Googleのハイブリッドクラウドプラットフォームがベータ版へ

昨年7月に開催された、Cloud NextカンファレンスでGoogleはCloud Services Platform(CSP)を発表した。CSPはGoogle自身のクラウドサービスをマネージドサービスとしてエンタープライズデータセンターに持ち込むための、真の第一歩である。本日(米国時間2月20日)CSPはベータ版が公開された。

なおCSPは、少なくとも当面は、Googleのクラウドベースの開発者サービスの全てを、オンプレミスデータセンターに提供しようとしているわけではないという点に注意しておくことが大切だ。言い換えるなら、これはMicrosoftのAzure Stackのようなものとは、全く異なるプロジェクトだということだ。その代わり、焦点が当てられているのがGoogle Kubernetes Engine(GKE)である。GKEを使えば企業たちはそのアプリケーションを自身のデーターセンターや、実質的にコンテナをサポートするクラウドプラットフォームならどこででも実行することができる。Google CloudのエンジニアリングディレクターであるChen Goldbergが、私に言ったように、ここでの狙いは、企業の革新と近代化の支援なのである。「明らかに、誰もがクラウドコンピューティング、オンデマンドコンピューティング、そしてマネージドサービスにとても興奮していますが、お客さまたちは、その動きはそれほど簡単ではないことを認識なさっています」と彼女は述べ、大多数の企業がハイブリッドアプローチを採用していることに注意を促した。コンテナは明らかにまだとても新しいテクノロジだが、彼女はほとんどの企業がすでにコンテナとKubernetesを採用していることに好感触を得ている。しかも彼らのそうした取り組みは、クラウド(特にハイブリッドクラウド)への取り組みとほぼ同時なのである。

CSPがマネージドプラットフォームであることに注目して欲しい。アップグレードやセキュリティパッチのような負担の多い作業はすべて、Googleが負担してくれるのだ。そして最も人気のあるアプリケーションたちをインストールする、簡単な方法を必要としている企業のために、プラットフォームはGCP Marketplaceの、Kubernetesアプリケーションもサポートする。

技術そのものに関しては、これがKubernetesだけのためのものではないことをGoldbergは強調した。例えば、このサービスは、Istioも利用している。Istioは徐々に人気の高まっているサービスメッシュであり、企業がそのアプリケーション間のトラフィックとAPI呼び出しの流れを、簡単に保護したり制御したりできるようにするものだ。

本日のリリースで、Googleは新しいCSP構成管理ツールも開始した。このツールを使うことで、ユーザーはマルチクラスターポリシーを作成し、アクセス制御の設定と強制を行い、リソース利用量制限などを行うことができる。CSPはまた、GoogleのStackdriver Monitoringサービスや、継続的配信プラットフォームとも統合されている。

「オンプレミスは簡単ではありません」とGoldbergは語る。今回のものが、同社にとって自身のものではないデータセンターのソフトウェアをサポートする最初のケースだということを考えると、それはかなり控えめな表現だろう。しかし、Googleはまた、たとえばAzure Stackのように特定のハードウェア仕様にユーザーを縛り付けたくはないと判断したのだ。そうする代わりに、CSPはVMwareのvSphereサーバー仮想化プラットフォーム上に置かれている。いずれにせよこのプラットフォームは、既に多くの企業のデータセンターで利用されているものだ。これが非常によく理解されているプラットフォームであることを考えると、確実に物事は単純化されるだろう。

Google Cloud goes all-in on hybrid with its new Cloud Services Platform

画像クレジット: Adam Berry/Getty Images / Getty Images

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(翻訳:sako)

Operaがデスクトップブラウザーのニューデザインを開発中

ブラウザーのメーカーOperaはこれまで、“Reborn3”、略してR3と呼ばれる新たなプロジェクトをちょい見せしてきたが、今日(米国時間2/14)からはそれをベータで使えることになった。それは、同社のデスクトップブラウザーの、まったく新しいデザインだ。

今のところそれは、Operaのデベロッパーバージョンのみだが、それでも話題はいろいろある。

このニューバージョンの主な違いは、サイドバーとタブバーが同じ色になったことだ。サイドバーは、ボタンがいっぱい並んだ、よく目立つ黒いバーではなくなった。今ではそれらのボタンは、後からつけたものではなくブラウザーの一部のようだ。

今では、Webページと現在のタブとアドレスバーが一体化している。背景が白だったり、明るいテーマのWebサイトが、とても見やすいだろう。でも微妙な影があるので、あくまでもブラウザーの‘部品’であることは分かる。

右上のコーナーは、スナップショットボタンや、ブックマークボタン、自分のすべてのデバイスで現在のページを見つける“My Flow”ボタンなどなどで混雑していたが、あまりスペースを取らなくなり控えめになった。

Operaのモバイルブラウザーには暗号通貨のウォレットがあるが、これからはそれに、デスクトップのアプリケーションからもアクセスできるようになった。それは、デスクトップ上のWhatsAppと似ている。OperaはQRコードを表示するので、それをスマートフォンでスキャンする。処理はすべてスマートフォン上で行われるが、デスクトップブラウザーはモバイルのウォレットのいわばインタフェイスだ。

このブラウザーのWindowsバージョンは、macOSバージョンと同じルックスだが、Windowsボタンがコーナーにある。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

アルゴリズムの判断と人による評価。SEOの成功において必要なものはどちらか?

Googleの検索結果の順位付けは、基本的にはアルゴリズムによって全て行われます。しかし、直接的ではありませんが、品質評価者による評価結果も、アルゴリズムの更新に影響を与えている(参考にされている)とも言われています。もちろん、ユーザーへ価値のあるコンテンツを提供することが最重要であることは間違いないのですが、SEO担当者として、我々はアルゴリズムと評価者による評価のどちらを重視すべきなのでしょうか?このような疑問に対する考えの一助として、今回の記事をお読みいただければと思います。– SEO Japan

過去数年における、Googleの品質と権威性の捉え方の変更は、今後のSEOの流れを大きく変更させるものである。Googleはアルゴリズムの改善を継続しながら、”品質評価者”への依存も強めている。

自動生成のコンテンツや手っ取り早いハック的な古い手法は、長期的で安定的なSEOの成功を約束するものではなくなっている。

”新鮮なコンテンツ”の名のもとに、ブログ記事を矢継ぎ早に作成するなどの手法は過去のものとなった。また、オンライン上で手に入る情報を(しかも、引用しているという告知なしに)再利用しただけのコンテンツに、効果的で安定的な結果を期待するという戦略は成り立たなくなっている。

こうした状況の中で成功するために、SEO担当者は、Googleがコンテンツに対する品質と権威性のルールを変更したという事実を学ばなければならない。また、自身のWebサイトが、ターゲットとする領域において権威があるとみなされるために必要なタスクも学ばなければならない。

Path Interavtiv社のSEOディレクターであるリリー・レイ氏は、権威性に関するGoogleのアップデートが、彼女のクライアントのサイトに対してどのような影響を与えたかについて、数ヶ月に及ぶ調査を行った。「1月30日にサンノゼで開催されるSMX Westにて、レイ氏は上記の調査結果に加え、この新しい時代を生き抜くためのアドバイスも共有してくれる」

私はリリー氏にインタビューを行い、我々が注力すべき領域はなにか?また、アルゴリズムの判断が前提であるものの、人による評価の介入も認められる昨今の状況において、SEOの成功をおさめるために必要になるものはなにか?などの質問を投げてみた。

過去数年間で、Webサイトが評価され、順位づけされる方法において、一番変化があったものはなにか?

2018年は、GoogleがWebページとドメインの品質と信頼性を分析する方法を大きく変更させた年であった。以前は、よく知られたランキング要素(タイトルタグや内部リンクの修正)を調整することで、SEOの成果は十分に認められていた。たとえ、そのWebサイトが特定の領域において権威とみなされていなくても、だ。

このような簡易的な内部最適化の手法は、もはや検索結果の最高順位を約束するものではなくなっている。特に、品質や信頼性が重視される領域においては。Googleは、コンテンツの作成者を含め、Webサイト自身の評判や信頼性を重視している。また、ページスピードやモバイル・ファースト・インデックスに関わる変更からも、ユーザー体験に大きな比重を置いていることがうかがえる。

アルゴリズムの変更により大きくトラフィックを落としたクライアントに対し、あなたはどのような対策をとるか?

クライアントのWebサイトがアルゴリズムの変更による影響を受けた場合、品質と信頼性に関わる、Webサイト内外の要因を調査する。影響を受けたページはどこか、サイト全体が影響を受けているのか、を確認するのだ。もちろん、E-A-T (expertise:専門性、authoritativeness:権威性、trustworthiness:信頼性)に課題はあるか、サイト全体の権威性が疑われているのか、なども確認する。また、影響を受けたページと、競合サイトのページとの比較も詳細に行う。情報量、引用数、ページ構成などが、検索クエリに対する答えとして十分であるのかを確認するのだ。

次に、“Site:”を使用し、自身のサイトの自然検索結果における状況を調査する。内容が薄い、重複している、品質が低い、などのコンテンツが多くインデックスされていれば、これらを統合したり削除したりすることで、大きな改善が見込めるためだ。また、(これはGoogleも推奨していることだが)コンテンツ作成者やWebサイト自体の評判も確認する。解決すべき、Webサイトの信頼に影響を与える外的要因が存在することもあるのだ。

Googleの品質評価ガイドラインは、どの程度参考にするべきか?

我々のSEOチームは2018年度版の品質評価ガイドラインのコピーを書棚においている。アルゴリズムの変更の影響を受けたWebサイトを分析する際や、Googleが定義しているコンテンツの”高品質”を再確認する際など、すぐに閲覧できるようにするためだ。もちろん、このガイドラインに書かれている内容の多くが、そのまま現状のランキング要素ではないことは、十分に理解している。それらは、Googleが検索アルゴリズムにいずれ組み込むことを目指している、長期的なマーケティング戦略であると、我々は認識している。

さらに、ここ数ヶ月のアルゴリズムの改良は著しく、人間が行うようにWebサイトの品質の分析が行われており、我々はそうした痕跡を十分に確認することができている。また、多くのSEO担当者にとっては明らかであることだが、現行のガイドラインの内容は、過去のSEOの手法が通用しなくなっていることを指し示している。つまり、キーワードの詰め込みや自動生成、新しいコンテンツの作成のみを目的とした品質の低いブログ記事の大量生産などは、将来に渡って良い結果を生み出す安定的な手段ではなくなっているのだ。

人工知能と機械学習は、ランキングアルゴリズムにどの程度の影響を与えているのか?

私は、過去数ヶ月のアルゴリズムの更新は、Googleが急速に進めている機械学習の進歩に依るものであると考えている。Googleのベン・ゴメス氏は品質評価ガイドラインを”我々が、検索アルゴリズムを向かわせたい場所”と述べている。また、ゴメス氏は、「品質において(少なくとも今のところは)人間が最良の判断を下すことができるし、それは今後も続くだろう」としながらも、「アルゴリズムが人間の判断のレベルに追いつくためにするべきことはまだ残っている」とも述べている。

機械学習はこのプロセスを、過去の例に無いほど急速に、また、安定的に進めることができる。しかし、検索結果の順位が大きく変動するたび(過去6ヶ月においては各アルゴリズムの更新後に急激に順位を上昇・下降させたサイトがあった)、それらは、アルゴリズムが何らかの指標を見落としており、まだ改良すべき点があることを指し示しているのだと思う。

今年になって起こる大きな変化は、どのようのものになるのか?

Webサイト自体、また、コンテンツの作成者の評判が注視されるのだと思う。特にYMYL(Your Money Or Your Life*)においては顕著であり、平凡なコンテンツや専門性に欠けたコンテンツが上位に表示されることは難しくなるだろう。2019年は、上位表示を叶えるために、これまで以上に時間と努力が必要になってくる。短期的なハックはもはや安定的な成功を約束するものではないからである。

※金融や医療など、誤った情報を与えてしまうことで、ユーザーの人生に大きな影響を与えかねない領域

検索結果における露出拡大に注力している個人や企業は、自身のオンライン上での評判に気を配るべきだ。そして、信用や信頼に影響のある施策は、なんだって行うべきだと思う。これには、顧客の意見を聞いたり、多くのプラットフォームで発せられている意見に対する対応などの施策も含まれている。もちろん、圧倒的なコールトゥアクションや広告を提供するという話ではない。なにか問題があったときに顧客が簡単に連絡をとれる機会を増やしたり、彼らからのフィードバックをオペレーションに反映させるなどといった施策だ。

これらを達成するまでには困難がつきまとうだろう。デジタルブランドは、長期的な自然検索結果における露出を確保するために、全精力をもって取り組まなければならない。人間による評価が重要であることは変わりないが、検索エンジンは人間が評価をするプロセスに急速に近づきつつあるのだ。

「上記以上にも、リリー氏やその他のエキスパートからアルゴリズム変更への対応についてのアドバイスをもらいたいならば、2019年1月30日-31日にサンノゼで開催される、SMX Westに、ぜひ、ご参加いただきたい。


この記事は、Search Engine Landに掲載された「Machine vs. man: What really matters for SEO success」を翻訳した内容です。


記事中にもありますが、Googleがユーザーを重視している以上、人間による評価も重視されているはずです。アルゴリズムによる判断は、もちろん人間が下す評価と必ずしもイコールではありませんが、SEOに携わっていると、その精度は急速に高まっていることを実感することもあります。直接的なランキング要素ではありませんが、Googleが目指している方向性にキャッチアップするためにも、品質評価ガイドラインは定期的に読み直すべきでしょう。

ハイテク企業は健康管理の方法を変えられるか?

[著者:Cyrus Radfar]
V1 Worldwideの創設パートナー。

2018年9月の時点で、2012年からアメリカのハイテク企業上位10社が医療関係企業の買収に費やした総額は47億ドル(約5170億円)にのぼった。これらの企業による医療関係企業の買収件数は年々増加している。これは、アメリカのハイテク企業が医療への関心を高めている証しであることに違いはないが、ここにいくつもの疑問がわく。彼らの目的はなんなのか、また、医療業界はどんな帰路に立たされるのだろうか。

もうひとつ、なぜ医療がアメリカのハイテク大手企業の最新のターゲットになったのだろうか。表面上、この2つは気の合う仲間には見えない。片方は機敏で腰が軽いが、もう片方は鈍重で思いに耽るタイプだ。片方は未来に恋い焦がれ、もう片方は過去と共に生きようと必死になっている。

にも関わらず、これが事実だ。近年は、Apple、IBM、Microsoft、Samsung、Uberが医療に浮気し、データを収集する健康アプリ医療患者がタクシー配車のデジタルサービスを受けられる機器などを出している。なかでも、このところ医療分野に深く入り込もうとしているのがAmazonとAlphabetの2社だ。この2つの企業は、とくに健康保険を視野に入れているようだ。

Alphabet、Amazon、AppleのA

CB Insightsによれば、現在、アメリカで医療分野にもっとも多く投資しているハイテク企業はAlphabetだ。Alphabetの子会社Verilyは、テクノロジーで健康への理解を深めることに専念している。これもまたAlphabetが買収したDeepMindは人工知能(AI)によるソリューションを提供しているが、AlphabetはそのAIを活用し、データ生成、データ検出、生活習慣の改善で病気と闘う方法を探っている。Alphabetはまた、Oscar、Clover、Collective Hearlthといった、どれも健康保険分野に波風を立たせようという企業に相当額の投資を行っている。

一方、Amazonは、昨年の夏、インターネット薬局のスタートアップPillPackを買収するという、医療分野への大きな動きを見せて周囲を驚かせた。そして2018年10月には、音声アシスタントAlexaが風邪を感知する機能の特許申請を行った。さらにAmazonは、Heraという内部プロジェクトに取り組んでいる。これは、電子カルテ(EMR)のデータを使い、誤診を修正するというものだ。さらに昨年の1月、Amazonは、従業員の健康管理計画でBerkshireとJP Morganと提携したことを発表した。片方の目では一般市場への拡大を見据えつつ、企業の従業員を実験台にして健康保険の研究をしようという戦略が見え隠れしている。

Appleも黙って見ているわけではない。同社は2016年からAetnaと共同で、個々の顧客に合わせた運動と健康上の助言を提供し、健康的な生活習慣の実践を促す活動を行っている。

これら3つの企業は医療分野に大きな一歩を踏み出しているが、とくに、AlphabetとAmazonにとっては、医療保険が長期戦略の柱になりそうだ。

ハイテク大手は濠を超えられるか

アメリカの医療と健康保険の市場をハイテク産業が拡大したのは、今回が初めてではない。医療業界は、長い間、座ったアヒルのように何もせず自滅を待つ存在だと見なされてきた。それは事実であり、意外な話ではない。アナログシステム、複雑な縦割り組織、時代遅れの技術。デジタル改革の筆頭候補であり、その受け入れ準備ができている分野だと誰もが思う。最新のデジタル技術は、この時代遅れながら収益性の高い産業を合理化し、効率化し、利用者中心の形に変革できる。

それが、2013年、Health Heroの共同創設者でRock Healthの顧問を務めるGeoffrey Clappによって創設された、モバイル医療サービスを提供するBetterの設立の狙いでもあった。このスタートアップは、開業初日から投資や、過剰な問題をひとつの単純な方法で解決するという途方もない作業に翻弄された。そして設立からわずか2年後、Betterは敗北を認めることになった。

「私たちは、膝間接手術や脳卒中といった、あらゆる病状、あらゆる解剖学的状況に対処するコンシェルジュ・サービスを提供しつつ、包括支払い制度やその他の多岐にわたる支払い制度への対応を行なっていました」とClappは、2016年にBetterを振り返り話している。「人は製品を気に入ってくれるかも知れませんが、どんな問題にも対応して欲しいと望むのです。私たちはよく自分たちに言い聞かせていました。これはバーティカル市場なのだと」

健康保険は、アメリカの他の医療産業分野と同じく頑固であり、参入の手前ですでに巨額の資金を必要とするため、スタートアップには魅力の薄い分野だ。

規模、資本、アイデアに関わらず
医療産業への参入はハイテク企業にとって
容易なものではない

ここ数年のケーススタディーで興味深いのは、Oscar健康保険だ(ちなみに昨年、Alphabetから3億7500万ドル(約413億円)の投資を受けた)。Oscarは、2012年、テクノロジーと顧客体験からの洞察を活かして健康保険を簡素化するという条件のもとで設立され、健康保険業界を撹乱したことでスタートアップの鑑のように見られてきた。しかし、その道のりは決して平坦ではなく、巨額の投資を受けながらも、未来は混沌としている。

同社は、個人向け医療の市場で奮闘し、事業に必要な医師や病院とのネットワーク作りにも力を入れた。設立から7年目の2018年に初めて黒字の四半期を記録したが、そこに至るまでには資金の大量出血を経験している。2016年には2億ドル(約220億円)の損失もあった。もしOscarが、アメリカの健康保険に変革をもたらしたスタートアップの成功物語だとしたら、それは、この事業がどれだけ過酷な戦いであるかを知らしめる厳格な指標ともなる。

もちろん、AmazonとAlphabetは、健康保険という長期計画において損失を心配する必要はない。それでも、数々の規制や現実主義を乗り越えなければならず、こればかりは単に資金をつぎ込めば解決できるというものではない。企業規模や資金によって、自動的に信頼を獲得できるわけでもない。それは「思っていたほど広範なインパクトを与えられなかった」として2017年にGoogle Healthのサービスを打ち切ったGoogleが経験したことだ。

AlphabetやAmazonといった企業は、自身の失敗、仲間の失敗、Betterなどのスタートアップの失敗から学んでいるようだ。Alphabetは、今回は頭から飛び込むことは控え、特定の疾病に的を絞った。病院と提携し、AIに関する膨大なノウハウを武器に大勢のアメリカ人が抱える問題に立ち向かっている。Amazonは、Berkshire、Hathaway、JP Morganと提携し、ミクロのスケールで問題点を綿密に調べながら、引っかき回すべき市場を時間をかけて研究している。

成長するか死ぬか

もしアメリカの健康保険業界が本当に征服困難であるなら、ひとつの疑問が浮かぶ。ハイテク企業はどうして再挑戦しないのだろうか。答えは簡単。利益だ。

アメリカの健康保険業界の、2017年の健康保険と生命保険の純保険料は5949億ドル(約65兆4000億円)だった。これはAmazonの2017年の利益である1780億ドル(約19億6000万円)の3倍を上回る額であり、Alphabetの1110億ドル(約12億2000万円)の何倍にもなる額だ。

まだある。

年間の事業収益が1000億ドルを超えると、有意義な成長につながる新しい道を探すのが大変に困難になる。これは、AlphabetやAmazonのような企業には厄介な問題だ。彼らには、成長と規模の拡大が生命線だからだ。それが鈍れば、エコシステムから脱落すると見込んで、ハゲタカどもが頭の上を舞い始める。そしてそれが株価に響く。

近年、ハイテク大手企業は、他分野のバーティカル市場への拡大を成功させて、こうしたリスクを回避してきた。食品宅配サービス音声アシスタント自律運転車両など、ハイテク産業は帝国拡大の機会を求めて、新鮮なバーティカル市場を探し続けている。医療業界は、単に次なる征服目標にすぎないのだ。

行く手を阻む障害物

規模、資本、アイデアに関わらず、医療産業への参入は、どんなに気をつけたところで、ハイテク企業にとって容易なものではない。業界をかき回すことには慣れている彼らにしても、医療と健康保険はまったく別の生き物だ。

まず、規制の壁がある。薬を販売したり流通させるためには、複雑で費用のかさむいくつもの輪をくぐり抜けなければならない。そこでは米食品医療局や米麻薬取締局といった規制当局が目を光らせている。

これらの企業は膨大な独自のデータを
どのように活用するのかという疑問が
常につきまとう

そして、データとプライバシーの問題がある。ハイテク大手企業は、業界に長年居座っている既存企業にテクノロジーで勝ることができると信じているが、テクノロジーを活用しようとすれば、これまた厳しい個人情報保護のための規制に守られたデータへのアクセスが必要となる。とりわけ、健康保険に参入しようとする者には、乗り越えなければならない最大の障壁だ。

そしてそれらの上に、健康保険に参入したいと考えるハイテク企業が通らなければならない州ごとの保険規制制度がある。保険規制に関しては概して寛大だとされているユタ州で通用するものが、もっとも厳しいとされるカリフォルニア州では通用しない。

プライバシー、データ、国民皆保険

健康保険業界の主力選手となるための新規事業に挑むには、反対に打って出られる勇敢な人物が必要だ。成功しようと思えば、すべての人が喜ぶのとは違う道を行く必要もある。

まずは、これらの企業は膨大な独自のデータをどのように活用するのかという疑問符が常につきまとう。ハイテク企業はこの数年、自分たちのデータで金儲けをしていることを嫌った一般ユーザーの離反に揺さぶられてきた。しかし、そのデータが、その人の保険料の計算に使われるとしたらどうだろう。たとえば、健康的な食品を買っていたり、スポーツジムの会員になっていたり、日常的に運動をしていることを追跡するデバイスがあり、その人が健康的な生活を送っているとデータが証明してくれたなら、保険料が下がる可能性がある。

反対に、あまり体を動かさない人が不健康な食品や製品を買ったことがわかれば、保険料が徐々に上がるということも考えられる。

ジョージア工科大学Scheller College of Businessに在籍するプライバシー専門家であり、ホワイトハウスではクリントン大統領のもとで医療保険の相互運用性と説明責任に関する法律のプライバシーに関するルールを取りまとめたPeter Swireは、そこに危機感を覚えるという。「私の知る限りでは、AmazonのウェブサイトはAmazonが取得した利用者の情報を、提携する健康保険会社に提供できるとなっています」とSwireはViceのインタビューに応えて話している。「言い換えれば、データが医療機関の外へ流れ、健康保険会社で利用されることを阻むルールの存在を私は知らないということです」

接線:ハイテク企業が押すのは単一支払者制度かユニバーサルヘルスケアか?

ちょっと一息入れて、アルミ箔の帽子をかぶらせていただく。

つい先日の2017年、AetnaのCEO、Mark Bertoliniは単一支払者制度についてオープンに議論したいと話した。「単一支払者。国として議論しておくべきだったと思う」

単一支払者制度、いわゆる「メディケア・フォー・オール」(すべての人に医療を:国民皆保険)は、どちらもワシントンの進歩的な民主党の考え方だ。イギリスやカナダなどの国をモデルにした単一支払者制度の実現を目指す人たちは、すでに、医薬品業界と保険業界が送り込んだ強力なロビイスト団体に対抗している。ゲームの理論から言えば、世界で最も裕福な企業をロビイスト団体の味方につければ、アメリカでのユニバーサルヘルスケア(国民皆保険)の実現を遠くに追いやることができる。

これは、ハイテク企業が独自の保険方式を作り始める未来を思うときに、常に私につきまとう大きな「もしも」のシナリオだ。彼らは、政府の介入で民間の保険が奪われてしまうことを決して好まない。

さて、ここでアルミ箔の帽子を脱いで、陰謀めいた話から現実的な話に戻ろう。

現状よりはマシ

もちろん、AmazonやGoogleなど、健康保険への参入に興味を示す企業が、利用者に不利益をもたらよう、あるいはユニバーサルヘルスケアに反対するロビイスト団体のためにデータを使う可能性を示す証拠はない。実際、それらの業者が唯一わかっていることがあるとすれば、それはできるだけ多くの人を喜ばせることの重要性だ。彼らは、おもに個人的な体験から、ネガティブな評判の影響力の大きさを知っている。それは特定の製品やサービスに止まらず、事業全体にもダメージを与える。悪辣な金儲けに走れば、健康保険業界をかき回す可能性は、手を付ける前に、ことごとく失われる。

ハイテク企業は、それぞれのソリューションに特製ソースで臨んでくるだろう。

Amazonは、高度な効率性を武器にするだろう。無駄のない驚くほど高速な物流で製品を提供する。GoogleとAlphabetの子会社は、AIと予測的アプローチで挑んでくるだろう。そこでは、すべての人に、それぞれの分野の専門家に支えられた健康アシスタントが着く。Aiphabetのマシンやキオスクに立ち寄れば、簡単な健康診断ができる。Appleは、洗練された小売の経験を持ち、顧客の支配を好むことから、管理医療機構Kaiser Permanenteのようなバーティカルな方式を作り出すかも知れない。どの企業も、高品質な利便性を追求するはずだ。それらは実質的に、異なるタイプの消費者を対象にすることになる。

彼らが手の内を見せて、健康保険業界の既存企業と真っ向対決するようになれば、制度の対象となるすべての人たちのために、既存企業に置き換わる善意の企業という立ち位置で戦うことになる。それは結果的に、より良く、より安価で効率的なものを生み出す。2017年のMckinseyの調査によると、アメリカ人が求めているものを提供している保険会社は非常に少ないという。具体的には、保険料に見合った利便性、より統合された技術、健康増進のためのツールだ。

技術者が秀でることのできる分野がある。レベルの高いカスタマーケア、サービスの向上とコストの削減、これらを最新テクノロジーを取り込むことで実現する。それを健康保険に活かせれば、テクノロジーの約束を短期間に果たすことができるだろう。それは、時代遅れの業界を引っかき回すことだ。

ハイテク大手企業にとって、成長は血と同じ。そして、引っかき回す準備が整った健康分野のバーティカル市場は、奇遇にも、我々が生きてゆくために欠かせないものでもある。この戦いは見ものになる。Uberが荒っぽいスタートを切ったときのように、はたしてハイテク企業は規制を飛び越えて、議会を動かし、消費者の要求に応えさせることができるだろうか。

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(訳者:金井哲夫)

任天堂が国内初の直営オフィシャルショップ「Nintendo TOKYO」を渋谷に開設

任天堂は2月1日、国内初の直営オフィシャルショップを渋谷に開設する予定だと発表。

2019年秋に開業を予定している「渋谷PARCO(仮称)」に「Nintendo TOKYO(ニンテンドートウキョウ)」をオープンする。オープンのタイミングは渋谷PARCOの開業にあわせる予定だ。

Nintendo TOKYOではゲーム機本体、ソフト、キャラクターグッズなどの販売、そしてイベントの開催やゲームの体験などが予定されている。

任天堂はNintendo TOKYOを国内における同社の情報発信の新たな拠点として「幅広い層のお客様にお楽しみいただける場」になるよう準備をすすめている、とコメントしている。

なおアメリカ・ニューヨークにはすでに「Nintendo NY」というショップがオープンしており、限定商品の販売やイベントの開催が行われている。

詐欺まがいのサブスクリプションの排除に舵を切ったApple

Appleは、ユーザーを騙してサブスクリプションに引き込むのは止めろ、というメッセージをデベロッパーに送っている。それは、モバイルアプリのデベロッパー向けガイドラインを更新し、許されることと許されないことの線引を明確に定義したことによるもの。この最近の変更点は、9to5Macによって発見された。この文書の改定のタイミングは、サブスクリプションが消費者にとって何かしら災難のように感じられ始めたことと時機を同じくしている。

サブスクリプションは、すべてのアプリがそのサービスに移行してしまうのではないかと思われるほど、急速に普及した。それは結局のところ、ユーザーにお気に入りのアプリの利用を止めさせることになりかねない。なぜなら、何十ものアプリの支払いがずっと続くのは、大きな金銭的負担となるからだ。しかしもっと喫緊の問題は、サブスクリプションに関するルールの適用が甘いせいで、グレーなアプリデベロッパーの懐を肥やしてきたことだ。

サブスクリプションは、アップストア上の大きなビジネスとなっている。アプリ業界は、無料アプリ内の1回限りの購入や有料ダウンロードから、継続的な収益が得られるモデルへと移行してきた。常にアプリを改良し、新機能をリリースし続けるデベロッパーにとって、サブスクリプションは、そうした仕事を続けるための財政的な支えとなる。それがなければ、常に新規のユーザーを開拓し続けなければならない。

しかし、必ずしもすべてのデベロッパーがフェアに振る舞ってきたわけではない。

TechCrunchが昨年の秋に報告したように、多くの詐欺師たちは、サブスクリプションモデルを悪用し、無料ユーザーにしつこくアップグレードを促し、消費者を騙して継続的な支払いに誘い込んでいる。

アップグレードを促すプロンプトを頻繁にポップアップしたり、そのプロンプトウィンドウを閉じるための「×」を隠したりするアプリがある。また、無料トライアルを謳いながら、非常に短期間、たとえば3日で有料版になってしまうものがある。あるいは、わざと混乱を招くようなデザインを採用し、サブスクリプションのオプトインのボタンが「始める」とか「続ける」のような大きな文字になっているものもある。それでいて、それによりサブスクリプション料金の支払いに同意することになる、と説明する文字は小さく、薄く、読みにくくなっていたり、何らかの方法で隠されていたりする。

Appleのデベロッパーガイドラインは、これまでもサブスクリプションに関して詐欺的な行為を明確に禁止してきたが、現在では可否を具体的に記述している。

9to5Macが見つけたところでは、AppleのヒューマンインターフェースガイドラインApp Storeのドキュメントの改定の結果、サブスクリプションの月額を明記するよう、はっきりと記述された。また、長期間を選ぶと、いくらお得になるかといった情報は、あまり目立たないようにしなければならない。

無料トライアルに関する記述には、トライアルの期間の長さと、トライアル期間が終了したときにかかる料金を明示しなければならなくなった。

こうした新しいドキュメント自体も明瞭な構成となっていて、適切なサブスクリプションのためのサインアップの手順が、スクリーンショット付きで示されている。また、デベロッパーが各自のアプリ用に修正して使えるような、サンプルテキストも含まれている。さらに、ユーザーがApp Store内のサブスクリプションのセクションを探すのではなく、アプリ内で自分のサブスクリプションを管理できるようにすることを、デベロッパーに促している。

今日、多くのユーザーは、いったん有効にしたサブスクリプションを停止する方法を理解してない。 iPhoneの「設定」から、サブスクリプションのセクションにたどり着くには、いくつものステップが必要となる。App Storeからでも、2、3ステップかかる。(しかも分かりにくい。ホームページの右上にある自分のプロフィールアイコンをタップし、次にApple IDをタップしてから、そのページのいちばん下までスクロールする。それに比べると、Google Playでは、左側のハンバーガーメニューを1回タップするだけで、「定期購入」セクションを表示できる。)

すべきことと、すべきでないことを明確に記述したドキュメントの存在は歓迎できるが、現時点での本当の問題は、Appleがそのルールをどの程度まで厳密に適用するか、ということだ。

結局のところ、Appleは以前からサブスクリプションに関する詐欺やごまかしを容認してきたわけではないが、App Storeの、特にユーティリティのカテゴリには、それなりの数のたちの悪いものが巣食っていたというわけだ。

もちろん、Appleとしても、App Store内で、誤解を招くような、あるいは詐欺的なアプリが幅を利かせているというような風評が立つことは望んでいない。しかし、それはそれでAppleに利益をもたらすことになる。

App Annieのレポート、「State of Mobile 2019」によれば、ゲームは依然としてApp Storeでの支払額の大部分を占めているものの、現在ではゲーム以外のアプリも、App Store全体の4分の1を超える(26%)までになった。そして、その数字は2016年から18%も増加している。これは、主にアプリ内サブスクリプションのためなのだ。

重要なのは、サブスクリプションを市場に広めるための適切な方法を会得することだ。しかし、長い目で見たときに、デベロッパーにとってサブスクリプションが、果たして持続可能なモデルになり得るのか、という大きな疑問もある。今日のApp Storeでは、サブスクリプションを一種のゴールドラッシュ的なものととらえる風潮が広まっている。実際、毎月のように転がり込む目先の利益には抗しがたいものがある。

しかし、より多くのデベロッパーがサブスクリプションを採用すれば、消費者は自分にとって本当に価値があるものを最終的に選択しなければならなくなる。Apple Storeに限らず、すでに多くのサブスクリプション料金を支払っているからだ。たとえば、Netflixのようなストリーミングビデオ、Spotifyのようなストリーミングミュージック、YouTube TVのようなストリーミングTV、Ipsyのような定期購入、Amazonプライムのメンバーシップ、Instacartのような食料品の配達、RingやNestのようなスマートホームのサブスクリプション、新聞や雑誌、ニュースレター、などなど。最終的に、自撮りのエディタ、To-Doリスト、天気予報アプリ、といったものに残される取り分はあるのだろうか?

多くの消費者は、これ以上は払えないという段階に達し始めている。新しいものを有効にするために、何かを無効にしなければならない。そうなれば、サブスクリプションアプリのユーザーベースは縮小せざるを得ない。有料のサブスクリプションに留まるのは、コアなユーザーだけ。それほどこだわらないユーザーは、たとえばApple純正の標準アプリや、Googleのような裕福な大企業が提供する無料サービスに戻るだけだ。

Appleは、アプリの実装や設計方法だけでなく、そのアプリにとってサブスクリプションが意味がある場合には、デベロッパーにそれをアドバイスするようにすれば良いだろう。サブスクリプションは、単にアプリを使い続けられるようにするだけでなく、本当の価値を提供すべきだ。また、いつもサブスクリプションを拒否するようなユーザーをアプリにつなぎ留めておくには、1回限りの購入のオプションが有効な場合もあるはずだ。

画像クレジット:TechCrunch

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(翻訳:Fumihiko Shibata)

世界初のスマートハイウエイが中国に建設されるであろう理由

[著者:Hugh Harsono]
元金融アナリストであり現在はアメリカ陸軍士官。

中国は、急速な成長によって、既存のインフラに新技術を統合させるという意味において、世界でもっとも高度な柔軟性を持つ国となりつつある。機関や組織が比較的新しいため、中国では現在の、または将来実現する可能性のある技術を容易に受け入れることができるのだ。自律走行車両とそのための基準が現実化し始め、その技術を支えるためのインフラを、どのようにしたら適切に整備できるのかが考えられるようになった。そこに中国の成功のチャンスがある。変化に強いメカニズムを持ち、こうした新技術を大規模に組み入れる能力があるからだ。そこで、全世界の未来のインフラ計画の基準となるスマートハイウエイやスマート道路が確立されるのだ。

スマートハイウエイとは何か? なぜそれが必要なのか?

「スマートハイウエイ」という言葉の定義は定まっていないが、一般的には、交通用に使われている現在の道路に新しい技術を組み込むものと理解されている。たとえば、統合される技術の一部を挙げるなら、ソーラーパネルから電力を得る機能や、自律走行車両、センサー、構造物保全のための監視システムだ。スマートハイウエイは、各国々における輸送システムの屋台骨としてひとつの機能を提供しているハイウエイを、電力供給、安全のための機能、ドライバーと交通行政の双方に重要なデータを提供するといった付加価値をもたらすインフラに進化させる可能性がある。

Teslaの「オートパイロット」モードで事故を起こし人が亡くなった事件や、Uberの自律走行車両の試験運転中に歩行者を死なせてしまった事件があったが、スマートハイウエイなら安全性を高めるメカニズムを備えられる。自律走行車両とスマートハイウエイのセンサーとソフトウエアが組み合わされたなら、問題を特定して対策することができるはずだ。リアルタイムでフィードバックを送り、安全機能が働いて事故を予防する。少なくとも、ドライバーの怪我を軽減させることが可能だ。ドライバーに単純なコマンドを出すといった程度のことではない。それではヒューマンエラーを誘発しかねない恐れが残る。スマートハイウエイなら、スマートな車両と、センサーや路上に設備された技術を結びつけることで、ドライバーが運転困難な状況に陥った場合でも、完全に安全に対処するさまざまな手段を講じることが可能になる。

自律走行車が世界中に登場しだすと
スマートハイウエイの構想が世界中に広がった

自律走行車が世界中に登場しだすと、スマートハイウエイの構想が世界中に広がった。それに加えて、世界の電力消費量は拡大しており、2040年には電力需要は25パーセント以上高まると予想されている。同時に、化石燃料の消費量は減少し、再生可能エネルギー源の需要が高まる。その点、スマートハイウエイなら、地球上に張り巡らされた長大な道路を無駄なく利用できる。その広大な土地を二重に活用すれば、道路設備だけでなく、周辺の街や都市や、発電所にまでも電力を供給できる可能性がある。スマートハイウエイは持続可能なエネルギーの成長の機会を代表するものだ。重要な設備に電力を供給するだけでなく、その上を走る電気自動車の充電も可能になるだろう。

スマートハイウエイから集められたデータは、都市計画のための統計データとして大いに役立つ。交通の効率化や車両による環境汚染の低減などに寄与するだろう。スマートハイウエイがもたらす恩恵の一例として、車線の合流や高速道路の出入り口といった特異な場所における車の流れのリアルタイム分析が考えられる。それは、交通のボトルネックにおいて車両の停時間をできる限り短縮する、道路を最適化の研究に役立つ。

自律走行車両やその他のスマート技術が登場し、そうしたイノベーションを十分に統合して活用しようと思えば、スマートハイウエイが必然であることは単純な理屈だ。これは人の命を救うツールであり、ドライバーや歩行者の安全を守り、クリーンエネルギーの消費を増やし、持続可能性を高めるものだ。さらに、都市計画、道路計画、交通計画にも貢献する。

スマートハイウエイに使える製品は存在するのか?

スマートハイウエイの部材開発の試みは、数多く行われている。とくに、ソーラー道路やスマート交通インフラに特化した技術研究が多い。その多くは、良い結果と悪い結果の両方を生み出しており、さまざまな問題に直面している。その問題の代表は、実質的な発電効率とコストだ。

2014年10月、オランダはSolaRoad実験プロジェクトを立ち上げ、70メートルの自転車専用道路を建設した。このプロジェクトでは、最初の年で1万キロワット毎時に近い驚くべき発電量を記録した。そこからいくつものプロジェクトが派生し、2019年には交通量の多い道路での実験も予定されている。しかし、このプロジェクトはあくまでもソーラー道路に的を絞ったものであり、周辺地域に再生可能エネルギーを供給するといった、総合的なソーラーハイウエイを目指すものではない。

2016年9月、アイダホ州に本社を置くSolar Roadwaysは、アイダホ州サンディーポイントに14平方メートル近い道路を建設した。ところが、同社から米運輸省への報告書によると、「発電した電力の3分の1が、埋め込まれたLEDの点灯に使われた」とのことだった。これは発電効率に多大な影響を与え、6カ月間の発電量はわずか52.39キロワット毎時という結果を招いた。これがアメリカ国内の他のソーラー道路計画に波紋を広げ、ミズーリ州は、2017年にコンウェイ近くで予定していた計画を中止した。Solar Roadwaysが訴えていた「数々の複雑な行政手続の問題」も原因している。このプロジェクトは、エネルギー生産という点において、コストが高く発電効率は比較的低いという印象を多くの人たちに植え付けてしまった。

2016年12月、Hannah Solarとジョージア州交通省の出資によるWattwayを利用した50平方メートルのソーラーロードを建設し、The Rayが設立された。The Rayは、ジョージア州トループ郡を通る州間高速道路85号線の30キロメートルにのぼる部分をスマートハイウエイ化した。そこには電気自動車の充電ステーション、タイヤの安全確認ステーション、そしてもちろんソーラーロードを備えられ、現在もっとも充実したスマートハイウエイになっている。

さらに、2016年12月、フランスは、Colasというフランスの企業と合同で、およそ1キロメートルのソーラー道路をオープンした。しかし残念ながら、期待に応えることはできなかった。当初の見積もりでは1日あたり1万7963キロワット毎時の電力を生むはずだったのだが、実際には409キロワット毎時しか発電できなかったのだ。この建設と維持のためにフランス政府は数百万ユーロを費やしており、すでにソーラーパネルの5パーセントが破損して交換が必要な状態になっているという。

このように、世界中で行われているスマートハイウエイの試みには、限定的な成功しか収められないものもある。費用、官僚的な行政手続き、実質発電量、持続可能性など、こうしたプロジェクトの成功と失敗を分ける要素は、数多く存在する。

なぜ中国なのか:
インフラ建設の実績、施工の早さ、安定した製造能力

先進国に仲間入りしたい発展途上国である中国ならではの事情により、スマート技術には多大なる導入の好機が与えられている。「モバイル第一」の考え方が、デスクトップ型パソコンを持たない何億もの人々のインターネット利用を推進している中国は、新技術をいち早く、比較的効率的に実用化する能力を示している。そのため、本格的なスマートハイウエイを世界でもっとも早く建設できる国が中国である可能性は非常に高い。しかも中国は、独自のインフラ環境を持ち、新技術の導入に関しては行政手続が比較的柔軟であり、製造とサプライチェーンの基盤が強固で洗練されている。

中国東部の山東省にPavenergyQilu Transportationが建設し、2017年12月にオープンしたソーラー道路は、5875平方メートルという規模で、現在、世界でもっとも長い。今回の場合、中国の道路は固いコンクリート舗装なので、薄いソーラーセルを敷き詰めるのに都合がよかった。アスファルト舗装を採用しているアメリカのハイウエイと異なる点だ。この中国特有のインフラ環境は、ソーラー技術の比較的容易な施工を可能にしている。

さらに中国人は、昔から道路建設に長け、経験も豊富だ。中国国内の長大なハイウエイ網のみならず、中南米アフリカでも数多くの道路建設を行なっている。そこに、インフラ建設の仕事が早いという評判も加わる。57階建の高層ビルを19日間で建てた建設会社の記録もあれば、わずか9時間で鉄道の駅を作ったという記録もある。こうした他に類を見ないインフラ建設技術を考えると、世界初の本格的スマートハイウエイを建設するには、中国が理想的な場所と言える。

スマートハイウエイの建設においては
中国の製造業の力も成功の鍵となる

新技術の導入とイノベーションに関しては比較的柔軟な中国の行政手続も、中国が世界で初めてのスマートハイウエイを作る議論を後押しするだろう。中国では、モバイル第一の考え方が根付いている。2017年のモバイル端末によるインターネットの契約数は11億件だった(同時期のアメリカの契約件数のほぼ2倍)。中国人消費者は、コンピューターでよりも、携帯電話で買い物をすることが多いのも事実だ。中国政府も、モバイル第一技術のインフラ整備に積極的な役割を果たしている

ドローンの場合も、中国の民間航空局は、ドローン使用に関する明確なガイドラインと規制内容を2016年に発表している。西欧諸国のドローン利用に関するルールがまったく統一されていないのと対照的だ。国、州、郡、市などに独自のルールがあり、混乱するばかりか矛盾することすらある。この2つの事例から、いかにして中国が、新技術を国中に急速に普及させているかがわかる。しかも中国政府には、先を読み、新技術をいち早く取り入れる力がある。

スマートハイウエイの建設においては、中国の製造業の力も成功の鍵となる。その強力な製造能力は、一般向けの製品からiPhoneのような高級品の組み立て、そして今や、安価で発電効率の高いソーラーパネルの開発にいたるまで、数多くの成功を招いてきた。中国のサプライチェーンも驚くほど洗練されている。中国の工場は、製品の最初の部品を、わずか数キロ離れた工場から取り寄せたり、毎日数百万単位のパケケージを出荷したりと、最初から最後までが最適化されている。この圧倒的な効率化により、スマートハイウエイの鍵となる部品は中国の主要産業に成長した。現在、すべてのソーラーパネルのおよそ70パーセントが中国製だ。

さらに、中国はソーラー発電量でも世界をリードしている。2018年の最初の月だけで、新規のソーラー発電能力として34.5ギガワットが追加された。これは2017年の中国全体のソーラー発電量の53パーセントにあたり、2016年の全世界のソーラー発電量の50パーセントを上回る数値だ。中国でのソーラーパネルの大量生産能力は、中国のソーラー道路の大きな支えになっており、地方で素早く生産されたソーラーパネルが即座に地元の道路に、やがてはスマートハイウエイに設置できる形を作っている。群を抜く製造能力と発達したサプライチェーンを持つ中国こそ、世界初の本格的スマートハイウエイの建設場所になる可能性が高い。

しかし中国は、世界初のスマートハイウエイ建設のもっとも可能性が高いというだけではない。独特なインフラ環境、新技術をいち早く導入できる仕組み、世界に君臨する製造力とサプライチェーンを有するという、環境的にも最高の条件を整えている。

結論

自律走行車両の登場によりスマートハイウエイの構想が世界に広がり、より安全で効率的なドライブ環境を整備するためのセンサー、ソーラーパネル、ソフトウエアなど、あらゆる技術が投入されるようになった。ドバイでは、新技術の開発と既存のスマート技術を現在の交通システムに統合する計画を発表した。中国は、世界初ではないが、世界初のなかのひとつとして、浙江省の東部に161キロメートルのスマート道路を建設する計画を発表した。センサーと「車両のインターネット」とソーラーパネルを活用して、自律走行トラックのための安全機能を整えるという。

中国では、スマートハイウエイの主要部材であるソーラーパネルのイノベーションも進行しており、有機薄膜太陽電池で変換効率17.3パーセントを記録している。そのようなわけで、世界初の本格的スマートハイウエイは、スマート技術と既存の交通インフラをフルに統合する道を先導する形で、中国に建設されると結論づけることができる。

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(翻訳:金井哲夫)

JR東日本グループ運営9店舗でモバイルオーダーが利用可能に、駅弁屋やベッカーズなど

僕は先週、出勤前にコーヒーを買おうとしたが、電車の時間に間に合わなくなりそうだったので、レジに並んでいたが途中で妥協した。スマホからの事前決済が可能な中国のLuckin Coffee(ラッキンコーヒー)が日本にも進出してくれればいいのに、といつも思っている。

でもここ日本でも行列に並ばずにコーヒーやお弁当などを買える時代が到来するのはそう遠くはないかもしれない。

モバイルオーダー&ペイプラットフォーム「O:der(オーダー)」などを手がけるShowcase Gigは1月28日、JR東日本グループ運営の首都圏駅ナカ9店舗でモバイルオーダーの実証実験開始した。同社は1月9日にもUCCが運営するカフェにO:derを導入提供することを決定したと発表している。

今回の実証実験では、本日1月28日より駅弁屋、ベッカーズ、ほんのり屋の計9店舗の一部商品をスマホで事前に注文・決済することができるので、店頭で行列に並ぶことなく商品を受け取ることができる。駅弁屋は上野中央改札店など4店舗、ベッカーズはR・ベッカーズ池袋東口店など3店舗、ほんのり屋は池袋南口店など2店舗で利用可能だ。

利用者は専用ページから注文・支払いをし、調理完了の通知が届いたら店舗で商品を受け取る。

Showcase Gigいわく、モバイルオーダー&ペイは利用者だけでなく店舗側にとってもメリットは大きい。口頭注文や会計といったオペレーションの軽減により、スムーズな商品提供を可能にするとともに、混雑や行列による機会損失の防止を見込めるからだ。

JR東日本グループとShowcase Gigは 「店頭で注文と決済が可能なSuica対応のセルフ注文端末」も共同で開発しており、今春を目途に実店舗での試験的な導入も開始予定だという。モバイルオーダーとセルフ注文端末の両方を導入することで、利用者はよりスムーズに注文と決済が行えるようになり、店舗側はさらなる効率化と省人化が見込める。

Showcase Gigは2018年10月にはJR東日本スタートアップと2018年12月には九州旅客鉄道との資本業務提携を発表している。同社提供のO:derはPOSレジやデジタルサイネージなど、従来の端末とも連携可能なモバイルオーダー&ペイプラットフォームで、全国のおよそ1200店舗の飲食・小売店舗が同プラットフォームを活用したサービスを利用している。

あなたの1時間には30セント以上の価値があるか?

時間はとても貴重なものだと、大抵の人は思っている。少なくとも30セント以上の価値はあると。しかし、人間の意思決定に関する記事を読むと、人がどう考えているのかを疑わざるを得なくなる。

ここで紹介するのは、Jeffrey A. Trachtenbergがウォール・ストリート・ジャーナルに書いた、電子商取引の巨大(本を書く人にとっては)出版社であるアマゾン・パブリッシングの紹介記事だ。アマゾンは、2017年には1000タイトル以上の電子書籍を出版していて、オンライン、オフラインを問わず、アメリカで購入された全書籍の大部分を支配している。

しかし、私がこの記事で本当に驚かされたのは、次の段落だ。

同意のもとで、これらのタイトルはKindle Unlimitedに登録される。これは、電子書籍の読まれたページ数に応じて作者に代金が支払われるというものだ。支払額は、通常、1ページあたり0.004ドルから0.005ドル。価格が10ドルで300ページの電子書籍が読まれれば、作者には1.20ドルから1.30ドルが入る仕組みだ。途中までしか読まれなかった場合は、もっと安くなる。

読む速度が、平均して1時間に60ページ程度とすると、その娯楽の印税は1時間あたり30セントとなる。しかし、Kindle Unlimitedは購読形式なので、アマゾンはもっと儲かっているはずだ。Kindle Unlimitedの本は三文小説か、またはKindle Unlimitedの読者は低俗なのだと片付けてしまうこともできるだろう。

しかし本当のところは、人々(つまり一般読者)は、頭の中を文字で満たしたいと思ったときに、極端にケチになるという事実だ。ワイアードのライターAntonio Garcia Martinezは、先週、こんな疑問をツイートしている。

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ほとんどの本は、30ページの超長い雑誌記事に縮めることができる(ポッドキャストの音声版なら1時間だ)。しかし、そうした形式のためのチャンネルがない。どうしてだ? 昔からの伝統とか?

答えは明白だ。ハーバード・ビジネススクールのケーススタディー以外には、30ページの内容に10ドルから20ドルを支払う人たちの市場が存在していないということだ。私がこの問題について、作家や出版社の重役たちと話してみたところ、ふたつの結論が得られた。ひとつは、消費者は薄い本を買うよりも分厚い本に金を使う方が得だと思っていること。もうひとつは、本には膨大な固定費がかかっていて、その消費者市場を考えると、作品を縮めるのは現実的ではないということだ(たとえば、表紙デザインのための費用は、本のページ数とは関係なくかかる)。

そのため、出版社は実際の内容よりも分厚く見せるために、ゴテゴテと飾り立てるのだ。

今朝、私が読み終えたRichard Rothstein著の『The Color of Law』という本がある(とてもいい本だ)。アマゾンでは、ペーパーバック版で「368ページ」と書かれている。かなりのボリュームだが、実際にはそんなに長くない。エピローグも含めた正味は217ページで、26点の写真が散りばめられ、章ごとの空白もかなりたっぷり取ってある。したがって、実質的な内容は190ページほどだろう。さらに、よくある質問コーナー(22ページ)、謝辞コーナー(12ページ!)、注釈(40ページ)、参考文献目録(28ページ)、索引(18ページ)、それに読書会のためのガイド(3ページ)が追加されている。368ページの中の190ページは、たったの51.6パーセントだ。

このような政治的な論議を引き起こす本の場合、注釈や参考文献の情報まで削れとは言わない。しかしこれは、ペーパーバックに17.95ドルという値をつけた出版社が単に、写真やよくある質問を追加しなければ消費者はその価格に満足してくれないという危機感を抱いていた結果だ。

私は、『Brainjunk and the killing of the internet mind』(麻薬的なゴミコンテンツとインターネット的思考の停止)という記事で、メディア購読ではより少ない内容に多くの金を払うべきだと主張した。

とても皮肉なことだ。今の時代の読者は、大抵が高い教育を受けているが、ニューヨークやサンフランシスコでは食事に30ドルという大金を使い、家賃には何千ドルも払っているため、本に割ける数ドルがない。10ドルなんて論外だ。ニューヨークタイムズの月間購読料は、今ではマンハッタンで飲むカクテル1杯分程度に過ぎない。

私の友人の中に、購読料を払っている人はほとんどいない。インターネット利用者も、大部分が購読料を払わない。人々は、1日のうちの何時間も費やして、愚にもつかないものを読んで喜んでいるため、読み物の質を高めるための最小限の出資さえ拒んでいるのだ。だから、名高い書籍も道端に投げ捨てられ、『メディアを使いこなすための7つのコツ』なんかがもてはやされる。

私たちが購入するすべてのコンテンツの形式にそうした考え方を広げようするのは、もう遅すぎる。

そこで私は、質を調整し、そこに割いてもよい自分の時間を知るために、持っている本のページあたりの価格を計算してみることにした。目の前の机の上には、以下の3冊の薄い本がある。

1.Networks of New York Ingrid Burrington著(112ページ、15.96ドル)
2.The Lessons of History Will & Ariel Durant著(128ページ、15.00ドル)
3.The Emissary Yoko Tawada著(128ページ、14.95ドル)

160ページの本に18ドル支払うのは、悪いことではない。ファーストフードが、安いけれど食べた気になれないのと同じだ。価格の安い本でも、それなりに私たちの脳に栄養を与えてくれる。

スタートアップ弁護士に関する意見の募集

私は、同僚のEric Eldonとスタートアップの創設者や役員に会って、弁護士に関する経験談を聞いている。私たちの目標は、この業界の指導者を見つけ出すことであり、何がいちばんかを考える議論を焚きつけることだ。スタートアップの創設者で、弁護士がいい仕事をしてくれたという経験のある方は、Google Formでのアンケートに協力願いたい。そして、この調査のことを他の人たちにも知らせて欲しい。数週間後に結果をお知らせする予定だ。

迷える思考(今何を読んでいるか)

重要なニュースの要約と簡単な分析だ。

メディアの投資は今でも難しい

Nieman Labは、メディアに投資する数少ないベンチャー投資会社のひとつMatter.vcの創設者Corey Fordをインタビューした。Fordは、数年間その会社を舵取りしてきたが、次のステップのために仕事を離れている。Fordは投資の機会についてこう話している。「ベンチャー投資の旅を続ける企業の組み合わせからひとつのモデルを考え出せればよかったと思うが、非営利とベンチャーキャピタルとの中間に機会あると私は感じている。私はそうした場所に向かうだろう。野球に例えれば、グランドスラムを目指すのではなく、二塁打で十分だということだ」

アメリカと中国は合意に向かっているようだ

貿易上の喧嘩を収めようとするプレシャーは、アメリカと中国の双方アメリカと中国の双方で高まっている。その間、ヨーロッパでは、貿易担当大臣や競争政策の責任者たちは、戦略的産業の市場を飲み込もうとしている中国の国営複合企業との競争を有利に進めるための、オープンな話し合いを進めている。そして、ファーウェイのニュースでは、オックスフォード大学が渦中のファーウェイとの協力関係を一時中断した。ドイツでは全面的に禁止することを考えている(2カ月前にベルリンを訪れたときはファーウェイの広告にあふれていたので、信じがたいが)。

次は何か、そして気になること

  • 読みたい薄い本が机の上にたくさん置かれている。
  • ArmanはBilly Kilday著の『Never Lost Away』を読んでいる。Googleのマップ作りと、その先の話だ。
  • Armanと私は社会を復活させるスタートアップに興味を持っている。飲料水の確保、住宅、インフラ、気候変動、災害対策などの分野に焦点を当てた企業だ。よいアイデアや企業をご存知の方は、私に教えていただきたい。<danny@techcrunch.com>

[原文へ]
(翻訳:金井哲夫)

テクノロジーの「暗い森」(Dark Forest)

かつての私たちはなんと楽観的だったことだろう。テクノロジーは私たちに環境と調和した豊かな世界をもたらして、さらには新しい世界さえ連れてくる筈だったし、インターネットは国境を消し去り、あらゆる障壁を普遍的な表現の自由で置き換えて、私たち皆をより近しいものにしてくれる筈だった。私たちがあらゆる進歩を楽しみに見つめていた時代のことを覚えているだろうか?

私は、Liu Cixin(劉慈欣)による素晴らしいSF3部作である”Remembrance of Earth’s Past”(地球の追憶)シリーズを読み終えたところだ。それは私たちの時代に対して、冷静に切り込む悲観的な物語である。あまりネタバレしないように紹介するならば、この物語は異世界との楽観的な接触への期待が、決して思うようには進まない ―― なぜなら宇宙は「暗い森」(”The Dark Forest”:3部作の2冊めのタイトル)だから ―― という苦い気付きを描き出す作品だ。ここで語られる「暗い森の理論」とは、文明というものは、お互いを恐れるがゆえに、自分たちがいきなり潜在的な脅威と見なされ破壊されることがないように、あえて自分自身を積極的に晒す(さらす)ことはしないというものだ。

ここにはある種の類似がある。私たちは、テクノロジーを恐れ、それが提供するすべてのものに不信感を抱き、新しいものすべての裏側に、ダークサイドがあると想定するようになってしまった。例えば最近ミニブームとなった“10 Year Challenge”(10年チャレンジ)ミームを考えてみよう。それに対してこのWiredの記事は、このブームは、FacebookのAIが顔の加齢をよりよく認識できるようにする訓練に、私たちを向かわせるトロイの木馬だろうと指摘している。

だが私はそれは疑わしいと考えている。別にFacebookの透明な誠意を信じているからではない。なぜなら彼らは既に、より正確に(そして密かに)タグ付けできるデータを、豊富に所有しているからだ。たとえ明示的なタグ付けが多少役にたつものだとしても(私はそのことに対しても疑念を抱いている。メタデータは失われ、いたずらや冗談目的の投稿も多いからだ)、目立った変化をもたらすものではない。Max Readは次のようにツイートしている

だが私は、上の記事は、私たちの多くがいかにテクノロジーを「暗い森」として扱うようになったかを示す典型的な例だと考えている。テクノロジーが提供するものは何でも、無害と証明されるまでは脅威だと考えられるようになり、たとえ一度無害が証明されたとしてもやはり脅威であると思われ続ける場合もある。この関係が逆であったのはそれほど昔のことではない。どのように、そしてなぜ、こうなってしまったのだろうか?

その理由の一部は、おそらく憤りによるものだ。きわめて裕福で影響力のあるハイテク産業は世界有数のパワーセンターの1つになった。そして人びとは、テクノロジーはこの新しいヒエラルキーを破壊したり弱めたりするどころか、ますます強化しようとしているのではないかと(正しく)考えるようになっている。人間のヒエラルキーを改善するのは、民主主義の仕事だ。だがそれはテクノロジーの仕事ではない、という気持ちを振り払うのは難しい。まあ確かに、ここ数年の民主主義は、驚くほど貧弱な仕事しかしてきていなかったように見える。だがそれを全て、テクノロジーのせいだと責めることは難しい。

私は、こうしたテクノロジーを「暗い森」扱いする態度の大部分は、多くのひとにとってテクノロジーが、本質的に魔法化してしまっているからだろうと考えている。AIの場合、上のWiredの記事からもわかるように、専門家たちでさえも、テクノロジーが必要とするものについて合意することはできず、それがどのように機能するのかについてや、結果がどのように得られたかのかについて、正確に説明することはできていない(その「結果」も常に再現性があるわけではない)。

(おそらく知らないうちに、偏った結果が得られているのだ!と叫びたいひとも居るかもしれない。それは真実だし重要な点だ。しかし、業界の外の人びとが皆、声高に机を叩きながら、ハイテク業界に対してAIが暗黙的なバイアスを持っていることを無視しないようにと詰め寄る様子は異様なものに感じる。私が知っているすべてのAI関係者たちはこのリスクを深く認識しており、それを主要な関心事だと常に語っている。そして実際それを軽減もしくは排除するためにあらゆる努力を惜しんではいない。それなのに、すべてのAI研究者およびエンジニアたちが、このリスクを軽いものと受け止め無視しているという暗黙の前提があるのは何故だろう?。そう、繰り返しになるが、テクノロジーが暗い森になってしまったからだ)。

「魔法としてのテクノロジー」は、AIだけとは限らない。スイッチを操作してライトが点灯したときに、何が起こるかを本当に理解している人が何人いるというのだろう。テキストメッセージングがどのように動作しているのかを、少ないとしても本当に理解している人間が何人いるだろうか?あるいは地球の気温がほんの2、3度変わっただけで数十億の人間に壊滅的な影響が及ぶのは何故なのかを理解している人の数は?多くはない筈だ。私たちが恐れているのは何なのか?私たちが恐れているのは未知の出来事なのだ。ほとんどの人にとって、テクノロジーは暗い魔法であるために、テクノロジーは暗い森になってしまうのだ。

だが問題は、この暗い魔法(dark magic)こそが、地球温暖化のような急を要する眼の前の問題を解決する、唯一の希望だということだ。私たちは既に、かすんではっきりしない脅威に満ち溢れた、暗い森の中に住んでいる。それらは新しいテクノロジーによってもたらされたものではなく、旧来のテクノロジーが、私たちの星のもつ容量から溢れ出てしまったことによってもたらされた結果なのだ。気候変動は、森を抜けて恐ろしいスピードで私たちに届けられる恐怖の予感であり、その中でテクノロジーは、私たちを導くことができる火の1つかもしれないのだ。

当然のことながら、そのテクノロジーの火は、理論的には、長期的にはあるいは間違った使われ方をして、最終的にある種の脅威になる可能性がある。それは多くの悪人によって利用されて人びとを操り、抑圧を具体化し、ふさわしくない人びとのてに富をもたらす。地球の一部の地域では、さらなる恐ろしいやり方で技術が誤用されている。すべて実際の出来事だ。だが火が危険であるという理由だけでは、その全ての新しい利用方法が悪意ある脅威になるとは断言できない。お決まりの反対運動はやりすごして、新しいテクノロジーは(たとえそれがFacebookからやって来たとしても)自動的に悪用されてしまうものではないという、ちょっとした楽観主義、ちょっとした希望、そしてちょっとした信頼を取り戻そう。

(私にとって、Facebookが多くの悪いことを行っていることを認め、それを非難することにためらいはない!だがそれは、彼らがすることすべてが悪いという意味ではない。企業は人間のようなものだ。このような時代には信じることは難しいかもしれないが、彼らは善いことも悪いことも同時に行うことができるのだ。ショックだろうが、これはイーロン・マスクに対しても成り立つ話だ)。

私はただそれを良いことだと言っているわけではない。私が言いたいのは、とにかく何かをする必要があることだろうということだ。なぜなら好きか嫌いかにかかわらず、私たちは既に種(しゅ)として、とてつもなく暗い森の中に迷い込んでしまったように思えるからだ。そしてより良いテクノロジーを積み重ねて行くことだけが、その森を抜け出すための手段なのだ。もしそれが意図的に、落とし穴と流砂で一杯の道だと想定して始めてしまっては、その脱出の道筋を切り拓くことはとても困難になってしまう。あらゆる意味で懐疑的ではいよう。しかし私たちの基本的な立場として、犯罪行為と悪意を仮定するのは止めておこう。

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(翻訳:sako)

世界を手中に収めたオープンソースソフトウェア

わずか5年前には、ビジネスモデルとしてのオープンソースの実現可能性について、投資家たちには懐疑的な考えが少なくなかった。よく言われていたのは、Red Hatは奇跡的な例外であり、他にはソフトウェア業界で重要な存在となるオープンソース企業は存在しないということだった。

話を現在にまで早送りしてみると、私たちはこの分野で高まり続ける興奮を目の当たりにしてきた。Red HatはIBMに320億ドルで買収された。これは同社の2014年の時価総額の3倍に相当する。 MuleSoftは株式公開した後に65億ドルで買収された。 MongoDBの価値は、現在40億ドルを上回っている。 ElasticはIPOによって、現在60億ドルの価値を持つとされている。そして、ClouderaとHortonworksの合併によって、時価総額が40億ドルを超える新しい会社が出現することになる。そして、進化の過程の成長段階を経て、さらに成長を続けるOSS企業の一団もある。たとえば、ConfluenceHashiCorpDataBricksKongCockroach Labsなどだ。ウォールストリートや個人投資家が、これらのオープンソース企業について見積もっている相対的な株の価値を考えると、何か特別なことが起こっていることはかなり明らかのように思える。

この、かつてソフトウェアの最先端の動きとされていたものが、なぜビジネスとしても注目を集めるようになったのか? それには、オープンソースのビジネスを推し進め、市場での展望を増大させる、いくつかの根本的な変化があったのだ。

M写真はDavid Paul Morris/Getty ImagesのBloombergから

オープンソースからオープンコアへ、さらにSaaSへ

当初のオープンソースプロジェクトは、実際にはビジネスというわけではなく、クローズドソースのソフトウェア会社が享受していた不当な利益に対する革命だった。Microsoft、Oracle、SAPといった企業は、ソフトウェアに対して「モノポリーのレンタル料」のようなものを徴収していた。当時のトップクラスのデベロッパーは、これを普遍的なものとは考えていなかった。そこで、進歩的なデベロッパーが集り、通常は非同期的に協力して、最も広く利用されているソフトウェアのコンポーネントであるOSとデータベースを皮切りに、素晴らしいソフトウェアの一群を作成した。そうしたソフトウェアは、単にオープンというだけではなく、彼らが付け加えたゆるい管理モデルによって改善され、強化されたことは誰の目にも明らかだ。

そうしたソフトウェアは、もともとデベロッパーによって、デベロッパーのために作成されたものだったので、最初はあまりユーザーフレンドリーとは言えないものだった。しかし、それらは高性能かつ堅牢で、柔軟性も兼ね備えていた。こうしたメリットは、ソフトウェアの世界にだんだん浸透し、10年ほどの間に、Linuxはサーバー用として、Windowsに次いで2番目にポピュラーなOSとなった。 MySQLも、Oracleの支配を切り崩すことで、同様の成功を収めた。

初期のベンチャー企業は、これらのソフトウェアのディストリビューションに「エンタープライズ」グレードのサポート契約を提供することによって、こうした流れをフルに活用しようとした。その結果、Red HatはLinuxの競争で、MySQLは、会社としてデータベースでの勝者となった。ただし、そうしたビジネスには明らかな制約もある。サポートサービスだけでソフトウェアを収益化することが難しいのだ。しかし、OSとデータベースの市場規模が非常に大きかったため、少なからぬ困難を背負ったビジネスモデルにもかかわらず、かなり大きな会社を築き上げることができた。

LinuxとMySQLの手法が成功したことによって、第2世代のオープンソース企業のための基盤が整備された。その世代のシンボルが、ClouderaとHortonworksだ。これらのオープンソースプロジェクト、そして同時にビジネスは、2つの観点で第1世代とは根本的に異なっている。まず最初に、これらのソフトウェアは主に既存の企業の中で内で開発されたもので、広い、関連の薄いコミュニティによって開発されたものではない。現にHadoopは、Yahoo!の中で生まれたソフトウェアだ。2番めに、これらのビシネスは、プロジェクト内の一部のソフトウェアのみが無料でライセンスされるというモデルに基づいたもので、別の部分のソフトウェアについては、商用ライセンスとして、顧客に使用料を請求することができる。そしてこの商業利用は、エンタープライズの製品レベルを意識したものなので、収益化が容易なのだ。したがって、これらの企業は、彼らの製品がOSやデータベースほど訴求力がないものであっても、多くの収益を上げる力量を備えていたことになる。

しかしながら、こうしたオープンソースビジネスの第2世代のモデルには欠点もあった。1つには、こうしたソフトウェアに対する「道徳的権威」を単独で保持する企業が存在しないため、競合する各社がソフトウェアのより多くの部分を無料で提供することで、利益を求めて競い合うことになった。もう1つは、これらの企業は、ソフトウェアのバージョンの進化を細分化することによって、自らを差別化しようとするのが常態化したこと。さらに悪いことに、これらのビジネスはクラウドサービスを念頭に置いて構築されていなかった。そのために、クラウドプロバイダーは、オープンソースソフトウェアを利用して、同じソフトウェアベースのSaaSビジネスを展開することができた。AmazonのEMRがその典型だ。

起業家のデベロッパーが、オープンソース企業の最初の2世代、つまり第1世代と第2世代に横たわるビジネスモデルの課題を把握し、2つの重要な要素を取り入れてプロジェクトを展開したとき、新しい進化が始まった。まず第1に、オープンソースソフトウェアの多くの部分を企業の内部で開発するようにしたこと。現在では、多くの場合、そうしたプロジェクトに属するコードの90%以上が、そのソフトウェアを商品化した会社の従業員によって書かれている。第2に、それらの企業は、ごく初期の段階から彼ら独自のソフトウェアをクラウドサービスとして提供するようにしたこと。ある意味では、これらはオープンコアとクラウドサービスのハイブリッドビジネスであり、自社製品を収益化するための複数の道筋を備えている。製品をSaaSとして提供することによって、これらの企業はオープンソースソフトウェアと商用ソフトウェアを織り交ぜることができるので、顧客はもはやどちらのライセンスに従っているのか心配する必要がない。Elastic、Mongo、およびConfluentなどの企業は、それぞれElastic Cloud、MongoDB Atlas、Confluent Cloudといったサービスを提供しているが、それらが第3世代の代表だ。この進化の意味するところは、オープンソースソフトウェア企業が、今やソフトウェアインフラストラクチャの支配的なビジネスモデルとなる機会を持っているということなのだ。

コミュニティの役割

それらの第3世代の企業の製品は、確かにホスト企業によってしっかりと管理されてはいるものの、オープンソースコミュニティは、オープンソースプロジェクトの作成と開発において、いまだ中心的な役割を果たしている。1つには、コミュニティはもっとも革新的で有用なプロジェクトを発見し続けている。彼らはGitHub上のプロジェクトにスターを付け、そのソフトウェアをダウンロードして実際に試してみる。そして優れたプロジェクトだと感じたものは拡散して、他の人もその素晴らしいソフトウェアの利益を享受できるようにする。ちょうど、優れたブログ記事やツイートが感染のように広まるのと同じで、素晴らしいオープンソースソフトウェアもネットワークの効果を最大限に活用している。その感染を発生させる原動力となっているのがコミュニティというわけだ。

さらにコミュニティは、事実上それらのプロジェクトの「プロダクトマネージャ」として機能しているようなものだ。コミュニティは、ソフトウェアに対して機能強化と改良を求め、欠点も指摘する。製品に付随するドキュメントには、要求仕様書こそ含まれていないが、GitHubにはコメントスレッドがあり、Hacker Newsというものもある。そうしたオープンソースプロジェクトがコミュニティに誠実に対応すれば、やがてそれはデベロッパーが必要とする機能と性能を備えたものに、自然となっていくのだ。

またコミュニティは、オープンソースソフトウェアの品質保証部門としても機能している。ソフトウェアに含まれているバグや欠陥を指摘し、0.xバージョンを熱心にテストし、何が動いて何が動かないかをフィードバックする。そしてコミュニティは、すばらしいソフトウェアに対しては肯定的なコメントによって報いる。それによって、利用者数の拡大を促すことになる、

しかし、以前と比べて変わったことは、ソフトウェアプロジェクトの実際のコーディングについては、コミュニティはそれほど関与しなくなったこと。こうした傾向は、第1世代と第2世代の企業にとっては障害となるとしても、進化し続けるビジネスモデルの不可避な現実の1つなのだ。

Linus Torvaldsは、オープンソースのオペレーティングシステム、Linuxの設計者だ

デベロッパーの台頭

こうしたオープンソースプロジェクトにとって、デベロッパーの重要性が高まっていることを認識することも大切だ。伝統的なクローズドソースソフトウェアの市場開拓モデルは、ソフトウェアの購買センターとしてのITをターゲットにしていた。ITは、いまでもそのような役割を果たしているものの、オープンソースの本当の顧客はデベロッパーなのだ。彼らは、ソフトウェアを発見し、ダウンロードして開発中のプロジェクトのプロトタイプバージョンに組み込む、ということを普段からやっている。いったんオープンソースソフトウェアに「感染」すると、そのプロジェクトは、設計からプロトタイプ作成、開発、統合とテスト、発表、そして最終的に製品化まで、組織的な開発サイクルに沿って進行し始める。オープンソースソフトウェアが、製品に組み込まれるまでに、置き換えられるということはめったにない。基本的に、そのソフトウェア自体が「販売」されるということは決してない。それは、そのソフトウェアを高く評価しているデベロッパーによって選定されるのだ。それは彼ら自身の目で確かめ、実際に使ってみての判断であり、経営者の決定に基づいて決められたものではない。

言い換えれば、オープンソースソフトウェアは真のエキスパートを介して普及し、選択のプロセスを、これまでの歴史には見られなかったような民主的なものにした。デベロッパーは、自分の意志に従って行動する。これは、ソフトウェアが伝統的に販売されてきた方法と好対照を成している。

オープンソースビジネスモデルの美点

その結果、オープンソース企業のビジネスモデルは、従来のソフトウェアビジネスとはまったく異なって見えるものになった。まず最初に、収益ラインが違う。比べてみるなら、クローズドソースのソフトウェア会社は、オープンソース企業と比較して単価を高く設定できる。しかし今日でも、顧客は理論的には「無料」のはずのソフトウェアに対して、高額の対価を支払うことに、ある程度の抵抗を感じている。オープンソースソフトウェアは、単価は安くても、市場の弾力性を利用して全体としての市場規模を確保しているのだ。ものが安ければ、より多くの人が買う。それこそが、オープンソース企業が大きな規模で、かつ急激に製品市場に適合できた理由だ。

オープンソース企業のもう1つの大きな強みは、はるかに効率的かつ感染性の高い市場開拓の動きにある。中でも第1の、そしてもっとも明白な利点は、ユーザーはお金を払う前から、すでに「顧客」になっているということ。オープンソースソフトウェアの初期導入の大部分は、デベロッパーがソフトウェアを組織的にダウンロードして使用することによるものであるため、販売サイクルにおいて、市場への売り込みと概念実証の両方の段階を、企業自体が迂回できるのが普通だからだ。セールトークは、「あなたは、すでに私たちのソフトウェアの500のインスタンスを、あなたの環境で使用しています。エンタープライズ版にアップグレードして、これらの付加機能を入手されてはいかがでしょうか?」といったものになるだろう。これにより、販売サイクルが大幅に短縮され、顧客担当者1人あたりに必要なセールスエンジニアの数を大幅に減少させることができる。そして、販売費用の回収期間も大幅に短縮できるわけだ。実際、理想的な状況では、オープンソース企業は顧客担当者に対するシステムエンジニア数の比率を好ましいものに保って業務を遂行でき、四半期以内にセールスクオリファイドリード(SQL)から商談成立まで持ち込むことができる。

このようなオープンソースソフトウェアビジネスの感染性は、キャッシュフローの面でも、従来のソフトウェアビジネスよりはるかに効率的でいられるようになる。最高のオープンソース企業の中には、中程度の現金バーンレートを維持しつつ、3桁の成長率でビジネスを伸ばすことができたところもある。そんなことは、伝統的なソフトウェア会社では想像するのも難しい。言うまでもなく、現金の消費が少なければ、創業者にとっては希薄化も少ないことになる。

写真はGetty Imagesのご好意による

オープンソースからフリーミアムへ

変化し続けるオープンソースビジネスにおいて、詳しく説明する価値のある最後の様相は、真のオープンソースからコミュニティに支援されたフリーミアムへの緩やかな移行だ。すでに述べたように、初期のオープンソースプロジェクトは、コミュニティをソフトウェアベースへの重要な貢献者として活用していた。その際には、商業的にライセンスされたソフトウェアの要素がわずかでも混入すると、コミュニティから大きな反発を受けた。最近では、コミュニティも顧客も、オープンソースビジネスモデルについてより多くの知識を持つようになった。そしてオープンソース企業は「有料コンテンツの壁」を持つことで、開発と革新を続けていけるのだ、という認識も広まった。

実際、顧客の観点からすれば、オープンソースソフトウェアの価値を決める2つの要素は、1)コードが読めること、2)それをフリーミアムとして扱えることだ。フリーミアムの考え方は、それを製品として出荷しなければ、あるいはある一定数までは、基本的に無料で使用できるということ。ElasticやCockroach Labsのような企業は、実際にすべてのソフトウェアをオープンソース化するところまで踏み込みつつ、ソフトウェアベースの一部に商用ライセンスを適用している。その論拠は、実際のエンタープライズ契約の顧客は、ソフトウェアがオープンかクローズドかにかかわらず料金を支払うが、実際にコードを読むことができるのであれば、商用ソフトウェアを利用する意欲も高まる、というものだ。もちろん、誰かがそのコードを読んで、わずかな修正を加え、亜流を配布するという危険性もある。しかし、先進国では、すでにさまざまな分裂が生じているが、エンタープライズクラスの企業が模倣者をサプライヤーとして選ぶことなどありそうもない。

このような動きを可能にした重要な要因は、より現代的なソフトウェアライセンスにある。そのようなライセンスを最初から採用してた企業もあれば、時間をかけて移行してきた会社もある。Mongoの新しいライセンス、そしてElasticやCockroachのライセンスは、その良い例だ。10年ほど前に、オープンソースプロジェクトの原点となったApacheのインキュベートライセンスとは異なり、これらのライセンスははるかにビジネス向きで、モデルとなるようなオープンソースビジネスのほとんどが採用している。

(関連記事:MongoDBがそのコードのオープンソースライセンスを改定、オープンソースの“食い逃げ”に むかつく

将来は

4年前に、このオープンソースに関する記事を最初に書いたとき、私たちは象徴的なオープンソース企業が誕生することを熱望していた。Red Hatという1つのモデルしかなかった頃には、もっと多くのモデルが登場すると信じていた。今日、オープンソースビジネスの健全な一団を見ることができるようになったのは、非常にエキサイティングなことだ。これらは、オープンソースの遺伝子プールから登場してくるのを目にすることになる象徴的な企業のほんの始まりに過ぎないと、私は信じている。ある観点から見ると、何十億ドルもの価値があるこれらの企業は、このモデルの力を立証するものだ。明らかなのは、オープンソースはもはやソフトウェアに対する非主流のアプローチではないということ。世界中のトップクラスの企業がアンケート調査を受けたとき、その中核となるソフトウェアシステムを、オープンソース以外のものにしようとするような企業はほとんどないだろう。そして、もしFortune 5000の企業がクローズドソースソフトウェアへの投資をオープンソースに切り替えれば、まったく新しいソフトウェア企業の景観を目の当たりにすることになる。そしてその新しい一団のリーダーたちは、数百億ドルもの価値を持つことになるのだ。

もちろん、それは明日にも実現するようなことではない。これらのオープンソース企業は、今後10年間で、成長、成熟し、自社の製品と組織の開発を進める必要がある。それでも、この傾向は否定できない。そして、ここIndex Venturesでは、この旅の初期に、私たちがここにいたことを光栄に感じている。

画像クレジット:aurielaki

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(翻訳:Fumihiko Shibata)

ディズニー、Huluが原因で昨会計年度の損失は5.8億ドル

ストリーミングメディア・ビジネスは厳しい。Huluの株式を30%保有するDisneyは、前会計年度に5.8億ドルの損失を記録していたことがSEC提出文書からわかった。

提出文書によるとこれは「主として当社のHuluへの投資による多額の損失によるものであり、前年度に買収したBAMTechによる損失の減少によって一部相殺された」

BAMTechはESPN+などのサービスを支えるストリーミング技術だ。昨会計年度全体でDisneyの損失のうち10億ドル以上がストリーミングによるものだった。

一方、Disneyは自社のストリーミングサービスDisney+を2019年に公開予定だ。DisneyはHuluへの投資を増額することも計画中で、オリジナルコンテンツと海外展開に力をいれる。

Disneyは21st Century Fox買収の一環として、さらにHuluの30%を取得する見込みだ。もしHuluのビジネスが今会計年度と変わらなければ、Disneyの損失は増えるばかりだ。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

子どものモバイル端末の使用は悪ではない

【編集部注】著者Siri Fiskeは、メリーランド州ベセスダとワシントンD.C.にある少人数教育の学校MYSA Schoolの創設者であり校長だ。

ショッキングなNew York Timesの報道によると、我々が使うテックガジェットをデザインしたシリコンバレーのエンジニアたちは、彼らの子供にはガジェットをいつでもは使わせないのだという。こうしたエンジニアたちはスマホやiPadの長時間使用は子供の脳に悪影響を与えると信じている。Facebookの前従業員の1人は、テクノロジーは“我々の子供をダメにしている”と警告した。

こうした親はリラックスする必要がある。子どもに明け方までソーシャルメディアをブラウズさせるのは良いものではない、というのは事実だ。しかしまた、スマホやiPad、その他のガジェットが家庭と学校の両方においてパワフルな教育ツールであるということも事実だ。

全てのデバイスを悪いものとして禁止するより、親はスクリーンタイムを調整し、ためになる方法で子どもにテクノロジーを使用させるべきだろう。

シリコンバレーや世界中の高等教育を受けたコミュニティの親たちのパニックにもかかわらず、研究ではモバイル端末の使用が子どもにポジティブな影響を与えるかもしれない、としている。スイスの研究者が米国の大学を対象に実施した研究によると、親がスクリーンタイムを厳しく制限する子どもは学校での成績が悪いという。

そして迅速なフィードバックやマルチメディアの特集のおかげで、iPadは素晴らしい読書ツールとなっている。ロンドンのインスティチュート・オブ・エデュケーションの研究者によると、本だけを利用する子どもに比べ、iPadで読書をする子どもはより熱心で協力的、そして積極的に発言する。さらに本、iPadの両方で読書する社会経済的困難を抱える家庭の子どもは、学校での成績がかなり良い傾向にあるという。

スクリーンの使用そのものではなく閲覧する内容が鍵

そうした研究からわかるのは、善悪の鍵となるのはスクリーンそのものにあるのではなく、閲覧する内容にある。Cartoon Networkを2時間観るのと、National Geographicのドキュメンタリーを観るのとはかなり違う。教育的でないコンテンツの閲覧時間を制限したり、ソーシャルメディアを使用禁止にするというのは良い選択肢だ。

学校では生徒をサポートするのに授業を工夫するが、教育者はテックガジェットやアプリを使って学習プロセスをスピードアップすることができる。

初等、中等の生徒がiPadでさまざまな数学ゲームができるプラットフォームDreamBoxを考えてみてほしい。このツールは各ユーザーのためにレッスンをパーソナライズするのに1人の生徒につき1時間あたり4万8000超のデータポイントを集める。似たようなプログラムであるAlgebra Nationは、生徒がどうしたときに壁にぶつかるかを理解するためにクリックパターンを分析し、個人に合ったアドバイスを提供する。

そのような“対応性のある学習”プラットフォームはすでに高等教育においてものすごい結果を出している。コロラド工科大学では、対応性のある学習ツールの活用でコース習得率が27%、最終成績の平均が10%上がった。

教室でのテックの活用で教師はまた、問題を把握して予想する超人的な能力を獲得した。たとえば、ワシントン州スポケーンの学校では、どれくらい集中できているか、社会環境がどれくらい包括的か、どれくらいの頻度であきらめたい気持ちになるかを追跡するために生徒にオンライン調査を行う。そして教育者らは、生徒が教室内外のどういうところでサポートを必要としそうかを理解するためにダッシュボード経由でそのデータを分析する。

10年前は、学校が全ての生徒それぞれの日々の考えや気持ち、取り組んでいることなどを追跡するというのは非現実的だった。教室にテックを取り込むことでそのようなプラクティスがスタンダードになっていて、またそうなるべきだろう。

道理をわきまえていない人は、子どもが常にスクリーンにかじりつくのはいいことだと考え、人とのかかわりをアプリに置き換える。スクリーンの使用は本質的に子どもにとって有害だというのは、馬鹿げている。そろそろ教師や親は、懸念を広めるのをやめ、子どもにワールドクラスの教育を提供するのに最新テクノロジーを活用するときだ。

原文へ 編訳:Mizoguchi)

ドア・ツー・ドア配達DoorDash、全米50州をカバー

40億ドルという巨額の会社価値で2.5億ドルの資金調達ラウンドを終えたDoorDashが、新たに6つの地域でサービスを開始した。本日(米国時間1/16)よりアラスカ州アンカレッジ、モンタナ州ビリングス、ボウズマン、およびミズーラ、サウスダコタ州スーフォールズ、ノースダコタ州ファーゴー、ウェストバージニア州モーガンタウンおよびハンチントン、ならびにワイオミング州シャイアンで同サービスが利用可能になり、これで同社は米国全50州にわたって運用する初めてのオンデマンド・フードデリバリー・スタートアップになった。

「過去1年間だけで当社のサービス地域は北米600都市から3300都市へと4倍以上に増え、全米数億人にとってのドア・ツー・ドア配達を民主化した」とDoorDash共同ファウンダー・CEOのTony Xuが声明で語った。

2013年に設立されたサンフランシスコ拠点のDoorDashは、総額10億ドル近いベンチャー資金をSoftBank、Sequoia、Coatue Management、DST Global、Kleiner PerkinsけKhosla Ventures、CRVなどから調達している。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

米国の1600万世帯が地上波TVを利用、8年で48%増ーーニールセン調査

従来のケーブルテレビや衛星テレビではなくデジタルアンテナを使ったサービスを利用している米国の世帯数は過去8年間でほぼ倍増し、1600万世帯となったことがニールセンの最新調査で明らかになった。テレビを所有する米国の全世帯の14%が地上波で視聴している、としている。

ニールセンによると、ケーブルテレビや衛星テレビの契約を解除した“コードカッター”は基本的に2つのグループに分類されるという。

1つは、テレビをもっぱらアンテナ経由で視聴する年配の人で構成される平均年齢55歳のグループだー彼らはストリーミングサービスは全く購読していない。

計660万世帯を数えるこのグループは多様な家庭で構成され、平均収入は少なめだーこれは納得がいく。彼らにとって、コードカッティングはTV体験をパーソナライズするために無料コンテンツを有料サービスと組み合わせる手段というよりも、節約するためだろう。

計940万世帯を抱えるもう1つのグループは、Netflix、Hulu、Amazon Prime Videoといった購読ビデオサービスを少なくとも1つは利用している。こうした世帯の平均年齢は36歳で、若い傾向にあると同時に富裕であり、より多くのネット接続デバイスを利用している、とニールセンは指摘している。

彼らは他のことをしながらもデバイスにより多くの時間を割いているのでーおそらくゲームやソーシャルネットワークの使用だー彼らは従来のメディアをあまり利用していない。これがTV視聴時間に影響している。

コードカッターでビデオサービスを購読せず地上波を利用しているグループのテレビ視聴時間は1日あたり6時間超だ。これは、ビデオサービスを購読しているグループより2時間多いことが明らかになった。

ビデオサービスを購読しているグループはソーシャルメディアの使用も多い。これは、このグループの年齢や多くのデバイスを保有していることによるものだろう。彼らは毎日、平均1時間をソーシャルメディアに費やしていて、これはビデオサービスを購読していないグループより17分多い。

しかし、どちらのグループも“TV”コンテンツのほとんどをTVで視聴する傾向にある。スマホやタブレットといったデバイスの使用の増加にもかかわらず、テレビの視聴は主に大きなスクリーンで行われているようだ。

なお、コードカッターの中で、バーチャルプロバイダーへのアクセスを持つ購読サービスを利用しているグループも少ないながら増えている。YouTube TV、Hulu with Live TV、PlayStation Vue、Sling TVなどライブTVを提供するストリーミングサービスがある。このグループは2018年5月時点で130万世帯超に増えている、とニールセンは指摘する。(注記:ニールセンの数値は米国におけるテレビを所有する世帯数であり、こうしたサービスを利用するそれぞれのユーザーアカウント数ではない)

レポートではこの第3のセグメントについて深く掘り下げていて、そうしたグループは一般家庭に比べて大卒である傾向が56%超、子供を持っている傾向が19%超、そしてインターネットに接続するデバイスを所有している傾向が95%超多い。また、SVOD(オンデマンドの購読ビデオ)を利用するグループよりもわずかながらテレビを多く観る傾向にあり、視聴時間は、SVODグループが3時間22分なのに対して、3時間27分となっている。

イメージクレジット: Michael Blann / Getty Images

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(翻訳:Mizoguchi)

Firefoxのための実験工房Test PilotをMozillaが閉鎖へ、今後はMoz本体として新機能の実験を増やす

Mozillaが今日(米国時間1/15)、Firefox Test Pilot事業の閉鎖を発表した。これまでの3年間、Test PilotはMozilla Firefoxの実験的な機能を、志願したユーザーグループと共に試用する場だった。たとえばユーザーをユーザー追跡から護る繭のようなContainers機能は、のちにFirefox Facebook Containerエクステンションとして実現した。そのほか、スクリーンショットを撮るPage Shotや、最初のFirefoxとは無関係のテストとなったiOS用Lockboxアプリなどが、その例だ。

Test Pilotは消えゆくが、実験的機能のテストは今後も続ける、とMozillaは約束している。同団体の説明によると: “Firefox Monitorのようなプロダクトに導いたイノベーションは今後はひとにぎりの個人たちの担当とはせず、全組織の課題とする。Firefoxが築いてきた実験的精神は、誰もが担わなければならない。そういうテクニックやツールはわれわれのDNAでありアイデンティティだ。だから今度の、全組織浸透化はめでたいことである”。

Mozillaのもうひとつの約束は、Test Pilotという事業がなくなっても、これまでの参加ユーザーが使っているものを無効にはしないこと。その多くはmozilla.orgにおける正規のアドオンになるようだ。また、Mozilla Labsは継続して、Firefox for VRなどのプロジェクトを進めてゆく。

それでもなお、Test Pilotがなくなることは残念だ。それは小さなグループが、新しい便利な機能を低いリスクで試せる場所だった。サイドバー上のタブという、マイナーな機能も、そうやって実験された。今後実験はむしろ増える、とMozillaは言っているが、Test Pilot亡きあと、果たしてどうだろうか。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

米国政府データの電子化・公開を義務付ける法案が成立

連邦政府はおびただしい量のデータを生み出しているが、誰かに役立つような利用方法はほとんど保証されていない。それがOPEN Government Data Actで変わるかもしれない。昨夜大統領が署名して法律として成立した。

同法の本質は、政府機関がデータ(およびメタデータ)を公開可能なときには、機械可読形式で公開し、オンラインカタログ化することを必須にしたことにある。さらに、各機関は最高データ責任者を任命してこのプロセスを担当させることも義務化された。

この超党派による法案は、上院、下院をともにほぼ妥協なく通過したが、財務省は同法が適用される対象組織から除外されている。何か理由があったに違いないと私は想像している。

これは開かれた政府の推進者たちにとって大きな勝利だが、政府情報技術部門の桁外れな愚かさと陳腐さを考えると、喜ぶのはまだ少し早すぎるだろう。各機関が法を遵守するためには、必然的に多くの政策やシステムが更新される必要があり、それには何年もかかる可能性がある。それでも、良い方向に進み始めたことは間違いない。

同時に署名された別の法案(OPENは、利便性と駆け引き上の目的によりいくつかの法案と抱き合わせになっていた)では、対象の機関は政策の新規作成や変更には証拠の発見と提出が正式に義務付けられる。FCCなど一部の機関ではすでに義務付けられているが、その他の機関ではほぼ自由裁量だった。

当然だと思うかもしれないが——どの政策も証拠によって説明されるべきではないだろうか?——これは、たとえば各機関が質問に回答する際に、関連質問や方法のリストを(統計的方法にいたるまで)公に提示する必要がある、などのルールを成文化するものだ。、

同法および同時に通過した関連法案に興味のある人は、OPEN法の歴史がここで読める。法案の全文はここに、署名に関する発表はここにある。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

Googleの社員たちが強制仲裁に関する公衆教育活動を展開…契約社員への差別が未解決

Recodeの記事によると、Googleの社員たちのグループが明日(米国時間1/15)、TwitterやInstagramを利用して強制仲裁に関する一般公衆教育を行なう予定だ。東部標準時午前9時から午後6時まで、このグループは強制仲裁に関するストーリーや事実を共有し、また経験者(被害者)とエキスパートのインタビューもポストする。

この同じグループの35名が1か月前には共同請求で、いかなる差別的行為に関しても強制仲裁を廃止するよう求めた。同グループは、他社の労働者たちの運動への参加を呼びかけた。〔参考記事: Microsoftにおけるセクハラ強制仲裁の廃止

強制仲裁は職場における紛争を密室で調停し、上訴の権利は認められない。このようなタイプの合意は実質的に、社員が会社を訴訟することを防ぐ。

2万名にものぼる大型ストライキを受けてGoogleは11月に、セクハラと性的暴行に関する強制仲裁を廃止し、今後の調査の透明性などの施策を約束した。そしてAirbnb, eBayさらにFacebookも即座にこれに倣った。

しかしGoogleにおける仲裁方法の自由選択制は正社員に対してのみ認められ、何千人もいる同社の契約社員には認められていない。社員たちが12月にMedium誌で述べたように、依然として、人種や性、ジェンダー、年齢、能力などをめぐる差別のケースに対して強制仲裁が行われている。またアメリカの契約社員の場合は、契約書で仲裁に関する権利放棄を認めさせられる。

今日(米国時間1/14)のMedium誌上でグループは、“派手に報道されたけれど契約社員の契約書や雇用内定書面においてなんら有意な成果は得られていない”、と言っている。私が本稿を書いている時点でGoogleはまだ、古い仲裁ポリシーの載った内定書簡を送付している。

Googleに今問い合わせているので、何か得られ次第この記事をアップデートしよう。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

What3wordsは世界をフレーズに分割する

もし///joins.slides.predict を訪れたなら、///history.writing.closets に行ってみよう。お金に余裕があれば ///cattle.excuse.luggage の Bananas Fosterもいい。もちろん、帰る前に ///plotting.nest.reshape に寄るのを忘れずに。

もし世界がwhat3wordsの考える通りになったら、それが未来の案内方法だ。ミュージシャンのChris Sheldrickとケンブリッジ大学の数学者Mohan Ganesalingamが設立したこの会社は、世界を3つの単語からなる名前で識別できる3メートル四方のブロックに分けた。ブルックリンのTotonno’s Pizzeriaなら ///cats.lots.dame、ホワイトハウスは///kicks.mirror.tops。3つの単語だけなので、簡単に見つけられて住所も面倒な緯度経度も必要がない。

世界を57兆個の小さな区画に分割してそれぞれにユニークな名前をつけたwhat3wordsに投資が殺到

チームがこのシステムを作ったのは、旅行者が人里離れた場所を見つけのはほぼ不可能だと知ったからだ。たとえば東京は住所を頼りに移動するのが著しく困難なことで知られているし、アラスカでユルト(移動テント)を借りるときのように、住所が絶えず代わってGPS座標が役にたたないケースもある。代わりに、///else.impuls.broom と運転手に言うだけで済む。

同チームは4000万ポンドの資金を調達し、現在産業界や旅行会社向けのマッピングAPIを開発している。ここで地図を見ることができる

「私は世界中で音楽イベントを運営していた。会場の多くが郊外だ。楽器もミュージシャンもゲストも迷子になった。GPS座標を教えようとしたこともあるが、正確に覚えて伝えるのは不可能だった」とSheldrickは言った。「これは、音声のために作られた唯一のアドレス・ソリューションであり、英数字のコードではなく単語を使う唯一のシステムだ」

もちろん、これには慣れが必要だ。単語の発音を間違えておかしな結果を生むこともあるかもしれないが、ポストモダン時代を生きていくための良い方法の一つとは言えるだろう。それに、場所によっては詩的に聞こえる名前もあるし、気に入らなければいつでも ///drills.dandelions.bounds に行くことができる。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

シリコンバレーに移民がもっと必要なわけ

【編集部注】筆者Henrique Dubugrasはスタートアップにコーポレートクジットを提供する10億ドル企業Brexの創業者だ。

私のスタートアップの本部近くにあるサンフランシスコ入国管理局で「移民はここでは歓迎されている!」と叫ぶ抗議の声を聞いた時、かなり微妙なトピックをなんとシンプルなフレーズで表しているのだろうと感じた。移民起業家である私にはそう思えた。

ブラジルで育ったからか、移民法案に関する米国人の議論のニュアンスについて私はさほど詳しくない。しかし、ここサンフランシスコでは移民が仕事を生み出し、地元経済を刺激しているということは知っている。移民の起業家として、私はあらゆる要件を満たそうと試みたし、実際にこの国での私の存在価値を証明した。

私のテックスタートアップBrexは短期間に多くのことを成し遂げた。中でも偉業は、わずか1年で企業価値10億ドルとなったことだ。しかし、移民によって立ち上げられたスタートアップにも関わらずそのような高成長を達成した、のではなく、移民だったからこそできたことなのだ。グローバルブランド構築に向けた我々の成長や働き方の鍵となっているのが国際色豊かな人材の蓄積であり、これなしには今日の成功はなかっただろう。

Brexの話はこれくらいにして、シリコンバレーで最も成長しているスタートアップの共通点は何だろうか。そうした企業は移民によって運営されているということだ。実際、ベイエリアのSTEMテック労働者の57%が移民であるばかりでなく、米国の企業創業者の25%が移民だ。 SUN MicrosystemsやGoogleの創業者から、シリコンバレーで最も悪名高いツイッターユーザーであるTeslaのElon Muskまで、シリコンバレーでは移民の起業家はあげるときりがない。

移民はシリコンバレーで最初のマイクロチップを作っただけでなく、彼らはそうした企業を今日知られているテック大企業へと育て上げた。結局、10億ドルスタートアップの50%以上が移民によって創業され、そうしたスタートアップの多くがH-1Bビザを保有する移民によるものだ。

反直感的に聞こえるかもしれないが、移民は多くの仕事を作り出し、経済を強いものにした。シンクタンクNational Foundation of American Policy(NFAP)の研究で、移民が立ち上げた10億ドル企業が過去2年間で従業員の数を倍増させたことが明らかになっている。研究によると、「WeWorkは2016年から2018年にかけて従業員数を1200人から6000人にし、Houzzも過去2年間で800人から1800人に増やし、Cloudflareの従業員は225人から715人になった」という。

Brexでも同じような成長がみられた。1年の間に我々は70人を雇用し、雇用創出に600万ドルを投資した。我々のスタートアップだけではない。Inc.が最近報じたが、「[NFAPによる]レポートによると、移民が築いたユニコーンスタートアップ50社の合計企業価値は2480億ドルで、平均1200もの雇用を生み出した」という。

我々の成功の基礎原動力となっているのは国際色豊かな人材だ。主要人材の多くはウルグアイやメキシコといった南米中からきている人たちだ。事実、社員の42%が移民で、6%が移民の子供だ。多くの研究で、人種などのバラエティに富むチームは生産的で、チームワークがいいことがわかっている。しかしそれは、国際色豊かな人材に賭けるべき理由の一部にすぎない。それぞれの国から来ている優秀な人と働くと、それが作用してクリエイティブなアイデアがわき出るようになり、そして協調的になり、快適なゾーンからさらに一歩前に推し出してくれる。よりベストな状態へとあなたを駆り立てるのだ。

移民がこの国にもたらしたポジティブな貢献を考えると、移民政策はさほど制限的ではなかったと考えるかもしれない。しかしながら、そうではない。私が直面している難題の一つは、ペースの速い、競争の激しいマーケットでイノベーションを続けるために経験のある、適切なエンジニアやデザイナーを雇用することだ。

これはテック業界では世界共通の課題だ。過去10年間、ソフトウェアエンジニアは米国において十分に確保するのが最も難しい職業だった。経営者は優秀な人材やエンジニアにはマーケットレートに10〜20%上乗せした額を喜んで払う。しかし、私は2022年までに米国ではエンジニア200万人が不足すると予想している。イノベーションを起こす人材なくしてどうやってイノベーションをリードできるというだろうか。

問題をより深刻にさせているのは、優秀な移民への機会とビザのタイプがかなり少ないことだ。これは雇用の成長、知識の共有、そしてこの国におけるテクノロジーの躍進を妨げている。そして、制限の多いビザの法律を緩やかなものにしなければ優秀な人材を他の国にとられてしまうリスクがある。

今年H1-Bビザの申請が始まったが、このビザは取得が難しくなり、海外の人材を獲得するのは費用がかかるものになった。だからといって今が海外の優秀な人材を見捨てるときというわけではなく、あなたのスタートアップにとって競争面でアドバンテージをもたらすような専門性の高い労働力に投資をするときなのだ。

すでに、エンジニアの人材が急激にカナダに向かっている傾向があり、2017年には40%上昇した。トロント、ベルリン、シンガポールは急速にテックハブとして成長していて、多くの人がそうした都市が成長、人材、最新テクノロジーの開発面ですぐに米国をしのぐようになることを恐れている。

米国拠点のテック企業は2018年に3510億ドル売上げた。米国はこの大きな売上ソースを失うことはできない。ハーバード・ビジネススクールの教授でThe Gift of Global Talent: How Migration Shapes Business, Economy & Societyの著者であるWilliam R. Kerrは、「あなたがいかに経済的に成功するかは、活発な人材を惹きつけ、発展させ、そして取り込むあなたの能力に左右されることを今日のナレッジエコノミーは示している」としている。

移民は、シリコンバレーを今日のような原動力となるものにした。高度な技術を持つ人材の流入を厳しく制限することは誰の益にもならない。移民は、米国が世界でも最良のテックハブを築くのを手伝ってきたーいま、スタートアップは我々のテクノロジーや経済、地域社会が成長し続けられるよう、国際人材に投資するときだ。

イメージクレジット: BRYAN R. SMITH/AFP / Getty Images

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(翻訳:Mizoguchi)