TikTokが密かにディープフェイク機能を開発か

TikTok(ティクトック)の開発元であるByteDance(バイトダンス)は、他の誰かが出ている動画に顔を挿入できる技術を開発した。TechCrunchは、ByteDanceが未発表だが本物そっくりのディープフェイクを作る機能を開発したとの情報を入手した。そのコードは「Face Swap」(顔交換)という。TikTokと中国の姉妹アプリであるDouyin(ドウイン)のいずれでも、ユーザーは顔をさまざまな角度から撮り、共有したい動画に自分の顔を挿入できる。

ByteDanceの新しい顔交換機能では、ユーザーは自身をスキャンして動画を選ぶことで、クリップ内の誰かの顔に自分の顔を重ねることができる

ディープフェイク機能がDouyinとTikTokでリリースされた場合、偽情報を広めるためではなく、コントロールされた環境で、ユーザーが顔交換技術そのものや動画を純粋に楽しむために使われる可能性はある。テクノロジーに対する注意を喚起し、オンラインにあるものをそのまま信じるべきではないということを多くの人が理解するようになるかもしれない。だが、ByteDanceが機密性の高い生体認証データで何をするのか、懸念が高まることも考えられる。iPhoneで設定するFace IDが何に使われるのかという懸念と同じだ。

他のテック企業が最近、ディープフェイクの下位バージョンを商業化しようとしている。Morphin(モーフィン)のアプリでは、GIF画像上の俳優の顔にコンピューターが生成した顔データを上から重ねることができる。Snapchat(スナップチャット)は、フレームやカメラロールの中の2人の顔を入れ替える顔交換オプションを長年にわたって提供している。Face Swap Liveのようなスタンドアロンアプリもある。TechCrunchは2019年12月、Snapchatの新しいCameoについて、Snapchatが提供する動画クリップに本物の自撮り写真を挿入できるが、挿入しても混乱を招くほど現実的には見えないと報告した。

最も問題なのは、中国のディープフェイクアプリであるZaoだ。これは、人工知能を使用して、ある人の顔を他人の動きにあわせてその体に溶け込ませ、表情を同期させる。スキャンされたユーザーの顔が悪用される可能性があるため、プライバシーとセキュリティの懸念がある。Zaoは9月に急速に広まった。中国のWeChatは以前、Zaoを「セキュリティリスク」のためブロックしていた。なお、ここではセキュリティリスクの例として「Zao」を取り上げたが、ByteDanceとZaoが提携しているわけではない。

だがByteDanceは、15億回のダウンロードを超えるTikTokとDouyinという世界で最も人気のある2つのアプリ上で本物そっくりのディープフェイクを提供できそうだ。

中国のiOS App StoreのZao

TikTokとDouyinの中に密かに存在する

TechCrunchは、イスラエルの市場調査アプリのスタートアップであるWatchful.aiからこのニュースに関する手がかりを入手した。同社は、TikTokおよびDouyinのAndroidアプリの最新バージョンの中にディープフェイク機能のコードを発見した。Watchful.aiは、Douyinのコードをアクティブにして、機能のスクリーンショットを生成することができたが、現在は公開していない。

まず、ユーザーはDouyinで顔をスキャンする。これはIDチェックとしても機能する。つまり、自分自身の顔だけを送信していることを確認し、同意を得ていない他人の既存または新規の顔写真を使用したディープフェイクの作成を防ぐためだ。Douyinは、焦点を合わせ照明を当てる際に、瞬き、うなずき、口を開閉するよう求める。こうすることで、ユーザーが生きている人間であることを確認する。その上で、編集可能な顔のスキャンを生成すると、さまざまな感情表現に応用したり、異なる情景に埋め込めるようになる。

次に、ByteDanceが使用権を持つと主張する動画から1つ選択すると、クリップの人物の顔が自分のものに置き換えられ、ディープフェイク動画となり、共有・ダウンロードが可能になる。動画に入れる透かしによって、コンテンツが本物ではないと判断できると同社は主張する。Watchfulがこの機能によって作成した動画への機密アクセスを筆者は受け取った。顔の交換は非常にスムーズにできる。動き、表情、色合いのすべてに非常に説得力がある。

Watchfulは、ディープフェイク機能のプライバシーと使用に関するTikTokとDouyinの利用規約の未公開更新版も発見した。TikTokの米国版Androidアプリ内にある英文が、機能と使用条件の一部を説明している:

この機能には、顔のパターンが使用されます。詳細については、Drama Faceの利用規約とプライバシーポリシーをお読みください。続行する前に、利用規約とプライバシーポリシーを読んで同意してください。

1.この機能をすべての人にとって安全なものにするため、ID検証が必要です。ID検証により、ユーザー自身の顔でこの機能を使用していることを確認します。このため、アップロードした写真は使用できません。

2.顔のパターンは、投稿する前に自分だけに表示される顔変更動画を生成するためにのみ使用されます。個人情報保護のため、後でこの機能を使用する場合は、本人確認が必要です。

3.この機能は、未成年者向けのインターネット個人情報保護規則に準拠しています。未成年のユーザーはこの機能にアクセスできません。

4. Douyinが提供するこの機能に関連するすべての動画素材は、著作権を取得しています。

10月18日に中国東部の浙江省杭州で開催された2019年 Smart ExpoのTiktokのブース(クレジット: Costfoto / Barcroft Media via Getty Images)

Douyin内の中国語でも、使用条件とプライバシーに関して、より長いポリシーが見つかった。主要箇所の翻訳は以下のとおり。

  • この機能が提供する「顔を変える」効果は、写真に基づいて写真を重ね合わせることによって生成される架空の画像です。元の作品が変更され、この機能を使用して生成された動画が実際の動画ではないことを示すために、この機能を使用して生成された動画に透かしを入れます。 透かしを消さないでください。
  • 前述の検出プロセス中に収集された情報及びあなたの写真を使用して顔を変える動画のために生成する情報は、検出及び顔の変更の際の照合にのみ使用されます。他の目的には使用されません。また、照合された情報はすぐに削除され、顔の特徴は保存されません。
  •  この機能を使用する場合、当社が提供する素材のみを使用できます。素材を自分でアップロードすることはできません。当社が提供する素材は、著作権者により承認されています。
  • 「未成年のインターネット個人情報保護規則」および関連する法律と規制の条項に従い、子供や若者の個人情報を保護するため、この機能は未成年者の使用を制限しています。

TechCrunchはTikTokとDouyinに対し、ディープフェイク機能のリリース時期、生体認証情報のプライバシー保護方法、年齢制限について問い合わせた。TikTokは質問への回答を控えたが、広報担当者は「チームで確認した結果、TikTokの機能にはないこと、また今後導入するつもりはないことを確認した。あなたが探しているのはDouyinに予定されているものだと思う。あなたのメールにはDouyinのスクリーンショットとDouyinに言及するプライバシーポリシーが含まれている。TikTokではDouyinを使用していない」と述べた。TikTokはその後TechCrunchに「アクティブではないコードフラグメントを削除して混乱を排除しているところだ」と述べた。これは、TikTokで顔交換コードが見つかったことを暗に確認したものだといえる。

Douyinの広報担当者はTechCrunchに「Douyinは事業を展開する管轄区域、つまり中国の法律および規制に従っている」と答えた。TechCrunchはTikTokのアプリに顔交換の利用規約と機能が含まれていることを確認したものの、Douyinは否定した。

これは疑わしいし、ディープフェイク機能のコードと英語の利用規約が、アプリがすでにアクティブ化され利用規約が見つかったDouyinだけでなく、TikTokの中で見つかった理由を説明していない。ワシントン・ポストは情報筋の話として、同社が中国の要請で政治的・性的コンテンツを検閲していると報道したが、TikTokの米国法人は中国政府からの検閲要求に従っていることを否定した。

ディープフェイクの一般化

ディープフェイクの顔交換機能は、中国や米国では公式にリリースされない可能性はあり得る。だが、リリースされていなくてもすでに機能は完全で、偽情報や同意のないポルノで批判されているにもかかわらず論争の的となっている技術を採用するByteDanceの意欲を示している。少なくとも同社は、未成年者によるこの機能の使用を制限し、自分自身の顔を入れ替えることのみを許可し、ユーザーが自分のソース動画をアップロードできないようにはしている。従って危険な偽情報の動画の作成、例えば下院議長のNancy Pelosi(ナンシー・ペロシ)氏が酔っ払ったように見せる動画や、トランプ大統領のような話し方をする人のクリップを作成することは避けられる。

Watchful.aiの共同創業者でCEOのItay Kahana(イテイ・カハナ)氏はTechCrunchに「ソーシャルネットワーキングアプリが、18歳以上のユーザーのみに新しい高度な機能を制限することは滅多にない」と語った。「ディープフェイクアプリは表面的には楽しく見えるかもしれないが、トロイの木馬になったり、知的財産権と個人データ、特にTikTokの圧倒的ヘビーユーザーである未成年者の個人データを危険にさらしたりすることは許されない」と述べた。

TikTokはすでに米国海軍では禁止されている。ByteDanceによるMusical.lyの買収とTikTokとの合併は、対米外国投資委員会が調査中だ。ディープフェイクの恐怖は、さらに厳しい精査を招く可能性がある。

だが適切な安全対策を講じれば、顔を変える技術は作り手中心のコンテンツ新時代を招くかもしれない。これは、2020年に成長する可能性のあるパーソナライズされたメディアの新しいトレンドの一部にすぎない。ソーシャルメディアは、自撮り写真からBitmoji、Animoji、Cameoへと進化し、現在ではディープフェイクが消費者の手に入りつつある。我々の注意をそらす無数のアプリ、動画、通知がある中で、スターになれるというのは注意を引く最良の方法かもしれない。

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(翻訳・Mizoguchi

TikTokの第4四半期売上高が前年同期比300%以上増加した模様

新しくリリースされたサードパーティのデータによると、TikTok(ティクトク)には小躍りする理由がある。

モバイルアプリの売上高と使用状況を追跡するスタートアップApptopiaによると、誰もが知るショートビデオアプリであるTikTokのアプリ内購入による売上高が前年同期比310%増となった(ボストン拠点のスタートアップであるApptopiaは、これまでに820万ドル(約8億9000万円)を調達し、AppAnnieと競合している)。

TikTokの売上高増加は、パーセンテージで見ると印象的だ。ApptopiaのAdam Blacker(アダム・ブラッカー)氏が公開したチャートによると、人気のソーシャルアプリのアプリ内購入関連の四半期売上高は5000万ドル(約54億円)と相当の規模に達した。前年同期比でも急速な成長だが、第3四半期のアプリ内購入による売上高約2000万ドル(約22億円)からの増加幅のほうに目を奪われるもしれない。

1つの四半期で5000万ドル(約54億円)なら、年間売上高は数百万ドル(数百億円)も可能だし、株式公開には十分だ。おそらく親会社であるByteDanceを手厚く支援することもできる。

【更新】モバイルアプリ情報ビジネスの別のプレーヤー、SensorTowerTechCrunchに、上記データが「App StoreGoogle Playを足した市場合計で、第4四半期のTikTokのアプリ内総費用は中国を除き約8700万ドル(約94億円)、純費用は6200万ドル(約67億円)」であることを示していると語った。さらに、SensorTowerRandy Nelson(ランディ・ネルソン)氏はメールで、同社の計算によるとTikTokの「年間成長率見込みは521%に近い」と述べた。すごい。

中国に本拠を置くテック企業で、バリュエーションが700億ドル(約7兆6000億円)を超えるByteDance(バイトダンス)は、TikTokのほかにソーシャルメディアサービスのToutiaoで知られる。TikTokは、ByteDanceが2017年後半に買収したMusical.lyと、独自のアプリケーションであるDouyinの融合により生まれた。TikTokは疑う余地のない成功を世界中で収めた。

TikTokは米国市場でも大きな成功を収めたが、親会社が中国政府とつながっている可能性があるとの懸念から、米国政府の複数の組織がその使用を禁止した

トランプ政権の貿易に対する姿勢に一部起因して、米国と中国の間の緊張は近年高まっており、両国間に密接な結びつきがあるテクノロジー産業にも波及している。

公正かどうかはともかく、Huawei(ファーウェイ)とByteDanceだけが飛び交う砲火の中で捕らえられた中国企業ではないが、現在、大西洋をまたぐ敵意によって制約を受けている最も知られた会社だ。

少なくとも投資家にとっては、ByteDanceは非常に価値ある企業だ。  TechCrunch2018年に報告したように、同社は800億ドル(86000億円)近くの価値がある。2020年のIPO候補とみられている。おそらく、TikTokのアプリ内購入による売上高の爆発的な成長はSECへの申請にあたって有利に働く。

画像クレジット:Costfoto / Barcroft Media / Getty Images

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(翻訳:Mizoguchi)

米海軍でTikTokが使用禁止に、国家安全保障上の懸念から

TikTokは、インターネットの歴史の中でも、最も急速に成長しているソーシャルネットワークかもしれない。しかし急速に大きくなっているのは、むしろセキュリティ上の脅威であり、米国の対中国強硬派による攻撃の的となってきた。

その最新の展開は、米国海軍が発行した通知から知ることができる。その内容は、ロイターサウスチャイナ・モーニング・ポストが報じた。それによれば、TikTokは、もはや米軍人のデバイスにインストールすることは許されず、米軍のイントラネットから排除される可能性もあるという。

これは、この非常に人気のあるアプリが直面している災難の直近の一例に過ぎない。最近、ミズーリ州選出のJosh Hawley(ジョシュ・ホーリー)上院議員が率いる議会は、中国などの外国政府とデータを共有する可能性のある他のハイテク企業とともに、TikTokと、Sequoiaが支援する親会社ByteDanceに対して、国家安全保障に関する査察を要求した。機密通信の漏洩に対する懸念により、米国政府は最近、同性愛者のソーシャルネットワークアプリGrindrを、買収先の中国企業、Beijing Kunlunから買い戻すことも要求した。

太平洋を挟んだ両国の関係の悪化によって、両国間でIT企業をうまく運営することは、ますます困難になっている。私が最近TechCrunch上で議論したように、Shutterstockは、同社のストックフォトプラットフォーム上で、中国政府が難癖をつけそうな写真を検索することを、意図的に難しいものにしてきた。重要な収入源を失わないようにするための方策だ。

関連記事:ストックフォトShutterstockの中国検閲問題はハイテク企業が対中関係を見直すべき契機

同様の試練は、Googleと、同社の中国に特化した検索エンジン、Poject Dragonflyにも見ることができる。もちろんNBAの問題もしかりだ。

ここで興味深いのは、両国の企業が、それぞれ両国政府の政策に苦労していること。ByteDanceのような中国企業は、標的にされることが多くなり、米国市場から追い出されようとしている。そして米国企業も、中国で足場を築くのに長いこと苦労してきた。以前に比べれば平等な競争の場になってきてはいるかもしれないが、そうであるべきほど自由な市場にはなっていない。

中国と米国との貿易摩擦が続く中、両国の政治家が設定した境界線内にうまく収まることのできない企業には、ますます損害が降り掛かっている。将来、このような分断を埋めることができるIT企業が登場するかどうかは、残念ながら、今のところ不透明だ。

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(翻訳:Fumihiko Shibata)

TikTokはウイグル人虐待に関する動画を削除したことを「人的ミスだった」と謝罪

TikTokは、新疆自治区でのウイグル人とイスラム教グループの虐待にことをみんなに調べて欲しいと投稿した十代の女性のアカウントを一時的に停止した一件を、公式に謝罪した。TikTokは「出来事の時系列に関する説明」をすると共に、そのバイラルな動画が11月23日に投稿されてから4日間、「モデレーターの人的ミス」のために削除されていたと話した。それはTikTokプラットフォームのコミュニティー・ガイドラインには抵触しないという( @getmefamouspartthreeのアカウトと問題の動画は今は復活している)。

だが、ツイッターで「ただ広く知ってもらいたいイスラム教徒」とプロフィールを書いている本人のFeroza Aziz(フェロザ・アジズ)氏は、TikTokの声明を拒絶し、こうツイートした。「私が以前に削除されたアカウントで投稿して削除された、関係のない前の風刺的な動画のために排除されたなんて信じられる? ウイグル人に関する3部構成の動画を投稿した直後に? うそよ」

TikTokが削除した動画で、アジズ氏はまず、見ている人たちにピューラーを使うよう求め、次にこう話している。「今手に持ってるその携帯を使って、中国で何が起きているかを検索してください。彼らが強制収容所を建設し、そこに罪のないイスラム教徒を放り込み、家族を引き裂き、誘拐し、殺し、レイプし、豚肉を食べるよう強制し、飲酒を強制し、改宗を強要しています。これは新しいホロコーストです。でも、まったく問題にされていない。ぜひ、このことを知ってください。新疆について知ったことを、今すぐ拡散してください」

TikTokはByteDance(バイトダンス)が所有する企業であり、問題の動画の削除は、北京に本社を置くバイトダンスが中国共産党の圧力に屈したためだとの説を呼び起こした(バイトダンスが提供するTikTokの中国版ドウインは、他の中国のプラットフォーム同様に法的検閲の対象になっている)。

中国に暮らすイスラム教少数民族への中国政府の指示による虐待は数年前から行われていて、およそ100万人の人々が強制収容所に拘束されていると見られているが、この事態が注目を集めたのは今月になってからだ。それは、2回にわたって漏洩した中国政府の重大な機密情報をニューヨーク・タイムズ国際調査報道ジャーナリスト連合が報じ、元収容者、目撃者、研究者の報告を裏付けたことによる。

アジズ氏は、バズフィード・ニューズに対し、中国少数民族の迫害については2018年から話題にしていると話している。なぜなら「私自身がイスラム教徒で、いつも抑圧され、仲間が抑圧されるのを見てきて、ずっと人権に関心があったから」という。

TikTokが謝罪投稿を行う前にバズフィードに掲載された記事では、アジズ氏のアカウント停止は、彼女が以前にオサマ・ビン・ラーディンの画像を含む別の動画に関係しているとTikTokは主張していた。その動画は、有名人をもてはやすネット上のネタを揶揄するもので、アジズ氏はバズフィード・ニューズに「あれは、究極的には彼だよねというブラックジョーク。まともな人間なら、絶対にそんなことは言わないから」と話している。TikTokの広報担当者は、「いずれにせよ、テロ関連コンテンツに関する規約に反する」と言っている。

「その動画が風刺であることは私たちも認識できますが、その分野に関する規約は、現在非常に厳格化されています。その手のいかなるコンテンツも、特定され次第、コミュニティー・ガイドラインと利用規約に違反したとみなされ、アカウントと関連デバイスは永久追放されます」とTikTokの広報担当者はバズフィードに話している。さらに、お化粧のチュートリアル動画を投稿しているアジズ氏の2つめのアカウントの停止は、前に停止されたTikTokアカウントにリンクされた2406のデバイスのブロックの一環とのことだ。

今日(米国時間28日)のTikTokの謝罪を受けて、TikTok USの安全担当責任者Eric Tan(エリック・タン)は、このプラットフォームはコミュニティー・ガイドラインと人間のモデレーターを「第二防衛ライン」として支えるテクノロジーに依存していると書いている。

「このプロセスが完璧でないことは、私たちも時折認識しています。本日の@getmefamouspartthreeの動画のケースのように、人は間違いを犯すものです」と彼は続ける。「しかし、こうしたミスが発生したときは、私たちは迅速に対処し修正します。トレーニングや、同じミスを繰り返すリスクを減らすための改善を行い、私たちが犯した過ちに対して、完全に責任を追うことにしています」

だがアジズ氏は、ワシントンポストにこう話している。「TikTokは、すべての問題を隠そうとしています。私は決して譲りません」

TikTokは、ユーザーの個人情報の管理に関するアメリカ政府による調査を受けることになり、論争が巻き起こっている。ロイターは27日、今年の第三四半期内に製品事業開発とマーケティングおよび法務部門をドウインから分離する計画をTikTokが立てていると伝えた。

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(翻訳:金井哲夫)

TikTokがソーシャルコマースをテスト中

TikTokがソーシャルコマースに手を出し始めている。このショートビデオアプリは、一部のユーザーに対してプロフィールページにeコマースサイト(もしくは任意のサイト)へのリンクを許可し始めた。また視聴者たちへショッピングウェブサイトを簡単に送る機能の提供もクリエイターたちに対して始まった。

同社は、これらの2つの機能の展開は、ユーザーのアプリ体験を向上させるための通常の「実験」の一部であると述べている。ただし、この特定の実験は、収益性の高いインフルエンサーたちがTikTokを利用する方法を大幅に変える可能性がある。

ZHEJIANG, CHINA – OCTOBER 18 2019 Two us senators have sent a letter to the us national intelligence agency saying TikTok could pose a threat to us national security and should be investigated. Visitors visit the booth of douyin(Tiktok) at the 2019 smart expo in hangzhou, east China’s zhejiang province, Oct. 18, 2019.- PHOTOGRAPH BY Costfoto / Barcroft Media (Photo credit should read Costfoto / Barcroft Media via Getty Images)

TikTokを所有し、世界で最も評価額の高いスターアップのひとつであるByteDanceの広報担当者は「私たちは、ユーザーのみなさまのために、アプリ体験を向上させるための新しい方法を常に実験しています。最終的には、私たちは創造性を刺激し、喜びをもたらし、コミュニティに価値を付加する方法に焦点を当てているのです」と語っている。

これらの機能は、中国のインフルエンサーのためのスタートアップUplabの創業者であるファビアン・ベルン(Fabian Bern)氏によって、最初に発見されて共有された。木曜日に彼がツイートした動画の中で、ベルン氏は、クリエイターたちが視聴者たちにサードパーティのウェブサイトにアクセスできるようにすることが、初めて可能になったことを示した。

ビデオでは、TikTokがユーザーにプロフィールページにURLを追加することを許可していることも確認できる。Instagramは昔からこの機能を提供しており、多数のアカウントがさまざまな理由でそれを利用している。インフルエンサーは通常、ファンを商店へと誘導するものだが、一部のニュース出版社はこの機能を使って、たとえば人びとをニュース記事に誘導している。ただし、Instagramで現在かけられている一連の制限には、多くの要望が寄せられている

10億人以上のユーザーを抱えているTikTokが、これらの機能をこの先も提供し続けるなら、多くの業界人たちが「ソーシャルコマース」と呼ぶものに破壊的な変化が加わる可能性がある。最近のソーシャルメディア企業とメッセージングアプリは、コアサービスを通じて顧客を引き付け、ショッピング機能を提供している。

TikTokの最大の市場の1つである中国、東南アジア、インドなどの多くの市場では、ソーシャルコマースの人気が高まっており、Amazonなどの「従来型」eコマースプレイヤーたちに挑戦し始めている。

そして、大手企業たちはこの分野でチャンスをつかみ始めているのだ。市場を提供するFacebookは今年、インドのソーシャルコマーススタートアップであるMeeshoに資金提供を行った

MeeshoはWhatsAppを使って買い手と売り手をつないでいる。その他のソーシャルメディアプラットフォームも、商品を展示して販売したり、さまざまな物流会社と協力して注文を処理したりできるようになってきている。

「これはすごいことです!」とNaspersのグローバル決済会社PayUのインド部門で、ビジネス成長とマーケティングの責任者を務めるNameet Potnis(ナミート・ポトニス)氏が、TikTokの新機能について語った。

「TikTokがInstagramを圧倒しているインドで、これがどのように商取引を変革するかを楽しみにしています。インド人がオンラインでの購入と支払いに慣れるにしたがって、地元のインフルエンサーたちが影響を強めることでしょう」。

TikTokのこの実験は、ライバルのInstagramがパブリックビューから「いいね」を隠すテストを拡張し始めたタイミングで始まった。このInstagramの動きは、そのリーチする力を広告主にいいねの数で提示しているインフルエンサーたちに懸念を引き起こしている。

TikTokはインドで1億8000万人以上のユーザーと国内で数千人のインフルエンサーを集めており、先月にはインドの教育分野にも進出した

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(翻訳:sako)

アドビのPremiere RushからTikTokに直接投稿できる

米国時間11月4日、Adobe(アドビ)はCreative Cloudのビデオ製品のアップデートを多数発表した。ほとんどはプロ向け、あるいはプロではないにしてもYouTuber向けの製品だ。しかしPremiere Rushは、ビデオで楽しみたいすべての人のためのツールと位置付けられている。だから、短いクリップの共有プラットフォームとして人気のTikTokに、Premiere Rushからビデオを直接共有できるようになったと発表されたことは驚きではないだろう。TikTokに直接投稿できる他社製のアプリは、これが初めてだ。

Rushは2018年10月に提供が開始され、よく使われているビデオ公開サービスへの共有をサポートしていた。今回のTikTokとのパートナーシップにより、TikTokユーザーも自動ダッキング、トランジション、カラーフィルター、タイムラプス、スローモーションなど、Rushの簡単なビデオ編集機能を活用できるようになる。

アドビの機械学習により、ビデオプロデューサー、特にTikTokで好まれる縦長のビデオをふだん撮らない人々も、ボタンをクリックするだけでアスペクト比を変更できる。するとPremiere Rushは自動でショットのフレームを調整する。

アドビはこの日の発表で「世界各地のビデオクリエイターと対話を重ねるなかで私たちが最も頻繁に耳にした要望は、スピード、使いやすさ、そして投稿のしやすさだった。そこで人気のプラットフォームのTikTokでもビデオを共有できるようにした」と述べた。

Premiere Rushの新機能は、無料バージョンも含めCreative Cloudの全ユーザーにすでに公開されている。

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(翻訳:Kaori Koyama)

TikTokのByteDanceが2020年第1四半期の香港での株式上場を否定

ByteDance(バイトダンス)は、Financial Times紙による早ければ来年の第1四半期に香港で株式を公開する計画であるとの報道に反応した。「第1四半期に香港で上場する予定の噂には、まったく真実はない」とTikTokを運営する同社の広報担当者は述べた。

同紙の報道によると、2012年に設立され、ソフトバンクを含む投資筋からの支援を受けているByteDanceは、上場の準備に向けて法律事務所K&L Gatesと契約し、最高法務責任者と元米国担当者を直接雇用し、TikTokが米国のユーザーのデータを中国当局に引き渡すことを強制されるという「国家安全保障上のリスク」を招く可能性があるとする米議員の懸念に対処しているという。

ByteDanceがIPOに向けて準備しているという推測は、同社の評価額を世界で最も価値あるスタートアップとなる750億ドル(約8兆2000億円)〜780億ドル(約8兆5000億円)へと押し上げた、30億ドル(約3300億円)の資金調達ラウンドを完了した昨年から始まった。

ByteDanceのアプリには、中国版TikTokに相当するDouyin、ニュースアプリのToutiao、そして同紙によればIPOの準備に向けて販売が計画されていル米国市場向けニュースアグリゲーションアプリのTopBuzzも含まれている。

9月のReuters(ロイター)の報道によれば、ByteDanceが今年上半期に70億ドル(約7600億円)から84億ドル(約9100億円)の収益を上げ、6月に計上したとされている。

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(翻訳:塚本直樹 Twitter

TikTokは国家安全保障上の脅威?米国上院議員が情報機関に調査を要請

2人の米国上院議員が、動画共有アプリのTikTok(ティックトック)が「国家安全保障上のリスク」を引き起こす可能性があるか否かの評価を、米国政府の最上級情報機関に対して要請した。

A photo taken on December 14, 2018 in Paris shows the logo of the application TikTok. – TikTok, is a Chinese short-form video-sharing app, which has proved wildly popular this year. (Photo by JOEL SAGET / AFP) (Photo credit should read JOEL SAGET/AFP/Getty Images)

上院議員のCharles Schumer(チャールズ・シューマー)氏とTom Cotton(トム・コットン)氏による書簡の中で、議員たちは国家情報局のJoseph Maguire(ジョセフ・マグワイア)長官代行に、アプリのメーカーが、米国人のデータを中国当局に引き渡す可能性があるかないかを尋ねたのだ。

TikTokはこれまでに、およそ1億1000万回ダウンロードされており、ソーシャルメディアネットワーク上で共有可能な短く気軽なビデオを録画する機能が人気を博している。だが2人の議員は、TikTokは北京に本社を置く会社が所有しているため、位置データ、クッキー、メタデータなどの同社の所有するユーザーデータが、たとえ米国内のサーバーに保存されていたとしても、中国政府によって引き渡しを求められるのではないかと述べている。

シューマー氏とコットン氏は、TikTokの親会社であるByteDance(バイトダンス)が中国の法律を「現在も遵守するように強制されている」と警告している。

「セキュリティの専門家たちは、中国共産党によって搭載されている諜報活動を支援し協力を行うために中国企業たちを縛り付けている、中国の諜報機関、国家安全保障、そしてサイバーセキュリティ法の曖昧なパッチワークに対して懸念を表明している」、と米国時間10月23日に出された書簡で報告されている。「データやその他の活動に対する中国政府の要求を審査する、独立した司法機関がなければ、中国企業がその要求に同意しない場合に、上訴するための法的メカニズムが存在しないことになる」。

おなじ法的原則はどちらの側にも適用される。中国を含む一部の国では、米国政府を利する形でスパイ活動を強要される可能性があるという懸念から、米国企業は排除されるか、アクセスが制限されてきた。

米国政府の大規模な監視活動を明らかにしたエドワード・スノーデンによる暴露の余波で、多くの主要テック企業が、米国政府への協力のおそれから、中国政府の国家承認購買リストから皆排除されたのだ

上院議員たちはまた、このアプリが北京に対して「政治的に影響があるとみなされる」コンテンツを、検閲していることを懸念していると述べている。9月にはガーディアン紙が、アプリのモデレーターが、チベットの独立、天安門広場の虐殺、禁止された宗教団体である法輪功に関連するコンテンツを、積極的に検閲していることを明らかにしている。

また2016年の米国大統領選挙で見られたように、このアプリは外国から影響を及ぼすツールとして使用される可能性があるため、このアプリは「スパイ防止活動」に対する脅威をもたらす可能性があるとも述べている。

私たちの問合せに対して、国家情報局長官のスポークスマンはコメントを返さなかった。

TikTokは、書簡を「慎重にレビューしている」と述べている。「私たちTikTokは、TikTokが米国において信頼され責任ある企業市民であり続けることをまず改めて申し上げる以外に、現時点でこれ以上のコメントをするつもりはありません。もちろん議会や関連する法執行機関との協力は惜しみません」とTikTokの広報担当者Josh Gartner(ジョッシュ・ガートナー)氏は述べている。

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(翻訳:sako)

Snapchatの第3四半期は収入50%アップで躍進、株価はわずかに下落

一時困難が伝えられていたSnapchatのカムバックが続いている。 このほど発表された親会社、Snapの3四半期決算(pdf)の収入はアナリスト予想を大幅に上回ったが、株価はわずかにダウンした。

好調の原因は、今四半期のDAU(1日あたりアクティブユーザー)がプラス700万人となり、前年比13%増の2億1000万人に達したためだ。これにより売上は4億4600万ドルを記録、対前年比50%増となった。1株当たり0.04ドルの損失だ。ブルームバーグによればウォールストリートのアナリストの予想は、4億3790万ドルの収益、1株当たり0.05ドルの損失だったからこれを大きく上回る結果となった。

Snapは損失も削減され、収益性の改善が続いている。 純損失は、前四半期の2億5500万ドルから2億2700万ドルに改善された。赤字も2018年第3四半期に対して今期は9800万ドル減少した

CEOのEvan Spiegel(エヴァン・スピーゲル)氏は用意された声明で市場はSnapchatの株価をさらに高く評価すべきだとして「我々は急成長企業であり、営業力は強力であり、収益性への明確な道筋を持っている。将来に対するビジョンも明確で、長期的成長のための投資能力も有する」と述べた。

好調な四半期だったにもかかわらずSnapの株価は4%ダウンの14ドルの終値となった。時間外取引では4.6%ダウンの13.35ドル(現在は13.18ドル)で、上場時の17ドルを依然下回っている。しかし今年に入っての成長が目覚ましいために昨年12月の底値4.99ドルから大幅に回復している。

Snapchat DAU Q3 2019

黒字化がなかなか達成できない原因の一部は、ユーザーあたりの売上と比較してSnapの成長にかかる平均コストが高いためだ。ユーザー数はすべての地域で成長したが、700万人の新しいユーザーのうち500万人が米国以外からで、北米とヨーロッパでの増加は100万人に過ぎなかった。

リニューアルされたAndroidアプリの成長とユーザー保持率が予想を上回ったのはグッドニュースだった。インドではヒットした。しかしSnapchatは高解像度ビデオコンテンツにあれほど力を入れているにもかかわらず、米国以外の地域における平均収入はわずか1.01ドルしかない。同社は引き続きARPU(ユーザー1人当たりの売上)を成長させると同時に、米国以外での売上を伸ばしていく必要がある。

Snapchatの決算報告では以下のような点も目立った。

  • 2019年第3四半期の営業キャッシュフローは、対前年同期で5600万ドル改善し、7600万ドルの損失
  • フリーキャッシュフローは、対前年同期で7500万ドル改善し、今期は8400万ドルのプラスとなった
  • 手元現金および有価証券は23億ドルだった

Snapchat ARPU Q3 2019

スピーゲル氏が「今期、Snapchatのユーザーアクティビティが前年比で増加したが、これにはストーリーの投稿と閲覧の増加も含まれている」と述べたのは興味深い。Snapchatはこの2年間というものStoriesの成長について触れることがなかった。今年に入ってカムバックするまでSnapchatが縮小サイクルに落ち込んだのはInstagram Storiesなどのクローンによる激しい攻撃が大きかった。

StoriesはSnapchatの広告売上にとって非常に重要な部門なので、今後アナリストはさらに詳しいデータを知りたいと望むだろう。 Snapはアプリの利用回数について、2018年7月の1日25回から1日30回に増加した述べた。これをみればSnapchatのユーザーエンゲージメントは高く、写真などを連続送信する会話に強く好まれていることが推測できる。

Snapchatの他の主要広告分野の1つはDiscoverで、総視聴時間は対前年比で40%増加した。今四半期には、数少ないヒットでビューを稼ぐのではなく、100件以上のDiscoverチャンネルで1カ月あたり1000万人以上の視聴者を得た。InstagramのIGTVは失敗だったが、DiscoverはSnapchatのサービスを差別化する優れたプロダクトとなり、売上に貢献している。同社は今後もDiscoverの改善とプロモーションに力を入れていくべきだろう。

またInstagramは「親しい友達限定」のサービス、Threadでチャットに力を入れ始めた。Snapchatも「メッセージがすぐに消えるチャットサービス」を売り物にしていくだけでは差別化が難しくなるだろう。
3 TikTok Ad

TikTokのSnapchat広告はユーザーを奪おうとする試みか?

ライバルがSnapchatで広告を出し続けることができる理由について尋ねられたとき、スピーゲル氏は「TikTokは間違いなく友人だと考えている」と述べたのには驚かされた。たしかにこれらのアプリは別物だ。Snapchatがメッセージ交換に特化し、ユーザーの日常の一部となるソーシャルメディアであるTikTokは事前によく準備されたビジュアルエンタテインメントを拡散することに重きを置いている。

しかしこの「友情」はSnapchatにとって高くつくものとなりかねない。TikTokはユーザーがSnapchatのDiscoverに滞在する時間を盗むかもしれないからだ。TikTokがソーシャルエンタテインメントで地位を確立すればSnapchatはそこから締め出されるだろう

第4四半期について、決算報告のガイダンスはは「DAUは2億1400万から2億1500万人、収入は5億4千万から5億6千万ドル」としている。また調整後EBITDAについては、ブレークイーブンからプラス2000万ドル程度を期待している。クリスマス商戦を含む第4四半期の予測について、Snap自身のガイダンスがアナリスト予測を下回っていたことが株価低迷の一因となった。

Snapの黒字化まで道のりは、まだかなり長い。黒字化を達成できれば、長期的ビジョンに基づくプロジェクト、特にカメラ内蔵メガネのSpectaclesにもっと投資する資金が得られる。スピーゲル氏は「拡張現実メガネがメインストリームのプロダクトとして消費者に受け入れれられるまでには10年はかかるだろう」と述べている。つまり、Snapがこの分野で、Apple、Facebook、Magic Leapなどの有力ライバルと戦いたいなら、まずそれだけの期間を生き残らねばならないということを意味する。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook

TikTokがインドで教育コンテンツサービスを開始

現地時間10月17日、中国のTikTokはインドで教育プログラムのサービスを開始した。TikTokはショートビデオアプリとして人気だが、世界最大のマーケットのひとつであるインドでコンテンツを増やし、地元当局にアピールしようとしている。TikTokの広報はTechCrunchに対し、このようなプログラムの導入は世界初だと述べた。

世界最大のスタートアップであるBytedanceが運営するTikTokは、インドで多くのコンテンツクリエイターや制作会社と連携して教育用ビデオのプラットフォームを作っていると語った。学校で学ぶ内容の科学や数学から新しい言語の習得まで、幅広いトピックの短いビデオがそろっている。心身の健康のヒントや啓発的な内容もある。

TikTokはインドで1カ月に2億人以上に利用されている。教育プログラムは「インドのデジタルコミュニティにおける学びの民主化」を目指しているとしている(TikTokの今年4月の月間アクティブユーザーは1億2000万人だった)。

VedantuToppr、Made Easy、Gradeupといった教育テックのスタートアップが協力して、TikTok用の教育コンテンツを制作する。ソーシャル企業のJosh TalksやNudge Foundationとも連携してインド全体で5000人を指導する(こうした連携の一部は数カ月前に明らかにされていた)。Josh Talksの幹部は、TikTokでは2カ月足らずでほかのプラットフォームより多い3500万人以上にリーチすることができたと語る。

TikTokのセールス・提携担当ディレクターのSachin Sharma(サチン・シャルマ)氏は、教育分野への進出はユーザーの需要に応えるものだと言う。同氏はニューデリーでの記者会見で、世界的に見て教育ビデオは人気がありエンゲージメントが高いと語った。

シャルマ氏によれば、ここ数カ月で1000万本以上の教育ビデオが制作され、TikTokで共有されて480億ビュー以上を記録したという。同氏は、クリエイターとのパートナー契約に関する財務構造は明らかにしなかった。

低価格のデータ通信とAndroidデバイスの急増によりインドでモバイルビデオ視聴のブームが起きており、インド国内の教育テックの数も増えてオンラインでコンテンツを配信している。

学習アプリを提供している創業8年のスタートアップのByju’sは、ここ数年でカスタマーベースを大幅に増やしている。同社の評価額は57億5000万ドル(約6200億円)で、7月時点のユーザー数は3500万人だ。

教育コンテンツは広告主にとっても魅力がある。教育コンテンツはTikTokが効果的なマネタイズの方法を探るのに役立つだろうとアナリストは見ている。

eラーニングへの進出は、地元当局に対するTikTokのブランドイメージの向上にも役立つだろう。TikTokはこれまでに数回、インドで問題となっている。今年の4月には、ポルノなどの違法なコンテンツを公開し促進しているとしてインドの裁判所がTikTokを禁止した。この禁止措置はその後解除された。

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(翻訳:Kaori Koyama)

TikTokが政治的な広告の禁止について説明

北京を拠点とするビデオアプリのTikTokは、香港の抗議行動やLGBTを支持するコンテンツといったトピックを検閲して中国の外交政策を推進していると非難を受けている。そうした中、同社はアプリ上での政治的な広告を禁止し、Facebook、Twitter、Instagramなど米国のソーシャルメディアのプラットフォームからさらに距離を置くことになった。

米国時間10月3日、同社はTikTok上での政治的な広告を、このアプリが提供しようとしている体験にそぐわないものとして禁止すると発表した。

TikTokグローバルビジネスソリューション担当バイスプレジデントのBlake Chandlee(ブレイク・チャンドリー)氏は「コミュニティに対して表示される有料の広告はすべて我々のプラットフォームの基準に合致するものでなくてはならない。有料の政治広告はその性質上、TikTokプラットフォームの体験にふさわしくないと考えている」と述べた。同氏は最近、FacebookからTikTokに加わった

同氏は「このため、中央政府や州、自治体の、候補者、現在の指導者、政党や政治団体、政治問題に関する支援や反対の有料広告を禁止する。これには選挙関連の広告、アドボカシー広告、意見広告が含まれる」と述べた。

同社はさらに、TikTokは創造性を発揮する場であり、創造力を刺激するような「ポジティブで楽しい環境」を作っていきたいと説明している。

面白いフィルタやエフェクトなどの製品、そしてブランドとの提携関係を通じて、同社はこのような目標に向けて進んでいくものと思われる。

現在、TikTokは、フィード内ビデオ広告や起動画面広告、スポンサー付きハッシュタグチャレンジのようなネイティブ広告など、さまざまな広告の場を提供している。さらに最近では、TikTokクリエイターマーケットプレイスのベータ版を公開した。これはTikTokのクリエイターとブランドをつないでブランドのマーケティングキャンペーンに役立てようとするものだ。

チャンドリー氏はこう補足する。「ただしトータルで見れば、我々が最も重視しているのはコミュニティにとって楽しい本物の体験を作り出すことだ。ブランドに価値を提供する方法を探ってはいるが、我々はユーザーがTikTokのプラットフォームを特別なものとして気に入ってくれている理由に常に忠実であり続ける。それは、このアプリが楽しく常識にとらわれない感じがして、ずっと見ていたくなるということだ」。

政治広告はこの方針には合わないと、同社は考えている。政治的な広告を取り入れることには、Facebookが直面したように大きな困難が伴う。

例えば、政治広告の広告主を確認するシステムを作る必要があった。確認には住所、電話番号、業務用のメールアドレスとそれに対応するウェブサイト、納税者番号、米国連邦選挙管理委員会のID番号といった身元情報が必要だ。透明性を確保するために政治広告のデータベースも作って公開し、検索できるようにした。

中国系企業であるTikTokにはこのような運営をするためのリソースがないだろう。VICEが報じたように、昨年、同社はアプリ上のヘイトスピーチに対して断固とした措置をとっていなかったようだ。

TikTokでの政治広告の禁止は新たに開始されたことではない。これまでのポリシーの強化といえるものだが、TikTokはこれまで明言してこなかった。

同社はTechCrunchに対し、特にこのプラットフォームがマーケティングに活用される機会が増えていることから、広告の透明性を確保するためにポリシーを積極的に運用していくことにしたと述べている。

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(翻訳:Kaori Koyama)

Facebookでニュースを読む人は多いが内容を信用する人は少ない

画像クレジット:Jon SCC BY 2.0ライセンスによるFlickr

Facebookは、今月にも「ニュースタブ」を導入する準備を整えている。人手によってキュレーションしたニュースストーリーを表示するもの。友達だちがシェアした記事、有料のプロモーション、アルゴリズムによって選ばれた記事が表示されるニュースフィードを補うものとなる。しかし、ソーシャルメディアが、今日のニュースのプラットフォームとして、どのように見られているかを示す分の悪いレポートが登場した。

ソーシャルメディアごとのニュース消費量(Pew調べ)

Pew Research Center(ピューリサーチセンター)の調査によれば、この7月の調査の対象となった米国の成人の半数以上(約52%)は、すでにFacebookでニュースを読んでいるという。その結果、Facebookが、ソーシャルメディアの中でもっとも人気のあるニュースソースとなっている。ちなみに、2位はYouTubeで28%、3位はTwitterの17%となっている。Instagram、LinkedIn、Reddit、Snapchat、といった他のさまざまなプラットフォームも、数字は小さいながら、それなりの存在感を示している。

全体として、調査対象となった人の88%は、ソーシャルメディアがユーザーに見せるニュースは「少なくとも多少は統制」されていると考えていた。

しかし、そうした統制についての感情はさほど極端なものではない。

回答者の過半数(62%)は、ソーシャルメディア各社が、それぞれのプラットフォームに表示するニュースの選択について「統制し過ぎ」だと考えている。そして、55%の人は、その結果ニュースの取り合わせが偏っていると思う、と答えている。全体の53%は、一方的な視点で書かれたニュースの存在に気付き、51%は、不正確なニュースはソーシャルメディアの「非常に大きな問題」だと捉えている。

このような調査結果は不安をかきたてる。Facebookなどのメディアは、すでにニュースの配信に関しても、大きな力を握っていることを明確に示している。それと同時に、そうしたことが好ましくない影響を及ぼすと、すでに多くの人が判断していることも示している。

そうした不穏な話に続いて、ソーシャルメディアのプラットフォームが、悪意によってどの程度操作されているのか、ということも、今回の調査結果には含まれている。政治団体や政府が、身分を隠し、ソーシャルメディア上で人心を惑わすような話をばらまいているという話は、数年前から今日に至るまで囁かれてきた。しかし、いくらプラットフォーム側が、そうしたアカウントを特定して削除しようとしたところで、むしろおおっぴらな悪用は増え続けているのだ。

つい先月には、有料チャンネル(つまり広告)でストーリーを掲示する人は、自分の政治的な意図に合わせてニュースの見出しを書き換えられることが明らかになった。大多数の人に、ニュースの論調を偏向させて見せるためだ。多くの人は、友だちの子供の最新の写真をチェックしたりするためにスクロールする際、ストーリーをクリックして中身を読むことなく、表示されている要約を読んでいるだけなのだ。

そして、それは消費者にとってのみ悪いことなのではない。ニュースの発行元は、自分たちのストーリーをソーシャルメディアがシェアし、収益化可能なトラフィックに変換することで得ている収入の分け前を受け取っていないことを、長い間嘆いてきた。そして規制が強化されることで、こうした状況もじきに変わるだろうと考える人もいた。ところが、今週のWSJのレポートは、それもすぐには変わりそうもないことを示唆していた。Facebookは、人手でキュレーションされる新たなニュースタブでシェアされる記事についても、ごく一部の発行元にしか使用料を支払うつもりがないというのだ。

さらに興味をそそる詳細まで掘り下げてみると、共和党支持者は民主党支持者に比べて、ソーシャルメディアがニュースに及ぼす影響を問題視していることを、Pewは突き止めた。右寄りの人の75%が、ソーシャルメディアはニュースを統制しすぎだと考えているのに対し、左寄りの人は53%だけが、そう感じている。皮肉なことに、ソーシャルメディアが自分の考えを反映したものになっているか、という質問になると、これらの数字は逆転する。

またPewは、ソーシャルメディアでニュースを読む人の48%が、ニュースは「リベラル、または、かなりリベラル」と信じていることも示している。これは、共和党支持者は民主党支持者よりも、ソーシャルメディアがニュースを統制し過ぎていると考えていることと符合する。逆に、ニュースが保守的、または、かなり保守的だと信じている人は14%だった。これは、右寄りの人が、メディアはあまりにもリベラルだと感じていることを裏付けているのかもしれない。そして彼らは、彼ら自身の政治的信条にそぐわないニュースを見せられていると感じているのだろう。

また今回の調査は、Facebookから支払いを受けているのはごく一部のニュース発行元だけ、という最近の報告に沿った結果も示している。回答者の82%は、すべてのニュースソースが、現状ではFacebookから対等に扱われていないのではないかと感じている。つまり、一部のニュースソースが他よりも目立つような扱いを受けているということ。ほぼ88%の人は、「注目度の高い」、言い換えれば「クリックベイト」と呼ばれるような記事を発行している会社の記事が、フィードに表示されやすいと信じているのだ。そして84%が、ソーシャルメディア内でのフォローという行為が重要な役割を演じていると考えている。79%は、ストーリーの政治的傾向が、自分のフィードに表示される頻度に影響していると信じている。

男性と女性の読者の差異については、このレポートの調査結果も驚くに値しない。最近の他のソーシャルメディアに関する調査と似たりよったりとなっている。たとえば、Redditのようなメディアは、かなり男性の読者に偏っているが、Facebookでは逆に女性が多い。

最後に、このレポートは主にニュースの偏りと、それに対する感じ方についてのものだが、ここに登場しているプラットフォームの種類と、それぞれの傾向に注目して見てみるのも興味深い。たとえばTikTokは、ソーシャルメディアの世界では、やがて支配的な力を持つようになると多くの人が考えているものの、ニュースを読むためのプラットフォームだと考えている人は、1%にも満たない。一方Snapchatも、ニュース配信となると、たった6%でしかない。

これらのプラットフォームには、若いユーザーが多いことを考えると、これは、若い人たちが、ソーシャルメディアをニュースを読むためには使っていないことを示していると考えられる。さらに言えば、そもそもニュースには興味がないということなのだろう。ソーシャルメディアのプラットフォームは、今のところニュースの世界ではのけ者と位置付けられているのかもしれない。しかし、そうと決めつける必要はない。会話の種類を変えることもできるはずだ。そうして、これまでは会話に加わってこなかったような人を、引き込むこともできるだろう。

この調査は、Pewが、7月8日から7月21日にかけて、American Trendsのリサーチパネルに属する回答者5107人に対して実施したもの。

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(翻訳:Fumihiko Shibata)

NFLが複数年の提携でTikTokに参入

米国時間9月3日、NFLとソーシャルビデオアプリのTikTokは、複数年にわたる提携を発表した。NFL100周年の第1戦が9月5日に開催されるのを目前にして、NFLのコンテンツを世界中のファンに届け始めている。この提携には、TikTokのNFL公式アカウントの開設のほか、ハッシュタグチャレンジなどNFLのコンテンツに関するブランドマーケティングが含まれる。

最初のハッシュタグチャレンジは米国時間9月3〜5日に実施され、ファンは「#WeReady」のハッシュタグでお気に入りチームを応援できる。このチャレンジには人気のTikTokクリエイターとNFLのクラブも参加する。

TikTokは9月5日にシカゴのソルジャーフィールドで開催される開幕戦にも参加する。ファンはNFLをテーマにしたビデオを作り、チームや選手への思いを表現する。

TikTokのNFL公式アカウントには、舞台裏やハイライトから、楽しいミームコンテンツやぐっとくるものなど、開設時にすでにビデオが数本共有されていた。

TikTokのグローバルパートナーシップ担当、Mayan Scharf(マヤン・シャーフ)氏は「スポーツ界の巨人であるNFLとの提携に興奮している。この提携はスポーツエンターテインメントの体験にこれまでになかった活力と新鮮な視点をもたらす。TikTokは、ファンがチームの一員であると感じられる目的地だ。我々は、エキサイティングで本格的で驚きのあるNFLのコンテンツをTikTokのコミュニティに紹介できることを楽しみにしている」と語る。

TikTokはミームコンテンツ、リップシンクをフィーチャーしたショートビデオ、ダンスなどの才能の披露、コスプレ、コメディ、アートなどで知られているが、同社によればスポーツのコンテンツも人気のカテゴリーだという。

一方のNFLは、新しいプラットフォームにいち早く乗り出すことに抵抗がないようだ。Twitterのライブストリーミング、スポーツリーグとして初のSnapchat DiscoverAlexaボイスアプリの公開などをすでに手がけている。

さらにNFLは、ゲームのハイライトとまとめをFacebookで配信するなど、海外のファンにもリーチしようとしている。これはスポーツリーグにとって、視聴率低下が懸念される中では特に重要なことだ。昨シーズンはここ数年の低迷からはようやく回復したものの、米国以外のファンを引きつけるためにもこうした取り組みが有効であるとNFLは考えている。

NFLのデジタルメディアビジネス開発担当バイスプレジデント、Blake Stuchin氏は発表の中で次のように述べている。「TikTokとの提携は、我々のメディア戦略においては自然な拡張だ。TikTokのプラットフォームは、急速に増える世界中のNFLファン、そしてこれからファンになる人々にリーチできる。NFLのプログラムとハッシュタグチャレンジは、NFL100周年の幕開けにまさにふさわしい。TikTokならではの方法で、新たな楽しいコンテンツを発信してファンを楽しませ、ファンであることを誇れる体験を提供する」。

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(翻訳:Kaori Koyama)

誰もがインフルエンサーになりたい!Z世代のイベントVidConで感じたソーシャルメディアの未来

毎年ロサンゼルスのアナハイムで開かれるデジタルコンテンツのカンファレンスVidConが、今月の開催で10周年を迎えた。VidConは、影響力を高めたいと願っているオンラインクリエイター、そのファンやブランドマーケター、娯楽企業のためのイベントだ。

昨年は7万5000人以上の参加者があり(今年はそれを上回っている感じ)、ティーンエイジやトウィーンエイジ(9歳から14歳ぐらいの女の子)の若者たちも、大好きなインターネットのスターに会いに世界中から集まって来る。

VidCon2019に登場した虹の滑り台、かき氷とアイスクリームと綿飴を合体させたビックリもののユニコーン、巨大なInvisalignブランドのキャンディーマシン

今回は、私たちにとって2回目のVidConになる(2018年の取材記事はこちら)。ティーンエイジャーのカルチャー、インフルエンサーのマーケティング、ソーシャルプラットフォームの未来を知りたい人間にとって、ここは最高の場所だと私たちは感じた。そこで、私たちがこのイベントで学んだ5つのことを、興奮を交えてお伝えしたいと思う。私たちが見逃したものがあれば、どうか教えていただきたい。ミレニアル世代、Z世代についてもっと詳しく知りたい方は、私たちの週刊ニュースレターを購読していただきたい。

要約:私たちが持ち帰った5つのお土産

  1. TikTokはZ世代の間で爆発的な人気を呼んでいて、多様で「リアル」なクリエイターが他のプラットフォームよりもずっと多く生まれている。ブランドマーケターは、今でもTikTokのエコシステムが自分たちの居場所だと考えているが、一部のアーリーアダプター(メキシカンファストフードチェーンのChipotleなど)は大変に大きな結果を得た。
  2. トップクリエイターたちはメンタルヘルスについて、またユニークで高品質なコンテンツを継続的に生み出し続けることの大変さについてオープンに話し合うようになっている。彼らは新しいクリエイターたちに、もっと「安定した」プラットフォーム(アルゴリズムの依存度が低いもの)を探すこと、そして自分自身の価値を数値で測るのを止めようと訴えている。
  3. クリエイターたちは、ブランドとのスポンサー契約に慎重になりつつあり、自身のプロダクションを立ち上げる人たちが増えている。多くのクリエイターは、制作の管理のためのビジネスマネージャーを雇っている。また、インターネットを使って比較的簡単にそれが行えるようになっている。適切に行えば、増収と、ファンからの暖かい反応が得られる。
  4. 5年前は、デジタル・クリエイターはセレブになりたがっていた。今はセレブがデジタル・クリエイターになりたがっている。俳優やスポーツ選手は、今に彼らの「本来の仕事」よりもデジタル作品を通してZ世代の間で有名になるだろう。
  5. コンテンツ制作技術が民主化され、誰もがインフルエンサーを目指すようになった。VidConは、純粋なファンのためのイベントから、インフルエンサーが戦術的なヒントやキャリアアップのためのつながりを求める戦略的なビジネス・カンファレンスに移行しつつある。

TikTokとニューウェーブの本物のクリエイター

15秒という短い動画を配信するアプリであるTikTokは、間違いなくVidConのスターだった。TikTok関連の討論会は、ほぼすべてが立ち見のみだった。2016年にローンチされたこのアプリは、現在、世界中で月間5億人のアクティブユーザーを誇るまでに成長した。前進であるMusical.ly(最大で1億人)をはるかにしのぐ。

完璧にキュレートされているInstagramのフィードとは対照的に、TikTokに最もふさわしい表現は「奇抜」だろう。動画は、コメディー番組の一場面や、ダンスや、TikTokのチャレンジで人気を呼ぶ奇妙な技などにより、瞬間的な笑いや幸福感を引き出すように作られる。VidConのようなイベントでは、ユーチューバーは警備員に囲まれて有料の懇談会でファンと接触しているのに対して、ティックトッカーはもっと身近だ。外見にも多様性がある。ティックトッカーの多くは、Instagramのモデルというよりは、ビリー・アイリッシュに近い。

TikTokのスター座談会。髪の毛が青でもピンクでもないクリエイターは6人のうち1人だけ。

TikTokは、本物を重視することで差別化を図っている。同社のプロモーション動画では、インフルエンサーではなく行動する人を求めると公言されている。撮影と編集に何十時間も費やすユーチューバーと違い、ティックトッカーは、自らの作品を自然発生的なものと言っている。ダンサーデュオのOurFireのChris Kerr(クリス・カー)は、「TikTokとは瞬間に生きること。15秒しかないから、瞬間的にやって上げるだけだよ」と話している。ティックトッカーのAndrea Okete(アンドレア・オキート)(dreaknowsbest)は、「他のプラットフォームみたいにボックスの中に自分をはめ込む必要を感じさせないからTikTokが好き。私はただのドレアになって、みんなも私がそうすることを喜んでくれる」と話していた。彼女は、TikTokの動画に映ったミスをわざと残して、ファンがそれを見つけてシェアできるようにしている。

このプラットフォームの驚くべき多様性に、人々は気付いていません。あらゆる人種、年齢、職業。消防士、おばあちゃん、看護師、12歳児。他のプラットフォームでは声を上げられない人がたくさんいます(TikTokジェネラルマネージャー、Vanessa Pappas(バネッサ・パーパス))。

TikTokの本物志向は、Z世代を採り入れようとする多くのブランドにもアピールするものだ。Chipotleの上級デジタルマネージャー、Candice Beck(キャンディス・ベック)は、同社がもっと信頼性のあるコンテンツをマーケティング戦略に採り入れようと決めたとき、TikTokで2億人以上もの視聴者を集めていた#LidFlipChallengeのインフルエンサー、David Dobrik(デイビッド・ドブリック)と手を組んだと話している。Chipotleは、ドブリックブリトーを発売した後、1日のデジタルセールスの最高額を記録した。その他、TikTokと手を組んだブランドには、ジミー・ファロンNBAワシントンポストがある。

メンタルヘルスの限界点に到達

クリエイターたちは、燃え尽き症候群やメンタルヘルスとの戦いについて、堰を切ったように話し始めている。この問題をテーマにした討論会では、5人のクリエイターが、YouTubeで成功した後に神経衰弱を患った体験談を交換した。ギャビー・ハンナ(Gabbie Hanna)は、動画撮影の合間にパニック障害に陥り、毎週水曜日公開のスケジュールに間に合わないと泣き伏した話していた。Elle Mills(エリー・ミルズ)は、絶え間ないツアーと撮影の異常なスケジュールにより、スターダムにのし上がって1年も経たないうちに「大っぴらに精神疾患を発症」したと話していた。

誰も見てくれてないと感じて、とても辛かった。私が頑張ってきたすべてのものが、私から持ち去られてしまうって。だから多くのユーチューバーは精神をやられる。そんな心理状態なの(エリー・ミルズ)

ユーチューバーは簡単で楽しい仕事のように思われるかも知れないが、トップのクリエイターたちは過酷なスケジュールに苦しんでいる。自身のチャンネルNatalies Outletに800万人近い購読者を持つナタリー・アルゼータ(Matalie Alzate)は、毎週2本の動画を制作するために1日18時間働いている。クリエイターを目指す人たちに、彼女は「本当に体にこたえる」と警告している。そして、いずれはYouTubeをフルタイムの仕事ではなく、趣味にしたいとも話している。11歳でユーチューバーになったMikey Murphy(マイキー・マーフィー)は、21歳になった今は「アイデアが枯渇した」と話している。毎週定期的に動画を公開するYouTubeの基準は「病的だ」と断定し、若いクリエイターたちには「自分を潰してしまう」ので、アナリティクスは無視するよう助言している。

よくある悪意のコメントによるプレッシャーだけでなく、メタルヘルスに関してオープンに発言するクリエイターたちには、同じ悩みを抱えるファンたちのコミュニティの代表としてのプレッシャーもある。ユーチューバー(ContraPoints)のナタリー・ウィン(Natalie Wynn)は、ジェンダー、人種、政治を題材にした動画を制作しているが、もっとも怒りに満ちたコメントは、同じトランスジェンダーの人たちから来るという。その対処は「本当に大変」だ。YouTubeのアルゴリズムは、彼女のファン以外にも動画を広く配信してしまうため、トランスジェンダーに反感を持つ人たちにもアピールする内容にしなければと、彼女は責任を感じている。そのため彼女は、深刻な問題について語るときでも、楽しく「押しつけがましくない」口調を心がけている。

クリエイターは#SponConから独自ブランド設立に動いている

クリエイターにとって、スポンサー付きのコンテンツは、長い間厄介な問題だった。有名になって、ひとつのブランドと契約を交わすと、「身売りした」とか「信用できない」といった批判を数多く受けるようになる。ブランドから報酬を受け取れば、ファンは、そのブランドの製品のお勧めや使用レポートを信頼しなくなる。そのため、スポンサーが付いている事実を隠してコンテンツを流すクリエイターも一部に現れる(それは違法だ)。

今回、私たちは、クリエイターのスポンサー契約に対する考え方の変化に気がついた。クリエイターの多くは、ブランドからの申し出は、自分自身がそのブランドを本気で愛していて、ファンもそのことをよく知っている場合を除いては、もう検討しないと話していた。58万人の購読者を誇るファッション系ユーチューバーのSierra Schultzzie(シエラ・シュルツィー)は、アメリカンイーグルのジーンズの話をよくするので、彼女の動画にアメリカンイーグルをタグ付けするファンが多いと話していた。彼女がそのブランドと契約を交わしたとき、「やっと」彼女のスポンサーになってくれたと、ファンたちは歓迎した。

シエラ・シュルツィーのファンは、彼女がアメリカンイーグルとスポンサー契約を交わしたとき、それ以前から彼女がこのブランドを大好きだったことを知っていたファンは、これを受け入れた(このブランドの製品を勧める彼女へのファンの信頼が厚かったこともある)

マーケターも、創造性に関する自社の支配権を譲ることに同意している。クリエイターは、どんな内容が共感を呼ぶかを知っている。企業から渡された宣伝文句を読み上げることなどしたくない。WeRateDogsを運営するMatt Nelson(マット・ネルソン)は、新作映画「ダンボ」のためのTwitterキャンペーンをディズニーとともに行った。キャンペーンの成功の勝因を彼は、「ディズニーが僕をクリエイターとして尊重して、人々が何を求めているかを知るボクに、自由にやらせてくれたこと」だと話している。彼はアナリティクスにこだわりを持つことで、どうすればうまくいくかを把握している。結果とて彼は2万2000件のコメントを受け取り、ダンボのような耳の犬の写真を募集する投稿で7万件の高評価を獲得した。

金曜日に『ダンボ』が公開されるのを記念して、ダンボみたいな耳の犬の写真を募集します。勝者の発表は木曜日!

多くのクリエイターが、独自ブランドの創設へ一歩踏み出している。彼らは、誰でも製品ラインを立ち上げることができる新サービスを利用している。これはもはや、YouTubeのメガスターだけのオプションではない。事実、80万人の購読者数を誇る15歳のFiona Frills(フィオナ・フリルズ)は、セフォラやアルタといったショップではニキビ用のスキンケア商品が見つけられず、独自の商品をローンチしたのだが、それは簡単だったと話している。妻がCute Girls HairstyleというYouTubeチャンネル(購読者数560万人)を運営しているShaun McKnight(ショーン・マクナイト)は、条件のいいヘアーブランドからの申し出を10年間断り続けていると話していた。自分たちの独自ブランドを立ち上げる計画があるからだ。

マクナイトの双子の娘、ブルックリンとベイリー(購読者数620万人)も、独自のマスカラのブランドを立ち上げた。自宅で開発し、一部の資金をIndiegogoで調達した。その後、彼女たちは、このブランドを、その他の美容製品やアクセサリーにまで広げ、25万セットものシュシュを売りさばいた。インフルエンサーが独自ブランドを立ち上げることができるのなら、収益のほんの一部しかもらえない、好きにコンテンツを作らせてくれない、その上ファンから「身売りした」と責められる企業とのスポンサー契約など交わす必要があろうか。

セレブがクリエイターになりたがる時代

この5年間、私たちはZ世代の“伝統的”なセレブがインフルエンサーに置き換わってゆくのを見てきた。この世代は、従来型のテレビ放送を見る時間がきわめて短く、スマホを見て過ごす時間が長い。平均的Z世代はインターネットの動画を1日に3.4時間視聴している。Z世代の最大のスターが、ディズニーやニコロデオンなどではなく、YouTubeやInstagramやTikTokから現れるのもうなづける。そして今、主流のセレブも、デジタル・クリエイターになってZ世代に近づきたいと考えている。

その最たる例がウィル・スミスだ。彼は2017年末にInstagramアカウントを開設し、昨年、YouTubeチャンネルを開設した。今では大量のコンテンツをアップし、十代の若者の間で人気のチャレンジに参加し、キング・オブ・インスタグラムの称号を獲得している。プロスポーツ選手も、若いファンを獲得しようとソーシャルメディアを活用し始めている。プロバスケ選手カメーロ・アンソニーのビジネス戦略チームを率いAsani Swann(アサニ・スワン)は、アンソニーが「子どもが視ているものをたくさん視てる」と話している。彼は常に、こう自問しているという。「子どもたちは、どんなふうにコンテンツを取り込んでいるのか、次の流行は何なのか?」。

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ウィル・スミスの1000万フォロワーを祝うInstagramの投稿。「昔は、映画スターになるには、謎めいていて別世界の存在になる必要があった」ため、これまでソーシャルメディアは避けてきたと彼は話している。

2つのアカウントで300万フォロワーを持つユーチューバーのKristopher London(クリストファー・ロンドン)は、バスケットボールのコンテンツで、YouTubeの有名人になった。プロとしてプレイしたことはないが、NBAサマー・リーグなどのイベントでは、NBAの選手よりも人気が高い。彼は「子どもたちがボクと写真を撮りに来るとき、NBA選手には目もくれない」という状況を奇妙に感じると話している。彼の元には、NBAのビッグスターたちから動画に出演したいとの申し出が寄せられる。

オリンピック体操選手のShawn Johnson(ショーン・ジョンソン)は、現在、週2回、YouTubeで動画を公開している。彼女は常にチャレンジに参加し、ストーリーをアップし、十代のインフルエンサーたちとコラボしている。クリックベイトも気にせず使う。ショーン・ジョンソンのことを体操選手ではなくユーチューバーとして知れ渡る世界を想像するのは難しくない。

クリエイターの偶像化から新世代のエンパワーメントへ

数年前、VidConはほぼファンの集いだった。ファンが大好きなクリエイターと増え合える場だった。今でも、そうした企画は数多く行われてはいるものの、自分もクリエイターになりたいと願うファンも増えてきた。VidConに参加する若い人たちは、次第に、インターネットで実績を積む方法を学びに来るようになっている。最近の調査によれば、英国の11歳〜16歳の若者の、憧れの職業の第2位がインフルエンサーだ。

大きくなったら何になりたいか?英国の11歳〜16歳の子どもを持つ親2000人を対象とした調査

この変化は、VidConの内容にも影響を与えている。コンテンツの作り方とオーディエンスの集め方に重点を置いたクリエイターセッションが、今では目玉の出し物になっている。モデルでイン・リアル・ライフのストリーマー、Bri Teresi(ブリー・テレシ)を招いて行われたライブストリーミングのためのクリエイターセッションでは、参加者はお決まりのファンの質問コーナーを飛ばして、ストリームのオーバーレイにはどんな技術を使っているのか、新しいストリーマーにはどんなプラットフォームがもっとも使いやすいか、ドキシングをどのように避けるかといった質問がブリーに向けられた。

ブランドは、意欲のあるクリエイターを引き立てることで、自社のコンテンツへのエンゲージメントが増やせることに気がついた。eスポーツのメディア・プラットフォームであるSuper League Gamingの上級マネージャーであるMichelle D’Antonio(ミシェル・ダントニオ)は、若いゲーマーを盛り立てることが、ブランドの成長の鍵だったと話している。Super Leagueは、現在、「Spawn Point」という番組を毎日配信し、ユーザーの投票で選ばれたプレイヤーを紹介している。「(今の若者たちは)こんな感じ。『Ninjaもすごいけど、自分がそうなりたい』」のだという。

この変化は、VidConの巨大な展示ホールにも現れている。若い消費者を惹きつけようと、ブランドがブースを並べていた。インフルエンサーの物品販売ブースは、インフルエンサー本人がたまたま居あわせたとき以外は、驚くほど閑散としていた。人気のブースでは、来客自身のコンテンツ制作を行わせて、潜在オーディエンスの獲得を狙っていた。バービーやベストバイといったブランドは、ブースに簡易スタジオを設け、客をクリエイター席に座らせていた。こうしたブースには、スポットライトを浴びたい人たちの数十人から、ときには数百人の列ができていた。私たちは、こうした流れは加速すると見込んでいる。そのため、消費者がコンテンツを作り、そこからビジネスを発展させられる新しい技術が登場することを、大いに期待している(私たちはこれをクリエイターインフラストラクチャーと呼んでいる)。

生の観客の前で、eスポーツのステージに上がりビデオゲームをプレイしようと列を作る若者たち。プロの大会と同じように、彼らのプレイは大きなスクリーンに映し出される

最後に、VidConの展示ホールとコミュニティセッションで見つけた表面的なトレンドをいくつか紹介しておこう。

  • Twins  :特にTikTok上で。そっくりな2人の人が、まったく同じダンスの動きを見せる。
  • ASMR  :ASMR作家を招いた座談会はひとつだけだったが、来場者は2018年の4倍だったとパネリストの一人は話していた。すべてのクリエイターが、ASMRは、去年からずいぶん主流になってきたと認めている。
  • Glitter ✨:去年のVidConではタトゥーが大人気だったが、今年はグリッターや、その他のキラキラ光るものやホログラム物が流行っていた。とくに人気を集めていたのが、BlingerHolo TacoLemonhead LA
  • Facebook Watch/IGTV  :どちらのプラットフォームも、年齢層の低い若者たちの利用を目指しているが、Z世代の目は、IG、Snap、TikTokに向いている。Facebook WatchもIGTVも、クリエイターはもっと高い年齢層を対象にしていた。または、そのようなコンテンツの制作を奨励されていた(ただし、それでとくに満足していたとは限らない)。

【編集部注】著者のOlivia Moore(オリビア・ムーア)はと、姉妹のJustine Moore(ジャスティン・ムーア)は、ともにCRVのベンチャー投資家。Cardinal Venturesを設立。

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(翻訳:金井哲夫)

TikTokの親会社ByteDanceがスマホを開発しているという噂

世界でもっとも企業価値の高いスタートアップであり、世界的に人気の動画アプリTikTokの運営会社ByteDanceにとって、この2カ月間は何かと忙しかった。北京に本社を置く同社は、仕事の共同作業アプリLark、インスタントメッセージ・アプリFeiliao音楽ストリーミング・アプリなどなど、アプリの品揃えを次々に増やしてきたが、ついに、ハードウエアの世界への野心的な一歩を踏み出そうとしているようだ。

Bytedanceは、自前のスマートフォンの開発を計画している。Financial Times(有料版)は、2つの情報筋からの話として伝えている。ByteDanceの広報担当者は、この件に関してコメントを控えたが、中国のインターネット企業の間では、ユーザー数を増やす方法として、最初から自社アプリをインストールしたスマートフォンを販売するスタイルが長期にわたって人気だったことから、その噂に特段の驚きはない。

しかもByteDanceには、もっと多くのユーザー獲得チャンネルを開拓しなけらばならない差し迫った事情がある。Bloombergの記事によると、この2年ほどで急速に成長したByteDanceだが、昨年、中国での広告収入低迷の煽りを受け、目標収益の達成に初めて失敗している。

ByteDanceよりも前から市場にいる企業の中に、自撮りアプリのメーカーMeituがあるが、同社は写真編集アプリなどの自社製アプリ一式をあらかじめインストールしたスマートフォンを開発した。先日、その部門はXiaomiに売却され、Xiaomiは女性ユーザーや新規ユーザーの獲得数を増やそうと試みている。Snowが所有するカメラアプリB612やByteDanceのFaceuも、Meituのすぐ後に迫っている。

中国のインターネット業界の黎明期においては、その他の企業は、多くの資産を持たないアプローチを好んだ。Baidu、Alibaba、Tencentは、中国の技術界を牽引する企業として、まとめて「BAT」と呼ばれているが、彼らはみな、Android ROMをカスタマイズして使っている。これなら、スマートフォンのメーカーがプリインストールした市販のROMよりも、多くの機能が使える。

Alibabaの野心は、2016年のMeizuに対する5億9000万ドル(約650億円)の投資からも伺える。このEコマースの巨人は、携帯端末メーカーのためにオペレーティングシステムを注文生産するという冒険に打って出た。最近では3月、WeChatのオーナーであるTencentが、ゲーム用スマートフォンのメーカーRazerと手を組んで、ハードウエアをカバーする数々の構想に挑むことにした。

 

TikTokの親会社ByteDanceは無料音楽ストリーミング・アプリの立ち上げを計画(本文は英語)

ByteDanceのスマートフォン開発には、以前から兆候があった。同社は、1月、スマートフォンのメーカーSmartisanからいくつかの特許を買い取り、従業員も数名引き抜いたことを認めている。しかしその当時、同社は、この取り引きは「教育ビジネスを研究するため」と話していた。Smartisanの事業は教育とはほとんど関係ないことを考えると、この声明はおかしい。少なくともこの提携は、このモバイルインターネットの新興企業にハードウエア開発能力を与えている。

事実、Financial Timesの情報筋は、ByteDanceの創設者Zhang Yimingは「ByteDanceのアプリがあらかじめインストールされたスマートフォンを長年夢見ていた」と伝えている。とは言え、これは非常に厳しい戦いになるはずだ。少なくともスマートフォンの売り上げが低迷し、Huawei、Vivo、Oppo、Xiaomi、Appleといったメーカーがしっかりと堀を固めている中での過酷な競争となる。

ByteDanceは、モバイルアプリの帝国を築いたお陰で、古巣を遠く離れても有利な立場にいられる。同社は、世界的な足場をしっかりと固めることに成功した数少ない(最初だと主張する人も多いが)中国のインターネット系スタートアップのひとつだ。TikTokは、この数カ月間、世界のアプリランキングのトップの地位を保っている。しかし、世界のより大きな市場では、障害物に悩まされてもいる。

アメリカでは、連邦取引委員会が子どものプライバシー保護ための法律に違反したとして、TikTokに罰金を科したTikTokの近年の成長をおもに支えているインドでは、不法なコンテンツが含まれているとして、政府から一時的にアプリを使用禁止にされるという問題が降りかかった。

中国企業にはセキュリティー問題がついてまわるとするワシントンの懸念があるために、アメリカ市場に浸透するのは難しいかも知れないが、インドには現在、中国ブランドがひしめいている。Counterpointの調査によれば、第一四半期はXiaomiを筆頭とする中国メーカーが、インドのスマートフォン市場の66パーセントという大きなシェアを握っているという。ということは、ByteDanceは、同盟を組むであろうSmartisanと共に、インドの地元ライバルのみならず、故郷の市場で見慣れた顔ぶれとも戦うことになる。

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(翻訳:金井哲夫)

TikTokがiOS App Storeで5期連続のダウンロード数トップ

FTCに罰金570万ドルを支払い、13歳未満の使用を禁止されながらも、TikTokはApple App Storeのダウンロード数ランキングで5四半期連続でトップの座を守ったことがSensor Towerの最新レポートでわかった。Q1のダウンロード数は3300万回で、トップ5にはYouTube、Instagram、WhatsApp、およびMessengerが続く。

16位アプリだったTwitterにとっても好調な四半期だったとレポートは指摘している。
App Storeのダウンロード数1170万回は、2015年Q1以来最大、対前年比3.6%増だった。ただしこれらの数字がアクティブユーザー数の増加を表すわけではないのはもちろんだ。インストール数と利用頻度に直接の相関はない。

また、TikTokはApp Storeでは再びトップを守ったが、AndroidデバイスではQ1に最も多くダウンロードされたアプリではなかった。

新興市場に強く総ユーザー数も多いAndroidでは、トレンドがiOSと異なることがある。今四半期はWhatsAppがGoogle PlayでNo. 1のアプリで、1億9900万回近くインストールされた。Messenger、TikTok、Facebook、およびInstagramがこれに続いた。

Facebook、WhatsApp、Messengerの3つもTikTokと並んで2019年Q1に1億5000万回以上インストールされた。

Androidのトップアプリではなかったものの、TikTokにとっては大きな四半期だった。特にインドでは8860万人の新規ユーザーが同アプリをインストールし、2018年Q1から8.2倍増だったSensor Towerがレポートに書いている。

とはいえ、TokTokの次の四半期の数字はそこまでよくないかもしれない。同アプリはポルノを含む違法コンテンツのためにインドで4月に禁止された。同月内に禁止措置は解かれたが、Sensor Towerの推計によると1500万回のダウンロード機会を失った。

Q1の成長株アプリはYouTube Kidsで、Goolge Playで対前四半期比291%増の2900万ダウンロードを記録してYouTubeおよびYouTube Musicとともにトップ20アプリに入った。

両アプリストアを合わせると、WhatsAppが四半期で最もダウンロードされたアプリで、App StoreとGoogle Play合計で2.2億回以上ダウンロードされた。

Messengerが2.03億回で2位につけた。App Storeで数を伸ばしたTikTokが3位を獲得し、FacebookとInstagramが続いた。

トップ10のその他の顔ぶれに変化はなく、Facebookグループがトップ5のうち4つを占めている。一方、インドで初めてのユーザーを獲得した画像エディターのPicsArt Photo Studioが全世界トップ20に食い込んだ。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

TikTokの次の野望は未来のミュージックスター発掘

TikTokにはたくさんの音楽が必要だ。本当にたくさんの。この短尺動画サービスは、中国で口パクアプリとしてスタートし、Douyinと呼ばれていた。その後寸劇やライフハックなど別のカテゴリーのコンテンツも増えてきたが、音楽は同アプリの中心的要素であり、数億人のユーザーがビデオクリップにサウンドトラックを追加することが習慣になった。

そして、世界で10億近くダウンロードされたVineライクなアプリは、コンテンツクリエイターのために良質の楽曲を確保することを真剣に考え始めた。TikTokは日本と韓国で音楽の人材をスカウトする取り組みをスタートさせた。それ以前には、親会社であり世界で最も評価額の高いスタートアップ、Bytedanceが拠点を置く中国でも同様のプログラムを開始している。

Spotlightと呼ばれるそのオーディションは、TikTokを通じてデジタル的に行われる。アーティストは自分の作品をTikTokに投稿し、勝者は最終的に同社が提携する21のレーベルパートナーおよびパブリッシャーに紹介されてレコーディングの機会を得る。その結果TikTokユーザーは真新しい楽曲群から選んで自らの作品にひと味加える。

ユーザーは、TikTokが世界各地のレコード会社と提携して蓄積してきた著作権付き楽曲をすでに利用可能だ。中国だけで800以上のレコード会社と契約を結んでいると同社は言っている 。その中にはUniversal Music GroupとWarner Music Groupという大物も入っている。ユーザーは自作のサウンドトラックをアップロードすることもできる。

音楽マーケターたちはTikTokやVineのような短尺動画アプリに飛びついてアーティストを売り込んだ。聞くことを目的に作られた音楽ストリーミングアプリと異なり、TikTokにはソーシャル機能が組み込まれており、アーティストとファンの双方向の関係を作ることが可能なので、ファンは同プラットフォームのハッシュタグチャレンジの一環として、アイドルの歌のリミックス、ハンドバンス、口パクなどをよく行う。実際、韓国のボーイズバンド、BTSやガールズバンドのBlackpinkは、新曲のプロモーションにTikTokを利用している。

TikTokはSpotlightを、「独立アーティストを発見して成長を支援する」プログラムであると紹介している。マーケティング支援を受け音楽業界幹部とつながりが持てること以上に、TikTokがアーティストにどんな経済的利益を与える計画をもっているのかは不明だ。

TikTokのバイラル楽曲は、それを演じるアーティストに注目を向けさせられるかもしれないが、焦点は必ずしも音楽にはなく、15秒のビデオクリップを引き立てるのが本来の目的だ。多くの場合、楽曲が人気を博すのは耳について離れないからであったり、特定の流行に合っているためであり、必ずしもその音楽が「良い」ことが理由ではない。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

縦も横も関係ないFireworkのビデオストーリーアプリが公式リリース

Facebookの利用がここ10年で初めて減少するという状況をよそに、TikTokのような動画中心のアプリがソーシャルメディアの未来だともてはやされている。この変化の著しい主戦場に切り込もうとしているのがFireworkだ。その急成長中のソーシャルビデオアプリは、同社が「リビール・ビデオ(隠れていた部分を見せるビデオ)」と呼ぶ巧妙なトリックを備えている。動画の作成者は、モバイルデバイスによる1回の撮影で、縦、横、両方のビデオを撮影できるのだ。一方、動画の視聴者は、再生中にスマホを回転させることで、どちらでも好きな見方で、そのシーンを楽しめる。

縦型動画のアイディアを広めたのはSnapchatだが、Fireworkは縦型、横型の制約から動画を開放しようとしているのだ。

ところで、Jeffrey Katzenberg氏によるモバイルストリーミングサービスQuibiも、スマホの持ち方に関係なく、理想的な視聴体験を提供できることをウリにしている。QuibiのCEOであるMeg Whitman氏が米国時間3月8日にSXSWでのインタビューで、同社は「ランドスケープからポートレートまで、シームレスにフルスクリーンビデオを扱えるような機能を開発した」と説明している。

はっきり言って、Fireworkにそっくりだ。

Fireworkは、独自のフリップ・ザ・スクリーンの表示技術について特許を申請している。その技術は、クリエイターにビデオストーリーの新たな表現方法を提供するものとされている。「リビール・ビデオ」は、単に視聴者に見方の自由を与えるだけでなく、ストーリーの意外な展開や、驚きのエンディングといった未知の機会をもたらすのだ。

それを可能にする仕組みはこうだ。まず作成者は、スマホを横向きにして撮影する。その際、Fireworkの画面には、縦長のファインダーの枠が表示される。それを見れば、視聴者がスマホを縦にして再生したとき、画面のどの部分が表示されるのかが分かる。

この録画画面は、TikTokのものにちょっと似ている。それと同じようにして、録画を停止したり、再開したり、好きな部分を撮り直したり、音楽を追加したりもできる。

「Snapchatではひたすら縦型を押し進めました」と、Snapchatから移籍したFireworkの最高収益責任者であるCory Grenier氏は説明する。

「私たちが普段から見ているのは、ほとんどのプロの映画制作者が、まずはVimeoで、次にYouTubeで見てもらいたいと考えているような作品です。映画のストーリーに登場する背景や人物が、縦型画面の枠に完全に収まるような世界は存在しません。それはあり得ないのです」と、彼は続ける。

新しい撮影テクニックに関連する技術以外にも、Fireworkは、TikTokやQuibiといった、他の短編ビデオとの差別化ができるような領域を開拓することを目指している。

Fireworkの動画は30秒で、TikTokの15秒より長いが、Quibi8よりは、はるかに短い。

「30秒というのは、Snapchatの10秒と、それより長いものの中間にある、ちょうどいいスウィートスポットなのです」と、Grenier氏は説明する。「10秒では、ちゃんとストーリーを語るには短すぎます。印象的なオープニング、明快な中間部、そしてすごく面白い、または意外性のあるエンディングを、みんな入れたいでしょう」と、彼は述べた。

このフォーマットは、TikTokによくあるようなリミックスされた音楽付きムービーよりも、短編のストーリーに向いていると、Fireworkでは信じている。その上、ユーザーによる手作りが可能だ。それはQuibiの、2台のカメラを使った制作価値の高い(費用もかかる)「TV品質」のコンテンツとは対照的なもの。

Fireworkでは、それに対抗するように、同社が「プレミアム・ユーザージェン」と呼ぶものに注力している。それはプロのクリエイターと、有望な新人を合わせて起用する。これまでFireworkは、Flo Rida、Dexter Darden(「The Maze Runner」出演)、モデルでミスUSAのOlivia Jordan、ディズニースターのJordyn Jones、Frankie Grandeといった人々と仕事をしてきた。

さらに、Refinery29やComplex Networksなど、いくつかのブランドとも協力している。とはいえ同社は、アプリを、そうしたブランドのコンテンツだらけにするつもりはないとしている。

水平、垂直を問わないトリックに加えて、Fireworkはファンエンゲージメントに関しても、他とは異なることを考えている。コメントを排除しているのだ。ユーザーは個人的にビデオの作成者にメッセージを送ることはできるが、動画自体にコメントすることはできない。

「ヘイトや荒しといった行為をする人は、観衆に飢えています。極端な反応を煽りたいのです。われわれは、それを除外しました」と、Grenier氏は言う。

また、動画を「いいね」にする代わりに、ユーザーはその動画をブックマークするか共有することだけが可能となっている。これはリツイートのようなスタイルのエンゲージメントだ。共有した動画は、元のクレジットを残したまま、ユーザーのプロファイルにポストされる。

Fireworkは、2年弱前にマウンテンビューで設立され、現在はレッドウッドシティーに移転している。また、ロスアンゼルス、日本、ブラジルにも支社がある。親会社のLoop NowがFireworkを発表する前にテストしていたいくつかのアプリは、フィットする市場をみつけられなかった。

フルタイムで働く51人は、技術者とハリウッドの専門知識を持った人間の混成チームだ。

メンバーとしては、CEOのVincent Yang氏(StanfordのMBAで、以前はEverStringの共同創立者兼CEO)、共同創立者兼COOのJerry Luk氏(LinkedInの社員番号30で、Edmodoにもいた)、ビジネス開発部門のトップのBryan Barber氏(Warner Brothers、Universal Pictures、Foxでの経験を持つ)、そしてすでに登場したCROのCorey Grenier氏らがいる。

Quibiの十億ドルにはほど遠いが、Fireworkの親会社であるLoop Now Technologiesは、この会社を立ち上げるために「数百万ドル」を調達した。初期の支援者としては、Snapにも投資したLightspeed、IDG Capital、そして(非公開の)Musical.lyの初期の投資家が含まれている。Fireworkは数週間以内にシリーズAの資金調達を発表する体制を整えているところであり、現状では投資の詳細の公表を差し控えている。

このアプリは昨年リリースされているが、最近までオープンベータ版となっていたSensor Towerのデータによると、iOS上に180万のインストールがあり、その55%は米国内ということだ。Fireworkによれば、iOSAndroidを合わせて、すでに200万人の登録ユーザーがいるという。

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(翻訳:Fumihiko Shibata)

(関心のなかった人も)そろそろTikTokに真剣に注目してみよう

もしTikTokに注目していないのなら、きっとぼーっと生きていたのだろう。Sensor Towerの最近のレポートによれば、北京のByteDanceが提供するこのショート動画アプリは、12月には新規ユーザーを過去最高となる月7500万人も獲得した。これは2017年12月に獲得した月2000万人に対して、275%も上回っている。

その急激な拡大にもかかわらず、まだ多くの人びと(多くは高齢者たち)が、一体TikTokとは何かがわからず、取り残されたままだ。

TikTokはよく「リップシンク」(口パク)アプリと呼ばれるが、そう聞くとオンラインカラオケ体験のように聞こえる。しかし、より近い比較対象はVineだろう。Vineは今でも多くの人びとに惜しまれているTwitterの(今はもう無くなった)ショート動画アプリで、そのコンテンツはYouTube上に編集されて今でも残されている。

TikTokが人気のあるリップシンクの本拠地であることは事実だが、実際のところは、音楽やその他のサウンドクリップに裏打ちされた、アクトアウトミーム(act-out meme:特定の動作や演技を行うミーム)で良く知られているのだ。それらは若者たちによって、無限に再現され、リミックスされ続けている。

使われているはバラエティに富んでいる ―― ポップ、ラップ、R&B、EDM、そしてDJトラックが、その15秒のビデオクリップのためのバックグラウンドミュージックとして機能する。しかし、そうしたサウンドはYouTubeミュージックビデオ(上のビデオの“I Baked You A Pie”を参照)やSoundCloud、あるいはPeppa PigRiverdaleといったポップカルチャーからの奇妙な音源、もしくはオリジナル作品から取り込まれたものだ。

これらのミームビデオは、ゲーミング文化(下記参照)などのZ世代(1990年代以降生まれの世代)によく知られているものを引用している。それらが、スタンドアロンビデオ、リアクション 、デュエット、ミラー/クローンなどの形で提供される。

このアプリは、2017年11月に米国のライバル会社であるMusical.lyを8億ドル以上で買収してから着実に成長を続けている。その後2つのアプリのユーザーベースは1つに統合された

この買収はTikTokに西洋のマーケットで成長する手段を与えた。そこでは例えばジミー・ファロントニー・ホークような米国の有名人の興味をひくことに成功した。また次の新しいネタを探しているYouTuberたちの関心もとらえたのだ。

しかし、Vine(安らかに眠れ)やYouTube、あるいはInstagramとは違って、TikTokはまだ(確かに存在はしているが)マイクロセレブたちによって支配されているとは感じられない。

その代わりに、そのメインフィードには、普通のユーザー(つまりド素人)が次々と登場し、何か可愛らしいこと、可笑しなこと、ちょっと感心するようなことを行うのだ。その大部分の根底には「は〜い、これがインターネットジョークだよ」という暗黙の了解があるのだ。

はい、はい、その通り。言いたいことはわかる。

こうしたビデオは”クリンギー“(cringey:困惑させたり居心地の悪い気持ちにさせるもの) と表現されることもある。

しかしそう感じるのは、TikTokについて話そうとしている私たちたちが、古き良きインターネットの中で育ってきた「高齢者」だからなのだ。

率直に言って、クリンギーというラベルは、コミュニティの中である一定の方向性を定めることに成功したTikTokを、貶める不当な呼び名だ。ここでは、ユーザーたちが頻繁に悪びれもせず楽しいコンテンツを投稿している。そしてここではウェブの他の場所よりも嘲笑を受けることは少ない。なにしろTikTokの上では、他のひとたちも似たような「クリンギー」なコンテンツを投稿しているのだ。

だがもしあなたのTikTokへの接点が、YouTubeの”TikTok Cringe Compilations”(TikTokクリンギー特集)でしかない場合には、そうしたことは知らないかもしれない。しかし、(奇妙なほど中毒性のある)TikTokフィードを一日見て過ごせば、(YouTubeを含む)ウェブ上の他のどこにもないビデオの世界が、ここにはあることに気が付くだろう。ビデオは確かにイカれている ―― しかし楽しいことも事実なのだ。

これは既存のソーシャルメディアプラットフォームとはまったく違うものだ。

現代のユーザーたちは、Twitterでは文化戦争に巻き込まれ(ナチスを禁止せよ!言論の自由を守れ!)たり、一方ではYouTuberたちは、広告主を震え上がらせるような、憎しみに溢れ搾取的で危険でもあり、さもなくば疑わしいコンテンツで、YouTubeのアルゴリズムの裏をかこうとしている。そしてFacebookときたら…戦争犯罪や民主主義の破壊に貢献している、

そうした中で、TikTokはオンライン共有の、また別のありかたを示しているのだ。単純で、間抜けで、計算抜きで…そして率直に言えば、それは大いに求められていた心のリセット手段なのだ。

例えば、人気の高いTikTokのミームの中には、子供たちがお母さんをフレームに引き込んで自分のお母さんがどんなに素晴らしいかを訴えかけるビデオがある。あるいはゴミを拾ったり水を節約することを訴えるビデオもある。彼らはひょうきんに振る舞っているかもしれないが、自己肯定的であり、そのあと自分自身を「かわいい」ものというより「息を飲むほどゴージャス」なものとして表現するのだ。

彼らは何時間もかけてAdeleのコンサート参加者としてグミベアを並べたり、階段をシャッフルダンスで登る方法を学んだり、お父さんとダンスバトルしたりするだろう。あるいはなんらかの特別な才能を披露するかもしれない、スケッチ、絵画、体操、ダンス、あるいはスケートボードなどだ。科学実験をしたり、冗談を言ったり、ちょっとしたビデオマジックのために特殊効果を使ったりもする。

彼らは“hit or miss!” と公共の場で叫んで、 誰が反応するかを待っている(詳しくはこちら)。

馬鹿げているときもあるし、巧妙なときもある。しかし、それは中毒性があるのだ。

もちろん、それはインターネットに過ぎないし、TikTokは完璧なものではない。

このアプリは、その「ダーク」サイドの問題も指摘されてきている。伝えられるところでは、子供を狙うものが沢山いたり、ティーンエージャーの間でのいじめや嫌がらせもあるという。とはいえ、TikTokが苦しむこれらの問題が、その他の大規模な、ディフォルトが公開設定になっているソーシャルアプリよりも悪いものかどうかは、明らかではない。

また、一部のアプリとは異なり、心配する親たちやユーザー自身が、TikTokアカウントを非公開にしたり、コメントを無効にしたり、アカウントを検索から非表示にしたり、ダウンロードを無効にしたり、リアクションやデュエットを禁止したり、メッセージの受信を制限したりすることが可能だ。

とはいえ、13歳未満の子供たちが、親の同意無しにソーシャルメディアカウントを開設していることには、心配の声があがっている。(とはいえ、まあ、FortniteやRobloxの状況は見たことがあるだろうか?これが子供たちのしていることだ。少なくともTikTokのメインフィードは厄介なものではない)。

だがもっと大きな問題は ―― そして将来的にはTikTokにダメージを与えかねない問題は ―― コンテンツフィルタリングと削除要求に応え続けることができるかどうか、そして拡大して行く中でセキュリティとプライバシー保護の問題に対処できるかどうかなのだ。

TikTokの成長に貢献しているのはコンテンツとコミュニティだけではない。

ショートビデオの概念を導入したのはVineだったかも知れないが、TikTokはビデオ編集を驚くほど簡単にした。クリップをさまざまな効果でまとめるのに、ビデオの専門家である必要はない。これはモバイルビデオ時代のInstagramなのだ ―― 既にInstagram自身が真似できないやりかたで、インフルエンサーや広告主と連携しているのだ。

一方、TikTokの巨大なユーザーベースは、欧米市場での成長だけでなく、中国やインドなどの新興市場からの牽引力によるものが大きい。

2018年に最もダウンロードされたアプリに関するApp Annieのデータによれば、こうした新興市場の力によってTikTokはiOSとAndroidの合計で、世界第4位にランクされることが可能になったのだ。iOSでは、主に中国のおかげで、TikTokは年間で最もダウンロード数の多いアプリとなった。

昨年にはTikTokは、Facebook、Instagram、Snapchat、そしてYouTubeよりも上位にランクされた

App AnnieとSensor Towerの両方で、2018年にはTikTokが全アプリの中で、最もインストールされたアプリとして3位になっている。

現在、TikTokはインドで成長していると、Sensor Towerは発表している

この国は、2017年11月から2018年12月までの新規インストールの27%を占めており、先月はTikTokの新しい7500万ダウンロードのうちの3230万ダウンロードを占めていた。これは前年に比べて25倍の伸びである。

アプリの広告ネットワーク利用の調査を行っているApptopiaのレポートによれば、この成長の一部は広告費の投下によるものである(それはまたYouTubeの広告を使って、人びと怒り駆り立てている)。

売上も増え始めている。

Sensor Towerの推計によれば、世界全体では、ユーザーたちはお気に入りのライブストリーマーに対して600万ドルをチップとして支払っている。これは2017年12月の合計170万ドルに対して1年で253%したことになる。だが、ライブストリーミング機能はTikTokのデフォルト機能ではない。これはMusical.lyのライブストリーミングアプリLive.lyがシャットダウンされた後に、機能追加されたものだ。

上図:アプリが起動されたときに表示されるTikTokのフルスクリーン広告(今日表示された)

上図:今月初めに掲載された広告

TikTokはアプリ内広告のテストも開始しており、その結果広告代理店たちから注目を集めている。TikTokを起動すると、フルページのスプラッシュスクリーン広告が表示されることがある。ただし、同社はまだ正式な広告商品を発売していない。

しかし、ブランドたちは注目を寄せ始めている。例えば今週TikTokは、スーパーボウルに間に合うようにARアニメーションステッカーを紹介しようとしているSportsManias(公式NFL Players Associationパートナー)とコラボレーションを行った。こうした動きは、ブランド提供のコンテンツがどれくらい上手くTikTokの世界で受け入れられるかをテストするもののように思えるが、同社はそれを「広告取引ではない」と説明している。

同社はまた、現在TikTokを使用している人が何人になるかを明かさなかった。

とはいえ、親会社であるByteDanceは、合併後のリブランディングを行った後の昨年の発表で、月間アクティブユーザーの数は5億人であると公式に発表している。グローバルユーザーベースの新しい数字はまだ発表されていない。

と言いつつも、ByteDanceは、TikTokアプリの全てのバージョン(Google Play Androidバージョンも含む)に対する、中国国内のみでの最新情報は発表している。それによれば、TikTokは現在、中国だけで月に5億人のアクティブユーザーを抱えているという。

Sensor Towerは本日、TikTokが中国でのAndroid分を除いて、インストール数が8億回近くに達したという推定値を発表した。

中国国内でインストールされているAndroid分を考慮に入れると、ダウンロード数が10億を超えたと言っても間違いではないだろう。

さあこれが、新・新インターネットだ。これは大規模で、新興市場、モバイル、ビデオ、ミームを席巻しつつあり、オンラインでもオフラインでも大流行している。

もしこれまでTikTokに注目していなかったとしたら、始めてみたいと思うかもしれない。

画像クレジット:ByteDance

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(翻訳:sako)

中国人が熱狂するショートビデオにネットの巨人も気が気ではない

[著者:Rita Liao]

中国で地下鉄に乗ると、多くの人がスマホのTikTok(ティックトック)の動画に見入っている。

モバイルインターネット専門調査研究会社QuestMbileの調査によれば、中国人のインターネット利用時間のうち、TikTokなどの動画の視聴に占める割合は、2017年には5.2パーセントだったものが、現在は90パーセント近くまで跳ね上がっているという。

750億ドル(約8億5500万円)という世界最高の評価額を誇るスタートアップByteDanceが運営するTikTokのようなアプリは、これまでカメラに映ることを嫌がっていた人たちの間で人気を博した。動画編集の技術を持たない人でも簡単に操作でき、フィルターで映像をきれい加工できる。また、音楽を加えて作品を楽しくすることもできる。

Douyin(抖音)で動画を制作を楽しむ老夫婦 / 提供:Douyin ID @淘气陈奶奶

これには、近年のスマートフォンのデータ通信料の値下げや、スマートフォンの普及も手伝っている。中国政府の資料によれば、現在、中国には8億人のスマートフォン利用者がいる。CBNDataのデータベースによれば、インターネット利用者の中で、スマートフォンで動画のストリーミングを利用していた人は2013年には40パーセント以下だったが、2017年にはその割合は80パーセントに急上昇しているという

当初は若い人たち向けに開発されたショートビデオ・アプリだが、高齢者を含むあらゆる世代での人気が高まっている。中国の14億人の総人口のうちの3分の1以上の人たちが、毎月、活発にこれらのアプリを利用しており、50歳以上の人たちも、今では毎日50分もの時間をこのアプリに費やしてる。ちなみに、昨年は17分だった。

Tencentの不安

近年、中国では、Tencentのメッセージング・アプリWeChatのように、多くの注目を集めるモバイルアプリは少ない。WeChatは、買い物、タクシーの配車、ホテルの予約、その他の日常的な作業がワンストップで行えるサービスを提供するまでに発展している。

そこへショートビデオ・アプリが登場し、人々のスマートフォン利用時間が奪われるようになった。TikTokなどのアプリは、そもそもの目的が違うため、WeChatと直接競合するものではないが、本格的な動画の配信アプリに包囲されて、インスタントメッセージ・サービスの利用回数が減少していることをデータが示している。

今年、WeChatとその同類のアプリが、人々のインターネット利用時間で占めた割合は、前年比で3.6パーセント減少したとQuestMobileは報告している。

Tencentが、人気の陰りとByteDanceの台頭を心配するのは無理もない話だ。普段は低姿勢なTencentのCEO馬化騰(ポニー・マー)は、ByteDanceのCEO張一嗚(チャオ・インミン)に対し、盗作とWeChatでのTikTokのブロックに関して、珍しくネット上で喧嘩を売った。

十代の女性による、よくあるフィンガーダンスの動画 / 提供:Douyin ID @李雨霏2007

別のところで、Tencentは行動に出た。4月から、この巨大テック企業はTikTokに対抗するアプリをいくつも展開し始めた。しかし、今のところはまだ、世界に5億人のアクティブユーザーを抱える王者の数字に近づくことすらできていない。この中には、2017年後半にByteDanceが買収し、8月に合併したMusical.lyの総利用者数1億人は含まれていない。

だが、Tencentには代替策がある。同社は、TikTokの中国での最大のライバルKuaishou(快手)の株式を保有している。Kuaishouは、データ集計サービスJigunag(極光)によれば、9月には22.7パーセントの普及率を記録した。それでも、TikTokの33.8パーセントの前では小さな数字に見える。Jigunagの調査では、TikTokは、3分の1以上のモバイルデバイスにインストールされていることになるという。さらに、ByteDanceのHoushan(火山)、Xigua(西瓜)といった、その他のショートビデオ・アプリも、別のニッチ市場で健闘している。それぞれ、13.1パーセント、12.6パーセントという普及率だ。

Alibabaとの同盟は微妙

最近まで、ByteDanceは、中国のもうひとつのインターネットの巨人、Alibabaとうまくやって来たように見える。両社は、3月、TikTokが自社製アプリでの電子商取引にAlibabaのインターネット・マーケットプレイスTaoBaoを利用することを目的に提携した。認証されたTikTok利用者(大変に多いのだが)は、動画を自分のTaoBaoショップにリンクできる。金儲けを可能にするこのシステムで、TikTokは、より質の高い動画クリエイターを集めることができる。一方、Alibabaは、新種のソーシャルメディア・アプリからのトラフィックが得られ、WeChatにブロックされた電子商取引アプリの損失を補える。

だが、蜜月は続かないものだ。ByteDanceはAlibabaのテリトリーに急襲をかけた。ByteDanceは、電子商取引プラットフォームを導入し、長尺の動画ストリーミングの分野に進出してきたのだ。そこは、Alibaba、Tencent、BaiduのiQIYIが支配する領域だ。

ライフハックも人気だ。この男性は植木栽培のコツを伝授している / 提供:Douyin ID @速效三元化合肥

ByteDanceは独立を目指しているようだ。大半の中国のスタートアップとは違い、設立から6年目のByteDanceは、Baidu、Alibaba、Tencentの技術系大手トリオからの資金援助を受けていない。この3社はBATと呼ばれ、中国の一般消費者向け技術を独占してる。

ByteDanceの新分野への進出は、フィードに広告を掲載する以外の新しい収益チャンネルの獲得を急いでいるようにも見える。同社は、2018年の収入目標を72億ドル(約8200億円)に引き上げた。Bloombergによると、昨年の収益を25億ドル(約2850億円)上回る数字だ。

ホームとアウェイ

ブームとは裏腹に、中国のショートビデオ市場に対する規制の逆風が強まっている。この数カ月間、Kuaishou、ByteDanceの動画アプリ、その他の同様の企業やアプリは、違法または不適切とされるコンテンツを排除するとの理由で、当局から締め付けられている。

違反すればアプリストアは閉鎖され、Miaopai(秒拍)のように厳しい罰則を受ける。中国版TwitterのWeibo(微博)の支援を受けたMiaopaiだが、そのおかげでアプリのインストール件数は激減した。

Douyinは真面目な動画も流す。北京のテレビ局はDouyinにアカウントを持ち、動画を配信している / 提供:Douyin ID @BTV新闻

ByteDanceはまだ閉鎖にはなっていないが、そのAIを使った推薦アルゴリズムは攻撃の的になっている。同社自慢のアルゴリズムなのだが、メディアの監視機関は良い顔をしない。TikTokは、未成年の妊娠など「許容できない」動画を推薦することで注意を受けた。ByteDanceの人気のニュースサイト今日头条(今日のヘッドライン)も、1日1億2000万人の利用者に「失言」をして、同様の批判を受けた。

これを受けてByteDanceは、提供するアプリのAIによる推薦を監視する人材を、数千人単位で増員した。

ByteDanceは、TikTokを通じてそのテリトリーを中国の外にまで広げようとしている。今年、このショートムービー・アプリは、世界のアプリストアのランキングを上昇し、Musical.lyと一緒になってその速度を高めている。それに警戒しているのは、もはやTencentだけではない。FacebookTikTokのクローンを作っていることを、先日、TechCrunchがお伝えしたばかりだ。

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(翻訳:金井哲夫)