クラウドソーシングで道の画像を無料データベース化するMapillaryをFacebookが買収

クラウドソーシングによる道の写真のデータベースを使った世界の地図製作でGoogle(グーグル)などに対抗するスウェーデンのスタートアップMapillary(マピラリー)が、Facebook(フェイスブック)に買収されたことを、同社がブログで公表した。買収の条件については明かされていない。

Mapillaryのスタッフとプロジェクトは、Facebookの大規模なオープンマッピングの取り組みの一部となる。Mapillaryによれば、同社の「OpenStreetMap(オープンストリートマップ)の関与は維持される」という。Mapillaryの共同創設者でCEOのJan Erik(ヤン・エリク)氏は次のように書いている。

Mapillaryは創設初日から、誰でも画像やデータを入手して、よりよい地図が製作できるようにする世界中の道の画像プラットフォームの開発に関わってきました。私たちのプラットフォームには数万人もの協力者があり、日々、Mapillaryのデータで地図が改善されています。私たちはその旅の次なる大きな一歩を踏み出しました。

エリク氏が指摘するように、Facebookは「機械学習、衛星画像、地図製作コミュニティーの協力を利用して地図を改善するツールと技術を構築している」ことが知られている。そのソーシャルネットワークの巨人にとって、地図製作には、Facebook Marketplace(マーケットプレイス)や地方のビジネスへ地図の提供、さらには拡張現実への応用といった直近の使用事例がいくつもある。

この動きは、2月にTechCrunchが報じた、別のヨーロッパのスタートアップScape Technologies(スケープ・テクノロジーズ)の先日の買収にも現れている。2017年に設立されたScapeは、コンピュータービジョンをベースにした「ビジュアル・ポジショニング・サービス」を開発していた。GPS単独では得られない、ずっと高精度の位置情報を必要とするアプリの製作を可能にするものだ。この技術は、当初は拡張現実アプリをターゲットにしていたのだが、交通、物流、ロボティクスに応用しても大きな力が発揮できる可能性を有している。Scapeはさらに範囲を広げ、カメラを搭載したあらゆる機器が周囲の状況を理解できるようにしたいとも考えていた。

Mapillaryは、誰もが参加できる最新の「オープン」プロジェクトでもあり、そこへFacebookからの資金が入った。昨年12月、同社は英国のAtlas ML(アトラス・エムエル)を密かに買収している。Atlasは、機械学習に関する論文とコードを無料で提供するオープンな情報源「Papers With Code」(ペーパー・ウィズ・コード)の管理会社でもある。

Mapillaryに話を戻そう。同社は「画像、地図データ、そしてあらゆる地図の改善」のためのグローバル・プラットフォームとして今後も存続することを強く主張している。「今後もこのプラットフォームへの画像のアップロードや、プラットフォームに存在するあらゆる地図データの利用が可能」だとエリク氏は話す。商用利用許諾のランセンスも変更されるという。

以前から、私たちのプラットフォームで利用できるすべての画像は、非商用利用に限り、誰もが使えるようオープンで、無料で提供されてきました。その形を維持しつつ、さらに一歩進めるために、本日より商用利用も無償化します。Mapillaryにアップロードされたすべての画像が、オープンで、パブリックで、あらゆる人が利用できる状態を保つことにより、新しい使用事例の道が開かれ、カバー範囲と利用範囲が大きく広がり、あらゆる地図製作に恩恵がもたらされることを私たちは期待しています。これまで私たちは、プラットフォームの構築と運営のために商業化に注力する必要がありましたが、Facebookとひとつになることで、Mapillaryは、あらゆる人に無料サービスをという創設当初からのビジョンに近づくことができました。

画像クレジット:Mapillary

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(翻訳:金井哲夫)

NASAが新型コロナ対策のアイデアを全局員からクラウドソーシングで募集

NASAの局内でクラウドソーシングが行われる。世界で最も賢く創造的で才能に恵まれた問題解決集団が、業務の一環として日々現実世界のさまざまな課題を解決している場所だ。だからこそ、進行する新型コロナパンデミックとの戦いにNASAとそのリソースが貢献できる方法を考えるよう、NASAが全局員に呼びかけたことはわれわれにとって大きな励みになる。

NASAは、内部で問題解決に使っているクラウドソーシング・プラットフォームであるNASA@WORKを使用して、新型コロナ危機やそこから生まれるさまざまな問題に対処する新しい方法の創造的アイデアを募集する。すでにNASAはいくつかの方法に取組んでおり、スーパーコンピューターを使った治療方法の研究や、ウイルスを巡って進行中の重要な科学研究の見通しを立てるためのAIソリューションの開発などを行っている。

NASAが局員に向けて行っている公募は、ある程度選択的だ。解決策が最も緊急に必要とされる重要分野を特定し、ホワイトハウスその他のウイルス対策に関わる政府機関と協力して、個人防護具、人工呼吸器、新型コロナウイルスの拡散と伝染を追跡監視する方法などの不足や欠落を補うためにNASA局員の取り組みを集中させるかどうかを判断する。これは、NASAがその他の新型コロナ問題の解決策を聞こうとしないという意味ではない。最も緊急に必要だと判断したのが上記分野だというだけだ

この試みに生産的な時間制約を加えるべく、NASAは上記分野に関するアイデアをNASA @ WORKを通じて4月15日までに提出するよう求めている。その後、何が最も実現可能かを評価し、実現に必要な資源を割り当てるプロセスがある。結果としてつくられる製品やデザインはすべて「オープンソース化してどの企業も国も利用できる」ようにすると同局は言っている。ただし、そこで使われるテクノロジーによっては誰にでも利用可能とは限らない。

画像クレジット:Andrew Harrer/Bloomberg / Getty Images

新型コロナウイルス 関連アップデート

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

新型コロナの流行で分子科学のクラウドソーシング演算パワーがエクサフロップ級に

分子相互作用を解明するという複雑なタスクを、長い間クラウドソーシングによって運営してきたFolding@Homeプログラムが、大きな節目を迎えている。多くのユーザーが新規登録して自身のコンピューターの演算パワーの提供を始めたからだ。ネットワークが現在提供する計算パワーは「エクサフロップ」に達した。これは1秒あたり100京(1,000,000,000,000,000,000回)の演算を行えるということだ。

Folding@Homeが始まったのは約20年前。このプロジェクトは多大な計算量を要求する問題を適当な大きさに分割し、個々のコンピューターに割り当てる手段を提供するために登場した(現在は休眠中のSETI@Homeが切り拓いた、斬新な方法だった)。これはいわば、世界中に分散しているスーパーコンピュータに相当する。計算を一気呵成に行う「本物の」スーパーコンピューター程は効率的ではないものの、複雑な問題を短時間で処理することが可能だ。

セントルイスのワシントン大学の研究グループによって管理されているこのツールが対象としている問題は、タンパク質の折り畳み問題(Protein Folding)である。タンパク質は私たちの体を機能させている多くの化学構造物の1つであり、それらは比較的よく理解されている小さな分子から、本当に巨大なものまでさまざまなものが存在している。

タンパク質の性質は、温度、pH、他の分子の有無などの条件によって形状が変化することだ。この形状の変化によって、しばしばそれらは役に立つものとなる。たとえば、キネシンタンパク質は、一対の脚のような形状に変化して、物質を細胞内で運ぶ役割を果たすようになる。またそれとは別に、イオンチャネルのようなタンパク質は、その鍵穴に鍵のように差し込まれる別のタンパク質が存在する場合にのみ、荷電原子を通過させる。

画像クレジット:Voelz et al

こうした変化、もしくは畳み込み(Convolutions)の中には、よく解明されているものもあるが、ほとんどのものは完全に未知なままである。しかし、分子とその周囲に関する堅実なシミュレーションを行うことで、重要な発見につながる可能性のあるタンパク質の新しい情報を発見できる。例えば、あるイオンチャネルが開いているときに、別のタンパク質がそのチャネルを通常よりも長く開けたままにしておけたり、素早く閉じることができるとしたらどうだろうか?このような条件を見つけることが、この種の分子科学で一番大切なことなのだ。

だが残念ながら、そのための計算コストは、非常に高価なものとなる。これらの分子間および分子内の相互作用は、スーパーコンピュータがあらゆる組み合わせの可能性を、果てしない計算を通して試していかなければならない種類の問題なのだ。20年前には、スーパーコンピュータは現在よりもはるかに珍しいものだった。そのため5億ドル(約545億円)でCrayを導入する代わりに、この手の重い計算タスクをこなすためにFolding@Homeが始まったのだ。

このプログラムは誕生以来ずっと継続していて、SETI@Homeが自身の代替物としてこのプログラムを多数の既存ユーザーに推薦したときには、ユーザーが一気に増加した。そして今回、コロナウィルスの危機によって、自分のリソースをより大きな使命に提供するという考えが俄然魅力的なものになった。こうして多数のユーザーが増えたために、いまでは各人のコンピューターに解くべき問題を振り分けるためにサーバーが大忙しになっている。

Folding@Homeによって視覚化された新型コロナウイルス関連タンパク質の例

記念すべきマイルストーンは、エクサフロップの計算パワーの達成である。これは毎秒100京(10の18乗)回の演算に相当するはずだ。1回の演算はANDやNORのような論理演算であり、それらを組み合わせることで数式が表現される、その積み重ねによって、最終的に「摂氏38度以上の温度で、このタンパク質は変形し、薬物がこの部位に結合して、それを無効にする」といった有用な知見が引き出されるのだ。

エクサスケールコンピューティングは、スーパーコンピューターが目指す次の目標だ。IntelCrayは、国立研究所向けに今後数年後の稼働を目指してエクサスケールコンピューターを構築中である。だが、現在稼働中の最速のスーパーコンピューターの速度は数百ペタフロップス程度である。これはエクサフロップのおよそ半分から3分の1程度の速度だ。

当然、これら2つは直接比較することはできない。Folding@ Homeは個々の計算パワーを統合することでエクサフロップに相当する計算パワーを生み出しているが、他のエクサスケールシステムののように単一の問題を解くための単一のユニットして動作しているわけではない。ここで使われる「エクサ」というラベルは、スケール感を表現するためにつけられているのだ。

この種の分析はコロナウイルス治療につながるのだろうか?おそらく将来的には。だが近い将来に即効性があるということはないだろう。タンパク質の構造と機能を大規模に研究するプロテオミクスは、私たちの周り(そして私たちの中)の世界を、よりよく理解することを中心テーマとした「基礎研究」なのだ。

新型コロナウイルスは、パーキンソン病、アルツハイマー病、ALSなどと同様に、単一の問題ではなく、未知のものが広がった境界のはっきりしない大きな塊である。プロテオーム(対象にするタンパク質の総体)と関連するそれらの相互作用はその塊の一部なのだ。重要なのは、魔法の弾丸を見つけることではなく、理解のための基礎を築くことだ。そうしておくことで、潜在的なソリューションを評価する際に、この状況では、この分子が、あのように機能することを、たとえ1%程度だとしても速く判断することができるようになるのだ。

なおプロジェクトはブログ投稿の中で、新型コロナウイルス関連タスクの開始を発表している。

このプロジェクトの最初のタスクでは、コロナウィルスがヒト宿主細胞へのウイルスの侵入に必要な、ヒトACE2受容体とどのように相互作用するかをよりよく理解し、その相互作用を阻害する可能性のある新しい治療用抗体や低分子をデザインすることによって、研究者がコロナウィルスにどのように干渉できるかに焦点を当てます。

研究に協力したい場合には、Folding@Homeクライアントをダウンロードして、余っているCPUとGPUサイクルを提供することができる。

画像クレジット: Science Photo Library – PASIEKA / Getty Images

新型コロナウイルス 関連アップデート

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(翻訳:sako)

Amazon、Alexaの難しい質問への答えをクラウドソーシングで募集

Echoスピーカーを持っている人なら、Alexaに難しい質問をして、困惑した応答をさせようとする「Alexaいじめ」の経験があるに違いない。おそらく、AIを困らせるのがさほど難しないことがわかっただろう。つまるところAmazonはGoogleのように大がかりな知識グラフを持っているわけではない。

簡単な解決方法のひとつは、Wikipediaのように、ユーザーの知識を引き出し知識ベースを充実させることだ。Amazonはそのドアを開いた。ユーザーにAlexaの難しい質問への答えを投稿してもらう招待制プログラムを開始した。

Amazonは以前から Alexa Answersを社内でテストしており、先月だけで10万件以上の応答が集まった。今回このプログラムを、メールで招待した少人数のグループにも公開する。参加を依頼された人は、専用ウェブサイトでAlexaのさまざまな話題に関する質問に答えることができる。

たとえば、Amazonは次のような(あきらかに奇妙な)提示している。「バーバラ・ブッシュはどこに埋められているか?」「指輪物語の音楽を作ったのは誰?」「コルクは何からできているか?」「コウモリは冬どこにいるのか?」など。個人的には全部同じ変人が続けて聞いた質問だと思っている。

応答が追加されるとAlexaはそれを利用できるようになり、「Amazonユーザーから」と注記される。これでデジタルアシスタントへのプレッシャーが少し軽減されるはずだ。ただし、間違った方向に進む可能性もある

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

クリエイターが創作活動で評価される仕組みづくりへ、イラストやマンガ制作のフーモアが2.6億円を調達

クラウドソーシングの仕組みを活用して、ゲームイラストやマンガなどのコンテンツ制作を行うフーモア。同社は6月5日、みらい創造機構を含む6社と個人投資家3名を引受先とする第三者割当増資に加え、日本政策金融公庫からの融資により総額で2.6億円を調達したことを明らかにした。

今回のラウンドに参加した投資家陣は以下の通り。

  • みらい創造機構
  • ジュピターテレコム
  • iSGS インベストメントワークス
  • 一般社団法人 CiP 協議会
  • DG インキュベーション(既存投資家)
  • DK Gate(既存投資家)
  • 個人投資家3名

今回の調達を受けてフーモアでは組織体制を強化しクリエイタープラットフォームの拡大を目指すほか、映像化やゲームなどメディア展開を前提としたコンテンツの原作開発を進める方針だ。

なおフーモアは2011年の設立で、2015年12月にもDG インキュベーションとDK Gateから2億円を調達している。

クリエイターが創作活動を通じて評価されるプラットフォームへ

冒頭でも触れた通り、フーモアではクラウドソーシングを通じてゲーム向けのイラストやプロモーション用のマンガコンテンツを制作してきた。登録クリエイター数は国内外で6000名以上。制作工程を分業するスキームを活用し、手がけたコンテンツは累計で4000〜5000本に及ぶ。

フーモアではこのクリエイターネットワークとノウハウを生かし、クリエイターが世界中で創作活動を通じて評価されるプラットフォームの実現に向けて「クリエイターグローバルプラットフォーム構築の拡大」を中長期の戦略に掲げている。今回の調達もこの戦略をさらに推進するためのものだ。

「これまではクリエイターがクリエイターとしてだけで食べていく世界観というのは非常に限定的だった。我々が実現したいのは、あくまでクリエイターがクリエイターとしてしっかりと社会的に評価されることだ」(フーモア取締役COOの松田崇義氏)

松田氏の話では普段の仕事を提供するのはもちろん「ライフイベントで融資ができるようにしたり、手に職をつけるために雇用先を斡旋したり、アートディレクションという仕事をしっかりと教育する支援をしたりといったように、クリエイターのあらゆる活動を支援するプラットフォーム」をグローバルで目指していくという。

またアニメや映画などの映像化、ゲーム化、商品化などのメディア展開を目的としたコンテンツの原作開発にも力を入れる。これについては先日TechCrunchでも紹介した通り、ジュピターテレコムと業務提携を締結した。

今後は同社の100%子会社であるアスミック・エースと共同で電子コミックやライトノベル、ノベルアプリなどを制作。自社で管理できるIPを保有しマネタイズできる仕組みを構築する計画だ。

フーモア代表取締役の芝辻幹也氏は「今回の資金調達を皮切りに、クリエイターのグローバルエコシステムを構築し、エンターテインメントを前進させていきたい」とコメントしている。

フーモア代表取締役の芝辻 幹也氏

GoogleのインキュベーターからWAYZのNY地下鉄版登場――Pigeonはクラウドーシングで遅延を教えてくれる

Googleのインキュベーター、Area 120からニューヨーク市の地下鉄通勤者を助ける新しいアプリが登場した。最近NYの地下鉄はとみに遅延の回数が増えているが、アプリは利用者にクラウドーシングで最新の運行状況を教えてくれる。

PigeonアプリはAppleのApp storeに登録されているものの、現在は「招待オンリー」なので、私自身はまだ試していない。

しかPigeonのウェブサイトの説明によれば、利用者は日頃通勤、通学に使うルートを設定しておくと、運行に遅延が生じた場合、適切な代替ルートを教えてくれる。運行情報は他の地下鉄利用者からリアルタイムで収集されるので正確だ。クラウドーシングでナビゲーションができる点、地下鉄版のGoogle WAYZといっていいだろう。

Pigeonの開発チームはウェブサイトに「長年ニューヨーク市に住んで地下鉄を利用してきたので運行があてにならず苛立たしい思いをすることが多いのを実際に知っている。そこでわれわれはこのプロジェクトを立ち上げた。地下鉄利用者が互いに情報を交換して助け合い、ニューヨークにおける通勤をかくも不快なものにしている混雑、遅れ、ストレスを最小限に留めるためのアプリだ」と書いている。

Pigeon

私自身もニューヨーカーだが、地下鉄での移動ではもっぱらGoogleマップを頼りにしている。このアプリにはMTAの発表をベースにした遅延情報やそこそこ正確な到着予定時間が表示される。しかしもっと正確でもっとリアルタイム性の高いデータが得られるなら大歓迎だ。それに私は通常の通勤ルートで地下鉄に乗る場合、いちいちGoogleマップをチェックしない。つまり思わぬ遅延に出くわして重要なミーティングに出られなかったり、ひどく遅れたりする可能性があるわけだ。

Accel Partnersが支援するTransitやSequoia、 Intel Capitalが支援するMoovitのようなスタートアップも公共交通機関の利用にすぐれたナビゲーションを提供しようと努力している。

このアプリについて問い合わせるとGoogleの広報担当者から以下にような声明が送られてきた。

インキュベーターのArea 120ではさまざまなプロジェクトが動いているがPigeonもその一つだ。このiOSアプリはニューヨーク市の地下鉄利用者に他の利用者からリアルタイムで運行状況を知らせ、最適な代替ルートを選べるようにする。Area 120の他のプロジェクトと同様、きわめて初期段階の実験であるため今のところ発表可能な詳細は少ない

画像:Joe Josephs / Getty Images

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

Niantic、ARマップ作成にクラウドソーシングを活用

Nianticが単なるカジュアルゲームとは違う広大なプランを持っていることは明らかだ。Google傘下のスタートアップが2016年に公開したタイトル、ポケモンGOはAR(拡張現実)がメインストリームになる大きなきっかけを作ったとされている。このたび同社はさらに一歩先を目指して、その膨大なユーザー基盤を活用して大規模なARマップを作ろうとしている。

計画が最初に明らかになったのは今日午前のReutersの報道で、Niantic CEO John Hankeとの会話に基づく内容だった。Hankeは、「プレーヤーたちには自分たちの遊びたいゲームボードを作って欲しい」と語り、そうやって世界を作ることは「新しいタイプのソーシャル行動」を育むだろうと付け加えた。

スケジュールは何も決まっていない。また、そのマップがポケモンから来るのか、同社待望の続編であるHarry Potter: Wizards Uniteからなのかも不明だ。しかしはっきりしているのは、Nianticが最近買収したEscher Realityの開発したAR技術を利用して、公園などの公共空間を手がけようとしていることだ。

計画の狙いはサードパーティーが利用できる大規模プラットフォームを作ること。Apple、Googleという主要モバイル企業がARKit、ARCoreというツールを通じてデベロッパーにARアプリ開発を推進していることから、需要が高まることは間違いない。

Nianticを当初から見守ってきたGoogleは、今週のGoogle I/Oでマップ内の歩行ナビゲーションを発表するなどARへの強い意気込みを改めて表明している。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

連続殺人犯逮捕へと導いたDNA分析サイトは、ユーザープライバシーに関する懸念を再燃させる

ゴールデンステートキラー(カリフォルニア州連続殺人事件の犯人)であると疑われた男性の逮捕の詳細が明らかになるにつれて、この歴史上最も悪名高い未解決事件が、人気のある無料オンライン家系図データベースを利用して解決されたことが明らかになった。

GEDmatchと呼ばれるこのサイトは、すぐに利用できるコンシューマーテストサービスを通じて自分自身のDNA情報を入手し、さらに分析を行うために家系図の欠けている部分を埋めようと考える人びとに、人気のあるリソースである。23andMeのような洗練されたサービスと比較すると、GEDmatchは、より多くのメインストリームプラットフォームで見られるような、ユーザーデータを管理するためのプライバシーならびに法的制約がないオープンプラットフォームなのだ。

容疑者にたどり着くために捜査官たちは、1980年にベンチュラ郡で起きた連続殺人犯の物とされる、完全なDNAを利用した。チームはサンプルからデータをGEDmatchにアップロードし、容疑者の遠い親戚を特定することができた。これが重要なブレークスルーとなり、すぐにJoseph James DeAngelo(72歳)の逮捕へとつながった。

DNAデータの重要性と、このボランタリーオンラインDNAデータベースの人気の高さから、この事案はすぐにデータプライバシー擁護者たちの注意を喚起した。

金曜日にGEDmatchは、ログインのためのランディングページ上で、法執行機関が事件の捜査のためにDNAデータベースを精査していることを告知した:

大いなる誤解が生じているので訂正したいと思います。私たちはGEDmatch上のいかなる人物のDNAも開示していません。私たちはが開示しているのはDNAマッチ結果のようなデータの操作結果だけです。

私たちはゴールデンステートキラーの特定に、GEDmatchデータベースが使用されたことを知っています。私たちはこの事件や問題のDNAに関して、法執行機関や他の誰からもアプローチを受けていませんでした。サイトポリシーに定められているように、データベースが他の用途に使用される可能性があることを、ユーザーに知らせることは、GEDmatchの方針でした…

このデータベースは家系図研究のために作成されたものですが、GEDmatchへの参加者は、自身のDNAが、犯罪を犯したりあるいは犯罪の被害者となった親戚の特定などへの、使用の可能性があることを理解することが重要です。

DNAの家系図以外への利用が心配なときには、DNAをデータベースにアップロードしないでください。また、すでにアップロードされているDNAは削除して下さい。登録した情報の削除に関してはgedmatch@gmail.comまでご連絡ください。

最初の段階では、法執行機関がゴールデンステートキラーの捜査に、23andMeやAncestry DNAのような主要な消費者遺伝子テスト機関を利用したのではという誤解が生じていた。しかし捜査官たちはその代わりに、面倒な手続の不要なボランタリーDNAデータベースを利用したのだ。23andMeとAncestryの両者は、特定の遺伝的情報または個人情報にアクセスするためには、捜査令状または裁判所命令を発行するように法執行機関に要請している

23andMeは、法執行機関との関係に特化した特別ページで、法医学に対するポリシーを説明してる。

ケースワークやその他の犯罪捜査に23andMe Personal Genetic Serviceを使用することは、当社のサービスの目的外の使用に該当します。

したがって、法執行機関の職員が囚人あるいは犯罪容疑者のサンプルを登録することは、私たちの利用規約に違反します。

捜査官たちが、長きに渡る未解決事件の容疑者を逮捕したということそのものは良いニュースだ。しかしこの事件は消費者DNAテストに関するもっともな懸念を再燃させている。

ニューヨークタイムズとのインタビューで、この事件の解決を手伝ったコントラコスタ郡の調査官Paul Holesは、GEDmatchの力に驚いたと言う。そこでHolesは「私はそれを使ってできることに、心底驚きました」と語っている。

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(翻訳:sako)

Wikipediaを利用している企業たちはそのことに報いているのか?

企業は情報をソースとしてのWikipediaに大きく依存しているが、それは必ずしも双方向ではない。

Wikipediaの情報を使って、陰謀論ビデオと戦おうというYouTubeの計画は各方面からの反対を巻き起こした ―― 驚くべきことにWIkimedia自身からも懸念の声は挙がった。どうやらGoogleは、今月初めにこの計画をSXSWで発表する前に、Wikimedia財団に対してこの計画について何も知らせていなかったようなのだ。あーあ。

WikimediaのエグゼクティブディレクターKatherine Maherはこれに対し、クラウドソースで作り上げられた情報は真に自由利用が可能だが、まあ、もしそれを利用する企業が少しでもお返しをしてくれるなら嬉しい、と冷静に繰り返した。

「Wikipediaのコンテンツは、誰でも自由に使えるようにライセンスされています」とMaherは書いている。「それが、どんな人でも自由な知識を分かち合えるという、私たちのミッションの一部なのです。世界中の人々がWikipediaを使い、共有し、追加し、リミックスすることを願っています。同時に、私たちは、WIkimesiaのコンテンツを使用する企業が、持続可能性の精神の下に、何らかの寄付を行うことを奨励しています」。

もちろん、GoogleがWikipediaの貢献者や編集者たちの、一連の仕事を利用したのは、今回が初めてではない。最近は、このサイトに蓄積された、一般人の編集による豊富な知識は、良くも悪くも、多くの広く使われるサービスのバックボーンになっている。特にスマートアシスタントたちによる利用が目立つ。AlexaやSiriに英国の女王は誰かと聞いてみよう。どちらもこの情報を同じ場所から引き出して来るだろう。

先週の初め、Wikimediaの歳入担当者Lisa Gruwellは、TechCrunchに対して、このような使い方は、正式な関係を通して行われているものではないと語った。ほとんどの企業は、多かれ少なかれAPIにアクセスして、その幅広い知識を活用している。もちろんそれは手軽で、Wikimediaのフェアユースルールの中では何の問題もない。しかしMaherの発言と同様に、歳入担当者も一方的な関係にある種の懸念を表明した。

「私たちのコンテンツは利用されるために存在しています」とGruwell。「それは自由にライセンスされていますが、目的をもって自由にライセンスされているのです。同時に、それは環境のようなものです。それは使われるためのものですが、搾取(exploited)されるためのものではありません。私たちは、コンテンツを使って何らかの返礼を行ってくれる人たちを、本当に必要としています、それが私たちが奨励しているものです。一部の人だけにアクセスを許す有料の壁はありません。私たちはデータに対しては請求を行いません。もし余裕があるならば、私たちは寄付をお願いします、しかし、もし余裕がなくても、変らず利用することができます。それは私たちが読者に皆さまと結んでいる社会的契約のようなものです」。

もちろん「搾取」(Exploitation)というのは、Wikipediaのようなものの性格を考えると難しい表現である。NPR(National Public Radio:公共ラジオ局)やPBS(Public Broadcasting Service:公共放送サービス)のように、誰に対しても自由に提供されるサービスだが、Wikipediaは存続するために慈善寄付に依存している。スマートアシスタントたちは確かにその情報ベースを活用するという点では、適用されるルールに従っているが、その現在の使われ方では最終的にWIkipediaへ及ぼす影響は限定的なものとなる。

主に音声を利用するAlexaの様なものの場合、Wikipediaが引用されているとしても、元となる情報素材への直接の関係はない。つまり、ユーザーは元になるソース(WikipediaのDNAである重要な部分)を直接見ることはできない。また、Wikimediaからの寄付情報も前面にも中心にも出ることはない。

「まるで『ロラックスおじさんの秘密の種』(Dr. Seuss’ The Lorax)のようだと言いたいわけではありませんが」とGruwell。「もし何かを使いすぎて、それに対して何も返さないなら、害をなすこともあるでしょう。AlexaとSiriの場合、私たちのコンテンツは仲介されているわけです。Wikipediaが上手くいくのは、みなさんがそれに貢献することができ、それを編集することができるからです。そして私たちがお願いするのは年に一度ですが、みなさんは寄付を行うこともできます。みなさんが、私たちの持つ情報を、私たちからではなくSiriやAlexaのようなものを通して得ているときには、編集者として何かを返す機会は失われていますし、活動に貢献したり、寄付したりという機会も失われているのです」。

財団に対する支援の大半は、平均10ドルを支出する600万人のユーザーから寄せられたものである。Gruwellによれば、企業からの支援 (各種財団からのものを除く)は、同財団に対する寄付金の約4%を占めている。もちろん、匿名の巨額資金提供者の一部が、これらの企業と直接関係している可能性もあるが、企業からの寄付のリストには少々驚かされる。

2017-2018会計年度の数字は次の通りである:

  1. Google(100万ドル以上)
  2. Humble Bundle (45万6000ドル)
  3. Craigslist財団(25万ドル)
  4. Cards Against Humanity (3万5000ドル)

Gruwellによれば、最近のYouTubeを巡る騒ぎにもかかわらず「大手の大手インターネット企業上位5社のうち、Googleとの関係は遥かに良いものです。彼らが私たちの組織に貢献している点と、一般的に私たちと協力するやり方の両方で。多くの場合に、彼らは私たちに接触し、私たちと協力していると言うことができます。私たちは彼らとパートナーシップを結んでいます。私はそれは他のものと比べて、確かに良い関係だと思っています」。

他の大きな企業も、マッチングドネーション(集まった寄付金に企業が上乗せして寄付を行うこと)を使って貢献している。Apple、Facebook、Microsoft、そして(ここでも)Googleはそれぞれ、従業員からの寄付に上乗せする形でおよそ5万ドルを寄付している。一方、Amazonはそのリスト上のどこにも見つからない。

政界のあらゆる団体が互いに「偽のニュース」を叫んでいるこの時代に、情報源の引用と事実の確認はますます重要になっている。最も注目されているトピックであっても中立性を維持しようとしているため、その両者(引用と確認)は長い間、Wikipediaの基本的な特性だった。

「インターネット上のあらゆるプラットフォームと同様に、私たちは懸念していますし、時には悪い連中と向き合うことになるかも知れません」とGruwellは言う。「そうした懸念は事実です。私たちは、悪意ある貢献を検出するための機械学習ツールといったツールを構築しようとする過程で、多くのことに対処しました。私たちのコミュニティでは、そうしたツールが特定のページを見張っています」。

スマートアシスタントとして、YouTubeなどはますます日々の生活の一部となっている。そしてWikimediaがその中で果す役割はますます重要になっているのだ。そして「寄付のなる木」は存在しないことに留意したい。

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(翻訳:Sako)

個人がスキルを売り買いする「ココナラ」にPRO認定制度、ビジネスユース強化に向けて舵取り

個人の働き方が多様になるにつれ、近年クラウドソーシングやスキルシェア系のCtoCサービスが盛り上がっている。最近TechCrunch Japanで紹介したところでは、Zehitomoなど「応募課金モデル」と呼ばれる新しいマネタイズモデルを採用したサービスも生まれている。

“スキルのフリマ”というキャッチフレーズでサービスを展開するココナラも、スキルをもつ個人の働き方を多様化させるサービスの1つだ。

ココナラは、個人が自分の知識やスキルを販売できるCtoC型のECサービスサイト。同サービスはもともと500円均一でスキルを販売できるサービスとして始まったが、現在はランク制を導入し、そのランクに応じて定められた上限価格の範囲内(最高で20万円)でユーザーが価格を決めるというシステムに変更している。一方、ココナラは手数料としてその販売価格の25%を受け取る。

ココナラでは、ロゴやアイコンの作成、Webページの制作などクラウドソーシングでもおなじみのスキルが売り買いされているほか、ユニークなものとしては”占い”なんていうのもある。以前は占いサービスが売上高の大半をしめるという時期もあったそうだが、現在はデザイン系のスキル販売が急激に増えているという。

ココナラ広報担当によれば、同サービスの登録ユーザーは現在70万人で、出店されたスキルの数は17万件だという。累積の成約件数は150万件だ。

また、同社は2016年8月より法律相談というスキルの販売に特化した「ココナラ法律相談」も提供している。同サービスの弁護士登録数やサービス売上高は非公開ということだが、2018年1月時点で売上高は前年同月比で17倍に成長。有料広告掲載弁護士1名あたりへの問い合わせ数も月あたり10件程度となっているという。

そんなココナラは2月5日、おもにビジネス利用などで高いスキルを求めるユーザーに対応した「PRO認定制度」をリリースすると発表した。同サービスは2月下旬より開始する。

PRO認定制度とは、すでにサービス提供の実績が豊富にあり、かつユーザーからのレビュー評価も高い出品者に対してココナラが“お墨付き”を与える制度だ。PRO認定を受けた出品者のページには「PRO」と書かれたラベルが表示され、高品質を求めるビジネスユースのユーザーから注目されやすくなる。同社はPRO認定者に限定した検索機能も設置する予定のため、出品サービスの露出度アップも期待できる。

これに似たようなシステムとして、クラウドソーシングの「ランサーズ」には認定ランサー制度があるし、「クラウドワークス」にもプロクラウドワーカー制度がある。価格も範囲内でユーザーが自由に設定でき、ビジネスユースの強化を狙ったPRO認定制度も始めるとなると、ココナラと他のクラウドソーシング系サービスとの違いが薄くなり寂しい気もする。でも、それだけビジネスの場でもクラウドソーシングを利用する例が増えているということなのだろう。

ちなみに、ココナラは2017年10月に発表したリリースのなかで、「過去3決算期の収益(売上高)に基づく成長率が1252.39%を記録した」と発表している。スタートアップの成長が単純計算できる訳でもないが、単純計算で言うと1年あたりの年間収益成長率は約400%ということだ。前回TechCrunch Japanが取材を行った2016年7月時点における月次の流通高は8000万円だった。ココナラが受け取る手数料はスキル販売価格の25%なので、手数料収入は単月で2000万円。もし、これが過去1年間で4倍になっていたとすれば、2017年7月ごろの単月収益は8000万円となるのだろうか。

ココナラは2012年1月の創業。今回のPRO制度導入に加え、同社は2月中旬よりビデオチャット機能(ベータ版)の導入も発表している。これまで出品者と購入者のやりとりはテキストチャットに限られていたが、これにより英会話や楽器の個人レッスンなど、対面で提供するスキルの販売が可能になる。

GE Appliancesがクラウドソーシングな製品開発サービスを企業顧客向けに売っていく

GE Appliancesは今や中国の家電メーカーHaierの子会社だが、このたびクラウドソーシングによる製品開発事業をスピンアウトして、企業顧客にそのサービスを提供して(==売って)いくことになった。その企業名は、Giddyだ。

クラウドソーシングは不死鳥のように不滅のアイデアだ。ただし過去数年間では、失敗した企業も少なくない。たとえばQuirkyLocal Motorsのような企業は、メイカーたちのコミュニティからアイデアを得る製品開発ショップを作り、才能のあるアマチュアたちの技術やデザインと、手作りプロトタイピングによる製品を、マスマーケットに向けて売った。

そのような企業がこれまでに調達した資金総額は1億ドルを超えているが、しかしQuirkyは挫折し、1000人の自動車設計エンジニアを育てるというビジョンを掲げたLocal Motorsは失速した。

GE AppliancesもかつてはQuirkyとご縁があったが、今回はそれと同じモデルを企業顧客向けに生かそうとしている。

GE Appliancesはケンタッキー州ルイヴィルの本社に、Quirkyに倣ったFirstBuildという子会社を作った。そしてそれを、新製品のテストに利用しようとした。一部の製品、たとえば新しい製氷機水出しコーヒーマシンは成功して、実際に市販された。

GiddyのCEOに就任したTaylor Dawsonは、声明文でこう述べている: “企業がイノベーションにアプローチする方法はたえず進化している。しかも最近ではますます、会社の四方の壁の外にアイデアを求めようとしている。弊社も新鮮な考え方にビジネスとしてアクセスし、人びとが自分の好きなことをして経験を積んでいくための、機会を提供していきたい”。

一方FirstBuildはルイヴィルから上海に移転してオフィスを拡張し、2018年にはインド進出を計画している。

そしてGiddyはQuirkyとFirstBuildのモデルを取り入れ、モバイルのプラットホームとして企業に売っていく。企業顧客はここに開発テーマをポストして、社員たちや外部設計者/デザイナーにアイデアの開発を訴求する。

その最初のチャレンジ(開発テーマ)はCESで発表する予定で、その詳細はこのページにある。

企業顧客はGiddyに料金を払うのだが、アマチュア投資家やホビイスト、メイカーたちの参加は無料だ。彼らはさまざまなチャレンジの中から、自分の関心に沿うものを見つけて取り組む。

Dawsonは、こう言っている: “テクノロジーはすばらしいが、でもその価値はGiddyのクリエイティブコミュニティにある。そのアーチストたちやエンジニアたちが、テクノロジーのさまざまな価値を提供する。すでに弊社はFirstBuildで、コミュニティとオープンなイノベーションのパワーを経験した。そしてそれがGEの製品にとって有効なら、同じやり方がほかの企業にも有効なはずだ”。

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動画制作のCrevoが動画制作プラットフォーム「Collet」を公開、総額3.1億円の資金調達も実施

Crevo代表取締役の柴田憲佑氏

2014年に動画制作特化のクラウドソーシングサービス「Crevo」を公開したスタートアップ、Crevo。これまでの累計700社の動画を制作してきた同社が、その動画制作ツールをオープン化し、事業を拡大するという。Crevoは9月14日、動画制作プラットフォーム「Collet(コレット)」を発表。30社に限定して、クローズドベータ版サービスに向けた先行申込み企業の募集を開始した。またCrevoは伊藤忠テクノロジーベンチャーズ、三井住友海上キャピタル、AG キャピタル、D4Vを引受先とした総額3億1000万円の第三者割当増資を実施したこともあきらかにしている。

前述の通り、これまで700社の動画を制作してきたCrevoだが、20人弱という小さな組織で複数のプロジェクトを回すために、自社で制作管理ツールの開発を進めてきた。Crevoには現在、世界100カ国、3000人のクリエーターが登録しているが、そのクリエーターたちが離れた場所でも作業できるよう、ウェブ上で動画素材を集約。シーンごとに直接指示を出したり、コミュニケーションができる仕組みを作り上げた。Crevoでは、このツールによって、制作関連業務の負担を5分の1に圧縮したとしている。このツールを制作会社などに提供できるようにオープン化したものがColletだ。

Colletには大きく2つの機能がある。1つはCrevoが自社のビジネスで培ってきたノウハウを注ぎ込んだ、制作管理ツールとしての機能。そしてもう1つは、企業とクリエーターを直接繋ぐジョブボードの機能だ。Colletを利用する企業が、自社の動画制作案件をCollet上に掲載。Crevoに登録するクリエーターがその案件を引き受けるということができるようになる。

「若いクリエーターの労働環境は厳しいところがある。そこをなんとかしたい、働き方も改善して欲しいという思いがあった。クリエーターも(Crevoからの発注に限らず)さまざまな企業からの仕事ができるほうが魅力がある。動画制作事業は3年半で軌道に乗っているので、それで利益を上げつつ、Colletの開発に投資していく」(Crevo代表取締役の柴田憲佑氏)

Crevoでは、今冬をめどにColletをオープン化する予定。また今後はColletに限らず、「制作会社が困っていること、若い制作アシスタントたちが困っていることを解決できるようなサービスを提供していく」(柴田氏)としている。

Obama Foundationがデジタルの市民社会という未踏の課題/問題にクラウドソーシングで挑戦を開始

Obama Foundation(オバマ財団)が、その初めての公式声明の中で、デジタル世界の市民権ないし市民性という概念を吟味検討するよう呼びかけている。

デジタル世界への参加と、そこで良き市民であることは、オバマ政権の重要なテーマだった。そしてそれは、世界市民として一私人となった今も、中心的な関心であるようだ。

今年の初めにシカゴ大学で行った講演で、まだ大統領だった彼はこのテーマに触れた:

“今は、誰もが、すでに自分たちと同意している人びとの話だけを聞く、という状況がある”。

人びとはソーシャルメディアと、インターネットのグローバルな伝達力を利用して、“自分たち自身の現実を強調し、健全な議論を通じて共通の基盤を見つけソリューションを実際に前進させていくための、共通の現実を無視している”、と元大統領は述べた。

そして今回、彼の団体は、私たちのデジタル世界における行いを正していくための、会話を始めよう、と呼びかけている。

以下は、当団体のCDO(chief digital officer) Glenn Otis BrownがMediumに投稿した記事の一部だ:

目の前に大きなチャレンジがあり、その解は自明でない。では、どこから話を始めようか? 最初のステップは、問題を同定しそれらについて話すことだろう。オープンに、一緒に、この同じチャネルを使って。しかしそれは、前向きに、そして配慮を伴って使わなければ、最初から機能不全に陥ってしまう。

簡単な自問自答から、考えをスタートしてみよう。答を私たちのサイトにポストしてもよいし、ご自分のお考えをソーシャルメディア上の#DigitalCitizenでシェアしてもよい。あるいは独自のコンテンツを作って、それをみんなと共有しよう。それらに対応してこの記事も今後徐々にアップデートし、広げていきたい。もちろん、あなたご自身の質問を投稿してもよい。

  1. あなたの世界では誰がデジタル市民のモデルか? それはなぜか?
  2. あなたのオンライン生活で、どんな習慣を変えたいか? ほかの人たちに勧めたいやり方は何か? “デジタルの健康”を改善するために、簡単にできることは何か?
  3. 誰あるいはどの団体が、思想や個性など、あなたが重視するものの違いを受け入れるという意味で、デジタル市民の好例と言えるか?

では最初の一歩として、最初の質問へのぼくの答を言おう。ネット上の市民の好例とぼくが考える人物は、Zeynep Tufeckiだ。Zeynepは、難しい技術的な問題を一般の人に分かりやすく説明する名人だ。彼女は自分の個人的な体験と職業的な体験をベースに、社会的な問題に答えようとしている。とくに重視するのが、セキュリティと民主主義とテクノロジーが交わる部分の話題だ。ただし個人的な感情などは持ち込まない。彼女は学者だが、実践の経験も豊富だ。そしてとても感情的な話題のときでも、ユーモアと謙虚さを忘れない。

あなたのお答えは、私たちのサイト宛でもよいし、お好きなソーシャルチャネル上でもよい。あなたのお声を、ここに加えてほしい。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))

Q&AサイトのQuoraがビデオアンサーの導入を試行中

新しいユニコーン企業であるQuoraは、テキストによるQ&Aよりも、さらに大きな野心を持っている。そして、ビデオ大手や他のスタートアップがその未来を邪魔することは難しそうだ。

今週Quoraはビデオアンサーのテストを開始した。なぜなら何かがどのように働くかを説明したり、あるタスクを行なう手順を示したり、あるいはあるものが他のものより優れている理由を述べる際に、テキストで説明するよりもビデオを利用する方が遥かに簡単なことがあるからだ。ベータグループのユーザーは、Quoraのユーザーたちが見ることのできる、補足的あるいは完全な回答ビデオを、iOSもしくはAndroidを使って撮影することができる。ビデオをアップロードすることで、より洗練されたコンテンツが提供されることになるが、スパムが増える懸念もある。

ウェブとモバイルにおけるQuoraビデオアンサー

これまでQuoraは、ユーザーたちに、テキスト、自らのサイトにアップロードされた写真、リンク、そしてYouTubeのようなプラットフォームからの埋め込みビデオだけを用いた回答を行なわせてきた。それが今は、積極的にビデオのアップロードを受け入れ、投稿を奨励しようとしている。

このビデオ機能と評価システムを組み合わせることで、Quoraは現在YouTubeの上でホストされている、ハウツービデオコンテンツをある程度奪うことができるだろう。YouTube上ではSEOと人気度合いによって、Q&Aの精度が犠牲になる可能性がある。Quoraのビデオ回答は、どれだけ共有され宣伝されたかではなく、コミュニティの中でどれだけ有用であるかの指標を用いて並べられる。

「私たちの使命は、世界の知識を共有して成長させることです。そして知識は、単に書かれているだけでなく、多くの形式で表現されます」こうTechCrunchに語るのは、Quoraのモバイル責任者Tommy MacWilliamだ。「テキストによる回答と同様に、人々はビデオ形式の回答に対して、質問への回答という観点から、プラス評価をしたりマイナス評価をしたりすることができます」。

一方Quoraがこの領域にやってくることで、Justin Kan’s mobile video Q&A app WhaleAsk Me Anything app Yamのような、より若い競合相手は大きな困難に立ち向かうことになるだろう。こうしたアプリは質問対するビデオアンサーの記録を簡単にすることに焦点を当てていて(回答者をよく見せるためのフィルタ機能なども提供されている)、どちらのアプリも回答者にお金を稼ぐ手段を提供している。

しかしQuoraの1億9000万人のユーザー、2億22600万ドルの資金、8年間の先行者としての経験は大いなる強みだ。前身であるYahoo Answersとは対照的に品質を重視したブランディングを行いながら、慎重に専門家とコンテンツのネットワークを管理して来ている。このネットワークを打ち破るのは難しいかもしれない。

ビデオは、Quoraは本気のマネタイズをどのように始めるのか、という問いかけに対する回答かもしれない。この話題に関しては同社は少々口が重い。MacWilliamは「ベータプログラムを通して、私たちはビデオが回答者と視聴者の双方にどのようにフィットするかを学んでいる最中です。ともあれ今は素晴らしいプロダクトを作り上げることに専念しています」と語った。

Quoraのマネタイズの歩みは遅く、その最初のスポンサードクエスチョン広告フォーマットは非常に微妙で控えめだ。しかし、もしQuoraがビデオアンサーの後に動画広告を入れるようにするなら、視聴者の学習体験を損なうことなく、対象テーマに関心の高い層に、効果的に広告を届けることができるようになるだろう。

どのような種類のアプリであろうとも、モバイル上の全ては現在ビデオを用いて再定義されつつある。問題は、古いアプリたちが時代に乗っていくのか、それとも後に取り残されるのかということだ。

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(翻訳:Sako)

1度は退場した犯罪報告アプリVigilanteがCitizenとして復活、「事件報告」ボタンは削除予定

Vigilante(自警団員)アプリを覚えているだろうか?この論争を呼んだ犯罪報告アプリは、リリース後間もない昨年の11月にAppleStoreから追い出された。Appleが、このアプリは一般市民を所謂…自警主義(vigilantism)に巻き込むと判断したからだ。そのアプリが、異なるブランドとして戻ってきた。ニューヨークで運営が始まった新しい”Citizen”アプリは、リアルタイム犯罪レポートを911コールに基いて送ってくるだけでなく、利用者に犯罪現場のライブストリーム配信とコメントを行う手段を提供する。

Vigilanteアプリは、そのローンチに際しブログ上で、「平均的でごく普通の」市民たちが「集団で」犯罪の問題に取り組むべきだという元警察官の言葉を引用していた。「自警団員」というアプリの名前は、そのユーザーたちに、自分たちを非常に危険な状況に晒したり、あるいは警察 抜きに事態に直接対処することを後押しをするかのような響きがあった。

新しいCitizenアプリでは、ユーザーによる事件への直接の関与のトーンは薄まっている。Citizenはその代わりに、ユーザーが犯罪や事件のライブストリーミングを行い、他の人びとがそれ視たりコメントを書くことを促している。またアプリの説明のために、「決して犯罪現場に近付かないこと、事件に干渉しないこと、警察の邪魔をしないこと」を「強く指導する」ウィンドウがポップアップされる。

しかし、911コール(日本の110番に相当する緊急通話)からキュレーションされるアプリのコンテンツは、いまひとつ基準がはっきりしない。

「ニューヨークでは1日あたり1万件の911コールがありますが、私たちは平均して300から400件を通知します」と語るのはsp0nのCEOであるAndrew Frameだ(sp0nはアプリの開発メーカー)。

同社によれば、アプリによってリストされるのは、「公共の安全」に対する脅威に限られるということだ。

まだ作業途中であるからという理由で、使われている審査基準は公開されていない。Frameは「不審な人物」、「不審なバッグ」あるいはスーツケース、および薬物事件に関するコールは、現時点ではアプリには示されていないと述べている。

しかし、アプリでは、地図上の赤い点として事件の発生を知ることが可能なので、特定のエリアを回避するための、ある程度の役割を果たすことができる。これは仕様によるものだ。

この犯罪マッピングへの取り組みは、公開データを用いて白人たちが、「危険」と想定される隣人である非白人たちを避けることを助ける恐るべきアプリ “GhettoTracker”や“SketchFactor”とは少々異なったアプローチだ。しかしCitizenは911に通報される現在の事件を表示し、それが継続している間プッシュ通知で警告を送り続ける。

こうして、もし「Applebeeで喧嘩が発生」(これは今日(米国時間12日)起きた実際の事件だ)したなら、その店へ食事に行くことを控えることができる。

しかし The Outlineの記事が、ユーザーが犯罪や事件をその場で報告できる機能は生きたままであることを指摘している。そして実際に、新しいアプリには「事件報告」ボタンが備わっているのだ。

報告される全ての事件が、アプリで再通知される基準を満たすわけではなく、この機能は殆ど使用されることはない、とFrameは述べている。しかし、それは事実存在していて、アプリの意図は不明瞭だ(それはユーザー生成コンテンツを欲しているのか、いないのか?)。 課題は残る。

Frameによれば、このアプリの次期バージョンではこのボタンは削除されるという。

「誤解が多いようです。うまく説明できるようにする必要がありますね」と彼は言う。「私たちはとても慎重に事を運んでいます。それが通報ボタンがアプリの奥に埋め込まれている理由です。もし『事件報告』ボタンがアプリの中心に陣取っていたなら、アプリを開けた瞬間にそれを押したくなる誘惑に駆られる、強調ポイントとなるでしょう」。

外部から見ている人には明らかだが、人びとが「不正投票」をスマートフォンで通報するが奨励されているトランプのアメリカでは、ユーザーが各自の判断で犯罪を通報する機能をもったアプリの提供は危険な領域に向かいかねない状況だ。Nextdoorで起こったことを見てみるが良い、アプリ内での人種プロファイリングが蔓延してしまったために、同SNSはそれを防ぐために大幅な作り直しを余儀なくされたのだ。

「このボタンを削除することは約束しますよ」ユーザー報告ボタンがアプリのコアミッションを損なうことを認めながら、Frameは言った。アプリの使命は「犯罪を減らすことで、人びとをつつきまわすことではありません」と彼は主張します。

しかし The Outlineは他にも利用者に事件のライブストリーミングを促すことは、別の問題に繋がる可能性があることを指摘している。記事では、WITNESS(証人)のプログラムディレクターであるSam Gregoryの言葉を引用しながら、重要な証人の身元が判明してしまう可能性について指摘した。WITNESSは、人権侵害に繋がる可能性のある動画を倫理的に正しく用いる方法を訓練する非営利団体だ。彼はまた、Citizenが「誰かが暴行されている、信じれなはいほど屈辱的な動画」や、「誰かを、本当は無罪なのにあたかも有罪であるかのように写した動画」の共有に使われかねない、という懸念を表明している。

Frameはこれらの課題に対しては、最初そうした事態はまだ起きていないと答えただけだった。

より詳細な回答を迫ると、彼は以下のように付け加えた「これは透明性のあるアプリなのです。透明性がバイアスを取り除きます。透明性が、起きたことに関する不安と周りのすべての誤解を解消します。透明性の結果は、私たちにはコントロールできません」。

Frameに、デイヴ・エガーズの「ザ・サークル」を読んだことがあるかと尋ねたが、彼の答は「ない」ということだった

もうすぐ映画が公開されるこの小説には、Googleのようなハイテク企業が登場し、それが提供する「SeeChange camera」を人びとは24時間装着している。そうした人びとの中には「透明性」を強調したい政治家たちも含まれている。それらのカメラは、市民たちによっても、密かにあらゆる場所に設置されているのだ。

基本的に「1984年」の焼き直しだが、「ビッグブラザー」がクラウドソーシングになっている点が異なっている。

「私たちは、全ての場所が適切にモニターされているとは思っていません」とFrameは主張する。「このアプリでライブ配信を行って良いのは、事件が起きたときだけです」と彼は言う。

しかし、スマートフォンのおかげで、カメラはどこにでも存在している 。そして、Citizenの考える前提は、犯罪を減らすためには、公共の安全を脅かす犯罪はすべて集約され、ストリーミングされ、そして罰を与えられるべきだというものだ。

しかしながら、犯罪を減少させるためには、雇用、高賃金、そして教育の方が、よりよい手段だと主張することもできるだろう。

Cizizenは、Peter ThielのFounders Fund(FF Angelを経由して)、Slow Ventures、RRE Ventures、Kapor Capital (NAACPの元CEOであるBen Jealousを経由して)、その他のエンジェル投資家たちから、300万ドルのシード資金を調達している。

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(翻訳:Sako)

自動運転車のためのリアルタイム道路状況地図技術でHereとMobileyeが協働

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自動運転の分野ではこのところ、複数の企業による共同開発という傾向が多く見られるようになった。Nokiaからスピンアウトした地図スタートアップHereは、コンピューターヴィジョン用のチップやカメラなどを作っているMobileyeと協働し、自動運転技術の重要な要素であるマッピングサービスのサポートで、コラボレーションしていくことになった。

両社がパートナーシップを発表したのは木曜日(米国時間12/29)で、この提携により、クラウドソースなデータを利用してリアルタイムで最適ルートを見つけ、地図上に表示するMobileyeのRoadbookと、Hereの地図サービスHD Live Mapを重ね合わせたようなサービスを提供していく、とされた。これにより自動運転車は、HDの地図の上に車載のセンサーからの情報をオーバレイで表示して、今まわりに何が見えるかを知らせるだけでなく、これから先の路上に何があるか、という情報も絶えずアップデートしていくことができる。

このパートナーシップの一環として、MobileyeはHereのOpen Location Platformを利用し、またHereは、MobileyeのREM技術で道路状況のリアルタイムモニタを行っている車両の、センサーから得られる生データにアクセスする。これによりHereのHD Live Mapのアップデートがさらに高速化することが期待され、実際のリアルタイムの運転状況を自動運転車により適格に反映させることができる。

地図は自動運転の重要な要素であり、このパートナーシップによって両社は、自動運転車やフリートサービスを展開しようとする企業にとって、より魅力的なサプライパートナーになれるだろう。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))

Netflixの挑戦にヒントを得て、クラウドソーシングに乗り出すべき5つの業界

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【編集部注】著者のDevin Guan氏はDrawbridgeのCTO。

2006年にNetflixは、世界に名の通ったそのCinematch Technologyについて、じっくりと吟味を重ねていた。Cinematchはその名が示す通りのことを行うものだった:利用者が投入したデータによって、このテクノロジーはどの映画をある利用者が楽しむ(あるいは楽しまない)のかを予測することができる。それにより、Netflixは個々のユーザーのためにカスタムメイドされた、パーソナライズ映画レコメンデーションリストを作成することができた。

Cinematchはうまくいっていたが、その舞台裏では、Netflixはその可能性を最大に活かせていないことを気にしていた。そのため、当時の完全に前代未聞の動きとして、Netflixは膨大な匿名レーティングデータを公開し、世界規模の挑戦を募った:Netflixのものを上回る効率のアルゴリズムの開発への誘いである。

Netflix Prizeという名前で知られるようになったその挑戦は、この種の初の大規模なクラウドソースコンペティションだった。このコンペティションは、世界中からレコメンデーションエンジンの価値に対する注目を集める役にたった。まもなく、eコマース企業は類似のテクノロジーを売り物にするようになり、結果として、インターネットは消費者と売り手にとってより良い場所になった。Netflix Prizeはデータサイエンスに対して新しい扉を開き、それを新しい高みへと持ち上げたのだ。

私がNetflix Prizeの賞金100万ドルを手渡してから、およそ10年が過ぎようとしている今、私は新たに5つの業界が、自らの「Netflix Prize」を募るべきときだと考えている(著者は2009年4月から2010年4月にかけてNetflix Prize担当だった)。これらの5つのそれぞれの業界内で使用可能な豊富なデータを利用するための、機械学習を用いたソリューションを目指すクラウドソーシングによって、我々はノイズの中から関連する信号やパターンを見つけて、これらの業界をより効率的にするだけでなく、私たちの生活を向上させるためにより完全なものにしていくことができる。

デジタルセキュリティ

セキュリティ業界、とりわけリスクや不正検出周りの手法は、極めてルール駆動中心の市場である。消費者がオンラインまたは店舗でクレジットカードでの買い物をする際には、カード発行者は、次のような質問を伴う迅速な承認プロセスを実行している:消費者のアカウントが良好な状態か?カードは、消費者に関連性の高い店で使用されているか?店舗の場所は、最近の購入履歴の場所に矛盾しないものか?これらの(更にいくつかの)データ視点に基づいて、取引が承認または拒否される。

これらのルール駆動の認証システムはなはだ不完全で、多くの場合、変化しやすいデータの特性に対して適応することができない。考慮に取り込むことのできる、消費者とそのデバイスに関する遥かに大量のデータが、オンラインとオフラインの両方に存在している。

Netflix Prizeのようなクラウドソーシングコンペティションは、デバイス、時間、そして場所をまたがって、買い手のより完全なビューを提供する利用者のユニークな振舞を明らかにするための、利用者のパターンを共有する機会を提供することができる。究極的には、セキュリティ業界に機械学習を適用することで、セキュリティチームは、不正取引を削減するだけでなく、正しい取引が拒否されないような、適応学習戦略を構築することが可能になる。

健康と薬学

データは、命を救うための鍵だが、現在製薬企業と医療提供者は、主に独自のサイロ(閉鎖された領域)で仕事を行っている。これは重大な健康問題の解決には、不十分なデザインのシステムだ。医学・医療のためのクラウドソーシングNetflix Prizeは、根本的な成果をもたらす可能性がある。

実際に、その効果を支持する証拠は既に存在している。2012年に製薬会社メルクはコンテストを開催した。そこでは数千に及ぶ異なる分子の化学構造データが共有され、科学コミュニティに対して、新しいあるいはより良い薬品へと繋がるであろう物質の特定が、課題として投げかけられたのだ。優勝結果は、業界標準のベンチマークを超える17%の改善を示し、同時に機械学習によって支援される医薬品の研究のための新たな道を切り拓いた。

もしすべての薬物研究からのすべてのデータを入力することができるなら、可能性として薬剤に対するより良い予測を行うことができるだろう。

化学的データを越えて、患者たちは、喜んで医師に提供できる多世代にわたる価値ある家族データを持っている。心拍数の記録、尿サンプル、家族歴、血圧、そして医師のカルテの1ページ1ページなどから。身体は1つの大きなデータサイエンスの夢なのだ。もし私たちが、ビッグデータ機械学習手法をそれら全てのデータに適用したならば、HIPAA(Health Insurance Portability and Accountability Act)が要請する患者の秘密を遵守しながらも、医療の専門家たちはある家系や個人に対して、問題が起きる前に兆候や感受性の有無を発見することができるだろうか?同様に、もしすべての薬物研究からのすべてのデータを入力することができるなら、可能性としては、メルクの例を超えて、薬剤に対するより良い予測を行うことができるだろう。

広告とマーケティング

広告やマーケティングテクノロジーの世界で、すべてのブランド、代理店、そして企業が直面している大きなギャップは、デジタルアイデンティティだ。この問題は、デバイスの世界的な増殖現象に由来している。スマートフォン、タブレット、ノートパソコン、ネットテレビ、スマートウォッチ、そしてコネクテッドカーなどの間で、私たちのデジタル生活は極度に断片化され、そしてインターネット上の顧客体験の大部分は連携していない。

Facebook、Google、Amazon、Netflix、その他の企業は、この問題をログインを強制することで「解決」している。例えば、私のFacebookのニュースフィードは、モバイルでもデスクトップでも同じである; Amazonはデバイス間で一貫して私向けのプロダクトをお勧めしてくる。しかし、インターネットの残りの部分はどうだろう?私がログインせずに、オンラインやアプリの中で過ごす時間はどうだろう?

ここで良いニュースは、インターネットは定義により、データの無限の海だということだ。ブラウザデータ、デバイスデータ、位置データ、利用データ、ネットワークデータ – 十分な量のデータが、データサイエンティストたちの群れを、そうした信号の利用によるアイデンティティの解決へむけて忙しくしている。いくつかの企業は、すでにデジタルアイデンティティのこの問題に対処しているが、オープンスタンダードは、あったとしても、少なく、コラボレーションはとても限られている。

クラウドソーシングによるデータサイエンスコンペティションによって問題が解決されるならば、デジタルアイデンティティは、企業と消費者の双方にとってのオンライン経験を革新することができるだろう。レコメンデーションやコンテンツはパーソナライズすることができ、マーケティングは自動化することができる。クロスデバイス属性はシンプルになり、マーケティング担当者の消費者のビューは、総体的なものになる。

交通・輸送

私たちが日々の通勤で毎朝生み出している、全てのデータのことを考えて欲しい。私たちはWazeへデータを入力し、位置とスピードをGPSで共有する、スピードモニターゾーンを通過し、ナンバープレートの情報までも提供し、交差点のカメラや、料金所で交通パターンが収集される。数百万のドライバーかたのデータが到着し、それ以上のデータがバスや電車からやって来る。

機械学習は、より効率的な輸送環境と体験を生み出すことができる。

もし、通勤時間を最短化するために、あるいは望む時間に正確に着くためには、いつ家を出るべきかを正確に教えてくれるようなオープンソースプログラムを創り出すためのクラウドソースの「Netflix Prize」があったらどうだろう。もちろんGoogle Mapが今日提供できているものよりも優れているものを仮定している。もしこの全てのデータが広くデータサイエンティストたちに利用可能であったなら、データサイエンスを援用して、1日のある時刻に車線をいくつ開けておくべきかを決定することができたり、交通需要に応じて通行料を動的に変化させたり、どのようにモニターを行い交通信号を制御すれば良いか、などを決めたりすることができる。この領域の機械学習は、交通フローを大幅に改善し、より効率的な輸送環境と体験を生み出すことができる。

精密農業

2050年までに 、地球人口は90億人になる。今日に比べて35パーセントの増加であり、別の言い方をすれば、養うための口が20億増えるということである。現在の私たちの農業活動は、その食糧需要に追いついて行くことが可能だろうか?この地球に大きな被害を与えることなしに?環境保護の観点から見るときには、農業は最も競合する活動の1つとなる。作物は水を使用し、農薬を必要とし、私たちの貴重な水に対して窒素や他の廃棄物を送り出す。農業に対して、しっかりしたデータ駆動型アプローチをとるべきときが来たのだ。

気象パターンから土壌の栄養レベルまで、また昆虫の生態データや植物の成長記録さえも。農業関連データは、どの作物を植えるべきかの決定だけではなく、いつ植えるべきか、何処に植えるべきか、どのように収穫して、果ては灌漑をどのくらい行うべきかという決定にも使うことができる。The Farmer’s Almanac(農業年鑑)と人間の勘は、何世紀にもわたって信頼できるソースだったが、いまこの重要なターニングポイントを迎えて、この先農業をより精密な科学に転換し、私たちの種を守ることができるだろうか?機械学習と革新的エンジニアリングを融合させた、クラウドソースのソリューションを実施することにより、今後の世代をサポートするための持続可能なソリューションを構築することができる。

10年前、Netflix Prizeはデータと科学を使いレコメンデーションエンジンをより良いものへと変革した。アルゴリズムに基づく知性は、私たちが画面で見る物を変えた。もしおなじコンセプトを他の業界に適用したら何が起きるのだろうか?ここに挙げた5つは始まりに過ぎない。

(日本版注:Netflix Prizeは大きな技術的成果も挙げたものの、プライバシーに関する課題も提起した。匿名レーティング情報でも他のデータソースと付き合わせることによって個人を特定できる場合があるという研究が発表されたのだ。2009年12月にはこのコンペティションに関係して、Netflixユーザーからプライバシーを巡る訴訟を受けている。なおこのときは示談で解決した。もともとNetflix Prize 2が企画されていたが、こうした動きを受けてNetflix Prize 2の企画は2010年3月にキャンセルされている:参考 Netflix Prize (Wikipedia)。クラウドソーシングでなくても、大規模データを扱う現場にはこの先も常にこうした懸念がつきまとうだろう。TechCrunchでも最近「それで良いのかGoogle(Not OK, Google)」という記事を掲載している)

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(翻訳:Sako)

Google Mapsのクラウドソースの地図エディティングツールMap Makerが閉鎖、Local Guidesへ移行

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【抄訳】
2008年以降、Google Mapsには、世界中の誰もが地図データを寄与貢献できるツールMap Makerがあった。そのツールが、閉鎖される。Googleはこのプロジェクトのフォーラムで今日(米国時間11/8)、独立のプロダクトとしてのGoogle Map Makerは2017年3月に撤退する、と発表した。しかしGoogle Mapsへのクラウドソースの寄与貢献が終わるわけではなく、それらはGoogleのLocal Guidesプログラムへ移行する、としている。

Local Guides(地域案内)は、今や古くなったMap Makerサービスの現代版、と言えなくもない。

Map MakerサービスではMap上にオンラインのツールとエディターが現れて、誰もが地図情報のアップデートを投稿できる。それをモデレーターが認めたら、地図上に反映される。その重要な目標は、僻地や低開発国など詳細な地域地図のないところで、Google Mapsに道路や事業所などの情報を盛り込むことだった。

しかしご存知のように、Map Makerのクラウドソース機能が悪用される事件も相次いだ。たとえば2015年には、AndroidのマスコットキャラクターがAppleのロゴにおしっこをかけている絵がMap Makerを使ってGoogle Mapsに載った。Googleは、そんないたずらがあるたびに、Map Makerを一時的に閉鎖せざるを得なかった

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そうやってMap Makerがコミュニティの管理で苦労している間に、GoogleはLocal Guides の開発に着手していた

この企画はYelp ElitesのGoogle版とも言われ、ボランティアがGoogle MapsやGoogleの企業リストに貢献すると、ポイントがもらえたり、イベントに招待されたり、新しい機能に一般よりも早くアクセスできたりする。

ポイントは地図への貢献だけでなく、レビューを書いたり、写真をポストしたり、いろいろな理由でもらえる。

またMap Maker独特の機能、たとえば道路をエディットする機能などは、2027年3月の閉鎖以降、Local Guidesで利用できるようになる。機能が可利用になれば、プロダクトのWebサイト: Map Maker Help ForumLocalGuidesConnect.comで告知される。

また今日以降は、Google Mapsに提出されたエディットはMap Makerのモデレーションを経由しない。それは作業を簡素化して、それらのエディットの公開を早めるためだ、とGoogleは言っている。

同じような機能がMap MakerとLocal Guidesの両方にあってもしょうがないし、Guidesの承認プロセスではいたずらを防げそうだから、今回の閉鎖と移行はよろしいけれども、問題は、Map Makerのけっこう高度なエディティング機能が、完全にGuidesでも提供されるのか、という点だ。

Googleはプロダクトの閉鎖を‘春の大掃除’でまとめてやることが多いが、今回のMap Makerの閉鎖は単独かつ静かだ。同じく昨日(米国時間11/7)は、映画サイトGoogle Showtimesが、やはり静かに閉鎖された。

【中略】

以下は、「Google Map MakerがGoogle Mapsを卒業する」と題する発表声明だ:

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))

クラウドソーシングでアニメ動画を制作するCrevo、実写映像にも対応——独自の管理ツールで差別化を図る

Crevo代表取締役の柴田憲佑氏

Crevo代表取締役の柴田憲佑氏

クラウド動画制作プラットフォームのCrevoは9月5日、実写映像制作サービスの提供を開始した。

Crevoは2014年3月にサービスを開始して以来、アニメーションに特化したクラウド動画制作プラットフォームを提供してきた。これまでに500社が利用。登録クリエイターは3000人以上にのぼる。

今後はこのプラットフォーム上で実写映像制作サービスを提供する。顧客の顔や現場の雰囲気を直接伝えることができるインタビュー動画や店舗紹介動画など、実写撮影が必要である映像制作の需要に応えるため、サービスプランの拡充、システムの改善を進める。

映像制作全般をシステムで効率化

Crevo(当時の社名はPurpleCow)の設立は2012年6月。は2014年3月に「動画制作に特化したクラウドソーシング」とうたってサービスを開始した。2015年2月には1億円の調達を実施し、サービス名にあわせるかたちで社名をCrevoに変更した。2015年8月にはクラウドでの動画制作支援システム「Crevo Basecamp」の提供を開始し、動画制作を依頼するクライアントと動画を制作するクリエイターの間で発生する作業の工数削減を促進してきた。アニメーション動画制作の効率化、工数削減にはすでに成功し、安価なパッケージプランの提供が可能となっている。

一方で、クライアントからの需要が高いと感じていた実写映像制作のパッケージ化も2015年秋頃より着手。パッケージプラン、動画制作支援システムの最適化を行い、今後はアニメーション動画、実写映像の二軸でクライアントの需要に応えていくことになる。

Crevo Basecamp上では声優オーディションも行うことができる

Crevo Basecamp上では声優オーディションも行うことができる

ディレクターの負担を激減

実写映像制作は通常、企画完成後、スタッフ集めや機材準備、撮影地の確保からキャスティングまで、すべてをディレクターが担当する。手配が完了した後、撮影を実施、映像の納品を完了する。Crevoの実写映像制作サービスでは、ディレクターが属人的に行う工程をツール上のシステムで解決し、効率化していくことを目指すという。

映像のフィードバックを画面を共有しながら行うことができる

映像のフィードバックを画面を共有しながら行うことができる

従来は試写会や対面でのコミュニケーションを通じて行うことが多かった制作中の映像へのフィードバックを、システムでオンライン化。さらに、ロケーション探しの工数、負担を減らすためにレンタルスペースを運営するYuinchuと事業提携を実施。Crevoでの実写映像制作時にはYuinchuが運営するレンタルスペースをディスカウント料金、特別な支払いサイクルで利用することができる。

「従来の実写映像制作では、スタッフィング(カメラマンなどのスタッフ集め)、ロケーション決め(撮影地の確保)、キャスティング(モデル、出演者確保)は、ディレクターが検索して確保する。もしくは知り合いを通じて見つけるなど、かなりアナログな方法で作業をしている部分が多いことが分かった。そのアナログな工程を効率化できればと思っている」(Crevo広報)

2016年秋には、ディレクターが担当することが多いストーリー構成もテンプレート化するなど、実写映像制作の工程もアニメーションと同様、効率化を図っていく予定だという。

少人数の制作チームでスケールを目指す

今後も動画制作事業を中心に事業を展開していく。だが一方で「普通の制作会社」にならないよう、動画制作支援システムの開発に力を入れてきたというCrevo。インターン、バイトを入れて25人いる従業員のうち、制作チームは半数以下。営業とエンジニアの採用は強化していく一方で、制作チームは業務効率化を進めることで、少人数体制のままでのスケールを目指していくという。

「企業から受けている映像制作案件は1年前に比べるとかなり増えているが、制作チームの人数はほとんど変わっていない。通常の映像制作会社の場合は従業員の大半が制作担当者。我々はインターネット企業としての立場を大切にして、働き方やツールでの効率化も大切にして、成長していきたいと考えている」(Crevo広報)

商品写真のクラウドソーシングサービスBYLINED

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2015年の映画「ビジネス・ウォーズ(原題:Unifinished Business)」のキャンペーン用に作られた、主演Vince Vaughnのコラージュ写真を覚えている人がいるかもしれない。これらの写真は、味気ないビジネス系のストック写真にうつっている人の頭を、Vaughnのものと上手くすげ替えて作られていた。このキャンペーンがウケたのには理由がある。それは、私たち全員が巷にあふれるストック写真の安っぽさを認識しているということだ。

誤解しないでほしいのは、ストック写真の中にも良質なものが含まれているが、そのような写真をみつけるのには労力を要する。

BYLINEDというコロンバスで誕生したスタートアップは、企業と消費者がWin-Winな関係を築きやすくなるような環境を準備し、より良い写真、もしくは少なくともオリジナルな写真を生み出そうとしているのだ。

彼らの無料アプリと写真エコシステムでは、買い手(ブランドや広告会社、出版社などがその代表格)が、ある形式の写真のリクエストを、いわばアサインメントもしくは業務委託のような形で掲載することができる。さらに買い手は、自分が「ブランドプロミスや、製品が使用されている様子を含む、製品中心の写真」に対して支払いたいと思う金額を選択することになる。

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一旦アサインメントがプラットフォーム上に掲載されると、(BYLINER’sと呼ばれる)ユーザーは、BYLINEDのモバイルアプリを通じてその通知を受け取る。その後、ユーザーは自分の写真をアプリ経由で提出し、その写真が買い手に選ばれると報酬を受け取ることができる。なお、買い手には購入した写真を無償で二次使用できる権利も与えられる。

BYLINEDは現在、各写真のリクエストに設定された金額に応じて企業から受け取る25%のサービス料を収入源としており、2017年中にはサービスのサブスクリプション化を検討している。

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BYLINEDのほかにも、現在twenty20Foap(こちらはBYLINEDと酷似している)さらにはChuteといった類似のクラウドソース写真アプリが存在する。しかしBYLINEDは、商品写真へのフォーカスや、全ての写真にメタデータを付加することで、他社との差別化を図っている。さらに、彼らのモデルはアサイメントベースの写真販売・購入に的が絞られている。Foapのように決まったマーケットプレースは存在せず、BYLINEDファウンダーのDavid Hunegnawによれば、こうすることで「BYLINEDの存在理由である、顧客エンゲージメントにプラットフォームの照準を合わせている」。

競合サービスとの類似点はあるものの、私はこの市場にはまだ競争が激化する余地があると考えている。さらに、スマートフォンに搭載されたカメラの性能が段々と向上していく中、消費者が良いカメラマンのふりをするのも段々簡単になっている。これはアマチュア・カメラマンにとっては朗報だ。

そして、このサービスで損をするのは誰かと考えると、プロのカメラマンはどうだろうか。彼らの中には、BYLINEDのようなサービスで仕事が減ってしまう人が出てこないだろうか?その可能性はゼロではないが、デジタル時代において、こういった動きはどんな芸術分野でも起きていることだ。新しいシステムに対抗する代わりに、プロのカメラマンは新たな収入源を発見し、自分たちの技術を活かしてBYLINEDのようなサービスに入り込んで、その市場を支配してしまうという可能性もある。というのも、プロが撮影時に利用する写真の構図やライティングといった技術には鍛錬を要するのだ。

私の友人でプロカメラマンのJason Poteatに、このようなサービスについてどう思うか尋ねてみたところ、彼の回答は落ち着いたものだった。

「カメラマンとしては、こういったサービスが大きな脅威になるとはいまいち思えないな。スマートフォンのカメラはちゃんと使えば良い写真がとれるけど、キャンペーン全体で使う写真や、統一感が求められる場面、あとは印刷用やビルボード向けの大判写真に対応できるほどの柔軟性は持ち合わせてないしね」

さらに彼はこう続けた。

「一方で、パッと隠し撮りされたパーソナルな写真には、どこか芸術的で”繋がり”が感じられるものがあるのも事実だね。結局何を求めているかによるんじゃないかな。全体的に言えば、コメントというより、質問のほうがたくさん思い浮かんでくるな……例えば、デジタル一眼レフでとった写真はアップロードできるの?販売された写真は脇役として使われるの?それともキャンペーン用で使われるの?BYLINEDのようなサービスについて考えると、こんな質問が頭の中に浮かんでくるよ」

さらに、スマートフォンで撮った写真が、いつかは陳腐なストック写真のような烙印を押されることになるのか、ということについても考えなければならない。”スマートフォンっぽい写真”というのが見分けられるようになり、陳腐化してしまうようなことがあるのだろうか?その答えは分からないが、もしもそんなことが起きれば、BYLINEDのような企業は大きな問題に直面することになるだろう。

BYLINEDは、LOUD Capitalや複数のエンジェル投資家を通じて25万ドルを調達したばかりで、同社ファウンダーのDavid Hunegnawは、LOUD Capitalのパートナー兼EIRでもある。また、BYLINEDと同じく、コロンバスを拠点とするプロトタイピングの大手Big Kitty Labsも同社にエクイティパートナーとして参加しており、BYLINEDアプリの開発を担当していたことを記しておきたい。

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(翻訳:Atsushi Yukutake/ Twitter