インドのアグリテック大手DeHaatが約131億円調達、世界第2の生産量を誇るインド農業に注目が集まる

インドの農家にオンラインで総合的な農業サービスを提供するDeHaatが、インドのアグリテックスタートアップとしてはこれまでで最大となる資金調達ラウンドで1億1500万ドル(約131億円)を調達した。インドでは年間1兆ドル(約113兆8350億円)の小売支出のうち、その3分の2を農産物が占める。


創業10年のスタートアップのシリーズD投資ラウンドは、SofinaとLightrockが共同でリードした。他に、Temasekと現存の投資家であるProsus Ventures、RTP Global、Sequoia Capital India、そしてFMOがこのラウンドに参加した。これで同社のこれまでの資金調達総額は1億6100万ドル(約183億2000万円)になるが、この内1億5700万ドル(約178億7000万円)はここ30カ月のうちに調達している。

DeHaatはヒンドゥー語で「村」という意味で、同社はインドやその他の国の農家が直面する3つの大きな問題である「運転資金」「種子や肥料など農業資材の安定入手」「収穫物の安定市場」を解決しようとしている。インドの農家の収穫量のわずか3分の1しか大市場には届けられていない。

グルグラムとパトナーに本社を置く同社は、農業資材の販売と、機関投資家、そしてバイヤーの三者の役割を1つのブランドに集約し、また3000ほどの零細企業家に集荷や配達のサービスを提供している。

同社は、農家と積極的な関わりを持ちながらヘルプラインを提供し、また社名と同名のAndroidアプリを複数言語対応で提供している。

SofinaのプリンシパルYana Kachurina(ヤナ・カチュリナ)氏は「総合サービスというユニークな特徴とフィジカル、デジタル両方の市場開拓努力で、同社はインド農業における重要なプレイヤーに育つ路線に確実乗っていると私たちは確信している」と述べている。

DeHaatによると同社は、ビハール州とウッタル・プラデーシュ州、ジャールカンド州、オリッサ州の65万人以上の農家にサービスを提供し、また同社のプラットフォーム上では850あまりのユニークなアグリビジネスを提供している。

同社の共同創業者でCEOのShashank Kumar(シャシャンク・クマール)氏はTechCrunchインタビューに対して、同社は今回の新たな資金は「インドの主要な農業クラスターすべて」に同社サービスを拡大するために投入すると語った。

彼によると、DeHaatはここ7カ月間で5倍に成長した。

これまでほとんど無視されていたインド農業に最近では多くのスタートアップや大手テクノロジー企業が群がり、中国に次ぐ世界第2の生産量を誇る果物や野菜の、多様な市場化方式を探求している。世界4大会計事務所の1つであるEYは、インドのアグリテック産業には2025年の売上が約240億ドル(約2兆7311億円)に達するポテンシャルがある、としている。

Amazonは最近、農家が作物を決めるために役立つリアルタイムのアドバイスと情報を提供し始めている。またMicrosoftは、100の村と協働してAIをデプロイし、プラットフォームの構築を目指している。

CEOのクマール氏は「私たちのチームは850名を超える深い専門知識のあるプロフェッショナルの大部隊になりました。彼らの専門分野は成長、戦略、サプライチェーン、農業科学と多岐にわたっています」という。人材募集はまだまだこれからも続く。

画像クレジット:DeHaat

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(文:Manish Singh、翻訳:Hiroshi Iwatani)

アパートメントホテルの開発・運営を通しホスピタリティコミュニティを創造するSection Lが1.1億円のシード調達

アパートメントホテルの開発・運営を通してホスピタリティコミュニティを創造するSection Lは10月26日、シードラウンドにおいて、J-KISS型新株予約権方式による1億1000万円の資金調達を完了したと発表した。引受先は国内外のエンジェル投資家。


調達した資金は、ホテル事業とSasS事業拡大のための新規採用など体制強化にあてる。今後は、自社施設の軒数拡大に加え、SaaS事業として同業他社への運営ソリューサービスの拡大を予定。将来的にはSection Lブランドと運営ソリューションのフランチャイズ展開を国内外で実施し、日本発のパイオニア的ブランドを目指す。

Section Lでは、東京都中央区に自社ホテルの1棟目であるSection L Ginza Eastを2020年7月に開業した。開業日は、コロナ禍により都内宿泊施設の平均稼働率が14.2%という状況だったものの、同ホテルでは月次平均稼働率7割以上を維持しており、平均客室単価(ADR)も周辺競合施設の2倍以上を保っているという。

この要因について同社は、国内において供給不足になっていたミドル~アップスケールの長期滞在需要を満たす施設であったこと、プレミアム北欧家具メーカーとコラボレーションしたデザイン性の高い客室、質の高いサービス提供によって高評価とリピート客の獲得に成功したことによると見ているそうだ。

さらにSection Lは、非対面・無人化チェックインを可能とするソフトウェアを自社で開発・実装。従来は約50%でも良好とされていた施設の運営利益率(GOP)を約70%まで向上させることに成功したという。

Section Lは2020年2月に設立されたホスピタリティーカンパニー。創業チームの過半数がアメリカでのホテルスクールを卒業し、一流ホテルチェーンでの経験を持ち合わせるホテル経営のプロフェッショナル集団という。自社ブランドのアパートメントホテル運営と、省人化ソリューション・ソフトやコミュニティー・プラットフォームの開発を事業としている。

マイクロソフトとAlphabetはともに投資家の成長予測を上向きに裏切る

スタートアップへの投資の世界的なブームを支えているのは、デジタル製品とサービスへの巨大な需要とその成長だ。しかも実は、小さなテクノロジー企業を後押ししている同じ追い風が巨大企業の力にもなっている。

ソーシャルの大手Snapの第4四半期の弱い成長予測と、ソーシャル大手Facebookの売上の鈍化の後を受けて、その他の巨大テクノロジー企業に対する予測が低くなったとしても許されるだろう。

しかし米国時間10月6日は、まるでスタートアップような扱いをされかねない市場の空気をぶち破って、MicrosoftとGoogleの親会社Alphabetはいずれもその売上が予測を上回った。

以下が、その数字だ。

時間外取引でMicrosoftの株価は1%の上昇、対してAlphabetは微減だった。

もちろん、どちらの決算報告も話題山積みだ。AlphabetとMicrosoftはともに、単なる企業というよりも企業帝国に近い。両社をすこし掘り下げてみよう。

Microsoftの2022会計年度第1四半期

Microsoftの強烈な数字の中心にあるのは、パブリッククラウドサービスAzureの成長だ。この売上源は前年比で50%成長し、恒常通貨ベースでは48%の成長となった。言い換えるとAzureは通貨変動によりわずかに上昇し、売上が髪の毛一本ほど増えた。

細部の話はともかくとして、Azureの成長はこのところずっと、ほぼ50%周辺を維持している。つまりMicrosoftのプロダクトの全体としてトップラインに、Azureからかなり大きな数字が加えられていることを意味している。

Microsoftの決算報告を見て目立つその他の数字は、検索とニュースの売上が前年比で40%伸びていることだ。この数字はトラフィック取得費用などを取り除いて調整されているが、このような公正を期しての調整はAlphabetも行っている。一方悪い方のニュースは、Surfaceの売上が17%落ちたことだが、新しいハードウェアを準備中だから好転の可能性もある。

サブスクリプションに関しては、Microsoftは好悪混交している。Office 365の企業売上は前年比で23%伸び、同じプロダクトの消費者収入は低めの10%という成長だ。そしてLinkedInの売上の42%増は、Microsoftにとってかなりの余録だ。

Alphabetの2021年第3四半期

Alphabetの財務報告の良いところは、短いので記事にしやすいことだ。下図を見てみよう。

Alphabetの決算報告

YouTubeの売上の伸びは依然として驚異的で、今回同社はこの製品を独立項目にしている。なお、2020年にはパンデミックで突然みんなが家にいるようになり、テクノロジー大手の検索広告の需要が落ち込んだが、その中でどこよりもGoogleの被害が大きかった。被害を受けたのは他の検索サービスもにも影響があった。

CNBCのマーケット予測記事によると、Google Cloudは今四半期の成長ターゲットに達しなかった。予想は50億7000万ドル(約5777億円)で、実値が49億9000万ドル(約5686億円)、一応成長ではあるが、投資家たちがGoogleのクラウドに期待していた額には達しなかった。

細かい科目も集めれば大きいが、グループの営業損失は当四半期に増えた。さまざまな研究開発事業は合わせて12億9000万ドル(約1470億円)の営業損失を計上し、前年同四半期の11億ドル(約1253億円)よりも大きくなった。

ここで両社の財務についてさらに1000の言葉で表現するのを止めると、2つの大手テック企業は堅実な成長率を上げ、彼らの間で数兆ドルを稼ぎ、株式買い戻しと配当金を含む株主に優しい活動に回収された2350万ドル(約27億円)を使った。テクノロジーの巨人になるには良い時代だ。

画像クレジット:Bryce Durbin/ TechCrunch

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(文:Alex Wilhelm、翻訳:Hiroshi Iwatani)

【コラム】未来の仕事場は従業員が自身でデザインする、ハイブリッドワークの試験運用から見えたこと

なぜ私たちはオフィスに行くのか?

これは誇張した意味での質問ではない。他の人と一緒に仕事をするために行くのだろうか?オフィスに行くのは、自分の仕事に集中できる決まった場所だからだろうか?「見られる」ことが必要だから行くのだろうか?ただ、いつもそうしてきたから、仕方なく行くのだろうか?

私たちSAP(サップ)では、これらの質問に対する答えを見つけるだけでなく、社員自身がその答えに一役買うこと、そして未来のハイブリッドな仕事場を築いていくことが重要であると考えている。

この夏、私たちはパロアルトにあるオフィスで、まったく新しいハイブリッドワークの試験運用プログラムを開始した。この数カ月間、私たちはさまざまなフロアプランやセットアップ、多様な勤務体系、最も生産的なスペースの使い方、理想的なミーティングの構成などをテストしてきた。また、この新しい現実に適応するマネージャーやリーダーシップのトレーニング、仕組みづくりなど、たくさんのことを行ってきた。

では、私たちはこれらから何を学んだのか?そして、その教訓をあなたのビジネスにどう生かすことができるのだろうか?

まずはじめに:社員からの声

試験運用プログラムの開始前や開始中に寄せられた社員からのフィードバックによると、利便性が高く、エネルギー効率の高いワークスペースが求められていることがわかった。私たちはただ、必要なときだけでなく、使いたいときに使えるような空間を作る方法を見つけなければならなかった。では、人々がオフィスに来たいと思う要因は何だろう?

調査の結果、主に4つの要因が見つかった。

同僚間の学び合い:当社の社員は自分のネットワークを構築することに情熱を持っており、多くの社員が、自分のキャリアを早く向上させ、SAPがどのように自社製品を構築し、革新を生んでいるのかを学ぶ機会として「同僚からの学び」を挙げた。

入社オリエン、トレーニング、学習の機会の大部分はまだバーチャルで行われているが、社員が希望する場合は直接会う機会を与えるために、現在はハイブリッドオプションを検討している。

コラボレーション:新型コロナの状況が許す限り、多くの人は実際に会って話をしたいと思っている。ビデオ通話は機能的ではあるが、テーブルを挟んで一緒にブレインストーミングをしたり、学んだり、成長したりする効果にはかなわない。

ハイブリッドワーク試験運用プログラムに参加した社員にとって、コラボレーションは大きな推進力となっている。さまざまな社員がホワイトボードを使い、画面を共有して複雑な問題を一緒に解決している。鍵となるのは、高品質のビデオやオーディオ機器が装備されたスペースで、物理的に離れた場所にいるチームメンバーが同じように参加できるようにすることだ。

仲間意識の構築:全員参加型のミーティングやQ&Aセッション、その他のチームビルディング系の機会は全員が同じ物理的なスペースにいることでより効果的になる。私たちが調査した多くの社員は、オフィスにいることの明確な利点として、半年に一度の懇親会を挙げている。

私たちは、オフィスでの社員イベントの開催を試み始めたばかりだが、その環境は以前とは大きく異なる。小規模かつ屋外で、新型コロナ対策が施された環境だ。最初のイベントを開催する前に、私たちは自問した。「社員は来たいと思うだろうか?」その答えは、圧倒的に「イエス」だった。

申し込みを開始すると、数分後には申し込みがいっぱいになり、その倍の人数がキャンセル待ちとなった。ミーティング当日はエネルギーがみなぎっており、社員からのフィードバックも非常にポジティブなものだった。みんな、再び一緒にいられることに感激していた。

意図:多くの人が、オフィスでの当たり前の習慣が恋しいと語っていた。朝、服を着て車で出勤し、チームメンバーと一緒に机に向かうことで、生産性や集中力が格段に向上するという人もいる。

すべての社員がチームワークや仲間意識を求めてオフィスに来ているわけではない。中にはプライベートと仕事のスペースを分けたい人もいて、自分が最も生産性を発揮できる静かな場所を探している人もいる。オフィスではオープンなコラボレーションスペースは不可欠だが、無音スペースや電話ブースも同様に必要不可欠だ。

私たちがこれらの特性を実践しようとしている1つの方法が、オフィス内の「スクラムネイバーシップ」だ。この環境では15〜20のデスクが用意されており、コラボレーションとチームワークを促進するために、美しく創造的で自由なオフィススペースが設けられている。また、このスペースを有効に活用するために、モバイルアプリを開発した。チームはこのアプリを使って、一緒にオフィスに来る時間を調整したり、スペースや電話室を予約することができる。

同時に、私たちはリーダーたちがこの新しい現実の中でメンバーを管理できるように、偏見を避け、典型的なマネージャーと部下という関係を、より人間的で共感し合えるものにするための努力をしてきた。

試験運用プログラムから得られた教訓

これらはまだ始まりに過ぎない。試験運用プログラムは順調に進んでいるが、今後もハイブリッドワークを推進し、最適化するための最良の方法を研究・検証していくつもりだ。

従業員の80%が、将来的には自宅とオフィスの両方で仕事をしたいと考えていることがわかった。また、80%の社員がオフィスの比較的近くに住みたいと考えていることもわかった。

もちろん、このタイミングで戻ることに違和感を覚える人も少なくなかった。しかし、試験運用プログラムでオフィスにきた人の多くは、オフィスでの仕事環境の平穏さと静けさ、対面でのミーティングの生産性、そして無料のコーヒー、スナック、ランチなどのアメニティを、明らかな利点として挙げている。さらに、リーダーやマネージャーは、私たちが彼らとの間で培ったコミュニティの行動指針に基づくことで、この環境で指導や管理を行う準備が整っていると感じている。

これまでの「普通」が完全に戻ることはないため、私たちは何が有効で何がそうでないかを見極めるために、継続的な実験と内省を続けなければならない。なぜなら、ハイブリッドなワークモデルは、理論的に成功するだけではなく、実践的に成功しなければならないからだ。

例えば、2020年、多くの従業員が、家庭や家族の事情に合わせて早朝や深夜に働くなど、勤務時間を大幅に変更できる環境に慣れてしまっていることに気づいた。また、通勤時間やオフィスが不要になったことで、チームの一部の者にとっては大きな時間も生まれていた。一方で、これまで対面式で行っていた施策の中には、全体的な実行力と効果を向上させ、場所を問わず従業員の体験をより包括的なものにするために、再考する必要があるものもある。

私たちが自問すべきことは明らかだ。あとは、その答えを見つけるだけだ。

では次は?「なぜ」と問いて「どうやって」を見つける

同じくして、2020年には、仕事の現実において、一時停止したり、もしくは一気に進めたりしなくてはいけない状況でもあった。これは、私たちの多くがいまだになんとか管理 / 運営しようとしている矛盾でもある。私たちは、ハイブリッドワークの試験運用プログラムで得られた教訓が、未来のオフィスのあり方や生産性の向上に役立つとともに、社員やリーダーがこの変化に対応できるようになることを願っている。2022年に向けて、試験運用プログラムで得られた私たちの知見は、グローバルなフレックスワークポリシーに反映され、世界の各地域で何が最適かを判断するための基準となるだろう。

その答えを考えるのに、今が一番いい時期だ。私たちと一緒に考えてみよう。あなたの「なぜ」を「どうやって」に変え、従業員が自ら未来の仕事場を構築する力を与えよう。

編集部注:本稿の執筆者Anamarie Huerta Franc(アナマリー・ウエルタ・フラン)氏は、米国のSAP Labsのマネージングディレクター。全米の開発部門の従業員を対象とした、企業間コラボレーション、ロケーション戦略、コミュニケーション、従業員エンゲージメントのリーダー。

画像クレジット:Shannon Fagan / Getty Images

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(文:Anamarie Huerta Franc、翻訳:Akihito Mizukoshi)

NTT西日本がスタートアップ・自治体・大学とのオープンイノベーションのエコシステム構築と共創施設QUINTBRIDGE発表

NTT西日本がスタートアップ・自治体・大学などとのオープンイノベーションのエコシステム構築と共創施設QUINTBRIDGE発表

西日本電信電話(NTT西日本)は10月25日、企業・スタートアップや自治体、大学とともに地域課題解決や新事業共創を行うエコシステムの構築およびオープンイノベーション施設「QUINTBRIDGE」(クイントブリッジ)を創設することを発表した。QUINTBRIDGEは2022年2月、大阪府京橋エリアへの本社移転に合わせて創設される。

今後は2021年11月にQUINTBRIDGE会員の募集開始、2022年2月にQUINTBRIDGEの運用開始、同年4月から社会課題解決に向けた共創プログラム開始を予定している。

他企業とのアライアンスによる事業創出やジョイントベンチャー設立を通じて地域課題の解決に取り組んできたNTT西日本は、社会を取り巻く環境変化がもたらす課題をICTで解決する「ソーシャルICTパイオニア」を目指す。より複雑化する社会・地域・産業の課題に対して独創的なアイデアを採り入れ、同社が保有する開発人材、検証に必要なネットワーク環境、自治体と連携した社会実装のフィールドを活かしつつ地域課題・業界課題などの解決をさらに強化するため、今回の「QUINTBRIDGE」の創設に至った。

NTT西日本がスタートアップ・自治体・大学などとのオープンイノベーションのエコシステム構築と共創施設QUINTBRIDGE発表

QUINTBRIDGEは、会員に向けて、ビジネスアイデアの構想プログラム、NTT西日本の技術者による開発支援、50以上のICTに関する連携協定を活用し「社会実装までできるエコシステム」を提供。事業共創の用途に合わせたコワーキングスペース、プロジェクトルーム、オフィススペース、検証スペース、ピッチスペース、イベントスペース、映像配信スペースなどを備えた施設(地上3階・約4000㎡・大阪市都島区東野田町4丁目15番82号)を創設する。

NTT西日本がスタートアップ・自治体・大学などとのオープンイノベーションのエコシステム構築と共創施設QUINTBRIDGE発表

また、他のオープンイノベーション施設やコンソーシアムとの連携、社会課題解決やオープンイノベーションの実績を持つ人材をアドバイザーに招くことで、多様な社会課題の解決や事業共創を推進したいという。

3Dプリントの家を建設するICONが228億円獲得、月や火星の基地建設も計画

3Dプリンティングロボットを使ってホームレスの人々のための1世帯住宅を作る。米航空宇宙局(NASA)と協力して月面、ひいては火星にインフラや居住環境を構築するための建設システムを開発し、北米最大の3Dプリント建築物になるとみられるテキサス州の軍事部門の兵舎を納入する。

これらは、テキサス州オースティンに拠点を置く建設テックスタートアップICONが取り組んできたことのごく一部だ。

そして同社は2021年8月下旬、シリーズBで2億700万ドル(約228億円)という巨額の資金調達を達成した。

筆者はICONについて、2018年10月に同社がシードラウンドで900万ドル(約9億9000万円)を調達して以来取り上げてきた。3年も経たないうちにこのマイルストーンに到達したことを見るのはかなりクールだ。

シリーズBラウンドを主導したのはNorwest Venture Partnersで、他に8VC、Bjarke Ingels Group(BIG)、BOND、Citi Crosstimbers、Ensemble、Fifth Wall、LENX、Moderne Ventures、Oakhouse Partnersが参加している。この資金調達により、ICONの純資産合計は2億6600万ドル(約293億円)に達した。同社は評価額を明らかにしていない。

ICONは2017年後半に設立され、2018年3月のSXSW(サウスバイサウスウエスト)の際、米国で初めて認可された3Dプリント住宅をもってローンチした。その350平方フィート(約32.5平方メートル)の家のプリントに要した時間は、約48時間(25%のスピード)であった。ICONは意図的にコンクリートを材料に選んでいる。それは、共同創業者でCEOのJason Ballard(ジェイソン・バラード)氏が語ったところによると「コンクリートは地球上で最もレジリエンスに優れた材料の1つ」だからだ。

それ以来同社は、米国とメキシコに20を超える3Dプリントの住宅や建築物を届けてきた。これらの住宅の半数以上は、ホームレスや慢性的貧困状態にある人々のためのものである。例えば、ICONは2020年、非営利パートナーのNew Storyと提携してメキシコに3Dプリント住宅を建設した。またテキサス州オースティンで、慢性的なホームレスに提供する一連の住宅を非営利団体Mobile Loaves&Fishesと協働して完成させた。

同社は2021年初めにメインストリームの住宅市場に参入し、テキサス州オースティンのデベロッパー3Strands向けに米国初になるという3Dプリント住宅販売を行った。4軒のうち2軒は契約が結ばれている。残りの2軒は8月31日に発売予定である。

そして先頃、ICONは「次世代」Vulcan建設システムを公開し、住宅の新たな探求シリーズを披露した。シリーズ第1弾となる「House Zero」は、3Dプリンティングに特化して最適化設計されている。

ICONによると、同社独自のVulcan技術は、従来の工法より迅速で、無駄が少なく、設計の自由度が高い「レジリエンスとエネルギー効率に優れた」住宅を実現するという。新しいVulcan建設システムは、最大3000平方フィート(約278.7平方メートル)の住宅や建築物を3Dプリントすることができ、以前のVulcan 3Dプリンターより1.5倍大きく、2倍高速になっているとバラード氏は説明している。

ICONは世界的な住宅危機とそれに対処する解決策の欠如に突き動かされている、と同氏は会社設立当初から主張してきた。3Dプリンターやロボット、そして先進的な材料を利用することは、手頃な価格の住宅の不足に取り組む1つの方法である。この問題は、全国的に、そしてオースティンにおいて、悪化の一途をたどっている。

ICONの将来計画のリストには、社会、災害救援、そしてよりメインストリームの住宅を提供することなどが盛り込まれており、さらにはNASAと共同で、月、やがては火星にインフラや居住地を作るための建設システムを開発することも含まれている、とバラード氏は語る。

ICONはまた、NASAと2つのプロジェクトを進めている。先にNASA、ICON、BIGによるMars Dune Alphaの発表が行われた。ICONはこれまでのところ、壁システムの印刷を完了し、現在は屋根に取りかかっている。また、NASAは、ICONの3Dプリントで作られる火星の最初のシミュレーション居住地に住むミッションのクルーを募集中だ。このミッションは2022年秋に開始される予定である。

プロジェクトOlympusは、未来の月探査のための宇宙ベースの建設システムを開発し「別の世界に人類の住まいを想像する」ICONの取り組みを象徴するものとなっている。

「私たちの目標は、次の10年のうちにICONテックを月に届けることです」とバラード氏は語る。

バラード氏はTechCrunchの質問に対して「2020年8月の3500万ドル(約38億5700万円)のシリーズA以降で起きている最も重要なことは、3Dプリント住宅や建物に対する需要の急激な増加です」と答えている。

「この単一の指標は、私たちにとって大きな意味を持ちます」とバラード氏はTechCrunchに語った。「人々がこうした家を求めることは必然的なことなのです」。

「住宅不足に取り組むためには、世界は供給を増やし、コストを削減し、スピードを上げ、レジリエンスを上げ、持続可能性を高める必要があります【略】これらはすべて、質と美しさを損なうことなく行うことが必要です」とバラード氏は付け加えた。

「そのようなことを可能にするアプローチはいくつかあるかもしれませんが、それらすべてを実現できる可能性を秘めているのは、建設スケールの3Dプリントだけです」。

バラード氏によると、ICONは創業以来ほぼ毎年400%の売上増を記録し、目覚ましい財務成長を遂げている。同社のチームは2020年の3倍になり、現在100人以上の従業員を擁している。来年中には規模が倍増する見込みだ。

共同創業者たちと次世代Vulcan建設システム(画像クレジット:ICON)

シリーズBの資金は、3Dプリント住宅の建設の促進「急速なスケールアップと研究開発」、さらなる宇宙ベースの技術の発展、そして「住宅問題に対する持続的な社会的インパクト」の創出に充てられる、とバラード氏は語っている。

「私たちはすでに初期段階の製造を立ち上げており、3Dプリント住宅の需要を満たすために、その取り組みをアップグレードし、加速しているところです」とバラード氏。「今後5年間で年間数千世帯の住宅供給を実現し、将来的には年間数万世帯の住宅を供給できるようになると考えています」。

今回の資金調達の一環としてICONの取締役会に加わるNorwest Venture PartnersのマネージングパートナーJeff Crowe(ジェフ・クロウ)氏は、ICONの3Dプリンティング建設技術が「米国および世界中の住宅不足に多大なインパクトをもたらす」と考えていると語った。

クロウ氏によると、先進的なロボティクス、材料科学、ソフトウェアを組み合わせて堅牢な3Dプリント建設技術を開発することは、そもそも「非常に難しい」ことだという。

同氏はEメールで次のように述べている。「制御された環境で1台か2台のデモユニットを製造するだけではなく、さまざまな地域で、信頼性と予測可能性を備えた、美しく、手頃な価格で、快適で、エネルギー効率に優れた住宅を何百、何千台も生産できるような技術を開発することは、さらに困難です。ICONはこれらすべてを実現しており【略】ブレイクアウト、世代間の成功につながるすべての要素を備えています」。

画像クレジット:ICON, Lake/FLATO Architects

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(文:Mary Ann Azevedo、翻訳:Dragonfly)

トランプ氏のSPACを巡る「合理的な」投資判断が笑える

Donald Trump(ドナルド・トランプ)前米大統領がメディアおよびテクノロジーの会社を立ち上げようと思い立ち「白紙小切手会社」を通じて上場させるつもりだというニュースが流れたとき、同社の株式を「どれだけ早く空売りできるか」とあなたが直ちに考え始めたとしても、それはおそらく許される。

関連記事:トランプ氏が独自SNS「TRUTH Social」立ち上げ、新メディア会社はSPAC上場へ

その理由を挙げよう。右寄りのソーシャルネットワークはほとんど失敗していること、会社が目指していることの範囲やライバル企業の裕福さを考えると会社の資金が著しく不足していると思われること、将来のモデルとなる過去の収益はおろか、使える製品がないことなどだ。他にも懐疑的な理由はあるが、私が好きなのは上記に挙げたものだ。

だが、問題のSPAC(特別買収目的会社)Digital World Acquisition Corp(デジタルワールド・アクイジション・コープ)」の株価は、そのニュースで急上昇した。そして、米国時間10月22日もその曲芸は続いた。

DWACは同社のクラスA株のティッカーシンボルだ。一方、DWACUは同じ株式だが半分のワラントが付いている。後者の株価はあまり上昇しておらず、少し奇妙だ。

いずれにせよ、Yahoo Financeによると、10月22日のDWACの時価総額は約47億ドル(約5358億円)だ。つまり、Digital World、別名Trump Media and Technology Group(トランプ・メディア・アンド・テクノロジー・グループ、TMTG)は、メディアとテクノロジーの世界から生まれた最新のユニコーンのようなものだということだ。確かに市場で株価がついているが、Digital Worldと合併する会社があまりにも若く、笑うしかない。とりあえず、スタートアップと呼ぶ他はない。

何もかもが合理的ではない。2021年やSPACの時代の基準から見ても、非常にばかげている。

TMTGが唯一持ち合わせ、同社を薄っぺらな市場統計にくっついている熱い空気以外の何ものでもない存在にしているのは、トランプ氏の名だ。会社のプレゼンで、ポッドキャストの人気の高まりを思い出させてくれたことに感謝したい。鮮烈な洞察だ。TMTGは、SPACの資金を使って事業を行うのであって、トランプ氏のキャッシュを使うわけではない。まして、社名にその名前を冠し、億万長者といわれた男の資金的な支援があるわけでもない。

おそらく、TMTGがあまりにも馬鹿げていることからすれば、同社の株が「memestock(ミームストック、業績に関係なくSNS等の情報で株価が乱高下する銘柄)」や「stonk(ストンク、明らかに合理的とは見えない動きをする銘柄)」になることは、わかっていたはずだ。なぜなら、極めて奇抜な企業だけがそうなるからだ。ゲームグッズのデジタル配信が増え、実店舗の小売が減っている? GameStop(ゲームストップ)を月へ打ち上げよう。レンタカーを借りている人がいない? Hertz(ハーツ)の株を買いに走ろう。そんなところだ。

というわけで、当然に、DWACはほとんど垂直上昇していく。そうならないわけがない。この株の高騰は、まったくもって滑稽であると同時に、効率的な市場理論に対する厳しい批判でもある。ビジネスとしてほとんど意味をなさないことほど、ミームとして優れた「stonk」はない。かくして、TMTGは凄まじい上昇を見せている。それが合理性をもつのは、まさにそこに合理性が見られない状況においてだ。

いつもならこの辺りで寝てしまうのだが、やるべきことがたくさん出てきたので、今はこの辺にしておこう。本日の取引に参加されるみなさま、幸運を。

画像クレジット:Hiroshi Watanabe / Getty Images

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(文:Alex Wilhelm、翻訳:Nariko Mizoguchi

グーグルがスマホ代金と各種プレミアムサービスを組み合わせたサブスクプラン「Pixel Pass」発表、Pixel 6は月額約5100円

新しいスマートフォンPixel 6の発表と同時に、Google(グーグル)は新しい購入方法Pixel Pass(ピクセルパス)も紹介した。このオールインワンのサブスクリプションサービスによって、消費者はPixelを購入する際に、すべての費用を前払いするのではなく、月々の低価格で購入することができるようになる。このサービスは、Pixel 6の場合は月額45ドル(約5100円)、Pixel 6 Proの場合は月額55ドル(約6200円)で利用できるが、このサービスは、携帯電話そのものを利用できるだけではなく、ストレージや音楽、YouTube Premium(ユーチューブプレミアム)、無料アプリやゲームといったGoogleのサービスのサブスクリプションも含まれている。

具体的には、加入者は通常月額11.99ドル(約1300円)の広告なしのYouTube、通称YouTube Premiumを利用できる。これには、Spotify(スポティファイ)やApple Music(アップルミュージック)に対するGoogleの回答であり、利用できなくなったGoogle Play Music(グーグルプレイミュージック)の代わりとなるYouTube Music Premium(ユーチューブミュージックプレミアム)も含まれる。

Pixel Passの加入者は、Google One(グーグルワン)で200GBのクラウドストレージを利用できる他、Google Store(グーグルストア)での割引や、通常は月額4.99ドル(約570円)または年額29.99ドル(約3400円)のサブスクリプションでApple Arcade(アップルアーケード)と同様にアプリ内課金や広告なしでアプリやゲームを無料でできるGoogle Play Pass(グーグルプレイパス)を利用できる。

このサービスには修理や「人生のちょっとしたアクシデント」や修理に対応するPreferred Care(プリファードケア)という保険も含まれているとGoogleは述べている。これは、Apple(アップル)のデバイスに対するAppleCare(アップルケア)のGoogle版だ。

Pixel Passに同梱されるPixel端末は、アンロックされているため、主要な通信事業者に対応している。

このサービスは、Google Storeで購入することもできる他、同社独自の携帯電話サービスGoogle Fi(グーグルファイ)のプランと組み合わせて利用することも可能だという。

Pixel Passをサブスクリプションとして購入すると、2年間で最大294ドル(約3万3500円)の節約になるとGoogleは指摘している。しかし、Google Fiを通じて購入した場合は、毎月のFiプランからさらに4ドル(約450円)が割引され、2年間で414ドル(約4万7300円)の節約となる。

このサブスクリプションは、常に最新のデバイスを持ち歩きたいが、プレミアムサービスにもアクセスしたいという、定期的にアップデートする人のために設計されている。このサービスは、明らかにAppleが提供しているiPhone Upgrade Programに代わる、Googleのサブスクリプションプランを目指している。しかし、Appleは、新しいサブスクリプションプランApple Oneを通じて、独自のサブスクリプションサービスを個別に提供しているが、Pixel Passはそれらを一括して提供している。

Pixel 6と新しいPixel Passは、米国で本日よりGoogle StoreまたはGoogle Fiで月額45ドル(約5100円)から予約を開始している。

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(文:Sarah Perez、翻訳:Yuta Kaminishi)

アップルは新チップでテック業界を湧かせるが、ウォール街はあくびをする

Apple(アップル)がイベントで何かを発表しても、マーケットはほぼ反応しないことについてのおなじみの連載記事に、2021年もようこそ。

いやむしろ、Appleの株価は、同社自身が発表するものよりももっとずっと外部のイベントに対して敏感なようだ。同社による記者たちに愛想がいい長時間の発表の間、株価がNASDAQ総合よりも上がるとしたら、それはレアケースとなる。

そのことは今でも私たちにとってやや驚きだが、Appleのイベントは当日までに情報が十分リークしてしまうため、その日が来る前に新製品発表などは株価に織り込み済みになるのかもしれない。

そんな議論もおそらく必要なのだろうが、マーケットに関しては十分ではない。手は出すけど本格的ではない、なまぬるいというところか。本日のAppleは、PC用チップまで発表したのに、そのすごさは反映されなかった。そう、Appleは新製品M1 Proを詳しく紹介したし、M1 Maxチップだって驚異的だ。たしかに、これらの名前はいかにもベビーブーム世代らしい安っぽさだが、チップそのものは感動的な偉業ではないか。そしてAppleはその新チップを、一連の予想よりも高額なコンピューターに搭載している。

こんな考えもある。ハードウェアはすごい。しかしコンピューターの価格に対して高すぎる?この説は、どうだろう?しかもAppleの株は午後1時から2時までのイベントの間にNASDAQをかなり追っていた。下図のように。

この図における唯一の注目ポイントは、午後1時以降、Appleの最初の下降がNASDAQのもっと大きなテクノロジーコレクションの下降よりも急激であることだ。しかし、その後Appleはさらに急激に回復している。その結果、取引の全時間がまるで仮装だ。Appleも、他のテクノロジー株と同様に前進した。やれやれ。

私がAppleのエンジニアだったら、頭に来ただろう。おい、みんな見てくれ、すごいチップだぞ。長年インテルは、汚物を垂れ流して市場を食い物にしてきた。それができたからね!しかもそれなのに、ウォール街がまったく全然、感動しないなんて。

画像クレジット:Apple

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(文:Alex Wilhelm、翻訳:Hiroshi Iwatani)

70年以上も労働生産性の成長が停滞する建設業界のDXを進めるAgoraがTiger Global主導ラウンドで36億円調達

CEO兼共同設立者マリア・リューミン氏(画像クレジット:Agora)

請負業者向けの資材管理プラットフォーム構築を手がけるスタートアップAgoraが、Tiger Global Managementが主導するシリーズBラウンドで3300万ドル(約36億円)を調達した。

今回の資金調達には、8VC、Tishman Speyer、Yahooの共同創業者Jerry YangJerry Yang(ジェリー・ヤン)氏、Michael Ovitz(マイケル・オーヴィッツ)氏、DST、LeFrak、Kevin Hartz(ケヴィン・ハーツ)氏も参加しており、同スタートアップの2018年創業以来の調達総額は約4500万ドル(約49億円)となった。

建設テックは、きらびやかなテクノロジーを好むことが多いスタートアップの世界では、これまで「魅力的」とは考えられてこなかったセクターの1つだ。しかし、建設業は商業や不動産業の原動力ともなっており、私たちすべてに何らかの形でインパクトをもたらしていると言えるだろう。

一方、10兆ドル(約1097兆円)規模の建設業界は長い間、生産性の問題に悩まされてきた。事実、マッキンゼーによると、この業界における労働生産性の成長は1947年以降停滞しているという。

画像クレジット:Agora

Maria Rioumine(マリア・リューミン)氏とRyan Gibson(ライアン・ギブソン)氏がAgoraを設立したときのミッションは、商業取引の請負業者向けに、資材の発注と追跡、手作業でのデータ入力の自動化、そして調達プロセスに関わるすべての人への相互通信可能な単一プラットフォームの提供といった取り組みを推進することにあった。

最終的な目標は、プロジェクトの迅速な進行を支援し、請負業者が建設コストを削減して不必要な遅延を回避することに置かれている。Agoraが期待する、より大きなインパクトは、同社のSaaSプラットフォームが「建設環境をより迅速かつ効率的なものにする」ことであり、それによって都市が「より手頃になり、すべてにアクセスしやすくなる」ことだ。

サンフランシスコに拠点を置くAgoraは、極めて限定的でニッチな方法でこの問題に取り組んでおり、請負業者だけでなく投資家にも支持されていることが示されている。Agoraは、すべての取引を一括して解決しようとするのではなく、特定の垂直市場に焦点を絞っている。例えば、最初は電気関連でスタートしたが、現在は機械関連に移行している。

「2020年、1010億ドル(約11兆円)を超える規模の電気関連の案件に対応しました。当社の顧客は、あらゆる種類のプロジェクトに取り組んでいます」とリューミン氏はTechCrunchに語った。「例えば、発電所に従事する顧客、病院の建設を行う顧客、学校の教室や大学のキャンパスの建設を手がける顧客、教会やスタジアムの建設に携わる顧客がいます。これらの請負業者の仕事は、欠くことのできない重要なものです」。

Agoraの年間経常収益(ARR)は前年比で760%増加しており、顧客ベースも6倍の伸びを示しているという。従業員数もこれまでの3倍の45人に増員され、現在は顧客向けの年間資材ボリュームとして1億4000万ドル(約153億円)を処理している。

同社はシリーズBに向けて活発な資金調達を行ったわけではなく、代わりに投資家たちが積極的にタームシートを提供してくれた、とリューミン氏は説明する。

「私たちのことを十分に理解していた数人の投資家たちが、このラウンドを先取りすることについてアプローチしてきました」と同氏はTechCrunchに語ってくれた。「最初の対話から12日が過ぎた頃、複数のタームシートが用意されていました」。

Tiger GlobalのパートナーであるJohn Curtius(ジョン・カーティウス)氏は、Agoraの「独自」の取引に特化したアプローチに惹かれたと語っている。

同氏の見解によると、このスタートアップは「建設における調達の未来を定義している」という。

「Agoraは巨大かつクリティカルな問題を解決しようとしています」とカーティウス氏はメールで述べている。「調達プロセスの非効率性とサプライチェーンの破綻により、年間数十億ドル(約数千億円)が無駄になっています」。

同社のプラットフォームが提供する具体的な機能としては次のようなものがある。テンプレートのカスタマイズ、事前に承認された資材リストの作成、頻繁に必要とされるアイテムの容易な再注文、40万以上のSKUを提供するカタログからの注文、そしてエラーを減らし基本的なプロセスを自動化する、手作業によるデータ入力の排除などだ。

Agoraによると、現場チームとオフィスチームの両方を1つのデジタルプラットフォームに統合することで、オフィスチームが発注処理に費やす時間を75%、現場チームが資材管理に費やす時間を38%削減できるという。全体として、同社の技術は平均的な顧客に年間最大30万ドル(約3290万円)の節約をもたらす可能性があるという。

今回調達した資金は、複数のチームにわたる人材の雇用に充てる他、30の州を越えて事業を拡大し、他の垂直市場への進出を図っていくために活用する計画だ。

「建設業界では長い間、テクノロジーへの投資不足が続いてきました」とリューミン氏はいう。平均すると、建設収入に占めるテクノロジー支出の割合は約1.5%で「これは実際、中央値が3.3%を示す業界の中で最も低い水準です」と同氏は付け加えた。

「この業界の規模と、ここ最近における生産性向上の低調さを考えると、テクノロジーに真に投資し、それを現場や請負業者に提供していくすばらしい機会が私たちに訪れているのだと感じます」。

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(文:Mary Ann Azevedo、翻訳:Dragonfly)

【コラム】イーロン・マスクやスティーブ・ジョブズ、「独創的」な考え方を持つ脳多様性な人たちも活かすソフト設計とは

ホモ・サピエンスは実に多様性に富んだ種である。地球上のさまざまな地域に起源を持つ私たちは、出自に基づく区別を呈する姿をしており、コミュニケーション手段には何千もの言語が存在する。そしてそれぞれの経験、伝統、文化に基づいた異なる思考パターンを持ち合わせている。私たちの脳は、そのすべてに独自性がある。このような特性をはじめとするあらゆる機能を駆使して、私たちは問題を分析し、意思決定を行う。

これらの要素はすべて、私たちがビジネスを行う方法と、職務を遂行するためにツールを使用する方法に直接影響している。ビジネスを上手く進めることは、ほとんどの人にとって課題をともなうチャレンジングなものだ。しかし、ニューロダイバース(神経学的に多様)の特性を有する人々、故Steve Jobs(スティーブ・ジョブズ)氏がかつて述べたような「think different(異なる考えを持つ)」プロフェッショナルたちは、その才能が企業内でしばしば過小評価されるか、未開拓である、独自の類型となっている。こうした企業は、標準化に価値を置き、通常のワークパターンからの逸脱は限定的であることを好む傾向にある。

ニューロダイバーシティ(神経多様性 / 脳の多様性)の役割

ニューロダイバースな資質を持つ(ニューロダイバージェント)人々は、主流派とは異なる方法で情報を処理する。自閉症スペクトラム、失読症、注意欠陥障害(ADD)を持つ人々もその例として挙げられるが、専門家は全人口の40%がニューロダイバージェントであると考えている。

優秀なセールスパーソンほど粘り強さを発揮し「独創的」な考え方をすることが多いことを勘案し、このパーセンテージはセールス専門職ではさらに高くなると思う人も少なくない。あるセールスチームの誰かがスーパースター級のセールスパーソンであっても、彼らが情報や他者とどのようにやり取りするかに影響を与える神経学的変異を持っているという可能性は低い。こうしたことから、ニューロアティピカル(神経学的に非定型)な人々をセールス組織に統合し、彼らを成功に導く知恵についての非常に興味深い議論が生じている。

例えば、セールスパーソンはCRM(Customer Relationship Managementm、顧客関係管理)ソフトウェアシステムを利用している。このシステムでは、すべての記録、ワークフロー、アナリティクスが標準化されており、ユーザーエクスペリエンスはシステムに設定された1つの方法に限定されている。

だが、このような複雑で柔軟性に欠けるシステムを誰もが最適に使用できるわけではない。特に、ユーザーインタラクションレイヤーが非常に厳しく制限されている場合はなおさらだ。ニューロダイバースな人々の多くは、特に「独断的」なアプリケーションを使うことに困難を感じる。このようなアプリケーションでは、ユーザーに特定の作業方法を押し付ける傾向があり、ときにユーザーの人間性のすべての面、つまり情報を処理し、ワークフローをナビゲートするユーザー独自の方法を考慮しないこともある。そのため、ほとんどのセールス組織において、最も高いパフォーマンスを発揮するセールス担当者は、CRMを最低限しか更新していないことが多い。ノートテイキングアプリケーション、タスク、スプレッドシートなどの基本的なツールで取引のパイプラインを管理しているセールス担当者が多いのも、こうした理由からだろう。

ニューロダイバースなプロフェッショナルは、異なる視点と強みをもたらし、しばしば現状に挑戦する。思考の多様性が、特別なやり方で組織に力を与えるのだ。

企業はニューロダイバースの人材から何を得るべきだろうか?

JP Morgan(JPモルガン)は、2015年にニューロダイバーシティのパイロットプログラム「Autism(自閉症)at Work」を立ち上げた。その結果は注目に価するものであった。このプログラムに参加した従業員は、同僚よりも48%早く仕事を完了し、92%生産性が高かった。オーストラリアのDepartment of Human Services(福祉省)の別のパイロットプログラムの結果によると、同組織のニューロダイバースなソフトウェアテストチームは、ニューロティピカル(神経学的に定型)なチームよりも30%生産性が高くなっていた。

自閉症の人の多くは細部にまで強いこだわりを持つことが知られている。例えば、自閉症スペクトラムの7歳の少年は、歴史上のあらゆる難破船の詳細を暗記している。この種の情報への集中と欲求は、適切な役割に利用されることで、驚くべきポテンシャルが生み出される。自閉症の人材は、データアナリティクス、技術サービス、ソフトウェアエンジニアリングなど、知識経済の急成長分野の一部に理想的に適していることも多い。実際、Tesla(テスラ)のCEOであるElon Musk(イーロン・マスク)氏は、自身が自閉症の一種であるアスペルガー症候群であることを最近明らかにしている

ニューロダイバーシティの別の領域として、独創的な考え方をする人は失読症であることが多い。世界を変革した失読症の人々について考えてみよう。Steve Jobs(スティーブ・ジョブズ)氏、Richard Branson(リチャード・ブランソン)氏、Bill Gates(ビル・ゲイツ)氏。これはほんの一部の例にすぎない。彼らに共通しているのは、世界を違った目で見る能力である。

ソフトウェアのジレンマ

企業はこうしたメッセージを意識し始めている。ニューロダイバージェントの従業員は才能と貢献の巨大な源泉として評価されるべきであるという認識である。同時に、2020年の出来事をきっかけに、あらゆる種類の社会的不公平に対する意識が高まり、より多くの組織がニューロダイバーシティを多様性、公平性、インクルージョンの取り組みの一環として認識するようになった。

しかしこれまでのところ、焦点が当てられているのは、雇用、トレーニング、オンボーディングプロセス、さらにはオフィス設計(私たちがオフィスに復帰した場合)がどのようにしてニューロダイバージェントの人々にとってより包括的になることができるのかということだ。例えば、SAP(エスエイピー)とMicrosoft(マイクロソフト)は、ニューロアティピカルの従業員をより多く雇用する取り組みを拡大している。

こうしたイニシアティブは重要であるが、ソフトウェア企業は一歩進んで、中核的な設計レベルでアプローチを変える必要があると私たちは考えている。

多くのソフトウェアは、ユーザーの視点からすべてのものがどのように感じられ、どのように流れるかについてほとんど、またはまったく配慮することなく、ユーザーに特定の作業方法を課している。そしてその過程で、この硬直的なシステムは、ニューロダイバースな人々を排除してしまう。その結果、ユーザーは日々の業務で課題に直面することになる。これまで提供されてきたツールは、標準化という名の下に、情報の処理方法やワークフローの操作方法に適合していないのである。そして、組織はツールやシステムの適用状況が不十分であることに悩まされている。

このようなことを意図的に行っているベンダーは存在しない。ただ、実行して良い結果を出すのは難しいということである。しかし、あらゆるユーザーを念頭に置き、すべてのユーザーが同じように効率的かつ生産的になれるような、共感できるソフトウェア設計を追求することは、すべてのソフトウェア企業にとってコアバリューとなるはずだ。それは、すべての「ユーザー」が同じではないことを認識し、尊重することから始まる。そうすることで、より多くの人々が自然に利用できる、より柔軟でアプローチしやすいソフトウェアを設計する道が開けてくるだろう。

セールス組織がニューロダイバージェントの人材を多く擁しているとしたら、間違った種類のツールがもたらす影響を想像してみて欲しい。例えば、ADHD(注意欠陥・多動性障害)を持つ人に大量の単調なデータ入力タスクを要求するCRMソフトウェアのようなものだ。熟練した、ニューロダイバースなセールスパーソンが、自分の潜在能力を十分に発揮するには不適切なツールを与えられたために、フラストレーション、潜在能力の喪失、士気の低下が生じてしまうことを想像して欲しい。

業界全体として、ソフトウェアのユーザーエクスペリエンスについての考え方を広げ、柔軟性を主要な設計原則として組み込む時期がきているといえるだろう。

編集部注:本稿の執筆者Pouyan Salehi(プーヤン・サレヒ)氏は、Scratchpadの共同設立者兼CEO。

画像クレジット:Hiroshi Watanabe / Getty Images

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(文:Pouyan Salehi、翻訳:Dragonfly)

【コラム】包括的なマーケティングチャネル、ニュースレターを成長させるための実証済みの戦術

メールによるニュースレターほど包括的なマーケティングチャネルは他にはない。ニュースレターならオーディエンスとのダイレクトな通信ラインを所有できる。投資収益率は40倍(1ドルの投資で最大40ドルの利益)、拡張性はほぼ無限、コストはほぼゼロだ。

しかし、こうした利点を引き出すには、戦術が必要だ。この記事では、Demand Curveで使用している戦術を紹介する。この戦術により、Demand Curveでは、質の高い5万人を超える購読者を獲得し、開封率50%以上を維持している。

60%ルールを使用してポップアップによるコンバージョン率を上げる

ポップアップは侵襲的と考えられることが多いが、やはり機能する。平均でも、サイト訪問者の3%をコンバージョンする効果がある。戦略的で高パフォーマンスのポップアップならコンバージョン率は10%に達することもある。

コンバージョン率が高く侵襲性の低いポップアップにするには、60%ルールに従ってみるとよい。

  1. ポップアップを表示するページを選択する。コンバージョンを重視したページ(製品ページ、チェックアウト、サインアップなど)以外のページを選択するようにする。当社の調査ではコンテンツページが最適だ。コンテンツページは何か特定の情報を探しているページ訪問者にとって信号の役目を果たす。
  2. ウェブサイト分析ソフトウェアを起動して、そのページの平均滞在時間を確認する。
  3. そのページの平均滞在時間の60%が経過したらポップアップが表示されるよう設定する。

例えば平均滞在時間が50秒のページであれば、そのページに訪問者がランディングしてから30秒経過した時点でポップアップが表示されるように設定する。

なぜ60%なのか。読者は貴社のコンテンツに興味を示しているが、ページを離れるときが近づいている。そのタイミングでニュースレターを購読するよう促して、メールの代わりにより適切なコンテンツが表示されるようにすることは、適正だと受け止められるだろう。

ニュースレターのサンプルを掲載して品質の高さを示す

貴社のコンテンツを初めて見る訪問者に、ニュースレターの購読を勧めて成功すれば大きく前進する可能性はあるが、大半の新規訪問者はすぐには購読しない。新規訪問者と購読者の間のギャップを埋めるには、サインアップページにサンプルを掲載するとよい。最も魅力的なニュースレターをサンプルとして掲載して、コンテンツの質の高さを示すようにする。

最も魅力的なニュースレターを探すには、既刊号を開封率と返信でフィルタリングする。メールサービスプロバイダーにアクセスして、発行済みのニュースレターを開封率で並べ替えてみるとよい。これによりどのような件名のニュースレターが既存の読者に最も人気があるのかを特定できる。

次に、受信箱に移動して、ニュースレターに対する返信を並べ替えて、読者からの返信が最も多かったニュースレターを特定する。これは、その号が最も反響が大きく、無料サンプルとしてふさわしいことを示す良い証拠となる。

画像クレジット:Demand Curve

実在の人物からのメールのほうが開封率が高い

読者はサインアップした後のウェルカムメールを反射的に無視することが多い。しかし、ウェルカムメールを開く読み手のほうが、以降のニュースレターを毎回開く可能性が高い。

新規購読者がウェルカムメールを開くように促すには、購読に感謝するメールの配信を意識的に遅らせたり、送信者がはっきり分かるようにするなどして、ウェルカムメールのパターンを崩してみる。

ウェルカムメールの配信を45分遅らせる。これにより、サインアップ後数秒以内に配信されるメールを無視する新規購読者の反射的反応を回避できる。当社の調査によると45分が理想的だ。45分というのは従来のパターンを崩すには十分長い遅延であるが、ウェルカムメールが受信箱内に埋もれてしまうほど長くもない。

ウェルカムメールは、ビジネスアカウントからではなく、個人が送信するようにする。送信者を企業の創業者か確立されたオーディエンスを持つ人物にするととりわけ効果的だ。会社のロゴではなくその人物の写真を使うことで、メールが引き立つ。

送信者個人の受信箱があふれるのを防ぐには、メール送信専用に使用するウェブサイトのサブドメインを作成する。送信者のアカウントを作成し、以降ニュースレターの発行にはそのアカウントを使用する。これにより送信者の受信箱があふれるのを回避できるため、送信ドメインの健全性を維持できる。

画像クレジット:Demand Curve

新規購読者に特別号を送る

新規購読者は初回号の受信を楽しみにしている。新規購読者に確実に満足してもらうには、既刊号で特に良かったものを寄せ集めた初回特別号を作成するとよい。ただし、サインアップページにサンプルとして掲載したのと同じコンテンツは使わないように注意すること。

この初回特別号をウェルカムメールといっしょに送信して、新規購読者にニュースレターの価値(良さ)を分かってもらうようにする。これまでで最も良かった号を最初に送信しておけば、購読者は、以降の号も楽しみに待っていてくれる。

ウェルカムメールは長ったらしいものよりも簡潔でコンパクトにしたほうがよい。ウェルカムメッセージは簡潔にし、初回号は内容を充実させるようにする。ウェルカムメールと初回特別号が届いたら、以降は定期的な頻度で発行する。

画像クレジット:Demand Curve

発行回数を減らすことを検討する

Twitter上の2万4000人のマーケターたちを対象に「ニュースレター疲れ」で購読解除していないかというアンケートを実施したところ、

発行数が多過ぎるニュースレターは購読解除するという回答者が8割もいた。

購読者を疲れさせないためには、以下の点に注意する。

購読者がニュースレターの受信頻度を調整できるようにする:週1回の頻度で受信したい購読者もいれば、月1回で十分という購読者もいる。各号の末尾に、オプトアウト用のリンクを置いて、購読者がニュースレターの受信頻度をカスタマイズできるようにする。受信頻度は下がっても購読状態は維持されるようにすれば、その購読者とのつながりを保つことができる。完全に購読解除されるのは避けるようにしたい。

発行回数を減らす:四半期ごとの最大発行部数に制限をかけるようにすれば、必然的に、限られた部数のコンテンツを充実させようと努力するようになる。単に、購読者の受信箱に入り込むという目的のためだけに発行部数を増やしても、あなたも読み手も疲弊するだけだ。当社調査によると、発行部数とコンバージョン率の間には相関関係はないことが分かっている。

お堅い内容だけでなくおもしろい内容も含める

受信箱内の大半のメールはお堅い内容だ。目立つには、ウェブから収集した愉快なミーム、ジョーク、おもしろいリンクなどを含めるようにするとよい。

この戦術は毎号読者を楽しい気分にさせるという意味で、極めて効果的だ。毎号、すべての購読者の共感を呼ぶ内容を書くのは不可能だ。対照的に、ユーモアは何人にも通じる。おもしろい笑えるコンテンツを含めることで、すべての読者に満足感を与えることができる。

これはニュースレターを読む習慣の形成にも役立つ。毎号、少し内容が違っていれば、読者は、新しい号が届いたときに、どのような内容なのか分からない。ニュースレターの末尾に何かおもしろい内容を書くようにすると、読者にご褒美を与えることになって効果的だ。つまり、お堅いものを読んだ後に、笑えるものでご褒美を与えるというわけだ。

当社では毎号ミームを追加するようにしている。読者からはとてもおもしろかったという感想をいただいている。

画像クレジット:Demand Curve

他者への紹介をシームレスに行えるようにする

購読者が他者に紹介してくれれば、ニュースレターをコストなしで成長させることができる。購読者が他者に紹介してくれる可能性を高めるには、紹介プロセスを25秒以内に抑えるようにする。

毎号の終わりにニュースレターを他者に紹介できることを読者に知らせる。簡単なのは、興味を持ってくれそうな友人にメールを転送してもらう方法だ。ニュースレターの冒頭部分に、紹介された人が購読手続きを実行できるページへのリンクを含む短い文を含めるようにする。

もう少し高度な戦術として、紹介プログラムに対する購読者の一意なリンクを含めて、購読者が自分で紹介した人数を追跡できるようにする方法もある。メールやソーシャルメディア経由で共有するオプションも用意しておく。

毎号ウェブ版も用意して、メール以外でも簡単にコンテンツを共有できるようにしておく。大半のメールサービスプロバイダーはウェブ版を自動生成して、ソーシャルメディア等で拡散できるようにしている。また、コンテンツをコピーしてウェブサイトにブログ記事として投稿すれば、検索エンジンにも引っかかるようになる。

ニュースレターを紹介してくれた購読者に報酬を与えることを検討する。商品が紹介の動機となるのは、貴社のブランドが有名かかなり特殊な場合だけだ。当社は排他的コンテンツを使用して紹介を奨励することをお勧めしている。5人以上の友人を紹介してくれた購読者に毎月特別号をお送りする。これにより、コストを抑えながら、購読者により豊富な情報を提供できる。

紹介が効果を表すには購読者が最小必要人数を超えている必要がある。当社の調査によると、購読者約1万人がしきい値であることが分かっている。ただし、オーディエンスのエンゲージメントが非常に高いか、コミュニティがアクティブな場合は、無料の紹介プログラムを実装しても事実上不都合が生じることはない。

フォロワーを購読者に変える方法

購読者はソーシャルメディアを介して貴社のコンテンツを知るようになるかもしれないが、ソーシャルメディアのオーディエンスはそのメディアプラットフォームのものであり、貴社はそうした購読者と直接やり取りするためのチャネルを所有しているわけではない。フォロワーをニュースレターの購読者に変えることができれば、オーディエンスとダイレクトにやり取りして、関係を深めることができる。

フォロワーにニュースレターの購読を売り込むには、自分の略歴にリンクを含めるとよい。これは当たり前のように聞こえるかもしれないが、実際にそうしている人は少ない。あなたのソーシャルメディアのプロフィールを見た人に、ニュースレターにサインアップするよう呼びかけるのだ。そうしなければ、見た人は、貴社がニュースレターを運営していることさえ分からない。

ツイッターのスレッドやLinkedInの投稿を途中で切り上げて、すべてを読むにはニュースレターの購読をどうぞ、と呼びかけることもできる。

ニュースレター経由でしかアクセスできないオファーや独自のコンテンツを作成するのもよい。これにより、貴社のメーリングリストに参加して排他的なコンテンツや特殊なオファーを受け取るようフォロワーを動機づけることができる。

まとめ

新規購読者の獲得:自社のサイトで、適切なポップアップを購読の意志がある読者にのみ表示する。ニュースレターのサンプルを掲載して、貴社のニュースレターを購読すべき理由を示す。ウェルカムメールを目立たせ、初回号としてこれまでで最も良かった号を送る。

購読者の維持:購読者のもっと読みたいという気持ちを保つため、発行回数を抑える。ユーモアやおもしろいリンクを散りばめて、ニュースレターの購読を習慣にしてもらう。

ニュースレターの拡大:排他的なコンテンツやオファーを使って、貴社のソーシャルメディアのフォロワーにニュースレターを購読してもらうように仕向ける。購読者にニュースレターを他者に紹介してもらうことで購読者ベースの拡大を図る。

編集部注:本稿の執筆者Stewart Hillhouse(スチュワート・ヒルハウス)氏は、Demand Curveのシニア・コンテンツ・リードとして、実用的なグロース・マーケティングの洞察をまとめている。夜にはポッドキャスト「Top Of Mind」でマーケターやクリエイターにインタビューしている。マーケティングの世界に入る前は、セミプロの木こりだった。また、stewarthillhouse.comで執筆活動を行っている。

画像クレジット:Ihor Reshetniak / Getty Images

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(文:Stewart Hillhouse、翻訳:Dragonfly)

【コラム】知られざるデザインの事実とユーザーエクスペリエンスの偏りに対処する方法

最近とある巨大テック企業と話をする機会があった。彼らが知りたがっていたのは、彼らが手がける人間中心設計は、エクスペリエンスの偏りを防ぐことができるかどうかというものだった。簡単にいうとその答えは、おそらくノーである。

エクスペリエンスの偏りといっても、何も私たち自身の認知的な偏りのことではない。デジタルインターフォースのレイヤー(デザイン、コンテンツなど)における偏りのことを指しているのだ。人々が接しているほとんどのアプリやサイトは、制作したチームの認識や能力に基づいて設計されているか、ごく数人の価値の高いユーザーのために設計されている。もしユーザーがデザインにおける慣習を知らなかったり、デジタルへの理解が足りなかったり、技術的なアクセスがなかったりすると、そのエクスペリエンスは彼らにとって不利なものになると言えるだろう。

解決策としては、多様なユーザーのニーズに合わせ、デザインやエクスペリエンスを複数バージョン作るという考え方にシフトするというのがある。

前述のテック企業の話に戻ると、共感できるデザインへの投資はどんな企業にとっても不可欠だが、デザイン機能を立ち上げ運営してきた者として、ここで知られざる事実をいくつか打ち明けておく必要があるだろう。

まず第一に、UXチームやデザインチームは、戦略やビジネス部門から非常に限定されたターゲットユーザーを指示されることが多く、エクスペリエンスの偏りはすでにそこから始まっている。事業があるユーザーを優先しなければ、デザインチームはそのユーザーのためにエクスペリエンスを作る許可も予算も得られない。つまり、企業が人間中心設計を追求したり、デザイン思考を採用したりしていたとしても、多くの場合は商業的な利益に基づいてユーザープロファイルを繰り返し作成しているだけで、文化、人種、年齢、収入レベル、能力、言語などの多様性の定義からは程遠いものとなっている。

知られざる事実の2つ目に、人間中心設計ではUX、サービス、インターフェースのすべてを人間が設計することを前提としていることが挙げられる。エクスペリエンスの偏りを解決するために、ユーザーのあらゆるニーズに基づいてカスタマイズされたバリエーションを作成する必要がある場合、特にデザインチーム内の多様性が豊かでない場合には手作りのUIモデルというだけでは十分でない。ユーザーのニーズに基づいた多様なエクスペリエンスを優先させるには、デザインプロセスを根本的に変えるか、デジタルエクスペリエンスの構築に機械学習や自動化を活用するかのどちらかが必要であり、これらはどちらもエクスペリエンスの公平性へのシフトのためにはとても重要なことである。

エクスペリエンスの偏りを診断し、対処する方法

エクスペリエンスの偏りに対処するには、どこに問題があるかを診断する方法を理解するところから始まる。下記の質問は、デジタルエクスペリエンスのどこに問題が存在するかを理解するためにはとても有用な質問だ。

コンテンツと言語:このコンテンツは個人にとってわかりやすいものか?

アプリケーションには、技術面で特別な理解を必要としたり、企業や業界に特化した専門用語を使ったり、専門知識を前提としたりするものが多い。

金融機関や保険会社のウェブサイトでは、閲覧者が用語や業界、名称を理解していることが前提となっている。代理店や銀行員が事細かに教えてくれる時代でないのなら、デジタルエクスペリエンスがそれに代わって説明してくれるべきではないだろうか。

UIの複雑さ:自分の能力に基づいたインターフェースになっていないか?

障がいがあっても支援技術を使って操作ができるだろうか。またはUIの使用方法を学ぶ必要があるか。1ユーザーがインターフェイスを操作するために必要とする力量は、その人の能力や状況に応じて大きく異なる場合がある。

例えば高齢者向けのデザインでは、視覚的効果が控えめで文字の多いものが優先される傾向にあり、逆に若者は色分けや現在のデザイン規則を好む傾向にある。新型コロナウイルス(COVID-19)のワクチン用ウェブサイトでは、操作方法や予約方法を理解するのに皆苦労したのではないだろうか。また、各銀行のウェブサイトは同じような情報でも操作方法が大きく異なっている。かつて、スタートアップ企業のUIは非常にシンプルなものだったが、機能が追加されるにつれベテランユーザーにとってさえも複雑になってきている。Instagramの過去5年間での変化がその良い例である。

エコシステムの複雑さ:複数のエクスペリエンスをシームレスに操作する責任をユーザーに負わせていないか?

私たちのデジタルライフは単一のサイトやアプリを中心としているわけではなく、オンラインで行うことすべてにおいてあらゆるツールを使用している。ほとんどのデジタルビジネスやプロダクトチームは、ユーザーを自分たちの庭に閉じ込めておきたいと考えており、ユーザーが達成しようとしていることに基づいて、ユーザーが必要とするかもしれない他のツールを考慮してくれることなどほとんどない。

病気になれば、保険、病院、医師、銀行との連携が必要になるだろう。大学の新入生の場合は学校のさまざまなシステムに加えて、ベンダー、住宅、銀行、その他の関連組織と連携しなければならない。このように、ユーザーがエコシステムの中でさまざまなエクスペリエンスをつなぎ合わせる際に困難に直面しても、結局のところユーザーの自己責任となってしまうのである。

受け継がれるバイアス:コンテンツを生成するシステム、別の目的のために作られたデザインパターン、エクスペリエンスをパーソナライズするための機械学習を使用している場合。

このような場合、これらのアプローチがユーザーにとって正しいエクスペリエンスを生み出しているかどうかをどのようにして確認しているだろうか?コンテンツ、UI、コードを他のシステムから活用する場合、それらのツールに組み込まれたバイアスを引き継いでしまうことになる。例えば、現在利用可能なAIコンテンツやコピー生成ツールはいくつも存在するが、自身のウェブサイトのためにこれらのシステムからコピーを生成した場合、そのバイアスをエクスペリエンスに取り込んでしまうことになる。

よりインクルーシブで公平なエクスペリエンスエコシステムの構築を始めるには、新しいデザインと組織的なプロセスが必要だ。よりカスタマイズされたデジタルエクスペリエンスの生成を支援するAIツールは、今後数年間でフロントエンドデザインやコンテンツへの新しいアプローチにおいて大きな役割を果たしてくれることだろう。しかし、どんな組織でも今すぐ実行できる5つのステップがある。

デジタルエクイティをDEIアジェンダの一部とするということ:多くの組織がダイバーシティ、エクイティ、インクルージョンの目標を掲げているものの、それらが顧客向けのデジタル製品に反映されることはほとんどない。筆者は大企業でデザインチームを率いたり、デジタルスタートアップで働いたりした経験があるが、問題はどこでも同じで、組織全体の多様なユーザーに対して明確な説明責任を果たしていないということなのである。

大企業でも中小企業でも、各部門が影響力の強さやどちらが顧客に近いかを競い合っている。デジタルエクスペリエンスや製品の出発点は、ビジネスレベルで多様なユーザーを定義し、優先順位をつけるところから始まるが、上級職レベルでデジタルとエクスペリエンスの公平性の定義を作成することが義務付けられているのなら、各部門はそれらの目標にどのように貢献できるかを定義すれば良い。

デザインチームやプロダクトチームは、経営陣や資金面でのサポートがなければインパクトを与えることができないため、経営幹部レベルはこの優先順位を確保するという責任を負う必要がある。

デザインチームと開発チームの多様性を優先すること:これについてはこれまでにも多くの記事が書かれてきたが、多様な視点を持たないチームというのは、自分たちの恵まれた経歴や能力だけに基づいたエクスペリエンスを生み出してしまうということを強調しておく必要がある。

さらに、多様なユーザーに向けたデザイン製作を経験したことのある人材を採用することが不可欠であるということも付け加えておきたい。デザイナーや開発者のグループを改善するため、採用プロセスをどのように変えているのか。多様な人材を確保するためにどういった企業と提携しているか。DEI目標は採用用紙上のチェックボックスに過ぎず、すでに思い描いていたデザイナーを採用していないだろうか。使用しているエージェントは明確かつ積極的なダイバーシティプログラムを持っているか。そして、彼らはインクルーシブデザインにどの程度精通しているか。

Googleの取り組みには模範的なものがいくつかある。人材パイプラインにおける代表性を向上させるための取り組みとして、機械学習コースへの資金提供を白人の多い教育機関からより包括的な学校に移し、TensorFlowコースへのアクセスを無料にし、またBIPOC(黒人、先住民、有色人種)にあたる開発者にはGoogle I/Oなどのイベントへの無料チケットを送付している。

何を、誰にテストするかを再定義する:ユーザーテストが実施される場合、収益性の高いユーザー層や特に重要なユーザー層に限定してテストが実施されることがあまりにも多い。しかし、お年寄りやデスクトップコンピュータをまったく使用しない若いユーザーに対してそのサイトはどのように機能するだろうか?

エクスペリエンスにおける公平性と平等性の重要な側面として、複数のエクスペリエンスを開発し、テストすることが挙げられる。ほとんどの場合、デザインチームは1種類のデザインをテストして、ユーザーからのフィードバックに基づいて微調整を行っている(テストを行ってさえいない場合もかなり多い)。手間はかかるものの、高齢者やモバイルしか持っていないユーザー、異なる文化的背景を持つユーザーなどのニーズを考慮したデザインバリエーションを作ることで、デザインをデジタルエクイティの目標に結びつけることができるのである。

「1つのデザインをすべてのユーザーに」届けるのではなく「複数バージョンのエクスペリエンスを立ち上げる」ということにデザイン目標を変更する:通常、最も重要なユーザーのニーズに基づいて、あらゆるエクスペリエンスを単一バージョンに絞り込むというのがデジタルデザインや製品開発の常識である。アプリやサイトのバージョンを1つではなく、多様なユーザーに合わせて複数バージョンを用意するというのは、多くのデザイン組織のリソース確保や製作の方法に反するものである。

しかし、エクスペリエンスの公平性をもたらすためにはこの転換が不可欠だ。簡単な自問をしてみると良い。そのサイト / 製品 / アプリには、高齢者向けのシンプルで大きな文字のバリエーションが用意されているだろうか?低所得世帯向けのデザインに関しては、デスクトップに切り替えて作業する人と同様に、モバイルのみ使用のユーザーでも難なく作業を完了できるだろうか?

これは、単にレスポンシブバージョンのウェブサイトを用意したり、バリエーションをテストして最適なデザインを見つけたりすることに留まらない。デザインチームは、優先されるべき多様なユーザーや十分なサービスを受けていないユーザーに直接結びつくような、複数の視点を持ったエクスペリエンスを提供するという目標を持つべきなのである。

自動化を導入し、ユーザーグループごとにコンテンツやコピーのバリエーションを作成する:デザインのバリエーションを揃えたり、幅広いユーザーでテストしたりしていたとしても、コンテンツやUIのコピーは後回しにされているということがよくある。特に組織の規模が大きくなるにつれてコンテンツが専門用語で溢れ、洗練されすぎて意味をなさなくなることがある。

既存の言葉(例えばマーケティングコピー)からコピーを取ってアプリに載せた場合、そのツールが何のためにあるのか、どうやって使うのかなどの、人々の理解を制限してしまっていないだろうか。エクスペリエンスの偏りに対するソリューションが、個々のニーズに基づいたフロントエンドデザインのバリエーションを用意することであるならば、それを劇的に加速させるスマートな方法の1つは、どこに自動化を適用すべきかを理解することである。

私たちは今、UIやコンテンツの制作方法を根本的に変えてしまうであろう新たなAIツールが、静かな爆発のように広がり続けている時代にいる。ここ1年でオンラインに登場したコピー駆動型のAIツールの量を見てみると良い。こういったツールはコンテンツ制作者が広告やブログ記事をより速く書けるようにすることを主な目的としているが、大規模なブランド内でこのようなツールをカスタム展開し、ユーザーのデータを取得してUIのコピーやコンテンツをその場で動的に生成するということも容易に想像ができる。例えば、年配のユーザーには専門用語を使わないテキストによるサービスや商品の説明が展開され、Z世代のユーザーには画像を多用したコピーが表示されるという具合だ。

ノーコードのプラットフォームでも同様のことが可能である。WebFlowからThunkableまで、すべてが動的に生成されるUIの可能性を持ち備えている。Canvaのデザインは物足りなく感じるかもしれないが、すでに何千もの企業がデザイナーを雇う代わりに、ビジュアルコンテンツ作成のため、Canvaを利用している。

多くの企業がAdobe Experience Cloudを利用しているが、その中に埋もれているエクスペリエンスの自動化機能を蔑ろにしていないだろうか。デザインの役割は最終的に、カスタムメイドのエクスペリエンスを手作りすることから、動的に生成されるUIのキュレーションへと変化していくことだろう。過去20年間にアニメーション映画が遂げた進化が良い例である。

機械学習とAIがもたらすデザインバリエーションの未来

上記のステップは、組織がエクスペリエンスの偏りに対処し、現在のテクノロジーを使って変えていくための方法を示したものである。しかし、エクスペリエンスの偏りに対処する未来が、デザインやコンテンツのバリエーション作成に根ざしているとすれば、AIツールがかなり重要な役割を果たすようになる。すでにJarvis.aiやCopy.aiなどのAI駆動型コンテンツツールの波が押し寄せており、またFigmaやAdobe XDなどのプラットフォームに組み込まれた自動化ツールも存在する。

フロントエンドデザインやコンテンツを動的に生成できるAIや機械学習の技術は、多くの点でまだ初期段階にあるものの、今後の展開を物語る興味深い事例があるため以下に紹介したい。

1つ目は、Googleが2021年初めに発表したAndroid端末向けのデザインシステムのMaterial Youである。このシステムではユーザーが高度なカスタマイズを施すことができ、また高度なアクセシビリティも内蔵している。ユーザーは色やフォント、レイアウトなどを自由にカスタマイズでき、自在にコントロールすることができるが、機械学習の機能により、場所や時間帯などユーザーの変数に応じてデザインが変化するようになっている。

パーソナライゼーションは、ユーザーが自分でカスタマイズできるようにするためのものと説明されているが、Material Youの詳細を見てみるとデザインレイヤーにおける自動化と多くの可能性が交差していることが分かる。

人々がAIを体験する際のデザイン原則やインタラクションについて、これまで各企業が取り組んできたことも忘れてはいけない。例えばMicrosoftのHuman-AI eXperienceプログラムでは、AI主導のエクスペリエンスを構築する際に使用できる、インタラクションの原則とデザインパターンのコアセットを、人間とAI間のインタラクションの失敗を予測して解決策を設計するためのプレイブックとともに提供している。

これらの例は、インタラクションやデザインがAIによって生成されることを前提とした未来の指標となるものであり、これが現実の世界でどのように機能していくかについてはまだ実例がほとんどない。重要なのは、偏りを減らすためにはフロントエンドデザインのバリエーションとパーソナライゼーションを根本的に増やすというところまで、事を進化させる必要があるということであり、またこれはAIとデザインが交差するところで生まれつつあるトレンドを物語っている。

こうしたテクノロジーと新たなデザイン手法が融合すれば、企業にとってはユーザーのためのデザインのあり方を根本的に変えるチャンスになるだろう。エクスペリエンスの偏りという課題に今目を向けなければ、フロントエンド自動化の新時代が到来したときには、その問題に対処するチャンスがなくなってしまうだろう。

編集部注:本稿の執筆者Howard Pyle(ハワード・パイル)氏は、デジタルエクスペリエンスに公平性を持たせることを目的とした非営利団体ExperienceFutures.orgの創設者であり、これまでにMetLifeやIBMでブランドサイドのデザインイニシアチブを主導してきた。

画像クレジット:naqiewei / Getty Images

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(文:Howard Pyle、翻訳:Dragonfly)

チップ不足の影響が出始めたスマートフォン売上は6%減

Canalysが米国時間10月15日に発表した新しいレポートによると、今四半期の世界のスマートフォン販売台数は6%減少した。世界的なチップ不足が原因だ。

パンデミックはサプライチェーン全体に深刻な悪影響を及ぼしており、特にチップが大きな打撃を受けている。Canalysの主席アナリストであるBen Stanton(ベン・スタントン)氏によると、メーカーはできる限りの対応をしようとしているが、チップ不足は今のところ正真正銘の障害となっている。

「供給面では、チップセットメーカーが需要と供給のギャップを埋めるために、過剰注文を抑制するために価格を引き上げています」とスタントン氏は述べている。「しかし、それにもかかわらず、2022年に入っても不足はまだまだ解消されないでしょう」とも。

こうしたサプライチェーンの問題の結果、この四半期の市場はどうなったのだろうか?上位の常連メンバーは同じポジションを保ち、Samsung(サムスン)は前年と変わらぬ23%と安定したシェアを維持している。一方、Apple(アップル)は3ポイント増の15%となった。Xiaomi(シャオミ、小米科技)は、前年同期比横ばいの14%で3位を維持している。

画像クレジット:Canalys

特に年末商戦に向けて、メーカーはこのような事態を憂慮しているに違いない。Appleは9月末に新型iPhone 13を発売しており、今回の四半期報告には間に合わなかったが、ホリデーショッピングシーズンに合わせて発売したことは間違いない。チップ不足の問題は、その計画に水を差す可能性がある。SamsungもAppleも、モバイル機器用のチップセットを自社で製造しているとはいえ、各社ともチップ部品不足の影響を受けている。

関連記事:iPhone 13はバッテリー性能だけでなくカメラ機能も向上、税込9万8800円から

その結果、製造コストが上昇し続けている2021年、消費者がコストダウンを実感することはないだろうとスタントン氏はいう。その代わりに、購入インセンティブとして、携帯電話と他の機器をセットにして販売するケースが増えるのではないかと予想している。

「ユーザー側は、2021年のスマートフォンの値引きはそれほど積極的ではないと覚悟しておくべきです。しかし顧客の失望を避けるために、利益率に制約のあるスマートフォンブランドは、ウェアラブルやIoTなどの他のデバイスをバンドルして顧客に良いインセンティブを与えることを検討するでしょう」。

CNBCは14日、家電製品や消費財を製造するHisense(ハイセンスグループ)のJia Shaoqian(賈少謙)社長によると、コンシューマーチップの不足はスタントン氏の予測よりもさらに長く、おそらく2~3年は続く可能性があると報じていた。

画像クレジット:Tim Robberts / Getty Images

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(文:Ron Miller、翻訳:Aya Nakazato)

トリプルアイズが「将棋採用」を再開、将棋有段者に勝てたら最終面接へ

トリプルアイズが「将棋採用」を再開、将棋有段者に勝てたら最終面接へ

AI技術を追求し続ける、2008年設立のシステム開発ベンチャー「トリプルアイズ」は10月12日、採用試験において「将棋採用」を復活させると発表した。将棋採用とは、社内の将棋実力者と対局して、勝てばそのまま最終面接に進めるという採用試験。2019年に実施して大きな話題となった。そのときの将棋採用では11人が採用となり、現在はエンジニア職などの各部署で能力を発揮しているとのこと。

トリプルアイズは、社員の部活動として将棋に力を入れている。内閣総理大臣杯職域団体対抗将棋大会では、第112回大会Aクラス優勝(2017年)、第116回大会Sクラス準優勝(2019年)を果たすなどの実力派だ。将棋採用は、前代表の故福原智氏(写真)が率先して行っていたもの。福原氏はつねづね「将棋は、盤面の状況をロジカルに考えながら駒を置いていく。将棋が強い人は、処理の流れを矛盾なく組み立てていくプログラミングに向いている」と話していたという。

そこでロジカルアイズは、「将棋に必要とされる、序盤構想の核となるロジカルシンキング、秒読みでも正しい選択をし続ける集中力、時間内に次の一手を選択する決断力は、これからのIT、AIの研究開発には欠かせないもの」という理念のもとで、将棋に強い人材を募集することにした。また、「こうした能力を豊富に有する人材の積極採用がトリプルアイズの発展を支える一端を担ってきたことは間違いありません」とも述べている。

募集概要

  • 対象:2023年3月卒業予定の新卒採用および中途採用
  • 選考方法:1)エントリー時に履歴書と職務経歴書を提出、2)トリプルアイズ社員(有段者)と対局、3)最終面接、4)内々定
  • 対局場所:所司一門将棋センター(千葉県習志野市)
    https://kisosya.com/
  • 応募方法:同社募集告知の将棋採用担当者宛てメールアドレスに連絡

応募多数の場合は早期に締め切る可能性があるのでご注意を。

小売業界のDXを推進するフェズが総額約11.5億円のシリーズC調達、事業拡大・展開の加速に向け組織体制・採用など強化

小売業界のDXを推進するフェズが総額約11.5億円のシリーズC調達、事業拡大・展開の加速に向け組織体制・採用など強化

小売業界のDXを推進するフェズは10月13日、シリーズCラウンドの第三者割当増資および既存取引銀行などからの融資により総額約11億5000万円の資金調達を実施したと発表した。引受先は、リードインベスターのニッセイ・キャピタル(既存投資家)、またIncubate Fund US, L.P.、SHIFT、MTG Ventures、フォースタートアップスキャピタル。今回の資金調達は、既存投資家に加え、事業シナジーが見込める新規投資家からの調達という。調達した資金は、事業拡大および事業展開の加速に向け、組織体制・採用強化などに活用する予定。

2015年12月設立のフェズは、「小売業界の変革パートナー」として、小売・メーカー両社の売上が向上するよう、データを基に「両社の売上アップに繋がるマーケティングを支援するOMOプラットフォーム事業」と「売上が伸びる店頭づくりを目指す小売DX事業」を展開するリテールテック企業。

現在、ドラッグストアチェーンを中心とした複数小売事業者とパートナーシップを組み、約8000万以上(2021年6月時点)の消費者IDと連携しており、各小売事業者の許諾を得た際に利用が可能となっているという。

さらに、小売事業者の売場計画や店頭実現率、販売実績や施策効果など、すべてをデータで可視化できるプラットフォームを構築し、小売事業者の売上アップ、業務効率化に貢献する事業も2021年より展開。データを基に、実店舗で売上が伸びるファクトを解明するだけでなく、同プラットフォームが小売事業者本部で練られるMD戦略や各商談などの基本インフラとなることを目指すとしている。

化学コーティングではなくレーザーで表面を氷や錆から保護する技術の商用化を目指すFlite Material Sciences

Dan Cohen(ダン・コーエン)氏は、ソーラーパネルの氷、雪、霜を防ぐコーティングを探していた。その時に同氏はある技術に出会った。その技術は、航空機、ドローンから、医療機器、パイプライン、さらにはヨットに至るまで、広範囲のプロダクトにおいてコストを削減し、環境フットプリントを低減できる可能性を秘めていた。

それをきっかけにコーエン氏は、自身のスタートアップ企業Flite Material Sciencesを設立し、TechCrunchのStartup Battlefieldでデビューした。

ソーラーカンパニーのCTOとして取り組んでいたプロジェクトで、コーエン氏はそれらのソーラーパネルに最適なコーティングを模索していたが、見つけるには至っていなかった。コーティングは、パネルの色の変化、毎年塗布する必要性、有害物質の含有などの課題要素を有していた。その打開案となるものが、ロチェスター大学光学研究所の教授からもたらされた。同教授は、一切コーティングすることなく、氷、雨、雪、霜からパネルや構造物を保護することができると主張していた。

「少し直感と相いれないような気もしましたが、どのようなものか確認してみようと思いました」とコーエン氏。教授はコーエン氏をレーザーによる表面機能化のフィールドに導いた。ガラスやプラスチック、金属に撥水機能をもたせるコーティングの代わりに、レーザーを使って素材をリテクスチャすることで、それ自体が水分をはじくようになるというものだ。この処理はまた、半導体、さらには人間の骨や歯などの多様な表面において、錆や氷を防ぎ、油をはじくことにも効果を発揮する。

コーエン氏は感銘を受け、この技術をすでにライセンスしているソーラーパネルメーカーがあるかどうかを尋ねた。結果、どの企業にも、そしていずれの産業においても、この技術はライセンスされていないことが判明した。

ロチェスター大学はこの技術のライセンス供与に同意し、Flite Materials Scienceは2018年に同技術を商用化すべく誕生した。同スタートアップは最初の1年を、この技術について学び、IPを調査し、プロダクトと市場の適合性を理解することに費やした。また、モントリオールで開催されたTechStarsやCentechなどのアクセラレータープログラムもいくつか経験した。

コーエン氏は現在、この技術を商業規模に拡大し、航空宇宙、生命科学、その他の産業へ適用していくことを目指している。

仕組み

テクスチャ処理は、自然界に存在するものを模倣している。例えば、蓮の葉を見てみよう。その葉は一日中水に浸かっていても完全に乾いているように見える、とコーエン氏は説明する。

「十分な性能を備えた顕微鏡の下で見ると、実際にはその表面はとてもざらざらしていて、非常に微細な突起があることがわかります」と同氏は続けた。「そして、なぜ水がこうした微細な突起構造の表面に留まらないかについての理論が浮上したのです」。

このようなテクスチャを作成しようとした初期の研究では、ガスと化学物質の組み合わせに焦点が当てられていた。ロチェスター大学のChunlei Guo(チャンレイ・グオ)教授が考案したのは、毎秒1000兆パルスにも及ぶ高パルスレートのレーザーを使用して、大量の熱を発生させることなく素材を変換するという斬新な方法だった。

「これは多くのエネルギーを注入しますが、パルスの効果で、彫刻家のような緻密な作用が生み出されます」とコーエン氏は語る。「素材を燃やしてしまうことなく、移動させたり再堆積させたりするのです」。

この最後の点が重要である。Fliteがライセンスし、商用化を計画している技術は、表面を取り去ったり弱めたりするものではない。単にテクスチャを再形成するだけで、金属やプラスチックに水、油、氷をはじく能力が備わるというものだ。

今後の展開

同社は現在、可能な限り多くの顧客検証プロジェクトを実施するために「奔走している」とコーエン氏は語り、これらのプロジェクトは、この技術が特定のプロダクトや産業でどのように機能するかを証明するものだと付け加えた。Flite Material Scienceは数件のプロジェクトを完了しており、さらに多くのプロジェクトが準備されている。

コーエン氏によると、16社ほどの企業が来年中のテスト実施に強い関心を示しており、参加の機会が得られるのを待っている企業は150社あまりに上るという。

Flite Material Sciencesの従業員数は10人に満たないが、コーエン氏は、2021年の第3四半期または第4四半期に資金調達ラウンドが完了した時点で、さらに雇用を増やしたいと考えている。

同社は探究の結果、航空宇宙と防衛分野への進出の足がかりを得た。さらに石油やガス、半導体の分野でも同社は「かなりの仕事をしている」とコーエン氏は語っている。また、自動車やパッケージングでの需要も見込めるとしたうえで、これら2つの産業はユニットエコノミクスが機能するまで待つ必要があるだろう、と言い添えた。

画像クレジット:J. Adam Fenster / University of Rochester

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(文:Kirsten Korosec、翻訳:Dragonfly)

役員が自社を批判する?マーク・ザッカーバーグはピーター・ティールを恐れるべきか?書評「The Contrarian」

億万長者の投資家、Peter Thiel(ピーター・ティール)氏について書かれた「The Contrarian(逆張り投資家)」。Bloomberg Businessweekの特集編集者で、技術系の記者でもあるMax Chafkin(マックス・チャフキン)氏が著し、9月に発売されたばかりのこの新書に関するレビューや議論を目にした人も多いだろう。

それも当然のことだ。ピーター・ティール氏は米国でますます存在感を増し、チャフキン氏は魅力的なストーリーテラーである。謝辞には、15年間の取材を元にこの書籍をまとめ「何百もの情報源」から情報を集めた、と書かれている。

詳細を知るために、TechCrunchは先に、チャフキン氏に取材を申し込んだ。取材では、ティール氏(チャフキン氏はティール氏とオフレコで話をしている)が私生活をどの程度明かしているか、チャフキン氏が「トランプという人物が過小評価されていた、つまりイデオロギー的な部分もあるが、商売上手でもあった」とする理由、チャフキン氏のレポートがティール氏の信念を「極めて矛盾している」とするのはなぜか、など、活発な議論が行われた。また、ティール氏とMark Zuckerberg(マーク・ザッカーバーグ)氏との関係(Facebookの最初の投資家はティール氏であり、それ以来、良くも悪くもティール氏との関係を維持している)についても議論があった。

興味があれば、約30分のインタビュー(抜粋)を観て欲しい。TechCrunchは、Facebookがアメリカ社会や人類に与えた影響を鑑みるに、ザッカーバーグ氏とティール氏の関係は非常に興味深く、重要であると考えている。ここでは、ザッカーバーグ氏について語られたパートを抜粋、編集の上紹介したい。

TC(TechCrunch):ティール氏の最大かつ最も重要な賭けはFacebookだったということですが、本の中で、ティール氏は2005年から取締役としての立場を利用して、ザッカーバーグ氏に誤報も含めて何でもありの姿勢をとるように説得したと示唆していますね。また、ティール氏とザッカーバーグ氏の間には以前から摩擦があり、特にティール氏がトランプ主義を取るようになってからは、そのような状況が続いているとも指摘しています。ティール氏は今後もFacebookの役員を続けていくと思いますか?それとも彼は一歩下がった立場にあるのでしょうか?

MC(マックス・チャフキン):この本には、Facebookにまつわる話が出てきます。Facebookが上場したとき、株価が暴落し、ティールはすぐに株を売却しましたが取締役にとどまりました。本の中で、Facebookの社内で行われた、社員を活気づけるためのミーティングのことを書いています。自分が働いている会社の株価が下がるということは、(その人にとって)世界で最も憂鬱なことなのですから。当時は誰もが毎日損をしていました。マスコミにも叩かれる。消防士や教師からも訴えられる。とにかく悪いニュースのオンパレードでした。そこで、皆を励まそうと講演者を呼び、ピーター・ティールが講演を行いました。講演の中で、ティールは「空飛ぶ車が実現するはずだったのに、Facebookしか実現しなかった」と話しました。彼はいつも「空飛ぶ車が実現するはずだったのに、140文字しか手に入らなかった」と言ってTwitter(ツイッター)を攻撃しています。聴衆も、ザッカーバーグも「最も長く役員を務め、メンターであり、私のビジネス哲学を導いてくれた人にお前は最低だと言われた」ようなものです。

ザッカーバーグは実はティールのそういうところを尊敬しているのではないかと思っています。ザッカーバーグの立場にあれば、正直なフィードバックを得ることは非常に難しい。ティール以外に「あんたは最低だよ」という人はいないでしょう。あなたがいうように、ティールはここ数年、何度も、慎重に、このようなことをしています。

ティールは技術の独占や技術力について、Google(グーグル)を攻撃することがよくあります。Facebookはそれで安心するかもしれませんが、たいして役には立たないでしょう。なぜなら、FacebookとGoogleは非常によく似た企業であり、一方を規制するならば、もう一方も規制されることになるからです。ザッカーバーグがそのことを喜んでいるとは思えません。

ティールは、シリコンバレーの右翼活動家たちのプロジェクトをさまざまな場面で支援してきました。保守活動家のJames O’Keefe(ジェームズ・オキーフ)などは、FacebookやGoogle、Apple(アップル)などの超大手ハイテク企業の偽善を暴こうとしていますが、ティールはそうした活動を陰でサポートしてきました。

しかし、ティールは公の場で右翼活動家たちを支援することも多くなっています。今、彼は米国上院議員選挙で2人の候補者を支援しています。アリゾナ州のBlake Masters(ブレイク・マスターズ)とオハイオ州のJD Vance(JD・ヴァンス)はどちらも共和党の予備選に出馬していますが、ティールはそれぞれの候補者を支援する特別政治行動委員会(super PAC)に1000万ドル(約11億1000万円)の寄付を行っています。彼らは常にFacebookを攻撃しています。知性的な攻撃や疑問の提起だけではありません。ザッカーバーグを個人的に攻撃しているのです。(ティールが資金提供した)JD ヴァンスの広告には、暗い色調で「この国には手に負えないエリート層がいる」とあり、そこにはマーク・ザッカーバーグの顔が載っています。もし私がザッカーバーグだったら、これは間違いなく頭痛の種ですね。

一例を挙げると、(2017年に)ザッカーバーグはティールの辞任について話し合っています。ティールは辞任せず、ザッカーバーグも彼を解雇しませんでしたが、少なくとも多少の緊張感はあったのでしょう。ティールの価値が下がったか?というのは実に鋭い質問です。Biden(バイデン)が大統領となり、民主党が大統領と両院を支配している状況では、ティールがもつ右派とのつながりの価値は下がっています。とはいえ、2022年に共和党が上院を奪還する可能性は非常に高く、その上院議員の中にティールと非常に近い人物が存在することになる可能性があります。そうなればティールの価値は飛躍的に高まるでしょう。

TC:本の中で、ティール氏と親しく、彼を尊敬している人たちの多くが、彼を恐れていると書いていますね。マーク・ザッカーバーグ氏はおそらく世界で最もパワフルな人物であるにもかかわらず、あなたの感覚では「ティール氏を恐れている」ということでしょうか?

MC:ザッカーバーグは(そうしたければ)ティールを解雇することができると思います。ザッカーバーグは手強く、大金を持っています。ザッカーバーグはティールと争う資金もありますし、反発する余裕もあるでしょう。しかし、彼がそうしたいかどうかは疑問です。というのも、現在もティールが役員であり、公然と批判を行うことができる理由は、ザッカーバーグが彼を解雇した場合、巨額の代償を払うことになるという事実に関係しているからです。おかしな話ですが。

ティールは、トランプ大統領時代、ザッカーバーグの重要なサポーターでした。保守層では、次のようなミーム(ネタ)が流行っていました。「Facebookはドナルド・トランプを憎むリベラルな従業員によって運営されているリベラルな企業で、組織的に右翼的な視点を差別している、社内では左翼の利益を促進している……」というものです。しかし、ザッカーバーグにはそれに対するすばらしい回答がありました。「うちの役員にはティールがいる。ただの共和党員じゃない、George Bush(ジョージ・ブッシュ)みたいな中道の保守派でもない。うちにいるのはピーター・ティールだ。根っからのトランプ主義者、Steve Bannon(スティーブ・バノン、トランプ政権時の元首席戦略官)も真っ青なクレイジーなやつだ」。Facebookが使える、まさしく強力な主張です。

ピーター・ティールが資金援助しているJosh Hawley(ジョシュ・ホーリー、共和党上院議員)や、Ted Cruz(テッド・クルーズ、同じく共和党上院議員)のような人物が現れて、Facebookを攻撃するとしたら?もし(ティールが)辞めてしまったら、もし彼が解雇されてしまったら、そしてそれが記事になってしまったら?Facebookは厳しい批判にさらされるでしょう。

ザッカーバーグにとって存亡に関わるような問題ではないとは思います。しかし、Facebookの価値について埋められない意見の相違があったとしても、友人であり、役員でもあるピーター・ティールを残しておいたほうが、ザッカーバーグにとっては快適なのだと思います。

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(文:Connie Loizos、翻訳:Dragonfly)

グーグルがアフリカへの約1114億円の投資を再確認、容量20倍の高速海底ケーブル含め

大規模なインターネット企業にとって、発展途上諸国は最も成長のチャンスがある地域を意味する。今日、その中でも最も大きな企業の1つが、この問題に取り組むための戦略を発表した。

Google(グーグル)は、アフリカの「デジタルトランスフォーメーション」を支援するために10億ドル(約1114億円)を投資すると発表した。これには、インターネットの高速化を実現するための海底ケーブルの敷設、中小企業向けの低金利融資、アフリカのスタートアップへの出資、スキルトレーニングなどが含まれる。

この計画は米国時間10月6日、GoogleおよびAlphabet(アルファベット)のCEOであるSundar Pichai(サンダー・ピチャイ)氏が中心となって開催されたイベントで発表された。会社の最高責任者をイベントのトップに据えることは、同社がこの賭けにプライオリティーを置いていることの証といえるだろう。

ピチャイ氏は次のように述べた。「私たちはこの10年で大きな進歩を遂げましたしかし、すべてのアフリカ人がインターネットにアクセスでき、手頃な価格で便利に使えるようにするためには、まだまだ努力が必要です。本日、アフリカのデジタルトランスフォーメーションを支援するために、5年間で10億ドル(約1114億円)の投資を行い、接続性の向上からスタートアップ企業への投資まで、さまざまな取り組みを行うことで、アフリカへのコミットメントを再確認できることをうれしく思います」。

Googleはこの投資を、ナイジェリア、ケニア、ウガンダ、ガーナなど、アフリカ大陸の国々で実施されるプロジェクトに投入すると述べている。

海底ケーブルは、南アフリカ、ナミビア、ナイジェリア、セントヘレナを横断し、アフリカと欧州を結ぶ。Googleのアフリカ担当マネージングディレクターであるNitin Gajria(ニティン・ガジュリア)氏は「アフリカ向けに建設された前回のケーブルに比べ、約20倍のネットワーク容量を提供することになる」と述べた。

「これにより、ナイジェリアではインターネット料金が21%下がり、インターネットの速度が向上し、南アフリカでは速度が約3倍になります」とガジュリア氏はいう。

デジタル経済の発展にともない、2025年までにナイジェリアと南アフリカで約170万人の雇用創出が予測されている。

また、Googleは、Africa Investment Fund(アフリカ投資基金)の設立を発表した。同社はアフリカ大陸のスタートアップ企業に5000万ドル(約55億7000万円)を投資し「Googleの従業員、ネットワーク、テクノロジーへのアクセスを提供し、彼らがコミュニティのために意義のある製品を構築することを支援する」としている。

さらに、パンデミックの影響で苦境に立たされているナイジェリア、ガーナ、ケニア、南アフリカの中小企業に対し、1000万ドル(約11億1000万円)の低金利ローンを提供する。これは、サンフランシスコに本拠地を置く非営利の融資組織であるKiva(キヴァ)とのパートナーシップにより行われる。Kivaは、アフリカで人々の生活を改善している非営利団体に4000万ドル(約44億6000万円)を提供することを約束した。

ガジュリア氏はこう述べた。「アフリカの革新的なテックスタートアップシーンにとても刺激を受けています。2020年は、技術系スタートアップへの投資ラウンドがこれまでになく多く行われました。私は、アフリカで最も大きい問題を解決するのに、アフリカの若い開発者やスタートアップ創業者ほど適した人材はいないと確信しています。当社は、アフリカのイノベーターや起業家とのパートナーシップを深め、支援していきたいと考えています」。

画像クレジット:lex Tai/SOPA Images/LightRocket / Getty Images

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(文:Annie Njanja、翻訳:Aya Nakazato)

アマゾンが米国外で初の4-Star Storeをオープン、評価4つ星以上の商品が並ぶ

Amazon(アマゾン)は、ロンドン中心部の南東に位置するモール、ブルーウォーターに4-Star Store(フォースターストア)をオープンした。このストアは米国外で初の4-Star Storeというだけでなく、同社が英国で初めて、非食品・非生鮮品を販売する店舗でもある。ニューヨークや米国の他の都市にあるAmazonの4-Star Storeと同様に、ブルーウォーターの店舗では、4つ星以上の評価を受けた商品や、eコマース大手の英国サイトでトップセラーになっている商品、トレンドになっている商品を販売する。

Amazonがオンラインで販売している評価の高い商品をすべて取り扱うことはできないため、店舗での品揃えは厳選されたものになるが、家電、玩具、ゲーム、書籍、キッチン、ホームなどのトップカテゴリーの商品を取り扱う予定だ。また、Kindle電子書籍リーダー、Fireタブレット、Echoスピーカーなどの自社製品だけでなく、英国内の中小企業の製品も販売する予定だ。

このストアには、ウェブサイトの特定のセクションに対応したセクションが設けられており、例えば「Most Wished For」では「欲しい物リスト」に登録された商品が紹介されている。また「Trending in Bluewater」では、地元のカスタマーが購入した商品が紹介され「Most Gifted」では、ギフトとして注文の多かった商品が紹介される。Amazonは、カスタマーのフィードバックや最新のトレンドに合わせて、定期的に商品を入れ替えていくとしている。

ストア内の商品には、商品の価格、平均星評価、カスタマーレビューの数が記載されたデジタルタグが付けられる。また、プライム会員でなくても、そのストアで買い物はできる。ただし、この店舗には、ロンドンのFresh食料品店のようなAmazonのJust Walk Out技術は搭載されない。Just Walk Outは、買い物客が棚から必要なものを手に取り、有人レジやセルフレジで支払いをすることなく、そのまま外に出られるというものだ。しかし、Amazonの英国サイトから購入し、翌日に店舗で注文品を受け取ることはできる。

編集部注:本記事の初出はEngadget。執筆者のMariella Moon(マリエラ・ムーン)氏はEngadgetのアソシエートエディター。

画像クレジット:Bluewater

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(文:Mariella Moon、翻訳:Yuta Kaminishi)