循環経済を重視してCO2排出量の削減を目指すBMW Neue Klasseのラインナップ

BMW Groupは、米国時間9月2日、走行車両の全世界の二酸化炭素排出量を2030年までに、2019年レベルから50%、車両の全ライフサイクルの二酸化炭素排出量を2019年レベルから40%削減するという目標に向けて尽力する意向を発表した。これらの目標は、持続可能性の高い車両ライフサイクルを達成する循環経済の原則を重視する計画も含め、同社のNeue Klasse(新しいクラス)と呼ばれる新ラインナップ(2025年までに発売予定)で明らかになる。

3月に発表されたBMWの「新しいクラス」と呼ばれる計画は、同社が1962年から1977年までに生産したセダンとクーペのラインナップ、つまりBMWのスポーツカーメーカーとしての地位を確固たるものにしたラインナップを根本的に見直すものだ。同社によると、この新しいラインナップの目玉は「一新されたITおよびソフトウェアアーキテクチャ、新世代の高性能電気ドライブトレインとバッテリー、車両の全ライフサイクルに渡って持続可能性を達成するまったく新しいアプローチ」だという。

「Neue Klasseは、CO2削減の取り組み姿勢を一段と明確にし、世界の平均気温上昇を1.5度に抑える目標を達成するための明確な進路に沿って進むという当社の決意を表明するものです」とBMW AGの取締役会長 Oliver Zipse(オリバー・ジプス)氏は今回の発表で述べた。「CO2削減の取り組みは法人の活動を判断する大きな要因となっています。地球温暖化対策では、自動車メーカー各社の自社製車両の全ライフサイクルにおけるCO2排出ガスの削減量が決め手となります。当社がCO2排出量の大幅な削減について透明性が高くかつ野心的な目標を設定している理由もそこにあります。実際の削減量はScience Based Targets(科学的根拠に基づく目標)イニシアチブによって評価され、効果的で測定可能な貢献度として示されます」。

BMWによると、同グループのCO2総排出量の70%は、車両の利用段階で発生したものだという。これは、BMWの販売車両の大半が未だにガソリン車であるという事実からすると納得がいく。2021年上半期のBMWの総販売台数に占める電気自動車またはプラグインハイブリッド車の割合は11.44%であった(2021年上半期収益報告書による)。同社は、2021年末までに、ハイブリッド車を含め100万台のプラグイン(コンセント充電型)車両を販売するという目標を表明している。第2四半期終了時点で、約85万台を売り上げているが、車両利用段階でのCO2排出量を半分にするという目標を達成するには、CO2排出量が低いかゼロの車両の販売量を大幅に増やす必要がある。同社にはすでにi3コンパクトEVシリーズを販売しており、2021年後半には、i4セダンとiX SUVという2つのロングレンジ(長航続距離)モデルが発売され、2022年にはさらに別のモデルも投入される予定だ。GMやボルボと違い、BMWはガソリン車を廃止する計画をまだ発表しておらず、最初から電気自動車として設計されたラインナップの販売も開始していない。

今回の発表は、BMWが、Volkswagen(フォルクスワーゲン)、Audi(アウディ)、Porsche(ポルシェ)など、ドイツの他の自動車メーカーとともに、1990以来、排出ガスカルテルに関与していたことを認めた2カ月後に行われた。これらのメーカーは、EUの排出ガス規制で法的に必要とされる基準を超えて有害なガス排出量を削減できるテクノロジーを持ちながら、共謀してそれを隠ぺいしていた。EUは4億4200万ドル(約486億円)の制裁金を課したが、BMWの第2四半期の収益が60億ドル(約6599億円)近くになることを考えると、軽いお仕置き程度に過ぎない。

関連記事:EUがBMWとVWに約1110億円の制裁金、90年代からの排ガスカルテルで

また、2021年8月に発表されたEUの「Fit for 55」エネルギーおよび気候パッケージでは、世界全体のCO2ガス排出量の目標削減量が、2030年までに40%から55%に上方修正された。これは、自動車メーカーが電気自動車への移行ペースを早める必要があることを意味し、BMWもその点は認識している。欧州委員会では他にも、CO2ガス排出量を2030年までに60%削減し、2035年までには100%カットするという提案事項も検討されているという。これは、その頃までには、ガソリン車を販売することがほぼ不可能になることを意味する。

BMWによるとNeue Klasseによって、電気自動車が市場に出る勢いがさらに加速されるという。同社は、今後10年で、完全電気自動車1000万台を販売することを目標にしている。具体的には、 BMW Group全体の販売台数の少なくとも半分を完全電気自動車にし、Miniブランドは2030年以降、完全電気自動車のみを販売することになる。BMWは、循環経済重視の一環として、Neue Klasse計画による再生材料の利用率向上と、再生材料市場を確立するためのより良い枠組みの促進も目指している。同社によると、再生材料の利用率を現在の30%から50%に高めることが目標だというが、具体的な時期までは明言していない。

BMWによると、例えばiXのバッテリー再生ニッケルの使用率はすでに50%に達しており、バッテリーの筐体での再生アルミニウムの使用率も最大30%になるという。目標はこれらの数字を上げていくことだという。また、BMWは、BASFおよびALBAグループとの提携プロジェクトで自動車の再生プラスチックの使用量を試験的に増やす試みも行っている。

BMWが称する総合リサイクリングシステムの一環として「ALBA Groupは BMW Group製の寿命末期車両を解析して、車両間でのプラスチックの再利用が可能かどうかを確認している」という。「第2段階として、BASFは分類前の廃棄物をケミカルリサイクル処理して熱分解油を取得できないかどうか調べています。こうして得られた熱分解油はプラスチック製の新製品に利用できます。将来的には、例えばドアの内張りパネルやその他の部品を廃棄車の計器パネルを利用して製造できる可能性があります」。

リサイクリングプロセスを簡素化するため、BMWは、車両の初期段階設計の考え方も取り入れている。材料は、製品寿命が終わったときに容易に分解 / 再利用できるように組み立てる必要がある。BMWでは、再利用可能な材料に戻すことができるように車内インテリアを単一の素材で製造することが多くなっているという。

「例えば車内の配線システムは、車両内のケーブルハーネスで鉄と銅を混在させないようにして、容易に取り外しできるようにする必要があります」と同社は述べている。「鉄と銅が混在していると、再生鉄での鉄の必須特性が失われるため、自動車業界の高い安全性要件を満たすことができなくなるからです」。

また、循環経済では、高品質の車両を使用する必要がある。そうすることで、パーツを容易にリサイクルまたは修理できるため、結果として全材料数が削減されるからだ。

今回の発表で、BMWは車両のライフサイクルについて透明性を高めることを約束している。同社は、他のほとんどの大手自動車メーカーと同様、ライフ・サイクル・アセスメント(生産から回収再利用までの過程で環境に対する影響度を評価する手法)を公開しているが、業界の標準があるわけではない。このため、異種の車両を比較することが難しい場合がある。車両の全ライフサイクルを把握することは、CO2排出量の削減目標を達成するのにますます重要になっている。バッテリーと車両を製造するために必要なすべての材料を取得するためにサプライチェーンおよび製造段階で発生する排出ガスについての調査結果がようやく明らかになってきているが、この調査により、EV化の動きがライフサイクル全体のCO2排出量を却って増やす可能性があることが明らかになるかもしれない。

「内包二酸化炭素の数値化は大変難しく、特にEVでは非常に複雑で不確実です」とManhattan InstituteのシニアフェローMark Mills(マーク・ミルズ)氏は最近のTechCrunchの記事に書いている。「EVは走行中には何も排出しないが、生涯総炭素排出量の約80%は、バッテリーを製造する際のエネルギーおよび自動車を動かすための電力を発電する際のエネルギーから発生している。残りは、車の非燃料部品の製造によるものである。従来型の自動車の場合は、生涯総炭素排出量の約80%が走行中に燃焼した燃料から直接発生する二酸化炭素で、残りは自動車の製造とガソリンの生産にかかる内包二酸化炭素から発生する」。

関連記事:【コラム】材料、電池、製造の炭素排出量を積み上げたEVの本当のカーボンコスト

画像クレジット:BMW Group

原文へ

(文:Rebecca Bellan、翻訳:Dragonfly)

Lucid Airが航続距離約837kmを達成、テスラを凌ぎ市販EVトップに

2021年中に上場を予定している電気自動車メーカーのLucid Group(ルシード・グループ)は、米国時間9月16日、同社が発売する高級セダン「Air(エアー)」の仕様の1つが、EPA(米国環境保護庁)による航続距離(一度のフル充電で走行可能な距離)で、520マイル(約837キロメートル)を達成したと発表した。この「Lucid Air Dream Edition Range(ルシード・エアー・ドリーム・エディション・レンジ)」の公的機関による評価は、長くこのカテゴリーで優位を保ってきたTesla(テスラ)を押しのけるものだ。

関連記事:EVのLucid MotorsがSPAC合併で上場へ、2021年下期に北米でLucid Airの販売開始

Lucid Airの公式EPA航続距離は、テスラのいくつかのモデルと同等かそれ以上になることが期待されてきた。今回の発表は、Lucidに自画自賛する権利を与えるだけでなく、77400ドル(約850万円)から16万9000ドル(約1860万円)の間でさまざまなバージョンのAirを提供するという同社の戦略についても、少しだけ明らかにしている。

Lucidは当初、実質的に最初のフラッグシップモデルとなる「Lucid Air Dream Edition」の1バージョンのみを販売する計画だった。だが、現在はこの「Dream Edition」にも、最高出力933馬力で19インチ・タイヤを装着した場合の航続距離が520マイルの「Dream Edition Range」と、よりパワフルな1111馬力を発生するものの、同じく19インチのタイヤ装着車で航続距離が471マイル(約758キロメートル)に留まる「Lucid Air Dream Edition Performance(ルシード・エアー・ドリーム・エディション・パフォーマンス)」という2種類の仕様が設定されている。

Lucid GroupのCTO兼CEOであるPeter Rawlinson(ピーター・ローリンソン)氏によれば、この航続距離は同社の900Vバッテリーとバッテリー管理システム、小型化されたドライブユニット、そして電気ドライブトレイン技術の組み合わせで実現したとのこと。ローリンソン氏は、この数値が他のあらゆるEVを凌ぐ新記録だと確信していると言及している。

現在はすでに予約が締め切られている2種類のDream Editionの他に、LucidはEPA航続距離516マイル(約830キロメートル)を記録した「Lucid Air Grand Touring(ルシード・エアー・グランド・ツーリング)」を含む、いくつかのバリエーションの生産・販売を計画している。Dream Editionの価格は両モデルとも16万9000ドル(約1860万円)、最高出力800馬力のGrand Touringは13万9000ドル(1530万円)からとなっている。他にも目標航続距離が406マイル(約653キロメートル)で620馬力の「Lucid Air Touring(ルシード・エアー・ツーリング)」が9万5000ドル(1040万円)から、さらに出力を480馬力に抑えた廉価版「Lucid Air Pure(ルシード・エアー・ピュア)」が7万7400ドル(約850万円)からという価格で発売になる予定だ。

関連記事
Lucid Motorsがオール電化セダン「Air」の全テクノロジーを披露、主要音声アシスタントはAmazon Alexa
Lucid Motorsが中古EV用バッテリーをエネルギー貯蔵システムに再利用へ

画像クレジット:Lucid Motors

原文へ

(文:Kirsten Korosec、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

電動ピックアップトラックのRivianが無料充電とLTE通信を利用できるメンバープログラムを発表

イリノイ州ノーマルの工場でピックアップトラック「R1T」の組立ラインが動き出したRivian(リビアン)は、2021年9月中のデビューに向けて同社初のEVの準備を進めている。米国時間9月16日、同社は近々設立予定の充電ネットワーク、Adventure Networkand WaypointsでRivianオーナーが無料充電できるメンバーシッププログラムを開始した。

さらに同社は、Rivianメンバーが1マイル走る毎に、相当する風力、太陽光などの再生可能エネルギーを購入するマッチングプログラム、および4G LTE接続の無制限アクセスを約束した。

プログラムには、山道で溝にはまった時や緊急充電が必要な時、会社が代車を手配するRivian off-Roadside Assistanceも含まれている。将来、新しいドライブモード、コミュニティ集会、車室内コンテンツなどの追加特典を提供することも約束している。Rivian新車にはサービスの12カ月間無料使用権がついてくる。その後特典を利用したい人は料金を払う必要がある。同社は料金をいくらにするつもりか言わなかったので、追加情報のために問い合わせている。

編集部注:本稿の初出はEngadget。執筆者のIgor Bonifacic(イゴー・ボニファシック)氏はEngadgetのコントリビューティング・ライター。

関連記事:アマゾンも出資するRivianが電動ピックアップトラック「R1T」の量産第1号車を出荷

画像クレジット:Rivian

原文へ

(文:Igor Bonifacic、翻訳:Nob Takahashi / facebook

フォードが15万件超の予約が入ったF-150 Lightning生産能力拡大のため約270億円追加投資

Ford(フォード)は米国時間9月16日、発売を予定している全電動トラックF-150 Lightningの生産能力を年8万台に増やすために追加で2億5000万ドル(約274億円)を投資し、450人を新規採用する。この発表は、15万件超のF-150 Lightning予約が入っていることを受けてのものだ。

追加の投資と雇用はミシガン州ディアボーンにある新設のRouge Electric Vehicle Center(ルージュEVセンター)、Van Dyke Electric Powertrain Center(ヴァン・ダイク電動パワートレインセンター)、Rawsonville Components Plant(ロウソンヴィル部品プラント)に振り分けられる、と同社は説明している。

このニュースはルージュEVセンターでのイベントで発表された。このセンターはRouge Complexへの7億ドル(約768億円)の投資の一環で50万平方フィートに拡張された。ガソリンで走るFシリーズのトラックもまたRouge Complexで組み立てられている。

そしてFordはLightningトラックの生産準備を開始したことも明らかにした。これらのプロトタイプは実世界でのテストに使われる。顧客への納車は2022年春の予定だ。

全電動ピックアップトラックは同社の電動化に向けた300億ドル(約3兆2920億円)の投資の重要な一部で、Mustang Mach-Eとともに18カ月以内に発売されるFord EVデビュー車種の1つだ。Lightningは収益という点で最も重要かもしれない。Ford F-150 Lightningの生産は全電動Mustang Mach-E、そして商業顧客にフォーカスした設定変更可能な全電動貨物バンE-Transitの導入に続く。

F-150 Lightningはベース、XLT、Lariat、そしてPlatinumシリーズの4つのトリム、2つのバッテリーオプションで提供される。ボディがアルミニウム合金製のこのトラックは搭載する2つの電動モーターで動き、四輪駆動が標準で独立した後輪サスペンションを備える。ベースバージョンは連邦あるいは州の税控除前で3万9974ドル(約438万円)、一方のXLTモデルは5万2974ドル(約580万円)からだ。この価格にはデスティネーションフィーと税金は含まれていない。

関連記事
フォードが完全EV版に先駆けてハイブリッドの「2021 F-150」発表、オプション満載モデルから見える同社のEVトラック戦略
固体バッテリー開発のSolid Powerが生産能力拡大、2022年にフォードとBMWに試験用バッテリーを納入
フォードがアップルの秘密自動車開発プロジェクトを率いた幹部を採用
画像クレジット:Ford

原文へ

(文:Kirsten Korosec、翻訳:Nariko Mizoguchi

アマゾンも出資するRivianが電動ピックアップトラック「R1T」の量産第1号車を出荷

イリノイ州ノーマルにあるRivian(リヴィアン)の工場では、米国時間9月14日朝、「リヴィアンブルー」の電動ピックアップトラック「Rivian R1T」の量産第1号車が製造ラインからラインオフした。これは、同社とその創業者兼CEOであるRJ Scaringe(R・J・スカリンジ)氏にとっては、10年以上の歳月をかけて達成したマイルストーンだ。

2009年にMainstream Motorsとしてスタートし、2年後に「Rivian」に社名を改めた同社は、ここ数年で従業員、支援者、パートナーの面で爆発的な成長を遂げてきた。スカリンジ氏は14日にこのニュースと、リヴィアンブルーに塗られた最初の量産車の写真をツイートした。

「何カ月にもわたって試作車を作ってきましたが、今朝、最初のお客様の車がノーマルの製造ラインから走り出しました!」と彼は書いている。「この瞬間を迎えることができたのは、私たちのチームの努力の賜物です。お客様の手に渡るのが待ち遠しいです!」とも。

この1号車を誰が手にするのかは明らかにされていない。

Rivianは、2018年末のLAオートショーで電気トラック「R1T」と電気SUV「R1S」のプロトタイプを公開するまでの数年間、比較的無名のまま、いわゆるステルスモードで活動していた。

それ以来、Rivianは100億ドルを超える(2019年以降は105億ドル[約1兆1500億円])資金を調達し、イリノイ州ノーマルの工場を拡張し、数千人の従業員を雇用し、Amazon(アマゾン)を商用顧客として獲得し、最近ではIPOを内密に申請した。現在Rivianは、イリノイ州の工場に加えて、カリフォルニア州のパロアルトとアーバイン、ミシガン州のプリマスに施設を持ち、英国にもオフィスを構えている。

関連記事:EVメーカーのRivianが秘密裏にIPOを申請

2018年に2台の電気自動車を公開したとき、Rivianの従業員は約600人だった。現在では8000人になっている。

今回のスカリンジ氏の発表は、パンデミックと世界的なチップ不足による少なくとも2回の遅延を経て、同社が顧客向けにR1Tの生産を正式に開始したことを意味する。2021年夏の初め、同氏は顧客への手紙の中で、R1Tの納品は9月に開始され、R1Sはそれに「まもなく」続くと書いていた。

Rivianは、一般消費者向けのR1TとR1Sの準備と最終的な生産、およびAmazon向けの商用配送バンの生産という、相反する優先事項を両立させている。イリノイ州の工場には、車両を生産する2つの独立した製造ラインがある。1つはR1の生産ライン、もう1つは商用バンの製造ラインだ。

Amazonはこれらのバンを10万台発注しており、その納入は2021年に開始された。2021年初め、Amazonはロサンゼルスやサンフランシスコなどのいくつかの都市で、EV配送バンのテストを開始した。

9月初め、Rivianは、ピックアップトラック「R1T」の初期生産仕様車の航続距離がEPA(米国環境保護庁)基準で314マイル(505.3km)、電動SUV「R1T」の航続距離は316マイル(508.5km)を達成したと発表した。

EPAのウェブサイトに掲載された公式の航続距離と燃費の値は、Rivianが300マイル(482.8km)と宣伝していた以前の推定値と見合うものだ。

この瞬間は、Rivianが市場で最初の電気トラックとしてのメリットを得られるという意味でも重要だ。2022年春に発売予定のFord(フォード)「F-150 Lightning(F-150 ライトニング)」は、標準仕様で230マイル(370.1km)、拡張仕様で最大300マイル(482.8km)の航続距離を目標としている。EPAは、Ford Lightningの公式航続距離をまだ発表していない。

Rivianの「ローンチエディション」R1TトラックおよびR1S SUVは、「ラージパック」とブランディングされた135kWhのバッテリーパックを搭載している。ローンチエディション車両は、2021年9月中に納入を開始する予定だ。

【補足説明】Rivianは2019年以降105億ドルを調達したと記述したが、それは調達総額ではない。Rivianは総額を共有していないが、情報筋によると110億ドル(約1兆2030億円)前後だという。

関連記事:アマゾンがRivian製の配達EVテストをサンフランシスコでも開始

画像クレジット:Rivian

原文へ

(文:Kirsten Korosec、翻訳:Aya Nakazato)

トヨタとホンダは米自動車メーカーに有利なEV税制優遇措置拡大に反発

Toyota Motor(トヨタ自動車)とHonda(ホンダ)は、米国内で労働組合員が製造した電気自動車の税制優遇措置を拡大する法案を、否決するようにと議員たちに要請している。

この法案は、米国内で労働組合員によって製造された自動車に対する連邦税の優遇措置を7500ドル(約82万円)から最大1万2500ドル(約137万円)に拡大するというもので、トヨタは議会に提出した書簡の中で「明らかに偏っている」「法外だ」と非難している。さらに、米国内で製造されたバッテリー搭載車には優遇措置が500ドル(約5万5000円)上乗せされる。この法案が可決された場合、トヨタ、ホンダ、Tesla(テスラ)などの自動車メーカーの車両は優遇措置の対象外となるが、デトロイトの「ビッグ3」と呼ばれるメーカーはすべて対象となる。

トヨタは議員に宛てた書簡の中で、「現在の法案は、組合に加入しないという選択をした米国の自動車労働者を差別し、電動車両の普及を加速させるという目的を二の次にする」と述べ、「これは不公平であり、間違っています。この明らかに偏った提案を否決してくださることを求めます」と嘆願している。

さらにトヨタは、この法案は富裕層、つまり電気自動車の購入に公的資金を必要としない人々を優遇するものだと述べている。この法案には、調整後所得が40万ドル(約4400万円)までの個人、または80万ドル(約8800万円)までの世帯に、優遇措置の適用を制限するという所得調査の条項が設けられている。所得制限を設けるかどうか、あるいはその所得制限をどのようにするかは、議会の民主党と共和党の間で大きな争点となっている。

テスラのElon Musk(イーロン・マスク)CEOは、この法案を「メキシコで電気自動車を製造しているFord(フォード)  / UAW(全米自動車労働組合)のロビイストが書いたものだ。これがどれだけ米国の納税者のためになるのかはわからない」とツイッターで批判した。

Whole Mars Catalog

労働組合のために4500ドル(約49万円)に引き上げ、米国製に対してはたったの500ドルに減らしたことには、開いた口が塞がりません。

労働組合への2500ドル(約27万4000円)はすでに馬鹿げていました。しかし、新提案ではそれを4500ドルに拡大するとは?!? 彼らは明らかに1つの企業をターゲットにしています。

Elon Musk

メキシコで電気自動車を製造しているフォード / 全米自動車労働組合のロビイストが書いたものです。これがどれだけアメリカの納税者のためになるかはわかりません。

この法案は、EVに対する最大7500ドル(約82万円)の税額控除が10年以上前に施行されて以来、初めての増額となる可能性がある。また、この法案では20万台以上のEVを販売した自動車製造業者の車両を控除の対象外とする規定が廃止されるため、General Motors(ゼネラルモーターズ)やテスラのクルマも再び対象となる。

GM、フォード、そして旧クライスラー(Chrysler)のStellantis(ステランティス)という、全米自動車労働組合に代表される従業員が働く大手自動車メーカー3社は、この法案を賞賛している。

この法案は米国時間9月14日に下院歳入委員会で審議される。この税控除拡大は、現在議会で審議されている3兆5000億ドル(約383兆6000億円)規模の巨大な予算調整法案の一部に過ぎず、その中には他にも教育、医療、気候変動などを対象とした社会的に進歩的な提案が多数含まれている。

画像クレジット:Toyota

原文へ

(文:Aria Alamalhodaei、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

フォードが最高デジタル情報責任者を新たに迎えてソフトウェアとサービスの充実を目指す

Ford Motor(フォード・モーター)はソフトウェア、サブスクリプション、車載コネクティビティの拡充を狙って、最高デジタル&情報責任者としてMike Amend(マイク・アメンド)氏を迎えた。同氏はLowe’sのオンライン事業の責任者を3年間務め、今後はFordの新しい戦略「Ford+」の中心的分野である「データ利用、ソフトウェア、テクノロジー」に取り組む。

この人事はFordが顧客向けデジタルサービスに真剣に取り組み、ハイテク分野にピボットしようとしていることの現れだ。同社は2021年前半に明らかにしたこのプランをFord+と呼んでいる。このプランの中心にあるのは電気自動車で、同社は2030年までに世界の販売台数のおよそ半分を電気自動車にしたいとしている。またサブスクリプションやデジタルサービスによる新たな収入源の拡大も目指す。

こうしたことから、アメンド氏はテクノロジーとソフトウェアのプラットフォーム関連やグローバルでのデータのインサイトと解析の部門など多くのチームを率いていく。

Fordで最近注目される人事はアメンド氏だけではない。同社は最近、Doug Field(ダグ・フィールド)氏も密かに獲得した。フィールド氏はApple(アップル)の特別プロジェクトチームを率いていた技術系エグゼクティブで、Tesla(テスラ)でも先進テクノロジーと埋め込みシステムの責任者としてModel 3のリーダーを務めた。Fordによれば、両氏は製品責任者のHau Thai-Tang(ハウ・タイ・タン)氏とともに緊密に連携していくという。

アメンド氏はこれまでLowe’s、The Home Depot、JCPenneyといった大手小売店のオンライン事業を成長させてきた。Fordの暫定最高情報責任者であるSakis Kitsopanidis(サキス・キッツォパニディス)氏は引き続き統合エンタープライズリソースプランニングの責任者を務める。

関連記事:フォードがアップルの秘密自動車開発プロジェクトを率いた幹部を採用

画像クレジット:Ford

原文へ

(文:Aria Alamalhodaei、翻訳:Kaori Koyama)

フォードが電動カーゴバンの市場投入に先立ち、商用車部門のリーダーシップチームを構築

Ford(フォード)は、新たに設立した商用車・サービス事業部に6名の上級幹部を採用した。これは商用車ユーザー向けの新たな主力製品となる電動カーゴバン「E-Transit(イートランジット)」と、電動ピックアップトラックの商用バージョン「F-150 Lightning Pro(F-150ライトニングプロ)」の市場投入に先立ち、準備を整えるためだ。

フォードは、新ビジネスユニット「Ford Pro(フォード・プロ)」のリーダーシップチームを、社内外から招集した。新たに採用されたのは、6月にフォードが買収したバッテリー管理および車両監視ソフトウェアのスタートアップ企業であるElectriphi(エレクトリフィ)でCEOを務めているMuffi Ghadiali(マフィ・ガディアリ)氏だ。同氏はElectriphiにおける職務を継続し、フォード・プロの充電部門を統括する。

関連記事:フォードがEVバッテリー管理ソフトウェアのElectriphiを買収、法人顧客向けEV事業を強化

また、これまでフォードの米国マーケティング・販売・サービス担当コントローラーを務めていたTim Baughman(ティム・バックマン)氏は、フォード・プロ・ノースアメリカのジェネラルマネージャーに任命された。

フォード・プロの新しいCFOには、Ford Autonomous Vehicles LLC(フォード自動運転車有限責任会社)に在籍していたNavin Kumar(ナビン・クマール)が就任する。

Walt Disney Company(ウォルト・ディズニー・カンパニー)から移籍してきたTracey Pass(トレーシー・パス)氏は最高人事責任者として採用され、Ford Autonomous Vehiclesのソフトウェア開発責任者だったRahul Singh(ラフル・シン)氏はCTOに就任。Samsung Electronics America(サムスン電子アメリカ)のチーフ・マーケティング・オフィサーだったWanda Young(ワンダ・ヤング)氏は、フォード・プロで同じ役職に就くことになった。

フォードはすでにHans Schep(ハンス・シェップ)氏がフォード・プロの欧州地域担当ジェネラル・マネージャーに就任することも発表している。

フォード・プロが力を入れているのは単に商用バンだけではない。Ted Cannis(テッド・カニス)氏が率いるこの部門は、フリート管理やメインテナンス、充電サービスなども顧客に提供することを目指している。フォード・プロはハードウェアとそれに関連する新サービスから、2025年までに450億ドル(約4兆9500億円)の収益を上げることを期待しているという。

2019年に商用車部門の売上高が270億ドル(約2兆9700億円)だったことを考えれば、これは大きな収益増だ。フォードはこの目標を達成するために、バンやフルサイズのピックアップトラックに、内燃機関とハイブリッド、そして近い将来に追加される電気自動車バージョンを組み合わせて販売し、さらにそのEVのために、車両基地だけでなく自宅でも充電できる設備や、顧客のフリート管理およびメインテナンスに役立つデジタルサービス、サービスセンターのネットワーク、そしてもちろん融資を提供することを計画している。

フォードの商用車事業は欧州で先行しており、同地域では6年連続で商用車ブランドの首位に輝いている。北米では、クラス1からクラス7までのフルサイズ商用トラックおよびバンで、フォードのシェアは40%を超えているという。

特に欧州では、各国政府が都市部における排ガス規制を強化していることから、EV事業に力を入れている自動車メーカーには、より多くのシェアを獲得するための新たなチャンスが生まれている。フォード・プロの計画には、2021年後半に納車が開始予定のE-Transitと、2022年春の発売が見込まれるF-150 Lightning Proが重要な役割を果たすことになる。

画像クレジット:Ford

原文へ

(文:Kirsten Korosec、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

GMがシボレー・ボルトEVの生産中断をさらに2週間延長

GM(ゼネラル・モーターズ)はミシガン州オリオン組立工場の閉鎖期間を2週間延長した。Chevrolet Bolt EV(シボレー・ボルトEV)とBolt EUV(ボルトEUV)のリコールにともなうバッテリーパックの不足が理由だ。

GMはオリオン工場の閉鎖は9月20日まで延長されると語った。同工場は8月23日から閉鎖している。

リコールは、Chevy Bolt EVおよびEUVの2017年型以降が対象で、メーカーがバッテリーセルに2件の火災危険度を高める恐れのある製造欠陥を発見したため発行された。火災危険の恐れから、GMはBoltオーナーに対して充電状態制限を90%に設定し、走行距離70マイル以下までバッテリーを消耗させないよう推奨している。幹線道路交通安全局はBoltのドライバーに対し、火災危険度を減らすために自宅から離れた場所に駐車することを推奨している

関連記事:米幹線道路交通安全局が火災リスクのあるシボレー・ボルトを屋外に駐車するようオーナーに警告

同社は車両の供給元であるLG化学とともに「製造プロセスの改訂」に取り組んでいると語った。

オリオン工場は当初8月に半導体チップ不足を理由に閉鎖された。その後GMは従業員に対して、リコールに関連するバッテリー不足のために工場閉鎖が継続することを通知した。

このリコールによってGMは18億ドル(約1977億6000万円)の損害を受けると予測されている。GM広報担当者は、今回の閉鎖期間延長によってその数字が大きくなるかどうかについて情報を提供していない。自動車メーカーはLG化学に償還を求めるつもりであると語った。

半導体不足

世界的な半導体不足が続く中、GMは今後2週間にいくつかの工場で製造を再開できる見込みだと語った。

同社のインディアナ州Fort Wayne(フォート・ウェイン)組立工場とメキシコのSilao(シラオ)組立工場でフル生産が始まる予定で、世界的半導体不足による小規模な影響のあと、Chevrolet Silverado 1500(シルバラード 1500)およびGMC Sierra 1500(シエラ1500)モデルの生産が9月13日から開始される。

GMの北米にあるフルサイズトラックとフルサイズSUVの工場は来週フル生産に入る予定だ。

7月中旬以来閉鎖していたGMのテネシー州スプリングヒル組立工場は、GMC Acadia(アカディア)とCadillac(キャデラック)XT5およびXT6の生産を9月20日に再開する。同工場は、新モデルの器具取り付けのために9月27日の週から11月22日の週まで予定されていた延長閉鎖期間の一環として再び閉鎖される予定だ。

2月8日以来中断しているCadillac XT4の生産は、カンザス州フェアファクス組立工場で再開する。GMによると、同じくフェアファクスで生産されるChevrolet Malibu(マリブ)の生産は引き続き停止する。

同社は、ミシガン州ランシング・デルタ・タウンシップ工場とミズーリ州ウェンツビル工場の閉鎖期間を1週間延長、メキシコのラモス・アリスペ工場でのChevrolet Blazer(ブレーザー)の生産中断を1週間延長した。

関連記事
GMがシボレー・ボルトのリコール損失約1100億円をLG Chemに請求すると表明
GMがシボレー・ボルトEVに3度目のリコール、欠陥バッテリーから火災のおそれ
GMとAT&Tが2024年モデルから一部の車両に5G接続機能を提供すると発表
画像クレジット:GM

原文へ

(文:Kirsten Korosec、翻訳:Nob Takahashi / facebook

アップルがウェアラブルのチーフ、ケヴィン・リンチ氏を自動車部門のリーダーに任命との報道

Apple(アップル)は、秘密裏に進めている自動運転車部門の開発を指揮するために、新たな幹部を任命したと報じられている。Bloombergによると同社は、今週初めにiPhoneメーカーからFordに移った役員Doug Field(ダグ・フィールド)氏が後任として、Project Titanの統括にKevin Lynch(ケヴィン・リンチ)氏を起用したという。

関連記事:フォードがアップルの秘密自動車開発プロジェクトを率いた幹部を採用

初めて見る名前かもしれないが、ここ数年のAppleイベントを見ていた人は、ステージ上でリンチ氏を見たことがあるはずだ。リンチ氏は2013年にAdobeからAppleへ移籍して、同社のウェアラブル&ヘルス部門を統括し、watchOSの新しい機能が発表されるときには、紹介役を務めることが多かった。

Bloombergによるとリンチ氏は、2021年の早い時期に同事業部に参加したが、現在、その全体を統括している。同報道によると、リンチ氏の任命はAppleが、リリースすれば誰の目にも明らかな自動車そのものではなく、その走行を支えるソフトウェアに力を入れていることの表れだという。

編集部注:本稿の初出はEngadget

画像クレジット:BRITTANY HOSEA-SMALL/AFP/Getty Images

原文へ

(文:Igor Bonifacic、翻訳:Hiroshi Iwatani)

子供が乗れるロボユニコーンは中国のEVスタートアップXpeng製

子どものためにロボット犬を買うのではなく、神話上の生き物を買ってあげるといいかもしれない。中国の電気自動車メーカーXpengは、子どもたちが乗れるロボットユニコーンを発表した。SCMPによると、この四足歩行ロボットは、Xpengの自律走行やその他のAIタスクの経験を活かして複数の地形タイプをナビゲートし、物体を認識し「感情的なインタラクション」を行うという。

その他の詳細については明らかにされていないが、デザインはBoston RoboticsのSpotをよりかわいく、より子ども向けにしたようなものだ。サイズは子どもと同じくらい。ただ申し訳ないが、あなたが仕事に向かうときに踊ることはない。

関連記事:中国Xpengが展開するLiDARを利用した自律運転EV

このユニコーンロボットは、本物のユニコーンと同じくらい神話的な存在でもある。Xpengは、価格や入手方法はおろか「角付きロボット馬」の販売予定時期も明らかにしていない。7万5000ドル(約826億円)のSpotほどではないかもしれないが、洗練されていることもあり2019年に発売された2900ドル(日本では21万7800円)のaiboよりも高いと予想される。

ある程度までは、利益は問題ではない。XpengのチーフであるHe Xiaopeng(ホー・シャオペン)氏は、今回のユニコーンは同社の既存技術を活用してロボット分野に進出する広範な動きの一環であるという。これは第一歩だと思って欲しい。Xpengがユニコーンから学んだことは、より洗練された(そしてできれば大人向けの)ロボットの開発につながるかもしれない。

編集部注:本記事の初出はEngadget

関連記事
ロボット学者・石黒浩教授が大阪大学発スタートアップ「AVITA」を設立し5.2億円の資金調達
自律型潜水機とクラウドベースのデータでBedrockは海底マッピングを近代化
Agility Roboticsが倉庫で働く二足歩行ロボット「Digit」のビデオを公開
画像クレジット:Xpeng

原文へ

(文:Jon Fingas、翻訳:Katsuyuki Yasui)

40%軽量化で航続距離アップ、トレッドが再生可能なContinentalのエコなコンセプトタイヤ

自動車の環境負荷を低減するためにさまざまな取り組みが行われているが、そのクルマが履いているタイヤはどうだろうか?Continental(コンチネンタル)は、それが助けになるかもしれないと考えている。自動車情報サイトRoadshowによると、Continentalは、材料の半分以上が「トレーサブル、再生可能、再生素材」の「Conti GreenConcept」(そう、コンセプトタイヤだ)を発表した。天然ゴム製のトレッドを少しの手間でリニューアルすることも可能だ。それは全く新しいアイデアではないが、再生可能なトレッドは一般的に大型商用トラックに限られていた。3回再生すれば、総走行距離に対してケーシングに使用される材料が通常の半分になる。

原料の約35%は再生可能素材で、タンポポゴム、もみ殻を原料としたケイ酸塩、植物油や樹脂などが使われている。また、17%はペットボトルをリサイクルしたポリエステル繊維、再利用スチール、回収カーボンブラックを使用している。

このデザインによりクルマ自体の効率も向上するはずだ、とContinentalは付け加えた。新しいケーシング、サイドウォール、トレッドパターンにより、GreenConceptは従来のタイヤに比べて約40%軽量化され、約16.5ポンド(約7.5kg)になった。その結果、EUの最高ランクのタイヤに比べて、転がり抵抗が25%減少したという。Continentalの試算によると、EVの航続距離がそれで6%伸びるとのこと。

我々の自家用車にこのタイヤが装着される日はまだそんなに近くないもしれないが、これは単なる思考エクササイズではない。Continentalは2022年からリサイクル技術を段階的に展開する予定で、再生ボトルを使ったタイヤの生産も計画している。

Conti GreenConceptのような取り組みは、Continentalのイメージアップにもつながる。同社は2030年までに最も環境に優しいタイヤメーカーとなり、「遅くとも」2050年までには完全なカーボンニュートラルを実現したいと考えている。しかし、パワートレインだけでなく、多くのコンポーネントが地球に優しくなるような、より全体的なエコカーへのアプローチを示唆している。

編集部注:本稿の初出はEngadget。著者Jon Fingas(ジョン・フィンガス)氏は、Engadgetのウィークエンドエディター。

関連記事:NASA探査ローバーと同じ技術の自転車用エアレスタイヤを「サバイバー」優勝者のスタートアップが発表
画像クレジット:Continental

原文へ

(文:Jon Fingas、翻訳:Aya Nakazato)

固体バッテリー開発のSolid Powerが生産能力拡大、2022年にフォードとBMWに試験用バッテリーを納入

Ford(フォード)とBMWが投資するバッテリー開発企業のSolid Power(ソリッドパワー)は、2022年初めの固体電池パイロット生産の準備のため、コロラド州にある工場を拡張する。

新しい生産施設は、同社の主力製品の1つである硫化物系固体電解質材料の生産に特化し、現在の最大25倍の生産量を見込む。また、この新施設には、商用グレードの100アンペア電池をパイロット生産する最初のラインを設置する。これらのパウチ型電池は、2022年初めにFordやBMWで自動車試験が行われる予定で、2020年代後半の自動車での実用化を目指す。

固体電池は、長い間、電池技術の次のブレークスルーだと考えられてきた。TechCrunchのライターであるMark Harris(マーク・ハリス)が説明しているように、固体電池には液体電解質がない。従来のリチウムイオン電池では、液体電解質が正極と負極の間でイオンを移動させる物質だった。固体電池の開発者によれば、この技術によって得られる利益は、エネルギー密度の向上、コストの削減、優れた電池寿命などだ。

また、開発者らによれば、固体電池はより安全だという。GMがChevrolet Bolt(シボレー・ボルト)を3回にわたってリコールしたように、火災の危険性を考慮すると、それは重要なポイントだ。Solid PowerのCEOであるDoug Campbell(ダグ・キャンベル)氏はTechCrunchの取材に対し「熱暴走を引き起こす火種」となるのは電解液であると述べた。「現代自動車とGMが現在直面しているこうした問題は、固体電池で解決できると強く信じています」。

同社は新しい電池のパイロット生産ラインを建設するものの、最終的には電解質材料のみを生産し、OEMや電池メーカーに電池のライセンスを提供する計画だ。

「長期的に見れば、当社は材料メーカーです」とキャンベル氏は話す。「固体電解質材料の業界リーダーになりたいと考えています」。そのため、今回の電池生産への進出は、同社にとって最後のものになるだろうとキャンベル氏はいう。予定しているパイロット生産ラインでは、複数のOEMメーカーに自動車の認定試験用の電池を供給するのに十分な量を生産し、より大規模な生産は自動車メーカーや電池セルメーカーが行う想定だ。

電池を自社で生産するのではなく、パートナーにライセンス供与するという決断は、常識的なアセットライトモデルだと同氏は語る。

「正直なところ、小さなSolid Powerが成長して、パナソニックやLG、CATLのような企業を駆逐する可能性がどれほどあるでしょうか」。スウェーデンのNorthvoltのようにそれに挑む企業もあるが、材料事業の利益率は高く、直接の競争相手となる大手はいない、とキャンベル氏は付け加えた。「資本的には軽いものの、現実的でもあります」。

このスタートアップは2021年6月に、白紙小切手会社であるDecarbonization Plus Acquisition Corp IIIとの12億ドル(約1320億円)の逆さ合併により株式を公開すると発表した。キャンベル氏によると、この取引で約6億ドル(約660億円)の現金が得られる見込みで、2026年または2027年までの十分な資金となるという。

特に、2027年までに年間10ギガワット時の電池容量を支えるだけの電解質材料の生産を目指しているため、2030年まで乗り切るためには十分な資金が必要となる。そのためには、今回の発表と比べ「桁違い」の電解質生産能力が必要になるとキャンベルはいう(発表の内容自体が桁違いではある)。

Solid Powerは、電解液の生産だけに留まるつもりはない。キャンベル氏は、低コストの正極材の開発にも取り組んでいることを示唆した。この正極材は、電池の原材料の中でも最もコストのかかるニッケルやコバルトを含まないものだ。

「この業界は材料費に支配され、材料費はニッケルとコバルトを含む正極材のコストに支配されることになるでしょう」とキャンベル氏は話す。「2021年の終わりに公開するこの特定の化学物質は非常に低コストで、今日の(ニッケル・マンガン・コバルトの)陰極のコストの20分の1から30分の1になります」。

関連記事
BMWとフォードが出資する全固体電池デベロッパーSolid PowerがSPAC合併で上場へ
メルセデス・ベンツが2030年までにEV専門メーカーに、8つのバッテリー工場を建設
QuantumScapeが株式を売却し全固体電池の生産資金調達、市場価値を高める
画像クレジット:Solid Power

原文へ

(文:Aria Alamalhodaei、翻訳:Nariko Mizoguchi

EVバッテリーの充放電をクラウド管理し再エネ電力需給バランス調整向け蓄電システムに変える「Yanekara」が5500万円調達

EVバッテリーの充放電をクラウド管理し再エネ電力需給バランス調整向け蓄電システムに変える「Yanekara」が5500万円調達

EVをエネルギーストレージとして活用する充放電システムを開発する東大発スタートアップ「Yanekara」(ヤネカラ)は9月8日、シードラウンドにおいて、J-KISS型新株予約権による5500万円の資金調達が完了したことを発表した。引受先は、オープンイノベーション推進1号投資事業有限責任組合(AOI1号ファンド。東京大学協創プラットフォーム開発)、ディープコア、エンジェル投資家など。

Yanekaraは、「屋根から自然エネルギー100%の未来を創る」ことを目指すエネルギーテック領域のスタートアップ。現在、1基で複数台のEVに太陽光で充電できる充放電機器(V2X)と、EVを含め多様な分散エネルギー源を群管理するクラウドシステムを開発している。

それは、日本のカーボンニュートラルを実現させる再生可能エネルギーを大量導入する際に、常に変動する再生エネルギー電源からの発電量と電力需要量を一致させるための蓄電システムだ。駐車場で眠っているEVのバッテリーを有効活用すると同時に、EVによるモビリティーの脱炭素化も進める。太陽光でEVを走らせ、その蓄電能力を電力の需給調整に利用することで、「再エネが主力電源化した日本を1日でも早く実現します」とYanekaraは話す。

今回調達した資金は、充放電器の実証実験、量産準備に使われる。また、充放電器とクラウドシステムの開発を行う人材も採用するとのことだ。

【コラム】EVの充電ソリューションは電力網の資産になる

編集部注:本稿の執筆者Oren Ezer(オレン・イーザー)氏は、電気自動車にワイヤレス充電を提供する共有エネルギープラットフォーム「ElectReon」のCEO兼共同設立者。

ーーー

2030年までに米国の販売台数の約半分を電気自動車(EV)にするというJoe Biden(ジョー・バイデン)大統領の計画は、現在、米国の総排出量の約半分を占める交通システムの脱炭素化を進めようとしていることを意味している。

電気自動車の大量導入を促進するためには米国政府の支援が不可欠だが、一方で、何百万、何千万もの人々が頼りにしている劣化した電気インフラ、すなわち電力網を修復する必要にも迫られている。

社会がオール電化に移行し、EVの需要が高まる中、現代社会が直面する課題は、どうすれば電力網に負荷をかけ過ぎずに、増え続けるEVに充電できるかということである。EVは電力網に対して過負荷となるという予測がある一方で、ワイヤレス充電、V2G(Vehicle to Grid、自動車と地域電力網の間で電力を相互供給する技術やシステム)、再生可能エネルギーのより効率的な利用など、エネルギーインフラをバックアップする方法も研究されている。

不安定な電力網に対して信頼性の懸念が高まる現在、この重要なインフラを強化し、電力網の限界を超えないようにするためのソリューションを見つけることは急務となっている。

現在、電力網が直面している課題

気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の気候変動報告書は、地球温暖化や人類が排出した二酸化炭素の影響により、以前は50年に1度だった激しい熱波が、今後は10年に1度あるいはそれ以上の頻度で起こると予想している。このことは、すでに2020年も太平洋岸北西部における記録的な熱波や大火災で確認されているが、電力会社や事業者、業界の専門家たちは、現在のエネルギーシステムが気候変動による温度上昇に耐えられるか懸念を示している。

熱波だけではない。2月にテキサス州で発生した寒波は、エネルギーインフラを麻痺させ、何百万もの住宅で停電が発生した。温暖化が進み、電力需要を満たすために電力網が過負荷になればなるほど、このようなことは増加し続けるだろう。

気温の変動に加え、今後数年のうちに市場に出回ると予想されるEVの増加をサポートできるかどうかについても多くの人が懸念している。交通機関の電化にともない、2050年までに米国の発電容量を2倍にする必要があるとの報告もあり、充電のピーク時に柔軟性を向上させ、稼働率を上げられるEV充電の技術が求められている。しかし、現状では、米国の電力網の能力は2028年までに2400万台のEVをサポートできるにとどまり、道路輸送による二酸化炭素排出量を抑制するために必要なEVの数を大幅に下回っている。

このような課題にもかかわらず、業界の専門家は、EVが電力需要管理に大きな役割を果たし、必要に応じて電力網の安定化に貢献する潜在能力があることを指摘している。しかし、全米でEVの普及が進めば、電力会社は、人々がいつEVを充電するのか、何人のユーザーがいつEVを充電し、どのような種類の充電器が使用されてどのような車両(乗用車や中型・大型トラックなど)が充電されているのかといった重要な問題を調査し、電力需要の増加と電力網のアップグレードを決定する必要がある。

EV充電ソリューションは負債ではなく資産になる

電力網インフラのアップグレードには長い時間がかかる上、自動車の電動化を希望する個人や企業が増加しているので、全米の自治体は、EVの増加に先んじて、電力網の安定性を確保しながら必要な充電インフラを展開する方法を必死に模索している。しかし、国際クリーン交通委員会(ICCT)の最近の分析では、米国のEV充電器の数は現在21万6000台で、EVの普及目標を達成するためには2030年までに240万台の公的および民間の充電システムが必要になると推定されている。

各都市は充電インフラの不足を解消するために、必要な充電インフラの導入を早め、電力網を保護するための従来の据え置き型充電器以外の充電オプションを検討し始めている。その1つがワイヤレス充電や走行中充電といったダイナミックチャージング(大電力充電)である。

ワイヤレスのEV充電は、充電レーンの配置や交通量によって充電時間が断片化され、需要の変動が大きくなり、既存の電力網インフラにさらなる負担をかけるという意見がある一方、ワイヤレス充電では、14~19時に多く発生するエネルギー需要をまかなうためにEVを固定式充電器に接続しておく必要がなく、24時間さまざまな場所に分散して充電できるため、実際には電力網の需要を減少させ、グリッド接続の増設やアップグレードの必要性を減らすことができるという主張も多くある。

また、ワイヤレス充電は、道路、商業施設の搬入口の真下、施設の出入り口、タクシーの行列、バスの駅やターミナルなど、導電式(プラグイン)充電ソリューションでは対応できない場所にも設置することができるので、1日のうちに一定の間隔でEVに「上乗せ」充電を行うことができる。

導電式のEV充電ステーションは主に夕方や夜間にのみ使用され、蓄電装置が必要だが、ワイヤレス充電では、主に日中に生産・利用される再生可能な太陽エネルギーをより効率的に利用することができるので、必要な蓄電装置の台数を減らすことができる。

これには、都市や電力会社がワイヤレス充電のような効率的なエネルギー利用戦略を活用することで、エネルギー需要を時間的・空間的に分散させ、電力網に柔軟性をもたせて保護することができるというメリットがある。このエネルギー利用戦略を、自家用車やタクシーだけでなく、中型・大型トラックに適用すれば、EV化が難しいトラック分野でもEVへの移行をより迅速化できるようになる。

電気自動車の普及を支える電力網にプラスとなるワイヤレス充電

電力網にとっては乗用EVだけでも課題を抱えているが、大規模なトラック充電は、電力会社が積極的に移行を準備しなければ、非常に困難な課題となる。2030年には商用や乗用の全車両の10〜15%をEVにすることが計画されている現在、EVへの移行で二酸化炭素排出量の削減目標を達成しようとしている事業者にとって、ワイヤレス充電は費用対効果の高いソリューションになる。大型車のプラグイン充電とワイヤレス充電の比較と、両者が電力網に与える影響は次のようになる。

  • プラグインの導電式充電:240kWhのバッテリーを搭載した100台のEVバスをバス停留所で夜間導電充電する場合、全車両が毎日の運行終了時に同時に充電するために、最低でも6メガワット(MW)のグリッド接続が必要となる。
  • 電磁誘導方式のワイヤレス充電:都心部のバスターミナル、駐車場、ステーションに設置したワイヤレス充電の定置充電技術を使用して、100台のEVバスを、1日を通して運行の合間に「上乗せ」充電することができる。この充電戦略では、蓄電容量を大幅に削減でき(正確な削減量は車両と車両のエネルギー需要によって異なる)、1日を通して充電が行われるので、必要なグリッド接続は(プラグイン充電と比べて)66%減の2MWになる。

道路に隣接するソーラーパネルフェンスを備えたワイヤレス電気道路システムは、発電を分散させ、電力網への負荷を減らすための究極のソリューションになるかもしれない。業界が行った計算によると、約1kmの電気フェンスは、1.3〜3.3MWの電力を供給することができる。太陽光発電と道路に埋め込まれたワイヤレス充電インフラを組み合わせることで、1日あたり1300台から3300台のバスを電力網に接続せずに走らせることができる(平均時速80km、日射量の季節変動を考慮)。

さらに、ワイヤレス電気道路システムはすべてのEVに共通で使用できる。同じ電気道路でトラックやバン、乗用車に充電でき、電力網に新たな負荷をかけることもない。

電力網の近代化に向けて重要な役割をもつ革新的な充電技術

ワイヤレス充電はまだ市場に出てきて間もない技術だが、そのメリットは次第に明らかになっている。交通機関の電化の促進、気温の上昇、異常気象などに直面する電力網の老朽化が懸念される中、革新的な充電技術は最適なソリューションだ。

1日を通してEVの充電を分散させて過負荷を回避し、乗用車と大規模なトラック輸送両方のエネルギー需要を同時にサポートするワイヤレス充電などの技術は、将来の全電化脱炭素社会に向かうための重要なリソースとなる。

関連記事
【コラム】材料、電池、製造の炭素排出量を積み上げたEVの本当のカーボンコスト
【コラム】核融合に投資すべき理由
【コラム】エネルギーエコシステムは不安定な未来に適応する「エネルギーインターネット」の実現に向かうべきだ
画像クレジット:Bloomberg Creative / Getty Images

原文へ

(文:Oren Ezer、翻訳:Dragonfly)

フォードがアップルの秘密自動車開発プロジェクトを率いた幹部を採用

ソフトウェアと他の高度なテクノロジーで優位に立ちたいFord Motor(フォード・モーター)は、Apple(アップル)の特別プロジェクトチームを率いていたDoug Field(ダグ・フィールド)氏を社に迎え入れた。

かつてTesla(テスラ)のエンジニアリング担当上級副社長だったフィールド氏は米国時間9月7日に、Fordの高度テクノロジーと組み込みシステムの最高責任者に指名された。フィールド氏は直近ではAppleの特別プロジェクト担当副社長を務めた。この特別プロジェクトのチームは、いわゆるTitanカープロジェクトにも取り組んでいた。

Fordでの新しい役職では、フィールド氏は同社会長兼CEOのJim Farley(ジム・ファーリー)氏に直接報告する立場で、同社の組み込みソフトウェアとハードウェア構成を監督する。ソフトウェアとハードウェアは今日、車両コントロール、企業コネクティビティ、機能、統合・認証、アーキテクチャ・プラットフォーム、運転支援技術、デジタルエンジニアリングツールから構成される。これは、フィールド氏がインフォテーメントやナビゲーション、運転支援技術、コネクテッド・サービス、車両サイバーセキュリティなど、FordやLincolnのブランドの車両で使われている全テックスタックのデザイン、開発・実行を受け持つことを意味する。

フィールド氏の参加は、Teslaや他の新規参入企業などと競合するテクノロジーを搭載した乗用車やトラック、SUVを提供できると顧客や投資家に示したいFordにとって宣伝となるかもしれない。フィールド氏のTeslaでの経験、特にModel 3に関わった経験は、Fordが新しい電気自動車を開発・販売するのに伴い、重要であることが証明されそうだ。

Fordの次世代のコネクテッドプロダクトやエクスペリエンスを創造すべく、フィールド氏はプロダクトプラットフォームとオペレーションの最高責任者であるHau Thai-Tang(ハウ・タイ・タン)氏と緊密に連携する、と同社は述べた。タイ・タン氏は引き続き製品開発、購入、デザイン、研究・高度エンジニアリング、EPLM / D-Ford、高度な製造、Ford Ion Parkを監督する。

今回の採用で、フィールド氏は1987年から1993年にかけて開発エンジニアとして働き、キャリアをスタートさせた古巣に戻ることになる。

「私は常にFordと深いつながりを感じていました。私の父親の農園にあったF-150、結婚式で乗車した1965年製造のContinental、そしてModel Tのデザインにあるすばらしい優雅さを発見したときの感動など、Fordのプロダクトは物心ついたときから常に私の人生にありました」とフィールド氏は声明文で述べた。「チームが次世代のアイコン的Ford車両をつくり、今後何百年もFordが続くようサポートする機会に感謝しています」。

画像クレジット:Ford

原文へ

(文:Kirsten Korosec、翻訳:Nariko Mizoguchi

現代自動車グループが2028年までに全商用車に水素燃料電池モデルを投入へ

Hyundai Motor Group(現代自動車グループ)は持続可能性のための最優先エネルギーソリューションとして水素を支持している。今後数年内に展開する新しい燃料電池システムで、韓国の自動車メーカーである現代自動車グループは2028年までに同社の全商用車に水素燃料電池バージョンを提供すると明らかにした。

同グループは米国時間9月7日、同社のHydrogen Waveカンファレンスのライブストリームで水素を活用した未来戦略を発表した。同グループの代表取締役副社長で燃料電池センター責任者のSaehoon Kim(セフン・キム)氏は、2030年までにEV(電気自動車)バッテリーに匹敵するコスト競争力を獲得するのが目標だ、と述べた。

同社はまた、高性能で後輪駆動の水素スポーツカーVision FKの詳細も明らかにした。Vision FKは停止した状態から時速100kmに達するまで4秒もかからない500kWの燃料電池システムを搭載し、航続距離は600kmだ。生産開始時期については明らかにしなかった。

大半の自動車メーカーが乗用車EVと商用車EVの展開を始めているが、水素タイプはまだニッチなマーケットだ。しかし欧州、中国、米国が野心的な二酸化炭素排出削減目標を設定したのに伴い、成長中のマーケットでもある。トヨタ自動車、BMW 、Daimler(ダイムラー)も程度の差こそあれ、EVの開発を続けながら燃料電池テクノロジーを受け入れ始めた。この点において、現代自動車の水素への傾倒はEVへの傾倒を阻んでいない。現在のような気候状況では、あらゆるソリューションが必要だ。最高の燃料が選ばれるといい。

イベントでキム氏はまた、2023年に2種の水素燃料電池パワートレインを立ち上げる、と発表した。同社は2040年までに水素を主流にしたいと考えている。現代自動車の水素燃料スタックの第3世代は、乗用車向けが出力100 kW、商用車向けは200kWとなる。

現代自動車、Kia(起亜自動車)、Genesis(ジェネシス)を傘下にもつ現代自動車グループは現在、燃料電池バス「Elec City Fuel Cellバス」を展開していて、韓国で115台が走っている。また燃料電池トラック「Xcient Hyundai」も展開中で、こちらは45台が2020年スイスで導入された。

現代自動車は燃料電池SUVの「NEXO」を誇っていて、水素で駆動する多目的車両モデルとともに次のモデルを2023年に投入する計画だ。同社はミュンヘンで開催中のIAAモビリティカンファレンスで、大型の燃料電池で走るSUVを2025年以降に発売し、2030年までにさらに4種の商用車を投入する、とも発表した。同社は緊急車両や船舶、貨物トラック、トラム、フォークリフト、その他にも産業で使用される車両など異なるユースケース向けに燃料電池テクノロジーを提供することを目指している。

「燃料電池は水素のメリットをさまざまな分野の世界中の人に届けることができる実証済みのテクノロジーです」とキム氏は述べた。「基本的に燃料電池はエンジンのような発電機です。電気を蓄えるバッテリーとは異なります。燃料電池システムは発電する燃料電池スタック、水素供給システム、空気供給システム、熱管理システムで構成されます。水素と酸素を合わせることで発電し、内燃機関車両のエンジンと似ていますが、二酸化炭素を排出しません」。

同氏は続けて、燃料電池システムが化学反応を通じてエネルギーを生み出し、受動的にエネルギーを蓄えるだけのバッテリーと違って水素燃料が供給される限りエネルギーを生み出し続ける、とも説明した。現代自動車は生産、貯蔵、燃料電池テクノロジー、インフラなど、水素分野で成功するために必要なエコシステムの構築に取り組んでいる、と述べた。インフラの多くは、水を酸素と「グリーン」な水素に分解するためのクリーンパワーを生み出すのに必要な再生可能エネルギーを生産する太陽光と風力の発電施設となる。

独自のR&Dに加えて、現代自動車グループはH2Proのような水素スタートアップにすでに投資していて、政府が協力的で再生可能エネルギーリソースが豊富な国でグリーンな水素インフラを確立する計画も発表している。

この分野における取り組みの多くは、2040年までに二酸化炭素排出レベルを2019年の75%以下に削減し、2045年までにカーボンニュートラルになるという発表に続くものだ。現代自動車グループは全車両の30%が2030年までにゼロエミッションになり、全車両の80%が2040年までにバッテリー電気自動車と燃料電池車になると見込んでいる。

関連記事
電動セミトラックメーカーのNikolaがボッシュと水素燃料電池モジュールの製造で提携
電動航空機用水素燃料電池システムの開発でHyPointとPiaseckiが提携
ジャガー・ランドローバーがディフェンダーベースの水素燃料電池EVを開発へ
画像クレジット:Hyundai Motor Group

原文へ

(文:Rebecca Bellan、翻訳:Nariko Mizoguchi

【コラム】材料、電池、製造の炭素排出量を積み上げたEVの本当のカーボンコスト

EVの未来を夢見る投資家や政治家は、EVこそが世界の二酸化炭素排出量を大幅に削減すると信じている。しかし、その夢は完全に不透明だ。

従来型の自動車からEVへの置き換えが進んでも、世界の二酸化炭素排出量削減の効果はあまり大きくない。それどころかかえって排出量を増加させてしまう可能性もある、とする研究結果は増え続けている。

問題となるのは、発電時の炭素排出量ではない。顧客がEVを受け取るまでに発生する、私たちが気がついていない炭素排出量、すなわちバッテリーの製造に必要なすべての材料を入手し、加工するという迷路のように複雑なサプライチェーンで発生する「エンボディド・カーボン(内包二酸化炭素、環境負荷の指標)」のことだ。

ハンバーガー、住宅、スマートフォン、バッテリーなどのすべての製品で、生産工程の上流に「隠された」内包二酸化炭素が存在する。マクロレベルの影響については、フランスの気候変動に関する高等評議会が2020年発表した研究結果を参照して欲しい。この分析では、フランスが国を挙げて炭素排出量の削減を達成したという主張は幻想であることがわかる。炭素排出量は実際には増加しており、輸入品の内包二酸化炭素を計算すると、報告されていた値よりも約70%高くなった。

内包二酸化炭素の数値化は大変難しく、特にEVでは非常に複雑で不確実である。EVは走行中には何も排出しないが、生涯総炭素排出量の約80%は「バッテリーを製造する際のエネルギー」および「自動車を動かすための電力を発電する際のエネルギー」から発生している。残りは、クルマの非燃料部品の製造によるものである。従来型の自動車の場合は、生涯総炭素排出量の約80%が走行中に燃焼した燃料から直接発生する二酸化炭素で、残りは自動車の製造とガソリンの生産にかかる内包二酸化炭素から発生する。

従来型の自動車の燃料サイクルは狭い範囲に限定され、ほとんどの特徴が十分に解明している。そのため、厳しい規制がなくてもほぼすべてが追跡可能で、仮定(推定)の部分は少ない。しかし、電気自動車の場合はそうではない。

例えば50の学術研究を調査したレビューによると、電気自動車のバッテリー1つを製造する際の内包二酸化炭素は、最低でも8トン、最高で20トンである。最近の技術的な分析では、約4〜14トンとするものもある。14トンや20トンといえば、効率の良い従来型の自動車が、生涯の走行でガソリンを燃やした際に発生する二酸化炭素とほぼ同じ量である。それに対し、今挙げたEVの数値は、自動車が顧客に届けられ、走り出す前の話である。

この不確実性の原因は、バッテリーのライフサイクルで使用されるエネルギーの量と種類の両方が持つ、固有かつ解決できないばらつきにある。いずれも地理的条件や処理方法に左右され、データが公開されていないことも多い。内包二酸化炭素の分析によれば、ガソリン1ガロン(約3.7リットル)に相当するエネルギーを貯蔵できる電池を製造するために、エネルギー換算値で2〜6バレル(1バレルは約159リットル)の石油が必要であることがわかっている。つまり、EV用バッテリーの内包二酸化炭素は、無数の仮定に基づく推定値であり、実際のところ、今現在のEVの「炭素換算単位あたりの走行距離」を測定したり、将来の数値を予測したりすることは誰にもできない。

政府のプログラムや気候変動対策ファンドへの資金は殺到している。2021年もBlackRock(ブラックロック)General Atlantic(ジェネラルアトランティック)、TPGの3社がそれぞれ40〜50億ドル(約4400~5500億円)規模のクリーンテックファンドの新設を発表するなど、2021年の投資額は2020年の記録を上回る。私たちは炭素排出量を削減するための万能薬と思われているEVなどの技術の内包二酸化炭素に対し、きっちりと検討する時期を逸してしまった。ここからは、この万能薬が期待通りの結果を出していないことをご紹介する。

鉱山のデータ

自動車の目標は、燃料システムが総重量に占める割合をできるだけ小さくして、乗客や貨物のためのスペースを確保することだ。リチウム電池は、ノーベル賞級の革新的な製品であるはずだが、機械を動かすパワーの指標である「エネルギー密度」は、いまだに1位のはるか後塵を拝し、2位に甘んじている。

リチウム系の電池が本来持つ重量エネルギー密度は、理論的には1キログラム(バッテリーセルではなく、化学物質のみの重量)あたり約700ワット時(Wh/kg)である。これは鉛蓄電池のエネルギー密度に比べれば約5倍だが、石油の1万2000Wh/kgに比べればごくわずかに過ぎない。

30kgのガソリンと同じ航続距離を得られるEVのバッテリーは500kgになる。この差はガソリンエンジンと電気モーターとの重量差によっては埋められない。なぜなら、電気モーターはガソリンエンジンよりも90kg程度しか軽くないからだ。

自動車メーカーは、EVのモーター以外の部分を鉄ではなくアルミニウムやカーボンファイバーを使用して軽量化することで、バッテリーの重量による損失の一部を相殺している。残念なことに、これらの素材は鉄と比較して内包二酸化炭素がそれぞれ300%、600%多い。EVの多くに使用されている500kgのアルミニウムによって、バッテリー以外の内包二酸化炭素が(多くの分析で無視されているが)6トン増加することになる。しかし、すべての要素の中で最も炭素排出量の計算が面倒なのは、バッテリー自体の製造に必要な要素である。

関連記事:【コラム】さらなる電化の普及にはまったく新しいバッテリー技術へのアプローチが必要だ

リチウム系の電池にはさまざまな元素の組み合わせがあり、安全性、密度、充電率、寿命など、バッテリーの複数の性能指標を妥協しながら選択される。バッテリーの化学物質自体が持つ内包二酸化炭素は、選択された元素によって600%もの差がある

広く普及しているニッケル・コバルト系電池の主成分を考えてみよう。一般的な500kgのEV用バッテリーには、約15kgのリチウム、約30kgのコバルト、約65kgのニッケル、約95kgのグラファイト、約45kgの銅が含まれている(残りは、スチール、アルミニウム、プラスチックの重さである)。

内包二酸化炭素の不確実性は、鉱石の品位、つまり鉱石の金属含有量から始まる。鉱石の品位は含まれる金属や鉱山、経年によって異なり、わずか0.1%から数%である。今わかっている平均値で計算すると、EV用のバッテリー1台分に必要な鉱石は次のようになる。1000トン以上のリチウムブライン(かん水)から15kgのリチウム、30トン以上の鉱石から約30kgのコバルト、5トン以上の鉱石から約65kgのニッケル、6トン以上の鉱石から約45kgの銅、約1トン以上の鉱石から約95kgのグラファイトである(なお、採掘にはエネルギーを大量に消費する重機を使用する)。

ボリビア・ウユニ塩原の南側ゾーンにある国有の新しいリチウム抽出施設の蒸発プールで、ブラインを積み込むトラックの航空写真。現地時間2019年7月10日(画像クレジット:PABLO COZZAGLIO / AFP via Getty Image)

さらに、そのトン数には、金属を含む鉱石に到達するまでに最初に掘らなければならない岩石物質の量(オーバーバーデン)を追加する必要がある。オーバーバーデンも、鉱石の種類や地質によって大きく異なるが、通常は1トンの鉱石を採掘するために約3〜7トンのオーバーバーデンを掘削する。これらの要素を総合すると、500kgのEV用バッテリー1台を作るためには、約250トンの岩石を掘削して、合計約50トンの鉱石を運搬し、さらに金属を分離するための加工を行う必要があることになる。

内包二酸化炭素は、鉱山の場所によっても影響を受ける。これは理論的には推定可能だが、将来的な数値は推測の域を出ない。遠隔地にある鉱山ではトラック輸送の距離も長くなり、ディーゼル発電機によるオフグリッド電力に頼らざるを得ない。現在、鉱物部門だけで世界の産業エネルギー使用量の約40%を占めている。また、全世界のバッテリーやバッテリー用化学物質の半分以上は、石炭火力発電の多いアジアで生産されている。欧米での工場建設が期待されてはいるとはいえ、いずれの調査も、鉱物のサプライチェーンは長期にわたってアジアが完全に支配すると予測している。

電力網とバッテリーの大きなばらつき

EVの炭素排出量の分析では、ほとんどのケースでバッテリーの内包二酸化炭素が考慮されている。しかし、この内包二酸化炭素は、異なる電力網でEVを使用した場合に生じるばらつきに対し、単純化のために単一の値を割り当てて計算されていることが多い。

国際クリーン輸送協議会(ICCT)が最近行った分析は非常に参考になる。ICCTは、バッテリーに固定の炭素負債を設定し、ヨーロッパのどこでEVを運転するかによってカーボンフットプリント(ライフサイクル全体を通して排出される温室効果ガスの排出量を二酸化炭素に換算した指標)がどのように変化するかに着目した。その結果、EVのライフサイクルにおける炭素排出量は、燃費の良い従来型の自動車と比較して、ノルウェーやフランスでは60%、英国では25%削減されるが、ドイツではほとんど削減できないことがわかった(ドイツの送電網における1kWhあたりの平均炭素排出量は、米国の送電網とほぼ同じである)。

この分析では、平均的な送電網の炭素排出量データを使用しているため、必ずしもバッテリー充電時の炭素排出量を表しているわけではない。充電に使用される実際の電力源は、平均値ではなく特定の時間によって決定される。水力発電と原子力発電が24時間稼働しているノルウェーやフランスでは、EV充電のタイミングによる変動は少ないが、それ以外の地域では、太陽光100%の時間や石炭100%の時間など、充電の時間帯や時期、場所によって大きく変動する可能性がある。一方、ガソリンの場合は、使用する場所と時間にこのような曖昧さはなく、全世界でいつでも同じである。

ドイツ・ボクスバーグにある亜炭火力発電所。ドイツ東部のルサティア地方とその経済基盤は、イェンシュヴァルデ、シュヴァルツェ・プンペ、ボクスベルクの石炭火力発電所に大きく依存している(画像クレジット:Florian Gaertner / Photothek via Getty Image)

ICCTが最近行った別の分析でも電力網の年平均値が使用され、従来型の自動車と比較した場合のEVのライフサイクルにおける炭素排出削減量は、インドでは25%、ヨーロッパでは70%となっている。しかし、欧州内での比較と同様に、バッテリー製造時の炭素排出量に、単一の低い値を仮置きしている。

国際エネルギー機関(IEA)は、現在のほとんどの鉱物生産は、炭素排出量の振れ幅の上限で行われていると報告している。そのため、バッテリーの内包二酸化炭素には単一の低い平均値を仮置きするのではなく、バッテリーごとに異なる内包二酸化炭素の影響を考慮しなればならない。ICCTの結果を内包二酸化炭素の現実に合わせて調整すると、EVのライフサイクルにおける排出削減量は、ノルウェーでは40%削減(調整前は60%)できるが、英国やオランダではほとんど削減できず、ドイツでは20%の増加となる。

現実世界での不確実性はこれだけではない。ICCTもその他の類似の分析でも、480kmの航続距離(従来型の自動車からEVへの置き換えを進めるために必要な距離)を実現できるバッテリーのサイズよりも、実際よりも30~60%小さいバッテリーで計算している。現在のハイエンドEVでは大型のバッテリーが一般的だ。バッテリーのサイズを2倍にすると、内包二酸化炭素も単純に2倍になり、多くのシナリオ(あるいはほとんどのシナリオ)で、EVのライフサイクルにおける炭素排出削減効果が大幅に損なわれるか、ゼロになる。

同様に問題なのは、将来の排出削減量を予測する際に、将来の充電サプライチェーンがEVが存在する地域に「存在する」明示的想定していることだ。ある分析は広く引用されているが、米国のEV用アルミニウムは国内の製錬所で製造され、電力は主に水力発電のダムで供給されると仮定している。理論的には可能かもしれないが、現実はそうではない。例えば米国のアルミニウム生産量は全世界の6%に過ぎない。製造プロセスがアジアにあると仮定すると、EV用アルミニウムのライフサイクルにおける排出量は計算上150%も高くなる。

EVの内包二酸化炭素算出の問題点は、石油が採掘、精製、消費される際の内包二酸化炭素の透明性に匹敵する報告メカニズムや基準が存在しないことだ。エグゼクティブサマリーやメディアの主張には反映されていないとしても、研究者は正確なデータを得るためには課題があることを知っている。技術資料の中には「リチウムイオン電池の使用が急速に増加している現状の、環境への影響を正しく評価するためには、リチウムイオンバッテリーセルの製造に必要なエネルギーをより深く理解することが重要である」というような注意書きが見られることがよくある。また、最近の研究論文には「残念ながら、その他のバッテリー原料の業界データはほとんどないため、ライフサイクル分析の研究者はデータギャップを埋めるために工学的な計算や近似値に頼らざるを得ない」という記載もあった。

全世界の鉱物のサプライチェーンを計算の対象にして、何千万台もの電気自動車の生産に対応させようとすると、この「データギャップ」が大きな壁となる。

量を増やす場合

最も重要なワイルドカードは、国際エネルギー機関(IEA)がいうところの「エネルギー転換鉱物」(ETM、風力や太陽光を電気に変換するために必要な鉱物)を必要量確保するために予想されるエネルギーコストの上昇である。

IEAは2021年5月、バッテリーや太陽電池、風力発電機の製造に必要なエネルギー転換鉱物の供給に関する課題について、重要な報告書を発表した。この報告書は、他の研究者が以前から指摘していたことを補強している。従来型の自動車と比較して、EVでは1台あたり約5倍のレアメタルを使用する。これに従い、IEAは、現在のEVの計画と風力発電や太陽光発電の計画を合算すると、一連の主要鉱物を生産するためには、全世界で鉱山生産量を300〜4000%増加させる必要があると結論づけている。

例えばEVは従来型の自動車に比べて銅の使用量が約300〜400%多いが、全世界の自動車総数に占めるEVの割合はまだ1%にも満たないため、世界中のサプライチェーンには今のところ影響が出ていない。EVを大規模に生産するようになると、電力網用のバッテリーや風力・太陽光発電機の計画と合わせた「クリーンエネルギー」分野は世界の銅消費量の半分以上を占めるようになるだろう(現在は約20%)。現在はごくわずかしか使用されていないニッケルとコバルトという関連し合う鉱物についても、クリーンエネルギーへの移行を進めることで、その分野の需要が全世界の需要のそれぞれ60%、70%を占めるようになると考えられている。

横浜港に到着し、駐車場に並べられたテスラ社の車両。2021年5月10日月曜日(画像クレジット:Toru Hanai/Bloomberg via Getty Images)

電気自動車の義務化が鉱業に及ぼす究極の需要規模を説明するために、5億台の電気自動車が普及した世界(それでも自動車全体の半分にも満たない)を考えてみよう。この世界では約3兆台のスマートフォンのバッテリーを製造できる量の鉱物資源を採掘する必要があり、これは、スマートフォンのバッテリーを2000年以上も採掘・生産してきたことに相当する。念のため確認しておくと、これだけのEVを導入しても、世界の石油使用量は15%程度しか削減されない。

全世界での驚異的な採掘量の拡大がもたらす環境、経済、地政学的な影響はさておき、世界銀行は「鉱物と資源の持続可能な開発のための新たな課題」について警告している。原材料の調達はEVのライフサイクルにおける二酸化炭素排出量のほぼ半分を占めるので、このような採掘量の増加は、将来の鉱物の二酸化炭素排出原単位(carbon intensity、炭素集約度ともいう)の予測に直接関係する。

IEAのレポートでも指摘されているように、エネルギー転換鉱物の問題は「二酸化炭素排出原単位が高い」だけでない。鉱石の品位が長年にわたって低下し続け、採掘量1kgあたりのエネルギー使用量が増加する傾向があるのだ。鉱物の需要が加速すれば、採掘者は必然的に低品位の鉱石を、より遠隔地で採掘することになる。たとえばIEAは、リチウムとニッケルをそれぞれ1kg生産する際の二酸化炭素排出量は300~600%増加すると予測している。

フランスの海外共同体ニューカレドニアのチオにあるニッケル鉱山(画像クレジット:DeAgostini / Getty Images)

銅の動向はこの課題をよく表している。1930年から1970年にかけて銅鉱石の品位は年々に低下していったが、採掘後の化学プロセスも進歩したため、1トンの銅を生産するためのエネルギー使用量は30%減少した。しかしこれは、最適化された化学プロセスが物理学的な限界に近づくまでの一時的なものだった。1970年以降も鉱石の品位は下がり続け、それに伴って銅1トンあたりのエネルギー使用量は増加し、2010年には1930年と同じレベルに戻ってしまった。近い将来、他の鉱物でも鉱石の品位が下がると、同じパターンをたどることになるだろう。

それにもかかわらず、IEAは他の機関と同様に、今現在の推定平均サプライチェーン二酸化炭素排出原単位を用いて「将来EVが増加することで二酸化炭素の排出量を削減できる」と主張している。しかし、IEA自身の報告書のデータは、エネルギー転換鉱物の内包二酸化炭素が増加することを示唆している。さらに、IEAは、太陽光発電所や風力発電所は天然ガスの発電所に比べて500〜700%多く鉱物を必要とすると指摘しているが、それらの発電所の建設が大幅に増加すると、鉱山サプライチェーンがさらに逼迫し、商品市場では価格が劇的に上昇することになる。

Wood Mackenzie(ウッドマッケンジー)の資源専門家は、EVのシェアが現在の1%未満から10%に近づくと、到底対応できないほどの資源需要が発生し「バッテリー技術の開発、テスト、商業化、製造、EVとそのサプライチェーンへの適用がこれまで以上に迅速に行われなければ、EV目標を達成し、ICE(内燃機関)を禁止することは不可能であり、現在のEV普及率予測に問題が生じる」と予測している。

政策を定めたところで、化学物質の開発・製造や鉱業など、すでに業界トップクラスのものを短期間で加速させる能力があるという証拠はない。リチウム電池の化学的原理が発見されてから、最初のTeslaセダンが発売されるまでに30年近くかかっているのだから。

炭素効率性を追求するバッテリーサプライチェーン

もちろん、EVサプライチェーンの炭素排出量の増加が世界を脅かす要因を改善する方法はある。それにはバッテリーの化学的性質の改善(1kWhの蓄電に必要な材料の削減)、化学プロセスの効率化、鉱山機械の電動化、リサイクルなどが挙げられ、いずれも「避けられない」あるいは「必要な」解決策とされることが多い。しかし、EVの急速な普及を想定した場合、これらはいずれも大きなインパクトがあるものではない。

よくありがちなニュースでは、何らかの「ブレークスルー」があったように報道されるが、EVの1kmあたりに必要な物理的材料を桁違いに変化させるような、商業的に実現可能な代替バッテリーの化学原理は見つかっていない。ほとんどの場合、化学組成を変えても重量が変わるだけだ。

例えばコバルトの使用量を減らすためにはニッケルの含有量を増やすのが一般的である。炭素やニッケルなどのエネルギー原子を使用せず、代わりに鉄などの(レアではない)エネルギー密度の低い元素を使用したバッテリー(リン酸鉄リチウムイオン電池など)は、エネルギー密度が低くなる。後者の場合、同じ航続距離を維持するためには、より大きく、より重いバッテリーが必要になる。いつかは組成的に優れた電池用の化学物質の組み合わせが発見されるだろうが、化学メカニズムを検証から産業用に安全にスケールアップするには何年もかかる。それ故に、現在、そして近い将来自動車に搭載されるバッテリーに使用される技術は、いつか理論的に可能になる技術ではなく、今現在実現している技術となる。

関連記事:テスラが旧来のリン酸鉄リチウムバッテリーに賭けていることは、メーカーにとって何を意味するのか

また、鉱物の精製や変換に使用されるさまざまな化学的プロセスの効率化も期待されている。技術者が技術者である以上、改良は当然であり、デジタル時代にはさらに改良が進むかもしれない。しかし、研究されつくした物理化学の視点では、すでに物理学的限界に近い状態で精製や変換のプロセスが行われているので「ステップ関数(階段関数、階段を上がるように数値が増える関数)」的な変化は期待できない。つまり、リチウム電池は、プロセス(およびコスト)効率の急速な改善が見られる初期段階をとっくに過ぎて、少しずつしか改良されない段階に入っているのだ。

鉱山用トラックや機器の電動化についてはCaterpillar(キャタピラー)、Deere & Company(ディアアンドカンパニー)、Case(ケース)などがプロジェクトを進めており、量産機もいくつか販売されている。有望なデザインが登場しているユースケースもあるが、ほとんどのユースケースで重機に24時間365日の電力供給を行うにはバッテリーの性能が不足している。さらに、鉱山機械や産業機械の回転率は数十年単位であり、鉱山では、今後も多くの石油燃焼機材を長期間使用することになる。

リサイクルは新たな需要を軽減するためによく提案される手段だ。しかし、仮にすべてのバッテリーがリサイクルされたとしても、現在のEV推進策で提案されている(あるいは義務化されている)EVの増加予測から生じる膨大な需要の増加には到底対応できない。いずれにしても、バッテリーをはじめとする複雑な部品からレアメタルをリサイクルする際の有効性と経済性については、技術的な課題が未解決のまま残っている。いつかは自動化されたリサイクルが可能になるだろうと想像できるかもしれないが、現時点ではそのような解決策は存在しない。また現在も将来も、バッテリーの設計は統一されておらず、政策立案者やEV推進者が想定している期間内に設計の統一化を実現するための明確な道筋はない。

法規制の混乱とEVの排出権

ここまで見てきたとおり、EVの炭素排出量については非常に多くの仮定、推測、曖昧さがあるため、炭素排出量削減に関する主張は、詐欺とまではいかなくても、操作の対象となることが避けられない。必要なデータの多くは、技術的な不確実性、地理的要因の多様性と不透明性、多くのプロセスが公開されていない現状を考慮すると、通常の規制方法では収集できないと思われる。それでも、米国証券取引委員会(SEC)は、そのような開示要求を検討しているようだ。EVのエコシステムにおける不確実性は、欧州や米国の規制当局が法的拘束力のある「グリーン開示規則」を制定したり、二酸化炭素の排出量に関する「責任ある」ESG指標(企業を、環境[Environment]、社会[Society]、企業統治[Governance]の観点から評価した際の指標)を施行したりすれば、法的な大混乱につながる可能性がある。

自動車の石油使用量の削減に熱心な政策立案者に対しては、バッテリー化学や採掘の革命を待つまでもなく、技術者は目標を達成するためのより簡単で確実な方法を開発済みだ。燃料使用量を最大50%削減できる内燃機関はすでに存在している。より効率的なエンジンを積んだ自動車を購入するインセンティブを与え、その半分が燃費の良い自動車を購入するとしても、3億台のEVが供給されるよりも早く実現でき、安価である。そしてその検証は透明で、不確実性は存在しない。

編集部:本稿の執筆者Mark Mills(マーク・ミルズ)氏は「The Cloud Revolution」の著者。「The Cloud Revolution: How the Convergence of New Technologies Will Unleash the Next Economic Boom and a Roaring 2020s」を出版予定。マンハッタン研究所のシニアフェロー、ノースウェスタン大学マコーミック工学部のファカルティフェロー。

画像クレジット:Xu Congjun/VCG / Getty Images

原文へ

(文:Mark Mills、翻訳:Dragonfly)

EV時代を見据えてCox Automotiveがバッテリー関連サービス企業のSNTを買収

自動車関連サービス企業のCox Automotive(コックスオート・モーティブ)が、電気自動車用バッテリーのライフサイクルビジネスに参入する。

同社は米国時間9月1日、オクラホマ市に拠点を置くSpiers New Technologies(スピアーズ・ニュー・テクノロジーズ、SNT)を買収したと発表した。SNTは、EV用バッテリーパックの修理、再製造、再生、再利用などのサービスを提供している企業だ。

両社は買収額などの条件を明らかにしていない。Coxは今回の買収により、今後とりわけ「EVが中心的な存在になる」中で、バッテリーに関するサービスの提供を確立することができると述べている。同社によれば、電気自動車は、内燃機関の自動車とはサービス業務の内容がまったく異なり、その多くはバッテリーに関連するものだという。EVのバッテリーパックは車両コストの40%を占める場合もあるため、そのバッテリーをサポートすることは特に重要だ。

米連邦政府による電気自動車への投資が増加し、多くの自動車メーカーがEV事業の強化のために数十億ドル(数千億円)規模の投資を発表しているにもかかわらず、依然として一般の人々の多くはEVに対して懐疑的だ。Coxの調査によると、電気自動車の購入を検討していない人の10人中8人が、バッテリーの価値や耐用年数について懐疑的な見方をしているという。

Coxは現在、SNTのソフトウェアプラットフォーム「Alfred(アルフレッド)」を使用したバッテリー健康度診断ツールをSNTと共同で構築している。Coxは、この診断ツールを使って、電気自動車に対する信頼性を高めていくとしており、それは自動車の価値評価で知られる「Kelley Blue Book(ケリー・ブルー・ブック)」が、従来の(内燃機関で走る)自動車の状態に関する透明性を高めて消費者に提供してきたのと同じだと、同社は述べている。

今回の買収により、Coxはバッテリー再利用事業への投資も行うことになる。SNTは、自動車での使用に適さなくなったEV用バッテリーに「第二の人生」を与えることを専門とする数少ない企業の1つだ。SNTが受け取るバッテリーの約80〜90%は自動車メーカーからのもので、残りは自動車解体業者からのものだと、同社は数カ月前のTechCrunchによるインタビューで答えている。この事業分野は、EVの普及にともなって今後も拡大する可能性が高い。今回の買収によって、Coxは使用済みバッテリーの販売にも参入することになるだろう。

画像クレジット:Xu Congjun/VCG / Getty Images

原文へ

(文:Aria Alamalhodaei、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

IAA MobilityでEV挑戦状を叩きつけるメルセデス・ベンツ

Mercedes-Benz(メルセデス・ベンツ)は、ドイツで開催されるIAA Mobility(IAAモビリティ)ショーに先立ち、初のAMGブランドの高性能EV、セダン、GクラスSUVコンセプトなど、多数の電気自動車(EV)を発表した。いずれも、2020年代の終わりまでにEV専業メーカーになる決意の一部である。
メルセデスはすでに完全電気自動車であるEQSの生産を開始している。これは、Sクラスの電気自動車版カウンターパートとなることを目的とした、先進的で洗練されたフラッグシップカーだ。IAA Mobilityでメルセデスは、次の大きなEV関連の動きを紹介することを目指している。

2021年の初めに、メルセデスは400億ユーロ(約5兆2100億円)に及ぶ完全電気自動車化計画を打ち出した。このことによって、会社をより緊密に上流から下流まで統合し、従業員を訓練し、製品に利用するために必要なバッテリーを確保することを目指している。この計画は、実際には、より多くのEVを生産して販売するという以前の目標をさらに拡大したものだ。メルセデスは2017年に、2022年までにラインナップ全体を電気化すると発表していた。これはガスハイブリッド、プラグインハイブリッド、またはバッテリー式電気自動車を意味している。そして先の7月には、その2022年までに現在車両を提供するすべてのセグメントで、バッテリー式電気自動車を提供すると発表した。

関連記事
メルセデス・ベンツが2030年までにEV専門メーカーに、8つのバッテリー工場を建設
メルセデス・ベンツ、2022年までに全車種を電気化

メルセデスは、2025年には以降のすべての新車の基礎となる、3つの完全電動アーキテクチャを立ち上げることを目指している。MB.EAプラットフォームは中型から大型の乗用車に使用され、AMG.EAはメルセデスAMG車を支え、VAN.EAは電気乗用ミニバンと小型商用車専用のアーキテクチャだ。同社はすでに、MMAという名で知られる「電気ファースト」のコンパクトカーアーキテクチャを発表しており、2024年までには車両に搭載される予定だ。

メルセデスベンツの責任者であるOla Källenius(オラ・ケレニウス)氏は、新しいEQEの詳細を発表する際に「特にメルセデスが属する高級車セグメントでは、EVシフトが加速しています」と語った。「それこそが『EVファースト』から『EVオンリー』へと加速した理由です。2022年には、サービスを提供しているすべてのセグメントにバッテリー電気オプションを提供します。そして2025年までには、製造するすべてのモデルに少なくとも1つの電気式代替製品を提供します」。

ケレニウス氏は、全電気自動車への道を進むメルセデスは、2030年まで市場の状況が許す限り、メルセデス車を2台売るごとに1台のEVを販売することを目指していると語った。

メルセデスベンツEQB

画像クレジット:メルセデスベンツ

メルセデスが2021年初めに明らかにしたこの車種は、同社のイベントに登場した。そして今回、それらが2022年のある時期に米国で発売されることを含め、さらにいくつかの詳細が共有された。2021年の終わりにはヨーロッパと中国で発売される予定だ。

EQBは、ハンガリーのケチケメート工場から送り出される最初の電気自動車となる。中国市場向けの車両は北京で生産されている最中だ。米国に登場するEQBには、2つのバリエーションがある。最初に登場するコンパクトSUVは168 kW(255馬力)のEQB 300 4MATICだ。その次に215 kW(288馬力)のEQB 350 4MATICが発売される。前者は、390ポンドフィート(528.77ニュートンメートル)のトルクを持つ。どちらの場合も、航続距離は約419kmとなる。これは、米国時間9月5日に明らかにされた他の車種の航続距離よりも少し短い。メルセデスは、前輪駆動モデルと並んで、長距離バージョンも続いて提供される予定だという。

また電動パワートレイン(動力伝達機構)は、電動モーター、ディファレンシャル付き固定比トランスミッション、冷却システム、パワーエレクトロニクスで構成されるコンパクトな統合ユニットだ。前輪車軸には非同期モーターを採用している。

コンパクトなEQBは普段は5人乗りだが、大家族のために追加のスペースが必要な場合は、7人乗りにすることができる。

メルセデスベンツEQE350

画像クレジット:メルセデスベンツ

EQEセダンは、フラッグシップEQSを望んでいるものの、それを買う余裕がない人たちからの要望に応えるモデルだ。このセダンは、288馬力と391ポンドフィート(530ニュートンメートル)のトルクを発生する単一の電気モーターを備えている。気にしている人たちのために付け加えると、それはEQSより41馬力ほど少ない。90kWhのバッテリーは、約660kmの航続距離を提供し、急速充電を行うことで15分以内にさらに250km分を充電できる。市場投入時には、仕様の異なる2番目のモデルもリリースされる予定だが、メルセデスはそれ以上の詳細を発表していない。

EQSに備わるの機能の多く、すなわち先進運転支援システム、自動的に開くフロントドア、後輪車軸ステアリングなどは、弟分のこの車種にも搭載される。マルチスクリーン接続型エンターテインメントシステムのMBUXハイパースクリーンはオプションとして利用可能だ。ボディはやや小さめだが、室内はゆったりとしており、現在のEクラスに比べて、フロントシートのショルダー部が27mm広く、シートポジションが65mm高く、キャビン全長が80mm長くなっている。

関連記事:あらゆるテクノロジーが詰め込まれたメルセデス・ベンツEQS 2022年モデル、350ものセンサーで実現された数々の新機能

EQEは、メルセデスが2021年発表した4番目のEQ車であり、ケレニウス氏によると、ほどなくEQSとEQEのSUVバージョンが続くという。生産は世界市場向けのものはブレーメンで、中国市場向けのものは北京で行われ、2022年半ばには順次全世界での発売が開始される。

メルセデス-AMG EQS 53 4MATIC +

画像クレジット:メルセデスベンツ

さてパワーとパフォーマンスの登場だ。AMG EQSは、EQアーキテクチャに基づく最初のバッテリー式AMG生産モデルだ。メルセデス-AMGの本拠地であるアファルターバッハで生まれたこのクルマは、パワー、ボディ、豪華さを完璧に組み合わせたゼロエミッション車を具現化することを目的としている。その雰囲気を高めるために、このクルマは走行時に唸るような音を出すことができるようなサウンドシステムを備えた、特別なハードウェアで構成される。このことによって車内、車外の人たちに本物のAMG感を与えることができる。

AMG EQSは2台のAMG電気モーターを搭載し、システム全体の出力は484kW(658馬力)である。「レーススタート」まで踏み込んだ場合には、560kW(761馬力)と1020ニュートンメートルのトルクが得られ、3.4秒で0から時速100kmに到達し、最高速度は時速250kmとなる。

合計108kWhのストレージ容量を持ち580kmの航続距離を提供するバッテリーに対して、回生ブレーキシステムがエネルギーを送り返す。またこの車両は、200kWを超える高速DC充電にも対応している。

AMG EQSは、シュトゥットガルト郊外のジンデルフィンゲンにある、メルセデスベンツのカーボンニュートラルな工場の「Factory 56」(ファクトリー56)で生産されている。メルセデスは2021年末にこの車両を市場に投入することを計画している。

メルセデスコンセプトEQG

画像クレジット:メルセデスベンツ

さて「マイティG」のお目見えだ!EQGはGクラスの電動オフロードコンセプトカーで、EQモデルの先進的豪華さをともなった4×4 Gの強力な特徴を備えている。量産の前にはまだ多くの変更が考えられるため、メルセデスはEQGに関してはあまり多くの詳細は提供しなかったが、私たちが知っているのは以下のようなものだ。すなわち同車は「十分なパワーを持った」4基のモーターを持ち、それぞれのモーターは独立して制御できるようにそれぞれ車輪の近くに置かれている。またオンロードおよびオフロード走行用の新しい後輪車軸と、2速ギアボックス装備されている。

そのオフロード走行は、シリーズモデルへの開発の最後に、グラーツのシェークル山(標高1445m)にある、メルセデスのテストトラックでテストされる予定だ。

メルセデス・マイバッハ・コンセプト

画像クレジット:メルセデスベンツ

このSUVコンセプトカーは、比較的長い伝統を誇るマイバッハの歴史の中で、初の完全電気自動車となる。マイバッハEQSは、ツートンカラーの塗装仕上げなど、従来モデルのクラシックな特徴を備えながら、EQラインナップの先進的ドライブテクノロジーを備えた車種だ。おそろしく洒落た車両でもある。白いピアノラッカーの内装は豪華でなめらかで、映画「エリジウム」の後半で空中の楽園にたどり着くために使われた乗り物を思わせるかもしれない。仕事や休憩を快適に行える場所となるが、特に「エグゼクティブシート」や「ショーファーパッケージ」を選んだ場合にはなおさらだ。

このSUVは2023年には市場に出回る予定だが、メルセデスは早ければ2022年にも次のSUVのプラットフォームを導入すると発表しており、その予想される航続距離は約600kmである。

画像クレジット:Mercedes-Benz

原文へ

(文: Kirsten Korosec、Rebecca Bellan、翻訳:sako)