ユニコーンの投げ売りがそろそろ始まる?

スタートアップとマーケットの週刊ニュースレター、The TechCrunch Exchangeへようこそ。

今日はいろいろなことをお話しする。コーヒーを入れて、落ち着いて、一緒に楽しもう。

投げ売りか?

Amplitude(アンプリチュード)が直接上場し、取引を開始して、2021年第4四半期の決算を発表したときには壁にぶつかっていたことを覚えているだろうか?2022年初頭に資産価値を減じたのは、上場しているハイテク企業の中で同社だけではなかったが、その再評価の規模は際立っていた。現在、Instacart(インスタカート)が非公開市場で似たような事態に陥っている。

多くの非公開企業は、新入社員の入社意欲と既存社員の定着意欲を高めるために、株価の評価方法を見直すべきなのだろうか。おそらくは。GGVのJeff Richards(ジェフ・リチャーズ)氏は、金曜日(米国時間3月25日)に議論の種を投稿した

未上場企業の評価は上がるだけで、上下することはありえないと考えるのは不合理です。未上場期間が長い企業は、相関関係を正規化する必要があります……。

その通りだ。市場を避けては通れない。再度ベンチャーキャピタルから調達して再評価を目にするまでは、現実を先送りすることができる。もちろんだ。しかし、もし潤沢な資金を持つ後期ステージのユニコーンだったとしたら、新たな資金の調達なしに、どうやって市場価値を把握すればよいのだろうか?

もしInstacartがこのトレンドの始まりなら、スタートアップの評価額は、本当にもう一度、横ばいになる可能性がある。

新しい住処を見つけたTechnori

ささいなことだが、私はシカゴの学校に通っていたので、駆け出しジャーナリストの頃はシカゴのテック業界に出入りしていた。そのため、地域のイベントに出向き、現状を把握することに努めていた。私がJustyn Howard(ジャスティン・ハワード)氏と出会ったのは、現在は公開企業になったSprout Social(スプラウト・ソーシャル)がスタートアップだった頃で、街で開催されたUberのローンチディナーに参加したときだった(そこで初めてTechCrunchの記者に出会い、後に初の就職に協力してもらえた)。

当時はTechnori(テクノリ)というコミュニティ活動が立ち上がりつつある時期で、コミュニティの手によって地域の技術力をアピールするイベントが開催されていた。楽しかった。

その後、Technoriは、ポッドキャストやピッチイベントなどを擁する、一種のメディア業態へと進化し、エクイティクラウドファンディングによるスタートアップの資金調達を支援するようになった。CEOのScott Kitun(スコット・キトゥン)氏がそのポッドキャストに私を呼んでくれたことがきっかけとなって、再び交流が始まった。そして今、Technoriは、オンラインプラットフォームで資金調達を行うスタートアップを、審査・評価するサービスのKingsCrowd(キングスクラウド)に売却され、再び私たちの取材範囲に入った。Technoriがコミュニティ仲間の資金調達を支援するプラットフォームとして進化してきたことを考えると、今回の提携は合理的だと思う。

この取引は全額株式で行われたとキトゥン氏は語る。KingsCrowdもメディア戦略も持っているので、両社には少なからず重なる部分がある。

キトゥン氏はThe Exchangeとのインタビューで、TechnorとKingsCrowdの提携により、エクイティクラウドファンディングを希望するスタートアップの審査が、彼の直感ではなく、よりデータに基づいたものになるため、期待していると述べている。この2社がやがて資金調達の仕組みを通じてスタートアップ市場により多くの資金をを送り込むことができるかどうか、そして、そのうちのどれだけがシカゴに定着するかを見守る必要がある。

ちょっと視野を広げて、Public(パブリック)が最近Otis(オーティス)を買収したことを思い出して欲しい。プラットフォームに投資の多様性を追加するのがその狙いだ。TechnoriとKingsCrowdの取引も同様のものとみなすことができる。両社も新しい投資のための手段の1つを普通の人の手に渡したいと考えているからだ。

キトゥン氏は、別会社であるSongFinch(ソングフィンチ)の共同創業者でもあるので、彼の名前を聞くことがこれで最後にはならないだろう。

Expertsプログラムの変更

今週、私はTechCrunchでの役割が変わり、フルタイムのレポーターからTechCrunch+の編集長になった。The Exchangeのサイト投稿やニュースレターを長く読んでくださっている方は、ここ数年の私の仕事の多くが有料記事だったことをご存知だと思う。個人的な執筆を完全に止めるわけではないが、TechCrunch+のチームを積極的に拡大していく予定だ。まだ会員でない方は、ぜひご入会を(米国在住の方なら、申し込み時に優待コード『EICEXCHANGE』を入れていただくと25%オフとなる)。2022年はとんでもない年になりそうだ。

数年間実施してきた「Experts」プログラムの終了を含め、いくつかの変更を行う。このスタートアップ向けサービス企業を活動別に(たとえばSEOとか)データベース化する取り組みは、創業者を支援したいという私たちの志の一部だった。しかし今後は、単にベンダー候補のリストを作るよりも、市場のさまざまな事業者から知見を引き出すことに重点を置いた取り組みに進化させていくつもりだ。

とはいえ、こうすることで少しばかりブドウの木に実を残すことになる。そこで、Expertsの最後のエントリー業者に関するメモをここに記そう。Growthcurve(グロースカーブ)が、これまでの形式でご紹介する最後の企業だ。その旧来の形式の中で、人々が推薦を書き込んでくれた。ANNA Money(アンナ・マネー)のMariam Danielova(マリアム・ダニエロバ)氏は、Growthcurveについて「信頼性が高く、結果を重視し、データを重視する」と書いている。これは、グロースマーケティングチームに期待できるすべてだ。

TechCrunch+のこれまでの記事を整理し、古いインタビューファイルなどを読み返しながら学んだことは、SEOの重要性がまだまだ残っているということだ。私が以前解析したGrowthcurve創業者Mulenga Agley(ムレンガ・アグレー)氏のメモに書かれていたが、私たちが住む新しいiOS 14の世界では、これがもっと重要になるのだろうか?(現在の最新はiOS 15)もしそうなら、Google(グーグル)へのイジメだろう。

以上のような変化はあるものの、The ExchangeのAnna Heim(アンナ・ハイム)記者が、外部の専門家を起用したハウツー記事を担当することに変わりはない。ただ、2022年は少し違う様子となるだろう。過去に取り上げたみなさん、そしてリストの最後のエントリーとなったGrowthcurveに感謝する。

さあ未来へ!

画像クレジット:Nigel Sussman

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(文:Alex Wilhelm、翻訳:sako)

APIをプラットフォーム化せよ

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みなさんこんにちは!この記事が読まれるころは、私は晴天のニューオリンズを後にし、北東部のいつもの場所に戻っているだろう。そうそう、これから1週間の文章は天気の関係で憂鬱なものになりそうだ。それはともかく、今日は2つの話題があるので、早速始めよう!

APIがプラットフォームへ進化するとき

先のThe Exchangeでは、Shippo(シッポー)の創業者でCEOのLaura Behrens Wu(ローラ・ベーレンス・ウー)氏に、Shopifyとの提携発表ついて話を聞いた。

Shippoは、販売店に対してSaaSを使った出荷サービスを提供している。出荷を一括して行うことで出荷料金も安くなる。2021年には、5億ドル(約595億9000万円)弱の評価額で4500万ドル(約53億6000万円)を調達している(なお、2019年に3000万ドル[約35億8000万円]を調達した当時、ベーレンス・ウー氏は、自社の粗利率はSaaS並みだと述べていた)。

同社は急速に成長し、2020年に出荷量を倍増させ (収益の増加も緩やかにそれを追っていた)、規模も倍増させた。

前回Shippoをチェックしたのは2021年初頭だが、当時その成長を維持するためのきちんとしたプランが控えていた(強調は筆者による)。

資本金も増えて、Shippoは次にどうするのだろうか?CEOによると、スタートアップはプラットフォーム化(Shippoが組み込まれるマーケットプレイスなど)や海外展開(Shippoは国際配送を「少し」しかしていないという)への投資を強化し、自社のコア顧客基盤と考えているものへの投資を倍増させたいと考えている。

ベーレンス・ウー氏は、プラットフォームとマーケットプレイスの両方にとって、配送を提供することは今や常識であって、個々の売り手は、デジタルストアが提供されるなら、支払いサポートとともに配送のオプションも与えられることも期待するという。Shippoは、各プラットフォームに組み込まれる発送ツールになりたいと考えている。

CEOによると、約18カ月前にマーケットプレイス側から興味が示されたことで、彼女のチームはShippoのサービスを各社のマーケットプレイスに組み込めるようにするためのAPIを作ることに取り組んだ。

ベーレンス・ウー氏によれば、この取引にはレベニューシェアが含まれるが、Shopify(ショッピファイ)やその他の潜在的なパートナーから膨大な収益を得ることで、Shippoにとって良い結果に結びつく可能性があるという。なぜなら、そのサービスは量をこなすほど良くなるからだ。多くの荷物の輸送をてがけるほど、世界中の運送会社との間でより良い取引ができるようになる。そして今回、その取引総量を劇的に拡大する方法を手に入れて、おそらくeコマース出荷の世界からより多くの金銭的価値を引き出す能力を身につけることができた。

数カ月後に様子を見る必要があるが、すべてが強気であるように感じられる。

ベーレンス・ウー氏は、APIを利用するスタートアップの成長に関する私たちのレポートに注目し、連絡を取ってきたのだ。そして今、同社は全体の成長軌道のカギを握っているAPI を手に入れた。私たちの信じる命題は、SaaSはすばらしいが、将来性があるのはAPIビジネスモデルだというものだ。

インシュアテックはまだ死んでいない!

年老いた馬に鞭打つわけではないが、インシュアテックはここ数年、浮き沈みが激しかった。ネオインシュアランススタートアップの巨額の資金調達から、インシュアテックマーケットプレイスの巨額の資金調達に至るまでまで、デビュー後に価値を維持できないIPOが相次いでいる。これは大変なことだ。

だがしかし、The Exchangeは2022年に入って、この業界で最も有名な企業たちについての否定的なニュースが相次いだにもかかわらず、2021年は実際にはインシュアテック向けベンチャーキャピタルの活動は活発だったと書いた。そもそも2020年初頭には「なぜVCが保険マーケットプレイスに資金を投下するのか」を解明しようとしたほど、かつて事態は熱を帯びていたのだ。

まあ、VCは今でも続けているのだが。先週、Policygenius(ポリシージーニアス)は1億2500万ドル(約149億円円)のラウンドを終了したと発表した。同社のソフトウェアは、基本的に消費者がオンラインでさまざまな保険商品を探し、購入することを可能にする。保険市場の規模を考えれば、顧客に適切な商品を提供することは大きなビジネスだ。言ってみれば、Credit Karma(個人ファイナンス管理ソフト)がいかに役に立ったかに少し似ている。

参考までに、Policygeniusの競合であるThe Zebra(ザ・ゼブラ)は、2021年4月に1億5千万ドル(約178億8000万円)を調達しているので、Policygeniusのラウンドはまったくの驚きではない。このニュースは、公開市場のニュースがスタートアップを加速させることはあっても、消滅させることはできないという事実を浮き彫りにしている。

画像クレジット:Nigel Sussman

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(文:Alex Wilhelm、翻訳:sako)

スタートアップ成長のパラドックス

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ようこそ!やっと週末を迎えることができた。ゆっくり休んで充電できただろうか。今回の内容はかなりリラックスしたものなので、コーヒーをもう1杯注いで、始めることにしよう。

スタートアップ成長のパラドックス

先週、The Exchangeはスタートアップ市場の変化に注目して、多くの時間を費やした。要約すると、投資家によってテック系企業の価値が見直されつつあり、2020年、2021年のスタートアップの業績を牽引した投機的な熱意が一部消滅したように見える。

多くの企業にとって、目先の市場の変化は大きな問題ではない。スタートアップの中には、十分な資金力を持ち、持続的な成長によって収益率の低下を回避できる企業もある。これをDatabricks(データブリックス)戦略と呼ぼう。

しかし、かなりの数のスタートアップ企業にとっては、状況は違っているようだ。ここで、いくつかのスタートアップ企業が現在置かれている状況を紹介する。

  • 市場が投機資金で潤っていたおかげで、2020 / 2021年には歴史的な大型ラウンドを行えた
  • 採用や成長目標に多額の費用を投じ、2021年末までの厳しいバーンレートを招いた

2022年を乗り切るだけの資金があるスタートアップならば、これはそれほど悪い状況ではない。そのころには、テック系企業に対する評価額も多少回復しているかもしれない。しかし、2021年かつてないほどのスピードで資金調達が行われた(時には1年で3回も資金調達が行われた!)一部のスタートアップは、どうしても現金消費型の成長目標に縛られることになった。つまり、多くの企業にとって、2020年、2021年の調達だけでは、この1年を乗り切れないということだ。

つまり、タイミングはどうであれ、もう一度調達しなければならないということになる。

そのため、一部の新興ハイテク企業は、2つの選択肢に迫られている。すなわち、よりゆっくりと成長してキャッシュを節約するか、キャッシュを気にせずペダルを踏み続けるかだ。厄介なのは、どちらを選んでもうまくいかない可能性があることだ。それはなぜか?

  • 急成長を期待されて多額の資金を調達したにもかかわらず、その期待に応えられないまま次のラウンド評価に向かおうとしているスタートアップの場合は、現金を節約するために成長を制限することができる。これにより、次の資金調達までの時間稼ぎをすることができる。しかし、このやり方では成長率が損なわれ、株式の価値が大きく下がり、資金調達の選択肢が狭まり、長期的な存続が疑問視されることになる
  • 一方、急成長を期待されて多額の資金を調達したにもかかわらず、その期待に応えられないまま次のラウンド評価に向かおうとしているスタートアップが、現金残高を逼迫させながら、成長のための支出を続ける可能性もある。キャッシュの持続時間は短くなるが、成長率は比較的高く保たれる。しかし、投資家が収益性を重要視している以上、単に成長するための支出は、悪魔に魂を売ることになってしまうかもしれない

これが、スタートアップの成長パラドックスだ。過去にさかのぼって、より少額の資金調達を行うか、あるいはより限定的な成長計画を立てることができればこの問題は解決できる。しかし、2021年はスタートアップの資金調達が量的にも価格的にも記録的だったことを考えると、もはや少々手遅れだろう。

スタートアップがこの課題にどのように対処するかが、2022年の重要なシナリオになると思われる。

良いこともある。投資家は、既存の投資先企業に対して、フラットな価格で追加ラウンドへ資金提供を行うことができる。スタートアップにとっては希釈化になるが、致命的なものではない。そして、スタートアップは、製品主導の成長など、よりコストの低い成長方法を活用することで、恐ろしい営業損失を出さずに良好な収益拡大を達成することを期待できる。

しかし、たとえそのような市場参入の方法を最初から念頭に置いて設立された企業であっても、そうした成長形態を追求することは容易ではない。販売スタッフを増やしたり広告費を増やしたりせずに新しいトップラインを獲得する方法をすぐにでも見つけたいスタートアップにとって、これまでの販売方法から転換する方法ははっきりしない。

最近、悪いニュースばかりで申し訳ないが、2021年のパーティーへの強壮剤だと思って欲しい。これが二日酔いというものだ。

画像クレジット:Nigel Sussman

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(文:Alex Wilhelm、翻訳:sako)

ウクライナ、APIスタートアップ、スタートアップの評価額

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みなさん、こんにちは!このメールのために残しておいた話題があったのだが、予定がずれ込んでしまったので、それは数日後にご紹介する。ということで、本日の分に少し余裕が出たのは良い点だ。

では、ウクライナに対するテック業界の反応、APIスタートアップ、スタートアップの評価額について話すことにしよう。おもしろい内容だと思う。

勇気を見せるテック業界

ロシアがウクライナに侵攻したとき、世界はその泥沼に関わろうとしないのではないかと心配していた。しかし幸いなことに、事態はほぼその逆の様相を見せている。そしてさらに、テック業界が立ち上がった。

しかも、滑稽で悲劇的な今回の侵略に対する、ポジショニングや言葉だけの対応ではなく、ビジネスに影響を与えるような対応だ。Microsoft(マイクロソフト)などがロシアでの販売を中止したり、Airbnb(エアビーアンドビー)が撤退したり、大小さまざまなハイテク企業が騒ぎ立てていたりしていることには、励まされる。

その行動の積み重ねは、どのような結果になるのだろうか?その答はまだわからないが、ロシアも同じように、国民が実際に何が起こっているのかを把握するために利用するかもしれない国内のソーシャルサービスを禁止している。そのため、ロシア国内外からの技術製品・サービスのブラックアウトが起きているのだ。ロシアが、地理的にも経済的にも世界のどれほどの地域と関わっているかを考えると、私たちは実験的な状況を見ていることになる。

おそらく、このテック業界の動きは、より大きな国際的制裁の推進を補完するものとなるだろう。しかしこうした動きは、軍事力を行使して小国を壊滅させようと考えている他の国に対しても、そのような侵略行動への反応は国民国家からだけ起こされるものではないことを示していて、好戦的な国家に少しばかり冷水を浴びせる役目を果たしているかもしれない。

テック業界が、独裁的な帝国主義と手を切りつつあるというニュースを、この先も聞き続けられることを期待したい。

APIスタートアップ

やれやれ。今週は、GGVの新しいAPIスタートアップインデックスについての記事を書いた。それはGGVの新しいプロジェクトだが、好感が持てた。簡単に言えば、GGVは、クールな非公開APIスタートアップのデータベースのようなものを構築しているのだ。当然、VC(GGV)はAPIの話題の中心にいたいので、この取り組みはリサーチプロジェクトであると同時に、ある種のコンテンツマーケティングでもある。

しかし、約8392社のAPIスタートアップ、または自身のモデルに強力なAPIコンポーネントを持つスタートアップを、リストアップする良いきっかけになっている。そして、さらに多くのスタートアップが追加され続けている。そのようなスタートアップの1つがHighnote(ハイノート)だ。同社は他社がカード発行サービスを自社製品に組み込めるようなAPIを開発している。

私は、先の記事を書く際にすべてのリンクを探すために腱鞘炎を患ってしまったので、記事で紹介したAPIスタートアップに新しい名前を追加するつもりはなかったのが、Highnoteの特性の一部が私の目を引いた。同社のウェブサイトでは、同社のサービスを利用することで、カード発行の迅速な立ち上げが可能になると説明されている。そう、それこそが、APIによって提供されるサービスのポイントであり、(問題ではなく)製品が必要とされる場所での複雑さを取り除いた簡潔さを提供するのだ、

そう、そして2日間かけて企業ベンチャーの世界を掘り下げているうちに、ここには似たような部分があることに気が付いた。Airbase(エアベース)がAmex Venturesから資金を調達し、同社のソフトウェアをAmexの顧客に提供する契約を結んだ際、Amexの関心の1つは、基本的に市場投入までの時間だった。Airbaseがすでに作り上げていたものを独自に開発するよりも、提携・出資した方がより迅速に進めることができたからだ。

どこかで聞いたような話では?ある意味、APIスタートアップは、あらゆる企業がこれまで以上に迅速に製品を生み出しテストすることを可能にしている。これは、作るべきか買うべきかの議論を、これまで以上に迅速かつ明確に進められるようになったということも意味する。つまり、中小企業にとってのAPI製品は、既存企業にとってのコーポレートベンチャーキャピタルということだろうか?まあそんな部分もあるということで!

週末に考えたことだが、気になったので共有しよう思った。

みんながやられた

締めくくりは、悪いニュースだ。SaaSの成長率は、中堅企業でも1桁台まで圧縮されてしまった。このことが意味するのは、スタートアップが2桁の収益(ARRなど)伸び率を目標とするならば、ほぼすべての同業他社よりも速く成長しなければならないことを意味する。新型コロナウイルス(COVID-19)の時にソフトウェア会社が得た利益を、株式市場は基本的に失ってしまったのだ。評価額の観点からは、以前もしくはより悪化している。

ARRの100倍に達するリッチラウンドを調達できたスタートアップのみなさん、ご健闘を。

画像クレジット:Nigel Sussman

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(文:Alex Wilhelm、翻訳:sako)

SPACがすべてゴミとは限らない、そしてチームワークの力

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こんにちは!今回は2つのトピックを取り上げる。1つ目は、いつもの取材範囲にすっぽり収まるものだ。2つ目はそうでもない。では始めよう!

すべてのSPACがゴミというわけではない

2021年のSPACラッシュの中で、Alight Solutions(アライト・ソリューションズ)の公開を見逃していた。この会社は、シカゴ郊外に拠点を置き、米国内の数千万人の従業員をサポートするビジネス・プロセス・アウトソーシング企業だ。2021年初めにSPAC経由で上場する意向を表明した後、2021年7月に白紙委任のFoley Trasimene(フォーリー・トラジメン)と統合した。

今週は決算発表もあり、その後にCEOのStephan Schol(ステファン・ショル)氏と対談した。Alightのレポートには重要な点が3つあるので、一緒に眺めていきたい。以下のようなものだ。

  • すべてのSPACが滅茶苦茶なわけではない: 現在Alight Solutionsは約47億ドル(約5431億円)の価値があり、統合前の1株あたり10ドルをわずかに上回る水準で取引されている。つまり、この会社のSPAC取引はかなり高く評価され、この手法で会社を上場させても、その後の数週間、数カ月、数四半期のうちに、ダメージを受けずに済ませることが可能だということだ。これまでは、失速しなかったSPACコンボの代表例はSoFiだったが、そこにまた新たな名前を加えることができる。
  • いくつかのSPACの予測がそれを裏づけている:Alightは、1月の合併発表時の投資家向けデッキで、2021年のBPaaSの収益は億6300万ドル(約419億5000万円)になるとの見通しだったと語っている。BPaaSはBusiness Process as a Service(サービスとしてのビジネスプロセス)の略で、同社のSaaS的なサービスの中でも、最も急速に収益が伸びているセグメントだ。しかし実際には、2021年のBPaaSの売上は3億9000万ドル(約450億7000万円)に達していた。重要な指標で予想を上回った!それこそが、会社をまだ水面上にとどめているのだと思う。
  • 利益ある成長という考え方:ハイテク企業が配当を開始すると、なぜ一部の業界では悪い知らせと見なされるのか?その理由の1つは、定期的な支出を通じて株主に現金を還元するという選択は、企業が資金を投入する場所がないことを示しており、将来の成長が鈍化することを意味しているからだ。そのような理由から、私たちは巨人ではないハイテク企業が、利益を犠牲にしてでも、がむしゃらに成長する様を目にすることが多くなる。Alightは両極端の間に位置し、ショル氏がTechCrunchに語ったように、利益の出る成長に焦点を合わせているようだ。これによって、彼の会社は特定の努力に対して「過剰な回転」をすることはなく。BPaaS戦略にすべてを賭けることもしない。もし長期的にうまくいかなくても、会社は生き延びるだろうと彼は説明した。なおAlightは利益を出しているので、彼の発言は黒字の立場からなされていることは念頭に置いて欲しい。それでも、ソフトウェアの移行を経験しているテクノロジ企業と多くの点で共通している点が多い一方で、成長と利益のバランスを取るアプローチが非常に異なる企業と話をするのは興味深いことだった。本当におもしろい。

さて次は少し毛色の変わった話だ。

チームワーク

毎週のことだが私はこの原稿を金曜日(米国時間2月25日)の午後に書いている。Daily Crunchを少しばかり補足するこの原稿を書き、週末を迎える。

だが、今週の金曜日はグッタリしている。不透明な経済、パンデミック、ウクライナ侵攻などの理由だけでなく、Chris Gates(クリス・ゲイツ)がTechCrunchを辞めて別の場所で新しい仕事をすることになったからだ。これまで彼の名前をあまり取り上げてこなかったので、クリスのことは多分ご存知ないだろう。

ともあれ、彼はEquity podcastの立ち上げメンバーであり、今日が最終日となった。この記事が読まれるころには、彼はもういない。私たちは約5年間一緒に仕事をし、何百もの番組を収録し、失敗に苦しみ、勝利を祝い、総じてチームとして番組を成功させてきた。ホスト役の交代、親会社の売却など、さまざまなことがあったが、彼はいつもそこにいて、落ち着いていて、温かく、準備万端だった。もちろん、EquityはGrace(グレース)、Mary Ann(メアリー・アン)、Natasha(ナターシャ)のおかげでもあり、ときおりDanny(ダニー)、Kate(ケイト)、Matthew(マシュー)、Katie(ケイティ)、Connie(コニー)にも参加してもらえる喜びもあった。グループプロジェクトとしての意味合いが強いのだ。

クリスと一緒に仕事ができなくなるのは、とても寂しい。しかし、彼の退任は、チームワークという人間力の掛け算を思い起こさせる。

その人物、その逸話、その微笑み。これはクリスが退社を発表したときにSlackに投稿したものなので、ここで晒しても文句は言われないだろう。彼は毎日エネルギーを持ち込んでくれた。

たとえばこのニュースレターは、私自身が書いている。そして、Annie (アニー)かRichard(リチャード)に読んでもらう。Henry(ヘンリー)もよく覗いてくれる。彼は数年前、私と一緒に企画を練りこの誕生をサポートしてくれた人物だ。最後に、セールスチームが適切な広告要素を取り込むために準備しているスロットへ、メールを使って原稿を送る。その後、読者の受信トレイに配信され、サイトに掲載されるのだが、それを可能にしているのは、私たちの技術陣だ。私の名前が一番上に出ているのは、中の言葉を書いたからだ。しかし、この記事は、重要な一連のチームワークの結果なのだ。

チームに関しては、身に余る幸運に恵まれている。私がこれまで一緒に仕事をしてきた人たちは、ごく少数の例外を除いて、私の人生の中でも普通に愛せるひとたちだった。クリスと私は、結婚式や子どもの誕生、引っ越しなどを挟みつつ、一緒にEquityに取り組んだ。私たちは一緒に人生を歩んできたのだ。

そして、The Exchangeが所属しているTechCrunch+のチームはエース級であることもお伝えしておきたい。Walter (ウォルター)、アニー、Ram(ラム)、Anna(アンナ)をはじめとするチームのメンバーはすばらしい人たちばかりで、一緒に仕事をできることは本当に幸運だ。一緒に仕事をしているからこそ、私はできることがたくさんあるのだ。そして、その恩返しができればと思っている。

チームワーク。それこそが最高のものだ。だからこそ仕事の別れがより一層辛くなる。

クリス、君の次の冒険のために、幸運を祈ろう。君が次に生み出すものが何であれ、君の1番のファンでいられることを楽しみにしている。

画像クレジット:Nigel Sussman

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(文:Alex Wilhelm、翻訳:sako)

製品ピボットのタイミング、2つの決算報告の話

スタートアップとマーケットの週刊ニュースレター、The TechCrunch Exchangeへようこそ。

みなさんこんにちは。米国は(米国時間)2月21日はお休み(大統領の日、ワシントン誕生日)なので、長い週末だ。おそらく読者がこれを読んでいるときには、私は(願わくば)ソファで3匹の犬と一緒に昼寝をしていることだろう。

しかし!まず最初に!やるべきことはたくさんあるが、先週の初めに行われたあるスタートアップのピボットと、そう、お金についても少しお話しよう。

Jukesのピボット

eスポーツの世界は、かなり細分化されている。さまざまなゲーム、フォーラム、トーナメントシリーズ、プラットフォーム、チャットアプリ、ウェブサイトの上に構築されているので、お気に入りのゲームでさえ、一体何が起こっているのかを理解するのには大変な労力を必要とする。そこでJuked.gg(ジュークド)は、2020年になってeスポーツに関するニュースをひとまとめに管理するハブの構築に着手した。

初期の同社はある程度の成功を収め、私達も記事にしたように、2021年初頭には100万ドル超え(1億円強)の調達ラウンドを実施した。しかし、共同創業者のBen Goldhaber(ベン・ゴールドへーバー)氏によれば、同氏がグラフで「右肩上がり」と表現したような急速な成長時期もあったものの、2021年にはアクティブユーザー数が頭打ちになった。

何が起きたのだろう?「FishStix」というゲーマータグも持つゴールドへーバー氏によれば、Jukedはeスポーツファンの上位1%にはリーチできていたものの、それ以上広がることはできなかったのだという。そこで、この新しい会社はスマートなやり方として、ユーザーに自社のサービスの感想を尋ねた。それらの会話を通して、ユーザーが、コミュニティの「毒性」、スパム、感情的な会話などのeスポーツ特有の問題を提起してくれたのだとゴールドへーバー氏は語っている。

そこでJukedは、少し軸足を変えて、ユーザーが事実上求めていたソーシャルネットワークを構築することにした。すなわちeスポーツファンにとって「毒性」が少なくもっと安心できる場所である。

この製品は、約750人のユーザーによるクローズド・アルファ版としてのテストを経た後、米国時間2月12日に一般公開された。

AppAnnie(現在はData.aiとなっているようだ)の情報によると、このサービスは今週米国のiOSユーザーの間で、ソーシャル・ネットワーキングのカテゴリー限定ではあるがチャート入りを果たした。2、3カ月後にまた、ダウンロードがどのように進んだかを確認してみたいと思う。

このサービスがどのようにして大規模にコミュニティの「毒性」対策を行うのかなどへの大きな疑問は残る(サインアップのためには、かなり強い条件に同意しなければならなかった)。Jukedは将来的にはAIをアシスタントに使った人間によるモデレーションを行うことを意図しており、ユーザーには電話番号の登録を求めている。すべて良いアイデアではあるが、同社は大規模な検証は行っていない。

私はeスポーツのファンなので、Jukedが取り組んできたことは理解している。しかし、私は必ずしも市場に新しいソーシャルネットワークを求めているわけではない。このスタートアップの市場での戦略が、どのようにしてより多くのポイントを獲得できるかを見いくことにしたい(そしておそらく資金調達だ。エクイティクラウドファンディングのラウンドから1年経っているので、同社が今後の四半期でもっと多くの資金を調達しようとしたとしても、驚くようなことではない)。

2つの決算報告

今週は、ハイテク企業の決算報告が相次いで行われた。いつものように市場に目を向け、スタートアップ企業の今後を占うヒントを探してきた。

私たちの仕事のほとんどはここにまとめてある。今日のテクノロジー企業にとって今後の業績予想がいかに重要であるかを掘り下げている。投資家にとっては、将来の見通しに比べて、過去の実績は全然重要ではないようだ。そのため、Amplitude(アンプリテュード)が公開市場の投資家から非難を受けたことには、注意をひかれた。同じような批判を受けた会社はMeta(メタ)も含めて他にもあったので、私たちが最近上場したAmplitudeを非難しているのだとは思わないで欲しい(同社は2021年直接上場を行っている)。

しかし、Appian(アピアン)の業績発表は、また別の側面を見せた。ローコードオートメーション企業のAppianは、他のハイテク企業よりも静かに公開市場に登場してきた。それは決して悪い話ではない。同社のCEOであるMatt Calkins(マット・カルキンス)氏は、先週の決算説明会で私にそう語った。

それはなぜか?それはイノベーションとは何かというカルキンス氏の定義に帰結するが、イノベーションとは単に何かを作ることではない。TechCrunchに語ったところによると、彼の会社は長らくエンジニアリング主導の組織であったが、それだけではクールなものを作るのには不十分だという。新しい機能を市場に出して売り、使ってもらわなければ、実際にはイノベーションを起こしていないのだ。イノベーションとは、製品ではなく体験であるとカルキンス氏はいう。イノベーションの最終的な成果は、新しい機能に対する顧客からの証言であると彼は付け加えた。すなわち誰かが新しいものは本当に良いものだという言葉を残したときだ。そのためには、人々が試せるように、その存在を知らしめる必要があるのだ。

私は彼の視点が好きだ。これは、ブロックチェーンの世界におけるいわゆるイノベーションの多くが、本当のイノベーションではなく仮説の集合を生み出しているとしか思えない理由を説明するのに役立つ。確かに、現在市場に出ている難解なWeb3製品の中には、実際に影響力を持つものもあるだろうが、ほとんどのものは、役に立つツールというよりは単にコーディングのトリックだ。

終わる前にもう少しだけ。米国の企業が感じている人材不足は、単に雇用コストを上昇させるだけではなく、Appianのような企業の後押しもしている。同社は、従業員がやりたがらないので、さらに多くの仕事の自動化をしたいという企業からの要望を受けている。そして、不幸な社員たちは追い出されるというわけだ。

こうして、Appianの成長は少し前から加速している。また、決算発表では株価は下落せず、上昇した。話を元に戻すと、これは現在、企業が時価総額を拡大するためにクリアしなければならないハードルだ。数四半期前とは比較にならないほど厳しい市場となっている。そのため、個人的にはIPOの線はまだしばらくは使えないと考えている。

ではまた。

画像クレジット:Nigel Sussman

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(文:Alex Wilhelm、翻訳:sako)

近い将来、すべてのブロックチェーン企業が暗号投機家になる

スタートアップとマーケットの週刊ニュースレター、The TechCrunch Exchangeへようこそ。

ロシアが間もなくウクライナに侵攻するというニュースが流れたばかりの時に、落ち着いてテクノロジースタートアップ市場の現状について活き活きとした原稿を書くのは、ちょっと難しい。独裁政治よりも民主主義を信じている人にとっては、かなり暗い一日になるだろう。そして、すぐ近くの地平線上にある、迫りくる地政学的な雲は、さらに悪いニュースを約束している。

それでも、ニュースエンジンは前進していて、自分の分野で何かをしなければならない。そこで、暗号市場での資本リサイクルについて話すことで仕事の手を止めないことにしよう。

それは、ぐるぐると回っていいる

現在、テクノロジーの世界で徐々に勢いを増しているイノベーションの1つが、企業が創立後のより早い段階からベンチャーキャピタル活動(防御的なものも攻撃的なものも)を始めるようになっているということだ。

OpenSea(オープンシー)は、その最新の例だ。同社は米国時間2月12日に、OpenSea Ventures(オープンシー・ベンチャーズ)という組織と「Ecosystem Grants」(エコシステム・グランツ)という名のプログラムを立ち上げることを発表した。どちらも「Web3とNFTの世界的な成長を促進するクリエイター、チーム、新技術を支援することを目的としている」という触れ込みだ。

OpenSeaから資金を得る企業は「OpenSeaのリーダーシップへのアクセス」を行うことが可能で、当然ながらa16z(アンドリーセン・ホロウィッツ)を含むOpenSeaの投資家へもアクセスすることができる。

The Block(ザ・ブロック)が指摘するように「OpenSeaは、ユニコーンのAlchemy(アルケミー)やFTXなどの、独自のベンチャーユニットを立ち上げた数多くの暗号スタートアップの一員になる」のだ。いずれも非公開企業であることをお断りしておく。ともあれ、急成長したブロックチェーン企業が余剰資金を得て、その資金を他のグループに再投資し始めることはよくある話だ。

Intel Capitalが企業のベンチャー取引のパラダイムだった時代は終わった。現在は、Coinbaseがおそらく最近最も尊敬されている企業投資チームだが、ライバルたちはそれに挑戦しようとしている。

だが、本当にそうなのだろうか?この近辺には奇妙なニュアンスがある。

  • Coinbaseは非公開の時代、a16zがバックアップしていた
  • Marc Andreessen(マーク・アンドリーセン)氏は、最近自身の暗号ファンドを立ち上げたKatie Haun(ケイティハウン)氏とともに、Coinbaseの役員として残っている
  • Coinbase VenturesがOpenSeaを支援
  • a16zもOpenSeaを支援
  • OpenSeaは現在、独自の投資を行っているが、理論的にはある程度はa16zとの共同投資となっているはずだ

a16zはまた、独自の投資を行っているAlchemyにも出資しているが、これはなかなかのからみ具合だ。OpenSeaはAlchemyの技術を使用しており、すべてが統合されている(このような中央集権化とファミリー化が、分権化すなわち民主化と正反対であることはいうまでもない)。

資本が暗号を追い、暗号が資本を追うこの渦巻は、いつほど収まり始めるのだろうか、そしていつ内部での競争が強まるのだろうか?もしCoinbaseがかねての計画通り独自のNFTプロダクトをローンチしたら、OpenSeaはいつまで共通の投資家に寄り添っていたいだろうか?Coinbaseがインフラを売りたいと思って、Alchemyのスペースに入ってきたらどうなるのだろうか?Alchemyがどれだけの活動をしているかを考えると、率直に言って、Coinbaseがそれをしない理由はない。

現在、OpenSeaが自らのイグジットの前に、資本を他のベンチャーに再投資しているのは奇妙なことだ。しかし、より大きな暗号資産市場の変化のペースが、単純なビジネスモデルである投機を行う企業を、多数ではないにしても少なくともある程度の数以上生み出したようだ。すごい!そして奇妙だ!

私は、主要な暗号資産プレイヤーとその財政スポンサーのクローズドネットワークを監視しようとしている。私にとっては、他のベンチャーカテゴリーよりも中央集権的で、ちょっと奇妙な感じを受けている。Web 2.0で大金を稼いだ人たちが、この先Web3が何になろうとほとんどの利益を手にしようとしているように見える中で、同じ人たちが、分散型の自律組織やゼロトラスト体制などを推進している話を読み続けていると、口の中にこみ上げる苦みを拭い去ることができない。

さて、私はもう消えて、今は自由な社会と民主主義の運命について心配することにしよう。月曜日までにロシアがウクライナに侵攻していないことを祈る。

画像クレジット:Nigel Sussman

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(文:Alex Wilhelm、翻訳:sako)

禁酒スタートアップの序盤戦

スタートアップとマーケットの週刊ニュースレター、The TechCrunch Exchangeへようこそ。

みなさんこんにちは!今日は、シンプルな料理にこだわった。私たちの持ち場の、肉とポテト、豆のプロテインとグルテンフリーのデンプン。すなわちスタートアップの活動だ。ということで今回は、私たちがとてもすばらしいと思うスタートアップのニュースをご紹介する。

個人的な話で恐縮だが、私はお酒とは複雑な事情を抱えていた。最終的には飲酒を完全に止めた。なので、先々週Reframe(リフレーム)が私の視界に入ってきたとき、私は興味を持った。

このスタートアップは、まだアルコール依存症ではないがアルコール摂取量を減らしたい、あるいは完全にやめたいと考えている人に焦点を当て、アルコール摂取量を減らすためのアプリを提供している。飲酒に限らず、あらゆる薬物中毒や依存症、その問題を解決するための市場は巨大だ。私がこのことを知っているのは、酒の量を減らしたり、完全にやめたりしようとしている多くの人たちと、話をできる機会があるからだ。パンデミックの中で状況が悪化していることも付け加えておこう。

なので、Reframeが最近急速に成長していることを知っても驚きはなかった。同社はAtlanta Venturesから140万ドル(約1億6000万円)を調達した後、Y Combinatorに参加している(2021年夏のクラスで、私はお気に入りの企業の1つとして挙げている)。アクセラレータープログラム終了後に340万ドル(約3億9000万円)を調達し、つい最近1250万ドル(約14億4000万円)のラウンドをクローズした。最後の資金調達ラウンドは、2021年末に行われ、資金調達後の評価額は1億ドル(約115億2000万円)となった。

このスタートアップは明らかに何かをつかんでいる。そして、ありがたいことに、同社はその結果を詳細に話してくれた。

同社のCEOであるVedant Pradeep(べダント・プリディープ)氏に話を聞いたところ、Reframeはこの6カ月間でARRが約79%の複利で拡大したという。また、プリディープ氏は、同社では過去12カ月間に毎週10.3%の成長が見られたという。その結果、1月28日までに計950万ドル(約10億9000万円)のARRが発生したが、先週初めにプリディープ氏がメッセージを使ってその数字を1000万ドル(約11億5000万円)に修正してきた。

さらに良いことに、認知行動療法や日記などのツールを組み合わせることで、人々の飲酒量を実際に変化させることができている。プリディープ氏によると、約88.63%のユーザーが2カ月で「飲酒目標を達成した」と報告しているという。さらにCEOは、自社のデータに基づいて、このデータは「彼らの飲酒量が50%(以上)減少したことを意味します」と付け加えた。

大したものだ。

さて、私は薬物関連の営利目的のケアには少々うるさい。そこで私は、プリディープ氏に会社の価格モデルや、Reframeに支払うだけのお金がない人たちに対する方針について話を聞いた。少なくとも私の基準では、この会社は公正なバランスをとっている。

テクノロジー界のリーダー、著名人、悪党が皆、大金を得ようと暗号資産の世界に頭から突っ込んでいるように見える今、Reframeは現実の問題を解決することもお金を稼ぐ方法の1つだということを思い出させてくれる。最近のスタートアップの価格傾向を考えると、なぜこの会社の最新の評価額にもう1つゼロが加わっていないのかが不思議だ。

そして、お酒といえば

今日のテーマであるお酒を続けよう。次はワインだ。それはすべてだ。

ワインについて学ぶ時間は決して無駄なものではない。Reframeの顧客でないのなら、ワイン通でいるのは楽しい過ごし方だ。友人と椅子を並べて、ゆっくりと頭の中に酔いを回すことが好きな人をを酔わせるのが好きな人は、カリフォルニアのしっかりしたカベルネとともにシャブリを楽しむ方法を知ることで食卓が華やぐだろう。

しかし、すべてのワインが飲むためのものではない。その中には、実際に投資に適したものがある。それこそがVinovest(ビノベスト)が、ワインの価格上昇に賭けることができるプラットフォームを開発している理由だ。最近同社は、顧客が個々のワインに投資できるサービスをリリースした。以前のVinovestは、ワイン投資のカテゴリーで、ロボアドバイザーによるサービスに力を入れていた。簡単に言えば同社は、これまで手の届かなかった高級ワインのような、代替投資の選択肢を求める人々が増えていることに賭けているのだ。

このVinovestのニュースを取り上げたのは、2021年に運用資産残高(AUM)が500%成長したことをはじめとして、何かが起きようとしているからだ。同社の勇猛果敢な広報担当者であるWilliam Ruben(ウィリアム・ルーベン)氏によれば、Vinovestは25万本以上のボトルをユーザーの名のもとに管理しており、それらは「世界各地にある特注の倉庫」に保管されているという。

暗号資産の急増や、デジタルコレクション購入の動きなどの中で、おそらくワイン投資は、ありふれた401(k)により多く組み込まれるようになるだろう。もしそれがうまく行けば、Vinovestの市場への賭けは、楽しみの多い果実を実らせることができるだろう。

画像クレジット:Nigel Sussman

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(文:Alex Wilhelm、翻訳:sako)

新しいゲームへの期待、そして何を語ったかにかかわらず誰もがそれぞれと競い合う理由

スタートアップとマーケットの週刊ニュースレター、The TechCrunch Exchangeへようこそ。

親愛なるみなさん、こんにちは。今日も暖かく、安全で、幸せな1日をお過ごしだろうか。今回のExchangeは、ちょっと短めだが、楽しいものにしたいと思っている。私の大好きな「ゲーム」と「競争」の話題を取り上げたい。

ゲームの世界についてのメモ

ベンチャーキャピタルの世界では、暗号資産を使ったビデオゲームが「ゲーム」の世界に財務的な活動をもたらしていることが波紋を広げているが、より伝統的なモデルにこだわるゲーム開発者もいる。

そのような企業の1つがFrost Giant(フロスト・ジャイアント)だ。同社は先週2500万ドル(約28億8000万円)のシリーズAを発表し、新たにリアルタイムストラテジー(RTS)ゲームの開発を行っている。このジャンルの長年のファンとして、私はとてつもなく興奮しているし、ビジネスとテクノロジーのジャーナリストとしても、好奇心を持っている。

先日、創業者である2人のTim──、Tim Morten(ティム・モルテン)氏と、Tim Campbell(ティム・キャンベル)氏と電話で話をして、彼らが何を作っているのかについて話を聞いた。タイトルの発表もまだ先なので、詳細はまだほとんどわからない。しかし!このゲームは、「Age of Empires(エイジオブエンパイア)」や「Starcraft」(スタークラフト)といった人気作品で有名になった、RTS(リアルタイムストラテジー)ジャンルに属するゲームなのだ。現在開示されているのは、作戦行動機能やマルチプレイヤー機能が搭載されているということだ。また、eスポーツのプレイヤーたちとも対話を重ねていて、より競技性の高い戦いに最初から対応できるようにする予定だ。

同社によれば、長い寿命を保つように、サービスとしてのゲームとして開発が進んでいるのだという。それは大きな目標だし、それを新規ゲームを核にして行うのは、大きな賭けとなる。良い意味で、これこそがベンチャーキャピタル向けの話だ。未知の世界に踏み出すことがベンチャー(冒険)なのだから。より多くのB2B SaaSを支援することだけがベンチャーキャピタルではない。

今のところ、Frost Giantは設定やゲームの核となる要素については明らかにしていないので、今後の展開に注目したい。

より実際的な話としては、Frost Giantは2020年に創業された後、シードラウンドで470万ドル(約5億4000万円)を調達し、その後さらに500万ドル(約5億8000万円)を追加した。韓国のゲーム開発会社であるKakao Games(カカオゲームズ)が今回のシリーズAを主導したことで、25人の正社員と12人の契約社員で構成されるチームに、ゲームを完成させるための十分な余裕を与えることができた。

そして、良いゲームを作るために時間をかけるといえば、Paradox(パラドクス)についても語りたい。Paradoxは、スウェーデンに拠点を置くゲームスタジオで、いわゆるグランドストラテジーゲーム(政治や経済、外交なども含めた戦略を扱うストラテジーゲーム)のメーカーだ。これらはある意味リアルタイムだが、従来のRTSというジャンルとは異なり、その複雑さとプレイ時間の長さが特徴だ。たとえばBlizzard Entertainmen(ブリザードエンターテインメント)が開発した普通のRTSゲームである「Starcraft 2」では、操作に熟達していれば、15分で誰かをK.O.することができる。これに対してParadoxのタイトル「Crusader Kings 3」(クルセイダーキング3、CK3)をプレイするには、何日もかけてコツコツとプレイする必要がある。私自身はそのことをあまり気にしていない。

いずれにしても、ParadoxはCK3初の大規模な拡張である「Royal Court」(ロイヤルコート)を使って、私たちの目の前で自然な実験をしているのだ。同社はそれをずっと前から発表していたが、ようやく2021年10月に「来年2月に発売します」とファンに伝えた。このニュースはちょっとした驚きだったが、他のいくつかのタイトルの拡張に問題があったこともあり、CK3のプレイヤーたちは、新しいコードが品質のしっかりした状態で出てくるのであれば、予定よりも遅い発売でも問題ないと考えているようだ。

Royal Courtの発売日である2月8日が間近に迫っており、Paradoxは上場企業なので、ひょっとしたらユーザーの興味を失わせてしまうかもしれない危険を冒しても大型アップデートを待たせる、という賭けがどうなるかを知ることができるだろう。個人的には、この拡張版を購入するつもりだが、自分の行動を過剰に一般化したくはない。

CK3に関連するニュースとしては、先週Paradoxは、同タイトルをゲーム機で発売することを発表した。私は実際に、同社と、同社がゲームを携帯環境に対応させるために契約したスタジオが共催したプレスイベントに招待された。なぜ人びとがゲーミングPCを買わないのか、私には理解できないが、ゲームが他のプラットフォームにどのように移植されるのかについては、かなり多くのことを学ぶことができた。PCゲームをキーボード/マウス以外の環境で動作させるのは大変な作業だということがわかった。

誰もがそれぞれと戦う

次の話題だが、「The Information」(ザ・インフォメーション)に掲載されたこの記事をお読みだろうか?一時期、Databricks(データブリックス:もうすぐ上場、価値は莫大)とSnowflake(スノーフレーク:上場済、価値は莫大)はある意味仲が良かった。そしてその頃に、どちらか、たとえばDatabricksにもう1社のことを訪ねたら、おそらく彼らの事業領域は重なっていないという回答が返ってきただろう。

おそらく一時はそうだったのかもしれないが、The Informationが指摘するように、もはやそうではない。

なぜこの話をしたのかって?単に、DatabricksのS-1ドキュメントを再度公開請求すればよいのでは?まあ、そうなのだが、それ以上に注目したいのは、あらゆる規模のスタートアップは、自分たちがさまざまな会社といかに競合していないかを語るのが大好きだということだ。しかし、成長すればするほど、市場の多くの部分で重なり合うようになってしまう。

次に、あるスタートアップが「自分たちはその分野で類似した企業や大手企業と競合していません」と言ったら、タイマーをセットしてみよう。そして待とう。

画像クレジット:Nigel Sussman

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(文:Alex Wilhelm、翻訳:sako)

オタクのみなさんご乗車ください、メタバースへ向かいます

スタートアップとマーケットの週刊ニュースレター、The TechCrunch Exchangeへようこそ。

こんにちは、みなさん。元気で暖かく健康で幸せで良好な状態でいらっしゃるだろうか。全部でなくても、一部だけでもそうであればと願う。まあ、すべてが当てはまらないとしたら、アイスクリームが発明された理由を正当化できるだろう。

今回は、メタバースの話、創生期から見守ってきたベンチャーキャピタルの話、そして先週うっかり取り上げていなかった、とてもクールなスタートアップの資金調達の話をしよう。準備はOK?では楽しもう。

先週最も楽しかったのは、仮想環境Decentraland(ディセントラランド)への訪問だった。手短にいうと、編集の仕事をしていた私はその途中、編集チームの邪魔にならないように気を紛らわそうとしていたのだ。そこで、私はソーシャル暗号資産環境──つまりメタバースを始動してツアーに出かけたのだ。モヒカン姿でかっこいいパンツを履いて、道に迷ったり、NFTのギャラリーに行ったり、アリーナに入ることに失敗したりしていた。

現在のメタバースは、MMORPGの「Runescape」によく似ている。これは、オンラインRPGが築いてきた歴史的な足跡を考えれば、それほど馬鹿にした表現ではない。しかし、私がゲームで好む水準よりも半端に多くの経済的な側面を含んだ、あまり特徴のないMMORPGは、私にとって最も不要なものだ。

私は今のところ中立的な立場だし、メタバースが毎日ログインしたくなるほどクールになる日を待ちたいと思う。しかし現在、コミュニティの形成やソーシャルな交流を含むWeb 2.0の特性の中には、暗号チームがこれまで見てきたものよりも優れているものがあるようだ。

Amplifyの新しいジェネラルパートナー

数年前、私はMattermark(マターマーク)というスタートアップに雇われて、彼らの会社のために独立したニュース部門を作ることになった。率直に言って、それはすばらしい学習経験であり、さらに何人かの生涯の友人とも出会うことができた。例えばTechStars(テックスターズ)のKevin Liu(ケビン・リュウ)氏だ。

Sarah Catanzaro(サラ・カタンザロ)氏もまた、Mattermarkチームの中では傑出した存在だった。同社における彼女のデータチームでの仕事は、後に就職したVCのCanvas Ventures(キャンバス・ベンチャーズ)、そしてAmplify Partners(アンプリファイ・パートナーズ)で生かされた。参考までに、Amplifyが2020年後半に発表した最新のファンドは、2億7500万ドル(約312億6000万円)相当のものだった。前回からの時間を考えると、そろそろ同グループが新たなファンド組成を発表するのではないかと考えている。

そのAmplifyでカタンザロ氏は、プリンシパルからパートナー、そしてつい最近ゼネラルパートナー(GP)へと昇格した。彼女がVCの世界で最下層から最上層に至るまでの道のりは、眺めていて楽しいものだった。そして、先々週のTechCrunchとの電話では、Amplifyで彼女のレベルに達した女性は彼女が最初だと語っていた。私が強調したいのは、ベンチャーキャピタルというまだ家内産業規模の世界での昇進は、スタートアップのペースでの成長とは異なるということだ。

ともあれ、カタンザロ氏が話してくれたことは、後で振り返ることができるように、ここに書き留めておきたい。私たちは、彼女の会社の投資アプローチ、チェックサイズのターゲット、シードレベルやシリーズAレベルの企業への参入の頻度などについて話をした。新任GPのカタンザロ氏によれば、シリーズAのラウンドははるかに大きくなっているが、リクスはそれに釣り合って小さくなってはいないという。これは、私が以前から直感的に感じていたことだが、これまで誰かが口に出していうのを聞いたことはなかった。

つまり、VCから見たシリーズAのリスクは、スタートアップの段階でより多くの資本が投入されることで上昇しているということだ。今後数年間で十分なメガイグジットを行うことができるなら、最終的には計算が合うのかもしれない。しかし、市場が急落し「懸念」が「奔放な熱意」よりも多くの紙面を占めている今、私は多少疑問に思っている。

ロードアイランド州の誇り

私が住んでいるオーシャン・ステイト(ロードアイランド州の別称)は、米国で最も有名なテクノロジー・ハブからは少しだけ離れている。しかし、だからといって、魅力的なハイテク企業がこの小さな州に生まれないわけではない。TechCrunchは、大学生のためのフリーランス労働市場を構築しているプロビデンスで設立されたスタートアップ、Pangea(パンゲア)を例として紹介している

リトルローディ(これもロードアイランド州の愛称)のもう1つのスタートアップが、マリーナやボートに乗る人のためのソフトウェアプラットフォームDockwa(ドクワ)を開発する、The Wanderlust Group(ザ・ワンダーラスト・グループ)だ。要するに、ペンと紙の世界に留まっていたボートの船着場の予約管理の世界を、Wanderlustはソフトウェアを使って近代化することにしたのだ。

前回、同社について触れたのは、同社が2020年に1420万ドル(約16億1000万円)を調達したときだった。当時、CEOのMike Melillo(マイク・メリロ)氏はTechCrunchの取材に対し、同社は単に700万ドル(約8億円)を求めていたに過ぎなかったが、数字が倍になったと語った。

だから最近同社から「また調達しました」と聞いても驚かなかった。今回、Wanderlustは1億5000万ドル(約172億5000万円)のプレマネー評価額のもと、シリーズCで3000万ドル(約34億1000万円)を調達した。この資金調達は、Thursday Venturesが主導した。

幸いなことに、Wanderlustは2021年のARR(年間経常収益)成長率を喜んで開示してくれたが、それは71%だった。さらにおもしろいことに、週休3日制に移行した後、同社のARRは2020年6月から2021年6月にかけて100%拡大した。これは、私がスタートアップ界隈で追跡している、より興味深い労働実験の1つの実際のデータだ。

しかし、この会社の最も興味深い点は、自身でファンドを組成していることだ。ただし普通の企業向けベンチャーキャピタルファンドではなく、何か別のものだ。Wanderfund(ワンダーファンド)と名付けられたこのファンドに対して、同社は「国や地域レベルでの環境保護活動」のために2022年30万ドル(約3400万円)の資金を投じた。その一環として、まずは子どもたちが家から出て自然の中で過ごせるように、地元のBoys & Girls Club(ボーイズ&ガールズクラブ)に資金を提供することを始めている。

同社はキャンプ用に使えるDockwaのような製品を開発しているので「外に出よう」というテーマは、Wanderlust(放浪願望)Groupという名前にふさわしいコアとなる。

その他雑多なもの

ということで今日はここまで。また来週!

画像クレジット:Nigel Sussman

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(文:Alex Wilhelm、翻訳:sako)

「暗号資産の未来」への投資競争には確実に金がかかる

スタートアップとマーケットの週刊ニュースレター、The TechCrunch Exchangeへようこそ!

先週もなんとか乗り切れた。電話やTwitter(ツイッター)ではみんな疲れた姿を見せていたが、なんとかなったようだ。なんとか平日を乗り切って、週末にしばし休息は得られたろうか。そう、今日は暗号資産の話だ。楽しもう。

私は、Coinbase(コインベース)がより大きなブロックチェーン市場の他の企業に資本を投入するペースに感銘を受けている。米国の上場企業は比較的少額(売上と比べての場合だが)を支払うことで、スタートアップの所有権と情報アクセス権の両方を買うことができ、何が起きているかの早期警告データを得ることができるので、これは賢明な動きだ。Coinbaseが、暗号資産市場における明らかな既存大手であり、ある意味門番のようなものであることを考えると、その投資は理に適っている。

しかし、他にもあちらでも投資、こちらでも投資が続いている。今回発表されたFTXファンドは、かなり速いペースで取引されているにも関わらず、これまでCoinbaseが行ってきた取引よりもさらに積極的なものになっているようだ。

FTXの暗号資産ファンドの総額は約20億ドル(約2276億8000万円)で、インタビューによると2022年中に投資されるだろうという。これは、ワイルドな投資ペースだが、おそらくa16z(アンドリーセン・ホロウィッツ)が最近22億ドル(約2504億5000万円)の暗号資産ファンドを立ち上げたことを思い出す人もいるだろう。

いくつか疑問がある。

  1. インターネットに比べてはるかにユーザー数が少ない暗号資産市場に、なぜこれほどまでの資金が必要なのか?
  2. なぜ私たちは、暗号資産に資金を供給するために、これほど多くの決断を下してしているのだろうか?

これらは相互に関連した疑問だ。結局これらは、なぜ暗号資産市場で有用なものを作るのは難しいのか、という私の素朴な疑問に対応している。CoinbaseとFTXは、暗号資産の世界の端に存在し、従来の経済とその未来になりうるものとの間でお金を行き来させている。彼らが投資するのは賢明なことだが、彼らが投資しようとしている金額と、従来のベンチャーキャピタルがブロックチェーンスタートアップに投じている金額とを比較すると、私はやや混乱する。一体資産は何に使われているのか?

2つの主要なブロックチェーンは確立されており、もはや新しいものではない(Ethereum[イーサリアム]は2013年に案出され2015年にローンチされたし、Bitcoin[ビットコイン]のホワイトペーパーは2008年に発表された)。多くのステーブルコインが存在し、多くの安定したプレイヤーがいて、膨大な資金がNFT(非代替性トークン)マーケットプレイスやいくつかの暗号資産ゲームへ流れ込んでいる。その中には、そこそこの利用者ベースを築いているものもある。しかし、スペースに流れ込むお金の量と、利用可能な結果として見えてくるものを比較すると、やや凝縮されすぎているような気がする。

Institutional Investor(インスティテューショナルインベスター)のレポートによると、2021年は総額328億ドル(約3兆7340億円)が「暗号資産やブロックチェーン技術事業」に投資されたという。おそらく、そのお金で作られた多くのものが今にも出てきて、私たちをびっくりさせるのかもしれないが、Bitcoinが誕生して10年以上経った今でも、私はブロックチェーンで動くアプリやサービスを日々使ってはいない。もちろん、研究目的で暗号資産の世界の一部をあれこれこねくりまわしているのなら別だが。

すでに私は認めたくないほど多くの時間をオンラインで過ごしているのだ!おそらく新しいFTXファンドは、単なる投機の手段ではない、大衆向けのブロックチェーン製品を市場にもたらすだろう。何が登場するか待ってみようと思う。

画像クレジット:Nigel Sussman

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(文:Alex Wilhelm、翻訳:sako)

ベンチャーウォーター、フィンテック、バイオテックへの投資

スタートアップとマーケットの週刊ニュースレター、The TechCrunch Exchangeへようこそ。

みなさん、再び仕事の世界へようこそ。デスクへと無事にたどり着き、暖かく健康であることをお祈りしている。現時点の新型コロナウイルス感染症の隆盛は非常に困った事態だが、ロックダウン、大量死、抱擁の欠如という不安の中で、生産性を取り戻すために苦労するのはおそらく2022年が最後だろう。そう願っている。

ともあれ、今日は世界情勢をつかの間でも気にせずに済むような楽しいネタをたくさん用意した。

今日はまず、Liquid Death(リキッド・デス)についてお話ししよう。この見事な名前の会社は、その名の通り、喉の渇きを水で「殺して」くれる企業だ。それがこの会社の簡潔な説明である。Liquid Deathは缶入りの水を販売しているが、反プラスチックのスタンスと一般的なヘビーメタルの雰囲気に合わせて作られている。うまいやり方だ。

しかし、Liquid Deathは今週7500万ドル(約86億7000万円)の調達もしていて、最近は何を作るにも金がかかるものだと思わずにはいられない。なぜ水販売の会社が1回の投資でプレシード資金をすべて調達する必要があるのだろうか?何のためにそのお金が必要なのか?研究?水を売っているだけなのに!

数年前には、スタートアップを作るのがかつてないほど安くなったという一般的な見方があった。既製のソフトウェア、クラウドコンピューティング、最新のフィンテックのバックエンドといった現代のビジネス要素を組み合わせることは、ますます速くそして安く行うことができるようになった。ソフトウェア開発者を雇うコストの高さを除けば、スタートアップ企業はより少ないコストでより多くのことを行うことができるようになるように見えた。

それなのに、スタートアップたちは、かつてないほど多くの資金を調達しているのだ。The Exchangeは来週、ベンチャーキャピタルのデータを調査する予定だが、ベンチャーキャピタルやスタートアップクラスが嬉々として資金を動かし続けていることは明らかだ。そうした中で、Crunchbaseのデータによれば、Liquid Deathはこれまでに1億3000万ドル(約150億2000万円)以上を調達している。

スタートアップコストの削減とメガラウンドの実現、できるものなら見せて欲しい。マーケティング費用を自己資本から調達しているのだろうか?そうだとすると、ちょっと心配になる。

(なお、Liquid Deathは利益率が高く、経済的にも優れた凄いビジネスである可能性があるが、私はその数字を知らない。しかし、もしそんなに調子が良いのなら、なぜ7500万ドル[約86億7000万円]も必要になるのか?何か私がまだ知らないことがあるのだろうか?)

Levelが資金調達

メモ帳を掘り起こして、Level(レベル)についての簡単な説明をしよう。Levelは、2021年2月に記事で取り上げた会社だ。そのときこの会社は、150万ドル(約1億7000万円)の資金調達を行ったばかりだったが、私たちはその事業内容を「現在のフリーランス収入をもとに、従来なら不可能だった前借りを行えるような信用供与を行う」と説明した。

多くの人々が、働いてはいるものの資産重視のライフスタイルを送っていない世界では、キャッシュフローではなく資産に基づく融資は少々ばかげているので、これはすばらしいモデルだった(もちろんこれは総論賛成各論反対のブーマーたちを皮肉る丁寧な言い方だ)。

ともあれ、Levelは2021年の終わりに今度は700万ドルのシリーズAを行った。Anthos Capitalがこのラウンドを主導し、NextView Venturesやその他の既存投資家も資金を提供した。今回の資金は、同社のデータによれば「10倍」の規模に成長した後に得られたものだ。

Levelのニュースで最も注目すべき点は、同社がより多くの資金を調達したという点ではなく、その目標設定が非常に大きいという点だ。同社は「マイクロビジネスのための金融OS」を構築したいのだという。

伝統的な金融機関は小規模ビジネスを相手にしたがらないので、これはよく理解できる。フィンテックは、技術を応用して壁を壊し、より多くの人々に価値をもたらす手法であるべきだと私は考えている。Levelは、その線に沿った活動をしながら、ベンチャー企業に役立つビジネスを構築しているように見える。すばらしい!

PsyMedがバイオテックファンドを組成

a16zがベンチャー、グロース、バイオテック投資のために90億ドル(約1兆円)の新規ファンドを設立したというニュースを聞くと、市場には小規模なファンドも存在することを忘れそうになる。また、その中には実際かなり新しいものもある。

バイオテック分野では、PsyMed Venturesが2500万ドル(約28億9000万円)のファンド組成に奔走しており、その第一次分の800万ドル(約9億2000万円)が銀行に入金されたところだ。私は彼らのモデルについてもう少し掘り下げるために、金曜日(米国時間1月7日)にこのグループと対話をした。

まずは基本。PsyMedには3人の投資パートナーがいる。Dina Burkitbayeva(ディナ・ブルキトバエワ)氏、Greg Kubin(グレッグ・キュービン)氏、Matias Serebrinsky(マティアス・セレブリンスキー)氏だ。最初のファンドサイズの目標からもわかるように、この会社は、麻薬医療分野とその関連分野での初期段階の投資を行う。このグループは共同作業は初めてではなく、以前にもAngelList(エンジェルリスト)の技術を使って投資グループを結成し、これまでに約1500万ドル(約17億3000万円)の投資を行っている。

PsyMedについて少し考えてみよう。まず、医療用にテストするものの対象の境界を広げていることに興奮する。私の国では、慎重さがこの種の仕事を妨げ、私たちに不利益を与えている。第二に、バイオテックへの投資は、たとえば企業向けソフトウェア市場で見られるようなものよりもずっと早く上場する企業が多く、私にとって興味深いものだ。そのため、より多くの企業を、よりすばやく、より頻繁に見ることができる。

バイオテック企業へのベンチャー投資家にとっては、今日のユニコーン時代によく見られるような流動性の可能性よりも早い時期に流動性が得られることを意味する。

ブルキトバエワ氏、キュービン氏、セレブリンスキー氏と話していると、規制、科学、医学の進歩の面で合流点に近づいているという印象を受けた。この合流点では、人間の厄介な問題に対する多くの優れた新しい治療法が生み出される可能性がある。たとえばPTSD、治療抵抗性うつ病など、そして個人的に気に入ったのは薬物利用障害だ。

ともあれ、このグループが新しいファンドをどのように活用し、初期段階の製薬スタートアップをどれだけ早く公開市場に送り出すことができるかに注目していきたい。2022年も来年も、バイオテックのS-1申請書類をたくさん読めることだろう!

最後に

来週からEquityは週3回のペースに戻るので、お好きなポッドキャストアプリでお会いしよう。ではまた!

画像クレジット:Nigel Sussman

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(文:Alex Wilhelm、翻訳:sako)

評価額が収益の実質「無限大」に

スタートアップとマーケットの週刊ニュースレター、The TechCrunch Exchangeへようこそ。

この記事を書いている今日(米国時間12月25日)はクリスマスなので、実際に読者が何人いるかはわからない。ということで家族を避けている7人のみなさん、こんにちは。

次回いつものように大勢の人向けの話に戻る前に、今回は2つほどすばやくお話ししておきたい。どうだろう?2021年の終わりにおもしろい話を。ともあれご愛読にお礼をお伝えしたい。感謝している。

さて今週(クリスマスで終わる週)の最高のストーリーは、Jack Dorsey(ジャック・ドーシー)氏がweb3をバカにしたことではなく、とある資金調達ラウンドだ。ラウンド自体はそれほど魅力的ではなかったが、Airbyte(エアバイト)のラウンドの背後にあるストーリーが魅力的だったのだ。

参考までに、Airbyteとは、顧客のデータ移動を支援するオープンソーススタートアップ(OSS)である。率直に言って、それは大きな市場だ。なぜなら、そこにはたくさんのデータがあるし、単にそこに置かれたままではないからだ。企業はそれをあちこちに移動したいと考えている。そして、それを行うことは一大事だ。必要がないので、読者に「ELT(抽出、変換、読み込み)」についてはとりたてて何かいうつもりはないが、それはAirbyteが競合する一般的な市場である。

ビジネスという観点では、Airbyteはもちろんオープンソース製品を用意し、そして有料サービスを提供している。有料版のAirbyteには、通常のエンタープライズ向けのツールが含まれている。例えばSSO(シングルサインオン)などだ。そしてホスティングも。ということでかなり標準的なOSSではないだろうか?

お金の話に戻ろう。Crunchbaseのデータによれば、Airbyteは2021年初頭にシードラウンドを行っている。その後、5月にはシリーズA調達を実施した。その時点で、同社は2021年3000万ドル(約34億3000万円)以上を調達したが、これは大層な金額だ。

次に来た金額がまた見ものだった。Airbyteは今週、約15億ドル(約1715億4000万円)の評価額で1億5000万ドル(約171億5000万円)のシリーズB調達を行った。おもしろいことに、同社の現在の収益(年間経常収益、つまりARR)は100万ドル(約1億1400万円)未満なのだ。

私はツイッターで、同社がARRの1500倍の価値を生み出したと冗談を言った。このツイートはウケたようだ。

だがそれは中途半端な冗談に過ぎなかったことが判明した。Airbyteのニュースが出された後、収益はおそらく私が最初に考えていた線よりも、さらに下回っていたと聞いた。つまり実際にはAirbyteの評価額は、ARRの1500倍よりずっと多かったことを意味する。

事実上、それは無限大のようなものだ。それは驚くべきことであり、2021年にベンチャーキャピタルが常に目指していた地点だ。結局何を言いたいのかって?つまり次のとおりだ。

  • より大きな資金がスートアップのライフサイクルのますます早い段階に投入されるようになっている。これはより多くの資金を投入して、将来の人気企業に対して多くの取り分を確保するためだ
  • これは、これまで以上に多くのスタートアップがFOMO(Fear of Missing Out:取り残される恐怖)に基づいて巨額の資金を調達できるようになったことを意味している
  • その後、2021年になって、さらに多くのお金が流れ込むようになって、上記の2つの点(多額の資金投入、青田刈りの早期化)はさらに激化した
  • 現在シリーズBラウンドは数十万ドル(数千万円)単位のARRで行われていると耳にしたが、昔(2019年)はシリーズA調達を行うためには、最低でも100万ドル(約1億1400万円)のARRが必要だった
  • そしていまAirbyteの例を見ると、収益ベースと比較した場合には、企業の評価額には実質的な制限がないことがわかる

Airbyteはこの偉業をどのように達成したのか?私の勘では以下のようなものだ。オープンソース企業は、資金を調達しようとするときに、投資家の前にぶら下げることができる、単純に優れた一連の非収益指標を持っている。例えばオープンソースプロジェクトの利用状況と貢献情報などだ。なので、私の推測では、有料プランはまだ初期段階だとしても、Airbyteのコミュニティ内での利用率は非常に高いのだろう。

ではこのAirbyteラウンドは馬鹿げたものなのだろうか?そんなことは誰にもわからない!私たちが言えることは、収益の桁数がはるかに少ないにもかかわらず、投資家が数十億ドル(数千億円)の評価額の下で数億ドル(数百億円)の資本を同社に投入するのに十分なデータがどこかにあったということだ。

これはオープンソースのスタートアップにとって強気の材料ではないか?私はそう思っている。

そして最後に、Juna(ジュナ)だ。

先にJunaの創業者でCEOのPeter Arian(ピーター・アリアン)氏に会い、彼のスタートアップが何をしているのかについて話を聞いた。スタートアップが力を入れているのは、保険会社と協力して、性的にアクティブな人びとに低コストの性的健康診断を提供することだ。それは、若者に対して顧客直接取引と健康技術のハイブリッドモデルを適用し、若者が検査を受ける習慣を、受動的ではなく能動的に行うものへとシフトさせることを狙っている。

すべてを新型コロナウイルス感染症(COVD-19)のせいだというつもりもないが、最近はみんな検査を受けることに少し慣れているのではないかと思う。新型コロナ検査のやり方が変わっていないのら、それは鼻の奥を綿棒でつついて数分でお終いだ。現代生活の喜びとはこんなものだ。

Junaのやり方がスマートだと思う点は、もし私がもっと若くて結婚していなかったら使いたくなるようなクールな製品だということだけではなく、そのマーケティング戦略もすばらしいことだ。ソーシャルメディアを活用して注目を集めるブランドについてはよく耳にすることと思う。そう、JunaはTikTokをそのビジネスのために利用している

アリアン氏によると、同社のアクセスの順番待ちリストは毎月15〜20%の間で伸びており、かなり健全なようだ。Junaは2月のローンチを目指しているため、この先まだ順番待ちリストは長くなるだろう。おそらく、TikTokへの出費は続くのでは?

同社はある程度の資本を集めてはいるが、それはまだ完全には終わっていない。私はアリアン氏が資金調達ラウンドを行い、サービスをローンチしたときに再び話をきくつもりだ。検査はセクシーではないが、検査を受けた人たちのセックスはどうだろう?とか何とか。

画像クレジット:Nigel Sussman

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(文: Alex Wilhelm、翻訳:sako)

市場の懸念、嫌悪、魅力的な企業向けギフト

スタートアップとマーケットの週刊ニュースレター、The TechCrunch Exchangeへようこそ。

親愛なるみなさん、今回は3つのテーマを取り上げる。1つ目は懸念、つまり市場の懸念だ。2つ目は嫌悪、ある特定の企業ニュースに対する私の直感的な反応だ。そして最後に企業ギフト、魅力的なスタートアップ戦争へ飛び込む。では始めよう!

懸念

電子署名企業のDocuSign(ドキュサイン)は、先週金曜日に株価が40%以上下落して、大きな打撃を受けた。これは、詐欺やその他の企業の不正事例を除けば、私が今まで見た中で最悪の業績報告後の株価変動だ。

何が起きたのだろう?DocuSignは、直近の四半期(2022年度第3四半期)には収益予想を上回っていた。しかし、同社の請求額(将来の収益を表す)は、予想を大幅に下回った。同社のCEOであるDan Springer(ダン・スプリンガー)氏は、投資家向けの手紙の中で次のように述べている。

成長が6四半期の間加速した後、お客様はかつての正常な購入パターンに戻り、その結果、請求額は前年比で28%増加しました。

スプリンガー氏は、市場が過剰反応していると考えており、来週DocuSign株を購入する予定だ。市場は、DocuSignがより普通の成長へ回帰したと思われるものを、あまりにも重視しているのだろうか?

そうでないかもしれない。これが起きてから、私は仲間たち(その中には仕事の場で私の正気を保ってくれる友人のロン・ミラー記者もいる)と、私たちが見ている現象はウォール街の焦りなのか、それとも別のものなのかを語ってきた。私は後者(別のもの)に傾いている。

Yahoo Financeのデータによれば、DocuSignは大幅な下落の後でも約270億ドル(約3兆円)の価値がある。あるいは、現在のランレートの約12.4倍だ。将来の収益の減速について強いヒントを示す公開テクノロジー企業に対して、椅子から立ち上がってそれは低すぎるというのは誰なのだろうか?

実際そういう人は多い、しかしそれは一般にSaaSの勢いが長い間非常に強かったためなのだ。それほど昔の話ではない。DocuSignが請求額の成長が28%だと公表したあとで、ランレートの12.4倍という評価額は、それほど良くはないとしてもまずまずの数字だ。以前の成長状態に戻るのは許されない話なのだろか?

懸念。それが、ソフトウェア会社の間で複数の収縮が見られる場合に、私が味わうことを予想する感覚だ。非公開市場における非常に多くの賭けは、公開企業の評価額が高いままであるという期待に頼ってきた。しかし、先週のような一般的なハイテク株にとって最悪な数字が出現すると、ハイテク業界に対する風潮は、100%のリスク偏重から、よりバランスの取れたものへとついにシフトする可能性がある。

嫌悪

Better.com(ベタードットコム)は、SPACデビューで7億5000万ドル(約846億円)を手に入れ、事業のために十分な資金を得た。そして、従業員の一部を解雇した。あるオンラインコールでCEOは、解雇されるスタッフは15%だと述べた。一方Better自身は、その数は実際には9%だと主張している。CEOがメモを読みながら、レイオフを通知するためにそのオンラインコールを行っているというなら、その数字の食い違いは問題だ。彼が決定を下したのなら、数字を間違えたりするだろうか?

とにかく、ここに労働者の多くを解雇しないですむ方法のレッスンがある。

(このバージョンが取り消された場合に備えて、ビデオのコピーを保存している)。

忘れてはならないこと。職場は自分の家庭ではないということ。労働者としてのあなたは、会社が利用して利益を引き出したい資産に過ぎないのだ!

企業向けギフト

時計を2020年初頭に戻そう。その年の2月、パンデミックが発生する直前に、私はSendoso(センドソー)の4000万ドル(約45億1000万円)のシリーズBを取り上げた。同社は企業ギフトの分野を扱う企業で、それ以降1億ドル(約112億8000万円)のシリーズC調達を行っている

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これとは別に、私が知っている投資家が、Sendosoと同じ市場の別のプレイヤーであるPostal.io(または単にPostal)を私に紹介した。この2つの企業は、現在および潜在的な顧客市場におけるギフトでシェアを競い合っている。つまり巨大な市場なのだ。

通常版のExchangeをよく読む読者は、最近この話題に触れていなかったのではないかと思っているかもしれない。実は取り上げている!9月には、Disruptの直前に、Postalとその進捗状況をお知らせした。

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しかし、私はそれ以降、PostalとSendosoからいくつかの成長指標を抽出して、この分野の継続的なカバレッジに追加したいと思った。なぜこれを気にかけるのか?なぜならこの分野は、OKRソフトウェアや即時食料品配達市場に似ているため、追跡する価値のある興味深いスタートアップクラスターがある。

たとえばSendosoとPostalは、Alyce(アリス)やReachdesk(リーチデスク)と競合する。オンラインからオフラインへの市場チャネルに対して、多くのスタートアップ活動が集まっている。そして、市場は複数のプレイヤーが同時に成長できるくらい十分に大きいのだ。たとえばSendosoは、Coresight(コアサイト)を引用して「米国の企業向けギフト市場は2021年末までに2420億ドル(約27兆3000億円)に達すると予測されている」とThe Exchangeに語った。

Postalはメトリクスで最も突出していて、過去5四半期連続で70%のサブスクリプション収益の伸びが見られたことを公表している。また顧客数が35から286に増加したため、GMV(流通取引総額)の規模は2020年第3四半期から2021年第3四半期にかけて3765%に増加した。それが理由で、同社は9月に資金を調達することに成功できたと私たちは考えている。

Sendosoの最近のパフォーマンスに関しての数字は、より控えめ目なものだった。スタートアップは2019年に330%成長したことを思い出して欲しい。しかしその最近の結果に関しては数字を公開するつもりはないようだ。その代わりに、Sendosoによれば、現在900の顧客(詳細にいうならそれらの企業の中にさらに2万件超えのアカウント)を持ち「北米、ヨーロッパ、アジアの倉庫から165か国以上で300万以上の出荷を行った」という。

AlyceならびにReachdeskからは、この記事の公開に間に合うようには新しい数字を得ることができなかった。もし彼らに数字を共有して貰えた場合は来週お知らせする。

また、OKRスタートアップ市場のように、より大きなテーマにはバリエーションが付きものだ。企業向けギフトの場合、Postalはよりデジタルなサービスを構築し、商品会社と購入者を結び付けている。一方、Sendosoは、独自の物理的なアイテム集約場所を含む実世界でのフットプリントが大きくなっている。私たちは、ビジネスケースがリアルタイムで競い合うのが大好きだ。

ただし、激しい競争が起きると、すべての関係者が無傷のままとはいかないということは忘れないように。OKR市場を見ると、Koan(コウアン)は次の資金調達のマイルストーンに到達できず、Microsoft(マイクロソフト)はスタートアップ企業の1つをすくい上げた。即時食料品配達市場では、1520がちょうど破綻したところだ。SendosoやPostalが現金を使い果たす危機にさらされているわけではないが、もしその市場の中で統合の動きが出てきたとしたら興味深いだろう。

画像クレジット:Nigel Sussman

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(文:Alex Wilhelm、翻訳:sako)

ますますリスクを背負うスタートアップ市場

スタートアップとマーケットの週刊ニュースレター、The TechCrunch Exchangeへようこそ。

米国東海岸からこんにちは。私はいま、新型コロナウイルスワクチンのブースターショットの副反応を払いのけようとドーナツを食べている。今のところ、Moderna(モデルナ)の3回目の接種の副反応は、2回目ほどひどくはないが、何が起こるかは誰にもわからない。ということで、途中で椅子からすべり落ちて、そのまま昼寝をしてしまうかもしれないので、今日は簡単にしたい。

まずはじめにみなさんに感謝を。このささやかな週刊ニュースレターには、今では3万人以上の購読者がいて、毎週の開封率は40%台半ばから後半に達している。これは、私がTechCrunchに戻ってきたときに始めた大きなプロジェクトの一部だが、平日のExchangeコラムにこのニュースレターを追加したときには、果たしてうまくいくものかどうかはわからなかった。

率直に言って、この週刊ニュースレターが受け入れられるかどうかは一種の賭けのようなものだと思っていたのだ。読者のみなさんのおかげで、賭けは成功し、通常のExchangeコラムは今では週6回発行されている。すばらしい。みなさんに感謝する。

さて、リスクについてだ!

少し前に、スタートアップ市場のリスクが公開市場に流れ込むケースが増えているという話をした。つまり、一般の投資家が、SPACやいくつかの興味深い株式公開のおかげで、以前よりも多く、新生スタートアップの高額な株式を手に入れることができるようになったということだ。

しかし、その中には、スタートアップのリスクが非公開市場の投資家にとっても高まっているという暗黙の了解があった。何が起こっているのかを話そう。

  • スタートアップ企業の評価額は、市場の潤沢な資金、利回りの高い限定的な投資、および関連する諸事情のおかげで上昇している。こうしたことはある程度聞いたことがあると思う。
  • スタートアップ企業の評価額も、より多くの投資家が投資プロセスの早期に投資するようになったことでも上昇している。このことも、これまでに聞いたことがあるだろう。しかし、それがどのように自己強化される問題であるかについては、意識していないかもしれない。大規模なファンドはその規模を後ろ盾にしてこれまでよりも「早い」段階的で投資することができる、実質的に、全体的なリターンプロファイルをリスクにさらすことなく、当該スタートアップの株式を大量に購入するオプション契約を結ぶことになるのだ。これにより後期ステージ資金が早期ステージに投入される一般的傾向が後押しされる。そして、その金額の差によって、後期ステージの投資家たちは早期ステージの評価額をあまり強く気にしないために、評価額が上昇するのだ。もっと簡単にいうと、もしあなたが10億ドル(約1133億円)の投資資金を持っていて、シリーズAに500万ドル(約5億7000万円)を投入する場合、プレマネー評価額が6500万ドル(約74億円)でも7500万ドル(約85億円)でも、それほど気にしないということだ。投資家が本当に気にしているのは、成功したスタートアップが次のラウンドで資金を調達するときに、5000万ドル(56億7000万円)を投資できるかどうかだ。
  • しかし、それだけではない。ベンチャー投資家たちがThe Exchangeに報告してくれたところによると、スタートアップの評価額が上昇しているのは、ハイテク企業の成長率が予想以上に高いだけでなく、成長率が予想以上に持続していることが証明されたからだという。つまり、これまでのスタートアップ企業が、多くの人が予想していたよりも速い成長を遂げて上場し、その拡大ペースを長く維持しているということだ。その結果、テクノロジー企業の将来価値は予想以上に高くなる可能性があるため、投資家はより多くの金額を今支払うことができ、期待していたほどの額の増加がなくても心配しないでいられるということだ。
  • メンローの投資家であるMatt Murphy(マット・マーフィー)氏が最近説明してくれた、評価額上昇に関するもう1つの要因は、昔のベンチャーが感じていたスタートアップの失敗率が今では正しくないということだ。失敗率は以前よりも低く、極めて重要なヒット率も高くなっているという。

上記を全体的に眺めて良く考えるならば、量産されるユニコーンや数十万ドル(数千万円)のラウンドも説明できるのではないだろうか。それは、どこか納得できる視点でもある。結局のところ、こうしたスマートマネーが賭けているのは、より速く、より持続的な成長と、より少ない失敗(本質的にSaaSは殺すのが難しい)が、より高いコストとバランスを取って、ベンチャー数学を満たすために必要なリターンを生み出すことだ。

しかし、しかーーしだ、新型コロナパンデミックによる初期のショックが収まった後に始まったソフトウェア企業買収ブーム以降、スタートアップ市場のファンダメンタルズはあまり改善されていないために、ますますリスクは高まっている。つまり。2021年、ベンチャー投資家が支援しているスタートアップたちは、2020年半ば以降、マクロ的な運勢はあまり良くなっていないのにもかかわらず、より多くの資金を、より早く調達することに躍起になっている。その分、投資リスクが高まっているのだ。

現在、市場には900社以上のユニコーンが存在しているが、これらのユニコーンはすべて、投資家が期待するリターンを得るために、IPOを必要としている。もし市場が最終的に少し修正されて、少しだけ歴史的な整合性が取られたとすれば、かなりの数の高額な非公開企業が、非公開市場での評価と公開市場での価格の間で行き詰まってしまう可能性がある。非常に厄介なことになる可能性があるだろう。皆はただ、そうでないことに賭けているだけだ。

つまり、スタートアップの価格の上昇に対する合理的な理由があるにもかかわらず、スタートアップがより多くの資本を、より早く調達するようになると、それは限界リスクゼロの賭けではなくなるということだ。

今日はここまで。残り物を食べて、オフラインになるとしよう。

画像クレジット:Nigel Sussman

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(文: Alex Wilhelm、翻訳:sako)

機械学習運用基盤(MLOps)スタートアップの話をよく聞くようになってきた

スタートアップとマーケットの週刊ニュースレター、The TechCrunch Exchangeへようこそ。

ああ、先週の金曜(米国時間11月19日)の午後はちょっと苦労していた。米国にいない人には、ちょっと説明が難しい。簡単に言えば、先週の終わりになって、私たちの警察と司法のシステムのある種の欠陥が明るみに出たのだ(訳注:警察のヘリコプターから撮影されたとみられる大量の監視映像が米国で流出した)。というわけで、今回のExchangeニュースレターは予定よりも短くなる。

DevOps(デブオプス)の市場は多忙で、資金も豊富だ。例えば先日はOpslyft(オプスリフト)の話を聞いた。インドと米国にまたがるこの企業は、ソフトウェアを作成する際のポストデプロイメント側のツールをまとめた統合DevOpsサービスを開発している。すばらしい企業なので、もし資本調達を発表したら、もっと時間をかけて記事を書くことになるだろう。最近の記憶に残る別の例を挙げるなら、先日公開されたプレデプロイメントDevOpsサービスであるGitLab(ギットラボ)がある。

つまり、大小を問わずのハイテク企業はDevOpsツールを構築しているということだ。そして、機械学習運用基盤(MLOps、エムエルオプス)の市場は、大きな兄弟(DevOps)と同じように急速に成長し始めている。TechCrunchは、MLOpsスタートアップのComet(コメット)が今週資金調達したことを記事にしたが、これを読んでThe Exchangeは、MLOpsスタートアップの別の資金調達イベントであるWeights & Biases(ウエイツ&バイアス)のラウンド、を取り上げたことを思い出した。

関連記事:企業の機械学習利用の空隙を満たすMLOpsのスタートアップCometが約57億円調達

こんな話を持ち出したのは、先日私たちがSapphire VenturesのJai Das(ジェイ・ダス)氏にインタビューを行い、AIによる資金調達のトレンドについての情報を収集したからだ。その対話の中で、私はAIOps(エーアイオプス)のアイデアを持ち出し、それが私たちが注目すべき第3の「Ops」カテゴリーになるのではないかと口にした。しかし、ダス氏によれば「MLOpsは基本的にAIOpsです」ということなので、2つの大きなカテゴリーに考え方をほぼ限定することができる。

とはいえ、AI(人工知能)とML(機械学習)は正確には同じものではない(ここであまり争うつもりはない、大まかな話なので)よって、2つの異なるタイプの仕事が、同じソフトウェアの中に収まるかどうかは興味深いところだ。

さらにAIについて

AIのテーマに沿って、今回はAI市場についてもう少し触れてみよう。Anna(アンナ)記者が、世界の人工知能投資の動向を論じた最近のエントリーを踏まえて、メモを用意した。彼女は、今日のAIファンドがどこに使われているのか、また「AI」という呼び名にふさわしいものの定義が変わることで、スタートアップ活動のための資金量がどのように増えていくのかについて考えている。

地理的な格差が私たちの注意を引いたが、AIの定義や応用が広がれば、資金はより均等に分配されると考えている。例えば第3四半期に新たにラテンアメリカのAIユニコーンに選ばれたのは、フードテックのNotCo(ノットコ)とデジタルIDを提供するUnico(ユニコ)の2社だった、またメキシコの融資会社Kueski(キュースキー)も大規模なラウンドを行った。私たちはこれをフィンテックと呼んでいたが、これもまたAIを活用したも企業だ。それがAIの新たな現実だとすれば、ラテンアメリカやアフリカなど、世界のあらゆる場所で、AIを活用して現実の問題に取り組むスタートアップに資金が集まるようになるのも不思議ではない。

来週はカナダにお住まいの方にはぜひ読んでいただきたいものがあるのだが、今回のAI記事の締めくくりとして前回のAI記事には少し遅れてしまったPoint72 VenturesのSri Chandrasekar(スリ・チャンドラセカール)氏からの回答をご紹介しよう。

AIに特化したスタートアップの経済性についての質問に答えて、投資家であるチャンドラセカール氏は以下のようなコメントを寄せてきた。

最近のAIへの関心のほとんどは、大規模なラウンドを調達している企業たちの収益の成長によってもたらされているのだと思います。しかし、その増収の背景にあるのは、商品の需要の高さと労働参加率の低さという極めてシンプルなものなのです。これは、Point72 Venturesのディープテック・ポートフォリオ全体に見られることです。AIは人間を補強して生産性を向上させ、場合によっては自動化に適した作業を人間に代わって行い、人間はより付加価値の高い戦略的な活動に専念できるようになります。これまでは、こうした自動化を導入するための労力が大きかったのですが、(人材不足によって)カスタマーサービスのリクエストに対応する人や受付を担当する人を雇うことができなくなると、自動化が俄然意味を持ち始めます。

最近私たちは、マクロ環境がスタートアップにどのような影響を与えるかについて、多くのことを学んでいる。インフレの進行でインシュアテックの利益が損なわれたり、「the Great Resignation(大退職時代)」が進んだりすることで、AIソフトウェアの需要が高まっているのだ。心に留めておきたい。

関連記事:暗号資産ゲームは短期的にどれだけの資金を吸収できるだろうか

その他のあれこれ

  • ユタ州を拠点とするPodium(ポディウム)の最近の巨額ラウンドを受けて、私たちは同州のより大きなスタートアップシーンを掘り下げたPitchBookの最新記事をご紹介する。ご想像の通り、数字は上向いている。
  • また、巨額ラウンドといえば、Faire(フェア)が今週、シリーズG調達を行った。だから?紹介したい興味深い成長の統計データがあったのだ。Faireは、自らの表現では「オンライン卸売市場」であり、かなり急速に成長しているビジネスだ。同社が「3倍」の収益成長と「年間10億ドル(約1141億円)以上のボリューム」を自己申告したことで、私たちの注目を集めた。もし非公開市場が、この会社をベンチャーキャピタルのフォアグラにしようと太らせているのでなければ、この会社はIPOの候補になるだろう。
  • さて他には?OKRスタートアップのKoan(コーアン)は、シリーズA調達に失敗した後、Gtmhub(ジーティーエムハブ)に売却されることになった。私たちは長年にわたってOKRソフトウェア市場について多くの記事を書いてきたので、この出来事を紹介しておきたいと思う(KoanのCEOは、公の場とメールの両方で、会社の終わりについてのメモを共有してくれたので、この件については、時間があれば来週お伝えすることになるかもしれない)。
  • そして、最後はBraze(ブレーズ)だ。ニューヨークを拠点とするソフトウェアのユニコーン企業であるBrazeは先週上場した。The Exchangeは上場日に同社のリーダーにインタビューを行った。すべてのIPO発表会と同様に、対象となる会社は、発言できること(あまり多くない)とできないこと(ほとんどすべて)に関して、かなり厳しい指導を受けていた。それでも、IPOの準備を始めたのは数年前で、実際に上場するためのプロセスを開始したのは約1年前であったという、準備プロセスについての情報を得ることができた。私たちは、2018年以降資金調達の必要がなかった同社が、なぜ直接上場を目指さなかったのかを知りたいと思った。BrazeのBill Magnuson(ビル・マグナソン)CEOは興味深い話をしてくれた。つまり最近の変化を踏まえれば、従来のやり方のIPOは一部の人々が考えているほど柔軟性に欠けるものではないというのだ。これから数週間、2021年の最後の公開を眺めながら、そのことを考える価値はあると思っている。なお、Brazeは、1株あたり65ドル(約7415円)で上場した後、現在は1株あたり94.16ドル(約1万700円)となっている。

画像クレジット:Nigel Sussman

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(文: Alex Wilhelm、翻訳:sako)

暗号資産ゲームは短期的にどれだけの資金を吸収できるだろうか

スタートアップとマーケットの週刊ニュースレター、The TechCrunch Exchangeへようこそ。

みなさんこんにちは!今回は、インシュアテック、SPAC、そしてダイレクトリスティングがIPOの価格問題をどれだけ解決できるかについてお話ししたい。だがその前に暗号資産について取り上げる。

先週の暗号資産周辺はにぎやかだった。Coinbase(コインベース)の業績報告からは、第3四半期の資産クラスの取引活動がいかに忙しかったかを知ることができた。Robinhoodの業績報告を思い出せば、Coinbaseが開示したものは驚きではないだろう。米国の株式投資プラットフォームの暗号資産収益が大幅に減少したために、Coinbaseも第2四半期と比較して、取引量と収益の両者が減少した。

これに関連して、暗号資産取引所FTXの米国事業所が自社のパフォーマンスデータの一部を公開した。これによると、2021年9月までの3カ月間は全体的に減少傾向にあるものの、暗号資産取引市場はまだ成長可能であることが示されている。

つまり、暗号市場は急速に進化(脱皮?)し続けているのだ。大規模ブロックチェーンと中小規模のコインのアクティビティは、四半期ごとに大きく変動する可能性がある。Coinbaseのような企業にとっては、これは収益や利益の変動を意味している。

しかし、Coinbaseは現金を豊富に持っているため、暗号活動の長期的な動きがポジティブなものである限り、短期的な浮き沈みはそれほど大きな問題ではない。

長期的な上昇トレンドに賭けるもう1つの企業集団は、暗号資産ゲーム会社たちだ。彼らはここ数カ月、非常に忙しい日々を送っている。例えば、Patron(パトロン)は暗号資産ベースのゲームに投資するために9000万ドル(約102億5000万円)のファンドを組成し、Mythical Games(ミシカル・ゲームズ)は暗号資産ゲームを開発するために2021年の夏に7500万ドル(約85億4000万円)を調達、トレーディングゲームのParallelは評価額5億ドル(約569億3000万円)で調達を行い、Axie Infinity(アクシ・インフィニティは)2021年の年頭に資金調達を行っている

また先週、Forte(フォルテ)は、暗号資産ゲームのインフラのために7億2500万ドル(約825億4000万円)を調達した。このことから、私はブロックチェーンゲームが短期的にどれだけの資本を吸収できるのだろうかと考えている。これまでのところ、少なくとも伝統的なベンチャーキャピタルの考え方の中では、ゲームはベンチャーキャピタルの投資対象としては不適切であることが証明されてきた。それはなぜか?というのも、ゲームはどちらかというとヒットに左右される商品であり、発売後に好調でも収益が減少していくタイトルもあるからだ。

投資家は、予測可能で成長性のある強力な収入を求めている。そして投資家は、収益の不均一性や不確実性を嫌うものなのだ。新規タイトルは、失敗する可能性があるという不安要素を持っている。

それなのに、暗号資産に群がり、ゲーム企業がもてはやされているとは?ベンチャーの投資対象としての魅力を失わせていたゲーム会社の経済的・社会的リスクが、ブロックチェーンをバックボーンとして構築されることで改善されるというのだろうか?それがなぜそうなるのかを私は理解できない。しかし、投資家たちはあたかもそれが起きるとばかりに資金を投入している。さまざまな賭けがどのような損得に落ち着くのかを見ていきたいと思う。

インシュアテック、SPAC、そしてデータ

現在は決算期を迎えている最中だ。メジャーな企業はもちろんのこと、中小企業も多くの時間とエネルギーを費やしている。先週のいくつかの決算報告会から、以下のようなことがわかった。

インシュアテックは難しい:Metromile(メトロマイル)がLemonade(レモネード)に身売りしたというニュースの直後では、公開インシュアテック企業の運命に疑いが生じても仕方がない。とはいえ、先週発表されたRoot(ルート)の決算では、この自動車に特化した保険会社の業績が投資家に評価されて、株価が大きく上昇しや。

しかし、Rootにとっては、ライバルが新しい落ち着き先を見つけたからといって、すべてが順風満帆というわけではない。先週、RootのCEOであるAlex Timm(アレックス・ティム)氏にインタビューした結果、私たちは保険分野での成長のタイミングがいかに複雑であるかを知った。

現在、多くの自動車保険会社が直面している補償価格の設定に関する市場の不確実性(つまりRoot自身の問題ではない)を考慮し、Rootは短期的な成長目標を引き下げたとCEOは説明している。車両や人件費などのインフレ圧力により、保険料の決定が難しくなっており、市場の各プレイヤーが新規契約の獲得に慎重になっていることがわかった。

これは、Rootが長期的に問題を抱えていることを意味するものではないが、マクロ的な状況が、どのように技術や技術を応用したビジネスにとって厳しい状況をもたらしているかを示している。Rootは、データとスマートなソフトウェアが、時間とともに保険の価格を改善していくことに賭けている。しかし、上場直後の同社は、事実上前例のないビジネスの根本的な経済的変化に遭遇していると、ティム氏はいう。Metromileが上場後すぐに諦めて事業を売却したのは、このような複雑な事情があったからかもしれない。

SPACはおそらく大丈夫:先週、NextDoor(ネクストドア)が公開会社として取引を開始した(オリジナルのメモはこちら)。私たちは取引初日にCEOのSarah Friar(サラ・フライア)氏にインタビューを行い、彼女が選択した上場方法について話を聞いた。

彼女によれば、NextDoorは2020年後半に製品計画の一部を止めなくてはならなくなり、これによってより多くの資金を調達する必要性が生じたのだという。また、NextDoorは上場準備が整っており、SPACパートナーを通じて事前に決められた価格でまとまった資金を調達することができたため、この取引は彼女の会社にとって意味のあるものとなった。

これはある意味標準的な視点であり、SPACが2021年初頭に流行した理由を詳しく説明してくれるものだ。しかし、その後の状況は変わり、多くのSPAC主導の組み合わせでは、買収対象を発表して取引を完了させた後に、一部の支援者が資本を引き上げることも起きている。

NextDoorは、そうした資金引き上げ問題が必然的なものではないことを示した。最初のリリースでは、SPACパートナーが4億1600万ドル(約473億2000万円)の現金を事業に注入するとしていたが、最終的な集計では4億400万ドル(約460億円)となった。これは、失われた資本比率としては超低水準だ。そして、NextDoorの株価は、SPAC以降順調に推移している。このように、SPAC主導のデビューでも、場合によってはうまくいくこともあるようだ。

ダイレクトリスティングは価格の万能薬ではない:Amplitude(アンプリチュード)は、最近ダイレクトリスティング(直接上場)を行い、先週上場企業になって初めての収益を報告した。上場以来、同社の取引は好調で、今週の終値は1株当たり73.86ドル(約8409円)と、基準価格の35ドル(約3985円)を大きく上回っている。

Yahoo Finance(ヤフー・ファイナンス)によれば、同社の現在の価値は80億ドル(約9108億円)強だ。同社が不本意な価格付けを避けるために伝統的なIPOではなくダイレクトリスティングを選択したことに対して、私たちは、同社がダイレクトリスティングに先だって2021年初めの調達時の評価額が約40億ドル(約4554億円)だったことに苛立っていたのではないかと気になっていた。結局、彼らは価格の問題を避けるためにダイレクトリスティングを行い、Roblox(ロボロックス)が行ったように事前に個人投資家から資金を調達したのだ。

AmplitudeのCEOであるSpenser Skates(スペンサー・スケイツ)氏は、従来のIPOでは価格の歪みがさらに大きくなっていただろうと語り、ダイレクトリスティングに手応えを感じていると述べた。それに対して、私たちは「おそらくそうでしょうね」と答えるだけだ。しかし、非公開市場の投資家が自分の資金を一気に倍にしてしまう様子は、結局別の金持ちが儲けをさらっていくだけの間違った値付けのIPOが生み出す「儲け損ない」と似たものにみえる。

それではまた!

画像クレジット:Nigel Sussman

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(文:Alex Wilhelm、翻訳:sako)

あるスタートアップが消費者向けトレーディングのブームを変える

スタートアップとマーケットの週刊ニュースレター「The TechCrunch Exchange」へようこそ。

みなさん、お元気でお過ごしだろうか。今回は取り上げる話題が山のようにある。消費者向けフィンテック市場における魅力的なスタートアップのラウンドに関するメモ、AppianのCEOであるMatt Calkins(マット・カルキンス)氏と決算説明会に行ったインタビューによるローコードの世界に関するメモ、そしてIPOたち、Kidas(キダス)のベンチャーキャピタルラウンド、ビルの「公開」、NFTなどをすばやく紹介していく。では始めよう!

あるスタートアップが消費者向けトレーディングのブームを変える

Robinhood(ロビンフッド)は、投資やトレーディングに対する消費者の関心の波に乗り、株式を公開するまでに至った。最近では、いくつかの失敗があったものの、同社は株式の購入だけでなく、より魅惑的なオプション取引に対する市場の関心の高さも証明している。

今回話題にしたいのは後者だ。シカゴにゆかりのある分散型スタートアップOptions AI(オプションズAI)が、410万ドル(約4億6000万円)のシードラウンドを実施した。私はこの会社の創業メンバーを知っていたので、会社についでも以前から知っていたものの、これまであまり書く機会がなかった。

だがAkuna Capital、Miami International Holdings、Optiver Principal Strategic Investmentsの3社のリードインベスターなどから資金を調達したいま、取り上げる時期にきたといえるだろう。

基本的にオプションは複雑であり、トレーディングに臨む多くの人々は、手をつけようとする時に。良い選択をするためのツールや洗練された技術を持ち合わせていない。私の意見を疑うなら、トレーディングをやっている友人にオプション戦略について聞いてみると良いだろう。きっと複雑さが理解できるやりとりになる筈だ。

Options AIは、トレーダーが執行する前に対象のトレードをよく確認して、マルチレッグオプションなどを扱う際により良い選択ができるようなツールを開発した。これは非常に優れたツールで、以前からオプション取引の仕組みや価格付けについて漠然としか理解していなかった私にとっては、しっかり理解を深めるのに役立った。

しかし、Options AIが私の興味を引いた理由は、チャートが優れているということだけではない。もう1つの理由は、トレードに課金することだ。このスタートアップは、トレードコストを一律5ドル(約567円)としているため、Robinhood(ロビンフッド)やWebull(ウィブル)などが近年追求してきた無料トレーディングの流れに逆らって泳いでいることになる。

現在、Options AIは株式オプションを扱っているが、The Exchangeには、そのうち暗号資産や先物オプションを追加するかもしれないと語っている。同社は現在の状況を、これまで開発しテストしてきた場所から頭を出した状態だと述べ、初期の人気とユーザーデータから何かを掴んだと考えている。もちろん、新しい投資家たちもそう思っているだろう。

さらに話を進める前に、オプションに関するデータを。大手消費者向けトレーディングプラットフォームが、なぜオプション取引に興味を持つのだろうか?なぜなら、めちゃくちゃ儲かるからだ。例えばオプショントレーディングのおかげで、Robinhoodは2021年第3四半期に6400万ドル(72億6000万円)の収益をあげた。一方株式トレーディングの収益は5000万ドル(56億7000万円)だった。これはビッグビジネスなのだ。

また、一律手数料とPFOF(ペイメント・フォー・オーダーフロー)の収入があることで、Option AIは十分な数の人々を集めることさえできれば、かなり魅力的な市場ポジションを得ることができる。スタートアップのターゲットユーザーは誰だろう?トレードを始めてはみたものの、もう少し専門的なツールが欲しいという人に向いていると思う。そしてRobinhoodの数字は、そのようなユーザーが相当数存在する可能性を示している。

Option AIのトレーディングの成長データを得たときに続報をお知らせする。

SaaSの価格設定を揺るがす

これまでTechCrunchは、SaaSの価格設定の議論を、サブスクリプションとオンデマンドまたは使用量ベースの価格設定レンズを通して検討してきた。現在、多くのスタートアップ企業が、(オンデマンドの価格設定がより理にかなった)APIとして誕生しているため、このレンズは市場の進化を見る上で良い視点になっている。また、市場にはSaaS疲れも見られる。

そんな中、Appian(アピアン)は少し変わったことをしている。先週、同社のCEOであるMatt Calkins(マット・カルキンス)氏を決算説明会の後でつかまえて、ローコード市場、プロセスオートメーション、プロセスマイニングについての話を中心に聞いてみた。Appianは、顧客が自動化すべき点をプロセスから抽出し、必要に応じて設計や自動化を行うことができるソフトウェアセットを提供している企業だが、私たちはその内容はもちろん、価格についても話し合った。

Appianは、利用無制限の価格設定を用意している。これは、使用量に上限のないSaaSのようなものだ。SaaSはアカウントやアプリケーションごとに価格が設定されることが多いのだが、カルキンスらはSaaSとオンデマンドの良いところをミックスしたような試みをしている。もっと簡単に言えば、1年分のサービスを定額制にして利用制限を設けないことで、顧客にAppianのサービスをたくさん使ってもらい、そのプラットフォームにどっぷりとハマってもらおうとしているのだ。

カルキンス氏は、公開企業のCEOとしては不自然なほど「無制限プランは、一部のお客様にとって非常にお得なプランになるかもしれません」と明言した。カルキンス氏は、価格設定に「イノベーション」を起こしたいと口にする。彼は、利用無制限の価格設定モデルを提供することで、顧客がAppianの技術を使って多くのものを作り、他の価格設定メカニズムで支払うよりも少ない金額で済ませる可能性があるものの、それは顧客にAppianの技術を全面的に使ってもらうためのコストに過ぎないと強調した。

上手く行けば、Appianは利益率の高い高収益を生み出すことができる長期顧客を持つことになるだろう。悪い取引ではない。

IPOまとめ

  • HashiCorp(ハシコープ)が上場を申請したので、その数字を調べてみた。結果はこちらで
  • 消費者直販のAllBirds(オールバーズ)は、IPOの価格を予定レンジよりも高く設定し、取引開始時にはさらにポイントを上昇させた。価格情報はこちら、財務情報はこちら
  • NerdWallet(ナードウォレット)は、IPOの価格を中程度に設定したが、その後高値で取引された。その後、少しずつ価格は下がったが、それでも見事なデビューを果たしている。金融関連の報道はこちらこちら。(そして、元TechCrunchのFelicia Shivakumar[フェリシア・シバクマール]氏にもエールを送りたい。彼女はかつて、私がTCのためのビデオショーを立ち上げる際に手伝ってくれた。非常に優れた人間であると同時に、現在はNerdWalletで働いている!)。
  • Nubank(ヌーバンク)が株式公開を申請したことで、その経営の数字の一端が明らかになった
  • Bird(バード)のSPAC取引が完了したが、初日は ベストではなかった
  • そして最後に、Backblaze(バックブレイズ)は自社のIPOに向けて最初の価格設定を行った。これは、同社の手堅い収益規模を考えると魅力的なことだと思う。

その他のこと

  • 先週私の目に飛び込んできたKidas(キダス)は、親と協力して子どもたちがオンラインゲーム環境で安全に過ごせるようサポートするスタートアップだ。これまでの控えめな資金調達に加えて、今回200万ドル(約2億2700万円円)を調達した。同社はThe Exchangeに対して「親御さんにとっては、他の方法では得られない新しい情報が得られ、それによって好きなものを介してお子さんたちとより良い関係を築くことができます」と語っている。
  • 私は権力者が配下の者のデジタル活動の制約を強めるようなことは、決して良いことだとは思わない。しかし、ゲームの世界ではコミュニケーション手段が急速に多様化しているため、保護者は何らかの監視を必要とするだろう。
  • 注目すべきは、そのツールがゲームプレイを妨げないことだ、つまりアンチチートソフトウェアを反応させないということである。これは本当に本当に重要なことだ。
  • 会社の詳細はまた別の機会に紹介するが、本拠地はフィラデルフィアで、私はそこに惹かれた。
  • ビルが「公開」された:私たちのIPOのセクションとは関係しないが、私が動向を薄くトラッキングしているLEX Capital Markets(レックス・キャピタル・マーケット)というスタートアップが、1つのビルを債権化して公開した。この会社は、実にすてきなモデルを提供している。覗いてみる価値があるだろう。
  • そして最後に、最近のNFT(非代替性トークン)報告の延長だが、、Mythical(ミシカル)がNFTを取り入れたゲームのために1億5000万ドル(約170億円)を調達したところだ。NFTの風はそこに向かっているのかもしれない。

画像クレジット:Nigel Sussman

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(文:Alex Wilhelm、翻訳:sako)

グローバル化するスタートアップ市場にVCはどのように対応しているのか

スタートアップとマーケットの週刊ニュースレター「The TechCrunch Exchange」へようこそ。

親愛なるみなさんおはよう。良い週末をお過ごしだっただろうか。これからの数日間は、医者が眉をひそめるくらいの糖分を摂取するというのはどうだろう。結局、人間は最後には死ぬわけだし。そんな勢いをつけながら、さっそく仕事に取り掛かろう!

TechCrunchでは、ベンチャーキャピタルの動向を定期的に取り上げているが、スタートアップ市場があらゆる地域に拡大していることをうけて、VCもますますグローバルになる傾向がある。そのため、インドのスタートアップシーンの報告を強化するとともに、ご存知のようにアフリカ大陸で生まれるスタートアップにも注目しているのだ。

多くのスタートアップ企業が多額の資金調達を行っているため、すべてを把握するのは困難だ。しかし、グローバルな新しい現実への対応を続ける、新進のテクノロジー企業に注目しているのは、私たちだけではない。ベンチャーキャピタリストも同様だ。

近年のテクノロジーイノベーションのフラットな世界に合わせて、VCがオペレーションを変えていくのを目にするようになった。例えばより多くのパートナーを持つ大規模なファンドを設立して焦点を分散させたり、国や地域に特化したファンドを設立したりすることなどが挙げられる。

White Star(ホワイト・スター)は、そのような企業の1つで、ますます幅広い分野に焦点を当てている。最近このベンチャーグループは、3億6000万ドル(約410億4000万円)規模の3つめのファンドをクローズしたばかりだが、TechCrunchは数日前に創業者のEric Martineau-Fortin(エリック・マルティノー=フォルティン)氏にインタビューを行った。だがその話題の中心は、評価額や業界の話ではなく、ほとんどが地理的な話に終始した。

マルティノー=フォルティン氏が住むのはフランスとイギリスのほぼ中間に位置する小さな島、ガーンジー島だ。彼の最初のファンドが、アメリカとヨーロッパに焦点を当て、ほぼ半分ずつ投資を分けていたため、そうした中間的な場所に居を構えていることは都合が良かったのだ。

White Starの2つめのファンドは、地理的な範囲を広げて、アジアにも適度に焦点を当てたものだった。そしてグループの3つめのファンドは、アメリカ、ヨーロッパ、アジアがほぼ40/40/20の割合で構成されているとマルティノー=フォルティン氏は語る。

特筆すべきは、同グループがインド市場を積極的に開拓していないことだ。インドにどれだけの資本が流入しているのかを考えると、これは際立った特徴だ。しかし、White Starは、韓国と日本の市場に重点を置いているため、インドをリストの上位に入れなくともアジアに広く投資することが可能だ。

マルティノー=フォルティン氏と、他の市場についても意見を交わした。彼は、ブラジルのスタートアップシーン(Nubank[ヌーバンク]のIPOが迫っていることを考えると驚きではない)やメキシコについて、肯定的な意見を述べた。もっと簡単に言えば、中南米のベンチャーキャピタル市場は、その地に現在焦点を当てていない投資家からも関心を持たれているということだ。

世界のベンチャー市場は、若干のフラット化は見られるものの、依然として不均一な状態が続いている。CB Insights(CBインサイツ)のデータによると、2021年第3四半期には、米国では総額723億ドル(約8兆2400億円)のVC活動があった。一方アジア全体では502億ドル(約5兆7200億円)である。そしてヨーロッパは242億ドル(約2兆7600億円)、ラテンアメリカはわずか53億ドル(約6042億円)だった。つまり、新しいタイムゾーンを対象に加えようとする投資家は、先行者利益を得る可能性があるということだ。

今後は、米国、ヨーロッパ、アジアに3分の1ずつ分割して投資することも考えられる。そのうち、それが普通の分け方になるのだろうか。結局のところ、北朝鮮や中国などの一部の市場を除けば、インターネットはどこにでもあるのだから、場所を問わずいろいろな企業に資本を投入してみてはどうだろうか?

消費者投資の未来

ここからは、大きく舵を切って、英国の消費者投資について話をしよう。上手くまとめるつもりだ。

先週The ExchangeはFreetrade(フレートレード)を取材したが、Robinhoodの低調な業績報告を受けての電話だったので、それは幸先のよいタイミングだった。思い起こせば、Robinhoodの株価は、同社が前四半期比で大幅な減収を発表した後、アクティブユーザー数が減少し、投資アカウントの合計数が減少したことで下落した。

2021年第2四半期から2021年第3四半期にかけてRobinhoodに何が起こったのかを簡単に説明すると、同社のプラットフォームでの暗号取引がつまずいてしまい、精彩を欠いた収益となった。第4四半期は、第3四半期よりもさらに縮小することが予想されている。残念な話だ。

私は、Freetradeが自身のユーザーベースから期待できるものを、Robinhoodの結果が示してくれることを期待していた。しかし、FreetradeのAdam Dodds(アダム・ドッズ)CEOによれば、そのようなことは一切ないとの話だった。実際、同社は先日、ユーザー数が100万人に達したことを発表したが、それ以上に重要なのは、10月に入ってからこれまでに11万件の新規出資アカウントを確保したことだ。1カ月で同社の総ユーザー数が大きく増えることになった。

そうした決して不調とはいえない事実を前にして、ドッズ氏はFreetradeの中核市場であるイギリスでの開拓の余地がまだあると考えており、さらに数ヵ月後にはカナダ、オーストラリアなどへの事業拡大を計画している。併せて、そう、暗号資産の取引も。

取り上げるべきRobinhoodとFreetradeのもう1つの違いは、ユーザー数の伸びが異なることの他に、Freetradeはオーダーフローに対する支払いを行っていないことだ。その代わりに、同社はサブスクリプション、FX取引に対するわずかな手数料、そしてユーザーから預かっている現金が生み出す利子で収益を上げていると、ドッズ氏は説明する。

このサブスクリプションの要素は、会社の長期的な価値の鍵を握っていると私は考えている。それはなぜか?ソフトウェアからの定期収入は投資家にとって魅力的なものであり、ドッズ氏によれば、4分の1程度の顧客が有料版のサービスを選ぶという。

この比率がこのまま維持されるか、あるいは小幅な減少にとどまれば、Freetradeは巨大なソフトウェアビジネスを構築できるだろう。海外はもちろんのこと、国内でのさらなる普及を考えれば、この先も収益が生み出される筈だ。次にFreetradeが資金調達をするときにもっと詳しくお伝えする。

画像クレジット:Nigel Sussman

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(文:Alex Wilhelm、翻訳:sako)

NFTマーケットプレイスOpenSeaの苦悩、「真の友人は正面から君を刺す」

スタートアップとマーケットの週刊ニュースレター「The TechCrunch Exchange」へようこそ。

みなさんこんにちは!今日は気楽な話題なので、くつろぎながら読んで欲しい。

よく知られているオスカー・ワイルドの言葉に「真の友人は正面から君を刺す」というものがあるが、この言葉は覚えておくべき機知に富んだ真実だ。Coinbase(コインベース)がNFTに参入するという最近の決定について、ここ1、2週間あれこれと考えているうちにこの言葉が浮かんできた。

関連記事:CoinbaseがNFT市場参入を発表、OpenSeaに対抗するマーケットプレイスを準備中

いくつかの事実を知れば、ワイルドの言葉がなぜ今の状況に合っているのかがわかるだろう。

  • a16z(アンドリーセン・ホロウィッツ)の共同創業者であるMarc Andreessen(マーク・アンドリーセン)氏は、上場前から支援してきたCoinbase(コインベース)の役員を務めている
  • 一方a16zはOpenSeaのシリーズAを主導した。これは2300万ドル(約26億円)規模で、NFT市場に多額の資金と信用をもたらした
  • Coinbase VenturesもOpeanSeaに投資しているが、これは同VCが行ってきた数多くの投資の1つだ
  • そしていま、CoinbaseがNFTに参入することを発表したことで、ウェイティングリストに大量の登録者が集まった

暗号資産ウォッチンググループのDappRadar(ダップレーダー)によれば、現在OpenSeaは最大のNFTマーケットプレイスだ。もし競合するソリューションに興味を示したユーザーたちが、著名な暗号資産投資プラットフォームであるCoinbaseで実際にNFTを売買するようになれば、CoinbaseはOpenSeaを圧倒するかもしれない。

そうなると、OpenSeaは困った立場になるだろう。

VCが上場後も企業の取締役に留まるのは、彼らがそうすることを選択し、そして投資先企業が彼らを引き留めるのであれば問題はない。公開された企業のボードメンバーになることを習慣にしているVCもある。例えばMarc Andreessen(マーク・アンドリーセン)氏は、Facebookの取締役会に参加しているが、Facebookはアンドリーセン氏についての説明の中で、彼が以前にeBayやHPで取締役を務めていたことを紹介している。やるもんだ。

しかし、ある投資家が上場後も投資先企業の役員に留まりながら、同じ投資家の会社のポートフォリオ企業と直接対抗することを決めたとすると、少し厄介なことになる。その投資家がまだ働いているところ。仮に私がOpenSeaの立場だったとすると、アンドリーセン氏がCoinbaseのボードにいて同時に彼のベンチャーファーム(a16z)が私(OpenSea)の投資者に名を連ねているときに、Coinbaseが私の市場を攻撃することを決めたとしたら、私は腹を立てるだろう。

「真の友人は正面から刺す」ものなのか?

また、Facebookによる最近の暗号資産の推進は、ご存知の通りCoinbaseとの提携であることも思い出そう!

関連記事:フェイスブックが暗号資産ウォレット「Novi」の試験運用を米国とグアテマラで開始

また最近、Facebookのボードメンバーが関わる皮肉な事態は他にもみられた。例えばPeter Thiel(ピーター・ティール)氏はFacebookの役員だ。そして彼は同時に、政治家を目指すJ.D. Vance(J.D.バンス)氏も支援している。ここで注目すべきは、J.D.バンス氏が選挙に出馬しながらFacebookを攻撃している点だ。個人的には大企業が中小企業を沈めようとしているのを見るのは好きではないので、OpenSeaの事態を眺めているのは少々不愉快だが、Facebookの資金が循環してFacebookの尻に噛みついているのを見るのは、その過程で稚魚たちが被害を受けていないこともあって滑稽だ。

とはいうものの、もう少し取締役会の席を他者に譲ったほうが良いのではないだろうか。そうでなければ、a16zは自分たちが支援している創業者たちを貶めるような活動を続けることなってしまうだろう。

Volvoその他のIPO

今週は時間を見つけてVolvo(ボルボ)の公開について調べようと思っていたが、それはかなわなかった。ここで会社自身によるノートを見ることができる。Volvoから分離したPolestar(ポールスター)は、SPACを使って株式を公開している。

そして先週の終わりに、Braze(ブレイズ)は株式公開を申請した。この会社とそのS-1については、米国時間の月曜日の朝一番に詳しくお伝えする。

今後も、(冗談抜きで)最高の企業ギフトプラットフォームを構築しようと競い合う熾烈なスタートアップレースの様子などを紹介していく。

関連記事:ボルボの高級EVブランドPolestarが約2兆2200億円の評価額でSPAC上場へ

画像クレジット:Nigel Sussman

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(文:Alex Wilhelm、翻訳:sako)