【レビュー】iPad Pro 2021 はスマホ以上に5Gの重要性を感じた1台

12.9インチ版のiPad Proで、5G通信機能を試した

12.9インチ版のiPad Proで、5G通信機能を試した

MacBook Airなどと同じM1チップを採用し、5Gにも対応したiPad Proの発売が迫ってきています。発売に先立ち、筆者も実機を試用することができました。パフォーマンスの高さやディスプレイの美しさは別の記事に譲るとして、ここでは、シリーズ初となる5G対応に関してあれこれレビューしていきたいと思います。筆者が今回、もっとも注目していたのもこの機能です。
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と言っても、ユーザーが何か特別なことをする必要はありません。セルラー版を購入して、5Gに対応するキャリアのSIMカードを挿せばOK。ドコモ、au、ソフトバンクの大手3キャリアの場合、スマホのメイン回線と組み合わせることができる「データプラス」などのいわゆるシェアプランがあるため、料金的にはそれを利用するのが手っ取り早いでしょう。2枚目のSIMカードは1枚目と容量をシェアする形ですが、主回線が無制限の場合、30GB前後の制限があります。

設定項目は、ほぼほぼiPhone 12シリーズと同じ。「設定」の「モバイルデータ通信」で「通信のオプション」を選ぶと、「データ」と「データモード」で5G接続の挙動を変更することができます。前者のデータは、5G対応のSIMカードを挿すと、常時5Gが有効になる「5Gオン」と、自動で5Gをオフにすることがある「5Gオート」を選択可能。何らかの理由でオフにしたい時には、「4G」を選択すればOKです。

5Gの設定項目は手順などが少々異なるものの、ほぼiPhoneと同じ

5Gの設定項目は手順などが少々異なるものの、ほぼiPhoneと同じ

「データモード」は、5G接続時にコンテンツの画質を自動的に向上させるための項目です。初期設定では、データ容量を節約するためか、「標準」になっていましたが、「5Gでより多くのデータを許容」をオンにすると、5Gで接続している際に、FaceTimeやビデオの画質が向上します。おそらくこの初期設定は、キャリアや加入しているプランによって変わるはずで、iPhoneと同じだとすると、KDDIの無制限プランに加入している場合は、デフォルトで「許容」になると思われます。

「5Gでより多くのデータを許容」をオンにすると、5G接続時に一部アプリの画質などが自動的に上がる

「5Gでより多くのデータを許容」をオンにすると、5G接続時に一部アプリの画質などが自動的に上がる

設定をオンにしていると、高画質化するコンテンツは、以前より増えています。この機能をプッシュするKDDI関連のサービスが多い印象ですが、スポーツコンテンツでおなじみのDAZNも、動画品質の自動アップグレードに対応しています。試しに、編集長とWi-Fi環境下でFaceTimeを使って雑談してみましたが、肌の質感までよく分かるほどの映像で、通常のFaceTime以上に臨場感が高いと感じました。試用したiPad Proは、12.9インチと画面サイズが大きいため、迫力はiPhone以上。スマホ以上に、5Gエリアで通信することの重要性を感じました。

編集長とFaceTime HDで楽しい時間を過ごした。大画面のiPad Proなら、iPhone以上に画質の違いが分かりやすい

編集長とFaceTime HDで楽しい時間を過ごした。大画面のiPad Proなら、iPhone以上に画質の違いが分かりやすい

そのメリットを体感するには、5Gのエリアが広い必要があります。現時点では残念ながら、4Gのように全国くまなくというわけではありませんが、KDDIやソフトバンクについては、以前とは様相が変わってきています。4Gから5Gへの周波数転用を開始したからです。iPad Proには主にソフトバンクのSIMカードを挿していましたが、筆者の事務所がある渋谷では、様々な場所で5Gがつながります。路上はもちろん、よく行くカフェや事務所の喫煙所(屋外)も、5Gのエリアになっていました。

転用のため、通信速度に関しては4Gとそこまで変わらず、数十Mbpsという場所も多々ありましたが、上記のような、画質向上機能がオンになるのはメリットの1つと言えるでしょう。逆に、周波数転用を現時点では導入していないドコモは、5Gにつながったときの速度には以下のように、目を見張るものがあります。一方で、元々の5Gの周波数は4.5GHz帯や3.7GHz帯と非常に高く、屋内浸透もしにくいのが難点。KDDIやソフトバンクのように、とりあえず入ったカフェの中で5Gを使うというシチュエーションには、なかなか出くわさない印象があります。

転用5Gのエリアは広く、導線がしっかりカバーされている印象を受ける。ただし、速度は4Gと大差なし

転用5Gのエリアは広く、導線がしっかりカバーされている印象を受ける。ただし、速度は4Gと大差なし

【レビュー】iPad Pro 2021はスマホ以上に5Gの重要性を感じた1台(石野純也)

ドコモはエリアこそ狭いが、つながると爆速になるケースが多い。同じ場所でも、4G(下)と5G(上)では速度がこれだけ違う

ドコモはエリアこそ狭いが、つながると爆速になるケースが多い。同じ場所でも、4G(下)と5G(上)では速度がこれだけ違う

iPad Proの利用シーンや、上記のように5Gでコンテンツの画質を向上させる機能があることを踏まえると、やはり転用であっても、エリアが広い方が嬉しいのではないでしょうか。いくら高速でも、スマホと違って、iPad Proを路上で使うことはあまりありません。最近は、駅などで歩きタブレット(!)をしている人を見かけることもありますが、あくまでレアケース。カフェなどに入って、Webや動画を見たり、ビデオ会議をしたりするシーンの方が、シチュエーションとしてリアリティがあります。

そもそもの話として、通信速度ではなく、4Gか5Gの区分だけでコンテンツの品質を分けてしまうのはどうなのかという議論もありますが、同様の機能はiOSだけでなく、Androidにも採用され始めていて、業界標準になりつつあります。特に腰を据えてじっくり使うiPad Proでは、その恩恵が大きいため、ドコモは屋内対策をぜひともがんばってほしいと思いました。ただ、iPad Proは作成した動画をアップロードするといった用途も考えられるため、ほか2社も転用だけに頼らず、Sub-6のエリア整備は強化してほしいところです。

ここまで、あえて名前を挙げていませんでしたが、4月にiPhoneの取り扱いを開始した楽天モバイルも試してみました。オチのように使ってしまうのは大変恐縮ですが、残念ながらiPad Proは、同社の5Gには非対応のようです。楽天モバイルのeSIMプロファイルをインストールしてみたところ、iPhone 12シリーズを取り扱っていなかったころと同様、設定メニューに5Gの文字が現れませんでした。

楽天モバイルのeSIMを設定してみたところ、「データ」で5Gを選択できなかった

楽天モバイルのeSIMを設定してみたところ、「データ」で5Gを選択できなかった

選択できるのは4Gのみで、アンテナピクトの表記は「LTE」になります。また、APNは入力なしで通信できましたが、空欄のままだとインターネット共有(テザリング)の設定も表示されません。これは、楽天モバイルがiPad ProやiPadを取り扱っていないためだと思われます。キャリア設定も降ってこなかったため、取り扱いを開始するまで、同社の5Gはお預けということになりそうです。段階制の料金プランは、サブデバイスとしてのタブレットと相性がよさそうなだけに、今後の展開に期待したいところです。

APNは空欄のままでもつながったが、インターネット共有を利用する際には手動での入力が必要

APNは空欄のままでもつながったが、インターネット共有を利用する際には手動での入力が必要

M1チップを搭載したiPad Pro発表。Thunderboltに5G対応

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(文:石野純也、Engadget日本版より転載)

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【レビュー】新iMac パープル先行動画レビュー。周辺機器まで統一されたカラーデザインに感動

【レビュー】新iMac パープル先行動画レビュー。周辺機器まで統一されたカラーデザインに感動

Appleが4月20日に発表、7色展開が目を惹いたiMac 2021年モデル。24インチの画面にM1チップを搭載したこの新iMacが、いよいよ5月21日に発売となります。ひと足早く実機に触れる機会がありましたので、音を出せる環境の方は、ぜひ動画をご覧いただき、感動体験を共有できたらうれしいです。

SKUドンと来い?

ご紹介するのはパープルの実機になります。今回、ボックスもとても凝っています。飛び出す絵本みたい

ご紹介するのはパープルの実機になります。今回、ボックスもとても凝っています。飛び出す絵本みたい

Magic Keyboard、Magic Trackpad、Magic Mouseも、きちんと色がそろえてあるんです

Magic Keyboard、Magic Trackpad、Magic Mouseも、きちんと色がそろえてあるんです

付属品を充電するために同梱されたLightningケーブルもパープル。iPhone 12 パープルの充電に使いたくなってしまいますね

付属品を充電するために同梱されたLightningケーブルもパープル。iPhone 12 パープルの充電に使いたくなってしまいますね

同色のアクセサリーはAppleCareサポートによる保守は可能ですが、単品での販売予定はないとのこと

同色のアクセサリーはAppleCareサポートによる保守は可能ですが、単品での販売予定はないとのこと

いや〜、これらすべてに7色のカラーバリエーションがあるのかと思うと、ちょっとスゴイですよねぇ。「SKUドンと来い」なんて誰かが言ったのも頷けます。

まさに機能美

iMacの背面。コバルトブルーに近い濃い目の色です

iMacの背面。コバルトブルーに近い濃い目の色です

向かって左下にUSB-C、Thunderboltがそれぞれ2基の計4つ。大きな端子(Aとか)なんて、もうApple製品にはあり得ない? とにかくスッキリしています

向かって左下にUSB-C、Thunderboltがそれぞれ2基の計4つ。大きな端子(Aとか)なんて、もうApple製品にはあり得ない? とにかくスッキリしています

向かって右下に電源ボタン

向かって右下に電源ボタン

中央の電源プラグ回りも新設計の機構。電源プラグのケーブルはiMac本体とマグネットでピタッとくっつきます

中央の電源プラグ回りも新設計の機構。電源プラグのケーブルはiMac本体とマグネットでピタッとくっつきます

ACアダプターと電源プラグは一体型。ケーブルは本体と同色で、編み込みされた頑丈なタイプです

ACアダプターと電源プラグは一体型。ケーブルは本体と同色で、編み込みされた頑丈なタイプです

ACアダプターには有線LANの端子があります(一部モデルはオプション扱い)。アクセサリー類はすべてBluetoothによりワイヤレス接続なので、電源プラグ1本だけでスッキリとしたデスク周りを実現できます

ACアダプターには有線LANの端子があります(一部モデルはオプション扱い)。アクセサリー類はすべてBluetoothによりワイヤレス接続なので、電源プラグ1本だけでスッキリとしたデスク周りを実現できます

ワイヤレスでTouch IDを初搭載

キーボードのデザインも一新。Spotlight、音声入力、おやすみモード、絵文字キーがあります

キーボードのデザインも一新。Spotlight、音声入力、おやすみモード、絵文字キーがあります

右上にロック解除やApplePayの支払いなどを指紋認証で利用できるTouch IDを搭載しています。Touch IDのワイヤレスでの実装は初(一部モデルはオプション扱い)

右上にロック解除やApplePayの支払いなどを指紋認証で利用できるTouch IDを搭載しています。Touch IDのワイヤレスでの実装は初(一部モデルはオプション扱い)

ファーストユーザースイッチをオンにすれば、家族でiMacを共有する際、ロック画面から指紋認証でサクッとユーザーを交代できます

ファーストユーザースイッチをオンにすれば、家族でiMacを共有する際、ロック画面から指紋認証でサクッとユーザーを交代できます

同色アクセは超貴重品

Touch ID搭載Magic Keyboardは、M1搭載のMacであればminiなどほかのモデルでも利用できるとのことですが、単品販売はされません。ほかの同色アクセサリーも同様、AppleCareによる保守部品としては入手可能ですが、単体では手に入らないので貴重です!

Touch ID搭載Magic Keyboardは、M1搭載のMacであればminiなどほかのモデルでも利用できるとのことですが、単品販売はされません。ほかの同色アクセサリーも同様、AppleCareによる保守部品としては入手可能ですが、単体では手に入らないので貴重です!

関連記事:Touch ID内蔵Magic Keyboard、当面は新iMacとのセット販売のみ

真っ平な画面

24インチと言うとテレワーク向けにピッタリなサイズですが、意外にもiMacでは初となるディスプレイサイズ。解像度は4480×2520ドットの4.5Kで、27インチモデルの5Kディスプレイと画素密度は、ほぼ同等です

24インチと言うとテレワーク向けにピッタリなサイズですが、意外にもiMacでは初となるディスプレイサイズ。解像度は4480×2520ドットの4.5Kで、27インチモデルの5Kディスプレイと画素密度は、ほぼ同等です

デザイン上のアクセントとなっている顎の部分に施されたカラーリングですが、画面とベゼルからこの部分は完全にツライチになっています

デザイン上のアクセントとなっている顎の部分に施されたカラーリングですが、画面とベゼルからこの部分は完全にツライチになっています

FaceTimeカメラは1080pに。暗所での画質もアップしました。マイクもスタジオ品質でインプットでき、ビデオチャットが対面で会話しているかのようにストレスなく行なえました

FaceTimeカメラは1080pに。暗所での画質もアップしました。マイクもスタジオ品質でインプットでき、ビデオチャットが対面で会話しているかのようにストレスなく行なえました

ノートPCより場所取りません

ニューiMac、なんといっても、この「佇まい」ですよね。わずか11.5ミリの薄型ディスプレイとシンプルなスタンドに、電源以外のすべてが詰め込まれているなんて、ちょっと信じられません

ニューiMac、なんといっても、この「佇まい」ですよね。わずか11.5ミリの薄型ディスプレイとシンプルなスタンドに、電源以外のすべてが詰め込まれているなんて、ちょっと信じられません

iPhoneより少し厚みがあるくらいです

iPhoneより少し厚みがあるくらいです

ファンレスではないのですが、ノイズは10dB以下に抑えられていて、動作音らしいものを感じることは一時もありませんでした。

スタンドの底部のゴム足までパープル。個人的には、もう少し滑りにくい素材にしてほしかった気もしました

スタンドの底部のゴム足までパープル。個人的には、もう少し滑りにくい素材にしてほしかった気もしました

短期間ですがニューiMacを実際に使ってみた印象は……冒頭の動画で語っているので、ぜひそちらを再生してご覧いただきたいのですが、画面のインパクト、音質、デザイン性、どれを取っても「洗練」という言葉がピッタリと思いました。あと、カラバリの表現に対するAppleの異常とも言える細部へのこだわりですね。ほかのカラーもすべて細かく見てみたくなっております。

デスクトップというと置き場所が……となりがちですが、ぶっちゃけノートパソコンより面積取らない印象ですので、外ではスマホやタブレットで十分という人は、せっかくなら自宅では大きな画面、最高の音質を備えたニューiMacで贅沢三昧してほしいです。

より詳しい使い勝手やベンチマーク結果など掲載していますので、引き続きEngadget 日本版にご注目いただけましたらと思います。

グリーンのiMacに想う──新しいiMacは「見た目で選んでいいMac」だった
ひと足先に触れたブルーのiMacに感じる家庭向けデスクトップの新基準

Engadget日本版より転載)

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タグ:iMac(製品・サービス)Apple / アップル(企業)レビュー(用語)日本(国・地域)

【レビュー】ひと足先に触れたブルーのiMacに感じる家庭向けデスクトップの新基準

【レビュー】ひと足先に触れたブルーのiMacに感じる家庭向けデスクトップの新基準

IntelからArmへ。昨年6月、Mac搭載プロセッサの変更を発表したApple。M1と名付けられたSoCはさまざまな製品に搭載されているが、MacBook Pro、MacBook Airへの採用に続き、このたびデスクトップ機のiMacにも搭載された。

さらに驚かされたのは7つものカラーバリエーションが選べることだ。選んだカラーに合わせ、本体色はもちろん、付属キーボード、マウス、トラックパッド、付属ケーブルなども同じカラーテーマで揃えられている。

【レビュー】ひと足先に触れたブルーのiMacに感じる家庭向けデスクトップの新基準【レビュー】ひと足先に触れたブルーのiMacに感じる家庭向けデスクトップの新基準【レビュー】ひと足先に触れたブルーのiMacに感じる家庭向けデスクトップの新基準【レビュー】ひと足先に触れたブルーのiMacに感じる家庭向けデスクトップの新基準
本体のみのカラーバリエーションはありがちだが、付属品のほとんどが選んだカラーに統一され、それがさらに7色も用意されているということには素直に敬意を表したい。

しかし、ポップなカラーリングとは裏腹に11.5ミリ、ぱっと見はただのディスプレイとも思えるスリムなボディながら、コンピュータとしてはパワフルかつ洗練された使い勝手と完成度を誇る。それが今回のiMacだ。

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薄型ディスプレイにM1 Mac miniが内蔵されただけではない24インチiMacの価値

高精細ディスプレイ+Mac mini=24インチiMacではない

24インチ(正確には23.5インチ)の4.5Kディスプレイは市販品で探しても見つからない。このサイズではもっとも高精細なディスプレイのひとつで、他のApple製品と同じように事前に色調整が行われたDisplay-P3対応の広色域に対応している。この点は期待通りの仕上がりとなっている。

最大500nitsの範囲でHDR表示も行えるため、iPhone 12シリーズで撮影したHDR動画を美しく表示できる。標準に準拠していながらも、異なるApple製品との互換性がきっちりと取られているので気持ちいい。

【レビュー】ひと足先に触れたブルーのiMacに感じる家庭向けデスクトップの新基準
本体の配色に関しては、ベゼルがホワイトであるため、見づらさなどに繋がらないか懸念していたが、実際には明るいグレー。ディスプレイの輝度が適度であるならば特に気になることはない。むしろ一般的な家庭の室内の白系の壁紙であれば、部屋の壁などと馴染んでベゼルの存在感を和らげると感じられるチューニングだ。

同様に、ディスプレイ下の部分(この中にメイン基板が入っている)がテーマカラーごとの明るい色合いで組み合わされ(側面と背面は濃い配色)、ベゼルの明るいグレー(あるいはやや暗めの白)と馴染む濃度で、こちらもカラフルな外観を損ねない範囲でアクセントとなっている。

側面と背面のヴィヴィッドな配色は好みもあるだろうが、ウェブページ上で見るよりも実物は落ち着いた印象で、筆者が評価したブルーが鮮やかすぎるとは感じなかった。もちろん、もっと透明感のある選択をしたいならばシルバーという選択肢を選べばいい。

付属品を含めたトータルのデザインコーディネートを考えれば、その佇まいだけでも価値があると感じる。とはいえ、そうした感覚でパソコンを選ぶわけではないと思う人もいるだろう。

スタンドや角度調整のヒンジなども含め、アルミとガラスだけで包まれたiMacだが、カラーバリエーションや4.5Kディスプレイを必須と思わないならば、手持ちのディスプレイ+Mac miniでいいのではと考える人がいるかもしれない。後述するが、24インチiMacの性能はMac miniとほぼ同じであり、ソフトウェアの実行速度という観点では全く同じとなる。

しかし、Appleが独自に設計したAppleM1の活用という側面で、Mac miniでは得られない体験が一体型のiMacには用意されている。トータルコーディネートに興味がなくとも、iMacならではの良さがそこにはあるのだ。

iPhone 12向けの開発成果がiMacにも

M1はMac向けに性能と高速インターフェイス、メモリアーキテクチャなどを強化されているが、マイクロプロセッサとしての基本はiPhone 12シリーズ向けのA14Bionicと共通する回路が搭載されている。このためiPhoneを磨き上げる中で活用されてきた技術が、そのままMacでも使えるようになるわけだ。

【レビュー】ひと足先に触れたブルーのiMacに感じる家庭向けデスクトップの新基準
そのもっとも端的な例がTouch IDボタン付きのキーボード。M1にはiPhone向けのAシリーズと同じく指紋認証を行うための処理回路とセキュリティ機能が搭載されているので、iPhoneで実績のある指紋認証システムがそのまま利用できる。

【レビュー】ひと足先に触れたブルーのiMacに感じる家庭向けデスクトップの新基準
裏を返せば、Touch ID付きのBluetoothキーボードはM1との組み合わせで動作するということ。M1を搭載していればどのMacでも利用可能で、Mac miniなどでも利用できるという。ただし、現時点では単体での発売は予定されていない。単体発売されないのはマウス、トラックパッド、ライトニングケーブルのカラーバリエーションも同じだ。(※いずれもiMacオーナーならば保守部品としては入手できる)

関連記事:Touch ID内蔵Magic Keyboard、当面は新iMacとのセット販売のみ

次に体感できるのが1080p解像度に対応するFaceTime HDカメラの画質。iPhoneと同じ映像処理のプロセスをそのまま活かすことで画質が高められているのだ。

なお、1080p対応の新しいセンサーだけならば、昨年発売された27インチiMacにも搭載されている。27インチiMacのFaceTime HDカメラもかなり高画質だったが、映像処理はT2チップで行っていた。実はこの部分でのM1の貢献も大きく、内蔵する映像処理プロセッサの世代が異なるため、画質が上がっているのだ。T2チップは世代としてはA10世代と目されているが、M1を搭載するMacではiPhone 12シリーズの内蔵カメラと同水準の映像処理が施されることになる。

暗部ノイズの少なさやダイナミックレンジの広さ、質感表現の深さ、オートホワイトバランスの的確さなどiPhone向けの開発成果がそのまま活かされており、外部接続の高画質カメラとして発売されている最新のUSBカメラよりも画質が良い。

本体サイズを感じさせない音質

“iPhone向けの開発成果”に関しては、音質面にも現れている。

マルチマイクを用いてビームフォーミング(話者の方向に指向特性を合わせる)するため、オンライン会議にヘッドセットなしで参加しても生活音を拾いにくく、話者の声にフォーカスしてくれるのはありがたい。声のトーンもイメージを崩さずに拾ってくれ、外部マイクが必要だとは感じないはずだ。

カメラの信号処理と同じくこの音声処理もT2チップ搭載以降のMacでは一部導入されてきていたものだが、信号処理の世代が上がっている。本体サイズやレイアウトの制約が少ないためか、M1搭載のMacBook Proよりも良好に仕上がっていると感じた。

しかし、やはり驚くのはスピーカーの音質と高音質なスピーカーを活用した空間オーディオ(仮想立体音響)の完成度の高さ。何しろ本体の厚みは11.5ミリしかない。本体下部の空間は大半の容積をスピーカーで使っているだろうが、音波の出口は本体下のスリット。とても良い音が出てくるイメージはない。ところが、本機から出てくる音は驚くほどバランス良く、低域も豊かだ。

形式で言えば、iMacのスピーカーは2ウェイ3スピーカーのステレオ構成。低域を担当するウーファー2基がたがい違いの方向に搭載され、振動をキャンセルする構造になっている。豊かな低音が出せるのは振動をキャンセルする構造にすることで、積極的に低音を出せるためだろう。

音は真下に出し、机から反射させて耳に届くことになるが、驚くことに周波数特性や位相特性がよく調教されており、アンバランスなイメージはない。中でも位相特性の整え方は空間オーディオのサポートからも感じられる。

空間オーディオは、いわば仮想サラウンドの一種だが、仮想サラウンドはサラウンドチャンネルの音を、左右の耳に位相を変えて届けることで実現する。位相とは音が耳に届く時間軸の差のようなものだが、iMacのような音が出てくる経路が複雑なシステムでは、周波数帯ごとに差が生まれがち。ところがiMacの空間オーディオは素晴らしく、音の移動感が感じられる効果的なサラウンド効果を発揮してくれた。空間オーディオが利用できるのは、Apple TV+のコンテンツなど一部だが、今後はサポートが広がることも期待できる。

少なくとも別途、スピーカーを購入して接続する必要がない程度には、優れたスピーカーを内蔵していると考えていい。

AppleM1搭載による体験価値

【レビュー】ひと足先に触れたブルーのiMacに感じる家庭向けデスクトップの新基準
一方、SoCとして採用されているAppleM1の能力に関しては、昨年登場したMac miniやMacBook Proとほぼ変わらないと考えていい。冷却ファンは動作していることに気づくことはほとんどなく、その点ではSoCに関連した性能、および体験の質はMac miniと同一と考えていいだろう。

……と言うと、少しあっさりとしすぎかもしれないが、 21.5インチiMacと比べると8割以上もCPUが高速になり、GPUに至っては2倍程度。27インチiMacと比べてもCPUだけならば凌駕する。

ここまで紹介してきたハードウェア設計と一体となった体験価値、機能などもM1の価値ということができるだろうが、長期的に見ればM1に内蔵されるNeural EngineやMLアクセラレータなどのCPU、GPUとは別の処理回路がもたらす価値が、Mac用アプリにもたらす価値のほうが大きい。

その一部はmacOSでも動作可能なiPad用アプリの存在からもたらされるだろう。さらにMac用アプリで積極的に機械学習処理を活用する動きも強まっている。もちろん、macOSに標準添付されているアプリではすでに活用が始まっており、例えば写真アプリでは写真の分析処理をM1内蔵のNeural EngineやMLアクセラレータで行っている。

Intelプロセッサからの移行で心配された互換性問題やネイティブアプリへの移行速度といった懸念は、この半年ほどですっかり解消されたと言っても過言ではない。多くのアプリがM1対応となり、先日はAdobeのクリエイティブツールもほぼ移行が完了した。

【レビュー】ひと足先に触れたブルーのiMacに感じる家庭向けデスクトップの新基準
M1の弱点といえば、それはシステムスペックの選択肢が少ない(搭載メモリ、Thunderbolt 3のポート数、独立GPUが選べない)ことぐらいしか思いつかないが、これらは今回の24インチiMacの位置付けからすれば大きなマイナスとは言えないだろう。だからこそ、Appleは27インチモデルにM1を搭載していない。

関連記事:新24インチiMac vs 旧27インチiMac比較。M1チップ搭載で極薄化

Boot Campや仮想化ソフトでWindowsを動かせなくなったことを残念に思うユーザーもいるかもしれないが、長年、両方のプラットフォームを併用してきた筆者でも、その必要性はほとんど感じなくなってきているというのが正直なところだ。

なお、ご存知の通りParallels DesktopがARM版Windowsの動作をサポートした。パフォーマンスは良好で、ブラウザの互換性などをチェックしたり、一部のWindowsでしかないアプリ(例えば筆者の環境では弥生会計)を動かしたりする程度ならば十分だと感じた。

ただし、ARM版Windowsの製品版を入手する手法がなく、開発者向けのプレビュー版をテストする場合にしか利用できないのが現状だ。マイクロソフトが一般向けにライセンスを始めない限り、公式なサポートは受けることができない点に留意しておきたい。

家庭向けデスクトップの新しい基準に

ディスプレイ一体型デスクトップパソコンというジャンルは、ディスプレイやスピーカーなどをトータルで設計できるため、ディスプレイ別売りのコンピュータよりもユーザー体験を演出しやすいという利点がある。

かつては、高品位ディスプレイが高価、かつパソコンの性能面での進化が速かったこともあり、エントリーユーザー向けの低価格製品というイメージがあったが、そうした考え方は古くなっている。

代表例がiMacで27インチモデルに5Kディスプレイが搭載されたこと。これにより新たな基準点が生まれた。製品ごとにカラー調整が施され、単体で購入すると高価な5Kディスプレイだが、それを搭載したことで、一体型を単なるお買い得モデルから体験価値の高い製品にしたわけだ。

【レビュー】ひと足先に触れたブルーのiMacに感じる家庭向けデスクトップの新基準
今回の製品ではさらに一歩踏み込み、独自プロセッサとハードウェア設計の組み合わせでの体験価値向上をもたらしている。狭額縁や薄型筐体などもあって21.5インチモデルからの置き換えでもむしろスッキリとした佇まいになる。

価格に関してもその質感や性能を考えれば決して高くはなく、むしろ安いと感じる人が多いのではないだろうか。家庭向けのデスクトップコンピュータの基準点として、今後、さまざまな製品を評価する際の指標となる定番製品に仕上がっていると思う。

グリーンのiMacに想う──新しいiMacは「見た目で選んでいいMac」だった

新iMac パープル先行動画レビュー。周辺機器まで統一されたカラーデザインに感動

(文:本田雅一、Engadget日本版より転載)

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カテゴリー:ハードウェア
タグ:iMac(製品・サービス)Apple / アップル(企業)レビュー(用語)日本(国・地域)

Epic GamesがアーティストコミュニティのArtStationを買収、直ちに手数料を12%に引き下げ

Fortnite(フォートナイト)のメーカーであるEpic Games(エピックゲームズ)は、Apple(アップル)のApp Storeのビジネスモデルに対して史上最大の訴訟を起こしたその同じ日に、アーティストポートフォリオコミュニティのArtStation(アートステーション)を買収し、直ちに販売手数料を値下げしたことを発表した。今後ArtStationの一般クリエイターは、Epic自身のPC向けGames Storeと同じ12%の手数料で利用できる。これまでは30%だった。この値下げは、幅広いコミュニティに対して「適切な」手数料率の見本を示す狙いがある。つまり今後の裁判で、Apple App StoreがEpicなどの大規模デベロッパーに課している30%の手数料との比較基準になる可能性がある。

現在ArtStationは、ゲーミング、メディア、エンターテインメントなどのクリエイターが自分たちの作品を披露し、新しい仕事を見つけるための場を提供している。同社はEpic Gamesと長年の関係があり、AirStationのクリエイターの多くがEpicのUnreal Engineの仕事をしている。しかし、ArtStationは、Unreal Engineを使わないさまざまな分野の2Dおよび3Dクリエイターの居場所でもある。

買収によってそれが変わることはない、とチームは発表文の中で述べている。むしろ、この契約によってクリエイターが作品を収益化する機会は広がる。中でも大きいのが、手数料引き下げだ。一般クリエイターの手数料は30%から12%に下がる。Pro(プロ)メンバー(月額9.95ドル、約1086円のサブスクリプション料金を払っている)の場合、手数料はさらに低く、20%から8%に引け下げられる。そしてセルフプロモーションによる販売では、手数料はわずか5%だ。ストリーミングビデオサービスのArtStation Learning(アートステーション・ラーニング)も2021年いっぱい無料だと同社はいう。

しかし手数料の引き下げこそが、EpicのArtStationに対する最も重要な変更だ。なぜならそれは、Epicが自身のクリエイターコミュニティをどう扱っているかを示す具体例になるからだ。同社はこの買収と手数料変更と自身のEpic Games Storeの低い手数料率を、Appleとの裁判で引き合いに出すに違いない。すでにEpicの動きはMicrosoft(マイクロソフト)のゲーム販売における取り分減少へと波及しており、最近同社は同様に手数料を30%から12%へと引き下げることを発表した

Epic Gamesは裁判で、AppleがiOSアプリのエコシステムを独占していることによる市場支配力を濫用し、デベロッパーにAppleの決済システムを使用することを強制し、販売およびシステムを通じて行われるアプリ内購入で手数料を支払わせていると主張するつもりだろう。Epic Gamesは、他の大手アプリメーカー同様、自らの決済システムを使用して手数料を回避したいと思っている。あるいは、最低でもユーザーが直接支払いできるウェブサイトへと誘導できるようにしたい。しかし、Appleはこれを許していないことがApp Storeガイドラインに記されている。

2020年Epic Gamesは、モバイル端末で直接支払って大幅な割引を受けられる方法を新たに導入したことで、FortniteがApp Storeから追放される事態を招いた。それは計算された行動だった。その結果AppleとGoogleは両社ともに、それぞれのApp Storeのポリシーに違反したとして同ゲームを排除した。そしてEpicが訴訟した。

Epicの戦いは厳密にはAppleとGoogleを相手にしているが、エネルギーの大部分は前者に集中している。なぜならAndroidはアプリのサイドローディング(ストア外でのインストール)を許しているのに対して、Appleは違うからだ。

一方Appleの主張は、Epic GamesはAppleの規約とガイドラインに同意しながら、意図的に違反して特別な特典を得ようとしたというものだ。Appleは、ガイドラインは全デベロッパーに公平に適用されるものであり、Epicが例外になることはないと言っている。

しかし大手テック企業に対する一連の米国反トラスト捜査の結果、実際にはAppleが過去に特別契約を結んでいたことが発見されている。下院司法委員会が捜査結果の一環として公開したメールは、AppleがAmazon Prime Videoアプリの手数料をスタート時から15%とすることに同意していたことを暴露した。通常サブスクリプション・ビデオ・アプリの手数料は1年目が30%で、2年目以降は15%になる(AppleはAmazonが新たなプログラムの要件を満たしただけだと言っている。さらに別の古いメールは、Appleが手数料を30%以上に上げる交渉を何度か行っていことも明らかにしており、Appleが手数料率に柔軟性があると考えていたことを示している。

今回のEpic Gamesによる買収以前に、ArtStationはパンデミックさなかの不確実な期間を乗り切るために、Epicから「MegaGrants」と呼ばれる巨額の資金提供を受けている。これがその後両社の繋がりを強くするきっかけになった可能性がある。

「過去7年間、私たちはクリエイターが自分の作品を世に紹介してチャンスを掴み、大好きなことをなりわいにできるための努力を続けてきました」とArtStationのCEOで共同ファウンダーであるLeonard Teo(レオナルド・テオ)氏が声明で語った。「Epicの一員となることで、私たちはこのミッションを推し進め、自分たちだけではできなかった形でコミュニティに還元し、かつArtStationの名前と精神を維持することができます」

カテゴリー:ゲーム / eSports
タグ:Epic GamesArtStation買収Apple

画像クレジット:ArtStation

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(文:Sarah Perez、翻訳:Nob Takahashi / facebook

【インタビュー】アップル幹部がM1搭載の2021年版iPad Proに寄せる思い、Macとの統合と新しい統合プロセッサー戦略

Apple(アップル)が開催した2021年1発目の製品イベント。開始後3分にしてすでに3つの発表がなされた頃には、発表づくしのイベントになることを確信した。Appleは今週、わずか1時間もの間にAirTag(エアタグ)、新しいApple Card(アップルカード)のファミリーシェアリング、新しいApple TV(アップルティービー)、カラフルなiMacの新シリーズ、そして新色パープルのiPhone 12など、数多くの新製品を発表したのだ。

関連記事:アップルが「Spring Loaded」で発表した新製品まとめ、新iMac、iPad Pro、AirTagなど

Appleが新たに発表したデバイスの中でも、市場ポジションの面で最も目を引くのは新しい12.9インチのiPad Proだ。

今週、筆者はAppleのワールドワイドマーケティング担当上級副社長Greg Joswiak(グレッグ・ジョズウィアック)氏とハードウェアエンジニアリング担当上級副社長John Ternus(ジョン・ターナス)氏とともに、最新版のiPad Proと、コンピューティング関連の仕事を扱う業界でのその立ち位置について話す機会を得た。

さまざまな面で、新しいiPad Proは、最終ラップにダントツ1位で突入しているのに、アフターバーナーを点火して後ろの集団をさらに引き離すスプリンターのようだ。2020年のモデルはいまだに最高レベルのコンピューターであり、強力なコンピューティングツールのほか、バッテリー性能、ポータビリティがすべて備わっていた。それなのに2021年のモデルには、さらにM1プロセッサー、RAM、ストレージ速度、Thunderbolt(サンダーボルト)接続、5Gラジオ、新しい超広角前面カメラ、さらにはLiquid Retina XDRディスプレイ搭載といった数々のアップグレードがなされている。

市場ではまだ2020年のiPad Proが席巻しているが、これほどの飛躍は驚きだ。その中心にあるのは、ディスプレイである。

Appleは、5000ドル(日本では税込58万2780円)の超高性能Pro Display XDRにわずかな機能改善を加え、それを12.9インチのタッチ版に移植した。とはいえ、その仕様ははっきり言って最高だ。1000ニトの輝度はHDRではピーク時に1600ニトに達し、フルアレイのローカルディミングゾーンは2500個にのぼる。Pro Display XDRの576個と比べるとケタ違いだ。

2021年最初のApple製品発表はオンラインで行われたため、やはりメディアはiPad Proを含め、新作デバイスをその場で入手できていない。つまり、筆者自身もまだこの目でXDRディスプレイを見ていないというわけだ。残念ながら、スペックが本当に高いためスクリーンを見ずにそのルックを推測しようとするのは、頭の中で「1兆個」をイメージしようとするようなものだ。理論的には可能だが、あまり役に立つものではない。

このスクリーンは市場に出ているどのMacデバイスやiOSデバイスよりも明るく、仕事でHDRの動画や写真を扱う人にとっては大きな決定打になるだろう。しかしそれでも、市場にあるどのディスプレイよりも高密度かつ高輝度のマイクロLEDディスプレイを何百万個あるいは何千万個もの単位で搭載するには、大々的な投資が必要だ。

そこで筆者は、すでに史上最高の携帯ディスプレイ、ないしはディスプレイ全体で見ても史上最高の1つとされるものがありながら、この性能強化に踏み切った理由についてお2人に伺った。

「私たちは常に最高のディスプレイを追求してきました」ターナス氏は続ける。「最高のディスプレイをすべてのデバイスに搭載し、それをさらに良くしていくこと。それが私たちの仕事であり、私たちが毎日職場に来て、大きなことを成し遂げるために働きたいと思う理由です」。

「覚えていらっしゃるかもしれませんが、Pro Display XDRについて私たちが話したことの1つは、このディスプレイと性能を仕事環境にもっと取り入れることでした。今までの仕事の流れでは、プロジェクトの最終段階になってやっと、非常に高価なリファレンスモニターを1つだけ目にするのが普通でした。ですがこのディスプレイがあれば、もうスタジオに足を運ぶ必要はありません。外出先へどこでも持って行って、同じ性能で使えるため、クリエイティブな仕事をする人にとっては非常に大きな価値になるはずです」。

筆者自身がPro Displayを使う中で、また専門職のユーザーとPro Displayについて話す中で共通して感じたことは、作業段階のさまざまなポイントで色彩と画像を仕様に合わせて正確に処理できるようになったことで、全体的なワークロードが削減されたという点だ。一般的なシステムでは制作ステージのかなり遅い段階でリファレンスモニターが登場するため、多くの場合、高コストで時間のかかるリレンダリングや新色のパスが必要となる。Liquid Retina XDRディスプレイを非常に低価格で作業環境に組み込めば、制作ライン上の数多くのポイントを格段に速く通過できるようになるはずだ。

「なぜ強気でスペックを高めるのか」という質問の主な回答は今回の話し合いの後半で登場するが、この流れで少し触れておきたい。ジョズウィアック氏は、頭上スペース、つまりユーザーにとっての頭上スペースとデベロッパーにとっての頭上スペースを確保することがポイントだというのだ。

「ジョン(ターナス氏)が話したように、iPad Proが実現したことの1つは限界に挑んだことです。さらなる高みを追求したことで、デベロッパー側に頭上スペースが生まれ、彼らのクリエイティビティを試せるようになりました。最初にiPad Proを生み出したときは、Photoshop(フォトショップ)もなかったんですよ」ジョズウィアック氏は次のように続ける。「すぐに使えるようなクリエイティブ向けのアプリがなかったんです。それが今では数えきれないほどの種類になりました。それらを生み出すためのキャパシティーや性能を私たちが確保したからこそ、そしてたくさん売りさばいたからこそ、デベロッパーがこのツールを活用できたというわけです。十分な顧客がいて、十分なパフォーマンスがある。じゃあ、これを活用しようじゃないか、というようにね。どの世代も、このように新しいものが生まれていきます。私たちがパフォーマンスの頭上スペースをもっと確保すれば、デベロッパーは自然とその活用方法を考えるものです」。

「自分が買おうとしているものに頭上スペースがあれば、顧客にとってはこの上なしです。実際、デベロッパーにとても気に入ってもらっています」。

今回のiPad ProにはM1チップが搭載されており、Aシリーズのネーミングからは手を引いた格好だ。このプロセッサー部分は、今週発表されたiMac、そして2021年の初めに発売されたMacBookに搭載されたものと同一(メモリー構成が類似)となっている。

「同じM1の部品ですからね」ターナス氏はこう述べる。「iPad Proには常に、Appleが持つ最高のシリコンを搭載してきましたから」。

「デスクトップに入っているチップをそのままiPadに入れられるなんて、すごいですよね」ジョズウィアック氏は話す。「これほどの電力効率でこのレベルのパフォーマンスを発揮できるなんて、ものすごいことです。しかも、それに加えてテクノロジーもそろってる。ニューラルエンジン、ISP、サンダーボルト、他にも数多くのテクノロジーが搭載されていますから、他のどの会社よりも圧倒的な技術です」。

M1の本格展開が始まり、筆者自身でテストを実施するようになると、エネルギー消費効率が圧倒的な点を実感した。これこそが、M1の一番の差別化要因だ。何十年にもわたり、ノートパソコンのユーザーは電力消費を抑えるために、膨大で負荷の大きいワークロードはパソコンをコンセントにつなぐまで後回しにすることが習慣になっていた。そんなノートパソコンに対する期待値を、M1はデスクトップクラスのプロセッサーを使うことで引き上げようとしている。事実、Appleは最も強力なCPUを提供するだけでなく、市場で最も電力効率の良いCPUを提供しているのだ。このCPUは、700ドル(約7万6000円)のMac Miniの他、同時に1700ドル(約18万5000円)のiMac、そして1100ドル(約12万円)のiPad Proにも搭載される。かなり大胆な動きではあるが、10年以上にわたって独自のアーキテクチャとシリコンを築いてきた製品だからこそ実現できることだ。

関連記事:AppleのM1搭載MacBook Proは特にバッテリー駆動時間が驚異的

「バッテリー寿命は、バッテリー容量とシステム効率によって変わりますよね。だから私たちはシステム効率の向上に力を入れて、チームがお分かりのとおりすばらしいパフォーマンスのM1を生み出してくれたわけです。ですが、ディスプレイも忘れてはいけません。私たちはこのディスプレイ用に、効率と、名前のとおりパッケージサイズに注力した新しいミニLEDを設計し、iPadの使い勝手に合った、そしてバッテリー寿命の長いディスプレイを実現しました」。

「この点だけは、妥協したくなかったのでね」ターナス氏は付け加える。

新しいiPad Proの大きな目玉機能は、Center Stage(センターステージ)機能搭載の、12MPの超広角カメラだ。自動センタリング機能やビデオのトリミング機能により、文字通り人間中心のFaceTime(フェイスタイム)が可能になる。フレーム内で人を検知すると自動的に顔が画面の中心に映されるよう調整し、その人が動いたり立ち上がったり、ストレッチをしたり、左右に傾いたりしても、フレームの中心から外れないように調整してくれるのだ。また、別の人が12MPの超広角前面カメラの枠内に入ると、その人にも自動でフレーム調整が適用される。この機能は、フェイスタイムだけでなくZoom(ズーム)やWebex(ウェベックス)にも対応しており、この機能のAPIも提供されるという。

筆者は実際の動きをもう少し詳しく見ることができたため、それを踏まえてこれが業界の被写体フォーカス機能の標準実装になると断言できる。トリミング機能はスマートに作られており、突然どアップのカットに飛ぶのではなく、安定した手でスムーズに拡大縮小をしているカメラマンを思わせた。まさに、目に見えない機械学習エンジンが監督を務めるテレビ番組を見ているような感覚だ。

「私たちが大好きな仕事の良い例が、この機能ですね。ハードウェアとソフトウェアをうまく融合することです」ターナス氏は続ける。「もちろん主役はカメラですが、人の検知やパン、拡大などを実現しているのは、その周りにあるSOCとアルゴリズムです。これにはセンスがいりますよね。動きが速すぎてもいけないし、遅すぎてもいけない、心地よい感覚を生み出すわけですから。Appleには、Appleらしい製品を作るためにセンスにあふれたクリエイティブなメンバーがたくさん集まっているんです」。

この機能は、Magic Keyboard(マジックキーボード)を使ってiPad Proを操作する際の、カメラが不自然に天井を映してしまう問題の解決にも大いに役立つ。このご時世、ビデオ会議に参加することが非常に増えたが、今まではこの問題のせいでiPad Proを外出先でのビデオ会議用に使えずにいた。そこで筆者は、センターステージがこの角度を修正するために設計されたのかターナス氏に伺った。

「iPadはどの角度でも使えますよね。そこで、使い方によってその使い心地も変わります。ですがこの機能のすごいところは、常にフレームを修正できるところです。ビデオ会議に1日中参加していると、立ち上がって足を伸ばしたくなります。カメラを消さなくても、立ち上がってストレッチをしたり、部屋の中を歩き回ったりできる。今までにない圧倒的に新しい技術で、本当にすばらしいことです」。

確かに、Portal(ポータル)などの他のビデオチャット用デバイスに加え、Teams(チームズ)などのビデオソフトウェアがすでにトリミング形式の模倣機能を提供していることは事実だが、一度に何百万ものユーザーにこのようなソフトウェアを提供する際には、ユーザーエクスペリエンスがすべてだ。実際に市場に展開したセンターステージ機能がどのように競合と戦うか楽しみだ。

さて、機能の面でiPad ProとMacがどのように一体化するかについて延々と議論が続いていることを受け、筆者はiPad ProとMacBookそれぞれの購入者にどのような違いがあるかお2人に伺った。この質問にいち早く答えたのは、ジョズウィアック氏だ。

「とてもいい質問ですね。世の中にはiPadとMacが互いに戦争していて、どちらかが倒れるまで戦い続けると考えている人がいる。その一方で、『いや、Appleはこの2つを一体化しようとしているんだ、2つとも1つのプラットフォームに強制的にまとめようとたくらんでいるんだ』という人もいます」ジョズウィアック氏は続ける。

「この2つの声は真逆の思考から生まれていて、実際にはこのどちらも正解ではありません。私たちはそれぞれの分野で最高の製品を作ろうと本当に一生懸命努力していることを誇りに思っています。Macははっきり言って最高のパソコンです。顧客満足度を見れば、長期的にこれが実証されていることが分かります」。

ジョズウィアック氏は、パソコン分野全体が成長していることに触れ、それをうれしく思うと話す一方で、Macはパソコンという概念をはるかに上回る製品で「売れ行きも上々だ」と付け加えている。また、iPadのビジネスも依然として(iPadをタブレット扱いすることは拒否しながらも)タブレット分野を逸脱していると述べる。

「それに、iPadとMacの『どちらか』という考えも間違っています。Macを購入されるユーザーの大半がiPadを持っています。うれしいことですね。Macの代わりに使っているのではなく、適切なときに適切なツールを使っているのです」。

「彼(ターナス氏)とそのチームがiPad Proで実現したすごいところは、一番満足してもらうのが難しい、クリエイティブな仕事をする人にも引き続き喜んでもらえる製品を作ったことです。Macを使って、自宅でも同じように専門的な作業をしながら、iPad Proも活用できる。今までも、何世代にもわたってこのような使い方がクリエイティブのワークフローの一部になってきました」ジョズウィアック氏はこう続ける。「この分析を見ているとワクワクします。どちらか一方ではなく、どちらもクリエイティブ職の人にとって役割があるのです」。

持ち歩き用のコンピューターをiPad Proのみに絞って以来、筆者はよくマルチモーダルの観点から専門的な仕事について考えるようになった。Appleもまた、2018年にProワークフローチームの立ち上げを行っている。ワークフローはここ10年で大幅に変わっており、そこには、いうまでもなくiPhoneやiPadがダイレクト操作の実例を普及させたことが大きく関係している。今の社会では「この新しいものは何だ」とか「すごいね、これが当たり前になったんだ」などという感覚さえ昔のものと化し「これは自分には不可欠だと思う、自分に必要だろう」と思うようになっているのだ。

関連記事:最新iPad Proは旧モデルから乗り換えるほどではないが、マウスとキーボードは快適で便利

「一部の人の考えとは違って、私たちはMacの領域を侵害しないようにiPadで何をすべきでないか考えたり、その逆をMacで考えたりすることはありません」ターナス氏はこう述べる。「私たちが重視しているのは、何が最高のやり方かということです。私たちが作れる最高のiPadとは何だろう、最高のMacとは何だろう、というようにね。iPadとMacを両方使う人もいれば、自分のニーズに合わせてそのどちらかを好む人もいる。どちらも良いと思うんです」。

ここまで読んでいただいた読者のみなさまは、Appleが断固としてiPad対Macの議論をしようとしないことがお分かりだろう。そのうえ、AppleはiPadを市場で対抗者のいない独自のポジションに据えようとしていることも見て取れる。ジョズウィアック氏はよく、タブレットという言葉を使うことさえ嫌だと話している。

「iPadとタブレットは別物です。タブレットはいま1つですが、iPadは最高です」ジョズウィアック氏はこう続ける。「私たちは常にiPad Proで限界を押し上げています。リーダーにはそうあって欲しいと思いますよね。リーダーは限界を突破する存在で、リーダーこそ、XDRディスプレイのように今まで見たことがない世界へ連れていってくれる存在です。私たち以外に、この役割を担える人はいません。そして、一度新しいものを目にして、使ってみれば、疑う気持ちは晴れるでしょう。作ってくれてよかったと思うはずです」。

カテゴリー:ハードウェア
タグ:AppleインタビューApple M1iPad

画像クレジット:Apple

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(文:Matthew Panzarino、翻訳:Dragonfly)

2021年第1四半期のスマホ世界出荷台数は27%増

パンデミックの影響から回復しつつあるスマートフォン市場から、さらなる朗報がもたらされた。Canalysの発表によると、2021年第1四半期(1〜3月)のスマートフォンの世界での出荷台数は、前年同期比27%増だったという。

この業界は新型コロナウイルス(COVID-19)によって早い段階から打撃を受けており、第1四半期にはパンデミックがまず中国や製造業の多いアジア地域を襲ったため、深刻なサプライチェーンの問題に直面した。その後、モバイル機器を購入しようとする人が減り、経済や雇用にも影響が出てきたため、需要が低迷し始めた。

画像クレジット:Canalys

Samsung(サムスン)は引き続き世界市場をリードしており、5960万から7650万台(前年同期比28%増)となった。同社は世界のスマートフォン出荷台数の約22%を占めている(これは前年同期と変わらない) 。

2位はApple(アップル)で、3710万台から5240万台へと41%増加した。これは、2020年末にリリースされた大規模なアップグレードによるものであると考えて間違いない。一方、Huawei(ファーウェイ)の苦戦は同社をトップ5から追い落とした。

CanalysのBen Stanton(ベン・スタントン)氏はプレスリリースの中で「Xiaomi(シャオミ)は、新しいファーウェイとなるためのポールポジションを獲得している」と述べている。「競合他社はチャネルマージンに優れているが、シャオミの圧倒的な販売台数は競合ブランドよりも収益を上げる良い機会を与えている。しかし、競争は終わっていない。OppoとVivoがすぐ後を追っており、多くの地域でミッドレンジにポジショニングし、ローエンドでシャオミを囲い込んでいる」。

また調査によると、LGのスマートフォン分野からの撤退は、特に2020年の売上の80%を占めた米国で若干の混乱を招くだろうとしている。

関連記事:中国におけるアップルのスマホ売上回復、ファーウェイは王座を失う

カテゴリー:ハードウェア
タグ:スマートフォンCanalysAppleSamsungXiaomiLG

画像クレジット:ViewApart / Getty Images

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(文:Brian Heater、翻訳:塚本直樹 / Twitter

アップルの中国におけるスマホ売上回復、ファーウェイは王座を失う

中国におけるHuawei(ファーウェイ)のスマートフォンのライバルが、2020年失ったマーケットシェアを急速に奪い返しつつある。

マーケティングリサーチの企業Canalysの調査報告によると、2021年第1四半期で中国では9240万台のスマートフォンが購入され、トップのVivoは23%、姉妹企業Oppoは22%という僅差で2位になった。米国の制裁でサプライチェーンから重要なチップを失ったファーウェイは、スマートフォンの売り上げも落ち込み3位の16%に終わった。そしてXiaomiとApple(アップル)がそれぞれ4位と5位になった。

前年同期、すなわち2020年第1四半期と比べると、すべての大手スマートフォンブランドの中でファーウェイだけを除く全社がマーケットシェアを伸ばした。Appleの中華圏における売上はほぼ倍増し、2021年3月で終わる3カ月の売上は177億ドル(約1兆9287億円)となった。最新の決算報告によると、これまでのすべての四半期売上の中で断トツだ。

今週行われた決算報告でTim Cook(ティム・クック)CEOは「「iPhone 12ファミリーに対する中国のお客様の反応には特に満足しています。中国では、2020年の第2四半期に他の国よりも早くシャットダウンの段階に入ったことを忘れてはなりません。そのため、この四半期には比較的大きな影響を受けました。その点を考慮して結果を考慮する必要があります」と述べている

ファーウェイのシェアは同じ第1四半期で41%から16%へと落ち込んだが、通信機器大手である同社は主にコスト削減により利益率を上げている。2020年11月には低価格機Honorのラインを売却した

今期はまた、中国のスマートフォン市場が4年ぶりに成長した四半期でもある。Canalysによると、その成長率は27%だったという。

CanalysのアナリストであるAmber Liu(アンバー・リュー)氏は「有力ベンダーは市場トップを目指して競争しており、今期は2020年第1四半期、あるいは2020年第4四半期と比較しても、スマートフォンの発売数が異常に多かった。ファーウェイの制裁とHonorの売却は、消費者とチャネルが代替ブランドに対してよりオープンになる中で、この新しい市場成長の特徴となっています」と述べている。

関連記事:ファーウェイが低価格スマートフォンのHonor事業部を政府系企業などからなるのコンソーシアムに売却

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タグ:HuaweiApple中国スマートフォンCanalysHonor

画像クレジット:Miguel Candela/SOPA Images/LightRocket/Getty Images

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(文:Rita Liao、翻訳:Hiroshi Iwatani)

macOSにマルウェアがセキュリティ保護を回避できるバグ(macOS 11.3で修正済み)

Apple(アップル)は何年もかけてmacOSのセキュリティ機能を強化し、マルウェアの侵入を困難にしてきた。しかし、新たに発見された脆弱性は、macOSの最新セキュリティ保護のほとんどを、悪意あるアプリをダブルクリックするだけで通過させてしまう。Appleの監視の下であってはならない事態だ。

さらに悪いことに、悪名高きMacマルウェアの一族が、この脆弱性を今週Appleが修正する何カ月も前から利用していたことを示す証拠が見つかった。

ここ数年、Macはほとんどのタイプのマルウェアを技術的障壁を設けることで防いできた。実際、macOSは、インターネットからダウンロードされたドキュメントになりすました悪意あるアプリに警告フラグをつけている。また、Appleが「notarization(公証)」と呼ぶプロセスによって、Appleがレビューしていないアプリや、デベロッパーを確認できなかったアプリは、ユーザーが確認しない限りmacOSでは実行されない。

しかし、セキュリティ研究者のCedric Owens(セドリック・オーエンス)氏は、一連のチェックを逃れて悪意あるアプリが実行できるようになるバグを2021年3月に発見したと語った。

オーエンス氏はTechCrunchに、そのバグによって彼は、一見無害なドキュメントに見えるが開くとmacOSに組み込まれた防御をすり抜ける悪意あるアプリを作ることができたと語った。

「ユーザーに必要なのはダブルクリックすることだけで、macOSからはプロンプトも警告も出きません」と彼はTechCrunchに話した。オーエンス氏は、無害なドキュメントがバクを利用して計算機アプリを立ち上げる概念実証アプリを作った。実際にマルウェアを仕込むことなくバグの仕組みをデモする方法だ。しかし悪意あるアタッカーはこの脆弱性を利用して、なりすましドキュメントを標的に開かせるだけで、遠隔からユーザーの機密情報をアクセスできると彼は説明した。

無害なドキュメントになりすまして、修正前のmacOS機で実行する概念実証アプリ。作者より提供

この脆弱性をアタッカーが悪用することを恐れたオーエンス氏は、Appleにバグを報告した。

AppleはTechCrunchに、バグはmacOS 11.3で修正したと伝えた。さらにAppleは、旧バージョンのmacOSの悪用も防ぐためにパッチを施し、更新されたルールをmacOSの内蔵アンチマルウェアエンジンであるXProtectにプッシュ配信してマルウェアが脆弱性を利用するのを防いだ。

オーエンス氏はMacセキュリティ研究者のPatrick Wardle(パトリック・ウォードル)氏に、このバグがどうやって、なぜ動くのかを調査するよう依頼した。米国時間4月26日の技術的ブログ記事でウォードル氏は、脆弱性がmacOSに内在するコードのロジックバグのために発生することを説明した。つまりmacOSが一部のアプリの分類を誤り、セキュリティ・チェックをスキップしたため、オーエンス氏の概念実証アプリが妨害されずに実行できた。

わかりやすくいうと、macOSアプリは単一のファイルではなくアプリの動作に必要な複数のファイルの集合体で構成されており、アプリケーションが依存しているファイルの場所を教えてくれるプロパティリストファイルもその1つだ。しかしオーエンス氏はこのプロパティリストファイルを取り出して特定の構造の集合体を作ることによって、macOSを騙して中にあるコードを警告を出さずに実行させる方法を見つけた。

ウォードル氏は、そのバグはmacOSのセキュリティ機能を「まったく無意味」にすると評した。Appleのセキュリティアップデートがこのバグを修正したことを同氏は確認した。「アップデートされた結果アプリケーションは正しく分類されるようになり、信頼されていない公証されていないアプリケーショっは(再び)ブロックされ、ユーザーは保護されます」と同氏がTechCrunchに話した。

バグの仕組みを知ったウォードル氏は、Macセキュリティ会社のJamfに、オーエンス氏の発見以前に悪用された証拠がないか尋ねた。Jamfの発見ツール責任者、Jaron Bradley(ジェロン・ブラッドリー)氏は、Shlayerマルウェアファミリーのがバグを利用している例を2021年1月に、オーエンス氏の発見より数カ月早く見つけられていたことを確認した。Jamfはこのマルウェアに関する技術的ブログ記事も公開している。

「このテクニックを使う私たちの見つけたマルウェアは、Shlayerという2018年に最初に発見されたマルウェアファミリーのアップデート版です。ShlayerはmacOSでもっともよく見られるマルウェアの1つであり、そのため私たちはその数多くの変種を発見する方法を開発して進化の過程を綿密に監視しました」とブラッドリー氏がTechCrunchに話した。「発見ツールの1つがこの新たな変種を見つけ、詳しく調べたところ、それがこの変種が抜け穴を使ってインストールされ、ユーザープロンプトも表示されないことを発見しました。さらに分析した結果、マルウェアの開発者はゼロデー脆弱性を見つけ、それを利用するように自分たちのマルウェアを調整したものと考えます」。

Shlayerは、暗号化されたウェブトラフィック(HTTPS利用サイトを含む)を横取りして独自の広告を埋め込み、運用者に詐欺広告マネーをもたらすアドウェアだ。

「多くの場合、ユーザーに偽のインストーラーやアップデートをダウンロードさせることでインストールされます」とブラッドリー氏はいう。「この技法を用いるバージョンのShlayerはそうやってOSのマルウェア検査をかいくぐり『本当にいいですか?』のプロンプトをユーザーに表示することなく実行されます」と彼は言った。

「この変種で最も興味深いのは、作者は旧バージョンをわずかに修正してmacOSのセキュリティ機能を回避することです」と言った氏はいう。

ウォードル氏は、ユーザーが過去に悪用されたかどうかを検出するためのPythonスクリプトも公開している。

ShlayerがmacOSの防御をすり抜けたのはこれが初めてではない。2020年、ウォードル氏はセキュリティ研究者のPeter Dantini氏と協力して、Appleが “notarization”プロセスで誤って承認したShlayerのサンプルを見つけた。デベロッパーがアプリをAppleに送り、セキュリティチェックを受けて、何千万台ものMacの上で邪魔されずの動作できるようにするためのプロセスだ。

【Japan編集部】本稿で触れているmacOSのバグは、現在配布済みのmacOS 11.3にアップデートすることで修正される。

関連記事:アップルが悪名高いMac用マルウェアを誤って承認してしまう

カテゴリー:セキュリティ
タグ:ApplemacOSマルウェアバグ

画像クレジット:Jack Carter / Unsplash

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(文:Zack Whittaker、翻訳:Nob Takahashi / facebook

ついにアップルが導入開始した「アプリのトラッキングの透明性」について知っておくべきこと

Apple(アップル)のモバイルOSの最新バージョン「iOS 14.5」が、米国時間4月26日に配信開始となった。これに伴い、多くの議論を巻き起こした「App Tracking Transparency(アプリのトラッキングの透明性)」という新しいプライバシー保護機能が導入される。

この機能は約1年前に発表されたが、アップルはアプリ開発者に準備期間を与えるために導入を延期していた。以来、この機能への対応はすでにiOSで始まっており、いくつかのアプリがすでに採用している。例えば、Duolingo(デュオリンゴ)やVenmo(ベンモ)では、ユーザーにデータ追跡の許可を求めることが確認されている。だが、アップルは今回のアップデートから実際に新しい規定の施行を開始すると述べている。

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つまり、iPhoneユーザーは一般的なアプリケーションを使用していると、何度もプライバシーに関するプロンプトを目にするようになる。アプリごとに「他社のAppやウェブサイトを横断してあなたのアクティビティを追跡する」許可を求めて来るのだ。追跡(トラッキング)許可を求めるすべてのアプリは、iOSの広範な「プライバシー」設定の中の「トラッキング」メニューに表示され、個々のアプリまたはすべてのアプリについて、トラッキングのオン / オフをいつでも切り替えることができる。

関連記事:アップルが導入間近のデータトラッキング規制「App Tracking Transparency」の詳細をさらに公開

トラッキングのオン / オフを切り替えると、実際にどのような効果があるのだろうか?トラッキングをオフにすると、そのアプリケーションは、アップルのIDFA識別子を使ってあなたの行動に関するデータをデータブローカーやその他の第三者と共有し、広告のターゲットにすることができなくなる。また、アプリが他の識別子(ハッシュ化されたメールアドレスなど)を使ってあなたを追跡することもできなくなるが、アップルにとって実際にポリシーのこの部分を施行することは、より困難になるかもしれない。

画像クレジット:Apple

App Tracking Transparencyについては、リリースに向けて激しい議論が交わされてきた。賛否両論あるものの、賛成派の説明は簡単だ。これまで膨大な量の個人情報や活動が、消費者の同意なしに収集されていた(アップルは「あなたのデータの1日」と名づけられた報告書でその概要を説明している)が、その共有を簡単に制御できるようになるということである。

しかし、Facebook(フェイスブック)は、この新ポリシーが広告ターゲティングに深刻な打撃を与えることから、手頃な費用で効果的な広告キャンペーンを行うためにターゲティングを利用している中小企業に損害を与えると主張している。

さらにFacebookは、The New York Times(ニューヨーク・タイムズ)、The Wall Street Journal(ウォール・ストリート・ジャーナル)、The Washington Post(ワシントン・ポスト)に「世界中の中小企業のためにAppleに立ち向かう」と宣言する広告まで掲載した(電子フロンティア財団は、このキャンペーンを「Facebookのビジネスに悪影響を与えるアップルのプライバシー保護強化に向けた変更を阻止しようとしつつ、自社の反競争的な行動やプライバシー問題に関する失態から人々の目を逸らさせようとする、Facebookの笑えない試み」と断じた)。

関連記事:Facebookがアプリ追跡と広告ターゲティング制限に対してアップル批判を強化

なお、このような変更は一部の開発者や広告主に「存亡の危機」をもたらす一方で、アップルには利益をもたらすことにもなるという意見もある。

これがどれほどの影響をもたらすかということは、どれだけ多くの人がトラッキングの拒否を選択するかにかかってくるだろう。アプリ開発者はトラッキングの有無に応じて何らかの機能を制限することができないため、このようなプロンプトが表示されたときに、一般的なiPhoneユーザーの多くが「許可」を選択するとは考えにくい。しかし、モバイルアトリビューション分析会社のAppsFlyer(アップスフライヤー)によると、初期の調査結果によれば、「許可」選択率は39%にも達する可能性があるという。

カテゴリー:ソフトウェア
タグ:AppleiOSiOS 14IDFAApp Tracking Transparency広告Facebook個人情報プライバシー

画像クレジット:Getty Images

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(文:Anthony Ha、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

iOS 14.5「Apple Watchでロック解除」はマスク姿なら本人含め誰でもロック解除可能に

iOS 14.5「Apple Watchでロック解除」はマスク姿なら本人含め誰でもロック解除可能に

iOS 14.5およびWatchOS 7.4アップデートを適用することで、Apple WatchがあればマスクをしたままiPhoneのFace IDでロックを解除できるようになりました。使用方法と注意点をお伝えします。

同機能を利用するにはまず、iPhoneとApple WatchをそれぞれiOS 14.5以降とWatchOS 7.4以降にアップデートする必要があります。

iOS/iPadOS 14.5配信開始。ついに「マスクしたままFace IDロック解除」が実現

アップデート後、「iPhoneの設定 > Face IDとパスコード」に「Apple Watchでロック解除」という項目が追加されています。そのメニューでトグルスイッチをONにするとApple Watchを身に着けている場合に、マスク姿でもロックを解除できるようになります。

iOS 14.5「Apple Watchでロック解除」はマスク姿なら本人含め誰でもロック解除可能に

なお、利用するにはいくつかの条件があります。

まず、Apple WatchはiPhoneとの通信圏内にあり、かつ腕に装着していなければいけません。仕事中は外してキーボードの横に置くような人は、注意が必要でしょう。また、Apple Watchにパスコードでロックをかける設定にし、その上で、Apple Watchのロックを解除しておく必要があります。これは、他の人がApple Watchをこっそり身に着けて、iPhoneのロックを解除してしまうのを防ぐためでしょう。

マスク姿なら本人以外でもロック解除可能

機能を有効化する際に、下記の注意事項が表示されます。具体的には「マスク姿であれば本人以外でもロック解除が可能になる」とのこと。

iOS 14.5「Apple Watchでロック解除」はマスク姿なら本人含め誰でもロック解除可能に

この機能が発表された際、Face IDでの認証を若干甘くし、その分のセキュリティをApple Watchを身に着けているということで担保するものだと考えていましたが、実際ではそうでないようです。

同機能を用いてロック解除すると、Apple Watchに通知が来るので、意図せず解除された(本人ではないのに解除された)場合には、Apple Watchからロックすることもできます。ちなみに機能を有効にした後、マスク姿ではなく、通常のFace IDでロック解除した場合には通知は出ませんでした。

iOS 14.5「Apple Watchでロック解除」はマスク姿なら本人含め誰でもロック解除可能に

また、マスクでなくとも手で口元を押さえても、マスク姿と判断される様子。逆に目元を隠すとFace ID、Apple Watchでのロック解除のどちらでも認識はされませんでした。

Apple Payの認証には非対応。できるのはiPhoneのロック解除のみ

そんなApple Watchによるロック解除、Apple Payでの支払い時の認証がどうなるのか気になるところですが、残念ながらここでは利用できませんでした。

あくまでもApple Watchを使ってできるのは、iPhoneのロック解除のみで、Face IDの代わりになるものではないようです。

iOS 14.5「Apple Watchでロック解除」はマスク姿なら本人含め誰でもロック解除可能に

これができないと魅力が半減な気もしますが、他の人でも利用可能になってしまうのでセキュリティ上は必要なのでしょう。レジでの支払い時には、引き続き、パスコードを使うか、マスクをちょっとずらしてFace IDで認証する必要がありそうです。

Engadget日本版より転載)

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カテゴリー:セキュリティ
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アップルが米国に5年で46兆円超投資し2万人を新規雇用、ノースカロライナに新社屋

Apple(アップル)は米国4月26日朝、今後5年間で4300億ドル(約46兆4868億円)超を投資するという抜本的な計画を発表した。ここには米国の全50州での「経済的恩恵」が含まれ、同期間に2万人超の雇用を創出するとしている。

計画は2018年に同社が発表したものを拡大しており、元々の3500億ドル(約37兆8343億円)から20%引き上げた。計画の中心となるのは、待望のノースカロライナ社屋の建設だ。機械学習やAIのような新興分野に専従する3000人など、リサーチ・トライアングル首都圏への10億ドル(約1081億円)の投資が含まれる。

「イノベーションは長らくノースカロライナのコーリングカードでした。新しい社屋をリサーチ・トライアングルに建設するというAppleの判断は、ノースカロライナ州の良好なビジネス環境、ワールドクラスの大学、テックのスキルを持った労働者、そして多くの人がノースカロライナをホームと呼びたくなる友好的で多様なコミュニティの重要性を示しています」と州知事は共同声明で述べた。「この発表は州全域のコミュニティに恩恵をもたらします。経済を成長させ続け、 トランスフォーメーショナルな産業と高賃金の仕事をノースカロライナにもってくるために協業することを誇りに思います」。

Appleはまた、ローリー・ダーラム周辺エリアのコミュニティと学校のための1億ドル(約108億円)の基金と、インフラへの1億1000万(約118億円)の支出の概要も示した。

「回復と再建のこのときに、Appleは米国全50州のコミュニティに行き渡らせる長期投資で米国のイノベーションと製造へのコミットメントを倍増させます」とTim Cook(ティム・クック)氏は投資計画のニュースリリースで述べた。「当社は5Gからシリコンエンジニアリング、人工知能に至るまでの最先端分野で雇用を創出し、次の世代のイノベーティブな新規事業に投資します。そして、より環境に優しく公平な未来に向けて取り組みを進めます」。

Appleが拠点を構えるカリフォルニア州、それからコロラド州、テキサス州、ワシントン州、アイオワ州における取り組みの概要も示された。この中ではカリフォルニア州がまず最初に最大の恩恵を受け、サンディエゴのオフィスで5000人超を、カルバーシティで3000人超を新規に雇用する。インディアナ州とケンタッキー州、テキサス州はAppleが2017年に設置した50億ドル(約5405億円)のAdvanced Manufacturing Fundの一環としてすでに雇用を始めている。

今回のニュースの1週間前には、ウィスコンシン州がフラットスクリーンテレビを製造するはずだったFoxconn(フォックスコン)の工場を大幅に縮小する計画を発表した。Donald Trump(ドナルド・トランプ)氏は大統領時代、クック氏を含むさまざまなテック企業のトップの機嫌を取る一方で、計画されていたFoxconnの工場を「世界8つめの不思議」と呼び、製造を米国に戻す計画の中心に据えていた。

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カテゴリー:その他
タグ:Apple投資アメリカノースカロライナ

画像クレジット:Apple

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(文:Brian Heater、翻訳:Nariko Mizoguchi

iOS 14.5でマスク着用時でのApple WatchによるiPhoneのロック解除、アプリ追跡の透明化、キス絵文字が追加

先週開催されたビッグイベントで、Apple(アップル)はiOSの最新アップデートが間もなく登場することを予告した。そして米国時間4月26日、すべてのユーザーに向けてiOS 14.5が公開された。このアップデートは、モバイルOSの中でも特に大きなアップデートの1つになりそうだ。

ユーザーから最も待ち望まれていたアップデートは、Apple Watchを使ってiPhoneのロックを解除できるようになったことだろう。これはアップルのウェアラブルデバイスにとって便利な機能が追加されたのはもちろんだが、それよりも重要なのは、マスクをしているユーザーがフェイスアンロックの回避策を期待していたことを考えると、このアップデートは1年間待ち望まれたものだと言えるだろう。

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画像クレジット:Apple

マスクを装着すると、iPhoneはデフォルトでApple Watchに接続され(watchOS 7.4がインストールされた後に)、触覚的なブザーとともにApple Watchに通知が送られる。

セキュリティ面でも、アプリのトラッキングの透明性が追加され大きな話題となった。TechCrunchのAnthony記者は2021年4月初めの投稿で、この機能について解説している。

Apple(アップル)が新しいルールを施行することになるため、iPhoneユーザーはおそらくより多くのリクエストを目にするようになるだろう。これらのリクエストはアプリを利用しているさまざまな時点で表示されるが、すべてのリクエストではアプリが「他社のアプリやウェブサイトでのあなたの行動を追跡できるかどうか」を尋ねる標準的なメッセージが表示され、その後に開発者からのカスタマイズされた説明が表示される。

そのため多くのポップアップ通知が表示されるようになるだろうが、それには正当な理由がある。

画像クレジット:Apple

その他の追加点は以下のとおりとなる。

  • たくさんの新しい絵文字が登場する。キスをするカップル、燃えるようなハート、性別の追加など。
  • 追加の声(現在はデフォルトの声の設定はない)と、緊急電話番号のダイヤル機能などを含むSiriのアップデート
  • AirTagへの対応
  • Apple Podcastアプリのデザイン変更
  • AirPlay 2を有効にしたデバイスにFitness+をストリーミングできるようになった
  • リマインダーに日付、優先度、タイトルを指定できる
  • 音声コントロールのアクセシビリティに関するアップデート
  • 「この先で事故が起きています」「道路に何かがあります」などのSiriコマンドを使って、ユーザーは交通事故をマップに直接報告できる。また、スピードチェックも搭載された
  • News+ タブが再編成され、関連する記事や出版物を見つけやすくなった

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カテゴリー:ソフトウェア
タグ:AppleiOSiOS 14アップデートAirTagポッドキャストFitness+絵文字Apple Watch

画像クレジット:Getty Images

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(文:Brian Heater、翻訳:塚本直樹 / Twitter

アップルがiTunesストアの「購入」について集団訴訟に直面、「購入」と「レンタル」の区別が欺瞞的との主張

アップルがiTunesストアの「購入」について集団訴訟に直面、「購入」と「レンタル」の区別が欺瞞的との主張

電子書籍や音楽などDRM(デジタル著作権管理)がかかったものは、一般にあくまで「アクセス権」を購入しているにすぎず、ストアがサービスが終了したりアクセス権を停止すれば読んだり視聴できなくなるリスクがあります。

そうした文脈のもと、アップルがiTunesストアで映画やテレビ番組につき「購入」が詐欺的だとして集団訴訟に直面していると報じられています。

米メディアHollywood Reporterによると、本訴訟はカリフォルニア州の連邦地裁に提起されたものです。主席原告のデビッド・アンディーノ氏は、「購入」と「レンタル」の区別が欺瞞的だと言い、なぜならアップルが「購入した」コンテンツへのアクセスを停止する権利を持っており、実際に何度も行ってきた(だから「買う」と「借りる」の違いはない)と主張しているとのことです。

この裁判を担当するジョン・メンデス判事いわく、アップル側は「購入したコンテンツがiTunesプラットフォーム上に無期限に残ると信じている合理的消費者はいない(つまり永遠にアクセス権を取り消されないと信じてはいない)」と主張して訴訟を却下させようとしたとのことです。

しかし判事は「一般的な言い回しでは、『購入する』という言葉は何かの所有権を獲得することを意味しています」「合理的な消費者は自分のアクセスが取り消されないことを期待すると考えるのが妥当だと思われます」として、訴訟を却下せずに継続を認めています。

ほか、アンディーノ氏の主張に対してアップルは、原告が「デジタルコンテンツを買うのをやめたとも言ってないし、デジタルコンテンツが改善されたと思えるようなiTunes Storeの変更も申し立てていないので、有効な将来の脅迫侵害を主張していない」と反論したとのこと。これを判事は、原告が購入したコンテンツがいつか消える可能性があるという損害は具体性を欠き、むしろ憶測にすぎないと主張しているとまとめています。

アップルの主張につき判事は「原告が主張する損害は、アップルが言うような『購入したコンテンツへのアクセスをいつか失うかもしれない』というものではない。むしろ購入時に高額な金額を支払ったこと、または不当表示がなければ使わなかったであろうお金を払ったことが損害です。この経済的損害は、アップルが主張するような憶測ではなく、具体的かつ現実的なもの」だとコメントしています。

メンデス判事は、原告の主張のうち不当利得返還請求を棄却したものの、アップルにコンテンツ販売方法の変更を迫ることができる差止命令の余地は残したとのこと。つまりアンディーノ氏ら原告は払ったお金を返してもらうことはできないが、iTunesストアの「購入する」など表記の修正命令を勝ち取れる可能性はあるわけです。

こうしたデジタルコンテンツにまつわる問題は、アップルのみならずAmazonなどにも深く関係があり、実際に米Amazonプライムビデオは不公正な競争と虚偽の広告があるとして訴訟を起こされています。今回の訴訟もゆくえによっては、デジタルコンテンツ業界に広く影響を及ぼすのかもしれません。

(Source:Hollywood ReporterEngadget日本版より転載)

カテゴリー:ネットサービス
タグ:iTunes(製品・サービス)Apple / アップル(企業)訴訟 / 裁判(用語)DRM(用語)ネットショッピング / eコマース(用語)

【レビュー】アップルの最新位置情報デバイスAirTagの第一印象

Apple(アップル)の新しい位置情報デバイスAirTag(エアタグ)を、手に入れてから数時間使っているが、ほぼ宣伝文句通りに動作しているようだ。セットアップの流れは、AppleがAirPods(エアポッズ)用に開発したものから明らかな影響を受けたシンプルでクリーンなものになっている。U1チップで実現されている精密検索機能は、実用性指向の拡張現実(AR)の実用的な例として機能していて、画面上に仮想矢印やその他の視覚的な識別情報を表示することで、AirTagをすばやく見つけさせる。

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あまりお馴染みではない方のために説明すると、AirTagの基本的な仕組みは、Bluetooth(ブルートゥース)のビーコン技術を利用して、iOS 13以上を搭載した近くのデバイスに自分の存在を知らせるというものだ。これらの静かな「発信」は暗号化されていて、通りすがりの人には(通常は)検知されない(特にオーナーと「一緒にいる」場合には)。つまり、どのデバイスが実際にAirTagを「見つけた」のかは、Appleも含めて誰にもわからないのだ。

画像クレジット:Matthew Panzarino

ちなみに「一緒にいる」とは、AirTagが登録されているものと、同じiCloud(アイクラウド)アカウントにサインインしているデバイスが、近くにあることを意味している。Bluetoothの通信範囲は、その場の状況や信号反射にもよるが、一般的には40フィート(約12.2メートル)程度だ。

個人で非常に限られたテストしかしていないが、AirTagの位置特定範囲は、Bluetoothの基本的な期待値に沿っている。つまり、たくさんの障害物や壁、信号反射の阻害などによって、阻まれる可能性がある。例えば別の部屋にあるAirTagからの最初の位置情報を取得するのに30秒以上かかることもあった。とはいえ、位置情報を受け取った後は、デバイスの位置を特定するための指示がすぐに更新されて、数インチ(数センチ)単位で極めて正確に表示されるようになった。

近くのAirTagを探すのはこんな感じ

AirTagは、ユーザーが交換可能な標準的なCR2032ボタン電池で1年間動作する。ある程度の時間、水に浸かっても大丈夫な程度の防水性も備えている。バッグ用のレザーストラップや、ラゲージタグ、キーリングなど、デザイン性の高いアクセサリーがたくさん用意されている。また、たくさん寄せられた質問にお答えしておくなら、この機能はなぜか新しいApple TVのリモコンには搭載されていない。

分解されたAirTagの写真からは、Appleのハードウェアへの強いこだわりを見ることができる。ケースの中の電池接点は、小型機器にありがちな単純な折り曲げ式の突起ではなく、ケース内部の留め金と3つの圧力接点を介している。これによって、バッテリー交換時のねじれや曲がり、経年劣化による接触不良などが起こりにくくなり、デバイスの長寿命化が期待できる。

画像クレジット:Matthew Panzarino

ここまではいい感じだ。さらにテストを重ねていく予定だ。

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保護機能

位置情報に関連する製品なら何でもそうだが、AirTagsにとってもセキュリティとプライバシーは最重要課題であり、Appleはいくつかの保護措置を講じている。

AirTagを共有することはできない。AirTagは特定の1人が所有することを想定している。自分のiCloudファミリー共有グループに入っている他のメンバーができることは「近くに未知のAirTagがある」という警告を自分のデバイスに出ないようにすることだけだ。そのため、AirTagは共有鍵や、家のペットなどに使う際にも便利だ。他のiOSデバイスのように、家族の「探す」アプリにAirTagが表示されることはない。「Find My(探す)」アプリ内にはすでに「アイテム」専用のセクション「持ち物を探す」が設けられていて「探す」機能が組み込まれたアイテムもそこに入る。

画像クレジット:Matthew Panzarino

持ち主としばらく離れていたAirTagは、動かされる度に音を鳴らすようになる。この「しばらく」というのは現在は3日間に設定されているが、変えることが可能だ。またAirTagの使われ方を観察して、将来的にはAppleがデフォルトを調整するかもしれない。この機能によって、近くにいる人にその存在を知らせることができる。

画像クレジット:Matthew Panzarino

その他のプライバシー機能としては、AirTagが持ち主の近くではなく、他者である誰かの近くに置かれた場合、しばらくしてからその他者に「警告」する機能がある(例えば、バッグやクルマの中に入れて一緒に移動した場合など)。そのときその他者は、AirTagの位置を特定するために音を鳴らしたり、シリアル番号などの情報を調べたり、電池を外して動作を止めたりすることができる。

もちろん、AirTagを紛失モードにして、警告音を鳴らしたときにAirTagを見つけた人と個人情報を共有することもできる。またAndroid(アンドロイド)を含むNFC搭載のスマートデバイスを持っている人なら、誰でもデバイスにタッチすることで、そのAirTagのオーナーが選択した情報が掲載されたウェブページを見ることができる。もしそうしたくなければ、単にシリアルナンバーだけでも良い。

このシナリオは、自分の前に他人のAirTagがあることを知らせてくれるiOSデバイスを持っていない場合を想定している。もし紛失モードになっていなくても最終的にはAirTagは音を鳴らすことになり、AirTagオーナーはそれをコントロールすることができない。

画像クレジット:Matthew Panzarino

Appleが多くのエッジケース(極端な場合)を考慮していることは明らかだが、出荷が進むにつれて、何らかのケースが出てくる可能性があるので、それを見守る必要がある。

アップルには、市場における明確な優位性がある。

  • AirTagの位置を確認できる機器が、世界に10億台近くあること
  • U1ワイドバンドチップを内蔵し、iPhoneに搭載されている同様のU1チップと通信することで、超高精度(インチ単位)の測位を可能にしていること
  • 競合他社のタグにはない、プライバシーに配慮した機能が満載なこと

なお、Appleは、ウルトラワイドバンド(UWB)無線を搭載したサードパーティー製デバイスが、iPhoneに搭載されているU1チップにアクセスできるように、チップセットメーカー向けの仕様の策定を「2021年春以降」に行うと発表している。これにより、AirTagのようなU1を内蔵していないアクセサリーでも検索機能に対する精度が上昇することが期待される。もちろん、AppleはAirTagと同様の基本的な検索機能を提供したいと考えているBelkin(ベルキン)、Chipolo(チポロ)、VanMoof(バンムーフ)などのサードパーティー製デバイス向けに、「Find My(探す)」メッシュネットワーク全体を開放している。Tile(タイル)は、Apple社の優位性がこの市場への参入を不公平なものにしていると先の議会で証言したものの、UWBバージョンのトラッカーも提供する計画を発表した。

もしAirTagsが屋外で紛失してしまったらどうなるかを見るのが楽しみだ。手に入れてからまだ12時間も経っていないので、エッジケースや公共スペースでの一般的な実用性などをテストすることがまだできていない。

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デバイスは日本時間4月23日午後21時から発売の予定だ。

画像クレジット:Matthew Panzarino

カテゴリー:ハードウェア
タグ:AppleトラッカーAirTagレビュー

画像クレジット:Matthew Panzarino

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(文:Matthew Panzarino、翻訳:sako)

アップル幹部が「AirTagはiPhoneから3日間離れると音が鳴る」と明かす

アップル幹部が「AirTagはiPhoneから3日間離れると音が鳴る」と明かす

アップルが21日(日本時間)のイベントにて発表した忘れ物トラッカーAirTagにつき、アップル幹部らが「プライバシー優先」と「ストーカー防止」の機能と配慮につき掘り下げて語っています。

FascCompanyの取材を受けているのは、アップルのiPhone製品ワールドワイドiPhoneプロダクトマーケティング担当副社長カイアン・ドランス氏とセンシング&コネクティビティ担当シニアディレクターであるロン・ファン氏です。

まずドランス氏は「AirTagの所有者と非所有者のプライバシーに配慮するとともに、これらのメリットをサードパーティ製品にも開放していることがお分かりいただけると思います」と述べ、AirTagユーザーやそれ以外の人々が追跡されないことを重視しており、そのメリットを自社製品が独占していないことを確認しています。

持ち主の手から離れたAirTagにつき心配されるのが、盗まれるということ。しかしファン氏いわく「AirTagを紛失して、誰かがAirTagを拾っても、自分のiPhoneと再ペアリングして使い続けることはできない」とのこと。これをアップルは「ペアリングロック」と呼んでおり、iPhoneのアクティベーションロック(紛失した場合に「探す」アプリからロックをかけられる)に例えています。

ストーカー対策については、誰かがその人を追跡するためにAirTagを付けた場合は、iPhoneに「AirTagがあなたと一緒に移動している」という通知が届くとのこと。こちらは公式サポート文書にも説明があり、検知した場合はサウンドを鳴らしてどこにあるか見つけたり、ないし借りものにAirTagが付いていた場合はアラートを1日オフにできると述べられています。ただし「iOS 14.5以降をインストールしている」場合のみであり、それ以前のiPhoneでは感知できない模様です。

さらに本通知は、自分のApple IDや近くにある他のiPhoneと紐付けされていないAirTagが近くにある場合だけ表示されるとのことです。つまり満員電車の中で数十ものAirTagに囲まれていたとしても、持ち主がiPhoneと一緒に持ち歩いていれば「あなたと一緒に移動している」通知ラッシュに襲われることもないと思われます。

またAndroidユーザー(やスマートフォンを持っていない人)に対しては、ペアリングされたデバイスから一定時間離れると自動的に音を出して在処を知らせる仕様は石川温氏の記事でも言及がありました。今回の取材ではその補足として、現時点では「一定時間」とは3日間だと明かされています。

つまり当面は、子供が家から離れた瞬間にAirTagが鳴るわけではなく、AirTagを付けた自転車や自動車を駐車してその日のうちに帰ってくれば無音のままのようです。が、将来的にはソフトウェアアップデートにより、この時間を長くしたり短くもできるとのことです。

アップル幹部らは「AirTagはヒトやペットではなく、アイテムを追跡するために設計されている」と強調しています。そして小さなお子さんを安全に追跡したい場合は、Apple Watchのファミリーセットアップをお使いくださいとお勧めしています。

裏返せば、少なくとも現時点ではAirTagをペットにつけて追跡することも……とも憶測できます。ただし1つのApple IDに紐付けられるAirTagは16個に制限されているため、猫を17匹以上飼っている人には不満が残るかもしれません。

(Source:FastCompanyEngadget日本版より転載)

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カテゴリー:セキュリティ
タグ:Apple / アップル(企業)APPLE SPRING HARDWARE EVENT 2021ウルトラワイドバンド / UWB(用語)AirTag(製品・サービス)トラッカー / スマートタグ(用語)

Kandjiがアップル製デバイス管理プラットフォームの急成長を追い風にシリーズBで64.8億円調達

パンデミック期間中、Apple(アップル)デバイスの導入とアップデートをリモートで行う自動化ソリューションは不可欠となっている。米国時間4月22日、企業のIT部門のためにまさしくそれをやっているスタートアップKandji(カンジ)が、6000万ドル(約64億8000万円)の大型シリーズBラウンドを発表した。

Felicis Venturesがラウンドをリードし、他にSVB Capital、Greycroft、Okta Ventures、およびThe Spruce House Partnershipが参加した。本日のラウンドは、先の2100万ドル(約22億7000万円)のシリーズAからわずか7カ月後のことであり、3回のラウンドで調達した資金総額は8850万ドル(約95億5000万円)に上る、と同社は言っている。

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CEOのAdam Pettit(アダム・ペティット)氏は、2020年10月の資金調達以来、会社は飛躍的に成長していると語った。

「これは当初の期待さえもはるかに上回る顧客の増加です。どれだけ速く成長できるか目標を掲げるたびに、それを追い越しています」と彼は言った。成長の理由の1つは、パンデミックによる在宅勤務への急速な変化だと同氏はいう。

「現在、当社は40以上の業界の顧客と仕事をしていて、海外からも顧客が来ているので、今はひたすらリモートワークの支援に専念し、リモート作業者がエレガントな形で仕事をする環境を提供していきます」と彼は言った。

ペティット氏は売上の正確な数値を明らかにすることを拒んだが、シリーズAの発表以来3倍に増えたことは話した。その原動力の一部は、大企業の関心を呼んでいることであり、2021年はもっと多くを顧客に変えることを目指すとペティット氏は語った。

売上を伸ばし、顧客を増やすとともに、新たな従業員も迎え2020年10月以来40名から100名へと増えた。ペティット氏は、同社は多様で包括的なカルチャーを会社で育むことを誓約しており、そのための重要な要素として、多様な候補者の中から採用者を選ぶことを大切にしている。

「結局は、自分にとって重要であり、会社にとって重要である決定を下すこと、それをやってきました。そこから一歩ずつ前進して行き、採用にあたっては多様性のある候補者から選びます」。

これは、採用パートナーに対して、多様な候補者集団を望んでいることを明確に伝えていることを意味している。1つの方法は、リモートを実践し、幅広い人材集団を確保しておくことだ。「私たちの誓約を守るためには、サンディエゴやサンフランシスコの中心市場にこだわるのが非常に難しいことに気づきました。そこで海外へも進出した結果、優れた人材の新たな集団を数多く発掘することができました」と同氏は言った。

たった今ペティット氏は、戻れるようになった時に自社オフィスをどう動かしていくかを真剣に考えている。特に、主要なテックハブ以外に住んでいる一部の社員についてだ。ある程度リモートワークが続くことはわかっているが、難しいのはオフィスに来ない人たちがチームの一員として完全に溶け込めるかどうかだと同氏は話した。

カテゴリー:ネットサービス
タグ:Kandji資金調達Appleリモートワーク

画像クレジット:Bloomberg / Getty Images

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(文:Ron Miller、翻訳:Nob Takahashi / facebook

米上院は独禁法公聴会でアップルのApp Storeにおける不正防止の怠慢を非難

米国時間4月21日に米上院司法委員会の反トラスト法小委員会で開催されたヒアリングでApple(アップル)はApp Store における詐欺的行為についても追及を受けた。Appleはこれまで、App Storeにおける高額の手数料はAppleが詐欺、不正を防止し消費者を守るために必要だと主張していた。しかし最近デベロッパーコミュニティは「Appleは詐欺的であることが明白な有料・課金アプリに対して防止の努力を十分払わずこうしたアプリ全般に対する消費者の信頼損ねている。そのため合法的なサブスクリプション・ビジネスに対しても悪影響が出ている」と主張している。

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特にあるデベロッパーのKosta Eleftheriou(コスタス・エレフテリウ)氏はApp Storeにおける明白な不正を暴くことを自らの使命としている。エレフテリウ氏はいわば企業犯罪取締のワンマンアーミーとしてレビュー欄に大量のフェイク投稿を載せてユーザーを集めるなどの有害アプリをTwitter で告発し続けてきた。

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これまでに発見されたこうした詐欺行為の中でも特に目立つものは、あるユーザーの全財産であるビットコイン約60万ドル(6500万円)を騙し取った暗号資産ウォレットや、オンラインカジノを隠した子ども向けゲーム年間500万ドル(約5億4000万円)を騙し取ったVPNアプリなどがある。そもそもエレフテリウ氏をこの活動に向かわせる発端となった詐欺事件も詳しく報告している。同氏が開発したApple Watchアプリのライバルがマーケティング資料を盗み、アプリをコピーし、金を払って偽のレビューを投稿させたという。これによって詐欺アプリの方が優れた選択肢であるかのように見せかけて「ユーザーから年間200万ドル(約2億2000万円)をだまし取った」とエレフテリウ氏は主張する。

エレフテリウ氏のツイートは、アプリ開発者コミュニティで大きな注目を集めた。デベロッパーは自分が発見した詐欺の事例をエレフテリウ氏にメールで送るようになった。同氏は最近、さらに一歩を進め、App Store詐欺によって被った損害についてAppleを相手に訴訟を起こした

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上院の反トラスト法ヒアリングではエレフテリウ氏の名前は言及されなかったが同氏の努力が広く評価されていることは確実だ。

ヒアリングではJon Ossoff(ジョン・オソフ)上院議員(ジョージア州、民主党)がAppleの最高コンプライアンス責任者Kyle Andeer(カイル・アンディア)氏に対し「なぜアップルはこのような詐欺的アプリを摘発できないのか?」と質問した。オソフ上院議員は「これらが詐欺的アプリであるのは明白であり、そのようなものと判断するのは極めて容易なはずだ」と述べた。

上院議員は「なぜ我々は App Store における不正を発見するためにデベロッパー・コミュニティやジャーナリストからの情報に頼らねばならないのか?」と追求した。これはおそらくエレフテリウ氏の活動を念頭に置いたものだろう。

エレフテリウ氏自身は「(詐欺アプリの発見に)さして努力を払ったことはない」と述べている。「高い利益を上げているアプリについて不審なユーザーレビューがないか利用料金が高額ではないかチェックするだけです。その両方に当てはまるならおそらく詐欺です」という。

上院議員の質問に対しアンディア氏は「我々はApp Storeのセキュリティ強化と改善のために数千万ドル(数十億円)から数億ドル(数百億円)を投資しています」と述べて反論した。

アンディア氏は続けて「アプリストアにおけるセキュリティ強化と詐欺の防止はモグラ叩きです。このビジネスに携わっている全員がそう認めるでしょう。だからこそ、私たちは常に改善に取り組んでいます」と述べた。またAppleは不正行為者を発見するために膨大なリソースを新しいテクノロジーに投資していると主張した。同氏はApp Storeが消費者にリスクをもたらすアプリケーションを毎年何千も拒否していることを指摘した。

同氏はApp Store を運営しているのがApple でなかったら事態はさらに悪くなっていただろうとして次のように述べた。

誰しも完全な仕事はできません。しかし私たちは他社よりも優れた仕事をしていることを何度も証明してきたと思っています。App Store に登録されたアプリ以外のプログラムをサイドロードすることやサードパーティのアプリケストアにiPhoneを開放することはこの問題をますます悪化させるものと考えています。他のアプリストアや配信プラットフォームを観察すると、その状態は恐ろしいものです。

オソフ上院議員は、サイドローディングに関しては別途質問するとして詐欺アプリについて再度「Appleはこうした詐欺的アプリからも手数料を徴収していすね?」と質問した。

アンディア氏は「そういうことはないと考えてます。詐欺あるいは不正を発見すれば我々は直ちに是正措置を取ります。これは毎日行われています 」と答えた。

しかし、mAppleがApp Storeの詐欺からどの程度の利益を得ていたのかについては明確にならなかった。オソフ上院議員はAppleが詐欺による請求で得た収入の「全額」を被害者に返金したのかどうか、言い換えれば、これまでに契約したすべての顧客が、詐欺が確認されたときに返金を受けたのかを尋ねた。

アンディア氏の答えはいささか漠然としていたが、どうやら現行のシステムでは「詐欺を通報しまた苦情を申し立てた顧客については返金している」ことになっている受け取れた。同氏は、詐欺が発見された場合「顧客全員に返金している」とういう表現を避け「Appleは顧客が満足するよう取り計らっている」と慎重に答えた。アンディア氏はこう述べた。

もちろんAppleには毎日この作業を行っている専門チームがあります。私の理解によれば、チームは顧客の立場に立って懸命に働いています。顧客の満足が結局のところ私たちが最も重視する点です。もし顧客の信頼を失えば、Appleにとって痛手となります。

しかしエレフテリウ氏はこうした説明に満足していない。同氏は TechCrunchの取材に対して次のように述べた

昨日の公聴会でのオソフ上院議員の質問は的確なものでしたが、Appleは事実上回答から逃げました。デベロッパーコミュニティの全員はこれに対して怒りを感じています。App Storeでは何年も数百万ドル規模の詐欺行為がチェックされず見過ごされtえいています。しかしこれを発見するのは私のような個人でも簡単なのです。なぜAppleが見過ごしているのか、その理由についてAppleはまったく説明しませんでした。またApp Storeでの詐欺行為に対しAppleに責任があるのかどうかについても明確な回答をしませんでした。

Appleはこうした詐欺行為から利益を得ているように受け取れます。つまり後になって詐欺的と判明したアプリを削除しても、すべてのユーザーに被害金額を返金するのではないのです。私たちは10年以上にわたり、Appleの問題点を指摘し続けてきました。上院反トラスト法委員会には、こうした疑問の真相を究明するよう強く求めます。これには数年前にApp Storeでユーザーが疑わしいアプリに通報フラグを立てる機能を削除したAppleの不可解きわまる決定も含まれます

Appleにコメントを求めているがいまのところ回答がない。

カテゴリー:パブリック / ダイバーシティ
タグ:独占禁止法アメリカAppleアプリApp Store詐欺

画像クレジット:TechCrunch
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(文:Sarah Perez、翻訳:滑川海彦@Facebook

これが美しいパープルのiPhone 12

春になると、Apple(アップル)は新色を発表する。新しいiMacは深みのあるパープルなど7種類の色が提供される。またラインアップの刷新として、同社はパープルのiPhone 12とiPhone 12 miniもリリースした。手元にプレビュー機があるのだが、側面はバイオレットに近く、また背面はライラックに近いすばらしい色だ。

これはすばらしい色だ。私の意見では、これまでに発売されたiPhone 12の中で最も良い色だと思う。アップルがこのパープルの新色を発表したのは、iPhone 12 miniを愛用している人たちに向けて「心配しないでください、まだしばらくは使えますよ」といっているようにも思える。しかし逆にいえば、しばらくはこのバージョンのminiしか手に入らないという兆しなのかもしれない。もしかしたらこれは私の深読みで、単に「できるから」春の購入者に新しい選択肢を提供しているのかもしれない。いずれにしても、デザインやファッションの世界でブームとなっている「ミレニアル・パープル(ライラック)」というトレンドにマッチした、すばらしいスマートフォンだ。同社の色彩理論チームは常にトレンドに敏感なのは、以前から変わらない。

またアップルはパープルのシリコーンケースもリリースしており、このモデルを引き立てている。

iPhone 12 miniの実力を知りたい方は、2020年末のレビューを参照して欲しい。

ここでは、パープルのiPhone 12 miniの美しい写真をいくつか紹介しよう。

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カテゴリー:ハードウェア
タグ:AppleiPhone

画像クレジット:TechCrunch

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(文:Matthew Panzarino、翻訳:塚本直樹 / Twitter

アップルとグーグルが上院の独禁法ヒアリングでサードパーティーアプリのデータ共有の詳細を問われる

米国時間4月21日、米上院で行われた反トラスト法に関するヒアリングでAppleとGoogleの代表がそれぞれのアプリストアで収集されたデータを不当に利用していないかどうか質問された。プラットフォームにアプリを登録しているサードパーティーの企業のデータを自社の製品開発に流用し、不当に競争力を得ることを防ぐために「厳しいファイアウォール」その他の内部ポリシーを設けているかどうかが焦点となった。Richard Blumenthal(リチャード・ブルーメンソール)上院議員(コネティカット州、民主党)はAppleに対して「sherlocking(シャーロッキング)」という慣行について質問した。同上院議員はAppleの開発者コミュニティでは他のアプリをコピーする行為が一般的になっており「シャーロッキング」というニックネームで呼ばれていると指摘した。

Sherlock(シャーロット)というソフトウェアはWikipediaに1項目を立てた記事が掲載されているが、2000年代初頭にAppleが開発した検索ツールだ。サードパーティーのデベロッパーであるKarelia SoftwareはSherlockのライバルとなるWatsonという検索ツールを開発した。この製品の成功に対し、AppleはWatsonと同一の機能を自社のSherlock検索ツールに追加したためWatsonは事実上ビジネスの継続が不可能となった。後に「Sherlock」ないし「sherlocking」という呼び名はAppleがサードパーティーのデベロッパーのアイデアをコピーし、ライバルを脅かしたり潰したりすることを意味するようになった。

以後、デベロッパーコミュニティはAppleは多年にわたって数多くのアプリを「Sherlock」してきたと主張してきた。例えばデスクトップ・ウィジェットのKonfabulator、ポッドキャストマネージャーのiPodderX、ウェブサイト作成アプリSandvox、Mac OS Xの通知システムGrowl、さらに近年では、画面のブルーライト軽減ツールF.lux、iPadをサブディスプレイにするアプリDuetとLunaに加えてさまざまなスクリーンタイム管理ツールなどがそうだという。今回、TileはAppleのAirTagは不当な方法で同社の市場を脅かすものだと主張している。

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ブルーメンソール上院議員がヒアリングで質問した相手はAppleのKyle Andeer(カイル・アンディア)最高コンプライアンス責任者とGoogleのWislon White(ウィルソン・ホワイト)公共政策および政府関係担当シニアディレクターだ。同上院議員はAppleのアプリストアとビジネス戦略立案の間に何らかの「ファイアウォール」を採用しているか尋ねた。

アンディア氏は「上院議員の質問を正しく理解しているなら、AppleではApp Storeを管理するチームと製品開発戦略に携わるチームは別個の存在しです」と述べ質問をかわそうとした。

これに対しブルメンソール議員は「ファイアウォール 」の意味を具体的に説明した。つまり、それぞれを担当するチームが存在するかどうかではなく、App StoreとAppleの他事業部の間でデータ共有を禁止する社内規定の有無を尋ねているのだと述べた。

アンディア氏は「私たちは適切な管理を行っています」と答えた。

これに続いて「過去12年間、Appleはごく少数のアプリとサービスを導入したのみです」と述べた。いずれの場合においてもApp Storeには「サードパーティーによる数十の選択肢があり、そうしたライバルのアプリがAppleの製品より人気があることも多々ありました」とした。

アンディア氏は「我々はコピーしませんし、敵を潰したりしません。私たちがしているのは新しい選択肢と新しいイノベーションを提供することだけです」と述べた。

この主張は、SpotifyとApple Music、NetflixとApple TV +、KindleとApple Booksなど強力なライバルとの競争の場合には当てはまるかもしれない。しかしAppleがiPadをサブディスプレイにすることができる機能であるSidecarを導入したときのようにAppleが限定された領域で改良を行う場合は別だ。DuetやLunaのようなアプリがサブディスプレイ接続のニーズがあることを証明したもののSidecarの導入でサードパーティーのアプリは行き場を失った。

もう1つの例は、AppleがiOSに視聴時間制限機能を組み込んだときだ。サードパーティーのスクリーンタイムアプリのデベロッパーにAPIを提供しなかったため消費者はサードパーティーのアプリからAppleのスクリーンタイム設定機能にアクセスすることが不可能となった。このためユーザーはサードパーティーの専用インターフェースや独自機能を利用できなかった。

関連記事:アップルがスクリーンタイム監視アプリ削除の正当性を主張

ブルーメンソール議員はファイアウォールの存在に関するアンディア氏の答えた「ノー」だと断定した。

同じ質問を受けたGoogleのホワイト氏は「Googleにはサードパーティーのサービスからのデータの使用方法に対するデータアクセスコントロールが実施されていると理解しています」と答えた。

上院議員はこれが前述の「ファイアウォール」であるかどうかを明確にするようさらに迫った。議員はサードパーティのデータへの別チームの「アクセスを禁止しているかどうか」に明確に答えるよう求めた。

「Google自身のサービスと直接競合するような仕方でサードパーティーのサービスを利用することは禁止されています。Googleにはそれを管理する内部規定があります」とホワイト氏は述べた。

この時点で時間切れとなったため、ブルーメンソール上院議員は「フォローアップ質問は書面で行う」と述べた。

カテゴリー:パブリック / ダイバーシティ
タグ:独占禁止法アメリカAppleGoogleアプリApp StoreGoogle Play

画像クレジット:TechCrunch

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(文:Sarah Perez、翻訳:滑川海彦@Facebook

アップル2021年春の新製品イベントは投資家マインドに響かず、株価は微減

Apple(アップル)の米国時間4月20日の新製品発表イベントには同社の今後の成長と業績についての多くの情報が含まれていた。こうした情報は株式市場にとってAppleが期待に応えるかのか下回るのかを決める重要なヒントになるはずだった。しかし実際にはAppleの株価はほとんど動かなかった。

つまり新たな常識はこういうことだ。「Appleが新製品、新サービス、新ソフト、新周辺機器などをいくら発表しようと株価に影響しない」。Appleといえども四半期決算の発表は株価に影響することがある。しかし新製品の予告では対した影響は出ない。

少なくともTechCrunchが注目している間には多きな動きはありそうにない(こちらに詳しい記事)。Appleのユーザー(とマスコミ)はApple製品に熱狂的だ。見たものについて非常に声高に語る。一方、投資家はその間、いわば黙々とランチを食べていた。

関連記事:WWDC基調講演中に新OS、新機能の発表でアップル株価はどう動いたのか?

今回のAppleイベントの結果はといえば、場内の引け値は1.28%下落、その後さらに時間外取引で0.36%下落した。株価はイベントが始まった時には133.40ドルだったが現在は133.11ドルだ。Appleはこのイベントで逆風が強まるのを防ぐことはできなかった。

Yahoo Financeによれば、市場の総合的な状態を示すNASDAQ指数は0.92%の下げだった。

言い方を変えると、Appleからの多数の発表クレジットカードをアップデートすること、ポッドキャストアプリをリニューアルして有料会員をサポートすること、iPhoneのカラバリに紫色を追加すること、AirTagsを本当に準備していること、ついに新しいApple TVが登場すること、新しいiMacがとてもホットであるらしいこと、新しいiPad(iPad Proを含む)が登場すること、等々のニュースは投資家からは概ね無視された。

関連記事:アップルが「Spring Loaded」で発表した新製品まとめ、新iMac、iPad Pro、AirTagなど

使い古されているのでここには「君らは退屈しているのか?」という(映画の)「Gladiator(グラディエーター)」をネタにしたGIFは貼らないでおくが、こうした結果になったのには理由がある。投資家は決算の数字にしか注意を払わない。将来の決算の収入の源となるはずの製品には目を向けず、影響が出たら出たときに改めて検討すればいいと考えるわけだ。Yahoo Financeのグラフを貼っておく。

 

画像クレジット:YCharts

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カテゴリー:イベント情報
タグ:AppleAPPLE SPRING HARDWARE EVENT 2021株価

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(文:Alex Wilhelm、翻訳:滑川海彦@Facebook