がん免疫細胞療法に向け細胞医薬品の開発に取り組む九州大学発スタートアップ「ガイアバイオメディシン」が1億円調達

がん免疫細胞療法に向け細胞医薬品の新規開発に取り組む九州大学発スタートアップ「ガイアバイオメディシン」が1億円調達

大阪大学ベンチャーキャピタル(OUVC)を無限責任組合員とするOUVC2号投資事業有限責任組合(OUVC2号ファンド)は6月4日、ガイアバイオメディシン(GAIA BioMedicine)に対し、1億円の投資を実行したと発表した。大阪大学以外の国立大学の研究成果を活用したスタートアップ企業に対する投資が可能になったOUVC2号ファンドでの初の他大学案件という。

ガイアバイオメディシンでは、調達した資金により、非小細胞肺がん患者を対象とした第I相臨床試験を完了させるとともに、2ndパイプラインの治験に向けた準備も進める。OUVCは、同社事業について、有効な治療薬が存在しない創薬の開発につながるものであり、医学的・社会的な意義が大きいと判断し、投資を実行したとしている。

2015年10月設立のガイアバイオメディシンは、九州大学大学院薬学研究院・米満吉和教授の研究成果を活用し、新規細胞医薬品の開発に取り組む九州大学発のスタートアップ企業。

細胞医薬品とは、近年注目されている新たな創薬モダリティ(手法)にあたる、細胞そのものを人に投与して治療効果を得る薬剤を指し、もともと人に備わるT細胞やナチュラルキラー(NK)細胞などの免疫細胞をベースにがん細胞への攻撃力を増強させた細胞が利用される。ガイアバイオメディシンでは、NK細胞と形質上類似するNK様細胞(GAIA-102)を開発し、患者本人の細胞ではなく健康なドナーから採取した細胞「他家細胞」を用いることによりスケーラブルな医療を可能とする新たながん免疫細胞療法の開発に取り組んでいるという。

GAIA-102は、死亡数の最も高い肺がんの中でも8割を占める「非小細胞肺がん」への高い有効性が見込まれており、T細胞を遺伝子改変したCAR-Tなど他の細胞医薬品に比べて固形がんに対し有望な免疫細胞療法となることが期待されるという。また、他の細胞医薬品と異なり、極めてシンプルな製造・投薬プロセスが可能となることから、商業利用の点でも優れた競争優位性を有するとしている。

関連記事
山口大学および国立がん研究センター発スタートアップのノイルイミューン・バイオテックが23.8億円調達
同種由来iPS細胞由来心筋細胞シートの開発・事業化を手がける大阪大学発スタートアップ「クオリプス」が20億円調達
AIが「細胞を見分ける」新技術でがんの超早期発見などを目指すCYBO、6000万円調達
陽子線がん治療装置の小型化・低価格化開発を手がけるビードットメディカルが7億円を調達
東大IPCがガンの診断・治療に役立つ独自抗体医薬を開発する凜研究所に2億円を出資
心臓疾患の治療方法研究・開発のメトセラが総額13.2億円を調達、心不全向け製品の臨床試験を予定
細胞治療に向けた細胞量産技術開発に取り組む「セルファイバ」が1.05億円を調達

カテゴリー:バイオテック
タグ:医療(用語)大阪大学ベンチャーキャピタル / OUVCガイアバイオメディシン(企業)がん / がん治療(用語)九州大学(組織)細胞療法資金調達(用語)日本(国・地域)

マイオリッジが京都大学保有のiPS細胞由来心筋細胞製造方法について海外企業と初のライセンス契約

マイオリッジが京都大学保有のiPS細胞由来心筋細胞製造方法について海外企業と初のライセンス契約

京都大学発スタートアップ「マイオリッジ」は4月19日、iPS細胞由来心筋細胞を用いた再生医療関連製品を開発する米Avery Therapeutics(Avery)との間で、京都大学およびマイオリッジが保有するiPS細胞由来心筋細胞の分化誘導法について非独占的なライセンスをAveryへ共与するライセンス契約を締結いたしたと発表した。

この契約に基づきAveryは、同誘導法を使用した製品の製造・開発販売を北米において行う非独占的な権利を得る。現在Averyの製品は、非臨床試験の段階にあるという。

なお同契約は、公表されている限り、京都大学の保有するiPS細胞由来心筋細胞製造方法として、海外企業に対して臨床応用を目指した技術供与を行う、初めてのライセンス契約となる。マイオリッジは、京都大学よりライセンスを受けた同誘導法に加えて、iPS細胞などの幹細胞や中胚葉由来細胞(心筋細胞、間葉系幹細胞、血球系細胞など)の製造にかかる基盤技術を有している。今後も独自性の高い基盤技術を世の中へ送り出すことで、再生医療の普及に貢献するとしている。

マイオリッジは、京都大学の研究成果を基に2016年8月に設立されたスタートアップ。新規低分子化合物を用いることで高価なタンパク質を必要とせずに、浮遊培養にて多能性細胞を心筋細胞を含む分化細胞へ分化誘導できる基盤技術を保有している。同誘導法は京都大学よりライセンスを受け実施している。

同技術を活用したiPS細胞由来心筋細胞の販売のほか、自社で保有する低分子化合物データベース、特許出願中の培地成分探索技術を活用したオーダーメイドの培地開発支援、製造プロセス開発支援といった、再生医療等製品を開発する企業を対象としたサービスなどの事業を展開している。

Averyは、心血管疾患に苦しむ患者のため高度な治療法を開発している企業で、主要な開発パイプラインは、慢性心不全の治療を目的に開発中の同種再生医療製品MyCardiaとなっている。同社は、独自の製造プロセスを活用しMyCardiaの大規模製造を実現し、凍結保存することで即時使用可能な製品としてMyCardiaを販売する予定。さらに同社は、独自の組織プラットフォームを活用し、他の心血管系疾患を対象とした開発も進めている。

関連記事
研究以外の業務で疲弊する日本の研究業界の効率化を図るバイオインフォマティクス解析「ANCAT」が4000万円調達
同種由来iPS細胞由来心筋細胞シートの開発・事業化を手がける大阪大学発スタートアップ「クオリプス」が20億円調達
バイオバンクの保存血液からiPS細胞の樹立に成功、15万人分の血液が今後の研究に貢献
AI創薬・AI再生医療スタートアップ「ナレッジパレット」が創薬・再生医療領域の停滞を吹き飛ばす
心臓疾患の治療方法研究・開発のメトセラが総額13.2億円を調達、心不全向け製品の臨床試験を予定
細胞治療に向けた細胞量産技術開発に取り組む「セルファイバ」が1.05億円を調達

カテゴリー:バイオテック
タグ:iPS細胞(用語)医療(用語)京都大学(組織)再生医学・再生医療細胞療法マイオリッジ(企業)日本(国・地域)

同種由来iPS細胞由来心筋細胞シートの開発・事業化を手がける大阪大学発スタートアップ「クオリプス」が20億円調達

同種由来iPS細胞由来心筋細胞シートの開発・事業化を手がける大阪大学発スタートアップ「クオリプス」が20億円調達

同種由来iPS細胞由来心筋細胞シートの開発・事業化を行う、大阪大学発スタートアップ「クオリプス」は3月16日、総額約20億円の第三者割当増資に関する契約を締結したと発表した。引受先は、JICベンチャー・グロース・ファンド1号投資事業有限責任組合(JICベンチャー・グロース・インベストメンツ)、ジャフコSV6投資事業有限責任組合、ジャフコSV6-S投資事業有限責任組合(ジャフコ グループ)、京大ベンチャーNVCC2号投資事業有限責任組合、阪大ベンチャーNVCC1号投資事業有限責任組合(日本ベンチャーキャピタル)、富士フイルム、セルソース他。

同種由来iPS細胞由来心筋細胞シートとは、ヒトiPS細胞から作製した心筋細胞(iPS心筋)を主成分とした他家細胞治療薬で、シート状に加工したものを心臓に移植するという(他家とは、第三者提供のiPS細胞から作った細胞を使うことを指す)。有効な治療法がない重症心不全の患者を対象とし、心機能の改善や心不全状態からの回復等の治療効果が期待されている。

今回調達した資金により、同社はこの同種由来iPS細胞由来心筋細胞シートの実用化を一層加速化させ、様々な細胞製品の培養・加工を通じ、画期的な細胞治療薬の創生に貢献するとしている。

富士フイルムは、同種由来iPS細胞由来心筋細胞シートを用いた心筋再生医療研究開発の促進を、またセルソースは、同種由来間葉系幹細胞および同種由来iPS細胞由来エクソソームの利活用を通じた再生医療分野での協業を期待し資本参加したという。

クオリプスは、大阪大学の技術・研究成果をベースに、同種由来iPS細胞由来心筋細胞シートの開発・事業化を行うことを目的とする、2017年3月設立の大阪大学発スタートアップ。同種由来iPS細胞由来心筋細胞シートの製造方法に関する研究開発を推進し、さらに効率的な生産技術を確立して、世界に先駆けて再生医療等製品として製造販売承認を取得することを目指す。

同社は2020年夏、同種由来iPS細胞由来心筋細胞シートの早期実用化を進めるべく、現在大阪大学で実施中の医師主導治験を支援するとともに、同製品の製造・供給体制を構築するため商業用細胞培養加工施設を大阪府箕面市において稼働させている。

また今後、3年後の上市に向けて、研究開発の加速化や商業用細胞製造施設の安定稼働を図り、事業化体制を構築するとともに、海外展開のための準備、第2、第3プロジェクトの探索研究を推進するため、第三者割当増資の実施に至ったという。

関連記事
大手バイオテクノロジー企業ElevateBioが細胞・遺伝子治療技術開発で約573億円を調達
AIが「細胞を見分ける」新技術でがんの超早期発見などを目指すCYBO、6000万円調達
陽子線がん治療装置の小型化・低価格化開発を手がけるビードットメディカルが7億円を調達
同種由来iPS細胞由来心筋細胞シート実用化を目指す大阪大学発の「クオリプス」が約20億円調達
細胞治療に向けた細胞量産技術開発に取り組む「セルファイバ」が1.05億円を調達
新型コロナ対応の細胞療法の早期治験を米食品医薬品局がCelularityに認可
英国のバイオテックスタートアップMogrifyが革新的な細胞療法を市場投入へ

カテゴリー:バイオテック
タグ:医療(用語)大阪大学がん / がん治療(用語)クオリプス再生医学・再生医療細胞療法資金調達(用語)日本(国・地域)

心臓疾患の治療方法研究・開発のメトセラが総額13.2億円を調達、心不全向け製品の臨床試験を予定

心臓疾患の治療方法研究・開発のメトセラが総額13.2億円を調達、心不全向け製品の臨床試験を予定

線維芽細胞を用いた心臓疾患の治療方法の研究・開発を手がけるメトセラは1月4日、第三者割当増資による総額約13.2億円の資金調達を完了したと発表した。2020年4月に完了したシリーズB-1ラウンド(総額4.3億円)に加えて、B-2ラウンドでは新たに約8.9億円を調達した。引受先は、リードインベスターの東京大学エッジキャピタルパートナーズ(UTEC)、ベンチャーキャピタルおよび事業会社など。

また、2020年12月25日付けで、UTEC取締役/パートナーの宇佐美篤氏が社外監査役に、UTECプリンシパルの小林宏彰氏が社外取締役に、それぞれ就任した。

調達した資金により、グローバル展開も視野に、製造プロセスの効率化、後続パイプラインの創出、およびアカデミアや企業との戦略的連携を強力に推進する。

メトセラは2016年の創業以来、心不全を対象とした新たな細胞療法の研究開発に取り組んできた。同社リードアセット「MTC001」は、VCAM1陽性心臓線維芽細胞(VCF)を用いた細胞治療で、非臨床試験において損傷した心臓組織の再生を促すなどの、良好な治療効果を確認している。

今回の資金調達を通じ、MTC001の第I相臨床試験の実施体制をさらに強化可能となった。MTC001は、医療機関の負担を軽減したワークフローとシンプルな製造プロセスを実現した細胞治療。患者本人の心臓から低侵襲に採取された組織をもとに製造を行うことで、製造や安全性において他の技術に対して大きなアドバンテージを有しているという。

関連記事
同種由来iPS細胞由来心筋細胞シート実用化を目指す大阪大学発の「クオリプス」が約20億円調達
細胞治療に向けた細胞量産技術開発に取り組む「セルファイバ」が1.05億円を調達
免疫システムの完全なマッピングを目指すImmunai、細胞療法と癌免疫療法に新しい道を拓く
新型コロナ対応の細胞療法の早期治験を米食品医薬品局がCelularityに認可
英国のバイオテックスタートアップMogrifyが革新的な細胞療法を市場投入へ

カテゴリー:ヘルステック
タグ:医療(用語)細胞療法資金調達(用語)メトセラ日本(国・地域)

同種由来iPS細胞由来心筋細胞シート実用化を目指す大阪大学発の「クオリプス」が約20億円調達

同種由来iPS細胞由来心筋細胞シート実用化を目指す大阪大学発の「クオリプス」が約20億円調達

クオリプスは12月4日、総額約20億円の第三者割当増資に関する契約を締結したと発表した。引受先は、大幸薬品、京都大学イノベーションキャピタル、テルモ、ダイダン、ステムセル研究所、および朝日インテック。

今回の資金調達により、同種由来iPS細胞由来心筋細胞シートの実用化を一層加速化させ、様々な細胞製品の培養・加工を通じ、画期的な細胞治療薬の創生に貢献する。

大幸薬品は再生医療にかかる衛生管理分野での協業など、ダイダンは商業用細胞培養加工施設を活用した管理技術の一層の高度化など、ステムセル研究所とは再生医療関連でのシナジーなど、朝日インテックは細胞を体内デリバリーするシステムの開発などの期待のもと、資本参加を行っている。

クオリプスは、2017年3月に大阪大学の技術・研究成果をベースに、同種由来iPS細胞由来心筋細胞シートの開発・事業化を目的に設立された大阪大学発スタートアップ。

同種由来iPS細胞由来心筋細胞シートの製造方法に関する研究開発を推進し、さらに効率的な生産技術を確立して、世界に先駆けて再生医療等製品として製造販売承認を取得することを目指している。

同種由来iPS細胞由来心筋細胞シートとは、ヒトiPS細胞から作製した心筋細胞(iPS心筋)を主成分とした他家細胞治療薬にあたり、シート状に加工されたものを心臓に移植する。有効な治療法がない重症心不全の患者を対象とし、心機能の改善や心不全状態からの回復等の治療効果が期待される。

同社は、同種由来iPS細胞由来心筋細胞シートの早期実用化を進めるべく、現在大阪大学で実施中の医師主導治験を支援するとともに、当該製品の製造・供給体制を構築するため、本年夏に商業用細胞培養加工施設を大阪府箕面市に稼働させた。

今後、3年後の上市に向けて、研究開発の加速化、商業用細胞製造施設の安定稼働を図り、事業化体制を構築するとともに、海外展開のための準備、第2、第3プロジェクトの探索研究を推進するため、第三者割当増資の実施に至ったという。

関連記事
細胞治療に向けた細胞量産技術開発に取り組む「セルファイバ」が1.05億円を調達
新型コロナ対応の細胞療法の早期治験を米食品医薬品局がCelularityに認可
英国のバイオテックスタートアップMogrifyが革新的な細胞療法を市場投入へ

カテゴリー:ヘルステック
タグ:医療(用語)大阪大学クオリプス再生医学・再生医療細胞療法資金調達(用語)日本(国・地域)

新型コロナ対応の細胞療法の早期治験を米食品医薬品局がCelularityに認可

Celularity(セルラリティ)は、ベンチャーキャピタルから支援を受け、癌治療のための画期的な細胞療法に取り組んでいる。新型コロナウイルス(COVID-19)に有効と考えられる治療法に関する早期臨床試験を開始するため、必要なFDA(米食品医薬品局)からの初期認可を受けた。

画像クレジット:Andriy Onufriyenko/Getty Images

Crunchbaseによると、同社はこれまでに、少なくとも2億9000万ドル(約313億円)を調達している。「ナチュラルキラー」(NK)細胞療法を使用して、免疫システムが疾患と闘う際の反応を高める。Celularityでは、こうしたNK細胞を、胎盤組織から培養された幹細胞から得ている。通常は、病院が医療廃棄物とみなしているものだ。

同社は、ベンチャー投資会社のSection 32と、いくつかの戦略的投資家から支援を受けている。その中には、現在はブリストル・マイヤーズ(Bristol Myers)の一部門となったCelgene、生物医学技術開発会社のUnited Therapeutics、J. Craig Venter(J・クレイグ・ベンタ―()氏によって創立され、ベンチャーキャピタルから支援を受けたスタートアップのHuman Longevity、そして上場している生物医学企業のSorrento Therapeuticsが含まれる。Celularityは、新たな細胞療法についていくつかの応用に取り組んでいたが、それはもともと癌治療に焦点を当てたものだった。

同社が成し遂げた本当のブレークスルーは、細胞療法に使う細胞を、患者から取り出した細胞から培養する必要がないこと。それは時間もお金もかかるプロセスなのだ。それゆえ、同社への期待は高く、多くの資金が集まった。Celularityは、NK細胞を生成して保存できるので必要なときにいつでも輸血できる。

Celularityでは「FDAの承認を得て、86人を対象とした小規模な治験を開始し、新型コロナウイルスに感染した成人に対し、CYNK-001免疫療法による治療の有効性をテストする予定である」と述べている。中国でも、ナチュラルキラー細胞が新型コロナウイルスの治療に使用できるかどうかをテストする、少なくとも2つの研究が進行中だ。

NK細胞は、身体の免疫系の一部である白血球の一種。特定の病原体を標的とするt細胞とは異なり、NK細胞は通常、免疫システムをサポートするように働く。感染や変異によってストレスを受けていると判断される体内の細胞を特定して破壊する。

この治療法は、特定の種類の癌の治療には効果を上げているものと考えられる。同社の研究者は、新型コロナウイルスを全身に広げる新型コロナウイルスの能力を停止させることで、同様の結果が得られると推測している。

ただし、NK療法を実施するにあたっては、それ相応の潜在的な障害とリスクがある。何よりも、新型コロナウイルスは免疫システムを暴走状態にする可能性があり、致命的となる場合もある。感染によって引き起こされる「高サイトカイン血症」だ。免疫システムが、肺の健康な細胞を攻撃し始め、臓器不全を起こして死に至らしめる。その場合、新型コロナウイルスに対する免疫反応を高めることは、患者にとって危険なこととなる。またNK細胞が、新型コロナウイルスを引き起こす新型コロナウイルスに感染している細胞を検出できず、治療の効果が得られない可能性もある。

「研究では、ウイルスの種類に関係なく、ウイルス感染に対してNK細胞が強力に活性化されることが確かめられています」とCelularityの最高科学責任者であるXiaokui Zhang(キアオクイ・ジャング)氏は、声明で述べている。「こうした作用は、CYNK-001が感染した細胞を排除することによって、SARS-CoV-2ウイルスの複製を阻害し、疾患の進行を遅らせることで、新型コロナウイルスの患者に有益である可能性を示唆しています」。

新型コロナウイルス 関連アップデート

原文へ

(翻訳:Fumihiko Shibata)

英国のバイオテックスタートアップMogrifyが革新的な細胞療法を市場投入へ

再生医療などの分野で、革新的な細胞療法開発の体系化を進めている英国ケンブリッジに拠点を置くバイオテック系スタートアップであるMogrify(モグリファイ)が、1600万ドル(約17億4000万円)という最初のシリーズA投資を決めた。

Ahren Innovation Capital(アーレン・イノベーション・キャピタル)、Parkwalk (パークウォーク)、24Haymarket(トゥエンティーフォー・ヘイマーケット)による今回の投資に先立ち、2月には400万ドル(約4億3500万円)のシード投資を受けており、今日までの合計で2000万ドル(約21億7400万円)の資金を調達している。

Mogrifyのアプローチを簡単に説明すると、大量のゲノムデータを分析し、成熟細胞を、幹細胞の状態にリセットすることなく、ある細胞種から別の細胞種に転換させるのに必要な特定のエネルギーの変化を識別するというものだ。多種多様な治療使用事例に応用できる可能性が非常に大きい。

私たちがMogrifyで行おうとしているのは、そのプロセスを体系化して、これが元の細胞、これが目標とする細胞、これがそれぞれのネットワークの違い。そしてこれが、成熟細胞を別の成熟細胞に幹細胞ステージに戻すことなく転換させなければならない治療介入点である可能性が最も高い場所だとわかるようにすることです」とCEOで投資者のDarrin Disley(ダリン・ディズリー)博士は話す。

博士によると、今のところ15回試して15個の細胞転換に成功しているという。Mogrifyの事業は3つの大きな柱で構成されている。細胞療法のための内部プログラム開発(現在開発中の細胞療法には、増殖軟骨移植の強化、眼損傷の非侵襲性治療法、そして血液疾患の治療が含まれる)。また、免疫療法に使用する細胞の普遍的な供給源の開発も行っている。ディズリー博士によると、それは疾患を食うものとして働くそうだ。

もうひとつの柱は、投機的な知的財産の開発だ。「私たちは特定の細胞の転換を核とし、治療範囲をごく短時間で特定できる立場にいます。テクノロジーの体系的な性質のため、それら細胞の周囲には知的財産が急速に発生し、知的財産の領域が築かれていきます」と彼は言う。提携関係は3番目の柱だ。同社は開発や標的細胞療法の市場投入を他社と共同で行っている。ディズリー博士は、すでにいくつかの提携が決まっているが、まだ社名は公表できないと話している。

Mogrifyはゲノミクスにおけるこの10年間分の研究結果を基礎にしているが、特にFantom 5と呼ばれる国際的な研究活動で得られたデータセットに依存している。その創設者は、優先的にデータセットが利用できることになっている。

「私たちは、その膨大なFantomデータセットからスタートしました。これが基盤です。背景と言ってもいいでしょう。それは米国の2つの都市、シカゴとニューヨークに例えられます。元になる細胞があり、目標となる細胞がある。そして、それぞれのネットワークの背景データ(すべての建物、すべての超高層ビル)をすべて手にしているとします。この2つを比較すれば、その遺伝子発現の差異を識別できます。従って、どの要素がそれらの遺伝子の大きな配列を調整しているのかを特定できます。そうして2つの差異の特定が開始できるのです」とディズリー氏は説明している。

「そして私たちは、その膨大なデータセットにDNAタンパクとタンパク質間相互作用を追加しました。それにより、すべてのデータを重ねて見ることができます。さらにその上に、新しい次世代シークエンスデータとエピジェネティクスのデータを重ねました。そうして、膨大なデータセットが出来上がりました。それは、あらゆる細胞種のネットワークマップを手に入れたことと同じです。これを使えば、細胞の状態を転換させるのに、何回どのような介入が必要かがわかります。しかもシステマチックに。ひとつだけが提示されるのではありません。ランキングが示されます。数百件になることもあります。重複することもあります。なので、例えばひとつの気に入ったものを試してみて、思ったようにいかなかったときは、最初に戻って別のものを選んで試すことができます。もしその要素に知的財産権の問題が関連しているときは、そのネットワークは忘れて別のルートを使用します。そして、ひとたび標的の細胞に辿り着けたなら、そしてそれが調整を必要としていたなら、実際にシークエンスを変更して、最初の状態に戻して再出発ができます。そしてまた、この最適化プロセスを実行します。すると、結果として特許が得られます。物質特許を構成する小さな分子のようなものですが、それが癒しになります。目的が達成できなくても、細胞の構成要素は得られるのです」。

概念から出発して、新しい細胞療法を発見し、市場に送り出すまでに要する時間は、ディズリー博士の話から察するに4年から7年程度のようだ。「GMPに準拠した製造工程の基礎となる細胞種を特定できれば、治療指標に従って調整が行えるようになり、細胞療法を開発し、5年以内には市場に送り出せます」と彼は話す。「小さな細胞が市場で本格的な治療に使われるようになるまで、10年、15年、20年もの時間を要した時代とは違います。患者を治療する際、ほかに治療法がない場合はフェーズ2に進み、安全性および有効性の研究を行います。彼らの疾病という点では、すでに実際の治療が始まっています。もし適切に行えれば、早めの認証が得られます。それがダメでも条件付きの認証が得られます。なのでフェーズ3(試験)に移行する必要すらありません」。

「私たちは人工知能は一切使っていません」と彼は、偏りのないアプローチで使用するのが最も望ましいと主張する巨大で極端なデータ領域の中の企業に投資した経験から強調した。「私が思うに、AIはまだその道を探っている段階です」と彼は続けた。

「本質的にそれは、わずかな量のデータから答えを導き出そうとするものですが、学習に使用したデータ以上の答は出せません。しかもAIの危険な部分は、あなたが認識して欲しいものを認識するように教育されるところにあります。AIは、自分が何を知っているかを知らないのです。このような膨大な細胞ネットワークのデータなどを生成し続けるなら、それと組み合わせることで、機械学習やAIの側面を取り入れてもいいでしょう。しかし、そのデータを持たないAIでは、Mogrifyは決して成り立ちません。データはどうしても必要です。そしてそのデータは非常に複雑であり無数の組み合わせが発生します。それらの遺伝子の規則という面だけでも2000種類の転写因子があります。しかもそれらはネットワーク上でタンパク質間相互作用のために関わり合いを持ちます。そこにはエピジェネティクスの面もあり、後に細胞の微生物叢の効果も加わります。したがって、細胞の表現型に影響を及ぼす可能性のある要素が無数に生み出されるのです。なので、AIを使う際には少々注意が必要です。システムの中で十分な信頼が得られるようになれば、最適化のためのツールとして活用できるでしょう」と語る。

シリーズA投資で得た資金は、Mogrifyの経営の強化と社員の増員に使われる予定だ。これには、業界からの上級管理職や専門家のスカウトも含まれる。また、治療法開発計画の予算にも回される。ディズリー博士によれば、その一環として、Jane Osbourn(ジェーン・オズボーン)博士を会長に迎え入れることが決まっているという。

「私たちは、大手製薬会社から細胞療法の経験を持つ人材を数多く招くつもりです。同時に、製造と配送の経験を持つ人たちも招きます。私たちは、単なる技術系企業では終わりません」と彼は言う。「すでに私たちは大変に大きな力を持っています。技術と早期の創薬のサイドではすでに35名が働いていますが、さらに30名を増員する予定です。しかし、製品を市場に送り出すために、大手製薬会社、細胞療法開発、製造での経験を持つ人間を今後も増やしていきます」。

シリーズAの資金の使い道として、提携先探しも大きな柱になっている。「私たちは、適切な戦略パートナーを探しています。提携関係の中で複数のプログラムが行えるような戦略パートナーと出会いたいと思っています」と彼は言い足した。「そして、細胞転換で特定の問題を抱えている領域との一連の戦略的な取引を重ねます。必要ならば、これらはターンキー契約にできます。それでも私たちは、最前線に立ち、道標となり、特許がありますが、その数は多くありません」。

現在は、今後2年から2年半までの間の十分な資金があるものの、シリーズAをオープンにしたまま、これから12カ月の間にラウンドを最大で1600万ドル(約17億4000万円)まで拡大させることも可能だ。

「興味を示してくれる投資家が大勢います」とディズリー博士は私たちに語った。「今回のラウンドでは、私たちは実際にオープンにはしませんでした。内部の投資者と以前一緒に仕事をしていたとく親しい人たち、そして列を作っていた投資家たちから資金を調達した際には、そうしていました。そのため私たちは、今後12カ月間で額を増やしたくなったときに増やせるようにオープンのままにしています。これがもしシリーズAなら、最大でさらに1600万ドルを調達できたでしょうが、私たちは先に進むことを決めました。できるだけ早く成長して、より大きなシリーズBを目指します」。

[原文へ]

(翻訳:金井哲夫)