SalesforceのAI開発に携わった3人がエンジニアリング業務に秩序をもたらすFaros AIを設立

Faros AI(ファロスAI)の創業者3人は、Salesforce(セールスフォース)で働いていた頃、同社の人工知能「Einstein(アインシュタイン)」の開発に携わった。Einsteinの目的は、企業がよりデータを活用できるように支援することだが、それを構築するエンジニアリングチームは、他の企業と同じように、エンジニアリングの運用データをトラッキングすることの苦しみを経験した。

Faros AIのCEO兼共同創業者であるVitaly Gordon(ヴァイタリー・ゴードン)氏は、Salesforceの膨大なリソースにもかかわらず、データの不足とそれを収集するための適切なツールがないことに悩まされていたと語る。「私たちはSalesforce内でその業務を拡大し、1万近い顧客と取引していたと思いますが、実は(データの活用に関して)私たちが技術組織として主張していることを、実践できていないと気づいたのです」と、ゴードン氏はいう。

営業やマーケティングチームがデータを活用するために、エンジニアリングチームが作っているようなツールが、エンジニアリングチームにはない、ということはまさに目からウロコだった。彼らは、サイドプロジェクトとしてこの問題に取り組み始めたが、これは誰にとっても大きな問題であると認識するようになった。

創業者の3人、つまりゴードン氏に加え、Salesforce Einsteinに携わっていたMatthew Tovbin(マシュー・トヴビン)氏とShubha Nabar(シュバ・ナバール)氏は、2019年に同社を辞め、この問題を解決するためにFaros AIを設立した。彼らは、開発者がコーディングを終えた時点から、その更新されたコードが顧客の前に製品として着地するまで、どれくらい時間がかかるかといったことなどを、エンジニアリングマネジメントがデータを見て簡単に把握できるようにしたいと考えた。

彼らは、Jira(ジラ)、Jenkins(ジェンキンス)、GitHub(ギットハブ)などのエンジニアリングシステムに接続するための製品を作り始めた。これには、データ間の論理的な接続を行い、ダッシュボードで顧客に提供できるようなインテリジェンスレイヤーが含まれる。このシステムは、例えば、GitHubにサインインしているエンジニアとJiraにサインインしているエンジニアが同じであることを確認したり、複数のシステムにわたってエンジニアリングプロジェクトの履歴や動きをトレースしたりすることができる。

Faros AIエンジニアリングオペレーションのダッシュボード(画像クレジット:Faros AI)

彼らは一般的なツールにすぐに接続できる50以上のコネクタを構築したが、Faros社がネイティブにサポートしているかどうかにかかわらず、エンジニアリングチームがあらゆるシステムに接続できるように、このコネクタ技術をオープンソース化することを決めた。最終的に、Faros CE(Community Editionの略)と呼ばれる製品全体のオープンソース版を開発することも決定し、米国時間3月2日より、一般にダウンロードとインストールができるようにした。

そのエンタープライズ版は、完全にホストされたSaaS製品であり、セキュリティコントロール、ロールベースアクセス、Oktaなどのエンタープライズ認証システムとの接続など、企業顧客に求められる種類の追加機能が備わっている。この製品は現在、Box(ボックス)、Coursera(コーセラ)、GoFundMe(ゴーファンドミー)など、多くの顧客に利用されている。

Faros AIの従業員数は現在20名だが、2022年中に倍増する見込みだという。すでに男女比50%ずつの多様な経営陣がいて、より幅広く多様なチーム作りを目指している。ゴードン氏によると、多様性のあるチームだったSalesforce Einsteinチームのネットワークや、それ以前に働いていたLinkedIn(リンクトイン)での経験が、そのために役立っているという。

同社は今回、1600万ドル(約18億5000万円)のシードラウンドについても発表した。起ち上げ直後の2019年10月に、同社は最初の375万ドル(約4億3000万円)を受け取っている。投資家との間で取り決めたいくつかのマイルストーンを達成した後、さらに300万ドル(約3億5000万円)ほど受け取り、最近になって残りを獲得したという。この資金調達は、SignalFire(シグナルファイア)、Salesforce Ventures(セールスフォース・ベンチャーズ)、Global Founders Capital(グローバル・ファウンダーズ・キャピタル)が主導し、複数の業界エンジェル投資家が参加した。

なお、Pinpoint(ピンポイント)やAcumen(アキュメン)など、他のスタートアップも同じ問題に取り組んでいることは注目に値するだろう。

画像クレジット:PeopleImages / Getty Images

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(文:Ron Miller、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

障がい者支援に向けたeラーニングサービスを提供するLean on MeがシリーズAエクステンションとして8050万円を調達

障がい者支援のeラーニングサービスを提供するLean on MeがシリーズAエクステンションとして8050万円を調達

障がい者支援者向けeラーニングサービスを提供するLean on Me(リーオンミー)は3月2日、シリーズAエクステンションラウンドとして第三者割当増資による8050万円の資金調達を実施したと発表した。これにより、シリーズAラウンド累計調達額は約3億円となった。調達した資金は、障がい者支援のためのeラーニング「Special Learning」のコンテンツ充実、サポート体制の強化、システム改良によるサービス強化にあてる。

引受先は、以下の通り。

・おおさか社会課題解決2号投資事業有限責任組合(大阪信用金庫およびフューチャーベンチャーキャピタル)
・京信イノベーションC2号投資事業有限責任組合(京都信用金庫CVC「京信ソーシャルキャピタル」およびフューチャーベンチャーキャピタル)
・京銀輝く未来応援ファンド2号投資事業有限責任組合(京銀リース・キャピタル)
・三菱UFJキャピタル8号投資事業有限責任組合(三菱UFJキャピタル)
・松尾義清氏(農業総合研究所取締役)

2014年4月設立のLean on Meは、「障がい者にやさしい街づくり」をビジョンに掲げ、障害のある方の生きづらさを解消し共生社会の社会基盤となることを目指すスタートアップ。

Special Learningは、社会福祉法人の職員や障がい者を雇用する一般企業の社員に向けたサービス。障がい者を支援するうえで必要となる知識を、動画を用いて学べるオンライン研修を提供している。日常の支援でつまずいた際に、必要とする知識・コンテンツを自ら選択し学ぶことで、実際に適切な支援が行えるようサポートするという。具体的な内容の例としては、「AEDの使い方・応急手当・防災マニュアル・移乗介助の仕方」といった安全面、「基本的人権・障害者差別解消法・虐待の5類型・運営適性委員会など」の権利面などがある。障がい者支援のeラーニングサービスを提供するLean on MeがシリーズAエクステンションとして8050万円を調達

建設業界向け受発注クラウド「建設PAD」のKPtechnologiesが5200万円のシード調達、機能拡大と人材採用を加速

建設業界向け受発注クラウド「建設PAD」を手がけるKPtechnologiesが5200万円のシード調達、機能拡大と人材採用を加速

クラウド型受発注ソフト「建設PAD」を運営し建設業界のDX化を推進するKPtechnologiesは3月2日、シードラウンドとして、第三者割当増資による総額5200万円の資金調達を実施したことを発表した。引受先は、B Dash Fund 4号投資事業有限責任組合、エアトリ、WealthPark、クロスボーダーインベストメント、複数の個人投資家。調達した資金は、建設PADのユーザー体験をさらに高めるため、プロダクトの機能拡充および拡販・人材採用にあてる予定。

建設PADは、建設業界の契約、受発注、請求といった業務デジタル化し事務作業にかかる負担を削減できる、電子商取引プラットフォーム。

建設業界は、高齢化や労働人口の減少、時間外・休日労働に関する36協定の2024年改定、電子帳簿保存法改定、コロナ禍による働き方改革への適応といった課題に直面している。その解決のためDX化推進の動きがあるものの、順調に進んでいるとはいえない状況だ。これを受けKPtechnologiesは、建設業に特化したSaaS企業として建設PADに各種課題を解決する新機能を実装し、DXの実現を推進しようとしている。

KPtechnologiesは、2020年2月に設立されたスタートアップ。「建設産業のポテンシャルを最大化する」をミッションに掲げ、現場とデジタルの共生基盤を構築し業界のイノベーションをうながすことを目指している。建設業界向け受発注クラウド「建設PAD」を手がけるKPtechnologiesが5200万円のシード調達、機能拡大と人材採用を加速

食料供給の未来を守るため、屋内栽培をスマート化するSource.ag

アグテックスタートアップのSource.agは米国時間3月1日、温室をよりスマートにするために1000万ドル(約11億6000万円)の投資を獲得したと発表した。創業者たちは、気候変動と人口増加にともなう世界的な食糧需要の急増により、より多くの作物が屋内で収穫量を確保せざるを得ないという地平を見据えている。温室に関する記事を書いていると、種(たね)とシード資金(seed)でダジャレを書きたい誘惑に駆られるが、ここではもう1つのダジャレ、成長産業(growth industry、栽培産業)についてご報告しよう。

1000万ドルの投資ラウンドをリードしたのはAcre Venture Partnersで、E14 fundと、食品専門のベンチャーであるAstanorが参加した。他に、同社の顧客ともいえるサラダ菜栽培の国際的な協同組合Harvest Houseやトマト専門のAgrocare、ピーマン専門のRainbow Growersなどもこの投資に参加している。

同社は、温室、いわゆるハウスをよりスマートにするためのソフトウェアを開発している。同社の主張では、温室農業(ハウス栽培)は安全で信頼性があり、気候耐性のある食糧生産方式として、従来の農業の最大15倍の収量を、20分の1の水量で可能にする。Sourceがさらに独特なのは、データとAIを利用して温室の生産効率を上げ、各作付けの高い収量を維持できることだ。

AcreのマネージングパートナーであるLucas Mann(ルーカス・マン)氏は「食糧のグローバルな供給は気候変動でその希少性と難度が増しています。今後はそれがもっと苛酷なものになると思われます。そのため効率の良い大規模な栽培方式により、農業のフットプリントを軽くすることを目指さなくてはなりません。温室農業はすでに実証済みの有効なソリューションですが、イノベーションがなければ需要に応えることができません。その点でSource.agは、グローバルなスケーラビリティを実現するための重要な役割を担うことができるはずです」と語る。

資金は、製品開発の加速と商用化コラボレーションの拡張に充当される。

SourceのCEO、Rien Kamman(リエン・カンマン)氏は次のように説明する。「ひと口でハウスと言っても、いろいろなかたちや方式があり、いずれも技術的には大なり小なり進歩しています。しかしハイテクともなれば、湿度や潅水や栄養分など、人が思いつく限りのあらゆる環境要素をコントロールしたいものです。たとえばトマトは、土ではなくロックウールのようなものが最適です。そのような育て方は、農地に依存しません。しかも十分にコントロールできるため、毎日の細かい管理も可能です。農家が日々調整するパラメータは60から70ほど存在します。それにより作物の育ち方が決まるのですが、植物に何を与えるべきか、植物固有のパラメータはどれも最適状態か、わき芽かきや整枝はどこをいつやるべきかなど、毎日、正しい決定をしなければなりません。本来であればこの決定は一種の職人技になるため、これまでの農業と同じく難しいものです。1人前になるには、数十年が必要です」。

栽培の難しさは歴然としたものだが、Sourceはこれらすべての成長パラメータを監視し、それを収量の履歴データや市場価格と組み合わせて農家の体験を改善する。

「私たちのシステムには2つの側面があります。1つは、植物の現状を評価するレコメンドシステム。リソースの価格や天候などを先読みして予想、それに基づいて極めて具体的なレコメンドを農家に提供します。サステナビリティと収量を最大化するために、植物自身と温室内の気象に対して今日、明日何をすべきか、たとえば刈り込みや枝下ろしはどうすべきかなどをレコメンドします」とカンマン氏はいう。

「もう1つは、計画通りにいかないときにどうするかということです。そこで登場するのがアルゴリズムです。さまざまな制御システムと協力して、その戦略を取り、実際に最も効率的な方法で実行することを確認します」。

インドア農業はまだ相当量の人力労働を必要とし、特にトマトやキュウリ、ピーマンなど、大きく枝や蔓を張る作物は大変だ。しかし同社によると、そんな作物でもSourceは役に立つ。例えばいつどこを整枝すべきか、どれとどれを摘果すべきか教えてくれるし、植物の生長のいろいろな側面を細かく最適化できる。しかもSourceが興味深いのは、リアルタイムの価格データを利用して、熟度とその進捗の早い遅いを調整できることだ。さらに、競合する他の農家の熟度の進捗をモニターして、少ない収量を高く売ったりできるのではないかといったことも考えられる。気温や天候の条件を見ながら生産コストを抑えることも可能だろう。

同社のサービスはSaaSで提供され、料金は栽培の規模で決まる。

「農業は今、歴史の転換点にあると私たちは考えています。人類をここまで導いてきた農業は、現在、100億人もいる人類を激しい気候変動の世界へ導いてくれることはないでしょう。しかも現在、そのマーケットは巨大です。したがって、気候耐性のある食糧システムの必要性が増しているのです。数十年後のより厳しい時代には、いうまでもなくその他の伝統的農作物も屋内へと移行しているでしょう。私たちの投資家と私たちのチームを結びつけているものは、スマートインドア農業の利点が短期的なものではなく、グローバルにスケールできる知識を構築できることです」とカンマン氏はいう

同社は、プロダクトのスクリーンショットを公開することを拒否したが、「競争上の機密事項」のためだという。

画像クレジット:Source Ag

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(文:Haje Jan Kamps、翻訳:Hiroshi Iwatani)

世界最大級の食品会社が新製品を開発するとき、まず相談するAIデータ分析「Tastewise」

Tastewiseの共同設立者アロン・チェン氏とエイエル・ガオン氏(画像クレジット:Hadar Berl)

食品を市場に出す適切な時期を調査することは、従来はアンケートやフォーカスグループを通じて行われてきたが、Tastewise(テイストワイズ)はこれをテクノロジーでより良く実現できると考えている。

イスラエルに拠点を置く同社は、人工知能(AI)によるデータ分析を開発し、食品ブランドが次のヘルシー、持続可能でおいしい製品について、製品開発、マーケティング、小売販売に関するよりスマートな意思決定を行えるよう支援している。また、世界中の100万以上のレストランをモニタリングし、食品ブランドとその食品を試したがっている人々を結びつけている。

Tastewiseは過去5年間で、Nestlé(ネスレ)、PepsiCo(ペプシコ)、Kraft Heinz(クラフトハインツ)、Campbell’s(キャンベル)、JustEgg(ジャストエッグ)など、トップクラスの食品・飲料メーカーや新進気鋭のフードテック系スタートアップからなる顧客ベースを持つまでに成長した。

そしてこのたび同社は、新たにシリーズAで1700万ドル(約19億6400万円)の資金を確保した。Disruptiveがこのラウンドをリードし、既存投資家であるPeakBridgeとPICO Venture Partnersに加わった。今回の資金調達により、Tastewiseの累計調達額は2150万ドル(約24億8400万円)に達した。

Tastewiseの共同創業者兼CEOであるAlon Chen(アロン・チェン)氏は、12歳のときから独学でコードを書き始めたエンジニアで、5年前に母親のシャバット(安息日)のディナーから会社のアイデアを得た後、Google(グーグル)でのキャリアを捨てたという。

「母はすばらしいシャバットディナーを作るのですが、私たち家族にその週の食事のニーズ(好みやアレルギー、栄養ニーズなど)を聞いてくるようになったのです」とチェン氏。「共同創業者のEyal Gaon(エイエル・ガオン)とともに、消費者の食生活のニーズが以前よりとても早く変化していることに気づかされました。21世紀になっても、毎年発売される3万個の新商品のうち、9割が失敗しているのです。画一的なアプローチは、もはや不可能なのです」。

同氏は、最も革新的なフードテック企業でさえ、いまだに時代遅れの小売データに頼って商品戦略を考えており、正しいデータから始めなければ、間違った答えが返ってくることを説明した。

そこでチェン氏とガオン氏は、食品・飲料企業がより健康的な食品、新しいフレーバー、植物由来のバリエーションなどで10兆ドル(約1155兆円)規模の業界をディスラプトし、新製品の販売と採用を加速させる方法でそれを実現できるよう、データ専用のプラットフォーム構築に乗り出した。

2017年にスタートして以来、2020年と2021年に増資を行ったTastewiseは無駄のない運営を行っているとチェン氏はいう。同社は2020年から2021年にかけて売上を3倍に拡大し、現在は米国やイギリスだけでなく、インド、オーストラリア、ドイツ、カナダ、フランスへとデータと人材の拡充を進めている。

米国とイスラエルではすでに従業員数を2倍に増やし、食品・飲料ブランド上位100社のうち15%近くと、数十社のフードテックスタートアップと協業しているという。

「Tastewiseを始めた当初、フードテックはまだ存在しておらず、食品・飲料の予測分析について投資家と話を始めたとき、これが未来だと話していました」とチェン氏は語る。「私たちは、世界がデータを取得し、食品業界を改善し、よりヘルシーでおいしいものを作る手助けをしなければなりません」。

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(文:Christine Hall、翻訳:Den Nakano)

iPS細胞による免疫細胞臨床応用に向けた研究を進める京都大学発サイアスが21.3億円調達、研究開発体制拡充・米国展開へ

iPS細胞由来の免疫細胞の臨床応用に向けた研究を進めるサイアスは2月28日、シリーズBラウンドとして、第三者割当増資による総額21億3000万円の資金調達を実施したと発表した。引受先は、新規投資家のEight Roads Ventures Japan、F-Prime Capital Partners、既存投資家のD3 LLC。調達した資金により、研究開発体制を大幅に拡充し、次世代の免疫細胞療法の開発を加速する。またEight RoadsとF-Primeの協力の下、本格的な米国展開の準備を開始する。

サイアスは、京都大学iPS細胞研究所(CiRA)の金子新教授の研究成果を基に、iPS細胞由来の免疫細胞(T細胞やNK細胞等)の臨床応用に向けた研究開発を進める京都大学発のスタートアップ。

他家iPS細胞を原料として、固形がんをターゲットにT細胞受容体(TCR)を遺伝子導入するiPS細胞由来T細胞製品や、固形がんをターゲットとするキメラ抗原受容体(CAR)遺伝子を導入したiPS細胞由来NK細胞製品など、各種免疫細胞治療の研究開発を行っている。また、この分化技術から製造される再生免疫細胞は、様々なTCRやCARを搭載しており、多様ながん種に対する治療法の開発を行えるプラットフォームとなりえるという。そのため、所望するターゲットを狙ったTCRやCARを搭載した免疫細胞製品を様々なパートナーと共同開発することも可能としている。

京都大学iPS細胞研究所を起源とするサイアスの免疫細胞分化方法は世界有数の技術としており、これを基に世界最先端の遺伝子・細胞療法市場、巨大な資本市場、さらに優秀な人材へのアクセスが可能なアメリカに踏み出すことで、グローバル企業への進化を目指す。

コンテンツクリエイターに無料の音楽を提供する英国のUppbeatが約7億円を調達

英国を拠点とする音楽プラットフォームのUppbeatは、コンテンツクリエイターがYouTubeやTwitch、TikTokなどのプラットフォームで公開する動画に使用できる無料で高品質の音楽を簡単に見つけられるサービスを構築し、現在50万人以上のユーザーが利用している。同社はビジネスを成長させるためにシリーズAで460万ポンド(約7億500万円)を調達したと発表した。

Uppbeatを構築したのは、英国を拠点とする音楽ライセンス企業のMusic Vineを共同で創業したLewis Foster(ルイス・フォスター)氏とMatt Russell(マット・ラッセル)氏だ。2人は、自分たちの専門性を活かしてクリエイターの間で高まっている無料の音楽リソースのニーズに応えるチャンスがあると考えた。現在、1億人以上がソーシャルプラットフォームでコンテンツを共有しているが、無料でありながら高品質の音楽の選択肢は多くないと2人は確信していた。

Uppbeatは2021年1月にサービスを開始し、費用のかかる音楽ライセンスプラットフォーム、あるいはYouTubeのオーディオライブラリやクリエイティブ・コモンズの音楽といった無料の音楽に代わる選択肢を提供することで、クリエイターが作るコンテンツで使われる音楽の著作権に関する頭痛の種を取り除いている。

Uppbeatはフリーミアムのモデルを活用して、クリエイターがアカウントを作成するとサイトのカタログの約50%にアクセスでき、1カ月に10件ダウンロードできるようにしている。プレミアムのサブスクリプション(月額6.99ドル、約800円)ではすべてにアクセスし、無制限にダウンロードできる(3年間と永続のサブスクリプションも用意されている)。

2021年9月にはサイトを拡張して、音楽だけでなく「ミームスタイル」のコンテンツに適した効果音とクリップのライブラリも提供している。

画像クレジット:Uppbeat

曲にはライセンスのない使用への対抗策としてフィンガープリントが必要であるため、Uppbeatの音楽を使う際に著作権の主張が発生することもある。しかしおよそ5分以内でシステムが必要なクレジットを確認してから主張を自動で処理する。無料ユーザーはYouTubeの動画の説明にクレジットを追加して著作権の主張をクリアすればよい。YouTubeを利用するプレミアムユーザーは自分のチャンネルをホワイトリストに登録して自動で著作権の主張から保護することができる。

このシステムはYouTube限定ではない。音楽と効果音はストリーマー、ポッドキャスター、ブロガー、その他のソーシャルメディアクリエイターが利用する、ほぼすべてのプラットフォームで動作する。

一方、Uppbeatのアーティストは音楽の所有権をすべて保持し、レベニューシェアベースで報酬を受け取る。

Uppbeatによれば、毎月7万5000人以上の新規ユーザーを獲得し、サイトへのトラフィックは月間100万セッションを超えるという。リテンションは高く直帰率は10%未満の低さであると、同社はTechCrunchに対して語った。セッションタイムの平均は5分以上だという。

Uppbeatのカタログはサービス開始時の1000曲から3000曲以上へと増えている。2500種類の効果音とクリップも追加された。同社は、年間収益ランレートは71万8000ドル(約8300万円)で、Music Vine全体としてはおよそ240万ドル(約2億7600万円)と発表している。

同社は、シリーズAの投資家は戦略的支援者でありこの分野のリーダーで、当人が公表を望まないため発表できないと述べた。

今回の資金調達により、Uppbeatは同社の音楽をYouTubeで公開してブランドのプレゼンスをさらに高め、オンラインのコミュニティとこれまで以上に直接関わっていくとしている。バックエンド全体を見直して、パーソナライズ機能を備えたスマートなユーザーインターフェイスの構築も予定している。

さらにクリエイター向け新機能を公開する計画もある。例えばクリエイターが独自のプレイリストを作成して共有する機能が挙げられる。これによりUppbeatのアーティストの露出が増え、クリエイターの収益化につながる可能性もある。すでに同社はユーチューバーと連携し、厳選された「パートナーのプレイリスト」を公開してユーチューバーが自分のチャンネルでよく使う音楽を紹介している。

従業員も現在の9人から増員し、新しいオフィスに移る予定だ。

共同創業者でCEOのフォスター氏は次のように述べた。「Uppbeatの公開以来、クリエイターコミュニティの反応はまさにすばらしいものです。クリエイターの積極性とフィードバックによりこのプラットフォームは現在の地位を得ることができました。Uppbeatがエキサイティングな新しい展開を始めるにあたり多額の投資を受けられたのはクリエイターのみなさんのおかげです。今回の調達はUppbeatが目指す成長戦略の資金となるゲームチェンジャーであるだけでなく、クリエイターコミュニティにとってエキサイティングな出来事であり誰もが自由に創作活動ができるようにするという我々の道のりにおける大きなマイルストーンです」。

画像クレジット:Uppbeat

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(文:Sarah Perez、翻訳:Kaori Koyama)

Satellite Vuが熱画像撮影のための衛星コンステレーション打ち上げに向けて約24億円調達

2100万ドル(約24億円)の新たな資金を得たSatellite Vu(サテライト・ヴュー)は、2023年に最初の7基の衛星によるコンステレーションを打ち上げ、計画通り地球の熱監視を開始することがほぼ決定している。Lockheed Martin(ロッキード・マーチン)とIn-Q-Tel(イン・キュー・テル)が投資家に加わっていることからもわかるように、同社による軌道上からの暑さと寒さの監視は、重大な経済的洞察と、さらにそれ以外の種類の洞察にもつながる可能性がある。

Satellite Vuは、急速に進化している地球観測画像の製品群に興味深い機能を追加する。例えばPlanet(プラネット)のような可視光や、ICEYE(アイスアイ)のようなレーダーによる3D構造に焦点を当てたプロダクトが多いが、Satellite Vuは熱画像を収集し、幅広い産業に応用することを目指している。

創業者兼CEOのAnthony Baker(アンソニー・ベイカー)氏が、2021年のシードラウンドの際に説明したように、熱画像を見れば、建物に人が住んでいるか、都市のどの部分に交通量が多いか、工場の熱や冷却水が漏れているか、地下水が消失しているか増加しているかなどを知ることができるのだ。

関連記事:産業や気候変動モニタリングで重要な赤外線と熱放射を観測する衛星画像のSatellite Vuが5.4億円調達、2022年に衛星打ち上げへ

「私たちの技術は、建物の熱的フットプリントを監視し、経済活動の洞察と効率を導き出すことができます。また、水路の廃棄物汚染を発見したり、災害救助を支援するためにも役立ちます」と、ベイカー氏はTechCrunchにメールで語った。

英国を拠点とする同社はこれまで、製品の需要を検証するために、高高度飛行で撮影した写真と、独自の画像処理ハードウェアを使って、敷地や都市全体をスキャンしてきた。この実証飛行が非常に好評であることが証明されたため、同社は実際に衛星が打ち上げられるまで定期的な運用を計画している。

衛星の打ち上げは2023年の初頭になる予定だ。同社はSpaceX(スペースエックス)と契約し、この打ち上げ会社のライドシェア機で、最初の衛星コンステレーションとなる7基の衛星を軌道へ運ぶ。Satellite Vuの「秘伝のタレ」である光学技術は、大気圏内飛行の時代からアップグレードされ、より鮮明な昼間の画像を提供できるようになっている。衛星自体もより機動力が増しており、1パスあたりより多くのショットを撮影できるようになった。

Satellite Vuの画像処理衛星のイメージ画像(画像クレジット:Satellite Vu)

この技術が諜報活動や防衛に応用できることは明らかだ。しかし、1ピクセルあたり約3.5メートルという解像力では、衛星に1人ひとりの人間を見る分ける能力はないと、ベイカー氏は断言する。もちろん、自動車や人の集団など、人間がいることを示す大きな特徴は見えるかもしれないが、これは戦術的に有用なものではない(比較のために挙げると、他社の衛星熱画像の解像度は1ピクセルあたり100メートル程度である)。

そうは言っても、これが商業的に価値ある情報源であることは明らかだ。同社がA2ラウンドと称する投資機会に、ロッキードとIn-Q-Telが誘い込まれたことからもそれはわかる。

「このラウンドは1500万ポンド(約23億円)で完全にコミットされていました」と、10月にベイカー氏は書いている。「しかし、ロッキード・マーチン、In-Q-Tel、Contrarian(コントラリアン)はもう少し時間を必要としていたので、このラウンドに参加させたかったのです。経営陣と現在の投資家は、シリーズBでコンステレーションに資金を供給する強力なシンジケートを持つことの重要性を理解し、これらの新しい参加者を高く評価しました」。

もちろん、複数の衛星を使うコンステレーションのコストは些細なものではないが、Satellite Vuは用心深く動いて、すべての正しいボックスにチェックマークを入れているようだ。

防衛用途と、気候変動や公害の追跡や対策に役立つ可能性を組み合わせることは、現時点において、このビジネスで得られる成功に最も近いと思われる。

画像クレジット:Satellite Vu

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(文:Devin Coldewey、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

MITスピンオフ企業OPT Industriesが3Dプリントによる鼻腔用綿棒の生産拡大に向けて約17億円を調達

OPT Industries(オプト・インダストリー)という社名を耳にしたことがあるならば(ない人がほとんどだと思うが)、それはこのMITのスピンオフ企業が、新しい鼻腔用綿棒を3Dプリントで作ったからだろう。例年ならあまり話題にならないような種類のものだが、昨今の世界的な新型コロナウイルス感染流行によって大きな注目を浴びたのだ。

この「InstaSwab(インスタスワブ)」は、髪の毛の幅にも満たない極細のポリマー繊維で構成された複雑な幾何学模様の構造が、デザイン界でも注目されている。

OPTの3Dプリントシステムは、開発に7年の月日がかかっているが、このタイミングで「細菌サンプルの溶出に最大20倍の効果がある」という綿棒が誕生したことは、確かに幸運だった。もちろん、このようなデバイスの必要性は新型コロナウイルスより前からあり、コロナ禍が(幸いにも)過ぎ去った後も確実に残るだろう。

画像クレジット:OPT Industries

アーリーステージのスタートアップが、大規模な資金調達を始める時に、まさに夢見るような報道のされ方であったことは間違いない。同社は米国時間3月1日、1500万ドル(約17億円)のシリーズA資金を調達し、再び注目を浴びることになった。このラウンドはNorthpond Ventures(ノースポンド・ベンチャーズ)が主導し、既存投資家のCrosslink Capital(クロスリンク・キャピタル)と、MITと提携しているE14 Fund(E14ファンド)が参加した。

InstaSwapは当面、この会社にとって不可欠な製品であり続けるだろうから、同社はこの綿棒の代替製品の生産拡大を計画している。今回の資金調達と同時に、OPTはLumiraDx(ルミラ・ダイアグノスティクス)が、InstaSwapを承認済み綿棒のリストに加えたことを認めた。3Dプリント製品がこの栄誉に浴するのはこれが初めてだ。

「先進的な製造企業として、私たちはマクロスケールの課題を解決するマイクロスケールの技術を構築することに価値を見出しています」と、創業者兼CEOのJifei Ou(欧冀飞、オウ・ジーフェイ)氏は述べている。「OPTは顧客と協力して、ヘルスケア、自動車、化粧品、消費財、その他の業界向けの斬新なメタマテリアルと製品の設計・製造に取り組んでいます。私たちはこの新たな資金を使って、InstaSwabの需要に対応し、製品開発を促進して、事業を拡大させ、チームを成長させるつもりです」。

画像クレジット:OPT Industries

その点から見れば、この綿棒はコンセプトの証明を超えたものであることは間違いない。しかし、これはOPTのアディティブ・マニュファクチャリング(付加製造・積層造形)を支える基盤技術の出発点のようなものでもある。同社の「RAMP 3D」と呼ばれる3Dプリンターは、エッジからエッジまでロール状にプリントするため、従来の方法よりもはるかに速い規模で高解像度のプリントを作成することができる。また、24時間プリント可能であるため、アディティブ・マニュファクチャリングの長年の目標であるサプライチェーン問題の対処において、極めて重要な役割を果たすことができると、同社は確信している。しかし、従来は規模を大きくすることに問題があった。

そこでOPTは、2021年後半に、InstaSwabの需要拡大に対応するため、最初の本社があるベッドフォードに近いマサチューセッツ州メドフォードに、1万4000平方フィート(約1300平方メートル)の製造施設を新設した。

画像クレジット:OPT Industries

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(文:Brian Heater、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

不動産管理業務のワークシェアリングサービスCOSOJIを運営するRsmileが累計1.6億円の資金調達

不動産管理業務のワークシェアリングサービスCOSOJIを運営するRsmileが累計1.6億円の資金調達

不動産の管理業務と地域作業者をつなぐワークシェアリングサービス「COSOJI」(コソージ)を展開するRsmileは3月1日、第三者割当増資による資金調達を実施したことを発表した。引受先は、KUSABI1号投資事業有限責任組合、B Dash Ventures、ニッセイ・キャピタル、グロービス。累計調達金額は1億6000万円となった。調達した資金は、開発体制とカスタマーサポート、マーケティング強化のための人員拡大に充当する。

COSOJIは、不動産の共用部清掃や目視点検などのメンテナンス、消防設備点検や貯水槽清掃などの法令点検を、地域の作業者や工務店に直接つなげるマッチングサービス。不動産のある地域に近い作業者に業務を委託することで、交通費などの経費を削減でき、物件の登録・作業の依頼・作業報告の確認・決済までをオンラインで完結できる。2021年1月のリリース以降、アパート、空き家、駐輪場・駐車場、太陽光施設などの不動産に導入されており、現在は全国2000以上の施設でサービスを展開。利用者は不動産管理会社、オーナーとなっており、現地作業員・工務店などの現地パートナーは1万ユーザーを超える。「不動産にかかわる全ての人に快適な世界を」をビジョンに掲げるRsmileは、地域に根差した新しいサービスの提供を目指したいという。

 

バイオ分子に照準を合わせて新薬を生み出すGandeeva Therapeuticsが46億円調達

かつて冗談交じりに「ブロボグラフィー(抽象的な芸術作品の一種)」と呼ばれていた分野が大きく進展した。

低温電子顕微鏡法は、現在、生体の最小構成要素を最も忠実に観察できる手法の1つで、バイオ分子のアモルファス(非晶質=結晶ではない)画像を提供する。米国時間1月31日、4000万ドル(約46億円)のシリーズAラウンドを完了し、その存在を世に知らしめた新しいバイオテック企業Gandeeva Therapeutics(ガンディーバセラピューティクス)は、これを重要な柱として、低温電子顕微鏡法による高解像度画像と機械学習ツールを組み合わせて、創薬のプロセスを高速化することを計画している。

共同創業者でありCEOのSriram Subramaniam(シュリラーム・サブラマニアム)氏は、TechCrunchの取材に対して次のように話す。「『電子顕微鏡でタンパク質を原子レベルの分解能で可視化する』という創業時の夢を、約15年の歳月をかけて実現しました。誰かがこの夢を実現できれば、これこそが創薬を変え、革命を起こすために必要な重要なツールになるはずだと確信していました」。

「現在の低温電子顕微鏡法の進歩を採り入れて、実際に学習するプラットフォームを作ることがGandeevaの命題である」と同氏は続ける。高解像度の画像を利用すれは、これまで観ることのできなかった結合ポケットを発見することが可能で、それに合う薬剤を見つけることができる、というのだ。

「金鉱を採掘する道具は重要ですが、その金鉱をどうするか、つまりどのような製品に変換するかを知っている必要があります。私たちの場合は、それは患者さんのための薬です」。

現在では、Insilico Medicine(インシリコ・メディスン)Generate Biomedicines(ジェネレート・バイオメディシンズ)Pepper Bio(ペッパーバイオ)Eikon Therapeutics(エイコン・セラピューティクス)Isomorphic Labs(アイソモルフィックラボ)といった数多くの企業が創薬という大きなチャレンジに取り組んでいるが、Gandeevaのアプローチは、簡単にいえば、体内のドラッガブル(druggable、ターゲット分子における低分子化合物による機能調節の可能性を意味する)なターゲットを見つけるために「実際に観てみる」といったところだ。

周りをぐるっと見ただけでも、これまで数え切れないほどの科学的ブレークスルーがもたらされてきた。しかし、身体の構成要素に関しては、特殊な顕微鏡技術がなければブレークスルーは起こり得ない。この分野の代表的な技術はX線結晶構造解析で、タンパク質や分子を文字通り結晶に詰め込んでX線を照射し、その形や大きさ、向きを近似的に再現するものである。

X線結晶構造解析の問題は、結晶化という手間と時間のかかるプロセスにある。しかし、低温電子顕微鏡法では、結晶化が不要だ。この手法では、分子を瞬間冷凍して2次元のシートを作り、それを電子銃で照射する。2次元シートは生体分子を電子から保護し、詳細な画像の撮影や、結晶化構造では観ることのできないバイオ分子の動きの撮影を可能にする。

低温電子顕微鏡法では、2オングストローム(ナノメートルの10分の1)の構造体の画像が得られる(参考までに、人の髪の毛1本の太さは約100万オングストロームである)。

低温電子顕微鏡がブームになっていることを示す証拠もある。2024年までに、低温電子顕微鏡で決定されるタンパク質構造がX線結晶構造解析を上回る、と予測する科学者もいる(2020年2月のNatureのニュース)。顕微鏡や装置が高価であるにもかかわらず、分解能が飛躍的に向上したことで、低温電子顕微鏡は主要な科学的ツールキットとなりつつある。

左:オミクロンスパイクタンパク質の低温電子顕微鏡マップ(画像クレジット:Scienceに掲載)、右:X線結晶構造解析によるAAA ATPaseのp97の画像(画像クレジット:Gandeeva Therapeutics)

一方、構造生物学という点ではGandeevaに有利な動きが他にもある。1つは、機械学習が進歩してタンパク質がどのように折りたたまれるか(タンパク質フォールディング)を正確に予測できるようになったことだ。

すでにタンパク質フォールディングを予測できるAIエンジンが2つ開発されている。アルファベット傘下のAI企業、DeepMind(ディープマインド)が開発したAlphaFoldと、ワシントン大学が開発したRoseTTAFoldである。かつてはタンパク質の構造を決定するには何時間も実験室で作業する必要があったが、RoseTTAFoldは通常のゲーム用コンピューターを使って、10分でタンパク質の構造を予測できるという。

サブラマニアム氏は、これらのツールは、タンパク質の構造と機能に関する前例のないレベルの知見を提供するが、まだ対処すべきギャップがある(AIによる予測では、要素によっては他の手法より信頼度が低いなど)と主張し、低温電子顕微鏡法では、タンパク質のある領域にズームインしたり、タンパク質のさまざまなコンフォメーション(立体配座)を撮影したりすることができるので、こうしたギャップを埋めることができるだろう、と指摘する。

「AIには革命の真っただ中にありますが、誰もが『AIって結局何?』と疑問に思っているのではないでしょうか。AIと低温電子顕微鏡の組み合わせは、実験だけでも予測だけでもない、まさしく正攻法であり、Gandeevaの命題でもあります」とサブラマニアム氏。

「AIによる構造生物学や相互作用の理解を利用して、最速かつ適切なスループットで精密なイメージングを組み合わせることができます」。

Gandeevaは現在、政府や大学がスポンサーとなっていなくても、すばやく簡単に低温電子顕微鏡を利用できることを証明しようとしている。この分野におけるサブラマニアム氏の研究の多くはこうした環境で行われてきたので、これは重要なポイントだ。

サブラマニアム氏は、キャリアの大半を米国国立衛生研究所(NIH)で過ごした。国立がん研究所(NCI)の生物物理学セクションのチーフを務め、その後、政府が運営する国立低温電子顕微鏡研究所を設立。NIHでは、Gandeevaの低温電子顕微鏡を使った創薬プラットフォームの開発を進めたいと考えていたが、ラボの開発だけで数十億円の費用がかかることが判明した。

同氏によると、当時「VCはこのようなアプローチに関心を持たなかった」という。しかし、ブリティッシュコロンビア大学(UBC)が興味を示したため、彼はNIHを退職し、UBCのCancer Drug Designのチェアマンに就任した。

「NIHで行っていたことが再現できると証明するために、UBCに来て数年間でこのプロジェクトの基本を立ち上げました。UBCで作成したプロトタイプは、この方面に迅速に進めることを投資家に確信してもらうきっかけとなりました」と同氏は話す。

この概念実証(PoC)では、短時間で作成されたオミクロン変異体のスパイクタンパク質の低温電子顕微鏡画像がScienceに掲載された。

しかしながら、Gandeevaの最終目標は、低温電子顕微鏡法をパッケージ化して生物学的に美しい写真を撮ることではなく、新薬の開発にかかる時間を短縮することを目的とした研究プラットフォームである。

サブラマニアム氏は「薬剤がどこに結合するか、タンパク質のどの表面をターゲットにしているのかを正確に観ることができるので、単純に、大幅に時間を短縮できると考えています。このような情報があれば行き止まりの経路を調べずに済むため、非常に有効です」と話す。

Gandeevaは、この技術を工業規模かつ速度で実行し、他では得られない情報を得られることを証明する必要がある。同社は、バンクーバー郊外の施設を6年間リースしており、サブラマニアム氏はここでプラットフォーム機能を構築する予定だ。

社内的には、いくつかのプログラムを進めて、潜在的な創薬ターゲットを特定できることを証明するのが目標である。サブラマニアム氏は、もしかしたらGandeevaのプラットフォームを腫瘍学に適用し始めるかもしれない、と話すが、これはまだ決まっていない。

今回のラウンドはLux Capital(ラックスキャピタル)とLEAPS by Bayer(リープスバイバイエル)が主導。Obvious Ventures(オブビアスベンチャーズ)、Amgen Ventures(アムジェンベンチャーズ)、Amplitude Ventures(アンプリチュードベンチャーズ)、Air Street Capital(エアストリートキャピタル)が参加した。

画像クレジット:Gandeeva Therapeutics

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(文:Emma Betuel、翻訳:Dragonfly)

リモートセンシング技術のスカイマティクスが13億円のシリーズB調達、セールス・マーケティング・人材採用を強化

リモートセンシング技術のスカイマティクスが13億円のシリーズB調達、セールス・マーケティング・人材採用を強化

「リモートセンシングで、新しい社会を創る」をミッションとするスカイマティクスは3月1日、シリーズBラウンドとして、第三者割当増資による総額約13億円の資金調達を実施したことを発表した。引受先は、既存投資家のフェムトグロースファンド2.0投資事業有限責任組合、新規投資家のミライトロン、ジャパン・コインベスト(三井住友トラスト・インベストメント)、農林中央金庫の4社。累積調達額は約29億円となった。調達した資金は、同社サービスのセールスとマーケティングに「集中投下」し、同時に人材採用も強化するとのことだ。特に、GISエンジニア、ウェブエンジニア、画像処理解析エンジニア、さらにR&D人材、セールス、カスタマーサクセス人材を拡充する。

リモートセンシングとは、遠く離れた場所からセンサーを用いて対象物を調べる技術のことをいう。この技術を柱とするスカイマティクスは、人工衛星やドローンなどから収集したあらゆる地理空間情報(GIS)と時系列情報を処理解析する「時空間解析プラットフォーム」を構築し、農業・建設・測量・整備点検・防災といった幅広い業界のDXを推進している。

スカイマティクスが提供するサービスには、以下のものがある。

ドローン測量・現地管理DXクラウド「くみき

ドローン測量データから現場の画像や動画データを駆使した「現場データ丸ごと管理」サービス。あらゆるデータを地図上に統合し、データ管理を効率化する。

施設・設備情報管理システム「くみきスコープ

施設や設備に関する画像、テキスト、ファイルなどの情報を、屋内外を360度パノラマ化した画像で可視化し、スマートに管理するサービス。独自AIによる画像処理で、錆びや腐食の検出なども行える。

農家向けスマート農業サービス「いろは

画像解析技術と地理情報技術で、農地へ行かなくても農地全体の状況を把握できるようにするサービス。全国の農地に採用され、都道府県普及率100パーセントを達成した。

自治体向け農業管理DXソリューション「いろはMapper

自治体による経営所得安定対策と中山間地域等直接支払いのための現地調査を効率化するサービス。

 

ウェルネス産業向け会員管理・予約・決済SaaSのhacomonoが20億円のシリーズB調達、エンジニア・デザイナーなど採用強化

ウェルネス産業向け会員管理・予約・決済SaaSのhacomonoが20億円のシリーズB調達、エンジニア・デザイナーなど採用強化

フィットネスクラブや公共運動施設などに向けた会員管理・予約・決済システム「hacomono」を運営するhacomonoは3月2日、シリーズBラウンドにおいて、三者割当増資による総額20億円の資金調達を行なったことを発表した。引受先は、新規リード投資家のTHE FUND(シニフィアン、みずほキャピタル)、既存投資家のCoral Capital、ALL STAR SAAS FUND。

調達した資金は、プロダクト強化のためのエンジニアとUI/UXデザイナーチームの増強、提案力・サポート力強化のためセールス・カスタマーサクセス・サポートチームの増強、日本全国への拠点作りなどに充当する予定。ウェルネス産業を中心にさらなる業務のデジタル化を後押しし、経営力と収益力を強化できるプラットフォームを目指し、今後は他業種に対してもリアル店舗・サービス業における「リアル店舗のOS」となることを視野に入れているという。ウェルネス産業向け会員管理・予約・決済SaaSのhacomonoが20億円のシリーズB調達、エンジニア・デザイナーなど採用強化

hacomonoは、リアル店舗における予約・決済や入会手続きについて、顧客が自分のPCやスマホからオンラインで完結させることができ、店舗での事務手続きや支払い手続きを削減可能というクラウドサービス。店舗側にとっては、月謝の引き落としや未払い徴収に関するオペレーションなどを自動化できるため、店舗・施設スタッフの業務の省力化も行える。2019年3月のリリース以来、導入店舗・施設数は1000を超え、導入件数は前年比10倍以上のペースで増加。ウェルネス産業におけるオンライン化(非対面・非接触・脱労働集約)、キャッシュレス化・DX化、アフターデジタル(OMO化)を推し進めているという。ウェルネス産業向け会員管理・予約・決済SaaSのhacomonoが20億円のシリーズB調達、エンジニア・デザイナーなど採用強化

沿岸部などに住む人のために正確に住宅のリスクを予測する保険会社Kin Insuranceが約94億円調達

カリフォルニアの家とネブラスカの家では、保険のニーズが異なる。Kin Insurance(キンインシュアランス)は、データとテクノロジーによって、保険に加入しにくい家の最適な保険加入方法を判断できると考えている。

シカゴを拠点とする消費者直販の住宅保険会社Kin Insuranceが400万ドル(約4億6000万円)を調達してから数年が経つが、CEOのSean Harper(ショーン・ハーパー)氏はTechCrunchに、1100億ドル(約12兆6400億円)の住宅保険市場のうち、半分の住宅は異常気象や火災にさらされる地域にあると語った。

「そういう場所に移住する人が増えているため、大きな保険需要があります」とハーパー氏は付け加えた。「米国には、防波島やこれまで洪水が度々起こっている平野のような、住むべきでない場所があります。しかし、そこに住むことを選択すると、保険は高額になります。技術の特殊ソースを使うことで、郡は広大で、すべての家を同じ筆で描くべきでないということをうまく理解できます」。

Lucas Ward(ルーカス・ワード)氏、Jason Heidkamp(ジェイソン・ハイドカンプ)氏、Sebastian Villarreal(セバスチャン・ビラレアル)氏と共同で会社を設立したハーパー氏は、従来の保険会社は、どの家がリスクがあり、どの家がそうでないかを判断するのに必要なデータを持っていないため、往々にして大胆な価格設定になり、結果として引受額が高くなると説明する。

しかし、データを使ってリスクを正確に見積もることで、Kin Insuranceの引受額は常に最安値とは限らなくとも平均すると結果的に安くなる。これは、同社がリスクの細分化に優れており、代理店のようにテクノロジーを使ってコストの一部を排除しているためだ。代理店を通して保険を販売する場合、継続的に保険料総額の20%のコストがかかると同氏は推定する。

また、ハーパー氏は、50年前はローカルの代理店を持つことが理にかなっていたが、テクノロジーの進歩により、保険会社が消費者に直接アプローチすることができなくなり、電子メール、テキスト、チャット、電話などで同様の顧客サービスを提供することができるようになったとも話す。

2021年4月にシリーズCで8000万ドル(約92億円)の資金を調達したKin Insuranceは、特別目的買収会社Omnichannel Acquisition Corp.と合併して上場する予定だった。しかし1月、同社はこの取引を進めないことを決定したとハーパー氏は述べた。

「株式公開の市況が良くなかったことも理由としてあります。SEC(米証券取引委員会)の手続きを踏みましたが、テック企業にとって1年前のような市場ではありませんでした。将来、再びテック企業にとって良い市場になるときが来るでしょうし、Kinも上場するでしょう」と同氏は付け加えた。

同社が非公開にするかどうかを決定する間、非公開を選んだ場合に備えてベンチャーキャピタルは列をなしていた。

同社は3月1日、シリーズDラウンドで8200万ドル(約94億円)を調達したと発表したが、ハーパー氏は1億ドル(約115億円)で正式にクローズすると予想している。QED Investorsが同ラウンドをリードし、既存投資家のCommerce Ventures、Flourish Ventures、Hudson Structured Capital Management Ltd.(HSCM Bermuda)、Alpha Edison、Allegis NL Capital、Avanta Ventures、August Capital、そして新規投資家のGeodesic CapitalとPROOF.VCも参加した。ハーパー氏によると、Kin Insuranceはこれまで株式で1億3300万ドル(約152億円)、負債で5000万ドル(約57億円)を調達した。

同社は、急成長を遂げているインシュアテック企業の1社で、同社の保険料は2020年の2500万ドル(約28億円)から2021年には1億500万ドル(約120億円)に増加し、それに伴い新たな資本が集まっている。その成長軌道は2022年も続き、2022年の保険料は2億5000万ドル(約287億円)超に達するとハーパー氏は予想している。

この1年で保険料が増えたのに加え、同社は従業員数を2021年初頭の250人から450人にまで増やした。

同社はすでにフロリダ、ルイジアナ、カリフォルニアで事業を展開していて、ハーパー氏によれば、この3州だけで250億ドル(約2兆8700億円)近い保険市場となっている。今回の資金調達で、2022年さらに6州に進出できるという。同社はマーケティング、データサイエンス、テクノロジーへの投資にも注力する予定だ。

「保険金請求に関するデータが増えれば、引受額の精度が向上します」とハーパー氏は付け加えた。「それが、従来企業と当社の引受方法の大きな違いであり、その違いを広げたいのです」。

画像クレジット:Kin Insurance / Kin Insurance co-founders Lucas Ward and Sean Harper

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(文:Christine Hall、翻訳:Nariko Mizoguchi

ファッションデザインと制作の合理化を目指すCalaの新しいモバイルアプリ

ニューヨークを拠点とするCala(カラ)は、ファッションデザインと制作のための新しいCalaモバイルアプリのローンチを発表した。企業やインフルエンサーにデジタルファッションデザインのインターフェースを提供する同社は、新しいアプリは製品制作とサプライチェーン管理のプロセスを合理化するために設計されたものだという。

2016年に立ち上げられたCalaは、コラボレーション、デザイン、製造などを可能にしながら、ファッションブランドや小売業者に、ファッションデザインとサプライチェーンのプロセスの各ステップを助けるオールインワンプラットフォームを提供することを目指している。Calaのパートナーネットワークには13カ国60以上の工場が含まれており、顧客はニーズにあうメーカーと繋がることができる。

Cala の CEO で共同設立者のAndrew Wyatt(アンドリュー・ワイアット)氏は TechCrunch のインタビューで、ファッション業界の製品作成プロセスはスケッチから始まることが多いが、このステップ以降は、開発と生産に関わるすべてがモバイルで行われると語っている。同社は、開発・生産プロセスをより迅速かつ容易にすることを目的として、新しいアプリをリリースするとのことだ。Calaの新しいアプリでは、ユーザーがデザインやコレクションを見たり作成したりできる他、デザインのインスピレーションをアップロードして文脈に応じたコメントを追加できるツールも含まれている。また、コメント、写真、ファイルの添付により、チーム間でアプリを通じてコミュニケーションをとることができる。また、アプリには通知センターがあり、重要な情報のみを表示し、ユーザーに多数の通知を浴びせないように設計されている。

「このアプリのターゲット層は、ファッションブランドで働く人たちです」と、ワイアット氏は語った。「年間10万ドル(約1148万円)以上の商品を扱っているブランドにフォーカスしています。私たちは、3-5人のチームでも、50人のチームでも、サプライチェーンをより効果的に運営する手助けができます」。

この新しいアプリケーションは、Apple App Storeでダウンロードできる。ワイアット氏は、Cala のモバイルウェブユーザーの80%以上がAppleデバイスを使用していると指摘し、それが iOSの発売を優先させた理由であると述べた。同社は、Androidでもこのアプリを提供する予定だが、現時点では、そのスケジュールは未定であると述べている。

画像クレジット:Cala

米国時間3月1日の発表の中で、Calaはデザインプロセスに3Dプロトタイピング機能を追加することも明らかにした。この新機能により、ユーザーはデザインの3D画像をリクエストすることで、フィット感や素材感をリアルに確認することができるようになる。Calaによると、この機能はサンプルを注文するよりも時間的に効率的な代替案として機能し、またデザインの最終決定にも役立つという。

「世界は間違いなく、3Dデザインとオンデマンド生産の世界に向かっており、我々はその最前線に立つことができると思っています」と、ワイアット氏は語った。「また、私たちには、物理的な製品を購入すると、metaverse(メタバース)で使用できるデジタルツインが手に入るという明確な未来が見えています。これが、私たちが3Dデザインを学んでいるもう1つの理由です。現在、3Dデザインは時間の節約になり、ブランドが開発面でより持続可能なものになるのに役立っています」。

Calaは、発売当初、オンデマンドのカスタムフィット3Dボディスキャンシステムで市場への進出を果たした。ワイアット氏によると、それ以来、Calaはファッションブランドの中核的なサプライチェーンパートナーであることに重点を置くようになり、ここ数年、小規模なファッションブランドやインフルエンサーと協力して、テクノロジーを使って物理的な製品を作り、顧客に販売するプロセスを合理化するソリューションを作り始めた。

Calaの直近の資金調達ラウンドは2020年7月で、Maersk Growth(マースク・グロース)とReal Ventures(リアル・ベンチャーズ)の共同主導で300万ドル(約3億4400万円)のシードラウンド拡張を実施した。同社は2018年にReal Venturesが主導する最初のシードを行った。この2つのラウンドにより、同社の資金調達総額は700万ドル(約8億400万円)に達した。

画像クレジット:Cala

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(文:Aisha Malik、翻訳:Yuta Kaminishi)

Netflixのオープンソースツール「Conductor」の開発者たちがその運用・管理を支援する「Orkes」を発表

Netflix(ネットフリックス)は「Conductor(コンダクター)」というツールを開発・アウトソースすることで、マイクロサービスを取り巻く状況を一変させることに貢献した。このツールは当初、自社の大規模なマルチチャネルでオンデマンドのビデオ・トラフィック(およびそれに対応する複雑なコードベース)をグローバルに扱うために作られたものだったが、後にTesla(テスラ)やAmerican Express(アメリカン・エクスプレス)、GitHub(ギットハブ)、Deutsche Telekom(ドイツテレコム)、VMware(VMウェア)をはじめとする約150社もの大規模な組織などが、自社のサービスを管理するために採用するようになった。そして現在、Conductorを開発したチームは、Conductorをベースにしたツールのクラウドホスティング版である「Orkes(オーケス「オーケストレーション」の短縮形)」を発表し、同時にこのミッションを推進して、オープンソースのConductorコミュニティの継続的成長をサポートするために、930万ドル(約1億700万円)の資金調達を実施した。

このラウンドは、Battery Ventures(バッテリー・ベンチャーズ)とVertex Ventures(バーテックス・ベンチャーズ)が共同で主導し、Mahendra Ramsinghani(マヘンドラ・ラムシンガニ)氏とや Gokul Rajaram(ゴクル・ラジャラム)氏などのエンジェル投資家や、Amazon(アマゾン)やFacebook(フェースブック)を含むさまざまなテック系企業の名前を明かしていない幹部が参加している。

Orkesは、CEOのJeu George(ジョー・ジョージ)氏、共同CTOのViren Baraiya(ヴィレン・バライヤ)氏 とBoney Sekh(ボニー・セク)氏、CPOのDilip Lukose(ディリップ・ルコセ)氏が共同で設立した会社だ。最初の3人は、NetflixでConductorを一緒に作ったが、その後は別々の道を歩んでいた。ジョージ氏はUber(ウーバー)でシニアエンジニアとして働き、バライヤ氏はGoogle(グーグル)でFirebase(ファイアベース)のエンジニアリングを率い、セク氏はRobinhood(ロビンフッド)で決済の責任者を務めていた。2021年、この3人が再結集し、Microsoft Azure(マイクロソフト・アジュール)の卒業生で、ジョージ氏と一緒に働いていたルコス氏も加わり、Orkesを起ち上げた。

Conductorに戻って、その上に乗るツール群を構築した理由は、ジョージ氏がいうように、非常に明確な市場のシグナルがあったからだ。

「私たちはConductorを汎用エンジンとして構築し、多くの企業がこれを使い始めると予想しました。現在、この分野は変曲点にあり、組織はマイクロサービス・アーキテクチャに移行しています」と、ジョージ氏はインタビューに答えている。「しかし、より広い今のアイデアは、その運用を支援し、その上における規模の管理を支援することです」。組織はしばしばハイブリッドクラウド環境で、複数のコーディング言語にわたって作業するため、Orkesのアイデアは管理を支援するための「すぐに使える」一連のツールを提供することだと、同氏は付け加えた。

実際、Orkesが登場する前にHacker News(ハッカー・ニュース)で行われたConductorの長所と短所に関する議論では、一部の環境における実装の難しさが強調され、それを解決する機会も指摘されている。

「企業がマイクロサービスを構築するとき、彼らは選択した言語で構築するわけですが、概して複数の言語を使用することがあります」とジョージ氏は述べ、一般的には少なくとも3つの言語が使用され、時にはそれ以上の場合もあると語った。「ConductorとOrkesのユニークな点は、まったく言語に依存しないことです」。

クラウドサービスに注力したクローズド・アルファ版が好評を得ているため、今回調達した資金は、引き続きOrkesのエンジニアリング・チームと市場参入戦略チームの増強に使用される予定だ。

Orkesの台頭は、オープンソースツールの最近よくあるルートを浮き彫りにする。開発者やエンジニアは、既存の組織で、あるいはプロジェクトとして、自らの実体験に基づく非常に直接的なニーズを解決するための、画期的なツールを構築することに多大な力を注ぐ。そして、それをどのように運用するべきかという開発者の倫理観から、これらのツールを長期的にサポートする幅広いコミュニティを構築するために、オープンソース化するのだ。

同じ開発者が、オープンソース版を使いやすく実装するためのリソースや人材を持たない多くの組織でもより簡単に使えるようにするために、結局は開発に舞い戻り、最も明白で有用なカスタマイズを行うこともよくある。

もちろん、誰でもオープンソースツールの商用版を作ることはできる(非常に成熟した技術では、その上に競合する商用製品が作られることもある)が、そのようなスタートアップ企業の創設者は、概して最初にオープンソースツールの構築をてがけた人物と同じであることが多い。彼らは誰よりも時間と力を注ぎ込んでいて、誰よりもそのツールの可能性と落とし穴を知っている。

そして、投資家も同じ理由からそのような企業を支持したがるものだ。同じテーマに沿った最近の例では、Great Expectations(グレート・エクスペクテーションズ)の開発者たちによるSuperconductive(スーパーコンダクティブ)が、先ごろ4000万ドル(約46億円)を調達した。

Conductorの場合、このオープンソースツールには熟した既存ユーザーがいて、それはOrkesにとって当然ながら顧客となる。しかし、このスタートアップの台頭は、新たな見込みのあるユーザー層への扉も開くことになる、あるいはそう考えることができる。

「Conductorの普及曲線は、私が見た中で最も速いものの1つです。そして、オリジナルの開発チームによる商品化をサポートできることは、私たちにとってすばらしい機会です」と、Battery Venturesのジェネラル・パートナーであるDharmesh Thakker(ダルメシュ・サッカー)氏は声明の中で述べている。「Orkesには、この活気あるコミュニティに、企業レベルのサポートとクラウドサービスを提供するための最適なチームが揃っています」。VertexのパートナーであるSandeep Bhadra(サンディープ・バドラー)氏は、このラウンドで同社の取締役会にも加わっている。

画像クレジット:woodleywonderworks Flickr under a CC BY 2.0 license.

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(文:Ingrid Lunden、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

習慣化アプリ「みんチャレ」のエーテンラボが3.7億円調達、健保向け事業開発・営業・カスタマーサクセスの人材採用注力

三日坊主を乗り越えるための習慣化アプリ「みんチャレ」(Android版iOS版)を開発・運営するエーテンラボは2月28日、プレシリーズAおよびシリーズAラウンドにおいて、3億7000万円の資金調達を実施したと発表した。引受先は、ファストトラックイニシアティブ、みずほキャピタルなど。調達した資金は、人材採用にあてる。みんチャレに新機能を実装するエンジニアや、特に健保向け事業を展開するための事業開発、営業、カスタマーサクセスの強化に注力するという。

みんチャレは、勉強・ダイエット・運動・糖尿病改善といった同じ目標を持つ匿名の5人でチームを作り、チャットを介して報告とはげまし合うことで、楽しく習慣化に取り組めるというピアサポートアプリ。ピアサポートとは、同じ課題を抱える者同士がお互いに支援するといった意味。2022年2月現在の累計利用者数は100万人という。

習慣化アプリ「みんチャレ」のエーテンラボが3.7億円調達、健保向け事業開発・営業・カスタマーサクセスの人材採用注力

また今後エーテンラボは、健康保険組合の保健事業や企業の健康経営、自治体の健康支援事業向けとして、個人の参加者が生活習慣の改善を「始める」行動変容プログラム「みんチャレHealthcare」も提供する。「保健事業に参加する」「生活習慣の改善を続ける」という2つの行動変容にコミットし、ウィズコロナに対応した、オンラインでピアサポートが行える保健事業を提供するとしている。

エーテンラボは、2017年にソニーの新規事業創出プログラムから独立したスタートアップ。「テクノロジーでみんなを幸せにする」をミッションとし、ユーザーが習慣化の成功体験を糧に自ら積極的に行動して幸せになる社会を目指している。

習慣化アプリ「みんチャレ」のエーテンラボが3.7億円調達、健保向け事業開発・営業・カスタマーサクセスの人材採用注力

インフルエンサーマーケ支援のトリドリが12億円のシリーズB調達、人材採用・プロダクト開発・プロモーションを強化

各種インフルエンサーマーケティング事業を展開するトリドリ(toridori)は2月28日、シリーズBラウンドとして第三者割当増資による総額12億円の資金調達を実施したと発表した。引受先は、リードベンチャーのGlobal Catalyst Partners Japan、既存投資家の三菱UFJキャピタル、セレス、イノベーションエンジン、新規投資家のXTech Ventures、スリーエスキャピタル、ファーストアドバイザーズ、HIRAC FUND(マネーフォワードベンチャーパートナーズ)。シリーズAラウンドおよびこれまでの借入金も含め、累計調達額は24億円を突破した。

調達した資金により、インフルエンサーと企業を繋ぐマーケティングプラットフォーム「toridori marketing」(トリドリマーケティング)と「toridori base」(トリドリベース)(Android版iOS版)の成長を加速させる。より使いやすいサービスへと進化させるための人材採用、プロダクト開発、戦略的プロモーションにあてる予定。

企業用サービスtoridori marketingと、インフルエンサー専用案件管理アプリtoridori baseは、中小企業・個人事業主などの事業者に対してインフルエンサーを活用したマーケティング支援を行うサービス。企業がmarketing上でPR案件依頼募集を行うと、商品を紹介したい全国のインフルエンサーがbaseアプリを利用し立候補する形式で、どこのエリアの企業でも利用しやすいとしている。利用料金は月額制で、登録インフルエンサーは約2万5000人。現在はPR実績が15万件を超えるという。

2016年6月設立のトリドリは、「『個の時代』の、担い手に。」をミッションとして、インフルエンサーマーケティングに特化した各種サービスを提供している。toridori marketingとtoridori baseのほか、インフルエンサー成果報酬型広告「toridori ad」、YouTubeコンサルティング「toridori studio」といった事業を展開し、インフルエンサーの個性を最大化し企業プロモーションに活用するサービスを提供している。

3Dプリントによる次世代小型バイオリアクターの開発でStämm Biotechが約20億円調達

この1年、細胞を使った食肉加工や微生物を使った医薬品製造など、バイオマニュファクチャリングが盛んに行われるようになっている。しかし、合成生物学は、バイオリアクターという重要な装置なしには成り立たない。生物学を利用した製造業の実現に向けて、世界中でさまざまな議論が行われているが、ある企業ではすでに最も重要な装置を再考に取り組んでいるしている。

2014年に創業されたStämm Biotechは、工業用やベンチトップのバイオリアクターにすら見られるタンクとチューブとつまみの集合体とはかなり異なっているデスクトップ型のバイオリアクターを開発している。ブエノスアイレスに拠点を置く同社はこのほど、1700万ドル(約20億円)のシリーズAを発表、これまでのシードとプレシードのラウンドを合わせると総調達額は2000万ドル(約23億円)になった。

Stämmが行っていることを理解するために、バイオリアクターは通常どのような形状で、その中で何をしているのかをまず知ろう。基本的には、工業用のバイオリアクターは、巨大な滅菌タンクだ。タンクの中に、特定のタイプの細胞や微生物を育てるための培地があり、それらが目的の製品を生産したり、あるいはそれ自体が製品そのものだ。

これらの細胞培養の工程はまず全体がモーターで撹拌され、冷却液を使って正しい温度を維持し、正しい量の酸素を供給、または無酸素状態を維持してその成長を促す。この工程はタンクではなく使い捨ての袋を使っても行うことができ、別のものを育てるときのタンクの滅菌作業を省略できる。

Stämmの方法は要するに、以上の工程からタンクと撹拌とチューブをなくしてしまう。その代わりに同社は、独自に開発した3Dプリントの基本装置を利用して、微小な流路の稠密なネットワークをプリントし、そこを細胞が通過する間に必要な栄養と酸素を供給される。そしてこの動きが、撹拌の役をする。

液体の流路が3Dプリントされる様子。細胞と酸素と栄養はさまざまな場所で加えられる。(画像クレジット:Stämm Biotech)

流路の設計はStämmのソフトウェアを使って行う。Stammの共同創業者でCEOのYuyo Llamazares(ユヨ・ラマザレス)氏によると、その工程全体を、クラウド上のCDMO(医薬品製造受託機関)と考えることができる。

「バイオ製品を開発する意志と、現在、市場に出回っているツールの能力との間に、大きなギャップがあることに気がつきました。そこで、それを自分の問題として解決しようと考えたのです」とラマザレス氏はいう。

バイオマニュファクチャリングは、製薬や化学、テキスタイル、香料、そして食肉に至るまで、多様な分野で、その細胞からものを作るという考え方が、次世代の生産技術として大きな関心を寄せられている。

たとえば150億ドル(約1兆7275億円)の評価額でIPOに至ったGinkgo Bioworks(時価総額は72億4000万ドル[約8338億円])は、製薬とそれ以外の分野の両方でバイオマニュファクチャリングの応用に積極的に取り組んでいる。しかしそんな、世界を変えるような製造技術も、エビデンスは少しずつ漏れてきている。

バイオマニュファクチャリングが約束していることはどれも、バイオリアクターがなければ実現しない。Stämmのアプローチは、マイクロ流体力学を利用してリアクターのサイズを小さくする。

3Dプリントされた部品の中を流れていく液体をCGで表現(画像クレジット:Stämm Biotech)

現在の同社の技術では、バイオマニュファクチャリングを行う設備の大きさを従来の数百分の一程度に縮小できる。しかしそれでも、これまでの大きなバイオリアクターに比べるとかなり小さい。Stämmのバイオリアクターの最大出力は約30リットルで、工業用に多い数千リットルではない。しかし、同社によると、そのプリントされた微小流路方式でも、理論的には約5000リットルまで可能だという。

技術のポテンシャルは大きいが、Stämmはまだ、その技術の商用化を始めたばかりだ。現在、同社はバイオシミラーの生産にフォーカスしているヨーロッパのバイオ製剤企業と協働しているが、他に検討しているパートナー候補は5社いる。計画では、同社が「パイロットスケール」に移行するのは2022年中となっている。

今は、パートナー企業が増えることがStämmの主な成功の証だとラマザレス氏はいう。「できるだけ多くのパートナーと直接の関係を持ちたいと考えています。それによって、私たちが開発した製品の有用性を確認したい」。

ビジネスの面では、まださまざまな問題がある。装置のコストについてラマザレス氏に確認すると、彼はコメントしなかった。そして彼は、クライアントが従来のマシンではなくマイクロ流体力学方式のリアクターを使い慣れて欲しいという。マシンとサービスの価格は未定だ。

「今は勉強の段階です。いろいろなビジネスモデルを理解し、クライアントとの対話に努めたいと考えています」とラマザレス氏はいう。

Stämmは、今回得た資金で社員数を倍増して200名にし、国際的なプレゼンスを拡張、さらに同社のマイクロ流体力学によるバイオリアクターとその制御に必要なツールの改良や開発を進めたいという。

このラウンドの新たな投資家は、リード投資家がVaranaで、他にVista、New Abundance、Trillian、Serenity Traders、Teramips、Decarbonization Consortium。そして彼らが仲間に加わった既存の投資家は、Draper Associates、SOSV、Grid Exponential、VistaEnergy、Teramips、,Cygnus Draper、そしてDragones VCもこのラウンドに参加した。

画像クレジット:Stamm Biotech

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(文:Emma Betuel、翻訳:Hiroshi Iwatani)

自宅から離れた好きな場所にホーム(オフィス)環境を提供するAnyplaceが6.1億円調達

リモートワークの時代、人々は好きな時に好きな場所で暮らせるよう、できる限りの柔軟性を求めている。

長期滞在の選択肢を増やそうと、スタートアップ企業が次々と登場しているのも当然のことだ。Anyplaceもそんなスタートアップの1つだ。自称「デジタルノマド」であるSatoru Steve Naito(内藤聡)氏によると、2017年にサンフランシスコに拠点を置くAnyplaceを共同設立したのは、自分自身がこのプロダクトを欲していたからだという。

その名の通り、Anyplaceは、ホテルやレンタカーを30日以上ほとんどどこでも予約できるマーケットプレイスとしてスタートした。当マーケットプレイスは今日、60カ国以上、450以上の都市で展開されている。そして現在このスタートアップ企業、Anyplaceは、最新の製品であるAnyplace Selectの提供を開始し、オペレーターとしての役割に移行しつつある。この製品は、リモートワーカーや企業の出張者が「完全に設備が整った」ホームオフィスなどの家具付きの部屋を利用して、どこでも仕事ができるようにするために設計されたものだ。

パンデミックが猛威を振るい、オフィスが閉鎖され続ける中、柔軟に移動できる人がかつてないほど増えた。Anyplaceは2021年、サンフランシスコ、ニューヨーク、ロサンゼルス、サンディエゴでSelectの提供を開始し、開始から7カ月で100万ドル(約1億1500万円)のランレートを達成したと、同社のCEOを務める内藤氏はいう。Selectのサービスの月次収益成長率は平均50%以上、今月現在、稼働率は90%以上となっている。

AnyplaceはGreystarやAvalonBayなどの不動産デベロッパーと提携し、マンションを借りて家具を揃え、Selectで価格を上乗せしてマスターリースしている。各部屋には「完全なオフィス設備」が揃っており、フレキシブルな期間契約(最低30日間)が可能だ。設備には高さ調節可能なスタンディングデスク、人間工学に基づいた椅子、約86cmの「超ワイド」モニター、プロ用マイク、ウェブカメラ、折り畳み式グリーンバック、パソコンスタンド、ドッキングステーション、キーライトなどが含まれている。

「Selectに掲載されているすべての部屋で、ホームオフィスと同等以上の生産性を実現します。全室1Gbpsインターネット対応なので、Wi-Fiの速度も問題ありません」と内藤氏は語る。

他の都市に住んでみたいというリモートワーカーは、なぜAirbnbで物件を借りないのだろうか?リモートワークのために家や部屋を用意することは、思っているほど簡単ではないと内藤氏は主張する。Wi-Fiの速度が遅い部屋もあれば、適切なデスクや専用のワークスペースがない部屋もある。

「現在の宿泊施設のほとんどは、パンデミック前の滞在に最適化されています。ホテルやAirbnbに滞在している間、人々は本当に1日中部屋で仕事をしていました。しかし、パンデミック後の世界では、Zoomコールをする時間が増え、部屋で仕事をするようになりました。だから私たちはパンデミック後の世界に最適化した宿泊施設を作っています」と内藤氏はいう。

確かに、サービス業の巨人Airbnbは昔から短期滞在に注力しているが、現在は、Airbnbのマーケットプレイスで長期滞在が増加している。つまり長期滞在の需要が増加している。2021年5月、AirbnbのCEOであるBrian Chesky(ブライアン・チェスキー)氏はYahoo Financeに対し、Airbnbの宿泊の24%がAnyplaceだったと語った(わずか2年前は14%)。さらにこのトレンドの裏付けとなるのは、Airbnbが最近、この分野の別のスタートアップ企業であるZeus Livingを支援しているということだ。同社は当初、企業の出張者向けの柔軟なオプションの提供に重点を置いていたが、現在はより幅広い潜在顧客層へと拡大している。

これまでAnyplaceはマーケットプレイスを運営していただけだったが、新たなSelectの提供により、現在はより幅広いビジネスの焦点をオペレーターにシフトしている。

内藤氏はTechCrunchに対し「Airbnbは競合ではなく、パートナーであり、実は最大の獲得チャネルの1つです。Airbnbが独自のインベントリーを持つオペレーターの領域に進出するとは思っていません。彼らの強みはプラットフォームビジネスです」と語る。

Anyplaceはインベントリーを他の市場に「積極的に」拡大し、機能改善を続けるために、シリーズAで530万ドル(約6億1100万円)を調達したと発表した。これはGA Technologiesが主導し、Jason Calacanis、Launch Fund、日本のサッカースターで(Will Smithとともに)Dreamers Venturesの共同設立者である本田圭佑、メルカリ共同設立者の富島寛、East Venturesが参加した。今回のラウンド資金調達で、Anyplaceは合計800万ドル(約9億2330万円)を調達し、現在は17人である従業員の増強にも充てられる予定だ。

内藤氏によると、当スタートアップはすでに次のラウンドの資金調達を開始しており「急成長とAnyplace Selectが提供する宿泊施設に対する需要の急増」によって、すでに「いくつかの投資の約束」を受けているという。具体的には、米国の主要都市、特にハワイ、マイアミ、オースティン、デンバーといった人気の高いリゾート地への進出を考えていると内藤氏はいう。

内藤氏はTechCrunchにこう語った。「デジタルノマドになるために、フルタイムの仕事を辞める必要はもうないのです。パンデミック以前は、ノマド的なライフスタイルを送るためには、会社を辞めてフリーランサーや中小企業のオーナーになる必要がありました。しかし今では、Google、Facebook、Twitterのようなハイテク大手が、従業員にフルタイムのリモートワークを許可しています。パンデミックは、多くの新しいタイプのノマドを生み出しました。つまり、これは人々の働き方における大きなパラダイムシフトなのです」。

本田圭佑はTechCrunchに、初めて会ったときに内藤の「気概」を感じたとメールで語ってくれた。

「彼は、どのようにしてJason Calacanis(ジェイソン・カラカニス) のような米国の有名な投資家からの資金調達に成功したのかを話してくれました。簡単ではなかったし、苦労もした。彼は、移民の創業者が直面する言語やその他さまざまな障壁を乗り越えたのです」本田氏はいう。スタートアップで成功するためには、気概が最も重要なものの1つだと思います。また、彼が望んだ製品を、彼自身が居住し、仕事をしている場所で作り上げたことにも感銘を受けました」。

さらに本田氏は、サッカー選手として多くの国を旅し「多くのホテルやAirbnbの部屋に宿泊した」という。

そしてこのようにTechCrunchに語った。「Anyplace Selectのように、オフィス環境が完備された宿泊施設は見たことがありません。明らかに自宅で仕事をする人が増えており、そのような人たちは1つの場所だけに住みたいとは思っていないのです。Anyplace Selectは、パンデミック後の世界において、そのような人たちの標準的な宿泊施設になるでしょう」。

画像クレジット:Anyplace

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(文:Mary Ann Azevedo、翻訳:Dragonfly)