ビル・ゲイツ氏が勧める合成肉の開発に取り組むオランダのMeatableが約51億円調達

Bill Gates(ビル・ゲイツ)氏の近著「How to Avoid a Climate Disaster」について語った最近のインタビューの中で、Microsoft(マイクロソフト)とBreakthrough Energyの創業者で世界長者番付第3位の同氏は、温室効果ガスの排出を抑制するために世界の最富裕国の市民は同氏がいうところの合成肉が完全に使われている食事に切り替えるべきだと啓発した。

ゲイツ氏の要望は、アムステルダムからテルアビブ、ロンドン、ロサンゼルス、バークレー、シカゴに至るまであちこちで設立されたスタートアップや上場企業の動きと合致する。

実際、人工肉マーケットで最も資金潤沢な企業の2社はオランダで創業された。そこでは、4700万ドル(約51億円)の新規資金調達を発表したばかりの新興企業MeatableMosa Meatに挑んでいる。

Meatableは2023年までに欧州当局から最初のプロダクトの承認を得て2025年までに商業販売することを目指している。

同社の今後の道のりは長い。というのも、ゲイツ氏はMIT Technology Reviewとのインタビューで「細胞レベルで取り組んでいるMemphis Meatsなどもありますが、それが経済的なのかはわかりません」と認めた。

経済性の他にも、消費者が人工肉に進んで切り替えるかどうかという問題もある。サンフランシスコ拠点のJust FoodsやテルアビブのSupermeat など一部の企業はすでにいくつかのレストランで培養細胞から作られたチキンパテやナゲットを販売している。

Meatableのテクノロジー責任者Daan Luining(ダン・ルイニング)氏によると、こうしたプロダクトは細胞テクノロジーの全潜在能力を生かしていない。「ナゲットとチキンバーガーが登場しましたが、当社は全筋肉組織に取り組んでいます」と同氏は述べた。

この分野へのかなりの新規参入、そしてそうした企業が調達した資金は、企業が大規模生産時のコストと放し飼い肉代替品の質とのバランスを取りながら綱渡りできれば、いくつかの勝ち抜いた企業のためにチャンスが広がっていることを指している。

「当社のミッションは地球の人々のためのタンパク質提供でグローバルリーダーになることです。豚肉や牛肉の定期的な摂取の削減は環境や土地管理に影響を及ぼします」とルイニング氏は話した。「当社が使っているテクノロジーでは、異なる種を扱うことになります。最初に当社は気候変動やプラネタリーヘルス(地球全体の健康)に最大の影響を及ぼす動物にフォーカスします」。

目下、Meatableにとって価格が問題だ。同社は現在、1ポンド(450グラム)あたり約1万ドル(約108万円)で肉を生産しているが、競合他社と違って全肉を作っていると同社は話した。そこには、肉を構成する脂肪や結合組織が含まれる。つまり肉だ。

従業員35人と新たに調達した資金で、同社は研究・開発から食料生産企業に移行しようとしている。欧州において最大の食品バイオテクノロジー企業の1社であるDSMのような戦略的投資家がサポートするだろう。Vertex Pharmaceuticalsの会長Jeffrey Leiden(ジェフリー・リーデン)博士や、Bill and Melinda Gates Foundation(ビル&メリンダ・ゲイツ財団)の元エグゼクティブディレクターで、最高メディカル責任者を務めたIlluminaを去った後にJuno Therapeutics、GRAIL、Mindstrong Healthを創業したRick Klausner(リック・クラウスナー)博士といったエンジェル投資家もサポートするはずだ。

Meatableの直近のラウンドに参加した機関投資家にはGoogle Ventures創業者Bill Maris(ビル・マリス)氏の新ファンドSection 32、既存投資家のBlueYard CapitalAgronomicsHumboldtTaavet Hinrikus(デビッド・ヒンリクス)氏が含まれる。

Meatableの最初の商品はおそらく人工の豚肉製品になるだろうが、オランダのトップ大学の1つが立地するデルフトにある施設を拡張し、牛肉製品の登場もそれほど遅くならなさそうだ。

「(Meatableは)すばらしいチーム、そして地球が直面している世界の食料不安の問題をめぐる困難を解決することができる画期的なテクノロジーを持っています」とクラウスナー氏は述べた。「Meatableは持続可能な方法で効率的に生産された肉の主要な選択となるための正しい成分を持っています」。

カテゴリー:フードテック
タグ:Meatable資金調達培養肉オランダ

画像クレジット:Getty Images under a NICOLAS ASFOURI/AFP/Getty Images license.

原文へ

(文:Jonathan Shieber、翻訳:Nariko Mizoguchi

投稿者:

TechCrunch Japan

TechCrunchは2005年にシリコンバレーでスタートし、スタートアップ企業の紹介やインターネットの新しいプロダクトのレビュー、そして業界の重要なニュースを扱うテクノロジーメディアとして成長してきました。現在、米国を始め、欧州、アジア地域のテクノロジー業界の話題をカバーしています。そして、米国では2010年9月に世界的なオンラインメディア企業のAOLの傘下となりその運営が続けられています。 日本では2006年6月から翻訳版となるTechCrunch Japanが産声を上げてスタートしています。その後、日本でのオリジナル記事の投稿やイベントなどを開催しています。なお、TechCrunch Japanも2011年4月1日より米国と同様に米AOLの日本法人AOLオンライン・ジャパンにより運営されています。