決済サービスStripeが評価額10兆円超で約655億円調達、欧州事業の拡大に注力

資金を調達中との報道のすぐ後に、決済大手のStripe(ストライプ)はその詳細を明らかにした。同社は950億ドル(約10兆3680億円)の評価額で6億ドル(約655億円)の調達を完了した。

調達した資金は欧州本社を中心に欧州での事業拡大と、グローバルの決済・財務ネットワークの強化に使う、と同社は述べている。

「当社は2021年、欧州、特にアイルランドにかなり投資します」とStripeの共同創業者で最高責任者のJohn Collison(ジョン・コリソン)氏は声明で述べた。「フィンテック、モビリティ、小売、SaaSであろうとなかろうと、欧州のデジタル経済の成長機会は巨大です」。

資金調達は大手保険会社2社からの出資が含まれるとStripeは述べた。Allianz X fundを通じたAllianz(アリアンツ)とAxa(アクサ)が、Baillie Gifford、Fidelity Management & Research Company、Sequoia Capital、そして米国の投資家らやアイルランド国債管理庁(NTMA)とともに本ラウンドに出資した。

保険会社の出資はStripeが次に進もうとしている方角をおそらく示している。結局、フィンテックと保険は緊密に連携している。

「Stripeは世界経済成長のアクセラレーターであり、持続可能な金融のリーダーです。過去10年、大きな進歩を遂げたにもかかわらず、Stripeの成長のほとんどはまだこれからです」とNTMAのCEOであるConor O’Kelly(コナー・オケリー)氏は声明で述べた。「アイルランドと欧州の最も傑出した成功物語を支援し、そうすることで何百万という野心を持つ企業がグローバル経済においてこれまで以上に競争力を持つのをサポートすることをうれしく思います」。

評価額を増やした大きなラウンド、そして拡大している資本政策表は必然的にStripeの次のステップがどのようなものになるのか、そこには上場が含まれているのかといった疑問につながる。同社はユーザー数や売上高、利益といった詳細についてはこれまでずっと隠してきた。そして今回のニュースでも明らかにせず、IPO計画についてコメントもしなかった。

とりわけ、米国時間3月14日のニュースにあった評価額は同社がセカンダリーマーケットで取引されていると報じられた中での評価額1150億ドル(約12兆5520億円)より小さい。そして評価額950億ドルでクローズしたラウンドは1000億ドル(約10兆9150億円)超となるだろうとも噂されていた。

そうした数字が正確ではなかったのか、あるいは新型コロナウイルスが評価額に影響を与えたのか、欧州の投資家が単にかなり値切ったのかははっきりとしない。

欧州での成長への注力はまた、EMEA(欧州、中東、アフリカ)のGoogleのコミュニケーション担当副社長でジャーナリストだったPeter Barron(ピーター・バロン)氏の採用にある意味つながっている。

ジョン氏と、CEOである兄Patrick Collison(パトリック・コリソン)氏が創業したStripeは、デジタル決済、特にオンライン決済が軌道に乗り始めたときに、デベロッパーがいくつかのラインのコードで決済をアプリやサイトに盛り込めるようにするシンプルな方法を構築する価値を認めた一連のコマーススタートアップの1社だ。

そのコードの裏で、Stripeは国内外で機能する決済に必要とされるあらゆる複雑な要素を統合する困難な作業を行った。これまで同社は、事業者が法人化や不正管理、キャッシュフロー管理などを含む事業の商業的な業務を行うのを単にサポートするだけでなく、自社をワンストップショップにするために一連のサービスをを提供し、プラットフォームを成長させてきた。

そうした中で同社は欧州で事業を拡大し、今では欧州42カ国中31カ国に顧客を抱える。同社は当初スタートアップ(特に小規模で新しいスタートアップ)への決済インフラ提供で事業を開始して成長してきたが、今日同社の顧客リストには多くの大手企業も含まれる。欧州の顧客としては、Axel Springer、Jaguar Land Rover、Maersk、Metro、Mountain Warehouse and Waitrose、Deliveroo (英国)、Doctolib(フランス)、Glofox(アイルランド)、Klarna(スウェーデン)、ManoMano(フランス)、N26(ドイツ)、UiPath(ルーマニア)、Vinted(リトアニア)などがある。

決済とその周辺サービスにおける競争は激しいが、さらに成長するチャンスはまだ大いにある。新型コロナの発生と、実在店舗よりウェブやアプリで買い物する人が増えたことで、現在コマースの14%ほどがオンライン上でのもので、1年前は10%だったことを考えると大きなシフトだとStripeは指摘している。

カテゴリー:フィンテック
タグ:Stripe資金調達

画像クレジット:TechCrunch

原文へ

(文:Ingrid Lunden、翻訳:Nariko Mizoguchi

投稿者:

TechCrunch Japan

TechCrunchは2005年にシリコンバレーでスタートし、スタートアップ企業の紹介やインターネットの新しいプロダクトのレビュー、そして業界の重要なニュースを扱うテクノロジーメディアとして成長してきました。現在、米国を始め、欧州、アジア地域のテクノロジー業界の話題をカバーしています。そして、米国では2010年9月に世界的なオンラインメディア企業のAOLの傘下となりその運営が続けられています。 日本では2006年6月から翻訳版となるTechCrunch Japanが産声を上げてスタートしています。その後、日本でのオリジナル記事の投稿やイベントなどを開催しています。なお、TechCrunch Japanも2011年4月1日より米国と同様に米AOLの日本法人AOLオンライン・ジャパンにより運営されています。