KDDI ∞ Labo第6期最優秀賞はブラウザー間コンテンツ配信「MistCDN」

KDDIが2014年3月にスタートしたインキュベーションプログラム「KDDI ∞ Labo(KDDI無限ラボ)」の第6期プログラムが終了した。7月14日には第6期参加チームが東京・ヒカリエでプレゼンを実施し、最優秀チームにはブラウザー間でコンテンツ交換を行うP2P型コンテンツ配信プラットフォーム「MistCDN」を運営するMist Technogiesが選ばれた。第6期プログラムは一般に公表されていないサービスアイデアを持つ5チームが参加し、KDDIが「独自性」「市場性」「完成度」の観点で最優秀チームを選定した。

アクセスが集中するほどパフォーマンスが向上

MistCDNはユーザーのPCにコンテンツをキャッシュし、同じコンテンツを視聴するユーザーのPC間でコンテンツを交換するコンテンツデリバリネットワーク(CDN)。アクセスが集中するほど配信元となるPCが増え、転送速度が向上する仕組み。PC間の通信は、Web標準技術の「WebRTC」を採用している。MistCDNを導入するウェブサービス運営者は、コードを数行挿入するだけで利用できる。

アカマイに代表される従来のCDNは、アクセスが集中するほどサービス品質が低下する傾向にあるが、「MistCDNはアクセス集中を味方にするのが強み」とMist Technologiesの田中晋太郎氏は話す。逆に言えば、アクセスが集中していない状況は従来のCDNに分があるとも言える。田中氏によれば、従来のCDNをディスラプト(破壊)するのではなく、お互いの強みをウェブサービス運営者が使い分けられる環境を提供したいのだという。

現在はHTML5コンテンツ配信やライブストリーミング配信を行っていて、14日には無料トライアルキャンペーンを開始した。正式サービスの時期や料金は未定だが、コスト面では従来のCDNと比べて平均60〜80%削減できるとしている。

子どもの日常のベストシーンを集めた成長シネマを自動作成できる「filme」

14日に行われたプレゼンでは、来場者の投票により決定する 「オーディエンス賞」も発表され、スマホで撮影した動画を選んでコメントを添えるだけで動画日記が作れるアプリ「filme(フィルミー)」を開発するコトコトが選ばれた。日々の動画が20日分たまると、その期間の成長を振り返れる「成長シネマ」を自動的に作成できるのが特徴。成長シネマは独自の動画編集エンジンにより、子どもの表情や動き、声を自動検出し、日々の動画の中からベストシーンを集める。

動画の保存容量に制限がある無料プランに加え、容量無制限で成長シネマを毎月1枚無料でDVD化できる有料プランを用意する。コトコトの門松信吾氏は「動画版のフォトブックのポジションを目指す」と言い、将来的にはDVDの送付先となる祖父母をターゲットとしたシニア市場や、動画編集技術を転用することで旅行を含めた「思い出市場」も視野に入れているという。8月に正式サービス開始予定で、14日には事前登録を開始した。

第6期プログラムのチームはこのほか、ユーザー投票や審査に通過したクリエイターのみが出店できるハンドメイドジュエリーのECサイト「QuaQua(クアクア)」を運営するダックリングス、独自のクローラーと女子大生キュレーターによって厳選した女性向け媒体の記事を配信する「macaron(マカロン)」を手がけるSPWTECH、ネイティブアプリのユーザー行動を動画として記録して解析するツール「Repro(レプロ)」を開発するReproが参加した。

第7期はセブン&アイやテレビ朝日などのパートナー企業が支援

第7期プログラムは、7月14日より参加チームの募集を開始した。第7期の特徴は「パートナー連合プログラム」として、セブン&アイ・ホールディングスやテレビ朝日など13社が参加すること。これによってスタートアップは、セブン&アイに流通チャネルとの連携をサポートしてもらうことなどが可能となる。

KDDI ∞ Laboのラボ長を務める江幡智広氏は、「各社のアセットをスタートアップに提供して新規事業創出のきっかけが作れれば」と話す。KDDI ∞ LaboのようなCVC(コーポレートベンチャーキャピタル)は一般的に自社の事業との相乗効果を求めて運営されるが、江端氏は「すぐにシナジーは求めず、スタートアップの成長をひたすら願う」としている。

パートナー連合プログラムに参加する各社は、スタートアップとの協業を通じて新事業シーズの発掘、経営資源の活用やスピード感の不足を補うのが狙いだ。13社のうちセブン&アイ、テレビ朝日、三井物産、コクヨ、プラスの5社はメンタリング企業としてスタートアップをバックアップする。このほか、近畿日本ツーリスト、ソフトフロント、大日本印刷、東京急行電鉄、凸版印刷、パルコ、バンダイナムコゲームスがサポート企業として名を連ねている。

KDDIは14日、新たに約50億円規模の「KDDI新規事業育成2号ファンド」を設立することも発表している。


バイラルメディアCuRAZY運営会社が1億円調達、独自コンテンツ制作に注力


思わず友人にシェアしたくなるような、バズを生みやすい動画や画像、まとめなどを中心にコンテンツをキュレーションして提供し、FacebookやTwitterといったソーシャルメディアでの拡散を狙うブログメディアである「バイラルメディア」が国内で急増している。米国ではBuzzFeedUpworthyがその代表例だが、国内でもCuRAZYViratesWhatsをはじめとして、数多くのバイラルメディアが登場している。サイバーエージェントも10のバイラルメディアを立ち上げるとしており、SpotLightなどに注目が集まっている。

これらのバイラルメディアは、ソーシャルメディアでの「シェア」によって短期間で大きなトラフィックを生み出すことに成功しており、例えばViratesなどは、スマートフォンアプリを含めるとすでに2000万ページビュー(PV)を達成していると聞いているし、今回取り上げるCuRAZYも1900万PV(CuRAZYは現状アプリがないのでウェブサイトのみの数字)を達成したそうだ。ただ純粋にバイラルメディアと今までのメディアのPVを比較できる訳でもないし、むしろPVという指標自体が意味をなさなくなってくるのではないかという話もバイラルメディアの運営者からも聞いている。

さてそんなCuRAZYを運営するBitGatherが7月9日、サイバーエージェント・ベンチャーズ(CAV)、ディー・エヌ・エー(DeNA)、Skyland Venturesを割当先とする、総額1億円の第三者割当増資を実施したことを発表した。あわせて、社名を「LAUGH TECH」に変更。ライター陣を拡大するほか、データ解析などを強化し、「笑いを科学する」をコンセプトにしたメディア運営を進めるという。

独自コンテンツで差別化狙う

BitGather代表取締役の伊藤新之介氏に話を聞いて印象的だったのが、最近バイラルメディア間でネタの「かぶり」が起きているということだ。僕も国内のバイラルメディアを読んでいてなんとなく感じていたし、ほかのバイラルメディア運営者からも「あのメディアは露骨にネタをパクっているのではないか」と具体的なサイト名まで聞くこともあった。

そういった状況を打破するためにも、CuRAZYでは独自コンテンツの提供を進めるという。正直バイラルメディアは読んでいて楽しいものが多いけれども、結局のところ既存メディアや他人のアップロードした動画が中心なのが現状。なので、独自コンテンツを作るという動きは1人の読者としても楽しみだ。

伊藤氏いわく、例えばBuzzFeedは(1)コストをかけた調査報道(2)まとめやクイズといった記事(3)今日本で主流となっている動画や画像を中心にしたトラフィックを生むコンテンツの3層構造になっているそうだ。だが国内でバイラルメディアと言われているのは(3)のコンテンツがほとんど。CuRAZYでが日本ではあまりない(1)の調査報道ができるまでの体制作りを進めたいと語る。「編集者4人、その編集者の方針に会わせて動くキュレーターが20人程度の体制を作りたい」(伊藤氏)。このあたりの話はViratesも語っていたののだけれども、調達で一足先にその体制を整えつつあるようだ。

また、社内で利用しているアナリティクスツールを強化し、国内外のウェブメディアに関するソーシャルでの反応などを解析できるサービスとして提供することを予定する。今夏にはスマートフォンアプリも提供する予定で、アプリにはこの解析サービスのアルゴリズムを使って、ソーシャルメディアで反響の大きいコンテンツを紹介する機能なども導入することを検討している。バイラルメディアのGunosy、SmartNewsといったところだろうか。

CuRAZYは現在、PVは前述の通り1900万で、UUは500万ほど。スマホ利用率は80%に上る。シェアされるソーシャルメディアはFacebookが8割以上(残りはTwitterが中心)、メインのユーザー層は30〜40代の男女が半々程度だという。今後は独自コンテンツを武器に、年内1000万UUを目指すとしている。すでにバナーや記事広告も展開しているそうだが、この1年については、マネタイズよりもユーザーの拡大に注力するそうだ。「ユーザーはまだ捕まえきれていない、『暇なときに立ち上げるアプリ』という立場に持っていってユーザーをしっかり捕まえないと意味がないと考えている」(伊藤氏)


General Harmonicsの圧縮テクノロジーは驚異的―テレビドラマの「シリコンバレー」そのまま

General Harmonicsはカナダの小さなスタートアップだが、ストリーミング・メディアに革命を起こすかもしれない。こういえばおかしく聞こえるが、 HBOの人気テレビドラマ、Silicon Valleyに登場する新しいデータ圧縮プラットフォーム、Pied Piperに奇妙なほどそっくりなのだ。ただGeneral Harmonicsの方ははるかに経験を積んでいるし、もっと進歩している。

ドラマでは主人公たちが創立した会社はファイルサイズを信じられないほど小さくできる独自技術、Pied Piperを開発する。General Harmonicのテクノロジーも結果は似ているが、実現のために用いられたアプローチはもちろん完全に異なる。特許出願中の新たなエンコード・テクノロジーによってコンテンツを分析し、個々の要素に分解して記述することで従来の手法では不可能だったレベルまでデータを圧縮する。

たとえばある楽曲がボーカルとインストラメンタルからなるのであれば、それぞれのパートごとに分解して「記述」する。この記述は音声データよりはるかに少さなサイズになる。General Harmonicsによれば、CD音質のファイルを元サイズの20分の1にできるという。先週私も参観したAT&Tの3Gを使ったデモ(屋内で無線の品質はきわめて悪かった)でGeneral Harmonicsはこの新たなエンコーディング手法の大きな可能性を示した。

たとえば周囲で再生されて音楽をスマートフォンに聞かせると、どの曲のどの部分であるかを判断して、その曲を現在の位置からストリーミング再生し、対応する歌詞も表示するといったShazamのような機能もデモされた。ただしShazamよりずっと早く、即座に曲の判別が行われた。

このテクノロジーでは「どのアーティストがどのパートをどの部分で演奏しているのか」といった情報も解析できる。General Harmonicsは最終的にはこうした情報もアプリケーションからアクセスできる形でエンコードしようと計画している。これによって演奏される音楽によって流れが変化するゲームなどの開発が可能になる。また将来は既存の楽曲データをユーザーがリミックスして即座に高音質の新しい曲をユーザーが作れるようになるかもしれない。SoundCloudの未来版というところだ。

アメリカのオンデマンド音楽ストリーミング、対前年比42%アップ―ダウンロード販売は衰退へという記事にあるとおり、ストリーミングの重要性は増す一方だ。ユーザーはもはや音楽を聞くためにスマートフォンをいちいちコンピュータに接続して音楽ライブラリーを同期するなどという手間をかけない。ユーザーはいつ、どんな場所でも即座に望みの音楽が聞けることを当然だと考えるようになっている。

そこで音質を落とさずにデータサイズを小さくし、高速でストリーミングできるようにすることは音楽サービスにとって死活的に重要になっている。同時にSpotifyPandora、 Appleのような巨大ストリーミング企業はサーバー費用を大幅に節約できるだろう。

またGeneral Harmonicのテクノロジーはここ5年のうちに新たに何十億もの人々がスマートフォンを持つようになると予測されている アフリカやアジアの途上国の市場で最も大きな影響を与えるかもしれない。こうした市場では4GやLTEネットワークが未整備であり、データのサイズはサービスの品質を直接に左右する。

7年間のステルスモードでの開発期間の後、General Harmonicsは戦略的パートナーを探す段階に入った。同社は自身で音楽サービス事業に参入してPandora、Beats、Spotifyなどのサービスと競争する計画はない。

General Harmonicsはここ数ヶ月のうちにこのテクノロジーのライセンス供与を進めていく予定であり、すでに先週からシリコンバレーの有力メディア企業と話し合いを始めていることを確認した。ただし広報担当者はそれ以上の詳細を明かすことを避けた。

〔日本版〕 Advanced Televisionによれば、Sony Picturesの最高デジタル戦略役員だったMitch SingerがGeneral Harmonicsのデジタル事業開発担当副社長に就任したという。

またこの記事はGeneral HarmonicsのDynamicMedia Technologyについて「現在インターネットで用いられているメディア・システムとは根本的に異なる。このテクノロジーは調和解析(harmonic analysis)、意味論的マルチノード転送、ニューラルパターン認識、高度なカオス情報処理の原理を組み合わせたもの」だと説明している。現在のところこれ以外にGeneral Harmonicsのテクノロジーについて解説した記事は見当たらない。

[原文へ]

(翻訳:滑川海彦 Facebook Google+


知識がなくても使える電子書籍出版サービスを目指す「WOODY」

WOODY Concept Movie from WOODY on Vimeo.

AmazonのKidle Direct Publishing(KDP)をはじめとして、個人が執筆した電子書籍を流通させるプラットフォームは増えてきた。だがいざ出版しようとなると、ITリテラシーの低い人間では難しいことも多いそうだ。例えばKDPであればEPUBへの変換が必要だし、管理画面も人によっては複雑だという。さらに米国での所得税の回避手続きに至っては、ファックスでのやりとりが発生するそうだ。

そんな電子書籍の出版を「JPEG(という画像形式)すら知らない主婦でも利用できるようにしたい」と語るのが、サイバーエージェントを退職して7月7日に「WOODY」を正式オープンしたWoody代表取締役社長の中里祐次氏だ。

中里氏が手がけるWOODYは、ブラウザ上で電子書籍を作成すれば、電子書籍プラットフォームでの出版の申し込みまでを実現してくれるサービス。書籍の内容をエディタ上で編集し、表紙の画像やタイトルを挿入、さらに著者や書籍の情報をサイトにて編集すれば、Kindle、GooglePlayBook、kobo、iBooksでの出版の申請ができる(出版元はWOODYとなる)。申請から先の作業はWOODYが担当する。すでに、先日上場したばかりのVOYAGE GROUP代表取締役である宇佐美進典氏の「サイバーエージェントからMBO、そして上場へ 」など、数冊の電子書籍が販売されている。僕も実際に申請までのフローを試してみたのだけれど、ブログサービスなどを使ったことのあるユーザーであれば迷うことはないと思う。ただ、各電子書籍プラットフォームの違いなども含めて、もう少し説明があればより使いやすくなる気がした。中里氏によると、サービスの改善については今後急ピッチで進めていくそうだ。

電子書籍の制作は無料。売上については、各販売プラットフォームの手数料を引いた金額から30%を手数料として徴収する。正直この手数料でマネタイズできるのかとも思ったのだけれど、今後はWoody自身も執筆者を発掘していき、「身近な人々」「興味のあるジャンルの人々」の本を簡単に読めるようになる仕組み作りをしていくという。

中里祐次氏は、2013年までサイバーエージェントに在籍し、若手ビジネスマン育成事業の「SHAKE100」などに携わっていた人物。もともと本を読むことは好きだったそうだが、複数の友人のすすめもあってWOODYを企画。サイバーエージェントから創業資金の一部について出資を受ける形で事業をスタートした。


「ごちクル」運営のスターフェスティバルがアスクルから28億円を調達、共同配送で効率化目指す

弁当やケータリング商品の宅配サービス「ごちクル」 を手がけるスターフェスティバル。2013年8月にジャフコを割当先とした10億円の資金調達を発表していたが、さらなる大型増資を実施している。同社は7月4日、オフィス用品の通販を手がけるアスクルを割当先にした第三者割当増資と、新株予約権付社債の発行等によって総額28億円の調達を実施。資本と業務の両面で提携することを明らかにした。

ごちクルはこれまでに、600ブランド6800種以上の商品を展開。累計550万食を提供してきた。今回の提携を契機にして、11月をめどにごちクルをアスクルのサービスとしても展開していく。

さらに配送面でもごちクルの商品をアスクル子会社であるBizexの配送サービスを活用して配送したり、スターフェスティバルの配送車の空き時間をアスクルのサービスに活用するなどして、配送の効率化を進める。将来的にはアスクルとごちクルの商材の同時配送等も目指すとしている。


Streamfullyは、リンク先をプレビューできる学習機能付Chrome拡張機能

スタートアップのGeneral Cybernetcsは、新アプリStreamfullyでちょっと毛色の変わったブラウジング体験を提供する。

このGoogle Chrome用Streamfully拡張機能をインストールして、ウェブのリンクにマウスをかざすと、クリックする前にそのページのプレビューが表示される。例えば、TechCrunchのトップページを訪れて、どれかヘッドラインのにマウスを置くと、記事のテキストと画像が現れ、サイトまたはウェブ上の関連記事のスニペットも表示される。

こうしたプレビューはすぐに役立つ。特に、あるコンテンツから重要な事実だけを得ようとしている時に向いている。しかし、ファウンダー・社長のPaul Pangaroは、スニペットは時間と共に改善されていくと言った。Streamfullyがユーザーの使い方を学習し、それに従ってプレビューをカスタマイズするからだ。例えばあなたが、Pangaroのように、サイバネティクスに興味を持っていて、サイバネティクスに何度か言及している長文記事があると、全体を探さなくても目的の場所に「直接飛んでいける」と彼は言う。

Pangaroはこのやり方を、ウェブのページや記事を「巨大な容れ物」から脱皮させ、閲覧体験を「より会話的」にするものだと言っている ― 言い換えれば、読者の興味に関連が強く、反複が少なく(Streamfullyはあるコンテンツの独自な部分や他のプレビューで表示していないものに焦点を合わせている)、流れのある体験だ。

そしてこれは、必ずしも体験が浅薄になることを意味していない ― Pangaroいわく、「閲覧のバイオコスト」(ページをクリックして興味のない内容を読む不快さ)を下げるため、Streamfullyは、ユーザーが本当に必要だと感じたコンテンツに費やす時間は増やすかもしれない。

Chrome拡張機能は無料(Pangaraは「永久に無料」と言っていた)だ。しかし、Streamfullyは、この体験をサイトの読者全員に提供したいと考えるオンラインパブリッシャーにもツールとして提供され、最終的にパブリッシャーから収益を上げることを計画している。例えば、パーソナライゼーション技術は、関連性広告の配信にも利用できるとPangaroは指摘する。

ところで、Pangaroは豊富な技術経験があり、ブルネル大学のサイバネティクス博士号を持つ他、Sun Microsystemsの市場ストラテジストとして活躍し、Snap.comの創設時CTOを務めた。彼はこのパーソナライズドプレビュー技術を、ニュースアグリゲーションやパートナライズド検索など様々な分野に適用する実験をしているようだ。現在はStreamfullyのサービスに専念しているが、将来の拡大に向けての実験も行っている、と彼は話した。

そう、Streamfullyはいずれモバイルでも使えるようになる ― Pangaroは、現在開発中のバージョンを見せてくれたが、それはスマートフォン画面用にスリム化されていた。

[原文へ]

(翻訳:Nob Takahashi / facebook


オンライン秘書「Kaori-san」を起業したのは「FON」の共同創業者だった


「Kaori-san」は「出張先のホテルを探してほしい」とか「競合他社のサービスをリストアップしてほしい」といったリクエストに答えてくれるオンライン秘書サービスだ。TechCrunch Japan読者なら、このサービスの存在にしばらく前から気付いていた人もいるかもしれないけど、気になるのは、Kaori-sanを運営しているのはどんな会社なのかということだよね。サイトには社長と思われるスキンヘッドのいかついアフリカ系アメリカ人の写真が、「I am Kaori-san」というコメント付きで掲載されていたりする。意味が分からない。誰が、かおりさんだって?

Kaori-sanさんにメール取材を申し込んでみたところ、創業者であるイジョビ・ヌウェア氏から回答を得ることができた。

それによれば、Kaori-sanの母体となる会社はアメリカにあり、日本法人は2013年7月に設立。ヌウェア氏は先述したスキンヘッドのアフリカ系アメリカ人で、ニューヨーク出身。実は無線LAN共有サービス「FON」の創業者の1人で、ビジネスウイーク誌により「25人のトップ起業家」に選出されている。日本では2008年6月にオンラインマーケティングに特化したランドラッシュグループ株式会社を設立し、その後オンライン秘書サービスKaori-sanをスタートしたのだという(参考:CrunchBase

Kaori-sanの運営チームはすべてオンラインで仕事をしていて、オフィスは郵便物の受け取りや打ち合わせのためだけに使用している。オンライン秘書の人数は非公開とのことだが、8割は日本人、残りの2割は中国人、台湾人、韓国人が占めている。現在のアクティブユーザーは数百人。売上については非公開だそうだ。

日本でKaori-sanを始めたきっかけは、有能で「使える」スタッフを雇うのはコストがかかり、特に中小企業がバイリンガルのスタッフを探すのが難しかったからだ。「企業のスタートアップ時期に好ましくない人物を誤って採用してしまっては、会社にとって大きなダメージ」という問題を解決するために日本でKaori-sanを始めたのだと、ヌウェア氏は僕に説明した。

接待で使えるメイド喫茶を教えてください

実はメール取材の前に、Kaori-sanを試してみたので使用感もお伝えしたい。今回利用したのは、3件のリクエストを依頼できる「バイトプラン」(月額2490円)。このほかには、リクエスト数が6件までの「部長プラン」(月額4980円)、15件までの「社長プラン」(月額8980円)、25件までの「会長プラン」(月額1万4980円)がある。プランごとに営業時間が異なり、バイトプランは午前9時から午後5時までの対応だが、会長プランだと24時間対応してくれる(現実の会長秘書が24時間付き添ってくれるのかどうかは別として)。

実際にリクエストしたのは以下の3つだ。

・7月の山口・萩旅行のお土産を教えてほしい
・彼女の誕生日に贈るものを考えてほしい
・接待で使えるメイド喫茶を教えてほしい

内心、最後の質問は無茶振りかなと思ったりもしたが、果たしてKaori-sanはこれらの質問に答えてくれるだろうか。

それではまず、「7月の山口・萩旅行のお土産」の結果から見てみよう。返信は依頼から2時間で来た。これを早いと見るか、遅いと見るかは人それぞれだろうけど、そんなに急ぎの用件ではなかったので特に不満はなかった。

Kaori-sanのオススメは「夏蜜柑丸漬」「ブランデーケーキ 夏蜜柑」「萩焼(茶の湯で使うための陶器)」「萩のカマボコ」「萩のチクワ」。萩についていくばくかの知識しかない僕にとっては、夏蜜柑やカマボコ、チクワが名物であるなんて思いもしなかった。さすがに職場の同僚に陶器をプレゼントするのは躊躇するが、美味しそうなお土産を買って来ることができそうだ。1つ注文を入れるとすれば、「どこで購入できるのか」「駅の売店で買えるのか」といったところまでカバーしてくれればなお良かった。

次は、「彼女の誕生日プレゼント」だ。Kaori-sanはNAVERまとめをソースとして5つのプレゼントを提案してくれた。5位はバック、4位は時計、3位は花、2位はネックレス、そして1位は指輪という結果に。ふだん、ネットで記事を書いている僕からすると、「おいおい、ソースがNAVERまとめかよ。『彼女 誕生日 プレゼント』で検索してトップに出てくるようなページをおすすめされてもなあ……」と思わなくもなかったが、「検索するのも面倒」と言う人にはいいかもしれない。

最後は、「接待で使えるメイド喫茶」の結果だ。そもそも「ビジネス用メイド喫茶」を探す依頼自体が無理難題っぽいが(存在するかも含めて)、案の定、Kaori-sanは困っているらしく「どちらの場所でお探しいたしましょうか? 個室等ご希望でしたら、詳細も合わせてご連絡ください」とのこと。そこで「秋葉原で、個室」という追加情報を記入したところで、回答は次の日に持ち越しとなった。僕が選んだバイトプランは、午前9時から午後5時までの「定時」以外は対応しないからだ。

翌日に届いた返信でKaori-sanは、5カ所のメイド喫茶をオススメしてくれた。ちなみに個室の件だが、「ゲームをしたり、写真撮影をしたりするお部屋はございましたが、接待に適した個室のあるメイド喫茶はございませんでした」との返信。こちらの無茶振りにもしっかりと答えてくれ、まさに”ご主人様”になった気分(若干Sっ気が出たのは事実)であった。

最後のメイド喫茶のリクエストはさておき、職場へのお土産については解決してくれたKaori-san。ネットリテラシーの高い人にとっては「自分でネットを使って調べたほうが早いのでは?」と思う人もいるだろうが、ネットで調べること自体が面倒とか、時間がもったいないという人もなかにはいるはず(僕もその一人)。そういう意味で、忙しい人にはおすすめのサービスと言えそうだ。

また、今回は「調べ物」を依頼してみたが、サイト上には「代理でアポイントやレストランの予約を取る」「カスタマーサポートへの問い合わせに対応する」「競合他社等の企業リストを作成する」といったリクエストにも対応してくれるそうだ。


ECサイトの接客ツールを開発するプレイド、フェムトから1.5億円を調達

ECサイトの「集客」と聞くと、SEOに広告にメルマガに…といくつも思いつくかも知れないが、その集客したユーザーの「接客」を実現しようとしているスタートアップがプレイドだ。同社は7月2日、フェムト・グロースキャピタルなどを割当先とする第三者割当増資を実施して、1億5000万円を調達したと発表した。あわせて、フェムト・グロースキャピタルのゼネラルパートナーである磯崎哲也氏が社外取締役に就任した。

プレイドが開発を進める「KARTE(カルテ)」は、サイトに数行のJavaScriptコードを埋め込むことで、訪問者の特徴や行動をリアルタイムに追跡できるサービス。

例えばGoogleアナリティクスのリアルタイムレポート機能では、サイトの来訪者について、ページビュー(PV)やユニークユーザー(UU)といった数字までは分かるのだが、ECサイトとして必要な属性が取れるわけではない。KARTEでは、そのユーザー1人1人に対してIDを振り、会員か非会員か、これまでの購入額はいくらか、コンバージョンはどれくらいか、どんなカテゴリを見るのか、といった属性までをリアルタイムに解析できる。ただし、会員情報と紐付ける場合は、別途カスタマイズが必要になる。

さらに、あらかじめ設定したユーザー属性やユーザーの行動にあわせて、即座に広告を表示したり、割引のオファーをしたりといった、まさに「接客」のような施策を自動で行える。「サイト上に商品をどのように掲載するか、広告やパーツをどう変えるだけでもコンバージョンは変わる。でも従来のシステムでそういった施策をするのは、長ければ数カ月の作業になる。KARTEではそんな施策をすぐに実現できる」(プレイド代表取締役の倉橋健太氏)。現在はクローズドベータ版として一部のサイトに限定してサービスを提供しているが、コンバージョンが3倍になったサイトもあるそうだ。

ところでサイトのコンバージョン改善と聞くと、いわゆる「グロースハック」を思い浮かべるのだけれども、倉橋氏は、「グロースハックはサイトの全体最適の施策だが、KARTEで実現するのは(ユーザー個人個人に対する)個別最適のための施策」と説明する。

実際にデモも見たし、機能もすばらしいと思ったのだけど、気になったのは使いこなすのにはそれなりに高いリテラシーが求められそうなことだ。これについてはもちろんプレイドでも意識しているそうで、現在業種にあわせて施策をテンプレート化しているほか、正式リリース時には機能を限定して提供するといったことも考えているそうだ。正式リリースは10月頃を目指しているとのこと。

ちなみに倉橋氏は楽天で楽天市場の事業に携わっていた人物。2011年にプレイドを設立し、当初は「foodstoQ」というグルメアプリを手がけていたがピボット。KARTEの開発に着手した。プレイドでは現在、EC関連の情報を提供するブログメディア「Shopping Tribe」も運営している。


Panda Graphics、Gamba、コネクトフリー–East Venturesが続々出資

プレスリリースが配信され、大々的に発表されているのが投資・資金調達のすべての案件かというと全然そういうわけではないのだけれども、今日7月1日、East Ventuersを割当先とした資金調達が複数発表されている。ここでざっくりにはなるのだが、各社についてご紹介しておく。

まずクラウドソーシングサービス「Panda Graphics」を手がけるPanda Graphicsが、East Venturesとオプトから総額1.4億円を調達した。Panda Graphicsは2Dイラストと3Dコンピューターグラフィックスのクラウドソーシングサービス。MUGENUPなどと同じ事業領域になるだろうか。同社は今回調達した資金をもとに、北米事業拠点を開設してシリコンバレーへの進出を進める。

クラウド日報共有サービス「Gamba!」を提供するgambaは、East VenturesとSkyland Venturesを引受先とする総額4000万円の第三者割当増資を実施したと発表した。Gamba!は、現在中小企業を中心に3500社がトライアル利用。トライアルは毎月200社ペースで増加しており、そのうち約10%が有料サービスに移行しているそうだ。6月13日にはニフティとも業務提携を発表。今後は日報に限らず、メッセージングサービスなど、社内コミュニケーションに関わるサービスを提供していく予定もあるそうだ。

さらに、京都のコネクトフリーもEast Ventureからの調達を発表している。金額については非公開、プロダクトに関しても「モノのインターネットの通信チップ開発を目指す」とだけアナウンスされており、詳細については非公開となっている。コネクトフリーといえば、2011年に無料無線LANサービス「コネクトフリー」を提供(その後、総務省から通信の保護に関わる指導を受けることとなった。現在はサービス終了)、その後2012年にはMacとiPhoneを使ったテザリングサービス「t.free」(こちらも現在はサービス終了)を提供していたが(さらにさかのぼると、代表のクリストファー・テイト氏は実名SNS「ケイレキ」や写真共有サービス「zooomr」なども手がけた)、どのようなプロダクトを手がけているのだろうか気になるところだ。


CoffeeMeetingの次の一手は空き時間の売買サービス「TimeTicket」

空き時間にお茶したい人を探すサービス「CoffeeMeeting」を運営する株式会社レレレが先ほど、個人の空き時間を売買する「TimeTicket」を開始した。サイト上では「Webサービスのこと何でも相談にのります」や「英日翻訳とか手伝えます」といった専門スキルありきのものから、「とにかく話を聞きます」「友だちのフリをします」「皇居をぐるりと一緒に一周歩きます」のような商品っぽくないものまでが販売されている。個人の空き時間を生かす点ではCoffeeMeetingと同じだが、TimeTicketはマネタイズを意識したサービスと言えそうだ。

空き時間を30分単位で売買する

サービスの流れはこんな感じだ。空き時間を売りたいユーザー(ホスト)はまず、「自分ができること」を登録。その後、シェアする時間(0.5〜5時間)と1時間あたりの価格(1000〜1万円)を設定する。空き時間は「チケット」としてサイト上に登録され、売り上げの一部(10%〜100%)は指定した寄付先に寄付できる。売上げの30%は手数料としてレレレに支払い、そこから寄付金を引いた金額が収入となる。

チケットに興味を持ったユーザー(ゲスト)は、予約日時と金額を指定して購入を申し込む。「この人にはもっと価値がある」と思えば、支払う金額を増やすこともできる。ホストに申し込みが承認された場合、ゲストはクレジットカードで仮支払を行い、予約した日時にオンライン・オフラインで会う。ホストは「ちょっとこのゲスト怪しい」と思った場合、承認をしなければ会わなくてもよいことになっている。

金銭のトラブルを防ぐために、ホストとゲストには直接チケット代金をやり取りさせないようにしている。ホストは事前に仮支払を行ったゲストだけに会えるし、ゲストとしてもホストの都合で予約当日に時間の提供を受けられなかった場合の支払いはキャンセルされる仕組みだ。

実用的なスキルよりも「個人のなんでもない時間」を販売

空き時間を生かして専門的なスキルを売買するサービスとしては、仕事のジャンルが多いクラウドワークスやランサーズをはじめ、最近では請求や経理、家事など特定のジャンルに特化するサービスが増えている。これに対してTimeTicketは、実用的なスキルというよりは「個人のなんでもない時間」が商品になっている印象だ。

レレレが運営する「CoffeeMeeting」は会員数が3万人を突破し、これまでに約1200件のミーティングが成立。それなりに利用数は伸びているようだが、山本氏によれば「無料サービスだからこそ成り立っている部分があってマネタイズが難しかった」という。これらが実際にどれだけ売れるのかはわからないが、サービスを運営するレレレ代表取締役の山本大策氏は、「これまで世の中になかった新しいサービスが生まれ、それだけで食べていける人が出てくるのが理想」と話している。


レストラン予約サービスのポケットコンシェルジュ、Uberライクなスマート決済を実現

12億ドルの超大型調達をはじめとして、最近何かと話題に上がる「Uber」。そのビジネスの話は置いておいて、実際にユーザーとして使ってみると分かることがある。降車の際にいちいち財布からお金を出して会計しなくとも、そのまま車を出て、あらかじめ登録しておいたクレジットカードで自動で決済できるという快適さだ。僕もまだ2度ほどしか使っていないが、想像以上に使い心地がいい。

そんな快適な経験をレストランでも味わえるようになるのが、ポケットメニューが手がけるレストラン予約サービス「ポケットコンシェルジュ」の新機能「ポケットエクスペリエンス」だ。

ポケットコンシェルジュは、会食や接待などにも使える厳選されたレストランを予約できるサービスだ。現在は東京を中心に150店舗ほどのレストランが登録されており、客単価は1万3000円程度。1年前の時点では高所得者層を中心に約1万人が利用していると話していたが、現在のユーザー数に関しては詳細は公開していない。

実際僕も利用したことがあるが、通常紹介がないと入れないようなところも含めて、ポケットコンシェルジュでないとオンライン予約できないようなレストランが中心となってラインアップされている。店舗数こそまだ少ないがそのグレードは既存のレストラン予約サービスとは一線を画している。また、会食での利用を想定していることもあって、レストランへの要望や利用用途なども登録できるようになっている。

今回発表されたポケットエクスペリエンスだが、あらかじめクレジットカードを登録して、予約の際にカードでの支払いを選択しておけば、当日レストランで会計をすることなく、自動でカード決済されるというもの。会計の内容は会計後にメールで送信される。ユーザーのサービス利用は無料。ポケットメニューは店舗側への手数料と、カード会社への手数料の差額で収益を上げるモデルとなる。

お酒の追加などで金額が変わることもあるため、基本的にはコース料理とペアリング(コースのひと皿ごとに合ったお酒を提供する)、コース料理とドリンク1杯のセットといったようなパッケージを店舗が用意し、追加注文については加算して決済するという仕組みにする。1ユーザーが登録できるカードは5枚となっており、法人カードと個人カードを登録して使い分けることもできる。

店舗にも大きなメリット

このポケットエクスペリエンス、ユーザーにとっては会食での話の腰を折らずにスムーズな会計を実現できるというメリットがすぐに想像できると思うが(デートなどでおごる際にも有効ではないかという話も出たが)、実はそれ以上に大きいのは店舗側のメリットだそうだ。

ポケットメニュー代表取締役社長の戸門慶氏は6年間板前として修業をしたのち、飲食店のコンサルティングを手がけていた人物。同氏の話によると、実は会計のたびにスタッフが伝票を取ってレジに移動して…という作業はいつ発生するか分からず、なかなか面倒なモノだそうだ。それがポケットコンシェルジュの管理画面1つで、しかも多少の時間差はあっても処理できるようになるのは、ユーザー以上にありがたい話なのだそうだ。

現時点でポケットエクスペリエンスに対応するのは全レストランのうち15店舗ほど。同社ではこれを月内にも30店舗程度まで拡大し、最終的には全店舗への導入を目指すとしている。またこれにあわせて、7月末にもポケットコンシェルジュの有料会員モデルをやめ、無料利用、決済手数料でのマネタイズというビジネスモデルに移行するとしている。今秋にはスマートフォンアプリも提供予定だ。


月額2980円で士業に相談し放題の法人向けQ&Aサービス「Bizer」、登記用の書類も自動作成

Q&Aサービスと言えばオウケイウェイヴの「OKWave」から、スマートフォンに特化したLINEの「LINE Q」、nanapiの「Answer」などを思い浮かべるかも知らないが、企業を支援するQ&Aサービスも存在する。弁護士ドットコムの「弁護士ドットコム」もそうだし、walkntalkの「Visasq(ビザスク)」もそう、今回紹介するビズグラウンドの「Bizer(バイザー)」もそういったサービスの1つだ。

Bizerは、会社運営に関する手続きについて税理士や社労士、行政書士、司法書士といった士業の人々にオンラインで相談できるサービスだ。価格は月額2980円で、相談回数は無制限となっている。

サービスを開始したのは5月。現在はユーザーの8割が10人以下のスタートアップだそうだが、数十名規模の中小企業まで約100社がサービスを利用している。相談は基本的に24時間以内に回答するとしているが、現在1〜2時間程度で回答が来ることがほとんどだという。回答する士業の人数は30人程度。現在のリソースで1000社程度のユーザーまでカバーできるそうだ。ビズグラウンドで実際に自社の登記変更を依頼するなどしてテストをして、信頼できる人物のみを採用するという徹底ぶりだという。

Bizerはユーザーと士業の相談に加えて、士業への仕事の発注までをサポートする。Bizer上で金銭のやりとりは発生しないが、士業はユーザーから発注された金額の20%を利用料としてBizerに支払っている。「個別具体的な話が多い。また地域によっては業種を理解している士業の人にリーチするのが難しかったりもする。そういった課題を解決したい」(ビズグラウンド代表取締役の畠山友一氏)。

これを聞いてしっくりきたのだけれど、最近地方発のあるスタートアップが、起業の際にあった課題の1つとして「ITを理解している税理士が近所に居なかった」と話していたことがあった。Bizerでも、実際に地方のITスタートアップとITを理解している都内の税理士が仕事をするといった事例が出てきているそうだ。

そんなBizerが6月30日、役所提出書類の自動生成機能を公開した。この機能を利用すると、あらかじめBizerに登録しておいた情報をもとに、公証役場の委任状、法務局の登記申請書など、会社設立時や設立後に必要な16の書類を自動で作成できるようになる。

ただこれを聞いて疑問に思ったのだけれども、この機能、士業の仕事を奪うようなものではないのだろうか?畠山氏はその可能性を認めた上で、「書類作成はあくまで単純労働のようなもの。そういったものではなく、士業でないとできない付加価値のある仕事に集中できるようにしてほしい」と語る。2013年の株式会社の登記件数は約8万件とのことだが、Bizerでは今度その1割に当たる8000社の利用を目指すとしている。また、Bizerは登録された情報などをもとに、新たなサービスも提供していけそうだ。

なおビズグラウンドは、インキュベイトファンドの運営するファンド「インキュベイトファンド2号投資事業有限責任組合」から出資を受けている。金額は非公開だが、数千万円程度とみられる。


孫さんが認めたサービスの開発者が手がけるデートアプリ「コッピア」

日本でFacebookを活用して恋人を探せるスマートフォンアプリといえば、2013年12月にヤフーと提携した「Omiai」や100万人が利用するという「pairs」などがある。この手のアプリはゴマンとあって、違いがよくわからないのが正直なところだけれど、今回紹介するデートアプリ「Coppia(コッピア)」を記事にするのは、その原点となったアプリがちょっと異色だからだ。

コッピアを運営するロケットスタッフは2011年3月、東日本大震災の被災者と支援者をマッチングするサービス「TwitForYou!」をオープン。被災者が欲しい物資と、支援者が送りたい物資の情報をそれぞれTwiterアカウントでログインして登録する仕組みで、これまでに家具や洋服、雑貨など2000件の物資がやりとりされたのだという。この取り組みにはソフトバンクの孫正義社長も「素晴らしい!」と絶賛している。

Twitterを使ったマッチングに可能性を感じた彼らが次に手がけたのは、現在地から10km圏内にいる人とチャットや写真共有ができるiPhoneアプリ「Pepper-meet」だ。この話を聞いてすぐに「近所同士の出会い系?」と思ってしまったが、ロケットスタッフ代表取締役社長の高榮郁氏曰く「近所同士の助け合いが目的だった」。結局は意に反して出会い系のように使われたためにサービスを終了。ところが、このアプリに目を付けた会社からデートアプリを作ってほしいというオファーが舞い込む皮肉な展開となり、2つのデートアプリを受託開発することとなったそうだ。

理想のデートプランでマッチングする「重くない」デートアプリ

そして今回、独自のデートアプリとしてリリースしたのがコッピア(イタリア語でカップルの意)というわけだ。自分が投稿したデートプランを気に入ってくれた異性とメッセージのやりとりをするのが特徴。デートプランを投稿した人は、1対1だけでなく、2対2以上のグループデートも選べる。アプリを見せてもらったところ、「ワールドカップ観戦できるビアガーデンに行きたい」「ダーツバーに行ってみたい、できれば複数で」といったデートプランが投稿されていた。

婚活や恋活をうたうデートアプリは、お互いのプロフィール写真に「いいね!」をした人同士をマッチングするものが多いが、高氏はこれらのアプリを「重苦くないですか? そもそも婚活ってキーワード自体が重い。出会いというのは、かしこまらず自然であるべき」と言う。コッピアは「同姓や異性にかかわらず、気軽に楽しいことができるサービスにしたい」と話し、早々に2000ユーザーを目指す。

利用するにはFacebookアカウントが必須。あとは保険証や免許証などの写真をアップロードして年齢認証を行わせることで安全面に配慮している。月額料金は無料で、課金はお互いの「サブ写真」(メインのプロフィール写真とは別にアップロードしている写真)を見たり、男性が女性にメッセージを送信するごとに発生する。現時点では東京限定のサービスだが、今後は大阪や名古屋での展開も見込んでいる。


週2日副業で月24万円も、エンジニアの空き時間と企業をマッチングする「PROsheet」

ITエンジニア不足が深刻化していると言われるが、優秀なエンジニアはすでに働いていたり、転職しようと思えば自分の横のつながりで新しい仕事を紹介されたりしている。企業に属さないイケてるエンジニアだってフリーランスや起業家として活躍しているもの。そんなITエンジニアの空き時間に着目し、企業とマッチングしているのが、今年2月にベータ版を開始した「PROsheet(プロシート)」だ。エンジニアに職務経歴書を登録してもらうことで、週2日からの仕事を紹介している。

エンジニアはサイト上で、自分が扱えるJavaScriptやPHP、Java、Ruby、Perlといった「言語」、LinuxやMySQLといった「スキル」、「希望報酬」を登録。希望に沿った案件がある場合は通知され、その場でエントリーできる。その後はプロシート専属のエージェントと面談し、希望条件を満たす企業に推薦してもらえる。最終的には企業との面談で業務委託契約を交わすことになる。

プロシートを運営するシェアゼロの中川亮氏によれば、すべての仕事が企業との直接案件のため報酬面が充実しているのが特徴。エンジニアが得られる報酬は「1日3万円がベース」。週2日勤務で月額24万円前後、週3日勤務で36万円前後の案件が多いという。自社サービスをやりつつ「ラーメン代稼ぎ」をしたい起業家や、時間を有効活用したいフリーランスなどに良さそうだ。

フリーのエンジニアが活躍する場としてはクラウドソーシングもあるが、「現状ではオンラインで完結する簡単なタスクが多い」と指摘する。サービス開始から3カ月で500人のエンジニアが登録し、年内に登録者数3000人を目指している。

採用企業にとっては、面談から最短1週間以内で稼働できるのがメリットだという。「即戦力を求める企業のニーズにも合致する」(中川氏)。プロシート側で登録者を事前にスクリーニングして、企業にフィットする人をエージェント経由で紹介するため、ミスマッチも起こらずに通常の採用のような負荷もないのだとか。これまでにカヤックやエウレカなどのベンチャー約60社が、100人近くのエンジニアと業務委託契約を結んでいるそうだ。

27日にはエンジニアを支援するために、シェアゼロが運営する東京・渋谷のコワーキングスペース「ライトニングスポット」にキャリア相談室を開設。プロシートの登録者に対して、TORETA(トレタ)やミイルのCTOを務める増井雄一郎氏ら現役エンジニアがメンターとなってアドバイスするサービスを開始した。あわせて、プロシート専属のエージェントが職務経歴書を添削するサービスも始めた。

シェアゼロの中川亮氏


グロースハックとAndroid優先が奏功、ファッションアプリ「iQON」は登録ユーザー100万人に

ファッションアイテムの画像を組み合わせて自分好みのコーディネートを作成するVASILYのファッションアプリ「iQON」。同アプリの登録会員数(ダウンロード数やアクセスしたユニークユーザーではなく、会員登録したユーザーだ)が、6月25日付けで100万人を突破した。

グロースハックとAndroidファーストがキモ

「Androidファーストでの開発がうまくいっている」——VASILY代表取締役の金山裕樹氏はこう語る。実はVASILYは国内でもグロースハックにいち早く注目したスタートアップの1社とのことで、2013年1月からは様々な施策に取り組んでいるという。

「雄介(AppSociallyの高橋雄介氏)に概念を教えてもらったことがグロースハックを始めたきっかけ。VASILYはテクノロジーカンパニー。社員もエンジニアが多いし、アプリのユーザーレビューでも評価が高い。僕自身もUXのプロであってもマーケティングのプロではない。自社のエンジニアリング能力を生かす意味では、グロースハックでユーザーを獲得するのは『アリ』だと思った」(金山氏)

グロースハックのための施策は、ボタンの変更からチュートリアルの簡素化にはじまる「細かいことの積み重ね」だそう。その考え方や施策については、同社のブログでも一部紹介されているので参考にして欲しい。そしてその際に生きているのが、前述のAndroidファーストでの開発だという。

AndroidのアプリストアであるGoogle Playは、アプリのアップデートにアプリストア側で審査する時間がかからない(AppleのApp Storeではおおよそ1-2週間の審査時間を要する)。そのため、細かな施策をAndroidアプリで次々に実施し、効果が検証できたもののみをiOS版のアプリに反映していっているのだそうだ。その結果、リワード広告やアドネットワークなどをほとんど利用することなく会員100万人を達成したという。

特にアプリをリニューアルした2013年秋以降の成長は急激だという。「アプリのアイコンを4つに減らし、徹底的にシンプルなデザインにした。これもAndroidでうまくいったのでiOSにも反映した施策だ」(金山氏)

マネタイズの3つの柱

100万人の登録ユーザーは、もちろんファッション好きなユーザーが中心だ。iQONではコーディネート作成に利用するアイテムを直接購入できるように、ECサイトへのアフィリエイトリンクを張っているが、すでにiQON経由での売上が合計1億円を越えるサイトなども登場しているそうだ。

マネタイズについても聞いたのだが、前述のアフィリエイトのほか、タイアップを中心にした広告、4月から開始した月額300円のコンテンツ課金の3点を展開しているとのことだった。

広告に関しては、ELLEgirl前編集長の澄川恭子氏がVASILYに参画したこともあって「コンテンツの信頼感も増し、ナショナルクライアントも入ってきている」(金山氏)。一方で課金ユーザーはまだまだ少ない。だが将来的には「外部のファッション誌のコンテンツとも連携していきたい。まずはユーザーのニーズがあることを自社コンテンツで証明する」(金山氏)。

今週Gunosyの発表が続いたりしたこともあって、ニュースアプリのプラットフォーム化を意識する機会はあった。それと同じようにiQONは、ファッションECの集客を実現するプラットフォームとなりつつあるようだ。

ロゴ刷新、海外展開も視野に

VASILYでは今回の発表にあわせて、ロゴを一新する。記事冒頭にあるのが新しいロゴだ。また年内に会員数200万人を目指すほか、早ければ年内にも台湾をはじめとしてアジア、米国での展開を目指すとしている。


MOVIDA JAPANが体制を刷新、今後は嶋根氏が事業の舵取りに–伊藤氏は投資注力

シードアクセラレーターのMOVIDA JAPAN(MOVIDA)が、運営体制を新たにする。これまで、チーフアクセラレーターとしてインキュベーション事業を担当し、同時にMOVIDAから分離したベンチャーキャピタルファンドであるGenuine Startups(Genuine)の代表を務めていた伊藤健吾氏が、Genuineでの投資事業に専念する。MOVIDAについては、これまでもインキュベーションプログラムの運営に携わってきた嶋根秀幸氏が後任となり事業を進める。今後はプログラムも刷新してスタートアップの支援を続けるとしている。

ちょっとややこしいので、まずはMOVIDAとGenuineの関係を説明しておく。もともとMOVIDAは2011年に第1期となる「Seed Accelerationプログラム」を開始。以後半年に1回の周期でプログラムを実施してきた。プログラムの参加者や、プログラムには参加していなくともMOVIDAが開催する起業家向けのイベント「MOVIDA SCHOOL」に参加する起業家などに、転換社債で最大500万円までの資金を提供してきた。

当初、この投資は孫泰蔵氏率いるMOVIDAグループの資本で行われてきた。だが、2013年以降は伊藤氏の会社であるケイマン法人のGenuine Startupsがゼネラルパートナー(GP)となり、外部投資家からも資金を集めたファンド「Genuine Startups Fund」を設立。MOVIDAの投資先も新ファンドに移管する形で、ファンドの独立性を高めている。孫泰蔵氏はあくまでLPという形でファンドに出資している。

Genuineでは、2014年に入って30社以上に出資しているそうで、これまでのMOVIDAでの実績と合わせると約50社に資金を提供していることになる。そこで課題になってくるのは、投資先への支援体制だ。「投資を受けてさらなる成長を目指す1社1社に対して、事業開発の支援や次の資金調達などのフォローアップに十分に時間をかけられなくなる」(伊藤氏)ということで、同氏はGenuineでの投資および投資先の支援事業に注力することにしたのだという。「今までやりきれてなかったことをちゃんとやる。意外にいいものを持っているのに、安売りするというか価値を伝えてない起業家も多いので、それを伝えていく」と伊藤氏は語ってくれた。ただ、これまでプログラム開始時から育成に携わってきた伊藤氏が、まだ上場、売却といったイグジットのないMOVIDAから離れるのは少し残念な気もする。

一方でMOVIDAでは、プログラムを見直して文字通り創業期の起業家の支援に注力していく。「これまでやってきたMOVIDA SCHOOLも、講義から実践的な勉強会に一新する。数カ月のブートキャンプ形式でプロダクトを完成させるところまでやる。もし投資が受けれないのであれば、なぜできないのかも理解させて、徹底的にブラッシュアップをする」(嶋根氏)。SCHOOLの開催時間もこれまでの水曜夕方から午後7時に変更し、広く起業家、企業志向の人材を集めていく。また、育成と投資の機能を完全に分けることから、MOVIDAのプログラム参加者であっても、500万円の投資が受けられる“確約”はなくなることになる(一方でGenuineやその他のファンドから、「500万円」という枠にとらわれない出資を受けることも可能になるが)。

MOVIDAから出資を受けている中には、TrippieceやBeatroboのような億単位の調達をしているスタートアップも居るが、中には次の調達ができず、事業の継続を諦めたケースもある。「どのスタートアップも手応えはあったが、果たして1社1社に500万円を渡すかは悩みどころだ。スタートアップのエッセンスを伝え、プロダクトを考えるところ伝えて、突き抜けているスタートアップを作りたい」(嶋根氏)。ただ前述の通り、出資が前提ではないプログラムとなることで、起業家にとっての魅力がどう変化するのかは、正直分からないところだ。

さてそうなると気になるのは、投資事業を行わなくなり、管理報酬やキャピタルゲインを得られなくなったMOVIDAのマネタイズだ。同社はスタートアップの支援を続ける一方で、企業の新規事業支援にも挑戦していくのだそうだ。すでにヤフーと共同で「スター育成プログラム」を展開しているが、このプログラムのように、企業内の人材育成や社内インキュベーションといった領域での事業展開も準備しているという。すでにいくつかの引き合いもあるそうだ。実はこういった企業の新規事業支援・企業マインドをもった人材の育成といった分野は、一部のベンチャーキャピタルやスタートアップを支援する企業が事業として取り組みはじめているという話を聞いている。

 


配信記事キャッシュ開始したGunosy、広告収益分配ではSmartNewsを先制

昨日KDDIなどからの12億円の資金調達を発表したばかりのGunosyだが、また新たな発表があった。同社は6月24日、ニュースリーダーアプリ「Gunosy」上で閲覧できるオンラインメディアの記事のキャッシュ化と、メディアに対して広告収益の一部を還元すると発表した。

同社に聞いたところ、すでに6月6日から大手を中心にいくつかのオンラインメディアの記事をキャッシュしているそう。対象メディアの記事は、高速かつ、通信環境を問わずに閲覧できるようになっているという。Gunosyではキャッシュを許諾した媒体名を明らかにしていないが、僕が実際にスマートフォンのネットワークを切って記事を閲覧したところ、共同通信と毎日新聞の記事は閲覧できた。少なくともこの2媒体はキャッシュを許諾しているとみてよいのではないだろうか。Gunosyでは今後、大手を中心としたオンラインメディアに対してキャッシュ取得の打診をしていくとのことだ。

Gunosyでは、2014年に入ってアプリの方向性を変え、パーソナライズからみんなの注目するニュースを集める「メジャー化」に舵を切った。以降、競合サービスであるスマートニュースのニュースリーダーアプリ「SmartNews」に似てきたという声も聞くが、ユーザー体験を比較すると、記事をキャッシュしているSmartNewsに対して、キャッシュしていないGunosyでの記事閲覧に速度的な不満を感じたことがあるのは正直なところだった。

だがキャッシュの取得について言えば、SmartNewsが「メディアの許諾を取らずに記事をキャッシュをしている」として問題になったこともある。余談ではあるが、当時はとある新聞社をかたる警告書までがスマートニュースに届き、それがまたNAVERまとめにまとめられる(現在は削除されている)といったことにもなっていた。スマートニュースに近い関係者に聞いたところ、この警告文はあくまで「かたったもの」だったとのことで、その後その新聞社のコンテンツはSmartNewsで閲覧できるようになっている。こういった背景もあったからなのか、Gunosyではメディア各社に打診したのち、キャッシュを取得するという慎重な姿勢を見せている。

また、キャッシュの取得とあわせて、媒体社に対して広告収益の一部を還元していくという。数字こそ明言しないものの、Gunosyは月間で億単位の売上があるという。その一部について、キャッシュの取得を許諾したメディアに対して還元していくという。

金額などは非公開だが、レベニューシェア、月額固定などいくつかのパターンを想定しているとのこと。Gunosy取締役CFOの伊藤光茂氏は、「Gunosyはバリューチェーンで言うところのデリバリー。コンテンツを作っているところには還元していく」と語る。また伊藤氏は「おこがましいかも知れないが…」とした上で、将来的には自社の広告だけでは収益を上げられないメディアであっても、Gunosy経由での記事配信で大きな収益を生めるような環境を整えたいと語っていた。なお、当面は自社に編集部を持ってオリジナルのコンテンツを作るといったことは予定していないとのこと。

収益の還元についてはスマートニュースでも以前からメディアに対して何らかの形で行うとしているものの、現時点では広告事業も収益還元プログラムなども発表されていない(メディアが指定する広告をスマートモード(キャッシュ)上に掲出する機能は提供している)。もちろんスマートフォンでのニュースアプリの覇権を争っているのはGunosyとSmartNewsだけではないが、両社の展開は僕らオンラインメディアにも少なからず関係する話だ。今後について注目していきたい。


音楽業界に入り込むBeatroboの「PlugAir」が今度はTMNとタッグ

4月にローソンHMV エンタテイメントなどから110万ドルを調達したBeatrobo。調達の際にも紹介したのだけれども、彼らが手がけているイヤホンプラグ型マルチデバイス「PlugAir」は、スマートフォンのイヤホンジャックに挿入して専用アプリを立ち上げることで、コンテンツのダウンロードや視聴などができるというものだ。

スタートアップのハードウェアながら、すでに米国の人気バンドLinkin Parkがファンクラブ向けの特典として採用しているほか、Universal Musicやアミューズ所属のアーティストの楽曲販売、ツアーグッズとして提供された実績がある。そんなPlugAirが今度はTM NETWORKの先行チケットの購入特典として採用された。

「TM NETWORK 30th WINTER TOUR 2014」の先行チケットをアーティストのファンクラブで購入(抽選)すると、専用のPlugAirを特典として受け取ることができる。これをスマートフォンのイヤホンジャックに差し込めば、オリジナルのオンラインコンテンツをダウンロードできる。

Beatrobo CEOの浅枝大志氏は調達の際にも「今後、より多くのアーティストとの取り組みを進める」と話していたけれども、正直音楽業界とのアライアンスを手がけているスタートアップはそう多くはいない。あくまで提携先が1つ増えただけと見ることができるかも知れないけれども、Beatroboにはガンガンこの分野を切り開いていって欲しい(もちろんPlugAirは音楽に特化しているワケではないらしいので、他の分野も、だ)。


日本人ファウンダーの福利厚生サービス、AnyPerkがVegas Tech Fund等から300万ドルを調達

AnyPerkはあらゆる規模の企業に社員福利厚生を提供するY Combinator出身のスタートアップだが、300万ドルの追加シード資金を調達したことを発表した。

共同ファウンダーでCEOの福山太郎(写真)によれば、AnyPerkはすでに2500社にサービスを提供しているという(Uberのライバル、Lyftはドライバーのリクルートの一環としてAnyPerkを利用している)。福山は「優秀な社員をリクルートするためのさまざまな方策が議論されているが、福利厚生の充実は社員の士気を高め、定着を促す上で非常に重要な要素だ」と語った。

この記事を執筆している時点で、AnyPerkのウェブサイトにはモバイル料金、映画、ジム、レストラン、スパリゾートの割引など400種類以上の福利厚生特典が用意されている。福山は「企業は自社で用意している福利厚生を社員がさらに簡単に利用できるようにするためにAnyPerkにアップロードすることもできる」と語った。

BetterWorksのような同種のサービスが失敗していることについて尋ねると、福山は「(BetterWorksなどは)ローカルビジネスと提携しようとした。われわれは逆に全国チェーンとの提携に力を入れている。その方がビジネスをスケールしやすいからだ」と答えた。また福山は「福利厚生サービスは他の多くの国ですでに成功している。アメリカが例外なのだ」と付け加えた。

たしかに投資家はこの分野に大きな可能性を見出しているようだ。AnyPerkに対する投資家にはZapposのファウンダー、Tony HsiehのVegas Tech Fund、Zuora CEOのTien Tzuo、Vayner RSEなどがいる。今回の新規資金の調達も主としてCyberAgent、Digital Garageなどを含む既存投資家から行われた。前回の資金調達(Andreessen Horowitz、SV Angel、YC、Digital Garage、CyberAgent)と合わせてAnyPerkは総額450万ドルのシード資金を調達したことになる。

今回の資金は主にセールスおよびマーケティングのチームの拡大とモバイル・アプリの開発に充てられる。

[原文へ]

(翻訳:滑川海彦 Facebook Google+


GunosyがKDDIなどからさらに12億円を調達、テレビCM中心にプロモーションを継続

Gunosy代表取締役共同最高経営責任者の木村新司

テレビCMでもよく目にするようになったニュースアプリ「Gunosy(グノシー)」。サービスを提供するGunosyは、年始にもKDDIから推定12億円の資金調達を実施し、そのほとんど広告宣伝費として投下したとも聞いていた。そんな同社が6月23日、KDDIとジャフコ、B Dash Venturesがら総額12億円の資金調達を実施したことを明らかにした。いずれも追加投資となる。

Gunosyによると、テレビCM開始前で200万台後半だったというダウンロード数は、今月末には400万ダウンロードを突破するまでに成長。当初放映していたウルトラマンを起用したCMの評判はイマイチだったようだが、現在は評判もいいそうだ。「秒単位でCMとダウンロードを解析している」とのことで、CPI(インストールにかかる費用)を考慮すると、「ビジネスとして成立する状況」(Gunosy取締役CFOの伊藤光茂氏)だという。またビジネス面について少し聞いたところ、すでに広告事業で月次で億単位の売上があるのだそうだ。

今回の調達の主目的も「広告宣伝」とのこと。今後も引き続き国内でテレビCMを中心にしたプロモーションを展開するほか、4月に開始した海外事業のプロモーションも進める。

2月以降、アプリを刷新してニュースの“パーソナライズ”から“メジャー化”を進めてきたGunosyだが、CM効果もあって好調だ。一方で競合と言われることの多い「SmartNews」を手がけるスマートニュースについても、資金調達をしたのち今夏にもテレビCMを展開するという噂も聞こえてきているし、すでにグライダーアソシエイツの「Antenna」もテレビCMと交通広告を展開している。