建設現場用スキャンロボ開発するバルセロナ拠点のScaled Roboticsが2.4億円超を調達

産業用ロボットは高価だが、建設現場の作業ミスはもっと高くつく。ビルの建設では数ミリの誤差が積み重なって寸法が合わなくなり、修正に莫大なコストと時間がかかるという事態が起きることがある。建設作業のモニターがロボティクスの大きなターゲットになっているのはそうした理由からだ。数多くのスタートアップがこの新たなフロンティア市場に参入しようと努力を続けている。.

先ごろTechCrunchがベルリンで開催したスタートアップイベントのTechCrunch Disruptのピッチコンテスト「Startup Battlefield」の優勝者でスペインのバルセロナに本拠を置くScaled Roboticsもその1社だ。米国時間2月3日、同社はシードラウンドで200万ユーロ(約2億4200万円)のベンチャー投資を受けたことを発表した。今回のラウンドは、Norwegian Construct VentureとPropTech Fund Surplusがリードした。同社はこれ以前に100万ユーロ(約1億2100万円)のプレシード資金を調達している。

ロボティクス事業への投資のうち、最近大きな部分を占めるようになったのが建設作業だ。昨年あたりから、Built、Toggle、Dustyなどのスタートアップがベンチャーラウンドで投資を受けている。大手のBoston Dynamicsも小型4脚ロボットのSpotにLIDARセンサーを搭載し、商用ロボットとして多様な作業に対応できることをアピールしているが、建設現場もターゲット分野の1つだ。

Scaled Roboticsのロボットは4輪式だが姿勢が低く安定している。上方に伸びた首部分にはレーザースキャナとカメラが搭載され、SLAMテクノロジーにより自動的に建設現場の3Dマップを作製し、設計図をベースにしたモデルと照合し差異がないかチェックする。誤差はセンチ単位で記録される。ロボットは移動能力が高く、さまざまな場所に自走可能だ。現場作業員はこれまでのように三脚にレーザースキャナーを載せた重いツールを担いで歩き回る必要がなくなる。

共同創業者でCEOのStuart Maggs(スチュアート・マグス)氏は資金調達を発表したプレスリリースで「Scaled Roboticsが開発したこのロボットは建設現場の状態をリアルタイムで詳細に記録できるだけでなく、その現場に関連する情報および進捗状態に関する情報を一元的に保存するデータベースとしても活用できる。世界の13兆ドル(約1424兆円)の建設市場においてこのプロダクトはこれまで不可能だったようなリスク管理、安全性の向上に役立つカギとなるというビジョンを抱いている。Surplus InvestとConstruct Ventureという有力な投資家がロボティクスと人工知能により建設現場を変革するというわれわれのビジョンを共有して今回のラウンドが実現できたことは非常にうれしい」と述べた。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook

その場で購入できるインタラクティブ動画を5分で作成できるClideo

スペインのClideoは、インタラクティブなオーバレイを使って動画から直接買い物できるようにすることで、企業はよりスマートに消費者へリーチできるようになるという。

元Ki Groupの役員であり、イタリアのKPMGで合併や買収に携わったこともあるCEOのMichele Mazzaro(ミケーレ・マザーロ)氏は、動画には解決すべき大きな問題があると気づいた。「今のデジタルメディアでは、企業は多くの人とコミュニケーションできていない。大量のバナー広告やプリロール(本編開始前広告)やミッドロール(本編の途中広告)を視聴者に投げつけるだけだ。一人の消費者としても、この状態は好ましいものではない」という。

そこでマザーロ氏と共同創業者のNitzan Mayer-Wolf(ニッツァン・メイヤー-ウルフ)氏およびAndrea Iriondo(アンドレア・イリオンド)氏は、「どんな動画も発見の体験に変える」とマザーロ氏が呼ぶものを制作した。そのプロダクトは米国時間12月10日、Disrupt BerlinのStartup Battlefieldでプレゼンされた。

インタラクティブな動画と言ってもClideoは、EkoやNetflixが配信したBlack Mirror(ブラックミラー)の特別編「Bandersnatch」(バンダースナッチ)のような本編からの分岐ではなく、よくある動画に登場する製品を軸としており、その製品を買えたり、欲しい物リストに入れたり、ソーシャルメディアでシェアしたりする新機能が追加される。

マザーロ氏は「こういう機能があれば、企業はその製品に強い関心を持つオーディエンスがどんな人たちかを知ることができる」と主張する。「動画の予算をゴミ箱に捨てるのはやめて、消費者がポジティブな関心を持つ理由を知るべきだ」と同氏。

Clideoの動画は専用のプレーヤーが必要になるため、YouTubeやソーシャルメディアで再生できないが、FacebookやTwitterなどにリンクを投稿し広められるとマザーロ氏はいう。制約があるにも関わらず、マドリッドに本拠地を置く同社はすでに、スペインのModalia.comなどのeコマースサイトでテストされており、33%という高いコンバージョン率を出している。

インタラクティブでショッパブル(買い物できる)な動画は新しいアイデアではないが、マザーロ氏によると、これまではクリエイティブエージェンシーなどがごく一部のラグジュアリーブランドのために制作したものか、非常に限定的なインタラクティブ機能しかないビデオマーケティングプラットホームと称するものだったという。

マザーロ氏によると、Clideoは「クリエティビティを犠牲にせずにDIYでできるソリューション」だ。インタラクティブな動画をわずか5分で作ることも可能だという。

さらに彼のピッチ(セールストーク)によると、Clideoはビジネスモデルも独特だ。月額のサブスクリプションのほかに、企業は特別料金を支払うことで視聴者を買い物と決済のページに誘導できる。「私たちの目標と顧客の目標が同じサービスは、私たちだけだ」と同氏は自信を見せる。

Clideoはまだ自己資本だけで操業しているが、そのプロダクトはすでにグローバルで利用可能。初期の顧客はスペインとイタリアとイスラエルの企業になりそうだ。

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(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

建築現場の3DデジタイズロボットがStartup Battlefieldベルリンの最優秀賞を獲得

ベルリンで開催されたTechCrunch Disrupのスタートアップ・バトルフィールドの参加者は当初14チームあった。2日間にわたる激烈な競争を勝ち抜いて勝者が決定した。

Startup Battlefieldの登壇者はすべて我々が慎重に選定した優秀なスタートアップばかりだ。チームはベンチャーキャピタリスト、テクノロジー界のリーダー、著名ジャーナリストを含む審査員グループの前で公開プレゼンを行い、Disrupt杯の名誉と5万ドル(約550万円)の賞金獲得を目指した。

1日目のプレゼンの後、TechCrunchの編集部は審査員の評価メモをベースに数時間わたって討議し、GmeliusHawa DawaInovatScaled RoboticsStableの5チームを最終候補とした。

選ばれたチームは2日目に最終決定を決定を行う審査員の前でプレゼンを行った。パネルのメンバーは、Accel PartnersのAndrei Brasoveanu (アンドレイ・ブラソヴェアヌ)氏、 Sequoia CapitalnのAndrew Reed (アンドリュー・リード)氏、ソフトバンクビジョンファンドのCarolina Brochado(カロライナ・ブロチャド)氏、Generation Investment ManagementのLila Preston
リラ・プレストン)氏の各氏にTechCrunchのMike Butcher(マイク・ブッチャー)記者が加わった。

優勝:Scaled Robotics


Scaled Roboticsが開発したのは、建設現場の詳細な3D画像を自動的に取得するロボットだ。処理は高速で極めて精密な測定を行うことができる。例えば、設置された梁材の位置が設計と1、2センチずれているだけで判別できるという。建設現場の責任者はロボットのソフトウェアを利用してどのような部材がどのフロアのどの位置に設置されているか、ほぼリアルタイムで詳細にチェックできる。また設置が許容誤差の範囲内にあるかも判別できる。また廃棄物の堆積などが作業の安全を脅かしていないかチェックできる。下は作動中のロボットのビデオだ。関連記事はこちら

準優勝:Stable

Stableは農産物等の購入者を価格変動から守る保険を自動車保険なみの手軽さで提供するサービスだ。コカ・コーラのような巨大企業からスムージーを販売するローカルビジネスまで、世界の関係者は農産物に加えてパッケージやエネルギー関連プロダクトまで多数のアイテムに保険をかけることができるStableについては別記事で詳しく紹介している。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook

都市のブロック単位で大気汚染を監視するHawa Dawa

都市の行政機関がブロック単位で大気汚染の状況を把握できるとしたら、行政の判断は変わるだろうか?これがHawa Dawaの背景となっている発想だ。同社は、TechCrunch Disrupt Berlinのスタートアップバトルフィールドでトップパッターとして登場した。衛星や専用の大気観測装置などのデータを組み合わせて大気汚染のきめ細かいヒートマップを作成し、これをサブスクリプションのAPIとして都市や企業に販売している。

同社は、このサービスはハードウェアに依存しないが、企業や都市に大気を測定するセンサーがまだない場合には独自のIoTセンサーを用意すると説明している。

ところでHawa Dawaとは不思議な名前だが、共同創業者のKarim Tarraf(カリム・タラフ)氏によれば、これはスワヒリ語、トルコ語、ペルシャ語など多くの言語で「空気のきれいさ」または「航空医療」の言葉にだいたい似ているそうだ。

こうしたデータを基に、都市行政では特に大気汚染のひどい道路で車の排出ガスを減らすために交通のルートを変更したり、そのような変更が大気に実際にどの程度影響があるかを監視したりすることができるだろう。不動産会社なら、喘息などの肺の問題を抱える顧客にその界隈で空気が最もきれいなところにある物件を紹介できるかもしれない。海運会社はこのデータを使って、排出ガスの影響を最小限に抑える海上ルートを計画できる可能性もある。

Hawa Dawaは現在、ドイツ、スイス、英国で20以上の都市に対応している。同社はこれまでに120万ユーロ(約1億4500万円)以上を調達し、近々また別の「プレシリーズA」ラウンドを終了する計画だ。

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(翻訳:Kaori Koyama)

機械学習により状況に合う音楽をリアルタイムで作るArcona

Arcona MusicはTechCrunch Disrupt Berlinのステージで、状況対応型音楽サービスを披露した。ベルリンにある同社は、機械学習を活用してさまざまな状況に合わせたサウンドトラックをリアルタイムで制作する。ユーザーが数項目のパラメーターを入力するだけでサービスがそれに合わせる。

共同創業者のRyan Groves(ライアン・グローブズ)氏はTechCrunchに対し、次のように説明した。「スタイル、気分、音楽のテーマを入力し、『これを再生して』と言うだけだ。するとエンジンがその状況を設計として把握し実現する。気分やスタイルが変わったらいつでも、エンジンはそれに対応し、基本的には無限に音楽をストリーミングする。環境が変化しても、特定の曲の設計を必要なだけ再生できる」。

現時点では、このサービスはまだ始まったばかりだ。フルタイムのスタッフは創業者の2人だけで、あとはパートタイムの開発者が1人いる。グローブズ氏と、もう1人の共同創業者のAmélie Anglade(アメリ・アングラード)氏が会社を立ち上げ、資金調達はまだしていない。

グローブズ氏は作曲と音楽理論の専門家で、以前はAIベースの作曲サービスで人気のDittyで仕事をしていた。アングラード氏はSoundCloudで働いていた、音楽情報検索のスペシャリストだ。

このサービスを活かせるのは、まず人気ジャンルであるリズムゲームだ。リズムゲームには変化するサウンドトラックが使われていて、音楽の事前のプログラミングが最小限で済むならメリットがあるだろう。ほかにも幅広い分野で可能性がある。

グローブズ氏は「相当長期的に見れば、このサービスはARやGPSなどあらゆるものを活用して自分専用のパーソナルオーケストラとなり、環境に応じた音楽を聴けるようになるだろう」と語った。

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(翻訳:Kaori Koyama)

脳波によるデバイスの制御を目指すMindAffect

米国時間12月11日の、TechCrunch Disrupt Startup Battlefieldで発表したチームの1つであるMindAffectは、私たちの周囲のデバイスを脳波で制御できるようになればどんなことが可能になるのかを探求したいと考えている。そして他の人にもその可能性を探ってほしいと考えている。

MindAffectは、今回のイベントに出場している企業の中から、ワイルドカードエントリーとしてStartup Battlefieldに選ばれた。このチームの初期の1つの研究目的は、ALSや脳卒中などの神経障害によって、目以外はどこも動かせなくなった人が、文字をタイプすることでコミュニケーションできるよう支援することだった。

その研究を通じて、チームは既存の脳波図(EEG)ハードウェアと、独自の点滅パターンを使用するブレインコンピューターインターフェイスを設計した。ユーザーの目の動きと脳で生成された信号のみを使用してデバイスをコントロールできるようにするもの。このインターフェイスを他の人も利用できるよう、来月のCESで開発キットも発売する予定だ。用途はチームがこれまでに探求してきた医療分野に限らず、ゲームやエンタメ分野でも構わない。

MindAffectを利用して実際にAppleTVをコントロールする様子。

すでに、目の動きを追跡してコンピューターを制御するソリューションはある。しかし、このアプローチはこれまでの概念をひっくり返すものだ。

目の動きを追跡する方法のほとんどは、カメラと、目によって反射する赤外線を使用して、ユーザーの見ている方向を検出する。それに対してMindAffectのアプローチは、脳からの信号を分析して、ユーザーが見ているものを特定する。

これを可能にするため、MindAffectは、インターフェイス上の各ボタン、たとえば画面に表示したキーボードのすべてのキーを、それぞれ異なる周波数で点滅させる。ユーザーが1つのボタンを注視すると、視覚を司る大脳皮質も、そのボタンの点滅の周波数に応じた固有の信号を発生する、と同社は説明している。非侵襲型のEEGヘッドセットが、そうした信号を検出して増幅し、MindAffectのアルゴリズムによって、元の動作や入力から得られるはずの信号を逆算する。MindAffectによれば、現在のアルゴリズムでも、ほとんど、あるいはまったくトレーニングしなくても、正確に機能させることができるという。

このような方式の違いを考えたとき、カメラを使った視線の追跡と比較して、MindAffect方式の利点はどこにあるのだろうか。今回の発表の直前に、楽屋裏でMindAffectのCEO、Ivo de la Rive Box氏と、それについてちょっと話してみたが、彼らもまだそれを把握しようとしているところだという。彼の話では、少なくとも、照明の条件が通常の視線追跡を妨害するような環境では、MindAffect方式が有利だとのこと。

MindAffectは、この技術が特に有利となるようなユースケースを探している。開発キットを公開することは、それに役立つだろう。

2017年9月に設立された同社は、現在までに100万ドル(約1億860万円)を調達している。

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(翻訳:Fumihiko Shibata)