CES 2019の主役はメンタルヘルスだった

先週ラスベガスのコンベンションセンターでは今年最大の新製品の数々が展示された。しかしここ数年、サンズ・ホテルが本当の魔法の起こる場所になった。ショウの中でユーレカ・パークと呼ばれる場所には、スタートアップやアクセラレーターが集結し、まだ数年先と思われる製品を披露するも多い。

ざっと見渡した限りでも、業界最大のトレンドが大きく取り上げられていた。昨年からの持ち越しも多かったが——スマートホームとウェアラブルが今回も支配的だった——今後数年間にテクノロジーが向かう先を予感させるものもあった。

この一年間に急上昇した大きなトレンドのひとつが、メンタルヘルスだ。睡眠、くつろぎ、集中、瞑想などの製品が立ち並び、5フィート歩く間に売り込みに合わないことは難しい。なかには、Museの瞑想・睡眠ヘッドセットのように見慣れた顔(少なくともわれわれには)もあったが、山ほどの新顔がそろった。

こうした製品の多くは、数年前大流行したフィットネス・トラッカーの拡張ともいえる。スタートアップたちは、まずわれわれに体を鍛えさせ、次に睡眠を監視し、ついには人の精神状態を追跡しようとしている。基本的脳活動などを追跡するセンサーの利用が容易になったことが、精神健康のコンセプトを推進する後押しになっている。

もちろんこれは価値ある大義である。この数年間、さまざまなテクノロジーの増殖によって、われわれの体と脳はかなり手荒い扱いを受けてきた。テクノロジーがそれを改善できたらすばらしいと思わないだろうか?

多くのケースで効果は明白。長年にわたる研究の結果、静かに座って瞑想しているだけで、ストレスレベルやメンタルヘルスが改善させることがわかった。そういう製品を使って習慣づけができるのはよいことだ。しかし、そこにはフィットネスよりもいっそう多くの詐欺商法が蔓延している。

ここは当然FDAが役割を果たし、検証されていない医学的効果を謳ってはならないことを徹底すべきだが、結局ほとんどの負荷は結局ジャーナリストと消費者にかかってくる。この分野では、プラセボ効果が重要な要素になってくる。

[原文へ]

(翻訳:Nob Takahashi / facebook

Samsungの障害者用外骨格製品を試着して歩いてみた

Samsungの新しい事業であるロボット部門は、その中途半端な姿勢が疑問を喚(よ)んでいるが、でも同時に同社は、そのGEMS(Gait Enhancing and Motivation System, 歩行の強化と動機付けシステム)を嬉々としてデモしてくれた。

デモには、三つの着用型外骨格、A(ankle/足首), H(hip/尻), そしてK(knee/膝)が含まれていた。それぞれ、異なるニーズと筋肉に奉仕するが、歩行アシスタント+介護者の力とバランスのアップ、という機能性は同じだ。

障害者等用の外骨格製品はもちろん、Samsung以前にもいろんな企業が作っている。そのそれぞれが、歩行の補助やリハビリ、あるいは仕事の現場などで難しい作業のアシスタントとして利用されている。RewalkやEkso, SuitXなどの企業が強力な製品を提供しており、また複数の自動車企業がこの分野に投資している。

そんな中で、新人Samsungが何を提供できるのか、まだよく分からないが、確実なのは同社がお金持ちであることだ。ノウハウも、そして優秀な社員も抱えている。ロボットに関しても、本気で取り組めば、きっとすばらしい製品を作れるだろう。

H(hip/尻)システムを試着してみたが、アシストと抗力機能は完成しているようだ。同社の社員は抗力(resistance)機能のことを、水面下を歩くような感覚、と言ったが、もっと良い比喩が欲しいね。アシスト機能は、最初はよく分らなかったが、実際に階段を上がってみると納得できた。

ロボットもそうだが、この外骨格プロダクトも、スマートフォンとテレビとチップの会社と思われている同社の製品群の、どのへんにどうやって収まるのか。次のCESが始まる前に、組織も事業も元気に動き出すことを期待したい。

[原文へ]
(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

[ビデオ]Impossible Foodsの完全植物性バーガーがノーグルテンでバージョンアップ

【ビデオはここ】

Impossible Burgerの次世代バージョンは、ノーグルテン、コレステロールゼロで、生物が吸収できる鉄と、本物のビーフに負けない高品質なタンパク質を含んでいる。Impossible Burger 2.0の詳しい記事+それを食べられるアメリカのお店のリストがここにある。

Impossible FoodsのCrunchBaseページ

[原文へ]
(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

ウォーターサーバーのFloWaterが$15Mを調達してボトル入り飲料産業との戦いを拡大継続

カリフォルニア州バーリンゲームの今年で8歳になるFloWaterは、水筒や瓶などに飲み水を補充するウォーターステーション(またの名ウォーターサーバー)を作っている。同社はこのほど、初めての大型投資として1500万ドルを調達した。浄水器などを作っているスウェーデンのBluewaterが、このラウンドをリードした。

FloWaterの製品は学校や大学、フィットネスセンター、ホテル、オフィスなどに置かれる。CEO Rich Razgaitisが語る同社のミッションは、4つの環境問題の解決だ。1)アメリカにおける肥満は砂糖で味付けをした炭酸飲料の飲み過ぎが大きな原因のひとつだ; 2)毎年400億本の使い捨て飲料ボトルが放棄されている; 3)そんなボトル入り飲料の生産や輸送のために数百万バレルの石油が消費され数百万ポンドのCO2が排出されている; 4)使い捨てプラスチックボトルには、内分泌かく乱化学物質(endocrine-disrupting chemicals, EDC)などの毒物が含まれている。

これは、相当な説得力があるし、水補充ステーションのそのほかのメーカーも同じことを主張している。SECの文書によると、今回は13の投資家がFloWaterの主張に賛同して、同社に小切手を書いた。

ファウンダーのWyatt Taubmanによると、同社の創業資金は18600ドルの銀行融資だった。Taubmanは2015年以降、同社の一取締役へと退いているが、自分の新しい企業としてコールドプレスジュースのメーカーを立ち上げた。

LinkedIn上のTaubmanの言葉によると、最初の銀行融資でパイロット事業として水補充ステーションを立ち上げ、次は友だちや家族から12万5000ドルを集め、そして62000ドルの二度目の融資で補充ステーションの設置数を増やした。その後同社は、Tech Coast AngelsとHawaii Angels、そして社員として雇用したRazgaitisから95万ドルを調達、製品のデザインを一新し、2016年にはシリーズAとして260万ドルを調達した。

FloWaterのウォーターステーションは、Google, Airbnb, Specialized Bikes, そして皮肉なことにRed Bullなどに置かれている。

同社のステーションは、今では50近くの州にあるそうだ。

画像クレジット: Zing Images

[原文へ]
(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

この腕輪は麻薬の過剰摂取を検出して死を未然に防ぐ

カーネギーメロン大学の学生たちのプロジェクトが、人命を救うかもしれない。HopeBandと名付けられた腕輪が、血中の酸素濃度が低いことを感知して、それが急を要するレベルならテキストメッセージとアラーム音を送る。

学生のRashmi Kalkunteが、IEEEにこう語っている: “友だちの誰かがいつも過量摂取を心配していたら、その使い方パターンを理解し、どんなときには誰に助けを求めるべきか知ってる人が近くにいるといいよね。HopeBandは、そんな人の代わりになることを目指して、設計したんだ”。

9月に行われたHealth 2.0カンファレンスでチームは、Robert Wood Johnson財団主催のOpioid Challengeコンペに応募して三位になった。彼らはその腕輪を、ピッツバーグの針交換事業*に送るつもりだ。売価は20ドル未満をねらっている。〔*: 注射針を新品の針に交換することでエイズなどの伝染を防ぐ。多くは地方自治体の公衆衛生事業の一環。〕

今年アメリカで過量摂取で死んだ人は72000人を超えている。こんなデバイスがあれば、人びとを少しは安全にできるだろう。

[原文へ]
(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

iPadで問診、医師と看護師の働き方改革を目指すCAPSが資金調達

写真中央がCAPSで最高医療責任者を務める白岡亮平氏

CAPSは12月20日、第三者割当増資による500 Startups Japanからの資金調達を発表した。調達額は1億円を超えない額。

同社は、かかりつけの医療機関向けの総合支援サービス「プライマリケア・クリニックチェーンマネジメント」を提供する創業4年目の企業。これはクリニックを開業する際の不動産の選定・取得から、経営システム、電子カルテの構築・運用、医師や看護師の募集をまとめてアウトソージングできるサービス。365日、夜間対応も可能な診療体制を支援する。

現在は、CAPSの最高医療責任者・白岡亮平氏が理事長を務める医療法人社団ナイズ向けにサービスを提供中だ。ナイズは、西葛西、北葛西、代官山、紀尾井町、柏の葉の首都圏6拠点でクリニックを運営しており、のべ16万人以上(2017年実績)の患者がいる。CAPSとしては当面、同サービスを導入しているナイズの拠点を増やしていく方針だが、将来的にはほかのクリニックへの提供を積極的に進め「2021年ぐらいに100拠点を目指す」とのこと。

白岡氏によると「医療機関は全国に10万拠点ほどあるが、その95~96%が個人経営」だそうだ。個人経営のクリニックでは、カルテの記録や保管、医師や看護師のシフト管理、給与計算、患者の予約管理など、医療行為以外の業務を院長や少数の看護師が自ら行うこともある。働き方改革が叫ばれる中、これらの業務負担により夜間診療が難しいうえ、時間外労働時間を減らせないのが現状なのだという。

ネット経由の予約システムはもちろん、問診のシステムも提供

ナイズでは、「プライマリケア・クリニックチェーンマネジメント」の導入により、1時間あたりで診療できる患者数を68人から、最大1516人に増やせたそうだ。具体的には、問診にiPadを活用することで時間短縮を実現している。問診はウェブ経由でも利用できるため、移動中にスマホで問診を済ませることも可能だ。白岡氏によると「ナイズでは、受付、問診、診察、会計のそれぞれの業務にかかった時間をログとして記録しており、どこで待ち時間が多く発生しているかを分析して最適な人員の配置を実現している」とのこと。現在、医師や看護師の時間外労働は月10時間以内で、離職率も低下したそうだ。

さらに小児科がメインの西葛西では21時まで、亀有と柏の葉では20時30分まで、北葛西では20時までの夜間診療を実施している。一般的に18時~22時の診療は「時間外加算」のため診療報酬点数が上がり、クリニックを個人経営するうえでのインパクトは強い。患者にとっては診療費は少し上がるものの、会社帰りでも医師の診断を受けれるという直接的なメリットのほか、蓄積された各種データにより自分の健康維持に役立てられ、病気の予防にもなる。「プライマリケア・クリニックチェーンマネジメントの導入により、セルフメディケーションで治療できる患者を増やしたい」と白岡氏。

500 Startupsから資金調達を受けた理由について白岡氏は「資金調達なしでもサービスの運営を続けられるが、500 Startupsとの提携で知名度を上げて優秀なエンジニアを確保するのが1つの狙い」とのこと。過酷な労働環境としてメディアにも頻繁に取り上げられる医療の現場が、こういったサービスの広がりで改善されることを期待したい。

高齢者のほとんどが施設よりも在宅を望む、CherryHomeが$5.2Mを調達してAIによる在宅ケアに挑戦

高齢者ケアにAIを利用するスタートアップが新たな資金を獲得して、歩き方や行動の変化、そして転倒やぶつかりを検出できるようにしたい、と考えている。言い換えると彼らは、長期的に高齢者の健康をモニタして、変化を予測できるようになりたいのだ。

そのスタートアップ、Cherry Labsが作ったAIによる家庭用安全システムCherryHomeが、GSR Venturesから520万ドルを調達して、在宅高齢者ケアにテクノロジーを活用しようとしている。CherryHomeはコンピュータービジョンの独自のアルゴリズムを使ってカメラのデータを解釈し、仮想の“スケルトン”(人体骨格)を作る(上図)。それをAIが見て、家の中での出来事や人間の行動を分析する。たとえば、この状態を放置したら足を引きずって歩くようになりそうだ、とか。

競合するサービスSafely Youは、転倒に反応してアラートを送る。NestとLighthouseは、画像処理に初歩的なAIを利用している。そしてAmazonのRingは、屋外での安全をサポートする。

CherryHomeでは、すべての情報がローカルに処理されるので、ビデオが家の外に出ることがない(サーバーに送られたりしない)。ビデオの中では高齢者が上図のようにマッチ棒で描いたような線画で表現されるから、プライバシーが保たれる。この最後の部分が、とても重要だろう。

今度得た資金でCherryHomeは、在宅ケアサービスTheraCareと、介護施設のためのテクノロジーシステムTriCuraと共に、パイロット事業を興すことになった。どちらも、ベイエリアの企業だ。

CherryHomeのCEOで協同ファウンダーのMax Goncharovは次のように語る: “人間の生き方の中に、多くのアプリケーションの芽がある。家の中や外の安全、在宅高齢者ケア、スマートホームの完全な自律化、などなど、ニーズはさまざまだ。しかしテクノロジーによる改良がいちばん必要なのが、高齢者のケアだと私は思う”。彼によると、高齢者は現在、アメリカの人口の15%を占め、2030年にはアメリカ人の5人に一人は、退職後の年齢になる。いくつかの調査によれば、これらの人びとの多くが家にとどまることを願ってる。アシストの完備した施設へ移るのではなくて。

[原文へ]
(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

人間の爪のミクロン単位のゆがみから症状の治癒や悪化を判定する超小型センサーをIBM Researchが開発

IBMが今日(米国時間12/20)、人間の手の指の爪につけて、パーキンソン病なやそのほかの疾病の治療薬の効果をモニターする、小さなセンサーを開発した、と発表した。そのデータを分析する専用のソフトウェアと共にセンサーは、ユーザーが物を握ったときの爪の歪(ゆが)みを測定する。ほとんどどんな活動にも、物を握る行為があるので、そのソフトウェアが分析すべき大量のデータが生成される。

センサーを爪ではなく肌につけて運動をモニターし、筋肉や神経の健康を調べる方法もあるが、IBMのチームによると、皮膚を使う方法には感染など多くの問題があるので、爪の曲がりから得られるデータを使う方法を選んだ。

ただし、多くの場合に、爪はわずかしか曲がらないので、感度の高いセンサーが必要になる。研究者たちはこう説明している: “分かってきたのは、人間の指が、それらで物を握ったり掴んだり、曲げたり伸ばしたりするとき、一定のパターンで変形することだ。この変形の大きさは通常、ひと桁の数ミクロンのオーダーで、肉眼では見えない。しかし、ひずみゲージを使えば容易に検出できる。ご参考までに、人間の毛髪の太さは50から100ミクロン、赤血球の径は10ミクロン未満だ”。

現在のプロトタイプバージョンでは、センサーを爪に接着している。爪はけっこう丈夫なので、そのやり方でもリスクはほとんどない。肌につけるセンサーよりは、ずっと安全だ。センサーのデータはスマートウォッチへ行き、そこで機械学習のモデルを動かして、震(ふる)えなどのパーキンソン病の症状を検出する。モデルは、装着者が今何をしているかも検出できる(ドアノブを回している、ドライバーを使っている、など)。装着者が自分の指で数字を書くと、それも正確に判読できる。

今後は、このセンサーのプロトタイプとモデルの改良により、そのほかの疾病も認識し分析できるようにしたい、とチームは望んでいる。このセンサーが市販される時期については、まだ発表の段階ではないようだ。

[原文へ]
(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

Apple Watch Series 4に命を救われた男、詳細な体験と「心房細動は早期発見が大事」を語る

eng-logo-2015watchOS 5.1.2正式リリースされてApple Watch Series 4でECG(心電図)アプリがサポートされた直後、さっそく心房細動(AFib)が検出されて命が救われたという人がRedditに現れ、簡単な事実関係のみを報告しました。

その人物Ed Dentel氏は米ABCが放送する朝の番組「グッドモーニングアメリカ」に呼ばれて出演することとなり、Apple Watchにより心房細動が判明して命拾いするまでの詳細ないきさつを語っています。
46歳のDentel氏は、今年はじめに胸部の痛みを覚えたものの、心電図を取ると正常な結果で、医者には胸焼けと診断されたとのこと。もしもApple Watchが警告しなければ、自分の心臓の状態を知ることはできなかったと語っています。

Dentel氏が心電図アプリを起動すると、ただちに警告音が鳴ったとのこと。本人はまともな健康状態だと自覚があり、それほど心配はしなかったとのこと。

翌日、Dentel氏は朝の食卓で再びECGアプリを試してみました。すると、4回試しても同じ結果。そこで妻に試してもらったところ、2回とも正常の結果が出たため、気がかりになったとしています。

Dentel氏は地元の診療所に行ってみると、駐車場が一杯で待合室も混雑。しかしApple Watchで心房細動が検出されたことを説明すると、即検査をすることに。

そして診療所のEKG(心電図モニター。ECGをドイツ語で略した呼び名)で診断してもらうと、医者は「うん、あなたは心房細動だ。これ(Apple Watch)はあなたの人生を救ってくれたかもしれない」と言ったそうです。

Dentel氏は、心房細動がどのようなものかを普段から知っておくことがいかに重要かを学んだと語っています。確かにそもそもの知識がなければ、心房細動が起こってもそれとは気づかず、対処のしようもありません。

日常生活の中で手軽に心電図が取れ、公的機関(米国ではFDA)での認証のおかげで医師にも証拠として提示できるApple Watch Series 4のECG機能は、日本でも利用可能になるのが望まれるところです。

Engadget 日本版からの転載。

Google Fitにホーム画面化など新機能追加――呼吸エクササイズはWear OSオンリー

健康づくりのためのAndroidアプリ、Google Fitのアクティビティ・トラッキング機能が強化された。今日(米国時間1210)のマイナー・アップデートは日常使っているユーザーには大いに意味がある。

新機能のいくつかは、FitのウィジェットをAndroidスマートフォンのホーム画面に設定できるといった基本的なものだが、トラッキング機能の追加やアクティビティアクティビティ・ログの項目拡大などは重要な新機能だ。呼吸エクササイズが可能になったがこれは当面Wear OSだけの機能になる。

Google Fitアプリは今年に入って大きくリニューアルされた。このときGoogleは「強めの運動」に点数を与えるHeart Pointsを導入した、これによって単に運動の持続時間だけでなく強度も記録できるようになった。

こうしたデータはもちろんマニュアルで記録することも可能だが、デバイスを身に着けているかぎり自動的に記録できる。またユーザーはHeart Pointsの得点目標に自分で調整を加えることもできる。

今回導入されたもう一つの機能は「強めの運動:」とは逆の呼吸エクササイズだ。 これはユーザーが心身を落ち着かせたいときに行う運動だ。理由ははっきりしないが、Googleはこの機能をまずWear OSに導入した。もしWear OSウォッチを持っていない場合は、別の方法で自分を落ち着かせる方法を考える必要がある。

原文へ

滑川海彦@Facebook Google+

今、ブラジルのヘルステック分野が熱い

[著者:Manoel Lemos]
シリコンバレーのベンチャー企業Redpointのブラジル専門部門Redpoint eventuresの業務執行社員。

大勢の人が絡む大きな問題に取り組むことは、起業家と投資家の両方にとって絶好のチャンスとなる。たとえば近年のブラジルでは、フィンテックによる金融改革や、新しいオンデマンドのビジネスモデルに投資が集中しているが、ヘルステック関連のスタートアップも、ブラジルで爆発的な増加を見せている。全国民のうちの数千万人が、根深い不平等問題によって医療サービスが受けられず、深刻なまでに低水準な医療の質、重い負担、あらゆる面での非効率といった問題に苦しめられている。起業家の皿は、市場に届けたいヘルステックの改革案で山盛りの状態だ。

Liga Venturesの最近の調査では、現在ブラジルには健康に特化したスタートアップが250社位上あり、民間医療に年間420億ドル(約4707億円)以上を消費する世界で7番目に大きな健康市場になっているという。ただし、そのうち180億ドル(約2017億円)が効率の悪さのために浪費され、この5年間でブラジルの医療関連コストが倍に跳ね上がっているため(累積インフレ率38パーセント)、ブラジルの医療は崩壊寸前にある。ヘルステック系スタートアップは、サンパウロ南部のビラオリンピアに拠点を置く世界最大級の起業家ハブCUBOItaúでも、トップ5の業界に入っている。

昨年、中南米の民間投資を支援する非営利団体LAVCAが発表した「中南米の技術ブレークアウトの年」によると、中南米において、ヘルステックは2番目に急成長している技術分野になっている。2016年と比較して、ヘルステックの取り引きは250パーセントにまで拡大した。ブラジルに診療所を建設して安価に最高の医療を提供することを目的としたネットワークDr. Consultaへの5000万ドル(約56億円)の投資は、2017年のベンチャーキャピタルによる投資の中でも最大のものだった。

医療分野は、患者、仲介業者、診療所、代理店、サプライヤーの間で、人と仕事と製品を結びつけなければならない複雑な市場だ。そこで、技術革新を武器に、ブラジルでもっとも大きなインパクトを与え、この市場に新しいビジネスモデルをもたらす主要なカテゴリーと企業を紹介しよう。

オンデマンドの医療

公的医療機関が利用できるのは、ブラジルの人口(約1億5000万人)のうち、およそ75パーセントに限られている。しかし、そうした医療機関は運営管理が不十分で非効率だ。1回の診療や検査のために、患者が数週間から数カ月待たされることも少なくない。そこに技術力を背景にしたスタートアップが登場し、より広く、より高齢の人々にも、効率的に医療を受けやすくする機会を提供し始めた。

たとえば、低価格な診療所チェーンDr. Consaltaの施設は、この3年間で1軒から51軒にまで増えた。今では、100万人以上の患者から得た国内最大の医療データセットを持つと主張するまでになった。他の民間診療所では、診察料が少なくとも90ドル(約1万円)はするが、Dr.Consaltaは25ドルだ。同様のオンデマンド医療を提供する診療所として、ClínicaSimDr. Sem Filas、 DocwayGlobalMed.などがある。

テレヘルスとモバイル健康アプリ

医療上の助言、診断、モニタリングをより便利にするテレヘルス・サービスがブラジルで拡大している。たとえば、Brasil Telemedicinaは、医療検査、医師の診察、遠隔モニタリング、心理カウセリングなど、さまざまなサービスを24時間提供している。

患者のケアを改善するためのB2Bテレヘルス・サービスには、1日24時間年中無休で放射線画像解析を行うTelelaudo、心臓の健康状態のモニター、陰圧閉鎖療法、乳児の呼吸と健康状態のモニターのための特殊な機器を提供するVentrixなどがある。また、サンパウロに拠点を置くスタートアップNEO MEDは、心電図と脳波図の医学報告が簡単に素早く作成でき、それぞれの場所で柔軟に収入を増やしたいと考える診療所、研究所、病院、医師の協力を促すプラットフォームを開設した。

フィンテックのような急成長分野を
もうひとつ作れる重要な材料が
この国にはふんだんにある。

ブラジルでは、糖尿病と高血圧といった疾患の発生率の高さインターネットユーザーの多さから、モバイル健康アプリの人気が高まっている。たとえば、Dieta e Saude(栄養と健康)というアプリは、160万人以上のユーザーに、よりよい栄養食品を選ぶよう助言し、それを習慣づける動機を与えている。ブラジルで設立され、現在はサンフランシスコに拠点を移したYouperは、社会的不安の解消を手助けする情緒的健康のためのバーチャル・アシスタントだ。ユーザーの思考パターンを再構成して、心をより健康な状態にしてくれる。

AIとデータ解析

他の業界と同様、またブラジルに限らず、AIとデータ解析は、患者の診断のスピードアップから医療コストの管理に至るまで、医療を変革しつつある。

その中のイノベーターのひとつにGestoがある。データベースに蓄積した450万件以上の患者の情報を機械学習でふるいにかけ、有用な情報を引き出して、患者の治療を最適化すると同時にコストを管理し、企業にとって最適な保険プランの選択を助けてくれる。集中治療室の管理を専門とするブラジル最大手のIntensicareは、AIを利用して診断のための時間を短縮し、患者の滞在時間と死亡率の低減を目指している。レシフェに本拠地を置くスタートアップEpitrackは、クラウドソースのデータ、AI、予測分析を使って疫学をコンピューター化し、伝染病の大流行と戦っている。

電子カルテ

昨年、ブラジル政府は、国内4万2000箇所以上の公営診療所で扱う患者のカルテを近代化するプロジェクトを、2018年までに完了させると発表した。世界銀行によると、カルテの電子化によって、連邦政府の経費は68億ドル(約7630億円)削減できるという。昨年末の時点で、ブラジル人(2億800万人)のうち3000万人しか電子カルテを持っておらず、ブラジルの家族向け診療所の3分の2近くが、患者の電子カルテを作成する手段を持っていなかった。

SaaS電子カルテのプラットフォームであるiClinicは、医療の近代化に大きな影響を与えたブラジルでもトップクラスのスタートアップだ。医療の専門家によるカルテの分類を電子的に支援し、すべてのデータをクラウドに保管し、あらゆるデバイスで読み出せるようにする。iClinicは非常に使いやすいシステムであるため、医療の効率化、コストの削減、治療の質の向上が期待できる。現在、ブラジルの各地で利用されているが、ブラジル以外の20カ国以上にも利用者が広がっている。

処方箋のデジタル化

ブラジルでのデジタル化の遅れによるもうひとつの大きな問題として、70パーセント近くの処方箋に記述ミスの恐れがあるという点を世界保健機関(WHO)が指摘いている。そのためブラジルでは、投薬ミスの関連で年間数千人が死亡している。精査することで、かなりの人数が救えるはずだ。アメリカでは、すでに77パーセント以上の処方箋がデジタル化されている。

この生死の問題に対処するために、ブラジルの電子処方箋管理の中心的存在としてMemedが登場した。現在、ブラジルのすべての医療分野の5万5000人以上の医師がこれを利用し、アレルギーと薬物相互作用の照合を行っている。これにより、服薬コンプライアンスが容易になり、医療効果も高まる。同社は、ブラジルでもっとも充実した、信頼性の高い、最新の薬物データベースを開発している。

ブラジルのヘルステック関連のスタートアップは注視すべき分野として急成長しているのは確かだが、ヘルステック革新が解決に着手したこの国の問題は、まだまだ氷山の一角に過ぎない。フィンテックのような急成長分野をもうひとつ作れる重要な材料が、この国にはふんだんにある。ブラジルにおけるヘルステックは、今後長きにわたり、それを信じる起業家と投資家にとって、確実にホットな分野となる。

備考:Redpoint eventuresはMemedに投資しています。  

[原文へ]
(翻訳:金井哲夫)

不眠症治療用アプリ開発のサスメドが7.2億円を資金調達——医療機器としての承認目指し、治験開始へ

医療機器として不眠症治療用アプリの研究開発を行うヘルステックスタートアップのサスメドは6月4日、総額7.2億円の第三者割当増資を実施したと発表した。引受先は既存株主のBeyond Next Venturesに加え、SBIインベストメント第一生命保険エムスリーSony Innovation Fund東京センチュリーの各社。

サスメドは2016年2月の設立(2015年7月に合同会社として創業)。2017年2月にはシリーズAラウンドでBeyond Next Venturesから約1億円を調達しており、今回の資金調達はシリーズBラウンドにあたる。

写真右から3人目:サスメド代表取締役 上野太郎氏

サスメド代表取締役の上野太郎氏は、睡眠医療を専門とする医師で、診療のほか睡眠の基礎研究も行ってきた。サスメドが開発する不眠症治療用アプリは薬を使わず、プログラムで睡眠障害の治療を行うというもの。ソフトウェア医療機器としての承認を目指して、2016年9月から複数の医療機関との臨床試験を進めてきた。

上野氏によれば開発・検証は順調に進んでいるとのこと。臨床試験の結果を受け、PMDA(医薬品医療機器総合機構)との協議や厚生労働省への届出を経て、6月からアプリの治験を開始する予定だ。

今回の調達資金の使途はこの治験実施にかかる割合が大きいということだ。そのほかにエンジニアを中心とした開発体制を強化し、アプリ開発やデジタル医療の開発を進めるという。

また上野氏は治験で得る実データを活用して、ブロックチェーン技術を臨床応用する実証実験も行っていくと話している。「医療データは重要なデータだが、過去に医薬品開発などで改ざんが行われたケースもあり、厚生労働省による規制が厳しくなった。ブロックチェーンを活用することで、データの信頼性を低コストで担保することができる。これは医療費の低減にもつながると考える」(上野氏)

上野氏は「ICTを医療の現場へ取り入れることで、医療の質を保ちつつコストを最適化し、持続可能な医療を目指していく」と語る。サスメドでは2020年をめどに、不眠症治療用アプリの医療機器としての承認を目指す。また治療効果のあるプロダクトを実現した上で、健康経営など法人向けサービスの提供にも応用していきたい考えだ。

医療機器としての治療用アプリ開発では、医療機関向けのニコチン依存症治療用アプリなどを開発するキュア・アップが2月に15億円の資金調達を実施している。また医療機器ではないが、法人向けに睡眠改善プログラムなどを提供するニューロスペースは2017年10月に約1億円の資金調達を行っている

遠隔診療アプリとAI医療サービス開発の情報医療が三菱商事などから11億円を資金調達

このところ、ヘルステック分野のスタートアップによる資金調達が活発だ。5月7日にはAI問診システムと病名予測アプリ開発のUbieが3億円を調達を発表したばかり。そして今日5月14日、さらに3社のヘルステック関連ベンチャーが資金調達の実施を明らかにしている。

1つは健康管理アプリ「カロミル」を運営するライフログテクノロジーによる6000万円の調達。もう1つは電子薬歴システム「Musubi」を提供するカケハシ(詳しくは別の記事で紹介予定)。そして残る1社は、AIを活用した各種医療サービスと医療機関向けのオンライン診療サービス「curon(クロン)」を提供する情報医療だ。

情報医療が本日発表したのは、4月末までに実施された三菱商事など4社を引受先とする、総額11億円の第三者割当増資の実施。三菱商事以外の3社については社名が公開されていないが、いずれも事業会社とのことだ。同社にとって今回の資金調達はシリーズAラウンドにあたる。

情報医療は2015年11月、代表取締役CEOで医師でもある原聖吾氏らにより設立された。創業メンバーにはGunosyやREADYFORの創業にも関わり、ディープラーニングに関する著書も出版する、巣籠悠輔氏もCTOとして参画している。

写真左から代表取締役CEO 原聖吾氏、取締役CTO 巣籠悠輔氏、取締役COO 草間亮一氏。

同社が2016年より展開するcuronは、予約から問診、診察・処方、決済など、遠隔医療に必要な機能が一式そろった医療機関向けのオンライン診療サービス。初期費用・固定費なしで、PCだけでなくタブレットやスマートフォンなどからも利用できる。患者側も利用は無料。スマホアプリでいつでも診察・処方が受けられる。リリースから2年で約500の施設に導入されているという。

またAIを用いたサービスとしては、画像や患者行動からの疾病識別エンジンや、個々人の健康状態の将来予測エンジン、疾病・健康状態の維持管理をサポートするソリューションなどを開発・提供している。

3月には日本生命とともに糖尿病予備軍向けの予防プログラムの開発を開始。日本生命済生会付属・日生病院でのトライアルを経て、curonを使った、個々人に合わせた患者支援を展開していく予定だ。

冒頭でも触れたが、ヘルステック分野のスタートアップの台頭はめざましい。2018年4月から診療報酬が新設されたオンライン診療では、メドレーの「CLINICS(クリニクス)」やシェアメディカルの「MediLine(メディライン)」などの競合サービスがある。またAIを活用した医療ソリューションは、医療画像の診断支援技術を提供するエルピクセルや、医療画像解析、血液によるがんの早期診断技術を提供するプリファード・ネットワークス、医療、特に介護分野でAIを取り入れるエクサウィザーズなどのほか、スタートアップ以外でもさまざまな企業が参画する激戦区だ。

こうした中、情報医療では医療とAIの両方のプロフェッショナルがそろっている点を強みとして、事業を展開していこうとしている。またAIに関してはスペシャリストによる技術力に加え、curonを核として、大企業や大病院との提携により、精度の高いデータを蓄積できることも特色としている。

「他社のオンライン診療サービスでは、販売したところで終わる企業が多い。我々は医師と患者のやり取りをデータ化し、効果的な治療につなげていく」と情報医療ではコメント。「オンライン診療サービスとAIによる医療サービスを両輪として成長を目指す」と担当者は話す。

今回の調達資金は、機械学習や深層学習のエンジニアを中心に採用を強化するために投資していくとのこと。情報医療では今後、さらに多くのデータを持つ企業とタッグを組み、医療現場に合ったAIを提供していく考えだ。

AI問診・病名予測アプリ開発のUbieが関西電力CVCから3億円を資金調達

AIによる問診ソリューションや病気予測アプリを開発するヘルステックのスタートアップ、Ubieは5月7日、J-KISS型新株予約権により関電ベンチャーマネジメントから資金調達を実施したことを発表した。金額は公開されていないが、登記情報などから3億円を調達したものと見られる。今回の調達は、2017年9月に行われたD4Vを引受先とした6000万円のシードラウンドに続くものとなる。

Ubieの設立は2017年5月。共同代表取締役で医師の阿部吉倫氏とエンジニアの久保恒太氏が立ち上げた。久保氏は東京大学在学中の2013年に病名予測アルゴリズムの研究を開始。現在Ubieでは、医療機関向け「AI問診Ubie」と一般ユーザー向け「Dr.Ubie」という、共通のアルゴリズムで動く2つのプロダクトを提供している。

AI問診Ubieは、現役医師が監修した問診ツールだ。自然言語処理技術と質問選定アルゴリズムを利用して、紙の問診票と医師の問診に代わり、AIで患者の回答に応じた最適な問診を自動で行い、カルテのテンプレートも自動で生成。医師の事務にかける時間と患者の待ち時間を削減する。2017年8月にベータ版、同年12月に製品版がリリースされ、50件近い医療機関に提供されている。今月からは日立総合病院での運用が始まり、今夏には宮崎大との多施設での共同研究開始が予定されている。

Dr.Ubieはセルフメディケーションを目的とした、一般ユーザー向けの病気予測アプリ。ユーザーの年齢や性別に合わせて質問を出し、症状から考えられる病名を予測する。現状ではAndroid版がリリースされている。

Ubieでは資金調達にともない、エンジニアを中心とした採用を強化。主力事業であるAI問診Ubieの機能拡充・事業拡大に加えて、Dr.Ubieのマルチチャネル化や海外展開も含めた開発・マーケティングにも力を入れていくという。

Cardiogramが200万ドルを調達、ウェアラブルデバイスを使って心血管疾患を予測

cardiogram_apple_watch

ヘルステックスタートアップのCardiogramは、a16z Bio Fundがリードインベスターとなったシードラウンドで200万ドルを調達した。同社は、心血管疾患のスクリーニングや、心血管に関連した健康状態の改善・維持に関するアドバイスを発信するアプリを開発している。

Cardiogramのアプリは当初、Apple Watch用としてスタートした。しかし、同社は当アプリを最終的に”デバイスに依存しない”ビジネスへ発展させようと計画しており、Android Wearを搭載したスマートウォッチや、Fitbit、Garminなどのフィットネスバンド兼アクティビティトラッカーへも今後対応させていきたいと考えている。

シードラウンドでの資金調達に加えて、Cardiogramは”生活習慣用アプリストア”についても本日発表を行った。このアプリストアでは、ガイド付きの瞑想や、肉体・心理的なエクササイズのアプリをダウンロードすることができ、ユーザーの心血管の状態を維持もしくは向上させるのに役立つと同社は考えている。

共同ファウンダーのBrandon BallingerとJohnson Hsiehによれば、これまでにCardiogramは、約10万人のApple Watchユーザーから100億もの計測結果を集めている。

「この量のデータがあれば、C統計量(正誤判別をするときに用いられる指標)を算出することができ、不整脈の典型例である心房細動を90%以上の確率で発見することができます」とBallingerは言う。「私たちは、設立間もないデジタルヘルス企業であっても査読を申請するのが重要だと考えています。その証拠に、これから数年の間に私たちは、医療雑誌やAIカンファレンスで研究結果を発表していく予定です」

Cardiogram's founding team.Cardiogramの創業チーム

これまでにCardiogramは、高齢者だけではなく、その逆と言えるフィットネス好きの若者にも人気を博している。ファウンダーのふたりによれば、ユーザーの年齢層は18〜94歳とのこと。

シードラウンドには、Homebrewや、Color Genomicsの共同ファウンダーであるElad GilやOthman Laraki、Rock HealthファウンダーのHalle Teccoといったエンジェル投資家らも参加していた。

a16zで2億ドルのヘルスケア業界に特化したファンドを立ち上げた、同社ジェネラル・パートナーのVijay Pandeは、Cardiogramへ投資した理由のひとつは、収集したデータをアクションに直結した情報に変換し、人の命を救うことができる同社のサービスの力だと話す。

「Cardiogramは、ウェアラブルというチャンネルを通して、新しい情報源から大量のデータを収集し、最新の機械学習技術を利用することで、ユーザーが自分たちでアクションを取れるようなサービスを提供しています。これは私が個人的にとても興味をもっているサービスの種類でもあります」と彼は言う。

Pandeは、Cardiogramが今後も情報共有や自社の研究結果を精査するために、研究者のコミュニティと密接に協力し、今回の調達資金を人員の増強や製品開発にあてることを期待している。

現在Cardiogramのアプリは、心血管疾患の代表例である心房細動の発見・予測に向けて改良が進められているが、その他の心血管疾患や血圧と関係のある肥満などの病気を予測するのにも役立つ可能性がある。

さらに現在Cardiogramは、サンフランシスコにあるUniversity of CaliforniaのHealth eHeart研究の一環として、同大学の研究者や心臓専門医と協業を進めている。

彼らは、主要なウェアラブルデバイスやスマートフォンから収集したデータを基に、アルゴリズムを使って心房細動を正確に予測・発見すると共に、正常な心臓とはどのような状態のものなのかを定義づけることを目標にしている。

原文へ

(翻訳:Atsushi Yukutake/ Twitter

Florence Healthcareが170万ドルを調達、臨床情報のクラウド化を目指す

2016-07-27-2

アトランタを拠点とするスタートアップのFlorence Healthcareは、シードラウンドで170万ドルを調達し、製薬会社や病院などの治験実施施設に務める研究者が、クラウド上で臨床試験に関する情報を共有できるような環境をつくろうとしている。

最終的には、関係者が互いに情報を交換するだけでなく、アメリカ食品医薬品局(FDA)とも情報共有を行うことで、患者が切望している治療法を市場に届けるのにかかる時間を短縮できるかもしれないと、Florence Healthcareの設立者兼CEOのRyan Jonesは語った。

これまでホワイトボードや紙の上で行われていたプロセスをデジタル化することで、製薬業界が時間とお金を節約することにも繋がる可能性がある。

「毎年、製薬業界では100億ドルもの資金が、治験実施施設の訪問や、FDAに提出するための書類をまとめたりスキャンしたりする目的で使われています」とJonesは話した。

Florence Healthcareは、紙で情報の記録や回覧を行い、患者をオフラインで処置しながらカルテや研究レポートをまとめることに慣れている研究者が、違和感なく利用できるようなソフトの開発に努めていた。

さらにJonesによれば、最近のバイオテック界でのブレイクスルーによって、新薬の効能や安全性に関する臨床試験を行う、研究機関や「治験実施施設」の業務量が大幅に増加していた。

2014年のFlorence Healthcare設立以前、JonesはPubgetと呼ばれるコンテンツ検索ベンチャーの社長を務めており、同社は2012年にCopyright Clearance Center Inc.によって買収された。Pubgetのおかげで、大手製薬企業は、数ある情報の中でも600以上の医療機関から発表された研究論文にアクセスできるようになった。

Florence Healthcare CEO Ryan Jones

Florence Healthcare CEOのRyan Jones

Bee PartnersがFlorence Healthcareのシードラウンドにおけるリードインベスターとなり、Bessemer Venture Partnersや、ダートマス大学の卒業生から成るGreen Dのファンドのほか、Fitbitの技術部門のヴァイスプレジデントであるWill Crawfordがラウンドに参加した。

Bee Partnersの共同設立者兼CEOのMichael Berolzheimerは、Florence Healthcareが良いタイミングで市場に参入したと語っていた。

というのも、FDAの規制により、2017年の5月までに各社は臨床試験の情報を紙ではなくデジタルで管理・申請しなければならないのだ。

Berolzheimerは、Florence Healthcareが今回の調達資金を、Florence eBinder Suiteと呼ばれる「統合垂直型ワークフローシステム」の採用数を増やし、同システムが、事務担当者から臨床試験のリーダーまで利用する人全員にとって簡単なものであり続けるような開発を行うために使うべきだと語った。

さらに彼は、「長期的に見れば、Florence Healthcareは、製薬業界のバリューチェーン上に存在する全ての人に対して、新たなデータやサービスの供給方法をみつけることができるかもしれません。彼らは、FDAや新薬開発のさらに上流工程をサポートできる可能性を備えています」と話した。

Florence Healthcareのユーザーには既に、カリフォルニア大学サンフランシスコ校Mt. SinaiやSloan KetteringのPCCTC Cancer Research Centerなど、医薬品や医療機器の開発者に人気の機関が名を連ねている。

原文へ

(翻訳:Atsushi Yukutake/ Twitter