Startup Step-By-Step 「闘い」

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編集部注:この記事はFreemitのCEOであり、TechCrunchの元ライターであるJohn Biggsにより執筆された。

勝兵は先ず勝ちて而る後に戦いを求める。(Every battle is won or lost before it is fought. )この、自己啓発セミナーでよく耳にする孫子の知恵は、意欲的な起業家の世代に対する禅の公案だ。だが、この言葉にはもう少し地味なバージョンもある。

「Every battle is won or lost before it is fought.」
活気に満ちた起業家の物語での重要な部分は、誰も口にしない部分だ。それは、起業家が誰にも相手にされず、カップラーメンをすする場面だ。世界がきらびやかに輝やく一方で、その起業家がVCに会うために各地を飛び回るという場面だ。敗北の物語は決して語られることはない。

これは、敗北の物語だ。

カルフォルニアで誕生

私が最初にFreemitに関する記事を執筆した当時、私たちの状況は今とは違っていた。私たちのチームは10名ほどで構成されていた。東ヨーロッパ出身の2人のプログラマー、コロラド出身のビックデータ専門家、若い弁護士、そしてユーザーエクスペリエンスが専門の若者、そして、共同創業者たちというメンバーだった。共同創業者は、私の大学時代からの友人であり技術家のRichard Svinkin、ラマーズ法のクラスで出会ったPaul、そして私の3人だ。私たちは、有望な企業を探していたエンジェル投資家から多少の資金を獲得し、Alchemist Acceleratorに参加することになった。Richardは数カ月のあいだシリコンバレーに滞在し、ピッチのやり方を学んだり、ビジネス拡大の方法論などを学ぶことになった。その一方で、残りのメンバーはVCと面接するために各地を転々とし、たくさんの成果を残すことになった。

私たちは送金アプリを製作しようとしていた。それは、ビットコイン・ベースのシステムにM.Night Shayamalan流のアレンジを加えたアプリケーションだ。ビットコインのシステムに存在する「不均衡性」が利益をあげるツールとして利用されており、私たちはそれに目を付けた。ある通貨でビットコインを購入し、それを別の通貨に換金する。すると、その時に適応される為替レートは、従来の金融機関が提供する為替レートに比べて有利になることが多い。私たちはこのビジネスモデルをテストし、構築し、そして拡大することにしたのだ。

スタートアップの生活

Alchemist Acceleratorから学んだことの1つに、スタートアップは仮想実験のマシーンであるという考え方がある。実験をし、数字が結果として現れ、そしてまた別の実験をする。成果を示すためには、それを見せるための何かが必要だ。2010年から2014年に限っては、この考え方は正しかった。VCたちがClinkleのようなバカげたアイデアに対して多額の金額をつぎ込んでいた時代だ。私たちが資金調達を試みた2016年は、ビットコイン系の投資が落ち込み、ユニコーンと呼ばれるIT系スタートアップに対して再評価が行われる時代だ。VCが探していたのは、人を惹きつける力を持ち、売り上げや利益をあげているスタートアップだった。私たちはそのすべてを持ち合わせていなかった。

唯一、私たちが持っていたのは夢だった。ビットコインの価格を最適化すれば、マーケットに打ち勝つことができ、この業界のメインプレイヤーたちにも勝てるという夢だ(このどちらとも、私たちは本気でそう思っていた)。そして、世界中に存在する従来の送金サービスや、非ブロックチェーンの送金サービスに比べて有利なレートでの送金を可能にできるという夢だ。しかし、投資家を納得させるためには、このビジネスモデルを支えるだけの流動性が、はたしてビットコインにあるのかどうかを示す必要があった。それから優秀なVCたちとの会話を経て、私たちはあることを痛感した。今後短期間でビットコインがもつ流動性が十分なレベルまで達する可能性は低く、このビジネスモデルで生き残ることは不可能だということだ。

しかし私たちは闘った。何度もVCのもとに足を運び、私たちのビジネスモデルを説明して回った。私たちは、ビットコイン市場の成熟度が私たちのビジネスモデルにいずれ追いつくことに賭けたのだ。このビジネスモデルを成立させるだけの取引量は存在するし、それがもつハイスピードな送金機能は魅力的であるはずだ。そして、私たちはビジネスのターゲットを送金者から旅行者に変更することも説明した。マドリードへの旅行中に友人にユーロを渡す必要があるとき、Freemitを使えば、数分でその友人に直接ユーロを送金することができる。ポーランドに旅行中、花屋ですてきな花を見つけ、それをおばあちゃんへプレゼントしたければ、Freemitを使って60ズロチを花屋に送金すればいい。Freemitは速く、無料で、シームレスなシステムだ。Freemitのインド企業パートナーを利用すれば、現地でルピーを引き出すことだってできる。これは素晴らしいアイデアだった。

私たちが失敗した理由は3つある。まず第一に、ビットコイン市場は私たちの夢を支えられるほど成熟していなかった。私たちのビジネスに必要なビットコインの量は多い。その量を実際に売り買いすれば、マーケットに多大な影響を与えてしまう。ボウリングのボールを湯船に投げ込むようなものだ。その影響は破滅的なものにもなりかねない。第二に、アメリカ人VCが私たちのビジネスモデルを理解することは難しい。彼らは裕福で、旅行中のお金のことなど気にしたことがないからだ。アメックスのプラチナムカードを持っている彼らが、私たちのサービスなど必要とするだろうか?最後に、私たちは規制によって羽交い絞めにされていた。当時、無許可で送金ビジネスを運営したとして逮捕されるものがいた。そのため、私たちは資金調達なしではサービスを開始することができず、サービスを開始することなしでは資金調達することもできなかったのだ。

「Every battle is won or lost before it is fought.」
その時、私たちの闘いは始まったばかりだった。しかし、私たちはその時すでに敗北していたのだ。

4月は最も過酷な月

私たちは約50社のVCに対してピッチをおこなった。そして、その答えはすべて同じものだった。たった一つの答えを除いて。前CFOの元同僚が、はみ出し者の寄せ集めともいえる私たちのチームに何かを見出してくれたのだ。私たちにとっては最後のチャンスだった。

Keith Teareが「Valley of Death」と呼んだ場所に、私たちは足を踏み入れた。エネルギーいっぱいで、資金があり、従業員も揃っているという時期を意味するインキュベーション。その後にくるステージに、私たちは立っていた。VCの元に足を運び、彼らが私たちのビジネスに投資するかどうか判断する。審判の時だ。結局、私たちが得た答えは「No」だった。

時間が経つにつれて、私たちはチームを編成し直すことを決めた。それまで半年間連れ添ってきたチームメンバーをすべて解雇し、プログラミングは私たち自身で行った。競合企業が私たちのビジョンに追いつき、RevolutやCircleといった企業が私たちのものと似たサービスをローンチした。彼らは、私たちのビジネスモデルが他の方法でも実現可能なことを示したが、同時にそれが持つ制約も浮き彫りにした。地理的、法的、そして経済的な制約だ。

私たちの技術リーダーもCFOもチームを離れた。友情に緊張が走り、ぐらついた。厳しい時期だった。起業家に必要な自信、パワー、積極的な姿勢がすべて吹き飛んだ。完全なる社会不適合者でもなければ、この状況は耐え難いものだろう。病気になった。体重が約10キロ増えた。腰痛とパニック発作に苦しめられた。スタートアップを創りあげることと、精神的な病のあいだには明確な関係が存在する。感受性の高い起業家が壁にぶち当たることを防ぐため、そのことについて話すのは意義のあることだろう。しかし、それはまた別の記事で述べることにする。

Ash RustHans Reisgies、Ravi Belani、Edith Harbaughから学んだ事がある。それは、ある仮説が間違いだったからといって、すべてが間違っているわけではないということだ。それは、間違った質問に答えようとしているだけに過ぎない。

Richardと私は毎日お互いの家で働き、色々な数値の組み合わせを試して最良の道を見つけようとしていた。ビットコインに頼らなくてもビジネスモデルを実現できる技術をもつ人物を新たに技術リーダーとしてチームに招いた。私とRichardは、ビットコインとブロックチェーンの世界が向かう先を知ろうとした。当初のビジネスモデルには多くの変更が加えられ、新しいアイデアが生まれた。

必要は発明の母である。新しい技術的なソリューションを試している途中、私たちはある重大な壁に突き当たった。そこで立ち止まったが、それは短い間だった。5月にメンバー同士で話し合いをしていたとき、議論は白熱し、チームはバラバラになる寸前だった。その時、Richardが動きを止め、彼独特のブルックリンのアイルランド訛りで、ある言葉を発した。起業家にとっては、最高の一言だ。

「ちょっと待ってくれ。いい手が浮かんだぞ。」

闘い、戦争

私たちはまだ完全にやられたわけではない。しかし、これはスタートアップの復活劇でもない。今のところは。この記事は、最初のアイデアを賞賛するものではなく、葬るためのものだ。未来は予測不能であるが、その未来は常に、私たちの会社のようなビジネスと関わりあいながら形成される。私たちのビジネスに起こったことや、現代のスタートアップのあり方について説明するのは意義のあることだ。

現代のスタートアップは以下のように機能する。データを一通り集めたあと、上手くいかない物事を素直に認めて、先に必要があるのだ。「上手くいかない」という言葉が意味するのは、あなたの力が足りないということだ。「上手くいかない」が意味するのは、もう一度チャレンジするということだ。

スタートアップの王道ともいえる、このプロセスを繰り返すことで、ある失敗のアイデアが成功のアイデアに結びつく可能性もある。1日1歩、3日で3歩、3歩進んで2歩下がる。それでも、歩き続けるのだ。


この記事は、「Startup Step-By-Step」の第三話である。残りの記事はここで読むことができる。

[原文]

(翻訳: 木村 拓哉 /Website /Twitter /Facebook

「顔と名前が一致しない」を解決、人材管理ツールのカオナビが3億円調達

「顔と名前が一致しない……」

急成長中のスタートアップにありがちな悩みを解決しているのが、顔写真を切り口にした人材管理ツールの「カオナビ」だ。

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最大の特徴は、社員の顔写真がずらりと並ぶインターフェイス。顔写真をクリックすると、その社員のプロフィールに加えて、異動履歴、取得資格、評価といった項目が見られる。これらの項目は導入企業の環境に応じて自由に追加できる。

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顔と名前が一致するメリットは?

いたってシンプルなプロダクトだが、利用シーンはこんな感じ。

人事異動の会議。社員の名前がうろ覚えでも、「彼はこっちだ、あ、いや彼女はこっち」と組織全体の評価バランスを見つつ、最適な組織配置をドラッグ&ドロップ検討できるわけだ。

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カオナビを最初に導入したサイバーエージェントでは、入社年度を横軸、社員のグレードを縦軸に並べた上で、新規事業の責任者やチームを決めるような使い方をしている。

アパレルメーカーのトゥモローランドは、全店舗1200人のスタッフ情報に「身長」という項目を追加。スタッフを店舗異動させる際、身長をばらけさせている。身長の異なるスタッフが自社の洋服を着ることで、来店者が自分に似合うかイメージしやすくするためだ。

日本全国に店舗を構えるトゥモローランドは、エリアマネージャーが1日に数店舗を周ることも少なくない。そんな時は移動中にスマホアプリでスタッフの情報を把握し、一人ひとりに名前で声がけしているそうだ。

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「顔と名前が一致する」メリットは一見わかりにくいかもしれないが、「名前で呼ばれると、自分が認識されているという気持ちになる。その結果、やる気が出るだけでなく、ミスや不正も減る」とカオナビの柳橋仁機社長は語る。

メルカリから日清まで、前年2倍の200社超が導入

カオナビは2012年4月にサービスを開始。2016年5月末時点の導入企業は、前年同月比2倍の224社。社員数が数十人規模のスタートアップから、1万人以上の大企業までが導入する。

TechCrunch Japan読者にお馴染みの企業ではメルカリやgumi、Sansan、ピクスタなど、大企業では学研や日清食品など、意外なところでは、20歳以下のラグビー日本代表が選手選考のために活用している。

初期費用は無料、月額料金は3万9800円〜。IT・ウェブだけでなく、外食業やアパレル・流通業、スポーツ業界など、企業規模や業種を問わずターゲットが広がっていて、今後の成長が予想されそうだ。

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カオナビの柳橋仁機社長

国内の人事システムとしては、中小ベンチャー向けには「人事奉行i10」、大企業向けには数百万円の「OBIC7」、大企業向けには「SAP」などがあり、クラウド上でタレントマネジメントサービスを提供するスタートアップには「CYDAS」もある。

これらの人事システムについて柳橋氏は、顔と名前を一致させることに特化したツールはカオナビ以外になく、競合にはならないと見ている。既存の人事システムとの連携機能も用意していて、「顔と名前並べるだけで事業を伸ばす」と意気込む。

6月8日には、大和企業投資と日本ベンチャーキャピタル(NVCC)の2社から、総額3億円の資金調達を実施。調達した資金は新機能開発やマーケティング活動に当て、2019年3月までに1000社導入を目指す。

社内SNSのTalknoteを中学・高等学校が導入、SNS利用のトラブル防止を評価

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「『いい会社』をつくる」がコンセプトの社内SNS「Talknote」。ビジネスでの利用が中心のこのサービスが「『いい学校』をつくる」ための試みを開始した。

Talknoteをテスト導入するのは、東京都・武蔵野市の聖徳学園中学・高等学校だ。ICT教育を積極的に推進している同校は、2015年12月よりTalknoteのテスト導入を開始。一定の成果が得られたことから本格導入に乗り出すことをあきらかにした。これまでも教育現場での導入実績はあったが、全面導入は初の事例となる。

教育現場へTalknote導入するのは、「ICT教育の推進」といった目的に限らない。今回の事例に関して言えば、「SNSを利用したいじめや犯罪などのトラブルを未然に防ぎたいという学校側の意図もあった」とトークノートの関係者は語る。そして、そのための機能こそがTalknoteの強みであり、「Slack」や「ChatWork」といった競合他社のツールとの違いであると、トークノート代表の小池温男氏はTechCrunch Japanの取材に対して語った。

「Talknoteは、社員満足度を高めることを最大の目的としている。たとえば、気持よく仕事ができているか、体調を崩していないかなど、『具合が悪い社員』を出さないような努力を企業はすべきだと考えている。そのための仕組みがTalknoteにはある。具体的には、『毎朝9:00にログインしているのに今朝は10:00にログインした』『普段は頻繁に投稿するのに今週は投稿数が極端に減った』といった社員のアクションの変化を、Talknoteは管理者にアラートで教えてくれる」(小池氏)

こういった「アクションの変化」を見逃すことなく、具合が悪い社員を出さない仕組みが、今回の学校側の「SNSを利用したいじめや犯罪などのトラブルを未然に防ぎたい」というニーズと合致した形だ。

Talknoteの導入企業数は右肩上がりで成長している。2015年12月時点では2万1515社。導入企業の業界・規模は飲食から通信・情報サービス、不動産、広告・Webマーケティング、小売、Web・映像制作、人材、コンサルティング、セールスプロモーション、製造業、学習塾、通販など幅広い。企業ごとのアカウント数は数人~1000人以上と幅広い。

「Talknote」導入企業数の推移

「Talknote」導入企業数の推移

Talknoteに限らず、コミュニケーションツールは利用人数が多いほどその恩恵を受けやすい。「塚田農場」や「四十八漁場」などの飲食店を運営するエー・ピーカンパニーでは、1000名を超える全社員がTalknoteを活用している。課題のひとつに、「食材(魚種)が多過ぎて特徴が覚えきれない」ことがあった。しかし、現地の漁師から店舗スタッフまですべての人で情報を共有する「産地共有ノート」というグループを作成。商品知識向上の目的を達成したという。

また、2016年3月にはいわゆる「スタンプ機能」を追加した。

「リリースした3月以降、Talknote上のメッセージ総数は増加傾向にある。今までの新規機能利用率と比べても、初動活性化が早かった印象だ。また、オリジナルスタンプを作りたいというニーズも増えており、実際に導入も進んでいる」(Talknote広報)

同社では、今後も必要に応じてTalknoteに機能を追加していくという。最後に、中・長期的な目標を小池氏に語ってもらった。

「将来的には、あらゆる企業・団体でTalknoteが導入されているというのが理想。社内SNSを含め、コミュニケーションツールはひとつの勝者に収れんしていくというのが一般的な見方だが、それは間違い。B2C向けコミュニケーションツールに目を向ければそれは明らかだ。Facebookを使う人もいればLINEやSkypeを使う人もいる。目的が異なれば使うべきツールも違ってくる。事実、弊社のクライアントの中にもツールを併用している企業がある」(小池氏)

SlackやChatWorkといったB2B向けコミュニケーションツールとのすみ分けを図りながら共存していくというTalknoteの戦略が、小池氏の言葉から浮かび上がってくる。

学生が(技術がなくても)アイデアを無料でアプリにできるアプリビルダーBizness Apps、すでに3万名50校が登録

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“協同ファウンダーになってくれる技術者いないかなぁ”

“今、このアイデアを形にしてくれる、CS出身者を探してるんだ”

2016年ともなると、世の中の全員が(彼らのお母さんすら)アプリのアイデアを持っている。今や大学では、アプリ作りがビアポンに代わって課外活動の主役だ。唯一の問題は、アイデアの数だけデベロッパーがいないこと。あなたが学食でナプキンにスケッチしたアイデアを、3%のマージンで完全なアプリにしてくれるCS専攻の友人もいない。

でも、学生が起業すること自体は(アプリでなくっても)すばらしい。起業体験は、教室では得られない貴重な学習体験だ。ビジネスとして軌道に乗れば経済にも貢献する。

そこで、技術のない人のためのDIYアプリ開発プラットホームBizness Appsは、.eduアカウントの学生に無料アクセスをを提供している。

このプラットホームは最初の数か月で約3万名の学生が登録し、同社は約50の大学の起業学科とパートナーして、その学生たちもユーザーにした。

このプラットホームにアクセスすると、何がどうなるのか? ユーザーが自分でアプリを作れるためのツールが提供されたり、あるいはBizness Appのホワイトレーベルソリューションを利用してアプリを地元の小企業に売ったりできる。どちらも、起業に結びつけることができる。

同社のツールは、一般ユーザーが使えば月額59ドルだ。ホワイトレーベルでアプリを作る場合の設計料は2000ドルだ。これらがすべてただとは、どういうこと?

それは主に、Bizness Appsが、ファウンダーが学生のときに創業されたからだ。協同ファウンダーのAndrew Gazdeckiによると、大学で企業を興したことによって人生が一変した。だから、“今の学生たちに同じ体験を提供できたら、自分も本当の達成感を得られるはずだ”。

もちろん、そうやって多くの学生がこのプラットホームを利用するようになれば、その口コミ効果は大きいだろう。でも、そんなことよりもGazdeckiの関心は、できるかぎり多くの学生に起業家になってもらうことにある。そして、誰もかれもがアプリづいている今の世の中では、学生たちにアプリビルダーへのアクセスを提供することが、彼の関心にいちばん叶うやり方なのだ。そのほかの業種よりも。

このプラットホームを、ネイティブアプリの作り方を本格的に勉強することと比較するのは酷だ。でも多くの学生にとっては、このプラットホームへの無料アクセスによって、今後の売り込みのための最小限のアプリは作れるから、投資家や本物のデベロッパーの関心を惹くには十分だ。

9月1日までに、.eduのメールアドレスでここに登録した学生は、いつまでも無料でアクセスできる。同社によると、締め切りがあるのは学生たちにできるだけ早くアプリ作りを始めてもらいたいため。もっと早く登録すれば、夏休みに何かを作って、秋にそれを大学に持ち込むこともできるだろう。

[原文へ]
(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))

輪行もUberで?! アムステルダムでUberの新サービス開始

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Uberがアムステルダムにて、サイクリスト向けのサービスを展開中だ。アムステルダムといえば人口よりも自転車の数が多いとも言われている街ではある。そんな街でUberはUberBikeなるサービスを開始したのだ。

UberBikeでは、自転車ラック(自転車を車に搭載するためのラック)をつけた車をオーダーできる。自転車に乗るのがメインの目的ではあっても、遠くにでかける際や、あるいは予想しなかった雨に降られたときなど、家と自転車に乗る場所との間を移動するのに車を使うことができるようになるわけだ。

UberBikeの使い方はこれまでとさほど変わらない。アムステルダムのユーザーがUberの利用をする際、他のオプションといっしょに「Uber Bike」のオプションが表示されるようになっている。このオプションを選択して、そしてピックアップ場所を指定すれば良いのだ。

自身は座席に、そして自転車は自転車ラックにて移動することになる。

価格は通常のUberXに、自転車代として€4を加えたものになる。

アイデアとしては単純なものだと言えるかもしれない。ただ、自転車との連携というのはなかなかの目の付け所かもしれない。自転車が人気の地域に広まっていく可能性は十分に有り得るように思う。

詳細についてはこちらで確認できる。

原文へ

(翻訳:Maeda, H

VR制作ソフト「SYMMETRY」開発のディヴァース、103.9万ドルの資金調達を実施

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VR制作ソフトウェアを開発するDVERSE(ディヴァース)は6月2日、500 Starups Japan、Colopl VR Fund、KLab Venture Partners、アドウェイズ、ウィルグループ(傘下のウィルグループインキュベートファンド)、スローガン、エンジェル投資家の川田尚吾氏ほかからConvertible Noteにて103万9000ドル(約1億1000万円)の資金調達を実施したことを明らかにした。

DVERSE(ディヴァース)は2014年10月の設立。海外展開を想定して米国デラウェア州に登記している。CEOの沼倉正吾氏はCAD/CAMシステムなどを開発するゼネテックの出身で、Oculus Riftに出会い、VR領域での起業を決めた。2015年7月には、韓国のBonAngels Venture Partnersおよび日本のViling Venture Partnersからも資金調達を実施している。

同社が開発するのは、VR制作ソフトウェア「SYMMETRY(シンメトリー)」だ。簡単、リアルタイム、高品質を特徴に掲げる制作ソフトで、3DCADデータや3Dモデルファイルを入力し、直感的な操作で編集、出力までが可能だという。

「VRのUI/UXは、広さの制限がある従来の2Dモニタと違って、非常に広大な空間が使用できる。そのため、ピクトグラム的なアイコンのみのメニューでを用意して、それぞれのアイコンの機能については、3Dのアニメーションでチュートリアル的に表示することもできる。DVERSEでは、このような形で『非言語UI』を用いて、グローバル展開可能なソフトウェアの開発を進めている。SNSでもゲームでも、デファクトになるプロダクトやサービスは言語圏ごとに分かれていたが、VRではPCでもスマホでもできなかったグローバルでデファクトなプロダクト・サービスが可能になる。その第1弾がSYMMETRYだ」(沼倉氏)

VRコンテンツの制作ニーズが大きいのは現在北米やヨーロッパが中心だという。沼倉氏によると、VRコンテンツの制作にも使われる3DCADソフトの「SketchUp」は日本のユーザー数が1万人なのに対して、グローバルだと3000万人と、規模に大きな差がある状況だ。ただし、日本では国交省が発表した「i Construction」で2020年までに全ての設計図やデータを3D化するとしている。そのためSYMMETRYは、この対応に追われる施工業者から大きな反響とフィードバックを得ているという。

そういった状況から、当初は「設計、デザイナー」「マンション/戸建てを販売するデベロッパー」「実際に工事を行う施工業者」など建築・土木分野をターゲットにしていく。将来的には「インダストリアルデザインやエンタメにも進みたい」(沼倉氏)という。

新しいチャレンジはいまだに「ヒリヒリする」——挑戦を続ける経営者の覚悟と苦悩

左からプロノバ代表取締役社長の岡島悦子氏、エウレカ代表取締役CEOの赤坂優氏、SSTJ INVESTMENT CEOの木村新司氏、セプテーニ・ホールディングス代表取締役社長の佐藤光紀氏

左からプロノバ代表取締役社長の岡島悦子氏、エウレカ代表取締役CEOの赤坂優氏、SSTJ INVESTMENT CEOの木村新司氏、セプテーニ・ホールディングス代表取締役社長の佐藤光紀氏

スタートアップの起業家が事業を育て、大きな組織を動かす経営者となったとき、果たしてどんなことが求められるのか? 5月26日〜27日にかけて宮崎県で開催された招待制イベント「Infinity Ventures Summit 2016 Spring Miyazaki」の2日目のセッション「プロの経営者に求められるもの」には、エウレカ代表取締役CEOの赤坂優氏、SSTJ INVESTMENT CEOの木村新司氏、セプテーニ・ホールディングス代表取締役社長の佐藤光紀氏が登壇。プロノバ代表取締役社長の岡島悦子氏がモデレーターを務める中、それぞれの経営論、そしてチャレンジを続けることの苦悩を語った。

サービスへの「愛」だけではなく、「組織」として成り立つことが重要

エウレカと言えば、ちょうど1年前の2015年5月に米IACグループのThe Match Groupが買収したことで話題になった。岡島氏は赤坂氏にエウレカの歩みと、どこでIACグループ入りをしたのかと改めて尋ねた。

「通常の会社は一発大きいサービスを開発して、外部から資金を調達するもの。僕らは受託などをやって底力を付けてから、(インキュベーションプログラムの)KDDI ∞ laboに参加して自社サービスを作った」——同社は外部から資金調達をせず(厳密には経営共創基盤がごく一部の株式を取得していた)、自社サービス開発するための土壌を作ってきたのだという。

そんな同社が買収を受け入れる際に重視したのは、“会社のカルチャーを変えない”ということだった。「これまでに4つほどのサービスやってきたが、『サービス愛』で成立しているのではなく、『組織』として成立している」(赤坂氏)。つまりエウレカは、1つのサービスを愛しているメンバーが集まった訳ではなく、さまざまなサービスを作ってきた経験のある組織自体が強みなのだということだ。買収の際にはその組織、カルチャーを変えないということが受け入れられたことで、買収の話は進んでいった。

だが当然ながら親会社から数字に対するコミットメントは強く求められる。「何やってもいいけど結果を達成せい、ということ」(赤坂氏)。しかし必要なM&Aは進める、KPIを達成できる見込みがあればマーケティング予算を捻出するといった投資には積極的だという。また本社とのコミュニケーション頻度は非常に多い。週1回の電話会議に加え、3カ月に1回のペースでアジア担当のCOOやCFOが来日。密なコミュニケーションを取っている。「買収からちょうど1年。まだ信頼されていないので、短期業績へのコミットの色が強いと思っている」(赤坂氏)

岡島氏は赤坂氏に買収後の「経営者としての役割」が変化したかと尋ねる。「(IACグループによる)M&Aが終わったからといって変わるわけではない」と答える赤坂氏。だが会社が100人を超える規模に成長したことを契機にして、組織化されたマネジメントが求められるようになってきたという。権限委譲も進めているところだ。

“大学院のお兄ちゃん”はIPOを通じて経営者として成長

シリウステクノロジーズ取締役を経てアトランティスを創業。その後グリーに同社を売却し、エンジェル投資家としてニュースアプリ「グノシー」を開発するGunosyに投資(2013年11月には代表取締役となるも2014年8月には退任)した木村氏。岡島氏は同氏にGunosyとの出会いについて尋ねる。

「グノシーがリリースされた日、Facebook上にその情報が流れてきた。『これは(他のサービスと)ちょっと違う』と思ったので知人に紹介してもらい、(メンバーと)会いましょうとなった」(木村氏)。当時大学院生3人で開発していたグノシーだが、法人設立時点でユーザー数が2万人、デイリーのアクティブレートが50%という状況。この数字を見て、事業化する価値があると判断したという。

その後木村氏は同社の経営に参画することになるが、その理由について次のように語る。「ニュースだと競合はヤフー。そうすると、戦うためにサービスを変えないといけないし、会社としての体裁を整えていかないと、お金でも文化でも負けてしまう可能性がある。それならば自分が入っていかないといけないと思った」(木村氏)。また木村氏は、グリーの急拡大を“中の人”として見ていた経験がある。そこで学んだマネジメントや仕組み作りに、自らチャレンジしたいという思いもあったという。

「やっぱり(創業メンバーは)大学院の3人。ニュースという大きなポテンシャルのあるサービスに、学生も、CFOも、営業できる人も呼び込まないといけなかったので、エンジニアサイドは福島(創業者であり、代表取締役の福島良典氏)らに任せて、それ以外は僕が連れてくるという話で折り合った」(木村氏)

その後木村氏はグノシーの代表を退く。その発表は当時さまざまな憶測を呼んだが、木村氏は「事業の解像度が深掘りできて、行動規範もできたことで、(自身が)抜けても伸びつつある状況だった」と振り返る。岡島氏が再び経営メンバーに戻る気持ちがないのかを尋ねると、「以前は戻る気持ちが少しあった」とした上で、「経営陣と話して、自分たちで持っている(目標の)数字が僕と同じだったので、戻る必要はないと思っている」とした。木村氏は福島氏について「最初は大学院のお兄ちゃんだったが、IPOを経験して、一番成長した」と評価する。

「自動的に伸びていく組織」こそ美しい経営

創業間もなく、サブ・アンド・リミナルという社名でダイレクトメールの発送代行などを手がけていたのがセプテーニ。そこに社員として入社し、ネット広告事業を立ち上げて現在の同社の基盤を作ったのが佐藤氏。同氏はIPOを通じて経営者としての意識が大きく変化したと語る。

「数えてみたら四半期決算をもう60数回発表していて、それで学んだことはたくさんある。当時は現コロプラの長谷部さん(コロプラ取締役CSOの長谷部潤氏。以前は大和証券のアナリストだった)にアナリストとして詰められ、逆に市場のことを教わったりもした。『経営』とは何か? となっていたことが鮮明になってきた」(佐藤氏)

佐藤氏は、売上高100億円程度の頃まで組織を階層化せず、「力で引っ張る」という経営手法が成果に繋がっていたと振り返る。だがある時期を境に、「オートマティカル(自動的に)に伸びていく組織」を作ることこそが正しい経営ではないかと考えようになったという。「『ハイパフォーマーがめちゃくちゃ働いてすごい成果を出す』というのを『普通の人を普通以上にして成果を出す』に。そうなるよう、自分のリソースを作る方が会社にとっての価値になるのではないか」(佐藤氏)

そうやって組織の仕組み化を進めていった佐藤氏だが、現在、自身のリソースの半分を新規ビジネスであるモバイルマンガ事業「GANMA!」に費やしているという。

「権限委譲で生まれた成長のカーブはとても連続的。良くも悪くも成長しやすく、売上や利益が見える。だが非連続な成長のためには物足りなさが出てきた。非連続な成長のためには、行動を変えないといけないのではないかと思った」

「マネジメントの仕事は経営陣の成熟を感じていたので他(の経営メンバー)でもできる。逆に自分は1つのプロダクトにこだわり抜いて、サービスのエコチェーンを作る。自分の中にあるイメージは、別の人には作れない」(佐藤氏)

新しいチャレンジは「ヒリヒリしている」

他部署の事業担当社と横並びで、自ら新規事業に取り組む佐藤氏。その挑戦について、「結構ヒリヒリしている」と心境を吐露する。

「なまじトラクションがあると、2回目を外すのが格好悪いじゃないですか。それでも自分がしたことがないことに挑戦する。キツい状況に身を置いた方が成長率が上がるので、過去の実績をアンラーン(脱学習)して、一度ゼロに戻した」(佐藤氏)

佐藤氏の発言をうなずきながら聞いていた木村氏も、続けて自身の思いを語る。「やはりすごく怖い。Gunosyもそうだ。アトランティスがうまくいって、(次のチャレンジに)失敗したら恥ずかしいな、と思うんです。だから寝ないんですよ。寝てる間も考えているだけ。とにかく成功に持っていく」

「それだけ怖いのだから、価値あるものだけをやる。また企業として大きくなるためには市場もあるが、会社のバリュー(になるか?)、社会の役に立つモノであるか? ということがある。恐怖よりリターンがあるかというのが自分の中の(チャレンジするかどうかの)物差し。だからあえて外に『やります』と言っている。でないと逃げてしまうので。でもやっぱり怖いですよ」(木村氏)。

これに対して赤坂氏は「自分にプレッシャーかけられるのは才能だ」と語った。通常であれば逃げてしまいたいものにチャレンジするからこそ、その先に進めるのだと。

起業家から経営者へ、非連続な成長を生み出すには

木村氏はエンジェル投資家としての現在20社ほどのスタートアップに出資しているという。投資先の若き起業家に対してはどのようなコミュニケーションを取るのか。

「基本的に戦略には口に出さない。口を出すと投資先は『何でこんなことを言うのか』と思うし、現場のことは現場の方が知っているからだ」(木村氏)。だがその一方で、どのレベルで事業理解が必要なのか、ビジョンや行動規範はどうやって定めるか、会議の進め方に予算作り、評価制度の設計まで、組織をどう「仕組み」にしていくかについては徹底して伝えているのだという。

組織が100人を超えたばかりのエウレカ。冒頭で権限委譲を行うフェーズだと語っていた赤坂氏も、「細かい施策は現場の方がプロフェッショナル」だと同意。会議などでも可能な限り発言を控えるなどしているのだという。「意思決定をさせることの訓練。ケツを持たないと人は成長しない。僕も事業を作ってる中で、10個のうち1個が当たったようなもの」(赤坂氏)

また、自身が新しいチャレンジを行う必要性については、次のように語った。「そうやって(権限委譲で)できる組織は、連続的な成長しかない。非連続な成長のためには圧倒的なチャレンジをしないと。あと0を1個増やす(売り上げの桁を1つ上げる)には何をするか。以前に木村さんは、それを『たがを外す』と言っていた」(赤坂氏)

また、木村氏とは以前から親交があるという赤坂氏は、木村氏から教わったこととして、「事業」「経営」「投資」という3つのステージを経験することがプロの経営者に求められると語った。木村氏もこう続ける。「非連続な成長というのは、事業もあるし、投資もできないといけない。さらに投資先のバリューアップもしないといけない。そういうことを突き詰めていかないと」(木村氏)

佐藤氏はさらに、新しいチャレンジのためには経験を武器にしつつも、初心を忘れないようにと続けた。「僕は41歳で、会社経営としては(登山に例えて)やっと一合目。それは一緒に登る強い仲間ができて、装備についても何が必要か分かって、複数のルートが見えている状態。それを登っているのが今。デイワン(1日目の気持ち)で居続けることが一番大変で、価値が高い。フレッシュで居続けたい」(佐藤氏)

Slackでスケジュール管理やリマインドを丸投げできるボット「Subot」——チーム作業の効率化目指す

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Subotは5月30日、コミュニケーションサービス「Slack」上で、リマインドやGoogleカレンダー連携のスケジュール管理が行えるボット「Subot(スーボット)」をローンチした。当初は無料で公開するが、将来的には月額課金制の導入を視野に入れる。

Subotの第1の特徴は、決まった日付・時刻にSlack上でリマインドをかけられる点だ。例えば、特定のチャンネル(Slack上のグループ)に対して毎月25日の午前10時に「経費精算をお願いします」というメッセージを流すといったことができる。

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また他のボットと連携するのもウリだ。SlackにGoogle アナリティクスのデータを投稿すStatsbot」というボットをご存じだろうか。このボットでは、特定のキーワードで話しかけたり、あらかじめ設定しておいたスケジュールに合わせてGoogle アナリティクスの各種統計データを投稿してくれる。StatsbotとSubotのリマインダと組み合わせることで、Statbot単体ではできない、細かなスケジュール設定で統計データを表示することが可能になる。このように他のBotとの組み合わせにより、さまざまな業務を自動化できるとしている。

第2の特徴は、Googleカレンダーと連携したスケジュールアシスタント機能だ。Slack上で簡単なコマンドを入力するだけで、カレンダーに予定を作成できる。また、チームメンバーの予定を一覧表示したり、チームメンバーの空き時間を自動認識し、全員が参加できる最適なスケジュールを提案することもできる。

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Subotを立ち上げた衣川氏は、これまでヤフーで各種ウェブサービス、IoT製品を連携するプラットフォームである「MyThings」のプロダクトマネージャーを務めていた人物。それ以前はミクシィでiPhoneアプリを開発していた。エンジニアの戸高氏は前職がフリーランスのエンジニアで、以前は衣川氏と同じミクシィにいた。2人が在席していた当時のミクシィは大ヒットゲームアプリの「モンスターストライク」が登場する前。頻繁に新規事業創出プログラムが行われており、2人は事業を提案し落選を繰り返すなかで知り合った。その後いったんは別々の道を歩き始めたものの、衣川氏はヤフーに移ってからも新サービスを作りたいという思いが続いたという。そこでミクシィ時代の知り合いである戸高氏に声をかけたところから、Subotの設立に至った。

2人は2015年の春頃から仕事の合間を縫ってアイデア出しをするようになり、プロダクトのローンチと初期のマーケットヒットを目標に2015年秋にシードラウンドで資金調達を完了。2人ともエンジニア出身ということもあり、ファイナンスの知識がなく苦労したという。10月にSubotを設立。2016年2月にSubotの開発を始め、5月にベータ版の提供を開始。そして今回いよいよローンチを迎えた。

Subotの利点について衣川氏は「チーム作業の効率化」を掲げる。スケジューリングやリマインダといった面倒な作業をSubotに任せ、人間はより人間らしい仕事にフォーカスするというコンセプトだ。開発のきっかけには自身の結婚があった。「家庭を持つと家で仕事をしなければならない場面が増えた。業務へのチャットアプリの普及で家での仕事も容易になり、その中にある非効率な部分を減らしたい」(衣川氏)

すでにSubotの競合となるGoogleカレンダー連携のチャットボットは複数あるし、リマインダ機能自体はSlack本体にも組み込まれている。それらと比較した強みについて衣川氏は、Subotのリマインダを使って他のボットにコマンドを送れる点を挙げる。SubotをSlackボットのハブとして活用できるというわけだ。

なお最近はLINEやFacebookがボット向けフレームワークを提供するなど、チャットサービスで使えるボットが増えてきた。衣川氏はそういった動きについて「とりあえず作ってみた的なボットが多い」と語る。「ボットは利用者に近しい存在。そこで体験の悪いものを出すとユーザーは一瞬で消えてしまう。その中で受け入れられ、ビジネスとして生き残っていけるボットを作りたい」(衣川氏)

Subotの対応言語は日本語と英語。海外展開については「海外の展示会に出展するお金はない」(衣川氏)とする一方、Slack App Directoryのボットカテゴリに現在申請中。これはSlackにおけるApp StoreやGoogle Playのようなもので、登録されれば海外にも認知されるチャンスがあるという。

左からSubotを立ち上げた衣川憲治氏、エンジニアの戸高慎一郎氏

左からSubotを立ち上げた衣川憲治氏、エンジニアの戸高慎一郎氏

オンデマンドで獣医を派遣するペットのためのTreat

ペットの様子がおかしくなって、どうすれば良いのかわからなくなったことはおありだろうか。Googleで検索してみても異なる対処方法が出てくるばかりだし、獣医の予約を取るのにも時間がかかってしまう。そういう事態に対処しようとするのが、iOSアプリケーションとして登場してきたTreatだ。アプリケーションを経由して獣医師とチャットしたり、あるいは訪問を依頼したりすることができるのだ。さらにこのアプリケーションを使って、ペット関連製品を購入したり、あるいはトレーニングやグルーミングの依頼をすることもできる。

つまりTreatはペット医療系のコンシェルジュとして機能するわけだ。

まずはサンフランシスコおよびオークランドを対象にサービスを開始することとなった。下に4匹の子猫について相談する様子をFacebookのライブストリームで流したものを掲載しておこう。

サービスを開始したばかりではあるが、SlackのApril Underwoodや、ペットケア分野で戦略投資を行う人物からの資金を獲得している。iOSアプリケーションを使えば午前8時から深夜まで獣医師に無料で相談できる。また獣医師に訪問してもらう場合の費用は99ドルとなっている。また30分のトレーニングセッションを行う場合は59ドルで爪の手入れが29ドルだ。

Treat Chat

Treat Vet ChatTreatはペットオーナーの悩み全般を解決することも目的としている。関連市場は、餌市場をあわせて600億ドルとなる。Treatがチャットを通じての結びつきを築くことができれば、食べ物からコスメ、健康関連まで、さまざまな面でのワンストップサービスを提供することができるようになる。

サービスのアイデアは共同ファウンダー兼CEOのSteve Simitzisの猫が発作を起こした関連で思いついたのだとのこと。猫は理学療法および人工栄養により回復したそうだが、病が発症したのは午前2時のことで対応に困り、また自身の仕事中にどのように処遇すれば良いのかでとても悩んだのだとのこと。「今の世の中、答えはネット上にあると思っていました。しかしそうではなかったのです」。そこで共同ファウンダーのMarta Croweおよび獣医のKait Linkとこのサービスを考えだした。

Treatの競合としてはオンデマンドで獣医を派遣するVetProntoや、犬の散歩に付随するサービスを展開するWagWalkingなどが想定される。しかしTreatとしては、PetcoやPetSmartなどのペット関連の小売サービス全体をライバルとして成長したいのだとのこと。ペット関連の小売サービスでは現在、緊急時に対応するようなサービスを展開しているところはない。飼い犬の吐いたものが緑であったり、飼い猫の様子がいつもとまったくちがうとき、インターネットに答えを探してもたいていは不安が増すばかりとなってしまう。

Treat Book Appointment確かに、Treatもペットが骨折したような場合に自宅でレントゲンをとったり、麻酔を施したりするようなソリューションは提供していない。「基本的な、予防的手段を提供しようと考えているのです」とSimitzisは言っている。ただしTreatはいくつかのクリニックと提携し、深刻な症状についてはそちらで対応できるようにも考えている。

ペットの具合が悪くなったら獣医につれていく、という発想を変えることが、Treatにとって必要なことだろう。自宅で医療ケアを受けたり、あるいは医師に相談するというのは一般的なことではない。しかしUberは外出時の振る舞いをまったく変えてしまった。それにならって、料金を支払うことによってペットの健康に関する不安を和らげるというあり方を探っているわけだ。

サービス提供開始のプロモーションとして、Treatはベイエリアに子猫を持ち込んでみる予定となっている。これは捨てられた猫などの住まいを探すためのプロジェクトとの共同で行われるプロモーションだ。このプロモーションには獣医も帯同する。この一環としてTechCrunchにも4匹の子猫を連れてきてくれたわけだ。子猫の様子やTreatがどのようなチームなのかについてはFacebook Liveのビデオ(上に掲載した)にて確認することができる。

Treatは現在iOS版のみ提供されており、また利用できるのはサンフランシスコおよびオークランドに限定されている。

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(翻訳:Maeda, H

クラウド労務管理サービス「SmartHR」が優勝——IVSのピッチコンテストLaunch Pad

5月26日〜27日にかけて宮崎県で開催中の招待制イベント「Infinity Ventures Summit 2016 Spring Miyazaki」。2日目の朝には恒例のピッチコンテストの「Launch Pad」が開催された。14社のスタートアップが6分間のプレゼンテーションに挑んだ。その中で見事優勝を果たしたのはクラウド労務サービス「SmartHR」を開発するKUFUだった。僕らが手がけるイベント「TechCrunch Tokyo 2015」のスタートアップアトル、招待制イベントB Dash Campのピッチアリーナに続きスタートアップ向けのピッチコンテストで優勝したことになる。

2位は触感型ゲームコントローラーを開発するH2L、3位はスマートフォン向けの情報配信用プレートを開発するアクアビットスパイラルズ。4位はナレッジシェアアプリを開発するTANREN、チャット型の弁護士相談アプリを開発する弁護士トーク、運転支援システムを開発するPyreneeの3社。各社のサービス概要は以下の通り。

ハックフォープレイ:あそべるプログラミング「HackforPlay

ゲームを遊ぶことを通してプログラミングを学習できるサービス。ゲームをプレイしたり、そのゲームのプログラムを改造してプレイ・再投稿できるゲーム投稿サイト。他のユーザーのコードも見れるので、それを見つつ、技術を学ぶことを促す。現在700以上のゲームが投稿されている。その中心は小学生だという。また同社は金沢市でリアルなスクールを開講。子ども達のプログラミング学習の機会を提供している。

TANREN:ナレッジシェアアプリ「TANREN

TechCrunch Tokyoのスタートアップバトルにも登壇してくれたTANRENは店舗販売員向けのナレッジシェアのサービス。接客業の営業ロールプレイングを動画で撮影・指導できる。マネージャーが課題を設定し、該当する店舗にメールで通達。その後は実際のロールプレイングを携帯電話で撮影してアップロードすることで、マネージャーが指導を行える。携帯電話販売業を中心にサービスを展開。最近ではRIZAPなどでも全店舗導入を実現した。

弁護士トーク:チャットでする新しい法律相談「弁護士トーク

アプリを通じて無料で弁護士と相談できるサービス。テーマや弁護士名をもとに弁護士を検索。チャット型のUIで情報を入力していくことで弁護士に相談を行うことができる。写真などもアップロードして共有可能。より詳しい相談をする場合はアプリから弁護士に正式に依頼する。アプリリース6カ月で5万1000件の相談が寄せられている。特徴は一括見積もりでの弁護士の比較機能。プレゼンでは「弁護士ドットコム」を引き合いに出し、同サービスとの強みについて、弁護士スキルを比較できることこそが強みだと語った。

selfree:5分で電話窓口を開設できるクラウド電話システム「CallConnect

ブラウザベースのクラウド型電話サポートシステム。取得したい番号や会社情報などを入力すれば、すぐにも導入可能なのが特徴。音声ガイダンスの録音や音声ファイルのアップロード、転送機能など各種機能を導入。Salesforceなど各種サービスとの連携を実現。顧客情報の繋ぎ込みなどが可能だ。すでに個人事業主からコールセンターまで150以上の企業が利用している。

KUFU:クラウド労務ソフト「SmartHR

TechCrunch Tokyo 2015のスタートアップバトル優勝企業であるKUFUが提供するクラウド労務サービス。社会保険や雇用保険など労務手続き自動化をしてくれる。最近では開発者向けに「SmartHR for Developers」を公開。SmartHRのユーザー企業の社内システムや他社製クラウドサービスとのデータ連係を実現した。 すでに1000社がサービスを導入している。

RENO:ソーシャルヘッドハンティング「SCOUTER

審査を通過したユーザーが友人・知人を企業に推薦することで報酬を得られるサービス。ただし人材紹介の業務委託は違法になる。そこでユーザーとRENOが契約社員(スカウター)になる(弁護士ドットコムの契約サービスを利用)ことで実現する。スカウターには時給および転職後の年収5%をフィーとして提供する。企業のニーズに対して、スカウターが人物を紹介。現在登録は200人。求人700件。すでに実績も出ているという。

Labit:10秒で出品できる、本のCtoCフリマサービス「ブクマ!

本に特化したCtoCのフリマサービス。書籍・雑誌につくISBNバーコードを撮影すると、書籍の情報やAmazon.co.jpでの最安価格などを自動で取得できる。あとは希望価格と本の状態を設定すればすぐに出品できる。現在サービスを開発中。6月下旬にもサービスをリリースする予定だ。 Labitではこのサービスとは別にクラウドファンディングサービスのCAMPFIREでリアルな書店立ち上げのプロジェクトを立ち上げている。

ウリドキネット:買取比較サイト「ウリドキ

スマートフォンやブランド商品の ネット買い取りの価格比較サイト。これまでは価格比較の機能のみを提供していたが、最新版では価格の比較から直接買取申し込み(対応する店舗のみ)までをサイト上で実現した。買取業者はサイト上で商品の買取価格を設定可能。競合比較や買取依頼管理のステータス管理などの機能を提供する。この機能によって1日3時間の管理業務が1時間に短縮した事例もあるという。

Bizcast:YouTuberと企業のマッチングプラットフォーム「BitStar

YouTuberを起用したマーケティングなどを行うためのマッチングプラットフォーム。一部を除き、YouTuberの多くは収益化に悩んでいるのが実情。また一方で企業は最適なYouTuberと出会うことが難しい。これをオンラインでマッチングするほか、実際に動き出した案件についてはデータ解析機能を提供する。延べファン数2500万人のYouTuberが登録する。またInstagramなど各種のソーシャルメディア向けにもサービスを展開する。

CANDLIFY VR:Technologies すばやく、簡単に、結果を出すVR制作プラットフォーム「InstaVR

通常制作には数週間から数カ月が掛かるVRコンテンツを手軽に制作できるツールがInstaVRだ。360度写真や動画があれば、簡単にブラウザ上でVRコンテンツを制作できる。コンテンツ内に動画を埋め込んだり、電話発信やサイトへのリンクを付けることも可能。視線情報を取得しているため、ヒートマップの機能も提供する。サービスは2015年末にローンチ。これまで100カ国1000社が採用。スミソニアン博物館をはじめとして北米でも採用実績がある。

WHITE:世界初の触れるVRゴーグル「MilboxTouch

Google Cardboardやハコスコ同様の段ボール製VR筐体。競合との差別化ポイントは1枚のシール。導電性インクで描かれたこの回路シールを触ることで、スクロールやスワイプ、タップの入力が可能になる。この技術はすでに特許を取得しており、今後は各種VR筐体メーカーに対してOEM提供を進めていく予定だ。今後はSDKをオープンソース提供していく予定(Unityは提供済み)。プレゼンではVR版パックマンのプレイ動画なども紹介された。

H2L:世界初の触感型ゲームコントローラ「Unlimited Hand

Unlimited Handは腕に電気刺激を与えることで触感を実現したVR向けのコントローラーだ。インプット、アウトプットの両方を実現しており、指ごとの操作が可能。ハードウェア、ソフトウェアともにオープンプラットフォームを採用、あらゆるVR端末、コンテンツに利用可能だという。2015年にKickstarterにプロジェクトを掲出。7万2000ドルを集めた。今後は反響の大きかった順に北米、ヨーロッパ、中国に出荷していく予定だが、本日から日米amazonで319.99ドル(3万5000円)で販売を開始している。

Pyrenee:いまある車に付けられる運転支援システム「Pyrenee Drive

人類が負傷する最大の原因である「交通事故」。そんな交通事故の約8割はドライバーの不注意で起こっているという。そんな交通事故を防ぐための後付け運転支援デバイスがPyrenee Driveだ。立体物を認識し、ぶつかるものがないかを確認。ぶつかりそうになった際はアラートを出す。最近の車には自動ブレーキも搭載されているが、それでも事故が起こる可能性はある。スマートフォンとBluetoothで連携し、プロダクトの透過スクリーン上で操作することができる。2017年3月には日本、米国、欧州、アジアで販売する予定。

アクアビットスパイラルズ:瞬間コミュニケーションで世界をつなぐ「スマートプレート

「ググらせない」をテーマにしたプロダクト。スマートフォンにタッチすることで、特別なアプリを導入することなく各種のアプリを立ち上げたり、情報をプッシュする小型のプレート。プレゼンでは技術解説はなかったが、AmazonのDash Buttonに近いイメージだ。例えばタッチすることでタクシーの配車を行ったり、商品のECサイトを立ち上げる、といったことを実現する。専用アプリ・クラウドでリアルタイムなデータ解析も可能。設置については特許技術を持っているという。

スマートスーツケースのBluesmart、外観を整えて性能もアップしたブラックモデルをリリース

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GPSや充電用バッテリーも搭載したスマートスーツケースのBluesmartが、新たにブラックモデルを発表した。

今回のモデルはデザインを重視したものとなっている。素材やディテイルにもこだわり、よりスマートになったスマートスーツケースといった感じになっている。一般的な高級スーツケース風のいでたちだ。

初期モデルからさまざまな面が見直され、外装にはナイロンとポリエステルを採用し、また2層のPUコーティングを行い、本体に傷がつくのを防ぎ、同時に防水性ももたせている。

実用性の観点からは、取り外し可能なメッシュディバイダーも付属している。

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もちろん注目すべきはデザインよりも採用されている「テクノロジー」の方だろう。

BluesmartスーツケースにはSIMカードも搭載されていて、Telefonicaの回線を使って3G接続を行う。これによりスーツケースがある場所をリアルタイムで確認できるようになっているわけだ。また10,000mAhのUSBチャージャーも内蔵していて、スマートフォンを最高で6回程度充電できるようになっている。

さらにBluesmartは、Bluetoothを使ったリモートロックの仕組みも搭載している。所有者がスーツケースから離れれば、自動的にロックすることができるようになっている。

ところで空港で荷物を預ける際に重量オーバーを指摘された人もいるかもしれない。Bluesmartスーツケースには重量センサーも備わっていて、重さが規則の範囲内におさまっているかどうかをチェックすることもできる。

Bluesmartが当初発表したスーツケースは450ドルだったが、いろいろとバージョンアップしたこのBlackモデルは595ドルとなっている。現在はプレオーダーの受け付け中で、30日以内には出荷される予定だとのことだ。

詳細についてはこちらから確認することができる。

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(翻訳:Maeda, H

Supership、SSP事業「Ad Generation」でスマホネイティブ広告を強化

Facebookオーディエンスネットワークを含むAd Generationのイメージ図

Facebookオーディエンスネットワークを含むAd Generationのイメージ図

2014年10月にKDDIが中心となって立ち上げたモバイルインターネットの新ポータル構想「Syn.」。このSyn.のプロジェクトに参画するKDDI傘下のスケールアウト、nanapi、ビットセラーが合併して立ち上がったのがSupershipだ。

同社ではこれまで3社で展開してきた事業に加えて、新事業の立ち上げを進めている。Syn.のアライアンス拡大も着々と進めているが、サイト上にあるプレスリリースを見ると広告ビジネスの会社の印象が強い。中でも旧・スケールアウトが展開するSSP「Ad Generation」が好調なのだそう。月間広告リクエスト数は160億インプレッション。2015年11月にはFacebookとのパートナー提携も発表。Facebookのオーディエンスネットワークによる広告配信も可能になった。

「サービスの開始は年半前。すでに競合がおり、最後発のサービスだった。だがまだアプリに強いSSPはウェブに比較すると少ない状況。SSPとして自由に使え、透明性の高いモノを無料で提供できるように考えた」—Ad Generationの事業を統括するSupership ジ・アドジェネの池田寛氏はこう語る。

あまりTechCrunchは広告の話題を取り扱ってきていないので改めて説明すると、SSPとはSupply-Side Platformの略称。複数のDSP(Demand-Side Platform:広告在庫の買い付けから配信までを管理する広告主側のツール)やアドネットワークから、メディア(アプリなどの「面」を持つサービスを含めてのメディアという意味だ)にとって最も収益性の高くなる広告を自動で選択・配信するツールを指す。

中の人が「最後発のサービス」と語るとおりで、配信規模で同社を上回る国内SSPはあるが(例えばジーニーの「Geniee SSP」で月間500億インプレッション、VOYAGE GROUPの「Fluct」は月間250億インプレッションをうたっている)、Ad Generationはスマートフォンアプリで導入が盛んだという。時期の詳細は明かされたなかったが、App Storeのランキング上位100アプリの40%がAd Generationを導入しているというケースもあるそうだ。

そんなAd Generationだが、今後はネイティブ広告の配信を強化したいと語る。

「comScoreが発表したレポートによると、84%のユーザーは1カ月に一度もバナーをクリックしないという話があった。またGoogleの発表では、モバイル広告の半数は意図しないクリックだという話もある。スマートフォンユーザーにとって、結局バナー広告は無駄で邪魔なモノでしかない」(池田氏)

とは言え、まだまだすべてのネイティブ広告が洗練されているかというとまた別の話。「記事だと思って読んだら広告だった」ということで媒体価値を落とす可能性もある。そのため、「文字の色を変え、通常の記事とは数ピクセル空けるなど、広告だと一目で分かるレイアウトを用意する。間違えて広告を押してくれるほうが儲かるかも知れないが、真面目にやっていく。広告でも有益な情報であればユーザーは広告を押すし、クライアントの商材価値も上がる。『バナー広告を捨てる』は言い過ぎだが、それくらいの気持ち」(池田氏)

池田氏はこういった取り組みの結果がFacebookとのパートナーシップにも結びついたと語る(なおSupership代表取締役社長の森岡康一氏はFacebook Japanの元副代表だ)。Facebook広告の売り上げは2015年通期で前年比44%増の179億ドル。これは2015年通期で674億ドルのGoogleに次ぐ世界第2位の数字で、急速に売り上げを拡大している。

実際オーディエンスネットワークによる広告は、CTR(クリック率)で国内のアドネットワークと比較して約1.2〜2倍、eCPM(1000ページビューあたりの収益)で約1.5倍程度になるのだという。「オーディエンスターゲティングによってユーザーに最適な広告が配信されているほか、世界約300万社の広告主が配信するため、国内のアドネットワークと比較して広告への興味が摩耗しにくい。またネイティブデザインのため、ユーザーの抵抗が少ない。またオーディエンスターゲティングに基づいた配信のため、広告効果も高い」(Supership)

労務管理クラウドの「SmartHR」がAPI公開、社内システムなどと連携可能に

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社会保険や雇用保険など労務手続き自動化をするクラウドサービス「SmartHR」。サービスを提供するKUFUは5月25日、開発者向けに「SmartHR for Developers」を公開した。

SmartHR for Developersでは、他社製クラウドサービスとのデータ連携を実現するためのAPIやWebhookを提供しており、すでにマネーフォワード、キメラなどクラウドサービスを提供する4社と連携、もしくは連携に向けて協議を進めている。概要は以下の通り。

マネーフォワード:クラウド給与計算ソフト「MFクラウド給与
従来は給与計算ソフトには社会保険関係の情報を含む膨大な従業員データの入力が必用だったが、本連携により、入社手続きを行った従業員情報を1クリックでMFクラウド給与に取り込むことが可能になる。※すでに実装済み

キメラ:クラウド型採用管理サービス「Talentio

Talentioはキメラが提供する採用管理クラウドサービス。SmartHRとの連携により、入社が決定した内定者のデータを1クリックで同期し、そのまま入社手続を行えるような仕組みを提供する予定。将来的には在籍期間まで含めた採用KPIの分析機能の追加も視野に入れる

ソネット:クラウド型勤怠管理システム「AKASHI
本日公開のクラウド型勤怠管理システム。SmartHRとの連携では、勤怠データを1クリックで取り込み、勤務実績に応じて必用な手続きの有無を自動判別、そのまま手続を作成、役所へウェブ申請まで行えるような仕組みを提供する予定

ヴェルク:受託ビジネスに特化したクラウド型業務サービス「board
受託ビジネスに特化したクラウド型業務システム。連携では、SmartHRが持つ人事情報を活用し、人件費まで考慮された案件単位の損益管理機能を予定する

またSmartHR導入企業であれば、内製の社内システムとSmartHRの自社アカウントをシステム連携できるようになる。すでにSmartHRを利用するメルカリ、VASILYなどが社内システムとの連携を進めている。

各種クラウドサービスとSmartHRのシステムを連携することで、例えば従業員の入退社をトリガーにして各種クラウドサービスへ従業員情報を登録するなど、登録されている従業員データを様々な活用が可能になる。将来的には、外部サービスからデータを取り込んで必要手続きを自動作成したり、シングルサインオンを活用した各種クラウドサービスのアカウント管理をしたりと昨日を拡張させていく予定だ。

「クライアント企業からも『社内システムとSmartHRで従業員データのマスタを二重に持つことは面倒だ』という声があったことからAPI提供に至った」(KUFU代表取締役の宮田昇始氏)。もともと中小規模向けにサービスを提供してきたが、現在では1000〜4000名規模の企業もSmartHRの導入検討を進めているのだという。そういった背景もあり、API提供によるシステム連携に加えて、IP制限や二段階認証など、大企業のニーズにも応えられる機能開発を進めていくとしている。

物流アウトソーシングのオープンロジが2.1億円の資金調達、海外展開も視野に

左からオープンロジ代表取締役の伊藤秀嗣氏、取締役CTOの五十嵐正人氏

左からオープンロジ代表取締役の伊藤秀嗣氏、取締役CTOの五十嵐正人氏

ロジスティクスのアウトソーシングサービス「オープンロジ」を運営するオープンロジ。同社は5月24日、IMJ Investment Partners(IMJIP)、SMBCベンチャーキャピタル、インフィニティ・ベンチャーズLLPなどから総額2億1000万円の資金調達を実施したことを明らかにした。また今回の資金調達に伴い、IMJIPの岡洋氏が同社の社外取締役に就任する。オープンロジでは調達した資金をもとに人材採用や経営基盤の強化を進める。また東南アジアを中心とした海外事業展開も視野に入れる。

オープンロジは2014年10月にサービスを開始した。一般的な物流倉庫では、見積もりを行い、そのあとで業種業態ごとに「坪単価いくら」という価格設定をしている。スペースを借り上げる設定のため大規模事業者でないと利用が難しい。そこでオープンロジでは物流倉庫会社と提携。「アイテム1つ単位いくら」というシンプルな価格設定と、オンラインでの管理機能を提供することで、中小規模のEC事業者や個人が倉庫を手軽に利用できるサービスを展開してきた。

直近の状況についてオープンロジ代表取締役の伊藤秀嗣氏に聞いたところ、中小規模のEC事業者やフリマアプリやオークション利用の個人などが多く利用するだけでなく、大規模EC事業者の利用、商品サンプルの発送、イベント用資材の搬入搬出、店舗の棚・什器の保管など幅広いニーズがあるという。

「評価されているポイントは3つ。費用が分かりやすく安い、またオンラインで倉庫内のアイテムを管理できる使い勝手、小ロットでも対応する柔軟性だ。ユーザーの継続率は90%に上る。また、想定以上に大規模なユーザーからの問い合わせを頂いている。そのニーズは単に倉庫スペースが欲しいと言うことだけでなく、現状利用している受注管理の業務システムの課題を解決をしたいというものもある。今後はそういった企業に向けたエンタープライズ向けプランも用意する」(伊藤氏)

パートナーとなる物流倉庫会社も拡大しているそうだ。倉庫側の業務システムも提供し、さらに送客も行う点が評価された。現在毎月1社のペースでパートナーが増えているのだという。

同社は今後、東南アジアを中心に海外展開も視野に入れる。

「海外の事業者が日本でビジネスをしたいときにもロジが必要。日本の事業者が海外でビジネスをしたい場合も同じだ。オープンロジであれば、在庫確認をオンラインでリアルタイムに行い、自国にいながら海外の物流オペレーションが実現できるようにもなる。来年以降は積極的に進出していきたい」(伊藤氏)

「タトゥー」のメインストリーム化をうけ、タトゥー版InstagramのTatoodoがアプリケーションをリリース

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タトゥー文化はますますメインストリーム化しているようだ。タトゥー関連産業は消費産業の中で6番目のはやさで成長しており、またアメリカ人の30%がタトゥーをいれているのだそうだ。そんな中でスタートしているのがTattoodoで、タトゥー関連の「デジタルハブ」を目指してサービスを提供中だ。タトゥーの写真を掲載し、コミュニティやマーケットプレイスとして機能する。すなわちタトゥー版のPinterestのようなサービスを展開しているわけだ。

コペンハーゲン発のこのTattoodoはこの2月、250万ドルの資金を調達している。出資にはAOLのJimmy Maymann(AOLのContent部門およびConsumer Brands部門のプレジデント)、Tom Ryan(Pluto TVのCEO)、Jake Nickell(ThreadlessのCEO)、Rene Rechtman(Maker StudiosのInternational President)、そのほかおおぜいのエグゼクティブたちが参加している。

このTattoodoだが、このたびiOS版およびAndroid版のアプリケーションをリリースした。手軽に数千ものタトゥーギャラリーや、Tatoo界で有名な人が発信する情報などを持ち運べるようになったわけだ。タトゥーコレクターないしタトゥーアーティストたちにはおおいに役立つに違いない。アプリケーションでフィーチャーされているのはMike Rubendall、Megan Massacre、およびHenning Jørgensenなどで、彼らの新しいデザインやファッションスタイルを見ることができる。タトゥーに興味がある人はきっとハマるのではなかろうか。

TattoodoはアントレプレナーのJohan PlengeおよびMik Thobo-Carlsenが2013年にコペンハーゲンで立ち上げたサービスだ。後に世界的に有名なタトゥーアーティストであるAmi Jamesも参加している。

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(翻訳:Maeda, H

シェアリングエコノミーに欠かせない本人確認情報をブロックチェーンで共有、ガイアックスが実証実験

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スタートアップ企業がシェアリングエコノミーのアイデアを事業化しようとするとき、乗り越えないといけない壁がある。利用者の本人確認だ。利用者は「運転免許証のコピー」のような重要な個人情報を含む書類を事業者に預けることになる。手間もかかるし、信頼性も求められる。社会的な信頼を獲得する途上段階にあるスタートアップ企業にとっては大きなハードルとなる。ここで、利用者側から見ても信頼できる透明な個人情報共有の枠組みを低コストで作れるとしたら、そのメリットは計り知れない。

ガイアックスが発表したブロックチェーンの実証実験(プレスリリース、同社のブロックチェーン技術サイト)の狙いは、シェアリングエコノミーのスタートアップ企業が参加しやすいような、非集権化(decentralized)された個人情報管理の枠組みを低コストで作ることだ。「強大な1社が個人情報を管理する枠組みではうまくいかない。もっといい形で共同所有できるようにしたい」とガイアックスは説明する。

同社は「シェアリングエコノミー協会」の理事として立ち上げに参加しており(関連記事)、その参加企業の一部に呼びかけて、今回の実証実験を行う。今回の実証実験に協力あるいは賛同する企業およびサービス名は以下のようになる。

  • コギコギ スマートロック型シェアサイクルサービス『COGICOGI
  • MOSOMafia 美容のプロフェッショナルを出張でオンデマンド予約『careL(ケアエル)』
  • BUZZPORT 仲間を集めて海外旅行プランに参加『TRAVEL PLANET
  • DogHuggy 外出する飼い主と近くの犬好きホストをマッチングする『DogHuggy
  • Huber 訪日外国人旅行者と国際交流を望む人たちをガイドとしてマッチングする『TOMODACHI GUIDE
  • ココナラ 知識・スキル・経験をマッチングする個人間マーケットプレイス『ココナラ
  • notteco 長距離ライドシェアサービス『notteco
  • Tadaku 外国人宅での食のシェア(家庭料理教室マッチング)『Tadaku

本人証明をP2Pデータベースとパブリックブロックチェーンで

ガイアックスが現在考えている枠組みは、本人確認をある1社が行えば、複数の会社で「本人確認済み」であるとの情報を共有できるようにするものだ。構想では、本人確認書類(例えばパスポートや運転免許証など)そのもののデータは、最終的には特定の企業ではなく非集権化されたP2Pのデータベース(候補はIPFS)により管理する。本人確認を行った後、本人確認に利用したデータのハッシュ値を改ざんが事実上不可能なパブリックブロックチェーンに刻み込み、証明書を発行する。証明書のデジタル署名、ブロックチェーン、タイムスタンプを照合することで、本人確認データおよび証明書が改ざんされていないことを確認する。このような非集権化された枠組みを作り上げる構想である。

利用するブロックチェーン技術の候補だが、今のところ最も利用者数が多く実績があるビットコインのブロックチェーンが有力だ。「現段階の要件、つまりIDと本人確認ドキュメントを確認して証明書を発行するには、ビットコインの仕様で十分ではないかと思う」とガイアックスでは話している。ただ、最終的にどの技術を活用することになるかどうかは未定だ。「もし求められる要件にスマートコントラクトの要素が含まれるようなら、Ethereumを検討することもありえる」(同社)。

個人情報管理の「重たさ」(コスト、手間、リスク)は増す一方だ。しかも、複数の事業主体による個人情報の利用(第三者への提供)に対して世間の目は厳しくなる方向にある。

ブロックチェーン技術で本人確認の情報を共有する仕組みがうまく構築できれば、システム構築コストを押さえつつ、セキュアで透明な枠組みを作れるはずだ。この仕組みがうまく回れば、スタートアップ企業の側にとっても、個人情報を預ける利用者の側にとってもメリットは大きい。希望としては、個人情報を預ける利用者の側から見ても「大事な情報は自分でも管理できる」ような透明性を担保した仕組みにして欲しいと願っている。

コメディ専用のストリーミング番組を提供するLaugh.ly、現在はクローズドベータで運用中

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ディック・ヴァン・ダイク(Dick Van Dyke)のように大声で笑うのが好きな人には、きっと気に入ってもらえるはずだと信じているのがLaugh Radioだ。コメディやお笑いが大好きな人に、検索可能なコメディアーカイブのストリーミング番組を提供するアプリケーションだ。

「コメディを構成する話芸に興味を持つ人のために、いちからアプリケーションを作り上げました」とファウンダーのDave Scottは言っている。

Scottによると、スタンダップ・コメディは人気であり、毎年5000万もの人がコメディ・クラブに出かけているのだとのこと。スタジアムでのイベントも売り切れになり、いまやニッチな娯楽ではなくテレビやラジオでも放送されるメジャーな存在になっている。

しかし。その割に、コメディアンたちは十分な収入を得られずにいるのだ。

「30年前、レコードセールスの20%はコメディでした。エディ・マーフィーやチーチ&チョン(Cheech & Chong)、およびアンドリュー・ダイス・クレイ(Andrew Dice Clay)などの全盛期でした」とScottは語る。「しかしレコード(およびCD)が廃れてしまったのです。アルバムは売れなくなり、人々はストリーミングを聞くようになりました。おかげでコメディ市場が衰退してしまったのです。ただし、市場が衰退したといっても、人々のコメディに対する興味までなくなってしまったとは思えないのです」。

「コメディを待ち望んでいる人が多いことは、現状から明らかでしょう。また、それと同時に多くのコメディアンが恵まれずにきたことも理解したのです。コメディアンたちはどのようにして露出の機会を増やせばいいのかわからず、状況を改善するためにいったい何をすれば良いのかの手がかりを掴めずにいたのでした。そこでこのアプリケーションを世に問うこととしたのです」とのこと。

狙いはなかなか面白そうだ。アプリケーションは今夏より提供を開始する予定で、400名のコメディアンの参加を見込み、さらに新人には自身の作品をアップロードするような場も提供したいと考えているそうだ。視聴者はストリーミングチャネルを選んで、特定のコメディアンのコントを聞いたり、あるいは何人かのコメディアンたちが共演するお笑い番組などを聞くことができるようになる。

無料版には広告が流されるようになっていて、月額7.99ドルの有料版も提供されるそうだ。有料版では専用のコンテンツも提供し、また広告を流さないようにするのだそうだ。

Scott曰く、コメディアンたちにも好意的に受け入れられているとのこと。ルイス・ブラック(Lewis Black)なども、すぐに参加したい旨の態度表明を行なっているのだそうだ。

「録音してしまえば、トイレに行っている間に稼げたりするわけかい?」とブラックは言ったのだとのこと。「そりゃやらないわけがないじゃないか」。

現在資金集めを行い、それと同時にクローズドベータでサービスを提供中なのだそうだ。

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(翻訳:Maeda, H

スマホVRのハコスコがKDDIとアイ・マーキュリーから資金調達、業務提携も拡大

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現地時間の5月18日に開催されたGoogle I/OでGoogleがスマートフォンVRのプロジェクト「Daydream」を発表したばかりだが、日本でもスマートフォンVRに関する動きがあったようだ。段ボール製の筐体を組み立ててスマートフォンを差し込めば、簡単にVRコンテンツを体験できる「ハコスコ」。このハコスコとVR動画共有プラットフォームの「ハコスコストア」を提供するスタートアップのハコスコが5月19日、KDDIの運営するファンド「KDDI Open Innovation Fund」およびミクシィ傘下のマーキュリーキャピタルから合計約5000万円の資金調達を実施したことを明らかにした。

ハコスコの創業は2014年7月。代表取締役を務める藤井直敬氏は、MITの研究員を経て、独立行政法人理化学研究所(理研)の脳科学総合研究センター適応知性研究チームのリーダーとして「SR(Substitutional Reality:代替現実技術)システム」の開発に携わってきた。現在は、VRコンソーシアムの代表理事も務めている。2014年にはANRIがシードマネーとして3000万円の出資を行っている。

以前の取材でも聞いたのだが、ハコスコは初月から単月黒字を達成している。ビジネスはハコスコの販売や、アプリを通じたVRコンテンツ配信チャンネルの販売、VRコンテンツの製作など。企業のプロモーションなどで利用されるケースが多く、これまでに約50件の導入事例があるという。その内容は音楽アーティストの映像特典やアート、博物館の企画展と連動したコンテンツなど。筐体の荷台数は17万個。ハコスコストアのアプリダウンロード数はiOS、Android合わせて7万件。特定ユーザーへの限定公開も含めて、約5000本のVR動画がクライアント企業やユーザーからアップされた。

「ハコスコ本体も販売しているが、それだけでは価値を出せない。プラットフォームからコンテンツの提供までワンストップで実現できるのが強み」(藤井氏)。3D表示機能(左右の目それぞれに視差のある映像を表示することでe映像を立体的に見せること)についてはGoogleよりも早く対応している。

今回の資金調達はいずれもCVCからだが、これは事業提携の意味合いも強いためだそう。KDDIは今後VRプラットフォームの営業および集客⽀支援、同社のAR事業「SATCH」との連携を進める。またミクシィとは、先日発表されたばかりの「きみだけ360°チャンネル」を始めとしたVR エンタメコンテンツの開発で提携する。その他にも、エイベックス・ミュージック・クリエイティヴ、グリー、アマナ凸版印刷、ポニーキャニオン、博報堂/博報堂プロダクツとの業務提携を進める。また、不動産、旅行、冠婚葬祭といった領域での提携も拡大。筐体はこれまでEC限定で販売していたが、今後は大手家電量販店でも販売していく。

ハコスコでは今後、段ボール筐体にこだわらず、スマートフォンだけでVR、ARなどを楽しめるプロダクトも開発していくという。「過去・現在、CG・リアルという4象限で言えば、今までは過去、CGの組み合わせのコンテンツが中心だった。それを現在、リアルなものであっても、(過去、CGと)あまり変わりのない体験にしたい」(ハコスコCOOの太田良恵子氏)。KDDIとの連携でARエンジンを組み込むほか、位置情報などをもとに「ある地点である方向を向いた際にだけ特定の体験をさせる」という、位置ゲー(位置情報ゲーム)のような体験を提供していくとしている。

TwitterおよびInstagramのフォロワー分析を行うSocialRankにプレミアムサービスが登場

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SocialRankは、ブランド、エージェント、セレブのために、ソーシャルメディア上で自分をフォローする人についての情報を把握するサービスを展開している。同ジャンルの他サービスと異なり、人数などを表示するだけではなく、それぞれのフォロワーの特徴に基づいて分析を行うことができるようになっている。そのSocialRankが、新たにSocialRank Premiumの提供を開始した。

SocialRankは、TwitterおよびInstagram上で「最も価値のある」(most valuable)フォロワーや、特定の地域に住んでいるフォロワー、ないし特定のトピックについてツイートしているフォロワーなどをリストアップすることができる。共同ファウンダーのAlex Taubによると、プレミアム版では具体的アクションに役立てることのできるデータを提供したいのだとのこと。

プレミアム版で提供されるもっとも目立つ機能といえばDMキャンペーン用の機能だろう。キャンペーンの役にたってくれそうだと思えるフォロワーがいれば、その人に何か特別なサービスを提供しようというのは自然な発想だろう。そして既に自らのアカウントをフォローしてもらっているのなら、DMでキャンペーンを展開することができる。そのことを積極的に活用するために、SocialRank Premiumでは1度に複数のDMを同時発送できるようになっている。DMの一斉発送の際に、個々人の名前を埋め込むような機能ももっている。

もちろんこのサービスの目的はスパムや、不必要なキャンペーン情報を垂れ流すことではない。Taubの言葉を借りれば、真に関係を構築したい人とつながるための手段を提供するのです、とのこと。またSocialRankとしても機能の使われ方については注意を払っていくつもりなのだそうだ。最初のうちは同時発送できるDM数に制限を設けたりすることも行うらしい。

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DMキャンペーンの機能に加えて、フォロワー情報を詳細に分析する機能も加えられている。たとえば、特定地域に居住していて、バイオ欄に「engineer」という語を含むフォロワーを一覧するようなこともできる。そうして抽出したデータはPDFに書き出すこともできる。

蛇足かもしれないが付け加えておくと、SocialRankの基本サービスは無料で提供されている。またSocialRankは、Market Intelligenceというより高額な有料オプションも提供している。そちらのサービスでは競合のフォロワー状況などを検討してみることができるようになっている。今回発表されたSocialRank Premiumは月額49ドルだ。

「Market Intelligenceは、企業が比較的大きな規模の比較分析などを行うために開発したものです」とTaubは言っている。「Premiumの方はソーシャルネットワーク上での状況分析などを請け負う個人などにも採用を検討してもらえるサービスだと考えています」。

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(翻訳:Maeda, H

「シリコンバレーと日本をつなぐ」ルース元駐日大使や三菱商事が3億3500万ドルのファンドを立ち上げ

前駐日米国大使であり、Geodesic Capitalゼネラルパートナーのジョン・ルース氏

前駐日米国大使であり、Geodesic Capitalゼネラルパートナーのジョン・ルース氏

米カリフォルニア州に拠点を置くGeodesic Capital(ジオデシック・キャピタル)は5月17日、第1号ファンドの「Geodesic Capital Fund I」を組成したことを発表した。ファンドの総額は3億3500万ドル。三菱商事のほか、三井住友銀行、三菱重工業、三菱東京UFJ銀行、三菱UFJ信託銀行、損害保険ジャパン日本興亜、ニコン、日本政策投資銀行、東邦銀行などが出資する。

ジオデシック・キャピタルは、前駐日米国大使のジョン・ルース氏と、アンドリーセン・ホロウィッツ元パートナーのアシュヴィン・バチレディ氏、三菱商事で立ち上げた投資ファンド。

ルース氏は第1期オバマ政権下、2009年から2013年まで駐日大使を務めたが、それ以前はスタートアップのサポートにも積極的なウィルソン・ソンシーニ・グッドリッチ&ロサーティ法律事務所のCEOを務めていた。TechCrunchの過去記事にもあるが、Salesforce.comをはじめとしたIT企業の取締役も務めている。またアシュヴィン・バチレディ氏は米VCのアンドリーセン・ホロウィッツでFacebookをはじめ、Twitter、Box、Airbnb、Githubへの投資に関わってきた。

日本やアジアのマーケットを狙う米スタートアップに出資

Geodesic Capitalでは、グロースステージのシリコンバレーのスタートアップに対して、500万〜3000万ドルの範囲で投資を実行する。バチレディ氏いわく、投資の際に重要視するのは(1)Strong Leader、長期的なビジョンを持ち舵取りをするCEOがいること、(2)イノベーションを起こすプロダクトを持っている個と、(3)潜在市場、ポテンシャルがあること、(4)強い実行力と急速な拡大を実現できること——の4点。

投資の対象とするのは、日本やアジア進出を狙うシリコンバレーのスタートアップだ。ルース氏は大使としての日本赴任から米国・シリコンバレーに戻ってきて、あらゆる業種でITによる破壊的なイノベーションが起こっていること、また同時にシリコンバレー企業が日本の市場への関心が高まっていることなどを背景にこのファンドを立ち上げたと語る。現在公開されているポートフォリオは、セキュリティのTanium、メッセージングサービスのSnapchat、アプリケーション配信ネットワークのInstart Logic、ビットコインマイニングに特化したコンピュータを手がける21の4社。

こう聞くと——あまりにも使い古された表現だが——「黒船襲来」という印象を持つ人がいるかも知れない。だがルース氏らは、海外からのイノベーション、イノベーティブな企業が日本の市場に参入することこそが、日本経済に価値をもたらすと語る。「一方通行でなく、両方が通行できる『架け橋』を作る」(ルース氏)。シリコンバレーのスタートアップに対しては日本を玄関口にして、アジア進出を支援。一方、ファンドへ出資する日本企業に対してはシリコンバレーの拠点も用意しているという。

三菱商事もファンド組成の趣旨について「当然だが金融投資のリターンは大いに期待している」(三菱商事常務執行役員新産業金融事業グループCEOの吉田真也氏)とした上で、「狙いは中期経営戦略2018にうたっているとおりで、ビジネスにおける先端技術の利用や新規ビジネスの開発、既存ビジネスの変革。そのためにもシリコンバレーとのアクセスを深めていきたい」(吉田氏)と語る。

新しい市場へのチャレンジ、「One size fits all」になるな

ところで、米国で人気を博したサービスであっても、いざ日本市場に参入した際にはパッとしないなんて話は時々聞くものだ。そうならないためにも重要なのは、ローカルパートナーと組むなどして、カルチャライズすることだろう。例えば、今では日本人が数多く利用するTwitterも、デジタルガレージと組んで日本に参入している。

リース氏もこの点については意識しており、「米国企業に限らず、世界の多くの企業が日本やアジアの国々に進出する際に犯す過ちが『One size fits all』。つまりそのまま持ってくれば成功すると信じているところだ」と指摘する。これに対してGeodesic Capitalでは、投資先の日本参入支援を行う日本法人「ジオデシック・ジャパン」を設立しており、カントリーマネージャーには元オムニチュア・ジャパン カントリーマネージャーの尾辻マーカス氏、シニアアドバイザーに元ツイッター日本法人代表取締役会長の近藤正晃ジェームス氏を招聘。日本でも成功したそのノウハウを生かして投資先の支援を行うとしている。