ヘルスケアデータを構造化するScienceIOがステルス状態から脱出

Gaurav Kaushik(ガウラブ・カウシク)氏は、混乱した医療データの世界を整えるために今回立ち上げたステルス事業の数年前からすでに、より良い視覚化が医療結果にどのような影響を与えるかについて、少しずつ構想を深めていた。2018年にこの新進起業家は、ボストンのがん研究企業ならびにFlatIron Health(フラットアイアン・ヘルス)と協力して、がん患者、がんの変異、健康状態の結果のすべてがどのように関連しているかを調べていた。

最終的には、特に有色人種の女性に酷い結果をもたらすトリプルネガティブ乳がんの患者が、免疫療法によく反応するという分析結果を得た。

カウシク氏は、整理されていない患者データを治療計画に結びつけることのインパクトを理解して、元ティールフェローでDorm Room FundのマネージングパートナーであるWill Manidis(ウィル・マニディス)氏と共同で、新しいスタートアップScienceIO(サイエンスIO)を創業した(マニディス氏がCEOを務めている)。このスタートアップは、自然言語処理とデータ分析を用いて患者データの巨大なデータベースを構築し、関係者が患者をよりよく理解し、総合的に治療することに役立てようとしている。

「地図がなければ旅ができないのに、医療には地図がないのです。例えば、どの患者さんが切実で満たされていないニーズを抱えていて、特別な配慮や新たなソリューションを必要としているのか、あるいは希少疾患に対する新しい治療法を見つけようとしているのかなどの、基本的なことを理解しようとすると、何千時間もの労力と何年もの期間が必要になるのです」とマニディス氏は述べている。

ヘルスケアデータの状況をなんとかしようとするスタートアップは、ScienceIOが初めてではない。そして、それはおそらくこれが最後のものでもないだろう。だが、このスタートアップの差別化ポイントは、何年もかけて、最も代表的なデータを集めたデータベースを構築してきたことだ。

カウシク氏は「私たちは過去2年間をかけて、この種のものとしては初のヘルスケアAIプラットフォームを構築しました。私たちは、データファーストのアプローチを人工知能に適用し、バラバラのヘルスケアデータを高品質で計算可能なデータに変えるために必要な技術を開発しています。ヘルスケア分野では、データを活用したソリューションを構築する機会が非常に多く、当社のプラットフォームや幅広い自然言語処理ルネッサンスから恩恵を受ける、企業のエコシステムが生まれることを期待しています」という。

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NLP(Natural Language Processing、自然言語処理)とは、人間の音声をコンピュータが理解しやすくするための最新技術だ。同社は、ソーシャルメディアの投稿を見て、その投稿を行った人間がどのように感じているかを予測する技術であるセンチメント分析に、NLPがどのように利用できるかを説明した。ScienceIOのNLPアプリケーションは、機械学習と組み合わせられることで、900万以上の医療条件、薬剤、機器、遺伝子を潜在的な手がかりとして、患者の健康に影響を与える変数を見つけ出す。

ScienceIOの動作画面(画像クレジット:ScienceIO)

幅広いというのは、その製品がさまざまな潜在的顧客に適用できるということを意味する。例えば臨床医が患者の背景に基づいて患者の全体像を把握できるようになると、カウシク氏は考えている。

「扱う患者さんにはさまざまなヘルスケアイシューがありますので、それに対してがんをよく理解しているとか、社会経済状況を別途理解しているというだけでは十分ではないのです」とカウシク氏はいう。「あらゆる分野に驚くほどの深さがありますし、そうした問題を最小化することなく患者全体を把握することが必要なのです」。

さらに彼は「3年間、世間には公表しないままこのデータセットを構築してきた理由は、患者をバイオリスクに還元するのではなく、患者を医師が見るべきものとして表現するためだったのです」と付け加えた。

マニディス氏は、保険会社が毎日、莫大な数の医療プランや、請求コード、コスト、症状などのデータを受け取っていることを例に挙げた。

マニディス氏は「そこでは、請求をどのように優先させるか、裁定に回すか、不正行為の検出などを行うかで常に悩まされています。そこでScienceIOを使えば、データを構造化し、請求内容を理解して、患者への保険金をより早く、正確に支払うことができます」という。

注目すべきは、ScienceIOはトラッキングを行うのではなく、データをより検索しやすくし、有用な洞察を生み出すことのできる分析結果を作成するのだということだ。ScienceIOは、現在いくつかの顧客とパイロットプログラムを行っているということだが、具体的な名前は明かしていない。カウシク氏によれば、これらのパイロットの結果によって、一般公開までの現実的なスケジュールが左右されるということだ。

これまでの進展によって、これまで秘密裏に行われていたビジネスが、800万ドル(約9億1000万円)のシード資金を調達することができた。今回のラウンドには、Section 32やSea Lane Venturesなどの機関投資家の他、Lachy Groom(ラッチー・グルーム)氏やJosh Buckley(ジョシュ・バックリー)氏といった起業家も参加している。

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画像クレジット:Getty Images

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(文:Natasha Mascarenhas、翻訳:sako)

AIチップメーカーのHailoが約155億円調達、エッジデバイスにおけるAIモジュールの機会を倍増させる

世界的に半導体が不足するなか、AIチップ業界のスタートアップが、その技術に対する需要の高まりに対応するため、大規模な資金調達を発表した。スマートシティ、小売環境、産業用機器、次世代自動車システムなど、AIワークロード用にカスタマイズされたエッジデバイス用チップを製造しているHailo(ハイロ)が、シリーズCラウンドで1億3600万ドル(約155億円)を調達した。同社に近い情報筋にTechCrunchが確認したところ、今回の投資はHailoのバリュエーションを約10億ドル(約1140億円)とみているという。

このラウンドはPoalim EquityとGil Agmonが共同でリードした。Hailoの会長であるZohar Zisapel(ゾハー・ジサペル)氏、ABB Technology Ventures(ATV)、Latitude Ventures、OurCrowdの他、新たにCarasso Motors、Comasco、Shlomo Group、Talcar Corporation、Automotive Equipment(AEV)社も出資した。Halioの累計調達額は約2億2400万ドル(約255億円)になった。

約1年半前の6000万ドル(約68億円)のシリーズBに続くラウンドだ。同社は約1年前、Intel(インテル)やNVIDIA(エヌビディア)に対抗するHailo 8チップを搭載した最新のAIモジュールを発表した。

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共同創業者でCEOのOrr Danon(オア・ダノン)氏はインタビューで、最近、市場での関心が非常に高まっており、前四半期だけで、Hailoが取り組むプロジェクトの数が100件に倍増したと話した。今回のラウンドを受け、需要増加に応えて規模を拡大すると同時に、プロセッサーの用途にあわせたカスタマイズを継続する。

「現在、Hailo 8を市場に投入していますが、その効率の良さに人々は非常に喜んでいます」と同氏はいう。同社のエッジチップの独自性は、既存のリソースに適応してカスタムニューラルネットワークを動作させるよう設計されている点にある。そのため、同様のタスクを実行するためにデータセンターのコンピューターで必要とされる同等の処理能力より高速であるだけでなく、より少ないエネルギーで動作する。「私たちはこのサービスを拡大していきたいと考えています。そのために、ソフトウェアにも投資しています」と話す。

今回の資金調達は、2021年のチップ業界の複雑な状況の中で実施された。

パンデミックの影響で、一部の分野では旺盛な需要があったものの(例えば、コンシューマー環境では、活動が制限されている時期にユーザーはより良いデバイスへの乗り換えを始めた)、他の分野では活動が大幅に低下し(例えば自動運転車などの野心的なプロジェクト)、全体的に生産が大幅に減速した。

Hailoのようなエッジデバイスを扱う企業にとっては、より効率的でコスト効率の高いシステムをアピールするチャンスだ。ユーザー自身のニューラルネットワークや、TensorFlowおよびONNXなどの人気のある開発フレームワークと統合できることも後押しする。

ダノン氏によると、Hailoは自動車などの一部の分野で需要が軟化しているが、同社のビジネスの幅広さにより、全体的な需要は引き続き増加している。自動車分野は、一時期盛り上がり、その結果としてしばらく落ち込んでいたが、復調しつつある。

例えば、完全自動運転車を対象とするプロジェクトの数は減ったかもしれないが、半自動運転システムに取り組むプロジェクトはまだ数多くあり、それがHailoのビジネスにつながっていると同氏は話す。

「企業は今、現実的な展開を模索し始めており、現実的な課題に直面しています」と同氏はいう。「自動運転車に自動車専用の高速道路を走らせる必要はないかもしれませんが、それでも新しいタスクを学ぶ必要はあります」。

また、産業界や小売業界(エッジデバイスが、セキュリティシステム・自動レジ向けのコンピュータビジョンアプリケーションや、分析に使用されている)、さらには交通機関が今後もビジネスの主要な原動力となるスマートシティなどからも強い関心が寄せられているという。

投資家が同社に投資するのは、現在のビジネスのためだけでなく、今後のチャンスのためでもある。

「今後数年間で、AIは新たなビジネス価値を生み出し、これまでのユーザーエクスペリエンスを再構築する決定的な機能となるでしょう。AIベースの機能を市場に投入する能力は、企業の成功と失敗の分ける決定的要因となることが増えていきます」と語るのはMooly Eden(モーリー・イーデン)氏だ。同氏は、Intelに40年近く勤務し、直近ではイスラエル事業の社長を務めた後に退社した。現在はHailoの取締役を務める。「Hailoの革新的で超効率的なプロセッサー・アーキテクチャーは、従来のコンピューティング・ソリューションに挑戦し、新しいタイプのワークロードを処理する新しい種類のチップに対する需要増加に対応します」。

画像クレジット:Hailo

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(文:Ingrid Lunden、翻訳:Nariko Mizoguchi

さつまいも「紅天使」のポテトかいつかの選別ラインで活躍、ロビットのAI外観検査ソリューションTES RAY for food & agri

ロビットのAI外観検査ソリューションTES RAY for food & agriがさつまいも専門大手ポテトかいつか選別ラインで本格稼働

ロボット・精密機器・ソフトウェアの開発販売を行うロビットは10月12日、AI外観検査ソリューション「TESRAY for food & agri」が、さつまいも専門大手「ポテトかいつか」に導入され、選別ラインで本格稼働を開始したことを発表した。

AI外観検査ソリューション「TESRAY」は、独自のハードウェア技術とAI技術を活用した画像処理アルゴリズムにより、外観検査を自動化するシステム。製造業をはじめ、幅広い産業に対応できるほか、食品や農作物分野への導入も拡大している。食品分野の選別工程に必要となるAI・撮像・ロボティクスといった技術を自社ですべて保有しており、「高精度の異常検出を瞬時に行い、インラインで全数検査を実現」できるという。

ポテトかいつかは、オリジナルブランド芋の「紅天使」(ベニテンシ)を生産するさつまいも専門の食品企業。約600軒の農家から仕入れたさつまいもの貯蔵・選別・加工・出荷を行っている。選別においては、さつまいもの傷、カビ、虫食いなどの外観不良の検出と、大きさや形などを加味した等級付けも行われる。外観不良の検査項目は大変に多く、これまで手作業に頼ってきたが、生産量の増加に人手が追いつかない状態が続いていた。

AIによる外観検査不検出例。左から皮むけ、くびれ、腐敗

AIによる外観検査不検出例。左から皮むけ、くびれ、腐敗

TESRAYソリューションにより、さつまいもに最適化したラインを専用設計で開発したところ、洗浄後の搬送・計量・撮像・AIによる選別判定・選別までが自動化できた。また、多面撮像機構によるさつまいもの全周囲検査、すべての外観不良項目の検査も実現された。これにより、品質の安定化に加え、従業員の負担軽減による人材の定着化も実現できたとのことだ。

さつまいも「紅天使」のポテトかいつか選別ラインで活躍、ロビットのAI外観検査ソリューションTES RAY for food & agri

TESRAYソリューションの装置画像。左はコンベアへの搬送の様子。右が装置の撮像部

さつまいも「紅天使」のポテトかいつか選別ラインで活躍、ロビットのAI外観検査ソリューションTES RAY for food & agri

画像左は選別風景と判定結果。右は多面撮像の様子

韓国のロボアドバイザーFountがAIベースのプラットフォームを進化させるために37.9億円を調達

韓国のロボアドバイザースタートアップのFount(ファウント)が、機械学習をベースにしたプラットフォームの開発とスタッフの雇用を強化するために、3340万ドル(約37億9000万円)のシリーズCラウンドを実施した。

今回のラウンドは、Hana Financial InvestmentがNice Investmentとともに主導した。これまでの支援者だったSmilegate Investment、KT Investment、Shinhan Capital、Korea Development Bankも参加している。

CEOのYoungbeen Kim(キム・ヨンビン)氏がTechCrunchに語ったところでは、今回のシリーズCにより、資金調達総額は約5850万ドル(約66億3600万円)となり、同社の評価額は現在2090億ドル(約23兆7000億円)に達したものと推定される。

同社は今後3年間に約8500万ドル(約96億4000万円)の追加投資を行い、技術開発を続けていく予定だとキム氏は付け加えた。

2015年11月にキム氏によって設立されたFountは、2016年2月に最初のベータ版ロボアドバイザーサービスを開始した。その翌月には、Fountの顧問であるJim Rogers(ジム・ロジャース)氏が同社に投資した。

投資の助言の提供に対する規制当局の承認を2017年11月に得た後、Fountはモバイルアプリを2018年6月に立ち上げている。

今回のパンデミックをきっかけに、ロボアドバイザーなどの非接触型投資サービスを利用して、緊急時の資金を準備したり、資産を増やして老後に備えるための投資ポートフォリオを作成したりする動きが活発化している。現地メディアの報道によれば、Fountを含む韓国のロボアドバイザーのスタートアップ3社の2021年1月における運用資産額が、前年同月比402.9%増で合計10億ドル(約1134億円)を超えたという。

Fountの運用資産は、2021年3月時点で7億3000万ドル(約828億1000万円)を突破した。プレスリリースによると、同社のコア市場は、ミレニアル世代の約66.8%を含む20~49歳の人々だ。

同社のAIを搭載したプラットフォームは、資産を増やすためには投資をする必要があるとわかっていながらも投資についてよく知らない人のために、アルゴリズムとデータを使ってユーザーに代わって投資を行う。

FountのAIベースのプロダクトBlueWhale(ブルーホエール)は、5万2000件以上の世界の経済データや市場指数を分析し、カスタマイズされた分散投資ポートフォリオを自動的に提案しする(後に必要に応じてリバランスすることもできる)。

同社は、主幹事投資家であるHana Financial investment(ハナ金融投資)、Samsung Life Insurance(サムスン生命保険)、MetLife(メットライフ)、Hyundai Motor Securities(現代自動車証券)など、韓国を拠点とする約20社のB2B顧客を通してロボアドバイザーサービスを提供している。また現在他の金融機関との提携も検討しているといい、2021年6月時点での登録ユーザー数は26万人としている。

Statista(スタティスタ)のレポートを引用した同社の声明によれば、世界のロボアドバイザーの運用資産は、2021年の1兆3700億ドル(約155兆3400億円)から2025年には2兆8000億ドル(約317兆4900億円)に増加すると予想されている。また韓国内のロボアドバイザーの運用資産は、2021年の83億6000万ドル(約9476億円)から2025年には250億ドル(約2兆8400億円)にまで拡大すると予想されている。

キム氏は、海外展開についての質問に対し、現在は国内市場に焦点を当てており、世界に普及させるための具体的な計画はないと答えている。

関連記事:インドネシアのロボット投資支援アプリBibitが約31億円を調達、セコイア・キャピタル主導

画像クレジット:fount

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(文:Kate Park、翻訳:sako)

風味と言語の総合変換を行う日本酒ソムリエAI「KAORIUM for Sake」を京都酒蔵館が導入

風味と言語の総合変換を行う日本酒ソムリエAI「KAORIUM for Sake」を京都酒蔵館が導入

香りを言語化するAIシステムであらゆるものに情緒的な体験価値をプラスする香りのビジネスデザイン集団SCENTMATIC(セントマティック)は、香りと言葉の相互変換を行うAIシステム「KAORIUM」(カオリウム)の技術を用いた日本酒ソムリエAI「KAORIUM for Sake」を、10月1日より、京都42酒蔵の日本酒が楽しめる居酒屋「京都酒蔵館」に関西で初めて導入した。

「KAORIUM for Sake」は、インターネット上の膨大な言語表現、ユーザーの1万件以上の感性データ、酒ソムリエ赤星慶太氏の感性を学習した、日本酒の風味を言葉で可視化するAIシステム。今まで感じ取ることが難しかった奥深い味わいが感じられる体験を提供するという。

日本酒を「すずしげ」、「ふくよか」、「あたたかみ」の3要素のバランスに加え、香りや印象、情景に喩えた表現や言葉で可視化することで、日本酒の特徴がわかりやすくなり、好みの酒が選びやすくなる。SCENTMATICによれば、「キーワードを見ながら言葉を意識して味わうことで、今まで感じることのでき なかった風味や味わいに気付くことができます」とのことだ。同時に、客がタブレットで酒の印象を表す言葉をタップれば、さらにAIの学習が進む。

「接客を頑張りたい」が人的に限界があり悩んでいたという京都酒蔵館は、「KAORIUM for Sake」の画面を見ながら酒を楽しむ客の姿を見て、客と会話ができなくとも日本酒の魅力が伝えられるようになったと話している。

デジタルサンプルとAI需要予測によりアパレル業界サプライチェーンの変革を目指すGOOD VIBES ONLYが5.5億円調達

デジタルサンプルとAI需要予測によりアパレル業界サプライチェーンの変革を目指すGOOD VIBES ONLYが5.5億円調達

GOOD VIBES ONLY(グッドバイブスオンリー)は10月8日、第三者割当増資および融資による総額約5億5000万円の資金調達を発表した。引受先はマルイグループ、SMBCベンチャーキャピタル、豊島株式CVC、Sun Asterisk、セレス、スタイレム瀧定大阪。

2018年4月設立のGOOD VIBES ONLYは、デジタルサンプルとAI需要予測を活用することで、アパレル業界におけるサプライチェーンの変革を目指すスタートアップ。アパレルにおける全商流を一気通貫させたビジネスモデルを構築し、自社D2Cブランドも6ブランド展開。他社のブランドプロデュースも多数請け負っているという。

調達した資金は、既存アパレル業界へのDX導入を加速させるためのデジタルサンプルプラットフォームの開発、中国、アジア圏内への展開を目的とした採用・マーケティング強化にあてる。来春には3Dデータを軸にしたアパレルのプラットフォームをスタートさせる。

デジタルサンプルは、サンプル費用の削減だけでなく、従来のサンプル生産方式から30日以上のリードタイムを短縮し、実物サンプルを生産することなくSNSなどでの訴求投稿、EC商品画像として活用することで撮影販管費の削減と効率化、サスティナブルな取り組みにもつながるという。

またSNSに投稿された画像は、AI需要予測により事前需要(予測点数)を可視化し、これまで人の感覚や前年比実績に基づく属人化された発注・生産体質を変革させ、シームレスに製品生産までを一気通貫したシステム提供を行うことが可能となるとしている。

 

「強力なAI」誕生へのカウントダウン

スタートアップとマーケットの週刊ニュースレター「The TechCrunch Exchange」へようこそ。
みなさん、お元気でお過ごしだろうか。週末はゆっくりと休んでリラックスできただろうか。

今回は楽しい話題だ。もちろん、後の方にはいつものようにベンチャーキャピタルのラウンドやメモなどが並んでいる。だがその前に、AIについて話そう。

先週私は、機械知能をもう少し確かなものにするために活動している2つの企業と話をする機会があった。1つはハードウェア、もう1つはソフトウェアを扱う企業だ。

まずハードウェアの方は、IonQ(イオンキュー)のPeter Chapman(ピーター・チャップマン)氏に話を聞いた。IonQは、最近SPACで上場した量子コンピューティング企業だ。チャップマン氏と私は、償還やその他のSPAC絡みの瑣末な問題を掘り下げる代わりに、大部分の時間をSFと「強力なAI」の本当の意味について費やした。

簡単に言えば「強力なAI」とは今のAlexa(アレクサ)の動作原理とは異なるものだ。チャップマン氏によれば、Alexaは、エンジニアがクエリに対して可能な限り多くの応答をコード化することで動作している。このやり方はある程度は拡大できる。しかし、強力なAIは自分でコードを書くことができなければならないとチャップマン氏は語り、これは人間の手で書かれた質問と回答の組み合わせとは根本的に異なるという。

このためには量子トピックがふさわしいとチャップマン氏はいう。なぜなら、量子コンピューティングは強力なAIが必要とする種類のコード生成に非常に優れているからだ。そして重要なのは、無数の確率を同時に解析し、その中から選択することも得意なことだ。

量子コンピューターは実用化の初期段階にあり、IonQ(閉じ込めたイオンを使用していることから名付けられた)のような企業が、この新しいコンピューターの時代の到来を先導しているのだ。量子コンピューティングが主流になれば、単なるMLモデルではない大規模なAIにもっと近づくことができるはずだ。

さて、ソフトウェアの方は、Intrinio(イントリニオ)のCEOであるRachel Carpenter(レイチェル・カーペンター)氏と電話で話した。彼女の会社は、APIから利用可能な巨大なファイナンシャルデータセットを構築した。金融オタクとしては、ワクワクする話だ。Intrinioが気になるかどうかは、読者がこれまでSECの書類を読むのにどれだけの時間を費やしてきたかによって決まるだろう。

だが、このスタートアップは、Thea(シーア)という名のAIサービスも開発している。これは、ニューラルネットワークを、テキストを理解できる独自の自然言語処理マシンに織り込むことで機能するAIサービスだ。膨大な量の財務報告書を解析したいと考えている者にとっては、これはすばらしい製品アイデアだ。

カーペンター氏と話していて印象的だったのは、Theaは最初、広いインターネット上でトレーニングを受けていたということだ。つまり単なる金融言語解析ツールではなく、それ以上のことができるということだ。

CEOによれば、現在同社はTheaの焦点を金融のニッチに置いているという。しかし、Intrinioが部分的にでもオープンソースのサービスを使用して複雑なものを立ち上げることができるなら、今後数年のうちにTheaのようなインテリジェントシステムがより多く市場に登場する可能性がある。それを商用化されつつある量子コンピューティング技術と融合させると、もしかしたら、いつの日か、実際の人工知能に近づけるのかもしれないと思えてくる。

そう、私たちは生まれるのが50年ほど早すぎたのだ。

VCあれこれ

予想通り、第3四半期のベンチャーキャピタルの状況は、まったくもって正気の沙汰ではなかった。びっくり仰天。前代未聞。好きなように呼んで欲しい。

そしてこれまでのところ、第4四半期もまったく同じ状況のように見える。たとえば:

  • フォーブスのAlex Konrad(アレックス・コンラッド)氏によれば、Notion(ノーション)が評価額100億ドル(約1兆1200億円)で2億7500万ドル(約308億6000万円)の資金調達ラウンドを行ったとのことだ(アレックスの最近の活躍は目覚ましい)。これは事実上のフリーキャピタルなのだ。それはなぜか?Notionは自社の2.75%の株式を2億5000万ドル(約280億5000万円)以上で売却したばかりだ。希薄化の観点から資本効率を考えれば、それは……安い。特に、収益の大きさを心配して実際には数字を公表していないスタートアップにとっては。Notionは今回のラウンドの前でも、前回のラウンドの大部分をまだ銀行に残したままだった。つまり同社は、少なくとも300億ドル(約3兆4000億円)のエグジットを果たすことに賭けるために、多額の資金を用意していた投資家たちから、2億5000万ドル(約280億5000万円)を調達したのだ。この先どうなるかを見守りたい。
  • そして先週、Modern Treasury(モダン・トレジャリー)は8500万ドル(約95億4000万円)のシリーズC調達を行った。ここでは、この「ペイメントオペレーション」フィンテック企業の価値が20億ドル(約2244億円)以上と評価されている。同社は2021年の初めにシリーズB調達を行ったが、PitchBookのデータによるとその際の評価額はおおよそ3億ドル(約337億円)だった。それは、とてもとても短い期間での価値創造だ!しかし、この数カ月間に見てきたことを考えると、かなり納得できるものでもある。

つまり、2021年の第2、第3四半期に比べて、第4四半期が減速しているようには見えないということだ。もし2022年が2021年のベンチャーキャピタルの総額を上回ることがないとすれば、このような投資が再び見られるのは何年後になるだろうか。

あとどれくらい生きている必要があるのやら。

ではまた。

画像クレジット:Nigel Sussman

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(文:Alex Wilhelm、翻訳:sako)

ソフトバンクが支援する韓国EdTechスタートアップのRiiidがLangooを買収して日本での拡大を目指す

韓国に本社を置きAIを活用するEdTech企業のRiiidが、日本のディストリビューションパートナーであるLangooを買収して日本での事業拡大を目指す。

Riiidは直近のラウンドである2021年5月のシリーズDでソフトバンク・ビジョン・ファンド2から1億7500万ドル(約195億8000万円)を調達し、その後この買収を実施した。Riiidはこの資金で海外進出をさらに加速していくと述べていた。

関連記事:韓国のRiiidはソフトバンクの支援を受けてAIベースの学習プラットフォームをグローバルに拡大する

Riiidの日本でのパートナーであるLangooは、TOEIC対策アプリのSANTAを日本のiOSのApp Storeで提供している。SANTAの後継アプリであるRiiid Tutor(リドチューター)は、Riiidが日本のiOSのApp StoreとGoogle Playストアで公開している。Riiidによれば、Riiid Tutorアプリは韓国と日本で250万人以上のユーザーにダウンロードされたという。日本で公開された2019年4月に、Riiid Tutorアプリは公開から1週間でAndroidの教育アプリの売上トップになった。

Riiidの共同創業者でCEOのYJ(Young-Jun)Jang(チャン・ヨンジュン)氏は「Riiid Tutorを日本で成功させてきたLangooの卓越した能力が買収の主な理由です。Riiidの強みは、地域や言語、分野に関わらずあらゆるところで我々のテクノロジーを生かせるスケーラビリティと能力です。今回の投資によって我々は日本市場をさらに広く獲得していきます。この買収はRiiidのAIテクノロジーを世界のマーケットに広め、世界中の学習者を支援する無機的戦略の第一歩です」と述べた。

Riiidの広報担当者はTechCrunchに対し、日本は最大の教育市場の1つで旧来型の対面の教育システムに今も依存している日本のEdTech業界には大きな成長の可能性があると述べた。担当者はさらに、日本市場に浸透した後は中央アジアや東アジアなど他の海外市場へ進出していくと述べた。

矢野経済研究所のレポートによると、2020年の日本のリモート学習業界は前年比22.4%増の約2880億5000万円規模と推計されている。

Riiidは今回の買収を通じて日本のユニットを立ち上げ、日本におけるマーケティング、セールス、B2B事業開発を進めていく方針だ。日本市場でのリモート学習に取り組む。

同社は日本でTOEICや英会話指導のサービスを提供してカスタマーベースを広げていくという。

Riiidは米国の拠点としてシリコンバレーにRiiid Labsを開設し、2020年以降、グローバルマーケットに積極的に進出している。広報担当者によれば、ベトナムと台湾でもユーザーを獲得し、最近ではインドを拠点とするAIベースのEdTech企業と提携した。さらにカナダにも研究開発拠点を開設する予定だという。

TOEIC対策のモバイルアプリだけでなく、エジプト、トルコ、UAE、ヨルダン、サウジアラビアで2021年前半にConnectMe Educationとの提携でACT対策のモバイルアプリをリリースした。2021年にはKaplanとの提携でGMAT対策のベータ版を発表し、まず韓国市場をターゲットにする。2022年第1四半期には教員に形成的評価と学習のプログラムを提供するAIベースのソリューションであるRiiid Classroomをリリースする計画だ。Riiid Classroomの主な機能には、個人のパフォーマンスの分析、生徒1人ひとりの弱点に応じた授業の提案、ドロップアウトの分析、タスク管理などがある。

RiiidはK-12、高等教育、企業向けにAIベースのオンライン教育ソリューションを提供している。2014年に創業し、韓国、米国、英国、カナダ、ブラジル、ベトナムにおよそ210人の従業員がいる。

画像クレジット:Riiid / Riiid

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(文:Kate Park、翻訳:Kaori Koyama)

心と体はどのように進化し成功するのか、スタンフォード大学がAI生物でシミュレーション

人工知能は、プログラムされた心を持ち、デジタルな空間に浮かんでいる実体のないものと考えられがちだ。だが人間の心は体と深く結びついている。今回紹介する、仮想生物がシミュレーション環境でタスクを実行する実験は、AIが心と体を与えられることで、何らかの恩恵を受ける可能性を示唆している。

スタンフォード大学の科学者たちは、私たちが未開の状態から道具を使う類人猿へと進化する際の、物理的・精神的な相互作用について興味を持っていた。脳が身体の機能から影響を受けたり、またその逆の現象も起きたりするのだろうか。実際には、これは以前から指摘されていたことだ(1世紀以上前から指摘されていた)。確かに、モノをつかむことのできる手を使うほうが、それほど分化していない付属器官を使うよりも、より早く物体を操作することを学ぶことができることは明らかだ。

同じことがAIにも言えるかどうかは、開発がより構造化されているので直ちにはわからない。とはいえ以下のような考えがもらたす疑問には説得力がある。つまり、AIが初めから世界に適応するように進化していけば、AIはよりよく学び世界に適応できるのではないだろうか。

今回科学者たちがデザインした実験は、何十年も前から進化アルゴリズムのテストに使われてきたシミュレーション環境に似ているところがある。仮想空間を設定して、そこにシンプルなシミュレートされたクリーチャー(生物)を配置する。この段階では複数の連結された幾何学的形状がランダムに動くだけだ。そんな千匹のうごめく個体の中から、一番遠くまでのたうちながら移動した10匹の個体を選び出し、そこから千匹のバリエーションを作り出して、それを何度も繰り返す。ほどなく、ひと握りの多角形が仮想表面を、まずまず滑らかに横切って歩くようになる。

しかし、それはもう古い話だ。研究者たちが説明するように、シミュレーションをより堅牢で可変的なものにする必要があった。単に歩き回る仮想的な生物を作るのではなく、それらの生物が行動をどのようにして学習したのか、そして他の個体よりも良く学習したり速く学習したりするものがあるのかを調べようとしているのだ。

それを確かめるために、研究チームは、以前のものと同様のシミュレーションを作成しunimals(ユニマルス、universal animal=「普遍的な動物」の意、果たしてこの用語が市民権を得られるかどうか)と呼ばれる生物たちを、まずは歩くことを学ばせるためにシミュレーションに投入した。このシンプルな形状たちは、球状の「頭」と数本の枝状の関節を持つ手足を持ち、それらを使っていくつものおもしろい歩き方を編み出した。ある個体はよろめきながら前進し、ある個体はトカゲのような関節歩行を身につけ、ある個体は陸上のタコを思わせるようなバタバタとした、しかし効果的なスタイルを身につけた。

見よこの動き!(画像クレジット:スタンフォード大学)

ここまでは以前の実験と同じだが、似ているのはそこまでだ。

これらのユニマルスの中には、起伏のある丘や低い障壁を乗り越えることが強いられる、いわば異なる母星で育ったものもある。そして次の段階では、これらの異なる地形出身のユニマルスが、しばしば言われる「逆境こそが適応力の母」という言葉が正しいかどうかを観察するために、より複雑な課題で競い合った。

論文共著者のAgrim Gupta(アグリム・グプタ)氏は「この分野の先行研究のほとんどは、単純な平地でエージェントを進化させてきました。さらに、環境との直接的な感覚運動の相互作用を通じて、エージェントの制御や行動が学習されていないという意味では、学習は行われていません」とTechCrunchに説明した。「この研究は初めて、段差、丘、尾根のある地形のような複雑な環境で、進化と学習を同時に行い、複雑な環境での操作を可能にするものです」。

各環境の上位10匹のユニマルは、新しい障害物の出現、ボールをゴールに運ぶ、箱を丘に押し上げる、2つの地点の間をパトロールするといった課題が与えられた。ここでは「グラディエーター 」(ローマの剣闘士)たちが、真にバーチャルな根性を発揮したのだ。変化に富んだ地形の上を歩くことを学んだユニマルは、平地で育ったユニマルよりも、新しい作業を早く覚えて上手にこなすことができた。

画像クレジット:スタンフォード大学

米国時間10月6日、学術誌「Nature」に掲載された論文で著者らは「要するに私たちが発見したのは、進化は学習速度の速い形態を急速に選択することで、初期の祖先が一生の後半で学んだ行動を、子孫が一生のうちで早い段階で発現させることを可能にしていることです」と述べている。

単に速く学習することを学んだだけでなく、進化の過程で、より速く適応し、より速く学習を生かすことができるような体型が選択されたのだ。平坦な場所では、タコのようにジタバタしても同じように早くゴールできるかもしれないが、坂道や尾根では、スピード、安定性、適応性に優れた体型が選択された。この体をグラディエーターの闘いの場に持ち込んでみると、苦境を乗り越えたユニマルスたちは競争に強かった。彼らの汎用性のある身体は、頭で考えたことを実践するのに適しており、ジタバタするだけの競争相手にすぐに大差をつけた。

3Dの棒人間がバーチャルな地形を疾走するGIFを多少楽しめること以外に、これは何を意味するのだろうか。論文によると、この実験は「環境の複雑さ、形態的な知性、制御タスクの学習可能性の間に、学習と進化がどのように協力して高度な関係を作り出すのかについて、科学的な洞察を得るための、大規模な仮想実験を行うための扉を開くものです」ということだ。

例えば、4本足のロボットで階段を上るような、比較的複雑なタスクを自動化したいとしよう。動きを手動で設計したり、カスタムメイドのものとAIが生成したものを組み合わせたりすることもできるが、一番の解決策は、エージェントが自分の動きをゼロから進化させることだろう。この実験は、身体とそれをコントロールする心を連動させて進化することに、潜在的に大きなメリットがあることを示している。

コーディングに精通していれば、自分のハードウェア上ですべての操作を行うことができる。研究グループが、すべてのコードとデータをGitHubに無償で公開しているからだ。そして、ハイエンドのコンピューティングクラスターやクラウドコンテナも用意しておこう。なにしろ「デフォルトのパラメーターでは、16台のマシンでコードを実行することを想定しています。各マシンが72個以上のCPUを持つことを確認してください」とのことなので。

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画像クレジット:Stanford

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(文:Devin Coldewey、翻訳:sako)

EBILABが日本で初めて伊勢海老の脱皮をAIで検知するシステムを開発、映像解析で食材の「最旬」の見極め目指す

EBILABが日本で初めて伊勢海老の脱皮をAIで検知するシステムを開発、食材の「最旬」の見極め目指すEBILAB(エビラボ)は10月7日、日本で初めてAI映像解析により伊勢海老の脱皮を検知するシステムを開発し、10月1日から実証実験を行っていることを発表した。これは、伊勢海老の水槽を暗視カメラで監視し、AIが伊勢海老の脱皮を検知するとユーザーのモバイル端末に通知されるというもの。実験終了後は、三重県伊勢市の老舗伊勢海老料理店「倭庵黒石」(やまとあんくろいし)に導入される予定。EBILABが日本で初めて伊勢海老の脱皮をAIで検知するシステムを開発、食材の「最旬」の見極め目指す

エビの香の大部分は皮に含まれているため、皮ごと食べるのがおいしいとされている。皮が非常に固い伊勢海老も、脱皮直後なら柔らかい。その瞬間が伊勢海老がもっともおいしくなる最旬とされている。このシステムを導入予定の倭庵黒石でも、脱皮直後にさばいた伊勢海老を「幻の伊勢海老」として提供している。ところが、伊勢海老の脱皮には特定の周期がなく、生育環境や個体差によるばらつきもあり、その時期を見極めるには、現状では職人の勘と経験に頼るしかない。しかも夜行性のため、寝ずの番になることもある。そんな苦労が、このシステムを使うことで軽減されるという。EBILABが日本で初めて伊勢海老の脱皮をAIで検知するシステムを開発、食材の「最旬」の見極め目指すこのシステムでは、映像解析にMicrosoftの「Azure Cognitive Services」を利用している。これは、言語や音声や視覚など、人の認知を模した機能をウェブAPIとして簡単に利用できるAIサービスだ。このサービスを導入したことで、開発コストや運用コストを、飲食店が導入しやすいレベルにまで抑えることができた。

EBILABは、三重県伊勢市で150年の歴史を誇る老舗「ゑびや」の経営メソッドから生まれたサービス産業のためのシンクタンク。飲食店向けのクラウドサービスの開発、提供を行っている。このシステムは、「人の経験や勘に頼らず正確かつ効率的に食材の『最旬』を見極める仕組み」として、伊勢海老以外にも応用できると、EBILABは話している。

希望条件を基にAIが旅行情報を提案する「AVA Travel」が正式リリース、レコメンドエンジンのAPI提供事業にも挑戦

希望条件を基にAIが旅行情報を提案する「AVA Travel」が正式リリース、レコメンドエンジンのAPI提供事業にも挑戦

AVA Intelligence(アバインテリジェンス)は10月7日、AIを活用した旅行サービス「AVA Travel」(アバトラベル)の正式版リリースを発表した。また、AVA Travelの旅行提案機能(レコメンドエンジン)のAPI提供事業にも挑戦すると明らかにした。希望条件を基にAIが旅行情報を提案する「AVA Travel」が正式リリース、レコメンドエンジンのAPI提供事業にも挑戦

AVA Travelは、ユーザーの希望や条件を基にAIが適した旅行情報を提案するサービス。2019年8月にローンチしたβ版では、海外における約100都市からユーザーに合わせた旅行先の提案を行っていた。その後コロナ禍の影響もあり、国内旅行先の提案にも対応し、現在は国内外合わせ約400の旅行先から好みに合わせて提案するようにしたという。

また、広島県を舞台としたアクセラレーションプログラム「ひろしまサンドボックス『D-EGGS PROJECT』」(2021年4月採択)で実証開発を行い、正式版では現地での具体的な観光スポット・ホテル・体験・レストランまでユーザーごとにおすすめ順で提案可能となっているそうだ。特に、広島県尾道市周辺の観光情報は、現地の人のみぞ知るようなディープな情報も提案できるようにしており、自力で探していては出会いにくい、新たな発見を提供するという。

さらに同社によると、AVA Travelの裏側で動いている旅行提案機能について、APIとして利用希望先へ提供する事業を開始予定という(2022年に正式提供予定)。現在、同機能の正式提供に向け、実証開発に協力可能な企業を募集中だ。

同APIでは、旅行に関する希望・条件を送ると、それに応じた旅行先や、旅行先における観光スポット・ホテル・体験・レストランなどをおすすめ順で受け取れる。これにより同社レコメンドエンジン提供先では、まだ具体的な旅行プランの決まっていない検討ユーザーに対して瞬時に提案することが可能となり、ユーザー体験価値の向上が期待されるという。希望条件を基にAIが旅行情報を提案する「AVA Travel」が正式リリース、レコメンドエンジンのAPI提供事業にも挑戦

データ+AI企業Databricksがローコード・ノーコード機能拡張のため8080 Labsを買収

Databricks(データブリックス)は米国時間10月6日、ドイツのスタートアップである8080 Labsを買収したと発表した。8080 Labsは、Pythonベースのデータ分析・操作ツールPandasの人気GUIである「bamboolib」を開発している。bamboolibは、データサイエンティストがコードを書くことなく、迅速かつ容易にデータを探索し、変換することを可能にする。8080 Labsは、bamboolibの無料コミュニティ版と、企業向けの機能を追加した有料プロ版を提供していた。Databricksは、これらのUIにフォーカスした機能を自社のLakehouse Platformに統合し、ローコード・ノーコード機能を拡張していく予定だ。

今回の買収は、8月に16億ドル(約1783億円)のシリーズH資金調達ラウンドを終了して以来、Databricksにとって初めての買収となる。当時、DatabricksのAli Ghodsi(アリ・ゴディシ)CEOは、この分野で資本力のある競合他社に対抗するために資金調達を行ったと話していた。競争の激しい分野で急成長している企業にありがちなことだが、そのためには、エンジニアリング人材とソフトウェア機能の両方を手に入れるための買収が必要になる。

ゴディシ氏は本日の発表でこう述べている。「2020年のRedashの買収と合わせて、ローコード・ノーコードのソリューションを好むより多くのユーザーに当社のユーザーベースを拡大していきます。Databricksにシンプルな機能を導入することは、専門知識の有無にかかわらず、より多くの人が大規模なデータセットを簡単に分析・探索できるようにするための重要なステップです」。

Databricksにとって今回の買収は、専門知識を持たないシチズンデータサイエンティストに同社のプラットフォームを提供することに新たな重点を置くことを意味する。「データとAIがあらゆる規模の企業にとって戦略的な優先事項になるにつれ、組織内の誰もがデータに基づいて質問したり行動を起こしたりする権限を持つことが重要になっています」と同社は声明の中で述べている。Databricksは、同社の自動機械学習ツールと組み合わせることで、より幅広いユーザーがデータから価値を引き出すことができるようになると主張している。また、プロの開発者にとっても、同社のUIツールでデータ変換を構築し、よりカスタムな実装が必要になったときにPythonコードをエクスポートすることで、負担が軽減されるとしている。

8080 Labsの共同設立者であるTobias Krabel(トビアス・クラベル)氏はこう述べた。「我々は、複雑なデータタスクをシンプルにし、データサイエンスと機械学習のパワーをあらゆるスキルセットのデータチームが利用できるようにするために8080 Labsを設立しました。オープンソースをルーツとし、レイクハウスというカテゴリーでデータ環境を再構築するという素晴らしいビジョンを持つDatabricksには無限の可能性があると考えており、チームの一員としてその旅に加われることをこの上なく嬉しく思っています」。

8080 Labsは4人のビジネスエンジェルからエンジェル資金を調達していたが、詳細は公表していない。

画像クレジット:Artur Debat / Getty Images

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(文:Frederic Lardinois、翻訳:Aya Nakazato)

AI開発のデータ不足を物理学を利用して作成した合成データで解決するRendered.ai

必要なデータを得ることができないため、ソフトウェアを提供するプロダクトやサービス、その企業が麻痺してしまうことがある。この問題を解決するために、創業2年のデータスタートアップRendered.aiは、人工衛星や医療、ロボティクス、自動車などの業界向けに合成データを作っている。

大きな意味では、合成データとは現実世界から集められるデータではなく人工的に作られるデータのことだ。Rendered.aiのCEOであるNathan Kundtz(ネイサン・クンツ)氏は最近のインタビューでこ「私たちが合成データという言葉を使うとき、実際に意味しているのは、工学的にシミュレートされたデータセットです。特に物理ベースのシミュレーションに重点を置いています」と語っている。

デューク大学で物理学の博士号を取得したクンツ氏は、衛星アンテナ開発会社であるKymeta Corporationを率いて宇宙産業に従事していた。Kymetaを退社した後、クンツ氏は他の小さな宇宙関連企業と仕事をするようになったが、彼は「ニワトリが先か、卵が先か」の問題に気づいた。

例えば、ある企業が衛星用の新しいセンサーを開発し、商品化のための資金を探しているとする。この企業は、そのセンサーが有用な知見を生み出すことができることを投資家に示す必要があるが、その洞察を得るためには、衛星を打ち上げて大量のデータを収集する必要がある。

「このデータへのアクセスがないことが、人工知能の妨げになっていました」とクンツ氏はいう。

投資家の関心

その「アクセス」を作り出すRendered.aiのアプローチは、投資家たちの関心を集めた。同社はSpace CapitalがリードしTectonic VenturesとCongruent Ventures、Union Labs、そしてUncorrelated Venturesが参加する600万ドル(約6億7000万円)のシードラウンドを調達した。

Rendered.aiは、物理ベースのアプローチの採用で、純粋に生成的な手法で合成データを作成する競合他社とは一線を画してる。競合他社は、純粋に生成的な手法で合成データを作成する。一般的には、敵対的生成ネットワーク(Generative Adversarial Network、GAN)と呼ばれるAI技術を用いて合成データのシミュレーションを行い、改良を加えていく。クンツ氏によると、新興産業ではデータがほとんどない、GANの有用性は限られているという。

企業がデータを取得する際には、コストがかかり、困難で、時間のかかる作業になるなどさまざまな要因がある。これらの問題は、合成開口レーダーで生成された画像のように、RGBでない画像の場合はさらに厄介になる。

では、物理学はこの新たな情報の生成という問題をどのように解決するのだろうか。クンツ氏は、「物理学の知識、例えば光が物体とどのように相互作用するかを支配する方程式を通して、これらのアルゴリズムを作成するプロセスに新しい情報を導入することができます。例えば、光が物体とどのように相互作用するかを支配する方程式などです」と述べている。

開発者のツールキット

Rendered.aiが開発したプラットフォームには、ノーコードの設定ツールや、顧客がデータセット上のパラメータをエンジニアリングして微調整するためのAPI、データセットのイントロスペクションやデータ分析のためのツールセットなどが含まれている。また、衛星画像など、顧客が興味を持つ特定のアプリケーションのためのスターターコードも提供している。同社はこれを「Platform as a Service」と呼ぶ。

Rendered.aiの顧客がシステムを使用するためには一定の専門知識が必要だが、その量は日に日に減少しており、資金の一部はプラットフォームを使用するために必要なスキルセットを継続的に低下させるために使用されるとクンツ氏はいう。

「私たちが目指しているのは、ブラウザーのボタンをクリックできる人なら誰でも合成データを生成でき、単なる合成データではなく、必要なタイプの合成データを実際にコントロールして、それを他の機械学習のワークフローに導入できることです」とクンツ氏はいう。

しかし、Rendered.aiは全知全能ではないため、合成データセットをもっと有効にし、アルゴリズムの機能性を良くするために必要なパラメータは事前にはわからない。そこで同社は試行錯誤の繰り返しと対話を重視して、顧客がアルゴリズムのギャップを見つけ、その盲点を理解できるようにしている。

クンツ氏によると、彼の考えでは合成データが現実データを完全に置換することはありえないが、現在の人工知能アプリケーションのますます深刻なギャップを填めることはできる。Googleのような企業は数兆の画像と山のようなデータセットに私企業としてアクセスできるが、Rendered.aiの顧客のデータ能力が、その状態にわずかに接近できるだけでも貴重だ。

Rendered.aiにはすでにひと握りの顧客がいるが、現状まだまだベータであるため、資金はプラットフォームへのアクセスを広げ、また特定業種の特定タイプのデータを作るために投じたいという。

画像クレジット:Rendered.ai

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(文:Aria Alamalhodaei、翻訳:Hiroshi Iwatani)

24時間信頼できるAIの構築を目指しAI品質保守の自動化ツールを提供するCitadel AIが1億円調達

24時間信頼できるAIの構築を目指しAI品質保守の自動化ツールを提供するCitadel AIが1億円調達

「24時間信頼できるAIをあなたに」をビジョンに、AIの品質保守の自動化ツールを提供するCitadel AIは10月4日、シードラウンドにおいて合計1億円の資金調達を実施したと発表した。引受先は、東京大学協創プラットフォーム開発(東大IPC)、ANRIがそれぞれ運営するファンド。現在創業期ソフトウェアエンジニアの募集を進めており、調達した資金をベースにエンジニアリングチームを拡充し、2022年の商用化サービスに向け開発を加速化する。

2020年12月設立のCitadel AIは、米Google Brainの元AIインフラ構築責任者が開発をリードするスタートアップ。東京を拠点としつつ、インターナショナルなチームを構築しており、グローバルな市場を狙っているという。

同社提供の「Citadel Radar」(β版)は、顧客のAIの品質を自動モニタリングし、AIの入出力の異常を自動検知・ブロックの上、人間が理解できる形で可視化する機能を搭載したシステム。現在大手製造メーカー、システムインテグレータやAIベンチャー企業など10社以上で試験利用を開始しているそうだ。24時間信頼できるAIの構築を目指しAI品質保守の自動化ツールを提供するCitadel AIが1億円調達24時間信頼できるAIの構築を目指しAI品質保守の自動化ツールを提供するCitadel AIが1億円調達24時間信頼できるAIの構築を目指しAI品質保守の自動化ツールを提供するCitadel AIが1億円調達

従来のソフトウェアの場合、そのロジックが外部環境の影響を受けて変化することはなく、システムの性能や品質を監視するさまざまなツールも提供されている。一方AIの場合、外部環境の影響を受けやすい特性があるにも関わらず、AI固有のリスクから顧客を守る仕組みが確立されていない。

Citadel AIは「24時間信頼できるAIをあなたに」をビジョンに、開発時から運用時まで、自動化を通じてこの課題をエンドツーエンドで効率的に解決するソリューションを提供することで、企業や社会をこうしたリスクから守るとしている。

Citadel AIは、AIが誤認識・誤判断し、ビジネス上の損失やコンプライアンス問題として顕在化する前に、異常を自動検知しAIの品質を保つことは、今後のビジネスにとって非常に重要と指摘。AIの社会実装が進む中、同社システムは、これからの社会・企業経営にとって必須としている。

現場に「使える」AI・アルゴリズムを提供するALGO ARTISがシリーズAエクステンション完了、合計調達額5.28億円に

現場に「使える」AI・アルゴリズムを提供するALGO ARTISがシリーズAエクステンション完了、合計調達額5.28億円に

AI(アルゴリズム)のコンサルティングおよびソリューションを提供するALGO ARTISは9月30日、2021年7月に続くシリーズAエクステンションラウンドにおいて、第三者割当増資による資金調達を2021年9月に完了したと発表した。新たな引受先は、東京大学エッジキャピタルパートナーズをリードインベスター、K4 Ventures、みやこキャピタル。シリーズAラウンドにおける合計調達額は5億2800万円となった。調達した資金は、エンジニアといった人材の獲得費用にあて、プロダクト開発を促進し主要事業の成長をさらに加速させる。

ALGO ARTISは「社会基盤の最適化」というミッションを掲げ、コンサルティング・デザイン・システムの力を活用して優れた最適化AI(アルゴリズム)を現場に導入し、継続的に価値を提供することを目指す事業を展開している。

プラントやロジスティクスのスケジュール管理をはじめとする幅広い社会基盤の管理業務を対象としており、現場で継続的に利用されるよう、入念なヒアリングとコンサルティングを経てアルゴリズム・デザイン・機能を設計・実装している。また、実装の過程ではプロトタイプを提供し実際に利用してもらうことで、机上では把握できない課題を抽出し、改善を繰り返すことでスムーズな現場への導入を実現しているとのこと。

HACARUSと大阪ガスが地中レーダーによる地中埋設管の位置検知をAIが行う「AI自動判定ソフトウェア」開発

HACARUSと大阪ガスがガス管・水道管や電力・通信ケーブルなど地中埋設管の検知を行う「AI自動判定ソフトウェア」開発

産業向けのAIソリューションを開発・提供するHACARUS(ハカルス)は9月29日、大阪ガスと共同で、地中の埋設管の位置を自動的に判定できる「AI自動判定ソフトウェア」の開発を発表した。熟練技術者のノウハウをAI化して、地中の埋設管の調査を効率化するというもの。大阪ガスが、日本信号を通じて10月1日より発売する。

今回共同開発した同ソフトウェアを用いると、熟練の技術がなくても、AIにより埋設管位置を正確に判定できるようになるという。AIによって埋設管の位置の検出率89%を実現し、現場作業員の平均と比較して10%以上高い判定精度を達成したとしている。

HACARUSと大阪ガスがガス管・水道管や電力・通信ケーブルなど地中埋設管の検知を行う「AI自動判定ソフトウェア」開発

ガス工事などで道路を掘削する際、ガス管や水道管、電力・通信など各種ケーブルの埋設物を傷つけないよう、地中レーダーなどでその位置を正確に把握する必要があるが、検出されたレーダー波の解析には、熟練の技術者の勘と経験が物を言う。だが、少子高齢化、人材不足などにより熟練の技術者が減少する傾向にある今、そのノウハウを継承する方法が求められている。そこで、HACARUSは、同社独自のAI技術を活かして、そのAI化に取り組んできた。

AI自動判定ソフトウェアには、スパースモデリング(疎性モデリング)と呼ばれる、少ない情報から全体像を把握するAI技術が使われている。大量のデータを必要としないため、クラウドなどに接続する必要がない。そのためローカルで処理が行えるエッジ端末として、システムを既存の地中レーダーなどの装置(既存データ収集デバイス)に組み込むことができる。「今ある設備やオペレーションをなるべく維持しながら、AIを活用した匠の技やノウハウの継承が可能」とHACARUSでは話している。

請求書AIクラウド「LayerX インボイス」が改正電子帳簿保存法に対応、追加費用ナシでデジタルでの請求書・証憑保管可能に

請求書AIクラウド「LayerX インボイス」が改正電子帳簿保存法に対応、追加費用ナシでデジタルでの請求書・証憑保管可能に

LayerXは10月1日、請求書AIクラウド「LayerX インボイス」において、2022年1月施行の改正電子帳簿保存法(施行規則等を含む)のシステム要件への対応を発表した(国税庁「電子帳簿保存法関係」「令和3年度税制改正による電子帳簿等保存制度の見直しについて」参照)。同対応により、LayerX インボイスに請求書などのアップロードを行った後、認定タイムスタンプの付与や法定要件に即した検索などが可能になり、またデジタル上で請求書を含む証憑の保管が行える。機能提供予定時期は、2021年10月中旬以降(対応完了次第順次)。また標準機能として提供し、追加費用など発生せず利用できる。請求書AIクラウド「LayerX インボイス」が改正電子帳簿保存法に対応、追加費用ナシでデジタルでの請求書・証憑保管可能に

請求書などの国税関係書類の電子帳簿保存法の対応においては、以下2要件を満たすシステムの利用が必要になる。

  1. 「紙で受領・作成した書類をデータとして保存する「スキャナー保存」
  2. メールなどを介し電子的に授受した取引情報をデータで保存する「電子取引」データ保存

特に「電子取引」に関する要件として、これまで電子的に授受した取引情報は紙に印刷することが認められていたが、今回の改正法施行で紙に印刷した形での保管ができなくなることから、運用上でも大きな影響が発生する。

これに対応するため、LayerX インボイスでは「訂正削除履歴および検索要件の具備」「認定タイムスタンプの付与」の2点を提供する。またこれら対応については、LayerX インボイス標準で付帯する機能として、追加費用なく利用可能となる。

訂正削除履歴および検索要件の具備

同対応により、LayerX インボイスは、訂正削除履歴が残るシステムとして利用可能になる。また、検索要件の対象項目である、取引年月日・取引金額・取引先をデータ化・保存が可能となる。これにより、先に挙げた(1)のスキャナー保存に対応できる。

認定タイムスタンプの付与

「訂正削除履歴および検索要件の具備」に加え、(2)のメールなどを介し電子的に授受した取引情報をデータで保存する「電子取引」においては、認定タイムスタンプの付与を行わない場合、事務処理規定を備付け・運用が必須になる。LayerX インボイスでは、認定タイムスタンプの付与を行うことで、当該規定の備付け・運用不要で、電子取引に関しても電子帳簿保存法の対応が可能になる。

LayerX インボイスは、請求書受取業務の効率化を通じて経理DXを推進するサービス。請求書の受取り後、AI-OCRで請求書を自動でデータ化の上、仕訳データ・振込データの自動作成および会計システム連携をシームレスに実行できる。

グーグルがAIと新機能を導入して検索サービスを「再設計」

Google(グーグル)は米国時間9月29日、Multitask Unified Model(MUM)と呼ばれる新技術を含むAIの進歩をGoogle検索の改善に応用することを発表した。同社のイベント「Search On」では、MUMを活用した新機能をはじめとするデモンストレーションが行われ、ウェブ検索者を探しているコンテンツによりよく結びつけると同時に、ウェブ検索をより自然で直感的に感じられるようになる。

機能の1つは「Things to know」と呼ばれ、探しているモノをもっと簡単に理解できるようにする。この機能は、人がさまざまなトピックを調べるときの一般的なやり方を理解しており、検索者が最初に見たいと思っているテーマを表示する。

画像クレジット:Google

Googleは例として「acrylic painting」(アクリル画)を検索すると、絵の描き方入門や、アクリル画のスタイル、アクリル画の描き方のコツ、アクリル絵の具の掃除の仕方といったさまざまな「Things to know」(知るべきこと)が表示される。アクリル画に関連する350あまりのトピックを見つけることができる。

この機能が提供されるのは数カ月後からだが、将来的にはMUMを使い表面的なトピックだけでなく、「家庭用品でアクリル画を描く方法」といったより深い洞察に基づくトピックをユーザーに開示することができるようになる。

画像クレジット:Google

また同社は、ユーザーが新しいクエリで検索を再開しなくても、最初の1つの検索を洗練し、拡張できる方法も開発している。

アクリル画の例でいえば、Google検索は、水たまりに絵を描くようなパドルポーリングに関する具体的なテクニックや、受講可能なアートクラスに関する情報を提供するかもしれない。それらのトピックにズームインすると、検索結果やウェブ上の記事、画像、動画などのアイデアが視覚的に豊かなページとして表示される。

画像クレジット:Google

これらのページは、Pinterestに対抗するためのものと思われる。Pinterestの画像を多用したピンボードが、人々の視覚的なインスピレーションをウェブサイトへの訪問やオンラインでの購入などの行動に結びつけることを目的としているのと同様に、検索によって人々がインスピレーションを得ることができるようになっている。

Googleによると、このページは「ハロウィンの飾り付けのアイデア」や「屋内の垂直庭園のアイデア」など、ユーザーが「インスピレーションを求めている」検索に役立ち、試してみたいアイデアを提供するとのこと。本日よりモバイル端末で試すことができる。

Googleはまた、動画検索もアップグレードしている。すでに同社は、AIを使って動画内の重要な瞬間を特定している。さらに、動画内で明確な言及がなくても、そのトピックを識別し、ユーザーがより深く掘り下げて学ぶことができるリンクを提供する機能を始めている。

画像クレジット:Google

 

つまり、YouTubeの動画を見ているときに、MUMはその動画の内容を理解して提案をしてくれるということだ。例えば、マカロニペンギンの動画では、マカロニペンギンがどのようにして家族を見つけたり、捕食者を回避したりするのかを語る動画など、さまざまな関連動画をユーザーに提示することができる。MUMは、たとえ動画の中で明確に語られていなくても、これらの用語を識別して検索することが可能だ。

この機能は、今後数週間のうちにYouTube検索で初期バージョンが展開され、今後数カ月のうちにアップデートされ、より視覚的な機能が強化される予定だとGoogleはいう。

この変更は、YouTubeの大きなリーチを活用することで、Google検索へのトラフィック増加にもつながるだろう。Z世代のユーザーの多くは、すでに旧世代とは異なる方法でオンラインコンテンツを検索していることが調査で明らかになっている。Z世代ユーザーは、複数のソーシャルメディアチャネルを利用し、モバイルファーストの考え方を持ち、動画コンテンツに興味を持つ傾向がある。「Think with Google」の調査によると、Z世代のティーンエイジャーの85%がコンテンツを探すためにYouTubeを定期的に利用し、80%がYouTubeの動画が何かを教えてくれたと回答している。その他のデータでも、Z世代は新たなアイデアやプロダクトについて、テキストやネイティブ広告といったコンテンツフォーマットではなく、動画で知ることを好むことが明らかになっている。

モバイルへの移行が検索の優位性に影響を与えているため、Googleにはこのような追加が必要なのかもしれない。今日、モバイルでのショッピング検索の多くは、Amazonで直接始まるようになっている。さらに、iPhoneユーザーがスマートフォンで何か特別なことをしなければならない場合、Siri、Spotlight、App Store、またはネイティブアプリに助けを求めることが多い。

またGoogleは、MUM技術を使ってGoogleレンズを使ったビジュアル検索を改善する方法も発表している。

関連記事:ビジュアル検索「Googleレンズ」アップデート、グーグルがAIで画像とテキストを1つのクエリにまとめる新検索方法を近々導入

画像クレジット:Google

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(文:Sarah Perez、翻訳:Hiroshi Iwatani)

経済産業省が中学高校のデジタル関連部活の活性化に向け支援を検討開始、パソコン・プログラミング・ロボット・AIなど

経済産業省が中学・高校のデジタル関連部活の活性化に向け支援を検討開始、パソコン部・プログラミング部・ロボット部・AI部など経済産業省は9月29日、デジタル技術に精通した人材を育てるため、中学校と高校のパソコン部、プログラミング部、ロボット部、AI部などのデジタル関連の部活動を活性化・高度化させ、生徒のデジタルスキルの向上をはかる目的で、産業界を中心としたデジタル関連部活の支援のあり方を検討すると発表した。

経済産業省は、10月に「デジタル関連部活支援の在り方に関する検討会」を設置し、教育界、産業界の有識者、デジタル庁、総務省、文部科学省、文化庁などが参加して論議を進め、2021年度内に提言を取りまとめる予定としている。

中学高校では、デジタル技術に高い関心と能力を有する生徒たちが集まっているものの、顧問の教師にプログラミングはじめ専門知識や経験がないことが多く、そのために活動は限定的となり、十分な指導ができないのが現状とされている。一方、産業界には、CSR(社会的責任)の意識の高まりや、将来の日本の競争力を見据える立場から、中学高校のデジタル関連部活を支援したいという意欲がある。2020年に経済産業省が発表した「中学・高等学校等の IT 関連部活への支援に関する調査研究」報告書によれば、調査対象となった企業の約半数が、そうした支援を行いたいと答えた。また、「教育委員会や学校と産業界をつなぐ仕組みを作ってほしい」という声も産業界から出ているとのことだ。

10月5日に第1回検討会が開かれ、12月、3月にもそれぞれ開催される予定。第1回の傍聴予約はこちらから委員の名簿はこちらで公開されている。

経済産業省が中学・高校のデジタル関連部活の活性化に向け支援を検討開始、パソコン部・プログラミング部・ロボット部・AI部など

経済産業省が中学・高校のデジタル関連部活の活性化に向け支援を検討開始、パソコン部・プログラミング部・ロボット部・AI部など

産業界に対するアンケート結果(「中学・高等学校等の IT 関連部活への支援に関する調査研究」報告書)

アルゴリズムで学習者の理解度に合ったSTEM教育を行うNumeradeのショート動画サービス

現在、注目を集めるEdTech分野の起業家たちは、テストの技術や情報保持の在り方など、現代の学習に関連するほぼすべての要素について、その構造や影響を再定義しようとしている。しかし、最も人気のある製品は、一見シンプルなもの、つまり、オールマイティな個別指導なのかもしれない。2018年に設立されたEdTech企業、Numerade(ヌーマレイド)は、拡張可能かつ高品質な個別指導に挑戦し、1億ドル(約110億円)の評価を受けたばかりだ。

方程式や実験の仕組みを解説する短編動画のサブスクリプションを販売するNumeradeは、アルゴリズムを使って学習者の理解の仕方に合わせた説明を行う。共同設立者であるCEOのNhon Ma(エヌホン・マ)氏によると、コンテキストで説明する非同期型のコンテンツに焦点を当てることで、高品質な個別指導を手頃な価格で提供することが可能になるという。

「本当の教育には、視覚と聴覚だけでなく、生徒が実際に学習する際の言葉で伝えるというコンテキストも含まれます」とマ氏。Numeradeは、Wolfram AlphaのようなロボットQ&Aやステップバイステップの回答プラットフォームではなく、実際に科学をソリューションに統合してユーザーに伝えるプラットフォームにしたいと考えている。

7月下旬、NumeradeはIDG Capital(アイデージーキャピタル)、General Catalyst(ゼネラルカタリスト)、Mucker Capital(マッカーキャピタル)、Kapor Capital(カパーキャピタル)、Interplay Ventures(インタープレイベンチャーズ)などの投資家や、Margo Georgiadis(マーゴ・ジョージアディス、Ancestry(アンセストリー)の元CEO)、Khaled Helioui(ハレド・ヒリオリ、Bigpoint Games(ビッグポイントゲームズ)の元CEOでUber(ウーバー)のエンジェル投資家)、Taavet Hinrikus(ターベット・ヒンリクス、Wise(ワイズ)の創業者)などの戦略的投資家が参加するラウンドで、評価額1億ドル(約110億円)で2600万ドル(約28億7000万円)を調達したことを発表した。

マ氏は「同期型の個別指導には需要と供給のメカニズムの縛りがあります。優秀な家庭教師の時間は限られていて、割増料金を要求されることもあり、全体的に市場の供給側の制約になっています」と説明する。一部の企業では、効率化のために複数の生徒を1人の教師に割り当てるグループレッスンオプションも採用されているが、マ氏は「これは本当に時代遅れで、教師の質を損なうものだ」と考えている。

ライブ授業やWolfram Alphaのような答えを教えるだけのシステムを避けてきたNumeradeだが、第3の選択肢として動画を採用した。動画はEdTechの分野では目新しいものではなく、現在は主に、CourseraやUdemyなどの大規模オープンオンラインコースのプロバイダーや、MasterClassやOutschoolなどの「エデュテインメント(エデュケーションとエンターテインメントを合わせた造語)」プラットフォームが動画を利用している。Numeradeは、教師または教育者主導で「Fundamentals of Physics(物理学の基礎)」の第2章にある問題を中心に動画を作成しようと考えている。

Numeradeの動画で学ぶ学生(画像クレジット:Numerade)

Numeradeには、基礎的な知識を得るためのブートキャンプの動画、手順に焦点を当ててその知識をスキルに変えるステップバイステップの動画、これらの情報がどれだけ理解できたかを評価するクイズという3つの主要製品がある。

しかし、このスタートアップの真の狙いは、どの学生にどの動画を見せるかを決定するアルゴリズムにある。マ氏は「深層学習」や「コンピュータビジョン」「オントロジー」といった言葉を使ってアルゴリズムの仕組みを説明するが、つまりは教育動画にTikTok並みの特殊性を持たせ、ユーザーの過去の行動を利用して、学習スタイルに合うコンテンツを適切に提供したい、ということだ。

Numeradeは、ステップ・バイ・ステップの動画で脳が問題のパターンや多様性を理解することで、最終的には答えをよりよく理解できるようになると考えている。同社のアルゴリズムは主にクイズで利用され、あるトピックに対する学生の成績を確認し、その結果をモデルに入力して、新しいブートキャンプやクイズをより適切に提供できるようにする。

「当社のモデルでは、まず学生の強みと弱みを理解し、次に関連する概念的、実践的、評価的なコンテンツを表示して、主題に対する学生の知識を構築して学生の成長と学習をサポートします。アルゴリズムは、動画の構造化データを解析し、学生ごとのニーズに合わせた教育スタイルを提供することができます」とマ氏。

現在のところ、Numeradeのアルゴリズムは予備的なもののようだ。ユーザーが自分に合うコンテンツの恩恵を受けるためには、有料会員になって、十分な利用履歴を稼ぐ必要がある。それができたとしても、学生が前回のクイズで間違えたコンセプトを再表示する以外に、このアルゴリズムがどのようにその学生に合うコンテンツを提供できるのかは明らかではない。

Numeradeの計画も野心的な前提の上に成り立っている。すなわち、学生はコンセプトを学びたいのであって、先延ばしにしていた宿題を終わらせるために急いで答えを知りたいのではない、というものだ。マ氏は、Numeradeの動画の視聴時間はその動画の長さの2~3倍にもなり、これは学生が単にスキップして答えにたどり着くだけでなく、コンテンツと向き合っていることを意味している、と説明する。

Wolfram Alphaに対抗しようとしているのはNumeradeだけではない。過去1年間、Quizlet(クイズレット)やCourse Hero(コースヒーロー)といったEdTechのユニコーン企業は、AIを搭載したチャットボットやライブ電卓に多額の投資を行ってきたが、Course Heroの手法は主にNumeradeのような企業を買収することだった。これらのプラットフォームは、テクノロジーを駆使した個別指導のセッションでは、人間関係の構築や時間ではなく、スピードとシンプルさを優先すべきだという考えに基づいて構築されている。週に一度、数学の家庭教師のところに行くことを嫌がる学生でも、数学試験の数時間前の真夜中に、丁寧に答えを説明してくれるプラットフォームを利用するかもしれない、という考えだ。

アルゴリズムの進化があまり進んでいるとはいえず、競争も激しい分野にもかかわらず、Numeradeの新しい投資家と、収益をもたらす能力は期待がもてる。具体的な内容は明かされていないが、マ氏によると、同社は年間経常収益が8桁(日本円では10億円)目前だという。現在の加入者ベースで少なくとも1000万ドル(約11億5000万円)以上の年間収益を上げていることだ。マ氏は、Numeradeの最大の競争力は「視点」だと考えている。

「商業的なSTEM(Science:科学、Technology:技術、Engineering:工学、Mathematics:数学)教材に対するよくある批判は、モジュール化されすぎている、というものです。教科書では物理を単独で教えています」とマ氏は話す。「私たちのアルゴリズムはそうではありません。私たちはSTEMを連動したエコシステムとして扱います。数学、物理、化学、生物学の概念は全面的に関連しているのです」。

画像クレジット:Westend61 / Getty Images

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(文:Natasha Mascarenhas、翻訳:Dragonfly)