アップルが中小企業向けデバイス管理ソリューション「Apple Business Essentials」ベータ版を発表

多くの中小企業にとって、従業員のApple(アップル)製デバイスを管理し、常にアップデートされた状態を維持することは大きな課題となっている。そうした企業には高度なIT部門が存在しないことも多いため、デバイスが故障したり、ユーザーが質問したいことがあっても、Appleのコンシューマー向けサポートツールを使って自分たちで解決しなければならないことが多い。

この問題を認識したAppleは、2020年にFleetsmithを買収し、米国時間11月10日、従業員数500人以下の企業を対象としたデバイス管理ソリューション「Apple Business Essentials」のベータ版を発表した。

Appleのエンタープライズおよびエデュケーションマーケティング担当VPであるSusan Prescott(スーザン・プレスコット)氏によると、Appleはこれらの顧客企業がスタッフのApple製デバイスを導入、サポート、アップデートし、従業員が退職する際にはオフボーディングすることを支援したいと考えている。

「この製品は、デバイスのライフサイクル全体にわたってApple製デバイスを管理するために設計されており、3つのコア部分で構成されています。デバイス管理、ストレージ、そしてサポートを1つのサブスクリプションで提供します」とプレスコット氏は説明する。

管理コンポーネントは、Fleetsmithの買収とApple Device Enrollment Program(DEP)の組み合わせで構成されている。中小企業でも大企業と同様のツールを利用することができ、デバイス管理を強化し、従業員がログインしたらすぐに使えるようにすることが可能になる。

企業がサービスにサインアップすると、管理者はユーザーとグループを作成することができる。ユーザーはグループに所属し、管理者はグループごとに、サポートするデバイスの数やストレージ容量などの設定を行うことができる。また、各企業やグループには、そのグループに適したアプリの基本セットを含めることができる。

画像クレジット:Apple

注目すべきは、従業員が自分のデバイスを持ち込むことができ、サポートされているデバイスにサインインすると、会社がそれらの従業員の仕事用プロファイルを設定してくれることだ。そうすれば、仕事の成果物だけがバックアップされ、万が一、社員が会社を辞めた場合には、仕事の成果物だけが削除され、個人的なものはそのまま残され、雇用主がアクセスできないようになる。

また、個人所有、職場所有にかかわらず、このソリューションは、最新のシステムアップデートを維持することで、セキュリティを維持することができる。さらに、管理者は、MacのFileVaultによるフルディスク暗号化や、Apple製デバイスの紛失・盗難時にデバイスをロックするアクティベーションロックなどのセキュリティ設定を実施することができる。

ストレージにはiCloudを採用しているが、企業はDropbox(ドロップボックス)のようなサードパーティのストレージプロバイダーに自由に接続することができる。サポート要素には、Apple Business Essentialsを実行するIT部門と、Appleに関する質問がある従業員の両方に対するヘルプデスクサービスが含まれる。この部分は、ビジネスレベルサポート部門となる「AppleCare+ for Business Essentials」を通じて提供される。AppleCare+ for Business Essentialsではプランによって、問題報告から4時間以内のプライオリティーオンサイトサービスも含まれる。出張サービスは、Appleのパートナーが運営する。なお、AppleCare+ for Business Essentialsは無料ベータ版には含まれておらず、2022年春に提供開始予定とのこと。

Lopez Researchの創業者で主席アナリストのMaribel Lopez(マリベル・ロペス)氏は、このサービスは中小企業にとって、基本的にビジネス要件を満たすように設計されていないアップルのコンシューマーサポートチャネルを利用する必要がなくなることから、魅力的なものになるだろうと述べている。

「中小企業は、管理とサポートから事実上取り残されていました。重いMDM(モバイルデバイスマネジメント)は自分たちには向いていないと考え企業も多かったでしょうし、ジーニアスバーには、あらゆるビジネス、特に中小企業が必要とするリアルタイムのサポートが欠けていました。Fleetsmithは、よりユーザーフレンドリーで、モバイルに適したデバイス管理の方法だと考えられていました。また、ユーザー中心主義とデバイス中心主義の対立もその一因です」と同氏はいう。

IDCのデバイス&コンシューマーリサーチグループのアナリストであるTom Mainelli(トム・マイネリ)氏は「この新しいプログラムによって、中小企業はこれまで大企業にしか提供されていなかった一連のサービスを利用できるようになり、価格が妥当である限り、Appleにお金を払ってでもこれらのサービスを提供したいと考えるようになるでしょう」と語る。

「Appleが中小企業に焦点を当てていることは、非常に理にかなっています。企業の顧客は、すでにApple製品を管理するためのシステムを持っているかと思いますが、中小企業では必ずしも専任のIT担当者がいるとは限りません。つまり、雇用者が提供するデバイスと従業員が購入するデバイスが混在している場合は特に、すべてを管理するのは非常に困難です」。

「Appleは、さまざまなレベルのサービスを提供していることや、中小企業がそれらを必要とする理由について、ある程度の教育を行う必要があるでしょう。しかし、多くの経営者は、Appleにお金を払ってこれらの課題を解決してもらうことを喜んで受け入れるのではないでしょうか」と同氏。

ベータ版は無料で利用できるが、デバイス管理とストレージのコンポーネントについては、選択された構成に応じて、ユーザーごとに月単位で課金される。また、サポートに関しては、ユーザーごとに追加料金が発生するが、その部分は2022年春に予定されている同サービスの一般提供開始まで利用できないとのこと。

画像クレジット:Brian Heater

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(文:Ron Miller、翻訳:Aya Nakazato)

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TechCrunch Japan

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