社内ツールを作るためのノーコードプラットホーム「Snapboard」

ノーコードツールがこのところ好調で、Y Combinator出身のSnapboardもその波に乗ろうとしている。SnapboardはCalum Moore(カルム・ムーア)氏が単独の創業者として作ったプロダクトで、同氏の1年間毎週1つのプロダクトを作るという個人的チャレンジの産物だ。2週目に同氏は、作らなければならないアプリやサービスの数だけでなく、ソーシャルメディアにポストすべきプロダクトに関する記事の本数も大変であることを悟った。

そこでムーア氏は「それらすべてのアプリとツールの開発を1つのダッシュボードから管理したい」と考え、Snapboardを作った。

Snapboardを使えば、ユーザーはさまざまなアプリとプラットホームを1つのカスタマイズ可能なダッシュボードでリンクし管理できる。Snapboardの名のとおりユーザーは社内的に使うツールになるボードを手早く作るが、そのときプロダクトやエンジニアリングのチームが社内プロジェクトとして関わってこない。ムーア氏はそれを「すべてのデータがすでにそこにあるAirtableだ」と説明する。

Snapboardのプラットホーム上では、ShopifyやDropbox、Google Analytics、MailChimp、MongoDB、MySQL、Trello、Zendeskなど、50以上のアプリを利用できる。ムーア氏は、アプリを新たに統合してSnapboardに載せることをいちいち気にしないし心配もしない。スタートアップやテクノロジー企業が使う人気ツールには、ほとんどどれにもAPIがあるからだ。

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このプラットホームのユースケースは数え切れないほどあり、便利であるだけでなくそれらを実装するのも大変だ。ムーア氏が挙げた例の中には、個々の顧客1人ひとりのボードを作る、MailChimpが送ってきたメールにStripeのデータを結びつけて動作をターゲットしてみる、といったものがある。

そして、このプラットホームの柔軟性はほとんど何でもできるところにある。ただし、何をどうしたいのか事前によく理解する必要がある。曖昧なものや、あまりにも多くの使い方があるものは、難しいだろう。同氏によると、重要なのはSnapboard用のテンプレートライブラリを素早く作ること。それによって新しいユーザーにいろんなインスピレーションのネタを与えることだ。

Snapboardは無料でも使えるが、1人あたり月額10ドルで高度な機能もある。今、登録ユーザー数は3000で、WAU(週のアクティブユーザー)は230人程度だ。「ターゲットはもっぱらテクノロジー企業だが、Snapboardの社内ツール作成プラットホームは他の業界にも用途はある」と彼は見ている。

数え切れないほど多くの使い方のあるプラットホームに、目的に応じた正しいメッセージを送るのは、決して容易ではない。それだけでなくムーア氏が気づいているのは、現状のUXがあまりよくないことだ。

同氏は「デベロッパーにしかできないことを素材にして、万人向けのツールを作ろうとしてきた。デベロッパーにプラットホームを与えれば、黙っていてもそれを使いこなせる。自分なりに、それを使えるようになる。しかしテクノロジーに疎い人びとは、もっとわかりやすくて使いやすいものを求める。でも、今やろうとしているのは、技術的な体験を技術系でない人びとに届けることだ」と語る。

SnapboardはY Combinatorから15万ドル(約1566万円)を調達しており、3月16日から始まるデモデーに登場する。

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(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

インテルチップに新たな欠陥、攻撃者がセキュア領域にデータを忍び込ませることが可能に

Intel(インテル)チップに新しく見つかった欠陥 は、攻撃者がシステムを通過する特権情報を見ることを可能にするだけでなく、新しいデータを挿入することさえ可能にする恐れがある。この欠陥は、普通のユーザーが心配する必要のあるものではないが、情報のセキュリティに対する脅威といういう意味では時代の象徴だ。

読者はおそらくMeltdownやSpectre、そしてHeartbleedという驚異はご存知だと思うが、今回の脅威に与えられているのはそれよりは控えめなLoad Value Injection(LVI)と言う名前だ。この欠陥は、BitDefenderならびに、Van Bulck(バン・バルク)氏が率いる複数の大学が参加するあるグループが、それぞれ独自に発見したものだ。

欠陥の正確な技術的詳細は、普通のユーザーには理解できないものだし、自分たちで修正できるようなものでもない。ただし以下のことは知っておくべきだ。LVIとは最新のコンピューティングアーキテクチャで使用される「投機的実行」(Speculative Execution)と呼ばれる手法に関連する、一般的な欠陥の1つなのだ。

関連記事:スペクター!メルトダウン!カーネル・パニック!、今回の脆弱性はほぼ全員に影響が及ぶ

投機的実行というのは、誰かが黒板に数学の問題をかなりゆっくり書き始めた際に、それが解かれる可能性のある10種類の方向に先回りして、その問題を解いてしまうやり方に少し似ている。こうすることで、教師が黒板に問題を書き終えたときには、既に答が求まっているというわけだ。予想が外れたほかの解答は捨ててしまえばいい。プロセッサーもこれと似たようなことをやっている。もちろんはるかに複雑で統制された方法を行っているが、予備サイクルを用いて様々な計算を投機的に実行するのだ。

最近示されてきたのは、最深部のコードを注意深くチップの突いてやることで、普通なら極めて高度に保護され暗号化されたデータを吐き出させることができるという意味でこのやり方は安全性が低いということ。MeltdownとSpectreの場合は、漏洩を強制してデータを収集するようなものだったが、LVIはさらに一歩踏み込み、攻撃者がプロセス中に新しい値を埋め込むことを可能にし、結果に干渉したり、結果を制御したりすることさえできるようにする。

さらに悪いことに、これは安全であることを信頼できる難攻不落のサブシステムであるはずの「SGX Enclave」の内部で行われる。ただし、はっきりさせておきたいのは、まだ任意のコードが実行できるという段階ではないということ。安全だと思われているこのチャネルを操作するための、新しく効果的な手法なのだ。ここでは、それをよりはっきりと説明するため内容を更新している。

さて、これらのプロセスは、コンピューターの多くのコードと実行の階層の、非常に奥深い場所にあるため、何のために使えるのか、または使えないのかを言うことはできない。だがこの、攻撃者が特定の安全な値を独自のものに置き換えることができるという性質により、全体が危険にさらされていると想定すべきだ。

名前はそれほどキャッチーではないが、既にクールなロゴを持っている

もちろん緩和策はあるものの、それらはチップのパフォーマンスに深刻な影響を与える可能性がある。にもかかわらず、それらの緩和策は欠陥を抱えるチップ上に導入される必要がある。それには昨年より前に出荷されたほとんどの新しいインテルチップが関係している。

インテル自体はこの問題を非常によく認識しており、実際LVIとそれが可能にするさまざまな特定の攻撃方法に関する30ページの技術概要を公開している。ただし、最初に注意しておかなければならないが、これは世の中に大規模に展開されるようなものではない。

「LVIメソッドを思いどおりに実装するには、多数の複雑な要件を満たす必要があるため、LVIは実世界では実際的な脅威ではない」と上記技術概要の中には記されている。

そして、それこそが普通のユーザーが心配する必要がない理由なのだ。単純な真理は、おそらく普通のユーザーはこの攻撃の理想的なターゲットではないということだ。データを引き出すのは容易ではないうえに、個人ユーザーのデータは従来の手段(フィッシングなど)やデータセンターレベルで一括してデータを収集する方が得策だからだ。そこで重要なのは、個人ができるだけ早く自分のPCをアップデートすることではなく、何百万台ものサーバーを所有して運用している会社がアップデートを行うことだ。

ただし、その場合でも、一般に公開されていないシステムに対して攻撃者がアクセスすることはほぼ不可能であり、たとえ攻撃を行えたとしても価値のあるデータを取り出すことは難しいだろう。従って対処の優先度を最終的に決めるのはそれらの企業次第であり、その後、LVIやそれに類する欠陥を持たない将来のチップやアーキテクチャを設計するかどうかは、インテルのようなチップメーカー次第である。もちろん、これらのシステムの複雑さを考えると、そうした設計を行うのはかなり困難ではあるものの実際に存在しているものではあるのだ。

LVIの詳細については、その内容の文書化を行うために用意されたサイトを参照してほしい。あるいは単に、欠陥を特定した研究チームがまとめた、滑稽な「予告編動画」を見ることもできる。

関連記事:供給電圧を変化させてプロセッサを攻撃する新ハッキング手法「プランダーボルト」が発見される

画像クレジット: Getty Images

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(翻訳:sako)

ニューヨークオートショーが新型コロナ懸念で8月に開催延期

2020 New York International Auto Show(ニューヨーク国際オートショー2020)は、新型コロナウイルス(COVID-19)感染拡大のため開催が8月に延期される。広域ニューヨーク自動車ディーラー連盟が主催するニューヨークオートショーは、ニューヨーク市のJacob K. Javits Convention Center(ジェイコブ・ジャビッツ・コンベンションセンター)で4月10日に始まる予定だった。

広報担当のChris Sam(クリス・サム)氏の発表によると、ショーは8月28日〜9月6日に開催される。報道機関向け発表日は8月26、27日だ。「出席者や出展者、そしてすべての参加者をコロナウイルスから守るために異例の措置を取った」とディーラー連盟会長のMark Schienberg(マーク・シェンベルク)氏は電子メールによる声明文で述べた。「120年もの間、『ショーの継続』は我々のDNAに深く刻まれてきた。ショーの開催延期は難しい決断だったが、我々の最優先事項はこの歴史あるイベントに関わるすべての人の健康だ。すでに多くの出展者やパートナーと連絡を取っており、新しい日程で開催される今年のショーは成功すると確信している」とシェンベルク氏は語った。

電気自動車スタートアップのLucid Motors(ルシード・モータース)、そしてFordやGMといった大手OEMなど、多くの自動車メーカーがこのショーで車をデビューさせようと計画していた。新型コロナウイルスのためにキャンセルされたり延期となったイベントがこのところ相次いでいて、ニューヨークオートショーもこのリストに加わる。新型コロナウイルスは過去に流行したSARS(重症急性呼吸器症候群)やMERS(中東呼吸器症候群)のウイルスに近いもので、政府や企業は世界中でテックやビジネス、自動車関連イベントなどをキャンセルしている。

キャデラックも3月9日、ロサンゼルスで来月開催する予定だったスペシャルイベントでの電気自動車の発表を中止することを明らかにした。ジュネーブ国際モーターショーや、バルセロナのMWC(モバイル・ワールド・コングレス)、テキサス州オースティンのSXSWフェスティバルも中止された。

画像クレジット:Mercedes-Benz

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(翻訳:Mizoguchi

ECサイトのSEOにおいて、情報提供型コンテンツが持つ真の価値とは?

全てのWebサイトには目的があり、ECサイトの場合は「商品を売ること」が目的となるでしょう。

そのため、ユーザーに情報を提供するようなページは、ECサイトの最大の目的とは直接関係していないと考えることもできます。

もちろん、ユーザー体験等を考えるとそうした情報提供のページは必要だと思われますが、「購買を目的としたキーワードでの上位表示にどれだけ寄与しているか」を証明するのは困難です。

以前、Web担当者フォーラムでも紹介されましたが(※)、実際に起こったケースを解説してくれている、Search Engine Landの記事を紹介いたします。
【悲劇】CV貢献してない記事ページを整理 → ECサイト全体の売上が減少【ありがち】【SEO情報まとめ】

データによると、情報提供型のコンテンツは、商業的な検索意図のある検索キーワードの順位にも良い影響を与える。

ECサイトのSEOにおける、情報提供型のコンテンツの真の価値を計ることは難しい。情報提供型のコンテンツは他のWebサイトからの自然リンクの獲得に寄与すると考えるコンテンツマーケターやSEO担当者がいる。そうしたリンクはオンラインショップ全体のSEOパフォーマンスの改善の助けとなると思われる。

しかし、全体のSEOパフォーマンスに貢献したのは、情報提供型のコンテンツなのか、他の施策や開発によるものなのか、どのように区別すればよいだろうか。

そこで、この記事では、情報提供型のコンテンツが商業目的のページの順位上昇に寄与し、売上増に貢献するという考えを紹介したいと思う。

背景:SEOの戦略とパフォーマンス

今回のケーススタディで用いたECサイトは2011年にローンチされたが、SEOの戦略が最後に実施されたのは2017年のみであった。状況をまとめると、下記となる。

テクニカルSEO

  • Webサイトのコンテンツ(60,000の商品ページ、80のカテゴリページ)は検索エンジンによってクロールされ、インデックスされている
  • ユーザーと検索エンジンの両方に対し、ページスピードを上昇させることに非常に注力している

コンテンツ

  • 既存の情報提供型のコンテンツを整理し、新規のコンテンツを追加している
  • 情報提供型のコンテンツから、関連性のある内部リンクを、カテゴリページに貼っている

積極的なリンク構築の施策は行われていない。現在の被リンクの全ては、他のマーケティング施策やパートナーシップの副産物、ユーザーによって自然に貼られたリンクである。

これらのアプローチは、直近2年半に渡り、ビジネス上の大きな結果をもたらしている。SEOの戦略を実施して以降、Sistrixで計測されたGoogleの検索結果におけるビジビリティは大きく増加している。2018年の夏に起こったメディック・アップデートにより減少したが、2019年3月のコアアップデートで回復している。

ビジビリティの増加は、売上の増加を導いている。自然検索経由での売上は、SEO戦略が実施される1年前の2016年は359,000ユーロ(約4,260万円)であったが、2019年には914,000ユーロ(約1億800万円)へと増加している。

自然検索のトラフィックからの収益はGoogle Analyticsで計測している。また、カスタム属性を用い、売上が発生した直前のインタラクションだけでなく、それ以前のインタラクションの要素も算出されている。

同様の属性を使用し、ランディングページの内、どのタイプのページが、自然検索経由で発生している売上に貢献しているかも算出している。2019年、情報提供型のコンテンツは、SEO収益のたった2.36%に値するトラフィックしか生んでいない。

情報提供型のコンテンツが素晴らしいパフォーマンスを見せた領域は、被リンクの獲得である。他のドメインからのリンクを最も獲得した10ページのうち、5ページが情報提供型のコンテンツ、4ページがカテゴリページ、1ページがトップページであった。

こうしたデータを確認しても、情報提供型のコンテンツがSEO全体のパフォーマンスにおいて、どのような役割を果たしていたかを理解することは難しい。また、売上に対する直接の貢献は低い。

しかし、十分な量の被リンクを獲得している。こうした被リンクは、商業目的のページの順位上昇と、自然検索経由での売上増加に寄与しているのだろうか。

全ての情報提供型のコンテンツのページを削除する

2019年後半、重大な経営判断がこの会社を大きく変化させた。

近年の素晴らしいパフォーマンスにもかかわらず、このショップは大きな組織内では相対的に小さなプレイヤーに過ぎなかった。

この会社は、このショップの競合相手となるサイトを保持している、より大きな企業に属している。経費削減を目的とし、このショップはより大きな競合サイトによって運営されることになった。

新しいオーナーはショップ全体を自身のシステムにリプレイスすることを計画し、ドメイン名とロゴのみを現状のままにしようとした。過去数年で作成した情報提供型のコンテンツを使用する予定が無いことは明らかだった。

そのため、このショップを運営している現在の会社は、こうしたコンテンツを削除し、将来の別のプロジェクトのために保管することを決意した。

約25の情報提供型のコンテンツが削除され、トップページへとリダイレクトされた。このリダイレクトは、トップページの順位上昇を目的とした措置ではなかった。404や410の設定ではなく、リダイレクトを選択したことは、悲観的な状況の中で下された選択であり、特別な理由はなかった。

情報提供型のコンテンツを削除したこと以外の変化はなく、数週間が経過した。

Webサイトのランキングへの影響

情報提供型のコンテンツが削除された後の最初の数日間は、Googleの評価は特に変わりはなかった。

そのショップのトップページへとリダイレクトされているのにもかかわらず、削除されたページのいくつかは、順位を維持していた。これは、Googleがすぐにクロールをしなかったからかもしれない。

Googleがサイトの変更を検知し、ランキングへと反映させる処理を行うのには多少の時間がかかる。

コンテンツが削除された10日後、かつて情報提供型のコンテンツを含んでいたディレクトリページの全ての順位が完全に失われた。

上記のスクリーンショットにあるデイリーのビジビリティの推移は、この下落を完全に反映していない可能性を考慮してほしい。

Sistrixはデイリーのビジビリティを計測しているが、彼らのデータベース内にある何百万ものキーワードの検索結果を毎日スクレイプしているわけではない。そのため、ランキングの変化は、それが発生した数日後にビジビリティのグラフに反映されることもある。

興味深いことに、このドメインのビジビリティ全体が大きく減少し、それは、削除されたディレクトリが失ったビジビリティよりも大きいものだった。

情報提供型のコンテンツの削除から3週間以内に、そのショップはビジビリティの約1/3を失った。削除されたコンテンツは、かつて、ドメイン全体のビジビリティの約1%しか占めていなかったのにもかかわらずだ。

トップページといくつかのカテゴリページは、検索ボリュームの大きい商業検索意図のあるキーワードで、1ページ目表示の多くを失った。下記のスクリーンショットは、情報提供型のコンテンツが削除された後に失われた、最も重要なランキングの変化を表している。

このショップはサングラスを販売しておらず、英語のサイトでもない。上記のスクリーンショットのキーワードとURLは実際のものとは異なっており、これは、そのショップの特定を避けるための措置である。しかし、検索意図には差異がなく、スクリーンショットに記載されている他の数字(検索ボリューム、CPC、順位など)は実際の数字である。

トップページとカテゴリページの順位下落とビジビリティの減少は、情報提供型のコンテンツの削除に起因しているのだろうか。もしそうだとしたら、どのように関連しているのだろうか。

順位下落の可能性となる理由

情報提供型のコンテンツの削除の後、トップページとカテゴリページの順位が下落した理由として、最も説得力のある理由がリンクである。前述のとおり、削除された情報提供型のコンテンツは、十分な量のリンクを獲得していた。

それらのコンテンツには、関連性のある内部リンクがトップページとカテゴリページに向けて貼られており、情報提供型のコンテンツに向けて貼られた他サイトからのリンクの関連性を渡し、商業的な検索意図のある検索での優位性を与えていたかもしれない。

情報提供型のコンテンツの削除後、そのコンテンツへ貼られていた他サイトからのリンクは、その関連性をすべて失った。加えて、情報提供型のコンテンツから他のページへと貼られていた内部リンクの関連性も、完全に失われている。

しかし、順位下落に影響を与える要素は複数あり、まだ考慮できていない要素もあるかもしれない。

情報提供型のコンテンツのURLはトップページへとリダイレクトされている。その結果、情報提供型のコンテンツに向けて貼られていたリンクの関連性をリダイレクト先のページへ渡せなくなっているかもしれない。

なぜなら、削除されたページは、リダイレクト先のページとコンテンツの内容がまるで異なるからだ。関連性の低いページへリダイレクトされている場合、「ソフト404」としてみなされる可能性があることを、Googleも認めている。
(参考:Proof That 301 Redirects To Less-Relevant Pages Are Seen As Soft 404s To Google [Case Study]

では、トップページへのリダイレクトではなく、情報提供型のコンテンツが404や410を返していた場合、状況は変わっていたのだろうか。

関連性の低いページへのリダイレクトによって生じた「ソフト404」と比べ、404や410を返すページへのバックリンクは、関連性の喪失という意味では少ないのだろうか。

今回の場合、トップページへのリダイレクトと404や410を返す処置の間に差異はないはずだ。関連性を残す唯一の方法は、削除されたページから同様のコンテンツのページへのリダイレクトを設置することであるが、今回の場合、その選択肢はなかった。

今回のケースを、ドメイン全体のトピックの関連性、最近流行りの言葉で言えば「E-A-T」の考えと結びつけたいという誘惑に駆られる。

被リンクや、商業目的のページに関連性を渡す内部リンクということ以上に、情報提供型のコンテンツ自体に価値があると主張する者もいるだろう。こうした考えを捨て去るべきではないが、漠然とした内容であり、証明が困難である。

他の要素としては、Webサイトのランキングに影響を与える可能性がある外的な要因だろう。情報提供型のコンテンツの削除後にランキングが変動したことは偶然であり、直接的な要因でないかもしれない。ランキングが変化した場合、Googleのアルゴリズムの変更を要因から完全に除外することは、いつだって難しい。

次のセクションでは、今回のランキングの変化が偶然の一致ではなく、情報提供型のコンテンツの削除と関連しているという考えを支持する要素について論じたいと思う。

コンテンツを復活させたことによる回復

情報提供型のコンテンツを削除した3週間後、このWebサイトはまだ該当の会社のコントロール下にあったため、全てのコンテンツを一時的に復活させることにした。

この判断は、SEOの研究を目的として下されており、順位の変化が情報提供型のコンテンツの削除に関連しているのかを確かめるためであった。

また、新しいオーナーが情報提供型のコンテンツに対する考えを変えなかったとしても、可能な限り最高の状態で譲渡したいという思いがあった。

下記のスクリーンショットは、Sistrixのデイリーのビジビリティのグラフである。情報提供型のコンテンツを復活させた後、Google検索でのビジビリティがどのように推移したかを表している。

情報提供型のコンテンツを復活させてから3週間後、Webサイト全体のビジビリティは完全に回復し、削除前と同程度の水準となった。トップページやカテゴリページは、商業検索意図のあるキーワードでの上位表示を、情報提供型のコンテンツの削除以前の水準で、再び獲得した。

多少の差異はあったが、6週間という周期を考えると妥当な範囲であり、通常の変動や季節要因によるものと思われる。

今回のケースから我々が学べること

今回のケースから得られる主要な知見は、「トップページやカテゴリページが商業検索意図のあるクエリでの順位を改善するために、情報提供型のコンテンツが助けとなっていることをデータが強力に示している」ということである。

正確な要素を適切に判断することは不明なままであるが、商業ページのSEOのパフォーマンス改善にとって、他のドメインから情報提供型のコンテンツへ貼られている外部リンクと、情報提供型のコンテンツから商業目的のページへ貼られている内部リンクが、非常に大きな役割を果たしていると言えそうだ。

まとめ

・該当のECサイトは、60,000の商品ページ、80のカテゴリページ、25の情報提供型のコンテンツがある。全ての情報提供型のコンテンツは削除され、トップページへとリダイレクトされている。

・削除される前は、情報提供型のコンテンツの自然検索からのトラフィックは2.36%であったが、ドメイン全体の被リンクの内、大きな割合を占めていた。

・情報提供型のコンテンツを削除した後、トップページとカテゴリページの商業検索意図のあるキーワードでの順位が下落したため、このサイト全体のビジビリティの1/3が失われた。

・順位の下落がコンテンツの削除と関連があるかどうかを調べるため、削除から3週間後に、該当のコンテンツを復活させた。

・3週間後、ドメイン全体のビジビリティは完全に回復し、トップページとカテゴリページの商業検索意図のあるキーワードでの順位も回復した。

・情報提供型のコンテンツが、トップページとカテゴリページの商業検索意図のあるキーワードでの順位改善の助けとなっていることを、データは指し示している。

・他のドメインから情報提供型のコンテンツへのリンク、また、情報提供型のコンテンツから商業目的のページへの内部リンクの存在が、今回の状況の説明として最も適切であると考えられる。

この記事は、Search Engine Landに掲載された「Case study: The true value of informational content for e-commerce SEO」を翻訳した内容です。

感想としては、「やはりそうだろうな」と思いました。

しかし、実際にやってみてどうなるか、なぜそのような事が起こるのか、という説明は非常に難しいとも思いました。自分のサイトではなかなか実証することが難しいため、こうしたケースの紹介は非常に助かりますね。

もちろん、Googleからの公式な情報ではないため、完全に正しいという証明も難しいです。とはいえ、ユーザー検索意図を満たすために、広いアプローチでコンテンツを作ることは今後も取り組むべきだと改めて感じさせられる記事でした。

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企業間のデータ共有を図るBackboneAIが約5億円を調達

米国時間3月10日、アーリーステージのスタートアップのBackboneAIが470万ドル(約5億円)のシード資金を調達したと発表した。同社は、大量のデータ、特にさまざまな外部ソースから取得するデータを扱う企業の支援を目指している。

このラウンドを主導したのはFika Venturesで、ほかにBoldstart Ventures、Dynamo Ventures、GGV Capital、MetaProp、Spider VCと、匿名の複数の投資家も参加した。

BackboneAIの創業者のRob Bailey(ロブ・ベイリー)氏は、これまでのキャリアにおいていくつかの組織でデータのフローをたくさん見てきたという。組織間のデータの移動には課題がまだまだたくさんあり、BackboneAIはそれを解決しようとしている。同氏は「BackboneAIは、社内、そして企業間のデータのフローを自動化するためのAIプラットフォームだ」と述べた。

大規模で複雑なデータカタログを最新の状態に維持することから、建築資材企業間の入り組んだフローを調整すること、あるいはエンターテインメント業界のコンテンツの権利管理まで、利用場面は多岐にわたると考えられる。

ベイリー氏は、1年半にわたってさまざまな企業と話をしてから、プロダクトを構築したという。「我々が話をした企業はいずれも、あらゆるアプリから、そして連携している外部の企業からもたらされるおびただしい量のデータについて、何かしら懸念していた」(ベイリー氏)。

BackboneAIのプラットフォームは、こうした多くの問題の解決を目指している。まずは、納入業者、顧客、監督機関といった他者からのデータの取得を自動化する。その後、データを取り込み、最後に外部ソースからのデータを自社のERPシステムにマッピングするといった多くの処理を実行する。

ベイリー氏は、数十の部門で100万種類もの品目を扱う工業用品会社を例に挙げる。手動でも古いシステムでも、追跡管理は難しい。同氏は次のように説明する。「この会社では外部の納入業者から製品のデータを取得し、その情報を自社の製品カタログで処理し、最終的に製品データを膨大な数の顧客に提示する。このデータ処理はきわめて大規模で困難だ。とてつもない数の品目と注文を処理し、常にデータを最新の状態にしておかなくてはならないからだ」。

BackboneAIはまだスタートしたばかりだ。2019年はBoldstart Venturesの内部で準備をしていた。現在はニューヨーク市に20人近くの社員がいて、Fortune 500に入っている企業の1社と初めて契約した。さらにあと15社のFortune 500企業との交渉が進行中だとベイリー氏は語る。シード資金で、この最初の取り組みを成功させたい考えだ。

画像:Yuichiro Chino / Getty Images

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(翻訳:Kaori Koyama)

建築家向けプロジェクト管理ソフト開発のMonographが約2億円を調達

米国時間3月10日、建築家がプロジェクトとコストを簡単に管理できるようにするクラウドベースのソフトウェアを手がけるスタートアップのMonographが、190万ドル(約2億円)のシード資金を調達したと発表した。このラウンドを主導したのはHomebrew VenturesとParade Venturesで、Designer Fund、Hustle Fund VC、複数のエンジェル投資家も参加した。

画像:Monograph

2019年にRobert Yuen(ロバート・ユエン)氏、Alex Dixon(アレックス・ディクソン)氏、Moe Amaya(モエ・アマヤ)氏が、サンフランシスコを拠点として同社を創業した。3人がそれぞれ建築、デザイン、ソフトウェア開発の経験を有していることが、建築家に特化した管理プラットフォームの構築に有利に働いている。

Monographは、簡単に使うことができ、特に使いはじめが簡単なソフトウェアを設計した。建築事務所が表計算ソフトなど従来のプロジェクト管理方法から乗り換えるように促すためだ。同社によれば、1人で活動する建築家から60人以上を擁する事務所まで、すでに数百人の建築家と契約しているという。Monographはこれまでに、バスルームやキッチンのリフォームから大型ホテルの建設まで、1億2500万ドル(約130億円)以上のプロジェクトの管理に使われてきた。

  1. Monograph_Projects

  2. Monograph_Project_Tasks

  3. Monograph_Dashboard

Monographの創業以前、3人はDixon & Moeという広告代理店で、テック系スタートアップや建築事務所を対象としたUI/UXコンサルタントとして、ともに働いていた。

ユエン氏はTechCrunchに対し、次のように語った。「Monographは、建築デザイナーとしての毎日の生活や友人たちとの日々の暮らしの中で見てきた問題を解決する製品として、まさにこの代理店から生まれた。仕事にどれほどの時間がかかっているか、プロジェクトの進行状況はどうか、誰がプロジェクトに関わっているのかといった情報が透明でなかった。プロジェクトをきちんと管理できる方法がなく、年々複雑さを増していた」。

PlanGrid、Procore、UpCodesといった建築業界のテック企業と同様に、Monographも設計と建築のプロセスを効率化しつつ、チームがもっと簡単に連携できるようにすることを目指している。

Monographは現在、建築家とコンサルタント向けに設計されており、マイルストーンのアサイン、プロジェクトのタイムラインの管理、タイムシート、請求のツールを備えている。データは後からMoneyGanttのようなコストと進捗の分析に使用し、予算を予測できる。

ユエン氏は、プロジェクトの規模にかかわらずチームには建築家、デザイナー、エンジニアがいると語る。Monographは今年末までに、構造、電気、機械のエンジニアやその他の有資格者も使える新しいバージョンのリリースを開始する計画だ。

同社は調達した資金でソフトウェアエンジニアリングとカスタマーサポートのチームを雇用することにしている。

報道発表の中でHomebrew VenturesのパートナーのSatya Patel(サティア・パテール)氏は「Monographは組織とプロジェクト管理を変革するソフトウェアを提供している。建築家とデザイナーの仕事を変えて、クライアントへのサービスを充実させコストを管理し利益を増やすものだ。我々は、モダンなソリューションを期待してきた市場において同社が成長し革新を続けていくことに期待している」と述べた。

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(翻訳:Kaori Koyama)

Y Combinatorがデモデーを3月16日に1週間前倒し、ビデオプレゼンはなしに

先週、Y Combinatorは「新型コロナウイルスに対する懸念」を理由として、今年冬学期のデモデーをオンライン化すると発表した。 当初、サンフランシスコのピア48ビルで2日間にわたって実施されるはずだったが、3月23日にオンラインでホストされるということだった。

昨夜、さらに予定が変更され、YCはデモデーを1週間前倒しして開催は3月16日(日本時間3月17日)となった。

Y CombinatorのCEOでパートナーのMichael Seibel(マイケル・サイベル)氏の発表によれば、これは「投資家の動きが速まってきた」ことによるものだという。サイベル氏は次のように書いている。

この数日、投資家の多くが起業家への働きかけを加速している。投資決定を行うことが急がれており、Y Combinatorは投資家のこのようなペースに合わせてスケジュールを1週間前倒しすることとした。YC W20イベントはオンラインのデモデーとして3月16日(日本時間3月17日)に開催さる。

3月16日にYC Demo Day Webサイトが公開される。これは投資家と起業家がこれまで5年間利用してきたサイトを改良したバージョンだ。このサイトを通じて投資家はスライド1枚の事業サマリー、簡単なチームの背景、メンバーの略歴を知ることができる。またチームを事業内容や本拠地でソートすることもリスト化してスプレッドシートに出力することもできる。

これまでデモデーでは参加チームがステージ上でプレゼンテーションを行っており、Y Combinatorは当初、このプレゼンを「事前に録画して、すべての投資家に同時に公開される」と述べていた。今回の発表では「事業の概要スライド、チームの背景、略歴」だけになるようだ。スケジュールの前倒しに合わせて内容が修正されたのだろう。

TechCrunnchの取材に対して、Y Combinatorはオンラインのデモデーにはビデオプレゼンテーションは含まれないと確認した。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook

WHOが新型コロナは「パンデミック」と宣言

世界保健機関(WHO)は米国時間3月11日、ジュネーブで会見を開き、新型コロナウイルス(COVID-19)は「パンデミック」だと宣言した。感染者の数が2週間で13倍に急増し、感染者を抱える国の数も3倍になったことを受けてのものだ。

WHOによると、世界114カ国で11万8000人の感染が報告され、死者は4291人となっている。WHO事務局長のTedros Adhanom Ghebreyesus(テドロス・アダノム・ゲブレイェソス)氏は記者会見で、「パンデミックという言葉は軽々しく、あるいは不注意に使うものではない」と指摘したが「各国の当局が感染拡大を緩やかにする時間は残されている」とも付け加えた。WHOのチームには多くの医療専門家がいるが、WHOはこれまで正式な宣言は避けてきた。

WHOはパンデミックを「新しい病気の世界的な流行」と定義している。また「過去にパンデミックを引き起こしたウイルスのほとんどが動物のインフルエンザウイルスに由来する」ともしており、今回の新型コロナウイルスもこれに当てはまるようだ。とりわけ、パンデミックという分類は厳しい症状を引き起こすというより、病気の地理的な広がりの意味合いが強い。

状況は今後さらに悪くなる、というのが当局者の共通する見解だ。新型コロナはすでに世界中の経済活動や日々の暮らしに多大な影響を及ぼしている。米国では、首脳会議の多くが秘密裏に行われ、かなりの批判を招いている。

画像クレジット:FABRICE COFFRINI / Getty Images

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(翻訳:Mizoguchi

市場の荒れ模様は続いているが株価水準は回復、SaaSが遅れる

トランプ大統領の「今年中は給与税をゼロにする」という大盤振る舞いの約束はビジネスにバラ色の楽観的なメガネをかけさせる効果があったようだ。

米国の株式市場は売り一色の惨状から一転して回復基調となった。主要インデックスは引けにかけて軒並み上昇した。昨日の下落を帳消しにするほどの値上がりではなかったが、右肩上がりに慣れていた市場にとっては正常への復帰に近かった。

値動きが平常なときであれば驚くべき上げ幅だが、今日はダウ平均が4.89%、1167.1ドルもアップし、S&P 500は4.94%(135.7ドル)、Nasdaqは4.95%(393.6ドル)とそれぞれ上げた。

ところがBessemer-NasdaqのCloud Indexによると、SaaS・クラウド株は3.1%しか戻していなかった。つまりNasdaq全般のアップに遅れを取っている。SaaS、クラウド関連株の昨日の下落(率)が他カテゴリーよりもよりも大きかったうえに、回復も遅れている。 SaaS・クラウド株はここしばらく新しいソフトウェア企業の代表として株式市場でリーダーを務めてきたが、ここにきて株価の調整が入っているかもしれない。SaaS・クラウドプレミアムは低下する可能性がある。

しかし乱高下は広い範囲で続いており、bitcoinは底を打ち、石油も急上昇した。それでも株式市場は高値までは回復していない。ダウは15%安で、今日回復する前に52週の安値を付けている。 S&Pも最近付けた52週の高値と比べて15%以上ダウンしている。Nasdaqはこれよりわずかに大きくダウンし52週の高値から15.2%安だ。

急落を完全に回復するには本日ぐらいの値上がりがさらに数回必要だ。しかも頭上には次のような暗雲が垂れ込めている。ニューヨーク州ニューロシェルに新型コロナウィルスのために検疫隔離施設が設置された。石油、天然ガス企業の債務はひどいものだ。また政府の救済策も具体性を欠いている。

米国時間3月11日の取引では乱高下が収まり、TechCrunchでも我々(WellcomとShieber)が速報を出すのを止めることができるようになることを期待したい。

ちなみにApple(アップル)とMicrosoft(マイクロソフト)はそれぞれ1兆ドル企業だ。そのためこの大混乱の中でもテクノロジー株は全体としてはほとんど損失を被っていない。ともあれNasdaqは対前年では12.6%上っている。

画像:monsitj / Getty Images

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(翻訳:滑川海彦@Facebook

ウォール街の悲惨な1日はNYダウ2000ドル超安で終わる

少なくとも、市場は引けた。ダウ平均株価が2000ドル超、7.79%下落し2万3850.79ドルで引け、市場は年初の最悪の取引に耐えた。ナスダック総合指数は624.94ドル安の7950.68ドルで取引を終え、S&P 500の下落を受け、朝方の取引は一時停止した。S&P自身は225.81ドル安の2,746.56ドルで引け、7.6%の下落だった。

主要な金融指標が軒並み悪化したことから、株式市場は米国時間3月9日の月曜日に下落することが予想されていた。さらに石油輸出国機構(OPEC)の合意が破棄され、ロシアとサウジアラビアが世界の石油市場に安価な原油を供給することになったため原油価格は下落した。価格競争の結果、原油価格はバレル当たり約30ドル(約3100円)まで下落した。

一方、米国では新型コロナウイルス(COVID-19) の感染拡大をめぐる最新の報道を、市場が吸収しようとしている。ジョンズホプキンス大学がまとめたデータによると感染者数は607人で、米国では感染拡大が続いている。学校は閉鎖され、企業は可能であれば従業員に在宅勤務を奨励しており、ほとんどの人が不必要な出張をキャンセルしている。

石油・ガス会社や航空機メーカーへの打撃は、常にダウに大きな影響を与えてきた。そして今、米国政府では業界救済の可能性についての公開議論が行われている。

この種の話題は米国経済の健全性にとって良い前兆ではないし、一方で同国のサービス産業に大打撃を与えるような恐れでもない。

米連邦準備制度理事会(FRB)は基本的に、米国経済を活気づけるために可能なすべての政策を変更し、株式市場への投資を促すために金利をほぼゼロに引き下げた。

しかしこれらの施策は、いずれもまだ役に立っていないようだ。そしてスタートアップは、世界の他の国々と同じくらい、市場の縮小を恐れる必要がある。金融市場での資金の流れが減っているということは、現実世界での資金調達が減少し、企業が保有する資金の使い方について慎重な意思決定が行われることを反映するからだ。

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(翻訳:塚本直樹Twitter

転職に積極的でない人を見分けて企業を支援する「HireSweet」

いい採用候補者がいると思っても、その人は実は今すぐ転職したいわけではないかもしれない。フランス・パリを拠点とし、Y Combinatorの現在のスタートアップクラスに参加しているHireSweet(ハイヤースイート)は、ぴったりの人材であっても積極的に職を探してはいない人を見分けることで企業を支援しようとしている。

ほかの多くの採用プラットフォームと同様に、HireSweetも最初は評価ツールに取り組んでいた。しかし、企業が直面している問題は実は評価ではなく、適切な候補者の洗い出しだと気づいた。

同社の共同創業者でCEOのRobin Choy(ロビン・チョイ)氏は筆者に対し「そこで我々はバリューチェーンを少し進化させ、エンジニア採用を支援することにした。エンジニアの市場では興味深いことに、多くの人は積極的には仕事を探していない。プログラミングに関するQ&AサイトのStack Overflowの数字によれば、候補者のうち応募後に転職するのは15%で、60%は新しいチャンスに関心はあるものの積極的に仕事を求めてはいない」と述べた。

こうした候補者の採用活動には、企業はまず消極的な人を見分け、それから候補者に対して働きかけることが不可欠だ。これは、候補者が採用に応募するのと同じだ。これまでリクルーターは、LinkedInGitHubを見て、このようなことを人力でやっていた。あるいは社外のエージェントに依頼していた。

HireSweetはこのプロセスを自動化している。候補者になるかもしれない人がウェブで公開しているプロフィールをシステムが検索し、その情報を採用する企業に送る。これはチョイ氏が言うように、単に時間を節約するだけではない。「情報がたくさんあるおかげで、我々は人間なら見逃してしまうようなパターンを検出することができる。例えば、誰かがLinkedInで経歴を更新したことや、LinkedInの経歴とGitHubでの活動に齟齬があることを検出できる。こうしたことは、その人が転職に興味を示している可能性があることを表している」と同氏。

HireSweetは、競合他社と比べてずっと精度が高いことを誇っている。チョイ氏によれば、同社の顧客の一部は80%の精度があると見ており、これによりHireSweetは候補者の接触率が80%と定義している。機械学習の技術を取り入れているが、古き良き正規表現も多く活用している。履歴書に「フリーランス」と書いてあれば、その人が本当にフリーランスであることを予測するアルゴリズムを構築する必要はないのだ。

HireSweetは新規顧客が利用を開始する際にきめ細かい対応をしている。チョイ氏は次のように説明する。「我々はしょっちゅう企業と電話で話している。その企業が何を求めているかを真に理解したいからだ。それに、公開されている職務内容が、採用しようとしている人の実際の職務内容と一致していることはきわめて稀だ。このことを我々はここ数年で具体的に学んだ。だから、企業とたくさん話すようにしている」。

多くの企業がすでに採用ツールを提供しているため、HireSweetはそうしたツールとの統合手段を多数用意している。チョイ氏が筆者に語ったところによれば、さらに多く、そして深く統合できるように機能を拡張する計画だという。

HireSweetは3年半ほど前からこのプロダクトに取り組んでいる。2年前には150万ユーロ(約1億8000万円)を調達した。現在の社員数は30人で、BlaBlaCar、Dashlane、Nokiaなどを顧客として獲得している。ヨーロッパの市場に集中していたが、現在は米国に進出し、約100社の顧客を獲得した。これは、米国企業の採用方法や働く人の転職方法にシステムを対応させるということでもある。採用や転職の方法や国によってかなり異なる。チョイ氏は、これからは米国でのロードマップに集中し、そのイノベーションを将来的にヨーロッパに持ち込む可能性が高いと述べた。

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(翻訳:Kaori Koyama)

新型コロナの影響を受けるシアトルの中小企業救済へAmazonが基金を設立

ほかの多くのテック企業と同様、Amazon(アマゾン)も在宅勤務を推奨している間は時間給の従業員に賃金を支払う。同社はまた、自社ビルに入居している事業所のテナント賃料を助成することも明らかにしている。そして3月10日、Amazonは新型コロナウイルス感染拡大で影響を受けている地元の企業を助成する500万ドル(約5億円)の基金としてNeighborhood Small Relief Fundを設けることを発表した。

基金は、従業員が50人以下または年間売上高が700万ドル(約7億円)以下で、RegradeとSouth Lake Unionオフィスビル周辺に事務所を構える小規模事業所向けのものとなる。対象となるのは一般向けの事業を展開し、かつ客の来店に頼っている事業所だ。

申請する事業所は3月にどれくらい売上が落ち込むか、何かしらそれを証明するものを尋ねられる。助成金申請の審査や基金の配分はサードパーティーとともに行う。申請のレビューは3月下旬に行われ、助成金は4月に配分される。

「この基金は、事業所が従業員をそのまま雇用して彼らに給与を支払い、現在の事務所をそのまま維持し、その他の運営関連の費用をカバーするのをサポートするためのものだ」とAmazonは話す。

明らかにAmazonはこの界隈に責任を負っている。同社がそのエリアに社を構えると、レストランやフードトラック、コーヒーショップ、小売などの零細企業が後に続いた。Amazonの社員が在宅勤務を推奨されると、周辺の事業者は苦しむ。もしAmazonが在宅勤務を解除するまでに周辺事業者に救いの手を差しのべなければ、その多くは事業を続けられないかもしれない。

「新型コロナウイルスの感染拡大によって引き起こされている状況に対応するとき、従業員や住民の安全と健康を確保するという点、そして近所の地元企業をサポートする点において弊社が重要な役割を担っていることは承知している」とAmazonの不動産責任者John Schoettler(ジョン・スケトラー)氏は今朝の発表文で述べた。「我々の街にとって試練の時で、共に乗り越えられるようコミュニティと手を携えて取り組みを続ける」

新型コロナ感染拡大で影響を受けた人をサポートするテック企業は他にもある。Uber(ウーバー)、Salesforce(セールスフォース)、Cisco(シスコ)、Microsoft(マイクロソフト)、Lyft(リフト)、Square(スクエア)、Twitter(ツイッター)、Facebook(フェイスブック)、Google(グーグル)、Apple(アップル)は需要減で影響を受ける時間給労働者や非正規労働者に賃金を支払うことを約束している。Google(グーグル)はまた、WHOや政府機関向けに2500万ドル(約26億円)分の広告クレジットを用意した。加えて、Google I/O会議中止の埋め合わせとして、小規模事業者をサポートし、またマウンテンビューの学校のSTEMやコンピューターサイエンスの授業を増やすために地元の団体に100万ドル(約1億円)の提供を約束した。

さらには、MicrosoftとAmazon、そして他のシアトル企業は感染拡大への対応措置として救済基金を立ち上げるために非営利団体や政府と提携している。AmazonとMicrosoftはそれぞれ100万ドル(約1億円)を拠出した。新たな基金でサポートする地元の事業所は何万人も雇用していて、経済の重要な一部だとAmazonは語る。

「彼らは我々の友人であり、隣人だ。彼らがCOVID-19感染拡大によって直面する経済的試練に立ち向かえるよう、サポートすることが大事だと確信している」とスケトラー氏は話した。

画像クレジット:David Ryder / Getty Images

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(翻訳:Mizoguchi

ゲイツ財団やMastercardが新型コロナ対策医薬品開発に約130億円の出資を約束

ビル・ゲイツの慈善財団であるBill&Melinda Gates Foundation、英国の医療慈善団体であるWellcome Trust、大手クレジットカード企業のMastercardは、共同で新型コロナウィルス(COVID-19)に対する新たな診断、治療法の開発、普及を目指すテクノロジーを支援するイニシアチブを発表した

ゲイツ財団の発表よると、「COVID-19 Therapeutics Accelerator」(COVID-19治療法アクセラレータ)プログラムは、当初まず新型コロナウィルスの患者を治療し、将来はほかのウイルス性感染症を治療することを目的として、既存薬剤のリポジショニングや新たな抗ウウイルス・バイオ医薬品の研究開発や評価を支援する。このイニシアチブについてパートナー3社は、「プロダクトを誰でも利用できる低価格に設定し、公平なアクセスを確保する」と表明した。

まさにこの「公平なアクセスが確保できる低価格」が現在最大の問題となっている。新型コロナウィルスの流行の突発に対応すべき公的機関はそのようなノウハウやリソースを欠いており、民間部門に依存しなければならない。公的ヘルスケアシステムは診断キット、治療薬など民間企業が開発する高コストな手段に頼ることになる。

このイニシアチブの直近の目標は、新型コロナウイルスの治療に役立てるための新たなバイオ医薬品の開発やドラッグリポジショニングを支援、加速させることだ。ゲイツ財団によれば、現在新型コロナウイルス流行を抑制するために有効な抗ウイルス薬やワクチンは存在しない。

ゲイツ財団とウェルカム財団はそれぞれがプログラムに最大5000万ドルを寄付する。ゲイツ財団が2月に発表した新型コロナウイルス対応のための1億ドルの資金が同財団の今回の寄付に利用される。

ゲイツ財団のCEOであるMark Suzman(マーク・スズマン)氏は「新型コロナウイルスのようなウイルスは世界に急速に拡大するのに対して、ワクチンや治療法の開発はスピードがはるかに遅い。新型コロナウイルス流行の拡大から世界、ことに最も立場の弱い人々をを守るためには、研究開発を加速する方法を見つけねばならない。これには政府、企業、慈善団体が迅速に行動して研究開発に資金を提供する必要がある」と述べた。

発表によれば、、このプログラムはWHO、政府、規制当局、議会、民間慈善団体など政策決定と資金提供に関連するあらゆる組織と協力し、医薬品の研究開発から製造、生産、流通に至るパイプラインのすべてに焦点を当てるという。

ゲイツ財団にとって、組織横断的、学際的アプローチの有効性は2014年にエボラ出血熱の流行を封じ込めることに成功したことから得た成果の1つだったとい。声明によれば、プログラムは資金提供3社の共同主導し、3つの異なる戦略を追求する。 1つは感染の治療、拡大防止に役立つ医薬品の発見と評価、2つ目は医薬品業界のパートナーとの協力、3つ目は治療を現場で役立てるための規制当局などの公的機関との連携だ。

Wellcom Trustの責任者、 Jeremy Farrar(ジェレミー・ファラー)博士は声明で「このウイルスは前例のないレベルでの世界的な脅威であり、迅速な診断と治療、、あたワクチンの開発のために国際的な協力を推進する必要がある。 COVID-19に対して医学、薬学など関連分野において驚くべき努力が払われているが、この流行に先んじ、封じ込めるためにはさらに多額の資金が必要だ。また多数の研究の共同と調整を確保することも重要だ。われわれのアクセラレータ・プログラムは治療、予防に役立つ研究、開発、評価、製造の過程全体をサポートする。 COVID-19への挑戦は困難な課題ではあるが、国境を越えて協力することで新たな感染症に取り組むことができることが証明されている」と述べた。

画像: Mark Lennihan/AP

【Japan編集部追記】ゲイツ財団のサイトによればMastercard Impact Fundが最大2500万ドルの寄付を約束している。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook

Googleが新型コロナ拡大で在宅勤務を北米全社員に推奨

先週Googleは、新型コロナウイルス(COVID-19)拡大のリスクを抑制するため、ワシントン州拠点の従業員にリモートワークを推奨するメモを送った。そして3月10日、ウイルス感染拡大を受け、その対象が大幅に広げられた。同社が出したメモでは同様の措置を北米の社員に推奨している。

同社の広報担当者は、職務が許すのであれば北米の社員に家から働くよう勧めている事実をTechCrunchに認めた。また、別の地域でも同様のガイダンスを案内したことも明らかにした。例えば、現状欧州では在宅勤務を強く推奨している。他の地域は実情に応じて異なる対応となる。

先週の措置は、ワシントン州で最大のGoogleのオフィスがあるキング郡、シアトル、カークランドを含む太平洋北西部でコロナウイルスの感染が拡大している初期のレポートに基づいている。新型コロナウイルスの感染例は瞬く間に全米に広がった。最新の情報では、米疾病予防管理センター(CDC)が把握している感染者数は647人、死亡者は25人だ。ニューヨーク州の患者数が最も多く170人超となっている。

ウイルス拡散抑制のために同じような行動を起こしているテック企業は増えつつあるが、Googleはそのうちの1社だ。Microsoft、Box、Lyft、その他企業は従業員への影響を懸念し、自宅から勤務することを推奨したり求めたりしている。労働時間が短くなっても従来と同じ賃金を維持しているケースすらある。健康への懸念から大規模なテックショーがキャンセルされているが、Googleが例年春に開催するカンファレンス「Google I/O」もそこに含まれる。

Googleはまた、世界中の一時雇いの従業員やベンダー向けの新型コロナウイルス基金の設立も発表した。「米国においては移行期にある。世界中のあちこちにあるギャップを埋めるために、Googleは弊社の世界中の一時雇いの従業員やベンダーが新型コロナウイルスの症状がある場合、あるいは隔離されているために出社できない場合に有給で休めるようにする基金を設立する」とGoogleの職場サービス担当ディレクターAdrienne Crowther(エイドリアン・クラウザー)氏は書いている。「我々はパートナーとともに働いており、外部の労働者もそうした理由で職場に来ることができない場合、この基金から通常勤務時間分の保障を受けられる。我々は状況を注視していて、今後も引き続き必要な措置を検討していく」

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(翻訳:Mizoguchi

モバイル株取引のロビンフッドが2週間で3度目のダウン

この2週間で3回目のダウンを起こしたRobinhood(ロビンフッド)の経営チームは、自分たちのビジネスを動かしている技術基盤を根本から見直す必要があるかもしれない。なぜなら、広報担当者によると昨日のモバイル株取引プラットフォームの機能停止は、先週同社のシステムを2回ダウンさせた問題とは無関係だったからだ。

2週間で3度目のシステム停止は、顧客にとってもこの会社に9億ドル(約940億円)近くを投入し70億ドル(約7300億円)の会社価値を与えた投資家(Crunchbase)にとっても、不安を感じる兆候だ。

広報担当者によると、直近のシステム停止は東海岸時刻午前10時25分までサービスに影響を与え、その時点でもサービスは部分的に復旧しただけだった。完全復旧したのは午後3時30分、市場が閉鎖されるわずか30分前だった。

「米国時間3月9日午前、当社プラットフォームでの取引が一時的に利用不能になりました。この中断がお客様を苛立たせていることは承知しており、また先週に続くトラブルであるともに市場全体の取引が停止されたこの日に起きたことを特に重く受け止めております」と昨日の声明で同社は言った。「当社のプラットフォームは現在全面的に復旧しており、この歴史的で不安定な市場状況の時期に当社サービスを改善すべく鋭意努力しております」と同社はコメントした。

Robinhoodは、他の金融サービスアプリと同様、顧客を囲い込みやすい特徴がある。なぜなら、仕組み上、資産を1つのプラットフォームから別のプラットフォームに移行することが難しいからだ。顧客にとって最も必要なときに大きなシステム停止に見舞われることは、会社にとっていい兆候とはいえない。しかも、数年前に同社が無料で利用できる取引プラットフォームを立ち上げたときの先行者利益の恩恵はすでに存在しない。

昨年10月、主要株取引プラットフォームはすべて無料モデルに移行した。そして昨年Charles Schwab(チャールズ・シュワブ)が 260億ドル(約2兆7100億円)でTD Ameritrade(TDアメリトレード)を買収し、今年2月にMorgan Stanley(モルガン・スタンレー)がE-trade(イー・トレード)を130億ドル(1兆3600億円)で買収したことで、業界は再編成されようとしている。

関連記事:What the $13B E-Trade deal says about Robinhood’s valuation

TechCrunchが先月報じたように、Robinhoodがこの競合の激しい環境を勝ち抜くためには、自社システムの革新が必要になるだろう。顧客が最も必要としている時のシステム停止はあるべきことではない。今、再びユーザーの信頼を得るために会社としてすべきなのは、事故の原因と問題解決の計画を責任を持って説明することだ。

投資家志望者が取引に使えるプラットフォームはほかにいくらでもある。また大きなシステム停止を起こすようなことがあれば、Robinhoodの顧客はトラブルまみれのシャーウッドの森を樹上から眺めているかもしれない。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

昨年廃業したKubernetesインフラ管理のContainershipの資産を日立の米子会社が買収

日立製作所の米国子会社であるHitachi Vantara(ヒタチ・ヴァンタラ)は、企業のデータ管理を助けるハードウェアやソフトウェアを開発している。同社は米国時間3月10日、Containership(コンテナシップ)の資産を買収したことを発表した。Containershipはコンテナエコシステムの初期のメンバーのひとつだが、昨年10月に業務を停止した。

2015 Disrupt New YorkのStartup BattlefieldでデビューしたContainershipは、コンテナ化されたワークロードを複数のクラウド間で移動するサービスとしてスタートした。しかしその後、コンテナサービススタートアップの多くがそうであったように、もっぱらKubernetes(クバネティス)にフォーカスするようになり、企業のKubernetesインフラストラクチャの管理を助けるサービスを提供した。業務を停止する直前には、主にKubernetesのマルチクラウド展開を管理するサービスを提供していた。しかし同社のKubernetes関連プロダクトは収益化が遅れ、今ではそのウェブサイトも存在しない

Hitachi Vantaraのデジタルインフラストラクチャ部門のCOOを務めるBobby Soni(ボビー・ソニ)氏は「ContainershipはKubernetesクラスターとコンテナ化アプリケーションの、パブリッククラウドとプライベートクラウドおよびオンプレミス環境における容易なデプロイと管理を可能にする。そのソフトウェアは、Kubernetesを使っている企業が直面するクラウドネイティブの重要な問題、例えばパーシステントなストレージのサポートや認証の一元化、監査のロギング、継続的デプロイメント、ワークロードの可搬性、費用分析、オートスケール、アップグレードなどなどを解決する」と語る。

Hitachi Vantaraによると、同社の買収対象としてContainershipの顧客契約や社員は含まれず、Containershipのブランドを保全する計画もない。「ContainershipのIPをベースとして新しいプロダクトを開発することが目的である。それらのプロダクトが実際に供用される時点で以前の顧客が再び関わってこられることを期待したい」と同社のスポークスパーソンは説明する。

買収の価額は公表されていない。ピッツバーグに本社を置くContainershipは、2014年の創業以来約260万ドル(2億7121万円)しか資金を調達していない。その早逝の1〜2年前からは、まったく音沙汰がなくなっていた。買収価額もそんなに高くはなかっただろう。これまでの投資家は、Birchmere VenturesとDraper Triangle、およびInnovation Worksだった。

Hitachi Vantaraによると、同社のKubernetesコミュニティとの関係は継続する。ContainershipはCloud Native Computing Foundationのメンバーで、この買収を機にメンバーではなかったHitachi Vantaraも変わるかもしれない。

関連記事:ContainerShipはコンテナ化したアプリケーションのマルチクラウド展開を助ける

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(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

MessageBirdからカスタマーサービス市場を一変させるInbox.aiが登場

アムステルダムに本社を置くクラウド型のコミュニケーション・プラットフォームを運営するMessageBird(メッセージバード)は米国時間3月10日、またしても新製品を発表した。今度は、3500億ドル(約37兆円)規模のカスタマーサービス市場に狙いを定めている。なお同社は、米国のAccel(アクセル)、欧州のAtomico(アトミコ)の支援を受けている

Inbox.ai(インボックス・エーアイ)と名付けられた新製品は、Slackの社外コミュニケーション版ともいえるプロダクトだ。大半の機能が無料で使え、顧客が選んだほぼすべてのメッセージアプリで企業と連絡が取り合える。対応するアプリは、WhatsApp、SMS、Voice、Messenger、Instagram、WeChat、Apple Business Chat、RCS、Line、Telegramとなっている。顧客が普段から「最初に使う」デジタルメッセージで対応できるというのがウリだ。メッセージの内容については、ローンチの時点ですでに、テキスト、画像、動画、位置情報など数多くのコンテンツに対応している。

そして恐らく最も重要と思われるのが、顧客が使ったメッセージアプリとは関係なく、受信したメッセージと客との会話がひとつのスレッドに表示されるため、チケット管理やカスタマーサポート担当者たちとの連携が簡単にできる点だ。インテリジェントな機能も搭載されている。AIがキーワードを分析し、客のニーズの予測して適切な返答のリストを示すなどだ。サポート担当者は、言葉をドラッグ&ドロップして自動応答用のメッセージを組み立てられるほか、顧客満足度調査やメッセージのルーティングルールを決めたりもできる。

もともと開発者を主なターゲットとしていた企業だけに、Inbox.aiはウェブフックを利用してさまざまなサードパーティー製ツールと統合できる。また、Shopify、Slack、Salesforce、Jiraなど数多くのアプリへの対応も最初から組み込まれている。これには、Inbox.aiで作られたコンテンツを、企業がさまざまな通信、セールス、その他の業務に使用しているソフトウェアと同期させる能力も含まれている。多少時間が掛かったとしても、Inbox.aiが万能のツールとなる企業もあるだろう。

MessageBirdの創設者でCEOのRobert Vis(ロバート・ビス)氏は、私とのビデオ通話でInbox.aiのデモを個人的に見せてくれた。その中で、新たに導入した企業の従業員だけでなく、客の側もいかに早く使い方を習得できるかがわかった。彼は私に、ある会社のサポート電話の番号をWhatsAppで送るよう指示した。すると即座にソフトウェアの画面に私のメッセージが表示されるのが見えた。私は自分の訴えを補う写真を送ることができ、その返答としてリッチメディアが送られてきた。

この新製品の推進力になったのは、ビス氏自身が募らせた一般企業の顧客サポートに対する「現在では、何時間も電話を保留にして待たされたり、電子メールの返事が来るのに24時間もかかるなんてことは、もはや受け入れられない」という不満だ。

彼は、その場でさっと計算してこう指摘した。35歳の時点で彼はすでに電話を保留したまま人生のうちの2週間を過ごしたことになるという。彼はまた、Inbox.aiでは、一貫性のないサポートの問題も解決したいと話していた。別のサポート担当者や他の部門に電話を回されたときに、もう一度同じ説明を繰り返さなければならないといった、よくある問題だ。

「MessageBirdの観点から、私たちはこうしたAPIを開発し、人々はすでにそうしたエクスペリエンスを構築できる手段を得ました。それなのに、こんな世界で暮らしている必要がありますか?」とビス氏は、つい最近携帯電話会社で経験した嫌な思いを振り返り大げさに訴えた。「メッセージを送れば問題が簡単に解決される世界に私は暮らしたい。電子メールで連絡してきて、その上でこちらから電話を掛けなければならないなんて、ごめんです」と続ける。

そうしたわけで、開発者にフックを提供して、インフラを構築するという重労働よりも、MessageBirdは、一般ユーザーに向き合う初めての製品に賭けることにしたのだ。取締役会の中には眉をひそめる者もいたと彼は話していた。

それを実現するために、MessageBirdの担当チームは12カ月でInbox.aiを完成させ、続けて、顧客、サポート担当者、管理者を対象に幅広い調査を実施した。ローンチまでには、このソフトウェアはテストを終えており、すでに欧州のHelloFreshとDeliveroo、アジアのZilingo、中南米のJoin BuggyとTix Telecom in Latin Americaで使われている。

「信頼できる唯一の情報源」を作ろうという試みは数多くあったにも関わらず、なぜ今まで誰もこの問題に取り組まなかったのかを尋ねると、ビス氏は「みんながその話をしていたが、誰もやらなかった」と答えた。その理由は、関連し合う3つの難しい問題を理解しなければならないからだ。

第一は、多種多様なあらゆるコミュニケーションチャンネルからデータを取り込まなければならないことだ。これは、MessageBirdの以前のソフトウェアが解決している。第二は「エクスペリエンス世代」。画像、動画、位置情報、トラッキングコード、割り引きといった充実した内容のエクスペリエンスを、サポート担当者が簡単に提供できるようにすることだ。ほとんどの企業は、これを可能にする開発資源を持ち合わせていないとビス氏は指摘する。そして第三がUIだ。サポート担当者がすべてのチャンネルにわたって境目なく、最初にどのチャンネルから送られてきたかを意識せずに、コミュニケーションをとり、チケット管理を行えるようにしなければならない。

「これは新しいカテゴリーだと思います。これは、物事が収斂する場所だと思います」とMessageBirdのCEOは話す。「たくさんのツールと競合しますが、私たちはそのどれでもありません。私たちは、5年後にすべてのツールがどうなっているかを考えた結果なのです」と語る。

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(翻訳:金井哲夫)

テスラがCybertruck製造工場の候補地としてテネシー州ナッシュビルを検討中

Tesla(テスラ)は米国内陸部のテネシー州ナッシュビル当局と、同社のCybertruck(サイバートラック)とクロスオーバー車のModel Yを生産する工場の設置を話し合っている。交渉に詳しい情報筋が明らかにした。

TeslaのCEOであるElon Musk(イーロン・マスク)氏は米国時間3月10日夜に、同社が米国に新たに設けるギガファクトリーの設置場所を「スカウトしている」とツイートした。

「Cybertruckギガファクトリーの場所をスカウトしている。米国中央部になりそうだ」とマスク氏はツイートした。彼はまた「この新ギガファクトリーが東海岸マーケット向けのModel Y生産にも使われる」と付け加えた。最初のModel Yはカリフォルニア州フリーモントのプラントで生産中だ。

マスク氏はツイートでは多くは語らなかった。しかし交渉を知っている情報筋は、さほど多くない候補リストにはナッシュビルが載っていると話した。

テネシー州はすでに電動車両生産のハブになりつつある。昨年、Volkswagen(フォルクスワーゲン)はテネシー州チャタヌーガに置く米国工場の拡大に8億ドル(約840億円)を投じると発表した。電動車両生産の北米拠点となる。発表当時、同社はテネシー州での電動車両生産は2022年に開始すると話した。一方、日産は2013年から同州スマーナで完全電気自動車のLeaf(リーフ)を生産してきた。

テスラはカリフォルニア州フリーモントにある工場でModel S、Model X、Model 3を組み立てている。この工場ではかつて、GMとトヨタの合弁会社NUMMIが操業していたが、テスラが2010年に工場を買収した。最初のModel Sは2012年6月にこの工場で生産された。

テスラはその後バッテリー生産にも注力し、2014年6月にネバダ州リノ近くの土地に最初のギガファクトリーを起工した。その建物はかなり巨大で、面積は190万平方フィート(17万平方m)を超える。そこでテスラはModel 3向けのバッテリーパックや電動モーターを製造している。また、同社はリチウムイオン電池を製造するパナソニックとのジョイントベンチャーも抱えている。

さらにテスラはニューヨーク州バッファローにギガファクトリー2を置き、そこではソーラー電池やモジュールを製造している。2018年には、Teslaは上海に工場を建設することで中国政府と合意した。これは、中国を長らく重要なマーケットと位置付けてきたマスク氏にとってマイルストーンとなった。中国工場は昨年後半にModel 3の生産を開始した。そして最初の納車が1月初旬に始まった。

同社はいま、ベルリン近くに工場を建設するための整地を進めている。完成すれば、ドイツ工場は欧州マーケット向けのModel 3とModel Yを生産することになる。

画像クレジット: Kirsten Korosec

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(翻訳:Mizoguchi

Facebookの写真移行ツールが欧州、中南米、アフリカ諸国で公開

Facebook(フェイスブック)は昨年12月にアイルランドで公開したデータ移行ツールの提供範囲を広げている。このツールを使うと、Facebookサーバーに保存してある画像やビデオを別の写真ストレージサービス、たとえばGoogle Photos(Googleフォト)などに暗号化転送を通じて直接移行できる。

Facebook広報は「移行ツールは米国時間3月10日に英国、EU諸国、および中南米、アフリカの一部の国々で公開される」とTechCrunchに伝えた。広報担当者によると、先月末にFacebookは、APACおよび中南米の複数の地域でもツールを公開している。Facebookは以前、このツールを2020年上半期中に全世界で公開すると言っていた。

「transfer a copy of your photos and videos」(写真とビデオの転送)機能は、設定ページのFacebook Information(あなたのFacebook情報)タブから設定できる

このツールは、FacebookがData Transfer Project(DTP)に参加して開発したコードが基になっている。DTPは2018年に始まった協同プロジェクトで、Apple(アップル)、Facebook、Google(グーグル)、Microsoft(マイクロソフト)、およびTwitter(ツイッター)が参加しており、オープンソースコードを使って任意のオンラインサービス間をつなぎ「2プラットフォーム間でシームレスに直接ユーザー主導のデータ移行を行う」ための共通フレームワークを構築することを目的としている。

ここ数年、テック界の巨人たちによる寡占に対する不満が高まっており、議会や規制当局の注目を集め始めている。例えばEUでは、競争規制当局がテック巨人のデータ運用を巡ってAmazonFacebookGoogleなどに目をつけている。一方米国では、GoogleFacebookAmazon、 Apple、Microsoftらが反トラスト法の監視にさらされている。そして反トラストに関する疑問が増えるにつれ、巨大テック企業は対応にせまられる。こうしてポータビリティーに関する集合的圧力がかかっている。

昨年9月、Facebookは白書を公開してデータポータビリティーに関する同社の見解を示し、ポータビリティーをプライバシー問題への挑戦であると主張しようとした。それは同社が集めたユーザーの個人情報の移行に規制当局が制限をつけることを求めるロビー活動のようにも見えた。

同時に、ポータビリティーツールの公開は、規制当局の手が入った際の点数稼ぎにもなるかもしれない。もっともこのツールはFacebookが保持している個人データのごくわずかな部分を移行できるだけであり、こうしたツールを望むのはごく一部の技術に詳しいユーザーだけかもしれない。

さらにFacebookの移行ツールは、現在Googleのクラウドストレージへの直接転送にしか対応していない。これは、ユーザーの顔生体情報をある巨人から別の巨人にコピーするパイプを太くしているだけだ。

本誌、おらびEU在住の記者を通じて確認したところ、Facebookのドロップダウンメニューにある転送先は今の所Google Photosだけだった。

しかし広報担当者は、より広範囲な利用形態を示唆しており、DTPプロジェクトがSmugMug(スマグマグ、Flickrの親会社)の写真API用アダプターを更新したことや、音楽ストリーミングのDeezer(ディーザー)、分散型ソーシャルネットワークのMastodon(マストドン)、Tim Berners-Lee(ティム・バーナーズ・リー)の分散型プロジェクトSolid(ソリッド)などとの統合についても語った。

担当者によるとアダプターはデータタイプごとに用意され、オープンソースの協力者がさまざまなデータタイプ(写真、プレイリスト、連絡先など)のアダプターを開発している。GitHubには開発中のプロジェクト一覧もある。

上記サービスへの直接転送オプションがなぜFacebookのメニューにないのかはまだわからない。直接データ転送を実装するためにサードパーティー側の作業が必要なのかもしれない。この点について質問したところ、今はGoogle Photosが唯一の転送先であることを認め、これは「第一ステップ」で「関係者に評価できる実物のツールを見せることが目的であり、その間にもっと多くの会社がDTPプロジェクトに参加すれば、我々はもっと多くのサービスやデータタイプの移行準備を進める」と答えた。

DTPプロジェクトの目的は、「ポータビリティーツールをつくるたびに車輪を作り直す」ことがないよう、誰でも簡単に使える標準バージョンをつくることだと広報担当者は語り、「このツールは現在のDTPパートナーと協力してつくったものであり、将来さらに多くのパートナー企業が参加することを願っている」と付け加えた。

彼はコードがオープンソースであることも強調し、自社のサービスをフレームワークにプラグインしようとする会社は、公開APIさえもっていれば「スムーズに統合」できると言っていた。「公開API向けにDTPアダプターを書くだけでいい」とのこと。

「ツールが公開された今、我々はもっと多くの専門家や企業と協力して働けることを楽しみにしている。この種のサービスとつながることを目指しているスタートアップや新しいプラットフォームは特に歓迎だ」と広報担当者は語った。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

配達用ドローンのランディングステーションはSF映画のセットみたいだ

配達用ドローンはもちろんハイパーローカルなテクノロジーのホットな話題だが、その未来の飛行物体はそもそもどこに着陸するのか?芝生?そこでMatternet(マターネット)は、同社の輸送ドローン用のランディングステーションを作った。しかし、それは配達のためのインフラというよりも、60年代のSF映画の殺人光線兵器に似ている。

離着陸の場所を特定しないPrime Airなどと違ってMatternetのドローンは、特定の場所を結びつける配達ネットワークを使う。そのやり方は確実ではあるが、病院など時間を争う配達には向いていないかもしれない。

関連記事:大学病院が血液サンプルの配送にドローンを利用

同社はスイスとノースカロライナでパイロット事業を行い、最近サンディエゴでも始めた。医療機関が交通渋滞などの問題に悩まされずに血液などの検体や医療品やワクチンなどの発送や受け取りが目的だ。

問題は、ドローンがどこに着陸してそのあとどうするか。誰かが電池交換をするのか?そのドローンに接近しても安全だと誰が言うのか?積荷をどうやって取り外すのか?どんな方法にせよ、なるべく容易でできるだけ自動化してほしい。それを実現するのが、ステーションの役目のはずだ。

テクノオーガニックな曲線と、花のような上部のハッチを見ると、高さ10フィート(3m)のそのステーションは「Star Trek: The Original Series」(スタートレック宇宙大作戦)とか「Lost in Space」(宇宙家族ロビンソン)なんかを彷彿とさせ、機能的であると同時に、明らかに目立つことも狙っている。

ドローンが到着すると上部が開き、ドローンはその中央に着陸する。ステーションの機構部がドローンをしっかりと固定し、積荷を下ろすとともに電池も換える。積荷は塔の部分に収容され、認証された人物が来るのを待つ。その人はドングルをスキャンしてドアを開き、パッケージを受け取る。

ドローンが1台だけなら、再び必要とされるまで上部のバルブのような部分に収まるだけだが、配達に複数の機を使用するときは中の機がすぐ離陸して約60フィート(18m)上空を「ドーナツ状に」旋回する。

このステーションは今年の第2四半期に、Matternetの既存の顧客である病院のひとつに設置される。そして安定稼働が実証されたら、もっと広く展開されるだろう。下のデモビデオは、俳優たちが演じるドラマになっている。

画像クレジット: Matternet

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(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa