国際金融サービスのAirwallexがシリーズDで約110億円調達、評価額は約2800億円に

国境を越えたビジネスのためのフィンテック企業Aircwallexは米国時間3月23日、シリーズDラウンドで1億ドル(約110億円)を追加し、評価額を26億ドル(約2800億円)に引き上げたと発表した。このラウンドはGreenoaksがリードし、Grok Ventures、Skip CapitalおよびANZi Venturesも参加した。

共同創業者で最高経営責任者のJack Zhang(ジャック・チャン)は米TechCrunchに対して、今回の新たな資金調達は2021年の第2四半期(4月〜6月)におけるAirlallexの米国でのサービスローンチや、中東、アフリカ、東欧、ラテンアメリカなどの新たな地域への決済対象の拡大、物理的なカードを含む製品の追加に使用されると述べている。

今回の拡張によりAirlallexのシリーズDラウンドは3億ドル(約330億円)となり、これまでに調達した総額は5億ドル(約540億円)となった。Airwallexは1億6000万ドル(約170億円)を調達した後に2020年4月に初めてシリーズDを発表し、2020年9月には4000万ドル(約43億円)を追加した別のトランシェを発表した。

Airwallexは2019年3月のシリーズCを経て、ユニコーンの評価に達した。同社は2015年にメルボルンで設立され、現在はオーストラリア、中国、香港、英国、日本、米国の12のオフィスで600人以上の従業員を擁している。Airwallexは本日の発表で、500以上のポジションを募集していると述べている。

Airwallexのクロスボーダービジネス向け製品には、Visaを利用した外貨口座やマルチカレンシーデビットカード、国際送金、企業による国際決済を受け入れの管理、外国為替リスクを管理するための一式のAPIなどがある。

関連記事:国際送金決済サービスのAirwallexが約170億円を調達

カテゴリー:フィンテック
タグ:Airwallex資金調達

画像クレジット:Towfiqu Photography / Getty Images

原文へ

(文:Alex Wilhelm、翻訳:塚本直樹 / Twitter

タマゴを使わないタマゴとマヨネーズを開発する代替タンパク製品のEat Justがさらに217億円調達

タマゴを使わないタマゴとマヨネーズ、そして初めてシンガポール政府の承認を得た培養鶏肉のメーカーEat Jsut(イート・ジャスト)は、新規ラウンド2億ドル(約217億円)の資金調達を行ったと発表した。

このラウンドは、カタールの政府系ファンドQatar Investment Authorityが主導したもの。これに、Charlesbank Capital Partners、Microsoft(マイクロソフト)の共同創設者Paul G. Allen(ポール・G・アレン)氏の遺産で運用される投資会社Vulcan Capitalが参加している。

関連記事:Eat Justが世界初の認証を取得しシンガポールで培養肉の販売を開始

2011年、Hampton Creek(ハンプトン・クリーク)として創設されて以来、同社は総額6億5000万ドル(約705億円)以上を調達した。そのすべてが、代替タマゴ製品と新しい培養肉生産ラインの確立に注ぎ込まれている。

「私たちは、健康的で安全で持続可能なフードシステムを投資家のみなさんと構築できることを、大変にうれしく思っています。数々の産業の改革を進めてきたその企業提携の知識と専門性が、彼らをパートナーと決めた私たちの判断の根幹にあります」と、Eat Jsutの共同創設者にしてCEOのJosh Tetrick(ジョシュ・テトリック)氏は声明で述べている。

Eat Jsutの発展は、円満に進んできたわけではない。2017年、同社とその最高責任者はクーデター未遂事件に巻き込まれ、結果として数名の幹部の解雇を余儀なくされた。その解雇が、取締役会の全員辞職という事態を招いたが、数カ月後に新しい取締役を迎えることで事なきを得た。

この騒ぎの後、Hampton Creekはリブランドを行い、目標も刷新した。現在、同社の製品は、同系統の2つのカテゴリーに絞られている。植物由来の代替タマゴ製品、タマゴを使わないマヨネーズ、養鶏場で飼育された鶏の肉に置き換わる培養チキン製品だ。

Just Eatのチキンおよびタマゴ事業のうち、先陣を切ったのはタマゴ製品だった。そのため、2万を超える小売店と1万を超えるフードサービス店舗で同社製品が販売されていることは注目に値する。この製品は販売開始以来、アメリカの100万世帯に1億個以上のタマゴを届けている。

このタマゴ製品は、中国のファストフードチェーンDicos(ディコス)でも売られている。また、Cuisine Solutions(キュイジン・ソリューションズ)とは、代替タマゴの低温調理製品を販売する契約も結んだ。さらにPeet’s Coffee(ピーツ・コーヒー)のアメリカ全国の店舗でも購入が可能だ。Eat Justは、タマゴを使わないタマゴ製品の流通基盤をカナダにも広げたと話している。

次に来るのが GOOD Meat(グッド・ミート)製品だ。これはシンガポールで短期間だけ販売されていた。同社は、生産コストを下げ、他の種類の代替肉製品と並行して商品化を進めてゆく考えを声明に記している。

Khosla VenturesとFounders Fundからの、初めての百万ドル(数億円)単位の資金調達でスタートを切ってからここまで、Eat Jsutが歩んだ道のりは長かった。

カテゴリー:フードテック
タグ:Eat Just代替卵 / 植物由来卵培養肉資金調達シンガポール

画像クレジット:Eat Just

原文へ

(文:Jonathan Shieber、翻訳:金井哲夫)

コロナ禍で苦しむ製薬会社のDXを進める、業界特化型デジタルマーケのフラジェリンが1.5億円調達

長引くコロナ禍を背景に、医療従事者を顧客とする製薬会社は苦境に立たされている。一般市民よりもはるかに厳しい感染拡大対策を行う医療機関では、MR(医薬情報担当者)による訪問営業を受け入れないケースが増えてきているからだ。

そんななか、製薬・医療関係企業向けのデジタルマーケティングツール「Shaperon(シャペロン)」を手がけるフラジェリンが順調に歩を進めつつある。同社はALL STAR SAAS FUNDを引受先とする第三者割当増資によって1億5000万円を調達したことをTechCrunch Japanの取材で明かした。

シャペロンは製薬会社がもつ医療従事者(顧客)の情報を集約・蓄積し、営業やマーケティング活動の生産性向上とデジタル化をサポートするサービスだ。具体的な機能としては、医療従事者とのコミュニケーションのデータ化と顧客管理、OutlookとGmailの連携によるメールの送受信の集約、メール開封やファイル閲覧履歴のトラッキングなどがある。

製薬業界には、顧客のメールアドレスがMR個人の資産となっていて企業として活用できないことや、業界特有のルールやコンプライアンスの制約から、他の汎用マーケティングツールを導入しにくいなどの課題がある。フラジェリン代表の阪本怜氏はそこに目をつけ、自身も薬剤師であり、製薬メーカーのグラクソ・スミスクラインでマーケティング戦略立案やデータ解析に携わった経験を活かし、業界の課題を解決するためにシャペロンを開発した。

フラジェリンにとってコロナ禍も追い風だった。阪本氏によれば、製薬業界はこれまでにも営業・マーケティングのDXで遅れをとっていることを課題として認識していた。しかし従来のアナログなやり方でも長い間ビジネスが成り立っていたことから、その改革の優先順位は低いままだった。そんななか、新型コロナウイルスの感染拡大により、訪問営業の自粛や患者の受診控えによる薬の需要減などの逆風を受けた製薬業界は改革を迫られ、DX推進の優先順位が一気に上がったという。

フラジェリンは2019年9月にシャペロンをリリース。翌10月には上場製薬会社の持田製薬への全社導入が決まった。その他にも、大手製薬会社1社(名称非公開)への導入もすでに進んでいるという。フラジェリンは収益の数字を公表していないが、同社が公表する「シャペロンによるプロモーションメールの配信数」は大きく伸びている。

阪本氏は今後予想される製薬業界の変化について、「MRによる訪問営業が主流だった従来のやり方から、MR活動のデジタル化とインサイド(リモート)セールス部隊によるより多角的な方法へと進化すると予想している。インサイドセールスがリモートで幅広い顧客にアプローチしつつ、詳細を求める医療機関にはMRが直接訪問するなど、製薬業界の営業とマーケティングのあり方は変わっていくだろう」と話す。

フラジェリンはそれを見越し、今後インサイドセールス向けのマーケティングオートメーションツールのリリースを検討するほか、外部の顧客管理システムとのサービス連携などにより、MR活動のデジタル化を1つのツールで実現できるようにシャペロンの機能を拡充していく予定だ。

関連記事:山口大学および国立がん研究センター発スタートアップのノイルイミューン・バイオテックが23.8億円調達

カテゴリー:ソフトウェア
タグ:資金調達 日本 医療

アフリカへの送金サービスを提供するAfriexがシード資金1.3億円を調達

米国からナイジェリアに送金するのは厄介な作業だ。Western Union(ウェスタン・ユニオン)のような送金サービスを使うと、送金手数料が必要で米国のデビットカードから送ったお金がナイジェリアの銀行口座に届くまでには1~5営業日かかる。

この国境を越えた支払いの問題を、時間と手数料を減らすことで解決しようと登場したのが仮想通貨送金プラットフォームだ。つい米国時間3月22日、本誌は現在Y Combinator 2021年冬組にいてこの問題を解決しようとしているFlux(フラックス)というナイジェリアのフィンテックを取り上げた。そして本日、3月23日にこれもYC出身のスタートアップ(こちらは2020年夏組)、Afriex(アフリークス)が1200万ドル(約13億円)のシードラウンドを完了した。

同社はTope Alabi(トープ・アラビ)氏とJohn Obirije(ジョン・オビリエ)氏が2019年に設立し、母国や離れ離れのアフリカ人たちに手数料無料の即時送金サービスを提供している。ユーザーはアプリで現金を入金し、別のユーザーの銀行口座に送金したり、登録した銀行やデビットカードに出金することができる。

仮想通貨送金プラットフォームと同じく、Afriexは自社ビジネスを米ドルとの交換レートが決められているステーブルコインに基づいて事業を構築した。要するにこの会社は仮想通貨をどこかの国で買い、レートの良い別の国で売っている。よく知られているWestern UnionやWiseのように伝統的銀行システムを使っているプラットフォームとは対照的だ。

2020年YCを卒業した時点で、このスタートアップは30か国以上にわたって月間約50万ドル(約5400万円)の手数料を稼いでいた。当時Afriexはナイジェリアと米国のみでサービスを提供していた。そしてガーナ、ケニア、ウガンダで事業を開始して以来、Afriexは毎月数百万ドル(数億円)を処理しているという。ただし同社ウェブサイトでAfriexは、利用者はナイジェリア、ガーナ、ケニア、カナダおよび米国の各国間のみで送金できると書いている。

新たな投資によってナイジェリア、ラゴスとサンフランシスコに拠点を持つ同社は、チームを拡大し、他の市場に進出することが事業規模の成長を目指している。

汎アフリカのVC会社であるLaunch Africaがシードラウンドをリードした。他に、Y Combinator、SoftBank Opportunity Fund、Future Africa、Brightstone VC、Processus Capital、Uncommon Ventures、A$AP Capital、Precursor VenturesおよびIvernet Holdingsが出資した。エンジェル投資家のRussel Smith(ラッセル・スミス)氏、Mandela Schumacher-Hodge Dixon(マンデラ・シューマッハ-ホッジ・ディクソン)氏、Furqan Rydhan(フルカン・リダン)氏およびAndrea Vaccari(アンドレア・ヴァッカリ)氏も参加した。

SoftBank Opportunity FundはSoftBankグループの子会社で、米国の有色人種ファウンダーをターゲットにしている。2020年6月の設立以来、22社のスタートアップに投資しており、Afriexは米国と他の大陸のユーザーを対象とした唯一の会社のようだ。

これはアラビ氏が移民の子として両方の世界を知っているという生い立ちによる。ナイジェリアへの送金は困難であり、Consensysでのブロックチェーン開発者としての経験から、自分なら問題を解決できると気がついた。

「当時私たちは2年毎に国に帰っていて、私はその頃から何が欠けていて、何が改善できるかを書き留めていました。あるとき、海外での出費を米国の銀行口座にあるお金で支払わなくてはいけないことに気づきました」とアラビ氏はいう。「伝統的送金会社は非常に遅い上に手数料が高く、仮想通貨でもっとうまくできることを知っていました。送金は最高かつ最重要仮想通貨の利用方法です。私たちの目標は世界最大の送金会社を作ることであり、新興国から始めます」。

カテゴリー:フィンテック
タグ:Afriexアフリカナイジェリア資金調達Y Combinator

画像クレジット:Afriex

原文へ

(文:Tage Kene-Okafor、翻訳:Nob Takahashi / facebook

ビル・ゲイツ氏が勧める合成肉の開発に取り組むオランダのMeatableが約51億円調達

Bill Gates(ビル・ゲイツ)氏の近著「How to Avoid a Climate Disaster」について語った最近のインタビューの中で、Microsoft(マイクロソフト)とBreakthrough Energyの創業者で世界長者番付第3位の同氏は、温室効果ガスの排出を抑制するために世界の最富裕国の市民は同氏がいうところの合成肉が完全に使われている食事に切り替えるべきだと啓発した。

ゲイツ氏の要望は、アムステルダムからテルアビブ、ロンドン、ロサンゼルス、バークレー、シカゴに至るまであちこちで設立されたスタートアップや上場企業の動きと合致する。

実際、人工肉マーケットで最も資金潤沢な企業の2社はオランダで創業された。そこでは、4700万ドル(約51億円)の新規資金調達を発表したばかりの新興企業MeatableMosa Meatに挑んでいる。

Meatableは2023年までに欧州当局から最初のプロダクトの承認を得て2025年までに商業販売することを目指している。

同社の今後の道のりは長い。というのも、ゲイツ氏はMIT Technology Reviewとのインタビューで「細胞レベルで取り組んでいるMemphis Meatsなどもありますが、それが経済的なのかはわかりません」と認めた。

経済性の他にも、消費者が人工肉に進んで切り替えるかどうかという問題もある。サンフランシスコ拠点のJust FoodsやテルアビブのSupermeat など一部の企業はすでにいくつかのレストランで培養細胞から作られたチキンパテやナゲットを販売している。

Meatableのテクノロジー責任者Daan Luining(ダン・ルイニング)氏によると、こうしたプロダクトは細胞テクノロジーの全潜在能力を生かしていない。「ナゲットとチキンバーガーが登場しましたが、当社は全筋肉組織に取り組んでいます」と同氏は述べた。

この分野へのかなりの新規参入、そしてそうした企業が調達した資金は、企業が大規模生産時のコストと放し飼い肉代替品の質とのバランスを取りながら綱渡りできれば、いくつかの勝ち抜いた企業のためにチャンスが広がっていることを指している。

「当社のミッションは地球の人々のためのタンパク質提供でグローバルリーダーになることです。豚肉や牛肉の定期的な摂取の削減は環境や土地管理に影響を及ぼします」とルイニング氏は話した。「当社が使っているテクノロジーでは、異なる種を扱うことになります。最初に当社は気候変動やプラネタリーヘルス(地球全体の健康)に最大の影響を及ぼす動物にフォーカスします」。

目下、Meatableにとって価格が問題だ。同社は現在、1ポンド(450グラム)あたり約1万ドル(約108万円)で肉を生産しているが、競合他社と違って全肉を作っていると同社は話した。そこには、肉を構成する脂肪や結合組織が含まれる。つまり肉だ。

従業員35人と新たに調達した資金で、同社は研究・開発から食料生産企業に移行しようとしている。欧州において最大の食品バイオテクノロジー企業の1社であるDSMのような戦略的投資家がサポートするだろう。Vertex Pharmaceuticalsの会長Jeffrey Leiden(ジェフリー・リーデン)博士や、Bill and Melinda Gates Foundation(ビル&メリンダ・ゲイツ財団)の元エグゼクティブディレクターで、最高メディカル責任者を務めたIlluminaを去った後にJuno Therapeutics、GRAIL、Mindstrong Healthを創業したRick Klausner(リック・クラウスナー)博士といったエンジェル投資家もサポートするはずだ。

Meatableの直近のラウンドに参加した機関投資家にはGoogle Ventures創業者Bill Maris(ビル・マリス)氏の新ファンドSection 32、既存投資家のBlueYard CapitalAgronomicsHumboldtTaavet Hinrikus(デビッド・ヒンリクス)氏が含まれる。

Meatableの最初の商品はおそらく人工の豚肉製品になるだろうが、オランダのトップ大学の1つが立地するデルフトにある施設を拡張し、牛肉製品の登場もそれほど遅くならなさそうだ。

「(Meatableは)すばらしいチーム、そして地球が直面している世界の食料不安の問題をめぐる困難を解決することができる画期的なテクノロジーを持っています」とクラウスナー氏は述べた。「Meatableは持続可能な方法で効率的に生産された肉の主要な選択となるための正しい成分を持っています」。

カテゴリー:フードテック
タグ:Meatable資金調達培養肉オランダ

画像クレジット:Getty Images under a NICOLAS ASFOURI/AFP/Getty Images license.

原文へ

(文:Jonathan Shieber、翻訳:Nariko Mizoguchi

HRテックのブルーブレイズが3000万円調達、都築代表が語る社会人同士のOB・OG訪問サービス「CREEDO」の狙い

OB・OG訪問は、学生の就職活動時に行うものだと思われている。しかし、「育児と仕事を両立するコツ」「自身のスキルが企業のチームに合うのか」など、これまでタッチポイントがなかった現場の社員などに直接キャリア相談をし、自身の転職活動やキャリア形成に活かせることもあり、現在、社会人同士のOB・OG訪問にも注目が集まっている。さらに気軽なOB・OG訪問から、社員が知人などを自社に紹介して採用する「リファラル採用」に至るという流れも生まれているという。

社会人同士のOB・OG訪問サービスCREEDO(クリード)を展開するブルーブレイズは3月24日、J-KISS型新株式予約権方式で3000万円の資金調達を行ったと発表した。引受先はディープコアと個人投資家の本間達也氏(ラブグラフCOO)となる。ブルーブレイズは資金調達によって、CREEDOを活用した法人向け採用支援サービスに取り組む。2021年夏から同サービスを提供する見通しで、リファラル採用事業に本腰を入れる。

ブルーブレイズは同サービスに、AI技術によるユーザーと現場社員のマッチング最適化を図るシステムを組み込んでいく。さらにリファラル採用におけるコンサルティングサービスも始める予定だ。

新たな展開を迎えるブルーブレイズ。同社の都築辰弥代表に、サービス内容や起業の経緯、コロナ禍における人材業界の変化、法人向け採用支援サービスなどについて話を聞いた。

「人生の先輩」から聞くキャリア経験談

2019年8月に設立したブルーブレイズは、2020年3月にCtoCオンラインサービスとなるCREEDOをローンチした。CREEDOは、転職や起業、独立といったキャリア選択の岐路に立つ人が、すでにその経験を積んだ、いわゆる「人生の先輩」から話を聞くことができるサービスだ。また「人生の先輩」も自身のキャリア経験談を話すことで、報酬を得る。

キャリア経験談のイメージ

CREEDOでは、ユーザーがキャリア体験談を選ぶとサイト内のチャットルームから相手に連絡できる。ビデオ通話で話ができるなどオンラインで完結するため、連絡先の交換は不要だ。また、CREEDOではなりすましや二重登録などを防ぐため、ユーザー登録はFacebookによるログインのみとなっており、安心して利用できるようになっている。

サービス開始から1年で約3000人のユーザーが登録し、キャリア経験談は1200件を超えるなど急成長しており、リファラル採用を目的にCREEDOを使う企業はすでに100社を超えているとこと。社会人同士のOB・OG訪問領域では国内最大級の規模になるという。

都築氏は「企業は、より専門性が高い即戦力の人材を求めるジョブ型雇用に企業はシフトしています。新型コロナウイルスの流行による社会情勢の変化で、自身のキャリアを見つめ直す人が増え、キャリア形成の多様化が一気に進みました。ジョブ型雇用が注目され、その採用手段としてリファラル採用の重要性は高まっています」と語った。

ソニーへの入社を遅らせて世界を巡り見た景色

中央がブルーブレイズの都築辰弥代表

中央がブルーブレイズの都築辰弥代表

新卒学生の時、都築氏は中学生の頃から憧れていたソニーへの内定が決まっていた。しかし、大学を休学して入社を1年遅らせ、世界一周の旅に出たという。

「イスラエルからパレスチナ自治区に入った時、前日にまさにここで銃撃戦があったと聞きました。そんな場所に自分の足で立ったとき、この問題はソニーで働き、いくら貢献しても解決できないなと、そんなモヤっとした感覚が残ったのです」と都築氏は振り返る。

世界を見て回った後にソニーに入社するが、世界の人々もスコープに入るような仕事がしたいと思い始めたという。モヤっとした違和感から生まれたその想いが、キャリアチェンジのきっかけだった。ソニーに2年半務めたタイミングで都築氏は起業を決断した。

「世界には今もたくさんの課題がありますが、歴史を振り返ると、世界を良くしてきた人は何かしらの課題意識や志を持った人達でした。そんな志を持った人を増やすことができれば、間接的にいろいろな課題にアプローチできるのではないか」と都築氏はいう。

ブルーブレイズは「世界に百億の志を」というミッションを掲げている。多くの人が志を持てるような社会にしていきたいという想いが込められている。

都築氏は「そこでなぜCREEDOなのかといえば、自分のキャリアに納得して楽しいと思える感覚は、志が宿るための必要条件となります。日本では自分のキャリアに対して自信を持つことがまだ根づいていないため、CREEDOを通じて変えていきたいと考えています」と語った。

CREEDOにおけるユーザー増加の戦略

SNSシェア画面

スタートアップがゼロベースでCtoCサービスを始める際、初めのトラクションをいかに出していくかということが課題になる。CREEDOはサービス開始からほとんど広告を打たずに、SNSの口コミでユーザーを獲得していった。

CREEDOでは、ユーザーがキャリア経験談を登録・更新した時に「シェアしませんか」といったウインドウを表示し、ワンタップでSNSにシェアできるようにした。話し手起点で、聞き手を集めてくるようにCREEDOを設計しているのだ。

また、CREEDOでは、1人のユーザーが話し手と聞き手の両方で登録するケースが全体の4割以上を占めているとのこと。この転換率が高ければ1人が2人分のアクティブユーザーとなり、サービスはより活性化していく。

都築氏は「メルカリのようなサービスでも同じですが、1人のユーザーが買い手と売り手になる転換率は、CtoCサービスにおけるグロースの上で非常に重要なKPIになっています。我々も初めからそのKPIをトラッキングしていました」と説明した。

戦略としては、話し手から聞き手への転換は、ユーザーの興味や関心に応じてパーソナライズしたおすすめのキャリア経験談を、CREEDOのトップ画面に表示するようにした。一方、聞き手から話し手への転換は、聞き手としてユーザー登録をした後、キャリア経験談の登録画面を全ユーザーに提示するようにしている。

コロナ禍で見直されたキャリア形成の道

厚生労働省によると、2020年平均の有効求人倍率は2019年と比べて0.42ポイント減の1.18倍だった。有効求職者数は2019年から約12万人増の183万人となったが、有効求人数は約216万人で2019年から約58万人減少している。

コロナ禍で人材業界は大きく変わった。さらに中長期的には、日本の総人口は減少していくこともあり、今後も採用難の状況は変わらない。また、終身雇用制度が崩壊しつつあることや副業解禁といった要因も絡み、ジョブ型雇用は企業に定着しつつある。

ジョブ型雇用が主流になれば、個人はキャリア形成の道を自身で選んで仕事を変えていくため、終身雇用時代に比べて転職回数が増える。企業は1人当たりの採用コスト削減が必要になり、コストがかかる求人広告や転職エージェントサービスから抜け出す動きが出てくる。

ジョブ型雇用が進み、採用の流れが変わっていく中で、リファラル採用への対応は企業にとって大きな課題となっている。

法人向け採用支援サービスで中途採用に本腰

ブルーブレイズは2021年夏を目途にCREEDOを活用した新たな法人向け採用支援サービスを展開し、企業がリファラル採用をスムーズに行えるようにする。気軽なOB・OG訪問をフックにリファラル採用を推進できることで、企業の社員はCREEDO上で人材を待つだけでなく、自ら人材を獲得できるようになる。

また、ブルーブレイズはこれまで、CREEDOにおける個人同士のマッチングをメインのキャッシュポイントとして捉えていなかったが、今後は本格的な収益を法人向け採用支援サービスから獲得していきたいと考えていく。

法人向け採用支援サービスでは、リファラル採用をしたい企業がCREEDOにどういったユーザーがいるかを検索し、職種や経験を見てオファーできるスカウト機能を設ける予定だ。さらに企業がユーザーを探す手間を軽減させるために、AI技術を活用したレコメンド機能も提供していく。

今後、特に力を入れるのがこのAI技術を使ったマッチング精度の向上だ。CREEDOではユーザーがどの職種・キャリアに興味があるか、またOB訪問の実績やキャリア経験談の閲覧履歴など、さまざまなデータを蓄積することができる。データから、キャリア選択を控えるユーザーと、採用企業の現場社員とのマッチング最適化を図るシステムの開発に注力していく。

都築氏は「現場の社員は採用がメインの仕事ではないため、この負荷は最小化されるべきです。少ない時間と労力で、求める人材とマッチングし、継続的にリファラル採用ができる仕組みを作り上げていきます」と意気込む。

さらに同社は、リファラル採用のコンサルティングサービスも2021年夏から始める予定だ。リファラル採用はまだ、企業側の支援体制やインセンティブの仕組みなど、一定のスタンダードが確立されていない。企業も手探りな部分が多い中で、CREEDOにおける知見を活用してリファラル採用の定着を後押ししていく。

カテゴリー:HRテック
タグ:ブルーブレイズCREEDOリファラル採用日本資金調達

友人におすすめ商品を提案するソーシャルショッピングのChumsがYCデモデイに先んじて3.8億円を調達

米国時間3月23日の朝、Y Combinator(YC)のDemo Dayがキックオフされるが、今回のバッチに含まれるスタートアップ企業は、最近の成長を投資家たちに披露する前に、少しでもニュースにしようと急いでいる。そうした企業のリストには、RunwayMonoPangea、そしてFluxが含まれる。

そこにさらにChumsが加わった。Chumsは、ユーザーが友達に商品を提案するのに役立つソーシャルショッピングサービスだ。このスタートアップは、2つのプレシード投資で合計350万ドル(約3億8000万円)を調達した。

TechCrunchはChumsの創業者の1人であるNoah Elion(ノア・エリオン)氏に、このラウンドについて話を聞いた。同氏によると、同社は2020年12月に100万ドル(約1億1000万円)をクローズし、その後さらに150万ドル(約1億6000万円)を調達しようとしていたという。同社への関心が高かったため、Chumsは当初の目標額より100万ドル(約1億1000万円)多く、合計350万ドル(約3億8000万円)を調達することになった。

同社は、SAFE(Simple Agreement for Future Equity、将来株式取得略式契約スキーム)で資金を確保した際のバリュエーション・キャップについては明かさなかった。

150万ドル(約1億6000万円)という目標額は、同社が今後1年半の間に必要とする資本金の額に基づいて設定されたものだとエリオン氏は述べている。最終的な調達額は、Ludlow、Shrug、Contrary Capital、そしてFuel Capitalなどの企業や個人から出資された。【更新】BoxGroupがこのラウンドで2番目に大きな小切手を書いたことは注目に値する。

現在YCに参加している企業が、数週間前に製品を発表したばかりにもかかわらず、どうやってオールドスクールなシリーズAラウンドの資金を調達できたのか。その質問に答えるには、創業チームの経歴がヒントになる。例えば共同創業者のDick Fickling(ディック・フィックリング)氏は、Honeyの初期のエンジニアだった。Honeyもショッピングに特化したスタートアップだったが、巨額のM&Aエグジットに至った企業だ

Chumsのサービスは、ユーザーが購入したいと思う商品タイプをフォローしたり、友人のニーズに合う商品を互いに提案したりできるモバイルアプリだ。このアプリが市場に登場したのは3週間前で、エリオン氏は同社が資金調達を行う直前だったと説明している。TechCrunchが初期の牽引力について質問したところ、エリオン氏は、まだ多くを語るには早すぎるが、これまでのところ「勇気づけられる」レベルのエンゲージメントが得られていると語った。

このスタートアップは現在4人で、ウェブサイトでは友人のグループと表現されている。これはほぼ事実だ。エリオン氏とフィックリング氏は、前者がChumsの前身であるChums Referralを構築した後にチームを組み、その過程で友人になった。フィックリング氏は、チームの他のメンバーであるエンジニアリング担当ディレクターのLauren Williams(ローレン・ウィリアムズ)氏や製品担当のLena Gasilina(レナ・ガシリーナ)氏とは、以前から同僚で友人だったという。

同社チームは、デザイナーとフロントエンド開発者を募集しているが、それ以降の採用は予定していない。次のラウンドまでは、6人のままでいるつもりだという。なぜか?同社は6人のスタッフでプロダクト・マーケット・フィット(PMF)を達成したいからだ。そうすれば、余裕のある評価額でさらなる資金調達ができるはず、とのこと。このアイデアはわからないでもないが、2021年に資本を維持するために成長を抑えるというスタートアップの計画を聞くのは少し奇妙だった。

Chumsは、おすすめ商品からの手数料で収入を得て、その収入をユーザーと分けている。エリオン氏は、同社が小売業者との商業的なつながりを確保するために協力しているネットワークについては明かさなかったが、将来的にはChumsがより良い条件を確保するために直接取引を行うことになるだろうと述べた。

ラウンドをクローズし、チームのほとんどが揃い、アプリも市場に投入されたChumsはこれから、Google(グーグル)は過度に操作されており、Amazon(アマゾン)は探しているものがわかっている場合のみに最適だというエリオン氏の見解を証明できるかどうかにかかっている。同氏の考えでは、人々は「コンテンツの多様性」と「自発的な買い物」のためのスペースとしてショッピングモールを好んできた。Chumsはそうしたニッチを埋め、大きな利益を生み出すことができるかもしれない。

関連記事:MAU700万人を突破したインドの美容系eコマース「Purplle」がシリーズDで約49億円を調達

カテゴリー:ネットサービス
タグ:eコマース 資金調達

[原文へ]

(文:Alex Wilhelm、翻訳:Aya Nakazato)

経営者賠償責任保険を扱うCounterpartがテスラ・スペースXの初期投資家などから10.9億円調達

インシュアテックのスタートアップCounterpart(カウンターパート)は、Valor Equity Partnersが主導したラウンドで1000万ドル(約10億9000万円)の資金を調達した。それに加え、Susa VenturesとFelicis Venturesも参加した。Counterpartは、「management liability(経営者賠償責任保険)」市場に注力している。またCounterpartは、Markel Corporationの特殊保険商品部門であるMarkel Specialtyと提携して経営者賠償責任保険商品を提供する予定だ。

これまでOscar(オスカー)、Lemonade(レモネード)、Root(ルート)などのインシュアテックのスタートアップは、個人向け保険に参入してきた。Counterpartによると、3000億ドル(約32兆6000億円)規模の企業向け保険市場に取り組む新興企業はあまり見られないという。

Counterpartは、同様に中小企業向け賠償責任保険を提供している、そして6億3100万ドル(約685億4000万円)を調達したNext Insuranceだけでなく、AIGやBerkshire Hathaway(バークシャー・ハサウェイ)などのような大手保険会社とも競合している。

Counterpartは申請書の提出から補償内容の選択、拘束、クレーム管理、損害防止に至るまでのプロセスの多くをデジタル化していることから、米国の一部のホールセール・ブローカーが中小企業の保険加入に利用している。Counterpartによるとこの市場は、保険金請求のコストや深刻度が増加し、プロセスのデジタル化が進んでいないため、保険会社にとっては魅力のない市場になっているとのこと。

創業者兼CEOのTanner Hackett(タナー・ハケット)氏は、声明の中で次のように述べている。「1.2兆ドル(約130.3兆円)規模の保険業界では、デジタル革命が起こっています。当社は、我々が独自の専門性を有する重要な保険分野である経営者賠償責任に、大きなチャンスを見出しました」。

Valor Equity PartnersのパートナーでCounterpartの取締役であるJon Shulkin(ジョン・シュルキン)氏はこう述べた。「Counterpartのプラットフォームは従来の保険会社の範疇を超えており、ビジネス関係者が昨今の非常にチャレンジングな経営環境をナビゲートする際に役立つ洞察力、ツール、サービスを兼ね備えています」。

Valor Equity Partnersは、Tesla(テスラ)、SpaceX(スペースX)、Addepar、そしてGoPuffの初期投資家だった。SusaはこれまでにRobinhood(ロビンフッド)、PolicyGenius、Newfront Insuranceを支援してきた。Felicisは、Hippo(ヒッポ)、Plaid(プレイド)、Credit Karma(クレジットカルマ)に出資している。

関連記事:中小企業向けに保険を提供するHuckleberryがバークシャー・ハサウェイと提携

カテゴリー:フィンテック
タグ:保険 資金調達

[原文へ]

(文:Mike Butcher、翻訳:Aya Nakazato)

医療テックのRoは遠隔および自宅初期診療プラットフォームの拡大に544億円を調達

医療テックスタートアップRo(ロー)は、遠隔医療と自宅初期診療を提供する同社のハイブリッド型医療プラットフォームをさらに拡大するために、5億ドル(約544億円)を調達した。計画には、薬局事業も含まれている。同社は、薬の配達の最適化と患者の医療負担削減のための垂直統合戦略を追究している。今回の投資はシリーズDラウンドだ。これにより2017年の創設以来の調達額は8億7600万ドル(約870億円)を超えた。

かなりの金額に感じられるが、Roの共同創設者でCEOのZachariah Reitano(ザッカリア・レイタノ)氏が私に話したところによれば、医療業界ではほんの「はした金」だそうだ。最初に企業を立ち上げたのは、そのためでもある。

「テック企業が医療業界の土俵に上がることが、どれほどすごいことかと語る人がいます」とレイタノ氏は話す。「医療は4兆ドル(約435兆円)市場だ、大変な規模だよと言われます。しかし、そこは世界でいちばん過酷な場所なのです。とにかく大き過ぎます。私は、テクノロジーでそれを半分に分けることができると考えています」。

今回の資金調達の第1の目的は、そこにあるとレイタノ氏はいう。つまり、医療サービスとテクノロジーを垂直統合させる取り組みを加速し、その過程で実現される効率化によって患者の医療負担を軽くするという最終目標に向かうものだ。

「私にとって一番うれしいのは、そのインフラへの投資が続けられることと、さらに増資できることです」とレイタノ氏は私に言った。「私たちは今後も遠隔医療に投資を続け、流通と薬局業務に投資を続け、自宅医療に投資を続け、さらにその3つの結合に、その後は診療科目の拡大、患者の遠隔モニターに投資します。デバイスを集めて患者に配布し、受動的な医療から積極的な医療へと移行させます」。

Roのモデルは、保険者、雇用主の資金提供、ガイデッドケアプログラムを介さず、消費者に直接、初期診療を届けることに重点を置いている。目的は、垂直統合とその他の効率的なエンジニアリングの取り組みにより医療費を軽減し、実質的に一部負担額と自己負担額を同等にすることを目指す。レイタノ氏によれば、現在の米国の保険制度は、個人の負担額を巧妙に隠しているだけだという。そのため、税金で補われているにせよ、職場が手取りの給与を削って医療費に回しているにせよ、とにかく自分のポケットからどれだけ医療費が出ているのかが、わかりづらくなっている。

画像クレジット:Ro

それが、同社が独自の薬局事業を展開し、常に足がかりを広げようと力を入れている理由になっている。同社は、2021年末までに薬局を10店舗、来年末までに15店舗を米国のほぼ全土に開設し、すべて地上ルートでの患者宅への翌日配達が可能になる戦略的な地点に配置する予定だとレイタノ氏は話す。

こうした垂直方向の最適化により、Roは一般的な医薬品500種類を月5ドル(約540円)で提供できるようになった。これには心臓疾患、不安障害、うつ、糖尿病などの薬も含まれる。2021年末までには、同じ価格で1000種類の医薬品を買えるようにするとのことだ。これで、多くの保険会社が同等の薬代として請求する一部負担金と、ほぼ同額になる。

またレイタノ氏は、新型コロナのパンデミックにより、Roのモデルに都合がよい方向に医療システムの大変革が起こり、ハイブリッド医療プランが加速されたとも話している。

「パンデミックは、医療システムに有意義な影響を2つもたらしたといえます」とレイタノ氏。「1つは、私たち全員が気にかけていたまさにそのとき、パンデミックが国全体のあらゆる不公平を照らし出したことです。その影響を日々被っている人たちには、ある意味よく知られた問題でした。地理的不公平、経済的不公平、人種的不公平などです。そうした不公平を感じた人は、それを誰かに話したくなりますが、みんなが同じぐらい高い関心を持っているとは限りません。しかし、その巨大なスポットライトが医療システムに当たったのです。もう1つは、すべての人の医療がオンライン化に進み始めたことです。途中から対面の直接診療に移行するにしても、オンラインから始まるようになるでしょう」。

Roのモデルは、遠隔医療、ほぼ毎日必要となる予約管理、場合によってはそれに続く自宅での直接診療という今の医療提供のかたちを、ずっと進めてきた。これが医療を大幅に効率化したことは確かだ。同時に、高齢者や移動が困難な患者が家に居ながらにして、診療所の医師から15分間の診察が受けられる。これは動画では叶わないことだ。

左から、Roの共同創設者Rob Schutz(ロブ・シュッツ)氏、ザッカリア・レイタノ氏、Saman Rahmanian(サマン・ラーマニアン)氏

ほとんどの業界オブザーバーは、レイタノ氏の考えはほぼ正しく、パンデミックが終わっても医療はもう、初期診療から対面で行う昔ながらの非効率なモデルには戻らないだろうと考えている。新型コロナ禍がもたらした建設的な効果に、遠隔医療は、従来方式に比べて、特に遠隔モニターと継続的で積極的な健康対策を組み合わせることで、大勢の患者の大量の初期診療の需要に対処する能力が高いと証明された点がある。

現在、Roは保険会社とは協力体制にないが、レイタノ氏は、それを完全に拒んでいるわけではないと語る。ただ今ある医療保険が高額で、不確かで、希有な結果に対するリスクプールを目的としたものであり、彼の意図するように機能しないだけだという。いずれは、さまざまな形が組み合わされた医療全体に医療保険が参入できる場所ができると彼は信じている。しかしその前に、そのインセンティブ構造を、実際のコアカスタマー、つまり患者本人に再び合わせるための方策作りに正面から取り組む必要がある。

カテゴリー:ヘルステック
タグ:Ro資金調達遠隔医療オンライン薬局

画像クレジット:Ro

原文へ

(文:Darrell Etherington、翻訳:金井哲夫)

仮想オフィスプラットフォームはこんなにたくさん必要か?

元Uber(ウーバー)のマネージャーであるFlo Crivello(フロ・クリベロ)氏が創業したバーチャルオフィスプラットフォームのTeamflow(チームフロー)がシリーズAで1100万ドル(約12億円)を調達した。わずか3カ月前にシード資金390万ドル(約4億2000万円)を調達したばかりだ。今回のラウンドをリードしたのはBattery Ventures。シードラウンドはMenlo Venturesがリードした。

Teamflowの資金調達は、ライバルのGather(ギャザー)がSequioa Capitalのリードで2600万ドル(約28億3000万円)のシリーズAを発表した数日後のことだった。別のライバル会社であるBranch(ブランチ)も、HomebrewとGumroadのSahil Lavingia(サヒール・ラヴィニア)氏らの投資家からシードラウンドで150万ドル(約1億6000万円)を調達し、現在シリーズAを実施している。

関連記事:「バーチャル本社」プラットフォームのGatherがSequoiaなどから約28億円調達

いずれのスタートアップも、人々が仕事中より何かを切り替える場面でゲームライクなインターフェースを主流にしたいと思っている。ただし現実は、3社とも(他の数十社も)成功しそうにない。勝者となるべき差別化は戦略にある、とTeamflowのクリベロ氏は私に話した。

「かつて、最大の差別化要因はUX(ユーザー体験)と美的感覚だったと思います」と彼はいう。「多くの会社が採用している非常にゲーム性の強いアプローチは私たちも大ファンですが、仕事の会議をポケモンゲームの中でやりたくない、と私たちは思うのです」。

Teamflowのオフィスを案内してもらったとき、この会社はゲーミフィケーションよりも生産性に力を入れていると感じた。統合できる機能にはSlack風のチャットやファイル・画像の共有などがある。現在プラットフォーム内アプリストアを開発中で、完成すればユーザーは自分たちのチームに最適な統合モジュールをダウンロードできる、とクリベロ氏はいう。アプリストアにはゲームもある。

Teamflowのバーチャルオフィスプラットフォーム

この方針はTeamflowがイベント主催者よりも企業経営者の支持を得るのに役立った。ファウンダーは、より安定した収入源だという。現在同社はプラットフォーム上のスタートアップ内で数千のチームをホストして「数十万ドル(数千万円)の売上」を集めている。ライバルのGatherは、売上の大部分を1回限りのイベントから得ていると最近TechCrunchに話す。現在Gatherの月間売上は40万ドル(約4300万円)だとファウンダーのPhilip Wang(フィリップ・ワン)氏はいう。

ちなみにGatherのルック・アンド・フィールはTeamflowとは大きく異なり、Sims(シムズ)に近い。

Gatherのバーチャルオフィスプラットフォーム

BranchのDayton Mills(デイトン・ミルズ)氏は「ゲーミフィケーションを大きく強化」することで競争力を保っていると語った。同社はレベル、ゲーム内通貨、経験値などを導入して従業員が自分のオフィス空間をカスタマイズするよう推奨している。

「生産性は落ちていませんが、カルチャーや楽しさや人とのつながりは悪化しています」とミルズ氏は本誌に語った。「だから、仕事と遊びを考えたとき、私たちは遊びの部分の修復に目を向けます。仕事ではありません。仕事は副次効果としてついてきます」。Branchはまだ収益を上げていない

Teamflowにとって次の野望は、顧客ベースを流行に敏感なスタートアップの実験チーム以上へと拡大することだ。クリベロ氏は、Zoomが売上の約40%を大企業から得ていることを挙げ、Teamflowは「大企業対応の準備にいっそう注力している」と語った。

同社はルールを守りプライバシー標準に従うことで、医療やバイオテック企業にも進出しようとしている。これは同社が「きちんと管理された分野」と呼ぶ、他のゲーミフィケーションアプローチを望まない可能性のある領域だ。

クリベロ氏は、自社のビジョンに関して明快だ。バーチャルオフィスの引っ越しを物理的オフィス以上に難しくしたい、と彼は考える。もしTeamflowがいつかオペレーティングシステムのようになってアプリケーションを加え、質の高い基準を設定することができれば、もっと幅広い層の顧客を取り込めるかもしれない。

関連記事:リモートワーク疲れの市場を狙うバーチャルオフィススタートアップ

カテゴリー:ネットサービス
タグ:Teamflowリモートワークバーチャルオフィス資金調達

画像クレジット:Bryce Durbin

原文へ

(文:Natasha Mascarenhas、翻訳:Nob Takahashi / facebook

ディーカレットが67億円調達、民間発行デジタル通貨と企業独自のスマコン実装が可能なプラットフォーム開発目指す

ディーカレットが67億円調達、民間発行デジタル通貨と企業独自のスマコン実装が可能なプラットフォーム開発目指す

暗号資産(仮想通貨)などデジタル通貨の取引・決済を担う金融サービス事業を手がけるディーカレット(DeCurret)は3月23日、第三者割当増資による総額67億円の資金調達を実施したと発表した。引受先は、筆頭株主のインターネットイニシアティブ、KDDI、日本電信電話(NTT)、三井住友銀行、三菱UFJ銀行、ゆうちょ銀行、綜合警備保障(ALSOK)、三菱商事、SBIホールディングス、セコムの計10社。

調達した資金により、民間発行デジタル通貨の実現と企業独自のスマートコントラクトの実装を可能にする二層構造デジタル通貨プラットフォームや、ブロックチェーンを利用したあらゆるデジタル価値の交換プラットフォームの開発体制を強化し、事業加速につなげる。

ディーカレットが67億円調達、民間発行デジタル通貨と企業独自のスマコン実装が可能なプラットフォーム開発目指す

日本におけるデジタル通貨のリーディングカンパニーを目指す同社は、2020年6月よりデジタル通貨勉強会、その後継となるデジタル通貨フォーラム(現在の参加企業数55社以上)の事務局を務め、デジタル通貨実現のための取組みを実施してきた。

世界では中央銀行デジタル通貨(CBDC)や法定通貨を価値の裏付けとした暗号資産の発行など、デジタル通貨の実現に向けた動きが拡大しているという。デジタル通貨プラットフォーム開発や企業とのパートナーシップをさらに強化し、一体となってデジタル通貨の世界を実現するべく、今回の増資を実施した。

関連記事
KDDIグループがブロックチェーン活用のP2P電力取引の事業成立要因を検証開始
暗号資産・ブロックチェーン業界の最新1週間(2020.10.25~10.31)
マスターカードが暗号資産に年内対応と発表、中央銀行デジタル通貨(CBDC)で中央銀行数行とも連携
暗号資産・ブロックチェーン業界の最新1週間(2020.8.2~8.8)
ALSOKも出資のディーカレットが32億円調達、仮想通貨の決済技術開発にアクセル踏む

カテゴリー:ブロックチェーン
タグ:暗号資産 / 仮想通貨(用語)資金調達(用語)中央銀行デジタル通貨(CBDC)ディーカレット日本(国・地域)

ワンストップでの現場実装と映像エッジAIソリューションを提供するEDGEMATRIXが約10億円を調達

ワンストップでの現場実装と映像エッジAIソリューションを提供するEDGEMATRIXが約10億円を調達

ワンストップでの現場実装と課題解決「映像エッジAIソリューション」を提供するEDGEMATRIX(エッジマトリクス)は3月23日、シリーズBラウンドにおいて、第三者割当増資による約10億円を資金調達を実施したと発表した。引受先は、NTTドコモ、清水建設、SONY INNOVATION FUND (ソニー設立のCVC)、DGベンチャーズの4社。2019年8月のシリーズAにおける約9億円を加え、累計調達額は19億円となった。

2019年4月設立のEDGEMATRIXは、「映像エッジAI」のインフラ製品からプラットフォームサービスをエンドエンドに提供し、現場実装までをワンストップで提供できる体制を整えたスタートアップ企業。

調達した資金により、高精細映像などを現場(エッジ)でリアルタイムにAI処理するデバイス「Edge AI Box」新機種追加、「EDGEMATRIXサービス」新機能開発を行い製品サービスをさらに強化する。また、スマートシティやスマートビルディングにおける各種センサーとの連携開発を行うとともに、道路・鉄道などの公共施設や医療・福祉施設を含む社会インフラへのソリューション提供拡大、製品引き合いが増えているアジア市場から海外展開を加速する。

DGEMATRIXのEdge AI Boxは、街やビルを見守るIPカメラ映像などを現場でAI処理し伝送できる屋内と屋外用小型デバイス。深層学習ベースのAIなどの高速計算処理を行うNVIDIA製GPUとWiFi・LTE・5G通信モジュールを搭載し、カメラ接続などの豊富なインターフェイスを備えている。

ワンストップでの現場実装と映像エッジAIソリューションを提供するEDGEMATRIXが約10億円を調達

EDGEMATRIXサービスは、現場設置の「Edge AI Box」からエンド・ツー・エンドで映像エッジAIを統合管理するプラットフォーム。デバイスの遠隔管理、設置場所を地図表示(マップビュー)する状態管理、現場からのAI処理済映像をブラウザーに多数同時表示する「エッジビュー」などのサービス管理、AIアプリケーションの配信・管理、パートナーが開発した汎用AIアプリケーションを選択購入できる「EDGEMATRIXストア」を提供している。

ワンストップでの現場実装と映像エッジAIソリューションを提供するEDGEMATRIXが約10億円を調達

ワンストップでの現場実装と映像エッジAIソリューションを提供するEDGEMATRIXが約10億円を調達

顧客は、ストアアプリから月額課金のAIアプリを選択するだけで「映像エッジAI」を開始可能という。また、自社でAIアプリを開発する場合は、「EDGEMATRIX Platformサービス」によりプラットフォーム機能だけを利用できる。短時間で効率的な開発を行うための技術文書や画像処理用のソフトウェア開発キット「EDGEMATRIX Stream Toolkit」も提供している。

映像エッジAIソリューションでは、現地調査に始まり、顧客からの要望に応えるカメラ、周辺機器、AIアプリケーション調達や開発、設置工事、設定調整に至る「映像エッジAI」の現場実装と課題解決をワンストップで提供する。

関連記事
IoT・M2M関連のアプトポッドが8億円を調達、エムスリーと遠隔医療・ヘルスケア領域の協業も
高さ2mの65型有機ELディスプレイで等身大のAIキャラによる接客実現、Gateboxが法人向け大型召喚装置
ラズパイやArduinoより簡単なIoT開発ボード「obniz」が約2.1億円のシリーズA調達
マイクロソフトがAIをエッジで動かすハードウェアとソフトウェアの新プラットフォーム「Azure Percept」を発表
中⼩企業向け検品・検査⼯程用エッジAIをサブスクで提供するフツパーが約1億円を資金調達
旅館・ホテルなどサービス業用おもてなしシステム「OMOTE-Bako」のラトナが3.8億円調達
安価な汎⽤デバイスで高速エッジAIを実現する「Actcast」のIdeinが20億円を調達
エッジAI開発のエイシングが第一生命、未来創生ファンドから4億円を資金調達

カテゴリー:IoT
タグ:5G(用語)エッジAI(用語)エッジコンピューティング(用語)AI / 人工知能(用語)EDGEMATRIX(企業)資金調達(用語)日本(国・地域)

インドネシアの貯蓄・投資アプリのPluangがプレシリーズBで約21.8億円の資金を調達

インドネシアを拠点とするフィンテック企業のPluang(プルアン)は、Openspace Ventures(オープンスペース・ベンチャーズ)が主導するプレシリーズBラウンドで2000万ドル(約21億8000万円)を調達したことを発表した。このラウンドには、Go Ventures(ゴー・ベンチャーズ)をはじめとするリターン投資家も参加している。Pluangは、ユーザーが50セント(約54円)から拠出できる独自の貯蓄・投資商品を提供している。

Gojek(ゴジェック)の投資部門であるGo Venturesは、2019年3月に300万ドル(約3億2600万円)でクローズしたPluangのシリーズAラウンドにも参加した。PluangはGojek、Dana(ダナ)、Bukalapak(ブカラパック)などの「スーパーアプリ」との提携を通じて利用でき、現在100万人以上のユーザーがいるとされている。

同社はサードパーティの金融サービスプロバイダーと連携するのではなく、金や米国の株価指数、仮想通貨の投資口座などの金融商品を独自に作成しているため、取引顧客1人当たり2ドル(約217円)という低い顧客獲得コストを維持できているという。

左からPluangのエンジニアリング責任者のAditya Jha(アディツア・ジャー)氏、共同設立者のクラウディア・コロナス氏とRichard Chua(リチャード・チュア)氏(画像クレジット:Pluang)

Pluangが今回のラウンドで調達した資金は、国債などより多くの資産クラスをカバーする独自の金融商品の開発に使用される。

「以前は、これらの資産クラスはインドネシアの富裕層しか利用できませんでした」と、Pluangの創業者であるClaudia Kolonas(クラウディア・コロナス)氏は、声明の中で述べている。「しかし、私たちは誰もが貯蓄を増やす機会を持つべきだと考えており、新しい商品にはそれが反映されることになります」。

Pluangは、Ajaib(アジャイブ)、Bibit(ビビット)、FUNDtastic(ファンドタスティック)など、最近資金調達を行ったインドネシアの金融アプリの1つだ。いずれの企業も、高額な手数料がかかる伝統的な証券会社に代わるものを提供することで、投資をより多くの人が利用しやすいものにすることを目指している。

関連記事:ミレニアル世代と初心者に焦点を当てるインドネシアの投資プラットフォームAjaibが26億円調達

インドネシアでは、個人投資家は人口のごく一部に過ぎないが、その数は特に18歳から30歳の間で増加している。その背景には、新型コロナウイルス感染流行時に資金計画への関心が高まったことや、株のインフルエンサーの台頭など、さまざまな要因が重なっている。

Openspace Venturesの設立パートナーであるShane Chesson(シェーン・チェッソン)氏は、声明の中で次のように述べている。「Pluangは、業界をリードするユニットエコノミクスで、この12カ月間における驚異的な成長を示しました。インドネシア人全員が貯蓄を増やせるようにするという同社の野望を持続的に加速させるために、引き続きチームをサポートできることをうれしく思います」。

関連記事:インドネシアの投資アプリFUNDtasticがシリーズAで8億円を獲得、狙いはZ世代

カテゴリー:フィンテック
タグ:Pluang資金調達インドネシア投資

画像クレジット:Fajrul Islam / Getty Images

原文へ

(文:Catherine Shu、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

不動産販売員の独立を支援するSideが企業価値1087億円で163億円を調達

Sideは不動産の個人販売員を独立ブランドへと変えようとする不動産テックのスタートアップだ。米国時間3月22日、シリーズDラウンドで1億5000万ドル(約163億円)を調達したことを発表した。

Coatue Managementがリードしたこの調達ラウンドで、サンフランシスコ拠点のSideの企業価値は10億ドル(約1087億円)となり、2017年の創業以来の総調達額は2億ドル(約217億円)になった。既存出資者のMatrix Partners、Trinity Ventures、およびSapphire Venturesも今回のラウンドに参加した。

このラウンドの調達金額は、2019年11月のシリーズCラウンドで調達した3500万ドル(約38億円)よりも著しく多いことは注目に値する。企業価値もシリーズCの1億5000万ドルと比べて7倍近くに増えた。Sapphire Venturesが当時のラウンドをリードし、元TruliaのCOO(同社のIPOとZillowによる数千億円の買収による)マネージングディレクターのPaul Levine(ポール・レヴィン)氏がSideの取締役に加わった。

スタートアップの2020年の売上は3000~5000万ドル(約33億〜54億円)で、2021年は倍増すると予想されている。2019年、Sideは同社の全パートナーを通じて年間50億ドル(約5436億円)の住宅販売を仲介した。現在、同社の不動産販売員コミュニティは、合わせて年間150億ドル(約1兆6037億円)を販売している。

Sideを設立したのはGuy Gal(ガイ・ギャ​​ル)氏、Edward Wu(エドワード・ウー)氏、Hilary Saunders(ヒラリー・サンダース)氏の3名で、伝統的不動産仲介モデルのためにほとんどの独立販売員は「十分な報酬と評価を得ていない」という想いが理由だった。

CEOのギャ​​ル氏は、現在の仲介業務は「平均的」不動販売員を意図した構造になっており、トップセールスの販売員は「大きな負担」を強いられている。

Sideのホワイトレーベルモデルは、もっぱら販売員やチームの独自ブランドを売り込み、バックエンドに必要な技術とサポートを提供する。パートナーが実績を「計画どおり伸ばし」、生産性を向上するのを支援することが目標だ。

「Sideのやっていることは、Shopifyがeコマースで何をやっているかを考えればわかります。【略】Sideと提携することで、成績優秀な不動産販売員やチームや独立仲介人は、史上初めて、ブローカー会社を設立することなく、独自ブランドと事業の権利をすべて得ることができます」とギャル氏はいう。「不動産販売員というこの特別のコミュニティの問題解決に何年も取り組んだことで、ソフトウェアを使ったこれまでになかったやり方で、彼らに膨大な効率をもたらすことができるようになったのです」。

既存の不動産業務の仕組みは、不動産販売員やチームがトップセールスを達成する意欲を削ぐように作られていると彼は指摘する。なぜなら、顧客の少ない販売員は取引のたびに高い手数料を払うことを余儀なくされるため、ブローカーと販売員との間に動機の不一致があるからだ。

「トップ販売員は売上を伸ばして差別化したいと考えますが、ブローカーは販売員が高い手数料で少ない仕事をして、自分のブランドの一員でいることを望んでいます」とギャル氏は言った。「Sideはトップセールスの販売員やチームとの競争意欲を削ぐのではなく、彼らが成長して自分の事業とブランドを拡大できるよう支援します」。

現在Sideは、カリフォルニア州、テキサス州、フロリダ州全体で1500人のパートナー不動産販売員を支援している。

同スタートアップは新たな資金を「大規模な雇用」と現在運用しているカリフォルニア、テキサス、フロリダの3州以外への進出に使う計画だ。現在300名以上いる従業員はさらに200人増やす予定。

カテゴリー:ソフトウェア
タグ:Side不動産資金調達

画像クレジット:Volanthevist / Getty Images (画像加工済み)

原文へ

(文:Mary Ann Azevedo、翻訳:Nob Takahashi / facebook

スウェーデンのフィンテックZaverが5.4億円を調達、「耐久消費財」分野にカードレス支払いと後払い決済を提供

スウェーデンのフィンテックであるZaver(ゼイバー)は、売り手が決済方法のオプションとしてカードレス支払いや後払い(BNPL)に対応できるようにするスタートアップだ。このほど新たなラウンドで500万ドル(約5億4000万円)の資金を獲得した。

マーケットプレイス取引のP2P決済に特化してスタートした同社は、オンラインおよびオフラインコマースの耐久消費財(自動車、健康・美容、工芸品など)分野にプロダクトマーケットフィットを見出して以来、この市場に賭けている。

Zaverの最新ラウンドをリードしたのは、Inbox Capital(Revolut、Klarnanaなどに出資している)とInventureのVCで、他にEvolution GamingのファウンダーであるFredrik Österberg氏(フレデリック・エスターバーグ)、エンジェル投資家のMagnus Rausing氏(マグナス・ラウシング)、AtomicoのパートナーJoen Bonnier氏(ジョエン・ボニエ)、ErnstromのオーナーであるFabian Hielte(ファビアン・ヒエルテ)氏とMax Hobohm(マックス・ホボーム)氏およびJohannes Hobohm(ヨハネス・ホボーム)らが参加した。

2016年中頃、Amir Marandi(アミール・マランディ)氏とLinus Malmén(リーナス・マルメン)氏がストックホルムのスウェーデン王立工科大学の学生だった頃に創業したZaverは、プラスチックカードからモバイル決済への変革を加速したいと考えた。ターゲットにした市場は「耐久消費財」で、スウェーデン国内でスタートした。提供する決済機能には、オープン・バンキングを利用したオンライン / オフラインのカードレス決済、即時支払、BNPL、信用度スコアなどがある。

「私たちのいう『耐久消費財』とは、頻繁に買う必要がなく長期間続けて使うもののことで、自動車、歯科診療、キッチンのリフォームなどがあります」とマランディ氏はいう。「一般にこれらの商品は『日常的』な商品やサービスよりも高い金額で取引されます」。

2年前に「Zaver for Business」を提供開始して以来、同社の取引高はゼロから「数億ドル(数百億円)」へと急増したとMarandi氏はいう。「当社がプロダクトマーケットフィットを実現していることは、今やユーザーは古い習慣を捨て、高額な商品やサービスの支払にもスマホを使うようになったことを証明しています」と同氏は言った。

カード利用を回避することで、Zaverは価格、ユーザー体験、およびプロダクト開発を社内でカスタマイズできるようになり、これは以前は困難だった、とマランディ氏は指摘する。そして「狙いは、この分野の中小企業のために、伝統的ソリューションを総合的なバンキング・決済プラットフォームで置き換えることにあり、そこではBNPLが顧客の行動変革に置ける重要な役割を果たします」と付け加えた。

ちなみに、Zaverの主たるライバルはクレジットカードや債権買取会社などの伝統的商品だ。「私たちの特徴は、低利益率で平均取引高の高い分野におけるモバイル決済への移行に特化していることです」とマランディ氏はいう。「新たな顧客行動(BNPL、自動引落、購入時の分割払いなど)とリアルタイム決済に集中することで、金額の大きさに関わらず同じ摩擦のない支払い体験をオンラインでもオフラインでも提供できます」。

カテゴリー:フィンテック
タグ:Zaver資金調達スウェーデン

画像クレジット:Zaver

原文へ

(文:Steve O’Hear、翻訳:Nob Takahashi / facebook

業務自動化ソフトウェアのCamundaが約106億円調達

業務自動化ツーリングは企業にとってますます重要になっている。オープンソースのプロセス自動化ソフトウェアを手がけているベルリンのスタートアップCamunda(カマンダ)が3月22日に8200万ユーロ(約106億円)のシリーズBを発表したのはおそらくそのためだ。換算すると米国ドルで約9800万ドルになる。

本ラウンドはInsight Partnersがリードし、シリーズAラウンドの投資家Highland Europeも加わった。2800万ドル(約30億円)を調達した2018年12月のシリーズAラウンドと合わせると、累計調達額は約1億2600万ドル(約137億円)だ。

このレベルの投資を引きつけた理由について、Camundaの共同創業者でCEOのJakob Freund(ジェイコブ・フロイント)氏は、同社が純粋な自動化以上の問題を解決しているからだと説明する。「エンド・ツー・エンドの自動化、あるいはエンド・ツー・エンドのエンドポイントのオーケストレーションと呼べるものに関して大きなことが起こっています。これらはたとえばRPAロボットだったりしますが、マイクロサービスと(人間による)手仕事であったりもします」と同氏は話した。

そして「Camundaは他の物の一番上にくるエンドポイント・アグノスティック・オーケストレーション・レイヤーになりました」と付け加えた。これは、企業全体の完全なワークフローを作るために自動化の要素がいかに互いに連携して動作するか、それを統合する能力を同社が提供することを意味する。

同社は270人を雇用し、現時点でGoldman Sachs、Lufthansa、Universal Music Group、Orangeを含む顧客約400社を抱える。Insight PartnersのマネージングディレクターMatt Gatto(マット・ガット)氏は巨大なマーケット機会を目にしている。だからこそ今回の巨額投資を同社は引き受けた。

組織が真にデジタル企業へと転換するのをサポートしているCamundaの成功は、エンド・ツー・エンドの業務自動化のためのオープンで標準ベース、デベロッパーフレンドリーのプラットフォームがいかに企業の機敏性を高め、顧客エクスペリエンスを改善できるかを示しています」とガット氏は声明で述べた。

Camundaは典型的なスタートアップではない。同社の歴史は実際には2008年にさかのぼり、BPM(ビジネスプロセスマネジメント)のコンサル会社として始まった。2013年に同社はオープンソースのプロジェクトを始め、それが商業的な要素を加えたオープンソースソフトウェア会社へと方向転換した始まりだ。

こうしたアイデア、そしてアイデアを元に同社が構築したかったものにマーケットが追いつき始めたため、同社は2018年末に資金を調達した。事業はかなり順調で、キャッシュフローはポジティブだとしている。そして新たに調達した資金は引き続き事業を加速させるのに使う。

カテゴリー:
タグ:

画像クレジット: Traitov / Getty Images

[原文へ]

(文:Ron Miller、翻訳:Nariko Mizoguchi

ノーコードビジネスインテリジェンスサービスのy42が3.2億円のシードラウンドを実施

ベルリンを拠点とするy42(旧称Datos Intelligence)が、現地時間3月22日、La Famiglia VCが主導する290万ドル(約3億2000万円)のシード資金調達を行ったことを発表した。y42はデータウェアハウスを中心としたビジネスインテリジェンスサービスを提供しており、企業がエンタープライズレベルのデータに、表計算ソフトのような手軽さでアクセスできるようすると約束する企業だ。同時に、Foodspring(フードスプリング)、Personio(パーソニオ)、Petlab(ペタラブ)の共同創業者たちも出資している。

2020年に創業されたこのサービスは、100種類以上のデータソースを統合しており、Airtable(エアテーブル)からShopify(ショッピファイ)、Zendesk(ゼンデスク)といった標準的なB2B SaaSツールや、Google(グーグル)のBigQuery(ビッグクエリー)などのデータベースサービスを網羅している。ユーザーは、こうしたデータを変換して視覚化し、データパイプラインを編成し、そのデータに基づいて自動化されたワークフローを起動することができる(売上が下がったときにSlackで通知を送ったり、独自の基準に基づいて顧客にメールを送ったりするといった用途を想像して欲しい)。

類似のスタートアップ企業と同じように、y42は従来分析のために使用されていたデータウェアハウスのコンセプトを拡張し、企業によるそうしたデータの活用を支援する。このサービスの中核は多くのオープンソースで構成されており、例えば同社はGitLabs(ギットラブ)のデータパイプライン構築用プラットフォームMeltano(メルタノ)の開発に貢献している。

y42の創業者でCEOのフン・ダン氏

y42の創業者でCEOのHung Dang(フン・ダン)氏は「私たちは、最高のオープンソースソフトウェアを採用しています。本当に達成したいのは、本当にわかりやすくて、誰もが効率的にデータを扱うことができるツールを作ることなのです」と語る。「私たちは非常にUXにこだわっていますし、自分たちをノーコード / ローコードのBIツールと表現していますが、私たちのサービスはエンタープライズレベルのデータスタックのパワーとGoogle Sheetsのシンプルさを兼ね備えています」。

ベトナム出身のダン氏は、y42以前に、10カ国以上で事業を展開する大手イベント会社を共同創業し、数百万ドル(数億円)規模の売上を達成した(ただし、利益率は非常に低いものだった)が、同時にビジネス分析に的を絞った自身の研究を進めていた。その結果、B2Bデータ分析に特化した2社目の会社を創業することになったのだ。

画像クレジット:y42

彼によれば、イベント会社を創業した際にも、常に製品やデータを重視していたという。「お客様の声を収集し、業務データと統合するためにデータパイプラインを構築していましたが、当時は本当に苦労していました」と彼はいう。「Tableau(タブロー)やAlteryx(アルテリックス)などのツールを使っていたのですが、それらを組み合わせるのはとても難しく、しかもとても高価でした。そこで、その欲求不満から、かなり使える社内ツールを開発し、2016年にはそれを使って、実際の会社を起業することにしたのです」。

彼はその後、その会社をドイツの大手上場企業に売却した。この取引の詳細についてはNDAによって彼から聞き出すことはできなかったが、彼がy42を設立する前にはEventim(イベンティム)に在籍していたという事実から、なんらかの想像は可能だろう。

こうした彼の経歴を考えれば、y42がデータエンジニアの生活を便利にすると同時に、ビジネスアナリストにプラットフォームのパワーを提供することに重点を置いているのは当然のことかも知れない。ダン氏は、y42が新規顧客を獲得した際には、通常コンサルティングを提供しているが、それは顧客が素早いスタートを切ることができるようにするためだという。製品の持つノーコード / ローコードの性質によって、ほとんどのアナリストたちはすぐに使い始めることができる。また、より複雑なクエリの場合には、グラフィカルなインターフェースからy42のローコードレベルに降りて、サービスが提供するSQLの方言でクエリを書くこともできる。

このサービス自体はGoogle Cloud(グーグル・クラウド)上で動作しており、25人のチームが顧客のために1日あたり約5万件のジョブを管理している。現在同社の顧客には、LifeMD(ライフMD)、Petlab(ペットラブ)、Everdrop(エバードロップ)などがいる。

今回の資金調達を行うまでは、ダン氏は自己資金とエンジェル投資家からのある程度の資金で会社を運営していた。しかし、スタートアップ企業と伝統的な企業を結びつけることに特に重点を置いているLa Famiglia VCが、自社をy42にふさわしいと判断した。

LaFamiglia VCのゼネラルパートナーであるJudith Dada(ジュディス・ダダ)氏は「最初に製品デモを見たとき、その優れた分析能力に加えて、y42プラットフォーム上で多くの製品開発が行われていることに驚かされました」と語る。「ますます多くのデータを扱わなければならなくなった結果、組織内のデータサイロが増え、混沌と不正確なデータにつながっています。y42は、データの専門家であるかそうでない人かを問わず、強力な真の単一情報源を提供してくれるのです。昔データサイエンティストやアナリストだった身としては、その頃y42の機能があればよかったのにと思っています」。

ダン氏は、もっと資金を集めることもできたが、この時点ではチームの出資比率をあまり下げたくないと考えたのだと語る。「小さなラウンドですが、このラウンドによって正しい体制を整えざるを得ません。2021年末に予定しているシリーズAでは、10倍の次元の話を進めています」。

カテゴリー:ソフトウェア
タグ:y42ノーコードローコードドイツ資金調達

画像クレジット:Jonathan Kitchen / Getty Images

原文へ

(文:Frederic Lardinois、翻訳:sako)

アフリカでAPIフィンテックを展開するStitchがステルスから脱して4.3億円を調達

この数年、世界中でフィンテックインフラストラクチャー企業が多数出現している。アフリカでは、過去3年の間に、フィンテックインフラストラクチャーを提供するスタートアップがいくつか誕生している。南アフリカのフィンテックスタートアップStitch(スティッチ)もその1つだ。このほど、Stitchはステルスモードから脱して、400万ドル(約4億3000万円)のシードラウンドを発表した。これは現時点で、アフリカのAPIフィンテックスタートアップによる最高額の資金調達ラウンドだ。

Kiaan Pillay(キアーン・ピレイ)氏、Natalie Cuthbert(ナタリー・カスバート)氏、およびPriyen Pillay(プリエン・ピレイ)氏によって創業されたStitchは、アフリカ全土の金融口座にAPIのみでアクセス可能にしたいと考えており、まずは、最初のマーケットである南アフリカからサービスを開始する予定だ。開発者はStitchのAPIを使用すると、アプリを金融口座に接続できる。これにより、利用者は、取引履歴と残高の共有、本人確認、決済の開始といった処理を行うことができる。

APIを利用した金融サービス企業が世界中で多数出現している。Plaid(プレイド)は米国の市場をリードしている。スウェーデンに本拠地を置くフィンテックTink(ティンク)は欧州全体を席巻しており、Truelayer(トゥルーレイヤー)とBelvo(ベルボ)はそれぞれ、英国と中南米で確固とした地位を築いている。

関連記事:提携銀行3400行、ユーザー数2億5000万人を抱えるまでに成長したスウェーデンのオープンバンキング企業Tinkが約107億円を調達

こうした企業は、エンジニアおよび開発者向けに、アプリからユーザーの金融口座に接続する際に必要な技術面および運用面での操作を軽減するツールを提供している。APIを使うことで、通常ならゼロから構築する必要のある複雑なサービスを数行のコードを追加するだけで組み込むことができる。

企業や開発者は他の金融インフラストラクチャー同様、Stitchのサービスを使用すると、パーソナルファイナンス、融資、保険、決済、資産管理などの他のサービスにイノベーションを起こすことができる。

Stitchの創業者たちは南アフリカのマーケットでAPI製品を構築した経験に基づいて起業した。キアーン・ピレイ氏は、2017年、南アフリカの保険APIプラットフォームRoot(ルート)の運用リーダーとして勤務していた。しかしその後、サンフランシスコに本拠地を置く、ID APIを開発する企業Smile Identity(スマイルアイデンティティー)に転職する。そこで同氏は、アフリカ全土のフィンテックに取り組み、コンプライアンスとアイデンティティー周りのインフラストラクチャーに問題があることを発見する。

Stitchのチーム(画像クレジット:Pang Isaac)

この頃、ピレイ氏、カスバート氏(前職はRootのソフトウェアアーキテクト)、およびプリエン・ピレイ氏は、サイドプロジェクトとして、アフリカ向けにVenmo(ベンモ)式のウォレットを構築する作業を行っていた。そして、銀行に接続しようと8カ月間試みた結果、アフリカのフィンテックはインフラストラクチャーが欠如しているために進歩のスピードが遅いことに気づいた。

「我々はユーザーが現金をウォレットから銀行口座に移せるようにする方法を考えていた」とピレイ氏はいう。「最初は手作業でやっていたが、その後、一時しのぎの策として、このプロセスを画面スクレイピングを使って自動化してみた。そして、この手作業を自動化するという解決策自体を製品化できること、なおかつもっと洗練された方法があることに気づいた」。

そのような経緯で、ピレイ氏をCEO、カスバート氏をCTO、プリエン・ピレイ氏をCPOとして、Stitchの立ち上げに向けてチームが結成された。2019年10月にはこのアイデアに本格的に取り組み始め、1カ月後にはプレシードラウンドを確保した。Stitchによると、ステルス状態で運営している間に、 Intelligent Debt Management(インテリジェント・デット・マネジメント)、Momentum Velocity Club(モメンタム・ベロシティ・クラブ)、FlexClub(フレックスクラブ)など、数社の顧客を獲得したという。その後、Stitchは消費者向け製品を扱う企業からも注目されるようになる。

Stitchは現時点で、データおよび本人確認用API製品を提供しているが、今月には、決済用製品もラインナップに追加する予定だ。大半のAPIフィンテックスタートアップと同様、StitchもAPIコール1回ごとに課金する。ただし、予算作成やパーソナルファイナンス管理アプリなど、一部の製品では、固定料金制も導入している。

Stitchは、投資家たちから幅広く深い支援を受け、資金を調達して南アフリカで確固とした成長基盤を築くつもりだ。また、アフリカ西部や東部でも事業を展開する予定だという。

活況を呈するアフリカの金融インフラストラクチャー

アフリカの金融インフラストラクチャー市場にはすでに、APIフィンテック領域のプレイヤー(主にナイジェリアのスタートアップ)が存在している。そうした企業は大規模なラウンドで資金調達しており、うらやましいほどの支援も受けている。Mono(モノ、半年前に起業したばかりのスタートアップ)はYCの支援を受けている。また、Okra(オクラ)はアフリカ全土に展開するVC企業TLcom Capital(TLcomキャピタル)の支援を、OnePipe(ワンパイプ)はTechstars(テックスターズ)の支援を受けている。米国に本拠地を置くがアフリカに注力しているPngme(プングメ)は、アフリカ全土に展開するVC企業EchoVC(エコーVC)、とLateral Capital(ラテラルキャピタル)から投資を誘致している。

現時点では、これらのスタートアップは3か国以上には事業展開していない。例えばモノ、オクラ、ワンパイプはナイジェリア国内のみを拠点としており、プングメはナイジェリアとケニア、Stitchは南アフリカのみでサービスを提供している。こうした企業がマーケットを拡大していったとき、どのような競合関係および協力関係が展開されていくのかを見るのは興味深い。これは、そんなに先の話ではない。オクラは現在、ケニアと南アフリカで試験的にサービスを提供しているし、モノは2021年末までには、ガーナとケニアにマーケットを拡大する予定だからだ。

これらのスタートアップの創業者に以前話を聞いたところ、アフリカの市場では健全な競争が展開されると思うと答えてくれた。キアーン・ピレイ氏は次のように付け加えた。「長期的な展開としては、各企業がそれぞれ得意な分野でニッチな機能を実現していく形になるだろう」。

「プレイドが席巻している米国とは違い、アフリカのフィンテック業界には複数のプレイヤーが必要だと思う。欧州が良い例だ。多くのかなり大規模な企業が同じようなバンキングAPIサービスを提供している。アフリカでは、複数の企業が特定の機能(決済、データのエンリッチ化、店舗IDなど)を提供する形になるのではないかと思う」。

画像クレジット:Stitch

Stitchの今回のシードラウンドには錚々たる参加者が名を連ねており、主導するのは、ロンドンに本拠地を置くVC企業firstminute Capital(ファーストミニッツ・キャピタル)と米国に本拠地を置く投資会社The Raba Partnership(ラバ・パートナーシップ)だ。その他の出資者にはファンドとエンジェル投資家の両方がいる。

ファンドとしては、CRE、Village Global(ビレッジグローバル)、Norrsken(ノースケン、Klarna(クラーナ)の共同創業者Niklas Adalberth(ニクラス・アダルバース)氏が設立したファンド)、Future Africa(フューチャーアフリカ、Flutterwave(フラッターウェーブ)の共同創業者Iyinoluwa Aboyeji(リノウワ・アボイェジ)氏が設立したファンド)、500 Fintech(ファイブハンドレッド・フィンテック)などがいる。エンジェル投資家としては、ベンモの共同創業者Iqram Magdon-Ismail(イクラム・マグドンイズメール)氏、プレイドの何人かの創業メンバー、およびCoinbase(コインベース)、Revolut(レヴォルート)、Fast(ファスト)、Paystack(ペイスタック)の経営幹部らがいる。

ステルス状態のスタートアップがこれだけの投資家たちの支援を受けることができた理由について「Stitchの米国でのネットワークと各投資家の当社の製品に対する信頼が大きい」とピレイ氏はいう。

「スマイルアイデンティティーで仕事をしていたときサンフランシスコでかなりの期間過ごしたため、こうした世界クラスの創業者や投資家たちと接触することができた」とキーアン・ピレイ氏はいう。「我々にはアフリカ全土の市場で新世代の金融サービスを提供するチャンスがある。これだけの投資家たちの支援を受けることができて本当に幸運だと思う」。

ファーストミニッツ・キャピタルの共同創業者兼ジェネラルパートナーBrent Hoberman(ブレント・ホバーマン)氏によると、同社がStitchを支援する決定を下したのは、アフリカのほとんどのオンラインビジネスは、Stitchを介して自社のアプリケーションにフィンテック機能(シンプルなオンライン決済、融資能力の向上、本人確認の簡素化など)を組み込むようになると信じているからだという。

「南アフリカ人の同胞として、アフリカ全土のマーケットへの進出を見据える、優れた才能を持つ同胞エンジニアのチームと仕事ができることにワクワクしている」とホバーマン氏は付け加えた。

この1月、アフリカのVC市場は、アグリテックとクリーンテックセクターが資金調達ラウンドを席巻しており、フィンテックセクターは低調だったが、その後、フィンテックセクターが活気を呈しつつある。今週、南アフリカのデジタルバンクTymeBank(タイムバンク)が1億900万ドル(約118億1600万円)という巨額の資金を調達し、南アフリカ全土およびアジアへの進出を目論んでいる。大規模ラウンドといえばVC資金の30%以上を獲得した特定のセクターの大規模ラウンドを見たことがあるが、今回のラウンドはそれを上回る規模になっている。

過去2年間のアフリカにおけるAPIフィンテック領域で注目すべき、一連の投資案件では、すべての主要スタートアップが50万ドル(約5400万円)から400万ドル(約4億3300万円)を調達しているが、今回のStitchのシードラウンドはその中の最新の案件だ。

ブレント・ホバーマン氏のファーストミニッツ・キャピタルでの役職とラバ・パートナーシップの本拠地を更新しました。

カテゴリー:フィンテック
タグ:Stitchアフリカ資金調達南アフリカ

画像クレジット:Pang Isaac

原文へ

(文:Tage Kene-Okafor、翻訳:Dragonfly)

「昭和」な方法が残る債権管理・督促業務のDXを進めるLectoが総額1.1億円調達

債権回収のDXを進める

債権管理・督促業務のDXを進めるスタートアップLecto(レクト)は3月22日、第三者割当増資によって総額1億1000万円の資金調達を行ったと発表した。

Lectoは今回の調達で、債権管理・督促回収業務を一貫して支えるSaaS(Software as a Service)プロダクトの開発を進める。金融事業者がユーザーにサービスを提供した後に発生する請求通知や督促連絡、債券譲渡など、さまざまな業務をワンストップで管理できるようにする。また、2021年7月を目途に債権回収を自動化する機能を開発して提供する見通し。

金融事業にはさまざまな業務フローがある

金融事業にはさまざまな業務フローがある

なお、引受先はシンガポールに本社を置くBEENEXTが運営するALL STAR SAASFUNDのほか、East Venturesやラクマ(フリル)創業者の堀井翔太氏、コネヒト創業者の大湯俊介氏らとなる。

Lectoは2020年11月に会社を設立後、2021年1月から債権管理などにおけるハンズオン支援のコンサルティングサービスを提供している。すでにyupナッジに同サービスを提供しており、今後は複数社でのサービス導入が決まっている。

レガシーな金融業界と新たな動き

金融業界では債権管理業務自体をMicrosoft Excelなどのアナログ管理で行っている事業者が少なくない。また、既存事業者には督促回収を電話や個別訪問で行うなど、昭和から続くアナログな方法が残っているという。

金融業界には現在、ITを活用した決済テクノロジーが進歩し、決済サービスなどが多様化している側面もある。このため政府は2021年4月から、改正割賦販売法を施行し、新しい決済テクノロジーやサービスに対応するための環境を整えている。

改正法では、限度額10万円以下となる少額の分割後払いサービス提供事業者に対する登録制度を創設する。また、限度額審査については、AI技術などによる新たなテクノロジーに基づく審査手法を許容するとしている。改正法が施行されれば、少額の分割後払いサービスを提供する事業者が多く金融市場に参入することになる。

Lectoでは、既存事業者に対しては債権管理・督促回収のDXを展開し、スタートアップをはじめとした新規参入事業者にはゼロベースからの債権管理・督促回収の支援サービスを提供していく考えだ。

Lectoは「金融サービスの裏側を変えていくことは一見地味な取り組みだが、我々の取り組みこそが金融ビジネスを成長させるキモだと考えている。債権管理・督促回収のアップデートが金融市場に与える影響は大きく、我々はARR(年間経常利益)で1000億円以上を目指せると試算している」と述べた。

カテゴリー:フィンテック
タグ:LectoSaaS資金調達日本DX

eコマースマーケティングのスタートアップ企業Yotpoが約250億円調達、企業価値は約1524億円に

直近の資金調達の発表からわずか7カ月後、Yotpo(ヨットポ)はシリーズFラウンドでさらに2億3000万ドル(約250億円)を調達したことを明らかにした。これにより同社の企業価値(資金調達後)は14億ドル(約1524億円)となった。

「今回のラウンドは、私の目から見ると、eコマースの未来を祝福するものです」と、同社の共同創業者でCEOのTomer Tagrin(トマー・タグリン)氏は筆者に語った。「ブランドは、もうマーケティングスタックの接続について心配する必要がありません」。

従来の小売業における成功は「一に場所、二に場所、三に場所」によって決まっていたが、eコマースは「消費者の注目がすべて」だと、タグリン氏はいう。その注目を集めるために、平均的なブランドは10〜14種類のマーケティングアプリケーションを使用しており「かなりひどい体験」をしていると、同氏は推測している。そこで、2011年創立のニューヨークに本社を置くYotpoは、ブランドが必要とするすべてのeコマースマーケティングを、単一の統合されたプラットフォームで提供することを目指している。

これを説明するために、タグリン氏は「例えば、あるマーケターが、過去90日間に商品を購入して5つ星のレビューを残したユーザーだけにカスタマイズされたオファーを作りたいと考えているとします」と説明した。Yotpoでは「ボタンをクリックするだけ」でそれが可能だが「Yotpo以前には、そのような体験は実現できませんでした」と、同氏は述べている。

同社のプラットフォームは現在、Yotpo SMS Marketing、Yotpo Loyalty & Referrals、Yotpo Reviews、Yotpo Visual UGCという4つの主要製品で構成されており、これらは相互に統合されている。また、Shopify(ショッピファイ)、Salesforce Commerce Cloud(セールスフォース・コマース・クラウド)、Adobe(アドビ)傘下のMagento(マジェント)、BigCommerce(ビッグコマース)などのeコマース・プラットフォームとも連携できる。

Yotpoのトマー・タグリンCEO(画像クレジット:Yotpo)

タグリン氏によると、Yotpoには前回のラウンドで得た資金がまだ残っていたが、製品やマーケティングへの投資を継続するとともに、戦略的な買収のために追加の資金を調達することにしたという(同社は2020年初頭にSMSBumpを買収しており、完全な統合に向けて「70%ほど進んでいる」とタグリン氏は述べている)。中でも、カスタマー・コミュニケーションや、カスタマーライフタイムバリュー(顧客生涯価値)の測定に関する新製品の投入を計画しているそうだ。

Yotpoは現在、年間経常収益も1億ドル(約109億円)を超えており、2020年はSMS Marketingの収益が170%増加して、Loyalty & Referralsの収益も約2倍になったという。Patagonia(パタゴニア)やSteve Madden(スティーブ・マデン)などの大手ブランドがこのプラットフォームを利用しているが、Princess Polly(プリンセス・ポリー)のような新しいメーカー直販型ビジネスにも利用されていることをタグリン氏は指摘。全体で3万社の有料顧客を抱えているという。

「私が言いたいのは、Victoria’s Secret(ヴィクトリアズ・シークレット)は少しずつたくさん切られて死んでいくということです」と、タグリン氏は述べている。「たくさんのミニブランドがあり、それらは既存のブランドに取って代わろうとしている新鋭ブランドです」。

Crunchbaseによると、Yotpoは現在までに総額4億ドル(約435億円)以上の資金を調達している。今回のラウンドは、Bessemer Venture Partners(ベッセマー・ベンチャー・パートナーズ)とTiger Global(タイガー・グローバル)が主導し、Claltech Investment(クラルテック・インベストメント)、Coin Ventures(コイン・ベンチャーズ)、Hanaco(ハナコ)、Vertex Ventures(バーテックス・ベンチャーズ)、Vintage Investment Partners(ビンテージ・インベストメント・パートナーズ)などが参加した。

「Tiger Globalは、小売業の未来を担うeコマースに長年にわたり強気で取り組んでおり、Warby Parker(ワービー・パーカー)やPeloton(ペロトン)などのディスラプター(破壊的)ブランドや、JD.comなどの大手企業、Stripe(ストライプ)やTwilio(トゥイリオ)など最高クラスのSaaS企業に投資してきました」と、Tiger GlobalのJohn Curtius(ジョン・カーティウス)氏は声明で述べている。「統合されたマーケティング技術スタックを提供するYotpoのアプローチと、それによってブランドとオンラインショッパーに提供される価値に、我々は胸を躍らせています」。

関連記事:eコーマス業者が顧客とのより良い関係を構築することを支援するYotpoが約79億円を調達

カテゴリー:ソフトウェア
タグ:Yotpo資金調達eコマースマーケティング

画像クレジット:Christina Reichl Photography / Getty Images

原文へ

(文:Anthony Ha、翻訳:Hirokazu Kusakabe)