ソフトバンクも巨額出資する3400億円企業、Flexport創業物語

「このビジネスを始めて1年になるまで『貨物フォワーダー』という言葉の意味を知らなかったんですよ」。物流スタートアップのFlexportが直近で32億ドル(約3420億円)の評価を受けたことを考えると、2016年にCEO兼創業者のRyan Petersen(ライアン・ピーターセン)氏に初めてインタビューしたときのこの言葉に、今となってはいっそう驚きを禁じ得ない。

しかし、そこに同氏がテック産業で最も才能のある、エキサイティングな経営者の1人である理由が透けて見える。何といっても、彼は学ぶ。謙虚に。休むことなく。果たす役割が大きくなると、それに必要なことは何でも学ぶ。

まさに今なら、旅客機の座席に人が座っているように箱をシートベルトで固定すると医療用マスク115万枚を搭載できることを学ぶ、という意味だ。Flexportはこれまでに個人用防護具約6200万個を輸送している。そのうち1000万個以上が同社のFlexport .orgの働きにより資金提供されたものだ。 一方でピーターセン氏とFlexportはFrontline Responders Fund(最前線対応者支援ファンド、FRF)の設立に協力し、同ファンドは新型コロナウイルス(COVID-19)対策支援のために700万ドル(約7億5000万円)の資金調達を行った。

Flexportが輸送する300万個のウイルス防護具

Flexport.orgは300万個の個人防護具を梱包して空の旅客機に積み付け、最前線で対応する人々に向けて送り出した。

「彼は私が知る中で最も印象的な創業者の1人ですよ」と語るのは、FRFを率いる仲間でScienceの共同創業者のPeter Pham(ピーター・ファム)氏。「ライアンは本当に私欲なく、ただ問題を解決したいと思っているのです」。

これを踏まえて、TechCrunchがこれまで4年間にわたり行った6回のインタビューから、13億ドル(約1390億円)の調達と数億の収益を達成してきたピーターセン氏の歩みを振り返る。

面倒なことを無視しない

ピーターセン氏はほどなく、「貨物のフォワーディング」が出荷と引き渡しの諸々を調整し、そこにある商品のパレットやコンテナを、トラックや船、飛行機を使って地球の反対側にいる販売業者へと届けることだと知った。それまでに、Flexportは2014年のY Combinatorに参加し、1兆ドル産業の貨物業界に参入する準備をしていた。

Flexport創業者のRyan ピーターセン氏

Flexport創業者のライアン・ピーターセン氏。

「問題の規模が大きすぎて、解決できると思えなかった」と同氏は振り返る。「どうやって世界貿易を修正すればいいんだろう? だいぶ経ってから、とにかくやってみよう。壊れっぱなしというわけにはいかないだろう、と思うようになったのです」どうしてか、当時の貨物フォワーディングの世界というのは、ファックスの記録と紙の積荷目録だらけで、Excelファイルか電子メールを受け取れればその顧客は運が良いほうだった。

貨物フォワーディングは多くの起業家の悩みの種であったが、誰もこのことに取り組もうとしなかった。困難が大きすぎて克服できないことから、YCの共同クリエイターのPaul Graham(
ポール・グラハム)氏が名づけた「schlep blindness」(面倒な仕事を無視すること)を引き起こしているようだった。

「面倒な仕事を無視することとは、あまりにも大変すぎるので脳がそのことを考えないようになってしまう、ということです。私たちの脳には必要な機能だと思います。そうでなかったら、座って死について一日中逡巡して、何もできなかったということになるでしょう」とピーターセン氏はいう。「Stripeが現れるより前にインターネットで何かを販売したことがある人なら、恐ろしく面倒な決済の手続きをしたことがあると思います。インターネット起業家なら100%その問題を経験していて、それぞれの方法ででやってきたと思います」。100年前からあって今なお現役の貨物輸送手続きと、山のような規制当局の頭文字語。参入したい人なんているのだろうか。

「Ryanは私が呼ぶところの『徹甲弾』ですよ。他の人が諦めるような障壁を乗り越え続ける創業者です」とグラハム氏は言う。同氏はFlexport.orgの新型コロナウイルス対策支援に100万ドル(約1億1000万円)を寄付している。「彼は意思が固いというだけじゃない。他の人に見えないものが、彼には見えるんです。貨物ビジネスは巨大でありながらものすごく前近代的で、けれど何千人もスタートアップ起業家がいて、誰がそのことに気づいたでしょうね」。

Flexportイメージ画像

ピーターセン氏が腹を立てていたのは、顧客の貨物が最適とは言いがたいルートで輸送されているのに、そのことが価格やスケジュールにどれほど影響しているかを顧客に知られたくないと、大手貨物フォワーダーが考えていたことだった。「全体がどう機能しているかを私自身が理解できないことで、彼らはお金を儲けていたわけです。それで、当時は、この分野にまだ疎い起業家にありがちなことなのだろうと思っていたのですが、実は大企業でさえこのことに苦労していることがわかったのです。貨物利用運送事業者に利用されてしまうのではないかと恐れていたのです」。

ところが、ピーターセン氏はそれほど世間知らずではなかった。実のところ、それまでずっと貨物ビジネスと関わりがあったのだ。

ソーダの売買からスタートアップの創設へ

「母はたぶんそうとは知らずに、私たちを起業家として育てたのだと思います」とピーターセン氏は振り返る。同氏と兄のデビッドの母親は生化学者であり、食品安全ビジネスを手がけていた。父親はその会社のプログラミングを担当していた。「子供の頃の会話といえば、ソフトウェアを活用し、どうやって政府規制をもっとアクセシブルにするか、ということばかりでした」。Flexportが最終的に、米国の43もの貿易規制当局を突破したのも、同社のCEOにしてみれば自然な成り行きだった。

Ryan ピーターセン氏、2015年撮影

Ryan ピーターセン氏、2015年撮影

ピーターセン氏が発散している行動的なエネルギーからは、いつも次の難題を待ち望んでいるような印象を受ける。「その頃は、何もかも飽き飽きしていて」それで、母親の職場に連れて行かれた。「母は私にオフィスに買い置きするソーダを納品させて、報酬を払ってくれたんです。Safeway(セイフウェイ)まで父の車に乗せてもらい、ソーダを1ケース4ドルで買って、9ドルで会社に販売しました」。同氏は笑いながら、ふと考えて「それって、子供のお小遣いを非課税にする方法だったかもしれませんよね」と語った。

ほどなく、ピーターセン氏はもっと大きな商品をもっと遠くへ輸送するようになった。中国でスクーターを買い付け、米国内でオンライン販売した。2005年までピーターセン氏は、サプライチェーンに近い場所にいるため中国で暮らしていた。その翌年、同氏は兄とMichael Klanko(マイケル・クランコ)氏と共同でImportGeniusを創業した。そこで彼らが気づいたのは、紙の積荷目録には膨大な量の価値ある情報が詰まっているということだった。そこで、輸入者と輸出者が競合会社の動向をチェックできるよう、スキャンしたデータを販売し始めた。

ピーターセン氏が初めてスポットライトを浴びたのは、2008年に偶然Steve Jobs(スティーブ・ジョブズ)に出会ったときだった。ImportGeniusは、Apple(アップル)が大量の「電子コンピュータ」を出荷しようとしていたことを掴んだ。これは同社で初めての出荷分類品目だ。 「iPhone 3Gの発売を、公開積荷目録データからスクープしたのです。スティーブ・ジョブズが米国税局に連絡し、国税局から私に連絡が来ました」と2016年のインタビューで語った。

ImportGeniusは結局頭打ちになったが、ピーターセン氏はここで知識を蓄え、後に自らの「面倒な仕事」を突き止め、それを無視することなく打ち砕くことを学んだ。 「最大の難問が本丸から私をじっと見ているようでした。世界貿易は難しすぎて、管理できるソフトウェアがありませんでした」と同氏は振り返る。「その頃、この業界では中小企業向けのソフトウェアが不足しているだろうと予想していました。しかしその後分かったのは、この業界には本当にまったくそのソフトウェアがないということでした」。

最初はImportGeniusの社内で後のFlexportを立ち上げたかったが、既存の投資家にリスクを取るよう説得するのは困難だった。何か別のことを始めるのは怖いが、エキサイティングでもある。「兄は私の親友で、最良のアドバイザーでもあります」とピーターセン氏は言う。お互いに嬉々として競争している2人 — ライアンのTwitterハンドルは「@TypesFast」だ。一方のデビッドは「@TypesFaster」である。

それで、Davidがまず動いた。後に2300万ドル(24億5000万円)を調達するBuildZoomを創業し、工事業者手配の兵站を固めた(このパターン、お気づきでしょうか)。その後2013年にライアンが退社する。「自分の城を出て自分を試したいと……1人で陣頭指揮を執れることを証明したいと望む自分がいたと思います。本当にすごく大きな挑戦でした。その日が来て、初めて味わうような解放感があって、すばらしい気分でした」。

「笑いのタネ」が10億ドルを調達

規制当局の認可をすべて受け、Flexportの商品の基盤を構築するのに数年かかった。Founders Fundからの早期の資本で、ピーターセン氏は待望の貨物ソフトウェアを構築した。それでも「大企業の経営者からは笑いのタネに。私たちのことを(映画「バック・トゥ・ザ・フューチャー」の)Emett Brown(エメット・ブラウン)博士と次元転移装置に例えた人がいて。でもその人は、博士はタイムマシンを発明して、それは実際に動いたということを忘れていたのだと思います」。

2016年までに、Flexportは64カ国で700社のクライアントにサービスを提供した。僕が以前書いた記事のなかで、「Flexportはイノベーションを寄せ付けない退屈な巨大産業に立ち向かう、最もセクシーでない1兆ドル産業のスタートアップ」とFlexportのことを表現したことがある。それからコンシューマー向けスタートアップが飽和状態になり、投資家はこれまで触れられなかった市場で進化しているテクノロジーに目を向けるようになった。2017年の資金調達後、企業価値9億1000万ドル(971億2000万円)と算定されたFlexportは、DSTが主導する1億1000万ドル(117億4000万円)の資金調達ラウンドを実施し、シリコンバレーの目に留まり始めた。

Flexportのダッシュボード画面

Flexboardプラットフォームのダッシュボードは、地図、通知、タスク一覧、そしてFlexportの顧客がサプライヤー工場との間で使えるチャットを提供している。

幸運なことに、Flexportが1800社の顧客と取引し月間7000件の貨物を取り扱うようになっても、まだ貨物業界の巨人たちは笑って見ていた。「スタートアップのライバルは気にしていません。大手が私たちのことをジョークだと思わなくなったら心配です」と同年ピーターセン氏は語っていた。ほどなく、創業25年の中国の民間物流大手S.F. ExpressがFlexportと業務提携し、2018年の追加の1億ドル(106億7000万円)のラウンドにつながった。一方で、Flexportは老舗のライバルたちのようになろうと努力していた。 当時ピーターセン氏は「スタートアップという言葉を外したいと考えていました。(当社のお客様は)成長を助けてくれる企業を求めているのであって、地に足のつかないスタートアップは求めていませんでした」と話していた

その点、ピーターセン氏は貨物ビジネスか魅力的かどうかは気にしていなかった。「セクシーとも、セクシーでないとも考えたことがありませんでした。世界経済のバックステージパスだと考えていただけです」と後に同氏はそう説明した。それでも、サウジアラビアを後ろ盾とするソフトバンクのVision Fundには魅力的に映った。その頃Flexportは、販売業者が数カ月後に販売予定の商品の決済を完結できる貨物ファイナンス機能を追加していた。自社で航空機をチャーターし、自社の倉庫を運用するようになった。その倉庫では、入庫するすべての貨物のサイズをスキャンしてその先の輸送を最適化できる次世代ロジスティクスの実証実験を行った。

Ryan ピーターセン氏

それまでに、Flexportには数多くのイグジットの選択肢があった。しかし、ピーターセン氏は運転を楽しんでいたのだ。「ただおもしろいのです。目的があれば興味深いことに引き込まれる。ビジネスを売却してしまえば、ただのどこにでもいるお金持ちです。ビジネスを売却したいとはまったく思いません」。幸いにも、貨物フォワーディングでの利益拡大の見通しから、ソフトバンクは2019年前半、Flexportに仰天の10億ドル(約1067億円)を投資することに同意し、資金調達後の企業価値は32億ドル(約3415億円)になった。

「当社の役員会でも物議を醸しました。これは大きな希薄化だと考えられていました。しかし、これからやってくる上がり下がりの波で、サイクルを乗り切るのにキャッシュが必要だと説得しました。私の考えでは、世界は不確実なものです。あらゆる出来事に準備ができていなければならない」とピーターセン氏はいう。嵐を乗り切れさえすれば「やがて将来勝利するということです」。

この戦略はほどなく当たった。国内で新型コロナウイルスの感染が拡大したために中国との貿易が事実上停止し、Flexportの取り扱いコンテナ数は激減したが、他の後発スタートアップ企業のように大規模な解雇をせずに済んだ。2月4日に、先を見越して減速が予測される採用部門を中心に従業員の3%にあたる約50人を削減した。「社員を落胆させるのは本当に辛いこと」とピーターセン氏は打ち明ける。

Flexportのチャーター機

Flexportはここ数年自社のチャーター便を運用して輸送している。

不況時代のCEOとして舵をとること、そして思いやりを持って人員を削減することが、ピーターセン氏の新しい目標になった。「そのことに私が個人的な責任を負っているということを、社員に知って欲しかったのです。ここには透過性があることを」と同氏は語る。事態の深刻さに、その声に力がこもる。「社員は不安を感じるとリーダーに目を向ける。そのときリーダーが不安を感じていないと分かると、いっそう不安が増すのです。でも、社員が不安を感じていて、『ああ、リーダーもやっぱり不安なのかな?』と思えば、その時は大丈夫。彼らもきちんと行動してくれます」。

新型コロナウイルスの国内感染拡大前に素早い決断力で行動したことで、Flexportの推進力は強く、滑走路は開かれた。ピーターセン氏は、不況でも好況期と同じように同社を導けるだけのちからを証明しつつある。

Flexportのマネジメント術

「この18カ月ほどで得た最大の学びは、全部はできないということです。やりたいことは何でもできるけれど、全部はできないのです」とピーターセン氏は説明する。「良いアイデアが浮かんで『やろう!』というでしょう。するとすぐ手を広げすぎになってしまう。物事に『ノー』という、何らかのトップダウン的な規律が必要なのです。創業後の数年間、私たちにはそれが欠けていました」と彼は苦笑いしながら話した。

規律の探求によって同氏は、顧客ニーズと企業文化維持の優先度付けのための、2つの重要なフレームワークを開発し、今はそれに従っている。Flexportは従業員1800人、14拠点、6つの倉庫、そしてSonos、Kleen Kanteen、Timbuk2など1万社の顧客を獲得するまでに成長したのだから、それらのフレームワークは決定的に重要だ。

ホワイトボードで自身のマネジメントフレームワークを説明するRyan ピーターセン氏

ホワイトボードで自身のマネジメントフレームワークを説明するライアン・ピーターセン氏。

最初のフレームワークは、ピーターセン氏のメンターである米国ビジネス界の大御所であるCharlie Munger(チャーリー・マンガー)氏からヒントを得たものだ。ビジネスが成功するために満足させなければならない6種類のステークホルダー、または「お客様」を明らかにする。ピーターセン氏が述べるにはこうだ。

  1. 顧客:お金を払ってくれる人たち。Flexportにとっては、輸入者と輸出者の両方だ。
  2. ベンダー:自分が支払う相手。Flexportの場合、航空機、船舶、トラックの所有者。
  3. 従業員:彼らの待遇を必ず良くすること。Win-Winな関係でなければならない。
  4. 投資家:自分の投資のリターンを得る資格がある人たち。リスクを取っているから。
  5. 規制当局:誰に免許を与えるかを決める人たち。Flexportにとっては、輸入製品に関係するもので、米国内だけでも43の規制当局がある。
  6. コミュニティ:事業を行っている場所。いつかこれは、グローバル社会になるかもしれない。

Charlie Munger氏、Ryan ピーターセン氏が提唱する「6種類の満足」

「すべての項目でBグレード以上、できればAを取れなければ、長期に持続可能ではありません」とピーターセン氏は説明する。そこで働くべきか、投資すべきか、取引すべきか、または自分で導いて向上させられるか、会社を評価するときに誰でも使えるスマートレンズだ。

Airbnbを例に取ってみよう。顧客は概してこのホテルの代わりのサービスを好んでいるし、従業員の採用も継続的に有効にできている。そして、投資家は数十億ドルのオファーを提示し、同社が新型コロナウイルスの災禍を生き延びるよう資金を注入している。ただし、ベンダーであるホストとその近隣住民は問題のあるゲストに手を焼いていて、コミュニティと規制当局は住宅供給に与える影響を巡ってこのスタートアップと衝突している。この「6種類の満足」で、Airbnbが何をもっと頑張らないといけないかが分かるだろう。

2つめのフレームワークは、ピーターセン氏が自ら開発したもので、事業の拡大期に会社のコアバリューを確実に維持する方法に関するものである。6種類の文化的な問いが与えられる。

  1. Why:なぜ自分は存在するのか。自分の目的、ミッション、ビジョン、影響力は?
  2. Who:誰を雇用していて、どのような価値観と行動を求めているか。
  3. What:自分は何に焦点を合わせているか、成功の尺度にどのような指標を使っているか
  4. How:どうやって意思決定していて、どのようにして改善のためのフィードバックループを短くしているか。
  5. When:いつまでにやり終えて、商品はいつ出荷しなければならないのか。
  6. Where:自分のチームはどこに帰属意識を持っていて、自分はどうすればもっと多様性を受け入れられるのか。

ピーターセン氏はこれらの理念を医学的な状況への対処になぞらえる。リーダーが早くからチームの文化にそれらを組み込んでおけば、あとで直そうとするよりもずっと簡単だ。「どの会社でも、これらを正しくできれば、競争に勝てる」と同氏は考えている。

これらを実践するために、ピーターセン氏は身近な人たちでチームを編成した。チームは「当社のOKR(目標と主な結果)は明確か、きちんと文書化され、多様性を受け入れた会議をしているか、社員が自ら責任をもって業務しているかを確認すること、それだけです」。この方法はアマゾンの企業スタイルに大きく影響を受けている。ピーターセン氏は2019年に「英語には官僚制を意味するポジティブな言葉がないですよね」と語っていた。

プロセスを真面目に捉えるCEOは従業員にも好評だ。「ライアンの元で働いたおかげで、この10年でキャリアが大きく前進しました。彼は人に能力を最大に発揮させるような、不思議な力を持っているのです」と語るのは、Flexportの元商品担当副社長を長年勤め、後にPlacementを創設したSean Linehan(ショーン・リネハン)氏である。「ライアンは、オペレーション集約型のテックビジネスの戦略を作り上げているのです。グローバルロジスティクスの巨大企業を一から作るのは、頭がおかしくなるほど複雑な仕事です。でもライアンは複雑さの中で成長しています。ほとんどの起業家がだめになってしまう状況で、彼は本領を発揮するのです」。

現在直面している経済的な向かい風の中でFlexportが上場を目指すならば、ピーターセン氏にはこの推進力が必要だろう。ご想像どおり、同氏はそのことについても学んでいるところだ。「年次報告書を読むのが好きなのです。趣味みたいなものです、特に競合会社の報告書が」とピーターセン氏は言う。「上場したいです。ただし、利益を出せるようになってからです。ウォールストリートの気まぐれに流されたくありません。上場していて損を出して、そのとき自社の株がウォールストリートに嫌われたら、死のサイクルに入ってしまいます」

他をしのぐ会社のCEOであることで、新しいメンターへの扉も開かれた。エグゼクティブコーチのMatt Messari(マット・メッサリ)氏と、マイクロソフトのSatya Nadella(サティア・ナデラ)氏である。ピーターセン氏はナデラ氏に「学びと成長を測定可能にする方法はないか」と相談した。レドモンドの実力者の答えは「すべてを測定しなくてもよい」だった。ピーターセン氏はメモを取った。自分が正しいと思うことをすればいい時もある。

戦時CEO

真心を持って率いてきたFlexportは、新型コロナウイルス対策支援に大規模に参加することに舵を切った。「私たちはただ温かい毛布にくるまってベッドで寝ているためにここにいるのではない。世界のために何かするときがやってきた」とピーターセン氏はツイートした。

Flexportの対応は2020年1月に始まり、週に数回ブログに記事を投稿して、新型コロナウイルスが世界貿易に与える影響、支援組織がサプライチェーンの問題に対処する方法、そして政府や企業が支援する方法を明らかにした。そして、Frontline Responders Fundを立ち上げ、Flexport.orgへの寄付をすべてこのチャリティーに回し、必要ならばいつでも貨物フォワーディング費用の大幅割引を提供して個人防護具の入手を支援した。

Frontline Responders Fundの立ち上げ

Flexport.orgがFrontline Responders Fundを立ち上げ。

「今回受け取った寄付は100%、最前線の人々にできるだけ速くマスクを輸送することに直接費やされます。お受けした寄付は1セントでも無駄にしないことをお約束します」とピーターセン氏はツイートした。自分のビジネスもまた世界貿易と需要の混乱における自身の問題に直面している中で、同氏はすべての時間をFlexport.orgの運営とFRFの支援を行うことにした。Arnold Schwarzenegge(アーノルド・シュワルツェネッガー)氏やEdward Norton(エドワード・ノートン)氏のようなセレブの支援もあって、700万ドル(約7億5000千万円)以上の資金を調達した。FRFはこれまでにマスク690万枚、 ガウン24万着、人工呼吸器1000台、手袋15万5000枚、そして社会的に弱い立場の人々の食事25万食を届けている。

ピーターセン氏は多くのリーダーに声をかけ人道支援を説いて回ることに躊躇がない。救援活動を妨げている主なボトルネックの広範なガイドを記している。「慈善活動家たちもステップアップして、個人防護具を受注したものの、代金を前払いで受け取らないと仕入れの資金がないという組織に対し、資金提供するべきです。パンデミックが落ち着いたらお金は戻ってくるのだから、今できる慈善活動で最も効果の高い方法のひとつです」。

同氏の意欲が従業員たちの心を動かし、彼らも腕まくりを始めた。「危機の中で、リーダーたちは彼らが体現する価値観を如実に示しています」とFlexport.orgの責任者Susy Schöneberg(スージー・シェーネベルク)氏は語る。「新型コロナウイルスの大流行後、ライアンは民間企業と非営利団体の顧客を支援するために、すぐに多くのリソースを提供してくれました。ここ数週間、私の1日は彼との会話に始まり、彼との会話で終わるという状況でした。時刻が何時だろうが構わずにです」。

Ryan ピーターセン氏

ピーターセン氏の立場を利用することに加え、同氏には利益を得るために危機を利用しようとしている人を見抜く特別な視力がある。「どの病院システムまたは最前線緊急事態対応者に提供するかを明らかにされないお客様からのご依頼の場合、Flexportは個人防護具を輸送いたしません。このことは即時有効とします」とピーターセン氏はつづった。「個人防護具は世界的に不足しています。簡単にお金を稼ぎたい起業家に戦争で儲けさせるような行為は、非道徳的です」。

連邦政府レベルの適切な危機管理の欠如により、ピーターセン氏は対新型コロナウイルス戦線の事実上の総司令官になった。「問題の規模が甚大であること、そして先に説明した市場の失敗の複雑さを考えれば、米国政府がみずからこの問題を解決できるとは思いません。それでも、障壁を取り払い、民間セクターの対応を調整するようなリーダーシップは発揮できるし、そうしなければなりません」それまで、ピーターセン氏は全速力で今すぐ必要な戦時CEOになることを学んでいることろだ。

ピーターセン氏は故Kobe Bryant(コービー・ブライアント)氏の言葉を借りて「自分のゴールがわかっているとき、世界は全部図書館になる」と締めくくった。

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Category:ネットサービス

Tags:Flexport Softbank Vision Fund 物流

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(翻訳:Dragonfly)

事業用不動産は新型コロナ終息後の回復に影

ここ数年の好景気により、事業用不動産のオーナー、不動産業者、土地所有者たちは、年間数千億ドルもの収益を上げてきた。

それが今、新型コロナウイルスのパンデミックによって引き起こされた経済危機で、大打撃を受けている。さらに悪いことに、不動産業界は元に戻れないほどに変わり果ててしまう可能性もある。

今、賃貸料を回収するのは明らかに至難の業である。National Multifamily Housing Councilによれば、米国では、3月5日の時点で家賃を支払えた世帯が81%であったが、4月5日にはそれが69%まで激減した。昨年の同じ時期には82%の世帯が家賃を支払っていたのに、だ。

解雇された人や自宅待機となった人の数が急増したことを考えると、この数は、5月5日までに、ほぼ間違いなく悪化するだろう。

事業用不動産でも、問題は深刻になりつつある。賃料を支払えなくなり、立ち退きを余儀なくされた小売店やレストラン業は数え切れない。さらに、大手チェーンの中にも、賃借料の支払いが困難になったり支払いを拒否したりする企業が増えている。

例えば、ウォール・ストリート・ジャーナル紙が報じるところによると、WeWorkは米国にある一部の施設の賃借料を支払えず、リース契約についての再交渉を試みている。とはいえ、WeWorkは自社がコワーキングスペースを提供するテナントには賃料の請求を続けている

StaplesSubway、Mattress Firmも、賃貸料の値下げ、リース契約の修正、新型コロナウイルスの影響で被った損失を埋め合わせるその他の措置を講じるよう建物のオーナーに強く迫るため、賃貸料の支払いを停止したのである。

目まぐるしい変化

一番答えが知りたい質問は、次に何が起こるかということだ。行き詰ってしまった資産を何とかしようと、その方法を探る人たちもいるが、事業用不動産市場が元に戻らないという可能性は非常に高い。

小売業者やレストランが姿を消していく一方で、オンラインで事業を展開する企業の業績は上がっている。Amazonは、悪い評判がないとは言えないが、それでも一日ごとに市場シェアを拡大している。実際、Amazonの時価総額は今週1兆ドルの大台を取り戻した。

数週間前に報じた通り、ストリートウェアのオンライン販売を手掛けるStockXも急成長している。StockXのCEOであるScott Cutler(スコット・カトラー)氏は、その時にこう語っていた。「StockXは、これまでもずっと希少性の高い購買プラットフォームだったが、実際の店舗に行けなくなった今、StockXの利用者はさらに増えている」。

特に、サンフランシスコ、シカゴ、ボストン、ニューヨークといった市場では状況が急速に変化する可能性がある。個人経営の店やレストランがしのぎを削るエリアであったのに、ベンチャー企業の従業員やサラリーマンたちが突然在宅勤務となってその業務形態に順応してきており、消費需要が落ち込んでいるためだ。

Cadenceの創設者兼CEOであるNelson Chu(ネルソン・チュー)氏の例を考えてみよう。Cadenceは、ニューヨークにおいて17人のスタッフで証券化プラットフォームを運営する駆け出しの会社である。最近、400万ドルの資金調達に成功し、先月、住宅地内の物件の賃貸契約を結んだ。その契約では、オフィスを移転できるまでは、賃借料を請求されないことになっていた。

Cadenceにしてみれば、良い条件である。使ってもいない場所の貸借料の支払いを心配しなくて済むのだ。それにもかかわらず、Chu氏は、リモートで働かなければならない状況に追い込まれたことで、自社の業務形態にリモートワークをもっと組み込む余地があることに気づかされたと述べている。

Chu氏は次のように語っている。「これまでリモートワークがビジネスを継続する上で悪影響を及ぼすのではないかと心配されてきた。しかし現在、リモートワークが強いられる中でも、業務には何の支障も出ていない。これは、オフィスの規模を縮小し、州外に住む従業員が毎日出勤しなくても運営が成り立つことを示しているのではないだろうか」。

想像に難くないが、これまでテレワークというトレンドに同調してこなかった他の起業家や経営陣も、Slack、Googleスプレッドシート、Zoomなどのツールを使うようになり、同じ結論に達しつつある。

生き残りをかけて

リモートワークに関するこの新たな可能性は、不動産会社に直接影響する。

事業用不動産向けサービス会社大手のCBREで、調査と分析のディレクターを務めるColin Yasukochi(コリン・ヤスコチ)氏はこう語っている。「リモートワークは現在、その運用が活発に検討されている分野である。今はリモートワークを余儀なくされている状況だが、その働き方を今後も続ける企業が当然出てくるだろう。問題はリモートワークの規模や期間がわからないことだ」。

この状況はもちろん、CBREや他の不動産業界が今年期待していた動向ではない。昨年11月にCBREが発行した「市場展望」レポートの内容はかなり楽観的だった。当時は、「不測のリスクがなければ」と前置きした上で、「活発な経済活動、強固な財務基盤、低金利、資産クラスとしてある程度の魅力が不動産にあること」について考えると、2020年は事業用不動産業界にとって「非常に良い年」になるであろうと推測していたのである。

ご存知の通り、その後の数カ月間に生じた「不測のリスク」により、企業は休業に追い込まれ、産業界のほぼすべてのセクターにおいて一時解雇が余儀なくされている。また、ウイルス感染の本質が明らかになった今、オフィスに再び出勤できるようになったとしても、人が密集する職場に行くことに気乗りしない人が出ることも十分に考えられる。

オフィスに行かずに仕事ができることを知ってしまえば、間違いなくそうなるであろう。

それが、今後のオフィス用スペースの需要減少につながる可能性は高い。そして、減少したのと同じ(またはそれより大きな)スペースが、新たな形体のオフィスに利用されることになるかもしれない。このことは、事業用不動産業者を含め、誰にもまだわからないのだ。

Mark George(マーク・ジョージ)氏はカリフォルニア州サンノゼ在住の仲介業者で、Cresaという事業用不動産会社に勤務している。現在、在宅勤務を行っており、同じく初めてリモートワークを行う妻とオフィスを共有し、子どもたちと一緒に家にいる時間を楽しんでいる。「しかし、特に不動産業では、自宅から出られない状況で業界の動向の変化を把握するのは難しい」と同氏は言う。

ジョージ氏によると、仲介業者は「いくぶん孤立している」。「物件を見せられないので、内見などの仕事はすっかりなくなってしまった。どの地方自治体でも庁舎は閉まっていて許可を得られないため、不動産業界はまさに休業状態だ」とのことだ。

「最終段階まで来ていた取引は」新型コロナウイルスが米国で勢いを増す前に「おそらく契約までこぎ着け」た。しかし「契約成立まであと少しだったが、最終段階とは言えない取引はどうなったかわからない。私が見てきた取引は、全て保留になっている。皆が待機状態に陥っている」と同氏は語っている。

同じくCresaに勤務しており、サンフランシスコ在住のBrandon Leitner(ブランドン・ライトナー)氏も同じように感じており、「取引に急速な動きはない」と言う。それでも、自社がTwitterのような大企業をはじめ、シリーズAラウンドやシードラウンドのスタートアップとも取引があるため、現在の市の外出禁止令が解除され、仲介業者が再び物件を見せられるようになれば、取引は再び活発化するであろうと期待している。

CBREによると、過去数年間、サンフランシスコで商業用スペースは1平方フィート(1000平方cm)当たり88ドルで取り引きされていたが、ライトナー氏は、その価値が「最低でも10%、おそらく20~30%」低下すると予想している。要因としては、市内にある200万平方フィートのスペースを押さえていた複数の企業がそれを手放したがっており、取引が可能になるとすぐにその物件が市場に出回ることが挙げられる。

特に、取引可能な320万平方フィートの商業用スペースがすでにあることを考えると、この数字は大きい。さらに、CBREのヤスコチ氏は、過去6カ月間だけでも「相当」なスペースが市場に上がってきたと述べている。

回復に望みをかける

ライトナー氏が言うように、「市場に上がる物件の数を増やすことを今は控えたい」と言う不動産所有者には、ありがたくない話である。

同氏は、不動産所有者が「現実的」であり、「できる限り譲歩して」踏みとどまり、新たなテナントを募集するようにと提案している。もちろん、できることには限界がある。土地所有者もたいてい負債を抱えているのだ。つまり、業績不振が長引き、オフィス利用者の数が元に戻らなければ、自分たちも苦境を乗り切るのに、金融業者に頼らざるを得なくなるのである。

サンノゼ在住の仲介業者であるジョージ氏は金融業者は投資を保護するためにも、不動産業者に助けを差し伸べるだろうと考えている。連邦準備制度も、銀行に不動産ローンの支払いを先送りする権限を与えることで、不動産所有者が賃貸料の請求を先延ばししやすくする可能性もある。

とはいえ、新型コロナウイルス感染症の終息後、事業用不動産マーケットが元に状態に完全に戻るのかどうかは、フタを開けてみなければわからない。

ヤスコチ氏は「このパンデミックは、我々が今までに経験したことのない事態だ」と語っている。CBREのエコノミストは第2四半期と第3四半期の目算が「非常に厳しい」と予測しているが、同氏によると、第4四半期には市場に「大幅な上昇傾向が見られるかもしれない」とのことである。

ただし、「これは、需要が回復するか、業務拡張計画が延期になるのか、それとも永久に白紙になるのかにかかっている」とも語っている。

今のところヤスコチ氏は、特に地元サンフランシスコの市場では、通常通りのビジネスに戻れるだろうと楽観視しているようである。「Bay Areaは何かあるとすぐ悪影響を受ける気がするが、たいてい回復も早い」と語っている。

業界関係者は、その回復に望みをかけているに違いない。

新型コロナウイルス 関連アップデート

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(翻訳: Dragonfly)

AWSがケニアのSafaricomと協力してアフリカにクラウドとコンサルティングサービスを売り込む

【抄訳】
AWS(Amazon Web Services)が、ケニア最大の電話および通信企業であるSafaricomとパートナーシップを結んだ。両社のコラボレーションはアフリカに、米国におけるクラウドプロバイダー間の競争をもたらすだろう。

TechCrunch宛ての声明でこの東アフリカの企業は、協定を「戦略的合意」と呼び、SafaricomAWSのサービス(主にクラウド)を同社の東アフリカの顧客ネットワークへ販売していくことになる。

SafaricomはモバイルマネーM-Pesaでよく知られているが、これからは、東アフリカのAWSパートナーネットワーク(APN)のための初めてのAdvanced Consulting Partnerになる。

「テクノロジーのための事業であるAPNは、AWSを利用して顧客のためにソリューションとサービスを構築している企業の集まりであり、価値あるビジネスと技術およびマーケティングのサポートを提供することによってAWSの提供物を売っていく」とSafaricomは語っている。

SafaricomCEOであるMichael Joseph(マイケル・ジョセフ)氏は、「AWSとのパートナーシップを選んだのは、同社が最も広範で、最も深いクラウドプラットホームを顧客に提供しているからだ。この合意によって、ケニアにデジタルトランスフォーメーションをもたらす我々の取り組みを加速できる」と述べている。

同社の声明はさらに続けて「SafaricomAWSのサービスを東アフリカの顧客に提供し、あらゆるサイズの企業がAWSクラウドの利用を速やかに開始するようにできる」と語っている。

【中略】

AWS-Safaricomの戦略的合意にとって、最も明確なライバルは、MicrosoftLiquid Telecomのコラボレーションだ。2017年以来、Microsoftはこのアフリカ南部のデジタルインフラストラクチャ企業をパートナーに、同社の対AWS競合製品Azureの採用を伸ばし、アフリカ大陸のスタートアップと既存企業に、クラウドサービスを提供している。特にMicrosoftLiquid Telecomのパートナーシップは、アフリカの未来を担うのはスタートアップとの信条のもとに、若いテクノロジー企業にフォーカスしている。

【後略】

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(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

出禁から1年、Lora DiCarloが新しい大人のオモチャをひっさげCESに復帰

たった1年間でどれだけのことが起きるのかを考えると、びっくりする。2019年、コンシューマー・エレクトロニクス・ショー(CES)を出入り禁止にされたセックステックのスタートアップ、Lora DiCarlo(ローラ・ディカーロ)が再び出展し、2つの新しい大人のオモチャを披露することになった。それどころか、Baci(バッチ)とOnda(オンダ)というその2つの新製品は、CESのHonoree Innovation賞を受賞した。

Lora DiCarloの3つの製品には、人が触った感覚を再現するためのマイクロロボティクス技術が使われている。Osé(オセ)は複合的なオーガズムを感じさせるようデザインされているが、OndaはGスポットに特化され、Baciはクリトリスに特化されている。

今回の受賞は、CESの母体である全米家電協会(CTA)の180度の方向転換によるものだ。2019年7月、CTAはセックステックのスタートアップ企業の出展と賞のエントリーを、健康のカテゴリーで1年間だけ試験的に認める方針を発表した。それ以前に、CTAはセックステック企業であるLora DiCarloに対して大きなヘマをやらかしていた。CTAは、生物模倣とロボティクスを応用し、手を使うことなくGスポットとクリトリスを同時に刺激して、女性が複合的なオーガズムを感じられるという装置を発表した同社に与えた賞を剥奪してしまったのだ。5月、CTAは同社に賞を再び授与し、謝罪した。

Lora DiCarloの創設者Lora Haddock(ローラ・ハドック)氏は、TechCrunch Disrupt 2019において、あの侮辱的な事件は、認知度という面で会社に大きく貢献したと話してくれた。2019年末、Lora DiCarloは最初の製品Oséのプレセールスを開始した。同社にはすでに300万ドル(約3億2500万円)の収益があり、そのうちの150万ドル(約1億6000万円)は、ローンチからわずか36時間で叩き出している。

10月3日、カリフォルニア州サンフランシスコにて。Lora DiCarloの創設者でCEOのローラ・ハドック氏は、モスコーン・コンベンションセンターで開かれたTechCrunch Disrupt San Franciscoに登壇し話を聞かせてくれた。(写真:Kimberly White/Getty Images for TechCrunch)

「Oséのイノベーション賞が剥奪されて再び授与された2019年の事件の後、私たちはチェンジエージェントとなり、すべてのCES出展者の性の公平性と、安全でよりインクルーシブな環境の構築を訴える人々の厳しい声を引き出してきました」とLora DiCarloの創設者ローラ・ハドック氏は声明の中で述べている。「私たちの製品と使命を深く知ることで、人々は、性的な健全性が幸福全体にとって重要であることに気づき始めたのです。2020年も、私たちはCESに出展し、セックステックに対する人々の考え方を改めさせたいと思っています。これはテクノロジーの話ではありません。オーガズムの話でもありません。技術によって強化されるエクスペリエンスが、健康の感覚を大きく拡大するという話です。良質な睡眠、ストレスの緩和、気分の改善など同じです」

私の同僚のBrian Heater(ブライアン・ヒーター)が、今週、CES会場でハドック氏の話を聞く予定です。ご期待ください。

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(翻訳:金井哲夫)

組合結成を妨害したテスラとイーロン・マスクが労働法違反と判決

Tesla(テスラ)が労働者の組合結成を不当に妨げたことは国の労働法に違反している。米国時間9月27日に米国カリフォルニア州の行政法判事が判決した。

この判決は控訴されると思われるが、Bloomberg(ブルームバーグ)が最初に報じた。Teslaは、コメントの求めに応じていない。得られ次第、この記事をアップデートする。

この自動車メーカーとCEOのElon Musk(イーロン・マスク)氏は、Amita Batman Tracey(アミタ・バットマン・トレーシー)判事から違反の修正行為を求められた。それには、組合結成活動をしていた社員の復職と遡及賃金の支払いが含まれる。判事はさらにマスク氏に、全国労働関係局(NLRB)が同社を法律違反と結論したことを、会社の集会などで全社員に報告することを命じた。

判決文より。

被告がその社員たちを召集してイーロン・マスクまたはその時点で会社の最高位にある者が、警備員や全管理職および監督職のいるところで、この注記を社員に向けて朗読することを命じたい。場合によっては朗読は、Musk同席のもとに全国労働関係局の職員によるものであってもよい。

Bloombergの記事によると、NLRBはTeslaが法に違反したことを判定できるが、それ以上の権限はない。例えばNLRBは、役員個人を有罪としたり、罪科となる被害を査定することはできない。

判決は9月27日に発表され、マスク氏とTeslaは全国労働関係法に違反して、同社のカリフォルニア州フリーモントの工場における組合結成の試みを抑圧したとしている。非番の社員がフリーモントの駐車場で組合結成呼びかけのチラシを配ることを同社は禁じて2人の労働者を不当に解雇し、組合活動について社員を尋問したことも違法とされた。さらにまた、組合に加入した労働者は会社が払うストックオプションを放棄すべし、と匂わせているマスク氏のツイートも違法と判断された。

Teslaのチームに組合結成を止めさせるものは何もない。望めば明日にでも作れる。でも組合費やストックオプションを彼らに会社が払ういわれはない。当社の安全性は、プラントが全米自動車労組に入っていたころより2倍いいし、誰もがすでに医療サービスを受けている。

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(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

一般消費者向け完全菜食製品のKenckoが3.6億円超を調達

果物や野菜の摂取量を増やそうとするKenckoが、シードラウンドで340万ドル(約3億6700万円)獲得し、その成長と製品開発をさらに加速していくことになった。

TechCrunchは昨年同社を紹介したが、ここであらためてご紹介するとKenckoは、植物を原料とする製品で、ひどい味の食品や極端な食事に悩まされずに健康な食生活を確保しようとする。最初の製品であるフルーツドリンクには、プレスジュースにない食物繊維やビタミンが含まれているが、小袋に入っていて、急速冷凍と遅乾処理により、栄養分をすべて保持している。同社によると、1袋20グラムを水で溶いて飲むことにより、1日の果物と野菜の推奨摂取量の5分の2を摂取できる。

Kenckoは健康を意味する日本語で、6種類のフレーバーのフルーツドリンクを売っている。ファウンダーでCEOのTomás Froes(トマス・フロス)氏によると、今年中にさらに6種類の新製品を出したいという。そのうち2つは近く発売されるが、それらはドリンクと同じく100%有機栽培の果物と野菜で作られ、簡単に食べられておいしく、しかも健康的だそうだ。

製品のほかに今度の資金でKenckoが開発しようとしているのは、消費者への直販方式だ。それはモバイルアプリをメインで使うが、アプリは今ベータで、初期の顧客と共にテストしている。一般公開は年内を予定している。

Kenckoの製品は好きな量を買うこともできるが、会員制もある。後者では同社のチームにいる栄養士が各人に合ったアドバイスをする。つまり食生活指導の個人化、パーソナライゼーションだ。米国内ならリモートだけでなく個人面談も提供できる。

同社は今、社員数が25名で、共同ファウンダーでCBO(最高ビジネス責任者)のRicardo Vice Santos(リカルド・ヴァイス・サントス)氏もいる。

関連記事:Kencko wants to help you eat more fruit and vegetables(果実食野菜食を振興するKencko、未訳)

Kenckoは米国とカナダが中心だが、製品は世界中から買える。フルーツドリンクは3日間試用パックが16ドル、20袋60袋がそれぞれ、60ドルと150ドルだ。

フロス氏は、急性胃炎になったあとにヴィーガン(Vegan、完全菜食主義者)になった。90%が果物と野菜、という食事療法で薬に頼らずに治ったあと2017年に、起業する気になった。それまで医師は、大量の薬を今後一生服用せよ、と彼に命じていた。

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今ではImpossible FoodsやBeyond Meatのような植物性食品のブランドに人気があり、メディアも熱心に取り上げているから、健康な食生活への関心も最高に盛り上がっているようだ、とフロス氏は見ている。

「消費者は食品の原料について知りたいと思うようになっている。表示にも、もっと透明性と正確性が必要だ。ここ5年ぐらいで、食べ物をめぐる革命が起きているのではないか」とフロス氏。

今回の投資家は、NextView Ventures、LocalGlobe、Kairos Ventures、Techstars、Max Ventures、そして匿名の支援者たちだ。同社は昨年、Techstarのロンドンのアクセラレーター事業に参加した

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(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

IntelとBaiduがニューラルネットワーク訓練専用プロセッサーでパートナーシップ

米国時間7月2日、Baidu(バイドゥ)が北京で開催したAIデベロッパーのためのCreateカンファレンスで同社とIntel(インテル)は、後者のニューラルネットワークを訓練するためのチップNervana Neural Network Processorでパートナーすることを発表した。名前から明確に分かるように、この開発途上のチップ(NNP-Tと略称)は、大規模なディープラーニングを実行するニューラルネットワークを訓練するための専用プロセッサーだ。

NNP-Tに関するBaiduとIntelのコラボレーションにはこのカスタムアクセラレーターのハードウェアとソフトウェアの両方が含まれ、それらが確実に、BaiduのディープラーニングフレームワークPaddlePaddleに向けて最適化されているように図る。Intelはすでに、Intel Xeon Scalableプロセッサーの上でのPaddlePaddleの最適セットアップで協力しているが、今回のパートナーシップはそれを補完するものになる。NNP-Tの最適化は、ニューラルネットワークの分散訓練にフォーカスしたPaddlePaddleのアプリケーションをとくに対象とする。それにより、他のタイプのAIアプリケーションも完成させる。

IntelのNervana Neural Network Processor系列は、同社が2016年に買収したNervana社からその名前を受け継ぎ、Nervanaの元CEO Naveen Rao氏が率いるIntelのAIグループが開発した。NNP-TはAIの訓練用に特製されていて、データセットの取り入れとジョブのやり方の学習に用いられる。また今年のCESで発表されたNNP-Iは、推論専用である。すなわち学習の結果を利用してさまざまなAIの仕事そのものを行う。

NNPがデビューしたのは2017年で、第1世代のチップは現在、ソフトウェア開発のプロトタイプ、および、パートナー向けのデモハードウェアとして利用されている。そして、最新のいわゆる「Spring Crest」(春の最盛期)世代は今年、プロダクション向けに利用可能となる。

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(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

人が歩くと電力が生まれるPavegenがクラファンで3億円超獲得

人の歩行からエネルギーを取り出し、そのデータも集める英国のPavegenが、クラウドファンディングで目標額95万ポンド(約1億3000万円)に対し、それを大きく上回る260万ポンド(約3億5500万円)を調達した。

支援者は1400人を超え、中には大手のグローバルな技術系コングロマリットHinduja Group(ヒンドゥジア・グループ)や家族投資企業Tamar Capitalからのパートナーシップやアンカー投資もあった。

共同会長たちが2019年の英国の富裕者リストの上位に並んでいるHinduja Groupは、この技術を使って製造コストを下げ、インドや東南アジアなどの急成長市場にアクセスしたいと考えている。

Pavegenはこの資金調達の前にすでに世界の36カ国に展開し、2018年の売上は180万ポンド(約2億4600万円)で、香港やインド、韓国、タイ、UAE、英国、米国などのスマートシティの開発や小売店、交通のハブ、そして教育機関で利用されている。

2018年にPavegenはエンジニアリングとテクノロジーのグローバルな巨大企業Siemens(シーメンス)と覚書を交わし、スマートシティの共同開発を行うことになった。

Pavegenの重要性は発電だけではない。歩行の運動エネルギーを電気とデータに換えるだけでなく、同社はPavegenの歩行者通路を歩く人々に報いるためのエコシステムを作りつつある。

同社によると、初のショッピングセンターでの展開であるイーストロンドンのモールThe Mercuryでは集客力が15%アップした。

PavegenのCEOであるLaurence Kemball-Cook氏はこう語る。「スマートシティの主役はあくまでも人間だ。Hinduja GroupやSiemens、Tamar Capitalなどの支援があれば、我々の技術を世界のすべての都市に普及させることも夢でなない」。

Tamar Capitalの創立パートナーであるHrag Sarkissian氏の考えはこうだ。「Pavegenは電力とデータ収集の両面でスマートシティとの相性が抜群に良い。コストがもっと下がれば、大規模展開によって世界が変わるだろう」。

Hinduja Groupの代替エネルギーと持続可能性計画のトップであるShom Hinduja氏は、次のように述べている。「アジアや中東、北米で空港や小売施設、スマートシティなどでの採用が広がっているから、Pavegenは今や活況を呈している。同社のチームがその野心を急速に実現することを、Hindujaのチームが中心的な役割で可能にするだろう」。

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(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

エンタープライズセキュリティサービスのChronicleがGoogle Cloudに統合へ

米国時間6月27日のGoogle Cloudの発表によると、Googleの親会社Alphabetがそのムーンショットファクトリー(MoonshotFactory、未来的なプロジェクトのインキュベーター)Xで育成したエンタープライズセキュリティ企業であるChronicleがGoogle Cloudへ移行し、Googleのセキュリティ関連プロダクトの仲間に加わる。

Chronicleは2018年1月にXから正式にローンチし、Alphabet傘下の独立企業になった。それまでセキュリティ企業SymantecのCOOだったStephen Gillett氏が同社のCEOになった。

ChronicleをGoogle Cloudに置かずにスピンアウトさせたことは、いつも謎だ。おそらく同社のプロダクト、マルウェアとウィルスをスキャンするVirusTotalや、エンタープライズ向けセキュリティインテリジェンスとアナリティクスのプラットホームが独立企業に向いている、と判断されたのだろう。その時点でChronicleがマーケットでどうだったか、それはよく分からないが、Googleはクラウド事業の成長にフォーカスしているから、ChronicleのGoogle Cloudへの統合も論理的な流れかもしれない。

Google CloudのCEO Thomas Kurian氏はこう書いている。「Chronicleのプロダクトと技術チームはGoogle Cloudの提供物を補完する。ChronicleのマルウェアインテリジェンスサービスVirusTotalは、Google Cloudの提供物に通知される脅威データのプールをより強力に充実する。それにより、われわれのプラットホーム上で動くアプリケーションのサポートを、継続することになるだろう」。

彼によると、ChronicleとGoogle Cloudはすでに両者が同じ種類のソリューションへと収束していく過程にあった、という。ChronicleのセキュリティツールがGoogle Cloudに完全に統合されるのは、今年の秋の予定だ。

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(翻訳:iwatanI、(a.k.a. hiwa

SoundCloudがアーティストディストリビューションプラットホームを買収

昨年はSpotifyが一連の買収で自己のサービス、中でもとくにポッドキャストのコンテンツの充実を図った。そして今度は、同じくヨーロッパの音楽スタートアップであるSoundCloudが、ここ数年の迷走にもかかわらず買収に意欲を示した。ベルリン出身の同社が選んだRepost Networkは、アーティストがSoundCloudをもっとも有効利用できるためのサービスだ。

契約の詳細は公表されず、買収が発表されたのもつい先週で、広く報じられることがなかったのも、たぶんSoundCloudには、今日の音楽ストリーミング市場のアウトサイダーというイメージがあるからだ。

かつては、アーティストのためのオンラインディストリビューションのパイオニアだった同社は、やがてスウェーデン出身のSpotifyが、2億あまりの月間リスナーを抱えるグローバルなサービスに育つのをただ指をくわえて見ていた。競合は、AppleやGoogle、それにPandora、Deezer、Jay-ZのTidalなどなどからも押し寄せてきた。

Soundcloudは18カ月ほど前に、シリーズFで1億6950万ドルを調達してひと息ついた。その投資はニューヨークの投資銀行Raine Groupとシンガポールの国有ファンドTemasekがリードした。

2017年8月に発表されたその資金調達は、SoundCloudを倒産から救う人工呼吸だった。その1か月前にはスタッフの40%をレイオフしてコストを切り詰めていた。その投資でトップも代わり、共同創業者のAlex Ljung氏に代わってVimeoのCEOであるKerry Trainor氏がCEOになった。新たなお金でSoundCloudの総調達額は4億7000万ドル近くになり、その投資前評価額は1億5000万ドルだったと言われている。前回の資金調達では7億ドルだったから大きく下がってしまった。

しかしそれでもなお、状況はこの買収に向けて熟していった。それはSoundCloudの二度目の買収だ。同社によると、トップアーティストたちがRepost Networkのツールにアクセスできるようになる。それらは、ストリーミングの配給、アナリティクスダッシュボード、そしてコンテンツの保護などだ。

リストラは苦悩の体験だったが、おかげでファンダメンタルズを重視できるようになった。買収の申請書類によると、2017年の売上は9070万ユーロで前年比80%の増加、損失は27%細って5140万ユーロになった。これらの結果はTrainorのCEO就任以降だが、さらにその後の現況を最新の数字で知りたいものだ。

SoundCloudの最初の買収は2012年までさかのぼり、そのときは1000万ドルで音楽管理のInstinctivを買った。

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(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

KickstarterのCEOが辞任、労働組合「Kickstarter United」発足

米国時間3月19日、KickstarterのCEOであるPerry Chen氏は同社のブログに公開文書を投稿し、その職を辞任する意向を示した。Chen氏は同サービスの共同ファウンダー3名のひとりで、2009年にYancey Strickler氏、Charles Adler氏とともに会社を立ち上げた。同氏はKickstarter設立直後の5年間CEOを務め、2年前に再び同職に戻った。

文書によると、今後も取締役会会長として会社に残り、「会社にとって重要かつ長期的なニーズ」に集中する。Kickstarterはデザイン・プロダクト責任者のAziz Hasan氏を暫定CEOに昇格させ、Chen氏は日常業務から離れる。

「2017年にCEOに復帰したとき、私はKickstarterがミッションを守り、次期リーダーを選ぶための長期的基盤を6ヶ月ほどかけて作るつもりだった。あっという間に2年がすぎ、堅牢なオペレーティングシステム、強力なプロダクトおよびこれまでKickstarterで作り上げてきたチームを通じて、サービスの改善に務めてきた」とChen氏は書いた。

実際素晴らしい実績だ。Chen氏自身が書いているように、これまで同サービスには42億ドルのプレッジが集まり、16万件のプロジェクトが資金調達に成功している。来月Kickstarterは10歳の誕生日を迎える。

この経営陣の大きい変化とともに、同社に労働組合、Kickstarter Unitedが結成されたことが担当者から発表された。Kickstarter社員はOffice and Professional Employees International Union(OPEIU、国際事務職・専門職従業員組合)のLocal 153に所属する。

担当者は次のように文書に書いている:

Kickstarter Unitedは、Kickstarterの使命である創造性、平等、社会貢献への取り組みを約束する安全策として組合を結成する。われわれは民主的プロセスを信頼し、Kickstarterの経営陣もそれを尊重することを確信している。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

トヨタは自動運転車でNvidiaの技術を大々的に採用

トヨタは自動車メーカーとしてNvidia(エヌビディア)との関係を深め、それにより同社の日本とアメリカの研究部門が自動運転車の開発事業を強化している。

NvidiaのCEOであるJensen Huang(ジェンスン・ファン)氏は米国時間3月18日に2019 GPU Technology Conferenceのキーノートで、トヨタの日本の研究部門Toyota Research Institute-Advanced Development(TRI-AD)が、Nvidiaの完全にエンドツーエンドな開発および製造技術を利用して、その自動運転車技術の開発と訓練と検証を行っていると発表した。そのパートナーシップはトヨタとの既存のコラボレーションをベースとするもので、Nvidiaと日本のTRI-ADと米国のToyota Research Institute(TRI)」の三者のチームにより行われている。

この新たな協定によりトヨタは、Nvidiaのプラットホームを利用してディープなニューラルネットワークの訓練やテストや検証などを経て、自動車への最終的な実装を行っていく。トヨタはまたNvidiaが最近リリースし、すでに顧客に提供されているAVシミュレーターのDrive Constellationも使っている。トヨタはConstellationを使う最初の企業で、それは、自動運転車の開発企業が仮想世界で技術をテストできる、クラウド上のプラットホームだ。

要するにトヨタは、自動運転車の開発工程の全体にわたってNvidiaの技術を使おうとしている。

Nvidiaの自動運転部門のシニアディレクターDanny Shapiro氏が3月18日にこう語った。「密接なコラボレーションこそがわれわれのビジネスモデルだ。協働してNvidiaのドライバーズプラットホームを築いていくのが、われわれのやり方だ」。

Nvidiaとトヨタはすでに数年間、コラボレーションしてきた。トヨタは2017年に、NvidiaのXavierプロセッサーを使用するスーパーコンピューターDrive PXを、今後の車に搭載する自動運転システムに採用する、と発表した。

Toyotaとその研究部門TRIおよび日本のTRI-ADは、自動運転技術に二重のアプローチを採用している。

トヨタは最終的にはそのChauffeur(ショーファー)と呼ばれるシステムで、高齢者や障害者に奉仕する完全な自動運転車をデプロイするつもりだ。しかし二重のもうひとつの部分であるGuardian(ガーディアン)は、人間が運転する車を必要に応じて支援するシステムだ。常に人が運転しているが、その間Guardianがたえずウォッチし、センスして、問題の発生に備えている。

トヨタがNvidiaのプラットホームをChauffeur(完全自動運転車)とGuardian(運転者支援システム)のどちらに利用するのか、それがまだ明確でない。

TRI-ADのCEOであるJames Kuffner氏は、声明の中でこう言っている。「死亡事故をゼロにし、すべての人に円滑な交通手段とモビリティを提供することが、弊社の自動運転車の究極のビジョンだ。Nvidiaとの技術協力は、このビジョンを実現するために重要だ。ソフトウェアの検証と試験に大規模なシミュレーションツールを使うことが、自動運転システムにとって重要と考える」。

NvidiaがスーパーコンピュータープラットホームDrive PXで自動運転車向けの最初のアーキテクチャを導入したのは2015年だが、それ以降パートナーシップを結んだ自動車メーカーはトヨタだけではない。その最初のプラットホームは車のカメラやセンサーからのデータをすべて処理し、AIのアルゴリズムを搭載したオペレーティングシステムと、クラウド上の高精細な3Dマップにより、現在位置や今後ありうるハザードなど、車の環境理解を助けることを目的としている。

画像クレジット: Kirsten Korosec

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(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

500 Startups Japanが50億円の新ファンドでCoral Capitalに生まれ変わる

500 Startups Japanのメンバーが独立する。このVCは2015年に3000万ドル(約33.5億円)のファンドを発表し、そして今回そのフォローアップがCoral Capitalと呼ばれる4500万ドル(約50億円)のファンドだ。

James Riney(ジェームズ・ライニー)氏と澤山陽平氏が仕切るCoralは、500 Startups Japanと同様、この米国VCが日本で行う事業を継続する。500 Startups Japanはすでに40件あまりの投資を行っており、その中にはカケハシ、衛星通信のインフォステラSmartHR日本語版記事)、American Expressに買収されたポケットコンシェルジュなどがいる。

本誌のインタビューでライニー氏はこう述べた。「Coral(サンゴ)は海洋生態系の中で基盤的な役割を担っている。われわれは日本のスタートアップのエコシステムにおいて同様の基盤的役割を提供したい。そこで、それを象徴する名前にした」。

このファンドのLPには、500 Startups Japanを支援しているみずほ銀行や三菱地所、ソフトバンクのCEO孫正義氏の弟でMistletoeのファウンダー孫泰蔵氏、新生銀行らがおり、非公表の機関投資家たちもいる。その機関投資家たちは、ライニー氏によるとLPの半分近くを占める。ファンドの資金調達は2年半で完了し、関心を示した一部の将来的投資家を断らざるをえなかった。

ライニー氏によると、セクハラを認めて2017年に退陣した創設パートナーDave McClureの一件は「Coralの創設にあたって重要な考慮事項ではなかった」という。

「Coralはそれよりもずっと前からあたためていた企画だからね」と彼は説明した。

Coral Capitalの創設パートナーであるジェームズ・ライニー氏と澤山陽平氏はこれまで500 Startups Japanを率いていた。

ライニー氏によると、Coralが500 Startups Japanの投資とバッティングすることはないし、Coralをやりながらそのポートフォリオの管理も継続する。

理屈の上では、500 Startups Japanからの継続という計画になり、全体として、スタートアップの初期段階の投資が主力になる。彼のこれまで4年間の経験では、安定した仕事を辞めてスタートアップを始めるファウンダーが多く、それが日本の場合はうまくいっている。

インタビューで彼は曰く、「今のキャリアに深入りすればするほど、自分の業界を抜本的に変えるには起業家精神しかない、と思えてくる人が多い。日本人はリスクを避けようとする気持ちの方が一般的に強いが、そういう人たちにおいてはリスク回避よりも起業指向の方が強くなるんだ」。

彼は、Coralの誕生が日本におけるスタートアップ文化をプッシュし続けていくための機会になる、と見ている。これまで圧倒的に企業社会で、仕事は会社でするもの、という慣行の強かった日本では、ファウンダーたちの初期段階の資本獲得の機会が不在だったのだ。

「ここではわれわれにやれることがたくさんあり、日本でわれわれが作り出すインパクトは、シリコンバレーなどよりずっと強いものになるだろう」と彼は展望している。

「今ではどこの企業にもスタートアップの計画はあるが、シードや初期段階を強力に引っ張れるところはほどんどない。彼らが比較的安心してやれるのは、後期段階の投資だ。スピンオフする勇気のある企業に投資する投資家も、昔からいないことはないが、他の国に比べるとあまりにも少なすぎる」と彼は付け加えた。

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(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

Huaweiのファウンダーは強気、“アメリカがうちを潰すことは不可能”

アメリカに負ける気のないHuaweiのファウンダーは、“アメリカがうちを潰すことはありえない”、と公言した。

同社を通信企業として1987年に立ち上げたRen Zhengfeiは、公(おおやけ)の声明などをあまりしない人物だが、BBCのインタビューに珍しく応じ、アメリカ政府からの圧力がますます強くなりつつあるが、そんな中で同社の事業は強力に伸びている、と強気に語った。アメリカ政府は、同社のイランとの取引を犯罪と見なしている。その告発により同社CFO Meng Wanzhouは、カナダを旅行中に拘束された

RenはBBCに、通訳を介してこう語った: “うちには他よりも進んだ技術があるので、世界中がHuaweiを必要としている。今後より多くの国を、一時的にうちを使わないよう説得できたとしても、それによる弊社の事業規模の縮小はごくわずかだ。アメリカがうちを標的にしつづけて、うちを悪者扱いすればするほど、うちは製品とサービスをますます改良せざるをえなくなる”。

Renは、近くアメリカに引き渡されるかもしれない娘のMengの逮捕について、“それは受け入れ難い政治的動機に基づいている”、と言う。

Renは曰く: “Meng Wanzhouが自由を失ったことによる、Huaweiの事業へのインパクトはまったくない。むしろ、この間にもさらに成長の速度は上がっている。彼女を逮捕すればHuaweiはこける、と考えたのかもしれないが、こけるどころか前進を続けている”。

めったにインタビューに応じないHuaweiのファウンダーRen Zhengfeiが、アメリカ政府からの圧力と同社のCFOである彼の娘のカナダでの逮捕についてBBCに語った。

法律は政府と政府契約企業によるHuawei製品の使用を禁じている。それには一連のネットワーキング機器とインフラストラクチャ、およびスマートフォンが含まれる。そして同盟国にも、これに従うよう説得している。オーストラリアニュージーランドおよび日本がこれに従った。日本は12月にHuaweiとZTEの機器を禁じ、オーストラリアとカナダ、ニュージーランド、およびイギリスの諜報部門のトップ(Five Eyesのメンバー)は、2018年の終わりに同様の合意に達した、と言われている

しかし今週Huaweiは、その決定の執行猶予を勝ち取った。Financial Timesによると、イギリスの情報部門のトップは、スパイ活動に関する懸念(アメリカはHuaweiを北京のプロキシとして働いている、と非難している)は管理可能であると信じている。これによってイギリスの通信事業者は、自由に中国企業と協働して彼らの5Gネットワークを構築できることになる。

この明白な信任票は、アメリカの立ち位置と鮮やかなコントラストをなし、Huaweiはイギリスにおける事業活動とプレゼンスを強化できるだろう。

RenはBBCにこう語っている: “うちはイギリスで投資を続けるし、依然としてイギリスを信頼している。イギリスも、うちを今以上に信頼してほしい。今後イギリスで投資を増やすのは、アメリカがうちを信頼しないのなら、投資をイギリスへ、もっと大規模にシフトせざるを得ないからだ”。

イギリスの心変わりは、かなりのサプライズだ。アメリカからの圧力でVodafoneはHuaweiからの調達を休止したが、昨年発表された政府専門委員会の報告書は、“〔製品を買わないことによって〕イギリスの重要なネットワークへのHuaweiの関与による、イギリスの国家レベルのセキュリティリスクが十分に軽減されたとする確証は、きわめて限定的なものである”、と言っている。

関連記事: Without proof, is Huawei still a national security threat?…証拠がないのにHuawaiは国のセキュリティの脅威か?(未訳)

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

The Lobbyは求職者のためにウォール街(一流金融業界)のウォール(壁)を壊す

Y Combinatorの12週間の育成事業を半年前に卒業したThe Lobbyが、120万ドルの資金調達を発表した。

The Lobbyは、求職者をウォール街の銀行家やベンチャーキャピタリストなど金融業界の“インサイダーたち”に結びつけて、アドバイスや各人に合ったキャリア指導を提供する。以前は投資銀行にいたファウンダーのDeepak Chhuganiは、エリート社会の出身者でもなく、アイビーリーグ系の大学も出ていない人たちに、一流金融企業への就活を成功させようとする。

“彼らのこれまでのやり方では、大量の優秀な人材を見落としている”、とChhuganiは語る。“裕福な世界や一流大学を出た者にしか、機会が与えられていない”。

Chhuganiは、ベントリー大学を卒業してMerrill Lynchに入ったが、自分がウォール街に割り込むことができたのは、たまたまこの超大手証券会社のラテンアメリカのM&Aグループに空きがあり、自分がエクアドル出身だったため、と彼は信じている。

彼の、やはりアイビーリーグ出身ではない何人かの友だちも、運良くウォール街のベンチャーキャピタルやプライベート・エクイティに就職できたが、でも一般的には、名門大学を出てない者はどれだけ優秀でも、金融業界の就活に成功することはない。

シードラウンドで個人的に投資をしたSocial Capitalのスカウト投資家Matt Mirelesは、The Lobbyについてこう言う: “求人市場は本物の能力主義だといつも自分たちに言い聞かせているし、少なくともそうあるべきだが、The Lobbyはそんな本物の能力主義を作り出しつつある”。同社のシードラウンドには、Y CombinatorのほかにAtaria Ventures, 37 Angels, 元TravelocityのCEO Carl Sparks, Columbia Business Schoolのchief innovation officer(CIO) Angela Leeらが参加した。

求職者はThe Lobby経由で、プロフェッショナルたちの30分の電話相談を受けられる。また模擬面接や効果的な履歴書の書き方なども学ぶ。インサイダーたちは、ユーザーがThe Lobbyに払う料金の一部を謝礼としてもらい、金融業界の本当の内幕話や、生きた人間によるGlassdoorのようなサービスを提供する。

The Lobbyという社名についてChhuganiは、ユーザーに就職を約束することはできないけど、各会社のロビー(控室)にまでは連れていけるから、と言っている。

“能力のある人が努力すれば、上(面接室)に呼ばれるだろう”。

[Y Combinatorの2018冬季デモデー1日目に登場した64のスタートアップたち]

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米司法省、イーロン・マスクの「非上場化」ツイートの捜査を開始

本日(米国時間9/18)午前、Teslaの株価は5%下がった。CEO Elon Muskが同社の非上場化について発信した8月7日のツイートに関して、米国司法省が犯罪捜査を開始したというニュースが報じられた後のことだ。本捜査は先日本誌が報じた証券取引委員会による同社の捜査に続くものだ。

「先月Elonが同社の非公開化を考えていると発表した後、Teslaは司法省から文書の任意提出の要求を受け、以来当社は協力的に応じている」とTeslaの広報担当者がTechCrunchに提供した声明で語った。「まだ召喚状や参考人招致その他の公式手続き依頼は受けていない。当社は本件に関する情報を入手したいという司法省の意思を尊重しており、同省が受け取った情報を精査することで早期に問題は解決すると確信している」

Bloombergによると、司法省による犯罪捜査は現在「初期段階」にある。

「一般に司法省は、捜査の存在の有無について、確認も否定もその他のコメントもしない」と司法省広報官がTechCrunchに伝えた。

その後Muskは株主と話しあい、会社の非上場化プロセスについて調べたあと、Teslaにとって最善の道は公開企業のままでいることであると確信し、一連の発言(ツイート)を撤回した。当時のTeslaブログの記事から抜粋する:

「私に届いたフィードバックを見たところ、Tesla株主の大半が上場企業であり続けるべきだと信じていることがわかった。また、何人かの機関投資家は、彼らには非上場企業に投資できる金額が制限されるという内部コンプライアンスの問題があることを説明した。そしてほとんどの個人投資家にとって当社が非上場になった場合に株を保有する明確な道筋がない。私が話した株主の大部分は、Teslaが非上場企業になっても株を持ち続けると言っていたが、素直な気持ちは「お願いだからやめて」だった。

TeslaとSpaceXの億万長者リーダーは当時、会社を820億ドル(1株あたり420ドル、借金を含む)で買い戻すつもりであり、そのための資金調達は手配済みだと書いた。後に彼は、資金の提供元がサウジアラビア政府系ファンドであることを明かした。

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Apple Watchは最初の心電計ではないが、消費者に与える影響は膨大だ

Apple’s COOのJeff Williamsは、Apple Watchが一般販売用心電計としてのFDA認可を受けたと、Apple本社で行われたスペシャルイベントで高らかに宣言した。Appleはものごとの最初になるのが大好きだが、この陳述は虚偽である。

AliveCorはKardiaMobileという製品で昨年11月以来「初」の称号を保持している。KardiaMobileは100ドルのスティック型デバイスで、スマートフォンの背面に取り付けて使用する。しかも皮肉なことに、同じくFDA認可を受けているKardiabandは、Apple Watchと共に使うブレスレット型心電計でAppleストアで販売されており、今週FDAがAliveCorのテクノロジーを使って血液検査をすることなく血液疾患のスクリーニングを行うことにゴーサインを出したばかりだ。

しかし、Apple Watchは幅広い消費者に影響をあたえる最初の製品になる可能性をもっている。まず、Appleは世界ウェアラブル市場の17%という確固たるシェアを持っており、2018年だけで推定2800万台を売っている。AliveCorのKardiabandとKardiaMobileの販売台数はわからないが、これに近い数字であるとは考えられない。

もう一つ、多くの人は、たとえ自分の心臓の状態に不安をもっていたとしても、それを調べるためだけの装置を買うことには抵抗があるだろう。自動的な統合によって、関心のある人たちが別製品を買わずに測定を始めやすくなる。さらに、心臓疾患は米国で最大の死亡原因であり世界人口の大きな部分に影響を与えているにもかかわらず、おそらくほとんどの人は自分の心拍リズムを日々考えることがない。心電計を腕時計自身に組み込むことで、モニタリングすることへの障壁が減り、一部の人がもつであろう心臓の状態を知ることへの恐怖を取り除くことができるかもしれない。

そして、Appleブランド自体の存在がある。今や多くの病院がAppleと提携してiPadを使っていることから、Apple Watchでも協業体制をとると考えることは理にかなっている。

「医者や病院も健康保険会社も自家保険の雇用者も、Apple、XiaomiFitbit、Huawei、Garmin、Polar、Samsung、Fossilその他のウェアブルメーカーと個別の提携を結びたいとは思っていない。必要なのは、どの患者にも適用できるクロスプラットフォーム製品だ」、とCardiogramのファウンダーで、心電計研究者のBrandon BallingerがTechCrunchに語った。「だから、もしAppleが医療のAppleになるのなら、CardiogramかAliveCorはこの分野のMicrosoftになればいい」

Appleの発表は、AliveCorにどう影響するのか? CEOのVic Gundotraは一笑に付した。彼はTechCrunchに、AliveCorのビジネスは大部分がKardiaMobileによるものでApple Watchに統合する心電計ではない、と話した。「Appleは以前からこの手のしくみをWatchに組み込むことを匂わせてきた」とGundotraは言った、「だから予測はできていた」

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VMwareがその顧客元実装上にAWSのRelational Database Serviceを導入

ちょっと意外なニュースだ。Amazonのクラウドコンピューティング部門であるAWSが、今日(米国時間8/27)の発表によると、同社のRelational Database Service(RDS)をVMwareに持ち込む。それはAWS上のVMware Cloudと、企業が自分のデータセンターでプライベートに動かすVMwareの両方だ。

AWSのコンペティターの一部は、かなり前から、こういうハイブリッドなクラウドのデプロイにも力を入れてきたが、AWSはそれほどでもなかった。でも今や、それが変わろうとしている。それはたぶん、Microsoftなどの競合他社がこの分野で好調だからだろう。

AWSのCEO Andy Jassyはこう述べている: “データベースは、その管理にも運用にも、泥沼のように面倒で厄介な側面がある。だからこそ何十万もの顧客がAmazon RDSを信頼して、大規模なデータベースの管理を任せているのだ。この、オペレーションの現場で鍛えられた同じサービスを、オンプレミスやハイブリッド環境の顧客にご提供していけるのは、とてもすばらしいことだ。それによって、エンタープライズのデータベース管理が容易になるだけでなく、データベースをクラウドに移行する作業も、より単純になる”。

Amazon RDSがVMwareに来たことによって、エンタープライズは、AWSの技術を利用してMicrosoft SQL ServerやOracle, PostgreSQL, MySQL, MariaDBなどのデータベースを利用できる。たとえば、どこでデータをホストするにしてもデータベースのセットアップと管理が楽になる。…そして将来的には、AWSへの移行も容易になるだろう。

この新しいサービスは目下非公開プレビューなので、その詳細や料金などはまだ分からないが、ユーザー体験はクラウドの場合とほぼ同じだろうし、VMware上のRDSもアップデートやパッチを自動的に行なうことになるのだろう。

今日の発表は、AWS上のVMware Cloudのローンチから約2年後になる。それは今日の発表の真逆で、VMwareがAWSに来る、というものだった。VMwareのデプロイを動かしているエンタープライズは、それをそのまま、AWSへ移せるのだ。

関連記事: VMwareがついにクラウドサービスを提供、しかもAWSとのパートナーシップのもとで

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資金調達に成功したスタートアップCEOの学歴事情

ファンドから投資を受けている会社のCEOになるのに学位は必要ではない。しかし、ハーバード大学やスタンフォード大学、その他スタートアップのトップを大勢輩出しているような大学12校のどこかを卒業していると、大いに有利になるだろう。

これが、我々が最近行なった卒業データ解析の結論だ。これは、過去100万ドル以上の資金調達を行なったスタートアップのCEOが、米国のどの大学で学んだのかというCrunchbase Newsの調査に基づいている。

1年前に実施した、ファンドから投資を受けたスタートアップの創業者たちの出身校についての調査で明らかになったことと、今回の調査でわかったことにさほど大差はない。しかし、いくつか目新しい点もあった。それは、主にこうした点だ。

創業者よりCEOを輩出するという点では、ハーバード大学の方がライバルのスタンフォード大学より優れている。この2つの大学は、CEO輩出ランキングではトップで、ほぼタイだ(創業者というくくりではスタンフォード大学の方が優っている)。

ビジネススクールの存在も大きい。MBAプログラムにチャレンジする人は減ってきている昨今だが、スタートアップのCEOの間では依然として人気がある。ハーバード大学やペンシルベニア大学など、リストに載っているCEOの半分以上がビジネススクールを卒業している。

大学で学ぶということは、それなりに影響を及ぼすことではあるが、しかしCEOになるのを必ずしも決定づけるものではない。全体から見ると少数だが、昨年おおよそ100万ドル以上の資金を調達した世界のスタートアップ800社超のCEOの出身校をみると、20校が大方を占めている。

以下に詳細を述べる。

CEOたちはどこの大学に行っているか

まず、学校ランキングをみてみよう。ここでは驚く事実はさほどない。CEOを輩出した大学としては、ハーバード大学とスタンフォード大学が群を抜いてトップで、過去100万ドルの資金を調達したスタートアップのCEOをそれぞれ150人近く出している。

そしてMIT、ペンシルベニア大学、コロンビア大学がトップ5に入る。続いて20位までは、アイビーリーグ(名門私立大学8校)や大規模な研究大学機関が占める。大学ごとのCEO数は下記のチャートにある。

スタートアップのCEOの間ではMBAが人気

確かに、ビル・ゲイツやマーク・ザッカーバーグはハーバード大学を中退している。スティーブ・ジョブズも1学期で学校を去っている。しかし、彼らはCEOとしては例外だろう。

ファンドから投資を受けている会社のトップの学歴はもう少し真面目なものだ。名の通った大学を卒業したり、トップランクのMBAを取得したり、というのが大方のコースだろう。

トップにくるようなビジネススクールに入れる学生は、そこの大学の学生数に比べてかなり少ない。にもかかわらず、CEOリストの中では不釣り合いにも大きなシェアを占めている。例えば、ペンシルベニア大学のビジネススクールであるウォートン校。ペンシルベニア大学を卒業したCEOのほとんどが同校出身だ。ハーバード大学にしても然り。ハーバード大学を卒業したCEOの半分以上が同校のビジネススクールを出ている。ノースウェスタン大学の経営大学院も同大学を卒業したCEOの半数近くを占める。

CEOの出身校は多彩

スタートアプのCEOの学歴は似ている部分が多い一方で、多様性もある。昨年5月以来100万ドルを調達したスタートアップのCEOは米国で3000人、そのほかの国で5000人いる。米国、そして米国以外の国どちらにおいても上記リストの学校を出ていない人が大半だ。

どうしてそんな計算になるのか、と思うのは不思議ではない。Crunchbaseに保存されているCEOの多く(おそらく3分の1以上)が大学を出ていない。この点を考慮してもなお、米国のCEOの半数以上がリストにある大学を出ているわけではない。米国以外の国のCEOでいえば、前述のリストにある大学を出ている人はかなり少ない。

こうした結果を鑑みて、卒業生に送るアドバイスはこうだ。資金調達を行えるようなスタートアップのCEOになりたいのなら、まずはスタートアップを立ち上げるのが確実、ということだ。学位は左右するかもしれない。しかし、決定づけほどのものではないのだ。

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(翻訳:Mizoguchi)

ハッカーのKevin Mitnickがフィッシングで二要素認証をバイパスする方法を教える

二要素認証(two-factor authentication, 2FA)を破ろうとするハッカーは、ユーザーに偽のログインページを送り、ユーザー名とパスワードとセッションクッキーを盗む。

KnowBe4のチーフ・ハッキング・オフィサー(Chief Hacking Officer) Kevin Mitnick*が、そのハックをビデオで公開している(下図)。ユーザーがLinkedInを訪ねようとしたら、一字違いの“LunkedIn.com”のページを送ってログインさせ、パスワードと認証コードを捉える。そしてそれらを使って本物のサイトにアクセスしたハッカーは、セッションクッキーを入手する。そのあとハッカーは、いつまでもログインできる。これは要するに、一回かぎりの2FAコードを使って偽のログインをし、データを盗むのだ。〔*: Mitnickの著書。〕

“Kevinの友だちのホワイトハットハッカー(white hat hacker, 犯罪行為をしない研究者的ハッカー)が、ソーシャルエンジニアリングの巧妙なやり方で二要素認証をバイパスするツールを開発し、それを使うとどんなサイトでも破れる”、とKnowBe4のCEO Stu Sjouwermanは語る。“二要素認証はセキュリティの層を一つ増やすが、でもそれだけで企業を守ることはできない”。

ホワイトハットハッカーのKuba Gretzkyが作ったそのevilginxと呼ばれるシステムは、彼のサイトに詳しい技術的説明がある。

Sjouwermanによると、セキュリティ教育の中でもとくに重要なのがフィッシング対策であり、被害者がセキュリティについてよく知り、メール中のリンクをクリックすると危険!と知っていたら、このようなハックは成功しない。そのことをぼくに教えるために彼は、本誌ライターのMatt Burns(matt@techcrunch.com)が、記事中の誤字について述べているメール(偽メール)を送ってきた。そのメールにあるリンクをクリックしたらリダイレクトサイトSendGridへ連れて行かれ、そこからTechCrunchに放り込まれた。しかしそのペイロードは、きわめて悪質だった。


そしてSjouwermanは曰く、“これで分かったと思うが、今や新しいセキュリティ意識が必要であり、とくにフィッシングをシミュレーションで体験することが重要だ。なぜなら、防衛ラインの最後尾を固めているのはソフトでもハードでもなく、人間だからだ”。

彼の予想では、この偽メールを使ったテクニックが数週間後に流行(はや)って、ユーザーとIT管理者はセキュリティのためのプロトコルを強化せざるをえなくなるだろう、という。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa