誰もが簡単に輸出入できる世界を目指す「Shippio」正式版リリース、1.9億円の調達も

B2B国際物流のクラウドサービス「Shippio」は12月3日、第二種貨物利用運送事業者の許可を取得し、サービスを正式版としてリリースしたことを発表した。これにより、既存のウェブ上の見積もりと輸送管理機能に加え、物流事業者として輸出入の荷主から「荷物を預かって運べる」サービスとなる。

またShippioはプロダクトの正式リリース発表と同時に、プレシリーズAラウンドで1.9億円の資金調達を完了したことも明らかにしている。

2016年6月設立のShippio(旧社名サークルイン)は同年8月にアクセラレータープログラム「Code Republic」に採択され、YJキャピタル、East Venturesからの出資を受けた。その後、500 Startups Japan、YJキャピタル、East Venturesを引受先として、2017年5月に数千万円規模の資金調達を実施

今回の資金調達はそれに続くもので、500 Startups Japanグロービス・キャピタル・パートナーズDBJキャピタルYJキャピタルEast Venturesのほか、個人投資家2名が第三者割当増資の引受先となっている。

Shippioは設立以来「輸出入の取引をもっと身近に」することを目指して、国際物流手配の自動化、クラウド化に取り組んできた。

Shippio代表取締役社長の佐藤孝徳氏は「物流はサプライチェーンが長く、関わるプレイヤーが多い業界」といい、前回調達からの動きについて「デジタルによる効率化をどこからスタートする(のがより効果的)か、検討してきた」と振り返る。

国際物流のプレイヤーは、出荷を行うシッパー(荷送人・荷主)、実際の運送を行うキャリア(運送事業者)、そして荷主から荷物を預かり、キャリアを手配して、シッパーとキャリアの間で運送を取り次ぐフォワーダー(貨物利用運送事業者)の大きく3つに分かれる。

Shippioは2017年8月、フォワーダー向けにオープンベータ版を公開。2018年6月には輸出入の荷主向けにも「WEB取次サービス」をリリースし、見積取得・依頼機能の提供を開始した。

ベータ版ユーザーは、中国、東南アジア、ヨーロッパとの間で、EC商品や家具、加工食品、日本酒、ワインなどさまざまな商品の輸出入取引を、海上・航空貨物の両方で行っている。深圳の工場から部品を指定の倉庫へ運送したり、フランスからワインを輸入したり、といった例があるそうだ。

ベータ版運用の感触について、佐藤氏は「利用者にはスタートアップも多い。すると小口貨物での利用が多いので『航空貨物だと高そう』といって船便にすることも多いのだが、比べてそうしているわけではなかったりする。船便会社も航空便のレートを知らないし、航空便の会社も船便のレートは知らない。Shippioは両方の数字を持っているので、本当に最適な輸送ルートの提案ができた」と話している。

また「国をまたぐ輸送を誰に頼めばいいのか、わからないというユーザーも多く、間口を広く持つのは重要だなと感じた」とも述べている。

このベータ版から、「間口を広く」して、誰もが輸出入の運送を頼める正式版サービスができるまでに、Shippioにはひとつ壁があった。Shippioを各国との輸出入手続きをドア・ツー・ドアで行えるサービス、すなわち「荷物を預かって運べる」サービスとするためには、フォワーダー(貨物利用運送事業者)としての許可を国土交通省から得る必要があったのだ。

佐藤氏によれば「スタートアップに外航運送の領域で免許を与えるという事例が、国土交通省にとっても新しいものだった」とのこと。「いろいろとヒアリングや交渉、調整を進めてきた」結果、第一種貨物利用運送事業者の登録と第二種貨物利用運送事業者の許可取得ができたという。

既存の見積もり取得、輸送管理のプラットフォームとしてだけでなく、物流事業者として実際に輸出入貨物が扱えるようになったことで、ユーザーはShippioに輸送依頼の発注ができ、また同じプラットフォーム上で輸出入の煩雑な手続きや管理を一元化することが可能になった。

輸送手段(船舶・航空など)の選択画面。

ステータス管理画面。

海外では、テクノロジーを活用した国際物流「デジタルフレートフォワーディング」のサービスとして、Flexportなどが既にあるが、今回の許可取得で「日本でも、見積もりからオペレーションまで一貫して、デジタルフレートフォワーディングのサービスを提供することができるようになった」と佐藤氏は話す。

調達資金の使途について、佐藤氏はその「オペレーション」の強化を進めると述べている。「物流事業にはオペレーションが必要。例えば船便やトラックの手配、輸出入業務に不慣れな顧客への対応など、数多くの業務がある。デジタルフレートフォワーディングの初期立ち上がりに必要な体制を作っていく」(佐藤氏)

また、プロダクトとしてのShippioについてもさらに機能を拡充していく、と佐藤氏。「安心してウェブで法人向けの貨物を国際輸送できる仕組みづくりを行う」と話している。「物流は建築業などと似ていて、大マーケットである一方、関係者が多いためにデジタル化が進まなかった分野だ。人手不足が進んでいる中で、やり方を変えていかなければ」(佐藤氏)

Shippioのメンバーと投資家。前列左から3人目がShippio代表取締役社長の佐藤孝徳氏。

利回り平均値5%の貸付型クラウドファンディング運営、クラウドクレジットが7.5億調達

貸付型クラウドファンディング(ソーシャルレンディング)を運営するクラウドクレジットは11月30日、マネックスベンチャーズ、YJキャピタル、ソニーフィナンシャルベンチャーズ、グローバル・ブレイン、SBIインベストメントなどを引受先とする第三者割当増資により7億5000万円を調達した。同社は2018年9月にも資金調達を発表しており、それと合わせた調達金額は8億8000万円となる。

クラウドクレジットは、日本の一般ユーザーから資金を募り、その資金を海外の事業者に貸し付ける貸付型クラウドファンディングを運営するスタートアップだ。クラウドクレジットは「シンガポール広告代理店ベンチャー企業支援ファンド」、「メキシコ女性起業家支援ファンド」などのミニファンドを企画し、そこに資金を拠出する投資家を日本の個人ユーザーから募集。投資家は1口1万円からファンドに応募でき、事業者への貸付けによって得られる金利分をリターンとして受け取る。

クラウドクレジットのファンドはロシアルーブル、メキシコペソ、ブラジルレアルなどの新興国通貨で運用されることが多く(為替ヘッジ付きのコースもある)、ユーザーは比較的高い為替リスクを負う分、高い利回りを見込むことができる。クラウドクレジットが発表している統計によれば、2014年6月から2018年8月までに運用したファンドの利回りの平均値は5%程度だったという。

クラウドクレジットはこれまでに3万1000人のユーザーを獲得し、累計出資金額は148億円以上、運用残高は106億円にのぼるという。同社は今回調達した資金を利用して、マーケティング施策、システムセキュリティ、コーポレートガバナンスの強化を図り、新機能の開発にも取り組む。また、今回のラウンドに参加したマネックスグループを始めとする投資家との協業の可能性についても検討する。

ITで“牛群管理”をスマートにするファームノートが4億円を調達

酪農・畜産向けのIoTソリューションを提供するファームノートホールディングスは11月30日、リアルテックファンドなど複数の投資家より総額4億円の資金調達を実施したことを明らかにした。

同社では今回の調達を踏まえてクラウド牛群管理システム「Farmnote」や牛向けウェアラブルデバイス「Farmnote Color」の拡大を目指す方針。特に北海道・九州エリアにおける顧客基盤の強化を進めるほか、獣医学分野での研究開発を加速させる計画だ。

ファームノートについては2017年3月に産業革新機構や全国農業協同組合連合会らから5億円を調達した際にも紹介しているけれど、その前後で複数回の資金調達を実施。今回も含めると累計の調達額は17億円になる。

なお今回ファームノートに出資した投資家陣は以下のファンド、個人投資家などだ。

  • リアルテックファンド(1号ファンド、2号ファンド双方)
  • 北海道成長企業応援ファンド
  • 北洋SDGs推進ファンド
  • FFGベンチャービジネスパートナーズ
  • みやぎん地方創生2号ファンド
  • かごしまバリューアップファンド
  • DGインキュベーション
  • D2 Garage
  • リバネス
  • 小泉文明氏(メルカリ取締役社長兼COO)
  • 長沼真太郎氏(BAKE創業者)
  • 千葉功太郎氏

ファームノートが展開するFarmnoteは、PCやタブレット、スマートフォンを通じてどこからでも牛群の情報を管理・記録・分析できるクラウドサービスだ。

牧場スタッフは従来のメモ帳では無くFarmnoteのノート上で「発情」や「種付」など個体情報を記録。すると記載された活動を基に発情などの繁殖予定や牛群の移動履歴、預託状況などが個体ごとに自動で整理される仕組みになっている。

牛の一生がストーリーとしてタイムライン形式で記録されていくため、過去の履歴を振り返るのもスムーズ。ノートに入力されたデータから種付後の妊娠鑑定や分娩予定日のカレンダーを自動で作成する機能なども搭載されている。

2017年からはリアルタイムに牛の活動情報を収集できるウェアラブルデバイスFarmnote Colorの提供もスタート。Farmnoteと連携することでより高い精度で個体情報を管理し、異常検知できる仕組みを整えた。

現在ファームノートの売上成長率は過去3年で約30倍に伸びていて、同社のサービスを2700件の農家が導入。契約頭数は27万頭に上る(日本の飼養頭数は390万頭とのこと)。

同社では今回の資金調達を機にさらなる成長を目指す方針。特に顧客層が集中する北海道・九州エリアで地銀と協業し、IoTソリューションの普及を促進する。

また2016年8月に設立した農業への人工知能とIoT活用の研究組織「Farmnote Lab」の活動も加速させる計画。リアルテックファンドとリバネスからの支援を受け、獣医学分野での研究開発に力を入れるという。

ロボティック外骨格のRoam、ヤマハ発動機などから1200万ドル調達

ベイエリア拠点のロボティック外骨格会社Roamは、シリーズAで1200万ドルを調達したと発表した。このラウンドはヤマハ発動機が主導し、Boost VC、Heuristicsキャピタルパートナーズ、Menloベンチャーズ、R7パートナーズ、Speroベンチャーズ、Valorエクイティパートナーズそしてベンチャー インベストメントアソシエイツが出資した。これによりRoamの累計調達額は約1500万ドルとなった。

投資家たちは当然のことながら産業労働者やモビリティへの応用がきくこの分野について強気だ。もちろんRoamにはロボティック外骨格分野で有名なEksoやSuitXといった競合相手がいる。しかしながら、これまでのところRoamはスキーヤーにフォーカスした製品でもってニッチ分野を開拓したようだ。

3月に発表されたElevateは、今度のクリスマス休暇にタホ湖のいくつかのロケーションで、その後プレジデント・デーの祝日にはユタ州・パークシティでデモレンタルを行う。今回の資金は、初の製品のセールスやマーケティングを後押しするのに使われる。

資金調達に加え、ヤマハのパートナーAmish ParasharとSperoのジェネラル・パートナーShripriya MaheshがRoamの取締役会に加わる。今回のディールについてのコメントは以下のとおりだ。「ロボティック外骨格を入手しやすい価格にし、またスケール展開できるものにし、さらにはパワフルにすることで、Roamは広範に受け入れられるための最大の障壁を取り払うことができた。我々は、このプロダクトがいつの日か新たなスリリング体験をつくりだしたり、人のモビリティをサポートしたりするのに普通に使われるようになると想像している」。

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(翻訳:Mizoguchi)

AIが1秒で契約書をレビューする「LegalForce」が5億円を調達、β版は約3ヶ月で70社が導入

AIを搭載した契約書レビュー支援サービス「LegalForce」を提供するLegalForceは11月30日、ジャフコ、京都大学イノベーションキャピタル、ドリームインキュベータを引受先とした第三者割当増資により約5億円を調達したことを明らかにした。

今回の資金調達は8000万円を調達した4月のシードラウンドに続く、シリーズAラウンドという位置付け。同社では開発体制や人材採用を強化し、正式版のリリースに向けてプロダクトの拡充に力を入れてる。

AI活用のレビュー支援と契約書データベースで法務の負担を削減

以前紹介した通りLegalForceは森・濱田松本法律事務所出身の2人の弁護士が2017年に創業したスタートアップだ。弁護士としての経験に、京都大学と共同で研究開発を進める自然言語処理技術、万単位の契約書を分析することで得た知見を統合。法務担当者の契約書レビュー業務を支援するソフトウェアを開発してきた。

メインの機能は、サービス上にアップロードされたWordの契約書を瞬時にレビューする「レビュー支援」と、契約書データベース内での「キーワードによる条文検索」の2つ。これらによって契約書に潜むリスクの判定から、条文例のリサーチまでを一括でサポートする。

実際に使う際はLegalForce上に契約書をアップロードした後に、契約書の類型や自社の立場などレビュー条件を指定する。その上でレビューを実行すると自社に「不利な条文がないか」「欠落している条項がないか」を約1秒でチェック。リスクや抜け漏れのある部分が検出されるとともに、該当する箇所の修正文例が提示される。

8月のオープンβ版リリース時には秘密保持契約(NDA)のみが対象で、レビュー結果もCSVでダウンロードする必要があったけれど、現在は業務委託契約など5類型に対応。結果もブラウザ上ですぐに確認できるようになった。

また代表取締役CEOの角田望氏の話ではレビューの精度もリリース時より向上しているそう。たとえば初期から提供していたNDAの場合、8割ぐらいだった精度が今では9割5分くらいまで上がってきているという(精度は類型によっても異なる)。

LegalForceには類型ごとにチェックリストが搭載されていて、アップロードした契約書が各項目にヒットするかどうかをAIが判定する構造。精度が8割の場合だと10個コメントが表示された時、そのうち2つが間違えているようなイメージだ。

「自分自身もレビュー業務で使ったりするが、8割の精度では『まぁまぁ間違えているな』という感覚だった。これが9割5分まであがると『基本的には大丈夫』に変わる。実際に使ってもらっている現場のユーザーからも、かなり業務が楽になったという声が多い」(角田氏)

同サービスはそもそも支援ソリューションであり、法務担当者を完全に代替するわけではなく「単純な繰り返し業務をサポートする」もの。人間のチェックとAIのチェックを合わせることで、効率的かつ抜け漏れのない契約書レビューを実現するサービスだ。

そのためAIだけでレビューが完結するわけではないけれど、精度があがることでレビュー業務全体のスピードも上がり、法務担当者がより多くの時間を他の業務に使えるような効果が生まれている。

もうひとつのキーワードによる条文検索機能は、あらかじめ過去の契約書や自社のひな形をアップローしておくことで「社内に蓄積されてきた契約書のナレッジ」を有効活用できる仕組みだ。

たとえば損害賠償に関する条項を検討している際に「損賠賠償」で検索すると、データベース内のそ雲外賠償に関連する条文を一覧で表示することが可能。従来は過去のファイルをひとつひとつ開きながら実施していたリサーチ業務の工数を大幅に削減できる点が特徴だ。

3ヶ月で大手企業や法律事務所など約70社が導入

オープンβ版の提供を始めてから約3ヶ月で大手企業や法律事務所を含む約70社が導入(2018年11月時点)。業界問わず、特に上場企業など法務部の専任スタッフが複数名いる規模の企業での活用が進んでいるという。

「特に大企業の法務部ではグローバル展開に向けた海外のリーガルサポートや、ガバナンスに関する難易度の高い仕事が増え、法務の仕事がどんどん拡大している。その一方で日常的な契約書関連の業務も疎かにはできず、各担当者の負担を軽減する仕組みが必要だ。人口減少などもあり法務部の人材を簡単には採用できないような状況だからこそ、LegalForceでは『法務部をどれだけ楽にさせられるか』をテーマにプロダクトを開発してきた」(角田氏)

β版のリリース以降も現場の担当者の負担を少しでも減らすという視点で随時プロダクトのアップデートを実施。新たに追加されたWordのアドイン機能も、その考え方から生まれたものだ。

これは簡単に言ってしまうとLegalForceの機能をWord上でそのまま使えるというもの。裏側ではクラウドと紐づいているので、Wordのアドイン機能を通じてレビューした履歴がクラウド上に残るほか、クラウド版と同じようにWord上でデータベースを活用した条文検索もできる。

実際に顧客にプロダクトを試してもらう中で、1台のPCを使ってブラウザとWordの契約書ファイルを何度も行ったり来たりする担当者の様子を見ていて「単にリスクをAIで判定するだけでは足りないと感じた」(角田氏)ことが背景にあるそう。

法務部の業務フローにギリギリまで寄り添いながら、一方でテクノロジーの恩恵もしっかりと受けられる形を考えた結果として、Wordのアドイン機能というアイデアが生まれたのだという。

今回調達した資金もプロダクトのさらなるアップデートに向けた開発体制や人材採用の強化に用いる方針。レビュー精度の向上のほか、対応類型の拡充や多言語対応、カスタマイズオプションの追加などに取り組む。

現在のβ版は無料で提供しているけれど、2019年の上旬にはいよいよ有料の正式版をローンチする予定。まずはスタートアップ向けのプランを先行で提供した後、大企業の法務部に対応したプランも整えていく計画だ。

「ITの活用でダンス市場を変えたい」ダンサーが立ち上げたDanceNowが資金調達

テクノロジーを活用して業界のルールや構造を変え、その市場の課題解決に挑む——TechCrunch Japanではそのようなチャレンジをしている日本のスタートアップをいくつも取り上げてきた。

今回紹介するDanceNowもその1社。社名から何となく想像がつくかもしれないけれど、同社が取り組んでいるのはダンス市場の課題だ。収入を得る手段が少ないというダンサー、そしてダンスに興味を持った際に手軽に学べる手段がないという個人。双方の悩みを解決するサービスを通じて、この業界をさらに盛り上げようとしている。

そんなDanceNowは11月28日、複数のエンジェル投資家を引受先とする第三者割当増資と金融機関からの融資による資金調達を実施したことを明らかにした。

同社に出資したのはファンコミュニケーションズ代表取締役社長の柳澤安慶氏、同社取締役副社長の松本洋志氏、同じく取締役の二宮幸司氏、FIVE代表取締役CEOの菅野圭介氏、ReproでCSOを務める越後陽介氏の5人。具体的な調達額は明かされていないものの、トータルで数千万円規模になるという。

短尺のダンスレッスン動画サービスを軸に、コミュニティを拡大

DanceNowでは現在ダンス市場において2つの事業を展開している。ひとつが主に初心者を対象とした短尺のダンス動画サービス「Dance Now」、もうひとつがオフラインのダンス練習スタジオだ。

Dance NowのInstagramより

動画サービスのDance Nowは代表取締役CEOの廣瀬空氏が“レシピ動画サービスのダンス版”と話すように、プロのダンサーによる1分ほどのレッスン動画をInstagramやFacebook上に投稿している。2018年6月に本格始動して、現在までに約50件の動画を作成。体制を整えた上で年内に100本まで動画を増やす計画だ。

投稿するコンテンツは初歩的なダンスレッスン動画、ダイエットやフィットネス文脈の動画、振付など実際に踊りのテクニックを学べる動画の大きく3タイプ。10〜20代を中心に、ダンスに興味を持ったユーザーにとって「ダンスを始める入り口」となるような場所を目指したいという。

「今は何かのきっかけでダンスを始めたいと思った時、ダンススクールに行く以外の選択肢がほとんどない。まずはオンライン上で、1分で手軽に踊りを学べる動画を通じてそのハードルを下げていきたい」(廣瀬氏)

現在は既存のSNS上のみに動画を投稿しているけれど、次のステップでは自社アプリを開発する予定。そこで動画を軸にダンスを学びたいユーザーとインストラクターをマッチングする機能を取り入れる方針だ。

廣瀬氏の話ではそのフェーズで公式のレクチャー動画に加えて、用意されたフォーマットを基に各ダンサー(インストラクター)が自身で動画を投稿できる環境を整備。ダンサーにとってはマーケティングプラットフォームのような位置付けとなり、動画を起点に自身のワークショップやプライベートレッスンの顧客を獲得できる状態を目指すという。

まずはSNS上で動画を運用し、ユーザー側のニーズやダンスをする上での課題を探っていく方針。それも踏まえて来年の夏頃を目安にアプリをリリースする予定だ。

また少し先の話にはなるけれど、テクノロジーを活用した遠隔ダンス練習システムの開発にも取り組む意向があるそう。従来の仕組みだとインストラクターの収益モデルはその場でレッスンを受けられる生徒数の制約を受けていた。そこでその“箱の制約”を取り払うシステムに投資し、ダンサーがより多くの収益を得られるモデルを構築する狙いだ。

遠隔でのダンスレッスンが実現すれば地理的な制約もなくなるため、近くにダンススクールがないユーザーにとっても新しい選択肢になるだろう。

ダンサーがより多くの収益を得られる環境を

DanceNowは2018年7月に設立されたばかりのスタートアップ。代表の廣瀬氏は学生時代にダンスに熱中し、コンテストでトップクラスの成績を収めたこともある。

一時はダンスの道に進むことも真剣に考えたが「ダンスだけで生計を立てられる人はほんの一握り」という現実に直面。最終的にはダンサーになるのではなく、事業を通じてダンス業界を変える道を選んだ。

新卒でWeb系の制作会社に進み開発スキルを身につけた後、ファンコミュニケーションズに入社。新規事業の立ち上げを経てDanceNowを起業した。廣瀬氏を含めて現在正社員として働く3名は全員がダンス経験者だ。

「ダンサーが稼ぐ手段が少なく、それだけでは食べていけない世界を少しでも変えたい。現状はプロダンサーとして収入を得る機会に恵まれずダンスのインストラクターになる人が多いが、スタジオでのレッスンでは1回あたりの報酬がだいたい5000円くらい。まずはそこから変えるべきだと考えた」(廣瀬氏)

上述した通り、Dance Nowでは動画サービスの他にオフラインのレンタルスタジオ事業を運営している。このスタジオではダンサーが直接所属するのではなく、フリーランスのような立ち位置で自らプライベートレッスンやワークショップを開くスタイル。そのため既存の仕組みに比べてダンサーの手元には約2倍の収益が入るという。

今は10月にオープンした渋谷のスタジオ1箇所のみだが、これから他店舗展開を進める方針。このレンタルスタジオはDance Nowにとって直近の収益源でもあり、今後はマッチングしたインストラクターとユーザーがプライベートレッスンを実施したり、遠隔ダンスシステムなど新しい取り組みをテストする場にもなる。

とはいえここまで紹介してきた通り、Dance Nowはスタートしたばかり。事業もこれからというフェーズで、廣瀬氏自身も「完全に想い先行で始まったスタートアップ」だと言う。まずは動画メディアとオフラインのスタジオを軸に、ダンスに関心のあるユーザーとダンサーのコミュニティを広げながら事業の拡大を目指す。

「ダンスはユースオリンピックの正式種目にも採用され、今後の伸びが期待されている。日本でも教育課程に採用されてから手軽なスポーツとして定着し、若者を中心に愛好者は600万人を超えるような規模になってきた。今からダンスを始める人にとって少しでもいい環境や選択肢を提供できるようなサービスを作っていきたい」(廣瀬氏)

中国のGeek+が倉庫と物流向けロボット開発のために1億5000万ドルを調達

ロボットならびに人工知能の一般的な応用の中で、もっとも直接的に役立っているもののひとつは、倉庫やそのほかの環境の中での無人ロボットの利用である。そこでは荷物を整理したり、物をA地点からB地点まで移動したりといった、繰り返し作業に関わる人間の作業が置き換えられている。さて、このたび北京に拠点を置くロボットスタートアップのGeek Plus(別名Geek+)が、製品開発、販売、そしてカスタマーサービスに投資して成長の機会を掴むために、1億5000万ドルを調達したことを発表した。

Geek Plusによれば、これは物流ロボットスタートアップが行った調達ラウンドの中で過去最大のものであると言う(実際、PitchBookによれば、これに先立つ最も多額の物流用ロボット向けラウンドは、ボストンから出てきたLocus Robotics向けの、2500万ドル強のものだった)。

今回のラウンド(シリーズB)はWarburg Pincusによって主導され、Volcanics VentureやVertex Venturesなどの他の株主たちが参加した。同社の評価額は公表されていないが、私たちは質問を送っているので、もし何かがわかったらお知らせする予定だ。Warburg Pincusは、2017年に行われた前回の6000万ドルのラウンドも主導した。今回でGeek Plusは、2015年の創業以来およそ2億1700万ドルを調達したことになる。

この大規模なラウンドの理由の一部は、同社によれば、事業が順調に成長していて、今年は5倍の成長が見込めること、そして海外はもちろん、中国国内の巨大な市場に資本投下を行いたいからだ。

これまで、Geek Plusは、中国香港台湾日本オーストラリアシンガポールヨーロッパ、そして米国の100以上のロボット倉庫プロジェクトに5000台以上のロボットを供給してきたと語っている。現在の顧客には、AlibabaのTmallやアジア発のVIP.comなどがある。

「Warburg Pincusや他の株主たちによる投資は、Geek Plusの成果と、Geek Plusの将来性に対する、全幅の信頼を示すものです」と発表で語るのは、Geek Plusの創業者兼CEOのYong Zhengである。「AIとロボット技術を通じて、さまざまな業界の強化に力を入れていきます。今年はビジネスを5倍以上成長させることができると思います…引き続き顧客中心であり続けます。そしてAIならびにロボットテクノロジーをサプライチェーンニーズへシームレスに統合することを通して、顧客の皆さまのために価値を創造して行きたいと考えています」。

独自の物流オペレーションを改良したり、他から使われる独立したビジネスとして構築したりするために、物流ロボットを掘り下げ続けている他の多くの企業がある。それらの企業はGeek Plusにとって、競合相手であり、潜在的なパートナーであり、あるいは買収してくる相手かもしれない。

そうしたリストのトップに位置するのはおそらくAmazonだろう。同社は2012年に自身の倉庫ロボットを開発するために、ロボットスタートアップのKivaを7億7500万ドルで買収した。それ以降、Amazonはロボットオペレーションを広いユニットに拡大してきた。それはAIとロボットを倉庫オペレーションに導入したいと考える他の企業のニーズを満たすためのロボットを、AWSやフルフィルメントのような基本サービスのやり方に従って、製品化することが可能だろう。

一方、InViaFetchは、最初から第三者に販売するための技術を構築することに集中している2社であり、それぞれサービスとしてのロボット技術とロボットそのものを扱っている。

こうしたロボットの中には、倉庫から出て、ラストマイル配送シナリオに向かっているものもある。こうしたより広い市場全体の価値を100億ドル規模と見積もる者もいる。

Geek Plusは、これまでに、ロボットを利用すると思われる様々なシナリオをカバーする製品を開発している。例えば人間によるピックアップを助けるシステム、整頓し移動するシステム、そして無人フォークリフトなどだ。

「昨年Geek+に初めて投資して以来、私たちはGeek+の急速な成長、特にそのビジネスの拡大と国際化に対して大きな感銘を受けて来ました」と語るのはWarburg PincusのエグゼクティブディレクターであるJericho Zhangだ。「テクノロジーはサプライチェーンに革命をもたらしています。Geek+は、従来のサプライチェーンで苦労していたポイントを解決するために、ロボット、ビッグデータ、AIなどの最先端技術を組み合わせることができる、先進的なテクノロジー企業の1つなのです。より多くのデータを蓄積し、アルゴリズムの最適化を続け、他の産業に拡大して行くにつれて、Geek+がさらにこの分野の革命と革新をリードし続けてきれるものと、私たちは確信しています」。

全体として、昨年ロボット業界には多額の投資が何件も見られた。製造業向けに力を入れているBrightMachinesは、10月に1億7900万ドルを調達した。これまでで最も大きかったロボットスタートアップのベンチャーラウンドは、Ubtechの8億2000万ドルである。これもまた中国の消費者ならびに教育向けロボットスタートアップであり、調達は今年の5月に行われた。

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(翻訳:sako)

フィンテックInstarem、グローバル展開へ2000万ドル調達ー日本ではライセンス待ち

銀行が海外送金を安くで行えるサービスを展開しているシンガポール拠点のスタートアップInstaremは、グローバル展開へ向けシリーズCラウンドで2000万ドルを調達した。

今回のラウンドはインドネシアの通信企業TelkomのVC部隊MDI Venturesとタイの銀行Kasikornのファンド、そして既存の投資家Vertex Ventures、GSR Ventures Rocket Internet、SBI-FMO Fundによって実施された。

今回の資金により、設立4年のInstaremはこれまでに4000万ドル近くを調達したことになる。しかしながらInstaremの創業者でCEOのPrajit NanuはTechCrunchに対し、シリーズCを4500万ドルに拡大する計画だと語った。追加の投資は来年1月までにクローズされる見込みだ。Nanuは、南米の新興マーケットと欧州でビジネスを展開するのに力を貸してくれそうな戦略投資家を引っ張ってくるのに注力している。

「我々はいま、資金の意味合いが非常に大事なときにある」とNanuはインタビューで語った。「我々のビジネスに付加価値を与えてくれるような投資家を今回のラウンドに取り込めるかどうかが、今後の鍵を握る」。

Nanuはまた、可能性のあるいくつかの投資家の中で、米国の大手ファンドと現在交渉していることも付け加えた。

Instaremは海外送金のコストを削減するために銀行と協力し、“企業向けのTransferwise”サービスのようなものを提供している。しかしTransferwiseが世界中に送金するのにグローバル銀行ネットワークを使うのに対し、Instaremは海外通貨で取引を行っている中規模の銀行を活用している。以前私が記事に書いた通り、この仕組みは、今から出港するというUPSの貨物船に荷物を置くようなものだ。これにかかる費用は、船を探して自分で荷物を送るのに伴うコストよりも安い。

Instaremは主に東南アジアにフォーカスしていて、50マーケット以上への送金に対応している。一般消費者向けにもサービスを提供してはいるが、常に需要があり、扱う平均額も大きな金融機関が主なターゲットだ。

Instaremはシンガポール、ムンバイ、リトアニアにオフィスを構えていて、提携企業の拡大を見据え、間もなくシアトルにもオープンする。すでに東南アジアの銀行上位10位のうち3行と提携している。Nanuによると、Instaremはまず南米とメキシコに関係する顧客をターゲットとしているクロスボーダーの銀行、ファイナンシャルサービスとの提携を目指す。アジアにおいては、日本とインドネシアでライセンス待ちの段階で、ライセンスを取得すればこの2国で多くのサービスを展開することになる。

TechCrunchが把握している限りでは、InstaremはVisaとの交渉で微妙な時期にある。交渉の結果次第では、顧客にプリペイドカードやファイナンシャルサービスを提供できるようになる。このVisaとの交渉について、Nanuはコメントを拒否した。

TechCrunchはまた、Instaremが今年初めに東南アジアのユニコーンの1社から買収のアプローチを受けたことも把握している。Nanuは買収を持ちかけてきた企業名を明かさなかったが、このオファーは“我々にとっていいタイミングではなかった”とコメントした。しかし、彼の考えはIPOに傾いている。

昨年、InstaremがシリーズBで1300万ドルを調達した時、Instaremが2020年までに株式を公開するかもしれない、とNanuはそれとなく語った。NanuはTechCrunchに対し、適当な時期がきたら米国で株式公開するというのが最も好ましいと言っていて、目標とするその時期は2021年と後ろ倒しになっている。

イメージクレジット: Svetlana LukienkoShutterstock

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(翻訳:Mizoguchi)

2万人登録のデイワークアプリ「ワクラク」運営が1億調達、資格が必要な業種での活用も視野に

Wakrak代表取締役 谷口怜央氏

デイワークアプリ「ワクラク」運営のWakrakは11月22日、オプトベンチャーズ、ANRI、ドリームインキュベータを引受先とする第三者割当増資による総額1億円の実施を発表した。調達した資金をもとに同社は導入企業・利用者拡大に向け開発・体制を強化するとともに、現在サービスの中心は東京となっているが地方への展開も実施していく予定だという。

ワクラクは「1日単位のワーク探し」「面接なしで雇用契約締結」「給与振込申請」が行えるデイワークサービスだ。ユーザーは「アプリのダウンロード」「プロフィールの入力」「契約書の発行」の3ステップで仕事が決定できる。要するに、履歴書や面接を受ける必要がない。登録者は学生やフリーター、主婦がメインで、登録者数は2万人を超える。Wakrakのミッションは“いつでも、どこでも、なんでも、好きなことができる世界を作る”こと。そんな風に自由で楽しく働けるワークスタイルを実現できるようなサービスとなっている。給与も最短で翌日振込なのも魅力的だ。

活用している企業は飲食店、ホテル、物流企業、EC企業、IT企業など。Wakrakいわく導入の目的には「即時性」と「コスト削減」などがあげられるという。初期費用や月額費用が一切かからず、Wakrakはユーザーの給与の10%分を求人企業から徴収するのみ。手数料の平均は600円なのでコストカットにつながる。また、ユーザーの大半はリピーターとなり2回3回と同じ企業でワークを行うことから“スポットでの雇用は合わない”という企業も利用しているそうだ。

競合として、人手が足りない飲食店などのお店と暇な時間を有効活用したい人たちをマッチングするサービス「タイミー」などもあるが、月に数千件のワークが行われているというワクラクは今後どのような方向を目指しているのだろうか。Wakrak代表取締役 谷口怜央氏は「次のフェーズはデータを貯めていく段階だ」と話した。

Wakrakは2017年6月に設立された。当時の企業名はSpacelookでサービス名は「Spacework」だった。正式ローンチした2017年9月以降、サービスへの「ニーズがあるかどうかは確信が持てた」と谷口氏は話す。需要が明らかになり、これからは「誰がどこで働いたことがあって、何が得意で不得意だったかなどのデータを作らなければならない」という。これまでのワクラクは簡易なものだったが、データを取る仕組みを構築するために「裏側をしっかりと作り込んだ」そうだ。

「一人が3、4回働いたデータには価値がないと思っている。これが10、20回となってきたときにやっと価値があるものとなる。そのためには仕事の数が必要なので、事業者・ユーザーを増やすことを徹底して行なっている」(谷口氏)

それを経て谷口氏が目指しているのが、資格やスキルが必要となる業界でのワクラクの活用だ。サービス業以外の専門性が必要となる仕事でもワクラクを通して求職できることを目標としている。

「A社で自分が築き上げた価値や役職は、B社に移った瞬間にまた1から積み上げなければならない。だが、アプリやサービスの中に自分の評価が溜まっていくならば、どこで働こうが関係がない。ブルーカラーだけではなくてホワイトカラーも、ありとあらゆる仕事をこのサービスを通して行える、かつ、やりたくないことをやめられる。そのような世界観を僕たちは持っている」(谷口氏)

そんなWakrakは2018年10月30日、01Boosterと愛知県庁が主催の「あいちアクセラレーター」に採択されたと発表している。これを通じて、愛知県内の企業に向けて今後の人手不足解消の新たなサービスとしてワクラクの導入がさらに加速することとなるという。単に愛知県内の飲食店やホテル、清掃会社、物流企業、イベント会社などへ導入を進めるだけでなく、自動車関連技術を有する技術者のデータ登録を実施することも併せて発表している。これは「サービス業以外の領域での展開を検討するための実証実験」なのだと谷口氏は説明した。今後は他の領域でも実証実験を行う予定だ。

取材中、谷口氏は「“やりたくないこと”をやっている人たちが“やりたくないこと”をやめて、“やりたいこと”をできるようにしたい」と話していた。近い将来、専門性が強い仕事に就く人でもより自由に簡単に働ける未来が到来することに期待したい。

ラズベリーパイより簡単にIoT電子工作ができる「obniz」が1億円を調達、コンセプトは“ハードウェアのAPI化”

数年前、3Dプリンターやレーザーカッターなどが普及することで“製造業の民主化”が実現するという「メイカーズムーブメント」が大きな話題を呼んだ。

技術革新によって製造コストが大幅に削減されただけでなく、クラウドファンディングのように資金と顧客を募れる仕組みが登場したことで“おもしろいアイデアと熱量”を持った個人が、思いのままにものづくりにチャレンジできる環境が整い始めている。

今回紹介する「obniz(オブナイズ)」が目指している世界観もメイカーズの文化に近いかもしれない。このプロダクトが叶えてくれるのは「電子工作をやってみたい、IoTプロダクトを作ってみたい」というロマンだ。

詳しくは後述するけれど、クラウドサービスと専用の組み込みデバイスによってさまざまな電子部品をインターネット経由で、あらゆるプログラム言語で操作できるのが特徴。電子工作やIoT機器の開発ハードルを下げ、高度な専門知識のない人でもその魅力を体験できる仕組みを提供する。

そんなobnizを開発するのはCambrianRobotics(カンブリアンロボティクス)という日本のスタートアップ。小学生の頃からマイコンやパソコンのプログラムをやっていたという2人のエンジニアが立ち上げたチームだ。

同社は11月22日、UTECを引受先とする第三者割当増資により約1億円を調達したことを明らかにした。

JavaScriptで電子工作が可能に、面倒な初期設定は不要

上述した通り、obnizは“インターネットと連携して動くもの”を簡単に作れるサービスだ。

写真にあるブルーの組み込みデバイスをWifiに接続した状態でセンサーやモーターといった部品に繋げば、それらの部品をインターネット(API)経由であらゆるプログラム言語から操作できるようになる。

実際に使い始めるまでの工程はわずか3ステップ。まずはobnizをWifiにつなぎ、使いたいモーターなどを接続する。あとはスマホからobnizに表示されるQRコードを読み込み、表示されたプログラムを実行するだけ。IoT機器を作ってスマートホーム化に挑戦したり、ラジコンやロボットを作ったりいろいろと応用の幅も広い。

最大の特徴はそのハードルの低さだ。

obnizの場合、組み込みデバイスに接続されたモーターやセンサーを操作するのに必要なのは、ブラウザでプログラムを書いて実行するだけ。従来IoTプロダクトを開発する際に高い壁となっていた「組み込みデバイスにおけるファームウェアの作成(ハードウェアを制御するソフトウェア)」を必要としない。

SDKを使えばJavaScriptから利用が可能。obnizにつないだリアルな部品をHTMLの中で“プログラム上のオブジェクト”として扱えるようになる。

全くの初心者であってもブロックプログラムを通じて簡単な操作を実行することができる上に、専用のアプリも不要で複雑な環境構築で行き詰まる心配もない。

kickstarterのプロジェクトを経て(160万円以上を集めることに成功)2018年5月より開発ボードの販売をスタート。1台の価格は5980円で、すでに2000台以上の販売実績があるという。

エンジニアが趣味でIoT機器の電子工作をする際や教育用のコンテンツとして活用されるケースが多いそう。obnizが電子工作デビューというユーザーも一定数いて、中にはプログラミング未経験ながら挑戦する人もいるようだ。

何か動くものを自作したいとなった場合、今であればArduino(アルディーノ)やRaspberry Pi(ラズベリーパイ)が代表的な選択肢にあがるだろう。obnizは両者では少しハードルが高いと感じる層のユーザーにもリーチしていきたい考え。使いやすさと作れるものの幅が広い点をウリに「グローバルにおいて、動くものを作る際の選択肢として1番最初に想起されるような存在を目指したい」という。

また個人だけでなく企業におけるPoC(概念実証)などプロトタイプ作成や、IoTへの導入目的でも使われ始めている。具体的には遠隔地のデータ収集や装置の監視などでの利用が考えられ、とある装置の故障予知を目的とした実証実験も企業と計画しているとのことだ。

コンセプトは「ハードウェアのAPI化」

そもそもobnizはどのような背景で生まれたのか。CambrianRobotics創業者でCEOの佐藤雄紀氏によると、IoT開発の壁をなくし「すべてのエンジニア、個人が自由にIoTを作れるようにする」という思いが根本にあるようだ。

IoTプロダクトの開発にはその性質上、ハードウェアとソフトウェア、そしてネットワークなど複数の領域に関する知見と開発スキルが必要とされ、それが大きな障壁となってきた。特に難点となっていたのがファームウェアの開発だ。

「スマホアプリで言えばiOSとAndroidがあって、iOSアプリはAndroidの機種では動かない。それと同じようなことがいろいろな世界で起きていて、組み込みの世界における小さなコンピューターにおいても同様だ。メーカーが違えばiOSとAndroidぐらいの違いがあるため、同じ電子部品を使う際にもソフトを書き換える必要がある」(佐藤氏)

佐藤氏によると、一般的には使うセンサーや装置が変わるごとにファームウェアを書き直す必要があるそう。しかも「(そこで動くようなソフトは)LinuxやMacやiOSのように洗練されたシステムと違って、機械言語に近いレベルで書かないといけない」ため、できる人が限られているのだという。

「IoTを進めたい場合には必ずそういったエンジニアの力が必要になるが、そもそも人材が足りない。また回路やその上で動くファームウェアには詳しくても、クラウドに繋ぐためのネットワークの知識は別の領域になるので、余計に難易度があがる」(佐藤氏)

そんな状況を打破するために開発したobnizのコンセプトは“ハードウェア(電子部品)のAPI化”だ。

それこそ今ではさまざまなWebサービスがAPIを公開している。たとえば天気の情報を取得したいような場合、該当するAPIの使い方さえわかれば、詳しい知識がなくとも欲しい情報を取ることができる。ハードウェアにおいても同じような仕組みがあるべきだというのがobnizの考え方だ。

「たとえ温度に関するデータの取り方を知らなかったとしても、APIがわかっていることで、どんなエンジニアでもその情報を使える。そのような環境を整えていければ、電子工作やIoTが初めてのエンジニアもチャレンジしやすくなるし、企業でのIoT活用も進められると考えている」(佐藤氏)

電子工作にチャレンジしたいユーザーを後押しできるプロダクトへ

写真左からCambrianRobotics共同創業者でCEOの佐藤雄紀氏、同じく共同創業者の木戸康平氏

CambrianRoboticsの創業は2014年。佐藤氏と共同創業者の木戸康平氏は早稲田大学総合機械工学科の同級生。学生時代には他の友人も含めて起業し「papelook」という1000万DL超えの画像加工アプリの開発に携わった。

その後佐藤氏はスポットライト(連続起業家の柴田陽氏が創業、2013年に楽天により買収)にジョインし、ポイントサービス「スマポ」のiOSアプリや超音波ビーコン、超音波プロトコルの設計や開発を担当。高校時代からロボコンなどに関わっていたという木戸氏はpapelookで一緒に活動した後、大学院を経てKDDIで働いた。

そんな2人が再び合流して立ち上げたのがCambrianRoboticsというわけだ。

同社では今回調達した資金を活用して、開発やテクニカルセールスを中心とした人材採用を進めるほか、国内外でのマーケティングにも力を入れる方針。現在はプログラミング教育などコンシューマー向けのプロダクトを強化していて、ロボットやセンサーなどをセットにしたAIロボットキット、IoTホームキットの準備も進めている(クラウドファンディングのMakuakeで先行販売中)。

「もちろん今まで回路に携わっていたような人が便利に使えるツールでもあるが、回路などの知識がないWebエンジニアの人が『ハードにも挑戦してみたい』と思った時に、それを後押しできるようなプロダクトにしていきたい」(木戸氏)

「(個人法人問わず)obnizがあったからIoTを始められたという声がいろんな所から出てくるような、そんなプロダクトを目指したい」(佐藤氏)

クラウド通信のためのAPIを提供するAgoraがシリーズCで$70Mを調達、Twilioに負けない強みとは?

クラウド通信のためのAPIを作っているAgoraが、Coatue ManagemenがリードするシリーズCのラウンドで7000万ドルを調達し、新しい市場と業種分野の開拓をねらっている。これまでの投資家SIG, Morningside Capital, およびShunwei Capitalもこのラウンドに参加し、Agoraの総調達額は1億2500万ドルになった。

同社のAPIはMeet Group, Xiaomi, Hike Messenger, Momoなどに利用されていて、顧客はそのAPIを使って自分のアプリケーションに音声やビデオ、そしてグループによる通話機能を実装する。Agoraによると、そのSDKのインストール数は最近20億を超え、同社の世界中に分散する200のデータセンターを経由する毎月平均100億分(ふん)のコミュニケーションを支えている。

同社はその成長目標の達成を目指して、比較的速いペースで資金を調達している。この前の資金調達の発表は5か月前で、そのときは同社のシリーズBの3000万ドルの拡張が行われて、ラウンドの合計が5000万ドルになった。

Agoraは2014年にCEOのTony Zhaoが創業した。彼はオンラインコミュニケーションプラットホームWebExの創設技術者だったが、同社は2007年にCiscoに買収された。また彼は、中国のビデオライブストリーミングプラットホームYYのCTOでもあった。Agoraは本社がカリフォルニア州サンタクララにあり、上海にもオフィスがある。同社は、TwilioやTokboxなど既存のコンペティターがいる市場への、比較的新しい参入企業だ。

Agoraのメインのプロダクトは、デベロッパーが自分のアプリケーションに音声、ビデオ、そしてグループによる通話機能や対話的なブロードキャスティング機能を持たせるためのSDKだが、最近ではゲームデベロッパーとFacebookのReact Nativeフレームワーク向けのSDKも提供している。

画像クレジット: Agora

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

“ファンクラブの民主化”目指す「CHIP」が4600万円を調達、開設されたファンクラブ数は2600個に

ファンクラブ作成アプリ「CHIP(チップ)」を運営するRINACITAは11月21日、East Venturesと複数の個人投資家を引受先とした第三者割当増資により、総額4600万円を調達したことを明らかにした。

今回同社に株主として加わった個人投資家はヘイ代表取締役社長の佐藤裕介氏、ペロリ創業者の中川綾太郎氏、nanapi創業者の古川健介氏、Vapes代表取締役社長の野口圭登氏、Candle代表取締役の金靖征氏、AppBrew代表取締役の深澤雄太氏と匿名の個人が1名。

RINACITAは過去にSkyland VenturesとEast Venturesからも資金調達を実施していて、今回はそれに続く調達となる。

3ヶ月で約2600個のファンクラブが開設

“ファンクラブの民主化”という紹介をしている通り、CHIPはスマホアプリから誰でも簡単にファンクラブを作れるサービスだ。

最初にテーマ画像を1枚設定した後は、ファンクラブの名前と説明、月額会員費、会員証のデザインなどを選ぶだけ。作るだけなら2〜3分もあればできる。テキストや画像の投稿、コメントなどを通じてアーティストとファンが交流を楽しむ場所になっていて、会員費の90%がアーティストに還元され、10%がCHIPの収益となる仕組みだ。

2018年8月5日のリリース後にSNSなどでちょっとした話題を呼び、約2週間で約1.3万人がユーザー登録。1700個ほどのファンクラブが開設され、実際に1400人が何らかのコミュニティに“CHIP”(課金)した。

RINACITA代表取締役の小澤昂大氏によると「今は一旦落ち着いたフェーズ」とのことで、確かにペース自体は落ちているものの、約3ヶ月が経過した現在もファンクラブ数が2600個、登録ユーザー数が2.2万人、課金ユーザー数が2700人と伸びている。

左からトップページ、CHIPの公式ファンクラブページ、ファンクラブの追加プラン作成画面

ただし現時点でCHIPを使ってできることはまだまだ限定的。「ローンチしてからの2〜3ヶ月はバグの修正や本当に最低限必要な機能を整備していた状態」(小澤氏)で、基本的にはアーティストがテキストや画像を投稿し、それに対してコミュニケーションをとるシンプルなプラットフォームだ。

直近では複数のプランを設定して金額や投稿の内容を変えられる機能や、入会できるファンの上限を設定できる機能、画像を複数枚投稿できる機能などが追加。11月からはより本格的なアップデートに向けた開発を進めていて、今回調達した資金も主にプロダクト強化に向けた人材採用などに用いるという。

現在はiOS版のみとなっているが、来年春ごろまでを目安にAndroid版とWeb版をローンチする方針。並行して(1)投稿できるコンテンツの種類を拡大(2)今までよりも本格的なファンクラブページを作れる機能の追加(3)アーティストと個人によるダイレクトメッセージ(DM)機能の追加 という3つを軸にアップデートを進めている。

投稿できるコンテンツに関しては動画や音声への対応を進める計画。今はテンプレートから選ぶ仕様になっている「ファンクラブの会員証」をカスマイズできる仕組みや、外向けにファンクラブサイトをデザインできる機能など、アーティストの世界観を反映しやすい環境も整える。

双方の交流を深めるという点で、DMの機能なども用意していく予定。なおDMについては全員が対象というよりは少人数限定の上位プランで特典として提供するなど、アーティストが範囲を選択できる仕様を検討しているとのことだ。

初期コストを気にせず、誰でも気軽にファンクラブを作れる場所へ

CHIPをローンチしてからの数ヶ月で「予想以上に多くの人に初期から使ってもらえ、多くの発見があった」と話す小澤氏。同様のサービスやオンラインサロンを含め“個人をエンパワーメントするサービス”が増えてきてはいるけれど、CHIPとしてはよりファンクラブに寄せていきたいという思いが強くなったという。

そのきっかけのひとつが「実際にCHIPを出してからファンクラブは『トップレイヤーのアーティストしか作れない』ということに改めて気づいた」ことにあるようだ。

「初期コストがかかるため、大手の事務所でもそれに見合った成果が見込めなければ簡単には作らない。結果として駆け出しの人達はもちろん、一定数のファンがいて良い作品を作っているアーティストでもファンクラブを持っておらず、収益化やファンとの交流の仕方に悩んでいるケースも多い。そんなアーティストが初期コストとかを気にせず、気軽にファンクラブを作れるようにしたい」(小澤氏)

とはいえ、ほとんど名も知られていないようなアーティストが熱狂的なファンを獲得したり、活動資金を確保したりできる場所を確立するには、解決しなければいけない課題も多い。

実際にCHIPを眺めてみても、多くのファンを集めているコミュニティはまだまだ一定数。もちろん試しに開設されたものもあるのだろうけど、ファンの数が0人や数人のものも少なくない。現在はSNSなどで影響力を持ちすでにフォロワーを抱えているユーザーが、そのパワーをCHIPでも発揮しているような状況にも見える。

これは他のサービスも抱えている問題かもしれないけれど、小澤氏も「その点は今後も試行錯誤を続けていきたい。まずは使いやすさなどで価値を感じてもらえるように改善をしていきつつ、『もともとのフォロワーが少ない人でもCHIPに来れば新たなファンがつく』『CHIPを開けば応援してみたいと思えるアーティストが見つかる』ような仕組みを模索していく」と話していた。

最短1時間で届く買い物代行サービス「Twidy」が7000万円を調達

地域密着型の買い物代行サービス「Twidy(ツイディ)」を展開するダブルフロンティアは11月20日、東京電力フロンティアパートナーズと澤田ホールディングス(エイチ・アイ・エス創業者の澤田秀雄氏が代表取締役会長を務める持株会社)を引受先とした第三者割当増資により総額7000万円を調達したことを明らかにした。

今回は6月に実施したシードラウンドの追加調達という位置付け。前回プラネットより調達した5000万円と合わせ、同ラウンドでトータル1億2000万円を集めたことになる。

Twidyは“近所のスーパーでのちょっとした買い物”をクルーに依頼できる買い物代行サービスだ。ユーザーはアプリ上から欲しい商品と届けてもらいたい日時を選んで決済するだけ。リクエストを受けたクルーは商品をピックし、指定の場所まで配送する。

ローンチ時に「日本版のインスタカート」と紹介したように、インスタカートを知っている人にとってはイメージがつきやすいサービスかもしれない。

特徴は注文してから商品が届くまでのスピード感だ。配送エリアを近隣に絞って地域密着型にしていることもあり、最短1時間で自宅まで配送する。

たとえば9月6日にスタートしたライフ渋谷東店の場合は、11時から20時が目安の配達時間。この時間内であれば1時間単位で指定が可能だ。お昼すぎに注文すれば夕飯を作る時間には十分間に合うし、夕方になって急に足りない物が出てきても夜には届けてもらえる。

現在はライフ渋谷東店のみが対象のためサービスを利用できる人も限られているけれど、子育て中のお母さん達を中心に利用が進んでいるそう。ダブルフロンティア代表取締役の八木橋裕氏によると「頼んだらすぐに持ってきてもらえる点が1番好評」とのことで、利用者の半分以上が再度利用しているという。

商品を届けるクルーについてはピック担当のピッキングクルーと配達担当のドライビングクルーの分業制。ピッキングはダブルフロンティアのパートスタッフが、配達に関しては日経新聞の配達員が担う。

これは前回も紹介した通り、実証実験時に配送スタッフがピッキングも含めて担当した結果、商品を間違えてしまうことなどの課題があったため。分業することでオペレーションは複雑化するものの「結果的にはユーザーの満足度向上に繋がり、それがリピート率の高さなどにも影響を与えている」(八木橋氏)そうだ。

11月からは試験的にピッキングの一部を“近所に住む個人ピッカー”が担当する取り組みも始めた。個人ピッカーには対応した件数に応じて報酬が支払われる仕組み。最終的にはこの層を増やして、ユーザー同士が協力し合う地域密着型の小さな経済圏を作り、各地に広げていくのが狙いだ。

今後ライフの別店舗や別のスーパーへの対応も計画していて、3月末までに5店舗くらいまで広げていきたいとのこと。ただし今は店舗数ではなく「ライフ渋谷東店できちんと成功事例を作ること」を重要視している段階。

「まずは勝利の方程式を確立した上で、拡大に向けて本格的に動き出したい」(八木橋氏)という。

生体認証Liquid関連会社で3Dスキャニングサービス提供のSYMBOLが1億円調達

生体認証・空間認識エンジン「Liquid」の研究・開発などで知られるLiquidの関連会社で、アパレルおよびフィットネス産業に3Dスキャンニング及びSizeCloudシステムを開発・提供するSYMBOLは10月5日、シードラウンドで日鉄住金物産ならびに三菱商事ファッションより約1億円を調達したと発表した。調達した資金をもとにSYMBOLは開発態勢を強化する予定だ。

SYMBOLは2016年12月、LiquidとDEFIANT代表取締役の今井賢一氏が合弁で設立。Liquidはこれまでに生体認証に関わる技術開発の過程で3Dスキャニングの画像解析の技術を蓄積してきている。一方、SYMBOLの代表取締役を務める今井氏は2012年からアパレルとフィットネス・ボディメイクの相関関係をソリューション化して提供するべく人体の3Dスキャニングシステムの研究を開始し、アメリカ最先端の3DスキャニングベンチャーにR&D資金を投じてきた。

SYMBOLの「3D Body Scanning System」は現時点のスペックでは20基のデプスセンサーで150万点群を5秒で取得、約40秒で3Dアバター生成から全身170ヵ所の計測値抽出が可能だ。マネキンを用いたスキャンデータ比較テストでは2000年代まで浜松ホトニクス社が製造していた高性能Body Line Scanner(光学式3次元計測装置)との計測値比較では+/-5mm未満までを実現し、なおかつアテンドスタッフ不用のセルフスキャニングを実現した。

前置きが長くなったが、ここでSYMBOLが何をやっている会社なのかを説明したい。

2017年には長年神戸のスポーツ科学研究所にて人体の3Dスキャンの研究をしていたASICSがSYMBOLのシステムを旗艦店で展開する「ASICS FITNESS LAB」に導入することを決定。このASICS FITNESS LABでは3Dスキャンを用いて体形や姿勢を分析・採寸した上で専門スタッフがランニングフォームなども測定し、その結果をもとにカスタムランニングタイツをオーダーすることができる。ASICSと同様に1980年代から自社の研究所にて3Dスキャニングを駆使し女性の体形を研究してきたワコールも今後国内100拠点にてSYMBOLのシステムを導入し、サービスの中核とする次世代型店舗を開発すると発表。また、パーソナルフィットネス大手のRIZAPの一部店舗でもSYMBOLのシステムで3Dスキャンから顧客の体形のビフォーアフターおよびトレーニングメニューを分析するサービスが提供されている。

2018年はZOZOがリリースした水玉模様の身体計測スーツ「ZOZOSUIT」が大きな話題となった。なので今年は「計測したデータをもとに顧客にカスタマイズした衣類」を提供する受注生産型アパレルの“元年”とも言えるのではないか。

そんななか、SYMBOLは「アパレルの設計から生産までの『モノづくり』にも、寸法だけではなく形状を伴う精緻な人体の三次元データが必要であり、スマホカメラでの撮影や既に所有しているアパレル製品を顧客自らが採寸した情報を基にアプリ等でサイズレコメンドを行うという、導入コストの低い簡易なシステムからは一貫して距離を置き、研究・開発を続けてきた」という。

SYMBOLの共同創業者でLiquid代表取締役の久田康弘氏は、徹底的に指紋データを収集検証し生体認証によるATMシステムまで開発してきた経験則から、縮む国内アパレル市場の中で大量生産大量在庫に身動きが取れなくなっているアパレル業界に関して「最初から低コストで中途半端な精度の体形データをアプリ等で収集しても、その先の機械学習やAIの活用に向けては結局回り道をする事になる」と話した。

一方、SYMBOL代表取締役の今井氏は「アパレルのサプライチェーンの中核に位置する両株主から学ぶアパレルのモノづくりのメカニズムをしっかりと把握し、3Dスキャニングシステムを介して収集したデータに時間(加齢ないしはダイエット・トレーニング期間)という概念を加えた精緻な4次元人体体形データが、確実にサプライチェーンと連携・活用されるようなソリューションを開発する事で、悩める巨人のような現在のアパレル産業の地殻変動に大きく貢献していきたい」と語った。

京大発の“大気計測技術”でドローンの安全運航を支援、メトロウェザーが2.2億円を調達

日本郵便が11月7日から福島の一部地域で始めた“ドローンによる郵便局間輸送”が、国内初の目視外飛行ということもあり話題を呼んだ。

近年、物流を始めインフラ点検や測量、農業など人手不足が深刻化する業界においてドローンが注目を集めている。日本郵便のケースでは約9km離れた郵便局間を2kg以内の荷物を積んだドローンが行き来するというものだけれど、従来は人が担っていた役割をドローンと分担する事例が徐々に増えていきそうだ。

このように今後様々な領域でドローンが活躍していくことを見据えた際、大前提となるのが「ドローンが安全に運航できる」こと。特にドローンが飛行する地上付近は風の影響を強く受けるため、その状況を高精度に観測する技術が欠かせない。

今回紹介するメトロウェザーは、まさに京都大学の研究をベースとした大気計測装置によってドローンの安全運航を支えようとしているスタートアップだ。

同社は11月19日、Drone Fund、リアルテックファンド、個人投資家を割当先とする第三者割当増資とNEDOからの助成金により、総額で2.2億円を調達したことを明らかにした。

通り1本ごとの風の乱れも測定する技術

メトロウェザーは2015年の設立。京都大学で気象レーダーを用いた乱気流の検出・予測技術の研究開発などを行なっていた代表取締役CEOの東邦昭氏と、京都大学生存圏研究所助教の古本淳一氏が2人で立ち上げた。

現在同社ではリモート・センシング技術と信号処理技術を基に、上空や海上における風の情報を高精度に測定する独自のドップラー・ライダーを開発している。

ドップラー・ライダーとは光を使って大気を測るシステムだ。具体的にはレーザー光を大気中に発射。その光がPM2.5などの微粒子に当たりドップラー・シフトして返ってくる(反射してくる)ものを受信し、風の情報に焼き直す。微粒子は風に乗って動いているため、ドップラー・シフトを見ることで風の動きもわかる仕組みだ。

東氏によると気象学においては高層大気の研究が比較的進んでいる一方で、ドローンが飛ぶような低層大気においては未解明な部分が多かったのだという。これは「低いところの方が建物や橋など障害物の影響を受けやすく難易度が高いから」で、難しいからこそ低層大気の状況を測定できる技術にはニーズがある。

たとえばゲリラ豪雨の予測など都市の防災や洋上風力発電事業を検討する際の風況観測、航空機の安全運航などいろいろな用途で使えるそう。ドローンもその一例だ。ドップラー・ライダーはビルの影や橋のたもとなど至る所で発生している風の乱れを測れるため、ドローンの安全運航をサポートするシステムにもなりうる。

ここで付け加えておくと、何もドップラー・ライダー自体は新しい技術というわけではない。すでに製品化されているものだ。ただし古本氏が「価格が高く、1台で約1億円するものもある」と話すようにコスト面がネックになっていたことに加え、サイズもより小型化できる余地があった。

「自分たちはライダーをばら撒きたいと考えている。そのためには価格を数百万円までに抑え、ビルの屋上に置けるようなコンパクトなものを作らなければならない」(東氏)

特にドローンとの関係においては、この“ばら撒く”というのが大きなポイントになるそう。たとえば都市部の複数のビルに、複数のライダーを設置することで「通り1本ごとの風の乱れまで細かく把握できるようになる」(古本氏)からだ。

出発点は野球場1個分の大型レーダーから

この点については今回Drone Fund代表パートナーの大前創希氏にも話を聞けたのだけれど、やはり低空領域の気象状況を高い解像度で、かつ即時に測定できることが重要なのだという。

「都市部で高層ビルの間をドローンが飛べるようにするには、そもそも高層ビルの間の気象状況を細かく把握できないとどうにもならない。そのためにはライダーを1台置けばいいというものではなく、複数台設置していくことが必要だ。1億円のライダーをポンポン設置するのはハードルが高いが、数百万円なら可能。だからこそ価格を下げられる技術を持ったチームであることが重要になる」(大前氏)

メトロウェザーの強みはかねてから研究を重ねてきた信号処理技術にある。もともとレーダーを用いてノイズだらけの状態から有益なデータを取得する研究をしてきたため“ノイズを取り除く技術”が高い。結果として弱いレーザーからもしっかりとしたデータがとれるので、低価格や小型化も実現できうるのだという。

ここに至るまでの歴史を紐解くと、メトロウェザーのチームはものすごく大きなレーダーの施設からデータを収集しつつ、どんどんサイズを小さくしていった経緯があるそう。東氏曰く「出発点は野球場1個分の大型レーダー」から。古本氏がコアとなっている技術の研究を始めたのは約20年前、東氏がポスドクとして古本氏の研究室に加わってからでも約10年が経つ。

今はレーダーからライダーに変わってはいるものの、長年の研究で培った技術やノウハウは変わらず活かされている。

ゆくゆくはライダーを作る会社から、データを扱う会社へ

左からDrone Fund最高公共政策責任者の高橋伸太郎氏、 Drone Fund代表パートナーの千葉功太郎氏、メトロウェザー 代表取締役CEOの東邦昭氏、 同社取締役の古本淳一氏、リアルテックファンドの木下太郎氏

同社のプロダクトは日常生活において多くの人が直接触れるようなものではないけれど、ドローンが安全に飛ぶためのインフラとして重要な役割を担う。Drone Fundで最高公共政策責任者を務める高橋伸太郎氏も「今後ドローンが社会的な課題解決ツールとしていろいろな場面で活用されていく中で、気象状況を把握できる技術は絶対になくてはならない存在」だと話す。

「レベル3、4の物流や広域災害調査を実現する上では『いかに気象状況を把握して安全なフライトプランを立てられるか』が重要だ(レベル3は無人地帯での、レベル4は有人地帯での目視外飛行)。そういった所でメトロウェザーの情報が必要になる。さらに先の未来の話をすると、空飛ぶクルマが人を運ぶようなエアモビリティ社会においても、低高度における天気の情報は不可欠だ」(高橋氏)

メトロウェザーでは、今年から来年にかけてまず洋上風力発電領域での利用を見据えたハイスペックなドップラー・ライダーを提供していく計画。並行して、調達した資金を基に小型の試作機作りにも取り組む。

将来的に製品化が進んだ先には「ドローンの飛ぶところを一網打尽にしたい。データを網羅的に確保してドローンが安全に飛べて、堕ちない社会の実現を目指していく」(古本氏)方針だ。

「(ライダーをばら巻くことができたら)メトロウェザーはライダーを作る会社から、だんだんとデータを扱う会社に変わっていき、データビジネスを展開するようになると考えている。たとえばドローンを運航する人に対してリアルタイムに風の情報を提供したり、ドローンの管制をする人にも同じような場を提供したり。今までは測定が難しかった低層領域の風のデータを扱うことで、ドローン前提社会に貢献していきたい」(東氏)

ユニコーンはもう珍しいものではない

Kleiner Perkinsの前パートナーでシードステージベンチャーキャピタル会社Cowboy Venturesの創業者Aileen Leeが2013年にまさにこのサイトで“ユニコーン”という言葉を作りだしたとき、このタイトルを持つ企業はわずか39社だった。

彼女はそれらの企業を“数少ない幸運/特殊な企業”と呼んだ。彼女の定義:2003年以降に設立された米国のソフトウェアスタートアップで、企業価値が10億ドル以上のもの。彼女がその投稿を書いた時、彼女の計算では毎年たったの4社がそうした企業価値を達成するはずだった。しかし5年後、PitchBookの最新の調査によると、スタートアップがユニコーンになる率は353.1%上昇している。

今日、米国だけで145社もの“アクティブユニコーン”が存在し、合計の企業価値は5559億ドルだ。

なぜなのか。理由はいくつかある。具体的には、企業がより長く非公開企業にとどまっていることが挙げられる。非公開から抜け出し、別のクラブー公開クラブに移行する企業は少なく、これによりユニコーンの数は増大し続けている。加えて、マーケットに資金が、正確にいえば801億ドルもあり、レイトステージの企業はフォームS-1であらゆる情報を公開する代わりに、ソフトバンクが提供する“ミニIPO”を選択している。

ユニコーンが生まれるスピードが緩やかになる気配はない。最新のデータでは米国のユニコーンがそのステータスを得るまでに平均6年かかっているのに対し、わずか3年前は平均7.5年だった。平均年数よりも随分早くユニコーンになっている企業もいくつかある。BrexLime、そしてBirdは記録的な早さで最近10億ドル超になった企業だ。

企業価値の増大はまた、これまでになく内容が充実している。レイトステージの企業価値の平均は前年比50.7%増えている。一方、アーリーステージ、シードステージの平均価値はそれぞれ28%増と12%増だった。2018年のベンチャーキャピタル投資がドットコムブーム以来の活況を呈していることは言うに及ばないだろう。

要するに、その企業がどれくらい大きいか、あるいはどれくらい早く10億ドルを達成したかにかかわらず、スタートアップの企業価値は問題であるべきではない。しかしこれらはスタートアップエコシステムの人がスタートアップの成功度を測り、価値があるかどうかを決める物差しとなるー少なくとも投資家かがいくら出すかを決定するのにかかわってくる。

ユニコーンという言葉、そしてコンセプト全てを廃止したいと思っても、10億ドル企業の増加は無視できないものとなっている。

イメージクレジット: annick vanderschelden photography / Getty Images

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(翻訳:Mizoguchi)

不動産の“時間貸し”当たり前にーースペースマーケットが東京建物とタッグ、VCらからの調達も

写真左から、東京建物代表取締役社長執行役員の野村均氏、スペースマーケット代表取締役社長の重松大輔氏、XTech Ventures共同創業者の西條晋一氏

「今までは“売買”と“賃貸”しかなかった不動産市場で、新しい選択肢として“タイムシェア(時間貸し)”の文化を作っていく。不動産の運用のあり方を根本から変えるようなチャレンジをしていきたい」

そう話すのはスペースマーケット代表取締役社長の重松大輔氏だ。同社では2014年4月より、さまざまなスペースを1時間単位で貸し借りできるプラットフォーム「スペースマーケット」を運営。現在は会議室や撮影スタジオ、映画館、住宅などバラエティ豊かなスペースが1万件以上も掲載され、個人・法人問わず幅広い“場所探し”のニーズに応えるサービスへと成長している。

そんなスペースマーケットが不動産の利活用にさらなら変革を起こすべく、業界の大物とタッグを組むというニュースが飛び込んできた。その相手は創立から120年を超える東京建物だ。

スペースマーケットは11月16日、東京建物と資本業務提携を締結したことを明らかにした。合わせてXTech Ventures、オプトベンチャーズ、みずほキャピタル、千葉功太郎氏を引受先とした第三者割当増資を実施したことも明かしている。

今回の資金調達は同社にとってシリーズCラウンドの一環という位置付け。具体的な調達額は公開されていないけれど、数億円規模になるという。

ローンチから4年半、幅広い用途で使われるプラットフォームに

TechCrunchで最初にスペースマーケットを紹介したのはサービスローンチ時の約4年半前のこと。当時は会議や研修、イベントなどのビジネス用途が多く“ビジネス向けのAirbnb”と紹介していたけれど、今ではパーティーやスポーツ、個展などプライベートでの利用も増えている。

重松氏の話では特にここ1〜2年で利用者の層や数も広がったそう。たとえば最近は働き方改革の波にも乗って、フリーランスや副業講師のレッスンやセミナーのスペースとして活用されるケースが増加。ヨガスタジオやトレーニングジム、多目的イベントスペースなどが人気だ。

背景にはそもそもユーザーが借りたいと思うスペースが増えたことがある。ローンチ時は“お寺”や“球場”などユニークなスペースを借りられるのがひとつのウリだったけれど、近年は幅広い用途で使えるおしゃれなクリエイティブスペースが集まってきた。

その結果として写真やロケ、CMの撮影場所として頻繁に使われるスペースも出てきているそうだ。

ここ数年で利用者の“シェアエコ”サービスに対する距離感も変わってきた。重松氏も「メルカリを始めさまざまなシェアリングサービスが登場し、他のユーザーと直接モノを売買したりシェアしたりすることへの抵抗感も減ってきているのではないか」とトレンドの変化が利用者層の拡大にも影響しているという。

そのような背景もあり、スペースマーケット自体もリリースから4年半の月日を重ねる中で“空きスペースのシェアリングプラットフォーム”としてのポジションを徐々に確立し、貸し借りのサイクルが回るようになってきた。

とはいえ重松氏が「自分の周りでも徐々に使われるになってきてはいるものの、認知度調査などを実施してみてもまだまだ認知度が低い」と話すように、世間一般で広く知られている状態にはまだ至っていない。

同社にとって今回の資金調達はこのサイクルをグッと加速させるためのものでもある。調達した資金を活用して今後大規模なマーケティング施策を実施する計画だ。

不動産大手にも広がる“シェアエコ”の波

ここ数年で変わってきたのは一般の消費者だけではなく、企業も同じ。特に大企業のシェアリングに対する考え方が一気に変わってきたというのが重松氏の見解だ。不動産関連では日本でも最近WeWorkの話題を耳にすることが増えてきたけれど、それに限らず大手ディベロッパーがコーワキングスペースを開設するなどシェアエコの波が広がり始めている。

冒頭でも触れた通り、従来の不動産市場においては売買と賃貸の二択が基本路線で、そこに時間貸しという概念が入ってくることはほとんどなかった。結果的にそのどちらも難しい場合は“遊休不動産”として使われずに放置されてしまっているのが現状だ。

時間貸しすることで有効活用できるポテンシャルがあるのは、遊休化したスペースに限らない。個人の自宅やオフィス、店舗などにも使われていない時間帯や空間が存在する。実際スペースマーケットではそのようなスペースの貸し借りが活発に行われてきた。

「ビッグプレイヤーが参入してきてこそ、この流れが本物になる。実は昔から大手のデベロッパーと話をしたりはしていたが、当時はなかなか具体的な話になるまでに至らなかった。(東京建物とタッグを組むことで)不動産の時間貸しをさらに加速させられると考えている」(重松氏)

東京建物が2018年10月20日にグランドオープンした「Brillia 品川南大井」のモデルルーム。今後このスペースをスペースマーケット上に掲載して貸し出す予定だ

不動産の時間貸しを当たり前にする挑戦

今回、東京建物側の担当者である古澤嘉一氏にも少し話を聞くことができたのだけれど、興味深かったのが「不動産の活用について“柔軟性”と“契約期間”の2軸でマトリクスを作って考えてみると、両社は真逆にいるようなプレイヤーだ」という考え方だ。

東京建物の場合は基本的にある程度長いスパンで顧客に不動産を提供し、従来からの伝統的なスタイルで顧客と関係性を築く。一方のスペースマーケットは登録されたスペースが1時間単位で、かつさまざまな用途で活用される。

「この間には不動産の活用方法に関する無数の選択肢がある。たとえばウィークリーマンションのようなものもそのひとつだし、ホテルに関しても家族が長期間宿泊することにフォーカスを当てたものがあってもいい。いろいろな答えを探っていくなら、完全に逆サイドのプレイヤーと組むのが1番おもしろいと考えた」(古澤氏)

ちなみに東京建物がスタートアップに直接出資を行うのは初めてのことなのだそう。両社では今後さまざまな角度から不動産活用の選択肢を模索していくようだけれど、まずは足元の取り組みとして東京建物の保有するアセットをスペースマーケット上で運用していく方針だ。

一例としてマンションのモデルルーム内のスペースを休業日に貸し出したり、再開発エリアにある未利用の開発用不動産を活用したりといったことから取り組む。賃貸不動産や商業施設などのシェアスペースを取り入れた空室活用や、シェアスペースを前提とした新しい不動産の開発も検討するという。

八重洲の再開発事業の対象エリアにあるヤエスメッグビル。同ビル内の地下音楽ホールもスペースマーケット上で有効活用する計画

「事例ができれば可能性も広がる。まずは事例を積み重ねて、業界の中でもシェアエコの話や不動産の時間貸しの話が普通に交わされるようにしていきたい。2〜3年後、“設計の段階からシェアすることを前提とした不動産”が作られるような段階が訪れた時に、いち早くその考え方を取り入れ業界を盛り上げていけるような存在になれれば」(古澤氏)

「自分たちの中では、これから不動産のタイムシェアが当たり前になると思って事業に取り組んでいる。歴史のある業界のガリバーと組んで、不動産業界を変えていくための第一歩にしたい」(重松氏)

TC Tokyo 2018バトル出場のPOLがプレシリーズAラウンド調達、研究者・理系学生と企業つなぐLabBase運営

理系学生のための採用プラットフォーム「LabBase」や、産学連携を加速する研究者データベース「LabBase R&D」など、研究者・理系学生の支援サービスを提供するPOLは11月15日、プレシリーズAラウンドで資金調達を実施することを発表した。第三者割当増資の引受先は、PKSHA Technology、個人投資家の千葉功太郎氏、松田良成氏(漆間総合法律事務所 所長弁護士)、森本千賀子氏(morich 代表)、御立尚資氏、岡野求氏(元FiNC CHO)ほか1名。調達金額は非公開だ。

POLが運営するLabBaseは、研究者版LinkedInとも言える、理系学生に特化したダイレクトリクルーティングサービス。多忙な理系学生が研究や論文内容を登録してアピールすることができ、企業は既存の採用サービスでは見つけづらい才能に直接アプローチすることができる。2018年11月現在、登録者数8000人を超え、一部上場企業からスタートアップ企業まで、約100社に利用されているという。

またLabBase R&Dは、共同研究先の候補となる研究者のデータを、企業が大学横断で検索し、コンタクトできるサービスだ。論文や受賞歴だけでなく、共同研究への姿勢やパートナーに求めること、これからやってみたい研究など、研究者の情報を詳しく確認できる。2018年5月に事前登録を開始し、企業と研究室のマッチング実績を積み重ねているそうだ。

POLは2016年9月、東京大学工学部に在籍する加茂倫明氏が、元ガリバーインターナショナル専務取締役の吉田行宏氏とともに創業した。2017年4月にはBEENEXTなどから5000万円を調達している。

ICC KYOTO 2018内で行なわれたスタートアップコンテストでは準優勝を受賞。また本日、東京・渋谷ヒカリエで開催中のTechCrunch Tokyo 2018スタートアップバトル・グループDにも、POLは出場を予定している。

企業のデータ保護とコンプライアンス充足をAIと機械学習で自動化するCognigoが$8.5Mを調達

AIと機械学習を利用して企業のデータ保護とGDPRなどの規制へのコンプライアンスを助けるCognigoが今日(米国時間11/13)、シリーズAのラウンドで850万ドルを調達したことを発表した。このラウンドをリードしたのはイスラエルのクラウドファンディングプラットホームOurCrowdで、これにプライバシー保護企業のProsegurState of Mind Venturesが参加した。

同社は、重要なデータ資産を護り、個人を同定できる情報が自社のネットワークの外に漏れることを防ごうとしている企業を支援できる、と約束している。そして同社によると、そのやり方は、専用システムのセットアップやそれらの長年の管理を必要とするような手作業の管理ではない。たとえばCognitoによれば、同社は企業のGDPRコンプライアンスの達成を、数か月ではなく数日で完了する。

そのために同社は、事前に訓練したデータ分類用の言語モデルを使用する。そのモデルは、給与明細や特許、NDA、契約書など、よくあるカテゴリーを検出するよう訓練されている。企業は独自のデータサンプルでモデルをさらに訓練し、その独自のニーズのためにモデルをカスタマイズできる。同社のスポークスパーソンは曰く、“唯一必要な人間による介入は構成だが、それは一日で済む作業だ。それ以外では、システムは完全に人手要らずだ”。

同社によると、新たな資金はR&Dとマーケティングと営業のチーム拡大に充てられ、目標は市場プレゼンスの拡張と製品知名度の向上だ。“弊社のビジョンは、顧客が自分のデータを利用して確実にスマートな意思決定ができ、同時にそのデータが継続的に保護されコンプライアンスを維持することだ”、と同社は言っている。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

ローラや佐藤健と1対1で話せるライブ配信アプリ「SUGAR」が2.1億円調達

双方向動画配信アプリ「SUGAR」などを提供するSUGARは10月12日、ジャフコを引受先とした2億1000万円の資金調達を発表した。

SUGARは、ライブ配信により有名人と双方向のコミュニケーションが図れるアプリ。最近ではInstagramなどのSNSを通して有名人が自身のプライベートなどを公開するようになったが、SUGARでは特徴的なUIにより、憧れの有名人と実際にテレビ電話しているような感覚を得られるのが特徴だ。

有名人がライブ配信をはじめると、ユーザーのスマホにはあたかも有名人から直接着信が入ったかようなUIが表示される。普段のように「応答」ボタンを押して電話にでるとライブ配信に参加する仕組みだ。ライブ配信では、他のライブ配信のようにコメントなどを送れるのはもちろん、有名人が選択したユーザーと1対1の会話ができる機能もある(他のユーザーはその会話の様子を観察できる)。

SUGARは2018年6月にオープンベータ版をリリース。同年9月にはiOSアプリを正式リリースしている。現在のところ、SUGARには佐藤健さん、ローラさん、ONE OK ROCKボーカルのTAKAさん、メンタリストのDaigoさんが参加しているという。

同社は「モバイル動画配信領域は大型プレイヤーも多数存在するマーケット」と述べ、今回調達した資金を利用し、「独立系企業として後発ながらも高度な開発を最大速度で進める社内体制を強化していく」としている。