HyperSciencesは超音速ドリル技術で宇宙飛行の「大逆転」を目指す

Eron Muskがトンネルを掘りながら、地球の遙か上空を飛びたいと考えているのは偶然ではない。HyperSciencesに聞けば、宇宙へ行く最良の方法は、ドリル技術を逆にして先端を上に向けることだと話してくれる。それは、一般にロケットだと思われている大きな筒の上に小さなペイロードが載っかったやつを推進するための、巨大で高価な燃料タンクの「段」を取り去ることを意味する。

今月、同社は準軌道飛行を成功させ、その冒険の旅を大きく前進させた。これは、NASAの助成金で行われた研究の第一段階を締めくくるものであり、概念実証のための打ち上げを2回成功させ、同社のラム加速と化学燃焼のワンツーパンチを見せつけた。

HyperSciencesは、ニューメキシコ州トゥルース・オア・コンシクエンシーズから1時間という人里離れた商業用宇宙港スペースポート・アメリカの打ち上げ場で、いくつもの高高度試験を行い、アイデアの実現に取り組んでいる。同社は1.5フィート(約45センチ)から9フィート(約274センチ)を超えるものまで「さまざまな発射体」を打ち上げた。HyperSciencesは、テキサス大学の航空宇宙研究グループとパートナーシップを組み、市販の電子部品を使ってシステムを製作している。

「私たちは600Gから1000G(つまり地球の重力の600倍から1000倍)でペイロードを打ち上げることを目標にしていましたが、それが達成できました」とHyperSciencesの上級顧問Raymond Kaminskiは話す。「ペイロードが感じる衝撃は、市販の電子製品(携帯電話など)を床に落としたときと同じ程度のものです」。Kaminskiは、エンジニアとして国際宇宙ステーションの仕事に就いていたNASAを離れ、しばらくスタートアップの世界へ転向していたが、その後、HyperSciencesで航空宇宙の世界に戻ってきた。

1.5フィートのシステムを打ち上げれば、NASAの目的を満たすには十分だったが、彼らは誰が見ても驚く長さ9フィート、直径18インチ(約46センチ)の発射体も試している。「私たちは9フィートのやつを打ち上げます。もう誰も否定できないでしょう」とKaminskiは言っていた。

面白いことにすべての始まりは、HyperSciencesの創設者でCEOのMark Russellが、深い深い穴をいくつもあけた後のことだった。Russellは、Jeff Bezosの宇宙事業Blue Originでカプセル開発の指揮を執っていたが、家業の採掘事業に加わるためにBlue Originを去った。彼はBlue Originの10人目の社員だった。Russellには、採掘と掘削の経験があった。そこから、岩を砕き穴を掘るために化学薬品を詰め込む筒を長くすれば、宇宙へ行けるのではないかと思いついたのだ。

「筒と発射体を用意する。先端を尖らせて、筒には天然ガスと空気を詰める」とRussellは説明してくれた。「それは、サーファーが波に乗るように、衝撃波に乗るんです」

彼らは、もっと手早く、安く、ずっと効率的に宇宙に物資を打ち上げることができると信じている。しかしそれには、プロセスを根底から考え直さなければならない。SpaceXの再利用型の第一段ロケットが宇宙飛行の潮流を変えたのに対して、HyperSciencesの技術は新発見に過ぎない。ただ、彼らの展望、つまり推進力としての超音速技術をスケールアップさせれば、宇宙に物資を送るという複雑で危険性の高いビジネスに応用できる。

超音速推進システムは、発射体を少なくとも音の5倍の速度で打ち上げることができる。つまりそれはマッハ5以上のスピードであり、1秒で1マイル(約1.6キロメートル)以上進むことができる。現在話題になっている超音速技術のほとんどは、防衛技術に関するものだ。高度なミサイル防衛システムもかいくぐったり、迎撃される間もなく目標を攻撃できる高速なミサイルなどだ。しかし、航空宇宙と地熱は、また別の興味深い大きな分野でもある。

昨年12月、ワシントンポスト紙が伝えたところによると、現在、ロケット推進式の兵器から超音速兵器へ移行する計画は、防衛政策において優先順位が「第一位、第二位、第三位」だという。米国防総省の2019年度予算のうち20億ドル(約2220億円)が超音速計画に割り当てられていて、それはほぼ3年連続で前年比を上回っている。「政府が欲しいと言ったときにその技術を開発し始めるのでは遅すぎます」とKaminski。「後追いになってしまいます」

そうしたチャンスはあるものの、HyperSciencesは兵器の世界への参入を熱望しているわけではない。「私たちはプラットフォーム型超音速企業です。兵器開発業者ではありません」とHyperSciencesのメンバーはTechCrunchに話してくれた。「武器商人になるつもりはありません。HyperSciencesは、世界をより良くすることに専念しているのです」

そのためHyperSciencesは、武器以外の超音速利用に針路を向けている。同社は、同社が利用しているラム加速技術の応用では先駆者であり、そこで発明された技術の独占権を持つワシントン大学の研究所室に資金援助をしている。

Shellから10億ドル(約1110億円)の出資を受けた地熱事業で、HyperSciencesは、彼らが呼ぶところの「Common Engine」(共通エンジン)を開発できた。地熱が溜まっている深度まで穴を掘ることができ、星に向けて物資を打ち上げることもできる超音速プラットフォームだ。「HyperSciencesとは、まずは地球を本当に理解することなのです」と、掘削から学んだ教訓を飛行計画に応用できる相互互換システムのひとつの利点を指して、Russellは言った。

「私たちのHyperDrone技術は、NASAの新しい吸気式超音速エンジンのテストや、世界の各地を1時間から2時間で結ぶ次世代の超音速または極超音速飛行機を開発したい航空機メーカーの役に立ちます」とHyperSciencesのメンバーは説明してくれた。「現在は、実験のためだけに大型飛行機にロケットを載せる必要があります。私たちは、地上に設置した管の先でそれが行えます」

買収に興味を示しているとの噂もあるHyperSciencesだが、今のところは堅実で実践的な航空宇宙業界ではまずあり得ない、通常とは違う風変わりなクラウドファンディング・モデルを追求している。同社は現在、SeedInvestのキャンペーン中で、適格投資家以外の小規模な投資家による最低1000ドルからというじつに少額な投資を、夢の実現のために募っている。この記事を書いている時点では、2000人近くの比較的小規模な投資家から500万ドル(約5億5500万円)が集まっていた。

「SpaceXのシードラウンドは、大手のベンチャー投資企業から受けています」とRussellは言う。「どこから入れるでしょう? 巨大な業界です。普通なら一般人は絶対に投資に参加できません」

Russellは、HyperSciencesの事業を柔軟な形にしておきたいと考えている。そして、ベンチャー投資家に頼れば、会社の目標を絞るように強要されるに違いないと恐れている。Shellとの関係はあるものの、その石油とエネルギーの巨大企業は彼らの株式は一切持っていないと、HyperSciencesは即座に答えてくれた。業界固有の契約の間を渡り歩きながら、クラウドファンディングで資金を得て、HyperSciencesはそのプラットフォームを並行して適用させる道を追求し続けたいと願っているのだ。

「宇宙飛行の次なるアーキテクチャーでは、全般的に超音速を使うことになります」とRussellは話す。「私たちはまさに、宇宙飛行の流れを変えるアイデアから、これをスタートさせました。ロケットの第一段と、できれば第二段を省略し、すべてのエネルギーを地上に置く……間違いなく宇宙飛行の流れが変わります」

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(翻訳:金井哲夫)

オポチュニティ、火星での偉大な探査ミッションを終える

NASAとJPL(ジェット推進研究所)は米国時間2月13日、2004年に火星に送られた2台の探査機のうちの1つ「オポチュニティ」の活動が終了したと、特別なプレスカンファレンスにて発表した。NASAのThomas Zurbuchen氏は、「オポチュニティのミッションが完了し、マーズ・エクスプロレーション・ローバーのミッションが完了したことを宣言する」と述べている。

オポチュニティが活動を終了することになった原因は、重要部品を動作させ活動を維持する動力電源のためのソーラーパネルが、惑星規模の砂嵐によって完全に、そして想定以上に長期間覆われたことにある。最後の通信は2018年6月10日におこなわれた一方で、バッテリーが切れるまでは数ヶ月の猶予があるはずだった。同探査機は火星の過酷な気候を想定してデザインされたが、濃密な砂嵐の中でマイナス100度という環境に長時間さらされるという状況には耐えられないのである。

探査機のチームはここ数ヶ月の間、あらゆる手法でオポチュニティとの交信を試み、探査機からの反応を得ようとした。たとえメモリが消去されたり、観測機器が動作しなくなったとしても、わずかな通信さえ確立できれば、システムを再プログラムしリフレッシュして活動が続けられたはずだ。しかし通常の通信手段から「sweep and beep」という指示まで、残念ながら探査機からの応答はなかった。そして昨晩、最後の信号発信がコントロールセンターから行われたのだ。

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スピリットとオポチュニティはマーズ・エクスプロレーション・ローバーのミッションとして2003年の夏に別々に打ち上げられ、15年前となる2004年1月に火星の異なる地域に着陸した。

それぞれの探査機は岩石やミネラルを分析するためにパノラマカメラやマクロカメラ、スペクトロメーターを搭載し、またサンプル収集用の小型のドリルも備えていた。もともとの運用期間は90日間で、毎日40メートル移動し最終的には約1kmの距離を探査するはずだった。しかし、どちらの探査機もそれを大幅に上回ることとなる。

スピリットは最終的に、7年間で7.7kmを移動した。そしてオポチュニティは驚くべきことに、14年間でフルマラソンを超える45kmを移動したのである。

もちろん、どちらの探査機も我々の火星に対する理解を大幅に引き上げてくれた。特に、単に過去の火星に水が存在していただけでなく、生命が存在しうる液体の水が存在していた証拠を発見した功績は大きい。

オポチュニティは科学観測だけでなく、たくさんの「セルフィー」も行なった。これは、エレバス・クレーターで撮影したもの

 

これまで活躍してきた探査機やロボットがその寿命を終えるのは、いつでも寂しいものだ。探査機「カッシーニ」は称賛の中で消滅し、探査機「ケプラー」も運用を終了した。しかし究極的にいえば、これらのプラットフォームは科学観測機器であり、われわれはその素晴らしい業績をたたえつつ、避けられない最期の日を弔うべきなのだ。

「スピリットとオポチュニティは活動を終了しただろうが、我々に遺産を残した。つまり、太陽系探査の新たなパラダイムだ」JPLを率いるMichael Watkins氏は語っている。「その遺産は、火星表面で約2300日間活動しているキュリオシティに連なるだけでない。現在JPLにて組み立て中の、マーズ2020にも引き継がれるのだ」

「スピリットとオポチュニティの功績は、それだけではない。探査機による火星探査への大衆からの関心を高めたのだ。ミッションが巻き起こしたエネルギーと興奮は、確かに一般へと伝わった」

もちろん、これで火星から探査機がいなくなったわけではない。昨年にはインサイトが火星に着陸し、注意深く観測機器をセッテイングしながらシステムをテストしている。さらに、探査車「マーズ2020」も打ち上げの準備がすすめられている。火星は人気の惑星なのだ。

いつの日か、我々はこの勤勉な探査機を掘り起こし、火星のミュージアムに展示することだろう。今は、次なるミッションを楽しみにしようではないか。

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(翻訳:塚本直樹 Twitter

Keplerが引退前に撮影した「最後の光」をNASAが公開

NASAのKepler宇宙望遠鏡の「最後の光」の写真

NASAは9月にKeplerが撮った最後の写真を公開した。これは、この宇宙望遠鏡が引退する直前のもの。われわれの太陽系の外側の宇宙についての、ほぼ10年間にわたる前例のない発見の最後を締めくくるものだ。

「この宇宙探査機が最初に空に目を向け、その『最初の光』の画像を捉えたときから、9年半におよぶ感動的な時間を締めくくりました」と、NASAエイムズ研究センターの広報担当官、Alison Hawkesは述べた。「ケプラーは、私たちの太陽系の外に2600を超える世界を発見し続け、私たちの銀河には恒星よりも惑星が多いことを統計的に証明しました」。

この「最後の光」の写真は、Keplerが引退する約1か月前の、9月25日に撮影された。宇宙望遠鏡は水瓶座の方向を向いていて、この画像はTRAPPIST-1系全体をカバーしている。そこには、「7つの岩石惑星が含まれていて、少なくともそのうち3つは温和な世界だと信じられています」と、Hawkesは書いている。また、GJ 9827系は 地球型の太陽系外惑星を持つ恒星で、「今後、他の望遠鏡による観察によって、遠く離れた世界の大気がどのようなものなのかを研究するための、絶好の対象と考えられています」とのことだ。

Keplerの視野は、その惑星探査の後継機であるNASAのTESS(Transiting Exoplanet Survey Satellite=トランジット系外惑星探索衛星)のものとも、わずかながら重複していたので、天文学者は2つの観測データを比較することができるはずだ。TESSは昨年打ち上げられ、1500を超える太陽系外惑星を探査する予定となっている。

Keplerの主要な任務の期待寿命は、元々3.5年に過ぎなかったので、その遺産はさらに特別なものとなった。この、17世紀のドイツの天文学者であり数学者のJohannes Keplerにちなんで名付けられた宇宙探査機は、9年間も仕事をしてくれたのだ。それは、頑丈な構造と予備の燃料のおかげだった。その間に、3912の太陽系外惑星を含む、4500以上の確認済の惑星と惑星の候補を発見した。

特に重要なのは、Keplerが発見した惑星の多くが、地球と同じくらいの大きさの可能性があることだ。NASAの分析によれば、空にある恒星の20〜50パーセントは「小さな、おそらく岩石でできた惑星、それも表面に液体の水をたたえた、その恒星系の中で生命が存在可能な領域にある惑星」を周回軌道上に持っているという。実際に生命が存在する可能性もある。

Keplerは、さらに「最後の光」を撮影した後の数時間も、30秒ごとに指定したターゲットを記録し続けた。「Keplerの送信機の電源は切られ、もはや科学的情報を収集していませんが、これまでに蓄積されたデータからは、今後何年にもわたって有効な情報を引き出すことができるでしょう」と、Hawkesは書いている。

画像クレジット:NASA

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(翻訳:Fumihiko Shibata)

SpaceX、ボーイングの有人宇宙飛行計画さらに遅延、当面ソユーズの利用が続く

今後の宇宙関連プロジェクトでもっとも重要なのはSpaceXとボーイングがそれぞれ進めている有人宇宙飛行カプセルの開発であることは間違いない。 しかし、今日(米国時間2/6)のNASAのブログによれば、すでに遅れているスケジュールがさらに遅れることが明らかとなった。

ボーイングのStarlinerとSpaceXのCrew Dragonは ISS(国際宇宙ステーション)にクルーを往復させるために用いられるカプセルだ。有人飛行であるため、現在の物資輸送用カプセルとは比べものにならないくらい厳密なテストが繰り返されてきた。

しかし、これは簡単な開発ではなく、両社とも長い道のりを歩んできた。当初2017年の運用開始が予定されていたが、スケジュールは大幅に遅延している。実際に人間を乗せて飛ぶのがいつになるかはまったく分からない。

今月はCrew Dragonにとって大きなマイルストーンとなるはずで、無人でISSに向かってテスト飛行が実施される計画だった。ボーイングも近く軌道飛行のテストを実行することを計画していた。しかしこれらのテストは双方とも延期されたという。NASAはこう述べている。

NASAではSpaceXのCrew DragonのDemo-1無人フライトテストを3月2日に予定している。 Boeingの無人の軌道フライトテストは4月以降となる。

ハードウェアの開発、テスト、データの確認、NASAや関係機関による結果の評価、乗員、地上要員の訓練などのスケジュールによって日程は調整される。

簡単にいえば、両社ともまだまったく準備が整っていないこということだ。かなり完成に近づいてはいる。しかし有人飛行の場合、「かなり」では十分ではない。

もしこれ以上の深刻な遅れが出ないなら、2019年の開発スケジュールはおおむね以下のようなものになる。

  • SpaceX Demo-1(無人):2019年3月2日
  • Boeing 軌道フライトテスト(無人):2019年4月以後
  • Boeing フライト中止テスト:2019年5月以後
  • SpaceX フライト中止テスト:2019年6月以後
  • SpaceX Demo-2フライトテスト(有人):2019年7月以後
  • Boeing フライトテスト(有人):2019年8月以後

この夏はSpaceX、ボーイングともに有人宇宙飛行を行う予定なので、アメリカの宇宙飛行にとってきわめて重要な時期になる。現在のところ、ISSにクルーを往復させる手段はソユーズしかない。ソユーズは何度も人員輸送を成功させてきたが、すでに登場から40年もたつ古いシスムであり、言うまでもなく、ロシア製だ。21世紀にふさわしいアメリカ製のシステムがかつてなく強く求められている。

画像:NASA

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滑川海彦@Facebook Google+

衛星通信技術の再構築を目指すUbiquitilinkは地上技術(端末技術)に着目

地球世界に高速インターネットをもたらす軌道ネットワークの建設にますます多くの企業が競うように参入しているため、通信衛星の数は年々倍増している。しかし、宇宙旅行会社Nanoracksを創始したCharles Millerが率いるUbiquitilinkは、別の道を行こうとしている。通信衛星技術全体の中の、地上部分に彼は着目したのだ。

Millerの直観を、多くの投資家と通信大手企業が支持し、投資も行っている。彼によると、今の通信衛星の世界で人びとは、正しい問題ではなく間違った問題を解こうと競っている。人工衛星のコストをいくら下げても、彼らが望む革命は訪れない。むしろ、彼の考えでは、この業界の前途は“ユーザー端末”を完全に作り変えることにある。今、地上局と巨大アンテナに支配されているその部分を。

彼は言う: “世界のデジタル格差を解消するために千の衛星と億のユーザー端末を作らなければならないとしたら、コスト最適化の効果が高いのはどっちだ?”。

もちろん、衛星の低価格化も決して無意味ではないが、彼には一理ある。衛星ネットワークがこの惑星のほぼ全域をカバーしたとき、それにアクセスするデバイスが一台何千ドルもしたり、一部の国などの補助でできた高度なハブの近くになければならないとしたら、どうなるのか? 格差は解消しない。

この惑星上には今、何十億もの携帯電話がある、と彼は指摘する。しかしモバイルのインターネット接続を享受できているのは、その10%にすぎない。でも数億単位の信号の届かない人たちにサービスを提供するのは、簡単だ。そのために、タワーを増設する必要もない。もしそれがビジネスとして有効な解なら、通信企業はとっくにやっていただろう。

むしろMillerの計画は、電話機に新しいハードウェアとソフトウェアの組み合わせを装備して、“圏外”にさまよい出たときにも、もっとも基本的な通信機能を確保できるようにすることだ。彼によると、それは一人あたり5ドル足らずでできる。

彼はその技術の詳細を明かそうとしないが、でもベーパーウェアのたぐいではなさそうだ。Millerと彼のチームは宇宙と通信技術のベテランたちだ。それに、ベーパーウェアをテストするために衛星を打ち上げる人はいない。

Ubiquitilinkはすでにプロトタイプがあり、その試験運用が来月始まるし、あと二基の衛星打ち上げも予定している。Millerによると、地上テストはすでに成功しており、本格的な事業としての関心を集めている。

“数年間ステルスでやってきたが、その間に22社のパートナーと契約した。うち20社は数十億ドル規模の企業だ”、と彼は語り、20社の多くは通信企業だ、と言う。社名は挙げない。同社はまた、試験に関して、アメリカも含む5か国の政府の認可を得ている。

最初はMillerの自己資金で始まった企業だが、すぐにBlazar Venturesがリードするプレシードラウンドを調達した。通信インフラストラクチャのNeustarからの間接的投資もあった。その後のシードラウンドはUnshackled Venturesがリードし、RRE VenturesとRise of the Rest、そしてOne Way Venturesが参加した。これで同社の総調達額は650万ドルになり、衛星打ち上げとシステムの試験をまかなえる。そのころには彼らも、技術の詳細をもっと明かすことができるだろう。

“Ubiquitilinkは通信技術における最大の機会を具現している”、とUnshackledの創設者パートナーManan Mehtaは語る。彼の言葉によると同社のチームは、“熱狂的に集中している”そうだ。

創業3年にして衛星通信技術をその根本から作り変える、と称する彼らの技術は興味津々だ。当然ながら疑念も少々あるけど、でもMiller以下の人脈は本物だ。今後数か月の試験の過程で、より詳しいことが分かってくるだろう。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

SpaceXのCrew Dragonカプセル回収の様子はこうなる

宇宙から高速で帰ってくるときは、いくつかの理由により、陸地より水の上に降りる方が安全だ。SpaceXのCrew Dragonカプセルももちろんそうする。そして、地球に帰還して回収船GO Searcherに載せられる様子はこんな感じになる。ただし、実際には英雄たちを歓迎する場面があるはずだ。

GO Searcherを見るのはこれが初めてではない。昨年海上でヘリコプターの着船テストを行ったときにも少しだけ公開された。

ご覧のとおりGO Searcherは、落下した飛行物体を捕獲するためだけの巨大なミットではない。大きくて重いカプセルを海上から回収するだけではなく、乗組員を収容しなくてはならない(医療行為が必要な場合もある)。つまりこれは作業用の船というよりも動く海上基地のようなものだ。

これはフロリダ州ポートカナベラル(もちろんあの有名なケープカナベラルの近く)のドックに船が帰還するところ。おそらく海上で何らかの訓練を行った帰りだろう。

船上にはCrew Dragonカプセル(実際の製品版ではなく実寸大のモックアップかプロトタイプと思われる)が載っているようなので、おそらく海面から拾い上げてソフトに着船させる訓練を行っていたのだろう。

訓練から戻ってくる様子はおそらくこんな感じだろうが、距離やミッションによっては、宇宙飛行士や宇宙旅行者たちをヘリコプターに乗せて急いで帰す可能性もある。けが人がいる場合はもちろん、場所や天候によっては遅い船ではなく空路を使う方が望ましい場合もあるだろう。

いずれにせよ、これからはこの種の船を頻繁に見かけるようになるだろう。SpaceXには、今回の作業の詳細、および同社が予定しているCrew Dragonのテスト飛行との関連について質問している。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

イーロン・マスク、Starshipロケットの完成品を披露

イラストや製造中の写真でさんざんじらしたあと、Elon Muskはようやく完成したStarshipロケットを披露した。

[Starshipのテスト飛行用ロケットがテキサス州のSpaceX打ち上げ施設で完成した。これは実物の写真でとり完成予想図ではない]

見ての通り、Satarshipテストロケットは外皮にステンレス鋼を使用しており、一部の人々を困惑させた。たしかにステンレスは非常に頑丈だが、カーボンファイバーやアルミニウム、チタンなどの最新ロケット材料と比べて重い。しかしMuskは、ステンレス鋼の極端な温度、特に高熱に対する耐久性はこのタイプのロケットにより適していると 主張した

Starshipロケットは以前BFRと呼ばれていたもので、SpaceXの長期計画の中で需要な位置を占める。FalconやFalcon Heavyに代わる主要打ち上げロケットになることを目的としており、多数の大気圏再突入(すなわち、多数の高熱体験)が予定されている。

このテストモデルは現在テキサス州ボカチカにあり、3月に準衛星軌道VTOL(垂直離着陸機)テストが予定されている。衛星軌道バージョンは、これよりも背が高く厚い外皮とスムーズなカーブのノーズ部分からなり2020年に打ち上げが予定されている。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

銀河系外からの高速電波バースト(FRB)が多数発見される

新しい「宇宙パズル」が現れるたびに、われわれは期待に胸を膨らませてしまう。しかし、それが地球外生命体からのメッセージやリングワールドでないからといって、科学的興味の対象でないという意味ではない。今日の出来事は、遥か遠い銀河から来た「高速電波バースト」に関連している。ただし、高度な文明から送られてきた秘密のメッセージを期待してはいけない。

高速電波バースト(FRB)は、銀河系の外から突発的にやって来る強い電磁波だ。何が原因でおきているのか誰も知らないが、われわれが観察したことのある何物とも違う可能性が高い——そしてその特異性によってノイズの多いデータの中での主要な標的になる。

昨秋SETIプロジェクトがごく少数を捉えたが、ほかにCHIMEと呼ばれる事実上全宇宙に向けられどこを「見る」かはソフトウェアで選ぶ最新の電波望遠鏡による観察も行われていた。そして今日(米国時間1/9)発表された2つの論文によると、新たに13個のFRBがその方法を用いて発見された。

「この望遠鏡には可動部品がない。代りにデジタル信号処理によって望遠鏡を標的に「向ける」ことで電磁波がやってくる場所を推定する。これは巧妙なアルゴリズムと望遠鏡近くに設置された巨大なコンピュータークラスターを用いてリアルタイムに計算して行われる」とCHIMEの発見に携わったMITのKiyoshi Masui准教授がニュースリリースで説明した。

この種のソフトウェア制御による方法は、コンピューターの計算能力と小型アレイの効果が高まったことで、急速に普及してきた。

FRBが宇宙のどこに現れたのかをこのビデオで見ることができる。

理解の助けになれば幸いだ。

当然だれもがこれを、超高知能の発信者であふれる宇宙船か惑星が、地球に向けて信号を送っていると考えたいが、もちろん、そのためには遠い〈遠い〉昔に発信されていなければらならない。それよりも、「特定の性質の場所に位置する傾向のある強力な天体物理学的物体」である可能性が高いと研究者らは推測している。

超新星、ブラックホール、クェーサー——宇宙には多くの奇妙な高エネルギー物質が存在しており、それらが組み合わせってなにが起きるかはだれにも想像できない。最近観察されたFRBには、従来よりずっと短い波長も含まれており、極めて多様であることが考えられる。

しかし、FRBよりもっとずっと稀少なのが、〈反復する〉FRBで、これまでにプエルトリコのアレシボ天文台で1回しか発見されていない。今回もう1回見つけるまでは。

1回だけであれば、その1回は宇宙線異常かもしれない——おそらく数十億年に一度起きる極めて稀な出来事。しかし、数年のうちに2回? それは、もっとありふれた現象であることを示唆するものであり、どこを探すともっと見つかりそうかはわかっている。

地球外文明ではないかもしれないが、科学にとってまったく新しい何かであれば、それはすばらしい残念賞だ。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

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SpaceXのStarshipは最高にゴージャス――イーロン・マスク、組立中の宇宙往還機のイラストを発表

このイラストはイーロン・マスクのツイートに添付されたものだ。テキサス州ボカ・チャイナのSpaceXの発射施設で組立中のStarship宇宙往還機のテスト機の外観のコンセプト・アートだという。 商用に用いられる実機のほうがさらにゴージャスになるはずだ。テスト機は商用機に設けられる予定の窓を欠いている。

組立中のStarshipテスト機はこのイラストのような外観になる。実機には外界を観察できる窓が設けられる。

SpaceXはシステムを検証するため今年3月か4月にテスト機を準軌道高度に打ち上げる計画だ。 衛星軌道への打ち上げは2020年に予定されているという。

Starship(以前BFRと呼ばれていた機体)はiSpaceXの宇宙事業の次の段階のカギとなる。現在のFalconやFalcon Heavyロケットを代替し、同社の宇宙事業は将来すべてStarshipによって実施される予定だ。Starshipを地上から打ち上げるブースター部分はSuper Heavyと呼ばれる。SpaceXの将来を担うにふさわしい壮麗な外観だ。以下のツイートの添付写真はボカ・チャイナ基地で組立中のStarshipテスト機。

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滑川海彦@Facebook Google+

Ultima Thuleは人類が接近した最遠の天体――New Horizonsの写真から成り立ちも判明

NASAのNew Horizons探査機がUltima Thule(ウルティマ・トゥーレ)の鮮明な写真を送ってきた。 これは太陽系の外縁、カイパーベルトに位置し、長径34はキロ程度だ。

ラテン語で「最も北にあるもの」という意味のこの岩のかけらは人類が接近して観察した中で最も遠い天体となった。ミッションの主任研究員、Alan Sternは「宇宙探査史上最高の技術的成功」と呼んだ。

Ultima Thuleは以前から食を利用した予備的研究が行われていたが、推定は非常に正確さだったことが判明した。 この小天体は数十億年前に2つの岩の塊が次第に接近し、接触融合したものだということがNew Horizonsが撮影した写真によって裏付けられた。これによって太陽系の成り立ちについての研究が大きく進歩することは間違いない。

NASAによるUltima Thule形成過程の推定

この天体は大小2つの球からなり、それぞれUltima(ウルティマ)とThule(トゥーレ)と名付けられた。2つの天体は太陽系形成の最初期に次第に近づき、共通の重心の周囲を回転しはじめた後で接触、融合したと考えられている。

ただしNew Horizos探査機が冥王星軌道を過ぎた後でUltima Thuleを目指したのはこうした特異な形状や成り立ちのために選ばれたわけではなかった。実はこの距離にある天体はどれもが未知であり、どれもが等しく科学的興味の対象だった。人類はこうしたカイパーベルト天体を間近で観察したことはこれまで一度もなかった。MU69(Ultima Thuleの科学的名称)は当初ハッブル宇宙望遠鏡によって発見され、2週間かけて大急ぎで軌道を計算した結果、最小の燃料消費でスイングバイが可能だと判明した。【略】

したがってMU69が選ばれた時点ではどれほど奇妙な天体なのかまったく知識はなかった。New Horizonsは天体を撮影するために数千キロ軌道を変更した。

下の写真はNew HorizonsのLORRI(遠距離観察用イメージャー)によるもので、モノクロで数ピクセルの小さな画像だ。

なるほどニュースの1面を飾るには地味な映像だが、宇宙船技術者や天文学者にとっては非常に大きな意味を持つ。New Horizonsが12月31日にこの画像を撮影したとき、天体から80万キロ以上離れていたはずだ。しかも相対速度は秒速14キロ以上だった。しかも太陽系外縁のカイパーベルト地帯には都合のよいWi-Fiタワーなどない。データはDeep Space Networkを通じて非常にゆっくり電送されてくる。

上の画像は探査機がもっと近づいてから撮影されたものだ。50万キロくらいだという。 LORRIも作動を続けていたが、この距離になるとRalphイメージャーが利用可能となり、はるかに詳しい画像が得られた。

Ralphはマルチスペクトル・イメージャーで多数の波長で画像を撮影できる。データ量も多くなり、正しい画像を再構成するためには専門家の解析が必要になる。画像はUltima Thuleの間近での見た目をできるかぎり忠実に再現しようとしたものだという。

天体はありふれた土くらいの反射率で色の濃い部分はなんらかの不安定な物質にさらされた痕跡だろうと研究チームは考えている。天体表面はさらに複雑な形状があると予想されるる。今後さらに鮮明な写真が得られるはずだ。上の写真はNew Horizonsが正常に機能したことを示すいわば予備的データで、詳細な情報の電送には今後1年以上かかる見込みだ。

それでもこの写真でUltima Thuleの大まかなモデリングは可能になった。

ジャガイモを2個くっつけたようなモデルについてSternは「氷山の一角に過ぎない。実際まだデータの1%も受け取っていない」と述べた。

「現在得られている最良の写真に写っいるターゲットは2万ピクセルから2.8万ピクセル程度だ。最初の画像が6ピクセルだったから大幅な改善だが、今後予定どおりに推移すれば、解像度35メートルくらいの画像が得られるはずだ。最終的にはメガピクセル級の画像が得られると期待している」という。

New Horizons探査機はUltima Thuleを過ぎて高速で太陽系の外に向かって飛行中で、今後15年から20年は機能を続けるという。また軌道変更可能な燃料を残しているので別のカイパーベルト天体に接近できる可能性もある。今後――つまり向こう何年か――に注目だという。当面、研究チームはUltima Thuleに関するデータ解析に専念する。

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滑川海彦@Facebook Google+

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SpaceXのStarshipはSF的にきらきら輝く――外皮にステンレスを採用したのは耐熱性

SpaceXが発表したStarship宇宙往還機はいろいろな意味でSF黄金時代のリバイバルを思わせる。この機体の目的は月などに旅客を輸送することだが、ぴかぴかのステンレス製外皮は古き良き時代のSF雑誌の派手な表紙にそっくりだ。

ファウンダー、CEOのイーロン・マスクはStarshipのイラストをTwitterに投稿した。キャプションは「ステンレススチールのスターシップ」とだけあった。正確に言えば、このステンレスの機体はSpaceXが来年テストを開始しようとしている宇宙旅行システムの一部にすぎない。現在計画されているフライトはシステムのテストのためなので、ごく短いものとなるだろう。

イーロン・マスクのツイートの例にもれず、今回もStarshipについてはさまざまな推測や議論が巻き起こっている。

まず第一に驚かされたのはステンレススチールという素材の選択だ。現代のロケットはカーボンファイバーなどの先進的な素材を複合して軽量かつ目的に適した物理特性を備えた構造を実現しようとしている。金属が利用される場合は、アルミ、チタンなどが普通だ。もちろんAtlas 5ロケットの2段目などステンレスが使われたこともあるが、むしろ例外だ。ましてStarshipのように他の天体まで航行し、大気圏への再突入を必要とする機体の場合、ステンレスが使われるとは誰も予想しなかっただろう。

マスクは後続のツイートでステンレスを採用した理由を簡単に説明している。

ステンレスはカーボンファイバーに比べて極端な温度状態で良好な重量/強度を実現する。極低温でやや優れており、室温では劣っているが、高温では圧倒的に優れている。 

マスクがここで言うステンレスはニッケル系の300シリーズだが高度な処理で最高の強度を実現している超合金だ。われわれのキッチンにあるすぐに曲がってしまうステンレス包丁とはわけが違う。マスクはSpaceXの冶金エンジニアがRaptorロケットエンジンのために開発したSX500を用いるとしている。Raptorエンジンは現在のMerlinエンジンに代わってBRF以降の大型ロケットに利用される。

ステンレスが採用された理由としては再突入耐性が高いためのようだ。

宇宙船やブースター・ロケットを再利用する場合には大気圏に再突入する際に発生する熱が大きな問題となる。 スペースシャトルなどで用いられた熱吸収性シールドは高熱で融解し、徐々に剥離していくことによって機体から熱を取り去る仕組みだ。

ところがこの方式はStarshipでは採用できない。熱シールドを完全に除去して貼り替える作業は時間と人手を食う。ターアラウンドの最小化を目的とするStarshipに不向きだ。そこで熱吸収式ではなく熱反射式のシールドを採用することが現実的な選択となる。そかしこうした高温に耐え乗員を保護できるシステムの開発は極めて困難なエンジニアリングとなる。

Scott Manleyがこの点を詳しく説明するビデオをアップしている。

マスクは当初Starship(この時点ではBFRと呼ばれていた)について、「再突入時にはほぼ全期間にわたって減速を続けるが、その際に機体のあらゆる表面が利用される」と述べている。再突入はおそらくFalcon 9のブースターのようなロケットの制動噴射ではなく、スペースシャトル式の滑空になるだろうと思われる。

ステンレスへの変更はSFコミックのファンにおなじみのスーパークールな見た目になるという思わぬ副作用を生んでいる。マスクによれば塗装は即座に焼ききれてしまうので無意味だという。

ステンレス外皮は高熱になるため塗装は不可能。反射能率を最高にするためミラー仕上げ。 

いかにステンレスでもいつまでもぴかぴかのままでいることは難しいだろう。ガスレンジで空焚きしたステンレスの鍋底のようにStarshipの底面にも焼けやシミが見られるようになるに違いない。もっともこうした「汚し」が入るようになるというのはスターウォーズの宇宙船のようで魅力的だ。

まだ開発段階であるため詳細については不明な点が多い。SpaceXはテストが進むに従って、その結果を取り入れ、デザインをさらに変更する可能性がある。早ければ来年にも最初のテスト飛行が行われるはずだ。大気圏脱出にはこれも開発中のFalcon Super Heavyブースターが用いられる。

マスクによればStarshipのテクニカル・ドキュメントの公開は来年の3月かs4月になるという。この文書がテスト用機体だけに関するものか、SpaceXが計画している日本人が乗客1号となる月旅行計画まで含むものかは不明だ。いずれにせよ、Starshipについてマスクの大胆な(ときに無謀な)ツイートによって近々さらに情報を得ることができるはずだ。

画像:Elon Musk

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滑川海彦@Facebook Google+

SpaceX、新GPS打上げ成功で今年のミッション完了

SpaceXはアメリカ空軍が運用する新しいGPS、Global Positioning System IIIの第1回打ち上げに成功し、2018年のすべてのミッションを完了した。今日(米国時間12/24)、ケープカナベラルから打ち上げられた新しい衛星はVespucciと名付けられた。SpaceXにとって初の国家安全保障に直結するミッションだった。

SpaceXは当初もっと早い日時を予定していたが強風のため延期され、クリスマスの打ち上げとなった。

SpaceXは2016年に空軍からNational Security Space (宇宙国家安全保障)プロジェクトの契約を得ており、この後さらに4回のGPS III衛星打ち上げが予定されている。これにはすべて2段式のFalcon 9ロケットが用いられる。

GPSは米軍の管轄下にあり、運用は空軍が行っている。 冷戦時代に構築されたシステムであるが、2000年代に民間利用が休息に普及した。新しいGPS衛星はロッキード・マーティンが製造し、現在のシステムの3倍の精度を提供できる。SpaceXの発表によれば妨害に8倍強いという。.

「新世代GPSは測地、航法、タイミング情報を提供する。GPSのユーザーは世界で40億人に上り、適切なサポート体制の提供は極めて大きなミッションだ」とSpaceXは述べている

2002年にイーロン・マスクによって創立されたSpaceXにとって今年は大きな意味がある年となった。2018年にSpaceXは21回の打ち上げを行いすべて成功させている。これは2017年の18回の打ち上げから3回のアップとなっている。また305億ドルの会社評価額で5億ドルのラウンドを行っているという情報もある。これは1000個以上のミニ衛星のネットワークで全世界にインターネット接続を提供するStarlinkプロジェクトのための資金となるという。現在のラウンドが目標を達成すれば、SpaceXの資金調達総額25億ドルとなる。

今日の打ち上げのビデオを上にエンベッドしたが、SpaceXのサイトはこちら

〔日本版〕ビデオでは6:58でリフトオフ、8:13でマックスQ、9:50からメインエンジン停止、ブースター切り離し、第2段エンジンスタートと続く。全世界をカバーするため軌道傾斜角が55°と大きく、衛星も大型であるためブースターの回収は行われなかった。Vespucciはコロンブスより先にアメリカに到達し、アメリカという命名の起源となった探検家、アメリゴ・ヴェスプッチにちなむ。

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GPS戦争勃発

あなたはどこにいるのか? これは、単なる純正哲学的な問ではなく、地政学的にますます重要な問題となってきた。それによって、AppleやAlphabetのようなIT系の大企業が厳しい立場に追いやられようとしている。

中国、日本、インド、イギリス、そして欧州連合を含む世界中の国々が、独自の測位システムを構築するための研究、実験を行い、実際に衛星を打ち上げている。

これは、ここ何十年もの間、グローバル・ポジショニング・システム(GPS)によって、物体の位置を測定する機能を実質的に独占してきたアメリカにとって、とてつもなく大きな変化となる。GPSは、冷戦時代にアメリカ空軍 が軍事目的で開発し、2000年の半ばに民生用にも開放された(GPSの簡単な歴史については、この記事を、詳しい歴史が知りたければ、一冊の本となった情報もここにある)。

GPSを支配することには、多くの利点がある。その中で、第一の、そしてもっとも重要なことは、軍用、商用に関わらず、世界中のユーザーがアメリカ政府が提供するサービスに依存するということだ。いわば、ペンタゴンの慈悲によって位置を決めさせてもらっているわけだ。この技術の開発と測位衛星の打ち上げが、宇宙産業に利益をもたらす波及効果もある。

現在のところ、そのシステムに対する代替手段となるのは、世界規模では唯一ロシアのGLONASSだけだ。これは、ロシア大統領ウラジミール・プーチンの肝入で進められたアグレッシブなプログラムによって、数年前に全球をカバーするようになった。ソビエト連邦の崩壊後に衰退していたものを再構築したものだ。

今では、他にも多くの国々が、米国への依存度を下げ、独自の経済的な利益を得たいと考えている。おそらく、それがもっとも顕著なのは、GPSに代わる世界的なシステムの構築を国家の最優先事項としている中国だ。そのBeidou(北斗−「Big Dipper」)ナビゲーションシステムは、2000年以降ゆっくりと構築されてきており、主にアジアでのサービス提供に焦点を当てている。

しかしこのところ中国は、Beidou衛星の打ち上げを加速し、世界規模の測位サービスの提供をもくろんでいるFinancial Times紙の数週間前の記事によれば、中国は今年だけで11個のBeidou衛星を打ち上げた。それは、そのネットワーク全体のほぼ半分に当たる数であり、2020年までには、さらに十数個の衛星を追加する計画だという。完成の暁には、世界でもっとも規模の大きなシステムの1つとなるだろう。

2017年11月5日、中国は西昌の衛星打ち上げセンターから発射されるLong March-3B型の打ち上げロケット。第24号と第25号のBeidouナビゲーション衛星を搭載している。写真は、Getty Imagesから、Wang Yulei /中国通信社/VCGによるもの。

中国は、衛星を軌道に乗せるだけでなく、自国のスマートフォンメーカーに、Beidouに対応した測位チップを各社のデバイスに搭載するよう要求している。すでに、HuaweiやXiaomiといった大手メーカー数社のデバイスは、GPSとロシアのGLONASSに加えて、Beidouのシステムに対応している。

それはAlphabetや、とりわけAppleのようなアメリカのスマートフォンのリーダーを苦境に陥れる。たった1種類に統合されたiPhoneデバイスを世界中に供給していることを誇りにしているAppleにとって、GPSに関する独占の崩壊は頭の痛い問題だ。中国市場にだけBeidouに対応した独特なデバイスを供給することになるのか。あるいは、世界市場向けの携帯電話にもBeidouチップを搭載するのか。それによって、米国の国家安全保障当局とトラブルになるのではないか?

やっかいな問題は、それだけではない。GPSに代わるシステムを立ち上げることに、もっとも積極的なのは中国で、世界中を網羅することに強気の姿勢を見せているが、独自のシステムを追求しているのは中国だけではないのだ。

日本は、宇宙開発を、中国に対抗し、経済を回復させるための国家的な優先事項と位置づけており、そのプログラムのもっとも重要な要素の1つとなっているのが、ポジショニングシステムの構築だ。そのQuasi-Zenith Satellite System(準天頂衛星システム)には、現在までに1200億円(10億8000万ドル)の費用をつぎ込んでいる。GPSを補強して、日本国内のカバー範囲を拡大するように設計されたものだ。それによって、推定2兆4000億円(2155億8000万ドル)の経済効果を見込んでいる。

この新しいシステムを利用するには多大なコストがかかる。生産規模が小さいためだ。Nikkei Asian Reviewの数週間前の記事は、「受信機の価格が高いことがハードルになる。三菱電機が木曜日に発売した受信機は、誤差が数センチ以内という精度を持っているが、その価格は1台が数百万円、つまり何万ドルもするのだ。」と指摘している。自律走行車には、日本国内でのより高い位置精度が必要なのかもしれないが、その技術を車に取り入れたいのであれば、自動車メーカーは直ちにコストを下げる必要がある。

日本と同様に、インドもGPSを補完するIRNSSというシステムの実現を目指している。すでに7つの衛星を打ち上げ、インド亜大陸でのカバー範囲を拡張している。一方、Brexitをめぐる国民投票の結果、3月に欧州連合から脱退することになっている英国は、EUのGalileo測位システムにアクセスできなくなる可能性がかなり高い。そのため、独自のシステムの立ち上げを計画している。そのGalileoは、2019年には完全な運用状態になると期待されている。

かいつまんで言えば、世界は1つのシステム(GPS)から、おそらく7つのシステムに移行したのだ。中国のメーカーは、GPS、GLONASS、そしてBeidouを1つのチップに実装することを促進しているが、それは中国という国家規模でしか成立しないだろう。たとえば日本では、スマートフォン市場は飽和状態にあり、人口は中国の10分の1にも満たない。そのため、価格を下げるために必要な量産効果は見いだせない。同じ理由で、英国ではさらに厳しいだろいう。

理論的には、1つの測位チップを、それらのさまざまなシステムすべてに対応するように設計することは可能だ。しかし、特にGLONASSとBeidouに関しては、米国の国家安全保障法に抵触する可能性がある。つまり、インターネットが異質な極に分断されているのと同様に、スマートフォンの測位チップも、そうした地域ごとの市場に対応するため、細分化を余儀なくされることが、すぐに明らかになるだろう。それは最終的には、消費者にとって、より高い価格を意味し、製造業者にとっては、より厳しいサプライチェーンを意味することになるのだ。

画像クレジット:AFP/Getty Images

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(翻訳:Fumihiko Shibata)

NORADのサンタクロース追跡サービスは政府が閉鎖しても継続する

60年以上前から、NORAD(North American Aerospace Defense Command, 北米航空宇宙防衛司令部)とその前身CONAD(Continental Air Defense Command, 米国本土防空軍)は、12月24日に世界中でサンタの飛行を追跡してきた。

そしてそのオペレーションセンターは金曜日(米国時間12/21)のツイートで、政府による閉鎖にもかかわらず今年も続ける、と語った。

[このツイートの概要は以下の記事に]

NORADによると、NORADのサンタ追跡(Santa tracker)は、約1500名のボランティアが支援し、電話やコンピューターを使って世界中の子ども(と大人)たちからの質問に答えている。

そのリアルタイムのアップデートは、WebサイトNORAD Tracks Santaや電話、およびメールで得られる。言語は、7か国語に対応している。Twitter上のアップデートもある。

ここでもフォローできる。

この伝統のすべては、ある新聞に載った広告の中の電話番号の誤植から始まった。その広告の中ではサンタが、“さあ、子どもたち、私に直接電話しなさい、番号を間違えないようにね”、と言っていた。1955年の12月24日にある子が電話をしたら、コロラド州コロラドスプリングスにあるCONADのオペレーションセンターにつながった。

その夜、宿直を担当していたのHarry Shoup大佐が、電話に答えた。しかしその夜電話をしたのは、その子だけではなかった。Shoupはオペレーターたちに、サンタクロースの位置を見つけてそれを電話してきたすべての子どもに伝えるよう命じた。そして、その、毎年の伝統が始まった。

[原文へ]
(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

まもなく24時間以内に5基のロケットが打ち上げられる

今日は4基のロケットを異なる4つの会社が打ち上げる歴史的な日になるはずだった。しかし、それが実現されることはない。本稿執筆時点で4基のうち3基の発射が中止された。それぞれの打ち上げは明日に延期され、改めて歴史的に重要なイベントが設定された。

全部のロケットが計画通りに打ち上げられれば、24時間以内にロケット5基が発射されることになる。

[日時は米国東海岸時間]

  • 12/18(火曜) 8:57pm ET ULA Delta IV Heavy
  • 12/19(水曜) 5:40am ET インドの GSLV Mk. 2
  • 12/19(水曜) 9:07am ET Space X Falcon 9
  • 12/19(水曜) 9:30am ET Blue Origin New Shepard
  • 12/19(水曜)11:37am ET Arianespace Soyuz

本日(米国時間12/18)当初はSpaceX、Blue Origin、Arianespace、およびULAがそれぞれのロケットを打ち上げる予定だっだ。人々はこの日をRocket Tuesday[ロケット火曜日]と呼んでいだ。そして、もし成功していれば歴史的イベントになるはずだった。しかしArianspaceが高高度の強風のために発射を延期した。Blue Originはロケットの地上設備が原因で発射を延期した。そしてSpaceXのFalcon 9の発射7分前に、搭載コンピューターが異常終了し、ロケットは一日休止状態になった。

ULAのDelta IV Heavyの打ち上げは予定通り本日行われる予定で、成功すれば夢の24時間ロケット打ち上げ期間がスタートする。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

Rocket Lab、超小型衛星10基をまもなく打ち上げ(ライブ中継あり)

Rocket Labの商用ロケット “It’s Business Time”の(大きく遅れた)デビュー打ち上げから1ヶ月、同社が宇宙に運ぼうとしている次の顧客はNASAだ。今夜(米国時間12/12)午後8時打ち上げ予定のロケットは、NASAの小型衛星打ち上げ教育プログラム(ELaNa)XIXの一環として超小型衛星10基を運ぶ。

これはRocket LabにとってはじめてのNASA専用打ち上げであるだけでなく、新世代短期ターンアラウンド小型ロケットの特長を活かしたNASAのプロジェクト、”Venture Class Launch Services” の下で行う初の打ち上げとなる。

「NASA Venture Class Launch Serviceは、新しいロケット打ち上げ会社の市場進出を促進し、成長する小型衛星市場向けに未来クラスのロケット開発を可能にするために立ち上げられたNASAの革新的取り組みだ」とELaNa XIXのミッションマネージャー、Justin Treptowが Rocket Labのプレスリリースで語った。

今夜の打ち上げにはNASA研究員らの衛星4基、および全米のさまざまな大学、研究機関の衛星6基が搭載される。NASAのSpaceflightサイトに プロジェクトのわかりやすい概要とロケットの技術的詳細が掲載されているので興味のある方は参照されたい。各衛星はElectronロケットに適切な高度に連れていかれたあと、それぞれの道を進んでいく。

打ち上げ機の名前は “This One’s For Pickering” で、元JPL(ジェット推進研究所)所長で米国発の人工衛星Explorer Iの開発チームを率いたサー・ウィリアム・ピカリングに因んでいる。サー・ピカリングの生地ニュージーランドは、Rocket Labの拠点で今回の打ち上げが行われる場所でもある。

発射は西海岸時間8 PMちょうどに行われ、搭載された装置は打ち上げ後1時間弱に切り離される。打ち上げのライブストリーミングはRocket Labのウェブサイトで見られる

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

Voyager 2が恒星間宇宙に到達、その双子の兄弟に追いついた

1977年に打ち上げられた多惑星探査機Voyager 2が、ついに恒星間宇宙(interstellar space)に到達した。その双子であるVoyager 1が到達してから、6年が経過している。現在地球から約110億マイル(177億キロ)の場所にいるが、これは人類が作ったものが到達した2番目に遠い位置だ。

恒星間宇宙は、私たちの太陽の「太陽圏(heliosphere)」が終わるところから始まっている。太陽圏は巨大な放射線とプラズマの球体で、その中に惑星が包まれつつ守られている。2機のVoyagerにはこうしたものを観測できる機器が搭載されていて、どちらも大幅な電気的そしてプラズマ的なアクテビティの低下を示している。これが示唆するのは、彼らが太陽圏を離れたということだ。

恒星間宇宙の正確境界は論議の的だ。Voyager 1がその端にいた時、大いなる論争が巻き起こり、科学者たちはそれが恒星間宇宙に出たのか否かについて議論を行っていた。しかし合意は形成されて、今では多くの科学者たちが、両機が既に太陽圏を去ったことに同意している。

とはいえ両機は、多かれ少なかれオールトの雲によって定義される太陽系はまだ立ち去ってはいない(オールトの雲とは太陽の重力 ―― といっても本当に僅かなものだが ―― によって捕えられた、塵と小さな物体で構成された巨大な外殻である)。2機のVoyagerがそこを通り過ぎるまでは(おそらくあと3万年程かかる)、両機は定義的な意味ではまだ太陽系の中にいるのだ。

興味深いことに、Voyager 2が恒星間宇宙に入ったのは2番目だったが、打ち上げは先に行われていた。これらの複雑で野心的な探査機の失敗のリスクはとても高かったため、NASAは2機を建造し、連続して打ち上げるべきだと考えたのだ。このためVoyager 2はVoyager 1に16日先立って打ち上げられた。しかし後者はその軌道のために、黄道面(太陽系の天体の大部分が周回している平面)をより早く違う角度で脱出したのだ。

こうしてVoyager 2はNASAのもっとも長期的に継続しているミッションとなった(ただし宇宙空間に最も長く存在しているというわけではない ―― もっと初期の衛星が宇宙には漂っているからだ)。それに携わる人たちはこれ以上ない喜びを感じている。

「2つのVoyager探査機が、どちらも長い歳月を経てこのマイルストーンを達成できたということを、私たち全員が喜ぶと共にほっとしていると思っています」と、NASAのニュースリリースの中で語るのは、VoyagerプロジェクトのマネージャーであるSuzanne Dodd(JPL所属)である。「これこそ私たち全員が待ち続けていたものです。この先私たちが、恒星間宇宙に出た2機の探査機から、何を学ぶことができるかを楽しみにしています」。

両方のVoyagerは少なくともあと数年間は運用が続くだろう。彼らの電力が尽きるのは2025年ごろの予定だ。その時点で彼らは、宇宙から50年近くにわたってデータを送り続けていることになる。驚くべきことを成し遂げてくれたチームに、そして人類に、心から祝福を送りたい。

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(翻訳:sako)

NASAのInSight探査機が収集した、心落ち着く火星の風の音を聞こう

InSight火星探査機は先週、Elysium Planitiaエリアへの完璧な着陸を果たした。現在同機は地面の下への掘削の準備に大忙しだ(そしてもちろん自撮りも行った)。しかし、「予定外の作業」の1つが、火星の平野を吹き渡る風の音の録音だった。その音は記事の下の方のリンクから聞くことができる。

技術的に言えば、探査機は音を検知するようにはできていない。少なくとも慎重に音を録音しようと準備しているときのようには。しかし、ロボットプラットフォームの空気圧センサと地震計は、両方とも風が吹き抜けていく際の微かな変化を検出することができる。上の写真に見ることができる銀色のドームの中に置かれた空気圧センサーが、ほぼ通常の音の信号を生成するが、それでも仮に火星の大気の中に立つ人間が居たとして、実際に聞くことのできるような音の信号にするためには、かなりの調整が必要だった。

「InSight探査機は巨大な耳のように働きます」とNASAのニュースリリースで説明したのは、InSight科学チームのメンバーTom Pikeである。「探査機の横のソーラーパネルは、風の圧力変動に反応します。まるでInSightが耳に手をあてて、その耳に当たる風を聞いているようなものです」。

それがどのような音かに興味があるだろうか?録音された音ははSoundCloud上もしくは以下のリンクから聞くことができる:

ほぼ普通の風のように聞こえるって?何か違うものを期待していただろうか?宇宙探査の多くの側面と同じように、現象そのものはありふれたものだ ―― 岩石、景観、風の音など ―― だがそれが、現象が数百万マイルの彼方にある見知らぬ世界で起きていて、ハイテクロボットによってここまでリレーされて来たことを思うと十分に感慨深いものとなる。火星の風の音は地球上の風とはあまり違わないかもしれないが…そんなことは問題ではない!

興味がある人のために付け加えれば、録音の中の風の動きは北西からのもので、その地域に見られる「ダストデビル(アメリカ南部の旋風)による風紋」に一致している。InSightの「耳」をその目的のために使えることがわかったことは良いことだが、探査機の科学的ターゲットはあくまでも地下であって、地表を調べることではない。

すぐにより多くの録音が増えることだろう。それを眠りにつくためのノイズとして利用することもできる。しかしこの先さらに良い音が期待できる予定だ:Mars 2020ローバーが、真に高品質のマイクを搭載し、火星の環境音はもちろん着陸音も録音する予定なのだ。

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(翻訳:sako)

衛星による毎日全地球観測インフラの実現へ!東大宇宙系スタートアップが総額25.8億円調達

東京大学協創プラットフォーム開発(東大IPC)が運営する「協創プラットフォーム開発1号投資事業有限責任組合」は12月7日、東大関連の宇宙系スタートアップ3社に総額7億円を出資した。

小型光学衛星のコンステレーションによる全地球観測網の構築を目指すアクセルスペースに対して約3億円、小型衛星による宇宙デブリ回収を目指すAstroscale(アストロスケール)に約1.1億円(100万ドル)、「小型合成開口レーダ衛星」のコンステレーションによる地球観測を目指すSynspective(シンスペクティブ)に約3億円という内訳だ。

またアクセルスペースは、東大IPCからの約3億円を含め、シリーズB投資ラウンドとして総額25.8億円を資金調達している。引き受け先は以下のとおりで、31VENTURES-グローバル・ブレイン-グロースIがリードインベスターを務める。

左から、三井不動産ベンチャー共創事業部田中氏、同菅原部長、 アクセルスペース代表取締役中村氏、グローバル・ブレイン百合本社長、同社パートナー青木氏

・31VENTURES-グローバル・ブレイン-グロースI(三井不動産/グローバル・ブレイン)
・INCJ
・協創プラットフォーム開発1号投資事業有限責任組合(東京大学協創プラットフォーム開発)
・SBIベンチャー企業成長支援投資事業有限責任組合(SBIインベストメント)
・SBIベンチャー企業成長支援2号投資事業有限責任組合(同上)
・SBIベンチャー企業成長支援3号投資事業有限責任組合(同上)
・SBIベンチャー企業成長支援4号投資事業有限責任組合(同上)
・第一生命保険

アクセルスペースはこの資金調達によって、2020年に2機のGRUSの追加打ち上げを予定している。資金調達に併せて、2017年から延期されていたGRUS初号機の打ち上げと組織改編についても発表した。

GRUS初号機

GRUS初号機は、2018年12月27日にソユーズ(Soyuz-2)を使い、ロシア連邦ボストーチヌイ射場から打ち上げられることとなった。同社は、今後数十機のGRUS衛星を打ち上げ、2022年に毎日全地球観測インフラ「AxelGlobe」の構築を目指す。

組織改編については、中村友哉CEO、野尻悠太COOは留任となるが、新たに同社の共同設立者で取締役だった宮下直己氏がCTOに任命された。そのほか、CBDO(最高事業開発責任者)に山崎泰教氏、CFOに永山雅之氏が就く。なお、同社創業者の永島隆氏は取締役CTOを退任し、今後は上席研究員となる。

Falcon 9、衛星打上げは成功、ブースター回収は失敗――グリッドフィン不調で海中へ(ビデオあり)

SpaceXのFalcon 9による国際宇宙ステーションへの補給船打ち上げは成功した。しかしブースターの回収は、グリッドフィンの不調で失敗に終わった。イーロン・マスクのツイートによれば、ブースターは着陸予定地点をわずかに外れて海中に落下した。

〔ブースター上端に設けられた〕グリッドフィンを作動させる油圧ポンプの不調のためFalconは海中に落下した。ブースターからは引き続き信号が送信されているので破壊されていはないもよう。回収船を出発させた。

ビデオ配信サービス、Twitch(以前のJustin.tv)が着陸を中継中だった。下にエンベッドしたのはDazValdezの船上から撮影されたビデオだ。Falcon 9のブースターが降下中に姿勢が不安定となりケープ・カナベラル宇宙基地の着陸ゾーンをわずかにそれて海中に落下する一部始終がはっきり記録されている。

火曜日のフライトではISS向けの2.5トンの実験装置と補給物資が打ち上げられた。これにより250回の実験が可能になると期待されている。 SpaceXにとって16回目の補給船打ち上げミッションだった。

Dragon補給船はFalcon 9の打ち上げ後約10分で2段目ロケットから予定どおりに分離されISSに向かって飛行を開始した。SpaceXの発表によれば、Dragon補給船がISSに到達するのは12月8日になる。今回用いられたDragonにとってこれが2回目の飛行となる。最初の飛行は2017年2月に実施された。

このミッションで次の重要なステップとなるのはDragonを安全にISSに接続することだ。 ISSのクルーは全長17.6メートルのロボット・アームを操作して補給船を捕獲し、慎重に引き寄せることになっている。

Dragon補給船は来年1月に入っておよそ1.8トンの物資を搭載して地球上に戻る。バハ・カリフォルニア沖の太平洋上に着水することが予定されている。

今週はSpaceXにとって忙しいものとなった。同社は民間の衛星運営企業、Spaceflight Industriesの委託により64基のミニ衛星を打ち上げている。このミッションでは15基のマイクロ衛星と49基のキューブサットが打ち上げられた。SpaceXによれば、顧客には民間企業、大学、政府機関だけでなく 中学校のプロジェクトも含まれていたという。国籍はアメリカ、オーストラリア、イタリア、オランダ、フィンランド、韓国、スペイン、スイス、イギリス、ドイツ、ヨルダン、カザフスタン、ポーランド、カナダ、ブラジル、タイ、インドの17ヵ国に及んだ。

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滑川海彦@Facebook Google+