土木建設のさらなる効率化を目指すブラジルの建設テックAmbarが約41.2億円調達

ブラジルの建設テックスタートアップAmbar(アンバー)は、大規模なシリーズCラウンドを調達したことを発表した。2億400万レアル、今日の市場中値で約3600万ドル(約41億1800万円)だ。このラウンドはブラジルのEcho Capital(エコー・キャピタル)とOria Capital(オリア・キャピタル)が共同でリードし、TPG Capital(TPGキャピタル)、Argonautic Ventures(アルゴノーティック・ベンチャーズ)などが参加した。

Ambarは、テクノロジーを活用して土木建設プロセスを効率化するという野望を持って2013年に設立された。同社によると、これまでに3億6000万レアルの株式資金を調達している。これは約1億ドル(約114億4400万円)だと、CEOのBruno Balbinot(ブルーノ・バルビノット)氏は推定している。

この1億ドル(約114億4400万円)という数字は、現在のドル建て3億6000万レアルに相当する金額よりも高いが、為替レートはこの数年でかなり変動しているので、この数字を割り出すのは一筋縄ではいかない。また、一方で、同社の借入金も調達していることは考慮されていない。

正確な数字はともかく、Ambarは現在、計画実行のための相当量の資本を手に入れたということだ。TechCrunchの取材に応じたバルビノット氏は、この資金をラテンアメリカ全域で強いニーズがあるデジタル化事業を強化するために使う計画だと説明した。

スペイン語圏のラテンアメリカはAmbarの収益の一部となっているが、Ambarが最も存在感を示しているのはブラジルであるとバルビノット氏はいう。このスタートアップの母国には、2つの利点がある。この地域最大の市場であること、そしてブラジルのポルトガル語が競合他社に対する堀の役割を果たすことだ。

Ambarのサイトによると、467社のアクティブな顧客がいる。このうち3社は米国にあるが、米国に進出したのは、学習のためだとバルビノット氏はいう。一方、ブラジル国内では1500の建築現場がある。

Ambarのビジネスには、2つの側面がある。さらに推進する計画のデジタル化と、一部のメディアで建築分野のLego(レゴ)に例えられた工業化だ。

とはいえ、Ambarはゼネコンではない。「私たちは、建設業を営む人たちとパートナーを組むのが目的であり、決して建設業を営むことはありません」と、バルビノット氏はポルトガル語で語った。バルビノット氏は、Ambarが技術系企業であることを主張するだけでなく「建設部門よりもはるかに高い」単位経済性を裏付けにする。

バルビノット氏と共同創業者のIan Fadel(イアン・ファデル)氏には、自動車産業という意外なインスピレーションの源がある。Volkswagen(フォルクスワーゲン)の関連会社で働いていた2人は、同じようなプロセス駆動型のアプローチを建設分野にも取り入れたいと考えている。

建設業をより効率的に変革することは、同時に持続可能性を高めることでもある。人的・物的資源を最適化することで、Amberは従来の建設業の大きな副産物であった廃棄物を削減している。

これは、最新の投資家たちが取り組んでいる問題でもある。Oria CapitalはBコーポレーションで、サイトの環境・社会・ガバナンス(ESG)セクションは「Oriaのポートフォリオは、国連が提唱する主な持続可能な開発目標に貢献することを目指しています」と、説明している。

また、今回のシリーズCラウンドは、国連グローバル・コンパクトのイニシアチブと繋がりのあるAmbarの取締役Guilherme Weege(ギリェルメ・ウィーゲ)氏が新たに設立した成長ファンド、Echo Capitalが共同リードしている。ファッショングループGrupo Malwee(グルポ・マルウィ)のCEOは、同イニシアチブの1.5℃へのビジネス・アンビション・コミットメントに署名したビジネスリーダーの1人だ。

両ファンドは、Ambarが見習いたいポートフォリオの成功例がある。ウィーゲ氏のファミリーオフィスは、最近サンパウロのB3証券取引所のNovo Mercado(ノヴォ・メルカド)セグメントでIPOを果たしたブラジル企業のInfracommerce(インフラコマース)を支援した。Oriaは、1億ドル(約114億4400万円)の第3号ファンドで、2020年7月にNASDAQに上場したZenvia(ゼンヴィア)への追随投資を行った。

AmbarもOriaの3号ファンドが支援した企業の1つで、来年は大きな成長計画を立てている。「2022年には、Ambar製品を適用した同時施工数を2倍に増やし、970社の新規顧客を獲得する予定です」と、バルビノット氏は述べた。

最近、ソフトウェア会社のAutodoc(オートドック)を買収したバルビノット氏とそのチームは、ビジネスのIT面を優先させる計画だ。このスタートアップは、断片化を解消し、顧客が「1つのプラットフォームですべてにアクセスできるようにしたいのです」と、バルビノット氏は言った。「10のアプリケーションがあり、多くの人がそれらをコントロールする必要があったとしたら、これからはすべてを統一し、同じログインで提供します」。

画像クレジット:Amber

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(文:Anna Heim、翻訳:Yuta Kaminishi)

住宅ローン貸付のRocket CompaniesがTruebillを約1450億円で買収、なぜこの取引は高くなかったのだろうか?

Rocket Companies(ロケット・カンパニーズ)は米国時間12月20日朝、Truebill(トゥルービル)を現金12億7500万ドル(約1450億円)で買収すると発表した。

Rocket CompaniesはRocket Mortgageという製品でよく知られている。一方のTruebillは消費者向けのアプリで、消費者のサブスクリプションの管理、貯蓄の自動化、予算編成をサポートする。今回の買収額は、Truebillの株主にとって有利なものになる。PitchBookのデータによると、Truebillの最終的な非公開評価額は、前回のラウンド後に5億3000万ドル(約600億円)だった。同ラウンドの4500万ドル(約50億円)の投資は2021年初めに行われた

関連記事:サブスクリプション管理や自動貯金に加え資産・負債の一元管理も目指す「Truebill」

つまり、Truebillの最終投資家にとっては2倍以上、初期の支援者にとってはさらに大きなリターンとなるわけだ。悪い話ではない。

さあ、倍率を推測してみよう!

Truebillが13億ドル弱で販売されるということで、このスタートアップの年間経常収益(ARR)の見積もりを出すために必要な情報を持っていることになる。大雑把に、年間売上高はどの程度になるだろう?

もしあなたが5000万ドル(約57億円)前後と予想したなら、私たちの予想と同じだ。テック会社のバリュエーションは、最近の下降傾向にもかかわらず高く、フィンテックの会社もホットだ。なので、20ドル台半ばの倍率は妥当な推測に思える。

しかし、そうではない。Rocketは次のように述べている。

この新事業は、Rocket Companiesの毎月の売上も安定させることになります。現在、住宅ローン貸付事業に顧客から支払われる毎月の支払いは、年率換算で13億ドル(約1480億円)のサービス収入を生み出しています。Rocket Companiesは、250万人の顧客を抱え、業界最高の91%の顧客維持率を誇っています。Truebillは、年間1億ドル(約114億円)の経常収益を上げる勢いです。この数字は一貫して増加しており、2021年の売上は2020年の2倍以上となる見込みです。

熱い。驚きだ。

Truebillは、我々が予想した約2倍のARRで2021年を締めくくることになる。そしてさらに、同社は毎年2倍の規模に成長している。大きな収益と速い成長。これは、まさしく企業が株式公開前に打ち出したいプロフィールだ。にもかかわらず、Truebillは株式公開する代わりに、現在のARRの13倍以下で売却している。この数字は、時間が経つにつれて圧縮され、2022年には一桁になる。ただし、新年度にTruebillが成長を維持することができればの話だが。

正直言って、かなり割安感がある。

この取引がすべて現金であることは、Rocketが一種の割引を得たかもしれないことを意味する。株式は現金よりも安く、Truebillはおそらく取引が、例えば50%の株式であれば、もう1億ドルをなんとか獲得できたかもしれない。ただし、我々が話している数字は非常におおまかなものだ。

それでも、この取引はある種の朗報であり、また前兆でもある。100%成長、ARR9桁近いフィンテック企業が、なぜかろうじてユニコーン並みの金額で売れたのか?前述の通り、この価格はTruebillの出資者にとってはかなり甘い年末の流動性を意味するが、他のフィンテック企業にとっては、年末に歓迎されない無料招待券を受けただけで、この数字は強気とは言い難い。正直なところ、少しソフトな印象を受ける。

おそらく、Nubankのやや低調なIPOの影響があるのだろう。あるいは、ここ数四半期で見られた、ソフトウェア業界の倍率の全般的な下降傾向の影響かもしれない。または、Truebillの内部に何かまずいものがあるのかもしれない。おそらく、同社は我々が予想するよりもはるかに大きな販売およびマーケティング費用を持っており、Rocketと融合することで顧客獲得コストを下げ、同社の経済状態を改善することができるのかもしれない。

いずれにせよ、RocketがTruebillを含む最初の四半期を報告する際に、より多くのデータを得ることができるはずだ。この買収は2021年中に完了する見込みだ。

画像クレジット:Bryce Durbin / TechCrunch

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(文:Alex Wilhelm、翻訳:Nariko Mizoguchi

リアルタイムで土壌検査を行うドイツのアグリテックStenonが22億円を調達

リアルタイムの土壌センシングソリューションを持つアグリテック企業のStenon(ステノン)は、シリーズAラウンドで2000万ドル(約22億円)を調達した。ラウンドには、Founders Fund、David FriedbergのThe Production Boardの他、Cherry VenturesやAtlantic Labsなどの既存投資家も参加した。

2018年にドイツのポツダムで創業したStenonのデジタル土壌データは、ラボを必要とせずに生成されるため、より速く、より効率的だと同社は主張する。Stenonによると、農家はデータにより栽培に関して最適な判断を下し、収穫量、作物の品質、土壌の健全性を高められるという。また、土壌検査機関を利用する必要がないため、時間とコストを大幅に削減することができるとしている。

共同創業者でCEOのDominic Roth(ドミニク・ロス)氏は、次のように語った。「Stenonのミッションは、農業における土壌データ会社となり、物理的なラボの必要性をなくすことです。土壌データが大規模に利用できなければ、農家は今後、持続的かつ収益性の高い仕事をすることはできません。さらに、市場は再生農業や自律型農業の方向にダイナミックに動いています。これらの実践にはすべて、当社が提供するデータセットが必要になります」。

農業による温室効果ガス排出の半分は、現在の土壌管理方法に起因しているため、Stenonのような土壌管理システムが気候変動との戦いにおいて非常に重要となりつつある。

Stenonの技術は、20カ国で特許を取得するか認証を受けるかして、活用されている。ヨーロッパの主要な農業組合が、ドイツのユリウス・キューン研究所などの研究機関のパネルと共同で認証を行っている。

主な競合他社は、Agrocares、360 Soilscan、ChrysaLabs(140万カナダドル=約1億2300万円を調達)だ。

The Production BoardのDavid Friedberg(デービッド・フリードバーグ)氏は「Stenonのリアルタイム土壌測定は、農家に重要なデータを提供し、コストと時間のかかる現在の土壌分析プロセスに革命をもたらします」とコメントした。

画像クレジット:Stenon soil testing

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(文:Mike Butcher、翻訳:Nariko Mizoguchi

Sidewalk Labsのスマートシティプロジェクトがグーグルに復帰

Alphabetのスマートシティプロジェクトが終了し、Googleが引き継ぐことになった。Sidewalk LabsのCEOであるDan Doctoroff(ダニエル・ドクトロフ)氏は、健康上の理由で退任することを記した書簡で発表した。広報担当者は、Sidewalk LabsのプロダクトはGoogleに組み込まれることを確認したが、AlphabetはCanopy Buildingsを別会社としてスピンアウトさせる予定だという。

「2022年からSidewalkのPebble、Mesa、DelveおよびAffordable ElectrificationのプロダクトはGoogleに加わり、Googleの都市持続可能性プロダクトの中核になります。これらのプロダクトは、Sidewalk Labsの都市プロダクト担当社長Prem Ramaswami(プレム・ラマスワミ)氏と最高技術責任者のCraig Nevill-Manning(クレイグ・ネヴィル-マニング)氏が引き続き担当します。2人はGoogle出身であり、チームは彼らのビジョンの実行を継続し、顧客に奉仕します」とドクトロフ氏は述べている。

Pebbleは縁石や駐車場の管理を目的とした車両センサーシステム、DelveはAIの力を借りて不動産開発を強化することを軸としている。Mesa sensorsは省エネを目的としたセンサー、Affordable Electrificationは家庭のエネルギー管理を目的としたセンサーだ。一方、Canopy Buildingsは「木材や木造建築の自動化された大量工場生産」を目指している。

ドクトロフ氏は6年前にGoogle内でSidewalk Labsを立ち上げ、その後Alphabetの傘下で独立企業になった。2017年10月、Sidewalk Labsはトロントのウォーターフロントにスマートな地域を建設する計画を発表した。Quaysideは、特に配達ロボットや騒音、交通、汚染といったものを管理するためのセンサーを多数導入していたはずだ。

しかし、Sidewalk Labsは2020年5月にプロジェクトを中断した。ドクターフは当時、新型コロナウイルス(COVID-19)による「前例のない経済的な不安」と、その他の妥協しなければならないことから、キーサイドのビジョンはもはや実行不可能であるとされていた。同社は、北米の開発プロジェクトに関するアドバイスも行っていた。

Sidewalk Labsからは、恵まれない地域のヘルスケアの改革を目指すCityblock Health、交通計画の見直しを目指したデータ収集プロジェクトで物議を醸したReplica「テクノロジーを駆使した新しい形のインフラを開拓した」とドクトロフ氏が語るSidewalk Infrastructure Partnersなどの企業がスピンアウトしている。

ドクトロフ氏は、医師からALS(ルー・ゲーリック病)である可能性が高いと判断され、身を引くことになったという。家族と過ごす時間を増やし、この病気と闘うことに専念するとのこと。2010年、ドクトロフ氏は、ALSと診断された父と叔父の死後、ALS研究のための新しい共同アプローチを構築することに焦点を当てた組織を立ち上げている。

編集部注:本記事の初出はEngadget。執筆者Kris HoltはEngadgetの寄稿ライター。

画像クレジット:Sidewalk Labs

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(文:Kris Holt、翻訳:Hiroshi Iwatani)

中国のAI・顔認識大手SenseTimeが米国のブラックリスト入りでIPOを延期

中国で最も価値のあるAIソリューションプロバイダーの1つであるSenseTime(商湯科技、センスタイム)は、7億6700万ドル(約872億円)の株式上場を保留すると香港時間12月13日に発表した。

この発表は、香港証券取引所がSenseTimeのIPOにゴーサインを出してから3週間後のことだ。12月10日、米財務省は同社を「中国軍産複合体企業」のリストに加え、同社が「対象者の民族性を判断できる顔認識プログラムを開発し、特にウイグル族を識別することに重点を置いている」と述べた。

前政権時には国防総省と財務省が共同管轄し、財務省のみの管轄へと変更されたこのブラックリストは、米国の投資家がSenseTimeの有価証券を購入または売却することを禁止している。

米国政府の決定を受けて、SenseTimeはIPOを延期し、潜在的な投資家の「利益を守る」ために、新たな上場スケジュールを記載した補足目論見書を発行するとのこと。

SenseTimeは声明の中で、次にように述べた。「当社は、今回の指定およびそれに関連して行われた非難に強く反対します。これらの非難は根拠がなく、当社に対する根本的な誤解を反映しています。地政学的な緊張の渦中に巻き込まれたことを遺憾に思います」。

2019年、SenseTimeは、米国企業との取引を制限する「エンティティリスト」に登録された。

SenseTimeのビジネスの概要については、以前の記事でご覧いただける。

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画像クレジット:Getty Images(Image has been modified)

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(文:Rita Liao、Catherine Shu、翻訳:Aya Nakazato)

映画「シン・ウルトラマン」公開日が2022年5月13日に決定、飯塚定雄氏による手書きスペシウム光線の新予告編も

映画「シン・ウルトラマン」公開日が5月13日に決定、飯塚定雄氏による手書きスペシウム光線の新予告編も

円谷プロの新作発表会TSUBURAYA CONVENTION 2021で、映画『シン・ウルトラマン』の公開日が2022年5月13日になることが明かされました。同時に、ウルトラマンの必殺技スペシウム光線が見られる「特報2」映像も公開しています。

映画『シン・ウルトラマン』は企画・脚本が『エヴァンゲリオン』『シン・ゴジラ』の庵野秀明、監督が『シン・ゴジラ』監督・特技監督の樋口真嗣。

当初は2021年初夏公開予定としていたものの、新型コロナウイルス感染症の影響で「公開時期調整中」の状態でした。

約一年の延期を経て、ようやく劇場で令和の庵野版ウルトラマンが観られるようになります。

映画「シン・ウルトラマン」公開日が5月13日に決定、飯塚定雄氏による手書きスペシウム光線の新予告編も発表会配信には樋口真嗣監督も登壇。とうに完成しているのに公開が延期になった作品と思われがちなものの、実際にはまだ完成しておらず、スタッフはポストプロダクションに追われていると明かしています。

今回新たに公開された特報映像は、ウルトラマンがゆっくりと立ち上がり、スペシウム光線を放つ場面。改めて見ると立ち上がる部分は特報1と同じで、塵の向こうで光る眼とシルエットが見えるエフェクトが追加されています。

映画公式によると、このスペシウム光線はなんと初代ウルトラマンで光線作画を手掛けた飯塚定雄さんが担当したとのこと。

シン・ウルトラマンのデザインはテレビの初代ウルトラマンを尊重しつつ、それ以上に成田亨のオリジナルデザインと佐々木明の造形への回帰を志向しカラータイマーや着ぐるみのモールド等を排除したことが庵野秀明によって語られていました。

スペシウム光線をオリジナルの手書きベースでCG化することからも、「本来のウルトラマン」を描くために現代のCG技術を用いるコンセプトが伺えます。映画「シン・ウルトラマン」公開日が5月13日に決定、飯塚定雄氏による手書きスペシウム光線の新予告編も

メインビジュアルは昨年からそのまま、公開日が確定したのみ。しかし樋口監督の口から、中央のベーターカプセルはやっぱりベーターカプセルであること、ドッグタグは斎藤工演じる主人公のものであること、名前は「神永新二」であることが明らかにされています。

(初代ウルトラマンに変身するハヤタ隊員のフルネームは、後付けされた設定では「ハヤタ・シン」。「シンジ」は樋口監督の名前であり、そこから名付けられたエヴァンゲリオンの主人公「碇シンジ」の名でもありますが、ウルトラマンの主人公「シン」がシン・ウルトラマンでは「シンジ」になっているのが面白いところです)。

物語についての具体的な新情報はなし。惹句の「そんなに人間が好きになったのか、ウルトラマン。」は、初代ウルトラマン最終回のゾフィーの台詞を思い出させます。

映画『シン・ウルトラマン』特報映像公開。二体の怪獣も初公開

Metaの実験的アプリ部門NPEの新仮説「次の大きなアイデアは米国市場で生まれるのではないか?」

Meta(旧Facebook)の実験的アプリ部門であるNPE(New Product Experimentation)チームがシフトチェンジしている。2019年半ばに初めて発足した当グループは、新しいソーシャル機能をテストし、人々の反応を測るための消費者向けアプリの構築に注力してきた。

カリフォルニアのメンローパークを拠点としたチームは、長年にわたりデートアプリ通話アプリミームメーカーからTikTokTwitterClubhouseのライバルカップル向けアプリなど、数多くの実験的アプリを始め、引退させてきた。そして今、NPEは、新たな仮説の検証を開始する。それも、大きなアイデアは米国以外の市場から生まれるのではないかというものだ。

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このような潜在性への投資として、NPEは最近ナイジェリアのラゴスにオフィスを開設し、近々アジアにもオフィスを開設する予定だ。また、小規模な起業家チームへのシードステージの投資を行うなど、戦略の調整を行っている。

そのような投資のうち1つはすでに行われている。Metaが最近行った投資で、バーチャルキャラクターを作るAI搭載の開発者向けプラットフォームであるInworld AIへの投資はNPEが主導した。しかし今後は、モバイルインターネットを新しい方法で活用しているスタートアップ企業など、より短期的な可能性を秘めたメタバース関連ではない企業にも投資を行う可能性がある。

Metaはもちろん、今日の普遍的な体験の多くが、最初はニッチなコミュニティから生まれたことを理解している。例えばWhatsAppは、世界中で導入される前に、SMSテキストメッセージが無料ではなかった地域で人気を博した。また、モバイルマネーのイノベーションの中には、東アフリカにおける従来の決済システムの欠如から生まれたものもある。

MetaのNPEチームは、このような未来のチャンスを逃さないために、シリコンバレー以外にも目を向けている。

NPEの責任者イメ・アーチボン氏(画像クレジット:Meta)

MetaのNPE(New Product Experimentation)の責任者であるIme Archibong(イメ・アーチボン)は、Metaに11年間勤務しており、NPEの前にはFacebookの開発者向けプラットフォームでの勤務経験がある。NPEに参加する前は、Facebookの開発者向けプラットフォームを担当し、世界中を飛び回って小規模なスタートアップから大企業の起業家に至るまでとつながりを作っていた。アーチボンは2年前にNPEに参加し、グループを同じような方向性に導いている。

「これは私が10年前にやっていたことと似ています。つまり、起業家や小さなチームを集めて、彼らのアイデアを実現するためのリソース、つまり人材、時間、技術にアクセスしてもらうのです。そしてもちろん、目標は私たちが構築できるアイデアの種のいくつかが、いつの日か非常に大きく育ってくれることです」と彼は説明する。

この新しい方向性を追求するために、チームはアジア、アフリカ、ラテンアメリカの市場に焦点を当てているが、米国ベースのプロジェクトを完全に放棄しているわけではない。だが、その中にはこれまでとは違って見えるものがあるかもしれない。NPEの現在の試みは、立ち上げても人気が出ずにすぐに終了してしまう新しいソーシャルアプリではなく、米国で投獄された人の社会復帰を支援するプロジェクトや、LGBTQの家族が親になるまでの支援を目的としたプロジェクトなどがある。これらは、単なるTikTokのクローンよりも明らかに内容が充実している。

グローバルな舞台に焦点を移すことで、NPEは最初は小さく、もしかすると十分なサービスを受けていない市場を対象にしているかもしれないが、規模を拡大できる可能性のあるアイデアを対象にしていくだろう。

アーチボン氏はこう述べる。「未来は、歴史的に見過ごされ、過小評価されてきた世界のいくつかの地域で築かれると思います。私は、問題、解決策、機会、そして新しい体験は、サービスを提供しようとしているコミュニティに最も近いところにいる人々によって構築されると確信しています」。そしてこのようなソリューションは、長期的には「より耐久力があり、より持続可能で、より実行可能な」ものになるだろうと彼はいう。

この論自体は堅実なものに聞こえる。何しろ、すでに歴史がそれを証明しているのだから。しかしMetaが中小企業からアイデアを「借用」してきたことを考えると、世界の起業家コミュニティがMetaによる投資を歓迎するかどうかには疑問が残る。

MetaがSnapchatのStoriesをコピーして、より大きな製品に成長させたことは広く知られている。同社はSnapchatのBitmojiの自社バージョンを公開した他、現在はClubhouseTikTokNextdoorSubstackのクローンを展開中だ。Phhhotoというスタートアップ企業は、最初にパートナーシップの機会を約束しておきながら、最終的にはPhhhotoの技術(InstagramのBoomerangになった)を独自に構築したとして、Metaを訴えているほどだ。Metaは、コピーしないものは買収した。例えばInstagramWhatsAppGIPHYのような将来のライバルから、tbhMovesのような新進気鋭の企業に至るまでだ。

関連記事:「コピーされて殺された」、ショート動画アプリPhhhotoがフェイスブックを反トラストで訴える

Inworld AIは、両者のVRにおけるミッションが緊密に一致していたことから、Metaとの連携に違和感を感じなかったかもしれないが、他のシードステージにあるスタートアップ企業は同じようには感じない可能性がある。しかしアーチボンは、このチャンスをものにする企業は十分に存在すると信じている。

「私は、(Inworld AIの)機会はもっと増えると思います。私たちのような、自分たちがやろうとしていることとミッションが一致した組織、つまり、類似したテクノロジーのトレンドや、新興のプラットフォーム、ユーザーの行動などにかなり力をいれている組織と一緒に仕事をする人々です」と彼はいう。

同社は、どのくらいの期間にどのくらいの資本を投入するかは明らかにしていないが、チーム自体と同様に、その規模は「本当に小さなもの」になるとアーチボンはいう。

画像クレジット:Meta

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(文:Sarah Perez、翻訳:Dragonfly)

英独禁監視当局がマイクロソフトのNuance買収を調査中

2021年初めに発表された、Microsoft(マイクロソフト)による197億ドル(約2兆2380億円)での音声テキスト化企業Nuance Communicationsの買収は、英国の活発な反トラスト監視当局の注意を引いてきた。そして当局は12月13日、提案されている取引に懸念すべき理由があるかどうかを評価するために第1段階の調査を行っていると発表した

関連記事:マイクロソフトが過去2番目規模で文字起こし大手Nuance Communications買収、ヘルスケア分野のクラウドを強化

競争市場局(CMA)が第1段階の調査を開始するかどうかの決定は追って行われる予定だ。

現在のところ、規制当局がこの決定を下すまでの期間は示されていないが、CMAが利害関係者にコメントを求める協議期間は2022年1月10日までとなっている。

買収案に対する独占禁止法上の監視は何カ月にもわたることがあり、少なくとも取引完了に大きな遅れをきたす可能性がある。

CMAはこの件に関する声明の中で「取引が実行された場合、2002年企業法の合併規定に基づく関連する合併状況の創出につながるかどうか、またその可能性があるかどうかを検討しており、もしそうであれば、その状況の創出が英国の商品またはサービスの市場における競争の実質的な低下につながることが予想されるかどうかを検討している」と述べている。

Microsoftは、4月にNuance買収を発表した際に、ヘルスケア分野でのプレゼンスを強化するために音声テキスト化企業を買収すると述べていた。ヘルスケア分野では、Nuanceが多くの臨床医支援製品を開発している(遠隔診療の記録のためのテック、臨床文書作成のための音声認識ツール、AIを活用した放射線診断レポートなど)。

反トラスト規制当局は、今回の買収計画をさらに精査する必要があると判断した場合、第1段階の調査を開始する。その後、まだ懸念すべき理由があると判断した場合、より詳細な第2段階の調査を開始する可能性がある。

また、いずれかの段階で、懸念される競争上の問題がないと判断し、買収を許可することもあり得る。

逆に、懸念がある場合には、買収を実行する前に救済措置が必要と判断したり、買収停止を命じたりする可能性もある。

Nuance買収計画に対するCMAの予備調査について、Microsoftにコメントを求めている。

Amazon(アマゾン)、Apple(アップル)、Google(グーグル)、Microsoft、さらにはFacebook(フェイスブック)などのテック大手は何年もの間、健康状態の追跡やモニタリングなどを行うツールの開発に関心を示してきたが、デリケートな分野への進出は、重要分野のデジタル化が進む中で、企業の支配力や市場力をさらに強めることになるのではないかという懸念がある。

一方、英国では、プラットフォームの力を考慮して国内の競争法を再編成しているところで、「競争促進」の体制を導入し、大企業の市場支配力から中小のイノベーターを保護したいとしている。

競争監視委員会は、CMA内部に設置される新しい部署Digital Markets Unitにハイテク企業を監督する権限を与える法案に先立ち、M&A活動やその他の主要な動き(Googleの戦略的な「プライバシーサンドボックス」計画など)を引き続き監視している。

関連記事:英国でテック大企業を監視する新部署「DMU」発足、デジタル分野の競争を促進

最近では、CMAはMeta(元Facebook)に対し、アニメーションGIFプラットフォームGiphyの買収を取り消すよう命令した。これは、これまでハイテク大手のM&Aに異議が唱えられることがほとんどなかったことを考えると、競争監視において注目すべき出来事だ。CMAは、プラットフォームの力と野心に挑戦する最前線にいることを強調している(命令によって面倒な取引破棄が必要な場合もある)。

画像クレジット:Jeenah Moon/Bloomberg via Getty Images / Getty Images

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(文:Natasha Lomas、翻訳:Nariko Mizoguchi

火星で着るマーズジャケットやホタルのように光るソーラーチャージジャケットなど「未来の服」を作る英Vollebak

Vollebakは、ロンドンを拠点とする設立6年目のアパレル企業で、顧客に直接販売を行っている。Vollebakのウェブサイトを訪れた人は、同社の服に付けられた誇張された宣伝文句に驚くことだろう。例えば「『防水』だけでは不十分な、大嵐のためにデザインされた」ジャケット「雨、風、雪、火から身を守ってくれる」パーカー「先史時代のヒトが着ていた柔らかい獣皮の感触と性能を再現した『氷河期』」フリースといった具合だ。

他の追随を許さないこのマーケティングセンスは、CEOのSteve Tidball(スティーブ・ティドバル)氏本人が生み出したものだ。彼は双子の片割れであるNick Tidball(ニック・ティドバル)氏と共同でVollebakを創設した。2人とも以前広告業界で働いた経験があり、またどちらも活発なアウトドア派なのだが、ここ数年は家族とVollebakでの仕事が忙しくアウトドアアクティビティはご無沙汰となっている。先に「未来の服」を作るVollebakについて行ったインタビューの中で、スティーブ・ティドバル氏は、こうしたコピーを自分で書いていることを明かしてくれた。

このインタビューの中で、彼は衣服の製作にどの程度テクノロジーが関与しているのかという私達の質問に回答し、また、まもなく終了するシリーズAでの資金調達などで、Vollebakがこれまでに約1000万ドル(約11億4000万円)の外部資金を調達したことも語ってくれた。シリーズAは、ロンドンを拠点とするベンチャー企業Venrexが主導し、Airbnbの共同創設者であるJoe Gebbia(ジョー・ゲッビア)氏やHeadspace CFOのSean Brecker(ショーン・ブレッカー)氏などが参加している。このインタビュー記事は、長さの調節と内容を明確にする目的に編集されている。

TC:あなたは、双子のニック氏とともにVollebakを立ち上げましたね。Vollebakの特色として、服につけられたコピーが天才的な感じがします。そのあたりのお話を聞かせていただけないでしょうか。

ST:5年前、Vollebakを立ち上げました。その前は、15年間、どちらも広告業界で働いていました。ですから、コピーがちょっとおもしろいとしたら、それは私達の以前の仕事と関係しているかもしれません。

私達はマーケティングの観点からいえば、信じられないほどシンプルなルールでVollebakを運営しています。そのルールとは基本的に「可能な限りお金をかけない」ことです。例えば、数年前、私達はディープ・スリープ・コクーンという最初の宇宙服を作りました。マーケティングでは、ターゲットが誰かを必ず考えますが、その時の私たちのターゲットはElon Musk(イーロン・マスク)氏その人だったので、SpaceXの向かいにある看板に空きスペースを見つけ、そこにポスターを掲げました。ポスターには「我が社のジャケットは出来ているけど、そちらのロケットはどうなっていますか?」と書きました。これはそれほどコストがかからない方法ですが、とてもおもしろいコピーだったので、次の週、NASAから電話がかかってきて、彼らと少し話をすることになりました。

TC:Vollebakの服は、宇宙旅行からサステナビリティまで、次の世紀に人々が経験しそうだとあなたが想像することが反映されているように思います。例えば、暗闇でもホタルのように光を放つソーラーチャージジャケットがありますね。自然界で最も優れたカモフラージュ方法の1つである、イカの適応迷彩を再現したと言える「ブラックスクイッド」ジャケットもありますね。どの程度テクノロジーが衣服製作に絡んでいるのでしょうか?

ST:私達がここ5年ほど技術面で焦点を当ててきたのは、マテリアルサイエンス(素材の科学)です。これはスタートアップとしてはアクセスしやすい分野なのです。AIや衣服型装置のようなもっと複雑なテクノロジーに焦点を当てようとするなら大変な額の資金が必要ですが、マテリアルサイエンスなら、スタートアップにも扱うことができるからです。これが私達が大変関心を持っている分野です。マテリアルサイエンスをどの程度製品に込めることができるか、ということは通常あまり追求されていないように思います。

私達が発売した商品で最もおもしろかったものの1つが世界初のグラフェンジャケットでした。グラフェンを最初に分離した科学者でさえ、グラフェンでなにができるかをいうことはできませでした【略】そこで、私達は、こちら側にはグラフェンが使われていて、こちら側には使われていない、これをテストして、どうなるか教えて欲しい、と彼らに言ったのです。私達は、グラフェンは驚くべき作用があり、熱を保存し再分配することができる、そしてグラフェンが保存できる熱の量には制限がない、という理論を持っていました。テストでは、驚くような結果が2つ出ました。ある米国人医師が非常に寒い夜のゴビ砂漠で過ごすことになったのですが、彼はまずグラフェンジャケットをラクダに巻きつけ、そのジャケットがラクダの熱を吸収した後、もう一度そのジャケットを自分で着込みました。そうすることで、彼は一晩暖かく過ごすことができました。

別のロシア人の友人の場合は、ネパールの山で凍死しそうになったのですが、グラフェンジャケットに最後の一筋の太陽光を吸収させたところ、ジャケットが温まり、彼はそれをインナーとして着ることにしました。この友人は、夜通し体を暖かく保ってくれたのが、グラフェンジャケットだと信じています。

TC:グラフェンシャツやセラミックシャツをどのように作るのですか?特別な織り機があるのですか?それとも3Dプリンターでしょうか?プロセスを教えて下さい。

ST:とても困難なプロセスを経る、というのがその質問への回答です。そのために、当社の製品は通常の衣服より値段が割り高です。具体的には、特殊な工場、特にヨーロッパの工場でそれらを作ります。そうした工場には、わずかな人しかアクセスできない非常にハイテクな機器が備えられています。

TC:生産期間は通常短期ですか?

ST:そのとおりです。最初は、資金があまりなかったので、可能な範囲でできるだけ多くの服を作りました。それらはあっという間に売り切れ、また作る、という形でビジネスは拡大していきました。私達の製品には非常に複雑で、非常に実験的な部分があるので、1万着も作るのは無謀なことです。そこで、うまく機能するか、改善点はあるか、などを見るために、最も実験的なものについては短期で生産しています。

TC:そうした実験的な新製品の1つが、マーズジャケットですね。どこで着るものなんですか?

ST:火星のために何かを作るといっても、結局それを地球で検証しなければならないのですから、その皮肉さがちょっとおもしろいですよね。しかし、火星や宇宙旅行が現実になった場合、そこへ出かける人の数や、そこに行った際に彼らが行うべき仕事は指数関数的に増加するでしょう。科学者、生物学者、建設業者、エンジニア、建築家などが必要になるでしょうが、彼らは何かを着なければなりません。ですから、私達は今のうちから作業を始め、月か、火星か、もっと軌道の低いところかを問わず、実際に行うべきタスクにはどんなものがあるのか検討し、それらがどんな作業か、そして対処すべき課題はなにか、といったことを考えたいと思っています。マーズジャケットには吐くためのポケットがついているのですが、これは無重力になるとヒトの前庭器官が混乱に陥るためです。

TC:前庭器官について知っているなんてすごいですね。あなたはマーケティングの天才だと思っていたのですが、科学者でもあるんですか?

ST:私は、科学者のフリをしているエセ科学者ですね(笑)。まあ、私達の周囲には本当におもしろい人達がたくさんいて、彼らは未来の戦争について考えていたり、今後の宇宙旅行について考えていたりします。私達はよく、うちの事業はWhatsAppの上で行われているね、と冗談を言っています。

TC:顧客からのフィードバックは主にどこで集めていますか?一部のD2Cブランドは、ソーシャルメディアやインスタグラムで活発に活動して、Slackチャンネルも持っていますよね。Vollebakはいかがですか?

ST:私は当初から、革新的なテクノロジーとフレンドリーな人々をメールでつなげたら素敵だな、という考えを持っていました。

TC:Vollebakは、サイトを通した直接販売のみを行っていますが、今後このスタイルが変わることはありますか?

ST:現在のスタイルを短期間で変えることはありません。私達のブランドにとって絶対的に重要なことの1つがお客様からフィードバックを得ることですが、現在の販売スタイルを変えることで、お客様とのつながりを失ってしまうことが心配です。例えば、お客様が当社のシャツ、あるいはジャケットでなにかよい経験をしたとしても、それを買ったのがどこかの小売店なら、お客様は私達と本当のつながりを持っていないことになります。これは情報の喪失だと感じます。

当社では、近々メタバース空間でより多くのことを行おうとしています。メタバースという考え方、つまり仮想世界と現実世界との間に競争や統合が起こるというアイデアがとてもエキサイティングだと思うからです。そのために現在、その空間ですごいものを構築しており、ある物を処理できる強力なスーパーコンピューターを探しているところです。基本的に、未来を決定づけると思うものは何でも深く掘り下げていくつもりです。

編集部注:インタビュー全体はこちらでお聞きいただける。インタビュー全体には、Vollebakの女性製品発売計画や資金調達状況なども含まれている。

画像クレジット:Vollebak

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(文:Connie Loizos、翻訳:Dragonfly)

【コラム】米国特許商標局はイノベーションを推進するために今すぐ行動すべきだ

近年、発明を促進すべき米国の特許システムの乱用がはびこりイノベーションを阻止している。即刻刷新が必要であり、そこにはあらゆる規模のイノベーターと起業家のためにシステムが働くように変える「今すぐ」実行可能な決定的修正方法がある。

バイデン政権が米国特許商標庁(USPTO)長官に指名したKathi Vidal(カシー・ビダル)氏は最近、上院司法委員会で指名承認公聴会を行った。両党の上院議員(民主党のバーモント州選出Patrick Leathy[パトリック・リーヒ]氏と共和党ノースカロライナ州選出Thom Tillis[トム・ティリス]氏)がともにビダル氏に質問したのがNHK-Fintivルールに関連する問題だった。これは米国特許商標庁の前長官が強要したルールで、議会で承認された超党派法案と真っ向から対立する。NHK-Fintivとは、特許商標庁における専門家による透明な侵害請求レビュープロセスの利用を制限し、イノベーターが費用のかかる訴訟や和解に関与することを強要するものだ。

短時間の公聴会の中でこの質問が際だっていたことは、USPTOおよび米国にとってこの問題がいかに重要であるかを示している。就任が承認されれば、次期長官はほぼ間違いなくNHK-Fintivのさまざまな問題に取り組まなくてはならない。しかし、特許商標庁は待つべきではない。米国のイノベーターたちを守るために今すぐ行動を起こすことができるのだから。

10年以上前、米国発明法によって米国特許商標局における当事者系レビュー(IPR)プロセスが生まれた。IPRは、特許侵害申請が偏見のない専門家審査員による透明な方法で解決されることを可能にするもので、企業はしばしば根拠のない訴訟や和解に巨額の費用と時間を割く必要がなくなる。このレビューが極めて重要なのは、誰もが特許侵害申請に善意で携わっているわけではないからだ。近年、特許訴訟の 60%近くに、特許不実施主体(NPEs)、いわゆる「特許ゴロ」グループが関わっている。

特許ゴロはダミー会社(その多くをヘッジファンドなどの訴訟資金提供者が支援している)で、使われけていない広範囲の特許を買い取り、米国の真っ当なイノベーターたちに対する武器として使用する。特許ゴロには、購入した特許を使って価値ある物を作る意志が一切ない。自分たちの出資者のために、価値ある商品を作っている企業から判決と和解金をゆすり取るためだけに存在している連中だ。

我々Intelは、相当数の特許ゴロに直面している。しかしこれは大メーカーだけの問題ではない。ゴロたちは数千通もの同一の要求書を小さな会社に送りつけることを、まるでネットビジネスを運用するように日々行っている。彼らは、多くの小企業が高額な費用のかかる訴訟に関わることを避けて和解金やライセンス費用を支払うことを当てにしている。さらに、時折専門知識のない陪審員が都合の良い判決を下して大当たりクジを引くことも期待している。

特許ゴロ訴訟は米国企業に深刻な影響を与えている。標的にされた企業は、年間総額290億ドル(約3兆2931億円)の現金支出を強いられ、和解金の平均は650万ドル(約7億4000万円)に及んでいる。これは本来であればビジネスを成長させ、新たな労働力を雇い、研究開発に使われるべきだったものであり、費用と時間のかかる裁判に関われる会社は多くない。IPRプロセスはこの種の搾取行為に対する効果的な保護措置であった。

不幸なことに、米国特許商標局前長官がNHK-Fintivルールを強制した結果、状況は特許システムを乱用する者たちに有利な方向へと逆戻りしてしまった。NHK-Fintivの下では、係争中の訴訟がある場合、当事者系レビュー(IPR)は拒否され、侵害申請の内容すら吟味されない。これは、IPRによって無効な特許や侵害申請に高価な訴訟を減らすことを目的とした米国発明法を無視するものだ。さらに、ビダル氏の公聴会でリーヒ議員は、最近の分析によると、USPTOがこれらの「自由裁量による拒否」を発行する際に基づいていた公判期日の90%以上が不正確だったことを指摘した。

議会が意図したIPRプロセスを復活させるために、NHK-Fintivは破棄されるべきだ。これはビダル氏の承認プロセスが進行する中で今後も重要事項として扱われるべきだが、商務省と特許商標庁には、米国のイノベーターたちを守るために「今すぐ」行動を起こす権限がある。

彼らはこれ以上待つべきではない。特許ゴロが米国のイノベーターを食い物にする時期は1日たりとも延びてはならない。

編集部注:本稿の執筆者Steven R. Rogers(スティーブン・R・ロジャーズ)氏は、
Intel Corporation(インテル・コーポレーション)の執行副社長兼法務顧問。上級幹部チームに属し、同社の法務、政府および貿易グループを担当している。

画像クレジット:Supawat Kaydeesud / EyeEm / Getty Images

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(文:Steven R. Rogers、翻訳:Nob Takahashi / facebook

職場での寄付やボランティア専用のプラットフォームを提供するDeedが約11.3億円調達

2021年の初めに書いたように、Deed(ディード)のミッションは明確だ。それは、多くの大企業が実施している従業員の寄付 / チャリティ / ボランティアプログラムを、より良いものにすることだ。モダンなUI、内蔵型コミュニティ管理ツールを備え、そして忘れないようにワークフロー(Slackなど)に接続することができる適切な箱を用意することだ。

その結果、Airbnb(エアービーアンドビー)、Stripe(ストライプ)、Box(ボックス)、Adidas(アディダス)などの大手企業を、ローンチ後すぐに顧客として獲得することができた。そして今、彼らは1000万ドル(約11億3700万円)のシリーズAを調達し、その活動を続けている。

先に、私はDeedの共同創業者であるDeevee Kashi(ディーヴイ・カシー)と電話で話をした。彼は、私に会社の最新情報を教えてくれるために、講演中のカンファレンスを抜け出して対応してくれた。彼によると、今回のラウンドはEarlybird(アーリーバード)がリードし、PruVen Capital(プルベン・キャピタル)、Y Combinator(Yコンビネータ)、Paua Ventures(ポウア・ベンチャーズ)がバックアップし、さらに戦略的な観点から非常に興味深い人物として、David Clarke(デビッド・クラーク)氏(エンタープライズワークプレイス管理ツールWorkdayの元CTO)、Uber(ウーバー)のCEO Dara Khosrowshahi(ダラ・コズローシャヒ)氏、そしてJeffrey Katzenberg(ジェフリー・カッツェンバーグ)のWndrco(ウォンドルコ)などが参加しているという。

同氏は、企業が従業員が本当に関心のある事を把握し、それに合わせて企業の取り組み(多くの場合「ESG」という言葉で括られる)をどのように形成するかを支援することにより注力していると教えてくれた。

「ESGへの投資は過去最高の水準にありますね。企業は多額の資金を投じていますが、その前に従業員の賛同を得られていません」と彼はいう。

「Deedの目標は、ESGとESGに関する戦略を『私』から『私たち』に変えることです。従業員が自分の関心事について行動を起こせるようにすることで、企業が従業員の実際の関心事に耳を傾け、発見できるようにするのです」。

そのためには、企業のソーシャルインパクトチームの担当者だけでなく、個々の従業員にも、プログラムや募金、ボランティア・キャンペーンを作成・管理する能力を与えることが必要だと彼はいう。「企業が従業員のためにプログラムを管理するのではなく、従業員自身が企業のためにプログラムを管理できるようにすることです」。

もう1つは、データチームを強化し、明確で実行可能な方法で「インパクトを測定し、報告する」方法を見つけ出すことだと彼は指摘する。

これに先立ち、Deedは2020年末にシードラウンドで200万ドル(約2億2700万円)を調達している。

画像クレジット:Deed

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(文:Greg Kumparak、翻訳:Akihito Mizukoshi)

ビッグニュースに関するささやかなメモ

スタートアップとマーケットの週刊ニュースレター、The TechCrunch Exchangeへようこそ。

なんて1週間だったのだろう。いや、本当に。もう12月後半も目前だというのに、どういうわけかニュースは起き続けている。ホリデイシーズンなのにこの多さとは!今回はまず始めに、先週の重要なニュースに関するいくつかのメモ、次にベクトル検索と、2021年のお勧め本についてお話しする。さあ始めよう!

  • 私たちが知るSPACの終焉:Trump Media SPAC(トランプメディアSPAC)を取り巻く煙スモッグレベルの濃さに達している。またBuzzFeed SPAC(バズフィードSPAC)の取引は、あらゆる手を尽くしたが失敗し、結局は世間の評判を落とし、その価値を半分近くまで下げただけに終わった。
  • 暗号資産 vs 従来の金融商品:宗教戦争の真っ只中に割り込むつもりはない、しかしテクノロジー市場は、暗号資産企業に資金を提供して育成する方法を真剣に決めていく必要がある。そしてその答はおそらくベンチャーキャピタルではないのかもしれない。先週私たちは、OpenSea(オープンシー)のIPOへの期待が、ユーザーから歓迎されるのではなく、軽蔑されている様子を見た。公開だって?トークンを発行して暗号資産の世界に留まっていればいいのでは?なぜなら、大量の従来資金がOpenSeaに流れ込んだので、それらの投資家は、デジタル硬貨ではなく、彼らに対する投資家たちにドルで返済する必要がある。これを解決する方法は?はっきりしない、だが私は、長期的には、暗号資産企業は完全に従来の金融レールから外れたものになるのではないかと思っている。そうならない理由はない。
  • SaaSの状況:これを書かなかったことをお詫びしたい、だがソフトウェアの評価額に関する最近の記憶の中でも最も急激なマイナスの動きの1つが見られた。確かに価格はまだ高いものの、以前ほどではない。現在過剰高値のユニコーンは注意が必要だ。
  • そして最後に、Instacart(インスタカート)は社長が辞任した:入社してからわずか数カ月後で、Instacartは注目を集めた人材を手放した。The Exchangeは、11月にInstacartについて少し書いている。パンデミックでの急増が落ち着いたあと、Instacartの成長率が元に戻ったことを示す報告に注目したのだ。ゆっくりではあるが、会社は今でも成長している。しかし、成長が遅いままでは、理にかなった価格で会社を公開することはできない。この先なにが待ち受けるのだろう?わからない。

会社をメディアにとりあげてもらう方法、そしてベクトル検索

テクノロジー分野での記者になることの最も良い点の1つは、未来を説明してくれる賢い人たちと時間を過ごせることだ。私たちが、すぐにはメタバースの住民になるわけではないものの、将来的なの意味での情報処理方法を変えるテクノロジーがここにはある。

Semi Technologies(セミ・テクノロジーズ)の共同創業者Bob van Luijt(ボブ・ファン・ラウト)CEOをご紹介しよう。この企業はWeaviate(ウィビエイト)を開発している。現在すでに多く存在するスタートアップと同様に、Semiは営利目的のOSS企業だ。簡単にいえば、同社はオープンソースプロジェクトWeaviateの上にビジネスを構築しているのだ。

ボブは数時間の時間を割いて、彼の会社、非構造化データの検索市場、Weaviateの仕組みについて話してくれただけでなく、TechCrunchの2021年分の記事をスクレイピングして小さなGUIに入れて、私が遊べるようにしてくれた。

ちなみに、これは記者にあなたの会社のことを気にかけてもらうためのすばらしい方法だ。これはお気軽な作業ではない、実に手間のかかる厚意で、相手の記者が基礎の基礎から知りたがっているような場合でも、初歩的な質問に忍耐強く答え続けることなのだ。

とにかく、ベクトル検索だ。Weaviateで可能になるのは、非構造化データをすばやく検索することだ。Microsoftの説明によればベクトル検索とは「深層学習モデルを使用して、データセットを意味のあるベクトル表現にエンコードします。ベクトル間の距離はアイテム間の類似性を表します」ということになる。

ボブは例を挙げて、これをもう少し簡単に説明してくれた。従来のデータベースでは、自由の女神がニューヨーク市にあり、エッフェル塔がパリにあることを示すデータを持っているだろう。しかし、こうしたデータを取得するには、対象を正確に検索をする必要がある。Weaviateまたは関連するソフトウェアを介したベクトル検索を使用すると、データベースの中になるフランスのランドマークについて、データを表示するように依頼することができる。そして、エッフェル塔のデータが取得される。

クールだよね、とても。ボブと彼のチームが親切にもセットアップしてくれたTechCrunchのポータルをいじくり回したが、私は彼らが提案した質問に最もこころ惹かれた。このようなものだ「Alex Wilhelmが外出中にTecCrunchニュースレターを書いたのは誰か?」率直にいえば、これはその曖昧さゆえに楽しい質問だ。どのTechCrunchニュースレターのことだろう?そして「外出中」とはどういう意味だろうか?結局、検索結果は、私が休みを取ってAnnaがニュースレターを処理していることを書いたちょっとしたテキストをこのコラムからなんとか見つけることができた。

とてもすばらしい。Semi Technologiesはかなり若い会社だが、私がずっと注目している会社の1つだ。それにはいくつかの理由がある。第1の理由は、オープンソースのスタートアップはクローズドコードの同業者よりも多くの場合興味深いからだ。そして、OSSテクノロジーを使用した構築を進めている創業者は、ビジネスに対するアプローチにやや余裕があることが多いし、個人的にボブが好きなことも理由だ。

Semiとの対話から書き起こした未整理の約3000語のノートを、もう少し一貫性のあるものに整理できたら、さらにお伝えする。

画像クレジット:Semi

本のお勧め2021

先週2部構成になったベンチャーキャピタルからの推薦図書リストにかなりの時間を費やした後、私たちは自分たちのお気に入りの何冊かをリストに追加しようとしている。もちろん、本の好みは絵画の好みと同じように個人的なものだが、2021年読んだもののうち最高だったもののいくつかを共有せずにはいられない!

Annaの2021年のお気に入りは以下のようなものだ:

フィクション:

「Born to be Mild:Adventures for the Anxious」Rob Temple(ロブ・テンプル)著

記録によれば、これは私が2021年に読んだ最初の本だったが、12カ月経っても本当に私を魅了してやまない。著者のRob Temple(ロブ・テンプル)はご存知かもしれない。陽気なソーシャルメディアアカウントを運営し、書籍シリーズである「Very British Problems」(ベリー・ブリティッシュ・プロブレム)の作者でもある。だがこの本はこれまでとは違うテイストだ。それは彼の不安との闘いと、自身のコンフォートゾーンから抜け出そうとした努力についての物語だ。それは感動的で、非常に親しみやすく、とてもおもしろい──あなたが私のようなSue Townsend(スー・タウンゼント)のファンなら、あなたもこれを気に入る可能性が高い。

ノンフィクション:

「How to Read Numbers:A Guide to Statistics in the News (and Knowing When to Trust Them)」 David Chivers(デビッド・シバース)、Tom Chivers(トム・シバース)著

これは私が今読んでいる本で、まだ読み切っていないという注意はしておくものの、とてもおもしろい本だ。それはメディアからの反発を招くかもしれないが、重要なポイントを提示している。私たちがニュースで目にする多くの数字は注意深く吟味される必要があるということだ。これは、ジャーナリストとニュース読者の双方にとってすばらしい読み物になる。読者が数字の読み方に精通すればするほど、分析の精度も上がっていく。

Alexの2021年のお気に入りには以下のようなものがある:

「The Salvation Sequence」Peter F. Hamilton(ピーター・F・ハミルトン)著

最高の空想科学小説(SF)は、私たちが住んでいる世界の上に宇宙船を登場させて充実した1日にしてくれるだけではない。実際、最高のSFは、経済学から人類、科学、物理学に至るまで、あらゆるものを再定義するのだ。2021年私が読んだシリーズ「The Salvation Sequence」は、まさにそのような本だ。経済学やエイリアンへの対処から、真の人間である意味や将来の政治まで、すべてがここに含まれている。とんでもない読み物だ。次の巻が出るのが待ちきれない、そうしたらこのすごいシリーズ全体をもう一度読み返すことができる。

「A Memory Called Empire」「A Desolation Called Peace」Arkady Martine(アーカディ・マーティン)

未来を描く方法は1つではない。マーティンが描くのは、文明と野蛮の概念が、芸術と帝国に衝突する未来だ。そして記憶に。そして隠された技術と戦争に。短い説明文ではとても説明しきれないが、マーティンがSF世界に構築したものは、科学というよりもアートに近いものという他はない。これは激賞に値する。

「Black Sun」Rebecca Roanhorse(レベッカ・ローンホース)

ファンタジー小説は、ヨーロッパの封建時代の歴史を背景に描かれることが非常に多い。登場する公爵が◯◯野郎だって?農奴たちに反逆させたほうが良いぜ!そんな感じだ。そして登場したのが「Black Sun」だ。これはまったく異なる方向にファンタジーをとり込んだ作品だ。南米ならびに中米の伝統に触発されたように見えるものの、本作はジェットコースター並のすばらしさである。必読だ。

「The Last Graduate」、Naomi Novik(ナオミ・ノヴィク)著

ノヴィクは本当にすばらしい作家だ。「Uprooted」(邦訳:ドラゴンの塔)と「Spinning Silve」(邦訳:銀をつむぐもの)はどちらも傑作だった。しかし、私の個人的な意見では、彼女の最高傑作は「A Deadly Education」だ。これは2020年後半に発売された。そして、その続編「The Last Graduate」へのカウントダウンが始まった。本が出るまでの日数を数えることはめったにないが、そうせずにはいられなかったのだ。そして「The Last Graduate」はすばらしい作品だった。今まで読んだことのない主人公に出会い、すべてが歯を持つ世界に入りたいなら、これらの本を読もう。それらを読めば、幸せを味わえるだろう。

画像クレジット:Nigel Sussman

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(文: Alex Wilhelm、翻訳:sako)

スペインがスタートアップ法成立へ前進、税制面で優遇や手続きを簡素化

スペイン政府は、スタートアップ法草案の詳細に同意し、議会へ提出した。議会は法案採択の議決に先立ち審議を行う。内容を修正する可能性もある。

閣僚理事会が現地時間12月10日、草案採択を発表した。この草案には、スペインでスタートアップを設立したり、スタートアップに投資したりする際の官僚主義的な障害を取り除くための重要な措置が含まれているという。

また、起業家やデジタル人材にとってスペインをより魅力的な場にするための、ストックオプションやビザの取得に関する改革も含まれている。

スペイン政府はリリースで、今回のパッケージには「ストックオプションのリターン関してEUで最も有利な扱い」が含まれていると述べた。

閣僚らは、ストックオプションの所得に対する非課税枠を、年間1万2000ユーロ(約153万円)から5万ユーロ(約640万円)に引き上げることで合意した。

また、この草案は、株の売却と会社の上場のいずれかの日まで課税を繰り延べると規定している。

その他の注目すべき税制措置としては、法人税および非居住者所得税の4年間の引き下げ(25%から15%へ)がある。これは、大きな障壁への取り組みだ。スタートアップは普通、創業期に売り上げの計上に力を注がないからだ(現行の規則では、一般的な企業と同じ税率が適用される)。

閣僚会議が採択した草案によると、新規 または最近設立された企業への投資に対する控除額の上限も年間6万ユーロ(約768万円)から10万ユーロ(約1280万円)へ引き上げられた。控除率も30%から50%になり「最近設立された」とみなす期間も延長される。

また、この改革は、スペインの創業者が抱えるもう1つの不満、スペインでの起業にかかるコストと官僚的手続きにも対処することになりそうだ。それらのせいで、スペイン国内にオフィスを構えて製品を開発したとしても、ヨーロッパの他の場所で事業を立ち上げる創業者もいる。

今回の法案では、会社設立の手続きが「合理化」され、公証人や登記の費用が不要となり、オンラインで完了できるようになるという。

スタートアップは、オンラインポータルで各種申告を提出し、特典を受けることもできる。

キーボードスタートアップであるThingThingの共同創業者であるOlivier Plante(オリビエ・プランテ)氏は、スペインの高いコストのせいで、2015年に英国でスタートアップを法人化した際、そうせざる得ないと感じたと話す。同社は、スペインにオフィスを構え、Fleksy(キーボードSDK事業)を開発している。

「私たちは3年間、1ユーロも稼げませんでした」と同氏は説明した。「最初の数カ月は、登記簿、株式、銀行、公証人(彼らは寄生虫のようなものです)など、事業の開始に多額の資金が必要でした。スペインでは最大5000ユーロ(約64万円)かかるところ、英国では70ポンド(約1万500円)で済んだのです」。

プランテ氏は、改革パッケージを歓迎している。同氏にとって最も重要な2つの点は、スタートアップの設立手続きを簡素化することと、初期段階での法人税率の引き下げだ。

現在のアプローチは、基本的に「起業家精神を初日から殺すものです」とプランテ氏はいう。あるいは、創業者となりうる人々を、創業するのに十分な資金を蓄えられる立場にある人々に限定しているという。「本当の起業家は、往々にして手段を選ばないものなのです」と指摘する。「そしてスペインでは、根本的に、貧しい人々が豊かになることができません」。

スペインのスタートアップ団体であるスペインスタートアップ協会も、閣僚会議による草案採択を歓迎したが、全文発表後に詳細を確認したいとしている。

また、議会がこの提案をさらに改善することを期待していると述べた。企業がスタートアップとみなされる年数をさらに長くすることや、(草案がそうなっていないとの仮定で)制限する条件を変更する可能性も示唆した(例えば、スタートアップが適格となるために、スタッフの60%がスペイン国内にいる必要がある、売上高がたった500万ユーロ[約6億4000万円]までであるなど)。

同協会は、スタートアップ投資家に対する税控除の拡大については「成功している他のエコシステムと同等になるすばらしいニュースだ」と、非常に高く評価している。

また、この改革案には、起業家精神を刺激するさまざまな施策が盛り込まれている。例えば従業員として別の仕事にも就いている起業家は、社会保障制度へ2回拠出する必要がなくなる(これはブートストラッピングを阻害する要因となる)。また、規制業種では、新しいサービスやMVP(実用最小限の製品)の開発を促進するため、サンドボックスやトライアルライセンスの新設が計画されている。

ただし、具体的な内容が国会でどのように修正されるかは注目だ。

法案可決の時期は、政府関係者がTechCrunchに語ったところによると2022年前半だが、可決期限は同年末までだという。

資金面では、スペイン政府は最大40億ユーロ(約5120億円)の投資目標を掲げている。欧州連合(EU)のコロナウイルス復興資金の活用も含め、スタートアップの成長を促す。

スペインのスタートアップ改革のための10カ年計画については、TechCrunchが2021年初めに行った、スペインの起業家戦略を担当するFrancisco Polo(フランシスコ・ポロ)高等弁務官へのインタビューをチェックして欲しい。

関連記事:スタートアップを経済の推進役に据えるスペインの10年計画

画像クレジット:AntoinePound / Flickr under a CC BY 2.0 license..

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(文:Natasha Lomas、翻訳:Nariko Mizoguchi

「チームワーク」で働くフリーランサーを支援する仏Collective

Collective(コレクティブ)は、開発、プロダクトデザイン、デジタルマーケティング、データ戦略など、フリーランスとして働くことの意味を再定義しようとするフランスのスタートアップだ。同社は、複数のフリーランサーがチームを組んで、同じプロジェクトに取り組むことができるようなプラットフォームを構築した。

ポイントとなるのは、それらのチームが独立したフリーランサーであり続けるということだ。彼らは同じ会社のために働いているのではなく、あくまで同じプロジェクトで働いているだけなのだ。そして、仕事が終わると、全員が請求書の一部を受け取ることができる。

Collectiveは、スタートアップ企業であるeFounders(イーファウンダーズ)の支援を受けて設立されたが、Blossom Capital(ブロッサム・キャピタル)が800万ドル(約9億円)のシードラウンドを実施した。また、多くのビジネスエンジェル投資家がこのスタートアップに投資している。フリーランスの仕事でCollectiveを利用しているフリーランサーの中には、Collectiveに投資している人もいる。彼らは自らお金をかけているのだ。

フリーランサーのためのプラットフォームは決して新しいものではない。フランスに拠点を置く開発者の多くは、Malt(モルト)Comet(コメット)にすでに慣れ親しんでいることだろう。しかし、Collectiveはこれらの市場と真っ向勝負するつもりはない。その代わりに、Collectiveはフリーランサーのチームのみを受け入れている。それは、スクワッド、スタジオ、フラッシュチーム、コミュニティなどだ。

共同設立者兼CEOのJean de Rauglaudre(ジャン・ド・ラグラードレ)氏は「私たちは、独立したコレクティブ(集団)に特化した初のSaaSプラットフォームを構築しています」と語った。同氏は、伝統的な開発会社と比較した場合のコレクティブの利点を挙げてくれた。

同氏によると、フリーランサーのチームは通常、代理業者に比べて安価だ。代理業者の場合は固定費がかかるからだ。一方フリーランサーも、健康保険や年金などの費用を払わなければならないのは事実だ。基本的には、コレクティブは同じ福利厚生を共有しないので、同僚グループという考え方に関する個人主義的な考え方になる。

しかし、それを気にしないのであれば、他にもコレクティブにはもっと明らかなメリットがある。例えば、コレクティブに参加すると、副業として自分のプロジェクトに取り組むことができるので、よりフレキシブルな働き方ができる。また、一度に複数のコレクティブに参加することもできる。

同社は、フリーランスに必要なツールを提供する。例えば、プラットフォーム上でコレクティブを管理することを選択した場合、単一の請求書を作成して顧客に送信することができる。顧客は請求書を一度だけ支払えばよい。支払いの分割や各アカウントへの追加は同社が行ってくれる。

また、Collectiveは「Portage Administratif(ポータジュ・アドミニストレーション)」と呼ばれる特別なステータスを利用している。これにより、同社は合法的に請求書を発行し、チームを代表するものとして名乗ることができるのだ。一方、フリーランサーは自分で法人格を選ぶことができる。

管理業務に加えて、同社はマーケティングツールも提供したいと考えている。例えば、軽量のコンテンツプラットフォームを開発し、各コレクティブが独自のブランディングを行い、仕事のポートフォリオを見せることができるようにしたいと考えている。

Collectiveは、フリーランスに支払われる請求額からわずかに手数料を引く。もし顧客がCollectivを通して直接来たのであれば、同社はより多くの手数料を要求することになるだろう。すでに何百社もの企業がコレクティブと仕事をしており、この仕組みはうまく機能しているようだ。

コレクティブのガバナンスシステムを解明することも興味深いことだ。従来の民間企業とは異なり、コレクティブは誰も「所有」していないからだ。つまり、次の仕事や報酬システムを選択する際には、誰もが発言権を持つことになる。

多くのDAO(分散型自律組織)は、重要な意思決定をブロックチェーン上のトークンに依存している。Collectiveでは、ブロックチェーンは関係ない。そして同社は、コンセンサスを得るのに必ずしもブロックチェーンが必要ではないということを証明してくれているだろう。

画像クレジット:Collective

画像クレジット:Nathan Dumlao / Unsplash

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(文:Romain Dillet、翻訳:AKihito Mizukoshi)

CTOはテスラ共同創業者、硬い岩盤に触れることなくトンネルを掘るロボット「Swifty」を引っ提げPetraが脱ステルス

Petra(ペトラ)は、DCVCが主導したシリーズAラウンドで3300万ドル(約37億4000万円)を調達したと発表し、ステルス状態から脱却した。ACME Capital Congruent Ventures、8VC、Real Ventures、Elementum Ventures、Mac Venture Capitalがこのラウンドに参加した。

共同創業者兼CEOのKim Abrams(キム・エイブラムス)氏は、このニュースに関連したリリースの中でこう述べている。「当社は岩盤を掘削するまったく新しい方法を発明しました。これはトンネル工事の将来に大きな影響を与えることになるでしょう。ハイグレードな岩盤を貫き、手頃な価格でユーティリティ設備を地下に埋設するボーリングソリューションを提供することで、最終的に地域社会を山火事の危険から守り、災害の多い地域、特にシエラネバダ山脈、ロッキー山脈、沿岸地域で重要なインフラの安全性を確保することができます」。

このニュースは、同社が開発したロボット「Swifty」のパイロット版が成功したという発表を受けてのもの。同社によると、このロボットは、スークォーツァイト石(スー石英岩)に毎分1インチ(25.4mm)の速さで20フィート(約6.1m)のトンネルを掘ることに成功したという。この変成岩は硬いことで有名で、米国中西部の建築物によく使われている。しかし、その硬さゆえに、インフラ整備などのトンネル工事には手強い存在でもある。

画像クレジット:Petra

Tesla(テスラ)の共同創業者の1人であり、同社のCTOを務めるIan Wright(イアン・ライト)氏はこう述べている。「これまで、このような硬い岩盤をトンネルで貫くことができる工法はありませんでした。Petraの成果は、岩盤に触れずに効率的に掘削するSwiftyのサーマルドリル工法によるものです。非常に硬いスークォーツァイト石に20フィート(約6.1m)の穴を開けたことで、ハイグレードな硬い岩盤に実用的なサイズのトンネルを手頃な価格で埋設できる当社のユニークな能力が証明されました」。

このロボットシステムは、マシンビジョンを活用し、岩石に直接接触するのではなく、サーマルドリル工法を使って困難な素材をマイクロトンネル掘削する。同社はリリースの中でこう述べている。「Switfyは、従来のマイクロトンネル掘削法に比べて、数多くの斬新な利点を提供します。従来のマイクロトンネル掘削機は、単一の直径に合わせて専用に作られています。しかし、Swiftyは20~60インチ(約50.8〜152.4cm)の範囲の直径を掘削できる初めてのロボットであり、トンネル掘削のコストを劇的に削減することができます」。

同社は、このような穿孔技術の用途として、建設、インフラ維持、トンネル作成など、幅広い可能性を挙げている。

画像クレジット:Petra

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(文:Brian Heater、翻訳:Aya Nakazato)

ファミコンおよびスーファミの開発責任者、元任天堂の上村雅之氏が逝去

ファミコンおよびスーファミの開発責任者、元任天堂の上村雅之氏が逝去

ANA Global

任天堂でファミリーコンピュータ、同ディスクシステム、スーパーファミコンを開発し、後に立命館大学ゲーム研究センター長を務められた技術者、上村雅之氏が12月6日に死去されていたことがわかりました。78歳。すでに葬儀等はご家族のみで行われ、偲ぶ会等の開催については未定とのことです。

上村氏は1967年に早川電機(現シャープ)に入社、その後1971年に任天堂に移り、米国で市場を形成しつつあったビデオゲームの開発に取り組みました。任天堂ではテーブル形筐体の『任天堂レジャーシステム』のゲーム機開発や『カラーテレビゲーム15』の開発に携わった後、任天堂製造本部開発第二部部長として、1981年からは『ファミリーコンピュータ』の開発を率いました。

『ファミリーコンピュータ』は1983年に発売されて大ヒットを記録しました。 世界累計販売数は6191万台、1990年発売の後継機『スーパーファミコン』を足し合わせると1億台以上にのぼり、いずれも日本のみならず世界のゲーム史に燦然と輝く名機になりました。

上村氏は2015年の日本デジタルゲーム学会の年次大会で、NES(北米版ファミコン)のゲームを息子と楽しんでいるという外国人に出会ったエピソードを紹介し、ファミコン世代のゲームが30年の月日を過ぎてもなお親しまれる理由として、作り手側がそれまで現実にはできなかった、つまり夢に描いていた遊びを、ファミコンを通じて実現するのに夢中になったに違いなく、だからこそ長い年月を経ても面白いのかもしれないといった旨を述べられていました

いまもビデオゲームはたくさん作られていますが、その多くが、基本的にはファミコン時代に作り出されたゲームたちの類型とも言え、テレビ / ディスプレイの中で繰り広げられるゲームの世界は当時から大きな夢の上に成り立っていました。そして処理能力や映像表現力が格段に進化した現在のゲーム機も、その基本構成は上村氏が作ったファミコンの頃から大きく変わってはいません。

(Source:立命館大学ゲーム研究センターEngadget日本版より転載)

アップルは控訴審の判決が出るまでApp Storeのポリシー変更の必要なし

Apple(アップル)は、Epic Gamesとの法廷闘争で判事が下したアプリ内購入とAPP Storeのガイドラインの変更命令を、実行しなくてもよくなった。判決は、Appleは独占ではなかったというほぼ勝訴だが、同社は、開発者がアプリ内購入の決済先であるApp Store以外のリンクをアプリに追加することを禁じてはならないと命じられた。最初の判決に対してAppleとEpicの両方が上訴し、Epicはメインの主張が認められなかったこと、そしてAppleはアプリ内購入に関する当の判決そのものが不服であるとした。判決ではApp Storeのポリシーの改定は12月9日までとなっていたが、Appleはアプリ内購入ガイドラインの変更は控訴への判決が決まるまで猶予とすることを求めた。

関連記事:アップルのApp Store外での決済方法への誘導ブロックが禁止に、Epic Gamesとの裁判で

控訴裁判所は今回、差し止め命令が発効するまでの猶予をAppleに認めた。つまり、開発者はAppleが提供する既存のアプリ内課金システムを使い続けなければならない。アプリ内での支払いのために、自社のウェブサイトにリンクしたり、ユーザーを誘導したりすることは許されない。

米国時間12月8日、米国第9巡回区控訴裁判所に提出された文書(下記参照)では、Epic Games Inc.がAppleの行為が反トラスト法に違反していることを証明できなかったが、同じ行為がカリフォルニア州の不正競争防止法に違反していることは証明できた、という連邦地裁の判断に対して、「少なくとも、その控訴が本質的な問題を提起するものである」とAppleは判断した。

裁判所はさらに、Appleは「修復不能な損害の十分な提示」を行ったとして、判決の一部を猶予にするAppleの申し立てを認めている。

その文書によると、猶予は控訴が審理されるまで有効だ。

Appleは、以前にも停止の申し立てを試みたが、裁判所はその申し立てを却下した。今回の申請は、App Store以外で行われた購入を委託するためのまったく新しいシステムを考え出さなければならないなどと主張し、戦術を変えた後に認められた。

Epic Gamesは、裁判所の決定についてのコメントを控えている。

一方、Appleの広報担当者は、以下のような声明を発表した。

私たちはApp Storeを絶えず進化させて、さらに良いユーザー体験と、優れたiOS開発者のをコミュニティを築くことに努めています。私たちは、これらの変化によってプライバシーとセキュリティのリスクが生じ、また、顧客がApp Storeに関して愛する、ユーザー体験が壊されることを懸念しています。私たちは、この猶予を認めて控訴のプロセスを継続される裁判所に感謝します。

The Verge9to5Macがこの猶予のニュースを先に報じている。

Apple granted stay on injunction in Epic ruling by TechCrunch on Scribd

画像クレジット:TechCrunch

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(文:Sarah Perez、翻訳:Hiroshi Iwatani)

お手頃な新技術でクリーンな水素製造を目指すDibiGasが約4.2億円調達

多くの産業プロセスの中心である水素は、将来主要なエネルギーエコシステムに組み込まれる可能性を有している。しかしながら、水素を分離・貯蔵するプロセスは、エネルギーロスが多く、コストも高い。今回シードラウンドで360万ドル(約4億2000万円)を調達したDiviGas(デヴィガス)は、既存の方法を凌駕する新しい技術でクリーンな水素製造ビジネスを実現し、新たなグリーン経済を推し進めようとしている。

一般的に、水素はクリーンで非常に便利な元素と考えられているが、その製造には多くの「クリーンではない」産業プロセスが関わっている。例えば、石油精製やプラスチック製造の過程ではさまざまな炭化水素や混合ガス、化学物質が排出され、そういった排出物から水素を分離するためにはさらなる処理とエネルギーが必要である。

化学反応よりもクリーンでシンプルな方法として、水素分離膜やフィルターを使って、水素ガスや二酸化炭素ガスを他の物質から分離する方法がある。しかしながら、これらの分離膜やフィルターは高温では機能せず、低圧で分離して得られたガスの一部は再加圧する必要があり(コストがかかる)、分離膜自体も一般的な酸性ガスの存在下では急速に劣化する。

水素製造産業はとてつもなく大きいが、現在のところ高価でエネルギー消費の多い選択肢と、安価で限定的な選択肢しかない。シンガポールにあるSOSV(エスオーエスブイ)のインキュベーターであるHAXでお互いを知ることとなったDiviGasの創業者2人は、このような弱点を持たない第3の選択肢を提供しようとしている。

同社はオングストローム(ナノメートルの10分の1)スケールの新しい「中空糸高分子膜」を設計したと主張する。原子サイズ(1オングストローム程度)のフィルターを設計したという意味ではない。このサイズの機能的特徴が、望ましい高度に分離された結果を生み出すことができるのだ。この場合は、ガスにわずかに異なる圧力をかけることで水素ガスと二酸化炭素ガスを分け(ダイバート)、分離(アイソレーション)することができる。

画像クレジット:DiviGas

同社の水素分離膜技術では、膨大な数の繊維を束ねてチューブを作り、そこにガスを送り込むだけ。化学反応は必要としない。他の分離膜とは異なり、この新しい分離膜は150度以下の高温でも機能する。硫黄と塩素の混合ガスに含まれる一般的な酸性化合物にも耐性があり、腐食性の高い、処理されていないガスを劣化することなく処理できる。また、分離された物質の純度に影響する選択性、対応できる圧力に影響する透過性という基本的な性能では、従来の分離膜と同等以上の性能を持つ。

DiviGasの技術は既存の分離膜技術と原理的には同じなので、最小限の作業でDiviGasの水素分離膜を導入できる。また、同社の水素分離膜で使用する繊維の製造は簡単ではないが、ことさらに特殊なものではなく、既存のプロセスが多く利用されている。共同創業者かつCTO(最高技術責任者)であり、新素材の生みの親でもあるAli Naderi(アリ・ナデリ)氏が説明するように、新素材はさまざまな最先端の技術革新の成果であり、その結果として製造も難しくない。

ナデリ氏はメールで次のように説明する。「二層構造の中空糸膜の開発では、経済性を確保するために、選択層(=外層)に使用する高価な機能性材料をできるだけ少なくして、機械的支持層(=内層)には市販されている安価なポリマーを使用しました。この膜は、標準的な紡糸ラインをカスタマイズして使うことで、同程度の価格で商業的に製造することができます」。

画像クレジット:DiviGas

共同創業者でCEOのAndre Lorenceau(アンドレ・ロレンソー)氏によると、よりシンプルでクリーンな水素と二酸化炭素の製造が可能であろうという同社の見通しは、業界関係者から非常に高い評価を受けているという。

「この製品を数千万個提供できるのはいつごろか、という問い合わせがきています。今回の資金調達ラウンドは、問い合わせに応えるためのものです」とロレンソー氏。

今回の資金は、メルボルンにパイロットスケールの工場を建設するために使用され、工場は2022年3月には稼働を開始する予定である。現在のところ、デモ用のユニット(分離膜に使用する繊維の束)を1つ作るのに数カ月かかっているが、クライアントによっては数百、数千のユニットを定期的に必要とするケースも想定される。1週間で製造できるようになれば、より大規模なデモを行ったり、小さな施設で実際に運用したりすることが可能になる。そうすれば、実際の注文を確保して、さらにその収益を本格的な製造プロセスに充当できるようになるだろう。

「今は(従来の分離膜の)2〜3倍の価格ですが、クライアントは気にしていません」とロレンソー氏(数量が増えれば価格は下がるだろう)。「『私が知っている技術、私が知っている製造工程、それをこの価格で提供してくれるなら最高だ』といってくれます。まだ販売していないのに、そういってくれるクライアントが大勢います」。

競合他社が動きの遅い企業や停滞しているスタートアップ企業ばかりなので、クライアントがせっつくのはそのせいだろう、とロレンソー氏は続ける。

「製材の大企業では専門の部署があり、(水素製造技術の)改善を行っていますが、時代遅れです。次世代のソフトウェア技術を構築するのがコンピュータサイエンスの旧態依然の博士たちではないのと同じ理由です。常に次世代の「ヘンなもの」にチャレンジする必要があります」「(停滞している)スタートアップも、目まぐるしく移り変わるベンチャーキャピタルの世界に慣れていない研究者たちです。優れた研究成果があっても、製造しようとすると手のひらサイズのものを作るのに10億ドル(約1100億円)もかかります。「製造可能性を考慮して……」と口ではいいますが、まったく考慮していません。だから私たちはこのようなスタートアップや大企業を追い抜くことができるのです」。

今回の360万ドルのラウンドは、Energy Revolution Ventures(エナジーレボリューションベンチャーズ)とドイツの工業用フィルターメーカーであるMann + Hummel(マンウントフンメル)が共同で主導した。ラウンドには、Entrepreneur First(アントレプレナーファースト)、Union Square Ventures(ユニオンスクエアベンチャーズ)のAlbert Wenger(アルベルト・ウェンガー)氏、SOSV/HAX、Amasia VC(アメイジアブイシー)、Volta Energy Technologies(ボルタエナジーテクノロジーズ)、Climate Capital(クライメイトキャピタル)の他、数名の個人投資家が参加した。

画像クレジット:Shutterstock

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(文:Devin Coldewey、翻訳:Dragonfly)

住宅ローンBetter.comのCEOが大量レイオフの「失態」を現役社員に謝罪、SPACは延期に

Better.com(ベター・ドットコム)のCEOであるVishal Garg(ヴィシャール・ガーグ)氏は、明らかに自分が誤ったことをしたと認識しているようだ(まるで否定的な報道の嵐がその十分な証拠ではなかったかのように)。

米国時間12月8日、現従業員に宛てた手紙が、Betterの確認済みの従業員によってBlind(ブラインド)にリークされた。その手紙の中で、先にニュースとなった、ガーグ氏が(不適切に)行ったレイオフに関して謝罪し、こう書いている「私は、今回のレイオフの影響を受けた人たちや彼らの同社への貢献に対して、適切な敬意と感謝を示すことができませんでした。レイオフを決定したのは私ですが、その遂行を私は誤りました。それにより、みなさんに恥をかかせてしまいました」。

彼自身も恥をかいたという人もいるかもしれない。複数の関係者によると、影響を受けた従業員の中には、同社のダイバーシティ&インクルージョンチームも含まれているそうだ。

12月8日未明、同社の内部事情に詳しい関係者がTechCrunchに語ったところによると、同社のコミュニケーション担当副社長のPatrick Lenihan(パトリック・レニハン)氏、広報担当部長のTanya Gillogley(ターニャ・ギログリー)氏、マーケティング担当部長のMelanie Hahn(メラニー・ハーン)の3名が辞表を提出したとのことだ。また、Insider(インサイダー)も同じくこのニュースを報じている。

TechCrunchが最初に報じたように、CEO兼共同創業者であるヴィシャール・ガーグ氏が約900人のレイオフを実行したことによる影響は、Zoom上で処理されたという批判から、ガーグ氏の不誠実さへの非難まで、広範囲に及んでいる。このビデオに関するミームはTikTokにまで波及し、世界中の人々がガーグ氏の行動をこきおろしている。

先週の動きは、デジタル住宅ローンの貸し手である同社が、ブランクチェックカンパニー(白地小切手会社)のAurora Acquisition Corp.(オーロラ・アクイジション・コーポ)やSoftBank(ソフトバンク)とのSPAC(特別買収目的会社)契約の修正として、約7億5000万ドル(約853億円)の現金注入を受けたと発表した後、すぐに1万人の従業員の約9%をレイオフしたことによるものだ。同社は、69億ドル(約7800億円)の評価額で上場する見込みだ。

Bloomberg(ブルームバーグ)が報じたところによると、同社は当初、2021年の第4四半期にクローズすると予想されていたSPACを(当然のことながら)延期することになったという。

また、ガーグ氏は今週のFortune(フォーチュン)誌に対して、同社がレイオフした「少なくとも250人」のスタッフが1日2時間しか働かずに会社や顧客から金を盗んだとして非難したことを認めた。ガーグ氏は、レイオフを発表してから間もなく、ライブストリーミングによるタウンホールでスピーチを行った。Insiderにリークされた会議の記録によると、彼は「ぜい肉を落として競争力をつけた、ハングリーな労働力」を目指す「Better 2.0」と呼ばれるビジョンを打ち出したという。

TechCrunchは、Better.comにコメントを求めたが、本稿執筆時点ではまだ回答は得られていない。また、退職したとされる従業員も、コメントを求められても応じていない。

SoftBankが支援するプロップテックで、公開デビューを前にトップが退職したのはBetter.comだけではない。2019年にもInsiderは、社内での不満やIPO計画をめぐる不確実性が報じられるなか、WeWork(ウィワーク)の十数人のトップが同社を去ったと報じた。

現時点で私たち全員が考えているのは、投資家や役員がガーグ氏のこの種の行動を容認するのか、それともAdam Neumann(アダム・ノイマン)氏のように追い出されるのかということだ。

関連記事:WeWorkのニューマンCEOが辞任、非常勤の会長職に

ガーグ氏があまりいい人ではないという評判は、2020年、Forbesがガーグ氏から社員に送られたメールの内容を明らかにした時にさかのぼる。「やぁ、 優秀なチームよ、目覚めなさい。あなたたちはあまりにも遅い。あなたたちは馬鹿なイルカの集団で、【略】馬鹿なイルカは網にかかってサメに食べられてしまう。だから、やめなさい。やめなさい。今すぐやめなさい。あなたは私に恥をかかせている」。

同じForbesの記事によると、ガーグ氏はPIMCO(ピムコ)やGoldman Sachs(ゴールドマン・サックス)などから「過去の2つの事業における不適切で詐欺的な活動」や「数千万ドル(数十億円)の不正流用」などの理由で、多くの訴訟を起こされていたことが明らかになっている。

最近の借り換え件数の減少は、Better.comが従業員の一部をレイオフすることを決定した要因であると考えられている。

2020年4月、同社は、歴史的な低金利の住宅ローンに直面して住宅の借り換えを求める人が増えていることから「人員を積極的に採用する」と述べていた。当時、私はCrunchbase News(クランチベース・ニュース)で、ガーグ氏から社員への内部メモにより、住宅ローン融資のスタートアップが「より多くの住宅所有者がオンラインに移行してきている」というニーズに応えるため、全体として2020年に約1000人の雇用を検討しているということが明らかになったと報告していた。

画像クレジット:Better.com / Instagram

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(文:Mary Ann Azevedo、翻訳:Akihito Mizukoshi)

アップルがApple Walletでホテルの鍵のサポートを開始、まずハイアットと提携

Apple(アップル)は6月に開催したWWDCで、自宅、オフィス、ホテルの鍵や、州の運転免許証をApple Walletでサポートする計画を予告した。そして12月8日、同社はHyatt(ハイアット)がこの新技術を活用する最初のホテルパートナーになることを発表した。ホテルチェーンのHyattは、宿泊客がApple Walletで部屋の鍵を使用できるようにするため、まず米国内の6つのホテルでサポートを開始し、将来的にはさらに多くのホテルで導入する予定だ。

6つのホテルはAndaz Maui at Wailea Resort、Hyatt Centric Key West Resort & Spa、Hyatt House Chicago/West Loop-Fulton Market、Hyatt House Dallas/Richardson、Hyatt Place Fremont/Silicon Valley、Hyatt Regency Long Beachとなる。

新システムは、モバイルアプリ「World of Hyatt」と連動する。アプリで予約をすると、ルームキーをウォレットに追加するオプションを提供する画面が表示される。この体験は、チケットやパスを予約した後、ボタンをタップしてそれらのアイテムをApple Walletに追加し、後でアクセスできるようにするオプションがあるのと似ている。また、他のパスと同様に、予約後すぐにホテルのルームキーを追加することができる。もちろん、チェックイン時にならないとドアが解錠されることはない。

Apple Walletにキーが追加されると、メイン画面に予約日、施設名、チェックイン予定日が表示されるようになる。また、右上の3つのドットメニューをタップして、予約番号や施設の詳細情報など、宿泊に関する情報を確認することができる。さらに、Apple Wallet内から直接Hyattのアプリを起動して、予約を管理することもできる。

ホテルのキーは、iPhoneだけでなく、ペアリングしたApple WatchのWalletアプリにも自動的に追加される。

このシステムでは、プラスチック製のホテルキーカードを持つ必要がないという利便性に加えて、ロビーの列に並んでチェックインする手間を省くことができる。部屋の準備が整ったことをアプリが通知し、宿泊客は携帯電話でチェックインすることが可能だ。そのプロセスが完了するとルームキーが有効になり、部屋番号が表示されるので、そのまま部屋に向かうことができるようになる。これにより、宿泊客はチェックインのために他の宿泊客と列に並んで待つ必要がなくなり、新型コロナウイルスへの露出を減らすことができる。

Appleによると、複数の部屋を持っている宿泊客は、滞在中すべての部屋を同じルームキーとウォレットに追加することができるので、どのバーチャルキーをタップするかを覚えておく必要はない。また、交通機関のパス保持者が使用するエクスプレスモードのように、ホテルのキーもデバイスのロックを解除しなくてもドアを開けることができるエクスプレスモードで機能する。また、このキーは、ジムやプールなどのホテルのアメニティへのアクセスを解除するためにも機能する。

Apple Walletに登録されたハイアットのルームキー:2021年10月27日、シカゴ(画像クレジット:Jean-Marc Giboux/AP Images for Hyatt)

宿泊客がモバイルアプリで滞在延長やレイトチェックアウトを決定すると、ホテルキーも更新される。ただし、ホテルキーを友人と共有することはできない。ホテルキーは、モバイルアプリにログインしているHyattのアカウント所有者にのみ有効だ。チェックアウト後、ホテルキーはApple Walletに記録保存され、削除はされない。

この新しいシステムでは、ホテル側は部屋の鍵のインフラをNFC技術に対応するように更新する必要がある。これにより、対応するPOS端末でApple Payを利用する際に現在行っているように、宿泊客はタップするだけでホテルのドアを開けることができるようになる。HyattはAssa Abloyと共同でソリューションを開発しているが、Appleはホテルが選択したベンダーとの協力に前向きだ。同社はこの技術の導入に取り組んでいる他のホテルチェーンについては明らかにしなかったが、Hyattは世界各地のホテルにアクセスを拡大する計画がある、と話す。

ホテルキーのサポートは、iOS 15を搭載したiPhoneとwatchOS 8を搭載したApple Watchを対象に12月8日から始まる。

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(文:Sarah Perez、翻訳:Nariko Mizoguchi