定額制ランチサービス「POTLUCK」で「テイクアウト保険」の適用開始

RYM&CO.が提供している月額定額制ランチテイクアウトサービス「POTLUCK」。30日間有効のチケットを購入することで、さまざまな飲食店のランチがテイクアウトできるサービスだ。

月額料金(税別)によってチケットの枚数が異なり、4080円の場合は6枚(1食あたり680円)、1万2000円の場合は20枚(同510円)のチケットを付与される。2万4000円の食べ放題プランもある。同社によると、事前予約制で待ち時間がなく限られたランチタイムを有効に使えるとのこと。

現在のところ営業エリアは都内の渋谷・恵比寿・代官山・表参道エリアのみだが、2018年9月3日のスタートから半年が経過した2019年に3月3日に累計注文数が1万食を突破するなど、順調にユーザーを増やしている。2月12日には100名限定で月額1万2000円の食べ放題プランを募集、翌日には上限に達した。

同社はサービスの向上を目指し、3月13日から「テイクアウト保険」の提供を開始した。これは三井住友海上火災保険との連携で実現したもの。万が一の事故が発生した場合に、テイクアウトの提供者や利用者が追加費用を一切支払うことなくサポートを受けられるというもの。具体的には、食中毒などが発生した場合の賠償金などを、テイクアウト提供者が個別で加入するPL保険の上限金額を超過した際に、その不足分をテイクアウト保険で支払うというもの。保険期間は1年間で上限金額を1億円。なお、テイクアウト保険が適用されるテイクアウト提供者は、支払限度額1億円以上のPL保険を加入していることが条件となる。

1000万MAU突破のnoteが新たに法人向けの「note pro」をローンチ

メディアプラットフォーム「note」を展開するピースオブケイクは3月13日、法人向けの新サービス「note pro」を正式にローンチした。

note proはnoteの仕組みを用いて、企業が手軽にウェブメディアを運用できるサービス。2019年1月に月間アクティブユーザー数(MAU)が1000万人、会員登録者数も100万人を超えたnoteの基盤を活用できる点が大きな特徴だ。

ゼロからサイトを作るよりも立ち上げのコストを抑えられるため運用のハードルが低く、集客面でもクリエイティブへの関心が高い層を中心にnoteユーザーへのリーチが見込める。またサブスクリプションなどの課金システムを備えているほか、11サイトのECカートとも連携しているため、有料マガジンやメディアコマースのような形で収益を上げたい企業にも使いやすい。

ピースオブケイクによると、近年noteのサービス規模が拡大する中で個人のクリエイターだけでなく企業の利用も広がっているそう。たとえば昨年7月に資本業務提携を結んでいる日経新聞社では、2017年夏に立ち上げた「COMEMO」を昨年12月にnote上へ移行。noteと日経双方のユーザーやコンテンツが交わるような場所として、現在も運用を続けている。

加えて社員ブログをnote上で展開しているZaimのように、ブランディングや採用広報の文脈でnoteを活用するケースも増加。土屋鞄製造所とnote公式が実施している絵本投稿企画など、noteの基盤を活かしたブランディングの事例も生まれてきているようだ。

これまで一部企業に提供していたnote proのβ版は導入社数が150社を突破。今回正式にサービス化することでさらに多くの企業へと広げていく計画で、上述した機能のほか、独自ドメインの適用やメニュー・ロゴのカスタマイズ、SmartNewsへの外部配信機能などを月額5万円から提供するという。

Amazonが米国の出店者に価格統一を強いる契約条項を廃止か

Amazonは、同社の米国内プラットフォームに出店している独立販売者が、同じ製品を他サイトで安く売ることを禁止していた契約条項を解除する計画であることを、ビジネス情報サイトのAxiosが報道した。

Amazonがこの価格統制方針を撤回したのは、リチャード・ブルメンタル上院議員がAmazonのポリシーを反トラスト法に則って調査するよう 司法省に要請したことを受けてのことだ。要請の数日前、民主党大統領候補のエリザベス・ウォーレン上院議員は、Amazon、Google、Facebookの分割を自身の選挙方針の主要課題であると発表した

最恵国(Most Favored Nation、MFN)条件とも呼ばれるAmazonの価格統制条項は、競争優位性をもたらす一方、その規模ゆえに、消費者にとって公正な競争や価格に影響をおよぼす懸念がある。Amazonは2013年、英国公正取引局およびドイツの連邦カルテル庁の捜査対象になった後EUの出店者に対する価格統一規約を解除した

ブルメンタル議員は声明で、Amazonの「賢明かつ歓迎すべき決定は、Amazonに虐待的契約条項の削除を余儀なくさせた積極果敢な支援と広報活動があってようやく実現した」。さらに彼は「私は今も、反競争的行為を取り締まるべき規制当局が居眠り運転状態でいることが、米国のイノベーションと消費者に多大な犠牲をもたらしていることを深く懸念している」と語った。

TechCrunchはAmazonにコメントを求めている。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

Amazonが有力ボイスアプリの開発者に報酬を支払うプログラムをフランス、イタリア、スペインに拡大

Amazonは、有益で品質の高いボイスアプリを作成したAlexaの開発者に直接、現金で報酬を支払うプログラムを、ヨーロッパの新しいマーケット(フランスイタリアスペイン)に拡大している。Alexa Developer Rewardsプログラムはゲームのスキルを作成した開発者に対して2017年に米国でスタートし、その後、対象とするスキルのカテゴリーを広げてきた。また、ヨーロッパの有力マーケットであるドイツと英国、さらに日本とインドもすでに対象となっていた。

Alexa Developer Rewardsプログラムが、フランス、イタリア、スペインで開始されたことで、教育・レファレンス、フード・ドリンク、ゲーム・トリビア、子ども向け、ヘルス・フィットネス、ライフスタイル、音楽・オーディオ、仕事効率化といったカテゴリーの優れたスキルに報酬が支払われることになった。

このプログラム自体はAmazonがボイスアプリのエコシステムを作ろうとしている大きな戦略の一部で、開発者が自分のボイスアプリから継続的に収入を得られる時期がまだ到来していないことから実施されている。

Amazonは開発者に対し、スキル内購入ワンタイム購入物理的な商品の販売といったマネタイズの手段を提供しているが、Amazonからの直接的な支援なしにこれらの手段だけで開発者がボイスアプリから確実な収入を得ることは難しい。そして開発資金となる収入が得られなければ、開発者はAlexaスキルの開発をあきらめて、よそへ行ってしまうかもしれない。

これまでのところ、開発者のエコシステムに対して直接投資するというAmazonの方針はうまく機能している。

現在、AmazonのAlexaスキルのストアには、どの競合他社よりも多くの他社製ボイスアプリが登録されている。クリスマスシーズンにAlexa対応デバイスが大量に売れ、ボイスアプリの数は2月の時点で8万に上った。その成長ぶりはすさまじく、米国で利用できるAlexaスキルの数はこの1年で2倍以上になった

これまでに人気のAlexaスキルの多くは、広く使われているモバイルアプリを声で操作できるようにしたものだ。代表的なものとしては、音楽アプリ、話し言葉、瞑想アプリ、クイズ、ゲーム、ワークアウトアプリなどのオーディオベースのアプリがある。

しかしAlexaが成長し続けていくためには、米国以外でスマートスピーカー人気が高まりつつある重要なマーケット向けにローカライズされたボイスアプリを提供することが重要だ。その点ではGoogleに利があるかもしれない。Googleアシスタントは高度な言語機能を備えていて、英語以外の多くの言語に対応しているだけでなく、多言語対応通訳サポートなどの機能もある。

Amazonは、2017年にAlexa Developer Rewardsプログラムを開始して以来、20カ国以上の開発者に対して「多額の」報酬を支払ったとしている。開発者は報酬を受け取るために登録をする必要はなく、アプリが条件を満たせばAmazonから開発者宛にメールが届くことになっている。

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(翻訳:Kaori Koyama)

辛い葬儀を補佐するEver Lovedが本当の問題に取り組む

アリソン・ジョンストン氏は、死というものに関連するスタートアップを立ち上げようと考えていたわけではなかった。Googleに買収されたQ&Aアプリ「Aardvark」の初期の社員だった彼女は、InstaEDUという個人指導アプリを立ち上げ、それをCheggに売却した。彼女はマスマーケットの消費者向け製品を開発していたのだ。ところがその後、「私の家族が末期癌と診断されたのです。私は彼女のことをずっと憶えているにはどうすればよいか、と考えました」と、当時を思い出して語った。また別のソーシャルアプリを創り出すことは、それほど重要ではないと、すぐに判断した。

「私は葬儀業界について調べ始めましたが、身近に死を経験した家族を支援したり、案内したりするような拠り所となるものが、ほとんどないことに気付いたのです。オプションや価格について理解したり比べたりするのは難しく(いずれにせよ私がこれまで想像していたよりもはるかに高かったのですが)、そうした情報や、思い出を他の人と共有できるような良いツールもありませんでした」とジョンストン氏は語った。米国内では平均9000ドル(約100万円)にもなる高額な葬儀のコストと、いろいろなオプションを突きつけられて、ただでさえ危機に瀕した家族は、途方に暮れることになる。

Ever Lovedの共同創立者兼CEOのアリソン・ジョンストン氏

ジョンストン氏が起したEver Lovedは、葬儀に関する手続きの間、心の安らぎを提供したいと考えている。これは、葬儀場、墓地、棺、骨壷、墓石を比較して購入し、レビューできるサイトなのだ。価格のガイドを提供し、Amazonで人気のある葬儀商品を推薦して5パーセントのアフィリエイト料を受け取る。それによって、Ever Lovedが無料で提供する追悼サイト作成機能の経費をまかなっている。そのサイトでは、葬儀の詳細、思い出や追想を共有することができる。さらに家族は資金を募集して、自分たちの費用をまかなったり、慈善団体を支援することさえできるのだ。

このスタートアップは、1年ほど前にSocial Capitalと、多くのエンジェル投資家からシード資金を調達した。今では、毎月何十万ものユーザーがEver Lovedのショッピングサイトや追悼サイトを訪れている。Ever Lovedは、ゆくゆくは、独自に葬儀サービスと製品の販売サイトを立ち上げたいと考えている。そこでは販売代金の10パーセントを徴収し、葬儀社に対して商取引用のソフトウェアを販売する。

「人は死について語りたがりません。私たちの社会ではタブーなのです。それにほとんどの人は、前もって計画するということを、まったくしていません」と、ジョンストン氏は語った。人の死に際して必要なものを慌てて準備するというのは、とても辛いものだ。ジョンストン氏は、Ever Lovedがそのストレスをいくらか軽くすることができると信じている。「私は、シリコンバレーの人が、ほとんど経験したことがないような分野を探したかったのです。それは、若くて都会に住むプロフェッショナルのためだけのものではないのです」。

この老朽化した業界を近代化することには、多くの機会がある。そのためには、持続可能なビジネスモデルと、人の感情を大切にすることが不可欠だ。ジョンストン氏によれば、葬儀場の86パーセントは独立した会社なので、ハイテクを導入するリソースを持っているところはほとんどない。この分野の数少ない大企業としては、時価総額70億ドルで株式公開しているService Corporation Internationalがある。葬儀社や墓所を統括してはいるものの、価格の透明性を確保したり、苦難の最中にある家族のためにユーザー体験を向上させたりといったことは、ほとんど実現できていない。評価やレビューが公開されない場合が多く、顧客は選択肢が多過ぎる割に、高い金額を払わされることになりがちだ。

スタートアップとしては、たとえばFuneralWiseのように、直接競合する企業もある。この会社は、教育とフォーラムに焦点を当てているものの、しっかりした予約機能や、追悼サイト作成機能は備えていない。もう1つのFuneral360は、Ever Lovedの最大のライバルだ。しかし、Ever Lovedの追悼サイトの方が見栄えがよく、ステップバイステップで使えるより踏み込んだ価格見積もりと、葬儀場に関する詳しい情報も得られる。

ジョンストン氏は、終活関連の販売による利益を、Ever Lovedの追悼サイト作成、資金募集機能の財政基盤とし、無料、または安い価格を維持したいと考えている。それによって、市場の関心を高め、先導的な役割を果たそうというのだ。しかし、未だ誰もブレークしておらず、結婚サイトThe Knotの葬儀版になることができていない。

私は学生時代からジョンストン氏を知っていた。彼女はいつも際立った先見性を持っていて、ブレークしそうなものを嗅ぎ分けていた。かなり初期のBox.comでのパートタイム的な仕事から、AardvarkでのQ&Aやオンデマンド解答、さらにはInstaEDUによるオンライン教育の急成長に至るまで、彼女は大きな潮流の先頭を駆け抜けてきた。そして、日陰に置かれてきたビジネスを再構築することは、現在のハイテクにとって運命的に重要なのだ。

Amazonでは、価格とレビューを前もって調べることができる。それにならってEver Lovedは、米国の葬儀社の約3分の2から料金の見積もりを集め、実際に使った人々の声を募集している。それにより、誰でも近所にある4つ星以上の葬儀場をすぐに検索し、質の高い結果をすぐに得ることができる。一方、葬儀場側では、契約して自分のページを持つことができ、情報を提供できるのだ。

Facebookは、オンラインのイベントページを広めた。しかし、その融通の効かないアクセス権、万能的な雰囲気、反感のせいで、葬儀の詳細を公開するには、礼を失した場所のように感じさせるきらいがある。また、故郷を離れた人々にとって、新聞はそうした情報を適切に広める媒体ではない。Ever Lovedは、このような厳粛な瞬間のために特別に作られたもの。招待状の管理を容易にし、追悼記事を収集する場所を提供し、写真や思い出も共有できる。

GoFundMeページへのリンクをクリックしなければならないというのも面倒なので、Ever Lovedは追悼サイトの中に資金集めの機能を備え、てきるだけ多くの寄付を募る。ほとんどの人にとって、葬儀には貯金している金額以上の費用がかかるので、これは非常に重要だ。Ever Lovedでは、手数料が課金されるだけで、サイトの訪問者の意思でチップを追加できるようになっているため、一般的な資金集めのサイトほど高くつくことはない。

それから、「2つの重要な点は、私たちのサイトですべてを確実に予約することができること、そして死後に必要なことをサポートできることです」と、ジョンストン氏は続けた。というのも、葬儀は死後の手続きの始まりに過ぎないからだ。Ever Lovedは遺されたものの処理にも手を差し伸べる。「誰かが亡くなった後にしなければならないことは、文字通り何十もあります。社会保障事務所への連絡、銀行口座を閉じ、Facebookのプロフィールを削除すること…」。

ジョンストン氏によると、44%の家庭で遺産を分割する際にもめごとがあるという。そして、それには平均で560時間、フルタイムの仕事に換算して3ヶ月もかかるというのだ。団塊の世代に属する人は、今後30年でいなくなる。その際、その資産の30兆ドル分が遺産として相続されることになると、彼女は主張する。その一部だけでも相続できるようにするため、会葬者に遺産分割の一般的な方法を説明する手段を提供することで、争いを軽減することができるはず。その部分で、Ever Lovedは利益を得ることができるかもしれない。

「最初のころは、私も、これについて人々に話すことが気まずかったのです。私たちは死というものを嫌うので、いろいろな面で行動が妨げられているのです」と、ジョンストン氏は締めくくった。筆者自身の家族も、これに苦しんだ。死ぬことを受け入れるのを拒んだ結果、祖父母は自分たちがいなくなった後のことを計画することができなかった。「しかし私は、これは会話を始めるとても良い機会であって、決して沈黙すべきときではないと、すぐに気付きました。これは、人々がより多く話し合い、そこからより多くのことを学びたいと思うはずの話題なのです。ハイテクは、すでにそこそこの人生や仕事を手にしている人にとって、単にそれらをより良くするためだけのものでありがちです。ハイテクが悲劇を和らげられれば、シリコンバレーにとって歓迎すべき進化でしょう」。

画像クレジット:ProCollage

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(翻訳:Fumihiko Shibata)

60代以上のフリマアプリ利用者は「お金」より「つながり」を重視、メルカリ調査

メルカリは全国のフリマアプリ利用者および非利用者1648名を対象に「60代以上のフリマアプリ利用実態」に関する意識調査を実施し、3月11日に調査結果を公表した。

結果を見ると、60代以上のシニアは「お金」よりも人との「つながり」を重視しフリマアプリを利用する傾向にあるのがわかる。

「フリマアプリ利用後の意識変化を教えてください」という問いに対し、60代以上のフリマアプリ利用者の26.8%が「社会とのつながりを感じるようになった」と回答している。これは20代の約3倍だ。逆に「新品を購入するとき、フリマアプリで売れるかを考慮するようになった」「生活の不安が軽減した」と回答している60代は20代と比較して少ない。

「フリマを始めた当初の利用目的」では20代の71.6%が「お金を得るため」と回答。まあ、妥当だろう。だが、比較すると同様の目的でフリマアプリの利用を開始した60代は約半数だった。「誰かの役に立つため」という回答も20代と比較して多いのが目立つ。

「歳を重ねても働く目的」は「生活資金を稼ぐため」がもちろん、最も多い。だが、2番目に多い回答は「趣味・娯楽」のための“小遣い稼ぎ”をしのぎ、「人とのつながりを持つため」だった。

「今後チャレンジしたいこと」に関しても「社会貢献活動」が20代と比較すると多いのがわかる。

60代以上の回答者に対し、金融資産、不動産、貯蓄などを含む現在の資産の状況を聴取し、利用者、非利用者別の資産合計額から平均資産額を算出したところ、利用者の平均資産額は約2500万円、非利用者は約2100万円となり、利用者の方が資産額が多かった。

「フリマアプリを利用して、あなた自身に起こった変化」についての自由回答では、60代以上の利用者から「日本中の購入者・出品者等、他者とのコミュニケーションを取れることに喜びを感じるようになった」「人と人とのつながりの大切さも実感するようになった」といった回答が得られたという。だが、そのような回答がどれほどあったのか、また、20代からも同様の回答があったのかは定かではない。

同調査は慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科の前野隆司教授監修の下、行われた。

前野隆氏

前野氏いわく、60代のフリマアプリ利用者の利用目的は「お金」より「つながり」を重視する傾向にあり、利用するシニアは利用しないシニアよりも「リッチで幸せであり、働く意欲が高く、チャレンジしたいことがある」。

そう説明しつつも「この調査からは因果は断定できないことには注意していただきたい」「フリマアプリ利用が原因なのか結果なのかは、この度の調査からはわからない」と同氏は加える。

だが、フリマアプリ利用の結果として「繋がりが増えた」「売買を通してのコミュニケーションが楽しかった」といった回答結果もあることから、「フリマアプリを利用した結果として多様なつながりが増えてリッチで幸せになった人がいるかもしれない」という可能性は否定できないそうだ。

【調査概要】
調査時期:2019年2月16日(土)
調査方法:インターネット調査
調査対象:全国、1648名
60歳~、男女824名(フリマアプリ利用者412名、フリマアプリ非利用者412名)
20~29歳、男女824名(フリマアプリ利用者412名、フリマアプリ非利用者412名)

スクウェア・エニックスも利用、職場向けメンタルヘルス・プラットフォーム「Unmind」

「この社会におけるメンタルヘルスのサポートは不十分だ、特に職場では」

そう話すのはイギリスのメンタルヘルス領域のスタートアップUnmind(アンマインド)の共同創始者でCEOのニック・テイラー。彼は臨床心理士でもある。

2016年創業のUnmindが提供するのは職場向けメンタルヘルス改善プラットフォームの「Unmind」。従業員のメンタルヘルスを改善するためのツールやトレーニング、精神状態のアセスメントなどを提供する。Unmindのスマホアプリではストレス発散、睡眠改善、集中力アップのための特別なプログラムも用意されている。

「誰にだってメンタルヘルスがあり、健康な精神状態を保つためのサポートは労働者の活躍に不可欠」(テイラー)だが提供されるサポートの多くは問題が起きてから対応し、かつ、“好印象”とは言い難いため、従業員の理解を得ることは難しい。

一方で、Unmindは誰もがメンタルヘルスを改善そして悪化を予防するために使える“ポジティブ”なソリューションとなっている。テイラーいわく、“匿名”で利用できる同プラットフォームを提供することで、従業員たちは自らのメンタルヘルスを積極的に計測、管理、そして改善することが可能だ。

「従業員はいつでもどこでも、匿名で、Unmindを使うことができる」(テイラー)

Unmindは現在、Square Enix、John Lewis & Partners、Made.com、William Hill、Yorkshire Building Society、Thomsons Online Benefits 、そしてPentland Brandsなどをクライアントとして抱えている。

「我々はまだ若い会社だが、Unmindはすでに世界中で使われている」(テイラー)同氏いわく、同社は1000人以上の従業員を抱える企業にUnmindを提供することに重点をおいているという。

そんなUnmindはロンドンのFelix Capitalに加え、Thomsons Online Benefitsの創業者であるMichael WhitfieldとChris Bruceから合計で300万ポンドの資金調達を実施したと明かしていた。

同社は調達した資金を元に、プロダクトを改良し、コンテンツを増やしていくという。同社のより大きな目標は、メンタルヘルスに関し「深く理解し、教育され、尊重される」職場作りに貢献することだ。

【原文】

(TechCrunch US版の記事を翻訳、編集しました)

アップルのドラマ版「バンデットQ」監督は「マイティ・ソー バトルロイヤル」のタイカ・ワイティティ

「マイティ・ソー バトルロイヤル」や「シェアハウス・ウィズ・ヴァンパイア」などで知られる映画監督のタイカ・ワイティティが、アップルのドラマ版「バンデットQ」の監督を務める。Deadlineが3月11日、報じた

このバンデットQはアノニマス・コンテント、パラマウント・テレビジョン、そしてメディア・ライツ・キャピタルによる共同制作。同シリーズの存在は去年、明らかになった

原作はテリー・ギリアム監督による、同タイトルのファンタジー映画だ。製物語は一人っ子の少年ケビンと小人たちによる時空を移動する旅について。ショーン・コネリー扮するアガメムノンやロビン・フッド役のジョン・クリーズが登場する。

ワイティティはバンデットQ以外にもシェアハウス・ウィズ・ヴァンパイアのテレビドラマ版、スター・ウォーズシリーズ初のドラマ版「The Mandalorian」にも関わっていて、自身の最新作「Jojo Rabbit」は2019年秋に公開される予定だ。

僕たちは1年以上もアップル関連の映画やドラマについて追ってきたが、3月25日のイベントで、ようやく同社のストリーミングに関するオフィシャルな情報を聞けるかもしれない。

【原文へ】

(翻訳:Daisuke Kikuchi)

Facebook広告チームがエリザベス・ウォーレン上院議員の選挙広告削除で墓穴

Facebookの広告部がまたやらかした。今回はエリザベス・ウォーレン上院議員の、巨大IT企業の分割を提案する選挙広告を撤去した。

その攻撃的広告が削除された理由は、Politicoによると、広告内でFacebookブランドが使われていたかららしい。

一方、同議員の大統領選挙陣営による、Facebook、Amazon、およびAlphabet(Googleの親会社)による数多くの買収を解消させる計画に関する広告はFacebookから削除されていない。

実際、削除は短時間だったようだが、ウォーレンの選挙運動には反発材料を与え、数多くのニュース見出し、ツイート、リツイートのネタになった。

「当社企業ロゴの利用規約に反していたため当該広告を削除した」とFacebookの広報担当者がBuzzfeedRyan Macに語った。「活発な議論を可能にするために、広告を再掲載した」。

Facebook広報チームはよくやった。報道によると問題の広告にはFacebookロゴが入っていないというからなおさらだ。

しかし、ダメージはすでに始まっている。巨大IT企業は情報伝達方法に強大な力を持ちすぎている(特に自社プラットフォームでは)というウォーレンの主張に格好のネタを与えてしまった。

これは些細な出来事かもしれないが、巨大テクノロジー企業の私欲と自社プラットフォームでコンテンツを規制する能力が、広告においてさえも、言論の自由への圧力となることに対して、さまざまな立場の態度を硬化させることになるだろう。

[原文へ]

(翻訳:Nob Takahashi / facebook

アップルが3月25日に新動画ストリーミングサービス発表か、AirPowerやAirPods 2はどうなる?

Apple(アップル)は米国時間3月11日の午後、3月25日にクパチーノのスティーブ・ジョブズ・シアターで開催れるスペシャルイベントの招待状を記者たちに送った。

諸説によると、その日のキーノートの主役は、ハードウェアでもソフトウェアでもなく、同社のコンテンツ事業らしい。招待状に付随している、かなりそのものずばりのヒントによると、そのイベントではビデオコンテンツのサービスが全面的に紹介されるようだ。招待状付随の動画は最初にフィルムリールのカウントダウンが数秒あり、最後に「It’s show time.」というメッセージが表示される。

[3月25日午前10時のイベントへの招待状と付随動画]

Appleはこれまで、大量のテレビ番組を提供してきたし、制作中のコンテンツに関する発表も多かった。でも奇妙なことに、それらを支えるプラットホームとか、サブスクリプションに関する情報は、ほとんど聞かれなかった。

Apple Newsが発表されたときにはサブスクリプション制の話もあったが、でも今回はビデオサービスの本格的なマーケティング色が濃厚だから、ニュースサービスがそこでついでに言及されることも、ありえないだろう。干された企画といえば、今回ハードウェアの発表もない雰囲気だ。AirPowerや第2世代のAirPodsは、とっくに発表があってもいい頃合いだけどね。

[原文へ]
(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

Googleはセクハラ告発された幹部2名に計120億円近くの退職金を支払っていた

Googleは、セクシャル・ハラスメントで訴えられていたAndy Rubin(アンディー・ルービン)氏とAmit Singhai(アミット シングハル)氏に合計1.05億ドル(約117億円)を支払っていた。ウォールストリートジャーナルが最初に報じた。これは以前New York Times が報じたGoogleがルービン氏に9000万(10億円)ドル払ったという記事を裏付けるとともに、Googleがシングハル氏にも1500万ドルに払ったことも暴露している。シングハル氏はGoogleでセクシャル・ハラスメント疑惑について告知しなかったことが明らかになった後Uberを去った

裁判は株主であるJames Martin(ジェームズ・マーチン)氏が起こしたもので、取締役会がルービン氏に9000万ドルの退職金一式を「彼への餞別として与えることを認めた。もちろん、ルービン氏の「辞職」の真の理由(Google在職時の重大なセクシャル・ハラスメント)については言及されなかった」

訴状は、シングハル氏がどうやって「2016年に信憑性の高いセクシャル・ハラスメントの申立てを受けた後、静かにGoogleを去り、数百万ドルの退職金を受け取ることが許されたか」を説明している。

訴状は、Googleが提供した文書を挙げ、Googleがシングハル氏に4500万ドル支払うことに同意したが、競合会社に転職したため最終的に1500万ドルしか払われなかったことを暴いている。当初Googleはシングハル氏に年間1500万ドルの現金を12カ月、退社後24カ月支払うことにと同意した。さらにGoogleは、競合会社に転職しないことを条件に、退社後36カ月間に最大1500万ドルを追加で支払うことを提案した。

「Googleの取締役会がシングハル氏の退社理由を隠蔽したために、同氏は実入りのよい職に再度就くことができた」と訴状に書かれている。

シングハル氏は2016年2月にGoogleを辞める前、検索担当上級副社長だった。当時は自分の辞職理由を引退と説明していたが、引退は1年以下しか続かなかった。2017年1月、シングハル氏はUberに就職した。その1カ月後、当時UbeのCEOだった Travis Kalanick(トラビス・カラニック)氏はシングハル氏に対して、Googleでのセクシャル・ハラスメント問題を告知しなかったことが判明した後、退職を要求した。Bloomberg宛のメールでシングハル氏は、「ハラスメントはいかなる状況でも許されない。私はそのような行為を容赦せず、自ら起こしたことはないことをみんなにわかって欲しい。20年間の経歴の中で、このような申立を受けたことはなく、Googleを辞めた決断は私自身によるものだ」と書いた。

2018年11月、Googleは48人がセクシャル・ハラスメントを理由に退職したと発表した。うち13人はシニアマネージャー以上だった。当時Googleは、該当者で退職金を受け取ったものは一人もいないと言っていた。今日TechCrunchに届いた声明で、Google広報担当者は次のように語った。

誰であれGoogleで不適切な行動をしたものには深刻な結果がもたらされる。近年、当社は職場環境に数多くの変更を加え、権威ある地位にいる人々による不適切な行為に対する処置を一層厳しくしている」

訴状全文は以下で読むことができる。

[原文へ]

(翻訳:Nob Takahashi / facebook

製造業のアナログな購買業務をITで変革、元キーエンスの起業家が作った「RFQクラウド」

「元々新卒で入社したキーエンスで、営業として主に中部地方の自動車関連メーカーを担当していた。当時実際に体験したのが、同じ企業でも工場や部門、担当者が変わるだけで同一製品が違う価格で売れるということ。そこにずっと違和感を感じていたからこそ、今の事業を立ち上げた」

そう話すのは、テクノロジーを用いて製造業の課題解決に取り組むA1A代表取締役社長の松原脩平氏だ。

松原氏が着目したのは製造業において競争力の源泉となる“モノの仕入れ”の領域。従来各社の購買調達部門が担ってきたが、多くの担当者が「購入品目の価格が妥当なのか、そもそも最適な価格はいくらなのかがわからない」という共通の悩みを持っているという。

その解決策となるのがA1Aの開発する購買調達部門向けの見積もり査定システム「RFQクラウド」だ。本日3月12日にβ版がローンチされた同サービスは、煩雑な見積プロセスをクラウド上で完結させる仕組みを通じて「価格の透明化」を実現し、最適価格での購買と担当者の業務効率化を支援する。

100社にヒアリングした結果を集約したプロダクト

一般的に製造業の購買担当者は適切な価格でモノの仕入れを行うべく、数社のサプライヤに見積を依頼した上で明細や図面の内容を精査し、類似品と比較した後に発注先を決定する。この業務は高度な専門性と経験が求めらる一方で、現在もアナログ的な要素が多く効率化が進んでいない。

結果として「個別品目ごとに十分な見積査定を実施できていないという企業が多いのが実情」(松原氏)なのだそう。担当者間で見積のデータが共有されていないため、業務が属人的になったり、ブラックボックス化したりといった課題もある。

「プロダクトを立ち上げるにあたって約100社にインタビューを実施したところ、各担当者が似たようなことを言う。そもそも製造業は部品がものすごく多く、車だと3万点ほど。1人あたりが数百〜数千の取引先を持ち、膨大な品目数を担当している。ただでさえ各見積の項目数が多いことに加え、サプライヤごとにフォーマットもバラバラでどうしようもない状況に陥っている」(松原氏)

A1Aが購買担当者にヒアリングをした中で見つかった代表的な課題

RFQクラウドでは見積査定に必要な情報をデータベース化することで、これらの課題を解決する。

複数のサプライヤの見積を横並びで比較できるように情報の粒度を統一し、クラウド上に蓄積。データを貯めていくことで、簡単に過去の見積とも比べられる環境を整える。加えてエクセルとメールが主流だった一連の業務フローをクラウド上で行うことによって、属人化を解消するとともに工数の大幅削減も実現する。

大雑把に紹介するとRFQクラウドはそんなプロダクトだ。A1Aではこのサービスを購買担当者の使用ID数による月額課金モデルで展開する計画。1IDあたりの料金は月額2万円からだ。

見積プロセスをクラウド上で完結させ、価格を透明化

ここからは同サービスの特徴的な機能をもう少しだけ詳しく紹介していきたい。

まず複数の見積を比較する上でボトルネックになっていた「見積フォーマットや項目がサプライヤごとに異なる」問題を解決するために、“バイヤー指定統一フォーマット”を取り入れているのがポイントだ。

そもそも従来は見積をサプライヤ側から提出するのが一般的だったため、フォーマットにズレが生じていた。RFQクラウドでは見積プロセスをバイヤー(購買担当者)起点に置き換え、同一のフォーマットを複数のサプライヤに送付することで、戻ってきた見積をそのまま比較できるようにする。

見積の回答をシステム上で受け付けることにより、各社ごとにメールのやりとりを何往復もしたり、送られてきた見積の内容をエクセルなどに転記する手間もない。フォーマットの項目はカスタマイズできるので、自社にとって必要な項目を効率よく把握することが可能だ。

また、これまではフォーマットがバラバラだったり、見積データのファイル形式が紙やエクセル、PDFなど異なっていたため過去の見積と比べるのも難しかった。RFQクラウドの場合は各社の見積が同じ形式でクラウド上に貯まっていくので、見積データベースが自動で構築されるようなイメージに近い。

松原氏いわく「価格の妥当性を見極めるには、相見積もりだけでは不十分。過去の見積と比較することも非常に重要」なのだそう。同サービスは一度データベースを作ってしまえば、明細検索機能や抽出したデータの横並び比較表示機能を通じて、複数社の見積や過去のデータを簡単に参照できるのがウリだ。

これらの特徴に加えて、見積プロセス全体をクラウド化することで、属人化しがちだった工程やブラックボックスとなっていた部分がクリアになる。出し直しなどにかかる余計な工数を大幅に削減できる利点もあり、テスト的にクローズドで提供していたα版の導入企業では見積査定工数が1/5程度に短縮された例もあるという。

「購買担当者は原価を何パーセント下げたかをKPIとしていることが多く、とにかく原価を下げたいという思いが強い一方で、これまでは下げる材料がなかった。自分たちは業務効率化が主目的ではなく、あくまで原価を下げることにコミットしている」(松原氏)

売り上げの規模が大きい企業ほど、わずか1%の原価の変動でも業績に多大な影響を及ぼす。だからこそ最適価格での購買をサポートするシステムには明確なニーズがあるようで、β版についてもすでに大手企業を中心に約20社での導入が決まっているという。

ゆくゆくは「企業間取引」を支えるプラットフォームへ

A1A代表取締役社長の松原脩平氏

冒頭でも触れた通り、松原氏はキーエンスの出身。同社を経てコロプラの子会社であるコロプラネクストでベンチャーキャピタリストとして働いた後、2018年6月にA1Aを創業している。

RFQクラウドの原案となるアイデアはキーエンス時代から考えていたそう。2018年7月にはBEENEXT、PKSHA Technology、コロプラネクスト及び複数名の個人投資家から5300万円の資金調達も実施し、プロダクトの開発を着々と進めてきた。

松原氏によると、購買担当者向けの既存プロダクトとしては大手Sierが手がける「発注システム」がメインとなるが、その前段階の「サプライヤの選定から見積依頼・査定、発注先の決定」に至るプロセスを最適化するようなソリューションはほとんどなかったという。

一部の発注システムベンダーはオプションとして発注前のプロセスに対応した機能も提供するが、これは発注システムの拡張機能として利用するのが基本。これまでオンプレ型のシステムが中心だった市場にSaaS型のプロダクトとして挑む格好になり、コスト面や導入ハードルの低さでも大きな違いがあるということだった。

A1Aでは今回紹介したようにRFQクラウドを通じて「価格の透明化」を進めていくが「これはあくまでファーストステップにすぎない」(松原氏)とのこと。次のステップでは価格以外の軸で取引の妥当性を評価できる機能のほか、サプライヤ企業向けの機能も提供していく方針。最終的にはシステム上でバイヤー企業とサプライヤ企業の最適なマッチングをサポートする「企業間取引プラットフォーム」を見据えている。

「もともとA1Aという社名も『B2B取引をワンランク上にしたい』という思いからきたもの。バイヤー向けの見積査定システムから始めることで、1社のバイヤーに紐づく数百〜数千のサプライヤーをサービス上に巻き込めるというメリットもある。まずは企業間取引の入口である『見積』のデータ化を通じて最適価格での取引を支援しつつ、ゆくゆくはB2B取引の基盤となるプラットフォームを目指していきたい」(松原氏)

20歳になったSalesforceから学ぶ、スタートアップ成功の心得

Salesforceは、3月8日に創立20周年を迎えた。当時はOracleやSiebel Systems(シーベル・システムズ)などの1990年代のCRM市場の巨人たちを追いかけていた、この小さくて元気な企業が、今や本格的SaaS企業へと成長した。年間収益が140億ドルを超える同社は、これまで作られたものの中で最も成功している純粋クラウドアプリケーションである。

20年前の時点では、それは製品を出荷することを狙う、アイデアを抱えたスタートアップの1つに過ぎなかった。今では、同社の起業当時にまつわる伝説が語られるようになっている。それマーク・ザッカーバーグ氏の大学寮の部屋や、スティーブ・ジョブズ氏のガレージのようなものではなく、すべては1999年のサンフランシスコのアパートの一室から始まった。元Oracleの幹部だったマーク・ベニオフ氏と開発者のパーカー・ハリス氏がインターネット上で実行されるビジネスソフトを開発するためにチームを組んだのだ。彼らはそれをSalesforce.comと名付けた。

1999年の営業初日に、そのアパートに集まったほんのひと握りの従業員たちの中で、20年後の姿を想像できていた者はおそらくいなかっただろう。特にそれがドットコムクラッシュの始まる一年前だったことを思うとなおさらだ。

今や歓喜の頂点へ

すべては1999年3月8日に、サンフランシスコのモンゴメリー通り1449番地にあるアパートから始まった。そこがSalesforceの最初のオフィスが置かれた場所である。最初に集結した4人の従業員は、ベニオフ氏とハリス氏、そしてハリス氏のプログラミング仲間であるデイブ・メレンホフ氏とフランク・ドミンゲス氏だった。この場所を彼らが選んだのは、ベニオフが近くに住んでいたからだ。

SaaS(Software as a Service)という名のもとに、最初に市場に投入されたものがSalesforceだ、という表現は正確なものではないだろう。この用語はその数年後に登場したものだからだ。実際に、当時は他にもたくさんのエンタープライズソフトウェアのスタートアップたちが、ビジネスをオンラインで行おうとしていた。たとえばその中には、後にNetSuiteに名前を変え、2016年にはOracleに93億ドルで売却されたNetLedgerなどがいた。

ほかにもオンラインCRM競合企業としては、Salesnet、RightNow Technologies、そしてUpshotといった企業が存在していた。いずれの企業も数年のうちに売却されることになる。だがSalesforceだけが独立した会社として生き残った、それは2004年に株式公開され、最終的には世界のトップ10のソフトウェア企業の1つに成長することになる。

共同創業者でCTOのハリス氏は、当初こうしたことが起きることは想像していなかったと、最近語っている。もちろんベニオフ氏とは出会っており、彼がなにか凄いことが起きると考えていることは知っていたのだが。「当時私達が20年後にこんなにも成功した企業となり、世界にこれほどの影響を持つようになるとは、私自身はほとんど想像していませんでした」とハリス氏はTechCrunchに語った。

止めるものは何もなかった

ベニオフ氏とハリス氏が出会ったのはまったくの偶然というわけではなかった。ベニオフ氏は、オラクルからサバティカル(長期一時休暇)を取って、インターネット上で実行されるセールスオートメーションツールを開発することに狙いを定めていた。一方ハリス氏、メレンホフ氏、そしてドミニゲス氏の3人は営業自動化ソフトウェアソリューションを開発していた。そして両者のビジョンが合体することになったのだ。しかし、クライアントサーバーソリューションを構築することと、オンラインソリューションを構築することはとても異なるものだった。

1998年に送られた、マーク・ベニオフ氏からパーカー・ハリス氏へのミーティング出席依頼電子メール(パーカー・ハリス氏の厚意による)

これが1999年だったということを思い出して欲しい。この頃にはサービスとしてのインフラストラクチャ(IaaS)という概念は存在していない。Amazonが2006年にAmazon Elastic Compute Cloudを発表するまでには、まだ何年も待たなければならなかった。そこでハリス氏と彼の勇敢なプログラミングチームは、スケール可能で成長するソフトウェアの開発とサーバーの提供を、自力で行うことになった。

「ある意味では、それが私たちを成功させた理由の1つなのです。何より先に、私たちは世界規模で考えなければならないことに気付いていたからです」とハリス氏は言う。解くべき問題は、ある大企業向けにCRMツールを1つ構築しては、その組織の需要に合わせて拡張して行ったり、それを次々に横展開して行ったりすることではなかったのだ。本当に行おうとしていたのは、人びとがサインアップするだけでサービスを使い始めることができるような方法を編み出すことだったのだ、と彼は語る。

「ある意味では、それが私たちを成功させた理由の1つなのです。何より先に、私たちは世界規模で考えなければならないことに気付いていたからです」(ハリス・パーカー氏)(Salesforce

それはいまでは、ありふれたやり方に思えるかもしれないが、1999年にビジネスを行う方法としては決して一般的ではなかった。当時のインターネットは、消費者向けの無数のドットコムたちによって支配されていたが、その多くは翌年、またはさらにその翌年に破綻することになる。Salesforceは、オンラインでエンタープライズソフトウェア企業を立ち上げることを望んでいた。そうした試みをする企業は彼らだけではなかったものの、先行者の常として前例のない課題に直面し続けていた。

「当時『サービスとしてのインフラストラクチャ(IaaS)』が世の中になかったために、ハードウェア層での最適化が行えなかったために、私たちは大規模マルチテナントと呼ぶソフトウェアを作成しました。そしてその上で、最適化を行ったのです。実際には、初期段階では私たちはとても小規模なインフラストラクチャを持っているだけでした」と彼は説明した。

夢を追い続けて

当初からベニオフ氏はビジョンを持っており、ハリス氏はその構築の責任を負った。2007年にZuoraの共同創業者となるティエン・ツオ氏がSalesforceの11番目の従業員になったのは、ビジネスのためのアパートオフィスがオープンして5ヶ月後のことだった。その時点では、まだ公式の製品は存在していなかったが、ベニオフ氏がツオ氏を雇ったときにはそのリリースは迫っていた。

ツオ氏が言うには、彼はプロダクトマネージャーとしての役割を期待していたのだが、彼のOracleでの営業経験を見たベニオフ氏は、彼をADR(Account Dvelopment Representative、マーケティングの集めた見込み客情報を、適切な営業チームに引き渡す役割)として雇用した。「私の本能は、この男に逆らうな、ただ引き受けよ、と告げていました」とツオ氏は語る。

Salesforce.comの初期プロトタイプ(写真提供:Salesforce)

ツオ氏が指摘するように、少数の人間しかいないスタートアップでは、結局肩書には、あまり大きな意味はなかったのだ。「あなたの肩書が何だったかなど、誰も気にしません。私たち全員がそのような姿勢でした。コードを書くか書かないかの違いがあるだけです」と彼は言った。コーダーたちは、サンフランシスコ湾を眺めることのできる2階で隠れるように仕事をしており、ベニオフ氏からは彼らの邪魔をしていけないという厳命が下されていた。残りの従業員たちは階下にいて、顧客を獲得するために電話をかけていた。

「あなたの肩書が何だったかなど、誰も気にしません。私たち全員がそのような姿勢でした。コードを書くか書かないかの違いがあるだけです」(ティエン・ツオ氏)。

Salesforce.comのWayback Machine上の最初のスナップショットは、1999年11月15日のものである。洒落たものではないがCRMツールに期待するものがひととおりそろっていることがわかる。アカウント、連絡先、商談、予想、報告が、タブで分類されている。

このサイトが正式に立ち上げられたのは2000年2月7日だった。そのときの顧客数は200人だった。

遠い道のり

成功したスタートアップの背後にはみな、強力に推進するビジョナリーが控えているものだ。Salesforceの場合、その人物とはマーク・ベニオフ氏だ。彼が会社のコンセプトを思いついたとき、ドットコムブームは加速していた。それから1年か2年で、それらの多くは退場して行くのだが、1999年の時点は何でもありの状況だった。ベニオフ氏は大胆で無鉄砲で、そしてアイデアにあふれた人物だったのだ。

しかし、たとえいいアイデアであってもさまざまなな理由から上手くいくとは限らない。このことは多くの失敗したスタートアップの創業者なら骨身に染みて知っていることだ。スタートアップが成功するためには、この先どうなっていくかについての長期的なビジョンが必要である。ベニオフ氏はビジョナリーであり、そしてフロントマン、チャンピオン、チーフマーケターのすべてを兼ね備えた人物だったのだ。そう言われても彼は否定しないだろう。

The 56 GroupのマネージングプリンシパルでありCRM業界に関する複数の書籍(2001年に出版された「CRM at the Light」などを含む)があるポール・グリーンバーグ氏はSalesforceの初期ユーザーだった。彼によれば、初期の製品にはあまり感心しなかったそうである。ある記事の中ではそのエクスポート機能に対する不満を述べている。

当時のSalesforceの競合相手だったSalesnetは、グリーンバーグ氏の投稿に気付くと、その不満を自社のウェブサイトに掲載した。ベニオフ氏はそれを読むと、早速電子メールをグリーンバーグ氏に送信した。「私どもの製品に疑いを感じていらっしゃるようですね。説得力のある疑念は大歓迎です。納得していただけるよう話を聞いていただけるでしょうか?」グリーンバーグ氏は、ニューヨーカーらしく1行で返信したと語った。「お好きなように」。20年後、グリーンバーグ氏はベニオフ氏はその仕事をやってのけたと語った。彼をついに納得させたのだ。

「私どもの製品に疑いを感じていらっしゃるようですね。説得力のある疑念は大歓迎です。納得していただけるよう話を聞いていただけるでしょうか?」(初期のマーク・ベニオフ氏のメール)

SMBグループの共同創業者兼パートナーであるローリー・マッケーブ氏は、1999年にベニオフ氏がSalesforceを彼女のチームにプレゼンするためにやって来た当時は、ボストンのコンサルティング会社で働いていた。彼女はすぐにマーク本人に感銘を受けただけでなく、エンタープライズソフトウェアをオンラインにして、多くの企業の手に届くものにするという概念にも感銘を受けたと話す。

「彼は、SaaSでもクラウドでも、その他何と呼ぼうと構いませんが、そうしたものの舞台監督だったのです。決して他の人たちが素晴らしいビジョンを持っていなかったという意味ではありませんが、彼のドラムはひときわ大きく鳴り響いていたのです。そして、彼は非常に優れたストーリーテラー、マーケター、その他全てを兼ね備えた人物であるという事実に加えて、オンプレミスソフトウェアはほとんどのビジネスにとって手を出せないものであるという正しい認識を持っている人物だと思いました」と彼女は語った。

極端にやろう

ソーシャルメディアが登場するよりも前の時代に、ベニオフ氏が世間の注目を会社に集めるために行った方法の1つは、ゲリラマーケティングのテクニックだった。彼はインターネット上のソフトウェアを説明する方法として「ソフトウェア不要(no software)」というアイデアを思いついた。2000年2月にモスコーンセンターで開催されたSiebelの会議に、彼は初期の従業員の何人かを「抗議」のために送り込んだ(下の写真)。彼は主要な競争相手の1つにゲリラ的に挑んだのだ、そのことによって、テレビニュースクルーたちによる十分な注目を集め、ウォールストリートジャーナルの中で言及されるほどの騒ぎを巻き起こすことに成功した。こうしたことはみな、まだ初期段階にあった会社にとって、貴重な宣伝となった。

写真提供:Salesforce

ブレント・ラーリー氏は、2003年に業界コンサルタントとして独立し、現在の自分の会社であるCRM Essentialsを立ち上げた人物だ。彼によればこの製品を売り込む力こそが、同社にとっての差別化の力であり、彼の注意を引いた点だと言う。「私はSalesnetやその他のものについても聞いたことがありましたが、Salesforceは本当に良い製品を提供していただけでなく、すでにそれを力強く推進していたのです。彼らは『ソフトウェア不要』の福音を全面的に打ち出すことで、この競争を有利に運んでいるように思えました。そしてそれもショー全体の一部だったのです」とラーリー氏は、Salesforceとの初めての協業体験について語った。

さらにラーリー氏は「私が最初にDreamforce(Salesforceの年次ユーザー会議)に参加したのは2004年でした、その年の会議は特に印象的なものでした。なぜならそれは2004年のエレクションデイ(米国の公職選挙の日)に開催され、ジョージ・W・ブッシュ大統領のそっくりさんがやってきて開会宣言を行ったのです。それが本物の大統領だと思った人もいたことでしょう」と付け加えた。

グリーンバーグ氏は、「ソフトウェア不要」キャンペーンは、ソフトウェアをオンラインで提供するというアイデアを、人間のレベルで語ったことが素晴らしいと語った。「マークが『ソフトウェア不要』と言うとき、もちろん彼自身はソフトウェアがあることは知っていました。ですが、彼が本当に素晴らしい点は、ビジョンを人びとに届ける力に長けているところなのです」。1990年代から2000年代初頭にかけてのソフトウェアは、主にCD(または3.5インチフロッピーディスク)の箱に入って出荷されていた。よってソフトウェア不要という言葉は、そうしたソフトウェアに直接触る必要がないことを人びとに理解させた。単にサインアップして使うだけでよいのだ。グリーンバーグ氏によれば、このキャンペーンは、当時提供手段として一般的でないオンラインソフトを、人びとに理解させる役に立ったということだ。

カルチャークラブ

Salesforceを会社として差別化している大きな要因の一つは、創業1日目から続くその企業カルチャーである。ベニオフ氏は責任ある資本主義のビジョンを持ち、その最初期の計画文書の中に、彼らの慈善1-1-1モデル(1%の誓約)を記している。そのアイデアとは、Salesforceの株式の1%、製品の1%、および従業員の労働時間の1%をコミュニティに提供するということだ。ベニオフ氏がかつて笑いながら述べたように、その誓約を行ったときには、彼らは製品を持っておらず、まったくお金を稼いでもいなかった。しかし彼らはその誓約を忘れず、他の多くの企業もSalesforceが生み出したモデルに従っている。

画像提供:Salesforce

Wildcat Venturesのパートナーであり、ジェフリー・ムーア氏(著書「キャズム」で有名)と「Traversing the Traction Gap」という本を共同で著したブルース・クリーブランド氏は、まさしくベニオフ氏がやったように、初期にカルチャーを確立しておくことが、スタートアップにとって不可欠だと語る。「CEOは、そうしたカルチャーを、自社の運営基準だと言い切らなければなりません。私たちが価値を置くのはそういうところなのです。こうすることで社員たちは、お互いに責任をもって日々の運営を行っていくのです」とクリーブランドは語った。それがベニオフ氏のやったことなのだ。

また別の要素は、顧客との信頼関係を築くことだった。これは今日に至るまでベニオフ氏が追求し続けているテーマである。ハリスが指摘したように、1999年の時点では、まだ人びとはインターネットを完全には信頼していなかったので、同社はクレジットカード情報をオンラインで入力することに対する抵抗を克服しなければならなかった。だがそれ以上に困難だったことは、利用する企業たちに、彼らの貴重な顧客情報をインターネット上で預けることに同意させることだった。

「私たちは規模について考えるだけでなく、顧客の信頼をどのようにすれば得られるのかについても考えなければなりませんでした。顧客に向かって私たちは、ご自身で管理なさるよりも、私たちの方が同等以上に良い情報保護をご提供できますと説得したのです」とハリス氏は説明した。

成長する

同社はもちろんこれらの抵抗を克服し、さらに進むことができた。現在Oktaで共同創業者兼CEOを務めているトッド・マキノン氏が2006年にエンジニアリング担当副社長としてSalesforceに入社したのは、会社が1億ドル規模の会社に成長を始めた頃だった。彼は当時を振り返り、ある程度の成長痛があったことを語る。

2006年から現在に至るSalesforceの収益の成長(グラフ出典:Macro Trends

彼が就任したとき、Salesforceは3台の中規模Sunサーバーを、コロケーション施設に置いて運用していた。マキノン氏はそれは現代の基準から考えるとハイエンドとは言えないものだったと言う。「現代のMacBook Proに搭載されているものよりもおそらく少ないメモリーしか搭載されていなかった筈です」と彼は笑いながら言った。

着任時には同社にはまだ13人のエンジニアしかおらず、実際のインフラストラクチャへの要求はまだとても低かった。それは彼が任にあたっていた6年の間に変わることになるのだが、彼が入社時点ではそれは上手く動作していた。5年以内に、それは劇的に変化したと彼は語る。その当時同社は自社データセンターを運営し、Dell X86サーバーのクラスタを運用するようになっていたが、変更は不可避だった。

その変更を行うために、彼らはもう一度Sunに戻って、そのとき売られていた最大のサーバーを4台購入し、そしてすべてのデータを転送した。問題は、Oracleデータベースがうまく機能していなかったことだった。そのため、マキノン氏が語ったところによれば、Oracleのラリー・エリソン氏に電話をかけることになった。設定について話を聞いたエリソンは、どうしてそのような設定にしているのかと質問してきた。彼らがそれを設定した方法は単純に上手くいかないやり方だったのだ。

彼らはそうしたことをすべて解決して、先に進むことができたが、こうしたことは現代のスタートアップなら出会うことのない危機だっただろう。なぜなら現代なら企業は自社ハードウェアではなく、クラウドインフラストラクチャサービスを利用するからだ。

ウィンドウショッピング

これとほぼ同じ時期に、Salesforceは買収を通じて成長する戦略を開始した。2006年には、その後続いていく買収の最初の1社として、Sendiaという名の小さなワイヤレステクノロジー企業を1500万ドルで買収した。これは最初のiPhoneが発売される1年前の2006年の時点だが、同社はすでにモバイルについて考えていたのだ。

昨年、同社は52回目の買収を行った。これはこれまで行ったものの中でも最も高額なものだった。MuleSoftを65億ドルで買収したのだ。そのソフトウェアを使うことでSalesforceの顧客はオンプレミスとクラウドの世界の橋渡しを行うことが容易になる。グリーンバーグ氏が指摘したように、これは会社からのメッセージに大きな変化をもたらした。

「SalesforceによるMuleSoftの買収により、バックオフィスとフロントオフィスの間、およびオンプレミスとクラウドの間のサイクルを、ほぼ完全に自己完結させることができるようになりました。そして突然気付くのです、彼らは『ソフトウェア不要』と言っていないということに。彼らはオンプレミスを攻撃していないのです。おわかりのように、そうした話はみな脇へ追いやられてしまったのです」とグリーンバーグ氏は語った。

成長して優先順位が変化していく中で、完全に一貫性を保てる企業は存在していないが、もしどのように成功する企業を成長させるべきかの青写真を、スタートアップとして探しているのなら、Salesforceは学ぶべきとても優れた企業である。20年が経った今も、彼らは成長し続けており、まだ強くなっている最中だ。そして責任ある資本主義のための力強い発言力でもあり続けている。仕事をしながら多くのお金を稼ぎ、コミュニティに対しても還元を行っている。

さらに学ぶことができるもう一つのレッスンは、これで終わりではないということだ。20年というのは大きな節目だが、成功した組織にとっては長めの1歩に過ぎないのだ。

画像クレジット: Getty Images

[原文へ]

(翻訳:sako)

オランダ当局がCookieウォールはGDPRの要件を満たさないと判断

(編集部注:この記事は米国時間38日に掲載された)

オランダのデータ保護当局(DPA)は、ウェブサイトに入るための料金的に、インターネットブラウジングが広告目的でトラッキングされることに同意するようウェブサイト訪問者に求めるCookieウォールは欧州データ保護法にそぐわないとの見解を昨日示した。

DPAによると、当局にはCookieの利用についての同意を拒否したあとにウェブサイトへのアクセスがブロックされたインターネットユーザーから何十もの苦情が寄せられた。そのため、この件について明確なガイダンスを示す運びとなった。

DPAはまた、ユーザーからの苦情が最も多かった複数の組織に、GDPRを遵守するよう促す忠告書を送ったことも明らかにし(組織名は伏せている)、今後さらに監視を強化する方針だ。

昨年5月に導入された欧州のGDPR(一般データ保護規則)は、法律に基づいて個人データを処理するよう、同意のルールを厳格化している。このルールでは同意を求める際は明確な説明がなされ、選択する自由をユーザーに与えることを定めている。

もちろん同意は個人データの処理に伴う法的な措置というだけでなく、多くのウェブサイトが、ユーザーがウェブサイトにアクセスした時に広告目的でのCookieに同意するよう求めている。

そしてオランダのDPAのガイダンスは、サードパーティのCookie、トラッキングピクセル、ブラウザの指紋テックなど、いかなる追跡ソフトウェアが使われようとも、インターネットビジターは前もって追跡の許可を尋ねられなければならない、と明確に示している。そしてその許可は自由に 基づいて得られなければならないともしている。つまり、そこには選択の自由がなければならない。

ゆえに別の言葉で言うと、アクセスしたければデータをよこせ的なCookieウォールは反している。DPAはこのように言っている。「真に自由な選択がなければ許可は自由ではない。または、許可しなかった結果、不利を被ることがあれば自由とはいえない」。

さらには「これはそれだけの意味があるウェブサイト訪問者が個人データがきちんと保護されていると信頼できる状態になければならない」(Google Translateでの翻訳)と明確にウェブサイトに記されている。

ウェブサイトがきちんと機能するため、そしてサイト訪問の一般的な分析のためのソフトウェアについては問題はない。ウェブサイト訪問者の行動のモニターや分析、そしてそうした情報を他のパーティーとシェアすることは許可がある場合のみ許される。その許可は完全に自由裁量によるものでなければならない」と付け加えている。

我々がDPAに問い合わせたところ、広報は個々の苦情についてはコメントできない、としながらも次のように述べた。「CookieウォールはGDPRの同意の原則に即したものではない。つまり、ウェブサイトにCookieウォールを活用しているパーティーは全てできるだけ早期にGDPRに沿うものにしなければならないことを意味する。きちんとGDPRに準じたものになっているか、我々は数カ月以内にチェックする。このチェックは必ず行う」。

説明に照らすと、インターネット広告協議会(IAB)の欧州サイトのCookieウォールは、まさしくしてはいけないことのいい例のようだ。このオンライン広告産業の団体は、たった1つの同意選択のもとに、複数のCookie(サイト機能用、サイト分析用、サードパーティー広告用)を使用している。

ウェブ訪問者に「同意しない」という選択はまったく提供していない(下の写真にある、さらなる情報やプライバシー・ポリシーのボタンをクリックしてもない)。

もしユーザーが「同意します」をクリックしなければ、ユーザーはIABのウェブサイトにアクセスすることはできない。ゆえに、ここでは選択の自由はない。同意するか、サイトへのアクセスをあきらめるかだ。

さらなる情報クリックすると、IABがどういう目的でCookieを使っているのかさらなる説明がある。そこには訪問者プロファイルをつくるために集めた情報を使っているわけではない、とある。

しかしながら、Googleプロダクトを使っているとも記されていて、そうしたプロダクトのいくつかは訪問者の情報を広告目的で集めるかもしれないCookieを使っていると説明している。よって、ウェブサイトのサービス同意に広告トラッキングを含ませているわけだ。

繰り返しになるが、サイト訪問者に提供される選択肢は「同意する」か、ウェブサイトにアクセスすることなくそのまま去るかとなっている。つまり、自由な選択ではない。

IABCookieウォールに関してデータ保護当局から何の接触もないとTechCrunchに対し述べた。

オランダDPAのガイダンスを考慮してCookieウォールを改める意思があるかどうかを尋ねたところ、広報はチームがそうする意向があるかどうかはわからない、と述べた。ただ、GDPRはアクセスを同意に基づく条件付きのものにすることをただちには禁止していない、と広報は主張した。また、ここで適用されると主張する(2002年の)ePrivacy Directiveを持ち出して、「ePrivacy Directiveには、十分に説明されたCookieの同意に基づいてウェブサイトのコンテンツが条件付きになることに言及する詳しい説明がある」とも説明した。

「我々はこの点についてCookieバナーの使用を変更しようとは考えていない。なぜなら、Cookie使用への同意なしに我々のウェブサイトにアクセスできるようにするよう法律では求められていないからだ」とIABでプライバシー政策を担当するディレクターMatthias Matthiesen氏は、その後の電話取材で話した。

IABの考えというのは、この件に関してはePrivacy DirectiveGDPRに勝る、というものだ。

しかし、彼らがどうやってその結論にたどりついたのかは不明だ。(GDPRが昨年施行されたのに対し、ePrivacy Directive15年以上前からあり、現在アップデートの最中だ)。

Matthiesen氏の言葉を引用すると、彼がいう法の一般原則は同じことに関する2つのルールの相違があった場合、より具体的な方の法律が優先される。(それから推測すると、GDPRePrivacy DirectiveCookieウォールの部分で相違があるようだ)。

IABが言及しているePrivacy Directiveの箇所は前文25のようだ。そこには以下のような文言が含まれる。

特定のウェブサイトコンテンツへのアクセスは、合法な目的で使用されるのであれば、十分に説明されたCookieまたは類似のデバイスに関する同意にもとづき、条件付きとなることがある。

しかしながら、特定のウェブサイトコンテンツは、すべてのサイトのアクセスを意味しない。たとえば、サイト全てへのアクセスをCookieウォールでブロックすることではない。

加えて、前文で指摘している合法の目的Cookie同意に基づいてアクセスを制限することとは相反していて、要注意点だろう。前文の文言には、合法な目的として情報社会サービスの提供を促進するものを例に挙げている。

情報社会サービスとは何だろう。先の欧州指令ではサービスを法的言葉として遠隔から電子上で、そして受け取り側の個々のリクエストに基づいて提供されるもの、と定義している。これから察するに、インターネットユーザーがネットサーフをするときにそうしたユーザーを裏で追跡する広告ではなく、インターネットユーザーが実際にアクセスするインターネットコンテンツ例えばウェブサイトそのもののことを指している。

ゆえに、別の言葉でいうと、時代遅れのePrivacy Directiveを根拠としていても、IABのサイトはそれぞれのサイトごとにCookie使用の同意をユーザーから得る必要がある。

しかし、それはウェブサイト訪問者が自身のブラウジングが普及している方法で広告事業者に追跡されることに同意しない限り、ウェブサイト全体にアクセスできるようになるということではない。

それは、ウェブサイト訪問者が求めている種類のサービスのウェブサイトではない。

加えて現在の話に戻すと、オランダのDPACookieウォールを解体する明確なガイダンスを打ち出している。

唯一、ここでの道理にかなった法的解釈はウォールがCookieウォールを指して書かれていることだ。

IABMatthiesen氏はもちろん意見を異にする。

「法律というのは複雑で、書かれているほどにシンプルではない」と、この点で異議を唱えた。「ブラウザがウェブサイトに接続するとき、テクニカル的にローディングされるものにリクエストを出す。なので、サイトにロードされたコンテンツにリクエストを出している」。

「ウェブサイトはウェブサイトオーナーの所有物だ。所有物に付随する基本的な権利もまたある」と彼は付け加えた。「GDPRでは自分のウェブサイトコンテンツを人々に公開しなければならないとは言っていない。私がつくっている所有物についての条件を自分で決めるのになんら問題はない」。

「このことについてはあなたには何の権利もない。あなたに追跡を受け入れるよう強制することはできないというのは、確かだろう。あなたが強制されないというのは、あなたが私の所有物を使う必要がないということだ。これは、Cookieウォールの使用禁止と私の考え方と根本的に異なる点だ」。

そして彼は、この件を法的に明らかにするのに欧州司法裁判所に判断をあおぐことを提案した。Cookieウォールを使用することがないよう当局によって監視のターゲットとなっているオランダのウェブサイトが訴訟に持ち込むことが想定される。

この記事はDPAIABのコメントがアップデートされた。

イメージクレジット: Tekke/ Flickr under a CC BY-ND 2.0license.

原文へ、翻訳:Mizoguchi)

ディズニーの「キャプテン・マーベル」が初週末で興収500億円超、日本公開は3月15日

Marvel(マーベル)シリーズの最新作、映画、「 キャプテン・マーベル」はスマッシュヒットと判明した。公開最初の週末で女性スーパーヒーローを主人公にしたこの映画は4億5500万ドル(約505億円)の興行収入をディズニーにもたらした。

Marvelシリーズとして初の女性スーパーヒーロー主役にした作品であり、Marvel Studio自身のツイートによれば、公開後最初の週末の興行収入としてスーパーヒーローもの全体で「アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー」に次いで史上2位、全ジャンル総合で6位となった。

この映画の大ヒットは、従来無視されがちだったファン層が良質のエンターテインメントには喜んで料金を支払うことを再確認させたといえるだろう。Marvelの北米における興収1位は「ブラックパンサー」で、なんと7億ドル(約777億円)をかきあつめている

驚異的興収もキャプテン・マーベルだが、批評家の評価は分かれており、TechCrunchのAnthony Haは「よくできた映画だがブリー・ラーソンのスーパーヒーロー・デビュー作としてはやや期待はずれ」と述べている。

今回のリリースでMarvelは女性観客の動員に成功したようだ。ディズニーには観客のジェンダー・ギャップを着々と減少させつつある。キャプテン・マーベルはディズニーのスーパーヒーローものとして、ブラックパンサー、アントマン&ワスプと並んで男女差がもっとも少なかった作品となっている。Box Office Mojoの調査によれば、今回の週末の観客では男性が55%、女性が45%だったという。

作品のヒットはディズニーが準備しているストリーミング・サービス「Disney+」の立ち上げにも好影響をもたらすだろう。このサービスでは契約者獲得をMarvelとLucasFilm(ルーカスフィルム)というビッグネームに強く依存している(実は私もすでに契約した)。

ロキをトム・ヒドルストンが演じるプロジェクトが進行中だ。 ロキは「マイティー・ソー」と「アベンジャーズ」に登場する悪役ないしアンチ・ヒーローで複雑な性格づけだ。MarvelはこのキャラクターをNetflix/Marvel配信 の「ディフェンダーズ」の予告編に登場させていた。 MarvelとNetfilxの提携はその後解消されたので、今後ロキが登場する先品はDisney+を通じて配信されることになるだろう。

「キャプテン・マーベル」はDisney+で独占ストリーミングされることがすでに決定している。

【編集部注】公式サイトによれば日本公開は3月15日(金)

原文へ

(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

WellSaidは人間の代役が務まるほど自然な合成音声を公開

文字で読むより、口で言ってもらったほうがいいことは多い。しかし、今のところ最高の音声技術は音声アシスタントが独占していて、画面の読み上げやオーディオブックの自動生成などには使えていない。WellSaid(「うまい言い方」という意味)は、人の声の代わりになる高品質な合成音声による語りを、クリエイターにも使えるようにしたいと考えている。もしかしたら、自分自身の声を合成できるかもしれない。

この数年間で、ニューラル技術が手作業に頼っていた従来のアプローチを大幅に改善したことにより、音声合成は大きな進歩を遂げた。しかし、GoogleもAppleもAmazonも、その高度な音声技術をスマートフォンやホームハブのおしゃべりに限定して、それ以外の利用は決して許さない。

WaveNetのことを聞き、そのあとTacotronのことを聞いた私は、Googleの担当チームに連絡をとり、Google Booksの全書籍を対象とした自然な読み上げによるオーディオブックの開発をいつ始めるのか、または、AMP(Accelerated Mobile Pages)の機能やユーザー保護機能に採り入れる予定はあるのか尋ねてみた。だが返事はなかった。そのようなサービスを必要としている人は大勢いるのに、彼らはチャンスを逃していると私は感じた。

それだけに、私はWellSaidがその市場を奪おうとしていることを聞いて、私は喜んだ。曲がりなりにではあるが。この会社は、2017年にアレン人工知能(AI2)研究所によるインキュベーター・プログラムで創設が発表されている。かなりのマイペースだ。


アレン研究所はAIスタートアップと世界レベルの才能をつなぐためのAI2インキュベーターを支援(本文は英語)

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私は、CEOのMatt Hocking氏とCTOのMichael Petrochuk氏に話を聞いた。なぜ、音声合成のまったく新しいシステムを作ろうと考えたのか。彼らによると、そもそもの問題は、既存のシステムでは「まともに聞こえる」ようにするために、人の手による大量の注釈に依存していること、そしてその「まとも」さが常にまったく同じであることにあるという。数時間分の音声を読み込ませておいても、質問にどう反応するか、リストの各項目の間にどれだけ時間を開けるかといった判断は期待できない。こうした問題点を、詳細にあぶり出す必要があった。しかし最終的には、非常に効率的なシステムが完成した。

「目標は、毎回同じ発音で話す小さなモデルをチープ(演算が)に作ることでした。パーフェクトな声で」とPetrochuk氏。「私たちはTacotronと同じような研究を行い、技術的には超えることができました。しかし、スピーチをコントロールしたり、この任意構造をそこに押しつけることは考えませんでした」

「人間の声が自然に聞こえるのは、ある意味、一貫性がないからなのです」とHocking氏は言う。

一貫性のなさとなれば、人間から学ぶのがいちばんだ。彼らは数人の声優に協力してもらい、数十時間分の音声を録音してシステムに読み込ませた。注釈を入れるために「音声マークアップ言語」で文章の指定をする、などという必要はない。Petrochuk氏はこう話していた。「私たちは未加工のオーディオブックのデータからトレーニングをする方法を発見しました。それ以上に行うべきことは、何もありません」

そのため、WellSaidのモデルは、同じ言葉でも発音が違うことがよくある。そう話すよう、言語の手動モデルに念入りに指示を仕込んだわけではない。システムが模倣している声紋の持ち主が、そうしていただけだ。

しかし、実際にそれはどのような仕組みなのだろう? この質問は、WellSaidの秘伝に顔を突っ込むようなものだ。彼らのモデルは、あらゆる深層学習システムと同様、無数のインプットを踏まえてアウトプットを生成している。しかし、他の音声合成システムと比べて、彼らのものはずっと大規模で範囲が広い。抑揚や発音は管理する人間が決めるのではなく、音声から抽出されてリアルタイムでモデル化される。魔法のように聞こえるが、最先端のAI研究とはそういうものだ。

それは、どこか遠い場所にあるGPUクラスター・ソフトウェアを使うことなく、CPU上でリアルタイムに処理される。そのため、オフラインでも使える。多くの音声合成アルゴリズムがリソースを大量に喰うのに比べれば、これだけでも大手柄だ。

この音声は、どのような文章もごく自然に聞こえるように読み上げることが求められる。下の動画は、ある記事の最初の部分を読み上げたものだ(残念ながら私の記事ではない。私なら、もっと回りくどく甘美な文章を書いていたのに)。最初にGoogleのWaveNetが読み上げ、次にWellSaidが2回続けて読み上げている。

後の2つは、明らかに最初のものより自然に聞こえる。いくつかのフレーズは、人間が読んでいるものとほとんど聞き分けられない。それでも、高い確率で、確実に合成音声だとわかる単語も少なくない。

それでもかなり近いのだから、大したものだ。もし、私の記事を合成音声に読み上げてもらうとしたら、確実にWellSaidを選ぶ。通常の録音と同じく、微調整もやり直しも可能だし、エフェクトをかけることも可能だ。NPR(ナショナル・パブリック・ラジオ)で放送されたインタビューは編集を加えていない。お気づきだったろうか?

当初の目標は、このツールを仕事道具に加えることで、仕事の質を向上させ、労力を削減できるクリエイティブな人間を探すことだった。

「これを必要としている人は大勢います」とHocking氏は言う。「声優を雇う予算のないビデオのプロデューサーや、短時間に大量の文章を練り直さなければいけない人などです。英語が母国語ではない人にも、これはいろいろな扉を開いてくれます。ラジオ向けの声を持っていない人にも」

ソーシャルメディアの広告で、文章を表示して著作権フリーの音楽を流す代わりに、ワンクリックで音声を加えられるのは素晴らしいことだ(広告業界のみなさん、ご一考あれ)。

私は、声優たちの反応について聞いてみた。自分の声に置き換わる音声のために、そのトレーニングに協力した人たちだ。写真素材の声版のようなものだと思えば、声優も納得できるという。安く上げたいときは「あり物」を使い、きちんとやりたいときは役者にギャラを払う。将来のモデルに今から自分をはめ込もうとは思わないが、声優にも分け前が入る仕組みを、ひとつの可能性として受け入れている。仮想代役が報酬を得るという形は、ちょとした新しい展開分野となる。

本日、クローズド・ベータテストが開始された。同社のサイトから参加を申し込むことができる。最初は5種類の音声だけだが、WellSaidの市場進出が決まれば、さらに数が増え、オプションも加わるという。このベータテストは、目の不自由な人や、その他の障害を持つ人たちの参加も見込んでいるはずだ。それは私が、長年、望んできたことだ。

聞いたことがある声

次はどうするのだろう?もちろん、ユーザー自身の声の合成版を作ることだ。わかりきっている!ところが2人の創設者は、その可能性は十分にあるが的外れだと警告した。それにはいくつかの理由がある。

「現在は、一人分のデータを処理するのに、およそ20時間かかっています。しかし、将来は、生身の人間と変わらない声の質を保ちながら、1時間から2時間で処理できるようになります」とPetrochuk氏は言う。

「それに、データセットを作ることもできます。過去のコンテンツのカタログを持つ感じです」とHocking氏は付け加えた。

問題は、そのコンテンツが深層学習モデルにぴったり適合しない場合があることだ。進歩したシステムなので、当然のことながら繊細だ。微調整のための機能はあるものの、音声を微調整するためには、さらに元になる人の声を集めなければならなくなると彼らは言う。響きを強化したり、抑揚を強めたりしたい特定の文章を、声優に読んでもらわなければならないのだ。

彼らは、声優を監督することと、コードを調整することを比較した。どう考えても、カンマの後の間を8パーセントだけ、または15ミリ秒だけ増やせなどという指示を声優に出すことはできない。実例を聞かせるのがいちばんだ。「このように読んでください」と。

それでも、限定的な不完全なトレーニングデータからそこそこの品質の音声を作ることは大変に難しい。もし行おうとすれば、同社にとって大変な負担となる。

しかし、すでにお気づきの方もいるだろうが、この腐った「深層フェイク」の世界には、まがい物がある。ポッドキャストやスピーチを大量にダウンロードして十分な素材を集めれば、誰かさんの、おそらく有名人の、そこそこ聞こえる音声のレプリカが作れてしまう。すでに存在するフェイク動画などの画像合成の技術と組み合わされば、困った問題に発展することは明らかだ。

Hocking氏とPetrochuk氏にとって、これは何も新しい話ではない。AIに携わっている限り、この手の問題はかならず起きるからだ。

「これは非常に重要な問題です。私たちも真剣に考えました」とPetrochuk氏は言う。「私たちはAI2畑の人間です。そのモットーは『公益のためのAI』です。私たちも完全に同意しているもので、MVP(Minimum Viable Product、実用最小限の製品)を開発する以前にバラク・オバマ氏の声を合成した競合相手とは一線を画するところです。これを悪用されないよう、私たちは厳密に見守ってゆく覚悟です。自由に声が作れる機能は発表しません。誰でも、他人の声が自由に作れてしまうからです」

能動的な監視は、社会問題を引き起こしそうなAI技術を有する人たち全員が行うべきことだが、彼らは、合成音声であることを特定できるようにする緩和技術にも着目している。

コンテンツも広告も、だだの文章ではなく、マルチメディアによる表現にますます重きを置くようになる中、WellSaidは、成長市場の最初の立役者になるべく身構えているようだ。製品が進化し改良されたなら、たとえばタイムシフト・アプリ(5つの中から好きな声を選んで簡単にポッドキャストができる)など、新しい、より具体的な世界への進出が容易に想像できる。さらに、現在は音声アシスタントが占領している領域を奪うことも可能だ。私はそれを楽しみに思う。

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(翻訳:金井哲夫)

1度死んだGIFが復活した理由:大野謙介「GIF文化史」連載〜第1弾〜

「GIF文化史」/ 大野謙介 – 全3回連載概要

1987年に誕生し、インターネットのビジュアルコンテンツを支えた1990年代。FLASHによりミームとしての役割が弱まった2000年代。そして2011年、スマホ&SNSの爆発的普及によってサクッと手軽に楽しめるGIFは 「1) 次世代ビジュアル言語」また「2) 芸術、エンタメコンテンツ」として復活します。ファイルフォーマットの次元を超え、新たなポップカルチャーに変化しつつある「GIF文化」についてデータや事例と共に全3回で考察をします。

第1回 “1度死んだGIFが復活した理由”
第2回 “GIFの生存戦略 – 次世代ビジュアル言語編”
第3回 “GIFの生存戦略 – 芸術、エンタメコンテンツ編”

第1回 1分サマリー

本当に「GIF」が流行っているのか? 世界と日本それぞれ状況を定量的データや事例から考察します。そしてGIFが復活する理由となる2011年以降のスマホ&SNSの爆発的普及。また超短尺動画としての「GIF」の2つの役割 「1) 次世代ビジュアル言語」「2) 芸術、エンタメコンテンツ」について解説します。

「GIF(ジフ)」と聞いて一番に思い出すのは?

「GIF(ジフ)」と聞いた時にどんな映像が思い浮かぶでしょうか?いくつか代表的なGIFを見てみましょう。

インターネットのおもしろコンテンツとしてのGIF?

芸術として評価されるGIF?

出典:Ars Longa by Sholim © Sholim -GIFMAGAZINE

挨拶に使われるGIF?

© HattoriGraphics – GIFMAGAZINE

アニメや映画のワンシーンのGIF?

© 映画「アクアマン」【公式】-GIFMAGAZINE

 

現在、スマホでSNSやチャットを開けば、このように多種多様なGIFに簡単に出会うことができます。海外の方とFacebook Messengerでやり取りする人はGIFが送られてくるという経験をしているかもしれません。

しかし、日本で「GIF」と言うと、バナー広告としてのGIFや、どことなくギークな印象や古臭い印象を持たれている方が多いのではないかと思います。本当に世界でGIFは流行しているのでしょうか?

本当に世界でGIFは流行しているのでしょうか?

世の中の興味関心を定量的に表すデータとして、Googleトレンドを見てみましょう。Googleトレンドは、ある単語がどの国でどれだけ検索されているか、つまり興味関心を持たれているかを簡易的に知ることができるツールです。

「GIF」という言葉が「emoji(絵文字)」や「sticker(スタンプ)」と比べてどれほど検索されているのか、世界と日本のみで比較をしたグラフを見てみましょう。

2004年から2019年までの「GIF」の検索ボリューム推移:世界

グラフからわかること「世界のGIF」

  • 世界のGIFの流行は2010年7月頃から始まった。
  • 世界のemojiの流行は2014年2月頃から始まった。
  • 2019年2月時点でGIFはemojiの3倍検索されている。

2004年から2019年までの「GIF」の検索ボリューム推移:日本

グラフからわかること「日本のGIF」

  • 日本のGIFの流行は2014年6月頃から始まった。(※TwitterのGIF対応2014年6月と一致、世界から約4年遅れ)
  • 日本のスタンプの流行は2011年10月頃から始まった。(※LINEのスタンプ機能公開と一致)
  • 日本の絵文字は2012年3月頃をピークに大きく減少している(※LINEのスタンプ機能公開から5ヶ月後)
  • 日本の顔文字は2011年10月からピークに大きく減少している(※LINEスタンプ機能の公開と一致)

日本のスタンプの場合、Googleで探すというより、LINEで探す体験が主かと思いますが、上記の傾向自体は大きく間違いはないだろうと考えています。

またGIFとは別の話ですが、顔文字の検索数の大幅な減少タイミングとLINEのスタンプ機能が公開されるタイミングが一致していることを考えると「顔文字を衰退させたのはスタンプ」と言っても間違いはないかもしれません。

結論としては、GIFは、2010年7月頃から世界で流行し始めている。そして日本は約4年遅れで流行し始めていると言えそうです。また日本での流行は明らかにTwitterのGIF再生対応と一致してるのも面白いことだと思います。

ちなみに、アメリカでは2012年に「GIF」が流行語大賞に選ばれるほど一般的なコンテンツになっています。ここまでの事実から世界的にGIFは流行っているとは言えそうです。じゃあ2010年7月前後に何があったのかのでしょうか?

2011年、スマホ&SNSの爆発的普及

世界のスマホの出荷台数のグラフを見てみましょう。

出典:総務省 平成29年版 情報通信白書

2010年から2011年頃、世界的にスマホが普及していることがわかります。またそれに応じて、スマホのキラーアプリである、Facebook、TwitterなどのSNSのユーザー数も爆発的に増加します。

スマホが登場することにより、人が情報を得る体験が大きく変化しました。私自身も移動中の1分間、レジ待ちの2分間、トイレ中の3分間、スマホを反射的に開いてしまします。

就寝前の長時間スマホゲームやNetflixでの海外ドラマの長時間視聴を除くと、1) 非常に短い時間に、2) 何回もスマホを起動するので、1分の早回し料理動画を始め、サクッと短いコンテンツとしてGIFが好まれることは想像できます。

ちなみに、10代の女性は、1日あたり99回もスマホを起動するそうです。起きている時間を考えると10分に1回はスマホを立ち上げていると言えそうですね。

世界のGIF企業

ここまで、GIFが世界的に流行っていること、そしてその理由がスマホ&SNS、チャットの爆発的普及であることは説明をしました。すると、そのGIFを一箇所に集めたり、見やすくまとめられていると便利だと感じる人が増えてきます。

2013年ごろからアメリカ、中国、インド、日本、様々な国で各国ならではのGIFが楽しめるGIFプラットフォームが登場します。それぞれの名前と創業年、国を示します。

プラットフォーム名(創業年 国)

GIPHY (2013年2月 アメリカ)
GIFMAGAZINE (2013年7月 日本)
Tenor (2014年2月 アメリカ)
闪萌-weshine (2014年9月 中国)
GIFSKEY (2017年10月 インド)

GIPHY(アメリカ)はFacebook MessengerやInstagramなどを通じて毎日3億人が利用していると発表しています。また、2018年3月にはGoogleがTenor(アメリカ)を買収しました。

GIF検索はGoogle検索に現れない、感情検索エンジンとしても注目を浴びました。朝には「おはよう」のGIFを探します。昼には「ランチ」に関わるGIFを探します。告白したい人は「好き」のGIFを探します。

GIFを探すということは、Google検索ではわからない、毎日74億人が行う感情表現に貢献することにつながっていきます。

インドでは国内に多数の公用語が存在します。インドのGIFSKEYはヒンディー語やベンガル語などインドならではの9言語でGIFが探せるようになっています。英語をメインの検索キーワードとしたGIPHYやTenorでは対応しきれないGIFを見つけることできます。また宗教や独特なインド映画産業、国民的スポーツであるクリケットのGIFが人気で、GIFSKEYは地元インドに好まれるGIFを提供しています。GIFSKEYのトップページのカテゴリに「Gods(神)」が存在するのはインドならではと感じるおもしろい点ですね。

日本ではGIFMAGAZINEがLINEのトークの「+」メニューの中からGIFを送れる機能「ジフマガ」を2019年2月に提供開始しました。日本のアニメ、映画、芸能事務所、クリエイターなどの公式GIFコンテンツがLINEの中で送れるようになりました。

アメリカのGIFではフェアユースという考えが比較的浸透しています。ディズニーを始め多くの大手コンテンツホルダーが自社の映像コンテンツをGIFにして世界中の人に送り合ってもらったり、二次創作を許容しています。

日本はフェアユースという考えは浸透していませんし、コンテンツに対する愛や、クリエイターに対するリスペクトは非常に強い国です。

GIFMAGAZINEは、様々なクリエイターやアニメ、映画、芸能事務所の方々と共に、公式のGIFコンテンツを日本の方が楽しめるようにGIFを制作・配信しています。日本ではまさにこれからスタンプと並んでGIFが日常的に送られるようになるかもしれません。

GIFの本質は「超短尺動画」であるということ

ここまでの説明でGIFが復活した理由は、あくまでファイルフォーマットとしての魅力ではなく、「約3秒でループする動画」という「超短尺動画」としての性質がスマホ&SNSチャット環境にマッチしたからということは説明しました。

尺の違いによって動画の利用目的がどう違うのか実体験と照らし合わせて考えてみましょう。

“1分間”の早回し料理動画は自分自身が楽しむための目的として視聴します。しかし、URL自体を共有することはあっても、LINEの中で自分の感情表現として、コミュニケーションとして料理動画を送ることはなさそうです。

“3秒”のラッコのGIFを見てみてください。

©らっこの気持ち

「食後に自分で貝殻を返す健気なラッコがかわいい!」と自分自身が楽しむための目的として視聴することもできます。また、「ごちそうさまでした」という感情表現としてもLINEなどでコミュニケーションとして送ることはできそうです。

動画が超短尺(3秒前後)になると、コミュニケーションとしての役割が生まれることがわかる1つの事例です。

GIFの2つの役割

GIFの役割は2つあると考えています。

1) コミュニケーションコンテンツとしてのGIF
2) メディアコンテンツとしてのGIF

1) コミュニケーションコンテンツとしてのGIF、これはスタンプと同じ楽しみ方で、人に送るからこそ楽しいという超短尺だからこそできる動画の楽しみ方の1つです。

2) メディアコンテンツとしてのGIF、これは芸術や新たなエンタメコンテンツとして自分自身が楽しむという超短尺動画の楽しみ方の1つです。

まとめ

第1回では、本当に「GIF」が流行っているのかを定量的に見てみました。そしてGIFが復活する理由は2011年以降のスマホ&SNSの爆発的普及でした。それを支える各国にカルチャライズされたGIFプラットフォームの存在、そして超短尺動画としての「GIF」の2つの役割(送る楽しさ、自分で見る楽しさ)を解説しました。

第2回は「GIFの生存戦略 – 次世代ビジュアル言語編」と題して、1) コミュニケーションコンテンツとしてのGIFを見てみます。スタンプや絵文字と共に表意文字として世界中に送られるようになった理由を、1to1のコミュニケーションツールの歴史と共に考察してみましょう。

第3回は「GIFの生存戦略 – 芸術,エンタメコンテンツ編」として、2) メディアコンテンツとして、実際に芸術として評価されているGIFや政治、広告、エンタメに活用されるGIFについて、その理由を世界中の事例と共に考察してみましょう。

 

GIFって愛くるしいポンコツ感がたまらなくいいんですよね!Twitter(@sekai_seifuku)で感想やご意見いただけたら嬉しいです。DMもお待ちしています。ではまた次回お会いしましょう。

筆者

大野謙介 / GIFMAGAZINE 代表取締役社長 CEO

GIFの人。1989年、福島生まれ。2012年、横浜国立大学工学部卒。リクルート入社。2013年7月に「株式会社GIFMAGAZINE」を大学後輩の中坂雄平(CTO)と創業し、GIFプラットフォーム「GIFMAGAZINE」をリリース。世界中のチャットやSNSで頻繁に送り合われている「GIF」を通じて、絵文字やスタンプに続く「次世代ビジュアル言語の創造」を目指す。また「GIF」の芸術的側面とマスエンタメ側面(映画、アニメ)を両立した「新しいポップカルチャー」を創ることを目指している。Twitter(@sekai_seifuku)

(編集:Daisuke Kikuchi / TechCrunch Japan編集記者)

クラウドサービスのScalewayがGPUインスタンスを1時間1ユーロで提供

フランスのクラウド・ホスティング会社Scalewayは、Nvidia Tesla P100 GPUを使用した新しいインスタンスを公開した。同社はシンプルな価格体系を採用し、料金は1時間あたり1ユーロとした。

今や多くの会社がGPUインスタンスを使って機械学習ベースのアプリやサービスのモデルを訓練している。こうしたインスタンスを活用して3Dモデルを作ったり、その他のGPU主導タスクを実行している会社もある。高価なGPUを山ほど買わなくても、気に入ったクラウドホスティング会社でGPUをオンデマンドで使うことができる。終わったらそのインスタンスを閉じる。

ScalewayのRENDER-SインスタンスはNvidia Tesla P100に16 GBのHBM2メモリーを付けて使っている。RAM 45 GBと400 GBのストレージ(ローカルNVMe SSDなのでビデオ処理は超高速のはず)を備え10コアのIntel Xeon Gold 6148をAVX-512命令セットで使用している。ある程度長い期間使う予定があれば、料金は1時間1ユーロまたは月間500ユーロ(567ドル)のどちらか安い方になる。

Google Cloudでは、Nvidia P100のオンデマンド・インスタンスを1時間あたりアジア・ヨーロッパでは1.60ドル、米国では1.46ドルで使える。MicrosoftもP100 GPUのクラウド・インスタンスを1時間2.07ドルで提供している。Scalewayは、これらのサービスを主なライバルと見ているのだろう。

AmazonものAmazon Web ServiceにもGPUインスタンスがある。Nvidia Tesla V100というもっと強力な GPUを使うインスタンスもある。価格も高く1時間当たり3ドルだ(価格はデータセンターによって異なる)。古いGPUを使うAWSインスタンスもあるが、性能は落ちる。

OVHもTesla V100 GPUを使った インスタンスを1時間当たり2.30ユーロ(2.61ドル)で提供している。DigitalOceanとLinodeではGPUインスタンスを見つけることができなかった。

おそらく殆どの人にとってGPUインスタンスは必要ない。しかし、次のクラウドプロバイダーを探している会社にとっては、重要な要素になりうる。支払先を一箇所にまとめたければ、幅広いオプションのある会社を選ぶ必要がある。

[原文へ]

(翻訳:Nob Takahashi / facebook

鏡の前に立つだけでプロに遠隔ファッション相談、エアークロゼットがJR東日本と協働

定額制ファッションレンタルサービス「airCloset(エアークローゼット)」などを展開するエアークローゼットは3月8日、JR東日本グループのスタートアップ支援会社であるJR東日本スタートアップと共同で、遠隔パーソナルスタイリングサービスの実証実験を開始する。

この取り組みにおいて、エアークローゼットはJR東日本の駅構内に本サービス専用のスペースを設置。この会場には、2017年設立のスタートアップであるミラーロイドと同社が共同開発した「パーソナルスタイリング専用のスマートミラー」が設置されている。

ユーザーはこのスマートミラーの前に立つだけで、遠隔地にいるスタイリストとリアルタイムで会話でき、そのユーザーに合ったコーディネートの相談や、ファッションチェックを受けることができる。また、会場にはタブレット端末も用意されていて、その端末でファッション診断を受ければ、その結果を基にしたスタイリング提案も受けることができる。この取り組みは、3月9日と10日にJR長野駅で、そしてJR品川駅で3月18日〜21日まで開催されている。

エアークローゼットはこれまで、ユーザーに対してパーソナライズされたスタイリング提案をし、定額制でその人に合った服を貸し出すオンラインサービスのairClosetを提供してきた。また、2016年にはユーザーとオフラインの接点を持つために実店舗の「airCloset×ABLE(エアークローゼットエイブル)」をオープン。その他にも百貨店や商業施設との共同の取り組みなどを通して、ユーザーとの“リアルな接点”を増やしてきた。

今回の取り組みもその1つで、同社は今回のような駅構内だけでなく、公共施設やコンビニなどのチェーンストアとの協業によってオフラインの接点を増やしていくという。

Airbnbがホテル直前予約サービスのHotelTonight買収へ

ツリーハウスやちょっと変わった家以上のものを扱う宿泊プラットフォームを拡大中のAirbnbは、この業界でさらに飛躍しようと準備を整えている。

今日、Airbnbは旅行者が直前に宿泊場所を探せるホテル予約アプリのデベロッパーであるHotelTonightを買収する意向を明らかにした。この買収についてはウォール・ストリート・ジャーナルが1月に報道し、その記事では交渉は「冷え切っている」と書いていた。

Airbnbの共同創業者でCEOのBrian Chesky氏は具体的なタイムラインを明かさないが、同社は今年なるべく早く株式公開を完了させる見込みだ。Uberが最大の輸送会社になることを計画しているように、Airbnbの長期的な野心は、部屋のシェアリング、ホテル予約、出張手配、旅先での体験などを扱う総合的な旅行プラットフォームにすることだ。

Airbnbは、HotelTonightの買収金額は明らかにはしなかった。買収手続き完了後、HotelTonightのアプリとウェブサイトは独立して運営されるが、HotelTonightの共同創業者でCEOのSam ShankはAirbnbの宿泊部門の責任者Greg Greeleyに報告する体制となる。

「素敵なホテルの部屋をオンデマンドで予約するいい方法があれば、と考えている人がいることを知り、我々はHotelTonightを立ち上げた。そしてこのサービスをAirbnbとともに世界中のゲストに届けることを楽しみにしている」とShankは声明で述べている。「HotelTonightとAirbnbが一緒になることで、ゲストにより多くの選択肢を提供でき、また世界で最もいいブティックホテルや独立したホテルにとって、我々はゲストとつながるためのパートナーとなる」。

2010年に設立されたサンフランシスコ拠点のHotelTonightは、PitchBookによると2017年にシリーズEで3700万ドルを調達し、評価額を4億6300万ドルとしている。HotelTonightは、ほぼ毎回のラウンドに参加しているAccelとBattery Venturesからベンチャーキャピタル投資で累計1億3100万ドルを調達している。他の初期投資家にはForerunner VenturesとFirst Round Capitalがいる。

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一方のAirbnbは2017年に10億ドルを調達し、評価額は310億ドルとなった。1月、同社はEBITDAベースでこれまでに二番目の儲けとなったと発表した。

HotelTonightは、米国、欧州、オーストラリアのホテルの割引を提供している。ビジネス客や直前の宿泊予約をしたい人向けに空室を提供するためにホテルと提携している。今回の買収で、Airbnbのユーザーは何週間あるいは何カ月も前に計画を立てなくてもホテルを予約するのが容易になり、Airbnbにとっては短期貸しのホストとそのゲストというコミュニティを拡大させることになる。

Airbnbは2018年初めにプラットフォームにブティックホテルを加え、急成長させた。同年には扱うブティックホテル、B&B、ホステル、リゾートの数が倍以上になったとのことだ。Airbnbの出張部門Airbnb for Workもまた短期で成功を収めている。2014年に立ち上げられ、今や全予約の15%を占める。現在Airbnbは191カ国で計500万もの物件を扱っている。

Airbnbは2019年に入って続けざまに買収している。1月には、会議やビジネスに関するイベントのためのスペースを貸し借りできるマーケットプレイススタイルのプラットフォームを提供するデンマークのスタートアップGaestを買収した。この件でもAirbnbは買収額を非公表とした。しかし、Gaestが自己資本350万ドルの調達だったことを考えると、HotelTonightの買収額には劣る。

2019年はユニコーン企業のIPOが多く控えている。これらのいくつかは、年初にあった数週間にもわたる政府閉鎖で遅れることが見込まれている。最近フォームS-1を公開したLyftは、株式市場へとエグジットする今年初の10億ドル企業となる準備が整っていて、その後にUber、Slack、Pinterestと続く。Airbnbはそうした列のどこかに入り込むのだろうか。いずれわかる。

イメージクレジット: TOSHIFUMI KITAMURA / Contributor / Getty Images

原文へ 翻訳:Mizoguchi)