ケニアの農業ベンチャーApollo AgricultureがシリーズAで約6.5億円を調達

Apollo Agriculture(アポロアグリカルチャー)は、ケニアの小規模農家たちの収益を最大化する支援をすることで、利益を生み出すことができると考えている。

それこそが、Anthemisが主導するシリーズAの資金調達ラウンドで600万ドル(約6億5000万円)を調達した、ナイロビを拠点とするこのスタートアップのミッションなのだ。

2016年に創業されたApollo Agriculture は、運転資金、より高い作物収量のためのデータ分析、主要な資材や機器の購入オプションなどを提供する、モバイルベースの製品群を農家に提供している。

「農家が成功するために必要なすべてを提供します。それは、植える必要がある種子と肥料だったり、彼らがシーズンを通してその作物を管理するために必要なアドバイスだったりします。そして不作の年に農家を守るために必要な保険と……最終的はファイナンシングですね」とTechCrunnchとの電話で語ったのは、Apollo AgricultureのCEOであるEli Pollak(エリ・ポラック)氏だ。

Apolloが対応可能な市場には、ケニアの人口5300万人にまたがる多くの小規模農家が含まれている。同社が提供するものは、農家自身が思い描くプロット上で、より良い結果を達成するための技術と、リソースへのアクセス不足という問題に対する支援だ。

スタートアップが設計したのは、ケニアの農家とつながるための独自のアプリ、プラットフォーム、そしてアウトリーチプログラムである。Apolloは自身が提供するクレジットと製品を提供するために、モバイルマネーM-Pesa、機械学習、そして衛星データを使用している。

ポラック氏によれば、TechCrunch Startup Battlefield Africa 2018のファイナリストだった同社は、創業以来4万件の農家を支援し、2020年には支払いが発生する関係が2万5000件に達すると語っている。

Apollo Agricultureが始動

Apollo Agricultureの共同創業者であるベンジャミン・ネンガ氏とエリ・ポラック氏。

Apollo Agricultureは、農産物の販売とファイナンシング時のマージンから収益を生み出している。「農家は支援パッケージに対して固定価格を支払いますが、その支払期限は収穫時です。ここには必要な費用がすべて含まれており、隠れた追加料金は発生しません」とポラック氏は語る。

シリーズAで調達された600万ドルの使途について彼は「まずは、成長への投資を継続することが本当に重要です。すばらしい製品を手に入れたような気がしています。顧客の皆さまからすばらしい評価を頂けていますので、それをスケーリングし続けたいと思っています」と語った。すなわち採用、Apolloの技術への投資そしてスタートアップ自身の、セールスおよびマーケティング活動の拡大に投入するということだ。

「2つ目は、顧客の方々に貸し出す必要がある運転資金を引き続き調達できるように、バランスシートを本気で強化するということです」とポラック氏は述べている。

現時点では、ケニアの国境を越えたアフリカ内での拡大は構想されてはいるものの、短期的に行われる予定はない。「もちろんそれはロードマップ上にあります」とポラック氏は語った。「しかしすべての企業と同様に、現在はすべてが流動的です。したがって、新型コロナウイルス(COVID-19)で物事が揺れ動くのを見定める間、即時拡大の計画の一部は一時停止しています」。

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アフリカの小規模農家の生産高と収益を向上させようとするApollo Agricultureの活動は、共同創業者たちの共通の関心から生まれた。

ポラック氏は、スタンフォード大学で工学を学んだ後、The Climate Corporation(モンサント傘下のデジタル農業企業)で米国内の農学に従事した米国人だ。「それがApolloに期待をかける理由になったのです。なにしろ私は他の市場を見たときに『おいおい、アフリカ全体ではメイズ、つまりトウモロコシの作付面積が20%も大きいのに、米国の農家に比べてアフリカの農家は驚くほど生産量が少ないぞ』と口に出したのです」とポラック氏は語る。

またポラック氏の同僚であるBenjamin Njenga(ベンジャミン・ネンガ)氏は、自身の成長過程の体験からインスピレーションを得た。「私はケニアの村の農場で育ちました。小規模農家だった私の母は、低品質の種子を使い肥料を使わずに作物を植えていました。毎年エーカーあたりの収穫は5袋しかありませんでした」と、彼は2018年にラゴスで開催されたStartup Battlefield in Africaで聴衆に語りかけた。

画像クレジット:Apollo Agriculture

「私たちは、もし母が肥料とハイブリッド種子を使用したなら、生産量が倍になって、私の学費の支払いが容易になることはわかっていました」。ネンガ氏は、母親はこれらの準備を整えるためのクレジットにアクセスできなかったと説明した。それが彼にとってApollo Agricultureを推進するための動機となっているのだ。

Anthemis Exponential VenturesのVica Manos(バイカ・マノス)氏が、Apolloの最新の調達を主導したことを認めた。マノス氏はTechCrunchに対して、英国を拠点とし主にヨーロッパと米国に投資を行う同VCファームは、南アフリカのフィンテック企業Jumo(ジャンボ)への支援も行っており、アフリカのスタートアップへの投資を引き続き検討していると語った。

Apollo AgricultureのシリーズAラウンドには、Accion Venture Lab、Leaps by BayerそしてFlourish Venturesなども名を連ねている。

農業はアフリカにおける主要な雇用創出産業だが、ベンチャー企業や起業家たちからは、フィンテック、ロジスティクス、eコマースと同じような注目は集めていない。アフリカ大陸のアグリテックスタートアップたちが、資金調達で遅れをとっていることは、Disrupt AfricaとWeeTrackerによる2019年の資金調達レポートに報告されている。

VC資金を獲得した注目すべきアグリテックベンチャーとしては、ナイジェリアのFarmcrowdyIBMと提携したHello Tractor、そしてナイロビを拠点とするゴールドマンの支援を受けたB2B農業サプライチェーンスタートアップのTwiga Foodsなどがある。

Apollo AgricultureがTwigaを競争相手と見なしているかどうかという問いに対して、CEOのエリ・ポラック氏ははコラボレーションを探っていると答えた。「Twigaは将来的にパートナーになる可能性のある会社かもしれません」と彼はいう。

「私たちは高品質の作物を大量に生産するために農家と提携しています。Twigaは農家が収量に対して安定した価格を確保できるように支援するための、すばらしいパートナーになる可能性があります」。

新型コロナ禍でインドのスタートアップ70%が3カ月以内に資金枯渇か

業界レポートによると、インドのスタートアップの3分の2以上が新型コロナウイルス(COVID-19)パンデミックを乗り越えるために、数週間以内に新たな資金を確保する必要があるという。

インドは世界最大のスタートアップエコシステムを有している国の1つだが、スタートアップの70%は資金がなくなるまでに残された期間、いわゆるキャッシュランウェイは3カ月未満で、年内なんとかもつのは22%だ。業界団体Nasscom(ナスコム)が実施した調査で明らかになった。

調査に参加したスタートアップの中で、今後9カ月以上操業を続けるだけの十分な資金があると答えたのはわずか8%だった。スタートアップの90%が売上高の減少に直面していて、30~40%がオペレーションを一時中止または廃止の過程にあると答えている。

前代未聞の状況に直面し、スタートアップの多くがなんとか生き延びようと大胆な策を取ることを検討している。回答したスタートアップ250社の54%が新規事業に目を向けており、40%がヘルスケアといった成長分野へ参入したいと答えた。

世界第2位のインターネットマーケットプレイスとなっているインドの投資家は、若い企業に新たな小切手を切るのに慎重になっていて、これが資金不足を起こしている。2020年4月の公開レターの中で、いくつかの主要VCファンドが「スタートアップに今後数カ月は新たな資金調達がかなり難しくなるかもしれない」と警告した。

一部のスタートアップにとっては他にも苦戦要因がある。B2Bスタートアップの69%超、中でも小売とフィンテック部門のスタートアップが、クライアントの支払い遅れに直面していると答えた。そうしたスタートアップの半分以上が支払い遅れにより給与削減を余儀なくされ、4分の1が経費削減のためにコストの安いベンダーに切り替えた。

交通・旅行部門のスタートアップも甚大な影響を被っている。調査に参加したスタートアップの78%がビジネスモデルを再考中で現状に合うようプロダクトに変更を加えている。

5月19日に開かれた記者会見で、OYOの幹部は格安ホテルチェーンの同社が事業者と顧客の安全を確保するために取る新たな策を明らかにしている。同社はまた、国や州政府が人々の移動とホテル宿泊を再び許可することを望んでいると述べた。

スタートアップの3分の2以上が規制を緩和し、政府購入を推進する政策を期待していると答えた。また大多数が今後数年間の税の減免を要望した。

インドのスタートアップの3分の2以上が、新型コロナウイルスの影響は最大12カ月続くと考えている(提供:Nasscom)

2020年5月初め、インド政府は失速した経済を復活させようと2660億ドル(約28兆6600億円)の対策を発表した。5月15日に財務大臣のNirmala Sitharaman(ナーマラ・シサラマン)氏はスタートアップもこの救済策の一部を利用できる、と述べている。しかしどのように利用できるようになるのか、詳細は不明だ。

2017年以来、インドのスタートアップエコシステムは順調に成長してきた。2019年にインドのスタートアップは過去最多となる145億ドル(約1兆5600億円)を調達(未訳)した。

「新型コロナウイルスという青天の霹靂の要因で、成長は打撃を受けることになった。新型コロナパンデミックの影響を受けていない国や事業者、暮らしはない。各国の政府が人命を守り、助けるのに懸命になっている一方で、事業者は苦しんでいる。零細事業者やスタートアップが最も深刻な影響を受けている」とNasscomの会長であるDebjani Ghosh(デブジャニ・ゴーシュ)氏はレポートで述べた。

画像クレジット:MONEY SHARMA / AFP / Getty Images

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(翻訳:Mizoguchi

英国のエンジェル投資家はロックダウン中の今もアクティブだが、スタートアップたちよ急げ

新型コロナウィルス感染症(COVID-19)のパンデミックの中での、英国のエンジェル投資家たちの投資戦略に関する調査によれば、エンジェル投資家の65%以上が、ロックダウン中でもスタートアップへの投資を続けていることがわかった、ただしその内容は新規取引が中心となっている。多くの投資家が取引数を増やし、投資額も18%ほど増加しているのだ。

しかし、パンデミックはエンジェル投資家たちが2020年に投資する総資金を61%減らし、投資家の60%弱は、COVID-19が2020年の残りの期間に投資する能力に悪影響を与えると考えている。 TechCrunchがその調査開始を独占的に記事にした後、2週間のうちに250人を超えるエンジェルがサーベイに答えた。

これらは、新しい英国組織であるActivate our Angels(AoA)によって行われた調査だ。この組織は、今週中に開始される予定であるスタートアップのための英国政府の「フューチャーファンド」(未来基金)と同時に立ち上がった(なおフューチャーファンドは、エンジェルやシードステージのスタートアップのニーズには不十分だと批判されてきた)。

AoAは、昨年買収されたGiveMeSportの元CEOで共同創業者のNick Thain(ニック・タイン)氏が立ち上げた組織で、さらに7percent Ventures、Forward Partners、Portfolio Ventures、ICE、Foundrs、Punk Money、Humanity、Culture Gene、Barndance、Bindi Karia、そしてStakeholderzの代表者たちが参加している。

AoAは、創業者たちが、ロックダウンの最中そしてロックダウン後に資金調達の意思決定を行う際に役立つ実用的なデータを提供することを目的に、2週間弱前にキャンペーンを開始した。

調査によれば、エンジェルたちは現在投資を継続しているものの、出資希望の創業者たちはこうした資金を素早く確保する必要があることが示された。なぜなら調査対象となったエンジェル投資家の59%が、ロックダウンが長引くことによって将来の投資が影響を受けると答えているからだ。

これは、スタートアップの調達額が25万ポンド(約3300万円)より少ない場合には、より重要になる。

さらに同調査は、エンジェルが1取引あたりこれまでより18%多く投資しており、取引の頻度も2019年の1か月の0.27取引から、ロックダウン中の過去3か月には1か月あたり0.6取引と122%以上に増えていると結論付けている。

エンジェルたちは、より長いランウェイ(長期資金余力)と収益力のあるビジネスを求めているが、目にしているのはバリュエーションの減少とより小規模なラウンドだ。

さらに、調査によればエンジェルたちが2020年に投資する資金額は2019年と比較して61%にとどまると伝えられている。これは、エンジェルたちが「ロックダウンもとで太陽がまだ輝いている間に、干し草を作ろうとしている」ことを示唆していると、調査は結んでいる。

その結果、エンジェルたちが2020年の残りの期間に投じる資金は大幅に少なくなる。

まだ調達を済ませていないスタートアップの場合には、最初のラウンドをできるだけ早く行うべきであることを調査結果は示唆している。

すでに資金を調達しているスタートアップにとっては、この差し迫ったエンジェル資金不足は、今後立ち上がる政府支援のフューチャーファンドなどの組織を、これまで以上に重要なものにするだろうと調査は述べている。

「ロックダウンの中で投資を行っていないエンジェルは、彼らは現金を握ったまま、COVID-19が終わったことを確信できるタイミングを待っている。彼らに接触するための最良の手段は、ソーシャルメディアではなく、紹介や推薦、電子メールもしくはLinkedIn経由だ」と調査は付け加えている。

調査の結果を以下に要約する。

● エンジェル投資家の66.7%はロックダウン中でもまだ投資している
○ そのうちの77%が新しい取引に投資している
○ 既存のポートフォリオへの投資は23%にとどまる

● エンジェルの33.3%はロックダウン中に投資を行っていない
○ 71%が取引のレビューを行っている
○ 29%まはったく投資していない

● ロックダウン中は各取引ごとに17.6%以上多く投資している
○ ロックダウン中の1取引あたりの投資金額は2万3071ポンド(約300万円)
○ 2019年は1取引あたりの投資金額は1万9620ポンド(約260万円)

● エンジェルはロックダウン中に平均1.81回の取引を完了したが、2019年全体では平均3.24回の取引を行っている
○ 2020年3月23日のロックダウン以降、おおよそ3〜4週間ごとに1取引
○ 過去1〜3か月間は約7〜8週間ごとごとに1取引
○ 過去4〜12か月間は3〜4か月ごとに1取引
○ 2019年は約3〜4か月ごとに1取引

● エンジェルのうち、Covid-19が2020年における自身投資能力にマイナスの影響を与えると考えているのは58.1%、変化なしは27.2%、そして14.7%はプラスの影響を与えると述べている

● 調査したエンジェルのうち、51.4%は2020年の投資額は少なくなるだろうと回答
○ その人たちは、2019年と比較した2020年の投資額は61%少なくなると回答

● エンジェルの33.3%はロックダウンの中で投資をしていない
○ そのうちの47.6%はCovid-19の危機が終わったと確信できるまで投資はしない
○ また28.6%は投資再開を計画していない

● エンジェルの64.9%は、対象とするビジネスセクターを変えている。対象となるのはヘルスケア、フィンテック、ゲームなどだ

● エンジェルの54.1%が投資要件を変更した。その中では、より長いランウェイ、収益力、定期的収益が最も重視されている
○ エンジェルの46.9%は投資要件を変更していない

● エンジェルの68%はCovid-19の結果、取引条件における評価額の減少を見ており、35%はより少額の投資ラウンドを見ている。

● エンジェルとの連絡に関しては、72%のエンジェルが推薦や紹介を通じて連絡を取りたいと考えている。
○ 54%が電子メールも受け入れ
○ 32.6%がLinkedIn
○ 30.9%がエンジェルネットワークも可としている
FacebookとTwitterはエンジェルに連絡する手段としては最も効果が薄く、この手段を受け入れるのは3%以下だった

● エンジェルの70%は、SEIS/EIS(英国のエンジェル投資向け優遇税制)が投資決定にとって重要、または非常に重要、もしくは決定的であると答え、そのうち58%は、SEISの上限額が現在の10万ポンド(約1300万円)から20万ポンド(約2600万円)に引き上げられても、これ以上投資しないと答えている。

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(翻訳:sako)

伊藤忠テクノロジーベンチャーズが100億円規模の5号ファンド設立、伊藤忠は20億円を出資

ベンチャーキャピタル事業を展開する伊藤忠テクノロジーベンチャーズ(ITV)は5月19日、「テクノロジーベンチャーズ5号投資事業有限責任組合」(5号ファンド)の設立を発表した。ファンドサイズは、同社過去最大規模となる100億円で、親会社の伊藤忠は出資約束金総額の5分の1となる20億円を出資する。

GP、LPの顔ぶれは以下のとおり(五十音順)。

  • GP(無限責任組合員):伊藤忠テクノロジーベンチャーズ
  • LP(有限責任組合員):伊藤忠商事、伊藤忠テクノソリューションズ、KJホールディングス、コネクシオ、センチュリー、独立行政法人中小企業基盤整備機構、ベルシステム24ホールディングス、みずほ証券、三菱UFJ銀行、りそな銀行

ITVは2000年に設立された伊藤忠のコーポレートベンチャーキャピタル。1980年代から伊藤忠が培っていたシリコンバレーを中心とした有力ベンチャーキャピタルとのネットワークやノウハウを生かし、アーリーステージを中心としたスタートアップに対して投資を進めている。2000年設立の1号ファンドから2015年設立の4号ファンドまでの運用総額累計290億円超、累計投資先社数は150社超となっている。国内では、メルカリ、ラクスル、ユーザベースなどへの投資実績もある、

一方の伊藤忠商事は、ITVを含めた広範囲な国内外のスタートアップとのネットワークを生かし、ミドルおよびレイターステージを中心としたスタートアップへの出資および協業を進めていた。具体的には、医療系SaaSを提供するカケハシや、貸付ファンドのオンラインマーケットを運営するファンズへの出資。後払い決済サービスを提供するPaidyや企業のデータ活用を支援するウイングアーク1stは、持分法適用会社化している。

多難なソフトバンクグループがアリババ創業者ジャック・マー氏の取締役退任を発表

米国時間5月18日、ソフトバンクグループはアリババグループの共同ファウンダーJack Ma(ジャック・マー)氏が同グループの取締役から去ると発表した。13年間にわたって 取締役を務めてきたマー氏だが、6月25日のソフトバンクグループの年次株主総会で退任が正式に発効する。

ソフトバンクは退任の理由を明らかにしなかったが、この1年、マー氏はチャリティ活動に力を入れており、ビジネス上の役割は減少していた。 2019年9月、同氏はアリババの会長を辞任したが、2020年の年次株主総会で取締役も退任するという。

マー氏とソフトバンクグループの孫正義会長、CEOとのビジネス関係はたいへん長い。ソフトバンクはマー氏のアリババに対する最初期からの大口投資家だった。創立の翌年である2000年には投資額が2000万ドル(約21億5000万円)に上ったと報道された。米SEC(証券取引委員会)への2020年2月の提出書類ではソフトバンクグループはアリババ株の25.1%を所有している。この持ち分は時価で1000億ドル(約10兆7000億円)の価値があり、 ソフトバンクとして最も成功した投資となっていた。

この発表はソフトバンクグループの第1四半期の(極めて憂鬱なものとなった)決算の発表予定の数時間前に行われた。同グループは2020年4月に総額1000億ドル(約10兆7000億円)のビジョンファンドが165億ドル(約1兆8000億円)の損失となると予想していることを発表した。この損失はWeWorkが破綻寸前に追い込まれたこと、新型コロナウイルス(COVID-19)によるパンデミックがUberやOyoを含む他の投資先に強い悪影響を与えたことが大きい。またソフトバンクグループも通年で125億ドル(約1兆3000億円)の営業損失を予想していることを発表した

同グループはこの3月に負債を減らし、現金準備を増やすために410億ドル(約4兆4000億円)の資産を売却または現金化し、47億ドル(約5040億円)の自社株買いを行うと発表した

ちなみにソフトバンクグループの11名の取締役のうち、退任するのはマー氏のみだ。同社は2020年6月の株主総会に向けて新しく3人の取締役候補を指名した。社内からはソフトバンクグループの現CFO(最高財務責任者)の後藤芳光氏が、社外からは電子回路設計企業のケイデンス・デザイン・システムズのCEO、Lip-Bu Tan(リップ・ブー・タン)氏、早稲田大学経営大学院教授の川本裕子氏がそれぞれ選ばれている。

画像クレジット:Chesnot / Getty Images

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(翻訳:滑川海彦@Facebook

AngelListがVCファンドのパフォーマンスを比較する新しい指標とツールを開発

ベンチャーキャピタル業界は非常に不透明であり、ベンチャーファンドの比較は非常に困難なことで有名だ。Cambridge Associates(ケンブリッジ・アソシエイツ)などのグループが計算した従来のベンチマークは、ベンチャーファンドを「ヴィンテージイヤー」ごとにバケツに入れ、IRR(時間で調整した収益率)やDPI(リミテッドパートナーへの分配額をファンドへの投入資金で割った金額)などの指標に基づいて資金を四分位にランク付けする。どのファンドも第1四分位(上位25%)に入りたい。ファンドのCFOの多くは、「あと数ポイント」を絞り出して指標を改善し、自身のファンドが上位25%のラインより上に行くような技を持っている。

データの粒度が細かくなると、パフォーマンスの比較はさらに難しくなる。 ファンドがシードステージのスタートアップに投資し、シリーズAでフォローアップ投資を行い、シリーズBとCラウンドで持ち分に応じた投資を行ったとする。そしてスタートアップが売却でイグジットするとき、買い手が対価を18カ月にわたり3つのトランシェに分けて現金で払うとする。IRRはどう計算するのか。他のファンドやそのポートフォリオ投資とどう比較すればよいのか。

AngelList(エンジェルリスト)は、同社の最新プロジェクトがこうした課題を解決し、その過程でVCアセットクラスのパフォーマンスの透明性が高まることを期待している。同社のデータサイエンスチームは、自社のファンドやシンジケート、また外部の情報源からのデータに基づき、ファンドマネージャーがパフォーマンスを他のファンドと比較できる「VC Fund Performance Calculator」を開発した。四分位数にとどまらず、各ファンドのパフォーマンスのパーセンタイル(百分位数)スコアを提供する。

このツールが基礎としているのは、AngelListが「有効期間」と呼ぶ、再定義されたVCファンドの投資ウィンドウの概念だ。前述した、VCファンドが1つのスタートアップに複数回投資したり、投資を複数年に分散したりする場合に生じる問題への回答だ。こうした投資に対してどうベンチマークを取ればいいのか。数年にわたる投資のすべてを1つの「ヴィンテージイヤー」に、また投資のイグジットをすべて1つの「イグジット日」に集約することは方法としてはやや荒っぽい。そこでこのツールは、投下資本とリターンに時間で重み付けして、投資のスピードに関係なく、ファンド間の直接比較を可能にした。

写真:AngelList

AngelListのデータサイエンスの責任者であり、このプロジェクトのリーダーであるAbe Othman(アベ・オスマン)氏は、「『有効期間』を使えばVCのベンチマークに関する多くのあいまいさや恣意性を排除できる」と説明した。

同氏は、VCファンドがポートフォリオ企業の将来のラウンドに投資する方法として、コミットした投資金額のかなりの部分を後にとっておく手法を例に挙げた。これにはIRRを押し上げる副次的効果がある。資金がファンドのライフサイクルの後半に拠出されるからだ。「私の仕事の興味深い点の1つは、多くの同業者の知恵を数学的に裏付けるデータを持っていることだ。ここでの研究で得られた成果の1つだと思う」とオスマン氏は語った。

実際のパーセンタイルデータを構築するには、パフォーマンスに関する大規模なデータセットが必要だったが、AngelListはもちろん、Cambridge Associatesのようなグループを除いては、詳細な情報を持っている組織はほとんどない。オスマン氏は「このツールを開発するために400を超えるファンドのデータを使った」と述べた。ファンドのパフォーマンスのパーセンタイルスコアという面では非常に正確なのかもしれない。

オスマン氏が発見したパーセンタイルに関する興味深い点の1つは、40パーセンタイルといった非常に低く見えるスコアでも、実際には依然として優れたIRRのこともあるということだ。

写真:AngelList

AngelListは、自社のファンドオブファンズの事業でこのデータを利用し、パフォーマンスの良いマネージャーに資金を振り向けている。「有名なベンチャーファンドや当社のベンチャーファンドの業績に関するデータを公開することが目的ではない」とオスマン氏は語った。「当社のプラットフォームで活動する新進のマネージャーに自身が最高の業績を上げていることを認識してもらい、データも提供してもらう。そして願わくば、将来的に彼らがより多くの資金を調達するのを手助けすることがより重要だ」

AngelListの外部に対してオスマン氏のチームが期待することは、新しいツールと指標がベンチャー業界の透明性を高め、最終的に資産クラスのリターンが適切に理解されることだ。

画像クレジット:Bryce Durbin / TechCrunch

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(翻訳:Mizoguchi

ソフトバンクとWeWorkがEmergeアクセラレータの最初のスタートアップ14社を選定

ソフトバンクグループのベンチャーキャピタル、SoftBank Investment AdvisersWeWork Labsは共同でEmergeの最初のチーム14社を選定したことを発表した。Emergeは価値を過小評価されているスタートアップのファウンダーを支援するアクセラレータプログラム。

両社のプレスリリースによれば、Emergeは「ソフトバンクがWeWork Labsのサポートを得て立ち上げた」ものと述べている。WeWork Labsは「グローバルイノベーションの促進」を目的としたWeWorkのアクセラレータだ。

これは株式取得を求めない8週間のワークショップで、両社の関係者がメンターとなってアドバイスを行う。またソフトバンクのトップとのセッションも用意される。こうした準備の後、投資家、ソフトバンクのパートナー向けのデモやイベントでクライマックスとなる仕組みだ。

Emergeのサイトによれば、このプログラムはカリフォルニア州サンマテオを拠点としているが、新型コロナウイルス(COVID-19)の流行のため、セッションを含めてすべのプログラムはオンラインで実施される。

SoftBank Investment Advisersのマネージングパートナーで最高人事責任者であるCatherine Lenson(キャサリン・レンソン)氏は声明に次のようにう書いている。

「ソフトバンクにとって、過小評価されている起業家とスタートアップを支援することは最優先事項だ。テクノロジー・エコシステム全般で、スタートアップに多様性を確保したい。この分野ではダイバーシティが不十分であり、欠けており、われわれにはなすべきことが多数ある。これがEmergeをスタートさせた理由だ。優れたファウンダーたちのインスピレーションがテクノロジー・コミュニティに多くのプラスの影響を与えることになるだろうと期待している」。

現在、WeWorkがソフトバンクグループを訴えるなど両社は法的、財務的に緊張した関係にあるが、一方では依然として緊密な協力も続いているわけだ。

Emergeの第1陣として選定されたスタートアップ14社は以下のとおり。

  • Aquagenuity:水質を分析し、環境をリアルタイムでモニターできるスマートデバイス
  • Bridge to College:学生の大学選択を助けるデータの提供と分析
  • Caldo:レストランチェーン各店舗にカスタマイズ可能な自動化とモバイル機能を提供する
  • GameJolt: 10万以上のゲームをフォローできるゲーマー向けプラットフォーム(開発中)
  • Koniku:呼気を分析して疾患を診断する
  • Mogul:雇用主が多様な人材を発見するのを助ける
  • Moment AI:AIがドライバーをモニタし運転の安全性を向上させる
  • Node:ユニークなキット部品から実際の家を組み立てる
  • OjaExpress:移民が出身国の食材を扱う近隣の食品店を探せるマーケットプレイス
  • Proven:MITの2018年の人工知能賞を受賞したThe Skin Genome Projectが提供する個人向けにカスタマイズできるスキンケア製品
  • Rebellyous Foods:植物性の肉を使った各種プロダクト
  • ScriptHealth:処方薬の購入を助けるサービス
  • Shyft:IoTデバイスとソフトウェアにより分散型エネルギー資源のインテリジェント管理ネットワークを構築する
  • SPS:米国の主要州とカナダから国際支払いをサポートする決済サービス

画像:WeWork

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(翻訳:滑川海彦@Facebook

ザッカーバーグの才能を見出した投資家、次は「優秀な学生は大企業へ」を覆す

多くの大学4年生にとって学校とは、選択肢を考慮しながらゆっくりと未来を熟考するための自己探求の期間である。

しかし、世界で最も優れた大学に通っていたり、またはクラスの上位に君臨したりしているコンピューターエンジニアリングの学生にとっては別の話だ。学校が始まり、最初の週にコースを選択すると直ぐに彼らは大学のキャリアフェアに参加し、GoogleやFacebookなどとの面接の可能性について考え始める。そしてそれが実現すると、48時間の返答期限を伴うサインオンボーナス付きのオファーを受け取ることになるのだ。

その内定を断るということは、その企業のブラックリストに永遠に載ることを意味すると言うのが通常の認識だ。しかし、複数の企業を設立したのちに投資家に転向し、双子の兄弟であるHadi Partovi(ハイディ・パルトヴィ)氏とAli Partovi(アリ・パルトヴィ)氏は、それはまったくのでたらめだと言う。「卒業したばかりの優秀な学生はそれほどおらず、CS(コンピューターサイエンス)の卒業生の数よりも、よっぽど多くの仕事が働き手を必要としています。むしろ、卒業生のほうが企業に対して返答期限を言い渡すべきです」。

学生には選択肢があり、大手テクノロジー企業に急かされる必要がないというメッセージを広めるため、パルトヴィ氏は何か新しいことを企画している。同氏は4年目となるネットワーキング組織、Neoそれに関連するベンチャーファンドを通じて、これまでとまったく異なる種類の機会を学生に紹介する一種の仮想マッチメイキングとも言える企画を8月8日に実施する予定だ。

Neo Startup Connectと呼ばれるこのアイデアは、5月初旬に5000万ドル(約54億円)の資金調達を発表した設計ソフトウェア「Figma」のような、急成長していながらも安定している企業に学生を紹介するというものだ。

パルトヴィ氏は、従業員何万人規模の企業よりも100人程度の規模の企業の方が、より多くのことを学べる機会を与えてくれると考えている。彼はまた、こういった企業が学生を特定さえできれば、学生の興味とより調和するであろうスタートアップが数多くあると信じている。

学生が集まるNEOの集会

「例えばプリンストン大学のトップにいる学生と話した際、彼女は医療と機械学習に興味があり、ゴールドマンサックスから仕事のオファーをもらったと言う。こういった話を毎日のように私は聞きます。私にはなんでそんな銀行やヘッジファンドに行きたいのかまったく分かりません」とパルトヴィ氏。

もちろん、こういったつながりの醸成はパルトヴィ氏の利益にもつながる。実際、Neo Startup Connectは近年のNeoの取り組みから派生した自然な流れである。卒業間際の才能あるエンジニアリングの学生を特定し、必ず成功するという確信のもとその学生が後に開発する予定の企画に投資することを約束すると言うものだ。このアプローチはシリコンバレー全体に広がっているが、通常これは長期戦を意味する。Neo Startup Connectでパルトヴィ氏は、誰かの将来に即時に影響を与えるだけでなく、Neoが過去に支援した、または将来支援したい企業との関係を強化することができるというわけだ。

同イベントに参加する企業にはFigmaに加え、TechCrunch Battlefieldの優勝者であり、カスタマーサポートの生産性を高めるAIシステムを開発するForethoughtや、5月初めに5000万ドル(約54億円)の資金調達を発表し、著名なエンジェル投資家であるRam Shriram(ラム・シュリラム)氏を早期支援者として持つ話題のコラボレーションソフトウェアメーカー、Notionなどが含まれる。Neoはこれらの企業に資金支援をしていない。

Neoから資金提供を受けた他の参加者には、2019年後半にシリーズDラウンドで4億ドル(430億円)を調達したオンデマンドのトラッキングプラットフォームConvoyのほか、これまでに625万ドル(約6億7000万円)のシード資金を調達しており、コーディング不要のポイントアンドクリック式のプログラミングツールを開発するBubbleや、2019年にMicrosoftの共同創設者であるBill Gates(ビル・ゲイツ)氏、Uberの共同創設者であるTravis Kalanick(トラビス・カラニック)氏、Uberの現CEOでパルトヴィ氏の従兄弟でもあるDara Khosrowshahi(ダラ・コスロシャヒ)氏などからのシード資金で900万ドル(約9億7000万円)を調達したAIチップ企業、Luminousなども含まれる。

学生にとっての利点としては、ビジョンや機会を広げられるだけでなく、Quoraやその他の企業にも使用されているコーディング評価プログラムや対面式の面談を用いて学生の適性審査をあらかじめ実施することで、申請プロセスを簡単に行うことができるという点だ。パルトヴィ氏のよると、面談は「Neoコミュニティからのさまざまな経験豊富なベテラン群」とパルトヴィ氏によって行われる。

この審査プロセスが参加企業を満足させるものか否かは疑問である。たとえば、Figmaのエンジニアリング担当副社長であるKris Rasmussen(クリス・ラスムーセン)氏は、Neoが「コミュニティから優秀な候補者を見つけ出すという点で素晴らしい仕事をしている」一方で、「すべてのFigmaの候補者も同じ技術面接プロセスを通過している」とEメールで語ってくれた。

つまり、近道にはなっていないということだ。

Neoの支援は間違いなく重要であり、パルトヴィ氏は幅広いネットワークを持っている。彼は90年代後半に約2億5000万ドル(約270億円)でMicrosoftに売却したLinkExchangeを含む、多数の企業を共同設立した経歴を持つ。同氏はまた、Mark Zuckerberg(マーク・ザッカーバーグ)氏やDropboxのDrew Houston(ドリュー・ヒューストン)氏を含む才能ある創設者への投資実績がある。

「アリが目をつけた人は、IQとEQ両方の面で世界トップクラスになると信じるようになりました」とForethoughtのCEOであるDeon Nicholas(ディオン・ニコラス)氏は言う。8月のイベントへの参加は「朝飯前」であり、「難しい点を1点あげるとすれば、参加する生徒たちがGoogleからオファーを受けないようにすることのみ」と付け加えた。

そもそも、大手テクノロジー企業でキャリアをスタートさせることがそれほど悪いことなのか、という疑問が浮上する。

パルトヴィ氏自身もハーバード大学の学生であった時代にMicrosoftでインターンをし、卒業後はOracleとテック系スタートアップの間を行き来した過去を持つ。ニコラス氏もDropboxやPure Storageなど複数の大企業で働いていた。

細かく掘り下げるつもりはないが、ラスムーセン氏もまた卒業直後にMicrosoftで働き1年未満で退社している。スタートアップの世界に飛び込み最終的にはFigmaに到達したわけだが、その前に大企業で時間を費やしたことを後悔しているかどうかをメールで尋ねたところ、その質問には答えてくれなかった。

スタートアップとの関連性なども含み、新しい大学卒業生が大企業の内部で多くを学ぶことは可能ではないのか、また大企業で勤めた経歴が収入の可能性を高め、より多くの選択肢を得ることが可能ではないのか、とパルトヴィ氏に聞いてみた。

彼の回答は、どれも「否定はしない」とのことだ。「大企業への就職も、スタートアップへの参加も、自分で起業することも、どれも個人が自分にとって適切だと思うことが正しい道でしょう」。

「残念な事に、起業家精神を持った成績の良い学生であってもスタートアップ立ち上げの道には組織的な障害が伴います。正解やガイドはなく、威圧的で、構造的な障害があります」と同氏は続ける。Neoがそれらの障害を取り除く手伝いができたら、パルトヴィ氏の試みは成功したと言えるかもしれない。

大企業がほとんどの優秀な才能を吸い上げている世界の中で、現在機能している仕組みに介入することによっても社会は利益を得られるのではないかという考えもある。

いずれにせよ、大手テクノロジー企業の内定を断ることはそれほどリスクの高い問題ではないかもしれない。Googleの元採用担当者によると、内定を辞任するほとんどの学生がその後も候補として残ると言う。

場合によっては、企業は生涯その人物を雇おうと試みる可能性もある。

(注記:Neo Startup Connectへの参加を望む学生に向け、同組織は米国時間5月8日に登録を開始し、候補者の審査は6月末まで行われる。パルトヴィ氏によると、約150名を受け入れる予定とのことだ。)

関連記事:学生が仮想1対1で専門家の助言を受けられるようにするBonsaiが約1.6億円を調達

Category:VC / エンジェル

Tags:Neo 学生

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(翻訳:Dragonfly)

WeWorkの共同創業者アダム・ニューマン氏がソフトバンクを権力濫用で訴える

WeWorkの共同創業者Adam Neumann(アダム・ニューマン)氏は米国時間5月4日に起こした訴訟で、ソフトバンクグループがその権力を濫用していると非難している。訴えによると、ソフトバンクグループはWeWorkの30億ドル(約3200億円)の株の公開買付けに関して契約に違反し、信認義務にも違反したとされる。

その訴訟はデラウェア州エクィティ裁判所に提出され、2020年4月にSpecial Committee of WeWork(WeWork特別委員会)が起こした訴訟との一本化を求める動議も含まれている。どちらの訴訟も、ソフトバンクグループと同社のビジョンファンドによる、WeWorkの株を購入契約の取り消しにフォーカスしている。

ソフトバンクグループは4月1日に、WeWork株の30億ドルの公開買付けオファーを撤回し、新型コロナウイルス(COVID-19)の事業への影響と完了条件の不備をその理由とした。具体的に同社が合意が破談した原因として挙げたのは、規制当局による調査が未了であり、WeWorkに対する訴訟が増えていること、そして中国における合弁事業の再編成の失敗だった。

ソフトバンクの上級副社長であるRob Townsend(ロブ・タウンゼンド)氏は、声明で「ソフトバンクはこれらの原告に法的利益のない主張に対して断固として自己を防衛する。アダム・ニューマン氏も署名した我々の合意の下では、ソフトバンクには公開買付けを完了する義務がない。その公開買付けでは、10億ドル(約1070億ドル)の株を売ろうとしていたニューマン氏が最大の受益者であった」と語っている。

2019年10月には、ニューマン氏が保有する非公開株の一部と、ベンチャーキャピタルのBenchmark Capitalおよび企業の社員である多くの個人の株を買い取る契約が交わされた。それによりニューマン氏は、10億ドル近くを受け取るはずだった。

WeWorkとニューマン氏は、会社のコントロールをソフトバンクに与えたが、訴状によると後者は価格を大幅に下げて所有権の増大を図っていた。

訴状は次のように述べている。 「ソフトバンクはその権利者としての立場を濫用して、ニューマン氏と株主と数百名の社員に対し既に授権されていた利益を支払う約束に背いた。ソフトバンクは、約束を破棄するための秘密裏の行動で、投資家たちが一部の権利の放棄をしないよう、かつ中国の合弁契約が完了しないよう圧力をかけた」。

さらにソフトバンクの公開買付け終了の決定には同社の財務状況が影響していると主張している。「法的アクションを起こせるのはWeWorkの特別委員会のソフトバンクがコントロールしている理事会のみであり、既に同理事会が訴訟を起こしているのにこのような決定をしたことは権力の濫用だ」という。

そして訴状では「実際にソフトバンクグループとソフトバンクビジョンファンドは彼らのWeWorkに対するコントロールを濫用し、特別委員会の法的に意義のある訴訟をかき消そうとしている」と述べている。

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(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

TechCrunch Japan 2020-05-02 09:37:19

スタートアップを支援する福岡市の官民共働型の施設であるFukuoka Growth Nextは5月1日、新型コロナウイルス蔓延に伴う全国的な外出自粛要請の中、市民・企業の社会経済活動を持続可能なサービスやプロジェクトの創出を目指す実証実験の募集を開始した。専用のウェブページで応募を受け付けている。

具体的には、感染予防や健康管理、リモートワークの推進、子どもの教育環境向上、外出自粛中の日常生活を豊かにする「withコロナ」に関連したプロジェクト。ローンチ前のものはもちろん、すでにサービスや販売を開始しているプロジェクトであっても、事業の改善、効率化などが図れるものであれば対象となる。対象となる企業は、新型コロナウイルスがもたらすさまざまな社会課題の解決を目指すスタートアップだが、設立年数や資金調達のステージなどは問わない。

採択企業社は複数社としており、応募プロジェクトの内容や数に柔軟に決定されるようだ。なお、優れたプロジェクトには上限50万円の助成金が支給されるほか、実証実験期間中は、地下鉄天神駅や西鉄福岡(天神)駅より徒歩7分の旧・大名小学校にあるFGNコワーキングスペースを無償で利用可能になる。

募集概要は以下のとおり。

  • 募集期間:2020年6月1日17時まで
  • 審査会:2020年6月中旬
  • 審査方法:完全オンラインでクローズドピッチによる審査(応募者多数の場合は、書面による事前審査あり)

新型コロナウイルス 関連アップデート

世界的なセレブ投資家ジョージ・ソロス氏がEV車群の充電管理スタートアップに投資

全地球規模のパンデミックに対応してシャットダウンが国際的に広がり、エネルギー需要の崩壊で石油企業ですら苦難を経験している。そんな中で、世界でもっとも賢い金融企業を代表する投資家たちは、運輸交通の未来を担う充電に、小さな賭けをしようとしている。

高名な投資家ジョージ・ソロス(George Soros)氏の投資企業Soros Fund Managementが、Siemensとそのほかの多くの投資家たちとともに、ロサンゼルスの充電スタートアップAmply Powerに、1320万ドルという小額の投資を行なった。

Amplyの創業者で会長でCEOのVic Shao氏は、こう言う: 「まだ発展途上のわれわれの業界にソロス氏が入ってくるなんて、100万年に1度も考えたことがないよ」。

そして化石燃料のエネルギー価格が崩壊しても、Shao氏によると、Amplyの価値命題には依然として道理がある。

Shao氏は曰く、「エネルギーだけの単価なら、電気は化石燃料の半分だ。経済が回復すれば、ソーラーや風力もどんどん安くなるだろう。石油の掘削技術の最低費用は1バレルあたり今20ドルだが、そのあとの処理や蒸留にも金がかかる」。

Shao氏は、Green Chargeの元CEOで、そこはエネルギーの分散保存をする企業だが、世界最大の国際的エネルギーサプライヤーENGIEに買収された。

Amplyには競合他社が多く、電気自動車の車群に対する充電管理の市場はトップ争いも激しい。ElectriphiやEVConnnect、GreenLots、GreenFluxなどの企業が、同様のサービスでしのぎを削っている。

今回の資金の使途は、チームと顧客展開の拡大で市場競争に勝つことだ。現在Amplyが充電操作を管理している顧客は、East Contra Costa郡のTri Delta Transitと、ニューヨーク市のLogan Busの電気スクールバスの車隊デモンストレーションなどだ。

同社によると、Amplyは中国の電気バスメーカーBYDや、Hawaiian Electric Companyの子会社Pacific Currentなどの良きパートナーだそうだ。

Amplyは顧客企業に提供する充電インフラストラクチャのオーナーであり、車の台数等によらない固定料金を顧客に課金する。「車隊管理のためのハードやソフトを売るベンダーが多いけど、それらは結局顧客のリスクになる。それらのツールの実装と使用を自分でやるか、ベンダーがやるか、という話になってしまう」、とShao氏は言っている。

Shao氏によると、同社は、都市の基幹的なインフラである公共交通機関の顧客が多く、政府のファンドも使えるので、不景気でも経営は比較的安定している。

「売上がサブスクリプションベースで安定していることは、本当にありがたい。公共交通機関の利用者は減っているし、ルートも少なくなっているが、乗合バスや校区のバスはなくならない。顧客がやや減っているのは、民間企業の方だけだ」、とShao氏は言っている。

SiemensとSoros氏が加わった新たな資金調達には、この前のシードラウンドの投資家Congruent VenturesPeopleFund、そしてObvious Venturesも参加した。

画像クレジット: GM

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

VCファームPartechが100億円規模のシード期投資専門ファンドを立ち上げ

VCファームのPartech(パーテック)がシード期の投資を専門とする新たなファンドを立ち上げた。Partech Entrepreneur IIIという名称の新ファンドは同社にとって3つめのシード投資ファンドとなる。前のファンドのクロージングを発表したのは2016年12月のことだ。

PartechはプレシードからプレシリーズAまで、かなりアーリーステージにある企業を投資している。スタートアップのステージに応じて、わずか数十万ドル(数千万円)から最大数百万ドル(数億円)までの投資に応じる。そして同社は好調なスタートアップについては、その後に訪れるシリーズA、シリーズBでの再投資に積極的だ。

Partechは特に6つの分野にフォーカスしている。健康、労働、商業、金融、モビリティ、コンピューティングだ。かなり大雑把な分類だが、Partechはシード投資を専門とする投資家10人で構成するチームを有する。投資家らはパリ、サンフランシスコ、ベルリンに拠点を置いている。

過去にPartechは3つのシード投資を通じて22カ国で投資160件をクローズした。同社はフィードバックや紹介を行なったりポートフォリオの拡大を手伝ったりすることができる400人もの創業者のコミュニティを抱えている。そうした創業者たちの3分の1がシード投資のリミテッドパートナーだ。

投資160件のうち、スタートアップの17%で共同創業者の少なくとも1人が女性となっている。過去2年間でPartechが支援したスタートアップの29%のシード期に女性の共同創業者がいた。

Partechはここしばらく今回のファンドの立ち上げを展開していて、つまりファンドの一部を既に投資している。同社は新たなファンドを通じてスタートアップ40社以上に投資し、ここには新型コロナウイルス(COVID-19)による経済危機が始まってから投資を開始した10社が含まれる。

Partechが以前投資した企業には、Aiden.ai、Dejbox、Frontier Car Group、Pricematch、Streamroot、Alanなどがある。

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(翻訳:Mizoguchi

ベン・ホロウィッツ氏がLyftの取締役を退任

ベンチャーキャピタル、Andreessen Horowitz(アンドリーセン・ホロウィッツ)の共同ファウンダー・ゼネラルパートナーのBen Horowitz(ベン・ホロウィッツ)氏がライドシェアリング会社Lyft(リフト)の取締役再選に立候補しない以降であることが、月曜日(米国時間4/27)に証券取引委員会(SEC)に提出された書類でわかった。

Horowitz氏はLyftの取締役を2016年6月から務めてきた。同氏がMarc Andreessen(マーク・アンドリーセン)氏と共同設立したベンチャーキャピタル会社、Andreessen HorowitzはLyftの初期の出資者だった。Horowitz氏は6月19日に予定されているLyftの年次株主総会まで取締役会に残る。同氏の取締役辞任の意志を最初に報じたのはProtocolのBiz Carson記者だった。

LyftはHorowitz氏の空席を埋める予定はない。

Horowitz氏のコメントは入手できていない。TechCrunchは反応があり次第本稿を更新する予定。

「Ben(Horowitz氏)には4年間にわたる取締役の任務を始めとするLyftとの長年の関係に感謝している」とLyftの広報担当者がTechCrunch宛のメールで語った。「在任中Benは、Lyftが大きな節目を達成する時何度も助けてくれた。2019年のIPOもその一つだった。投資家の先駆者として、またベンチャーキャピタル界の指導者として、引き続き活躍することを祈っている」

Horowitz氏は、Okta(オクタ)、Foursquare(フォースクエア)、Genius(ジニアス)、Medium(ミディアム)、Databricks(データブリックス)を始めとする13社の取締役を務めている。

Horowitz氏がLyftの取締役に選ばれたのは、彼の豊富な業務と経営の経験、テクノロジー会社の知識、そしてベンチャーキャピタルとしての膨大な経験が理由だった、と2020年株主総会の議題を発表した書類の中で同社は語った。

年次総会は西海岸時間2020年6月19日午後1時30分からバーチャルで開催される。株主以外でも http://www.virtualshareholdermeeting.com/LYFT2020 に行けば株主総会を観覧できる。株主は質問と投票をオンラインで行える。

総会の場でLyftは2023年までの任期の取締役2名を推薦するほか、独立公認会計会社としてPricewaterhouseCoopers LLP(プライスウォーターハウスクーパース)の指名承認を諮る予定だ。Lyftの共同ファウンダー・CEO Logan Green(ローガン・グリーン)氏とFloodgate Fund(フラッドゲート・ファンド)の共同ファウンダー・パートナーのAnn Miura-Ko(アン・ミウラ・コー)氏が取締役再任に立候補する予定。

同社の議事にはほかに、特定業務執行役員報酬の勧告的承認、および特定業務執行役員報酬に関する将来の株主による勧告的投票の頻度の勧告的承認という2件の承認議案がある。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

資金調達の契約条件はBeforeコロナ、Afterコロナでどう変わるか

スタートアップが資金を調達しようとするときは、間違っても公園を散歩するようにはいかない。良い時があり、悪い時がある。現在はと言えば、ほとんど誰も生涯で経験したことがないような不確実な時期だ。

新型コロナウイルス(COVID-19)のパンデミックで世の中が混乱する前に難なく資金調達できたスタートアップでも、事業継続のためにさらに資金が必要になる可能性は十分ある。多くのセクターで売上が急減しているからだ。

バリュエーションはほぼ確実に下がるか横ばいだ。もう1つの切実な問題は、Zoom(ズーム)を使った電話会議で創業者がどういう取引条件に直面するかということだ。多くの業界関係者によると、投資家は自らの資金を守ろうとするため、契約条件は厳しいものになるという。

「現時点で企業には3種類ある」と、ワシントンDCに拠点を置くCooley(クーリー)でスタートアップを専門とする弁護士、Derek Colla(デレク・コラ)氏は述べる。「2カ月前を振り返ってみよう。まず、投資家に『金を持っていってくれ』を言わしめるような業績の良い会社があった。次に良くやっている会社があった。実績は計画に近いが大したことはない。最後に投資家のブリッジファイナンスで何とかしのいでいる会社があった」。

「今は」とコラ氏は言う、誰もがはしごから足をを滑らせたところだ。「良い会社は、次の資金調達でバリュエーションがわずかに上がるかもしれないが、たいていは直近のラウンドを再びオープンするにとどまっている。インサイダー(既存株主)が会社の失敗を望まないという理由もあるが、新しい投資家に入られ、良いディールを持っていかれ、自分たちが間抜けに見られるのをいやがるという理由もある」。

さて「そこそこの会社」は、より厳しい条件の受け入れを要求されている。低いバリュエーションに甘んじたり、会社がダウンラウンドを避けたいなら、多くのワラントを投資家に渡したりすることだ。後者はつまり、投資家に今日の低い株価で計算した持ち分を将来渡す契約上の権利だ。

コラ氏はまた「第2グループの会社が一時的に不利な条件をのむよう求められる例が増えている」と言う。例えば、将来のラウンドで会社のバリュエーションが下落した場合に投資家が保有する株の希薄化防止を保証するフルラチェット条項を付し、保証期間を1年にすることなどだ。

「第3グループはもう終わりだ」と同氏は言う。

これは逸話であって、今のところ全体の一部のそのまた一部の話にすぎない。Orrick(オリック)サンフランシスコ事務所のパートナーであり、法人グループの責任者であるMike Sullivan(マイク・サリバン)弁護士は次のように指摘する。「危機が起きた後に、この機に乗じようとする投資家を見たことはない。ただデータが取れているわけではない。ドットコムブーム後の2001年と2002年に訪れた『核の冬』で見られた契約条件が再び現れるか判断するには時期尚早だと思う」。

TechCrunchが話した、ニューヨークを拠点とするスタートアップ弁護士の1人は、最も厳しい契約条件は今のところ、ほとんどが東海岸のグロースステージをターゲットとする投資家が関わるタームシートで見られると述べた。彼らは創業者の「物語る」能力よりも常に数字に関心がある。

ベイエリアのスタートアップはまだ厳しい取引条件に直面していないようだ。たとえばFenwick & Westが今週初めに発行した今年第1四半期に関するレポートでは、パンデミックのため新規取引の動きが落ちていると指摘しているが、より高い優先順位や倍数を条件とする残余財産分配優先権(Senior or Multiple Liquidation Preference)、希薄化を防止するラチェット条項、Pay-to-Play(ペイ・トゥ・プレイ)条項など、深刻な景気後退時に現れる条項の増加はみられないという。(ペイ・トゥ・プレイ条項とは、会社が資金調達の際にインサイダーに頼る必要があるが、比例按分による資金負担ができないまたはしたくない株主がいる場合、その株主が保有する優先株式が普通株やその他の権利内容の面で劣後する株式に転換されてしまう条項)。

レポートの著者は、「そのような契約条件は今後数カ月で注目されるようになるだろう」と述べている。だが、匿名を希望した経験の長い投資家は、そうした条件が再び現れることは決してないと主張する。「スタートアップエコシステムにおける非常に自由な情報の流れと投資家の評判の重要性を考えると、選択肢が減っている創業者に圧力をかけることは合理的ではない。このビジネスに今後20年は関わる必要のある人々が嬉々として襲い掛かるという考えは、ほとんどフィクションだ」。

起業家でエンジェル投資家のJason Calacanis(ジェイソン・カラカニス)氏も概ね同意し、次のように語った。「ワラントやフラットラウンドを望む声を聞いたことはあるが、ドットコムバブル崩壊後のように残余財産分配優先権を2倍や3倍にというのは聞いたことがない。創業者が出会うとしてもそうしたナンセンスを求めるのは略奪的なVCだけだ。ただそういうクレイジーな条件に合意してしまうと、問題は会社が死のスパイラルに陥る可能性があるということだ」。

価格以外の条件について、これまで紹介してきた見方が正しいかは時間が経たなければわからない。多くはこの不況がどれだけ長く続くかにかかっている。

とはいえ「創設者はゲームが変わったことを理解すべきだ」とシードステージ向けのVCであるHaystackの創業者であるSemil Shah(セミル・シャー)氏は示唆した。

資金調達ラウンドの「最適化」は少し前まで、経営陣にとって可能なことだったが、今は確実にクロージングすることが重要だ。誰かがフェアで合理的な条件を提示してきたら、ぐずぐずしたり、もっと良い条件を得ようといろんな人に働きかけるのはやめたほうが良いかもしれない。

画像クレジットpryzmat / Shutterstock

“新型コロナウイルス

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(翻訳:Mizoguchi

NextView Venturesがスタートアップ向けリモートアクセラレーターを開始

シリコンバレーのリーダーであるMarc Andreessen(マーク・アンドリーセン)氏は先週末、いつもの沈黙を破りシリコンバレーに向けいくつかのアドバイスを送った。「It’s time to build(構築するのは今だ)」。有名な投資家である同氏はCEO、起業家、投資家すべてに新しい企業を迎えようと呼びかた。

ブログの投稿で数々の野心的な提案を披露しているが、読者の立場によって受け取り方は異なるだろう。だが、自分はビジネスにオープンであると証明したがるベンチャーキャピタリストを試すにはもう少し地に足のついた方法がある。タームシートにサインして、小切手を切れるかどうかだ。

ブログで語られた言葉は、ボストンに本拠を置くベンチャーキャピタルであるNextView Venturesの理論、そして4月20日に発表された新しいリモートアクセラレータプログラムと不気味なほどに似ている。

「現在の新型コロナウイルス(COVID-19)危機の間に多くのVCが『ビジネスにオープン』であると公言するのを見てきたが、当社は投資に関して言行一致でありたい」とパートナーのDavid Beisel(デイビッド・ベイゼル)氏は語る。

NextViewは、既存ファンドから資金を一部振り向け、10に満たない数のプレシードおよびシードスタートアップの株式の8%に20万ドル(約2150万円)を投資する。プログラムは完全にバーチャルで行われ、「市井の人々の日常の生活」を変える力になる創業者に投資する。

NextViewの共同創業者であるRob Go(ロブ・ゴー)氏は、プログラム開始についてツイートした。

NextViewアクセラレータの立ち上げは、Y Combinator500 Startupsなどの従来の名だたるインキュベーターが自身の戦略を考え直しているこの時期に行われる。Y Combinatorは4月20日、次のバッチが完全にリモートになると発表した。500 Startupsは2020年3月にコホートモデルを廃止すると発表した。

同社はまた、大きなバッチサイズや派手なデモデイなど、従来のアクセラレータープログラムのどこが悪いかについてコメントを出した。「アクセラレーターは小規模で親密な雰囲気なら最高だ。YCの最初のバッチはわずか8社だった」とベイゼル氏は参加者の少なさについて語った。「だが時間が経つにつれ、アクセラレーターは数字ゲームのようになった」。

ベイゼル氏はこう付け加えた。「もともとアクセラレーターのデモデイは、スタートアップをフォローしたい投資家への紹介手段として始まったが、最近は多くの関係者を満足させる念入りなショーへと進化した」。

とはいえ、デモデイについて避けられない真実は、それがスタートアップと創業者を結び付け、うまくいけば最初の小切手をもたらすきっかけになるということだ。ジャーナリストやベンチャーキャピタリストが集まる場所で創業者の顔にスポットライトが当たるような機会がなければ、ディールに成功をもたらすことなどできるだろうか。

YCと500 Startupsが2020年に初めてバーチャルデモデイを開催した後、筆者らはさまざまな不平を耳にした。Y Combinator先週、YCの卒業生に常に投資する方針を変え、原則としてケースバイケースでレビューする方針とした。アクセラレーター内部にある保守主義をほのめかす例だ。

NextViewはアクセラレータープログラムの後の資金調達にも控えめに取り組んでいる。同社は、小規模なコホートを次のラウンドに参加する投資家につなげるものの「次のラウンドの資金調達をリードすることはあえてしない」と述べている。同社がプログラム後の投資ラウンドをリードしない方針を明らかにしたのは「将来の資金調達で何らかのシグナルを送ってしまう可能性を回避する」ためだという。ただ同社は、コホートを支援するため、プログラム後のすべての企業の資金調達ラウンドに少なくとも同じ割合で参加する。

この決定を楽観的に捉えるなら、NextViewは自身のアクセラレーター機能を投資会社とは別のものと見ており、ディールフローのパイプラインを厚くするというよりは助けになればいいと考えているのかもしれない。あるいはそうではなくて、今後の景気が予測不可能な時期に投資に過剰にコミットしたくないだけかもしれない。ただ、バッチの中に宝石を見つけたとしてもNextViewがその会社に投資しないのは驚くべきことだ。

はっきりしているのは、NextViewがアクセラレーターを立ち上げ、多くのVCが投資を控える中でNextViewはスタートアップに投資しようとしているということだ。すばらしいリターンをもたらす若いスタートアップの育成に同社がどれだけ成功するかは時を待たなければならないが、今のところ、同社は何かを構築しているといえる。今日のニューノーマルの下では、構築することは歓迎すべき兆候だ。

画像クレジット:erhui1979 / Getty Images

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(翻訳:Mizoguchi

Y Combinatorが本年夏季からアクセラレーターのクラスを全面的にリモートへ移行

先月はCOVID-19の全国的なアウトブレークで急遽、リモートのデモデーを余儀なくされたY Combinatorが今日(米国時間4/20)、次回は全セッションを完全にリモートで行う、と発表した。

Y CombinatorのCEO Michael Seibel氏は同社のサイトへのポストで、その発表を行なった。そこで彼は、「2020年夏季はリモートで行うと決定した。COVID-19の危機のさなかでは、創業者たちとYCのスタッフの安全が優先されるからである」、と述べている。

2020年夏季を受ける創業者たちは、面接も執務時間も夜の会合もすべてビデオ会議で行う。ということは、まだ発表はないが、彼らのデモデーもリモートになるのだろう。最前のクラスではスタートアップたちが、ステージ上のローンチを今後のデモデーに延ばしてもよい、というオプションを与えられたが、今後それはないだろう。

YCがオンライン化されると当然、創業者としてはクラスの質が気になる。従来、YCのアクセラレーター事業に参加する創業者たちは、15万ドルの資金を得てその見返りに会社の所有権の7%をYCに提供していた。そしてその後は、YCのネットワークやアドバイザー集団にアクセスできるようになる。

Y Combinatorのクラスは、今ではとても大きいが、今回はその形の全体が変わることになる。今度の夏季のサイズはまだ確定していないが、前回は240のスタートアップが参加した。これだけの数にオンラインで対応するためにYCは、スタートアップをグループ化するやり方や、彼らが投資家にプレゼンするやり方などを工夫しなければならない。前回も対面のデモデーがなくなって創業者たちは、このイベントに集まるVCたちの大きな集団に生身の自分を紹介する機会を失った。

先週TechCrunchは、YCが、その比例案分制の投資をやめて、スタートアップへの投資をケースバイケースで行う、と報じた。既存の持ち分に応じての比例的なシード資金やシリーズAの投資は、これまでの同社の伝統だった。

関連記事: Changing policy, Y Combinator cuts its pro rata stake and makes investments case-by-case…Y Combinatorが比例案分制をやめてケースバイケースの投資に移行(未訳)

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

ソフトバンクが「Vision Fundは1.8兆円の損失」と予測、本体もWeWorkとOneWeb投資が痛手

日本の巨大テクノロジー企業グループ、ソフトバンクは2019年度の損益見通しを発表した。これによれば、Vision Fundの損失は1.8兆円という巨額に上るという。

またソフトバンク本体の投資でも、シェアリングエコノミーのブームを代表したオフィススペース賃貸のWeWork、衛星通信のOneWebに対する投資の失敗が痛手となった。 投資先のテクノロジースタートアップのビジネスの失敗により、グループ全体での損失も7500億円となる予想だ。

この2年間、ソフトバンクとファウンダーの孫正義氏は、Vision Fundの数十億ドルの資金(大半は外部投資家のカネだったが)をスタートアップに投じてきた。機械学習、ロボティクス、次世代テレコムへの投資はやがて数千億ドルの利益を生むという見通しに賭けたものだった。

ともかく孫氏が投資家に売り込んだビジョンはそうだった。しかし実態は、WeWork、OpenDoor、Compassなどへの数十億ドルは要するに不動産投資だった。消費者向けビジネスではBrandlessは事業閉鎖 犬を散歩させるWagでは持ち分売却を余儀なくされた。食品配達のDoorDashへの投資も成功とはいえないだろう。これに加えて大口の投資を行ったホテルチェーンのOyoが苦境に陥っていることでVision Fundの「先見の明」に大きな疑問符がついている。

2019年はこうした投資先がいくつも暗礁に乗り上げた。見事なまでの崩壊をみせたのは、我々も繰り返し報じてきたがWeWorkだ。会社評価額は一時の400億ドル(約4兆3000億円)以上から約80億ドル(約8600億円)に急落した。

Brandlessは2020年初めに廃業した。新型コロナウイルス(COVID-19)のパンデミックの発生により、ホテルのOyoに加えて不動産投資ではCompassも打撃を受けている。

もっともソフトバンクのVision Fundの投資先に失敗企業が続出しているのは事実だが、失敗の多くは経済全体に逆風が吹いている結果だ。またすべての投資が行き詰まっているわけではない。例えばVision Fundは上場前のSlackに巨額の投資をしている。しかも新型コロナウイルスによる否応ないリモートワーク化はSlackの強い追い風となっている。

ソフトバンクの投資の中で最も遠大なビジョンがあったのは(皮肉にもこれはVision Fundからの投資ではなかったが)衛星ネットワークのOneWebだったに違いない。しかし世界のいたるところに高速のインターネット接続サービスを提供するというビジョンは優れていたが、あまりに多額の資本を必要としたためその重みで自壊した。ピザのロボット配達サービス、Zumeも失敗している。

しかしこうしたギャンブルが軒並み失敗に終わってもソフトバンク自体が倒れない理由は、なんといっても大量のアリババ株という金庫を抱えているからだ。またコアビジネスのテレコム事業や傘下の半導体事業も堅調だ。

ソフトバンクは発表で次のように述べている。

「上記に加え、(2019年度比較して2020年度の)税引前利益の減少は、主として営業外損失の計上が予測されることによる。 2019年度における(Vision Fund外の)投資関連の損失総額は8000億円となる。これはAlibaba株式のPVF(プリペイド・バリアブル・フォワード)契約(による売却)から生じる利益によって部分的に相殺される。2019会計年度第1四半期に計上され、Alibaba株保有分の希薄化によって生じた利益は2019年度第3四半期に計上されている。またAlibaba株式関連の投資については対前年比での利益の増大があると予測される」。

結局のところ、孫氏は大胆かつ優れたビジョンを持つ投資家だという神話に自縄自縛となったのではないだろうか。この神話は外部の株主、投資家に損害を与えるものとなったようだ。

4月13日に、Bloombergはop-edコラムで次のように書いている

「(多額の投資をすることで)スタートアップをファウンダーが考えているより早く成長させ、予想以上の収益を上げさせることができる」という孫氏の主張は今や重荷となっている。これはVision Fundやソフトバンク本体への投資家にとって利益より損失を生むリスクをもたらしている。

多額のキャッシュをばらまいたために多数のスタートアップが財政規律を維持することを忘れ、金を使うことに夢中になってしまった。何年もの間、これは賢明な戦略のように見えた。ソフトバンクの投資を受けたスタートアップはライバルよりも多額のキャッシュをユーザー獲得のインセンティブや広告に支出し、、能力の高い人材を惹きつけることができた。これは市場市場シェアを得るために役立った。

現在、ソフトバンクはUber、WeWork、Grab.、Oyoなどの市場リーダーの大株主だ。 しかしナンバーワンになることと、利益を上げることはまったく別の話だ。

画像クレジット:Getty Images

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(翻訳:滑川海彦@Facebook

JR東日本スタートアップが2020年度のアクセラレーションプログラムの募集開始

東日本旅客鉄道とJR東日本スタートアップは4月13日、 優れた事業アイデアを有するスタートアップ企業などとの協業によるビジネス創造の取り組みとして「JR東日本スタートアッププログラム2020」を開催することを発表した。

同プログラムは2017年度から開催している取り組みで、 これまでに計63件の提案を採択。 鉄道事業や生活サービス事業、 IT・Suica事業など幅広い分野の実証実験を進め、一部は実用化に漕ぎ着けている。4回目となる2020年度のテーマは、地方創生、観光・インバウンド、スマートライフの3つ。

地方創生
東日本大震災発生から10年の節目を迎える東北エリアをはじめとした「地方創生」の推進

観光・インバウンド
新たな視点での観光資源活性化や地域の魅力創出などの「観光・インバウンド」事業の創造

スマートライフ
テレワーク・デュアルライフなどの社会的なニーズへの対応、 デジタルトランスフォーメーションによる新たな消費行動など、 新しい働き方や暮らし方の提案としての「スマートライフ」の実現

具体的な事業領域は以下のとおり。設立(起業)から10年以外の企業で、年度内に実証実験が可能なプロダクトやサービスが対象だ。

  1. 人・モノ・情報をタイムリーに結び付け、 利便性を高めるサービスの創出
  2. 出発地から目的地までをスムーズにつなぐ快適な移動の創造
  3. より安心・安全な輸送、 サービス向上に資する技術革新
  4. 魅力あるサービスの提供を通じ、 国内外の多様な人々が集い楽しめる場としての駅づくり
  5. 地域の雇用・移住・観光の促進
  6. 環境負荷の少ないエネルギーや安全で安定した食糧の供給など社会的課題の解決

応募期間は5月31日までを予定しており、JR東日本スタートアッププログラム専用ページから申し込める。応募条件と選考スケジュールは以下のとおり。選考に残った企業は、1社をスタートアップ大賞、1〜2社を優秀賞、同じく1〜2社をその他各賞を授与され、それぞれ100万円、50万円、10万円の支援金を受け取れる。

応募条件

  • 提案内容が新規性を備えていること。
  • JR東日本グループのリソース・アセットを活用すること。
  • 応募者・JR東日本グループにとって新たな事業展開に繋がる取組みであること。

選考スケジュール

  • 応募締切:5月31日
  • 書類審査結果通知:6月30日
  • プレゼン審査(非公開):7月中
  • アクセラレーション期間:8月~
  • Demo Day(公開):11月
  • 実証実験:12月~

CoralやDNX、グロービスなどVC数社が追加投資用ファンドを組成し投資先の成長後押しへ

VCが有望な投資先に対して手厚いサポートをするべく、追加投資専用のファンドを組成する動きが国内でも増え始めている。

先日グロービス・キャピタル・パートナーズが大手機関投資家を中心に37.3億円で新ファンドの一次募集を完了したことをアナウンスしたのに続き、本日4月13日にも2つのVCが新たな追加投資用ファンドを組成したことが明らかになった。

1社はシードVCのCoral Capital、もう1社がB2Bスタートアップを中心に日米で投資をしているDNX Venturesだ。前者は約27億円で新ファンドの一次募集を完了したことを、後者は約40億円の新ファンドの組成を完了したことを発表している。

シードから入って手厚いサポートを

Coral Capitalの基本スタイルはシードからシリーズAの段階で投資をして、その後積極的にフォローオン投資をするというもの。これまで1号ファンド(約38億円)だけでも43社に投資を実行していて、4億円までを上限に追加投資も行ってきた。

代表案件となっているのがSmartHRだ。Coral Capitalではシード期以降もSmartHRを手厚くサポートするための1つの取り組みとして専用のファンド(SPV)を組成。そうすることで同社のシリーズBCラウンドでも追加投資を実施し、合計で20億円以上を投資している。

「(SmartHRへの投資を通じて)シードから入って、投資先のその後の成長に合わせて継続的に支援するという挑戦のPMFができた。実際に1回やってみて、専用ファンドを作ればレイターステージに近づいても支援し続けられることがわかった」(Coral Capital創業パートナー兼CEOのJames Riney氏)

James氏によると1号ファンドの中からSmartHRに続くような有望案件が徐々に出始めているそう。「それらの会社のために毎回SVPを作るよりは、あらかじめある程度まとまった金額を用意しておく方がよりスムーズに支援ができる」との考えから、今回追加投資用のグロースファンドを設立するに至ったという。

グロースファンドの設立によって1社あたりの投資額の上限を拡張し「イメージとしては1社あたり5億円〜15億円を投資していく」計画。同ファンドでは1号ファンドの投資先のみを対象に追加投資を行い、新規の投資や2号ファンドの投資先への追加投資は引き続き現在運用している2号ファンド(約60億円)から実施する。

なお今回のファンドでは国内大手機関投資家や事業会社など既存LPのみから資金を集めているとのこと。同ファンドと1号・2号ファンド、そしてSmartHRのSPVなどを含めるとCoral Capitalの運用総額は約150億円となった。

国内SaaS中心に既存投資先の大型調達を支援

専用ファンドによって有望な既存投資先の成長を後押ししようという考えはDNX Venturesも同様だ。特に同社が積極的に投資をしているSaaS領域は近年数十億〜100億円規模の資金調達が目立ち、大型化が進んでいる。

「マネーフォワードやSansan、freeeなど大型調達をしながらARRが積み上がるまでは上場せず、プライベートカンパニーとして成長し続けるやり方が国内でも定着し始めている。自分たちの投資先でも同じような動きが今後予想される中で、(ステージが進んでも)しっかりとフォローオンできるように追加投資専用のファンドが必要だと考えた」(DNX Venturesマネージングディレクターの倉林陽氏)

新ファンドの対象となるのは2号ファンドから投資をした日本企業だ。倉林氏の話ではかなり厳選した上で1社あたり数億円〜十数億円の投資を行っていく計画とのことで、100億円を調達したフロムスクラッチのシリーズDラウンドなど、新ファンドからすでに数件投資を実行しているという。

フロムスクラッチのほかオクト、カケハシ、toBeマーケティング、UPWARDに新ファンドから投資済みとのこと

「(レイターステージにもなると)もともと想定していた1社あたりの投資額をはるかに超えてくるようになるが、それでもいい投資先であればできる限りその要求に応じたい。既存投資先が継続して投資をするということは、新規の投資先にとってもいいメッセージになる」(倉林氏)

新ファンドには国内大手機関投資家2社のほか、アドウェイズ、HAKUHODO DY FUTURE DESIGN FUND、フジ・メディア・ホールディングス、みずほ銀行、三井不動産、三菱UFJ銀行、米子信用金庫などがLPとして出資。同ファンドを合わせるとDNX Venturesの合計運用総額は約580億円となる。

新型コロナウイルスの影響は?

タイミング的にも気になるので新型コロナウイルスとの関連についても両社に聞いてみたが、前提として「(新ファンドは)それ以前から構想していたもので、コロナウイルスの影響を受けて組成したわけではない」という。

ただし結果的にコロナの影響で大型調達が難しくなったり、調達が円滑に進まなくなったりする既存投資先を支援できるのではないかという話もあった。

「今後大型の調達が難しくなる可能性は高い。実際に足元を見ていても、当初二桁億円を調達する予定だったが数億円しか集まりそうにないといった話はある。(既存の投資先であれば)今までの上限枠以上の金額を投資できるようになったので、今回のファンドを通じて大型調達も積極的にサポートしていきたい」(Coral Capital創業パートナーの澤山陽平氏)

「調達環境が大きく変わってきていることは間違いない。自分たちの投資先でも上半期に調達が必要な会社もあるが、スタートアップはバリュエーションを強気で設定しづらくなるほか、多くの投資家がまず既存投資先の支援に時間を使うようになるため新規の案件はかなりセレクティブになる。全ての案件を支援できる訳ではないが、(1社あたりの上限金額が上がったことで)投資先の調達力を担保し、大型のラウンドを支えることができるようになった」(倉林氏)

両社が言及していたのが、今後特に事業会社が積極的に投資をするのが難しくなるのではないかということ。近年は国内でも新規のCVCの設立などが目立ち、調達関連の取材をしていても事業会社の名前を聞くことが増えていたので、事業会社の状況が変わってくるとバリュエーションや調達額、スタートアップと投資家とのパワーバランスなどにも影響が出てくるかもしれない。

「資金調達環境への影響はステージによっても異なる。シードやプレシリーズAは長いスパンで見ている案件が多いので、そこまで景気に左右されにくい。実際に自分たち自身も新規投資のペースは変わっていないし、シリコンバレーの状況を聞いていても状況は近い。レイターステージに関しては交渉がシビアになる可能性はあるが、日本でもミドルレイターのVCが増えてきているので、投資自体は引き続き実行されると考えている。ただしそのような状況下では二極化が加速し、有望なスタートアップに資金が集中していくのではないか」(澤山氏)

ARCHが新型コロナ治療を研究する企業向けのファンドを設立

世界が新型コロナウイルス(COVID-19)のワクチンや治療法の開発を競い、バイオテクノロジーのイノベーションが死活を分けることが明らかになりつつある中で、ライフサイエンス投資家のARCH Venture Partnersが新技術開発に出資するために14億6000万ドル(約1580億円)を調達した。

同社は、アーリーステージのバイオテクノロジー企業だけに投資する多くのビークルを抱えるが、この長いリストにARCH Venture Fund XとARCH Venture Fund X Overageが新たに加わった。

「ARCHは人類の健康に影響をもたらす素晴らしいサイエンスに常に投資してきた。総力を挙げてCOVID-19と戦うことほど我々の理念を示すものはない」と共同創業者でマネージングディレクターのRobert Nelsen(ロバート・ネルセン)氏は声明で述べた。「ヘルスケア革命は現在起こっている変化によって今後加速し、真に転換を図るサイエンスに取り組んでいる挑戦者たちに引き続き積極的に投資することを嬉しく思う」

ARCHのポートフォリオに名を連ねるVir Biotechnology、Alnylam Pharmaceuticals、VBI Vaccines、Brii Biosciences、そしてSana Biotechnologyは全てCOVID-19の治療法に取り組んでいる。Quanterixは臨床試験と臨床試験開発を支える技術を開発している。またARCHがサポートする別の会社Twist Biosciencesは、治療やワクチン開発に貢献すると考えている遺伝子編集ツールを持っている。吸入された一酸化炭素を放出するテクノロジーの開発を手掛けたBellerophonはCOVID-19による呼吸困難を軽減させる治療としてFDA(米食品医薬品局)から緊急使用許可を得た。

ARCHのOverageファンドはより多額の資金を必要としているレイターステージ企業の大量の株を取得するのに使われる、と同社は説明した。

「当社は、何百万という人が直面するさまざまな病気や症状のための薬を開発できる最先端のサイエンス、ツール、人材をもたらす。2つの新たなファンドで当社は急を要する、そして意義のある仕事に引き続き取り組む」とマネージングディレクターのKristina Burow(クリスティーナ・ブロウ)氏は声明で述べた。「我々は5万ドル(約540万円)から数億ドル(数百億円)まで、あらゆる額の投資に対応する。各企業やそれぞれのテクノロジーは状況を改善して変えるという最高の機会を持っている」

2つのファンドは、2016年に11億ドル(約1190億円)でクローズしたARCHの直近の投資ファンドとおおよそ同じ規模だ。しかし総額で5億6000万ドル(約600億円)調達した2014年のARCHファンドからは大幅な増加だ。

ARCHファンドの規模拡大は、資金を確保してきた幅広い産業が運用資本を拡大する傾向にあることを表しているが、しかしまたスタートアップ業界におけるバイオテック投資の認知度が高まっていることも暗示している。

このところ、世界を飲み込んでいるのはソフトウェアではなく、プログラム可能なバイオロジーだ。

「ARCHは、健康福祉に関する重要な問題を解決することで、生命科学や自然科学研究のリードから、世界のコミュニティへの貢献まで、最も約束されたイノベーションを前進させるというミッションに35年間取り組んできた」とKeith Crandell (キース・クランデル)氏は声明で述べた。「ARCHは、感染病やメンタルヘルス、免疫学、ゲノムと生物学のツール、データサイエンス、新発想の診断や治療などで進歩を追求する草分け的な会社の発掘、サポート、投資を優先する」

新ファンドのマネージングディレクターにはRobert Nelsen氏、Keith Crandell氏、Kristina Burow氏、Mark McDonnell(マーク・マクドネル)氏、Steve Gillis(スティーブ・ギルス)氏、そしてPaul Thurk(ポール・サーク)氏が含まれる。

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(翻訳:Mizoguchi