サステナブルに関するポッドキャストはなぜVCも支援する事業に転換したのか

サステナブルファッションに関するポッドキャストにゲスト参加した際に偶然出会ったLaura Wittig(ローラ・ウィティグ)氏とLiza Moiseeva(リザ・モイシーヴァ)氏。あまりにも意気投合した2人は、Good Togetherと名づけた自分たちのポッドキャストを始めることにした。無理のない範囲で、環境に配慮した消費者になる方法を学ぶ場所を提供するというのが同番組の目的だ。

一消費者がゼロ・ウェイストを完璧に実行できていないからといって、批判的になることのない姿勢が同番組の差別化要因だとウィティグ氏は考えている。「すると次第に、単なるリスナーとして以外に何ができるのかという質問を人々からeメールで受けるようになりました」と同氏。番組開始から1年以上経った現在、共同ホストの2人はこういったリスナーからの言葉に応えるべく、新たに独立した事業Brightlyを立ち上げた。

Brightlyは厳選されたエコフレンドリーなグッズを販売し、環境意識の高い消費者になるためのアドバイスを提供するプラットフォームだ。同スタートアップはSheets & GigglesJuice Beautyなど、環境に優しいブランドの製品をすでに200点以上取り扱っているが、長期的なビジョンはBrightlyブランドとして独自の製品シリーズを立ち上げることだという。ホームスペースで2~4製品を目安に展開し始めていく予定だ。

製品をホリデーシーズンに間に合わせるため、同社はTacoma Venture Fund、Keeler Investmentsの他、FAB Venturesの支援者で元L’OréalのCEOのOdile Roujol(オディール・ルジョル)氏、Female Founder’s Allianceなどの投資家から100万ドル(約1億500万円)のベンチャー資金を調達したとTechCrunchに語ってくれた。

Brightlyの目まぐるしい12カ月間を締めくくるものとなった今回の資金調達。同社はソーシャルメディア企業Snapの2018年に始まった社内取り組みであるYellow Acceleratorに参加した。プログラムの一環としてSnapは各Yellowスタートアップに15万ドル(約1600万円)を投資して株式を取得している。また、2020年秋にはFemale Founders Allianceが実施したエクイティフリーのアクセラレーター、Ready Set Raiseにも参加している。

新たな資金提供を受けたBrightlyは、優れた製品をレコメンドすることでコミュニティを作り、戦略を転換して熱心なファンが同じブランドの自社製品を購入するようにするというGlossier的なアプローチで次のビッグブランドになろうとしている。

「私たちはショップで直接購入してくれる女性コミュニティにリーチすることができ、また彼女たちのために向けた製品を用意しています」とウィティグ氏。

ウィティグ氏はBrightlyを、ShopifyやAmazonのように一瞬で買い物が完結する「無味乾燥なショッピングページ」よりも深い体験ができるサイトにしていきたいと語る。

同社の製品はすべて、プラットフォームに掲載される前に広範におよぶ検証プロセスを経ている。すべての製品が持続可能で倫理的なサプライチェーンプロセスと持続可能な素材で作られていることを確認し、またブランド誕生までの背景を知るため、Brightlyのプラットフォームに掲載される各ブランドの創設者にインタビューを行っている。また、共同創設者の2人は製品の耐久性や寿命に関しても重きを置いており、ウィティグ氏のいう「Wirecutter(The New York Timesの製品レビューサイト)的アプローチ」を取り入れているという。

「倫理的な方法で作られたレザーのハンドバッグと、レザーではないものの長く愛用できない耐久性の低いハンドバッグなら、どちらが良いかという話です。エコフレンドリーという言葉はあまりにも曖昧なため、顧客とのコミュニケーションを大切にしています」とウィティグ氏はいう。

画像クレジット:Brightly

同氏によると、Brightlyには毎日25万人以上のユーザーがアプリやウェブサイトを経由して訪れているという。同スタートアップは主にブランドとのパートナーシップと、ユーザーを有料製品に導くことで収益化を図っている。

画像クレジット:Brightly

同社の収益化戦略は、アフィリエイトリンクやエピソードの途中で入る商品の紹介などポッドキャストのそれと似ている。現在はこの方法に頼っているが、共同創設者の2人は今後独自のeコマースの立ち上げることで、より多くな収益につながるとみている。

「大きな利益を出すためのチャンスはアフィリエイトリンクではありません。直接取引を行い、私たちが厳選した倫理的で持続可能な商品を販売することに価値があるのです」とウィティグ氏はいう。

環境に優しい商品についてのポッドキャスティングから自社で商品を作ることへの移行は強力なシフトだ。流通コマースチャネルの創造はポッドキャスティングビジネスよりも大きなチャンスであり、利益を生む可能性も高いと共同創設者の2人は考えている。

Brightlyは自社製品シリーズの製造だけでなく、ホワイトレーベルのサステイナブルな製品との提携方法についても思考を巡らせている。他の選択肢としては、大企業と提携し、Brightlyオリジナルのカラーやカスタマイズされた製品を用意することだとウィティグ氏はいう。理想的なパートナーシップの例として、ReformationとBluelandの最近のパートナーシップが挙げられる。

同氏は今後どのようにして勝利を目指すのかについての詳細を明かさなかったが、コンテンツを武器にしてスタートし、コミュニティをコマースプラットフォームに引き込んだGoopやGlossierの戦略に似ていることは確かである。

「サステナブルな製品が無数に並ぶThrive Marketのようなプラットフォームにするつもりはありません。それよりもはるかに厳選されたものとなります」と同氏。

環境意識の高い消費者コミュニティを結びつけるためのプラットフォームの必要性は、新型コロナウイルス(COVID-19)によってより明確になっている。

「何かを購入するということの意味の大きさにみんな気がついています。消費者として地元のコーヒーショップでコーヒーを買うことにより、小さなビジネスを支援するという人は多いですが、これまでAmazonですべてのものを購入するスタイルに疑問を感じていた人は少なかったのではないでしょうか」と同氏は問いかける。

投資家らとの会話は単純なものではないようだ。投資家はコミュニティベースのプラットフォームに確信が持てないため、そこには「触れない」という状況が続いている。ウィティグ氏によると、弱気な投資家の多くはAwayやBluelandなど単一の消費者向け直接販売に賭けているという。

「投資家たちは顧客獲得にかかるコストの上昇について知っており、私たちの事業を支えているコミュニティがないとどうなるかを知っています」と同氏。

Brightlyは、コマースブランドの未来は、市場へ進出してから製品を導入するかたちにすべきだと信じている。ここでの同社の最終目標はZ世代やミレニアル世代の買い物客を惹きつけることであり、ウィティグ氏によるとそのために同社はショッピング体験に人との交流の側面を導入する方法を実験しているという。

Female Founders Allianceの創設者であるLeslie Feinzaig(レスリー・フェインザグ)氏は「構築する以前にすでに需要を実証している」という点がBrightlyの魅力だと話す。

「人と人を結びつけてモノを売るためのソフトウェアの制作はさほど難しくありませんが、何千人もの熱狂的なフォロワーを集めて実際にお互いに関わり合い、そのソフトウェアを有用なものにできる企業はあまり見かけません。Brightlyはそのコミュニティを見事に作り上げました」とフェインザグ氏は述べている。

カテゴリー:EnviroTech
タグ:Brightly持続可能性ポッドキャスト

画像クレジット:Brightly

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(文:Natasha Mascarenhas、翻訳:Dragonfly)

Shellの気候計画における柱はEV充電ステーション、バイオ燃料、水素転換、化学物質

世界最大の上場石油製造会社の1社であるRoyal Dutch Shell Group(ロイヤル・ダッチ・シェル・グループ)が、温室効果ガス排出ゼロの気候に配慮した社会の中で同社がいかに生き残って行くかについての計画を発表した

この計画は、「電気自動車充電ステーションの大規模な展開」「潤滑油、化学品、バイオ燃料の重視」「大幅に拡大した再生可能エネルギー発電ポートフォリオとカーボンオフセット計画の策定」「水素・天然ガス資源の開発を継続し、石油生産を年間1〜2%削減」「二酸化炭素の回収と貯留への多額の投資」という5つの主要な柱に基づいている。

これらは同社の事業全体にわたるもので、大手石油会社による、最も包括的でハイレベルな計画となっている。低排出、そして究極的にはゼロエミッションのエネルギーと電源への移行によって石油業界が次の犠牲者となることを防ぐごうとする内容となっている(石炭産業を指している)。

ロイヤル・ダッチ・シェルのBen van Beurden(ベン・ヴァン・バーデン)最高経営責任者は声明で、「私たちの力強い戦略は、炭素排出量を削減し、株主、顧客、そして社会全体に価値を提供することになるでしょう」と述べた。

同社はまた、株主の離脱を防ぐため、コスト削減を実施し1株当たり年間約4%の配当の増加を約束した。これは高価な石油・ガス探査事業に投資した投資家に資金を還元することを意味する。さらに、同社は負債を返済し、営業キャッシュフローの20〜30%を株主に支払うことも約束した。とても……思いやりがある。

画像クレジット:Bryce Durbin

計画

同社の推計によると、シェルは100万社以上の商工業顧客と約3000万人の顧客を擁し、4万6000の小売サービスステーションに顧客が毎日訪れる巨大企業である。同社は成長の機会、エネルギー転換の機会、そしてアップストリームの’掘削作業と石油生成作業が徐々に衰退していく状況について考えを整理した。

成長が見込まれる分野について、シェルは約50億から60億ドル(約5300億から6400億円)の投資を計画している。2025年までに50万カ所の電気自動車充電施設を整備すること(現在の6万カ所からの拡大)およびそれにともなう充電促進の小売・サービス拠点の強化などが計画に盛り込まれている。

同社はまた、バイオ燃料や再生可能エネルギーの生産拡大とカーボンオフセットにも重点的に投資すると述べた。同社は年間560テラワット時を2030年までに発電したいと考えており、これは現在の発電量の倍に相当する。シェルが独立系発電事業者として事業を展開し、1500万の小売および商業顧客に自然エネルギー発電をサービスとして提供することを期待したい。

さらに同社は、水素関連事業も成長可能な分野だと捉えている。

低炭素経済に移行できる資産をすでに保有しているシェルは、そこにさらに力を入れる意向だ。つまりゼロエミッションの天然ガス生産と化学品製造の3倍の削減を目指す(ダウとBASFに着目)。同社は100万トンのプラスチック廃棄物を処理して循環型化学製品を製造する方針を固めており、これはリサイクル率の向上にもつながる。

アップストリームは長年にわたって石油・ガス事業の中心だったが、同社は声明で「量よりも価値に焦点を当てる」と述べている。これが実際に意味するのは、掘削が簡単で低コストの油井を探し求めることであろう(これは石油経済において、当分の間中東が重要であり続けることを示している)。同社は石油生産量を年間約1%から2%削減する予定である。また、カナダのQuest CCS開発、ノルウェーのNorthern Lightsプロジェクト、オランダのPorthosプロジェクトなどを通じて、年間2500万トン相当の二酸化炭素の回収と貯留に投資を行う考えだ。

「私たちは、顧客が求め、必要としている製品とサービス、すなわち環境への影響が最も少ない製品を提供する必要があります」とヴァン・バーデン氏は声明で語っている。「同時に、これまでの強みを活かして競争力のあるポートフォリオを構築し、社会と歩調を合わせたゼロエミッション事業への転換を図っていきます」。

米ドル紙幣による貨幣または財務のグリーンパターン。銀行、キャッシュバック、支払い、Eコマース。ベクトルバックグラウンド(画像クレジット:Svetlana Borovkova / Getty Images)

マネートーク

同社は、主要事業からの収益が削減される中で生き残っていくために、営業経費を抑え、もはや意味のない事業の大きな部分を売却しようとしている。

つまり、年間の支出を350億ドル(約3兆7200億円)未満に抑え、年間売上高は約40億ドル(約4250億円)で、投資家への配当と現金の流れを維持していることになる。

「長期的には、資本投資のバランスは成長の柱の事業にシフトし、新たな設備投資の約半分はこれらの分野に行われるようになる」と同社は説明している。「キャッシュフローも同じ傾向をたどり、長期的には石油やガスの価格との関連性が少なくなり、より広範な経済成長との結びつきが強まることが期待される」。

シェルは、全従業員に支払われる給与の一部として炭素集約度の削減目標を設定しており、その目標は目を見張るものがある。2016年を基準とする炭素集約度の削減率を6〜8%(2023年)、20%(2030年)、45%(2035年)、100%(2050年)と想定している。

同社によると、同社の炭素排出量は2018年に年間1.7ギガトンでピークに達し、石油生産量は2019年にピークに達している。

背景

シェルがこうした措置を取っているのは、同社が望んでいるからではなく、そうする必要があるからだ。化石燃料の汚染と気候変動を止めるために何か劇的なことをしない限り、世界は深刻な結果に直面することが予測される。

今週初めに発表された調査で、化石燃料による大気汚染で世界の人口の18%が亡くなっていることが示された。ハーバード大学が率いる研究者らの報告によると、化石燃料を燃やすことはガンと同じくらい致命的だということだ。

化石燃料に直接結びついた人的代償以外にも、気候変動には膨大な損失が見込まれている。米国では、これを逆転させるための措置を取らない限り、2090年までに損失は年間5000億ドル(約53兆円)のに上ると推定されている。

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タグ:Shell電気自動車二酸化炭素充電ステーション

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(文:Jonathan Shieber、翻訳:TechCrunch Japan)

気候変動と戦うための測量技術を提供するYard Stick

著者のJesse Klein(ジェシー・クライン)氏は科学、アウトドア、ビジネス分野のジャーナリスト。New Scientist、GreenBiz、The New York Times、WIREDに執筆している。ベイエリアのスタートアップで働いていたこともあり、明日のビジネスが直面する喫緊の課題に精通している。

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世界の気候変動問題を解決する鍵は、我々の足の下にあるかも知れない。土壌には、大気の3倍以上もの炭素吸収能力がある。だが地球上の土壌のおよそ45パーセントが農業に使われており、その農地のほとんどで、持続性のない土地管理慣習により最大30パーセントもの炭素が放出されている。

農地を、盛んに炭素を吸収できる場所に変えるには、農家は耕うんの削減、計画的な被覆作物の導入、輪作の拡大、生物多様性の強化といった再生可能な農業実践法に切り替え、炭素吸収力を管理できるようにする必要がある。とはいえ、計測ができなければ、何事も適切に管理することはできない。そこでYard Stick(ヤード・スティック)の出番となる。

「土壌炭素隔離は、大変に有効な炭素除去技術になり得ます」とYard StickのCEO、Chris Tolles(クリス・トールズ)氏はいう。「ただし、それを測定できる本当に高度な科学とテクノロジーがあればの話です」

再生可能な農業を定量化するのは難しい。土壌中の炭素量の測定も例外ではない。昔ながらの乾式燃焼法は大変な労力を要する。研究者たちは何エーカーもの土地を歩き回りながら土壌サンプルを掘り出し、遠く離れた研究室にそれを郵送する。研究室では、その土を燃やして炭素量を計る。

「見てのとおりの理由から、規模を拡大できません」とトールズ氏。「そうしたボトルネックをなくしてくれる測定技術が必要なのです」。

Yard Stickは、その提供者になりたいと考えている。同社の製品は、片手で扱える土壌用プローブで、その場で炭素量を計ることができる。マサチューセッツを拠点とするこのスタートアップは、米国エネルギー省のエネルギー高等研究計画局からの助成金325万ドル(約3億4400万円)を元手に非営利団体Soil Health Institute(土壌健康研究所)によって創設された。この助成金は、社会性のある技術的ソリューションの市場投入を特に目的としている。

Soil Health Instituteの最高科学責任者Christine Morgan(クリスティン・モーガン)博士、工学および電気エンジニアで炭素除去スタートアップCharm Industrial(チャーム・インダストリアル)の創設者であり元CTOのKevin Meissner(ケビン・マイスナー)氏、ネブラスカ大学助教授のYufeng Ge(ユーフェン・ジー)氏、シドニー大学のAlex McBratney(アレックス・マクブラットニー)氏という4人の土壌専門家がそれぞれの研究と専門知識を合わせて、スペクトル解析、抵抗センサー、機械学習、農業統計を活用し、その場で土壌の炭素量を測定し計算できるプローブを開発した。トールズ氏はこの製品を学界と商業市場に紹介する役割を担っている。

プローブはハンドドリルに装着して使用する。先端に取りつけられたカメラは、可視近赤外分光法を使って有機炭素から反射する特定の光の波長を捕らえられるよう調整されている。抵抗センサーは、地面にプローブをにねじ込む際にかかった力から土壌の密度を割り出す。この2つのインプットに、いくつか複雑なアルゴリズムと統計分析を加えることで、Yard Stickは土中の炭素量を、サンプルを掘り出すこともなく、それを研究所に送るという面倒もなく測定できる。

画像クレジット:Yard Stick

「1つ、サンプルをずっと早く採取できる。2つ、コストは劇的に低い」とトールズ氏。「そしてそれが意味するものが3つ目。私たちのテクノロジーは非常に安価で簡単で、サンプリング密度を劇的に高められるため、炭素貯蔵量のより正確な計測が可能になります」。

Yard Stickは現在、大手食品企業数社と協力して、米国中の農場で再生可能な農業の試験プログラムを実施している。Yard Stickは、農家に直接製品を販売する予定はなく、こうした企業のようなプロジェクト開発業者と提携している。それらのコネクションを利用して、Yard Stickは従来の王道であった土壌の炭素量測定法と同等の信頼性があることを実証し、そのコネクションを通じて農家に製品とサービスを販売したいと考えている。ハードウェアそのものではなく、データ測定サービスを販売するというのが同社の方針だ。

「分光計を所有したいという顧客はいません」とトールズ氏。「めちゃくちゃシンプルなものを作ったとしても、それで何をすればいいのか、わからないでしょう」。

Yard Stickでは人員を派遣して測定を行い、その後、データを意味の通じるかたちにした報告書を、農家やその他利害関係者に送る。料金はエーカーごとに可算される。トールズ氏は、プローブはいずれ、少し訓練するだけで誰にでも使える簡単なものになると予想しているため、従業員の数が律速要因になるとは考えていない。

2022年までに、Yard Stickは、数千台のプローブで20万エーカー(約8万ヘクタール)を測定したいと考えている。

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もっと多くのデータと、同程度に重要な、もっと多くのデータ共有があって、私たちは気候変動を回避する方向へ舵を切ることができる。しかし、データはセンシティブなビジネスであるため、参入が難しい。

「共有を好まない傾向にあるレイターステージの投資家の世界観には、限界があることを認識してほしいのです」とトールズ氏はいう。「そこには実に悲劇的なリスクがあります。情報は大変に価値が高いため、誰もが自分だけのものにしたがります。なので、土壌炭素市場の利益は、ずっと前から情報を独占してきた工業と農業の巨大企業に集中する一方です」。

土壌炭素市場の開放を目指すアーリーステージのスタートアップは、農地ではなく研究所で活動するLaserAg(レーザーアグ)、衛星を使って土壌の健康を遠隔測定するCloudAgronomics(クラウドアグロノミクス)など、他にも数社ある。しかし、Yard Stickの主要なライバルは、炭素貯蓄量の測定も管理もしていないすべての農場だ。トールズ氏によれば、それは全体の99.9パーセントだという。

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カテゴリー:EnviroTech
タグ:Yard Stick気候変動農業二酸化炭素

画像クレジット:Yard Stick

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(文:ゲストライター、翻訳:金井哲夫)

米運輸省が初めて気候変動と環境正義プロジェクトに予算を配分

米運輸省による助成事業Infrastructure for Rebuilding America(米国を再建するためのインフラストラクチャ、INFRA)の一環として同省は初めて、総予算8億8900万ドル(約939億8000万円)の一部を気候変動と環境正義を対象とするプロジェクトに対し切り分ける。

助成採否の基準は、そのプロジェクトが、気候変動に対する総合的な戦略の一環であったり、無公害車の普及のためのインフラストラクチャや、交通や旅程の方法の変更などにより温室効果ガスの排出を削減する戦略を支援していることだ。

運輸長官のPete Buttigieg(ピート・ブティジェグ)氏が声明でこう述べている。「このかつてなく壊滅的なパンデミックから回復するために今こそ、わが国のインフラストラクチャに永続的な投資を行わなければならない。我々が本気で取り組むべきは老朽インフラストラクチャの再建だけでなく、米国人のコミュニティを未来の成功に導く道を再構築することである。それにより高給の雇用を作り出し、経済を活性化し、公平を確保し、気候の危機と戦うべきである。INFRAの補助事業は、これらの目標を達成するためのすばらしい好機である」。

同省の発表によると、人種的公正にも配慮される。その要求には、公平をベースとする福祉サービスと、行政サービスが十分に行き届かないコミュニティの受益、および近隣社会の好機と活性化と将来性を目指すプロジェクトが含まれている。

この新しい気候変動対策事業は、自動車などの電動化を目指しているスタートアップに意外に早く国の金が下りることを示しているとともに、すでに電気自動車産業を前進させている追い風にも、さらなる力を与える。さらに付随して、充電ネットワークも前進させる。

運輸省によると、助成事業のうち、大規模なインフラプロジェクトには2500万ドル(約26億4000万円)以上、承認要件を満たした小規模事業には500万ドル(約5億3000万円)以上が下りる。

助成の対象となるプロジェクトは再建、復興、不動産の取得(プロジェクトに関連する土地や土地改良のための土地など)、環境修復、機器取得、システムの性能に直結した運用方式の改善などとなる。

助成の申請は3月19日が締め切りだ

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タグ:米運輸省気候変動環境正義電気自動車

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(文:Jonathan Shieber、翻訳:Hiroshi Iwatani)

デュポンとVCはリチウム採掘が電動化が進む未来に向けての超重要な投資先だと考える

「採掘(マイニング)」は、テック業界では数年前から暗号資産と同義になっている。ビットコインは5万ドル(約5万3000円)の壁に穴を空け、GPUとASICは分散型暗号資産の恩恵に賭けて、世界中でハッシュ関数のシェア獲得合戦を繰り広げている。その興奮は、皮肉なことにベンチャー投資資金と起業家の思考をマイニング1.0(実際の鉱物資源の採取)に引き戻そうとする力に油を注いでいる。

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中でも注目を集めるターゲットはリチウムだ。スマートフォンや電気自動車のバッテリー、さらには現代生活の利便性や産業の重要な部分を担うほぼすべての電気製品に欠かせない素材だ。中国は、自国のリチウムの採掘業とバッテリーの製造業が現在のところ世界をリードしていると考えている。それは、長年にわたるリチウムの供給統制と、世界の需要に応えるための大量生産能力の拡大を推進してきたおおかげ。だが米中関係の緊張が高まり、また世界がますます基盤システムの電動化を進めるようになるにつれいぇ、企業は別のサプライヤーを競って求めるようになった。

DuPont(デュポン)が抽出技術の実用化を推し進めているのは、そのためでもある。

水のろ過と浄化サービスを提供するDuPont Water Slutions(デュポン・ウォーター・ソリューションズ)は、リチウム採掘技術の開発と再生可能エネルギー事業を行うVulcan Energy Resources(バルカン・エナジー・リリソーセズ)と手を組み、リチウムの新しい直接抽出方式の試験を行うことにした。

現在、リチウムの採掘方法は、どう控えめにいっても環境に悪い。毒性の化学薬品を大量に使用し、水資源の汚染を拡大している。ドイツのアッパーライン渓谷で準備中のこの新しい合弁事業では、DuPontのリチウム直接抽出製品とろ過に関する専門知識を活かして、リチウムの採掘と精製を環境にやさしいかたちで行うものだと、同社は話している。

バルカンの業務執行取締役であるFrancis Wedin(フランシス・ウェディン)博士は、声明の中でこう述べている。「大きなスケールで製造されるDuPontの多様な製品群は、持続可能な方法でブラインからリチウムを抽出する方式への高い適応性を示しています」。

DuPontでは、この技術を鉱業全体に押し広げ、吸着剤、ナノろ過技術、逆浸透フィルター、イオン交換樹脂、限外ろ過、閉回路逆浸透などの同社のポートフォリオにある製品を広範な顧客グループに利用してもらおうと考えている。

DuPontがリチウム採掘事業に本格的に乗り出したことで、独自のリチウム抽出技術を開発したLilac Solutions(ライラック・ソリューションズ)などのスタートアップは、激しい競争に捲き込まれることになるだろう。Lilacは、カリフォルニアで最も環境汚染が深刻なソルトン湖でリチウムブラインの鉱床(プール)の開発を行うため、オーストラリアのControlled Thermal Resources(コントロールド・サーマル・リソーシズ)と提携した。

2020年はオークランドのスタートアップが、Breakthrough Energy Ventures(この人たちはどこにでも顔を出す)、MIT傘下の投資会社The Engine(ジ・エンジン)、設立当初からのUber(ウーバー)の投資家Chris Sacca(クリス・サッカ)氏の比較的新しい気候変動に特化した投資会社Lowercarbon Capital(ローワーカーボン・キャピタル)の主導による2000万ドル(約21億円)の投資を獲得したと発表している。

Lilacの他にも、ソフトウェアによって抽出企業の事業が効率化されるのにともない、ベンチャー投資金(暗号資産ではない)が、マイニングビジネスに流れ込んでいる。注目を集めた投資先には、ハイテク技術で鉱床を探し出すKoBold Minerals(コボンルド・ミネラルズ)がある(これもまたBreakthrough Energy Venturesのポートフォリオ企業)。この会社は、ビッグデータと機械学習を活用して有望な鉱床の選定を支援する。また、宇宙から衛星を使って鉱床探索を行うLunasonde(ルナゾンデ)もそうだ。

この他のリチウム問題のソリューションも、投資家たちの関心を集めている。バッテリー技術に投資するVolta Energy Technologies(ボルタ・エナジー・テクノロジーズ)の創設者であり最高責任者のJeff Chamberlain(ジェフ・チャンバーレイン)氏は、もう1つのソリューションを「都市鉱山」に見いだしている。つまり、使用済みリチウムイオンバッテリーのリサイクルだ。鉛蓄電池は、何十年も前から部品のリサイクルが行われてきた。チャンバーレイン氏は、リチウムイオンのサプライチェーンも、今ある資源の再利用がより効率的に行われるよう進化することを期待している。

チャンバーレイン氏の考えが正しいことを実証しようとする企業も数多い。米国時間2月16日、特別買収目的会社(SPAC)を通じて株式公開を果たしたLi-Cycle(リサイクル)もその1つだ。同社の評価額は、この時点で16億7000万ドル(約1770億円)と見積もられている。

一方、非公開またはベンチャー投資家が支援するスタートアップも、別のリサイクルソリューションを開発している。マサチューセッツのウースター工科大学からスピンアウトしたBattery Resourcers(バッテリー・リソーサーズ)は、回収したスクラップから新しい陰極材料を作り出すことに特化している。シンガポールのGreen Li-ion(グリーン・リアイオン)もまた、リチウムイオンバッテリーのの陰極を製造するリサイクル工場を開設しよううとしている。2016年に元Tesla(テスラ)の幹部によって創設されたスウェーデンのバッテリースタートアップNorthvolt(ノースボルト)は、すでにリサイクルの実験工場を稼働させている。

もう1つ、J.B. Straubel(ジェイ・ビー・ストローブル)氏がネバダに創設したスタートアップRedwood Materials(レッドウッド・マテリアルズ)もある。これは、Amazon(アマゾン)のClimate Pledge Fund(気候誓約基金)を通じて資金援助を受けた最初の企業の1つだ。

「究極的には、石からリチウムを抽出しなければならないことはないのです。ブラインプールや都市鉱山からもリチウムは採れます」とチャンバーレイン氏は話す。これは「マイニング1.0バージョン2」といえる。だがまさにそれが、気候の未来を確実に安定させたいと私たちが願ったとき、この世界が投資すべき分野だ。

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カテゴリー:EnviroTech
タグ:DuPontリチウムバッテリーリサイクル

画像クレジット:SeppFriedhuber / Getty Images

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(文:Jonathan Shieber, Danny Crichton、翻訳:金井哲夫)

悪天候や停電が示す米国の電力網最大の問題は再生可能エネルギーではなくインフラそのものにある

米国が、地球規模の気候変動による非常に現実的な影響を無視することは、ますます難しくなっている。そして否定論者の努力にもかかわらず、米国を席巻する停電は再生可能エネルギーが普及しているせいではない。それは米国のエネルギーインフラが原因だ。

地球温暖化が引き起こす厳しい気象条件は、現在、米国の最大の都市のいくつかで大規模な停電の原因となっている。米国の電力網(パワーグリッド)が異常気象によるストレスに耐えられないという事実が、エネルギーインフラをより回復力のあるものにするため大規模に更新する投資計画が必要であることを示している。

こうした問題は現在、テキサス州の2900万人の住民にとって痛々しいほど明白だ。彼らは現在、米国中を襲う極寒の気象が引き起こした計画停電に直面している。

テキサス州の電気信頼性評議会(ERCOT)は声明で、「緊急事態に入り、今日の午前1時25分に計画停電を開始した」と述べた。テキサス州のグリッドは10.5ギガワットの負荷を削減した。これは、ピーク時に200万世帯へ電力を供給するのに十分な量だ。

同評議会は声明で「異常気象により、燃料の種類を問わず多くの発電ユニットがオフラインになり利用不能になった」と述べた。

プリンストン大学のJesse Jenkins(ジェシー・ジェンキンス)教授によると、問題の一部はテキサス州のグリッドに電力の多くを供給する天然ガス発電機にある。同氏はプリンストン大学機械航空宇宙工学科とアンドリンガーエネルギー環境センターのジョイント・アポイントメント教員だ。

ジェンキンス氏はツイッターで市場参加者からの情報を引用し、天然ガスが電力ではなく熱を供給するために転用されているため、約26ギガワットの火力発電がオフラインになっていると述べた。同氏によると、氷結のためにオフラインになっている風力発電は約4ギガワットのみだ。

現在の停電は再生可能エネルギーとは何の関係もない。すべては凍結と暖房需要の急増により、寒冷な気候が天然ガス発電を遅らせたことに関係している。

ジョージア工科大学の土木環境工学の助教授であり、公共政策の助教授であるEmily Grubert(エミリー・グルーバート)博士が指摘したように、問題は再生可能電力に関連する問題というよりも、システム全体の問題だ。

「はっきりさせておきたい。今日グリッドに障害が発生するなら、それは既存の(主に化石ベースの)システムもこうした状況に対応できないことを示しています」とグルーバート氏はツイッターで述べている。「これらは恐ろしい気候変動の影響により生まれた状況であり、グリッドに非常に困難な課題をもたらします。既存のシステムでは簡単に処理できない状況が続く可能性があります。どの電力システムでも、適応するために大規模な改善を行う必要があります」。

再生可能エネルギーとエネルギーストレージが問題の解決策を提供し、より弾力性のあるグリッドに貢献する可能性がある。住宅用エネルギー開発業者のSwell Energyは2020年末に4億5000万ドル(約470億円)の資金を調達し、3つの州にまたがるいくつかのプロジェクトの開発を開始した。これらのプロジェクトでは、電力需要の増加の時代にあって、分散型の住宅用太陽光発電とバッテリーストレージを組み合わせる。

関連記事:住宅用再生エネルギー推進のSwell Energyが分散型電力プロジェクト建設に向け470億円調達

Swell EnergyのCEOであるSuleman Khan(スールマン・カーン)氏は発表時、「電力会社は分散型エネルギー資源が貴重な『グリッドエッジ』資産だとしてますます注目しています」と述べた。「個々の家庭や企業を仮想発電所としてネットワーク化することで、Swellは顧客の所有コストを削減し、電力会社が電力網全体の需要を管理できるよう支援します」。

Evolve EnergyGriddyといった他の企業は、電力を卸売りの料率で請求することで消費者のコスト管理を支援しようとしている。こうした企業は、卸電力の料金が低い場合にのみ経済的になる。Bloomberg EnergyのレポーターであるJavier Bias(ハビエル・バイアス)氏によると、現在電力需要が急増しているため、ERCOTのエネルギー価格はメガワットあたり5000ドル(約52万5000円)を超え、多くのノードで9000ドル(約94万5000円)の上限に達した。

今日のテキサス州と2021年1月のカリフォルニア州での停電は、米国の現在のグリッドを根本的に改善する必要があることを示している。カリフォルニア州のような厳しく規制された市場であろうとテキサス州のような自由市場であろうと、現在の政策では天候が大混乱を引き起こし人々の命を危険にさらすことを阻止できない。

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タグ:再生可能エネルギーコラム

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(文:Jonathan Shieber、翻訳:Nariko Mizoguchi

新技術で天然ガスから水素を生産するC-Zeroがビル・ゲイツ氏の気候テック基金から資金を調達

4年前、Zach Jones(ザック・ジョーンズ)氏はカリフォルニア州サンタバーバラで新しい水素生産技術の商用化を目指すスタートアップC-Zero(シーゼロ)の適正調査に向かった。小さな家族経営の事務所に勤めていた彼は、いずれそのスタートアップの最高経営責任者になろうとは思ってもみなかった。

また、その会社でBreakthrough Energy Ventures(ブレークスルー・エナジー・ベンチャーズ)から資金を調達するようになるなどとは考えもしなかった。それは、主に温室効果ガス削減のための技術を開発する企業や世界最大級の工業、石油、ガス企業を対象にしたかの大富豪が支援する投資団体だ。

当時、ジョーンズ氏は、サウスダコタの小さな投資会社Beryllium Capital(ベリリウム・キャピタル)に勤めており、C-Zeroへの投資機会の可能性を確認していた。C-Zeroは、カリフォルニア大学サンタバーバラ校のEric McFarland(エリック・マクファーランド)教授が開発した新しい水素生産方法の商用化を進めていた。

ただ、1つ問題があった。マクファーランド氏は研究者であり、会社経営については素人である点だ。そこでジョーンズ氏は一歩踏み込んだ。彼の会社は投資を行わなかったが、エコノミスト誌で科学ライターもしていたジョーンズ氏が会社経営を引き受けることになり、PG&E(パシフィック・ガス・アンド・エレクトリック)とSoCal Gas(サザン・カリフォルニア・ガス)という、カリフォルニアの二大電気ガス事業者からの投資を獲得したのだ。

これらの企業が投資を決めた理由は、後にBreakthrough Energy Venturesがこの新しい会社に興味を示すようになった理由と一致する。再生可能エネルギーの生産が、首をへし折るほどの急加速で台頭し始めたとはいえ、世界の大部分が、まだ当分は化石燃料を使い続ける気でいる。それでも、化石燃料からの温室ガスの排出はゼロにしなければならない。

C-Zeroが開発したのは、天然ガスを水素に変換する技術だ。天然ガスは大変にクリーンな燃料源であり、発電に利用した際に排出されるのは固体炭素のみ。熱触媒で処理することで、水素やアンモニアといった有用な化学物質が抽出できる。

「私たちのCTOは、炭鉱を反転させるのだといっています」とジョーンズ氏は話す。

工業製造プラントの夜景(画像クレジット:Getty Images)

同社の技術は、メタン熱分解というかたちをとっている。独自の化学触媒を使い、他の粒子から水素ガスを抽出する。後に残る廃棄物は固体炭素だ。この処理方法は、廃棄物ゼロでななく(固体炭素が出る)、再生可能でもない(天然ガスが原料)が、現在の低コストな水素生成方法よりもクリーンであり、再生可能性が高い水素生産方法よりもずっと安価だ。

再生可能な水素を生成するには、水に電荷をかけて酸素と水素に分解する必要がある。しかも、酸素分子から水素分子を引き離すために使われるエネルギーは、炭素分子から水素分子を取り出す場合よりもずっと多い。

「水素がおもしろいのは、断続的な再生可能エネルギーの補てん役になるという点です」とジョーンズ氏。「つまりエネルギー貯蔵の問題です。日々または季節ごとの長期的貯蔵には、途方もないコストがかかります。化学燃料は、あらゆるものから炭素排出をなくす上で欠かせない存在です」。

ジョーンズ氏はこの技術を「燃焼前の炭素回収」と説明し、大型車両の燃料、公共電力網と製造業向け産業用電力の発電などの幅広い分野に水素の恩恵を広げるためには必要不可欠と考えている。

そう考えるのは彼だけではない。

「年間1000億ドル(約10兆4543億円)を超える水素が商品として生産されています」と、C-Zeroへの1150万ドル(約12億円)の投資で新たな主導者となったBreakthrough Energy VenturesのCarmichael Roberts(カーマイケル・ロバーツ)氏は話す。「残念なことに、その生産量の圧倒的な大部分が、大量の二酸化炭素を排出する蒸気メタン改質という方法によるものです。C-Zeroが開発したような、低コストで炭素排出量の少ない水素生産方式を探し出すことは農業、化学、製造、輸送などの主要セグメントの脱炭素化に水素分子を主要な担い手として役立てるために、どうしても欠かせません」。

Bill Gates(ビル・ゲイツ)氏が支援するBreakthrough Energy Ventures主導の今回の新ラウンドにはイタリアの石油、ガス、電力企業の投資部門であるEni Next、三菱重工業、水素技術に特化したベンチャー投資企業AP Venturesが参加している。

三菱重工業は、すでにC-Zeroの技術を利用している。同社は現在、今ある石炭火力発電所を、2025年までに天然ガスと水素で運転できるよう改装している。その目標達成に、C-Zeroの技術が活かされることだろう。

製造業向け水素の低コストな生産方法を開発しただけでなく、C-Zeroは米国税庁が2021年の初めに導入した炭素隔離のための税額控除が適用される初の企業になる可能性がある。これが適用された企業は、隔離された固体炭素1トンにつき20ドル(約2100円)が控除される。固体炭素は、まさにC-Zeroの処理で排出されるものだ。

だがたとえC-Zeroがその技術の商用展開を開始できたとしても、そこでは世界の最大手化学企業との厳しい競争が待ち受けている。

ドイツの大手化学企業BASF(ビーエーエスエフ)は、独自のメタン熱分解方式をほぼ10年をかけて開発し、そのクリーンな水素の生産規模拡大のための試験施設を建設中だ。

さらにヨーロッパの2つの大手企業も水素生産ゲームに加わった。フランスの化学企業Air Liquide(エア・リキード)は、Siemens Energy(シーメンス・エナジー)と水素生産の合弁事業を発表した。

C-Zeroの技術は、今のところは単なる場つなぎのソリューションに過ぎないとジョーンズ氏は自認している。だが彼は、廃棄物から再生可能な天然ガスを生産できる体制に移行した世界では、循環型の水素経済が可能になると展望している。

「100年後、この技術は使われているか?もしそうなら、それは再生可能な天然ガスのおかげです」とジョーンズ氏はいう。そこに至るまでに踏破すべきステップは山ほどある。しかし、ジョーンズ氏は同社のプロジェクトの短期的成功に自信を見せる。

「エネルギー密度の高い燃料の需要はなくなりません。液体水素は、核エネルギーを除けば事実上も最もエネルギー密度が高い燃料です」と彼はいう。「水素は長続きすると思います。最終的に、最も低コストにCO2を排除できる、最も低コストなエネルギーが勝利するのです」。

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タグ:C-Zeroビル・ゲイツ水素再生可能エネルギー

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(文:Jonathan Shieber、翻訳:金井哲夫)

再生可能ジェット燃料LanzaJetが英国航空と提携、年間7500トン供給へ

再生可能ジェット燃料のスタートアップLanzaJet(ランザジェット)は、British Airways(ブリティッシュ・エアウェイズ、英国航空)に年間7500トンの燃料添加剤を供給することで同航空と契約をかわした。LanzaJetは長年、再生可能・合成燃料に取り組んでいるLanzaTech(ランザテック)のスピンオフだ。

今回の契約は英国企業とのものとしては2件目で、その前の2019年8月にLanzaJetは英国企業Velocysとも契約を結んでいる。また、LanzaJetにとって2つめのオフテイク契約(長期供給契約)だ。同社は全日本空輸(ANA)との提携も発表している。

契約を通じて英国航空は、額は非公開ながらLanzaJetのジョージアにある初の商業規模施設に投資する。両社によると、2022年末までにLanzaJetが製造した燃料がフライトに使われるようになる。

LanzaJetが数年内に英国航空のために米国に商業施設を設置するという広範な拡張に向けた取り組みの一環だ。

2021年後半にジョージアの施設の建設が始まる計画で、同施設では化学反応を使ってエタノールをジェット燃料添加剤に変える。

植物由来の燃料は、従来のジェット燃料に比べ温室効果ガスの排出を70%減らす。同社によると、これはガソリンあるいはディーゼルで走るクルマ2万7000台を毎年減らすのに相当する。

契約は、LanzaJetの親会社LanzaTechと米エネルギー省のパシフィックノースウェスト国立研究所が数年にもわたって努力した結果だ。

2020年6月にスピンオフしたLanzaJetは親会社LanzaTech、三井物産、Suncor Energy(サンカー・エナジー)などから投資を受けている。そしてLanzaJetが2025年までに大規模展開するという野心的なプログラムを視野に入れている現在、英国航空が他の戦略的投資家2社に加わる。LanzaJetは再生可能燃料のパイプラインを作る大規模プラント4カ所を立ち上げる計画だ。

「低コストで持続可能な燃料のオプションは航空部門の未来にとって重要です。廃棄物や残留物を化石燃料を使用しないSAF(持続可能な航空燃料)にリサイクルすることで、LanzaJetのプロセスは最もフレキシブルな原料溶液を大規模に提供します。英国航空は英政府とともに長らく廃棄物を燃料に変える取り組みを展開してきました」とLanzaJetのCEOであるJimmy Samartzis(ジミー・サマーティス)氏は述べた。「廃棄物ベースの燃料への適切なサポートにより、英国はLanzaJetプラントを商業展開する上で理想的なロケーションになります。これを実現するために英国航空ならびに英政府と引き続きやり取りすることを、そして首相のJet Zeroビジョンを現実のものとすべくサポートを続けることを楽しみにしています」。

LanzaJetの燃料は従来の灯油に最大50%混ぜて商業フライトに使用することが認められている。「航空マーケットが年間900億ガロンのジェット燃料を使っていることを考えると、その半分の450億ガロンの生産能力、そして最大ブレンドレベルに達することは大きな問題です」とLanzaTechのCEOであるJennifer Holmgren(ジェニファー・ホルムグレン)氏は電子メールで述べた。

ホルムグレン氏によると、LanzaJetのジョージア州にある製造施設はゼロウェイスト燃料を生産するためのものだ。英国航空は今後5年間、LanzaJetのバイオ精製所から毎年7500トンの持続可能航空燃料の提供を受ける。

提携は英国航空、Hangar 51(国際航空グループのアクセラレーター)、その他の間でのものだ。

バイオ燃料の取り組みに加え、英国航空は水素燃料企業ZeroAvia(ゼロアビア)のような企業とも協業している。ZeroAviaはAmazon(アマゾン)、Shell(シェル)、Breakthrough Energy Ventures(ブレークスルー・エナジー・ベンチャーズ)から出資を受けている。

「過去100年、我々は英国と世界を、世界と英国を結んできました。そして今後100年の成功を確かなものにするために、我々は持続可能な方法でそれを行わなければなりません」と英国航空CEOのSean Doyle(ショーン・ドイル)氏は述べた。

「持続可能な航空燃料の開発と商業展開の推進は航空産業の脱炭素化にとって重要であり、LanzaJetとの提携はネットゼロ(温室効果ガス排出ゼロ)に向けた英国航空の取り組みの前進を示しています」。

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タグ:LanzaJet再生可能エネルギーBritish Airwaysイギリス

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(文:Jonathan Shieber、翻訳:Nariko Mizoguchi

イーロン・マスク氏が賞金105億円を出す炭素回収技術XPRIZEコンテストの詳細が明らかに

Elon Musk(イーロン・マスク)氏は先日、気候変動を食い止める一手段として、二酸化炭素を積極的に大気から取り除くことができる二酸化炭素回収(Carbon Capture)の新技術を促進するため、1億ドル(約105億円)を寄付すると世間に知らしめた。2021年1月に同氏がツイートした際にTechCrunchが報じたように、マスク氏の大規模な金銭的インセンティブは、同様の考えを持つ、世界を変えるテクノロジーの開発を目的とした野心的な技術コンテストを主催している非営利団体XPRIZE財団に寄付されることになった。そしてこのほど、XPRIZEとマスク氏はこのコンテストの詳細を新たに発表した

関連記事:イーロン・マスク氏が最高の二酸化炭素回収技術に賞金104億円

総額1億ドル(約105億円)の賞金プールが、このコンペティションを通じて授与される。コンペティションは、「大気中や海洋から直接、二酸化炭素を除去し、環境に負担をかけない方法で恒久的に貯留する」ことができるソリューションを模索する。これは野心的な目標であり、地球全体のバランスの中で、炭素という元素の存在にネットネガテイブの影響を与える回収方法を追求するものだ。XPRIZEは、最高15組のファイナリストにそれぞれ100万ドル(約1億1000万円)を授与する予定で、さらに上位3組の受賞者については、大賞受賞者には5000万ドル(約52億6000万円)、2位と3位にはそれぞれ2000万ドル(約21億円)と1000万ドル(約10億5000万円)を授与することを目指している。また、学生チーム参加者のために特別に、それぞれ25万ドル(約2630万円)相当の奨学金も25組分用意されている。

勝利の資格を得るためには、ソリューションは1日あたり1トンの二酸化炭素を抽出することができ、プレゼンテーション時にはスケーリングされた検証済みモデルで実行可能であり、将来的に「ギガトンレベル」にまでスケールアップできる、商業的に実行可能な方法でなければなならない。これらは新技術にとって大きな目標だが、このコンペティションにかかっているものは大きい。マスク氏は、気候変動を人類の存亡に関わる脅威として頻繁に言及しており、炭素回収は気候変動に対抗するための重要な手段の1つだからだ。

大気から抽出した二酸化炭素を利用して新しいタイプの燃料を製造するカナダのCarbon Engineering(カーボンエンジニアリング)や、大気から除去した二酸化炭素を利用して蒸留したカーボンネガティブウォッカのAir Vodkaなど、炭素回収の方法は存在するし、それが新しいスタートアップや新興ビジネスの中心となっているケースもある。ひと握りの企業はこの技術を追求しているものの、問題は、安全かつ副産物が環境に影響を与えない方法で炭素を除去するのは、一般的に非常に高価であるということだ。

新しいXPRIZEのコンペティションは、2004年に行われた1000万ドルの民間宇宙飛行「Ansari XPRIZE(アンサリ・Xプライズ)」が宇宙産業の新時代の発展を牽引したのと同様に、幅広い新興企業の発展に拍車をかけることを目指している。今回のコンテストは米国時間2021年4月22日に正式に開始され、その時点で完全なガイドラインが公開され、登録が開始される。応募者はソリューションを提出するまでに最長4年間の期間が与えられ、コンテストは2025年のアースデイ(4月22日)に終了し、最初のステージの100万ドルの賞金はその18カ月後に分配される。これにより、チームが上位入賞に向け、本格的なデモを構築するために必要な資金が提供されることになる。

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(文:Darrell Etherington、翻訳:TechCrunch Japan)

a16zによる次の気候テック投資がカーボンオフセットAPIのPatchになる可能性

アーリーステージのカーボンオフセットAPI開発会社のPatch(パッチ)は、Andreessen Horowitz(アンドリーセン・ホロウィッツ、a16z)にとって気候テックへの初期の投資の1つになる可能性がある。

この投資ラウンドについて知る何人かによると、OpenTableの元最高経営責任者であり、現在Andreessen Horowitzのパートナーを務めるJeff Jordan(ジェフ・ジョーダン)氏がこの若い会社の最新の資金調達をリードすることを検討している。

このような投資はPatchにとって勝利だ。ますます混みあってきている分野でAndreessen Horowitzのマーケティング力を享受できる。取引が成立すれば、ベンチャー業界で最も(社会的に)活発な投資家の1つがもっと多くの投資を行う予兆となる可能性がある。

PachamaCloverlyCarbon InterfaceCooler.devなどの企業はすべて、同様のAPIを提供している。必要最小限の労力でオフセットによるカーボンニュートラルを目指す企業が増えるにつれ、この種のサービスの市場は拡大しそうだ。成長する市場は複数のベンチャー投資の勝者を生み出す可能性がある。

Patchの共同創業者とAndreessen Horowitzのいずれも資金調達についてコメントに応じなかった。

Patchのようなサービスに関する懸念の1つは、顧客が事業から排出する二酸化炭素の量を削減するための一歩ではなく、最終的な目的としてオフセットを検討してしまうことだ。気候危機の解決にはさらに多くの仕事が必要になる。

Patchはアパート賃貸サービスのSonderの従業員だったBrennan Spellacy(ブレナン・スペラシー)氏とAaron Grunfeld(アーロン・グランフェルド)氏が創業し、2020年9月にVersionOne Venturesから最初の資金調達を行った。

同社の事業運営に詳しい人々によると、現在約15〜20社がこのサービスを利用している。

同社には、企業のERPシステムと統合することにより排出量を計算できるAPIがある。その後、同量の二酸化炭素を除去するオフセットプロジェクトに資金を投じる。

関連記事:企業向けにカーボンオフセットAPIを開発するスタートアップが急増中

Pachamaのようなサービスは森林再生や森林管理などの低コストの除去ソリューションを優先するが、Patchはオフセットのためのさまざまな投資機会を提供する。同社の計画に詳しいある人は、同社が新しい技術のコストを削減するために、より高価で高度な複数のオプションに顧客を誘導しようとしていると述べた。

オフセットを自動化する他のサービスと同様に、Patchはプロジェクトの追加性(すでに確立されたベースラインを超えて除去する炭素量)、永続性(炭素排出量が除去される期間)、検証可能性に基づいてプロジェクトを評価する。

また創業者らが同社のサービスについて声明で述べているように、顧客が展開すべき唯一のソリューションを意図したものではない。

多くの気候モデルは大気から二酸化炭素を除去しながらも、地球規模で排出量を削減する必要があることを示しています」と創業者らはMediumの投稿に書いている。「当社は企業の炭素削減の目標に取り組み、企業は排出量の削減に力を注ぎます。企業の努力には、より専門的な事業運営の知識が必要とされます。Patchが企業の行動の変化を補完します。これは気候変動を軽減する真のチャンスです」。

VersionOneのAngela Tran(アンジェラ・トラン)氏は2020年9月の発表で、Patchのテクノロジーの防御可能性に関する懸念に答えた。

「また、防御可能性には、質の高い供給の集約と『デジタル化』がともなうと考えています。Patchを市場と見なすとき、企業(需要)は排出量を中和するために購入するプロジェクト(供給)の種類に関心があると考えています」とトラン氏は書いている。「たとえば企業は、持続可能性の遺産を林業や鉱化プロジェクトに結びつける選択をする場合があります。Patchは、最高の炭素除去開発会社および最新の負の排出技術を持つ会社と提携し、低コストで影響力のあるプロジェクトのネットワークを構築しています」。

Patchは気候変動にはっきりと特化しているが、Andreessenは持続可能性というテーマに幅広く、アーリーステージの投資を複数行っている。2020年はSiloへの900万ドル(約9億5000万円)の投資をリードし、2019年にはKoBold Metalsに投資した。

Siloは生鮮食品のサプライチェーン向けにエンタープライズリソースプランニングツールを開発した。現在、卸売農産物に特化する同社は2020年の声明で、来年には肉、乳製品、パントリー製品にサービスを拡大すると述べた。

「Siloのようなイノベーターが廃棄物を削減し、マージンを改善する市場の可能性は非常に大きい。私たちは米国で食品流通の記録システムとしての取り組みをサポートできることをうれしく思います」とAndreessen HorowitzのゼネラルパートナーであるAnish Acharya(アニッシュ・アチャリヤ)氏は当時の声明で述べた。「Siloは西海岸を越えて拡張する潜在力があります。より多くの顧客がペンと紙からソフトウェアへと業務を最新化し、移行できるよう支援します」。

一方KoBoldは、機械学習とビッグデータ処理技術により、企業が新しいバッテリーと再生可能エネルギー生成技術を開発するために必要とする貴金属の新しい分野を開拓するソフトウェア開発者だ。

「KoBoldのソフトウェアは、コンピュータービジョン、機械学習および現在業界では利用できない高度なデータ分析により(ゼロからフルスタックで)デジタルプロスペクティングエンジンを開発することにより、これまで利用できなかったダークデータを従来の地球化学的、地球物理学的、地質学的データと組み合わせます。他のデータネットワーク効果と同様に、時間の経過とともに良くなるモデルにおいて見通しを示します」と、当時のブログ投稿でConnie Chan(コニー・チャン)氏は書いている。

以上を踏まえると、Andreessen Horowitzとその運用資産165億ドル(約1兆7300億円)のプールが再生可能エネルギー業界にどのようにアプローチするかがわかる。

カテゴリー:EnviroTech
タグ:PatchAndreessen Horowitzカーボンオフセット投資

画像クレジット:Luke Sharrett/Bloomberg / Getty Images

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(文:Jonathan Shieber、翻訳:Nariko Mizoguchi

個人投資家が社会や環境への影響に基づいて金融投資アプリTickrが約3.6億円調達

英国の消費者が社会や環境への影響に基づいて金融投資することができるアプリTickrは、インパクトのあるスタートアップに特化したVCであるAda Venturesが主導した資金調達ラウンドにて250万ポンド(約3億6000万円)を獲得した。調達した資金は製品開発、ユーザーベースの拡大、最終的にはTickrを英国の拠点から他のヨーロッパ諸国へと拡大するために使われる。

同プラットフォームでは投資だけでなく、顧客はインパクトを重視した影響の比較とパートナーシップを通じて現金を使い、サブスクリプションを通じて二酸化炭素排出量を相殺することができる。主なビジネスモデルは、顧客1人当たり1ポンドp/m、資産が3000ポンド(約43万4000円)を超える場合は0.30%の手数料を支払うことだ。またカーボンオフセットなどの追加商品は、選択したレイヤーに応じた追加サブスクリプションとして課金される。

同スタートアップによると英国では10万ユーザーに近づき、そのうち90%が「これまで投資をしたことがない」ミレニアル世代のユーザーであり、これらのユーザーは平均して毎月250ポンド(約3万6000円)を投資しているという。

アプリ「Tickr」

これは取引を目的としたアプリではなく、インパクトのある企業のポートフォリオに投資しながら富を築くことを目的としている。競合他社にはMoneyBoxがあるが、Tickrは「インパクト企業だけに100%焦点を当てている」としている。ヨーロッパの人々の大半は市場への投資を行わないため、この製品にとって良い機会となるだろう。

創業者のTom McGillycuddy(トム・マクギリーカディ)氏とMatt Latham(マット・レイサム)氏は8年間投資運用の仕事に関わってきたが、専門用語や高額な手数料、環境問題などへの無関心さに幻滅したという。

テキストインタビューで、マクギリーカディ氏は次のように語っている。「私たちは、人々が行っていた投資の根本的な影響について考慮していないことに気づきました。ウィガンとリバプール出身の私たちは家族の中で初めてこの世界に触れましたが、それが正しいとは思えませんでした」。2人はインパクト投資の分野に進出し、2018年にTickrをローンチした。

カテゴリー:EnviroTech
タグ:Tickr二酸化炭素排出量

画像クレジット:Tickr

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(文:Mike Butcher、翻訳:塚本直樹 / Twitter

企業向けにカーボンオフセットAPIを開発するスタートアップが急増中

カーボンオフセットのためのアプリケーション・プログラミング・インターフェース(API)が出てくるのは時間の問題だった。カーボンオフセットとは、企業が世界の再生可能エネルギープロジェクトや炭素隔離プロジェクトに資金援助することで、自社の温室効果ガスの排出量を(紙の上で)相殺する自主制度だ。

eコマースと決済最大手のShopify(ショッピファイ)とStripe(ストライプ)は、すでにサービスとしての排出オフセットを顧客に提供しているが、今や数多くのスタートアップがソフトウェアを使って処理を自動化しようと狙っている。

たとえば Cloverly(クローバリー)は米国南西部の電力・ガス大手Southern Company(サザン・カンパニー)が社内で立ち上げたスタートアップだ。Patch(パッチ)はアパート管理と短期レンタルサービスのSonder(サンダー)出身の2人がスタートした会社だ。さらにはCooler.dev(クーラー・ドット・デブ)、そして森林再生と森林管理に焦点を当てた国際オフセットマーケットプレイスを運営しているPachama(パチャマ)などなど。

これは企業や消費者向けに環境フットプリントの観察と削減を行うサービスを立ち上げる、というアーリーステージ企業の間で起きている新たなムーブメントの一環だ。

Pachamaの場合、APIをビジネスモデルに組み入れるという発想は当初からビジネスプランに織り込み済みだった、と同社の共同ファウンダーであるCEOのDiego Saez-Gil(ディエゴ・サエズ・ギル)氏はいう。

「私たちが顧客としてShopifyに接してから事態は加速しました」とギル氏はいう。「Shopifyはカーボンニュートラルなサービスの提供を望んでいました。私たちはすでにカーボンクレジットをShopifyに売っていましたが、注文を手動で処理していました【略】 これを大規模でやるためにはクレジットの購入を自動化する必要があります」。

Pachamaが巨大ロジスティック会社でカーボンニュートラルなフルフィルメントサービスを提供しているShipbobと契約を結んでから状況が一変した。

PatchやCloverlyのような会社と異なり、Pachamaには自らのオフセットマーケットプレイスを使ってクレジットを提供できるという優位性があるとギル氏は感じている。

「私たちには、プラットフォームを通じて持ち込むあらゆるものについてマーケットプレイスと検証・監視サービスがあります」とGilは語った。

こうした背景によって、提供するオフセットの品質に高い透明性をもたらすことができる。

カーボンオフセットは、気象変動と戦うための有効な、しかし危険をはらむメカニズムであることが証明されている。ほとんどのプロジェクトは再生可能エネルギーや再生された森林、あるいは既存の森林や土地の保存といったかたちでコミュニティに真の利益をもたらしているが、一方では重複計算やカーボッオフセットの価値を水増しした単なる詐欺プロジェクトなどの問題がある。

Bloomberg News(ブルームバーグ・ニュース)のBen Elgin(ベン・エルジン)氏が連載している記事が、問題の広さを指摘しており、そこではThe Nature Conservancyなど信頼されている組織のプロジェクトも取り上げられている。

「これは、純粋な追加性の問題に行きつきます」とギル氏はいう。「プロジェクトに関わるものすべてについての炭素分離あるいは脱炭素の実際の増加は何なのか【略】オフセットの価値を評価するとき、私たちは科学に基づくアプローチと極めて保守的な仮定に沿う必要があります」。

透明性と説明責任はオフセットの開発、監視、管理をする上で極めて重要であり、これらのオフセットが、事業にともなう温室効果ガス排出量を劇的に減らそうとしている企業にとって中心的役割を果たすことを踏まえるとなおさらだ。

そしてオフセットは一時しのぎの措置にすぎない。最終的に企業は、社会にいっそう大きな影響をおよぼす気象変動のリスクを減らすために、一刻も早く自社の事業から炭素排出を取り除く必要がある。

「こんなに多くの会社がカーボンニュートラルなサービスを提供したがっていることを大変うれしく思います。やがて規範となるものであり、企業は顧客が望むからそうすることになります」とギル氏はいう。

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タグ:カーボンオフセット二酸化炭素API

画像クレジット:Getty Images under a license

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(文:Jonathan Shieber、翻訳:Nob Takahashi / facebook

中国が企業間の炭素排出量取引制度の運用開始、気候変動にポジティブな影響の可能性

中国は現地時間2月1日、全国規模の炭素取引マーケットを立ち上げた。このマーケットが効果的に機能すれば、2021年における温室効果ガスを削減するための最も大きな取り組みになるかもしれない

中国は世界最大の温室効果ガス排出国で、世界の排出量に占める中国の割合は右肩上がりだ。

中国政府は環境への影響を抑えようと取り組んでおり、炭素取引システムのような政策は新テクノロジーの浸透、国内スタートアップや世界中のテック企業の商品やサービスに対する需要増を呼び起こすかもしれない。

米国では一部で、そして欧州では広範に導入されている炭素市場は産業からの炭素排出に価格をつけ、大気から同量の温室効果ガスを取り除くプロジェクトに投資することでそうした炭素排出を相殺するよう企業に促す。

これは2015年のパリ協定の重要な構成要素であるが、議論も呼んでいる。というのも、Carbon Markets Watchの政策担当官Gilles Dufrasne(ジレス・デュフラン)氏が2020年にタイム誌に語ったように、十分に実行され効果的に管理されなければ排出企業の「大きな抜け穴」になり得るからだ。

これは中国には特に当てはまる。中国では腐敗が繰り返されており同国は長い間、環境政策と経済成長の管理を犠牲にしてきた。こうしたことは中国だけではないが、他のどの国(米国を除く)よりも大規模な制度の運用が決定された。

政策の有効性はまた、中国共産党の官僚主義内に存在するヒエラルキーの影響を受ける。ChinaDialogueが指摘したように、中国国家発展改革委員会(NDRC)よりも弱い法的権限を持つ生態環境省によって政策は出された。NDRCは中国全土のマクロ経済政策と同国の主要経済イニシアチブの監督を行っている主要政府機関だ。

世界の温室効果ガスの28%を占めるという最大の排出国である中国ほど、大規模な排出取引マーケットを導入した国は他にない。

全国人民代表大会(NPC)の閉会式で演説する習近平国家主席、2018年3月、中国・北京(画像クレジット:Lintao Zhang/Getty Images)

中国はまず2011年に深セン、上海、北京、広東、天津、湖北、重慶、福建で排出ガス取引システムのテストを開始した。絶対的な排出上限値よりも炭素集約度(GDPユニットあたりの排出)に基づいた排出の上限を設けたシステムを使って政府は電力部門や他の産業でこうしたパイロットの展開を開始した。

2018年の構造改革後に、NDRCの後援の元に起草された計画は生態環境部に投げ渡された。排出上限・取引プログラムの移譲は、ちょうど米国がDonald Trump(ドナルド・トランプ)政権下で気候規制やイニシアチブを捨ててパリ協定から脱退する最中でのものだった。

中国の排出スキームは当初2020年に取引シミュレーションで開始するはずだったが、新型コロナウイルスパンデミックで妨げられ、2021年2月1日の実行まで半年後ろ倒しになった。

差し当たって排出取引は中国の電力産業と約2000の発電所施設をカバーしている。ChinaDialogueによると、これだけで中国の総排出量の30%を占め、今後取引システムはセメントや鉄鋼、アルミニウム、化学、石油・ガスといった重工業にもおよぶ。

当面、政府は無料の排出枠を割り当て、「状況に応じて適切な時期に」オークション枠を開始する。

そうした表現、それから炭素価格が利益と貸し出しリスクにもたらし得る効果について注意喚起している国有企業や金融サービス企業が提起した懸念は、中国政府がまだ産業成長にともなう環境的コストよりも経済的利益を重視していることを示している。

ChinaDialogueが引用したマーケット参加者の調査では、二酸化炭素1トンあたりの価格は41元(約670円)から始まり、2025年には66元(約1070円)に上昇すると予想されている。中国における二酸化炭素の価格は2030年までに77元(約1250円)になると見込まれている。

一方、経済学者Joseph Stiglitz(ジョセフ・スティグリッツ)氏とNicholas Stern(ニコラス・スターン)氏が提唱した炭素価格にかかるコミッションが2017年にできた。両氏はマーケットと価格が行動に影響を与えるとすれば、二酸化炭素は2020年までに40〜80ドル(約4200〜8400円)、2030年までに50〜100ドル(約5200〜1万400円)のレンジになる必要があるとの考えを示した。

そうした価格をつけている国はない。しかし欧州連合はかなり近く、その結果、温室効果ガスを最も削減している。

それでも中国政府の計画には、検証済みの企業レベルの排出量についての公開報告要件が含まれている。そして、もし政府が実際の価格をつけることを決めた場合、マーケットの存在は炭素排出を追跡するための技術を開発しているモニター・管理機器のスタートアップにとって大きな恩恵となり得る。

ChinaDialogueのアナリストは以下のように記している。

カーボンプライシング(炭素の排出量に価格づけを行うこと)の最も困難な部分は往々にして開始時にあります。中国政府が国家の排出量取引制度(ETS)で目標を高く設定すると決めることは可能です。メカニズムが今、動き出し、習国家主席の気候分野における野心による勢いと政治的意思が衰えなければ、加速するかもしれません。数年のうちに、これは上限の低下、多くの部門のカバー、透明性のあるデータ提供、効果的な政府間の調整につながるかもしれません。ETSを縄張りへの脅威としてではなく、政策目標のために大きなコベネフィットをともなう方策としてとらえる必要があるエネルギー・産業当局においては特にそうです。

カテゴリー:EnviroTech
タグ:中国二酸化炭素二酸化炭素排出量気候変動

画像クレジット:大杨 / Flickr under a CC BY 2.0 license.

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(文:Jonathan Shiber、翻訳:Nariko Mizoguchi)

SPACはVCがクリーンテックに資金を提供するために必要なツール

【著者紹介】本稿著者のBrian Walsh(ブライアン・ウォルシュ)氏は、中南米の大手エネルギー企業であるCOPECのベンチャーキャピタル部門WIND Venturesの責任者だ。U.S. WIND Venturesは、モビリティ、エネルギー、小売分野のスタートアップやスケールアップに中南米へのアクセスを提供している。

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気候変動や世界的なエネルギー需要の増大を背景に、再生可能エネルギーやエネルギー貯蔵から原子力発電に至るまで、新たなクリーンテクノロジーに注目が集まっている。こうした技術には大きな可能性があるが、多くのイノベーションが必要であり、イノベーションには豊富な資本が必要だ。

しかし問題は、アーリーステージのクリーンテックへの資金供給が十分に行われず、新エネルギー企業の成長を阻害しているのはなぜかということだ。一般に、クリーンテック企業は敏捷性と柔軟性というスタートアップの利点を欠いている。

「迅速に動く」ことは消費者向けモバイルアプリやSaaSソリューションなどの製品では機能する。一方、クリーンテックセクターは高度に規制され、資本集約的で、ミッションクリティカルなインフラに関わる傾向がある。

それがリターンと善意に基づく影響力の両方を傷つけた。Cambridge Associatesによると、ベンチャーキャピタルが投資した企業の2000年以降の内部収益率(IRR)は平均してマイナス15%だった。これをベンチャーキャピタルが投資したヘルスケア企業と比べてほしい。同じ期間のIRRは24%だった。

クリーンテックに資金が不足している理由

テクノロジーを通じて世界をより良く、よりクリーンで、より安全で、より健康的な場所にするというその目的は高貴なものだ。しかし、クリーンテックベンチャーキャピタルは苦しんできた。理由は、単にクリーンテックが従来のベンチャーキャピタルモデルに合わないということだ。ベンチャーキャピタルモデルの中心となるのは、新しいアイデアのリスクを軽減し、最も有望なアイデアを大幅に活用して、M&Aまたは新規株式公開(IPO)により流動性をもたらす機能だ。

アーリーステージのクリーンテックへの資金供給は十分に行われず、新エネルギー企業の成長を阻害している。

ベンチャーキャピタルという仕組みがVC自身に投資リターンをもたらすだけでなく、ベンチャーキャピタルの投資評価額の上昇を通じてさらなる資金調達を可能にする。こうした資本化イベントにより、ベンチャーキャピタルから投資を受ける企業は成長を加速し、市場への影響を最大化することもできる。

これがどのように機能するかは、ヘルスケアとクリーンテックを比較すると明らかになる。ヘルスケアでは、VCが新しいイノベーションのリスクを軽減する。そして毎年、より成熟したイノベーションが得られたり、IPOを達成したりしている。その結果、2012年以降、VCの投資金額に対するイグジット時の調達金額の平均年率は1.8となっている。この比率は、クリーンテックではわずか0.2であり、反対方向に800%以上の差がある。このため、クリーンテック企業のリターンは低く、時価総額も抑えられている。

「SPAC」で(もう一度)検索してほしい

世界の環境の状況と新興国に豊富なエネルギーがないことを踏まえ、私たちはこうした問題をまとめて解決する必要がある。特別買収目的会社(SPAC)はクリーンテックが必要とするベンチャーキャピタル機能を大幅に改善している。Investopediaによると、

SPACは、既存の会社を買収するために新規株式公開(IPO)を通じて資金を調達する目的で設立される、商業活動を行わない会社である。

「ブランクチェック(白紙小切手)会社」としても知られるSPACは、何十年も前から存在している。近年人気が出ており、アンダーライターや投資家のビッグネームを引きつけ、2019年に記録的な金額のIPO資金を調達した。

2020年には110社を超えるSPACが米国で取引を完了し、290億ドル(約3兆450億円)以上の資本がもたらされた。

2020年、SPACからFisker、Lordstown Motors、QuantumScape、Hyliion、XL Fleetなどのクリーンテック企業に合計約40億ドル(約4200億円)の資本が投入された。これにより、同年にベンチャーキャピタルの投資金額に対するイグジット時の調達金額の比率は、以前の平均0.2からはるかに健全な0.6に押し上げられ、200%向上した。

2021年にはさらに改善すると思われる。なぜか。クリーンテックに携わる合併対象会社を探したり決めたりしようとするアクティブなSPACが43社存在するためだ。これらのSPACが合計120億ドル(約1兆2600億円)の成長資本を提供する可能性がある。2021年にこれ以上新しいSPACが現れず、M&AとIPOが歴史的低水準になっても、2021年はクリーンテックへの投資の継続的な改善が約束されている。

Nikolaを悪しき前例にするな

最も注目を集めたクリーンテックSPACの1つはNikola Corporationだ。バッテリー式で水素を動力源とするトラックを製造する同社は、2020年6月に特別買収会社VectoIQとの逆さ合併により公開して以来、注目の的となってきた。時価総額は急上昇し、事態は順調に進んでいるように見えたが、2020年末に同社の技術などについて虚偽の発言をしたとして非難され、物議を醸した。

Nikolaのような例は、クリーンテックへの投資促進手段としてのSPACの台頭を阻む汚点となる可能性があるが、そうなってはならない。品質と誠実さを主張するスタートアップの例はたくさんある。たとえばエネルギー貯蔵最適化分野のリーダーであるStem(Wind Venturesのポートフォリオカンパニー)は、Star Peak SPACを介して公開する予定であり、現在SECの承認待ちだ。

公開市場は熱意を持ってSPACを迎えている。Stemの合併が起こると仮定すると、成長を加速し、影響を促進するために4億5000万ドル(約470億円)を超える現金を保有することになる。クリーンテックを機能させ、繁栄するセクターとするために必要かつ前向きなベンチャーキャピタル機能としてのSPACの例だ。

私自身、長年のクリーンテックベンチャーキャピタリストとして、SPACを介した公開市場での投資がクリーンテックにとってVC機能に代わる可能性があることは興味深い。何年もの間、企業がこの問題を解決するためにプレミアムを乗せたバリュエーションでM&A活動を強化すると思っていた。だが私は、長い間待ち続けることとなった。

活動から判断すると、企業は「所有」の役割ではなく、依然として非常に重要な投資家や育成者の役割を果たし続けることに満足しているようだ。とにかく、有望なクリーンテック企業に資金を提供するということが意味するのはたった1つ。これらの企業は資本を必要とし、また規模を拡大するためにそれを使用する中で、クリーンテック関連のインパクトがかつてないほど大きくなっているということだ。

新しい優れたクリーンテクノロジー企業を見つけて資金を提供するための、新しくより多様なアプローチが切実に必要とされている。SPACは、クリーンテックをヘルスケアなどのセクターと同等にするために必要なツールになると思われる。それは私たち全員にメリットがある発展だ。

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カテゴリー:EnviroTech
タグ:SPAC

画像クレジット:ATU Images / Getty Images

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(文:Brian Walsh、翻訳:Nariko Mizoguchi)

アクセラレーターUrbanーXは世界がその環境思想に追いついてきたこの機に次期コホートを決定

ベンチャー投資ファンドUrban US(アーバン・アス)とBMWの子会社であるMINI(ミニ)が、持続可能で回復力のある未来の都市居住問題に第一義的に取り組む企業を支援する目的で立ち上げたアクセラレーターのUrban-X(アーバンエックス)の新しいコホートが決まった。

第9期となる今回の参加企業は、Urban-Xとその親会社が長年取り組んできたUrban-Xの使命に世界最大手の投資会社が賛同し始めたこの時期に、市場展開することとなる。早い話が、気候が変動しているため、変化した環境に人が適応できるよにする技術的ソリューションが求められているということだ。

「2014年の気候テック投資家として、2021年にいられてよかった」とUrban USの共同創設者Stonly Baptiste Blue(ストーンリー・バプティース・ブルー)氏はいう。「持続可能性と気候変動に対処するスタートアップが今ほど追い風に恵まれた時期はないと、納得されると思います」。

もちろんUrban−Xの仕事は、単に気候変動と復興に対処するだけではない。今後数年で資金を調達し投資者に大きなリターンをもたらすであろう企業として、この分野のスタートアップが目立つようになってきた。

「私たちが見ているのは、気候市場の数百兆ドル(数京円)という資金の波です」とバプティース・ブルー氏。「今が気候の10年であることを示す証拠はたくさんあります」

そして、バプティース・ブルー氏が将来に期待するように、野心的な起業家が大きな新ビジネスを立ち上げる機会はまだまだたくさんある。

「物事がますます厄介になり、災害が日常のものとなる中、復元力を備え、人と人とのコミュニケーションを保つために、災害リスクから情報遮断対策、コミュニティ構築と、この気候テック投資の第2波で私たちがカバーしようとしてる課題は数多くあります」とバプティース・ブルー氏は話す。

今回の新しい講座でUrban−Xが支援する企業には、その条件にぴったり一致するものがある。ソーラー電力の交直変換を集中管理する装置を展開するDomatic(ドマティック)、復元プラットフォームのためのコミュニケーションプラットフォームを構築するOneRoof(ワンルーフ)、災害リスクを軽減する機械学習プラットフォームDorothy(ドロシー)などがそうだ。

TechCrunchの調べでは、現在、同アクセラレーターの内部利益率はおよそ29%だ。

今回参加するコホート企業は以下のとおり。

  • Builders Patch(ビルダーズ・パッチ):安価で複数世帯が暮らせる住居のためのデータプラットフォームおよびマーケットプレイス
  • Domatic(ドマティック):交流主体のソーラー電力供給の普及を目指す集中型の交直変換装置を販売
  • Dorothy(ドロシー):宅地単位で高度な災害リスクの分析が行える機械学習プラットフォーム
  • OneRoof(ワンルーフ):コミュニティ住宅と復元コミュニケーションプラットフォーム
  • Oonee(ウーニー):安全な自転車置き場の管理とマイクロモビリティ関連サービスのためのeコマース・プラットフォーム
  • Origen Hydrogen(オリジェン・ハイドロジェン):大型車両、工業、長期バックアップ電源のための環境にやさしい水素を製造する低価格のハードウェア
  • Singularity(シンギュラリティー):AIとデータを駆使した炭素排出情報と予測のためのプラットフォーム
  • Urbio(アービオ):都市や公共施設のエネルギー革命のための計画とデザインを支援するソフトウェア。
カテゴリー:EnviroTech
タグ:Urban-Xアクセラレータープログラム気候変動持続可能性

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(文:Jonathan Shieber、翻訳:金井哲夫)

太陽光発電に融資するLoanpalが約834億円調達、再生エネルギーへの投資の波は続く

億万長者で投資家のChamath Palihapitiya(チャマス・パリハピティヤ)氏が太陽光発電および住宅改修への融資事業を営むSunlight Financialの13億ドル(約1350億円)での買収への関与を発表してから数日後、複数の投資家が再生可能エネルギーおよび住宅改修への別の融資業者であるLoanpal(ローンパル)への約10億ドル(約1043億円)の現金注入を発表した。

Loanpalへの8億ドル(約834億円)のコミットメントは、世界最大の投資家らが気候へのコミットメントを急ぐ動きと歩調を合わせるかたちとなった。

9兆ドル(約940兆円)の投資運用会社であるBlackrock(ブラックロック)のCEOであるLarry Fink(ラリー・フィンク)氏は米国時間1月26日、気候データのより厳格な会計と報告を求める年次書簡を発表した。Bank of America(バンク・オブ・アメリカ)も、国際ビジネス委員会と世界経済フォーラムが承認した気候と持続可能性に関する新しい報告基準に取り組むために他の60社とともに加わった。同氏は、Task Force on Climate Related Financial Disclosures(TCFD、気候関連の財務情報開示に関するタスクフォース)という別の報告スキームも承認した。このスキームは世界最大の金融投資家らが支援している。

こうした新しい基準は、温室効果ガス排出量を削減する企業への投資額を増やすだろう。温室効果ガスは地球全体の気候変動に影響している。そして、エネルギー効率がより高い機器や再生可能な設備への切り替えを奨励する融資プログラムは、金融サービス業界にとっておそらく最も成果を得やすい分野だ。

これがNEA、WestCap Group、Brookfield Asset Management、巨大なプライベートエクイティエネルギー投資ファンドのRiverstone Holdings(リバーストーンホールディングス)などの投資家がLoanpalを支援する理由の1つだ。

戦略的投資家に事業の持ち分を与えるセカンダリートランザクション(株主間の株式売買)だったこの取引は、実際には2020年に完了した。取引の結果、NEAのマネージングゼネラルパートナーであり、投資家としての長い経歴も持つScott Sandell(スコット・サンデル)氏と、WestCap GroupのマネージングパートナーであるLaurence Tosi(ローレンス・トシ)氏が同社の取締役会に加わった。

「私たちは多くのプレイヤーを会社に招待しました」と、Loanpalの創業者で会長兼最高経営責任者のHayes Barnard(ヘイズ・バーナード)氏は述べた。Tesla(テスラ)に買収される前のSolarCity(ソーラーシティ)の元最高収益責任者であるバーナード氏は、太陽エネルギー開発で長い経験を持つ。Loanpalでは投資家になる可能性のある人々の中から選べるだけのバランスシートを持っていた。「私たちは数十億ドル(数千億円)規模の企業です」とバーナード氏は述べた。

Loanpalの創業者で会長兼最高経営責任者のヘイズ・バーナード氏(画像クレジット:Loanpal)

「戦略的投資家を招き、彼らにどこで助けてもらえるか、そして彼らにどのように助けてもらえるかについて考えていたのは私たちです」とバーナード氏は語った。

Loanpalは収益性が高く、負債もなく、投資家に毎月配当している。「現在、私たちはバッテリーシステムと組み合わせた約1万5000のソーラーシステムに月額4億ドル(約420億円)の資金を融資しています」とバーナード氏はいう。同社は2018年の立ち上げ以来、合計で59億ドル(約6140億円)の消費者金融ローンを手がけた。同社はまた、ベンダーであるトップソーラー企業の約85%を顧客に数え、約1万2000人のセールスプロフェッショナルを擁している。

こうした数字により、同社は数十億ドル(数千億円)規模の金融サービス会社であるBlackstoneの元最高財務責任者だったトシ氏のような取締役を迎え入れることができた。「彼は資本市場を大規模に招き入れる方法を本当に理解しています」とバーナードは述べた。

とにかくBlackrock、Blackstone、Riverstone、および名前に石(ストーン)や岩(ロック)が入っていないあらゆる金融サービス会社からの注目は、これが大規模な資本の問題であることを示している。世界経済フォーラムによると、世界経済の脱炭素化は10兆ドル(約1040兆円)規模のビジネスだ。または、個人投資を行う人々にとっては、米国時間1月26日の株価で約667億ドル(約7兆円)のGamestopに相当する。

「私たちが今、参入しようとしている短期の市場は、1000億ドル(約10兆4000億円)の市場である持続可能な家庭向けソリューションです」とバーナード氏は述べた。

その10兆ドル(約1040兆円)のかなりの部分は、エネルギー消費を削減するための新しい消費者向け機器とハードウェアの開発・統合からもたらされる予定だ。「バッテリーストレージ市場、スマートサーモスタット市場、ソーラー市場はすべて絡み合い、統合されていると私たちは信じています」とバーナード氏は話した。「全体として最も重要なことは、これがより優れたテクノロジーにすぎないということです。ホワイトハウスに誰がいるかに関係なく、規模は拡大する予定でした。こういったテクノロジーは優れており、住宅所有者のお金を節約します。住宅所有者がやりたいのであれば、これは一種のIQテストです」。

関連記事:SPACで知られるVCの最新の合併はSunlight Financial、再生可能エネルギーブームの兆しか

カテゴリー:EnviroTech
タグ:Loanpal資金調達再生可能エネルギー

画像クレジット:Will Lester/Inland Valley Daily Bulletin / Getty Images

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(文:Jonathan Shieber、翻訳:Nariko Mizoguchi

テスラが第4四半期の決算を発表、蓄電池・太陽光発電事業に急成長の兆し

Tesla(テスラ)が最新の決算報告書を発表した。そこには蓄電池と太陽光発電に対するElon Musk(イーロン・マスク)氏の賭けが実を結び始めていることが示されている。

蓄電池事業はこの第4四半期に同社の攻撃的戦略における主役となり、四半期ごとの前年同期比成長率は200%に近づいている。テスラは株主向けプレゼンテーションで「(蓄電池事業の)市場展開は2019年から2020年にかけて大幅に成長しました。当社の蓄電池の総配備量は初めて単年度で3GWhを超え、前年比83%増となりました」と述べている。

太陽光発電事業にも陽光が射し込んだ。年間の太陽光発電の設置量は205MWに増加し、前年比18%増となった。「この成長は製品の簡素化、コスト削減、業界をリードする価格設定など、当社の太陽光発電設備戦略を大幅に改善した結果です」とマスク氏は語った。

Teslaの第4四半期における発電・蓄電事業の収益は7億5200万ドル(約784億円)と、前年同期の4億3600万ドル(約455億円)、第3四半期の5億7900万ドル(約604億円)から増加した。

これは、Teslaの電力事業における急成長の始まりに過ぎないと思われる。同社は長い間、世界最大の電力会社や公益事業会社の1つになりたいと公言しており、世界中の資本が再生可能エネルギーへのシフトを促進するために資源を集めている。

バイデン政権の再生可能エネルギー計画が、その目標に向けて太陽光発電の開発や建造を劇的に推し進めることで、Teslaは大きな恩恵を受ける可能性がある。この大規模なインフラ投資では、再生可能エネルギーを蓄えるために大容量のバッテリーが必要になるだろう。また、大規模な太陽光発電設備も必要になるだろう。

米連邦政府が再生可能エネルギーに資金を移す間にも、民間資本が太陽光発電やエネルギー貯蔵を劇的に後押しするために流入してきている。

先週だけでも、投資家は住宅所有者に太陽光発電設置やオール電化リフォームのために資金を貸す企業に、20億ドル(約2085億円)近くを投入した。SolarCity(ソーラーシティ)の元幹部が設立したある会社は、8億ドル(約834億円)の資金を調達したと米国時間1月27日発表したばかりだ。

少なくとも、これらの資金の一部は、テスラの蓄電池事業と太陽光発電設置事業のキャッシュレジスターを鳴らすことになるだろう。

関連記事:バイデン次期大統領の気候変動対策はグリーンニューディールに依存しない

カテゴリー:EnviroTech
タグ:Tesla太陽光発電イーロン・マスク再生可能エネルギー決算発表

画像クレジット:Patrick T. Fallon / Bloomberg / Getty Images

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(翻訳:TechCrunch Japan)

イーロン・マスク氏が最高の二酸化炭素回収技術に賞金104億円

Elon Musk(イーロン・マスク)氏は米国時間1月21日、最高の二酸化炭素回収技術に1億ドル(約104億円)を寄附するとツイートした。

マスク氏は最近、Amazon(アマゾン)のJeff Bezos(ジェフ・ベゾス)氏を超えて世界一のお金持ちになったが、別のツイートで「来週詳細を発表する」と述べただけで、それ以上の説明はない。

【更新】計画に詳しい人物がTechCrunchに語ったところによると、これは技術開発とイノベーションの促進を目的としたコンテストを主催する非営利団体のXprize Foundationと連携するものだという。

最高の炭素回収技術賞に1億ドルを寄付しています。

正式な名称を二酸化炭素貯留(Carbon Capture and Storage、CCS)というこの技術の定義は、その名前のとおりだ。製油所や工場などの廃棄物である二酸化炭素を、その発生源で捉えて保存し、有害な副産物を環境から取り除いて気候変動を緩和する。それは新しい探求ではなく、およそ20年ほど前から、多くの企業によってさまざまな方法が提案されてきた。

CSSは、初期費用が高いことが主な障害となっている。しかしそれでも、炭素の回収と再利用(Carbon Capture and Utilization, CCU)で有望な技術を見つけた企業がいくつか存在する。CSSの「いとこ」のようなその技術は、収集された排出ガスを他のより価値の高い用途に変換する。

LanzaTechが開発した技術は、排出ガスとバクテリアを利用してエタノール燃料を作り出す。使用するバイオリアクターは、製鉄所や工場などからの排出ガスを取り込み、圧縮して液化する。LanzaTechのコア技術は、汚れた排出ガスを好んで食べるバクテリアだ。バクテリアが排出ガスを食べると発酵が生じ、エタノールが生成される。そしてそのエタノールからさまざまな製品を作る。LanzaTechは、多様な製品の生産をそれぞれ別の企業としてスピンオフしている。たとえばLanzaJetと呼ばれるスピンオフは、エタノールをエチレンに変換するといった技術に取り組んでいる。そのエチレンから、瓶を作るためのポリエチレンや、服の繊維になるPEPなどが作られる。

その他にもClimeworksやCarbon Engineeringといった企業もある。

Climeworksはスイスのスタートアップで、ダイレクトな排出ガス回収の技術を目指している。その技術はフィルターを使って空気から二酸化炭素を収集する。集まった二酸化炭素を保存したり、肥料などの他の用途に販売したりする。発泡飲料の泡としても使われる。Carbon Engineeringはカナダの企業で、大気中の二酸化炭素を取り除き、それを処理して強力な石油回収技術や、新しい合成燃料の生産に利用する。

カテゴリー:EnviroTech
タグ:イーロン・マスク二酸化炭素

画像クレジット:Diego Donamaria / Getty Images

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(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

リモートワークは環境に優しいがそのためのテクノロジーにも炭素コストがある

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)によるリモートワークへの大幅なシフトによって、自動車その他の二酸化炭素排出量は大幅に減少したが、また別のコストがかかっている。最新の研究によると、自宅勤務を可能にするためのネット接続やデータインフラストラクチャーは一時的な炭素コスト引き上げを起こしている。そしてそれは、カメラをオフにするいい訳になる。

パデュー大学、イェール大学、およびMIT(マサチューセッツ工科大学)の研究者が、インターネットインフラストラクチャーの炭素、土地、および水のコスト分析を試みた。

「持続可能なデジタル世界を構築するためには、インターネットの環境負荷を慎重に評価し、その増大に最も影響を与える個人あるいは集団の取るべき行動を見定める必要がある」と彼らの論文の導入部に書かれている。

単一の指標を使うのは短絡的すぎると彼は指摘する。炭素排出量は有効な指標だが、電力源や水のコスト(データセンターの冷却・運用に必要)に加え、製品を作るために必要な理論的「用地費」を追跡することも重要だ。もしこれが少々根拠に欠けると感じたなら、それは一連の推計がそうだからだ。

「この種の計算を地球規模で行うためには、数多くの仮定が必要であり、必要なデータの多くが欠けています」と筆頭研究者であるイェール大学のKaveh Madani(カーヴェ・マダニ)氏はTechCrunch宛のメールで述べた。「それでもこれは良い出発点であり、手に入るデータを使ってできることにベストを尽くすだけです」(マダニ氏は、統計的や科学的な厳密さの欠如よりも、業界の透明性の欠如の方が、研究の精度を妨害していると指摘した)。

研究結果の一例を挙げると、1時間のHDビデオストリーミングは最大440gの二酸化炭素を排出する。YouTubeの排出は最大1000g、Zoomやビデオ会議では160gなどビデオ品質によって異なる。一方、現代の自動車はガソリン1ガロン当たり8887g(1リットル当たり2347g)排出している、とEPA(米国環境保護庁)はいっている。職場まで20マイル(32 km)通勤する代わりに、ビデオミーティングを1時間行っているなら、間違いなくグリーンであり、1桁か2桁は違う。

画像クレジット:Madani et al

ただし、在宅勤務へのシフトやデジタル消費が悪いことだといっている人はいない。「もちろん、バーチャル会議はオフィスにクルマで行くよりも環境に良いけれど、もっと良い方法があるはずです」とマダニ氏はいう。

問題は、わずかな環境コストでビットを動かすことだけではないことだ。たしかにそのデータはファイバーを通じて送られるだけたが、それは巨大なデータセンターや通信インフラ、そしてもちろん無駄なデバイス買い替えの永遠のサイクルのおかげでもある。ただし最後の1つはこの論文の推計には含まれていない。

使うもののコストを知らなければ、情報に基づく使い方はできないと研究者らは警告する。
「バンキングシステムはペーパーレスによる環境への好影響を訴えるが、カメラをオフにしたりストリーミングの解像度を下げることの有益性は誰も教えてくれない。つまり、ユーザーの了解を得ることなく、各プラットフォームは私たちの環境負荷を増やしているのです」とマダニ氏はパデュー大学のニュースリリースで語った。。

顔が見える必要のない通話でカメラをオフにすることによる炭素排出量の削減は、わずかではあるが些細ではない。同様に、ストリーミングの品質をHDからSDに落とすことで、通信に関わるエネルギーを約90%節約できる(もちろんテレビやスピーカーの使用電力は変わらない)。

悲観的情報を読み続けるあの「ドゥームスクローリング」の習慣はすでに問題になっているが、親指のフリック1つずつが、間接的にどこかのデータセンターに熱い不気味な気体を排出させ、空調費用をわずかに上昇させていることを思うと、いっそう問題だ。ソーシャルメディア一般はHDストリーミングほどのデータを消費していないが、TikTokをはじめとするビデオ中心ネットワークの普及は、すぐに追いつくことを意味している。

マダニ氏は、彼らの研究に関する誤解を招く記事はともかく、この研究はカメラをオフにするなどといった簡単な治療薬を処方するものではないと説明する。もちろんそうすることは可能だしするべきだが、我々が見るべきは体系的変化であり個人ではない、と同氏はいう。何百何千万人の人々がそれぞれカメラをオフにしたりストリーミング品質を4Kから720pに下げる可能性を考えてみてほしい。ほんのわずかだろう。

その一方で、もしこれらのサービスのコストが明確になれば(マダニ氏らが取り組み始めているように)、対象となる企業にインフラ側の変化を求める圧力がかかり、アルゴリズムを改善することで、5000万人がかすかな不快を受け入れる意識的決断をする以上のエネルギーが節約されるだろう。

「消費者には、今起きていることをもっとよく知る権利があります。彼らは自分のコンピューターでEnterボタンを押したとき何が起きるかを知りません。知らない人たちが行動を変えることは期待できません」とマダニ氏はいう。「政策決定者は立ち上がってこの分野の問題を提起し、規制を検討し、透明化の改善を強制し、公害税を課し、インセンティブ機構を作るべきです。将来もう1つの維持不可能で制御不能なセクターを見たくなければ」。

デジタルへの転換は、驚くべき効率を生み出し多くの無駄を削減あるいは排除してきたが、その過程で新たな問題を生み出した。進歩とはそういうものだ。新たな問題が古い問題より好ましいことを願うばかりだ。

この研究は学術雑誌、Resources, Conservation and Recyclingに掲載されている。

関連記事:リモートワークは「自宅監禁」から柔軟性のある「どこでも勤務」に変わっていくべき

カテゴリー:EnviroTech
タグ:リモートワーク二酸化炭素排出量

画像クレジット:Olivier Doiliery / Getty Images

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

100%植物性・完全生分解性の素材を開発するアミカテラが資金調達、国内初の工場を熊本で6月稼働

100%植物性・完全生分解性の素材を開発するアミカテラが資金調達、熊本で国内初の第一工場を6月稼働

100%植物由来および完全生分解性を示す新素材「プラントファイバーセラミック」(PFC)を開発するアミカテラは1月20日、第三者割当増資による資金調達を発表した。引受先は、EEI4号イノベーション&インパクト投資事業組合、伊藤園、イノベーション創出投資事業有限責任組合(阿波製紙)、住友商事、ハウス食品グループ-SBIイノベーション投資事業有限責任組合など(50音順)。

これに伴い、2021年6月に国内初となる第一工場(熊本県益城町)稼働を開始し、PFC製品の開発・製造販売を推進する。さらに2022年1月には、第二工場(熊本県水俣市)の稼働も予定している。

アミカテラが製造するPFCは、「プラスチックによる環境汚染問題の解決」と「大量廃棄される植物残渣の有効活用」を目指して開発されたプラスチック代替素材。

PFCは植物繊維を主原料とし「100%植物由来」であるため、「自然環境下で100%生分解する」特性を備え、「バイオマスプラスチック」と「生分解性プラスチック」両面の特性を持つ稀有な素材という。

また、植物繊維であれば原料となりうるため、植物残渣の活用や間伐材、製材残渣、放置竹林問題などへの貢献も可能。PFCの製造を先行開始している台湾では、すでに大手コーヒーチェーンやコンビニエンスストアなどで多数の採用実績があるそうだ。

アミカテラによると、日本工場における将来的な事業スキームは、「廃棄物完全ゼロ」への挑戦という。製造の過程では、地域の農業廃棄物や、食品・飲料メーカーなどから出る残渣などを引き取り、原料として活用。製品の使用後は、回収し、粉砕・再製造するという一貫した自然環境のリサイクル活動を目指す。

これは、2015年9月の国連サミットで採択された「SDGs」(持続可能な開発目標)17の目標の達成に向けて、また菅政権が掲げる「2050年カーボンニュートラル」への挑戦に向けた取り組みとしても貢献につながると考えているという。

関連領域における豊富なリソースを有する事業会社と連携することで、PFCならではの強みを生かし、循環型社会の実現に向けた新たなビジネスモデル構築を推進していくとしている。

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Boomの超音速旅客機のテスト機「XB-1」はカーボンニュートラルの実現を目指す
Amazon、2030年までに出荷の50%をカーボンニュートラルにすると宣言
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カテゴリー:EnviroTech
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