アマゾンがAlexaの「スキル」開発者への手数料引き下げ、2022年から

Amazon(アマゾン)は、他の大手テック企業と同様、開発者が得る収益からの取り分を引き下げる。開発者が、スマートスピーカーやその他のAlexa(アレクサ)対応デバイスで動作する音声アプリ、いわゆるAlexaの「スキル」から得る収益が対象だ。

同社は今週、スキル購入(有料インストール)、スキル内購入(アプリ内購入のAlexa版)、スキルサブスクリプションなどの収益が100万ドル(約1億1400万円)未満のAlexaスキル開発者の手数料を2022年、30%から20%に引き下げると発表した。この変更は2022年第2四半期から適用される。サードパーティーの開発者がトラフィックを生み出し、スキルの認知度を高められるよう、開発者特典も拡充する。Amazonによると、新しくプログラムの対象になるのは、前年の収益が100万ドル未満の開発者や、新規のAlexa開発者だ。

AmazonによるAlexa開発者の収益に対する手数料体系の更新は、Apple(アップル)、Google(グーグル)、Microsoft(マイクロソフト)など他の大手テック企業による同様の動きに続くものだ。

ちょうど1年前、AppleはApp Store事業に対する規制当局の監視強化に対応し、1年間のApp Store収益が100万ドル未満の小規模開発者の手数料率を15%に引き下げた。以前は、Appleの標準的な30%の手数料を支払わなければならなかった。Googleもすぐにその動きを追い、Google Playで同様のプログラムを実施し、手数料を15%に引き下げた。ただし、引き下げ後の手数料適用時の計算方法には若干の違いがあった。両社はその後、ニュース出版社やその他のサブスクリプションアプリなど、特定のカテゴリのアプリについて、標準の手数料率にさらに例外を設けることにした。

また、Microsoftは2021年、収益分配の条件をより開発者に有利なものに更新し、同社の決済プラットフォームを利用するアプリ開発者の収益分配を85対15、ゲーム開発者の収益分配を88対12とした。

しかし、AmazonのAlexaプラットフォームは、そうした他の大規模なアプリのエコシステムとまったく同じカテゴリにあるわけではない。

同社は当初、他のアプリストアに匹敵する音声アプリのカタログを計画していたが、現実には、米国の消費者家庭におけるAlexaの大きな足がかりを利用してビジネスで利益を生み出すことができた開発者はほとんどいなかった。

実際、Amazonは長年にわたってスキルの発掘に苦心してきた。調査によると、Alexaデバイスの所有者は、スマートスピーカーやスクリーンを主に内蔵機能のために使用していることがわかっている。すなわち、スマートホーム機器の制御、音楽の再生、買い物リストの作成、タイマーの設定、ニュースの視聴、天気やスポーツ試合結果などの最新情報の取得などだ。Alexaデバイスを通じて行われると期待された音声ベースのショッピングが本格的に普及することはなかった

つまり、Amazonの手数料率の調整を、他のアプリストアのポリシー変更と同じようにとらえることはできないということだ。Amazonは、ある程度、市場動向に追随しなければならないというプレッシャーを感じている。他方、手数料引き下げが、Alexa開発者による自社プラットフォーム向け開発を促すことを期待していることも明らかだ。

Amazonは同じ発表の中で、2022年から始まる新しいプログラムのもとで、開発者の収益を増やすために設計された、さらなる特典を展開するとも述べた。追加特典は、開発者の収益の「最大10%」に相当する可能性があると同社は指摘している。特典には、インセンティブプログラム、開発者のスキルを最適化するための個別フィードバック、マネタイズの機会を見出すための支援などが含まれる予定だ。

Amazonはこれまでにも、優秀なスキル開発者に対し、直接支払う試みをを繰り返してきた。新しいインセンティブがこれまでと異なるものなのか、それとも同じことの繰り返しなのかは、今のところわからない。同社は、このプログラムの詳細について、2022年の開始前に詳細を公表すると述べた。

同社は2020年、Alexaスキルを収益化する機会を増やすことで、スキル開発への関心を呼び戻そうとしてきた。消費者が前払いしてアドオン音声アプリにアクセスする「Paid Skills」の開始、開発者がスキル内でAmazon.comから販売できる(そしてアフィリエイト収入を得られる)「Alexa Shopping Actions」の導入、スキル内購入にアクセスできる海外の開発者の範囲拡大、スキルのホスティングコストのほぼ0ドルへの引き下げなどがある。

画像クレジット:Amazon

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(文:Sarah Perez、翻訳:Nariko Mizoguchi

投稿者:

TechCrunch Japan

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