ハードウェア開発者のための「GitHub」を目指すコラボハブAllSpice

AllSpiceの創業者、カイル・デュモン氏とヴァレンティナ・ラトナー氏(画像クレジット:Harvard Innovation Labs)

AllSpice(オールスパイス)はハードウェア開発のためのコラボレーションハブだ。GitHub(ギットハブ)に触発され、DevOpsエコシステムを構築することを使命として、プライベートベータ版から登場した。

創業者のValentina Ratner(ヴァレンティナ・ラトナー)氏とKyle Dumont(カイル・デュモン)氏は、2019年にハーバード大学で出会い、2人とも工学修士とMBAの両方を取得した。2人は、物事を進めるのにPDFや電子メールに頼るという、ソフトウェア開発に比べて遅れているハードウェア業界でのそれぞれの仕事に対するフラストレーションで意気投合した。

「ソフトウェア業界は強力なコラボレーションと自動化を備えている優れた開発者ツールで一斉にスタートしているように感じていました」とデュモン氏はTechCrunchに語った。「私がヴァレンティナに会ったとき、私たちはどのようにこの業界を修正することができるか、市場の規模にどのような影響を与えることができるか、アイデアを出し始めました」。

未だに手作業で行われているタスクが多く、エンジニアは書類作成やスプレッドシートにかなりの時間を費やしているため、エンジニアがハードウェア製品の設計や構築に大半の時間を割けるようにすることが、AllSpiceの背景にある考え方だとラトナー氏は話した。

AllSpiceのデザインレビュー機能(画像クレジット:AllSpice)

リモートワークや近年のチップ不足を背景に、AllSpiceや他の企業は「ハードウェアのためのGitHub」が必要だと考えている。リモートでほとんど何でも作ることを可能にするコラボレーションツールを作っているWikifactory(ウィキファクトリー)は、2020年末に300万ドル(約3億5000万円)の資金調達を発表した。2021年10月に1200万ドル(約13億8000万円)を調達したFlux(フラックス)は、ブラウザベースのハードウェア設計ツールを開発中だ。

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AllSpiceのツールで、エンジニアリング専門の人は自分のプロジェクトを管理し、チーム内の関係者と共同作業ができるようになる、とデュモン氏は話す。AllSpiceは、GitHub、GitLab(ギットラボ)、Bitbucket(ビットバケット)などのツールと互換性があり、ハードウェアチームが修正、レビュー、リリースを1カ所で管理するための一種のホームベースとして機能する。

AllSpiceは2020年にプレシードラウンドを調達した。そして、Bowery CapitalとRoot Venturesが共同でリードし、Flybridgeとエンジェル投資家が参加した320万ドル(約3億7000万円)のシードラウンドをこのほどクローズした。累計調達額は380万ドル(約4億4000万円)となった。

2021年は、数百の企業向けユーザーコメント、30以上のプロジェクト、数百のプロジェクトリポジトリが作成され「信じられないような採用」があったとラトナー氏は述べた。この勢いを維持するために、新しい資本は継続的なインテグレーションとデリバリーのためのエンジニアリングとマーケティングの新規雇用に投入される予定だ。

「私たちは、開発者主導のアプローチをとっています。これは、ソフトウェア業界ではしばらく前からしっかりと確立されていることですが、ハードウェア業界では、まだかなり営業が強いのです。業界に追いついていない販売手法もあるため、私たちはまずエンジニアに役立つ製品を提供することを心がけています」。

AllSpiceはツールに依存しない。幅広い企業にアピールできるよう、統合のための別のCADツールをもたらし、そしてより多くのものがデジタルで非同期であることから、環境の変化にハードウェアチームが迅速に対応できるようにする、というのがAllSpiceの計画だとラトナー氏とデュモン氏は話す。

一方、Bowery CapitalのゼネラルパートナーであるLoren Straub(ローレン・ストラアブ)氏は、AllSpiceを紹介されたとき、同社は製品主導の成長アプローチに注目していたと述べた。ストラアブ氏が最もよく目にしたものは、サプライチェーン、製造、オートメーションと関係があり、ハードウェアも含まれていた。

ストラアブ氏は、創業者たちがソフトウェアとハードウェアのエンジニアリングの経験を持ち、ハードウェア開発がいかに困難で時代に遅れを取っているかを目の当たりにし、それを経験していたことに魅力を感じたという。

「事前調査を進めていくなかで、今まで見たこともないようなフラストレーションが溜まっているのを目にしました。人々は、そのエクスペリエンスがいかにクリエイティブな体験であるかを聞いて、いくつかのソフトウェアツールに自分達のワークフローを無理やり取り込もうとしたが、うまくいかなかった、とさえ言っていました」と付け加えた。「ヴァレンティーナとカイルは、ハードウェアのために適切なツールが作られれば、どれだけ良くなるかを深く理解していたのです」。

「VCになる前、私は10年以上ハードウェアエンジニアリングに携わっていました」と、Root Venturesのパートナー、Chrissy Meyer(クリッシー・メイヤー)氏は電子メールで述べた。「Appleのような大企業がスタートアップと共通していたのは、スクリーンショットを使ってデザインレビューをまだ行っていたことです。ハードウェアエンジニアがGitHubやJIRAのようなソフトウェアツールを寄せ集めるのを見たことがありますが、それらのツールはコードのために作られたもので、CADのためのものではありません。ヴァレンティーナとカイルに初めて会ったとき、私はすぐさま興奮しました。というのも、あったらいいなと私がいつも思っていたツール を彼らが説明してくれたからです」。

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(文:Christine Hall、翻訳:Nariko Mizoguchi

ついにマスク姿でもiPhoneのロック解除可能に!アップルの最新ベータ版OSはマスク着用に対応したFace IDや待望のユニバーサルコントロールを提供

Appleは新たなOSのベータ版を大量にリリースし、待望の機能を2つ提供する。iOS 15.4はマスクをしたままFace IDでiPhoneのロックを解除できる機能を搭載、さらにiPadOSとMacOS 12.3のバージョンベータ15.4では、遅れていたユニバーサルコントロールを提供する。

マスク着用時のFace IDは、当然のことながらパンデミックになった当初から熱望されていた機能だった。2020年4月に報道されたのは、iPhoneがマスクを発見すると、パスワード入力画面にユーザーに表示するもので、2021年2月には、iOS 14.5のデベロッパーベータ版に、接続したApple Watchを介してiPhoneのロックを解除する機能(巧妙な回避策だ)が追加された。

新しいOSのベータ版のOSは、多くの人が求めてきた機能をついに提供する。有効にすると、iPhoneは目の周りで正しいユーザーであるかどうかを判断する。しかし、顔全体がないと、読み取りの精度が低くなり、安全性も定価するため、オプトイン方式になっている。

画像クレジット:Apple

iPadとMacOSでは、ついにユニバーサルコントロールのベータ版を提供されることになった。
macOS 12 Montereyと同時に発表されたこの機能は、2021年に期待されていたが、その後、著しく遅れていた。現在のところ、春頃と予想されているが、デベロッパーベータのテスターはすぐにそれを手に入れることができる。

この機能は、Sidecarに代わるものだ。SidecarはiPadを追加ディスプレイに変えるが、、ユニバーサルコントロールは自動的にMacとiPadの間でマウスカーソルとキーボードを共有する。一方のデバイスでコンテンツを選択し、マシン間でドラッグ&ドロップすることもできる。

また、iOSの新機能として、ハートの手、唇を噛む、妊婦/男性など、多数の絵文字が追加されている。ベータ版は本日から利用可能。最終的な一般へのリリース時期は未定だ。

画像クレジット:Nora Tam/South China Morning Post / Getty Images

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(文:Brian Heater、翻訳:Katsuyuki Yasui)

無償で働くオープンソース開発者たちは自分の「力」に気づき始めている

ほとんどの人は意識していないと思うが、日常的に使用しているデバイスやアプリの多くはオープンソースソフトウェア上に構築されており、1人か2人の開発者によって維持管理されている。開発者は自分の時間のためにお金を支払われておらず、コミュニティや情熱的なプロジェクトに還元するべく、バグを修正したりコードを改善したりしている。

例えば「cURL」は、APIなどの別のシステムのデータにソフトウェアが簡単にアクセスできるようにするオープンソースライブラリである。このライブラリは、iPhoneから自動車、スマート冷蔵庫、テレビに至るまで、ほぼすべての現代的なコネクテッドデバイスで使用されているが、基本的には1人の開発者、Daniel Steinberg(ダニエル・ステンバーグ)氏が30年近く無料で維持管理している。

多くのオープンソースプロジェクトが営利目的のソフトウェアやデバイスに含まれており、一般的に、純粋な謝意を別にすれば報酬がともわないにもかかわらず、このシステムはほぼ確実に機能している。一部のオープンソース開発者は、GitHub SponsorsBuy Me A Coffeeなどのプログラム、企業とのメンテナンス契約、あるいは自分のライブラリの維持費を支払ってくれる企業で仕事をすることで、自分の仕事を首尾よくサポートすることができるが、これは標準とは程遠い。

広範なセキュリティ侵害が発生したとき、このシステムの不公平性がしばしば表面化する。2021年12月にJavaライブラリ「Log4j」に出現したLog4Shellの脆弱性は、世界中で重大なセキュリティ脆弱性の問題を引き起こしており、一部の大企業にも影響が及んでいる。

影響を受けたライブラリの開発者たちは、問題を緩和するために24時間体制で作業することを余儀なくされたが、対価は支払われず、そもそも彼らの開発品は無料で使用されていたのだということへの認識も乏しいものであった。cURLの開発者も同じような扱いを経験している。同氏のプロジェクトに依存している企業が、コードに問題が発生した際、そのサービスに対価を支払っていないにもかかわらず、同氏に支援を求めてきたのである。

したがって、当然のことながら、自らの仕事に対する報酬がない中で自分たちが過大な力を行使していることを、一部のオープンソース開発者たちは自覚し始めている。彼らのプロジェクトは、世界最大規模の収益性の高い企業に利用されているのである。

その一例として、人気のnpmパッケージ「colors」と「faker」の開発者であるMarak Squires(マラク・スクワイアーズ)氏は、2022年1月初旬、これらのコードに意図的に変更を加え、ユーザーすべてに影響する破壊的展開を誘発した。使用時に「LIBERTY LIBERTY LIBERTY」というテキストに続いて意味不明な文字や記号を出力し、無限ループが発生するというものであった。

スクワイアーズ氏はこの変更を行った理由についてコメントしていないが、同氏は以前GitHubで「私はもうFortune 500企業(およびその他の小規模企業)を無償の仕事でサポートするつもりはありません」と発言していた。

スクワイアーズ氏が加えた変更は、Amazon(アマゾン)のCloud Development Kit(クラウド開発キット)を含む他の人気プロジェクトを破壊した。同氏のライブラリは週に2000万近くnpmにインストールされており、何千ものプロジェクトが直接的に依存している。npmは数時間以内に不正なリリースをロールバックし、GitHubはそれに応じてこの開発者のアカウントを一時停止した。

npmの対応は、過去にもライブラリに悪意のあるコードが追加され、最終的にはロールバックされて被害を抑えた事例があり、予想されるものであった。一方で、GitHubはこれまでにない反応を示した。同コードホスティングプラットフォームは、スクワイアーズ氏がコードの所有者であり、意のままに変更する権利を持っていたにもかかわらず、同氏のアカウント全体を停止したのである。

開発者が抗議のために自身のコードを取り下げる形をとったのも、これが初めてではない。2016年に「left-pad」の開発者は、自身が所有する別のオープンソースプロジェクトの命名をめぐってKik Messenger(キック・メッセンジャー)と争った後、npmから自分のコードを取り下げ、依存していた何万ものウェブサイトを破壊した。

驚くべきことに、著名なライブラリが時折業界のやり方に抗議してはいるが、この種の事象はそれほど一般的なものではない。オープンソース開発者たちは、自分たちの仕事の裏で数百万ドル(数億円)のプロダクトが作られているにもかかわらず、無償で働き続け、自らのプロジェクトの維持管理に最善を尽くしている。

ホワイトハウスでさえテクノロジー業界に対するオープンソースの重要性を認めている。Log4Jの一連の出来事を受けて2022年1月に業界と会合を持ち、次のように言及している。「オープンソースソフトウェアは独自の価値をもたらすものであり、同時に独自のセキュリティ上の課題を抱えている。その背景には、利用範囲の広さと、継続的なセキュリティの維持管理に責任を負う多数のボランティアの存在がある」。

しかし、こうした声明が出ている一方で、大規模な人気を誇るオープンソースソフトウェアでも、少なくとも世間の注目を集めるまでは、厳しい資金不足に陥っている。Heartbleedの脆弱性がインターネット全体を危険にさらす前、影響を受けたオープンソースプロジェクト「OpenSSL」への寄付は年間2000ドル(約23万円)程度であったが、問題が発覚した後には9000ドル(約102万円)に増加した。

現代的なネットワーク機器のほぼすべてで使われているOpenSSLの開発チームは当時、書面で次のように述べていた。「OpenSSLのケアと供給に専念できるフルタイムのチームメンバーは、1人ではなく、少なくとも6人は必要です」。プロジェクトチームはその代わりに、プロジェクトの維持費をカバーする契約作業を継続的に確保している。

開発者が自身のオープンソースライセンスを変更したり、自分の仕事をプロダクトに変えたり、スポンサーを増やす努力をすることはできるにしても、すべてのプロジェクトに万能のソリューションはない。この無償の仕事のすべてに資金を提供するより良い方法を業界が見出すまでは(誰もそんなことは考えていないようであるが)、より多くのオープンソース開発者が、意図的に自分たちの仕事を中断する形で不服従行動を起こすことで、自らが貢献しているものに光を当てる他ないのが現状である。

これは長い目で見れば持続可能なものではない。しかし、この混乱からどうやって抜け出すのかは不透明である。今日生み出されているあらゆるソフトウェアやコネクテッドデバイスでオープンソースの採用が急増しているが、何人かのオープンソース開発者が陰鬱な日を甘受するのではなく、すべてを破壊しようと決断することに、その行方が委ねられている。

何百万ものデバイスで使用されているcURLのようなライブラリが、洗濯機から乗用車まであらゆるものに含まれているという状況であっても、作成者がそのサポートに疲れて世界にメッセージを送ることを決断したとしたら、どのようなことが起きるであろうか。過去においては被害が回復したことは幸運であったが、将来はそのような幸運にはつながらないかもしれない。

画像クレジット:aurielaki / Getty Images

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(文:Owen Williams、翻訳:Dragonfly)

透明性の高いソフトウェアサプライチェーン構築を支援するCodenotaryが約14.2億円調達

開発チームが透明性の高いソフトウェアサプライチェーンを簡単に構築できるサービスを提供するCodenotary(オープンソースでイミュータブルで人気のimmudbの開発元でもある)は米国時間1月24日、Bluwat、Elaiaなどの新規および既存の投資家から1250万ドル(約14億2000万円)のシリーズBラウンドを調達したことを発表した。この新ラウンドにより、2021年7月に行われた550万ドル(約6億2000万円)のシリーズAラウンドを含め、同社の資金調達総額は1800万ドル(約20億2000万円)に達した。

Codenotaryは、以前Qumranetを共同設立したCEOのMoshe Bar(モシェ・バー)氏とCTOのDennis Zimmer(デニス・ジマー)氏によって設立され、DevOpsサイクルにおけるすべてのコンポーネントを識別・追跡できるよう支援する。つまり、サプライチェーンに対する攻撃やLog4jのような脆弱性がある場合、企業がこれらのライブラリがどこで使われているかを把握し、潜在的な被害の広がりを最小限に抑えることがはるかに容易になる。これらの情報はすべて、改ざん不可能な履歴システムを提供する台帳データベースであるimmudb上にあるため(ブロックチェーンを頼らずに)、ユーザーはこれらの情報を完全に信頼することができるはずだ。Codenotaryをソフトウェアのサプライチェーンに追加すると、サービスはそれに基づいて自動的に部品表を作成する。

画像クレジット: Codenotary

バー氏によると「私たちのミッションは、オープンソースでも、エンタープライズの内製でも、企業のどのようなアプリケーション開発でも、そのすべての成果物を信頼できるようにすることだ。会社を始めたときは、誰がどこを担当しているか、彼らがいつ何をしたかなど、すべての開発関連情報が安全で不正アクセスが起こり得ないことを目指した」という。当時、Codenotaryにはそのような要求を満たすデータベースがなかったので、チームがそれを自作した。バー氏によると、immudbはブロックチェーンから得られるものと同じような暗号検証を、はるかにパフォーマンスの良いデータベースの形で提供する。

 

「Codenotaryは、DevOpsサイクルにおけるすべてのコンポーネントを迅速に識別・追跡し、無数のアプリケーションの信頼性と完全性を回復するためのソリューションを提供しています」と、同社の初期投資家であるスイスのBluwat AGのシニアパートナーであるPascal Blum(パスカル・ブルーム)氏はいう。「Codenotaryの主要なイミュータブルデータベースであるimmudbと組み合わせることで、同社はこの新たな市場でリーダーの地位を獲得しています」。

現在、同サービスの顧客は100社を超え、そのほとんどを公表することはできないが、世界最大級の銀行も含まれていると同チームはいう。

CTOのジマー氏によると、Codenotaryの顧客の多くは、まずソフトウェアパイプラインにこのサービスを導入し、ソースから製品までのソフトウェアの出所を証明できるようにする。その顧客層は、小規模なソフトウェア開発会社から大規模なERP企業までさまざまで、例えば、新しいリリースにかけた品質保証作業を公開したり、自社のソフトウェアを使用する外部顧客に部品表を提供するために、このサービスを利用することが多いと、同氏は指摘している。バー氏が付け加えたように、こうした問題を最前線で考えているのは、金融機関や政府機関であることが多い。

Codenotaryは、今回の資金調達により、製品開発を加速させ、マーケティングと販売を世界的に拡大する計画だという。

画像クレジット:boonchai wedmakawand/Getty Images

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(文:Frederic Lardinois、翻訳:Hiroshi Iwatani)

アップル、パンデミックの影響を受け続ける一部デベロッパーに対してアプリ内購入免除の特例措置を再度延長

パンデミックはまだ終わっていない、とAppleはいう。同社は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のためにバーチャル開催を強いられた一部サービスのための、アプリデベロッパーがアプリ内購入システムを回避することを認めるというCOVID時代のApp Store猶予措置を再び延長した。具体的にAppleは「有料オンライングループサービス」を提供するアプリはアプリ内購入を利用しなければならないとするApp Store Reviewガイドライン3.1.1の適用を引き続き延期する。

影響を受けているデベロッパー(元来のビジネスモデルが、バーチャルではなく、対面イベントを中心に作られていた)は、パンデミック中、アプリ内購入を使用しなくてはならないというAppleの要件に従わずにすんでいる。

当初Appleは,1対1のサービスに限りアプリ内購入要件を免除した。医者と患者による医療相談や、教師と生徒の個人指導、不動産屋と顧客の物件ツアー、トレーナーと顧客のフィットネストレーニングなどだ。しかしAppleはその後すぐ、グループサービスのイベントから手数料の徴収を続けることは世界的パンデミック下で小企業に害を及ぼすとMeta(Facebook)から批判された

もちろんFacebookには別の思惑があった。自社の決済システムで手数料を免除していたFacebook Pay(フェイスブック・ペイ)を、Appleのアプリ内購入の代わりに使うことをAppleに認めさせたかったのだ。一時的にせよ、Appleがそれを認めれば、Facebookは何千何万人のユーザーを自社の決済エコシステムに引き込むことができる。

そうではなく、Appleは自社の手数料をオンライングループサービスに対しても一時的に免除した。オンラインセミナーやグループ・ヨガクラスなど、1対少人数や1対多人数のイベントも含まれる。これによってAppleは、パンデミックの打撃を受けている小企業から利益を上げているというMetaの批判に答え、かつFacebook Payには何の利益も与えない。

しかしパンデミックが長引くにつれAppleは、猶予期間が過ぎて対象企業がAppleのアプリ内購入システムに戻る期限を延期せざるを得なくなった。2020年11月、Appleは猶予期間を2021年6月までに延長した。そして2021年4月、同社は期限を2021年12月31日まで延期した。2021年11月、Appleは期限が迫っていることをデベロッパーに再通知した。

悲しいかな、オミクロン株の影響によってAppleは再度期限を延ばすことになった。

現在同社は、対象デベロッパーは2022年6月30日まで、Appleのアプリ内購入システムに戻ることを猶予されるとしている。この日は、失った収入源を取り戻し始められることが確実だとAppleが期待している日付に違いない。

さらに同社は、アカウント作成が可能なアプリ内にアカウント削除機能を実装する期限も延長したことを示した。「この要件の実装の複雑さ」が理由だ。つまり、もともと時間がかかり実装が困難な変更が、店舗の閉鎖や新型コロナによる従業員の病休や子どもの家庭でのバーチャル授業などによって、いっそう大変になっているということだ。

この延長は、先週末Appleのデベロッパーサイトの投稿で静かに発表された。それはAppleのアプリ内購入ビジネスモデルがさまざまな角度から攻撃されているさなかだった。同社のEpic Games(エピックゲームズ)と裁判は現在上訴中であり、つい最近オランダ規制当局からは、デベロッパーのサードパーティー決済に自社のアプリ内購入インフラストラクチャーの使用を強制していることは反トラスト法に違反しているとして罰金を課された。さらに同社は、最近韓国でもアプリ内決済をめぐる同様の規則に従わざるを得なかった

関連記事:オランダ当局がアップルに約6.4億円の罰金、出会い系アプリの独占禁止法違反で

画像クレジット:TechCrunch

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(文:Sarah Perez、翻訳:Nob Takahashi / facebook

「ノーコード」ブームの継続を感じさせるSoftrのシリーズA資金調達

テクノロジー系市場では数年前、ローコードやノーコードのアプリケーションやサービスの増加について議論があった。世界的に開発者の人材が不足していることもあり、より簡単にソフトウェアを作成できるようにするためのソフトウェアの開発が進んだが、ノーコードやローコードの開発ツールは、新たにエキサイティングな技術的負債を増やすための非常に優れた方法に過ぎないと考える人もいた。

しかし、ここ1年ほどはそんな議論も影を潜め、技術者ではない人々に力を与えるローコードの可能性を十分に備えた製品を開発している企業は、順調に成長していることに気づいた。

Softr(ソフター)はその好例で、同社は先日、シリーズAラウンドで1350万ドル(約15億円)の資金を調達したことを発表した。TechCrunchでは2021年初頭に、Softrが220万ドル(約2億5000万円)の外部資金を集めたシードラウンドを実施したことを報じている

関連記事:ノーコードでAirtableを利用したウェブサイト・アプリの作成を簡単にするSoftrが2.3億円調達

今回のシリーズAラウンドは、FirstMarket Capital(ファーストマーケット・キャピタル)が主導し、テクノロジー業界から多くの個人が参加した。筆者は少し前にこの案件の気配を、Box(ボックス)やGlossier(グロッシアー)に在籍していたAshley Mayer(アシュレイ・メイヤー)氏から聞いていた。前回、Softrに出資したAtlanticLabs(アトランティックラボ)も、同社のシリーズAに参加している。

ベルリンを拠点とするこのスタートアップ企業は、顧客がAirtable(エアテーブル)のデータベース上に簡単にアプリを構築できるようにするプラットフォームを提供している。しかし、同社は現在の任務にとどまらず、かなり大きな野望を持っている。

TechCrunchは、SoftrのMariam Hakobyan(マリアム・ハコビアン)CEOとのインタビューで、同社がそのソフトウェアを使ってアプリを作成するために利用できるデータベースの種類を増やす予定であることを知った。また、同社ではコンポーネント(Softrができることを公式の機能よりも拡張するためのもの)とテンプレート(我々の理解では、箱から出してすぐに使えるアプリ)の両方のマーケットプレイスを開設することも計画しているという。

ハコビアン氏によれば、Softrはやがて1つのエコシステムになることを目指しているという。Googleスプレッドシートやその他のデータソースのサポートを追加することは、その取り組みに役立つだろう。

同社では、ノーコードのサービスが「ただ引き継がれていくだけ」で、同社はその下流に向かって泳いでいると考えていると、ハコビアン氏は語る。

ハコビアン氏は、現在のソフトウェア市場において、なぜノーコードサービスや、さらにいえばより一般的なローコードサービスが好調なのかということに関して、いくつかの傾向を挙げている。1つ目は、需要に見合うだけの開発者が市場にいないということ。これはよく理解されている。彼女のもう1つの主張は、世代論的なものだ。ハコビアン氏によると、Z世代はそれ以前の世代に比べて技術的な知識が豊富で、伝統的な本業を確保することにはあまり興味がなく、自分でツールなどを作る方法を探しているという。

Z世代がノーコードを促進させるというのは、理由をはっきり指摘できなくても、頭では理解できる。次の四半期に向けて注目していきたい。

次に、市場におけるSoftrの実績について見ていこう。この会社は製品を市場に投入してからまだ日が浅いので、前年同期比の成長率を厳しく評価することは難しいが、初期のデータをいくつか紹介すると、同社の登録ユーザー数は現在3万人で、有料会員数は1000人を超えているという。同社の主な顧客は、中小企業であることを明らかにしている。これは、現在の競争が激しい開発者市場に、中小企業ではなかなか手が出せなくなっていることを考えると、理に適っている。

Softrがどれだけ早く自社サービスにより多くのデータソースを追加できるか、そして計画中のマーケットプレイスをどれだけ早く展開できるかに注目したい。Softrがエコシステムになるかどうかは、その時点で市場が決めることだろう。

画像クレジット:Visual Generation / Getty Images

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(文:Alex Wilhelm、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

オランダ当局がアップルに約6.4億円の罰金、出会い系アプリの独占禁止法違反で

オランダの競争当局は、同国の出会い系アプリがサードパーティの決済技術を利用できるようにするよう求めた命令に従わなかったとして、Apple(アップル)に500万ユーロ(約6億4000万円)の罰金を科した。

来週までに当局が求める要件を満たさなければ、同社はさらに500万ユーロの罰金が科される可能性があり、その後も毎週、数カ月にわたって、この命令に関連して最大5000万ユーロ(約64億円)の罰金が課される可能性がある。

この罰金は、オランダの監視機関である消費者・市場庁(ACM)が2021年に出した命令に関連するものだ。当局はAppleが独占禁止法に違反していると判断し、出会い系アプリプロバイダーに押し付けている条件を見直すよう命じていた。

独占禁止法上の問題となっているのは、デジタルコンテンツの販売にApple独自のアプリ内決済インフラ(別名IAP API)を使用することを義務付けるApp Storeの規約で、AppleはこのAPIを通じて手数料を徴収している。

Appleの規約では、出会い系アプリが代替決済システムを利用することも禁止している。

当局は、出会い系アプリがアプリ内で他の支払い方法に言及することをAppleが禁止していることも問題視した。

ACMは1月24日、Appleが命令に従っておらず、出会い系アプリに関する規則を命令に沿うよう修正しなければならないと発表した。

「出会い系アプリのプロバイダーがApp StoreでApple以外の決済システムも利用できるようにしなければならない。加えて、出会い系アプリのプロバイダーは、アプリ外の決済システムを参照できなければならない」と発表にはある。

現在も続くAppleの違反の全容は、明確に述べられていない。しかし、重要なのは、Appleが求められていることをまだ行っておらず、実際に出会い系アプリのプロバイダーが他の決済システムを利用できるようにしていないことのようだ。

オランダ当局はまた、出会い系アプリのプロバイダーがApple以外の決済インフラを利用することを難しくするためにAppleが構築したと示唆する障壁を批判している。

「Appleはいくつかの点で要件を満たしていない」とACMは書いている。最も重要なのは、Appleが条件を見直さなかったことであり、その結果、出会い系アプリのプロバイダーはいまだに他の決済システムを利用できないでいる。現時点では、出会い系アプリのプロバイダーは、単に「関心」を表明することしかできない。

「加えてAppleは、出会い系アプリのプロバイダーがサードパーティの決済システムを利用することに対して、いくつかの障壁を設けた。これもACMの要求と相反する。例えば、Appleはアプリプロバイダーに対して、アプリ外の決済システムを参照するか、代替の決済システムを参照するかの選択を迫っているようだ。これは許されない。プロバイダーはどちらの選択肢も選ぶことができなければならない」。

ACMは2021年に下した決定で、出会い系アプリに対する条件を修正する必要があるとAppleに伝えた。しかし、TechCrunchが報道したように、Appleは差止命令を求め、命令への対応を遅らせることに成功した(命令の一部はまだ封印されたままだ)。

また、同社はこの命令の適用を1月中旬まで遅らせることもできた。

Apple以外の決済インフラで処理されたデジタルコンテンツの販売について、同社はオランダの出会い系アプリから依然として手数料を徴収する意向があることが先週明らかになった。開発者向けサポートノートには「ACMの命令に従い、リンクアウトまたはサードパーティのアプリ内決済プロバイダーを使用する資格を与えられた出会い系アプリは、取引にかかる手数料をAppleに支払う」と記されている。

本稿執筆時点では、その主張はAppleの「StoreKit External Purchase Entitlement」(ACM命令に言及している)に関する投稿にまだ掲載されている。そして、封印されたままの命令の一部は手数料に関係している可能性がある。しかし、詳細を確認することはできていない。

Apple以外の決済システムを使用するアプリにも手数料を課すことができるというAppleの主張について、TechCrunchは先週ACMに問い合わせたが、当局の広報担当者は回答を却下した。「裁判所が支持し、公表を許可した命令の部分しか言及できない」とのことだ。

一方、Appleのサポートサイトは、Apple以外の決済手段を導入するための明確なプロセスを提供する代わりに、関心のあるデベロッパーに「developer interest form」を紹介するにとどまっている。

説明文も「間もなく」詳細情報が提供される、という曖昧な表現にとどまっている。

オランダの出会い系アプリが代替決済手段を導入するための手続きの実装遅れによってAppleに500万ユーロの罰金が発生した(そして増えている)。

もちろん、数百万ドル(数億円)の罰金、あるいは5000万ユーロ(約64億6000万円)の罰金でも、Appleは騒ぎはしないだろう。

しかしいま、App Storeの規約に対する複数の競争法上の苦情や調査はAppleにとってはるかに大きな懸念となっている。これらはアプリ内課金で徴収する手数料を攻撃していて、EU英国アジア米国ではデベロッパー向けの契約条件について当局が調査し、命令が出されているところもある。

短期的には、そして(または)AppleがApp Storeの競争に関する苦情をなくすような実のあるグローバルな競争改革の提案をしない場合、各市場 / 地域の規制当局がAppleの規約の評価に注意を向けるため、iOSアプリ開発者のための規制のパッチワークが迫っている。

差し当たり、iOSアプリの競争と価格設定に関する消費者と開発者の勝利は、しぶしぶもたらされる可能性が高く、苦労して勝ち取るもののようだ。

しかし、Appleの契約条件の事前規制は現在多くの市場で検討されており、その明確な目的は、行動修正を加速させることにある。つまり、故意に遅らせるという戦略は、将来的にもっと高くつくことになりそうだ。

ACMの罰金についてAppleにコメントを求めている。

画像クレジット:TechCrunch

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(文:Natasha Lomas、翻訳:Nariko Mizoguchi

アップルは2021年、アプリ開発者に約7兆円支払う

数々の反トラスト訴訟や特定マーケットでの規制強化に直面しながらも、Apple(アップル)は米国時間1月10日、2021年のApp Storeの成長率が記録的なものであることを示す新たなデータを公表した。同社はプレスリリースの中で、App Storeが登場した2008年以来、アプリ開発者に支払った金額は現在2600億ドル(約29兆9710億円)を超えたと明らかにした。この数字は同社が2020年末に報告した2000億ドル(約23兆550億円)から増加している。つまり、2021年だけでも開発者に少なくとも総額600億ドル(約6兆9165億円)を支払ったことになる。

この数字は、過去に報告された支払い額よりもずっと大きい。

ちなみに、Appleは2019年末までに、App Storeのデビュー以来、開発者に計1550億ドル(約17兆8680億円)を支払った。その前年は、約1200億ドル(約13兆8335億円)だったと明らかにした。行間を読むと、開発者への支払いは2018年から2019年にかけて350億ドル(約4兆330億円)増え、その後2019年から2020年にかけてさらに450億ドル(約5兆1855億円)増加したことになる。

残念ながら、個々のアプリによって支払われる割合が異なるため、Appleが共有した支払額の数字は、もはやApp Store全体の経済状況を明らかにする助けにはならない。

App Storeのビジネス慣行に対する規制当局による監視の強化、独占禁止をめぐる苦情、訴訟(現在控訴中のEpic Gamesとの裁判を含む)が増すなかで、Appleは近年、開発者収益の自社の取り分を減らすために手数料体系を調整してきた。

2020年11月に発表されたAppleのSmall Business Programの開始にともない、同社は対象となるアプリ(年間売上高が100万ドル[約1億1520万円]以下)に対して、手数料を30%から15%に引き下げた。2021年にはまた、一部のメディアアプリを対象に、Apple News Partner Programに参加することを選択した場合に手数料を引き下げた。Appleは、実際にこうした機会を利用した開発者やメディアの数については明らかにしていないが「大多数」のアプリが零細事業割引の対象となると指摘している。

Appleは、App Storeの新たな記録を発表するにあたり、通常の自社宣伝と、膨大な利益に対する過剰な注目との間の微妙なラインを行き来しているようだ。同社は、2021年のクリスマスイブから大晦日にかけて、App Storeの顧客が「これまで以上に」お金を使い、前年から2桁の伸びを記録したと明らかにした。

しかし、Appleは2021年同様、このマイルストーンを記録する明確な数字を提示しなかった。2021年は2020年のクリスマスイブから大晦日までの1週間に消費者はデジタル商品とサービスに18億ドル(約2070億円)を費やし、これは主にゲーム支出によるものだと指摘していた。

1月10日に発表された数字は、App Storeにとって過渡期の1年だったことを示している。

App Storeは、米議会の公聴会で取り上げられたApp Store詐欺や、App Reviewプロセスに現在も伴っている難しさについて、開発者からの反発をこれまで以上に受けている。Appleは2022年、Epic訴訟の判決により、サードパーティの決済方法へのリンクを許可するようApp Storeの変更を命じられたが、その後、この訴訟が上訴されている間、裁判所から土壇場で猶予を与えられた。しかし、日本韓国など他のマーケットでは、規制当局がAppleに外部ウェブサイトへのリンクを許可するよう迫り、手数料を抑制するためのその他の措置を取ったため、同社はApp Storeに対する支配力を緩めざるを得なくなった。

App Storeの数字に加えてAppleはApple Arcade、Apple Fitness+、Apple Music、Apple TV+、Apple News+、Apple Podcasts、Apple Books、Apple PayとWallet、Apple Maps、iCloud+といった他のサービス事業に関する最新情報も提供した

特筆すべきは、Arcadeが今や200以上のゲームを扱い、Apple Musicには9000万曲超のロスレスオーディオがあり、Apple TV+は190の業界賞を獲得したことだ。また、Apple Fitness+には2000セッション近くのワークアウトコンテンツがあり、Apple Newsは提供されているすべてのマーケットで引き続きナンバーワンのニュースアプリとなっている。Apple Payは約60カ国・地域で提供されていて、ユーザーは2021年にApple Walletで3000万枚のNFCチケットを利用した。

画像クレジット:Apple

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(文:Sarah Perez、翻訳:Nariko Mizoguchi

技術系スタートアップが在宅勤務のソフトウェア開発者を大切に扱うための5つのヒント

先に迎えた世界メンタルヘルスデーを目前に控え、私はテック業界がいかに精神的に良好な状態を保つのが難しい場所であるかを考えていた。特に、前例のない状況でのリモートワークは、困難な状況をさらに悪化させる可能性がある。10年以上にわたってテクノロジー業界でリモートワークをしてきた者として、今回はペースの速い技術系スタートアップ企業がソフトウェア開発の人材を大切に扱うためのヒントを紹介したい。

最高の状態でのソフトウェア開発は、創造的な試みとなる。開発者が質の高い仕事をするためには、ある程度の快適さが必要だ。退屈な作業、騒がしいオフィス、あまりに多い会議などは、生産性が最高の状態であっても影響を及ぼす。

しかし、健康はもっと基本的なものであり、ニーズの階層の中でもほぼ最下層に位置するもので、これには精神的な健康も含まれる。ソフトウェア開発者が仕事をするためには、脳の状態が良好でなければならない。物事がうまくいかないとき、本当の問題を知らなくても、同僚のコードを見ればわかることもある。

リモートで働くスタートアップチームの分散により、健康維持はより困難になっている。リモートで働いていると、チームのウェルビーイングをサポートするためのオフィスの機能が欠落してしまう。無料のフルーツやコーヒー、ビーズソファだけでなく、同僚がつらい思いをしていても気づきにくいこともある。同僚と同じ場所にいないと、誰が遅刻や早退するのか、あるいはやや活力がない感じがするのかを見分けるのが難しくなる。

また、井戸端会議がない場合、同僚がうまくやっているかどうかを確認するのが難しくなる。しかし、もし誰かのことが気になっていて、その人に聞くべきかどうか悩んでいるのであれば、私は常に連絡を取るようにアドバイスする。リモートチームにおいては、コミュニケーションを増やす必要がある。メンタルヘルスに関しては、誰かが1人で限界に達してしまうよりも、言葉を発して、その人が元気であること、何も心配する必要はなかったと知るほうがいい。

自主性を重んじる

私は10年以上にわたり、大企業から中小企業でも、さらには自分のフリーランスのコンサルタントでも、自分の意思でリモートワークを行ってきた。私が在宅勤務で最も重視しているのは、柔軟性だ。特に、ソフトウェア開発者としてメーカーのスケジュールに合わせて仕事をする場合には、柔軟性が重要になる。

私は、最高の仕事をより多く実現するために、一連のライフハックを発見した。例えば、早い時間にオフィスで仕事を始めた後、午前11時にジムでトレーニングをしたり、その日の最後のミーティングの前に夕食をオーブンに入れたりするのだ。このように、仕事と並行して「生活」を送ることができるのは、特に苦しいとき、自分自身の幸福感を高めるのに有効だ。

ダニエル・ピンクの著書『モチベーション3.0 持続する「やる気!」をいかに引き出すか』では、自律、成長、目的がモチベーションの主な原動力であることを取り上げている。ソフトウェア開発の仕事を成功させるには、モチベーション、承認、自信が重要だ。自分のスキルを使ってより大きな目標に向かって貢献する権限を与えられることは、非常にやりがいのあることであり、通常仕事の選択や優先順位の決定において自由度が高いスタートアップ企業の開発者にとっては、非常に満足のいくことだろう。

しかし、Haystackの調査によると、開発者の83%に燃え尽き症候群が報告されている。そのため、ソフトウェア開発者には現実的な期待を設定するよう注意して欲しい。物理的なオフィスがない場合、適切な時間に帰宅させるのは難しいので、そのような期待は慎重に設定する必要がある。特に、勤務時間がフレキシブルで、大きなプロジェクトを任されやすい場合には慎重になるべきだ。

教育は社員を大切にしているということ

開発者は生涯学習者だ。業界の変化が非常に速いため、開発者はそうならざるを得ない。彼らは常に自分自身、知識、スキルに投資している。

雇用者は、開発者を個人としても投資することができる。企業によっては手厚いトレーニング予算や休暇を提供するところもある。私はかつて小さなソフトウェア会社で働いていた。そこでは学習のための予算は提供されていなかったが、月に1日、学習のための日を予約することができ、そこで教科書を読んだり、新しいテーマについて誰かに1時間のチュートリアルを頼んだりすることができた。会社にとっては大したコストではなかったが、私の成功を願ってくれているように感じた。

働く自由

開発者に金銭的な報酬を与えても、モチベーションの向上にはつながらない。しかし時間を与え、開発者を信じて時間を直接的なプロダクトエンジニアリングの仕事以外に使ってもらうことは、大きな効果が得られる可能性がある。

Googleは、社員の時間の20%を「おもしろいと思ったことに使っていい」というアプローチをとったことで有名だ。それによって便利な製品も生まれたが、重要なのは開発者が仕事に関わっていると感じ、信頼されているということだ。Atlassianも同様のことを行っていることで有名だ。全社員が24時間、自分の好きなプロジェクトに取り組み、他の方法では決して出てこなかったかもしれない驚くべき革新や改善を生み出している。

多くの開発者は、自分の時間の多くをオープンソースプロジェクトに費やしている。このことを他の職業の人に説明しようと何度か試みたことがあるが、ハッカー文化は不可解だということが分かった。

しかし、開発者はこの世界に強く共感し、91%の開発者がオープンソースが自分の将来の道だと答えている。開発者にオープンソースへの貢献を許可することで、彼らはより自分たちが大事にされていると感じることができる。このようなオープンソースコミュニティは、開発者の社会的ネットワークやサポートネットワーク、さらにはアイデンティティの重要な一部となり、開発者のより広い意味での幸福のために欠かせないものとなる。

オープンソースの教訓

現代の職場では、他人がプロジェクトに参加できるという点でオープンソースから学ぶことがたくさんある。オープンソースのプロジェクトは真のリモートワークフローが機能している合理的なモデルとなっている。

ソフトウェアの世界の基礎的な構成要素のいくつかは、メーリングリストやIRCチャンネルでしかお互いを知ることができなかった人々によって作られたものだ。ソフトウェアは作られたが、おそらくそれ以上に重要なのは、強力なコネクションが作られたことだ。

今日のリモートソフトウェアチームは、自らの選択によるものであれ、状況によるものであれ、より優れたツールを利用することができる。ソース管理ツールやコラボレーションツールは、今やメーリングリスト以上のものであり、テキストチャット、オーディオコール、ビデオコールで常に連絡を取り合うことができる。画面共有やVSCode Live Shareのようなツールを使って、遠隔地でプログラムを組み合わせることも可能だ。

しかし、このような接続性の高さは、ストレスや通知疲れの原因となりうる。ソフトウェア開発者はそれぞれが異なる存在であり、ある人の作業スタイルが他の人のそれとまったく同じとはならないことを忘れてはならない。オープンソースのプロジェクトでは、全員の時間を尊重し、特定の時間に誰かがいるということをあまり期待せず、むしろ想定した時間枠内で作業を進める。

高度な技術を要する仕事をしているリモートチームでは、思考時間が長くなるようなミーティングをできるだけ少なくしたり、Slackのメッセージに期待される返信の時間を決めておくと、落ち着いた仕事環境の提供につながる。

ワークライフバランス

新型コロナウイルス感染症の影響で毎日の通勤ができなくなったとき、多くの人は作業環境が理想的ではなくなった。ソファやキッチンテーブルに座って、しかも家族が近くにいるという状況は、当然ながら多くの人にとって困難であり、燃え尽き症候群の増加が広く報告されている。

たとえ開発者が以前から自宅で仕事をしていたとしても、モニターのアップグレードや予備の電源、あるいは新しいキーボードが必要かどうかをチェックするのは良いことだ。現在、多くの企業が在宅勤務の予算を提供しているが、開発者が必要とするツールの確保は少しの予算でできる。

職場で一緒に交流する時間を持つ。恥ずかしいチームビルディングは過去のものとなっていることを願うが、簡単なオンラインゲームで場を明るくすることは可能だ。会社にEAP(従業員支援プログラム)がある場合は、従業員全員がプログラムについてと、アクセス方法を知っていることを確認したい。また、マネージャーには、彼らのチームメンバーだけでなく、マネージャーのためのプログラムもあることを伝えておくとよい。

メンタルヘルスに関して言えば、スタートアップは難しい場所かもしれない。スタートアップ企業はペースが速く、頻繁に変化があり、いくつもの仕事をこなさなければならない。私からの最良のアドバイスは、お互いに気を配ることだ。それは、上司が部下を気遣うだけではなく、私たち全員が他人を気遣い、自分自身を大切にすることで、少しでも貢献することができる。

燃え尽きる時は、その前に兆候が出ている。私たちは、仕事を長期的に持続させ、健康的な生活と並行して行う方法を見つけなければならない。「言うは易し行うは難し」ですが、多忙なスタートアップ企業は、従業員が重要な存在であることを再認識してもらうための時間を取らなくてはならない。

あなたやあなたの知り合いが、うつ病に悩まされていたり、自傷行為や自殺を考えたことがある場合、全米自殺防止ライフライン(1-800-273-8255)では、24時間年中無休で無料サポートを提供しています。また、専門家向けのベストプラクティスや、予防や危機的状況に役立つリソースも提供しています。

編集部注:Lorna Mitchell(ローナ・ミッチェル)氏は、最高のオープンソーステクノロジーとクラウドインフラを組み合わせたソフトウェア企業Aivenのデベロッパーリレーションズ担当責任者。

画像クレジット:Carol Yepes / Getty Images

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(文:Lorna Mitchell、翻訳:Dragonfly)

ハードウェア開発をアジャイルの時代へと導くDuro

ソフトウェア開発者にとって、ハードウェア製品の開発プロセスは、1980年代のものとまったく同じであるように見えるかもしれない。最もハイテクなワークフローであっても、表計算ソフトなどのミスが起こりやすくコストのかかる手作業、混乱、そしてハードウェア開発現場のかび臭いハンダ付けされた床板から漂う生きる気力のなさがある。そんな中、Duroは400万ドル(約4億6100万円)の資金を調達し、アジャイル手法を導入して、手間がかかりすぎている世界に正気を取り戻そうとしている。

Duroの資金調達ラウンドは、B2B SaaSの投資機関であるBonfire Ventures(ボンファイア・ベンチャーズ)がリードし、ハードテクノロジーの投資機関Riot Ventures(ライオット・ベンチャーズ)が追加資金を提供した。今回の資金調達は、営業・マーケティングチームの拡大と、Duroの製品ライフサイクル管理(PLM)ソリューションのさらなる展開のために使用される。

DuroのCEOであるMichael Corr(マイケル・コー)はこのように説明する。「私は元エレクトリカルエンジニアです。20年間、IoT、ドローン、通信機器、ウェアラブル、クリーンテックなど、あらゆる製品を設計・製造してきました。私はCADファイル、部品表、サプライチェーンデータなどのハードウェア開発の最も基本的な要素の管理にどれだけの時間が費やされているかに不満を感じていました。PLM(製品ライフサイクル管理)と呼ばれる製品カテゴリーがありますが、これは、これらの情報を一元管理するための受け皿となるものです。リビジョン管理も含まれており、自社のチームで使用するだけでなく、製造委託先と共有することもできます。しかし、私が使ったどのツールも、実際に時間を節約したり、最終的に価値を提供してくれるものではありませんでした。すべての作業が手作業で、プロセス志向であるため、スプレッドシートを使ったほうが楽な場合が多かったのです。今でもこの方法が主流です。なぜなら既存のツールは非常に複雑でエラーが発生しやすく、実際には価値がないからです」。

このような現状に個人的に疑問を感じた共同創業者のマイケル・コーとKellan O’Connor(ケラン・オコナー)は、すべての製品データを一元化し、異なるチームやツールを接続する際の摩擦をなくすためのクラウドプラットフォーム「Duro」を開発した。目標は透明性であり、製品チーム、エンジニアチーム、サプライヤーや製造チームの誰もが、常に最も正確で最新のデータにアクセスできるようにすることだ。

コーはDuroが進出している市場の状況を説明した。「少し単純化していうと、ハードウェア業界は二極化の文化に支配されています。80年代、90年代に入社して現在のツールセットを確立した上の世代がいます。その一方でギャップがあり、若いエンジニアは、ウェブやモバイル、アプリの開発が流行っていたため、それらの学習に興味を持っていました。若いエンジニアが続けてハードウェア分野に参入することはなかったのです。しかし、今は彼らが戻ってきています。ハードウェアは魅力的な製品であることが証明されたのです。IoTが実現して、ハードウェアの開発コストが劇的に下がりました。現在、若い世代のエンジニアが続々と社会に出てきています。Duroが狙っているのは、彼らです。彼らはソフトウェア開発の文化に慣れていますし、使用するソフトウェアに対する基準も違います」。

言い換えれば、SaaS、GitHub、DevOpsのプロセスがソフトウェアの継続的な提供方法を完全に変えたのと同じような仕組みで、Duroはハードウェアに関わる人々をミレニアムの時代に招待しようとしている。

「GitHubは、それが可能であることを証明するすばらしい仕事をしてくれました。GitHubはクラウド上の単一のソースでソースコード管理を行い、それを中心にツールや人々、タスクといったエコシステムを構築することができるのです。そして、誰もがGitHubに注目しています。従来のハードウェア業界はこれとは異なっていました。電気工学、機械工学、調達、製造など、複数のチームがそれぞれの役割を担っていました。一元化するという概念がなかったため、全員がそれぞれのデータを持っているのです。例えば、全員が別々の部品表を持っていると、問題が発生します。すべてのコミュニケーションチャネルを管理し、全員が確実に最新のデータのコピーを持っているようにするための諸経費が必要になります」とコーは説明した。

ボンファイア・ベンチャーズのJim Andelman(ジム・アンデルマン)は「古い企業が支配する大きな市場に新鮮なソリューションを提供するDuroと提携できたことを非常にうれしく思っています。Duroのようなスタートアップ企業がまったく新しいユーザーにとっての参入障壁を下げることで、新たな市場の大部分を獲得することができます。Duroのプラットフォームに対する顧客の親和性は非常に高く、エンジニアリング志向の企業にとってPLMソリューションとして選ばれていることは明らかです」と述べている。

Duroは製品だけでなく、SaaSを参考にしたビジネスモデルの革新にも取り組んでいる。

「これまでのハードウェアのためのソフトウェア販売には、多くの摩擦がありました。ユーザーライセンスのビジネスモデルによる非常に高価なアプリケーションで、試用版が用意されていることはほとんどなく、使いたければお金を払って、手に入れたものをただ受け入れるしかありません。そこでDuroは、そこにもちょっとした工夫を凝らしています。Duroには3つのサブスクリプションパッケージを用意しています。スターターパッケージは、スプレッドシートを使わずに、適切に管理されたデータ、集中管理された環境を求めている企業向けです。Pro版は、他の製品で必要とされる複雑な構成や設定をすることなく、入手後すぐに使えます。Pro版は、最初の生産を行う段階で、サプライヤーとの間で適切なリビジョン管理を行いたいと考えているチーム向けに設計されています。大企業向けパッケージは、これらの下位2つの層を超えて成長したチームや、より確立していて既存のワークフローを持っているチームのためのより拡張的なパッケージです」とコーは説明する。

スターターパッケージは月額450ドル(約5万1000円)、年額5,400ドル(約62万円)。Proパッケージは、月額750ドル(約8万6000円)、年間約9,000ドル(約103万円)となっている。大企業向けパッケージは、顧客のニーズに応じた柔軟な価格設定となっている。Duroのチームは、ソフトウェアの構成に応じて、2万5,000ドル(約288万円)から10万ドル(約1153万円)の契約を結んでいると話した。

Riot Venturesの共同設立者であり、ゼネラルパートナーであるWill Coffield(ウィル・コフィールド)は「フルスタックビジネスへの投資を行ってきた経験から、データの継続性に関する問題は、ハードウェアの製造においても同じであり、業界に大きな影響を与えることがわかっています。ハードウェアの設計・開発を現代化するために、手動のプロセスを自動化し、チームと情報を結びつけて知的で効率的なコラボレーションを実現するDuroのアプローチは大変好ましいと思います」と述べている。

画像クレジット:Duro

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(文:Haje Jan Kamps、翻訳:Dragonfly)

アップル、iPad上でアプリ開発ができるSwift Playgrounds 4をリリース

Apple(アップル)が、Swift Playgrounds 4の公式ローンチを発表した。最初の発表と予告は、2021年6月のWWDCで行われている。今回のローンチにより、ユーザーはSwiftUIによるiPhoneやiPadのアプリの作成を直接iPad上で行えるようになり、アプリに変更を加えた場合、その結果をリアルタイムでプレビューできるようになる。Appleによると「App Store Connect」が統合されているため、完成したアプリをApp Storeにアップロードすることもできる。

「Swift Playgroundsは、プログラミングを学ぶ最良で、最も簡単な方法です。あなたが書いたコードは、アプリの制作と並行してライブの(リアルタイムの)プレビューにすぐ反映され、アプリをフルスクリーンで表示しながら実行できます。Swiftのパッケージに基づく新しいオープンプロジェクトフォーマットは、iPad用のSwift Playgroundsの中でオープンしエディットできますが、同じくMac上のXcode内でも行えるため、iPadとMacの両方で使用できるアプリを開発できる幅広い多機能性が提供されます」とブログで語られている。

画像クレジット:Apple

Appleによると、このソフトウェアにはインラインコードの提案機能があるため、コードをより速く正確に書くことができる。検索機能は個別のファイルではなくプロジェクト全域を対象とするので、一度に複数のファイルを検索できる。また、Swiftパッケージのサポートにより、ユーザーは公開されているコードを含めてアプリを強化することができるとしている。なお、このソフトウェアの「Snippets Library」は、何百種類ものSwiftUIのコントロールやシンボル、カラーなどをユーザーに提供する。

Swift Playgrounds 4の狙いは、iPhoneとiPadの新人デベロッパーがMacを使わなくても容易にアイデアを試せることだ。新機能を利用するためには、iPadOS 15.2以上が必要となる。Swift Playgrounds 4は、現在、iPad向けのApp Storeでアクセス可能だ。

画像クレジット:Apple

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(文:Aisha Malik、翻訳:Hiroshi Iwatani)

プログラミング言語Rubyを活用したITビジネスアワードRuby biz Grand prix 2021表彰式が開催、大賞はHIKKYとヤマップ

プログラミング言語Rubyを活用したITビジネスアワードRuby biz Grand prix 2021表彰式が開催、大賞はHIKKYとYAMAP

Ruby bizグランプリ実行委員会は12月15日、プログラミング言語Rubyを活用したITビジネスコンテスト「Ruby biz Grand prix 2021」の表彰式を行い、大賞・特別賞・DX賞・Digital Media賞を発表した。表彰式の様子は島根県からライブ配信された。表彰式のアーカイブ映像はYouTube上で視聴できる。

第7回目となる今年のRuby biz Grand prix 2021には25事例の応募があり、その中から9事例が最終選考(ファイナリスト)として発表されていた。そこから、大賞2点、特別賞3点、DX賞2点、Digital Media賞2点が決定した。表彰式では、大賞と特別賞の受賞者がプレゼンテーションを行い、Rubyを活用した理由や優位性などが話された。また、審査員長を務めたRuby開発者のまつもとゆきひろ氏のスピーチでは、グランプリの舞台裏と「日本のウェブを中心としたサービスへの期待」が語られた。

プログラミング言語Rubyを活用したITビジネスアワードRuby biz Grand prix 2021表彰式が開催、大賞はHIKKYとYAMAP

Ruby開発者のまつもとゆきひろ氏

大賞:バーチャルマーケット

HIKKYは、3Dアイテムやリアル商品の売買ができるVRマーケット「バーチャルマーケット」を提供。イベント運営のためのシステムや出展者や企業のEC、各マイクロサービスのバックエンドがRubyで構成されている。1万人以上のアカウントの認証管理基盤においてもRubyを採用しているとのこと。プログラミング言語Rubyを活用したITビジネスアワードRuby biz Grand prix 2021表彰式が開催、大賞はHIKKYとYAMAP

大賞:ヤマップ

ヤマップは、電波が届かない山中でもGPSで現地と登山ルートがわかるサービスおよびアプリ「ヤマップ」(YAMAP)を提供。電波のない状態でも登山ユーザー同士が互いの位置情報を知ることのできるみまもり機能を実装しており、登山ユーザーの命・安全を支援しているという。プログラミング言語Rubyを活用したITビジネスアワードRuby biz Grand prix 2021表彰式が開催、大賞はHIKKYとYAMAP

特別賞:Autify

オーティファイ提供のAutifyは、プログラムコードを書くことなく、ウェブアプリおよびモバイルアプリ(ネイティブアプリ)の検証作業を自動化できるシステム。サービスの根幹を担う部分でRubyを使用とのこと。プログラミング言語Rubyを活用したITビジネスアワードRuby biz Grand prix 2021表彰式が開催、大賞はHIKKYとYAMAP

特別賞:Mitsuri

Mitsuriは、Catallaxyが提供する金属加工統合プラットフォーム。金属加工部品を必要とする会社と受注したい会社をマッチングする商取引プラットフォーム、受発注管理システム、自動CAMなどで構成されている。オープンソースのRubyが顧客への素早い価値提供につながっているという。プログラミング言語Rubyを活用したITビジネスアワードRuby biz Grand prix 2021表彰式が開催、大賞はHIKKYとYAMAP

特別賞:トドクサポーター

207が提供するトドクサポーターは、ラストワンマイルの配送効率化を目的とした、配送員向けのiOSおよびAndroid向けアプリ。各プロダクトにおけるバックエンド部分をほぼすべててRubyで開発している。プログラミング言語Rubyを活用したITビジネスアワードRuby biz Grand prix 2021表彰式が開催、大賞はHIKKYとYAMAP

DX賞:BONX WORK

BONX WORKは、BONXが提供するデスクレスワーカー向けの音声によるグループトークシステム。声をリアルタイムに届けるため、VoIPサーバーとクライアントをつなぐAPIサーバーをRuby on Railsで実装している。プログラミング言語Rubyを活用したITビジネスアワードRuby biz Grand prix 2021表彰式が開催、大賞はHIKKYとYAMAP

DX賞:Throttle

Relicが提供する新規事業開発のためのイノベーションマネージメント・プラットフォーム。事業構想やアイデアの整理、具体化を支援するフレームワークなどの提供や、各種インキュベーションプログラムの企画、事業アイデアなどの収集・管理や評価・審査などを効率化できる。プログラミング言語Rubyを活用したITビジネスアワードRuby biz Grand prix 2021表彰式が開催、大賞はHIKKYとYAMAP

Digital Media賞:ヤンマガWeb

講談社「週刊ヤングマガジン」のウェブサイト。週刊ヤングマガジンのマンガ・グラビアといったコンテンツをインターネット上でも楽しめる。Glossomおよび社講談社が登壇した。プログラミング言語Rubyを活用したITビジネスアワードRuby biz Grand prix 2021表彰式が開催、大賞はHIKKYとYAMAP

Digital Media賞:note

noteが提供するクリエイターのためのメディアプラットフォーム。誰でも文章や画像・音声・動画を投稿可能で、ユーザーはそのコンテンツを楽しみつつ応援できる。プログラミング言語Rubyを活用したITビジネスアワードRuby biz Grand prix 2021表彰式が開催、大賞はHIKKYとYAMAP

アマゾンがAlexaの「スキル」開発者への手数料引き下げ、2022年から

Amazon(アマゾン)は、他の大手テック企業と同様、開発者が得る収益からの取り分を引き下げる。開発者が、スマートスピーカーやその他のAlexa(アレクサ)対応デバイスで動作する音声アプリ、いわゆるAlexaの「スキル」から得る収益が対象だ。

同社は今週、スキル購入(有料インストール)、スキル内購入(アプリ内購入のAlexa版)、スキルサブスクリプションなどの収益が100万ドル(約1億1400万円)未満のAlexaスキル開発者の手数料を2022年、30%から20%に引き下げると発表した。この変更は2022年第2四半期から適用される。サードパーティーの開発者がトラフィックを生み出し、スキルの認知度を高められるよう、開発者特典も拡充する。Amazonによると、新しくプログラムの対象になるのは、前年の収益が100万ドル未満の開発者や、新規のAlexa開発者だ。

AmazonによるAlexa開発者の収益に対する手数料体系の更新は、Apple(アップル)、Google(グーグル)、Microsoft(マイクロソフト)など他の大手テック企業による同様の動きに続くものだ。

ちょうど1年前、AppleはApp Store事業に対する規制当局の監視強化に対応し、1年間のApp Store収益が100万ドル未満の小規模開発者の手数料率を15%に引き下げた。以前は、Appleの標準的な30%の手数料を支払わなければならなかった。Googleもすぐにその動きを追い、Google Playで同様のプログラムを実施し、手数料を15%に引き下げた。ただし、引き下げ後の手数料適用時の計算方法には若干の違いがあった。両社はその後、ニュース出版社やその他のサブスクリプションアプリなど、特定のカテゴリのアプリについて、標準の手数料率にさらに例外を設けることにした。

また、Microsoftは2021年、収益分配の条件をより開発者に有利なものに更新し、同社の決済プラットフォームを利用するアプリ開発者の収益分配を85対15、ゲーム開発者の収益分配を88対12とした。

しかし、AmazonのAlexaプラットフォームは、そうした他の大規模なアプリのエコシステムとまったく同じカテゴリにあるわけではない。

同社は当初、他のアプリストアに匹敵する音声アプリのカタログを計画していたが、現実には、米国の消費者家庭におけるAlexaの大きな足がかりを利用してビジネスで利益を生み出すことができた開発者はほとんどいなかった。

実際、Amazonは長年にわたってスキルの発掘に苦心してきた。調査によると、Alexaデバイスの所有者は、スマートスピーカーやスクリーンを主に内蔵機能のために使用していることがわかっている。すなわち、スマートホーム機器の制御、音楽の再生、買い物リストの作成、タイマーの設定、ニュースの視聴、天気やスポーツ試合結果などの最新情報の取得などだ。Alexaデバイスを通じて行われると期待された音声ベースのショッピングが本格的に普及することはなかった

つまり、Amazonの手数料率の調整を、他のアプリストアのポリシー変更と同じようにとらえることはできないということだ。Amazonは、ある程度、市場動向に追随しなければならないというプレッシャーを感じている。他方、手数料引き下げが、Alexa開発者による自社プラットフォーム向け開発を促すことを期待していることも明らかだ。

Amazonは同じ発表の中で、2022年から始まる新しいプログラムのもとで、開発者の収益を増やすために設計された、さらなる特典を展開するとも述べた。追加特典は、開発者の収益の「最大10%」に相当する可能性があると同社は指摘している。特典には、インセンティブプログラム、開発者のスキルを最適化するための個別フィードバック、マネタイズの機会を見出すための支援などが含まれる予定だ。

Amazonはこれまでにも、優秀なスキル開発者に対し、直接支払う試みをを繰り返してきた。新しいインセンティブがこれまでと異なるものなのか、それとも同じことの繰り返しなのかは、今のところわからない。同社は、このプログラムの詳細について、2022年の開始前に詳細を公表すると述べた。

同社は2020年、Alexaスキルを収益化する機会を増やすことで、スキル開発への関心を呼び戻そうとしてきた。消費者が前払いしてアドオン音声アプリにアクセスする「Paid Skills」の開始、開発者がスキル内でAmazon.comから販売できる(そしてアフィリエイト収入を得られる)「Alexa Shopping Actions」の導入、スキル内購入にアクセスできる海外の開発者の範囲拡大、スキルのホスティングコストのほぼ0ドルへの引き下げなどがある。

画像クレジット:Amazon

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(文:Sarah Perez、翻訳:Nariko Mizoguchi

5Gネットワーク上で動作するアプリの開発を容易にするプラットフォーム「Shabodi」

市場の多くが5Gインフラストラクチャの構築と販売に注力している一方、見落とされている重要な部分として、5Gネットワーク上で動作するアプリケーションの開発があると、SineWave Ventures(サインウェーブ・ベンチャーズ)のゼネラルパートナーであるVivek Ladsariya(ヴィヴェック・ラドサリヤ)氏は述べている。だからこそ、Shabodi(シャボディ)のような企業を支援することに興奮していると同氏はいう。

「アプリケーション開発者は常にネットワークの複雑さを取り除きたいと考えており、Shabodiはそんなニーズに応えるための準備を整えています」と、ラドサリヤ氏はメールで語っている。

Shabodiは、企業やシステムインテグレーター、通信事業者が5G上での次世代アプリケーションの開発・展開を加速できるようにするために、シード資金として337万5000ドル(約3億8000万円)を調達した。

トロントを拠点とするこの会社は、通信業界のベテランであるVikram Chopra(ヴィクラム・チョプラ)氏とHarpreet Geekee(ハープリート・ギーキー)氏によって2020年に設立され、まずはそのアプリケーション・イネーブルメント・プラットフォームによる5Gの展開に注力している。2人が一緒に働くのはこれが二度目になる。

Shabodiはすでに顧客と協力し、5Gの展開を収益化して投資収益率を高め、そのネットワークの可能性を最大限に活用している。

「5Gはすべての人にとっては2〜3年先の話ですが、事業としては今、機が熟しています」と、チョプラ氏はTechCrunchに語った。「企業は複数の拠点に5Gを展開していますが、その上でアプリケーションを構築するには新たなスキルセットが必要であり、今のところ当社はそれに対応している数少ない企業の1つです」。

Shabodiでは、決済の分野でSquare(スクウェア)がやったことになぞらえて、シンプルなAPIを提供することで5Gを解きほぐし、開発者が予想外のコストや複雑さ、ドメインの格差なしに、インダストリー4.0のアプリケーションを構築できるようにすることを目指していると、チョプラ氏は述べている。

今回のシードラウンドは、Blumberg Capital(ブラムバーグ・キャピタル)が主導し、Counterview Capital(カウンタービュー・キャピタル)、Shasta Ventures(シャスタ・ベンチャーズ)、SineWave Ventures、MAVA Ventures(マヴァ・ベンチャーズ)、Green Egg Ventures(グリーン・エッグ・ベンチャーズ)、Maccabee Ventures(マカビー・ベンチャーズ)、CEAS Investments(シアス・インベストメント)、Supernode Ventures(スーパーノード・ベンチャーズ)、Lorimer Ventures(ロリマー・ベンチャーズ)が参加した。Shabodiは2021年初め、 Forum Ventures(フォーラム・ベンチャーズ)とCisco(シスコ)やYahoo(ヤフー)の元幹部が主導するプレシードラウンドを実施し、20万ドル(約2300万円)を調達している。

同社は15人の従業員と2つの特許を有しており、2022年には3つ目の特許を取得する予定だ。

チョプラ氏は、他の顧客については明らかにできないとのことだが、約10社ほどの企業と交渉中であると述べている。同氏によれば、今回の資金調達によって製品チームと営業チームを強化し、年内にはShabodiの最初の製品を公開する予定だという。

「この10年で最も影響力のある開発の1つである5Gの展開を加速させるために、業界の専門家からなるShabodiの先見性のあるチームに協力できることを誇らしく思います」と、Blumberg Capitalのマネージング・ディレクター、Bruce Taragin(ブルース・タラギン)氏はメールで語っている。「5Gはエンタープライズ・テクノロジーの多くの側面を崩壊させるでしょう。Shabodiのプラットフォームは、アプリケーション開発者、組織、業界全体が5Gを実現する方法を大幅に改善する可能性を有しています」。

画像クレジット:Bryce Durbin / TechCrunch

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(文:Christine Hall、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

Gadgetはeコマースアプリ開発者の生産性を高めるプラットフォームを提供

カナダのオタワに拠点を置くGadget(ガジェット)は、Shopify(ショッピファイ)の元社員2名によって設立された開発者の生産性向上を支援する企業だ。同社はシード資金として、850万ドル(約9億6700万円)を調達したことを発表した。この資金調達ラウンドは、Sequoia Capital(セコイア・キャピタル)とBessemer Venture Partners(ベッセマー・ベンチャー・パートナーズ)が主導し、OpenAI(オープンAI)の共同創業者兼CTOであるGreg Brockman(グレッグ・ブロックマン)氏、Klarna(クラーナ)のCTOであるKoen Koppen(コエン・コッペン)氏、Shopifyのデータサイエンス・エンジニアリング部門の責任者を務めるSolmaz Shahalizadeh(ソルマズ・シャハリザデ)氏などが参加した。

2020年にHarry Brundage(ハリー・ブランデージ)氏とMohammad Hashemi(ムハンマド・ハシェム)氏が設立したGadgetは、eコマースアプリの開発者がコードを書く時間を削減する方法を提供することを目的としている。同社のプラットフォームを利用することで、開発者は作業にともなう無駄な仕事を省くことができ、アプリの構築と拡張をより効率的に行うことができる。

「私たちがGadgetを起ち上げた理由は、自分たちでさまざまなものを作ろうとしていた時に、何かを実現するまでには、どれほど長い時間がかかるかということに不満を感じたからです」と、CEOのブランデージ氏は、TechCrunchによるインタビューで語っている。「発売前の準備に何週間もかかるのは、フラストレーションがたまります。私たちは他の多くの人が同じ問題を抱えていると考え、それを解決するものを構築したいと思いました」。

Gadgetは、開発者が必要とするツール、ライブラリ、API、そしてベストプラクティスを1つにまとめ、開発者が、内蔵ステートマシン、自動アクセス制御、即時のAPI生成、他のSaaSプラットフォームとの統合など、一連の高度なプリミティブにアクセスしながら、データモデルを定義し、コードを書くことができるようにした。

画像クレジット:Gadget

今回調達した資金を使って、Gadgetはサーバーレススタックを公開し、Shopifyを手始めにサードパーティのAPIとの接続を構築する予定だ。ブランデージ氏とハシェム氏は、Shopifyの製品やエンジニアリングに関する専門的な知識を活用するために、まずはこの大手eコマース企業に注力する。

将来について、ブランデージ氏とハシェム氏は、重要なソフトウェアをより容易に開発できるようにするために、息の長い永続的な会社を作りたいと望んでいる。ブランデージ氏は、まだ作られていない実現可能な役に立つツールがたくさんあると指摘し、Gadgetは同社でそれらのツールを実現したいと考えている。

「ソフトウェア開発は転換期を迎えています」と、SequoiaのパートナーであるMike Vernal(マイク・ヴァーナル)は声明で述べている。「私たちが使用するソフトウェアに多くを期待するようになったことで、開発者はその要求に追いつくために、構築に使うツールに多くを求めるようになりました。Gadgetのプラットフォームは、eコマースの開発者が拡張性の高いソフトウェアを驚くほど速く構築できるように支援するという約束を果たしています」。

画像クレジット:Gadget

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(文:Aisha Malik、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

【コラム】開発者と設計者が企業の半導体不足解消のためにできること

米半導体メーカーMarvell Technology(マーベル・テクノロジー)のCEOであるMatt Murphy(マット・マーフィー)氏は2021年10月、半導体不足は2022年さらにはそれ以降にも及ぶだろうとの見解を示した。供給不足はすでに世界中で甚大な影響をもたらしており、ドイツの自動車メーカーOpel(オペル)は一部ラインの稼動を2022年初めまで停止すると発表している。

Society of Motor Manufacturers and Traders(英国自動車製造販売協会)が最近発表したところによると、2021年9月の英国の新車登録台数は1998年以降で最低を記録した。世界的に自動車メーカーは半導体不足に苦しんでおり、需要を満たすだけの車を製造・販売できていない。

しその余波はさらに広がっている。新型コロナウイルスのパンデミックを受けて需要が急増したコンシューマーエレクトロニクスも半導体不足の影響を受け始めており、調査結果からは、スマートフォンの生産に当初の予想以上の打撃が生じる可能性が示唆されている。Microsoft(マイクロソフト)のゲーミング担当エグゼクティブバイスプレジデントであるPhil Spencer(フィル・スペンサー)氏は、Xbox(エックスボックス)とPlayStation(プレイステーション)のゲームコンソールは2022年も供給不足が続くだろうとの見通しを表明した。

このことは、当社The Qt Company(ザ・キュート・カンパニー)がForrester(フォレスター)と最近行った、世界の製造業が直面している課題に関する調査でさらに実証された。驚くべきことに、私たちが話をした組織の80%が現在、デジタルプロダクトやサービスの産出に苦慮しており、62%がその原因として半導体供給の遅れを挙げている。

迅速な解決策はない

2020年を通じて、デジタルプロダクトとサービスに対する需要は前例のないペースで増加し、この需要はまだ揺らいでいない。2021年上半期に実施した本調査では、さらに82%の組織が、市場での地位を維持または成長させるためには新しいスマートプロダクトやコネクテッドプロダクト、サービスを迅速に導入する必要があると回答した。10組織のうち8組織近く(79%)にとって、これはソフトウェアの研究開発ライフサイクルの加速に意識を向けることを意味している。

スピードは依然として企業の最重要事項であり、半導体の供給やソフトウェア開発サイクルの遅れは深刻な問題を引き起こしている。多くの場合、このような遅延は数カ月間続く。そして、ファームウェアの課題にしっかりと向き合うことは、開発者スキルの不足という絶えず存在する懸念とも関係していることを忘れてはならない。

人材不足や半導体不足をすぐに解決することはできないが、企業が即座に有益なインパクトを生み出せる変革は存在する。そしてその中心には、半導体や組み込みデバイスに依拠するプロダクトやサービスを創造し、送り出す設計者と開発者が位置している。

開発プロセスへの挑戦

企業は危機に陥らないために、迅速かつ効果的な改善を行うための働き方に今すぐ目を向けなければならない。プロダクトのライフサイクルを見ると、ほとんどの企業は設計と開発に対して非常にサイロ化されたアプローチをとっている。そうした状況は、プロジェクトの着手時からのインタラクションの方法(あるいは多くの場合なされていない)に関してだけではなく、チームが使用するソフトウェアやツールを検討する際にも当てはまる。

これは、迅速で効率的なモバイルアプリ開発における中核的な課題の1つである、過度に複雑な開発者 / 設計フィードバックループに直接つながっている。デジタルプロダクトの制作を任されている開発者と、ユーザーエクスペリエンスやユーザーインターフェイスのような要素をより考慮している設計者との間には、しばしば断絶がある。

連携して作業を行うべきときに、両者は異なるサイロで活動している。開発者と設計者のコラボレーションを有効にすることは、このプロセスを促進し、チップ不足により失われた部分を補うために極めて重要である。

プロセスの一元化

開発と設計のツールとプラクティスを一元化することで、設計イテレーションを、中断ではなく開発プロセスへの貢献に転換することができる。骨の折れるフィードバックループのサイクルを断ち切り、ブランドはより早くプロダクトを市場に投入できるようになる。

DevOpsによるソフトウェア開発と同じような考え方で、設計と開発を「DevDes」として統合することは、サイロ化を解消し、ワークロードを軽減し、デリバリーをシンプルにすることを意味する。

クロスプラットフォームのフレームワークとツールは、これらの市場の課題の影響を緩和するために不可欠である。デジタルプロダクトの意思決定者は、柔軟性を維持し、調達可能なものを調達できる限り利用する必要があるだろう。例えば、多種多様なシリコンをサポートする柔軟なソフトウェアツールやプラットフォームに投資することで、サプライチェーンの不足による負荷を低減できる。

しかし、利点はそれだけではない。半導体不足を超えて考えると、プロダクトチームは多くの場合、複数のデバイスで使用可能でありながら、なおかつシームレスでネイティブなエクスペリエンスをエンドユーザーに提供できるプロダクトを、迅速に開発して展開することが求められる。繰り返しになるが、サイロを取り除き、DevDesアプローチをクロスプラットフォームフレームワークで採用することで、チームがネイティブ環境で作業できるようになり、プロセスの迅速化が可能になる。

将来にわたって機能するプロセス

私たちすべてがパンデミックの視点を離れ、より持続可能な未来を見据えつつあることに喜びを感じる一方で、過去20カ月間に得た教訓を決して忘れることはできないし、忘れてはならないと思う。

これほど急激に需要が高まることはないと思うが、再びピークを迎える可能性は高い。そして、消費者と企業の両方から期待されている、より良い品質のプロダクトの迅速な提供と、増え続けるデバイス間でのシームレスなエクスペリエンスは、今後も確実に続いていくトレンドである。

開発者のバーンアウトは広く語られており、必要なサポートを受けずにより多くのものをより速く提供するというプレッシャーは、持続可能なものではない。開発者スキルの不足に対応するために、より多くの開発者を育成していく上で、開発者がプロダクトチームの他の部分と真に統合された方法で作業できるようにすることは、極めて重要な意味を持つ。

今後しばらくの間、半導体不足が混乱を引き起こすことは避けられないだろう。それゆえ、現在のプロセスで実現可能なステップに目を向けることが、企業に委ねられている。その取り組みは、この困難な時期を乗り切るのに役立つだけではなく、将来にわたって存続できる企業を確立することにもつながるはずだ。それは開発ライフサイクルの中核をなす人とプロセスから始まるものである。

編集部注:本稿の執筆者Asa Forsell(アサ・フォーセル)氏は、The Qt Companyのオートモーティブ担当シニアプロダクトマネージャー。

画像クレジット:Mykyta Dolmatov / Getty Images

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(文:Asa Forsell、翻訳:Dragonfly)

【コラム】開発者と設計者が企業の半導体不足解消のためにできること

米半導体メーカーMarvell Technology(マーベル・テクノロジー)のCEOであるMatt Murphy(マット・マーフィー)氏は2021年10月、半導体不足は2022年さらにはそれ以降にも及ぶだろうとの見解を示した。供給不足はすでに世界中で甚大な影響をもたらしており、ドイツの自動車メーカーOpel(オペル)は一部ラインの稼動を2022年初めまで停止すると発表している。

Society of Motor Manufacturers and Traders(英国自動車製造販売協会)が最近発表したところによると、2021年9月の英国の新車登録台数は1998年以降で最低を記録した。世界的に自動車メーカーは半導体不足に苦しんでおり、需要を満たすだけの車を製造・販売できていない。

しその余波はさらに広がっている。新型コロナウイルスのパンデミックを受けて需要が急増したコンシューマーエレクトロニクスも半導体不足の影響を受け始めており、調査結果からは、スマートフォンの生産に当初の予想以上の打撃が生じる可能性が示唆されている。Microsoft(マイクロソフト)のゲーミング担当エグゼクティブバイスプレジデントであるPhil Spencer(フィル・スペンサー)氏は、Xbox(エックスボックス)とPlayStation(プレイステーション)のゲームコンソールは2022年も供給不足が続くだろうとの見通しを表明した。

このことは、当社The Qt Company(ザ・キュート・カンパニー)がForrester(フォレスター)と最近行った、世界の製造業が直面している課題に関する調査でさらに実証された。驚くべきことに、私たちが話をした組織の80%が現在、デジタルプロダクトやサービスの産出に苦慮しており、62%がその原因として半導体供給の遅れを挙げている。

迅速な解決策はない

2020年を通じて、デジタルプロダクトとサービスに対する需要は前例のないペースで増加し、この需要はまだ揺らいでいない。2021年上半期に実施した本調査では、さらに82%の組織が、市場での地位を維持または成長させるためには新しいスマートプロダクトやコネクテッドプロダクト、サービスを迅速に導入する必要があると回答した。10組織のうち8組織近く(79%)にとって、これはソフトウェアの研究開発ライフサイクルの加速に意識を向けることを意味している。

スピードは依然として企業の最重要事項であり、半導体の供給やソフトウェア開発サイクルの遅れは深刻な問題を引き起こしている。多くの場合、このような遅延は数カ月間続く。そして、ファームウェアの課題にしっかりと向き合うことは、開発者スキルの不足という絶えず存在する懸念とも関係していることを忘れてはならない。

人材不足や半導体不足をすぐに解決することはできないが、企業が即座に有益なインパクトを生み出せる変革は存在する。そしてその中心には、半導体や組み込みデバイスに依拠するプロダクトやサービスを創造し、送り出す設計者と開発者が位置している。

開発プロセスへの挑戦

企業は危機に陥らないために、迅速かつ効果的な改善を行うための働き方に今すぐ目を向けなければならない。プロダクトのライフサイクルを見ると、ほとんどの企業は設計と開発に対して非常にサイロ化されたアプローチをとっている。そうした状況は、プロジェクトの着手時からのインタラクションの方法(あるいは多くの場合なされていない)に関してだけではなく、チームが使用するソフトウェアやツールを検討する際にも当てはまる。

これは、迅速で効率的なモバイルアプリ開発における中核的な課題の1つである、過度に複雑な開発者 / 設計フィードバックループに直接つながっている。デジタルプロダクトの制作を任されている開発者と、ユーザーエクスペリエンスやユーザーインターフェイスのような要素をより考慮している設計者との間には、しばしば断絶がある。

連携して作業を行うべきときに、両者は異なるサイロで活動している。開発者と設計者のコラボレーションを有効にすることは、このプロセスを促進し、チップ不足により失われた部分を補うために極めて重要である。

プロセスの一元化

開発と設計のツールとプラクティスを一元化することで、設計イテレーションを、中断ではなく開発プロセスへの貢献に転換することができる。骨の折れるフィードバックループのサイクルを断ち切り、ブランドはより早くプロダクトを市場に投入できるようになる。

DevOpsによるソフトウェア開発と同じような考え方で、設計と開発を「DevDes」として統合することは、サイロ化を解消し、ワークロードを軽減し、デリバリーをシンプルにすることを意味する。

クロスプラットフォームのフレームワークとツールは、これらの市場の課題の影響を緩和するために不可欠である。デジタルプロダクトの意思決定者は、柔軟性を維持し、調達可能なものを調達できる限り利用する必要があるだろう。例えば、多種多様なシリコンをサポートする柔軟なソフトウェアツールやプラットフォームに投資することで、サプライチェーンの不足による負荷を低減できる。

しかし、利点はそれだけではない。半導体不足を超えて考えると、プロダクトチームは多くの場合、複数のデバイスで使用可能でありながら、なおかつシームレスでネイティブなエクスペリエンスをエンドユーザーに提供できるプロダクトを、迅速に開発して展開することが求められる。繰り返しになるが、サイロを取り除き、DevDesアプローチをクロスプラットフォームフレームワークで採用することで、チームがネイティブ環境で作業できるようになり、プロセスの迅速化が可能になる。

将来にわたって機能するプロセス

私たちすべてがパンデミックの視点を離れ、より持続可能な未来を見据えつつあることに喜びを感じる一方で、過去20カ月間に得た教訓を決して忘れることはできないし、忘れてはならないと思う。

これほど急激に需要が高まることはないと思うが、再びピークを迎える可能性は高い。そして、消費者と企業の両方から期待されている、より良い品質のプロダクトの迅速な提供と、増え続けるデバイス間でのシームレスなエクスペリエンスは、今後も確実に続いていくトレンドである。

開発者のバーンアウトは広く語られており、必要なサポートを受けずにより多くのものをより速く提供するというプレッシャーは、持続可能なものではない。開発者スキルの不足に対応するために、より多くの開発者を育成していく上で、開発者がプロダクトチームの他の部分と真に統合された方法で作業できるようにすることは、極めて重要な意味を持つ。

今後しばらくの間、半導体不足が混乱を引き起こすことは避けられないだろう。それゆえ、現在のプロセスで実現可能なステップに目を向けることが、企業に委ねられている。その取り組みは、この困難な時期を乗り切るのに役立つだけではなく、将来にわたって存続できる企業を確立することにもつながるはずだ。それは開発ライフサイクルの中核をなす人とプロセスから始まるものである。

編集部注:本稿の執筆者Asa Forsell(アサ・フォーセル)氏は、The Qt Companyのオートモーティブ担当シニアプロダクトマネージャー。

画像クレジット:Mykyta Dolmatov / Getty Images

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(文:Asa Forsell、翻訳:Dragonfly)

Twilioが次世代アプリ開発を支援する約57億円のファンドを設立

Twilio(トゥイリオ)は開発者と直接仕事をする企業であり、Twilioを利用して企業を設立する開発者を支援する社内投資部門を持つことは非常に理に適っている。通信API企業であるTwilioは米国時間12月8日、同社を利用している企業や、革新的なアイデアに取り組んでいる企業への投資を目的とした5000万ドル(約57億円)のファンド、Twilio Venturesの設立を発表した。

この新しい投資部門の責任者である経営企画担当上級副社長Bryan Vaniman(ブライアン・ヴァニマン)氏は、ファンドを設立して投資を開始するというミッションを持って、3月にAdobe(アドビ)から移ってきた。多くの企業のように資金調達の仕組みを持つことは、アプリケーションをより早く構築するためのツールを開発者に提供するというTwilioのミッションの自然な延長線上にあるものだとヴァニマン氏は話す。

「このファンドは、次世代のカスタマーエンゲージメントアプリケーションを構築する開発者やスタートアップを支援するためのものです。当初から開発者を第一に考えていた当社にとって、これは自然な流れだと思います」と述べた。

同社は2020年、32億ドル(約3640億円)を投じてSegment(セグメント)を買収したが、Twilio Venturesが出資する企業を探す際には、顧客エクスペリエンスが大きな焦点となっている。

「何よりもまず、開発者と顧客エンゲージメントアプリケーションのための次世代機能を構築しているエキサイティングな企業を支援することで、そのエコシステム内での当社のリーチと影響力を拡大する機会だと考えています」とヴァニマン氏は話した。

同氏によると、Twilio Venturesは多くの場合、シリーズAラウンドに投資するが、企業との相性が良ければそれ以降、またはそれ以前にも投資する。通常、出資額は100万ドルから300万ドル(約1億1000万〜3億4000万円)の範囲となる。

画像クレジット:Twilio

予想通り、Twilio VenturesはすでにTwilioと共通点の多い企業数社に投資している。「当社が行なったいくつかの投資をみると、Algolia(アルゴリア)は我々と非常によく似た開発者の精神を共有する企業の好例です。Algoliaは、開発者がすばらしい検索推薦体験を構築できるようなAPIを開発しました」とヴァニマン氏は述べた。

これらの企業への正確な投資額は明かさないが、セカンダリーの戦略的投資家だと同氏は話す。これらの企業に対しては、社内リソースへのアクセスを提供したり、営業やマーケティングを支援したりするなど、有用なパートナーとしての役割を果たすことを計画しているが、ほとんどの場合、取締役会に役員を送らない。

投資先の企業を買収することも考えられるが、それはこのファンドの主要な目的ではない。「それは、どちらかというと副次的な利益でしょう。このプログラムの本義ではなく、投資をして企業に近づき、関係を築くことで、将来的にはより深い関係につながる可能性があるというメリットがありますが、それが主な目的ではありません」と述べた。

Salesforce(セールスフォース)、Zoom(ズーム)、Hubspot(ハブスポット)、Workday(ワークデイ)、Okta(オクタ)など他のSaaS企業も投資部門の設立という同様のアプローチを取っている。

画像クレジット:Robert Alexander/Getty Images / Getty Images

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(文:Ron Miller、翻訳:Nariko Mizoguchi

「地球上で最もプログラマブルな自動車」の実現を目指すウーブン・プラネット

2日間にわたってオンラインで開催された「TechCrunch Tokyo 2021」で、初日冒頭の「Keynote」セッションに登場したのが、ウーブン・プラネット・ホールディングスでソフトウェアプラットフォーム担当シニア・バイス・プレジデントを務めるNikos Michalakis(ニコス・ミハラキス)氏だ。

「Programmable Mobility」(プログラム可能なモビリティ)と題したこのセッションでは、

  • ウーブン・プラネットの戦略の概要
  • モビリティのプログラミングをよりオープンにするためのArene(アリーン)プロジェクト
  • ウーブン・プラネットが切り開こうとしているビジネスチャンス

の3点を取り上げるとミハラキス氏は述べ、Keynoteが始まった。

技術と投資にフォーカスするウーブン・プラネット

ミハラキス氏はギリシャで生まれ、米国に渡って電気工学とコンピュータサイエンスを学んだ。さまざまな分野のスタートアップやNetflixで働いた後、シリコンバレーのトヨタ・リサーチ・インスティテュートに入社。その後、東京のウーブン・プラネットに移った。

ウーブン・プラネットのビジョンは「Mobility to love, Safety to live」で、技術にフォーカスした2つの会社と投資にフォーカスした1つの会社で構成されている。

技術にフォーカスした会社の1つがウーブン・アルファで、イノベーティブなプロジェクトを推進している。ミハラキス氏のチームが取り組んでいるプロジェクトもここに含まれる。

もう1つがウーブン・コアで、自動車メーカーとサプライヤーが協力しながら自動運転や新しい車載電子プラットフォームを提供している。

そして投資にフォーカスしたウーブン・キャピタルは投資や協業を通じて、スタートアップだけでなく大企業ともパートナーシップを構築しているという。

モビリティは古典的な考え方と現代的な考え方が交差するところに生まれる

モビリティについてミハラキス氏は「自動車に関する古典的な考え方と、ソフトウェア、つまりウェブ、モバイル、インターネットといった現代的な考え方が交差するところに生まれるものです」と語る。

同氏は「(新しい技術ゆえに)モビリティ構築に必要なスキルを持つ人材は今のところいません」とし、ウーブン・プラネットは日本のモノづくりにおけるクラフトマンシップとシリコンバレーのイノベーションの考え方を融合させた文化を構築しようとしていると述べた。また、社内に「DOJO(道場)」を作り、新しいモビリティ・スキルセットを身につけた人材を育成しているそうだ。

快適にソフトウェアを開発できる環境を目指すAreneプラットフォーム

「私たちは地球上で最もプログラマブルな自動車を実現したいと考えています」とミハラキス氏はいう。それを実現するプラットフォームがAreneだ。

Areneのビジョンを、同氏は「開発者が快適に開発を行えるようにしたいのです。最適なツールとプラットフォームを提供し、イノベーションを実現できるようにするのです」と説明する。

このビジョンを実現するためのミッションについては「ソフトウェア開発をシンプルにし、開発頻度を上げて、車載コードをシームレスにアップデートできるようにします。また、そのために安全性が損なわれることもないようにします。これを実現できれば、自動車のプログラミングは誰でもできるものになると考えています」と述べた。

スマートフォンと同じように自動車のプログラミングができるようになる

自動車のプログラミングが誰でもできるとはどういうことか。ミハラキス氏は10〜15年前の携帯電話の状況と対比して説明する。

「かつては電話機をプログラミングできるのは電話機メーカーだけでした。しかし現在は誰もがスマートフォンをプログラミングできます。何千ものアプリケーションが利用可能で、何千もの開発者がこのプラットフォームに参入し新しいアイデアを生み出しています。それにより投資家たちの関心が高まり、利益が見込まれるアイデアには資金が集まるようになりました」と同氏は述べ、このようなポジティブなサイクルが生み出された結果、モバイルエコシステムが成長していると携帯電話の状況を位置づけた。

これと同じように「現在のところ、自動車のプログラミングを行えるのは自動車メーカーだけですが、将来は誰もが車のプログラミングをできるようになるべきです」とミハラキス氏はいう。

オープンな開発プラットフォームで開発者の参入を促し、自動車業界に影響を与える

ウーブン・プラネットの目的は「オープンな開発プラットフォームを構築して、そこでクラウドベースのツールやソフトウェア開発キットを開発者に提供すること」で、自動車の各機能にアクセスするためのVehicle APIも提供する。

ツールを提供するだけでなく「自動車自体についても再考する必要がある」とミハラキス氏はいう。現在の自動車は複数の異なる領域ごとにコンピューティングが活用され、各コンピュータが特定の機能を実行するための専用のものとなっている。これに対し、ウーブン・プラネットは複数のECU(電子制御ユニット)を横断するArene OSにフォーカスする。「アプリケーションがコンピューティング全体に作用していくようにする」と同氏は説明した。

こうした取り組みは業界に大きな影響を与えて「車載アプリ開発者」という職種が生まれる、起業家がモビリティ分野に参入する際の障壁が少なくなる、車載ソフトウェアをアップデートできることで自動車自体のLTV(顧客生涯価値)も高まると同氏は見ている。

アプリ、Arene OS、ECU、ハードウェアの概念図

新しいビジネスチャンスのアイデアは?

このプラットフォームにより「新しいビジネスチャンスが得られると考えています」とミハラキス氏は述べ「ともに考え、創造性を磨いていきましょう」と呼びかける。そして、ビジネスチャンスのアイデアをいくつか挙げた。

まず、アプリのパーソナライズ機能を構築すれば、カーシェアで誰が乗ったかに応じてアプリや構成をロードできるようになる。

また、企業のブランディングも考えられる。企業が実店舗からウェブ、モバイル、ソーシャルメディアにプレゼンスが求められるようになったのと同じで、モビリティにもプレゼンスが求められるようになるだろうという。その例として同氏は、ホテルの送迎車内でチェックインやシャンパンのサービスを提供できるかもしれないと述べた。

分散型アプリケーションの可能性もある。同氏は「すべての自動車に最先端のパワフルなコンピューティング能力とセンサーが搭載されているのを想像してみてください。データの力を活用したすばらしいアプリケーションを構築できるでしょう」と述べ、リアルタイムのマップ構築を例として示した。

そしてビジネスチャンスとして同氏は最後に、これまでにないハードウェアへの期待を挙げた。同氏は個人的に、マッサージチェアがあればいいなと思っているという。

エッジコンピューティングによるマップのイメージ

ミハラキス氏は「成功するものもあれば失敗するものもあるでしょう。結果はわかりません。それが起業というものです」と述べ「自動車のプログラミングをよりオープンなものにしていけば、アイデアを繰り返し実験し、より容易にできるように改良し、実験にかかるコストを低減し、アイデアをさまざまな方法で応用してみるといった活動を通じて、エコシステムを成長させる機会が得られると思っています」と強調して、Keynoteを締めくくった。

(文:Kaori Koyama)

AWS、ローコードのアプリ開発ツール「Amplify Studio」を発表

2021年のre:InventカンファレンスでAWSは米国時間12月2日、Figmaに接続されるノーコード / ローコードサービスで、これによりデベロッパーはクラウドに接続されたアプリケーションを迅速に開発することができるAmplify Studio発表した。Amplify Studioは既存のAWS Amplifyサービスの拡張で、ウェブアプリケーションやモバイルアプリを作れるという基本機能は同じだが、Amplify Studioはドラッグ&ドロップのインターフェースなので使いやすい。

AWSは、Studioを人気のあるユーザーインターフェースデザインツールFigmaに接続するという、おもしろいことをしている。これによりデザイナーはインターフェースをFigmaで作り、そのあとデベロッパーがそれを自分のバックエンドデータに接続してStudioの中でアプリケーションのロジックを作る。そのためAWSが自分のツールを作る必要がなく、Amplify StudioがFigmaのデザインをReact UIのコンポーネントのコードに翻訳する。

画像クレジット:AWS

AWSのRene Brandel(ルネ・ブランデル)氏は、声明で「Studioの新しい『UI Library』(プレビュー)で、FigmaとAmplify Studioのコンポーネントを同期できます。またAmplifyには便利なFigmaファイルがあるため、仕事の開始が早い。AmplifyのFigmaファイルには、UIのプリミティブと既成のコンポーネントの両方があります。さらにStudioは、Figmaで作られた新しいコンポーネントも同期できます」。

画像クレジット:AWS

AmazonのWerner Vogels(ワーナー・ヴォゲルス)CTOによると、同社はこれを今でもデベロッパーファーストのサービスと見なしており、特にフロントエンドのエンジニアが対象だ。つまり、まだあちこちにコードを少し書かなければならないということだが、それによりデベロッパーは自分のアプリケーションを既存のDevOpsのパイプラインにエクスポートすることが容易にできる。

Amplify Studioでは、必要なら一部の既成コンポーネントを、AWS Cloud Development Kitを使って、デベロッパーがAmplify Studioの中でオーバライドしてもよい。AWSによると、これのおかげでデベロッパーは、ニーズや成長に応じてアプリケーションをスケールできないといった壁にぶつかることがない。

画像クレジット:AWS

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(文:Frederic Lardinois、翻訳:Hiroshi Iwatani)