財務の収支報告に加えて未来の企業は炭素収支をと訴えるPersefoniがシードで4億円相当を調達

大企業の炭素排出量報告(カーボンレポーティング)を簡易化するPersefoniの創業者Kentaro Kawamori氏とJason Offerman氏は、炭素排出のエキスパートだ。

二人が働いていたオクラホマシティのエネルギー企業Chesapeake Energy Corp.は、石油や天然ガスの抽出をやっていたが、それらは世界最大の汚染源のひとつだ

Kawamori氏は多彩なキャリアの持ち主で、これまでAccentureやInsight、SoftwareONE、Major League Gamingなどでそれぞれ2年ほど過ごし、その後Chesapeake Energyのチーフ・デジタル・オフィサー(CDO)に昇進、そこでOfferman氏に出会った。同社は当時、アメリカを石油と天然ガスの世界の覇者にすべく、健闘していた。

Offerman氏はKawamori氏に出会う前も同社に30年在籍して、現場のオペレーショとERPを担当していた。二人は一緒に社を去って起業家の道を選び、2019年の終わりごろRice Investment Groupと呼ばれる家族VCと出会った。

彼らのタイミングは、運が良かった。Chesapeake Energyはその後1年足らずで倒産した。しかしChesapeakeが苦境でもOffermanとKawamoriの両氏はPersofoniの創業に励み、1月に正規に法人を立ち上げた。

同社は企業に、ERPのソフトウェアに似たものを提供し、確立されたガイドラインに基づいて企業のカーボンレポーティングのスコープをセットアップして、その会社の排出プロフィールを見える化する。

同様のプロダクトを売り込む企業はこれまでもたくさんいたが、多くの顧客企業が環境の影響など無視できると信じているため、売り込みは、組織の惰性の克服に苦労した。しかし今日のような景況においては、企業が株式市場の流動性のために依存する大手の投資家たちにとって、そのような怠惰な態度はもはや受け入れられない。

PersefoniのCEOであるKawamori氏もこう言う: 「今では、機関投資家たちは企業が持続可能性に関する指標を必ず公表せよと迫っている」。

持続可能性に関連する数値の公表を企業に求めているのは、機関投資家だけではない。Kawamori氏の予想では、EUがプライバシーに関する必須事項をまとめたGDPRと同じような 必須的な規制を、炭素排出に関しても成立させるだろう、という。

同社を支える投資家は、8月18日の350万ドルのシードラウンドをリードしたRice Investment Groupと、それに参加したCarnrite Ventures、そして匿名希望のエンジェル投資家たちだ。Rice Investment Groupの共同創業者でパートナーのDaniel Rice氏は、かつてRice Energyの石油と天然ガス担当役員だったが、今回Persefoniの取締役会に加わった。

Persefoniがレポーティングに用いるのは標準的な測度で、そのソフトウェアは、それらの測度に対して同社が策定した基準に基づくレポーティングのみをサポートする。このような、あらかじめ項目の決まった自己報告的な仕組みによって、顧客企業が測定に関して十分な透明性を欠いたり、どのデータを含めるべきかよく分からない場合でも、必要最小限の情報開示を確保する。

Kawamori氏は声明でこう述べている: 「Persefoniが目指すのは、今どの企業でも財務報告がほぼ義務化されているように、将来はカーボンフットプリントの調査や報告を、どの企業にとっても当たり前のものにしたい。財務のためのERPシステムは何十年も前に財務データに関して標準化と義務化を普及させたが、炭素インベントリの管理とトランザクションに関しても、企業に対する同じニーズが育ちつつある」。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

ウェザーニューズが台風など荒天時の商品需要を予測する在庫最適化エンジンを発表、「いなげや」に試験導入

ウェザーニューズが荒天時の商品需要を予測する日本初の在庫最適化エンジンを発表、「いなげや」に試験導入

ウェザーニューズは8月3日、今夏の台風シーズンに備え、小売・製造事業者向けに荒天時における商品の急激な需要変化を予測する日本初の在庫最適化エンジン「PASCAL」(パスカル)を独自開発したと発表した。8月21日からスーパーマーケット「いなげや」で試験導入を開始する。

PASCALは、台風・大雪など荒天時の消費者行動を予測する在庫最適化エンジン。小売・製造事業者が保有する販売数や購買客数のデータと、ウェザーニューズの日々の気象や体感、荒天時のデータを基に構築されており、荒天時の来客数や、商品需要をカテゴリー・品目ごとに予測可能。日々の気温・体感の変化に伴う商品需要も予測でき、平常時から利用できるとしている。

また、8月からPASCALを搭載した商品発注支援サービスの提供を開始する。同サービスは、台風接近など荒天時の消費者行動を加味した7日先までの商品需要と来客数を「特需」「増加」「並」「減少」「特減」の5段階で判定。これにより、事前の備えによる食料品や防災品の「特需」や、台風接近時の来客数の「特減」を事前に把握することが可能になるという。

ウェザーニューズが荒天時の商品需要を予測する日本初の在庫最適化エンジン「PASCAL」を発表、「いなげや」に試験導入

さらに8月21日から、いなげやに商品発注支援サービスを提供する。いなげやでは、台風や大雪などの気象ニュースをもとに商品を送り込む場合、実際の影響が異なる場合があることや、影響を受ける店舗を把握できるタイミングが直前になり、メーカーとの調整が間に合わないことが課題となっていたという。同サービスの試験導入により、まずは実験店舗にて荒天時の来店客数や商品需要予測を活用し、店舗への最適な送り込みや、食品の廃棄ロス・発注のチャンスロスの軽減を狙う。

ウェザーニューズが荒天時の商品需要を予測する日本初の在庫最適化エンジン「PASCAL」を発表、「いなげや」に試験導入

ウェザーニューズはPASCALをプロモーションや荒天時の計画配送、計画生産など製造、小売業に向けのシステムに搭載し、様々なサービスに展開していくほか、自動発注システムとの連携も計画。小売・製造事業者が有するビジネスデータや既存システムと気象データを連携させることで、サプライチェーンにおける収益の最大化、廃棄ロスの最小化、気候変動リスクへの適応を目指す。

ジップロックをリサイクルした傘のシェアリングサービスが開始、7月29日よりテラサイクルが一般回収スタート

旭化成ホームプロダクツ テラサイクルジャパン Nature Innovation Group アイカサ ビームス Ziploc RECYCLE PROGRAM

旭化成ホームプロダクツテラサイクルジャパンNature Innovation Group(アイカサ)ビームスは7月29日、ジップロックをリサイクルした傘のシェアリングサービスを展開する「Ziploc RECYCLE PROGRAM」の開始を発表した。

Ziploc RECYCLE PROGRAMは、使用済みジップロックを回収し、別のプラスチック製品に作り替えることで廃プラスチック問題の解決に貢献する活動。使い捨てビニール傘の廃棄問題に着目し、ジップロックをリサイクルした傘を、傘シェアリングサービスで運用する。

旭化成ホームプロダクツを中心とした4者協同のプログラムとなっており、回収とリサイクルをテラサイクルが、傘のデザイン監修をビームスのBEAMS COUTURE(ビームス クチュール)が、傘シェアリングサービス運用をアイカサが実施する。

旭化成ホームプロダクツ テラサイクルジャパン Nature Innovation Group アイカサ ビームス Ziploc RECYCLE PROGRAM

まずは、7月29日よりテラサイクルの「Ziploc リサイクルプログラム」でジップロックの一般回収を開始。9月中旬には、生産過程で出る廃棄品を使用したリサイクル傘のシェアリングサービス運用を西武鉄道池袋線池袋~飯能駅(26駅)を中心に都内で開始する。

旭化成ホームプロダクツ テラサイクルジャパン Nature Innovation Group アイカサ ビームス Ziploc RECYCLE PROGRAM

旭化成ホームプロダクツ テラサイクルジャパン Nature Innovation Group アイカサ ビームス Ziploc RECYCLE PROGRAM

旭化成ホームプロダクツは、 持続可能な社会の実現に向けてサステナブル方針を策定。この方針のもと、ステートメント「あたりまえのまいにちを、この先も、ずっと。」を掲げ、今回の新規プロジェクトを発足。豊かな食生活や健康的な暮らしをかなえるためのアイディアなどの日々の暮らしに寄り添う取り組みから、食料問題やエネルギー問題、気候変動への対策といった未来の暮らしを守る取り組みまで、SDGs(持続可能な開発目標)に表される社会課題を見すえた取り組みを推進する。

テラサイクルは、「捨てるという概念を捨てよう」というミッションのもと、従来廃棄物として捨てられていたモノや、リサイクルが困難とされているモノを世界各国で回収し、様々な製品にリサイクルする米国発の環境ソーシャルベンチャー。現在21ヵ国で事業を展開しており、大手企業やブランドと協働で使用済み製品やパッケージなどを回収、原料や製品としてマテリアルリサイクル(再資源化)している。

アイカサは、2018年12月にサービスを開始した、日本初の本格的な傘のシェアリングサービス。突発的な雨の際でも、ビニール傘を購入せずにアイカサを借りて利用でき、雨が止んだ際には最寄りの傘スポットに傘を返却できる。現在は、東京都内全域と、福岡、岡山、関西、名古屋などを合わせて、スポット数約700ヵ所を展開。

ビームスは、BEAMSのデッドストック商品などをリメイクし新たなアイテムへアップサイクルするブランドとして、2017年10月よりBEAMS COUTUREを展開している。

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深圳で犬へのマイクロチップ埋め込みが義務化、費用は行政負担

ハードウェアの世界的中心都市が、ペットのためのデジタル技術に取り組んでいる。2020年5月に中国南部の都市である深圳は、すべての犬はチップを埋め込まなければならないと発表(Global Times記事)し、英国(BBC News記事)、日本(The Japan Times記事)、オーストラリア(RSPCAリリース)などと並んで、現在、続々増えている犬のマイクロチップを義務化した国々の仲間入りをすることになった。

Shenzhen Urban Management Bureau(深圳都市管理局)からのソーシャルメディアへのポスト(Weibo投稿)は、今週、当市の行政は市に登録している動物病院に注入ステーションを設置する作業を開始したと報告している。

チップの寿命は15年以上といわれ、大きさは米粒程度、犬の首の皮膚の下に埋め込まれる。有資格者がそのチップをスキャンすると15桁のユニークな数値がわかり、そこからさらに犬の名前や犬種、オーナーの名前、連絡先などがわかる。これにより迷い犬の減少が期待される。そのマイクロチップは、電波による近距離の静的データ送信を行うRFIDチップで、犬の位置などの動的データは追わない。また、地元メディアの記事によると、行政がオーナーの個人情報を保存することはない(SHENZHEN CHINA記事)。

深圳を象徴するようなテクノロジー企業であるHuawei(ファーウェイ)は、米国の貿易制裁の中で外国の半導体部品の追放に躍起になっているが、市の調達部局はペット用チップを輸入した。前述の記事によると、それらは米国とスウェーデンのブランドだという。

深圳は今、ペットの人口が増加しているので、それらに対する監督力を強めたい行政は、すべてのチップとその埋め込み費用を市が負担することにした。2020年11月までに自分の犬にマイクロチップを埋め込まなかった者は罰金を払うか、犬を市に渡さなければならない。この人口2000万あまりの都市には、2019年現在の公式データ(深圳市リリース)で約20万の犬と猫がいる。同じ2019年に中国全土では1年間に犬と猫の人口が8.4%増加して10億頭近いと業界の白書(Pet Fairリリース)はいう。

画像クレジット:Angelo Merendino/Corbis / Getty Images

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(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

東大発スタートアップ「ノイカ」が世界初のサンゴの人工産卵実証実験を再始動

環境移送技術 イノカ サンゴ 人工産卵 実証実験

東大発スタートアップ企業のイノカは7月26日、IoT技術による水温調整により、沖縄の久米島付近の海面水温と同期させた完全閉鎖環境内の実験で、サンゴの人工抱卵を実現したと発表した。また、サンゴの人工産卵のための実証実験を2020年8月から再始動すること、2021年3月に世界初の産卵時期をコントロールした人工産卵の成功を目指すことを明らかにした。

イノカは、「自然の価値を、人々に届ける」をミッションに2019年に創業した、東京大学発のスタートアップ企業。国内最高峰の「生態系エンジニア」とAI・IoTエンジニアとを中心に、生態系の理解と再現(=「人工生態系」技術)の研究開発および社会実装を推進する。

地球上の全海洋面積のうち、サンゴ礁が占める面積の割合は世界の0.2%程度にすぎない一方、約9万3000種(海洋生物種の25%程度)の生物種が生息し、1km2のサンゴ礁が年間15トンの食料を生産しているという。

サンゴの生態系は大気中の二酸化炭素を吸収し、炭素を海洋に固定するブルーカーボン生態系としても注目されている。温室効果ガスの抑制効果も期待されていることから、世界的に減少を続けているサンゴを保護し、残していくことでSDGsに貢献できると考え、2019年10月より実験を開始した。

環境移送技術 イノカ サンゴ 人工産卵 実証実験

今回イノカが成功した実験は、独自で研究開発を進める「環境移送技術」を用い、虎ノ門・オフィスビル内の会議フロア一角にて実施した。IoT技術を活用し、四季の変化をサンゴの採種元である沖縄・久米島付近の海と同期させ、水槽内の水温調整、また水流を作ることで沖縄の海のような波を人工的に発生させた。

環境移送技術とは、水質(30種以上の微量元素の溶存濃度)をはじめ、水温・水流・照明環境・微生物を含んだ様々な生物の関係といったパラメーターのバランスを取りながら、自社開発のIoTデバイスを用いて実際の自然環境と同期させ、特定地域の生態系を自然に限りなく近い状態で水槽内に再現するイノカ独自の技術。

同実験では沖縄産の成熟したサンゴを利用し、アクアリウム用サンゴライトで紫外線を照射。ライトについては、昼は太陽を浴びるような明るさ、夜間は月明かりに照らされる程度の明るさとすることで、水槽内の環境を沖縄の海に可能な限り近づけたという。

環境移送技術 イノカ サンゴ 人工産卵 実証実験

産卵実験時のシステムは24時間ライブ配信し、産卵の予兆を常時監視。5月中旬にサンゴを折って確認したところ、体内での抱卵を確認したものの、産卵タイミングである6月中旬に再度サンゴを折って確認した際にはサンゴの体調の悪化に伴い卵が確認できず、産卵に至らなかったという。

環境移送技術 イノカ サンゴ 人工産卵 実証実験

同社は、サンゴが産卵しなかった原因を「体調不良によってサンゴ本体に卵が吸収されたのではないか」と考えており、体調悪化を食い止めるため卵を自分自身のエネルギーに変えた可能性を挙げている。

同社は、今回の結果をもとに、2020年8月より再び実証実験を開始する予定。生体へのストレスを可能なかぎり低減できるよう、水槽内の各パラメーターをさらに精緻に調整し、サンゴの健康状態の判別のために画像解析技術も応用。世界初の産卵時期をコントロールした人工産卵の成功を目指す。

また暑い時期を経験させず、かつ次の産卵タイミングまで最短でたどり着くように季節を3ヵ月ずらす。11月の水温設定から実験をスタートさせ、約半年後の2021年3月に産卵を目指すとしている。

小型水槽内での人工産卵技術が確立すれば、ビルなどの一般的な都市空間のような場所でも人工産卵が可能になるため、サンゴ研究が飛躍的に促進されるという。

また本来、自然界におけるサンゴの産卵は年に1回と限定的だが、水槽内の各パラメーター調整により、理論上産卵時期をコントロール可能となる。何世代にもわたって研究調査を行うモデル生物としてサンゴを扱えるようになるため、サンゴの基礎研究が進み、サンゴ保全に大きく寄与すると同社は考えている。

イノカは今後も、国内初のサンゴの人工産卵の成功を目指しながら、地球温暖化や環境汚染などの危機に対し、生態系の価値を「のこす」ための取り組みを進めるとしている。

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テスラの蓄電事業は小規模ながらQ2に着実な伸び

Tesla(テスラ)の蓄電事業は第2四半期に加速し、同社の4四半期連続の黒字達成にもわずかながら貢献した。米国時間7月22日に発表された四半期決算で明らかになった。

商用・住居用の蓄電事業ならびにソーラー事業の売上はテスラの事業全体においてはわずかなものだ。同社の売上の大部分は自動車部門が占める。しかし第2四半期決算は、蓄電事業、特に2019年にローンチされた発電所規模の蓄電プロダクトであるMegapack(メガパック)が有望であることを示している。Megapackは同社が南オーストラリアで展開した大規模なバッテリーシステムの後に作られた。

テスラはソーラー事業と蓄電事業をそれぞれに展開しているが、売上に関してはこの2つの事業を合算するので、Megapackがどれくらいうまくいっているのか完全に把握することはできない。ただ、同社は第2四半期決算発表の中で、Megapackを「Winner」(勝者)と取り上げ、初めて黒字を達成したと記した。

「このプロダクトにはかなりの需要があり、出来る限り早急に生産率を上げる」と、パワートレイン・エネルギーエンジニアリング担当上級副社長Drew Baglino(ドリュー・バッリーノ)氏は決算発表で述べた。

これまでの4年間、テスラは投資家らに同社を単に自動車メーカーとしてではなくエネルギー企業としてみるよう求めていた。一部のアナリストは同社の事業の真の価値はエネルギー事業と自動車事業が対等になったときだと考えている。対等というのは、Elon Musk(イーロン・マスク)氏も追求している目標だ。

しかし同社のエネルギー事業と自動車事業はやがて対等になるという請け合いにもかかわらず、蓄電とソーラーは自動車事業の影に隠れてきた。現在のところ蓄電事業は同社全体の売上高に占める割合は小さいが成長している。CEOのマスク氏はエネルギー事業が長期的には自動車事業とほぼ同じくらいの規模になると予測した。ただ、そのタイムラインは明らかにしなかった。

テスラ待望のプロダクトは、同社の自動化されたエネルギー売買用の機械学習プラットフォームAutobidderだ。「Autobidderはグリッドの安定化を提供し、物事が「超スムーズ」であることを約束する」とマスク氏は述べた。また「持続可能なエネルギー問題を解決するために必要不可欠なもの」とも語った。

結局、蓄電の展開は四半期ベースで61%増え(260MW/hから419MW/h)、事業は新型コロナウイルスパンデミック前の水準へと回復し始めていることを示している。第2四半期における蓄電の配備は前年同期比でわずか1%増で、同社が2019年第3四半期と第4四半期に達成した数字までにはもうしばらくかかる。

一方で、テスラのソーラーパネルの展開は縮小した。同社は第2四半期に27MWのソーラーパネルを設置した。これは前四半期比23%減、前年同期比7%減だ。減少の一部は、経済後退と、新型コロナウイルス対応として全米で展開された外出禁止令のためだ。

同社はSolarCityの買収で、米国の主要なソーラーパネル設置事業者となった。しかし SunrunとVivint Solarが米国マーケットでシェアを拡大し、トップの地位から転落した。テスラはいま、Solar Roofで再びシェアを拡大しようとしている。Solar Roofは、何年もかけて開発・テストされてきた板状の製品だ。同社は7月22日、Solar Roofの設置台数は第2四半期に前四半期の3倍になったと述べた。ただ、実際の数字については明らかにせず、いくつのSolar Roofの設置が完了したのかは不明だ。

画像クレジット: Tesla

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(翻訳:Mizoguchi

京大発スタートアップ「バイオーム」が大阪府内の生物ビッグデータの構築・生物多様性の調査に協力

Biome バイオーム 大阪府立環境農林水産総合研究所 おおさか気候変動適応センター 生物多様性

いきものコレクションアプリ「Biome」(バイオーム。iOS版Android版)運営のバイオームは7月22日、大阪府立環境農林水産総合研究所に対してアプリを提供し、府内の「在来種」と「外来種」を中心とする生物ビッグデータの構築、および生物多様性と気候変動の影響の調査に協力すると発表した。

Biome バイオーム 大阪府立環境農林水産総合研究所 おおさか気候変動適応センター 生物多様性

同企画では、バイオーム提供のアプリBiomeのゲーム機能を用いて、府内のいきもの観察クエスト「在来種 VS 外来種 おおさかはどっちが多い?」を2020年7月25日より配信。注目の在来種と外来種を中心に幅広い生物種を網羅することが期待されており、アプリを通じて集められた府内の網羅的な生物分布データは生物多様性と気候変動の影響分析に活用される。またコンテンツの配信に合わせて、大阪府立環境農林水産研究所 おおさか気候変動適応センター主催のいきもの観察イベントを、7月25日から9月30日まで開催する。

Biomeは、独自のゲーム機能「クエスト」を実装しており、テーマに沿って選ばれた対象種を見つけ、写真を撮影・投稿することでゲームをクリアできるようになっている。選ばれるいきものは季節や地域によって多様であり、様々な条件で発行されるクエストを仲間とともにクリアすることで、遊びながらいきものに関する様々な知識を身に着けられる。コンプリートしたユーザーは、アプリ内のバッヂを獲得できる。

大阪府の都市部およびその近郊の自然環境において、希少種を含む在来種の減少や新たな外来種の発見が報告されているという。しかし、これまで生物多様性の調査は、専門的な知識を要することから専門家など限られた人手によって行われてきた。Biomeは、スマホで撮影したいきものの種名をAIが自動判別する機能を実装しており、誰でも気軽にいきものの情報を収集できる。アプリを利用して数多の市民の目を通じた情報収集を行うことで、「広域・細粒度・最新」の生物ビッグデータの構築が期待される。

バイオームは、世界中の生物・環境をビッグデータ化し「生物多様性市場」を創り出すことを目指し、2017年に京都大学技術イノベーション事業化コース最優秀賞の受賞を経て、2017年5月に設立された京都大学発のスタートアップ企業。SDGs(Sustainable Development Goals。持続可能な開発目標)の社会的ニーズを背景に生物の分布データを取り扱った生物情報プラットフォームを構築し、情報収集ツールとしてBiomeを提供している。

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アップルは製品とサプライチェーンを含む事業全体を2030年までにカーボンニュートラルにすると発表

米国時間7月21日、Apple(アップル)は今後10年以内に同社の事業全体をカーボンニュートラルにする計画を発表した。これは完全にカーボンニュートラスな企業構造に向けた同社の取り組みに続くもので、製造サプライチェーンとその結果作られる製品をその構成要素に加えている。

本日公表された持続可能性へのロードマップは、同社が毎年発表するEnvironmental Progress Report(環境進捗報告)の一部だ(Appleリリース)。同社が販売するすべてのデバイスを気候変動への影響をゼロにすることは、2つのことを意味している。第一の関心事は製造工程からの排出を75%減らす方法を見つけることだ。そして残りは大気中の炭素を除去を支援する取り組みに集中することとなる。

同社ではすでに、製品のかなりの割合が再生素材で作られている。そのために活躍するのがiPhone分解ロボットのDaveとDaisyで、まるで「2001年宇宙の旅」に出てきそうなロボットだが、主に希土類磁石とタングステン、そして一部のスチールを回収している。またオースチンには同社のMaterial Recovery Lab(素材再生研究所)があり、カーネギーメロン大学の技術者たちが協力している。

アップルは70を超えるエネルギーサプライヤーと協力して、同社の生産センターが使用するエネルギーを100%再生可能エネルギーにしようとしている。このパートナーシップによって減らせる炭素排出量は、車300万台1年分の排出量に相当する。同社はまた、ヨーロッパ最大のソーラーアレイを計画している。25%の炭素削減に関しては、アフリカと南米における森林の回復など、多くの取り組みがレポートで紹介されている。

また同社の人種的公平性と公正の一環としてマイノリティの企業への投資を目的とした「Impact Accelerator」の立ち上げも計画されている。副社長のLisa Jackson(リサ・ジャクソン)氏がプレスリリースで語っているところによると、この投資と持続可能性との関係は「社会全体に滲み付いている人種差別と気候変動は別々の問題ではないため、別々の解決策は通用しない。我々の世代には、より環境に優しくより公正な経済の構築を支援する機会があり、次世代に彼らが自分の故郷と呼ぶにふさわしい地球を遺すために、新しい産業を開発していかなければならない」という。

Appleは近年、その大規模なグローバル事業がもたらす影響を制限するための積極的な努力で、Greenpeace(グリーンピース)から高い評価を得ている

画像クレジット:Apple

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(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

再生可能エネルギーの地域送電網を構築し、Energicityは未来のアフリカの電力会社になるかか

Nicole Poindexter(ニコール・ポインデクスター)氏がエネルギー効率にフォーカスしたスタートアップであるOpowerを、同社が上場してから数カ月後に辞めたとき、彼女にはまだ次の構想がなかった。

2014年当時の米国では、再生可能エネルギーの運動はまだ反対勢力が強かった。しかし同氏には、再生可能エネルギーの恩恵をアフリカに持ち込む機会だと考えていた。

「100%再生可能エネルギーだけのグリッド(送電網)を作ることは、当時の米国では解決可能な問題ではなかった。しかしアフリカに目を向けると、グリッドという資産はあまりないと聞いたので、このアイデアを試してみることができるかもしれないと思いました。市場調査をしてみると、電気のない生活がどういうものかを知り、人間のそんな状態は受け入れられないため自分で何かやってみようと考えた」と同氏はいう。

そして同氏は、SunEdisonの開発エンジニアで役員だったJoe Philip(ジョー・フィリップ)氏との知己を得て、2人でEnergicityを創業し、アフリカのいわゆるオフグリッド(大手電力会社の電力網に繋がっていない自給自足の電力網)のコミュニティに再生可能エネルギーのマイクログリッド(小規模な送電網)を作ろうと志した。

「彼は常に、太陽光発電を導入するための正しい方法はオフグリッドで行うことだと考えていた」と共同創業者についてポインデクスター氏は語っている。

Energicityでは、両氏が適切なコミュニティを見つけ、プロジェクトの開発やマイクログリッドの運用を行っている。これまでのところ同社のプロジェクトは、政府の補助事業への入札で勝ったものが多い。「最近はシード資金として325万ドル(約3億5000万円)を調達できたため、政府の補助事業への依存から卒業できる」とポインデクスター氏はいう。

「ベニンとシエラレオネでの譲歩は、私たちが勝ち取ったものです」と同氏は語る。「今後はもっと地域に根ざした成長をしたい。トラックを運転して地域社会に行き、『明かりが欲しい?』と問えば、答は必ずイエスだからだ」と続ける。

同社が構築しているマイクログリッドを効果的に運用するためには、システムのすべての側面をエンドツーエンドで再構築する必要があった。ソーラーパネルは既製品を使っているが、スマートメーターや監視と管理をサポートするソフトウェアスタックは自作だ。

「これまで、同社は800kW(キロワット)の電力を作ったが、年内には1.5MW(メガワット)に達したい」とポインデクスター氏はいう。

農村地域のためのマイクログリッドは、ガーナとシエラレオネとナイジェリアでは政府の補助事業だ。現在、36のコミュニティと23000人に電気を届けている。今後5年間で受益者人口100万人を目指しているが、それでもこの大陸が必要としている電化のごく一部にすぎない。

ガーナではBlack Star Energy、シエラレオネではPower Leoneという2つの政府補助事業でEnergicityはシエラレオネで向こう20年間10万人に電力を供給し、ガーナでは民間事業としては最大のミニグリッドを同社が運用する。

これまでEnergicityの開発資金は政府の補助金がほとんどだったが「今後は営業に力を入れ、政府補助以外の財務モデルでプロジェクトを立ち上げたい」と同氏。

例えば、カーボンオフセットはプロジェクトを開発するための魅力的な仕組みであり、資金を得るためのコストも安い。ポインデクスター氏は「出資と融資の両方を利用しており、多くのプロジェクトが英国や国連などの援助機関から資金を得ている」と説明する。同社は電力の利用者から料金を徴収しているが、基本的な電化と携帯電話の充電用という家庭利用はkwh(キロワット時)あたり月額2ドル未満だ。

アフリカの消費者を狙っているソーラー事業者としては、M-kopaeasy solarなどがあるが、ポインデクスター氏は「Energicityのマイクログリッドモデルのほうがコストが安い」と主張している。

直近の調達ラウンドにも参加して同社を支援している投資会社の1社でEcosystem Integrity Fundでマネージングパートナーを務めるJames Everett(ジェームズ・エベレット)氏は「Energicity Corpのような、抜本的な変化を目指す企業に投資できることは光栄である。西アフリカ全域にクリーンエネルギーの安価な利用を広げて行くことによって、経済成長と持続可能性と健康と人間開発が促進される。Energicityの初期的なリーダーシップとイノベーションにより、この偉大な企業とパートナーして成長を助けていきたい」と語っている。

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(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

新型コロナ禍でもクリーンエネルギーの導入は未来に向けて進行中

新型コロナウイルス(COVID-19)パンデミックによる経済ロックダウンは、再生可能エネルギープロジェクトや電気自動車の販売にすぐさまマイナスの影響を及ぼした。しかし持続可能なトレンドは続いており、長期的にはより強いものになるかもしれない。

国際エネルギー機関によると、この40年で初めて世界全体で太陽光発電、風力発電、その他の再生可能エネルギーの導入が前年を下回る見込みだ。同機関は2020年の再生可能エネルギー導入は前年比13%減となると予想している。また、Wood Mackenzieの予測では世界の太陽光発電の導入は2020年に18%減る。そしてMorgan Stanleyは米国の太陽光発電の導入は今年第2四半期の48%減から第4四半期に17%減になると予想している。

これは建設の停滞、サプライチェーンの混乱、資金難が原因だ。

屋根へのソーラー発電設置が最も深刻な影響を受けている。個人宅や事業所への訪問が3月から数カ月にわたって停止された。設置業者は従業員の半分が一時帰休となった、と明らかにした。中国での太陽光発電設備の生産が一時的に停止されたため、サプライチェーンも混乱した。設置、サプライチェーン共に再開し、契約の大半はまだ有効だ。しかし太陽光発電設備の屋根取り付けは2020年は成長が見込めず、回復するのに1年以上かかるだろう。また、太陽光発電の導入を計画していた一部の事業所は、事業再開にあたってより優先順位の高い資金の確保や投資があるかもしれない。太陽光発電の導入を計画していた零細事業所の需要の多くはまったく戻らないことも考えられる。

一方で、再生可能エネルギーを利用した発電所での発電は引き続き成長していて、マーケットシェアを拡大している。今年前半、再生可能エネルギーの発電量は19世紀後半以降初めて石炭による発電量を上回った。19世紀後半というのは水力発電が活用され始めたころだ。米国では、新たな発電方法の中では風力と太陽光によるものが最もコストが安い。パンデミックと石油価格の崩壊でもその傾向は変わらない。石炭プラントの閉鎖が2020年は加速していて、風力と太陽光は引き続きガソリンと競合する。

加えて、太陽光発電所と風力発電所はすでに資金を工面済みで、僻地で進行中の建設はロックダウンの影響を受けていない。30GW発電できる新規の太陽光発電の契約も交わされ、金利が低い限り資金面は問題にならないはずだ。実際、米国と中国の太陽光・風力発電プロジェクトの多くは政府のインセンティブを得ようと2020年中の完成を急いでいる。

しかし再生可能エネルギー発電所向けのサプライチェーンは混乱した。第1四半期に中国のソーラーパネル製造は一時停止され、今は再開しているものの注文減に直面している。また、一時期はスペインとイタリアにある18もの風力発電用タービン製造施設が、社会的距離の維持と消毒の対策が導入されるまでの間、稼働を停止した。アフリカやその他の国での採掘作業も一時中断され、現在、需要減に直面している。

発展途上国における石油・ガスの再生可能エネルギーへの切り替えは数年前ほどには魅力的なものにはならないようだ。新興国の経済は可能な限り電力を低価格で確保したい。つまり石炭やガス、あるいはディーゼルの発電所だ。発展途上国の新化石燃料プラントは数年間は二酸化炭素排出を抑制できるかもしれない。

電気自動車の販売は世界的にかなり影響を受けた。電気自動車への移行は、人々が車を買い換えるときに起こる。石油価格が低迷し、中古車価格も下がり、失業率も世界恐慌以来の水準にまで上がっている。安いガソリン、安い車、高い失業率により2020年の複数人乗りEVの販売は予想を大幅に下回りそうだ。Wood Mackenzieは、2020年の世界のEV販売は前年比43%減となると予想している。加えて、自動車メーカーが発表する新EVモデルの多くが2021年までマーケットに投入されない。

ただ、長期的なEVへの移行は継続し、加速さえするかもしれない。走行コストはガソリン車よりもEVの方が安く、数年以内にEV初期費用がガソリン車と同じくらいになったとき、マーケットはEVに傾くはずだ。フル充電で走行できる距離は平均的なドライバーには十分なもので、残るハードルは急速充電ステーションの設置のようだ。

2020年に石油需要が崩壊する前、石油大手は石油需要のピークは2040年代にくるだろうと予想していた。しかし今、ピークはもう少し早く、おそらく2020年代半ばにくると予想されている。石油消費のピークは2019年だったかもしれないと、考える人もいる。とにかく2019年のレベルに戻ることがあるにしても、それは少なくとも数年先になりそうだ。

ただ最近の石油価格の崩壊は、石油・ガス業界が数十年間、かなり競争力のある価格で燃料を供給できることを意味する。これは少なくともEVが短期的にマーケットシェアを奪うのをさらに難しいものにする。また、代替の液体燃料を競争力のあるものにするのも困難にする。バイオ燃料や合成燃料にとっては、安い石油がそうした業界に打撃を与えた数十年前の再現となりそうだ。ガソリンやディーゼルで走る車の代替は、発展途上国の貧しくなった経済では当然のことながら魅力的なものではなくなるだろう。

しかしクリーンな交通手段が浸透しつつあるという明るい要素もある。例えば、電動自転車はホットなアイテムだ。人々は大量輸送交通機関の代わりを模索し、外の新鮮な空気を吸いながら移動できるものを求めていて、電動アシスト自転車は素晴らしいソリューションだ。もはや年寄り(あるいは怠惰な)サイクリストのための乗り物と見下されることはなくなった。

在宅勤務もここ数年は浸透していなかったが、パンデミックが最終的に一変させた。直近の全国規模のロックダウンは、従業員を家から働かせるよう大企業を駆り立てた。在宅勤務はおおむね機能すると企業は認識し、多くが人で溢れかえるダウンタウンのオフィスには戻らないだろう。

一部の専門家は、クリーンエネルギーの可能性に言及した。というのも、パンデミックで空気はきれいになり、日々の石油消費は30%減ったからだ。とある消費者調査では、電気自動車への関心が高まっていることが示された。

クリーンテクノロジーでロックダウン前よりも経済を回復させる機会にしたい。しかし労働者や事業所は現在あるインフラで経済を再開させなければならず、クリーンテクノロジーへの投資には資金が必要なのが現実だ。多くの事業所が事業を維持するための資金繰りに苦しんでいて、新たなクリーンテクノロジーはずれ込むかもしれない。

それでも、持続可能な未来のための大きなインフラの変化は進行中だ。太陽光発電と風力発電は急速に化石燃料発電に取って代わろうとしている。車メーカーや政府は交通部門の電動化を約束している。パンデミックは目先の障害ではあるが、持続可能な経済への移行は遅れているだけであり、数年内には加速さえしそうだ。

編集部注:筆者であるRoger Duncan(ロジャー・ダンカン)はテキサス大学オースティン校エネルギー研究所の前研究フェローで、Austin Energyの前ゼネラル・マネジャー。 著書「The Future of Buildings, Transportation and Power」(共著)が間もなく出版される。

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1MWの電力を150時間供給できる長時間持続蓄電技術を米国ミネソタ州第2位の電力会社が導入へ

グリッド用に長時間持続しつつ超低コストの蓄電技術を開発しているForm Energy(フォームエナジー)は、米国ミネソタ州に本拠を置くGreat River Energy(グレートリバーエナジー)とのパイロットプロジェクトの開発に向けて契約を締結した。

ミネソタ州第2位の電力会社であるGreat River Energyのミネソタ州ケンブリッジの施設が、バッテリー技術を開発するスタートアップによる長時間持続蓄電技術の最初の商業展開になるわけだ。

From Energyの蓄電池システムは、1MWの電力を150時間供給できる点が重要だ。ほとんどのグリッドスケールストレージプロジェクトで現在使用されているリチウムイオン電池を凌駕する。リチウムイオン電池システムは2〜4時間持続する。

電力供給時間が徐々に伸びれば、電力貯蔵施設がピーク時のみ稼働する発電所に取って代わることができる。そうした発電所はグリッドからの需要への調整弁となっており、石炭と天然ガスに頼っている。

「長時間持続する蓄電ソリューションは、大規模配備されている従来の蓄電池システムとは一線を画し、クリーンな電力システムにおいてまったく異なる役割を果たすだろう」と低炭素エネルギーシステム工学を研究するプリンストン大学のJesse Jenkins(ジェシー・ジェンキンス)助教授は声明で述べた。「リチウムイオン電池は急激な出力増大に対応できるが、数時間で電力が枯渇する。何日も出力を維持できる真の低コストの長時間蓄電ソリューションは、風力と太陽光発電の欠点を補うことになる。その欠点のために化石燃料による発電が必要とされてきた。こうした技術が、信頼性が高く手頃な価格の100%再生可能電力システムを現実のものにする可能性がある」。

4900万ドル(約54億円)を超えるベンチャーファイナンスに支えられてきた。投資家には、MITの投資ビークル「The Engine」、イタリアのエネルギー会社Eni Spaのベンチャーキャピタル部門であるEni Next、Bill Gates(ビル・ゲイツ)氏の持続可能性投資会社であるBreakthrough Energy Venturesなどが名を連ねる。Form Energyは「水系空気」蓄電池システムという新しい蓄電技術を開発した。

「Form Energyにおける我々のビジョンは、再生可能エネルギーの力を解き放ち、独自の長期貯蔵技術でグリッドを変革することだ。このプロジェクトは、信頼性を犠牲にすることなく、手頃な価格で再生可能な未来のビジョンが実現可能であることを証明するための大胆な一歩だ」とForm Energyの最高経営責任者であるMateo Jaramillo(マテオ・ジャラミロ)氏は声明で述べた。

電力会社に対するFormのセールスポイントは、革新的な蓄電技術にとどまらない。独自のアナリティクスソフトウェアを使用して電力会社を診断し、電力ポートフォリオを最適化する。このソフトウェアは、システムレベルで高い普及率の再生可能エネルギーをモデル化して、蓄電池を再生可能エネルギーとどう組み合わせれば低コストで電気を作ることができるのかを分析し、発電会社により良いリターンをもたらす方法を理解するために開発された。

「Great River Energyは、この重要なプロジェクトでForm Energyと提携できることをうれしく思う。送電網を流れる再生可能エネルギーがますます増える。商業的に実現可能な長時間持続する蓄電池は、再生可能エネルギーによる電力が常に利用可能になるよう保証できれば、信頼性を高めることができる。こうした蓄電池は、極端な気象条件が数日間続くようなときに特に重要性を増す。長時間持続する蓄電池はまた、不安定なエネルギー価格に対する優れたヘッジとなる」とGreat River Energyの副社長兼最高電力供給責任者のJon Brekke(ジョン・ブレッケ)氏は声明で述べた。

両社の声明によると、今回のプロジェクトをForm Energyの蓄電システムの第1号案件とし、さらに展開していく予定とのことだ。

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Google流、再生可能エネルギー活用法

Google(グーグル)のデータセンターは24時間年中無休で稼働しており、大量のエネルギーを消費している。それを考えると、そのデータセンターを可能な限り効率的に稼働させることは、同社と地球の両方の利益につながるといえる。そのための新たな方法として、同社は常に天候を監視し、それに応じて太陽エネルギーや風力エネルギーといった再生可能エネルギーを利用するのに最適な時期を予測する。

再生可能エネルギーの問題は、発電所で作られる電力量に確実性がないという点だ。もちろん、風がなくなった途端、風力エネルギーは10倍ほど高価なものとなるか利用不可になる。そうでなくても、グリッド上にいつどこで作られた電力が運ばれるのかによって電力の価格は常に変化する。

データセンターをより環境に優しく効率的にするためのグーグルの最新の取り組みは、そういったエネルギー経済を予測し、それに基づいて膨大な量のデータ処理タスクのスケジュールを組むというものだ。

とは言え、グーグルの従業員が実際に翌日の天気を調べて、太陽エネルギーが特定の地域でいつどれだけ電力を供給するかを計算するわけではない。幸いにもそれをやってくれる企業が他にいる。デンマークのグリーンテック企業、Tomorrowだ。

「適切な時間と場所で電力を使用することにより、コストと二酸化炭素排出量の両方を削減できると多くの組織は気付き始めています」とTomorrowのCEOはプレスリリース中で述べている。

気象パターンはこういったエネルギー経済に大きな影響を及ぼす。だから、このシステムでは気象状況によって主に石炭などの炭素源から電力が供給される場合もあるし、また再生可能エネルギーが最大限に利用されるときもある。

上記の便利なビジュアルチャートでこのシステムの仕組みが分かるだろう。グリーンエネルギーが最も豊富な時間に合わせ、データセンターの計算タスクのピーク時間をシフトしている。

グーグルは、グリッドに炭素エネルギーが多く運ばれている時間帯と再生可能エネルギーが多い時間帯を把握し、多大な計算タスクを再生可能エネルギーが得られやすい時間帯に割り振ることで、炭素エネルギーへの依存を減らすことが可能になる。

グリッドにある電力が高価で、炭素エネルギーを多く含むとき、ほんの少しのEメールの送信やYouTube動画の視聴だけでもデータセンターのキャパシティを圧迫するのには十分になる。しかし逆に電力が安価でかつクリーンなときには、機械学習や動画のトランスコードなど重い計算タスクが大量に処理されていくのだ。

情報に基づいて計算タスクを処理する時間帯をシフトするというアイデアは、スマートで、直感的にうまくいくだろうと感じる。しかし、今回のグーグルの発表にはそれが実際にどれほど効果的であるかのデータは提供されていない。通常、企業がこのような取り組みを発表する際には、今後節約されるエネルギー量や効率向上の見積もりの発表が伴うものだ。しかし今回のタイムシフト実験に関して同社はいつになく保守的である。

「試験運用によって得られた結果は、計算量をシフトすることで消費されるグリーンエネルギーの量を増やすことができることを示唆しています」とグーグルはいう。

ホームランを打ったのように扱ってもおかしくないニュースにしては謙虚すぎる姿勢である。完全な研究論文はまもなく発表されるが、筆者はグーグルにもっと多くの情報を提示するよう求めてみた。その直後に、同プロジェクトのテクニカルリーダーであるAna Radovanovic(アナ・ラドバノビッチ)氏から次のような返信を受けとった。

新システムの初期段階の結果は有望ですが、ご指摘のとおり現時点では特定の指標を公表していません。弊社チームは、この方法論の詳細や導入結果のデータなどをまとめた科学論文を年内に発行する予定です。

単一のデータセンター施設やフリート全体が再生可能エネルギーの使用をどれだけ増加させることができるかには、複数の変数が関わってきます。そのため、特定の数値を公表する前にさらなる分析を行っているところです。

原文

イタリアの都市で家に閉じ込められた人びとがクラウドソーシングによる光害調査に参加

多くの人びとが家に閉じ込められている今の事態が、奇妙な幸運を招いている。イタリアでは住民たちがバルコニーに出て歌を歌っていたが、その同じバルコニーを、ちょっとした市民科学の機会ととらえた研究者たちがいる。

イタリア学術会議が始めたこのプロジェクトは、この国の光害の広範囲な標本を取ることをねらっている。家の外の光がどれだけ家の中に入ってくるかを表す「光侵害」(light trespass)の問題は通常、それらの家にアクセスしないと計測できない。そこで今回彼らは、その情報を家の住民に集めてもらうことにした。

大量のデータポイントだ!

2週間前にはおよそ7000名のイタリア人が、自分のスマートフォンとアプリを使って、この実験の初回に参加した。彼らがやるべきことは、自分の家の明かりをすべて消し、窓またはバルコニーへ行き、そこから見えるいちばん明るい光源にスマートフォンを向けることだった。

得られた結果によると、イタリアの都市の平均的光侵害の大きさは、田舎のほぼ倍だった。意外とは言えないけど、こんな当たり前のような結論でも、ちゃんと定量化でき、証拠が得られたことは重要だ。明るいといっても、どれくらい明るいのか?それはどんな明かりか?…今後もっとデータが集まればこんな基本的な疑問にも具体的な答が得られるだろう。

この実験を組織したグループの一人、Alessandro Farini氏が、Nature誌にこう語っている: 「この実験で私たちは、計測技術を一般市民に身近なものにしたかった。市民が計測の複雑な過程を知り、ものごとの科学的なやり方に参加できるようにしたかった」。今、研究者たちにさらなる情報を求めているので、得られ次第ご報告したい。

関連記事: 衛星コンステレーションによる夜空の光汚染を天文学者たちが懸念

この実験が大成功だったので、#scienzasulbalcone(バルコニー上の科学)の人びとはアンコールをやった。彼らは先週新しい計測をして、さらに最後の計測を明日(米国時間4/14)の夜やる予定だ。参加者へのインストラクションも改訂して、彼らが送るデータの性格を表せるようにした。

参加者は、ワット数が分かる電球を見つけるよう求められる。そして、その電球だけが点いている場所でスマートフォンの周辺光センサーに光量を計測させ、スマートフォンの光計測機能を調整する。すると各スマートフォンの性能にばらつきがあっても、均一に光量を計測し報告できるようになる。そして窓やバルコニーへ行って外の光量を計測し、結果を報告できる。

もっと詳しく知りたい人のために、イタリア語のインストラクションがここにある。英語版もあるが、まだそれはグローバルな取り組みではない。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

植物由来の包装資材やクーラーボックス用断熱材を生産するVericoolが21億円相当を調達

プラスチックの包装資材や断熱材を植物由来の製品で置き換えようとするカリフォルニア州リバーモアのVericoolが、新たな資金調達ラウンドで1910万ドル(約21億円)を獲得した。

同社の目標は、これまで使われてきたポリスチレンなどの包装資材を植物由来の断熱性のある素材で置き換えることだという。

同社はその技術で再生紙やその他の植物性素材を使用して、歩道の縁石や漆喰(しっくい)なども作っている。

今回のラウンドの投資家はRadicle Impact PartnersThe Ecosystem Integrity FundID8 Investments、そしてAiiM Partnersとなる。

Radicle Impact Partnersのマネージングパートナーで、新たにVericoolの取締役のトップになったDan Skaff(ダン・スカフ)氏は「Vericoolをサポートできることは喜ばしいことだ。同社はイノベーションと高性能な製品と安定したパテントポートフォリオ、および回復力のある環境への注力においてすばらしい実績がある。我々は再犯に対処しや出所者の就労確保といった社会問題に取り組む同社の姿勢にも感銘を受けている」と語った。

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(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

財務分析を応用して企業の炭素排出量削減を助けるYC卒のSINAI

企業にとって、気候変動と戦うための第一歩は、自分たちがそれにどれだけ貢献しているかを知ることだ。Y Combinatorを最近卒業したSINAI Technologiesは、その理解を助けてくれる企業だ。

創業者のMaria Fujihara(マリア・フジハラ)氏は持続可能性産業と16年つき合ってきたベテランで、最近では企業のLEED認証への適合を促進するための一連のツールを作ってきた。SINAIは認証ツールを国際市場に適合させるための長年の取り組みの成果であり、またこの5年間はSingularity University(シンギュラリティ・ユニバーシティ)で炭素排出プロファイルに関する研究を行っている。

フジハラ氏は「会社を起ち上げたときに、カーボンオフセットを始めた。最近の3年ぐらいで企業も政府も炭素排出量を計算しており、自らの炭素排出量と炭素インベントリを知り、自分の炭素インベントリを使って炭素クレジットを買うようになった」と語る。

そして彼女によると、その市場は成熟して多くの企業が参加するようになっているという。「それでも排出量は、過去6年間増える一方でまったく減らない。減らすためのソリューションを考えなかったからだ」と彼女は言う。企業は炭素排出量の測定にばかり集中して、さまざまなポリシーによる削減方法を見出さなかった。ビジネスのどの部分をターゲットにすべきかについても考えなかった。しかし「それぞれのビジネスをユーザーシナリオとして理解すれば、彼らのヴァリューチェーンの中で排出量を減らせる」という。

SINAIのサービスは企業における排出量関連のさまざまな報告書作成やデータ取得を自動化して、わかりやすいかたちでモニタできるようにすることだ。「財務分析と似ているが、対象はお金ではなくて環境分析だ。しかも四半期ごとではなくて、年に1回行う」とフジハラ氏は言う。

現在同社は製造業、運輸業、アパレルとリテール、食品と飲料、そして不動産という5つの業界にフォーカスしている。同社の声明によると「炭素循環の構成要素は、炭素排出インベントリ(フットプリント)の作成、オプションの適切な選択により低炭素シナリオを作る、カーボン削減のターゲットを設定する(科学的でない視点も含む)、炭素予算を計算する、今後可能性がある炭素税を分析する、最適最善の炭素価格を定義する、そして外部的シナリオ(国内的国際的政策へのコンプライアンスに基づくもの)を分析することだ。

フジハラ氏の共同創業者であるAlain Rodriguez(アラン・ロドリゲス)氏は、現在、気候問題に取り組んでいるUberの20名の技術者の1人だ。SINAIの声明によると「基本的に我々は気候問題に財務分析の方法論を結びつけて、排出の削減と低炭素技術の実装に伴うコストの管理を行う。そのコストは企業の炭素価格のベースになる。この方法ではさまざまな要素が互いに依存し合っており、炭素循環のどの段階にある企業でも分析でき、その一歩一歩における価値を提供する」という。

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(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

持続可能なマイクログリッドがクリーンエネルギーの未来を作る

気候変動や日常化しつつある自然災害に対抗するために必要不可欠なツールとして、持続可能なマイクログリッドが米国中に作られ始めている。ハリケーン、地震、山火事に襲われた多くの地域では、従来型の電力網による電力供給の維持が難しくなり、停電が発生すれば地域経済は停滞し、究極的には人の命が危険にさらされる。

マイクログリッド(災害時には広域の電力網から独立して運用できるように設計された電力供給設備)が生まれて数十年になるが、21世紀に入るまで発電はもっぱら化石燃料に頼っていた。ソーラーパネルとバッテリー容量のコストが十分に下がって持続可能なマイクログリッドが経済的な現実味を帯びるようになるまでに、そこから20年を要した。しかし、このところの注目度の高まりや設置件数の増加を見るにそれは変曲点に達し、未来のクリーンエネルギーとしての可能性が大いに高まったと言える。

サンタバーバラの例を見てみよう。同郡では、全学校に設置できるマイクログリッドの研究と設計のために50万ドル(約5400万円)を割り当てることについて、11月に統一学区が全員一致で賛成票を投じた。Clean Coalition(クリーン・コーリション)は、予備調査で18の学校の敷地には太陽光で15MW(メガワット)以上を発電できる可能性を割り出している。

こうしたソーラーパネルとバッテリーを組み合わせた「ソーラー・プラス・ストレージ」型のマイクログリッドを適切な学校に設置すれば、自然災害や、昨年10月に数十万人もの住民に損害を与えたカリフォルニアの電力会社PG&Gの停電事故のようなときに、地域社会に貢献できる。こうしたサイトは、重要な緊急援助サービス、痛みやすい食料の保存、照明、電気、インターネット絶続を非常時に供給する場にもなる。

マイクログリッド設置の実現性の調査は6月に完了する。最終的な費用は4000万ドル(約43億円)ほどと見積もられているが、長期の電力販売契約(PPA)を結ぶことで、学区はサイトを無料で設置し、通常の電気料金と同じ形で料金を長期支払いにできる(価格は電力会社の電気よりも安い)。このような契約は、ここ数年の間に再生可能エネルギーの発電コストが継続的に低下し、経済的な有効性が認められて初めて可能となった。そしてこれが、マイクログリッド・ブームの中心的な牽引力になっている。

1月末に、Scale Microgrid Solutions(スケール・マイクログリッド・ソリューションズ)は、投資会社のWarburg Pincus(ウォーバーグ・ピンカス)から3億ドル(約320億円)の投資を受けた。現在のマイクログリッドは、個々の顧客の特別な状況に合わせて設計され設置されるのが普通だ。だがScale Microgrid Solutionsは、運送用のコンテナの中にソーラーパネル、バッテリー、制御装置、バックアップ用のガス発電機を組み込んだモジュール式のマイクログリッド・インフラストラクチャーを提供している。

このモジュールは素早く設置でき、1500万ドル(約16億円)程度の予算でマイクログリッドの設備が欲しいと考える顧客や施設に適したオプションだ。最初のモジュール型マイクログリッドは、2019年5月、高度なクリーンエネルギー技術への投資に特化した金融会社であるGenerate Capital(ジェネレート・キャピタル)の資金援助で設置されている。

一方、米国の反対側、米国自治連邦区プエルトリコでは、自然災害の連続によりソーラー・プラス・ストレージ型マイクログリッドの有効性が証明されている。2017年にハリケーン・マリアがこの地の集中型の電力網に壊滅的な被害を加え、大勢の人たちが1年以上もの期間にわたって電気のない生活を強いられていた。

Rocky Mountain Institute(ロッキーマウンテン研究所)、Save the Children(セーブ・ザ・チルドレン)、Kinesis Foundation(キネシス財団)は、プエルトリコの中心地である山岳地帯の10の学校にソーラー・プラス・ストレージ型マイクログリッドを設置した。学校内の図書館、厨房、水道ポンプが停電の間、無期限で使えるように作られている。設置は2019年12月に完了した。ただでさえ経済復興が停滞していたプエルトリコを危機にさらした1月の群発地震発生の直前だ。ロッキーマウンテン研究所の島しょ緊急事態プログラムが専門情報サイトMicrogrid Knowledge(マイクログリッド・ナレッジ)に話したところによると、いくつもの学校で電力網の電気が止まったが、マイクログリッドは見事に機能し続け、重要なサービスを提供できたという。

マイクログリッドの利用は学校に留まらない。いくつかの地域社会では、自宅に設置したソーラー・アンド・ストレージ・システムをリンクさせているところもある。インバーターや制御装置は、この2年ほどで効率が向上し、電力網を補完して、またはそこから独立して参加者同士で電気を融通し合う「コミュニティー・マイクログリッド」の構築コストが、ようやく手の届く範囲になってきたという。

1月、オーストラリアのスタートアップであるRelectrify(リレクトリファイ)は、バッテリーの寿命を最大で30%も延ばし、同時に運用コストも削減するというインバーターとバッテリーの管理技術の継続的な改善にシリーズA投資450万ドル(約4億8000万円)を獲得した。Relectrifyの技術はまた、電気自動車に使われていたが、自動車用としての安定性が低下しすぎたバッテリー(Teslaの大人気の製品も含む)を再利用することもできる。これにより、需要が高まるマイクログリッドに大量の中古バッテリーを転用する道が開かれる。

これらの事業が魅力的に感じられるのは、電力網の回復力や電力網からの独立が化石燃料に依存することが多かったからでもあるが、エネルギー消費者にとって、どんどんコストが下がる安価なオプションになってきたという理由もある。プエルトリコの家庭用電力の価格は、2019年時点で1キロワット毎時(kWh)あたり27セント(約29円)と高額だ。これに対して、家庭用のソーラー・アンド・ストレージ・システムの価格は、条件がよければ24セント(約26円)まで下がる。

ソーラーパネルの設置費用は、調査会社Wood Mackenzie(ウッド・マッケンジー)の調べでは、この10年間で90%も下落した。同時に、地球温暖化とそれに起因する自然災害による早期の影響が、それでなくとも通常の維持管理や高まる需要の対応に苦しんでいる米国のエネルギーインフラに負担をかけ始めている。多くの大手電力会社が老朽化する集中型の電力網に依存する天然ガスやその他の部分的なソリューションに目を向ける中、災厄を経験した社会はすでにマイクログリッドの価値を実感し、競って導入するようになっているのだ。

これらの初期型のサステナブルなマイクログリッドが与える最大のインパクトは、近隣住民に電力を届ける非常用電源としての役割を超える。発電方法と電気の使い方に関する地域社会とエネルギー消費者の考え方を劇的に変化させるきっかけが、そこにはある。地域社会のマイクログリッド・システムでは、住民は電力源との間に具体的で明確なつながりを持つことができ、需要に対して十分な電力が行き渡るように友人や近所の人たちと協力し合うことが求められる。

このようなシステムは、あるかないかの社会的または技術的な制約のために、ピーク需要に合わせて環境にもっとも悪い燃料を常に燃やし続けるよう発電所に要求する現在の電力網とは、まったく対照的だ。持続可能なマイクログリッドは、ついに完全に誰の手にも届く価格にまでなってきた。そしていつの間にかマイクログリッドは、エネルギー消費と復元力に対する私たちの考え方を変え始めた。

【編集部注】著者のAlex Behrens(アレックス・ベレンズ)は、運輸、エネルギー、自動化、分散化における未来のテクノロジーを専門とする調査分析家でありブロガー。Fortune 500に選ばれた企業や技術系スタートアップでのデータおよび運用業務を経験。Seeking Alpha、Spend Matters、Metal Minerといったパブリッシャーのレギュラー寄稿者。

画像クレジット:Will Lester/Inland Valley Daily Bulletin (opens in a new window)/ Getty Images

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(翻訳:金井哲夫)