フィリピンの決済ゲートウェイPayMongoが約35.6億円のシリーズB調達、東南アジア地域での拡大狙う

PayMongoの創業者たち。CTOのJaime Hing III(ハイメ・ヒンIII)氏、CEOのFrancis Plaza(フランシス・プラザ)氏、CCOのLuis Sia(ルイス・シア)氏

マニラに拠点を置くフィンテック企業で、加盟店のデジタル決済を可能にするオンライン決済プラットフォームのPayMongo(ペイモンゴ)は、周辺地域での事業拡大を視野に入れ、シリーズBラウンドで3100万ドル(約35億5800万円)を調達したと発表した。参加した投資家には、Justin Mateen(ジャスティン・マティーン)氏のJAM Fund、ICCP-SBI Venture Partners、Lisa Gokongwei(リサ・ゴコンウェイ)氏のKaya Foundersに加え、既存投資家のGlobal Founders CapitalとSOMA Capitalが名を連ねている。今回のラウンドには、Qonto、Viva Wallet、Billie、Scalableといった欧州のフィンテック創業者らも参加したとのこと。

これでPayMongoの累計調達額は4600万ドル(約52億7900万円)弱に達した。前回の資金調達は2020年に発表された1200万ドル(約13億7700万円)のシリーズAで、米国の決済サービス大手であるStripe(ストライプ)がリードした

同社はあらゆる規模の企業を対象としているが、特に零細企業、中小企業をターゲットとしており、銀行カード、デジタルウォレット、店頭取引など、さまざまな形態の支払いを受け付けることを可能にする。同社の製品には、PayMongo決済APIやeコマースプラグインなどがある。今回調達した資金は、PayMongoの現在の決済インフラをさらに発展させ、払い出し、資金貸し出し、BNPL(後払い)、サブスクリプションや定期支払いなどの金融サービスの追加に充てられる。

PayMongoの製品ロードマップの一部には、より多様な金融サービスの運営を可能にする新しいライセンスの取得が含まれている。同時に、地域的な拡大も模索しているという。

共同創業者兼CEOのFrancis Plaza(フランシス・プラザ)氏は、TechCrunchにメールでこう語った。「まだまだフィリピンで、やるべきことがたくさんあります。現在の需要の増加に対応し、積極的な製品ロードマップを実現するために、チームの規模を2倍以上にすることを見込んでいます。それと並行して、2021年に取りかかり始めた、東南アジア地域での事業拡大に向けた初期調査と足固めを開始しました」。

フィリピンには他にも、DragonPay、PesoPay、PayMaya、Paynamicsといったデジタル決済ゲートウェイがある。プラザ氏はTechCrunchへのメールで、PayMongoは2019年に設立されて以来、SMBや高成長のスタートアップ・企業にフォーカスすることで差別化を図っていると語った。

それ以上に、当社のプラットフォームを利用している何千もの企業と協力しながら、マーチャントが簡単に支払いを受けられるだけでなく、他の金融サービスにアクセスして成長できるような、より多くの製品やサービスを構築することを目指しています」と同氏。「送金機能から、残高の保存、クレジットへのアクセスまで、そして顧客にとっての支払い方法の選択肢を広げることができます」。プラザ氏はさらに、いくつかの新しい製品やサービスを、すでに加盟店とともにベータ版としてテストしていると付け加えた。

Tinder(ティンダー)やJAM Fundの創業者であるJustin Mateen(ジャスティン・マティーン)氏は声明で次のように述べた。「PayMongoの最初の投資家の一人として、私は彼らがひと握りの企業の決済を簡素化したところから、今では何千もの加盟店が日々の業務で頼りにしている会社になるまでの道のりを見てきました。彼らの成長にワクワクするとともに、デジタル経済を通じてより大きな経済機会を生み出すチームを再びサポートできることを嬉しく思っています」。

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(文:Catherine Shu、翻訳:Den Nakano)

「デスクを持たない労働力」管理HRプラットフォームのSnapshift、市場拡大に向け約51.9億円調達

このいわゆる「大量自主退職時代」には、多くの現場作業員(看護師、トラック運転手など)が新型コロナウイルス感染流行をきっかけに自分の生活を見直しており、その一方で旧来の企業はこの新しい世界秩序に苦心している。従業員はまた、より良いコミュニケーションも求めているため、このようなコミュニケーションをアプリ化することは理に適っている。

フランスを拠点とするSnapshift(スナップシフト)は、レストラン向けのスタッフ管理ウェブソリューションとしてスタートし、Bpifrance(ビーピーアイフランス、フランスの政府系投資銀行)とFemmes Business Angels(フェム・ビジネス・エンジェルズ)から390万ユーロ(約5億1000万円)の資金を調達した。しかし、この会社は明らかに賢いアイデアを思い付いていた。そしてそれは、私たちが今、生きている時代に合わせて作られたようなものだ。

今やこのHR(人的資源)プラットフォームは、いわゆる「デスクレスワークフォース(デスクを持たない労働力)」を管理するためのプラットフォームとして生まれ変わった。これは、かつてブルーカラーやフロントラインワーカーと呼ばれていた人々のことを指す今風の言葉である。

Snapshiftは今回、4500万ドル(約51億9000万円)のシリーズAグロースエクイティ資金を調達した。このラウンドはHighland Europe(ハイランド・ヨーロッパ)が主導し、既存投資家であるBpifranceとUL Invest(ULインベスト)も参加した。

Snapshiftは、2021年に同社のサービスに対する「大きな需要」があったことを受け、現在はSubway(サブウェイ)、Pizza Hut(ピザハット)、Spar(スパー)、Amorino(アモリーノ)、Biocoop(ビオコープ)、Fitness Park(フィットネスパーク)、Columbus Cafe(コロンブス・カフェ)、Carrefour(カルフール)など、6000社以上の顧客を抱えているという。

今回の資金調達は、欧州のレストラン、ホテル、小売業など、すべての中小企業にサービスを拡大するために使用される予定で、スペインが最初の国際ターゲット市場となる。

Snapshiftのオリジナル製品は、スタートアップ企業やレストランの起業家であるOlivier Severyns(オリヴィエ・セヴェリンス)氏が、自身のスタッフ当番表を管理するために作ったものだった。その後、同氏は他の企業向けにSnapshiftを起ち上げることを決めた。現在では70名以上の従業員を抱えているが、2022年には150名に増員することを目指している。

セヴェリンス氏は、次のように述べている。「私たちの使命は、中小企業が人事関連のあらゆる事柄を理解し、最適化するための支援をすることです。給与管理やスタッフのスケジュール管理を簡素化し、刻々と変化する社会法や雇用法などの複雑な問題についてガイダンスを提供します。Snapshiftの顧客の多くは、新型コロナウイルスが招いた持続的な人材確保の問題から影響を受けています。Snapshiftの製品によって、顧客は管理システムを近代化し、信頼と透明性を促進することで、従業員にとって『働きがいのある会社』にすることができるのです」。

Highland EuropeのパートナーであるJean Tardy-Joubert(ジャン・タルディ・ジュベール)氏は、次のように述べている。「私たちは、広範なホスピタリティおよびサービス業界で、Snapshiftが解決しているまさにそのようなペインポイントに悩む無数の企業と話をしました。多くの業界が、ますます深刻さを増している人材不足の問題に直面している今、Snapshiftのミッションクリティカルなプラットフォームを他の業界に導入する大きなチャンスがあると、私たちは確信しています。オリヴィエと彼のチームが、このような短期間で成し遂げたことに非常に感銘を受けています」。

セヴェリンス氏は「当社の最大のライバルはExcel(エクセル)です。当社の顧客の80~90%は、Excelから初めてのデジタルスケジューリングソリューションに移行しています」と付け加えた。

しかし、SnapshiftにはSkello(スケロ)とPlanday(プランデイ)というSaaSの競合企業が存在する。

同じくフランスを拠点とするSkelloは、これまでに5440万ドル(約62億7000万円)を調達しており、デンマークのPlandayは、7310万ドル(約84億2000万円)を調達している。このように、HR機能をシンプルなアプリにするための競争が繰り広げられているのだ……。

画像クレジット:Snapshift founder Olivier Severyns

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(文:Mike Butcher、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

バーチャル「最高情報セキュリティ責任者」を提供するCynomiが約4億円調達、中小企業のセキュリティ自動化を支援

イスラエルのサイバーセキュリティ企業Cynomiは、中小企業や各種のサービスプロバイダーにバーチャルのCISO(Chief Information Security Officer、最高情報セキュリティ責任者)を提供する。同社はこのほど、Flint Capitalがリードするシードラウンドで350万ドル(約4億円)を調達した。

バーチャルCISOすなわち「vCISO」は通常、専門サービスへのアウトソーシングや、リモートでパートタイムのセキュリティ実践家をオンデマンドで起用するかたちをとり、彼らが、サイバーセキュリティの専門的技能やガイダンスを企業に提供する。しかしCynomiのプラットフォームはそこから人間の部分を取り去り、人工知能を利用して人間のCISOをエミュレートし、手作業的だったオペレーションを自動化する。

Cynomiが他のvCISOと異なるのは、これまでセキュリティをマネージドサービスやセキュリティプロバイダーに依存していた中小企業に同社がフォーカスしていることだ。Cynomiの共同創業者でCEOのDavid Primor(デビッド・プリマー)氏によると、外部のエキスパートに頼む方法では社内にサイバーの専門家がいないため、悪質なハッカーの安易なターゲットになりやすい。

「中小企業や中堅の企業は状況が悪い。今では企業の経営者になっている何人かの友だちのセキュリティを手伝って痛感したのは、プロフェッショナルのCISOがいる企業と、ツールだけの中小企業の落差が大きいことです。会社を完全に守るツールはないし、犯人たちはそのことをよく知っています」とプリマー氏は語る

Cynomiは、同社のサイバーセキュリティプラットフォームを小さな企業に提供してこの落差を埋めようとする。セキュリティのスキルは一般的に不足しているだけでなく、パンデミックの間は不足が一層悪化した。Cynomiの共同創業者でCOOのRoy Azoulay(ロイ・アズーレイ)氏は「要するに中小企業や中堅企業はこの人材争奪戦に勝てない」という。

同社のvCISOプラットフォームは企業に、ランサムウェアやデータの遺漏など具体的な脅威別に、NIST(米国国立標準技術研究所)の評価点を与え、外部に露出しているアセットの脆弱性やエクスプロイトの、技術的に極めて高度な評価を与える。

Cynomiによると、すでにイスラエルと米国と英国には数社の有料顧客がいて、350万ドルのシード資金によりさらに市場開拓努力に力を入れたいという。このラウンドを支えたのは、SeedILとLytical Ventures、およびCyberXの共同創業者であるNir Giller(ニル・ギラー)氏などのビジネスエンジェルたちだ。

同社によると、数百社をランサムウェアにさらした7月のKaseyaの例のように、過去2年近くは中小企業や中堅企業がサイバー攻撃のターゲットになってきたが、同社のソリューションが市場の現状に対して遅すぎることはない。

「2021年は誰もが新しいサイバーセキュリティ・ツールの導入を急いでいましたが、再発が見られます。中小企業が保護され、すべてがうまくいくのであれば、私たちの使命は終わったと言えるでしょう。しかし、私は純粋にこのサイクルの始まりに過ぎないと考えています」とアズーレイ氏はいう。

画像クレジット:Getty Images

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(文:Carly Page、翻訳:Hiroshi Iwatani)

中小企業にクレジットカードを提供する支出管理プラットフォーム「Moss」が約97.8億円調達

ベルリンのMossが今週初めに、8600万ドル(約97億8000万円)のシリーズBを発表した。同社は中小企業にクレジットカードを提供して、支出管理が容易にできるようにする。

このラウンドによりMossの評価額は5億7300万ドル(約651億3000万円)に達した。Tiger Global ManagementがこのシリーズBをリードし、A-Starが参加した。合わせて同社の調達額は総額で1億5000万ドル(約170万5000円)近くとなった。

Mossは、支出管理のプラットフォームだということができる。ヨーロッパの競合他社は、SpendeskPleoSoldoなどだ。Mossの強みは、デビットカードでなくクレジットカードを提供していることだ。取引は各決済の数秒後にMossのダッシュボードに表示される。

カード本体だけでなく、従業員はオンライン決済のためのバーチャルカードを作ることができる。何かを買うたびに、Mossの顧客はすべての支出に0.4%の割引がある。

これなら、小さな会社でも1枚のコーポレートカードですべての経費を共有する必要がない。チームリーダーは、従業員ごとに予算を設定し、より簡単に経費を把握することができる。

従業員自身にとっても、ヨーロッパではコーポレートカードはそれほど一般的ではない。Mossに切り替えることで、従業員の経費を自己負担する必要がなくなる。Mossのカードで決済し、レシートを添付すればいい。また、カード決済ができないレストランでは、現金での経費精算もMossで行うことができる。

カード決済以外にも、すべての請求書をMossアカウントで一元管理することで、Mossに頼ることができる。Mossのユーザーは、承認ルールを設定し、ビジネス銀行口座の支払いリストをエクスポートすることができる。

最後に、Mossは、ドイツ市場で人気の会計ソフトであるDatevと統合しているため、会計業務をスピードアップすることができる。今後、このスタートアップは、製品をさらにモジュール化する予定だ。すべてを必要としないのであれば、支出管理スタック全体を使用する必要はないだろう。

Mossは、全体で25万件の取引を処理し、2万枚のカードを発行している。製品はドイツとオランダで提供されている。同社は現在、英国への進出を計画している。

画像クレジット:Moss

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(文:Romain Dillet、翻訳:Hiroshi Iwatani)

中小企業の営業とサポートチーム向け自動化プラットフォームSaaS Labsが約48億円を調達

SaaS Labs(SaaSラボ)は、中小企業の営業およびサポートチーム向けの自動化プラットフォームを積極的に成長させるため、前回の資金調達完了から3カ月足らずで新たな資金調達ラウンドで4200万ドル(約48億490万円)を調達し、2社のスタートアップを買収した。

SaaS LabsのシリーズBラウンドは、Sequoia Capital India(セコイア・キャピタル・インディア)が主導した。このラウンドには、既存の出資者であるBase 10 Partners(ベース10パートナーズ)とEight Roads Ventures(エイト・ロード・ベンチャー)の他、起業家の Anand Chandrasekaran(アナンド・チャンドラセカラン)氏、Allison Pickens(アリソン・ピケンズ)氏、Michael Stoppelman(マイケル・ストッペルマン)氏、Amit Agarwal(アミット・アガーワル)が参加している。今回の資金調達は、カリフォルニアとノイダを本拠地とする同スタートアップが10月に行った1800万ドル(約20億5800万円)のシリーズA調達に続くものだ。

大企業やエンタープライズ向けには、営業やサポート業務の効率化をもたらすツールが数多く存在する。しかし、中小企業には同じことは当てはまらない。これが、Gaurav Sharma(ガウラブ・シャルマ)氏が米国で立ち上げたHelloSociety(ハローソサエティ)というベンチャー企業で得た学びである(この会社は、New York Timesに買収された)。

彼はTechCrunchのインタビューで「中小企業は、彼らの指先にあるソフトウェア製品を見てみると、それほど愛されておらず、十分なサービスを受けられていないことがわかる」と語っている。それに比べて大企業は「エージェントの生産性を向上させるためのすばらしいツールにアクセスできる」と彼は述べている。

SaaS Labsはこの6年間、中小企業の営業チームやサポートチームを強化するために「同じくらい強力」なAI搭載ツールを構築してきた。これらの製品はノーコードソリューションであり、導入のためにITチームを持つ必要性を排除している。

「これらのツールはまた、非常に手頃な価格で、中小企業が依存する他のビジネススタックやオンプレミスのハードウェアソリューションとシームレスに統合することができます」と同氏は語る。

現在、1500万人以上の販売・サポート担当者が直面している課題は、コールログやCRMツールを手動で更新しなければならず、そのツールは上司にリアルタイムの更新情報を提供するようには設計されていないということだ。このため、彼らのコミュニケーションチャネルにギャップが生じ、リアルタイムに介入することができないのだ。

中小企業が営業やサポートチームのためにクラウドベースのコンタクトセンターを数分で立ち上げることができるSaaS LabのJustCallのダッシュボード(画像クレジット:SaaS Labs)

「顧客とのコミュニケーションを行う5人のチームを持つと、大混乱が起こり始めるものです。例えば、JustCall.ioは100以上のビジネスツールと統合されており、これらのチームが利用することができます。JustCallは1億件以上の通話データベースを持ち、機械学習によって通話の品質やプレイブックやワークフローが守られているかどうかを確認することができます。管理者は、すべての通話をふるいにかけるのではなく、評価の低い通話だけを見ることができるのです」と同氏はいう。

このスタートアップは、全世界で6000社以上の顧客を獲得している。小規模な企業であれば、月々25ドル(約2800円)程度の支払いで利用でき、ビジネスの成長とともに年額数万ドル(数百万円)の支払いに移行していくのが一般的である。

顧客のうち70%以上が米国、10%が英国に拠点を置いている。顧客にはGrab(グラブ)、GoStudent(ゴースチューデント)、Booksy(ブックシー)、HelloFresh(ハローフレッシュ)などが含まれる。

同スタートアップは何年も黒字を続けており、2021年は売上を2.5倍に伸ばしたという。

米国時間1月20日には、2つの買収も発表した。ポーランドに拠点を置くCallPage(コールページ)は、営業チームがリードと即座につながるためのコールバック自動化ツールで、フランスに拠点を置くAtolia(アトリア)は生産性とコラボレーションツールである(彼らのチームは、正社員としてSaas Labsに参加する予定だ)。シャルマ氏は、これらの買収はSaaS Labsの製品提供の幅を広げ、さまざまな市場での足跡を深めるのに役立つと述べている。

シャルマ氏によると、今回の資金の一部は、さらに多くのスタートアップを買収するために投入される予定だという。

「当社は十分な資本を有していますが、今回の資金調達により、成功した事業をさらに強化したり、優れた人材をグローバルに採用したり、革新的な製品を発売したり、ブランドマーケティングに注力したり、戦略的M&Aを積極的に行うために必要な資金を確保することができるようになります。中小企業が営業、サポート、マーケティングなどさまざまな機能を現代化するためにソフトウェアを導入し続ける中、SaaS Labsはこの機会を捉え、今後5~7年で30倍の成長を遂げることができると確信しています」。と述べている。

彼は、今後4~5年以内にSaaS Labsを上場させることを視野に入れているという。

「SaaS Labsは、中小企業向けのマルチチャネルの顧客コミュニケーションプラットフォームを構築しています。一連の製品を通じて、デジタルの効率性とオフラインのコミュニケーションチャネルの親密性を融合させた体験を提供しています」と、Sequoia Capital IndiaのMDであるTejashwi Sharma(テジャシュウィ・シャルマ)氏は声明で述べている。

「例えば、同社の主力製品であるJustCallは、大きなインパクトを与えることができました。顧客は、平均して1人のエージェントが手作業で行う時間を週に12時間短縮したと報告し、顧客満足度は30%向上しました。Sequoia Capital Indiaは、顧客コミュニケーションの未来を築くガウラブとそのチームと提携できることをうれしく思っています」とも述べている。

画像クレジット:Getty Images

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(文:Manish Singh、翻訳:Akihito Mizukoshi)

すべてのプラットフォームを横断する顧客メッセージングプラットフォームSuperchatが約17.9億円調達

Superchatの創業者。ミカ・ハリー氏(左)とユルマズ・キョクナル氏(右)

2021年のWhatsAppの停止事故は、今でも20億のユーザーの背筋を凍らせているが、このアプリを使って顧客と繋がっている何百万もの企業も同様だ。ご存知のように、現在ではすべてのプラットフォームを横断する全方向的なメッセージングは、そこから多くのスタートアップが誕生している新たな分野だ。

Superchatはその中でも最新となるスタートアップで、現在、必要とされている中小企業が顧客とコンタクトするための、オールインワンのメッセージングプラットフォームを開発している。一部の調査によると、顧客の78%はネガティブな体験に懲りて、企業とのやり取りにギブアップしている。そんな劣悪な顧客サービスによってヨーロッパの企業は毎年、130億ユーロ(約1兆7046億円)の売上を失っているという

Superchatはこのほど、ロンドンのVCであるBlossom CapitalがリードするシリーズAのラウンドで1560万ドル(約17億9000万円)を調達し、これに468 Capitalも参加した。これでSuperchatの調達総額は1800万ドル(約20億6000万円)になる。

Blossom CapitalのマネージングパートナーAlex Lim(アレックス・リム)氏は次のように語る。「Superchatは、中小企業に力をつけて、彼らがデジタルのチャネルをうまく利用できるようにし、最も厳しい顧客にも最良のサービスを提供できるようにします。創業者とチームは、企業が抱える彼ら独特の難関をよく理解している。中小企業の多くは今でもメールや電話を使っているが、特にパンデミック以降はデジタルへの移行が増えています」。

同社は企業の顧客との会話をWhatsAppやFacebook、Instagram、Google Business、Telegram、ウェブ上のチャット、メール、それにSMSからも取り出して、それらを企業用の単一のボックスに入れる。それによって企業は顧客に関するインサイトを得ることができ、売上アップなどに結実させる。メッセージへの返信は、チームの全員が読むことができる。

Yilmaz Köknar(ユルマズ・キョクナル)氏とMika Hally(ミカ・ハリー)氏が創業した同社は、これまで主にドイツの企業を顧客にしてきた。

「現在の顧客は、どこのどのような企業が相手でも、時間を問わずに企業とコンタクトがとれると思っています。これが、企業にとって業務運用の悪夢になり、顧客にはお粗末な体験につながります。このような方法は誰にとっても良いものではありませんが、Superchatを利用すればみんながWinになります」とキョクナル氏はいう。

この分野には、Rake、Messagebird、Smoochといった資金豊富な競合他社が多く、Superchatは苦労している。今後どんな戦いになるか、興味深い。

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(文:Mike Butcher、翻訳:Hiroshi Iwatani)

中小ビジネス向け融資プラットフォームのAmplaがシリーズAで約45.7億円調達

Amplaの創業チーム。(左から)Jim Cummings(ジム・カミングス)氏、Anthony Santomo(アンソニー・サントモ)氏、Jie Zhou(ジー・ゾウ)氏(画像クレジット:Ampla)

中小規模の消費者向け事業者に融資を行うAmpla Technologies(アンプラ・テクノロジーズ)は米国時間12月22日、4000万ドル(約45億7000万円)のシリーズAラウンドをVMG Partners(VMGパートナーズ)とForerunner Ventures(フォアランナー・ベンチャーズ)のリードで完了したことを発表した。

既存出資者のCore Innovation Capital(コア・イノベーション・キャピタル)もラウンドに参加した。Amplaはこの少し前、今回の株式投資とは別に2億5000万ドル(約285億4000万円)の負債融資を受けて事業を強化している。今回の資本投入によって、ニューヨーク拠点スタートアップの2019年創業以来の総調達額は、株式が5000万ドル(約57億9000万億円)、負債融資が3億3000万ドル(約376億8000万円)となった。

中小事業者やeコマース事業者に融資しているスタートアップは他にも数多くあるが、Amplaは自社の差別化要因を「オムニチャンネル」収益ストリームを考慮した融資限度枠を提供していることだと説明している。目標は、ファウンダーが低コストでより多くの資本を手に入れられるようにすることだとAmplaのCEOでファウンダーのAnthony Santomo(アンソニー・サントモ)氏はいう。

たとえばAmplaの主力プロダクトは、企業に(収益を上げる前でも)運転資金を貸し出すことで、在庫確保やマーケティングなどに出費できるようにすることが目的だ。現在Amplaは、eコマースと小売店舗チャンネル両方の消費者ブランド業界にいる中小企業を扱っている。同社「独自の」のデータに基づく保証ツールは、ビジネス全体を評価し「完全に透明」な利息と高い貸し出し限度で融資を行い隠れコストはない、とサントモ氏はいう。

ベンチャー資金の調達とは異なり、運転資金の調達は非希釈的(既存株主の持分比率が減らない)だ。最近、Clearco(クリアコ)やSettle(セトル)など、代替融資を行うスタートアップがいくつもでてきている。

Amplaはその一歩先を行き「新興企業がより効率的に成長する」ための周辺金融ツールを提供しているとサントモ氏はいう。

現在同スタートアップには、Partake Foods(パーテイク・フーズ)、Bev(ベヴ)、Good Planet Foods(グッド・プラネット・フーズ)、およびSerenity Kids(セレニティ・キッズ)など200社以上の顧客がいる。Amplaの顧客企業のファウンダーは、30%近くが白人以外で、40%以上が女性だと同社幹部は語った。

同社は具体的な売上数値は明らかにしなかったが、月間取引量は直近12カ月に300%以上伸びたと言った。同じ期間に社員数は4倍の40名になった。

Amplaは新たな資金を使って、プロダクト、テクノロジー、営業、および運用各部門の追加雇用を行う計画だ。

「チームを拡大することによって、新たなプロダクトの提供と既存プロダクトの改善を迅速に行えるようになります」とサントモ氏がTechCrunchに話した。「すべてのプロダクトは顧客からのフィードバックと要望に基づいています」。

新型コロナウイルス感染症のパンデミックはeコマース利用に変革を起こした。パンデミック到来時「Amplaはすぐに、顧客基盤の大部分でEコマース販売が急増していることに気づきました」とサントモ氏は言った。「こうしたeコマース販売の大幅な増加によって、商業レベルの本格的運転資金ソリューションの需要が世界中で生まれました」。

Forerunner Venturesの代表、Jason Bornstein(ジェイソン・ボーンスタイン)氏は、Bonobos(ボノボス、Walmart[ウォルマート]のeコマース主導アパレル小会社)の創成期に顧客獲得・需要計画の責任者を務め、1億ドル(約114億4000万円)以上の資金を調達した。

同氏はこう回想した「当時オンラインでブランドを構築するのは簡単でしたが、オンラインでビジネスを構築するのはとても困難でした」。

「それでもこの10年で、デジタルブランドを立ち上げる手法が確立されました。プロダクトやサービスの実施レイヤーが成熟し、今はデジタルブランドの活気あふれるエコシステムができ上がっています」と同氏がメールで言った。「しかし、こと融資となると選択肢はまったく明確ではありません。有名ブランドがVCエコシステムを通じてベンチャー資金を得ている一方で、ほとんどのブランドは規模拡大のための適切な資本を利用できません。どのブランドにも、自分たちのビジネスモデルや資金需要、そして熱意を正しく認識し理解してくれる融資プラットフォームがあるべきです」。

Forerunnerはデジタルブランドの早期からの支持者としてで知られているが、ボーンスタイン氏は、同社が「常に」、ブランドの販売戦略と市場でのプレゼンス確立において、店舗と卸(おろし)が重要な役割を果たし続けると信じてきたことを強調した。

「Amplaはこの信念を共有していて、融資引き受けにあたってオムニチャンネルによる収益を考慮してくれる稀有な存在です」と同氏は言った。

VMG CatalystのパートナーであるBrooke Kiley(ブルック・カイリー)氏は、VMGには消費者プロダクトに投資してきた長い歴史があり、新興ブランドには有効な運転資金の選択肢がないことを直に見てきたことを指摘した。

「既存の選択肢は、起業家に混乱とイライラを与えるだけです。Amplaを使えば、見た通りのものが手に入ります」とカイリー氏がメールに書いた。「隠れコストや意図的に混乱させる仕組みはありません。会社は1つの収益チャンネルだけでなくビジネス全体で評価されます。そして、顧客を念頭においた柔軟な条件で融資を受けられます」。

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(文:Mary Ann Azevedo、翻訳:Nob Takahashi / facebook

配管工、電気工事士、機械工向けビジネス管理ツールを提供するFuzey

ロンドンを拠点とし、中小企業や個人事業主向けに「デジタル・ワンストップ・ショップ」と呼ばれるサービスを提供しているFuzey(フュージー)が、450万ドル(約5億1000万円)のシード資金を調達した。

このラウンドは、byFounders(バイファウンダーズ)が主導し、Flash Ventures(フラッシュ・ベンチャーズ)、Global Founders Capital(グローパル・ファウンダーズ・キャピタル)、Ascension(アセンション)の他、Index Ventures(インデックス・ベンチャーズ)のベンチャーパートナーであるStephane Kurgan(ステファン・クルガン)氏、Amplo VC(アンプロVC)の創業者兼CEOであるSheel Tyle(シール・タイル)氏などのエンジェル投資家グループが参加した。

今回のラウンドにより、同社はHenrik Lysgaard Jensen(ヘンリク・リスガード・ジェンセン)氏とAlex Boyce(アレックス・ボイス)氏が2020年に設立以来、総額520万ドル(約5億9000万円)の資金調達を行ったことになる。また、この投資の一環として、byFoundersの投資家であるSara Rywe(サラ・ライウェ)氏と、Flash VenturesのパートナーであるLorenzo Franzi(ロレンツォ・フランジ)氏が、同社の取締役に就任した。

CEOのリスガード・ジェンセン氏とCOOのボイス氏は約2年ほど前に出会い、中小企業のデジタル化を支援することで意気投合した。配管工、電気工事士、機械工などの小規模事業者をターゲットにしている理由について、リスガード・ジェンセン氏は「ローカルビジネスはすべてのコミュニティのバックボーンである」と信じているが、ビジネス管理用に開発されたツールの多くは、このような事業者には手が届かないし、またこのような事業者を念頭に置いて設計されてもいないからだ。

他にもこのような種類の事業に注目しているスタートアップ企業はある。11月に1500万ドル(約17億円)を調達したPuls Technologies(プラス・テクノロジーズ)のモバイルアプリは、職人とオンデマンドの住宅修理サービスをつなぐものだ。また、2021年初めに6000万ドル(約68億円)の資金調達を発表したJobber(ジョバー)のように、もっと規模の大きな企業もこの分野には存在する。

ボイス氏にとって、個人的にも特にこの分野には思い入れがあるという。同氏の母親は中小企業の経営者で、革製のノートを使ってビジネスを行っていたが、常にノートの紛失を恐れていたと説明する。

「これらは私たちが取り組んでいるテーマです」と、ボイス氏はTechCrunchに語った。「新型コロナウイルス感染症の流行期間中に、どうすれば私たちは変革の担い手になれるかを考えました。消費者の需要が変化し、人々がテクノロジーをより重視するようになり、地元の商店とさまざまな方法で関わりたいと思っている状況を見て目が覚めたのです」。

そうして同社が作り上げたツールは、請求書など従来は手作業で紙に書いて行っていたことを、中小企業向けにデジタル化するものだ。顧客とのコミュニケーション、支払い、マーケティング、カレンダーなどを1つのダッシュボードにまとめ、事業を管理し、オンラインのプロフィールを充実させることができる。

ユーザーの中小企業は、メッセージングからソーシャルメディアまで、さまざまな方法で顧客とコミュニケーションをとることができる。また、請求書を作成して即時に支払いを処理したり、リードジェネレーション(見込み顧客を獲得するための取り組み)を洞察する機能も用意されている。さらに、Fuzeyは文書のテンプレートやワンクリックカスタマーレビューも提供しており、簡単に顧客がレビューを残せるようにすることができる。

「レスポンスタイムは重要です。当社では、あらかじめ質問やコメントが定義されたレスポンステンプレートも用意しているので、顧客に迅速に対応することができます」と、リスガード・ジェンセン氏は述べている。「私たちは、この機能が20、30、40の時間的効果をもたらすと確信しています」。

6月に製品の販売を開始した同社は、今回の資金調達を製品開発と地域の拡大に活用する予定だ。Fuzeyはすでに、欧州、米国、カナダの一部の市場で事業を展開している。従業員数は現在10名で、顧客数、売上高ともに前月比で2桁の伸びを示している。

画像クレジット:Fuzey / Fuzey co-founders Alex Boyce and Henrik Lysgaard Jensen

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(文:Christine Hall、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

イタリア競争当局がアマゾンに約1450億円の罰金、市場での地位乱用を指摘

イタリアの競争当局は、Amazon(アマゾン)に11億2900万ユーロ(約1450億円)の罰金を科したと発表した。独禁監視当局によると、Amazonは市場での支配的地位を乱用し、サードパーティの販売者に同社の物流サービス「フルフィルメント・バイ・アマゾン(FBA)」の利用を押し付けたという。

イタリア競争・市場保護委員会(AGCM)は、声明250ページに及ぶ報告書でその考え方を詳述している。それによると、サードパーティの販売者がFBAを活用している場合と、独自の物流スタックを使用している場合では、同じ扱いを受けることができないとのことだ。

FBAを活用している販売者は、同社の有料ロイヤリティプログラムAmazon Primeに参加することができる。このサービスの会員は、一部の商品を無料で配達してもらうことができる。Amazonの自社在庫に加えて、FBAによってAmazonの倉庫から送られてくるサードパーティ販売者の商品にもPrimeラベルが貼られる。

プライムデー、ブラックフライデー、サイバーマンデーなどのAmazonのイベントでPrime商品が扱われるため、広範囲に影響を与えることになる。つまり「Fulfillment by Amazon」を利用すれば、Amazonのイベントに取り上げられる可能性が高くなる。

しかし、それだけではない。Amazonの商品ページでは、同社が自動的に販売者を選択して、購入ボックスを表示している。パソコンの場合、購入ボックスとは画面の右側にある、商品をカートに入れたり「今すぐ購入」ボタンで直接購入したりするためのボックスのことだ。

購入ボックスの下にある小さなボックスには、他の販売者が表示されている。イタリアの競争当局によると、FBAを利用している販売者は、他のサードパーティの販売者に比べて、購入ボックスで紹介される確率が高いという。

筆者がAmazon.itで良い例を探してみたところ、この便座には次のようなことが書かれていた。「Amazonが直接販売していません。サードパーティの販売者からしか入手できません」。デフォルトでは、Amazonは購入ボックスにWOLTU GmbHを掲載している。WOLTU GmbHはFBAを利用しているため、この商品はAmazonが発送する。そして、Amazon Primeで無料の迅速配達を受けることができる。

その購入ボックスの下には、他の販売者から購入できるという小さなボックスがある。今回は、もう一度WOLTU GmbHを目にする(そして「Amazon倉庫」の中古商品も)。同じ販売者だが、直接発送してくれるので送料も無料になる。

なぜWOLTU GmbHは同じ便座を2回出品しているのか? FBAは無料の物流サービスではない。AmazonはFBAで販売された商品からより多い手数料を得ている。また、WOLTU GmbHは直接販売した方が収益が上がるように思える。しかし、便座がサブメニューに隠されているため、顧客が直接販売者から便座を手に入れることを選ぶことはおそらくない。

Institute for Local Self-Reliance(地域自立研究所)の最近の研究では、Amazonがサードパーティの販売者からますます多くの収益を得ていることが取り上げられ、FBAが悪循環に陥っていること、サードパーティの販売者が虜になっていることが強調されている。

同様に、Amazonは販売者に対して、同社の倉庫・配送サービスであるフルフィルメント・バイ・アマゾン(FBA)の購入を強制しています。Amazonのアルゴリズムは、FBAを購入した販売者を非常に優遇しており、Amazonで売上を上げるためにはFBAが必須となっています。その結果、他の運送業者の使用を辞めてFBAを利用する販売者の割合が近年急増しています。Amazonは、自社の配送サービスの使用を虜となった販売者に強制することで、一夜にして大手物流業者に成長しました。Amazonの配達事業は、今や米郵政公社に匹敵する規模となっています。また、ここ数年、Amazonは保管料や配送料を着実に値上げし、FBAを利用して販売者の収益を圧迫しています。

イタリア当局はAmazonに対し、FBAを利用しているかどうかにかかわらず、サードパーティである販売者にとって公平な基準を新たに設けるよう求めている。また、同社は行動面での対策も実施しなければならない。監視する管財人が変更点を確認する。

Amazonは筆者に声明を送ってきた。「当社はイタリア競争当局の決定に強く反対し、控訴します。提案された罰金と救済措置は不当であり、不釣り合いなものです」と同社は述べている。

「イタリアにおけるAmazonの年間売上高の半分以上は中小企業によるものであり、中小企業の成功は当社のビジネスモデルの中核をなすものです。中小企業は、オンラインでもオフラインでも自社製品を販売するための複数のチャネルを持っています。Amazonはその選択肢の1つにすぎません。当社は、Amazonで販売する1万8000社のイタリアの中小企業の成長をサポートするために常に投資を行っており、自社で出荷を管理する販売者を含め、複数のツールを販売者に提供しています」としている。

画像クレジット:Philippe Lopez / AFP / Getty Images

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(文:Romain Dillet、翻訳:Nariko Mizoguchi

東南アジアの多通貨ネオバンクYouTripが約34億円調達、法人カードも発行

多通貨取引のコスト削減と効率化に特化した、シンガポールを拠点とするオンライン銀行のYouTrip(ユートリップ)は現地時間11月30日、シリーズAで3000万ドル(約34億円)を調達したと発表した。

同社創業者でCEOのCaecilia Chu(カエシリア・チュー)氏によると、今回のラウンドは、アジアの著名なファミリーオフィスがリードしたもので、このファミリーオフィスは匿名を希望しているが、前ラウンドにも参加している。

今回のシリーズAにより、YouTripの資金調達総額は6000万ドル(約67億円)を超えた。同社によると、これまでに全世界で8億ドル(約902億円)超のカード利用を処理し、取引数は約2000万件、アプリのダウンロードは150万回を超えている。

チュー氏はTechCrunchに対し、YouTripが資金調達に踏み切ったのは「変曲点」に達しているからだと述べた。

「東南アジアがパンデミックから脱却し、シンガポールがワクチン接種率で先頭に立っていることから、消費者の間では、旅行に対する大きな需要の高まりと、消費者心理の回復が見られました。eコマースへの支出は確実に増加しており、旅行に関しては、シンガポールのワクチン接種済みトラベルレーンが始まって以来、1日の取引額が少なくとも2〜3倍に増加しています」。

YouTripはこうした追い風を楽観視しているが、旅行の回復については現実的なアプローチをとっている。中期的には、個人消費と、YouBizと呼ばれる複数通貨対応の法人カードを含む新しいB2Bビジネスに最も期待しているとチューは述べた。

YouTrip共同創業者でCEOのカエシリア・チュー氏

2022年、YouTripは地理的拡大にも注力する計画だ。現在、シンガポールとタイで事業を展開している同社は、フィリピンとマレーシアに進出するためにVisa(ビザ)と提携した。さらにチュー氏は、インドネシアとベトナムでのサービス開始に向けて、パートナーと話し合いを進めていると付け加えた。

TechCrunchが2019年にYouTripを取り上げたとき、コアな顧客層の1つは海外旅行者だった。そして新型コロナに見舞われ、同社は非常に迅速に適応しなければならなかった。

YouTrip Perksのような新機能を追加し、LazadaやShopeeといった業者と協力して最大15%のキャッシュバックを提供するパートナーシップチームを立ち上げた。「パンデミックの間、人々はオンラインで多くのものを購入していただけでなく、健康への意識も高まっていたため、スポーツ用品や健康補助食品の購入が増えました」とチュー氏は話す。「私たちは、ユーザーにとって最も関連性の高い業者をターゲットにして提携を促進してきました」。

同社によると、現在、取引額はパンデミック前のレベルに戻っている。YouTripは、消費者の支出や旅行の増加にともない、さらなる牽引力を期待しており、2022年初めに消費者向けアプリのブランドイメージを一新し、新たな決済機能を導入する予定だ。

また、法人向けカードであるYouBizも2022年初めに導入する予定だ。チュー氏は、同社がB2B分野に参入した理由の1つとして、フィンテックサービスを導入する中小企業が増えていることを挙げる。

「私たちは、パンデミックに強い企業になることがどれほど重要かを知っています」と同氏は付け加えた。「国境がいつ再開されるかと毎日ニュースを読むのはやめようと心に誓いました。私たちは、新しい旅行対策に関わらず乗り越え、成功させ続けます」。

同社はまた、中小企業におけるパラダイムシフトを目の当たりにした。

「彼らはフィンテック商品や新しい銀行商品に対して、よりオープンマインドになっています」とチュー氏は指摘する。「当社に関連して言えば、在宅勤務やハイブリッドモデルの普及により、企業の分散化が進んでいます。給与支払い、ベンダーへの支払い、さらには売上の受け取りや消費者への請求までもが世界中に広がっており、外貨のニーズは確実に高まっています。ですので、この市場に参入するには最適な時期だと感じています」。

YouBizの提供が始まれば、YouTripは、AspireSpenmoVolopayなど、法人カードを提供したり、中小企業分野に焦点を当てたりしているVCが支援する東南アジアのフィンテック企業数社の仲間入りをすることになる。しかしチュー氏は、中小企業向けのサービスは消費者向けのサービスに比べて巨大であるだけでなく「サービスが十分に行き届いていないため、大きなチャンスがある」と話す。

特にYouTripは、従業員数1人から1000人までの企業にフォーカスする計画だ。このセグメントを選んだ理由は、YouBizが従来の銀行口座の代わりになるものではないからだ。YouBizは、中小企業の外貨取引にかかる費用を削減することを主な付加価値としている。また、出張の再開を見据えて、経費管理ツールの導入も予定している。

「中小企業の部門では、1人勝ちにはならないと感じています。しかし、競争の話に戻ると、私たちはこの分野に注意深く参入しています。当社には、際立った2つの優位点があります。1つは、テックインフラとライセンスインフラをエンド・ツー・エンドで所有している唯一のネオバンクであることです」。

YouTripは「消費者向け決済サービスではマージンが非常に小さいため、最高のコストと価値を提供するためには、製品のロードマップを含めて、バリューチェーンを完全にコントロールできるレベルまで最適化する必要がある」として、自社の技術スタックに多くの投資を行った。

YouTripの2つ目の強みは、すでに強いブランド認知があることだ。「ビジネスオーナーと話をしていると、多くの人が自分の買い物のためにすでにYouTripを利用しています」とチュー氏はいう。この実績は、YouTripが中小企業に売り込む際に役立っており、チュー氏によれば、B2Bサービス開始に向けてすでに1000件の申し込みがあるという。

画像クレジット:YouTrip

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(文:Catherine Shu、翻訳:Nariko Mizoguchi

法人設立、会計、税金、規制遵守など煩わしいバックオフィス管理を行うSleek、ビジネス構築に集中したい起業家向けサービス強化

Sleekの創業者ジュリアン・ラブリエール(右)とエイドリアン・バーゼル氏(左)(画像クレジット:Sleek)

起業家や中小企業は、カンパニーセクレタリー業務、簿記、銀行業務、税務、給与計算、雇用サービス、保険など、サイロ化された機能への対応に苦労することがよくある。

フランスの起業家Julien Labruyere(ジュリアン・ラブリエール)氏とAdrien Barthel(エイドリアン・バーゼル)氏は2017年にSleek(スリーク)を設立し、起業家がシンガポールと香港で事業を設立して運営するのを支援した。Sleekは法人設立、行政、会計、税金、ビザから規制遵守まで、すべてを処理するバックエンドのOSプラットフォームを構築した。

同社の使命は、Sleekによってバックオフィスの煩わしさをすべて取り除くことで、ビジネスの構築に集中したい起業家やビジネスオーナーにとって最適なプラットフォームになることだと、バーゼル氏は述べている。

Sleekは米国時間11月16日、White Star Capital(ホワイト・スター・キャピタル)とJungle Ventures(ジャングル・ベンチャーズ)がリードする1400万ドル(約15億9800万円)のシリーズAラウンドを獲得したことを発表した。これにより、Sleekの総調達額は2400万ドル(約27億3900万円)となった。

この資金は、技術および製品開発の強化、人員の増強、既存市場でのプレゼンスの拡大、オーストラリアや英国を含む新規市場への参入に使用される。

英国市場への参入にともない、Sleekは、英国の法人設立管理会社で、2005年の設立以来、45万社以上の法人を設立してきたLtd Companies(Ltdカンパニーズ)の買収を発表した。Sleekは、既存のLtd Companiesのサービスに同社のスタックを加え、英国の中小企業向けのオペレーティングシステムを構築する。

Sleekは設立以来、シンガポールだけでなく、香港、オーストラリア、英国、フィリピンにも拠点を拡大してきた。

同社は、パンデミック時に顧客ポートフォリオの規模を2倍にした。興味深いのは、Sleekの顧客は経済全体の混乱の影響をあまり受けていないようだ、とバーゼル氏はTechCrunchに語っている。また、2021年初めには1000万ドル(約11億4100万円)の年間経常収益を達成したとバーゼル氏は述べている。

5000社以上のポートフォリオを管理しているSleekは、2020年に140万件以上の簿記取引を処理し、約7億ドル(約799億円)の収益を計上した。

Sleekは最近、中小企業の銀行口座開設を簡素化したSleekビジネスアカウントを発表した。これにより、起業家や中小企業の経営者は、Sleekアプリを使ってわずか1日で預金口座を開設し、取引を開始することができ、口座開設前の煩わしい書類作成の必要性がなくなった。さらに、ユーザーはSleekのダッシュボード上で、他の会社の指標と一緒に口座の詳細を確認することができ、会計や簿記のための銀行照合を効率的に行うことができる。また、送金やカード発行に対応した製品のリリースも予定している。

「Sleekビジネスアカウントのリリースにより、起業家のためのオペレーティングシステム(OS)を構築するという当社の製品ビジョンに、大きな一歩を踏み出すことができました」とバーゼル氏は述べている。

また、経験豊富なCFO(最高財務責任者)がビジネスインテリジェンスツールを介してクライアントの会計データにアクセスし、クライアントへの提案や分析(予算編成、戦略、資金調達)を行うCFOサービスを試験的に開始した。

「テクノロジーが人間の超効率化を可能にする未来では、人間は手作業よりも顧客へのアドバイスに多くの時間を費やします。現在、当社のカンパニーセクレタリーは、従来の会社の4~5倍多くのクライアントにアドバイスを行っていますが、その機能の100%自動化を実現し、クライアントへのアドバイスのみに集中できるようにすることを目指しています」と、バーゼル氏はTechCrunchに語っている。

White Star Capitalの創業者兼マネージングパートナーであるEric Martineau-Fortin(エリック・マルティノー・フォーティン)氏は「我々は、Sleekの優れたパートナーとなり、我々のグローバルなカバーエリアを活用して、すべての中小企業が抱える根本的な問題を解決し、ヨーロッパやオーストラリアへの成長を加速できると信じています」と語っている。

「Sleekは、世界中の起業家や中小企業が抱えるバックオフィス管理という、まだ十分なサービスが提供されていない領域の課題に取り組んでいます。Sleekの地域を超えた成長と急速な拡大は、プラットフォームの導入が加速していることと、それがエコシステムにもたらす価値を証明しています」。とJungle VenturesのマネージングパートナーであるDavid Gowdey(デビッド・ゴウディ)氏は語っている。

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(文:Kate Park、翻訳:Akihito Mizukoshi)

【コラム】ビッグテックはビジネスが苦手なのか?中小の知的財産権を侵害する大手

Google(グーグル)は2021年8月、Sonos(ソノス)との法廷闘争で大きな敗北を喫し、米国際貿易委員会の判事はグーグルがSonosのオーディオ技術特許5件を侵害したと判断した。この判決が支持されれば、Googleは数億ドル(数百億円)を支払うことになり、PixelスマートフォンからNestスピーカーに至るまで、あらゆるものを取り込むことが禁止されるかもしれない。

これは些細な展開ではない。ビッグテックがより規模の小さい企業から知的財産を盗むのを阻止しようとする一連の訴訟や苦情の最新事例である。

ここ数年、ビッグテック企業が小規模なライバル企業の知的財産権を侵害するケースが増えている。こうした小規模な企業は反撃を開始しており、今やビッグテック企業は裁判所から命じられる数百億ドル(数兆円)の損害賠償と訴訟費用に直面する可能性がある。

もしビッグテックの幹部たちが無謀な侵害を続けるなら、彼らの会社は取り返しのつかない財政的、評判上の損害を受けることになる。競合他社の知的財産を盗むことはもはや単に非倫理的なだけではない。それはビジネス上の決定があまりにも悲惨なほど近視眼的であり、経営者の株主に対する受託者責任の侵害にあたることはほぼ間違いない。

長い間、Apple(アップル)のような巨大テクノロジー企業は、対抗する資金力や法的な武器を持たない小規模な競合他社を自由に餌食にすることができると考えていた。だが、もはやそうではない。

小規模企業は訴訟にコストをかける価値があると判断し、大きな勝利を収めている。この1年間に行われた3つ訴訟だけでも、陪審は小規模企業に10億ドル(約1133億円)以上の賠償金を認めている。8月にAppleは4G技術を侵害したとしてPanOptis(パンオプティス)に3億ドル(約340億円)を支払うよう命じられた。また2020年には、VPNの特許を保有するVirnetX(バーネットX)に10億ドルの損害賠償を支払うよう裁判所から命じられている。

Appleだけではない。2020年10月、連邦裁判所はCisco(シスコ)に対し、サイバーセキュリティとソフトウェアを手がけるCentripetal Networks(セントリペタル・ネットワークス)に20億ドル(約2266億円)近くを支払うよう命じた。この裁判の判事は、Ciscoの行為を「典型的な侵害を超えた意図的な不正行為の悪質な事例」と呼んだ。

知的財産権の盗用は、ビッグテックの収益に大きな影響を与える可能性がある。これらの企業は数千億ドル(数十兆円)、場合によっては数兆ドル(数百兆円)の時価総額を誇っているが、裁判所が命令した巨額の支払いを積み上げるのは好ましいことではない。

例えば、Ciscoのペイアウトは年間売上の4%を占めている。Appleは最近、さらに10億ドルの損害賠償を支払うことなく、日本企業と和解した。また、英国の裁判所で特許侵害に対する70億ドル(約7921億円)の支払いを受け入れる代わりに、(強要されれば)英国市場から撤退する可能性があると警告した。

しかし大企業が知的財産権の盗用による罰金を免れることができたとしても、その結果としての評判へのダメージは相当なものになる。

米議会の委員会は、反トラスト法違反やプライバシー侵害に関する公聴会のために、幹部を定期的に議場に引き入れている。消費者はますますFacebook(フェイスブック)、Google、Apple、Amazon(アマゾン)を嫌悪するようになっている、あるいはもっと深刻だ。もし政治家や顧客が、これらの企業の利益が継続的な特許侵害にかかっていることを知れば、企業の評判は打撃を受けるであろう。

結局のところ、ビッグテックの経営陣は株主に対して法的な受託者責任を負っている。特許裁判にともなうリスクに目をつぶっている経営陣、つまり自分たちの会社を莫大な法的リスクや評判リスクにさらしている経営陣は、最終的には彼らの道徳的に疑問のある決定が株価に反映されていることに気づくだろう。

一方、株主、一般社員、その他の利害関係者は、経営陣の責任を問うべきである。最大の機関投資家の利益のためにも、Appleなどに圧力をかけて係争中の訴訟を解決させ、小規模ベンダーとライセンス契約を締結させることが必要だ。

ビッグテックが知的財産法の範囲内で活動を開始すれば、セクター全体を持続的な成功に導くであろう。

ペルーの経済学者Hernando de Soto(エルナンド・デ・ソト)氏が著書「The Mystery of Capital」で指摘しているように、社会の経済的繁栄は知的財産権を含む財産権の保護と保全に大きく依存している。

財産権の保護が強い社会は、人々が自分のアイデアに投資することを奨励する。逆に、財産権の保護が弱い社会はそのような投資を抑制し、イノベーションも抑制される。

米国のテクノロジーセクターも例外ではない。消費者と株主は、規模の大小を問わず、企業の繁栄を望むべきだ。より小規模な企業では、入力ソフトウェア、アプリケーション、ハードウェアを開発しており、最終的には消費者向け製品になることが多い。

しかし、大企業が小さな企業を虐げ、お金を払わずに最高のアイデアを略奪すると、小さな企業はイノベーションへのインセンティブを失ってしまう。

ビッグテックは特許の盗用をやめる時を迎えている。

編集部注:本稿の執筆者Andrew Langer(アンドリュー・ランガー)氏はInstitute for Libertyのプレジデント。

画像クレジット:

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(文:Andrew Langer、翻訳:Dragonfly)

アップルが中小企業向けデバイス管理ソリューション「Apple Business Essentials」ベータ版を発表

多くの中小企業にとって、従業員のApple(アップル)製デバイスを管理し、常にアップデートされた状態を維持することは大きな課題となっている。そうした企業には高度なIT部門が存在しないことも多いため、デバイスが故障したり、ユーザーが質問したいことがあっても、Appleのコンシューマー向けサポートツールを使って自分たちで解決しなければならないことが多い。

この問題を認識したAppleは、2020年にFleetsmithを買収し、米国時間11月10日、従業員数500人以下の企業を対象としたデバイス管理ソリューション「Apple Business Essentials」のベータ版を発表した。

Appleのエンタープライズおよびエデュケーションマーケティング担当VPであるSusan Prescott(スーザン・プレスコット)氏によると、Appleはこれらの顧客企業がスタッフのApple製デバイスを導入、サポート、アップデートし、従業員が退職する際にはオフボーディングすることを支援したいと考えている。

「この製品は、デバイスのライフサイクル全体にわたってApple製デバイスを管理するために設計されており、3つのコア部分で構成されています。デバイス管理、ストレージ、そしてサポートを1つのサブスクリプションで提供します」とプレスコット氏は説明する。

管理コンポーネントは、Fleetsmithの買収とApple Device Enrollment Program(DEP)の組み合わせで構成されている。中小企業でも大企業と同様のツールを利用することができ、デバイス管理を強化し、従業員がログインしたらすぐに使えるようにすることが可能になる。

企業がサービスにサインアップすると、管理者はユーザーとグループを作成することができる。ユーザーはグループに所属し、管理者はグループごとに、サポートするデバイスの数やストレージ容量などの設定を行うことができる。また、各企業やグループには、そのグループに適したアプリの基本セットを含めることができる。

画像クレジット:Apple

注目すべきは、従業員が自分のデバイスを持ち込むことができ、サポートされているデバイスにサインインすると、会社がそれらの従業員の仕事用プロファイルを設定してくれることだ。そうすれば、仕事の成果物だけがバックアップされ、万が一、社員が会社を辞めた場合には、仕事の成果物だけが削除され、個人的なものはそのまま残され、雇用主がアクセスできないようになる。

また、個人所有、職場所有にかかわらず、このソリューションは、最新のシステムアップデートを維持することで、セキュリティを維持することができる。さらに、管理者は、MacのFileVaultによるフルディスク暗号化や、Apple製デバイスの紛失・盗難時にデバイスをロックするアクティベーションロックなどのセキュリティ設定を実施することができる。

ストレージにはiCloudを採用しているが、企業はDropbox(ドロップボックス)のようなサードパーティのストレージプロバイダーに自由に接続することができる。サポート要素には、Apple Business Essentialsを実行するIT部門と、Appleに関する質問がある従業員の両方に対するヘルプデスクサービスが含まれる。この部分は、ビジネスレベルサポート部門となる「AppleCare+ for Business Essentials」を通じて提供される。AppleCare+ for Business Essentialsではプランによって、問題報告から4時間以内のプライオリティーオンサイトサービスも含まれる。出張サービスは、Appleのパートナーが運営する。なお、AppleCare+ for Business Essentialsは無料ベータ版には含まれておらず、2022年春に提供開始予定とのこと。

Lopez Researchの創業者で主席アナリストのMaribel Lopez(マリベル・ロペス)氏は、このサービスは中小企業にとって、基本的にビジネス要件を満たすように設計されていないアップルのコンシューマーサポートチャネルを利用する必要がなくなることから、魅力的なものになるだろうと述べている。

「中小企業は、管理とサポートから事実上取り残されていました。重いMDM(モバイルデバイスマネジメント)は自分たちには向いていないと考え企業も多かったでしょうし、ジーニアスバーには、あらゆるビジネス、特に中小企業が必要とするリアルタイムのサポートが欠けていました。Fleetsmithは、よりユーザーフレンドリーで、モバイルに適したデバイス管理の方法だと考えられていました。また、ユーザー中心主義とデバイス中心主義の対立もその一因です」と同氏はいう。

IDCのデバイス&コンシューマーリサーチグループのアナリストであるTom Mainelli(トム・マイネリ)氏は「この新しいプログラムによって、中小企業はこれまで大企業にしか提供されていなかった一連のサービスを利用できるようになり、価格が妥当である限り、Appleにお金を払ってでもこれらのサービスを提供したいと考えるようになるでしょう」と語る。

「Appleが中小企業に焦点を当てていることは、非常に理にかなっています。企業の顧客は、すでにApple製品を管理するためのシステムを持っているかと思いますが、中小企業では必ずしも専任のIT担当者がいるとは限りません。つまり、雇用者が提供するデバイスと従業員が購入するデバイスが混在している場合は特に、すべてを管理するのは非常に困難です」。

「Appleは、さまざまなレベルのサービスを提供していることや、中小企業がそれらを必要とする理由について、ある程度の教育を行う必要があるでしょう。しかし、多くの経営者は、Appleにお金を払ってこれらの課題を解決してもらうことを喜んで受け入れるのではないでしょうか」と同氏。

ベータ版は無料で利用できるが、デバイス管理とストレージのコンポーネントについては、選択された構成に応じて、ユーザーごとに月単位で課金される。また、サポートに関しては、ユーザーごとに追加料金が発生するが、その部分は2022年春に予定されている同サービスの一般提供開始まで利用できないとのこと。

画像クレジット:Brian Heater

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(文:Ron Miller、翻訳:Aya Nakazato)

巨大テック企業が自分に不利になると中小企業の陰に隠れる習性を阻止する「監視キャンペーン」実施

巨大テクノロジー企業は、自社の数兆ドル(数百億円)規模のビジネスを脅かすものがあると、それが波及して自社製品に依存している中小企業を苦しめることになる、という物語を何度も繰り返してきた。

しかし、大企業が長年にわたって展開してきた温かみのある曖昧な逸話とは裏腹に、企業経営者の中には、巨大で不透明な企業に大きく依存することに苦悩する人も多く、物事がうまくいかない時にはほとんど頼ることができない場合も多い。

このような問題を解決するために、ハイテク産業の監視団体であるAccountable Tech(アカウンタブル・テック)は「Main Street Against Big Tech(巨大テック企業に対抗する市井の中小企業)」という新たな啓蒙活動を展開している。この数十万ドル(数千万円)を投じたキャンペーンでは、今週、サンノゼの日刊紙「The Mercury News(ザ・マーキュリー・ニュース)」に全面広告を掲載する他、ソーシャルプラットフォーム上にデジタル広告を流したり、テック企業の宣伝話に背反した中小企業経営者の体験談を紹介するビデオシリーズを継続的に放映するといった活動を行っている。

このプロジェクトは「Main Street Alliance(メインストリート・アライアンス)」「Small Business Rising(スモール・ビジネス・ライジング)」「Institute for Local Self-Reliance(インスティテュート・フォー・ローカル・セルフ・リライアンス)」「American Economic Liberties Project(アメリカン・エコノミック・リバティーズ・プロジェクト)」からも支援を受けている。

Accountable Techの共同設立者であるJesse Lehrich(ジェシー・レーリック)は、TechCrunchの取材に対し「このキャンペーンは、誤解を招く信頼性の低いデータ、隠されたコスト、ルールやアルゴリズムを突然変更して会社全体に大打撃を与えながら、カスタマーサービスも受けさせないといった、巨大テック企業が小規模企業の経営者に与えている数々の害悪を浮き彫りにしています」と語っている。「起業家には、それぞれの言い分があり、声を上げる理由があるのです」。

レーリック氏は、Facebook(フェイスブック)が長年にわたって行ってきた中小企業支援のPRキャンペーンを「信じられないほど皮肉で日和見的」と評しているが、Facebookの一部の社員も同じ考えを持っているようだ。巨大テクノロジー企業のプラットフォームで事業を展開する現実は、中小企業経営者にとって必ずしもバラ色ではない。中小企業経営者は、希薄な関係性しか築けない巨大企業の気まぐれに左右されることになる。

「中小企業の経営者は、完全に大企業のなすがままになるしかなく、正当な評価基準を得ることも、カスタマーサービスを受けることもできません」と、レーリック氏はいう。「これはパートナーシップではなく、搾取です」。

民衆の感情も、無料プラットフォームとはいえ、プライバシーの犠牲や、広告のキャンバスとなるユーザー作成コンテンツの延々と続く流れなど、コストがかかることを広く認める段階に移りつつあるようだ。

小規模な企業は支配的なテクノロジー企業のツールに依存しているかもしれないが、しかし理論的には、新興の競合企業が、これらと同等かそれ以上のサービスを提供することが不可能いうわけではない。「これらの巨大テック企業やそのサービスが『不可欠』なのは、それが唯一の選択肢であることを確実なものにするために、限りない反競争的な行動に携わってきたからです。これが独占や寡占の仕組みです」と、レーリック氏はTechCrunchに語った。

インターネットビジネスが存在するはるか以前の時代に作られた法律を、どのように更新するかで議会が揉めている間にも、巨大テック企業は引き続き市場支配に傾倒し、中小企業もユーザーも現状に甘んじたままに置かれ続けるだろう。

「規制による監視を避けるために、Facebook、Google(グーグル)、Amazon(アマゾン)のような独占企業は、何百万ドル(数億円)もの資金を投じて、自社の企業向け製品が中小企業にとっての生命線であるかのように、議員や一般市民を説得してきましたが、実際はその逆です」と、Accountable Techの共同設立者でエグゼクティブ・ディレクターを務めるNicole Gill(ニコール・ギル)氏は述べている。

「しかし今、中小企業の経営者たちは、自分たちの生きた経験を共有し、巨大テック企業と中小企業の本当の関係を明らかにすることで反撃しているのです」。

画像クレジット:Photo by Gado/Getty Images / Getty Images

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(文:Taylor Hatmaker、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

中小企業向けHRプラットフォームPersonioが約306億円調達、人事業務プロセスの自動化にも進出

この20カ月間でHRテクノロジーはスポットライトを浴びてきた。新型コロナウイルス(COVID-19)で私たちの働き方が変わったことで、仕事環境において人を管理する方法も変わらなければならなかったからだ。米国時間10月11日、中小企業に特化してこの問題に対処する方法を提供し大きなビジネスを構築してきた、ミュンヘンを拠点とするスタートアップ企業であるPersonio(ペルソニオ)が、同社のサービスに対する強い需要を受け、次のステップに向けて2億7000万ドル(約306億円)の資金調達を発表した。今回のシリーズEにより、Personioの評価額は63億ドル(約7140億円)に跳ね上がり、現在ヨーロッパで最も価値のある人事関連のスタートアップ企業の1つとなっている。

今回の資金調達は、Greenoaks Capital Partners(グリーンオークス・キャピタル・パートナーズ)が主導し、新たな投資家であるAltimeter Capital(アルティメット・キャピタル)とAlkeon(アルキオン)も参加している。このラウンドには、Index Ventures(インデックス・ベンチャーズ)、Accel(アクセル)、Meritech(メリテック)、Lightspeed(ライトスピード)、Northzone(ノースゾーン)、Global Founders Capital(グローバル・ファウンダーズ・キャピタル)など、以前からの支援者も参加している。IndexとMeritechは、2021年1月に行われたばかりの同社の前回のラウンドを主導した。当時のシリーズDラウンドの評価額は17億ドル(約1920億円)で、10カ月で3.7倍に成長したことになり、Personioの成長の速さを物語っている。

関連記事:中小企業にHRプラットフォームを提供する独Personioが約130億円調達

Personioは現在、ヨーロッパの中小企業(通常、従業員数10~2000人)を対象に、採用・入社手続き、給与計算、欠勤管理などの主要な人事機能をオールインワンのプラットフォームで提供している。1月の時点では3000社だった顧客数は、現在5000社に達している。Personioは、今後もさまざまなツールを拡充していく一方で、CEOのHanno Renner(ハンノ・レナー)氏が「ピープルワークフローオートメーション(人事業務プロセスの自動化)」と表現する分野にも進出していく予定だ。

基本的にこれは、Personio以外のアプリケーションで行う人事関連の作業において、人事情報を自動入力したり、それらのアプリケーション内でアクションを起こしたりすることで、手作業では時間がかかっていた作業をスピードアップすることを目的としている。例えば、雇用契約書の作成・発行や、入社や退職時に特定のアプリへのアクセス権を切り替えるといったことが可能だ。

Personioのプラットフォームが、企業が大規模で多面的なプラットフォームを用意するのと同じように、中小企業のニーズに合わせて連携する一連のHRツールであり「中小企業のためのWorkday」と捉えられるとすれば、同社が現在追加している自動化ツールは、中小企業向けのUiPath(ユーパス)やServiceNow(サービスナウ)に対する答えだと捉えられるかもしれない。つまり、機械学習やロボティック・プロセス・オートメーションなどの技術を使って、人事関連のタスクに関わる忙しい反復業務を取り除くことができる。

「12ヵ月間取り組んできましたが、今では5000人のお客様にプロダクトをそのまま使っていただいて、そこから学んでいます」とレナー氏はインタビューで答えている。この問題の核心は、異なる領域にあるソフトウェアをより迅速に連携させることにある。例えば、内定者に契約書を発行する必要があるときに、ここで時間をかけてその内定者が別の会社で契約するようなことにならないに、また、解雇された従業員が会社のITシステムに侵入できるようなことがないようにする必要がある。「人事プロセスは人事部だけではありません。人事プロセスは人事にとどまらず、他の機能や部門にも影響を与えます。遅延は時間を無駄にするだけでなく、有害な結果をもたらす可能性があるのです」。

Personioはこれまで、中小企業向けの製品を開発することで、中小企業という収益性の高い顧客層を開拓してきた新興企業グループの一員であることをアピールしてきた。中小企業は、ヨーロッパだけでも2500万社以上あり、全企業の99%以上を占めている。しかし、中小企業はさまざまな業種や関心事によって細分化されており、IT予算も非常に少なかったり、もしくはまったくなかったりするため、見過ごされがちだ。

人事の世界では、それがさらに深刻な状態だったとレナー氏はいう。ほとんどの中小企業は、人事関連のデータをエクセルのスプレッドシートや、ただの紙で管理していたりする。「私たちが日々目にするのは、中小企業の70%が何らかのHRソリューションを持っていないという状況です」と彼はいう。

しかし、デジタルトランスフォーメーションが中小企業を完全に見過ごしていたわけではなく、先進的な中小企業は販売、財務、CRMソフトウェアを徐々に導入していきている。そしてその流れが人事に関する考え方にも「波及」してきていると彼はいう。

Personioは、このことが顧客に自動化を売り込む際にも役立つと考えている。一般的な中小企業では、平均して約40種類のアプリを使用しており、その多くが人事システムからのデータを必要としていると同社は推定している。Personioは、これらのアプリケーションに連動性を提供することで、これらのアプリケーションの動作を高速化することができると考えている。

同社にはまだまだ多くの成長余地が残っている。Personioが対象としている中小企業(従業員数10〜2000人)の数は170万社であり、これはまだ市場のごく一部に過ぎないからだ。

つまり、新しい自動化製品が軌道に乗るかどうかにかかわらず、Personioにはまだ成長の可能性が高いということであり、同社が必要とする前に都合よく調達された今回の資金は役に立つだろう。新技術の導入により、将来的には人事部門以外の中小企業にも自動化サービスを提供できる可能性が出てきたため、今回の評価額の大幅な上昇は、中小企業に人事部門を進出させるための大きなチャンスであると同時に、その多様化にも関係していると考えられる。

「小規模企業は欧州経済を支える存在ですが、従来の企業では長い間、十分なサービスを受けられず、見過ごされてきました。Personioは、従業員のライフサイクル全体にわたって人事業務プロセスを簡素化し、大手企業がもっていた機能を広く普及させ、生産性を一段階向上させてくれました」とGreenoaks(グリーンオークス)の創業者兼マネージングパートナーであるNeil Mehta(ニール・メータ)氏は語っている。「私たちは、世界有数のプライベート・テクノロジー企業の多くとパートナー関係にあることを幸運に思っていますが、Personioのチームは、まだ彼らのミッションに着手したばかりだと確信しています。「人事業務プロセス自動化」のカテゴリーを立ち上げることで、ヨーロッパ中の企業にさらに多くの価値を提供することができるでしょう。私たちは、Personioのスリリングなステージに参加できることを誇りに思うとともに、今後も末永くパートナーであり続けたいと思っています」。

長期的には株式公開も視野に入れているが、ここで強調したいのは、その「長期的には」の部分だ。Personioは現在5億ドル(約560億円)の資金を調達しているが、レナー氏は次のステップを考えるのは少なくとも18〜24ヵ月後だと述べている。「公開を急いでいるわけではありません」と彼は語っている。

画像クレジット:metamorworks / Getty Images

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(文:Ingrid Lunden、Akihito Mizukoshi)

AIを使って企業の電話着信を管理するGoodcallが約4億3900万円を調達し、Yelpとの提携を発表

人員不足がなかったとしても、地方の商店では、スタッフが忙しい中、同時に電話に対応するのは困難だ。そこで、Goodcall(グッドコール)は、アメリカの3,000万の中小企業の負担を少しでも軽減したいと考えている。

Goodcallは、人工知能を活用して電話の着信を管理し、あらゆる規模における企業のカスタマーサービスを向上させる、クラウドベースの会話プラットフォームを無料で提供している。Goodcallは、Google(グーグル)の元役員であるBob Summers(ボブ・サマーズ)氏が、実験的プロジェクトのための社内インキュベータープログラム、Area 120に取り組んでいたグーグルを1月に退社して立ち上げたもので、同氏は電話の抱える問題に気づき、実際に加盟店にかかってくる電話の60%が応答されていないことを指摘していた。

「これは、あなたにとっても、電話をかけてきた人にとっても、イライラするものです。電話に出られないことは、機会損失につながります。」とTechCrunchに語っている。

Goodcall社は、戦略的投資家であるNeo(ネオ)社、Foothill Ventures(フットヒル・ベンチャーズ)社、Merus Capital(メルス・キャピタル)社、Xoogler Ventures(ゾグラー・ベンチャーズ)社、Verissimo Ventures(ベリッシモ・ベンチャーズ)社、VSC Ventures(VSCベンチャーズ)社に加え、Pipe.com社の創業者兼共同CEOであるHarry Hurst(ハリー・ハースト)氏、Zillow(ジロー)社の共同創業者であるSpencer Rascoff(スペンサー・ラスコーフ)氏などのエンジェル投資家から400万ドル(約4億3900万円)のシード資金を得て、水曜日(米国時間9月1日)にサービスを開始することを発表した。

Goodcallのモバイルエージェント(画像クレジット:Goodcall)

Goodcallは、レストラン、ショップ、商店などが数分で設定でき、さらに現地の電話番号を設定することで、オーナーの携帯電話番号をビジネスのメイン回線にする必要がなくなる。このサービスはまず英語で展開され、2022年までにスペイン語、フランス語、ヒンディー語での運用を予定している。

加盟店は、6種類からアシスタントの声を選ぶことができ、通話ログや通話内容をモニターすることができる。Goodcallは消費者の感情も把握できるとサマーズ氏は言う。

同社は3つのオプションを用意しており、そのうちの1つは、個人事業主やビジネスオーナー向けのフリーミアムサービスで、1つの電話回線で月に500分までGoodcallのサービスを受けることができる。さらに5つの拠点と5人のスタッフまで追加できるProレベルは月額19ドル(約2090円)、拠点とスタッフが無制限になるPremiumレベルは月額49ドル(約5380円)となっている。

同社のテスト期間中、Goodcall社は月に数千件の電話対応を処理していた。今回の資金調達は、無料サービスの継続、エンジニアの雇用、製品開発の継続に充てられる。

今回の資金調達に加えて、Goodcall社はYelp(イェルプ)社との提携を発表しており、Yelp社が保有するローカルビジネスのデータベースを活用して、企業のオーナーや管理者がGoodcall社を簡単に導入できるようにするねらいだ。Yelpのデータによると、パンデミックの間に50万以上の企業が新たにオープンしたとのことだ。Goodcallは、Yelpから営業時間、所在地、Wi-Fiの有無、COVID対策ポリシーなどの情報を引き出せる。

「私たちは、小規模企業に関する最高のデータを持つYelpや、その他の大規模な流通チャネルと提携して、製品を市場に送り出しています。私たちは、1980年代から革新のなかった業界にテクノロジーを導入し、雇用創出の主役でもある小規模企業のために会話型AIを普及させ、その成長を支援したいと考えています。」とサマーズ氏は語っている。

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中小企業向けERPプラットフォームの独xentralがTiger Globalなどから82.2億円のシリーズB調達

エンタープライズ・リソース・プランニング(ERP)システムは、従来は大企業が使うものだったが、近年では中小規模の企業が生成するデータ量が増加し、中小企業(SMB)でもERPの世界に参入できるようになってきた。特にオンラインだけのビジネスでは、その傾向が顕著だ。

年初に、オンラインの中小企業向けERPを開発するドイツのスタートアップxentral(ゼントラル)が行った、2000万ドル(約21億9000万円)のシリーズAラウンドについて取り上げたが、もちろんxentralはそれだけで終わらせるつもりはなかった。

今回xentralは、既存の投資家であるSequoia Capital、Visionaries Club(ベルリン発のB2Bに特化したVC)、Freigeistに続き、Tiger GlobalとMeritechから7500万ドル(約82億2000万円)のシリーズB調達を行った。

今回の資金は、製品の強化、スタッフの雇用、2023年には320億ドル(約3兆5000億円)に達すると予想されるグローバルなERP市場を睨んだ、英国事業の拡大に使用される。

xentralの創業者でCEOであるBenedikt Sauter(ベネディクト・ザウター)氏は、電話で次のように語った。「わたしたちはShopify(ショッピファイ)、eBay(イーベイ)、Amazon(アマゾン)、Magento(マジェント)、WooCommerce(ウーコマース)、そしてPipedrive(パイプドライブ)のようなCRMシステムに接続してソフトウェアを1カ所に集め、企業が本当に業務に集中できるようにバックグラウンドですべてを自動的に行うようにしています。私たちの目標は、金曜日に柔軟なERPが必要だと判断した経営者が、その週末にxentralを導入・設定し、月曜日にはチームに引き渡せるようにすることです」。

同スタートアップは、受注・倉庫管理、パッケージング、フルフィルメント、会計、販売管理などのサービスをカバーしており、現在、1000社の顧客の大半がドイツ国内にいる。顧客には、YFood(ワイフード)、KoRo(コロ)、the Nu Company(ニューカンパニー)、Flyeralarm(フライヤーアラーム)などのダイレクト・トゥ・コンシューマー(D2C)ブランドが名を連ねている。

Tiger GlobalのパートナーであるJohn Curtius(ジョン・クーティウス)氏は次のように語っている。「私たちの調査によれば、xentralの顧客から喜びの声が寄せられていること、そして世界中のeコマース事業者にとって真のミッションクリティカルなプラットフォームに進化した製品を提供していることが明らかになりました。今後、ヨーロッパだけでなく世界中のお客様にサービスを提供するために事業を拡大していくにあたって、ベネディクトやクラウディアのような製品のビジョンを持った方々とパートナーになれることをうれしく思っています」。

xentralは、Sequoiaが2021年ヨーロッパで正式に事業を開始して以来、初めての投資案件だ。Sequoiaはこれまでには、Graphcore(グラフコア)、Klarna(クラルナ)、Tessian(テシアン)、Unity(ユニティー)、UiPath(ユーアイパス)、n8n、Evervault(エバーボルト)などの欧州の スタートアップを支援してきたが、これらの取引はすべて米国で行われてきた。Sequoiaとその欧州における新しいパートナーであるLuciana Lixandru(ルシアナ・リキサンドル)氏は、VisionariesのRobert Lacher(ロバート・レイチャー)氏とともにxentralの取締役会に参加すると考えられている。

MeritechのゼネラルパートナーであるAlex Clayton(アレックス・クレイトン)氏は次のように語る「Meritechは、ERPをクラウド化するというビジョンのもと、2008年にNetSuite(ネットスイート)に投資しました。xentralは、何十万もの中小企業に自動化をもたらし、成長を続けるeコマース市場におけるマルチチャネルプロセスとデータ管理を劇的に改善すると信じています」。

ベネディクト・ザウター氏と共同創業者であるClaudia Sauter(クラウディア・ザウター)氏(妻でもある)は、もともとは彼らの最初のビジネスであるコンピューターハードウェア販売のために、xentralの初期プロトタイプを作ったのだ。

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カテゴリー:ソフトウェア
タグ:xentralTiger Global資金調達中小企業ERPドイツ

画像クレジット:Xentral

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(文:Mike Butcher、翻訳:sako)

【コラム】オープンバンキングが普及し、フィンテックと中小企業の蜜月が始まる

本稿の著者Lee Li(リー・リー)氏はプロジェクトマネージャー兼B2Bコピーライター。TaoBao、MeitTuan、DouYin(現TikTok)のPMとして、中国のフィンテックスタートアップ界隈で10年の経験がある。

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これまで10年間で大きな成長を遂げたフィンテック業界。パンデミックに際してさらに大きな成功を収めた業界だが、多くの関係者が、この成功談はまだ始まったばかりで、フィンテックの次の10年はこれまでとは根本的に異なるものになると信じている、と聞けば驚くだろうか。

銀行の規制方法はパンデミックのはるか前から変化してきた。銀行業界の競争を促進する方法として、オープンバンキングや新しい決済サービス指令(PSD2)などの取り組みが提案され、大手金融機関が長い間支配してきた市場に、小規模で意欲的な金融サービス企業が参入できるようになった。

これらの取り組みが実施された今、その効果は、小規模金融サービス企業に活躍できる余地を与えるだけではないことがわかってきた。オープンバンキングでは、データをAPI経由で利用できるようにする必要があるので、中小企業の資金調達方法に革命が起こりつつある。金融資本ではなくデータが、フィンテックが成功するための最も重要な要素になったのだ。

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オープンバンキングとデータの自由

フィンテックが台頭し、中小企業との連携方法を再構築している現状を理解するには、オープンバンキングの理解が重要である。オープンバンキングは、過去10年間に政府や超国家の銀行規制当局の間で定着した概念で、現在、バンキングセクター全体にその影響が現れ始めている。

基本的に、オープンバンキングとは、APIを使用して消費者の金融データを第三者に公開するプロセスを指し、これにより、第三者が独自の金融商品を設計、構築、販売できるようになる。これらの商品の有用性(つまり、収益性)は、莫大な資本を保有していることによるのではなく、収集・保管しているデータに起因する。

オープンバンキングモデルにはいくつかの課題がある。1つ目の課題は、このような形でデータを共有することに対して常に利用者の同意を得るために、より厳密なシステムを開発する必要があるということである。フィンテックの黎明期には、利用者がデータを提供することに対してかなり寛容で、米国のユーザーの約60%がプライバシーよりもフィンテックを選ぶという調査結果もあった。しかし現在、オープンバンキングのシステムで共有されるデータの種類と量は、これまでの金融商品よりもはるかに多くなっている。

こうした懸念にもかかわらず、オープンバンキングへの取り組みは世界各地で進んでいる。欧州の新しい決済サービス指令(PSD2)は、大手銀行が金融情報を第三者と共有することを要求している。アジアでは、中国のAlipayやWeChat、インドのTezやPayTMなどのサービスによって、すでに金融サービス市場が変化しつつある。そして、これらのサービスが提供する機能により、米国の金融システムにもオープンバンキングを導入することを求める声が高まっている。

中小企業へのサービス提供

米国の銀行業界がオープンバンキングの有用性を受け入れ、あるいは法律によってオープンバンキングを認めざるを得なくなれば、次のように恩恵を受けるグループがある。

  • 利用者は、現在よりもはるかに詳細なデータ分析に基づく、まったく新しいバンキングや投資商品を利用できるようになる。
  • これらの商品を設計・構築するフィンテック企業も、自社商品をもっと利用してもらえるようになり、利益率が向上する。
  • どんなにオープンなモデルであっても、どの第三者が消費者データにアクセスできるか、アクセスするための要件は何かを決定するゲートキーパーの役割を果たすのは銀行なので、銀行が恩恵を受けるのは確実である。

しかし、オープンバンキングで最大の恩恵を受けるのは中小企業である。これは、必ずしもオープンバンキングの枠組みが、中小企業にとって有益な新機能を提供するからということではなく、中小企業は従来型の銀行から十分なサービスを受けてこなかったという事実を反映している、といえるだろう。

中小企業がサービスを受けられない理由はたくさんある。従来型の銀行では、複数の金融機関や金融商品を資本として保有している中小企業の総合的な財務状況を把握する能力が極めて限られているため、資金の提供が非常に難しいのだ。

銀行にデータを送信するために、旧式で時間と手間のかかるインターフェースを利用しなければならないこともよくある。そして(おそらく最悪なのは)、ほとんどの銀行で使用されているB2B決済システムでは、利用する企業へのフィードバックが非常に限られ、情報が少ないことで、企業にとって大きな負担となることだ。

新しい機能

このような欠点を考えると、フィンテック企業が中小企業への融資に熱心であることも、中小企業が新しい銀行商品やサービスを積極的に求めていることも、驚くべきことではない。そしてもちろん、この分野ではすでにいくつかのサクセスストーリーがあり、今日、特に欧州の中小企業が利用できるバンキングシステムの種類は、10年前に利用できたサービスよりもはるかに進んでいる。

オープンバンキングはこの変革を加速させ、一般的な中小企業が利用できる金融サービスを、いくつかの方法でさらに大胆に改善することを約束している。銀行が保有するデータに第三者がアクセスできるようになることで、多くの中小企業が、その財務状況を初めて正しく評価してもらえることになる。

フィンテック企業は、APIを利用してさまざまな種類の口座、保険、カード、リースなどの複数の国にまたがる情報にアクセスし、データをまとめて1つの全体像に統合することができる。

こういったことは、中小企業の信用力の評価に大きな影響を与えるだろう。現在、多くの中小企業が資金不足に陥っているが、これは銀行が「貸借対照表」モデルを使わずに信用リスクを評価することを躊躇しているためだ。中小企業のビジネス活動をリアルタイムで分析できれば、銀行は信用リスクをもっと正確に評価し、より多くの企業に融資することができるようになる。

実際、オープンバンキング先進国では、このような取り組みがすでに行われている。英国では、Lloyds(ロイズ)がビジネスツールボックスを提供していて、口座の取引データに加えて、企業や役員の信用調査を無制限に行うことができる。

オープンバンキングは、これまでよりもはるかに進んだ同業他社比較分析も実現する。APIを利用すれば、該当の市場で中小企業がどのような業績を上げているかをリアルタイムでフィードバックすることができる。英国ではこれもすでに実現していて、Barclays(バークレイズ)は同社のスマートビジネスダッシュボードで、マーケティング費用を最大限に活用するためのツールを提供している。このダッシュボードはカスタマイズも可能だ。

集約したアカウント上に構築されたインテリジェントなデータ分析によるインサイト、レコメンデーション、自動プロンプトなどの主要な機能は中小企業にとって非常に有益なので、これらの機能を提供するフィンテック商品の人気は高まるだろう。

銀行や代替融資機関にとっては、これらのモニタリングツールから得られる情報を活用することで、これまで資金提供が困難だった中小企業に対して、承認済みの融資枠をタイムリーに提供するなど、より積極的な融資を行うことができるようになる。

結論

中小企業は、データ分析に基づく付加価値サービスを受けて成長することができるのであれば、ほぼ間違いなく喜んで手数料を支払うだろう。これはフィンテック業界にとって重要なことだ。この分野のスタートアップ企業の中には、すでに巨額の資金を調達しているところもあり、オープンバンキングが技術と経済の関係の中心にあるのもそれが理由だ。

ここまで見てきたように、すでにフィンテックが成功していたとしても、それは物語の始まりに過ぎないと考えられる。オープンバンキングの取り組みに後押しされたフィンテックは今、バンキング革命の最前線にある。この革命により、各中小企業はそれに相応しいサービスを受けられるようになり、経済全体でそれらの企業の真の可能性を引き出せるようになるだろう。

関連記事:雇用維持のために誰もが利用可能な金融テクノロジーを

カテゴリー:フィンテック
タグ:コラムオープンバンキングオープンAPI銀行中小企業

画像クレジット:Richard Drury / Getty Images

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(文:Lee Li、翻訳:Dragonfly)

技術的な知識が少ない人も利用できるエンタープライズAI「Dataiku」が中小企業向けマネージドサービスを開始

Dataikuは米国時間6月14日「Dataiku Online」と呼ばれる新しい製品でダウンストリームに拡大する。その名が示すように、Dataiku OnlineはDataikuのフルマネージドバージョンだ。これにより、システム管理者や独自インフラを必要とする複雑なセットアッププロセスを経ることなく、同社のデータサイエンスプラットフォームを活用することができる。

Dataikuという名を聞き慣れない方のために説明すると、このプラットフォームでは、生データを高度な分析に変換したり、データの可視化タスクを実行したり、データにづ付けられたダッシュボードを作成したり、機械学習モデルをトレーニングすることができる。Dataikuは特に、データサイエンティストだけでなく、ビジネスアナリストやあまり技術的な知識が少ない人でも利用できる。

同社はこれまで、大企業のエンタープライズ顧客を中心に事業を展開してきた。現在Dataikuは、Unilever(ユニリーバ)、Schlumberger(シュルンベルジェ)、GE、BNP Paribas(BNPパリバ)、Cisco(シスコ)、Merck(メルク)、NXP Semiconductors(NXPセミコンダクターズ)など、400社以上の顧客を抱えている。

Dataikuを使用するには2つの方法がある。1つは、自社のオンプレミスサーバーにソフトウェアソリューションをインストールする方法。2つ目は、クラウドインスタンス上で実行する方法だ。Dataiku Onlineは3つ目のオプションを提供し、同スタートアップがセットアップとインフラの面倒を見てくれる。

共同創業者兼CEOのFlorian Douetteau(フロリアン・ドゥエトー)氏はこう述べている。「Dataiku Onlineを利用するお客様は、当社のオンプレミス製品やクラウドインスタンスが提供するのと同じ機能、つまり、データ準備や可視化から高度なデータ分析や機械学習の機能まで、すべてを利用することができます。中小企業(SMB)やアーリーステージ企業は、AIプロジェクトから価値を得るためのリソースや技術的な専門知識を持っていないというイメージがありますが、そんなことはありません。データサイエンティストや専門のMLエンジニアを持たない小規模なチームでも、当社のプラットフォームを利用することで、技術的な負担を大幅に軽減することができ、実際にAIをビジネスに活用することに集中できます」。

Dataiku Onlineを利用する顧客は、Dataikuの構築済みコネクターを利用できる。例えば、Dataikuインスタンスを、Snowflake Data Cloud、Amazon Redshift、Google BigQueryなどのクラウドデータウェアハウスと接続することができる。また、SQLデータベース(MySQL、PostgreSQLなど)に接続することも可能で、Amazon S3に保存されたCSVファイル上で実行することもできる。

また、データインジェストの作業を始めたばかりであれば、Dataikuは一般的なデータインジェストサービスとうまく連携する。「Dataiku Onlineのお客様の典型的なスタックは、FiveTran、Stitch、Aloomaのようなデータインジェストツールを活用し、Google BigQuery、Amazon Redshift、Snowflakeのようなクラウドデータウェアハウスに同期します。Dataikuはそれらの最新のデータスタックにうまく適合しています」とドゥエトー氏は語る。

Dataiku Onlineは、Dataikuを使い始めるのに最適なサービスだ。高成長のスタートアップ企業は人手が足りない傾向にあり、できるだけすばやくサービスを立ち上げて稼働させたいと考えているので、Dataiku Onlineからスタートするかもしれない。しかし事業が大きくなるにつれて、Dataikuのクラウドまたはオンプレミスインストールに切り替えることを想像できる。そうすれば会社がスケールアップしても、従業員は同じプラットフォームを使い続けることができる。

カテゴリー:ソフトウェア
タグ:Dataiku中小企業機械学習

画像クレジット:Jason Coudriet / Unsplash

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(文:Romain Dillet、翻訳:Aya Nakazato)