YCombinatorに客員パートナー制度―スタートアップをさらに密接に指導する

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Y CombinatorはプレジデントのSam Altmanの下でさまざまな実験を行ってきた。このアクセラレーターの最新の試みは臨時あるいは客員パートナー制度だ。このポジションに就いたパートナーはそれぞれ自分の経験、知識を活かし、YCの特定「クラス」(batch)専属となってアドバイスを与える。

臨時パートナーはYCが2011年に設けたパートタイム・パートナーと少し似ているが、こちらは更新可能な6ヶ月の任期で、多くのパートタイム・パートナーは任期を更新し続けている。

新制度の出発にあたって、YCは3人の客員パートナーを任命した。うち2人はYCの卒業生で、Aaron Epsteinと Gustaf Alströmerだ。もう一人はLyle Fong。

Epsteinはデジタル・コンテンツのマーケットプレイスであるCreative Marketを開発し、2010年にYCを卒業している。Creative Marketは、金額は公表されていないが、2014年にAutodeskに買収された

AlströmerはAirbnbのグロース・プロダクトの責任者だ。Airbnb以前にはコミュニケーション・アプリの企業、Voxerでグロース担当副社長を務めた。またHeysanの共同ファウンダーでもある。こちらはメッセージ・サービスで、YCの2007年のクラスを通じて生まれ、2009年にGood Technologyに買収されている(額は不明)。

一方、Fongはモバイルゲーム・スタジオのHobo Labsの共同ファウンダー、CEOだ。Fongはソーシャルメディアのソフトウェア開発企業、Lithium Technologiesのファウンダーでもある。ソーシャルメディア上の影響力を点数化するという点が賛否を呼んだサービス、Kloutを2014年に買収したことは一部で有名だ。.

シリコンバレーのマウンテンビューに本拠を置くYCは来年1月に冬学期のクラスをスタートさせる前に、YCは10数名のパートナー陣にさらに3人のパートタイム・パートナーを加える予定だ。Immand Akhund、Kevin Hale、Marcus Segalの3人のうち2人はやはりYC卒業生だ。

Akhundはモバイル広告のHeyzapのファウンダーで、2009年のYCのクラスに参加している。会社はRNTS Mediaに4500万ドルで売却された。Akhundは2007年にもYCのクラスに参加しており、この際にユーザーのオンライン上の身元を管理するClickpassを共同で創業している(この会社は翌年買収されているが、これは人材獲得目的の買収(aqcui-hire)の典型的な例だった)。

YCのネットワークではHaleはさらに有名だ。Haleはオンライ書式設定のスタートアップ、Wufooを携えて2006年にYCに参加している。2011年にSurveyMonkeyが同社を3500万ドルで買収した。その後HaleはYCのパートナーとして3年過ごしたが、新会社を設立するため来年からはパートタイム・パートナーとなる。

Segalの最近の職はZyngaのグローバル事業担当上級副社長だった。それ以前には 課金プラットフォーム、Vindicia( Amdocsが買収)の最高財務責任者、 またeMusicの最高執行責任者 (Universal Music Groupが買収)を務めたことがある。

われわれは昨夜、YCのパートナー、Michael Seibel とAdora Cheungにインタビューする機会があった。Seibelは最近YCのCEOへの任命が発表されたばかりだ (Sam Altmanは引き続きグループ・プレジデントとしてYC全体を代表する)。Cheungは昨年スタートアップのHomejoyを閉鎖し、現在はパートタイム・パートナーの世話を担当している。

YCネットワークにはクラスの卒業生を含めて多数のファウンダーや投資家がおり、きわめて強力なものとなっている。この中で「客員パートナー」制度をスタートさせてた意味についてCheungは「われわれはそれぞれのクラスにもっと多数のアドバイザーを『エンベッド』したいと考えている。これはその実験の一つだ」と説明した。客員パートナーは「クラスでのアドバイスにパートタイム・パートナーよりも多くくの時間を費やしてくれることになっている」という。

Seibelは以前、Justin.TVとSocialcam(Autodeskが6000万ドルで買収)のCEOを務めた。Seibelによれば、客員パートナーは多くの時間をYCでの活動にあてることを期待されているものの、YC全体における役割は「パートタイム・パートナーのようなものではない」という。また客員パートナーもパートタイム・パートナーも指導するスタートアップに投資する権利を何ら保証されているわけではないという。

YCはどのように客員パートナー、パートタイム・パートナー(あるいはどんな種類の職についても)を選任しているのかという質問に対して、Seibelは「公募しているわけではない」と述べるにとどまり、すぐに新メンバーの説明に戻った。

ところで、YCでは冬学期のクラスへの参加申し込みをまだ受付中だ。実はYCのクラスへの参加申し込みは常時可能だという。ぎりぎりになってからの応募も「(内容を審査している)ということだ。

〔日本版〕今日(11/18)のTechCrunch JapanのカンファレンスではY CombinatorのQasar Younis COOがキーノートに登壇する予定。西村編集長の記事ではY Combinatorについても詳しく解説されている。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

確定報:Periscope Dataが2500万ドルをBessemer Venture Partnersの主導で調達

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データサイエンティストたちが、その解析内容を聴衆に理解して貰いやすいビジュアルへ素早く変換することを助けるPeriscope Dataが、シリーズBファンディングで2500万ドルを調達したことが確認された。

私たちは、もともとこの資金調達に関するニュースを先週報告していたが、主導投資家の名前を誤って報告していた。ラウンドを手動したのはBessemerである(先の報告ではDFJだとしていた)。 これにDFJ、Susa Ventures、Innovation Endeavors、そしてAngelPadという投資家たちが加わった。

契約の一環として、BessemerのEthan Kurzweilが、Periscope Dataの取締役会に加わった。

CEOのHarry Glazerが、TechCrunchに語ったところによれば、会社にとっての次の段階は、プロダクトを拡張し市場開拓戦略(go-to-market strategy)をとることによって、より大きな企業ユーザーへ対応可能にして行こうということである。彼はPeriscope Dataのとっての大きな挑戦の一つは、データサイエンティストたちへの売り込みだと語った。

「データサイエンティストたちの目に止まりエンパワーを与えることは、セールス部門や、IT部門や、人事部門の目に止まることとは全く違うことなのです。後者のセールスサイクルは比較的良く確立されています」とGlazer。「技術的な聴衆に売り込むことに関しては、Ethanが深い経験を持っています」。

Periscope Dataは、データ量に基づいて課金を行い収益を挙げている。しかしGlazerはより大きな企業向けに、よりプレミアムな機能を追加するチャンスを探っている。これらの機能は、レポート作成とコラボレーションから、セキュリティと認証の範囲までをも覆うものである。

Crunchbaseによれば、この最新のラウンドにより、Periscope Dataの合計調達額は3450万ドルに達した。

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(翻訳:Sako)

顧客の株式収益をフリーランスに分配するGigsterの深謀遠慮

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401K?、ストックオプション?フリーランサーには、何もありません。私たちは、Gigsterのために働いてくれるフリーランスの人たちを、スタートアップ企業で働いているような状態に近づけたいと思っているのです」こう語るのは創業者でCEOのRoger Dickeyだ。彼のスタートアップであるGigsterは、フリーランスのプロダクトマネージャー、エンジニア、そしてデザイナーをコーディネートすることによって、顧客のアイデアを本格的なアプリに仕上げる会社だ。そして、同社は今日、その最高のフリーランス契約者たちを引き留め、インセンティブを調整し、顧客のためにさらに熱心に働いて貰う、革新的な方法をスタートした。

GigsterがローンチするのはGigster Fundである。リミテッドパートナーとしてのBloomberg、Felicis、China’s CSCからの70万ドル、そしてこれにGigster自身の資本の1パーセントが加えられて構成されている。同ファンドはGigsterのトップ顧客の1つに、企業評価額500万ドルに対しその1パーセントの5万ドルをキャッシュで毎月投資する。Gigsterは顧客に対して、アドバイス、コネクション、ファンドレイジンクの支援、トップフリーランサーへのアクセスと自社への雇用の機会も提供する。

gigster-fundDickeyは、Gigster Fundによるアレンジに対するスタートアップへのチャージは、ブートキャンププログラムは提供しないものの、1ドルあたりY Combinatorに比べて3分の1、500 Startupsに比べて2.5分の1の資本で済むことを強調した。これまでに対象となったポートフォリオ企業のいくつかには、スタンフォード出身者による医療機器会社、Techstars出資で元Google従業員がスタッフとして勤めるスタートアップAdHawk、ある公開企業ならびにIshqr for Muslimsという名の出会い系アプリの創業者による開発ツールなどが含まれている。

しかしここで特別なのは、Gigsterはファンドの潜在的利益の全ては保持し続けないということだ。投資収益の最初の70万ドルは投資家たちに戻されるが、その後は、投資家たちとGigsterは余剰利益を分割し、Gigsterはフリーランサーたちにシェアを与える。

毎月、Gigster Fundから得られるGigsterの収益の一部が、その月のアクティブフリーランサーの間で均等に分配される。よって、もしファンドが1年運用され、Gigsterが最終的に(投資家の取り分を除いて)1200万ドルの収益を挙げたならば、毎月の収益は100万ドルということになり、よってもし100人のフリーランサーがアクティブならば、それぞれが月に1万ドルを受け取ることになる。

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基本的に、Gigsterのフリーランサーたちは、もし顧客が成功して、かつ自身もしばしGigsterでの活動を続けたならば、おそらくDickeyが言うところの「退職金の一部」を受け取ることができるだろう。「成功した会社は皆、株式を通してその従業員に報いています」とDickeyは説明する。SECはGigsterがフリーランサーたちに株式を直接渡すことを許さない、そこで「そうしたたやりかたを真似る一番の方法は、彼らが仕事をしている顧客の株式を介して報酬を与える方法なのです」。

もちろん、これはすべて、Gigsterとその顧客が成功することに依存している。Gigsterは正しい方向に進んでいる。2015年7月にGigsterは、大企業や起業家たちに、個々のフリーランサーを自分で管理する必要がなく、アプリケーション全体の開発プロセスをアウトソースできるサービスをローンチした。最初の2週間には100万ドルを売り上げ、そのわずか4ヶ月後にはGigsterはアンドリーセン・ホロウィッツ率いるシリーズAで1000万ドルを調達した。今では、マスターカード、IBM、そしてペプシコといった顧客と契約しながら、企業向けの売り上げは前の四半期に比べて9倍に伸びている。

Gigsterの共同創業者たち:(左から)Roger DickeyとDebo Olaosebikan

Gigsterの共同創業者たち:(左から)Roger DickeyとDebo Olaosebikan

その急速な成長は何らかの混乱を引き起こす可能性がある。私はGigsterがプロジェクトコストを過小に見積ったために、追加予算が必要となって腹を立てている顧客の話を聞いたことがある。また、顧客は自分のアプリの保守と更新を継続するためには、Gigsterとのやりとりを繰り返さなければならない。こうしたプロセスが、あまりにもでこぼこ道(too bumpy)であることが判明したときには、将来のGigsterの顧客を落胆させてしまう可能性がある。

しかし、ソフトウェアが世界を食い、全ての企業がテックカンパニーを目指している現在、需要は屋根を突き抜けるほど積み上がっている。アプリを必要とはするものの、どうやってそれらを開発すればよいかわからない企業たちは、そのよく吟味されたタレントと、苦労の少ないソリューションに惹かれて、Gigsterを選んでいる。

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Gigsterで構築。

顧客、フリーランサー、そしてGigsterの潜在的な利益を超えて、ファンドはまた、他の企業が契約労働者を支援するために何ができるかについてについて語ることもできるかも知れない。「多くのスタートアップがこれに踏み切ることを怖れています、なぜなら『働きに応じて支払われる』クラス分け問題に突き当たることを怖れているからなのです。従業員の処遇に対してのアプローチを考えることほど、スタートアップを疲弊させるものはありませんからね」とDickey。

Uberのような、オンデマンドギグ(gig:一時的な仕事)エコノミー世界のスタートアップたちは、「1099」独立契約者(米国では個人請負業者のためにForm 1099という申請用紙が用意されている)を、よりコストのかかるフルタイム従業員として扱うようにさせようとする訴訟と、戦ったり回避の努力をしたりしている。Gigsterのフリーランサーたちは、ホワイトカラーの知識労働者であるため、Dickeyは、この特典を提供すれば訴訟を回避できると考えている。そのリスクにもかかわらず、Dickeyは「私たちは、私たちが思う正しいことをやるのだ、という重い決断を下しました」と言う。

もしこのスキームが上手く行った場合には、Gigsterは、株式収益を通じて、フリーランスの独立性と柔軟性という利点と、フルタイム雇用者の潜在的な利点をうまく組み合わせることができることになる。このことは、優れたプロジェクトマネジャーたちや、開発者たち、そしてデザイナーたちに9時から5時の拘束から抜け出して、Gigsterとギグを行う決意を促すことにもなるだろう(ギグには「一時的な仕事」」という意味の他に「音楽ライブ」という意味もある)。そして、自分自身ではそれほど良いチームを集めることのできない顧客の前に、その才能をぶら下げることができるようになるのだ。

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(翻訳:Sako)

従来の音楽エージェンシーモデルを破壊するEncore

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英国のスタートアップでありEntrepreneur First卒業生のEncore(アンコール)は、伝統的なエージェントモデルを破壊しようとしている、また別の例だ。それは予約エージェント業務を対象に、あなたのイベントためにミュージシャンやバンドをオンラインで見付け、出演予約を取り付けることができる。このマーケットプレイスは既に1万8000人以上のミュージシャンを引き付けていて、毎月その3割が実稼働していると聞いている。

さらに会社を成長させるために、Encoreは56万ポンド以上の資金をシードファンディングで調達したことを発表した。計画では、その資金をチームの拡大と、マーケットの買い手側の要求に応えるための有償マーケティングの立ち上げのために利用する予定である。

注目すべきは、Entrepreneur First自身がラウンドに参加したことだ。この投資は、同社が新たに用意した4000万ポンドの「Next Stage Fund」から、初めて提供されるものである。Next Stage Fundは追加ファンディングによって卒業生の企業を支援するために用意されたものだ。

blogviolinapp 「あなたの会場やイベントのために、偉大なミュージシャンを探すことは悪夢です」と、Encoreの共同創業者であるJames McAulayは語る。「予約プロセスは面倒で遅く、しばしば何週間もかかり、そしてやっと良いグループやミュージシャンを発見しても、その先の予約の完遂には、契約や、請求書、そして古臭い決済方法に関する交渉といった地雷原が待ち構えています。そしてその後、電話とテキストメッセージのやりとりが始まります。会場の搬入搬出、そしてデポジットの手配…リストは無限大です」。

McAulayによれば、ミュージシャンとバンドの予約を簡単にするだけではなく、Encoreは支払い方法やミュージシャン自身にとっての条件も、従来のエージェントを取り除く(そして置き換える)ことによって改善することを狙っている。「ミュージシャンたちは、多くの割り前をハネていき、そのくせ多くはミュージシャンたち自身には関心のない、旧来のエージェントたちに搾取されることに、我慢ならなくなって来ています」と彼は語った。「Encoreは、業界に心底求められている透明性を提供するのです」。

サイトは以下のような流れで使うことができる:イベントを登録する人は、単に使いたいミュージシャンやバンドのタイプを登録する、同時に楽器、ジャンル、そして時間と場所といった詳細も入力する。Encoreはその情報を基に、条件に合う登録済みのミュージシャンやバンドのモバイルアプリに対してアラートを送信する。

対応可能で興味を持ったミュージシャンは、見積額と共に返事を送ることができ、予約を求めている側はそれを受けてミュージシャンのプロフィールやSoundcloudなどのリンクを確認することができる。そして実際の予約を行う前に追加の質問を行うことも可能だ。支払いはその後Encoreによって処理される。予約処理手数料は15パーセントである。

「顧客に、対応可能ではないかもしれないミュージシャンの一覧を閲覧させる代わりに、顧客には1件の問い合わせだけをお願いし、それを近隣のパフォーマーたちに送信するのです」と、McAulayは説明した。「出演可能な演者たちは、平均20分位で対象イベント用にカスタマイズした見積と共に返信してきます。これによって顧客はそこから選択可能な短いリストを得ることができるのです。迅速で、簡単で、効率的ですよ」。

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(翻訳:Sako)

スタートアップのための知的財産戦略

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【編集部注】著者のBenjamin Lehbergerは登録特許弁護士で、St. Onge Steward Johnston & Reensのパートナーである。

知的財産保護は、ほとんどのスタートアップにとって重要な考慮事項である。特許などの知的財産権保護手段を取得することによって、競争を最小限にし、他者からの侵害請求に対する防衛手段として利用することができる。知的財産権はまた、資金とパートナーシップを引き寄せ、強固なものにすることができる。スタートアップのための知的財産戦略を策定する際には、以下のことを考慮して欲しい。

申請は迅速に、それまでは秘密に

特許申請のためのあなたの時間は限られている。開発の初期段階で特許は想定されているべきである。米国の場合、発明者は、最初に発明を公開してから特許申請を行うまでに1年間の「猶予期間」が与えられている。その後では手遅れだ。とはいえ、そんなに長く待つべきではない。2013年に、米国の特許制度は、先発明主義から先願主義に切り替わった。この用語上では僅かに違うだけの変更が、特許保護を遅らせた者への悲劇へと繋がる可能性がある。

従前の先発明制度の下では、たとえ先に申請をした者がいたとしても、あなたが最初に考案したという証拠を示し、発明に対する地道な努力を続けていれば、その発明に対する最初の考案者と認められ特許を得ることが可能だった。しかし今日では、特許庁に駆け込む早さを競うレースになっている。誰がその発明を最初に考案したものかに関わらず、最初にその特許を申請したものが「勝つ」のだ。

特許はスタートアップにとっての貴重な資産だが、それらはパズルの1片に過ぎない。

また、特許出願をするために1年間の「猶予期間」は、米国以外のほとんどの国には存在しないことに注意することが重要だ。海外でも特許保護を求めることを計画している場合には、特許出願を提出する前に発明を公表すると、海外における知的財産権を危険な状態に晒すことになる。したがって、申請は迅速に、それまでは秘密に。

発明が進化するにつれ、追加申請を

あなたのスタートアップが自社の製品を開発し続けていく過程では、それぞれの新しい機能に対して特許保護の可能性を検討して欲しい。初期に特許を申請しただけで、その後申請を行わなかったスタートアップは、実際に特許が発行されたときに、作っている製品が最初の特許の適用範囲を遥かに逸脱していることに気がつくかもしれない。そのとき製品は、保護が範囲が不足しているか、あるいは特許で全く保護されなくなっている可能性もある。

定期的に特許保護を再評価し、発明の新機能に対する申請を考慮することが重要である。製品が急速に進化している場合は、特許出願をするまでの1年以内に、仮特許出願あるいは連続した仮特許出願を行うことを考慮して欲しい。

特許の発行を待つことはない

特許には時間がかかる。審査を早める方法も存在しているが、平均的には、米国特許庁によって付与される特許のためには2年以上が必要である。特許出願の約30パーセントは全く受け入れられずに終わる。

発行された特許を持つことは、あなたのスタートアップのための資金を集め、マーケットにおける地位を確保することに役立つ。しかし、発明の商品化を、特許の発行まで待っていてはならない。常にスタートアップを前進させ、開発を続けよう。その過程で更なる問題を解決し、それがさらに重要な発明に導く可能性もあるのだ。また一方で、あなたのブランド、評判、収益を構築することになる。

意匠特許を検討しよう

特許の議論をする際に、焦点はしばしば通常特許(utility patent)に向かいがちだが、意匠特許(design patent)も包括的な知的財産戦略の一環として考慮されるべきである。一般に、通常特許は製品の使われ方や動き方を保護するものであるのに対して、意匠特許は製品の見た目を保護するものである。2015年の終わりまでに、米国特許庁は920万件以上の通常特許を発行したが、意匠特許の件数はわずか74万6000件ほどに留まっている。

意匠特許は通常特許を補足したり、通常特許が適用できないときの代替として利用したりする際に、重要な価値を提供することができる。ソフトウェア特許は、米国ではまだ適用可能である。しかし、AliceとCLS Bankが争った訴訟に対する最高裁の判断により、ソフトウェアに関連した発明の通常特許の取得は、より難しく予測できないものになっている。意匠特許は、ソフトウェア関連発明に関する特定の特徴、特にグラフィカル・ユーザ・インターフェースを保護するためには有効な選択肢である。

意匠特許の有効期間は15年で、通常特許の20年と比べるとやや短いが、これもコストのうちである。また、意匠特許は多くの場合、通常特許よりもはるかに迅速に得ることができる。

特許のみに依存してはならない

特許はスタートアップにとっての貴重な資産だが、それらはパズルの1片に過ぎない。スタートアップが成功するには、まず第1に良い製品やサービスを必要とする。特許庁は新規性があり自明ではない発明に対して特許を与える。しかしながら、特許を受けたからと言って、必ずしも良い発明であるとか、誰かが購入したいと思うものであるというわけではない。あなたが保護しているものが、保護に値するものであるかを確認して欲しい。

そして第2に、ユニークなブランドを構築して、登録商標でそれを保護すべきだ。商標とは、ある者の商品の由来を識別子、他のものと区別するための、単語、フレーズ、シンボル、あるいはデザインだ。強く分かりやすい商標を持つことは、競争相手からあなたを区別するためにとても重要な価値がある。そして特許とは異なり、登録商標は使用し続ける限り、期限切れになることはない。商標は、特許のような厳格な申請期限を持っていないが、早期に行動を始めて商標のクリアランスを検索し、あなたがその商標を使う際の競合がないことを確認することがベストだ。

最後に、スタートアップ事業の種類に応じて、著作権及び企業秘密保護もまた、知的財産戦略の中で考慮されるべきである。スタートアップを始める際には、知的財産の専門家と、どのようなタイプの知的財産戦略があなたの企業に相応しいかについて、相談して欲しい。

(訳注:本文中の特許関連の話題はすべて米国の話である。文中にもあるように長らく続けられてきた先発明主義は先願主義へと切り替わったため、比較的日米でも似たようなコンセプトで考えられるようになった。参考:米国の特許制度

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(翻訳:Sako)

電話カウンセリング「ボイスマルシェ」のバーニャカウダが6000万円を調達、法人向けの福利厚生サービスに軸足

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「いま、割とカウンセリング市場が熱い。注目され始めた感じ」──そう語るのは、女性専用の電話カウンセリングサービス「ボイスマルシェ」を運営するバーニャカウダのCOO 菅野彩子氏だ。同社はSMBCベンチャーキャピタル・みずほキャピタル・三生キャピタルを割当先とする第3者割当増資を実施。調達額は約6000万円で内訳は非公開。調達資金を元手にさらなるサービス拡大を図る。

ボイスマルシェは、女性ユーザー専用の電話カウンセリングサービスだ。ユーザーは、心理カウンセラーやキャリアコンサルタント、コーチなどの専門家による個別カウンセリングをうけることができる。25分で3000円、55分で1万2000円、110分で2万4000円の3プランを用意し、通話料は無料。サービス開始は2012年3月。

相談できる悩みは多岐にわたる

ウェブサイト上で相談したいカウンセラーを選ぶことができる

相談できる内容は、20代の就活から終活まで多岐にわたる。例えば友人との喧嘩・仕事のキャリア形成・婚活・結婚・子供に関する悩みなど。カウンセラーは約500人以上が登録しており、心理カウンセラーやキャリアコンサルタントなど公的・民間の有資格者がほとんどを占めている。バーニャカウダが面談と実技指導を行い、カウンセラーの一定の品質を確保しているという。

また法人向けには「ボイスマルシェforビジネス」も展開している。これは従業員向けの福利厚生サービスで、企業が窓口となって契約し、従業員は1回1時間の電話カウンセリングが受け放題だ。2015年9月より提供を開始し、すでにルミネなどが導入。こちらは女性だけでなく男性の従業員も利用できる。2015年12月から一定規模以上の事業所で従業員のストレスチェックが義務化されるなど、従業員のメンタルヘルスに関心が高まっており、法人向けサービスの企業からの引き合いも増えているという。

イメージしたのは食べログ

バーニャカウダCEOの古川亮氏は、ボイスマルシェについて「イメージしたのは食べログ」と語る。利用者は、ボイスマルシェのWEBページからカウンセラーの評価やレビューをチェックし、気に入れば日時を予約、クレジットカードで決済できる。評価から予約、決済までがウェブサイト上で完結する点が売りで「カウンセラーのプラットフォームでもある」と古川氏は説明する。

左からバーニャカウダ COOの菅野彩子氏、CEOの古川亮氏

左からバーニャカウダ COOの菅野彩子氏、CEOの古川亮氏

競合サービスとしては、エキサイトが運営する”お悩み相談室”などがある。それらと比較した強みについて古川氏は「カウンセラーの数」を挙げる。同様のオンラインカウンセリングサービスでは、カウンセラーは多くても数十人が一般的であるといい、500人以上という在籍数は「日本最大級」と古川氏は胸を張る。カウンセラーが多いために「当日上司に怒られてしんどい時に、10分前に予約してカウンセリングをうけることもできる」と菅野氏は言う。またコンシューマ向けと法人向けの両輪で展開している点も国内では珍しいという。

相談できる相手がいなかった

バーニャカウダは2010年1月に設立。創業メンバーの古川亮CEOと菅野彩子COOはともに前職がリクルートで、2人はリクルート時代の社内研修で知り合った。2人とも起業志向ということで意気投合。当初は「占い」を軸としたサービスを構想していたが、途中で「カウンセリング」に変えた。その理由について菅野氏は次のように語る。

「当時結婚を前提に交際していた人がいたが、転職を機に破談。追い詰められた時に相談できる相手がいなかった。占いだといまいちだが、専門家に相談できるプラットフォームがあればいいなと思った」

女性向けにサービスを絞る理由については、女性管理職の割合を増やすという日本政府の政策的な後押し。そして女性の社会進出が進む中で、「仕事でのキャリア形成」「家庭と仕事の両立」など、親世代が経験しなかった新しい悩みが産まれ、女性の悩みが急速に多様化している点を挙げる。

「予約と購入を抑える」のがリクルート流

前職のリクルートでは、古川氏はSUUMOやHR事業でマッチングサービスを、菅野氏はインターネットマーケティングやウェブメディアの立ち上げや運営に携わった。ボイスマルシェの立ち上げにはその経験も役立ったという。菅野氏は「既存の広告メディアでは勝てないと思った。リクルートでは、ホットペッパーのように広告よりアクション、つまり予約と購入を抑える。ボイスマルシェもこの考えで立ち上げようと思った」とも語る。

創業期には古川氏と菅野氏の自己資金でサービスを運営。2014年9月にSMBCベンチャーキャピタルから第3者割当増資により3000億円を調達した。そして2015年9月に今回の6000万円の調達に至った。資金調達の際には、500人以上のカウンセラーと密接なコミュニティを構築している点、さらに、法人向けサービスのボイスマルシェforビジネスがルミネ内で好評だという点が評価された。

バーニャカウダは今回調達した資金をもとに、サービス拡大に向け人員を拡充。現在は社員3人とパートで運営しているが、これを10名に増員。また直近ではB2CよりもB2B向けサービスに注力する方針で、そのための営業やマーケティングの人材も揃えたいとしている。

Vine創業者、サービス停止の報を受け「会社は売っちゃいけない!」とツイート

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Vineの創業者であるRus Yusupovが、Vineのシャットダウンについてごく短いツイートを行い、それに対して大量の反応が生じている。そのツイートとは「自分の会社は売るもんじゃない」(Don’t sell your company!)というものだ。TechCrunchが取材を申し込むまで、YusupovもVineのサービス停止を知らなかったそうだ。

ちなみにRusは、1年前にTwitterをレイオフされている。彼がDom HofmannおよびColin KrollとVineを立ち上げたのは、2012年6月のことだった。そして10月にはサービスをTwitterに売却している。価格は3000万ドルだったと報じられている。ライバルと目されるInstagramに対して、2014年末にCiti Groupが3500万ドルのバリュエーションを行なっているのをみて、Rusとしては売ってしまうよりも運営を続けた方が良かったのではないかと思っていたことだろう。

Twitterは2013年1月にVineのサービスを開始したが、さほど積極的ではなかったようにも見える。一部で強い支持を受けたサービスを手元におき、デザインや制作ツールなどの改善を行い、さらにバイラルにも活用してきた。しかしついにはTwitterとの積極的な統合は行われず、より一層の進化を目指すという方向性は見えていなかった。

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(翻訳:Maeda, H

「リモートワークと旅を同時に」Remote Yearが1200万ドルを調達

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旅への強い情熱をもつ人たちにとって、Remote Yearのアイデアはとても魅力的にうつることだろう。参加者は1年間、リモートで仕事をしながら毎月新しい街や国へと旅を続けるというアイデアだ。

しかし、Remote Yearは一時の楽しい体験を提供するだけのものなのか、それとも、大きく成長する可能性のあるビジネスの種なのだろうか。Highland Capital Partnersは後者のシナリオに賭け、Remote Yearが1200万ドルの調達に成功したシリーズAのリード投資家を務めることとなった。今回のラウンドにはHighland Capital Partnersの他にも、WeWork Labsの共同創業者であるJesse Middletonと、Airbnbの共同創業者兼CTOであるNate Blecharczykも参加している。

創業者兼CEOのGreg Caplanが最初にこのアイデアを思いついたのは2年前のことだという。そして彼が第一回目のプログラムへの参加者を募集すると、75人の枠に2万5000人の応募者が殺到したのだ。その75人は先日1年間のプログラムを終えたばかりだ。その後、同社はこれまでに6つのプログラムを実施し、合計で500人の旅するワーカーがRemote Yearに参加している。

今回の資金調達によってCaplanが目指すのはもちろん、プログラム参加者を劇的に増やすことだ。それを達成するうえで、二つの「巨大なトレンド」がRemote Yearの後押しをしているという。

「まず第一に、生産活動の場所がクラウドに移ったということです」と彼は言う。「今はどこにいても素晴らしい成果を上げることができます。周りの環境にインスパイアされることで人はよりクリエイティブに、そしてより生産的になるのです。(中略)2つ目のトレンドとは、人々は自分が所有するものではなく、周りの人とシェアできる体験を重んじるようになったことです」。

プログラムの拡大を目指し、現在85人いるチームの強化を続けていきたいとCaplanは話している。(ご推察の通り、Remote Yearの従業員たちは世界各地に散らばっている。チームの中心拠点など存在しないのだ)。

「例えば、クロアチアではエキサイティングなコワーキング体験ができる場所がありませんでした。そのため私たちは、(スプリトという町にある)ビーチのすぐそばにコワーキング・スペースをオープンすることにしたのです」とCaplanは話す。

Remote Yearの参加費は5000ドルの頭金と、最初の11カ月のあいだ月ごとに支払う2000ドルだ。これには交通費、住居費、ワーキングスペースの利用料、インターネットの利用料が含まれている。75人というグループのサイズは丁度良く、それによってプログラムを継続して運用していくことができているとCaplanは話す。しかし、旅行内容はプログラムごとに変わることもある。例えば参加者がアメリカのタイムゾーンで働く人ばかりであれば、アジアへの旅行を避けるなどの工夫がされているからだ。

仕事に悪影響を与える可能性を考えれば、時差の問題に関して参加者自身が解決策を考え、会社からの理解を得る必要がある。だが、Caplanによれば、従業員が教育や能力開発の一環としてRemote Yearに参加することに賛成する企業は多いという。それに加え、Remote Yearのチームが「参加者と一緒にもっとも良い解決策を考え、会社から理解を得るためのアドバイスをしている」という。

「グループがもつ多様性のなかでも私たちが最も嬉しく思うのは、職業の多様性です」と彼は加える。「参加者それぞれが実に様々なバックグラウンドを持っています。エンジニアやデザイナーも多いのですが、一番多いのはマーケティング分野で働く人々です。ジャーナリストやライターとして働く人もいて、なかには弁護士までいます。彼らがどこから来て、何をしている人なのかという点に関して、とても多様性が高いグループなのです」。

もちろん、リモートで働くというのは大変なことでもあり、全員がプログラムを最後までやり遂げられるわけではない。個人的な意見だが、ときには休憩して、また気が向けばまたプログラムに参加してみてもいいだろう。また、リモートワークという働き方に関してCaplanは、「問題のある社員を優秀なリモートワーカーに変えることができるとは考えていません。しかし、優秀な社員を優秀なリモートワーカーに変えることは可能だと信じています」と話している。

[原文]

(翻訳: 木村 拓哉 /Website /Facebook /Twitter

学生エンゲージメント管理ソフトのCheck I’m Hereが100万ドルを調達

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Check I’m Hereは、カレッジや大学が、キャンパス活動に対する学生の関わり(エンゲージメント)を追跡することを助けるプラットフォームだ。そのCheck I’m Hereがそのサービスの成長を継続するために、シリーズAファンディングで100万ドルを調達した。現時点で30の州、3つの国にまたがった80教育機関の40万人の学生が利用している。Check I’m Hereの優れた点は、単にあるキャンパスアクティビティに何人学生が参加したかのデータを集めるだけでなく、大学やカレッジがそのデータを将来より多くの学生を呼び込んだり、学校への残留者を増やしたりするために活用する手助けをすることである。

教育機関はこれまでずっと、リーダーシップセミナー、学生のクラブあるいは組織活動のイベント、コンサートといった課外活動に対する学生の出席状況を追いかけていた、なぜならそうした学生の関わりは学校へ残留する割合 ‐ つまり卒業まで留まる割合 ‐ と深く関係しているからだ。

header-phone収集したデータを利用して、学校はどのイベントが残留率を上げるのかを、そしてどの学生がそうしたイベントに参加しなかったのかを知ることができる。そしてそうしたイベントの「マーケティング」や「宣伝」の仕方をそれに従って変えていくことができるのだ。

また学校側は、ドロップアウトした学生が参加したイベントといったものを知ることもでき、そして高い残留率に紐付けられたイベントへの案内を、どのような経緯でドロップアウトした学生に届け損なったのかを知ることもできる。

Check I’m Hereプラットフォームは、教育機関が役立てることのできる様々なツールを提供している、学生がイベントにやってきたときにIDをスワイプするための小さなデバイス;デジタル同意書;ビルトインされたイベントマネジメントシステム(Eventbriteに類似);イベントとその詳細へのユーザーアクセスの作成、承認、そしてカスタマイズ;イベントの効率と学生1人あたりのコストを追跡する予算ツール;ウェブ、モバイル、ソーシャルメディア、そしてオフラインを横断して学生との関わりを実現するマーケティングツール;コミュニケーションと文書共有ツール;カスタムレポート;などなど。

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ほとんどの学校は、既に学生イベントのために確保されている予算を使ってCheck I’m Hereへの支払いを行っている。(授業料には、これに資金を回すための「アクティビティとサービス」料金が含まれていることが多い)。

あるケースでは、学校が、計数カウンターとスプレッドシートを使った、より手作業の多いイベントマネジメントとトラッキングからのアップグレードを行っている。また別のケースでは、学校が他のライバルシステム、例えばCampus LabsあるいはOrgsyncといったものからの移行を行うこともある。

興味深いのは、沢山の学校がCampus LabsあるいはOrgsyncをとても好んでいるように見えるにも関わらず、いまや両社ともLeeds Equity Partners買収されて、統合されつつあるということだ。統合の結果、生まれる新しいプロダクトを好きになれない学校が、Check I’m Hereに切り替える余地が生まれることになるかもしれない。

「主要な教育機関は、これまで何年も重厚長大なマネジメントシステムを使ってきています」と語るのは創業者でCEOのReuben Pressmanだ。「しかし、米国の4500以上の高等教育機関の大半は、まだこうしたエンゲージメントソフトを試したことがありません。彼らのニーズに合った既存のソリューションがなければ、どの教育機関にとっても重要な機能に対して、彼らは不利な立場になってしまうのです」。

「私たちはエンゲージメントプラットフォームへ賭けています」と彼は私たちに説明した。「(競合相手は)私たちがやっているようなデータトラッキングをしていません」とPressmanは付け加えた。

今日、Check I’m Hereは、7万人の学生を擁する大きな学校から、小さなプライベートカレッジまで、幅広い範囲の教育機関と提携している。四半期毎に顧客が25パーセントずつ増えていて、その継続率は98パーセントに及ぶ、とPressmanは語った。

フロリダ州タンパに拠点を置く、Check I’m HereのシリーズAは、Tampa Bay LightningのオーナーであるJeffrey VinikRonald Schlosser(McGraw-Hill Educationの元エグゼクティブチェアマン)、そして500 Mobile Collectiveを含むエンジェル投資家たちによって支援されている。

新しい資金は、雇用を含む、継続的な成長に向かって行くために使用される。現在15人のチームは、年末までにセールスとマーケティングに半ダースほどのスタッフ増強を計画している。

[ 原文へ ]
(翻訳:Sako)

「iPhone版DayDream」でGoogleに挑む──スマホVRコントローラーのVroomがKickstarterで出資募集中

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「DayDreamに対抗するVRプラットフォームを創りあげる」──こう語るのはワンダーリーグの代表取締役社長・北村勝利氏だ。同社はiPhoneや既存のAndroid端末でも使えるスマホVR用のモーションコントローラー「Vroom」を開発し、Kickstarterで出資の募集を開始した。目標金額は約100万円で、2017年1月後半の出荷を予定する。

Vroomは、ハコスコなどといった市販のVRビューワーと組み合わせて、iPhoneや既存のAndroidスマートフォンで使うことができるVRモーションコントローラーだ。加速度、地磁気、傾きの9軸センサーを搭載し、手の動きをVRの仮想空間に反映させることができる。筆者はエンジニアリングサンプルを使ったデモを見たが、iPhoneのスクリーン上に表示したVR空間上に、まるでOculus TouchかHTC Viveといった専用機のコントローラーで操作するごとく手の動きが再現されており新鮮さを感じた。

DayDreamはGoogleにしては「珍しくクローズド」

スマホVRを巡っては、Googleが今年春に最新のVRプロジェクト「DayDream」を発表。10月のイベントでは対応ヘッドセット「View」とスマートフォン「Pixel」を発表した。DayDreamの特徴は、手の3次元の動きをVR空間に反映できる”モーションコントローラー”を備える点にある。HTC Viveなどの据え置き型VRでは当たり前だが、これまでのスマホVRにおいてはモーションコントローラが存在しなかったこともあり、DayDreamの登場でスマホVRのリッチ化が進むとの期待が大きい。

一方でDayDreamは「Googleにしては珍しくクローズドなプラットフォーム」だと北村氏は指摘する。同氏は「ハードウェアはGoogleが指定したメーカーしか作れないし、アプリケーションはGoogleが審査したものしか動かない」とも話す。このクローズさを勝機と捉え、DayDreamに対抗する”オープンソース”なVRモーションコントローラとして開発したのがVroomだという。

「Macに対してWindows、iPhoneに対してAndroidが立ち上がったように、リーディングプロダクトがクローズドな仕組みで登場すると、これに対抗するオープンな仕組みが求められる。今そのポジションが空いたと判断した」(北村氏)

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ワンダーリーグの代表取締役社長の北村勝利氏

北村氏は、福岡県出身の実業家。25歳にして情報提供サービスを手がける会社を設立。以来25年にわたってソフトウェアやモバイルビジネスの分野で会社を経営し、次々に事業を立ち上げたシリアルアントレプレナーだ。エグジットはこれまでに4度も経験し、東芝子会社の社長を3年間務めたこともある。同氏が2004年に設立し、しばらく休眠状態に置いていたワンダーリーグ社を本格始動させたのは2014年。2015年までEスポーツアプリの開発を手がけていたが、今回新規事業としてVRに参入した。資本金は約1億3000万円(資本準備金9200万円)で、これまでアドウェイズ、サイバーエージェント・ベンチャーズ、B Dash Ventures、日本アジア投資、D2C R、ベルロックメディアから出資をウケている。

世界に500万人いるUnityユーザーに届けたい

北村氏は「ハードウェアで儲けるつもりはない」と話す。Vroomについても「誰でも採用できるオープンなVRコントローラーのプラットフォームを目指した」としていて、VroomのファームウェアやSDKも全てオープンにしている。Kickstarterで出資を募集したのは「世界に500万人いるUnityエンジニアの方々に届ける」ことが目的だと北村氏は言う。目標額が日本円にして約100万円と控え目なのは、このような事情もあるのだろう。

ではどこでマネタイズするのかというと、Unityのアセットストアにおいて、Vroomのアセットをエンジニア向けに販売したりする。「ソフト屋なので、Vroomのプラットフォームが広がれば支援業務で稼げる」と北村氏は語る。例えば中国メーカーが低価格なVRビューワーに、Vroomのプラットフォームを採用することも大歓迎なのだという。顧客としては全世界のスマートフォン向けアプリディベロッパーやVRビジネス参入検討会社、そして玩具メーカーなどを想定している。

また国内では、不動産や建設会社向けのAR/VRのソリューションにも取り組む。「VRを使えば住宅展示場と同じことがスマホ1台で行える。従来のスマホVRは『見るだけ』だったが、Vroomを使えば手を伸ばしてドアを空けることもできる。また既存のスマホやiPhoneを使えるので、数を用意することが必要な法人ソリューションに最適」と北村氏は述べた。

開発途中のデモ動画を見る限り、モーショントラッキングの精度は高いと感じた

来春に公開予定のVroom対応ゲーム TrainFaith。手を動かしてパンチを繰り出せる

来春に公開予定のVroom対応ゲーム Trainfight。手を動かしてパンチを繰り出せる

なお現時点でVroomの競合は、DayDreamを除いて存在しないという。大手メーカーが競合となる可能性ついては、東芝子会社の社長を3年間務めた経験から「大手はSDKが必要な製品は作りたながらない」と北川氏は語り、さらに「我々が既にオープンソースで出しているので、競合が出す意味もない」と付け加えた。

なぜシリコンバレーのトップ投資家たちは今、ラテンアメリカに投資するのか?

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ベンチャー〔編集部〕Julie Ruvoloは元TechCrunchライターで、現在はLatin American Private Equity and Venture Capital Associationの論説主任を務めている。

ラテンアメリカは、今地球上で最も見過ごされている市場かもしれない。

ラテンアメリカのベンチャー市場規模はインドや中国には及ばない。ウォールストリートジャーナルによれば、2016年前半の中国における新規ベンチャーキャピタルファンドは118億ドル(14%減)に上るのに対し、ラテンアメリカでは2億1800万ドルだった。「真のスタートアップ」となるには10億を超えるユーザーが必要だと考える投資家たちは、同地域の6億人という人口規模も見落としている。

しかしAndreessen Horowitz(コロンビア)、Founders Fund、Sequoia Capital(ブラジル)、QED(メキシコおよびブラジル)からの初投資によって、その様相は変わりつつある。

自分はここ数年、TechCrunch向けにラテンアメリカでの投資について書いてきた。VivaRealPSafeComparaOnlineDescomplicaなどのスタートアップのラウンドについて取り上げたこともある。また、幅広く成功中のMercadoLibreが設立した「KaszeK Ventures」や、その名のとおりRedpointとe.Venturesのジョイントベンチャーである「Redpoint e.Ventures」のようなラテンアメリカ地域の主要なローカル投資家を取材したこともある。

ローカル投資家の視点から見た場合、ラテンアメリカにおける機会には次のようなものがあるだろう。

  • インターネット人口は3億人から6億人へと倍増する見込み。
  • 人口の半数が銀行システムを利用していない(たとえばメキシコではわずか15%しかクレジットカードを所持していない)。
  • 人々のほとんどが安価なAndroid経由でオンラインに接続している。

注目に値するのはブラジルで、その人口2億人のうち、半数しかオンラインにいないにもかかわらず、すでに主要ソーシャルプラットフォームで世界2位または3位を占めている事実だ。また、データよっては、ブラジル人は(不思議なことになぜかOrkutに端を発して)世界のどの国民よりもオンラインで時間を過ごしているという。

ではベンチャーに関するデータはどうだろうか。ベンチャーキャピタルによる投資はこの5年間で着実な増加をみせている。2015年には過去最高となり、総額5億9400万ドル、182件以上の取引があった。ブラジルは経済的・政治的危機にもかかわらず、調達額と投資額の点でラテンアメリカのベンチャー市場ではトッププレイヤーだ。

Latin American Private Equity and Venture Capital Association(LAVCA)による年半データによると、ラテンアメリカでのベンチャーキャピタル取引は前年比で46パーセント増加したという(ちなみにLAVCAは筆者が勤務するOmidyar Networkがサポートする非営利団体だ)。

アメリカ国境よりも南では「大したことは起きていない」と思っているあなたのために、以下に自分が気づいた投資トレンドをいくつか紹介しよう。

シリコンバレーのトップ企業がラテンアメリカで投資を始めた

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ちょうど今年、Andreessen Horowitzがコロンビアの食料品宅配サービスRappiに、ラテンアメリカで初めての投資を行った。

Founders Fundもラテンアメリカでデビューを飾った。投資先は弁護士マッチングプラットフォームのJusbrasilと、フィンテック関連のスタートアップNubankだ。Nubankは昨年にかけてFounders Fund、Sequoia Capital(同キャピタル初のブラジルへの投資)、Tiger Global、KaszeK Ventures、QED Investorsから8000万ドルを調達し、さらに今年に入ってゴールドマンサックスによる5200万ドルの債務投資も受けた。

またゴールドマンサックスは今年、ブラジルの物流系スタートアップCargoXに対する1000万ドルの投資も率いた。その際にはValor Capitalと、Uberの共同設立者Oscar Salazarの参加があった。

メキシコではAccel PartnersとQED Investorsが初めての投資を行った。Accelは同国の食料品ショッピングサービスCornershopへのシリーズAで670万ドルを出資したのだ。このラウンドはラテンアメリカで最もアクティブなベンチャーキャピタルの1つ、ALLVPが率いた。QEDはKaszeK、Quona Capital、Accion Frontier Inclusion Fund、Jaguar Ventures(メキシコの投資会社)とともに、融資プラットフォームKonfioに向けた800万ドルのシリーズAに参加した。

メキシコは2015年、資金調達で初めてブラジルを追い抜いた

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2016年上半期には、メキシコの資金調達件数はラテンアメリカでトップとなった。取引数は47件(2015年上半期と比較して4.2倍)で、政府機関であるFondo de FondosとNational Institute of the Entrepreneur(INADEM)がここ数年で提供した資本によって活気づいたところが大きい。

(ちなみに、ブラジルにおけるベンチャーキャピタルのエコシステムも、BNDESFINEPからの政府出資で活性化した経緯がある。また、多数国間投資ファンドFOMINのSusana Garcia-Roblesが、ラテンアメリカ地域における70ファンド以上で個人的にアンカー投資を率いているのも注目に値する。)

今のところラテンアメリカのベンチャー投資ではフィンテックが優勢

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IT関連の投資では、フィンテックが投資額面で2015年には29パーセント、2016年上半期では40 パーセントを占めた。メキシコでは前述のKonfioに加えて、同じく融資プラットフォームのKueskiがCrunchFund、Rise Capital、Variv Capitalなどから1000万ドルを調達した(さらに2500万ドルの借入もあり)。ブラジルではIFCが1500万ドルを調達したGuiaBolsoのシリーズCを率い、KaszeK Ventures、Ribbit Capital、QED Investorsが名を連ねた。興味深いのは、ラテンアメリカでは人口の半数が銀行サービスを利用していないため、ほとんどすべてのフィンテック系スタートアップは直接的、あるいはそうと意図せずとも、市民の金融サービスへのインクルージョンに影響していると言える点だ。

MonsantoやQualcomm、BASFによる大規模投資で、アグテックもヒートアップ中

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ブラジルは、アメリカに次いで世界第2位の農業ビジネス市場だが、ラテンアメリカにおけるアグテックは全くといっていいほど注目されておらず、2011年以降は同地域におけるベンチャー投資の1パーセント以下しか占めていなかった。しかしこれも変わりつつあるようだ。Monsantoが、ブラジルのアグテックファンドBR Startupsに最大9200万ドルを投資することになった。このファンドはMicrosoftがQualcomm Venturesとの協力のもと管理しているものだ。

またQualcomm Venturesは、ブラジルで200万件以上あるすべての農場にドローン1機を配置するプログラムをローンチした。さらにドイツの大手殺虫剤メーカーBASFも、アグテックアクセラレーターのAgrostartを先頃ローンチしたばかりだ。

買収に精を出すブラジルのモバイル複合企業Movile

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ラテンアメリカ関連のデジタルM&A取引については、公に入手可能なデータが十分とはいえないが(これについては現在改善中だ)、現在最も活発に買収活動を行っているのはMovileのようだ。

Movileの子会社で、ラテンアメリカでオンデマンド式フードデリバリーの先陣を切るスタートアップのiFoodは、シリーズFで調達したばかりの3000万ドルでSpoonRocketを買収した。これは過去2年以内で15件目の買収にあたる。

また、メキシコではMovileのオンデマンド式デリバリー・配送サービスのRappidoが、ブラジルでのライバル会社99Motosを合併し、ますます勢いを増している。

注目の集まるアルゼンチン

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新たに選出されたマウリシオ・マクリが大統領となったアルゼンチンでは、起業を促そうと構造改革が進行中だ。

マクリ大統領とNational Secretary of Entrepreneurship(起業庁)長官のMariano Mayerは、起業家精神と新規企業設立の促進を目的とした一連の法案を発表した。このLey del Emprendedor(起業家法)では、起業家はオンラインから24時間かからずに登記して会社を設立できるようになる。Ley de Sociedades de Beneficio de Interés Colectivo(集団的利益に関する会社法)は、持続可能な環境的・社会的影響について定義し、ビジネスを承認する法律としてはラテンアメリカ地域で初めてのものとなる。

加えて、新たに10件のファンドを設立して起業家が資本にアクセスできるようにする計画(このうち3件は今年末までにそれぞれ3000万ドルを調達する予定)や、クラウドファンディングの許可に関する法案も提出予定となっている。これと似た企業の新設を後押しするための法案プロジェクトは、メキシコシティとブラジルでも進行中だ。

<筆者付記>ラテンアメリカのベンチャー資金調達や投資データ、ローカルおよび世界で最もアクティブな投資家と最大規模の取引などについては、LAVCA発行の5年間の動向レポートをお読みいただきたい。最新のベンチャーキャピタル取引をフォローするには、同じくLAVCAが隔週発行するLatAm Venture Bulletinの定期購読をおすすめする。

 

画像提供:LEIRIS202/FLICKRCC BY 2.0ライセンス)

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(翻訳:Ayako Teranishi / website

アーリーステージの企業がShippoのシリーズAから学ぶべきこと

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シリーズAのクロージングは難しいことで有名だ。その厳しさから”シリーズA危機”という言葉が生み出されるほどである。また、シードラウンドで資金調達に成功したスタートアップのうち、25%しかシリーズAをクローズできないとも推定されている。

複数の配送会社に対応したAPIを提供しているShippoは、その苦難を乗り越えたスタートアップのひとつだ。先月同社は、USVをリードインベスターとするシリーズAで700万ドルを調達したと発表し、今後USVのAlbert Wengerを取締役として迎える予定だ。

他の起業家がShippoの経験から学べるよう、彼らは特別な計らいとして、シードラウンドとシリーズAで使われたプレゼン資料を一般公開することを決めた(記事の末尾参照)。プレゼン資料からは機密情報が取り除かれているものの、Shippo CEOのLaura Behrens Wuはそれぞれの資金調達の詳細について話をしてくれた。

TC:2014年にシードラウンドで資金調達をしようとしていたときの話からはじめましょう。いつ頃資金調達の必要性を感じましたか?また、その時はどんなゴールに向かって進んでいましたか?

Wu:Shippoをはじめてから7ヶ月経った頃に資金調達を決断しました。最初の4ヶ月は手持ちの資金を使い、残りの3ヶ月は500 Startupsのプログラムに所属していて、Shippoの成長に関する数字を確認したとき資金調達の必要性に気づきました。機能しているプロダクト・満足している顧客・取引量の増加という、ビジネスに最低限必要なものはその頃既に揃っていたんです。一方で、その当時私たちのプロダクトがヒットしていたとも、市場にフィットしていたとも言えないんですけどね。その頃から何度も何度もプロダクトの改良を行ってきましたし!

新米ファウンダーだった私たちは、Shippoのビジネスに参加して会社の成長を手助けしてくれるような支援者を探していました。また、事業の成長に専念できるよう、資金調達のプロセスは本業とは全く別のスケジュールで捉えるようにしていました。

TC:あなたと共同ファウンダーのSimonはどちらも外国人ファウンダーですよね。アメリカではどのように投資家とのネットワークを作っていったんですか?

Wu:当初は500 Startupsを通じてでしたが、その後は自分自身の評判を高めることでネットワークを築いていきました。さまざまな場面で会う投資家(や他のファウンダーなど全員)に、自分のことを、信頼に値し責任感がある人だと考えてもらいたいですよね。そのためにも、自分が約束したことを必ずやり遂げるということが大切です。アドバイスをもらって人の時間を使っておきながら、なにもアクションを起こさないなんてことは、絶対にしてはいけません。

TC:当時のShippoの段階において、投資家はどのような指標を重要視していたんですか?

Wu:投資家はトラクションの兆候を見たがっていました。私たちは、ユーザーが常にShippoを利用し、気に入っている(利用率・継続率の増加、低い解約率などを指標として)ということを投資家に証明することができました。また、常に議論にあがっていたのが市場規模で、支援先企業にとって十分な可能性がその市場にあるのかというのを彼らは知りたがっていました。

TC:シードステージにある企業には、何も指標がなかったり、あったとしても価値ある洞察が得られるほどではないという場合が多いと思いますが、彼らにはどのようなアドバイスをしますか?

Wu:ひとつのKPIを重視するということですね。指標を得たいがために複数の指標を準備する必要はありません。本当に意味のある数値だけに集中するんです。もしもそれが何か分からない場合(もしくは目標に到達しない場合)は、お客さんが自分たちのプロダクト無しでは生きていけないと思うほど、彼らを満足させることに集中すればいいんです。

TC:投資家を説得させるのが最も難しかったことはなんですか?

Wu:マーケットプレイスやECが盛り上がっている一方、配送業に注目している投資家はあまりいませんでした。配送業に隠された問題を知らない人にとっては、とても地味な業界ですからね。しかし、そのうち問題の深層や、私たちのプロダクトがどのようにその問題を解決できるか、さらにはそこからどのようなデータが得られるか、といったことにある人が気づきはじめると、段々と興奮が高まっていったんです。

TC:ラウンドはクローズまでにどのくらいかかりましたか?また、ラウンド自体はどのように構成されていたんですか?

Wu:私たちが資金調達に注力しようと決めてからは、全部ひっくるめて約4ヶ月程度かかりました。その間に125もの投資家と話をしました。一旦勢いづくと、とても上手く進んで行き、全てが3週間のうちにまとまりました。当時はYC Safeがまだなかったので、法律事務所が用意した通常のコンバーティブル・ノートの書類を準備して、Jeff Clavierがそれを基にプライスドラウンドを計画しました(これはとても一般的な書類とプロセス)。

他社とちょっと違っていたのは、シード段階のプライスドラウンドで取締役のポジションを投資家に渡したことですかね(これは一般的なアドバイスに反する動き)。しかしこれは私たちにとって、とても価値のあることでした。シード段階で取締役になるということは、私たちが成功するまで支援し協力するという覚悟をその投資家が持っているという表れですからね。私たちがシリーズAで資金調達した際に、Jeffは取締役のボジションをはずれ、通例に従ってシリーズAの投資家が取締役になれるよう席を空けてくれました。

TC:会社をシードステージからシリーズAで資金調達ができるようになるまで成長させる上で、1番大変だったことはなんですか?

Wu:ファウンダーに期待される役割がすごい速さで変わっていくことです。もともとは全て自分たちでやっていたのに、専門家を雇って権限を委譲していなかければいけません。そしてファウンダーとしての私たちの役目は、会社がスケールするにつれて目まぐるしく変わっていきます。チームが出来上がってくると狂乱状態がおさまってきて、より大きな課題に取り組めるようになるんですが、それでもプレッシャーは変わらずそこにあります。ただ、そのプレッシャーは当初のものとは少し性質が違うような気がします。

TC:スタッフの雇用というのはどのファウンダーも直面する課題のようですが、どうやって効率的に人を雇う術を学んだのですか?

Wu:当初は、以前自分の下で働いていた人や一緒に働いていた人など、知り合いを当たるのが1番の手段でした。しかしそれでは数が稼げません。

私たちは、大規模な雇用方法についてはまだまだ模索している最中です。雇用は、一時期私が自分の時間の約80%を費やしていた程、シリーズA後のShippoにとって大きな焦点のひとつとなっています。現在私たちは、リクルーターや紹介ボーナス、ブランディング、カンファレンス参加など、さまざまな方法を試しているところです。近いうちに新しい情報を共有できればと思っておりますのでお楽しみに!

TC:シリーズAでは、どのようにアプローチ先となるVCを決めましたか?シードラウンドと比較して話をしたVCの数に変化はありましたか?

Wu:シリーズAでは25社のVCと話をしました。さらに私たちは、組織としてのVCだけでなく、その中にいるパートナーという存在に重きを置いていました。また、これまでに大型のマーケットプレイスやEC企業の立ち上げに関わったことがあり、願わくばECショップが日々直面している配送に関する問題点を理解しているような投資家と仕事をしたいと考えていたんです。結果的に、シードラウンドの投資家の支援を引き続き受けると同時に、USVのAlbert WengerがShippoに参加することとなり、私たちは興奮しました。Albertが持つTwilio(別のAPI企業)とEtsyでの経験は、非常に貴重ですからね。

シードラウンドに比べるとずっとタイトな日程でしたが、自分たちのスケジュールに沿って、プロセスに振り回されるのではなく、私たちの方からプロセスを進めていきました。

TC:プレゼン資料以外に、デュー・デリジェンスの一環として何か別の資料を準備しましたか?

Wu:シリーズAのミーティングに向けて、Shippoのフィナンシャルモデルと収支予測が正確かつ完全かというのをチェックし、顧客からの推薦状も持っていきました。さらにはSocial Capitalのmagic 8-ball分析を行い、これは投資家だけでなく私たちにとっても大変有益な情報でした。今でも会社の状況を確認するために分析結果を使っています。

TC:シリーズAでの資金調達前に知っておけばよかったと思うことは何ですか?

Wu:数週間の間でシリーズAの投資家について深く知ることはできないため、彼らとは資金調達のプロセスを開始するずっと前から関係性を築きはじめなければいけません。そして資金調達の段階で、既にどの投資家に参加して欲しいかというのが分かっていれば、彼らとの会議がもっと効果的なものになります。

TC: Shippoの投資家であるAlbert Wenger(USV)やJeff Clavier(SoftTech VC)とはよく話をしているようですが、積極的なアドバイザーの存在はどのくらい重要だと思いますか?

Wu:Jeffとは月次の電話ミーティングをしていますが、それだけでなく必要に応じて彼とは連絡をとっています。何かあればどんなときでも彼にテキストを送っていますし、Albertについても同じことが言えます!

私は定期的に連絡をとることで信頼関係が構築されると強く信じています。投資家は(悪い)ニュースを聞いたときに驚くべきではないと思いますし、彼らとは常に会社の動向に関する最新情報を共有すべきだと思います。つまり、取締役会の場にサプライズがあってはいけません。

Version OneのBoris WertzFundersClub、500 Startups、Jeff、Albertは、大企業との交渉の場や、見込み顧客への紹介、採用者候補の選定、オペレーションに関するアドバイスなど、さまざまな場面で私たちにとってかけがえのない存在でした。

TC:シリーズAに到達するのは大変ですが、シリーズBに到達するのも同じくらい大変ですよね。今後Shippoの成長を持続または改善するにあたって、どんなことを考えていますか?

Wu:成長を続けるには、繰り返しになりますが人材の雇用が不可欠です。Simonと私しか会社にいなかった頃は、私たちが全部やらなければいけませんでした。でも今は、自分たちのやっていたことを他の人ができるようにしなければいけません。そのためには、仕組みやプロセスが必要で、現在専門家の力を借りながらそのシステムを構築しようとしています。最高の幹部陣を揃えるのは本当に重要です。

また、私たちは話をした全ての投資家から資金を調達したわけではありません。その代わり資金調達のプロセスで、たくさんの素晴らしいフィードバックを得ることができました。そのフィードバックを持ち帰って、私たちの事業のさまざまな点を改善するのに使おうとしているところです。

TC:Shippoの次の一手は何でしょうか?

Wu:私たちはどんな企業や人に対しても、よりスマートにものを送ることができるテクノロジーを提供したいと考えています。

Shippo Seed Deck

Shippo Series A Deck

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(翻訳:Atsushi Yukutake/ Twitter

Heekはウェブサイトを製作できるチャットボット

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スタートアップのHeekは、ウェブサイトの製作をチャットの会話と同じくらい簡単にしようとしている。同社の会話型インターフェイスではチャットボットがいくつかの質問をユーザーに投げかける。ユーザーのビジネス、製作しようとしているウェブサイトについての質問だ。そして、その質問の答えによってカスタマイズされたデザイン候補の中から気に入ったものを選択できるというわけだ。製作プロセスが進むにつれて、チャットボットがユーザーの負担を軽減するための助け舟も出してくれる。

現存するチャットボットの多くはWebサービスとの相性が良いとは言えない。また、チャットボットならではの制限的な性質からイライラさせられることも多い。

しかし、ウェブサイトを会話をしながら製作するというHeekのアイデアは、プロのWebデザイナーを雇う資金を持たなかったり、基本的なWeb製作サービスも難しいと感じる小規模ビジネスのオーナーに受け入れられる可能性は高いだろう。screen-shot-2016-10-03-at-10-40-19-am

Heekを利用するのは驚くほど簡単だ。Heekのウェブサイトでスタートボタンをクリックすると、チャットボットがユーザーの名前、会社の名前、ビジネスのタイプなどを質問する。その後、チャットボットがおすすめするデザインのテンプレートを選択するのだ。テンプレートのタイプには、Eコマース向けのデザインや、有名人向けのサイト、チャリティ向け、サービス業向け、ニュースや食べ物、音楽、スポーツ、教育、ペットなどの「メディア/エンターテイメント」向けのデザインなどがあり、選択肢は豊富に用意されている。

サイトのカテゴリーに沿ったテンプレートは、「Next design」、「Previous design」と書かれたボタンをクリックすることで選択することができる。

Webサイトに必要な要素をユーザー自身が考える代わりに、Heekがアイテムをおすすめしてくれる。例えば、会社の住所やコンタクトフォーム、ページを移動すためのナビゲーションメニューを追加するようにおすすめしてくれるのだ。提案されたアイテムを導入するためには、「OK」ボタンをクリックするだけでいい。導入しない場合には、「No thanks」をクリックする。するとHeekが次の提案をしてくれる。

製作するサイトの種類によっては、より高度なカスタマイズをすることも可能だ。ユーザー自身の写真をアップロードしたり、製品情報や価格などを追加することができる。

しかし、Webサイトのデザインがすべてテキスト・ベースのやり取りで完了するわけではない。写真を取り換えたり、テキストを編集するためにはWeb版のビルダーを使う必要がある(スクリーンの右側に編集中のサイトの見た目が表示されるようになっている)。

写真やテキストの編集に関する明確な説明はないが、カーソルを写真に合わせると「写真を編集」という文字が表示されるなど、比較的操作は分かりやすいだろう。同じく、テキストをクリックすると文字を編集することができ、フォントやサイズ、見た目(太文字やイタリック文字)の変更をすることも可能だ。

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提供されるテンプレートは柔軟にカスタマイズすることもできる。大半の「WYSIWYG(What you see is what you get、見たままが得られる)」Webサイト・ビルダーのように、数多く用意されたサイトの部品をドラッグ・アンド・ドロップでカスタマイズすることが可能だ。

しかし、Heekを利用するうえでテキストや写真の編集について頭を悩ませる必要はない。「箱から出したらすぐ使える」Heekでは、テキストの例文や写真素材を提供してくれるため、サイト製作の面倒くささをより軽減してくれる。

Heekの利用料金は月に30ドル、年間契約ならばひと月あたり25ドルだ。この料金にはWebサイト製作サービス、専用のドメイン名、サーチエンジン最適化、そしてカスタマーサポートも含まれている。

しかし、Heekが本当に優れているのはサービスを試してみるために料金を支払ったり、アカウントを作成することが必要ない点だ。Webサイトのスタートボタンを押せば、すぐにサイト製作に取り掛かることができる。完成するまでにまだ時間が必要なのであれば、その後14日間は無料でサービスを利用することができ、Webサイトもそのまま維持される。

Heekは昨年の終わりにNicolas Fayonによって創立された。FayonはFacebookページのカスタマイズ・ツール、PageYourselfを開発する会社を共同創業した経歴を持つ人物だ。

「私たちがすぐに気がついたのは、(中小規模のビジネスオーナーは)オンライン上のプレゼンスという点に関して、皆が同じ問題を抱えているということです。時間的なリソース、そしてWeb製作に関する知識の無さです」とFayonは創業の理由を説明している。「私たちはその問題の解決策を考えてきました。そして、その解決策とは他のエージェンシーが提供するものと同等のサービスを、安価に提供することだと気づいたのです」。

また、Heekのチャットボットを利用するユーザーが増えれば増えるほど、ボットは賢くなっていくとFayonは語る。

今、同社はWix、Weebly、GoDaddy、Squarespaceなど、Webサイト製作サービスを手掛ける数多くの企業の一つとなった。しかも、Heekはこれらの競合が提供する従来のドラッグ・アンド・ドロップ形式のビルダーよりもシンプルなサービスをつくり上げた。これらの会社の代わりにHeekの競合となるのは、Powerpointのように簡単にサイトを製作できるというコンセプトを持つPageCloudなどの新しいサービスだろう。The Disrupt NY 2016の勝者であるAlexaSiteもまた、声だけでWebサイトの編集をするというアイデアを持ったプロジェクトだ。しかし、あくまでAlexSiteはハッカソンのプロジェクトであり、現在すでに利用可能なサービスではない。

Heekはこれまでベータ版のみの提供であったが、先週にバージョン1をリリースし、これまでに約2500人のユーザーがHeekを利用しているとFayonは話す。

10名のチームを抱えるHeekはパリを拠点とし、過去にフランスのOK Investから70万ユーロを調達している。

[原文]

(翻訳: 木村 拓哉 /Website /Facebook /Twitter

ファンドレイジングに成功したスタートアップ創業者の出身大学は?

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【編集部注】著者のJoanna GlasnerCrunchBaseの記者である。

特定の大学が資金を得てスタートアップを起業する人材を多く輩出することは、良く知られている。これらの学校はある種のクオリティを共有している:大学の威信、大規模なSTEMプログラム、研究の技量、そして投資家たちの資金源が集中する場所の近隣にあることなどだ。

CrunchBase内で私たちは、そのような大学間の記録を追跡するための定量化を行ってみた。まず、米国のトップ研究大学のリストから開始した。2016年のファンディングデータと所属大学のクロスレファレンスを使って、どの大学機関が、シードやVCによって資金調達を果たしたスタートアップの創業者(卒業生、在学生)を、最も多く輩出したのかを決定した。

結果、資金調達を受けたスタートアップ創業者の輩出数としてスタンフォード大が圧倒的なリーダーとして示された。今年ここまでの実績は225人であり、Crunchbase Pro検索によれば、他のどの大学よりも遥かに多い。MITは第2位で、少なくとも145人を輩出、そのあとに続くのがカリフォルニア大学バークレー校ハーバード大学 だ。

以下に示したのがトップ10の比較である。

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高額の資金調達を果たしたスタートアップの創業者の出身大学、という観点で見てもランキングはあまり変化しなかった。

私たちは少なくとも1000万ドルの調達を果たした2012年以降のスタートアップを調べてみた。スタンフォード大学は、ここでも依然トップだった。同大学に所属していた創業者の会社は420社に及ぶ。次はMITの269、ハーバード大学の251、そしてカリフォルニア大学バークレー校の239と続いている。

しかしほとんどの資本をプライベートに調達している企業の創設者の出身大学を見ると、こうした予測は難しくなる。CrunchBaseのUnicorn Leaderboardメンバーの、米国における最も価値ある5社のCEOの出身大学を見てみた結果、過去に大きなスタートアップを創業した卒業生がいることで知られた大学に通っていたことは、ある程度助けにはなるものの、決して必須条件ではないことがわかった。

最も価値ある米国のプライベートなベンチャー支援5社とは以下のものだ:Uber、Airbnb、Palantir、Snapchat、およびWeWork。それぞれの創業者CEOの出身大学は、UCLA、ロードアイランドスクールオブデザイン、スタンフォード、スタンフォード、そしてバルークカレッジである。

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(翻訳:Sako)

プログラミング学習ゲームを提供するCodeSparkが410万ドルを調達

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ロサンゼルスのスタートアップcodeSparkがシード資金410万ドルを調達した。同社は、まだ読み書きもおぼつかない年齢の子供たちに対してもコードの書き方を教えることのできる、ウェブとモバイルのゲームを提供している。

CodeSparkのゲームは4〜9歳の子供たちのために開発され、単にSTEMの概念を教えるだけではなく、男の子と女の子が同様に関われることを目標に置いている。例えば、ゲームには女の子のキャラクターも採用され、ストーリーの中で女の子を救うといった展開は含まれていない。

共同創業者兼CEOのGrant Hosfordによれば、このエデュテックスタートアップの最初のゲームであるThe Foos Codingは、これまで201の国の400万人の子供たちによってプレイされている。ゲームの人気を高いものにしている一因は、Hosfordと共同創業者兼CPO(Chief Product Officer)のJoe Shochetが、その内容を言葉でも数字でもなく、ビジュアルなものにしていることだ。

Hosfordは「言葉を使わないアプローチは、アクセシビリティとローカライゼーションの観点から、私たちにとってとても重要です」と語った。「このゲームは翻訳せずに中国でも米国でも遊べるというだけではなく、ADHDや失読症、あるいはその他の学習上の困難や障害を持つ子供でも、クラスメートと一緒にFoosを遊ぶことができるのです」。

codeSparkはFOOSコーディングゲームです。

codeSpark.orgのFoos Codingゲーム

Kapor CapitalIdealab、PGA Advisors、Felton Group、NewGen Capital、そしてUmang Guptaを含むエンジェルたちの協力の下で、codeSparkのシードラウンドを主導した。

CodeSparkはそのゲームを公立学校、図書館、非営利団体に対して無償で公開している。個々のユーザー(多くは自分の子供に自宅でゲームをプレイさせたい親たち)は、携帯電話やタブレットのためにcodeSparkゲームを購入しダウンロードすることができる。

本日同社は、codeSpark Academy with the Foosという名前のプレミアムサブスクリプションサービスを開始した。これは有償ユーザーに対して、継続的に新しいゲームとコンテンツを配信するものだ。このプレミアムサービスは、iOSおよびAndroidデバイスで利用可能だ。

codeSpark Academy with the Foosは、基本的にはThe Foos Codingの拡張版であり、子供たちにデザインやプログラムを促すパズルやエクササイズ、そして自作のゲームをシェアさせたり、他の子供がプラットフォーム上で作った作品を「リミックス」する機能などが含まれている。

Hosfordによれば、子供たちは「Foos Studio」を利用して既に700万のゲームを作成したということだ。

FOOSスタジオ

Foos Studio

Idealabの創業者Bill Grossは、高度な数学や読みのスキルを身につける前の子供たちにプログラミングを教えるユニークなアプローチが気に入って、codeSparkを応援しているのだと語った。

「まだこれからのことですが、コードは私たちの身の回りのもの全てに埋め込まれるようになります。私たちは米国や世界中に、その原理を理解するより多くの人びと必要としています。ループや、変数、そして順次実行などを理解できる人たちです。もし職業がコーディングでなくても、こうしたことは皆にとって大切なことになります」とGrossは語った。

現在Grossは、世界初のスタートアップインキュベーター Idealabの創設者として最もよく知られているが、かつてはKnowledge Adventureという教育ソフトウェア会社を立ち上げた経験を持っている。Knowledge Adventureは1996年に950万ドルでCendantによって買収されている。ということで彼はエデュテックマーケットの素人ではないのだ。

「当時の私は、子供たちにスキルアンドドリルで演習漬けにする代わりに、子供たちが学びと恋に落ちることを助けたいと願っていました。それ以来私は、インターネット、タブレット、個別化、適用学習といったものが提供する全ての能力を使って、そうしたことを行うことを夢見てきたのです」とGross。

Hosfordは、codeSparkは獲得したシード資金を、新しいカリキュラムの開発、国際的なユーザーベースの構築、一流のアカデミック研究者の行う第三者研究との協力によるゲームの効果の検証などに使っていくと話した。

いつの日か、codeSparkがコーディングの基礎を超えたカリキュラムを提供できる可能性を、Hosfordは見つめている。起業家精神が関心のある領域だ、と彼は話した。

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(翻訳:Sako)

起業家円卓会議(ERA)デモデーにおける12社のプレゼンテーション

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ご存知ない方へ。Entrepreneur Roundtable Accelerator(起業家円卓会議アクセラレーター)は、他のアクセラレーターと同様に、参加するスタートアップ企業を投資候補者へ紹介するプログラムである。

プログラムはまた、スタートアップがマーケットに参加することを助けてくれる、業界に関連したメンターとのペアリングも行う。今年は、12スタートアップのうちの11社が、ERAから40000ドルのシード投資を受けた

このプログラムの有名な卒業生の1つはPublic Stuffだ。苦情管理で顧客をアシストするソフトウェア企業である ‐ 現在はブルジュ・ハリファのビル管理における苦情管理を支援している。

今年のスタートアップは、あらゆる場所からのB2B市場への対応、サイバーセキュリティプラットフォーム、そしてネット接続された犬小屋までをカバーする幅広いものだった。以下に、各企業についての概要をまとめよう。

Caylent

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ソフトウェア開発者が、クラウドを通じてコンテナの構築、ロールアウト、そして管理をできるようにデザインされたDevOpsプラットフォーム。Caylentは、企業のプログラマーたちの新しいプログラムとプロジェクトの構築と保守を簡単にして、本質的に1つの強い組織を作り上げる手助けをする。

Caylentのパイプラインは、アプリケーションのテスト、構築、そしてデプロイを含んでいて、サーバー管理にもおよぶ。Dockerとコンテナテクノロジーで提携し、新しいコードのデプロイ、監視、そして自動テストを可能にしている ‐ これによって企業のプログラマーをDevOpsマシーンへと変身させる。

プレゼンテーションの中では、このフィールドに関する同社の向かう方向への将来性へのアピールに加えて、MicrosoftがCaylentのクラウドインフラストラクチャに投資していることも言及された。

ClearChat

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安全な通信のための企業向けサイバーセキュリティプラットフォーム。私たちも以前取り上げたことがある。今も増大し続ける、金融、健康、法務、政府などに適した、セキュアなチームのコミュニケーションとファイル共有の必要性に応えることを狙っている ‐ もちろんTechCrunchのような出版にも。

ClearChat は、本質的にSlackの補完を狙っている。隔週とも言えるペースで主要なコミュニケーションプラットフォームが破られていて 、個人情報が危険にさらされている。ClearChatは、やりとりしているものの内容に関してプライバシーと安全を守る、チームのためのよりよいプラットフォームを提供しつつ、こうした危険な現状を終わらせたと願っている。

CoLoadX

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古臭い慣習が支配する国際海上貨物業界を狙っているB2Bマーケットプレイス。CoLoadXは海上貨物の船積みの近代化を行おうとしているが、輸送費の節約だけではなく、大規模な船積みにも対応できる標準的な方式の地位になることを狙っている。

現在、彼らの最初の顧客たちはニューヨークからドバイまでの範囲で運行を行っている、このように彼らは既にいくつかの海と大洋をカバーしている。

Fauad Shariff、Petere Miner、そしてSalima Fassellの3人組に率いられた同社は、輸送コンテナ業界に新しい方式を持ち込むことに断固たる決意で臨んでいる。単に最もコストが安い提案を顧客のために見つけるだけでなく、それをインターネットを介して行うのだ – これは大部分をFAXと電話に頼っている業界にとって、新鮮な手段なのだ。彼らがこのジレンマに対して正しいアプローチをしていると考えてくれる顧客が、どの位いるのかがこの先注目される点だ。

Dog Parker

dog-parker-2-190x80彼らは今年のDisrupt NYの参加者である。これが要約だ:安全で、分刻みの温度管理がされた犬小屋。よく分からない説明である。

Dog Parkerの目標は、店舗がその敷地内に安全な犬小屋を設置できるようにすること、具体的にはDog Parkerの犬小屋を置いてもらうということだ。ビジネス上の観点は、通常は衛生上の規制から、こうした施設がなければ来店することのできない犬の飼い主を、小売店が引きつけられるようにすること。そうして業界を問わずビジネスの推進が行われるようにすることである。

一方、商品としての本当のアイデアは、犬の所有者が健康と安全に関してDog Parkerを信頼できるようにすることで、安全で、抗菌で、温度管理のされた鍵のかかる犬小屋は事前にアプリを通して予約をすることが可能で、どの位置にあるかもアプリを通して知ることができる。

問題は、私のジャーマン・シェパードのどの1匹もその中に収まろうとしないことだ。

Felix Gray

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David RogerとChris Benedictによって創業されたFelix Grayは、目の健康を意識している21世紀のスタートアップだ。大人のミレニアル世代と現代の子供たちの両方を相手にしている。眼精疲労の原因になるブルーライトやスクリーンの反射から目を保護することを目的としたメガネを売っている(この技術はGunnar Optiksに酷似している)。これによってドライアイの、究極には不眠の原因になるという眼精疲労を予防するのである。

結局のところ、いまや誰もが何時間も画面を見つめている。何時間もの間画面を見続ける私たちの眼精疲労を軽減するための手頃なソリューションを提供したいというのがFelix Grayの主張である。Felix Grayのメガネはブルーライトフィルター付きで95ドル、なしで75ドルである。

問題は、これは光学的なアプローチではなく、ハードウェアの改良によって解決されると思われる問題に対する一時的な解だということだ。

FROTH

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Catie Cole、Dae Lim、そしてHarry Leeによって創業された First Round on the House(FROTH)はアルコール飲料ブランドのためにデザインされたニューヨークのマーケティングプラットフォームだ。

その目的は、iOSアプリを介して、消費者に飲料ブランドのマーケティング効果を届けることだ。もしAbsolutウォッカが気になっているが、飲むことがなかった場合、Absoluteはあなたに彼らのウォッカを飲む気にさせる。

ブランドは、アプリを利用して飲み手のために特定の場所(バー)を指定する。飲み手(ユーザー)は自分の手元でアプリを使い、気分に合った飲み物を指定する。ユーザーの選んだ場所で飲料ブランドはこのコネクションを使って、ユーザーをターゲットにして飲み物の選択肢を提供することが出来る ‐ その店でのテイスティング(味見)の一環としてだ。皆がタダ酒を好きなこと、そして無料で試飲させてくれるブランドには更に向かいやすいことにに気がつくのにそれほど長い時間はいらない。そして、結局それらが飲み手の好む飲料になっていくことにも。

Bullet BourbonとKetel One VodkaがFROTHの新しい2つのパートナーである、今年の後半にはノンアルコールのブランドの参加も計画されている。

inkHunter

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InkHunterはモバイルアプリ全般を改善することを狙ったARプラットフォームである、ARはモバイルでは遅く、一貫性がないと思われてることがその開発の動機だ。

Oleksandra RohachoveとPavlo Razumovskyiによって創業されたinkHunterは、ARを使って自分の体の上のタトゥーをプレビューすることを可能にする – これは、彼らの提供するマークベースのARテクノロジーの1応用例である。身体の上でタトゥーを入れたい場所にスマイルマークを描くことで、inkHunterアプリはその落書きを認識しタトゥーに変換してARを使い画面上に表示する。

これまでのところ、inkHunterはApp Storeで250万回以上ダウンロードされている。彼らはプレゼンテーションで、タトゥーを超えて、彼らのAR技術をeコマースや、健康産業、そしてゲーム会社で利用してもらうことが彼らの希望だと述べた。

Karate Health

karate-health-190x80Arif SorathiaとBrett Adelmanによって創業された、データサイエンス主導のスタートアップである。狼瘡などの、慢性で自己免疫疾患の患者を対象にしている。

Karate Healthは、ピアリレーションシップ、薬や副作用の追跡、そして教育素材を組み合わせたアプリだ。ユーザーは自分の処方薬、経験した症状、そして幾つかの必要な個人情報(年齢や性別など)を入力する。患者たちに自分自身の状態について学んでもらうことがKarate Healthの最終目標であり、一方ヘルスケアプロバイダーに彼らの患者の状態や症状について知るためのよりコスト効率の高い手段も提供し、研究と治療を改善する。

成功の可能性という点では、Karate Healthはそのプレゼンテーションの中で、現在1500人以上の狼瘡患者を支援しており、程なくその専門分野を関節リウマチ(RA)患者を支援にも広げると述べた。

Koa

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Mark Hartmanによって創業されたKoaは、住宅ローンの買い手と売り手のためのソフトウェアプラットフォームである。エンドツーエンドの取引及びローン管理を行うこのシステムは、2008年の金融危機からずっとアップデートされて来なかった業界の、近代化を目指している。

Koaの現在および将来の顧客は、彼らのローン投資に対する管理、分析、執行を、コンピューター上のオンラインコントロールパネルを使用して行う。有効性に対するKoaの主張は、Koaのそのまま使えるソフトウェア実装によってユーザーはコストを減らし、利益を増やす便益を受けることができるというものだ。一見ものすごくエキサイティングなものではないが、潜在的な顧客の増加に伴い、Koaの究極のビジョンは顧客同士の取引を可能にするものとなる – おそらくそれは有用なものであろう。

Pairprep

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Pairprep:教育プラットフォームのスタートアップ。Sean Lanningによって創業され、AIを活用する企業だ。写真を撮るか、PDFをアップロードすることで、教師(または親)が課題を作成することができ、それらを彼らの生徒たちのための個別の必要性に応じて調整することができる。

より良くより豊かな課題を作成し、究極的には主要な教科書出版社と競うことを可能にするために、複数の教師(または親)がコラボレーションするためのツールが用意されている。Pairprepの主張は、50000人の代数教師のチームは、PearsonやMcGraw-Hillといった大出版社の専門家たちよりも、生徒のためのよりよい課題を生み出すことができるというものである。

35万8000人のユーザーを擁するPairPrepは、業界を根底から覆すだけの強みと知識を(その協力する教師たちが)持っていると考えている。当初、ソフトウェアの基本機能に対しての教師からの支払いは発生しない、プレミアム機能(生徒のための個別支援機能など)に対して支払いを行ってくれる学校を獲得するのが彼らの目標である。

SensorKit

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Houtan FanisalekとKenneth Krugerによって設立されたSensorKitは、アクティビティやジェスチャー認識を行うプラットフォームである。彼らが主張するのは、機械学習を使ってApple WatchやMoto 360 smartwatchesのようなウェアラブルからのトラッキングを向上させるという点である。ありがたいことに、これは新しいハードウェアを生産するということではなく、既存のウェアラブルのセンサーを改良するという話である。

SensorKitはアプリを裏側で支える頭脳であり、YouMoveとよばれるソフトと同じメンバーによって開発された。AndroidとiOS向けのものが存在していて、プラットフォームを用いてユーザーのアクションを自動的に検出する。検出されるものはベンチプレス、スクワット、ボート漕ぎ運動、時間の設定や休憩などである ‐ すべて聴覚フィードバックを用いてユーザーのコーチに利用される。

以前はiPhone上のアプリだけだったが、SensorKitは新しく解放されたApple Watchのセンサーをこの先活用するようになる。よってYouMoveはApple Watch上で使えるようになる。これは10月7日からである。

Turnout.ai

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Julien Newmanが共同創業者であるTurnout.aiは、企業に近代的な世論調査を可能にする、B2Bの分析プラットフォームだ

世論調査員や申込書から世論データを手動で集めることは定型作業なので、Turnout.aiはそうしたフォームをスキャンして検索可能なPDFの形に変換する。「草の根アプリを使った草の根運動」の世論調査員は、リストを撮影しデータを集める。Turnout.aiはデータをデジタル化し、支持者たちにあなたの主張(登録時にアウトラインを入力したもの)に関連するデータとして送ることができる。

Turnout.aiの名簿に加わった最初の顧客はUberである、(アプリ全体ではなく)分析エンジンのみを使って、Turnout.aiによって定量化されたデータから定性データを見つけている、そうして社会的反発を回避するようにしている。その通り、本質的に彼らは企業や個人的な課題への支援を行うために対話の内容をマイニングしている – その是非の判断はお任せする。

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(翻訳:Sako)

Flywheel、タクシー用のUberライクなシステムをニューヨークに拡大

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タクシー用アプリのスタートアップ、Flywheelが正式にニューヨーク進出した。従来型タクシーがUberやLyftに対抗するための基盤を作る。最近Flywheelは、ニューヨークのタクシー・リムジン委員会から同社のスマートフォン用タクシーメーター、TaxiOSを利用するための承認を得た。TaxiOSには、配車、支払い、ナビ、およびGPSベースのメーター等の機能がある。

Creative Mobile TechnologiesのArroや、VerifoneのWay2Ride等のライバルも、UberやLyftに代わるシステムとして、独自のデジタル配車・支払いアプリを提供している。

「これまでは典型的な二社による寡占だった」とBhambaniは言った。「この10年近く、この2社だけが認可を受けていた。われわれが破壊したいのはこの複占状態だ」。

昨年12月、FlywheelはTaxiOSのサンフランシスコでのパイロットテスト成功を経てカリフォルニア州から利用許可を得た。現在サンフランシスコを走るタクシー約1800台のうち、400台がTaxiOSを使用している、とFlywheelのCOO、Oneal Bhambaniが私に話した。ニューヨークでは、今年末までに従来型タクシーメーター1000台を置き換えることを目標にしている。

その過程でFlywheelは、Samsungのタブレットを後部座席に置いて乗客がWi-Fiスポットやエンターテイメントを利用できるようにしたいと考えている。過去2年間FlywheelはEコマース会社のライストマイル配送も行っている。Bhambaniは請負っている会社の数も名前も明らかにしていないが、ウォール街の噂によると、Amazonがその中の一社だという。

現在Flywheelは、サンフランシスコ、ロサンゼルス、シアトル、今回のニュークを含め7都市で運用されている。

[原文へ]

(翻訳:Nob Takahashi / facebook

ベンチャー資金―使い方を誤ればスタートアップの麻薬になる

Long exposure of cars traffic at night

この記事はCrunch NetworkのメンバーのEric Paleyの執筆。PaleyはFounder Collectiveのマネージングディレクター。

この数年、巨額の金がスタートアップにつぎ込まれている。資金を集めるのが簡単でコストがかからないというのはもちろん有利だ。ファウンダーは単に多額の資金を得られるようになっただけでなく、以前だったら資金集めが不可能だった巨大なプロジェクトを立ち上げることができるし、中には実際ユニコーン〔会社評価額10億ドル以上〕の地位を得るものも出ている。

このトレンドの負の面については、「これはバブルだ」という議論が常に持ち出される。こうした警告は主として経済環境やビジネスのエコシステムのリスクに関するものだ。

しかしスタートアップのファウンダーが日々するリスクについての分析はめったに行われない。簡単にいえば、こういうことだ―より多くの資金はより多くのリスクを意味する。問題はそのリスクを誰が負うのかだ。物事がうまく行かなくなってきたときどのようなことが起きるのか? なるほど資金の出し手は大きなリスクを負う。しかしリスクを負うのはベンチャー・キャピタリストだけではない。

ベンチャー・キャピタルでファウンダーのリスクは増大する

短期的にみれば、ベンチャー資金はチームの給与をまかなうために使えるのでファウンダーが負う個人的リスクを減少させる。ファウンダーは開発資金を確保するためにクレジットカードで金を借り入りるなどの困難に直面せずにすむ。しかし、直感には反するかもしれないが、ベンチャー資金の調達は、次の2つの重要な部分においてリスクを増大させる。

エグジットが制限される

ベンチャー資金の調達はスタートアップのエグジット〔買収などによる投資の回収〕の柔軟性を奪うというコストをもたらす。またバーンレート〔収益化以前の資金消費率〕をアップさせる。実現可能性のあるスタートアップのエグジットは5000万ドル以下だろう。しかしこの程度ではベンチャー・キャピタリストにはほとんど利益にならない。ベンチャー・キャピタリストはたとえ実現性が低くてはるかに大型のエグジットを望むのが普通だ。

ベンチャー資金というのは動力工具のようなものだ。動力工具なしでは不可能が作業が数多くある―正しく使われれば非常な効果を発揮する。

巨額のベンチャーを資金を調達したことによって引き起こされた株式持分の希薄化に苦しむ起業家は非常に多い。巨額の資金調達は、実現性のあるエグジットの可能性を自ら放棄することを意味する。その代わりに、ほとんどありえないような低い確率でしか起きないスーパースター的スタートアップを作ることを狙わざるを得ない状態を作りだす。何十億ドルものベンチャー資金が数多くの起業家にまったく無駄に使われている。スタートアップに巨額の資金を導入しさえしなければ現実的なエグジットで大成功を収めたはずなのに、実現しない大型エグジットの幻を追わされた起業家は多い。.私のアドバイスはこうだ―実現するかどうかわからない夢のような将来のために現在手にしている価値を捨てるな。

バーンレートが危険なレベルに高まる

エグジットが制限されるだけでなく、ベンチャー資金の導入はバーンレートのアップをもたらすことが多い。 スタートアップのビジネスモデルが本当に正しいものであれば、バーンレートの増大は有効な投資の増大を意味する。ところが、スタートアップがそもそも有効なビジネスモデルを持っておらず、増大したバーンレートが正しいビジネスモデルを探すために使われることがあまりに多い。残念ながら正しいビジネスモデルは金をかけたから見つかるというものではない。そうなれば会社はすぐにバーンレートそのものを維持できなくなる。CEOは節約を考え始めるが、そのときはもう遅すぎる。すでにベンチャー・キャピタリストの夢は冷めており、熱狂を呼び戻す方法はない。

導入された資金はすべて持分を希薄化させるものだということを忘れてはならない。粗っぽく要約すると、スタートアップは資金調達後の会社評価額を2年で3倍にしなければならない。1ドル使うごとに2年以内に3倍にして取り返せるというか確信が得られないなら、そういう金を使うべきではない。というか最初からベンチャー資金を調達すべきではない。

繰り返すが、ベンチャー資金は動力工具だ。つまり使用には危険が伴う。しかし未経験な起業家はどんな夢でも常に叶えてくれる打ち出の小槌と考えがちだ。チェーンソーがなければできない作業は数多い。しかし間違った使いかをすれば腕を切り落とされることになる。

ベンチャー・キャピタリストには10億ドルのエグジットが必要―起業家はそうではない

10億ドルのエグジットはもちろん素晴らしい。しかし起業家は最初からそれを成功の基準にすべきではない。ユニコーンを探すのはベンチャー・キャピタル業界特有のビジネスモデルではあっても、スタートアップの成功はそういうもので測られるべきではない。

10億ドルのベンチャー資金の背後にあるビジネスの論理を簡単に説明しよう。

  • ベンチャー・キャピタリストが10億ドルのファンドを組成する。成功とみなされるためにはそれを3倍に増やさればならない。
  • ベンチャー・キャピタリストは30社に投資する。
  • ベンチャー・キャピタリストは10社についてブレーク・イーブン、10社について全額を失う。すると残りの10社は平均して3億ドルの利益をファンドにもたらす必要がある。。
  • ベンチャー・キャピタリストのスタートアップの持分は通常2割から3割だ(それより低いことも珍しくない)。このビジネスモデルでは、1社10億ドル以下のエグジットではベンチャー・キャピタリストにとって成功とはみなせないことになる〔10億ドルのエグジットならVCの利益は2-3億ドルとなる〕。

こういう仕組みがあるのでベンチャー・キャピタリストは10億ドルのエグジットを求める。10億ドルのエグジットがたびたび起きないことが事実であっても、大型ベンチャー・ファンドのビジネスモデルがそれを要求する。
単に10億ドルのレベルだけの問題ではない。ベンチャー・キャピタリストのビジネスモデルは2.5億ドルのエグジットについても同じことを要求する。

資金に洞察力はない―それは単なる金に過ぎない

おおざっぱに言って、スタートアップのエグジットは資金の元となったファンドの総額以上でなければベンチャー・キャピタリストにとって重要な意味があるとはみなされない。これはもちろん「尻尾が犬を振る」ような本末転倒だ。ベンチャー・キャピタリストはファウンダーに「ビッグを目指せ。でなければ止めろ」という非合理な行動をけしかけている。誰も表立って言わないが、「ビッグを目指せ。でなければ破滅だ」というのが裏の意味だ。

もしスタートアップが失敗したら―これは多くのスタートアップがたどる道だ―30社に投資しているベンチャー・キャピタリストはあとの29社に期待をつなぐことができる。しかし起業家には自分のスタートアップ以外に後がない。スタートアップを育てるために注ぎ込んだ努力と時間はまったくの無駄になる。つまりベンチャー資金の調達ラウンドでは、通常、資金の出し手より受け手の方がはるかに大きなリスクを負う。

もちろん一部のファウンダーにとってベンチャー資金は必須のものだ。しかし―フェラーリは確かに優れた車だが、普通の人間が家を抵当に入れてまで買う価値があるかは疑問だ。通勤やスーパーで買い物するためならトヨタ・プリウスを買うほうが賢明だろう。

エグジット額は見栄の数字

もしファウンダーの目標の一つに金を稼ぐことが入っているなら、エグジット額に気を取られるのは愚かだ。スタートアップを10億ドルで売却したにもかかわらず手元に残った利益は1億ドルで売ったときより少なかったということはしばしばある。

身近な例でいえば、Huffington Postは3億1400万ドルでAOLに売却され、ファウンダーのアリアナ・ハフィントンは1800万ドルを得たという。一方、TechCrunchのファウンダー、マイケル・アリントンは同じAOLにTechCrunchを3000万ドルで売却し、2400万ドルを得たと報じられた。ベンチャー・キャピタリストの立場からすればTechCrunchの売却は「大失敗」だ。ベンチャー・キャピタリストならマイケルに「そんな値段では売るな」と強く勧めただろう。ところがマイケル・アリントンはこの取引でアリアナ・ハフィントンより多額の利益をえている。

起業における練習効果

私がベンチャー・キャピタリストから何度も聞かされた議論は、ファウンダーはポーカーでいえばオールインで、全財産をつぎ込むのでなければスタートアップを成功させることはできないというものだ。これはもちろんナンセンスだ。スタートアップを10億ドルに育てるためにはまず1億ドルにしなければならない。起業家は一足飛びに10億ドルに到達できるわけではない。現金化のレベルに到達するまでにはさまざまな段階を踏まねばならない。次の1歩に集中していてもなおかつ、結局はスケールの大きいエンドゲームにたどりつくことはできる。

まだ実現してい将来のために現在を売り渡してはならない

これは本質的に重要な点だ。成功したとみなされるスタートアップを見てみるとよい。WayfairBraintreeShutterstockSurveyMonkeyPlenty of FishShopifyLyndaGitHubAtlassianMailChimpEpicCampaign MonitorMinecraftLootCrateUnityCarGurus and SimpliSafe等々。こうしたスタートアップはどれも最初から「10億ドルか死か」というような考え方と無縁だった。にもかかわらず、このリストには10億ドル以上の企業が多数含まれている。こうした企業はスタート当初はほとんど、あるいはまったくベンチャー資金を導入していない。プロダクトにニーズがあり、市場に適合していることが明らかになり、さらに需要な点だが、ファウンダーが企業を拡大するためにどのように資金を使ったらいいかわかるようになってからベンチャー資金を調達している。なかにはベンチャー資金に一切頼らなかったスタートアップもある。

上に挙げたようなスタートアップは最初の1日から資金の使い方が非常に効率的だった。こうしたスタートアップには上場したものもあるし、10億ドル以上の金額で大企業に買収された会社もある。私は外部資金に頼らない起業、いわゆるブートストラップを特に推奨するものではない。しかし資金を賢明に使って企業を育てたファウンダーのやり方には学ぶべき点が多々あるとはずだ。

賢いのは人間で、金ではない

私は10億ドル起業のファウンダーとなることを目指すこともできたかもしれないが、事実は起業した会社を喜んで1億ドルで売却した。スタートアップを10億ドルに育てることも1億ドルに育てることも同じくらいの確率で実現するという誤った思い込みをしている起業家が多すぎる。なるほど10億ドルでエグジットするというのはファウンダーの夢としてはすばらしい。しかし5億ドルのエグジットなら間違いなくホームランだし、1億ドルのエグジットは驚くべき成功だ。
5000万ドルのエグジットでも大勢の関係者の生活を一変させるようなインパクトがある。そもそも100万ドル程度の「はした金」の現金化でファウンダーには大きな影響がある。

要するに、エグジットの可能性を早まって売り渡してはならない。持分やオプションを売るのは、スタートアップの将来価値が現在よりはるかにアップするという確信が得られてからにすべきだ。いかに多額の資金を導入しても洞察力が増すわけではない。堅実なビジネスを宝くじの束などと交換してはならない。

会社をスケールさせる必要があるからといっても道理に合わない多額の資金を調達することはビッグ・ビジネスを作る道ではない。起業家は大きく考え、大きな夢を持つべきだ。ベンチャー・キャピタリストの助力を得ることはよい。だがベンチャー資金をステロイドのように使うのは致命的だ。「効率的なスタートアップ運営」をモットーにすべきだ。断っておくが、私は起業家は小さい会社を作るべきだかとか小さい問題だけを解決すべきだとか言っているわけではない。正しい理由があるならなんとしてもベンチャー資金を調達すべきだ。しかしベンチャー資金ラウンドの華やかな見かけのために将来を売り渡してはならない。ベンチャー資金はファウンダーの自由を奪い、不必要に高いバーンレートをもたらす可能性がある。

実は大部分のスタートアップにとってベンチャー資金の導入は正しい選択ではない。正しく使われればベンチャー資金はきわめて有効だ。しかし残念ながら、多くの起業家は正しい使い方をしていない。

画像:xijian/Getty Images

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

新たなスタートアップDoorkeysがインドの不動産市場を電子化

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ようやくテクノロジーが欧米の不動産ビジネスを変えようとしているが、新興市場の方が住宅の購入や賃貸に関し深刻な問題を抱えている。世界各地で不動産に関する情報が不足している中、利用できる情報もでたらめにまとめられている上、さまざまな関係者が自分の利益を追求しながらこの業界に深く関わっているため、そのうち誰かを飛び越えてビジネスを行うこともできないでいる。

インドで誕生した新たなスタートアップのDoorkeysは、業界の透明性や効率性を高めるため、住宅売買のプロセスをオンライン化しようとしている。

Rising Straits Capitalの会長を務め、不動産業界での豊富な経験を持つSubhash Bediと、サービスマーケットプレイスMydala.comの共同ファウンダーであり実業家のArjun Basuによって設立されたDoorkeysは、200万ドルの資本金とともに9月1日にローンチした。

不動産取引のオンライン化

同社のプラットフォームは、基本的には売り手と買い手を結びつけるマーケットプレイスとして機能している。仲介業者を全て排除するNoBrokerのような競合サービスとは違い、Doorkeysは仲介業者の存在を認めている。同サービスは、言うならば既存のシステムや関係者に変更を加えず、全体をそっくりそのままデジタル化しようとしているのだ。

「アメリカでさえ仲介業者を取り除くことができていないのに、インドのような透明性が極めて低い市場でそれが実現すると思いますか?」とBediはTechCrunchとのインタビューで話していた。「仲介業者を考慮しないコンセプトは現実離れしているように感じます。私たちは、Doorkeysを仲介業者用のオンラインCRMシステムのようにとらえようとしているんです」

ユーザーはDoorkeys上で、地域や価格といった条件をもとに候補となる物件を探すことができます。さらに全ての売り手(=仲介業者)はレート付けされているため、内覧やその後の契約をアレンジする業者を選ぶ際に、買い手は高いレーティングの業者を探しだしたり、彼らの過去のパフォーマンスに基づくコメントを確認することができるのだ。つまり、Doorkeysは仲介業者が買い手の利益を1番に考えるという、現在のインドの仲介業者にはあまり意識されていない考え方に対するインセンティブを生み出そうとしているのだ。

「インドには50万以上の不動産仲介業者が存在します。不動産市場はとても細かく分散しているものの、私たちは仲介業者にツールを提供しつつ、街や近隣地域に関する彼らの知識を利用することで、この規制の行き届いていない分野のフレームワークを構築しようとしているのです」とBasuは付け加え、さまざまなオフラインのプロセスにも仲介業者の力が必要であると説明した。

Doorkeysは、売り手・買い手のどちらからも利用料を受け取っておらず、その代わりに契約時のコミッション(詳細非公表)を通じて収益をあげている。既に同社は、向こう2年間のうちに年間純利益7000万ドルを達成するという野心的な目標を掲げている。

「私たちは、既にいくつかの国内最大級の仲介業者ネットワークに入り込んでおり、Doorkeysの付加価値についても彼らに理解してもらっています。仲介業者は物件の引き合いに関する情報(旧来の広告業界で言えば虚偽の引き合い情報)に対して、そこまでの大金は支払っていません」とBasuは語る。

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ローカル市場へのフォーカス

Bediは、以前不動産テクノロジー企業に対する投資環境の偵察のためにインドを訪れたが、その結果にがっかりしたところで、BasuとDoorkeysのアイディアについて話しはじめたと説明する。

BediとBasuによれば、当分の間Doorkeysはニューデリー市場に注力し、急速な拡大路線をとることはない。

「最初にニューデリーというローカル市場でサービスを開始するのはとても重要なことです」とBasuは説明する。「私たちはまず、ローカルレベルでユニットエコノミクスを成立させなければいけません」

インドの上位8都市前後が国全体の不動産取引の約80%を占めていることから、今後の目標は、インドの全ての地域を攻めるのではなく、大きなボリュームを占める中核都市に進出することだと彼は語った。

彼らのモデルが正しいことを証明するための上記のような計画を踏まえ、Doorkeysはコスト面も”締めて”いきたいと考えている。現在同社は40人の社員を抱えており、今年の終わりまでにはその数を倍に増やす計画だ。

「創設メンバーは今後もこのサービスに資金を投入していくほか、さらに今後数ヶ月間のうちに、不動産業界に大きな影響力を持つ企業や投資家からのシードマネーの受け入れも予定しています。そして、最終的に私たちは”A級”投資家の獲得を狙っています。そうは言っても、Doorkeysは多くのアセットを必要としないモデルのため、重要なのは現金燃焼率を抑え、サービスの普及を待つということです」とBediは語る。

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(翻訳:Atsushi Yukutake/ Twitter

Squireは理髪店にUberの利便性をもたらす

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先週Y CombinatorのSummer ’16 Demo Dayでお披露目されたSquireは、理髪店のためのソフトウェアを提供している。サロンでもなければビューティーパーラーでもなく、他のどんな場所でもなくて…ただの理髪店向けなのだ。

それでは、その独自のソフトウェアプラットフォームに存在理由を与えられるほどに、理髪店のどんな点がユニークなのだろうか?いくつかの点が挙げられる。

まず、ほとんどの顧客は、理髪店の予約は髪を切る当日に行う。サロンのように何週間も前にではない。さらに、多くの理髪店はその席を、独立した事業主としての理髪師に貸している ‐ これが典型的なサロンに比べて、バックエンドの仕組みを少し変わったものにしている。

さらに理髪業界は、正確に言えばニッチではない。メンズ整髪業界は今年、全体で200億ドル以上の規模になる、そして世界の理髪店は明らかにその巨大な一角を占めているのだ。

したがって、これらのユニークなユースケースをサポートし、その顧客が使う200億ドルの一部を掴むため、Squireは顧客と理髪店所有者のためのプラットフォームを構築したのだ。

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Squireの顧客向けアプリ

顧客対応プラットフォームは、ユーザーが近くの理髪店を見つけて、電話またはSMSの必要なしに予約をすることができるモバイルアプリとウェブサイトだ。それに加えて、キャッシュレスで理髪師に料金とチップを支払うことができる。ヘアカットの予約(とその支払い)を、まるでUberのように簡単にできるので、顧客はそれを喜ぶし、普通は立ち寄らないような新しいお客さんを連れて来てくれるので、店側も嬉しいのだ。

理髪店管理のためのバックエンドのプラットフォームは、もう少し複雑だ。これは、顧客リレーションシップ、支払い、スケジュールなどを扱う – Squireによれば「どんなお店でも必要とされる全てのテクノロジーを」提供するのだ。

理髪店のような伝統的な産業にハイテクソリューションを持ち込むことは、通常は典型的な失敗のレシピである ‐ レストラン業界が辿ってきた10年に及ぶオーダーとデリバリーテクノロジーの適合の痛みを見るだけでそれはわかる。しかしSquireの共同創業者であるSonge LaRonとDave Salvantによれば、理髪店オーナーからの反応は、そうしたものとは全く逆のものであるそうだ。

2人はすぐに、理髪店オーナーたちはすでにテクノロジーが彼らの業界の利益向上を手助けしてくれることを理解していて、この全体テクノロジーに乗る準備ができていることを発見した。

さらに、オーナーたちは明らかに、顧客が望むものを与える必要があることを理解していた、そして間違いなく顧客はモバイルで予約や支払いができるようになることを望んでいたのだ。

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Squireの理髪店向け管理画面

Squireは現在、ニューヨークとサンフランシスコの100あまりの理髪店で採用されていて、来年には1000店舗を目指している。同社はまた、まだ現金やカードで支払いたい人々にも満足して貰えるように、POSシステムを展開することを計画しいている。

興味深いことに、サービスは現在それを利用したい理髪店には無償で提供されている ‐ 要するに同社はなるべく多くの理髪店を巻き込みたいと考えているのだ、そしてその上で会計やマーケティングにチャージすることで収益を挙げようと考えている。顧客は現在1取引当たり1ドルを支払っているが、それはほとんど収益源としては機能していない。Squireの収入はできるだけ多くの理髪店に参加して貰い、徐々に新しいサービスを提供することによってもたらされるのだ。

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(翻訳:Sako)