オーディオストリーミングの週間再生回数が過去最高の70億回を突破――総再生数は前年比で62.4%の伸び

先週公開されたNielsenの最新のレポートを見ると、オーディオストリーミングサービスの盛り上がり具合がよくわかる。ストリーミングサービスの普及率が大幅に上がっただけでなく、合計再生回数も過去最高を記録しているのだ。アメリカ市場を対象にした同レポートによれば、今年の3月にはオーディオストリーミングの週間再生回数が初めて70億回を突破した。

念のためだが、これはあくまで”オーディオ”ストリーミングであって、ここには音楽以外のものも含まれる。

”オーディオ”というカテゴリーには、スポークンワードやポッドキャストも含まれており、特にポッドキャストの再生回数は急激な伸びを見せた。Nieslsenは音楽とそれ以外のコンテンツの再生回数に関する詳細はレポートに明記していないものの、同社が以前発表した情報では、成人ユーザーのポッドキャストの月間消費量は過去5年間で倍増したとされている。

その一方で、SpotifyやApple Musicをはじめとする音楽ストリーミングサービスが70億再生というマイルストーンへの到達に大きく貢献していることは間違いない。

2017年3月3〜9日には、オーディオストリーミングの再生回数が過去最高値となる75億回を記録したとNieslsenは記している。再生回数が70億回を超えたのは今回が初めてだ。

さらに、2017年上半期の総再生回数も1840億回を突破しており、前年比で62.4%も増加している(2017年の1月1日から6月29日までの6か月間のデータをまとめたNielsenの中間レポート)。

ここに動画ストリーミングの数値を加えると、再生回数は前年比で36.4%増の2840億回以上になる。

どうやらこの再生回数の伸びの裏で、アルバム(デジタル、物理的なメディア両方)売上は落ち込んでいるようだ。

物理的なアルバムの売上は17%、デジタルは20%減少しており、TEA(Track Equivalent Albums、10トラックを1アルバムとしてカウントした数値)も同様に20%減った。つまり、ストリーミングでひとつひとつの楽曲を聞けるようになった今、音楽を購入して”保有”することへの需要が減ってきているのだ。

また、Nielsenのレポートではアーティストごとの数値も集計されており、調査期間中にストリーミング再生(オーディオ、動画を合わせた数値)された回数が1番多かったのはEd Sheeranの『Shape of You』だということがわかった。同楽曲のダウンロード売上数は200万枚で、ユニット数(ストリーミング回数)は453万単位だった。

Ed Sheeranの後には、Migos feat. Lil Uzi Vertの『Bad and Boujee』とFonsi & Daddy Yankee feat. Justin Bieberの『Despacito』が続いた。

さらにアルバム単位では、Kendrick Lamarの『DAMN』が1位を獲得し、ユニット数(アルバム・ETA売上、ストリーミングETAの合計)は177万枚だった。ちなみに、2位と3位はそれぞれEd Sheeranの『÷(Divide)』(ユニット数:174万枚)と、Drakeの『More Life』(ユニット数:169万枚)だった。

アーティストごとの詳細が知りたい方は、こちらのページからレポート全文をダウンロードできる。

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(翻訳:Atsushi Yukutake

SonyのPlaystation NowのストリーミングサービスにPS4のゲームが加わる

ゲームのストリーミングサービスは今や一つの業態として確立してしまったようで、今日(米国時間7/6)はSonyのPlaystation Nowが嬉しいアップデートを行った: このサービス上のPS4のゲームがNowでも初めてプレイできるようになる。そのデビューリストには最初PS4用に出た24のゲームが載っていて、PS Nowを彼と同世代のコンソールゲームの世界へ初めて連れて行ってくれるのだ。

リストにはマイナーなリリースもたくさんあり、またGod of War 3 Remasteredのようにリマスターバージョンもある。しかもこれはほんの序の口で、Sonyは今後もこのサービスへの投資を続け、最新の人気作も加えていくようだ。ゲームがストリーミングされるのはユーザーのコンソールのほかに、Windows PCでもよい。料金は月額19ドル99セントだが、最初の1か月は9ドル99セントになる。年額は99ドル99セントだ。

全体としてPS Nowのライブラリには500あまりのゲームがあり、Red Dead Redemptionなどはお買い得と言えるだろう。今後は新作がどんどん入ってくるといいなぁ、と期待してしまう。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))

Twitter、ウィンブルドンやコミコンのライブ配信に関し新たなパートナーシップを締結

Twitterは引き続きストリーミングビジネスに精力的に取り組んでおり、ここ数週間に複数の企業と新たなパートナーシップを締結した。これにより、ユーザーは7月にサンディエゴで行われるコミコンの様子や、ウィンブルドンのニュース、舞台裏の様子などもTwitter上で視聴できるようになる。

皆さんの中には、Twitter初のスポーツ中継として昨年ウィンブルドンの様子が放映され、それ以前には、同社がNFLから1000万ドルで『Thursday Night Football』の放映権を獲得したのを覚えている人がいるかもしれない。なお、ウィンブルドンの中継は大々的に宣伝されなかったため、当時は本格的なサービスというよりは、むしろTwitter上でのライブ配信のテストのように考えられていた。

しかし時は流れ、その後Twitterはさまざまなスポーツの試合やスポーツ関連の番組、ニュースコンサートをはじめとするイベントなどのライブ配信を行い、NFLやMLBNBANHL(ホッケー)、NLL(ラクロス)、大学スポーツeスポーツなど多彩なコンテンツが扱われるようになった。

同社が今回ウィンブルドンに関するパートナーシップを結んだのは、ESPNではなくAll England Clubで、大会開催中には「Wimbledon Channel」がTwitter上でライブ配信される。具体的な内容としては、その日のまとめやニュース、インタビュー、舞台裏の様子、”好プレー集”が含まれる予定だ(つまり、試合の様子が丸々配信されるわけではない)。

ウィンブルドン以外にも、Twitterは過去2、3週間で新たな契約をいくつか結んでいる。その中でもエンターテイメント系メディアのIGNとは、サンディエゴで行われるコミコン2017(comiccon.twitter.com)の様子を中継することになった。IGNは7月19〜22日に行われる同イベントの様子を最長13時間ライブ配信する予定だとTwitterは語った。

内容としては、ABC、AMC、DC、Lionsgate、Marvel、Netflix、Startz、TBZといった制作・配給会社とのインタビューのほか、IGNのホストやスペシャルゲストによるイベント前後の解説がメインになる。そのほかにも、予告編や舞台裏の様子、俳優やプロデューサーとのインタビュー、コスプレイヤーの映像などが含まれる予定だ。

TwitterとIGNの新しいパートナーシップは、これまでの両社の協力関係を発展させたもので、最近ではロサンゼルスで行われたeスポーツイベント、2017 Electronic Entertainment Expo(E3)の中継でも彼らはコラボしていた。

また、最近はカナディアン・フットボール・リーグ(CFL)、UAFAクラブカップ、女子プロアイスホッケーリーグ(NWHL)などニッチなプログラムにも手を伸ばしており、Twitterのスポーツコンテンツは今後さらに増えていくだろう。

今年の春以降は、スポーツ以外にも元FBI長官ジェームズ・コミーの議会証言(協力:Bloomberg)や、アリアナ・グランデの慈善コンサート『One Love Manchester』など注目が集まっていたイベントの中継を行った。

ライブ配信に注力することで、「今何が起きているかがわかるプラットフォーム」というTwitterの目指す姿に近づくことはできるかもしれないが、消費者が見たいと思うようなコンテンツ(残念ながらカナディアン・フットボール・リーグはここには含まれない)の獲得に関しては、ストリーミング企業や大手テック企業の壁が立ちはだかっている。

例えば、Twitterは今年に入ってからNFLとの契約をAmazonに奪われてしまった。AmazonとNFLの契約料は5000万ドルにのぼると言われており、これは去年Twitterが支払った金額の5倍だ。これを受けて、Twitterのライブ配信事業は批判を浴びることになり、専門家の中には主要なプレイヤーについていくだけの資金力がTwitterにはない(つまり、同社は放映権の獲得競争に敗れる可能性が高く、人気があまりないコンテンツしか扱えない)と言う人もいる。

しかし、TwitterはAmazonへの対抗策としてNFLと新たな契約を結び、ニュースやハイライトといった試合以外のコンテンツをライブ配信することになった。コンテンツの魅力という点では実際の試合の放映権を獲得したAmazonに劣るものの、ニュース性が評価されているTwitterと新しいコンテンツの相性は良さそうだ。結局のところ、Twitterはニュースが集まるプラットフォームであり、多くのジャーナリストが情報収集する場なのだ。

とはいっても、Twitterの最近の動きを見る限り、彼らはファンの数が限られているロングテールスポーツや規模の小さなイベントを重点的に攻めているように見える。さらに同社は5月の時点で200件のパートナーシップを結んでいると発表しており、Twitterが質より量を優先しているのではないかという憶測が強まる。

ただ、個々のパートナーシップを取るに足らないものだと無視することもできる一方で、小さな努力が積み重なれば、人々は何か面白いライブ動画が配信されていないかとTwitterをチェックするようになるかもしれない(少なくともTwitterはそう願っている)。そして、例えNFLの試合のような話題性の高いコンテンツを扱えなくとも、Twitterのライブ配信の認知度が高まれば、長期的には他の指標(登録ユーザー数、広告収益など)に良い影響を及ぼす可能性がある。

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(翻訳:Atsushi Yukutake/ Twitter

Periscope、配信者がコンテンツを収益化できるスーパーハート機能をローンチ――仮想通貨ビジネスへの参入も?

Twitter傘下のPeriscopeは新機能をローンチし、新たな収益源と人気配信者の獲得を狙っている。本日(現地時間6月21日)ローンチされた、スーパーハートと呼ばれるアプリ内購入機能を使えば、ユーザーは好きな配信者に特別なハートマークを送り、コメント欄で注目を集めることができる。さらに配信者は、集めたスーパーハートの数に応じてTwitterから毎月現金を受け取れるようになる。

スーパーハートの収益は、まずiOS・Android版どちらについても30%のアプリストア利用料と決済手数料が引かれ、残りの金額の70%が配信者へ、30%がTwitterに入るようになっている。また、この機能は世界中のiOS・Androidユーザーが利用できるが、受け取った”チップ”を現金化できるのは現在のところアメリカに住む配信者に限られており、Periscopeは今後対象エリアを広げていこうとしている。

今回発表された新機能は、恐らく中国のライブストリーミングサービスで人気のバーチャルギフトからヒントを得たのだろう。中国のYingkeやYizhiboなどでは、ファンがバラのマークや種々のステッカーをアプリ内で購入し、お気に入りの配信者に送っている様子がよく見られる。先週には、チップや換金可能なバーチャルグッズをクリエイターに送れる機能の利用をAppleが正式に許可した。しかし、Appleの決定とPeriscopeの新機能に直接的な関係はなく、同社は「私たちがやろうとしていることを(Appleが)たまたまサポートしてくれた」と語っている。

スーパーハートの買い方、送り方、換金方法

残念ながら新機能は少し複雑だ。まず、視聴画面には新しくスーパーハートのアイコンが表示されるようになっており、ユーザーはそれをタップするとスーパーハート専用のストアに移動できる。しかし、スーパーハートを購入するためには、まず枚数に応じて0.99ドルから100ドルの値段がついたバーチャル”コイン”を購入しなければならない。スーパーハートは全部で3種類準備されており、ひとつめはベーシックなハートマークにプラスサインがついたもの、ふたつめは泡で囲まれた光り輝くハートマーク、そしてもっとも高価な3つめは、中央にユーザーの顔写真がフィーチャーされており、配信者に送ると小爆発を繰り返すもの。なお、購入したスーパーハートはどの配信者に対しても送ることでき、0.99ドルだと約30個のベーシックなスーパーハートを購入できる。

多くのゲームアプリでは、普通にプレイしているだけでも無料でコインを獲得できるが、Periscopeでコインを入手するためにはお金を使う以外の方法がなく、所得の少ないユーザーは新しい機能を十分に楽しめない可能性がある。

スーパーハートを送ったユーザーは、以前からある無料のハートマークを送ったユーザーに比べて配信画面上で目立つように表示される。さらに、配信中にスーパーハートを送ったユーザーの名前はリーダーボードに掲載されるため、配信者は誰に動画内で感謝すればいいのか把握できる。他のユーザーはその様子を羨望の眼差しで見つめることになりそうだ。今のところスーパーハートの購入や送信はPeriscope上でしか行えないが、配信をTwitter上で見ている人もやりとりの様子を確認することはできる。

配信者のプロフィールには、受け取ったスーパーハートに対応するコインの枚数が”スター”として表示されるようになる。そして、175ドル分のスター(約18万5000スター)が集まると、その配信者はPeriscopeのSuper Broadcasterプログラム加入申請できるようになり、申請が受け入れられれば、月末にスターを現金化してACH送金(日本版注:アメリカの一般的な国内送金の手段)で受け取れるようになる。また、ファンからお金を受け取りたくないという配信者であれば、スーパーハートの機能をオフにすることも可能だ。

料金設定やTwitterの取り分について、PeriscopeのSara Haiderは次のように語った。

「スーパーハートは、一定の要件を満たした配信者の中で、コンテンツから収益を得たいと考えている人のために作られた機能です。私たちは、配信者が最大限の収益を得られるように、この機能の様子を観察しながら改善していこうと考えています。アプリ内購入や決済にかかる手数料を除いた金額のうち、約70%が配信者の元に渡ることになりますが、手数料や為替レート等の変動によって、実際の割合は多少変化する可能性があります」

コインを購入し、そのコインでスーパーハートを購入し、さらにそれがスターに姿を変え、その後ようやく現金化されるというプロセスをややこしく感じる人もいるかもしれない。というか、これは大変ややこしいプロセスだ。ユーザーは自分がどのくらいお金を使っているのかわかりづらいし、どのくらいの金額がお気に入りの配信者の元に届いているかもよくわからないため、ユーザーと配信者どちらにとっても新機能を利用するには多少のハードルがあるかもしれない。

しかしコアなファンからしてみれば、自分の好きな配信者のコメント欄やリーダーボードで目立つことができ、さらには配信者から直接お礼を言われるかもしれないとなれば、多少の複雑さなど問題ではないのかもしれない。

Twitterは仮想通貨ビジネスへの参入を画策中?

もしもスーパーハートが広く利用されれば、好調な2017年度第一四半期の業績でカムバックを果たしたTwitterにとっては重要な収益源となる。さらに配信者からすれば、Facebook Liveで収益をあげるには邪魔な広告を動画の途中に挟まなければならず、SnapchatやInstagramではマネタイズの手段が準備されていないため、Pericopeで動画配信を行うインセンティブが生まれる。

しかし、配信者たちはこの機能が大きな収益に繋がるとは考えていないようだ。Periscope上で有名なある配信者は「素晴らしい第一歩ではありますが、現実的に考えるとスーパーハート機能で稼げるのはお小遣い程度でしょう。つまり、これは大金を稼げるようなマネタイズ機能ではないため、配信者側もあまり期待し過ぎない方がいいと思います」と語っている。

そのため、仕事として動画配信を行いたい人は、引き続き応援機能のあるTwitchや、クリエイターの収益を中心に考えて作られたBusker、最近課金ユーザーのみを対象にした限定配信オプションが追加された月額制会員プラットフォームのPatreonなどを利用することになるだろう。視聴者のコメントを目立たせるためのSuper Chatと呼ばれる機能や広告からの収益を考えると、YouTubeも有力なオプションだと言える。

もしかしたら、Periscopeは自分たちで新たなコンテンツを追加しなければならないかもしれない。というのも、同社はユーザー数や配信者数をここ2年ほど発表しておらず、これは悪いサインである可能性が高い。

さらに、彼らはスーパーハートを使ったアダルトコンテンツの配信にも気をつけなければならない。だからこそ、Super Broadcasterプログラムは許可制で、175ドルというハードルが設定されているのだろう。元からアダルトコンテンツを配信するつもりの人の申請は通らないだろうし、急にアダルトコンテンツで稼ごうと思った人も、現金を手にする前に一定額を稼ぎ、さらには申請が許可されなければならないのだ。

今後スーパーハート機能がTwitterからも利用できるようになるかや、Periscope上のコインを他の目的で使えるようになるかに関しては、Twitterはコメントを控えている。しかし、彼らにとって初となるバーチャルグッズの導入がうまくいけば、Twitterは特別なステッカーからプロフィールを飾るバッチまで、各ユーザーのツイートがより多くの人の目につくようなものを色々と販売できるようになるだろう。

さらに、もしもTwitterが多様な意見が受け入れられるプラットフォームという信念を曲げずに、ユーザーがお金を払いたくなるようなモノを発見できれば、広告収入のためにユーザー数を増やさなくとも、コアな一部のファンから十分な収益をあげられるようになるかもしれない。

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(翻訳:Atsushi Yukutake/ Twitter

Spotifyからショーン・パーカーが去る――上場を控えて取締役会を一新

今やユーザー1億4000万人を擁する音楽ストリーミングの有力企業Spotifyは上場に向けて準備を進めているところだ。ここで取締役会に大きな変化があった。初期からの投資家でありデジタル音楽サービスのパイオニア、NapsterのファウンダーでFacebookの立ち上げにも大きな役割を果たしたショーン・パーカーがSpotifyの取締役会から離れた。もうひとりの初期からの投資家でヨーロッパを代表するエンジェル投資家のクラウス・ホメルズも取締役会を辞任した。

同時にSpotifyは業界の著名人4人を新たに取締役に任命した。Padmasree WarriorはCiscoの元CTO、CSOで現在、中国の電気自動車メーカーNIOのCEOを務めている。Thomas StaggsはDisneyの元COO、Shishir Mehrotraは元YouTube幹部、Cristina Stenbeckは投資家だ。

この4人以外の既存のSpotify取締役はDaniel Ek、Christopher Marshall、Martin Lorentzon、Pär-Jörgen Pärsson、Ted Sarandosの5人だ。

現在Spotifyの企業価値は130億ドル前後と評価されており、これまでに総額15億6000万ドルの資金を調達している。同社はTechCrunchの取材に対して、ショーン・パーカーらが取締役会を離れ、ほぼ同時に4人の新たな取締役が任命されたことを確認した。情報源によれば、パーカー、ホメルズともSpotifyに対する投資家であり、友人であることに変化はないという。

新取締役の変更は先月から噂が流れていたが、今回、ルクセンブルクにおける登記書類によって確認された(スウェーデンのサイト、Breakitが発見した)。

パーカーホメルズは共に2009年からSpotifyの取締役を務めていた。特にパーカーは単なる出資者という以上にSpotifyのビジネスの立ち上げに重要な役割を果たした。上の写真は2010年ごろ、パーカーがパートナーを務めたピーター・ティールのFounders FundがシリーズCでSpotifyの資金調達に加わったときのものだ。

Napsterが海賊版音楽サイトとして悪名を轟かせたことを考えれば皮肉ともいえるが、パーカーはSpotifyを助けてレーベルと交渉に当たり、リスナーがストリーミング再生した回数に合わせてライセンス料金を支払う交渉をまとめた(この契約によってSpotifyは音楽ストリーミングを始めることができたが、ビジネスとしては決して有利な内容ではなかった。Spotifyは現在レーベルと契約の再交渉を進めている)。

パーカーはまたヨーロッパ生まれのSpotifyをアメリカに導入する上でも重要な役割を果たした。アメリカ上陸は同社の成長にとって決定的な段階となった。こうした努力の結果、Spotifyは音楽ストリーミング・サービスにおいてユーザー数でも売上でも世界最大の企業となっている。

新取締役

新メンバーは上場IT企業となることを念頭に選ばれたようだ。Spotifyの上場は今年にも行われるという情報が流れていたが、むしろ2018年になる公算が高い。上場先はニューヨーク証券取引所となる模様だ。

Padmasree WarriorはCiscoの幹部として長く務め、テクノロジーだけでなくビジネスにも経験が深い。これはクラウドベースのテクノロジー企業であると同時にサードパーティーと複雑な権利関係をさばく必要があるSpotifyの取締役として重要な資質だろう。【略】

StaggsはDisneyのベテラン(1990年に加わった)で、2016年に同社を去る前はCOOを務めていた。報道によれば、CEOに昇格する可能性がなくなったためにDisneyを離れたのだという。Staggsはメディア界で契約をまとめた経験が豊富だ。これはSpotifyにとって今後必要性を増す分野だ。【略】

YouTubeで長年エンジニアリングと収益化のために働いてきたShishir Mehrotraについても同じことがいえる。またSpotifyは今後ビデオに注力していくという。ライバルのAppleもデジタル音楽を出発点としてビデオ・ストリーミングにビジネスを拡大した。こうした面からもMehrotraの果たす役割は重要だろう。またMehrotraはこれまでもSpotifyと密接な関係があった。2014年以来同社のスペシャル・アドバイザーとなっている。【略】

Christina Stenbeckはスウェーデンのストックホルムを拠点とする投資会社Kinnevikの会長であり、原動力だ。多くのビジネスに関与しているが、Rocket Internet出身の多くのスタートアップの主要投資家でもある。KinnevikはこれまでSpotifyに出資していないが、われわれが以前報じたとおり、Spotifyはスウェーデン発でもっとも成功したテクノロジー企業であり、スウェーデンを代表する投資家を取締役に加えることを有利とみたのだろう。Stenbeckの取締役就任は上場を控えたSpotifyとしてスウェーデンの投資家に対するプロモーションの一環でもあるだろう。

画像: BillBoardBiz

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

Netflixがマルティエンディングの子ども向け作品をローンチ――自分で物語の進行を選べるように

Netflixは本日(現地時間6月20日)より、”インタラクティブ”動画をローンチすると発表した。これは、ユーザーの選択によってストーリーが変わる、ゲームブックのような仕組みの動画のことを指している。今年に入ってから噂が立っていたこの仕組みは、まず子ども向けの番組に導入される予定だ。Netflixによれば、特に子どもはスクリーンに触れたりスワイプしたりするのに加え、お気に入りのキャラクターと一緒に”遊ぶ”のが好きだという。

大人向けの番組にも今後同じような仕組みが採用される可能性はあるが、具体的な計画についてはまだ発表されていない。

インタラクティブ動画の第一弾となる『Puss in Book: Trapped in an Epic Tale』は本日より世界中で配信され、『Buddy Thunderstruck: The Maybe Pile』も7月14日から配信が始まる予定だ。Netflixが分岐物語(branching narrative)と呼ぶインタラクティブ作品の3つ目が『Stretch Armstrong: The Breakout』で、こちらは来年中の配信が決まっている。

『Puss in Book』では選択肢を選ぶ場面が13か所あり、最終的には2種類のエンディングに帰結するようになっている。さらに作品の視聴時間は、選択肢によって18〜39分の間で変化する。

インタラクティブ動画はほとんどのスマートテレビとiOSデバイスで楽しめるとNetflixは話しているが、現在のところNetflixのウェブサイトとアンドロイドデバイス、Chromecast、Apple TVには対応していない。

視聴者となる子どもたちは、各キャラクターに関するさまざま選択肢を選ぶことで、そのキャラクターのアクションや物語を自分で形作ることができる。つまり、選択肢によって結末が変わるので、同じ作品であっても何度も楽しむことができるのだ。

Netflixはインタラクティブ動画のローンチ前に、このアイディアに対するフィードバックを得るため、親と話し合いの場を設けたという。その結果、インタラクティブ動画には従来の作品よりも子どもをひきつける効果があり、さらに子どもたちに何らかの意思決定をさせることができると、親はポジティブな印象を持っていることがわかった。

とはいっても、Netflixがインターネットベースのサービスだからこそできることだと語っているこの試みは、まだ実験段階の域を出ない。現段階でのゴールは、ユーザーがコンテンツとどのように関わり合うのかを測定し、そこから洞察を得ることだ。具体的には、どのストーリーラインが人気かや、複数のエンディングがあることでユーザーは同じ作品を何度も見るようになるのか、といったことをNetflixは観察しようとしている。

子どもの視聴者を喜ばせる仕組みとして、インタラクティブ動画というのは一定の効果があるように感じられる。そして、子どもを取り込むことができれば、Netflixは既存ユーザーである家族を留めておけるようになるばかりか、新たな家族をユーザーとして獲得できるようになるかもしれない。しかし、ゲームブックの仕組みは本やゲーム、アプリではうまくいったものの、動画に採用するとなると、制作期間が普通の作品よりも増え、技術的な問題も発生してくる。例えば、複数の分岐点がある場合、早送りや巻き戻しをどのように行えばいいのだろうか?

その一方でもっと視野を広げてみると、インタラクティブ動画というのは、既に子ども向け番組では一般化している「第四の壁を破る」というトレンドが変化したものに過ぎないと気づく。昔の子ども向け番組から『セサミストリート』、さらには『ドーラといっしょに大冒険』といった最近の作品にいたるまで、キャラクターが画面を見ている子どもに向かって語りかけたり、指示を出したりするという演出は広く用いられており、教育番組であればこれが記憶の定着率のアップにも繋がるということがわかっている。この仕組みに慣れている子どもたちであれば、Netflixのインタラクティブ作品も抵抗なく楽しめることだろう。

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(翻訳:Atsushi Yukutake/ Twitter

Appleがソニーピクチャーズの幹部2人を採用――オリジナルコンテンツの制作に本腰

NetflixとAmazonも、うかうかしていられない。『Planet of the Apps – アプリケーションの世界』でオリジナルコンテンツの分野に足を踏み入れたAppleは、本日新たなニュースを発表した。2005年からSony Pictures Televisionで共同社長を務めていたJamie ErlichtとZack Van AmburgがAppleに加わり、番組制作を率いていくことが決まったのだ。

Appleがオリジナルコンテンツに興味を持っているという噂は、今年の頭からよく耳にしていた。彼らの狙いは、オリジナルの映画やテレビ番組を制作し、有料のストリーミングサービス(現状Apple Musicでは月10ドル/980円で音楽だけ聞くことができる)で配信することだ。そうすれば登録者数が増え、ストリーミングサービスからの売上がハードウェア事業(特にiPhoneとiPad)の成長の鈍化を埋め合わせられるかもしれないのだ。

このような戦略に関する説明はなかったが、ErlichtとVan Amburgのふたりは、インターネットソフトウェア・サービス担当上級副社長Eddy Cueの部下として、テレビの分野で「心が躍るようなプラン」を実現するために業務にあたることになるとAppleは発表した。

「JamieとZackは世界的にも類を見ないほどの才能を持つテレビ界のスターで、新たなテレビの黄金期をつくる上で欠かせない存在でした」と声明の中でCueは述べた。「私たちは顧客のために心が躍るようなプランを準備していますし、ふたりがこれまでに培ってきたものをAppleで発揮してくれるのをとても楽しみにしています。Appleのこれからに是非ご期待ください」

ErlichtとVan Amburgは、ここ数年で大ヒットをおさめた作品を手掛けたことでその名が知られている。特に彼らが携わっていたオンライン向けの番組のおかげもあり、ストリーミングサービスはケーブルテレビとの戦いで優位に立ち、視聴者数と人気を伸ばしてきた。代表的な番組としては『ブレイキング・バッド』『ベター・コール・ソウル』『ザ・クラウン』『レスキュー・ミー NYの英雄たち』などがある。

「Appleのチームに参加できることを光栄に思っています」とErlichtは語った。「圧倒的なクオリティという、これまでAppleがコンシューマー向けの製品や他のサービスで形にしてきたことを、私たちはビデオでも実現したいと考えています」

「Appleは顧客を喜ばせるプロダクトの開発を何よりも大切にしています」とVan Amburgは話す。「私たちはその考え方をAppleの番組制作にも反映させていきたいと思っています。これから何が起きるか本当に楽しみです」

なお、今年Appleが制作した『Planet of the Apps – アプリケーションの世界』という『Shark Tank』(日本版注:『マネーの虎』のアメリカ版で起業家候補が投資家にプレゼンを行う番組)のような番組の評価は、リリース直後からきっぱりと分かれている

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(翻訳:Atsushi Yukutake/ Twitter

あなたの日常生活をライブストリーミングしたらCamSodaが毎月200ドルくれる、意外とメディアの未来を暗示か

あなたは、自分の乱れた部屋を何百人もの人たちに見せたい、と思っていたかな? 自分の朝食や昼食や夕食の様子をストリーミングして、快感と同時にお金も得たいと思っているかな? 何もすることがなくてスマホの画面を長時間じっと見つめているところを、どうしてもほかの人たちとシェアしたいと思ってるかい? CamSodaが、そんなあなたと契約したいって。

CamSodaは、男や女やいろんな人が服を脱ぐところを実況ストリーミングするサービスだが、今ではユニークなライフストリーミングもやっている。あなたの日常をみんなに見せて、月に200ドルと、無料の“カスタムメイドの”Webカメラをもらえる。そのサービスLifeStreamは、ほとんどがNSFWだから、今クリックしない方がよい。

これを、パブリシティで海千山千の企業が放った巧妙なパブリシティだ、と思ってもよいが、実はLifeStreamは、ライブストリーミングの強力なユースケースのひとつだ。 受け入れのプロセスはかなり厳しいが、選ばれた人には自分の家に置く数台のカメラが配布され、毎月200ドルの報酬をもらえる。インターネットの通信料金は、CamSodaが負担する。言い換えると、自分の生活は人が見てもおもしろいはず、と確信できる人に、誰かがお金を払ってくれるのだ。

CamSodaの注意深い説明の仕方によると、彼らが求めているのは、ありのままのライブストリーミングで、それはたまたまセクシャルであったり、なかったりする…そして結果的に同社のサービスは、FacebookやInstagram、SnapChatなどとガチで競合する。Facebookなどの名を挙げるのも、パブリシティの一環だろう。Facebookなどにもときどき、画質の悪い、見るに耐えないライブビデオが登場し、ときにはそれがニュースねたにもなるが、CamSodaはそれをあえて商用化して、ライブストリーミングというものを、セックスに依存せずにおもしろいものにしようとしている。

たしかに、セックス以外にもおもしろいライブストリーミングはある。パロアルトでシェアハウスしているプログラマーたちが、La Croix炭酸水の代金を稼ぐために、自分たちの男ばっかりのパーティーをライブストリーミングしている。あるバンドは、練習場兼彼らの住居である家を、ライブストリーミングしている。アンディ・ウォーホルの有名な言葉を借りれば、“未来には誰もが有名人になれる、飽きられるまでは”、だね。

このライブストリーミングに、VRを加える計画もある。CamSodaのプレスリリースは、こう言っている:

CamSodaは今、完全に没入的な体験を提供するために仮想現実(VR)カメラをテストしている。これによって、もっと親密な体験を共有できるようになり、視聴者自身が実際にその部屋にいるような感覚になる。

 

ここで強力な武器になるのは、(またまた)ポルノだろう。VRは良いアイデアだ。

でもインターネット上では今後ますます、ユーザーが作ったコンテンツによる収益化が難しくなるだろう。TwitterやFacebookは今のところ安全地帯にいるが、未来のネットワークはますます細分化されたオーディエンスにブロードキャストせざるを得なくなり、ギャラを払わなければならないタレントや有名人でビューを稼ぐ安易なやり方は、ますます空振りに近づくだろう。そうやってユーザー生成コンテンツ(user-generated content, UGC)が破綻したら、生き残るのはどんな企業だろうか。

結局これは、人がセックスしているところを見るサービスに帰結するのかもしれない。でもメディアの社会的構造が大きく変わろうとしている今および今後、あなたや、あなたの乱雑なベッド、あなたのだらしないゴールデンレトリーバーのビデオが、ライブストリーミングの人気を盛り上げ、ハリウッドを斜陽に追い込むかもしれない。それは、実際にありえることだ。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))

Spotify、2016年度のユーザー1億4000万、売上50%アップ――レーベルとの交渉力もアップ

Spotifyのビジネスは順調だ。昨年は売上を50%もアップさせている。同社のミュージック・ストリーミングは総額で33億ドルを稼ぎ出した。これは木曜日にRecodeが報じた決算書類〔PDF〕で確認された。Spotifyのユーザー数も有料、無料合計して昨年の1億2600万人から1億4000万人に成長している。

しかし良いニュースの陰には悪いニュース、というよりむしろSpotifyは今後も成長を続ける必要があることを示すニュースもあった。同社は今後数年の間に少なくとも20億ドルをレコード・レーベルに支払う必要がある。この金額はユーザーが実際に音楽を聞いたときに支払われる曲単位のライセンス料とは別個で、レーベルが今後もSpotifyに協力していくとことを保証するものだ。

売上が大きい割合にSpotifyが確保した利益が比較的少ないのは主としてこの巨額の支払いがあるためだ。レーベルを始めとする著作権者の協力を確保するために、売上の大部分は用いられている。われわれのJosh Constine記者が指摘したとおり、Spotifyは最近著作権者に対する交渉力を強めつつある。しかし急に利益率をアップさせるようなものではない。

Spotifyが5000万の有料ユーザー(これは3月の数字で、その後アップデートされていない)を確保したことはたしかにレーベルに対する立場を強化したはずだ。しかし今日明日にも力関係に劇的な変化が起こると期待すべきではないだろう。

e画像: Thomas Trutschel/Photothek/Getty Images

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

テイラー・スウィフトとSpotifyが復縁――全楽曲が主要サービスで聞けるように

2014年の別れからしばらくが経ち、テイラー・スウィフトとSpotifyが再び手を結ぼうとしている。アルバム『1989』の販売枚数が1000万枚を突破し、個々の楽曲の販売数も合計1億曲に達したことを記念し、テイラー・スウィフトは、6月8日の深夜よりこれまでに発表された全音源が全ての音楽配信サービスで聞けるようになるとTwitter上で発表した

この発表以前にも、Apple Musicではテイラー・スウィフトの楽曲が配信されていたが、今回の決定によりSpotifyやAmazon Music Unlimited、Amazon Prime Music、Tidal、Pandora Premiumなどでも彼女の曲を聞けるようになる。業界筋によれば、Spotifyでは広告付きの無料プランと有料プランの両方が配信対象となる。

音楽配信サービスに抵抗しているアーティストの中でも特に名の通った彼女が方針を変更したことから、これまで制作者に十分な対価を支払っていないと批判されてきた音楽配信サービスに対するアーティストの見方が変わってきたのかもしれない。最近では、SpotifyとApple Musicの有料登録者数がそれぞれ5000万人と2700万人を超えたこともあり、アーティストの音楽配信サービスからの収益が増加し、物理的なメディアの売上の穴を埋め始めている。

テイラー・スウィフトは、無料プランでも彼女の曲が聞けることに納得できず、Spotifyとは2014年に決別した。当時彼女はTimeに対して「芸術作品は固有の価値があるものとして扱われるべきだと思っています」と語り、Spotifyと他社との違いについては「Beats MusicやRhapsodyでは、私のアルバムを聞くためには有料プランに加入しなければいけません。そのおかげで、私のつくったものに価値があると認識できるのです」と説明した。

テイラー・スウィフトとSpotifyが復縁。

その頃Spotifyは、ユーザーの混乱を避けるために、有料プランと無料プランで聞ける楽曲に差をつけないようにしていた。そのため、テイラー・スウィフトはほぼ全ての楽曲をSpotifyから引き上げることに(今年の4月、Spotifyは複数のレーベルと新たな契約を結び、無料プランでの売れ筋アルバムの配信を有料プランから2週間遅らせる代わりに、レーベルに支払われるロイヤルティーを下げることを決めた)。

しかし、同社に近い情報筋によれば、メディア各社がこの件を一斉に取り上げた結果、Spotifyの新規ユーザー数は急増したとのこと。「テイラー・スウィフトの曲以外ならSpotifyで全部無料で聞けるの?じゃあ登録しよ」という人がたくさんいたようだ。

その後彼女は、3か月間の無料トライアル期間中はアーティストへロイヤルティーを支払わないと決めたApple Musicと対立することに。当然ながらこの仕組みの下では、Appleのマーケティングのために、アーティストが不利益を被ることになるとテイラー・スウィフトは考えたのだ。最終的にAppleが折れ、トライアル期間中もアーティストにお金が支払われるようになった。また、Apple Musicは広告付きの無料プランを提供していなかったので、テイラー・スウィフトの楽曲を配信しているというのが彼らにとっての売りになった。

しかし最近アーティスト側も、基本的に音楽配信というのは、コンサートやグッズといった主要な収益源のための販促手段なのだということに気づき始めた。Spotifyで楽曲が配信されていれば、テイラー・スウィフトの曲をラジオでしか聞いたことがなかったという人が、コンサートチケットやTシャツにお金をかける熱心なファンへと変わっていく可能性がある。さらに音楽配信サービスの現在の成長率を考えると、ロイヤルティーの金額はこれから段々と全盛期のCDの売上に近づいていくだろう。

いずれにせよ、音楽配信サービスはなくならない。アーティストはこの仕組みを利用しなければ、ファン(既存・見込み共に)を失うだけだ。

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(翻訳:Atsushi Yukutake/ Twitter

アーティスト向け収益管理プラットフォームのStem――運営元が800万ドルを調達

音楽配信サービスが一般に広がり、SpotifyやYouTube、Apple Musicなど、楽曲の流通チャンネルも増えてきたが、アーティストへの支払いプロセスにはまだ問題が残っている。

同じ曲に複数人のアーティストが関わっていると状況はさらに複雑化し、それぞれのプラットフォームでの収益から、誰にいくら支払うべきなのかというのがわかりづらくなってしまう。さらにアーティストは収入が予測しづらいという問題を抱えており、Milana RabkinをはじめとするStemの共同ファウンダーはそこに商機を見出した。そして同社は、アーティスト向け収益管理プラットフォームの更なる改善を目指し、この度Evolution MediaとAspect Venturesが中心となったラウンドで800万ドルを調達した。今回のラウンドには、他にも複数の戦略的投資家と既存株主のUpfront Venturesが参加していた。

Stemでは、各音楽配信サービスからの収益がエスクロー口座のようなものに一旦集められるようになっている。その後、事前に決められた割合に応じて、それぞれのアーティストに収益が分配される。Rabkinによれば、ある楽曲の制作に関わった全てのアーティストや共同制作者は、予めそれぞれが受け取る収益の割合に合意しなければならない。その後楽曲がアップロードされ、代表となるアーティストがそれぞれの分け前をプラットフォーム上で設定すると、従来のプロセスよりもかなり速く支払いが行われる。作品の公開後、だいたい30〜60日程度で収益データを確認できるようになるとRabkinは話す。

「これまでに誕生したフィンテック関連のツールは、小規模事業者のビジネスを支えるようなものばかりでした」とRabkinは語る。「アーティストやクリエイターも彼らと何ら変わりないはずなのですが、クリエイティブな人たちのニーズに合ったツールはこれまで存在しませんでした。IntuitはMintで小規模事業者の手助けをしていますが、収入が不安定で収益源の追跡が難しいアーティストの状況は彼らとは違うのです。Mintのアカウントに銀行口座を紐付けるだけであれば簡単なことですが、iTunesやYouTube、Spotifyといったサービスとの連携となると話は別です」

Stemが取り組もうとしている別の問題が、発表したコンテンツから収益をあげられない可能性のある共同制作者への支払いの徹底だ。業界経験の少ない人たちをはじめに、アーティストの中には純粋に販促やマーケティングの目的でコンテンツを公開する人たちもいるのだ。彼らがツアー資金を貯めるので手一杯にならなくてもいいように、Stemは新人アーティストも最初から収益を得られるような仕組みを構築しようとしているのだとRabkinは言う。

それぞれのプラットフォームからStemが収集するデータ自体に価値を見出す人もいるかもしれない。アーティストであれば、当該データからファンの情報を調べ、ターゲットの好みにあった楽曲制作に取り組むことができる。ツアーの計画や他のマーケティング施策に役立つ情報が得られる可能性もある。しかし、ここに収益関連の情報が加わることで、これまでよりもハッキリとファンのエンゲージメント度合いを掴めるようになるだろう。

「サプライチェーンと深く関係しているロイヤルティーの問題は、音楽業界の中でもなかなか解決の目処が立っていませんでした」とRabkinは話す。「しかし、新たなフレームワークや関係データベース内のデータを正規化するための素晴らしいツールが最近誕生しました。そのおかげで、昔は不可能だった方法で支払いに関する情報を簡単に追跡できるようになったのです」

また、Stemはアーティストへの支払いを管理するためにデータやお金を一か所に集めているだけなので、音楽配信サービスとは競合しないと彼女は言う。今のところは同社がこの収集プロセスを担当しているが、今回調達した資金を使って、Stemは既存のツールを音楽配信サービスの運営企業が使えるような形に変えていこうとしている。

そうは言っても、この業界でも今後競争の激化が予想されている。Kobaltも先月、7億7500万ドルの評価額で7500万ドルを調達したばかりだ。さらに、iTunesやSpotifyといったサービスが将来的にアーティスト向けのツールを簡略化することで、Stemのようなサービスがなくても各アーティストにきちんと支払いが行われるようになるかもしれない。しかし、シームレスなツールを構築することで、Frank OceanやChildish Gambino、DJ Jazzy Jeff、Anna Wise、Chromatics、Poolsideなど、さまざまなアーティストを顧客に迎えられることをRabkinは祈っている。

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(翻訳:Atsushi Yukutake/ Twitter

AirPlay 2はHomeKitでマルチルームオーディオストリーミングをサポート、Google Cast+Google Homeと競争

AppleのAirPlay 2は’2’のない最初のワイヤレスオーディオストリーミングプロトコルの進化形で、複数の部屋への同時(同期)ストリーミングがサポートされ、AppleのスマートホームコントロールプラットホームHomeKit対応になり、サードパーティのアプリも作れるようになった。また、だれかがそのWi-Fiに飛び込んできて、パーティーなどのプレイリストにライブで貢献/闖入することができる。

AirPlay 2はAPIが公開され、誰もがアプリを作ってストリーミングを楽しく利用できる。もちろんそのアプリも、複数の部屋(‘マルチルーム’)へのスピーカーへブロードキャストができる。スピーカーに関してはパートナーのメーカーの長いリストをAppleは公開しているから、ほとんど必ず気に入ったものを選べるだろう。Apple TVの第四世代ハードウェアにも対応するから、ホームシアターへの統合も可能だ。

マルチルームのオーディオといえば、Sonosの独壇場だったが、独自のソフトウェアやアプリを必要とする。しかしこっちはiOSのシステムレベルのサポートだから、YouTubeやポッドキャストなどもソースにできる。GoogleのGoogle CastもAndroidのシステムレベルのサポートありだが、それはGoogle Homeの主要機能の一つだから、Siriのスピーカーの発表の前に対抗的な発表があるかもしれない。要注視だ。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))

Beatie WolfeがニューアルバムRaw Spaceのプロモで拡張現実を利用、あのベル研がテクノロジーで支援

シンガーソングライターのBeatie Wolfeは、テクノロジーを利用して、昔の音楽が持っていた不思議な力や身体性を取り戻そうとしている。

昨年はWolfeと彼女のNFCジャケットについて話をしたが、それはスマートフォンとジャケットをNFCで結んで、彼女のシングルを宣伝するWebサイトを開く、というものだ。

ニューアルバムのRaw Spaceでは、WolfeはNokia Bell Labs(昔のベル研を今はNokiaが所有)やDesign IOとパートナーして、5月5日から360度の映像無響室からストリーミングし、音はRaw Spaceのビニールバージョン(LPレコード)から流す。

そのビデオにはDesign IOが作った拡張現実のアニメーションが含まれ、曲の感情や考えを表す。一部のアニメーションはリアルタイムで作られるので、毎回内容が違う。

“こんなことを考えていた: 今のストリーミング全盛の世界でアンチ・ストリーミングを表現しようとしたら、どうなるだろうか?”、とWolfeは語る。“ストリーミング体験には、形や重さがあって実際に触(さわ)れるものや、強力なアートがない。それらを今の世代に生き返させるためには、どうすべきか?”。

彼女のこの企画は、ベル研で50年の歴史を持つExperiments in Arts and Technology事業の一環でもある。過去にはJohn CageやRobert Rauschenbergなども参加したコラボレーション事業だ。ベル研の社長でNokiaのCTO Marcus Weldonによると、その事業は昔ほど活気がないけど、Wolfeなどとのコラボレーションで新たに活を入れたい、という。

“今年は50周年記念じゃないか、そろそろやり方を再検討すべきだね”、と彼は語る。

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デスクトップ版YouTubeのデザインが一新――見た目以上に大きな変更が

今週の月曜日にYouTubeは設立12周年を迎え、これを記念し5月2日にはデスクトップ版YouTubeのデザインが一新された。Googleが提唱するデザインフレームワーク「Material Design」が反映された新しいインターフェースは、さらにすっきりとしたシンプルなデザイン、そしてデバイスを超えた統一感を意識してつくられている。ダークモードの導入や検索機能・チャンネルページの一部変更、フルスクリーンを利用せずに動画を大きく表示できるシアターモードのアップデートなど、機能面でもいくつか変更が加えられた。

しかし中身をよく見てみると、今回のアップデートはYouTubeにとってこれまでで1番大きな変化なのかもしれないと気づく。

同サイトは、数年前に行われたディベロッパー向けのGoogle I/Oカンファレンスで発表された、オープンソースJavaScriptライブラリーのPolymerをベースに再構築されているのだ。彼らはPolymerを採用することで、ウェブコンポーネントを再利用することができるようになった。

Polymer上にYouTubeを作り直すというプロジェクトは1年ほど前にはじまった。ユーザーはその変化にあまり気付かないかもしれないが、これこそがデザイン変更のもっとも重要なポイントだ。

「いったんPolymerで何かを構築すれば、そのコンポーネントをすぐに再利用できるようになります」とYouTubeでプロダクトマネジメント担当VPを務めるManuel Bronsteinは、Polymerについて説明する。「Polymerは特定の機能に関するテクノロジーというよりは、むしろリリースまでの速度を上げる仕組みようなものです。Polymerを利用することでもっといろんな可能性を模索できるので、必然的に私たちが出来ることの幅も広がってきます」と彼は話す。

例えば新たに導入されたダークモードに関して言えば、Polymerを使うことで開発プロセスを簡素化することができた。

このテーマは先月の時点で発見されていたが、当時ユーザーはダークモードを有効化するためにChromeの設定を一部変更しなければならなかった。

しかしデザイン変更により、今ではYouTube上のスイッチをクリックするだけでダークモードのON/OFFを切り替えることができる。既存の白い背景を黒に変更することで、暗い場所や夜間でも動画を見やすくするというのがダークテーマの狙いだ。さらに画面のまぶしさが抑えられることで、目にも優しく、ユーザーは動画の本来の色彩を感じることができる。

まだパソコン以外のデバイス向けのアプリにダークテーマが展開されるかどうかは発表されていないが、YouTubeはまずユーザーに広く受け入れられるかどうかを確認すると話している(とは言っても、モバイル版にもダークテーマが導入されるのが当然のように感じられる。というのも、結局のところTwitterにある機能であれば、YouTubeにも搭載されるはずだからだ)。

写真上: 旧サイト

写真上:新サイト

しかし、初めて新しいサイトを訪れたときに最初に気がつくのは、Material Designの影響が見受けられる箇所だ。左側に配置されたナビゲーションバーは、スクリーンの左上にあるハンバーガーメニューをクリックすると隠すことができ、現状のモバイルアプリと同じような見た目になる。

ナビゲーションバーのトップに表示されているセクションは、ホーム、急上昇、登録チャンネルの3つで、その次にライブラリ(保存・購入した動画、再生リストなど)、個別の登録チャンネルが続く。

また、ホームページをスクロールしていくと、無限スクロールが採用されていることに気がつく。新サイトでは、下に行けば行くほど登録チャンネルの動画や、ユーザーの視聴傾向をもとにYouTubeがオススメする動画が表示されるようになっているのだ。

チャンネルページに飛ぶと、こちらも少し雰囲気が変わっている。

写真上:旧チャンネルページ

写真上:新チャンネルページ

新しいチャンネルページでは、バナーがブラウザの幅いっぱいに表示されるようになっており、ヒーローメディア(チャンネルについて紹介している動画や最新の動画など)も以前に比べて大きくなっている。

チャンネルページのナビゲーション(ホーム、再生リスト、チャンネル、フリートーク、概要など)も前より大きくなり、さらにシンプルになった。チャンネルセクションはサイドバーからタブ下に移動されているほか、以前よりすっきりしたサイト上では赤い「チャンネル登録」ボタン(こちらも前より大きくなった)もかなり目立つようになっている。

さらに実際に動画を見てみると「シアターモード」が以前より少し大きくなり、背景が黒くなったことに気がつく。

検索結果のリスト内でもチャンネル登録ボタンが目立つようになっており、新デザインでは検索内容とチャンネルがマッチしていると同ボタンがトップに表示される。またその影響で、検索結果内でチャンネルと動画を見分けやすくなった。

すぐには気づかないかもしれないが、新しい機能を試しているうちにサイトのスピードも上がったように感じる。もちろんスピードには回線速度や使っているデバイスなど、さまざまな要因が関係しているが、もしも早くなったと感じる人がいたらそれは気のせいではない可能性が高い。

Polymerへの移行により、YouTubeのチームはレイテンシーの改善に注力できるようになったのだ。

「レイテンシーには常に改善の余地があります」とBronsteinは話す。「どうすればユーザーにメディアを届けるスピードを上げられるか、ということを私たちは常に考えています。ユーザーが見たいと思うコンテンツを届けるのにかかる時間は、短ければ短いほどいいですからね」

現時点で新サイトを利用するためには、youtube.com/newから設定を有効化しなければいけない。そしてアカウントメニューの「以前のYouTubeに戻す」を選択すれば、旧デザインに戻すこともできる。

YouTubeは新デザインがまだ完全には出来上がっていないと話しており、新しいサイトを試せる人の数には上限が設定される予定だ。

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(翻訳:Atsushi Yukutake/ Twitter

十代の70%以上がストリーミングで映像・音楽を楽しむ時代――米Awesomenessが新ブランドをローンチ

YouTube好きの若者をターゲットにしたコンテンツを制作している、デジタルメディア企業のAwesomenessがニュース事業をスタートさせる。現地時間5月1日にニューヨークで行われたNewFrontsというイベントで、同社は新しいプロジェクトAwesomeness Newsを発表した。このブランドは、いわゆるジェネレーションZ(日本版注:1990年代半ばから2000年代前半に生まれ、ソーシャルメディアをはじめとするネットサービスに慣れ親しんだ世代。生年に関しては諸説あり)のオーディエンスをターゲットに、政治や社会正義、環境などをテーマにしたニュースを配信する予定だ。

テレビよりもオンライン動画を見て過ごす時間の方が長い若年層向けのコンテンツ制作にいち早く乗り出したAwesomenessTVは、2013年にDreamWorksに3300億ドルで買収され、DWは未だに同社の株式の51%を握っている。Verizon(TechCrunchの親会社であるAOLの親会社)も1年前にAwesomenessTVの株式の24.5%を取得し、Hearstが残りの24.5%にあたる株式を保有している。

DreamWorksによるAwesomenessTVの買収は、従来のメディア企業がモバイルやストリーミング、ネット配信を中心としたデジタル新時代に舵を切りはじめたことを示す、最初の例のひとつとして知られている。

ジェネレーションZの視聴傾向に関するAwesomenessの調査(こちらも5/1に発表された)では、1996年から2011年に生まれた世代と定義づけられたジェネレーションZがアメリカの人口の25%を占めており、サイズではベイビーブーマー、ジェネレーションX、ミレニアル世代の全てを上回るとされている。さらに彼らは、オンライン配信されているストリーミング動画をモバイル端末で見ながら育ち、ほぼ常にインターネットが使える環境にいる。

またティーンエイジャーの71%が、主にストリーミングサービス経由でエンターテイメントコンテンツを消費しており、使われているデバイスはスマートフォン(34%)、パソコン(26%)、テレビ(24%)、タブレット(10%)、その他のデバイス(6%)の順に多い。

ジェネレーションZはソーシャルサイトへの参加率も高く、Snapchat(79%)、Instagram(73%)、YouTube(68%)が主なサービスとして利用されている。

Awesomenessによれば、新ブランドはジェネレーションZの社会的な関心に沿ったコンテンツを配信していくという。各世代が社会的な変化を体験している中、ジェネレーションZの特徴は、プラットフォームを上手く使って自分たちの声を伝え、変化を起こす力を持っていることだとAwesomenessは話す。この発言から、Awesomeness Newsは従来の報道メディアというよりも、社会的な活動にフォーカスしたネットワークになろうとしている様子がうかがえる。

新ブランドの番組は全てのAwesomenessTVプラットフォームで視聴できるが、ローンチ日や番組の内容に関する詳細は明かされなかった。

NewFrontsでは新ブランドの他にもいくつか新たな情報が発表された。中でも注目すべきなのが、Awesomeness FilmsのNetflixオリジナル映画『You Get me』。6月16日から公開が予定されているこの映画は、高校生の三角関係が描かれた作品だ。

さらにAwesomenessは、ファッションブランドHollisterとのオリジナルYouTubeシリーズでのコラボレーションや、Huluで配信されている『Freakish』やYouTube Redの『Foursome』、Verizon go90の『Guidance』『t@gged』、AwesomenessTVの『The Commute』など複数の番組の新シリーズに関する発表を行った。

また同社は、子ども向けのブランドDreamWorks TVと、ミレニアル世代の母親をターゲットにしたAwestruckに関するアップデートについても話していた。DreamWroks TVはYouTube上で既に300万人近い登録者数を獲得し、総視聴数は17億回を記録している。前年と比較すると、登録者数は50万人以上、視聴時間(分)は倍に伸びたほか、ネイティブコンテンツの数は合計2500エピソード以上に増加した。

一方、Awestruckの視聴者数は前年比で5倍、月間視聴数は300%増えたとAwesomenessは語った。

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(翻訳:Atsushi Yukutake/ Twitter

Netflixが外債で10億ドルを調達、同社の今年度のコンテンツ予算の総額は60億ドルだ

Netflixは“非米国人”からの優先債として10億ドル(10億ユーロ)あまりを調達する、と月曜日(米国時間4/24)に同社が発表した。 この債券の売上は同社の一般資本支出として使われるが、同時にNetflixの戦略の執行と関連したコンテンツの取得や投資、諸契約等の資金にもなる。

この調達は予想されていた。Netflixは今月初めの同社第一四半期の投資家宛書簡で、借入金による資金調達を増やす、と述べていた。このストリーミング企業は過去にも定常的に優先債の販売による資金調達を行っている。前の10月には8億ドル、2015年2月には15億ドル、というように。

オリジナルコンテンツの製作や取得は高価につく。Netflixは、それらの番組のマーケティングだけで2017年には約10億ドルを費消する、と言っている。同社の2017年のコンテンツ予算の総額は60億ドルだ。アメリカのエンタテイメント業界全体の中でも、これは相当上位の額だ。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))

マルチカメラの撮影/編集/ライブ放送/録画が容易にできるビデオプロダクションハブSlingStudioはお値段999ドル

【抄訳】
SlingboxSling TVなどの、消費者向けビデオ/テレビ製品で知られるSling Mediaが今度は、Facebook LiveやYouTubeの上でライブのビデオストリームを‘放送したい’プロシューマーやクリエイターのための999ドルのハードウェアSlingStudioを今日(米国時間4/24)発売した。

プロフェッショナルな放送編集機器は値段が高くて、NewTekのTriCasterなどは5000ドル以上もする。しかもそれらは、学習曲線が急峻である。それに対しSlingStudioは、iPadのアプリで簡単にコントロールできる。

つまりビデオの制作者は、そのアプリを使って容易に、最大4つまでのHDビデオ入力からのフィードを、録画し、編集し、モニタできる。なおカメラやスマートフォンは最大10台まで接続できるけど、ライブで編集できるのは同時に4台までだ。でも、通常はそれで十分だろう。フィードを途中で適当に切り替えれば、結果的に10台全部のエディットが可能だ。あるいは、すでに録画されていたビデオをストリームに挿入してもよい。

ハブとしてのSlingStudioと、アプリと、HDMI接続のカメラが数台あればとりあえず十分だが、スマホ(iOS、Android)をカメラとして使うときはCaptureというアプリが必要だ。同社はこのほか、屋外撮影用に149ドルの電池や、撮影ストリーム(生およびスイッチ後)をUSBハードディスクに記録するためのUSB-Cエキスパンダーも売っている。それらの編集には、Adobe Premiereなどを使用する。

HDMI出力のあるカメラをワイヤレスカメラにしてしまうアクセサリ、CameraLinkもある。これ自身が2時間容量の電池を内蔵していて、SlingStudio本体から最大300フィートの距離に置ける。

またSlingStudioはライブの‘放送’(ブロードキャスティング)だけでなく、すべての入力ストリームを、あとからの制作のために記録録画するだけ、という使い方もできる。

【中略】

なお、Facebook LiveとYouTube以外のコンテンツ共有サイトも、‘もうすぐ’サポートするそうだ。

【後略】

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))

YouTube Liveの配信者が急増中―、チップ収益の96%は未だにTwitch上で発生

YouTube Liveは、先行サービスのTwitchに驚くべき勢いで迫っているが、両者が肩を並べるまでにはまだ時間がかかりそうだ。その一方で、YouTube Liveの未来が暗いというわけでもない。Streamlabsが最近発表したレポートも、ライブ動画配信自体は持続可能なビジネスであることを示唆している。

Streamlabsが自社のストリーミング・アシスタント・アプリを通じて入手したデータをもとに、過去半年間の成長率を見てみると、YouTube LiveがTwitchを上回っていることがわかる。YouTube LiveがYouTubeという人気サービスから派生したものであることを考えると、この結果は予想の範囲内と言えるが、このような新規サービスが十分なトラクションを獲得できずに終わるということもよくある。

最近のTwitchのMAS(Monthly Active Streamers:月間アクティブ配信者数)はだいたい25万人強を記録しているものの、その伸びに関しては、今月は5000人増、翌月は1万5000人増といった具合で間欠的だ。一方YouTube Liveは、初月に2万3000人のMASを獲得し、その数はこれまでに7万5000人へと増加。これはまずまずの成長率で、その勢いが衰える様子もない。

とは言いつつも、Streamlabsのシステム(多数の配信者が利用している)が直接関わっているチップ(投げ銭)収益に関しては、Twitchが全体の96%を占めている。

予想外ながらも嬉しい発見として、長い間ライブ動画を楽しんでいる人のチップ額は、最近ライブ動画を見始めた人よりもかなり大きいということがわかった。2年前に作られたアカウントの平均チップ額が80ドル以上となっている一方、新規アカウントの平均チップ額は約23ドルにすぎなかった。アカウントの保有期間が長くなるにつれて平均チップ額が増加するという傾向からは、ユーザーが動画視聴を趣味のようにとらえ、(他の趣味のように)徐々にそこにかけるお金を増やしている様子が見て取れる。

そしてユーザーからのチップが配信者の支えとなっており、動画配信からの収入で生活する人も増えてきている。同時に、スポンサーがついていない配信者の数も増加傾向にある。

業界動向について探るため、StreamalbsのCEO Ali Moizに話を聞いた。私が特に気にしていたのが、Twitchの成長速度が落ちたことで、ライブ動画配信ビジネスの未来に関する前向きな議論が妨げられてしまう可能性があるのではということだった。

これに関しMoizは、Twitchの成長のスピードが緩まってきたことには同意しつつも、その原因はむしろ健全な競争環境にあると言う。

「今ライブ動画配信を始めようとしている人には、数年前と比較するとかなりの選択肢が用意されています。当時は、ライブ動画配信をしたければTwitch、という感じでしたからね。今ではYoutube、Facebook、Instagramを筆頭にさまざまなサービスが揃っています」と彼は話す。

しかし、選択肢が増えたからといって、配信者や視聴者の数も増えるとは限らない。ライブ動画配信業界は、これからの5年間何を頼りに成長していくのだろうか?

「個人的には、ゲーム以外のジャンルが業界の成長の大部分を支えることになると考えています。モバイル端末を使ったライブ配信もはじまったばかりですしね」とMoizは語る。「旅行やファッション、美容、コンサート、食べ物(特に韓国で人気)あたりが特に注目のジャンルです。ゲームも引き続き少しずつ成長していくとは思いますが、これまでのような2倍、3倍というスピードにはならないでしょう」

Streamlabsのレポート(1月に最初のレポートが発行されて以降、四半期ごとにリリースされている)の全文は、Medium上に掲載されている。

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(翻訳:Atsushi Yukutake/ Twitter

YouTube、モバイル・ストリーミングの要件緩和―登録人数は1万人から1000人に

ライブストリーミングにはわれがちに人々が押しかけている状態だ。さる金曜日にYouTubeはチャンネルの所有者がモバイルからライブストリーミングする能力を与えた。ただし、注意事項があった―チャンネルには登録者が1万人必要だった。

まだ登録者が1万人に届かないので悔しがっていたチャンネル運営者に朗報だ。YouTubeは制限を大幅に緩和した。いまや1000人のサブスクリプションがあればモバイルからストリーミングできるようになった。 まだ全員に開放されたわけではないが、1万人に比べれば1000人は非常に低いハードルだろう。

この変更についてYouTubeは大きな発表をしなかったし、エープリルフールの騒ぎにまぎれてあまり注目を引かなかった。しかしYouTubeのサポートページは変更を確認している。またYouTubeの広報も確認しているので単なる噂ではない。

ではなぜ一般公開ではなく、1000人という条件が残されたのか? いくつかの理由が考えられる。

  • 退屈なコンテンツはライブストリーミングの敵だ。視聴者の興味を引くようなコンテンツを編集ができないライブストリーミングで放映するのは難しい。1000人が登録しているチャンネルであれば運営者に一定のスキルがあることを推測させる。
  • 負荷テスト:ライブストリーミングは技術的に新しい課題をもたらす可能性がある。ストリーミングの数を制限することによってあらかじめ技術的問題を解決することができる。
  • すでに大勢の登録者を抱える運営者は違法なコンテンツを放映してアカウントを失う可能性が低い

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

『トムとジェリー』など懐かしのアニメが復活―、アニメ専門SVODのBoomerangがローンチ

タイム・ワーナー傘下のターナーとワーナー・ブラザーズは、共同でBoomerangと呼ばれるサービスをローンチし、競争激化が続く定額制動画配信サービス(SVOD)業界に進出した。Boomerangでは、月額5ドルで懐かしの作品から最近のものまで、さまざまなアニメシリーズを楽しむことができ、将来的にはワーナー・ブラザーズ傘下のHanna-Barberaや、Looney Tunes、MGMの作品を含む、計5000タイトル以上が視聴できるようになる。『スクービー・ドゥー』『トムとジェリー』『バッグス・バニー』『宇宙家族ジェットソン』『原始家族フリントストーン』といったクラシック作品のほか、オリジナルシリーズの配信も決まっている。

しかし、3月のBoomerang発表時に謳われていたよりも、ローンチ時点でのタイトル数は少なくなっている。

同サービスのウェブサイトに掲載されているFAQを見てみると、現在のところ配信されているアニメの数は1000エピソードに留まり、毎週新たなコンテンツが追加されると書かれている。『宇宙家族ジェットソン』や『原始家族フリントストーン』など、以前から配信が決まっている作品もまだウェブサイト上には見当たらないが、恐らく今後追加されるのだろう。

Boomerangのようにニッチなコンテンツを配信するサービスへの需要があるかどうかについては、これから市場の反応を見て判断するしかない。

Netflix、Amazon、Huluなど、現在業界のトップを走っているサービスでは、既に子ども向けのプログラムが配信されており、子どもたちはヒット映画やライセンスされたテレビ番組、各サービスのオリジナル番組を楽しんでいる。HBOも『セサミストリート』の配信をスタートし、NickelodeonはNogginと呼ばれる独自のサービスをローンチした。

Boomerangが配信している番組のほとんどはクラシック作品だが、『Warner Bros. Animation’s Dorothy and the Wizard of Oz(ワーナー・ブラザーズ版オズの魔法使い)』やHanna-Barberaの『チキチキマシン猛レース』のリメイクなど、オリジナル作品の制作も進められている。なお、『オズの魔法使い』はローンチ時点ではまだ配信されていない。

さらに、ユーザー別のレコメンド機能や家族ひとりひとりのアカウント設定、オフライン時にも番組が見られるダウンロード機能、スペイン語音声など、他のサービスでは概ね準備されているさまざまな機能も、今後Boomerangに追加される予定だ。しかし現時点のウェブサイトは、十数本の映画を含む各番組のカタログが表示され、プレイリストがいくつか準備されている程度。

Boomerangの開発には、Warner Bros. Digital Networks傘下のDaramaFeverが携わっている。

アニメ好きの人は、Boomerangというサービス名に既に馴染みがあるかもしれない。というのも、この名前はBoomerang TVというケーブルテレビのチャンネルからとったもので、同チャンネルでは似たような(全く一緒というわけではない)番組が放映されている。他局で類似サービスを利用する場合、視聴者はプロバイダーでの認証プロセスを経なければいけないが、Boomerangは別サービスとしてローンチされ、コードカッター(ケーブルテレビの契約を解除=接続をカットしたユーザー)をメインの顧客層としている。

利用料については、4.99ドルの月額プランに加え、39.99ドルの年額プランも準備されている。年額プランであれば、月々の利用料は実質約3ドルまで下がるので、番組のバラエティーに限りがあるBoomerangであっても納得がいく。もちろん価格以前に、そもそも新たな動画配信サービスが必要かどうかということは検討しなければいけない。

今のところBoomerangはアメリカ国内でのみ利用可能で、ウェブ、iOS、Androidに対応しており、今後Amazon、Roku、Chromecast、Apple TVにも対応する予定だ。

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(翻訳:Atsushi Yukutake/ Twitter