フィンテック企業Marqetaの巨額IPOの内実

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(ささやかなお知らせ:来週、6月14日-6月19日は、Exchangeコラムとニュースレターはお休みとなる。ちょっとした休暇をとって新しいアイデアとともに米国時間6月21日から通常サイクルに戻る予定だ)

The Exchangeは、先週初めに、ほぼ強気のIPO市場を調査し、Monday.com(マンデー・ドットコム)とMarqeta(マルケタ)がここ数日でかなり大きなポイントを獲得したことを指摘した。言い換えるなら、ユニコーン市場は適度に健全であり、これは第3四半期の流動性にとっても良い兆候だ。

しかし、今日は広い視野をとる代わりに、Marqetaの公開だけに絞って考えてみたい。フィンテック企業たちにとって、Marqetaの適切な価格設定と堅調な株価推移は歓迎すべき結果だ。しかし、Marqeta自身は、そのデビューをどのように感じているのだろうか?

そのことを知るために、The Exchangeは、IPOの価格が決定し取引が開始された直後に、同社の創業者でCEOのJason Gardner(ジェイソン・ガードナー)氏に話を聞いた。私の親愛なる友人であり、TechCrunchの上司であるHenry Pickavet(ヘンリー・ピカヴェット)を悩ませるためにも、多くの話題をカバーしつつ文字数を抑えられるように、箇条書きで話を進める。

  • ガードナー氏は、Marqetaのロードショー中に、34時間Q&Aを行ったという。彼はそれを気に入っていた。話の詳細は、同社のIPOとはほとんど関係ないが、CEO自身のことを少し語るものだ。同じ13の質問に答えるのに、何時間もの時間をかけている。私なら気がおかしくなってしまうだろう。
  • Marqetaは、価格を高めに設定し、予想以上に多くの資金を調達した。ガードナー氏によると、同社は特に米国以外の市場では、人工的な成長(買収)を追求していくという。それは理にかなった動きだが、ただし彼は技術の質に対しては高いハードルを設定しているという。ガードナー氏は、技術力の劣る企業は買わないという。もし買ってしまったら買収後に再構築をしなければならなくなるからだ。ドライだね。
  • MarqetaはIPOの1年半前から社内で話し合いを始めていたので、公開企業への移行は比較的スムースだった。私の想像では、ここでガードナー氏が言いたいのは、株式公開をするということは、単に会計上の仕事だというだけではなく、文化的な向上にもつながるということだと思う。このことをもう一歩掘り下げたなら、SPACの価値が多少色あせて見えるだろう。
  • 会社が成長し上場したことで、ガードナー氏にとって何が変わったのだろう?彼の視点が、数カ月単位から数年単位へと、より遠くへと広がったということだ。Marqetaがさらに拡大していく中で、この変化は続いていくだろう。

私がこの記事を書いている金曜日(米国時間6月11日)の午後の時点で、Marqetaの株価はさらに6%上昇している。

Embrokerに何が起きた?

金曜日(米国時間6月11日)の朝に報じたように、世界のインシュアテック市場は、米国でも欧州でも大いに盛り上がりを見せている。その証拠を見つけるのは難しくないが、インシュアテック市場の現在の状況をよく表しているのが、先週の初めに行われたEmbroker(エンブローカー)の1億ドル(約109億7000万円)のラウンドだ。

Embrokerは、サンフランシスコに拠点を置くインシュアテック企業で、企業向けの保険を販売している。その商品は、サイバー保険、ビジネスオーナー保険、プロフェッショナル損害賠償などだ。おそらくそれは、最近、巨額のラウンドを調達したビジネスに特化した別のインシュアテックプロバイダーNext Insurance(ネクスト・インシュアランス)と通じるところがあるのかもしれない。

関連記事:中小企業向け保険テックのNext Insuranceが276.8億円を調達、1年足らずで評価額を4428億円超に倍増

インシュアテックという大きなカテゴリーに魅せられたExchangeのスタッフが、Embrokerのスタッフにいくつかの質問を投げかけてみた。ここでは、メールで行われたQ&Aを紹介する(太字はTechCrunch側。各Q&Aはわかりやすくするために多少編集されている)。

高いレベルから見たときに、Embrokerが提供するビジネス保険商品の損害率(ロスレシオ)は、私たちがよく知っている消費者向け自動車保険の損害率と比べて良いのか、悪いのか、それとも同等なのでしょうか?

はい、当社商品の損害率は、消費者向け自動車保険や家財保険などの他の保険商品に比べて大幅に優れています。また、これまでの当社の損害率は、他の確立された中小企業向け商品と比較しても良好です。

新ラウンドの評価額(バリュエーション)を交渉する際に、最近のインシュアテックのIPOが価格決定の議論に取り上げられたのでしょうか?

最近のインシュアテックのIPOは、公開市場での評価額の基準を提供していて、これはこの分野全体にとってすばらしいことです。しかし、私たちはそれを直接の比較対象としては使用しませんでした。なぜなら当社の損害率、リテンション、セールスとマーケティングの効率性は、現在公開している他のインシュアテック企業よりも大幅に優れているからです。

Embrokerが「サイバーリスク保険」を提供していることに興味を持ちました。ランサムウェアに対する市場の関心が高まっている中で、その製品の需要も以前より高まっているのでしょうか?また、それは社内の他の保険ラインに比べて経済的に利益を生むものなのでしょうか?

最近、注目を集めているサイバー犯罪に対する保険金請求を考えると、サイバー犯罪への対応は需要面でも価格面でも急速に成長している保険種目であると考えられます。保険金請求は今後も増加すると思われますが、サイバー領域に関する当社のモデルは、リスクを適切に評価するのに効果的であり、当社のプラットフォームへの投資によって、今後もそのような評価が可能であることを期待しています。

特にスタートアップ企業向けには、技術者向けのE&O(職業賠償責任)保険とサイバー保険をセットにしています。これは多くの創業者が独立したE&Oもしくは迫りくる脅威に対してサイバーポリシーを契約しているからです。

最後に、マーケティング費用がどのように推移しているのか気になります。Embrokerがまだ小さかった頃と同じように、効率的なセールスとマーケティングが行えているでしょうか?

マーケティング費用は毎年大幅に増加していますが、ターゲットとする市場でのシェアが拡大するにつれて、売上高に対する比率は一貫して低下しています。これによって、オーガニックな成長が促進されています。例えば、当社は現在、米国で活動中のVC支援企業の多くから保険をひきうけています。このことで多くの企業から資金調達の際に、当社に保険を依頼しようと思ってもらえるのです。

確かに言葉は多い。だが、このかたまりの中に、重要な情報が詰まっているのだ。Embrokerが自社の経済性をほとんどの上場企業よりも優れていると考えていることは注目に値する。この事実は、私たちがこれまで見てきたいくつかのIPOによって想像するようになったきたものよりも、インシュアテック企業間にはより広い経済的広がりがあることを示唆している。

また、Embrokerは、少なくともセールスとマーケティングの支出に関しては、営業レバレッジを持っている。それは、インシュアテック市場はインテリジェントなビジネス運営が不可能なほどには、混み合っていないことを示しているのかもしれない。もちろん厳しい事態の変化があっても、Tiger(タイガー)やその他からの数億ドル(数百億円)の追加投資で解決できるはずだ。

最後になるが、OKRソフトウェアに関して(詳細はこちら)、Koan(コーアン)は先週、82%の顧客増を報告した。混沌とした市場の中で頑張っている企業にとって、これはすばらしい結果だ。見るべきスタートアップだと思う。

では、1回お休みの後にまた。

カテゴリー:フィンテック
タグ:The TechCrunch Exchangeインシュアテック

画像クレジット:Nigel Sussman

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(文:Alex Wilhelm、翻訳:sako)

相続手続きのDX化による「すべての相続問題の解決」を掲げるbetterが総額約1億円を調達

相続手続きのDX化による「すべての相続問題の解決」を掲げるbetterが総額約1億円を調達

「テクノロジー×専門家のノウハウ」によって、すべての相続問題の解決を掲げるbetter(ベター)は6月10日、第三者割当増資およびデットファイナンスによる総額約1億円の資金調達を発表した。引受先は、ニッセイ・キャピタル、AG キャピタルなど。調達した資金は、さらなる課題を解決するプロダクト開発、マーケティングチャネルの拡大、営業やエンジニアを中心とした採用強化、より柔軟なカスタマーサポート体制構築に用いる。

betterは、公認会計士・税理士およびリクルート出身のエンジニアを中心に2018年に設立。「すべての相続問題を解決するプラットフォームになる」をビジョンに、「無限の選択肢から、より良い決断を導く」をミッションとしており、まだまだアナログ作業が多分に残る「相続に関わる各種作業」のDX化を推し進めているという。

提供中のサービスとしては、一般層が相続税申告にかかるコストを大幅削減できる「better相続税申告」、義務化が予定される相続不動産の名義変更を行える「better相続登記」がある。両サービスとも、専門家のノウハウとテクノロジー導入による効率化を実施し、ユーザーにかかる費用や手間の大幅削減を実現している。

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カテゴリー:フィンテック
タグ:遺産相続(用語)資産管理(用語)better(企業・サービス)資金調達(用語)日本(国・地域)

最もリクエストが多かった消費税計算、会計ツールを決済大手Stripeは約30カ国で提供開始

消費税計算を専門とするTaxJar(タックスジャー)を2021年4月に買収したのに引き続き、Stripe(ストライプ)は米国時間6月10日、税分野でさらに大きな動きに出た。企業価値950億ドル(約10兆3855億円)もの決済巨人である同社はStripe Taxという新プロダクトを展開する。自動でアップデートされる消費税計算(消費税、VAT[付加価値税]、GST[商品サービス税]をカバー)や関連する会計サービスを、Stripeの決済を利用するまず30カ国超の顧客に提供する。

Stripe TaxはTaxJarとは別のサービスだが、関係がないわけではない。Stripe Taxはここ数カ月かけてダブリンにあるStripeのオフィスで制作され、StripeのEMEA(欧州、中東、アフリカ)担当責任者Matt Henderson(マット・ヘンダーソン)氏は、その過程でTaxJarがこの分野で強い会社だとチームは気づいた、と筆者に語った。それが最終的には2社のM&Aにつながった。

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消費税、そして特に課税と追跡に対応するよりシームレスな方法の確保は事業をオンラインで行う人にとって悩ましい問題だ。

デジタル、そして物理的商品は130カ国超で課税されるとStripeは話す。課税に関する規則は絶えず変化するため、規則やコンプライアンスの複雑さは大きく異なる。一方で、消費税の取り扱いミスはかなり高額の罰金につながり、時に支払い期限を過ぎた未払額の利子は30%にものぼる。

驚くことではないが、消費税ツールはStripeの顧客から最もリクエストが多かった機能だったとヘンダーソン氏は話した。こうした要望は、新型コロナウイルスの影響でeコマースとデジタル決済が非常に増えたために2020年にさらに大きなものになったようだ。

おそらくそれはStripe TaxをStripeのプロダクト立ち上げでも大きなものの1つにしている。2021年初めの巨大な資金調達を発表してから初のプロダクトであるということはいうに及ばないだろう。

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これまでStripe顧客は消費税に対応するのに(TaxJarのような)サードパーティのサービスに頼っていた。あるいは、より典型的な例として、そうしたStripe顧客は複雑でかなり地域によって異なる複数の税法に対処する労力を最小化するために、商品やサービスを販売する場所の数を制限することを選ぶこともある。

「税に対応するのに興奮して朝ベッドから飛び起きる人はいません」とStripeの共同創業者で社長のJohn Collison(ジョン・コリソン)氏は声明文で述べた。「大半の企業にとって、税コンプライアンスの管理は頭痛の種です。当社は消費税の計算と徴収に関するすべてを簡素化します」。

Stripeは同社の顧客に行った調査で、3分の2が消費税実行の問題が実際に成長を制限したと答えた、と述べた。

TaxJarは消費税を扱うための強固なシステムを構築したが、マサチューセッツに拠点を置きリモートチームを抱える同社は主に米国マーケットにフォーカスしている。米国の消費税も非常に複雑だ(米国には1万1000もの税務管轄区域がある)。

このため、米国以外の国のための消費税ツールを構築する余地がある。このように、TaxJarとStripeが今後どのように統合するかにかかわらず、Stripe Taxの広範なフォーカスはStripeにとっての地理的ギャップを埋めている。

もう1つ、2社の間に注意すべき主要な相違点がある。

TaxJarはかなり確立されたオペレーションでStripeの注意を引いた。TaxJarは買収発表時に2万3000もの顧客を抱えていた。Stripeは(賢くも)TaxJarを独立事業会社とし、これはTaxJarを利用する新規・既存顧客がこれまで通りTaxJarを使えることを意味する。つまり、少なくとも当面はTaxJarを使うためにStripeの決済顧客である必要はない。2つのプラットフォームの統合が今後さらに進むとしてもだ。

一方、Stripe TaxはStripe顧客との接点と付き合いを増やすことを目的とするプロダクトとしてゼロから構築されている。

Stripe Taxは顧客の所在地と販売するプロダクトに基づいてリアルタイムの税計算を提供している。顧客のための透明な項目分け、(欧州のように)ビジネス顧客が一定の売上高以下であれば自社コードを提供して税金ををリバースチャージできる地域でのタックスID管理、書類提出と送金を簡単にするためのすべての取引での調停と報告などだ。

しかしStripe決済の外でStripe Taxを使う方法は現在のところない。

これは一部の顧客にとっては問題となるかもしれない。最近、大手小売の多くがマーケットプレイスを通じた販売、ウェブサイトを通じた販売、ソーシャルメディアを通じた販売などをカバーする「オムニチャネル」アプローチを取ろうとしているが、そうしたエクスペリエンスのすべてがStripeで提供されるわけではない。Stripe Taxの将来のイテレーションがそこをカバーするかどうか、注目する価値がありそうだ。

StripeのStripe Tax以外の最も大きなプロダクトの立ち上げは2020年12月のStripe Treasuryだ。これは、同社が現在いかに基本的な決済事業以外のところで多様化を図り、広範でさらに多くの取引にプラットフォームを開放することに注力しているかを強調している。

まだ招待制であるTreasuryでStripeは銀行業務サービスを展開するために銀行と提携し、顧客がStripe駆動の事業からの売り上げを管理できる方法を提供している。

Stripe Taxが利用できる国はオーストラリア、オーストリア、ベルギー、ブルガリア、クロアチア、キプロス、チェコ、デンマーク、エストニア、フィンランド、フランス、ドイツ、ギリシャ、ハンガリー、アイルランド、イタリア、ラトビア、リトアニア、ルクセンブルク、マルタ、ニュージーランド、オランダ、ノルウェー、ポーランド、ポルトガル、ルーマニア、スロバキア、スロベニア、スペイン、スウェーデン、スイス、米国、英国だ。

カテゴリー:フィンテック
タグ:Stripe

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(文:Ingrid Lunden、翻訳:Nariko Mizoguchi

スマホでペット保険金を請求できる「アニポス」が約1.1億円を調達、開発運営体制を強化

スマホでペット保険金を請求できる「アニポス」が約1.1億円を調達、開発運営体制を強化

ペット保険金統合プラットフォーム「アニポス」(Android版iOS版)を開発・運営するアニポスは6月9日、プレシリーズAラウンドにおいて、株式発行による資金調達を発表した。割当先は、マネックスベンチャーズ、DGベンチャーズ、山口キャピタル、広島ベンチャーキャピタル、グロービス、エンジェル投資家。

調達した資金は、同社サービス認知やサービス導入ニーズの高まりに対応し、保険運営会社・飼い主の求めるもの以上のサービスレベルを最短で提供することを目的に、機能開発・サービス開発、サービス改善の加速に投資する。

アニポスは、「全ての人がより良い適切な動物医療を享受し、動物と幸せに暮らせる世界を創る。」をビジョンに掲げ、ペット保険のDXを推進しているインシュアテック・カンパニー。獣医師でもある代表取締役CEOの大川拓洋氏が2019年3月に設立した。

ペット保険金を簡単に請求できるスマホアプリ「Anipos」(アニポス)と、同アプリからシームレスに繋がるペット保険事業者の保険金支払い業務効率化サービスとして、「ANIPOS OCR」「ANIPOS Cloud」を展開している。

また同社は、アニポスアプリでのアップロード明細書件数に応じて、アニポスの資金から公益社団法人アニマルドネーションを通じて、動物保護団体への寄付(明細書で寄付)を毎月実施している。

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カテゴリー:フィンテック
タグ:医療(用語)保険 / インシュアテック / InsurTech(用語)ペット(用語)資金調達(用語)日本(国・地域)

すべてのSPACが純粋なゴミというわけじゃない

スタートアップとマーケットの週刊ニュースレター「The TechCrunch Exchange」へようこそ。

準備OK?ここではお金の話、スタートアップの話、IPOの噂話などをお伝えする。

みなさんこんにちは。先週は短い1週間だったが(米国は5月31日月曜日が祝日だった)、ここ数日のうちに扱ったニュースの多さにかなり参っている。そこで、一旦立ち止まって、愚痴をこぼしつつ、ちょっとした気休めにSPAC(特別買収目的会社)の話をしよう。

ただし、米国時間6月6日の月曜日にはBabylon Health(バビロン・ヘルス)のSPACについて掘り下げる予定だが、今回はSPACの投資家向けプレゼンテーションの分析をするわけではない。今回はその代わりに、SoFi(ソーファイ)とBarkBox(バークボックス)の白紙小切手取引(SPACのこと)について話したい。

両社とも、しばらく前に公開が行われた後、先週から取引が開始された。ものごとは順調に進んだのだろうか? SoFiの公開企業としての最初の動きについてCNBCは以下のように書いている。

Social Finance(ソーシャル・ファイナンス)の略称を名前としたSoFi(ソーファイ)が、ベンチャーキャピタル投資家のChamath Palihapitiya(チャマス・パリハピティヤ)氏が所有する白紙小切手会社(SPAC)のSocial Capital Hedosophia Corp Vと合併して上場した。株価は12%以上上昇し、22.65ドル(約2478円)で終了した。

これはSoFiにとっての勝利であるばかりでなく、ここ数カ月やや翳りの見えるSPACへの投資で、いくぶん苦戦しているチャマス・パリハピティヤ)氏にとっても良い結果だ。もちろん、SPACによる公開はすべて投機的なものだが、一部の一般投資家は企業のファンダメンタルズよりもパリハピティヤ氏の評判の方を重視していたようだ。そもそも他に何ができるだろう。

BarkBoxも、Barrons(バロンズ)が報じたように、SPAC統合が完了した後先週取引を開始したときには、まったく問題がなかった。

BarkBox(ティッカー:BARK)の株価は水曜日(米国時間5月2日)には約7.5%上昇し、午後には12ドル(約1313円)前後で取引された。これにより、同社の市場価値は24億ドル(約2627億円)近くになった。

その後、BarkBoxの株価はやや下落したが、SPAC当初の価格を下回ることなく推移している。これは、設立が発表されたときよりも市場の状況が変化していることを考えると、勝利と言えるだろう。

1週間に2つの良い結果が出たことは、SPACの世界そのものや、市場にいる白紙小切手(SPAC)側やスタートアップ側の無数のプレイヤーにとって朗報だ。もちろん、今回の2つの確たる結果がトレンドを生み出すわけではないが、着実に収益を上げている企業にとっては、SPACルートは世間が噂するほどには穴だらけの道ではないということは明らかだ。

暗号資産への賭け

SPACが基本的には胡散臭いと思っているのなら、白紙小切手(SPAC)ブームと暗号資産の組み合わせについて話を聞いて欲しい。以下にお話ししよう。

今週、暗号資産に特化しステーブルコインを特に好むCircle(サークル)が4億4千万ドル(約481億4000万円)を調達した。USDC(USD Coin)というステーブルコインで知られる同社にとって、これは多額の資金であり、SPACのIPOを検討しているとも言われている。

ところでステーブルコインとは何だろう?それは法定通貨と連動している暗号資産(仮想通貨)だ。ご想像の通り、USDCの場合には米ドルと連動している。ステーブルコインは、暗号資産の世界の中での有用な法定通貨代替物で、非常に人気があることがわかっている。

CircleのUSDCは、228億ドル(約2兆4950億円)相当が流通しており、CoinMarketCapのデータによれば、1日の取引額は数十億ドル(数千億円)だという。悪くない!しかし、この会社が一体どのようにして魅力的な粗利益率の下に莫大な収益を上げているのかは、あなたの謙虚なるしもべである私にとってそれほど明確ではない。これは、一度に5億ドル(約547億円)近い民間資金を確保した会社には、当然明確化が期待されることだ。

だから、今度ばかりは、SPACをして欲しい。もちろん莫大な数字の中身を早く見たい、という好奇心からだ。

成長は?

先日Ron Miller(ロン・ミラー)記者と私は、いくつかの公開企業の決算報告書を調査した。その結果、一部の企業では、ご自慢のデジタルトランスフォーメーションの加速本当に実現していることがわかった。

先週のニュースには、その議論の続きがあった。例えば、Zoom(ズーム)の業績は、私たちの仮説を裏づけるものだった。その2022年第1四半期の売上高は、2021年第1四半期と比較して191%増加した。それはまさに目を見張る好成績だ。

その一方で、Dropbox(ドロップボックス)とBox(ボックス)は、先週外部の投資家から新たな圧力を受けた。かつて非公開市場の寵児であった2社は、成長の壁にぶつかり、そのために攻撃を受けている。「成長かさもなくば死を」は、単なるスタートアップ向けの助言ではない。それは、ソフトウェア企業が自らの運命を握り続けるために必要なことなのだ。

カテゴリー:フィンテック
タグ:The TechCrunch ExchangeSPAC暗号資産ステーブルコイン

画像クレジット:Nigel Sussman

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(文:Alex Wilhelm、翻訳:sako)

サブスクリプション管理や自動貯金に加え資産・負債の一元管理も目指す「Truebill」

パーソナルファイナンスのスタートアップ「Truebill」は、Accelが主導して4500万ドル(約49億3000万円)のシリーズD資金調達を実施した。同社がシリーズCで1700万ドル(約18億6000万円)を調達したのはわずか数カ月前のことだ。設立以来の調達合計額はこれで8500万ドル(約93億円)となった。

今回の資金調達ラウンドには、既存投資家であるBessemer Venture Partners、Cota Capital、Eldridge Industriesも参加している。

Truebillは、米国に住む人々の財務管理を支援するいくつかのツールを提供している。このアプリの主な特徴の1つは、すべてのサブスクリプションを1カ所で管理できることだ。ユーザーは、アプリで不要なサブスクリプションをキャンセルすることもできる。携帯電話やケーブルテレビの料金については、Truebillが値引き交渉まで行ってくれる。

最近になって、同社はこのアプリを経済的なパートナーにするための機能を追加している。支出に関するインサイト、健全な毎月の予算の作成とアプリによるその追跡、クレジットレポートの閲覧などが可能になった。

Truebillでは、自動的にお金を貯めることもできる。Truebillはユーザーの口座を分析し、お金が残っているときに貯金することができる。

現在、同社はすべての資産と負債を一元管理するウェルスマネジメントダッシュボードの開発に取り組んでいる。ウェルスマネジメントはお金のあるアカウント1つ1つに接続する必要があり、そうしないと全体像が見えないため少々煩雑だ。

共同創業者兼CEOのHaroon Mokhtarzada(ハルーン・モクタルザダ)氏は、声明でこう述べた。「自分の財務状況をより良く理解し改善するために、毎日1万人以上の会員がTruebillに登録しています。今回の資金調達により、Truebillをオールインワンの総合的なプラットフォームに変革し、会員のみなさまがサブスクリプションや支出を管理するだけでなく、貯蓄を最適化したり、財務状況を改善するために、情報に基づいた意思決定を行えるようにします。Truebillは、一般消費者にとって最も価値のあるメンバーシップに急速になりつつあります」。

ご覧のとおり、このスタートアップは急速なペースで成長している。2020年11月以降、ユーザー数は100万人から200万人へと倍増した。同社は月間400億ドル(約4兆3800億円)のトランザクション量を分析している。

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カテゴリー:フィンテック
タグ:Truebill資金調達サブスクリプションアプリ

画像クレジット:Truebill

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(文:Romain Dillet、翻訳:Aya Nakazato)

LINEがインドネシアでデジタルバンキング提供開始、タイと台湾に続き

メッセージングアプリで有名なLINEは、現地時間6月1日、インドネシアでデジタルバンキングのプラットフォームをローンチした。これで、日本を拠点とする同社が、その三大海外市場であるインドネシアとタイと台湾でバンキングサービスを提供することになる。

LINEのインドネシアのバンキングプラットフォームは同社が2018年に、韓国のHana ZBankの子会社PT Bank KEB Hana Indonesiaと結んだパートナーシップの結果だ。LINEはPT Bank KEB Hana Indonesiaの20%を買収することで合意し、それにより同行の2番目に大きな株主になり、普通預金口座とマイクロクレジットと送金と決済のサービスを提供するオンラインバンキングサービスを行なうと発表した。

Momentum Worksの記事は、2020年にインドネシアではデジタル銀行アプリのダウンロードが7%増かし、それらは主にBTPN JeniusやOCBC Nyala、Permata leadingといった既存銀行のアプリだったという。しかしMomentum Worksによると「インドネシアのデジタルバンクのユーザーの多くは複数のデジタルバンクアプリをダウンロードして試している」段階であり、勝者はまだ決まっていないという。Sea GroupGrabGojekなどの大手テクノロジー企業も独自にネオバンクサービスを提供している。

LINEは2020年10月に、Kasikorn Bankの子会社Kasikorn Vision Companyとの合弁事業の一環としてタイのユーザーにバンキングサービスを導入している。台湾では同社の子会社LINE Bank Taiwanが、2021年初めにFinancial Supervisory Commissionからバンキングのライセンスを認められた

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カテゴリー:フィンテック
タグ:LINEインドネシアデジタルバンク東南アジア

画像クレジット:Bloomberg / Getty Images

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(文:Catherine Shu、翻訳:Hiroshi Iwatani)

銀行から直接低金利ローン提案を受けられる「クラウドローン」、6年間で60万円お得に

あなたは、自動車を購入する際には銀行が提供する「自動車ローン」、ビジネススクールに通うときには「教育ローン」、歯のインプラント治療をするときは「医療ローン」を活用できることをご存知だろうか。「金利が低い銀行ローンを上手に活用できている人は、実はかなり少ないと思っています」と話すのは、クラウドローンCEOの村田大輔氏だ。同社は、ユーザーが個人情報を登録するだけで、条件に見合った銀行からの各種ローンオファーを直接受けられるプラットフォーム「クラウドローン」を運営する。

6年間で60万円の差が生まれる

例えば、中古自動車を購入する時のことを考えてみよう。客はディーラーまで足を運んで、試乗をしてみたり、担当者と話をして購入を決定する。その際によく利用されるのが、ディーラーが紹介する「ディーラーローン」。村田氏によると「期間は6年、金利は9%程度」などが平均的だという。

このディーラーローンは、購入と併せて契約手続きができるため便利な一方で「必ずしも消費者にとってベストな選択肢ではない」と同氏は話す。その理由は2つある。まず、金利が高い。ディーラーは信販系のクレジット会社と提携してローンを提供しており「金利の約半分をディーラーが受け取るという構造」と村田氏はいう。そのため、どうしても消費者側の負担が重くなる。次に、顧客はローンを完済するまで、購入した自動車の所有権を持てない場合が多い。つまり、ローンの返済期間中は自動車は「あくまでローン会社の所有物」なので、顧客が何らかの事情で売却したいと思ってもそれは叶わない。

これに対して、銀行が提供する目的別ローンはどうだろうか。例えば「自動車ローン」であれば「車関連の費用向け」など用途は限定されているものの、金利は2%程度。ディーラーローン(9%程度)と比較すると、6年間のうちに支払う金額は60万円ほど少なくなる。また、自動車は購入した瞬間から消費者に所有権が移るので、ローン返済中自由に売却することも可能だ。村田氏は「もちろん、銀行ローンのほうが審査基準は厳しいなどの制約もあります。ただ、あまりに多くの人が銀行ローンの存在を知りません。金利の高いディーラーローンを店舗で勧められるままに契約してしまっている」という。

銀行からローンの提案を受けられる

このような現状を変えることに挑戦するのが、同氏が運営するクラウドローンだ。まず、同ウェブサイトにてユーザーは年収や年代、雇用形態といった基本情報を登録する(名前や住所は登録不要)。すると、同社と提携する地方銀行や信用金庫の担当者がそれらのデータを閲覧し「融資できる可能性が高い」と判断したユーザーに、クラウドローンを経由してローンの提案を行う。基本的に翌営業日までには提案が受けられる。その後、ユーザーは提案を受けた複数の金融機関から一行を選び、ローン申し込みに進むという流れだ。

「従来のローン比較サイトなどとクラウドローンが異なる点は、ユーザーが『自分の条件で融資を受けられる銀行』を知った上で、ローンの申し込みができることです。これまでのように、インターネット上でさまざまなローンを比較検討して、大量に申し込む……そういった手間もなくなりますし、失敗を重ねて信用情報を毀損するリスクも低くなります」と村田氏。同社は、提携する銀行側から成果ベースの収益を得るため、ユーザー側はクラウドローンを利用する際に手数料などは一切かからない。

ただ、ふと疑問に残るのは「信販系と比較して銀行ローンのほうが条件が良いなら、なぜ現状の認知度はそんなにも低いのか」という点だ。村田氏は、それは約10年前に施行された改正割賦販売法の規制のためだという。「銀行は規制により、例えば中古車販売を行うガリバーなどの事業者と手を組んで、ローン商品の紹介することができません」。一方で銀行ではないクラウドローンは、エイチームが運営する中古車買取サイト「ナビクル」や、ウェブクルーが運営する比較ポータルサイト「ズバッと」などと連携し、さまざまな経路からユーザーを獲得している。このように、クラウドローンのようなマッチングプラットフォームが銀行の代わりとなって事業者と連携し、消費者と銀行ローンを結びつけるための橋渡し的存在になっているというわけだ。

クラウドローンCEOの村田大輔氏

情報格差をゼロに

2018年設立のクラウドローンは、これまでに約1万5000人のユーザーが利用しており、ローン申し込み件数は約2万件、申し込み総額は約250億円にのぼる。横浜銀行や名古屋銀行など17の金融機関と提携しており、年内には50行まで増やす予定という。

「今、新型コロナの影響で親が失業したり、アルバイトを続けられなかったりで、学校を辞めてしまう若い人がいます。でもそういう人は、実は銀行の教育ローンをかなり低い金利で借りられることを知らなかったりする。あるいは、不妊治療の高い費用を支払えずに諦めてしまう人がいる。そういう人は、妊活ローンを利用できることを知らないかもしれない……。そんな人たちに向けて、『低い金利で銀行から借りられる選択肢』があることを発信していきたい」と村田氏は想いを語る。

銀行にとっても、金利収入の減少やコロナ禍による融資先の資金繰りの悪化などにより、個人向けローンは収益源の「最後の砦」といえる。消費者、銀行、そしてそれらのマッチングプラットフォームである同社の三方良しを実現するクラウドローンは、もっと多くの日本人が知っておいても良い存在ではないだろうか。

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カテゴリー:フィンテック
タグ:クラウドローンローン日本銀行

画像クレジット:クラウドローン

アフリカでの銀行業務と決済のためのローカルソリューション構築を目指すナイジェリアのAppzone

アフリカのフィンテック分野は、ここ数年の投資で一定の注目を集めているが、スタートアップ企業の多くが、高品質な製品の提供を課題としている。それでも従来型のコスト構造や極めて低い業務効率などの課題を抱える伝統的な銀行と比較すると、スタートアップ企業の首尾は上々のようだ。

フィンテックソフトウェアを提供するAppzone(アップゾーン)は、伝統的な金融機関のバンキングサービス・決済サービス向けに独自のソリューションを構築している数少ない企業の1つである。2021年4月、同社は1000万ドル(約11億円)のシリーズA資金調達ラウンドを完了したと発表した。

アフリカの金融機関は、通常、問題が生じた際に海外の技術ソリューションを利用しているが、その場合、価格、変化に対する柔軟性、現地の技術サポートの不足といった問題が付きまとう。ここに目を付けたEmeka Emetarom(エメカ・エメタロン)氏、Obi Emetarom(オビ・エメタロン)氏、Wale Onawunmi(ウェール・オナウンミ)氏の3人は、2008年、ナイジェリアのラゴスを拠点としてAppzoneを設立した。

Appzoneの手法は他のアフリカのフィンテック企業とは明らかに異なる。他社と明確に差別化される要因の1つは、同社が銀行や決済におけるイネーブラ(enabler、手助けする存在という意味。ここでは決済レールやコアインフラ)として機能しているという点にある。

同社は、商業銀行にカスタムソフトウェア開発サービスを提供するサービス会社として設立された。2011年に、マイクロファイナンス機関をターゲットとした最初の勘定系サービスを発売。2012年に商業銀行向けの最初のサービス(ブランチレスバンキング)を発売し、2016年にはモバイルバンキングとインターネットバンキング向けのサービスを開始、2017年にカード即時発行サービスを発売した。2020年には、銀行の融資業務におけるエンド・ツー・エンドの自動化サービスとブロックチェーンの交換に対応したサービスを開始した。

AppzoneのCEOであるオビ・エメタロン氏はTechCrunchに次のように話す。「私たちは(アフリカ)大陸における銀行業務と決済のための革新的なローカルソリューションを構築することを目指してAppzoneを立ち上げました。焦点となったのは、イネーブラとしての力を活用して、この分野での独自技術を開発することでした」。

画像クレジット:Appzone

Appzoneのプラットフォームは、アフリカの18の商業銀行と450以上のマイクロファイナンス金融機関で利用されていて、年間の取引額は20億ドル(約2200億円)、年間の融資額は3億ドル(330億円)に達する。

Google for Startups Acceleratorにも参加した同社は、設立以来、アフリカのフィンテック分野をリードし、アフリカからいくつかの世界初の試みを行ったという。1つ目は、世界初の分散型決済処理ネットワークの構築。2つ目は、クラウドでの勘定系およびオムニチャネルソフトウェア。そして3つ目が、複数の金融機関での口座振替サービスである。

エメタロン氏は、Appzoneを独自技術に重点を置いたフィンテック製品のエコシステムと表現する。このエコシステムの2つの層、すなわち、金融機関の業務全体を動かすソフトウェアを提供するデジタル勘定系サービスと、ブロックチェーンを利用した分散型ネットワークに金融機関を統合する銀行間処理については上述のとおりだ。

Appzoneは、今回の資金調達で、エンドユーザー向けのアプリケーションに焦点を当てた第3の層を導入し、規模を拡大する。銀行とフィンテックの両方のレイヤーを構築してきた同社は、次に個人や企業と自社のサービスをつなげようとしている。新時代のフィンテックスタートアップのほとんどが参入している分野で、Appzoneは遅れて参入することにはなるが、エメタロン氏は優位に立っていると考えている。

「エンドユーザー向けのアプリケーションを提供する企業の多くは、自社サービスを提供するために、勘定系システムと銀行間処理サービスに頼らざるを得ません。私たちはすでに両方のレイヤーで事業を展開しており、コストや柔軟性の面で優位性があると考えています」と、エメタロン氏は他社との競合について話す。

10年以上もひっそりと活動してきたAppzoneだが、ここにきて製品やサービスの規模を爆発的に拡大しようとしている。450以上の顧客の大部分はナイジェリアを拠点としているが、同社はまず、アフリカ全土への拡大を真剣に取り組む。コンゴ民主共和国、ガーナ、ガンビア、ギニア、タンザニア、セネガルは存在感を増しているが、Appzoneには、これらの有望な市場に積極的に参入するためのリソースが不足していた。シリーズA資金調達ラウンドを完了した今、同社はこれらの国々を手始めに、さらにアフリカ全土に拡大していく計画だ。

また、Appzoneは規模の拡大を実現するために、同社が誇るエンジニアリングチームをさらに成長させることを計画している。すでに従業員150人のうち半数がエンジニアであるが、この数を2倍に増やす。ナイジェリアの多くのスタートアップ企業と同じように、Appzoneもシニアエンジニアを重視している。しかし、他の企業ではシニアエンジニアの不足が問題になっても、Appzoneでは有望な若手人材を育成して専門知識を身につけさせることができる、とエメタロン氏は話す。

「わずかなコストでイノベーションを起こすことができる私たちの独自の技術は、基本的に地元の優秀な人材によって構築されています。私たちのシステムは非常に複雑で、必要とされるイノベーションのレベルも別次元です。文字通りナイジェリアのトップ1%の人材を求めています」とエメタロン氏。「たとえ専門知識がなくても、最高の人材を育成すれば、専門性の高い人材をスムーズに得られることがわかっています。エンジニアを育てれば育てるほど彼らの専門性は高まり、私たちが期待する世界標準グレードの品質でサービスを提供できるようになります」。

Appzoneの共同創業者兼CEOオビ・エメタロン氏(画像クレジット:Appzone)

資金調達ラウンドに話を戻そう。注目すべき点は、参加した投資家のほとんどがナイジェリアを拠点としていることで、公開されている情報によると、ナイジェリアの投資家が主導したラウンドとしては最大規模であることは間違いない。主導したのは、ラゴスに拠点を置く投資会社のCardinalStone Capital Advisers(カーディナルストーンキャピタルアドバイザー)V8 Capital(V8キャピタル)Constant Capital(コンスタントキャピタル)Itanna Capital Ventures(アターナキャピタルベンチャーズ)の他、ニューヨークを拠点とし、アフリカに特化した企業であるLateral Investment Partners(ラテラルインベストメントパートナーズ)も参加した。

これまでにAppzoneは、南アフリカのBusiness Connexion(BCX、ビジネスコネクション)から200万ドル(約2億2000万円)のラウンドを2014年に獲得している。その4年後には、転換社債で250万ドル(約2億7000万円)を調達し、その過程でBCXから株式を買い戻した。全体としては株式発行による資金調達で1500万ドル(約16億3000万円)を獲得したことになるという。

CardinalStone Capital Advisersの共同設立者兼マネージングディレクターのYomi Jemibewon(ヨミ・ジュマイボワン)氏は、今回のAppzoneへの投資について、アフリカが将来的に世界クラスのテクノロジーの拠点となる可能性をさらに証明するものだと話す。

「Appzoneは、アフリカの金融業界のバックボーンとなる革新的なフィンテックエコシステムを構築しており、決済、インフラ、サービスとしてのソフトウェアにまたがる商品を提供しています。Appzoneは、アフリカ大陸全体の金融包摂(Financial Inclusion)を推し進めるサービスと同時に、金融機関に最適な低コストのソリューションを提供していて、この企業活動がもたらす影響は多岐にわたります。また、優秀な人材に重点を置くことで頭脳流出を防ぎ、アフリカの優秀な人材に最高の雇用機会を提供しています」とジュマイボワン氏。

アフリカのフィンテック分野は、2021年1月の低迷の後、Appzoneの資金調達も含め、ペースの速い投資活動を継続している。この2カ月を見ると、2月には南アフリカのデジタルバンクTymeBank(タイムバンク)(1億900万ドル、約119億円)、3月にはアフリカの決済会社Flutterwave(フラッターウェーブ)(1億7000万ドル、約185億円)による大規模な資金調達など、8社以上のフィンテック企業が100万ドル(1億900万円)規模の資金調達を行った。

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カテゴリー:フィンテック
タグ:Appzone資金調達アフリカナイジェリア

画像クレジット:Appzone

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(文:Tage Kene-Okafor、翻訳:Dragonfly)

Visaがデジタル化促進で銀行とフィンテックの協業を促すプログラムを拡大

銀行とフィンテックの関係は多面的だ。

あるときには彼らはパートナーだ。しかし別のときには片方が相手を買収したり投資したりする。

そして米国時間5月26日、決済大手のグローバル企業Visa(ビザ)による発表は、銀行とフィンテックの協業能力を促進することを目的としている。

具体的には、Visaは金融機関に「精査、そしてキュレートされた」テクノロジープロバイダーを迅速につなげるためのプログラム「Visa Fintech Partner Connect」を拡大したと発表した。

それが正確に何を意味するのか、筆者は同社のシニアバイスプレジデントでフィンテックグローバル責任者のTerry Angelos(テリー・アンゲロス)氏に話を聞いた。

「2020年のグローバルフィンテック投資は1050億ドル(約11兆4620億円)でした」とアンゲロス氏は話した。「ベンチャー、PE、M&Aの案件が2861件ありました。文字どおり1000億ドル(約10兆9160億円)超がフィンテックに向かっています。この額は米国の銀行のテクノロジー関係の予算の合計額を上回ります。その結果、フィンテックで起こっているイノベーションの多くがベンチャー資金によって賄われています。Visaはそのイノベーションを当社の顧客である銀行や処理業者、他のフィンテックに持ってこようとしています」。

このプログラムは2020年11月にまず欧州で始まり、現在は米国、アジア・太平洋、南米、CEMEA(中欧・中東・アフリカ)で展開されている。Visaは同社のクライアントの銀行や金融機関、そして他のフィンテックが「コストをかけずに、そしてバックエンドテクノロジーを自前で構築する複雑さをともなわずにデジタルファーストのエクスペリエンスを創り出す」ことをサポートできるフィンテックの発掘に取り組んできた。

それぞれの地域でローカルのチームがプログラムを運営し、口座開設、データ統合、分析・セキュリティ、顧客エンゲージメント、新規カード顧客サービス、オペレーションとコンプライアンスの部門のパートナーを調査し、管理する。

アンゲロス氏によると、これまでのところVisaはバックオフィス機能から新しいフロントエンドサービスに至るまで、さまざまなテクノロジーを提供するパートナー60社を特定した。Alloy、Jumio、Argyle、Fidel、FirstSource、TravelBank、Canopy、Hummingbird、Unit21などが含まれる。うち24社は米国企業だ。

「フィンテックが注力し、カバーしている多くが既存の銀行をディスラプトすることについてです。PayPalのようなフィンテックも含め、誰もが誰かをディスラプトしようとしています」とアンゲロス氏はTechCrunchに語った。「ベンチャーの数はもちろんかなり大きなものです。我々が認識しているのは、ベンチャーが支援している企業を当社の既存の顧客とペアリングする多大な機会があるということです。あなたが通常耳にする、我々vs彼らというアプローチとやや反対のものです」。

Visaの顧客はVisa Partnerウェブサイトを通じてプログラムパートナーと連絡を取り、実行費用の割引や値引き価格といった恩恵を受けることができる。

「Fintech Connectプログラムは興味深いフィンテック企業を特定してキュレートし、その後顧客がそうしたFintech Connectパートナーと関われるよう魅力的な商業提携をつくりだすのをサポートします」とアンゲロス氏は話した。

それで、Visaはそこから何を得るのか。

「当社の目標は、すべての顧客がより良いデジタルエクスペリエンスを消費者のために構築できるようにすることです。すべての銀行が顧客の役に立ち、デジタルエクスペリエンスを構築するための最新のツールを持っていればすばらしいと思います」と同氏は語った。

例えばパートナーの1社はバーチャルカードスタートアップのExtendだ。

「TripActions、Ramp、Divvyなど今日バーチャルカードを提供するフィンテック企業はあります。しかしVisaがしようとしているのは、『どうやって当社の銀行顧客に同じようなことをさせられるだろうか』と検討することです。ですので当社は誰もが利用できるよう、我々のエコシステムにイノベーションを持ち込んでいます」とアンゲロス氏は説明した。

これは例えば攻撃があっても動じない体制のための補完的なテクノロジーを持つTripActions、Ramp、Divvyといった企業もサポートする。

「純粋な受益者はうまくいけばそうしたレールに乗っているものにさらに支出しようとします。例えばB2B支出額は年間約120兆ドル(約1京3100兆円)です。うち20兆ドル(約2180兆円)にカードが使えると考えています。今日当社はそのうちの1兆ドルを扱っています。ですので、当社の顧客の銀行やフィンテックがB2B決済を可能にするこうした種のソリューションを構築できれば、残り19兆ドル(約2070兆円)をVisaはパートナーを通じて取りにいけます」。

はっきりさせておくと、Visaは時々スタートアップに投資もする。このイニシアチブはそうした取り組みとは異なるが、パートナーの数社はVisaから投資を受けている。

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カテゴリー:フィンテック
タグ:Visa投資

画像クレジット:Kursad / Getty Images

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(文:Mary Ann Azevedo、翻訳:Nariko Mizoguchi

スマホ利用の非接触チェックインが可能な宿泊施設向けaiPassでオンライン決済可能に、VeriTrans 4Gとの連携で実現

スマホ利用の非接触チェックインが可能な宿泊施設向けシステム「aiPass」がオンライン決済可能に、「VeriTrans 4G」との連携で実現

スマートチェックインなどで宿泊施設のDX化を支援するスマートオペレーションサービス「aiPass」(アイパス)を提供するCUICIN(クイッキン)は5月25日、デジタルガレージ・ファイナンシャルテクノロジー(DGFT)の総合決済サービス「VeriTrans 4G」と連携し、aiPassでのオンライン決済を可能にするサービスの提供開始を発表した。

DGFTは、インターネット関連の決済・マーケティング・投資などを行うデジタルガレージの子会社。CUICINは2020年、デジタルガレージが主催するインキュベータープログラム「Open Network Lab」の第20期」に参加したことから、同社より様々なサポートを受けており、VeriTrans 4Gを導入すればaiPassでのスムーズな支払いに加え、非対面・非接触の対応を可能にする宿泊施設のDX化を促進できるとの期待から、今回の提携に至った。

aiPassでは、顧客分析・混雑予測・スマートキーなど、宿泊業の「マーケティング」「ホスピタリティー」「業務効率化」に関する作業のデジタル化をプラグインの形で提供し、導入業者が自由に組み合わせて使えるようにしている。新たな決済機能は、業務効率化プラグインのひとつとして追加された。

宿泊施設は、システムの改修や新たな設備の導入などを行うことなく、この決済システムを利用できるようになる。一方、宿泊客は、aiPassのユーザーアカウントにクレジット番号を登録するだけで、予約から決済までをフロントを介することなく行えるようになる。

ここで使われているVeriTrans4Gの「PayNowID」機能では、ひとつのユーザーIDを、複数のサービスに共通して使える共有IDとして設定されるため、ユーザーはひとたびクレジット番号を登録すれば、他のサービスでも簡単に決済できるようになる。

例えばホテル周辺の提携店舗を利用した際には、ホテルのチェックアウト時に宿泊代とまとめて支払いを行える。また、複数の宿泊施設を運営する業者や、オンラインと実店舗でのオムニチャンネルを展開する小売業者なども、ひとつのユーザーIDで決済が可能になるため、オンライン決済やキャッシュレス決済の導入と運用の負荷が大幅に軽減される。

現在CUICINでは、自治体などと連携し、地域の宿泊施設、飲食店、店舗で横断的に利用できるキャッシュレスサービスの展開を進めている。地域活性化を支援し、宿泊観光業のDXを加速して「価値ある旅行体験を提供」すると同社は話している。

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カテゴリー:フィンテック
タグ:オンライン決済(用語)クイッキン(企業)ホテル・宿泊(用語)日本(国・地域)

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DGFTは、インターネット関連の決済・マーケティング・投資などを行うデジタルガレージの子会社。CUICINは2020年、デジタルガレージが主催するインキュベータープログラム「Open Network Lab」の第20期」に参加したことから、同社より様々なサポートを受けており、VeriTrans 4Gを導入すればaiPassでのスムーズな支払いに加え、非対面・非接触の対応を可能にする宿泊施設のDX化を促進できるとの期待から、今回の提携に至った。

aiPassでは、顧客分析・混雑予測・スマートキーなど、宿泊業の「マーケティング」「ホスピタリティー」「業務効率化」に関する作業のデジタル化をプラグインの形で提供し、導入業者が自由に組み合わせて使えるようにしている。新たな決済機能は、業務効率化プラグインのひとつとして追加された。

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ここで使われているVeriTrans4Gの「PayNowID」機能では、ひとつのユーザーIDを、複数のサービスに共通して使える共有IDとして設定されるため、ユーザーはひとたびクレジット番号を登録すれば、他のサービスでも簡単に決済できるようになる。

例えばホテル周辺の提携店舗を利用した際には、ホテルのチェックアウト時に宿泊代とまとめて支払いを行える。また、複数の宿泊施設を運営する業者や、オンラインと実店舗でのオムニチャンネルを展開する小売業者なども、ひとつのユーザーIDで決済が可能になるため、オンライン決済やキャッシュレス決済の導入と運用の負荷が大幅に軽減される。

現在CUICINでは、自治体などと連携し、地域の宿泊施設、飲食店、店舗で横断的に利用できるキャッシュレスサービスの展開を進めている。地域活性化を支援し、宿泊観光業のDXを加速して「価値ある旅行体験を提供」すると同社は話している。

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インドのフィンテック「Zeta」がソフトバンクのリードで約272億円調達、待望のユニコーンに

Zeta(ゼータ)は、銀行やフィンテックのサービス開発を手助けするスタートアップだ。このほど調達ラウンドを完了し、待望だったユニコーンの地位を獲得した。

このバンキングテック会社は、インドの連続起業家、Bhavin Turakhia(バーヴィン・トゥラキア)氏が共同設立した。現地時間5月24日に同社は、SoftBank Vision Fund(ソフトバンク・ビジョン・ファンド)がリードしたシリーズCラウンドで、2億5000万ドル(約272億円)調達したことを発表し、TechCrunchが4月中旬に報じた内容が確認された。既存出資者のSodexo(ソデグソ)もラウンドに参加した。

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この最新ラウンドによって、ベンガルールとドバイにオフィスを構える同スタートアップの企業価値は14億5000万ドル(約1576億円)となった。Zetaが2019年7月に報告した企業価値3億ドル(約326億円)を大きく上回る金額だ。(トゥラキア氏は前回のラウンドを誤ってシリーズCと呼んでいたことを話した)。

Zetaは、銀行やフィンテックスタートアップ、およびその他のオンライン消費者プラットフォームに提供するテクノロジースタック(ツールのセット)を開発した。背景には、現代の銀行の多くが旧態依然のテクノロジーで運用されており、膨大な数の顧客やフィンテック企業に最高の体験を与える時間も専門知識も持っていない、という現状がある。

「銀行は1980年代のままです。その多くがCOBOLプログラミング言語をまだ使っていて、貧弱なユーザー体験を提供しています」とトゥラキア氏がこの日の記者会見で語り、それを改善するために銀行は何十というベンダーや技術パートナーの協力を得なくてはならないことを付け加えた。「銀行向けスタックを1から作ることなど誰も考えませんでした。今までは」。

顧客に金融サービスを提供するライセンスを持つ銀行は、ZetaのクラウドネイティブなAPIとSDKを使って、クレジットカード、デビットカード、ローンなどのサービスを開発し、顧客のユーザー体験を改善する。フィンテックもこれらのサービスを利用できる。

「あなたが思いつくどんな金融サービスでも、Zetaなら今すぐ提供します」と彼は言った。

現在同社は10社の銀行と25社のフィンテック企業にサービスを提供しており、新たな資金を使ってさらに顧客を拡大するとともに人員も増やす計画だ。

Zetaの道のり(画像クレジット:Zeta)

ZetaはSoftBank Vision Fund 2にとってインドで最新の投資先だ。日本のコングロマリットは2021年4月にもソーシャルコマースのMeesho(ミーショウ)をユニコーンに育てあげた他、インドのフードデリバリー大手Swiggy(スウィッギー)と交渉中で、さらにはSaaSのスタートアップWhatFix(ワットフィクス)への出資も検討している。

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「バンキングソフトウェアは世界で3000億ドル(約32兆6151億円)の業界です。ほとんどの銀行は顧客よりはるかに遅れたテクノロジーを現在も使っているため、ユーザー体験や顧客維持に影響を与えています」とSoftBank Investment AdviserのマネージングパートナーであるMunish Varma(ムニシュ・ヴァーマ)氏が声明で語った。

Zetaは2021年ユニコーンになった14番目のインド発スタートアップだ。Tiger Global(タイガー・グローバル)、Falcon Edge(ファルコン・エッジ)、SoftBankなどのベンチャーキャピタルが、世界第2のインターネット市場であるインドで出資のペースを加速した結果だ。

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トゥラキア氏は、弟のDivyank(ディヴャンク)氏とともに初めてのベンチャー企業を1998年に立ち上げた。その後2人は4つのウェブ企業を1億6000万ドル(約174億円)でEndurance(エンデュランス)に売却した。Zetaはそれ以降バーヴィン氏が共同開発した3番目のスタートアップで、あとの2つはビジネス・メッセージング・プラットフォームのFlock(フロック)とRadix(ラディックス)だ。

「デジタル世界は銀行に対して、セキュリティ、プライバシー、データ保護に関してますます多くの課題を突きつけています。業界はシステムを再開発してセキュリティ、プライバシー、スケーラビリティー、そして信頼性を中心基盤に据える必要があります。ZetaのOmni Stack(オムニ・スタック)はそのニーズに答えます」とZetaの共同ファウンダーで最高技術責任者、Ramki Raddipati(ラムキ・ラディパティ)氏が声明で語った。

カテゴリー:フィンテック
タグ:Zetaインド資金調達SoftBank Vision FundユニコーンTiger Global

画像クレジット:Zeta

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(文:Manish Singh、翻訳:Nob Takahashi / facebook

アフリカ、ラテンアメリカ、インドなどの新興市場では決済、融資、ネオバンクがフィンテック業界を掌握

ここ数年、新興市場ではテック関連の投資が活発に行われており、エコシステムの成長につながっている。

アフリカ、ラテンアメリカ、インドなど、これらの市場の一部では、それぞれの地域の傾向や投資に関する包括的な報告が出版社や企業により提供されている。しかし、地域間の傾向や投資を比較対照した報告はほとんどみられない。それも当然だろう。このような作業は骨の折れる仕事である。

そうした中、データ調査機関Briter BridgesとインクルーシブテックのグローバルアクセラレーターCatalyst Fundが発表した報告書は、この3市場の最重要セクターであるフィンテックに対して全体像の提示を試みるものだ。

本報告書「新興市場におけるフィンテックの状況レポート」は、新興市場全体にわたって投資、プロダクト、包括性という3つの指標で評価を行っている。

調査はアフリカ、ラテンアメリカ、インドの177のスタートアップと33の投資家を対象に行われた。ここで使用されているサンプルの規模はごく小さなものであるが、鍵となる所見は非常に印象的である。

それでは中身を見ていこう。

フィンテックは2017年以降、地域全体で230億ドル(約2兆5038億円)を資金調達している

新興市場に向けられた投資意欲はとどまるところを知らない。本セクターは過去5年間、前年比で最大の投資を受け続けている。

3億人を超えるアフリカの成人が、銀行口座を持たない世界人口の17%を占めている。2019年にアフリカ大陸でBranch、Tala、World Remit、Interswitch、OPayによる合計7億7500万ドル(約845億円)超に達する5つの大型取引が行われたことは理解に難くない。2020年は3億6200万ドル(約394億円)に低下したものの、Flutterwave、TymeBank、Kudaなどの企業がこの期間にかなりの額を調達している。

画像クレジット:Briter Bridges & Catalyst Fund

ラテンアメリカでは、デジタルユーザーの基盤が拡大し、規制と改革が促進され、中小企業が活況を呈している。アフリカ同様、銀行口座を持たない人の割合は70%と高い。この地域のフィンテック企業はその事業機会をとらえ、NuBank、Neon、Konfio、Clipといった企業が享受するメガラウンドを獲得した。これまでの5年間で、フィンテック系スタートアップは合計100億ドル(約1兆886億円)を調達している。

インドのフィンテック系スタートアップは、2019年だけで48億ドル(約5225億円)という記録的な額を調達したことが報告書に記されている。そして2020年、同セクターは30億ドル(約3266億円)を調達し、CRED、Razorpay、Groww、BharatPeなどの著名な大手企業を含む過去5年間の合計額は116億ドル(約1兆2627億円)に達した。

アフリカの平均シードラウンドは100万ドル(約1億885万円)、インドとラテンアメリカの平均は400万ドル(約4億3540万円)

報告書によると、アフリカでの初期段階の取引は過去5年間で累計16億ドル(約1742億円)以上増加している。特にシードラウンドの平均規模は、2017年の75万ドル(約8250万円)から2020年には100万ドル(約1億885万円)に拡大した。

ラテンアメリカにおける過去5年間の平均シード取引額は約570万ドル(約6億2040万円)であったのに対し、インドでは約460万ドル(約5億円)であった。報告書では、後者のデータはCREDの3000万ドル(約33億円)のシードラウンドにより偏りが生じているとしている。

画像クレジット:Briter Bridges & Catalyst Fund

ラテンアメリカはIPOに意欲的で、インドはユニコーンを産み、アフリカはM&Aへ向かっている

2020年StripeがPaystackを買収したことは、その規模とナイジェリアのフィンテック系スタートアップの地元出身というステータスにより、アフリカのM&Aのハイライトとなった。その他に大きな話題となったラウンドには、WorldRemitによるWaveの5億ドル(約544億円)の買収(これは大陸で最大のものである)とNetwork InternationalによるDPO Groupの2億8800万ドル(約313億円)の買収がある。

関連記事:インドのスタートアップは2020年に合計9660億円を調達、記録更新ならずも後半回復

アフリカのフィンテック市場ではメガ買収や7桁規模の未公開取引の数々に注目が集まっているが、ラテンアメリカのフィンテック市場ではIPOへの関心が高い。報告書によると、同地域のフィンテック企業は数回にわたり1億ドル(約109億円)のラウンドを行っており(Nubank、PagSeguro、Creditas、BancoInter、Neon)、M&A活動は希薄だ。しかし、Arco Educacao、Stone Pagamentos、Pagseguroなど、その多くが最近上場を果たしている。

一方、インドには25社を超える10億ドル(約1088億円)企業が存在し、毎年増え続けている。先月には8件新たに誕生した。こうしたユニコーン企業は、Paytmのような既存の企業からCREDのような新しい企業まで多岐にわたっている。

決済、クレジット、ネオバンクがフィンテック活動をリード

報告書によると、この3地域では決済企業がフィンテックへの投資の中心となっている。そのサブセット内では、B2B決済が支配的な位置を占めている。次に資金を得たフィンテックのカテゴリーは、クレジットとデジタルバンキングだ。

アフリカでは、決済スタートアップへの投資がクレジットやネオバンクを上回っている。Flutterwave、Chipper Cash、Wave、Paystack、DPOなどが挙げられるだろう。

画像クレジット:Briter Bridges & Catalyst Fund

ラテンアメリカで最も資金を得ているフィンテック企業はネオバンクである。また、3つのプロダクトカテゴリーすべてに20億ドル(約2176億円)から30億ドル(約3266億円)の資金が集まっている唯一の地域でもある。そうした企業には、NuBank、Creditas、dLocalなどが名を連ねている。

インドではトップクラスの資金力を持つフィンテック系スタートアップは決済カテゴリーに属している。しかし、Niyo、Lendingkart、InCredのような9桁のラウンドを調達する企業が、クレジットやネオバンクで注目すべき存在となっている。

投資家は保険、決済、デジタル銀行の将来に期待を寄せている

5年後のフィンテックプロダクトの将来動向については、調査対象となった少数の投資家のほとんどが、保険、決済、デジタルバンキングモデルを選択肢としている。

投資プラットフォームや組み込み型モデルにも関心が集まっている。彼らの関心は農業や送金に向けられておらず、ウェルステックプラットフォームやネオバンクも優先順位が低かった。デジタルバンキングとネオバンキングが投資家の選択範囲の両極にあるのはなぜだろうか?確かなことはわからない。

画像クレジット:Briter Bridges & Catalyst Fund

報告書の一部では、これらの地域で十分なサービスが行き届いていない消費者のことや、フィンテックスタートアップが彼らにどのようにサービスを提供しているかについて述べられている。また、これらのフィンテックスタートアップがファイナンシャルインクルージョンを促進しているかどうか、どのような機能やプロダクトがそれを可能にするかについても論じている。

そのすべてにおいて、アフリカがラテンアメリカとインドに何年も後れをとっているという明白な事実は、目新しい情報ではない。Briter BridgesのディレクターDario Giuliani(ダリオ・ジュリアーニ)氏に話を聞いたところ、アフリカ大陸がラテンアメリカとインドが現在位置しているところに到達するには5年かかるだろうと語っている。同氏はまた、現段階でインドをより良い市場にしているのは、他の市場のように大陸ではなく、オペレーションが一律的であるからだと付け加えた。

「アフリカの54カ国やラテンアメリカの20カ国よりも、1つの国を管理する方が容易です」と同氏はTechCrunchに語った。「アフリカでは、私たちは『アフリカ』というラベルを使いながら、4~6カ国にわたって言及します。ラテンアメリカでは基本的にブラジル、メキシコ、アルゼンチン、コロンビアの4カ国で大手企業が台頭しています。一方、インドは1カ国です」。

同報告書によると、新興市場のほとんどのフィンテック企業は、作物保険、流通業者やベンダー向けのクレジットライン、KYC、電子商取引決済ゲートウェイ、医療金融、保険といったさまざまな分野に進出しているという。ジュリアーニ氏は、この状況が今後も続くと予想している。

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タグ:アフリカラテンアメリカインド投資決済クレジットカード保険銀行金融

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(文:Tage Kene-Okafor、翻訳:Dragonfly)

中国のフィンテックWalletsClubは世界で使える「eウォレットのためのVisa」を目指す

WalletsClubの共同創業者:CEOのシュー・ジシャン氏、COOのZeng Xianru(ツェン・シェンルー)氏、CTOのLiu Hang(リュー・ハン)氏

デジタル決済が世界中で主流になりつつある。モバイルネットワーク事業者の業界団体であるGSMAが発表したレポートによると、2020年末までにアクティブユーザー10万人超を抱えるモバイルマネープロバイダーは300社超となった。合計で3億を超えるモバイルマネー口座が世界中で毎月使われている。

eウォレットとして広く知られるモバイルマネープロバイダーは、従来の銀行に頼ることなく携帯電話を通じての送金、支払い、支払い受け取りに使われている。広く浸透し、強固なネットワーク効果を享受している限り、使い勝手はいい。しかし年間ユーザーが10億人を超えるAnt GroupsのAlipayのような人気のサービスですら、大半の国ではさほど浸透していないために中国外では実際には使用できない。

そこでの問題は、従来の銀行が持つ相互運用性が大半のウォレット間ではないことだ、とWalletsClubを創業する前にAlibabaのクラウド部門とAlipayの基礎インフラ構築に携わったXue Zhixiang(シュー・ジシャン)氏は指摘した。

2019年に香港で登記し、中国本土にオペレーションチームを抱えるWalletsClubはデジタルウォレットのためのVisaになることを狙っている。世界の何百もの電子マネーサービス間での送金を可能にするというものだ。

「デジタルウォレットのための手形交換所のようなものです」とCEOのシュー氏は話した。

決済システムは金融取引に関わっている2者の仲介だ。資金の有効性を認証し、取引を行う2者間の送金を記録することで、送金の効率とセキュリティを確保するようデザインされている。WalletsClubを使ってリアルタイムに支払ったり、支払いを受けたりすることができる、とシュー氏は主張した。同社のテクノロジーは金融機関が世界中でデータを交換するのに使われている「ISO 20022」基準に基づいているとも話した。

言い換えると、WalletsClubは個人エンドユーザーではなく、世界中の何百ものeウォレットを追いかけている。同社のビジョンは、送金する側と送金を受け取る側のサービスプロバイダーあるいは金融機関がWalletsClubの会員である限り、あらゆるモバイルウォレットを使って人々がどこででも支払えるようにすることだ。これはVisaやMastercardがネットワーク内のさまざまな銀行が発行しているクレジットカードをいかに処理しているかに似ている。WalletsClubは取引ごとに定額手数料を課すことで収益をあげる計画だ。

電子ウォレットに相互運用性を加えることで、決済システムが動いているところであればどこでも互換性を獲得するため、特定の地域でサービスを提供する小規模事業者ですら成長できる。

従来の金融システムに挑む代わりに、WalletsClubは銀行サービスを利用できていない個人が簡単にデジタルウォレットを使ってお金を動かせるようにする手段を提供したいと考えている。この手段は銀行口座を開設するより簡単だ。何百万人という東南アジアの労働者のような、母国に送金する必要がある出稼ぎ労働者の中にそうした送金に対する大きな需要がある。

WalletsClubは潜在的には数社のテリトリーに侵入している。母国に送金する移民労働者は現在、長年にわたって展開されているWestern UnionやMoneyGramといった送金サービスに頼っている。いずれのサービスもユーザーが送金したり金を受け取ったりするのに足を運ぶ「エージェント」の大きなネットワークを持つ。2018年にAlipayは香港のユーザーがフィリピンのGCashアカウントに送金できるようにしたが「Ant Groupのフォーカスは送金というより決済だった」とXue氏は述べた。

世界銀行のデータによると、故郷を離れている労働者からの母国への送金は2019年に、中国を除く低中所得国における最大の海外からの資金調達源となった。送金額は5000億ドル(約54兆4625億円)超となり、そうした低中所得国の海外直接投資の水準を上回った。

モバイルウォレットの手形交換所が脅かすその他の業種としては、事業者がさまざまなデジタル決済手法を統合しなくてもいいようにしているクロスボーダー決済アグリゲーターがある。

初期段階にあるWalletsClubにとって最大の課題は顧客との信頼関係の構築であり、同社は香港、シンガポール、カナダにいる中国人起業家が興した電子マネーサービスと協議中だ。こうした創業者たちがここ10年の中国のフィンテックブームから学んだことのおかげで、中国で開発されたウォレットは特に新興マーケットで数多く展開されている。それらの多くはTencentやAntのような巨大企業と競合するのは難しいとわかっていて、中国のフィンテックをめぐる規制強化はいうまでもない。

「メンバーを20社集め、メンバー間の毎日の決済が数百件あれば、当社は基本的に利益をあげられます」とシュー氏は話し、目標は2021年中に参加企業12社を獲得することだと付け加えた。

関連記事:中国政府がジャック・マー氏のフィンテック帝国Ant Groupの「修正」計画を発表

カテゴリー:フィンテック
タグ:WalletsClubデジタルウォレット中国送金

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(文:Rita Liao、翻訳:Nariko Mizoguchi

パブリッシャーが個々の記事、動画、ポッドキャストに対する支払いを受け取ることを可能にするFewcentsが1.7億円を調達

パブリッシャーの多くは、サイトの訪問者たちをサブスクユーザーにすることに熱心だが、他にも重要なユーザーグループがいる。特定のプレミアム記事や動画を見たいけれど、サブスクリプションに登録する気はない人たちだ。シンガポールに拠点を置くフィンテックスタートアップであるFewcents(フューセンツ)が、シンガポール時間5月5日、160万ドル(約1億7000万円)のシード資金調達を発表した。同社はパブリッシャーが個々のコンテンツに対する「マイクロペイメント」を受け取ることを可能にする。

記事、動画、ポッドキャストを収益化するために、Fewcentsを使用することができる。現在同サービスは50種類の通貨に対応し、広告やサブスクリプションへによる収益の補完的な流れとして機能することを意図している。現在の顧客には、5500万人の読者を擁するインドのDainik Jagran(ダイニク・ジャグラン)、インドネシアのニュースサイトDailySocial(デイリーソーシャル)、ストリーミング動画サイトDailymotion(デイリーモーション)などがある。デジタルパブリッシャーと売上をシェアすることで収益を上げる同社は、欧州での拡大を目指してJnomics Media(ジェイノミクス・メディア)とのパートナーシップも締結した。

M Venture Partners(Mベンチャーパートナーズ)とHustle Fund(ハッスルファンド)がラウンドに参加しているが、同時にフィンテック、アドテック、メディア企業のトップ企業出身のエンジェル投資家たちも参加している。例えばDBS銀行の元会長のKoh Boon Hwee(コー・ブン・ハウェー)氏、Facebook(フェイスブック)の東南アジア元マネージングディレクターのKenneth Bishop(ケネス・ビショップ)氏、Stripe(ストライプ)のパートナーシップ責任者のJeremy Butteriss(ジェレミー・バターリス)氏。Boston Consulting Group(ボストン・コンサルティング・グループ)のパートナー兼マネージングディレクターのShiv Choudhury(シブ・チョウドリィ)氏、ブルームバーグ・メディア配信の元APAC地域セールスディレクターのFrancesco Alberti (フランチェスコ・アルベルティ)氏、Summit Media(サミット・メディア)社長のLisa Gokongwei-Cheng(リサ・ゴコンウェイ=チェン)氏、電通マネージングディレクターのPrantik Mazumdar(プランティック・マズムダー)氏、Mission Holdings(ミッション・ホールディングス)の会長で創業者のSaurabh Mittal(サウラブ・ミッタル)氏、Amazon(アマゾン)ビデオ・インディアの元ディレクターでカントリー責任者のNitesh Kripalani (ニテシュ・クリパラニ)氏などだ。

Fewcentsは、2020年Abhisek Dadoo(アブシェク・ダドゥー)氏とDushyant Khare(ドゥシェン・カーリー)氏(上の写真)によって創業された。ダドゥー氏が以前創業したスタートアップShoffr(シャッフラー)(オンラインからオフラインへの橋渡しを行うプラットフォーム)は、2019年にAffle(アフル)によって買収された。またカーリー氏は、東南アジアとインドの戦略的パートナーシップのディレクター職を含め、Google(グーグルで)で12年間働いた経歴を持つ。

ダドゥー氏とカーリー氏は、電子メールの中でTechCrunchに対して、パブリッシャーのアクセスユーザーのうち、月間サブスクリプションに進むのは1~5%しかいないと語った。大多数は、たまたま訪れたか、他ページのリンクからのユーザーであり、パブリッシャーはそのトラフィックを収益化するために広告に頼っている。

コンテンツクリエイターたちは、マイクロペイメントや、その他ワンタイム支払いを行えるFlattr(フラッター)や、Axate(アクセイト)の都度払いツールなどを試行している。しかしパブリッシャーたちはいまだに、モデルがどれくらい効果的かの議論を続けていて、2020年にはTechCrunchは、Googleがサイトのチップ機能を提供しないことを決定したことを報告している。

都度払いコンテンツモデルをうまく実装するには、パブリッシャーは魅力的なコンテンツを作成するだけでなく、支払いそのものを極めて簡単にする必要がある。Fewcentsにとって、これは3つの大きな課題を解決することを意味していると、ダドゥー氏とカーリー氏は語った。まず第1に、彼らはどのサイトでもそのまま動作するプラットフォームを構築する必要があった、なぜならたまたま訪れたユーザーは、新しいサイトを訪れるたびにいちいち新しいサービスにサインアップなどしたくはないからだ。そして第2に、デジタルウォレットなどの最も身近な支払い方法を使用して、現地通貨での国境を越えた支払いを受け入れる必要がある。そして最後に、パブリッシャーは、ユーザーがコンテンツにアクセスできる期間などの、デジタル著作権を管理できる必要がある。

パブリッシャーはまた、購入者を遠ざけることはなく、かつ十分な収益を生み出す価格ポイントも決定する必要がある。現在Fewcentsは、既存のトラフィックデータを使用して、各コンテンツの価格を手動で設定している。ダドゥー氏は「各地域の需給曲線に基づいて、私たちは最高の収益結果を得るために、柔軟に価格を変更しています」という。「しかし、私たちはAI アルゴリズムの開発も進めています。その目的はアクセス場所とコンテンツの内容に応じて、価格設定を動的に提案することです」。

カーリー氏は、コンテンツを分売することで、Fewcents はページビューよりもさらに深いデータを提供することが可能になり、パブリッシャーが特定の市場やユーザーセグメントの好みを理解しより特化した「マイクロバンドル」を開発することを、助けることができるようになるという。また彼は、Fewcentsの目標は、ユーザーごとに特化したコンテンツバンドルを自動的に推奨できるようにすることだと付け加えた。

関連記事:Clubhouseが同社初となるクリエイター用収益化機能をテスト開始

カテゴリー:フィンテック
タグ:Fewcentsシンガポール資金調達サブスクリプション

画像クレジット:Fewcents

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(文:Catherine Shu、翻訳:sako)

欧州の金融スーパーアプリへ向けてVivid Moneyが約79.6億円を調達

ドイツのスタートアップVivid Money(ビビッドマネー)は、GreenoaksがリードするシリーズBラウンドで新たに7300万ドル(79億6000万円)を調達した。既存の投資家からRibbit Capitalも参加した。この資金調達ラウンドで、Vivid Moneyのバリュエーションは4億3600万ドル(約480億円)に達した。

Vivid MoneyはRevolutの競合企業と見ることができるが、ユーロ圏向けに特別にデザインされている。同社は銀行インフラにSolarisbankを利用して開発されており、ユーザーはさまざまな方法で送金、受け取り、支出、投資、貯蓄が可能になる。

アカウントを作成すると、DEで始まるドイツのIBAN(国際銀行口座番号)と、メタルカードが届く。カード自体にはカードの情報は記載されていない。すべての情報はアプリにある。他のフィンテックスタートアップと同様、Vivid Moneyを利用すると、アプリからカードをコントロールできる。カードをロックしたりロックを解除したり、GooglePayやApplePayに追加したりできる。

その後、アカウントにチャージすれば、数十の異なる通貨を持つことができる。海外でカードを使って支払う場合、同社は現在の為替レートに少額のマークアップをのせる。通常銀行で適用される為替レートよりも良いレートが得られるはずだ。

このかなり標準的な一連の機能に加え、VividMoneyは端株での株取引を提供している。株式やETFに投資でき、手数料はかからない。同様に、アプリから暗号資産(仮想通貨)を購入、保有、共有することもできる。同社はこれらの機能についてCM Equity AGと提携している。

また、キャッシュバックプログラムと月額9.90ユーロ(約1300円)のプレミアムサブスクリプションもある。有料ユーザーは、無料の現金引き出し枠の拡大、バーチャルカードを作成する機能、追加の通貨のサポート、より良いキャッシュバックリワードの対象となる。

最後に、ユーザーはポケットと呼ばれるサブアカウントを作成できる。あるポケットから別のポケットにお金を移動したり、他のユーザーをポケットに追加したりできる。各ポケットには独自のIBANがある。従い、それぞれのポケットで別々の請求書の支払いを行うことができる。また、将来の買い物のために、カードを特定のポケットにリンクさせることもできる。

Vivid Moneyは、またたく間に多数の機能を追加した。今では銀行口座に多額の資金を預かる。今後、定評ある欧州のフィンテックプレーヤーとの競争の中で、多くのユーザー層を引き付けることができるかどうか注目したい。

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(文:Romain Dillet、翻訳:Nariko Mizoguchi

ソニーがFeliCa内蔵「推し払いキーホルダー」試験販売、アニメ「まどマギ」デザインに楽天Edy機能付加

ソニーがFeliCa内蔵「推し払いキーホルダー」試験販売、アニメ「まどマギ」デザインに楽天Edy機能付加

ソニーは4月30日、FeliCa(フェリカ)のモジュールを内蔵し、電子決済サービス「楽天Edy」の機能を付加したアクリル製の「推し払い(おしはらい)キーホルダー」を発表しました。

本体に今年テレビシリーズ放送10周年を迎えた人気アニメ『魔法少女まどか☆マギカ』のキャラクター2種類を印刷し、5月1日午前10時から5月31日まで、通販サイト「ANIPLEX+(アニプレックスプラス)」で予約販売します。

価格は2980円(税込)で、商品の発送は7月を予定。期間中に予定数を達成した場合、早期に販売を終了する可能性があるとのことです。

ソニーがFeliCa内蔵「推し払いキーホルダー」試験販売、アニメ「まどマギ」デザインに楽天Edy機能付加

FeliCaとは、電子マネーなどに使われる非接触型ICチップ技術で、10cm程度の範囲内であればリーダーなどが発する微弱な電波でデータの読み書きが行えます。最近では携帯電話だけでなく、オフィスの出入りに使う社員証にも内蔵されたりと、利用範囲が広がっています。

ソニーによると、汎用的な電子マネー機能をキーホルダーに付けるためには、本体の金型代や版代に加え、形状ごとに通信性能検定が必要でしたが、「推し払いキーホルダー」には、既存のアクリルキーホルダーの外観・厚みを考慮し、内部にFeliCaモジュールを埋め込める、新開発の多層構成の製法を使用しています。

アクリルキーホルダーが一定の厚さ(約3mm)とサイズ(縦115mm、横86.5mm以内)であれば、さまざまな形状で規定の通信性能を保持できるほか、デジタル印刷を利用し、金型不要の加工方法で製作するため、初期費用が抑えられ、少量生産も可能だといいます。

ソニーは、今回の試験販売を通じて、他のアニメキャラクターとのコラボレーションや、アーティストのライブグッズなどへの活用を検討していく考えです。

ソニーがFeliCa内蔵「推し払いキーホルダー」試験販売、アニメ「まどマギ」デザインに楽天Edy機能付加

(Source:ソニーEngadget日本版より転載)

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カテゴリー:フィンテック
タグ:Sony / ソニー(企業)FeliCa楽天 / Rakuten(企業)楽天Edy(企業・サービス)日本(国・地域)

割り勘アプリのSplitwiseがシリーズAで約22億円を調達

米国ロードアイランド州プロビデンスを拠点とするスタートアップのSplitwise(スプリットワイズ)が米国時間4月28日、2000万ドル(約22億円)のシリーズAをクローズしたと発表した。

同社は、ユーザーが支払いを割り勘にできる消費者向けフィンテックソフトウェアを開発している。ただし、SplitwiseはVenmoやPaytmのクローンではない。同社はユーザーの友人への送金は支援しない。送金は他社に任せる。Splitwiseは、お金があらゆる種類の人間関係に与えるストレスと煩雑さを軽減したいだけだ、とCEOのJon Bittner(ジョン・ビットナー)氏はTechCrunchにインタビューで語った。

ルームメイト、パートナー、財布を別にしている夫婦、スキー旅行に行く友人同士などはみな、支払いをどう負担するかを考える必要がある。支払いを求めて友達、配偶者、ルームメイトを追いかけ回すのはまったく楽しいことではない。Splitwiseのソフトウェアを使えば、共通の支払いに関する合意と管理が容易になる。このアプリは、そうした支払いをオープンにし、誰が誰に支払うべきかを明らかにすることで支払われるべき金額を明確し、お金に関するトラブルを避けることを目指す。

その製品コンセプトは世界中から聴衆を集めた。ビットナー氏によると、同社は2011年以来、数千万人の登録ユーザーを惹きつけた。金額にして900億ドル(約9兆8000万円)が割り勘にされ、または管理されたという。同社はアクティブユーザー数の開示を拒否した。シリーズAで資金を調達したにすぎないため、より具体的なユーザー数に関する指標はアーリーステージではパスしても良いだろう。

Splitwiseはユーザー間での送金を他社に任せているため、取引手数料や消費者から預る資金で利益を得ることはない。ではどのようにキャッシュを生むのか。Proサービスでユーザーに月額3ドル(約330円)を請求する。簡単に言えば、Splitwiseはもっとパワフルな割り勘ソフトウェアを必要とするユーザーに消費者向けサブスクリプションを提供する。

Splitwiseのサブスクユーザー層の厚みがどの程度なのかを示す指標は手元にないが、ビットナー氏は、同社の無料ユーザー層が拡大したため、同社の無料から有料へのコンバージョンレートは低下していないという。ただし、Insight Partnersが同社への2000万ドル(約22億円)の投資を進んでリードしたため、有料ユーザー層は少なくともそれなりのレベルで成長しているものと推測される。

シリーズAの前に、ビットナー氏はTechCrunchに対し、同社は約900万ドル(約9億8000万円)を調達したと語った。

Splitwiseは長い間オーガニックに成長してきた。新規ユーザーの獲得に資金を投下せずに済んできたため、コストを低く抑えることができた。つまり、他の消費者向けフィンテック企業と同じ速度でベンチャーキャピタルから資金をを調達する必要がなかったわけだ。だが、資金調達を最小限に抑えてきたため、経営資源を何に割り当てるべきかについて、いくらか注意を払う必要があった。

CEOは、新しい資本により同社は製品開発のペースを上げることができると語った。

ただし、有料版でのみ使える機能の作成に資金がすべて注ぎ込まれるとは思わないで欲しい。SplitwiseはTechCrunchに対し、友達をサービスへ招待したいと思わせるのに十分な無料体験を望んでおり、過度に押し付けがましいデジタルの商業環境にユーザーを引っ張り込むリスクは冒したくないと明らかにした。

Insight PartnersのBoris Treskunov(ボリス・トレスクノフ)氏は声明で「このアプリが友人や家族の間で簡単に支払いを分割するための頼れるプラットフォームになるのを目の当たりにしてうれしく思っています」と述べた。他の投資家の考えも一致しているようだ。この種のアプリが広く使われるには、無料のエクスペリエンスが幅広く必要だ。これはつまり、同社がフリーミアム製品の無料の側面に資金を費やすことを意味する。

Splitwiseはおそらくプロビデンスで最も有名なスタートアップだが、最近Y Combinatorを卒業したPangeaも資金調達に関して同地域で名を馳せた。とにかく2社は、スタートアップの仕事に最もつながりが深い米国の数えるほどの都市の外であっても、成長するテクノロジー企業を築き上げることが可能であることの証左となった。Splitwiseが新しい資本で何ができるか、そして将来の採用の何パーセントが地元のメインハブではなくリモートになるか注目したい。

関連記事:Y Combinatorが支援するPangeaがデモデーを前に成長と資金調達について語る

カテゴリー:フィンテック
タグ:Splitwise資金調達

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(文:Alex Wilhelm、翻訳:Nariko Mizoguchi

Google Payがアップデート、食料品セール情報・交通カード・家計管理機能を追加

Google Pay(グーグル・ペイ)の2020年11月の大規模なリニューアルで個人向け会計サービスに進出したGoogleは、本日米国時間4月29日、Google Payをユーザーの日常生活の一部にするための新機能を公開した。このアップデートによって、食料品のセール情報や公共交通機関の支払い、支出の分類などに利用できるようになる。

大手スーパーのSafeway(セーフウェイ)とTarget(ターゲット)との提携を通じて、Google Payユーザーはこれらの店のセール内容が書かれたチラシを見ることができる。Safewayは500以上の店舗にGoogle Payプラットフォームを導入し、Targetも全米の店舗で同様の機能を提供する予定だ。Google Payユーザーは、おすすめのお得情報をお気に入りに登録して後で見ることができる。さらに、近々Google Payは、位置情報が有効になっていれば、ユーザーが参加店舗の近くに行くとその週のセールを通知する機能も導入する。

関連記事:Google Payがリニューアル、オプトインで支出履歴の把握など家計簿サービス的に進化

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今回拡張されるGoogle Payの交通機関機能は、現在すでに米国内80以上の年で乗車券の購入と使用に対応している。近々新たに加わる中には、シカゴとサンフランシスコ・ベイエリアという主要市場がある。これは、Apple Pay(アップル・ペイ)が最近提供を開始して大いに歓迎されたベイエリアのClipper(クリッパー)カードへの対応を追うものだ。GoogleはToken Transitとも統合して、全米の小都市の交通機関へも対応範囲を広げる。

関連記事:iPhoneやApple Watchでベイエリアの公共交通機関支払いが可能に

近々、Googel Payアプリを利用しているAndroid(アンドロイドユーザー)は、アプリのホーム画面から「Ride Transit(交通機関を利用する)」ショートカットから乗車券を使えるようになる。ユーザーはそこで交通カードを購入したりチャージしたりできる。カード購入後は、スマホをリーダーにかざす(あるいはリーダーがなければチケット画面を見せる)だけで乗車できる。

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最後に紹介するのは、Google Payを使って家計を管理する機能だ。2020年の大改訂で、Googleは11社の銀行と提携し、Plex(プレックス)という新しいタイプの銀行口座をスタートさせることを発表した。増え続けるモバイル専門デジタルバンクのライバルとなるGoogle Payアプリは、Citi(シティ)、Stanford Federal Credit Union(スタンフォード連邦信用組合)などの提携銀行が実際に運用している口座の窓口として機能する。

新機能の一環として、Google Payユーザーは、自身の消費行動や残高、請求書などを「Insights(インサイト)」タブを通じてこれまで以上に便利に確認できるようになる。これを使えば、残高はいくらか、期限が迫っている請求書は何かを見たり、大きい取引のアラートを受けたり、分類別や店舗別に消費状況を追跡することができる。Googleは取引を自動的にカテゴリー分けしているので、一般的な分類(「食料」など)でも特定の店名(「バーガーキング」など)でも検索できる、とGoogleは説明している。

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これらの機能は、決済アプリを使ってユーザーのデータをさらに集めようとするGoogleの計画の一部でもある。そのユーザーはGoogle Payパートナーからの売り込みターゲットになる。

2020年改定されたアプリが公開された時、ユーザーはカスタマイズ機能へのオプトインを勧められた。ユーザーにとって意味のあるよりよいセール広告をアプリが表示するためだ。Googleはユーザーのデータを第三者のブランドや小売店に直接提供することはないと述べているが、追跡業界がAppleのプライバシー方針変更に振り回されている中、同アプリは企業が潜在顧客とつながるパイプを提供することになるだろう。

そうなるために、今後Google Payがもっと便利な、あるいは「必携の」機能を出してくることが予想される。

カテゴリー:フィンテック
タグ:GoogleGoogle Payアメリカ

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(文:Sarah Perez、翻訳:Nob Takahashi / facebook