ロボットアームの動きは適度に遅いほうが不気味の谷現象を防げる

ロボットアームは空中に投げた物でもつかめるほど速く動けるが、でも実際にそうすべきだろうか?Disney Research(ディズニー研究所)が行った実験によると、ロボットを操作している人間を不安がらせないためには、そこまですべきでない。同研究所のロボット技術者たちは、人間が正常と感じるためにはロボットの反応時間を遅くした方がいいことに気づいた。

ディズニーはもちろん、何十年も前からロボットに関心があり、そのテーマパークにおけるオートメーションは世界でもっとも有名なロボットの一部だ。でもそれらのロボットには、人間と直接対話する機会がほとんどない。そこで同社の研究所は一連の研究プロジェクトにより、安全でしかも不気味ではない、ロボットと人間の共存を研究してきた。

今回の研究テーマは、ロボットに物を手渡すとき、怖がらずに自然にそれができるためにはどうするかだ。もちろん、人間がチケットや空のカップなどに手を伸ばしたとき、ロボットが電光石火のスピードで間髪をいれずそれらをつかみ取ったら、危険であるだけでなく人間は恐怖を感じるだろう。

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そこで、この場合の、擬人化された猫に取り付けられているロボットアームは、正常な人間の速さで動く。しかし、でも、いつその腕を伸ばすべきか? 実験で分かったのは、人間は自分に何かが手渡されようとしていることの認識に1秒を要し、その後手を伸ばしてそれをつかむ。コンピュータービジョンのシステムなら、物を認識して手を伸ばす動作がもっと速いが、それは人間が見ると奇妙に感じる。

研究者たちが行った実験では、ロボットが人間からリングを受け取るスピードや遅延を三種類に変えてみた。

ロボットの手の動きが速いと、人間はそれを「温かみがなくて不快」と感じた。遅い速度が一番好評だった。ロボットの手の動きに初動時の遅延がないと、それも人間にとっては不安だった。ただし遅延が長すぎると、やはり不安が生じた。

誰かの手が自分のほうへ伸びてきて自分の手から何かを取ろうとするときには、そのための快適な間合いがあることがわかった。その動きはある程度遅いほうが良い。適度に遅くてしかも遅すぎないことが、人間らしさを感じさせる。

この手渡しシステムは、米国時間11月7日に発表される研究論文に詳しく説明されている。実験はしっかりとした日常的環境で行われ、物の動きや予期せざる力などもある。ディズニーワールドのカフェでおしゃれキャットのロボットが、あなたの手からマグを取り上げるようになるのはまだ先の話だが、でもそのロボットの手の動きが人びとを怖がらせるほど「目にも止まらぬ速さ」ではないことは、これで確実になった。

画像クレジット: Disney Research

参考記事: 不気味の谷現象

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(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

この顔認識システムは、映画の観客が喜んでいるかどうかを追跡する

映画制作がアートと同じくらいサイエンスになってきた今、映画会社は観客の反応を測定するためにかつてない方法を必要としている。喜んでくれたのだろうか? どのくらい…正確には?42分の時点で? カリフォルニア工科大学とDisney Researchは、表情認識ニューラルネットワークを使って、観客の反応を知り、予測しようとしている。次世代のニールセンレーティングの基盤になるかもしれない。

この研究プロジェクトは、ハワイで行われたIEEEコンピュータービジョンおよびパターン認識会議で発表され、劇場での表情を確実かつ比較的簡単にリアルタイムで追跡する新しい方法を演示した。

認識には、factorized variational autoencoderと呼ばれるものを使う。数学的背景は説明しようとも思わないが、動きのある表情のように複雑なものの本質を抽出することに関して、従来の方法よりも優れている。

研究チームは映画(もちろんDisney作品)を見ている観衆を録画することで、大量の表情データを収集した。高解像度赤外線カメラで観客の動きと顔を撮影し、得られたデータ(約1600万個のデータポイント)をニューラルネットワークに送り込む。

システムの訓練が終わったら、映画を見ている観客をリアルタイムで追跡して、様々な時点で見せる表情を予測する。研究チームによると、システムが観衆に慣れるのに10分ほどかかり、その後は笑いや微笑みを確実に予測できるようになるという(泣き顔や恐怖はまだ追えていないようだ)。

もちろんこれは、この種のテクノロジーの応用例の1つにすぎない ―― 群衆の監視や、その他の複雑なデータをリアルタイムで解釈する場面にも適用できるだろう。

「人間の行動を理解することは、行動的社会的に優れた知識を持つAIシステムを開発する上で基礎をなす」と同大学のYisong Yueはニュースリリースで言った。「例えば、高齢者を見守り世話をするAIシステムを開発するには、ボディーランゲージのわずかな動きを捕らえる能力が必要だ。人間は不満足であったり問題を抱えていることを明示的に言うとは限らないのだから」。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

Disney Researchが考案したリアルタイムのモーションキャプチャーシステムはできるだけ少数のセンサーしか使わない

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本格的なモーションキャプチャーは、大量の光学マーカーや内部のセンサー、あるいはその両方を使う。組み立ても分解もたいへんだし、膨大な量のデータを作り出す。Disney Researchのこのプロジェクトは、体の動き方に関するお利口な想定を利用して、わずかばかりのセンサーを使用し、高品質な結果を作り出す。

研究者たちは、ありとあらゆるものがセンサーの理想的な数と配置の邪魔をすることに気づいた。マーカーや衣装、粗悪な照明なども邪魔をする。そこで彼らは、それでもなおかつ良質なリアルタイムの結果を作り出す、最小限のシステムを提案している。

彼らのシステムでは、慣性ユニットが両手、両足、頭と尾てい骨、計6つある。同じ場所に光学マーカーがあり、計測された相対的動きを、参照カメラが見た絶対位置に関連付ける。

とても少ないセンサーでうまくいくのは、送られてくるデータを、体の動きを多少知っている物理モデルに入力するからだ。マーカーの位置と、検出した力に基づいて、“物理的に正しい”位置と動きを計算し、それをさらに、既知の動き、関節の位置、および姿勢と照合して、おかしな情報でないことをチェックする。

だから、センサーは、肘は後ろに曲がらない、とか、膝はそんなおかしなねじれ方をしない、と言ってくれなくても、システムは体のシミュレーションに基づいて、それはありえないと判断できる。トップの静止画像では、青い男はセンサーの正規の組み合わせが作り出した地上真実(ground truth)だ。緑の男はモデルが計算したもの。そして黄色の男は、各コマを“動き優先(motion priors)”で捉えたもので、ときどき全然おかしくなる。

研究者たちが提案している最小のセットアップとリアルタイムのフィードバックは、モーションキャプチャーや仮想現実で役に立ちそうだ。Kinectやヘッドセットのセンサーが捉える体の動きは、多くの点で限界がある。でもそれらを、50の部分から成り、計算に1時間を要するシステムでリプレースすることはできない。プレーヤーが、全身を覆う完全なボディースーツを着るわけにもいかない。でも伸縮性のバンド2本にセンサーが付いてるだけなら、着脱は容易だし、日常的なVRアプリケーションには十分以上の良好な結果が得られるだろう。

このシステムを記述している論文は今日(米国時間12/12)、ロンドンで行われたConference on Visual Media Productionでプレゼンされた。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))

ディズニー・リサーチ、RFIDタグを使って電池不要の低価格対話型コントローラーを開発

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Disney Researchは、古くて楽しいしかけを生かすのが得意だが、今回は市販のRFIDタグの新しい用途を見つけた。カーネギーメロン大学の研究者の協力を得て、 Disneyの研究部門はRFID信号を低遅延処理する方法を発見し、タグを使って安価な材料から電池不要の簡単なワイヤレス対話型制御システムを作れるようにした。

RapID(”rapid”と発音する)システムは、あらゆる種類の低価格な対話型玩具に利用できる。同様の機能は、スマートブックにも比較的安く組み込めるだろう。

このシステムは、受動的で外部リーダーの電源を利用するRFIDシステムの、興味深い利用方法を可能にする。RFIDは遅延が大きく追跡精度も低い。RapIDのフレームワークは、2秒の遅延時間を、200ミリ秒というはるかに実用的なレベルまで減少させる。

「われわれのアプローチでは、確率的フィルタリングレイヤーに、モンテカルロサンプリングに基づく対話レイヤーを組み合わせることによって、タグ読み取りの不確定性を、対話のコンテキスト内で解決されるまで保持する。こうすることで、設計者は入力を高いレベルで推測するコードを書くことができる」とDisneyは説明した。

このシステムが、複雑なゲーミングシナリオでも同じ効果を発揮できるかどうかはわからないが、ビデオのデモを見る限り、三目並べや、Pongゲームでは、確実にうまくいっているようだ。

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ディズニー、どこにでも付くスマホ用マウントを作るシステムを発明

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DisneyのReseach Hubは、インターネットで一番好きな場所の一つだ。新しく公開されるビデオはいつも、(利用場面は)直ちに理解可能で、しかし(実現方法は)非常に複雑だ。

彼らがつい最近デモしたこのソフトウェアを見てほしい。ユーザーは3Dプリンターを使ってほぼどんなもの(携帯電話、コントローラー、ティーカップ等)でも、ほぼどんな場所(デスク、車、ギター)にでも付けられるマウントを作ることができる。

なぜこれが重要かって?

それは、もし3Dプリンティングが一般大衆にとって意味のあるものになるとすれば、2つの巨大なハードルを越える必要があるからだ:まず、殆ど使い道のないプラスチックのガラクタ以上の物を作る(例えばVolteraのような電子回路基板)。そして、今よりはるかに利用しやすくなる。3Dプリンターを使うだけのために、誰もCAD/Blender/等々の使い方など勉強したくない。

こんなソフトウェアがあれば、「このテーブルとこの携帯電話がある。マウントを作ってくれ!」と言えば、その通りのことを起きる。モデリングも、自分のスマホで本当に使えるかどうかわからないマウントをThingiverseで探しまくる必要もない。

あるいは、「私はこのティーカップを持っていて、これをギターにマウントしたい。なぜ?質問などするな、コンピューター!だまって作れ」と怒鳴ると、まるでプラスチック射出魔術師になったかのように、天空から降ってくる。

こいつはすごい。

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ディズニーのエンジニアが歯車と棒だけで動物の動きが驚くほど自然に再現できるデザイン・ソフトを開発

歯車で人形を動かす技術は何世紀も前から存在するが、ある種、秘密の職人芸として伝えられてきた。人間や動物そっくりに動作するメカニカルな仕掛けをデザインすることは難しいが、歯車と連接棒だけでそれを実現するとなるといっそうハードルは高くなる。

機械仕掛で動く人間や動物の人形のファン向けにディズニーのエンジニアのチームが驚くべきシステムを開発した。このソフトウェアでデザインすれば3Dプリンターと金属棒だけで自然な動きをする人形が作れる。その動きは昔のチェス人形などとは比べ物にならない。

このデザイン・ソフトウェアを利用すると作成しようとする人形のサイズに合わせてさまざまな歯車の組み合わせが選択できる。その結果、放物線、楕円その他、一見まったくランダムに思えるような多様な曲線運動が実現する。デザイン・チームによれば

デザイナーは動かそうとする部本のデザインを入力し、続いていくつかの点を指定して、それぞれのの大まかな動作曲線を描く。ソフトウェアはデータベースからその動作を実現するもっとも近い歯車と連接棒の組み合わせを提示する。デザイナーはその後シミュレーション機能を用いて修正を加え、所望の動きを正確に実現するメカニズムを完成することができる。

コンピュータ上でデザインが完成すれば、後で回転の途中で部品が衝突して動きがつかえたりすることはない。データにもとづいて3Dプリンタで人形の各部や歯車などを出力する。つまりソフトウェアがデータベースに蓄積しているさまざまな動作のパターンを利用して、新しい人形とその動きを容易にデザインすることができるわけだ。チューリッヒとボストンのDisney Research、チューリッヒ工科大学、MITのコンピュータ科学と人工知能ラボがこのプロジェクトで協力した。このシステムは柔軟な素材を用いればクラゲのようなぐにゃぐにゃした生き物の動きを再現するのにも用いることができる。

3Ders

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(翻訳:滑川海彦 Facebook Google+