AIをがんの病理診断に活用するPaigeが約5億4000万円調達

Sloan-Kettering(スローン・ケタリング記念がんセンター)からスピンアウトしたPaige(ペイジ)は、腫瘍病理学の進歩に役立つ人工知能プラットフォームを開発している。プラットフォームから得られる知見をより良い治療薬の開発に利用する。同社は新たに500万ドル(約5億4000万円)の資金を調達し、プラットフォームの商業化と研究範囲の拡大を続ける。また、北米と欧州の病院での利用に向けFDA(米食品医薬品局)の認可取得を目指している。

Goldman Sachs(ゴールドマンサックス)、具体的にはその商業銀行部門が出資した。これはPaigeが2019年12月に発表したシリーズBの延長だ。Breyer Capital(ブレイヤーキャピタル)がリードしたシリーズBで、Paigeは4500万ドル(約49億円)を調達した。バリュエーションは PitchBook(ピッチブック)によると約2億800万ドル(約230億円)だった。

PaigeのCEOであるLeo Grady(レオ・グレイディ)氏は「当社は新型コロナウィルスに関わる仕事はしていない。今のところはがんの研究に重点を置いている。ただ、パンデミックが医学の世界に存在する欠陥に光を当てた。それは当社がまさに取り組んでいる分野だ」と語った。

「当社は新型コロナ関連の研究に取り組んではいないが、新型コロナが病理学コミュニティに強い影響を与えていることはわかった」とグレイディ氏は言う。「病理学コミュニティがリモートで作業できないことが浮き彫りになった。当社が構築するテクノロジーは、病理学コミュニティを安全にリモートで作業する能力をサポートする。AIテクノロジーを利用して作業スピードをさらに速くすることもできる。病理医がリモートで作業できないことが明らかになりつつあり、デジタル化が急ぐ必要性が生じている」

確かに、進行中のコロナウイルスのパンデミックは、ヘルスクライシスでテクノロジーが果たす役割の可能性に焦点を当てることになった。その答えは明らかになりつつある。研究活動におけるAIの利用、健康のリモートモニタリングや遠隔医療、そしてもっと基本的なこととして、テクノロジー企業の資金調達能力や消費者のリーチを利用して重要な物資や情報を必要とする人々に提供することがその答えだ。

Paigeはこれらのうち概ね1つ目のカテゴリーに分類される。「ゴールドマンサックス投資をがん研究にまで広げていること踏まえると、新しい資金は特に戦略的だと言える」とグレイディ氏は述べた。

Paigeは、がんの病院および研究センターとして名高いスローン・ケタリング記念がんセンター(MSK)と非常に密接な関係にある。これはPaigeが、MSKの2500万件の病理スライドと、AIベースの計算病理に関する知的財産に独占的にアクセスできることを意味する。この2つは財産だ。スライドの数はこの種のリポジトリーの中では最大級であり、機械学習プラットフォームは入力されるデータと同じくらい優れている。また最近、コニカミノルタの子会社であるInvicro LLC(インビクロLLC)との提携を発表した。治療薬の探索・開発に取り組む製薬会社やバイオテクノロジー会社に病理学の統合ソリューションを提供する狙いだ。

「ゴールドマンサックスは当社に大きな可能性があることを理解している。臨床グレードのAIだけでなく、病理医のリモート作業を可能にする機能を持つプラットフォームとビューアーもそうだ」とグレイディ氏は述べた。Paigeはすでに十分な資金を有しているが、「高まる病理医のリモート作業の必要性に応えるべく、500万ドル(約5億4000万円)の新しい資金でさらにプロダクトの開発を進める。ゴールドマンサックスが投資してきたがんネットワークと、世界中のがんネットワークをサポートする当社のテクノロジーが、両社の関係を素晴らしいものにするはずだ」。

グレイディ氏によれば、シリーズBの発表以来、Paigeはいくつかのベータ版サイトを追加し、完了した多数の研究が間もなく公開されるという。「これらのベータ版研究は当社の価値を証明する基盤となる。当社のテクノロジーが腫瘍病理学のワークフローに価値をもたらすことを証明できる。当社のテクノロジーの商品化にも役立つ」と同氏は説明した。

次のラウンドの計画は今のところない、と同氏は付け加えた。

投資銀行のマネージングディレクターであるDavid Castelblanco(デイビッド・カステルブランコ)氏がこのラウンドで取締役会に加わった。「Paigeは、がん分野の病理学とトランスレーショナルリサーチを変革し、バイオ製​​薬会社と緊密に協力して、患者のケアを改善するカスタム診断ソリューションと創薬技術を開発している」と同氏は声明で述べた。「我々は、AIテクノロジーを通じてがん治療を改善するという会社の重要な使命をサポートできることを楽しみにしている」

「Paigeの経営陣は優れたチームを構築し、このエキサイティングな市場でチャンスをつかむために素晴らしい仕事をしている」とBreyer Capitalの創業者兼CEOであるJim Breyer(ジム・ブレイヤー)氏は声明で付け加えた。

画像クレジット: Busakorn Pongparnit / Getty Images

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(翻訳:Mizoguchi

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TechCrunch Japan

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