CoralやDNX、グロービスなどVC数社が追加投資用ファンドを組成し投資先の成長後押しへ

VCが有望な投資先に対して手厚いサポートをするべく、追加投資専用のファンドを組成する動きが国内でも増え始めている。

先日グロービス・キャピタル・パートナーズが大手機関投資家を中心に37.3億円で新ファンドの一次募集を完了したことをアナウンスしたのに続き、本日4月13日にも2つのVCが新たな追加投資用ファンドを組成したことが明らかになった。

1社はシードVCのCoral Capital、もう1社がB2Bスタートアップを中心に日米で投資をしているDNX Venturesだ。前者は約27億円で新ファンドの一次募集を完了したことを、後者は約40億円の新ファンドの組成を完了したことを発表している。

シードから入って手厚いサポートを

Coral Capitalの基本スタイルはシードからシリーズAの段階で投資をして、その後積極的にフォローオン投資をするというもの。これまで1号ファンド(約38億円)だけでも43社に投資を実行していて、4億円までを上限に追加投資も行ってきた。

代表案件となっているのがSmartHRだ。Coral Capitalではシード期以降もSmartHRを手厚くサポートするための1つの取り組みとして専用のファンド(SPV)を組成。そうすることで同社のシリーズBCラウンドでも追加投資を実施し、合計で20億円以上を投資している。

「(SmartHRへの投資を通じて)シードから入って、投資先のその後の成長に合わせて継続的に支援するという挑戦のPMFができた。実際に1回やってみて、専用ファンドを作ればレイターステージに近づいても支援し続けられることがわかった」(Coral Capital創業パートナー兼CEOのJames Riney氏)

James氏によると1号ファンドの中からSmartHRに続くような有望案件が徐々に出始めているそう。「それらの会社のために毎回SVPを作るよりは、あらかじめある程度まとまった金額を用意しておく方がよりスムーズに支援ができる」との考えから、今回追加投資用のグロースファンドを設立するに至ったという。

グロースファンドの設立によって1社あたりの投資額の上限を拡張し「イメージとしては1社あたり5億円〜15億円を投資していく」計画。同ファンドでは1号ファンドの投資先のみを対象に追加投資を行い、新規の投資や2号ファンドの投資先への追加投資は引き続き現在運用している2号ファンド(約60億円)から実施する。

なお今回のファンドでは国内大手機関投資家や事業会社など既存LPのみから資金を集めているとのこと。同ファンドと1号・2号ファンド、そしてSmartHRのSPVなどを含めるとCoral Capitalの運用総額は約150億円となった。

国内SaaS中心に既存投資先の大型調達を支援

専用ファンドによって有望な既存投資先の成長を後押ししようという考えはDNX Venturesも同様だ。特に同社が積極的に投資をしているSaaS領域は近年数十億〜100億円規模の資金調達が目立ち、大型化が進んでいる。

「マネーフォワードやSansan、freeeなど大型調達をしながらARRが積み上がるまでは上場せず、プライベートカンパニーとして成長し続けるやり方が国内でも定着し始めている。自分たちの投資先でも同じような動きが今後予想される中で、(ステージが進んでも)しっかりとフォローオンできるように追加投資専用のファンドが必要だと考えた」(DNX Venturesマネージングディレクターの倉林陽氏)

新ファンドの対象となるのは2号ファンドから投資をした日本企業だ。倉林氏の話ではかなり厳選した上で1社あたり数億円〜十数億円の投資を行っていく計画とのことで、100億円を調達したフロムスクラッチのシリーズDラウンドなど、新ファンドからすでに数件投資を実行しているという。

フロムスクラッチのほかオクト、カケハシ、toBeマーケティング、UPWARDに新ファンドから投資済みとのこと

「(レイターステージにもなると)もともと想定していた1社あたりの投資額をはるかに超えてくるようになるが、それでもいい投資先であればできる限りその要求に応じたい。既存投資先が継続して投資をするということは、新規の投資先にとってもいいメッセージになる」(倉林氏)

新ファンドには国内大手機関投資家2社のほか、アドウェイズ、HAKUHODO DY FUTURE DESIGN FUND、フジ・メディア・ホールディングス、みずほ銀行、三井不動産、三菱UFJ銀行、米子信用金庫などがLPとして出資。同ファンドを合わせるとDNX Venturesの合計運用総額は約580億円となる。

新型コロナウイルスの影響は?

タイミング的にも気になるので新型コロナウイルスとの関連についても両社に聞いてみたが、前提として「(新ファンドは)それ以前から構想していたもので、コロナウイルスの影響を受けて組成したわけではない」という。

ただし結果的にコロナの影響で大型調達が難しくなったり、調達が円滑に進まなくなったりする既存投資先を支援できるのではないかという話もあった。

「今後大型の調達が難しくなる可能性は高い。実際に足元を見ていても、当初二桁億円を調達する予定だったが数億円しか集まりそうにないといった話はある。(既存の投資先であれば)今までの上限枠以上の金額を投資できるようになったので、今回のファンドを通じて大型調達も積極的にサポートしていきたい」(Coral Capital創業パートナーの澤山陽平氏)

「調達環境が大きく変わってきていることは間違いない。自分たちの投資先でも上半期に調達が必要な会社もあるが、スタートアップはバリュエーションを強気で設定しづらくなるほか、多くの投資家がまず既存投資先の支援に時間を使うようになるため新規の案件はかなりセレクティブになる。全ての案件を支援できる訳ではないが、(1社あたりの上限金額が上がったことで)投資先の調達力を担保し、大型のラウンドを支えることができるようになった」(倉林氏)

両社が言及していたのが、今後特に事業会社が積極的に投資をするのが難しくなるのではないかということ。近年は国内でも新規のCVCの設立などが目立ち、調達関連の取材をしていても事業会社の名前を聞くことが増えていたので、事業会社の状況が変わってくるとバリュエーションや調達額、スタートアップと投資家とのパワーバランスなどにも影響が出てくるかもしれない。

「資金調達環境への影響はステージによっても異なる。シードやプレシリーズAは長いスパンで見ている案件が多いので、そこまで景気に左右されにくい。実際に自分たち自身も新規投資のペースは変わっていないし、シリコンバレーの状況を聞いていても状況は近い。レイターステージに関しては交渉がシビアになる可能性はあるが、日本でもミドルレイターのVCが増えてきているので、投資自体は引き続き実行されると考えている。ただしそのような状況下では二極化が加速し、有望なスタートアップに資金が集中していくのではないか」(澤山氏)

AIの社会実装の拡大を目指すギリアがグロービス・キャピタル・パートナーズから資金調達

統合AIプラットフォームの開発・提供を手掛けるギリアは4月7日、グロービス・キャピタル・パートナーズを引受先とする第三者割当増資を実施したことを明らかにした。グロービスの出資額は非公開。ギリアは、 同社CEOの清水 亮氏が創業したUEI(旧・ユビキタスエンターテインメント)とソニーコンピュータサイエンス研究所、ベンチャーキャピタルWiLが2017年に共同設立した企業。

同社はこれまで、2018年8月には、保険事業を手掛ける東京海上日動とコンサルティング事業を手掛けるシグマクシス、みずほキャピタル、2019年8月に教育事業を手掛けるトライグループとみずほ銀行、2019年9月に電気機器事業を手掛ける図研と資本提携や業務提携を結んでいたが、今回は創業時のWiLに続くベンチャーキャピタルの出資を受けることになる。今回調達した資金は、エンジニアなどの採用・教育、新サービスの研究開発、同社の認知度向上のためのプロモーション活動などに使われる。

グロービス・キャピタル・パートナーズ シニア・アソシエイトを務める南 良平氏は、「グロービスとしてもAIの社会実装というテーマは強く関心があり、それを可能にする有力な1社としてギリアへの出資を決めた」とのこと。同氏はプレスリリースでも以下のようにコメントしている。

AIの社会実装は社会的に不可逆なトレンドであり、潜在的に市場は巨大と認識しています。一方で、よく言われるように人材不足の中、一定のカスタマイズが発生する多種多様なニーズに応えられるプレーヤーは希少であり、ギリアは間違いなくその有力な1社と考えています。株式会社ソニーコンピュータサイエンス研究所と株式会社UEIのジョイントベンチャーとして始まったユニークな“大人のスタートアップ”であり、既に有力な顧客・パイプラインを多く抱え、単なるPoC/受託開発に留まらないモデルを構築しつつあります。ギリアの目指す世界観の実現に大きく期待するとともに、今後ギリアの企業価値向上に向け伴走させていただけることを楽しみにしています。

ギリア代表の清水氏のコメントは以下のとおり。

仕事を通じてAIが社会に貢献できる領域の広がりを日々実感する一方、世界の先行きが不透明なこのタイミングでグロービス・キャピタル・パートナーズ様から資本参画いただいたことを非常に心強く思っております。同社の持つ豊富なコネクションとビジネス経験からの助言を賜りながら、ギリアはさらなるAIの社会実装を加速します。

ギリアは2019年12月にスイッチサイエンスと共同で、ギリアが開発したマウス操作によるAI開発を可能にしたGUIベースの深層学習ソフトウェア「Deep Analyzer」(ディープアナライザー)を利用して企業などの問題解決に活用する手法を学べる入門講座「Deep Analyzerワークショップ」を開催。AIをより簡単に使えるような取り組みを進めている。

関連記事:ソニーCSLが出資のギリアが一般顧客向けAIサービスの提供を2018年内に開始予定、ブラウザだけで誰でも人工知能

月額課金型ファンコミュニティ運営のOSIROがグロービス・キャピタルから資金調達した理由

オシロは2月27日、グロービス・キャピタル・パートナーズを引受先とした第三者割当増資を実施したことを発表した。同社は月額課金制のファンコミュニティサービス「OSIRO」を運営する2017年1月設立のスタートアップ。

OSIROには、課金やグループ・イベント管理などファンコミュニティ運営に必要な機能が備わっているほか、コミュニティ活性化につながるコンサルティングサービスも提供する。具体的には、コミュニティプロデューサーが各コミュニティにつき、コミュニティ活性化と醸成のサポートを行っている。コミュニティ内のユーザーのアクション率は平均70%。一般的なサイトでは、書き込みをせずに見るだけの、いわゆるロムユーザーが90%であることを考えるとアクション率は高い(ソース元:The Guardian掲載「What is the 1% rule?」)。

OSIROの特徴は、クローズドな場でファンとコンテンツホルダー、もしくはファン同士が狭く深い関係を築くことができる「n対nのファンコミュニティ」である点。興味関心や価値観が近い人たちが集うと共感が起こり交流が深まりやすくなるという考えに基づいている。

そして、共感した者同士の交流が深まるとコミュニティ全体の熱量が高くなり、結果的には自発的なコミュニティ活動、いわゆる共創が発生する。ここで重要になるのがコミュニティの活性化に欠かせないコミュニティマネジャー存在だ。とはいえコミュニティマネジャーの業務量は多いうえ経験豊富な人材が不足しているのが現状。そこでOSIROには、コミュニティマネージャーの負担を減らす各種機能が搭載されている。

月額課金のファンコミュニティサービスには競合サービスも多いが、OSIROではファン同士が仲良くなる仕掛けとして、興味関心カード、バディ制度などを取り入れている点、「こだわりが強い」コンテンツホルダーやブランドから支持されている点が差別化ポイントとのこと。今後は、アニメコンテンツ、人気ユーチューバー、オンラインメディア、日本のものづくりを支援する企業など、さまざまなコンテンツホルダーとの連携を計画している。

オシロで代表取締役社長を務める杉山 博一氏は、「私がアーティスト活動をしていた経験と、多くのアーティストの作品(パトロン)を購入してきた経験から、アーティストが活動を続けるには、資金面と精神面での応援が必要です。精神面の応援としては、ファンレターなどがありますが、あきらかにデジタル・テクノロジーは弱いと考えています。ファン同士が作品のどこが好きなのか、どこが良いのかを熱量高く語り合うことは、アーティストにとって何よりも励みになります。また、ファンを巻き込んだ新たな創作や、ファン同士が仲良くなることで生まれる価値共創の場に進化していきます。OSIROでは、こういう場作りをテクノロジーで解決したいと考えています」と語る。

同社は「日本を芸術文化大国にする」というミッションを掲げており、これまでもこのミッションに共感したエンジェル投資家などからの出資を受けていた。具体的には、谷家衛氏、小泉文明氏(メルカリ会長)、田川欣哉氏(Takram代表)、渡邉康太郎氏、嶽澤奏子氏、遠山正道氏(スマイルズ代表)、森住理海氏、中川綾太郎氏(newn代表)などの個人投資家だ。そのほか、クリエイターのエージェント業務を手掛けるコルク、ウェブサイトの制作やマーケティングなどを手掛けるRIDE MEDIA&DESIGN、金融関係のスクール事業を展開する日本ファイナンシャルアカデミーなどの事業会社も出資者に名を連ねる。

今回、グロービスからの資金調達はベンチャーキャピタルを株主に加えるという同社としては初の試みとなる。同社によると「成長フェーズに差し掛かるにあたっては実績とリソースが豊富なベンチャーキャピタルの支援が必要であると考えた」とのこと。

一般的にベンチャーキャピタルからの出資を受けると、ユーザー拡大や認知度向上などマネタイズに向けた動きを早める必要があるが、杉山氏は「オンラインコミュニティのニーズや、活用事例はますます増えている状況です。そのスピード感に合わせて、あと数年で一気にオンラインコミュニティの立ち上げを支援していく必要があると考えました。そこで、時間的な制約である『締切』を作ったほうがより実現に近づくと考え、あえてVCに入っていただく決意をしました」と語る。

そのうえでグロービスからの出資を受け入れた理由として「オシロが掲げる『日本を芸術文化大国に』というミッションの実現について深い理解を示していただき、一緒に歩んでいけると確認し合うことができたので、株主としての参加をお願いしました」と続ける。資金提供の以外では「編集者という役割、サービスを昇華するために伴走してくれるところに期待しています。月に数回ミーティングを行い、サービスはもちろに経営について対話し、ベストな道を探るパートナーとしての役割を期待しています」とのこと。

くらしのマーケットが総額40億円を調達、ゼンリンデータコムとの連携も

くらしのマーケット」を運営するみんなのマーケットは1月21日、総額40億円の資金調達を発表した。第三者割当増資と融資(デットファイナンス)による調達で、第三者割当増資の引受先はシリーズAラウンドからのリード投資先であるニッセイ・キャピタルのほか、新たにグロービス・キャピタル・パートナーズ、ソニー、大和証券グループの大和キャピタル・ホールディングスが運営するInnovation Growth Ventures、ゼンリンデータコムが加わっている。これに日本政策金融公庫からの融資を加えて総額40億円となる。調達資金の割合は非公開。

くらしのマーケットは、エアコンや洗濯機、換気扇などの清掃、引っ越し、家事代行、遺品整理などのサービスを個人からネット経由で直接プロに頼めるスキルシェアのマーケットプレイス。サービス開始は2011年で、最近ではテレビCMも放映されているので知っている読者も多いことだろう。2019年12月末時点における累計出店登録店舗数は3万3000店超となっている。

今回調達した資金は、くらしのマーケットの認知向上、プロダクト開発、関連スタートアップへの投資、人材の採用と教育に当てるとのこと。

また同社は、第三者割当増資の引受先として名を連ねている、位置情報サービスを提供するゼンリンデータコムとの業務提携も発表。高精度な地図データや位置情報サービスなどをくらしのマーケットに参加する出店者やユーザーに向けに活用していく計画だ。

スマートニュースが総額100億円調達、米国事業を加速

スマートニュースは11月19日、8月5日に公表した31億円と合わせて総額100億円の資金調達を発表した。調達方法は、日本郵政キャピタルおよびACA Investmentsをリード投資家とした第三者割当増資で、グロービス・キャピタル・パートナーズ 、電通、デジタル・アドバタイジング・コンソーシアムなどが引受先として名を連ねる。

アグリメディアが4.5億円調達、シェア畑とあぐりナビの拡充・収益化を目指す

アグリメディアは11月1日、第三者割当増資により10月31日付けで総額4億5000万円の資金調達を実施したことを明らかにした。引き受け先は、既存株主のグロービス・キャピタル・パートナーズ、REAPRA VENTURESのほか、新たに地域創生ソリューションが加わっている。内訳は既存株主が4億円、地域創生ソリューションが5000万円となる。

同社は、都市部の遊休農地を活用した「シェア畑」と地方の担い手不足を解消する「あぐりナビ」などのサービスを運営している、2011年4月設立の企業。今回の資金調達により、これら主力2サービスの拡充・収益化と、事業拡大に伴う人材採用と育成などにより経営基盤の強化を図るとのこと。併せて新規事業開発も進める。

シェア畑は、現在首都圏を中心に93カ所で運営。現地に種や苗、肥料、農機具、資材などがすべてそろっており、手ぶらで訪れて野菜作りを体験できるのが特徴だ。菜園アドバイザーから野菜作りについてのレクチャーを受けられるので、素人でも専用区画で年間30種類以上の無農薬栽培の野菜を収穫できるとのこと。

あぐりナビは、農業、酪農、牧場を中心とした求人サイト。就農希望者には希望者はキャリアアドバイザーのサポートが受けられるのが特徴だ。サービス開始5年で登累計録会員が5万人を突破しており、取引農家は北海道から九州まで計4200件を超えている(2019年9月時点)。会員のうち30代以下が約7割で、実際に新規雇用就農者(農家に従業員として勤務する人)の約4分の1が「あぐりナビ」経由で就農しているそうだ。さらに、農業への外国人の受け入れをサポートするサービスも展開している。

同社ではこれら2事業のほか、地元農家の新鮮野菜や旬の野菜の収穫体験とバーベキューを楽しめる「ベジQ」や、神奈川県清川村で「道の駅 清川」運営するなど、飲食・流通事業、企業や自治体へのコンサルト事業も手がける。

新たに株主に加わった地域創生ソリューションは、「ALL-JAPAN観光立国ファンド」を通じてホテルなどの宿泊施設から観光産業に関連するスタートアップ、地場伝統産業まで幅広い分野に投資している。アグリメディアは地域創生ソリューションから出資を受けるだけでなく、地域創生ソリューションのネットワークを生かして農業関連企業などとの協業を検討していくとのこと。

調剤薬局向けクラウド「Musubi」開発のカケハシが26億円調達、伊藤忠やアフラックが株主に加わる

カケハシは10月31日、シリーズBラウンドで第三者割当増資による26億円の資金調達を発表した。引き受け先は既存株主のDNX Venturesやグロービス・キャピタル・パートナーズのほか、新たに伊藤忠商事、電通ベンチャーズ、アフラック・イノベーション・パートナーズ、みずほキャピタルが加わった。今回の資金調達により累計調達額は約37億円となる。そのほか既存の引き受け先は以下のとおり。

  • STRIVE
  • 伊藤忠テクノロジーベンチャーズ
  • 千葉道場2号投資事業有限責任組合
  • Coral Capital(旧500 Startups Japan)
  • SMBCベンチャーキャピタル

カケハシは、調剤薬局向けのクラウドシステム「Musubi」を開発している2016年3月設立のスタートアップ。患者の疾患や年齢、性別、アレルギー、生活習慣、検査値などのデータを基に最適化した服薬指導をサポートする。季節に応じた対応や、過去の処方や薬歴などを参照した指導内容の提示も可能だ。データを入力していくことで各種情報が蓄積され、より高い精度で患者に最適な服薬指導やアドバイスを自動提案してくれる。

Musubiはタブレットを使用するサービスで、服薬指導中に患者と薬剤師が一緒に画面を見ながら、話した内容をタップするだけで薬歴の下書きを自動生成できるのも特徴だ。調剤薬局といえば、医師から出された処方箋を手渡して薬をもらうだけの場所になりがち。通常は「(処方された薬を)ジェネリック医薬品に切り替えますか」「お薬手帳を持っていますか?」ぐらいの会話しか発生しない。

こういった環境にMusubiを導入することで「かかりつけ薬局」としての存在感が増すという。患者にとっては、診察を受ける医療機関はさまざまでも、薬を受け取る調剤薬局を1つに決めておくことで薬歴が集約されるので、調剤薬局で市販薬を購入する際の服薬指導やアドバイスの精度も増すはずだ。小児科や皮膚科などは平日でも混み合っていることが多く待ち時間が長い。深刻な症状を除けば、調剤薬局に相談して解決というケースも増えるだろう。

カケハシによると、今回調達した資金のうちの大半は、Musubi事業の拡大と新規事業の創出に必要な人材に投資するとのこと。同社は2019年2月に大阪に拠点を開設するなど首都圏以外での事業展開を進めている最中だ。

“PriceTech”の空にグロービスが出資、ラウンド全体で3億円を調達

写真左:グロービス・キャピタル・パートナーズ 渡邉佑規氏、右:空代表取締役 松村大貴氏

ホテルの料金設定サービス「MagicPrice」を提供するは9月4日、グロービス・キャピタル・パートナーズ(GCP)からの資金調達実施を発表した。今年5月に発表されたUB Venturesからの調達と今回の調達を合わせ、ラウンド全体では約3億円の調達となる。

顧客コミュニティ醸成で改善進むMagicPrice

TechCrunch Tokyo 2017の「スタートアップバトル」で最優秀賞を獲得した空。「世界中の価格を最適化する」というミッションを掲げる同社は、ホテル向けプライシングサービス「MagicPrice」を提供している。客室料金を検討する際に必要な予約状況などのデータを自動収集・分析し、AIが適切な販売料金を提案するMagicPriceは、ホテルの担当者が簡単な操作で客室料金設定ができ、旅行予約サイトへの料金反映も自動で行える。

2018年12月に、同社が提供していた市場分析サービス「ホテル番付」と名称を統合し、デザインやAIを改善するリニューアルを実施したMagicPrice。7月に東急ホテルズ所属の那覇東急REIホテルへの導入が決まるなど、各社・各地のホテルで順調に導入が進んでおり、顧客数は直近1年間で約5倍に伸びているという。

「顧客増に加え、カスタマーサクセスチームが中心になって、コミュニティを形成しながらホテル収益をどう高めていくかを学び合うなど、MagicPriceの使い方だけでなく、ホテル業界としていかに前に進んでいくかを語り合うような関係性になっている」(空代表取締役の松村大貴氏)

コミュニティの醸成により「より多くの顧客の声を集めることができるようになった」と松村氏は述べ、「開発チームもそれを聞いてプロダクトを改良する、というよい循環が生まれている」と話している。

他業界へのプライシングサービス展開もにらみ組織強化へ

GCPからの資金調達を得ることになったきっかけは、5月に出資発表があったUB Venturesの紹介によるものだと松村氏は明かす。GCPはユーザベースへ出資していた経緯もあり、ユーザベースからの高評価が、空へのGCPの出資を後押しした形となる。

「ユーザベースにならいながら、空がSaaS事業を伸ばしていくという点は、グロービスにとって魅力に感じてもらえたのではないか。ユーザベースにはSaaS事業の先生として、事業面や組織づくりなど、さまざまな面で教わることも多い」(松村氏)

今回の調達ラウンドではGCPがリードインベスターとなる。出資はGCP過去最大の400億円規模となる6号ファンドからのものだ。ユニコーン創出を目指す同ファンドから投資を受けたことについて、松村氏は「空がホテル向けのプライシングにとどまらず、“PriceTech”という新しいテーマの事業を創造していることと、価格戦略というどの企業にも共通のテーマを軸に大きな広がりを見せそうだというところに『大きく化けるかもしれない』可能性を感じていただけたのではないか」と語っている。

調達資金については、MagicPrice事業強化のための人材採用とマーケティングに充てるという空。既存プロダクトの強化とともに、プライシング支援サービスを他業界にも展開すべく、「データサイエンティスト、エンジニアや、各業界でクライアントのビジネスパートナーとなれる人材も集めていく」と松村氏は述べている。

今回、資金調達の発表と同時に、社外取締役としてグロービス・キャピタル・パートナーズの渡邉佑規氏を、監査役に空の財務・コーポレートアドバイザーを務めていた堅田航平氏を迎えることも明らかにしており、IPOを見据えた財務面の強化を図る構えだ。グロービスには「経営マネジメントを担うハイレイヤー人材の採用と、今後のファイナンス面でも協力を仰ぐ」と松村氏は話している。

グロービスが過去最大規模の375億円ファンド設立へ、投資戦略「First to Last」で最大50億円を1社に投資

グロービス・キャピタル・パートナーズの代表パートナーを務める今野穣氏(写真左)と同じく代表パートナーの高宮慎一氏(写真右)。

ベンチャー・キャピタル事業を行うグロービス・キャピタル・パートナーズ(以下、GCP)は4月16日、同社にとって過去最大となる約360億円を調達して第6号ファンドを設立したと発表した。同ファンドの最終クローズは2019年6月末を予定しており、最終的なファンド総額は375億円へとなる予定だ。第6号ファンドへの主な出資者は以下の通り。

  • ジャパンビンテージファンド2019
  • 日本政策投資銀行
  • 中小企業基盤整備機構
  • 東京海上アセットマネジメント
  • 損害保険ジャパン日本興亜
  • 三井住友銀行
  • 横浜銀行

GCPは1996年に5億4000万円の1号ファンドを設立後、これまでにメルカリ、グリー、ユーザーベース、アカツキなど日本を代表するスタートアップを輩出してきた。ファンド規模だけでみると、1999年に設立した第2号ファンドの約200億円が最大だったが、今回それを大きく上回る規模で新ファンドを立ち上げた。

ファンド規模の拡大について、GCPは「本質的な新市場創造および既存業界の変革を実現するためには、ユニコーンと言われる規模のスタートアップを継続的に生み出す必要・使命がある。しかし、ユニコーンを輩出するには、当該企業の資本効率を考慮したとしても、累計100億円程度の外部資本調達が必要になる」とコメント。そのため、同社は第6号ファンドの投資戦略として「First to Last」を掲げ、スタートアップのシード後期からプレIPOまでの資金調達をリードインベスターとしてサポートする。そして、GCPから上記の「累計100億円程度」の約半分となる50億円を一社に投資できる余力を整えた。

GCPが第6号ファンドの投資先として注目するのは、ITにより変革が期待される次なる新しい領域「Next Internet」と、AI、IoT、ブロックチェーンなどインターネットの次を担う新しい技術領域「Beyond Internet」の2つ。前者のNext Internetの例として挙げられるのが、GCPが2018年3月に出資した建設業界向けのクラウド型施工管理アプリを提供するオクト。これが第6号ファンドにとって第1号案件となっている。