日本のLINEがAndroid機用のランチャーアプリをリリース

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日本のメッセージング企業LINEは、Android用のランチャーアプリをリリースしたあとも、新しいアプリやサービスの発表が依然として活発だ。

ランチャーアプリはAndroidデバイスを集中管理し、ユーザはそれにより、自分のデバイスのルック&フィールや使い方をカスタマイズできる。とくに有名なのが、FacebookのそういうアプリとLINEだ。LINEの運営企業はCamp MobileからLINEに改名され、LINEアプリ本体は新しい機能でアップデートされた。たとえばユーザは自分の壁紙の上にステッカーを貼り、また外見やアプリのアイコンをエディットできる。またウィジェットのショートカットやユーティリティアプリ、それに検索機能の統合がある。

LINEのランチャーはそのほか、ユーザがダウンロードするアプリをリコメンドしたり、LINEの基本機能であるチャットにパワーアップした通知を導入したりした。ランチャーとチャットとの統合はまだ本格的でないようだが、将来のアップデートでは互いにさらに最適化されるだろう。

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同社は最近の決算内容が良くなかったため再び、上場を遅らせたと報じられているが、新しいアプリのリリースは活発で、最近では位置共有アプリキーボードアプリ、そしてグループ呼び出しアプリサービス本体から切り離すなどにより、新規ユーザの獲得に努めている。

Android用のランチャーアプリは、メッセージングアプリのユーザを増やすだけでなく、アクティブユーザをさらにアクティブにするだろう。LINEは、アクティブユーザの半分が日本、台湾、タイの三カ国だ。

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LINEは最初、グローバルなメッセージングアプリを目指していたが、西欧世界であまり芽が出なかったため、最近はターゲットをアジアに絞っている。また今後は、単なるメッセージング企業ではなくライフスタイルプラットホームになる意向があり、そのために、オンラインからオフラインへと顧客を誘うサービスや独自の音楽アプリタクシーアプリ、それにLINEのチャットアプリと連携する支払決済サービスなどにも投資していくための、ファンドを準備している。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

LINEが人気飲食店のネット予約サービスをひっそり開始、しかも人力で

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LINEが一部地域で、ひっそりと飲食店のネット予約サービス「LINE グルメ予約」を開始した。

「デート」や「宴会」などのシーンから最大4店舗を選び、氏名や電話番号、来店日時、人数を入力すると、オペレーターが電話予約をしてくれる。飲食店のエリアやジャンル、予算などの詳細条件も設定できる。いわば人力の予約代行サービスだ。予約完了後はLINEで通知が届き、予約の依頼から完了まで最短10分で完結するという。

人気飲食店だけを厳選

人気飲食店の予約に特化していることも、大きな特徴だ。サービスの提供にあたっては実名型グルメサービス「Retty」と提携し、人気店舗を中心に9都道府県8500店舗を厳選。Rettyの画像や口コミといった店舗情報を掲載している。

ざっと見た限りだと、食べログの評価3.5点以上の店舗が多いような印象だ。逆に言うと、大手予約サービスが対応しているチェーン店は掲載していない。掲載店舗については、すべて許諾を取得している。

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利用するには外部のアプリインストール不要で、LINEアプリから「その他>LINE App>LINE グルメ予約」を選択する。現在は試験的な「ソフトローンチ」という位置づけで、LINE公式アカウントを登録して整理番号を取得した順番に、利用開始の通知が届く。今後は段階的に利用できるユーザーを増やしていく予定だ。

LINEの飲食店予約サービスは初めてではない。2014年11月には渋谷限定で、空席情報をLINEのトーク上からリアルタイム検索できる「LINEいますぐ予約」を開始。予約希望人数をトーク上から送信すると、当日の空席店舗情報がわかるサービスだ。LINE グルメ予約は、事前の予約を受け付けている点が異なる。

あえて人力予約を採用した理由

国内の飲食店ネット予約サービスにはホットペッパーグルメやぐるなび、食べログなどのプレイヤーが参入しているが、対応店舗は大手チェーン店が中心。今年4月には飲食店向け予約台帳サービスのトレタとヤフーが機能連携し、「俺のフレンチ」をはじめとする人気店のネット予約を開始したが、電話予約しか受け付けない人気店は多い。予約システム導入の負担が大きいためだ。

店舗の負担となっているのは、オペレーション変更に伴う教育コスト、複数の予約サービスを使うことでのオーバーブッキング、キャンセルのリスクなどがあり、集客に困っていない人気店がわざわざネット予約を導入しないのもうなずける。LINEは店舗の負担をなくすために、まずは、あえてスケールが見込めない電話での予約代行という方法を採用した。

前述のとおり、LINE グルメ予約はユーザーに代わってオペレーターが電話予約を代行してくれるサービスだ。店舗側はネット予約のシステムが不要で、オーバーブッキングも回避できる。個人と紐付いたLINEを通した予約となるため、キャンセルの抑止力も働く。悪質なキャンセルを繰り返すユーザーに対してLINEは、LINE グルメ予約の利用を停止させる措置も検討しているという。

ずっと人力の予約代行を続ける?

それでは予約代行サービスをずっと続けるのかというと、そうではない。今後は、飲食店がコミュニケーションツール「LINE@」を通じて予約を受け付けたり、顧客を管理できる機能を提供する。LINEとしては、LINE@の有料アカウント(月額5400円〜)を増やす狙いがある。

もともとネット予約を受け付けていなかった店舗に、どうやってLINE@を普及させるのか。LINE グルメ予約を担当するLINEの杉本謙一氏は、「人気店でも、曜日や時間帯によっては集客のニーズはまだある」と勝算を語る。「LINE経由の予約でキャンセル抑止につながったり、予約のやりとりを簡素化できることもアピールしたい」。

LINE MUSICは「シェア」と「価格」で音楽ビジネスを再構築する

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サイバーエージェントとエイベックスが5月27日にスタートした「AWA」、日本は未確定ながらも6月30日に世界150カ国で開始する「Apple Music」と、国内でも定額制音楽配信サービスがにわかに盛り上がりつつある。そして、紆余曲折を経て「LINE MUSIC」がついにベールを脱いだ。

LINE MUSICはどのようなサービスなのか? 一言でいえば、LINEは「シェア」という仕組みと、若者を意識した「価格体系」を武器に、音楽ビジネスを本気で再構築しようとしているように思える。スタートまでの紆余曲折を紹介した前回の記事に引き続き、LINE MUSICの舛田淳社長と、ソニー・ミュージックマーケティングの渡辺和則社長に狙いを聞いた。

二段階+学割で「若者の音楽離れを止めたい」

LINE MUSICの特徴は、まず「価格」だ(表参照)。時間にも機能にも制限のない「プレミアム」の価格は、業界の標準ともいえる価格帯だが、機能制限はなく20時間まで聞ける「ベーシック」が用意されていること、さらに双方に「学割」が用意されているところが特徴だ。

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舛田氏(以下敬称略):私どもの思いとして、若者の音楽離れを止めたい、というものがあります。ですから「学割」を用意します。二つの価格帯双方に用意し、1000円が600円、500円が300円になります。これによってエントリーのハードルを下げて音楽に触れていただき、音楽を好きになってもらいたいのです。

サービスの発表から開始まで時間がかかりましたが、この価格帯を実現するために時間がかかった、というところに近いです。世界が「ストリーミング・ミュージックは1000円だ」と言っているさなかで、我々は「もっとエントリーポイントを下げましょう」という話をさせていただいたわけです。

渡辺氏(以下敬称略):重要なのは、「でも、フリーではない」ということです。

舛田:まさに。フリーではない。フリーは(音楽ビジネス側から見ると)機会損失が大きい。ものすごい数の機会損失を生んでいるんです。実際、(無料の)ストリーミングとダウンロードで収支のバランスが取れているかというと、そうではありません。ですから無料はやるべきではない、と判断しました。その上で、プロモーションのために無料にしたい、というアーティストがいれば、それはそれで、プラスアルファの設計をすればいいだけです。なので、今回は2つの価格帯です。

LINE MUSICの舛田淳社長

LINE MUSICの舛田淳社長

LINEならではの音楽「シェア」機能とは

サービスは有料なのだが、「無料」で打ち出すところもある。それが、音楽の「シェア」である。

舛田:もうひとつは、会員登録がなくても、各曲30秒の試聴用の音楽だけは聴ける、ということです。トークルームとかタイムラインに好きな曲を送り合えます。LINEのスタンプはコミュニケーションの中に溶け込みますよね? それと同じように、音楽を送り合えるような設計にしています。プレイヤーから「シェア」を選べば、LINEのトークとタイムライン、その他TwitterやFacebookに送れます。(注:LINE以外のサービス経由で試聴する場合には、LINE MUSICアプリのダウンロードが必要。会員登録は不要)

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LINE MUSICにはiPhoneとAndroid向けに専用のスマホアプリが用意され、会員は通常そちらで音楽を楽しむ。

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だが、音楽がLINEでシェアされた場合には、LINE MUSICのアプリは必要ない。LINEのスタンプのように、最小限の機能を持った音楽プレイヤーと音楽が一緒に送られてくるので、それをタップすれば楽曲が聴ける。

会員なら曲全体が聴けるが、会員でない場合には、各曲30秒間は無料で聴ける。サブスクリプション型なので、会員側はスタート時150万曲以上というカタログから何曲、どれを選んでも追加料金はかからない。シェアされる側も負担はない。

ネット時代の「音楽を語り合う放課後」を作ろう

音楽の「シェア」は、LINE MUSICのサービス設計の根幹をなす部分である。そこには舛田氏を初めとする、LINE MUSIC開発陣の強い思いがあった。

舛田:例えば、グループトークをしている時に、「BGMはこれだよね」みたいにシェアできますし、「ハッピーバースデー」ミュージックみたいなこともできます。そうですね……告白ミュージック的なものもできますね(笑)。生活の中のコミュニケーションというか、感情を伝える手段として使えるわけです。

昔、彼女にカセットテープを作って送ったりしたじゃないですか。それと同じ環境をどうやって作るか、そしてデジタルの時代に応じて進化させるか、というのが我々のテーマでした。

音楽に出会うポイントって、年齢を重ねる毎に減るんですよ。先日は、33歳で新しい音楽との出会いは止まる、なんていう記事もありましたよね。

学生時代が一番音楽を聴いていて、放課後はひたすら音楽について話し込んだりしていたじゃないですか。そういう世界を、30になろうが40になろうが60になろうが、続けられるような世界を作りたかった。「ずっと放課後」を作りたかったんですよ。

音楽をコミュニケーションアイテムに

音楽レーベルと連携したのも、こうした新しい聴き方が、音楽市場拡大につながるのではないか、という発想からだった。

舛田:結果、音楽の楽しみ方が、次のステージに行けるかもしれません。音楽は一人で聴くもの、という感覚が強いのですが、そうじゃなくて、みんなでコミュニケーションアイテムとして使う、という新しい価値を提供することで、今音楽から離れようとしているユーザー達に、「音楽って素晴らしいよね」と伝えられるかもしれない。

アーティストの方々から見ても、新しい表現手段だと思います。もしかすると、トークに合った楽曲を作っていただけるかもしれない。それがヒットするかもしれない。

新譜と違い旧譜って、出会うきっかけがないじゃないですか。でもコミュニケーションの中で、「このシーンならこの曲でしょ」「このトークの流れなら、この曲が鉄板でしょ」というものを見つけてきて流すこともあるかもしれない。そういうコミュニケーションがLINEらしさです。

ラジオ型ではなくオンデマンド型サービスを選んだ理由

サブスクリプション・ミュージックには、楽曲を1つずつ再生する「オンデマンド型」と、ラジオや有線放送のように流しっぱなしにする「ラジオ型」がある。LINE MUSICはオンデマンド型だが、それを選らんだのも、シェアをやりたいがゆえだった。

舛田:なぜオンデマンド型サービスにこだわったかというと、コミュニケーションの要素を入れるためでした。ラジオのチャンネル1つをシェアされても、困る。コミュニケーションにはならないんです。コミュニケーションにストーリー性を持たせるのであれば、一曲一曲である方がいいだろう、という判断です。ラジオ型はオンデマンドではないので、一曲一曲のシェアが難しいんです。

正直この辺は、かなり社内でも検討しました。楽曲の配信許可許諾については、ラジオ型の方が料金も安くなりますし、簡単です。ラジオとオンデマンド配信では文化が異なっているため、そのような慣習になっています。

しかし今回は、あえて茨の道を行きました。各社と調整し、口説き落としながら進めていったんです。「未来はこっちですよ」と。

「着うた」と「LINE MUSIC」の類似点

ソニー・ミュージックマーケティングの渡辺氏は、そうした新しい要素と「着うた」の類似性を指摘する。

渡辺:着うたは、他の国々にはなかった日本のデジタルならではの盛り上がりで、すごくユーザーにも支持されたものです。一つの時代を作ったサービスだったな、と思います。特に、若い世代が音楽に触れるための道具としてワークしました。

着うたは、一種のアイデンティティです。ガラケーの中で、自分のテーマソングを決めるようなところがありました。その中での遊びだったと思います。

しかし今回のサ−ビスは、スマホになってLINEさんと組むことで、考えられる以上の遊びが考えられます。そこがまた音楽を盛り上げるきっかけになると思います。

着うたの時もユニークなユーザーが、最盛期には約2000万人くらいいました。LINE MUSICをはじめとしたストリーミング・ミュージックが2000万人くらいのユーザーに楽しんでもらえるようになれば……と思います。非常に大きなデジタルでの音楽マーケットができるのではないか、と期待しています。

2000万人に楽しんでもらえるような市場になれば、アーティストへの分配も、着うた時代以上に可能になるでしょう。新しいサービスがユーザーに支持されれば、着うた時代のように対価を払うことになんら抵抗がない、その分楽しんでいただけることになる。ストリーミング・ビジネスに対する懐疑論については、「2000万ユーザー」といった数字になってくれば、状況がまったく異なってくる、と期待しています。

そうなると、音楽ファンからアーティストファンへの移行もあるでしょうし、「所有」するような商品への需要も広がるでしょうし、ライブに行ってアーティストに触れるビジネスも広がります。ベースがあれば、その先はいくらでも計算できます。音楽ファンのベースを作るのが優先で、そこからつなげていけます。

ソニー・ミュージックマーケティングの渡辺和則社長

ソニー・ミュージックマーケティングの渡辺和則社長

前回の記事にて、「アーティストのファン向けのビジネスから、音楽ファンのビジネスへ」という、渡辺氏のコメントをご紹介した。これは、シェア機能の存在を前提にしている。無料でシェアできるよう広げていくことで、音楽を使ったコミュニケーションで「遊ぶ」人々が増え、結果、人々が音楽に触れる裾野が広がることを期待しているわけだ。

「LINEが旨味を独占するわけではない」

一方、こうした仕組みを「LINEが旨味を独り占めする」ととられたくはない、と舛田氏は話す。

舛田:実は私、LINE MUSICという名前から「LINE」を外すことも検討したんですよ。このビジネスをやるのは「この座組だから」であって、音楽業界全体のプラットフォームになれたら、と思っているんです。LINEという冠があると狭く思われてしまうのではないか、と。

でもみなさん「いやいや、LINEでしょ」と(笑)

思いとしては、LINEの中に止めるつもりはないんです。プレイリスト機能などについては、LINEの中以外に公開できるようにすべきだと思います。まずはLINEのタイムラインの中とか、公式アカウントを持っているアーティストがオフィシャルブログや公式アカウントでプレイリストを公開する、というところから始めますが。しかし、TwitterやFacebookでもいいですし、プレイリスト用のAPIを公開して、キュレーションメディアのようなものを作れる……といったところまでやるべきだと考えています。

LINEの他のサービスとも連携して広げていくべきだと考えています。

カタログの量と「サービスとしての完成度」は前提条件

LINE MUSICの魅力が「シェア」にあるのは間違いない。しかし、それは支持されるサービスになる一つの要素である。舛田氏は「通常のオンデマンド型サブスクリプション・サービスとして、素晴らしいものでなくてはならない、ということが大前提」と話す。

舛田:まずは音楽ファンを満足させるものでなくてはなりません。やはりカタログ数が重要です。主要なレーベルにご参加いただきました。第一弾として、二十数レーベルに参加していただき、新しい楽曲も出していただきます。カタログ数は今後も増やしていきますが、要はありとあらゆる楽曲を用意するつもりでやります。インディーズも含めてです。最初の段階では、日本の主要な楽曲は入っているのではないかな、と思います。

まずはスマホアプリですが、BGMとして、作業しながら聴く、ということはあると思いますので、ちょっと遅れることにはなりますが、PC版も用意します。

そして次に重要なのが価格です。こちらはいうまでもありません。音楽との出会いは人それぞれです。トップページで見つける方もいれば、専門家が作るプレイリストみたいなものを聴いていただくこともあるでしょうし、一般の方が作ったもので出会うこともあるでしょう。データによるレコメンドもあります。ユーザー同士のコンテンツ共有もあります。

プレイリストのイメージ

プレイリストのイメージ

音楽と出会うためにすべての手を打つ

舛田:これ、すべてがないとダメだと思うんです。そうでないと浅くなります。私は元々検索をやっていた人間で、検索には限界があると思って「NAVERまとめ」を作ったんです。かといってNAVERまとめですべてが完結できるわけではないです。そこは、すべてがハイブリッドでなくてはいけないです。現在は「音楽と出会うきっかけがない」のが問題なのですから。考えられるすべての手を打ちます。

いくら楽園があっても、そこへ到達できなければ意味がないんです。ですから、ユーザー間のシェアを大切にします。メーカーやアーティストが自分で情報発信していけるようにもなります。そうすれば、タッチポイントは必ず増えていきます。

今年、2015年は多数のストリーミング・ミュージックサービスがスタートするとみられています。まさにダムが決壊するがごとく、この2015年というのが、日本の音楽市場にとってターニングポイントになるのではないか、と。いや、そう「したい」と思っているんです。

その中で我々がどういう地位を占めたいか、というと、当然多くのユーザーに使っていただきたいと思っています。そしてその時は私たち(LINE)だけでなく、音楽業界全体のプラットフォームになっていきたい。それが目指すべき方向です。コミュニケーションと音楽を結びつけるというのが、私たちがやるべきこと。若い人達に音楽を聴いてもらって、感動してもらうのが、私たちがやるべきことです。

定額制音楽配信サービスの勝者は?

LINE MUSICがスタートした背景には、各種ストリーミング・ミュージックがこの時期に向けてスタートの準備を進めており、同様の条件交渉が必要なLINE MUSICについても、結果的に同じようなタイミングになった……という部分があるようだ。ライバルが増えることになるが、舛田氏は悲観していない。むしろ「今がチャンス」とみている。

海外のネット事情に詳しい人や、熱心な洋楽ファンにとっては、ストリーミング・ミュージックは「日常」であってなんら珍しいものでもない。だが日本では、舛田氏の言うとおり、多くの人が「本物のストリーミング・ミュージックを体験してない」状態であり、市場開拓はこれから。短期的には、競い合って認知度が高まることが望ましい。

一方、どのサービスが本命になるかは、読むのが難しい。

集客の点では、現在公称会員数300万人で、トップシェアであるNTTドコモの「dヒッツ」と、LINE MUSICが有利だ。dヒッツは、NTTドコモのスマートフォン販売戦略と連携しており、店頭での拡販が強み。一方LINEは、メッセージングサービスとしての圧倒的認知度がある。

Apple Musicは、音楽ファンには一番注目度が高い。ダウンロード販売では強いiTunes Storeとの連携が強く、「すでに持っているライブラリとの統合」は魅力的だ。Androidでの展開は秋になるものの、iOS機器に加え、PCやMacでもスタート時点から使えるため、「マルチデバイス展開」でも一歩先を行っている。海外では当たり前である水準をきちんとカバーしており、システムとしての完成度は一番高そうな印象を受ける。

価格面でも、上記2サービスは強い。LINE MUSICは「学割」をはじめとした施策でハードルを下げているし、dヒッツは税込み540円で、視聴時間制限がない。自分がまだ学生だと想定すると、毎月1000円近い金額が「音楽のためだけに出て行く」のは確かにちょっとつらい。だから、500円まででの戦いが主流になるのではないか、という予想もできる。一方、Apple Musicは1人向けのディスカウントはしないものの、「家族6人までが14.99ドルで使える」という、ファミリーアカウント制度を用意する。親に支払ってもらう想定ならば、実質的にはかなり競争力がある。

そうなると競争軸は、「音楽との出会いのプロセス」になるだろう。LINE MUSICのように「シェア」を軸に、友人との関係から利用者を広げる手法もあるだろう。Apple Musicは、国内で楽曲調達やiTunes Storeの「店舗設計」を日夜担当している音楽の目利きが、プレイリスト作成や楽曲提案の中心になる。「音楽がわかる人々からの伝播」という、ある意味古典的な「ラジオから流れる音楽」と同じモデルだ。他のサービスは、「シェア」「音楽発見」について凡庸な印象で、特徴が薄い。

「無料で音楽を楽しむ人々」を引きつけることが本命の条件だとすれば、「聴ける」以上の要素がカギになる。だからこそ、「Spotifyなどが日本への参入を果たしていない」という前提に立てば、LINE MusicとApple Musicの対決になるのでは……というのが、筆者の見立てある。どちらにしろまず、目の前にある「無料モデルからの脱却」が最大のハードルであり、「どこが勝つか」はその先にしかないのだが。

LINE NEWSのMAUが1200万人突破、ヤフーの牙城を崩せるか

編集部が選んだ話題のニュースをLINE経由でプッシュ配信する「LINE DIGEST NEWS」(左)、雑誌ライクな「LINE NEWS マガジン」(中)、「LINE NEWS」アプリ(右)
編集部が選んだ話題のニュースをLINE経由でプッシュ配信する「LINE NEWS DIGEST」(左)、雑誌ライクな「LINE NEWS マガジン」(中)、「LINE NEWS」アプリ(右)

編集部が選んだ話題のニュースをLINE経由でプッシュ配信する「LINE NEWS DIGEST」(左)、雑誌ライクな「LINE NEWS マガジン」(中)、「LINE NEWS」アプリ(右)

もう数年来言われてることだけど、PC時代の王者・ヤフーの牙城がスマホ時代になって崩れる時がいよいよ近づいてきたかもしれない。

5月の「LINE NEWS」月間アクティブユーザー数(MAU)が1200万人を突破した。MAUはLINE NEWSのアプリ、および公式LINEアカウント経由で、LINE NEWSのウェブページに月1回以上アクセスしたユニークユーザーの合計。双方で重複ユーザーはあるものの、前月比469万人増と急成長を遂げている。

重複というのは、アプリを立ち上げてニュースを閲覧しているユーザーと、LINEを通じて話題のニュースを1日に3回ダイジェスト配信する「LINE NEWS DIGEST」を読んでいるユーザーのこと。重複ユーザー数は明かされていないが、LINE NEWSを担当するLINE執行役員の島村武志氏によれば、「アプリは能動的にニュースを読みたい層、LINE NEWS DIGESTはライトな層で住み分けがあるので、重複は多くない」という。

国内のニュースアプリは、昨年12月にMAUが400万人と発表したスマートニュース、MAUを公表していないグノシーなどがしのぎを削っている状況。ニュースアプリに限定しなければ、Yahoo! JAPANアプリやスマホブラウザー経由で毎月2300万人が読んでいる「Yahoo!ニュース」が圧倒的なユーザー数を誇る。島村氏はYahoo!ニュースを「明確に意識している」と言い、“巨人”超えを狙っている。その一端を担うのが、4月27日にスタートした「LINE NEWS マガジン」だ。

MAU急増の牽引役となった「マガジン」とは

LINE NEWS マガジンは、ユーザーが好みに応じて選んだ「マガジン」を週1〜2回程度、LINE NEWSの公式LINEアカウント経由でプッシュ配信する。ニュースアプリによくある「経済」や「テクノロジー」といった単純なカテゴリ分けはせず、テーマを絞った全21マガジンを用意している。

登録者が多いマガジンとしては、見るだけで旅行気分が味わえる「なにここ行きたい!」(約65万件)、旬なレシピや話題のレシピを届ける「これは使えるレシピ」(約63万件)、女子力を上げる情報を厳選する「女子力UP!」(約56万件)などがある。創刊を記念して無料でLINEスタンプを配布したことも後押しし、5月末時点でマガジン登録者数は合計636万人。LINE NEWSのMAU急増の牽引役となった。

LINE NEWSのLINE公式アカウント経由で届く「マガジン」。別アプリを立ち上げることなくニュースがプッシュで受け取れる点や、ニュースを“見る”だけで内容を把握できるのが特徴だ

LINE NEWSのLINE公式アカウント経由で届く「マガジン」。別アプリを立ち上げることなくニュースがプッシュで受け取れる点や、ニュースを“見る”だけで内容を把握できるのが特徴だ

各テーマは雑誌のようにコンセプトを決めているのが特徴だ。例えば、「野郎メシ」創刊の際にLINEが発表したコンセプトはこんな感じになっている。

肉!肉!肉!とろける極旨な「お肉」の情報や、パンチの効いた「麺」や「ご飯もの」など、とにかくガッツリ食べられる男のメシ情報。届くと思わず腹がへる「野郎系」なグルメ情報をまとめてお届けするマガジンです

で、マガジンの何がウケているのか? ということだけど、LINE NEWSを担当する島村武志氏によれば、こういうことらしい。

「欲しい情報がちゃんと届くことですね。LINE NEWSのカテゴリは分類学上で何に属するかという話ですが、マガジンはユーザーの志向性に基づいています。テーマに特化することでユーザー層が狭まる? そんなことはないですよ。例えば、動物萌えっていうマガジンがありますが、動物を見て癒されたいって普遍的じゃないですか。マガジンはそういう共通性のあるテーマを揃えています。」

タップされるかどうかが本質的な価値じゃない

もうひとつマガジンで特徴的なのは、イメージ画像とシンプルな記事タイトルで見やすくまとめた雑誌のようなUIだ。

ニュースをチェックするのが日課になっている人ならともかく、そうでない人は忙しくなるとニュースを見る時間を取りにくい。そんな時でもわざわざアプリを立ち上げず、LINEを通じて友達が画像を送るような感覚でニュースが届く。ニュースを“読む”のではなく、“見る”だけで内容が把握できれば、“ニュース離れ”の層も取り込めるということなのだろう。

「LINE NEWSの価値は、今までニュースを読まなかった人にも、ニュースを身近な存在にしたこと。我々は情報源のニュースを集め、人力で編集しているので記事を読んでもらいたいですが、タップされるかどうかが本質じゃない。動物萌えマガジンでアザラシの画像を見て、『今日もがんばろう!』と思ってもらえるだけでも価値があるはずなんです。」

LINE執行役員の島村武志氏

LINE執行役員の島村武志氏

ヤフトピは「間違いなく意識している」

スマホ向けニュースアプリの多くは、動画広告とネイティブアドが収益源。そのため、記事がタップされるかどうかが生命線だ。「タップされるかどうかが本質的じゃない」と言うLINE NEWSは、収益化をどう考えているのか?

「タップを意識するのはPV型のビジネスモデルだから。PVを軽視するつもりはないですが、ユーザーを騙しちゃダメと思っています。今は焦ってPVをお金に換えるよりも、LINE NEWSを愛してくれる人、つまりMAUを増やす段階。なのでPVは全く追いかけていません。ただ、想定よりも早く1000万MAUを超えたので、そろそろマネタイズのテストはしたいですね。」

島村氏は、2013年7月のLINE NEWS創刊時から「ヤフトピ超え」を強く意識していた。昨年12月、ヤフーは「スマホのYahoo!ニュース利用者は2300万人」というブログエントリを投稿。新興ニュースアプリとはユーザー数で桁が違うことをアピールした。LINE NEWSのMAUと比べても2倍近くのユーザー数を誇っているが、島村氏は現在も「ヤフーを超えるのは、目標として確実に存在しています」と言い、その考えは揺らいでいない。

「Yahoo!ニュースがあるからこそ、カウンターとしてのLINE NEWSがあると思っています。ヤフーさんの13.5文字の見出しが並ぶ、磨きに磨かれた世界観は存在してますけど、スマートフォンの時代になって感覚は変わった。その枠組みを我々がどう壊せるか。例えばマガジンで極端にビジュアル中心にしているのは、ヤフーさんとの対比で意識している側面はありますね。」

イケてる友達に、LINE NEWSはなりたい

「LINE NEWS創刊時からブレてないんですけど、キーワードは『友達』なんです。記事は人力で編集し、本文の語り口が柔らかいのも、友達でありたいから。マガジンで言えば、普段ニュースを積極的に見ている人でも、もう少し深い情報を欲している人に『これ読んでおくといいよ』ってヒントを与える。そんな情報通のイケてる友達になりたいんです。」

LINE NEWS マガジンは「もっともっとニッチなニーズにも答えていきたい」と語る島村氏。時期は明らかにしなかったが、将来的にはマガジンの編集をオープン化することも視野に入れている。

マガジンは現在、LINE NEWS編集部がピックアップしたニュースをまとめて配信する形態。これを外部のユーザーが編集して配信できるようにする。LINEはこれまでも、外部のユーザーが「スタンプ」を制作できるようにして、売上に報酬を支払ってきたが、マガジンでも同様の仕組みを検討するという。

日本のLINEがグループ会話サービスPopcorn Buzzを開始、無料で最大200名まで

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日本のメッセージングサービスLineが、その絶えず拡大しているサービスの中にこのほど、グループ通話を加えた。そのPopcorn Buzzと名付けられたアプリは、すでに相当混み合っているグループ通話の市場に新たに参入する。SkypeやGoogle、Kakao Talkなどの強力な先輩たちに負けたくない新人Popcorn Buzzは、完全に無料で最大200名までのグループに対応、という機能を決め手にするつもりだ。

Lineの音声サービスLine Callは、安いけど無料ではない。またメインのLineアプリでは、ほかのLineユーザとの通話は無料だ。

このグループ通話サービスは今すでにAndroid上で全世界的に利用でき、iOSアプリももうすぐ出る。グループによるビデオチャットや、LINEの既存のチャットグループとのトークも、近くできるようになる。

また、これまで消費者向けのみだったLineのサービスと違って、このグループ通話は企業にも売り込んでいくようだ。

同社の声明によると、“Popcorn Buzzを使って友だちや家族、クラスメート、クラブのメンバーなどとお話できる。また、それだけでなく、Popcorn Buzzは、これまでの有料の企業向け会議通話サービスに代わって、立派に利用できる。Popcorn Buzzは個人利用も企業の利用も、すべて無料だ”、ということ。

ただし、この、最大200人のグループ通話を企業が利用する際、QoSの保証はないのでは…、と私は思う。

Lineは2億500万のユーザが、主に日本といくつかのアジア諸国に集中しているが、サイズではWhatsAppやFacebook Messengerの方が上だ。しかしLineの特長は、メッセージングだけでなく、ほかにも多様な機能を提供し、その部分でも伸びていることだ。

同社の考え方は、メインのメッセージングサービスの中で、そういういろいろなアプリやサービス(ゲーム、辞書、写真編集、ショッピング、そしてたぶん近く音楽も、などなど)を使わせることによって、既存のユーザのエンゲージメントを増し、メッセージングだけでは掴まえられなかった新規のユーザを獲得することだ。それらのアプリの中でステッカーなどを売ることが、同社の売上になっている。この、メッセージングサービスの中で機能を多様化するという、うまいやり方は、Facebookも最近、真似始めているようだ。

Lineで通話を始めるには登録が必要だが、その後はURLによってLineのユーザや、Line以外のユーザと共有できる。すでにLineの上にいたユーザは、そのLineのコンタクトをPopcorn Buzzにシンクできる。Uber Conferenceなど、そのほかのグループ通話サービスと同じく、誰かがトークするとその人のアイコンが高輝度になる。

今Popcorn Buzzで使える言語は、アラビア語、ブラジルポルトガル語、中国語(簡体と繁体)、英語、フランス語、ドイツ語、インドネシア語、イタリア語、韓国語、マレー語、ポルトガル語、ロシア語、スペイン語、タイ語、トルコ語、ベトナム語だ。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

定額制音楽配信サービス「LINE MUSIC」のティザーサイトが公開、取締役の舛田氏がツイッターでコメント

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エイベックス・デジタルとサイバーエージェント提供するサブスクリプション型(定額制)音楽配信サービス「AWA」が5月27日にスタートした。

僕も早速アプリをダウンロードしてほんの少し触ったが、UIも洗練されているし、楽曲も思った以上にバラエティに富んでいる印象だ。ソーシャルメディアを見る限りおおむね好評のようだ。90日間サービスは無料なので、リストをはじめとしてもう少しいろいろな機能を使ってみたいともっている。

そんなAWAのリリースがあった翌日、LINEなどが開発中のサブスクリプション型音楽配信サービス、「LINE MUSIC」のティザーサイトがオープンした。

LINE MUSICは、LINEとエイベックス・デジタル、ソニー・ミュージックエンタテインメントが共同出資した「LINE MUSIC株式会社」が開発中のサービス。サイト上では近日中にサービスインするとしているが、詳細なスケジュールについては改めてお知らせするとのこと。

ところで、このタイミングでのティザーサイト公開について、「AWAを意識しているのではないか」といった声もあるようだ。LINE取締役でCSMOの舛田淳氏はそんな声の1つ(ベンチャーキャピタリストの佐俣アンリ氏のツイートだ)を取りあげて、「予定通りですw」とツイートしている。

LINE NEWSのMAUは670万人に、19カテゴリの「マガジン」も新設

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2014年末に開催された「IVS 2014 Fall Kyoto」で、LINE上級執行役員CSMの舛田淳氏がLINEのプラットフォーム構想を語っていたのだが、その中でニュースアプリの「LINE NEWS」について、「MAU(月間アクティブユーザー)500万人」と具体的な数字を初めて公の場で発表した。この数字は、約3カ月経過した3月時点で670万人(アプリとウェブの合計)に拡大しているそうだ。

そんなLINE NEWSが「LINE NEWS マガジン」と呼ぶ新たな形式での情報配信を開始する。

LINE NEWSでは、「LINE NEWS DIGEST」の名称で、LINE NEWSのアプリおよび公式アカウントから1日3回ニュースのプッシュ配信をしている。LINE NEWS マガジンはそのダイジェストのノウハウをもとに、特定のカテゴリやテーマの情報について、イメージ画像とシンプルな記事タイトルにまとめた「マガジン」形式でプッシュ配信するというもの。

配信頻度は週1〜2回程度。当初は「東京トレンド」「野郎メシ」「動物萌え」など19のマガジンを提供する。今後はユーザーの意見をもとにサービスを拡大していくとしている。

冒頭に紹介したMAU670万人という数字はこのリリースに合わせて発表したもの。ちなみにLINE NEWSのLINE公式アカウントは、現在1200万人以上のユーザーが友達登録をしている(とリリースに書いていたが、確認したところ友達登録は1250万人を超えていた)。

LINEがソーシャルギフトサービスを本格化、「LINEギフト」を提供開始

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昨日はOpen Network Labの第10期デモデイがあったが、5年前の第1期に採択されていたのがソーシャルギフトサービス「Giftee」を手がけるギフティだった。同社はその後KDDIのインキュベーションプログラム「KDDI ∞ lab」にも参加。創業間もないスタートアップながら、あっという間にケンタッキーフライドチキンやクリスピー・クリーム・ドーナツ・ジャパンなどの大手と組んでキャンペーンなどを展開していてびっくりした記憶がある。

そんなソーシャルギフトの領域にLINEが参入する。同社は4月3日、無料通話・メッセージアプリの「LINE」上でソーシャルギフトサービス「LINEギフト」を開始した。このサービスを利用すれば、LINEで繋がっている友人に対してギフトを送ることができる。支払いはクレジットカードやコンビニ支払いに対応する。住所はギフトをもらう側が入力するため、住所を知らない友人にもギフトの送付が可能だ。

LINEでは2014年11月から、スマートフォン向けECサービス「LINE MALL」上で試験的にソーシャルギフトサービスを展開していた。これが好評だったため、今回独立したサービスとして提供するに至ったのだという。

ギフトとして送れるのは、これまで提供していたボディケア用品やベビー用品、アルコールといった慶弔事向けの商品のほか、スターバックスのギフトチケット、ファミリーマートの「FAMIMA COFFEE」、ローソンのウチカフェプレミアムコーヒーやからあげくんなど、職場の同僚や後輩などに贈れるような低価格の商品を追加している。

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「今年が勝負」LINE新社長が描く、米国市場“逆転のシナリオ”

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LINEの森川亮社長が3月31日付けで退任し、4月1日から現COOの出澤剛氏が新社長に就任する。国内では「LIFE」をテーマに掲げ、生活に密着したサービスを相次いで投入するLINE。2014年通期の売上は前年約2倍の863億円に上るなど、順調に推移している。

一方、海外に目を向けると、月間アクティブユーザー数(MAU)が7億人の米国WhatsApp、同5億人の中国WeChatが立ちはだかる。LINEのMAUは1億8000万人にとどまり、水をあけられているが、出澤氏は海外展開をどう舵取りしていくのか。

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――海外市場では苦戦しているように見えますが、どう攻略するのでしょうか?

苦戦というと言葉は悪いですが、挑戦し続けている状況。キーワードはローカライズです。現地のテイストに合うことを、表層的なスタンプのデザインレベルではなくて丁寧にやっていく。それは米国型企業の戦略とは違う考え方だと思います。フォーカスする地域はアジア全域と北米、南米市場ですね。

――ヨーロッパは対象外?

今までは欧州全域が対象と言っていたんですが、今年は絞ります。これまで海外展開している中で、ある程度、地域との相性が見えてきて、反応が良くない地域は絞っていこうというのが現状です。すでに1800万人以上が登録しているスペインについては、引き続きやっていきますけど。

――地域との相性とは?

例えば、キャンペーンの反応度合いとか。スタンプが刺さるときもあれば、現地企業とのタイアップが刺さることもありますし、セレブとの取り組みが刺さることもある。いろんなローカライズをやっているので、ユーザーの反応をかけあわせながら考えている感じですね。

インドネシアの若者の心をわしづかみに

――ローカライズの成功事例は?

例えば東南アジアのLINEには、同級生を探せる機能があります。これは日本にはなくて、東南アジア独自のものです。LINEは学校のデータベースを用意しておいて、ユーザーには学校名や卒業年度を任意で入力してもらっています。

同級生機能のマーケティングもすごくハマりました。2002年にインドネシアで「ビューティフル・デイズ」という映画が大ヒットしたのですが、LINEのキャンペーンに絡めて続編的な動画を作ったんです。この映画は、高校生の男女が主人公のラブストーリーで、最後は彼が米国に留学、彼女はジャカルタに残って離れ離れになっちゃうみたいな。

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――これまた、ずいぶんとベタなストーリー(笑)

インドネシアは民主化されて間もないのですが、2000年ぐらいから文化も活発になってきた面があるんです。「ビューティフル・デイズ」はインドネシアの国産映画としては、初めて大ヒットした国民的映画のひとつなんですね。本当に若者が全員が見ているぐらいの人気で。

それでLINEは2014年秋に、その映画を題材にした10分間のYouTube動画を公開したんです。主人公2人だけでなく、脇役にも出演してもらって。あれから12年後の2人はどうなったのか、っていう内容で。ここでのミソが、LINEの同級生を探す機能。

故郷のジャカルタ行きの出張を命じられた米国在住の彼は、同級生機能で彼女を見つけてメッセージを送るんです。2日間の滞在中に会いたいと。でも返事はなく、帰国のためにジャカルタの空港へ向かうと、そこには彼女が待っていて……。「また何か始まるかも」みたいな含みを持たせて動画は終わるんです。

――映画のファンだったら胸が熱くなりそうな展開ですね。

実際にYouTubeでは550万再生を超えましたし、ソーシャル界隈でも猛烈にシェアされましたね。こうした施策が打てるのは、きちんとローカライズをやっているからこそ。現地のLINE支社に、早い段階で優秀な人にジョインしてもらって、かなりの権限を持たせて企画してもらっています。現地でウケる企画は日本人では発想できないので、現地のセンスを取り入れようと。

インドネシアはものすごく伸びていて、登録ユーザー数は3000万人を超えました。タイや台湾、スペインのように、トップシェアを狙える次の国としては一番近い市場になっています。まさにLINEのローカライズが成功した象徴的なケースといえるでしょう。


ヒスパニック経由で米国進出

――米国市場もローカライズが攻略の鍵ですか? LINEはスペイン語圏で人気があるので、ヒスパニックを「入口」にして米国進出するという見方もあります。

スペイン語圏のユーザー動向で面白いのは、スペインで流行った後に、近隣国のフランスやイタリアではなく、海を渡ってメキシコや南米で流行ったことです。ですので、米国のヒスパニックが(攻略の)糸口になるというストーリーはありえます。

――そもそも、なぜスペイン語圏で人気が飛び火したのでしょう?

同じ言語だと、見ているメディアが同じだったりするじゃないですか。テレビ番組やニュースサイトだったりとか。スペインで伸びたきっかけは、あるブロガーがLINEを紹介してくれたのがきっかけなんですが、そのブログを南米の人が見たかもしれない。そういう意味では、見ているメディアが一緒というのは大きいと思います。

ヒスパニックユーザー以外にも、攻略の仮説はあります。中には、インドネシアの成功例みたく、爆発の起点となる施策が出てくるかもしれません。「これが海外展開の成功法則だ」みたいなものがあればいいんですが、国によって端末普及や通信速度、文化も違うので、1つ1つ丁寧にトライアルしていく感じですね。

非・LINEブランドのアプリが攻略の糸口に

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――ヒスパニックユーザー以外の仮説とは?

米国で言うと、ティーンネイジャーの間でセルフィーが人気なので、自撮り写真でLINEのスタンプが作成できる「ycon」が流行るかもしれません。このように、LINEブランドを名乗らないLINEのアプリがきっかけとなって、米国のユーザーに浸透する可能性もあると思っています。

LINEブランドを全面に出さないアプリとしてはほかにも、北米や中南米で自撮り専用アプリ「B612」が人気を集めていて、世界では2000万ダウンロードに達しました。ゲームでも、ディズニーキャラクターを使った「LINE:ディズニー ツムツム 」は米国で数字が出ています。

あくまでこれらがすべてではありませんが、ティーンネイジャー、LINE本体とは違うアプリ(yconやB612、ツムツムなど)、ヒスパニックといった3つ軸はあるかと思います。

今年1年が本当に勝負

――米国市場の勝算は?

まだまだチャンスはあると思いますよ。でも、そんなに長く空いているドアじゃないので、他のマーケットにしても、今年1年が本当に勝負。(長く空いているドアじゃないというのは)トップシェアを取るときに、端末普及状況を考えると、ある程度たったら固定化するので。

――米国市場のドアはほぼ閉まっているようにも思えますが。

米国はすでに固定化している可能性もありますが、固定化するとひっくり返せないかというとわからないですし、逆に日本でもひっくり返される可能性もはらんでいますので、そこはチャンスはあると思います。

――日本ではマネタイズが進んでいますが、他国の状況は?

日本はまだ「面」を広げるのが主眼です。まずはプラットフォームとして、使っていただく接点や時間を増やすことを目指していて、まだまだマネタイズは抑制している段階。ユーザーに使っていただくシーンを増やすのがプラットフォームとしては正しいと思います。

line04――森川さんと出澤さんの戦略で異なる点は?

方向性としては、2014年1月にCOOになって、昨年4月から代表権を持ってやっているので、基本的に大きな変更はありません。LINEのユーザーファーストのカルチャーやスピード感は、森川時代から言っていることで、それはDNAとして定着しています。私はこれまでの動きをさらに速いスピードで成功させて、世界で認められるステージに持って行くのがミッションだと思っています。

――出澤イズムみたいなのはあるのでしょうか?

どちらかというと私は現場が長いですし、LINEの各事業に関してもハンズオンでやってきました。そういう意味では、現場感というか、自分も一緒にプレイしながらまとめていくスタイルかもしれません。森川さんは、経営寄りなスタンスで大所高所から見る部分がありましたが、私はより、現場に近い目線でスピードを上げていく。提携交渉はもちろんですが、実際にビジネスを進めるところでも、なんでもやっていく感じです。

――ところで、LINE Musicはいつ始まるのでしょう?

もうすぐだと思います(苦笑)。始まると言いつつ、なかなか始まらないのは、ユーザーにとって良いものを届けるために調整しているためです。

――レコード会社との条件で交渉決裂みたいな話はないのですか?

レーベルさんとは非常に友好的な関係でやっていて、そのフェイズはとっくに超えています。あとはアプリの完成度を調整している段階。合弁自体はうまくいっていますよ。上半期にはリリースできるかと思います。

Facebookの、Messengerプラットフォーム化計画


来週のF8 デベロッパーカンファレンスで、Facebookはサードパーティーが同社のMessengerアプリを通じて新たな体験を提供する方法を発表する、と複数の情報源が伝えている。Facebookは、Messengerをもっと便利にしたいと考えている。アジアのチャットアプリ、WeChatやLineが友達とのテキストメッセージの枠を越え、プラットフォームとして成功しているのを踏まえてのことだ。

まずFacebookは、サードパーティーがMessengerを通じてコンテンツや情報を流すやり方に注目すると思われる。初期の実験の成否によって、FacebookはMessengerの実用性をさらに高めることを熟考するかもしれない。

Messengerプラットフォームが今回のF8の主要な話題になることは、あらゆる情報筋が言っているが、サードパーティーによる具体的な統合方法は不明だ。これまでWeChatやLineがやってきたことを見ると、企業によるユーザーとの直接対話やコンテンツの共有する、友達同志のコンテンツ共有の強化等、数多くの可能性がある。

Facebookは限られたパートナーとだけ、ゆっくりとスタートするだろうが、いずれ多くのデベロッパーに開放されるかもしれない。Facebookはこの件についてコメントを拒んだ。

スパムの回避

Facebookは、初期のウェブプラットフォームの良いところを再現しつつ、同じ失敗を繰り返さない方法を探っている。

Facebookの「ウェブキャンバス」はユーザーの個人情報や友達を簡単にサードパーティーに渡せることから、ゲームと共に急成長した。そして同社のオープングラフ・プロトコルは人々のFacebookプロフィールをアプリと結び付けた。いずれも人気の理由は、デベロッパーが自分に興味のあるユーザーを見つけるのに役立つからだ。それはアプリストアが混雑し競争が激化する今のモバイル時代においては極めて困難だ。

Facebookのゲームスパム(2010年頃)

問題は、ウェブプラットフォームにゲームスパムが氾藍しすぎた結果、Facebookがバイラルを抑制しなければならなくなったことだ。結局、熱中の場が携帯電話へとシフトし、Facebookが困惑してモバイルへの移行に遅れているうちに、ブームは衰えた。オープングラフは、ニュース、音楽、ビデオ等の使用をニュースフィード・ティッカーに自動配信したことによって、シェアのやりすぎだという悪評を得た。

こうした経験に基づき、Facebookはこの比較的未開のMessengerアプリにスパムが紛れ込まないよう慎重になるに違いない。

アジアの一体型チャットアプリにインスパイアされる

これまでMessengerはほぼFacebook上のみの体験だった。ウェブサイトに、ユーザーが友達に直接URLを送ることのできる“送信”ボタンを埋め込むことはできるが、それを除けばMessengerは、テキスト、音声通話、写真、ビデオ、スタンプ、ボイスクリップ、そしてお金の送受信にいたるすべてを、Facebookの独自システムを通じて提供している。

Facebookは、F8カンファレンスでMessengerに関する発表があることを私に話し、同社チャットアプリに新たなデベロッパー向け機能が加わることをほのめかしていた。また、Messengerの責任者、Daivd Marcusは、昨年Wiredに企業と顧客が直接対話する方法に興味を抱いていることを話し、貧弱な体験の原因の多くは電話の番号案内と航空会社のカスタマーサービスにあると指摘した。以前Facebookは、ユーザーがFacebookのビジネスページ管理者に個別メッセージを送るための殆ど知られなかった方法を提供していた。

Messengerのプラットフォーム化に関して、FacebookはLineとWeChatに注目したと言われている。両社は頻繁に使われるインスタントメッセージアプリをモバイルインターフェースの中心に据え、一体型ポータルとして使うパイオニアだ。Snapchatも、最近プラットフォーム・アプローチを急速に推進しているメッセージアプリだ。

Lineのプラットフォームページ

日本のメッセンジャー、Lineには「その他」タブがあり、スタンプショップ、物理的店舗で買い物ができるLine Pay、Lineのファミリーアプリやゲームの一覧などを利用できる。アプリには、自分の顔を友達に送れるスタンプメーカーや、写真共有のLine Toss、お絵描きのLine Brush、グリーティングカードを送れるLine Card、コラージュを作るLine Camera、自撮り写真を飾り付けるB612、マンガを読むためのLine WebToon等がある。

Snapchat Discover

Lineでは、公式アカウントをフォローして、ポール・マッカートニー、The Walking Dead、マンチェスター・ユナイテッド、BBCなどの有名人やエンターテイメント、ニュース機関、ブランド等から直接コンテンツを受取ることもできる。FacebookやTwitterの公式アカウントで起きている投稿の集中砲火と比べると、Line公式アカウントは、ファンとの少数高密度の直接コミュニケーションが特徴だ。

Snapchatは、Discoverページでプレミアム豪華コンテンツ戦略を追求している。Comedy Central、CNN、Vice、ESPNといった主要メディアが、Snapフォーマットの写真、記事、ビデオを挿入広告として送り込める。一方、WhatsAppは、ユーザーがWhatsAppメッセージを通じて友達にURLを送れるSendボタンをサイトに埋め込めるようにして、大量のトラフィックをメディアサイトに誘導している。

Facebookは、上記のいずれからでも着想を得ることができる。例えば、、装飾を加えた写真等のリッチコンテンツを作ってシェアするためのアプリをサードパーティーが提供できるようにする。Facebookは既に、写真にスタンプを貼って友達に送れるコンパニオンアプリとしてStickered For Messengerを提供している。

あるいはFacebookは、ユーザーが公式アカウントをフォローしたりページを訪れたりできるようにしてもよい。そうすればニュースフィードで見落とした最新情報に遅れずにすむ。電話より効果的な方法で企業と直接連絡を取る方法も提供できるだろう。もう一つの可能性は、ウェブやモバイルのコンテンツ提供者が、Messenger経由でバイラルなトラフィックを獲得する簡単な方法をFacebookが提供することだ。Facebook本体のニュースフィードに、読んだニュースをMessengerに送り込むもっと良い方法が用意されてもいい。

Facebook Stickered For Messenger

中国のWeChatプラットフォームは、よりコマース寄りだ。ユーザーはメッセージアプリを使って、映画のチケットを買ったり、タクシー料金を支払ったりできる。

Facebookの当初のMessengerプラットフォームへの取り組みは、コンテンツが中心と思われるが、サードパーティーの体験に手ごたえを感じれば、いずれネット販売にも拡大するかもしれない。つい先週、Facebookはデビットカードを追加することで友達同志がメッセンジャーを通じて送金するしくみを無料で追加した。支払いシステムを内蔵したことによって、Messengerにはすでにインターフェースがあるので、販売機能の構築は容易だろう。

中国のWeChatはアプリ内で買い物体験を提供している。 Via Benedict Evans

5億人以上のユーザーを持ち、Facebook Messengerは今や世界で最も使われているアプリの一つだ。Facebookのメインアプリが実質的にウェブサイトを小さな画面に移植しただけなのに対して、Messengerはモバイルのために作られたアプリだ。Facebookアプリがさして目的もなく気楽に眺めるものなのに対して、Messengerは行動を起こして何かを成し遂げるために作られている。世界の一部の人々にとっては、MessengerがFacebookを使う主要な方法になっている。その中のコンテンツを改善することは、ニュースフィードにかじりついていないユーザーにとっては理にかなっているかもしれない。

Facebookにとって最近のMessengerのミッションは、このアプリを「より有用に、表現を豊かに、快適に」することだと、支払い機能のプロダクトマネージャー、Steve Davidは言っている。今度は、Hacker Way 1番地の外に協力を求める時だ。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook


LINEに脆弱性、トーク内容などを閲覧される恐れ–修正版アプリは配信済み

LINEの手がけるメッセージアプリ「LINE」に脆弱性が発見された。

LINEは3月16日にその詳細を報告しており、問題を修正した最新版のアプリをすでに配信している(iOS版は3月4日から、Android版は3月10日から)。直近アプリのアップデートをしていないという読者は、早急にアップデートして欲しい。

今回発見された脆弱性は、悪意のある第三者が設置した無線LANに接続した際、LINEアプリ内の「その他」にあるページを開いたり、メッセージ・タイムラインに記載されたURLにアクセスしたりした場合に、LINE内のトーク内容・友だち一覧などのデータが取得・改ざんされる可能性があったというもの。

脆弱性はセキュリティ会社のスプラウトが発見。2月3日にJPCERTコーディネーションセンター(JPCERT/CC)および情報処理推進機構(IPA)からLINEに報告があったという。

またそのほかにも、悪意のある第三者が友だち表示名に不正なプログラムを埋め込んだ状態で友だち申請をしてコードが実行されると、LINE内の情報が閲覧・改ざんされる可能性があるという脆弱性も指摘されたとのことだが、こちらは2月3日に修正を完了しているとのこと。


「LINE TAXI」エリア大幅拡大、地方普及のボトルネックは手数料か


1月6日に東京先行でスタートした「LINE TAXI」がいよいよ全国展開する。2月25日に北海道や神奈川県、大阪府、福岡県など22都道府県に拡大し、順次対象エリアを増やす。都内は簡単に流しのタクシーを捕まえられるだけに、地方でどれだけ利用できるかが注目される。ただ、本格的に全国普及するには「手数料の壁」を乗り越える必要がありそうだ。

クレジットカードよりも「それなりに高い」手数料

LINE TAXIは、全国タクシー配車アプリを展開する日本交通と提携し、同社が保有する一部のタクシーをLINEで呼び出せるサービス。先行で開始した東京では、2回以上サービスを利用したユーザーは全体の34%、3回以上は15%超と、まずまずのリピート率だったそうだ。ユーザー数は非公表だが、日本交通の川鍋一朗社長は「我々の配車アプリではリーチできない若年層に届いている」と手応えを感じているようだ。

全国タクシー配車アプリは129社・約2万3000台のタクシーを配車しているが、全国展開を開始したLINE TAXIでは、これらがいきなり配車対象となるわけではない。理由は、タクシー会社がLINEに支払う「手数料」だ。

LINE TAXI経由でタクシーを呼び出した場合、タクシー会社がLINE Payの決済手数料を負担することになる。つまり、LINE TAXIで配車可能な台数を増やすには、全国のタクシー会社に手数料の条件をのんでもらう必要があるわけだ。手数料は非公表だが、川鍋氏は「クレジットカード手数料と比べると、それなりに高い金額」といい、「地方のタクシー会社が導入する一番のボトルネックになる」と続ける。

タクシー会社からすると、一番実入りがあるのは現金払い。地方都市でクレジットカード決済に対応していないタクシーが多いのは、「利益が減る」という企業論理のためだが、川鍋氏は「コスト削減でもなんでもなく、お客様の利便性を下げているだけ」と指摘。全国タクシー配車アプリを導入するタクシー会社には、「多少お金がかかっても本業で取り返せと啓蒙していく」と語る。LINEの出澤剛COOも「全国で開かれるタクシー会社の会合に出席して、LINE TAXIの導入を呼びかける」と意気込んでいる。

悲願のクーポンで利用に弾み

一筋縄ではいかなそうなLINE TAXIの全国展開だが、ユーザー獲得手段としては「飛び道具」を用意しているようだ。LINEの公式ブログでは、LINE TAXI用のクーポンを配信することをほのめかしている

タクシー会社にとって、タクシー料金の割引クーポンを発行するのは禁じ手とされている。タクシー会社が従う道路運送法10条(運賃又は料金の割戻しの禁止)の違反行為に該当するためだ。

一方、頻繁に数千円オフのクーポンを発行しているUberは、タクシーを自前で保有せず、「旅行業者」としてタクシー会社とユーザーをマッチングしている。このため、国土交通省によれば道路運送法には抵触しないのだという。

日本交通単体では認可されなかった“悲願”の割引クーポン発行だが、国土交通省はLINEが主体となるサービスであれば問題がないとの見解を示している。LINEはクーポン配布を計画中とのことだが、実現すれば、タクシー会社単体で運営する配車アプリとの差別化につながるし、いまだに東京限定のUberよりも存在感を示せそうだ。

LINEの出澤剛氏(左)と日本交通の川鍋一朗氏


「LINEバイト」は集客力でスマホアルバイト市場の勢力図を変える



若年層ユーザーの高いアクティブ率を武器に、LINEがアルバイト求人サービスに参入する。LINEとインテリジェンスが設立した合弁会社「株式会社AUBE(オーブ)」が2月16日、アルバイト求人情報サービス「LINEバイト」を公開した。専用のアプリをインストールせずにLINEアプリ内からアルバイト情報を探せるのが特徴だ。

バイト探しのハードルを下げる

インテリジェンスのアルバイト求人情報サイト「an」に掲載する10万件以上の求人を探せるほか、今後は独自の求人情報も掲載する。LINEならではの機能としては、求人情報をLINEの友人と共有したり、LINEバイト内の検索履歴に応じて、オススメの求人情報をプッシュ通知で受け取ることができる。

今後は、求職者と求人店舗・企業が「LINE@」で直接コミュニケーションを取れるようにして、メールや電話でのやりとりよりも、より気軽にバイトを探せるようにする。モバイル決済サービス「LINE Pay」を通じて、採用決定者に「お祝い金」を支払ったり、給与を振り込むことも視野に入れている。

求職者が登録する情報に基づき、求人店舗・企業がスカウトする機能も投入する。アルバイトでスカウトとはあまり想像できないが、「どんな情報をもとにスカウトするかは今後詰めていく」(AUBE代表取締役社長の上土達哉氏)。スカウト機能というと転職サービスが想像されるが、現時点で「LINE転職」をリリースする予定はないという。

LINEの集客力でスマホバイト市場のシェア拡大へ

「LIFE」をテーマに掲げ、生活に密着したサービスを提供するLINEにとって、インテリジェンスのアルバイト情報はコンテンツ拡大につながる。LINE執行役員の舛田淳氏は「若年層にとってアルバイト探しはライフイベント。ユーザーに寄り添うサービスを提供できる」と、求人市場参入の狙いを語る。

一方、スマホのアルバイト求人市場のシェア拡大を目指すインテリジェンスにとっても、LINEは「渡りに船」。anの調査によれば、アルバイト応募者のうち70%がスマホ経由。国内5800万人のユーザー基盤を持ち、特に10~20代の若年層ユーザーのアクティブ率が90%を超える(an調べ)集客力を生かすことで、アルバイト求人市場で先行するリクルートを追撃する構えだ。

具体的な集客方法としては、公式アカウントでLINEバイトを宣伝したり、スタンプや着せ替えの購入に利用できる「LINEフリーコイン」を付与することで、LINEバイトへの誘導を図るという。

AUBEの企画を担当するLINEの大野渉氏は、「紙やPCからアプリへの移行に苦労しているアルバイト求人サービスは多い。その中でうまくやっているのは、SEOに強い(ディップの)バイトル。営業部隊はリクルートが強い」と言うが、LINEバイトでスマホバイト市場の地図を塗り替えるチャンスと見ている。


LINE、決済サービスを提供するウェブペイを買収–LINE Payの強化図る

LINEは2月10日、モバイル送金・決済サービス「LINE Pay」の事業加速を目的として、子会社のLINE Payを通じてウェブペイ・ホールディングス (ウェブペイ)を買収することに合意したと発表した。

ウェブペイは、クレジットカード決済サービス「WebPay」を提供するスタートアップで、2013年10月に創業した。同社が提供するAPIをEC サイトやウェブサービス、モバイルアプリ向けに組み込むことで、数時間でカード決済の導入が可能。利用の審査期間は最短3営業日となっており、カード情報を加盟店側で処理・伝送・保存しない安全な決済システムを特長としている。

ウェブペイのブログでは、今回の買収について「急激な変革が進む決済業界において、次世代のグローバル・スタンダードとなるべく、当社のこれまで培ってきた決済に関する技術と、LINEの持つ巨大なプラットフォーム基盤およびスマートフォン向けアプリ運営のノウハウを統合することで、価値の高い決済サービスの実現を目指すため」としている。

また、WebPayの加盟店は引き続きサービスの利用が可能で、新規受付も継続する方針。今後はウェブペイの決済システム技術およびノウハウを活かし、LINE Payのさらなる機能拡充・利便性向上・事業拡大を推進するとしている。


LINEが50億円規模の投資ファンド設立–O2O、EC、決済、メディア、エンタメを対象に

LINEは2月9日、投資ファンド「LINE Life Global Gateway」の設立を決定したと発表した。同ファンドではO2O、EC、決済、メディア、エンターテイメント領域のサービスを展開する事業者を対象に投資する予定。これによってLINE プラットフォーム事業のさらなる拡大を目指すとしている。

ファンドの運用期間は2015年2月4日から10年間。約50億円の規模で投資を実行する予定。ファンドに出資するのは LINEおよびLINE Ventures。ファンドはLINE Venturesが運用する。同社の代表取締役には舛田淳氏が就任している。

2014年10月に開催した「LINE CONFERENCE TOKYO 2014」では、「LIFE」をテーマに、より生活に密接したプラットフォームを目指すという内容を発表していたLINE。すでに決済サービスの「LINE PAY」やタクシー配車サービスの「LINE TAXI」、飲食デリバリーの「LINE WOW」といったサービスを展開している。LINE Life Global Gatewayの設立は、こういった取り組みを加速・強化するものだという。

冒頭で触れたとおり対象とするのはO2O、EC、決済、メディア、エンターテイメント領域のサービスを展開する事業者。コミュニケーションサービス「LINE」との連携、LINEを核した周辺サービスの拡充を図っていくという。


LINE、売上が前年比2倍に

LINEの売り上げは1年間で2倍に増え、月間アクティブユーザー数はわずかに伸びている。1月29日に発表された2014年通期業績によれば、売上は863億円に上り、前年の404億円から114%増。12月末時点で月間アクティブユーザー数(MAU)は1億8100万人に上り、9月末時点の約1億7000万人から微増した。LINEがトップシェアを占める日本、タイ、台湾の3カ国のMAUは9200万人だった(日本だけのMAUは非公表)。

基幹事業である「LINE事業」の業績を見ると売上高は774億円で、前年の343億円から126%成長。LINE事業の内訳としては、前年と同様にゲーム課金が全体の60%を占めていて、以下はスタンプ課金が15%、その他(広告関連事業)が25%だった。「売上が倍増した特定の要因はなく、各事業が順調に成長している」とLINE広報部は話している。

2014年Q4以降は日本、タイ、台湾の主要3カ国に加えて、トップシェアを狙える位置にあるというインドネシア、フィリピンなどの東南アジア地域、メキシコやコロンビアなど南米地域、市場開拓を試みているアメリカなどを「優先度の高い市場」として積極的に投資していくそうだ。


LINEからタクシーが呼べるようになった、黒船Uberを追い払うか

日本上陸時に「黒船」とも言われたUberに強力な対抗馬が現れた。LINEとタクシー大手の日本交通が提携し、1月6日に東京限定でタクシー配車サービス「LINE TAXI」を開始した。サービスの仕組みはUberとほぼ変わらないが、大きな違いはLINE TAXIが外部アプリをインストールせずに使えること。利用するにはLINE Payでのクレジットカード情報の登録が必須だが、カード情報を登録するのはUberも同じ。わざわざ別のアプリを探す手間が省けるのは、利用のハードルが下がりそうだ。

LINE TAXIは、LINEアプリ上からGPS情報もしくは手入力で乗車位置を指定すればタクシーを呼び出せる。配車までの待ち時間はLINE TAXIの地図上に表示される。支払いはLINEの決済サービス「LINE Pay」で事前に登録したクレジットカードで自動精算されるため、降車時に現金の決済が不要となっている。

東京限定のサービスでは、日本交通が手がける全国タクシー配車アプリを導入している都内3340台のタクシーが配車対象。まずは東京23区内、三鷹市、武蔵野市でスタートし、近日中に全国展開する予定だ。全国展開時には、全国タクシー配車アプリを採用する全国約2万3000台のタクシーを呼び出せるようになる。

日本交通の全国タクシー配車アプリは2011年12月に公開され、2014年12月時点のダウンロード数は150万件。アプリ経由の配車台数は200万台、売り上げは50億円を突破している。日本交通は、LINE TAXIを通じて自社および提携先が保有するタクシーの利用拡大につながるのがメリットと言えそうだ。LINEは、日本交通からLINE Payの決済手数料(料率非開示)を徴収する。

世界のタクシー業界で旋風を巻き起こしているUberだが、国内のサービス圏はいまだ都内のみにとどまっている。日本においては、国内5400万ユーザーを抱えるLINEの配車サービス参入が脅威になるかもしれない。


日本のLineがMicrosoftからMixRadioを買収―世界で音楽ストリーミングに乗り出す

先月、われわれはMicrosoftがMixRadioをスピンオフさせようと考えていると報じた。結局、この音楽サービスは日本のメッセージ・サービス、Lineが買収することが発表された。契約の内容は明らかにされていない。

5億人の登録ユーザー、1億7000万人の月間アクティブ・ユーザーを抱えるLineは、先週、音楽ストリーミング分野へ進出する計画だと発表した。Musicallyの記事によれば、LineはAvex DigitalとSony Music Entertainmentと提携して新しいサービスを開始する。このサービスとMixRadioは別個の事業として推進されるようだ。前者は日本をターゲットとし、後者はそれ以外の海外市場をターゲットすることになるらしい。

MixRadioは「31カ国で数百万のWindows Phoneユーザー」がいると主張しているが、まだiOS版、Android版のサービスは提供していない。Lineにとってはこの既存のサービスを買収することによって、各国市場で音楽配信のための著作権交渉を省け、時間と資金を大幅に節約できるメリットがある。

今回の動きはLineが単なるチャット・アプリを超えて、総合的なモバイル・エンタテインメント・サービスになろうとしていることを示すもうひとつの証拠だ。Lineはすでにゲームやセレブ、ブランドのフォロー、チケットのオンライン購入などのサービスを提供しており、2日前には独自の支払いサービスもスタートさせている。また日本では、タクシーの予約や料理の宅配も計画している。

Lineの最大の市場は日本、台湾、タイで、これら3国がアクティブ・ユーザーの半分以上を占めている。しかしLineはさらに国際展開の加速を図っており、スペイン、メキシコなどラテンアメリカの一部で勢いを得ているとしている。これにMixRadioのユーザー・ベースが加わればそうした市場で注目を集め、知名度を上げるのに役立つだろう。

逆に、Lineによる買収はMixRadioにとっても朗報だ。正確な数字は公表されていながMixRadioがユーザー数でSpotify、Beats、Pandora、Rdioに遅れを取っているのは間違いない。Microsoftを離れてLineのような巨大サービスの傘下に入ることはリーチの拡大と同時にAndroid版、iOS版の出だしを大きく助けることだろう。

またこの買収はアジアのトップ・テクノロジー企業が世界進出に賭ける意気込みを改めて実感させるものとなった。以前にもLineは買収を行っているが、アジア圏以外での大型買収としては最初のものだ。中国のWeChatや韓国のKakao Talkもマルチメディア化してアジア以外の市場への進出狙っている。

[原文へ]

(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+


LINE Payで「LINEカツアゲ」が横行する?

12月16日、ついにモバイル決済サービス「LINE Pay」がスタートした。詳しい機能や気になるセキュリティに関する話は紹介済みだが、一部では「LINEカツアゲ」が懸念されている。気軽に個人間決済ができるようになったことで、「お前飛べよ」「いや、持ってないですよ」「おい、小銭の音したぞ」みたいなやりとりをせずに、「スマート」にカツアゲが行われるんじゃないかっていう心配だ。

この点についてLINE執行役員の舛田淳氏に聞いてみたところ、次のような答えが返ってきた。「カツアゲ自体は犯罪行為なので、警察に届けていただくべき。LINE Payを使ったカツアゲが起きたとしてもLINEにログが残っているので、リアルなカツアゲよりも足が付く。警察に一網打尽にされるでしょう」。

LINEカツアゲの被害にあった場合は警察に届け出よう。


モバイル決済サービス「LINE Pay」が始動–手数料0円で個人間送金や割り勘可能に

LINEの決済サービス「LINE Pay」が12月16日、スタートした。キャリアやOSを問わず、iPhone、Android版のLINEアプリを通じて友だちへの個人間送金や割り勘ができるほか、提携サイトでの決済が可能。ECサイトの決済はまず、LINEの有料コンテンツが買える「LINE ウェブストア」に対応する。決済の手数料は月額100万円未満まで無料(100万円以上は3.45%)、トランザクションフィーも無料。「業界最安値」の手数料を打ち出し、近く外部のECサイト(加盟店)を開拓していく。

相手の口座情報不要で送金できる

利用するにはまず、LINE上でLINE Pay専用のアカウントを登録する。その後、銀行口座振替やコンビニ店頭、Pay-easy(ペイジー)経由で最大10万円まで事前チャージ(手数料無料)したり、クレジットカード登録することで、送金や決済が利用できる。銀行口座振替は、みずほ銀行と三井住友銀行のネット口座振替と連携。送金・決済やチャージ、口座振替の際には、子会社のLINE Payと各機関の間で処理が行う。

主な機能は「送金」と「決済」の2つだ。

送金はLINEでつながっていれば、相手の銀行口座を知らなくても、メッセージやスタンプを添えてお金を送金できる。LINE Pay上から、送金する相手を選択し、支払金額やメッセージを入力すれば、相手のLINE Pay口座に支払金額が入金される。

特定の相手に対してLINEのトークを通じて支払い要請をする「送金依頼」機能、合計の支払額とLINEの友達の中から参加メンバーを選ぶだけで、均等な金額を各メンバーに請求できる「割り勘」機能も搭載する。

送金、送金依頼、割り勘の各機能は、LINE Pay未登録の友だちにも送信できるが、7日以内に登録・送金処理が行われない場合、送金は発信者への返金、送金依頼と割り勘はメッセージが再送信される。送金手数料は無料となっている。

出金手数料は216円

LINE Payでチャージ・送金されたお金は、日本全国の金融機関の口座から引き出せる。LINE Payでは送金自体の手数料は無料だが、出金するには200円(税別)の手数料がかかる。出金機能は、運転免許証や健康保険証を撮影してアップロードして本人確認を済ませたユーザーだけが利用できる。

LINE執行役員の舛田淳氏によれば、LINE Payはソフトローンチという位置付け。まずは、気軽に個人間送金を実現するツールとして提示したと語る。

「グローバルではモバイル送金サービスが進んでいるが、日本で個人間送金というと現金書留か振込みくらい。現金書留は使い方がわからない人もいるし、現金振込みは煩雑な手続きが必要で手数料も発生する。LINE PayはLINEのトークを通じて、24時間いつでも使える個人間送金を提案したかった。友だちの割り勘もLINEらしい機能。」

国内最安値の手数料で「LINE経済圏」拡大か

決済は、提携するECサイトやWebサービス、アプリの支払いを、LINEアプリ上から行える機能。まずはLINE ウェブストアでの決済に対応し、近く公開を予定しているデリバリーサービス「LINE WOW」やタクシー配車サービス「LINE TAXI」といったLINE周辺サービスにも導入する。今後は、LINEのIDとパスワードで商品の支払いができる加盟店を開拓する。

加盟店は、購入者に対して個人情報やクレジットカード情報の登録を求める必要がなくなり、買い物途中の離脱防止や成約率の向上が見込めるのがメリットだ。「顧客の決済情報」をLINEに押さえられることになるが、セキュリティなどのシステム投資に予算をかけずに、LINEの国内5400万ユーザーを潜在顧客にできるのは魅力かもしれない。

加盟店開拓の武器となるのは、「業界最安値」の手数料。決済手数料は月額100万円未満であれば無料、100万円を超えた分は物販であれば3.45%、デジタルコンテンツであれば5.5%、トランザクションフィーは無料となっている。手数料は2年間無料とし、その後も国内主要決済サービスより割安の3.45%に設定する予定だ。

加盟店の獲得は「LINE経済圏」を拡大することにもつながりそうだが、舛田氏は否定する。「LINE経済圏というより、もっと緩いイメージ。決済システムを提供することで、加盟店はLINEの周辺で簡単にビジネスできるようになる」。とはいえ、外部のECサイトからの手数料収入が、LINEの大きな収益源の一つとなることは間違いなさそうだ。

LINE執行役員の舛田淳氏

ところでセキュリティは大丈夫?

LINEはIDが乗っ取られ、プリペイドカードの購入を促す詐欺が相次いでいたことから、10月のLINE Pay発表時にはセキュリティを懸念する声が多かったのは事実。「LINE乗っ取り詐欺の効率が向上するのでは」と不安視する向きもあるが、実際のところはどうなのか?

LINEの乗っ取りについて舛田氏は、「9月22日にPINコードの設定を義務化したことで、10月12日以降は警察庁やLINEへの被害報告はない」と説明する。LINE Pay自体のセキュリティ確保や不正利用防止については、以下の対策をしているという。

・LINEと異なる、7桁のLINE Pay専用パスワードを登録する
・PCサイトでの決済時に、LINEアカウントを登録している手元のスマートフォンと連携して認証する
・金銭が移動する機能の利用時や、別端末でのLINE Pay初回ログイン時に、登録した専用パスワードを入力する
・Apple Touch IDによる指紋認証でパスワード照会(iPhoneのみ)する
・送金依頼の回数や金額などの諸条件で、不正な動きをするアカウントをモニタリングする
・ユーザーの本人認証の有無で利用できる機能を制限する(下図参照)

上記にあるように、金銭が移動する機能の利用時や、別端末でのLINE Pay初回ログイン時には、登録済みの専用パスワード入力が必須となるため、万が一、LINEのアカウントが乗っ取られた場合でも、LINE Payのほとんどの機能は利用できないと、舛田氏は語る。「不正利用で考えられるケースとしては、スマホを盗まれて、LINEとLINE Payのパスワードも知っている場合くらい」。

圧倒的な勝者不在のID連携決済

自社IDを使って外部のECサイトで支払いができるサービスとしては、国内では楽天の「楽天ID決済」やヤフーの「Yahoo!ウォレット」、リクルートの「かんたん支払い」、PayPal、携帯キャリアなどがある。米国ではAmazonが「Login and Pay with Amazon」を提供しているが、日本ではまだサービスインしていない。国内では圧倒的な勝者が不在のID連携決済だが、LINEはOSや携帯キャリアを問わずに使える利便性、国内屈指のユーザー基盤、手数料の安さによって、一気に加盟店を獲得する可能性もありそうだ。

米国では9月、実店舗での支払いに使える「Apple Pay」がスタートして注目が集まっている。詳細は明かされなかったが、LINE Payでも同様に、将来的にはオンラインとオフラインの垣根を超えて利用できるようにしたいという。