現場の医師同士をつなぐ実名相談サービス「Antaa」が2.3億円を調達

医師同士の質問解決プラットフォーム「Antaa」を展開するアンターは5月11日、XTech Ventures、ニッセイ・キャピタル、SMBCベンチャーキャピタル、三井住友海上キャピタルおよび個人投資家を引受先とした第三者割当増資により総額約2.3億円を調達したことを明らかにした。

Antaaは現在1万人を超える医師が登録している医師向けのコミュニティプラットフォームだ。このプラットフォームには医師同士のQ&Aサービス「AntaaQA」のほか、ユーザー間でスライド資料を共有できる「Antaa Slide」、医師向けのオンライン情報サイト「Antaa Media」、動画によるオンライン勉強会やイベントなどを開催するコミュニティ「Antaa Members」、医師向けの経営塾「Antaa Academia」など複数のサービスが含まれる。

主な収益源は医療機関や自治体の広報支援、製薬企業や医療機器メーカーのマーケティング支援など法人向けのもの。医師にはAcademia以外のサービスはすべて無料で提供している。

軸となるAntaaQAは、医療現場で何か困ったことがあった際にその領域に精通した医師にオンライン上で質問できるのが特徴。質問を投稿する際に「何科の相談なのか」「緊急を要するのか」をタグで設定することで、該当するユーザーに通知が届く仕組みだ。

たとえば当直担当の内科の医師が深夜に「子宮筋腫で入院中の患者がお腹を痛がっている」状況に直面した場合、AntaaQAを使えば産婦人科の医師から対応方法をレクチャーしてもらえる可能性がある。

アンター代表取締役で整形外科医の中山俊氏によると、実際に以前同じようなケースでAntaaQAが問題解決に役立ったことがあったそう。従来であれば緊急時は病院内の他の医師や知り合いにかたっぱしから電話をするなどして対処するしかなかったが、Antaaはそれに代わる有力なオプションになりえるという。

もともと同サービスは中山氏が実際に医療現場に立つ中で「1人の医師の能力だけでは限界を感じる瞬間があった」ことから、医師同士が繋がって情報共有できる仕組みの必要性を感じて立ち上げた。

「医師が不足している地域の医療機関や、都心であっても夜間医療の対応時などは現場の医師がたった1人で医療を行わなければいけない場面がある。自分自身も奄美大島出身で、もし島に戻って医師として働くとしたら、1人で診療しないといけない時が必ずあるはず。そんな時に医者同士が繋がって、助け合うことができればいいのではと考えた」(中山氏)

当初はプロダクトのニーズを探るためにLINEのコミュニティを開設し、中山氏自身がLINE@を通じてオンライン上で医師の質問に答えることから始めた。すると約1年ほどで100人ほどの医師から質問を受けるようになり、その過半数は直接面識のないLINE上でしか繋がりのない医師だったという。

「相談を続けているうちに直接会ったことのない医師からも『もし中山先生が何か困ったことがあったら聞いてください』と言われることが増えた。双方向でお互いが相談しあえるサービスには一定のニーズがあると感じ、ベータ版の開発を決めた」(中山氏)

現在Antaaは学習意欲の高い若手医師が多く集まるコミュニティになっていて、ユーザーの80%近くが30代以下の医師たちだ。その中には地方の若い開業医など周りに相談できる同業者が少ないユーザーも一定数存在し、場所の制約を超えてオンライン上で相談やディスカッションができるAntaaが重宝されているという。

直近では新型コロナウイルス(COVID-19)の影響を受け、2ヶ月弱でユーザーが約2000人増加した。日々新しい情報や論文が出てくる中で「最新の情報を医師同士が共有し合う場所として使われることが増えてきている」(中山氏)そうだ。

今回調達した資金はAntaaQAの機能性を改善するための開発に用いるほか、動画などのコンテンツ拡充などにも投資をしながら、医師にとってさらに使い勝手の良いサービスを目指す。

遠隔医療で鎮痛剤の断薬と中毒の予防をサポートするLusic Laneのサービス

4年前の2016年に、新しい中毒予防サービスLucid Lane(ルーシド・レーン)の創設者Adnan Asar(アドナン・アサー)氏は、Livongo Health(リボンゴ・ヘルス)を創設し最高技術責任者として順調に出世街道を歩んでいた。それはShutterfly(シャッターフライ)に長く勤めた後に数々の企業で続けて上席技術役員を務めてきた中でも、いちばん新しい仕事だ。そこで彼は、慢性病管理用の一連のソフトウェアとハードウェアの開発を通じて会社を率いてきた。

だがアサー氏の妻が非ホジキンリンパ腫と診断されると、彼はテクノロジーの世界から足を洗い、妻の治療を続ける間、家族とともに過ごすことを決めた。

その当時、この決断がLucid Lane創設に結びつくとは彼自身も気づいていなかった。この会社の使命は、痛みと不安に対処する薬を処方されている患者に、薬を絶って中毒を予防する方法を提供することにある。闘病中に服用していた処方薬を断つ際に苦労する妻を見てきたことから、この目標が生まれた。

それはアサー氏の妻に限ったことではない。米疾病予防管理センターのデータによれば、2018年に米国ではオピオイドの処方箋が1億6820万通も書かれている。Lucid Laneでは、手術後または癌治療に合わせて、毎年5000万人にオピオイドが、それ以外の1300万人にベンゾジアゼピンが処方されていると推測した。だが、これらの極めて中毒性が高い薬剤の管理や減薬のプランは示されない。

アサー氏の妻の場合、癌治療の一環として処方されたベンゾジアゼピンが問題となった。「妻はひどい離脱症状に見舞われたのですが、何が起きているのか私たちにはわかりませんでした」とアサー氏は話す。担当医に相談すると、医師は即座に断薬するか、薬を続けるかの2つの選択肢を示した。

「妻は断薬を決意しました」とアサー氏。「それは家族全員にとって大変な消耗戦でした」。

9カ月の治療と精神科医の定期的な診察により、投薬量と減薬の調整が行われたとアサー氏はいう。その体験がLusid Laneの創設につながった。

「私たちの目標は、薬物療法と依存症の予防と管理です」とアサー氏。

同社の遠隔医療ソリューションは、個別の治療プランの積極的なモニタリングを伴う、毎日の継続的なサポートと介入を提供する独自の治療プロトコルの上に成り立っている。すべてが継続的に行われるとアサー氏はいう。

しかも新型コロナウイルス(COVID-19)のパンデミックにより、遠隔医療サービスの需要は加速する一方だ。「新型コロナウイルスは、遠隔医療を自由に選べるサービスから絶対に必要なサービスに変えました」とアサー氏。「不安、抑うつ、物質使用障害、投薬乱用が急増しています。私たちに助けを求める患者も急増しています」。

アサー氏は、Lucid LaneのライバルはLyra Health(ライラ・ヘルス)やGinger(ジンジャー)などの企業、つまり不安や抑うつを察知するデジタル診断を構築するポイントソリューションだと考えている。しかし、依存症や常習行為の治療のために創設された一部の企業と異なり、アサー氏は自身のスタートアップを依存と中毒を予防するものと認識している。

「多くの人が、診察室で医師が行う1つの行為を通じて中毒に陥っています」とアサー氏。「私たちのソリューションでは、そうした薬物の処方箋は出しません」。

同社は、パロアルト退役軍人病院での臨床研究の準備を進めており、Battery Ventures(バッテリー・ベンチャーズ)やJerry Yang(ジェリー・ヤング)氏が創設した投資会社AME Cloud Ventures(AMEクラウドベンチャーズ)などを含む投資家たちによるシードラウンド400万ドル(約4億2700万円)を調達した。

「私たちは、現代社会が抱える最大の問題のひとつにスケーラブルなソリューションを開発したLucid Laneに、非常に大きな可能性を見いだしました」と、Battery VenturesのジェネラルパートナーDharmesh Thakker(ダーメッシュ・タッカー)氏は声明の中で述べている。「遠隔医療ソリューションは、複雑な問題に対処する高い能力を備えたものとして台頭してきましたが、Lucid Laneは最初から遠隔医療に取り組んできました。それは、いつでもどこでも患者が必要とする瞬間に医療が提供できるようデザインされています。これが、回復と再発とのバトルに大きな変化をもたらします。無数の人々をよりよい人生に導くことができると、私たちは確信しています」。

アサー氏のもとに集まった医療のプロからなる経験豊富なチームも、会社の発展と治療プロトコルの開発を支えている。サンタクララ・バレー医療センターの正式麻酔専門医であり(提携先の)スタンフォード大学薬学部麻酔学助教授でもあるAhmed Zaafran(アーメッド・ザーフラン)博士、米国防総省と退役軍人省の協力でオピオイド被害に対処する米保健福祉省対策本部の顧問を務めるVanila Singh(バニラ・シング)氏、テキサス大学MDアンダーソン癌センターで麻酔学、周術期薬学、疼痛医学の教授を務めるCarin Hagberg(キャリン・ハグバーグ)博士、テキサス医療委員会の会長、米保健福祉省の疼痛管理サービス小委員会対策本部や同省の疼痛クリニカルパス委員会など、疼痛管理のための数々の国内委員会で議長を務めるSherif Zaafran(シェリフ・サーフラン)氏などが名を連ねる。

「Lucid Laneは、手術後に化学療法を止めようと勇敢な決断をした患者に最良の臨床結果をもたらす、患者第一のソリューションを提供します」とシング博士は声明の中で述べている。「短期間のオピオイドやベンドジアゼピンの投薬を必要とする大勢の患者に対して、Lucid Laneの治療法はそれらの薬物への依存が長引くことを防ぎつつ、効果的な疼痛管理によって生活と体機能の質の向上をもたらします」。

画像クレジット:Bryce Durbin / TechCrunch

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(翻訳:金井哲夫)

ゴールドマンサックスが支援する電動歯ブラシ開発のスタートアップBurst

ヘッドが木炭入りの毛で、毎分3万3000回振動する電動歯ブラシを販売するスタートアップのBurstが、シリーズCの資金調達を完了した。

調達額は公開されていないが、このラウンドを主導したのはGoldman Sachs Growth Equityで、Burstによれば評価額が前回のラウンドの2倍以上になったという。ゴールドマンサックスはほかにも、最近P&Gに買収された女性用カミソリのBillieなどのD2C企業に投資している。

Burstによれば、多くのユーザーが69.99ドル(約7500円)の歯ブラシを購入するだけでなく、90日ごとに6ドル(約640円)で交換用ヘッドを受け取れるサブスクリプションを利用している。共同創業者でプレジデントのBrittany Stewart(ブリタニー・スチュアート)氏は、新型コロナウイルス感染拡大で多くの歯科医院が休診しているため、この種の製品に対するニーズはここ数カ月で伸びていると語る(歯科医は高い感染リスクにさらされている)。

「現在できるオーラルケアは、家でのケアだけだ」とスチュアート氏。

この結果、専門家によるクリーニングを安全に受けられるようになるまでは口の中を良好な状態に維持するためにBurstを使うよう患者に紹介する歯科医が増えていると、スチュアート氏は示唆した。Burstが生産を委託している中国の工場の一部は新型コロナウイルス感染拡大の影響で閉鎖されたが、在庫の計画は十分でサブスクリプションに影響はないという。

Burstの創業者、ハミッシュ・カヤット氏とブリタニー・スチュアート氏

実際、BurstはD2Cのサブスクリプションeコマースモデルで歯ブラシを販売しているが、新たに2万5000人の「アンバサダー」のネットワークにもリーチしている。これは歯科の専門家が自分専用の割引コードを使って製品の紹介料を受け取れるようにしたものだ。

この手法はマルチレベルマーケティング(連鎖販売取引、いわゆるネズミ講)との類似を疑われているが、Burstと同社の投資家はアフィリエイトに近いモデルだとしている。TechCrunchとのインタビューで共同創業者でCEOのHamish Khayat(ハミッシュ・カヤット)氏は、歯ブラシやデンタルケアのスタートアップ他社と比較した場合のBurstの強みとして、専門家コミュニティとの関わりが挙げられると述べた。

「我々は起業して以来、歯科関係のイベントや歯科医院に足を運び、さまざまな情報を得てきた」とカヤット氏は語る。

スチュアート氏は、Burstは新製品を開発する際に「数千人もの歯科の専門家」に相談してきたことにも言及した。同社の製品は歯ブラシにとどまらず、フロスや、ホワイトニング用のシートと歯磨き粉にもおよび、カヤット氏は今後数カ月は子供用製品の発売に力を入れると述べた。

Burstは以前に2000万ドル(約21億3000万円)の資金を調達した。今回の投資に伴い、ゴールドマンサックスのAllison Berardo(アリソン・ベラルド)氏とHillel Moerman(ヒレル・モアマン)氏がBurstの取締役になった。

ベラルド氏は声明で「我々は、ブリタニー、ハミッシュ、そしてBurstのチームを支援できることをうれしく思う。チームは歯科のコミュニティの力を生かして、次世代のオーラルケアビジネスを構築している。Burstには明確なビジョンとブランドの価値観があり、我々は製品のラインナップに関しても市場開拓の戦略に関しても同社の先行きが有望であると確信している」と述べた。

トップ画像:Burst Oral Care

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(翻訳:Kaori Koyama)

外科手術をAIが視覚化して手術ミスを減らすActiv Surgical

2500万ドル(約26億6000万円)の資金調達と3年の開発期間を経て、ボストン拠点の医療機器ソフトウェア開発会社のActiv Surgical(アクティヴ・サージカル)が米国時間5月6日に初の製品を市場に出した。

同社のプラットフォームであるActivEdge(アクティヴ・エッジ)は、既存の手術用機器に後付けするハードウェアアタッチメントから得たデータを使う人工知能・機械学習ソフトウェアシステムだ。知識情報やビジュアル情報をリアルタイムに提供することで患者の治療成果を高めることを目的としている。同システムと関連製品は当初米国内のみで提供されるが、来年には世界各地に提供範囲を拡大する予定だ。

「未来の手術は共同作業であり、人間の判断と見識をロボットの正確性で補強する」とチーフサイエンティストのTodd Usen(タッド・ウーセン)氏が声明で語った。Activのソフトウェアは、米国内だけで年間40万人の命を奪っている医療ミスを避けるために外科医を手助けすることを目的としている。回避可能な医療ミスは、心臓発作とガンに続く3番目の死因であり、そのうち26%は手術ミスが原因だ。犠牲者の数はもちろん、医療ミスは費用の犠牲も大きく、米国内の医療機関は年間約360億ドル(約約3兆8300億円)の出費を強いられている。

当初Activ Surgicalは、自社のテクノロジーを米国で最も多い220万件実施されている腹腔鏡手術に適用される予定で、胆嚢摘出術、堪能摘出、結腸切除術、胃切除術など血流量と重要構造の特定が最も重要な症例を対象とする。

「手術における視覚化技術の革新は長い間起きていない。最も広く導入されている手術画像プロセスであるICGは70年以上前に発明された蛍光染料を使用しており、手術中の外科医がもっとも必要としている時にリアルタイムで客観的な生理学情報を提供できない」とActiv Surgicalの共同創業者でチーフ・サイエンス・オフィサーのPeter Kim(ピーター・キム)博士が声明で語った。

同社のハードウェア・テクノロジーは、既存のビジュアル化システムと連携して、リアルタイムデータや新しいビジュアル情報を手術環境に提供する。このつながったプラットフォームは腹腔鏡手術および関節鏡手術システムに接続できる。新しいシステムはまだFDA(米食品医薬品局)の認可を取得していないが、現在米国内8つの病院ネットワークでパイロットテストが行われている。

ハードウェア製品だけでなく、Activ Surgicalは外科医により詳細なデータとビジュアル化を提供するソフトウェア・ツールも開発している。ActivInsightと呼ばれるその製品は現在開発中だと同社は語った。

「我々は医師が現在見ることのない新しいビジュアルデータを提供しようとしている」とウーセン氏はインタビューに答え、「病院にある既存の内視鏡に付加して手術のビジュアル化を強化する小さなモジュールの開発方法を見つけた」と語った。

同氏はこの装置を、究極的には外科手術へのロボティクスの統合を拡充するテクノロジーになると考えている。「我々が求める間違いのない手術を実現するために、自律ロボットの利点を生かし手術の主流にすることで、コンセプトを証明したい」と同氏は話した。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

自宅でフィットネスが増えてPelotonのQ3の決算報告は売り上げも会員も大幅増

コネクテッドフィットネス(インターネットに接続するフィットネス)のPelotonが、ウォール街の高い期待をさらに上回った。水曜日(米国時間5/6)に発表されたでっかい四半期決算は、66%増の売上を記録していた。そして時間外取引では、同社の株価は乱高下し、これまでの最高値よりも下に落ち着いた。

同社の四半期売上は5億2460万ドルで、予想の4億8850万ドルを上回った。同社の一株あたりの損失は0.20ドルになった。会員数はQ2の200万からQ3は260万になり、前期比で30%の増加となった。3月に同社は、エクササイズバイクやトレッドミルなど同社のハードウェアと結びつかないデジタル会員の無料試用期間を30日から90日に増やした。

同社のコネクテッドバイクは2245ドル、トレッドミルは4295ドルだ。

Pelotonは、COVID-19が商機となった数少ない上場企業の一つだ。ジムが閉鎖し、屋内避難が行政の命令だから、自宅の室内でフィットネスに励む人が増えたのだ。Pelotonは売上が増えただけでなく、営業マーケティング経費も53%増えて、Q3では1億5480万ドルになった。

同社にもネガティブな影響はある。ショウルームの閉鎖を余儀なくされたし、専用スタジオでのライブのクラスも中断した。最近同社は、インストラクターの自宅からのエクササイズクラスを、ユーザーのコンピューターやスマホの画面にライブでストリーミングしている。

しかし投資家にとっての疑問は、パンデミックの収束後にどうなるかだ。同社のハードウェアを買って使っているユーザーは逃げ出さないだろうが、ウォール街が気にするのは、無料試用のユーザーの何割が今後実買ユーザーになるかだ。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

3Dプリントで睡眠時無呼吸治療器具を新型コロナ用人工呼吸器に換えるアダプターを生産

米食品医薬品局(FDA)が、Formlabsの3Dプリント部品に緊急時使用認可(emergency use authorization、EUA)を認めた。この部品は、睡眠時無呼吸の治療に使われていた二相性陽圧呼吸(BiPAPマシン)を現在、強く求められている人工呼吸器に換えることができる。今週末にかけて、数十件もの人工呼吸器やそのアクセサリーに認可が下りた。

Formlabsはマサチューセッツ州サマービルの工場にある150台の3Dプリンターを動員してこの部品を製造し、全米の病院と地方自治体に配布することを計画している。

NorthwellHealth設計のニ相陽圧呼吸器用アダプターの3DプリントにFDAの緊急時使用認可が下りた。このアダプターを使って、睡眠時無呼吸症候群の患者が使用するBiPAPマシンを機能的な侵襲的人工呼吸器に換えることができる。

FormlabsのCEOであるMax Lobovsky(マックス・ロボフスキー)氏は、プレスリリースで「これまでの30年間、FDAの緊急時使用認可は片手で数えるほどしか下りてない。全国の病院がFormlabsの3Dプリンターを使って自分でアダプターを作ることができるし、感染がひどい地域では量産も可能だ」と述べている。

関連記事:3DプリンティングのFormlabsが米食品医薬品局の認可をもらって綿棒の量産へ

Formlabsだけでなく、数多くの3Dプリント企業が新型コロナウイルス(COVID-19)のパンデミックに対応してアクションを起こしている。この前例のない状況が、3Dプリントならではのさまざまな技術的課題を作り出している。Formlabsは既にウイルス検査キットで使う綿棒を3Dプリントで製造することで貢献している。この他にもFormlabsはマスクシールドや、シュノーケルマスクを防護服に換えるアダプターも作っている。

新型コロナウイルス 関連アップデート

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(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

AppleとGoogleが新型コロナ暴露通知アプリのサンプルコード、UI、詳細なポリシーを公開

Apple(アップル)とGoogle(グーグル)は、最初のバージョンのExposure Notification(暴露通知)APIの開発者向けに、さらなるリソースの提供を開始した。このAPIは、両社が制作した開発ツールだ。アップルとグーグルは、公的保健機関が新型コロナウイルス(COVID-19)の感染が診断された患者との接触の可能性を個人に知らせる、クロスプラットフォームの通知手段の開発に取り組んでいる。

第1バージョンのExposure Notification APIは、Contact Tracing(接触者追跡)APIと呼ばれていたものを、その実際の用途と目的を正確に表現しようとAppleとGoogleが名称を変更したものだが、iOSとXcodeのベータ版アップデートとともに先週公開された。そして米国時間5月4日、開発例となるUIアセット、iOSとAndroidのサンプルコードなどを含む開発者向けの新しいサンプルリソースがアップルとグーグルから公開された。これらは、公的保健機関がアプリ開発をすぐに始められるよう、開発の出発点としてデザインされている。

同時にアップルとグーグルは、新しいポリシーも発表した。これには、このAPIを使ったアプリの使用が承認されるように開発者が留意すべき、以下のような要件が含まれている。

  • これは公式な政府の保健当局によって作成され、または同局が使用するためものであり、その使用は新型コロナウイルス感染症対応に限定される。
    実際に使用する前に、当APIの実際の使用についてユーザーの同意を求めなければならない。
  • テストの陽性結果などの情報を、アプリを運営をする公的保健当局が公表する以前に、本人の同意を求めなければならない。
  • 暴露通知に必要な最低限の情報のみを収集し、新型コロナウイルス感染症対応のためのみにそれを利用すること。すなわちこれらのアプリが広告やその他の目的にその情報を利用することを明示的に禁ずるものである。
  • アプリは、特定の地理位置情報データを提供するデバイスの位置情報へのアクセス、およびアクセスの許可を求めることができない。公的保健当局から既に公開されている位置情報を利用するアプリについては今後も提供を続けるが、それらの情報を利用するいかなるアプリも、新しいExposure Notification APIへのアクセスをグーグルとアップルは認めない。
  • 効率性を高めるために細分化を避けるようデザインされているため、1つの国にアプリは1つと定めるが、国が地域や州などに分割されている場合、アップルとグーグルは当該保健当局と積極的に話し合い、最善の方法を探ることとする。これは基本的に国が州ごとに異なるアプリを使用したいとアップルに申し出た場合、アップルは複数アプリを許可し、その国のストアに掲載されるようにすることを意味する。また、これらは州ごとの暴露通知メカニズムが他州にまたがり連携できるか否かという点において、柔軟に対応する。

両社は、2020年5月末の一般消費者に向けた公開バージョンのAPIのリリースに先立ち、ソフトウェアおよびソフトウェア開発キットのアップデートのペースを今のまま保持するとも話している。アップルとグーグルは、APIの消費者向けリリースの時期を「5月中旬」に予定している。最終的な予定として、2020年末までには、システムレベルの機能として暴露通知をリリースするという。

以下の写真で、両社のサンプルUIリソースを見ることができる。これらは、アプリが完成した場合の通告方法、設定画面、その他の外観の案を示すものだ。もちろん、公衆衛生当局(または開発を請け負った者)が作るアプリごとに多少の違いは生じるだろう。

  1. 04-COVID-19-Exposure-Notifications-Settings-Android

    暴露通告の設定
  2. 02-COVID-19-Exposure-Notifications-Sample-Public-Health-Authority-App-Positive-Result-Android

    公的保健機関サンプルアプリの陽性報告の流れ
  3. 02-COVID-19-Exposure-Notifications-Sample-Public-Health-Authority-App-Positive-Result-iOS

    公的保健機関サンプルアプリの陽性報告の流れ
  4. 03-COVID-19-Exposure-Notifications-Sample-Public-Health-Authority-App-Exposure-Notifications-Android

    公的保健機関サンプルアプリの暴露通告の流れ
  5. 03-COVID-19-Exposure-Notifications-Sample-Public-Health-Authority-App-Exposure-Notifications-iOS

    公的保健機関サンプルアプリの暴露通告の流れ
  6. 04-COVID-19-Exposure-Notifications-Settings-iOS

    暴露通告の設定
  7. 01-COVID-19-Exposure-Notifications-Sample-Public-Health-Authority-App-Onboarding-Android

    公的保健機関サンプルアプリの登録画面
  8. 01-COVID-19-Exposure-Notifications-Sample-Public-Health-Authority-App-Onboarding-iOS

    公的保健機関サンプルアプリの登録画面

アップルとグーグルは、独自に接触者追跡アプリの開発に取り組み、それを機能させるためにiOSとAndroidの特定の部分にアクセスしたいという数多くの公的保健当局からの要請に応えて、この前例のない共同事業に乗り出した。両社は、ユーザーの身元がわからないように、また地理的位置情報衛星のサービスが受けられない屋内を含むあらゆる環境でもシステムが確実に機能するように、地理的位置情報データではなく、Bluetooth識別子を使うという基準のもとで協力し合うことを決めている。

保健当局は、自分が受けたテストの結果に紐付けられた一意のコードの入力をユーザーに求めるようにもできる。それによりユーザーは、陽性の診断が、自己判断や保健当局が新型コロナウイルス感染症診断用として認可していないテストに基づくものではなく、公式なテストで認められたものであることが確認できる。

グーグルとアップルが提示したサンプルの参照アプリケーションは、一般ユーザー向けに公開されることはない。あくまでも開発者限定だ。だが両社とも、新型コロナウイルス感染症に適時に対応するアプリの開発者の努力を支援するために、完全なソースコードを含んだ参照アプリケーション全体を開発者に提供している。

新型コロナウイルス 関連アップデート

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(翻訳:金井哲夫)

Googleの失敗から学ぶ、AIツールを医療現場へ適用することの難しさ

AIによる医療分野での魔術的な活躍がよく話題になる。機械学習モデルがまるで専門家のように問題を検出するスクリーニングという分野では、特にそれが言えるだろう。しかし、多くの技術と同じように、試験所でうまくいくことと、実社会で機能することは全く話が違う。Googleの研究者たちは、タイの田舎で行われた診療所でのテストを通じ、その厳しい事実を見せつけられた。

Google Healthは、目の画像を処理し、世界中で視力喪失の主な要因となっている糖尿病網膜症の兆候を見つける深層学習システムを開発した。しかし理論的な正しさとは裏腹に、同ツールは実際の現場テストで実用に向かないことが判明した。結果が安定せず、また現場の診療方法とうまく調和しないため、患者と看護師の両方が不満を訴えている。

ここではっきりさせておくべきことは、得られた結果は苦いものだったとはいえ、この種のテストを行うためには必要不可欠で、かつ道義性のある段階を踏んでいたという点である。また、Googleが体裁の悪い結果を公表したことは評価に値する。さらに、同社の文書を読む限り、担当チームが結果を肝に銘じていることは明らかである(ただし、ブログ記事では実際の経緯をやや楽観的に描いてはいる)。

研究報告では、タイにある数箇所の診療所で、糖尿病網膜症(DR)患者を選別する既存の手順を強化するためのツールの使用経緯が記録されている。既存の手順を手短に説明すると、看護師は糖尿病患者に1名ずつ対応し、目の画像(眼底写真)を撮影し、画像を検査して結果を報告する眼科医へまとめて送付する。患者数が多いため、通常は結果が得られるまで4~5週間かかる。

Googleシステムは、わずか数秒で眼科医レベルの専門作業を完了させる目的で開発された。社内テストでは、90%の精度でDRの度合いを判定している。これで、看護師は病院を紹介して推薦したり、さらなる検査を行う決定を1か月ではなく1分で行えることになる(自動判定は1週間以内に眼科医によってグランドトゥルース検証された)。見事な結果だ-理論的には。

目の画像(眼底写真)

理想的には、同システムはこのような結果を素早く返し、患者も確認できる

しかし、この理論は報告の著者たちが現場へ適用するやいなや、崩壊してしまった。報告には次の通り記載されている。

今回の研究では、11箇所の診療所において、目のスクリーニングプロセスをできるだけ多様に観察した。画像を取得してグレードを判定するプロセスはどの診療所でも同じである。しかし、看護師はスクリーニングのワークフロー構成において大きな自主性を持っており、また、診療所ごとに利用可能なリソースも異なっていた。

目のスクリーニングを行う環境や場所も、診療所に応じて大きく異った。高品質の眼底写真を撮影できるように、周囲を暗くして患者の瞳孔が十分に大きく映すための専用の選別室を設置した診療所は、わずか2箇所にとどまった。

環境条件とプロセスがばらばらであったため、サーバーへ送信された画像もアルゴリズムで要求される高いレベルを満たしていなかった。

この深層学習システムでは検査対象の画像が厳格な基準を満たす必要がある…画像にわずかなぼやけや暗い箇所があれば、明確に発症予測できる場合でも、システムは画像を拒否する。診療所の制約下で繰返し作業する看護師が撮影した画像の一貫性や品質は、システムが要求する高い画質を満足させなかった。このため不満が高まり、仕事量が増加した。

DRの症状を明らかに示しても画質の低い画像はシステムに拒否されるため、手順が混乱し、長引くこととなった。しかし、そもそもシステムへ画像をアップロードできなければ、こうした問題点を扱うことすらできない。

インターネット接続が良好であれば、結果は数秒で表示される。しかし、今回の研究に参加した診療所のインターネット接続は、遅くて不安定な場合が多々あった。このため、画像によってはアップロードに60~90秒かかり、スクリーニングの待ち時間が伸び、1日で処理できる患者数が減ることとなった。ある診療所では、目のスクリーニング中に2時間程度インターネット接続が途切れたため、選別した患者数は予定された200名からわずか100名へ下がった。

「最低限、危害は出ない」原則を思い出す必要があるだろう。新テクノロジーを活用する試みのおかげで、治療を受けられる患者数がかえって減ってしまった。看護師は様々な方法で埋め合わせようとしたが、画像の不安定さやその他の原因が重なり、患者に対して研究に参加しないよう勧める結果となった。

うまくいったケースでも、不慮の事態が発生している。患者は、画像送信後ただちに検査が行われて、次回の診察予約を行う準備ができていなかった。

今回の研究は、前向き研究(プロスペクティブスタディ)として設計されているため、紹介先の病院を訪れる予定をその場で立てなければならない。そのため、第4および第5診療所では、看護師は不要な面倒が増えないように、患者に対して前向き研究に参加しないよう勧告していた。

また、ある看護師はこう述べている。

「(患者)は検査の正確さではなく、その後何をしなければいけないのかを心配しているのだ。結果的に病院へ行かなければいけないのなら、診療所で検査するのは無駄なのではないかという疑問が浮かんでいる。私は患者に対し、「病院へ行く必要はない」と安心させる。彼らはまた、「もっと時間がかかるか?」「別の場所へ行かなければいけないのか?」とも聞く。出かけることができないため、研究にそもそも参加しない人もいる。40~50%の人は、病院へ行かなければいけないと考えて、研究に参加しない。」

もちろん、悪いニュースばかりではない。問題は、混みあったタイの診療所ではAIが何の役にも立たないことではない。課題と場所にソリューションをぴったり合わせなければいけないことだ。わかりやすい瞬間的な自動検査は、うまくいっている間は患者と看護師の両方から歓迎された。時には、目のスクリーニングという行為自体が緊急に対策が必要な深刻なケースを自覚させることに役立っている。当然のごとく、著しく制限されたリソース(現場の眼科医)への依存を減らすという主なメリットは、医療現場の状況を変革させる可能性がある。

しかし、今回のレポートを読む限り、GoogleのチームはこのAIシステムを時期尚早かつ部分的にのみ適用してしまった結果を真摯に受け止めているように見える。彼らはこう述べている。

新たな技術を導入したとき、企画担当者、政策立案者、技術設計者は、複雑な医療プログラムで起こる問題は流動的かつ緊急的であることを考慮していなかった。私たちは、人々のモチベーション、価値観、職業上の信念、そして仕事を形成する現行の規則と繰返し作業など、それぞれの都合を考慮することが、技術の導入を企画する際に不可欠であると考える。

この研究レポートは、AIツールが医療環境でどう効果を発揮するかを解説しており、また技術面の問題や技術を活用する人々が直面する問題の両方を理解できるため、十分に読む価値のある入門書だ。

関連記事:AIとビッグデータが新型コロナとの戦いで奇跡を起こすことはない

Category:ヘルステック 人工知能・AI

Tags:Google Google Heath 機械学習

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(翻訳:Dragonfly)

医療スタートアップNinesがAIトリアージツールを放射線診断医に無料提供

米食品医薬品局(FDA)から認可を受けたAIベースのトリアージツールを開発したメディカルスタートアップのNines(ナインズ)は、放射線診断医の負担増大に対処するため、6月30日までツールを無料で提供する。新型コロナウイルス(COVID-19)が米国におけるヘルスケアの姿を変えつつある。

NinesAIは、頭蓋内出血の可能性のある緊急症例と患者の血腫による圧迫の状態を識別するように設計されており、放射線科医が症例に優先順位を付けての診断に役立てることができる。NinesAIは兆候を検出する補助ツールであり、その上で訓練を受けた放射線科医がCTスキャンによってさらに検査すべきか検討することになる。とはいえ、作業負荷を減らし、時間のかかる手作業の初期ステップを省くのに非常に役立つ。

これはAIの応用が非常に理にかなっている良い例だ。Udacity(ユダシティ)の創業者とGoogle(グーグル)の自動運転車のパイオニアであるDavid Stavens(デイビッド・ステイブンズ)氏が共同で創業したNinesは、ニューヨーク市のマウント・サイナイ病院放射線科会長のAlexander Kagen(アレクサンダー・カーゲン)博士をチーフ・メディカル・オフィサーに擁する。同社は機械学習の専門知識を駆使して、診断プロセスの中で繰り返しが生じる部分を担うソフトウェアを開発し、放射線科医が最終診断や特別な症例などのより専門的でコピーが難しい部分に集中する時間を確保する。

NinesAIツールは同社の遠隔放射線診断プロダクトを使用するNinesのユーザーが無料で利用できるだけでなく、既存のユーザーも放射線診断の現場で追加費用なしで使用できる。

Ninesは、頭蓋内出血と血腫による圧迫のトリアージ向けAIツールにFDAから認可を受けた最初の企業だ。同社は2017年に創業され、これまでにAccel(アクセル)や8VCなどの投資家から1650万ドル(約18億円)を調達した。

画像クレジット:Nines

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(翻訳:Mizoguchi

新型コロナにテックで対抗するスタートアップたち

Helena Price Hambrecht氏Woody Hambrecht氏が手掛けるD2Cの低アルコール飲料ブランドのHausは、地元のレストランとホワイトラベル提携を結ぶための様々な構想を常に描いていた。しかし、新型コロナウイルスの影響が全国に広がり多くのレストランが大打撃を受ける中、創設者らはその商品プランを前倒しして、同時に社会貢献する機会だと考えた。

Hausは最近、全国のレストランと提携し、地元の人気レストランからインスピレーションを得たアペリティフ(食前酒)を共同プロデュースする計画を発表した。サンフランシスコの高級中華料理店Mister Jiu’sからは「温かみのあるブラックカルダモン、スモーキーなラプサン茶、スパイシーなジンジャー、フローラルなキンモクセイ」をミックスしたアペリティフ、シアトルの南部料理店JuneBabyからはエルダーフラワーとオレンジがほのかに香るアペリティフ。Hambrecht氏によると、各レストランはこの企画による全収益を受け取れることになっている。ハウスはこうしたコラボ飲料の事前注文だけで、すでに数百万ドル規模の金額をレストランに支払い始めている。

彼らの他にも、スタートアップ企業らが立ち上がり、新型コロナがもたらした現在の状況に苦しむ人々を助けようとしている。そういった実例をご紹介しよう。

1. 新型コロナウイルスの検査ができる電話ボックス

プライバシーを重視した電話ボックス型オフィスを製造するRoomは、新型コロナウイルスの影響でオフィスに行く人が少なくなるなか、顧客ベースが落ち込んでいる。同社は手持ち無沙汰になっているリソースを新商品の展開に回すことにした。病院向けに開発された新型コロナウイルスの検査ブースだ。このブースによって、医療従事者は保護バリアに守られながら検査を実施することができる。最初の検査用ブースはすでに世界中の病院に寄付されている。また各地域で製造できるよう、ブースの設計ファイルを無料ダウンロードできるようにした。

2. 必要不可欠な配送を無料で

Onfleetは、この状況下でも配送ビジネスを続けざるを得ない企業や組織に対して、配送ソフトウェアを無料で提供している。このスタートアップは必要不可欠な配送や配送業務を突然開始しなければいけなくなった団体を特に重視する。SF-Marin Foodbank、NYC Dept for the Aging(ニューヨーク市高齢者局)のほか全国のさまざまなファーマーズマーケット、最近組織化されたその他のPPE配送組織などのパートナーと連携している。

3. 自宅でコーディング

オンラインコーディングおよびキャリア開発ブートキャンプを提供するFullstack Academyは、2回分のブートキャンプ準備コースを無料で提供する。コースはリモートで行われ、特定のコーディングとJavaScriptコンセプトについて説明する。

4. 市民の義務としてデイリーアセスメント

スタンフォード大学医学部の少人数体制のチームは「National Daily Health Survey」と呼ばれるアンケートを作成し、全米各地のさまざまな郵便番号別に新型コロナウイルスの症状がある患者数を特定しようとしている。このアンケートに協力するのは、少しでも感染拡大の予測と対応に役立ちたいと願う人々だ。初日のアンケートは2~3分で完了し、その後のアンケートは1分で完了する。このアンケートはこれまでに5か国語に翻訳されている。National Daily Health Surveyチームはアンケートに長期間コミットできる人を探しているそうだ。

5. 新型コロナウイルスのない世界

Clara Healthは、LyftのRaj Kapoor氏やVSCのVijay Chattha氏などと協力し、患者とそうでない人の両方の公衆衛生状況を追跡できる無料ウェブサイトを立ち上げた。このサイトでは、公共衛生の専門家向けに新型コロナウイルスの治療データを提供し、臨床試験についての告知を行う。同サイトでは、今後医療ケアのボランティアを見つけるのに役立つよう、個人の免疫状況も追跡できるようにする予定だ。

6. Twilioのホットライン

WhileAtHome.orgはボランティアが運営するウェブサイトで、教育におけるリソース、ヘルスケアのヒント、コンサートなどを提供している。最近はトゥイリオ提供のホットラインを導入し、ユーザーがそれぞれの州にあるホットラインと簡単に通話できるようにした。「478-29COVID」宛に通話を開始すると、自分が住んでいる州のホットラインに自動的に繋げてくれる。

7. 解雇されたメイクアップアーティストの雇用努力

D2C化粧品ブランドのIl Makiageでは、新型コロナウイルスに関連した理由で解雇されたばかりのメイクアップアーティストを雇用し、1対1のバーチャルメイクアップチュートリアルを提供している。同社は、こうして雇用したメイクアップアーティストたちに時給25ドルを支払っている。

8. Chrome拡張機能で貢献

4thwallは、「動画のイッキ見」という行為を通じて社会的貢献に役立てたいと考えている。ユーザーがこの社会貢献に参加するためにはまず、4thwallのChrome拡張機能をインストールする必要がある。拡張機能を有効にしたら、ブラウザ上でNetflixやHuluの動画を視聴する。250分間ストリーミングすると、ユーザーは新型コロナウイルスに特化したチャリティ団体を選んでチャリティを行えるようになる仕組みだ。実際の寄付は4thwallが行うため、ユーザーには金銭の負担はない。同社は匿名可した視聴者の人口統計指標を別の企業に提供し、その企業は視聴傾向を確認したり、それに従ってコンテンツを作成できる。その対価をチャリティの原資にあてることで、コストがかからない寄付を実現した。クリエイターの1人であるAndrew Schneider氏によると、最初の2週間ですでに1500ドル(約16万円)の寄付が完了しており、目標は今後の10週間で4万ドル(約430万円)とのことだ。

9. ブライダル会社が社会に貢献

オンラインブライダルブランドのAnomalieは、CDC認定フェイスマスクを病院に寄付し、最前線で働く医療従事者を支援している。同社は独自のサプライチェーンと中国のメーカーのリソースを活用し、ウェディングドレスだけでなく今ではマスクも製造している。最初の2回の出荷では1万個以上のマスクを届けた。

10. 寝る前の絵本の読み聞かせがアップグレード

科学に基づく離乳食・幼児食の宅配事業を行うYumiは、幼児向けに新型コロナウイルスを説明する絵本を作成した。この絵本は無料ダウンロードできる。アメリカの著名人のSnoop Doggもこの絵本についてツイートしている。

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(翻訳:Dragonfly)

“新型コロナウイルス

AIをがんの病理診断に活用するPaigeが約5億4000万円調達

Sloan-Kettering(スローン・ケタリング記念がんセンター)からスピンアウトしたPaige(ペイジ)は、腫瘍病理学の進歩に役立つ人工知能プラットフォームを開発している。プラットフォームから得られる知見をより良い治療薬の開発に利用する。同社は新たに500万ドル(約5億4000万円)の資金を調達し、プラットフォームの商業化と研究範囲の拡大を続ける。また、北米と欧州の病院での利用に向けFDA(米食品医薬品局)の認可取得を目指している。

Goldman Sachs(ゴールドマンサックス)、具体的にはその商業銀行部門が出資した。これはPaigeが2019年12月に発表したシリーズBの延長だ。Breyer Capital(ブレイヤーキャピタル)がリードしたシリーズBで、Paigeは4500万ドル(約49億円)を調達した。バリュエーションは PitchBook(ピッチブック)によると約2億800万ドル(約230億円)だった。

PaigeのCEOであるLeo Grady(レオ・グレイディ)氏は「当社は新型コロナウィルスに関わる仕事はしていない。今のところはがんの研究に重点を置いている。ただ、パンデミックが医学の世界に存在する欠陥に光を当てた。それは当社がまさに取り組んでいる分野だ」と語った。

「当社は新型コロナ関連の研究に取り組んではいないが、新型コロナが病理学コミュニティに強い影響を与えていることはわかった」とグレイディ氏は言う。「病理学コミュニティがリモートで作業できないことが浮き彫りになった。当社が構築するテクノロジーは、病理学コミュニティを安全にリモートで作業する能力をサポートする。AIテクノロジーを利用して作業スピードをさらに速くすることもできる。病理医がリモートで作業できないことが明らかになりつつあり、デジタル化が急ぐ必要性が生じている」

確かに、進行中のコロナウイルスのパンデミックは、ヘルスクライシスでテクノロジーが果たす役割の可能性に焦点を当てることになった。その答えは明らかになりつつある。研究活動におけるAIの利用、健康のリモートモニタリングや遠隔医療、そしてもっと基本的なこととして、テクノロジー企業の資金調達能力や消費者のリーチを利用して重要な物資や情報を必要とする人々に提供することがその答えだ。

Paigeはこれらのうち概ね1つ目のカテゴリーに分類される。「ゴールドマンサックス投資をがん研究にまで広げていること踏まえると、新しい資金は特に戦略的だと言える」とグレイディ氏は述べた。

Paigeは、がんの病院および研究センターとして名高いスローン・ケタリング記念がんセンター(MSK)と非常に密接な関係にある。これはPaigeが、MSKの2500万件の病理スライドと、AIベースの計算病理に関する知的財産に独占的にアクセスできることを意味する。この2つは財産だ。スライドの数はこの種のリポジトリーの中では最大級であり、機械学習プラットフォームは入力されるデータと同じくらい優れている。また最近、コニカミノルタの子会社であるInvicro LLC(インビクロLLC)との提携を発表した。治療薬の探索・開発に取り組む製薬会社やバイオテクノロジー会社に病理学の統合ソリューションを提供する狙いだ。

「ゴールドマンサックスは当社に大きな可能性があることを理解している。臨床グレードのAIだけでなく、病理医のリモート作業を可能にする機能を持つプラットフォームとビューアーもそうだ」とグレイディ氏は述べた。Paigeはすでに十分な資金を有しているが、「高まる病理医のリモート作業の必要性に応えるべく、500万ドル(約5億4000万円)の新しい資金でさらにプロダクトの開発を進める。ゴールドマンサックスが投資してきたがんネットワークと、世界中のがんネットワークをサポートする当社のテクノロジーが、両社の関係を素晴らしいものにするはずだ」。

グレイディ氏によれば、シリーズBの発表以来、Paigeはいくつかのベータ版サイトを追加し、完了した多数の研究が間もなく公開されるという。「これらのベータ版研究は当社の価値を証明する基盤となる。当社のテクノロジーが腫瘍病理学のワークフローに価値をもたらすことを証明できる。当社のテクノロジーの商品化にも役立つ」と同氏は説明した。

次のラウンドの計画は今のところない、と同氏は付け加えた。

投資銀行のマネージングディレクターであるDavid Castelblanco(デイビッド・カステルブランコ)氏がこのラウンドで取締役会に加わった。「Paigeは、がん分野の病理学とトランスレーショナルリサーチを変革し、バイオ製​​薬会社と緊密に協力して、患者のケアを改善するカスタム診断ソリューションと創薬技術を開発している」と同氏は声明で述べた。「我々は、AIテクノロジーを通じてがん治療を改善するという会社の重要な使命をサポートできることを楽しみにしている」

「Paigeの経営陣は優れたチームを構築し、このエキサイティングな市場でチャンスをつかむために素晴らしい仕事をしている」とBreyer Capitalの創業者兼CEOであるJim Breyer(ジム・ブレイヤー)氏は声明で付け加えた。

画像クレジット: Busakorn Pongparnit / Getty Images

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(翻訳:Mizoguchi

Curativeは画期的な新型コロナ検査方法で米食品医薬品局の認可を取得

診断法のスタートアップであるCurative(キュラティブ)は、新型コロナウイルス(COVID-19)の感染を診断する画期的な検査方法について、米食品医薬品局(FDA)から非常事態時に限った使用認可を取得した。

同社によると、この検査方法は3月末からすでにロサンゼルス市に導入されており、5万3000人の住民が検査を受けているとのことだ。

Curativeの検査では、被験者に咳をしてもらい痰を採取することで、肺の奥のウイルスが検出できるのだと広報担当者は話している。

FDA最高科学責任者Denise Hinton(ダニース・ヒントン)氏がデジタル署名した書簡では、Curativeの検査が以下のように解説されている。

この製品の使用にあたっては、最初に口腔咽頭(喉の)スワブ、鼻咽頭スワブ、鼻腔スワブ、および口腔液検体よりSARS-CoV-2核酸を抽出し分離、純化する。次に、純化した核酸をcDNAに逆転写した後に、PCRによる増幅および認可されたリアルタイム(RT)PCR装置を用いた検出を行う。このCurative-Korva SARS-Cov-2検査は、EUA(緊急使用時許可)の要請により提出された認可手順に解説されているとおり、衛生研究所で一般的に使われているすべての市販マテリアル、またはその他の認可されたマテリアルおよび認可された補助的試薬が使用できる。

dot.LAで最初に紹介されたCurativeは、カリフォルニア大学ロサンゼルス校と提携する医療研究施設KorvaLabs(コーバラブズ)と共同で検査処理を行っている。

この検査方法は、米国での検査数に歯止めをかけているサプライチェーン不足の回避を目指している。現在米国では、検査キットに必要な重要部品の調達が世界的な新型コロナウイルスのパンデミックの影響で調達困難に陥っているため、検査キット不足が続いていると同社は話す。

Curativeは、検体採取と抽出キットの部品の多くを代替する製品の生産に取り組んでいる。それを同社は、磁気シリカビーズを使用しない大規模なRNA抽出方法と呼んでいる。

同社は、もともと敗血症のための画期的な検査方法の開発を目指して2020年1月に創設されたのだが、新型コロナウイルスが世界中に蔓延するようになり、その検査に方向を切り替えた。

「私たちの目標は、新型コロナウイルス検査キットの直交的なサプライチェーンを構築することです。それにより、公共衛生と米疾病対策センターの足かせとなり生産拡大を阻んでいる材料を買わずに済むようになります」と、同社はウェブサイトで述べている。「私たちはまた必要な試薬を提供することで、医療研究所の稼働率向上を目指す事業にも協力しています」。

Curativeは、同社の検査方法は2つの点で優れていると話す。その検体採取法は、医療従事者を危険にさらすことが少ないため個人用保護具の必要量を少なくできる点、そして、代替サプライチェーンを使うことで、素早く検査を拡大できる点だ。

同社は既に1日におよそ5000件の検査を可能にしており、1日に2万個のキットを生産している。検査結果は31時間ほどで届けられる。

「多くの人が検査できる体制は、我が国の新型コロナウイルス対策には欠かせません。認可を得たことで、私たちはさらに生産量を増やし、全国に私たちの検査キットを届けます」と、Curative Inc.の創設者でありCEOのFred Turner(フレッド・ターナー)氏は話す。「私たちは、ロサンゼルス市とロングビーチ市と共同で、数千の人々がドライブスルー施設で検査が受けられるようにしましたが、この検査をさらに全国の大勢の人々にも拡大できるよう、既に万全の態勢を整えています。同時にこの検査キットを使った自宅での検体採取を許可するよう、私たちはFDAとの協議を続けています。認可が得られれば、さらに検査数を増やせます」。

新たに認可されたことで、同社は全国のさらに多くの販売業者と事業を広げることが可能になる。

Curativeの検査は既にロサンゼルスとロングビーチで導入され、ロサンゼルス郡、ロサンゼルス郡消防局、ロサンゼルス郡保安局によって組織的に実施されている。検査キットは消費者に直接販売されるものではなく、医師による注文が必要だと同社は話している。

ベンチャー投資企業のDCVCの支援を受けているCurativeだが、DCVCが有限責任社員に、望むならCurativeの検査キットが手に入ることを示唆する手紙を出したことで、早くも物議をかもした。

DCVCの手紙には以下のように書かれていた。

新型コロナウイルスの症状があり、すぐに検査を受けられない場合は、速やかにお知らせください。我々のポートフォリオに含まれているある企業との特別な関係を通じて、検査キット(簡単で早くて安全な唾液または痰のスワブによるテスト)の送付を手配します。検査結果は1〜3日で郵送されます。

これに続くブログ記事で、DCVCの共同経営者たちはその主旨を以下のように説明した。

州境をまたぐ遠隔治療を可能にする規制変更に伴い、DCVCのすべての知人のみなさんに、Carbon (Health)の優れた医療ケアと完全な検査方法のことを知っていただきたいと考えたのです。そしてもちろん、それには私たちのL.P.で働く方々も含まれます。彼らも我々同様、この厳しい時期に際し、自分自身や家族に対して難しい決断を下しています。

Carbonは素早く患者に優しい電子患者研修により今のペースを保っていますが、Curativeの検査能力が加わったことで、今後10日間で1日あたりの検査数が1万件に拡大される見通しです。この医療戦力の合体が、すべての人への医療を、まさに「手配する」のです。

私たちの表現が傲慢に聞こえたでしょうか? それについて言い訳はしません。誤解された方がいれば、とても残念に思います。誰であれ「割り込み」は許されません。私たちは、友人のみなさんと私たちのコミュニティーに、いつでも質の高い医療を受けることができ、しかも私たちのポートフォリオにある最先端技術を活用できることをお伝えしようと努めているのです。

新型コロナウイルスのアウトブレイクに対処する上で、正確な検査が最重要であることに変わりはないが、数多くのスタートアップ企業が革新的な診断方式の開発に取り組んでいる。

ハーバード大学免疫学者William Hanage(ウィリアム・ヘイネージ)氏は、Business Insiderに「社会で実際に何が起きているのかを正確に知ることが、このパンデミックに対処する上での重要な鍵になります」と話している。

画像クレジット:Andriy Onufriyenko / Getty Images

新型コロナウイルス 関連アップデート

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(翻訳:金井哲夫)

米食品医薬品局が新型コロナ治療薬候補の一部に危険性ありと再警告

FDA(米食品医薬品局)は、ヒドロキシクロロキンとクロロキンの重大な副作用について再度警告した。両医薬品は抗マラリア(および皮膚エリテマトーデスなど)薬として以前から使われているが、最近新型コロナウイルス(COVID-19)治療薬の候補として臨床試験が行われていた。しかし研究者がJAMA(ジャーナル・オブ・アメリカン・メディシン)に 発表した論文によれば、試験は「重大な副作用」のため試験は急遽中止されている。

論文によると両薬品は「初期の結果」において22人の患者の死亡を含む重大な危険が認められ、試験は中止されたという。初期試験では薬剤の大量投与を受けたグループの死亡率は39%に上った。少量投与のグループでも死亡率は15%あった。双方を総合すると死亡率は27%だった。

「試験の結果は同薬剤の大量投与に対して強い懸念を示すものとなった。毒性のリスクが効能を上回ることが明らかだった」と研究グループは所見を述べている

4月24日のFDAの警告では特にこの臨床試験には言及していないが、81人の患者を対象としており、フェーズII臨床試験として最大規模のものだった。今回FDAは「ヒドロキシクロロキンを単独あるいは他の薬剤と併用して投与された新型コロナウイルス患者の死亡に関する報告を受けている」と注意を呼びかけている。「他の薬剤」には抗生物質のアジスロマイシンが含まれている(JAMA論文によれば被験者全員がアジスロマイシンの投与を受けていた)。治験者には心臓の鼓動が遅くなるQT間隔延長や逆に速くなる心室性頻拍などの危険な症状が見られ、一部の例では死亡の原因となったという。

ヒドロキシクロロキンとクロロキンはトランプ大統領が新型コロナウイルスの治療薬として有望だと述べたことで注目されたが、フランスにおける初期の小規模調査な研究で治療薬としての可能性が認められたものの、安全性に関しては科学的証拠が得られるような臨床試験は行われていなかった。医薬品として承認されたのはあくまで抗マラリヤなどに処方されることを前提としており、大量投与には重大な副作用があることは以前から知られていた。

画像クレジット:Getty Images

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(翻訳:滑川海彦@Facebook

MITが布に織り込んで洗濯機で洗濯できる常時健康モニタリング用センサーを開発

MITが開発した新しいタイプの軽量センサーは、布のような曲げられる素材に組み込める。たとえばそれをアスリートのウェアに織り込めば、体温や心拍数、呼吸数などのバイタルを常時モニタできる。また洗濯機で洗えるし、外から見て目立つものが何もない。あるいは織り込まずに取り外せるようにすると、複数の衣類で使える。

このセンサーの研究プロトタイプはスマートフォンと通信でき、最終的には中国のパートナーが量産する。応用分野は健康産業のほかに、宇宙飛行士の生命兆候を知るなど宇宙での利用も考えられる。MITのこの研究は、NASAとMITメディアラボの宇宙探究計画も出資しているが、ポテンシャルが圧倒的に大きいのは地球上での利用だ。とりわけ、COVID-19に悩まされている今は、将来のもっとコントロールの幅が広がったバージョンが、ヘルスケアの分野で多用されるだろう。

中でもとくにこれは、定常的なモニタリングと医師の診察を必要とする慢性病患者にとって費用効果が高くて容易な方法であり、多くの場合手作業で一貫性を維持することが難しかった記録の作成と維持を助けるだろう。記録の更新を人間の手や遠隔医療に頼るのではなく、患者自身がバイオメトリックデータの安定的なストリームを、治療をモニタしているヘルスケアのプロフェッショナルに提供できる。そしてそのプロセスを自動化すれば、患者と介護者の両方がつねに最新の状態情報をリアルタイムで提供し取得できる。

遠隔医療はCOVID-19のおかげですでに需要が急増しており、患者もヘルスケアのプロフェッショナルも共に、COVID-19の感染リスクを下げながらヘルスケアのニーズを継続的に管理する方法を求めている。とくに重要な対象は、慢性病や既往症を抱える弱者だ。

アメリカのプライマリーケアのスタートアップForwardなどは、すでにこの方式を実験している、。それは、バイオメトリックのセンサーを自宅にいる患者に配布してモニタするやり方だ。インターネットに接続されるセンサー(コネクテッドセンサー)を作っているKinsaも、匿名のバイオメトリックデータを集積するやり方に価値を見出している。それはセンサーのデータをマッピングしてCOVID-19の拡散の兆候、とくに地域における発熱の広がりを調べようとする。

衣類に埋め込まれるウェアラブルなセンサーは、前にも試みられ、製品化されたこともある。でも今回のMITのバージョンは、もっとも着用のなじみが良く、邪魔にならず、快適だ。将来、健康データの常時モニタリングによってパンデミックのもっと良質なモデリングが可能になれば、まさにこのセンサーがイノベーションの最先端として注目されるだろう。

画像クレジット: MIT

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

アップル/グーグル共同開発のコロナウイルス接触者追跡APIの最初のバージョンが来週リリース

Apple(アップル)のCEO Tim Cook氏と欧州委員会の単一市場担当委員Thierry BretonThe氏の会話によると、AppleとGoogleが共同開発しているクロスプラットホームな接触者追跡APIは来週から使用できる。Breton氏が彼のオフィスで共有した写真には、彼とCook氏のビデオ会話の様子が写っており、また彼がLes Echosに語ったところによると、AppleのCEOは、公衆衛生当局のためにアプリを作るソフトウェアデベロッパーがその接触者追跡APIを利用できるのは4月28日からだ、と述べた。

AppleとGoogleは4月10日に、両社がiOSとAndroidの両方のモバイルデバイスで動く接触者追跡システムで協働していると発表し、そのオプトインのネットワークがユーザーの実際のID情報とは無関係なランダムなIDにより、COVID-19の検査で陽性と確認された人と接触した可能性を 通信する、と詳しく説明した。それは、個人のプライバシーを保護するために位置データを決して集めない分散システムで、AppleとGoogleは、そのAPIを使って作られたいかなるアプリも、それらがユーザーベースの最遠のリーチを持ちうるために、プロジェクトで協働することを選んだ。

その接触者追跡システムの展開は二段階で行われる。最初に、APIがデベロッパーにとって可利用になる…それが来週起きることだ。この段階は最初、5月中旬を予定していたが、Breton氏とCook氏の会話を聞いたかぎりでは両社はそのスケジュールを早めたようだ。ソーシャルディスタンシング措置の変様や緩和をいついかにして行うべきかを正しく知るためには、接触者追跡が喫緊に必要だから、このスケジュール変更は理にかなっている。

計画の第二段階は、接触者追跡システムのアップデートをOSのレベルで行うことだ。オプトインはデバイス上で管理され、AndroidもiOSスマートフォンもどちらも、このイン・アウトの切り替えにより、ローカルな追跡行為に参加できるものでなければならない。しかもそれは、公衆衛生当局の特定のアプリの有無とは無関係でなければならない。ただしAppleとGoogleが行なったQ&Aセッションによると、接触者の可能性を通知する公衆衛生アプリのダウンロードとインストールを示唆するプロンプトが出るのは構わない。それによってユーザーは、信頼できるソースから、次にどうすればよいか関する追加的情報を取得できるだろう。

なお、この第二段階は今年後半の展開になる。でもAPIの最初のバージョンの到着がこれだけ早まったことは、これをなるべく早く市場に出したいとする両社の意欲と努力の表れだろう。おそらく、相当多くの技術者をつぎ込んでいると思われる。

現在開発中またはすでに実装された接触者追跡システムはたくさんあるが、共通の技術による相互乗り入れ通信が可能で、もっとも人気の高い複数のモバイル機種間の幅広い参加の機会が開けることは、そんなシステムが実際に効果的でありうる大きなチャンスになるだろう。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

Virgin Orbitの自動人工呼吸器を米食品医薬品局が緊急承認、数日以内に医療現場に提供へ

小型衛星の打ち上げを目指すVirgin OrbitはFDA(米食品医薬品局)から人工呼吸器用の緊急使用許可(EUA)を得た。同社は新型コロナウイルス(COVID-19)感染の重症患者に必須となる人工呼吸器のニーズに対処するため、数週間前から設計とプロトタイプ化の製造を開始していた。Virgin Orbitは、「FDAの承認が得られたので、数日以内に人工呼吸器の提供が開始できる」と期待している。

Virgin Orbitが設計した人工呼吸器は、救急車に搭載され救急隊員が自発呼吸の能力を失った患者に使用する手動人工呼吸器を自動化したものだ。設計に当たっては専門家と医師のグループ、ブリッジ人工呼吸器コンソーシアムの指導を得ている。「ブリッジ」という分類のとおり、主に「つなぎ」として使用されるタイプだが、これには大きなメリットがある。軽症患者にブリッジタイプの簡便な人工呼吸器を使うことにより、本来の人工呼吸器を新型コロナウイルスによって重篤な肺炎を起している患者の救命にあてることができるようになる。

Virginではすでに人工呼吸器の製造を開始していると発表しており、現在の生産体制で「週に100台以上」を生産できるという。今週中に出荷予定の最初の100台はカリフォルニア州に送られEMSA(Emergency Medial Services Authority)によって必要度の高い医療現場に配布される。

Vigin Orbitでは人工呼吸器の生産ラインを迅速に立ち上げて出荷を開始するために多大の努力を払ったが本業はやはり衛星打上だ。同社では独自の小型衛星発射システムの開発を続けるとしている。Virgin Orbitの空中発射システムについてはTechCrunchでも報じてきた。今月、Launcher Oneロケットを747母機の主翼下に吊り下げて所定の高度に上昇させる最終飛行テストに成功している。この後は実際にロケットに点火して衛星を打上げるテストとなる。これは今年中に実施される予定だ。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook

神戸市と500 Startupsの支援プログラムが6月開始、新型コロナと戦うスタートアップを国内外から募集

神戸市長の久元喜造氏は4月23日、神戸市と米国のベンチャーキャピタルである500 Startupsと連携したスタートアップ育成プログラム「500 KOBE ACCELERATOR」の参加募集を6月から開始することを明らかにした。新型コロナウイルス蔓延のため、プログラム自体は完全にオンラインで実施され、プログラムの成果を発表する場であるDemo Dayも現在のところオンラインでの開催を検討しているとのこと。

なお、すでに4月20日から神戸市独自で同様のプログラムの募集が始まっているが、重複して応募することも可能とのこと。

関連記事:神戸市が新型コロナと戦うスタートアップを募集、2営業日以内のオンライン一次審査後に社会実装へ
500 KOBE ACCELERATORは、約6週間の短期集中型起業家支援プログラムで、日本発のスタートアップエコシステムを神戸から生み出すことを目指して2016年から開催しているもの。第4回の昨年は、ヘルステック領域に特化。神戸市は、人工島であるポートアイランドに先端医療技術の国際的な研究開発拠点として神戸医療産業都市を有しており、医療関連のスタートアップを育成する環境が整っていることからテーマが決まったそうだ。申込数は174社で、そのうち半数以上が海外からの申し込だったとのこと。第1回からの採択企業の累計資金調達額は100億円を超える。そのうち3社はM&Aによる事業買収を受けたほか、8社は現在も神戸を拠点に活動している。

5回目となる今年は、さらにジャンルを絞り込み新型コロナウイルス(COVID-19)と戦うスタートアップ企業を募集する。開催概要は以下のとおりだが、コロナウイルス感染への治療や創薬、一部の医療機器開発などの事業は対象外となる。

また投資プログラムではないため、採択された企業への500 Startupsの基本的に出資はない。プログラムは原則として英語で実施されるが、講義ビデオは日本語字幕付きで、メンタリングは必要に応じて逐次通訳でサポートする。

  • プログラム名:500 KOBE Accelerator 2020 for COVID-19 Emerging Technology
  • 募集期間:2020年6〜7月(予定)
  • プログラム期間:2020年8月から10月(予定)
  • 開催方法:オンライン(デモデイの開催方法は社会状況に応じて今後検討)
  • 対象領域:ウイルス感染予防、公衆衛生などに関する正確な情報発信(デマ防止)、健康管理、リモートワーク・学習、食品物流、オンラインイベントなど
  • 参加資格:国内外の起業家または起業家候補でシード(最小限のプロダクト・モデルを開発済み)、アーリー(製品開発済み、顧客あり、第三者からの投資を獲得する段階)期にある ※すでに製品やサービスを持っており、チーム活動しているスタートアップを推奨
  • 参加者枠:20チーム

プログラム内容は以下のとおり。

  • メンタリング:500 Startupsのグローバルスタッフによる1対1形式のメンタリング
  • 講義:マーケティングやマネタイズ手法、UX/UI、資金調達などに関する専門家による講義
  • コミュニティ:選抜されたスタートアップのコミュニティ形成支援
  • 神戸医療産業都市のサポート

記者会見で久元市長は、新型コロナウイルス感染症対策で1624億円の緊急補正予算を組むことも発表。

この予算により、医療や教育、ひとり親やDVの被害を受けている人、中小企業への支援などを進める方針だ。そして、500 KOBE ACCELERATORプログラムでスタートアップの力も借りて戦後最悪ともいえる難局を乗り越える。

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子供向け睡眠・マインドフルネスアプリのMoshiが約13億円を調達

「子供が起きていたら、あなたも起きていることになる」。Moshiの創業者でCEOのIan Chambers(イアン・チェインバーズ)氏はそう語る。

大人の間ではマインドフルアプリの人気が高まっているが、Moshiはマインドフルネスと瞑想のテクニックを子供に利用してもらうためのアプリだ。米国時間4月21日、MoshiはAccelが主導したシリーズBで1200万ドル(約13億円)を調達したと発表した。このラウンドには、LocalGlobeの姉妹ファンドでシリーズB以降を支援するLatitude VenturesTriplepoint Capital、MTVのCEOだったBill Roedy(ビル・ローディ)氏も参加した。

今回の資金調達に伴い、Latitude VentureのJulia Hawkins(ジュリア・ホーキンス)氏がMoshiの取締役になった。

Moshiはもともと、Calmの創業者でCEOのMichael Acton Smith(マイケル・アクトン・スミス)氏が創業したMind Candyから生まれた。同氏はMoshi Monstersという子供向けオンラインエンターテインメントプラットフォームを作った人物だ。2015年に同氏はCalmを創業するためにMind CandyのCEOを辞め、チェインバーズ氏が後任となった。その後、2017年にMoshiを開発、公開し、Mind CandyはMoshiとリブランドした。

Moshiは子供が眠れるようにするアプリだ。このアプリでは150種類近くのオリジナルコンテンツを提供している。このうち80種類は、同社がオリジナルで制作した30分間の寝かしつけ用物語だ。オリジナルコンテンツ制作を指揮しているのは最高制作責任者のSteve Cleverley(スティーブ・クレバリー)氏だ。同氏はMoshi Monstersが英国アカデミー賞を受賞したときの作家で、アプリ内コンテンツの著作、作曲、制作を担当している。

Moshiの寝かしつけ用物語は、すべて同じような構成になっている。ナレーション、歌、そしてBGMだ。物語は細部にまで配慮して丁寧に作られている。例えばこのアプリで最も人気のある物語のひとつ「Mr. Snoodle’s Twilight Train」では、物語全体にわたってバックグラウンドに「シュッシュッポッポ」と汽車の音が流れている。子供を安らかな眠りに導くために、この効果音は子供の安静時の平均心拍数と同じテンポになっている。

またMoshiは、このプロジェクトに有名人の協力を得ている。女優のGoldie Hawn(ゴールディ・ホーン)や俳優のSir Patrick Stewart(パトリック・スチュワート)がナレーションを担当しているほか、声優も参加している。

このアプリでは、保護者がオリジナルのプレイリストを作ったり、「慌ただしい心に」などテーマごとのプレイリストを選んだりすることができる。

Moshiには睡眠だけでなく、休憩のときや不安を感じたときなど、1日中使えるマインドフルネスのコンテンツもある。

Moshiは最初の1週間は無料で試用でき、その後は年額40ドル(アップルの日本のApp Storeでは3700円)のサブスクリプションがある。6種類のコンテンツは誰でも無料で利用できる。

サブスクリプション利用者は10万人を超え、物語は8500万回再生された。チェインバーズ氏はTechCrunchに対し、全ストーリーの70%が完成していると述べた。

Moshiは今回調達した資金で、睡眠関連の専門家や科学者と協力して新しい機能やコンテンツを開発する計画だ。また、マーケティングや広告、提携により、さらなるユーザー獲得も目指す。

「朝、私が目覚める理由は、決まり文句のように聞こえるかもしれないが、フィードバックだ。フィードバックは、家族の生活を向上させ健康と幸福に良い影響を与えるために我々がどのように役立っているかを語るヒューマンストーリーだ。それが我々の心をかきたてる」と同氏。

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(翻訳:Kaori Koyama)

LabCorpの新型コロナ検査キットが家庭用として初めて米食品医薬品局が認可

LabCorp(ラブコープ)の家庭用新型コロナウイルス感染症(COVID-19)検査キットPixel(ピクセル)は、米食品医薬品局(FDA)が排除していた検査方法として、初めての緊急時使用許可(EUA)を取得した。これは家庭用の検体採取キットで、鼻腔スワブなどの検体採取用具と、採取した検体を検査機関に送るためのパッケージが含まれている。

これまでFDAは、家庭用の検査や検体採取のためのキットの使用を認めてこなかった。実際、同じように家庭で検体を採取して、新型コロナウイルスの存在を検出する分子リアルタイムCPR検査の実施をすでに許可されている研究所に送付し、検査結果を教えてもらうという検査キットを数多くのスタートアップ企業が発表するようになると、FDAはガイドラインを示し、家庭用検査キットは認可できない旨を強調していた。

FDAによれば、認可されたのはLabCorpの新型コロナリアルタイムPCR検査のみで、他の同様の検査キットは、今でも前もってEUAを取得しなければサービスは開始できないという。遠隔医療により有資格の医療専門家の指導を受けるか否かに関わらない。FDAガイドラインの例外を利用して、家庭での血清検査を実施している研究所もあるが、それは新型コロナウイルスの発症を確認するための検査ではないというのが同局の見解だは。

家庭での検査が許可されたことは(家庭での完全な検査の実施ではなく単なる検体検査ではあるが)、FDAがこれまでの方針を変更したという意味で、大きな一歩だ。FDAは先日、ガイドラインを更新し、同局は家庭用検査キットのメーカーと協力して、それを一般に普及させる最良の方法を探ると表明した。なぜならFDAは「家庭での検体検査を含む安全で正確な検査方法を通じて、新型コロナウイルスの検査の機会を増やすことに公衆衛生上の意味があると認識した」からだ。

LabCorpは40年以上の歴史を誇る米国の医療診断企業であり、Pixelシリーズには、大腸癌、糖尿病、心臓脂質の状態を家庭で検査できるものがある。FDAは家庭での検体採取の認可に道を開きたいと考える企業の中でも、業界で長年実績を積んできた相手を好んだようだ。専門家の立ち会いなく自分で検体採取を行い、パッキングして、送るといった手間がかかることで、間違いが増える恐れがあると同局は考えたのだろう。

米国では現在、新型コロナウイルスの検査は、診療所や病院に加えてドライブスルー施設に依存している。だがこれらの検査は、リスクプロファイルや症状発現など、受けるための条件が厳しい。また検査を実施する医療専門家は、自身が感染の危険にさらされる。家庭で検査ができれば、検査率が全体に高まと同時に、新型コロナウイルスパンデミックが実際にはどこまで広く、どれほど深く及んでいるかを、より正しくイメージできるようにもなるはずだ。

“新型コロナウイルス

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(翻訳:金井哲夫)

サムスンのGalaxy Watchの血圧測定アプリが韓国で規制をパス

Samsung Electronics(サムスン電子)が今日(4/21)、Galaxy Watch用の血圧測定アプリが韓国の規制当局に承認された、と発表した。Samsung Health Monitorと呼ばれるそのアプリは、第三四半期中に少なくとも韓国で、Galaxy Watch Active2で利用できるようになり、そして今後のGalaxy Watch製品にも加わる。

TechCrunchは、Galaxy Watch Active2の高度なセンサー技術を利用しているそのアプリが韓国以外ではいつごろ提供されるか、問い合わせている。

それは韓国の食品薬品安全省より、一般市販のカフレス血圧測定アプリとして認められた。このアプリは最初に、従来からある血圧カフで調整する必要がある。そしてその後は、脈波分析で血圧を測定する。調製は少なくとも4週間に一度行う必要がある。

IDCの最近の記事によると、2019年の最後の四半期ではSamsungのウェアラブルの売れ行きはApple(アップル)とXiaomi(シャオミ)に次いで第三位だった。その量を支えたのは、Galaxy Activeウォッチだ。Samsung(サムスン)は、スリープトラッカーなど、健康とフィットネスにフォーカスしたモニタリング機能で、同社のスマートウォッチを差別化したいようだ。

関連記事: サムスンのGalaxy Watch Active 2はAndroidユーザーに最適なスマートウォッチ

画像クレジット: Samsung Electronics

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa