緊急用人工呼吸器のSpiro Waveが米食品医薬品局の認可を取得して新型コロナ需要に応える

新型コロナウイルス(COVID-19)重篤患者の治療に必要な人工呼吸器の不足を補う新規プロジェクトが、米国時間4月20日に大きな節目を達成した。米食品医薬品局(FDA)の緊急時使用認可(EUA)が下りて、同プロジェクトの機器の使用と量産が認められた。「Spiro Wave」(スパイロ・ウェイブ)と呼ばれるそのハードウェアは緊急用の自動人工蘇生器で、1台5000ドル(約54万円)で製造できる。技術者、医師、研究者らからなる開発チームはすでに製造を開始して、介護施設に提供している。

Spiro Waveは、基本的に手動の人工蘇生器の機能を再現する。人工蘇生器は、緊急時に救急患者に手動で人工呼吸を行う持ち運び可能な装置だが、Spiro Waveはその作業を自動化し、かつ従来の手動式と同じタイプのバッグを使うので、機材の供給が容易だ。

Spiro Waveはマサチューセッツ工科大学(MIT)のオープンソースプロジェクトであるE-Vent(イーベント)のプロトタイプデザインを基にしている。E-Ventは新型コロナ危機による機器不足を緩和する位置手段として、MITの研究者らが開発した。Spiro WaveをつくったのはNewlab(ニューラブ)、10XBeta(テンエックス・ベータ)、Boyce Technologies(ボイス・テクノロジーズ)の共同ファウンダーたちからなるチームで、E-Ventのデザインを出発点にすることで、緊急用人口蘇生器の設計と製造をわずか数週間で成し遂げることができた。

製造パートナーのBoyce社は、ニューヨーク市クイーンズ地区にある同社のLong Island City製造工場で、1日に最大500台作ることが目標だといっている。最初の数百台は既に今週からニューヨーク市内の施設に届けられている。同チームは、FDAの医療機器製造許可を取得している海外パートナーを探して製造規模を拡大し、さらに多くの台数を供給することを考えている。

開発チームによると、これは本格的な人工呼吸器を置き換えることものではないという。緊急時の現場で、人工蘇生器で十分だが、手動式では操作者の配置や長期の利用が現実的ではないという場面に使用することで、機材不足を緩和することを目的としている。緊急時使用許可が与えられている他の多くの機材と同様、これは正式なFDA認可を受けた機器や治療方法を完全に置き換えるものではないが、革新的でスケーラブルな解決方法であり、過大な負荷のかかる医療機関における治療レベルに大きな違いをもたらすだろう。

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インドの大手配車プラットフォームOlaが新型コロナ対策で政府に協力

インドが国民を新型コロナウイルス(COVID-19)から守るために緊急体制をとる中、配車サービス大手のOlaが支援に乗り出した。同社テクノロジープラットフォーム機能のうち、リアルタイムの追跡とナビゲーション、そして群衆に対応する機能を連邦政府と州政府に無償で公開する。

すでにパンジャブ州政府と連携しているOlaは、同社のプラットフォームを政府や公共サービス機関のリアルタイムの戦略に役立つよう調整できるとしている。

同社のプラットフォームでは多くの車両と人を追跡でき、人がマスクを着用しているかどうかをセルフィーの写真で確認する機能もある。後者のセルフィーの機能は、Olaでは運転席に座っている人が登録済みのドライバーパートナーかどうかを認証するために使っている。同社は「最高レベルのデータのプライバシーとセキュリティを保証します」と強調している。

Olaによれば、パンジャブ州政府は同社のテクノロジーを使って野菜市場で170万人以上の農業従事者の生産物と車両の動きを追跡管理し、対人距離の基準が確実に守られるようにしているという。

このような機能は州政府にとって有用だろう。地元メディアの報道によると、多くの地域でここ数週間に、野菜市場内や食料品店の外に大勢の人々が集まってしまうことがあったからだ。連邦政府は2020年3月に、全土に対して人の移動を制限する命令を出している。

パンジャブ州では、Olaのプラットフォームは州政府がデジタルの移動許可証を発行するのにも使われている。インド各州の政府は、医療従事者や緊急の業務のために家から出なくてはならない人に対して許可証を発行している。

政府機関のPunjab Mandi Boardの秘書官でガバナンス改革特別秘書官のRavi Bhagat(ラビ・バガット)氏は声明で「現在の危機的状況において、Ola CONNECTSは市民全体の利益のために政府関係者が迅速に展開できる強力なプラットフォームだ」と述べた。

Ola Connectというのが、危機的状況を支援するOlaの最新の取り組みの名前だ。ここ数週間で、同社はドライバーパートナーのリース契約を放棄した。また、新型コロナウイルスの検査で陽性と診断されたドライバーパートナーとその家族に対し、数百ドル(数万円)の支援をすることを明らかにしている。

Olaの共同創業者のPranay Jivrajka(プラネイ・ジブラージカ)氏は声明で「AI、追跡技術、配置とフローの管理にわたるOlaのイノベーションはすべて、CONNECTSプラットフォームに活かされる。我々は国のためにできる限りの方法で尽力する。先頭に立って新型コロナウイルスと戦っている多くの医師、医療従事者、最前線のスタッフのために、このプラットフォームを無償で提供する」と述べた。

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(翻訳:Kaori Koyama)

マーク・アンドリーセンが決起の呼びかけ、何か有意義なものを作ろう

私たちの生活を完全にひっくり返した殺人ウイルスと共に生活するのは実に恐ろしい。希望を捨てて観念してしまうのは簡単だ。

それではいけない、とMarc Andreessen(マーク・アンドリーセン)氏が米国時間4月19日、自身のベンチャーキャピタル会社であるAndreessen Horowitz(アンドリーセン・ホロウィッツ)のサイトに書いた思慮に富んだエッセイで呼びかけた。文中でアンドリーセン氏は、何かをどんなものでも社会を今より前へ進ませるものをつくることを提唱している。「アメリカンドリームを再起動」するために我々は「政界のリーダーに、この国のCEOに、起業家に、投資家にもっと多くを要求する必要がある。そして、お互いにもっと多くを要求する必要がある。我々全員が必要であり全員が貢献できる、なにかを作ることに。

アンドリーセン氏は、テクノロジーの大部分はすでに作られていると指摘する。そして住宅、教育、製造、輸送の分野を取り上げ、それぞれを明るい未来に向けて加速するのに必要なツールはほとんどがすでに存在していると言う。そしてかつて我々の役に立ったシステムにしがみつくのは簡単だが、みんなが力を合わせて現状を捨てて置き換えることが重要だと説いた。我々はそういうものを「欲しがる」必要がある。問題は勢いだ。それを防ぎたい気持ちより、それを欲しがる力のほうが大きくなるようにしなくてはならない。問題は「規制の虜」(Regulatory Capture)だ。我々は新しい会社がこれらの新しいものを作ることを望まなくてはならない、たとえ既存勢力が望まなくても。たとえ既存勢力にそれを作るよう強制することになったとしても。そして問題は意志だ。我々はそういうものを作る必要がある。

もちろん彼のいうことは正しいが、アンドリーセン氏からはもっと規範的な何かを学びたい。彼はこの数年ほとんど人前に姿を見せていないが、その2万フィート(6km)の視野は想像をかきたてるものであるとともに、まだ出発点にすぎないことを期待したい。

社会がたった今なにを必要としているかは、トップダウンではなくボトムアップで決まる。問題を解決するためには大きな課題を小さな部分に分けることから始まる。アンドリーセン氏のような人は、今すぐ必要な目標を達成するために現在のテクノロジーに何ができるか、何をすべきかをもっと明確に話すことで、先頭に立って指揮を取ることができるだろう。お金を早く必要とする人に手に渡したり、ビジネス・インテリジェンスを使って緊急治療室の医師から新型コロナ患者の治療状況の情報を収集したり、政府のサプライチェーン管理に役立てたりなど。

米国には精力的な行動が必要であるとアンドリーセン氏は強調する。今ほどそれが明確なときはないと彼は言い、「コロナウイルス検査は足りていない、検査備品もだ。驚くべきごとに綿棒や一般的な試薬すら不足している。人工呼吸器も、陰圧室も、ICUのベッドも足りない。外科用マスク、アイシールド、医療用ガウンも。これを書いている今、ニューヨーク市はレインポンチョを医療用ガウンの代わりに使うよう非常命令を出している。レインポンチョ!2020年に!米国で!

今は恐ろしい状況であり、その大部分は政治システムが招いたものだとアンドリーセン氏は考察する。そしてアンドリーセン氏は口に出していないが、米国の収入格差はG7諸国中最大であり、毎年ごくわずかな人々のところに富が集まり、中流層は減り、貧困層が急増しているという事実がある。

しかし、一度にはひとつずつしかできない。

我々が今本当に必要としているのは、新型コロナ版のマンハッタン・プロジェクトであり、シリコンバレーがそれをリードする必要がある。

もしアンドリーセン氏がこれを手助けしたいのなら、みんな大賛成だ。私たちは耳を傾けている。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

新型コロナのカオスを正しく理解するために

私たちは毎日、もしかしたら毎時間、新型コロナウイルス(COVID-19)のデータや仮説や憶測さらにはばかげた陰謀論に囲まれて混乱している。数学的思考や何らかの批判的思考の下地があったとしても、どうやってこの状況を正しく理解すればいいのだろうか。

あなたがこの混沌を理解「したい」と考え、まだ一定の立ち位置や見方を決めていないと仮定しよう。そして、どんな新しい情報が入ってきても自分の思考になんらかの変更を加えることには抵抗する、という信念の持ち主ではないことも仮定しよう。しかし、残念ながらそういう人がなんと多いことか。それは、「ビルゲーツの仕業だ」から「われわれがウイルスである」、「単なるインフルエンザにすぎない」、「とにかくロックダウンを終えるべき時に間違いない」までさまざまな不平をぶちまけている人たち全員に当てはまる。

百歩譲って彼らを擁護するなら、私たちは今ソーシャルメディアで、ニュースあるいは「ニュースらしきもの」が、何ら意味のある説明も考察もなく流れてくる世界に生きている。こうしたニュースの「すばらしき新世界」では、誰もが自分自身で自分自身の文脈を決める必要がある。そうすることは、読んだものごとを正しく理解するために、今最も必要なスキルになりつつある。

たとえあなたがそのスキルに恵まれていたとしても、私たちはリアルタイムで起きているサイエンスを目の前にしている。驚くべき仕事が驚くべき速さで成し遂げられている。私たちは奇跡の時代に生きている。それを踏まえても、必要なプロセスはみんなが思うよりずっと厄介だ。査読前の論文と相互査読された論文の重みの違いを知る必要がある。モデルとデータ、仮説に基づく推論と残酷な事実との違いも。

これは調査結果の取り扱いにも当てはまる。薬品Xが有効か否かに関するあなたの意見が、支持政党が薬品Xを支持しているかどうかによって変わるとしたら、それはあなたが科学的に間違っているだけでなく、あなたの「知識」も間違っている。ウイルスに政治は関係ない。

微妙な変化も受け入れる必要がある。たとえば人工呼吸器。当初の考えは「できる限り多くの人工呼吸器が必要だ!」だった。しかし最近では、「人工呼吸器は乱用されている、益より害の方が大きいこともある」という懸念が出てきた。どちらも正しいかもしれない。過度な思考の単純化でこのカオスを乗り切ろうとする誘惑に負けてはならない。

雑音を選り分ける有効な方法は、3つの情報カテゴリーを区別することだ。
(A)自分たちの知っていることは真実である
(B)自分たちの考えていることは、十分強力な裏付けとなる証拠に基づく推論である
(C)その説は憶測である

世の中には、著しく証拠に乏しい(C)でありながら、(B)のふりをしているものが山ほどある。そして、確実にカテゴリー(A)に属している残酷な事実もたくさんある。たとえば、ウイルスが検査されなければ医療崩壊が起きるという極めて明確な証拠が、武漢、イタリアのロンバルディ、スペイン、そしてニューヨーク市で繰り返し見せつけられている。

軽度のカテゴリー(C)に属すものとして、当初新型コロナウイルスのち市立は0.025%程度だろうという憶測があった。今、1万3000人以上のニューヨーク市民が、新型コロナウイルスによる死亡として確認、あるいは可能性ありと分類されている。人口850万人のこの都市で死亡率は0.15%、これは「全市民」に対する割合であって、感染者に対する割合ではない。この種の憶測を、カテゴリー(D)「完全な誤りであると証明済み」と再分類する時はもう過ぎている。

あなた自身の信念をカテゴリー(D)に移動する勇気をもつことも重要だ。誰にもわかっていないことはたくさんあり、今も学習していることがたくさんある。もしあなたが、今全部の答えを知っていると思っているなら、自分があきれるど間違っている可能性の高さを考えてみてほしい。さもなければ今後あなたがウイルスについて議論をする機会も、あなたの信念の正しさを納得させられる機会もないことを保証する。だから、新たな証拠に出会ったときに、信念を変える覚悟をもつだけでなく、積極的に「変えたい」と思う気持ちをもつことを心がけてほしい。

画像クレジット:Pixabay under a Pixabay License.

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Instagramの創立者二人が新型コロナ感染追跡サイト「Rt.live」を公開

Instagramの共同ファウンダーであるKevin Systrom(ケビン・シストロム)氏とMike Kreiger(マイク・クリーガー)氏の二人が手を組み、Facebookの母艦を離れて以来最初のプロダクトを公開した。Rt.liveは新型コロナウイルス(COVID-19)が各州でどれだけ早く感染拡大しているかを追跡する。

“Rt”は、一人の感染者から生まれた平均感染者数を表すスコアだ。数値が1より大きければウイルスは集団内で急速に広がり、1より小さければ収束することを意味する。たとえば、Rt.liveによると、ジョージア州のRtスコアは最大で最も危険な1.5だが、ニューヨーク州では強力な自宅待機命令が功を奏して0.54まで下がっている。

クリーガー氏はによると「ケビン(シストロム氏)は日々のRtを計算する方法に関するデータ分析のメモを書き、オープンソースとして公開している。われわれはこの仕事を視覚化して各州の感染状態を誰でも目で見られるようにしたかった」。一方クリーガー氏は、サンフランシスコ湾岸地帯でギフトカードを売っているレストランを集めたSaveOurFavesというリストを作り、新型コロナ危機の最中もレストランが維持できるよう顧客が応援できるようにした。クリーガー氏は妻とともにこれを作り、オープンソース化することで、各地で同様のサイトをつくれるようにした。

Rt.liveによると、昨日(米国時間4/17)現在、テキサス州とカリフォルニア州では数値が1または1をわずかに下回り、バーモント州がベストスコアの0.33だった。時間を追ってグラフを見ると、ワシントン州とジョージア州は一度は新型コロナウイルスとの戦いに成功し、最近ウイルスが再発するまで1以下を維持していた。データはCOVID追跡プロジェクトから入手したものであり、Rt.liveのモデリングシステムはGitHubで見ることができる。

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「各州は緊急事態命令が解除するために、感染状態を注意深く監視する必要があり、rt.liveのようなダッシュボードはそのために役立つはずだ」とクリーガー氏は言う。自宅待機政策の遵守率のごく小さな違いが、ウイルスの影響の深刻度を指数関数的に増やす可能性があることを視覚的に表すことで、人々に家を出ないよう説得する効果が高まる。この種のツールは、一部のビジネスを安全に再開できるかどうかの決定にも役立つし、ウイルスが急速に伝搬し、厳格なソーシャル・ディスタンスが再び必要かどうかをすばやく判断できる。

同サイトの注目すべき特徴は、地域ごとにフィルターできる機能で、西部の州が南部の州より新型コロナウイルスの撲滅に健闘していることが見て取れる。屋内退避命令の出ていない州が平均よりスコアが悪いこともわかる。グラフは政治的思考とそこから生まれた政策の違いが、感染状況にどう円強しているのかを知るのに役立つ。

写真アプリの成功者が医療統計サイトを立ち上げるのは場違いに思えるかもしれない。しかしシストロム氏はInstagramを急速に成長させる仕事の一環として、長年バイラル性について研究してきた。彼はコロナウイルスの感染者数と死者数を追跡するための 統計モデルを3月19日に公開した。「二人で一緒に働く方法について話しているときに、このアイデアが湧いてきた。私は大学を出た後最初の仕事として、データのビジュアル化と分析をMeeboで行っていたので懐かしい思いででもある」とクリーガー氏は言った。システロム氏がデータ分析を行い、クリーガー氏がサイトを構築しているのは、Instagram時代のフロントエンドとバックエンドの分担と同じだ。

Rt.liveを作った理由は、新型コロナウイルスの感染拡大状況を理解するにはRt(実効感染率)が最適な方法であると信じていたからだ」とクリーガー氏は説明する。「再び一緒に仕事ができることをとてもよろこんでいる。アイデアからサービス公開までわずか数日で済んだのは、過去の歴史と背景を共有していたからだ」

画像クレジット:Cody Pickens

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製造業と小売業の低迷で米国株下落の中アマゾンが最高値を更新

米国時間4月15日、米国主要株式インデックスは揃って下落した。商務省および連邦準備制度理事会の最新データが、 製造業生産高と小売業売上の崩壊を示したためだ。

しかし、本日の暴落は昨日4月14日の上げ幅をすべて消し去ったわけではなく、米国の投資家と企業が、新型コロナ感染拡大による経済ショックに耐える好位置につけている可能性を示唆している。

商務省から出されたデータは特に厳しかった。米国小売業の売上は、先月8.7%減少した。これは1992年以降最大の下落だ。工場生産高は第二次世界大戦以来最悪の月だった。3月の工場出荷高は6.3%減という驚きの数字だった。

工業、小売両方から悪い知らせが届いたことを思えば、株価の下落はもっとひどくても不思議はなかった。おそらく投資家たちは、景気刺激策が近々実施される(大統領の署名するものが増えて遅れることがなければ)かもしれないという情報に元気づけられたのだろう。

  • ダウ平均株価:1.8%、445.41ドル安の2万3504.35ドルで引けた。
  • S&P 500:2.20%、62.70ポイント下げて、2783.36ポイントで引けた。
  • ナスダック総合指数:1.44%、122.56ポイント安の8393.18ポイントで終えた。

主要インデックスが低迷する一方で、SaaS株とクラウド株は この日値上がりした

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ダウを始めとする各インデックスは、底値より30%弱上がっているが、まだ最近の最高値には届いていない。つまり市場は、以前の楽観と最近の悲観の中間あたりにいる。次に何が起こるかは、おそらく誰も確信をもっていない。

株式市場がさまざまなメッセージを発信する中、巨人テック企業のAmazon(アマゾン)は今日最高値を更新した。株価は2307.68ドル、1%高で一日を終えた。低迷する市場の中でAmazonは突出した例外だ。

画像クレジット:monsitj / Getty Images

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経済悪化でユニコーンの大量解雇が止まらない

米国時間4月15日午前、米国経済の急激な下降を示すデータが新たに発表された。そして午後には、強力な資金援助を受けている著名なユニコーン3社が大規模な人員削減を行うというニュースが飛び込んできた。

株価が下がり、個人取引も公開市場も、そして経済全体からもよくない兆候が送られてくる。ここでは最初にマクロな状況を俯瞰し、そのあとBloomberg(ブルームバーグ)が最初に報じたCarta(カータ)、Business Insiderが報じたZume(ズーム)、The Informationが報じたOpendoor(オープンドア)の各社のレイオフ状況を見てみよう。

経済低迷

本日わかったレイオフの背景にあるのが米国経済の低迷だ。最近のニュースをひと目見るだけで十分だろう。過去数時間の間に、住宅建築は史上最悪の暴落を見せ、3月の小売業売上は8.7%の減少で、CNBCはこれを「政府の記録上最大の下げ幅」と評し、CNN Businessによると米国の3月の工場出荷高は5.4%減少し、「1946年以来最大の月間減少率」だった。

おそらく、ユニコーンが年中レイオフを行っているのは驚きではないだろう。今年1月にビジョン・ファンドが支援する複数の企業が怪しくなっていた。そして第一波の新型コロナによる人員削減が大企業を襲った。Bird(バード)やTripActions(トリップアクションズ)といった会社は、パンデミックと関連する経済や社会の変化による主要事業の停滞のために崩壊した。

小さな会社の小規模な人員整理ほぼ日常的に起こり、TechCrunchも報じた。

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しかし、今日レイオフが起きたユニコーン(会社価値10億ドル以上の非上場企業)3社は、長らくTechCrunchの注目の的だった大物だ。少々解説してみたい。

  • Opendoor:サンフランシスコ拠点の住宅販売に特化したスタートアップでソフトバンクが支援している同社は今日、大規模な人員削減を発表した。TechCrunchに提供された声明文の中でCEOのEric Wu(エリック・ウー)氏は、同社従業員の35%が、「我々のミッションを継続して実行するために」解雇されると語った。同CEOは、既存従業員には8週間分の給与と「16週間分の医療費」が支払われることも話した。さらにWu氏は自身の2020年の報酬を社員支援のための基金に寄付する。Opendoorは今年3月に発表したラウンドで、評価額38億ドルで、3億ドルを調達した
  • Carta:サンフランシスコ拠点で非上場の株式サービスプラットフォームを提供する同社は、社員の16%、161名を解雇すると発表した。同社が公開したメモでわかった。以前はeShareという名称だったCartaは、非上場中小企業の投資管理サービス提供会社から、大規模なサービスとソフトウェアを扱うまでに成長しながらも非上場を維持している。Cartaは昨年5月に3億円を調達し、評価額は17億ドルだった。
  • Zume:ピザ宅配のZumeは本稿執筆時点までコメント要求に回答がなく、公開メモを見つけることもできなかった。それでもBusiness Insiderは同社が年始の人員削減に続きさらに200人以上解雇すると報じた。同社に残る社員は100名程度で、ピザ配達を行うのだろう。Zumeは2018年11月に評価額(調達後)19億ドルで3.75億ドルを調達した。

レイオフ状況をすべて把握するのはますます難しくなっている。どうでもいいが、私は最近 Modsy(モッジー)のレイオフTechCrunchのNatasha Mascarenhasが速報するのを手伝い、BounceX(バウンスX)のレイオフも最初に報じた。厳しく過酷な経済は、スタートアップ・ユニコーンのように成長重視の企業をとりわけ痛めつけている。

追加があればまた。たぶん、私が書きたくなるよりも早くに。

画像クレジット:Bryce Durbin/TechCrunch

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新型コロナによるレイオフはスタートアップのサテライトオフィスに大きな影響を与えている

レイオフがスタートアップの世界を急速に襲っている。サービス業や旅行関係、人材採用、そしてスクーター企業もだ。新型コロナウイルスの影響によるレイオフの最新情報を見ると、サテライトキャンパスへの打撃が特に大きいようだ。

サテライトオフィスは、当然のことながらスタートアップの本社に対して二次的な存在だ。企業が新しいラウンドで資金を調達したり新しい市場に進出したりする際に、規模の小さいオフィスを開設するのは戦略的な動きだ。これまでポートランド、フェニックス、そしてApple(アップル)やFacebook(フェイスブック)、Oracle(オラクル)がサテライトオフィスを構えるオースティンなどの都市に、スタートアップのサテライトオフィスが出現してきた。

Y Combinator(Yコンビネータ)の卒業生であるRoger Lee(ロジャー・リー)氏が作成した追跡ツールのLayoffs.fyiによると、起業家の重要なハブとなっているベイエリアやニューヨークに本社を持つ企業がレイオフに踏み切っているが、実際にはサテライトの都市にいるスタッフがレイオフされているケースが多い。

サンフランシスコにあるロジスティック企業のEasyPostは、ソルトレイクシティとルイヴィルにいる従業員のほぼ全員にあたる75人をレイオフした。英国のチャレンジャーバックのMonzoは、ラスベガスにいる165人のカスタマーサポート要員をレイオフした。

ボストンに拠点を置くレストラン管理プラットフォームのToastは、全従業員の50%にあたる1300人をレイオフした。Layoffs.fyiのデータによると、レイオフされたうちの12%はオマハ、10%はシカゴにいる従業員だった。

サンフランシスコに拠点を置き、最新の評価額が12億5000万ドル(約1340億円)だった輸送用トラック管理のKeepTruckinは、約350人をレイオフした。そのうち33%はナッシュビルとシカゴにいる従業員だった。

Layoffs.fyiで扱っているのは公開された情報のみなので、これらの数字は米国全体で発生しているレイオフを断片的に見たものにすぎない。しかしサンプリングであるとしても、注目すべき重要なデータだ。

こうしたデータの持つ意味は

経済がニューノーマル、つまり前とは違う新しい常識で再生したときに、本社所在地とサテライトのどちらが立ち直りに適した場所になるかはわからない。最近レイオフの嵐に直面しているスタートアップのハブであるボストンの投資家たちに話を聞いた。

ボストンに拠点を置くベンチャーキャピタル、UnderscoreのパートナーであるLily Lyman(リリー・ライマン)氏によれば、サテライトオフィスにはセールス、カスタマーサクセス、事業開発のスタッフが勤務していることが多い。事業として考えれば、こうした役割は消費者の活動が低下することで最も大きな影響を受ける。多くの企業には、今なすべきセールスや取引がない。

ライマン氏は「企業が売上の減速を予測しているため、(これらの役割は人員の削減に関して)より大きな影響を受けている。手持ちのキャッシュで持ちこたえる期間を伸ばすためには理にかなった決定だが、顧客との間に回復が難しいダメージを与えるリスクもある」と語った。

人員削減がサテライトオフィスに集中するとは見ていない人もいる。同じくUnderscoreのパートナーであるMichael Skok(マイケル・スコック)氏は「サテライトオフィスがコストがあまりかからない新しい市場で地位を確立するケースも見てきた。そのため、サテライトオフィスはこの事態の中で実は守られるかもしれない」と述べた。どういうことかというと、コストを減らそうとする場合、サンフランシスコの従業員はデンバーの従業員よりコストがかさむ可能性がある。サンフランシスコのほうが、生活費がとてつもなくかかるからだ。新興テックシーンのスタートアップに投資しているRevolution Venturesは、投資先のサテライトオフィスのレイオフは最近聞いていないという。

最後にやっかいな話として、資金調達が難しくなりそうだという悲観的な兆候があり、創業者やベンチャーキャピタリストはこれを懸命に避けようとしているが、本社以外の都市でのレイオフはこの兆候を抑えるかもしれない。新型コロナウイルスの感染は広がり続けているため、事業のスリム化は受け身の戦略ではなく事前の対策になりつつある。

レイオフが単独で実施されることはめったにない。また、人員削減はあまり堅牢でないテックのエコシステムに、より深刻な影響を与えるようだ。現在の状況はこうしたことを示している。

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画像クレジット:Getty Images

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(翻訳:Kaori Koyama)

新型コロナ対策の外出自粛要請の中で名古屋がワースト、アップルの移動データ解析サイトから判明

既報のとおり、アップルはiPhoneなどが合法的に記録している各ユーザーの位置情報のデータを匿名化して「Mobility Trends Reports」として毎日更新している。日本はiPhoneのシェアが他国に比べて非常に高いことを考慮すると、実際の人の移動に近いデータと言える。

関連記事:アップルがユーザーの移動データを公開、新型コロナで変化する都市をひと目で確認可能に

現在のところ日本語のページは準備されていないが、都市名をローマ字で入力することで日本国内の移動データを参照することが可能だ。具体的には、東京(Tokyo)、大阪(Osaka)、名古屋(Nagoya)、福岡(Fukuoka)などの人の移動状況を調べられる。

  1. apple-covid199

    東京
  2. apple-covid198

    大阪
  3. apple-covid196

    福岡
  4. apple-covid1910

    日本全体

具体的には、2020年1月13日(月)と比較すると、

東京
自動車:マイナス28%
徒歩:マイナス43%
公共交通機関:マイナス45%

大阪
自動車:マイナス27%
徒歩:マイナス44%
公共交通機関:マイナス44%

福岡
自動車:マイナス29%
徒歩:マイナス42%
公共交通機関:マイナス43%

日本全体
自動車:マイナス26%
徒歩:マイナス36%
公共交通機関:マイナス38%

名古屋

現在調べられる日本の都市の中で減少率が最も低いのは名古屋だ。特に徒歩での移動がほかの都市と比べて突出して多く、外出自粛要請があまり効力を発揮していないことがわかる。

名古屋
自動車:マイナス24%
徒歩:マイナス28%
公共交通機関:マイナス33%

なお、本稿執筆時点では、横浜(Yokohama)や仙台(Sendai)、札幌(Sapporo)、神戸(Kobe)、京都(Kyoto)などのデータは参照できなかった。

とはいえ、諸外国と比べると日本の都市の減少率はまだまだ低い。

  1. apple-covid194

    米国・ニューヨーク市
  2. apple-covid195

    米国・サンフランシスコ(ベイエリア)
  3. apple-covid193

    フランス・パリ
  4. apple-covid192

    イタリア
  5. apple-covid191

    ドイツ・ベルリン

ニューヨーク市
自動車:マイナス64%
徒歩:マイナス81%
公共交通機関:マイナス87%

サンフランシスコ(ベイエリア)
自動車:マイナス61%
徒歩:マイナス74%
公共交通機関:マイナス80%

イタリア
自動車:マイナス85%
徒歩:マイナス88%
公共交通機関:マイナス90%

医療保険や医療体制、国民性、高齢化率が異なるので諸外国の数字とは一概には比較できないが、アップルのデータを見る限り新型コロナウイルス蔓延を食い止めるには日本国民一人ひとりのさらなる努力が必要だ。

なお同社は、Google(グーグル)と共同でOSレベルの匿名接触者追跡システムも開発している。

関連記事:アップルとグーグルが新型コロナ感染チェック用モバイルアプリを共同開発、プライバシー保護も確約

アップルがユーザーの移動データを公開、新型コロナで変化する都市をひと目で確認可能に

Apple(アップル)は、同社のマップアプリのユーザーから集めた匿名情報を元にしたデータを一般公開すると米国時間4月14日に発表した。このデータは「Mobility Trends Reports」として毎日更新され、マップアプリの中で行われたルート検索の回数の変化を見ることができる。マップはiPhoneの標準ナビゲーションアプリで自動車、徒歩、公共交通機関の3種類のモードがある。

アップルは、この情報がいかなる個人とも結びついていないことを強調している。マップアプリが移動データをユーザーのApple IDと関連付けることはなく、人がどこにいたかという履歴を保存することもない。アップルによると、マップで集めた検索ワードや個別の経路などのデータは、ランダムに変わる識別番号と結び付けられるだけで、その番号も定期的にリセットされる。この匿名集約データが提供するのは都市、国または地域レベルのビューだけであり、ある地区での歩行者、ドライバー、公共交通利用者の数の変化を、ユーザーがアプリを開いて道順を調べた回数に基づいて表現している。

Appleのインストールベースの大きさと、日々の通勤や移動のためにGoogleマップなどのサードパーティーアプリを使う人はあまりいないであろうことを踏まえるとある都市における外出回数の減少を確認するかなりよい方法だと考えられる。

このデータはアップルのウェブサイトで誰でも入手可能で、互換性の高いCSV形式でダウンロードできる。ウェブ上でも特定の地域を検索したり、その地域の全体的な傾向を見ることができる。

個人にとっては好奇心を満たす程度のことだろうが、新型コロナウイルス(COVID-19)の影響を調査している都市や州、国の政策担当者にとっては、ソーシャルディスタンスや自宅待機、隔離命令などの拡散防止戦略の効果を確認するためにとても役立つだろう。

アップルはほかにも、Googleと共同でOSレベルの匿名接触者追跡システムを開発している。両社はまずデベロッパー向けのAPIを公開し、その後機能をOSに組み込み、公共保健機関のアプリと連携する。アップルは新型コロナ危機のために役立つことに対してとりわけ熱心であると同時に、そのための対策が個々のユーザーのプライバシーを侵害しないことにも腐心している。集団レベルで効果的な行動を起こす上では困難なバランスだが、アップルのリーチの大きさは、どんなツールを提供する上でも強力な優位性になる可能性がある。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

新型コロナが我々をデジタルの未来へ駆り立てた

Bruce Springsteen(ブルース・スプリングスティーン)は「Livin’ In The Future」の中でこう歌った。「We’re living in the future and none of this has happened yet(僕たちは未来に生きている。こんなことはまだ何も起きていない)」。世界は我々の目の前で変化しているようだ。新型コロナウイルスは我々みんなを家に閉じ込め、企業のやり方を一夜にして変えさせた。

BoxのCEOのAaron Levie(アーロン・レヴィ)氏がTwitterで最近指摘したように、我々はかつて目撃したことのないレベルのデジタルな創造性を、今まさに目にしている。人々はつながりを失わず、我々を引き離しているウイルスに対峙する方法を探している。

レヴィ氏は最近このようにツイートした。「我々が現在見ている創意工夫は驚くほどすばらしい。Airbnbはバーチャル体験を提供し、Chefsはライブの料理教室を実施している。過越の祭はビデオ会議になった。ドライブイン形式のイースターも教会もストリーミングに移行している」。

2月以降の変化を考えてみよう。たった2カ月前の2月だ! 小学校から大学院までの学校が、膨大な数の児童・生徒・学生のためにオンラインにシフトした。メールも使っていなかった教授が急にZoomで教え始めた。

企業はオフィス中心のワークフローから、ビデオ会議そしてSlackやMicrosoft Teams、Google ハングアウトといったクラウドのコラボレーションツールを中心としたワークフローへ移行した。

毎年恒例のカンファレンスが、ラスベガスの派手で華やかなステージからエグゼクティブの自宅へと変更された。契約し、何カ月もかけて準備していたにもかかわらず、企業は急転直下で方針を変えた。そうするしかなかったからだ。選択肢は他にない。

休暇、誕生日、葬儀、記念日、そのほか人生のさまざまな場面に一緒にいられない家族が、突然FaceTimeやZoomで集まり、現在の状況でできる唯一の方法で支え合い、祝い、悼んでいる。デジタルコンテクストの中で。

このような出来事を我々はたくさん目にしている。驚くべきは、シームレスに計画やトレーニングに何年もかけることなく、こうなっているということだ。我々はシンプルにこの新しいデジタルの現実を受け入れている。そうするしかないから。

我々はSaaSのツールとクラウドインフラストラクチャの見事なレジリエンス(回復力、復元力)を活用して、デジタルの世界のパワーを証明している。しかし人間の精神のパワーも見てとれる。今、我々はすばらしい出来事を世界中で目撃している。ちょっと立ち止まって、感謝しよう。おそろしく困難な状況の中、こうしたあらゆるテクノロジーのおかげで我々の経済、教育、感情が維持されていることを、少しの間考えよう。

新型コロナウイルスは、我々をまとめてデジタルの未来へと駆り立てた。それはいつか起きることではなく、今、起きている。企業も人々も、90日という短い期間でデジタルトランスフォーメーションを推し進めた。このクレイジーな状況でポジティブなことを1つ見つけるとしたら、我々はこのデジタルの世界を受け入れ、もう決して後戻りはしないということだ。

画像クレジット:Chris Williams Black Box / Getty Images

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(翻訳:Kaori Koyama)

AppleとGoogleの新型コロナ追跡システムQ&A

先週、Apple(アップル)とGoogle(グーグル)は、新型コロナウイルス陽性者との接触を確認するためのオプトイン、分散方式の追跡ツールを共同開発することを発表した。

このシステムは本人が許可した場合にのみ作動するオプトイン方式で、Bluetoothを使ってランダム化匿名化された識別子を近くの端末に送信する。ユーザーは自分の匿名化されたデータをアップロードすることが可能で、そこから他の端末に広域発信される。近くの端末との距離と滞在時間に基づき、ユーザーにはウイルスに感染した人と接触した可能性があることが告げられる(個人を特定する情報は知らされない)。

これはMITの研究者らが考案したやはりBluetoothを使って匿名で感染の可能性を他の人に知らせるシステムに似ている。MITのシステムもApple、Googleの新たな取組と同様、位置情報データの利用は回避している。

接触者追跡は一部の国々ではある程度効果が証明されており、当局が感染の中心地を見つけるのに役立っている。しかしプライバシー団体とセキュリティー専門家は、ウイルス感染拡大と戦う個人の権利がプライバシーに優先されることに懸念を抱いている。AppleとGoogleは、このサービスはプライバシーを重視していると言っている。同システムは位置情報データを使わず、乱数化された識別子は15分毎に変更されて追跡を防いでおり、収集されたデータはすべて端末上で処理され、ユーザーが意図的にシェアしない限り端末から外に出ることはない。

しかしセキュリティーやプライバシーの専門家は、システムの潜在的欠陥をすぐに指摘した。元FTC(連邦通信委員会)のチーフ・テクノロジスト、Ashkan Soltani氏は、偽陽性だけでなく偽陰性の可能性を警告している。暗号化メッセージングアプリ、Signal(シグナル)のファウンダー、Moxie Marlinspike氏も、システムが不正利用される可能性に懸念を表明した。

TechCrunchは、AppleとGoogleの代表者とのリモート会見に参加した。記者は両社の新型コロナウイルス追跡の取り組みについて質問する機会を得た。

質疑の内容は以下の通り:

iOS、Androidのどのバージョンで新機能を使えるのか?

Appleは最大限の数のiOS端末にアップデートを提供すると答えた。iPhoneとiPadの3/4以上が最新バージョンのiOS 13を搭載しておりアップデートを受けることができる。GoogleはAndroidの中核部分であるGoogle Play Servicesをアップデートし、最近アップデートされた端末だけでなく、Android 6.0以降を搭載する全Android端末で接触者追跡システムが動作すると答えた。

この追跡システムはいつから使えるのか?

AppleとGoogleはソフトウェアアップデートを5月中旬から配布して接触者追跡の支援を開始すると言った。公共保健機関は自らの専用アプリに接触者追跡APIを組み込み、ユーザーはそのアプリをAppleとGoogleのアプリストアからダウンロードできる。二社は近々、接触者追跡機能をiOSとAndroidに組み込む予定であり、ユーザーはアプリをインストールする必要もなくなると言った。そうなればもっと多くの人たちがこのシステムを使うようになる、と両社は語った。

ただし、接触者追跡機能がOSのシステムレベルに組み込まれた場合でも、陽性者とのマッチングが検出された場合に接触者追跡プロセスの追加情報や次にすべきことなどを知るためには、地域向けの公衆衛生アプリをダウンロードする必要がある。

このAPIを他の誰かが使う可能性はあるか?

両社によると、接触者追跡APIのアクセスが許されるのは公共衛生当局のみである。

この限定APIの利用は、個人の健康情報を医師など資格を持つ医療専門家にのみ提供するのと同じ精神で制限される。APIの利用は認定された公共保健機関のみに制限され、国または地域でその組織を指定する責任のある政府によって認定される。何をもって正当な公共衛生機関と認めるかについては対立が生じる可能性があり場合によっては国と州当局の間でも一致しないかもしれないので、AppleとGoogleはプラットフォーム運営者として微妙な立場に立たされる可能性がある。

なんらかのデータが中央データベースに保存されることはあるのか?

Appleによるとデータはユーザーの端末上で処理され、そのデータは世界中の保健機関が運営するサーバーを「中継」され、中央に集約されることはない。テックの巨人たちは、データが分散化されることで政府が監視することははるかに困難担っていると言っている。

それはAppleとGoogleと公共保健機関はデータをアクセスできるという意味か?

AppleとGoogleは、完全に機密なシステムは存在しないことを認めた。「ハックされない」ものはない、ということはサイバーセキュリティーでは広く知られている概念だ。サーバーが侵入を受ける可能性はあり、データがなくなることもありうる。ただし、データを分散化することで、悪意をもってデータをアクセスすることははるかに困難になっている、と両社は言った。

人々が虚偽の報告をするのをどうやって防ぐのか?

両社は診断の検証について複数の公共保健機関と共同で作業していると語った。AppleとGoogleは、ユーザーにはシステムを信用してほしい、システムが信頼できることもユーザーに知ってほしい、と語った。

確認された新型コロナウイルス感染をどうやって識別するのか?

AppleとGoogleは、陽性の検査結果は症例を識別する最善の方法だが、必ずしも唯一の方法ではないと指摘する。実際、医療専門家の診断にウイルスの存在を具体的に示す陽性検査結果は必須ではない。理論的には、公共保健機関が判断基準を下げ、たとえば症状発現に基づく診断のみを必要とすることもありうる。

両テック巨人ともに、接触者追跡が効果を発揮するためには、集団内で高度な症例識別が行われる必要があることを認めているが、他の感染識別方法が地域の保健機関によって十分信頼できると判断されれば、高度な症例識別が必ずしも広範囲の検査を意味するものではない、という可能性も残している。

このシステムを信頼すべきか?

簡単な答えはない。AppleとGoogleは何もないよりはまし、というシステムを作ったように見えるが、これはユーザーの信頼を相当に必要とするシステムだ。あなたはAppleとGoogleが、彼ら自身あるいは政府による不正使用にも耐えうるシステムを作ったと信じる必要がある。信用しないのであれば、使う必要はない。

画像クレジット:Bryce Durbin/TechCrunch

新型コロナウイルス 関連アップデート

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

新型コロナウイルス陽性者をどう扱うか?

血液検査が始まる。ついにその時がやってきた。血清抗体調査(Serosurveys)は、すでに新型コロナウイルスに感染した人の割合を調べるために行われる。そして各個人については、すでに感染したが症状が軽かった、あるいはまったく感染していないかがわかる。

米国内だけで、まもなく100万人が新型コロナ感染から回復する。私自身を含め、知り合いの半数はここ数カ月間、「シュレディンガーの呼吸器感染症」を患っていて、果たして自分が新型コロナウイルス抗体陽性かどうかを何としても知りたがっている。

ただし、(大多数がそうではないが)仮に陽性だったとして何ができるのか?抗体が少なくとも一時的に免疫を意味するとしよう。それはある程度正しいと科学者は慎重に言っている。その検査は信頼するに足るほど精度が高いとしよう。だとしたら社会としてその情報をどう扱えばいいのだろうか。

抗体陽性、すなわち免疫を持つ人は、それ以外の陰性の人たちとは違って直ちに再感染する恐れなく比較的平常な生活に戻れる可能性がある。我々はそんな二階層の社会を作りたいのだろうか?老人ホームのようなリスクの高い現場で陰性の人々を陽性の人々に置き換える努力をするのだろうか?みんなの検査結果は公表されるべきなのか、それとも政府の要求によってのみ提供されるべきなのか?雇用者には?医療保険会社には?

どれも難しい質問であり、簡単に答えはでない。そして、最も害の少ない選択肢はどれかついて誰もがそれなりに強い意見を持っているだろうが、一方でこれは、まともな人間なら意見が分かれる問題であると私は思っている。総合的意見がなんであれ、その検査が最大限のプライバシーの下で実施されるべきだということには、誰もが賛成するだろう。今こそテクノロジーの出番だ

ちなみに、免疫を証明することは決して新しい問題ではない。私が訪れた多くの国々では、入国するために黄熱ワクチンを接種したことの証明が必要だった。接種を強制する国もある。解決方法は伝統的かつシンプルで分散的、日付と医師の署名が入った紙1枚だ。

この方式は比較的プライバシーが守られる。当局は個人の黄熱病記録の提出を要求することはできない。なぜなら、国境でしか必要ないからだ。正しさの検証は非常に困難であり比較的容易に偽造できるが、目的のためには「十分」だ。狙いは感染リスクを100%取り除くことではなく、対処可能な水準まで引き下げることだからだ。

同じことが新型コロナウイルスにも言える。ハーバード大学の疫学者であるBill Hanage(ビル・ハナゲ)氏とMarc Lipsitch(マーク・リプシッチ)氏がこの2月に書いていたように、何かが「一度でも」起きることと、何かが「問題となる頻度で」起きていることの区別」は重要だ。極端なケースを心配する必要はない。99%効果的なソリューションで十分だ。

では何がそのソリューションなのか?シンプルで分散的でそれなりの効果があり、プライバシーが守られるもの。例えば、検査を受けるために診療所へ行き、そこで顔写真を撮り、パスワードを選ぶ。そして検査結果と一緒にQRコードの書かれたリストバンドのようなものを受け取る。結果を証明する必要が生じたら、QRコードをスキャンし、パスワードを入力すると、顔写真が表示されて個人の識別と検査結果が確認できる(提示を拒否したり、都合よく偽装するかもしれない)。

これが完璧なソリューションだというふりをするつもりはない。本職の暗号技術者ならもっと違った良い方法を思いつくに違いない(たとえば、個々の検査結果を可能な限り匿名化し、中央データベースの管理者がいたとして、そこのデータを復号化できないようにする)。上の例で言いたかったポイントは、

・本人が認めた相手に限り結果を見ることができる
・検査結果が本人のものであることを、顔写真などの識別方法によって検証可能である

のふたつだ。

では、そんなシステムを使って何ができるのか?やがて感染拡大が落ち着いて解消した後、レストランはテーブルを一つおきに空けておく、店舗は3m四方に客が一人(マスク着用)だけ、という条件で再開することを考えるかもしれない。その代わりに、レストランや店舗は陽性の(免疫のある)客だけを受け入れるという方法があるかもしれない。つまり、店内での制限はないが、新型コロナウイルス陽性であることを証明しないと入店できない。バーに入る前に年齢を確認するのと同じように。

これは望ましい方法だろうか? 議論の紛糾は必至だ。誰かがシステムをハッキングするかもしれない(未成年者が偽IDを使うように)。それは「問題になるような頻度」で起きるのだろうか? その可能性は低い。起きる可能性の高いところでは、もっと厳重なルールが適用されるはずだ。。

テクノロジーを何に適用すべきかを考える上で重要なのは、シンプルかつ直感的、効果的でプライバシーを守れる上で、社会全体のゴールと一致していることだ。人々がどんな目的で使うことに合意するにせよ、すでに感染した人に免疫が授けられるのだとすれば、果たしなく続くパンデミックの影の中で、抗体陽性の人たちはわれわれの生活を再開する上で重要な役割を担うことになるだろう。

画像クレジット:NeedPix under a Public Domain license.

新型コロナウイルス 関連アップデート

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

AppleとGoogleが新型コロナ感染チェック用モバイルアプリを共同開発、プライバシー保護も確約

AppleとGoogleは協力して個人が新型コロナウイルス(COVID-19)の感染リスクにさらされたかどうかをチェックできる分散型モニターツールを開発中だ。

濃厚接触を知らせるツールは、公衆衛生当局が新型コロナウイルスの感染を追跡し、人々に感染のリスクがあることを知らせて検査を受けるよう推奨することに役立つ。このアプリはBluetoothテクノロジーを利用し、新型コロナ感染者との接触を発見し、適切なフォローアップを送信する。

プロジェクトの最初のステップは、公衆衛生機関がそれぞれのアプリにこのツールを組み込むAPI の開発だ。次のステップではモバイルデバイスのOS、すわなちiOSおよびAndroid のレベルに機能を組み込み、ユーザーがオプトインするだけで別のアプリをインストールせずに接触追跡が可能がシステムが開発される。

このシステムは、デバイスに搭載されたBluetoothチップを使用し、短時間で変化する匿名化されたIDを発信する。 サーバーは過去14日間のIDについて他のデバイスのIDとの一致の有無を検索する。一致は2つのデバイス間の接触時間および距離をしきい値として判断を行う。

新型コロナウイルスに感染していたことが確認されたユーザーとの接触があったと判断された場合、ユーザーには「感染テストを受け、その間自主隔離を行う」よう通知される。

位置情報を利用した接触追跡はプライバシーの侵害の懸念をめぐって議論を呼び起こしているものの、多数の公衆衛生機関や大学の研究組織が採用しているテクノロジーだ。例えばAppleの「探す(Find My)」にヒントを得たMITのBluetoothツールがそうした例の1つだ。「探す」は従来の「iPhoneを探す」などと異なり、プライバシーを強く意識しており、位置情報を利用した追跡ツールでありながらユーザー以外は個人情報を知りえない。AppleとGoogleはプライバシー問題の困難の解決にあたってMITなどの組織が支援を求めたと述べている。

【略】

開発は2段階

AppleとGoogleは2週間前にこの共同プロジェクトをスタートさせた。まずAPIの互換性を確保し、できるかぎり多数のユーザーが同一のアプリを利用できるようにするのが最初の目標だ。

4月10日の説明によれば、ユーザー同士の接近をモニターするAPIは5月中旬にiOSとAndroidに導入される予定だ。AppleとGoogleによれば、これは比較的シンプルなタスクで、既存または開発中のアプリに組み込むことも比較的簡単なはずだとと述べている。APIを使う場合、アプリはユーザーに対して位置の追跡機能にオプトインするよう求める(このシステムは全体としてオプトインベースだ)。これによりデバイスに付与される短時間で変化する匿名の識別子をBluetooth機能を利用してブロードキャストする。同種のアプリをインストールしているユーザーはこのブロードキャストを受信し、これによって、誰とどのような接触があったかが特定可能となる。

プロジェクトの次の段階は効率のアップだ。つまり位置追跡機能をモバイルOSそのものに組み込むことにより、個別アプリをダウンロードする必要をなくすのが目標となる。ユーザーはOSから機能にオプトインすればよい。第1段階の感染警告アプリも引き続きサポートされるが、OSへの組み込みはさらに広範囲のユーザーに対応できる。このレベルは数カ月以内に実現できるという。

【略】

アプリの動作例

このシステムがどのように動作するのか、ひとつの例を図示してみよう。

  1. アプリのユーザー2人が一定時間、例えば10分間近くにいたとする。ユーザーのデバイスはBluetooth無線により識別子(15分ごとに変化し匿名化されている)を交換する。
  2. その後、ユーザーの1人が新型コロナウイルスに感染していると診断された場合、感染者はAPIを組み込んだ公衆衛生当局のアプリに知らせる。
  3. システムは感染が診断されたユーザーから過去14日間の識別子(匿名)をシステムに送信することを許可するよう追加の同意を求めることができる。
  4. 公衆衛生アプリには(同意を得て)感染者の識別子をダウンロードすることができ、アプリは感染リスクを伴う接触があったかどうか判断する。
  5. 接触があったと判定された場合、アプリはユーザーに今後どうすべきかさらに情報を提供する。

プライバシーと透明性

Apple、Googleはともに「プライバシーと透明性が公衆衛生アプリにおいて最重要」だと述べ、 リリースされるアプリは今後とも決してプライバシーを侵害しないと確約している。この点は、以前からACLU(米国自由人権協会)が提起してきた問題だ。

【略】

しかしACLUはこのアプリに対しては慎重ながら楽観的な見方をしている。

ACLUの監視、サイバーセキュリティ担当弁護士、Jennifer Granick(ジェニファー・グラニック)氏は次のようにコメントしている。

「位置情報を利用するこの種の追跡アプリは無料かつ迅速な検査と各種医療への公平なアクセスが広く保証されないかぎり効果がない。 またユーザーがシステム(の匿名性)を信頼できなければやはり効果的ではない。AppleとGoogleが、プライバシーの悪質な侵害と中央集権化のリスクを軽減するであろうアプローチを発表したことは事実だ。 しかしまだ改善の余地がある。位置追跡アプリがオプトインであり匿名性を確保した分散型であることを確認するため我々は今後も厳しく監視を続ける。このような機能は現在のパンデミックの期間に限り、公衆衛生の確保の目的でのみ使用されるべきだ」。

【略】

感染チェックのためのはAPIについて、Googleの ブログ記事はこちら 、Appleのスペックなどへのリンクはこちら日本語版解説はこちら)。

ACLUからのコメントによりアップデート済み。

新型コロナウイルス 関連アップデート

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(翻訳:滑川海彦@Facebook

MITがアップルの「探す」機能にヒントを得て新型コロナ接触者追跡システムを開発

新型コロナウイルス(COVID-19)の感染拡大防止策のひとつとして、接触者の追跡がある。感染する機会があった人を保健当局が把握し、感染を広げる恐れがあるとその人に通知するものだ。接触者追跡は、感染拡大を抑えた世界の一部の地域では既に効果を上げているようだ。しかしプライバシー擁護派は、米国でこうしたシステムを実施することに大きな懸念を持っている。

プライバシーを守る接触者追跡システムの実施方法については、ヨーロッパの専門家グループによる分散方式など、多くの提言がある。米国では、MIT(マサチューセッツ工科大学)の研究チームが自動で接触者を追跡する新しい方法を考案した。みんなのモバイルデバイスから発信されているBluetoothの信号を利用して、個人をまったく特定せずに、接触した人とランダムな数字を結びつける方法だ。

このシステムは、研究チームが「チャープ(『さえずり』の意)」と呼ぶランダムな数字をモバイルデバイスが常に発信することによって動作する。チャープはBluetoothで発信される。これが重要だ。ほとんどの人のデバイスでBluetoothが常にオンになっており、また短距離の無線通信プロトコルなので誰かのチャープを受信したらそれはその人が比較的近くにいたのが確かであるからだ。

新型コロナウイルス感染症の陽性であると診断されたら、その人は過去14日間(接触感染のおそれがあった期間)に自分のスマートフォンから発信されたすべてのチャープをアップロードする。アップロードされたチャープは陽性と診断されたケースのデータベースに保存され、他の人はそのデータベースを調べて自分のスマートフォンが陽性の人のチャープを受信しているかどうかを確認することができる。もし一致するチャープがあったら、そのスマートフォンの持ち主は感染のリスクがある。陽性の人と約12メートル以内に近づいたことがあるからだ。検査を受けるべきかどうか、あるいは推奨される2週間の自己隔離をするかどうかの目安になる。

MITのシステムは、米国自由人権協会(ACLU)などのプライバシー保護関連団体が詳しく論じている、接触者追跡にまつわるプライバシー関連の厄介な問題の多くを完全に回避している。MITのシステムは位置情報をまったく使用しないし、個人を特定する診断やその他の情報とも一切結びつけられない。ただ、完全に個人の裁量に任されているわけではなく、コンプライアンスの観点からのリスクはあるだろう。MITは、陽性と診断された人に保健当局の担当者がQRコードを発行し、そのQRコードを使ってチャープの履歴をデータベースにアップロードすることを想定しているからだ。

MITのシステムは、人々のスマートフォンにインストールされたアプリで動作する。この設計は、紛失したMacやiOSデバイスを見つけたり、親しい人が持っているデバイスからその人のいる場所を知ったりするためにApple(アップル)が実装している「探す」システムからヒントを得たものだ。「探す」は、チャープを使って近くにあるアップルのハードウェアに位置情報をブロードキャストする。

MITリンカーン研究所のサイバーセキュリティ&情報サイエンス部門の担当主任でこのプロジェクトの共同主任研究員のMarc Zissman(マーク・ジスマン)氏は、ブログで次のように説明している。「このシステムは『探す』にヒントを得たものだ。もし私がスマートフォンをなくしたら、スマートフォンからBluetoothでランダムな数字のブロードキャストを始めることができる。それは広い海でライトを振るようなものだ。Bluetoothをオンにしている誰かが通りがかったとき、その人のスマートフォンが私に関して何かを知ることはない。ただアップルに『私はライトを見ましたよ』と伝えるだけだ」。

このシステムでは、陽性の人のチャープのデータベースを自動で調べ、検査を受けた方がいい人、あるいは自己隔離した方がいい人にアラートを送ることもできる。研究チームは、プライバシーを守りつつ保健当局のニーズと目的に合うよう、当局と緊密に連携してきた。

MITのチームは、この計画を広く実現するには次のステップとしてアップル、Google(グーグル)Microsoft(マイクロソフト)の協力が重要だと述べている。効果的に機能させるには、モバイルデバイスのプラットフォームとの緊密な連携が必要だ。将来的にiOSとAndroidの標準機能として提供すれば、広く普及するだろう。

新型コロナウイルス 関連アップデート

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(翻訳:Kaori Koyama)

Palantirの新型コロナモニタソフトを米CDCやNHSが利用中、EUにも採用働きかけ

多くのスタートアップが新型コロナウイルス(COVID-19)のパンデミックによって苦境に追い込まれている中、政府の感染抑制策を助けることによって事態が追い風となっている企業もある。その1社が謎めいた巨大企業、Palantirだ。

政府機関と密接な関係をもつ同社はビッグデータ処理を専門とし、膨大な情報を分析して個人を追跡し、トレンドを視覚化することができる。新型コロナウイルス感染の拡大が医療システムを崩壊させ社会、経済を混乱させる危険に直面している現在、極めて有用な能力だ。

3月中旬の Wall Street Journalの記事によれば、Palantirはウイルス感染の拡大をモデル化するためにCDCに協力したという。 Forbes(フォーブス)はCDCは現在新型コロナウイルスの流行状況を視覚化し、医療ニーズを予測するためにPalantirのアプリを使っている」と報じている。

記事によれば、Palantirはコロナウイルス関連のシ処理では個人を特定可能なプライバシー情報の取り扱いを避け、病院、ヘルスケア、研究機関、メーカーからの匿名化されたデータを分析しPalantir Foundryに集約している。

英国における新型コロナウイルス対策ではNHS(National Health Service、国民健康保険サービス)に同社のFoundryプラットフォームを通じてデータ分析を提供している。イギリス政府はブログ記事 で、Palantirとの提携に触れ、同社のFoundry ソフトウェアを利用するとして、「(このFoundryは)主として英国で開発されたものであり、異種データを組み合わせ、クリーンアップし、総合することにより意思決定に役立つ単一かつ確実性の高い情報源を提供する」と述べている。

Bloomberg(ブルームバーグ)によれば、Palantirはフランス、ドイツ、スイス、オーストリアの政府に対して同社の分析ソフトウェアの採用を働きかけている。同社はFoundryだけでなくデータ分析ツールのGothamも売り込んでいるという。このツールは政府の情報機関や捜査機関が個人を追跡するのに役立ていることでよく知られている。米国でICE( 移民税関捜査局)が不法滞在者を摘発するために用いているのがいい例だ。 FoundryとGothamは多数の情報源からデータを統合して新型コロナウイルスによるパンデミックの鳥瞰図を得られるとして各国政府の保健機関に提案されている。

危機に対応して監視テクノロジーへの関心が高まる中、プライバシー活動家は早くも警鐘を鳴らしている。 EFF(電子フロンティア財団)は「世界の政府はウイルスと戦うために並外れて強力な監視権限が必要だとしている。パンデミックから生じる政府と民間企業の間の新しい関係については綿密に検討しなければならない」と警告している

たとえばPalantirの共同創業者会長のPeter Thielピーター・ティール)氏は、テクノロジー界における最も強力はトランプ政権支持者の一人だ。ティール氏の推進するプロジェクト投資は、広く注目を集めると同時に賛否の議論を引き起こしているが、Palantirもその1つだ。

ICEの不法滞在者摘発強化に協力する謎めいたテクノロジーの巨人という一般のイメージがあることにPalantir自身も気づいており、プロダクトが多くの人々のプライバシーに影響することを認めている。Wall Street Journalへのコメントで、Palantirのプライバシー担当の責任者、Courtney Bowman(コートニー・ボーマン)氏は「新型コロナウイルス対策においてもプライバシーと市民的自由はわわれの指導的原理であり、付録のようなものであってはならない」と述べている。

Palantirは、米国の新型コロナウイルス対策でも大きな役割を担っているようだが、同社と米政府は長年にわたって協力して感染症の脅威に取り組んできた。たとえばCDCは2010年にハイチにおけるコレラの流行をモニターする同社のソフトウェアを利用している。

ごく最近の例もある。 この1月下旬、PalantirはHHS(保健社会福祉省)と360万ドルの契約を結び、PEPFARにソフトウェアを提供した。 PEPFAR(統領緊急エイズ救済計画)は HIVの感染者を援助するための啓蒙、救済活動だ。

画像:デンバーの新型コロナウイルス検査センター Michael Ciaglo/Getty Images

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(翻訳:滑川海彦@Facebook

Androidに点字キーボードが標準搭載、5.0 Lollipop以降が対応

Androidにはここ数年多くのアクセシビリティ機能が加えらえているが、視覚障害者が点字タイプするための手段はサードパーティーアプリに委ねられていた。米国時間4月9日にそれが変わる。Androidの点字キーボードがまもなく標準機能としてバージョン5以上のOS搭載機で使えるようになる。

点字はアクセシビリティ分野では微妙な話題だ。なぜなら音声認識やスクリーンリーダーなどのツールによって大部分が置き換えられつつあるからだ。しかし、多くの人たちはすでに点字に慣れていて今もふだんから使っている。それになんと言っても、いつも声を出して話せるわけではない。

サードパーティー製の点字キーボードはあるが、有料だったり開発を中止したものもある。また、キーボードというものは本質的に人がタイプしたことをすべて知ることができるのでセキュリティーの懸念もある。だからいつも使うキーボードは信用ある会社の正式なものが望ましい。それを作るはGoogle(グーグル)の仕事だ。

ちなみにApple(アップル)は、iOSのアクセシビリティ機能に対応した同じような点字キーボードを数年前から用意している。

関連記事:GoogleがProject Euphoniaの包括的な音声認識を支えるAIの詳細を発表

Googleのブログ記事によると、このキーボードはいろいろな点字ソフトのユーザーやデベロッパーと協力して作られたものであり、おなじようなツールを使ったことのある人ならすぐに馴染めるはずだとのこと。

使うには端末を横位置にして画面が向こう側になるようにして持ち、6つの点に対応した場所をタップして点字アルファベットを入力する。Androidのトークバック機能に対応していてタイプしたり選択した単語を読み上げるので、他の入力方法と同じように間違った入力はすぐに修正できる。簡単に文字や単語を削除したり、テキストを送信したり選んだフィールドに入力するための専用ジェスチャーもある。

点字キーボードを表示する方法はこちら。現在は英語のみだが、近いうちに他の言語も追加されると思われる。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

TikTokが新型コロナ救済基金に270億円拠出、135億円ぶんの広告クレジットも提供

ショートビデオアプリのTikTokは4月9日、新型コロナウイルス(COVID-19)対応の最前線で働く人、教育者、そして新型コロナウイルスの影響を受けている地域のコミュニティのサポートに2億5000万ドル(約270億円)超を拠出し、公衆衛生機関やビジネス再構築を図る事業所向けに1億2500万ドル(約135億円)分の広告クレジットを提供すると発表した。こうした資金の一部はCDC(米疾病予防センター)やWHO(世界保健機関)のような主要な衛生機関に向けられる一方、残りは個人や中小企業のサポートにあてられる。

2億5000万ドルの方は、TikTokヘルスヒーロー救済基金、TikTokコミュニティ救済基金、そしてTikTokクリエイティブラーニング基金の3つに活用される。

この中ではヘルスヒーロー救済基金向けが最も大きく、1億5000万ドル(約163億円)が医療従事者や物資の確保、ヘルスケアワーカーの救済に充てられる。このうちの1500万ドル(約16億円)が地方自治体を通じて膨れ上がっている新型コロナ対応スタッフをサポートするためのCDC基金に向けられる。そして1000万ドル(約11億円)がWHOのCOVID-19連帯基金向けだ。

加えて、中国インターネット大企業ByteDance(バイトダンス)が所有するTikTokは、同社の従業員マッチングプログラムで赤十字社やDirect Reliefのような非営利組織を手伝うと述べた。

TikTokはまた、マスクや個人保護備品をインドやインドネシア、イタリア、韓国、米国の病院に届けるためにさまざまなパートナーと協力しているとも話した。例えば、TikTokは今月始めにインドの最前線で働く医師やスタッフを守るために医療用防護スーツ40万着とマスク20万枚を寄贈したと発表した。

一方、TikTokコミュニティ救済基金はCOVID-19の影響を受けている脆弱なコミュニティに照準を当てている。

この取り組みでは、ミュージシャンやアーティスト、看護師、教育者、家族などを含むTikTokユーザーコミュニティの人々を支えている地元の組織に4000万ドル(約43億円)を現金で提供する。すでにAfter-School All-Starsへの300万ドル(約3億円)の寄付に使われた。After-School All-Starsはこれまで学校の給食に頼っていた家族に食料を提供している。そして、暮らしが滅茶苦茶になったアーティストやソングライター、音楽のプロをサポートするMusiCaresに200万ドル(約2億円)が提供された。

TikTokコミュニティ救済基金の一部として、TikTokは1000万ドル(約10億円)の寄付をコミュニティとマッチングする。

3つめのTikTokクリエイティブラーニング基金は、教育者や専門家、遠隔授業に取り組んでいる非営利組織に5000万ドル(約54億円)を提供する。TikTokは自らをクリエイティブリモート学習の場にするようだが、まだ詳細は明らかにされていない。

基金以外の部分では、TikTokは公衆衛生機関や零細企業に広告クレジットを提供する。

NGOや信頼できるヘルス関連団体、地元当局に2500万ドル(約27億円)分の「フィード内」広告スペースを提供し、重要なメッセージを何百万という人々と共有できるようにする。GoogleFacebookTwitterを含む他のテック大企業もそれぞれのプラットフォームで同様の取り組みを展開している。

TikTokはまた、WHOやIFRC(国際赤十字赤新月社連盟)などの代表、科学教育者Bill Nye(ビル・ナイ)が公衆衛生や科学について語るライブストリームを流すなど、他の方法でも教育情報を広める取り組みをしていると述べた。それからTikTok内にCOVID-19 Resources Page on TikTok’s Safety Centerという専用セクションも設けた。加えて、#HappyAtHomeといったキャンペーンのクリエイターとも提携した。#HappyAtHomeは金曜日の米国東部標準時間午後8時/太平洋時間午後5時(日本時間土曜日朝10時)にストリーミングしていて、ウィークデーに他のテーマでもストリームする計画だ。

またTikTokは、今後事業を立て直す中小企業向けに1億ドルぶん(約108億円)の広告クレジットを提供する。事業再開は公衆衛生当局の判断にかかっているため、この取り組みはまだ始まっていない、と同社は説明した。

「皆にとって困難な時だと理解している」とTikTokの会長 Alex Zhu(アレックス・ジュ)氏は声明文に書いている。「この困難な時に立ち向かっている世界中の企業、政府、NGO、そして一般の人々と共に、できる限りの支援を行うことを約束する。共に取り組むことで、危機を耐え、より良いコミュニティをつくり、そして我々が望んでいる世界が以前にも増して共通の目的で団結できるようになる」とジュ氏は述べた。

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新型コロナウイルス 関連アップデート

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(翻訳:Mizoguchi

米疾病対策管理センターは社会に必須のインフラ従業員に「コロナ疑いがあっても無症状なら業務継続すべき」

米CDC(疾病対策管理センター)は新型コロナウイルス(COVID-19)流行抑制に関するガイドラインをアップデートした。これにより「社会に必須のインフラ業務」に従事する人々については新型コロナウイルス患者に接触した後の予防的隔離が緩和される。 これは多数の労働者、特にギグエコノミーやテクノロジー企業の社員に大きな影響を与える可能性がある。

新ガイドラインは、新型コロナウイルスにさらされた可能性のある従業員の隔離を緩和し、以前のように自宅での隔離を強制するよりむしろ職場での予防策の徹底に重点を置いている。

CDCの発表によれば、新ガイドラインは「社会的に重要な機能の継続を確保する」こと目的としている。CDCは、社会的に必須な業務に従事している人々の場合、新型コロナウイルスにさらされた可能性があっても無症状であるなら職場に留まって業務を継続すべきであるとしている。「さらされた疑い」は家族が新型コロナウイルスに感染した場合、または感染したか感染の疑いがある人々から2m以内にいたことが確認された場合を含む。

もちろんCDCはそうした人々が通常どおり勤務していいと助言しているわけではない。 この種のリスクにさらされた人々は勤務に就く前に検温と症状の有無の確認の必要があり、自身でも健康状態に注意を払わねばならない。また少なくとも14日間、勤務先でマスクを着用する必要がある。適切な防護機能を備えたマスクが品不足のために入手できない場合は布マスクでもよいという。また他の従業員から物理的に距離をとる必要があり、使用したり接触した器具等は定期的に消毒される必要がある。

CDCはさらに雇用者に対して「勤務中に体調の悪化があった人々はただちに帰宅させること、 症状が現れる前の2日間にさかのぼって接触した可能性のある人のリストを報告すること」を求めている。

CDCのガイドラインの変更は、水曜日のホワイトハウスのコロナウイルス・タスクフォースの記者会見で発表され、インフラを機能させるために必要な措置だとされた。「新型コロナウイルスの流行中、社会的に必須な重要サービスの中断を防ぐことは極めて重要だ」とホワイトハウスは考えている。新ガイドラインは、常勤社員だけでなく「契約社員」にも適用される。これはAmazonのフルフィルメントセンターの従業員やInstacart、Uber Eatsなどの宅配サービスの配送スタッフなどが含まれるのだろう。

ガイドラインのアップデートに先立って、新型コロナウイルスに関連した多数の労働問題が起きていた。これには労働条件に対する契約労働者の抗議ストライキ重要なサービスの中断などが含まれている。

画像クレジット: CHRIS DELMAS/AFP / Getty Images

新型コロナウイルス 関連アップデート

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(翻訳:滑川海彦@Facebook

Googleが公開した「COVID-19コミュニティモビリティレポート」のプライバシー保護の評価と問題点

Google(グーグル)は、同社が世界中の人々についてどれだけ多くのことを知っているかを、より明確に世界に垣間見せている。新型コロナウイルスの危機を契機に、パンデミック発生時における公共の利益に資するよう、ユーザーのロケーションおよび行動履歴の永続的追跡システムを再構成しているのだ。

Googleはこのほど「COVID-19 Community Mobility Reports」(COVID-19コミュニティモビリティレポート)を公開するとブログで発表した。このレポートは同社がマッピングし追跡している詳細なロケーションデータを社内で分析したもので、広告ターゲットの絞り込み、製品開発に利用される他、広範な商業戦略として世界中の人々の移動の変化を集計して提示する。

新型コロナウイルスのパンデミック発生により、世界各国では政府の対応を知らせるツールとデータを大至急用意する必要に迫られている。例えばEUの欧州委員会では、匿名化され集計されたロケーションデータを各電気通信事業者に依頼して入手し、新型コロナウイルスの感染拡大モデルを構築している。

今回のGoogleのデータ公開は、社会政策用ユーティリティと同様の考え方をちらつかせながら、世界中のユーザーから取得したデータから人の移動の変化について公開スナップショットを提供して注目を集めるという意図があるものと思われる。

政策立案者向けのユーティリティという面では、今回のGoogleの提案の効果はかなりあいまいだ。このレポートは政府と公衆衛生当局者向けに「生活に必要な訪問や外出の変化を把握して、推奨営業時間の設定や宅配サービスの提供状況の通知に利用していただく」ものであるという。

同レポートでは「同様に、交通の中心地に向かう人が減少していないことから、バスや電車の便を増やして、どうしても移動する人が間隔を開けて座れるようにする必要があるかもしれない。最終的には、人が移動しているかどうかだけでなく、行き先の傾向も把握することで、担当者が、公衆衛生を保護し、コミュニティの不可欠なニーズを満たすためのガイダンスを策定できるようする」と述べられている。

Googleが公開しているロケーションデータも同様にはっきりしないものだ。プライバシーの侵害を避ける必要があるからだ。同社によると同データには「Google製品で日常的に使用している世界クラスの匿名化テクノロジー」を使用しているという。

Googleは次のように述べている。「今回公開のレポートでは、差分プライバシーを使用している。これはデータセットに人工的なノイズを加えて、個人を特定することなく高品質の結果が得られるようにするものだ。ロケーション履歴の設定をオン(デフォルト設定ではオフ)にしているユーザーから取得したデータセットを集計および匿名化したものを元に、さまざまなインサイトを提供している」。

「Googleマップでは、特定のタイプの場所の混雑具合を示す匿名化された集計データを使用して、その地域の商業施設が最も混雑する時間帯を特定している。公衆衛生当局者の話によると、これと同じタイプの匿名化された集計データが新型コロナウイルスの感染を抑える上で重要な決定を下すのに役立つという」。Googleはこのように指摘し、Googleマップの既存の機能が新型コロナウイルス感染対策のために利用できることをほのめかした。

このレポートは、国または州ごとに用意されていて(当初は131カ国をカバー)さらに地域ごとのレポートも利用可能だ。レポートではコミュニティの動向が、新型コロナウイルス発生前の基準値平均と比較してどのように変わったかを分析している。

例えば米国全土を対象とする3月29日のレポートでは、娯楽関連施設の活動は新型コロナウイルス発生前に比べて47%低下しており、食料品店やドラッグストアへの来店は22%、公園やビーチへの外出は19%低下しているという(Googleのデータより)。

同日のカリフォルニア州を対象とするレポートでは、公園やビーチへの外出は大きく落ち込んでおり(地域の基準値より38%低い)、娯楽関連施設(50%低下)と食料品店やドラッグストア(24%低下)への外出も米国全土と比較して若干低下の度合いが大きい。

Googleによると上記レポートでは「集計の上、匿名化されたデータを使って地域別に、大分類された場所(娯楽関連施設、食料品店やドラッグストア、公園、公共交通機関、職場、住宅)における時系列の動向をグラフ化している」とのことだ。この動向は数週間単位で、48~72時間前の最新情報と一緒に表示される。

また、訪問の絶対数はプライバシー保護の観点から公開していないという。また「プライバシー保護のため、個人の場所、連絡先、移動先といった個人識別情報は、どの時点でも公開していない」とGoogleはいう。

ヨーロッパ諸国で新型コロナウイルスによる打撃が依然として最も大きいイタリアのレポートでは、全住民に対するロックダウン後の変化が示されている。娯楽関連施設の活動はGoogleの基準値と比べて97%、食料品店やドラッグストアへの来店は85%、公園やビーチへの外出は90%、それぞれ低下しているとのこと。

同じレポートから、公共交通機関の活動は87%、職場での活動は63%それぞれ低下しており、逆に住宅での活動は約4分の1(24%)増大していることがわかる。これは多くのイタリア人が通勤せずに自宅待機しているためだ。

イタリアと同様、新型コロナウイルスによって大打撃を被っているスペインでも状況は同じだ。ただ、フランスのデータには、自宅待機命令の影響がそれほど顕著に現れていないようだ。住宅地域での活動の増加は18%に過ぎず、職場での活動の低下も56%に留まっている(これはおそらく、フランスでは、確認されている感染者と死者の数は国全体で増え続けているものの、パンデミックの影響が比較的小さいためと思われる)。

政策立案者は新型コロナウイルス対策を知らせるためのデータとツールを用意するのに懸命になっているものの、プライバシー専門家と市民的自由の保護運動家たちは、こうしたデータを利用する手法が個人の権利に与える影響を懸念する声を上げると同時に、こうした追跡機能の広範な利用に疑問を呈している。

Wolfie Christl @WolfieChristl · 12時間
返信先: @WolfieChristl
Googleのデータの精度が低くなる理由はたくさんある。例えば測定方法、場所の座標へのマッピング、場所の分類など……。

いずれにしても、政府や研究者が今後もGoogleから非個人的な分析結果を取得する必要があるなら、少なくとも、すべてにおいて100%の透明性が確保されていなければならない。

Wolfie Christl @WolfieChristl
その通り。この免責条項の適用範囲は極めて広い。ほとんど宣伝活動でしかない。

これとは別に、Googleは同社のさまざまな二次的データ利用に対し責任を負う必要がある。Google/Alphabetのパワーはあまりに強大で、複数レベルでの対応を早急に実施する必要がある。

経済的なクラッシュを引き起こすロックダウンから西側諸国を救済する潜在的な解決策として、アプリの利用を叫ぶ声がどんどん強まっている。接触者追跡もそうした分野の1つだ。接触者追跡を行うと、中国で起こったように、モバイル端末がロックダウンを強制するツールとなる可能性がある。

「大規模な個人データの収集はすぐに大規模な監視につながる」と簡潔な言葉で警告するのは、ロンドンのインペリアル・カレッジ、コンピュータプライバシーグループに籍を置く3人の研究者たちだ。この3人は、新型コロナウイルス接触者追跡アプリに関するプライバシー上の懸念を、アプリ開発者が検討すべき8つの質問としてまとめている。

Googleが新型コロナウイルス対策としてモバイル端末ロケーションデータを公開したことについて、同グループのリーダーであるYves-Alexandre de Montjoye(イヴ-アレキサンドル・ドゥ・モンジョワイエ)氏は、同ロケーションデータ公開に際してプライバシー上のリスクを軽減するためにGoogleが行った手順を概ね評価する見解を示している。ただし外部の研究者が、Googleの主張するプライバシー保護の堅牢性を評価しやすくするために、使用された技術的プロセスの詳細情報も公開するようGoogleに要求している。

Googleが公開したロケーションデータの技術的側面について、ドゥ・モンジョワイエ氏は次のように語った。「このデータは集計されており、特定の日付セットに正規化されていて、人数が少なすぎる場合はしきい値によってふるいにかけられる。その上、データを差分プライバシーにするために(Googleによれば)ノイズが追加されている。従って純粋に匿名化という観点からすると、悪くない。この3点はプライバシー上のリスク軽減に使用できる主要な3つの手段だ。Googleのデータはいずれの点もよく処理されていると思う」。

「ただし、特に現在のように多くの人がデータを使用している状況では、より詳細な情報を公開して欲しかったというのが私の感想だ。しきい値によるふるいのかけ方、差分プライバシーの適用方法など、こちらで推測するしかない点がいろいろとあるからだ」。同氏はGoogleがどのくらいのノイズをデータに追加したのかという点についても疑問を呈している。「差分プライバシーを適用した方法がもう少し詳細にわかると良いのだが。特に現在のような状況では、透明性が高いに越したことはない」。

Googleのモバイル端末データの公開は、欧州委員会が新型コロナウイルス感染症追跡のため電気通信事業者にメタデータを要求したのと目的は同じだと思えるかもしれないが、データソースの違いによって重大な違いが生じている可能性があると、ドゥ・モンジョワイエ氏は指摘する。

ドゥ・モンジョワイエ氏は次のように述べている。「この2つのデータには常にトレードオフの関係がある。電気通信事業者のデータは基本的に粒度が粗くなる。GPSは携帯電話の場合より、空間的に非常に精度が高く、1日あたり、1人あたりのデータポイント数も断然多くなる。その一方で、電気通信事業者のデータは対象範囲が広い。GPSデータ収集の対象となるのはスマートフォンだけではない緯度の情報がオンになっているユーザーだけでもない。国内にいるユーザー(スマートフォン以外のユーザーも含む)すべてが対象になる」。

同氏は、地域の通信事業者を使った方が解決できる可能性の高い国特有の問題もあるとも指摘する(欧州委員会はEU加盟国あたり1社の通信事業者に、匿名化された集計メタデータを提供させる意向であると語った)。

ロケーションデータはそもそも本当に匿名化できるのかという今問題となっている点について、データ再特定化の専門家であるドゥ・モンジョワイエ氏は「どちらともいえない」と答え、元のロケーションデータを「匿名化するのは相当に難しい」と指摘する。

「このデータを処理して集計結果を匿名化できるかと聞かれたら、おそらくできると答えるだろう。要するに条件次第だ。ただ、元のデータは残っている。たいてい集計データが生成されるまでのプロセスでプライバシー上のリスクが発生しないように、さまざまな制御が適切に行われているかどうかという点が問題になる」(同氏)。

Googleの位置情報の提供についてはもっと大きな問題がある。そもそもユーザーを追跡することについて法的な同意が得られているのかという点だ。

Googleは位置情報の追跡はオプトイン方式に基づいている(つまりユーザー側の許可がなければ追跡できない)と主張しているものの、同社は2019年に、フランスのデータ監視機関により、ユーザーデータの使い方が不透明であるとして5,700万ドルの罰金を課せられた

関連記事:Googleに罰金5700万ドル命令、仏データ保護当局

その後、2020年初めに、欧州におけるGoogleのプライバシー規制を主導しているアイルランドのデータ保護委員会(DPC)は、Googleの位置情報追跡活動の正式な調査を行うことを認めた。これは、Googleが広告ターゲティングの目的でウェブユーザーの位置情報を追跡し続けるため巧妙な戦術を使用しているとするEUの消費者団体からの2018年の苦情を受けたものだ。

「懸案事項の中から提起された問題は、Googleの位置情報の処理の合法性とその処理を取り巻く透明性に関連している」と、DPCは2月の調査発表の声明の中で伝えている。

法的に問われ続けている人々の追跡についての同意に関して、Googleは「ユーザーはオプトインを選択しており、設定で位置情報の履歴をクリアにすることもできる」ことを同社のブログで繰り返し伝えているという弁明をする可能性が高い。(実際の記述例 「位置情報履歴をオンにしているユーザーは、Googleアカウントからいつでも設定をオフにすることができ、いつでもタイムラインから位置情報履歴データを直接削除することができる」)

Googleは今後もこの危機の間、新型コロナウイルスのモビリティポルノレポートの提供を継続していくと明記しているが、さらに同社は 「新型コロナウイルスに取り組んでいる選りすぐりの疫学者が、パンデミックをより明確に把握し感染予測に役立てられるよう、既存の匿名化されたデータセットを更新し、協力している 」と述べている。

また「この種のデータは研究者による疫病の流行予測や、都市や交通インフラの計画、人々の移動性、紛争や自然災害への対応の把握に活用されてきた」と付け加えている。

画像クレジット: 写真 Omar Marques / SOPA Images / LightRocket via Getty Images / Getty Images

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(翻訳:Dragonfly)