建築現場の3DデジタイズロボットがStartup Battlefieldベルリンの最優秀賞を獲得

ベルリンで開催されたTechCrunch Disrupのスタートアップ・バトルフィールドの参加者は当初14チームあった。2日間にわたる激烈な競争を勝ち抜いて勝者が決定した。

Startup Battlefieldの登壇者はすべて我々が慎重に選定した優秀なスタートアップばかりだ。チームはベンチャーキャピタリスト、テクノロジー界のリーダー、著名ジャーナリストを含む審査員グループの前で公開プレゼンを行い、Disrupt杯の名誉と5万ドル(約550万円)の賞金獲得を目指した。

1日目のプレゼンの後、TechCrunchの編集部は審査員の評価メモをベースに数時間わたって討議し、GmeliusHawa DawaInovatScaled RoboticsStableの5チームを最終候補とした。

選ばれたチームは2日目に最終決定を決定を行う審査員の前でプレゼンを行った。パネルのメンバーは、Accel PartnersのAndrei Brasoveanu (アンドレイ・ブラソヴェアヌ)氏、 Sequoia CapitalnのAndrew Reed (アンドリュー・リード)氏、ソフトバンクビジョンファンドのCarolina Brochado(カロライナ・ブロチャド)氏、Generation Investment ManagementのLila Preston
リラ・プレストン)氏の各氏にTechCrunchのMike Butcher(マイク・ブッチャー)記者が加わった。

優勝:Scaled Robotics


Scaled Roboticsが開発したのは、建設現場の詳細な3D画像を自動的に取得するロボットだ。処理は高速で極めて精密な測定を行うことができる。例えば、設置された梁材の位置が設計と1、2センチずれているだけで判別できるという。建設現場の責任者はロボットのソフトウェアを利用してどのような部材がどのフロアのどの位置に設置されているか、ほぼリアルタイムで詳細にチェックできる。また設置が許容誤差の範囲内にあるかも判別できる。また廃棄物の堆積などが作業の安全を脅かしていないかチェックできる。下は作動中のロボットのビデオだ。関連記事はこちら

準優勝:Stable

Stableは農産物等の購入者を価格変動から守る保険を自動車保険なみの手軽さで提供するサービスだ。コカ・コーラのような巨大企業からスムージーを販売するローカルビジネスまで、世界の関係者は農産物に加えてパッケージやエネルギー関連プロダクトまで多数のアイテムに保険をかけることができるStableについては別記事で詳しく紹介している。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook

インテルの最新RealSenseライダーカメラは在庫管理という巨大市場を目指す

Intel(インテル)は米国時間12月11日、同社のRealSenseシリーズに新製品を加えた。そのL515と呼ばれる製品はテニスボールぐらいの大きさで、もっぱら倉庫のロジスティクスで使われることを狙っている。それは世界中の商取引において、ものすごく重要で自動化がどんどん進んでいる分野だ。

この新しいカメラのそのほかのありえる利用分野としては、リテール、ヘルスケア、3Dのスキャンニング、ロボティクスなどが挙げられる。アイスホッケーのパックのようなこのデバイスは場面のスキャンができ、数百万のデプスポイント(奥行き点)から成る点群を1秒で作れるとインテルは語る。このサイズにしてはかなりすごいことだ。

インテルによると「L515は、それ自身が新しい独自の機種系列であり、0.25〜9mの範囲で高品質な映像を安定的に提供する。また2300万以上の正確なデプスピクセルを毎秒提供し、デプス(奥行き)の解像度は1024 x 768ドット、毎秒30コマとなる。このIntel RealSenseのライダーカメラの特徴は、内部にビジョンプロセッサーとブレ抑制機構があり、光子がデプスに達するまでのレイテンシーも短い。L515は軽量なので、消費電力が3.5W未満で電池寿命が長い。常に即使える状態を維持するL515は、較正の必要もなく、その全寿命においてデプスの精度を保つ。

このRealSense系新製品は、同様のカメラをドローンやロボティクス、あるいはAR、VRなどの消費者製品向けに作ってきた同社が、ロジスティクスという巨大な利益を上げられそうな市場に注力するようになったことの表れだ。

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(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

MITの科学者が1年で10万回の反復実験が可能なロボットを開発

科学はエキサイティングなはずだが、実際にはおそろしく退屈なこともある。何千回も同じことを繰り返す実験もあるが、そんなものは自動化してほしいところだ。そこでMITの科学者が作ったロボットは、ある種の実験の結果を観察し、フォローアップを計画する。このロボットは、最初の1年で10万回の実験を行った。

流体力学という分野は、大量の複雑で予測不可能な力を扱い、それらを理解する最良の方法が同じことを何度も繰り返して一定のパターンを見つけることだったりする。これはあまりにも単純化した言い方だが、ここでは流体力学の詳しい説明はやめておこう。

繰り返して観察することを要する現象のひとつが、渦励振動(Vortex-Induced Vibration)だ。この一種の撹乱現象は、たとえば水上をより滑らかに効率的に航行する船を設計するときなどに重要になる。そのためには、船が水の上を進む様子を何度も何度も観察しなければならない(自動車のボディーの空気抵抗を減らすためにも、同種の実験を行う)。

でもこれは、ロボットにぴったりの仕事だ。しかもMITの科学者がIntelligent Tow Tank(インテリジェントな曳航水槽、ITT)と名付けた実験用ロボットは、水上で何かを引っ張るという物理的な仕事をするだけでなく、結果を知的に観察し、ほかの情報も得るためにセットアップを変え、価値ある報告が得られるまでそれを繰り返す。

今日Science Robotics誌に掲載された彼らの研究論文には「ITTはすでに約10万回の実験を済ませており、本質的には博士課程の学生が在学中に2週間ごと実施する実験を完了しています」と書かれている。

ロボット本体の設計よりも難しかったのは、流体系の表面の水流を観察して理解し、より有益な結果を得るためにフォローアップを実行する部分のロジックだ。通常は人間(院生など)が毎回の実行を観察してランダムに変わるパラメータを計り、次にどうするかを決める。でもその退屈でかったるい仕事は、優秀な科学者に向いているとは言えない。

だからそんな機械的な繰り返し作業はロボットにやらせて、人間は高レベルの概念や理念にフォーカスすべきだ。彼らの研究論文は、同じように実験を自動化するCMU(カーネギーメロン大学)などのロボットを紹介している。

彼らの研究論文では「これによって、実験を伴う研究にパラダイムシフトがもたらされ、ロボットとコンピューターと人間がコラボレーションして発見を加速し、これまでのやり方では無理だったような大きなパラメータ空間でも迅速かつ効果的に探索できるようになるだろう」と書かれている。インテリジェントな曳航水槽を記述している研究論文はここで読める。

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(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

Boston Dynamicsのロボットの警察演習映像に関し市民団体が情報請求

4月に米国カリフォルニア大学バークレー校で開催されたTechCrunchのロボットイベントで、Boston DynamicsのヘッドであるMarc Raibert(マーク・ライバート)氏が、現実社会を想定した場面で同社の「Spot」というロボットが動く映像を披露した。救急隊員や警察官などの「ファーストレスポンダー」として対応する場面や建設現場など、同社をフォローする人や自動化一般に精通している人にはおなじみの映像だ。

ところがマサチューセッツ州警察の演習の中でロボットがドアを開ける映像はまったく異なる印象を与える。テロリストと対峙したり人質を救出する状況で、人間の警官の危険を減らすためにロボットがどう役に立つかを示した短い映像だ。

この映像が公開されてから数カ月、住民の自由に関わる市民団体の間でいくつかの疑問が提起された。アメリカ自由人権協会(ACLU)マサチューセッツ支部による公共記録の開示請求はその1つ。請求は、州警察がFacebookに投稿した今年7月のイベントの様子について「州警察がロボットの使用をどのように検討しているか追加の情報を請求する」という内容だ。

ACLUマサチューセッツ支部の「自由のためのテクノロジー」プログラムのディレクターを務めるKade Crockford(ケイド・クロックフォード)氏はTechCrunchへの声明で開示請求について補足した。

このロボットシステムが現在マサチューセッツ州でどのように、どこに配備されているか我々は詳細を知らない。テクノロジーの進歩に社会的、政治的、法的システムの対応が追いつかないことはよくある。政府機関は早急に透明性を確保し、新しいテクノロジーの検証と配備の計画についてオープンにすべきだ。人工知能の時代に市民の自由、公民権、人種的正義を守るため州全体にわたる規制も必要だ。マサチューセッツ州は、安全対策が技術革新に遅れを取らないよう、やるべき事が多数ある。ACLUは地方や州レベルの職員と協力し、法律が技術に遅れないようにする解決策を見つけ実行していく。

どんな新しいテクノロジーにも言えることだが、こういった質問を多く尋ねることが重要だ。Boston Dynamicsの映像には、大きくて恐ろしいロボットに対する不信感と、法執行機関に対する(おそらく当然の)不信感を同時に増幅する負の相乗効果がある。そんな映像を見れば誰でもディストピアのウサギの穴を簡単に降りて行ける。

Boston DynamicsはTechCrunchに、マサチューセッツ州警察がロボットを配備する方法について同社から明かすことはできないが、事業開発担当副社長であるMichael Perry(マイケル・ペリー)氏が、貸し出すロボットの使用方法に関するガイドラインを設けたと説明した。

「現在、当社は契約を結ぶパートナーを選べる規模にある。パートナーを選ぶ際に、ロボットの配備と使用の方法に関して当社と同じビジョンを持っているか確認する」とペリー氏は述べた。「例えば、人を傷つけたり脅迫したりするような使い方はしないことやロボットができることとできないことについて現実的な見方ができることだ」

ペリー氏は、Boston Dynamicsの想定はロボットが法執行機関ではなくファーストレスポンダーの役割を担うことだと説明した。世の中の懸念の多くは前者に関するものだ。ロボットによる爆弾敷設や危険物の取り扱いではなく、警察行為の可能性が懸念材料になっている。特にACLUは「電子メールを含む文書で、ロボットの兵器化に関する議論や参照を含むもの」の開示を請求した。 

ペリー氏は、ACLUの懸念は妥当だが、Spotは人間のファーストレスポンダーが使っている既存のテクノロジーから大きく逸脱するものではないと説明した。 「新しいテクノロジーが採用される時には、複数の利害関係者がテーブルにつく必要がある」と同氏は述べた。「ACLUが具体的に提起した問題は、ロボットだけでなく、すでに展開されている新しいテクノロジーにも当てはまる。 当社がテーブルに持ち込むものが、すでに存在するものと大きく違うのかどうかはわからない」。

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(翻訳:Mizoguchi)

ロボットの日常化を目指すAlphabetのXがゴミ分別ロボットを公開

Alphabet(アルファベット)の、かつてGoogle Xと呼ばれていた子会社、X(エックス)は、野心的な“新たな挑戦”に取り組むことを専業としている。商品開発ではなく、SFの話だと思われそうなテクノロジーの応用方法の研究だ。そのひとつに、オフィスのゴミを分別するロボットがある。

エックスは他のアルファベットの子会社とは違い、何をしているかを、ある程度進展するまでは公言しない。そんなエックスが、「この数年間」頑張ってきたEveryday Robot Project(日常ロボットプロジェクト)がそのレベルに達したと発表した。プロジェクトリーダーのHans Peter Brondmo(ハンス・ピーター・ブロンドモー)氏は、11月22日のMediumの記事でそれを語り、このプロジェクトの意味や、何を目指しているのかを説明した。

ブロンドモー氏は現在のロボティクスを、実用化はされているが、専門教育を受けた決められたコンピューター・オペレーターが、特別な場所で専門的な目的のためだけに使えるものだった1950年代から60年代のコンピューターとを比較している。そこで彼らの挑戦だが、コンピューターの時代と同じように、ロボットの時代を招こうというものだ。言い換えれば、普通の人たちが日常的にロボットと暮らし関われる世界を築こうとしている。

それは、みなさんが思う以上に平凡で複雑なチャレンジだ。ロボットは、私たちが日常的で当たり前と感じているものすべてを備えなければならない。周りを人々が歩き回ったり、あるときは角に置かれていたゴミ箱が翌日は消えていたり、家具があちらこちらに移動したり、気象条件が変化したりと、日常生活で私たちがまったく当たり前であり、それでいて毎日の予測が難しいあらゆる物事だ。ロボットは、特定性と正確性が高い仕事を得意とする。とくにプログラミングにおいてはそれが顕著だ。

日常ロボットプロジェクトは、それを踏まえ、実際の人間が日常生活で本当に便利だと感じるロボットを作ろうと即座に決意した。その鍵となったのが、「プログラムすること」ではなく「教えること」だとブロンドモー氏は言う。つまり、Google AIのチームと共に、まずは研究室で、次に外の世界で研究を進めているということだ。そして今回、その段階に達したロボットの詳細が発表された。エックスのオフィスで出たゴミを分別をするロボットだ。

このロボットは、シミュレーションや強化学習など、さまざまな技法で訓練され、実際に廃棄物汚染の度合いを、およそ20パーセントから5パーセント未満にまで低減することができた(たとえば、所定のゴミ箱に間違ったゴミを入れてしまったら、そのゴミ箱の中身全体がリサイクルされることなく埋め立てられてしまう)。公的機関からグリーンな職場と認定されたビルで働いたことのある人なら、全般的な影響力として、どれほど素晴らしいことかわかるだろう。

大きなオフィスから出たリサイクルゴミが埋め立てに回されてしまう量を減らせることとは別に、今回の成果によって、ほぼすべての人にロボットを日常化するといエックスの究極の目標が実現可能であることが証明された。私たちが毎日持ち歩いているスマートフォンを一般化されたコンピューターの姿とするなら、ロボットがごく当たり前の相棒になる日までにはまだ遠い道のりがあるものの、その方向に一歩踏み出したと言える。

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(翻訳:金井哲夫)

MITがソフトロボティクスの制御を最適化する新手法を開発

ソフトロボットの特定のタスク実行を最適化する新たな方法をMITの研究チームが開発した。タスクの実行はソフトロボティクスにとってかなりの難題だ。というのもフレキシブルなボディを持つロボットは、基本的にいつでも無数の動きができるからだ。それゆえに、可能な限りベストな手法で何かをするようにソフトロボットをプログラミングすることは途方もない作業となる。

そうしたプロセス全体を簡単で計算もさほど複雑でないものにするために、あらゆる方向に動けるロボットを効率的なものにし、動きを最適化するのに使われる代表的な低次元モデルのプロセスをシンプルにする手法を研究チームが開発した。これは環境物理学と、ソフトロボットのような形状の柔らかい物体が実際にあらゆる状況で曲げられるという自然な方法に基づいている。

これまでのところ、開発を手がけたMITのチームはシミュレーションでしかデモを行っていない。しかしこのシミュレーションでは、今日使われている複雑な手法に比べるとプログラムされたロボットの動きのスピードと精度という点においてかなりの改善が見られる。実際、2Dと3Dのデザイン、4つ足の物理的デザインで行われた多くのシミュレーションテストで、研究者らは3万ものシミュレーションに対応する最適化を示すことができた。この数字はかつて400だった。

なぜこれが重要なのか?ソフトロボットに良い動きをさせるために必要な間接的処理の量を大幅に抑制するからだ。これは現実生活への応用として実際に使用できるようにするには大事な要素だ。もし水中での損壊評価や修理といった極めて有用なことをするためにソフトロボットのプログラミングにかなりの処理能力と時間を要するなら実際に展開するのは無理がある。

研究チームは将来的には最適化手法の現実世界でのテスト、さらにはソフトロボットのフルスケール開発を望んでいる。

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(翻訳:Mizoguchi)

自動ピザ調理機スタートアップのPicnicが5.4億円を調達

食品生産に特化したロボット工学のスタートアップことPicnic(ピクニック)は米国時間11月19日、追加のシード資金として500万ドル(約5億4000万円)を調達したと発表した。新ラウンドはCreative Venturesがリードし、Flying Fish PartnersとVulcan Capitalも参加した。

Picnicは、Kindle Fireタブレットの最初の4機種を担当し、Nike FuelbandやMicrosoft Xbox、Doppler LabsのHereOneで働いていたプロダクトエンジニアのKennard Nielsen(ケナード・ニールセン)氏を、エンジニアリング担当の新バイスプレジデントとして雇用したことも明かした。新たな資金は製品開発や雇用、マーケティングに使われる。

Picnicは、ピザの自動調理システムを10月にローンチしたことで知られている。現在、この変更可能なモジュール式プラットフォームは、大量のピザの生産に焦点を当てており、18インチのピザを1時間あたり最大180枚、あるいは12インチのピザを最大300枚製造できる。このシステムは、フードトラックやキオスクを含む既存のキッチンのレイアウトに適合し、同社のソフトウェアと統合することでバックエンドのデータとクラウド分析を提供し、一貫性とスピード、食品廃棄物の削減に役立つ。

Picnicは「ロボットサービスの提供」というモデルで運営されており、ユーザーはサブスクリプションにてシステムを購入する。ピザの組み立てシステムの最初の顧客は、大規模なイベント会場に食事とホスピタリティを提供するCenterplateと、ワシントンを拠点とするレストランチェーンのZaucer Pizzaだった。

Picnicは今年6月、以前にBUNN、Concordia Coffee Systems、Starbucks(スターバックス)で働いていた、食品・飲料業界のベテランであるMike McLaughlin(マイク・マクラフリン)氏を製品担当バイスプレジデントに迎えた。

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(翻訳:塚本直樹 Twitter

業界を混乱から救うため、リサイクルロボット企業が17億円を調達

デンバーに拠点を置くAMP Roboticsによって開発されたリサイクルロボットに、投資家たちが1600万ドル(約17億円)という資金を注ぎ込んだことで、ゴミの山から宝を掘り出す問題は、ハイテクなソリューションを見つけつつあるようだ。

リサイクル業者たちにとって、業界の問題に取り組むロボットの商用化は、これ以上ないというほどのタイミングでやってきた。かつて安定していた彼らのビジネスは、貿易戦争と低い失業率によってその足元をすくわれてきたからだ。

かつてリサイクルビジネスは、(中身の質には関係なく)どんな廃棄物でも中国の買取に任せることができていた。しかし約2年前、中国はもはや世界のゴミ捨て場として振る舞うことはやめることを決定し、他の国から喜んで受け取る原材料の種類に対して、厳しい基準を設けた。その結果は、リサイクル施設のコストを押し上げ、今ではゴミをより効率的に分別する必要に迫られている。

また同時に、低い失業率によって、基本的に人間が廃棄物をリサイクル可能な材料とゴミに手で分別しなければならない施設での、労働力確保が厳しいものになっている。

経済的な現実を目の前にして、リサイクル業者たちはAMPの技術に注目している。これはコンピュータービジョン、機械学習、ロボットによる自動化を組み合わせて、施設の効率を改善する技術だ。

trash cans

写真提供:Flickr / Abulla Al Muhairi

それが、同社の最新ラウンドを主導したSequoia Capitalを引きつけたのだ。国際市場のへの展開を睨み、同社は調達した1600万ドル(約17億円)のシリーズAの資金を、製造能力の向上と成長の加速に注ぐ予定だ。

「テクノロジーでリサイクル産業の経済性を変革するAMPと提携できることに大いに興奮しています」と声明で語るのは、SequoiaのパートナーであるShaun Maguire(ショーン・マグワイア)氏だ。「ここ数年の間、業界は労働力不足と商品価格の低下によって利益幅を圧迫されてきました。その結果、業界は積極的にコスト削減の代替手段を探し、より価値の高いリサイクル可能物を回収することで収益を増やす機会を追加てきました。その中でAMPが主要なソリューションとして浮上しているのです」。

この資金は「今後の守備範囲を広げる」ために使われる、と最高経営責任者のMatanya Horowitz(マタニャ・ホロウィッツ)氏は語る。リサイクル施設がバイヤーに出荷できる材料の、分別コストを削減し品質を改善するだけでなく、同社のコンピュータービジョンテクノロジーは、実際にブランドパッケージを識別し、各企業が自社の製品ライフサイクル管理を改善するために使用するのに役立つ。

「私たちは…それがコカ・コーラ缶なのかペプシ缶なのか、それともスターバックスのコップなのかを識別できます」とホロウィッツ氏は言う。「人々がリサイクルのために製品をデザインすることを手伝うことができるように…私たちはレポート機能を開発していますが、それがお客さまから、高い興味を持っていただいています」。

ホロウィッツ氏によれば、ロボット、コンピュータービジョン、機械学習の組み合わせは、リサイクル業界以外にも潜在的な用途があるという。自動車のスクラップと建設廃棄物は、同社がソフトウェアとハードウェアの組み合わせの適用に関心を寄せているその他の分野だ。

一方、中核事業のリサイクル向けは上向いている。10月には、同社はフロリダのSingle Stream Recyclersで14台のロボットの設置を完了した。リサイクル業界で一度に設置されたロボットとしては最大規模であり、人間に比べてより高度な正確性をもち2倍の速さで分別を行うことかできる。それらが、プラスティック、各種ケース、繊維、そして金属などの選別ラインに投入されたと同社は述べている。

AMPのビジネスには、ロボットサービスの提供と直接販売オプションという2つの独立した収益源があり、カリフォルニア、コロラド、インディアナ、ミネソタ、ニューヨーク、ペンシルベニア、テキサス、バージニア、そしてウィスコンシンの各サイトで導入を行っている。

同社がコア事業で追求しているものは、BV、Closed Loop Partners、Congruent Ventures、そしてSidewalk Infrastructure Partners(新しいインフラストラクチャプロジェクトをサポートするテクノロジーに投資する、Alphabet子会社からのスピンアウト)などの初期投資家たちに有効性を認められている。

Sidewalk Infrastructure Partnersで、自社のAMP Roboticsへの投資を主導したプリンシパルであるマイク・デルシア(Mike DeLucia)氏にとって、この取引は、彼の会社が今後資本を投入する予定の場所を指し示している。

「物理的な資産をより効率的に運用できるようにする技術です」と彼は言う。「私たちの目標は、本当にエキサイティングなインフラストラクチャプロジェクトを可能にするテクノロジーを見つけて、それらを支援し、それらと協力して現実の物理的な世界でプロジェクトを提供することです」。

デルシア氏や、投資会社Congruent VenturesのAbe Yokell(エイブ・ヨーケル)氏などの投資家たちは、リサイクルはまだ始まったばかりだと考えている。AMP Roboticの機械学習およびコンピュータービジョンテクノロジーの用途は、リサイクルセンターをはるかに超えた場所に多数考えることができる。

「テクノロジーが都市環境にどのように関わることができるかを考えたとき、1つの適用分野はマシンビジョンです」とヨーケル氏は言う。「(機械学習)ニューラルネットが実際の環境に適用できるようになって、より安価で簡単に展開できるようになりました」。

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(翻訳:sako)

Formlabsが歯科専用の3Dプリンターを発売

今年のCESで3DプリンターのメーカーであるFormlabsに、同社のプリンターを使って、これまでよりも早く安価に義歯を作る初期の実験について話を聞いた。

それから数カ月後、同社はそのコンセプトに深入りしていた。彼らは歯科専用の3Dプリンターを発売し、「Formlabs Dental」という新しい事業部門を立ち上げ、歯科医療に最適の素材を得るためにレジンのサプライヤーを買収した。

重要なのは同社のプリンターが、光造形法(Stereolithography、SLA)を使ってる点。これに対して、3Dプリントという言葉を聞いて誰もが思い浮かべるのが熱溶解積層法(Fused Deposition Modeling、FDM)だ。光造形法はその名のとおり、光、ここでは紫外線レーザーを精密に照射して、ネバネバしていたレジンを目的の形に硬化する。これに対してFDMプリンターは、固形の素材を熱で溶かし、それをグルーガンのようなノズルから押し出して積層して目的の形を作る。SLAは精度が高く、FDMは安くてしかもさまざまな色や性質の素材を使える。

Formlabsはその歯科専用のプリンターをForm 3bと呼んでいる。それは、同社がこの春発売したForm 3の特殊バージョンだ。ただし製造コストは一般的なForm 3よりも約1000ドル高い。でもそのソフトウェアは歯科医療のワークフローに即しており、また教育訓練やサポート、そして修理に代わる新品交換に応ずるためのサービス体系「Dental Service Plan」がついてくる。歯科医は仕事を休めないので、故障時には修理ではなく新品交換で応ずる。3bはまた、歯科用レジンに向けて最適化されているが、それについて同社は詳しく語らなかった。

レジンと言えば、同社は2012年の創業以来レジンのメインのサプライヤーだったSpectraを買収した。買収の条件を同社は公表していないが、買収を機に同社は医療規格のレジンを得るために数百万ドルかけてクリーンルームを作り、FDAにも登録できた。Spectraの既存の顧客は、継続して同社のレジンを購入できる。

同社の新しい事業部門「Formlabs Dental」は、歯科用の新素材の開発と、プリンターを既存の歯科医のワークフローにぴったり合った製品にするための改良にフォーカスする。同社によると、現状ではForm 3bで、クラウン、ブリッジ、透明リテーナー、インプラント施療時の施術ガイド(サージカルガイド)、カスタムマウスガード(オクルーザルスプリント)、そして義歯をプリントできる。

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(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

アディダスはSpeedfactoryを閉鎖してロボットによるシューズ生産から後退

Adidas(アディダス)は、世界規模の流通にかかわる費用をかけた実験を中止した。米国アトランタと、ドイツのアンスバッハにあるロボットによる「Speedfactory」(スピードファクトリー)を、6カ月以内に閉鎖すると発表したのだ。ただしこの技術を、アジアにある既存の人手中心の工場で再利用することを示して、このニュースのうわべを取り繕った。

このロボ工場は、製造プロセスを分散化する戦略の一環として、2016年にアンスバッハ、2017年にアトランタに設立されたもの。それ以前のモデルは、他の多くの産業と同様、労働力と間接費が安い東アジアで製品を生産し、そこから必要に応じて出荷するというものだった。しかしそれでは、ファッションや運動競技と同じほど動きの早い業界にとっては、いかにも遅く、ギクシャクしたものになってしまう。

「現在、当社の製品のほとんどはアジア製であり、それを船や飛行機でニューヨークまで運んでいました」と、アディダスのCMOであるEric Liedtke(エリック・リートケ)氏は、昨年のDisrupt SFで、新しい製造技術についてのインタビューに答えていた。Speedfactoryは、それを変えるためのものだった。「ある種のマイクロ流通センターをジャージーに置くのではなく、ジャージーにマイクロ工場を作って、その場で製造するのです」。

関連記事:Adidasのスニーカーのサプライチェーンが3Dプリントで劇的に変わりオンデマンド化へ

最終的に、これは想定したよりも難しかったことが証明されたようだ。他の業界も含めて、性急に自動化を推し進めるなか、目標を高く置きすぎて、まだ技術が整っていない段階で、できもしないことを約束してしまうことはよくある。

ロボット化された工場は強力なツールだが、早急に構築し、整備するのは難しい。ロボットアームやコンピュータービジョンのシステムをセットアップするには、専門知識が必要となるからだ。ロボットを利用した製造技術は、この分野でも進歩を遂げている。ただ今のところ、標準的なツールを異なるパターンで使えるよう、人間の労働力を訓練するよりも、はるかに難しいのだ。

アディダスのグローバルオペレーションの責任者であるMartin Shankland(マーティン・シャンクランド)氏は、「Speedfactoryは、私たちの製造技術の革新と能力の向上に貢献してきました」と、プレスリリースで説明している。また短期的には、製品を迅速に市場に投入できたという。「それが最初の目標でした」とも言うが、情勢が変化する中、おそらく2016年とは事の運びが違ったものになったのだろう。

「アンスバッハとアトランタでのコラボレーションが終わってしまったことを、非常に残念に思います」と、シャンクランド氏は言う。アディダスに協力したアンスバッハ拠点のハイテク製造技術パートナーのOechsler(オークスラー)も同じように感じている。「Oechslerでは、アディダスがSpeedfactoryでの生産を中止する事情は理解していますが、この決定を残念に思います」と、同社のCEOであるClaudius Kozlik(クラウディウス・コツリック)氏は、プレスリリースで述べている。これらの工場は4月までに閉鎖し、そこで働いていた160人程度の労働者は、失職または配置転換される。ただし、両社は引き続き協力関係を維持することにしている。

同じプレスリリースでアディダスは、来年から「Speedfactoryの技術を利用して、アジアの2つのサプライヤーで、アスリート用のフットウェアを製造する予定です」と述べている。それが正確に何を意味するのかよく分からないので、同社にはさらなる情報の提供を求めている。

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(翻訳:Fumihiko Shibata)

MITの最新ロボ「ミニチーター」がはしゃいで転んでひっくり返ってサッカーで遊ぶ

MITのバイオミメティックス・ロボティクス(Biomimetics Robotics=生体模倣ロボット工学)部門は、グループデモのため、新しい「ミニチーター」ロボットの群れをキャンパスに連れ出した。これはロボット技術の最新の状況を確かめる、またとない機会となった。

MITの学生たちは、9匹の犬サイズのロボットの動作を連携させ、協調運動、宙返り、落ち葉に埋もれた状態からの飛び出し、はてはサッカーまで、いろいろな活動をさせている。

ミニチーターの重量は、わずか20ポンド(約9kg)しかない。そのデザインは、今年初めにMITの機械工学部のロボット開発者チームによって公表されていた。このミニチーターは、「チーター3」の縮小版となっている。チーター3は、ずっと大きく、かなりの製造コストがかかるロボットで、ミニチーターほどの敏捷性はなく、カスタマイズ性にも劣るものだった。

ミニチーターは、既製の部品によって組み立て可能なレゴのようなものを目指して設計された。耐久性と比較的低コストであることも重視されている。正しい向きではもちろん、上下逆さまになっても歩くことができる。中でも最も印象的な運動能力は、静止状態から完璧な後方宙返りができることだろう。また、最大時速5マイル(約8km/h)で走ることも可能だ。

このロボットに取り組む研究者は、5月に最初のバージョンをデモした後、チーターの群れを作るための開発に着手した。最近では、MITの他のチームに群れごと貸し出し、協力してさらなる研究に取り組んでいる。

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(翻訳:Fumihiko Shibata)

Amazonがボストンに工費約43億円超のロボット研究・製造センター建設へ

Amazon(アマゾン)は工費4000万ドル(約43億7000万円)、3万2500平方mあまりのロボティクス・イノベーション・センターを米国マサチューセッツ州ウェストボロに建設すると発表した。この施設は2021年にオープンし、テクノロジーおよび高度な製造業務に関する職200あまりを提供する計画だ。

施設はオフィス、R&Dラボ、製造工場を含む。Amazonによれば、マサチューセッツ州ノースレディングの既存の Amazonロボティクスサイトを拡充するものだ。

Amazonのロボティクス・テクノロジー責任者であるTye Brady(タイ・ブレイディ)氏によれば新しいセンターはAmazonが引き続きロティクスに力を入れていくことを可能にするものだという。「これはチームが一丸となり同じ場所でロボットのデザイン、プログラミングからハードウェアの製造まで一貫して実行できる世界トップクラスのセンターだ。このハブの建設により世界中の顧客に対して、イノベーションから製品出荷までのサイクルが大幅に短縮、効率化される」とブレイディ氏は声明で述べた。

Amazonはすでに2012年に7億7500万ドルでKiva Systemsを買収し、ロジスティクス作業を行うロボットの市場に本格的に参入した。KivaはAmazon Roboticsと改名された。2012年以後、ロボット市場はさらに拡大し、これまでに同社は20万台のロボットを世界のフルフィルメントセンター、 50か所以上に出荷しているという。

Amazonはこれまでもマサチューセッツ州に各種の施設を建設してきた。Amazonの発表によれば、2011年以降、30億ドル以上を投資し4000人以上のフルタイムの職を作り出したという。ウェストボロはボストンから56kmほど離れた郊外だ。

画像:Getty Images

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(翻訳:滑川海彦@Facebook

ロボットアームの動きは適度に遅いほうが不気味の谷現象を防げる

ロボットアームは空中に投げた物でもつかめるほど速く動けるが、でも実際にそうすべきだろうか?Disney Research(ディズニー研究所)が行った実験によると、ロボットを操作している人間を不安がらせないためには、そこまですべきでない。同研究所のロボット技術者たちは、人間が正常と感じるためにはロボットの反応時間を遅くした方がいいことに気づいた。

ディズニーはもちろん、何十年も前からロボットに関心があり、そのテーマパークにおけるオートメーションは世界でもっとも有名なロボットの一部だ。でもそれらのロボットには、人間と直接対話する機会がほとんどない。そこで同社の研究所は一連の研究プロジェクトにより、安全でしかも不気味ではない、ロボットと人間の共存を研究してきた。

今回の研究テーマは、ロボットに物を手渡すとき、怖がらずに自然にそれができるためにはどうするかだ。もちろん、人間がチケットや空のカップなどに手を伸ばしたとき、ロボットが電光石火のスピードで間髪をいれずそれらをつかみ取ったら、危険であるだけでなく人間は恐怖を感じるだろう。

関連記事:投げられたラケットなどもキャッチできるスーパー・ロボットアーム登場

そこで、この場合の、擬人化された猫に取り付けられているロボットアームは、正常な人間の速さで動く。しかし、でも、いつその腕を伸ばすべきか? 実験で分かったのは、人間は自分に何かが手渡されようとしていることの認識に1秒を要し、その後手を伸ばしてそれをつかむ。コンピュータービジョンのシステムなら、物を認識して手を伸ばす動作がもっと速いが、それは人間が見ると奇妙に感じる。

研究者たちが行った実験では、ロボットが人間からリングを受け取るスピードや遅延を三種類に変えてみた。

ロボットの手の動きが速いと、人間はそれを「温かみがなくて不快」と感じた。遅い速度が一番好評だった。ロボットの手の動きに初動時の遅延がないと、それも人間にとっては不安だった。ただし遅延が長すぎると、やはり不安が生じた。

誰かの手が自分のほうへ伸びてきて自分の手から何かを取ろうとするときには、そのための快適な間合いがあることがわかった。その動きはある程度遅いほうが良い。適度に遅くてしかも遅すぎないことが、人間らしさを感じさせる。

この手渡しシステムは、米国時間11月7日に発表される研究論文に詳しく説明されている。実験はしっかりとした日常的環境で行われ、物の動きや予期せざる力などもある。ディズニーワールドのカフェでおしゃれキャットのロボットが、あなたの手からマグを取り上げるようになるのはまだ先の話だが、でもそのロボットの手の動きが人びとを怖がらせるほど「目にも止まらぬ速さ」ではないことは、これで確実になった。

画像クレジット: Disney Research

参考記事: 不気味の谷現象

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(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

デリバリーロボが地図なしで配達先のドアを自力で見つける方法

MITの研究者が開発した新しい行路発見方法は、さまざまな業界で客先まで物を届けなければならないロボット、いわゆるデリバリーロボットにとても役に立つ。彼らが考案したのは、前もって地図が与えられていなくてもロボットが客先の入り口のドアを見つける方法だ。

今ある自走デリバリーロボットの多くは、Starshipが開発してその後Postmatesなど多くの企業が採用した、車輪付きクーラーボックスタイプも含めて、顧客が外の路上に立っていなければならない。しかし未来のデリバリーロボットが自力でドアまで辿り着くためには、人間の配達員と同じく詳細な地図的能力(マッピング能力)だけが問題ではない。

MIT Newsによると、正確に客先のドアまで行けるためにご近所全体のマッピングができる能力は、それを全国レベルあるいは全世界レベルで実現しようとすると非常に難しい。それは一般的に難しいだけでなく、個々のユーザー企業の特殊性に合わせたマッピング能力ともなると桁違いに難しい。そこで研究者チームは詳細なマッピング方式を諦め、ロボットが現場で周囲の情報を処理してドアの場所を見つける方法を考えた。

これは、SLAM(Simultaneous Localization And Mapping)と呼ばれる方法の変形だ。MITのチームはちょっとした工夫により、ロボットがまわりの物を見つけてそれにラベルを付けていくセマンティックマップではなく、「前進するコスト」のマップというものを考案した。それは、訓練用の地図から得られたデータを使ってロボットが自分の身の回りのヒートマップを作る。そしてその色分けマップの中に「いちばん正面ドアらしいもの」を見つけ、そこへの最も効率的な経路を割り出す。

私たち人間も、初めて訪れる家では「家の正面ドアとはこんな形をしていて壁のどこそこにあるものだ」という過去の知識に基づいて入り口のドアの所在を判断する。MITのデリバリーロボットは、それと似たことをする。それはどちらも思考力を使わない直感的な判断だ。

ロボットが既存の地図に頼らずにAI的な能力で自分の周囲の環境を判断できることには、今後いろんなユースケースがありうる。でも商用のユースケースとして今のところいちばん需要が大きいのは、デリバリーロボットだろう。

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(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

MITのブロック型ロボットは相互通信によって集団行動

MITのComputer Science and Artificial Intelligence Laboratory(コンピューターサイエンスと人工知能研究所、 SAIL)が考案したこのキューブ状のロボットは、自力で移動し、お互いとコミュニケーションして協調しながら自分たちを何らかの構造物へ組み立てる。その振る舞いをMITの研究者たちは蜂の巣作りみたいだと述べた。ビデオを見るとその様子がよく分かる。


このキューブ状のロボットは平らな面の上を転がったり、お互いの上や向こう側に行ったり、短い距離をジャンプしたりする。そして最近の改良で簡単なコミュニケーションができるようになった。固有のバーコードを自分のIDとして持っているので、互いに個体を同定できる。16のブロックが自分のコミュニケーションシステムを使い、自力で動き回って仕事をする。主な仕事はさまざまな形状を作ることだが、矢印や光線に従うこともできる。

今の彼らにできることはごく限られているが、研究者たちが夢見ているのは、このような自己組み立て型ロボットが、災害時などに自力で橋や傾斜路や階段などになってくれることだ。それにもちろん、もっと世俗的なアプリケーション、例えばゲームなどに応用しても面白いと彼らは感じている。

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(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

人間の動きと連動してバランスを保つパシフィック・リム的ロボ

人間の手を介さずに作動する自律型ロボットは注目を集めているものの、実用化にはまだ距離がある。 例えば、二足歩行ロボットが倒れるのを防ぐには人間並みの俊敏な反射が必要になる。では人間は正確にいってどんな反射運動をしているのだろう?これが現在研究者の実験の重要なテーマとなっている。

人間が二足歩行である以上、その環境内で動き回るにはロボットも二足歩行が適している。しかし四足歩行や車輪移動のロボットよりも転倒や落下をしやすい。直立状態を維持するためには高度なアルゴリズムが必要だが、状況によってはアルゴリズムだけでは不十分だ。

MIT(マサチューセッツ工科大学)とイリノイ大学シャンペーン校では、人間とロボットのハイブリッド・システムを研究している。読者は「パシフィック・リム」、あるいは「ヱヴァンゲリヲン」、「ロボ・ジョックス」を思い出すかもしれない。

「なるほどパシフィック・リムはSFだが、ハイブリッドシステムの必要性は高い」と共同研究者のMITのSangbae Kim(キム・サンベ)氏、イリノイ大学のJoão Ramos(ジョアン・ラモス)氏は説明する。イリノイ大学のプレスリリースでラモス氏はこう述べている。

「このロボットを開発した動機は、2011年の日本の東北大地震による災害の状況を見たことだ。例えば、災害発生直後にロボットが原子力発電所に入ることができたら事態は異なっていただろうと我々は感じた」。

製作されたロボットはLittle Hermesという小型の二足歩行ロボットだ。感圧板の上に立って感圧フィードバックベストを身に着けた人間のオペレーターの動きと連動し、インプットを受け取る。ベストは双方向に力のかかり方を伝えることができる。

hermesロボットの動作は操縦者の動きに従うが、必ずしも人間の動作に1対1に対応しない。ロボットは人間よりも小く、重心の動き方も異なるからだ。しかし力学的に動作を解釈するとほぼリアルタイムで求められた動作をする。下のビデオとMITの記事でもう少し詳しくわかるはずだ。

ロボットが予期しない傾斜や障害物に遭遇した場合、そうした力はベストを介して人間のオペレータに伝えられる。 オペレーターは左向きの傾きを感じたら人間の二足歩行能力を生かし、反射的に体勢を安定させる方向に踏み出す。ロボットも同じ動作を行い自らを安定化させる。

このフィードバックループにより、災害現場でのレスキューロボットやその他困難な環境でのロボットの動作の信頼性が高まるはずだ。研究チームは、Little Hermesの脚と同様のフィードバックシステムを腕や手にも適用することでロボットの能力向上を図ろうととしている。

論文はScience Roboticsに掲載されている。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook

自動運転車からは見えない歩行者を影で予見するシステムをMITが開発

どの点を見ても自動運転車の能力はまだ人間ドライバーを超えてはいない。でも、最終的には自動運転車に搭載された技術が、コーナーの向こう側を見るなど人間には推測すらできないことをやってのけるかもしれない。この件については、何年も前から研究開発が進められているが、MITの最新システムは既存技術を使って低コストで、まるで手品のようなワザをやり遂げる。

Toyota Research Institute(TRI)が支援しているMITの研究プロジェクトが、影の微小な変化からコーナーに何か動くものが入ってくることを予見するシステムを作った。それは自動運転車で使えるだけでなく、同じスペースで人間と一緒に仕事をするロボットにも役に立つ。例えば、病院のお手伝いロボットなどだ。

そのシステムは汎用の学式カメラを使い、コンピュータービジョンの一連のテクニックで光の強さや密度の変化をモニターして、影が動いているものの影か、静的なものの影かを判定する。そして動いているものなら、その道筋を予測する。

これまでのテストでは、この方法はカメラではなくLIDAR(ライダー、レーザーによるセンシング技術)を利用する既存のシステムよりも有能だった。もちろん、LIDARはコーナーの向こう側を予見できない。コーナーの向こう側から何か動くものがやってくることの検出では、このMITのシステムがLIDARを使ったシステムより0.5秒早かった。自動運転車の世界で0.5秒は十分に長い時間だ。事故を起こすと避けるの違いにも結びつくだろう。

目下、この実験は屋内で行われていて、コーナーの向こうからやってくるものの速度はそんなに速くないし、光は都市の本物の屋外のように激しい変化がない。だから実用化までには、研究者たちの課題がまだ山のようにたくさんある。でもうまくいけば未来の自動運転車は、路上の歩行者や自転車やほかの車に、十分敏速に対応できるようになるだろう。

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(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

NASAが月の南極の地表下で結氷水を探すVIPER探査車を2022年に打ち上げ

NASAは月に、黄金のように貴重な液体を探している。それは石油ではなく、ごく普通の水だ。水が恒久的にあれば我々にとっても必要だから、それを知ることはきわめて重要だ。そこでNASAは、VIPER(バイパー)と呼ばれる探査車を月の南極へ送り込もうとしている。それは1972年以来最も長期の月面ミッションになる。

VIPERは、Volatiles Investigating Polar Exploration Rover(揮発性物質調査用極地探検探査車)の頭字語で、計画では2022年12月に月面へタッチダウンする。そのミッションは、極地域の恒久的に影の部分に水の存在を直接目撃して、その量を求めること、だ。

月のその年中暗い部分は、何百万年もかけて氷結水を集めてきた。陽が当たらないので、溶けないし蒸発もしない。NASAはすでにこれまで、一般的な領域で探針を地表下に差し込み、結氷水の存在を確認したが調査としての精度は低い。ロボットを送って正確な測定をすべきだ。

VIPERはゴルフカートぐらいの大きさで、探査用の機器を積んでいる。その中のNeutron Spectrometer System(中性子スペクトル分析システム)が、地表下の水を見つける。それに関してはNASAのアドミニストレーターであるJim Bridenstine(ジム・ブリデンスティン)氏が昨日、少し言及している

関連記事:NASA Administrator Jim Bridenstine explains how startups can help with Artemis Moon missions(人間の月滞在事業にスタートアップも貢献できる、未訳)

VIPERが水の上に来ると、TRIDENT(The Regolith and Ice Drill for Exploring New Terrain、新たな地質構造を探求するための表土と氷用ドリル)が展開される。それは文字どおりTrident(三叉鉾)のようだが今週出会った最高の頭字語だ。そのドリルは長さが1mで、スペクトロメーター(分光器)が月の土壌を分析するための試料を掘り取る。

試料採掘とスペクトル分析を大面積にわたって行うと、地表下の水の所在を地図に落とし、大きなパターンを掴めるだろう。月の上の、人間が大好きな物質の存在をもっと体系的に理解できるかもしれない。

waterhunt

探査車VIPERがマップした月の表面下の結氷の視覚化

トップの画像でおわかりのように、この探査車は目下開発途上だ。まだ、その動き回る部分をテストしているにすぎない。それは探査車本体の一番肝心な部分だけど。

月の南極の陽が射さない部分でのミッションだから、ソーラーパネルなどはなく今回積む電池で100日しか仕事できない。しかしそれでも、米国が月面で過ごした日数の記録を更新する。最近の数年間で大量の探査車を月面の至るところに展開した中国の場合はどうだろうか。

おもしろいことに、この探査車の展開は外部契約プロジェクトであるCommercial Lunar Payload Services(月面商用荷重サービス)の一環だ。つまりこのペイロードサービスに参加するどこかの企業がたぶん、VIPERを軌道から月面へ着地させる着陸船を作るのだ。打ち上げが近くなれば、もっと詳しい記事を書けるだろう。

関連記事:NASA calls for more companies to join its commercial lunar lander program(商用月面着陸船に多くの企業の参加をNASAは求む、未訳)

画像クレジット: NASA

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(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

Spheroがロボティック学習用のSTEMキットRVRを発売

100万ドル(約1億円)もの資金を集めた今年初めのクラウドファンディングキャンペーンを経て、Sphero(スフィロ)からSTEM/STEAMキットRVRが発売された。米国コロラド州に拠点を置く同社初のKickstarterキャンペーンの一環として2月に発表されたRVRは、あらゆる点でこれまでのSphero製品とは少し異なる。

まずはじめに、Orbotix以来、同社のプロジェクトの大半がリモートコントロールのボールデザインだったが、今回はそうではない。RVRは四輪システムで、それにも増して教育にフォーカスしている最近の動向に沿って、子どもがPythonやJavaScriptのようなランゲージを学習するのをサポートする。

RVRはまた、ロボティックスの基礎を教えるようなものになっている。しかしSpheroが記しているように、それでもRVRは箱から出してわずかな組み立てをすれば走らせることができる。加えて、ユーザーは同社が最近買収したlittleBitsのプロダクト、そしてRaspberry PiやArduinoのようなサードパーティーのボードをUSBポートを通じて搭載できる。

「今年初めにKickstarterでRVRを立ち上げたとき、反響の大きさに驚いた」と共同創業者でクリエイティブ責任者のAdam Wilson(アダム・ウィルソン)氏はリリースで述べた。「メーカー、デベロッパー、そして教師といった人たちが、実際にRVRを手にする前にキャンペーンが成功するようRVRに群がった。RVRはあらゆる年代、そしてあらゆるコーディング能力の人たちにアピールできている。人々がRVRで作るものを見るのが楽しみだ」。

RVRはSpheroのオンラインショップといくつかの小売店で販売されていて、価格は250ドル(約2万7000円)からとなっている。

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(翻訳:Mizoguchi)

MITがロボットが物体を扱う時間を大幅に短縮する方法を開発

モノを手に取るのは簡単なことのように思える。でもそれは、手に取るために必要なすべてのことを即座に、直感的に理解できる強力な脳を持つ人間にとってのこと。ロボットの場合、進化したロボットであっても、驚くほど複雑な計算をしなくてはならない。壊さないようにつかむなら、なおさらだ。

MITは、ロボットがどう物体をつかむかを決定する時間を短くする新しい方法を開発した。現在10分以上かかっているものが1秒以下と「驚くほど」速くなるという。これは桁違いの高速化であり、人間が反応して対応する時間に近くなる。

これが実現すれば、工業分野などロボットがすでに使われている場所では実際に大きなメリットとなる。この研究チームの方法では、ロボットはオブジェクトを動かない面に押し付けることで、どう扱うかを決めるプロセスを大幅にショートカットする。工場や倉庫でのロボットの用途として一般的なピッキングや並べ替えに応用できるだろう。

MITはこの技術について、ロボットが「複雑な道具」をうまく扱えるようにするためにも活用でき、さらに高度な関節があるロボットマニピュレーターだけでなくシンプルなグリッパーにも有効だろうとしている。

このモデルの有効性を実証するために、研究チームはロボットのグリッパーにT型のブロックを持たせ固定された垂直方向のバーに向かって押す実験をした。結果は仮想モデルのとおりになり、ロボットはつかんだブロックを操作してタブレットの上に立てることができた。これは従来の方法では500秒以上かかっていたが、この方法では1秒かからなかった。

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(翻訳:Kaori Koyama)