テック業界の黒人を支援する非営利団体のCEOが黒人起業家のための新ファンドを設立

新設されたBlack Tech Nation Ventures(BTVN)のゼネラルパートナーであるKelauni Jasmyn(ケラユニ・ジャスミン)氏は、新会社の狙いを実に簡潔に説明できる。「目標は、より多くの黒人に資金を提供することです」。

それはジャスミン氏が、教育、コンテンツ、コミュニティなどの分野で黒人起業家を支援する、ピッツバーグに拠点を置く非営利組織「Black Tech Nation」ですでに取り組んでいたことだ。そして今、同氏は共同GPとなるSean Sebastian(ショーン・セバスチャン)氏とDavid Motley(デビッド・モトリー)氏とともに5000万ドル(約54億5000万円)の第一号ファンドを調達し、資金調達の規模という部分にもっと直接的に取り組んでいく。

「世代を超えた富を築く上で黒人コミュニティに正真正銘の経済的な変化をもたらすような、歴史に残るようなまったく新しいことを始めようとしているのです」とジャスミン氏はいう。「私たちは、その基盤を形成する者になるのです」とも。

セバスチャン氏は同じくピッツバーグに拠点を置くシードファンド、Birchmere Venturesのパートナーであり、モトリー氏はBlueTree Venture FundとAfrican American Directors Forumの共同設立者だ。セバスチャン氏は、同氏とモトリー氏は、ジャスミン氏をはじめとする新世代の黒人投資家に力を与える「知識移転」のために参加しているとも示唆している。

一方のモトリー氏は、「Black Tech NationのプラットフォームをBirchmereのプラットフォームと結びつける」ための取り組みであることを示唆している。同氏はセバスチャン氏に促されて初めてジャスミン氏と話し、即座に「ショーン、これは本物だよ」と答えたことを覚えているという。

BTNVのパートナー3人は全員、ファンドには社会的な使命がある一方で、財務的なリターンも重視していることを強調する。

「特定のコミュニティを中心に据えているだけで、他のファンドと何ら変わりはありません」とジャスミン氏はいう。「当社は、たまたま未開拓の可能性という強みを持っているというだけです」。

このファンドはシードおよびシリーズAの投資を行うが、モトリー氏によるとソフトウェアのスタートアップに焦点を当てているそうで、SaaS、B2B、B2B2Cなどが考えられるという。これらのアイデアは収益化前または製品化前でも構わないが、「スケーラブルで、大きな価値創造につながる」必要がある。

セバスチャン氏はさらに、BTVNはピッツバーグに拠点を置いているが、米国内全域、特にシリコンバレー以外からの起業家への投資も視野に入れていると付け加えた。

ファンドの財務的な目標がBlack Tech Nationのより包括的なアプローチと相反することもあるのではないかと思ったが、パートナーたちは、営利目的のファンドと非営利組織は、実際にはお互いに補完し合えるものだと反論した。モトリー氏はBlack Tech Nationのおかげで「イエスと言える機会が増えた」と語り、ジャスミン氏は、もしこのベンチャーファンドが誰かへの投資を断らなければならなくなったとしても、「通りの向こう側(Black Tech Nation)に行って(アイデアに磨きをかけたあと)、また別の機会に検討しましょう」と伝えることができる、と提案した。

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カテゴリー:VC / エンジェル
タグ:資金調達

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(文:Anthony Ha、翻訳:Aya Nakazato)

企業向けノーコードAIプラットフォームのNoogataがシードラウンドで約13億円を調達

米国時間3月16日、企業向けノーコードAIソリューションを提供する2019年創業のNoogataが、シードラウンドで1200万ドル(約13億円)を調達したと発表した。このラウンドを主導したのはTeam8で、Skylake Capitalが参加した。NoogataはColgateやPepsiCoなどの企業に利用されている。Noogataは現在、eコマース、小売、金融サービスを対象としているが、今回調達した資金で製品開発を推進し新たな業界に拡大したいとしている。

Noogataのプラットフォームでは、事前にほとんどが設計されたAI構築用ブロックが提供され、企業のデータウェアハウス、SalesforceやStripeなどのデータソースといった他社ツールに接続できる。例えばeコマースの販売業者はNoogataプラットフォームからの提案で価格設定を最適化でき、実店舗ではある店舗にどのような品揃えをするかの計画を立てるのに役立つだろう。

画像クレジット:Noogata

Noogataの共同創業者でCEOのAssaf Egozi(アサフ・エゴジ)氏は次のように語る。「データチームはデジタルトランスフォーメーションの中心であり、影響力を持つにはデータチームがデータの価値を自由に利用できることが必要だと確信を持っています。信頼性が高く最新で、関連性があり継続的で説明可能なインサイトや予測にアクセスできなくてはなりません。Noogataは、企業のデータ環境とシームレスに統合してアクション可能なインサイトや予測、提案を生成する、状況に対応できるビジネス向けブロックを提供して、データの価値の可能性を広げます。ユーザーはセルフサービスの分析やデータソリューションでAIを活用して、従来のビジネスインテリジェンスをはるかに超えることができます」。

画像クレジット:Noogata

最近、この分野のスタートアップが多すぎるほどであることは明らかだ。データの急増、そしてデータウェアハウスの利用により、企業は機械学習ベースで予測をするためのデータを得られるようになった。しかし、人材が足りないことも多い。予測モデルをゼロから作れるデータサイエンティストや開発者が不足しているため、この分野でノーコードやローコードのサービスを構築するスタートアップが増えるのは当然と言えるだろう。例えば資金を潤沢に調達しているAbacus.aiは、Noogataとほぼ同じ市場を対象としている。

Team8のマネージングパートナーであるYuval Shachar(ユバル・シャハー)氏は「Noogataは意思決定のためにクラス最高のノーコードデータ分析プラットフォームを求める巨大な市場のニーズに対応する上で申し分ない位置にいます。同社の革新的なプラットフォームにより、複雑でコストのかかる社内開発や限界のある既製のベンダーソリューションの必要はなくなります。AIを利用してデータの価値を自由に利用できるようにする同社の手腕はゲームチェンジャーです。しかも創業チームは優秀で、私はNoogataが大成功を収めることは間違いないと思っています」と述べている。

カテゴリー:人工知能・AI
タグ:Noogata資金調達ノーコード

画像クレジット:Weiquan Lin / Getty Images

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(文:Frederic Lardinois、翻訳:Kaori Koyama)

企業のカード決済を支援するSumUpが977億円を調達して成長を加速

ロンドンを拠点とするスタートアップSumUp(サムアップ)は、物理的なカードリーダー、オンラインでの支払い、請求書払いなどに対するカード決済の提供によって、企業の収益向上を支援しているが、同時にSumUp自身も大きくパワーアップさせている。英国時間3月16日、同社は7億5000万ユーロ(約976億5000万円)の資金調達を発表した。新しい資金は事業の継続的な拡大に投入されるが、具体的には買収や、欧州、ラテンアメリカ、アジアの新市場への参入、一連の企業向けサービスの構築に利用される。同社はすでに33カ国で活動していて(最新のところではチリ、コロンビア、ルーマニア)、約300万社の企業を顧客として抱えている。

資金を提供しているのはGoldman Sachs、 Temasek、Bain Capital Credit、Crestline、そしてOaktree Capital Managementが管理するファンドだ。SumUpに確認したところ、今回の資金調達は株式ではなく融資のかたちで行われたため、公開できる正式な評価額はない。これまでのところ、この地域のスタートアップ企業(つまり、未上場のハイテク企業)にとって、融資であるかどうかの形式を問わず、最大の資金調達の1つとなっている。

注目すべきは、Goldman SachsとBain Capitalが2019年にも同社のために3億7100万ドル(約405億3000万円)の融資ラウンドを主導したことだ。

SumUpの共同創業者の1人であるMarc-Alexander Christ(マーク=アレクサンダー・クライスト)氏(同社は「CEO」のような正式な肩書きは使用していないようだ)は、同社が株式ではなく融資を選択したのは、それが可能だったからだと述べている。

彼は「借金をすることができるのは、私たちに非常に安定したキャッシュフローがあるからです」とインタビューに答えている。融資という手段は、より大きく成長していて、特に多くの現金を生み出している企業が採用することの多い手段だ。希釈化しないということは、資本コストも低くなるということである。

この会社は、いわゆるSquare(スクエア)クローンの1つとして2012年にスタートした企業だ。そうした米国内外で設立された「クローン」たちは、携帯電話やタブレットに取り付ける小型のカード決済ドングルを中心にサービスを提供しており、それまでコストがかかりすぎるとか、複雑すぎるといった理由でカード決済を採用してこなかった企業や、銀行が提供する高額な代替手段を使っていた企業たちに訴求してきた。

SquareやiZettle(アイゼットル、後にPayPalに買収された)などの同業他社と同様に、SumUpは時が経つにつれて、オンライン取引、請求書作成、ギフトカード、より幅広いPOSソリューションなど、ビジネス向けの他のカードや決済関連サービスにも手を広げて行った。

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また同社は、この分野での統合者としての顔も見せ始めている。2016年には、より大きな競合他社であるRocket Internet(ロケット・インターネット)傘下のPayleven(ペイレブン)を買収したことで、幅広い市場への進出が後押しされている。ここ数年にわたって、同社は数多くのスタートアップを買収してきたが、たとえば最近では、リトアニアでビジネス向けのモバイルバンキングプラットフォームを提供するPaysolut(ペイソルート)や、より大きな会場でのPOS展開を目的としたGoodtill(グッドティル)やTiller(ティラー)などを買収している。

こうした取引は、SumUpの製品拡大戦略への取り組みも物語っている。同社のビジネスモデルは、主にプラットフォーム上で行われる取引から手数料を徴収することを前提としている。そのため現在のところ、同社は企業向けのサービスを充実させ、その取引の割合の拡大というの戦略をとっている。消費者向けの金融サービス拡大ではない。

これは、Square Cash(スクエア・キャッシュ)によってこれまでに700万人以上の消費者を獲得したSquareや、消費者向けサービスを直接には開始しなかったものの、消費者向けデジタルウォレットの最大手であるPayPal(ペイパル)に買収されたiZettle(アイゼットル)などとは対照的だ。

また、SumUpは、他の2社が積極的に取り組んでいる仮想通貨にも関心がない。

クライスト氏は「Bitcoin(ビットコイン)投資についていえば、Squareは最も容易な入門体験手段となりました」という。「でもそれは、主にお客さま獲得のためのツールの1つなのです。彼らはBitcoinである程度のお金を稼いではいますが、それほど多くはありません。お客様にとって価値のあるものではないので、私たちがすぐにそこに手を出すことはありません。ユーザーの方々はアカウントが気になってログインするだけで、他のことは何もなさらないのです」。

こうした姿勢は、多くの取引がオンラインに移行し現金が忘れられていく流れの中で、同社の着実な成長を助けた。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)パンデミックが引き起こしたこの2つの大きな流れは、多くの国で商店の閉店を余儀なくし、人びとに対面での購買を控えさせ、コミュニティへの感染を抑制するために現金使用を控えるようになったからだ。また同社の姿勢は今回の資金調達にも役立った。

Bain Capital Credit のTom Maughan(トム・モーガン)氏は声明の中で「過去2年間にSumUpが遂げた、目覚ましい発展を知っている私たちは、こうしてSumUpを再び支援できることを誇りに思っています。SumUpが、想像し得る限り最も困難な経済状況の中で、世界中の中小企業のために行っている、取引を継続し繁栄するための支援に、大きな賞賛を捧げます」と語っている。「今回、SumUpへの投資額を倍増させたのは、同社の現在の状況と強い将来性への信頼を示しています」。

カテゴリー:フィンテック
タグ:SumUp資金調達イギリス

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(文:Ingrid Lunden、翻訳:sako)

ごみ拾いSNS「ピリカ」やマイクロプラスチック調査サービス「アルバトロス」運営元が1億円調達

ごみ拾いSNS「ピリカ」やマイクロプラスチック調査サービス「アルバトロス」運営元が1億円調達

環境領域スタートアップ「ピリカ」(Pirika)は3月15日、第三者割当増資による総額1億円の資金調達を発表した。引受先は、瀧口浩平氏など複数名の個人投資家。調達した資金により人材採用を強化し、サービスの開発、営業網の拡大などを通じて、ごみの自然界流出問題をはじめ環境問題の解決に向けた事業を加速する。

ピリカは、2011年の創業以来ごみの自然界流出問題をはじめ環境問題の解決に取り組み、ごみ拾い活動を共有・促進するSNS「ピリカ」(Android版iOS版)、画像解析技術で広範囲のポイ捨て状況を調査できる「タカノメ」、マイクロプラスチックの流出量調査や製品特定などを行う「アルバトロス」といった独自のサービスやソリューションを開発・提供している。

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カテゴリー:EnviroTech
タグ:環境問題(用語)資金調達(用語)ピリカ(企業・サービス)マイクロプラスチック(用語)日本(国・地域)

同種由来iPS細胞由来心筋細胞シートの開発・事業化を手がける大阪大学発スタートアップ「クオリプス」が20億円調達

同種由来iPS細胞由来心筋細胞シートの開発・事業化を手がける大阪大学発スタートアップ「クオリプス」が20億円調達

同種由来iPS細胞由来心筋細胞シートの開発・事業化を行う、大阪大学発スタートアップ「クオリプス」は3月16日、総額約20億円の第三者割当増資に関する契約を締結したと発表した。引受先は、JICベンチャー・グロース・ファンド1号投資事業有限責任組合(JICベンチャー・グロース・インベストメンツ)、ジャフコSV6投資事業有限責任組合、ジャフコSV6-S投資事業有限責任組合(ジャフコ グループ)、京大ベンチャーNVCC2号投資事業有限責任組合、阪大ベンチャーNVCC1号投資事業有限責任組合(日本ベンチャーキャピタル)、富士フイルム、セルソース他。

同種由来iPS細胞由来心筋細胞シートとは、ヒトiPS細胞から作製した心筋細胞(iPS心筋)を主成分とした他家細胞治療薬で、シート状に加工したものを心臓に移植するという(他家とは、第三者提供のiPS細胞から作った細胞を使うことを指す)。有効な治療法がない重症心不全の患者を対象とし、心機能の改善や心不全状態からの回復等の治療効果が期待されている。

今回調達した資金により、同社はこの同種由来iPS細胞由来心筋細胞シートの実用化を一層加速化させ、様々な細胞製品の培養・加工を通じ、画期的な細胞治療薬の創生に貢献するとしている。

富士フイルムは、同種由来iPS細胞由来心筋細胞シートを用いた心筋再生医療研究開発の促進を、またセルソースは、同種由来間葉系幹細胞および同種由来iPS細胞由来エクソソームの利活用を通じた再生医療分野での協業を期待し資本参加したという。

クオリプスは、大阪大学の技術・研究成果をベースに、同種由来iPS細胞由来心筋細胞シートの開発・事業化を行うことを目的とする、2017年3月設立の大阪大学発スタートアップ。同種由来iPS細胞由来心筋細胞シートの製造方法に関する研究開発を推進し、さらに効率的な生産技術を確立して、世界に先駆けて再生医療等製品として製造販売承認を取得することを目指す。

同社は2020年夏、同種由来iPS細胞由来心筋細胞シートの早期実用化を進めるべく、現在大阪大学で実施中の医師主導治験を支援するとともに、同製品の製造・供給体制を構築するため商業用細胞培養加工施設を大阪府箕面市において稼働させている。

また今後、3年後の上市に向けて、研究開発の加速化や商業用細胞製造施設の安定稼働を図り、事業化体制を構築するとともに、海外展開のための準備、第2、第3プロジェクトの探索研究を推進するため、第三者割当増資の実施に至ったという。

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タグ:医療(用語)大阪大学がん / がん治療(用語)クオリプス再生医学・再生医療細胞療法資金調達(用語)日本(国・地域)

D2C乳幼児フードブランド「the kindest」を手がけるMiLが3億4000万円を調達

D2C乳幼児フードブランド「the kindest」を手がけるMiLが3億4000万円を調達

厳選食材を使い、高品質にこだわるD2C乳幼児フードブランド「the kindest」(カインデスト)を手がけるMiLは3月15日、総額3億4000万円の資金調達を発表した。引受先は、既存投資家のFutureFoodFund1号投資事業有限責任組合、長友佑都が代表を務めるCuoreなど。

調達した資金は、自社システム構築への投資、子育て領域における専門家の採用強化、サービス開発人材の採用強化に投資し、社内体制強化を図る。

the kindestは、心と身体に「ほんとうにやさしいもの」を届ける乳幼児向けのフードブランド。考える・調べる・つくる時間を、少しでも多く子どもと過ごす時間に当ててほしいと願い開発したという。2019年4月のローンチ以降、販売実績50万食を突破した。

同ブランドでは、子どもの成長に必要な栄養素に関する実証データに基づいた上で、小児科医、管理栄養士、シェフとともに仕入れや商品開発を行っている。着色料や保存料などの不要な添加物を使用せず、厳選した契約農家や工場が生産した安心安全な食材を使った商品を提供している。

2018年1月設立のMiLは、「食×ヘルスケア」を軸にヘルシーでエシカルな世界の実現を目指すスタートアップ。シェフや小児科医などのプロフェッショナルたちとチームを組み、実証データに基づいた商品・サービスの開発を行うthe kindestを展開している。「自分らしい人生を食から実現する」をミッションに掲げ、世界中で注目を集めているSDGsとエシカルへの取り組み、日本が築き上げてきた食文化やクラフトマンシップを大事にしながら、世界を代表するの食品ブランドを目指す。

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カテゴリー:フードテック
タグ:資金調達(用語)D2C(用語)MiL(企業)日本(国・地域)

会話型AIからプライバシー重視のフェデレーテッドラーニングに拡大するスペインのSherpaが約9.3億円調達

スペインのビルバオに本社を置くSherpaは、スペイン語話者向けの音声デジタルアシスタントと予測検索を早くから開発していたスタートアップだ。そのSherpaが新たな取り組みのために資金を調達した。新たな取り組みとは、企業を対象とするプライバシーファーストのAIサービスだ。

同社は850万ドル(約9億2800万円)を調達し、創業者でCEOのXabi Uribe-Etxebarria(シャビ・ウリベ – エトシェバリア)氏はこの資金で既存の会話型AIと検索サービスに加え、フェデレーテッドラーニング(連合学習)モデルに基づくプライバシー重視の機械学習プラットフォームを引き続き開発していくと述べた。スペインの保健行政が初期ユーザーとしてSherpaのサービスを利用し、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に関する情報を分析して国内の救急医療機関の需要とキャパシティを予測していた。

今回の資金はApax DigitalマネージングパートナーのMarcelo Gigliani(マルセロ・ギリアーニ)氏、British Airways会長のAlex Cruz(アレックス・クルーズ)氏、スペインの投資会社であるMundi VenturesとEkarpenから調達した。今回はすでに完了していたシリーズAの1500万ドル(約16億3800万円)の追加だ。ということは、Sherpaは現在、さらに大規模なシリーズBも調達中であると考えられる。

会話型AI事業に失速が見えてきた中で、フェデレーテッドラーニングサービスの構築と商用化に方針転換することになった。

Sherpaはスペイン語の音声アシスタントで早い時期に注目を集めた。同社のアシスタントが初めて登場したのは、AppleのSiriやAmazonのAlexaなどが英語圏以外の市場への取り組みをそれほど強力に進めていない時期だった。

同社サービスのユーザー数は2019年時点で500万人を超えた。同社の会話型AIと予測検索サービスを利用している顧客には、スペインのメディア企業のPrisa、Volkswagen、Porsche、Samsungなどがある。

しかしウリベ – エトシェバリア氏は、アシスタント事業は現在も着実に成長してはいるものの難しい事実に直面したと語る。それは英語の音声アシスタント大手は結局スペイン語を追加し、大手が会話型AIへの投資を継続していけばSherpaがこの市場に長くとどまるのは不可能だろうということだ。

同氏は「どこかの企業と大きな取引をするのでない限り、我々がAmazonやAppleなどと闘っていくことはできないでしょう」という。

こうしてSherpaは、自社のAIエンジンを活用する新たな方法を探り始めた。

ウリベ – エトシェバリア氏は、同社の予測検索サービスを生産性向上アプリケーションに拡張するにはどうすればいいかと検討を始めたときにフェデレーテッドプライバシーが浮上したという。

同氏は「完璧なアシスタントはメールを読み、取るべき行動を理解できるでしょう。しかしこの動作に関してはプライバシーの問題があります」と説明する。同氏はある人から、アシスタントにメールの扱い方を「教える」手段の1つとしてフェデレーテッドラーニングを検討するよう助言を受けた。「我々が20人のスタッフを投入すれば、メールを読んで返信するようなものが作れるのではないかと思ったのです」という。

ウリベ – エトシェバリア氏によれば、Sherpaが開発したプラットフォームは予想より出来が良く、メールに優先順位をつけるだけでなくもっと利用できそうだと1年後に判断したという。つまりプライバシーに配慮して機密データから機械学習モデルをトレーニングするエンジンとして製品化し、販売するということだ。

このようなアプローチをしているのはSherpaだけではない。GoogleのTensorFlowもフェデレーテッドラーニングを活用しているし、Fate(Tencentのクラウドコンピューティングセキュリティ専門家が貢献している)や、フェデレーテッドラーニングのオープンソースライブラリであるPySyftも同様だ。

Sherpaは機密保持契約を交わした上でヘルスケアなどの分野でいくつかの企業と連携している。ウリベ – エトシェバリア氏は、近い将来に通信、小売、保険などの分野の顧客を公表する予定だと述べた。

カテゴリー:人工知能・AI
タグ:Sherpa音声アシスタント資金調達スペイン

画像クレジット:Jose A. Bernat Bacete / Getty Images

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(文:Ingrid Lunden、翻訳:Kaori Koyama)

FortniteなどのPvP対戦ゲームで相手を叩きのめす自分の能力に賭けてお金を稼げる1v1Me

Anthony Geranio(アンソニー・ゲラニオ)氏は過去13年間、ビデオゲームをプレイしてきた。26歳で初めての会社1v1Meを設立した彼は、以前プロゲーマーになろうとしたがうまくいかず、テック業界に目を向けたという。

ゲラニオ氏と共同設立者のAlex Emmanuel(アレックス・エマニュエル)氏は、TextNow、Skillshare、Grailedといった企業を渡り歩いた経験と、ゲームと起業という2つの情熱を組み合わせて新しい会社を立ち上げた。

「プログラミングを始めた理由は、いつか自分の上司になりたいと思ったからです」とゲラニオ氏はいう。ミッションを掲げたテック企業で働き年収20万ドル(約2200万円)を稼いでいても、まだ満たされていなかったと同氏は語る。

新型コロナウイルスのパンデミックにより、ゲラニオ氏とエマニュエル氏はついに決心した。ゲラニオ氏の友人たちはみんなロックダウンが始まると、オンラインポーカーをプレイしてお金を稼ぎ時間をつぶすようになった。ポーカーはやがて「Call of Duty(コール オブ デューティ)」に変わり、それが「Madden(マッデンNFL)」に変わり、今どきの子供たちがプレイしているものに変わっていった(筆者のゲーム時代は「モータルコンバットII」で終わっているのでそれらが何かは不明だが)。

ゲラニオ氏はその後On Deckプログラムに参加し、卒業すると投資家のドアを叩き始めた。そしてOn DeckをはじめVillage GlobalのErik Torenberg(エリック・トレンバーグ)氏、GeltVCのTurner Novak(ターナー・ノバック)氏、ShrugのNiv Dror(ニブ・ドロール)氏、SterlingVC、CrossbeamのAli Hamed(アリ・ハメッド)氏、UpNorthのCody Hock(コーディ・ホック)氏とCole Hock(コール・ホック)氏、Lightshed Ventures、Bettor Capitalなどの投資家から、200万ドル(約2億2000万円)以上の資金調達に成功した。また、Zynga(ジンガ)の共同創業者であるJustin Waldron(ジャスティン・ウォルドロン)氏、Brudの共同創業者であるTrevor McFedries(トレバー・マクフェドリース)氏、Ian Borthwick(イアン・ボースウィック)氏、Socially Financedの共同リーダーであるAlbert Cheng(アルバート・チェン)氏、Public.comのCOOであるStephen Sikes(スティーブン・サイクス)氏、Morgan Creek Digitalの創業者兼パートナーAnthony Pompliano(アンソニー・ポムプリアーノ)氏などの著名なエンジェルも同社に投資した。

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同社はアプリストアでのアプリのローンチを招待制で行っており、最初のステージの招待は、すでに「Call of Duty」のようなゲームをプレイしているコンテンツクリエイターを対象としている。長期的な目標は、賭けを中心としたコンテンツクリエイターの創出だという。「賭けがエンゲージメントツールとなるようなネットワークを作ろうとしているのです」とゲラニオ氏は語る。

今のところ同社は、「Call of Duty」や「Fortnite(フォートナイト)」といったゲームへの賭けにのみ対応している。このサービスは、PlayStationやXboxでコンタクト情報を交換するマーケットプレイスとして機能する。賭けに勝つためには、参加者がそれぞれ銀行口座をリンクし、金額を決めて、1v1Meがそのお金を一旦エスクローに預ける。ゲーマーはTwitchでゲームを配信し、1v1Meがゲームを監視して勝者を決定する。ゲームが終了すると、勝者の口座にお金が振り込まれる。

同社は当初、NoisyButters(同社に投資もしている)、LunchtimeRLawVonniezugzなどのゲーマーとともにサービスを立ち上げるという。

1v1Meがコードを配布しているTwitter(ツイッター)をフォローするか、クリエイターを介して得られるサインアップや招待をバズらせるために、同社は週の終わりに最も多くのゲームで勝利した競技者に500ドル(約5万5000円)の賞金を与えるチャレンジも提供する。

Socially Financedの共同リーダーでDuolingoのプロダクトディレクターであるアルバート・チェン氏は次のように述べている。「YouTubeで働いていたとき、ファンを楽しませつつ自分のスキルを磨きたいと願う多くのゲームクリエイターに出会いましたが、その過程で大きなお金を稼ぐのは大変なことです。1v1は、eスポーツゲーマーが生計を立てるための最も有望なプラットフォームであり、私は彼らの道のりを支援することに興奮しています」。

カテゴリー:ゲーム / eSports
タグ:1v1Me資金調達ギャンブル

画像クレジット:1v1Me

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(文:Jonathan Shieber、翻訳:Aya Nakazato)

決済サービスStripeが評価額10兆円超で約655億円調達、欧州事業の拡大に注力

資金を調達中との報道のすぐ後に、決済大手のStripe(ストライプ)はその詳細を明らかにした。同社は950億ドル(約10兆3680億円)の評価額で6億ドル(約655億円)の調達を完了した。

調達した資金は欧州本社を中心に欧州での事業拡大と、グローバルの決済・財務ネットワークの強化に使う、と同社は述べている。

「当社は2021年、欧州、特にアイルランドにかなり投資します」とStripeの共同創業者で最高責任者のJohn Collison(ジョン・コリソン)氏は声明で述べた。「フィンテック、モビリティ、小売、SaaSであろうとなかろうと、欧州のデジタル経済の成長機会は巨大です」。

資金調達は大手保険会社2社からの出資が含まれるとStripeは述べた。Allianz X fundを通じたAllianz(アリアンツ)とAxa(アクサ)が、Baillie Gifford、Fidelity Management & Research Company、Sequoia Capital、そして米国の投資家らやアイルランド国債管理庁(NTMA)とともに本ラウンドに出資した。

保険会社の出資はStripeが次に進もうとしている方角をおそらく示している。結局、フィンテックと保険は緊密に連携している。

「Stripeは世界経済成長のアクセラレーターであり、持続可能な金融のリーダーです。過去10年、大きな進歩を遂げたにもかかわらず、Stripeの成長のほとんどはまだこれからです」とNTMAのCEOであるConor O’Kelly(コナー・オケリー)氏は声明で述べた。「アイルランドと欧州の最も傑出した成功物語を支援し、そうすることで何百万という野心を持つ企業がグローバル経済においてこれまで以上に競争力を持つのをサポートすることをうれしく思います」。

評価額を増やした大きなラウンド、そして拡大している資本政策表は必然的にStripeの次のステップがどのようなものになるのか、そこには上場が含まれているのかといった疑問につながる。同社はユーザー数や売上高、利益といった詳細についてはこれまでずっと隠してきた。そして今回のニュースでも明らかにせず、IPO計画についてコメントもしなかった。

とりわけ、米国時間3月14日のニュースにあった評価額は同社がセカンダリーマーケットで取引されていると報じられた中での評価額1150億ドル(約12兆5520億円)より小さい。そして評価額950億ドルでクローズしたラウンドは1000億ドル(約10兆9150億円)超となるだろうとも噂されていた。

そうした数字が正確ではなかったのか、あるいは新型コロナウイルスが評価額に影響を与えたのか、欧州の投資家が単にかなり値切ったのかははっきりとしない。

欧州での成長への注力はまた、EMEA(欧州、中東、アフリカ)のGoogleのコミュニケーション担当副社長でジャーナリストだったPeter Barron(ピーター・バロン)氏の採用にある意味つながっている。

ジョン氏と、CEOである兄Patrick Collison(パトリック・コリソン)氏が創業したStripeは、デジタル決済、特にオンライン決済が軌道に乗り始めたときに、デベロッパーがいくつかのラインのコードで決済をアプリやサイトに盛り込めるようにするシンプルな方法を構築する価値を認めた一連のコマーススタートアップの1社だ。

そのコードの裏で、Stripeは国内外で機能する決済に必要とされるあらゆる複雑な要素を統合する困難な作業を行った。これまで同社は、事業者が法人化や不正管理、キャッシュフロー管理などを含む事業の商業的な業務を行うのを単にサポートするだけでなく、自社をワンストップショップにするために一連のサービスをを提供し、プラットフォームを成長させてきた。

そうした中で同社は欧州で事業を拡大し、今では欧州42カ国中31カ国に顧客を抱える。同社は当初スタートアップ(特に小規模で新しいスタートアップ)への決済インフラ提供で事業を開始して成長してきたが、今日同社の顧客リストには多くの大手企業も含まれる。欧州の顧客としては、Axel Springer、Jaguar Land Rover、Maersk、Metro、Mountain Warehouse and Waitrose、Deliveroo (英国)、Doctolib(フランス)、Glofox(アイルランド)、Klarna(スウェーデン)、ManoMano(フランス)、N26(ドイツ)、UiPath(ルーマニア)、Vinted(リトアニア)などがある。

決済とその周辺サービスにおける競争は激しいが、さらに成長するチャンスはまだ大いにある。新型コロナの発生と、実在店舗よりウェブやアプリで買い物する人が増えたことで、現在コマースの14%ほどがオンライン上でのもので、1年前は10%だったことを考えると大きなシフトだとStripeは指摘している。

カテゴリー:フィンテック
タグ:Stripe資金調達

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(文:Ingrid Lunden、翻訳:Nariko Mizoguchi

保険業界向けコミュニケーションツールのHi Marleyが約27億円調達

もしあなたが保険会社に保険金を請求しなければならなかったことがあるなら、それが楽しいものではないことを知っているはずだ。往々にして電話をかけてオペレーターにつながるまで延々と待たされる。そしてもし自動車保険や住宅保険の保険金を請求しなければならなかったことがあるなら、保険会社やさまざまなベンダーと行ったり来たりのやり取りにかなり時間をとられることを知っているはずだ。

Hi Marley(ハイ・マーリー)は保険契約者とテキストで「シームレス」にコミュニケーションを取る方法を保険会社に提供することで、保険業界のコミュニケーションを近代化することを目指しているボストン拠点のスタートアップだ。同社はSMSプラットフォームを拡大すべく、2500万ドル(約27億円)のシリーズBラウンドをクローズした。

Hi Marleyはそのコミュニケーションチャンネルにクルマの修理やレンタルの企業など他のベンダーも含めている。目標は、保険会社が保険請求をより早く処理できるようサポートするのに加えて、保険契約者を満足させ、他の保険会社に乗り換えないようにすることだ。

CEOで共同創業者のMike Greene(マイク・グリーン)氏によると、同社サービスはアプリのプラットフォームであり、APIでもあり、そして保険会社に「重要な知見を提供するために」GuidewireやDuckといった他の基幹システムを統合している高機能なレイヤーでもある。同社のウェブサイトによると、Hi Marleyのメッセージソリューションは「保険エクスペリエンスに関わる全員を1つのリアルタイム会話で同時につなげる」一方で、保険請求や引き受け、保険契約者サービスやり取りに関するコミュニケーションを合理化することだ。

需要はある。新型コロナウイルスのパンデミックによって多くの人がデジタルに移行せざるを得なくなり、新たなコミュニケーション方法に対する消費者の需要はさらに高まった。2020年Hi Marleyのプラットフォームを活用した保険会社の数は倍になり、ユーザーベースは4倍になったとグリーン氏は話した。現在はAmerican Family、MetLife、Auto-Owners、Erie、MAPFREなどを含む顧客企業40社超と協業している。

「水平展開のチャットソリューションと異なり、当社は保険会社とそのエコシステムパートナーのために全体をカバーするコミュニケーションレイヤーに取り組んでいます」とグリーン氏はTechCrunchに語った。

同氏はこの業界に馴染みがないわけではなく、保険分野で何年も働いた。以前Futurity Groupを共同創業して率い、同社はP&C保険のパフォーマンスのモニターと改善にフォーカスしているソフトウェアとサービスの会社AONに買収された

Emergence CapitalがシリーズBラウンドをリードし、Hi Marleyが2017年以来調達した額は計4170万ドル(約45億5000万円)になった。既存投資家のUnderscore、True Ventures、Bain Capital Ventures、GreenspringもシリーズBに参加し、新規投資家としてBrewer Laneが加わった。

Emergence Capitalの創業者でゼネラルパートナーのGordon Ritter(ゴードン・リッター)氏は、同社が「しばらくの間」保険分野で次のアイコン的産業クラウド企業を探すのに注力してきたと述べた。同氏はHi Marleyの役員にもなった。

「(同氏が2013年に成功的なIPOに導いた企業)Veevaは同じ方法でCRMから、製薬会社を動かす追加のソフトウェアソリューションへと拡大し、我々は引き続き産業全体を動かすことができる特定の分野に特化したソリューションを構築しているスタートアップに積極的です」とリッター氏は話した。

歴史的に保険は必要悪とみなされてきて、純粋に安全とセキュリティのために購入されると同氏は付け加えた。そして今日の環境では「古い」コミュニケーション戦略を使っている保険会社はパフォーマンスが落ち込むと同氏は考えている。

「まさかのときに保険会社とやり取りする体験が、不快というわけではなくても理想的なものではなかった、ということに多くの人が賛成するでしょう」とリッター氏は語った。同氏の家族は保険分野の出身だ。「しかしマイクは無関心やネガティブな評判をひっくり返したいと考えています。マイクは保険を愛すべきものにしようと懸命になっています。最終顧客に便益をもたらすための保険会社とエコシステムの間の新しいコミュニケーションファブリックが必要とされています」。

Hi Marleyは今後、調達した資金を新機能の構築やプラットフォームの拡大、(当然のことながら)新規採用などに使う計画だ。

カテゴリー:ネットサービス
タグ:Hi Marley資金調達保険

画像クレジット:JGI/Jamie Gill / Getty Images

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(文:Mary Ann Azevedo、翻訳:Nariko Mizoguchi

AIを中心とするプロセス・オートメーション・プラットフォームのDeepSee.aiが24.7億円のシリーズA調達

米国時間3月15日、企業がAIを利用して基幹業務の課題を自動化することを支援するスタートアップ企業のDeepSee.ai(ディープシーAI)が、ForgePoint Capitalの主導する2260万ドル(約24億7000万円)のシリーズAラウンドを実施したことを発表した。今回のラウンドには、前回の投資家であるAllegisCyber CapitalとSignal Peak Venturesも参加していて、ソルトレイクシティを拠点とするDeepSee.aiのこれまでの資金調達総額は3070万ドル(約33億5000万円)に達した。

同社は、これまでとは異なるプロセスオートメーションを、企業に対して提供するのだという。最近の業界のバズワードといえば「ロボティック・プロセス・オートメーション」(RPA)だが、DeepSee.aiはその内容が異なると主張している。私はそのシステムを「ナレッジ・プロセス・オートメーション」(KPA)と形容している。同社自身はこれを「非構造化データを採掘し、AIを活用した知見を運用し、結果を企業のリアルタイムアクションへと自動適用する」システムだと定義している。そして同社はまた、現在世の中で提供されているようなロボットは基本的なタスクの自動化に重点を置いており、高度な機械学習モデルがもたらせるような深い洞察は提供できていないと主張している。また同社は、このシステムがナレッジワーカーの置き換えを目指すものではなく、企業が収集する膨大なデータを実用的な洞察に返還する手助けをAIを活用して行うことを目指すのだと強調している。

画像クレジット:DeepSee.ai

DeepSee.aiのCEOであるSteve Shillingford(スティーブ・シリングフォード)氏は「経営者のみなさまは、科学的なプロジェクトではなく、ビジネス上の成果が必要なのだとおっしゃいます」と書いている。「そして現在、大企業の中でのAIを中心にした展開の多くで、急増している不満は、それらが理論的にはすばらしいものでありながら、本番ではほとんど失敗するということなのです。私たちはその理由を、現在の『AIアプローチ』には全体的なビジネスコンテキストへの関連性が欠けているからだと考えています。思慮に欠け、硬直していて、現場の専門家の文脈に沿った意見も取り入れられていません。私たちは、強力なテクノロジーと基幹業務の間のギャップを、適用可能なソリューションでつなぐために、DeepSeeを創業致しました。そのソリューションをお使いいただくことで、お客さにAIを活用した自動プロセスを運用していただくことが可能になります。すなわちより速く、より良く、そしてより安価な結果がもたらされるのです」。

DeepSee.aiは、顧客企業がそのプラットフォームを使い始めることができるように、3つのコアツールを提供している。まず、構造化されていないデータを取り込み、ラベリング、モデルレビュー、そして分析の準備を行うDeepSee Assembler(ディープシー・アセンブラー)がある。その後、DeepSee Atlas(ディープシー・アトラス)がこのデータを使用して、企業のビジネスプロセスを理解できるAIモデルを訓練する。そして対象業務の専門家が、企業の内部プロセスを自動化するためのテンプレート、ルール、ロジックを定義する手助けを行う。そして、それらとは並行して、企業がビジネスプロセスをよりよく理解し評価することができるように、3つ目のツールであるDeepSee Advisor(ディープシー・アドバイザー)がテキスト分析に焦点を当てる。

現在、同社はこれらのツールを保険会社、公共事業関係、資本市場に提供することに重点を置いている。たとえば保険分野では不正行為の検知、保険請求の予測と処理、大量の非構造化データを利用して代理店監査のためのパターンを特定するといったユースケースがある。

これは1つのスタートアップとしては比較的限られた数の業界だが、同社は今回の資金調達で製品開発を加速させ、新たな業界にも進出していくと語る。

ForgePoint CapitalのマネージングディレクターであるSean Cunningham(ショーン・カニンガム)氏は「KPAを使うことで、基幹業務の責任者の皆さまは、データサイエンスと企業の成果を結びつけ、AI / ML(人工知能 / 機械学習)を活用した自動化を大規模に運用し、予測的な洞察をリアルタイムに利用して収益の拡大、コストの削減、リスクの軽減を図ることができるのです」と語る。「ForgePointは、一流のサイバーセキュリティ投資家として、インサイダーの脅威、データの可視化、コンプライアンスといった、セキュリティに関わる日々の課題を認識しています。今回のDeepSeeへの投資は、ビジネスオートメーションのリスクを低減させる能力を加速させ、お客さまたちが実装に必要となさるAIの透明性を実現します」。

カテゴリー:人工知能・AI
タグ:DeepSee.aiRPA資金調達

画像クレジット:Nigel Sussman

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(文:Frederic Lardinois、翻訳:sako)

大手バイオテクノロジー企業ElevateBioが細胞・遺伝子治療技術開発で約573億円を調達

遺伝子治療に特化した大手バイオテクノロジー企業のElevateBioは、シリーズCラウンドで5億2500万ドル(約573億円)という巨額の資金を調達し、2020年完了したシリーズBの1億9300万ドル(約211億円)の資金を倍増させた。今回の資金調達は既存の投資家であるMatrix Capital Managementからのもので、新たにSoftBank Vision FundとFidelity Management & Research Companyが加わり、ElevateBioの研究開発と製造能力の拡大を支援し、同社の研究に基づく新たな企業やパートナーシップのスピンアウトを継続するために使われる。

マサチューセッツ州ケンブリッジを拠点とするElevateBioは、細胞および遺伝子治療の学術的な研究開発の世界と、商業化や生産規模の製造の世界とを橋渡しするために設立された。同社は特に重度あるいは慢性疾患の治療において、細胞および遺伝子編集を活用した治療法の開発で行われている有望な科学治療を市場に投入するための、より効率的な手段の必要性を認識している。ElevateBioのビジネスモデルは自社の治療法を開発・商品化することに加え、学術研究機関や他のバイオ企業と長期的なパートナーシップを結び、自社の技術を市場に投入することにある。

この目的のためにElevateBioは、特定の治療法に特化したスピンアウト企業を頻繁に設立し、新しい事業ではそれぞれ特定の治療薬に焦点を当てている。同社はこれまでにAlloVir(ベイラー医科大学との提携)、HighPassBio(遺伝子編集会社Fred Hutchinsonとの合弁事業)、Life Edit Therapeutics(AgBiome社との提携)の3社を発表している。ElevateBioによると他にもスピンアウトされた企業があるが、まだ公表されていない。

予測されていたように、ElevateBioは世界的なパンデミックとその影響によってバイオテクノロジー投資に対する需要が高まったことから、恩恵を受けたようだ。同社のスピンアウト企業であるAlloVirは、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対応するT細胞療法の候補を研究しており、これは患者のSARS-CoV-2に感染した細胞を排除して疾患の拡大を遅らせ、その重症化を軽減するのに有効である可能性がある。

カテゴリー:バイオテック
タグ:ElevateBio資金調達遺伝子SoftBank Vision Fund

画像クレジット:Bloomberg / Getty Images

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(文:Darrell Etherington、翻訳:塚本直樹 / Twitter

フォルクスワーゲンが240GWhのバッテリー生産能力を2030年までに欧州で実現

Volkswagen AG(フォルクスワーゲンAG)は世界最大の電気自動車メーカーとしての地位を確立するために、2030年までに欧州で40GWhのバッテリーセル生産工場を6カ所運用する計画を発表した。

これを達成するためにVolkswagenはスウェーデンの電池メーカーであるNorthvoltに10年間で140億ドル(約1兆5300億円)規模の発注を行ったが、これは計画中の6カ所の工場のうちの1つにすぎない。2025年にはドイツの第2工場でも生産を開始する予定だ。

関連記事:EV用バッテリーメーカーNorthvoltがフォルクスワーゲンから1.53兆円の大型契約を獲得

Volkswagenはまた、中国、欧州、米国の充電インフラへの本格的な投資も発表した。欧州ではパートナーであるIONITYとともに急速充電ネットワークを1万8000ステーションに、中国では合弁会社であるCAMS New Energy Technologyを通じて1万7000カ所の充電ポイントに、そして米国では急速充電ステーションを3500に増やすことを目指している。

Volkswagen初となるバッテリー関連のイベントは、Tesla(テスラ)のBattery Dayを記念して行われたものだが、その中には、コストを最大50%削減する斬新的なバッテリーの化学研究も含まれていた。このバッテリーセルは同社が2010年代半ばに予想されている固体電池セルへの移行への道を開くものでもある。Volkswagenは固体電池メーカーのQuantumScapeに多額の投資を行っている。

関連記事:未来のテスラ車のバッテリーは車体と一体構造で剛性、効率、安全性、コストを改善

Volkswagenの新しい 「Unified Premium Battery」 プラットフォームは2023年に発売され、同社のEV車両の80%で使用される予定だ。この新しいバッテリーを最初に搭載した最初のモデルであるAudi Artemisは、2024年に発売される予定となっている。

Volkswagenの大型トラックおよびバスのブランドであるScania ABも、EVシェアの拡大を計画している。水素燃料電池を選択した他の主要なトラックメーカーとは異なり「大型輸送部門の電動化は間違いなく可能である」と同社の代表者らは述べた。

バッテリーの寿命についてVWは、Hydrometallury(ハイドロメタリー)と呼ばれるプロセスにより、バッテリーを最大95%までリサイクルできると述べている。

カテゴリー:モビリティ
タグ:VW電気自動車資金調達バッテリー欧州充電ステーション

画像クレジット:Volkswagen

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(文:Aria Alamalhodaei、翻訳:塚本直樹 / Twitter

EV用バッテリーメーカーNorthvoltがフォルクスワーゲンから1.53兆円の大型契約を獲得

2019年にGoldman Sachs(ゴールドマンサックス)とVolkswagen(フォルクスワーゲン、VW)がリードしたラウンドで10億ドル(約1090億円)を調達したスウェーデンのバッテリーメーカーNorthvolt(ノースボルト)は、今後10年にわたるバッテリー製造でVWと140億ドル(約1兆5300億円)の契約を結んだ。

今回の巨額契約により、VWが進める電気自動車(EV)への転換のためのバッテリーをどこから調達するのかという疑問がいくらか解けた。VWは2025年までにEV生産能力を150万台に引き上げる計画だ。

契約では、Northvoltが欧州のVWグループ向けの主要な電池サプライヤーとなるばかりでなく、VWはNorthvoltの株式を追加取得する。

提携の一環として、Northvoltのスウェーデンにあるギガファクトリーは拡張され、またVWは欧州中に電池工場を建設する計画であるため、NorthvoltはSalzgitter(ザルツギッター)の合弁事業株をVWに売却することにも同意した、と両社は明らかにした。

NorthvoltとVWの合意により、Northvoltが10億ドルを調達して以来、同社はこの2年で270億ドル(約2兆9460億円)の契約を獲得したことになる。

「Volkswagenは主要投資家で顧客、パートナーです。VWが急速にEVを展開するのにともない、当社は引き続き地球上で最も環境に優しいバッテリーをVWに提供するという目標に懸命に取り組みます」とNorthvoltの共同創業者でCEOのPeter Carlsson(ピーター・カールソン)氏は声明で述べた。

Northvoltの他のパートナーや顧客にはABB、BMW Group、Scania、Siemen、Vattenfall、Vestasなどがいる。これら企業は欧州最大のメーカーでもある。

2019年にNorthvoltは、電池製造能力が16GWhに達すると見込まれ、2030年までにおおよそ130億ドル(約1兆4180億円)分のバッテリーを販売すると述べた。これは、VWとの契約が拡張されたプロダクト生産ラインのかなりの部分を占めることを意味する。

元Tesla幹部のカールソン氏が立ち上げたNorthvoltのバッテリー事業は欧州連合をSamsung(サムスン)、LG Chem(LG化学)、CATLといったアジア最大のバッテリーメーカーと直接競わせようという意図だった。

Northvoltが10億ドルの投資ラウンドを発表したとき、カールソン氏は2030年のEV販売目標を達成するためにはNorthvoltが150GWhの製造能力にする必要があると述べていた。

スウェーデンにある製造プラントは、大手財務パートナーであるVWとGoldman Sachsに加えて、部分的にはスウェーデンの年金ファンド会社AMF、Folksam、IKEA関連のIMAS Foundationによる支援のおかげで、製造能力は少なくとも32GWhを達成すると予想されている。

Northvoltはここ数カ月忙しかった。2021年3月初めに同社はシリコンバレー拠点のスタートアップCubergの買収を発表している。

この買収でNorthvoltは米国での足がかりを得て高度技術センターを設置した。

また、業界の救世主とされている最新の電池化学、リチウムメタル電池へのきっかけも買収で得ている。

Cubergは、液体電解質にリチウムメタルアノードを組み合わせている、同社がいうところの次世代バッテリーを商業展開するために2015年にスタンフォード大学からスピンアウトした。同社の顧客にはBoeing、BETA Technologies、Ampaire、VoltAeroなどがあり、Boeing HorizonX Ventures、Activate.org、カリフォルニア州エネルギー委員会、米エネルギー省、スタンフォード大学TomKat Centerから支援を受けている。

Cubergのバッテリーは、電動航空機使用向けにデザインされた同程度のリチウムイオン電池に比べて航続距離と容量を70%増やす。声明によると、CubergとNorthvoltは自動車メーカー顧客のあらゆる要件を満たしつつ、2025年に1000Wh/L超のバッテリーを産業化するという野心を持って、このテクノロジーをNorthvoltの自動車・産業プラダクトのポートフォリオに加えられることを願っている。

「Cubergのチームはワールドクラスのテクノロジーを開発する並外れた能力、実証済みの結果、無駄のない効率的な組織での傑出した顧客ベースを示してきました」とカールソン氏は述べた。「こうした強みをNorthvoltの能力、そしてテクノロジーと組み合わせることで、次世代電池のためにコストをさらに下げつつパフォーマンスと安全性の両方を大幅に改善できます。完全EVへのシフトを加速させ、主要自動車メーカーのニーズに応える上でこれは重要です」。

カテゴリー:モビリティ
タグ:NorthvoltVW電気自動車資金調達バッテリー

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(文:Jonathan Shieber、翻訳:Nariko Mizoguchi

IoT・M2M関連のアプトポッドが8億円を調達、エムスリーと遠隔医療・ヘルスケア領域の協業も

IoT・M2M関連のアプトポッドが8億円を調達、エムスリーと遠隔医療・ヘルスケア領域の協業も

アプトポッドは3月15日、シリーズCラウンドにおいて、第三者割当および融資による総額約8億円の資金調達を発表した。引受先は、DBJキャピタル、みずほ証券プリンシパルインベストメント、エムスリー、きらぼしキャピタル、SMBCベンチャーキャピタル。借入先は日本政策金融公庫。またエムスリーとは、遠隔医療・ヘルスケア分野への技術において、アプトポッドの技術の適用やサービス開発などを視野に協業を行う。

調達した資金は、以下投資・活動を行い、さらなる成長加速を目指す。

  • 急増するDX需要に向けた対応体制強化
  • 新製品開発などハードウェア事業の強化拡大
  • 遠隔医療・ヘルスケアといった新規分野進出のための研究開発
  • アプトポッドが開発したプロトコルの標準化活動など、自社プラットフォーム技術の啓蒙促進
  • アフターコロナ時代におけるグローバル展開準備

アプトポッドは、自動車分野、建機・重機・農機などの産業機械分野、ロボティクス分野を中心に産業IoTミドルウェア「intdash」(イントダッシュ)を核としたプラットフォーム製品・サービスを展開。intdashは、2018年のリリース以来、製造業を中心に約30社における50以上のDXプロジェクトで採用されているという。

IoT・M2M関連のアプトポッドが8億円を調達、エムスリーと遠隔医療・ヘルスケア領域の協業も

今後同社は、5G時代の高度なデータネットワーキングおよびプロセッシングの需要を見据え、クラウドコンピューティング、エッジコンピューティングなどのあらゆるデータ処理ネットワークを構築するためのプロダクト開発と提供を目指している。

直近では、ハードウェア事業としてエッジコンピューティングブランド「EDGEPLANT」(エッジプラント)をリリースするなど、5G時代のDXに包括的に貢献するための総合的な製品・事業展開を行っている。

IoT・M2M関連のアプトポッドが8億円を調達、エムスリーと遠隔医療・ヘルスケア領域の協業も

IoT・M2M関連のアプトポッドが8億円を調達、エムスリーと遠隔医療・ヘルスケア領域の協業も

2006年12月設立のアプトポッドは、産業IoTにおけるファストデータ(高速時系列データ)のスペシャリストとして、IoT・M2Mにおけるセンサー・ハードウェア技術、クラウド技術、グラフィカルなユーザーインターフェイス技術まで、ワンストップのテクノロジーを有するIoTソフトウェア・サービス企業。産業シーンにおける高速で大量なデータの収集、伝送、高度なリアルタイム処理、イベント処理を実現する包括的なフレームワークを提供している。

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IoT/M2M関連ソリューション提供のアプトポッドが8億調達
自動車などの産業IoT/M2Mソリューションを提供するアプトポッドが6.6億円の資金調達

カテゴリー:IoT
タグ:5G(用語)アプトポッド(企業)エッジコンピューティング(用語)エッジAI(用語)NVIDIA(企業)NVIDIA Jetson(製品・サービス)エムスリー(企業)M2M(用語)遠隔医療(用語)クラウドコンピューティング(用語)資金調達(用語)ヘルスケア(用語)日本(国・地域)

規格外バナナでウエットティッシュ、循環型社会を目指すファーメンステーションが総額2億円調達

ファーメンステーションが構築する廃棄物ゼロの循環型モデル

ファーメンステーションが構築する廃棄物ゼロの循環型モデル

りんごの搾りかすからエタノールを生み出し、アロマ製品を開発する。これまで捨てられていた食品廃棄物が、新たに価値ある商品へと生まれ変わる。そんな循環型社会の実現を目指して、岩手県奥州市に拠点を構えるスタートアップが大きく動き出した。

独自の発酵技術で未利用資源を活用し、循環型社会を構築する研究開発型スタートアップFERMENSTATION(ファーメンステーション)は3月15日、第三者割当増資により総額2億円の資金調達を実施したと発表した。引受先はSXキャピタル、新生企業投資、JR東日本スタートアップとなる。今回の調達で累計調達額は約2億4000万円となった。

ファーメンステーションは独自の発酵技術でオリジナル原料を作り出し、化粧品や雑貨原料として提供する販売事業などを行っている。

今回の調達では、事業・技術強化や人材採用の促進だけでなく、海外進出の足がかりとする。ファーメンステーションは海外進出について「サステナブルな動きで先行し、消費者の購買行動も変化している欧州などと一部取引の準備が進んでおり、候補になっている」と展望を語った。

また、ファーメンステーションは同日、エムスリーの事業責任者やヘルスケアスタートアップでの経営経験を持つ北畠勝太氏がCOOとして経営チームに参画したことを明らかにした。ファーメンステーションの酒井里奈代表が中心となってこれまで事業のベースを築き上げてきたが、北畠氏を経営チームに迎え入れることで、スタートアップとしての経営体制を強化する。

ファーメンステーションの事業概要

ファーメンステーションの事業モデル

ファーメンステーションの事業モデル

2009年7月7日に設立したファーメンステーションは「発酵で楽しい社会を(Fermenting a Renewable Society)!」をミッションに掲げる。岩手県奥州市に研究開発拠点兼自社工場(奥州ラボ)を構えている。

ファーメンステーションは奥州ラボを拠点に、独自の発酵・蒸留技術でエタノールやサステナブルな化粧品原料などを開発・製造しており、また奥州の休耕田を活用した原料米の生産も行っている。主力の米エタノールはこの休耕田を耕して育てた無農薬・無化学肥料の米から生まれる。エタノールは、化粧品やアロマ製品などの原材料として幅広く使われているものだ。

ファーメンステーションにおける事業の柱は4つ。原料事業では同社のサステナブル原料を、化粧品などの原料として化粧品メーカー・原料卸に販売している。また、自社ブランドによるオーガニック化粧品事業と、原料提案から製品開発まで担うODM / OEM事業も行う。

4つ目の柱として、食品・飲料工場の製造過程で出るパンくずといった副産物や食品残渣(ざんさ)などの未利用資源をさまざまなアイデアや手法を用いて、企業らと新たな高付加価値の商品を開発する共創事業にも取り組んでいる。

ファーメンステーションは米などのさまざまな糖質を含む農産物や食品から、高濃度のエタノールを発酵・蒸留・精製する独自技術を持つ。このエタノールは手肌への刺激や化学的なアルコール臭が強い通常のものと比べ、匂いを抑えて肌触りの良さなどを実現させているという。

また、事業展開で欠かせないエタノールの製造過程で生成される発酵粕は、化粧品原料だけでなく、地域の鶏や牛の飼料にも使われている。さらに鶏糞は水田や畑の肥料にするなど、ファーメンステーションはこれまで廃棄物ゼロの地域循環型モデルを構築してきた。

昨今、地域の未利用資源や食品残さなどを利用した循環型の取り組みは重要視されている。農林水産省によると、畜産業における飼料費は経営コストの約3~6割を占めているが、特に栄養価の高い濃厚飼料の大部分は輸入に依存しているという。そのためサステナブルな社会実現だけでなく、足元の飼料自給率向上の観点からも対応が急がれている。

サステナビリティ・トランスフォーメーション(SX)に向けて

これまでファーメンステーションは、アサヒグループとJR東日本と協業し、りんごの搾りカスから精製した「りんごエタノール」を使ったアロマ製品や除菌ウエットティッシュなどを製造している。いずれもアサヒグループとJR東日本グループが製造するりんご酒「シードル」の醸造工程から出る副産物を活用した商品となる。

また、ANAホールディングス傘下の全日空商事と協業し、天然由来成分99%となる「お米とバナナの除菌ウエットティッシュ」を開発した。同商品は、全日空商事グループがエクアドルから輸入・販売する「田辺農園バナナ」の規格外バナナと、ファーメンステーションが手がける休耕田のオーガニック米を原料に精製したエタノールを使ったものとなる。

これら2つのパートナーシップによる循環型の事業は、DXに次ぐ新たな概念となる「サステナビリティ・トランスフォーメーション(SX)」に対する取り組みだ。SXについては、経済産業省が2020年10月28日「サステナブルな企業価値創造に向けた対話の実質化検討会」の中間的なとりまとめの中で初めて提言したものだ。

経産省は長期的な視野に立って「企業のサステナビリティ」と「社会のサステナビリティ」を同期化する経営などが重要だとし、この経営のあり方を「サステナビリティ・トランスフォーメーション(SX)」と呼ぶ。今後、SXの普及やSXを踏まえた具体的な経営のあり方などについて、検討を進めていく考えだ。

現在は多くの企業がDXを進めている中、ファーメンステーションはスタートアップにもいずれSXの流れが来るとみる。2009年の創業からサステナブルな事業を展開してきたファーメンステーションは、SXが当たり前になった社会でその推進に大きく貢献していくかもしれない。

資金調達の背景

昨今、SDGsやESG投資の推進、カーボンオフセット(二酸化炭素排出ゼロ)やサーキュラーエコノミー(循環型経済)の推進など、環境問題への取り組みやサステナブルな事業創造が、多くの人から社会課題として認知されている。

認知は進むものの、技術革新やビジネスモデルなどのソリューションが確立されていないため、Cleantechやフードテックなど、テック系スタートアップにイノベーションの期待が集まる領域でもあるという。

海外に目を向けると、バイオ燃料などの「代替エネルギー」や植物由来の皮革製品などの「代替素材」、培養肉などの「代替食品」といった分野で多くのスタートアップが立ち上がり、時価総額10億ドル(約1000億円)以上のユニコーン企業も出てきた。

化粧品やライフスタイル製品の市場でも、オーガニック原料などを前提にした生活者ニーズの高まりや購買行動の変化が起きている。ファーメンステーションは「より本質的にサステナブルであることを前提とした製品・サービスの創出が課題になっている」と指摘する。

このような変化の中、実際にファーメンステーションでは自社ブランドの需要および化粧品・ライフスタイル製品などのOEMや原料提供の引き合いが急速に増えているという。

資金調達の目的

ファーメンステーションは今回の資金調達で、事業開発や技術力の強化を図り、事業成長に向けた人材採用を加速させていく。事業では1.原材料事業、2.自社ブランド事業、3.ODM / OEM事業、4.共創事業に注力していく。

同社は「研究開発型スタートアップとして、より幅広い未利用資源を元にしたエタノール開発や原料化にも研究開発投資を行う。また、サステナブルな製品開発・事業展開を目指す企業に向けた技術プラットフォームも構築していきたい」とコメントした。この他「独自性の高い技術とビジネスモデルを磨き、グローバル進出への準備も進めていく」と展望を語った。

原料料事業では、すでに展開するオーガニック認証のエタノールや米もろみ粕をはじめ、未利用資源を再生したオリジナル原料の開発と展開を促進する。直近の未利用資源の原料化事例では、岩手県産ヒエのヌカを世界で初めて化粧品原料化し、サステナブル原料「ヒエヌカオイル」「ヒエヌカエキス」を開発した。

自社ブランド事業では、天然由来100%でサステナブルであることを追求したオーガニック化粧品やライフスタイル製品を製造。自社オンラインサイトなどで販売していく。自社商品事例としては、オーガニック認証のある米エタノール原料を使った化粧品クオリティーのハンドスプレー や、オーガニック玄米を発酵させた原料を使用した洗顔石けん「奥州サボン」シリーズ などがある。

ODM / OEM事業においては、サステナブル・オーガニックにこだわったブランドの立ち上げなどを検討する企業に、自社原料やサステナブルな製品開発ノウハウを活かしたコラボレーション型のODM・OEMをより強化する。直近のコラボレーション型OEM事例では、AKOMEYA TOKYOとコラボレーションした米エタノールが原料のハンドリフレッシュスプレー がある。

そして共創事業では、独自の発酵技術など駆使して新たな事業を共創する未利用資源再生・循環パートナーシップ強化を進めていく。既存の未利用資源再生・循環パートナーシップの事例としては、アサヒグループ・JR東日本グループとシードル醸造副産物「りんごの搾り残さ」から「りんごエタノール」を精製し商品化した他、ANAグループと田辺農園の「規格外バナナ」から「バナナエタノール」を精製し商品化を行った。

これらの活動を通じ、社会課題の解決を行うソーシャルインパクトと、スタートアップとして事業・組織のスケールアップとを両立するカタチで企業成長を図っていく。

チームの強化(新経営チーム・採用)

(左から)酒井里奈代表、北畠勝太COO

(左から)酒井里奈代表、北畠勝太COO

ファーメンステーションは人材採用を強化していくため、コーポレート部門リーダー(コーポレート部門立ち上げ責任者)と事業開発(リーダー候補)などのポジションで募集を行っている。

コーポレート部門リーダーには、コーポレート部門専任1人目の責任者として、経理・財務・労務・総務・法務全般の仕組み化を中心に事業成長の基盤づくりを任せる。事業開発のポジションには、経営陣直下で、事業全般に関わる戦略立案から実行まで幅広く任せていくという。

カテゴリー:バイオテック
タグ:FERMENSTATION資金調達日本

持続可能な自動車製造を目指すBMWが二酸化炭素を排出しない製鉄技術を開発したBoston Metalに投資

Boston Metal(ボストン・メタル)が開発した二酸化炭素を排出しない鉄鋼生産技術を支援する投資家グループに、BMWが加わった。

ボストンを拠点とするこのスタートアップ企業は、TechCrunchでも報じたように、2021年初めに5000万ドル(約54億5000万円)の資金調達を目標としていたが、同社の関係筋によると、BMWが加わったことでこのラウンドは終了したとのこと。

関連記事:ビル・ゲイツ氏が支援するBoston Metalが金属産業の脱炭素化を目指し51.6億円調達

自動車メーカーの投資部門であるBMW iVentures(BMW iベンチャーズ)の支援を受けることで、Boston Metalはより持続可能な製造方法を大規模に求める企業と関係を築くことになる。例えば、欧州にあるBMWグループのプレス工場では、年間50万トンを超える鉄鋼を加工しているという。

「当社は、サプライヤーネットワークにおいて、生産時のCO2排出量が最も多い原材料や部品を体系的に特定しています」と、BMW AGの取締役会メンバーであり、購買およびサプライヤーネットワークを担当するAndreas Wendt(アンドレアス・ヴェント)博士は、声明の中で述べている。「鉄鋼もその1つですが、自動車の生産には欠かせません。そこで私たちは、鉄鋼のサプライチェーンにおけるCO2排出量を継続的に削減することを目指しています。2030年までに、CO2排出量を現在よりも約200万トン削減する必要があります」。

従来の鉄鋼生産では、二酸化炭素を排出する高炉が必要だが、Boston Metalによると、同社が開発した方法では、電気分解セルで鉄鋼に加工される銑鉄を生産することができるという。

Bill Gates(ビル・ゲイツ)氏が率いるBreakthrough Energy Ventures(ブレイクスルー・エナジー・ベンチャーズ)をはじめとする既存の戦略的・財務的投資家とともに、BMWは業界に莫大な影響力を持つ企業パートナーとしてこの投資家グループに加わり、今回の資金調達プロセスを締めくくることになった。

「当社の投資家は、上流の鉱山・鉄鉱石会社から下流の最終的な顧客まで、鉄鋼のバリューチェーン全体に及んでおり、高品質の鉄鋼を競争力のあるコストで大規模に生産できるBoston Metalの革新的なプロセスを評価してくれています」と、最高経営責任者で創業者のTadeu Carneiro.(タデウ・カルネイロ)氏は述べている。

カテゴリー:EnviroTech
タグ:BMW二酸化炭素Boston Metal資金調達環境問題投資持続可能性

画像クレジット:aydinmutlu / Getty Images

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(文:Jonathan Shieber、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

自然言語処理ライブラリをオープンソースで提供するHugging Faceが43.6億円調達

Hugging FaceがシリーズBで4000万ドル(約43億6000万円)を調達した。Additionがラウンドをリードしている。同社は、オープンソースの自然言語処理(NLP)ライブラリを開発してきた。GitHubにそのTransformersライブラリはあり、4万2000のスターと1万のフォークがある。

米国時間3月11日に行われた投資にはLux CapitalやA.Capital、Betaworksなど、これまでの投資家も参加。さらにDev Ittycheria(デヴ・イッティケリア)氏、Olivier Pomel(オリヴィエ・ポメル)氏、Alex Wang(アレキサンダー・ワン)氏、Aghi Marietti(アギ・マリエッティ)氏、Florian Douetteau(フロリアン・ドゥエトー)氏、Richard Socher(リチャード・ソーチャー)氏、Paul St. John(ポール・セント・ジョン)氏、Kevin Durant(ケビン・デュラント)氏そしてRich Kleiman(リッチ・クレイマン)氏らも参加した。

TransformersではBERT、GPT、XLNet、T5、DistilBERTなどの、よく使われているNLPのモデルを利用でき、これらのモデルを使ってテキストを、テキストの分類、質問への自動回答、テキストの生成などの処理といったいろいろなやり方で操作できる。

NLPのユースケースは極めて多い。現在多いのは、チャットボットのサポートだ。たとえばチャレンジャーバンクのMonzoは、Hugging Faceを楽屋裏で使って顧客からの質問に答えている。Hugging Faceを使っている企業はおよそ5000社あり、用途はさまざまだ。Microsoftは同社の検索エンジンBingに使っている。

ビジネスモデルとしては、同社は最近、優先順つきのサポートを立ち上げ、プライベートなモデルを管理したり、推論APIを提供したりしている。BloombergやTypeformも顧客となっている。

同社は今回新たに得た資金で、ニューヨークとパリの従業員数を3倍にする。その中にはリモートで仕事をする従業員もいる。同社が以下のように、銀行口座の詳細の一部を共有していることは少々興味深い。

Hugging Faceは、2021年1月と2月のキャッシュフローがポジティブだった。同社は1年あまり前に1500万ドル(約16億3000万円)のラウンドを実施したが、そのとき得た資金の90%は現在も同社の銀行口座にある。それ以降、同社の評価額は5倍になった。実際に調達の必要がないときは、そのことが交渉で好条件になるため、意外なことでもない。

同社はNLPデベロッパーの活気に満ちたコミュニティの世話をしているため、正しい路線上にあるといえる。モデルデータセットを閲覧でき、デベロッパーはそれらを利用したり寄与貢献したりして、Hugging FaceはNLP愛好家の要となる。

カテゴリー:ソフトウェア
タグ:Hugging Face資金調達自然言語処理オープンソース

画像クレジット:Hugging Face

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(文:Romain Dillet、翻訳:Hiroshi Iwatani)

倉庫業務の自動化を手がけるNimble Roboticsが約54.6億円調達

倉庫の自動化を手がけるNimble Robotics(ニンブル・ロボティクス)は米国時間3月11日、シリーズA資金調達ラウンドで5000万ドル(約54億6000万円)を調達したと発表した。

DNS Capital(DNSキャピタル)とGSR Ventures(GSRベンチャーズ)が主導し、 Accel(アクセル)とReinvent Capital(リインヴェント・キャピタル)が参加したこのラウンドで調達した資金は、同社が2021年中に従業員数を倍増させるために使われる予定だ。

スタンフォード大学の博士課程に在籍していたSimon Kalouche(サイモン・カルーシュ)氏が設立した同社のシステムは、深層模倣学習を利用している。これはロボット工学の研究では一般的な概念で、システムが模倣によってマッピングされ、改善されていく仕組みだ。

「研究室に5年間置いておき、このロボットのアプリケーションを作り上げてから最終的に現実世界で展開するのではなく、私たちは今日、展開しています」と、カルーシュ氏は語る。「これは完全な自律型ではなく、現時点では90〜95%程度の自律型です。残りの5~10%は人間のオペレーターが遠隔操作でサポートしますが、初日から信頼性が高く、1万日後も信頼性が高いと思います」。

Nimble Roboticsは、新型コロナウイルス感染流行による追い風を受けたロボット企業の1つだ。ウイルスの流行は、電子商取引の爆発的な成長と自動化に対する関心の高まりを引き起こし、倉庫のフルフィルメント業務に関するテクノロジーが著しく盛り上がる要因となった。Nimbleは、自社のシステムを迅速に展開したことからも利を得ている。

「私たちは、独自のロボットによる荷物の選別、配置、梱包を手がけた最初の企業というわけではありませんが、当社は急速に成長し、多くのロボットを現場に配備しています」と、カルーシュ氏はTechCrunchに語った。「多くの人は、ロボットを倉庫の隅に置いています。今、私たちは大量のロボットを導入しており、その数は急速に増えています。これらのロボットは現場で、それぞれのお客様のために、毎日何万もの実際の注文を処理しています」。

同社は今回、大規模な資金調達に加えて、取締役会に2人の目覚ましい人物を迎えた。スタンフォード大学でコンピュータサイエンスのセコイアプロフェッサーという地位に就くFei-Fei Li(李飛飛)氏と、Udacity(ユダシティ)の共同設立者でKitty Hawk(キティホーク)のCEOでもあるSebastian Thrun(セバスチアン・スラン)氏だ。

シード投資家でもある李氏は、このニュースに関連したリリースの中で、次のように述べている。「Nimbleは、信頼性と統合性の問題をどちらも解決します。同社のロボットは、いくつかの世界最大級の小売業者のために、1年以上にわたって、現場で信頼性の高い大規模なピッキング業務を行っています。彼らが開発しているAIを搭載した製品は、顧客である小売業者のために迅速で摩擦のない統合を実現します」。

カテゴリー:ロボティクス
タグ:Nimble Robotics資金調達倉庫

画像クレジット:Nimble Robotics

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(文:Brian Heater、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

ソフトバンクが支援するブラジルのVolpe Capitalが約87億円を調達し中南米への投資を開始

近年、ラテンアメリカのテックとベンチャーシーンは加速度的な成長を遂げている。より多くのグローバル投資家がこの地域のスタートアップを支援しており、特にフィンテックなどの特定の分野が爆発的に伸びている。

グローバル投資家が資金を投入しているのは企業だけではない。ファンドにも投資している。

米国時間3月10日、Volpe Capitalは、ラテンアメリカの高成長技術への投資を目的としたファンドの8000万ドル(約87億2000万円)のファーストクローズを発表した。このファンドは、1億ドル(約109億円)のコミットメント総額と1億5000万ドル(約163億5000万円)のハードキャップを目標としており、注目すべきことにソフトバンク、BTG、Banco Interの関連会社がアンカー投資家として名を連ねている。またVolpeは、同社の経営陣から「大規模なアンカー投資」を受けたという。

ブラジルのサンパウロを拠点とするこのファンドは、3人の共同パートナーAndre Maciel(アンドレ・マキエル)氏、Gregory Reider(グレゴリー・レイダー)氏、Milena Oliveira(ミレーナ・オリヴェイラ)氏によって設立された。特筆すべきは、マキエル氏はソフトバンクが50億ドル(約5449億円)を投じて設立した、ラテンアメリカに特化したイノベーションファンドの元マネージングパートナーであることだ。同氏は主にソフトバンクの支援を受けて、2019年にVolpeを立ち上げた。レイダー氏は、かつてWarburg Pincusで投資を行っていた。

マキエル氏はこのファンドの資金調達について「確固たるコミットメントを得て、大幅な応募超過となった」と述べ「ラテンアメリカにおいて同クラスのファンドが初めて行った資本調達としては最高のものの1つ」と思われると語った。

Volpe Capitalは今後2年半の間に約10〜15社への投資を計画しており、平均的な出資額はそれぞれ約500〜1000万ドル(約5億4000万〜約10億9000万円)になるとマキエル氏は予想している。

これまでにVolpeは、Grupo Uol社の子会社でブラジルのデジタル学習体験を再定義することを目的としたUol Edtech社を支援している。

マキエル氏はTechCrunchにこう語った。「我々は急いでいません。最初の取引に満足しており、資本保全を考慮に入れています。今は市場がホットだと思っているので、忍耐強くサイクルを利用していくつもりです」。

このファンドの戦略は、積極的な資金調達を行っていない企業を狙うことだという。

「我々がアプローチしたときに、必ずしも資金を調達しようとしていない企業に投資したいのです」とマキエル氏は語る。

そして同ファンドは、ステージやプライマリー・セカンダリーの違いにとらわれないという。

Volpeは評価額が5000万ドル(約54億5000万円)未満のアーリーステージの企業や、レイターステージの高成長企業への投資を目指している。ファンドの最初の投資先であるUol Edtech社は後者に該当し、EBITDAマージンが30%を超えているとマキエル氏は述べている。

Volpeはたとえテック関連であっても、資本集約的な産業は避ける予定だ。

「そうした企業は、Volpeよりも懐の深い投資家に適しています」とマキエル氏は語る。

その代わりに、EdTech、ヘルステック、ソフトウェア、フィンテック(クレジット関連ではないもの)への投資を視野に入れているという。

「我々は、ラテンアメリカでディスラプションが起こりやすく、現地でのカスタマイズが必要なセクターを好んでいます」とマキエル氏はいう。「ラテンアメリカにおけるVC・成長産業の段階を考えると、ジェネラリストである方が良いと考えています」とも。

ソフトバンクインターナショナルのCEOであるMarcelo Claure(マルセロ・クラウレ)氏は、マキエル氏を「ラテンアメリカにおけるソフトバンクのすばらしい創業パートナー」の1人と評している。

クラウレ氏は声明で「Volpeのアンカー投資家の一員になれたことを大変うれしく思い、今後も関係を続けていくのを楽しみにしています」と付け加えた。

ソフトバンクとのつながりがあるアンカー投資家がもう1人いる。ブラジルで上場し、時価総額が70億ドル(約7629億円)を超えるフィンテックプラットフォームInterのCEOであるJoão Vitor Menin(ジョアン・ヴィトル・メニン)氏は、マキエル氏がソフトバンクを通じてInterプラットフォームへの投資を主導したことを指摘した。また、メニン氏によると、マキエル氏は取締役としても「価値ある貢献をした」という。

カテゴリー:VC / エンジェル
タグ:Volpe Capitalラテンアメリカ資金調達ブラジル

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(文:Mary Ann Azevedo、翻訳:Aya Nakazato)