1年の中で2番目に素晴らしい季節がやってきた。一般の人が、1週間も続いた新年のほろ酔い気分を振り払いながら仕事に戻ろうとしているとき、目を血走らせたITジャーナリストたちはラスベガスに集結して、IT業界の大ニュースを掘り起こそうと躍起になる。
CES(コンシューマー・エレクトロニクス・ショー )は、製品発表の機会以上のものであることは言うまでもない。もちろん製品の発表が大部分を占めるは確かだが、その年のIT業界のトレンドが設定される場でもある。モバイルから自動車まで、そしてロボットからセックステクノロジーまで、多くの企業にとって、その後1年の活動の足場を固めるための最初にして最高の機会なのだ。
いつもどおり、TechCrunchではスタッフ全員が現場に張り付いて、随時ニュースをお届けする予定だ。しかしその前に、このハードウェアにとって最も重要な週に何が期待できるのか、トレンドをまとめておこう。
スマートホーム
Amazon.com Inc.の本社にある球状植物園「Spheres」に展示された画面付きのスマートスピーカー「Amazon Echo Show」。2018年9月20日木曜日に米国ワシントン州シアトルで開催されたお披露目イベントでのひとコマ(写真クレジット:Getty ImagesのAndrew Burton/Bloomberg)
コネクテッドホーム関連のテクノロジーは、ここ数年間、CESを支配してきた。今年もそれが変わることはないだろう。Amazon(アマゾン)やGoogle(グーグル)のようなビッグネームは、おそらく今回のショーでも大きな存在感を示すはず。Amazonは、昨年後半に多くのハードウェアを発表したが、Googleは間違いなく何かしら発表の準備を整えているはずだ。コネクテッドホームに関するあらゆるもの、たとえば家のロック、オーブン、冷蔵庫、洗濯機、その他風変わりでニッチな製品が期待できる。
スマートディスプレイも、間違いなく話題の中心となるはずだ。オフィスに焦点を当てたLenovo(レノボ)の製品についてはすでに記事を書いたが、今後はそのトレンドも注目に値する。
5Gとフォルダブル
CESは、モバイルに関しては、いつも投げやりな感じがあるのが否めない。というのも、スマホ最大のショーであるMobile World Congress(モバイル・ワールド・コングレス)が、1カ月ちょっと後に控えているのだから、無理もないことかもしれない。それに加えて、Samsung(サムスン)やApple(アップル)など、多くのメーカーが、各社の都合で独自の発表を行うようになっている点も影響している。
すでに発売されているサムスンのGalaxy Foldや、やはりすでに発表されているHuawei(ファーウェイ)のMate Xなど、フォルダブルについても、会場のあちこちで多少は話題になるかもしれない。米国内のショーにファーウェイが登場するのは、控えめに言っても興味深い。この分野についての新しい発表は、ほとんどのメーカーがバルセロナまで控えるのではないかと思われる。
とはいえ、2020年には、ほとんど5Gだらけとなるだろう。各キャリアも、ようやくカバーエリアを市場全域に拡げてくる。この次世代のワイヤレステクノロジーは、携帯電話だけでなく、もっと幅広いデバイスに搭載されるのを期待していいだろう。
8Kとスマートで風変わりなカタチのテレビ
CESは、前々からホームエンターテイメントの重要なショーだった。主要な企業がこぞって参加して、人々が汗水たらして稼いだ金を使わせる方策を次々と打ち出してくる。今回は8Kが大きなテーマとなるはずだ。実際に消費者向けの8Kコンテンツを用意するのに苦労しているのは、また別問題だ。昨年は、LGの巻き取れるディスプレイなど、ユニークなフォームファクターの製品が登場した。今年はそれ以上に「コンセプト」といった言葉の使われ方に注意すべきかもしれない。
テレビというのは、GoogleやAlexaのようなアシスタントにとっても、事実上避けて通ることのできない領域の1つだ。また、どうやってスマートホームにうまく組み込むことができるかという課題もある。
スリープテック
指輪のように着けて寝ることで睡眠の質をモニタリングするOura Ring
昨年私は「心の健康がCESの中心的な話題となった」と書いた。さらに今年は、多くの企業が様々なテクノロジーを駆使して、スクリーンタイムのような利用制限に挑むことになるだろう。それが、スリープテックにも大々的に波及することが期待できる。ウェアラブルからスマートベッドまで、さまざまなスタートアップがユーザーの睡眠パターンをコントロールしようと競っている。
モビリティ
2015年9月に最初に公開されたMission Eコンセプトカーのインテリア
この分野には大きく2つの注目すべきものがある。1つはADAS(Advanced Driver Assistance Systems、先進的運転者補助システム)だ。このところ自動車メーカーは、自動運転車から、人間の運転者を効果的に補助することに目を向け始めている。完全な自動運転システムは、近年いわば暗礁に乗り上げた感もあるからだ。一方で、運転者の補助は、自動車メーカーにとっては良い機会であると同時に自動運転車を実現するための一歩としても意味がある。そして2つ目は、人間の声だ。音声による自然な対話が、エンターテインメントシステムだけでなく、ドライブ体験におけるさまざまな領域で重要な役割を果たすようになることが期待できる。
その他
Northのスマートグラス、第1世代のFocals
ウェアラブルは、エクササイズ用のバンドを超えて発展し、ECG(心電計)といった本格的な健康器具だけでなく、ヘッドアップディスプレイなど、身体の他の部分にも進出する。そこでは、ARやVRが重要な役割を果たすはずだ。やはりAppleやGoogleが、このカテゴリでの重要なプレーヤーには違いないが、小規模のハードウェアメーカーも、このカテゴリ内でそれぞれの得意分野を生かしてくるだろう。
また、ラップトップとタブレットのハイブリッド的な製品にも注目すべきものが登場する可能性がある。大麻とセックステックも、かなりホットな話題になるはず。これまでCESは、そうしたものを阻止しようとしてきた経緯があるのだが。また、ストリーミング戦争も、会場を大いに盛り上げるはずだ。
あ、そうだ。Ivanka Trump(イヴァンカ・トランプ)氏も、訳あって登場することになるだろう。よく知らないが、CESなのだから何でもアリだ。
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(翻訳:Fumihiko Shibata)