GM、シルバラードEVの生産を2023年初頭に開始予定

GM(ゼネラル・モーターズ)はCES 2022でシルバラードEVを公開する予定だが、実際に手に入るまでにはかなりの時間がかかりそうだ。Automotive Newsによれば、GMはその主力電気ピックアップの生産を2023年初頭に開始し、その年の後半に販売を始めることを明らかにしたという。それは、2021年12月に出荷されるハマーEVピックアップよりもずいぶん遅れるし、現在は2023年初頭に出荷が予定されているハマー電動SUVにも数カ月遅れることになる。

GMはすでに重要な詳細のいくつかを小出しにしているが、それでも全体的な詳細に関してはまだ伏せたままだ。シルバラードEVは、ハマーやキャデラック・リリックと同じ駆動機構とUltium(アルティウム)バッテリー技術を利用し、400マイル(約640km)以上の航続距離と4輪ステアリングの採用を約束している。通常バージョンには目立つインテリアとしてガラスルーフが採用されているし、商用ユーザーのためのバージョンも用意されている。

登場のタイミングは理想的ではない。シルバラードEVは、主要なライバルになることが予想されるフォードのF-150ライトニングから1年以上後に登場する。Tesla(テスラ)のサイバートラックも、より早く到着するかもしれない。価格はまだ不明だが、新興EVであるリビアンR1Tが今後2年間、シルバラードの顧客の一部を吸収する可能性はあるだろう。CES 2022での発表は、関心を呼び起こし、期待を高める重要な役割を果たせるかもしれない。購入を検討している層は、シルバラードがさらに待つ価値があるかどうかを知りたいと思うだろう。

編集部注:本記事の初出はEngadget。著者のJon Fingas氏はEngadgetの寄稿者。

画像クレジット:GM

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(文: Jon Fingas、翻訳:sako)

フォードやBMWが支援するSolid Powerが上場、全固体電池開発の競争激化

Ford(フォード)やBMWが支援する全固体電池開発企業のSolid Power(ソリッドパワー)が、米国時間12月9日に上場した。取引開始直後に株価は急上昇している。

Solid Powerは、電気自動車関連分野では数少ない、特別買収目的会社(SPAC)との合併により上場した企業だ。同社は6月にSPACのDecarbonization Plus Acquisition Corp III(ディカーボナイゼーション・プラス・アクイジション・コーポ III)との合併を発表。合併後の市場評価額は12億ドル(約1360億円)とされていた

この合併では、株主投票前償還が著しく少なかったため、最終的にSolid Powerに約5億4290万ドル(約615億円)の現金がもたらされた。これは事前に推定されていた6億ドル(約680億円)に非常に近い金額だ。この現金には、1億9500万ドル(約221億円)のPIPE(上場企業の私募増資)と3億4790万ドル(約394億円)の信託現金が含まれる。

この資金は、世界初の電気自動車用全固体電池の実用化を目指す同社にとって必要なものになる。全固体電池とは、液体ではなく固体の電解質を用いることからその名がついたもので、次のブレークスルーとなる電池技術として注目を集めている。開発者によると、可燃性の電解液を使用しないために、従来の電池にともなう火災のリスクを最小限に抑えることができ、さらにエネルギー密度(すなわち電池の重量や体積あたりの航続距離)にも優れているという。

Solid Powerは現在、コロラド州にある工場を拡張し、2022年初頭に商用品質の100アンペア電池セルを試験的に生産する準備を進めているところだ。この電池セルは、同社に出資しているフォードやBMWの自動車でテストに使われることになっている。Solid Powerは今回の上場で得た資金を、2026年と予想される車両への搭載までの運営資金に充てる計画だ。

関連記事:固体バッテリー開発のSolid Powerが生産能力拡大、2022年にフォードとBMWに試験用バッテリーを納入

同社の長期的なビジネスプランは、業界大手のLG Chem(LG化学)やSK Innovation(SKイノベーション)のような大規模な電池メーカーになることではない。最終的な目標は、メーカーや製造業者にセルのライセンスを供与することである。「長期的に考えれば、当社は素材メーカーです」と、同社CEOのDoug Campbell(ダグ・キャンベル)氏は、先日のTechCrunchによる取材に語っていた。「私たちは、固体電解質材料の業界リーダーになりたいと考えています」。

Solid Powerは、SPACを通じて株式公開した唯一の全固体電池開発企業でもなければ、大手自動車メーカーから投資を受けている唯一の企業でもない。

実際、ライバルのQuantumScape(クァンタムスケープ)はVolkswagen(フォルクスワーゲン)の支援を受けており、Stellantis(ステランティス)とMercedes-Benz(メルセデス・ベンツ)は新規参入のFactorial Energy(ファクトリアル・エナジー)に資金を提供するなど、大手自動車メーカーは全固体電池の開発競争に出馬する馬を選んでいるようだ。

QuantumScapeも、2020年11月にSPAC合併による上場を完了させた。他のモビリティ系SPACと同様、株価は変動が激しく、12月には114ドル(約1万3000円)まで上昇した後、20~25ドル(約2270〜2830円)程度で落ち着いている。Solid Powerの株価が同じような激しい変動にさらされるかどうかはまだわからない。同社の株は「SLDP」というティッカーシンボルで取引されている。

画像クレジット:Solid Power

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(文:Aria Alamalhodaei、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

Polestar、約12.8万円のソフトウェアアップデートでEVの馬力をアップ

Polestarは、Polestar 2のトルクと馬力を向上させる無線アップデートを公開した。このアップデートにより、電気自動車のパワーは67hp増の469hp、トルクは15増の502lb.ftに向上する。

実用面では、0-60マイル時が4.4秒となり、コンマ1秒ほど短縮する。Polestarでは、最も加速が良くなるのはミッドレンジであるという。50-75マイル時の加速時間は2.2秒となり、これは一般的なPolestar 2の設定よりも約0.5秒速い。

ただし、このアップデートは無料ではない。英国、オランダ、ノルウェー、スウェーデン、スイス、フィンランド、デンマーク、ドイツ、オーストリアの対象車には、Polestar Extras storeで提供され、約1000ユーロ(約12万8000円)の費用がかかる。同社は、春には米国とカナダでもこのアップデートを提供する予定で、価格は後日発表される。

EVの性能を向上させるためのアップデートを行っているのは、Polestarだけではない。Tesla(テスラ)は、Model 3やModel Yなど、一部のモデルで加速性能を向上させる有料アップデート提供している

編集部注:本記事の初出はEngadget

画像クレジット:Kirsten Korosec

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(文:Kris Holt、翻訳:Hiroshi Iwatani)

使用済みリチウムイオン電池から99.99%の超高純度でリチウムを回収する装置を量子科学技術研究開発機構が開発

使用済みリチウムイオン電池から99.99%の超高純度でリチウムを回収する装置を量子科学技術研究開発機構が開発

国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構(量研)は12月7日、使用済みのリチウムイオン電池から99.99%という超高純度でリチウムを回収できる装置を開発したことを発表した。リチウムを100%輸入に頼っている日本において、国内資源循環への展望が拓かれる。

電気自動車(EV)の普及により世界中でリチウムの需要が急増し、今後、確保が難しくなることが予想される。2027年から2030年ごろまでに国内における需要に追いつけなくなるとの試算結果もある。現状ではリチウムのリサイクルがもっとも有力な対策となるが、既存技術では高コストとなり難しい。そこで、量研量子エネルギー部門六ヶ所研究所増殖機能材料開発グループの星野毅上席研究員らからなる研究グループは、新開発の高性能イオン伝導体を20枚積層してリチウムを回収する装置を作り、リチウム回収コストの評価を行った。

同機構の方式は、使用済みリチウムイオン電池を加熱処理(焙焼)して得られたブラックパウダー(電池灰)を水に浸し、その水侵出液50リットルを原液として、表面にリチウム吸着処理を施した高性能イオン伝導体20枚を積層した装置でリチウムを回収するというもの。そこに加える電圧、溶液の温度、流速の最適条件を導き出し、さらにブラックパウダーの中のリチウムが溶け出せる限界まで水侵出液のリチウム濃度を高めて回収速度を向上させたところ、2020年度貿易統計によるリチウムの輸入平均価格(1kgあたり1287円)の半分以下にまで製造原価を下げることができた。

99.99%という超高純度でリチウムを回収できることに加え、水素が発生すること、そして二酸化炭素ガスの吹き込みで電池原料となる炭酸リチウムを生成できるという副産物があることもわかった。これらにより、環境負荷の低い技術としての可能性も示された。

この技術により、これまでコスト面から困難とされてきた車載用大型リチウムイオン電池の工業的リサイクルが可能となる。しかも、リチウムは核融合の燃料ともなるため、核融合の早期実現にも貢献する。さらに今回開発された技術は、そもそものリチウムの供給源である塩湖かん水からのリチウムの回収も可能にする。また、塩湖かん水よりリチウム濃度は下がるものの、海水からのリチウム回収も不可能ではない。同機構は、「海水からのリチウム回収技術確立、すなわち無尽蔵のリチウム資源の確保を目指して研究開発を進めてまいります」と話している。

フォルクスワーゲンがEV生産強化のために3社と新たな提携を締結

Volkswagen(フォルクスワーゲン)が、電気自動車のバッテリーに関わる3つの新しいパートナーシップを締結した。このドイツの自動車メーカーは、2040年までに乗用車、トラック、SUVの全車種をゼロエミッション(排ガスを一切出さない)車に移行させることを目指している。

現地時間12月8日に発表されたこの3つのパートナーシップの提携企業は、素材技術グループのUmicore(ユミコア)、バッテリースペシャリストの24M Technologies (24Mテクノロジーズ)、そしてドイツでリチウム採掘プロジェクトの開設を計画しているVulcan Energy Resources(バルカン・エナジー・リソーシズ)だ。

フォルクスワーゲンとユミコアは合弁会社を起ち上げ、フォルクスワーゲンがドイツのザルツギッターに設立するバッテリーセル工場に、リチウムイオン電池の重要な構成要素である正極材を供給する。この合弁会社の初期生産能力は20ギガワット時だが、2030年までに160ギガワット時にまで拡大することを目指している。

さらにフォルクスワーゲンは、半固体の電極を持つバッテリーを開発している24Mテクノロジーズに出資すると発表した。マサチューセッツ工科大学(MIT)からスピンアウトしたこのバッテリー技術スタートアップ企業によれば、同社の半固体電池は、従来のリチウムイオン電池よりも製造工程を簡素化でき、コストも削減できるという。フォルクスワーゲンは出資額を明らかにしていない。

そしてバルカン・エナジー・リソーシズとのパートナーシップには、両社が「カーボンニュートラル」と表現するドイツ産リチウムの供給に関する拘束力のある契約が含まれている。

両社によると、このカーボンニュートラルなリチウムが得られるのは、バルカン社の塩水(塩湖かん水)からリチウムを採取する技術が、従来の塩湖かん水を蒸発させてリチウムを抽出する方法よりも環境に優しく、再生可能エネルギーを利用した工場で処理されるからだという。

バルカンは、2026年から5年間、フォルクスワーゲンに水酸化リチウムを供給する。

これら3つの提携は、フォルクスワーゲンが電気自動車に300億ユーロ(約3兆9000億円)を投資する計画の一環だ。欧州だけでも、同社は2030年までに6つの巨大バッテリー工場の建設を予定しており、それらすべてを合計した生産能力は、240ギガワット時になる見込みだという。

バッテリーのサプライチェーンを確保するために迅速に動いている大手自動車メーカーは、フォルクスワーゲンだけではない。General Motors(ゼネラルモーターズ)は2021年12月初め、韓国のPOSCO Chemical(ポスコケミカル)と同じように合弁会社を設立し、2024年までにバッテリーの正極材を製造する新工場を北米に建設すると発表した。一方、Stellantis(ステランティス)は11月、バルカンと独自のリチウム供給契約を締結している。

これらの提携は、自動車メーカーの電動化計画が加速していることを示すだけでなく、世界的なバッテリーサプライチェーンを中国から離れたところで再構築することに貢献するという点でも注目される。

Benchmark Mineral Intelligence(ベンチマーク・ミネラル・インテリジェンス)の調べによると、現在はバッテリーの正極材と負極材の大部分が中国で製造されているという。また、現在計画されている200の大規模バッテリー工場のうち、約75%にあたる148の工場が中国に建設される予定であることもわかっている。

画像クレジット:Jens Schlueter / Getty Images

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(文:Aria Alamalhodaei、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

テスラ、一部の故障したオートパイロットカメラを無償で交換との報道

CNBCによると、Tesla(テスラ)は一部の電気自動車のフロントフェンダーに搭載されているオートパイロットのカメラを無償で交換する。Teslaはまだリコールを発表していないが、CNBCは11月下旬に認定サービスプロバイダーに配布された内部文書を確認し、その中でTeslaは欠陥のある中継カメラを無償で交換するよう求めている。同社がカリフォルニア州フレモント工場で製造しているModel S、X、3の一部の車両に搭載されているカメラの回路基板に不具合があるようだ。

このカメラはクルマの死角を撮影するもので、これがないとオートパイロットは機能しない。カメラが意図したとおりに作動しなければ、ドライバーには、メインディスプレイのブロックボックスが見えるだけで、オートパイロットの機能に制限あることが警告される。CNBCによると、Teslaは使用したPCBの欠陥により、少なくとも数百台分のカメラを交換しなければならない可能性があるという。

TeslaのセールスマネージャーはCNBCに対し、内部サービス通知後に自主的なリコールが行われることもあるが、Teslaはまだ声明を出していないと述べている。Teslaは、過去にもさまざまな問題で何度かリコールを行った。10月には、フロントサスペンションのラテラルリンクのファスナーがゆるむ可能性があるとして、約3000台のModel 3とYをリコールした。また、2017年以降、そして11月にバグのあるフルセルフ ドライビングベータ版のアップデート後に誤作動でブレーキがかかりやすくなったため、同社は1万1704台をリコールした。

編集部注:本稿の初出はEngadget。執筆者のMariella MoonはEngadgetの共同編集者。

画像クレジット:Getty Images

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(文:Mariella Moon、翻訳:Nariko Mizoguchi

独Sono Motorsが上場、ソーラー電気自動車Sionを2023年までに市場へ投入

Sono Motors(ソノ・モーターズ)は、すべての電気自動車に太陽光発電で電力を供給したいと考えている。そのアイデアは9年前にミュンヘンの地下室で、起業家精神に富んだ18歳の若者2人が、化石燃料への社会の依存に対するソリューションを思いつくまま打ち出し始めたことに端を発する。Sono Motorsの共同創業者であるJona Christians(ジョナ・クリスチャン)氏とLaurin Hahn(ローリン・ハーン)氏は、自動車にはあまり乗り気ではなかったものの、輸送機関がどれほど化石燃料の燃焼に貢献しているかを認識しており、そこから始めるのが良いと考えた。

「私たちはあらゆる車両に太陽光発電を統合するというビジョンを思いつき、それには何が必要かと考えました」とハーン氏はTechCrunchに語った。

彼らは、再生可能エネルギーが輸送時の排出ガス問題の解決に役立つことを証明するために、ソーラー電気自動車の試作品の製造に着手し、2015年までに実用モデルを完成させた。翌年、クリスチャン氏とハーン氏はクリエイティブディレクターのNavina Pernsteiner(ナヴィナ・ペルンシュタイナー)氏を招き、共同で事業を立ち上げ、Sono Motorsを会社とブランドとして確立した。

米国時間2021年11月17日、Sono Motorsの親会社であるSono Group(ソノ・グループ)が上場した。IPO価格が15ドル(約1730円)に設定された後、NASDAQで20.06ドル(約2314円)で取引を開始したが、取引終了前に38.74(約4469円)ドルの高値をつけた。

Sono Motorsの市場への道は2つある。同社は、同社初のソーラー電気自動車であるSion(サイオン)の1万6000台の先行予約を平均3000ドル(約34万6000円)の頭金で確保した。5ドアの小型でファミリー向けのハッチバックは2万8700ドル(約331万円)で、2023年前半までに消費者に届ける予定だ。Sonoはさらに、複数の企業と協力して同社のソーラー技術を他の車両に統合しようとしている。2021年の初めに、同社は自社のソーラーボディパネル技術を他社にライセンス供与することを発表し、電動自動運転シャトルバス会社EasyMile(イージーマイル)を最初の顧客に選んだ。

関連記事:Sono Motorsがソーラーカー技術を自動運転シャトルバスのEasyMileにライセンス供与

Sion

Sionの航続距離は190マイル(約306km)で、中国のBYD(比亜迪)が供給する54kwHのリン酸鉄リチウム(LFP)バッテリーを使用する。この電池は環境と倫理に大きなインパクトを及ぼす金属であるマンガン、ニッケル、コバルトを使用していないため、よりサステナブルだと考えられている。Sionは壁のボックスを介して充電できるが、Sonoによると、太陽が輝いているときはいつでもバッテリーにエネルギーを供給するため、毎日の通勤のほとんどをまかなうことができるという。

「例えばドイツでは、通勤圏の平均は1日10マイル(約16km)です」とクリスチャン氏はTechCrunchに語ってくれた。「当社独自の技術により、太陽光発電だけで週平均112(約70マイル)走行できます。これは毎日の通勤の大半をカバーしているので、それほど頻繁に充電する必要がありません。同じサイズのバッテリーを搭載しながらも太陽光を統合していない他の電気自動車と比べて、航続距離は4倍になります。だからこそ、この技術はEVを大衆化する大きなポテンシャルを秘めていると考えています」。

同社によると、アルミニウム製フレームは248個以上のセルを統合したソーラーパネルで覆われており、車には双方向充電機能が搭載されている。これにより、消費者はバッテリーに蓄えられたエネルギーを使って、壁のボックスを介して自宅や他の電子機器に電力を供給できるようになる。この機能は、相乗りやカーシェアリングと併せて、デジタルキーとしても機能するSonoアプリによって実現される予定だ。

このクルマの予約注文のほとんどは、発売が予定されている欧州からのものだ。受注の90%はドイツまたは「ドイツ語圏」からで、残りの10%は製造拠点となるオランダ、スペイン、フランス、イタリア、スウェーデンなどからの受注だ。Sonoは旧Saabの工場で生産するため、National Electric Vehicle Sweden(ナショナル・エレクトリック・ビークル・スウェーデン、NEVS)と提携した。クリスチャン氏の話では、この工場は年間4万3000台の生産能力を有し、7年間で約26万台が生産される予定になっている。

「ワンベース」車両プラットフォーム

他の多くの自動車メーカー(GM、Arrival)と同様、Sonoも「ワンベース」の車両プラットフォームを開発中で、その上に将来のモデルを構築したいと考えている。Sionを皮切りに、同社はクロスオーバー乗用車やラストワンマイル配送用の貨物バンの製造も検討している。

「パワートレイン、シャーシ、サーマルユニット、一部の電子機器などのモジュラーシステムをSionで使用予定」とSonoは米証券取引委員会(SEC)への提出書類に記載している。「これらのモジュラーシステムは、改造なしに、または軽微な改造のみで他の車種にも使用することができる」。

太陽光技術の統合とライセンス

Sonoの太陽光技術は、他の車両への統合と、バス、トラック、ラストマイル車両などのさまざまな車両アーキテクチャのライセンス供与の両方を可能にするように設計されている。同社によると、すでに試作サンプルを顧客に発送しており、戦略的ユースケースの検証に向けて10件を上回る予備的合意書や商事契約書を締結済みだという。

「特に輸送および物流業界は、総所有コストに非常に重点を置いており、太陽光発電の統合でランニングコストを大幅に削減できる」とSECへの提出書類には書かれている。「当社の専有技術を保護するために、いくつかの特許を取得している。さらに、これらの特許、多数の異なるポリマー材料のテスト、そしてパワーエレクトロニクス、特にMCUなどの完全な太陽電池集積化用の複数の関連コンポーネントの使用により、関連する競合他社であると考えられる企業に先駆けて、最大4年間の高度な開発を進めている」。

このMCUとはSonoの「maximum power point tracker central unit(最大電力ポイント追跡中央ユニット」のことで、同社によると、太陽電池がエクステリアのさまざまな場所に設置されていることに起因する不均一な日光暴露の問題を解決する。

Sonoはまた、2030年に販売される車両の半数以上がソーラー改良に適しており、そのうちの3分の1がソーラー統合に適していると考えている。近年、太陽光発電の価格が低下し、太陽電池の効率が向上しており、EVの航続距離にインパクトを与える可能性がある。

「また、電気自動車の販売台数が急増していること、そして充電ステーションの伸びが比較的鈍化していることが、電気自動車の大規模導入のボトルネックになっている」と同社は提出書類に書いている。「今後数年のうちにも、個人が充電できないような場所に住んでいる人たちは、適切な充電オプションを見つけられるかどうかが不透明であることから、電気自動車を購入することに消極的になると私たちは考えている」。

Sono Motorsは納品できるだろうか?

生産をNEVSにアウトソーシングすることは、車を効率的かつスケーラブルに生産するためのSonoの戦略における、同社が称する「重要な差別化要因」の1つである。差別化には次のようなものが含まれている。他の企業はB2C販売のみであるが(同社は)従来型の店舗を排除している、アルミ製のスペースフレームを採用しているためスチールプレス加工が不要、ソーラーパネルであるため塗装作業が不要。しかし、NEVSは頼りにするには慎重を要する。この会社は中国企業のEvergrande(恒大集団)が所有しているが、同社は880億ドル(約10兆円)の負債を抱えており、世界的な金融危機の脅威にさらされている

「NEVSは2019年から当社の生産パートナーを務め、それ以来緊密な交流を続けており、現在もその状態が続いています」とクリスチャン氏。「Sionの生産は現在のところリストラの影響を受けていません。2022年のプレシリーズ生産と2023年前半に予定されているSionシリーズ生産の設備準備は計画通りに進んでいます」。

Sono Motorsは念のため、いくつかのバックアップ計画を立てている。プランAではNEVSでSionの製造を継続する予定だが、他の欧州の委託製造業者のキャパシティを利用するなど、代替シナリオと選択肢を模索しているとクリスチャン氏は話す。

それでも、NEVSは新しいオーナーを探しており、最終的にはSonoにとっては問題ないかもしれない。しかしこのスタートアップは生産を遅らせる余裕はないだろう。2018年、Sonoは2019年までに顧客に出荷する予定だった予約注文が7000件あったが、これらの注文は2021年まで延期された。Sonoがすぐに納品とスケーリングを開始しなければ、単なる評判の問題以上の問題に直面することになる。

予約注文1件当たり3000ドルで、Sonoは約4800万ドル(約55億円)を銀行に保有している。しかし、それだけではSionを生産することはできず、Sonoはすでに現金獲得を切望している。SECに提出された書類によると、同社の上半期の損失は約2900万ドル(約33億円)で、純損失は累積赤字1億2300万ドル(約142億円)となった。同社は「少なくとも当社がSionの資材輸送を開始し、当社のソーラー技術の収益化を含む事業規模を大幅に拡大するまでは、予測可能な将来においても引き続き損失を発生させ、外部からの資金調達に依存することになる」と述べている。

幸いなことに、今回のIPOは同社にとって、Sionを製品化するための良い緩衝材となった。同社は上場により1億5000万ドル(約173億円)を調達した。この資金は、一連のコンポーネントから作られる次のプロトタイプ世代に焦点を当てたSionの開発にも使われる予定だ。

画像クレジット:Sono Motors

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(文:Rebecca Bellan、翻訳:Dragonfly)

トヨタが米国初のバッテリー工場をノースカロライナに建設

自動車メーカーの多くが自社のバッテリー生産工場でサプライチェーンの主導権を握ろうとしている中、トヨタ自動車は米国初のバッテリー工場をノースカロライナ州に建設する。同社と同州政府幹部が米国時間12月6日、明らかにした。

トヨタは、トヨタ・バッテリー・マニュファクチャリング・ノースカロライナ(TBMNC)という名称のこの工場に12億9000万ドル(約1460億円)を投資し、2025年に生産を開始する予定だ。この投資は、2030年までに米国で自動車用バッテリーに34億ドル(約3860億円)を投資するという広範な約束の一部だ。

稼働開始時にはTBMNCには4本の生産ラインが設置され、各ラインが電気自動車やハイブリッド車約20万台分のバッテリーを生産できるようになる。トヨタは、生産ラインを少なくとも6本に拡張し、年間120万台分のバッテリーを生産することを目指している。新工場では約1750人の新規雇用を創出し、バッテリーの生産には100%再生可能エネルギーを使用すると同社は述べている。

このニュースは、米議会が電気自動車に対する消費者税控除の見直しを検討している中でのものだ。現在、電気自動車の販売台数が20万台以下のOEMに対しては約7500ドル(約85万円)の控除が適用されている。民主党のグループは、電気自動車のバッテリーが米国内で製造されたものであれば追加で500ドル(約5万7000円)を、また組合員のいる米国内工場で生産された電気自動車についてはさらに4500ドル(約51万円)を加算することを提案している。

トヨタは、この税控除の改正に真っ向から反対しており、議員に宛てた手紙の中で「露骨に偏っている」と指摘している。この法案は、Ford(フォード)、General Motors(ゼネラルモーターズ)、Stellantis(ステランティス)の大手3社と全米自動車労組に支持されている。

トヨタは、バッテリー生産工場の設置を発表した最新の主要自動車メーカー企業だ。こうした動きは、原材料や主要バッテリー部品のサプライチェーンが逼迫する可能性を考慮した取り組みの一環だ。Rebecca Bellan(レベッカ・ベラン)がTechCrunch+に書いたように、GMがLG Chem(LG 化学)との合弁会社Ultium(アルティウム)を設立したり、Ford MotorがSK Innovation(SKイノベーション)と契約したりするなど、バッテリーサプライヤーとの提携や合弁事業は、OEMが供給をコントロールする必要性を認識していることを示している。

画像クレジット:Kirsten Korosec

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(文:Aria Alamalhodaei、翻訳:Nariko Mizoguchi

SPAC上場をめぐりEVメーカーLucid Groupを米証券取引委員会が調査

Lucid Group(ルシード・グループ)は、同社の合併による上場を調査している証券当局から召喚された。

Lucidは米国時間12月6日朝に当局に提出した書類の中で、米証券取引委員会(SEC)から調査に関連する特定の文書を要求されたと述べた。

「この問題の範囲や結果について確たるものはありませんが、調査は当社(旧Churchill Capital Corp. IV)とAtievaとの合併、および特定の見通しと声明に関するものと思われます」と規制当局への提出書類には書かれている。

Lucidは、SECの審査に全面的に協力していると述べている。

このニュースを受けて、Lucidの株価は9.5%以上下落した。

Lucid Motorsは2021年2月に、特別買収目的会社Churchill Capital IV Corpとの合併を通じて上場企業になることで合意したと発表した。当時、特別買収目的会社(SPAC)と電気自動車スタートアップとの間で行われる取引としては最大級のものと考えられていた。

関連記事:EVのLucid MotorsがSPAC合併で上場へ、2021年下期に北米でLucid Airの販売開始

株主らは7月下旬、Lucid MotorsとChurchill Capital IVの合併を承認したが、個人投資家の投票数が少なかったため、両社は期限を1日延長した。合併会社は現在、Lucid Groupという社名だ。

Lucid Groupはその後、同社初の高級電気自動車Lucid Airの納入を開始し、アリゾナ州カサグランデにある工場を270万平方フィート(約25万平方メートル)拡張する計画を発表した。その拡張の一部は、2023年に生産開始を予定している高級電気自動車SUV「Project Gravity」に使用される。

SPACは2年前から流行した金融商品で、企業がより早く株式を公開するためのいい手段として位置づけられている。また、多くのベンチャーキャピタリストがSPACに参入し、取引のペースを上げている。しかし、それが原因で規制当局がこれらの合併の一部を詳しく調査することになった。少なくとも3件のモビリティ関連のSPAC合併がSECの精査を受けている。Nikola Motors(ニコラ・モーターズ)に対する規制当局の調査では、創業者が辞任し、3件の詐欺容疑で起訴された。Lordstown Motors(ローズタウン・モーターズ)はSECと司法省の調査を受けている

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画像クレジット:Kirsten Korosec

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(文:Kirsten Korosec、翻訳:Nariko Mizoguchi

「地球上で最もプログラマブルな自動車」の実現を目指すウーブン・プラネット

2日間にわたってオンラインで開催された「TechCrunch Tokyo 2021」で、初日冒頭の「Keynote」セッションに登場したのが、ウーブン・プラネット・ホールディングスでソフトウェアプラットフォーム担当シニア・バイス・プレジデントを務めるNikos Michalakis(ニコス・ミハラキス)氏だ。

「Programmable Mobility」(プログラム可能なモビリティ)と題したこのセッションでは、

  • ウーブン・プラネットの戦略の概要
  • モビリティのプログラミングをよりオープンにするためのArene(アリーン)プロジェクト
  • ウーブン・プラネットが切り開こうとしているビジネスチャンス

の3点を取り上げるとミハラキス氏は述べ、Keynoteが始まった。

技術と投資にフォーカスするウーブン・プラネット

ミハラキス氏はギリシャで生まれ、米国に渡って電気工学とコンピュータサイエンスを学んだ。さまざまな分野のスタートアップやNetflixで働いた後、シリコンバレーのトヨタ・リサーチ・インスティテュートに入社。その後、東京のウーブン・プラネットに移った。

ウーブン・プラネットのビジョンは「Mobility to love, Safety to live」で、技術にフォーカスした2つの会社と投資にフォーカスした1つの会社で構成されている。

技術にフォーカスした会社の1つがウーブン・アルファで、イノベーティブなプロジェクトを推進している。ミハラキス氏のチームが取り組んでいるプロジェクトもここに含まれる。

もう1つがウーブン・コアで、自動車メーカーとサプライヤーが協力しながら自動運転や新しい車載電子プラットフォームを提供している。

そして投資にフォーカスしたウーブン・キャピタルは投資や協業を通じて、スタートアップだけでなく大企業ともパートナーシップを構築しているという。

モビリティは古典的な考え方と現代的な考え方が交差するところに生まれる

モビリティについてミハラキス氏は「自動車に関する古典的な考え方と、ソフトウェア、つまりウェブ、モバイル、インターネットといった現代的な考え方が交差するところに生まれるものです」と語る。

同氏は「(新しい技術ゆえに)モビリティ構築に必要なスキルを持つ人材は今のところいません」とし、ウーブン・プラネットは日本のモノづくりにおけるクラフトマンシップとシリコンバレーのイノベーションの考え方を融合させた文化を構築しようとしていると述べた。また、社内に「DOJO(道場)」を作り、新しいモビリティ・スキルセットを身につけた人材を育成しているそうだ。

快適にソフトウェアを開発できる環境を目指すAreneプラットフォーム

「私たちは地球上で最もプログラマブルな自動車を実現したいと考えています」とミハラキス氏はいう。それを実現するプラットフォームがAreneだ。

Areneのビジョンを、同氏は「開発者が快適に開発を行えるようにしたいのです。最適なツールとプラットフォームを提供し、イノベーションを実現できるようにするのです」と説明する。

このビジョンを実現するためのミッションについては「ソフトウェア開発をシンプルにし、開発頻度を上げて、車載コードをシームレスにアップデートできるようにします。また、そのために安全性が損なわれることもないようにします。これを実現できれば、自動車のプログラミングは誰でもできるものになると考えています」と述べた。

スマートフォンと同じように自動車のプログラミングができるようになる

自動車のプログラミングが誰でもできるとはどういうことか。ミハラキス氏は10〜15年前の携帯電話の状況と対比して説明する。

「かつては電話機をプログラミングできるのは電話機メーカーだけでした。しかし現在は誰もがスマートフォンをプログラミングできます。何千ものアプリケーションが利用可能で、何千もの開発者がこのプラットフォームに参入し新しいアイデアを生み出しています。それにより投資家たちの関心が高まり、利益が見込まれるアイデアには資金が集まるようになりました」と同氏は述べ、このようなポジティブなサイクルが生み出された結果、モバイルエコシステムが成長していると携帯電話の状況を位置づけた。

これと同じように「現在のところ、自動車のプログラミングを行えるのは自動車メーカーだけですが、将来は誰もが車のプログラミングをできるようになるべきです」とミハラキス氏はいう。

オープンな開発プラットフォームで開発者の参入を促し、自動車業界に影響を与える

ウーブン・プラネットの目的は「オープンな開発プラットフォームを構築して、そこでクラウドベースのツールやソフトウェア開発キットを開発者に提供すること」で、自動車の各機能にアクセスするためのVehicle APIも提供する。

ツールを提供するだけでなく「自動車自体についても再考する必要がある」とミハラキス氏はいう。現在の自動車は複数の異なる領域ごとにコンピューティングが活用され、各コンピュータが特定の機能を実行するための専用のものとなっている。これに対し、ウーブン・プラネットは複数のECU(電子制御ユニット)を横断するArene OSにフォーカスする。「アプリケーションがコンピューティング全体に作用していくようにする」と同氏は説明した。

こうした取り組みは業界に大きな影響を与えて「車載アプリ開発者」という職種が生まれる、起業家がモビリティ分野に参入する際の障壁が少なくなる、車載ソフトウェアをアップデートできることで自動車自体のLTV(顧客生涯価値)も高まると同氏は見ている。

アプリ、Arene OS、ECU、ハードウェアの概念図

新しいビジネスチャンスのアイデアは?

このプラットフォームにより「新しいビジネスチャンスが得られると考えています」とミハラキス氏は述べ「ともに考え、創造性を磨いていきましょう」と呼びかける。そして、ビジネスチャンスのアイデアをいくつか挙げた。

まず、アプリのパーソナライズ機能を構築すれば、カーシェアで誰が乗ったかに応じてアプリや構成をロードできるようになる。

また、企業のブランディングも考えられる。企業が実店舗からウェブ、モバイル、ソーシャルメディアにプレゼンスが求められるようになったのと同じで、モビリティにもプレゼンスが求められるようになるだろうという。その例として同氏は、ホテルの送迎車内でチェックインやシャンパンのサービスを提供できるかもしれないと述べた。

分散型アプリケーションの可能性もある。同氏は「すべての自動車に最先端のパワフルなコンピューティング能力とセンサーが搭載されているのを想像してみてください。データの力を活用したすばらしいアプリケーションを構築できるでしょう」と述べ、リアルタイムのマップ構築を例として示した。

そしてビジネスチャンスとして同氏は最後に、これまでにないハードウェアへの期待を挙げた。同氏は個人的に、マッサージチェアがあればいいなと思っているという。

エッジコンピューティングによるマップのイメージ

ミハラキス氏は「成功するものもあれば失敗するものもあるでしょう。結果はわかりません。それが起業というものです」と述べ「自動車のプログラミングをよりオープンなものにしていけば、アイデアを繰り返し実験し、より容易にできるように改良し、実験にかかるコストを低減し、アイデアをさまざまな方法で応用してみるといった活動を通じて、エコシステムを成長させる機会が得られると思っています」と強調して、Keynoteを締めくくった。

(文:Kaori Koyama)

Polestar PreceptはEV自動車メーカーの未来を暗示している

Polestar(ポールスター)は、今後3年間で電気自動車を発売するという壮大な計画を遂行していく。その集大成となるのが、コンセプトモデル「Precept(プリセプト)」。これは、同社の未来を物理的に表現した「ロゼッタストーン」のようなものだ。

Volvo(ボルボ)から独立したブランドであるPolestarは、このコンセプトを「マニフェスト」と呼んでいる。言い換えれば、Polestar 5として生産されるPreceptにより、EV自動車メーカーである同社が目指す姿を消費者や将来の株主に伝えるのだ。

Polestar USAの責任者であるGreg Hembrough(グレッグ・ヘンブロー)氏は、ニューヨークで開催された会社説明会でTechCrunchのインタビューに応じ、「今後数年間は、Volvoのルーツから離れ、自社ブランドを確立していくことになるでしょう」と語った。説明会では、同社のCEO、Thomas Ingenlath(トーマス・インゲンラート)氏をはじめとする経営幹部が、新しい市場に進出し、販売台数を10倍に増やし、またその過程で3つの新型車を発売する計画を打ち出した。この野心的な計画は、同社のコアバリューであるデザイン、サステナビリティ、イノベーションに基礎を置いている。

これまでの道のり

Polestarは1996年、Volvo Carsのためにパフォーマンス・ソフトウェアを販売・開発するレース会社としてデビューした。スタートからVolvoと関連があったが、同盟は2011年には正式なものになり、Polestarはパフォーマンスパートナーとなった。そしてVolvo車のスポーツ性能を向上させた。2015年にはVolvo Car Groupに完全に買収された。その直後に独自のブランドとして分離独立し、2017年には最初で唯一のハイブリッド車「Polestar 1」を、2019年にはフルEVの「Polestar 2」を世に送り出した。

この2つのモデルを約2万9000台販売した。その大半を、4ドアのEV「Polestar 2」が占めた。Polestar 2は現在、本格的に生産されている唯一のモデルだ。Polestar 1の限定生産は先日終了し、次期SUVのPolestar 3は2022年中の発売を予定している。

将来のデザイン

Preceptは最初から、Polestarの理念をできるだけ多く視覚的に伝えることを目的としてきた。その中でも最も顕著なのは、ラグジュアリーとパフォーマンスだ。これは、同社のブランド・アイデンティティの鍵でもある。兄弟ブランドとの差別化を図り、唯一無二の存在にするものだ。

「Polestar 1とPolestar 2を見れば、私たちの兄弟会社のDNAが少しずつ残っているのがわかると思います」とヘンブロー氏はTechCrunchに話した。「Preceptの意図は、当社の将来のデザイン言語の形を示すだけでなく、デザインやサステナビリティの観点から見えてくる要素を明確に示すことにありました。これらは単にあれば良いと思うもののリストではなく、実際に製品化されるものです」

このことを念頭に置くと、Preceptのビジネスの側面が物語を語り始める。Volvoファミリーの面影は薄れ、より個性的で特徴的な外観となっている。例えば、兄弟ブランドの特徴である「Thor’s Hammer」ヘッドライトは「デュアルブレード」となり、オリジナルのデザインを物理的に半分に割ったように見える。加えて象徴的に、ということでなければだ。

「シャークノーズ」のフェイシア(前面)には、エンジン冷却用のグリルがなく、代わりに「SmartZone」と呼ばれるセンサー群が配置された。先進運転支援システムを強化するためのレーダーエミッターやカメラが格納されており、機能的に、「呼吸する顔」から「見る顔」へと変化した。

また、エアフローを改善するために、フロントにウイングを組み込んだフロントエアロフォイルも採用した。「もちろん、見た目も素晴らしいですよ」と、インゲンラート氏はイベントで熱く語った。

イノベーション

Polestarは技術面で課題を抱えている。例えば、高速道路での自動運転を一定レベルで実現したいという野望があるものの、競合車を上回る性能を実現できなければ意味がない。

Preceptの表層の下には、Polestar 5のスポーティな足回りを暗示するアルミニウム製の構造がある。このグランドツアラーには、Polestar 3に載せたものをベースにした電気系統を備え、Nvidia(エヌビディア)製のコンピューティングを組み込む予定だ。モーターは「P10」という450キロワットのユニットを開発中で、約603馬力を出す。出回っている製品の中でも、最もパワフルなユニットの1つにすることを目指している。また、800ボルトのバッテリーパックは、充電インフラに合わせて400ボルトに切り替えることが可能で、双方向充電にも対応する。

多くの課題がある中で、ヘンブロー氏は、ユーザーエクスペリエンスへの集中が、Polestarを正しい方向に導くと言う。「それは、Polestar 2で早くから取り組んできたことの1つです。Polestar 2は、Googleのサービスを組み込んだAndroid Automotive OSを採用した最初のモデルとなりました。毎月、顧客の車のソフトウェアをワイヤレスでアップデートします。Webブラウザ、ゲーム、ビデオプレーヤーなど、あらゆる面で驚きと喜びを提供しています」

「Polestar 3では、それを迅速に次のレベルに引き上げます。Preceptで示されたように、アイトラッキングのようなものは便利であると同時に、安全性にも寄与します。UXはイノベーションの一部であり続けると思いますが、私たちは安全性から離れることはありません」と付け加えた。

サステナビリティ

同社は、持続可能性の問題を強調し、生産における二酸化炭素の排出量を完全にオフセットするとまではいかないが、削減することに重点を置く。

Polestarは、2030年までに完全にカーボンニュートラルな自動車を生産することを宣言している。これは単なる自己満足ではなく、顧客も積極的に関わる話だ。

「振り返ってみると、5年前、10年前には、こうしたことに消費者が関心をもっていませんでした。しかし、世界は劇的に変化しています。あらゆる消費者が強く意識し、求めているものです」とヘンブローは語る。

「Polestar 0」プロジェクトを宣言したことで、社内の危機感が高まった。多岐にわたる方法を用意していた。まず、Preceptのインテリアには、炭素繊維のような亜麻由来のバイオコンポジット部品など、新しく革新的な素材を使った。シートは再生PES(ポリエーテルサルフォン)プラスチックを織り込んだものだ。ファッションやフットウェアの世界ではすでに使用されている素材であり、Polestarが旧来の自動車メーカーとの差別化を図る方法の1つでもある。「こうしたことは単なるキャッチフレーズではなく、私たちの核心をなすものです」とヘンブロー氏は話す。

革新的な素材以外にも、同社は目標達成のために炭素回収技術を採用するほか、サプライチェーンレベルでの透明性を高め、サプライヤーの業務改善にも力を入れる。

2025年以降

このような大胆な試みは、Polestarの計画のごく一部を表すにすぎない。

同社は、2030年までに完全なカーボンニュートラルカーの生産を目指しているが、その先はどうなるのか。それほど先の未来を描くことは、まさに未知の世界への航海だ。同社自身も、こうした努力が差別化につながるかどうかは、振り返ってみなければわからないと認める。同社には、2040年までに完全に気候変動に中立な企業になるというもう1つの目標があり、それが今後18年間の選択のすべてとは言わないまでも、多くを決定づけることになると思われる。

画像クレジット:Alex Kalogianni

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(文:Alex Kalogiannis、翻訳:Nariko Mizoguchi)

Polestarが新型電動SUVをチラ見せ、今後3年間で販売台数10倍増を目指す

かつてのモータースポーツにおける活躍から、電気自動車メーカーとなった現在まで、スウェーデンのPolestar(ポールスター)は長い道のりを歩んできた。だが、Thomas Ingenlath(トーマス・インゲラート)CEOによると、Volvo(ボルボ)からスピンオフした同社はまだ、始まったばかりだという。

インゲンラート氏は、同社の経営陣とともに、米国時間12月2日にニューヨークで行われたプレゼンテーションで、ポールスターの3年計画を発表した。その中では、野心的な販売目標とともに、次の電気自動車が少しだけ披露された。

「クルマとは非常に感情的なものです」という言葉で、インゲンラート氏はメディアに向けて語り始めた。

2021年12月のイベントでティーザーが公開された新型電気自動車「Polestar 3」(画像クレジット:Polestar)

その核となる計画は、2024年までに3つの新型車を発売するとともに、欧州とアジア太平洋地域の新しい市場に進出することで、販売台数を約29万台に拡大するというものだ。そしてこの拡大の基盤となるのが、デザイン、サステイナビリティ、イノベーション、カスタマーエンゲージメントというポールスター独自のコアバリューである。

今回のプレゼンテーションでは、特にサステナビリティ(持続可能性)が強調され、2030年までにカーボンニュートラルな自動車を生産するというポールスターのミッションが再確認された。そのためには、リサイクル素材の使用から、サプライチェーンレベルにおけるビジネスの変更まで、大小さまざまな持続可能への取り組みが必要になる。

今後発表される新型車「Polestar 3(ポールスター3)」と「Polestar 4(ポールスター4)」については、我々はまだほとんど何も知らされていない。それでもインゲンラート氏は、生産に向けて動き出していると主張し、EV愛好家を魅惑するPolestar 3のティーザー画像も公開した。このオールエレクトリックSUVは米国のサウスカロライナ州チャールストンで製造される予定だ。

関連記事:ボルボの高級EVブランドPolestarが初のフル電動SUV「Polestar 3」を米国で生産へ

Polestar 3は、気候変動に配慮したやり方で生産が行われるとともに、LiDAR開発企業であるLuminar(ルミナー)製のハードウェアとNVIDIA(エヌビディア)製のプロセッサを搭載し、高速道路での自動運転を可能にする先進運転支援システムを搭載することになっているが、発売当初はこの機能を使用することはできないようだ。

2022年に発売されるPolestar 3について、我々はほとんど知らされていないが、2023年に登場予定というPolestar 4についてはさらに不明だ。今回のプレゼンテーションで公開されたティーザー画像によると、Polestar 4は3よりコンパクトなプレミアムスポーツSUV「クーペ」として作られるモデルであり、後方がより傾斜したファストバック型のプロフィールを持つとされているが、それ以上の情報はない。

ポールスターは、3と4の価格帯のベンチマークとして、それぞれPorsche(ポルシェ)の「Cayenne(カイエン)」と「Macan(マカン)」の名前を挙げている。このことから、両車が目指すラグジュアリーとパフォーマンスのレベルにおいても、これらの競合車が基準となっていることが推察される。

興味深いことに、現時点で最もよくわかっているクルマは、最も遠い存在であるはずの「Polestar 5(ポールスター5)」だ。

ポールスターは先日、コンセプトカーの「Precept(プリセプト)」が、5番目のポールスター車となる4ドアのラグジュアリースポーツGTとして市販化されることを正式に発表した。現状でプリセプトはある意味、ポールスターの未来を物理的に宣言するものであり、今後発表になる2台のSUVにも影響を与えることになるだろう。

関連記事:Polestarが次世代EVセダン「プリセプト」改め「Polestar 5」は2024年に市場投入と発表

3年間で販売台数を2万9000台から29万台に飛躍させることは、ポールスターの存在感が増すというだけでなく、大変厳しい話にも聞こえるが、インゲンラート氏は心配していない。「これから先のポールスターは、すべてが成長するためにあります」と、同氏は語った。

すでに生産が開始されているというPolestar 3については、近いうちにより詳しい発表があるだろう。

画像クレジット:Alex Kalogiannis

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(文:Alex Kalogiannis、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

GMが新型シボレー・ボルトEVの生産を2022年1月末まで延期、リコール修理を優先

General Motors(GM、ゼネラル・モーターズ)は、ミシガン州にある同社のオリオン組立工場での新型Chevrolet Bolt(シボレー・ボルト)EVの生産を「2022年1月24日の週まで」延期すると、米国時間12月2日のTechCrunchへの電子メールで明らかにした。2021年初めにバッテリー内での発火の可能性があるとしてリコールされた数万台のChevrolet Boltについては「バッテリーモジュールの交換作業に引き続き注力する」と述べている。

同工場は8月23日から操業を停止しており、GMは新型Boltの生産時期を何度も延期してきた。

同社は10月、リコール対象の電気自動車Chevrolet Boltの交換用バッテリーモジュールのディーラーへの出荷を開始した。GMの広報担当は、出荷または交換されたモジュールの数について、具体的な情報は公表していないと述べた。

「当社は引き続き修理を強化しており、可能な限り迅速に修理を完了させることに注力しています」と広報担当は電子メールで述べた。「実際、BOLT EVの組立を行うオリオン組立工場の従業員には、リコールの修理を優先するために1月まで工場を閉鎖することを通知しました」。

5月には、当初、数件の火災が報告されてリコールとなった2017年から2019年のBoltに、火災を防止する新しいソフトウェアを追加する予定だった。このソフトウェアが有効でなかったため、Chevyは7月にリコールを発表した。そして新しい年式のBoltが発火し、8月にすべてのBolt EVをリコールした。ChevyのBoltバッテリーを製造しているLG Chem(LG化学)は、このリコールにかかった費用約20億ドル(約2260億円)を支払うことに合意した

GMは10月の投資家説明会で、2020年代末までに収益を倍増させ、EV市場シェアをTesla(テスラ)から奪うと述べた。GMは以前、2025年までに30種の新EVをリリースすることを約束したが、今のところ同社がスケジュールを発表しているのは、2021年末までに納車予定のGMCのHummer EVピックアップ、2023年発売予定のHummer EV SUV、そして2022年初めまでに市場に投入される予定のCadillac Lyricだけだ。

画像クレジット:General Motors

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(文:Rebecca Bellan、翻訳:Nariko Mizoguchi

テスラが約21.5万円の子供向け電動Cyberquad ATV(全地形型四輪バギー)を米国で販売

Tesla(テスラ)はいまだに、ブレードランナー風のピックアップトラックCybertruck(サイバートラック)や、同時に派手派手しく発表されたフルサイズのCyberquad(サイバークワッド、四輪バギー)を出荷していない。だが、今ウェブサイトから注文を行えば、2〜4週間のうちに子ども向けに設計されたミニCyberquadを入手できる。

Teslaのサイト上で「Cyberquad for Kids」(子ども用サイバークワッド)を1900ドル(約21万5000円)で購入できる。これは、平均的な子ども用電動乗り物に比べて高額だが、Teslaの既存のラインナップの中では最も低価格の車両だ。そして、Cyberquadの素材は平均的な電動子ども車よりも高級で「完全スチール製のフレーム」を持ち、クッション性のあるシートと完全な調整が可能なサスペンションを装備している。

だが実際に買うことのできる最も安いTeslaであると同時に、航続距離に関しても最も制限されている車両だ。Teslaによればフル充電で約15マイル(約24.2km)を走るという(フル充電には5時間かかる)。また、最高時速が時速10マイル(時速約16.1km)のスピードメーターを持つこの車両が、陸上でのスピード記録を打ち立てることもない(必要に応じて安全のために最大時速5マイル(時速約8.1km)に制限できる)。それでもまだ、子どもの乗り物のとしては十分に速いが、それはおそらくテスラがこれを少なくとも8歳以上の子どものために設計されたものとし、最大積載重量が150ポンド(約68km)である理由だ。

Cyberquad for Kidsは現在米国でのみ購入可能であり、Teslaはクリスマスに間に合うように配達することは保証していないものの、クリスマスツリーの下で開封したならば随分派手なプレゼントになるだろう(笛よりもずっといい)。

関連記事:内部告発者がらみのジョーク、または脅し?イーロン・マスク氏が約5600円の「サイバーホイッスル」を宣伝

さてその一方で、この商品をインスパイアした実際のCybertruckの出荷は2022年末まで遅れているし、イーロン・マスク氏がCybertruckと一緒に出荷すると口にしたフルサイズのCyberquadがそのときに登場するかどうかはまだ不明だ。

画像クレジット:Tesla

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(文: Darrell Etherington、翻訳:sako)

GMがポスコケミカルと合弁会社を設立、バッテリーの重要材料「正極活物質」を製造する新工場を北米に建設

General Motors(ゼネラルモーターズ)は、韓国のPOSCO Chemical(ポスコケミカル)と合弁会社を設立し、2024年までにバッテリーの正極活物質を製造する新工場を北米に建設すると発表。垂直統合型のバッテリーサプライチェーン運営への取り組みをさらに深めようとしている。

正極活物質は電気自動車用バッテリーのコストの約40%を占める重要な材料だ。Benchmark Mineral Intelligence(ベンチマーク・ミネラル・インテリジェンス)によると、正極と負極(リチウムイオン電池のもう1つの構成要素)は、その大部分が現在は中国で生産されているという。GMは今回の発表により、2025年までにバッテリー生産の大部分を北米に移すという目標に一歩近づくことになる。これは現存のバッテリーサプライチェーンと比べると、地理的な大改革を意味する。

「特にバッテリーの生産に関して、我々は自らの運命をコントロールする必要があります」と、GMの役員であるDoug Parks(ダグ・パークス)氏は、米国時間12月1日に行われた記者会見で語った。「だから我々は、独自のプラットフォームのために、北米を中心とする垂直統合戦略を追求しているのです」。

GMはすでに、LG Energy Solution(LGエナジーソリューション)との合弁事業であるUltium Cells LLC(アルティウム・セルズ)によるバッテリーセル生産や、Li-Cycle(リ・サイクル)とのバッテリーリサイクル契約など、バッテリーサプライチェーンの他の部分を積極的にコントロールしている。この新工場で生産される材料は、GMが350億ドル(約4兆円)を投じる電動化戦略基盤となる新しいニッケル・コバルト・マンガン・アルミニウム(NCMA)電池である「Ultium(アルティウム)」バッテリーのセルに直接使用される予定だ。

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同社の幹部は、工場の場所や投資額については明らかにしなかったものの、これが多額の投資であることはほぼ間違いない。なぜなら、この新工場で生産される材料は、GMがUltium Cells合弁会社の下で計画している4つのバッテリー製造施設で必要となる正極活物質の「ほとんど」を供給することになるからだ。これによって、GMは最終的に米国内で合計140ギガワット時の電池製造能力を持つことになる。

2024年までに新施設を稼働させるのであれば、この合弁会社は迅速に行動する必要があるだろう。両社によると、早ければ来年の第1四半期には立地を発表できるとのこと。

GMの垂直統合戦略の背景には、自動車から家電までさまざまな業界に影響を与え続けているチップ不足の問題がある。

「半導体の危機は、むしろ私たちが機敏性を備える必要があることを教えてくれました」と、パークス氏は語っている。

さらに同氏は、原材料の調達を含むサプライチェーンの多くを北米に移すことで、コバルト調達における人権侵害や環境への影響など、バッテリー生産におけるより厳しい現実に対処するためにも役立つと語る。

「私たちは、サプライチェーンを現在よりも改善することができると考えています。セキュリティの観点、つまり私たちが北米アプローチと呼ぶ場所的セキュリティにおいても、そして同時に、環境面においてもです」と、パークス氏は語った。

画像クレジット:GM

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(文:Aria Alamalhodaei、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

フォーミュラEが「地球上で最も効率的なレースカー」となる第3世代のマシンを発表

電動フォーミュラカーによるレースシリーズを展開しているFormula E(フォーミュラE)が、地球上で最も効率的なレースカーを発表した。各チームはこの新しい第3世代(Gen3)のマシンを2022-23年シーズンで使用することになっており、2022年春に納車された後、テストを開始できるようになる予定だ。

Gen3は、第2世代のマシンよりも軽量・小型化されているだけでなく、レースで使用するエネルギーの少なくとも40%は回生ブレーキによって生成されると、フォーミュラEと国際自動車連盟(FIA)は述べている。そのため、Gen3は、リアに油圧ブレーキを持たない初のフォーミュラカーとなる。

また、Gen3は車体の前後両方にパワートレインを搭載した初のフォーミュラカーでもある。フロントに250kW、リアに350kWのパワートレインを搭載しており、合計でGen2の2倍以上に相当する600kWの回生能力を備える。

さらに、電気モーターは最大で350kW(470bhp)の出力を発揮し、最高速度は320km/hに達する。フォーミュラEとFIAによれば、そのパワーウェイトレシオは、同等の最高出力を発生する内燃機関の2倍の効率になるという。

画像クレジット:Formula E

Gen3は持続可能性を念頭に置いて設計されたマシンだ。ネット・ゼロ・カーボンとなり、壊れた炭素繊維製部品はすべてリサイクルされる。タイヤには26%の持続可能素材が使用されている。

「第3世代のマシンを設計するにあたり、私たちは高性能、効率性、持続可能性が妥協せずに共存できると実証することを目指しました」と、フォーミュラEのJamie Reigle(ジェイミー・ライグル)CEOは、声明の中で述べている。「FIAと協力して、私たちは世界で最も効率的で持続可能な高性能レーシングカーを開発しました。Gen3は、これまでで最も速く、軽く、パワフルで、効率的なレーシングカーです」。

フォーミュラEは、まだGen3のデザインを完全に披露しているわけではない。いくつかのティーザー画像が公開されただけだ。しかし、数カ月後には各チームがテスト走行を開始する予定であるため、我々がこのマシンの全貌を目にする日もそれほど先のことではないはずだ。

編集部注:この記事はEngadgetに掲載されている。本稿を執筆したKris Holtは、Engadgetの寄稿ライター。

画像クレジット:Formula E

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(文:Kris Holt、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

LG化学のバッテリー部門LG Energy Solution、韓国取引所の承認を得てIPOを計画

LG Chem(LG化学)が全額出資するバッテリー部門のLG Energy Solution(LGエナジーソリューション)は新規株式公開の予備承認を得た。韓国取引所が現地時間11月30日に声明文で明らかにした。

LG Energy Solutionは早ければ今週中にも金融監督庁にIPO申請書を提出し、2022年1月末の上場を目指している、と報じられている。

同社は6月、米自動車メーカーGeneral Motors(ゼネラルモーターズ)の電気自動車Chevrolet Boltがバッテリーセルの欠陥で発火のリスクが高まる可能性があるとして一連のリコールを行ったことを受けて、IPO手続きを一時停止した。

General Motorsは、バッテリーセル製造パートナーであるLG Chemに、推定10億ドル(約1127億円)相当の損失の弁済を求めると述べていた。LG EnergyとLG Electronics(LG電子)は、Bolt EVのリコールにかかる費用として11億ドル(約1240億円)をGMに支払うことでリコール問題を解決した。

関連記事:GMがシボレー・ボルトのリコール損失約1100億円をLG Chemに請求すると表明

9月にGeneral Motorsとリコール関連問題で合意したことを受けて、LG Energy Solutionは10月、予定していたIPOを再開すると発表した。

ソウルのアナリストは、LG Energy Solutionの評価額を505億〜589億ドル(約5兆7230億〜6兆6750億円)と見積もった上で、IPOの規模を83億ドル(約9405億円)と予想しており、これは韓国では最大級のIPO案件となる。

同社の広報担当者は、IPOの詳細についてのコメントを却下した。

LG Energy Solutionは、財務報告書に基づき、9月時点の売上高を112億ドル(約1兆2690億円)としている。

同社は、中国のCATLBYD、日本のパナソニック、韓国のSK InnovationとSamsung SDIと競合している。

LG Chemは、2025年までに52億ドル(約5892億円)を投資して米国でのバッテリー事業を強化する計画を発表している

関連記事:LG化学がEV用バッテリー生産拡大へ向け2025年までに5770億円を投資

同社は先週、LG Energy Solution Michiganが、北米に新たなEV用バッテリー生産施設を設立するため、13億6000万ドル(約1541億円)の資金調達を計画していると発表した。同社はこの資金を利用してEV用バッテリーとエネルギー貯蔵システム(ESS)の生産を増やし、増大する需要に対応する。

LG Energy SolutionとStellantisは10月、北米でバッテリーセルおよびモジュールを生産する合弁会社を設立するという予備的な取引を発表した。この取引はまだ規制当局の承認を得る必要があるが、合弁会社は年間40ギガワット時の生産能力を持つことになるという。

また、LG Energy Solutionは正極材の生産に使用される主要鉱物(コバルトとニッケル)の安定供給に関して、オーストラリアの鉱山会社と6年間の契約を結んでいる

関連記事:LG Energy Solutionが豪州企業とニッケルとコバルトの購入契約を締結、EV用バッテリー製造のため

画像クレジット:Joan Cros Garcia – Corbis

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(文:Kate Park、翻訳:Nariko Mizoguchi

CO2排出量も抑えた自律走行ポッドとEVによる貨物輸送サービスのスウェーデンEinrideが米国進出

スウェーデンの運送テクノロジー企業Einride(アインライド)が米国での事業展開を開始すると発表した。同社は正式に、GE Appliances (GEアプライアンス)、ブリヂストン、Oatly(オートリー)などのパートナーと協力して、同社の輸送ソリューション(自律「ポッド」、電気トラック「Saga」オペレーティングシステムなど)のテストを開始する。

Einrideはまた、米国の道路事情と規制に対応した同社ポッドの米国版を導入することも発表した。さらには、造船所からのコンテナ輸送など、広範な運搬ニーズに対応するよう設計されたモジュール車両である平台型ポッドの導入も発表した。

Einrideは欧州で最大の電気トラック保有台数を誇る運送会社だ。運転席がなく、安全管理者用のスペースもない同社の自律走行ポッドも電気自動車だ。Kodiak Robotics(コディアクロボティクス)TuSimple(ツーシンプル)Waymo(ウェイモ)など、自律輸送分野の他の大手企業は、必ずしも電気自動車のみによるアプローチを追求していない。

「世界のCO2排出量の7~8%は陸上重量貨物輸送によるものです」とEinrideのCEO兼創業者のRobert Falck(ロバート・フラック)氏はいう。「Einrideを起業したのは、陸上貨物輸送の最適化と自律化をディーゼル車ベースで進めることで、却ってCO2排出量が増えるのではないかと心配したからです。ディーゼル車のほうがずっと安価に最適化と自律化を実現できますから」。

Einrideは、GEアプライアンスとの提携により、7台の自律走行電気トラックを配備し、ケンタッキー州ルーイビルにあるGEAの約3平方kmのキャンパス、およびテネシー州、ジョージア州にあるその他のロケーションを走行させる予定だ。これにより、GEAは今後5年以内にCO2排出量を870トン削減する予定だ。EinrideはGEAとの提携を今後数年で急速に拡大して電気トラックの配備台数を増やしていくという。

ブリヂストンとの提携はどちらかというと技術寄りの提携で、持続可能モビリティソリューションを共同開発し、クラス8の電気自律運転車両の実現を目指す。

「ブリヂストンとの協力により、Einrideは、ブリヂストンのスマートセンシングタイヤから安全性と効率性に関する新たなデータを収集できるようになります。ブリヂストン側も同社の先進のモビリティテクノロジーをEinrideに搭載されているオンボード車両プラットフォームに組み込むことができます」とEinrideの広報担当者はいう。「当社はブリヂストンとのサブスクリプション契約の下で、同社の米国輸送物流ネットワーク向けに、接続された電気トラックとデジタルサービスを提供することで、2025年までにブリヂストンの陸上輸送ニーズの大半を電化することを目指しています」。

オーツミルク企業であるOatly(オートリー)は、すでに欧州でEinrideと提携しており、その提携関係を米国にも拡大しようとしている。Einrideは米国への進出について詳細を明らかにしていないが、フラック氏によると、2020年からオートリーの欧州の輸送のデジタル化と電化を進めたのと同じような形で事業展開していくつもりだという。Einrideは欧州で、オートリーに電気トラックとSagaプラットフォームを提供することで、電化を迅速に推進し、特定経路におけるCO2排出量を87%削減したという。米国でも同様にしてオートリーの電化を進めていくことになるだろう。

Einrideの米国進出と同時に、Sagaプラットフォームのアップデートも実施される。Saga(ノルウェー語で「すべてを知っている」という意味)は、Einrideの電気トラックおよびポッド全体で稼働するIoTシステムだ。同社はこのシステムによって経路を最適化し、大規模電気トラック集団を稼働している。Einrideは、Sagaを、重量輸送産業に変革をもたらし、企業の保有車両の電化を推進する普遍的なオペレーティングシステムしたいと考えている。

「現在のトラック輸送産業は極度に分断化されていおり、連係が進んでいません」とフラック氏はいう。「電動化を進めるのは簡単ではありません。電動化の範囲とか実際の導入度といったことが目的ではないのです。当社のSagaプラットフォームとオペレーティングシステムを使えば、既存のテクノロジーを利用して、競争の激しいビジネスケースにおける米国の陸上貨物輸送システムの最大40%を電動化できます。どちらかというと、ハードウェアを改善するというよりも、新しい考え方を導入するといったほうが近いと思います」。

Einrideのポッドは安全管理責任者が同乗しないため、レベル4の自律性の達成方法について新しい考え方を取り入れている(米国自動車技術者協会によると、レベル4とは、車両が、特定の条件の下で人間の介入なしに運転のあらゆる側面を処理できることを意味する)。

Einrideの全システムは、安全管理ドライバーが存在しないため、異なる方法で構築する必要がある、とフラック氏はいう。他の運送会社は前の座席に人間のオペレーターを同乗させて距離を稼いでいるが、Einrideはフラック氏が「よちよち歩き式アプローチ」と呼ぶ方式を採用している。この方式では、ハイハイ、ゆっくり歩きという具合に車両に運転を教えていき、徐々に機能を高めていく。

「当社は従来のレベル4から開始し、自律運転とリモート運転機能を組み合わせてアプリケーションの使い勝手を向上させました。その結果、柔軟性、および自律運転、人間のアジリティ、意思決定の利点の両方を獲得できました」とフラック氏はいう。

Einrideは2019年から欧州で公道での自動運転システムの試験走行を開始しているが、米国での試験開始日はまだ決まっていない。

「車両に安全管理ドライバーを同乗させず、ドライバーの席もないため、規制を通過するには異なるアプローチを取る必要があります」とフラック氏はいう。「規制は国や州によって異なりますが、基本的には、アプリケーション自体の安全性が保証されているかどうかという問題です。当社も創業以来、ドライバーを同乗させずにすべてのアプリケーションで安全性を確認できるようにするというアプローチを取ってきました」。

リモートトラックドライバー、すなわち「ポッドオペレーター」は、Einrideのポッドを監視し、状況によっては運転を引き受ける。フラック氏によると、Einrideではレベル5の自律性(基本的に自動運転車のほうが人より運転能力も思考能力も優れているとするレベル)を信用しておらず、アジリティと意思決定能力を高められるように、いつでも人間がシステムに介入できるようにすることを目指しているという。

「マシンはまだ人のために働いています」とフラック氏はいう。「業界はレベル5の自律性を備えたAIを15年以上追求してきましたが、まだそのレベルには程遠い状態です。運送業界においては、自律運転の利点が活かされる場面も数多くありますが、人が介入することによる利点もあります。例えば別のゲートに戻ったり、周辺のドライバーとやり取りしたい場合などです。人間の意思決定を介入させられるのは大きな利点であり、ビジネスへの影響も最小限で済みます」。

Einrideは、トラック業界での経験があり、トラック運転免許を持っている最初のポッドオペレーターを採用した。詳細は、2021年後半のイベントで明らかにするという。

Einrideは米国に進出するだけでなく、ニューヨークに正式に米国本社を設立する予定で、一部の経営幹部がニューヨークを本拠に活動することになる。また、オースティン、サンフランシスコ、東南アジアにも支社を設置する予定だ。米国での工場建設予定は今のところはない。

画像クレジット:Einride

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(文:Rebecca Bellan、翻訳:Dragonfly)

プジョーやフィアットを傘下に持つStellantisがEV電池材料確保のためリチウム供給契約を締結

Fiat Chrysler Automobiles(フィアット・クライスラー・オートモービルズ)とフランスの自動車メーカーGroupe PSA(グループPSA)が折半出資で合併して誕生したグローバル企業Stellantis(ステランティス)は、リチウム生産者と拘束力のある契約を締結した。今回の合意は、EVの需要が高まる中、自動車メーカーとサプライヤーの間で相次ぎ行われている取引の1つだ。

Vulcan Energy Resourcesは、ドイツのアッパーラインヴァレー(上部ライン渓谷)にあるブラインプロジェクトからバッテリーグレードの水酸化リチウムを生産する。一般的に、リチウムは岩石を採掘して生産されるか、塩水鉱床から抽出される。どちらも環境面で問題があるが、Vulcanのサイトでは、再生可能な地熱エネルギーを利用してリチウムを抽出する。

また、このプロジェクトでは、使用済みのブラインを閉ループサイクルで再注入するため、生産滓のような残留物は発生しない。ドイツのプロジェクトは、南米などで行われている他のブラインプロジェクトに比べ水や土地の使用量が少ないため、二酸化炭素排出量が少なく、運用コストも低く抑えられる可能性があると、ドイツ・オーストラリアを拠点とする同社はウェブサイトで述べている。

この5年間の供給契約に基づき、Vulcanは2026年からドイツで抽出したリチウムをStellantisに送ることになる。契約期間中、Vulcanは8万1千トンから9万9千トンの水酸化リチウムを自動車メーカーに供給する。両社はこの取引の財務条件を明らかにしていないが、抽出サイトでの商業運転の開始と製品の適格性の両方を条件としている。

今回の契約は、Stellantisが7月に発表した、今後4年間で300億ユーロ(355億ドル、約3兆8480億円)をEVと新しいソフトウェアに充てる徹底的な電動化戦略の一環だ。同社は2025年までに130GWh、2030年までに北米と欧州の5つの工場で約260GWhのバッテリーを製造することを目標としている。

関連記事:多国籍自動車会社ステランティスが2025年までに約3.9兆円を電気自動車に投資

これは、世界の自動車メーカー各社が、EVバッテリーの主要鉱物であるリチウムのような有限の原材料を確保しようとしていることを示す最新の兆候だ。General Motors(GM、ゼネラルモーターズ)はカリフォルニア州のリチウム抽出プロジェクトに同様の投資を行っており、Tesla(テスラ)はニッケルなどの鉱物について独自の供給契約を結んでいる

一方、Renault(ルノー)は先週、欧州産リチウムを最大3万2千トン供給する契約をVulcanと締結した。

画像クレジット:Stellantis

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(文:Aria Alamalhodaei、翻訳:Aya Nakazato)

日産が今後5年間でEV開発に2兆円を投資へ、2030年度までに23車種の新型電動車投入

日産自動車は「Nissan Ambition 2030(日産アンビション2030)」と名づけた長期ビジョンの一環として、今後5年間で2兆円を投資し、新型電動車やバッテリー技術を開発することを発表した。同社は2030年度までに合計15車種の新型BEVを発売し、その時点で電動車が車両ラインナップの半分を占めることを目指す。

同社は、今後8年間で合計23車種の電動車を開発し、そのうち20台は今後5年間で開発すると発表した。2030年には、欧州で75%、日本で55%、米国と中国で40%の電動車販売比率(EVとe-Power PHEV / ハイブリッド車)に達することを目標にしている。

それ以外の部分は、内燃機関(ICE)車だと思われる。注目すべきなのは、2021年初頭、日産は「2030年代初頭までに発売するすべての新型車を電動化する」と発表していた点だ。おそらく、ICE車がまだ販売されている場合は、レガシーモデルということになるだろう。

日産は他にも、2028年までに全固体電池(ASSB)を搭載したEVを発売し、早ければ2024年に横浜にパイロット工場を設置すると発表した。この技術は、充電時間の短縮などのメリットを約束するものだが、まだ期待通りに市場に登場していない。また、バッテリーパックのコストを2028年までに1kWhあたり75ドル(約8500円)に引き下げ、さらに先には65ドル(約7400円)に引き下げることを目指している。Bloombergによると、これは2020年のEVバッテリーの価格の約半分に相当する。日産は、2030年までにグローバルな電池生産能力を130GWhへと引き上げる予定だという。

日産は、運転支援技術「プロパイロット」を、2026年までに250万台以上の日産車およびインフィニティ車に拡大する計画であるとも述べている。また、次世代LiDARシステムを「2030年度までにほぼすべての新型車に搭載する」としている。

画像クレジット:Nissan

「Ambition 2030」の一環として、日産は4つの新しいコンセプトカー「Chill-Out」「Surf-Out」「Hang-Out」「Max-Out」を発表した。他のコンセプトカーと同様に、これらは自動運転やインテリアの機能、そして奇抜なデザインなど、日産の未来のテクノロジーを体験するためのものだ。しかし、日産が実車として公開しているのは「Chill-Out」の画像のみで、他の3車種はレンダリング画像だ。

Chill-Out(トップ画像・上)は小型のクロスオーバーで、日産が以前に確認したように、次世代リーフがハッチからクロスオーバースタイルのボディに移行することを示す初期のプレビューかもしれない。アリアのCMF-EVプラットフォームとe-4orce電動駆動4輪制御システムを採用しており、2025年までに登場する予定だ。

画像クレジット:Nissan

一方、Surf-Outは小型の電動シングルキャブピックアップトラックで、そこそこの大きさの荷台と取り外し可能なキャノピーを備えている。デュアルモーターAWDと多様な出力を備え、オフロード性能、ユーティリティー性、広いカーゴスペースを提供する。

画像クレジット:Nissan

そしてHang-Outは「移動中の新しい過ごし方を提供する」ことをコンセプトにした、小型のキャンピングカー・SUVのようなモデルだ。完全にフラットなフロアと可動式のシアターシートを備え、最近のEVコンセプトにも見られる「移動空間でありながらリビングルームのような快適さ」を提供する。また、e-4orceや先進のプロパイロット機能も搭載している。

画像クレジット:Nissan

そして最後に、Max-Outは「最高の安定性と快適さ」を提供するオープンスポーツカーだ。ボディロールを抑えることで「ダイナミックなコーナリングとステアリングレスポンス」を実現し、ハンドリングと乗員の快適性を最適化している。また、 軽量・低重心で、先進のe-4orceも搭載しているとのこと。

日産の新計画は、カルロス・ゴーン前CEOの逮捕とその後の逃亡など、社内問題に取り組んできた中で生まれたものだ。同社は短期的には、2020年に発表された「NISSAN NEXT」計画の一環として、3000億円規模の固定費削減と生産能力の20%削減を計画している。

編集部注:本稿の初出はEngadget。著者Steve Dent(スティーブ・デント)氏は、Engadgetのアソシエイトエディター。

画像クレジット:Nissan

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(文:Steve Dent、翻訳:Aya Nakazato)