LINEの2014年4〜6月期、売上高は前四半期比17.5%増の212億円に

親会社である韓国NAVERの発表などを通じて、東京証券取引所に上場申請を行ったことが明らかになったLINE。米国での同時上場も検討しているという同社が7月30日、2014年12月期第2四半期(4-6月)の連結業績を発表した。売上高は212億円(前四半期比17.5%増)、基幹事業となるLINE事業の売上は182億円(同25%増、前年同期比146%増)となった。

LINEの利用者数は引き続き拡大しているそうだ。インドネシアをはじめとしたアジア諸国でユーザーが堅調に拡大しているほか、メキシコやコロンビアなどの中南米諸国でも、プラットフォーム戦略が受け入れられて新規ユーザーが拡大しているという。ユーザーは世界4.8億人にものぼる。

また、ユーザーが制作するスタンプの販売や購入ができるプラットフォーム「LINE Creators Market」を4月に発表。販売を開始した5月8日から1カ月間での販売総額は1億5000万円となった。(公式の)有料スタンプの売上は月間の最高販売額を更新していると説明。特に6月より提供を開始したアニメーションスタンプの売上が好調だという。

ゲーム事業においては、7月より欧米および東アジア市場に提供を拡大した「LINE:ディズニー ツムツム」が好調(ダウンロード数も世界2000万件となった)なほか、日本、タイ、台湾などで「LINE クッキーラン」、「LINE レンジャー」のテレビCMやオフラインイベントを通じたプロモーションを展開。利用者と売上が増加した。タイでは「LINE I am Wukung」を提供するなど、ローカライズしたサービスの提供を進めている。

また広告事業では、公式アカウントやスポンサードスタンプの導入企業が世界各国で増加して成長を継続。2月に発表した「LINE ビジネスコネクト」の導入企業も徐々に増加しているとのことだ。


アイスタイルがコスメのサブスクリプションEC「GLOSSYBOX」を買収


2012年頃に急増したサービスに「サブスクリプション(定期購入)型EC」がある。毎月(ときには別の期間の場合もあるが)定額を支払えば、サービス事業者が選んだ嗜好品やファッションアイテムなどが定期的に送られてくるというものだ。

4月に6000万ドルの調達を発表した「Brichbox」のようにコスメを取り扱うサービスや、質問に答えると毎月好みに合った靴を届けてくれる「ShoeDazzle」、さらには毎月髭剃りを提供してくれる「Dollar Shave Club」のような変わり種もあったし、国内では日本酒を扱う「SAKELIFE」などもある。日米ともに同様のモデルのサービスが一気に増加したが、今ではそれも一段落した様子。一部のサービスはすでに終了しており、その勝敗ははっきりしている(すでに2012年時点で、サブスクリプションコマースはピークを過ぎているという話もあったようだけれど)。

そんなサブスクリプションコマースに関するニュースが久々に飛び込んできた。コスメ情報サイト「@cosme」運営のアイスタイルが、コスメサンプルのサブスクリプションコマース「GLOSSYBOX」を日本で運営するビューティー・トレンド・ジャパンの買収を発表したのだ。

GLOSSYBOXはもともとドイツでサービスを立ち上げており、ドイツのベンチャーキャピタルであるRocket Internetなどが出資している。日本では現在、月額1620円で毎月約300ブランドの中から4〜5アイテムのコスメサンプルを届けているそうだ。日本でのサービスインは2011年末。現在はユーザー数を公開していないが、2012年9月時点で首都圏の働く女性を中心に3万1000人を集めているとのことだった。国内では、「VanityBox」「PurunusBox」「My Little Box」などの競合サービスがある。

この手のコスメサンプルのサブスクリプションコマースの多くは、化粧品メーカーから会員へのサンプリング目的で無料ないし安価にサンプルを入手し、これまた安価にユーザーに届けるというビジネスモデルだ。メーカーからすれば美容に興味のあるユーザーに直接サンプリングできるわけだから都合がいいだろうし、事業者側も一般的なサブスクリプションコマースより収益性の高いビジネスを展開できるように見える。アイスタイルでは既存事業で化粧品メーカー約850社とのネットワークがあるし、グループ会員286万人というユーザーベースも持っているので、シナジーも想像できる。買収額は非公開となっているが、つまりは開示義務のない規模とも読めるわけで、同社にとっては「いいお買い物」となるのではないだろうか。

2015年6月期は収益基盤強化に注力

なおアイスタイルは、7月30日に2014年6月期の通期決算を発表している。売上高は71億4100万円(前期比11.4%増)、営業利益は4億7300万円(同35.9%減)、純利益は1400万円(同96.7%減)となっている。

2015年6月期(今期)は収益基盤強化の時期と定めて、ユーザー向けサービスの抜本的改革に注力する。主力メディア@cosmeをタイムライン化するなど大幅刷新するほか、グローバルサイト(英語、中国語簡体、中国語繁体、韓国語)の展開も開始する。2015年6月期の収益予測は、売上高が73億5900万円(前期比3.1%増)、営業利益2億5400万円(同46.3%減)、純利益11億円(同685.7%増)。2016年6月期には、売上高100億円、営業利益15億円を目指す。


「LINE MALL」の定額配送はユーザーの心理的ハードルを下げる

新品・中古に関わらず、あらゆる商品をスマートフォンで売買できるフリマアプリ「LINE MALL」が30日、離島を含む全国一律でサイズ別の定額料金で配送できる「LINE配送」を開始した。ファッション通販を手がけるフェリシモとの提携により実現した。例えば、3辺の長さの合計が60cm以下の送料は全国一律で650円。佐川急便やヤマト運輸で東京から北海道まで送った場合と比べて500円近く安くなるわけだが、本質はユーザーの心理的なハードルを下げるところにありそうだ。

LINE MALLは出品者が送料を全額負担するため、販売価格に送料を上乗せした金額で出品する仕組み。購入者としては、地域ごとに異なる宅配業者の料金表をチェックして送料を計算しなくて済むので便利だが、出品者からすると、配送先が遠くなるほど送料がかさみ、その分の収益が少なくなるわけだ。

一方、LINE配送は誰に売れても送料が変わらないので、あの見にくい配送料金表とにらめっこして値付けに悩む必要もなくなり、出品時の心理的なハードルが下がりそう。レターパックライトやクロネコメール便といった安価な配送方法も選べるので、商品のサイズに応じてLINE配送と、これまでどおり一般の配送サービスとを使い分けるのがよさそうだ。

心理的なハードルが下がるのは出品者だけではない。LINE配送を利用する出品者は取引成立後、日本郵便の「ゆうパック」で神戸市にあるフェリシモの物流センターあてに着払いで商品を送り、物流センター内で購入者の配送先情報を印刷した伝票に貼り替えて出荷する。物流センターを中継することで、出品者と購入者が個人情報をやりとりしない「匿名配送」が可能になるわけだ。購入者は出品者に直接住所を教える必要がなくなるので、今まで以上に安心して取り引きできるかもしれない。

LINE MALLは2013年12月にサービスを開始。現時点での月間流通総額は非公表だが、アプリのダウンロード数は約200万件。スマホ向けフリマアプリの競合としては、メルカリやFril(フリル)がある。メルカリは7月に400万ダウンロードを突破し、月間流通金額は「10億円を大幅に超える」ことを明らかにした。一方、女性に特化したフリルも7月、アプリのダウンロード数が150万件に達し、月間流通総額が5億円を上回ることを発表した。LINE MALLは年内にも企業による出品を開始し、事業拡大を図る狙い。LINEは今後、物流センターで他社のチラシを同封する広告ビジネスも視野に入れているという。


“活動量計もどき”はいらない–オムロンが30億円規模のベンチャー投資

京都府京都市に本社を置く大手電機メーカーのオムロンが、7月1日付で投資子会社のオムロンベンチャーズを設立。コーポレートベンチャーキャピタル(CVC)として、2016年までの3年間で30億円規模のベンチャー投資を実施することを明らかにしている。

オムロンと言えば、コンシューマ向けの健康医療機器から制御機器や電子部品、車載電装部品などさまざまな事業を展開している。時価総額ベースで1兆円近い大企業がこのタイミングでベンチャーと組むことを決めた理由はどこにあるのか。

実は日本最古の民間VC設立にも関わったオムロン

実はオムロンは、日本最古の民間VCの設立にも関わっているそうだ。オムロン創業者で当時の代表だった故・立石一真氏が、京都経済同友会のメンバーとともに1972年に立ち上げた「京都エンタープライズディベロップメント(KED)」がそれだ。同社は日本電産などへの投資を行い、1979年に解散している。ちなみにKEDの設立から約2週間後、東京ではトヨタ自動車などが出資する日本エンタープライズ・デベロップメント(NED)が設立されているそうだ。

オムロンベンチャーズ代表取締役社長の小澤尚志氏

最近では通信キャリアだってテレビ局だってCVCを立ち上げているが、オムロンもそんな流れを受けているのだろうか。オムロンベンチャーズ代表取締役社長で博士の小澤尚志氏に率直に聞いたところ、「(オムロンベンチャーズを)立ち上げる中で知ったのだが、案外世の中ではやっていたとは知らなかった」と語る。

オムロンでは、2011年から10年間の長期経営計画「VG2020」を掲げており、その中でも2014年以降では「地球に対する『新たな価値創出』へつながる新規事業づくりに取り組む」としている。この経営計画の中で、ベンチャー投資の可能性を模索していたのだそうだ。

「オムロンは『ソーシャルニーズの創造』を掲げてきた会社。世の中で解決しないといけない課題を技術というよりはコアバリューとして提供してきた。例えばオムロンが世界で初めて提供した自動血圧計。これによって、これまで病院に行って看護師を必要としていた血圧測定が、家庭にいながら実現できるようになった。これは健康状態を手軽に見られる、より長く健康に生きたいという課題を解決しようとしたもの」(小澤氏)

オムロンは「課題解決のための会社」と語る小澤氏。もちろん自社に技術があればそれは活用するが、技術がなければ世の中の別の場所から獲得してくることもいとわないという考えだという。「本質的には、持っている要素技術でどんな課題を解決できるかを考えるのではなく、まず先に課題とその解決方法を考えている」(小澤氏)

しかしそうは言っても大企業の中でイノベーションを起こすのは難しいのは小澤氏も認めるところで、「いいモノを安く作るのは得意だが、新しいモノを作るのはなかなか大変」と語る。そこでオムロンベンチャーズを立ち上げ、速いスピードで投資し、協業できる体制を作る狙いがあるという。

オムロンベンチャーズは、ファンドを組成せず、オムロングループの資本をもとに投資を行う。対象とするのは「安全・安心センシング」「ライフサイエンス」「ヘルスケア」「ウェアラブルデバイス」「IoT」「環境・エネルギー」「農業関連」といった分野。オムロンベンチャーズがオムロングループ各社の新規事業のニーズをヒアリングし、協業の可能性のあるスタートアップを中心に、数千万円から数億円程度の出資を行う予定だ。すでにセンシングや農業関連の分野では具体的な話が進んでいるとのことで、第1号案件については、早ければ9月にも決定する予定だ。

モノづくりのノウハウをスタートアップに開放

小澤氏によると、今後は加工機や成形機など、自社グループの設備に関しても投資先に開放することを検討しているそうだ。「例えばfoxconnのようなEMS(Electronics Manufacturing Service:電子機器の受託生産サービス)がハードウェアベンチャーを助けているところがある。我々もハードウェアを安く製造できるノウハウや検品のノウハウなど、一通りの『モノづくり力』を持っている。そしてグローバルなネットワークもある。逆にベンチャーマインドやそのスピード感、テクノロジーは弱い。ならば我々がやるべきなのは、自分たちの能力やアセットをシェアすることだ」(小澤氏)

例えばスマートフォンアプリであれば、ここ数年のクラウドの普及によってスケールのための課題はある程度解決されたかも知れない。だがモノづくりとなるとQCD(Quality:品質、Cost:コスト、Delivery:納期)が求められる。その課題を解決するパートナーとしては最適だと小澤氏は語る。

ハードウェアのQCDまでケアできる連携体制と聞けば、ハードウェアスタートアップにとっては期待が高まるかも知れない。実際、ハードウェアスタートアップ関係者から、部品の調達や組み立てに苦労したという話を聞くことは多い。

しかしこの取り組み、M&A先の発掘のための施策にも見えなくもない。小澤氏も「本音を言うとそれがないわけではない」と可能性については否定しないが、あくまでM&Aありきという話ではないと続ける。「M&Aは場合によりけりだと思っている。パートナーという距離のままのほうがいいケースとよくないケースがあると思っている。グループに入った瞬間、大企業のしがらみだってあるはずだ」(小澤氏)

「活動量計もどき」のウェラブルデバイスはいらない

さて、オムロンベンチャーズの投資領域には「ウェラブル」とあるが、オムロンと言えばこれまでにも歩数計や活動量計など、(今時のウェアラブルデバイスとは方向が異なるが)ヘルスケア関連のウェアラブルデバイスを提供してきたメーカーだ。どういうスタートアップと連携する可能性があるのか、改めて聞いてみたところ、小澤氏は以下のように語った。

「血圧、活動量、睡眠時間については、(デバイスを)持っているのでもういいんじゃないかなと思っている。だがこれらのデータを使ってアプリを開発してもらう、さらには身体的な情報だけではなくて、意思やメンタルに関する情報までを取得しないと総合的な健康というのは見ることができないと思っている。活動量計もどきのウェラブルには正直興味がなくて、もっと先を一緒に考えたい」


メルマガの次はオンラインサロン? ホリエモンが月額1万円の「堀江貴文サロン」始動

いっときの有料メルマガブームの火付け役となったホリエモンこと堀江貴文氏。獄中にいながら年商1億円以上を稼いだことで知られるが、次に目を付けたのは有料オンラインサロンだ。Facebookグループのクローズドなコミュニティで交流する月額課金型サロンプラットフォーム「Synapse」で8月1日から、月額1万円の「堀江貴文サロン」をオープンする。7月28日には200人限定で会員募集を開始した。

具体的な活動内容としては、月1回、会員限定でオフラインの勉強会や、Google+ハングアウトなどを使った「オンラインオフ会」を開催。そのほかには、会員限定で突発的に生放送を配信したり、動画やテキストによるコンテンツも配信していく。今までのメルマガのQ&Aコーナーでは難しかった堀江氏との濃密なコミュニケーションや、参加者同士の交流が図れることが特徴だという。

堀江氏が有料メルマガを始めたのは2010年2月。その後、ネットの著名人や芸能人などが相次いで有料メルマガに参入したが、Synapseを運営するモバキッズ代表取締役社長の田村健太郎氏が「ブームは2年前くらいに沈静化した」と言うように、2013年頃には多くの廃刊もあった。オンラインサロンがメルマガに続くネットの月額課金モデルとして成立するかどうかは、ひとまず堀江貴文サロンが試金石となりそうだ。

モバキッズはSynapeseで平均単価1000円のオンラインサロンを複数運営し、売上の20%を手数料として徴収している。現在は「読者との交流に慣れているネットリテラシーの高いブロガー」(田村氏)が中心にサロンを開設。最も人気を集めているのは、はあちゅうこと伊藤春香氏と村上萌氏が手がけるサロンで、参加者は752人に上る。今後は地下アイドルなど非ITなジャンルの著名人を「ファンクラブのリプレイスとして」取り込むとともに、高額なサロンについては「書籍を20〜30万部売るような著者が少数のファンと交流できる場所」を目指していくという。


スマートロックとクラウドソーシングが連携するとどうなる?エニタイムズとAKERUNが試験サービス


先日インキュベイトファンドとディー・エヌ・エーからの資金調達を発表した生活密着型クラウドソーシングサービス「Any+Times」運営のエニタイ ムズ。同社がスマートロックシステムの開発を手がけるAKERUN(アケルン:現在法人化準備中)と連携したサービスを9月から試験的に提供することを明らかにした。

Any+Timesは家事代行を中心としたクラウドソーシングサービス。これに、AKERUNが開発するスマートロックシステムを組み合わせることで、家事代行の際のセキュリティの向上や入退室管理、鍵共有の効率化を図るという。

AKERUNが手がけるスマートロックシステムの中核となる「鍵ロボット」は、あらかじめスマートフォンとBluetoothでペアリングしておけば、スマートフォンが扉(というかロック)に近づくだけで自動で鍵を開けることができるというもの。他者のスマートフォンへの開錠権限を付与したり、時間を設定して開錠するといった機能も備える。単三電池1本で1年間利用できるそうだ(電池の残量についてはスマートフォン経由で知らせてくれるらしい)。現時点では詳細を聞けなかったが、特許申請中の新技術でセキュリティも強化しているということだ。

この鍵ロボットを持つAny+Timesユーザーは、家事代行を依頼する際、サポーターズ(Any+Timesで家事代行を請け負うユーザー)のスマートフォンに対して開錠権限を付与できるようになる。これによって、サポーターズは直接依頼人と会う必要なく、スマートフォン1つ持って家事を代行できるようになるというわけだ。以前エニタイムズ代表取締役社長兼CEOの角田千佳氏に聞いたところ、「最近ではAirbnb向けに提供している部屋の掃除などでAny+Timesを利用するユーザーもいる」と話していたのだけれど、そんな場合でもサポーターズ向けに合い鍵を作ることは少しためらわれる。その点、この仕組みがあれば、いらぬトラブルを避けることができる。

AKERUNはハードウェアエンジニアやソフトウェアエンジニアなど9人からなるチーム。エニタイムズのウェブディレクターである小林奨氏もそのメンバーだったことから、今回の連携が実現したという。まずは数人のAny+Timesユーザーに鍵ロボットを無料貸与して、Any+Timesのスマートフォンアプリの提供に合わせて試験的にサービスを開始する。年内にも正式に鍵ロボットを販売するよう準備中とのことで、今後はクラウドファンディングなどを通じて資金を集める予定だという。価格は現時点では未定だが、2万円程度での販売を目指すそうだ。また、Any+Timesで利用する場合は割引購入できるプログラムも用意するとのこと。

これまでにも、「Kevo」や「Lockitron」(現在プレオーダーとなっている)、「Goji」といったスマートロックシステムが海外ではあったようだが、日本発のスマートロックはクラウドソーシングと連携してどのようなイノベーションを起こしてくれるのだろうか。


黒い画面不要、非エンジニアも使えるウェブ制作バージョン管理システム「universions」

チームでウェブサイトを制作する際にありがちなのが変更内容の衝突。予期せぬファイルの上書きや誤削除を防ぐために、ウェブ制作の現場では「GitHub」や「BitBucket」などのバージョン管理システムがエンジニア間で普及しているが、システムに詳しくないデザイナーやクリエイターにとっては利用のハードルが高かったりする。そこで、ウェブ制作現場におけるメンバー間のスキルの気にすることなく使えるようにしたのが「universions」だ。2014年1月からオープンβ版として提供されていたが、7月28日に正式版をリリースした。

従来のバージョン管理システムで必須だったデータの格納場所であるリポジトリの準備や、非エンジニアにとって取っ付きにくいターミナル(黒い画面)での操作を必要とせず、専用クライアントの直感的な操作でバージョン管理を行えるのが特徴。ファイルは自動的に履歴管理されるため、誤ってファイルを上書きしたり削除してしまった場合でも履歴から簡単に戻せるようになっている。PhotoshopやIllustratorなどのファイルをプレビューする機能もあるため、デザイナーに作ってもらった成果物を確認するたびに重たい専用ソフトを立ち上げる面倒さからも解放されそうだ。

ファイル管理以外にも、プロジェクトごとにチャットやタスク、Wikiといったコラボレーション機能をひと通り揃えているので、メンバー間でコミュニケーションを取るためにメールやSkype、Facebookメッセンジャーなど別のツールを使い分ける必要もなくなる。WindowsやMac、ウェブブラウザーからの利用に対応している。

正式版の公開にあわせて、最新のファイルをuniversionsが用意するテストサーバーに反映するプレビューサーバー機能を追加した。従来のウェブ制作では自前でテストサーバーを構築し、FTPなどで最新のファイルをアップロードする必要があったが、こうした手間が省けるようになるわけだ。プレビューサーバーでは静的なサイトが動く環境のほか、WordPressが動くプラットフォームなどが用意されている。

料金体系はプロジェクトの作成数によって異なり、3件まで作成可能なMicroプラン(月額300円)、10件まで作成可能なSmallプラン(同900円)、20件まで作成可能なMediumプラン(同1500円)、50件まで作成可能なLargeプラン(同2900円)がある。プロジェクトの容量はいずれも1GB。初回のみMicroプランが45日間無料で試せる。メンバーとしてプロジェクトに参加するだけであれば無料となっている。

universionsを運営するユニマルは、2013年5月に創業した鹿児島のスタートアップ。代表取締役の永田司氏は「東京と比べるとコネクションが形成しづらく不利な現状がある」というが、リモートワークを可能にするuniversionsを提供する上で「一番の顧客が自分たちでありたい」と話す。「ITサービスは世界をターゲットにすることが多く、僕らのサービスも例外ではない。日本の中で地方か東京かはあまり課題にならない。地方発のスタートアップとして成功することで、場所が課題ではないことを証明したい」。


App Storeトップセールス常連ゲームの「運用スケジュール」を分析してみた

編集部注:この原稿は、スマートフォン向けゲームなどを手がけるワンオブゼムでDivision Managerを務める高橋遥人氏による寄稿である。同社は「ガチャウォリアーズ」をはじめとするゲームを提供する一方で、他社の人気ゲームの運用方法を分析するサービス「Sp!cemart(スパイスマート)」を手がけている。本稿では同サービスによる分析レポートを紹介する。前回の記事では、「パズル&ドラゴン」(以下、パズドラ)と「モンスターストライク」の運用方法、およびApp Storeトップセールスの1位と2位の逆転現象が発生した背景を分析した。今回はApp Storeトップセールス常連ゲームの「運用スケジュール」について紐解いてもらった。

ゲーム会社の実力が如実に表れる「運用スケジュール」

運用スケジュールとは、ガチャやセール、PvP(person versus person)と言われる対人戦などのイベントが、どのような日程で実施されているかのスケジュールを指す。単純にスケジュールと言ってもその実施方法は多岐にわたる。筆者としては、運用スケジュールはゲーム各社の運営・開発チームの実力が如実に表れるものだと考えている。

具体例を説明するにあたってわかりやすいのは、パズドラの曜日イベントだろう。曜日イベントとは各キャラクターの「進化素材」が手に入るもので、月曜日以外の火曜日から金曜日まで開催されている。このため、「月曜は曜日ステージがなく、それ以外の平日は進化素材が手に入る」というスケジュール感がユーザーに浸透していると想定される。

東京ディズニーランド(TDL)に代表されるテーマパークでも「スケジュール・季節感」は非常に大切にされている。我々はTDLに足を運ばなくても、9月と10月にはハロウィーンイベントがあることを知っているし、同様にクリスマスイベントの時期もおおよそ察しがつく。それがTDLへ足を運ぶ動機にもなっている。

それでは、スマートフォンゲームの世界はどうなっているのだろうか? ここからは具体的に月ごとの各ゲームのスケジュールを見ていく。

【1】ラブライブ!スクールアイドルフェスティバル

最初に紹介するのが、KLab社が提供する音ゲー「ラブライブ!スクールアイドルフェスティバル」だ。運用スケジュールは非常にわかりやすい。毎月15日と最終日の16時から新クリエイティブ追加のガチャイベントが始まるのだ。それに伴い、App Storeのトップセールス(売上)ランキングも上昇している。

下記の図はSp!cemartでラブライブの運用スケジュールを分析したものだ。青い折れ線グラフはApp Storeゲームカテゴリのトップセールスランキング、オレンジの折れ線グラフはゲームカテゴリの無料ランキングの順位、Descriptionとはイベントの概要を指している。

(引用:Sp!cemart)

ガチャイベントが毎月同じスパンで繰り返されるため、ユーザーは毎月15日と月末前後には告知がなくても「ラブライブ」に戻ってくる。ラブライブは特にコアなユーザーが多く、ガチャイベント限定のサイドストーリーもキャラとの「絆ポイント(ステージをクリアすると貯まってくポイント)」を貯めると見ることができるので、コンプリート欲が非常に上手くかき立てられていると推察できる。

【2】ドラゴンポーカー

次に紹介するのがアソビモ社が提供するリアルタイムポーカーカードゲーム「ドラゴンポーカー」だ。同ゲームもラブライブと同様に、スケジュールをかなり意識していることが下記の図から見て取れる。ドラゴンポーカーのポイントは「毎週金曜日」である。

(引用:Sp!cemart)

ドラゴンポーカーは毎週金曜日(実施しない週もあり)の15時〜16時でメンテナンスを行い、その後にガチャイベントを開催している(メンテナンスは上記記載の時間よりも長いこともある)。App Storeのトップセールスを見ると、イベント実施前は毎回40位前後だが、実施後は2位や3位まで一気にランクアップするのが特徴である。

オレンジの線はFreeランキング(無料ダウンロード数)の推移であるが、このランキングも5月9日、16日に一気に上昇しているため、「リワード広告(ユーザーがゲームをダウンロードした際に、サイト内ポイントなどが付与される広告)」などの施策を行っていることが伺える。リワード広告でDAUを増やし、売り上げを上げるサイクルを非常にうまく回しているように見受けられる。

【3】三国インフィニティ

最後にポケラボ社が提供するトレーディングカードゲーム「三国インフィニティ」だ。三国インフィニティはセールイベントの量が非常に多いことに加え、ガチャイベントやPvB(Person versus Boss)と言われる、プレイヤーがボスなどを倒しアイテムをゲットするマラソンイベントを行っているのが特徴だ。

(引用:Sp!cemart)

イベントのスケジュールを見るとわかりやすいが、月に大きく3つのタームが存在する。毎月初旬、中旬、下旬と分けてイベントを実施している。その切り替えのタイミングも見事だ。これだけ多くのイベントを追加しているにもかかわらず、11時から12時までのたった1時間でメンテナンスを行い、スムーズに切り換えている。

もう1点、上記の図を見ていただいてもわかるが、プッシュ通知の配信数が月初に集中している。つまり、三国インフィニティは特に「月初ターム」のイベントを重要視していることが伺える(他の月も同様である)。

ユーザーの「スケジュール感」と息を合わせた運用が効果的

先にも記載したが、運用スケジュールを最適化することによって、ユーザーは「告知がなくても」ゲームを再起動するきっかけになっていると想定できる。ユーザーが抱く「スケジュール感」と息を合わせて運用スケジュールを組むことが、一定の効果を生み出すのは間違いないだろう。

その一方で、そうはうまくはいかない現状もある。新しいクリエイティブやステージの追加には、現状のApp Storeの仕様だとアプリのアップデートが必要不可欠だからである。つまり、運用はアップデートスケジュールに大きく影響されてしまうということだ。冒頭で、ゲーム運営は運営・開発チームの実力が如実に表れる、と記載したがその理由が上記である。
 
運営を成功させるためには、運営および開発の息がぴったり合い、さらに売り上げも上昇させるチームの認識が必要であると考える。運営および開発も、ゲームというくくりでなく、あくまでユーザーへのエンターテインメントの提供と考え、市場拡大に貢献していきたいものである。


サイバーエージェントがAmeba事業の大改革、人員を半減しネイティブアプリや音楽ストリーミングなど新領域に

サイバーエージェントは7月24日、2014年9月期第3四半期の決算説明会を開催した。その中で、主力事業の1つであるAmeba事業の人員を現在の1600人から800人に半減し、800人を新たな成長分野にあてる大幅な構造改革に踏み切ることを明らかにした。

Ameba事業ではこれまで、「ガワアプリ」(ブラウザの外側だけ、という意味でウェブブラウザを表示するスマホアプリのこと)こそ提供してきたが、ネイティブアプリではなくブラウザベースでAmebaのプラットフォームを構築することに注力していた。

今回の構造改革でCP事業本部(ゲーム、コミュニティ以外のネイティブアプリ事業。内製のほか提携やM&A含む)、コミュニティ事業本部(Amebaの既存コミュニティサービスおよび各サービスのフルネイティブ化)、新規事業(音楽、動画関連の新事業)の3つの事業部を設立。Ameba事業から離れる800人を3つの新事業にあてる。

決算説明会の場でサイバーエージェント代表取締役の藤田晋氏は「Ameba事業は決してジリ貧になっているわけではないが、早めの構造改革が得策と考えた。これまで進めてきたブラウザのプラットフォーム戦略は一定の安定収益が得られているが、急激な拡大は難しいと判断した」と説明。明日7月25日に社内で説明会を開催し、8月1日付けで辞令を出す。

大幅な人員減になるが、藤田氏は「LINEが400億円(LINEの2013年通期の単体売上高)、600人規模でやっている。メディアを運営する規模としては適正。一気にスマホシフトした中で残った体制なので、いいタイミングで整理できたと思っている」と説明する。

新規事業はそれぞれ個別採算制とする。今後はプラットフォームを作るというよりは、「フルネイティブのアプリを出して、1つヒットが出れば他のアプリに誘導をして…ということをしていく」(藤田氏)とのこと。また、音楽関連の新規事業については、「Spotify」などの名前も例に挙げて、音楽ストリーミングサービスを検討中であると明かした。決算説明会後に藤田氏にあらためて話を聞いたところ、Amebaで培った芸能・音楽関係のネットワークをもとに権利者などとの話し合いを進めている最中だという。


ゲームではなくコミュニケーションの会社に–ミクシィ新社長の森田氏

劇的とも言える復活を果たしたミクシィ。2014年3月期の通期決算は、売上高121億5500万円(前年同期比3.8%減)、営業利益4億800万円(同81.3%減)、経営利益2億6300万円(同90%減)、純利益2億2700万円の赤字(前年同期は16億5400万円の黒字)、四半期ベースで見れば以下のグラフの通り。大幅な増収増益を実現した。そこには、前社長である朝倉祐介氏による事業再建施策と、スマホ向けゲーム「モンスターストライク(モンスト)」の好調ぶりが大きく貢献している。

そして事業再建のフェーズが終了したとして朝倉氏は6月に代表を退任。6月24日に開催された定時株主総会で、執行役員でゲーム事業の本部長を務めていた森田仁基氏が代表となった。

森田氏は2000年にfonfunに入社。フィーチャーフォン向けコンテンツの企画運営やケータイアプリのプロデューサーを経験したのち、2008年にミクシィに入社した。

当時のミクシィは、プラットフォームのオープン化を掲げていた時期。森田氏は「mixi アプリ」の立ち上げを担当して、当時人気だった「サンシャイン牧場」のRekoo、「まちつく」のウノウ(その後ジンガジャパンとなり、現在は閉鎖)などSAP(Social Game Provider:ゲーム開発会社のこと)開拓に務めたという。その後2011年にサイバーエージェントとの合弁会社であるグレンジの取締役副社長となり、さらにはミクシィのゲームプラットフォーム「mixi ゲーム」にも注力することとなる。

2013年1月からはミクシィ執行役員、5月にはゲーム事業本部長に就任。モンストの企画を立ち上げたのは2013年2月のこと。現在はモンストスタジオ エグゼクティブプロデューサーも兼任しているそうだ。モンストでは、全体戦略や組織作りなどを担当。制作面はプロデューサーの木村弘毅氏が中心になって活動しているそうだ。これまでのキャリアやモンストへの関わりもあって「ゲーム」の印象が強い森田氏だが、ミクシィをどのように導くのか。今後の展開を聞いた。

ミクシィ代表取締役の森田仁基氏

–社長交代の経緯について教えて下さい。

森田氏(以下敬称略):これまでミクシィは、どうしてもSNS「mixi」がほとんどを占めていました。それで調子がいいときもあれば、GREEやMobageのゲームにシェアを取られるようにもなりました。またFacebookやTwitterも出てきて、みんながmixiを使えばいいという時期でもなくなったのは、数字としても出てきました。

前代表の朝倉は事業再生のプロフェッショナル。そのタイミングで陣頭指揮を取るという考えが笠原としてはあったと思います。一方で僕は点を取るために新規事業を伸ばす、ということをやっていました。それでモンストが当たるようになってきて、事業再生も一段落し、再成長するというタイミングでの社長交代になります。

–森田さんが代表になったということで、ゲームを主軸に置いた会社になるという見方もできます。

森田:自身では特にそういうことは考えていません。ゲームはコミュニケーションの1つの手段なんです。それは木村とも、モンストのプロジェクトでもぶらさないようにしようと話していました。ツールがたまたまゲームというツールだったというイメージです。そこには「Face to Face」のコミュニケーションがあります。

もちろん新しいものは作り続けますが、必ずしもそれがゲームではないでしょう。ゲームの売上がかなり大きくなってしまったのでそう見えるかと思いますが、通期見通しでも、400億円のうち100億円はゲーム以外で作っていきます。

–「ミクシィは何の会社になるのか?」とは聞かれませんか。

森田:そう言われたのは初めてです。僕らを見て感じて頂ければいいと思うのですが、1つ言うならコミュニケーションを活性化させる、人と人のつながりを作れる会社だということです。繰り返しになりますが、モンストもmixiも人と人が繋がるサービスになります。

–モンストは6月に900万ダウンロード、7月には1000万ダウンロードを達成しました。成功の要因をどうお考えですか。

森田:先ほどから申し上げているとおり、コミュニケーションから設計に入っていることです。そうなると簡単に楽しめないといけません。難しそう、つまらない、となるとコミュニケーションは発生しません。

そこで、引っ張って離すというアクション(モンストは、キャラクターをタッチし、引っ張って離して飛ばすことで敵にぶつけ、敵を倒していくゲーム)は気持ちいいし、ミスした時にもツッコミを入れられるというコミュニケーションが起こります。アクションの気持ちよさについては岡本さん(ゲームリパブリック代表取締役社長でゲームプロデューサーの岡本吉起氏)に協力いただいています。

市場環境もラッキーでした。まずパズドラ(ガンホーの「パズル&ドラゴンズ」)がスマートフォンのゲームユーザーを切り開いてくれて、LINEがライトなユーザーを取っていった。ゲームを出したときに市場で上が狙えるような状況ができあがってきました。また、引っ張って離すという動作は(Rovioの)「AngryBird」にもありますが、それより気持ちいい。さらにスマホゲームなのに「(リアルで)集まってやる」というところがうまくはまったと思います。

–ゲーム以外の事業について教えて下さい。ライフイベント事業も好調のようです。

森田:特に(マッチングサービスの)YYCが好調です。売上はすごく大きいし、まだ伸びています。

–YYCは御社による買収の前から月商1億円近いという話も聞いたことがあります。ところでコンプライアンス上は大丈夫なのでしょうか。たとえば、2ちゃんねるのまとめを模して、(女性のヌードなども含まれる)過激な表現の広告なども見かけます。

森田:サービスは法律を遵守して運営しています。それをやっている限り心配はありません。

(前述の広告については)アフィリエイターのことなので、細かいところまで(コントロールすること)は難しいですが、そこは特にどうこうとは考えていません。もちろん法律に抵触するのであれば、対応していきます。(ここで広報コメント「ルールに反するものについては順次対応はしていますが、量が多く対応が終わっていないところもあります」)

–以前、「追い出し部屋」を作って、リストラをしたとも聞きました。あらためて「組織の再構築」という意味でリストラはなかったという認識ですか。

森田:そこは「リストラはなかった」と言うしかないです。

–現在の人事面での施策について教えて下さい。

森田:新しい事業が生まれているので、逐一必要な必要な人員は増えています。もちろん、人事異動もやっています。モンストがあれだけのユーザーを抱えてサービスを継続できるのは、これまでSNS「mixi」の強靱なシステムを作っていたスタッフが運用しているというところもあります。そういう意味では機動的な人員配置を行っています。

あと、人員配置の上で大事なのは「君こっちね」と言って指示しないようにすることです。こうしてしまうと、やらされている感が生まれます。そこで「キャリアチャレンジ」という制度を作り、できるだけ本人の意思をくむような人事異動ができるようにしました。

–決算資料などを見る限り、SNS「mixi」の人員は減らしているようです。mixiのサービスはどうしていくのでしょうか。

森田:FacebookやLINEなどが出てくる中で勝負するのはなかなかしんどいと思っています。ですがmixiには「コミュニティ」という大きな財産があります。これを軸に今後しっかり伸ばしていこうとしています。メインユーザーの属性は、30歳以上が比較的多い状況です。UUなどは公表していませんが、アクセス数自体は下げ止まっているという状況です。

–「イノベーションセンター」とうたって新規事業を募集していたかと思います。

森田:新規事業への取り組みは引き続き大事だと思っています。直近でも新規事業のブレストもやっていますが、基本的には「何でもあり」で社内から募集しています。ここはC(コンシューマ向け)、B(法人向け)問わずにやっていきます。

–新規事業としてやるかやらないかは別として、森田さんの興味のあるのはどういう分野でしょうか。

森田:興味がある分野はいっぱいありますね。新しいデバイスが出てくるタイミングは大きなビジネスチャンス。例えばウェアラブルなどもうまくやれば成長するのではないでしょうか。

また「nohana」のように、ネットだけで終わらないサービスは面白いと思います。すでにいくつかアイデアはあります。

−−ベンチャー投資についてはどうお考えでしょうか。

森田:(子会社の)アイ・マーキュリーキャピタルでは引き続きシードの純投資をやっていきます。一方でM&Aは(成長の)方法としてあります。当然既存の事業領域を伸ばすことはやっていく必要があり、それを自分たちでやることも、M&Aで時間を買うこともあります。

—創業者の笠原健治氏が新規事業を手がけていると聞いてすでに1年ほどが経過しました。

森田:笠原は今新しいサービスの仕込みをやっているところです。時期は明言できませんが、楽しみにして待っていて頂きたいと思っています。笠原はアンテナ感度が高いし、ラッキーパンチではなくしっかり狙ってヒットを出せます。市場の状況やニーズ、ビジネスモデルを熟考した上でモノを作っています。

ヒットを出すためにはそれなりの時間がかかります。モンストも2月から開発して9月に出したところです。もう少しだけ楽しみにして待って頂ければ。

—ご自身の課題と目標について教えて下さい。

森田:ぼくの英語力じゃないですか(笑)。アジアを含めてグローバルを目指す中で、英語を話せないといけないと思います。

個人的な目標についてですが、言っても社長1年目です。まずは社員からの信頼をしっかり得られるように誠実にやっていきたいと思います。僕はどちらかというと「時価総額1兆円」とか掲げるのは苦手で、都度自分自身の能力を伸ばしていくタイプだと思っています。

–モンストの次のゲームはもう準備されているのでしょうか。

森田:うーん、どうですかね(笑)。

今は正直なところモンストに注力しています。もちろん次のゲームを作るというのは、売上の地盤を作るためだと思います。しかし、日本と中国、台湾のように1カ国1カ国にモンストを出すのと、ゼロから新規のゲームを作って出すことは(市場を作るという意味で)同じだと思っています。


ザワットのスマホ向けオークション「スマオク」が「モバオク」と連携

最近はスマートフォン向けのフリマアプリの話題が多いが、少し違うアプローチでCtoCの領域に挑戦しているのがザワットだ。同社はこれまでクラシファイドサービス「Wishscope」を提供していたが、そこでニーズの高かったファッションアイテムの売買を切り出す形で、スマートフォン向けオークションサービス「スマオク」を提供している。

スマオクは、売り手のユーザーが値付けをして出品したアイテムに対して初めての入札が入った時から24時間で落札が確定するオークションサービス。アプリのダウンロード数は10万件だそうで、先行するフリマアプリなどと比較すると1桁少ない数字だ。だが、ラグジュアリーブランドのアイテムを中心に取り扱っていることやフリマと違って値引き交渉などが発生しないこともあって、平均で出品価格より30%ほど高値で落札されているとのこと。時には10万円前後の商品も落札されるそうだ。ブランド品が中心となるので、オプションで真贋鑑定のサービスも提供している。

落札率は全体の30%程度となっており、「まだまだ商品が足りない状態」(ザワット代表の原田大作氏)とのこと。落札価格の10%が手数料となっている。7月23日には高級ブランドを取り扱うキュレーションメディア「bijoux」を立ち上げているが、こちらは将来的にメディアとオークションのサービス連携を狙っているようにも見える。

そんな同社が7月24日、ディー・エヌ・エー子会社でオークションサービス「モバオク」を展開するモバオクと提携した。今回の提携により、出品者はスマオクとモバオクの同時出品が可能になる。スマオクは前述の通りアプリダウンロード数ベースで10万人、モバオクは96万人の登録ユーザーを抱えている。相互に商品を紹介することで落札機会を増やす。なお、手数料はいずれも10%になる(通常のモバオクは手数料無料、月額300円のみかかる)。

ちなみにモバオクはスタートアップとの連携を強めているようで、直近でもチケットストリートブラケットとの連携を発表している。


料理写真共有サービスmiil、リピーター数をもとにした飲食店ランキングを提供

5月の代表変更以降、サービスを「食を通じたコミュニケーション」のためのものと再定義した料理写真共有サービス「miil(ミイル)」。ユーザー数は33万人と決して大規模なコミュニティではないが、女性ユーザーを中心にして、月間40万枚の写真が投稿され、「食べたい!(Facebookの「いいね!」に相当)」は月間で900万件も付く。

6月に運営元のミイル代表取締役である大下徹朗氏に話を聞いたところ、今後はユーザーを拡大しつつ、有料オプション(月額300円)と食品EC支援事業、広告でのマネタイズをするとのことで、有料オプションについては機能を強化すると言っていた。その有料オプションの新機能「リピ店(リピテン)」が7月23日に発表された。iOS版のみでサービスが提供されており、Android版については8月以降の提供となる。

リピ店による「渋谷駅徒歩10分、焼肉、夜、予算指定なし」での検索結果

リピ店は、飲食店のランキング表示および検索機能だ。miilでは以前から飲食店の検索機能はあったのだけれども、それを改善して、ユーザーの写真投稿頻度をもとに「リピーター」を算出するようにしたそうだ。そのリピーターの多さをベースにして、独自の飲食店ランキングを表示、検索できるようになる。

その飲食店に一度しか訪れたことがないユーザーは、ランキングへの寄与度が低い。そのため、例え来店者が多い(=miil上で写真の共有が多い)飲食店であっても、ランキング上位には表示されにくくなる。一方で、異なる日付で同じ飲食店に複数回来店しているユーザーが多い場合はランキングの上位に表示されやすくなるのだそうだ。

常連がつくことがランキングに寄与するということで、オープンしたばかりの飲食店を発見するのにはちょっと向かない気もする。ただ、「常連さんが多い飲食店は良い飲食店」ということであれば信頼もできるし、何より飲食店選びに失敗するようなことはなさそうだ。飲食店を検索する際、食べログやRettyといったサービスを思い浮かべがちだが、匿名のユーザーによるレビュー、実名のユーザーによるレビューという基準ではなく、「常連がついているかどうか」は飲食店選びの新しい基準の1つになるのではないか。

リピ店の一部の機能(詳細な検索条件の指定など)は有料オプションでの提供になるが、8月10日までに限定して機能を無料で提供する予定。ミイルでは今後も有料オプション向けの機能を拡充するとしている。


打倒Excel!マネーフォワード「MFクラウド請求書」が郵送代行をスタート、1社100通まで無料

請求書といえばExcelなどのソフトで手入力で作成してから、印刷・捺印した上で郵送するのが一般的。これに対してマネーフォワードが5月にベータ版をリリースした「MFクラウド請求書」は、クラウド上でロゴや社印付きの請求書を管理できるサービスだ。「ライバルはExcel。もはや相手がでかすぎてよくわからない」と語る辻庸介代表取締役社長CEOだが、7月23日に請求書の郵送代行をはじめとする機能強化を実施し、Excelのリプレイスを図ろうとしている。

マネーフォワードによれば、請求書の郵送代行はユーザーから特に要望が多かった機能。MFクラウド請求書で作成した請求書の印刷から封入・発送までの業務をマネーフォワードが代行する。通常は郵送先の地域に応じて1通あたり160〜200円がかかるが、9月10日までは1事業所あたり合計100通まで無料で郵送できるキャンペーンを実施する。定期的に送付する請求書については、毎月・毎週などの繰り返し設定をすることで、請求書を自動で作成する機能も追加した。

クラウド会計ソフト「MFクラウド会計(旧マネーフォワード For BUSINESS)」と連携し、支払い期限が過ぎた未入金の請求書をメールで伝えることも可能となった。今後は、入金時に会計ソフト側で消し込み処理を行うと、請求書サービスのステータスも自動的に入金済みにするといった連携機能も図る。

クラウド型の請求書管理サービスは紙でやりとりするのに比べ、作業時間が短くなるだけでなく、紛失リスクがなくなるのもメリット。とはいえ、これまで紙ベースでやりとりしていた個人事業主や中小企業にとって、いきなり全面クラウド化に踏み切るのは商習慣的に抵抗があるかもしれない。打倒Excelを掲げるマネーフォワードとしては、将来的には紙の請求書をなくしたいというが、まだまだ紙で管理する企業が大多数であることを踏まえて郵送代行をサポートしたようだ。

MFクラウド請求書の競合としては、「MakeLeaps」「Misoca」といった既存のサービスもある。Misocaは4月以降、月額利用料を無料化(従来は980円〜)し、請求書の郵送やFAX送信に応じて課金するビジネスモデルを採用している。MFクラウド請求書はベータ版として無料提供されているが、秋ごろをメドに有料化する。料金は月額無料で郵送代が200円のトライアル版、月額500円で郵送代が180円(3通までは無料)のベーシック版などを投入するようだ。


弁護士ドットコムがオウンドメディアや検索機能を強化–今後は医療分野も視野に


2週間ほど前に、「なぜネットメディアは国会記者会館を使えないのか?~国会記者会事務局長に聞く」(前編後編)という記事がFacebook上で数多くシェアされているのに気付いた。シェアをしている多くの人はメディア関係者。内容を読んでみると、きっちりした取材に基づいた非常に骨太なインタビューだ。僕も非常に興味深く読ませて頂いた。

このインタビュー記事だが、実はいわゆる「オウンドメディア」のコンテンツの1つなのだ。運営するのは弁護士への法律相談や、弁護士、法律事務所の検索サービスを提供する弁護士ドットコムの「弁護士ドットコム」。その中にある「弁護士ドットコムトピックス」の記事となる。ここでは、世の中で起こるトピックスについて、弁護士の法的な側面からの見解を紹介する解説記事や、独自取材したインタビューを掲載している。編集部のメンバーは元新聞記者が中心。

Yahoo!ニュースにも記事を提供しているのだが、その結果もあってページビュー(PV)も大きく伸びているそうだ。最近では都議会のセクハラヤジ騒ぎに関するニュースで161万PV(オーガニックで2万PV)、渋谷の幼児虐待動画を撮影したニュースでは122万PV(オーガニックで78万PV)と、Yahoo!経由とは言え、ずば抜けたページビューを獲得している記事も増えているそうだ。弁護士に法律相談できるQ&Aサービスなども含めて、サイト全体では月間1008万PVとなっている。このトピックスに関しては、間もなく「弁コムニュース」に名称を変更し、さらにメディア色を強めてコンテンツを配信する予定だという。

そんな弁護士ドットコムだが、7月22日には本業である弁護士、法律事務所の検索機能を強化している。これまで都道府県単位でしか検索できなかった地域での検索については路線までの指定が可能になった。また弁護士の性別や写真、料金や解決事例、駅からの徒歩距離から駐車場の有無まで細かい条件での検索にも対応した。弁護士ドットコムに登録する弁護士は約6900人。国内の弁護士が約3万人というから、決して少なくない数の弁護士が同サービスを利用していることになる。

また同社では、この弁護士ドットコムのサービスを他の士業向けにも横展開している。姉妹サービスの「税理士ドットコム」でも弁護士ドットコム同様のQ&A機能を追加。さらに、マネーフォワードやfreeeと提携し、両サービスでの業務にする税理士の紹介なども開始している。弁護士ドットコム代表の元榮太一郎氏によると、今後は医療分野などでも同様のサービスを提供していく考えだという。


人力でレシートを読み取る「Dr.Wallet」が銀行口座アグリゲーションに対応

オンライン家計簿で便利な機能のひとつが、ネット銀行やネット証券のログインID・パスワードをあらかじめ登録しておくことで、利用明細を自動的に取得してくれるアカウントアグリゲーションだ。マネーフォワードやMoneyLook、MoneyTree、Zaim、Kakeibon(旧OCN家計簿)などが軒並み導入しているが、このたび人力でレシート情報を読み取ってくれる家計簿アプリ「Dr.Wallet」もウェブ明細を自動取得する機能を追加した。22日からAndroid版で開始し、iOS版も順次対応する。

Dr.Walletはスマホのカメラでレシートを撮影するだけで、99%以上の精度で1日以内に専属オペレーターが人力でデータ化するというアプリ。商品情報をもとに、ショップ名や品目名から自動でカテゴリ分類を行う独自エンジンも搭載する。2013年12月にはニッセイ・キャピタル、インキュベイドファンド、SMBCベンチャーキャピタルの3社を引受先として約1億円の第三者割当増資を実施している。

Dr.Walletの特徴は人力によるレシートのデータ化だ。その一方、レシートが出ない家賃や光熱費などの銀行引き落とし、ECサイトなどでのクレジットカード利用については、ユーザー自らが手動で入力せざるを得なかった。アカウントアグリゲーション機能を追加したことで、これまでカバーできなかった銀行口座やクレジットカードの利用履歴を自動で取り込めるようになったというわけだ。現時点では以下の大手10行に対応している。

・イオン銀行
・じぶん銀行
・住信SBIネット銀行
・セブン銀行
・東京スター銀行
・三井住友銀行
・三菱UFJ銀行
・楽天銀行
・りそな銀行
・ゆうちょ銀行

競合サービスはほとんどが千数百行の金融機関と連携しているが、Dr.Walletもこの動きに追随する。夏までにクレジットカードや地方銀行、第二地方銀行、証券、FX、携帯、ポイント、電子マネー、主要ECサイトを含めた国内の金融機関など約1500行に対応する予定だ。

アカウントアグリゲーションの利用者はまだまだ少ない?

オンライン家計簿がこぞってアカウントアグリゲーション対応を進めているが、Dr.Walletを運営するBearTail代表取締役の黒崎賢一氏は、「意外にもアグリゲーション機能はハードルが高い」と言う。理由を聞いてみると、ユーザー側でネット銀行やネット証券のアカウントを登録している人が、まだまだ少ないためだという。

「正式提供に先立って試験運用を行ったところ、アカウントアグリゲーションに登録したのはアクティブユーザーのわずか4%程度。しかも、そのうち70%は登録に失敗していた。おそらく、ユーザーはネットバンク化していないか、自分のオンラインアカウントの情報を把握できていないのではないか。」

黒崎氏の話をまとめると、現時点でアカウントアグリゲーションは、ネットに詳しいアーリーアダプター層を中心に使われているようだ。詳細は明かされなかったが、今後は一般ユーザーのハードルを下げるべく「登録時に迷わないよう、今まで他社もやっていなかったサポートもやっていくつもり」と話している。


“スーパーサイヤ人的経営者”が手がけるメルカリ、ダウンロード数は400万件に

先週福岡で開催された招待制イベント「B Dash Camp 2014 in Fukuoka」にて、スマートフォン向けフリマサービスの元祖「Fril」を手がけるFablicが月間物流総額4億円、アプリダウンロード数150万件という数字を発表していた。これだけでもわずか2年で大きな市場を築いたと思うのだけれども、後発の競合サービス「メルカリ」を展開するメルカリがダウンロード数でその2倍を超える数字を発表している。

メルカリは7月22日、フリマアプリメルカリが400万ダウンロードを突破したことを発表した。これに合わせるかたちでデザインのリニューアルも実施している。リニューアルはiOS版から進めており、Android版についても近日中にリニューアルする予定だという。

メルカリのリリースは2013年7月2日。1年を経過した7月時点での月間流通金額は10億円を「大幅に超える」(同社)とのこと。1日の出品数は10万点以上になっている。5月にはテレビCMも放映しており、こちらも奏功したそうだ。同社の発表によると、ダウンロード数は400万件に上るという。

Frilがユーザーを基本女性に限定している一方で、メルカリはユーザーを限定していない。実際のところメインユーザーとなっているのは地方在住の20代〜30代女性だそうで、流通しているのは女性向けのファッションアイテムが中心。そのほかにも男性向けのファッションアイテムからスマートフォンゲームのデータ(運営ポリシー上は問題ないそうだ)まで幅広いアイテムを扱っている。僕も2カ月ほど前にとあるブランドのブーツを出品したのだけれど、数秒で「いいね」が複数つき、10分以内には購入のやりとりをするに至ったので、そのスピードには正直驚いた。同社は現在仙台にカスタマーサポート部隊も設置しているそうだ。

今回のリニューアルでは、アイコン、レイアウト、色調等の全面を刷新している。ユーザーの個人ページについても、より商品の魅力を引き出せるデザインに変更したとのことだ。

「スーパーサイヤ人」な起業家の戦い方

さて、冒頭で紹介したB Dash Campのセッションの中で、登壇者らがメルカリ代表取締役社長の山田進太郎氏に言及したところがあったので、少しご紹介したい。

メルカリ代表取締役社長の山田進太郎氏

モデレーターを務めたモブキャスト執行役員CCOの福元健之氏が、登壇したアクティブソナー 代表取締役社長の青木康時氏、Fablic 代表取締役社長の堀井翔太氏、BASE 代表取締役鶴岡裕太氏に対して「大手が競合として攻めてくる中で、こういうことされると嫌なことは何か、脅威となるのは何か」と質問した際のことだ。

当初登壇者の3人は、共通して「上場企業や大きいプレーヤーは脅威だが、その隙間を狙っている、その会社ではできないことをやっている」と回答していたのだが、そこから鶴岡氏が「上場企業より、進太郎さん(山田進太郎)や木村さん(Gunosy代表取締役の木村新司氏)のようなスーパーサイヤ人がいることが脅威。そういう人は一気に来る(事業を展開する)」と語った。堀井氏もこれにうなずき、「強くてニューゲーム(ゲームクリア後に、レベルなどを引き継いだ状態でゲームを1から始めるという意味)な起業家」という表現をしていた。

山田氏は、大学在学中に楽天に参画。「楽オク」の立上げなどを経験。さらには卒業後にウノウを設立し、「映画生活」「フォト蔵」「まちつく!」といったサービスを開発。同社をZyngaに売却した経験がある。また木村氏も、ドリームインキュベーターにてコンサルやベンチャー投資を手がけた後にシリウステクノロジーズの取締役に就任。ヤフーによる買収の前に同社を離れてアトランティスを設立。2011年にグリーに売却した経験を持つ。

いずれにしてもイグジットの経験もある起業家だ。彼らは若いスタートアップがプロダクトを少しずつブラッシュアップし、口コミでユーザーを集めつつ徐々に市場を作っていく中で、大規模な調達をしてテレビCMを展開するなど、ダイナミックな資金調達、そしてその資金の投下を実行している。マンガ「ドラゴンボール」で言うならスーパーサイヤ人になって一気に戦闘力を高めて勝負に出ているといったところだろうか。

実際Frilのほうがメルカリよりも1年早い2012年にサービスを開始していたし、Gunosyにしても、同社のニュースリーダーアプリ「Gunosy」に競合するスマートニュースの「SmartNews」よりも100万件以上ダウンロード数が少なかった時期があるが、テレビCM放映後の現在はほぼ同じ程度ではないかと木村氏は話していた(ちなみにSmartNewsのテレビCMに関しては、同イベントの別セッションで登壇したスマートニュース取締役の鈴木健氏に質問が飛んだが、明言されなかった)。スーパーサイヤ人的経営者の山田氏はスマートフォン向けフリマのマーケットをどこまで拡大できるのだろうか。同社は現在手数料無料でサービスを提供しているが、いつからマネタイズに向かうのかも含めてその動向に注目したい。


ビジネス版Airbnb「スペースマーケット」が海外勢抑え栄冠、B Dash Campプレゼンバトル「ピッチアリーナ」

福岡で開催中の「B Dash Camp」で18日、スタートアップのピッチコンテスト「ピッチアリーナ」が開催された。国内外100社以上が参加し、前日の予選を通過した12社が本戦でプレゼンを実施。本戦には韓国、台湾、インドネシアといった海外勢が半数以上を占め、国際色の強いコンテストとなった。最優秀チームには空きスペースを1時間単位で貸し借りできる「SPACEMARKET(スペースマーケット」が選ばれた。以下、出場各社とサービスを紹介する。

SPACEMARKET

会議やセミナー、イベントなどに使える空きスペースを持つオーナーと借り手をマッチングする。ビジネス版のAirbnbとも言えるサービス。映画館や古民家、お化け屋敷などユニークな空きスペースが多数掲載されている。スペースマーケット代表取締役の重松大輔氏によれば、伊豆大島の古民家で開発合宿が行われたり、映画館で株主総会が開かれたりしているそう。リリースから2カ月時点で、ユーザーに提示された見積もりの総額は9000万円を超える。売り上げは非公表だが、スペースマーケットは販売金額の20〜50%を徴収している。今後は物件数を増やすため、多くの遊休スペースを持つ大手不動産会社との提携も視野に入れている。

 

BountyHunter(台湾)

デザインコンペを開催するプラットフォーム。2011年にローンチし、これまでにGoogleやGigabyte、Lexus、Playboyなどが自社商品のためのコンペを実施している。商品デザインについては生産前に購入者を集めることもできる。デザイナーのクラウドソーシングサービスと言えそうだ。

Drivemode(アメリカ)

スマートフォンアプリで操作可能な運転支援システム。大きくて見やすいボタンをタップするだけで道順をナビしたり、音楽を再生できる。ユーザーの行動をもとに、行き先や連絡先などをリコメンドする機能を備える。Drivemodeはシリコンバレーに拠点を置く日本のスタートアップ。CEOの古賀洋吉氏は日本で学生時代にベンチャーを立ち上げた後、渡米してモバイルベンチャー、ベンチャーキャピタル、カーシェアリングサービスを手がけてきた人物。

あきっぱ

全国の空いている月極や個人の駐車場を1日500〜1000円で予約して利用できるサービス。「駐車場版Airbnb」を標榜する。スマホで予約でき、市場価格よりも平均40%安く借りられるのが利点だという。貸し手は駐車料金の60〜90%が得られるほか、特別な設備を導入する必要もない。現在、4万台以上の駐車場を掲載していて、来期は10万台を確保したいという。10%の稼働率で1日1万台の稼働を目指す。

iCHEF(台湾)

飲食店に特化したiPadを使ったクラウド型のPOSレジ。レジだけでなく、注文や座席の空席管理も行える。月額使用料は65ドルで1台のiPadが無償貸与される。共同創業者のKen Chen氏によれば、通常のPOSレジシステムと比べて40%ほどコストを抑えることができ、すでに3万件以上の取り引きがあるのだという。プレゼンでは日本語のユーザーインターフェイスのアプリが使われていて、日本への参入も視野にいれているようだ。

Keukey(韓国)

スマートフォンのタイプミスや文法ミスを修正してくれるアプリ。指摘された修正案は画面をスワイプするだけで反映されるため、わざわざカーソルを動かす手間が省ける。CEOのMinchul Kim氏によれば、アプリを使うことでタイピング速度が12%上がるのだといい、9月には日本語バージョンも追加する予定。

 

LEZHIN COMICS(韓国)

フリーミアムモデルのデジタルコミックサービス。約300冊の漫画の中から、1週間で1冊を無料で読める。毎月10冊以上の漫画を追加している。一般的にフリーミアムモデルの有料ユーザー率は全体の5%と言われるが、LEZHIN COMICSは読者の15%が有料で漫画を購読しているという。8月には日本にも進出する。

MINDQUAKE(韓国)

6歳以下の子どのアプリ利用を監視するアプリ。自分で利用時間を認識できるようにするため、子どもに親しみやすいたまご型のタイマーで利用可能な時間を表示する。

LOGBOOK

知識がなくてもウェブサービスやスマホアプリのサービスの課題を発見し、改善プロセスを回せるグロースハックのプラットフォーム。サービス分析の基本フレームワーク「AARRR」に沿っており、業種を問わずサービスの改善を行う。改善すべきポイントをハイライト表示することで、「分析ツールは入れてみたものの、どこを見ればよいのかわからない」といった問題を解決できるのだとか。現在、事前登録者は300ユーザー。A/BテストのKAIZEN platformと提携している。

 

TEXTAT(韓国)

LINEやカカオトーク、WhatsAppなどのメッセージングアプリからエクスポートしたテキストを解析し、相手が自分のことをどう思っているかがわかるサービス。「会いたい」や「淋しい」といったテキストの内容だけでなく、返信時間も踏まえた上でお互いの関係性を分析する。2013年にローンチし、60万ダウンロードを突破。現在は韓国語しか対応していないが、今夏に日本語バージョンも提供する。

Shakr(韓国)

中小企業向けの動画広告制作サービス。写真をドラッグ&ドロップしてテキストを入れるだけで、動画を自動的に作成する。「アプリ&ゲーム」「宿泊&不動産」「自動車」といったテーマ別のテンプレを用意している。無料版もあるが、ユーザーの35%が多くのテンプレを選べる有料版に登録しているという。今夏までに4500のテンプレを用意する。18日には日本語サイトを開設した。

 

Tees.co.id(インドネシア)
自分でデザインしたTシャツやマグカップなどを販売できるサイト。買い手が現れた場合、製造や配送、カスタマーサービスまでを代行してもらえる。ユーザーはデザインをアップロードするだけで、在庫を一切持たないでよいのがメリット。現在、3万点のデザインが掲載されていて、収益は毎月30%増えている。


Frilの月間物流総額は5億円–「空中戦」も必要になったフリマアプリ市場

スマホ向けフリマアプリの元祖であるFablicの「Fril」。若い女性に特化したこのアプリだが、現在の月間物流総額は5億円以上、アプリのダウンロード数は150万件以上になっているという。

福岡で7月17〜18日に開催されている招待制イベント「B Dash Camp 2014 in Fukuoka」の2日目のセッション「新興eコマース〜新たなトレンドを作り出せるか?」に登壇したFablic 代表取締役社長の堀井翔太氏が明らかにした。

このセッションでは堀井氏のほかにアクティブソナー 代表取締役社長の青木康時氏、BASE 代表取締役鶴岡裕太氏が登壇。それぞれのビジネスについて語った。

「空中戦」も必要になったフリマアプリ市場

Fablicは、これまでほとんどメディアでビジネスの話をしたことがなかったし、アプリのダウンロード数をはじめとした情報を発信してこなかった。しかしここに来て数字を公開した堀井氏は、「今は競合も十数個ある。そういう(情報を非公開にする)フェーズではない」と語る。

競合とされる後発の「メルカリ」は、14億円超の大型調達、テレビCMなども奏功して大きくユーザーを拡大。1周年を迎えた2014年7月時点で、月間流通総額は10億円、ダウンロード数350万件という数字を発表している。

こういった状況に対して堀井氏は、「メルカリやGunosyなどは大きな資本を調達して勝負している。今まではプロダクトを磨いて、リテンション伸ばして…としてきたが、最近の戦い方はテレビCMなども含めて『空中戦』もするような状況にシフトしている」と語る。

Open Network Labのインキュベーションプログラム出身のスタートアップということで、デジタルガレージグループからシードマネーを調達しているFablic。1期目から黒字化して資金調達の必要もなかったとのことだが、今後は資金調達してテレビCMを放送することも検討しているという。さらに、ユーザーのニーズも多いことから、一部のユーザーに限定してフルフィルメントサービスを試験的に提供していることも明かされた。

BASEは「カート」ではなく「決済」

手軽にウェブショップを構築できる「BASE」を提供するBASE。個人だけでなく、中小企業を中心とした法人もサービスを利用している。最近では芸能人やニコニコ生放送の“生主”のような売り手も登場しており、数千万円から億単位の売上を実現しているショップもあるそうだ。

サイバーエージェントやグローバルブレインなどから資金を調達し、現在はユーザーの拡大フェーズにあるという。クレジットカードの決済手数料などは徴収しているものの、サービスの利用手数料は無料。「売上はゼロと言っていい」(鶴岡氏)状況だそうだ。「(調達によって)うちのようなところがどんどん攻めていけるのはありがたいし、EC(領域)自体を評価して頂いていると思っている」(鶴岡氏)

鶴岡氏はBASEについて、「本質は決済を提供するサービス」と語っている。カート機能でのマネタイズはあまり考えていないそうで、将来的には、決済、金融といった領域でのマネタイズをやっていくそうだ。

サービス開始当初は、ブラケットの「STORES.jp」と比較されることが多かったBASE。「初期はSTORES.jpもあったことで認知度が上がった」(鶴岡氏)とも語るが、スタートトゥデイがブラケットを買収したこともあって状況は変わったという。「最近は自社でどれだけがんばれるか。突き抜けないといけない」(鶴岡氏)将来的には世界展開で100万店舗を目指す。さらには日本から海外に商品を売るための支援もしていくそうだ。

プラットフォームを目指すアクティブソナー

CtoBtoC型のブランド商品委託販売サービス「RECLO」を提供するアクティブソナー。

こちらの記事にもあるように、米国ではCtoBtoC型のECサイトが複数登場しており、ユーザーのニーズも見えている状況だという。日本では(米国でも先行する)「RealReal」などのプレーヤーはいるが、まだデファクトスタンダードたる位置にあるサービスはない。そこで自らこの領域に挑戦したそうだ。

今後は海外向けに商品を販売していくほか、家具や中古車の販売なども視野に入れるという。また、CtoBtoCは言ってしまえば「小売り」だが、1つ1つの商品を売るということではなく、あくまでプラットフォームとして成長していきたいと語った。

この領域に大手企業が参入することについて尋ねられたところ、「大きいプレーヤーが来るのは脅威だが、狙っているのは(大きいプレーヤーがチャレンジできない)隙間でのおもてなし。ネットサービスでは実現できないフルフィルメントを全部やるというところ」(青木氏)とした。


「鮮魚版Amazon」さらに網を広げる、八面六臂がリクルートなどから4.5億円調達

「鮮魚流通のAmazon」を標榜するスタートアップの八面六臂が17日、リクルートやYJキャピタル、DeNA、マネックス・ベンチャーズなどから総額4億5000万円の資金調達を実施した。八面六臂は鮮魚を扱う飲食店に専用アプリを組み込んだiPadを無償で貸与。飲食店は専用アプリを使うことで、八面六臂が全国各地の市場や漁場で買い付けた魚を取り寄せられる。調達した資金では営業やシステム開発の人員を強化するとともに築地の物流センターを拡大し、関東中心に導入店舗を増やす狙いだ。現在、導入店舗は東京や神奈川、埼玉を中心に1000店に上る。

通常、漁師から飲食店に鮮魚が届くまでには、産地市場、築地市場、納品業者など多くの業者が間に入る。八面六臂代表取締役の松田雅也氏によれば、こうした中間業者の人件費は「約50%が無駄なコスト」。おまけに、鮮魚流通のプロセス間では「いまだに9割以上が電話やFAXでやりとりされている」のだという。そこで八面六臂は、市場流通品に加えて全国各地の漁場から鮮魚を調達。iPad経由の発注に応じて、築地の自社物流センターで検品・梱包を行った上で飲食店に届けている。八面六臂は鮮魚の流通プロセスでいうと「納品業者」に位置していて、その市場規模は3兆円に上るのだという。

飲食店はアジ1本から、カツオやブリの半身や4分の1といった切り身まで、ニーズに応じて豊富な種類を小ロットで購入できるのが利点。漁師としては、市場を通さずに販売することで利益が増えるのがメリットだ。八面六臂は過去の販売データを分析して注文数を予測し、先行して鮮魚を調達することで仕入れの無駄を省いている。こうしたITを駆使した流通予測に加えて、営業担当者が毎月飲食店に足を運び、旬の魚や売れ筋情報に応じた鮮魚の組み合わせを提案したり、鮮魚のポスターやチラシ、POPといった販促物を提供している。

年内には、iPadで従来の商品情報に加えて、レシピや売れ筋情報、調理法などを料理人向けに配信するサービスを開始する。来年には物流基盤を整備し、米や酒、肉、野菜、果物といった食材発注プラットフォームになることも視野に入れている。さらにその先には、毎日の購買を通じて蓄積される与信データをもとに、飲食店の運転資金や料理人の出典資金を資金を提供する金融業にも参入する。「鮮魚流通のAmazon」を掲げる八面六臂だが、2017年にIPO、2020年に年商3000億円を目指すなど、まだまだ網を広げようとしているようだ。


スマホ、常時接続が導き出す数年後のトレンド–Gunosy、gumiら4社が語る

福岡で7月17日〜18日にかけて開催中の招待制イベント「B Dash Camp 2014 Summer in Fukuoka」。

1日目のセッション「次世代リーダーになれるか!?」には、Gunosy代表取締役 共同最高経営責任者の木村新司氏、gumi 代表取締役社長の國光宏尚氏、フリークアウト 取締役COOの佐藤祐介氏、スポットライト 代表取締役社長の柴田陽氏が登壇。それぞれが手がける事業やイグジット戦略などが語られた。その中から、モデレーターを務めたB Dash Ventures 代表取締役社長の渡辺洋行氏が投げた「自身が手がけるマーケットをどう伸ばすのか、また来年再来年どういう分野がトレンドになるのか」という質問に対する登壇者の回答を紹介したい。

木村氏:CtoCのサービスを含めて、ユーザーとユーザーが同時接続している時間が圧倒的に増えた。それに加えてこれまでネットに繋がっていなかった人たちも、本格的にネットに繋がってきた。だがそういう人たちにサービスが提供できてなかった。

そうなると(トレンドは)1つはメルカリのようなCtoC。そして(個と個を)繋ぐだけではなくて、Uberやbento.jpのように、モノを調達するところだけやってあげて、ユーザーと繋ぐというサービス。これらがいくつも出てくるし、リアルな生活に近いのでマーケットも大きくなる。

佐藤氏:「常時のコネクティビティ」というのは明らかにキーワードになっている。それによってあらゆる産業のデマンドに対するサプライヤーはいたが、「ポテンシャルサプライヤー」ともいう人が出てきて、マッチングが起こっている。例えば移動したいときにはタクシーじゃなくて、どっかのおっちゃんの車もあるし、荷物を取りにくるのも業者ではなくてどこかのおばちゃんだったりする。それはコネクティビティの問題。つながってマッチングするということ。そこに機会が生まれるはず。

柴田氏:スマホは大事なキーワードになり続ける。ネットが街中に出て行ったことこそが大きな変化。Uberもそう。ネットが街中に出た当然の帰結。

街中(で起こるビジネス)だと、あとは飲み食い、買い物、人と会うこと。これらはまだサービスがデマンド(要求)に対して少ない状況が続くのではないか。

あと、スマートフォンというのは「インプットできるセンサー類がついているデバイス」ととらえている。そんなスマートフォン以外のセンサーのたぐいが広がると思う。そうなるとスクリーンだけではないアウトプットも出てくる。

國光氏:大きいビジネスは家、車、テレビ、健康の4つの市場。人生の時間が足りないから全部はできないので、ゲームはこのまま突っ走っていく。

(これまでも言い続けている時価総額8兆円の話を踏まえて)次次はテレビのDisrupt(破壊)をしたい。あとはオモチャ。ゲームと連動したテレビやオモチャやをダントツで意識している。

海外と国内のスタートアップのエコシステムの話がよくあるが、結局ベンチャーキャピタルがどうかという話より米国ではGoogleやFacebook、Microsoftなどがボコボコとスタートアップを買っていくからスピード感が増している。一方で日本はM&Aが起こらない。gumiは大きくなったら買いまくる。(エコシステムのスピードを)5倍速くしないと、シリコンバレーにはならない。gumiが上場すればガンガン行く。

木村氏:M&Aはやっていきたい。ただ日本の場合のれん代の問題もあるが。やれる部分はやっていきたい。

佐藤氏:あと数年先と言うより直近で面白いのは「暇な時間」の定義の変化。スマホのせいだと思うが、5〜10秒の時間でも暇だと思うようになった。そこをどう取るか。あとはマルチタスクになっている。例えばゲーム1個やっているのでは暇だ(と感じる)。実はそういったことに対してチャレンジしていることが1つ伸びている。

あとは広告。インターネットはリアクティブメディアになってきている。コンテンツはプッシュになってきているので、検索する前にその人の需要がやってきて、(顧客を)刈り取っている。Googleはスマホ広告の50%くらいのシェアがあると思うが、メディアに合った広告手法には張っていきたい。

柴田氏:変化しているのは、「生活必需品」の定義。Amazonが予測デリバリーの特許を持っているが、(ニーズを)予測できるモノが生活必需品になっている。それとエモーショナルな、ベタな感動をするモノとプロダクトが二極化している。それぞれを提供していかないといけない。