Blue Origin主導の開発チームが有人月着陸船の原寸大エンジニアリングモックをNASAに納入

Blue Origin(ブルー・オリジン)とその「ナショナルチーム」のメンバーであるLockheed Martin(ロッキード・マーチン)、Northrop Grumma(ノースロップ・グラマン)、Draper(ドレイパー)が、有人月着陸船のフルスケールエンジニアリングプロトタイプ(Blue Originプレスリリース)をNASAに納入した。NASAはこのプロトタイプの検査とレビューを進め、Artemis(アルテミス)計画の月ミッションに、最終的に利用する最終機体を作製するための準備を整える。

これによりBlue Originの有人着陸船は、テキサス州ヒューストンにあるNASAのジョンソン宇宙センターでテストを受ける準備が整った。このモックアップは実際に機能するわけではないものの、例えばBlue Originが製造予定の下降モジュールやロッキード・マーチンが製造予定の上昇モジュールなど、計画されている着陸船システムのフルサイズのコンポーネントも組み込まれている。モックアップ全体の高さは40フィート(約12.2m)弱だ。

このモックアップにより、乗務員と相互作用するテストとシミュレーションを可能になる。テストとシミュレーションを早期に開始することで、Blue Originとそのパートナーは最終的に使われる着陸船を開発する際に計器とコンポーネントのレイアウト、キャビンからの窓越しの視認性、座席や出入り口などを含む、設計上のさまざな観点に対する貴重な洞察を得ることができる。

モックアップの設計を活用できるのと同時に、シミュレーションによって宇宙船の多くの要素の設計に役立つ情報を得られる。どちらもBlue Originとナショナルチームが手掛けていることで、宇宙船をあたかも使用しているような状況を生み出すことでのみ収集できる情報はたくさんある。コンピューターによるシミュレーションや過去の教訓だけから得られない情報も多いのだ。

Blue Originとそのナショナルチームは、NASAから最初の有人着陸システム(HLS)の契約を勝ち取った3社のうちの1つだ。今後も同チームは、このエンジニアリングモックアップの具体化を続け、開発が進むにつれて、最終的な生産モデルにさらに近付けるための要素を追加していく。最終的には、次の米国人男性と初の米国人女性を2024年までに月面に着陸させるという野心的な目標のために、NASAをサポートする。

画像クレジット: Blue Origin

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(翻訳:sako)

NASAがSpaceX、Blue Origin、Dyneticsの3社を月面着陸船の開発に指名

NASAがアルテミス計画で有人着陸システムを提供する企業を選出した。これには、1972年以降初めて宇宙空間から月面に宇宙飛行士を運ぶこととなる着陸船が含まれる。幅広い分野にわたる競合他社の中から選ばれたBlue Origin、SpaceX、Dyneticsは、月面着陸において初の女性飛行士と新たな男性飛行士を月面に運ぶための有人着陸システム(HLS)を開発および構築する予定だ。2024年までの達成を目指している。

SpaceXが提案したStarshipが、SpaceX Super Heavyロケットを用いて発射する着陸船として選ばれた。Starshipは同社が現在開発中の宇宙船で、軌道、月、火星へのミッションに完全再利用可能な宇宙船として設計されている。Super Heavyも現在開発中だ。これは完全再利用可能なブースターとして機能し、全ペイロードを搭載したStarshipを軌道に乗せることができる。Starshipは以前使用されたモデルやデザインとは非常に異なるため、着陸船として選出された事実は実に興味深い。

NASAによると、Starshipの柔軟な設計が長期的な目標に役立つようだ。OrionやGateway月軌道ステーションから月面までなどのより長い距離を移動する輸送乗務員に対し、地球軌道での燃料移送を提供できるようになる。SpaceXの提案には、宇宙空間における車両間の推進剤移送のデモンストレーションや、無人での月面着陸テストが含まれている。

興味深いことに、2024年までにOrionのクルーカプセルを月に運ぶために開発されたSpace Launch System(スペースローンチシステム、SLS)は人を輸送できる唯一の人間用ロケットとなるが、NASAのJim Bridenstine(ジム・ブライデンスタイン)長官によると、必ずしも人が搭乗できる着陸船がSLSを使用して月に到達する必要があるわけではないと言う。理論的には、Super HeavyがStarshipを発射して月に運び、そこでオリオン(SLSを使用して移動)とドッキングして、月面への旅の最終行程にまでいたるというシナリオだ。

SpaceXによる有人Starshipのコンセプト

SpaceXによる有人Starshipのコンセプト

Blue OriginによるBlue Moonは、専用の着陸船に関してはより伝統的な設計になっており、Starshipほどは統合されていないマルチパートの降下および上昇システムを備えている。 昨年の国際宇宙会議でJeff Bezos(ジェフ・ベゾス)氏は、Blue Originの入札の際、より詳細なデザインのほかパートナー企業やその役割を提示した。その「ナショナルチーム」では、Lockheed MartinがHLSを打ち上げる発射システムの「上昇要素」部分を構築し、Northrop Grummanが着陸船を打ち上げ機から降下位置に移送するシステムを提供。Blue Originは着陸船と実際に月面に降ろすための降下システムを開発する予定だ。また、Draperが航空電子工学と降下におけるガイダンスを提供。Blue Moonは、Blue OriginのNew GlennロケットとULAのVulcanの両方で打ち上げることができる。Starshipと同様に、Blue Moonの着陸システムも宇宙飛行士を運ぶ前に別の打ち上げ機を使って移動することが可能だ。

Blue OriginによるBlue Moonの着陸コンセプト

Blue OriginによるBlue Moonの着陸コンセプト

Leidos(旧SAIC)の子会社であるDyneticsは、宇宙と防衛の専門知識を実証してきた長い歴史を持ち、1969年に設立されている。上昇および降下の機能を備えた着陸船1機を含むDynetics Human Landing Systemを開発し、月旅行の際にはULAのVulcan発射システムに搭載されて、月に向かう。DyneticsはSierra Nevada Corpなど、多くの下請業者と共に同システムの開発に取り組む。

Dynetics Human Landing Systemのコンセプトデザイン

Dynetics Human Landing Systemのコンセプトデザイン

この契約で競い合う企業のリストには、業界全域におよぶ共同チームを率いるベゾス氏のBlue Origin、NASAのCommercial Crewプログラムのプロバイダーの1社でもあるBoeing、Commercial Crew用の別の輸送船を開発し、5月下旬に初の乗員飛行を目指すSpaceXのほか、宇宙ステーションの補給を含むさまざまなミッションで使用するための再利用可能な宇宙往還機を開発するSierra Nevada Corporationや、同レースで驚きの勝者となったDyneticsなどの中小企業が含まれていた。

ここでの契約は、複数のプロバイダーに少なくとも2つのシステムを並行して開発させるというNASAの目標を反映している。これにより、大きな挫折に直面した場合にも冗長性が生まれ、またNASAは理論上少なくとも今後2つの有人着陸システムから選択が可能となるわけだ。アルテミス計画の目的は人を月面に再度送り込む事だけでなく、火星やその先を含む有人探査を見据え、NASAが深宇宙を目指すための中継地として確立させるためのものである。

契約は合計9億6700万ドル(約1030億円)に上る。支払いは10カ月の工程におけるプロバイダーのマイルストーン達成度合いに応じて行われる。NASAは電話にて、同ミッションを行うために必要な技術の多くはすでに存在し、参加している企業の多くはすでに彼ら自身の輸送船開発の追求に多大な投資を行っているため、今回の取り組みは前回月に行った際とは非常に異なるシナリオである事を言及している。

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Category:宇宙

Tags:NASA SpaceX Blue Origin Dynetics

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(翻訳:Dragonfly)

民間弾道飛行での宇宙飛行士の訓練にNASAは期待を寄せる

宇宙を第二の故郷と呼ぶ宇宙飛行士でさえ、初飛行を経験している。NASAは、Virgin Galactic(バージン・ギャラクティック)やBlue Origin(ブルー・オリジン)に委託して宇宙飛行士たちを弾道飛行を体験させ、数々の挑戦的な宇宙計画に備えてもらおうと考えている。これは現在、芽生え始めている民間宇宙飛行業界に新たな巨大市場が開かれることを示唆している。

2020年3月に開かれたNext Generation Suborbital Researchers conference(次世代準軌道研究者会議)で、NASAのJim Bridenstine(ジム・ブライデンスタイン)長官が演壇に立ち、NASAが現在民間ロケットの利用を検討しているのは、単にこれまでその可能性が存在していなかったからだと話した。

「それは、つい最近まで私たちが国として所有していなかった能力です」と彼は、Space.comの記事の中で語っている。

だが、現在その能力が確かにあると断言もできない。Virgin GalacticもBlue Originも、宇宙との境目をほんのかすった程度の弾道(準軌道)飛行を実証できただけで、試験飛行や商用飛行となると、まったく別の話だ。

関連記事:Virgin GalacticのSpaceShip2がマッハ2.9で宇宙の淵に到達(未訳)

Virginは既にチケットを発売しているが、客を乗せた初飛行の日程は決まっていない。2020年中に行われる公算は大きいが、信頼できるスケジュールを立て、ミッションの成功を記録しない限り、現時点ではただ熱望しているだけとしか見えない。それが宇宙旅行というものだ。その道の99パーセントは、まだ霧の中だ。

だがVirginにせよBlue Originにせよ、ロケットの打ち上げを請け負うその他の企業にせよ、今後数年以内に、ペイロードや人を乗せる能力を持つ宇宙船の弾道飛行を成功させることは間違いない。NASAが彼らの採用に熱心なのは、そのためだ。

それと同じぐらい避けられない現実として、奇妙に思えるのは宇宙飛行士の訓練をすべて地上で行わなければならないことだ。彼らはさまざまなシミュレーターで訓練を行う。いわゆる「嘔吐彗星」や、彼らが大好きなプールでのトレーニングなどだ。それでも宇宙を体験するには、宇宙に行くしかない。

Commercial Crewのデモミッションで最初にISSへ飛行する予定の宇宙飛行士Bob Behnken(ボブ・ベンケン)とDoug Hurley(ダグ・ハーレー)。Crew Dragon宇宙船のシミュレーターを操作している。

つい最近まで、それは何億ドルもするロケットの先端に乗ってISSまで飛ぶことを意味していた。またはその昔は、オービターや着陸船で月へ行くことを意味していた。

その準備として可能なことはほんのわずかしかないが、ごく限られた中の1つとして、安価で一時的な宇宙飛行がある。それを実現するのが弾道飛行だ。

ロケットで大気圏外に出て、その結果として数分間の無重力を体験できる環境は、訓練や実験や、その他のこれ以外には軌道上でしか行えない活動にはうってつけだ。NASAはその実現を期待しているのだが、まだ実際の契約には至っていない。

VirginやBlue Originなどの企業は、最初の数回の弾道飛行によりチケットの完売をほぼ確実にしたが、宇宙ツーリズムには産業としての実績はなく、また現在のパンデミックやその後に予想される経済の落ち込みにより、そうした高額商品(または宇宙ツーリズムを提供する能力)は深刻なダメージを受ける恐れがある。そのためこうした政府との定期契約は、弾道飛行の提供や支援を行う企業にとっては、ほぼ間違いなく大きな安心となる。

「これはNASAにとって大きな移行ですが、重要な移行です」とブライデンスタイン長官は言う。この移行は、近年の政府事業がそうしているような、単に民間企業への委託を増やすという程度の話でなく、民間飛行を公式なトレーニングに利用するということだ。飛行は徹底的に安全でなければならないが、ISSへの飛行時と同じ厳格な基準に従う必要もないと長官は述べている。

実際にはNASAが運用しない飛行でのトレーニングやテストが増えることで、新しいミッションの準備が促進される。準備が加速されると同時に、その能力を唯一持っていたNASAによる飛行ミッションに依存するこれまでのようなプログラムの煩雑さが低減される。私は、この件に関する詳しい内容をNASAに問い合わせている。新しい情報が入り次第お伝えする予定だ。

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(翻訳:金井哲夫)

Blue Originの新ロケットエンジン生産施設が2月17日に開所

Blue Origin(ブルー・オリジン)は米国時間2月17日の月曜日に、ロケットエンジン生産施設をアラバマ州ハンツビルに開所すると、14日にツイッターで明らかにした。新施設ではロケットエンジンを現在よりも早く生産できる見込みだ。同社は開発中のBE-4エンジンを自社のNew Glennロケットに採用する予定で、エンジンの生産スピードアップは有用だ。新ロケットVulcanの開発を進めるUnited Launch Alliance(ULA)への供給にも貢献する。

Blue Originは2011年にBE-4の開発を始めた。当初は自社のNew Glennロケット向けにデザインされていた。New GlennロケットはBlue Originの初の軌道打ち上げ機となる。2014年、ULAは次世代VulcanのエンジンとしてもBE-4を採用すると発表。BE-4は、燃料として液化天然ガスと酸素を使い、推力は55万ポンド(約25万キロ)で、重量貨物を打ち上げられるようにデザインされている。

Blue Originは生産するBE-4エンジンのうち最初の2つを2020年にULAへ納入する、と話している。ULAは初の静的点火試験を行うべくBE-4エンジンをVulcanに搭載する。Blue Originはまた、このエンジンを積んだNew Glennロケットの初テストフライトを2021年に行うことを目指している。これはエンジンの性能を証明するために長期にわたって行われるテストのプロセスで、ライフサイクルテストを通じて品質を保証するのが目的だ。ライフサイクルテストは、ハードウェアが実際に使用期間中に受けるであろうストレスや動作条件を模して行われる。

Blue Originのテストプロセスには新部品の追加導入と、NASAマーシャル宇宙飛行センターにあるTest Stand 4670のアップグレードが含まれる。アップグレードによりBlue Originは片側でBE-3エンジンを、別の側でBE-4エンジンをテストできる。

Blue OriginとBE-4にとってはエキサイティングな時期であり、このエンジンがマーケットに出回ってしばらく経つ。自社の打ち上げ機の計画が進捗にかかわらず、今後BE-4は米国の宇宙打ち上げプログラムを前進させる中心的なものとして位置付けられるかもしれない。

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(翻訳:Mizoguchi

宇宙開発企業Blue Originが新本社と研究開発センターをワシントン州に開設

eff Bezos(ジェフ・ベゾス)氏が創設した宇宙開発企業のBlue Origin(ブルー・オリジン)は、ワシントン州ケントに新たな本社および研究開発施設を開設し、正式にリボンカットを行った。Amazon(アマゾン)の本社の近くにある23万平方フィート(約2万1368平方m)の新施設は、30エーカー(約12万1406平方m)以上の土地の中に建設され、最終的には1500人のBlue Originの従業員の拠点となる。

新本社はプリンストン大学の物理学者であるGerard O’Neill(ジェラード・オニール)氏にちなんで、O’Neill Buildingと名付けられた。O’Neill氏は1970年にNASAと共同研究を行い、長期滞在者や宇宙船内での農業のため、地球の重力を再現するために回転するよう設計された、いわゆるO’Neillシリンダーを含む、宇宙で人間が持続的に活動するための未来技術を考案したことで知られている。

ベゾス氏は2019年、オニール氏のビジョンの実現について議論し、地球上の人類の住み家を拡張するために、1つの宇宙ステーションで100万人もの人々が居住する方法を詳しく語った。

Blue Originの従業員数は、米国のフロリダ州ケープ・カナベラル、テキサス州西部のバンホーン、アラバマ州ハンツビルの施設を含めれば2500人を超える。今年3月には、アラバマ州にてエンジン製造の専用施設を開設する計画だ。そして2020年にはサブオービタルロケットのNew Shepardにて、初の有人飛行を実施する。New Shepardは有人飛行の認証の獲得に向けて順調に開発が進んでおり、さらに翌年には大型ロケットのNew Glennの運用を始める予定だ。

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(翻訳:塚本直樹Twitter

Blue Originの準軌道打ち上げ機「New Shepard」が12回目の打ち上げで有人宇宙飛行の未来に少し近づく

Jeff Bezos(ジェフ・ベゾス)氏が創業したBlue Originが、準軌道打ち上げ機であるNew Shepardのミッションに再度成功した。それは、人間の宇宙飛行のための宇宙船を目指す前段階として重要なステップだ。それはまた、この再利用型ブースターの6度目の飛行であり、同社の多段ロケットの信頼性と回収可能性の実証という点でBlue Originの新記録でもある。

Blue OriginがNew Shepardで商用荷重を運んだのはこれが9度目で、そのシステムは毎回少しずつ、実際にクルーを乗せられるレベルへと近づいていることが、デモンストレーションされた。今回の打ち上げは研究用の実験機器や、児童生徒たちの勉強で使われる教材を運んだ。それにまた、世界中の児童生徒たちが書いた数千枚のハガキも運んだ。それらの宛先は、Blue Originが学校と児童生徒たちに宇宙教育教材を提供する非営利団体として今年の初めに創ったClub for the Futureだ。

最終的にBlue Originは、New Shepardに有料の宇宙旅客を乗せて飛ばすつもりだ。ただしそれには、民間の宇宙飛行士が研究などの目的で同乗する。New Shepardの上部に搭載するBlue Originのカプセルは旅客定員が6名だが、テストにせよ商用のフライトにせよ、実際に人を乗せるのがいつになるかは、まだわからない。

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(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

ベゾスのBlue OriginがNew Shepardを打ち上げ予定、ブースター再使用の拡大目指す

Jeff Bezos(ジェフ・ベゾス)が設立した宇宙開発企業であるBlue Origin(ブルー・オリジン)は米国時間12月10日に打ち上げを予定している。打ち上げ時間は米国中央標準時で午前8時30分(日本時間12月10日午後11時30分)に設定されている。打ち上げのライブ配信は、打ち上げの約30分前から始まる。

New ShepardロケットがBlue OriginのWest Texasの発射施設から打ち上げられる。天候が適さない可能性もあるため、チームは状況を見守り、延期しなければならない場合にはその旨が伝えられる。

今回の打ち上げはいくつかの理由で注目に値する。すでに5回使われた再使用可能なブースターが6回目の打ち上げに用いられる。New Shepardは弾道飛行を行うロケットであり、子どもたちを宇宙科学や探査に参加させることを目的としたBlue Originの非営利団体であるClub for the Futureを通じて、子どもたちから寄せられた何千通もの手紙や実験機器などの物資を搭載する予定だ。

【更新1】気象状況により、Blue Originは米国中部標準時の午前10時30分(日本時間12月11日午前1時30分)にロケットを打ち上げる予定だ。

【更新2】気象状況が改善されないため、Blue Originは米国時間12月10日の打ち上げを取りやめ、翌12月11日午前中に再度打ち上げを行うかを後ほど決定する。

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(翻訳:塚本直樹 Twitter

Blue OriginのNew Shepardによる宇宙旅行代金は数十万ドルになる見込み

Jeff Bezos(ジェフ・ベゾス)氏が立ち上げたロケット製造・打ち上げサービスのBlue Originは2019年に初の有人ロケット打ち上げを明言していたが、2020年へと後ろ倒しにせざるを得ないようだ。

サンフランシスコで開催中のTechCrunch Disruptのステージで、Blue OriginのCEOであるBob Smith(ボブ・スミス)氏は有人フライトの2019年の打ち上げウィンドウは狭まってきていると話した。「我々は日付を優先させようとはしていない」とも語った。

しかし商業打ち上げは近づいてきていて宇宙船New Shepardによる宇宙フライトのチケットは「数十億ドルになる」ようだ。今年末までに有人打ち上げを計画していた企業はBlue Originだけではない。6月にNASAはBoeing(ボーイング)とSpaceX(スペースエックス)がそれぞれ9月と11月に有人飛行を行うスケジュールを立てた。8月時点の発表文でも、SpaceXは今年後半に国際宇宙ステーションに人を送り込む計画だと述べていた。

Blue Originも計画に沿った打ち上げに向けて作業をまだ進めていて、目下の計画停滞は世界一の金持ちが支援する企業にとっては大した問題ではないだろう。Blue OriginのCEO(そして出資者でもある)にとって、同社の究極的な目標は人間が住むもうひとつの惑星を確保することだ。これは達成するのに数十年かかることのようにも思える。スミス氏やその他の人も、宇宙産業の商業面での潜在能力を確信している。

「打ち上げの回数は増えるだろうし、これまでも増加してきた」とスミス氏は語る。Blue Originの創業者によると、宇宙産業における打ち上げ回数は年3%の割合で増えてきていて、一部のマーケットアナリストはこの数字が50〜80%になる可能性がある、とみている。そしてこうした数字には、ロケットの軌道投入を考えているFacebookやAlphabet、Amazonのような企業のものは含まれない。

「打ち上げ回数は今後10年間でかなりのものになるだろう」とスミス氏は話す。何十年もの間、政府が主な顧客だった宇宙産業が変わりつつあり、「基本的に、より商業的なモデルに移行している」と同

氏は指摘した。

画像クレジット:Flickr under a license.

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(翻訳:Mizoguchi)

ベゾス、Blue Originの月植民計画と着陸船を公開

今日(米国時間5/9)、ホワイトハウスからほど近いワシントンの会場で、Amazonのファウンダー、ジェフ・ベゾスが2024年までに有人月旅行を実現する計画の詳細を発表した。聴衆にはプレス、企業と政府の幹部に加えて大勢の中学生も招かれていた。同時にBlue Moonと呼ばれる月着陸船も公開された。

ベゾスによれば月は資源の宝庫だと言う。ベゾスが私費を投じて運営している宇宙企業、Blue Originは、今年中にNew Shepardロケットで有人宇宙旅行を行う予定だ。

イベントのステージは最初に月を歩いた人間、ニール・アームストロング宇宙飛行士の「人類にとって大きな一歩」という有名な言葉をモチーフにしていた。ここでベゾスは「人口が1兆人に達したとき人類はどこに生存のための資源を求めるべきか?」という非常に深刻な問題に答えようとした(こちらはベゾスの過去のビジョン関係の発言)。

宇宙というユートピアに進出する上で最大のハードルは、巨大通販会社のファウンダーとして熟知している問題、すなわちロジスティクスとインフラのコストを実現可能なレベルに削減する方法だ。

ベゾスは「われわれの世代の役目は宇宙旅行のインフラの構築だ。われわれは宇宙への通路を開かねばならない」と述べた。

アメリカ政府機関と特にNASAの研究によれば宇宙への道は月を経由するという。ベゾスが今日のイベントで月着陸船を披露した)理由の一つはそこにある。

アメリカのペンス副大統領はこの3月、国家宇宙委員会(National Space Council)の総会でNASAに対し、「2024年までにアメリカの有人宇宙船を月周回軌道に乗せ、月の南極に着陸させるためにあらゆる手段を活用する」よう指示した。

南極が目的地として選ばれた理由は氷だ。NASAのジム・ブライデンスタイン長官は「われわれの科学者の調査によれば、4.5億トンの氷が月の南極に存在する」と述べている。

月の自転軸の傾きにより南極には太陽の光が射さない極めて低温の場所がある。南極のクレーター中に摂氏マイナス160度という低温により蒸発を免れた大量の氷が埋まっているとNASAの科学者は推定している。氷はロケットの推進剤に利用することができる。

マイク・ペンス副大統領は3月の国家宇宙委員会総会で大統領のコミットメントが裏付けだとしてこう述べた。

今世紀、われわれは新たな野心を抱いて月に戻る。単にそこに行くだけではなく、永久に日照のない南極のクレーターの底の氷から原子力によって水をつくり、酸素や宇宙ロケットの推進剤を得る。そうした補給があればわれわれの宇宙船は数年ではなく数ヶ月で火星に到達できるだろう。

Y Combinatorが支援するスタートアップ、Momentusは水を推進剤とするロケットを建造中だ。このロケットは原子炉から得られた電力で水を加熱し、水プラズマによって推進力を得る。

しかしこれまでNASAの有人宇宙プロジェクトは予算の削減などにより遅延を重ねてきた。月に戻るというのは非常に高価な事業となる。NASAもアメリカ政府も推定金額がどれほどになるか明らかにしていない。(略)

「アメリカは月に戻る」というのは2017年にトランプ大統領が署名した宇宙政策指令1号(Space Policy Directive 1)に基づくものだが、NASA のプランの具体的内容は不明だ。

これがBlue Originが重要な役割を担って登場した背景だ。

今日披露されたBlue Moon月着陸船に加えて、Blue Originは2種類の宇宙ロケットを開発している。New Shepardロケットは低軌道を短時間飛行して宇宙飛行に関するテクノロジーやノウハウの収集を行うことを目的としている。ペイロードを地球周回軌道に打ち上げるのはNew Glennロケットの任務だ。 2021に最初の打ち上げが予定されており、45トンのペイロードを地球周回低軌道に投入できる。ロケットはどちらも垂直着陸によって回収され、複数回利用される。

先週、Blue OriginのNew Shepardは低軌道を弾道飛行して各種の実験を行うことに成功している。これは11回目のミッショだった。New Shepardは成層圏と宇宙の境界である高度100キロメートルまで上昇してカプセルを切り離した後、逆噴射と垂直着陸によって回収された。カプセルは慣性で上昇を続け、こちらはパラシュートによって無事回収された。

ベゾスはこのカプセルを一般人向け宇宙観光旅行にも利用する計画で、昨年のReutersの記事によれば、チケットは20万ドルから30万ドル程度だという。

一方、イーロン・マスクのSpaceXはこれとは異なるアプローチを採用してきた。SpaceXは大型ロケットを開発し、さらに超大型ロケットの開発に進んでいる。同社として「最新、最大のロケット、Falcon Heavyは63.8トンのペイロードを地球周回軌道に投入できるSpaceXではさらに惑星間飛行を視野に入れた次世代宇宙船、Starshipを開発中だ。こちらは100トンのペイロードを低軌道に乗せることができるという。Starshipの最初の打ち上げは2020年に予定されている。.

これ以外にも活動中の民間宇宙企業は数多い。スタートアップとしてはリチャード・ブランソンのVirgin Galacticを始め、Rocket Lab、Vectorなどが打ち上げプラットフォームの開発に取り組んでいる。スタートアップは現在の衛星打ち上げ事業の主流となっているロシアのソユーズ、アメリカのロッキード・マーティンとボーイングの合弁企業ULA、EUのアリアンスペースといった巨大企業のロケットと競争しなければならない。またロケット以外にも衛星、着陸船、制御システムなどの重要部分を開発、製造するスタートアップも多数現れている。

ベゾスはイベントで「月に戻るときが来た。単に旅行するのではなく、われわれはそこに留まるのだ」と宣言した。

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滑川海彦@Facebook

HyperSciencesは超音速ドリル技術で宇宙飛行の「大逆転」を目指す

Eron Muskがトンネルを掘りながら、地球の遙か上空を飛びたいと考えているのは偶然ではない。HyperSciencesに聞けば、宇宙へ行く最良の方法は、ドリル技術を逆にして先端を上に向けることだと話してくれる。それは、一般にロケットだと思われている大きな筒の上に小さなペイロードが載っかったやつを推進するための、巨大で高価な燃料タンクの「段」を取り去ることを意味する。

今月、同社は準軌道飛行を成功させ、その冒険の旅を大きく前進させた。これは、NASAの助成金で行われた研究の第一段階を締めくくるものであり、概念実証のための打ち上げを2回成功させ、同社のラム加速と化学燃焼のワンツーパンチを見せつけた。

HyperSciencesは、ニューメキシコ州トゥルース・オア・コンシクエンシーズから1時間という人里離れた商業用宇宙港スペースポート・アメリカの打ち上げ場で、いくつもの高高度試験を行い、アイデアの実現に取り組んでいる。同社は1.5フィート(約45センチ)から9フィート(約274センチ)を超えるものまで「さまざまな発射体」を打ち上げた。HyperSciencesは、テキサス大学の航空宇宙研究グループとパートナーシップを組み、市販の電子部品を使ってシステムを製作している。

「私たちは600Gから1000G(つまり地球の重力の600倍から1000倍)でペイロードを打ち上げることを目標にしていましたが、それが達成できました」とHyperSciencesの上級顧問Raymond Kaminskiは話す。「ペイロードが感じる衝撃は、市販の電子製品(携帯電話など)を床に落としたときと同じ程度のものです」。Kaminskiは、エンジニアとして国際宇宙ステーションの仕事に就いていたNASAを離れ、しばらくスタートアップの世界へ転向していたが、その後、HyperSciencesで航空宇宙の世界に戻ってきた。

1.5フィートのシステムを打ち上げれば、NASAの目的を満たすには十分だったが、彼らは誰が見ても驚く長さ9フィート、直径18インチ(約46センチ)の発射体も試している。「私たちは9フィートのやつを打ち上げます。もう誰も否定できないでしょう」とKaminskiは言っていた。

面白いことにすべての始まりは、HyperSciencesの創設者でCEOのMark Russellが、深い深い穴をいくつもあけた後のことだった。Russellは、Jeff Bezosの宇宙事業Blue Originでカプセル開発の指揮を執っていたが、家業の採掘事業に加わるためにBlue Originを去った。彼はBlue Originの10人目の社員だった。Russellには、採掘と掘削の経験があった。そこから、岩を砕き穴を掘るために化学薬品を詰め込む筒を長くすれば、宇宙へ行けるのではないかと思いついたのだ。

「筒と発射体を用意する。先端を尖らせて、筒には天然ガスと空気を詰める」とRussellは説明してくれた。「それは、サーファーが波に乗るように、衝撃波に乗るんです」

彼らは、もっと手早く、安く、ずっと効率的に宇宙に物資を打ち上げることができると信じている。しかしそれには、プロセスを根底から考え直さなければならない。SpaceXの再利用型の第一段ロケットが宇宙飛行の潮流を変えたのに対して、HyperSciencesの技術は新発見に過ぎない。ただ、彼らの展望、つまり推進力としての超音速技術をスケールアップさせれば、宇宙に物資を送るという複雑で危険性の高いビジネスに応用できる。

超音速推進システムは、発射体を少なくとも音の5倍の速度で打ち上げることができる。つまりそれはマッハ5以上のスピードであり、1秒で1マイル(約1.6キロメートル)以上進むことができる。現在話題になっている超音速技術のほとんどは、防衛技術に関するものだ。高度なミサイル防衛システムもかいくぐったり、迎撃される間もなく目標を攻撃できる高速なミサイルなどだ。しかし、航空宇宙と地熱は、また別の興味深い大きな分野でもある。

昨年12月、ワシントンポスト紙が伝えたところによると、現在、ロケット推進式の兵器から超音速兵器へ移行する計画は、防衛政策において優先順位が「第一位、第二位、第三位」だという。米国防総省の2019年度予算のうち20億ドル(約2220億円)が超音速計画に割り当てられていて、それはほぼ3年連続で前年比を上回っている。「政府が欲しいと言ったときにその技術を開発し始めるのでは遅すぎます」とKaminski。「後追いになってしまいます」

そうしたチャンスはあるものの、HyperSciencesは兵器の世界への参入を熱望しているわけではない。「私たちはプラットフォーム型超音速企業です。兵器開発業者ではありません」とHyperSciencesのメンバーはTechCrunchに話してくれた。「武器商人になるつもりはありません。HyperSciencesは、世界をより良くすることに専念しているのです」

そのためHyperSciencesは、武器以外の超音速利用に針路を向けている。同社は、同社が利用しているラム加速技術の応用では先駆者であり、そこで発明された技術の独占権を持つワシントン大学の研究所室に資金援助をしている。

Shellから10億ドル(約1110億円)の出資を受けた地熱事業で、HyperSciencesは、彼らが呼ぶところの「Common Engine」(共通エンジン)を開発できた。地熱が溜まっている深度まで穴を掘ることができ、星に向けて物資を打ち上げることもできる超音速プラットフォームだ。「HyperSciencesとは、まずは地球を本当に理解することなのです」と、掘削から学んだ教訓を飛行計画に応用できる相互互換システムのひとつの利点を指して、Russellは言った。

「私たちのHyperDrone技術は、NASAの新しい吸気式超音速エンジンのテストや、世界の各地を1時間から2時間で結ぶ次世代の超音速または極超音速飛行機を開発したい航空機メーカーの役に立ちます」とHyperSciencesのメンバーは説明してくれた。「現在は、実験のためだけに大型飛行機にロケットを載せる必要があります。私たちは、地上に設置した管の先でそれが行えます」

買収に興味を示しているとの噂もあるHyperSciencesだが、今のところは堅実で実践的な航空宇宙業界ではまずあり得ない、通常とは違う風変わりなクラウドファンディング・モデルを追求している。同社は現在、SeedInvestのキャンペーン中で、適格投資家以外の小規模な投資家による最低1000ドルからというじつに少額な投資を、夢の実現のために募っている。この記事を書いている時点では、2000人近くの比較的小規模な投資家から500万ドル(約5億5500万円)が集まっていた。

「SpaceXのシードラウンドは、大手のベンチャー投資企業から受けています」とRussellは言う。「どこから入れるでしょう? 巨大な業界です。普通なら一般人は絶対に投資に参加できません」

Russellは、HyperSciencesの事業を柔軟な形にしておきたいと考えている。そして、ベンチャー投資家に頼れば、会社の目標を絞るように強要されるに違いないと恐れている。Shellとの関係はあるものの、その石油とエネルギーの巨大企業は彼らの株式は一切持っていないと、HyperSciencesは即座に答えてくれた。業界固有の契約の間を渡り歩きながら、クラウドファンディングで資金を得て、HyperSciencesはそのプラットフォームを並行して適用させる道を追求し続けたいと願っているのだ。

「宇宙飛行の次なるアーキテクチャーでは、全般的に超音速を使うことになります」とRussellは話す。「私たちはまさに、宇宙飛行の流れを変えるアイデアから、これをスタートさせました。ロケットの第一段と、できれば第二段を省略し、すべてのエネルギーを地上に置く……間違いなく宇宙飛行の流れが変わります」

[原文]
(翻訳:金井哲夫)

宇宙船の液体極低温化技術や空中回収でNASAが$44Mの助成金をBlue Originらに

NASAがアメリカの宇宙企業数社と、総額4400万ドルの巨額なパートナーシップを結んだ。Blue Origin, Astrobotic Technology, United Launch Alliance(ULA)などの各社が、宇宙利用の安全性と効率性を探求する複数のプロジェクトで、それぞれ最大1000万ドルを受け取る。

その10種類の懸賞金はNASAの言う“転換点となる”技術を対象とし、将来性はきわめて高いが、地上または飛行時のデモに資金を要する。言い換えるとそれらは、研究室を出て実用レベルに達したものでなければならない。

ULAがここでは大きな勝者で、三つのプロジェクトに計1390万ドルを受け取る。内1000万ドルは、月面着陸船を単純化し改良する液体燃料の極低温化管理システムに向けられる。残りは、長期間のミッションのための極低温液体プロジェクトと、最大8000ポンド(3632キログラム)までの、帰還船の空中回収のデモンストレーションに充てられる。帰還船は帰還の直前まで軌道を定常速度で周回していたものでなければならない。三つのうち、最後のがいちばん‘安い’プロジェクトだなんて、信じられないね!

1300万ドルをもらうBlue Originも、着陸船の極低温液体管理システムを探求する。どうやらNASAは、月の表土に執着関心があるようだ。残りの額は、月面着陸を容易にするための一連の高度なセンサーの試験に充てられる。同社はこれら二つのシステムを、100キロメートル上空のNew Shepard機上でテストする。

もう一社Astrobotic Technologyにも1000万ドルが行く。こちらはBlue Originと同じく、Terrain Relative Navigation(地形照合航法, TRN)のための一連のセンサーを開発する。これは着陸船に“地形の安全性の判定”という知性を与える技術で、着地直前の具体的な状況下で、実観測により、安全性を確保する。

Mars 2020 Roverは、独自のTRNシステムを使用するが、今回の資金はより高度な方式を対象とする。でも下図のGIF画像を見れば、TRNの概念を理解できるだろう。

今回のNASAの研究資金提供事業では、これら以外のプロジェクトも対象になっている。詳細を知りたい方は、このパートナーシップの発表ページへ行ってみよう。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

ジェフ・ベゾスのBlue Originの打ち上げテスト成功――カプセル、ブースターとも予定どおり無事回収

今日(米国時間7/18)、ジェフ・ベゾスの宇宙企業、Blue Originはテキサスの基地でこれまででもっとも重要な発射実験の一つを実施した。今回のテストでは上空で乗員カプセルの脱出用ロケットが点火され、カプセル、ブースター双方を無事回収することに成功した。ブースターからの切り離し直後に乗員カプセルのロケットが予定どおりのタイミングで点火され、カプセルはこれまでで最高の高度を達成した。

このテストの成功はジェフ・ベゾスの宇宙企業にとって非常に大きな意味がある。Blue Originでは、このテストが成功すれば今年中に最初の有人飛行に進めるとしていた。

今日のテストはBlue Originとしては9回目、New Shepardロケットとしては3回目の打ち上げだった。2万人以上がYouTubeでのライブ中継を見た。Blue Originによるハイライトを下にエンベッドしてある。回収されたカプセル、ブースターとも再利用を前提にデザインされているという。

ブースターのロケットは2分半程度作動し、噴射停止直後にカプセルの脱出モーターが作動し、カプセルはさらに上昇した。ブースターは降下し、着陸脚を展開し、逆噴射によって降下速度にブレーキをかけ、着陸パッドにタッチダウンした。一方、カプセルは3基のメイン・パラシュートを展開して地上に戻った。ビデオを見るかぎり、双方とも理想的な状態で作動したようだ。

テストは全体で11分程度かかり、カプセルは最高時速3600キロ、高度は宇宙との境界とされる100キロを超えて118.8キロを達成した。

今回のテストでは情報収集のためにSkywalkerと呼ばれるダミー人形がカプセルに搭載された。 Blue Originでは近い将来、人間の宇宙飛行を予定している。ビデオストリーミングでガイドを務めたAriane
Cornelは「[ダミーは] 最大で10G程度を経験するかもしれない。しかしこれは十分人間が耐えられる範囲内だ。ことに今回のようにごく短時間であり、リクライニングシートに着座してうればまったく問題ない。われわれは乗員を無事に帰還させることを最大の目的としている」と述べている。乗員カプセルの脱出用ロケットは静止状態から宇宙空間まであらゆる状況で作動するようデザインされているという。今回のテストの大きな目的は高高度で脱出ロケットが正常に作動し、カプセルを安全に地上に戻せるこを確認するところにあった。

Blue Originでは早ければ今年末には有人飛行を開始する。商用飛行の開始についてはまだスケジュールが発表されていないが、「皆さんを宇宙にご案内するのが待ちきれない」とCornellは付け加えた。

下はテストのストリーミング中継の録画〔7:00ごろから中継が始まる。全50分程度〕。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

ジェフ・ベゾスのBlue Origin、乗員カプセルの打ち上げ、回収に成功

今日(米国時間12/13)、ジェフ・ベゾスの宇宙企業、Blue Originがまた新た段階を達成した。乗員を宇宙に運ぶために開発された最新のCrew Capsule 2.0が初の飛行に成功した。Crew Capsule 2.0はNew Shepardロケットの先端に取り付けられ、テキサス州の基地から発射されて、高度98kmまで上昇した後、無事に回収された。

New Shepardロケットには各種の商用、研究用の機器も搭載されていたが、打ち上げ10分後に着陸ステーション逆噴射によって安定を保ちながら静かに着陸した。Blue OriginがNew Shepardロケットを打ち上げ再利用するのはこれで7回目になる。有人の乗員カプセルはNew Shephardから切り離され、パラシュートで着陸した。

今回の飛行ではCrew Capsule 2.0は有人ではなかったが、 テスト用ダミー人形を積んでいた。実際の乗客が体験する衝撃などが記録された。Blue Originでは2019年初めには有人飛行を成功させたいとしている。来年はBlue Originにとって忙しい年となるだろう。つまりわれわれもBlue Originのロケットについて見聞きする機会が増えるはずだ。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

ジェフ・ベゾスが語る人生の極意

以下に紹介するのは、AmazonのCEOジェフ・ベゾスによる、インスピレーション、ワークライフバランス、そして発明家になるためのヒントだ。おっと、それに加えて彼のロケットが着地した際に、シャンパンでずぶ濡れになってどのように感じたかも語っている。この週末にロスアンゼルスで開催された有名な創業者たちが集う、招待客のみのイベントSummit Seriesの中でのインタビューで、この世界で最も裕福な人物は、これまでにないほどの率直さを見せたのだ。

なぜジェフがそれほどまでに無防備だったのかって?なぜならインタビュワーが彼の弟、マーク・ベゾスだったからだ。豪華なオルフェウム劇場で、古いベゾスの家族写真を背景にして、ジェフは彼の個人的な哲学を明らかにした。

ベゾスが高校卒業時に話した卒業生代表スピーチの締めくくり:「宇宙、それは最後のフロンティア。そこでまた会おう」、彼はスタートレックのモットーを行動への呼びかけに変えて語った。

ジェフは、今年初めにインターネット上で流行った「バフ・ベゾス」(筋骨逞しいベゾス)のことを笑い飛ばした。

彼は豊かな問題解決能力をどのようにして手に入れたのか:ジェフは4歳から16歳までの毎夏の期間を、彼が「ポップ」(じいちゃん)と呼んでいた祖父の所有する僻地の農場で過ごしていた。外部の助けを借りることのできない場所で、ポップは自力で様々なことをこなさなければならなかった。ジェフが言うには、ポップは自分で針まで作って、牛を縫合するような獣医師の仕事までこなしていた。ある夏ジェフは、ポップが5000ドルという破格の値段で買った、キャタピラー製の古い建築機械を修理することに時間を費やした。その機械がそれほどまでに安かった理由は、それが完全に壊れていたからだ。修理のために必要な巨大な通販荷物が届いたとき、それらは重すぎて動かすことができなかった。そこでポップはそれらを持ち上げるためのミニクレーンを自作した。「ポップは、初めはどうすれば良いかを知らない大規模なプロジェクトに取り組んでは、それをやり遂げて行ったんだよ」とジェフは語った。

窮地からの回復力を身につけることについて:ポップは、親指の先を切り落としてしまったことがある。彼はそのとき、動いているトラックから飛び降りて、車が通り過ぎる前に農場の門を開けようとしていたのだが、車が門に衝突し、もう少しでポップの指をもぎ取ってしまいそうになった。彼は猛烈に怒って、親指の先をちぎり取ってヤブに投げ捨て、自分で運転して病院に向かった。親指を脇腹に縫い付けて再生を待つのではなく、ポップは医者たちに素早く尻の皮膚を移植させることにした。ジェフは、それ以来「ポップの親指から尻の毛が生えていた」ことを明瞭に記憶していた。しかし不平を言うこともなく、ポップは彼の顔と一緒に親指も剃っていただけだった。「問題が起きる度に、回復力と問題解決力を発揮して、窮地を脱する方法を生み出すんだよ」とジェフは語った。

ロサンゼルスのSummitで語るマークとジェフ・ベゾス。画像クレジット: Michael Drummond

子育てについて:ジェフと彼の妻は、子供たちに4歳の時から鋭いナイフを使わせ、程なく電動工具も使わせるようにしている。もし怪我をすれば、自ら学ぶことになるからだ。ジェフによれば、彼の妻の意見は「知恵のない子供よりも、むしろ9本指の子供を持ちたい」というものなのだ。

ロマンチックなパートナーを選ぶことについて:ジェフが結婚したいと決意したとき、友人たちは彼のために、数多くのお見合いデートをお膳立てした。そして本当に機知に富んだ人物に出会って、彼は遂に自分の妻を見つけたことを知ったのだ。「私を、未開地の牢獄から連れ出してくれることができるような女性を、必要としていたんだよ」とジェフは語った。

仕事を辞めてAmazonを始めようと、どうして思うようになったのか:ジェフはウォールストリートで金融系ソフトウェアエンジニアとして働いていた。しかし1994年になって、彼は上司にインターネット書店を開きたいと申し出た。彼の上司は、それはとても良いアイデアだとは言ったものの、それは「良い仕事をしていない人にとっては『ましな』アイデアだ」という意味だった。数日の間にジェフは「このことを考える最善の方法は、私の人生を80歳に向けて眺めてみることだ」と決心した。そして彼は「後悔を最小にすることにしたんだ。後悔をカタログのように集めたくはないからね」という結論に達したのだ。間違ってしまったことに対して深い後悔を感じるかもしれないが、誰かを好きになって告白しなかったというような「行かなかった道」から生じる後悔の方がより深い。なので、会社を去ってAmazonを始めるべきだということは「結局あまり考えるまでもなく明らかなことだったんだ。もし失敗したとしても、80歳になったときには、挑戦したことをとても誇りに思うだろうからね」と語った。

ハロウィンのための野菜コスチュームを着た10代のジェフ・ベゾス

もし「ジェフ・ベゾス」ではないとしたら、何をしているだろうか:機械学習やAIに興味を持っている「幸せなソフトウェアエンジニアというところかな」。しかし彼はまた「バーテンダーだったらどうだっただろうという妄想もあるんだよ。私は自作のカクテルに自信があるからね」とも語った。しかしご注意を。彼は作業がとても遅いのだと告白した。彼の夢のバーにはこのような注意書きが書かれていることだろう「あなたのお好みはどちら?美味しいもの?またはすぐにできるもの?」。

ニュースへの個人的つながりとワシントンポストの所有について:ジェフは1973年の「ウォーターゲート事件の公聴会を、ポップは食い入るように見ていた」と語った。それは彼が2013年にワシントンポストを買収する際に表明した、調査的ジャーナリズムへの高い評価に対して、無意識に影響を与えているのかもしれない。

Summitが開かれたロサンゼルスのオルフェウム劇場で語るマークとジェフ・ベゾス。画像クレジット: Michael Drummond

宇宙旅行の必要性と、彼のロケット会社Blue Originについて:「地球を救うためには、宇宙に行かなければならない」とジェフは語る。「結構急ぐ必要があると思う」。それでも彼は、地球を居住可能な環境に保つためには、幾つかの計画が必要だと考えている。「私たちは太陽系内のあらゆる惑星に向けてロボットプローブを送る。これが最高のものなんだ。すぐに成果が出るものではないけれどね」。

宇宙起業家精神について:宇宙への機会を開く鍵は、地球の重力から物体を脱出させるコストを下げることだ。「インターネットで経験したように、何千人もの起業家たちが、宇宙でスタートアップを始めることができるようにするには、参入するためのコストを軽減する必要があるんだよ」インフラのコストが下がることで、ウェブ企業が爆発的に増えたことを指摘しながら彼は語った。

ポップの農場で働く少年時代のジェフ・ベゾス。

電話とマルチタスキングについて:マークは兄のジェフが驚くほど目の前のものに集中すること、そして滅多に電話に出ることがないと語る。ジェフは「友人たちや家族と夕食を食べるときには、私はやっていることに集中したいんだよ。マルチタスクは好きじゃないんだ。電子メールを読むときには、全身全霊を込めて読みたいしね」。ジェフは幼い頃、マルチタスクに対して抵抗したことを語った。彼が通っていたモンテッソーリスクールで、時間が経って次の課題に進むことを彼が拒否したので、教師は文字通り彼と椅子を拾い上げて、次のプロジェクトに移していたのだ。ジェフは、絶え間なくタスクを切り替えるのではなく、順番に集中するのだと語る。「私は一つ一つに集中して、結果的に複数のタスクをこなしていくんだ」。

ワークライフバランスを確立する方法について:「 私はワークライフハーモニーという言葉が好きだな」とジェフは語る。「バランスという言葉には、厳しいトレードオフがあるような響きがあるからね」。もし彼が、価値を生み出し、働くチームの生産的なメンバーであると感じることができたなら「家庭でも上手くやることができるようになるだろうね。逆に、私が家庭で上手くやれるなら、会社でも良き社員、良き上司になれるだろうし」。同僚や家族のエネルギーを奪い去る人物になってはいけない。彼は、単に一日に何時間費やすかではなく、情熱をもって参加できる十分なエネルギーがあるかどうかが問題なのだと考えているのだ。

ハロウィンのために仮装したジェフ(中央)と友人たち。

発明家になる方法について:世界は非常に複雑なので、問題の解決策を見つけるには「ドメインの専門家」でなければなならない。「しかし、危険な点は、一度ドメイン専門家になってしまうと、その知識に縛られてしまうかもしれないということなんだ」。物事に対しては、子供のような好奇心でアプローチしなければならない。発明家とは初心者の心を持った専門家のことだ、と彼は言う。

あなたを形作っているものについて:「私たちはみな、自分自身の物語を選ばなければならない。私たちを形作るものは、自分のした選択の結果であって、生まれ持った才能ではないということだね。私たちにできることは自分の選択を誇りに思うことだけだよ」とジェフは語る。「安らぎと快適」の人生を選ぶこともできるし、「奉仕と冒険」の人生を選ぶこともできる。でも80歳になったときに、より誇らしく思えるのは後者だろう。

最後にひとこと:「冒険と連帯を」と彼は言う。彼は単なる「友情」(friendship)の代わりに「連帯」(fellowship)という言葉を選んだと語った。なぜなら連帯という言葉は「一緒に道を進んで行くというビジョンを呼び起こすから」だ。

最後に、今回のトーク中で最も下らないエピソード:Blue Originの再利用可能なニューシェパードロケットの着陸成功を受けて、お祝いをしているトップの写真について話していたときのこと、ジェフはこう言った「私のカウボーイハットにはまだシャンパンのシミがついているんだよ。最高のシミだね」。

Summitの詳細については特集記事をご覧ください。

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(翻訳:Sako)

ベゾス、Amazon株を毎年10億ドル売却して宇宙事業の資金調達―乗員カプセルのモックアップを披露

Amazonのファウンダー、ジェフ・ベゾスは彼の他の事業の資金を得るために保有するAmazon株式の一部を売却する計画だ。 Reutersによれば、ベゾスは発表した。33回目のスペース・シンポジウムで 毎年10億ドル相当のAmazon株を売却して有人宇宙飛行を目指すBlue Originの資金にあてると述べた。ベゾス保有するAmazon株式は、水曜日の引け値で735.4億ドルの価値があるから、10億ドルの株式はごく一部に過ぎない。

Blue Originはイーロン・マスクのSpaceXと同様、ロケットの再利用によるコストダウンにより最終的にはそれ自身で黒字化を達成することを目標としている。このコストダウンによって宇宙で健全ビジネスが展開できると考えている点もSpaceXに似ている。ベゾスは「ロケットの再利用がビジネスの成功のカギ」というマスクの考え方に賛成した上で、「目標は似ているものの、われわれわれエンジニアリングのアプローチは〔SpaceXとは〕異なる」と述べている。

SpaceX同様、Blue Originも有人飛行の実現を目指している。Blue Originが有人宇宙飛行のために開発中のNew Glennロケット・システムは合計25億ドルのコストがかかるものと推定されている。これは巨額だがベゾスの資産も巨大だ。Blue Origin事業はビジネスであると同時に、ベゾス自身の情熱の対象でもあるようだ。ベゾスは引き続き現在のペースで資金援助を続けるとみていいだろう。

Blue Originは宇宙観光旅行を目指している。ベゾスは2018年を有人宇宙飛行開始の目安としている。シンポジウムでは11分間の宇宙旅行に用いられるのと同じサイズのリアルな乗員カプセルのモックアップが披露された。

画像:Mark Wilson/Getty Images

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

これがジェフ・ベゾスの次世代ロケットだ―Blue Origin、New GlennのCGビデオ公開

ジェフ・ベゾスの宇宙企業、Blue Originは次世代大型ロケット、New Glennを開発中だ。Blue Originはさきほどビデオを公開し、このスーパーロケットがどのように打ち上げられるかを紹介するCGビデオを公開した。ネタバレになってしまうが、これはSpaceXのFalcon 9に非常によく似ている。

下にエンベッドしたビデオで、ロケットはBlue Originの発射基地から垂直に打ち上げられ、洋上を航行する大型プラットフォームに垂直に着陸する。これは現在SpaceXが用いているのとほぼ同様の方式だ。ただしCGアニメを見るかぎりでは、New Glennの着陸プラットフォームは大型船上に設けられており、乗員がいるもようだ。SpaceXのブースターはこれと異なり、自律航行する無人の艀に着陸する。

今回のビデオはBlue Originが宇宙計画の紹介するメディア・ツアーの一環でだ。昨日(米国時間3/6)、ベゾスは次世代ロケットで用いられるBE-4 エンジンを公開した。これに続いて今日、ベゾスはフランスの衛星テレビ企業、Eutelsatと契約を結んだことを発表した。この契約によれば、Blue Originは2021年ないし2022年に静止軌道に放送衛星を打ち上げる計画という。

SpaceXとBlue Originは本格的な宇宙競争に突入したようだ。平和的な競争なのが何よりだが、この2社のアメリカ企業の目標ははたいへん似通っている。つまりブースターを再利用することによって劇的なコスト削減と打ち上げ回数の増加を狙っている。Blue Originは2015年にNew Shepardでブースターの垂直着陸に最初に成功しSpaceXを出し抜いた。しかしSpaceXはその年の後半になってNew Shepardよりはるかに大きい実用衛星打ち上げロケット、Falcon 9で垂直着陸に成功し、その後も着陸を繰り返している。その中には洋上の艀への着陸も含まれる。現在、
両社とも月を目指しているという。さいわいなことに両社の競争はゼロサム・ゲームではない。どちらが勝つにしても本当の勝利は人類のものだ。

〔日本版〕 Blue Originのロケットはアメリカ初の有人宇宙飛行プロジェクト、マーキュリー計画の乗員の名前から命名されている。アラン・シェパードはアメリカ人として初の大気圏外飛行をした人物となった。ジョン・グレンは衛星軌道を飛んだ初のアメリカ人で、後にオハイオ州選出の上院議員を長く務めた。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

Amazon CEO Jeff Bezosがまたバイオテク企業に投資、今度は新しいアンチエージング療法のスタートアップだ

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シリコンバレーでは必ず何年かに一度、不老不死や長寿を喧伝する者が現れる。その前に、そんなに長生きをして一体何をするのかを、考えておいた方がよい、と私は思うのだけど。今度登場したUnity Biotechnologyは、加齢に関連した症状の進行を遅くすることによって長寿を実現する、と主張するスタートアップだ。同社は今日(米国時間10/27)、シリーズBで1億1600万ドルという巨額を調達したことを発表した。投資家の中には、AmazonのJeff Bezosもいる。

体(からだ)が、細胞の老化を遅らせることがある。何かのストレスで、細胞が分裂を停止することがあり、それは、がん細胞の分裂と成長を停止することもあるから、抗癌治療にも利用できる、と考えられている。でもそんな細胞が多すぎると、加齢とともに別の問題が生じる。Unityが追究しているのは、炎症や、加齢と結びついているその他の疾病を起こす古い細胞を、体が積極的に捨てるようにするための方法だ。

Unityの技術には、体の老化を遅らせる可能性があり、科学や医療分野の上位投資家たちの関心を招(よ)んでいる。またバイオテクノロジー分野の非上場企業としては、相当巨額な資金を獲得した少数企業の、仲間入りをしている。

Bezosは、前にもバイオテクに投資している。それは2014年のJuno Therapeuticsだが、そのときは彼のVC Bezos Expeditionsからの投資だった。Junoはがんの免疫療法で画期的な発見をして、バイオテク企業としては数少ないIPO成功企業の一つになった。

バイオテク企業への投資案件の多いスコットランドのミューチュアルファンドBaillie Giffordのほか、Venrock, ARCH Venture Capital, Mayo Clinic, WuXi Pharmaceuticalsなどがこの投資ラウンドに参加した。

同社の発表によると、元KYTHERA BiopharmaceuticalsのCEO Keith Leonardが新たにCEOになり、これまでのCEOで協同ファウンダーのNathaniel “Ned” DavidはUnityの社長になる。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))

ベゾスのBlue Origin、ロケットからの乗員脱出テストに成功―ブースターも5回目の垂直着陸

2016-10-06-blue-origin-et-booster-landing-2

今日(米国時間10/5)のBlue Originの飛行テストは成功したと同時に非常にユニークなものになった。今回ジェフ・ベゾスの宇宙企業では乗員安全確保システム(打ち上げ時にロケットに異常があった場合、乗員を安全に退避させる)を実験し、乗員カプセルは正常に回収された。この際、New Shepardロケット自体も(予定外だったが)安全な垂直着陸に成功した。

Blue Originではこのテストで打ち上げロケット本体を無事に回収できる可能性は低いとみており、事前にそのことを強調していた。ベゾスはメール中で「今回の乗員カプセル回収テストではブースターはすでに飛行中であり、条件は極めて厳しいのでブースターはおそらく破壊されるだろう」と述べていた。〔ビデオでは1:06:16にブースターのエンジンに点火〕

このテストでブースターは破壊されるだろう。ブースターはフライト中の乗員カプセルの脱出に耐えるようには設計されていない。

ともかく今回の実験の目的はクルーカプセルを飛行中のブースターから脱出させ、安全に着陸させることだった。ブースター自体の回収は目的に入っていなかった。しかしビデオで見られるとおり、ブースターも垂直着陸に成功し、New Shepardシステムの堅牢性を示す結果となった。このブースターにとっては今回が5回目の垂直着陸成功だった。またこれが最後の飛行となるようだ。ベゾスはこう述べている。

もしブースターも無事に生き残るようであれば、われわれは功績を讃えて引退パーティーをを開催し、ブースターは博物館に展示したい。

今回の実験はもちろん無人で行われた。打ち上げ途中で飛行継続できない異常が発生するという極限的な場合を想定した実験であり、そのような場合のシステムの挙動の情報を収集し、分析することが第一の目的だった。Blue Originが脱出システムを作動させるとロケットモーターによってカプセルはブースターから分離した。分離が行われるのは飛行中の空力的な圧力が最大になる地点が選ばれた。

この地点はシステムが音速を超える瞬間であり、Max Qと呼ばれ、カプセルに最大の力がかかる困難な地点と考えられている。今回のMax Qは高度1万6000フィート(4.9km)だった。

35分の遅れの後、東部時間午前11時35分にNew Shepardはウェストテキサス打ち上げ基地から発射された。打ち上げ後45秒で固体ロケットが2秒間噴射され、クルーカプセルをブースターから切り離した。〔ビデオでは1:07:03で脱出ロケット点火〕

Blue Origin escape system activated / Screenshot of Blue Origin live feed

Blue Originの乗員脱出システムが作動 / Blue Originのライブ中継からのスクリーンショット

分離成功後、乗員カプセルは通常の手順どおり、姿勢安定用のドローグ・パラシュート、続いて減速用のメイン・パラシュートを開いた。カプセルはリング状のフィンによって姿勢を制御しながら下降し、最後にエンジンを逆噴射して時速3マイル程度で静かにタッチダウンした。

Blue Origin crew capsule touching down in West Texas / Screenshot of Blue Origin live feed

Blue Originのクルーカプセルがウェストテキサス打ち上げ施設付近にタッチダウン/ Blue Originのライブ中継からのスクリーンショット

クルーカプセルのタッチダウンから3ほどでブースターも安定した姿勢で垂直着陸に成功した。このブースターがこれで連続5回、垂直着陸に成功しているというのはNew Shepardの安全性を考える上で印象的だ。

blue-origin-et-rocket-landing

Blue Originが打ち上げ時の乗員脱出のテストをするのはこれが初めてではない。2012年10月には同じクルーカプセルを使って静止状態からの脱出実験を実施している。ただしこのときは実物のブースターは用いられていない〔下のビデオ〕。

今回の脱出テストで用いられたクルーカプセルは2012年のテストで用いられたカプセルそのものだ。発射台に静止している状態からの脱出と異なり、加速して飛行中のブースターからのカプセル切り離しは考えられる中でもっとも過酷な条件でのテストだった。

こうしたテストは有人飛行のために必須の準備だ。ベゾスは早ければ2018年にも宇宙高度に乗客を送れると述べている

まだ有人での飛行ミッションは行われていないものの、ベゾスとBlue Originはさらなる未来を計画中だ。先月、Blue Originは衛星打ち上げ能力を備えた新しい大型ロケット、New Glennの開発計画を公式発表した

New Shepardと同様、New Glennのブースターも垂直着陸による再利用を目指している。今回のテストの成功をみるかぎり、Blue Originのブースター再利用による衛星打ち上げ計画は着々と前進しているようだ。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

ジェフ・ベゾスの宇宙ロケット、Blue Origin、再度の打ち上げ・地上回収に成功

2016-01-24-blue-origin-landing-1

昨日(米国時間1/22)、ジェフ・ベゾスが創立したBlue Originは何の予告もなくいきなりNew Shepherdロケットを打ち上げた。ロケットは宇宙を準軌道飛行した後、無事に地上に着陸することに成功した。この種のミッションに成功したのはBlue Originが史上初で、ジェフ・ベゾスはまたも歴史の1ページを書いたことになる。今回の飛行が特筆すべきなのは、打ち上げられたのが昨年11月に宇宙飛行したその同じロケットだという点だ。

地上への回収に成功したNew Shepardロケットはテキサス西部のBlue Originの実験場から発射され、無人のカプセルを高度101.7kmまで運んだ。ブースターロケットとカプセルは両方とも無事着陸に成功した。国際航空連盟が大気圏と宇宙との境界と認めているカーマン・ラインの高度は100kmだから、わずかではあるがそれを超えたことになる。

ブースターロケットは発射地点に戻り、逆噴射によってゆっくり着陸した。カプセルは3基の大型パラシュートを開き、逆噴射を併用して別な場所にこれも安全に着陸いた。

Blue Origin's New Shepard flight profile / Image courtesy of Blue Origin

Blue Origin’s New Shepard flight profile / Image courtesy of Blue Origin

New Shepherdの飛行のビデオは「「発射、着陸、繰り返し」とタイトルを付けられている。コンセプトは単純だが、これを実現しつつあるベゾスのBlue
Originやイーロン・マスクのSpaceXはまさに宇宙ビジネスに革命を起こしつつある。

昨年11月にBlue Originは今回使われたのと同じロケットを用いて同様の宇宙飛行を行い、カプセルは100.5kmの高度に達した。

New Shephardのカプセルは将来、ツーリストを有料で載せて準軌道を飛行する計画だ。リチャード・ブランソンのVirgin Galacticも同様の低層宇宙にツーリストを往復させようとしている。

Blue Originの公式ブログで、同社のファウンダー、ジェフ・ベゾスは、再度の打ち上げにはいくつかの部品の交換と同時にソフトウェアの大幅な改良が行われたことを明らかにした。

去る12月、イーロン・マスクのSpace XはFalcon 9ロケットで衛星を打ち上げた後、ロケット・ブースターを地上に着陸させることに成功している。ただしマスクを含む大勢の専門家が、ロケットの再利用に成功したといっても、衛星を打ち上げ可能な大型実用ロケット、Falcon 9と準軌道飛行を目的とした小型ロケットの間には大きな差異があることを指摘した。

Getting to space needs ~Mach 3, but GTO orbit requires ~Mach 30. The energy needed is the square, i.e. 9 units for space and 900 for orbit.

— Elon Musk (@elonmusk) November 24, 2015

宇宙高度に到達するだけならマッハ3でいいが、弾道飛行にはマッハ30が必要。エネルギーは2乗以上だ。つまり9に対して900のエネルギーが必要になる。 

しかしベゾスはNew ShephardはBlue Originが開発しようとしてブースターの中で最小のものだと述べた。つまりBlue Originには今後さらに大型の軌道カプセルの開発計画があるということだ。ベゾスはこう述べている。

われわれが軌道旅行ビジネスに参入してからすでに3年以上になる。計画している軌道カプセルは最小のモデルでも〔今回打ち上げられた〕New Shepherdの何倍も大きい。今年中にこの軌道飛行カプセルについて詳しいことが発表できるものと期待している。

【略】

過去3ヶ月の実績をみると、Blue OriginとSpace Xは宇宙ビジネスの革命に向けてすでに大きな前進を遂げた模様だ。

画像: Blue Origin

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

ジェフ・ベゾス、SpaceXにケチをつける(SpaceXが何年も前からロケット着陸に成功していることを忘れている)

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さて、Twitterの悪口合戦に参加したのは誰あろう、Mr. Jeff Bezosだった。

自らの宇宙会社 Blue Originがロケットの着陸に成功したばかりのAmazonファウンダーは、Falcon 9ロケットの着陸に成功したSpaceX に対して、初めて今日攻撃を仕掛けた。

[@SpaceXがFalconの準軌道ブースターの着陸に成功したことをお祝いする。
わがクラブへようこそ!]

「クラブへようこそ」― イタッ!!

注意深い読者(および今日一日中Twitterを見ている人)なら、SpaceXのファウンダー、Elon Muskが最初に火を着けたことを知っているだろう。先月BezosとBlue Originの偉業を称えると同時に、「軌道」ロケットと「準軌道」ロケットの違いを指摘した時だ。

[Jeff BezosとBO チームには打上げロケットの着陸成功をお祝いしたい。]

[ただし、はっきりさせておく必要があるのは、「宇宙」と「軌道」の違いであり、 https://what-if.xkcd.com/58/ に説明がある]
[宇宙高度に到達するだけならマッハ3でいいが、弾道飛行にはマッハ30が必要。エネルギーは2乗以上だ。つまり9に対して900のエネルギーが必要になる]

[ジェフは気づいていないかもしれないが、われわれのSpaceXは準衛星軌道へのロケットによるVTOLを2013年からテストしている。海面への着水は昨年成功した。次は軌道飛行の後の着陸だ]

[功績を正確に記録するなら、準衛星軌道を飛行した最初の再利用ロケットはX-15だ。最初の商業飛行に成功したのはバート・ルタンと言わねばならない。]

今日のBezosの反論で問題なのは ― 億万長者同志が互いの宇宙ゲームを巡って口論するとことを見るのは面白いが ― SpaceXがBlue Originのクラブに入会することはないことで、それはSpaceXは小型ロケットを何年も前から着陸させているからだ。

しかしそれ以上に、Blue OriginとFalcon 9を比較すること自体が不釣り合いだ。

TechCrunchのロケットマニア、Matt Burnsに言わせると、両社の着陸を比べることは、「縦列駐車を自転車と大型SUVで比べるようなもの」だそうだ。

今日着陸したFalcon 9は巨大なロケットだ。今回の発射には人工衛星が11基積載されており、塔載部分は再利用されず着陸もしていない。

Burnsがこう説明している

Falcon 9は本格的なロケットで、9基のエンジンが生み出す150万ポンド力(667万N)の推進力によって、高度124マイル(200 km)まで到達する能力を持つ。重要な機器を重要な軌道に運ぶために設計された。Blue Originは数人の人間を62マイル(100 km)の上空に送る能力がある ― これもまた素晴らしい。

果たしてElon Muskが再び反撃に出るか、誰かがBezosに少々状況を説明する機会を与えるか見物だ。

まもなく次のラウンドが始まる…

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook