VRコンテンツの検索方法を探るSVRF

【編集部注】著者のAlice Lloyd GeorgeRRE Venturesの投資家。先端技術のリーダーたちと対話を行うポッドキャストシリーズFluxのホストでもある。

ウェブサイトのためにはGoogleがある。動画のためにはYouTubeが。各種プロダクトのためにはAmazonが。一般的なレファレンスのためにはWikipediaが。そしてGIFファイルのためにはGiphyが。ではVRやARデバイスが主流になったとき、探求を待つ新しいコンテンツたちが溢れることを想像してみよう。私たちはこの、勇敢で新しい3D世界で、どのように探し物を見つけるのだろうか?

Fluxのためのインタビューとして、私はSVRFの共同創業者兼CEOのSophia Dominguezに話を聞いた。SVRFはオーブンベータが公開されたばかりのVRコンテンツ検索エンジンだ。

Sophiaが語った内容は多岐に渡る。何故消費者たちはVRを恐れているのか、彼女はそのバリアをどのように打ち破ろうとしているのか、何故検索ランキングで「目眩」ファクターが重要なのか、SnapchatがARへのギャップを埋める方法、そして何故FacebookのVRプライバシーポリシーが憂慮すべきものなのか、などだ。Sophiaはまた、業界の中で、女性である故の課題についても語った。また会社をニューヨークに設立することは、シリコンバレーのバブルの中で起業するよりも、現実的なチェックを行うには有利であること、VRゾンビが珈琲の代替品として素晴らしいものの理由、そして奇抜なVRアートの素晴らしさについても語っている(以下の記事はPodcastからの抜粋である)。

それでは、あなたの会社であるSVRFについての話をしましょう – ちょうど新しいプロダクトをローンチしたばかりですから、とてもエキサイティングなタイミングだと思いますが。あなたは、目標はVRを皆のものにすることだと仰っていて、ウェブ上のすべてのコンテンツのインデックスとキュレーションを行っています。つまり360度写真、360度ビデオ、そして3D体験ということですが。それは、VRのための検索エンジンを構築するために何を意味するのでしょうか?

Sophia Dominguez(SD):はい、その目的のために私たちは今コンテンツのインデックスを作成する必要があるのです。私たちは仮想現実コンテンツをホストしていたり、APIと統合していたり、あるいはコンテンツを取り出すためのカスタム手段を提供している特定のサイトの内容を見ています。どのサイトがVRコンテンツを持っているかは調べれば良いだけの話ですが、開発者の立場からインターネットをクロールするために必要な、どんな種類のコンテンツが存在していて、どのように見えているかに関する十分なデータもいつかは集まると思います。

私たちがこの仕事を始めたときに認識していなかったことの1つは、世の中にはどれほど悪いコンテンツがあるかということでした。考慮しなければならない、要注意のコンテンツが沢山存在しています。たとえばウェブ上のコンテンツを見て、へえこれは面白そうと思っても、ヘッドセットを装着してみたら、気分が悪くなってしまう可能性もあるのです。こうしたことも私たちのランキングは考慮しています。ヘッドセットを使ったときに快適に楽しめるかどうかということですね。

Alice Lloyd George(AMLG):そのコンテンツがあなたに吐き気を催すようならインデックスもランキングも下がってしまうということですね?

SD:はい。私たちはときどきSlackチャンネルで、リンクを配信していますが、もし誰かがその内容をみて気持ちが悪くなったと言った場合には、ポイントが自動的に下がります。もしウェブ上でそれを見るだけで、気持ちが悪くなるようなら、それは良いものとは言えませんよね。

AMLG:その通りですね、ヘッドセットで見るまでもない。さて、ウェブサイトのためにはGoogleがありますし、動画のためにはYouTubeがあって、GIFのためにはGiphyがあります。あなたはSVRFが、VRのために同等の役割を果たすと考えていますか?

SD:それこそが、私たちが望み、目指しているものです。

AMLG:現段階ではどのくらいの対応コンテンツがありますか?大体の数を挙げていただくことは可能でしょうか?

SD:360度という意味では、おそらく10万点ほどのコンテンツですね。3Dという意味ならもっとあって、おそらく数十万点でしょう。しかし、公平のために言っておくと、ほとんどのコンテンツは興味深いものではありませんよ。3Dについて考えて下さい。例えば靴のインデックスを作るとします、靴を見たいなんて、実際に何か買おうと思うまで意味がありませんよね。これが私たちが控えめにやってきた理由なのですが、来年には公開を開始します。それは消費者たちにとって異質な体験です、人びとは他の人たちや友人たちを手掛かりにしていますが、それに突然3D体験が加わると…今私たちはインタビューのためにオーディオスタジオの中にいますけど、もしオーディオスタジオをインデックスに含めたとして、それを使ってどうすれば良いでしょうか?私たちは、そうしたシナリオがどのようなものなのかを考え、今やることだけでなく、消費者向けに最善の方法で私たちがエコシステムを構築するために、この先の数年でやることも考えるようにしています。

AMLG:その通りですね。例としては靴を見つけたり、オーディオスタジオを見つけたりすることができます。例えば、それらを皆まとめることができれば、理にかなっているように思えます。そし、検索を行う際に「そうねオーディオスタジオの中に居たいわね、一緒に居るのはSophiaで、靴やなにかも一緒に」と指定できるとか。もっと良い例があると思いますが…例えば推理ゲームのクルードのような感じで、「Mustard大佐と一緒に、スパナを手に、図書館の中に居る」…といったように全てが織り込まれているような検索が行えるようなものですね。単なる物や、場所ではなく、ソーシャルなものでなければなりません。あなたの検索エンジンはそうしたことに対応するのでしょうか?こうした全ての要素を使った検索体験を実現できるのでしょうか?

SD:はい。わたしたちはそうしたことを行い、ソーシャルVRやARアプリケーションの中に機能をプラグインして、人びとに優れたコンテンツを提供するためのAPIを構築しています。そして、ソーシャルな部分は他の会社にお任せしたいと思っています。ちょうどGiphyがメッセージングでそうしているように。

AMLG:ということで、構想なさっていることの1部は、誰でも「さあピラミッドの麓に行きましょう」と言えるようになることですね。ハイエンドにはOculus RiftやViveの数十万人のユーザーがいます。その下のクラスだとGearやDaydreamのようなもので、おそらくユーザーは数百万人。そしてGoogleが売ったCardboard…25ドルの紙製の製品…が数千万個。SVRFでは、最初人びとがモバイルやデスクトップを利用することを想定していると思うのですが、そう、その数は数億ですよね。それは狙っている層ですか?

SD:ええ。それはほとんどの人が現在やっていることとは異なるものです。でも数週間のうちにリリースされる私たちのモバイルプロダクトがあれば、試せるようになるでしょう。私たちは、当社の製品を(利用者へ広い間口を提供して誘い込む)漏斗のへようなものと考えています。最初に私たちがローンチしたものはChrome拡張機能でした、それは新しいタブを開く度に360度写真を表示するようなものです。私たちにとって、それが日々ユーザーに360度コンテンツに馴染んでもらうための最も簡単な方法でした。そしてそこから、他のプロダクトへと導いて行くことができます。モバイルが登場してきたとき、私たちは何が人を仮想現実の中に向かわせるのかについての理解ができるようになりました、そしてウェブをバックボーンとして、何が人に仮想現実コンテンツをシェアさせるのかを。

AMLG:それがタブのアイデアなのですね。どうすれば消費者たちに360度体験に馴染んでもらえるのか?そこで出たアイデアが、ブラウザに追加していつでも体験できるようにしておくと?という問いに対応するための。

SD:はい、その通りです。私たちが、皆にVRや360度コンテンツについてもっと意識してもらうために、どのようなことをすれば良いかを考えていたときに、私たちはいつでもコンピューターのスクリーンを見ているし、新しいタブを開く度に広大な「土地」がそこにあるということに気が付いたのです。技術的に言えば、VRの中にいるときには、自分の周りのスクリーンを見ているということです。では、普通の状況でそれに匹敵することって何でしょう?それはコンピューターのスクリーンそのものです。そして、私たちはどのようにそのスペースを活用することができるでしょう?それはタブを開いたときに見せればいいね、ということに気が付いたのです。

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(翻訳:Sako)

OculusでのVR体験をFacebookにシェアできるようになった ― 同時にボイス検索も

VRがどんなものなのかを説明するのは骨の折れる作業だ。そんな中、本日(米国時間10日)FacebookとOculusは、友達や家族にVR体験を簡単にシェアできる機能を発表した。

新しいイベントアプリの追加、そしてOculus Room内での360度ビデオの視聴などのソーシャル機能と同時に本日Oculusが発表したのは、VRゲームをプレイしている様子などを直接facebookにアップロードできる機能だ。

この機能は今日から米国外のユーザー向けに公開される。米国内のユーザーには「今後数週間のうちに」公開される予定だ。これにより、VRコンテンツがより身近になり、VR体験とはどのようなものなのかを友人に見せてあげることが可能になる。

FacebookとOculusが統合機能を発表したのはこれが初めてではない。今週はじめ、Facebookは同社初となるVRアプリ「Facebook 360」を発表している。これはFacebook上の360度フォトや360度ビデオを閲覧できるVRアプリだ。この機能を使い、Facebookは同社がもつコミュニティを活用してVRへのアクセスを向上させ、VRをまだ試したことがないユーザーにVRとは何であるかを教えている。

Oculusが今日発表したビッグニュースは他にもある。RiftおよびGear VR向けのOculus Homeプラットフォームにボイス検索機能を追加すると発表したのだ。ストアに掲載されるコンテンツが増えつつあるなか、より容易な検索機能は同プラットフォームにとって大きな進歩だと言える。仮想現実のスクリーン上に表示されるキーボードは非常に使いづらい。だから、このボイス検索機能によってユーザーのイライラが多少緩和されることになるだろう。彼らはまず、「Oculus Voice」と呼ばれるこの新機能をボイス検索機能とともにローンチする。しかし、友達がオンラインかどうか確かめるなど、よりデジタルアシスタントに近い機能が搭載される日も近いだろう。

[原文]

(翻訳:木村 拓哉 /Website /Facebook /Twitter

VRで「どこでもドア」のProject i Can、最新VR施設を歌舞伎町に開設予定

2016年、家庭で使用できるOculusやPlaystation VRなどのVRハードウェアが出揃ったが、自宅でVRを体験したいと思う人はまだ少数かもしれない。一方、アトラクションとしてエンターテインメント施設で体験できるVRコンテンツは着実に増えているようだ。本日、バンダイナムコエンターテインメントは、2017年夏に期間限定で新宿歌舞伎町にエンターテインメント施設「VR ZONE Shinjuku」を開設すると発表した。

「VR ZONE Shinjuku」では最先端のVRアクティビティをはじめ、プロジェクションマッピングなど、来場者がインタラクティブに楽しめるコンテンツを提供するという。場所は、歌舞伎町の TOKYU MILANOの跡地で、施設規模は約1100坪だ。

バンダイナムコエンターテインメントは2016年より社内にVR部を立ち上げ、VRコンテンツの準備を進めてきたという。2016年3月には、VR技術によるエンターテインメントを追求するため「Project i Can」を開始した。このプロジェクトでは、2016年4月15日から10月10日までの間、青海にあるダイバーシティ東京プラザ内で「VR ZONE Project i Can」を開設し、来場者にVRアクティビティを提供していた。来場者からのフィードバックを元に、実在感のあるコンテンツ制作やVR酔いを軽減する技術の開発に取り組んできたという。

Project i Canではその後、いくつかVRコンテンツを開発している。今現在提供しているVRコンテンツには、ガンダムVR「ダイバ強襲」(大阪のガンダムスクエア)、ドラえもんVR「どこでもドア」(東京押上の商業施設ソラマチ)などがある。

AR・VR市場は立ち上がったばかりだが、2021年にはその市場規模は1080億ドルに達することが見込まれている。しかし、VRが広く普及するためには、一般消費者に実際にVRを体験してみてもらわないことにはその良さが伝わりづらいだろう。こうした施設で、VRの体験者が増えるのなら、いずれはどの家庭にもVRがある未来が近づくかもしれない。

混成現実の多様な可能性に賭けるMicrosoft、Windows 10用のデベロッパーキットを今月から提供開始

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Microsoftが前に言ってたところによると、PCの世界でみんながその名前を知ってるような、いくつかのOEMパートナーが今、Windows 10機の上で混成現実を体験できるためのヘッドセットを作っている。その最初の製品であるAcerの製品は、デベロッパー向けに今月発売される。また、その後の数か月は、ほかのパートナーたちのデベロッパー向け製品が次々と発表される。

そして、Windows Mixed Realityという新しいブランドが確立する。前にはWindows Holographicと呼ばれていて、技術的にはそっちの方が妥当、との声もある。

Microsoftは2018年のScorpio Xboxを皮切りにXbox Oneの系統も混成現実化していくつもりなので、今の一連の動きはそのための…とくにデベロッパーを意識した…下地作りという意味もある。またWindows 10は今後またCreators Updateが提供されるので、デスクトップOS上の混成現実にも、引き続き力を入れて行かなければならない。

Acerや今後のASUS, Dell, HP, Lenovoなどの混成現実ヘッドセットは、位置追跡機能がinside-out方式で、部屋の中などに外付けの位置追跡デバイスが要らない。その代わり、ヘッドセットの中にユーザーのまわりをスキャンするセンサー群があって、ユーザーの動きを正確に追跡し、仮想オブジェクトを正しく描画する。

Acerのキットがデベロッパーの手に渡るのは今日(米国時間3/1)で、1440×1440、リフレッシュレート90Hzの液晶画面を誇っている。オーディオ出力とマイク入力のための3.5mmジャックもある。Windows 10のコンピューターには、HDMI 2.0とUSB 3.0の両方を収めた単一のケーブルで接続する。

混成現実は多くの人びとにとって、仮想現実よりもおもしろいものになりそうだ。オフィスやそのほかの仕事環境でも、多様な機能やVR/ARコンテンツを付加できる点が、デベロッパー、ユーザー両方にとって魅力だ。VRだけだとVRが現実を完全に隠してしまうから、現実に対する多様な用途は期待しづらい。ただしもちろんMicrosoftにとっての勝敗は、デベロッパーのためのライブラリや、ユーザーのためのソフトウェアのクォリティーで決まる。ヘッドセットでデベロッパーキットを先行させるのも、そのことを意識しているからだ。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))

日本のVRスタートアップ、ダズルが2億円を調達 ― VR分析ツール「AccessiVR」を6月に正式リリースへ

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「Dazzle VR ROOM」の様子

「VR元年」と呼ばれた2016年も、あっという間に過ぎ去ってしまった。でも、VR業界の注目度は高いままだ。

VRプロダクト向け分析ツールの開発を手がける日本のダズルは3月1日、施工図作図や技術者派遣を行う夢真ホールディングス、およびグループの夢テクノロジーから総額2億円の資金調達を完了したと発表した。同社は2016年5月に同じく夢真HDから1億5000万円を調達しており、累計調達金額は3億5000万円となる。

これにともない、ダズルの監査役に夢真HDの佐藤義清氏、そしてスマートフォン向けサービス開発を手掛けるアクロディアの永山在郎氏が就任。また、経営顧問にスカイマーク元代表取締役会長の井出隆司氏が就任する。

ダズルはこれまでに、スマホゲームやVRゲームなど数点のゲームコンテンツをリリースしてきた。なかでも、スマホRPGの「ヴァリアントナイツ」は累計140万ダウンロードを達成している。そして、本日からクローズドβを開始するのが、VRプロダクト向け分析ツールの「AccessiVR(アクセシブル)」だ。今回調達した資金もこの開発費用に充てられる。

AccessiVRは、VRプロダクトの分析および運用サポートサービス。同ツールを利用することで、ユーザーがどこでコンテンツから離脱したか、そして、ユーザーがコンテンツのどこを見ているのかをヒートマップで確認することなどが可能だ。このヒートマップは、ユーザーが向いている方向の中心を視点とするかたちで作成されているそうだ。Unity5、Unreal Engine4など、国内外で使用される主要な開発言語に対応していて(Unreal Engineは正式版から)、対応デバイスもOculus Rift、Gear VR、HTC Viveなど幅広い。 data2

具体的な料金プランは未定だが、導入費用と初月利用料は無料で提供される見通しだ。正式版のリリースは6〜7月頃を予定している。

VRプロダクト向け分析ツールの例として挙げられるのが、バンクーバーの「cognitiveVR」だ。また、開発ツールであるInstaVRでもヒートマップ分析機能などが利用できるようになっている。コンテンツメーカーだったダズルがAccessiVRをリリースすることで、それらの分析ツールと直接的な競合関係になるわけだ。代表取締役CEOの山田泰央氏は、「日本企業として地の利を生かし、まずは日本、次に中国、そしてアジア諸国というかたちでアジアのマーケットを素早く獲得していく。アジアはVRにとって重要なマーケットになると思う」と今後の戦略について話す。

また、AccessiVRはプロジェクトの予算やKPI目標の設定、そしてその管理などが可能な「運用サポート機能」が備わっていることも差別化要因の1つだと山田氏は語る。加えて、「ライトなSDKをつくるという点にはかなり注力していて、他の分析ツールと比べてFPSのロスが少なくなるように開発している」そうだ。

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CEOの山田泰央氏(写真左)とCOOの出口雅也氏

今後、コンテンツメーカーだったダズルが分析ツールという新しい分野にビジネスを拡大していく。中長期的には、分析ツール開発事業がダズルの柱になっていくようだ。「分析ツールを開発して提供するためには、僕らでもコンテンツをつくって社内でもPDCAサイクルを回さないと顧客と対話できない。だからこそ、現在はVRゲームの開発も行っている」と山田氏は話す。

それと、TechCrunch Japanの読者であれば、少なくとも1ヶ月に1度くらいは日本のVR企業に関する記事が公開されていることにお気づきのことだろう。この市場に対する注目度は高いし、ポテンシャルも大きい。Goldman Sachs Asset Managementは、2025年にVR/AR市場は約800億ドルへと拡大し、PC・スマートフォンに続く第3のプラットフォームとして市場を形成する可能性があると予測している

僕たちが最近取り上げたものだけでも、CADデータを使ったVRコンテンツの「ワンダーリーク」VRアプリ開発ツールの「InstaVR」ヘッドマウントディスプレイ(HMD)の「FOVE」VR特化型インキュベーション施設の「Future Tech Hub」VR触覚コントローラーの「H2L」などがあり、日本のVR業界全体の温度が徐々に上がりつつあるように感じる。2016年に約12億円を調達したFOVEや今回のダズルをはじめ、日本のVR業界でも大型の資金調達も増えてきている。

ところで、VR業界全体の構造がある程度形成されるにつれて、「Oculus Store vs SteamVR」というコンテンツプラットフォーム争いの構図が生まれた。これについては、以前FOVEの小島由香氏も言及している。これまでVRコンテンツを製作してきた山田氏に意見を聞くと、「Steamにはコアなゲームユーザーが多く、それだけHMDを持っているユーザーの率も高いと思う。また、長年ゲームプラットフォームとしてやってきただけあってコンテンツメーカーへの対応も優れていて、結果的にリリースまでの時間が短いのもSteamだ」との話があった。多少、Steam有利の感はあるのだろうか。

かつてフリーランスエンジニアだった山田氏が、「クリエイターが楽しく働ける環境を作りたい」という思いで2011年に立ち上げたのがダズルだ。そして、同社は2015年にVR事業を本格化。現在は40人の従業員をもつ。また、「VR元年と呼ばれた2016年を過ぎた今年だからこそ、VRに触れる機会を提供したい」というアイデアがきっかけで、同社は3月22日までオフィスの一部を開放。「Dazzle VR ROOM」と銘打ってVR体験スペースを提供している。

VRベースのソーシャルプロダクティビティアプリBigscreenがAndreessen Horowitzらから$3Mを調達

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VRの“キラーアプリ”(killer app)*をめぐる議論が喧しい中で昨年は、VRが提供する他に類のない優れたコラボレーション機能を活かそうとするソーシャルアプリがいくつか登場してきた。〔*: killer app, ここでは特定のアプリケーションではなく、その分野をメジャーに押し上げるアプリケーションのジャンル。〕

それらの中で、VRの面白さと仕事の生産性(プロダクティビティ, productivity)の二兎を追った初期の試みのひとつがBigscreenだ。それは初期のVRユーザーたちのあいだで、かなりの人気を獲得したが、その製品は過去の同社の、Web上のコンテンツ共有経験がベースになっている。

同社は今日(米国時間2/24)、Andreessen Horowitz率いるラウンドによる300万ドルの資金調達を発表した。そのラウンドにはほかに、True Ventures, Presence Capital, Ludlow Ventures, David Bettner, SV Angelらも参加した。

Andreessen Horowitzがハードウェア以外の分野でAR/VRに投資した例は、あまり多くない。その中で同社のOculusVRへの投資は、同じく投資家の一員であったFacebookによる2014年20億ドルの買収で、VR企業としては初めての大型イグジット(exit, 出口)になった。

VRアプリケーションはVRの最大の特性である3Dのインタフェイスを強調したものが多いが、そんな中でBigscreenは、2DのWebの世界で提供されているコンテンツと、VRが提供する高度なソーシャル体験の両者を、結びつけようとしている。

同社のベータ・アプリケーションは、仮想会議室におけるコラボレーションや、ひとつの部屋に友だちが集まってお互いのアバターとゲームをプレイする、などの使われ方で人気が急伸し、今や15万人のユーザーがいる。まだ費用的にも大衆化しているとは言えないVRの世界でこの数字は、相当なものだ。

Presence CapitalのマネージングパートナーAmitt Maharjanが、Mediumに書いている: “最初からマルチプラットホームに対応しており、そして、体験を他と共有するやり方がきわめてシンプルなため、Bigscreenは知らない人たちが互いに関心を共有してコミュニティを形成する能力に秀でている”。

同社の次のアクションは、Bigscreenの1.0をリリースすること。また、同プラットホームのネイティブアプリケーションや、モバイルのVRヘッドセットへの対応も課題だ。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))

VR触覚コントローラー「UnlimitedHand」の開発元がソニーなどから2億円を調達

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Oculus、GearVR、Playstation VRなどのVRヘッドセットが出揃い、利用できるコンテンツも増えてきた。ただ、まだVRの世界と関わる最適な方法はまだ出てきていないように思う。OculusにはTouchコントローラーがあり、Playsation VRにはPlaysation MOVEコントロラーがあるが、VRのの世界を楽しむのに手にコントローラーを持っていては、完全に没入的なVR体験にはならないだろう。H2Lが開発する「UnlimitedHand」は、腕に巻くだけでVRゲームとのインタラクションを可能とするデバイスだ。本日H2Lは、総額2億円の第三者割当増資を実施したことを発表した。引受先は、ソニーのCVCであるSony Innovation Fundと環境エネルギー投資だ。

UnlimitedHandはモーションセンサーと手指の動きを推定する筋変位センサアレイの技術を搭載し、ユーザーの手の動きをVRに取り込むことができる。また、このデバイスは入力のみならず、電気刺激を筋肉に与えることで、ユーザーに擬似的な触感を与えることもできる。これによりユーザーは、コントローラーなしでVRの中の物に関わることができ、その時の触覚や衝撃を感じることができる。

H2Lは2012年に設立し、岩崎健一郎氏が代表取締役を務めている。立ち上げ当初は電極を仕込んだベルトを腕に巻き、筋肉に電気刺激を与えて手指を操作する「PossessedHand」に着手していて、これを2013年に製品化している。PossessedHandをよりコンシューマー向けの製品として仕上げたのがUnlimitedHandだ。2015年9月にUnlimitedHandのKickstarterキャンペーンを実施した際には、およそ7万5000ドルを集めることに成功した。H2Lは2015年のTechCrunch Disrupt、そして同年11月に開催したTechCrunch Tokyo 2015にも出展している。現在は、Amazonで製品を販売している。価格は3万5000円だ。

今回、調達先にソニーのCVCが入っているのは興味深い。将来的にソニーが開発するPlaystation VRでもUnlimitedHandが使用できるようになれば、VRゲームはハンズフリーでさらに没入感あるものになりそうだ。

GoogleのTilt BrushがOculus Riftに対応

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仮想現実のクリエイターになりたい人は、ツールの少なさを嘆いている。そこで今日Googleは、Oculus Rift用のTilt Brushを発表した。この仮想お絵かきアプリケーションは、これまでHTC Viveでしか経験できなかったけど、これからはRiftのTouch Controllersでより自然な対話ができるから、GoogleはTilt Brushを、Facebookが保有するVRプラットホーム〔==Oculus〕にも提供することに決めたのだ。

コントロールはTouch Controllers用になっているから、この完全にタッチ対応のハードウェアでは指をボタンに乗せただけでツールチップが出る。BrushesはOculusのヘッドフォーンも利用して、おもしろい音をイマーシブなサラウンドモードで出す。音で、今何を描いているかが分かるのだ。

このRiftバージョンのTilt Brushを数分使ってみたが、HTC Viveのころよりずっと成熟したツールになってることが分かる。対話的な操作が、とても軽快だ。OculusにもRift用のクリエイティブなスケッチや彫刻アプリケーションはあるけど、でもBrushesで道具がさらに増える。Touch Controllersがあるために、HTCからRiftに引っ越す仮想アーチストも、きっといるだろうね。

Tilt BrushはOculusのストアで29ドル99セントで買える。〔日本円: 2990円〕。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))

混成現実のビデオをもっと自然で親しみやすく見せるGoogleの工夫…ユーザーの顔を画面中に捕捉

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一般消費者向けのVRは1年近く前から出回っているが、その回りには山のように大量の疑問があり、業界の最優秀な人たちですら、ためらいを見せている。しかし、それらの疑問の中である程度答が得られたのは、消費者がVRを実際に体験しなくても、VRとはどういうものかを、知る方法だ。

研究者がそのために手早く作り上げたのが、混成現実(mixed reality, MR)という構成だ。背景にグリーンのスクリーンを張り、いろんな技術的工夫を凝らして、ヘッドセットを装着したVRユーザーを仮想環境の中に‘住まわせる’。

YouTubeにはVRのための混成現実スタジオというものがあり、本誌のこの記事中のビデオでは、著名なテレビ司会者Conan O’BrienがVRをプレイしている。それを見ると、混成現実というものが、お分かりいただけるだろう。

ゲームを作っているOwlchemy LabsRadial Gamesなどは混成現実にもっと深入りしてて、その経験から見つけたことをゲームデベロッパーのコミュニティで共有している。デジタルの世界の中で生きた人間のアバターを見分けることにはいろいろな問題があり、彼らはそのための努力の数々を紹介しているが、しかし今日Googleが発表したブログ記事には、そんなMRビデオをもっとリアルにするための工夫が載っている。それは、ユーザーの実際の顔をビデオの中に入れてしまう、という、ちょっと奇妙なやり方なのだ。

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GoogleのMachine Perception(機械知覚)のチームは、フェイシャルキャプチャ(facial capture, 顔だけを捉える)のプログラムと視線追跡とコンピュータービジョンのちょっとしたトリックを使って、改良型のVRのヘッドセットから顔が“透(す)けて見える”ようにし(右図下)、そして目の動きが参加者のアクションに従うようにした。

もちろんこの“ヘッドセットをなくしてしまう”ソリューションは、VRコンテンツの作者や共有者にとって大事件ではないけど、多くの消費者が問題とは思わなかったような問題の解決に、Googleが時間をかけて取り組んだことはクールだ。VRがユーザーの目を取り戻しただけでも、VR特有のよそよそしさがかなり減って、消費者にとって親しめるものになった、と言えるのではないだろうか。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))

広告効果測定から自閉症の診断まで―、アイトラッキングテクノロジーの可能性

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【編集部注】執筆者のBen DicksonはTechTalksを立ち上げたソフトウェアエンジニア。

人間の目の動きを測定したり、目の動きに反応したりするテクノロジーは以前から存在するが、最近テック業界ではアイトラッキングテクノロジーに注目が集まっている。大企業アイトラッキング関連のスタートアップを買収する動きは至るところで見られ、同テクノロジーを搭載したデバイスやソフトもいくつかリリースされている。

「アイトラッキングセンサーを使うことには、主にふたつの利点があります」とアイトラッキング企業Tobii Techでヴァイスプレジデントを務めるOscar Wernerは話す。「まず最初に、アイトラッキングデバイスは常にユーザーが何に興味を持っているかというのを把握することができます。そしてふたつめに、アイトラッキングテクノロジーによって、他のものは何も変化させずに、コンテンツとの新しいふれあい方が生まれます。つまりユーザーとデバイス間でやりとりする情報の量が増加するんです」

近いうちに、アイトラッキングが新しい世代のスマートフォンやノートパソコン、デスクトップモニターの標準機能として導入され、ユーザーとデバイスのコミュニケーションの形が変わってくるかもしれない。

「アイトラッキングテクノロジーはここ1年で、将来有望な技術という存在からさまざまな分野のコンシューマー向け製品に採用されるまでになりました」とWernerは付け加える。

デジタル広告会社Impax MediaのCEOのDominic Porcoは、安くて高機能なハードウェア、オープンソースの新しいソフトウェアプラットフォーム、そして以前よりも簡単に速くデータを収集してアルゴリズムを訓練できるような方法が誕生したことで、アイトラッキングテクノロジーが進歩したと語る。

「NVIDIAのような企業が、強力なGPUを搭載した製品を競争力のある価格で販売し、画像認識のスピードアップに貢献しています」と彼は言う。

さらにPorcoは、Amazon Mechanical Turkのような人気のクラウドソースサービスが登場したことで、これまでよりも大量で広範なデータを使って画像認識アルゴリズムを訓練できるようになったと言う。「このような技術の進歩のおかげで、アイトラッキングテクノロジーの進化の速度は大幅に向上し、研究者やディベロッパーは実験から実装までにかかる時間を短縮することができています」

特定のニーズやユースケースを満たさない限り、どんなテクノロジーも成長することはできないが、アイトラッキングに関して言えばそんな心配は無用のようだ。

仮想現実(VR)

Businessman in virtual computer room.

ユーザーがより没入できるプロダクトを開発するために、VRヘッドセットメーカーはアイトラッキングテクノロジーの分野で大規模な投資を行っている。アイトラッキングテクノロジーは、さまざま観点から見てVRを補完するような存在だと考えられているのだ。

「VRは没入感が全てです」とTobiiのWernerは語る。「しかしVRヘッドセットにアイトラッキング機能がなければ、システムが勝手にユーザーはおでこの向いている方向に立っているキャラクターへ話しかけようとしていると判断してしまいます。つまり、ユーザーの注意はおでこと同じ方向に向けられていると理解されてしまうんです。でもそうではないですよね。私たちは目で見ているものに注意を向けていて、顔の方向と目で見ているところが一致しないというのはよくあることです。そのため、没入感を高めるためには、ユーザーの目の動きを計算に入れないといけないんです」

さらにアイトラッキングはフォビエイテッドレンダリング(Foveated Rendering)に欠かせない技術だ。フォビエイテッドレンダリングとは、中心窩(細かなものを認識する網膜の一部)で認識される箇所だけを高画質でレンダリングする手法のことを指す。

フォビエイテッドレンダリングを使えば、描画しなければならないピクセル数が30〜70%減少し、処理能力を節約することができるため、フレームレートを上げることができ、人間の視界を再現するには24Kくらいの画質が必要とされる中、4K対応のヘッドセットでも高画質な映像を楽しむことができるようになるとWernerは言う。

またWernerいわく、VRグラフィックをレンダリングするときに目の動きを勘案していないと、画像に歪みが発生することがあるが、これもアイトラッキングテクノロジーを使えば抑えることができる。

KickstarterプロジェクトのFoveは、初めてアイトラッキングを標準装備したVRヘッドセットだ。他社も彼らに追いつこうとしており、ここ数ヶ月のうちにGoogleとFacebookが、アイトラッキングスタートアップのEyefluenceEye Tribeをそれぞれ買収し、今後彼らの製品にアイトラッキングテクノロジーが搭載されるようになると考えられている。

さらに、アイトラッキングテクノロジーの分野においてはリーダー的な存在にあるSMIも、スタンドアローンのVRヘッドセットやスマートフォンを挿入できるVRゴーグルに同テクノロジーを搭載するため、さまざまなプロジェクトや他社との協業に取り組んでいる。

またアイトラッキング機能は、現在開発中のKhoronos VR APIと呼ばれるオープンな規格にも含まれる予定で、OculusやGoogle、NVIDIAといった企業がこの動きを支援している。

「アイトラッキング機能が第2世代VRヘッドセットの重要な要素になる、と多くのメーカーが考えており、その結果、同テクノロジーの開発やイノベーションが促進されています」とWernerは言う。

PCゲーム

Another successful VR demo, at HTC, that showed room scale gaming that actually worked.

HTCはまた新たに、部屋全体を使ったゲームが上手く機能することを証明するようなVRデモを実施した。

何十年にもわたって、私たちはゲームパッドやジョイスティック、キーボード、マウスといった周辺機器を使って、ゲームのキャラクターの向きを変えてきた。ここでもアイトラッキングが使われれば、ゲーム機が勝手にプレイヤーの向いている方向を感知し、反応できるようになる。

「気になるモノがあれば、目を向けてボタンを押すだけでよくなります」とWernerは言う。「コンピューターはアイトラッキングテクノロジーを利用して、プレイヤーが気になっているモノが何なのかわかるので、プレイヤーはマウスやコントローラーを使ってわざわざ目で見ているものを指し示さなくてもよくなります」

気になるモノを調べるときや狙いを定めるとき、キャラクターの進む方向を決めるときや、単にカメラ位置を切り替えるときにも、アイトラッキング機能が備わっていれば、プレイヤーの操作はもっと楽になるかもしれない。マウスやコントローラーの高度な操作が必要になるゲームは、特に大きな影響を受けるだろう。

その結果、これまで難しいと思われていたゲームが急に簡単になってしまう可能性がある一方で、もっと動きの速いゲームが誕生する可能性もある。

また、UIもこれまでよりクリーンで邪魔にならなくなるだろう。

「グラフィックアーティストは、長い時間をかけて美しいゲームの世界をつくりあげていきます。その一方で、UIデザイナーは彼らの作品の上に没入感を損なってしまうようなUI要素を設置しなければいけないため、両者の間には常に争いが起きています」とWernerは語る。

しかしアイトラッキングを導入すれば、普段はUIを隠したり透明にしたりして、プレイヤーがUIの方を見たときだけ表示する、といったことが可能になるとWernerは説明する。「そうすれば没入感はさらに高まり、グラフィックアーティストとUIデザイナーの争いもなくなります」と彼は言う。

さらにゲーム内でのシミュレーションや仮想世界に関し、アイトラッキングテクノロジーを使えば、視線を感知するオブジェクトをつくることができるので、ゲーム内のアイテムやキャラクターがプレイヤーの視線に反応し、やりとりがもっとリアルになるとWernerは話す。そうなれば、お気に入りのRPGをプレイするときに、酒場で傭兵のカバンをジッと見ないように気をつけないといけない。

Tobii Techは、拡張型のアイトラッキングデバイスや、アイトラッキング機能が搭載されたノートパソコンなどを販売しているほか、ゲーム会社と協同でRise of the Tomb Raider、Deus ExWatch Dogs 2といった人気ゲームにアイトラッキング機能が追加されたバージョンをリリースしてきた。

アイトラッキングがすぐにコントローラーに取って代わることはなさそうだが、Wernerいわく、この技術のおかげで、「PCゲームは人間の目という、情報をやりとりする上で最も強力な手段を使えるようになり、プレイヤーは、マウスやコントローラーの補助として自分の目を使えるようになります。その結果、他の要素はそのままに、もっと自然にゲームをプレイできるようになるでしょう」

医学とアクセシビリティ

Medicine doctor hand working with modern computer interface as medical concept

アイトラッキングテクノロジーの長所は、コンシューマー向けプロダクトの世界を超えて、データを解析したり調査結果を得たりするのに目の動きの測定が欠かせないような分野にまでおよぶ。

「アイトラッキングを神経発達症の診断、さらには治療に使っていこうという考えが広まってきています」とバイオメトリクス関連の調査会社iMotionsでサイエンスエディターを務めるBryn Farnsworthは話す。「例えば、赤ん坊は一般的に、人の顔が大きく映ったソーシャルな要素のある画像を好む傾向にあります」

彼によれば、将来的に自閉症になる可能性の高い赤ん坊は、幾何学的図形が中心の画像を好む傾向にある一方、ウィリアムズ症候群の子どもの状況は全く逆で、通常よりもソーシャルな画像を好む傾向にある。

つまり、「目の動きを解析することで、神経発達症の初期段階での診断が可能になるかもしれない」とFarnsworthは言う。

カリフォルニア大学サンディエゴ校の生徒が発表した研究では、目の動きは年齢や発達レベルに関係なく計測することができるため、アイトラッキングテクノロジーが自閉症の初期症状を見つけるための客観的な手法になり得るとされている。

iMotionsのような企業は、効率的かつ正確に患者の状態を判断・理解するため、研究者がアイトラッキングデバイスを通じてデータを収集するサポートを行っている。

RightEyeという企業は、アイトラッキングテクノロジーを使って、単純な脳震とうからアルツハイマーや失読症まで、内科医がさまざまな疾患の検査をする際や、その兆候を見つける際のサポートをするとともに、自閉症の子どもの治療にも助力している。

さらにアイトラッキングは、身体的な障害を持つ人の生活にも大きな変化をもたらす可能性があり、特に安価なコンシューマー向けデバイスが市場に出回ればその可能性はさらに広がる。「これはアイトラッキングの発展的な使われ方で、現在も研究が進められています」とTobiiのWernerは話す。さらに彼は、目線を感知するキーボードや、アイトラッキング機能を備えたコントローラーが誕生すれば、脳性麻痺の患者や脊髄を損傷してしまった人が新たなコミュニケーション手段を手に入れることができ、彼らは身の回りのものを操作できるようになるほか、セラピーを通じて色んなスキルを伸ばせるようにもなると指摘する。

広告

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現状では、インプレッション数やクリック数が広告効果に関する最良の指標とされているが、このような数字は、広告キャンペーンの効果を正確には反映できていない。というのも、インプレッション数としてカウントされるものの多くは、人間の手によるものではないのだ。しかしこの状況も、アイトラッキングテクノロジーの導入で変わってくるだろう。

「広告効果を測定する世界共通の指標について、広告業界では現在大きな混乱が起きています」とImpax Media CEOのPorcoは言う。「広告ブロッカーが広まり、ボットによるトラフィックが増加する中、時代に合った形で広告効果が測定できるよう『可視性(Viewability)』のコンセプト全体が現在見直されています」

ここでもアイトラッキングテクノロジーを使えば、オンライン広告企業は、ウェブページに表示された広告を何人が実際にその目で見たかというのを測定できるようになる。現実的には、全てのコンピューターとモバイルデバイスにアイトラッキング機能が搭載されるまで、本当の意味で正確なデータを集めることはできないが、同技術を使うことで、少なくともユーザーと広告の関わり方についての洞察を得ることはできる。

しかし、オフラインでは既にアイトラッキングを使った仕組みが効果を見せはじめている。

「市場調査会社は、消費者調査を目的に、小売店内の広告のような家の外にある広告に触れている人から直接生体データを計測し、その人たちについて分析しようとしています」とPorcoは言う。

彼がCEOを務めるImpax Mediaは、自社で開発した屋内用の広告スクリーンからお店を訪れたお客さんの注目度を測定するために、最近アイトラッキングテクノロジーをはじめとしたコンピュータビジョンの分野に重点的に投資している。「そのうち広告業界は、インプレッションではなく注目度に関する指標を重視するようになると私たちは考えています。そして注目度を測定する上では、アイトラッキングが1番有効な手段であることは間違いありません」とPorcoは話す。

彼によれば、広告主や広告の掲載場所を提供しているお店は、アイトラッキングから得られたデータをもとに、さまざまな角度からお客さんが興味を持っていることについて知ることができる上、場所や時間、デモグラフィックといった別のデータとお客さんの関心事の相関関係も導き出すことができるようになる。「限られた予算で最大限の効果を得ようとしている広告主も、在庫やスタッフのシフトを管理しなければならない店舗のマネージャーも、アイトラッキングを使って有益な情報を得ることができます」とPorcoは話す。

小売企業は顧客情報を集めることで常に何かを得ることができるものの、顧客情報を集めること自体はグレーエリアでたびたび物議を醸しており、個人情報に関する法規制の対象となり得る。しかし個人と結びついた情報を集めなくても、年齢、性別、視点、どのくらいの間広告を眺めていたかといった匿名データを入手できれば、十分有用な洞察が得られるとPorcoは強調する。

市場調査

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マーケットリサーチャーにとっては、「全ての販路とタッチポイントで、製品やサービスに対する消費者の思いや関わり方を評価すること」が大事だとイタリアの市場調査会社TSWでUXリサーチャーを務めるSimone Benedettoは話す。

さらに彼は、最近のアイトラッキングテクノロジーの進歩によって、ニューロマーケティングの実験に(研究所内外どちらで行われる実験についても)新たな可能性が出てきたと説明する。

「製品やサービスの設計・評価にあたって、ユーザーの意見は欠かせません」とBenedettoは話す。「しかしこの意見という言葉には、ただユーザーが質問に答えた内容だけでなく、製品やサービスに触れたときの彼らの目や脳から得られる客観的なデータも含まれています」

TSWはモバイルアイトラッキング機器やその他のウェアラブルデバイスを使って、デジタル(オンライン広告、モバイルアプリ、ウェブサイト、ソフトウェアやデバイスの操作画面など)とフィジカル(印刷物、製品パッケージ、車、家具、小売店舗など)の両方で、さまざまな製品やサービスに対するユーザーや顧客の反応を正確に計測しようとしている。

ユーザーと製品・サービスの自然な触れ合いの様子を測定することができれば、ユーザビリティ上の本当の問題点や、ユーザーのフラストレーションがたまりやすい箇所を特定できるようになり、顧客満足度やエンゲージメントの向上にむけた施策や、設計に関する判断を下す根拠となるような情報を集められるようになる。

「この業界における昨年の動きで最もインパクトがあるのが、モバイルアイトラッカーから収集したデータの解析に、オブジェクトトラッキングが導入されたことです」とiMotionsのFarnsworthは話す。ここで彼が言っているのは、人の目が向いた先にあるモノを背景とは切り離して認識し、それぞれのモノがどのように観察されていたかという情報を記録するプロセスのことだ。

「例えば、ある被験者が小型のアイトラッキングメガネをかけていつも通り過ごした場合、身の回りにあるものにどのように注意を向けていたか――外を歩いているときにどのくらい地図を眺めていたかや、通り過ぎた広告に気づいたか――ということを、自動的に分析することができるんです」とFarnsworthは語る。「どこに、どのように注意が向けられているかということが自動的に分析できれば、人間についての理解が深まるだけでなく、もっとさまざまな可能性が広がっていくでしょう」

「個人的には、UXやニューロマケティングの調査にアイトラッキングテクノロジーを利用したいというニーズはかなりあると思っています」とBenedettoは言う。「アイトラッキングを使えば、バイアスをできるだけ排除した形でユーザーの行動を測定できる上、その測定結果を客観的かつ量的なデータに変換することができます。これまで長い間、私たちは主観的なデータに頼ってきましたが、この状況を変えるときがきました」

アイトラッキングテクノロジーの未来

Close Up of blue eye with computer circuit board lines, digital composite

回路が埋め込まれた青眼の拡大写真(デジタル合成)

TobiiのWernerは、この先コンピューターの使い方が大きく変化すると言う。タッチスクリーンやマウス・タッチパッド、声、キーボードに続く5つめの入力手段として目が使われるようになり、他の入力手段と目を組合せて使うことで、生産性や直感的な使いやすさがさらに向上していくと彼は考えているのだ。「マウスやキーボード、声などを使ったどんな操作にも視線は先んじるため、今後アイトラッキングを利用したもっとスマートなインターフェースが誕生すると思います」とWernerは話す。

視覚は五感の中でもっとも情報摂取量が多いため、目の動きをデジタルにトラックして測定できるようになれば、意識的かそうでないかはさておき、コンピューターへの意思の伝え方が大きく変わってくるだろう。

原文へ

(翻訳:Atsushi Yukutake/ Twitter

Magic Leapがスイスを拠点とするDacudaの3D部門を買収 ― ヨーロッパ進出は同社初

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AR分野のスタートアップであるMagic Leapは、これまでに14億ドルを調達しているものの、いまだにプロダクトをリリースしていない。そんな同社は、コンピュータービジョンとディープラーニング事業の拡大とヨーロッパへの進出を狙い、同社2度目となる買収を行ったことが確認された。

Magic Leapは、チューリッヒを拠点とするコンピュータービジョン分野のスタートアップ、Dacudaの3D部門を買収したことが明らかとなった。Dacudaがこれまでに注力してきたのは、コンシューマー向けのカメラで利用する2Dおよび3Dイメージングのアルゴリズムだ(カメラだけではなく、カメラが搭載されたデバイスであればどんな物にも適用可能)。「ビデオを撮るのと同じくらい簡単に3Dコンテンツをつくる」ということだ。

DacudaはWebサイト上の短いプレスリリースで今回の買収を発表している。それによれば、Dacudaの3Dチームは全員Magic Leapに移籍し、創業者のAlexander Ilic氏はMagic Leap Switzerlandを率いることになるという。

「Dacudaは無事、当社の3D部門をMR分野のリーディング企業であるMagic Leapに売却しました。Dacudaの3Dチームは全員Magic Leapに移籍し、同社初となるヨーロッパでのプレゼンスを築いていきます。Magic Leapがチューリッヒにオフィスを持つことで、コンピュータービジョンとディープラーニング分野におけるリーダーシップをさらに強化することができます。そして、これからMagic Leap Switzerlandを指揮するのは当社の創業者、Alexander Ilicです。Peter WeigandとMichael Bornの指揮のもと、DacudaはSunrise、Crealogix、Unisys、SITAなどの顧客とともに、プロダクティビティ分野のソリューションに再度フォーカスしていきます」。

以上をご覧になると分かるように、この2社が具体的にどのように協働していくかという点は言及されていない。だが、この買収が最初に噂された先週(Dacudaのブログに3D部門の売却を示唆するポストが投稿され、LinkedInのプロフィールを「Magic Leap所属」と変更する従業員がいた)、Tom’s Hardwareは、この買収によりDacudaが開発した技術によってMagic Leapが1部屋分のスケールをもった6自由度(6DoF)トラッキングを手掛けるようになると予測した(3D環境におけるイメージキャプチャーセンサーを向上する)。

Magic Leapがヨーロッパに進出するのはこれが初めてのことだ。だが、それよりも重要なのは、同社が拠点とするスイスはコンピュータービジョン分野の研究開発において非常に評価が高い国だということである。

スイスにはAR/VR技術に取り組むスタートアップや学術機関が多く存在する。特に、コンピュータービジョンやディープラーニングの分野ではそれが顕著だ。そのため、Magic Leapがスイスでのプレゼンスを持つことで、同国のAR/VRシーンにダイレクトに入り込むことができる。

(このエコシステムに着目する大企業も多い。2015年にAppleによって買収されたモーションキャプチャーのfaceshiftも、チューリッヒ出身のスタートアップだ)。

今回の買収により、Magic Leapは良いタイミングで、人材強化とスイスのエコシステムへのコネクション作りを達成したと言える。ご存知の読者もいるかもしれないが、つい先日、Magic Leapのプロダクト情報役員の離脱、そして同社のテクノロジーとハードウェアがあまり良い状態ではないとするレポートリークするという事件があった。それにより、少なくとも短いタームでみた場合、Magic Leapは本当に45億ドルのバリュエーションに見合う価値を生み出せるのかという疑問が残ることとなった。

今回、買収金額などの詳細は明らかになっていない。Dacudaの創業は2009年で、CrunchBaseによれば、同社はこれまでに金額非公開の資金調達ラウンドを実施。それに加えて、Kickstarterを利用したクラウドファンディングによって54万2000ドルを調達している。この資金は、同社が2014年に発表した「PocketScan」と呼ばれる手持ちスキャナーの開発費用に充てられている(このプロダクトは過去にTechCrunchでもカバーしている)。

また、この買収について明らかになっていないことがもう1つある。それは、Dacudaの3D部門がこれまでに獲得したパートナーシップの行く末だ。

例えば、同社は昨年10月、スイスを拠点にAR/VRを手掛けるMindMazeとのパートナーシップを締結している。「MMI」と呼ばれる新しいプラットフォームを構築するためだ。MindMazeの説明によれば、このプラットフォームは「モバイルベースの没入型アプリケーションとソーシャルVR向けに開発された、世界初のマルチセンサリング・プラットフォーム」だという。また、同社は今後「位置トラッキングとマルチレイヤー・インタラクションの分野でGoogleのdayDream Viewがカバーしきれていない部分にアプローチするため、全世界のユーザーにテクノロジーを提供していく」としている。TechCrunchは現在、今回の件についてMagic Leapに問い合わせしている最中だ。彼らから何らかのコメントが得られれば、記事をアップデートしていく。

Magic Leapが他社を買収するのは今回で2度目となる。1度目は、同社が2016年に買収したイスラエルのサイバーセキュリティ企業、Northbitだった。

[原文]

(翻訳: 木村 拓哉 /Website /Facebook /Twitter

3DCADデータをVR上で“体験”できる「SYMMETRY alpha」、DVERSEが公開

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2016年6月に500 Starups JapanやColopl VR Fundなどから約1億1000万円の資金を調達したVR制作ソフトウェア開発のDVERSE(ディヴァース)。同社は2月14日、VR体験ソフトウェア「SYMMETRY alpha(シンメトリーアルファ)」の提供を開始した。ゲーム配信プラットフォームの「Steam」から無料でダウンロード可能だ。

DVERSEが開発するSYMMETRY alphaは、3DCADデータを取り込めば、ヘッドマウントディスプレイ(HMD)を通じてそのデータをVR空間に表示し、体験できるというソフトだ。データは容量にもよるが数秒から数十秒のほぼリアルタイムで取り込み可能。ただし現時点では、3DCADデータはTrimble社のSketchUpのファイル形式にのみ対応。対応するHMDもHTC Viveのみの対応となっている。今後はほかのファイル形式に対応するほか、Oculus RiftやAndroid Daydreamといった環境での利用にも対応していく予定だ。

「SYMMETRY alpha」上で模型のように表示した3DCADデータ(右)と、等身大で表示した3DCADデータ(左)

「SYMMETRY alpha」上で表示した3DCADデータの「模型」(右)と、VR空間上に実寸サイズで表示したデータ(左)のイメージ

VR空間で3Dデータを表示できると言っても、体験していない読者には分かりにくいかも知れない。実際にHMDをつけてデモを体験をした僕の目線で説明すれば、SYMMETRY alphaでCADデータを取り込むと、まず目の前(のVR空間)にCADデータを元にした模型が表示される。その模型に対して、Viveのコントローラーを使ってポイントを指定すると、今度は実寸サイズで、その指定したポイントからCADデータを眺めることができる。VR空間上でさらにポイントを指定すれば、瞬間移動するがごとく指定した位置に移動できる。CADデータさえ取り込めば、その建物の好きな場所に中にいるかのような感覚で、データを閲覧できるというわけだ。フィードバック用のコメントを残す機能なども提供する。

DVERSEではまず、建築や土木といった分野での利用を想定している。例えばCADデータで作った店舗を、工事を始める前に体験するといった使い方だ。すでに大手の建築事務所やゼネコン、家具、自動車といったメーカーなどに導入を提案しているという。

また同社では、SYMMETRY alphaを「AdobeにおけるAcrobat Readerのようなもの」だと説明する。いわばこれは3Dデータを読み込むためのリーダーソフトだ。今後は対応ファイルや対応環境を拡充しつつ、オーサリングツールを開発。有料で提供する予定だ。

HoloLensで英語の発音が学べる「ENGLISH BIRD」に語学学習の未来を感じる

MR(複合現実)の本格的は幕開けはまだもう少し先かもしれないが、Microsoftのホログラフィック・コンピューター「HoloLens」を手に入れた開発者はさっそくMRでの開発を始めているようだ。本日ViRDは「ENGLISH BIRD」という英語の発音を練習する教育ゲームをリリースした。

ENGLISH BIRDのゲームを始めると、部屋の壁に空き、そこからカモメが出てくる。1分以内に、カモメが持っているプレートを正しい英語の発音で読み上げて高得点を競うという内容だ。(このゲームではどうやら英語の音声コマンドの発音を学べるようだ。)

カモメがふよふよ壁から出てきて、部屋中を飛び回っている様子はかわいらしい。けれど動画を見る限り、音声認識がうまくいっていないのか、相当正しい発音でないと得点にならないのかは分からないが、いまいちぎこちない印象だ。

このゲームが英語学習には実用的とは言えないかもしれない。ただ、今後音声入力とMRの技術が発展するだろう。その時、HoloLensのアプリで身の回りにある物の別の言語を覚えたり、学びたい外国語でMR上の要素と関わったりできるゲームであれば、なかなか身につかない語学学習も楽しく進められそうだ。

HoloLensは昨年末にプレオーダーを開始し、2017年1月中旬より順次提供している。HoloLens自体入手できるようになってから1ヶ月程度なので、MRが本格化するのはまだもう少し先だろう。価格も開発者向けが33万3800 円(税込)、法人向けが55万5800 円(税込)と安くない。けれどすでにMRに未来を見出し、開発を進める開発者は少なからずいるようだ。Twitter上で、HoloLensで開発を試行錯誤しているVoxelKei氏の作品なども見つけた。こちらは、現実世界と他の空間をつなげていて、空間をワープしているみたいに見える。

現時点で、Microsoftのアプリストアを確認したところ、HoloLens用のアプリは142個あった。今後どのようなアプリが出てくるのか、そのなかから私たちの生活に革新をもたらすものがあるのか、今からとても楽しみだ。

ケンブリッジ大学が癌の診断治療への3D VR技術の応用を研究中

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テクノロジーが癌の治療に貢献、というお話は、いつ聞いても嬉しいけど、そこに仮想現実が登場するとは、ぼくも含め多くの人が思ってない。でも、今ケンブリッジ大学の研究者たちが100万ポンドの補助事業で研究に取り組んでいるのは、VRと3Dの視覚化を利用する診断と治療の技術だ。

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同大のニュースサイトで、研究チームのリーダーGreg Hannonが語っている: “私たちが作ろうとしているのは、腫瘍の忠実な対話的立体マップで、それを科学者たちが仮想現実で調査研究し、いわば腫瘍の内部を‘歩きまわって’検査できるようにしたい”。

腫瘍の標本として最初は乳がんを用い、きわめて薄い小片にスライスしたそれを画像化し分析する。この方法により、個々の細胞の遺伝子的組成まで分かるようになる。すべてのスライスを再編成して仮想現実のための3Dモデルを作り、その中へ研究者たちが‘飛び込む’。

腫瘍や癌の成長を3Dスキャンする技術はすでにあるが、仮想現実の3Dモデルの中に研究者が入り込めるこの方法には、はるかに幅広い対話性がある。

同大が公開しているビデオの中でHannonはこう述べている: “癌に限らず、有機体の組織の成長発展を理解するための、最先端の方法と言えるだろう。生物の問題はすべて3Dで生じているし、細胞間のコミュニケーションも3Dで行われているから、従来のノン3Dの検査技術では、その詳細な理解が得られなくて当然だ”。

チームはイギリスの任意団体Cancer Research UKの研究補助金を交付されることになり、その総予算2000万ポンドの一部(100万ポンド)を、期間6年の研究事業に使えることになった。6年もあればこの、腫瘍の中を歩いて見て回れる3D VR技術の実用化も可能ではないか、と期待したいところだ。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))

HuluのVRアプリがアップデート、友人と映画を楽しめるソーシャル機能を追加

コンシューマーが利用できるVRはまだそれほど発展していない。HuluはVR熱を絶やさないためにも今回 VRアプリのアップデートを行った。ユーザーは簡単に仮想空間上で友人とコンテンツを楽しむことができるようになる。

本日HuluはGear VRとRift向けのアプリをアップデートし、最新のOculusのソーシャル機能に対応した。Gear VRのユーザーは、Oculus AvatarとRooms機能を利用できるようになる。誰でも無料でHuluの360度動画コンテンツを友人と楽しむことができ、有料サブスクライバーは仮想空間の大きな画面で2Dコンテンツを視聴できる。

一方Riftのアプリでは、Oculus Touchのコントローラーにも対応した。ユーザーはコマーシャルが流れている間、仮装空間内でコントローラーを動かして時間を潰せるだろう。

SonyとGoogleはまだ仮装空間上で集まれるソーシャル機能などを発表していないので、HuluのPSVRとDaydream向けアプリにはこのような新機機能はない。こちらでは、もうしばらく1人ぼっちでコンテンツを楽しむしかなさそうだ。

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(翻訳:Nozomi Okuma /Website

コロプラが5000万ドル規模のVR専門ファンド「Colopl VR Fund 2」を新たに設立

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1月26日に、30歳以下の起業家に特化した新ファンドを設立したばかりのコロプラが、新たにVR専門ファンドを1月31日に設立した。

コロプラおよびコロプラの100%子会社コロプラネクストが設立したのは、国内外のVR関連企業を投資対象とするVR特化型ファンド「Colopl VR Fund 2(コロプラネクスト4号ファンド投資事業組合)」で、出資規模は5000万ドル。2016年1月に設立されている「Colopl VR Fund」と合わせると、1億ドル規模の“世界屈指”のVR特化型ファンドとなるという。

Oculus RiftやPlayStation VRといったヘッドマウントディスプレーの登場でVRが一躍注目を集め、VR元年と言われた2016年を経て、拡大が期待されるAR/VR市場。Goldman Sachs Asset Managementによれば、「2025年には約950億米ドルまで拡大し、PC・スマートフォンに続く第3のプラットフォームとして市場を形成する可能性がある」と予測されている。

こうした動向の中でColopl VR Fundでは、国内外のVR関連企業30社超への投資。そのうち公開済みの各社が下記の21社だ。

Colopl VR Fund 投資実績(2016年12月末現在)

Colopl VR Fund 投資実績(2016年12月末現在)

コロプラでは「VR市場の発展には成長をさらに加速させるプレイヤーが必要だと考えている」として、「新ファンドを通じて、未投資領域・未投資地域への投資および、既存投資先への追加投資を進めながらVR業界の興隆に引き続き貢献していく」という。

また、コロプラネクスト代表取締役社長の山上愼太郎は「投資活動の中でアメリカに続いて中国におけるVR市場の拡大を目の当たりにし、世界のVRに対する熱量の高さを実感した。VR市場の確立を確信するとともに、新たなファンドの必要性を認識した」として、「新ファンドでは、医療や教育、エンタープライズ系といった未投資領域に加え、欧州、中東、アジアといった地域への投資を拡大し、VRが拡大するためのエコシステムの成長を積極的にサポートする」とコメントしている。

3D-CADとVRでマンション販売を革新、ワンダーリーグのVR事業がスタート

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人生でそう何回もマンションを買うことはないだろうから、購入を検討する人はモデルルームを訪れ、物件を入念に調査したいと思うだろう。ただ、マンションは竣工前に売り出しを開始するもので、実際のマンションの外観を見たり、内覧したりすることはできない。ここにVR技術を活用する余地がありそうだ。本日スマホアプリの開発を手がけるワンダーリーグは、分譲マンションの販売企業やデベロッパー向けの「マンションVRカタログ」サービスを開始すると発表した。

今のところ不動産でVRを活用する事例で多いのは、物件の360度写真や動画を撮影し、それをVR上でユーザーに見せる方法とワンダーリーグの代表取締役社長、北村勝利氏は説明する。一方、ワンダーリーグでは3DCADや2DCADデータを使ってよりリアリティーのあるVR体験を構築するという。CADは、建築などでパソコンの設計や製図ができるシステムのことで、マンション設計や内装のデザインなどに広く用いられている。ワンダーリーグはこのCADデータを使って、GearVRやGoogle CardboardなどでマンションをVRで閲覧できる「カタログ」アプリを作るのが目標だ。

ワンダーリーグは間取りや内装といった物件の内部の他に、マンションの外観とマンションが建つ周辺の街並みもVR上で再現できる。モデルルームでは模型やパネルを使ってマンションの外観や町並みを紹介することが多いが、VRでならより臨場感がある形でマンションの外観や雰囲気を伝えることができるとワンダーリーグは考えている。

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ワンダリーグは、これを実現するのにゼンリンが提供する3Dマップデータと連携している。3D-CADのマンションのデータと3Dマップデータを合わせることで、マンションの周辺の風景も一緒に再現している。ユーザーはVRアプリで竣工予定のマンションを見上げたり、マンションの周辺を歩き回ったりすることができる。

他社でもOculus Riftを使ったバーチャルモデルルームの体験を提供している事例もあると北村氏は話す。ただ、本格的なHMDでのVR体験の場合、アプリの開発から、機材を揃える手間暇がかかる上、モデルルームの来場者にVRを案内するだけでも時間がかかってしまう場合が多い。

ワンダーリーグのVRアプリは、モデルルームの担当者が簡単に扱うことができ、マンションの販促に効果的に活かせるよう工夫をしているという。例えば、マンションの営業担当者がマンションの案内がしやすいよう、ユーザーが見ているVRの中の景色を手持ちのパソコンと同期して、説明できる設定を用意した。また、簡易ビューアーと共に同じVRアプリを来場者に配布することでプロモーションに役立てることもできる。

他にも、ワンダーリーグはマンションの各階からの眺めをアプリ内で閲覧できるようドローンで空撮するオプションやマンションの3D画像をFacebookにも投稿できるようCADデータを用意したりするオプションも用意している。ワンダーリーグはさっそく東京日商エステムの分譲マンション「エステムプラザ赤羽アンダルシア」向けのVRアプリの開発に着手している。%e3%82%a6%e3%82%a7%e3%83%95%e3%82%99%e8%a1%a8%e7%a4%ba%e3%82%82%e5%8f%af%e8%83%bd

過去数回TechCrunch Japanでは、ワンダーリーグが手がけるモバイルeスポーツアプリスマホVR用のモーションコントローラー「Vroom」などを取材してきた。今回のVR事業は、ワンダーリーグがゲームアプリ開発という中核事業からピボットしたような印象を受けるが、「会社活動のスタンスはスマホ向けゲームアプリの企画開発会社というところは変わりません」と北村氏は説明する。モバイルアプリの開発がワンダーリーグの主軸であり、それを「VR」や「eスポーツ」に応用展開しているという。ワンダーリーグは、ゲーム開発環境、ハードウェア、コンテンツの開発力が強みであり、今回の分譲マンション向けのソリューションは、これまでワンダーリーグで培ったゲームアプリ開発技術を生かした受託サービスという位置付けだ。

これまでワンダーリーグが提供してきたイベント型のモバイルeスポーツに関しては、今後モバイルVRプラットフォームにシフトしていく予定だという。またモバイルVRへのシフトに伴い、専用のコントローラーが必要と考え、自社開発していたのが「Vroom」だった。VroomのKickstarterキャンペーン自体は未達に終わったが、開発は続けているという。今年3月にも量産体制に入れるよう準備を整えていると北村氏は話す。

2015年の首都圏の分譲マンション供給戸数は約4万3327戸であり、分譲マンションの広告販促費関連市場は1000億円以上だとワンダーリーグは推定している。今後ワンダーリーグはこの分譲マンションにおける2Dの販促市場を3Dに置き換え、革新を起こしたいと北村氏は話している。

美しすぎるVRムービー「Dear Angelica」

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バーチャルリアリティが「技術デモのフェーズ」を終えたようだ。「Dear Angelica」は、VRヘッドセットの特徴を活かしてユーザーを物語の世界に誘い込み、一人称で感動的なストーリーを楽しむことができる純アートの映像作品だ。映画館のスクリーンではDear Angelicaの美しさは伝わらない。

Oculusが新しく発表したこのショートフィルムは必見の作品だ。私はVRの熱狂的なファンである友人の自宅まで行ってDear Angelicaを観たのだが、その労力に見合うだけの価値があった。Sundance Film Festivalでプレミア試写会を行った本作品だが、現在はOculus Riftを通して無料で配信されている。

美しい演出が特徴的なVR作品は既にいくつかある。物語に出てくる電車がはじけ、そのカケラが無数の鳥となって日暮れの空に消えていく。この演出で印象的なChris Milkの「Evolution Of Verse」もその例だ。

感動的なVR作品もある。ユーザーをヨルダンの難民キャンプにいざなうGabo Aroraの「Clouds Over Sidra」では、VRヘッドセットが人々の共感を呼ぶ機械へと進化する。

素晴らしいストーリーをもつ作品もある。Penrose Studioの「The Rose & I」は、宇宙にいる孤独な少年と1本のバラが織りなす友情の物語だ。

しかし、Dear Angelicaはこれらの要素すべてを12分のストーリーに織り込んだ。そして、この作品は20年後もなお観る価値のある作品となるだろう。

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母親との思い出を語る女の子。彼女がこの物語の主人公だ。女優として活躍していた母親は、彼女にアンフェアな世界のなかでも勇気を持つことの大切さを教えてくれた。映画に出演する母親の姿が突然まわりに現れる。すると、悲しみと懐かしさがあなたを包み込む。筆で流れるように描かれた世界は、非の打ち所がないほど美しい。あなたの周りで主人公の世界と記憶が次々と描かれていく。

Dear Angelicaを観ると、それがVRのために生まれてきたような作品だと感じることだろう。それもそのはず、この作品は実際に仮想現実の世界で製作された作品なのだ。Oculusは「Quill」と呼ばれるVRイラストレーション・ツールを開発している。Dear AngelicaのアーティストであるWesley Allsbrookは、このツールを使ってオーディエンスと同じ視点でこの作品の世界を描いたのだ。

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Dear Angelicaでは、VRで描く世界に「時間軸」という新しい次元を取り入れている。情景が一度に表示されるのではなく、勇敢な騎士、凶暴なドラゴンなどのオブジェクトが適切な順番で、そしてカラフルに描かれていく。あらゆる方角で描かれた物語は、それぞれが同時並行で進行していく。しかし、オーディエンスは一度に1つの方角しか見ることはできない。だからこそ、手で掴むことができない「夢」の中に自分がいるかのように感じられ、観るたびに新しい発見がそこにはある。

 

VRクリエーターたちよ、今から話すことを心して聞いてほしい。ディレクターのSaschka Unseldが生み出したDear Angelicaは、今後のVRの在り方を考えるうえで重要な作品である。VRに搭載する新しい機能の実験をするのは良いことだし、将来的に今より大きな価値を生み出すVRのプロトタイプを製作するのも構わない。しかし、このテクノロジーによってオーディエンスを想像の世界に誘うための準備はすでに整っている。「美」、「感情」、「ストーリー」といった、人間がもつ可能性をVRでどのように表現するのか。私たちは今、それを考えるべきフェーズへと突入したのだ。

[原文]

(翻訳: 木村 拓哉 /Website /Facebook /Twitter

Amazonの求人公告を見るとショッピング体験のVR化を計画しているらしい

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Amazonは、VRによるeコマースとかVRプラットホーム一般に関してこれまで、あまり目立つ動きがなかった。同じく大手テクノロジー企業であるFacebookやGoogleが仮想現実にとても多くのリソースを注いでいるだけに、Amazonの沈黙は目立つ。

しかし同社は、VRコンテンツには手を出すつもりだったのだ。先月は元Tribeca Film Festivalの頭目Genna Terranovaをスカウトして、同社のスタジオにおけるVRプロジェクトのトップに据えた。

そして今度は、ショッピング体験にVRを持ち込むつもりのようだ。最近の求人公告を見ると、同社はVRのクリエイティブ・ディレクターを募集している。Varietyの記事によると、それは“AmazonのVRソリューションの未来を構想するため”、とある。

その仕事は同社のA9部門に属する。そこは、製品の検索や広告技術を担当する部門だ。しかしその求人公告によると、この部門は“何百万もの顧客が多様なVRデバイスを用いて行うAmazonのVRショッピング体験を構築する”、となっている。

これ以外に詳しい情報はまだないが、VRは確かに、消費者に商品を立体として詳しく見る機会を与える。でも、実際にVRヘッドセットを装着してからAmazonでの買い物を開始するお客さんは、そもそもどれぐらいおられるだろうか。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))

FoxのVR部門FoxNextが「猿の惑星」新シリーズをVRで製作中、早くも6月に封切り

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大手エンターテインメント企業は徐々に確実に、仮想現実事業に大金を投じつつある。

Foxは6月にWithinの1250万ドルの投資に参加し、そして今では、その“没入的な次世代エンターテインメント”部門FoxNetが、映画界のイノベーターChris Milk(Withinのファウンダー)と組んで、仮想および拡張現実によるオリジナル作品の制作を始めている。

最初の作品は、20世紀フォックスの「猿の惑星」シリーズだ。新シリーズの最初の長編作品War for the Planet of the Apesは、6月〔7月?〕に封切られる。この没入型プロジェクトの詳細はまだ明らかでないが、プレスリリースには、それに使われている新しい技術が、わずかに言及されている:

“このプロジェクトは人工知能を利用してソーシャルな共有体験を提供し、それはWithinのアプリと、さまざまな仮想および拡張現実プラットホームで体験できる”。この言葉の意味はよく分からないけど、Withinが対話性の豊富なコンテンツにどう挑戦しているのか、気になる。たとえそれが、広告の入る「猿の惑星」であったとしても。

FoxNetはほかにも、スタジオAnnapurna Picturesとパートナーして、オリジナルのVR作品、仮題“I Remember You”を制作する。制作にはSpike Jonzeも参加し、Chris Milkがプロデュースと監督を行う。

そのMilkが声明で述べている: “VRはテクノロジーと個人的体験の境界を露呈し探求するためのユニークな機会を与える。ストーリー性のあるVR体験をメジャーなエンターテインメントの路線に載せることには、予想される困難以上の魅力がある。この二つのプロジェクトは、作り方や最終結果が大きく異なると思われるが、この新しいメディアには唯一の正解が存在しないことこそが、制作する者のやる気をそそるのだ”。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))