無償で働くオープンソース開発者たちは自分の「力」に気づき始めている

ほとんどの人は意識していないと思うが、日常的に使用しているデバイスやアプリの多くはオープンソースソフトウェア上に構築されており、1人か2人の開発者によって維持管理されている。開発者は自分の時間のためにお金を支払われておらず、コミュニティや情熱的なプロジェクトに還元するべく、バグを修正したりコードを改善したりしている。

例えば「cURL」は、APIなどの別のシステムのデータにソフトウェアが簡単にアクセスできるようにするオープンソースライブラリである。このライブラリは、iPhoneから自動車、スマート冷蔵庫、テレビに至るまで、ほぼすべての現代的なコネクテッドデバイスで使用されているが、基本的には1人の開発者、Daniel Steinberg(ダニエル・ステンバーグ)氏が30年近く無料で維持管理している。

多くのオープンソースプロジェクトが営利目的のソフトウェアやデバイスに含まれており、一般的に、純粋な謝意を別にすれば報酬がともわないにもかかわらず、このシステムはほぼ確実に機能している。一部のオープンソース開発者は、GitHub SponsorsBuy Me A Coffeeなどのプログラム、企業とのメンテナンス契約、あるいは自分のライブラリの維持費を支払ってくれる企業で仕事をすることで、自分の仕事を首尾よくサポートすることができるが、これは標準とは程遠い。

広範なセキュリティ侵害が発生したとき、このシステムの不公平性がしばしば表面化する。2021年12月にJavaライブラリ「Log4j」に出現したLog4Shellの脆弱性は、世界中で重大なセキュリティ脆弱性の問題を引き起こしており、一部の大企業にも影響が及んでいる。

影響を受けたライブラリの開発者たちは、問題を緩和するために24時間体制で作業することを余儀なくされたが、対価は支払われず、そもそも彼らの開発品は無料で使用されていたのだということへの認識も乏しいものであった。cURLの開発者も同じような扱いを経験している。同氏のプロジェクトに依存している企業が、コードに問題が発生した際、そのサービスに対価を支払っていないにもかかわらず、同氏に支援を求めてきたのである。

したがって、当然のことながら、自らの仕事に対する報酬がない中で自分たちが過大な力を行使していることを、一部のオープンソース開発者たちは自覚し始めている。彼らのプロジェクトは、世界最大規模の収益性の高い企業に利用されているのである。

その一例として、人気のnpmパッケージ「colors」と「faker」の開発者であるMarak Squires(マラク・スクワイアーズ)氏は、2022年1月初旬、これらのコードに意図的に変更を加え、ユーザーすべてに影響する破壊的展開を誘発した。使用時に「LIBERTY LIBERTY LIBERTY」というテキストに続いて意味不明な文字や記号を出力し、無限ループが発生するというものであった。

スクワイアーズ氏はこの変更を行った理由についてコメントしていないが、同氏は以前GitHubで「私はもうFortune 500企業(およびその他の小規模企業)を無償の仕事でサポートするつもりはありません」と発言していた。

スクワイアーズ氏が加えた変更は、Amazon(アマゾン)のCloud Development Kit(クラウド開発キット)を含む他の人気プロジェクトを破壊した。同氏のライブラリは週に2000万近くnpmにインストールされており、何千ものプロジェクトが直接的に依存している。npmは数時間以内に不正なリリースをロールバックし、GitHubはそれに応じてこの開発者のアカウントを一時停止した。

npmの対応は、過去にもライブラリに悪意のあるコードが追加され、最終的にはロールバックされて被害を抑えた事例があり、予想されるものであった。一方で、GitHubはこれまでにない反応を示した。同コードホスティングプラットフォームは、スクワイアーズ氏がコードの所有者であり、意のままに変更する権利を持っていたにもかかわらず、同氏のアカウント全体を停止したのである。

開発者が抗議のために自身のコードを取り下げる形をとったのも、これが初めてではない。2016年に「left-pad」の開発者は、自身が所有する別のオープンソースプロジェクトの命名をめぐってKik Messenger(キック・メッセンジャー)と争った後、npmから自分のコードを取り下げ、依存していた何万ものウェブサイトを破壊した。

驚くべきことに、著名なライブラリが時折業界のやり方に抗議してはいるが、この種の事象はそれほど一般的なものではない。オープンソース開発者たちは、自分たちの仕事の裏で数百万ドル(数億円)のプロダクトが作られているにもかかわらず、無償で働き続け、自らのプロジェクトの維持管理に最善を尽くしている。

ホワイトハウスでさえテクノロジー業界に対するオープンソースの重要性を認めている。Log4Jの一連の出来事を受けて2022年1月に業界と会合を持ち、次のように言及している。「オープンソースソフトウェアは独自の価値をもたらすものであり、同時に独自のセキュリティ上の課題を抱えている。その背景には、利用範囲の広さと、継続的なセキュリティの維持管理に責任を負う多数のボランティアの存在がある」。

しかし、こうした声明が出ている一方で、大規模な人気を誇るオープンソースソフトウェアでも、少なくとも世間の注目を集めるまでは、厳しい資金不足に陥っている。Heartbleedの脆弱性がインターネット全体を危険にさらす前、影響を受けたオープンソースプロジェクト「OpenSSL」への寄付は年間2000ドル(約23万円)程度であったが、問題が発覚した後には9000ドル(約102万円)に増加した。

現代的なネットワーク機器のほぼすべてで使われているOpenSSLの開発チームは当時、書面で次のように述べていた。「OpenSSLのケアと供給に専念できるフルタイムのチームメンバーは、1人ではなく、少なくとも6人は必要です」。プロジェクトチームはその代わりに、プロジェクトの維持費をカバーする契約作業を継続的に確保している。

開発者が自身のオープンソースライセンスを変更したり、自分の仕事をプロダクトに変えたり、スポンサーを増やす努力をすることはできるにしても、すべてのプロジェクトに万能のソリューションはない。この無償の仕事のすべてに資金を提供するより良い方法を業界が見出すまでは(誰もそんなことは考えていないようであるが)、より多くのオープンソース開発者が、意図的に自分たちの仕事を中断する形で不服従行動を起こすことで、自らが貢献しているものに光を当てる他ないのが現状である。

これは長い目で見れば持続可能なものではない。しかし、この混乱からどうやって抜け出すのかは不透明である。今日生み出されているあらゆるソフトウェアやコネクテッドデバイスでオープンソースの採用が急増しているが、何人かのオープンソース開発者が陰鬱な日を甘受するのではなく、すべてを破壊しようと決断することに、その行方が委ねられている。

何百万ものデバイスで使用されているcURLのようなライブラリが、洗濯機から乗用車まであらゆるものに含まれているという状況であっても、作成者がそのサポートに疲れて世界にメッセージを送ることを決断したとしたら、どのようなことが起きるであろうか。過去においては被害が回復したことは幸運であったが、将来はそのような幸運にはつながらないかもしれない。

画像クレジット:aurielaki / Getty Images

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(文:Owen Williams、翻訳:Dragonfly)

2021年に急成長した中国のロボタクシー(専門用語と美辞麗句が溢れるリリースから実際のところを解析)

自動運転車を手がける中国のスタートアップは、自社の自律走行車両への乗客を獲得するため、軍拡競争を繰り広げている。数週間ごとに、また1つの大手企業が新しいパイロットプログラムや小規模サービスを開始するための認可を得たというニュースが届く。

これらのプレスリリースは、規制に関する専門用語や、企業の発展を誇示するための美辞麗句が多く、わかりにくい。そこで、中国の主要なロボタクシー事業者であるAutoX(オートX、裹動智駕)、Baidu(バイドゥ、百度)、Deeproute.ai(ディープルートAI、元戎啓行)、DiDi(ディディ、滴滴出行)、Momenta(モメンタ)、Pony.ai(ポニーAI、小馬智行)、WeRide(ウィーライド、文遠知行)の2021年の進捗状況をこの投稿にまとめ、それぞれの発表から実際にどのようなことがわかるのかを解析した。

中国では多くの大手企業が以前から有人車両(保安運転手が乗車する自動運転車)や無人車両の試験運行を行っているため、この投稿では、定期的に行なわれている一般向けサービスに焦点を当てる。これらの企業は、ロボタクシーに関わるコスト、安全性、規制を調整しながら、自動運転トラック、貨物運搬車、市バスなど、より早く規模を拡大できる分野にも乗り出している。とはいえ、やはり長期的にはロボタクシー分野に重点を置いていくことに変わりはない。

中国の自動運転区域について留意すべき点

本題に入る前に、中国の自動運転車事業に特有の状況をいくつか取り上げる。

  • 中国国内の道路事情は場所により大きく異なる可能性がある。例えば、深圳郊外の工業団地で自動運転車の試験走行を行う場合、都市部にある繁華街の蛇行する道路で行うよりも道路状況はずっと楽である。
  • 自動運転車に関する規制は、それぞれの省で異なる可能性に加え、同じ都市であっても地区によって異なる場合がある。ある都市において完全無人の自動運転走行試験を行う承認を得た企業が、必ずしも他の企業より技術的に進んでいるとは限らない。単に、連携する地元の規制当局が自動運転に対して進歩的な姿勢を有しているからだという場合もある。
  • スマート交通を成長戦略として掲げている地方行政もある。当然、自動運転車を手がけるスタートアップの支援にも熱心だ。国や都市レベルの規制が制定されるよりずっと前に、当局がその管轄区域内で無人運転の試験を行うことを非公式に承認する場合もある。
  • 行政支援は、税制優遇措置、有利な土地利用の機会や安価なオフィススペースの提供などの形で現れることもある。これが、中国の主要な自動運転車のスタートアップが、深圳、広州、上海、蘇州などの十分な資金力のある都市に集中している理由の1つだ。
  • 中国の地方行政は、自動運転のような新技術の開発に拍車をかけるため、たびたび実証区を設置する。こうした取り組みにより、企業は成熟産業を規制する通常の制約を受けることなく、試験を行うことができる。
  • 今日現在、中国のどの都市も無人ロボタクシーの許可を出していない。この許可が下りればサンフランシスコで Waymo(ウェイモ)やCruise(クルーズ)が行っているように、自動運転車が保安運転手なしで一般市民を輸送することが可能になる。

AutoX

深圳に本社を置き、カリフォルニアに研究開発センターを持つAutoXは、プリンストン大学の元教授、肖健雄氏により、2016年に設立された。出資者には、Alibaba(アリババ、阿里巴巴集团)、MediaTek(メディアテック、聯發科技)、中国国営自動車メーカーSAIC(サイク、上海汽車集団)などが名を連ねる。

深圳のAutoXのロボタクシー(画像クレジット:AutoX、2021年)

事業状況

2020年8月、AutoXは上海の嘉定区で、有人運転ロボタクシーの一般向けサービスを開始した。利用者はAlibabaのナビゲーションマップ「Amap(エーマップ、高徳地図)」を通じて配車予約ができる。AutoXによると、中国の大手配車サービスプラットフォームでロボタクシーのサービスが利用可能になったのはこれが「初めて」だという。

上海郊外の嘉定区には、上海汽車集団、Volkswagon(フォルクスワーゲン)、NIO(ニーオ、上海蔚来汽車)、トヨタ自動車、Baidu、DiDi、Delphi(デルファイ)といった大手自動車メーカーやOEMがオフィスを構えている。2020年の発表によると、AutoXは100台の「自動運転車」を市内の公道で走らせる契約を上海政府と結んだ。

2021年1月、AutoXは「スマートシティ」として生まれ変わりつつある深圳の工業地帯、坪山区で無人ロボタクシーのサービスを開始した。11月には、同社はこのプログラムが168平方キロメートルの坪山区全域をカバーしたと発表した。これはマンハッタンの約3倍の広さに相当する。

ちょうど1カ月前、AutoXは深圳の公道に25台の無人自動運転車を配備し「試験走行」を実施した。中国の自動車ニュースブログは、AutoXが地元の交通規制当局の許可を得ずにこれを進めたと報じている。一方、同社はTechCrunchに対し「政府の支援」を得たと語った。当時、我々は関連部門と連絡を取ることはできなかった。

AutoXによると、同社は合わせて「数百台」のロボタクシーを路上で走行させているという。

関連記事:自動運転ユニコーンAutoXが中国初のロボタクシーのテストを深センでスタート

米国での試験走行

2021年11月現在、AutoXはカリフォルニア州で無人および有人車両の試験走行を許可されている。

OEMパートナー

AutoXは、ホンダFiat Chrysler(フィアット・クライスラー)と共同で、中国でのロボタクシーの開発を進めている。

Baidu Apollo Go

「Apollo Go(アポロ・ゴー)」は、2000年に設立された北京のインターネット企業である検索エンジン大手Baiduの自動運転車プロジェクトである。Baiduは  2015年末、多くの競合するスタートアップが誕生したのとほぼ同時期に、自動運転車部門を始動させた。

Baidu「Apollo Go」のロボタクシーサービス(画像クレジット:Baidu、2021年)

事業状況

2021年11月、Apollo Goは北京の中国における「初の商用自動運転車実証区」で、有料でのロボタクシーサービスの提供が認められた。

Apollo Goにとって公道での「初の商用展開」となった67台の車両では、乗車した保安運転手が監視を行った。このサービスはApollo Goのアプリから配車が可能で、毎日午前7時から午後10時まで運行が実施された。

Apollo Goは、中国の「初の商用ロボタクシー実証区」に参加できたが、対価を目的とした乗車提供はBaiduのこのサービスが初めてではなかった(ネタバレ:以下のWeRide.aiの項を参照)。とはいえ、このイベントにはかなりの象徴的な重要性があった。60平方キロメートルに及ぶこの実証区は、亦荘郊外における国家レベルの経済プロジェクトである北京経済技術開発区の区域内に位置している。このイベントで、ロボタクシー事業者が乗客のデータを活用し、サービス価格を設定する方法について規定する規制の枠組みが導入されたのだ。首都におけるこのような動きは、中国全土のモデルとなる可能性がある。

亦荘が推進しているのは、ロボタクシーだけでない。「コネクテッドカー実証区」はその他のタイプの自動運転車にも対応している。2021年、JD.com(JDドットコム、京東商城)やMeituan(メイトゥアン、美団)を含む多くの大手テック企業が、実証区での無人配送用ミニバンの試験走行を開始した。

Apollo Goの無料版は、広州、長沙、滄州の一部地域で一般公開されており、現在は上海で早期テスターを募集している

米国での試験走行

2021年11月現在、Apollo Goはカリフォルニア州で無人および有人車両の試験走行を許可されている。

OEMパートナー

Apollo Goのロボタクシー車両は、国営メーカーFAW(第一汽車集団)のHongqi(ホンチー、紅旗)電気自動車(EV)スタートアップのWM Motor(WMモーター、威馬汽車)、国営メーカーGAC(広州汽車集団)のEVブランド「Aion(アイオン)」、国営メーカーBAIC(北京汽車集団)のEV新ブランド「ARCFOX(アークフォックス)」から提供されている。

Deeproute.ai

深圳に拠点を置くディープルートは、設立からわずか2年の企業としてはかなりの進展を遂げている。2019年、創業者の周光氏は、自動運転車ベンチャーのRoadstar.ai(ロードスター・エーアイ、星行科技)を会社の内紛により辞したのち、ディープルートを設立した。この若い起業家は、すぐに新しい試みへの支持を集めた。2021年9月、ディープルートはAlibabaや中国の自動車メーカーGeely(ジーリー、吉利汽車)などの出資者から、シリーズBラウンドで3億ドル(約340億円)もの資金を調達した

Deeprouteのロボタクシーサービス(画像クレジット:Deeproute.ai、2021年)

事業状況

7月、ディープルートは本社に近い深圳の繁華街、福田区の公道に、20台の有人ロボタクシーを配備した。同本社は香港、深圳両行政が設立した  技術協力区の区域内にある。

同社が4月に深圳の交通規制当局から許可を得て開始したロボタクシーサービスは、現在のところ無料で一般利用できる。TechCrunchに語ったところによると、将来的には有料化する予定だという。

2021年3月、中国国営メーカーの東風汽車集団と共同開発したディープルートのロボタクシーが、武漢で一般向けに無料乗車の提供を開始した。中国中部の都市武漢も、中国の自動運転車分野のパイオニアを目指す候補地の1つだ。

米国での試験走行

2021年11月現在、ディープルートはカリフォルニア州で有人自動運転車両の試験走行を許可されている。

OEMパートナー

ディープルートと東風汽車は、2022年までに200台以上のロボタクシーを配備することを予定している。

DiDi

配車サービス大手のDiDiは、2019年に自動運転車の子会社を設立し、新会社のために5億ドル(約570億円)を迅速に調達している(当時業界で唯一最大の資金調達ラウンドだった)。これにもかかわらず、ロボタクシー開発の動きは予想より静かだった。

DiDiが他の問題に気を取られていたとしても、無理はない。2021年、米国で上場した直後、同社は中国の規制当局から徹底的なデータ調査を受けている。この中国配車サービス大手は12月、ニューヨーク証券取引所から上場廃止となることを発表した

DiDiのロボタクシーサービス(画像クレジット:DiDi、2020年)

事業状況

DiDiのロボタクシーは、2020年6月に上海の一部地域で乗車サービスを開始した。同社は、2020年末までにロボタクシーサービスを北京と深圳に拡大し、2021年には中国国外にもこの事業を展開すると述べていたが、その進捗状況はいまだ更新されていない。同社はまた、2030年までに配車サービスプラットフォームを通じて100万台以上の「自動運転車」を運用するという野心的な目標も掲げている

米国での試験走行

2021年11月現在、DiDiはカリフォルニア州で有人自動運転車両の試験走行を許可されている。

OEMパートナー

2021年4月、DiDiはジーリー傘下のVolvo(ボルボ)から同社の海外向けロボタクシー車両の提供を受けると発表した

Momenta

レベル4の完全自動走行技術にのみ注力するロボタクシー事業者が多いなか、創業5年のMomentaは、自動車メーカー向けに先進運転支援システム(ADAS)の売り込みも行っている。このアプローチにより短期的な収入が得られる他、手頃なコストでアルゴリズムの学習用データを蓄積することができる。一方、同社が実際の無人運転技術に十分なリソースを投入しているかどうかについては、業界関係者から疑問の声が上がっている。

Momentaと上海汽車集団が共同開発したロボタクシー(画像クレジット:Deeproute.ai、2021年)

それでも、蘇州に拠点を置くMomentaは、中国で最も資金提供を受けている自動運転車のスタートアップの1つとなっている。General Motors(ゼネラルモーターズ)、Daimler(ダイムラー)、Bosch(ボッシュ)、トヨタ自動車、中国国営自動車メーカー上海汽車集団から、二―オの創業者ウィリアム・リー氏が監督するファンド、Nio Capital(二―オキャピタル)まで、名だたる出資者から合わせて12億ドル(約1370億円)を調達しているのだ。

同業他社の多くが、研究開発部隊の設置や試験走行を米国で行っている一方、Momentaは国際展開の拠点としてドイツを選んだ。2021年、同社は出資者であるダイムラーの本拠地、シュトゥットガルトにオフィスを開設した。

事業状況

2021年12月、Momentaと上海汽車集団は、上海の一部地域で無料のロボタクシーサービスを開始した。利用者は毎日午前8時から午後10時まで、上海汽車集団のアプリを通じて有人運転のロボタクシーを呼び出すことができる。このプログラムでは「20台の車両を用いて将来的な商用利用のための試験と検証を行っている」とMomentaは述べている。同プログラムは、今後数カ月のうちに蘇州と深圳で展開される予定だ。

Momentaは、上海に隣接する豊かな都市、蘇州の政府から多大な支援を得ている。国務院国有資産監督管理委員会(SASAC)蘇州支部と合弁事業を実施し、同市でのロボタクシー展開を「スケールアップ」させる。SASACは、100社あまりの大規模国有企業を監督する、中国の強力な政府機関である。

OEMパートナー

Momentaはロボタクシーの車両に関して上海汽車集団と協業している。両社は2022年までに中国全土に200台の車両を配備することを目標に掲げた

Pony.ai

Pony.aiは、中国で最も評判の高い自動運転車の専門家たちを輩出してきた、Baiduの自動運転車部門のベテラン2人により、2016年に設立された。広州とカリフォルニアにオフィスを構える同社は、トヨタ自動車の支援を受け、これまでに10億ドル(約1140億円)以上を調達している。

PonyのLexusのロボタクシー(画像クレジット:Pony.ai、2021年)

事業状況

Baiduと同様に、Pony.aiも2021年11月、北京のスマートカー実証区で有料のロボタクシーサービス事業を実施するための承認を得た。「PonyPilot+」と呼ばれるこのサービスは、これまで同エリア内で無料の乗車サービスを行っていた。

「PonyPilot+」は、2021年7月、上海の自動車産業の中心地である嘉定区で始動した。6月には、広州で既存のロボタクシーに加え、完全無人の自動運転車を配備している

米国での試験走行

11月、カリフォルニア州車両管理局は、フリーモントで起きた衝突事故の報告を受け、無人自動運転の試験許可を一時停止にするとPony.aiに通知した。Pony.aiが規制当局から許可を得てから6カ月後の決定だった。カリフォルニア州での同社の有人自動運転の試験許可には影響がなかった。

OEMパートナー

トヨタ自動車の「Lexus(レクサス)」、Hyundai(ヒュンダイ)の他、中国のBYD(ビーワイディー、比亚迪汽车)や「アイオン」など、複数のメーカーの車両をPony.aiのロボタクシーとして利用している。

WeRide.ai

WeRide.aiとPony.aiは多くのルーツを共有している。どちらも広州とカリフォルニアに拠点があり、創業者はBaiduの自動運転車チーム出身者だ。WeRide.aiは2017年に設立され、2021年だけで6億ドル(約686億円)以上を調達した。国営メーカーの広州汽車集団やルノー・日産・三菱アライアンスなどが出資者に名を連ねる。

東風汽車が提供するWeRideのロボタクシー(画像クレジット:WeRide、2021年)

東風汽車が提供するWeRideのロボタクシー/写真:WeRide2021年)

事業状況

2019年11月、WeRide.aiの有人運転ロボタクシーは、広州の144平方キロメートルのエリアで一般乗車を開始した。このサービスは、中国南部で最大のタクシー会社である国営の白雲タクシー会社(白雲出租汽車公司)と連携して実施している。

北京でのBaiduやポニーの有料サービスに先駆けて、WeRide.aiはサービス開始当初から、広州のタクシー料金に相当する金額を乗車料として受け取ってきた。

これは、競合同士が自社プログラムに中国で「初」という称号を得るため躍起になるという、よくある状況の例だ。このような主張そのものは有効だが、よく見極める必要がある。ある業界関係者によると「北京の方が政策を先導する上での影響力はある」が、企業にとっては有料ロボタクシーサービスを実施する場所が北京であろうと広州であろうと、その差は「それほど大きくない」という。

「北京でも広州でも、その都市が友好的な政策をとっていれば、それは良いニュースです。つまりは、ロボタクシー企業は実運用のための試験ができればいいのです」と、同関係者は語った。

WeRide.aiは、武漢でも有人運転のロボタクシーサービスを実施している。

米国での試験走行

2021年11月現在、WeRide.aiはカリフォルニア州で無人および有人車両の試験走行を許可されている。

OEMパートナー

WeRide.aiとその戦略的投資家である広州汽車集団が12月に発表したところによると、今後数年で「数万台」のロボタクシーを配備する予定であるという。

画像クレジット:Traffic jam during sunset / Getty Images

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(文:Rita Liao、翻訳:Dragonfly)

デジタル庁、新型コロナワクチン接種状況のダッシュボードとオープンデータをリニューアル

デジタル庁、新型コロナワクチン接種状況のダッシュボードとオープンデータをリニューアル

デジタル庁は1月24日、新型コロナウイルス感染症のワクチン接種状況に関するダッシュボードオープンデータを、3回目の接種状況を加えてリニューアル公開した。2022年1月24日現在、医療従事者のデータは公開準備中という。

データに関するライセンスは、「クリエイティブ・コモンズ・ライセンス 表示 4.0」(CC BY 4.0)としている。また利用の際のクレジットは「デジタル庁」と記載する必要がある(「デジタル庁コピーライトポリシー」参照)。

このダッシュボードは、ワクチン接種記録システム(VRS)に記録された新型コロナワクチンの接種状況を、全国および都道府県単位で、グラフを用いて視覚的に把握できるというもの。これに関連するデータファイルは、オープンデータとして公開され、プログラムなどに利用できるよう、NDJSON(改行区切りJSON)形式またはCSV形式で提供される。

オープンデータの概要

  • 都道府県別接種回数詳細
    形式:改行区切りJSON (NDJSON)
    内容:ワクチンの接種回数を都道府県別に集計した統計データ
  • 接種日別接種回数サマリー
    形式:CSV
    内容:ワクチンの接種回数を接種日別に集計した統計データ
  • 都道府県別累積接種回数サマリー
    形式:CSV
    内容:ワクチンの累積接種回数を都道府県別に集計した統計データ

詳細は下記リンクをご覧いただきたい。
https://info.vrs.digital.go.jp/opendata/

クラウド録画のセーフィーと秘密計算・AI開発のEAGLYSが製造現場の生産ライン不具合検知に向けAI画像解析サービス開発

クラウド録画のセーフィーと秘密計算・AI開発のEAGLYSが製造現場の生産ライン不具合検知に向けAI画像解析サービスを共同開発

クラウド録画サービス「safie」を展開するセーフィーと秘密計算とAI開発でデータ利活用を推進するEAGLYS(イーグリス)は1月25日、製造現場の生産ラインの不具合検知のためのAI画像解析サービスの共同開発に着手したことを発表した。実証実験では24m先の異物を91%の精度で検知できた。

人材不足が深刻化する製造現場では、産業用ロボットやFA(ファクトリーオートメーション)の導入が叫ばれているが、工場設備のレイアウトなど空間的な事情からロボットの設置が難しい工場では、製造工程の異物や残留物の確認・判断は人手に頼らざるをえない状況が続いている。

そこで、セーフィーとEAGLYSは、撮影した映像データにAI解析を組み合わせることで、生産ラインの不具合や異物検知が行えるAI画像解析サービスの開発に着手した。このサービスを利用すれば、AI画像解析カメラで不具合や異物を容易に検知できるだけでなく、映像を通じた確認作業の記録や、遠隔からの管理・実行、振り返りにも活用できるという。

両社は、実際の製造工場で同サービスの実証実験を行ったところ、現状の生産設備や従業員の作業導線を変えることなく、目視では検知が困難な24m先のライン上の異物を91%の確率で検知できた。

本格実装に向けて、工程や製品に合わせた画角やAIアルゴリズムをチューニングすることで、さらに高い精度での検知が期待できるとのことだ。

100台を超えるテスラ車が遠隔操作の危険性にさらされる、サードパーティ製ツールに脆弱性

Tesla(テスラ)車のオーナーに人気の高いオープンソースのログ記録ツールに、セキュリティバグが見つかった。これにより、セキュリティ研究者は世界中の数十台のテスラ車にリモートアクセスできたと述べている。

この脆弱性に関するニュースは2021年1月初め、ドイツのセキュリティ研究者であるDavid Colombo(デヴィッド・コロンボ)氏のツイートで初めて明らかになった。コロンボ氏は、25台以上のテスラを「完全に遠隔操作」できるようになったが、その詳細を公表せずに、悪意のあるハッカーに警告を与えず、影響を受けたテスラ車のオーナーに問題を開示することに苦労していたと述べている。

現在、このバグは修正されていることをコロンボ氏は確認している。TechCrunchはこの記事を、脆弱性が悪用される可能性がなくなるまで掲載を保留していた。コロンボ氏はブログで調査結果を発表した。

コロンボ氏がTechCrunchに語ったところによると、この脆弱性は「TeslaMate(テスラメイト)」というツールで見つかった。これはテスラ車のオーナーが自分の車両に接続して、車両のエネルギー消費量、位置情報の履歴、走行統計などの隠されたデータにアクセスし、問題のトラブルシューティングや診断を行うために使用する無料でダウンロードできるロギングソフトウェアだ。TeslaMateは、テスラ車マニアたちが家庭用コンピューターで実行していることも多いセルフホスト型のウェブダッシュボードで、テスラのAPIにアクセスすることで、クルマの所有者のアカウントに紐付けられている車両のデータに触れることができる。

しかし、匿名でのアクセスを許可したり、デフォルトのパスワードを変更せずに使用しているユーザーがいたりといったウェブダッシュボードのセキュリティ上の欠陥が、一部のテスラ車オーナーによる設定ミスと相まって、100台分を超えるTeslaMateのダッシュボードが、テスラ車を遠隔操作するために使用する車両オーナーのAPIキーを含めて、直接インターネットに漏洩するという事態を引き起こした。

コロンボ氏はTechCrunchに電話で、影響を受けたテスラ車の数はもっと多いだろうと語っている。

漏洩したTeslaMateのダッシュボードの1つには、あるテスラ車がカリフォルニア州を横断している最近の移動ルートが表示されていた。TeslaMateはその後、脆弱性を修正し、テスラは数千のAPIキーを失効させた(画像クレジット:David Colombo)

コロンボ氏によると、TeslaMateのダッシュボードがデフォルトでは保護されていないことを発見したのは、2021年、漏洩したダッシュボードを偶然見つけたことがきっかけだったという。インターネットで他のダッシュボードを検索した結果、同氏は英国、欧州、カナダ、中国、米国でダッシュボードが露呈されたテスラ車を発見した。

しかし、ダッシュボードが露呈しているテスラ車のオーナーに個別に連絡を取ることは非常に困難であり、多くの場合、影響を受けたテスラの顧客に連絡できる方法を正確に知ることはできないと、コロンボ氏は説明する。

さらに悪いことに、露呈したダッシュボードからテスラ車ユーザーのAPIキーを抽出することが可能だったため、悪意のあるハッカーが、ドライバーに気づかれず、テスラ車に長期的なアクセスを続けることができてしまったのだ(APIは、インターネット上で2つのソフトウェアが相互にやり取りすることを可能にする。この場合、テスラの車両と同社のサーバー、Teslaアプリ、またはTeslaMateダッシュボード)。テスラのAPIへのアクセスは、所有者のアカウントに紐付けされたプライベートAPIキーによって、テスラ車の所有者に制限されている。

コロンボ氏は、流出したAPIキーを利用することによって、ドアや窓のロック解除、クラクションの吹鳴、キーレス運転の開始など、車両の一部機能に遠隔操作でアクセスできることを、アイルランドのあるテスラ車オーナーに確認したという。また、車両の位置情報、最近の走行ルート、駐車場の場所など、車両内部のデータにもアクセスできたとのこと。ただし、APIへのアクセスを利用してインターネットから遠隔的に車両を動かすことができるとは思えないと、コロンボ氏はいう。

今回のセキュリティ問題は、テスラのインフラにあったわけではないものの、業界標準の措置であるパスワードが変更された時に顧客のAPIキーを失効させるなど、テスラはセキュリティを向上させるためにもっとできることがあると、コロンボ氏は述べている。

TeslaMateは内密に脆弱性を報告した後、アクセスを防ぐためにユーザーが手動でインストールしなければならないソフトウェア修正を配信した。

TeslaMateプロジェクトの保守管理者であるAdrian Kumpf(エイドリアン・クンプフ)氏は、コロンボ氏のメールを受け取ってから数時間以内に更新プログラムを配信したと、TechCrunchに語っている。このソフトウェアはセルフホスト型であるため、ユーザーが誤って自分のシステムをインターネットに露呈させてしまうことを防ぐことはできないと、クンプフ氏はメールで語っており、TeslaMateの説明書では以前から、ソフトウェアを「ホームネットワーク上にインストールするように。さもなければ、あなたのテスラAPIトークンが危険にさらされる可能性があります」と警告していると付け加えた。また、クンプフ氏は、高度なインストールオプションを選択したユーザーは影響を受けないはずだ、とも述べている。

テスラが数千人のドライバーのAPIキーを失効させたことから、この問題は当初考えられていたよりも広範囲に渡っていた可能性があると、コロンボ氏はTechCrunchに語った。なお、テスラには本記事掲載前にコメントを求めたが、回答は得られなかった(テスラは2020年に広報チームを廃止している)。

画像クレジット:Patricia de Melo Moreira / AFP / Getty Images

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(文:Zack Whittaker、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

Customer.ioのホームページから学ぶコンバージョン率の改善方法

サイト訪問者を顧客へと転換させることができるホームページは、スタートアップが所有できる最も有用な資産の1つである。

コールドトラフィック(そのサイトで紹介されているビジネスについて知らない訪問者)を顧客へと転換させることができるようになれば、新たなオーディエンスを獲得するために、より多くの時間とリソースを注ぐことができる。

この記事では、マーケターが自分でキャンペーンを設計し、そのようにしてカスタマイズしたキャンペーンを実施するためのマーケティング自動化プラットフォームCustomer.ioのホームページを分析してみようと思う。Customer.ioの顧客リストには、大企業からスタートアップまで、数千の企業が名を連ねている。

ランディングページの主なセクションすべてを分析して、スタートアップのホームページのコンバージョン戦略やコピーライティング戦略に使える点に注目する。

サイト訪問者の注意を一瞬で惹きつける

初めてのサイト訪問者の目に最初に映るのは、ウェブサイトを開いた際にスクロールしなくても見ることができる部分、つまり「ATF(アバッブ・ザ・フォールド)」と呼ばれる領域である。訪問者がそのまま閲覧を続けるか、そのサイトから離れてしまうかは、このATF領域が訪問者にとってどの程度役立つかどうかによって決まるため、ATFは非常に重要な部分である。

Customer.ioのATF領域は、ヘッダー、サブヘッダー、CTA(行動喚起)、顧客からの推薦コメント、視覚に訴える画像という5つの要素で構成されている。1つずつ見ていこう。

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内容の濃いヘッダーで、訪問者が知りたい情報を伝える

ATF領域では、その企業が何をしているのか、なぜそれが重要なのかを、正確かつ簡潔に説明する必要がある。

訪問者がそのヘッダーを読むだけで、どんなスタートアップなのか、なぜそのスタートアップの製品を使うとよいのかを理解できれば、そのヘッダーは全体的に効果的なヘッダーだということができる。

Customer.ioのヘッダーでは、同社の製品が「messaging workflows(メッセージング・ワークフロー)」という2つの言葉で説明されている。Customer.ioを使えば、ユーザーが理想とするワークフローを構築できるというメリットがあること、つまり全面的にカスタマイズが可能であるということをヘッダーから読み取ることができる。

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サブヘッダーでさらに詳細を説明する

サブヘッダーでは、ヘッダーで掲げている顧客へのメリットをどのように実現させるか、という点を説明する。Customer.ioのサブヘッダーでは、同社のメッセージング自動化プラットフォームを使って、ユーザーが独自のワークフローを構築できることが説明されている。

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サブヘッダーで製品の対象者について簡単に言及することも効果的な場合がある。Customer.ioのサブヘッダーでは、同社の製品の対象者が明確に指定されているため、ユーザーは「自分はハイテクに精通したマーケターだろうか」と考える。自分がそのようなマーケターだと思えば、サイトの閲覧を続けるだろう。あるいは、自分はその対象者には当てはまらないと思えばサイトを離れるだろうが、それはそれでまったく問題ない。

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Customer.ioのサブヘッダーは「データドリブンなメッセージングによって顧客をより深く理解できるため、収益が増加する」という、ユーザーに提供できる最大のメリットについて言及して締めくくられている。

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コンバージョン率を高めるCTAを作成する

CTA(行動喚起)とは、サイト訪問者と企業との関係をさらに深めるために訪問者側の行動を促すためのサイト構成要素である。このように、訪問者側からの行動を促す何らかの仕組みがないと、訪問者を顧客に転換させることは非常に難しい。

大抵の場合は、ATF領域の中に配置するCTAは1つだけにして、ユーザーが通る道を1つに限定することが好ましい。ただし、例えば、デモをリクエストするCTAを配置したのに、デモを申し込む人が少ないことに気づいた場合は「無料トライアル」など2つ目のCTAを配置して試してみるのもよいかもしれない。Customer.ioのサイトでは後者が採用されている。「無料トライアル」のCTAがなければ、数多くの見込み顧客を逃す可能性があることを知っているのだろう。

Customer.ioは、上記のように複数のCTAをユーザーに提示しているとはいえ、本当はデモを申し込んで欲しい、というのが本心である。そのため、デモをリクエストするためのCTAは他のCTAよりも強調された表示になっている。全体デモを申し込むユーザーの方が、コンバージョンへと至る確率も、サイトに留まる確率も他のユーザーより高くなることを、同社は理解しているのだろう。

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画像を使って説明する

その製品ならではの価値をサイト訪問者によりよく理解してもらうために画像が役立つ場合に限り、ATF領域に画像を配置することはよいアイデアだと言える。実際のところ、企業のランディングページで目にするイラスト画像やストック画像は無作為に選ばれたような意味のないものが多い。

イラスト画像を使うな、と言っているわけではない。使うなら、自社の製品の価値を示すような方法で使う必要がある。Customer.ioのサイトでは、プッシュ通知のタイミングを遅らせるワークフローを視覚的に説明する画像が効果的に使われている。

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顧客からの推薦コメントを掲載して信用を高める

顧客からの推薦コメントは、信頼を獲得するうえで必要不可欠なものである。さらに、他の顧客からの評価を掲載することには「皆がその製品について知っている中で、自分だけがチャンスを逃している」とサイト訪問者に感じさせるという目的もある。Customer.ioは、すでに3400社の企業が同社の製品を使用している、とサイトに掲載することにより、信用を確立し、ユーザーの不安を払拭している。また、顧客の中でも著名な企業のロゴを掲載することにより、伝えたいポイントをさらに強調している。

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その製品ならではの機能を伝える

機能に関する説明は、ランディングページの大部分を占める。機能は、ユーザーにとってその製品が価値のあるものかどうかを判断する材料になる。同時に、ユーザーが抱くであろう懸念や反論についても、機能説明の部分で先を見越して対応する必要がある。

機能を説明する文章を作成する際の定石は、その文章を読む人が直面している問題について強調することだ。顧客が自身の抱える悩みについて説明する際によく使うフレーズを繰り返し使うことができるだろう。

Customer.ioのサイトを閲覧するのは、ハイテクに精通しているマーケターだが、彼らが抱える喫緊の課題を、サイトのコピー文によってさらに誇大する必要はない。Customer.ioは、それよりも、同社の製品を使うことによってユーザーの仕事がどれほど楽になるのかという点をアピールすることに焦点を当てている。

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1つのセクションに多くの情報が存在する場合は、目立つ画像を使って訪問者の視線を誘導することができる。Customer.ioのサイトでは、黄色い電球の画像を使って、タイトルから段落、画像、顧客からの推薦コメントへと順に読み進めやすいように構成されている。

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顧客からの推薦コメントを機能説明のセクションに組み込むことにより、機能説明の信用度を高めることができる。下記の画像で示されている通り、Customer.ioのサイトでは、実際のマーケターからのコメントを掲載して、タブウィジェットとして埋め込まれているそのセクションをさらに読み進めたいと訪問者に感じさせる仕組みになっている。掲載されているマーケターと同じ役職に就いている人であれば特に、他社の事例について読み、その決定に賛同する傾向が強い。

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訪問者がウィジェットに興味を示さない場合は、タブや矢印などのナビゲーション方法をいくつか組み合わせて試してみることができる。

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二次的な機能で見込み顧客に安心感を与える

サイト訪問者は、ランディングページをスクロールしながら半分ほどまで読み進めたところで疲れを感じる可能性がある。より楽に読み進めてもらうためには、各機能の重要な点を目立たせることができる。Customer.ioのサイトでは、高度なメッセージング・ワークフローを構成するそれぞれのパーツを目立たせて「本当にこれ全部できるの?」と、訪問者にうれしい驚きを提供する仕組みになっている。

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顧客が自社で活用する方法を説明して、機能を際立たせる

機能について説明する文章には常に顧客にとってのメリットを盛り込む必要がある。顧客が即座に思いつくであろう反論に注意を向けることによっても、同じ目的を達成することができる。信頼に足る企業であることを顧客に感じさせ、顧客に論理的に訴求できるためだ。

Customer.ioのサイトでは自在にカスタマイズできることが強調されているが、そのうちユーザーは、論理的な思考のスイッチが入って「ちょっと待て。同じようなものを以前にもセットアップしようとしたけど、うまくいかなかったじゃないか」と考えるようになる。Customer.ioのサイトでは、技術的な仕様を掲載することにより、そのような考えに前もって対応している。

さらに「わずか数回のクリックで」という表現を強調し、使い方が簡単で、セットアップにわずかな時間しかかからないことをアピールしている。

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セグメンテーション機能の画像は、Customer.ioの製品を使うことにより、顧客のエンゲージメントが高まることを示唆している。

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ホームページのコピー文で反論に対応する

マーケターは、キャンペーンのために何千通ものメールを送信することが、どれだけ神経をすり減らす作業となるかを知っている。Customer.ioはこの悩みに注意を向け、テクニカルサポート用のチームとサービスがあることを強調して、その悩みへの答えを即座に提供している。

「自分が送信したメールが届かずに返ってきたり、迷惑メールフォルダに振り分けられたりすることは避けたい。リスクを取ってこのようなサービスを使うべきかどうか、わからない」と考えるユーザーもいるかもしれない。Customer.ioが配信率を最大化するためにユーザーのメールを分析することを確約しているのはそのためだ。

一部のユーザーは、当然のことながら、自社のデータを得体の知れないテック企業に渡して分析してもらうのは怖い、と感じるかもしれない。その点の信用度を高めるために、Customer.ioはデータの保護を保証している。

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業界における信用を証明する

統計を使うことにより、信用があることをすぐに証明できる。例えば、ある企業が2021年だけで5億3500万件のウェブフックを送信したという事実を伝えれば、それはつまり、その企業が数多くの企業を顧客として抱えており、それらの顧客が同社の製品を使用していることを示すことになる。

扱うことができるデータの量について説明する際にも、文章より画像を活用した方が簡単だろう。

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最終CTAと顧客からの推薦コメントで締めくくる

Customer.ioのランディングページでは、最後の数セクションで、プライバシー、セキュリティ、信頼について言及されており、それには理由がある。ユーザーの悩みを解決する機能をどれだけ用意したとしても、信頼を築くことなしにユーザーを勝ち取ることはできないことを、Customer.ioは知っている。だからこそ、同社は、どれだけの数の企業が同社に信頼を寄せているか、という点に言及してコピー文を締めくくっており、CTAのすぐ右側に、顧客企業のロゴを配置している。こうすることにより、サイト訪問者が同社に対して持つ信頼感をさらに高めることができる。

画像クレジット:Demand Curve

今回の分析を自社のホームページ作成に役立てるには

今回の分析を自社のホームページ作成に役立てるための主なポイントを以下にまとめてみた。

  • 製品の対象者は誰かを正確にユーザーに伝える。そうすることにより、対象者に該当するユーザーはより注意深くサイトを閲覧するようになり、対象者には該当せず、結局は購入に至らない訪問者をサイトから去らせることができる。
  • デモのリクエストをメインのCTAとしており、コンバージョン率が思わしくない場合は、無料トライアルをCTAとして追加してみる。
  • 画像のスタイルは重要ではない。重要なのは、製品の価値をユーザーに理解してもらうのに役立つ画像を使うことである。
  • 顧客の課題を解決する製品なのであれば、課題自体をそれ以上強調する必要はない。サイト訪問者が感じていることを見極めて、彼らの問題を解決する方法を提示する。
  • 特定の職業を対象とする製品である場合は、同じ職に就いている人たちからの推薦コメントを掲載する。その際には必ずその社名と役職名も掲載する。
  • サイト訪問者がタブウィジェットをあまり見ていないことに気づいたら、複数のナビゲーションオプションを試してみる。
  • 製品に対する最大の反論がセキュリティと信頼なのであれば、その反論に対応するために十分過ぎるほどのスペースを割いても問題ない。‍

画像クレジット:Klaus Vedfelt / Getty Images

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(文:Joey Noble、翻訳:Dragonfly)

Fanicon、ファンサービスとITを結びつける新サービス・動きをまとめた「エンタメ ファンテック カオスマップ 2022」公開

  1. Fanicon、ファンサービスとITを結びつける新サービス・動きをまとめた「エンタメ ファンテック カオスマップ 2022」公開

会員制ファンコミュニティプラットフォーム「Fanicon」(ファニコン。Android版iOS版)を運営するTHECOOは1月24日、「エンタメ ファンテック カオスマップ 2022」を公開した。

ファンテックは、「ファン」と「テクノロジー」を組み合わせた造語。THECOOは、ファンテックについて、ファンサービスとIT技術などを結びつけた新しいサービスや動きと位置付けている。またファンテックは、クリエイターがファンや消費者と直接つながり、収益を得られるようになった「クリエイターエコノミー」の中に属すものとしている。

クリエイターと、ファン・消費者のつながりが多様化し複雑に

昨今クリエイターエコノミー界隈では、サブスクリプションをはじめ課金型コンテンツを提供するプラットフォームが台頭しており、限定コンテンツにすることでファンとの強いコネクションのコミュニティを持つ傾向にあるという。

さらに、「バズる」といった短期的な収益ではなく「根付く」という長期的な応援・収益化を重視する流れによって、ファンを増やすSNS発信からファンにエンゲージメントするコミュニティを持つ思想へ移り変わっている。しかし急速に普及した結果、ファンに対してプラットフォームを使ったエンゲージメント方法が多様化し、各ツールの特徴を活かし連動させることが難しくなったそうだ。

同社は、(Faniconを開設している)インフルエンサー・俳優・アーティスト・タレントや消費者が、自身に合う機能やサービスでつながってほしいという思いから、オンライン上でファンが「体験」や「応援」できるプラットフォームを分類するカオスマップを作成した。

エンタメ業界の動向―長く応援してもらうための「熱量」にニーズ

コロナ禍により政府が発表した活動自粛規定により、エンタメ業界においても、ファンとのイベントやライブがオンライン上で開催されることが増え、チケット制ライブ配信など急速なデジタル化・DX化が進んだ。

また、ファンと直接会えないことが続き「ファン離れ」という懸念からファンベースの指向が強くなり、ファンにエンゲージメントする上で長く応援してもらうための「熱量の深さ」にニーズが置かれコミュニティ化しているという。

ファンテックの動向

コロナ禍による生活様式の変化をきっかけに、クリエイターの活躍の場も多様化。消費者が様々なコンテンツを楽しめるようになり、ファンとの交流機会も増えているという。しかし、それに伴い発信するコンテンツに対して唯一無二を感じられる付加価値が重要視されるようになった。例えばNFTの活用により、デジタルコンテンツに対して新たな価値を提供できるようにしている。

「認知→応援」フェーズでの傾向

ウィズコロナ:「体験」における新しい楽しみ方

オンライン上のコミュニティなどを通して誰かとつながることへの需要が高まり、SNSだけでなく配信ライブ(配信専用スタジオも含む)やメタバースなどの「体験」できるコンテンツが注目を集めているという。

現在、オンラインライブは、オフラインライブをカバーするには至らないものの、活動資金となる収益基盤の構築やファンとのつながりを維持する方法として必要とされている。

また、メタバースやVR配信ライブなど、オフラインでは難しい表現が可能な場の強みを活かすことで、エンターテインメントの可能性はさらに広がっていると指摘。プラットフォームサービスを提供する企業もオンラインにおいての幅広い取り組みを行っており、これまでに人気ゲームやアニメ、人、空間とのコラボライブなど、人気の高いコンテンツも増えているという。

アフターコロナ:推測される「リベンジ消費」

オフラインでのイベントやライブなどの開催は、これまでの開催自粛の反動から、コロナ禍前を上回る水準に復活すると予測されている。これを受けて、コロナ禍前の課題であった会場不足を解決するべく、アリーナや劇場などの新たな商業施設がオープンしているという。

リアルライブへの移行が見込まれつつも、コロナ禍の影響で急速に進んだデジタル化が後戻りすることはなく、エンターテインメントの楽しみ方が一層多様化していくと期待されている。デジタルとリアルの共存が今後も進んでいき、アフターコロナで新たに生まれるニーズに対して、デジタル化・DX化は引き続き加速していくと推測されるとしている。

まだ死んでいないよ、IBMの第4四半期における収益の伸びが加速

IBMが2021年第4四半期の決算を発表した。そのニュースは単に「良い」というものではなかった。ほぼ10年間、売上高がマイナス成長または低成長だった同社にとって、それはすばらしいものだった。IBMは、前年同期比6.5%増の167億ドル(約1兆9000億円)の売上を計上した(恒常為替レートベースでは8.6%増だ。ドル高により多くの企業が為替変動で対処している)。

この堅調な結果は、176億ドル(約2兆30億円)を少し上回る、はるかに控えめな0.3%の成長を記録した2021年第3四半期に続くものだ。そしてこの朗報は、同社が190億ドル(約2兆1625億円)のインフラストラクチャーサービス事業をスピンアウトした後にもたらされたものでもある。企業が大きな事業を失い、それがこんなに早く有利に働くというのは、少し直感に反するように思えるかもしれないが、それは、ほぼ完全にクラウドに集中すると判断したCEOのArvind Krishna(アルビンド・クリシュナ)氏の考えの大きな部分だったようだ。

関連記事:IBMがインフラサービス事業を「Kyndryl」として正式に分社化

同社が何年も低迷し、一時は22四半期連続で売上がマイナス成長するのを見てきた。前CEOのGinni Rometty(ジニ・ロメッティ)氏が2019年に社を去り、クリシュナ氏が就任したとき、同氏は今後変化が起こること、そして自身のビジョンに属さない事業を切り離すつもりであることを明らかにしている

その中には、Kyndryl (キンドリル)を切り離し、ロメッティ氏が大きな賭けに出て数十億ドル(数千億円)をかけて大きな事業に育て上げたWatson Health(ワトソン・ヘルス)部門の大部分を売却することも含まれていた。うまくいかなかったときにクリシュナ氏は損切りを恐れず、IBMは1月21日にWatson Health事業をFrancisco Partners(フランシスコ・パートナーズ)に売却したが、その額はロメッティ氏がこの部門につぎ込んだ資金をはるかに下回り、10億ドル(約1140億円)程度と報道されている。

関連記事:IBMが医療データ管理「Watson Health」事業の大半をFrancisco Partnersに売却

クリシュナ氏は現在、IBMが2018年に340億ドル(約3兆8690億円)で買収したRed Hat(レッドハット)を中心に会社を作りたいと明らかにしている。Red Hatの部門ハイブリッドクラウドの売上高は、第4四半期に前年同期比18%増の62億ドル(約7050億円)となり、同社が期待していたような収益成長だった。

クリシュナ氏は、目を見張るような成長ではなく、IBMのような成熟した企業に期待される、着実に前進する成長を求めていることを明らかにしており、もちろん毎四半期がマイナス成長というものは望んでいない。今回の決算では、まさに同社が着実な成長の道を歩んでいたように見える。

関連記事:IBMが約3.7兆円でRed Hat買収を完了

2021年度は、3%、0.3%、6.5%と3四半期連続のプラス成長だ。これは、屋上から叫びたくなるような成長率ではないが、この由緒ある企業が切実に必要としているプラス傾向だ。

Moor Insight & Strategiesの創設者で主席アナリストのPatrick Moorhead(パトリック・ムーアヘッド)氏は、今回の決算は少なくともIBMにとって良い兆候だと話す。「1つの良い四半期がトレンドを作るわけではありませんが、最低3つあればトレンドになると思います。近い将来、一桁台半ばの成長が見られると確信しています」

その他の明るい要素

ハイブリッドクラウドの売上高の伸びは、同社の第4四半期の成果のマトリックスから明らかに異常値だったが、考慮に値する他の明るい要素もあった。ソフトウェアの売上高は8%(恒常為替レートでは10%)増え、コンサルティング関連の売上高は13%(恒常為替レートでは16%)と大幅な伸びを記録した。

全般的に好調な結果を受けて、利益も好調だった。粗利益は95億ドル(約1兆810億円)で、2.5%の微増となった。しかし、純利益は29億ドル(約3300億円)と、税引き前ベースで183%増という衝撃的な数字となった。税引き後の利益は25億ドル(約2840億円)で、前年同期比で107%増とやや控えめな伸びとなった。

簡単に言えば、IBMのビジネスは依然として非常に儲けの多いものであるということだ。そして、何年もボリューム(売上)ベースで停滞し、減少してきた後、ようやく一連の成長を実現しただけでなく、直近の四半期ではかなり堅調に売上高を伸ばすことができた。

IBMがこれほど長く生き延びたのは偶然ではなく、おそらく我々はもっと信頼すべきだったのだろう。しかし、マイナス成長という壮絶な経過は、かなり強力な疑心暗鬼の集団を生み出した。少なくとも投資家は感心しており、時間外取引でIBMの株価は急上昇している。

同社は2022年もこの成長を繰り返せるだろうか。そうであれば、本当にカムバックといえるだろう。

画像クレジット:Sean Gallup

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(文:Ron Miller、Alex Wilhelm、翻訳:Nariko Mizoguchi

TikTokが新機能を続々開発中、アバター、ライブオーディオストリーム、クリエイター向けツールなどが見つかる

TikTok(ティックトック)が数多くの新機能を開発している。Bitmoji風のアバター、For Youページのキーワードによるフィルタリング、チャット、オーディオオンリーのライブストリーム、ライブストリーム中の画面共有、そしてクリエイターがサブスクライバー専用のエモートやサブスクライバー専用のコメントセクションを作ることができるTwitch風サブスクリプション機能などだ。一連の開発途上機能は、ソーシャルメディアアナリストのMatt Navarra(マット・ナバラ)氏が見つけた。

この手のリークはそのまま受け取ることはできない。TikTokが新しいアイデアをいろいろと試していることは、それがアプリに反映されるという意味ではないからだ。それでも開発中の機能はプラットフォーム計画のヒントを与えることがある。

「私たちは常に、コミニュティに価値をもたらしTikTok体験を豊かにする新しい方法を考えています」とTokTok広報担当者はいう。その担当者はこれらの機能が実際に検討されていることを認めたが、TikTokが新しいアイデアを試している時、ユーザーのフィードバックを得ることが最終目標だと強調した。最終結果(採用された場合)がリークで見たものと大きく変わることもある。

リークされた機能の中には、有料クリエイターサブスクリプションのようにすでに何らかのかたちで公開テストされているものもある。しかし、サブスクライバー専用のエモートやコメントセクション(Twitchからの完全な借り物)は、これも最近TikTokがテストしているデスクトップストリーミングソフトウェアであるTikTok Live Studioとの関係を踏まえると理に適っている。キーワードフィルタリングは、Twitter(ツイッター)のミュートに似た機能で、For Youページを整理しようとしているTikTokの現在進行中の取り組みの一環として以前にも言及されている。

関連記事:TikTokがTwitter、Instagramに続き有料サブスク導入を限定テスト、クリエイターの収益化の道を探る

「For Youフィードで見たくないコンテンツに関連したワードやハッシュタグを指定できる機能を開発しています」とTikTokが12月のブログ記事で述べている。

リークした他のアイデア、アバターオーディオオンリーのライブストリームなどは、TikTok拡大計画の別の方向性を示している。ライブストリームビデオができるなら、ライブオーディオへの関心を(少々遅いが)収益化しない手はない。それに、そろそろTikTokでグループメッセージができても良いころだ。

画像クレジット:SOPA Images Getty Images

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(文:Amanda Silberling、翻訳:Nob Takahashi / facebook

透明性の高いソフトウェアサプライチェーン構築を支援するCodenotaryが約14.2億円調達

開発チームが透明性の高いソフトウェアサプライチェーンを簡単に構築できるサービスを提供するCodenotary(オープンソースでイミュータブルで人気のimmudbの開発元でもある)は米国時間1月24日、Bluwat、Elaiaなどの新規および既存の投資家から1250万ドル(約14億2000万円)のシリーズBラウンドを調達したことを発表した。この新ラウンドにより、2021年7月に行われた550万ドル(約6億2000万円)のシリーズAラウンドを含め、同社の資金調達総額は1800万ドル(約20億2000万円)に達した。

Codenotaryは、以前Qumranetを共同設立したCEOのMoshe Bar(モシェ・バー)氏とCTOのDennis Zimmer(デニス・ジマー)氏によって設立され、DevOpsサイクルにおけるすべてのコンポーネントを識別・追跡できるよう支援する。つまり、サプライチェーンに対する攻撃やLog4jのような脆弱性がある場合、企業がこれらのライブラリがどこで使われているかを把握し、潜在的な被害の広がりを最小限に抑えることがはるかに容易になる。これらの情報はすべて、改ざん不可能な履歴システムを提供する台帳データベースであるimmudb上にあるため(ブロックチェーンを頼らずに)、ユーザーはこれらの情報を完全に信頼することができるはずだ。Codenotaryをソフトウェアのサプライチェーンに追加すると、サービスはそれに基づいて自動的に部品表を作成する。

画像クレジット: Codenotary

バー氏によると「私たちのミッションは、オープンソースでも、エンタープライズの内製でも、企業のどのようなアプリケーション開発でも、そのすべての成果物を信頼できるようにすることだ。会社を始めたときは、誰がどこを担当しているか、彼らがいつ何をしたかなど、すべての開発関連情報が安全で不正アクセスが起こり得ないことを目指した」という。当時、Codenotaryにはそのような要求を満たすデータベースがなかったので、チームがそれを自作した。バー氏によると、immudbはブロックチェーンから得られるものと同じような暗号検証を、はるかにパフォーマンスの良いデータベースの形で提供する。

 

「Codenotaryは、DevOpsサイクルにおけるすべてのコンポーネントを迅速に識別・追跡し、無数のアプリケーションの信頼性と完全性を回復するためのソリューションを提供しています」と、同社の初期投資家であるスイスのBluwat AGのシニアパートナーであるPascal Blum(パスカル・ブルーム)氏はいう。「Codenotaryの主要なイミュータブルデータベースであるimmudbと組み合わせることで、同社はこの新たな市場でリーダーの地位を獲得しています」。

現在、同サービスの顧客は100社を超え、そのほとんどを公表することはできないが、世界最大級の銀行も含まれていると同チームはいう。

CTOのジマー氏によると、Codenotaryの顧客の多くは、まずソフトウェアパイプラインにこのサービスを導入し、ソースから製品までのソフトウェアの出所を証明できるようにする。その顧客層は、小規模なソフトウェア開発会社から大規模なERP企業までさまざまで、例えば、新しいリリースにかけた品質保証作業を公開したり、自社のソフトウェアを使用する外部顧客に部品表を提供するために、このサービスを利用することが多いと、同氏は指摘している。バー氏が付け加えたように、こうした問題を最前線で考えているのは、金融機関や政府機関であることが多い。

Codenotaryは、今回の資金調達により、製品開発を加速させ、マーケティングと販売を世界的に拡大する計画だという。

画像クレジット:boonchai wedmakawand/Getty Images

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(文:Frederic Lardinois、翻訳:Hiroshi Iwatani)

12.6型120Hz有機ELの高速Androidタブ「Lenovo Tab P12 Pro」が日本発売、キーボード込み約13万円

12.6型120Hz有機ELの高速Androidタブ「Lenovo Tab P12 Pro」が日本発売、キーボード込み約13万円

一時期の「高速・高級タブレットといえばiPad Proのみ」といった市場から一転し、昨年ごろより再び市場が活性化しつつある、Androidの高速タブレット。

中でもレノボ・ジャパンは、昨年の11.5インチ有機EL搭載機『Lenovo Tab P11 Pro』や、HDMI入力でモバイルディスプレイとしても使える13型液晶搭載『Yoga Tab 13』など、意欲的なモデルをラインナップしているメーカーです。

そんなレノボが、海外で高評価を得ている、最高120Hzのリフレッシュレート(可変式ではなく選択式)に対応した12.6インチ有機EL画面+クアルコムSnapdragon 870搭載モデル『Lenovo Tab P12 Pro』の日本版を発表しました。

販路は同社Web直販『レノボオンラインストア』で、発売日は1月28日の予定。気になる価格は、RAM 8GB/ストレージ 256GB/Wi-Fiのみモデルが、キーボードカバーとペンとのセットで13万円(税込)前後。単品構成や5G対応モデルはありません。

なお米国版では699.99ドルからとなっており、一見価格差が大きそうに見えますが、これはRAM 6GB/ストレージ 128GBという下位構成にあたるモデルで、なおかつ本体のみ。現状米国モデルもこの1構成のみなので、直接比較はできません。

参考記事Lenovo Tab P12 Pro 発表。120Hz有機EL採用のハイエンドAndroidタブレット (2021年9月)

12.6型120Hz有機ELの高速Androidタブ「Lenovo Tab P12 Pro」が日本発売、キーボード込み約13万円
さて、同機の特徴はなんといっても、12.6インチの大画面有機ELディスプレイを搭載しながら本体重量が約565gと、「ある程度だったら手持ちでいける軽さ」である点。

直接的なライバルとなる現行の(ミニLED搭載液晶の)12.9インチiPad Proは682gなので、110g以上軽量。しかも600g台と500g台というのは、12.6インチ画面タブレットとしては体感重量にかなり“効く”差です。

本体サイズも、縦長状態で約184.53×285.61×5.63mm(幅✕高さ✕厚さ)と、とくに薄さが際立つ仕様。昨今のスマホやタブレットは薄型をことさら強調する例が増えていますが、筆者が海外モデルに触れてみたところ、さすがに12.6インチ画面で5mm台となると“実感を伴い”ます。

なお、12.9インチiPad Proは214.9✕280.6✕6.4mm。幅が30mmほど違うのは画面のアスペクト比が大きく異なるためですが(横長状態で本機は16:10、iPad Proは4:3)、このあたりもハンドリングには地味に影響する印象です(両機ともそもそもが大きくはあるのですが)。

そして「大画面で軽い」と聞くと気になるバッテリー駆動時間ですが、公称で最大約17時間。容量は10200mAhと、このあたりはさすがに大画面タブレットの水準といったところでしょう。なお急速充電は、ノートPC並の45Wに対応します。

12.6型120Hz有機ELの高速Androidタブ「Lenovo Tab P12 Pro」が日本発売、キーボード込み約13万円
そしてもう一つの特徴は、搭載する有機EL画面です。解像度は2560×1600でアスペクト比は16:10、最高輝度も600ニトで、HDR映像ソースはドルビービジョンとHDR10+にも対応。さらにスピーカーも4ユニットを搭載したJBLとのコラボ仕様と、良い意味で最新世代タブレットらしい水準でまとめられています。

さらに、Windows PCと組み合わせることで、本機をワイヤレス接続のディスプレイとしても使用可能な『Lenovo Project Unity』にも対応。タッチやペン入力もPC側で利用可能です。

SoCには、Yoga Tab 13に続き、クアルコムの高速モデル『Snapdragon 870』を搭載。Snapdragonシリーズでも888 Plusと888無印に次ぐ性能と位置づけられたグレードだけに、速度に関してはかなりのヘビーなゲームであってもカバーできる水準。

並のSoCでは負荷が高い、ヘビー級ゲームの120Hz表示環境を支えるだけのパワーを備えた、と呼べるモデルです。

12.6型120Hz有機ELの高速Androidタブ「Lenovo Tab P12 Pro」が日本発売、キーボード込み約13万円
本機に同梱されるキーボードは、いわゆるSurface Proタイプの背面スタンドカバーとセットで、本体カバーを兼ねる構造(スタンドカバーも、もちろん同梱です)。

本体の底面積の大きさを活かし、キーピッチなどもいわゆるフルサイズに近い仕様に。またタッチパッドも大型となっているため、操作性はかなり良好です。

もう一つ同梱されるペンは、4096段階の筆圧感知や傾き検知機能も備えた、最新世代の『Lenovo Precision Pen 3』仕様。本体画面のリフレッシュレートが120Hzであることも相まって、なめらかなペン入力が可能と謳います。

接続はBluetoothで、充電は本体とのマグネット装着により無接点で行われるタイプです。

カメラ部はタブレットだけあり、スマートフォンよりは仕様は控えめですが、それでもリア側はメイン(広角)1300万画素+超広角500万画素のデュアルカメラタイプ。フロント側も800万画素と、セルフィー用途も見据えた仕様です。

基本的な仕様は

  • アウトカメラ:1300万画素広角(メイン)+500万画素(超広角)
  • インカメラ:800万画素
  • ディスプレイ:12.6インチ有機EL(2560×1600/アスペクト比16:10)、10点タッチ
  • プロセッサ:クアルコムSnapdragon 870(8コア、最高3.2GHz)
  • メモリ(RAM):8GB
  • ストレージ:256GB
  • 外部ストレージ:microSD
  • 拡張端子:USB Type-C✕1
  • OS:Android 11
  • バッテリー駆動時間:最大約17時間
  • バッテリー容量:10200mAh
  • ワイヤレス通信: Wi-Fi 6、Bluetooth 5.2
  • 本体サイズ:約184.53×285.61×5.63mm
  • 重量:約565g

といったところ。総じていまどきのAndroidタブレットでも最上位に属するだけあり、仕様としては非常に隙のないタイプとして仕上がっています(その分、残念ながら値も張りますが)。

そしてなんといっても、12.6インチという美しい大画面を500g台という手持ちができる重量に収めた点は大きな魅力。実際の画面も、現行世代の有機ELにふさわしい高水準のため、多くのユーザーの期待を裏切らないものと呼べそうです。

(Source:本版製品ページ(レノボ・ジャパン)Engadget日本版より転載)

ビズリーチなどを展開するVisionalグループ、クラウドリスク評価サービスAssuredを正式リリース

ビズリーチ、HRMOS等を展開するVisionalは、2022年1⽉25⽇、セキュリティ領域の新事業として、クラウドリスク評価のデータベースサービス「Assured(アシュアード)」を正式リリースしたことを発表した。

進むクラウド化と追いつかないセキュリティ管理

各産業で不可逆のデジタル化が進み、特に国内クラウド市場は2018年度から2019年度にかけて約21%拡⼤し、2024年度には約2.8倍の5.4兆円規模に拡⼤ することが予想されている(MM総研「国内クラウドサービス需要動向調査」(2020年5⽉時点) )。⼀⽅で、クラウド利⽤を起因とした重⼤なインシデントも相次いでおり、企業の新たな経営課題として、セキュリティリスクマネジメントの必要性が⾼まっている。情報セキュリティ部門の担当者は、決裁者への説明のため担当者が各サービスを比較したり、上場準備等に伴う内部監査でクラウドサービスのセキュリティに問題がないかリサーチしたりと、日々増加していく作業量に頭を悩ませている。

(検索画面イメージ)

Assuredは、そんな情報セキュリティ部門の負担軽減、生産性向上を目指すサービスだ。クラウドサービスのセキュリティ状況がオンラインで確認でき、項目ごとに更新日時や過去ステータスも追える。

(レポート画面イメージ)

現在用意されているスタンダードプランでは同サービスでの検索を制限なく利用可能。掲載されるクラウドサービスは、Assuredチームによるリサーチ、クラウドベンダー側からの追加依頼のほか、ユーザー側から追加をリクエストすることもできるという。他に、クラウド導入のアドバイザリーオプションなどを追加したメニューも策定していく予定だそうだ。

 

自社課題から生まれた新規事業

(左:Assured事業部長の大島氏、右:代表の南氏)

同社は2021年4月に上場。実はこの事業、約500のクラウドサービスを利用していたVisional自身が、その上場準備の中でも特に大変だったクラウドセキュリティリサーチの経験から生まれたそうだ。

同事業の事業部長を務める大森厚志氏は、ビズリーチに新卒入社後、ビズリーチ事業のマーケティング部、事業企画部を経て、地域活性事業などを担う組織の立ち上げに従事。その後、クラウド活用と生産性向上の専門サイト「BizHint」のマーケティング組織の立ち上げを担った後、社長直下のR&Dプロジェクトを経て、Assuredを企画立案し、事業化に至っている。大森氏曰く「自社で苦労があるということは、同じことに困っている企業もきっとあると思い、本事業を進めることにしました」とのこと。Assuredは、事業化の承認から先行リリースまで3ヶ月、正式リリースまで約1年強というスピードとなる。

同社は、「新しい可能性を、次々と。」をグループミッションに掲げている。同社代表の南壮⼀郎氏は「同事業は、新規事業を任された大森が、強い思い入れを持って立ち上げたもの。弊社は、こういった自由な組織風土を以って、どんな方にもチャンスがあるということを体現していきたいし、特定の領域に固執せず、その時に必要なものを生み出していきたいと考えている」と語った。

関連記事:ビジョナル南壮一郎氏上場インタビュー、創業から12年の道のりと上場企業として目指すもの

アップル、パンデミックの影響を受け続ける一部デベロッパーに対してアプリ内購入免除の特例措置を再度延長

パンデミックはまだ終わっていない、とAppleはいう。同社は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のためにバーチャル開催を強いられた一部サービスのための、アプリデベロッパーがアプリ内購入システムを回避することを認めるというCOVID時代のApp Store猶予措置を再び延長した。具体的にAppleは「有料オンライングループサービス」を提供するアプリはアプリ内購入を利用しなければならないとするApp Store Reviewガイドライン3.1.1の適用を引き続き延期する。

影響を受けているデベロッパー(元来のビジネスモデルが、バーチャルではなく、対面イベントを中心に作られていた)は、パンデミック中、アプリ内購入を使用しなくてはならないというAppleの要件に従わずにすんでいる。

当初Appleは,1対1のサービスに限りアプリ内購入要件を免除した。医者と患者による医療相談や、教師と生徒の個人指導、不動産屋と顧客の物件ツアー、トレーナーと顧客のフィットネストレーニングなどだ。しかしAppleはその後すぐ、グループサービスのイベントから手数料の徴収を続けることは世界的パンデミック下で小企業に害を及ぼすとMeta(Facebook)から批判された

もちろんFacebookには別の思惑があった。自社の決済システムで手数料を免除していたFacebook Pay(フェイスブック・ペイ)を、Appleのアプリ内購入の代わりに使うことをAppleに認めさせたかったのだ。一時的にせよ、Appleがそれを認めれば、Facebookは何千何万人のユーザーを自社の決済エコシステムに引き込むことができる。

そうではなく、Appleは自社の手数料をオンライングループサービスに対しても一時的に免除した。オンラインセミナーやグループ・ヨガクラスなど、1対少人数や1対多人数のイベントも含まれる。これによってAppleは、パンデミックの打撃を受けている小企業から利益を上げているというMetaの批判に答え、かつFacebook Payには何の利益も与えない。

しかしパンデミックが長引くにつれAppleは、猶予期間が過ぎて対象企業がAppleのアプリ内購入システムに戻る期限を延期せざるを得なくなった。2020年11月、Appleは猶予期間を2021年6月までに延長した。そして2021年4月、同社は期限を2021年12月31日まで延期した。2021年11月、Appleは期限が迫っていることをデベロッパーに再通知した。

悲しいかな、オミクロン株の影響によってAppleは再度期限を延ばすことになった。

現在同社は、対象デベロッパーは2022年6月30日まで、Appleのアプリ内購入システムに戻ることを猶予されるとしている。この日は、失った収入源を取り戻し始められることが確実だとAppleが期待している日付に違いない。

さらに同社は、アカウント作成が可能なアプリ内にアカウント削除機能を実装する期限も延長したことを示した。「この要件の実装の複雑さ」が理由だ。つまり、もともと時間がかかり実装が困難な変更が、店舗の閉鎖や新型コロナによる従業員の病休や子どもの家庭でのバーチャル授業などによって、いっそう大変になっているということだ。

この延長は、先週末Appleのデベロッパーサイトの投稿で静かに発表された。それはAppleのアプリ内購入ビジネスモデルがさまざまな角度から攻撃されているさなかだった。同社のEpic Games(エピックゲームズ)と裁判は現在上訴中であり、つい最近オランダ規制当局からは、デベロッパーのサードパーティー決済に自社のアプリ内購入インフラストラクチャーの使用を強制していることは反トラスト法に違反しているとして罰金を課された。さらに同社は、最近韓国でもアプリ内決済をめぐる同様の規則に従わざるを得なかった

関連記事:オランダ当局がアップルに約6.4億円の罰金、出会い系アプリの独占禁止法違反で

画像クレジット:TechCrunch

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(文:Sarah Perez、翻訳:Nob Takahashi / facebook

LayerXのクラウド稟議システム「バクラク申請」がクラウドサインとAPI連携、稟議と契約締結プロセスをシームレスに統合

LayerXのクラウド稟議システム「バクラク申請」がクラウドサインとAPI連携、稟議と契約締結プロセスをシームレスに統合

ハタラクをバクラクにしたいLayerXは1月25日、請求書の支払申請をはじめ各種社内稟議・申請をデジタル上で完結可能なクラウド稟議システム「バクラク申請」について、クラウド型電子契約サービス「クラウドサイン」とのAPI連携を開始したことを発表した。

同連携により、これまで分断が発生し業務非効率の原因となっていた稟議と契約締結プロセスを統合し、シームレスな業務体験の実現が可能となった。バクラクシリーズは、これまでも利便性向上を目的に主に会計サービスとの連携を強化してきたが、電子契約サービスとの連携は初めてのケースとなる。

クラウドサイン連携機能を利用すると、バクラク申請上で契約締結申請を作成し、申請が承認されると、あらかじめ定められた署名者に対して自動でクラウドサインが送付されるようになる。

これにより、申請の完了から発送までのリードタイムがゼロになり、申請者・承認者・契約担当すべての当事者の契約締結コストが劇的に削減される。また、契約締結状況は申請者・承認者ともにバクラク申請上でリアルタイムで確認できることから、「契約先で契約書の締結が完了しているかどうか」を契約担当者に確認するコストもゼロになる。

LayerXのクラウド稟議システム「バクラク申請」がクラウドサインとAPI連携、稟議と契約締結プロセスをシームレスに統合

「紙の契約締結プロセス」と「バクラク申請×クラウドサイン連携機能利用時プロセス」の比較(一例)

バクラクシリーズは、コーポレートDXを支援するサービス群。クラウド請求書受領ソフト「バクラク請求書」、バクラク申請、電子帳簿保存法に準拠した形で請求書や領収書などの電子保管を可能にする「バクラク電子帳簿保存」の3サービスを展開している。

シリーズ第1弾となるバクラク請求書では、請求書の受取り後、AI-OCRで請求書を自動でデータ化の上、仕訳データや振込データの自動作成および会計システム連携をシームレスに実行可能。LayerXは、請求書受取業務の効率化を通じて経理DXを推進するとしている。

 

a16zとMonasheesがブラジルの在庫発見B2BマーケットプレイスInventaの新ラウンドをリード

Inventaの共同設立者、左からフェルナンド・カラスコ氏マルコス・サラマ氏、ローラ・カマルゴ氏(画像クレジット:Inventa)

ブラジルを拠点とし、中堅・中小企業が新規在庫を発掘・購入するためのデジタルマーケットプレイスを提供しているInventa(インベンタ)は、シリーズAラウンドで2000万ドル(約22億7500万円)を調達した。

Andreessen Horowitz(アンドリーセン・ホロウィッツ、a16z)とブラジルの大手VCであるMonasheesが共同でこのラウンドをリードし、Founders Fund、Greenoaks、Greylock、Tiger Global、そしてエンジェル投資家であるKavak(カバック)のHans Tung(ハンス・タン)氏とCarlos Gracia(カルロス・ガルシア)氏が参加した。また、今回のラウンドには、既存の投資家であるPear VC、NXTP、ONEVC、MAYA Capital、Alter Globalも参加した。

今回の新たな資本調達は、550万ドル(約6億2500万円)のシードラウンドを発表してから3カ月後に実施された。そのすべてが、2021年3月に設立された会社のためのものだ。

CEOのMarcos Salama(マルコス・サラマ)氏は、元General Atlanticの投資家Laura Camargo(ローラ・カマルゴ)氏、元McKinsey(マッキンゼー)のデータサイエンス専門家Fernando Carrasco(フェルナンド・カラスコ)氏とともに、ブラジルの起業家にテクノロジー、データ、クレジットを提供するために同社を設立した。

スペイン出身のサラマ氏は、機械工学のバックグラウンドを持ち、McKinseyとコロンビアのユニコーン企業Rappi(ラッピ)で働いた経験があり、それがブラジルへの道につながったという。同氏はRappiの食料品事業を担当していた時に、小売店と仕事をして、小さな店が品揃えや信用の確保に苦労している様子を目の当たりにした。

Inventaはテクノロジーを駆使して、中小企業の購買プロセスを容易にする。Inventaのオンラインプラットフォームは、実際の取引データに基づいて商品を推奨し、30日、60日、90日単位で小売店にクレジットを提供する。また、サプライヤー側でも、商品のアップロード、価格の管理、売れ筋・不人気商品の確認などができる。

これほど早く追加資金を調達した理由の1つは、Inventaが月次平均100%以上の成長を遂げていることだ。

「ブラジルには、Inventaがターゲットとしている小規模店舗を持つ起業家が500万人います」とサラマ氏は語る。「当社のB2Bマーケットプレイスは、ブランドと小規模小売店を結びつけ、化粧品、健康食品、ホームデコレーションなどの分野で品揃えを支援します。また、ニーズの高い製品のトレンドを知ることができるので、レコメンデーションがより有効になります」。

同社は400ブランドから7千以上の商品を提供し、2万人以上の顧客を獲得している。

今回の資金調達によりInventaは、100人の従業員の多くがエンジニアである同社の技術チームへの投資や、営業・マーケティングチームの構築が可能になる。サラマ氏は、今後数年間でさらに400人の従業員を増やすことを目標に、従業員分野での大規模な成長を期待している。

また、同社が化粧品、健康食品、家庭用品などの分野に深く入り込んでいくことで、扱うブランド数を1万に増やすことも計画している。さらに、技術開発にも力を入れ、最終的には小規模なサプライヤーや小売業者向けに無料のソフトウェア製品を提供できるようにしていきたいと考えている。

「Amazon(アマゾン)、MercadoLibre(メルカドリブレ)、RappiはB2Cの世界に対応していますが、B2Bにおいては、この市場をターゲットにしている企業は非常に少ないです」とサラマ氏はいう。しかし、B2Bでは、この市場をターゲットにしている企業は非常に少ない。「規模は大きいですがソリューションが欠けている中で、当社はサービスを提供する準備ができています」。

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(文:Christine Hall、翻訳:Aya Nakazato)

インドの電動スクーター企業Ola Electricが新たな資金調達で約5690億円の評価額に

インドの配車サービス大手のスピンオフであるOla Electric(オラエレクトリック)は初の電動スクーターの展開に苦労し、また同社の労働文化に疑問が呈されている中で、現地時間1月24日に新たな資金調達ラウンドで2億ドル(約230億円)を調達したと発表した。

Tekne Private Ventures、Alpine Opportunity Fund、Edelweissなどがこの新ラウンドに出資し、評価額は2021年9月の30億ドル(約3420億円)から50億ドル(約5690億円)になったと、ベンガルールに本社を置くOla Electricは明らかにした。

同社の共同創業者でCEOのBhavish Aggarwal(バビッシュ・アガワル)氏は声明で「投資家の方々の支援に感謝するとともに、EV革命をインドから世界へと広げるために彼らと協力することを楽しみにしています」と述べた。自動車を含め、より多くのカテゴリーに拡大することを検討していると、アガワル氏は語った。

Tiger GlobalとAlpha Wave Globalを既存投資家に持つOla Electricは2021年に、Ola S1という同社初の電動スクーターを発表した。価格は約1350ドル(約15万円)で、バッテリーを搭載したこのスクーターのフル充電時の航続距離は121キロメートル(75マイル)だ。

同社はスクーターの出荷を何度か遅らせているため、この数字はほとんどの人にとって仮説あるいは未検証の主張だ。せいぜい予約した顧客のごく一部しか受け取っていないのが現状だ。

一方、同じベンガルールに本社を置くスタートアップのBounce(バウンス)は、独自の電動スクーターを発表し、多くのアナリストがOlaの製品よりも優れていると話している。

インドで販売される車両のうち、全体の4分の3以上を二輪車が占めている。大手メーカーだけでなくスタートアップによる推進は、好意的に受け止められている近年の政府の奨励策と相まって、インドのEV推進を正しい方向に向かわせ始めている。UBSのアナリストは1月17日の週に発表したレポートで、2020年代末までにインドの全二輪車の37%が電動になると推定される、と書いている。

しかし、この予想が実現するためには、多くの要因が正しく作用する必要がある。

その1つは、インド最大のスタートアップの1社であるOlaの労働文化かもしれない。インドのメディアMorning ContextがOlaの有害な労働文化と不信感のある最高経営責任者について報じた結果、OlaとOla Electricではここ数カ月で複数の主要幹部が社を去った。アガワル氏は、最近73億ドル(約8310億円)の評価額で増資したOlaの共同創業者兼最高経営責任者でもある。

画像クレジット:MANJUNATH KIRAN / AFP / Getty Images

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(文:Manish Singh、翻訳:Nariko Mizoguchi

天気予報AccuWeatherが大気汚染データのスタートアップ仏Plume Labsを買収

天気予報会社のAccuWeather(アキュウェザー)がフランスのスタートアップPlume Labs(プルームラブズ)を買収する。買収条件は非公表。2014年の創業以来、Plume Labsは徐々に提供プロダクトを拡大し、大気汚染データに特化した3種類のプロダクトを展開している。

Plume Labsはまず、iOSとAndroid向けに、空気の質に関する情報を提供するモバイルアプリを立ち上げた。当初は、シンプルな都市レベルの大気汚染予測アプリだった。さまざまなソースからのデータを集約し、大気汚染が時間とともにどのように変化するかを予測していた。

その後、同社は予測能力を向上させ、現在では数日先の大気環境を予測することができる。同社は、予測にいくつかの機械学習モデルを使用している。また、通りごとの情報を含む詳細な地図も提供するようになった。これにより、自転車や原付バイクで通勤している人は、避けた方がいい特に交通量の多い通りがわかるようになった。

そしてPlume Labsは、空気質のトラッキングを視覚的かつ実用的にすることで、ユーザーが行動に移せるようにしたいと考えた。そこでBluetooth Low Energyを利用してスマートフォンに接続する、独自の大気質トラッカーを設計した。

この第2世代の装置は、粒子状物質(PM1、PM2.5、PM10)および汚染ガス(二酸化窒素、揮発性有機化合物)を追跡することができる。現在、政府が支援するモニタリングステーションよりもPlume Labsのデバイスは多く使用されており、比較的成功している。

最後に、Plume Labsは大気汚染データをAPIとして提供し始めた。同社は、世界中の何千もの環境モニタリングステーションを集約し、このデータに機械学習モデルを適用している。こうすることで、Plume Labsの顧客は、自社の製品に大気汚染データを統合したい場合に一歩先に進められる。異なるデータソースを扱い、これらのデータセットを1つのセットに統合する必要はない。同様に、大気汚染に適用する機械学習にリソースを割り当てる必要もない。

AccuWeatherは2020年1月にPlume Labsのデータを自社の天気予報プロダクトに統合した。AccuWeatherはその機会を利用してPlume Labsの株式を取得した。そして今回はさらに一歩踏み込んで、残りの株式を買収する。

「大気質は、人命救助と人々の繁栄を支援するというAccuWeatherのミッションにおいて本質的な役割を担っています。今回の買収により、ユーザーや顧客に、よりパーソナライズされた体験と、天候が健康に与える影響に関する360度理解を提供することができます」と、AccuWeather社長のSteven R. Smith(スティーブン・R・スミス)氏は声明で述べた。「2社の提携は、ユーザーが健康をこれまで以上にコントロールできるようサポートするという約束を実現し、この新しい戦略的方向性によって、目標にさらにしっかりとコミットしています」。

Plume Labsは、AccuWeatherの気候・環境データのセンターとなる。この買収は、大気汚染が多くの産業にとって重要な指標になりつつあることを証明している。

Plume Labsの共同創業者でCEOのRomain Lacombe(ロメイン・ラクーム)氏は「7年前、David Lissmyrと私は、誰もが大気質情報を利用できるようにするためにPlume Labsを設立しました。それ以来、私たちの活動は、気候変動の健康への影響を身近なものにすることで、きれいな空気を求める闘いに刺激を与えてきました。今、AccuWeatherと力を合わせることは、私たちの影響を地球規模で増幅し、世界中で15億人が大気汚染を回避するのを助ける特別な機会です」と声明で述べた。

今後、Plume Labsのチームと技術の運用は続き、山火事など他の環境リスクにも取り組む予定だ。気候リスク予測はまだ初期段階だが、今回の買収は時間の経過とともにその重要性が増していくことを裏付けている。

画像クレジット:Plume Labs

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(文:Romain Dillet、翻訳:Nariko Mizoguchi

グーグルの「欺瞞的」なユーザー位置情報追跡をめぐりワシントンD.C.などが提訴

米国時間1月24日、ワシントンD.C.、テキサス州、ワシントン州、インディアナ州は、ビッグテックに対する最新の訴訟を発表した。この訴訟は、ユーザーがその種のトラッキングが無効になっていると信じていた場合でも、Google(グーグル)は位置情報を収集してユーザーを欺いたと主張している。

ワシントンD.C.の検事総長Karl Racine(カール・ラシーン)氏は「Googleは、アカウントやデバイスの設定を変更することで、顧客が自分のプライバシーを保護し、同社がアクセスできる個人データをコントロールできると、消費者に誤って信じ込ませました」と述べている。「実際にはGoogleの説明に反して、同社は組織的に顧客を監視し、顧客データから利益を得続けています」。

ラシーン氏は、Googleのプライバシー慣行を、消費者のプライバシーを損なう「大胆な虚偽表示」と表現した。同氏の検事局は2018年、ユーザーが位置情報を保存しないと明示されたプライバシーオプションを選択している場合でも、iOSおよびAndroidの多くのGoogleアプリが位置情報を記録していることが判明したとAP通信が報じたのを受けて、Googleがユーザーの位置情報をどのように扱っているかを調査し始めた。AP通信は、プリンストン大学のコンピュータサイエンス研究者と連携して、その調査結果を検証した。

「この件に関するGoogleのサポートページには、次のように書かれている。『ロケーション履歴はいつでもオフにできます。ロケーション履歴をオフにすると、あなたが行った場所は自動的に保存されません』」とAPは報じた。「しかし、それは事実ではない。ロケーション履歴を停止した状態でも、一部のGoogleアプリでは、タイムスタンプ付きの位置情報が許可なく自動的に保存されている」。

この訴訟では、Googleが、ユーザーがオプトアウトすることが不可能な位置情報追跡システムを構築したこと、Androidのアプリ内およびデバイスレベルでのプライバシー設定によるデータの保護方法についてユーザーに誤解を与えたことを主張している。また、Googleは、ユーザーの利益に反する選択をさせるために、欺瞞的なダークパターンデザインを用いたとしている。

このような行為は、消費者を保護する州法に違反している可能性がある。ワシントンD.C.では、消費者保護手続法(Consumer Protection Procedures Act、CPPA)により「広範囲にわたる欺瞞的で非良心的なビジネス慣行」が禁止されており、検事総長が執行している。

ラシーン氏のD.C.検事局は、Googleに対する差止命令を求めるとともに、プライバシーに関して消費者を欺いて収集したユーザーデータから得た利益の支払いを同社に求めている。

関連記事:グーグル、広告ビジネスをめぐるテキサス州の反トラスト法訴訟で棄却を要請

画像クレジット:Alex Tai/SOPA Images/LightRocket / Getty Images

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(文:Taylor Hatmaker、翻訳:Aya Nakazato)

ビジネス向け保険の仲介を手助けするSayataがシリーズAで約39.8億円を追加調達

Sayataの創業者、アヴィシェイ・マヤ氏、アサフ・リフシッツ氏、イダン・ゴロン氏(画像クレジット:K Rifkind)

保険仲介業者であり、保険会社のマーケットプレイスであるSayata(サヤタ)は、2021年8月に1700万ドル(約19億3400万円)の資金調達を行った後、シリーズAに向けて3500万ドル(約39億8300万円)の追加資金を調達した。

今回のラウンド延長は、Pitango Growth(ピタンゴ・グロウス)とHanaco Ventures(ハナコ・ベンチャーズ)が共同主導し、これまでの投資家であるTeam8 Capital(チーム8・キャピタル)、Vertex Ventures(バーテックス・ベンチャーズ)、Elron Ventures(エルロン・ベンチャーズ)、OurCrowd(アワークラウド)が参加した。

ボストンを拠点とする同社にとって、2021年の10倍を超える収益成長に続く新たな資金調達となる。2年前に設立された同社は、中小企業が保険を確保するための手段を提供している。

保険を確保するために、これら中小企業は通常、保険会社に直接行くのではなく、保険仲介業者を経由すると、Sayataの共同創業者兼CEOのAsaf Lifshitz(アサフ・リフシッツ)氏はメールで教えてくれた。

「上記のプロセスは、より時間がかかり手作業です」とリフシッツ氏はいう。「ビジネス保険の確保は、仲介業者の1日の大半を占めます。見積書を集め、顧客がそれを理解するのを助け、申請書を処理し、保険会社と何度もやり取りして補償を確定するのに何時間も費やされます」。

その代わりに、Sayataは、仲介業者が入力したビジネスに関するいくつかの情報に基づいて、主要な保険会社から複数の保険の見積もりを提供する、完全に自動化され、オンラインで行われるマーケットプレイスを開発した。これらの見積もりは、保険プランに関するカスタマイズされた参考資料とともに、保険の選択と確保をするために企業に転送される。

このアプローチにより、Sayataを利用する仲介業者は、より多くの、より良い補償オプションを顧客に提供することができ、リクエストに迅速に対応することができるようになる。リフシッツ氏によると、このような簡単なプロセスにより、顧客はSayataのパートナー仲介業者が提供する保険に加入することが多いとのことだ。

現在、Sayataは100以上の仲介業者や保険会社のパートナーから、1000人以上のユーザーを抱えている。同社はAxis(アクシス)、Brit(ブリット)、Hiscox(ヒスコックス)、Tokio Marine(東京海上)などの保険会社や、At-Bay(アットベイ)、Coalition(コーリション)、Cowbell(カウベル)、Corvus(コルヴス)の大手技術系総代理店と提携している。

同社は、リフシッツ氏、Avishay Maya(アヴィシェイ・マヤ)氏、Iddan Golomb(イダン・ゴロン)氏によって2017年に設立されて以来、合計6000万ドル(約68億3400万円)を調達している。今回の追加資本により、同社は2021年同時期の17名から47名へと人員を増強することができる。

また、リフシッツ氏が米国内だけで1000億ドル(約11兆3900億円)以上と推定している、中小企業向け保険市場をさらに開拓することも可能になる。

「中小企業向けの商業保険をより良い方法で確保したいという市場の要望は多いです。現在、同社は主にサイバー保険をプラットフォームで提供していますが、当社の顧客からは、Sayataのプラットフォームにもっと多くの保険種目を追加して欲しいという要望が特に寄せられています。今回のラウンド延長は、その需要に応えるために新しい保険種目をより早く拡大するためのすばらしい方法です」と同氏は述べている。

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(文:Christine Hall、翻訳:Akihito Mizukoshi)

Metaが(おそらく)民間最速のAIリサーチ用「SuperCluster」でスパコン戦争に参入

地球上で最も大きく、最もパワフルなコンピューターを構築するための世界的な競争が過熱する中、Meta(別名Facebook)は「AI Research SuperCluster(RSC、AIリサーチ・スーパークラスター)」でその混戦に飛び込もうとしている。完全に稼働すれば、世界最速のスーパーコンピュータのトップ10に入る可能性があり、言語やコンピュータビジョンのモデリングに必要な大規模な演算に使用されることになる。

OpenAIのGPT-3が最も有名であろう大型AIモデルは、ノートPCやデスクトップではまとめられるものではなく、最先端のゲーム機をも凌駕する高性能コンピューティングシステムによって、数週間から数カ月にわたって継続的に計算された最終的な成果だ。また、モデルのトレーニングプロセスが早ければ早いほど、そのモデルをテストして、より良い新しいモデルを生み出すことができる。トレーニングの時間が月単位になるというのは、とても重要なことだ。

RSCは稼働しており、同社の研究者たちはすでにそれを使って仕事をしている。ユーザー生成データを使用して、と言わなければならないが、データはトレーニング時までに暗号化されており、施設全体が外部インターネットから隔離されていることをMetaは慎重に説明した。

スーパーコンピュータは驚くほど物理的な構築物であり、熱、ケーブル配線、相互接続などの基本的な考慮事項が性能や設計に影響を与えるが、RSCを構築したチームは、ほとんどリモートでこれを成し遂げたことを当然のことながら誇りに思っている。エクサバイト級のストレージはデジタル的に十分な大きさに聞こえるが、実際にどこかに存在し、現場でマイクロ秒単位でアクセスできる必要がある(Pure Storageも、このために同社が用意したセットアップを誇りに思っている)。

RSCは現在、760台のNVIDIA DGX A100システムをコンピュートノードとして使用しており、これらのシステムには合計6080個のNVIDIA A100 GPUが搭載されている。Metaは、米ローレンス・バークレー国立研究所のPerlmutterとほぼ同等の性能を持つと主張している。これは、長年のランキングサイト「Top 500」によると、現在稼働しているスーパーコンピュータの中で5番目に強力なスーパーコンピュータとなる(ちなみに、1位は今のところダントツで日本の富岳である)。

これは、同社がシステムの構築を続けることで変わる可能性がある。最終的には約3倍の性能になる予定で、理論的には3位の座を狙えることになる。

そこに補足説明があるべきなのは間違いない。2位の米ローレンス・リバモア国立研究所のSummitのようなシステムは、精度が求められる研究目的で採用されている。地球の大気圏内の分子を、これまでにない詳細なレベルでシミュレーションする場合、すべての計算を非常にたくさんの小数点以下の桁数で行う必要がある。つまり、それらの計算はより多くの計算コストを要するということだ。

Metaは、AIアプリケーションでは結果が1000分の1パーセントに左右されるわけではないため、同様の精度は必要ないと説明する。推論演算では「90%の確率でこれは猫である」というような結果が出るが、その数字が89%でも91%でも大きな違いはない。難しいのは、100個ではなく、100万個の物体や語句に対して90%の確実性を実現することだ。

それは単純化しすぎだが、結果として、TensorFloat-32(TF32)演算モードを実行しているRSCは、他のより精度を重視したシステムよりも、コアあたりのFLOPS(1秒あたりの浮動小数点演算)を多く得ることができる。この場合、189万5000テラFLOPS(または1.9エクサFLOPS)にもなり、富岳の4倍以上になり得る。それは重要なことだろうか?もしそうであれば、誰にとって?もし誰かいるとすれば、Top 500リストの人々にとっては重要かもしれないので、何か意見があるか聞いてみた。だが、RSCが世界最速のコンピュータの1つになるという事実は変わらないし、おそらく民間企業が独自の目的で運用するものとしては最速だろう。

画像クレジット:Meta

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(文:Devin Coldewey、翻訳:Dragonfly)