「お前が言うな」の声も想定していた——キュレーション騒動を受けてNAVERまとめが新方針を打ち出した理由

LINE上級執行役員 メディア担当の島村武志氏

2016年末ネット業界を揺るがした話題と言えば、ディー・エヌ・エー(DeNA)が手がける「WELQ」をはじめとした、キュレーションプラットフォームの騒動だろう。

医療情報に特化したWELQ。このサイトに掲載されていたコンテンツには医学的に誤った情報や不正確な内容が多く、問題視されていた。また、「誰もが投稿できるキュレーションプラットフォーム」とうたうものの、その実態はDeNAがクラウドソーシングを使ってコンテンツを作成する、というものだった。またコンテンツ作成においては、他サイトのコンテンツの盗用を指示すると言っても過言ではないマニュアルの存在があったことも明らかになった。結果、DeNAは自社で展開していた全てのキュレーションプラットフォームの記事を非公開化するに至った(詳細はこちら)が、この問題を契機として、各社のキュレーションメディアやキュレーションプラットフォームはコンテンツの見直しや非公開化が相次いだ。

そんな騒動の中、元祖とも言えるキュレーションプラットフォーム「NAVERまとめ」を運営するLINEが動いた。同社は2016年12月5日、LINE NEWSに関する発表会において、まとめの作成者にオーサーランクを適用するほか、一次コンテンツ作成者へのインセンティブや権利保護を行うといった新方針を発表した。NAVERまとめのサービス開始は2009年。サービスから6年以上経過したこのタイミングでなぜ新方針を打ち出したのか。LINE上級執行役員 メディア担当の島村武志氏に話を聞いた(編集注:取材は2016年12月8日に実施した)。

今のままでいい、と思っていたわけではない

——改めて、このタイミングで新方針を発表した意図について教えて下さい。

もともと(一連の騒動を受けてNAVERまとめの対応について)黙っているつもりはありませんでした。本当は発表会でLINE NEWSの取り組みについて発表する予定だったのですが(編集注:新方針の発表はもともと予定されていたLINE NEWSの発表会の中で行われた)、今回の騒動を受けてインターネットの信憑性や著作権まわりの問題、記事の制作プロセス、また“キュレーション”という言葉の定義も曖昧なものになっていました。

「これは先にNAVERまとめの話をしなければ、質疑応答が成り立たなくなるな……」という思いもあり、このタイミングで社内で相談して新方針について発表することを決めました。

振り返ってみると、NAVERまとめの理念についてしばらく話していなかったので、良い機会だなと思いましたし、もちろん今のままでいいと思っていたわけでもないのです。

——具体的にどこに課題を感じていたのでしょうか。

昔から議論していることなのですけど、そもそもNAVERまとめは検索エンジンの問題から始まったサービスです。Googleには「美味しいラーメン屋さん」が分からないと思っています。なので、美味しいラーメン屋さんを知っている人こそが「美味しいラーメン屋さん」をおすすめすることが、検索エンジンの「次」につながるのではないかと思っていました。

ただ、専門家ではない人がネットに落ちている情報をもとに「美味しいみたいですよ」と記事をまとめるケースが増えてきました。「よく分からないけどそういうモノが載っている」では検索エンジンと変わりがありません。やはり、「ラーメンを食べ続けて30年の私がオススメする」といった身元が保証されている人がまとめた記事の方が読みたくなるし、価値があります。

引用される、されないの定義に関しても、どこの誰かは分からない人に引用されているから権利者は怒るのであって、ネット界隈で有名な人に引用されたら「ありがとうございます」となるのではないでしょうか。だからこそ、誰がどう評価しているのかを明確にすべきだと前から思っていました。

また、まとめサービスをやっていく中で、一次コンテンツ作成者のおかげで成り立っているのに、コンテンツを二次的に利用して流通させている人にインセンティブを与えているだけなのはどうなのかと。立ち上げの頃からずっと議論してきました。

——NAVERまとめの立ち上げは2009年。今まで一次コンテンツ作成者への施策は着手できていませんでした。

言い訳がましく聞こえてしまうかもしれませんが、サービス立ち上げ期の2009年と今では状況が全く異なっています。

当時はブログ全盛の時代であり、ネットコンテンツが元気な時代でした。サービスを立ち上げるにあたっては、スタンダードなユーザー投稿型のサービスを考えていました。

ただ、すでに他のサービスがあり、たくさんコンテンツが発信されているという事実がありました。後発で参入しても成功しない、その次に何をするかを考えなければいけない、という議論をさんざんしました。それでリンク記事とTwitterの声を見せるようなただリスト記事ではないもの、DJで言えばサンプリングして新しいクリエイティブが作れるようなものがないか、といったところからセカンドメディア的な構想が始まりました。

「ユーザーは簡単には書いてくれないんじゃないか……」という思いは抱えたまま、NAVERまとめを開始してみたのですが、結果は想像通り。実際に誰も書いてくれなくて、1年くらい何の成果も出せませんでした。「NAVERまとめは最初から上手くいっている」という文脈で語られがちですけど、全然そんなことはありません。

それで最初に、(まとめ作成者への)インセンティブをやろうとなりました。最初は広告収益を全額分配するというところからです。そのあとに東日本大震災が起こって、情報が錯綜する中で輪番停電のまとめなどもできたりして、そういったところから知られるようになっていきました。2011年に(コミュニケーションサービスの)LINEができて、会社が大きくなっている中で、NAVERまとめの存在意義が求めらるようになったのが2012年頃です。つまりそれまでは全てを作成者に返してしまっているので赤字の運営です。その頃からまとめのページビューも増え始めたのですが、一方では検索サービスのNAVERも閉じてしまったので、独立して事業を回さないといけないという状況になりました。

——NAVERまとめは広告商品(スポンサードまとめ)でビジネスをしています。

PV至上主義から脱却したかったのです。自分たちの作っているものに誇りがあるのですが、ネット広告は結局アドネットワークになっていきます。でもそれだけで終わりたくなかったのです。単価を上げ、より多くインセンティブを返す方法を考えたのです。

当時はライブドアと会社も1つになり、一緒になって商品を作ろうとなっていました。ちょうどNAVERまとめは人が来てみて頂けるようになってきたので、アドネットワークだけでできない、うちでないとできない商品を…というので野心的に作りました。

NAVERまとめは自分たちの実力とは別に、評価が一人歩きしているところもあったのですが、決して順風満帆ではありませんでした。ですが、今回の一連の騒動を受けて、「今ここで対応すべきだ」と強く思えたので新方針を発表しました。

さまざまな“まとめ”が掲載される「NAVERまとめ」のトップページ

さまざまな“まとめ”が掲載される「NAVERまとめ」のトップページ

「お前が言うな」の声、言われると思っていた

——今回の発表について、ネット上では評価する声があると同時に「お前が言うな」という批判の声も大きいです。

それは言われると思っていました。ただ絵に描いた餅、ポジショントークで言うのではありません。新方針にチャレンジすると言い切ることが、自分たちの進むべき道を明確にしてくれるのではないかとも思いました。どういうことをやってきたかまず知って欲しいし、これからをどう考えているかを知って欲しい、と。

——ホワイトリストを作るのでプラットフォームに乗って欲しいという新方針は、NAVERまとめが「Googleになりたい」と言っているような印象を受けます。

Googleというと語弊があるのですが、「検索」になりたいんです。コンテンツを必要としている人とコンテンツを持っている人をいかにつなげるか、ということなのです。

一連の騒動で少しだけ違和感があるのは、検索エンジンについてどう考えるかということです。

権利侵害という意味でいうと、法律的には検索エンジンだけが免責されていて(編集注:検索サービスにおける「複製」は、著作権法上は適法となっている)、自社のサーバー内に保持しています。また中身が分かるレベルでの引用、画像もサムネイルの使用は認められています。

それを踏まえて、ロボットは良くて、ロボット以外がはダメな理由(まとめが検索サービスと認められない理由)はそもそも何だったのかと。例えばロボットが信頼性を評価できないことが今回の騒動につながりました。彼らは2014年頃にドメインを判定する、オーサーランクを導入する、と言っていましたが、それがきちんと適用されていれば問題は起きなかったかもしれません。一番人の目に触れている検索エンジンがどんなルールを設けているか、それがその先のコンテンツのあり方を大きく定義していることには違いありません。

「ウェブの記事はタイトルが9割」という話を耳にすることがあると思いますが、これは中身の信憑性は置いておいていい、人はタイトルしか見ないという今までの仕組みがそうさせているところがあります。

——「検索」において実質的にロボット検索のGoogleしか選択肢がないことが問題だということですか。

1つの選択肢しかなければ、すべてのコンテンツはその評価軸に沿って作られるようになってしまいます。だから、今回のような問題が起きてしまったと思いますし、記事の内容よりタイトルにこだわる傾向にになったのではないでしょうか。

ただ、大学教授であろうとその分野で優れた知識を持っている人でもタイトルのつけ方がうまいかどうかというと、決してそんなことはありません。タイトルをつけるのが上手な人と協業するかたちはないのか……と模索したのがNAVERまとめです。検索エンジンという概念はありつつも、それだけではない接点を上手く作っていくことを考えました。

みんなが検索しようと思ったときに最初に開くページではないので、プラットフォームとして拡大しようとしても難しい部分はあるけれども、LINEのスマートポータル事業と繋がる部分はあります。LINEは“あらゆることはLINEにつながる”と考えているので、将来的にはLINE上で医療のことを知りたいと思ったとき、その医療情報を誰がどのように作ったのか、そこまでつなげる必要が出てくるでしょう。

やり方に関しては見切り発車な部分もありますが、根拠なく新方針を発表したわけではありません。LINEのスマートポータル戦略が進んでいることを踏まえて、私たちはロボット検索とは違ったルールで権利をきちんと守ってコンテンツを届けることができると思っています。NAVERまとめで閉じる話でもないと思っているので、LINE IDでの認証を設けることにしました。LINE IDは(変更できないので)ウソを言ってあとから直す、ということはできません。

そもそも何も担保しない状態だったので、まずは少しでもフィルターがかかる状態にすれば、身元が保証されるようになっていき、検索する意味も変わっていくと思います。

——ロボット検索より以前にあったディレクトリ検索(編集注:「サーファー」と呼ばれる担当者がウェブサイト1つずつにカテゴリを付けて登録するタイプの検索エンジン。かつてはYahoo!検索でもこちらが主流だった)に近い印象も受けます。

私はディレクトリ検索全盛の時代から、ロボット検索が席巻するところまでを、身をもって体験しているので、あのとき多くのモノが失われたのを知っています。

当時はサイトが「その人自身」を表すものでした。今よりもサイトを作るのにハードルは高かったのですが、「好きな情報を発信したい」という情熱がフィルタにかけられて検索エンジンに登録されていました。そこには、ファンの人同士が作っている「リンク集」なんかもあって。そうすると自分の好きなことから新しい興味へ、「横に横に広がっていくインターネット」になっていました。ですがロボット型の検索は「ドリルダウン」しかありません。

例えばフェラーリが好きで調べたい人は、実はスポーツカー全体が好きなことがあります。そうすると他のメーカーのスポーツカーについても派生して調べたいし、興味がある。ディレクトリ検索はそういったものをカテゴリで辿っていけました。そのルールが正しかったかというと異論もありますし、これまで何度もレギュレーションはアップデートされてきました。ですが、(登録される情報は)機械をだませても人の目はだませません。例えば「肩こり 幽霊」なんていうキーワードは(人の目であれば問題があると)分かります。

例を挙げると——最近は事情が違ってきましたが——一般的にはコンピューターが写真を見て、その写真に写っている人物を男性か女性か判断するということは難しかったのです。処理の効率化にコンピューターを使うことはできますが、人間の経験をもとにしないと判断できないこともあります。そんな判断があるので安心できる、信頼できる場所を作る、それを広げる、という手法として「NAVERまとめ」があるのじゃないかとも思っています。

——プロバイダ責任制限法について言及されることが多いですが、NAVERまとめはプラットフォームなのでしょうか。自らコンテンツを発信するメディアになるのでしょうか。

NAVERまとめはプレーヤーになるつもりはありません。LINE社としてはLINE NEWSのチームでやりますが、NAVERまとめではやりません。エクスキューズしておくと広告商品のまとめだけは違いますが、いわゆる情報を発信する立場になることはありません。

—— WELQの騒動ではSEOの手法にも話題が及びました。NAVERまとめもSEOが強いサービスです。

実はNAVERまとめはSEOが本当に弱かったんですよ。初期の段階では韓国のNAVERから開発の支援を受けていたのですが、韓国にはSEOの概念がありません。それは韓国ではNAVER検索が最強の検索サービスで、ウェブ検索ではなくコンテンツ検索が主流だからです。

NAVER検索は知恵袋のようなQ&Aサービスを作って、ハンゲームのコイン配布キャンペーンを実施し、ユーザーにたくさんコンテンツを作ってもらった。できあがったコンテンツはGoogleから遮断し、NAVER内でしか読めないようにすることで、ユーザーを囲い込んでいきました。そういった経験もあり、人とテクノロジーが調和した「探しあう検索」(NAVER検索のテーマ)という根底の考え方を持っています。

しかしSEOを意識しないわけにもいかないので、「最低限インデックスしてもらえるように記述してください」ということは言っていました。もちろん最優先事項は作成者の数を増やすことなので、SEOの対応はすごく遅れていて、今の状態は本当に棚から牡丹餅みたいなものです。

——2015年5月のGoogleのアップデート以降、NAVERまとめは検索順位を落としたと聞きます。Googleに目をつけられるほどSEOが強かったとも言えるのではないでしょうか。

検索順位を落とされたと言われるのですが、私はそれが適切だったと思っています。そもそも検索上位にあることが本意ではありません。コンテンツがオリジナルじゃないし、ある種のリンクの集合体。コンテンツファームに見えるかも知れません。もちろんまとめによっては価値があるのですが、それが検索の1位、2位になることが適切かという悩みはありました。

あくまで私の推論ですが、最近のアルゴリズム変更でページランクと被リンクランクをドメインに返す割合が変わってきているので、その結果、まとめも良いものが残り、そうでないものの順位が下がってきてるだけではないかと思います。

残る著作権問題、どう取り組むか

——著作権に関する問題、情報の信頼性に関する問題は残っています。現在どんな取り組みをしていますか。

著作権侵害に関して残っている課題は事後対応のことだと思っています。結局、掲載後に権利者から連絡をいただかなければ分からない種類の権利侵害がある。我々が見て分かる権利侵害の記事や間違った情報が載っている記事はすぐに落とします。

——ライセンスの必要そうな画像を排除しているのですか。

画像の著作権って一番分からないのです。権利元が分からないですし、媒体がどこまで許諾をとっているのかも分かりません。

以前、宇多田ヒカルさんの楽曲がYouTubeから削除された問題があって、一時期大騒ぎになったんです。権利者から申告があったから消したと思いきや、実が権利者から「なんで消したんだ?」と言われたみたいで、本当に権利者が誰かが分かりづらい。

著作権に関しては申告制になっていることがそもそも問題だと思っているのですが、それを解決するためにあらかじめ「一次コンテンツ作成者が誰なのか」が分かる仕組みが入らないと確認のしようがありません。とにかく、そこがすべてだと思います。

なのでまず「これが私の著作です」と教えてもらう、本当にその人のものであるかを確認する、その人がどういう経験をしてきた人であるかを承認することが1つのステップだと思います。そうすることで私たちがコンテンツを紹介するときは、(一次コンテンツの作成者から)「使っていいですよ」と言われているので使うということができます。

それがNAVERまとめの中で、こういう範囲であれば使って大丈夫という形でどんどん共有していければと思っています。以前から「Getty Images」などとホワイトリスト的な取り組みをしており、権利の所在が明確なものをユーザーは自由にまとめに使えるようにしています。それを一般に広く解放していくイメージですね。

こういう仕組みを構築することで、ユーザーも使っていいものが増えればまとめの量が増えるし、権利の所在も明確になるのでインセンティブの還元もしやすくなる。これは一つの形として考え始めています。

権利者が誰で、どんなことを望んでいるのか。一次コンテンツ作成者に向き合って、彼らが情報を発信していくことに対して助けとなる形で入っていきたいのです。「具体的にいつやるんですか?」といった声もあると思うのですが、まずは始めなければ意味がない。どれくらいの人に賛同していただけるか分からないですが、少なくとも賛同していただいたときに、やってよかったと思っていただけるようにすることが、私たちができることだと思います。

そして、それをやり続けていけば、少しずつ価値が分かってもらえて、「今まではSEOを意識してタイトル付けをしていたけど、これからは中身にこだわればいいんじゃないか」という風に思ってもらえるかもしれません。

——とはいえ、すでに著作権が侵害されているコンテンツも見受けられます。それは権利者に対して「申請して下さい」と言うことになるのでしょうか。

そこはオプションをいくつか考えています。権利の範囲を一緒に設定していければと考えています。まとめられたくない権利も保証するし、まとめられたい権利も保証する。理想的には、その中間も保証したい。権利のコントロールができることが大事だと思っていますが、コンテンツをいただかないことには分からない部分もある。

——著作権を違反しているものがあれば、権利者から申請して欲しいと。

そうですね。申請していただくこともそうですし、明らかに著作権を違反しているものがあれば、こちらから「御社のものですよね? もし宜しければホワイトリストとして取り込ませていただければと思うのですが……」とお声がけする形もあると思います。もちろんNGな場合は断っていただければいいですし、そういったコミュニケーションを取っていけるようにしたいですね。

可能性としてはあらゆる方法が考えられるのですが、まずは追跡可能なデータベースを作ることが最初の一歩になり、後手ではなく能動的に対応できるようになるんじゃないかと思います。「お前が言うな」という声は受け止めるしかない。NAVERまとめには価値のあるものもあるが、もちろん課題があることも事実。きちんと現状を認識しているからこそ、発信するときに身元が分かるようにする方法しか解決の手立てがないと思っています。

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島村氏へのインタビューはここまで。冒頭にあるとおりこのインタビューは12月8日に実施したものだが、それ以降もNAVERまとめに関してネット上ではさまざまな議論が起こっている。TechCrunchでは(1)著作権上の引用について、引用物が主従関係の従になるべきという文化庁見解がある。その観点でNAVERまとめは正しい引用と言えないケースが見られるがどう考えるか、(2)著作権者からの発信者開示請求を拒否したことを契機に、広告配信の停止を要望する動きがあるがどう考えるか——という2点の追加質問を行ったところ、「コーポレートサイトに掲出した当社見解を回答とさせて頂く」(同社広報)とのコメントを得た。

LINEの見解は多くの項目にわたるため、質問に関わる点だけを抜粋すると(1)については、権利者より著作権侵害の申告があった時点で当該「まとめ」の非表示処理を行ったのちに作成者に正当性の証明・掲載再開を行う「みなし非表示対応」を開始したほか、発信者の情報開示体制の運用改善を実施するなどして権利者保護に努めているとしている。また(2)については、個別の事案についてのコメントは差し控えるとした上で、あらためて今回の新方針によって権利者保護、権利者へのメリット提供を行うとしている。ただし、(1)の引用の主従関係に関する具体的な回答はない。

トップシェアであるからこそ、プラットフォームになり得る──LINE舛田氏が語ったグローバル戦略

LINE取締役CSMOの舛田淳氏

LINE取締役CSMOの舛田淳氏

11月17日から18日にかけて開催されたスタートアップの祭典「TechCrunch Tokyo 2016」。ここでは2日目のセッション「日米同時上場のLINE、その次の挑戦」の様子をレポートする。このセッションに登壇したLINE取締役CSMOの舛田淳氏は、米TechCrunch記者のHaje Jan Kampsとの質疑を通じてLINEのグローバル戦略について熱く語った。

まずLINEと他のメッセンジャーアプリの違いについて。舛田氏によれば、LINEは日常的なコミュニケーションに徹底的にこだわってきたという。「日常生活で会ったことのある、プライベートな関係。そんな人達を友だちリストに並べて、その中だけでコミュニケーションを取る。そんなリアルグラフに徹底的にこだわったのが開発当初のLINEの差別化のポイント」(舛田氏)

ユーザー数の伸びに意味はない

LINEは、日本や台湾・タイ・インドネシアなどアジア圏を中心に、2016年9月末時点で2億2000万人のMAU(月間アクティブユーザー数)を抱えている。一方で2016年6月末に比べるとほぼ横ばいと、ここにきて伸び悩んでいるのも事実だ。舛田氏は、グローバル全体のユーザー数の伸びについて、本質的な意味はないと切り捨てる。

「LINEが誕生した2011年から2013年頃まで、我々は『どこまでいけるんだろう』と考えていた。日本発のサービスが海を超え、アジアや欧州でどんどん普及していった。ユーザー数が毎週伸びていくなかで、世界中に足を運んで、現地のパートナーと手を結び、現地のコンテンツを調達してきた」

「ただある時、全体としてのユーザー数の伸びに本質的な意味はないことに気づいた。毎週毎週ユーザーは増えるが、全体的にユーザーが増えることには意味がない。これ(MAU)が3億になっても4億になっても5億になっても、我々の思い描いているLINEというサービスを成功させるためには、意味がないとわかった」

トップシェアである必要がある

米TechCrunch記者のHaje Jan Kamps

米TechCrunch記者のHaje Jan Kamps

「我々のサービスは、その国々においてトップシェアでなければならない。トップシェアであるからこそ、プラットフォームとなり、その先の事業がうまれる。当時を振り返ると、LINEは多くの国で使われていたが、シェアが3位・4位という国が山ほど出てきた。短期的な投資家の観点では、例えば我々がバイアウトを考えていた場合では、ある種の評価がされるのかもしれない。ただ、私達は私達のサービスを戦略的に成長させていきたいという思いがあり、戦略を切り替えた」

「もちろんグーグルやFacebookのように、世界中で使われるサービスもある。しかし、全てがグローバルなサービスになってはいない。日本のApp Storeのランキングを見ても、決してグローバルプレイヤーだけが並んでいるわけでもない。グローバルプレイヤーが勝っていないケースはたくさんある。LINEはまさにその中の1つ」

「ネクストグローバル」はローカルに

「それぞれの国やローカルエリアによって、ユーザーのニーズは違う。(世界で)画一的なサービスを提供しようというのが、少し前のインターネットの形。ローカルから始まってグローバルになったが、『ネクストグローバル』はローカルになった。そこで文化がきちんと意識されて、慣習に合ったユーザーの行動パターンが求められている。そこにうまく最適化したところが、ユーザーを掴むのだと思う」

「我々のグローバル戦略というのは、きちんと1個1個、日本をやって台湾をやってタイをやって、次はインドネシアだと。アジアのマーケットが我々の挑戦すべきフィールドで、そこを押さえることに今は注力している。つまり(各国の)ローカルのユーザーに愛していただくことが、我々の成長に繋がる、結果としてグローバルにチャレンジできるという考え方。2014年後半から4か国に焦点を絞り、アジアフォーカスとして戦略を動かしている」

「(日本できちんとしたポジションがあるから海外に出ていきやすいというのは)あまり関係ないと思う。日本で考えたことをそのままやるというスタンスでは決して無い。日本で作ったものは当然あるが、やはり現地のスタッフが最前線でその国の人達と触れ合い、そこで生まれるアイデアを吸収して、そこで事業を行う。我々の考え方は、その国その国で最も愛されるサービスを作ることだ」

プラットフォーム化に先行してチャレンジしてきた

インドネシアはLINEがフォーカスする地域の1つだ。しかし、BlackBerry Messengerが同国のメッセンジャーアプリのシェア1位を獲得。LINEは2位と後塵を拝している。その点について舛田氏はこう語る。

「インドネシアではBlackBerry Messengerが強い。これはメッセンジャー業界のミステリーだ。とはいえ、ユーザーの属性を見てみると、若いユーザーはBlackBerryではないものをアクティブに使っている。それがLINEだ。そこではニュースが読めたり、ゲームも楽しめる。メッセンジャーだけでなく、メッセンジャーをアクティブにするためのコンテンツやサービスがあったりする」

「バラバラなサービスではなく、例えばニュースを読もうとすると、メッセンジャーを必ず通過する。LINEが持っているメッセンジャーのユーザー体験、それによって我々はインドネシアに注力するのが遅かったにもかかわらず、シェアを2位にまで伸ばすことができた」

「今はスマートフォンを1人1台持ち始めているし、アプリケーションも使われている。ただ調査によれば、スマートフォンで日常的に使われているアプリは10個もない。これは世界中で同じ。世に出ている90%以上のアプリはゾンビ化していて、作っても使われない」

「その代わりにメッセンジャーがそのプラットフォームになってきている。今までOSが担っていたサービスのプラットフォームを担っていたが、今やメッセンジャーが最もユーザーを集めるゲートウェイになり、擬似的なOSとして振る舞い始めている。WeChatもFacebook Messengerもやろうとしている、メッセンジャーの可能性。そこへLINEは先行してチャレンジしてきた」

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韓国NAVERがソフトバンクと共同で4300万ドル規模の新ファンドを設立

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アメリカと日本の株式市場に上場するチャットアプリ「LINE」の親会社であるNAVERは、ソフトバンクと共同で4300万ドル規模のファンドを設立すると発表した。同社の子会社が運営する2つのサービスを強化することが狙いだ。

「SB Next Media InnovationFund」と名付けられた当ファンドでは、NAVERの子会社であるSnowとWebtoonとシナジーを持つスタートアップやテクノロジーに投資することを目的としている。SnowはFacebookが買収を検討していると報じられたSnapchatに似たアプリを提供しており、Webtoonはオンラインコミックを提供する企業だ。このファンドの投資先は韓国国内の企業に限ったものではなく、世界中の企業を対象にしている。そのコネクションを提供するうえで重要なパートナーとなるのがSoftbankなのだ。

LINEは今年の夏に上場し、その際に11億ドルを調達している。その親会社である韓国の巨大Web企業NAVERが次に期待するのがSnowとWebtoonだ。Snow CEOのChang-Wook Kimと、Webtoon CEOのJun-Koo Kimがアドバイザーとして就任する当ファンドでは、主にコンテンツ製作やテック系のスタートアップに投資をしていくという。その中でも特に注力していく分野としてARとVRが挙げられている。

NAVERがこのようにファンドをビジネスの手段として利用するのは今回が初めてではない。今年9月には、LINEは海外市場でのプレゼンスの拡大を狙い、米国とフランスを拠点とするファンドに出資したと発表している。また、同社は「ライフスタイル」アプリの支援を目的として設立されたファンドを所有しており、同ファンドを通してゲーム関連企業などに出資をしている。

LINEにとって、グローバルなプレゼンスを持つことは特に重要だ。同アプリは2億1800万人ものアクティブ・ユーザーをもつものの、昨年の成長率はこれまでに比べてかなり落ち込んでいる。とは言うものの、創業から1年で総ダウンロード数が8000万回、そして月に1000万回のペースで新しいユーザーにダウンロードされているSnowの成長率と比べても、LINEの成長率が格段に高いことは確かだ(実際、今年の9月にLINEはSnowとのシナジー強化を目的に4500万ドルの出資を行っている)。

Webtoonのサービスはオンラインコミック版のNetflixとも言えるサービスだ。同サービスはWebに加えて、iOSとAndroidアプリで利用できる。同社もまた、新規ユーザーの獲得のためにLINEを利用しているものの、現在の会員数は公表していない。

同ファンドは今年の終わりまでに500億ウォン(約4300万ドル)を調達することを目指している。その内訳として、Naverがその大半の400億ウォン、ソフトバンクグループのSoftBank Venturesが45億ウォン、Korea Venture Investmentが5億ウォンを出資し、残りの50億ウォンを第三者から集めるとしている。

[原文]

(翻訳: 木村 拓哉 /Website /Facebook /Twitter

日米同時上場を果たしたLINE、次の展開は? TechCrunch Tokyoで舛田氏に聞く

LINE取締役CSMOの舛田淳氏

2016年に最も大きな話題となったIPO(新規上場)といえば、7月に東証一部とニューヨーク証券取引所(NYSE)に同時上場したLINEで間違いないだろう。11月17〜18日開催のイベント「TechCrunch Tokyo 2016」にもLINE取締役CSMOである舛田淳氏の登壇が決定したのでここでお知らせする。

同社のサービスの基盤となっているコミュニケーションアプリ「LINE」は、2011年の東日本大震災を契機に生まれたという。そんなLINEも今ではMAU国内6200万人、グローバル2億2000万人(2016年6月末時点)という巨大なサービスに成長した。

同社では上場に合わせて「スマートポータル」構想を発表。このLINEというアプリを入り口にして、ニュース(LINE NEWS)や音楽(LINE MUSIC)、マンガ(LINE マンガ)といったコンテンツ領域、決済(LINE Pay)やボット(LINE BOT API)、バイト探し(LINE バイト)といったライフ領域までを1つのプラットフォームとして経済圏を作っていくとしている。

また舛田氏は先日、招待制イベントのB Dash Campに登壇。今後は「NEXT LINE」と呼ぶべき新規事業を展開するため、スタートアップを含めた外部との提携やM&Aを行う可能性があるとも言及している(ちなみに舛田氏がチャレンジする領域の1つとして挙げたのは、「特化型のSNS」だった)。

TechCrunch Tokyoでは、そんなLINEのこれからの姿について舛田氏に聞いていきたい。同氏の登壇は11月18日午後になる予定だ。興味がある人は是非とも以下からチケットを購入頂きたい。

LINEでメール送受信・タスク管理ができるチャットボット「SwingBot」がリリース

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日本のスタートアップであるBHIが、本日10月20日よりLINEでメールの送受信やタスク管理ができるチャットボット「SwingBot」をリリースする。LINE上で動作するパーソナルアシスタントによって、非実用的で重要度の低い情報を自動的に省き、重要度の高い情報だけを届けることが目的だ。

SwingBotの機能はLINEで直接メールの送受信をする機能と、タスク管理機能だ。

LINEで直接メールの送受信、タスク管理も

Gmailやキャリアメールを受け取ると、チャットボットがLINEで通知してくれる。メールアプリに移動することなくLINE上で直接メールに返信することも可能だ。BHI株式会社のCEOである日昔 靖裕氏によれば、「チャット上で直接メールの送受信ができるのは、これが世界初」だという。

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もう一つのメイン機能であるタスク管理機能では、Googleカレンダーなどのサービスと統合することでチャットボットがその日の予定やタスクを教えてくれる。「今日の予定は?」などと質問することでチャットボットが回答したり、「〇〇をタスクに追加」と伝えれば、LINEから直接タスクを追加することが可能だ。
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既存サービスとの連携でチャットボットの精度アップ

スケジュール管理ができるチャットボットのx.aiなど、最近ではプロダクティビティ系のチャットボットが次々に誕生している。そのような状況のなかで、SwingBot独自の強みとは何だろうか。それは、BHIが提供する既存サービスのSwingmail(メールアプリ)とSwingdo(タスクアプリ)の存在だ。

メールアプリのSwingmailでは、メールとFacebookメッセージ、TwitterのDM、アプリ経由でかけたFaceTimeなどの通話履歴を全部まとめて見ることができる。他のメールアプリとの違いは、コミュニケーションする相手ごとにアプリ横断的にすべての履歴を管理することができるという点だ。現在、Swingmailは連携アカウントが計10万、メール総数は6000万通という実績を持っている。Swingmailについては過去にTechCrunchでも紹介している

Swingmailの特徴の一つに、重要度の高いメールを自動で認識するという機能がある。例えば、Swingmailでは「ユーザーがその相手とすでに連絡を取っている」という事実によってメールの重要度を認識するようになっている。このSwingmailと連携してSwingBotを利用することで、チャットボットが重要度の高いメールだけを通知することが可能なのだ。

また、タスクアプリのSwingdoではタスクと位置情報が紐づけられている。これにより、ユーザーの現在位置情報をもとにボットが自動的にタスクの優先順位を変更し、それを通知するということが可能になっている。「将来的には、他社と連携してユーザーの位置をもとにレストランをオススメしたりなどの機能が可能になると考えている」と日昔氏は話す。

つまり、「過去を管理するSwingmail、未来を管理するSwingdo」があるからこそSwingBotが生きてくるのだ。「SwingBotがもつ一番の参入障壁とは、私たちはすでにサーバーサイドで複数のサービスを同期をして、リアルタイムで通知をするという形をすでに構築しているということなのです」。

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また、既存サービスを運用するなかで、当初の想定とは違ったユーザーから受け入れられていることが分かったと日昔氏が教えてくれた。

「最近受け入れられているのが、キャリアメールを捨てられない人達。それと、最近ではMVNOに乗り換えた人たちが結構いて、そこで付与されたメールをSwingmailで連携するという例が多いです。これは、30代の主婦などのユーザー層です」。

既存サービスが必ずしもフリーランサーなどの「仕事をするユーザー」だけでなく、主婦層などにも受け入れられているという点を考えれば、どちらかと言えばプライベート用のチャットという感が強いLINEで動作するSwingBotも広く受け入れられる可能性は高いだろう。

こうしたユーザー層のさらなる取り込みを目指し、Swingmailでは最近、mineo、Y!mobile、 楽天メールなどのMVNOメールとの連携も可能になった。同社は今後もMVNOとの連携を進めていくとしている。

海外へも積極的に展開

既存サービスのSwingmailでは、北米やイギリス、オーストラリア、北欧などの海外にも積極的に展開してきた。今回リリースするSwingBotについても、「言語の問題があるので英語圏に限られてしまうが、海外展開は積極的に狙っていきたい」とのこと。また、それに併せて他のチャットアプリへの対応も進めていく。まずは10月第4週目にSlack、12月にはFacebook Messenger版をリリースする予定だ。

SwingBotは「年内に20万アカウントの獲得」を目標としており、「そこまでくれば、サブスクリプション型や広告型のマネタイズも見えてくる」と日昔氏は語る。

既存サービスおよびSwingBotの更なる拡大のため、同社は11月に資金調達を予定している。

興味あるのは「SNS」、一番怖いのは「固定化すること」——取締役・舛田氏が語るLINEのこれから

B Dash Ventures代表取締役社長の渡辺洋行氏(左)、LINE取締役CSMOの舛田淳氏(右)

B Dash Ventures代表取締役社長の渡辺洋行氏(左)、LINE取締役CSMOの舛田淳氏(右)

10月17日から18日にかけて北海道・札幌で開催中の招待制イベント「B Dash Camp 2016 Fall in Sapporo」。初日最初のセッションにはLINE取締役CSMOの舛田淳氏が登壇。B Dash Ventures代表取締役社長の渡辺洋行氏とのセッションを繰り広げた。

日本、NY同時上場の意味

2016年7月に日本(東証1部)、ニューヨーク(ニューヨーク証券取引所:NYSE)に同時上場したLINE。渡邊氏は舛田氏に改めて同時上場の意図を尋ねた。

「2016年の年頭までは悩みに悩みまくっていた。東証とNYSE両方なのか、東証だけに上場するのか。テクニカルなこと(株価上昇など)をしたかったという観測もあったが、全然そんなことはない」

「仮に今の経営陣がくたばったとしても——呪詛のように『LINEという会社は世界を意識しないといけない。10年後20年後にもそういう意識を持たさないといけない』と考えた。普通に考えたら『日本だけでいいんじゃないか』と(今後)我々以外の経営者が言うかも知れない。それでは困るのでニューヨークとの同時上場をした。これまで無茶をしてきたので、(上場も)無茶をするのがLINEらしいところもある。海外の投資家の理解度も高い。Twitter、Facebookと同じようなポテンシャルで見てもらっている」(舛田氏)

同時上場については、決定しなければいけない期限まで話し合ったのだという。「明日決めるという日の前日も、仕事の帰り際に出澤(LINE代表取締役社長CEOの出澤剛氏)と『どうする』と話していた。全ての選択肢は持ち続けた」(舛田氏)

そして迎えた7月15日の日米同時上場。ニューヨークで上場を迎えた舛田氏は、その様子を振り返る。

「同時上場ではなく、アメリカで上場するのもアリだと思う。文化の違いというのもあるが、チャレンジする人がサクセスするということ対して、『ウェルカム』と言ってくれる国だ。上場日、マーケットの前で車を下りた瞬間から、ある種のショーが始まっている。映画のように掃除をする人や警備をする人から『今日はいい日になるといいね』言われたり、ハイタッチされたりする」

「(取引所も)もう全てシステム化されているので、本来はディールの場に人が必要ない。ただ初値が付くまでは、(スタッフが)『40ドルだ。(LINEの株価は)そんな価値ではない』と言ってくれる。我々がしびれを切らすと『大丈夫だ。水を飲め』と語りかけるなど、エンターテインメントとして演出してくれる。TIMES SQUAREのショーなども決して我々が仕込んだのではない。セレモニーをやってもらった」(舛田氏)

一方で東証での上場については、出澤氏はじめとして参加者から「少し寂しかった」という声が出たそうだ。舛田氏は「ちょっとした演出でチャレンジする人(のモチベーションが)上がる。その日1日誇れれば、継続して成長するプライドも持てるのではないか」と提案する。

LINEは上場して何を目指す?

LINEは上場以降、「スマートポータル」という構想を掲げてサービスを展開している。渡辺氏はその進捗について舛田氏に尋ねる。舛田氏は次のスライドをもとに現状を語る。

LINEの「スマートポータル」構想

LINEの「スマートポータル」構想

「コンテンツやメディアの領域で1番成長著しいのはLINE NEWS。10代、20代はYahoo! ニュースに迫る勢い。MAUは4100万人で、スマートポータルのメディア戦略の中核中の中核。LINE LIVEは動画プラットフォーム。よく比較されるのはAbema TVだが、全然違うことを考えている。我々はスマホらしいプラットフォームを考えた時に、縦(縦向き動画のUI)だろうと考え、縦向きでコミュニケーションしやすいプラットフォームとして舵を切った。LINEのプッシュ通知などもあるので視聴も配信も増えてきた」

「(サブスクリプション型音楽配信サービスの)LINE MUSICも着実に伸びている。通常のサブスクリプションだとなかなか厳しいところがあったので、LINEの呼び出し音などに(利用できるように)力を入れたところ、サブスクライバーの数も売上も伸びてきた」(舛田氏)

このほか、インフラの面でも、LINE Payやメッセージング、BOT APIなどの提供も進めている。舛田氏は、LINEの本質は「カンバーセション」の会社だと続ける。「日本もタイも台湾もだが、そこで(メッセージングサービスの)リーディングカンパニーは間違いなくLINE。そこにUI、データ、カンバセーションといったものをOSのようにしてさまざまに展開しようとしている」(舛田氏)

スマートポータル構想について語る舛田氏。だが、渡辺氏からはより具体的な戦略について知りたいという質問が飛ぶ。

「さっきニュース(LINE NEWS)の話をしたが、ポータルサイトで必要なコンテンツというのはいろいろある。だが(ポータルと)スマートフォンを掛け合わせた時に必要なバーティカルなコンテンツやサービスはまだLINEにはない」(舛田氏)

LINEにまだ欠けているコンテンツやサービス、その1つの答えが先日発表された「出前館」運営の夢の街創造委員会の株式取得だろうか。舛田氏は「(コンテンツと比較して)サービスに近いところだがそうだ」と語る。

さらに、「コンテンツやメディアはまだ(LINEに)ない」として、他社との提携、株式の取得、協業などに力を入れていくとした。同時に、内製して開発していた内容についても、テクノロジー系のスタートアップと組んで補完していくと語った。「出資もするし、必要であれば100%(LINEの)中に入ってもらうものもある」(舛田氏)

舛田氏はLINEの戦略は分かりやすいと語る。「引いたところから見ると、光が強い(注目しており、サービスを提供しているという意味)ところ、弱いところがある」(舛田氏)。そしてまだ光が当たっていない領域については、すでに外部と連携に関する話をしていたりするとした。ビジネスとしては広告事業にも注力していくが、さらにLINEらしい非連続のチャレンジも続けていくという。

「例えば『NEXT LINE』というところにも張っていこうとしている」(舛田氏)

一番怖いのは「固定化すること」

その「NEXT LINE」としてチャレンジする領域の1つが「SNS」だという。LINEは現在、動画SNSのSNOWに出資したり、写真SNSの「B612」を提供したりしている。舛田氏は「LINEは基本的な連絡をすべてやっているのでアクティブ率は落ちない」とした上で、InstagramやSnapchatを例に挙げつつ、「ただ、(LINEが)みんなにリーチしてるからこそ、逃げたくなるようなもの(コミュニケーション)もある。そういうニーズをどうくみ取るかが大事」と語る。今後もこの領域でのチャレンジがあるということだろうか。

「社内で言っているが、一番怖いことは固くなること、固定化すること」——舛田氏はこう続ける。LINEは1兆円規模の会社になったが、ここまでのプロセスでの強みが、今後は弱点になることはある。そうやって終わっていく企業は多い。なのでどこまで固くならず、変な前提を持たず、新しいことにチャレンジできるのか(が大事)。IPOしたからこそ、きちんとやるべきだと思う。

“ソーシャル使い放題”のLINEモバイルがいよいよローンチ——本日より2万台限定で先行販売も

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3月に開催したプライベートカンファレンス。「LINE CONFERENCE TOKYO 2016」においてMVNO事業への参入を発表していたLINEだが、いよいよサービスが始まる。LINEは9月5日、「LINEモバイル」の詳細を発表した。正式ローンチは10月1日。これに先駆けて本日から2万台限定の先行販売を開始した。

LINEモバイルはLINEの子会社であるLINEモバイルを通じて提供されるMVNO事業。今回の発表では「LINEモバイル1.0」——つまり第1弾の取り組みであるとして——「LINEフリープラン」「コミュニケーションフリープラン」の2つの料金プランを発表した。各プランの概要は以下の通り。なおSIMカードのみでの販売に加えて、端末(8機種19バリエーション)とSIMカードとのセット販売も行う。本日9月5日午後2時より、LINEモバイルの公式サイトにて2万台限定の先行販売を開始している。

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  • LINEフリープラン
    月額500円(データ通信のみの金額。データ通信とSMSの場合月額620円、音声通話を加えると月額1200円)、LINEの通話およびトークが使い放題となるほか、1GBのデータ通信に対応する。
  • コミュニケーションフリープラン
    LINEに加えてTwitter、Facebookが使い放題となるプラン。データ通信とSMSの利用で月額1110円、音声通話を加えると月額1690円(いずれも3GBまでのデータ通信が可能)から。

いずれのプランでも0.5GBにつき500円からデータ通信容量の追加購入が可能。また、年齢認証やID検索に対応。支払いはLINE Payでも可能で、月額基本料の1%がLINEポイントとして付与される。LINE上の友人になっているLINEモバイルのユーザーに対してデータ容量を送りあうことも可能。フィルタリングサービスも無償で提供する。またLINE上にLINEモバイル公式アカウントを提供。トークを使ったデータ残量の問い合わせなども行う。

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ちなみにLINEモバイルではこのLINEやTwitter、Facebookの使い放題を「カウントフリー」と呼んでいるのだが、このカウントフリーの実現のために、LINEはNTTコミュニケーションと協力。IPやパケットの一部(テキスト、動画、画像等の内容は含まないとしている)をモニタリングすることになる。これについては、利用申込時に個別で同意を得るとしている。また今後は音楽ストリーミングサービスの使い放題プランなどを提供していく予定だ。

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ライブ動画配信の「LINE LIVE」、ユーザー向けに配信機能を解放——ライバルは「Snapchat」?

「LINE LIVE」のデモ

LINEが提供するライブ動画配信プラットフォーム「LINE LIVE」。LINEでは近日中にも一般ユーザー向けにライブ配信機能を開放する予定だとしていたが、アプリのアップデートにともなって、8月10日よりいよいよ一般ユーザーへのプラットフォーム開放が始まった(現状はiOS版のみ。Android版も間もなくアップデート予定)。

LINE LIVEはLINEが提供するライブ動画配信プラットフォーム。2015年12月にサービスを開始。この約半年間、LINEと組む制作会社やテレビ・ラジオ局などの企業、音楽アーティストやアイドルなどの著名人が配信する生中継番組を中心にしてコンテンツを拡大してきた。2016年6月末時点での延べ視聴者数は3億5000万人を突破。これまでに300人以上のアーティストやタレントがライブなどを配信している。

今回アップデートにより、そのライブ配信機能をユーザーに開放。LINE IDを持つユーザーであれば、誰でも動画の配信が可能になった。あらかじめアプリ上でLINE IDを連携しておけば、ボタン1つでライブ配信が可能になる。配信中はLINEが提供する自撮り動画アプリ「egg」でも実装されている「LIVE スタンプ」(顔認識を使って、配信者の顔をウサギにしたり、天使にしたりするスタンプ。最大3人まで認識可能)や色味を変えるフィルターでのデコレーションが可能だ。顔認識を使ったデコレーションと言えば「Snapchat」や「Snow」でもおなじみの機能ではあるが、ブラウンのようなキャラクターのスタンプも用意されているのはLINEらしいところ。ローンチ時点で45種類のスタンプを用意するが、今後は企業とのコラボなども含めて数を拡大する予定だ。

視聴者は配信者に対してコメントをしたり、面白ければ「ハート」を送ることができる。その他、仮想通貨を使ってさまざまなギフトアイテム(有料コンテンツ)を配信者にプレゼント可能。なおLINE LIVEではこのハートやギフトの数(厳密にはギフトごとに仮想通貨の額が決まっており、その額分のハートが配信者に贈られる)、視聴者数、配信時間などをもとに、配信者に対してLINEポイントをインセンティブとして付与する。ポイントの算出方法は「今後も非公開。体感して分かって欲しい」(LINE執行役員でエンターテイメント事業部の佐々木大輔氏)とのこと。なお現状はこの仮想通貨の購入がLINEの収益化手段となる。今後はLIVEスタンプの有料販売をはじめとして幅広いマネタイズ手段を検討しているという。

ライブの配信時間は最大30分。配信した動画は1カ月間アーカイブが残り、その後自動で消去される。設定によりアーカイブを非公開にすることも可能だ。ちなみに生放送とアーカイブでは、生放送の方が試聴されるという。例えば配信者が視聴者の名前を呼ぶ、質問に答えるなどインタラクティブなやり取りができるため盛り上がるのだという。僕はサービスのローンチに先駆けてサービスを体験する機会を得たのだが、やっぱりLIVEスタンプがあることでこれまでのサービスよりも配信ハードルは低い気がする。

ライバルは生配信よりSnapchat?

モイの「ツイキャス」にドワンゴの「ニコニコ動画」、ディー・エヌ・エーグループの「SHOWROOM」、海外を見ればTwitterの「Periscope」、最近ではFacebookアプリでも……ライブストリーミングのサービスはすでに多くある。佐々木氏はこれらのサービスに対して、「『競合は考えていない』というのではないが、(LINE LIVEは)コミュニケーションが中心のサービス」だと説明する。

それに加えて興味深かったのは、佐々木氏と2人で話した際に、ライブ配信サービスよりもSnapchatについて意識していた点だ。配信時に立ち上がるのはインカメラ——つまり外の世界ではなく自撮りを楽しむ前提のサービスであること、顔認識によって自撮りのハードルを下げていること、コミュニケーションだけでなく「ストーリー」というメディア機能を備えていること(前述のとおりLINE LIVEではローンチ時より企業や著名人のコンテンツが配信されている)——たしかにこれはSnapchatとLINE LIVEに共通する内容ではないだろうか。LINEの国内ユーザーは現在6800万人以上。このプラットフォームを生かして、LINE LIVEはどのように成長するのだろうか。

日本のLINE、7月の日米上場に向けて目標株価設定―10億ドルを調達へ

A smart phone is shown with messaging app Line in Seoul, South Korea, Wednesday, July 16, 2014. Naver Corp. said its subsidiary Line Corp. that operates a popular mobile messaging app is considering listing its shares in Tokyo or New York. Naver, South Korea's largest Internet company, said Wednesday that Line could sell shares in an initial public offering in both Japan and the U.S. (AP Photo/Lee Jin-man)

日本、タイ、台湾でメッセージ・サービスのメインストリームの地位を確立したLINE Corp.が来月に予定されている東京とニューヨークの証券取引所への上場を控えて、目標株価を発表した。その価格は一株当たり2700円から3700円、つまり26.50ドルから31.50ドルの範囲となっている。

今日のWall Street Journalの記事によれば、LINEがこうした目標価格での上場に成功すれば1120億円、あるいは10億9000万ドル前後の資金を調達できるだろうという。これは2016年で最大級のテクノロジー企業の上場となるもようだ。

最終的な売り出し株価は7月11日に発表される。

LINEのライバルとなる企業には、FacebookグループのWhatsApp、 中国のTencentホールディングスの WeChat、アジアで強い勢力を持つ韓国のKakao Talkなどがある 。ライバルと同様、LINEのビジネスモデルも単なるフリーミアムではなく、アプリ内課金、支払サービスなど多様な方法によって売り上げを確保する努力をしている。

TechCrunchのIngrid Lunden記者が 6月に入ってレポートしたとおり、 LINEが最初に東京証券取引所に上場を申請したのは約2年前だったが、このときは上場は延期された。今回LINEは東証だけでなくニューヨーク証券取引所にも同時に上場する。

先月、LINEは月間アクティブ・ユーザーが2億1800万人で、そのうち1億5200万人がアジアのトップ4市場によるものと発表している。

画像: Lee Jin-man/AP

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

LINE、イランに美容とファッションのポータルを開設

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【編集部注:本校の執筆者、Amir-Esmaeil Bozorgzadehは、教育IT分野のVRスタートアップ、Virtuleapの共同ファウンダー、およびドバイ拠点の中東アジアオンラインゲームパブリッシャー、Gameguiseの共同ファウンダーで、世界のゲーム開発者、パブリッシャーのコンサルタント業務を行っている。

Benitaは、ファッション、美容、ライフスタイルの最新ニュースを届けるポータルとして、今年5月にイランでデビューした。人気メッセージングアプリで知られるITの巨人、LINEは、同国での目的地サイト分野進出を後押ししようとしている。

ポータルは、地元のイラン人スタッフからなるチームが作る日々のコンテンツや、地域ユーザーが重要な話題を共有、議論するためのフォーラムを提供する。

LINEは入念な準備をしてきた。イランのITとスタートアップの状況は、経済制裁解除後に海外からの直接投資が急増したことをうけ、その活動も報道も沸き立っている。そして同社は、ITおよびソーシャルメディアの経験を活用するとともに、当地の女性人口の間にある根強い需要に対応するべく、この分野に入ってきた。

イランの女性人口は3900万人(全人口の49%)で、その60%が30歳以下だ。その結果イランは、全人口に対する15〜29歳の比率が世界最大である。

イランの女性を理解するための重要な鍵が一つある。それはイスラム教の服装規定だ。

女性は髪を隠し、地味な服装を着ることを強いられている。このことによって、イラン議会の調査センターの推定によると、この国の美容・化粧品の業界規模は40億ドルにも上る。開かれた領域である女性の顔と手は、彼女らが個性を発揮する最も重要な場所だ。

イランのITとスタートアップの状況は、その活動も報道も沸き立っている。

しかし、「ファッション」も忘れてはならない。テヘラン北部の繁華街には、一流国際ブランドの最新流行コレクションが並んでいる。イラン首都のこの裕福な地域に散在するブティックに行けば、最新トレンドのファッションがいつでも手に入る。オンラインでは、Instagramが最も人気の高いソーシャルネットワークで、イラン人の半数がこの写真共有サイトでトレンドを追いかけている。

イランには300万人の富裕層がいると言われ、そこには世界の高級品市場1兆ドルの約2%を占める高級品市場がある、とExane BNP Paribasのアナリスト、Luca Solcaが報告している。その中の女性シェアは重要である。

しかし、市場には偽物が溢れており、国際的な商標保護協定に加盟していないことから、近年事態は悪化している。しかし、有名ブランドらの介入によってもうすぐこれが変わろうとしている。その代表例が、イタリアの首相が最近イランを2日間訪問した際に、イタリアファッション業界が署名した、イランとの関係を良好にするための契約だ。

ロベルト・カバリはイランで最初のブティックをこの2月に開店した。 セフォラは地元の高級品小売大手、Chalhoub Groupと提携して秋にショップをオープンする計画だ。ヴェルサーチも近くテヘランに主要ブティックを開くと言われている。

こうして、ヨーロッバの最大高級品ブランドらは中東第二の市場に参入しつつあり商標保護を推進するとともに、偽物需要を減らそうとしている。

こうした海外ブランドの多くは現地のパートナーと提携関係を結んでいる。LINEも例がではない。同社はドバイ拠点のデジタル代理店で、ポータルやアプリの開発に定評のあるEdoramediaと組んで、Benitaを開発した。

「イランの人たちは、ITに関して初心者ユーザーではない」とEdoramediaのマネージングパートナー、Hossein Jalaliは言う。「彼らは非常に進歩的なユーザーであり、トップブランドによる最高のユーザー体験と商品を求めている」

通常この次に起きるのは、Benitaのようなポータルの参入と拡大にあわせて、関連するスタートアップやソリューションが急増することだ。女性が支配するこの業界のデジタル化を、彼らが挙って推進することによって、プラットフォームやツールの水準も目の肥えたユーザーたちの眼鏡にようやくかなうことだろう。

「小売の状況は急速に変化しているが、適切な小売場所が不足していることから、新規参入者にとってはEコマースが唯一の選択肢だ」と、現地の人気Eコマースポータル、Albasco.comのCEO、Ehsan Golabgirは言っている。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

LINE、東証とNYSEの同時上場へ——時価総額は約5880億円

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かねてから噂のあったLINEがついに上場することが決まった。東京証券取引所は6月10日、同社の上場を承認した。

上場予定日は7月15日で、市場区分は未定(東証1部または2部)。ニューヨーク証券取引所にも同時上場する(現地時間の7月14日)。証券コードは3938。上場にともない3500万株(国内1300万株、海外2200万株)を公募。オーバーアロットメントでの売り出しは525万株。発行想定価格の2800円で算出した場合、公募で約980億円を調達することになる(時価総額では約5880億円)。なお、共同主幹事会社は、野村證券株、三菱UFJモルガン・スタンレー証券、ゴールドマン・サックス証券、JPモルガン証券。

LINEのルーツは1999年に設立された韓国ネイバーコム(NAVER Corporation)にある。同社は日本進出に向けて2000年にゲーム事業を展開するハンゲームジャパン(2003年にNHN Japanに商号変更)を設立。また2007年には検索サービスの「NAVER」やキュレーションプラットフォームの「NAVERまとめ」などを展開するネイバージャパンを設立(厳密には同社グループでは2001〜2005年にも日本で検索サービスを展開していた)。2010年にはライブドアを子会社化し、2012年には3社を経営統合。2013年4月には「LINE株式会社」に商号を変更している。商号変更にあわせてゲーム事業をNHN Japan(こちらは新設会社。2013年8月にNHN PlayArtに商号変更)に承継している。なおLINE株式の87%はNAVER Corporationが保有している。

LINE社の事業基盤となるコミュニケーションアプリ「LINE」は2011年6月のローンチ。世界230以上の国と地域で利用されており、サービスの全世界での累計登録ユーザー数は10億人超。3月末時点の月間アクティブユーザー数(MAU)はグローバルで約2億1840万人(前年同期比7%増)、シェア率が高い日本、タイ、台湾、インドネシアでは約1億5160万人(同23%増)。これまでに提供されたスタンプの総数は全世界で25万8000セット以上(2016年2月末時点)、1日あたりの最大送受信回数は24億回以上。2015年度の年間スタンプ売上総額は253億円となっている。

現在はそのLINEのプラットフォーム上でスタンプに加えてゲームや漫画などのコンテンツや販売するほか、広告事業や決済事業を展開。2015年通期の売上額は1207億円(前年通期比40%増)で、サービス別での割合は、コンテンツ41%、コミュニケーション24%、広告30%、その他5%となっている。また直近では、MVNO事業への参入も発表。NTTドコモの回線を使用し、月額500円からの料金設定で、LINEをはじめとしたSNSの通信料無料のプランを提供する予定だとしている。

独調査会社のStatistaによると、2016年4月時点での世界のメッセージアプリのユーザー数はWhatsAppが10億人、Facebook Messangerが9億人、QQ Mobileが8億5300万人、WeChatが6億9700万人、Skypeが3億人、Viberが2億4900万人、それにLINEが続くかたち(Statistaの発表では2億1500万人)となっている。

LINE、タイでオンデマンド配達サービス「LINE MAN」を開始

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未来のモバイルメッセージングは、サービスへと向かっているが、それは送金やショッピングといったデジタルサービスに限らない。世界で最も多く使われているチャットアプリの一つである日本のLINEが、オンデマンド・サービスに向かって動きだした。

試行はまずタイで行われる。タイはLINEの最大市場の一つであり、以前音楽ビデオのストリーミングサービスのテストもここで行われた。新しい “LINE MAN” アプリを使って、3000万人以上のユーザーが宅配便や食品・雑貨等の配達サービスを利用できる。今年の2月に本誌は、デジタル執事サービスがやってくる、という記事を書いたが、まさしくこれがそうだ。

LINE MANサービスを請負うのは、2000万ドル以上の資金を調達しているLalamoveという物流スタートアップで、オートバイで配達するスタッフは、グリーンのジャケットにLineのマンガチックな絵文字キャラクターをつけて走る。LINEによると、タイは同サービスの最初の市場だが、成功すれば世界の他の地域にも広げていくつもりだ。

LINEは、最新データによると2.18億人のアクティブユーザーを持ち、うち69%が、日本、タイ、台湾、およびインドネシアが拠点だ。メッセージング市場の成熟は、殆どの国で上位のアプリが大半のユーザーを抱えていることを意味しており、トップにいないアプリがユーザーベースを伸ばすことは極めて困難だ。LINEのアジア ― 同社がリソースを集中している地域 ― の他地域での成長見込みは厳しいが、上記4ヵ国のようにLINEが高い人気を持つ強力な市場では、LINE MANのようなサービスに大きな可能性がある。

LINEの競合には、FoodPandaを始めとする既存の宅配サービスに加えて、オンデマンド乗車サービスがある。Grabは最近インドネシアで配達サービスを開始したが、そこではGo-Jekというオンデマンドスタートアップが既に活動している。Uberは米国で非タクシー事業を展開しているが、アジアにはまだ進出していない ― ただし、同社はアジアの一部地域でオートバイタクシーを運行していることから、今後は変わるかもしれない。Uber Motoは、現在インド、タイ、およびインドネシアで営業しているが、将来アジアの他の地域にも広がる可能性は高い。

多事業展開に関して、実はLINEはUberに似たサービスを2015年から日本で運用しているが、海外展開については不明だ。

LINEは2年前に株式公開した。同社は、米国・日本の二元上場を2014年と2015年に中止したと報じられており、今年改めて取り組むとも噂されている。成長を示すことは、株式公開で最も重要な鍵であり、今回のサービス参入は、「メッセージアプリだけではない」と言う同社の取り組みの表れだ。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

オープン化、広告拡大、ポイント導入にカード発行——LINEが発表した新戦略

LINEが3月24日に開催したプライベートカンファレンス「LINE CONFERENCE TOKYO 2016」。最後にMVNO事業参入というビッグニュースを発表したこともあって、そこに大きくフォーカスが当たることになった(実際質疑の多くがMVNO事業に関するものだった)。だが2時間半に渡るカンファレンスでは、それ以外にも数多くの発表があった。この記事ではMVNO事業以外の発表について紹介したい。

ビジネスプラットフォームをオープン化

これまでの企業向けの公式アカウントなどを提供してきたLINEだが、今後はオープン化を進める。その取り組みとして、「Official Web App」と呼ぶ外部連携の仕組みを提供する。

Official Web Appは、パートナー企業が自社サービスとLINEアカウントを連携させるというもの。LINEのプラットフォームを利用することで、サービスごとのアプリインストールや利用登録が必要なくなるほか、LINEを通じてのプッシュ通知なども可能だ。まずは一部企業に先行してアナウンスを行っており、「@cosme」「一休.com」「食べログ」「出前館」「リクナビ2018」「Goo-net」「アットホーム」「Oisix」など40社以上のサービスが参画することが決まっているという。提供は2016年夏頃を予定。料金については月額2万円のプランも用意することで利用の拡大を狙う。

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また大手企業に加えて中小企業向けの施策も強化する。LINEのビジネス向けアカウントである「LINE@」を(SME:Small and Medium-sized Enterprises、中小規模事業社)へ導入するための「SMEパートナーシッププログラム」を開始する。今夏をメドに「食べログ」「ホットペッパービューティー」「出前館」「HOME’S」「Goo-net」など14社と提携。各社のクライアントであるSMEに対してLINE@の利用を提案していく。また、4月にLINEのプロフィールページをリニューアル。クーポンやコマースの機能を導入する。

開発者向け施策は3つ。BLE(Bluetooth Low Energy)を利用したビーコンサービスの「LINE Beacon」の5月にリリース。スタートトゥデイとの取り組みが決まっている。またLINE@のメッセージをAPI経由で送受信可能にするAPIを夏頃に開放する(一部機能を無料で先行利用できる「BOT API トライアルアカウント」を2016年4月に公開)。また、LINE公式アカウントやLINE@アカウントの応答を行う「Chat AI Plugin」を外部サードパーティーとともに開発。年内にも提供する予定だ。

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広告配信も機能拡大

これまで一方通行、大規模一斉配信、大企業向け——と、マス広告にも近い印象のあったLINEの広告事業だが、今後は「レリバント」「パーソナル」「全ての企業向け」をキーワードにサービスを拡張するという。

フリークアウトから株式を取得して連結子会社としたM.T.Burnとともに、ユーザーの属性や興味関心をもとに最適化した運用型広告を6月より開始する。また、スタンプ制作・販売プラットフォームの「LINE Creators Market」で販売されているスタンプをキャンペーン等に活用する「Creators Sticker for Business」を2016年内に提供する予定だ。

決済事業ではJCBと連携、LINE Payカードを発行

さらに決済やポイントといった事業も本格化する。決済サービス「LINE Pay」の利用金額の2%を還元する独自ポイントサービスの「LINE ポイント」を開始。また、JCBと連携し、世界のJCB加盟店で利用できるプリペイドカード「LINE Pay カード」の発行を開始する。

またLINE Payのチャージ・決済提携先も拡大した。すでに連携済みのみずほ銀行、三井住友銀行、三菱東京UFJ銀行、りそな銀行、埼玉りそな銀行に加えて、4月以降、横浜銀行、滋賀銀行、伊予銀行、百五銀行、十六銀行との連携が行われる。そのほか、LINE Pay残高が一定額を下回ると自動的にチャージが行われるオートチャージ機能なども導入されている。

4種類のデザインのLINE Pay Card

4種類のデザインのLINE Payカード

速報:LINEが月額500円からのMVNO事業への参入を発表——関連サービスの通信料は無料

LINE MOBILE

プライベートカンファレンス「LINE CONFERENCE TOKYO 2016」を開催したLINE。今後の戦略などさまざまな発表があったが、とびきり大きい発表があったので速報をお伝えする。LINEがMVNO事業に参入することを明らかにした。

サービス名は「LINE MOBILE」。NTTドコモの回線網を利用し、価格は月額500円からとなる。また最大の特徴はLINEによるコミュニケーション機能(無料通話、チャットなど)は通信料にカウントせず、使い放題とすることだ。また、他社のコミュニケーションサービスであるFacebook、Twitterに関しても通信料を無料にするという。さらに、ストリーミング型の音楽配信サービスも通信料無料にする予定だ。当初対象とするのはLINE MUSICだが、その後書く音楽サービスに連携することも想定しているという。サービスは今夏ローンチの予定。

発表は続いているため、詳細は追ってレポートする。

メッセージングサービスを超え、スマートポータルを目指す——LINE出澤CEO

LINE代表取締役CEOの出澤剛氏

LINEは3月24日、今後の戦略などを発表するプライベートカンファレンス「LINE CONFERENCE TOKYO 2016」を千葉県・幕張にて開催。誕生から5年を目前にしたコミュニケーションアプリ「LINE」を軸にした同社の今後の戦略について語った。

LINEのMAU(月間アクティブユーザー)は全世界で2億1500万人、日本、タイ、台湾、インドネシアの主要4カ国では1億4770万人に成長した。すでにメッセージにとどまらず、LINE GAME、LINE LIVE、LINE MUSICをはじめとしたエンターテインメント領域や、LINE PayやLINE TAXI、LINE NEWSをはじめとしたライフ領域のプラットフォームとしての取る組みも進められている。

カンファレンスではまず、LINE代表取締役CEOの出澤剛氏が登壇。これまでのサービスを振り返った上で、次の5年を見据えた新ミッションを「CLOSING THE DISTANCE」とすると語った。

出澤氏はLINEによって人と人、さらに人と情報、サービス、ビジネスとの距離を縮め、生活を豊かにしていきたいと語る。その実現のため、LINEは「メッセージングサービス」を超え、様々なサービスとと繋がる入り口、「スマートポータル」を目指す。
このスマートいう言葉には「賢い」という意味、そして「スマートフォン」という意味があるいう。

「PCからスマートフォンへの変化は単なるデバイスの変化ではない。1人1台、24時間持ち歩く非常にパーソナルなデバイス。検索ではなくコミュニケーション起点でユーザーが活動する。複雑でなくシンプルなサービスが求められる。言い換えると『コミュニケーション中心、人間中心』に設計し直される必要がある。我々はスマホ時代に合った最高のポータルをやっていく」(出澤氏)

カンファレンスは現在も開催中。追って発表をレポートしていく予定だ。

LINEでは最大200人の友だちと音声チャットが可能に–ビジネスでも便利に使えそう

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スマートフォンで一度に複数の友だちとチャットしたいことって、あるかな? そんなあなたは、今日(米国時間3/10)から幸せだ。モバイルのメッセージングサービスLINEでこれからは、それできるのだ

LINEで一対一のビデオや音声呼び出しは前からできたが、今度の新しい機能では音声で複数の人を呼び出せる。同時に最大200名まで可能だそうだ。

200人の友だちと同時会話したい人は、あまりいないと思うけど、十分に使い物になるならば、ビジネスの用途はあるだろう。というかLINE自身も、昨年LINEとは別途に、グループ呼び出しアプリをローンチしたときには、一部のエンタープライズ呼び出しシステムをリプレースしたい、という野望を語っていたから、今回やっと、それのLINE本体への統合が実現したのだ。

この機能でLINEは、Facebook MessengerやWhatsAppなどのその他大勢と一線を画すことになるかもしれない。Messengerは、アクティブユーザー数が10億を超えているだけでなく、ビデオと音声を使えるし、WhatsAppは昨年、音声を加えた(噂ではビデオももうすぐ)。しかしどちらも、今現在は多数者同時呼び出しをサポートしていないから、LINEの人気がさらに高くなるかも。

この新しい機能はLINEの四大市場、日本、タイ、台湾、インドネシアを除く世界各国で利用できる。この4つの国は、Lineの月間ユーザー数2億1500万の67%を占めるから、同社にとってすごい負荷だ。そこでこれらの国での新機能の提供は、後回しになったのだ。

日本のLINEは韓国のインターネット企業Naverが創業し、今年は合衆国と日本と両方で同時にIPOする、と噂されている。同社は2014年と2015年には、上場の計画を廃棄している。同社の年商は昨年初めて10億ドルに達したが、ユーザー数の成長は鈍化し、また競合アプリもいろいろ登場しているので、それらが懸念材料となっている。

[原文へ]
(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))

ヤマト運輸、「LINE」を通じて荷物の問い合わせなどが可能に——「LINE ビジネスコネクト」利用で

コミュニケーションアプリ「LINE」の各種機能を企業向けに提供するサービス「LINE ビジネスコネクト」(詳細記事はこちら)。2014年2月にリリースされたこのサービスを利用して、ヤマト運輸が新たなサービスを提供する。ヤマトホールディングス傘下のヤマト運輸は1月19日、LINEを通じて荷物の問い合わせなどを行えるサービスを開始した。

これに合わせてヤマト運輸LINE公式アカウントを開設した。LINEユーザーはこのアカウントを友だち登録し、ヤマト運輸の会員サービス「クロネコメンバーズ」のクロネコIDを連携することで、公式アカウントのトーク画面で「お届け予定メッセージ」と「ご不在連絡メッセージ」を受け取ることができるようになる。

またこのメッセージを通じて、お届け日時や場所の変更が可能なほか、荷物の問い合わせや集荷・再配達の依頼、料金・お届け日検索などが可能だ。

サービスはこれにとどまらないようだ。今後は宅急便の送り状をLINE上で作成できるサービスも提供する予定。作成した送り状は、ヤマト運輸の直営店やコンビニエンスストアの店頭端末、集荷を担当するセールスドライバーの端末などから印字できるようにする予定だ。その詳細は今夏にも発表するとしている。

左からヤマト運輸代表取締役社長の長尾裕氏、LINE代表取締役社長の出澤剛氏

左からヤマト運輸代表取締役社長の長尾裕氏、LINE代表取締役社長の出澤剛氏

ライブ配信サービス「LINE LIVE」はコンテンツとプッシュ通知が強み

LINE LIVE視聴アプリのイメージ

LINE LIVE視聴アプリのイメージ

12月1日にニュースのプラットフォームを開放したLINEだが、今度はライブ配信への本格参入を発表した。LINEは12月10日、ライブ配信プラットフォーム「LINE LIVE」の提供を開始した。iOS、Android向けに視聴・配信用アプリを提供するほか、ウェブ版も用意。アプリ同様に動画の配信を行う。

当初は公式アカウントのユーザーである著名人やアーティストなど100人に限定して配信機能を提供。スマートフォン利用のゴールデンタイムと言うべき昼と夜(20時以降)の時間帯を中心に5〜8本程度の番組を配信する。第1回の放送となる今晩19時からは、AKB48によるスペシャル番組が予定されている。

公式アカウントによる配信に加えて、イベントや劇場、テレビ・ラジオ放送などとも連携。現時点では東京ガールズコレクション、原宿駅前ステージ、スペースシャワーTV、秘密結社鷹の爪、輝く!日本レコード大賞(TBS)、オールナイトニッポン(ニッポン放送)、SCHOOL OF LOCK(TOKYO FM)などとの連携が発表されているほか、LINEオリジナルの番組として、芸能人同士のトークを楽しむ「さしめし」、オーディションの「NEXT STAR」といったコンテンツを提供する。中には先行するライブ配信サービスである「ツイキャス(Twit Casting)」において、総視聴者数百数十万人を誇るアーティスト・井上苑子さんの名前などもあって、プラットフォーム間の容赦ないコンテンツ争奪戦があったのかと考えてしまう(ちなみに彼女はブログもamebaからLINE BLOGに移行したようだ)。

100人以上の著名人が参加

100人以上の著名人が参加

同日開催された発表会でLINE取締役CSMOの舛田淳氏はテレビからビデオ、PC、スマートフォンと動画視聴のメディアが進化することで、動画コンテンツが場所や視聴タイミングの制限なく閲覧できるようになってきたと説明。だが「いつでもどこでも視聴できる」というのはスマートフォン時代の1つの可能性でしかなく、もう1つ、「今だから観れる」ということもスマホ時代の可能性だと語る。「『オンデマンド』で体験の断絶化が起きている。だからここに来て体験を求めている、音楽市場でもライブが盛り上がり、コピーできない何かを求めている」(舛田氏)

LINEのライブ配信機能に手応え

実はLINEではこの1年、LINE上でライブ配信機能の「LINE LIVE CAST」を提供してきた。LINE執行役員の佐々木大輔氏が説明したところによると、この機能を利用して同社が実施したオーディションイベントの最終審査を配信。ユニークで63万2000人が集まった。10月に開催したイベント「T-SPOOK」では、リアルイベントには9万人が来場、視聴者数では512万人を記録したのだという。この好調な結果がLINE LIVEの事業化を推し進めた。

同社ではこの理由について、LINEを介した「友だちからのプッシュ通知」が可能な点ではないかと分析している。もちろん通常のアプリからもプッシュ通知は可能なわけだが、舛田氏いわくLINE経由のプッシュは、舛田氏いわく「効果が桁違い」なのだそう。

有名人コラボとプッシュ通知が武器

ライブ配信と言えば最近Ustreamが日本を含むアジアから事実上の撤退を発表したところだし、1年前に発表されたドワンゴの「ニコキャス」は3日で終了。サイト上では「出直してまいります」というコメントが残るが、この1年の間アップデートがない状況だった。このタイミングでスタートするLINE LIVEは、コンテンツの豊富さや、LINEを経由したプッシュ通知を武器に市場を開拓してくようだ。佐々木氏もLINE LIVE CASTで最もユーザーを集めたのは「有名人とのコラボ」だったと語っている。

同社は今後、広告(タイアップ番組やテレビなど他メディアとの連動商品)を中心に、EC(ライブショッピングなども含む)、チップ(投げ銭的な課金サービス)などでのマネタイズを進める。また一般ユーザーによる配信は2016年の早い時点で解禁する予定だ。「生放送にこだわったのもLINEがあるからこそ。通常こういったサービスはUGCから始めてプロを巻き込んでいくが、私どもは(LINEの)スタンプやマンガ同様、プロからインディーズに開いていく」(舛田氏)。同社は早期で月間視聴者数1000万人を目指す。

ニュースアカウントを開放したLINE、狙うはポータルとソーシャルで断片・量産化したコンテンツの再編

「当初はいろいろ試行錯誤していた。ニュースを求めている人であっても、わざわざアプリを入れるような人は少数派ではないのだろうか」——LINE NEWSを担当するLINE執行役員の島村武志氏はこう振り返る。

同社は12月1日、LINE NEWSのプラットフォームを開放し、外部メディアがLINE公式アカウントで自社のニュースを配信できる「アカウントメディアプラットフォーム」を発表した。現在はMAU(月間アクティブユーザー)1200万人、友だち登録者数1500万人を誇るLINE NEWSも、順風満帆なスタートとはいかなかったそうだ。

LINE執行役員の島村武志氏

LINE執行役員の島村武志氏

LINE NEWSはアプリ主体からプッシュ主体に

SmartNews、グノシーなど、次々にニュースアプリが生まれる中でアプリとしてスタートしたLINE NEWS。MAU300万人程度までは成長したが、ユーザー数は伸び悩んだ。そこで島村氏は冒頭のコメントのように、「気軽にニュースを見てもらうこと」イコール「アプリを見てもらう」ではないのではないかと考えるようになっていったという。

その仮説を確かめるべく、2014年4月にはLINEの公式アカウントを友だち登録しているユーザー向けに1日3回ダイジェストニュースをプッシュ配信する「LINE NEWS DIGEST」を開始。これで状況は大きく変化する。

友だち登録者は330万人から1000万人にまで増加。MAUも600万人を超えた。「自分たちしかできないことがうまくできた。スマホでは能動的にアプリを立ち上げてニュースを見るのではなく、プッシュしてあげる。一覧からニュースを検索して読むのではなく、(最初からダイジェストを表示して)0クリックでも読めればいいと分かった」(島村氏)

その後2015年4月には旅行をテーマにした「なにここ行きたい!」話題のレシピを紹介する「これは使えるレシピ」(約63万件)など20以上のテーマの情報を受信できる「LINE NEWSマガジン」をスタート。スタンプ配布キャンペーンなどの効果もあるが、マガジンは1カ月で累計登録数636万件を達成。友だち登録数は1500万人、MAUは1200万人となった。

LINE NEWSのMAU・友だち登録者数の推移

LINE NEWSのMAU・友だち登録者数の推移

「LINE NEWSマガジンは、これまで1つだったニュースの選択肢を複数にした」——島村氏は語る。LINE NEWSは「やさしいニュース」というテーマを掲げ、ですます調のテキストや簡潔な解説に努めている。しかしそんなニュースは万人向けのものではなく、あくまでライトにニュースを読みたい層に向けた情報になりがちだ。そのためマガジンのような「テーマ」でニュースを届けることで、新しい価値作りにチャレンジしたという。

「この経験を生かして、自分たちがどういうことをすべきか考えた」(島村氏)。今まではたとえマガジンで選択肢を増やしたとしても、あくまでLINEの中にある編集部の情報だった。それを開放する第一歩が今回のアカウントメディアプラットフォームの取り組みだという。

ポータルとソーシャルで断片化・偏重するネットニュース

島村氏は発表会でも語っていたのだけれども、今ネットにあるニュースは、ポータルサイトとソーシャルメディアによって断片化、量産化され、非ブランドなものになりがちなのだという。

Yahoo!ニュースに代表されるポータルサイト上のニュースは、掲載記事をポータルサイトの編集部が選ぶ。そのため、記事提供元であるメディアとしては、ブランドを作りづらい。LINEの中にもlivedoorニュースのようなポータルがあるが、「自社を批判することになるが、構造としては同じ」と言う。

またソーシャルメディアによって、ニュースとの接触機会はさらに増えたが、その中では友だちの食べたごはんの写真と国際的な大事件が並列に並んで見える。さらに言えば友だちが面白いと思うコンテンツに偏重してしまうと島村氏は指摘する。

島村氏が語ったポータルとソーシャルによるコンテンツの断片化

島村氏が考えるポータルとソーシャルによるコンテンツの断片化・量産化の現状

メディアとともにプラットフォームを作る

LINE NEWSだってポータルサイトと同じようにさまざまなメディアがコンテンツを掲載するワケだが、掲載するコンテンツはメディア側でダイジェストニュースを編集できるし、そもそも各メディアのアカウントで配信する。これによってメディアのブランド化が促されると期待する。また各メディアのダイジェストニュースには広告を掲載するが、広告収入は50:50でLINEとメディアがシェアするという。

島村氏はLINE NEWSが開けたプラットフォームであり、あくまで各メディアのファン獲得の入り口として価値を生むと主張する。「何もかもダイジェストニュースにして、『ファストフード』にしたくはない。しかし、メディアに関心を持ってもらわないことには始まらない。本当に重要なのはその先にある深いレポートだが、最初からそれを見てもらえる訳ではない。LINE NEWSのプラットフォームをメディアの皆さんと作りたい」

「アカウントを持って、自分たちの記事を自分たちの意図で集めて出せる、完全なオウンドメディアというところをめざす。ニュースアプリやほかのポータルとメディアとの関係は寄生関係かも知れないが、LINEでは集客も広告もシェアしていく。ほかの記事の合間に自分たちの記事がでるわけではない。あとはどれくらい自分たちのファンを集めて頑張れるかどうか」(島村氏)

参画メディアとしての期待と不安

僕らも彼らのプラットフォームに参画するので、その立場で感じたことも書いておこう。実際に入稿フローなどを聞くと、LINE NEWSに掲載するためのレイアウトやタイトル付けなど、各メディアの編集部には結構な負荷がかかりそうなのだ。

もちろん新しいプラットフォームを利用するためと考えれば、その作業はトレードオフなのだろうが、発表会の第2部のトークセッションに登壇した日本版BuzzFeed創刊編集長の古田大輔氏もこの点を指摘していたし、同じくトークセッションに登壇したNewsPicks編集長の佐々木紀彦氏がモバイル向けのインターフェースを評価した上で、「(インターフェースがいいだけに、元サイトへの)リンクバックがないのではないか」と語っていた。発表会に参加した人間のほとんどはメディア関係者なので、まだそのプラットフォームの価値を見定めているといった感じの質問も多かった。

フォローするわけではないが、僕が関係者から聞く限りは、現状のLINE NEWSでも、特にエンタメ系メディアのリンクバックのトラフィックは大きいようだ。

しかし今回選ばれた24社は、島村氏が「言い方は悪いが、オッサンホイホイ。これまでの(やさしいニュースという)LINE NEWSの印象を変えたかった」と語るように、「堅い」メディアを意識的に増やしている。ビジネス系メディアとLINE NEWSの相性に関してはLINEにとっても未知数なのだろうし、プラットフォームに参画した以上、僕たち自身も研究していかないといけない。

LINEでは今後、パートナーメディアの拡大を進めるとしている。今後はビジネスメディアにとどまらず、特化型メディアや地方紙などにも提案を進める。「例え同じニュースを取りあげても、各媒体のトップページは違う。それを楽しんでもらいたい。両論併記で、自由にメディアを読んで頂きたい」(島村氏)。この両論併記にはもちろんLINE NEWSも含まれる。同社は今後さらに編集部の体制を強化。「やさしいニュース」に特化したコンテンツの配信を進めるとしている。

LINE NEWSが展開するプラットフォームのイメージ

LINE NEWSが展開するプラットフォームのイメージ

LINE NEWSがプラットフォームを開放、第1弾として24メディアが公式アカウントでニュースを配信

LINE NEWSの「アカウントメディアプラットフォーム」でメディアが記事を配信した際のイメージ

LINE NEWSの「アカウントメディアプラットフォーム」でメディアが記事を配信した際のイメージ

5月にMAU(月間アクティブユーザー・アプリとLINEの公式アカウント合算。重複ユーザーありの数字)1200万人という数字を発表したLINEの「LINE NEWS」。このサービスが新たな展開を迎える。

LINEは12月1日、公式アカウントを利用したニュース配信機能を外部メディアに開放する「アカウントメディアプラットフォーム」を発表した。パートナーとなるメディアはそれぞれ自らが選んだコンテンツを、自由にダイジェスト記事として配信することができる。

第1弾として、テレビ、新聞、ウェブの24メディアが公式アカウントの提供を開始する。メディアリストとアカウントは以下の通り。ちなみに僕らTechCrunchもこのタイミングで公式アカウントを提供することになっている。

朝日新聞デジタル @oa-asahishimbun
毎日新聞 @oa-mainichi
産経ニュース @oa-sankeinews
時事通信ニュース @oa-jiji
BBC News @oa-bbcnewsjapan
AFPBB News @oa-afpbb
テレビ朝日 @oa-tvasahi-geinou
スポーツニッポン @oa-sponichi
日刊スポーツ @oa-nikkansports
サンスポコム @oa-sanspocom
スポーツ報知 @oa-sportshochi
デイリースポーツ @oa-dailysports
ORICON STYLE @oa-oriconstyle
ダイヤモンド・オンライン @oa-diamondonline
ニューズウィーク日本版 @oa-newsweekjapan
PRESIDENT @oa-president
現代ビジネス @oa-gendaibusiness
映画.com @oa-eigacom
サッカーキング @oa-soccerking
TechCrunch Japan @oa-techcrunchjapan
アスキー @oa-ascii
クックパッドニュース @oa-cookpadnews
Fashionsnap.com @oa-fashionsnap
All About @oa-allabout

アカウントは今後も順次拡大する予定。また、各メディアのダイジェストにはLINE側から広告を配信し(コンテンツの枠にPRのリンクを入れるほか、インフィード広告、動画広告も準備する)、LINEとメディアで50:50の割合でのレベニューシェアを行う。メディアが独自に広告を配信する仕組みなども提供する予定だという。

外部メディアによるコンテンツ配信のイメージ

外部メディアによるコンテンツ配信のイメージ

LINEアカウントの提供でユーザー数を拡大

2013年7月にスマホアプリとしてスタートしたLINE NEWSだが、2014年4月からはLINEの公式アカウントを設置。このアカウントからニュースを1日3回ダイジェスト形式でプッシュ配信する「LINE NEWS DIGEST」をスタートした。

このアカウント経由のプッシュ配信では、別のアプリやブラウザ等を立ち上げることなくニュースを受信できる点や、イメージ画像とシンプルなテキストで同社の編集部がピックアップしたニュースを配信する点などが評価されたそう。この延長線上の施策として2015年4月、「東京トレンド」「野郎メシ」といった特定のテーマの情報だけを選んで受信できる「LINE NEWSマガジン」をスタート。マガジンは1カ月で累計登録数636万件を達成するなど、ユーザーの評判も高い。

LINE NEWSのチームを率いるLINE 執行役員の島村武志氏は、以前にもこのNEWSマガジンのプラットフォームを開放すると語っていたのだが、それが今回実現したかたちだ。

LINEでは12月1日に発表会を開催し、アカウントメディアプラットフォームの詳細を説明している。TechCrunchではその様子や島村氏への個別取材の内容についても追ってお伝えする予定だ。