血漿ベースの新型コロナ治療法開発に米政府が約16億円注入

先週我々はEmergent BioSolutions(エマージェント・バイオソリューションズ)の治療学事業部門の責任者Laura Saward(ローラ・サワード)博士に、同社の血漿をベースとする新型コロナウイルス(COVID-19)治療法の開発について話を聞いている。そして今、同社は米国生物医学先端研究開発局(BARDA)から1450万ドル(約16億円)の資金を得たと発表した。BARDAは米保健福祉省(HHS)の一部門で、今回調達した資金は、可能性がある治療法の開発のスピードアップに使う。

Emergent BioSolutionsは、新型コロナに感染し、それによって引き起こされる呼吸器疾患を抱える患者の処置に使う2種類の血漿ベース治療法の開発にすでに取り組んでいる。そのうちの1つは馬から採取した血漿をベースにしたもので、大量生産できることがメリットだ。もう1つは人間の血漿を使用していて、こちらは患者の拒絶反応を引き起こす可能性を抑えられる。

どちらの場合も、患者の免疫を高めることができる「高度免疫」治療製品を開発する1つの方法として回復期患者の血漿を使うというコンセプトに基づいている。研究者や衛生当局が調べている、回復期患者の血漿の他の使用法と似ている。しかし直接注入するアプローチではなく、Emergentはウイルスと戦うための多くの異なる種の抗体を含む血漿ベースのソリューション、しかも予想通りの効果を伴うものを作り出すことで状況を打破しようとしている。

同社はすでにこれらのソリューションの開発に取り組んでおり、似たような治療法を実用化させた以前の経験をフル活用しながら開発、認証、テストを急いでいる。しかし今回、特に人間の血漿を使ったプログラムの開発を加速させるためにBARDAから1450万ドル(約16億円)を得た。計画では、新型コロナウイルスから回復した人の血液を使って開発を行う。同社はまた、すでに献血の回収とスクリーニングを始めている。

次のステップとして、Emergent BioSolutionsのソリューションは米国立アレルギー感染症研究所との臨床試験で確かめられる。同研究所が治療の有効性を判断する。

画像クレジット:zhangshuang/Getty Images

新型コロナウイルス 関連アップデート

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(翻訳:Mizoguchi

Disney+が米国でのQ1ダウンロード数でNetflixを上回る

Netflixはまだグローバルのダウンロード数を独占しているかもしれない。しかしDisney+は、11月にサービス提供を開始した米国で大成功を収めている。

Disney+の成功はすでに明白だ。他のレポートではDisney+が2019年米国で最もダウンロードされたアプリで、検索トレンドでも最上位にきていると報告された。そしてモバイル分析会社Apptopiaと顧客管理プラットフォームBrazeの新たなレポートでは、Disneyのストリーミングサービスは2020年も引き続き好調としているとしている。

レポートではDisney+のサービスが米国で始まる前と始まった後を調べており、2020年1〜3月に最も人気だったストリーミングアプリのチャートも示している。

チャートによると、世界で最もダウンロードされたストリーミングアプリはNetflixで、5910万回だった。そして3940万回でYouTubeが続いた。Disney+(現在は欧州とインドでも提供されている)のダウンロード数は1750万回で7位だった。

しかし米国でのDisney+のダウンロード数は1410万回で、これに対しNetflixは1190万回(すでに米国マーケットでは飽和状態になっているのかもしれない)、Huluは810万回だった(主にDisneyが経営を支配している)。

ただ、NetflixとDisneyだけの争いではなく、このどちらも最も使用されたアプリではなかったことは記しておくに値するだろう。米国、そしてグローバルで最も使用時間が多かったのはYouTube Kidsだった。

画像クレジット: ApptopiaとBraze

もちろん新型コロナウイルス感染症(COVID-19)がさらに人々をストリーミングに誘導している。レポートでは、3月のストリーミングセッションは30.7%増加したと指摘されている。

また、Disney+の成功は新たなストリーミングサービスが受け入れられる余地がまだあることを意味している、とレポートは指摘している(だが単にディズニーのエンターテインメント界独占を反映しているだけかもしれない。QuibiやNBCUniversalのPeacock、WarnerMediaのHBO Maxが今後数カ月以内にサービスを開始するが、同じように成功するかはわからない)。

加えてレポートは、デイリーアクティブユーザー(DAU)に基づく各サービスの使用量を増やすための戦略にも言及している。最も人気のブランドはプッシュ通知の使用が21%、アプリ内メッセージの送信も300%多かった。そして「ファンダム(大規模なコミュニティ)をつくったコンテンツが王様」と結んでいる。

Adult Swimの漫画シリーズ「RickとMorty」が、短期・長期の月間アクティブユーザー数を最も効率的に生み出しているコンテンツだ。「RickとMorty」の最新シーズン期間中、Adult SwimのアプリのDAUは504%増加した。Amazon Prime Videoの「The Marvelous Mrs. Maisel」、HBOの「Game of Thrones」、そしてスポーツイベントも効果的な方法でDAUを増やした。

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(翻訳:Mizoguchi

新型コロナ対策として空港の混雑などを監視するZensorsのコンピュータビジョン

新型コロナウイルスの感染が広がる中、商用のコンピュータビジョン技術が人々の行動を観測する有益なツールになりつつある。機械学習でレストランの空き状況や行列などを追跡するスタートアップのZensorsは、感染拡大防止のために測定のシステム化を必要としている空港などで、このプラットフォームを無料で利用できるようにする。

Zensorsが創業したのは2年前の2018年だが、TechCrunchは2016年に防犯カメラの映像などから有用なデータを抽出するコンピュータビジョンのアーリーアダプターの1つとして同社を紹介した。レストランを映すカメラでテーブルの空きを数え、時間の経過に伴うデータの変化を追跡するのは可能で当然のことのように思えるかもしれないが、数年前にはなかなか思いつかないことで、実現も簡単ではなかった。

それ以来Zensorsは、空港、オフィス、小売店などそれぞれの環境に合わせたツールを作ってきた。座席の埋まり具合やゴミ、行列の見込みなどを調べることができる。偶然ではあるが、人と人との距離を注意深く監視する必要がある現在の状況において、このようなデータは空港などの管理者にとってまさに必要なものだ。

Zensorsはカーネギーメロン大学から生まれた企業だ。Zensorsの共同創業者であるAnuraag Jain(アヌラーグ・ジェイン)氏は同大学に対し、Zensorsの技術を公衆衛生に生かしたいと考える空港などから多くの問い合わせを受けたと語っている

例えば、何人が行列に並んでいるかを数えるソフトウェアを応用すれば、簡単に人々の密集具合を推計し、人が集まり過ぎていたり狭い場所に集中したりしているときにアラートを送信できる。

「これで利益を得るのではなく、無償で支援しようと考えた」とジェイン氏は言う。そこで最短でも今後2カ月間、Zensorsは同社のプラットフォームを「我々のクライアントである空港など、現在の危機に最前線で対応している一部の組織」に対して無償で提供する。

特定のエリアにいる人が多すぎないか、ある場所が最後にいつ清掃されたか、急いで清掃する必要があるか、ある集団の中で何人がマスクをつけているかなど、新型コロナウイルスに関連して知りたい情報を提供する機能がすでに強化されている。

空港ではおそらくこうした情報をすでに追跡しているが、あまり体系化されてはいないだろう。このようなシステムは、清潔な環境を維持しリスクを減らすのに役立つはずだ。Zensorsとしては無償で試用した組織の一部が料金を支払うクライアントになることを期待していると思われる。関心を持った組織は、Zensorsの通常の問い合わせフォームから相談できる。

トップ画像クレジット:Zensors

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(翻訳:Kaori Koyama)

新型コロナ蔓延のいま、我々は安全なオンライン投票について検討しなければならない

オンライン投票

予備選挙と選挙を延期した州が急速に増加している。ニュージャージー州は地方選挙の延期をも決定した。議会でさえ、今後挙がってくるパンデミック関連法案の採決をリモートな手段で行うべきという要求が高まっており、新型コロナウイルスの蔓延という前例のない事態に対処する中で、伝統から離れ、安全な選挙とは何かを再考している。

しかし、この議論では重要な背景を見落としている。多くの米国市民はすでに在宅でまたは海外からオンラインによる投票を行っているのだ。米国の23州およびワシントンDCでは一部の不在者投票をEメールで、また別の5つの州ではウェブポータルで行うことを認めている

我々は、一部の有権者にオンラインによる投票手段を提供することが義務付けられている2つの州の選挙担当官である。これらの有権者にとって、この議論は学術的なものではなく、必要上の問題である。従来の投票方式は海外在住者、軍勤務者、障害者にとって機能していない。選挙担当官として、市民の憲法上の権利を守るのは我々の義務であり、彼らがどのような環境にいるのであれ、また彼らの現実がどのようなものであれ、オンライン投票を実現することで、これらの2つのグループに属する人々が我々の民主主義に参画する機会が劇的に改善するのである。

オンライン投票を認めるか否かを議論すべきではない。そうではなく、問うべきは「電子的なかたちでの投票を促進するための最も安全な方法とはなにか」である。オンライン投票はすでに既存のものだからである。また一部の有権者グループにオンライン投票が必要とされており、そのニーズが近い将来拡大する可能性があるからである。

連邦投票支援プログラムが隔年で行う海外米国市民人口分析によると、全国で300万人の有権者が海外に在住しているが、そのうち2016年の選挙に投票したのは7%だけであった。同分析によると、投票方式におけるバリアを取り除くことで、投票率が30%上がることがわかった。また別の分析では、100万人近くの現役軍人が投票権を持っているにもかかわらず、2018年の選挙で実際に投票したのはそのうちの約23%にすぎなかったことが明らかになった

従来の郵送による不在者投票や決まった場所で行われる投票の仕組みはこれらの有権者の役には立たない。選挙権を奪われているのは、彼らだけではない。投票率について言えば、障害者を持つ3500万人の投票者にとっても現実は厳しい。2017年10月の米国会計検査院の報告書でも、プライバシーを守った形での投票を難しくする機械など、障害者が投票するにあたっての多くの問題が明らかにされた。 2017年のラトガース大学の研究で明らかになったように、過去2回の大統領選挙で障害者の投票率が2008年の57.3%から2016年の55.9%に下がっているのは無理もないことである。

新たなテクノロジーにより、海外に在住する米国市民や障害を持った有権者の投票へのアクセスが拡大され、確保される。ユタ州の最高齢の有権者である、106才のMacCene Grimmett(マッケーン・グリメット)さんについて考えよう。彼女が生まれた1913年には、女性の選挙権は認められていなかった。彼女は2年前に足首を負傷して以来、外出できなくなり、またペンをしっかり握ることも難しい。しかし昨年、モバイルデバイスのアプリのおかげで投票することができたのだ。テクノロジーによって力を得たマッケーンさんは、誰かに頼ることなく、匿名で、安全にそして威厳をもって、彼女の最も基本的な市民としての義務を遂行することができた。

全国で様々な規模の先行試験や検証が行われ、現在のところ前向きな結果が示されている。2019年にユタ郡が海外在住者に携帯電話による投票を提案したところ、投票率に飛躍的な増加が見られた。アプリを使って海外から投票した有権者の投票率は、投票日に実際に会場に出向いて投票した人の投票率よりも高かった。2019年には、オレゴン州でも市民に対しアプリによる投票を認めた

重要なのは、全ての先行試験に厳密に結果を精査する機能が含まれているため100%の精度を確保できる点である。

最終的な課題は、投票へのアクセスを最大化するために、安全で革新的な方法でいかにテクノロジーを継続的に用いるかである。安全は最優先事項である。我々は、相互につながりあった世界に住んでおり、海外の敵やその他の悪意のある組織が情報技術を使用して我々の政治システムを弱体化させようとしていることを深く認識している。今後に向けて進む中で、我々自身の責任として、自らの環境を理解しておくべきである。

これらの懸念は実際問題ではあるが、インタネットを基盤とした投票の必要性や潜在的なメリットを抑制するものであってはならない。我々のテクノロジーには全く綻びがないと盲目的に信じることはできないのと同様、何百万もの有権者の選挙権を無駄にし、選挙への信頼を揺るがすような無意味で全面的な不信に陥る必要もない。

大ざっぱな判断を下すのではなく、それぞれのケースを個別に検討する必要がある。例えば、アイオワ州では、不十分なトレーニング、検証の欠如や、ある政党による特定のテクノロジープラットフォームに関する政党幹部会での結果報告にトラブルなどがあったことが原因でオンライン投票がうまくいかなかった。その失敗がなぜユタ州の障害者やオレゴン州の軍人がアプリで投票し、承認することに悪影響を与えるべきなのだろうか?

全市民のために投票へのアクセスを確保することにより投票率を上げることは、我々の民主主義を守るために、最も優先すべき事項である。21世紀の今、投票に電子的な手段が含まれるのは必然の成り行きである。海外の有権者に関する問題に直面し、また国内ではCOVID-19のような新たな課題が発生し、人々が大勢集まり長い列を作ることは脅威と考えられる現在では特にである。

我々は投票へのアクセスを広げるため、システムを強化しより耐性の高いものにしつつ、試行や実験を継続していく必要がある。小規模の先行試験からはじめ、機能する点を確認し、結果を厳密に精査してから、それをまた新しい段階の検証へと活用していくのである。例えばアプリベースの投票はEメールで投票を返信するよりも安全であり、Eメールでは不可能な投票者の匿名性を保護することもできる(Eメールを開き、集計のため投票を紙の投票用紙に手書きでコピーする担当者は、誰が送信したかわかるため)。

これらはインターネット上での投票が現時点で成功を収めている側面である。我々がゆっくりと責任と自信をもって前進するのと並行し、これらの成功が議論が促進してくれるはずである。

【編集部注】寄稿者のAmelia Powers-Gardner(アメリア・パワーズ-ガードナー)は、2019年1月に就任したユタ州ユタ郡の郡書記官。Chris Walker(クリス・ウォーカー)はオレゴン州ジャクソン郡の郡書記官だで、2008年に初めて任命され、 その後2010年、2014年に再任された。

画像クレジット: NickS / Getty Images

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(翻訳:Dragonfly)

米国でも布マスク推奨へ、米疾病予防管理センターが一般人に布マスク着用の要請を出す見込み

米国時間4月2日にホワイトハウスは、症状のない非医療従事者がマスクを着用することを奨励していなかったこれまでのガイドラインを、間もなく変更する可能性が高いことを発表した。この変更はCDC(米国疾病予防管理センター)から「ガイダンス」(要請)として発行されことになると思われるが、新型コロナウイルス(COVID-19)危機の中で、連邦政府の権力を行使することを躊躇し続ける大統領はそれを義務化する予定はない。

なお医療グレードのマスクの供給は、新型コロナウィルスの被害を受けた場所、あるいは程なく被害を受けるであろう場所で供給が極めて厳しくなっている。そうした不足が続いているため、新しいガイダンスの中で使うことを要請されるのは、布製マスクおよび非医療用の顔面カバーのみが対象となることが予想されている。

4月2日のホワイトハウスの記者会見で、コロナウィルス対策本部の渉外コーディネーターであるDeborah Birx(デボラ・バークス)博士は、新しいガイダンスは「追加の」保護手段を与えるもので、置き換えるものとして意図されたものではないと強調した。「要請が出たとしたら、もし出たらの話ですが、それは追加の対策になるでしょう」とバークス博士は語った。

バークス博士は、ホワイトハウスとCDCが新しいマスク要請を出すことをためらった理由は、そのことで人びとに、米国の封じ込め活動の鍵となる重要なソーシャルディスタンシング(ウイルスに感染しないために他人と距離を空けること)対策に対する気の緩みを招きかねないからだったと語る。「私たちは皆さんに決して『さあ、マスクをしたぞ、だから自分は大丈夫だし、他の人にも感染させたりしない』と思って欲しくないのです」。

バークス博士が布製マスクによる新しい予防策の背後にある考え方を説明した際に、トランプ大統領も自身の根拠のない情報の解釈を発表した。「マスクをつけたかったら、つければいい」とトランプ大統領は言った。だが残念なことに「多くの場合は、スカーフのほうがいいだろうね、なにしろもっと厚いから」という誤った情報も付け加えた。

新しいガイダンスは今後数日のうちに、CDCから発表される予定だ。 ワシントンポストが入手したメモによれば、症状のない人がウィルスを感染させているという証拠から、CDCは布マスクの推奨を検討し始めたということである。ポリシーのドラフトには、CDCが「周りの人へのウィルスの蔓延を防止するために人々が取ることができる追加の公衆衛生対策として、コミュニティに対して布マスクの使用を推奨する」と書かれている。

米国時間4月1日にロサンゼルス市長のEric Garcetti(エリック・ガルセッティ)氏は、N95とサージカルマスクは医療従事者に直接渡されるべきであることを強調しながら、住民に対し公共の場では顔を覆うよう促した。

適切な個人用保護具(PPE)を入手できない医療従事者や、保護対策を講じたい人たちのために、自家製マスクを作る草の根職人たちの運動がすでに全国的に広がっている。多くのオンラインリソースが、マスクの作り方や縫わずに作る方法に関する、パターンやハウツーを提供している。これから出される布マスクに関する新しい連邦要請は、多くの企業が耐え忍ぶために創造的な動きをしている中で、企業が新型コロナウイルスとの闘いに役立つリソースを生み出す機会を提供することもできるだろう。

日本や韓国のような国では、パンデミック時以外でもマスク着用は日常的に行われているが、欧米諸国では一般的にマスク着用はあまり好まれていない。米国人に対して発せられている、医療従事者に医療用マスクを寄付するように促すメッセージと、同時に発せられているマスクは日常的な状況でウィルスに対する保護を提供しないことを示唆する当局からの混乱したメッセージによって、社会規範は混乱するかもしれない。

「皆さん、心からのお願いです。マスクの購入をやめてください!」、米国公衆衛生局長官 Jerome Adams(ジェローム・アダムス)氏は、2月下旬にこのように ツイートした。「マスクは一般市民が#Coronavirusに感染することを防ぐのには効果的ではありませんが、もし医療提供者が患者のケアをする際にマスクを入手できない場合には、医療従事者と私たちのコミュニティを危険にさらします!」。

米国人が行う個人用のマスクを買いだめは、すでに逼迫していた医療従事者のための個人用保護具の供給を、さらに悪化させる可能性があったため、危機の初期段階ではこのようなメッセージは意味があったかもしれない。

布製マスクは医療用マスクほど効果的ではないが、たとえ不完全であったとしても、ウィルスの蔓延を制限するためには何もないよりはましだ。インフルエンザが大流行した場合の自家製マスクの有効性を検証するために、2013年に行われた先見性のある小さな研究によれば、研究者たちは布製マスクを「最後の手段としてのみ考慮されるべきである。しかし、何も保護しないよりはマシだろう」という表現で推奨している。

ケンブリッジ大学出版局が発表した研究によれば、手作りの布製マスクと従来の外科用マスクの両方で、着用者が排出する感染性のある飛沫の量は「有意に」減少したが、感染防止効果は外科用マスクの方が3倍優れていたという。自家製マスクは医療用マスクのように使い捨てられることが少ないため、使用後に洗浄して感染性の飛沫を取り除く必要がある。

木曜日に保健当局は、マスクを使用することは、物理的な距離対策を緩和しても良いという意味ではないことを、注意深く強調した。

「マスクを使うことが、現在皆さんにお願いしている全ての対策の代替になるものではないということを肝に銘じておいてください!」とバークス氏はコメントした。

画像クレジット: SeongJoon Cho/Bloomberg via Getty Images / Getty Images

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(翻訳:sako)

米国市場は記録的失業数は影響せず再び株価が上昇

およそ660万人が失業保険を申請した歴史的失業率が報じられる中、米国の株価は米国時間4月2日の通常取引時間に上昇した。

新型コロナによる米国内死者数の恐ろしい推定値が株価の下落をよび、政府の感染速度緩和の対策による経済低迷が続く中、米国の主要インデックスはそろって上昇した。

一方で米国連邦政府は、 CARES法の刺激策の一環として2兆ドル近い資金を米国経済に投入する方法の詳細を詰めているところだ。そして製薬会社と医療機器会社は診断ツールの改善ウイルス治療の新たな方法の開発のために休みなく働き、ワクチン開発規制当局の承認プロセスに向けてゆっくりと進んでいる。

主要3インデックスの数字は以下のとおり。

  • Dow Jones Industrial Average(ダウ平均株価):+469.93ドル、+2.24%
  • S&P 500:+56.40ポイント、+2.28%
  • Nasdaq Composite:(ナスダック総合指数) +126.73ポイント、+1.72%

テック株の多いNasdaqの上昇率は主要インデックス中で最も低く、この良き日がテクノロジー業界にとって必ずしも明るいものではないことを示している。この事実は、SaaS関連およびクラウド株の大量売りによる急落が強調しており、ベンチャーキャピタルのBessemer(ベッセマー)が算出したクラウドインデックスはこの日1.4%下落した。Nasdaqはいまだに下げ相場の領域にいる。

今日の時間外取引でTesla株は、同社が株主を喜ばせる納車台数を発表した後値上がりした。気まぐれな自動車会社はこの3ヶ月の期間に8万8400台を納車したことを発表し、予測されていた7万9900台(FactSetによる)を上回った。

今後を見渡すと、新たな失業者数が示唆する大規模な経済的影響を市場が消化できているとは感じられない。雇用率が急落し、世界中の経済が商業より安全を優先する中、世界は一時停止や静止どころではなくなるかもしれない。われわれは大恐慌の第一週を見下ろしているのかもしれない。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

新型コロナ対応の細胞療法の早期治験を米食品医薬品局がCelularityに認可

Celularity(セルラリティ)は、ベンチャーキャピタルから支援を受け、癌治療のための画期的な細胞療法に取り組んでいる。新型コロナウイルス(COVID-19)に有効と考えられる治療法に関する早期臨床試験を開始するため、必要なFDA(米食品医薬品局)からの初期認可を受けた。

画像クレジット:Andriy Onufriyenko/Getty Images

Crunchbaseによると、同社はこれまでに、少なくとも2億9000万ドル(約313億円)を調達している。「ナチュラルキラー」(NK)細胞療法を使用して、免疫システムが疾患と闘う際の反応を高める。Celularityでは、こうしたNK細胞を、胎盤組織から培養された幹細胞から得ている。通常は、病院が医療廃棄物とみなしているものだ。

同社は、ベンチャー投資会社のSection 32と、いくつかの戦略的投資家から支援を受けている。その中には、現在はブリストル・マイヤーズ(Bristol Myers)の一部門となったCelgene、生物医学技術開発会社のUnited Therapeutics、J. Craig Venter(J・クレイグ・ベンタ―()氏によって創立され、ベンチャーキャピタルから支援を受けたスタートアップのHuman Longevity、そして上場している生物医学企業のSorrento Therapeuticsが含まれる。Celularityは、新たな細胞療法についていくつかの応用に取り組んでいたが、それはもともと癌治療に焦点を当てたものだった。

同社が成し遂げた本当のブレークスルーは、細胞療法に使う細胞を、患者から取り出した細胞から培養する必要がないこと。それは時間もお金もかかるプロセスなのだ。それゆえ、同社への期待は高く、多くの資金が集まった。Celularityは、NK細胞を生成して保存できるので必要なときにいつでも輸血できる。

Celularityでは「FDAの承認を得て、86人を対象とした小規模な治験を開始し、新型コロナウイルスに感染した成人に対し、CYNK-001免疫療法による治療の有効性をテストする予定である」と述べている。中国でも、ナチュラルキラー細胞が新型コロナウイルスの治療に使用できるかどうかをテストする、少なくとも2つの研究が進行中だ。

NK細胞は、身体の免疫系の一部である白血球の一種。特定の病原体を標的とするt細胞とは異なり、NK細胞は通常、免疫システムをサポートするように働く。感染や変異によってストレスを受けていると判断される体内の細胞を特定して破壊する。

この治療法は、特定の種類の癌の治療には効果を上げているものと考えられる。同社の研究者は、新型コロナウイルスを全身に広げる新型コロナウイルスの能力を停止させることで、同様の結果が得られると推測している。

ただし、NK療法を実施するにあたっては、それ相応の潜在的な障害とリスクがある。何よりも、新型コロナウイルスは免疫システムを暴走状態にする可能性があり、致命的となる場合もある。感染によって引き起こされる「高サイトカイン血症」だ。免疫システムが、肺の健康な細胞を攻撃し始め、臓器不全を起こして死に至らしめる。その場合、新型コロナウイルスに対する免疫反応を高めることは、患者にとって危険なこととなる。またNK細胞が、新型コロナウイルスを引き起こす新型コロナウイルスに感染している細胞を検出できず、治療の効果が得られない可能性もある。

「研究では、ウイルスの種類に関係なく、ウイルス感染に対してNK細胞が強力に活性化されることが確かめられています」とCelularityの最高科学責任者であるXiaokui Zhang(キアオクイ・ジャング)氏は、声明で述べている。「こうした作用は、CYNK-001が感染した細胞を排除することによって、SARS-CoV-2ウイルスの複製を阻害し、疾患の進行を遅らせることで、新型コロナウイルスの患者に有益である可能性を示唆しています」。

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(翻訳:Fumihiko Shibata)

新型コロナ感染回避を強力に支援するビデオチャットアプリ8選

video call

ソーシャルディスタンス(社会的距離)の変遷を多くの人が驚きを持って受けとめる中、ビデオ通話が距離のある人との交流に欠かせない新しいツールになりつつある。しかし、巷にあふれる多くのアプリの中から、あなたと(テクノロジーに疎いかもしれない)友達や家族に適しているのはどのアプリなのだろう?お茶するときによし、家族の集まりによし、深夜のゲーム大会によしのお勧めアプリを紹介していこう。

ここで紹介するサービスは、簡単に他の人々とつながることのできる無料アプリを探している個人向けのもので、中小企業を含めた企業向けのものではない。セレクションのポイントは、使いやすさと一般の人々が魅力を感じる機能だ。アプリはすべて無料で、クロスプラットフォーム、つまり少なくともiOSとAndroidで使用でき、多くはmacOSやWindowsにも対応している。

多人数グループ向け

Skype(iOS、Android、macOS、Windows、Linux、ウェブ)

skype

良い点: 一度に多くの人と通話が可能
悪い点:他の機能に力を入れすぎ
Skypeは長く使われてきた。そのデスクトップアプリはいまひとつだが、モバイルバージョンは安定している。無料で多人数に対応可能で、実質上制限はない(1通話あたり4時間、月あたり100時間)。ビデオ通話をメインに考えているのであれば、優秀なアプリである。しかしSkypeの絵文字リアクション、ステータスの更新、およびその他のお粗末な機能は回避するのが最善。

Zoom(iOS、Android、macOS、Windows)
Zoom
良い点:一度に多くの人と通話が可能、主催者の権限が強い
悪い点:不完全なバックグラウンドデータポリシー、40分の通話制限
Zoomは、ビジネスビデオ会議アプリとしては最も人気のアプリの1つだ。信頼性が高く、安定したウェブ統合とその他の機能を備えている。Zoomは本来個人の通話用に作られたものではない。個人使用には必要ない機能も多数あるが無料版で十分だ。残念ながら、グループ通話には40分の時間制限が設けられている。40分は思ったより早く経過してしまい、全員がいったん通話を終了し、もう一度開始しなければならない。Zoomは無断で大量のデータを収集してたことで批判されてきた。友達とおしゃべりするだけなら、他にもっと良い選択肢がある。

友達・家族向け

Facebook Messenger(iOS、Android、macOS、Windows)
Facebook Messenger
良い点: 簡単に使用でき、多くの人が既に持っており、便利なグループ機能
悪い点: Facebookアカウントが必要
メッセンジャーの人気には理由がある。メッセンジャーがあれば、友達とのほぼすべてのデジタル通信の機能がある。無料の時間無制限のビデオ通話に最大8人が参加できる。2人で通話を行う場合は、サーバーを経由しないピアツーピア構造に切り替わり、渋滞を回避することができる。もちろん、これもFacebookの製品なので、Facebookアカウントが必要になってくるが、アカウントの作成を嫌がる人もいる。しかし、メッセンジャーは、Facebookへの投稿や画像よりもスヌーピングから保護されている。

WhatsAppメッセンジャー(iOS、Android、macOS、Windows、ウェブ)

whatsapp

良い点: 安全、多くの人が使用
悪い点: 1回のビデオ通話で4人まで
WhatsAppは、FBメッセンジャーの冴えない、やや見劣りする兄弟に例えることができる。かなりブサイクであっても、プライバシーに焦点を当てているため、WhatsAppは世界中で多くの人に支持されている。ビデオ通話はWhatsAppの主要機能ではないが、4人しか参加できないことが気にならないのであれば、悪くないアプリである。ビデオ通話をするには、グループチャットを開始し、右上の通話ボタンを押して参加者を選択し、カメラを押す。

Google Duoまたはハングアウト (iOS、Android、ウェブ)

Google Duo

良い点:シンプルなインターフェース、既存のGoogleアカウントの使用
悪い点:複雑なプラットフォームの問題、Duoは今後消えていく可能性あり
Duoは、Googleの比較的新しいメッセージング製品でAlloの補完を目的としている。ハングアウトのコンシューマーバージョンという位置付けで、ChatとMeetに分割されているが、独立した存在である。紛らわしい? それこそGoogleである。しかし現在このアプリはとてもうまく機能している。既存のGoogleコンタクトやアカウントに接続し、簡単にビデオ通話ができる上、特に制限はない。友達が新しいアカウントを作成したがらない場合、これはよい選択肢である。ただし、あまり依存してはいけない。人気のないGoogle製品の寿命は長くはないからだ。

Marco Polo(iOS、Android)

良い点: ビデオメッセージングはライブチャットの代替手段として楽しめる機能
悪い点: ライブチャットオプションがない
いわゆるビデオチャットアプリではないが、全員が対面式のライブビデオ通話を望んでいるわけではないのは事実だ。Marco Poloは合理化されたSnapchatのような存在で、落書きやフィルターなどを追加するオプションを使用して、短いビデオを友達やグループに送信するのに利用される。友達と話すのに30分も時間がない場合には、良いオプションになるだろう。

次点FaceTime、Instagram

FaceTimeは優秀なアプリだが、クロスプラットフォームではないため、かなり有用性が制限されている。友達がたまたまApple製品を使用していたら、FaceTimeは優秀でシンプルなオプションだ。Instagramにはダイレクトメッセージにビデオ通話が組み込まれている。内輪のグループにいれてもよいかどうか確信がもてない人と、ちょっとした通話を行うのに便利だ。

一緒に楽しいひとときを過ごすためのアプリ

Houseparty(iOS,、Android、ウェブ)

Houseparty

良い点: グループチャットへの出入りが簡単、ゲーム内蔵
悪い点: 基本的にHeads Upのためのトロイの木馬
Housepartyは、10代の若者が家に居ながらにして友達グループとチャットするために使用するアプリとしてそのブランドを確立した。大人には不評。しかし、そういったものの常として、子供には支持されている。Housepartyは仲良しグループでの使用に適している。誰かがオンラインになれば通知され、チャットにもで簡単に入ることができる。アプリ内のゲームも楽しめるが、Heads Upをするには課金されてしまう。ピクショナリークローンは楽しいが、限られた文字数では紹介しきれない。

Discord(iOS、Android、macOS、Windows、Linux、ウェブ)

Discord

良い点: ゲームをしながらボイスチャットをするか、たまに簡単なビデオチャットをするのに最適
悪い点:インターフェースが時々紛らわしく、ビデオが中心機能ではない
Discordはゲーム関連コミュニティーでは事実上の王者と言ってよく、ゲーム内チャットインターフェースやSteamなどの教育業界の大物に取って代わるものだ。Discordの主力サービスは音声チャットであり、そちらは良好だが、ビデオチャットも選択できる。複数のタブ、グループ、チャンネルがあるため、テクノロジーに精通していないユーザーには、そのインターフェースは紛らわしいかもしれない。

次点BunchSquad

新しいアプリ、Bunchは, ビデオチャットをしながらグループでゲームをすることに力を入れている。うまく機能するかどうかわからない上に一部のゲームにアプリ内課金がある可能性がある。しかしプラットフォームは当初から多くの人が利用しているので、この際試してみてはどうだろう。

Squadが力を入れているのが、自分がスマートフォンでしていることをチャットしながら共有する機能だ。一緒にTinderをチェックしたり、ビデオを見るといったことが可能だ。Bunchと同様、Squadは未だ新参のアプリであるため、友達にサインアップをしてもらわなければならないが、自分がスクロール(またはスワイプ)しているものをそのまま友達と共有するのには最適な手段だ。

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(翻訳:Dragonfly)

買い物代行のInstacartもショッパーにマスク、消毒剤、体温計を配布へ

Instacart(インスタカート)はフルタイムで働くショッパー(Instacartで買い物品を顧客に届ける人のこと)への健康・安全キットの配布を開始する。同社は2日、キットにはフェイスマスク、手指消毒剤、体温計が含まれると明らかにした。

このキットは来週から無料でショッパーに提供される。Instacartによると、ショッパーはInstacartショッパー電子メールで登録してキットをリクエストできる。需要に対応するため、同社は毎日在庫をアップデートする。店内での買い物業務を担うショッパー向けには、それぞれの小売店舗のショッパーにフェイスマスクを提供する。

「手指消毒剤やフェイスマスクのような個人用保護品は入荷が遅れ、また世界的に品薄になっているが、それらをヘルスケアワーカーから奪うことなく積極的に確保するために当社のチームは昼夜問わず取り組んでいる」とInstacart会長のNilam Ganenthiran(ニラム・ガネンティラン)氏は声明で述べた。「グローサリーや日用品の入手で頼れる必須のサービスを我々は顧客に提供したい。その一方でInstacartのショッパーに安全でフレキシブルな収入の機会を提供する。新型コロナウイルス(COVID-19)の感染が拡大するにつれ、今日の健康や安全のためのソリューションは、明日のために必須のものだ。当社のチームは、ショッパーコミュニティがこうした状況でも守られるよう、新しいサービスや機能を導入すべく素早く取り組んでいる」。

今回の発表は、一部のギグワーカーによるストライキが展開されている中でのものだ。3月27日、Instacartショッパーのグループはストライキの計画と同社が要求に応じるまで職場復帰しないと発表した。労働者に個人用保護品を無料で提供すること、オーダー1件あたり5ドル(約540円)の危険手当を上乗せすること、デフォルトのチップを10%にすること、疾病手当を新型コロナの影響を受けやすい持病を抱えている人にも適用すること、そうした福利厚生の資格申し込みの期限を4月8日以降に延ばすことを要求している。

これを受けInstacartは申し込み期限を延ばし、デフォルトのチップを顧客が払うチップ額に設定した。しかしこれでは十分でないとショッパーは話す。Mediumへの投稿の中で、労働者はInstacartの対応を「侮辱的」で「質の悪い冗談」と形容した。

「行動を起こすのにこんなに時間がかかるとは、まったく忌まわしい。しかしストライキがInstacartの行いを変えるのに効果的であることがわかったのは収穫だった」と投稿に書いた。

労働者への危険手当や新型コロナでかなりのリスクを負う人への支払いはまだだ。労働者に不穏な動きが広がる中で安全プロトコルを引き上げる企業はInstacartだけではない。Amazon(アマゾン)は、倉庫で働く従業員やWhole Foods(ホールフーズ)の従業員向けにサージカルマスク配布を開始すると明らかにした。

新型コロナウイルス 関連アップデート

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(翻訳:Mizoguchi

Estimoteが新型コロナ接触者を追跡するウェアラブル端末を発表

Bluetoothを使ったビーコン端末のスタートアップであるEstimote(エスティモート)は、その専門技術を活かし、新型コロナウイルス(COVID-19)の感染拡大を抑えるための一連の新製品を開発した。同社は、社会的距離の確保や隔離が要請されている間も物理的に狭い場所に集まって作業しなければならない人たちの職場の安全性を高めると共同創設者Steve Cheney(スティーブ・チェイニー)氏が確信する、新分野のウェアラブル端末を作り出したのだ。

ストレートに「Proof of Health」(健康の証)ウェアラブルと呼ばれるこのデバイスは、接触者の追跡を目的としている。言い換えれば、それぞれの職場の施設レベルで、人から人への新型コロナウイルスの感染経路をモニターするものだ。その狙いは、従業員の間で万一感染が発生した場合、状況を把握し、手遅れになる前に拡大を抑制する手立てを提供することにある。

このデバイスには、パッシブGPSによる位置追跡システムに加え、Bluetoothと超広帯域無線(UWB)接続を利用した近接センサー、充電式バッテリー、LTE通信機能が備わっている。さらに、装着者の健康状態や、健康の保証、症状、感染の確定といった記録状態の変更を手動で行える。装着者が、感染の可能性または感染確定に自身の状態を変更すると、接近した距離と位置情報の履歴を基に、接触した相手の情報が更新される。これらの情報は、接触の可能性のある人たちの詳細情報を保管し集中管理するための健康ダッシュボードにも記録される。現在は、ひとつの組織内での使用を想定してデザインされているが、この情報を企業全体あるいは一般社会での追跡に役立てることができないか、WHOを始めとする保健機関と協力する道を探っているとチェイニー氏は話している。

このデバイスは、さまざまな形態で展開できるよう作られている。現在すでにある丸い小石のようなタイプ(紐を取り付けることで首に装着して情報を確認できる)、調整可能なバンドで腕に巻くタイプ、施設の入出管理でよく使われている従来型のセキュリティーカードと一緒に携帯しやすいコンパクトなカード型タイプがある。小石型タイプはすでに生産に入っており、これから2000ユニットが展開される。近い将来、同社のポーランドにある製造資源を生かして、さらに1万ユニットを生産できるよう態勢を強化する予定だ。

Estimoteは、ほぼ10年間、企業向けにプログラム可能なセンサー技術を構築し、AppleAmazonといった巨大グローバル企業とも協力関係にある。チェイニー氏が私に話してくれたところによると、彼はその技術を、パンデミックによって生じたこの特異な問題に応用する必要性を即座に認識したというが、Estimoteはすでに18カ月前から、別の目的でその技術の開発に取り組んでいた。サービス業界の従業員向けに、安全対策や非常ボタンを提供するというものだ。

「このスタックは18カ月間、フル稼働しています」と彼はメッセージで話してくれた。「私たちは、すべてのウェアラブルのプログラムを遠隔で操作できます(LTE接続されてます)。工場に配備する場合、そのウェアラブルに遠隔でアプリを開発します。これがプログラマブルIoTです」

「ウイルスのおかげで、人と人が間近に接する場所での健康確認の診断技術が必要になるなんて、誰も思いませんでしたよ」と彼は言い足した。

接触者追跡をテクノロジーで実現しようという提案は数多くある。スマートフォンで収集された既存のデータを利用する方法や、カルテを転送する消費者向けアプリの応用などだ。しかし、それらの取り組みには、プライバシーの問題が大きく関係してくる。しかも、スマートフォンを使うことが前提だ。人の行き来が激しい環境では、正確な位置追跡をスマートフォンで行うのはほぼ不可能だとチェイニー氏は指摘する。専用のウェアラブルを作ることで、Estimoteは従業員同士の「侵害」的な行為を避けることができるとチェイニー氏は言う。その目的に合わせて作られたデバイスを使用し、従業員の間だけでデータを共有するからだ。さらに、取り外しができる形態で、部分的に自分でコントロールができる。また屋内では、モバイル機器は専用ハードウェアのように精度の高い追跡が行えないとも彼は話している。

しかも、このようにごく限られた領域での接触者追跡は、感染拡大を、他の方法よりも早く徹底的に抑制するための早期警報を雇用主に伝えるだけのものではない。実際、センサーデータから得られた大きなスケールでの接触者追跡情報により、新型コロナウイルス対策に、新しい優れた戦略がもたらされている。

「一般的に、接触者追跡は、個人の記憶や、高レベルの想定(例えば、その人の勤務シフトなど)に依存しています」と、ジョン・ホプキンズ大学応用物理研究室のBrianna Vechhio-Pagán(ブリアンナ・ベッキオペイガン)氏は言う。「新しいテクノロジーによって近距離、つまりおよそ2m以内での接触を追跡できるようになり、他の方法でもたらされる誤差が減りました。BlurtoothやUWB信号からの感染状態や症状を含む濃厚接触者追跡データにより、患者や医療従事者の安全を守る新しい優れた方法が発見されるでしょう」。

人との距離を保つ方針がいつまで続くかは今のところは不明だ。何カ月も続くという予測もある。感度に差があったとしても、Estimoteのようなソリューションは、リスクを回避して従業員の健康と安全を守るための最大の努力を払いつつ重要なサービスや業務を遂行する上で、欠かせないものとなる。さらに大規模な対策も必要だろう。一般市民を対象とした接触者追跡計画などだ。Estimoteの取り組みは、そうした計画の設計や開発の参考になるはずだ。

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(翻訳:金井哲夫)

トランプ政権がGEやフィリップスなどに人工呼吸器の製造を新たに指示

救命医療機器の国家備蓄が枯渇寸前の危機的状況の中、米国時間4月2日にトランプ大統領は、国家安全保障の重要な法律を活用し、新たな企業に人工呼吸器の製造を指示することを示唆した。

国内で新型コロナウイルスの蔓延を許した無数の初期対応の誤りを政権が正そうとする中、トランプ大統領が国防生産法(DPA)と呼ばれる法律の適用をためらっていたことは多くの人々を困惑させている。前例のない公衆健康危機は、米国で20万人の命を奪うと予測されている。

「本日私は、国防生産法に基づき、国内製造メーカーが国民の命を救うために必要な人工呼吸器を確実に作るための指令を出した」とトランプ氏が声明で語った。「保健福祉省長官および国土安全保障省長官に対する私の指令は、General Electric(ゼネラル・エレクトリック)、Hill-Rom(ヒル・ロム)、Medtronic(メドトロニック)、ResMed(レスメド)、Royal Philips(ロイヤル フィリップス)、Vyaire Medical(バイエア メディカル)といった国内メーカーが、ウイルスを打ち負かすのに必要な人工呼吸器の製造に必要な物資を確保するために役立つだろう」。

この指令によって、健康福祉省のAlex Azar(アレックス・アザール)長官は「あらゆる行政機関を利用して」製造の取組みを指示できるようになる。

「大統領は、米国の人々や医療従事者がPPE(個人防護具)や薬品など必要なものすべてを確実に入手できるために、DPAを使うつもりだ」とホワイトハウスのピーター・ナヴァロ大統領補佐官が木曜日の説明会で語った。

DPAに署名しながら実際に利用しないという大統領の意図を巡る当初の大きな混乱の後、トランプ氏は方針を転換したとみえ、米国時間3月27日にゼネラルモーターズに同法を適用した。同社は国家の指導がないときから人工呼吸器の製造を開始する意思を発表していた。その変容の二日前、トランプ大統領は、GMと人工呼吸器メーカーのVentec Life Systems(ベンテック・ライフ・システムズ)が最大8000台の人工呼吸器を製造する提携を結ぶことを発表する態勢にあった。その発表は、ホワイトハウスと米連邦緊急事態管理局(FEMA)がこの取組みの10億ドルという金額にたじろいだために中止されたと報じられている

関連記事:Trump orders GM to start ventilator production for COVID-19 amid contract dispute

トランプ大統領は、人工呼吸器、マスクその他医療用品の危機的不足状態について、再三疑問を投げかけていた。「一部で言われている多くの数字は実際よりも大きいのではないかと私は感じている」とトランプ氏が先週にFox NewsのホストであるSean Hannity(ショーン・ハニティー)氏に語った。「私には4万個とか3万個もの人工呼吸器が必要だとは思えない」。トランプ大統領はN95マスクやその他の一般的防護具の全国的不足についても繰り返し疑問を呈し、ニューヨークの医療施設はマスクを紛失したか、盗難を許したのではないかという根拠のない説を示唆した。,

国が今も命に関わる救命用品の不足と戦っている中、政府のDPAに基づく指令は、対象となるあらゆる企業が政府との契約を優先するよう強制することになる。同法はまた、連邦政府が力づくで、サプライチェーンに必要な物資をつくって提供させることも可能にする。この法の力の大部分は、国家的危機の中で物資を動員するために使われているが、指令が遂行されるためには、新たに選ばれたメーカーをトランプ政権が積極的に管理、調整していく必要があるだろう。

トランプ大統領がDPAに基づく指令を出し渋っていたのは、民間企業がホワイトハウスの指示を受けることなく、自力で立ち上がることに全幅の信頼をおいていたからだったのだろう。実際一部の企業はまさにそれを行ったが、新たな製造の取組みは需要を満たすにはほど遠く、流通が解決していないことは間違いない。感染拡大が国中の地域を襲うなか、多くの州は命にかかわる救命用品を持たずに戦っている。ニューヨークで次々と明らかになる深刻な健康危機は、悲惨な近未来の可能性を垣間見せている。

画像クレジット:Hiraman / Getty Images

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

スマート体温計の発熱者マップが新型コロナ対策での外出自粛の重要性を示す

米国ヘルスウェザーマップ

スマート体温計メーカーのKinsa(キンサ)は、インフルエンザなどの季節性疾患が地域でどのように感染拡大するかを示す正確かつ予測的なモデル作りに着手しており、発熱者マップは新型コロナウイルスの世界的なパンデミックにおいて役立つ可能性がある。キンサの米国ヘルスウェザーマップでは、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)を特定してその感染拡大を追跡することはできないが、地理的データに紐づく発熱状況が確認できるため、各地域で講じられる社会的距離戦略と隔離対策の有効性が簡単に把握できる。

キンサのヘルスウェザーマップが2月にニューヨークタイムズに掲載されたとき、同社製体温計の米国市場での流通量は約100万個だった。だが、記事掲載の1週間前から注文が殺到し、注文数は1日あたり1万個ほどに及んでいる。これは同社の分析が、米国総人口に対し非常に膨大なデータセットに基づいていることを意味している。キンサ創設者兼CEOのInder Singh(インダー・シン)氏は、同社がオレゴン州立大学助教授Ben Dalziel(ベン・ダルジエル)氏と提携し、今までにない高精度と高粒度で、地域レベルでのインフルエンザ予測を可能にしたと説明した。

「私が当社を起業した理由の核となる仮説が正しいことが証明された。その核となる仮説とは、感染症の突発的発生の検出や感染拡大の予測をするためには、罹患者から得られる、医療的に正確でリアルタイムの地理的なデータが必要であることだ」とシン氏は言及した。「当社は、自社データをダルジエル氏の感染病拡大第一原理モデルに入力した。そして9月15日には、風邪やインフルエンザのシーズンの残り全期間すなわち超局所的な20週間における感染の山(ピーク)と谷に関して、非常に正確に予測できることが示された」

これまでも、インフルエンザの感染を追跡・予測する努力はされてきたが、今までの「最新技術」は国もしくは複数の州レベルでの予測であり、個別の州や、ましては地域内の傾向の追跡や予測は不可能であった。リードタイムに関しては、キンサとダルジエル氏によるモデルの数ヵ月ではなく、実質的に最短3週間で達成可能だった。

新型コロナウイルスの世界的大流行という危機的な状況がなかったとしても、シン氏、ダルジエル氏とキンサが成し遂げたことは、テクノロジを利用した季節性疾患の追跡と緩和に向けた大きな一歩である。またキンサは1カ月前に「非定型疾患レベル」と呼ばれるヘルスウェザーマップ機能を有効にした。これは米国における新型コロナウイルスの感染と、社会的距離戦略などの主な緩和戦略の効果を解明する重要な先行指標となるだろう。

「リアルタイムの病気の兆候を集め、そこから予想値を取り除く」とシン氏は新しいビューの機能について説明した。「そうすると、非定型疾患が残る。つまり、通常の風邪やインフルエンザの時期からは予想されない発熱者のクラスターが残る。それは新型コロナウイルスと推定できる。新型コロナウイルスだと断言はできないが、普通ではないアウトブレイクであるとは言える。完全に予期されなかった菌株の変異型インフルエンザの可能性もある。また別の何かかもしれないが、少なくともその一部はほぼ間違いなく新型コロナウイルスだろう」。

「非定型疾患」ビュー

キンサの米国ヘルスウェザーマップ「非定型疾患」ビュー。赤色は、発熱で示される、予測レベルよりも高い疾患を示す

発熱者報告件数

グラフは、キンサの正確な季節性インフルエンザ予測モデルに基づき、各地域の予測数(青色表示)に対する、実際の発熱者報告件数を示す

上記の例で、シン氏は発熱者の急上昇は、推奨される距離戦略のガイダンスを無視するマイアミ市民と観光客の報告と一致していることを指摘した。ただしそのエリアでは、ビーチの閉鎖やその他の隔離措置などより厳格な措置が講じられた後に急下降がみられた。シン氏は住民が社会的距離戦略を無視しているエリアには急上昇がみられ、ロックダウンやその他の措置が講じられると、その5日以内に曲線が下に向くと言及した。

キンサのデータはリアルタイムというメリットと、ユーザーによって常に更新されるというメリットがある。これは、社会的距離戦略や隔離戦略のより即効的な効果を示すという点では、増加する新型コロナウイルスの検査結果数といった他の指標よりも時間的な利点がある。こうした戦略について起こった批判の1つは、感染確認例が増加の一途をたどっていることだが、専門家は社会的距離戦略がプラスの影響を及ぼしていても、検査の利用可能性が広がると、地域に新しい感染例が増えると予測している。

シン氏が指摘するように、キンサのデータは厳密には発熱範囲の体温を示すものであり、確認された新型コロナウイルスの症例を示すものではない。しかし発熱は新型コロナウイルスの症状がある患者の重要な初期症状であり、キンサが現在行っている風邪とインフルエンザに関連する発熱患者数の予測では、現在の状況は、少なくともかなりの確率で新型コロナウイルスの感染が拡大していることを示している。

アウトブレイクの追跡に位置データを使用することに尻込みする者もいるが、シン氏は地理的な座標と体温のみに関心があると言及。これらのデータを個人を特定する情報に結び付けることはないため、完全に匿名による集計プロジェクトとなる。

関連記事:米政府はハイテク企業と協議し新型コロナとの戦いに位置情報を活す作戦を練る

シン氏は「地理的信号をリバースエンジニアリングして個人を特定することはできない。不可能だ」と話してくれた。「これは個人のプライバシーを保護し、社会や地域が必要とするデータを公表する正しい方法だ」と言う。

非定型疾患を追跡する目的で、キンサは現在利用されている標準疾患マップと同等にまで精度を上げることはできない。そうするにはより高度な精巧性が必要とされる。しかし同社は、さらに多くの体温計を市場に出すことで、データセットの拡大に努めている。キンサのハードウェアは多くの健康関連のデバイス同様、現在いたるところで在庫切れとなっているが、シン氏は部品コストの全体的な値上がりにも関わらず、サプライヤーからの部品調達を進めていることに言及した。またシン氏は、他のスマート体温計メーカーとも協力したいと考えており、同社モデルにデータを入力するか、キンサ独自のアプリをワイヤレス体温計ハードウェア用の標準接続インターフェースを使ったBluetooth体温計と互換性を持たせることも検討している。

現在キンサでは、非定型疾患ビューを進化させ、疾患レベルがどの程度の速さで減少しているか、また感染の連鎖を効果的に断ち切るにはどの程度の速さで減少する必要があるかを視覚的に示すことで、自らの選択や行動が与える影響について、一般の人々にさらに情報を提供していくことに取り組んでいる。特に毎日公表される感染者数が切迫した数値になる中で、保健機関、研究者、医療専門家は一様に奨励していることだが、外出を控え、他者との距離を保つという勧告は我々全員にとって課題となっている。キンサの追跡機能は希望の光を与え、各個人の貢献が重要であるということを明確に示してくれるだろう。

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(翻訳:Dragonfly)

新型コロナの検査と追跡調査はAppleとGoogleの協力が不可欠

検査と追跡

閉鎖の後に行われるのは、検査と追跡調査である。韓国では「マントラは追跡調査、検査、治療であり、都市封鎖、道路封鎖、移動制限ではない」。WHOは「感染拡大を抑制し制御するため各国は隔離、検査、治療、追跡調査を行わなければならない」と述べている。

しかし「追跡調査」とは実際のところどのようなものなのだろうか?シンガポールでは「TraceTogether」アプリが使用されている。このアプリではBluetoothによって(位置情報を追跡することなく)近くの電話を追跡して、ユーザーが接触した人のログ記録をローカルで保持できる。そして、ユーザーが選択または同意した場合のみ、シンガポール保健省にそれらの情報がアップロードされる(おそらくユーザーが感染者と診断された後)。これにより、感染者との接触者に警告を与えることができるようになる。シンガポールではこのアプリのオープンソース化を予定している。

韓国では、新型コロナウイルス(COVID-19)感染者と診断された人が近くにいるかどうかを知らせるメールが政府から国民に送られる。送られる情報には、感染者の年齢、性別、位置情報の詳細な履歴が含まれる場合がある。その後、さらに詳細な情報が得られるようになる。

Victoria Kim(ヴィクトリア・キム) @vicjkim
@Seoul_govで提供されているCOVID-19感染者すべてに関する詳細情報のレベルは驚くべきものだ。以下の情報を確認できる。

姓(ここでは表示を隠している)
性別
生年
居住区
職業
旅行履歴
既知の感染者との接触
現在治療を受けている病院

お察しのとおり中国では、監視の目はより深く浸透しており、さらに厳格だ。中国で広く普及しているAlipayアプリとWeChatアプリには、不明瞭な基準に基づいて設定された健康コード(緑、黄、赤)が中国政府により追加された。この健康格付は今や、数百の都市(そして間もなく中国全土)で使用されている。例えば、人々が地下鉄や電車を利用したり、建物に入ったり、さらには幹線道路を出たりすることを許可できるかどうかを判断するために使われている。

高度に民主的な世界に住んでいる私たちはどうだろうか?中国のようなモデルを受け入れられるだろうか?当然受け入れることはできない。では韓国のモデルはどうだろうか?おそらく無理である。ではシンガポールのモデルは?もしかしたら可能かもしれない(例えば、私の故郷カナダでは受け入れられるんじゃないかと思う)。しかし、TraceTogetherアプリや、それと同じ方向性を持ったMITプロジェクトのSafe Pathsアプリといった別個のアプリをインストールする必要があるということは問題だ。シンガポールのような都市国家ではうまくいっても、米国のような巨大で政治的に分断された国で成功させるのははるかに難しいだろう。収集されるデータ品質は、データの使用に対する承諾が得られないこと、および選択の偏りが原因で低いものとなるだろう。

もっと広く言えば、緊急に求められている良質なデータを収集しようとすると、個人のプライバシー保護がどのような場合に犠牲になってしまうだろうか? さらに、警察国家を目指す国や現存する警察国家に利用可能な道具を与えてしまわないようにすることが、どのような場合に困難になるだろうか? 現実を甘く見ないようにしよう。このパンデミックは独裁主義の脅威増大させており、決して縮小させてはいないのだ。

おそらく英国のNHSのように、パンデミック対策の新しいデータインフラスを構築する人たちは「公衆衛生上の緊急事態が終結したら、データは破壊されるか返還される」ことを約束するだろう。しかし、すべての組織が、求められるレベルの信頼を一般大衆から得ているわけではない。このような強い不安が原因で、パンデミックを緩和し制御するために新しい監視システムを構築する必要があるかどうか熱い議論が引き起こされている。

これは私にとってすごく意外なことだ。こうした議論のどちらの側にいたとしても、新しい監視システムを構築することにはまったく意味がない。すでに複数の選択肢が存在するからだ。あまり考えたくはないが、冷厳な事実として、すでに2つの企業グループは集合体として事実上私たちのすべての近接(および位置情報)データに対して、望む時に無制限にアクセス可能である。

お察しのとおり、それら2つのグループを構成するのは主要な携帯電話プロバイダー、そしてAppleGoogleだ。この点は、データ企業のTectonixによってありありと示されている。Tectonixは、春休みにパーティーに行った人の移動に伴うウイルス拡散を視覚化することに成功した。

Tectonix GEO @TectonixGEO
社会的距離を取らないことにより、実際にどんな影響が考えられるか見てみたいと思わないだろうか? 当社では@xmodesocialと協力し、Ft. Lauderdaleビーチのみに限って、春休みの期間中にアクティブだった匿名化されたモバイルデバイスの二次的な位置情報を分析をした。この動画はそれらの人々が米国全土でどこに移動したかを示している。

言うまでもないことだが、それらすべての電話にOSを提供しているAppleとGoogleでは、事実上望む時に同様のことを行える。「科学技術者、感染症専門家および医療専門家」からの公開質問状では「Apple、Google、また他のモバイルオペレーティングシステムのベンダー(他のすべてのベンダーも遠隔で関わるのが望ましいとの考え)が、接触者の追跡調査をサポートするために、オプトイン方式のプライバシーを保全したOSの機能を提供する」ことを求めている。

彼らの言っていることは正しい。AndroidとiOSではプライバシーが保全され、相互使用可能なTraceTogetherのような機能をOSレベル(あるいは技術的な点で細かく言うとGoogle Play Serviceレベル)で追加してリリースすることが可能であり、またそうすべきだ。もちろん、これは企業による監視に頼ることを意味しており、それを考えると私たちはみな不安になる。しかし、少なくともこれはまったく新しい監視インフラストラクチャを構築することにはならない。また、AppleとGoogleは、特に携帯電話プロバイダーと比較して、強固な制度上の歴史を持ち、プライバシー保護、および監視内容の送信に対する制限を重要視している。

(信じられないって?Appleがプライバシーにコミットしていることは、長年にわたり同社にとって競争上優位な点となっている。Googleでは、データとプライバシーの設定をユーザーが管理できるようにする十分なツールセットが提供されている。お尋ねするが、あなたの携帯電話サービスプロバイダーではこれらと同等のものが提供されているだろうか。そう。今後、同等のものが提供されると思うだろうか。なるほど。提供されると思っているとすれば、起こりそうもないことを信じていることになる)

また、AppleとGoogleは、データセットを「匿名化する」ことによって適切な方法でプライバシーを保全できる。メリットは他にもある、両社は、ある種の差分プライバシーや準同型暗号、さらにはゼロ知識暗号化(概要が活発に議論された技術)を利用してプライバシーを保全する仕事を行うことに最適な企業だ。そして実用レベルでも、両社にはバックグラウンドサービスをアクティブ状態に維持する点で、サードパーティーのアプリ開発者よりも優れた能力がある。

もちろん、この点はすべて十分に、かつ厳しく規制されている必要がある。しかし同時に、すべての国民がそのような規制を信頼しているわけではないという事実も認識している必要がある。接触者追跡調査システムの有効性と最大限調和したプライバシー保護をシステムの奥深くに構築することは、生データを要求する独裁国家に利用される可能性を考えるととりわけ重要だ。「匿名化された」位置情報データセットは、確かに矛盾したものとなりがちだが、それでも独裁者にとって匿名性を奪うことの難しさは技術的な障害となる。また、個人のプライバシーを優れた暗号化方式でさらに安全に保全できるのであれば、非常に素晴らしいことだ。

AppleとGoogleは、他の選択肢(政府による監視、電話会社、または新しいアプリ、そしてそれらを使用することに付随するあらゆる衝突と障害)と比較して、異論の余地が少ない選択肢である。加えて、世界的なパンデミックに直面している今、両社ではそれぞれの検査および追跡調査のソリューションを30億人のユーザーに比較的迅速にリリースすることができるだろう。広く普及したパンデミック監視システムが必要であるなら、危険が最小限で、プライバシーが最大限保全される方法で既存のシステム(それについて話すのがあまり好きでないとしても)を利用しよう。

画像クレジット: PeakPx under a CC0 Public Domain license.

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(翻訳:Dragonfly)

Amazonが来週から倉庫従業員の体温をチェックしマスクも配布へ

Amazon(アマゾン)は、米国や欧州の倉庫での新型コロナウイルス(COVID-19)感染拡大を防ぐための新たな方策の詳細を明らかにした。ロイターの報道によると、Amazonの倉庫やWhole Foods(ホールフーズ)で働く従業員の体温チェックを行い、マスクも配布する。世界中の国・地域がロックダウンや自己隔離といった策を取るにつれ、Amazonの利用は急激に増えている。そして米国にある同社の倉庫で働く従業員の間でも新型コロナウイルスの感染が確認された。

Amazonはすでにいくつかの対策を明らかにしている。陽性となった従業員に対し隔離中の14日間の給料を保証するほか、施設やインフラの清掃・消毒を強化するというものだ。そして来週から導入される新たな対策では、施設の入り口で従業員の体温をチェックする。体温が38度以上だった人は帰宅するよう促される。そして職場に復帰するには、3日連続で平熱でなければならない。また、数週間前に発注した「何百万」ものサージカルマスクが届けば、従業員に配布するとのことだ。

こうした対策に加え、従業員が労働中に他人と安全な距離を保っているかを確認するために、機械学習を使ったソフトウェアを活用しながら施設内外に取り付けたカメラの映像をモニターする。

Amazonの新型コロナ危機対応をめぐっては多くの従業員が抗議している。スタテン島の倉庫ではボイコットが起こり、この動きを誘導した労働者が解雇される事態に発展した。デトロイトにある倉庫の従業員もまた、危険な労働環境だとして抗議するためにボイコットを計画している。

一方で、Amazonは増大する需要に対処するために倉庫や配送センターの従業員を増やしている。同社は以前、需要増に対応するために新たに10万人を雇用する計画だと発表したが、4月1日に同社がロイターに語ったところによると、すでに8万人を雇用したとのことだ。

画像クレジット: ANGELA WEISS/AFP / Getty Images

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(翻訳:Mizoguchi

スタートアップ製ウェアラブルで新型コロナによる下気道感染症を早期発見する研究

現在の新型コロナウイルス(COVID-19)による危機的状況は、たった1つの試みや対処策で完全に「解決」できるという見込みはほとんどない。そこで、スタートアップのWHOOP(フープ)のフィットネスと健康管理のためのリストバンドなどを対象にした、新しい研究が重要性を増してくる。オーストラリアのセントラル・クイーンズランド大学が主導し、クリーブランド・クリニックが協力する研究では、新型コロナウイルスに感染したと自己判断している数百人のボランティアにWHOOPを装着してもらい、収集したデータから各自の呼吸活動の変化を継続的に監察する計画を立てている。

この研究で使用するデータは、WHOOP Strap 3.0という機器から回収される。このリストバンドには、装着した人の睡眠中の呼吸数から睡眠の質を数値化して示す機能があり、最近のアリゾナ大学の外部研究により、その呼吸数の測定値の正確性が認められている。その研究で、侵襲的手段を除いてはもっとも正確に呼吸数が測れる装置であることが示されたため、今回の研究に携わる人たちは、他の方法によって症状が検知される以前に新型コロナウイルス患者の呼吸活動の異常を知らせる早期警報装置として有効ではないかとの仮説を立てたのだ。

WHOOPは、彼らのハードウェアが報告する呼吸数は、正しいと認められた個々の基準値から外れることがめったにないと話している。そのため、基準値から逸脱するとしたら、極端に気温が高くなったり酸素濃度が変化するといった環境的な原因か、下気道感染症などによる身体的な異常しか考えられない。

新型コロナウイルスは、まさに下気道感染症だ。上気道感染症であるインフルエンザや風邪とは違う。つまり、(比較的簡単に解消できる)環境的原因では説明がつかない下気道の問題による呼吸数の変化と新型コロナウイルスの事例との間には、強力な相互関係があると言える。WHOOPのウェアラブルは数値の偏りを機能不全の兆候として検出するため、本人が呼吸の異常を自覚する前に、基準値と呼吸数との乖離から体の変化を知ることができる。

この研究は、現時点ではまだ仮設の段階でありデータによる裏付けが必要だ。研究チームは、それには6週間ほどかかると話しているが、その調査を開始するアプリには、すでに「新型コロナウイルスに感染したと自己申告した最初の数百人」が集まっているという。目標は、陽性と診断された500人を参加させることだ。またこの他にも、健康や運動をモニターするウェアラブルを新型コロナウイルスの早期発見システムにできないかを探る研究がいくつか進められている。そのひとつに、カリフォルニア大学サンフランシスコ校とOura Ring(オーラ・リング)の共同研究がある。

以前のパンデミックと違い、この新型コロナウイルスの場合は、私たちがデータドリブンのアプローチで問題を解決する方法に慣れてきた時期に発生した。また、自分で数値を測定できる健康器具も数多く普及している。それらが、感染拡大の状況をより正確に評価するための手段となり、ウイルスが人々の間でどのように広がり、あるいは終息していくのか、その傾向を教えてくれるようになるだろう。

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(翻訳:金井哲夫)

感染に導く新型コロナのタンパク質をモデル化、免疫療法のImmunityBioとMicrosoft Azureが協力

大量のグラフィクス処理能力を結合する取り組みが、現在のパンデミックの背後にある新型コロナウイルス(COVID-19)の治療法や治療薬の開発に取り組んでいる研究者に鍵となる力を与えるかもしれない。

免疫療法のスタートアップであるImmunityBioが、Microsoftと協力し、合計24ペタフロップのGPUによるコンピューティングパワーを使って、新型コロナウイルの原因であるSARS-CoV-2ウイルスを人間の細胞に入らせる、いわゆる「突起タンパク質」(スパイクプロテイン、Spike Protein)の極めて詳細なモデルを作ろうとしている。

この新たなパートナーシップには、スパイクプロテインのモデルを、従来のように数か月ではなくわずか数日で作れるようになる、という意味がある。この時間節約によりモデルが、ワクチンや治療薬を開発している研究者や科学者の仮想的な手に早く入るようになり、そして彼らは自分たちの仕事を、人間のACE-2プロテインのレセプターにくっつくことを彼らが防ごうとしているまさにそのプロテインの、詳細な複製を作るところまで前進させることができる。ウイルスの感染とは、まさにスパイクプロテインのその働きのことだからである。

科学者が研究している治療法のメインは、体内のウイルスの拡散を防止または最小化して、ウイルスがそれらのプロテインにくっつくのをブロックすることだ。そしてそのためのもっとも単純な方法は、スパイクプロテインがターゲットのレセプターに接続できないようにすることだ。新型コロナウイルスから回復した患者に自然に生成される抗体は、まさにそれをやっている。現在開発中のワクチンも、同じことを先回りしてやらせようとしている。また多くの治療薬は、ウイルスが新しい細胞をつかまえて体内で自分を複製しようとする能力を、弱めようとしている。

両社のパートナーシップの具体的な中身は、Microsoft Azureのクラスターからの機械学習アプリケーションが使用する1250のNvidia V100 Tensor Core GPU群がImmunityBioの320 GPUのクラスターによる分子モデリングワークと協働するかたちになる。そのコラボレーションの結果を、COVID-19の治療や予防に取り組んでいる研究者たちに提供し、彼らの研究開発努力の迅速化と有効化を促進する。

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(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

新型コロナ発症の自己申告を促すOperation Covid-19がGitHubで協力を募る

カナダ首相のJustin Trudeau(ジャスティン・トルドー)氏の妻から新型コロナウイルス(COVID-19)を移されたカナダ人のスタートアップ創業者は、1つのイニシアティブを立ち上げた。誰でも自らの症状を自己申告して、公開できるようにするもの。関連当局がこのパンデミックを乗り越えられるよう助けるのが狙いだ。

Operation Covid-19は、新型コロナウイルスへの感染について、公式な発表と疑わしいケースの両方をデータリストと地図で可視化している。何よりも命を救い、世界的な公衆衛生システムを改善することを目的としたもの。匿名のアンケートに答えることで、症例を自己報告できるようになっている。このサイトでは、新型コロナウイルス感染の疑いがあるケースに対して、どれだけの公式な検査が行われたかを示すことを目指している。

「より多くの人が、自らの新型コロナウイルス体験を知らせてくれれば、このパンデミックの形勢を逆転させ、より多くの知を結集して命を救うことができるようになります」と、共同創立者のJillian Kowalchuk(ジュリアン・コワルチュク)氏は述べている。

コワルチュク氏は、路上の安全を確保するためのアプリ「Safe&The City」の共同創業者だ。同氏がInstagramに投稿したように、3月5日に英国ロンドンのカナダハウスで、カナダ首相婦人のSophie Trudeau(ソフィー・トルドー)氏に会った後、新型コロナウイルスを発症した。首相夫人も、後に新型コロナウイルスに対して陽性と診断されている。

その後コワルチェク氏は、英国の病院で新型コロナウイルスの検査を拒否され、落胆した。ただ家に帰って自己隔離するように言われたのだ。これによって同氏は、検査の数が足りないことと、この問題の大きさを人々が理解していないことを憂慮するようになった。

「私が直接経験したようなことが、世界中で普通のことになりつつあります。検査が拒否され、新型コロナウイルス発症の大部分が不明のままになり、問題の深刻さが過小評価され、予防策が取られず、必要な公衆衛生の監視システムへのリソース動員が制限されてしまうのです」とコワルチェク氏はTechCrunchに語った。

このイニシアティブは、新型コロナウイルスを発症した人々から洞察を収集し、医療および公衆衛生の当局にも提供する。そうすることで、新型コロナウイルスの発症、回復、および死亡について、公式な発表と自己申告の両方をマップによって可視化し、検査の数を増やすなど、世界的に最良の施策が取られるのを後押しする。

このプロジェクトのソフトウェア開発に貢献するには、ここからGitHubにアクセスすればいい。また、ボランティア活動に参加するには、operationcovid19@gmail.comに電子メールを送信するか、このFacebookグループのメンバーになることから始めよう。

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(翻訳:Fumihiko Shibata)

5分で新型コロナの検査ができるAbbot Labsの検査装置をデトロイトが米で初めて利用

米国デトロイトのMike Duggan(マイク・ダガン)市長は4月1日、CNNのWolf Blitzer(ウルフ・ブリッツァー氏)の番組で、デトロイト市はAbbott Labsの5分で結果がわかる新型コロナウイルス(COVID-19)検査装置を使用する最初の都市になると発表した。市長によるとその装置は、ファーストレスポンダー(広義の救急対応要員)が利用する。目標は、自己隔離中でまだ検査で陽性ではないファーストレスポンダーを検査することだ。

デトロイト市はAbbott Labsの検査装置を今日すなわち4月1日に受け取った。24時間以内に使用可能になる、と市長は言っている。

このAbbottのシステムには、米食品医薬品局(FDA)の緊急時使用免除が下りている。それは小さな台所用品ぐらいのサイズの検査装置で、小型で結果が早い点ではほかの方法より有利だ。

デトロイト市は新型コロナウイルスの被害が特にひどい。最近の数字では、デトロイト周辺の郡がミシガン州の7615名のコロナウイルス患者の81%を占めている。2500名強の警官の20%以上が、新型コロナウイルスの検疫を受けている。デトロイトの患者数がとても多いため、市長は行政の正規の調達ルート以外から誰よりも真っ先に検査装置を入手した。

The Washington Post紙によると、ダガン市長はAbbot Labsの会長で前CEOのMiles White(マイルス・ホワイト)氏の携帯電話の番号を入手して、米国時間3月29日の朝に彼を起こし、検査装置の提供を懇願したという。この早朝の電話によって市は、5台のマシンの入手と5000件の検査を可能にした。

本日のAbbot Labsのツイートによると、すでに同社の検査装置のある地域における緊急看護活動の一環として、システムを新型コロナウイルス向けに利用できるようにしていく。同社によると同社の製品はすでに米国において、最も多く利用されているポイントオブケア分子診断装置(現場で用いる分子生物学的診断装置)だ。そしてそれは、医師のオフィスや、緊急ケアクリニック、救急救命室などの医療施設で広く使われている。

Abbottの予測では、4月には500万件の検査を作り出せる。それは新しい高速検査と、3月18日にFDAの緊急時認可が下りた従来的な検査機関による高速検査を合わせた数字だ。

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(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

NASAが新型コロナ対策のアイデアを全局員からクラウドソーシングで募集

NASAの局内でクラウドソーシングが行われる。世界で最も賢く創造的で才能に恵まれた問題解決集団が、業務の一環として日々現実世界のさまざまな課題を解決している場所だ。だからこそ、進行する新型コロナパンデミックとの戦いにNASAとそのリソースが貢献できる方法を考えるよう、NASAが全局員に呼びかけたことはわれわれにとって大きな励みになる。

NASAは、内部で問題解決に使っているクラウドソーシング・プラットフォームであるNASA@WORKを使用して、新型コロナ危機やそこから生まれるさまざまな問題に対処する新しい方法の創造的アイデアを募集する。すでにNASAはいくつかの方法に取組んでおり、スーパーコンピューターを使った治療方法の研究や、ウイルスを巡って進行中の重要な科学研究の見通しを立てるためのAIソリューションの開発などを行っている。

NASAが局員に向けて行っている公募は、ある程度選択的だ。解決策が最も緊急に必要とされる重要分野を特定し、ホワイトハウスその他のウイルス対策に関わる政府機関と協力して、個人防護具、人工呼吸器、新型コロナウイルスの拡散と伝染を追跡監視する方法などの不足や欠落を補うためにNASA局員の取り組みを集中させるかどうかを判断する。これは、NASAがその他の新型コロナ問題の解決策を聞こうとしないという意味ではない。最も緊急に必要だと判断したのが上記分野だというだけだ

この試みに生産的な時間制約を加えるべく、NASAは上記分野に関するアイデアをNASA @ WORKを通じて4月15日までに提出するよう求めている。その後、何が最も実現可能かを評価し、実現に必要な資源を割り当てるプロセスがある。結果としてつくられる製品やデザインはすべて「オープンソース化してどの企業も国も利用できる」ようにすると同局は言っている。ただし、そこで使われるテクノロジーによっては誰にでも利用可能とは限らない。

画像クレジット:Andrew Harrer/Bloomberg / Getty Images

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

新型コロナ不安の中、ゼロックスが3.7兆円のHP買収を断念

Xerox(ゼロックス)は、 HP敵対的買収提案を取り下げると発表した。このドラマは昨年秋、両社の怒りが増していく書面の交換と、Xeroxの対立的行動に始まり、Xeroxは買収に反対したHP取締役会を乗っ取ろうとまでした。

そのすべてが米国時間3月31日に消滅し、Xeroxは新型コロナによる世界経済の不安定性を理由に買収提案を取り下げることを正式に発表した。

「新型コロナによる現在の世界的健康危機とそれに伴うマクロ経済と市場の混乱は、XeroxがHP(NYSE:HPQ)買収を追求し続けるべきではない状況を作り出した。このため当社はHPを買収するための公開買付を取り下げ、当社が選出した極めて有能なHP取締役候補らの推薦も行わないことにした」と同社が声明で語った。

これに対してHPは、財務状況は良好であり、この結果にかかわらず今後も株主の持つ価値を上げていくつもりだと語った。

我々は今後もHP株主の価値推進に全力をつくす。HPはパーソナルシステム、プリンター、および3Dプリンティングとデジタル製造の各部門で業界をリードしている会社だ。健全な現金持ち高とバランスシートのおかげで、世界的パンデミックという予想していなかった事態に直面しても、将来への戦略選択性を維持することが可能だった。

そもそもこの提案は理解が困難だった。Xeroxは時価総額が40億ドルほどであり、250億ドル近い時価総額のHPよりずっと小さな会社だ。まさしく小物が大物を食おうという話だ。

しかしXeroxは本日も、敗北を認めながらも両社は1つになったほうがよかったと言い張った。それをHPが現実と感じたことはない。HPはXeroxにそんな大金をそろえることができるのか、仮にできたとして、このような取引をやり遂げるほど財務状況が安定しているのかと疑問を呈していたた。

関連記事:HP買収を諦めないゼロックスが提示額を1株24ドルに引き上げ

しかしつい先月にも、Xeroxは1株22ドルから24ドルへと提案金額増やし、株主を取り込もうとした。以前取締役を総入れ替えしようとする前には、取締役会を飛び越し株主と直接交渉すると脅したこともある。

HPは、この提案に内在する敵対心も、取引を強制しようとするXeroxの行動も気に入らなかった。先月HPは、株主にXeroxの提案を拒否させる努力の一環として、数十億ドル規模の配当を提示した。しかし、結局ドラマは世界規模の危機の中でたち消えることになった。

関連記事:HPがXeroxによる敵対的買収回避のために数千億円規模の配当を株主に提案

画像クレジット:Getty Images

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook