Xiaomiは4〜6月期過去最高64%の収益増加、自動運転技術会社Deepmotionを買収

Xiaomi(シャオミ、小米科技)は第2四半期、売上高が135億6000万ドル(約1兆4916億円)となり、12億8000万ドル(約1408億円)の純利益を計上した。これは、中国のテック巨人である同社が、世界的にスマートフォンの市場シェアを大きく伸ばしたことを受けたものだ。

2021年6月に終了した同四半期において、Xiaomiは前年同期比で64%の増収を達成し、純利益は80%以上の増加となった。

香港に上場している同社は、スマートフォンの出荷台数が5290万台に増加したことにより、同カテゴリの売上高が91億ドル(約1兆10億円)に増加したと発表した。市場調査会社のCanalysによると、それによりこの四半期、同社はApple(アップル)を抜いて世界第2位のスマートフォンメーカーになった。

関連記事
シャオミのスマホ出荷台数がアップルを抜き世界第2位に
シャオミがEV事業に参入、10年で1.1兆円の投資目標

Xiaomiの国内最大のライバルであるHuawei(ファーウェイ)に対する米国政府の制裁措置に助けられ、Xiaomiは他のいくつかのメーカーとともに、国内だけでなく世界的にも市場シェアを拡大している。

また、IoTとライフスタイル製品カテゴリーからのXiaomiの収益も伸びを見せ、36%増の32億ドル(約3520億円)となった。

同社は決算報告の直後に、設立4年の自律走行技術スタートアップDeepmotion(深動科技)を約7730万ドル(約85億円)で買収すると発表した。この投資は、EV分野に今後10年間で100億ドル(約1兆1000億円)を投資するという同社の大胆な計画に沿ったものだ。

関連記事
中国の検索大手BaiduがEV製造ベンチャー設立へ
アリババとファーウェイが急成長の中国巨大EV市場に参入

Xiaomiは、EV業界に参入した最新の中国テック企業だ。中国の検索エンジン大手Baidu(バイドゥ、百度)は2021年初め、自動車メーカーGeely(ジーリー、吉利汽車)の協力を得てEVを製造すると発表した。2020年11月には、Alibaba(アリババ)と中国の国有自動車メーカーであるSAIC Motor(上海汽車集団)が手を組んで電気自動車を生産すると発表した。ライドシェア大手のDidi(ディディ、滴滴出行)とEVメーカーのBYD(比亜迪)も、配車サービス用のモデルを共同設計している。

筆者の同僚であるRita Liao(リタ・リャオ)は以前こう報じていた。

インターネットの巨人たちは、Xpeng(シャオペン、小鵬)やNio(ニオ、上海蔚来汽車)、Li Auto(リ・オート、理想汽車)など、すでに複数のモデルを発表し、しばしばTesla(テスラ)と比較される、より専門的なEVスタートアップの数々と競合している。これらEVメーカーは車内エンターテインメントから自律走行まで、様々な機能に投資して差別化を図ろうとしている。

Xiaomiにとって自動車メーカーとしての明らかな強みは、広大な小売ネットワークと国際的なブランド認知度だろう。また、スマートスピーカーや空気清浄機など、同社のスマートデバイスの一部は、セールスポイントとして車に簡単に組み込める。もちろん、真のチャレンジは製造にある。携帯電話の製造に比べ、自動車産業は資本集約的で、長く複雑なサプライチェーンを必要とする。Xiaomiがそれを成し遂げることができるかどうか、見守っていきたい。

Xiaomiは中国時間8月25日、Deepmotionへの投資は、同社製品の市場投入までの時間を短縮するのに役立つと述べた。

画像クレジット:Roman BalandinTASS / Getty Images

原文へ

(文:Manish Singh、翻訳:Aya Nakazato)

中国TencentがインドのPocket FMの投資ラウンドをリードへ、最大27億円規模か

Tencent(テンセント)が、インド・グルグラムに本社を置くPocket FM(ポケットエフエム)の投資ラウンドをリードする交渉が進んでいる。中国の大企業がインドマーケットで消費者インターネットのポートフォリオを拡大する最新の動きだ。

この件を把握している情報筋3人によると、すでにPocket FMに出資しているTencentはPocket FMの2000万〜2500万ドル(約22億〜27億円)のラウンドをリードすることで協議を進めている。提案された創業3年になるPocket FMの評価額は7500万〜1億ドル(約82億〜110億円)だと情報筋2人は述べた。既存投資家であるTimes InternetのBrand CapitalとLightspeedもラウンドに加わる。

ラウンドはまだクローズしていないため、条件は変わり得る。TencentとPocket FMはコメントを却下した。

Pocket FMは、ユーザーにポッドキャストとオーディオブックを英語やいくつかのインドの言語で提供する社名を冠したアプリを展開している。カタログは1万時間超にのぼると同社のウェブサイトにはある。オーディオブックを制作するのに同社は数人のクリエイターと協業している。

アプリはフリーミアムモデルで利用でき、有料のサブスクと広告が入る無料バージョンが用意されている。

今回の投資協議は、幅広いインドのスタートアップがオーディオ部門で事業を開始したり拡大したりしている中でのものだ。たとえばインドのソーシャルネットワークShareChatは2021年初めにClubhouseのような機能を立ち上げた。

Pocket FMはTencentがインドの消費者インターネット分野に賭ける最新の案件だ。Tencentはまた、音楽ストリーミングサービスのGaana、オンデマンドビデオストリーミングプレイヤーMX Playerの主要投資家でもある。

インド政府が中国企業によるインド企業への投資を許可制にする規則を導入したことを受け、Tencentは2020年にインドでの投資のペースを抑制した。ここ数四半期は活発になり、コンバーチブルノート付きの株式の代わりに社債を通じて投資している。

関連記事:インドが中国からの投資に政府承認を義務付け、新型コロナ渦中での敵対的買収を予防
画像クレジット:Arijit Sen / Hindustan Times / Getty Images

原文へ

(文:Manish Singh、翻訳:Nariko Mizoguchi

【中国の近況】政府がByteDanceに出資、Amazonの中国販売業者取り締まりは続く

TechCrunchチャイナ・ラウンドアップへようこそ&おかえりなさい。中国テック業界の近況と、それが世界の人々にどんな意味をもつかについてまとめてみた。

先週、中国政府がByteDance(バイトダンス)に資本参加したことで投資家たちの不安は増大した。TikTok(ティックトック)の親会社にして世界最大級の非上場インターネット企業だ。一方でAmazon(アマゾン)による中国販売者の取り締りは続き、中国南部の多くの業者を廃業に追いやり、政府は包括的データ保護法を可決しせ11月に施行される予定だ。

国の資本参加

中国政府による国のインターネット巨人の制御を強める大計画は続いている。今週、The Informationは、ByteDanceの国内事業体が4月に株式の1%を政府関係機関に売却したことを報じた。この取引は企業情報の公開データベースであるTianyancha公式企業登録簿にも記載されている。

この動きは突然起きたのではない。中国政府は非上場テック企業の少数株取得を2017年から考慮していた。当時The Wall Street Journalは、インターネット規制当局が、WeChat(ウィーチャット)運営者であるTencent(テンセント)、Twitter(ツイッター)類似サービスのWeibo(ウェイボ)、YouTube類似サービスのYouku(ヨーク)などの企業の1%株を取得する検討をしていると報じた

2020年4月、China Internet Investment Fund(中国インターネット投資ファンド)の子会社、WangTouTongDaはWeibo株の1%を1000万中国元(1億6900万円)で購入した。Weiboの米国証券規制当局への提出書類による。Weiboはこの書類で、WangTouTongDaの国との関係について言及しなかった。

同様に、ByteDanceは株式の1%を、主要規制機関が指定した3つの団体、China Internet Investment Fund、共産党中央宣伝部が制御するChina Media Group、および北京市政府の投資部門に売却した。

ByteDanceに対する中国政府の動きを受け、米共和党のMarco Rubio(マルコ・ルビオ)上院議員は今週、米国でTikTokをブロックするようジョー・バイデン大統領に緊急要請した。

ByteDanceの少数株を取得することで中国政府がどれほどの力を得るのか正確にはわからないが、Weiboによる投資家への情報開示がいくつかヒントを与えている。

同政府がWeiboとByteDance両方の国内事業体の株を取得していることは注目すべきだ。中国のインターネット企業は、中国本土の事業が契約上の合意を通じて金銭的利益を得られる資格をもつ海外事業体を設立することがよくある。この枠組は変動持ち分事業体(VIE)と呼ばれる。この構造によって中国企業は海外での資金調達が可能になるが、海外投資を制限する中国政府による監視が強まっている。

Weiboは提出書類の中で、出資者である国有企業のWangTouTongdaが、Weiboの国内事業体の3名からなる取締役会の役員1名を指名できるようになり、コンテンツや将来の資金調達に関する特定の要件に対する拒否権を得ると書いている。

ByteDanceも同様の契約を同社の国有出資者と結んでいる可能性が高い。中国政府はケイマン諸島法人の独立海外事業体の子会社であるTikTokの株式は取得していない、とThe Informationは指摘している。これは米国規制当局に多少の安心化を与えるものだが、中国政府による海外中国企業の支配に対する懸念が消えることはないだろう。

実際バイデン政権は2021年6月、ByteDanceとWeChatを禁止したトランプ時代の命令をより精査されたポリシーで置き換え、安全保障上のリスクを生む可能性のある「外国の敵対者」とのつながりについて、商務省によるアプリの審査を必須とした。

TikTokは中国政府へのユーザーデータ引き渡しに関する告発と戦ってきた。ByteDanceは米国で2021年4番目のロビー活動費使用者であり、Amazon、Facebook、およびAlphabetに続いている。中国政府による投資によって、さらに多くの活動費が必要になるだろう。

関連記事:バイデン大統領がトランプ氏時代のTikTok、WeChat禁止令を廃止

窮地のAmazon販売業者

5月に私はAmazonが中国最大級の販売業者数社を、同プラットフォームの規約に違反したとして利用禁止にしたことを報じた。偽レビューやユーザーに肯定的レビューを書かせるために報酬を支払うなどの行為による。厳しい取り締りは中国のオンライン輸出業者をパニックに陥らせ、それはAmazonによる1回限りの不意打ち攻撃ではなく、長引く戦争になった。影響を受けた中国業者の正確な数は明らかにされていないが、業界ウォッチャーのMarkeplace Pulseなどは、7月初め時点で「数百社の」中国販売業者が停止されたと言っていた

関連記事:米Amazonから中国の大手販売業者が消える、不正レビューが原因か

罰せられたアカウントは利用禁止となりされ、Amazonによって商品は差し止められ入金は凍結されている。世界のAmazon販売業者の大半が拠点を置く深圳では、最近だけで数千人が解雇された。深圳のある大規模販売業者のオーナーは、大損害を理由に最近自殺したと知人が伝えた。

取り締りを生き延びた販売業者は、Amazonによる襲撃は「遅かれ早かれ起きたこと」だと語った。私が話した業者のほとんどが同じ意見だった。シアトルの巨人Amazonは現在、価格とランキング操作だけで競争するジェネリック製品ではなく、品質とデザインを求めている。

中国政府もこの事象に注目した。商務部の高官は7月の記者会見で、相次ぐアカウント閉鎖について中国輸出業者を「水から出た魚」になぞらえた。

「世界の法律、文化、ビジネス慣行の違いのために、[中国]企業は海外進出においてリスクと難題に直面しています」と商務省のLi Xingqian(李興乾)対外貿易局長は言った。

「私たちは企業がリスク管理を改善し国際貿易標準を遵守する手助けをします」。一方で同氏は「各プラットフォームにはさまざまな企業による重要な貢献を大切にし、異なる取引相手を十分に尊重する」よう要請した。

データ保護

最後に、中国は先週、包括的なデータ保護法を可決した。同法はテック企業によるユーザーのデータ収集の方法を厳格に制限しているが、国家による監視には影響を与えない可能性が高い。この2020年提起された規制法案は11月1日に発効する。詳しくは以下の記事を参照されたい。

関連記事
中国で個人情報保護法が可決
中国のインターネット規制当局は強制的なユーザーデータの収集を標的に

画像クレジット:Photo by VCG/VCG via Getty Images

原文へ

(文:Rita Liao、翻訳:Nob Takahashi / facebook

アップルが台湾・香港・中国向け刻印サービスで「ダライ・ラマ」「雨傘革命」など法的義務以上に検閲していると明らかに

アップルが台湾・香港・中国向け刻印サービスで「ダライ・ラマ」「雨傘革命」など法的義務以上に検閲していると明らかに

Citizen Lab

アップルはAirPodsやiPadなどを公式ストアで注文したユーザーに対して、無料で刻印サービスを提供しています。このサービスに付き、中国や香港、台湾で政治的検閲を行っていると指摘するレポートが発表されています

この報告書は、カナダにあるトロント大学のインターネット監視団体Citizen Labが調査に基づき公表したものです。Citizen Labは中国生まれのTikTokが悪質な行為を行っている証拠はないと述べるなど、特に反中国というわけではありません。

アップルの無料刻印サービスはどの地域でも攻撃的な言葉やフレーズを禁止しており、米国でも170の単語を入力することができません。しかし中国では、禁止されている単語やフレーズの数は1000以上にのぼり、その中には政治的な言及も多く含まれているとのことです。

アップルが台湾・香港・中国向け刻印サービスで「ダライ・ラマ」「雨傘革命」など法的義務以上に検閲していると明らかに

Citizen Lab

アップルが台湾・香港・中国向け刻印サービスで「ダライ・ラマ」「雨傘革命」など法的義務以上に検閲していると明らかに

Citizen Lab

Citizen Labが行ったのも、どの単語が拒否されるかを調べるテストでした。これができたのは、アップルの刻印サイトが入力されたテキストを一文字ずつ分析し、受付できない内容に即座にフラグを立てるためです。

このテストは6つの地域で実施され、その結果アップルが国ごとに異なるAPIを使ってテキストを検証していると明らかになったそうです。さらに中国では政治的な検閲が行われていると分かり、その一部は香港や台湾にも及んでいました。

まず中国本土では、中国の指導者や政治システムに関する広範な言及、反体制派や独立系報道機関の名前、宗教や民主主義、人権に関する一般的な用語などが検閲されていると分かったとのことです。たとえば政治関係としては「政治、抵制、民主潮、人权(人権)」など、チベットやチベット宗教に関しては「正法、達賴(ダライ・ラマ)、达兰萨拉」といったところです。

かたや香港では、市民の集団行動に関するキーワードが広範囲に検閲されています。たとえば「雨伞革命」や「香港民运」「雙普選」、「新聞自由」など。はてはノーベル平和賞受賞者の劉暁波氏の妻で詩人の劉霞氏や、アーティストの艾未未氏の名前までも禁止されていることは「香港の国家安全法に基づくアップルの検閲義務をはるかに超えている」と評されています。

さらに台湾に対しても、中国に配慮したかのような政治的検閲が行われている模様です。こちらでは中国共産党の最高幹部らや歴史上の人物(毛主席など)、「外交部」などの国家機関、およびFALUNDAFAやFalun Gongなども禁止されているとのこと。台湾にはそうした言葉を取り締まる法律もなく、アップルが検閲を行う法的義務もありません。

それに加えてCitizen Labは、「8964」という数字まで検閲されていると突き止めています。この数字は中国では天安門事件の「1989年6月4日」という日付にちなんだものとして認識されているため、と推測されています。

アップルもいち民間企業に過ぎず、現地の法律には従う義務があり、Citizen Labも法律で禁止されている言葉の検閲を批判しているわけではありません。特に問題視されているのは、アップルが法的に要求されている以上を行っており、現地企業が自粛しているキーワードを検討せずに流用しているように見えることです。

今回の一件と関係あるかどうかは不明ですが、かつてiOS 11.4.1では“Taiwan”とタイプしたときに特定の言語や地域設定のiPhoneがクラッシュする問題や、日本語のiPhoneでも“たいわん”と入力して台湾の旗に変換できなかったことがあります(記事執筆時点では、どちらも修正済み)。

ちょうどアップルは、児童虐待対策として「iCloud上に保存された写真が自動スキャンされ、当局に通報されることもある」しくみの導入に対して、政府の検閲に利用されるのではないかとの懸念が寄せられているところです。アップルは「政府の要求を拒み続ける」と回答していますが、その言葉に信ぴょう性を与える行動が望まれそうです。

(Source:Citizen Lab。Via 9to5MacEngadget日本版より転載)

中国で企業の個人情報の扱い定める「個人情報保護法」が可決、EUのGDPR相当・個人情報の国外持ち出しを規制

中国で企業の個人情報の扱い定める「個人情報保護法」が可決、EUのGDPR相当・個人情報の国外持ち出しを規制

AerialPerspective Works via Getty Images

中国が、ユーザーデータ保護法(PIPL)案を可決したと新華社が伝えています。PIPLは、企業がユーザーデータをどのように収集、処理、保護するかについての包括的なルールを定めるもので、欧州のGDPR(一般データ保護規則)に相当する法律です。

この法律では、データの最小化(データ収集を特定の目的に必要な情報のみに限定すること)が規定されています。また、個人情報の使用方法をユーザーがコントロールできるようにすることも義務付けられており、例えばユーザーにはターゲティング広告を拒否する選択肢などが得られるとのこと。Reutersによると、PIPLでは「企業は明確かつ合理的な目的のもとで個人情報を取り扱わなければならず、取得する情報は目的のために必要最小限な範囲に限定される」とのこと。

また、この法律には第三国へのデータ転送に関しても規定があり、GDPRに定められるデータ保護責任者 (DPO) 的ポストを設置して、プライバシー保護の堅牢性について定期的な監査が行われるとされます。

中国ではPIPLの他にもデータセキュリティ関連の法律(DSL)が可決され9月1日から施行されることになっており、これらは企業が持つ経済的価値と「国家安全保障との関連性」に応じてデータを管理するための明確な枠組みを定めようという動きで、この点においてPIPLは欧州市民の情報を扱うあらゆる企業に適用されるGDPRとは異なっているようです。

中国がこうした法律を用意するのは、巨大化してきた国内テクノロジー企業への規制を強めるためと考えられます。中国最大のEC企業アリババは今年4月に、その支配的立場を乱用した廉で、182億2,800万元(2916億4800万円:当時)の行政処罰を科せられました。またネット配車サービスのDiDiも7月、ニューヨーク証券取引所への新規株式公開(IPO)をおこなった直後に、中国サイバースペース管理局(CAC)がユーザーのプライバシーを侵害した疑いがあるとして調査に入ったことが伝えられ、その出足を大きくくじかれています。また8月7日にはWeChatの”Youth Mode”が児童保護法に違反しているとして、テンセントが提訴されています。

PIPLは2021年11月1日に発効するため、企業がこの法律に対応するための猶予は2か月ほどしか余裕がありません。

(Source:Xinhua。Via CNBCEngadget日本版より転載)

中国で個人情報保護法が可決

中国で個人情報の保護を義務付ける法案が可決されたと、国営メディアの新華社が報じた。

この法律は「個人情報保護法(PIPL)」と呼ばれ、11月1日に施行される予定だ。

2020年提出されたこの法案は、ユーザー情報の収集に法的な制限を加えることで、商業分野における無節操なデータ収集を厳しく取り締まろうとする中国の共産党指導者の意図を示している。

関連記事:中国のインターネット規制当局は強制的なユーザーデータの収集を標的に

新華社によると、この新法はアプリメーカーに対し、個人の情報をどのように使用するか、あるいは使用しないか、そして使用する場合は個人の特性に基づいてマーケティングを行うか、あるいはマーケティングの対象としないか、といったことについての選択肢を、ユーザーに提供するよう求める。

また、この法律は、生体認証、医療・健康データ、財務情報、位置情報など、センシティブな種類のデータを取り扱う場合、個人から同意を得ることをデータ処理者に要求する。

ユーザーデータを違法に処理したアプリは、サービスの停止または終了を強いられるおそれがある。

中国でビジネスを行う欧米企業が、市民の個人データの処理をともなうビジネスを行う場合、この法律の域外適用に対処しなければならない。つまり、外国企業は、中国国内に代表者を配置し、中国の監督機関に報告しなければならないなどの規制上の要件に直面することになる。

表面上は、中国の新しいデータ保護制度の中核となる要素は、欧州連合(EU)の法律に長年にわたり組み込まれてきた要件とよく似ている。EUの一般データ保護規則(GDPR)では、個人データに深く関係する包括的な権利を市民に提供している。例えば、健康に関するデータなど、EU法が「特別なカテゴリーのデータ」と呼ぶ個人情報を処理する際には、同意に高いハードルを設けている(ただし、どのような個人情報が取り扱いに最も細心の注意を要するとみなされるかについては、各国のデータ法によって違いがある)。

また、GDPRの適用範囲も域外に及ぶ。

しかし、中国のデータ保護法が施行される状況の背景は、当然ながら欧州とは大きく異なる。特に、中国国家が膨大なデータ収集活動を利用して自国民の行動を監視し、取り締まっていることを考えるとなおさらだ。

PIPLが中国政府の各部門による市民のデータ収集に何らかの制限を課すとしても(この法律の草案では、国家機関も対象となっていた)、それはほとんど上辺だけの取り繕いに過ぎない可能性がある。中国共産党(CCP)の国家安全保障組織によるデータ収集を継続させ、政府に対する中央集権的な統制をさらに強化するためであると考えられるからだ。

また、中国共産党がこの新しいデータ保護規則を利用して、どのように国内のハイテク部門の力をさらに規制しようとする(「飼いならす」と言ってもいい)かも注目される。

中国共産党は、規制の変更をTencent(テンセント)のような大手企業に対する影響力として利用するなど、さまざまな方法を使ってこの分野を取り締まってきた。例えば今月初め、北京市はTencentのメッセージングアプリ「WeChat(ウィーチャット)」の青少年向けモードが、未成年者保護法に準拠していないと主張し、同社に対し民事訴訟を起こした

PIPLは、中国政府に国内のハイテク企業に制約を加えるための攻撃材料を豊富に提供することになる。

また、欧米の大手企業では当たり前のように行われているが、中国国内の企業が行うと摩擦が大きくなりそうなデータマイニングの実行に対しても、一刻の猶予も与えず攻撃している。

Reuters (ロイター)によると、全国人民代表大会(全人代)は同日、この法律の成立を記念して、国営メディア「人民法院報」に論説を掲載した。この論説では、この法律を称賛するとともに、レコメンドエンジンのような「パーソナライズされた意思決定」のためのアルゴリズムを使用する事業者は、まずユーザーの同意を得るよう求めている。

論説には次のように書かれている。「パーソナライズはユーザーの選択の結果であり、真のパーソナライズされたレコメンデーションは、強制することなくユーザーの選択の自由を確保しなければならない。したがって、ユーザーにはパーソナライズされたレコメンデーション機能を利用しない権利が与えられなければならない」。

中国以外の国でも、アルゴリズムによるターゲティングに対する懸念は、もちろん高まっている。

欧州では、議員や規制当局が行動ターゲティング広告の規制強化を求めている。欧州委員会は、デジタル市場法(Digital Markets Act)とデジタルサービス法(Digital Services Act)という、この分野を規制する権限を拡大する新たなデジタル規制案を2020年12月に提出し、現在協議を行っている過程にある。

インターネットの規制は、明らかに新しい地政学的な戦いの場であり、各地域はそれぞれの経済的、政治的、社会的な目標に合ったデータフローの未来を形作るために争っている。

関連記事:EUの主管プライバシー規制当局が行動監視に基づくターゲティング広告の禁止を求める
画像クレジット:George / Getty Images

原文へ

(文:Natasha Lomas、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

米IT企業がファーウェイによるパキスタン政府機関へのバックドア設置を告発、ただし決定的な証拠は出ず

米IT企業がファーウェイによるパキスタン政府機関へのバックドア設置を告発、ただし決定的な証拠は出ず

Wolfgang Rattay / Reuters

ファーウェイに新たなバックドア設置の疑惑が持ち上がっています。カリフォルニアを拠点とするIT企業Business Efficiency Solutions(BES)は、2016年にファーウェイとの提携でパキスタン政府とのプロジェクトで現地警察向けのソフトウェアを開発した際、ファーウェイがソフトウェアにバックドアを仕掛けたと主張しています。

問題のソフトウェアは2016年にHuawei Technologiesが主体となってパキスタン・パンジャブ州の州都ラホールのパンジャブ警察統合通信センター(PPIC3)向けの1億5000万ドル(約164億円)のプロジェクトで開発したもので、政府機関からのデータ収集、建物へのアクセス制御、ソーシャルメディアの監視、ドローンの管理といった8つの主な機能を備えています。

しかし、BESは8月11日、Huawei Technologiesがソフトウェアに「パキスタンの国家安全保障上重要とされる」機密情報を得るためのバックドアを仕掛けたとカリフォルニア州の連邦裁判所に訴え出ました。BESの主張によれば、当初ファーウェイはパキスタン政府のRFP(Request for Proposal:提案依頼書)に含まれる仕様を満たす技術を持たなかったためBESに協力を求め、パキスタン側もこれを評価していたとのこと。

BESは自社の企業秘密となる独自のコードや設計、図面などの情報を含めたベースとなるソフトウェアを開発したところ、ファーウェイはそのソフトウェアをテストするため中国側へ引き渡すよう要求しました。

証拠として提出された資料の中には、BESの創業者でCEOのJaved Nawaz氏が2017年3月28日にファーウェイに対し、機密データを中国に送ることへの承認を書面でPPIC3から得るよう求めたメールが含まれています。しかしファーウェイからはパキスタン政府から承認は得たが書面は「必要ない」との返答メールが来たのみ。その上で要求に応じなければ契約を解除しすべての支払いも行わないと脅迫じみた要求をされた結果、BESはやむなく中国国内へのシステムの設置を認めたとのことです。

しかし、The Registerが伝えるところでは、ファーウェイは中国国内へのシステム設置の後もBESへの支払いを行わないばかりか、BES抜きでカタールやドバイ、アラブ首長国連邦、サウジアラビアでパキスタンと同様のソフトウェア開発契約をまとめようとしたとされます。さらにBESのソフトウェアの一部を改変して中国からパキスタンのソフトウェアへのバックドアを加え、そこから中国へ国家安全保障に関わる重要なデータやパキスタン国民の個人情報を収集。閲覧可能にしたとBESは主張しています。

BESの訴訟では、2019年4月8日にBBCが報じた過去の事例として、パンジャブ州の政府機関PSCAがパキスタンのCCTVシステムからWiFiカードを取り除くようファーウェイに指示した理由は、それが「パキスタン市民を監視する秘密のバックドア」として遠隔から情報を収集できるように設定されていたからだと述べています。当時のファーウェイの担当者はこれを “誤解 “と主張していました。ほかにもBESは提出した書類で2019年と2020年に米国司法省がファーウェイに対して行った企業秘密窃盗の訴訟を指摘し、その主張を補強しています。

一方、Wall Street Journalに対してファーウェイは、いかなる製品にもバックドアを設置した「証拠はない」と述べています。BESのシステムを中国国内に設置させたことは認めたものの、それは他のネットワークからは「物理的に隔離」された試験用であり顧客からデータを入手することはできないと主張しています。またラホールのプロジェクト担当者は「現在のところ」データが盗まれたという証拠はないと述べています。

火のないところに煙は立たぬと言うように、何らかの争いが起こるところには必ずその原因となる問題が潜んでいるはずです。だれが事実と異なる主張をしているのかはわかりませんが、今回の問題もファーウェイが中国の情報収集に協力しているのではないかと継続的に懸念が持たれていることを浮き彫りにする事例のひとつであることは間違いありません。ただ、決定的な証拠も、まだひとつも出ていません。

(Source:The RegisterWall Street Journal。Via ReutersEngadget日本版より転載)

関連記事
ファーウェイがAndroidに代わるスマホ向けHarmonyOSを正式発表
スマホ事業不振のHuaweiはIoTに活路を見出そうとしている
ファーウェイが米商務省による「安全保障上の脅威」指定をめぐり提訴
バイデン政権のジーナ・ライモンド商務長官にはファーウェイをエンティティリストから外す理由がない
英国がファーウェイの5G機器設置禁止を2021年9月発効に前倒しへ
英政府が2027年までファーウェイ5G製品の排除を決定
FCCがファーウェイとZTEを「安全保障上の脅威」に指定した背景
いまさら聞けないバックドア入門

カテゴリー:セキュリティ
タグ:安全保障(用語)中国(国・地域)Huawei / ファーウェイ(企業)バックドア(用語)パキスタン(国・地域)

ソフトバンクG孫社長が中国への投資は「しばらく様子見」、IT大手締め付けに「いずれバランスを取り戻すと信じている」

ソフトバンクG孫社長が中国への投資は「しばらく様子見」、IT大手締め付けに「いずれバランスを取り戻すと信じている」

AI革命を掲げ、多くの中国ハイテク企業に投資しているソフトバンクグループの孫正義社長は8月10日の決算会見で、中国当局のIT大手締め付けについて『長い目でみれば、どこかでもう一度バランスを取り直すと私は信じている』とコメントしました。

孫社長は『6月末を過ぎたあたりで、中国の問題が出てきました。DiDiが上場した直後や、フルトラックアライアンスも上場直後でしたね。その後、アリババもテンセントもバイドゥもメイトゥアンも、中国のハイテク株は今受難のときであります。しかし、長い目で見ればですね、業績は伸び続けているわけですから、もう一度バランスを取り直して、株価も持ち直すと私は信じております』とコメント。

また『世界のAI技術の革新の中心は2つあって、米国と中国であると思っています。ですから、今後とも中国におけるAI技術そしてビジネスモデルの革新はどんどんと続いていくんだろうと強く信じております』と述べました。

一方で投資活動については『新たなさまざまな規制等がはじまっておりますので、どのような規制がどのような範囲で行われるのか、そしてそれが株式市場にどのような影響を与えるのかを、もう少し様子を見てみたい』とし、中国企業への投資は当面見合わせる方針を示しました。

加えて『我々が中国政府の動きに反対しているとか、そういうことは全く考えてませんし、中国の将来性について疑念を抱いているかというと、それも全く違います。ただ、新たな規制、新たなルールが今はじまろうとしているばかりですから、もう少し様子が固まるまで、我々としては様子を見てみたいと。おそらく1年2年すれば、新たなルールのもと、新たな秩序がもう一度しっかり構築されると私は信じておりますので、その状況がはっきりしてくれば、中国での投資活動を活発に行うということは十分に可能性としてはありますが、ここしばらくは様子を見てみたいということです』とも付け加えました。

また、ソフトバンクグループの時価純資産(NAV)の多くを占めるアリババについては『依然として売上1.3倍増くらいが続いていますし、直近もそれが衰えずに伸びておりますので、アリババの株価もいずれ回復すると私は信じております』と述べた一方、「直近ではNAVに占めるアリババ株の割合はソフトバンク・ビジョンファンドを下回っている」とも述べ、アリババ一本足打法とみなされる状況を脱却しつつあるとも強調しました。

時価純資産におけるアリババの割合はビジョンファンドの伸長で低下していると説明

時価純資産におけるアリババの割合はビジョンファンドの伸長で低下していると説明

また、ビジョンファンドにおける中国企業への依存度については、ビジョンファンド1・2のトータルでは『2021年7月末の時価ベースで23%』としたものの、2021年4月以降の新規投資では11%に留まっていることも明かしました。

Engadget日本版より転載)

関連記事
中国政府がテンセント「WeChat」を「未成年者保護の法律に違反」として提訴、ゲーム業界への締め付け強化か
中国TencentのWeChatが「法律・規制違反」で新規ユーザー受け付けを一時停止
中国で配車アプリDidiがストアから削除、不正個人情報収集疑いで
ついにソフトバンク、Uber、テンセントが出資する中国ライドシェア「Didi」がIPO申請
中国当局がジャック・マー氏のAnt Groupに決済における「反競争的な行為の是正」を要請
中国が独占禁止にいよいよ本腰、アリババに約3010億円の記録的な罰金
中国はAlibabaのメディア帝国を解体したいと考えている
三人三様、中国のテック巨人CEOが国会の年次総会で提案すること
中国政府が決済事業の規制案を発表、AntとTencentによる寡占を抑制
中国政府によるAnt、アリババへの規制強化を受けて世界の投資家が中国ハイテク株から脱出中
中国政府がジャック・マー氏のフィンテック帝国Ant Groupの「修正」計画を発表
中国eコマース大手アリババの独禁法違反調査始まる
Antの超大型IPOが延期、中国当局がアリババ創業者から事情聴取
TikTok、WeChatをめぐる騒動と、米中間で広がるデジタル格差

カテゴリー:VC / エンジェル
タグ:Alibaba / アリババ(企業)Ant Group(企業)ソフトバンク / SoftBank(企業)ソフトバンク・ビジョン・ファンド / SoftBank Vision Fund(企業)Tencent / テンセント(企業)Didi Chuxing / 滴滴出行(企業)Baidu / 百度(企業)Meituan / メイトゥアン(企業)中国(国・地域)日本(国・地域)

ソフトバンクG孫社長が中国への投資は「しばらく様子見」、IT大手締め付けに「いずれバランスを取り戻すと信じている」

ソフトバンクG孫社長が中国への投資は「しばらく様子見」、IT大手締め付けに「いずれバランスを取り戻すと信じている」

AI革命を掲げ、多くの中国ハイテク企業に投資しているソフトバンクグループの孫正義社長は8月10日の決算会見で、中国当局のIT大手締め付けについて『長い目でみれば、どこかでもう一度バランスを取り直すと私は信じている』とコメントしました。

孫社長は『6月末を過ぎたあたりで、中国の問題が出てきました。DiDiが上場した直後や、フルトラックアライアンスも上場直後でしたね。その後、アリババもテンセントもバイドゥもメイトゥアンも、中国のハイテク株は今受難のときであります。しかし、長い目で見ればですね、業績は伸び続けているわけですから、もう一度バランスを取り直して、株価も持ち直すと私は信じております』とコメント。

また『世界のAI技術の革新の中心は2つあって、米国と中国であると思っています。ですから、今後とも中国におけるAI技術そしてビジネスモデルの革新はどんどんと続いていくんだろうと強く信じております』と述べました。

一方で投資活動については『新たなさまざまな規制等がはじまっておりますので、どのような規制がどのような範囲で行われるのか、そしてそれが株式市場にどのような影響を与えるのかを、もう少し様子を見てみたい』とし、中国企業への投資は当面見合わせる方針を示しました。

加えて『我々が中国政府の動きに反対しているとか、そういうことは全く考えてませんし、中国の将来性について疑念を抱いているかというと、それも全く違います。ただ、新たな規制、新たなルールが今はじまろうとしているばかりですから、もう少し様子が固まるまで、我々としては様子を見てみたいと。おそらく1年2年すれば、新たなルールのもと、新たな秩序がもう一度しっかり構築されると私は信じておりますので、その状況がはっきりしてくれば、中国での投資活動を活発に行うということは十分に可能性としてはありますが、ここしばらくは様子を見てみたいということです』とも付け加えました。

また、ソフトバンクグループの時価純資産(NAV)の多くを占めるアリババについては『依然として売上1.3倍増くらいが続いていますし、直近もそれが衰えずに伸びておりますので、アリババの株価もいずれ回復すると私は信じております』と述べた一方、「直近ではNAVに占めるアリババ株の割合はソフトバンク・ビジョンファンドを下回っている」とも述べ、アリババ一本足打法とみなされる状況を脱却しつつあるとも強調しました。

時価純資産におけるアリババの割合はビジョンファンドの伸長で低下していると説明

時価純資産におけるアリババの割合はビジョンファンドの伸長で低下していると説明

また、ビジョンファンドにおける中国企業への依存度については、ビジョンファンド1・2のトータルでは『2021年7月末の時価ベースで23%』としたものの、2021年4月以降の新規投資では11%に留まっていることも明かしました。

Engadget日本版より転載)

関連記事
中国政府がテンセント「WeChat」を「未成年者保護の法律に違反」として提訴、ゲーム業界への締め付け強化か
中国TencentのWeChatが「法律・規制違反」で新規ユーザー受け付けを一時停止
中国で配車アプリDidiがストアから削除、不正個人情報収集疑いで
ついにソフトバンク、Uber、テンセントが出資する中国ライドシェア「Didi」がIPO申請
中国当局がジャック・マー氏のAnt Groupに決済における「反競争的な行為の是正」を要請
中国が独占禁止にいよいよ本腰、アリババに約3010億円の記録的な罰金
中国はAlibabaのメディア帝国を解体したいと考えている
三人三様、中国のテック巨人CEOが国会の年次総会で提案すること
中国政府が決済事業の規制案を発表、AntとTencentによる寡占を抑制
中国政府によるAnt、アリババへの規制強化を受けて世界の投資家が中国ハイテク株から脱出中
中国政府がジャック・マー氏のフィンテック帝国Ant Groupの「修正」計画を発表
中国eコマース大手アリババの独禁法違反調査始まる
Antの超大型IPOが延期、中国当局がアリババ創業者から事情聴取
TikTok、WeChatをめぐる騒動と、米中間で広がるデジタル格差

カテゴリー:VC / エンジェル
タグ:Alibaba / アリババ(企業)Ant Group(企業)ソフトバンク / SoftBank(企業)ソフトバンク・ビジョン・ファンド / SoftBank Vision Fund(企業)Tencent / テンセント(企業)Didi Chuxing / 滴滴出行(企業)Baidu / 百度(企業)Meituan / メイトゥアン(企業)中国(国・地域)日本(国・地域)

テスラが旧来のリン酸鉄リチウムバッテリーに賭けていることは、メーカーにとって何を意味するのか

Elon Musk(イーロン・マスク)氏は、鉄ベースのバッテリーに関してこれまでで最も強気の発言をした。Tesla(テスラ)は、エネルギー貯蔵製品と一部のエントリーレベルのEVにおいて、旧来の安価なリン酸鉄リチウム(LFP)セルへの「長期的なシフト」を行っていると強調した。

テスラのCEOは、同社のバッテリーは最終的に製品全体で鉄ベースが3分の2、ニッケルベースが3分の1になるだろうと思慮深く語り「これは実際に好ましいことです。世界には十分な量の鉄が存在していますから」と付け加えた。

マスク氏のコメントは、主に中国の自動車業界ですでに進行中の変化を反映するものだ。中国以外の地域でのバッテリー化学組成は大部分がニッケルベースで、具体的にはニッケル・マンガン・コバルト(NMC)とニッケル・コバルト・アルミニウム(NCA)である。これらの比較的新しい化学組成は、エネルギー密度が高いことから自動車メーカーにとって魅力的なものとなっており、OEM(完成車メーカー)におけるバッテリーの航続距離の改良に貢献している。

マスク氏の強気の姿勢がEV業界全体に真の変化をもたらしつつあるとすれば、中国以外のバッテリーメーカーが追随できるかどうかが問われるところだ。

LFP方式への回帰を示唆しているのはマスク氏だけではない。Ford(フォード)のCEOであるJim Farley(ジム・ファーリー)氏は2021年、一部の商用車にLFPバッテリーを採用すると発表した。一方、Volkswagen(フォルクスワーゲン、VW)のCEO、Herbert Diess(ヘルベルト・ディース)氏は、同社のバッテリーデーのプレゼンテーションで、VWのエントリーレベルEVの一部にLFPが使用されることを明らかにした。

エネルギー貯蔵の面では、マスク氏がコメントで言及した、Powerwall(パワーウォール)とMegapack(メガパック)でのLFPベースの化学組成の採用は、鉄ベースの処方を推進する他の定置型エネルギー貯蔵企業の潮流に沿うものとなっている。「定置型貯蔵業界は、より安価なLFPへの移行を志向しています」と、バッテリー調査会社Cairn Energy Research Advisorsを率いるSam Jaffe(サム・ジャッフェ)氏はTechCrunchに語った。

LFPバッテリーセルが魅力的な理由はいくつかある。まず、コバルトやニッケルのような極めて希少で価格が変動しやすい原料に依存していない(主にコンゴ民主共和国から調達されているコバルトは、非人道的な採掘条件のためにさらなる精査の対象となっている)。また、ニッケルベースの化学組成に比べてエネルギー密度は低いものの、LFPバッテリーははるかに安価に製造できる。電気自動車への移行を促進したいと考えている向きにとって、これは朗報となる。EVの普及には、1台あたりのコストを下げることが重要な鍵となる可能性が高いからだ。

マスク氏は明らかに、テスラにおける鉄ベースの化学組成に大きな未来を見出しており、同氏のコメントは、LFPが再びスポットライトを浴びるのに効果的な役割を果たした。ただし、それがショーのスターであり続けている場所は1つ、中国である。

中国によるLFPの独占

「LFPは中国でしか生産されていないといっても過言ではありません」と、調査会社Benchmark Mineral Intelligenceで価格・データ評価の責任者を務めるCaspar Rawles(キャスパー・ローレス)氏は、最近のTechCrunchとのインタビューで説明している。

LFPバッテリー生産における中国の優位性の一部は、大学や研究機関のコンソーシアムによって管理されている一連の主要なLFP特許に関連している。このコンソーシアムは10年前、中国のバッテリーメーカーとの間で、LFPバッテリーが中国市場でのみ使用されることを条件に、ライセンス料を徴収しないことで合意した。

こうして、LFP市場は中国が独占する形となった。

中国のバッテリーメーカーは、LFPへの構造的シフトのポテンシャルから最大の恩恵を受ける可能性がある。具体的にはBYD(比亜迪)とCATL(寧徳時代新能源科技)で、後者はすでに、中国で生産・販売されているテスラ車専用のLFPバッテリーを製造している。(一方、フォルクスワーゲンは中国のLFPメーカーGotion High-Tech[国軒高科]にかなりの出資をしている。)こうしたバッテリーメーカーの勢いはとどまる気配を見せていない。1月にCATLとShenzhen Dynanonic(深圳市徳方納米科技)は、中国の地方省の1つと、LFPカソード工場を2億8000万ドル(約307億円)の費用で3年をかけて建設する契約を結んだ。

業界アナリスト企業のRoskillによると、LFPの特許の存続期間の満了は2022年で、中国以外のバッテリーメーカーが生産の一部を鉄ベースの製品に移行し始める機は熟していることが予想されるという。しかし、LG Chem(LG化学)やSK Innovation(SKイノベーション)など、韓国の大手企業との合弁事業が多い欧州や北米のバッテリー工場はいずれも、依然としてニッケルベースの化学組成にフォーカスしている。

「米国がLFPの強みを生かすには、北米の製造業が必要となるでしょう」とジャッフェ氏は説明する。「今日、米国でギガファクトリーを建設する人々は皆、高ニッケル化学製品の製造を計画しています。現地で製造されるLFPバッテリーに対するアンメットニーズが非常に高くなっています」。

ローレス氏は、特に特許の有効期限が失効した後、数年のうちに北米と欧州である程度のLFPキャパシティが確保されると予想している。ドイツではCATLも、他のバッテリーメーカーSVOLT(蜂巣能源科技)も動きを見せているが、どちらも中国企業であり、その他のアジア企業や欧米企業がLFP市場で競争できるかについては疑問が残る、と同氏は指摘した(Stellantis[ステランティス]は2025年以降のバッテリーサプライヤーの1つとしてSVOLTを選定している)。

エネルギー貯蔵に関して、ジャッフェ氏は「定置型貯蔵システムのほとんどが最終的にはLFP系になることは避けられない」と考えているという。

しかし、米国の国内製造業にとってすべてが失われるとは限らない。「地元でLFP製造を確立するための好材料として、サプライチェーンがシンプルであることが挙げられます。リチウム以外にも、鉄とリン酸という2つの安価な材料が(米国で)大量に生産されています」とジャッフェ氏は付け加えた。

結局のところ、これはバッテリーの化学的性質の問題ではない。より有望な点は、テスラを含む自動車メーカーの動向からすでに明らかになっている。鉄ベースのバッテリーは主にエントリーレベルの低価格車に使用され、ニッケルベースのセルはハイエンドの高性能車に使用される。多くの消費者は、300マイル(約483km)から350マイル(約563km)の走行距離を持つ車よりも、数千ドル(約数十万円)安い200マイル(約322km)から250マイル(約402km)の走行距離の車の方に満足するだろう。

自動車メーカーは、垂直製造や既存のバッテリー会社との合弁事業を通じて、バッテリー供給をコントロールする方向に動き始めている。このことは、北米と欧州におけるLFPキャパシティの拡大は可能性が高いだけでなく、必然的であることを意味している。

関連記事
テスラの大型バッテリーシステム「メガパック」がオーストラリアの蓄電施設で発火事故
ついにテスラの太陽電池・エネルギー貯蔵事業が売上原価を超える、売上げ約882.6億円
テスラの大型蓄電システム「Megapack」が日本初上陸、茨城県・高砂熱学イノベーションセンターで稼働開始

カテゴリー:ハードウェア
タグ:Elon MuskTeslaバッテリー電気自動車FordVolkswagenPowerwallMegapack中国エネルギー貯蔵リチウムイオン電池

原文へ

(文:Aria Alamalhodaei、翻訳:Dragonfly)

中国政府がテンセント「WeChat」を「未成年者保護の法律に違反」として提訴、ゲーム業界への締め付け強化か

中国政府がテンセント「WeChat」を「未成年者保護の法律に違反」として提訴、ゲーム業界への締め付け強化か

Nikolas Joao Kokovlis/SOPA Images/LightRocket via Getty Images

中国の検察当局が、現地の人気メッセージングアプリ「WeChat」の青少年モード(Youth Mode)が未成年者を保護する法律を遵守していないとして提訴したと報じられています。

米Reuters報道によると、この訴訟は北京市海淀区人民検察院が深圳市のテンセント・コンピュータ・システムズ社に対して起こしたもの。訴状にはWeChatの青少年モードがどのように中国の法律に抵触したかは書かれておらず、テンセント社もコメントを求められてもすぐに答えなかったとのことです。

この問題視された青少年モードは、オンにすると若いユーザーが決済したり、近くの友人を検索したり、特定のゲームをプレイできなくなるという機能です。つまり事実上、WeChatのようなスーパーアプリ(中国内で、日常生活のあらゆる場面で活用できる統合的なアプリ)につき、親が子供の使用を制限するペアレンタルコントロールというわけです。

こうした青少年モードは中国の規制当局による指導のもとで各社のアプリに導入された経緯があり、今回なぜ問題視されたのかは不明です。もっともReutersは今回の訴訟が、中国政府による広範な取締りの一環ではないかと推測しています。

つい先日、中国の国営メディアが多くの10代の若者らがオンラインゲーム中毒となっており、「精神的アヘンが数十億ドル規模の産業に成長した」と報じたばかりです。

この記事はすぐに削除されましたが、直後にテンセント・ホールディングス(上記テンセント・コンピュータ・システムズの親会社)は人気モバイルゲーム「王者栄耀(Honor of Kings)」につき、18才未満のプレイ時間を平日は1日1時間、週末は2時間までに短縮することを発表しています

今年4月、Reutersは中国政府がインターネット大手に対する独占禁止措置の一環として、テンセントに対して巨額の罰金を準備しているとの噂話を報じていました。また国営メディアの証券時報も、今月はじめにゲーム業界に対する税制上の優遇措置を撤廃すべきとの論説を掲載。国営メディアの主張は中国政府の意向に他ならないため、より締め付けは厳しくなることが予想されます。

中国のゲーム産業は巨大なプレイヤー人口や豊富な資金力、それに政府の発展促進政策といった恩恵により、急速な成長を遂げてきました。しかし2018年、習近平主席が子供の近視率が高いことを憂える談話を述べたあと、オンラインゲームの新作やゲーム全体の本数を規制し、子供がプレイする時間を制限するなど風向きが変わっています。

テンセントは任天堂が中国にてNintendo Switchを販売する窓口ともなっているだけに、日本のゲーム業界に対する影響も少なくないはず。今後の展開を見守りたいところです。

(Source:ReutersEngadget日本版より転載)

関連記事
中国TencentのWeChatが「法律・規制違反」で新規ユーザー受け付けを一時停止
中国で配車アプリDidiがストアから削除、不正個人情報収集疑いで
ポケモンとテンセント傘下TiMi共同開発の基本無料ゲーム「ポケモンユナイト」が配信時期決定、Switch版7月・スマホ版9月
任天堂の古川俊太郎社長が2020年のSwitch販売のうち約580万世帯が2台目以降として購入と公表
XboxがTencent傘下でゲーム「王者栄耀」のTiMi Studiosと提携
任天堂が最終利益4803億円と過去最高更新、巣ごもり需要でSwitchが2021年3月期473万台と販売増
中国へ並行輸入されたゲーム機がグレーマーケットから姿を消す
TikTokの親会社ByteDanceはゲーム業界にどう切り込むか
三人三様、中国のテック巨人CEOが国会の年次総会で提案すること
中国政府によるAnt、アリババへの規制強化を受けて世界の投資家が中国ハイテク株から脱出中
TikTok、WeChatをめぐる騒動と、米中間で広がるデジタル格差
7月第1週に2500本超のiOS用ゲームが中国App Storeから削除される
Nintendo SwitchがTencent経由で中国発売へ

カテゴリー:ゲーム / eSports
タグ:WeChat(製品・サービス)ゲーム(用語)Tencent / テンセント(企業)任天堂 / Nintendo(企業)Nintendo Switch / ニンテンドースイッチ(製品・サービス)中国(国・地域)

TencentのWeChatが「法律・規制違反」で新規ユーザー受け付けを一時停止

Tencent(テンセント)のWeChat(ウィーチャット)は7月27日、「関連する法律と規制」を遵守するために中国での新規ユーザー受け付けを一時停止していると明らかにした。同社は、世界最大のインターネットマーケットである中国で当局の調査に直面した最新の中国企業となる。

ソーシャルメディアへの投稿の中で、Tencentは関連する全ての法律と規制に沿うようセキュリティのテクノロジーを「アップグレードしている」と述べ、このプロセスを進める間、「Weixin(WeChatの中国アプリ)の個人と公式の新規アカウント登録は一時的に停止される」と明らかにした。

「登録サービスはアップグレード終了後に元に戻ります。8月上旬が見込まれています」とWeChatは説明した。WeChatの年初時点の月間アクティブユーザー数は12億人超だった。

WeChatが発表でどの法律を指しているのか、にわかには明らかではないが、今回の動きは中国の規制当局がテック企業を幅広く取り締まっている中でのものだ。取り締まりにより、ここ数週間で中国企業の何十億ドルという時価総額が吹き飛び、ソフトバンクなど多くの著名グローバル投資家が影響を受けている。

中国でスーパーアプリとして展開されているWeChatがこの種の措置を取らなければならなくなったのはここ10年ほどで初めてのことだ。メッセージサービスの提供に加えて、ユーザーはWeixinでオンライン決済をしたり、幅広い金融サービスにアクセスしたりできる。

(他のマーケットでは様子は異なる。ドナルド・トランプ氏は2020年に米国内でのTikTok、WeChatを使った決済を禁止する大統領令に署名した。ジョー・バイデン大統領は6月、そうした措置を取り消して置き換えた

一部のアナリストは、中国政府が国内におけるテック企業の増大しつつある影響力と市民のデータのプライバシーを懸念している、と考えている。

7月上旬、中国のサイバーセキュリティ当局は配車サービス大手アプリのDidiに新規ユーザーの受付停止を命じた。この措置は同社のニューヨーク証券取引所での44億ドル(約4838億円)の新規株式公開から数日後のことだった。当局はDidiが顧客の個人データを不正に収集していたと非難し、Didiアプリは中国のアプリストアから削除された。

カテゴリー:
タグ:

画像クレジット: Drew Angerer / Getty Images

[原文へ]

(文:Manish Singh、翻訳:Nariko Mizoguchi

中国が「冷却水いらず」な実験用原子炉による9月実験開始を計画、2030年に商業用原子炉の建設を予定

中国が「冷却水いらず」な実験用原子炉による9月実験開始を計画、2030年に商業用原子炉の建設を予定

Thorium pellets. Pallava Bagla/Corbis via Getty Images

中国政府の科学者は、世界初をうたう、冷却のための水を必要としない実験用原子炉の計画を発表しました。来月にも原子炉は完成し、9月から最初の実験が開始される予定です。中国はこの実験炉での実験がうまくいくならば、早ければ2030年に最初の商業用原子炉を建設する予定。そしてその後は水が必要ない利点を活かして砂漠や平原地域にこの原子炉を置き、さらには「一帯一路」構想に参加する国にも最大30基を建設する予定だとしました。

中国人民政治協商会議(CPPCC)の常任委員、王守軍氏は、CPPCCのウェブサイトに掲載された報告書で「原子力での『進出』はすでに国家戦略であり、原子力の輸出は輸出貿易の最適化と、国内のハイエンドな製造能力を解放するのに役立つ」と述べています。

この構想の原子炉が大量の水を必要としないのは、燃料にウランではなく液体トリウムを使う溶融塩原子炉だからです。この原子炉ではトリウムを液体のフッ化物塩に溶かし込み、600℃以上の温度で原子炉に送り込みます。原子炉の中で高エネルギーの中性子が衝突することでトリウムがウラン233に変化し、核分裂の連鎖反応を開始します。こうしてトリウムと溶融塩の混合物が加熱され、それを2つめの炉室に贈ることで大きなエネルギーを抽出、発電に利用します。

溶融塩は空気に触れれば冷えて固まります。そのため、万が一漏洩があったとしても、核反応は自然におさまり、トリウムが外界に漏れ出ることもほとんどないとのこと。またトリウムはウランに比べて核兵器への転用が難しく、また安価で入手しやすいという点もメリットとされます。

この溶融塩原子炉の試作機を開発した上海応用物理研究所によれば、計画は中国が2060年までにカーボンニュートラルを実現するという目標の一環とのこと。2019年の米調査会社の報告によると、世界の炭素排出量の27%が中国が占めています。これは他の先進国全体を合計しても届かない数値であり、世界からの厳しい目が中国に向けられています。

溶融塩原子炉のアイデアは新しいものではなく、1946年に米空軍の前進組織が超音速ジェット機を開発するときに考えられました。しかし、その後の開発においては溶融塩のあまりの温度に配管が耐えられなかったり、トリウムの反応がウランに比べて弱いことから、結局ウランを添加しないと核分裂反応が持続させられないといった技術的なハードルを解決できず、研究は中止されました。

ちなみに、米国では6月に資産家のビル・ゲイツ氏とウォーレン・バフェット氏が出資する企業が「ナトリウム高速原子炉(SFR)」という新しい原子力発電方式の実証炉をワイオミング州の石炭火力発電所に建設することを発表しています。こちらは仕組み的には日本がかつて研究開発していた高速増殖炉「もんじゅ」の方式を発展させた方式のものとされます。

原子力発電というと、われわれ日本人はどうしても福島の原発事故や、広島・長崎の原爆投下を思い出し、放射能流出が心配になりがちです。化石燃料を使った発電から再エネへの積極的な転換を目指す大きな流れもあるなか、米中という大国が従来より安全とはいえ新たな原子力を開発し、これを推進するなら、その先の世界がどうなっていくのかは気になるところです。

(Source:LIve ScienceEngadget日本版より転載)

関連記事
さくらインターネットが石狩データセンターの主要電力をLNG発電に変更、年間CO2排出量の約24%にあたる約4800トン削減
【コラム】核廃棄物のリサイクルはエネルギー革新の最重要手段だ
EUがゲイツ氏のBreakthrough Energyと提携、クリーンテックの開発・浸透加速へ
パナソニックが世界で初めて純水素型燃料電池を活用したRE100化ソリューションの実証実験を開始
「電気の顔の見える化」目指すみんな電力が11.5億円のシリーズC調達、総調達額約41.5億円に
スタートアップにはバイデン大統領のインフラ計画を支持する110兆円分の理由がある
アップルが世界中の製造パートナー110社以上が製品製造に利用する電力を100%再生可能エネルギーに変更と発表
3兆6420億円の新エネルギー政策を含む2020年末の米国景気刺激法案
倫理感のある技術者の消滅と再生
ビル・ゲイツ、エネルギーを語る―「福島以後もやはり原子力はキロワット時あたり死傷率で石炭より安全」

カテゴリー:パブリック / ダイバーシティ
タグ:インフラ / インフラストラクチャー(用語)Warren Buffett / ウォーレン・バフェット(人物)エネルギー / エネルギー産業(用語)カーボンニュートラル(用語)環境問題(用語)原子力 / 核(用語)再生可能エネルギー(用語)持続可能性 / サステナビリティ(用語)中国人民政治協商会議 / CPPCC(組織)電力 / 電力網(用語)炭素 / 二酸化炭素(用語)Bill Gates / ビル・ゲイツ(人物)倫理(用語)中国(国・地域)

米国がExchangeサーバーのハッキングとランサムウェア攻撃で中国を非難、政府系ハッカー4人を起訴

バイデン政権とその同盟国は、2021年初めに行われたMicrosoft Exchangeサーバーへの大規模不正侵入について、中国を正式に非難した。その際はこのハッキングが広範な破壊につながる可能性があるという懸念が高まったため、FBIが介入することになった。

関連記事:中国の国家ハッカーがExchange Serverの脆弱性をゼロデイ攻撃、マイクロソフトが警告

この大規模なハッキングキャンペーンは、Microsoft Exchangeメールサーバーのそれまで発見されていなかった4つの脆弱性を狙ったもので、これらの脆弱性を利用したハッカーたち(Microsoftはすでに、中国政府の支援を受けるハッカーグループHafnium[ハフニウム]の仕業としている)は、米国内の何万もの組織からメールボックスやアドレス帳を盗み出した。

Microsoft(マイクロソフト)はこの脆弱性を修正するパッチをリリースしたが、ハッカーたちが残したバックドアコードを削除することはできなかった。このためFBIは、米国内にバックドアが塞がれないまま残っていた数百台のExchangeサーバーを実質的にハッキングしてバックドアコードを除去するという、これまでにない裁判所命令を得た。世界各国のコンピュータセキュリティインシデント対応チームも同様の対応を行い、同じように攻撃を受けた自国の組織に通知しようとした。

関連記事
FBIがハッキングされたMicrosoft Exchangeサーバーのバックドアを塞ぐ作戦を実行
米国の中小起業や地方自治体にも中国ハッカーによるゼロデイ攻撃の被害

バイデン政権は米国時間7月19日に発表した声明の中で、この攻撃は中国国家安全省の支援を受けたハッカーによって実行されたものであり、その結果「主に民間企業の被害者に多額の回復コスト」が発生したと述べた。

「我々は、今回の事件と中華人民共和国の広範な悪意のあるサイバー活動の両方について、中国政府の高官に懸念を伝え、中華人民共和国の行動がサイバースペースのセキュリティ、信頼性、安定性を脅かすものであることを明確にしました」と声明には記されている。

米国家安全保障局(NSA)は、ネットワーク防御者が潜在的な侵入経路を特定できるよう、攻撃の詳細を公開した

英国やNATO加盟国を含む複数の同盟国も、バイデン政権の調査結果を支持した。英国政府は声明の中で、ハッキングの「広範なパターン」の責任は北京にあるとしている。中国政府は、国家によるハッキング行為を繰り返し否定している。

また、バイデン政権は、中国国家安全省が犯罪者であるハッカーと契約し、ランサムウェア攻撃のような無認可の業務を「個人的な利益のために」行っていると非難した。米国政府は、中国政府に支援されたハッカーが、ハッキングされた企業に対して数百万ドル(数億円)の身代金を要求したことを認識していると述べている。2020年、米司法省は世界的なハッキングキャンペーンに関与した2人の中国人スパイを起訴したが、検察当局はハッカーらが個人的な利益のために活動していると非難していた。

関連記事
米国が新型コロナ研究など狙った中国人ハッカー2人を起訴
独立記念日を狙うKaseyaのハッキング、ランサムウェアで何百もの企業に被害

米国は、ランサムウェアギャングがロシア国内で活動するためのセーフハーバーを提供することをやめるようクレムリンに公式に働きかけているが、これまで北京がランサムウェア攻撃を仕かけた、またはそれに関与していると非難したことはなかった。

19日の声明では、「ハッカーを雇って犯罪行為を行う中国の姿勢は、知的財産や専有情報の損失、身代金の支払い、被害軽減のための努力などを通じて、政府や企業、重要インフラ事業者に何十億ドル(何千億円)もの損害を与えています」と述べている。

また、この声明では、中国の支援を受けたハッカーたちが、恐喝やクリプトジャッキング(コンピュータのコンピューティングリソースを利用して、金銭的利益を得るために暗号通貨を採掘するコードをコンピュータに実行させる方法)に従事していたとも述べている。

司法省はさらに、中国国家安全省に所属する4人のハッカーを新たに起訴すると発表した。これらのハッカーは米国、ノルウェー、スイス、英国に拠点を置く被害者を標的に、知的財産やエボラ出血熱、HIV / エイズ、MERSなどの感染症に関する研究を、フロント企業を使って隠蔽しながら盗み出す活動に従事していたと米国の検察当局は指摘している。

「中国のハッキングキャンペーンは、医療、バイオメディカル研究、航空、防衛など様々な分野で十数カ国を対象に行われており、その幅広さと期間の長さは、いかなる国や産業も安全ではないことを我々に気づかせます。今日の国際的な非難は、世界が公正なルールを求めており、各国が盗難ではなく技術革新に投資することを望んでいることを示しています」とLisa Monaco(リサ・モナコ)副検事総長は述べた。

カテゴリー:セキュリティ
タグ:Microsoft ExchangeMicrosoftハッキングランサムウェアアメリカ中国米国家安全保障局

画像クレジット:Getty Images

原文へ

(文:Zack Whittaker、翻訳:Aya Nakazato)

中国語パソコン1号機を実現した技術者魂、限られたメモリに数千の漢字を詰め込むためSinotype IIIの発明者は限界に挑む

中国は、今や世界で最も裕福なデジタル経済大国の1つとなった。ハードウェアのサプライチェーンは他の追随を許さず、Alibaba(アリババ)、Tencent(テンセント)、ByteDance(バイトダンス)など、莫大な利益を上げている超一流企業が世界で主導的な役割を果たしている。しかし、このような最先端のイノベーションは、40年前にさかのぼる「中国語ワープロの開発」という、コンピューティングの大きな課題に対するソリューションの上に成り立っている。

1980年代初頭、中国は米国や欧米からのコンピューターの購入を飛躍的に伸ばした。1980年には600台しかなかった外国製マイクロコンピューターの輸入が、1985年には13万台にまで増加した。当時、日米欧の企業は、この「爆買い」にあやかろうと躍起になったものだ。

しかし、中国のコンピューターユーザーにとっても、欧米のメーカーにとっても、大きな問題があった。それは、欧米のパソコン、プリンター、モニター、OS、プログラムなどが、漢字の入出力に対応していなかったことだ。1980年代前半から中盤にかけて「そのまま」では、まったく使えなかったのだ。大量生産されたパソコンは、大がかりな改造をしない限り、中国語での処理をしたいユーザーにとっては、事実上、役に立たなかった。

最も重要な理由の1つはメモリの問題、特に中国語フォントを格納するためのメモリ容量が不足していたのだ。アルファベット用のコンピューターが登場したとき、欧米のエンジニアやデザイナーは、英語のフォントは5×7のビットマップグリッドで表現できると判断し、記号1つにつき5バイトのメモリしか必要としなかった。このグリッドは、見た目には美しいとはいえないものの、コンピューターの端末や紙の印刷物にアルファベットの文字を読みやすく表示するのには十分な解像度を備えていた。米国のASCII規格の95文字を格納するのに必要なメモリは475バイトで、これは例えばApple II(アップル・ツー)の当時のマザーボード上のメモリ48KBに比べればごくわずかだ。

しかし、漢字を最低限読めるレベルで表現するには、5×7のグリッドでは小さすぎた。中国語のビットマップフォントをデザインするには、アルファベットのグリッドサイズである5×7ピクセルから16×16ピクセル(256ピクセル)以上に幾何学的に大きくする、つまり漢字1文字あたり32バイト(256ビット)以上のメモリを搭載する以外方法はなかった。漢字のビットマップだけでも(簡体字、繁体字のどちらの場合も。ただし両方同時ではなく、メタデータも含まず)最もよく使われる8000の中国語の文字を格納するには、合計約256KBのメモリが必要となり、これは1980年代初頭に一般に市販されていたパーソナルコンピューターの総メモリ容量の4倍にも及んだ。しかもこれは、オペレーティングシステムやアプリケーションソフトウェアに必要なメモリを考慮する前の話だ。

デジタル入力に向けて用意されたSinotype III用中国語フォントの手書きビットマップ(画像クレジット:Louis Rosenblum Papers、Stanford University Special Collections)

こういった背景から、現代のコンピューティングにおける偉大なエンジニアリングの歴史の1つが生まれた。ここでは、果敢な起業家魂とエンジニアリングの創意工夫がもたらしたデジタル革命の世界的発展をユニークな視点で描いていく。

この記事は、TechCrunchに掲載する2つの記事のうちの1つで、中国語の入出力が可能な最初のパーソナルコンピューターとなる実験機Sinotype III(サイノタイプ・スリー)について調査したものだ。サイノタイプIIIは、市販のアップルIIをベースに、独自に開発したワープロソフトウェアとOSを実装したもので、欧米製のコンピューターを中国語に「翻訳」することで、新しい巨大市場の開拓に向けた「概念実証」の役割を果たした。

前編では、サイノタイプIIIの開発者らが直面したコンピューターのメモリ、フォント、OSなど、深刻な技術的課題と、それを克服するための斬新なソリューションを生み出した過程を見ていく。

「差し迫った仕事があるはずもない、ほやほやの新卒社員の図太さ」

このエピソードは、チャイニーズ・コンピューティングの原点ともいえるGraphic Arts Research Foundation(GARF、グラフィック・アーツ・リサーチ・ファウンデーション)から始まる。1950年代後半、MITの電気技師Samuel Hawks Caldwell(サミュエル・ホークス・コールドウェル)氏は、GARFの資金提供を受けて「Ideographic Composing Machine(イディアグラフィク・コンポージング・マシーン)」通称「Sinotype(サイノタイプ)」を発明した。1960年に同氏が若くして亡くなり、プロジェクトは暗礁に乗り上げたが、1960年代から70年代にかけて、Itek(アイテック)、RCA(アール・シー・エー)、そしてやはりGARFなど、いくつかの団体によってサイノタイププロジェクトは受け継がれた。

1950年代後半、サミュエル・コールドウェル氏が設計したSinotype Iのキーボード(画像クレジット:Louis Rosenblum Papers、Stanford University Special Collections)

サイノタイプの里帰りには、1人の男の存在が大きかった。Louis Rosenblum(ルイ・ローゼンブラム)氏だ。1921年にニューヨークで生まれた同氏もまたMITファミリーの1人で、1942年に応用数学の学士号を取得して卒業した。電気工学の教授として世界的に有名なHarold Edgerton(ハロルド・エジャートン氏、1930年代に有名な「ミルククラウン」の写真を撮影した人物)に師事したローゼンブラムは、卒業後すぐにPolaroid(ポラロイド)に就職し、Edwin Land(エドウィン・ランド)氏とともにインスタント写真の開発などさまざまなプロジェクトに携わった。1954年にはPhoton(フォトン)に転職し、非ラテン語系文字の写真植字に取り組んだ。ローゼンブラム氏は、故コールドウェル氏のサイノタイプの先駆的な取り組みに詳しかったため、このプロジェクトを効果的に採用し、1970年代半ばにGARFにコンサルタントとして参加した際に、このプロジェクトを復活させた。

Nova 1200(ノヴァ1200)のCPUで動作するSinotype IIシステムの構成図(画像クレジット:Louis Rosenblum Papers、Stanford University Special Collections)

GARFは、1980年代初頭においてもサイノタイプ・プロジェクトを継続しており、それまでに中国に精通した学者や著名な学者を顧問として迎えていた。ハーバード大学の言語学者であるSusumo Kuno(久野暲)氏や、1972年のRichard Nixon(リチャード・ニクソン)元米国大統領の訪中で重要な役割を果たしたことで知られ、当時RAND Corporation(ランド・コーポレーション)の社会科学部門の責任者だったRichard Solomon(リチャード・ソロモン)氏などが参加した。

しかし、この顧問団に劣らぬ輝きを放つ新星によって、サイノタイプ・プロジェクトは大躍進を遂げる。1979年にGARFでサイノタイプIIプロジェクトのデータ管理に2週間携わっただけの大学生の参加がきっかけとなり、サイノタイプは、ミニコンピューターベースのシステム(Sinotype II[サイノタイプ・ツー])からマイクロコンピューターベースのシステム(サイノタイプIII)へと大きく前進したのだ。その大学性は、ルイ・ローゼンブラム氏の息子、Bruce Rosenblum(ブルース・ローゼンブラム)氏だ。

サイノタイプIIIシステムを使用するブルース・ローゼンブラム氏(画像クレジット:Louis Rosenblum Papers、Stanford University Special Collections)

ペンシルバニア大学でフォトジャーナリストを目指していたブルース氏は、学業と、学生が運営する独立系新聞「Daily Pennsylvanian(デイリー・ペンシルバニアン)」のフォトエディターとしての役割を両立させていた。この新聞は、使用する機材や担当する学生の深い専門知識の面で、非常に先進的なものだった。

ブルース氏が3年生の秋に、既存の植字機(Compugraphic[コンプグラフィック]製の植字機2台)が寿命を迎え、交換が必要になった。ブルース氏は同僚の学生3人と一緒に、代替機の調査を行い、最終的に2社と総額12万5000ドル(当時約2800万円)の契約を結んだ。カンザス州Wichita(ウィチタ)のMycro-Tek(マイクロ・テック)とマサチューセッツ州Wilmingto(ウィルミントン)のコンプグラフィックだ。

サイノタイプ・プロジェクトについては、ブルース氏は父親のおかげでよく知ってはいたものの、自身はまったく関与していなかった。しかし、1981年5月初旬、重要な転機が訪れる。期末試験を終えたばかりのブルース氏は、新聞社のオフィスを訪れた。そこには同僚のEric Jacobs(エリック・ジェイコブス)氏がいて、RadioShack(ラジオシャック)で買ったTRS-80 Model II(ティー・アール・エス・エイティ・モデル・ツー)というマイクロコンピューターと格闘していた。ジェイコブス氏は、このマイコンを新聞社の運営に利用する方法を考えており、ブルース氏は、その様子を30分ほど観察した後、自分の仕事に戻った。

しかし、この30分がブルース氏の心を掴んだ。「マイクロコンピューターを扱う人を見たのは初めてだった」とブルース氏は著者への電子メールで述べ「この30分に感化されてサイノタイプIIIのプロジェクトを開始し、最終的にコンピューターの世界に入ることになった」と語る。

その週末、ブルース氏は父親との電話でちょっとした思い付きを話した。ブルース氏は、サイノタイプIIの製作に使用していたData General(データ・ジェネラル)製のハードウェアに対してGARFが莫大な費用をかけていたことに触れ、マイクロコンピューターであれば同等以上のプログラムを作ることができるのではないかと勧めたのだ。当時、GARFが支出していた10万ドル(当時約2200万円)以上に対して、1万ドル(同約220万円)程度に抑えられることになる。

父親のルイ氏も強い関心を持ち、ブルース氏にそのような機械のプログラミングができるかどうか尋ねた。ブルース氏は、コンピューターサイエンスの正式なトレーニングは受けていなかったが、高校時代にコンピューターに親しみ、PDP-8(ピー・ディー・ピー・エイト)のアセンブリ言語とBASICを独学で学んでいた。「差し迫った仕事があるはずもない、ほやほやの新卒社員の図太さ」ゆえ、同氏は父親の問いに「もちろん」と答えた。

ブルース・ローゼンブラム氏は、世界旅行の間も、ニューデリーで入手したメモ用紙などを使って、サイノタイプIIIプロジェクトを進めた(画像クレジット:Louis Rosenblum Papers、Stanford University Special Collections)

1981年6月、ブルース氏はニューヨークでBill Garth(ビル・ガース)氏、Prescott Low(プレスコット・ロー)氏、そして父のルイ氏と正式な会合を持ち、サイノタイプIIIの提案を説明した。その時、ブルース氏は、スリーピースのスーツだった。ブルース氏の提案書には、ハードウェアの7500ドル(当時約165万円)に加え、プログラム料として5000ドル(同約110万円)の合計金額が記載されていた。アップルIIで動く中国語のワープロを、約4カ月で納品するというものだ。それが上手くいけば、中国語ワープロのコストは桁違いに安くなる。

ブルース氏はこの仕事を受注し、1981年6月から11月まで、フィラデルフィアの独立記念館で国立公園局のツアーガイドの仕事と両立させながら、サイノタイプIIIのプログラミングを行った。昼間の休憩時間には手書きでアセンブリコードを書き出し、夜にはそれを入力していた。1981年のレイバーデーにツアーガイドの仕事が終わり、ブルース氏はその後2カ月間ひたすらコーディングに専念し、サイノタイプIIIをGARFに納品した。

メモリハック

GARFとローゼンブラム両氏が最初に直面した問題は、コンピューターのメモリ容量の不足だった。初期の中国製パソコンの開発者たちは、システムからできるだけ多くのメモリを搾り取ろうと、あらゆる手段を講じていた。ここでは、単独で採用されることもあったが、主に同時に利用された2つの戦略を紹介する。「アダプティブメモリ」と「漢字カード」だ。

サイノタイプIIIのシステムは、5つのコンポーネントで構成されていた。Sanyo(三洋電機)の12インチモニターDM5012CM、Epson(エプソン)のプリンターMX-70、漢字のビットマップデータベースとそれに対応する「記述子コード」を格納するCorvus(コルバス)の10MB「Rigid Disk Storage(リジッド・ディスク・ストレージ)」「テキストファイル格納用」のApple Disk Drive(アップル・ディスク・ドライブ)、そしてアップルIIの本体だ。

標準のアップルIIには32KBのメモリが搭載されていたが、マザーボード上で48KBまで拡張することができた。ブルース・ローゼンブラム氏は「アップルIIが店から出る前に最大にした」と電子メールで語る。ブルース氏は、48KBのメモリではまだ足りなかったため、当時の「パワーユーザー」と呼ばれる人たちがよく行なっていた、16KBの増設メモリボードをスロット0に追加して64KBのメモリにするという、メーカー標準のアップグレードをおこなった。

しかし、それでもまだ足りなかった。「エンコーディングシステムのすべてを格納するためには、より多くのメモリが必要だった」と同氏はいい「頻繁に使われる漢字100種の16×16ビットマップを格納するためには、さらに多くのメモリが必要だった」と続ける。

そのため同氏は、それまで誰も試したことのないであろうアップルIIの「改造」を始めた。「なんとか、アップルIIのスロット2に16KBのボードをもう1枚入れて、合計80KBにすることができた。まったく仕様外だが、市販の部品を使うことができた」と同氏はいう。

しかし、この改造はマシンの限界を超えるものだった。アップルIIに搭載されている6502マイクロプロセッサーは、64KBのメモリにしか直接アクセスできなかった。つまり、ブルース氏がなんとか2枚目のメモリボードを組み入れ16KBのメモリを追加しても、アップルIIにはこの追加されたメモリアドレスに一度にアクセスする方法が組み込まれていなかったのだ。ブルース氏がアップルの技術者と何度も相談している中で、アップルの技術者にそのことを伝えたところ、その技術者は「そんなことをするなんて、聞いたことも考えたこともない」とショックを受けたほど「規格外」の改造だった。

ブルース氏は、アップルIIが64KBのメモリだけではなく80KBのメモリにアクセスできるようにするために、純正のOSは諦め、自分でアセンブリ言語を使ってプログラムを作った。そのカスタムプログラムの秘訣は「アドレスが重複する16KBのメモリバンクを個別に選択できる」ということだ。つまり、一度にアクセスできるメモリは64KB分しかないが、2枚の増設メモリボードを非常に速いタイミングで交互にアクセスすることにより、ユーザーから見ればコンピューターが両方のメモリにアクセスしているように動作させるというものだ。これにより、システムから25%の追加メモリをひねり出し、400字程度の漢字を増設メモリボードに格納することができた。

ブルース氏は、感謝祭の前の週にGARFに最終コードを納品し、その後、ヨーロッパとアジアを縦断するワールドバックパッカーズツアーに出発した。それ以降、サイノタイプIIIの開発は、ルイ・ローゼンブラム氏とGARFが中心となって進めていったが、ブルース氏もコンサルタントとして関わり続け、ヨーロッパ、中国、インドなど、どこにいても父親と頻繁に連絡を取り合っていた。

リアルタイムの中国語タイピングを目指した高速化

しかし、ブルース氏の巧妙な改造によっても、ルイ氏とブルース氏が試算したところでは、増設メモリボードに格納できる漢字の数は600~1000字程度だった。サイノタイプIIIのOS、アプリケーション、漢字に必要なメモリ容量を考えると、システム辞書に登録されている漢字の大部分は、フロッピーディスクや外付けハードディスクなど、他のハードウェアに保存する必要があった。

サイノタイプIIIコンピューターのモニター画面(画像クレジット:Louis Rosenblum Papers、Stanford University Special Collections)

ブルース氏は当初、PROM(プログラマブル・リード・オンリー・メモリ)チップの使用を考えたが、このアイデアはすぐに行き詰まってしまった。1981年から1982年当時、市場に出回っていた最大のPROMチップのメモリ容量は2KBで、漢字に換算すると28~51文字にしかならなかった。これでは、7000字の漢字を記憶させるためには、138~250個のPROMチップが必要になってしまう。「これは大変な量だ」と、ブルース氏は気づいた。

次に同氏は、フロッピーディスクに漢字を格納することを考えた。しかしこれも、実用的ではないことがわかった。多くのフロッピーディスクが必要なだけでなく、その遅いアクセススピードのため、フロッピーディスクに保存されている漢字のビットマップを取り出すのにも時間がかかるためだ。そこでGARFはサイノタイプIIIに、当時のマイクロコンピューターの周辺機器としてはほとんど例がなかった、外付けハードディスクを接続するという第3の方法をとった。深刻なメモリ不足の問題を解決するため、GARFは使用頻度の低い数千の漢字を外付けハードディスク(10MBのコルバス製「Rigid Disk Storage[リジッド・ディスク・ストレージ])つまりシステム本体とは別の「倉庫」に保存した。

しかし、これはサイノタイプIIIの動作が遅くなるという副作用をもたらした。コンピューターの内部では、ほとんどの処理がミリ秒単位の速さで行われるため、ハードディスクは厄介な代物だった。特に当時のハードディスクは「プラッター」と呼ばれる硬い磁気ディスクがレコードプレイヤーのように内部で回転しており、レコードの溝を針で読み取るように、各トラックの内容をヘッドで読み取るものだ。そして読み取り速度は、ヘッドの位置と、読み取り要求があった時点でのディスクの回転位置によって決まる。停留所に着いたらバスが出発していた、というのと似たようなもので、またバスが回ってくるまで待たなければならない。

実際、ハードディスクに保存されている漢字の読み取り速度は、メモリに保存されている漢字の読み取り速度に比べて10倍以上も遅かった。具体的には、メモリに保存された漢字の読み取り時間は、1文字あたり約100ミリ秒と、タイプする人にとって気になる遅延ではない。一方、外部ハードディスクに保存されている漢字の場合、1文字入力するたびにフォントの読み取りに1秒もの時間を要し、これは人間の感覚では無視できないレベルだ。

1980年代半ばのパーソナルコンピューターの世界では、英語圏のユーザーはリアルタイムタイピングに急速に慣れてきていたため、1文字の入力に1秒かかるというのは壊滅的な遅さだった。そして、1秒は100ミリ秒の10倍の長さであるため、一般のユーザーは使用頻度の低い漢字を入力するたびに、この大きな差を感じてしまうことになる。

この問題を軽減するために、ルイ・ローゼンブラム氏は「アダプティブ一時ストレージ」というアイデアを思いついた。サイノタイプIIIでは、ユーザーが直近に入力した文字に応じて、メモリに保存される文字セットを調整できるようにしたのだ。起動直後は、サイノタイプIIIの増設メモリには、あらかじめ決められた使用頻度の高い漢字だけが記憶されるようになっている。ハードドライブに格納されている頻度の低い文字の入力には、前述のように最大で1秒かかる。しかし「頻度の低い漢字をキーボードで入力すると、そのコードとドットマトリックスパターンがランダムアクセスメモリに記憶される」と、同氏は当時の手紙で説明している。つまり、そのような文字は一時的にハードドライブから増設ボードに割り当てたメモリキャッシュにコピーされ、その後の検索時間を短縮することができる。

サイノタイプIIIの文字データベースとメタデータが記載されたGARFの内部資料(画像クレジット:Louis Rosenblum Papers、Stanford University Special Collections)

チャイニーズ・オン・ア・チップ

メモリバンク切り替えやアダプティブメモリを駆使しても、そういった工夫だけでは手に負えない何千もの文字が残されていた。実際の漢字入力では、使用頻度の高い漢字が全体の大きな割合を占めているが、技術的な内容や専門的な内容の文章を作成する場合には、ユーザーは必ず「倉庫」の漢字リポジトリに繰り返しアクセスすることになる。中国語のコンピューターを英語のコンピューターと同じように、快適なスピードで使えるようにするためには、これらの「低頻度文字」をより多く「現場」に運び入れておく必要があった。

1970年代後半から1980年代前半にかけて、エンジニアたちは別のハードウェアソリューションを模索し始めた。「Chinese Character Cards(Hanka)[漢字カード]」「Chinese Cards(Zhongwenka)[中国語カード]」「Chinese Character Generators」(漢字生成機)「Chinese Font Generator(Hanzi zimo fashengqi)[漢字フォント生成機]」、そしてある記事では「Chinese-on-a-Chip(チャイニーズ・オン・ア・チップ)」などと呼ばれていた。こういった「漢字カード」類は、メモリーボードやグラフィックボードのように、マザーボードの拡張スロットに直接実装するように設計され、何千もの中国語のビットマップとキー入力をビットマップに対応させるエンコーダーが論理回路として組まれていた。実際、漢字カードは、外付けのハードディスクと同じ役割を果たすと同時に、より高速で安定した性能を発揮した。

しかし「チャイニーズ・オン・ア・チップ」カードは、GARFの研究対象ではなかった。というのも、漢字カードは、パーソナルコンピューターが普及する前の中国語システムの専用機向けに開発されたものだったからだ。そういったシステムは、Chan Yeh(チャン・イェー)氏のIdeographix IPX(イディアグラフィク・アイ・ピー・エックス)やOlympia 1011(オリンピア・テン・イレブン)などが挙げられ、漢字ビットマップの生成と入力記述子の保存のみを目的としたマイクロプロセッサーを搭載していた。中国語ワープロ「オリンピア1011」は、電動の中国語タイプライターであるが、3個のIntel 8085(インテル・エイティ・エイティファイブ)プロセッサーの内1個が漢字生成専用であったという。

1980年代初頭には、この漢字生成機がコモディティ化し、市販品として単体で販売されるようになった。そのため、漢字生成機の恩恵を受けるためにオリンピア1011のような本格的なワープロを買う必要はなくなり、代わりに「漢字カード」を購入して、それを自分のパソコンにインストールするだけでよくなった。

最も早くから漢字カードに取り組んでいた中国コンピューティングの中心の1つである清華大学では、約6000種類の中国語ビットマップパターンを32×32ドットマトリックス形式で格納できる先駆的なカードを開発した。そして、1980年代半ばから後半にかけては、日本、中国、台湾、香港、米国などの企業によって製造・販売された数十種類の「Hanka(漢字カード)」類似製品が市場に出回ることになった。

また同時に「チャイニーズ・オン・ア・チップ」のアプローチは非常に重要かつ一般的なものとなり、特に中国語や日本語に対応したコンピューターでは、何らかの文字生成カードが搭載されるようになっていた。

このように、1950年代のコールドウェル氏のサイノタイプから、1980年代のローゼンブラム親子とGARFのサイノタイプIIIに至るまで、漢字に関わるメモリ問題を解決することは、コンピューティングにおける中国市場の幕開けの重要な基盤となった。コンピューターの改造によるメモリの拡張、文字の優先度に適応するメモリ管理アルゴリズムの考案、問題の解決のための専用ハードウェアの構築、それらすべてが中国におけるコンピューター革命の引き金となったのだ。

しかし次のステップは、コンピューター本体だけではなく、コンピューターに接続されるすべての機器に、漢字対応をどのように拡大していくかということだった。TechCrunchでまもなく公開されるこのシリーズのパート2では、中国語のテキスト出力に対応した初期のコンピューターモニター、プリンター、その他の周辺機器で見られた、設計とプログラミングにおける課題について深く掘り下げていく。

カテゴリー:ハードウェア
タグ:中国コンピューター中国語コラム

画像クレジット:Louis Rosenblum Papers, Stanford University Special Collections

原文へ

(文:Tom Mullaney、翻訳:Dragonfly)

元Alibabaの科学者がコンピューターサイエンス分野以外の創業者に出資する理由

North Summit CapitalとAlibaba Cloudの元チーフサイエンティストであるミン・ワンリ氏(画像クレジット:North Summit Capital)

Min Wanli(ミン・ワンリ)氏は、コンピューターサイエンスを追求している人みなが切望するキャリアパスを持っていた。天才のミン氏は14歳のときに中国の一流大学に入学を許可された。同氏はその後、シカゴ大学で物理学と統計学の博士号を取得し、IBMとGoogleに計10年近く勤めた。

米国で働く多くの野心を持つ若い中国人科学者と同様、ミン氏は2010年代初めに中国でインターネットブームが起きたときに帰国した。同氏はAlibabaに設置されたばかりのクラウド部門に加わり、高速道路の交通量を抑制するために視覚的識別を使ったり、工場の効率を高めるためにコンピューティングを活用したりするような、同社のテックを産業面で応用する取り組みの最前線にいた。

そして2019年7月に、ミン氏は思い切った行動にで出た。eコマースの巨人Alibabaの成長の主要原動力となり、当時中国最大の公共クラウドインフラプロバイダーだった(今でもそうだ)Alibaba Cloudを辞めた。投資の経験はなかったが、ミン氏はNorth Summit Capitalというベンチャーキャピタル会社を興した。

「2016年と2017年ごろは、多くの企業が『デジタルトランスフォーメーション』についてかなり懐疑的でした。しかし(Alibaba Cloudからの)成功ケースを目にし、企業は2019年には実行可能性について疑問に思わなくなりました」とミン氏は深圳市の街並みや高層オフィスビルを見下ろしながら自身のオフィスで語った。きれいにアイロンがかけられた水色のシャツに身を包んだ同氏は子どものようなピュアな笑顔で話した。

「突然誰もがデジタル化したがりました。しかしわずか400〜500人のチームでそうした需要にどうやって応えられるでしょう」。

ミン氏のソリューションは、時代遅れの工場や会社に自らサービスを提供するのではなく、多数の企業がサービスを提供するよう資金を提供しサポートすることだった。間もなく、同氏はアラブ首長国連邦の氏名非公表の富裕人物から「数億ドル(数百億円)」を獲得してNorth Summit最初のファンドをクローズした。この人物とミン氏は、ミン氏が2018年に開催されたドバイテック会議にAlibabaの代表として参加したときに出会った。

「ベンチャーキャピタルは、私が多くのテック企業とコネクトし、私が昔得た教訓を共有できる拡大鏡のようなものです。ですので、テック企業はすばやく、そして効率的に従来の産業の顧客と協業できます」とミン氏は話した。

「たとえばポートフォリオにある企業と、まずハードウェア、あるいはソフトウェアの販売にフォーカスすべきなのか、それとも同等に重視すべきなのかを話し合います」。

ミン氏は支援する会社に深く関与するよう努めている。North Summitはこれまでのところ約500万〜2500万ドル(約5億5000万〜27億7000万円)の範囲で投資している。同氏はまた、ポートフォリオ企業に投資後のサポートを提供するQuadtalentというテクノロジーサービス会社も興した。

深圳市にあるNorth Summitのオフィス

デジタルトランスフォーメーションの概念は、従来の産業の性質がかなり複雑で細分化されているために、多くの投資家にとって手強いものだ。しかしミン氏はターゲットを絞るのに役立つ基準のリストを持っている。

まず最初に、投資可能なエリアはデータ集約型であるべきだ。たとえば地下鉄の追跡は鉄道システムの状況をモニターするかなりの数のセンサーを埋め込むことで恩恵を得ることができるかもしれない。2つめに、製造あるいは事業プロセスは、とてつもない設備を使う製造ラインのように、資本集約的でなければならない。そして最後に、産業は警察の交通誘導のように反復的な人間の経験にかなり頼るものでなけれなならない。

産業問題の解決は、創業者のコンピューティングの発明の才だけを要するのではなく、より重要なのは伝統的なセクターでの経験だ。なので、ミン氏は起業家を探すときに、コンピューターサイエンスウィザードの向こう側「遠く離れたところ」を見ている。

「今日我々が必要としているものは、『複合アルゴリズム』を扱える、複数の異なる分野にまたがる人材です。それは、センサーシグナル、ビジネスの論理的根拠、製造、コンピューターアルゴリズムの理解を意味します。他の要素なしにアルゴリズミックなブラックボックスを通じてニュートラルネットワークを適用するのは単なる無駄です」。

投資家らが次のABB、Schneider、中国Siemensを捉えようとするのにともなってミン氏はかなりの競争に直面している。中国は経済のすべての面でテクノロジーでの独立に向かっていて、新型コロナウイルスが世界のサプライチェーンをディスラプトしている中でその任務は緊急性を帯びている。その結果「産業用アップグレード」ソリューションをうたうスタートアップの評価額はうなぎのぼりだ。

しかし工場長たちは、自動化ソリューションプロバイダーが勝ち目のない企業なのか、あるいはユニコーンのスタートアップなのかは気にしない。「結局のところ、工場のCFOは『このソフトウェアや設備はいくら節約したり儲けたりするのに役立つのか』と聞くだけです」。

投資家らはミン氏の初のファンドの展開について慎重だ。展開を開始して2年、North Summitはこれまでに4件のディールを完了した。オートメーションを取り込んでいる創業17年の履き物メーカーTopScore、ロンドンを拠点とする就学前の中国人の子ども向けの英語学習アプリLingumi、マレーシアのドローンサービスプロバイダーのAerodyne、中小企業に安価なAIビジョンソリューションを紹介するマーケットプレイスのExtreme Visionだ。

North Summitは2021年、中国内外で企業に1億ドル(約111億円)近くを投資することを目指している。このところミン氏が注目している分野は光学式記憶装置とロボティックプロセスオートメーション(RPA)だ。

関連記事
【コラム】DXを「エシカル」にリードする方法、倫理優先の考え方は従業員と利益を守る
【コラム】パブリッククラウドにおけるセキュリティ課題の解決に向けて
Sansanが請求書をオンライン受領・管理できる「Bill One」を中小規模事業者に無料提供開始

カテゴリー:VC / エンジェル
タグ:North Summit CapitalAlibabaDX中国Alibaba Cloud

原文へ

(文:Rita Liao、翻訳:Nariko Mizoguchi

中国で配車アプリDidiがストアから削除、不正個人情報収集疑いで

中国はアプリストア運営事業者にストアからDidi(ディディ)のアプリを削除するよう命じた。このところ中国最大の配車事業者と中国当局の間では緊張が高まっていた。Apple(アップル)の中国App Storeを含むいくつかのアプリストアからDidiがなくなっているのをTechCrunchは確認している。

現地時間7月4日に削除命令を明らかにした中国のネット規制当局は、Didiが違法にユーザーの個人情報を収集していた、と述べた。

Apple、SoftBank、Tencent、Uberなどを投資家に持ち、2021年6月下旬に上場したばかりのDidiは中国のデータ保護規則を遵守するよう命令されていた。

この動きは、中国のインターネット規制当局が今週初めに「国家安全保障上」の懸念でDidiを調査すると発表したことに続くものだ。Didiは6月30日に米ニューヨーク証券取引所に上場した。米国で過去最大のIPOの1つとなり、同社は少なくとも40億ドル(約4440億円)を調達した。

Didiはさまざまなアプリストアからアプリを削除し「修正」を 開始した、と声明文で述べた。また、7月3日に新規ユーザー登録を停止したとも明らかにした。既存ユーザーはこれまで通りアプリを利用できる。

Didiのようにかなり浸透しているアプリがアプリストアから削除されるのは極めて異例だ。2021年3月までの1年間でDidiは年間アクティブユーザー4億9300万人にサービスを提供し、毎日4100万件の取引があると最近明らかにしていた。

Didiの2021年第1四半期の月間ユーザーは1億5600万人で、Uberの9800万人を上回る。中国の公式データでは、2020年12月時点で配車サービスを利用する人は3億6500万人だった。これはDidiがかなりのマーケットシェアを握っていることを示している。

関連記事
ついにソフトバンク、Uber、テンセントが出資する中国ライドシェア「Didi」がIPO申請
中国の配車サービスDidiが新型コロナワクチン接種支援で10.4億円の基金を設立
タクシー配車サービスの「DiDiモビリティジャパン」が52億円調達、ソフトバンクグループとのシナジー強化

カテゴリー:シェアリングエコノミー
タグ:中国個人情報Didi

画像クレジット:Didi Chuxing

原文へ

(文:Manish Singh、Rita Liao、翻訳:Nariko Mizoguchi

アップルは検索広告で中国での売上増を狙う

Apple(アップル)の検索広告は米国では5年前に始まったが、今週から中国本土でも始まる。

Apple Search Adsと呼ばれるこの機能は、App Storeにおけるユーザーのキーワード検索に基づいて開発者が広告枠に入札できるというもので、Google(グーグル)の検索広告と同じ仕組みだ。JPMorganの推計によると、Appleの年間広告収入は2025年に110億ドル(約1兆2200億円)を超えるというが、検索広告事業が占める割合はわからない。

国際的なアプリの中国進出をサポートしているAppInChinaの発行者であるRich Bishop(リッチ・ビショップ)氏によると「中国における検索広告の立ち上げが遅れたのは、中国では広告事業に対して政府の規制があるためです。Appleはそれを迂回する方法を見つけたようですが、決済を外貨で行なうことと、検索タブの広告は提供できないという制限があります」という。

関連記事
アップルがApp Storeの検索タブに新たな広告枠を導入
ついにアップルが導入開始した「アプリのトラッキングの透明性」について知っておくべきこと

Appleは、ユーザーがアプリによるデータトラッキングをオフにできるようにするなど、パーソナライズされた広告を抑制していますが、この動きは、第三者のデータに依存して広告を配信しているFacebook(フェイスブック)などのビジネスモデルを揺るがすことは必至だ。

これまで、中国はAppleにとって重要な市場だが、Huawei(ファーウェイ)といった地元企業の台頭により、iPhoneは同国におけるステータスシンボルとしての輝きを失いつつある。しかし、第1四半期には、Huaweiの売上が低迷したことやiPhone 12ファミリーの発売により、Appleのスマートフォン出荷台数は回復している。中国のApp Storeも、Appleにとって重要な収入源だ。

中国本土のユーザーに対して広告をターゲティングしたい開発者は、5ページのガイドラインでAppleが示している資格要件を満たさなければならない。広告主が取得する必要のある業界固有のライセンスが大量にあるため、AppInChinaのブログ記事では、外国企業が中国本土で広告を直接出稿することは実質的に不可能と述べている。

中国で検索広告に入札するには、政府の承認をすべて得ている地元のパートナーを見つける必要がある。

例えば中国に品物を輸入するアプリの要件は、インターネット上の付加価値事業を行なうための一般的なライセンスだけでなく、貿易や関税に関するさまざまな政府機関への登録が必要だ。AppInChinaによると、アプリを中国でリリースするだけでも、Appleはそういった許可を申請しなければならないかもしれない。以前のゲームアプリの取り締まりの例にも見られるように、Appleは今後も中国政府のルールを強制し続けるのだろう。

関連記事:Appleが中国で4年放置されていたApp Storeの抜け穴をやっと封鎖

カテゴリー:ネットサービス
タグ:Apple中国広告

画像クレジット:Miguel Candela/SOPA Images/LightRocket/Getty Images

原文へ

(文:Rita Liao、翻訳:Hiroshi Iwatani)

中国のロボットタクシーユニコーンのWeRideが5カ月で660億円を超える資金を調達

最近の中国における、自動運転産業の資金調達の状況を把握するのは難しい。広州とカリフォルニア州を拠点とするロボットタクシー企業WeRide(ウィーライド)は、ルノー・日産・三菱アライアンスを戦略的投資家の1つとして迎え、シリーズBとCの資金調達ラウンドによって、わずか5カ月弱で6億ドル(約664億円)以上を調達した

4年前に設立されたこのスタートアップによると、2021年5月に行ったシリーズCの資金調達で評価額が33億ドル(約3654億円)に跳ね上がったという。WeRideは、これまでその投資家の詳細を公表してこなかったが、中国時間6月23日、ルノー・日産・三菱が運営する戦略的ベンチャーキャピタルファンド「Alliance Ventures」、中国の国有プライベートエクイティファンド「China Structural Reform Fund」、中国のCDB Equipment Manufacturing Fundsを運用する「Pro Capital」から3億1000万ドル(約343億円)という多額の投資を受けたことを明らかにした。

投資情報の一部が未公開であるため、WeRideが設立以来どれくらいの資金を調達したかは不明だ。シリーズAラウンドでは「数千万ドル(数十億円)」の資金を獲得している。

ルノー・日産・三菱アライアンスがWeRideに資金を提供するのは、2018年に行われた最初の戦略的投資に続いて2回目となる。今回の資金調達は、中国市場向けのレベル4自動車の開発に向けて、両社が連携を強化するために行われた。WeRideのソフトウェアによって自動化された東風、日産の合弁会社が製造する電気自動車は、すでに1年半前から広州でロボットタクシーサービスを提供している。WeRideは研究開発のために、カリフォルニアでは日産車を使用している。

日産自動車のCOOであるAshwani Gupta(アシュワニ・グプタ)氏は、今回の提携について次のように述べている「中国がモビリティの未来を定義する最前線に立っている中で、私たちはWeRideと提携し、中国の人々の生活を豊かにするために、さらに革新的な技術やサービスを提供できることをうれしく思います」。

WeRide側も日産との提携について、同様にバラ色の印象を持っている。WeRideの創業者でCEOであるTony Han(トニー・ハン)氏は「過去3年間にわたり、彼らはWeRideの自律走行プラットフォームを支える重要な役割を果たしてくれました。そのおかげで当社は先進的なロボットタクシー群を生み出すことができたのです」と語った。

「日産自動車からの継続的な支援によって、私たちは中国における無人ロボットタクシーの商業利用を加速させていきます」。

関連記事
後付け自動運転システムを開発する中国のスタートアップPony.aiが276億円の資金調達、評価額5476億円に
トヨタ、ボッシュ、ダイムラーが中国の無人運転の未来に賭けてMomentaの550億円のラウンドに参加

カテゴリー:モビリティ
タグ:中国ロボタクシーWeRide資金調達

画像クレジット:WeRide

原文へ

(文: Rita Liao、翻訳:sako)

TikTokの好敵手Kuaishouが全世界でMAU10億人突破、東京オリンピックの放映権獲得

TikTok(ティックトック)の中国での最大のライバルであるKuaishou(クアイショウ、快手)にとって、現地時間6月23日は特別な日となった。海外では動画アプリ「Kwai」で知られる中国のショートビデオ企業は、月間アクティブユーザー数(MAU)が10億人を突破したと発表した。

それはどのくらいの規模なのか?FacebookのMAUは2021年3月時点で28.5億人だった。TikTokは2021年中に12億MAUを超えると予測されており、その中国版Douyin(抖音)は2020年9月にすでに6億人のデイリーユーザー(DAU)を獲得したと発表している。つまり、Kuaishouにはまだ追いつく余地があるということだ。

中国はKuaishouの主要な市場であり続ける。同社の海外のMAUは第1四半期に1億人を突破し、その間に「南米や東南アジアでの戦略を進めた」ことで、2021年4月には1億5000万人にまで急増したと、同社は決算説明会で述べている。

香港に上場しているKuaishouの株価は、6月23日に6%以上も上昇して1株あたり200香港ドル(約2860円)近くになり、時価総額は約8300億香港ドル(約11兆8640億円)に達したが、それでも2021年2月のピーク時の415香港ドル(約5930円)を大きく下回っている。

Kuaishouの世界進出は、海外市場で躍進している中国のインターネット企業はByteDance(バイトダンス)だけではないことを思い出させてくれる。中国のJoyy(ジョイ)が所有するBigoはインドで非常に人気のあるライブビデオアプリだったが、現地政府によって禁止されてしまった

Kuaishouの創業者兼CEOのSu Hua(宿华)氏は23日の記者会見で「Kuaishouは2011年からパイオニアとして、世界中のインターネットユーザーに自分のライフストーリーを記録し、共有する機会を提供してきました」と述べるとともに、同アプリが東京2020オリンピックの公式放映権を獲得したことを発表した。

関連記事
インド政府がTikTokなど中国企業の59のアプリを禁止すると発表
中国版TikTokのライバル動画アプリKuaishouが上場初日に194%急騰、時価総額19兆円超に

カテゴリー:ネットサービス
タグ:Kuaishou中国SNSオリンピックアプリ東京オリンピック

画像クレジット:Kuaishou’s Kwai app

原文へ

(文:Rita Liao、翻訳:Aya Nakazato)